(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037462
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】エンジンのブリーザ装置
(51)【国際特許分類】
F01M 13/00 20060101AFI20240312BHJP
F02D 43/00 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
F01M13/00 L
F02D43/00 301T
F02D43/00 301Z
F01M13/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142344
(22)【出願日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】竹▲崎▼ 直人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 礼
(72)【発明者】
【氏名】大久保 真司
(72)【発明者】
【氏名】足立 憲司
(72)【発明者】
【氏名】福山 尚尋
(72)【発明者】
【氏名】金野 晃大
(72)【発明者】
【氏名】森本 宏
(72)【発明者】
【氏名】坪田 健一
【テーマコード(参考)】
3G015
3G384
【Fターム(参考)】
3G015BD10
3G015BD28
3G015CA17
3G015EA37
3G015FB06
3G015FC04
3G384AA03
3G384BA34
3G384BA36
3G384BA42
3G384EB01
3G384ED07
(57)【要約】
【課題】本発明は、エンジンのブリーザへのブローバイガス経路が氷結してエンジン起動を困難にすることを防ぐことを技術課題とする。
【解決手段】エンジンにブローバイガスの内圧上昇を防ぐブリーザ3を設け、該ブリーザ3の近くを巡る暖気回路6を設け、エンジンの起動時に暖気回路6へ排気ガスを流してブリーザ3を暖めることを特徴とするエンジンのブリーザ装置とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンにブローバイガスの内圧上昇を防ぐブリーザ(3)を設け、該ブリーザ(3)の近くを巡る暖気回路(6)を設け、エンジンの起動時に暖気回路(6)へ排気ガスを流してブリーザ(3)を暖めることを特徴とするエンジンのブリーザ装置。
【請求項2】
エンジンの排気ガス路(5)に排気バルブ(7)を設け、該排気バルブ(7)の開閉で暖気回路(6)に流す排気ガスの量を調整することを特徴とする請求項1に記載のエンジンのブリーザ装置。
【請求項3】
ブリーザ(3)のガス入路(1)とガス出路(2)のガス圧差を検出する差圧センサ(10)を設け、該差圧センサ(10)が所定圧以上を検出すると排気バルブ(7)を閉じて排気ガスを暖気回路(6)に流すことを特徴とする請求項2に記載のエンジンのブリーザ装置。
【請求項4】
排気バルブ(7)を制御する制御装置(8)を設け、差圧センサ(10)の圧検出で排気バルブ(7)を開閉制御する請求項2に記載のエンジンのブリーザ装置。
【請求項5】
エンジンにブローバイガスの内圧上昇を防ぐブリーザ(3)を設け、該ブリーザ(3)の近くを巡る暖気回路(6)を設け、エンジンの冷却水循環路からの暖気回路(6)に感温バルブ(13)を設け、所定の低温で感温バルブ(13)を開きブリーザ(3)に冷却水を流すことを特徴とするエンジンのブリーザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンのクランクケース内で生じるブローバイガスを処理するエンジンのブリーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンのクランクケース内にはシリンダーから漏れるブローバイガスが充満するので、このブローバイガスの内圧上昇をブリーザで逃がしながらブローバイガスをエンジンの吸気路に合流する技術がある。
【0003】
特許第4597101号公報には、シリンダーケースの上部を覆うシリンダーヘッド上にブリーザを設ける構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ブローバイガスには水蒸気で含まれているために、冬季にエンジンを長時間停止していると水蒸気が水に戻り凍結してブリーザへのガス通路を詰まらせてブローバイガスの内圧上昇でエンジン起動が不調になることがある。
【0006】
本発明は、エンジンのブリーザへのブローバイガス経路が氷結してエンジン起動を困難にすることを防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
【0008】
請求項1の発明は、エンジンにブローバイガスの内圧上昇を防ぐブリーザ3を設け、該ブリーザ3の近くを巡る暖気回路6を設け、エンジンの起動時に暖気回路6へ排気ガスを流してブリーザ3を暖めることを特徴とするエンジンのブリーザ装置とする。
【0009】
請求項2の発明は、エンジンの排気ガス路5に排気バルブ7を設け、該排気バルブ7の開閉で暖気回路6に流す排気ガスの量を調整することを特徴とする請求項1に記載のエンジンのブリーザ装置とする。
【0010】
請求項3の発明は、ブリーザ3のガス入路1とガス出路2のガス圧差を検出する差圧センサ10を設け、該差圧センサ10が所定圧以上を検出すると排気バルブ7を閉じて排気ガスを暖気回路6に流すことを特徴とする請求項2に記載のエンジンのブリーザ装置とする。
【0011】
請求項4の発明は、排気バルブ7を制御する制御装置8を設け、差圧センサ10の圧検出で排気バルブ7を開閉制御する請求項2に記載のエンジンのブリーザ装置とする。
【0012】
請求項5の発明は、エンジンにブローバイガスの内圧上昇を防ぐブリーザ3を設け、該ブリーザ3の近くを巡る暖気回路6を設け、エンジンの冷却水循環路からの暖気回路6に感温バルブ13を設け、所定の低温で感温バルブ13を開きブリーザ3に冷却水を流すことを特徴とするエンジンのブリーザ装置とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明で、冬季にエンジンを長時間停止させて始動する際は、ブリーザ3の内部で水が凍結してブローバイガスを逃がさず内圧が上昇してエンジン起動が困難になるが、その際は暖気回路6に排気ガスを流してブリーザ3を暖めることでブリーザ機能を回復してエンジンの起動が滑らかに行えるようになる。
【0014】
請求項2の発明で、ブリーザ3が凍結している可能性がある場合に排気バルブ7を閉じて排気ガスを暖気回路6に多く流すことでブリーザ3を暖めてブリーザ機能を回復してエンジンの起動が滑らかに行えるようになる。
【0015】
請求項3の発明で、請求項2の効果に加えて、ブリーザ3の凍結よる詰りをガス入路1とガス出路2のガス圧差を検出する差圧センサ10で検出して排気ガスを暖気回路6に流してブリーザ3を暖めるので、冬季のエンジン起動が容易になる。
【0016】
請求項4の発明で、請求項2の効果に加えて、制御装置8が差圧センサ10の圧検出で排気バルブ7を自動で開閉制御するので、手間を要しない。
【0017】
請求項5の発明で、冬季には感温バルブ13が水温の低下を検出して開き、エンジンの冷却水を暖気回路6に流してブリーザ3を暖めるので、ブリーザ機能を回復してエンジンの起動が滑らかに行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態におけるブリーザを排気ガスで暖める回路の説明図である。
【
図2】排気ガス路に排気バルブを設けた回路の説明図である。
【
図3】ブリーザ出入差圧センサを設けた回路の説明図である。
【
図4】暖気回路に感温バルブを設けた回路の説明図である。
【
図5】DPF処理装置を設けるディーゼルエンジンで点検を促す表示を行うフローチャート図である。
【
図6】DPF処理装置を設けるディーゼルエンジンで点検を促す表示を行うフローチャート図である。
【
図7】DPF処理装置を設けるディーゼルエンジンで点検を促す表示を行うフローチャート図である。
【
図8】DPF処理装置を設けるディーゼルエンジンで点検を促す表示を行うフローチャート図である。
【
図9】DPF処理装置を設けるディーゼルエンジンで点検を促す表示を行うフローチャート図である。
【
図10】DPF処理装置の制御タイムチャート図である。
【
図11】DPF処理装置の制御タイムチャート図である。
【
図12】DPF処理装置の制御タイムチャート図である。
【
図13】DPF処理装置のスート推定における酸素濃度比較判定図である。
【
図14】吸入空気量を計測する手段の比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に示す実施例を参照しながら説明する。
【0020】
図1は、エンジン排気ガスの一部をブリーザ3の周囲に流して暖める回路図で、ブリーザ3は入路1を通ってブローバイガスが入り、ガス出路2を通ってエンジンの吸気路に流れ、排気ガス浄化装置4を通って排気ガス路5に流れる排気ガスの一部が暖気回路6を通ってブリーザ3を暖めている。
【0021】
図2は、前記回路図で排気ガス路5に設ける排気バルブ7をブリーザ3に設けた詰りセンサ9の詰り検出信号で制御装置8が排気バルブ7を閉じて排気ガスの多くを暖気回路6に流すようにした回路図である。
【0022】
図3は、前記詰りセンサ9の代わりにブリーザ3のブローバイガス入路1とガス出路2のガス圧の差を検出する差圧センサ10を設けた回路図で、差圧センサ10の圧が所定圧以上で排気バルブ7を閉じて排気ガスの多くをブリーザ3側に流して暖める。
【0023】
図4は、ブリーザ3の周囲に冷却水入路11から冷却水を流して冷却水出路12に戻す回路図で、冷却水入路11に設ける感温バルブ13は所定以下の水温で開いて冷却水をブリーザ3に流して凍結を解消する。なお、冷却水は不凍液を含み、冬季にも循環してブリーザ3の凍結を防ぐ。
【0024】
図5は、DPF処理装置を設けるディーゼルエンジンにおいて、大気圧と吸入空気温度とエンジン回転数により算出される基準空気量Aを算出し、堆積スートが少ない状態(例えば20%以下)で、現在のエアーフロー空気量とAとを比較し、ずれが認められる場合、エアーフローセンサ、吸気温度センサ、大気圧センサのいずれかの異常か、エアエレメント異常が疑われるため、点検を促す表示を行う制御で、エンジンに致命的なトラブルが発生してしまうことを防ぐことが出来る。
【0025】
図6は、DPF処理装置を設けるディーゼルエンジンにおいて、大気圧と吸入空気温度とエンジン回転数により算出される基準空気量Aを算出し、現在のエアーフロー空気量とAとを比較し、ずれが認められる場合に、エアーフローセンサ、吸気温度センサ、大気圧センサのいずれかの異常か、エアエレメント異常が疑われるため、点検を促す表示を行う制御で、エンジンに致命的なトラブルが発生してしまうことを防ぐことが出来る。
【0026】
図7は、DPF処理装置を設けるディーゼルエンジンにおいて、DPF処理装置に堆積されたスート量が少ない時(例えば堆積量20%以下)に、大気圧とエンジン回転数により算出される基準空気量Aに対して、現在のエアーフロー空気量がAに対して15%以上下回っている時、エアークリーナ・あるいはエアーフローセンサに異常が発生していると判断し、オペレータに点検を促す表示を行う制御で、エンジンに致命的なトラブルが発生してしまうことを防ぐことが出来る。
【0027】
図8は、DPF処理装置を設けるディーゼルエンジンにおいて、大気圧とエンジン回転数により算出される基準空気量Aに対して、DPF処理装置に堆積されたスート量によって決定される係数BをAに乗じた値であるXが、現在のエアーフロー空気量よりも上回っているときに、エアークリーナが詰まっていると判断し、オペレータに点検を促す表示を行う制御で、エアークリーナを含めた吸気系の点検を促すことで、トラブルを防ぐことが出来る。
【0028】
図9は、DPF処理装置を設けるディーゼルエンジンにおいて、DPF処理装置に堆積されたスート量が少ない時(例えば堆積量20%以下)に、大気圧とエンジン回転数により算出される基準空気量Aに対して、現在のエアーフロー空気量が15%以下である時、エアークリーナ、あるいはエアーフローセンサに異常が発生していると判断し、オペレータに点検を促す表示を行う制御で、エンジンに致命的なトラブルが発生してしまうことを防ぐことが出来る。
【0029】
図10は、DPF処理装置の制御タイムチャート図で、再生のため吸入空気流量、ポスト燃料量を段階的最適値に調整することで排気ガス温度を高める。
【0030】
最初に、吸気スロットルを用いてエンジン回転、噴射量などから算出される第1の目標空気量に調整する。その後、ポスト噴射を第1の上限量まで噴射しDPFを通過する排気温度を調整する。規定時間のちに排気温度が規定値まで上昇しておらず、DPF入口温度とDPF出口温度を比較し、DPF出口温度が規定値以下の場合は、ポスト噴射量を第2の上限量まで増加させる制御を行う。また、DPF入口温度とDPF出口温度を比較し、DPF出口温度が規定値より大きくなった場合は、目標吸入空気量を第2の閾値まで徐々に減少させ、減少中にエンジン回転、燃料噴射量の変動を判定する。
【0031】
この制御で、ポスト燃料量、吸気量を段階的に最適値に調整して、排気温度を効果的に上げることが出来る。
【0032】
図11は、DPF処理装置の制御タイムチャート図で、DPF処理装置の再生中における吸入空気流量を調整する。
【0033】
DPF処理装置の再生制御中は、吸気スロットルを用いてエンジン回転、噴射量などから算出される第1の目標空気量に調整する。その状態でポスト噴射を行ってDPFを通過する排気温度を調整する。規定時間のちに排気温度が規定値まで上昇しておらず、DPF入口温度とDPF出口温度を比較し、DPF出口温度が規定値より上昇している場合は、ポスト噴射を一時的に停止、もしくは減少させた状態で、目標吸入空気量を第2の閾値まで徐々に減少させる制御を行う。空気量の減少中はエンジン回転、燃料噴射量の変動を判定する制御を行い、その後、ポスト噴射を再度再開する。
【0034】
この制御で、段階的に吸入空気量を減らすことで、排気温度を安定して上げることが出来る。
【0035】
図12は、DPF処理装置の制御タイムチャート図で、DPFの再生中における吸入空気流量を調整する。
【0036】
DPF処理装置の再生制御中は、吸気スロットルを用いてエンジン回転、噴射量などから算出される第1の目標空気量に調整する。その状態でポスト噴射量を調整することでDPFを通過する排気温度を調整する。ポスト噴射量が100%になっているにも関わらず、規定時間ののちに排気温度が規定値まで上昇しない場合は、目標吸入空気量を第2の閾値まで徐々に減少させる制御を行う。減少中はエンジン回転、燃料噴射量の変動を判定する。これで、排気温度を効果的に上げることが出来る。
【0037】
図13は、DPF処理装置のスート推定における酸素濃度比較判定図で、エンジンの排気O2濃度をラムダセンサにより計測するエンジンで、エンジン始動後の暖機過程の凝縮水が発生しやすい期間に、ラムダセンサの破損防止のため、センサの駆動を停止する。停止期間中は、EGRを停止とし、O2濃度を、空気量と噴射量より算出する。
【0038】
図14は、吸入空気量を計測する手段の比較図で、1.吸入空気量をエアーフローセンサにより計測する手段と、2.エンジンの過給圧力を計測するブースト圧センサで計測する手段と、3.エンジンの排気O2濃度をラムダセンサにより計測する手段で、それらの値を4.の基準で比較することで、各センサから算出される吸入空気量を相互判定する。EGRバルブが停止するエンジン始動後の暖機過程において実施することで、計測値の異常を判定し、吸入空気量を精度よく求めることが出来る。
【0039】
図示を省略するが、各種センサを備えたトラクタ等の作業車で、出力制限解除用のスイッチ(又は他のスイッチを兼用)し、センサの異常で出力制限をした場合に、出力制限解除の確認として、メータパネルにスイッチ押下の点滅表示をし、スイッチを押してパーキングブレーキを作動させた後にエンジンを停止させてブザーを鳴らして出力解除を行うことで、気付かずに出力制限が解除されることによる急加速や急発進による事故を防ぐことが出来る。
【0040】
また、DPF処理装置の再生処理をラムダセンサで制御する場合に、吸気スロットルバルブを閉じて吸気流量を抑制して運転条件で、吸気圧を計測し、エアーフローセンサからの空気流量、燃料噴射量、吸気圧のマップを事前に準備し、そのマップと排ガス出力値を比較し、排ガス中の吸気圧が閾値から外れた場合、センサ異常と判定し、警告灯もしくは警報によりオペレータに知らせるようにすると良い。
【0041】
図15は、圃場の管理システムの説明図で、圃場19の横に作物を監視する赤外線カメラ20を設け、その赤外線カメラ20の画像をパソコン21に送信し、画像処理を行い、圃場19の近くにドローン23の待機場を設け、画像処理にて圃場19内に鳥獣が侵入してきたことが確認された場合、ユーザのスマホ22にリアルタイムのカメラ映像を送信し、ドローン23を飛ばしてマイクでユーザの声を発声したり音や光を発したりして鳥獣を脅し、威嚇効果を高める。
【符号の説明】
【0042】
1 ガス入路
2 ガス出路
3 ブリーザ
6 暖気回路
7 排気バルブ
10 差圧センサ
13 感温バルブ