(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037471
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】シリンダー及びマンホール蓋開閉補助装置
(51)【国際特許分類】
F16J 3/04 20060101AFI20240312BHJP
B65D 90/10 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
F16J3/04 B
B65D90/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142364
(22)【出願日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000209773
【氏名又は名称】エヌジーケイ・ケミテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】井上 智夫
(72)【発明者】
【氏名】狩野 千代
【テーマコード(参考)】
3E170
3J045
【Fターム(参考)】
3E170AA03
3E170AB09
3E170AB30
3E170PA01
3J045AA14
3J045BA01
3J045BA02
3J045BA03
3J045CB10
3J045CB16
3J045CB30
3J045EA10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】分割部構造がシンプルで、且つ、高効率で交換作業ができるカバーを有するシリンダーを提供する。
【解決手段】シリンダーのロッドの突出部を覆うカバー200が、第一首部201と、第二首部202と、胴体部203と、第一首部及び胴体部の第一端部203aを連結する第一連結部204と、第二首部及び胴体部の第二端部203bを連結する第二連結部205とを有し、胴体部には胴体部の外径を画定する複数の開リング206がロッドの軸方向に並んで固定され、複数の開リングは、胴体部の第一端部及び第二端部に設置されると共に、第一端部及び第二端部の間に少なくとも一つ設置され、カバーは、第一首部の先端から第一連結部、前記胴体部、及び第二連結部をこの順に通過して第二首部の先端まで連続する分割部208を有して、胴体部は、分割部の開閉を制御可能なファスナー209を有し、ファスナーは、複数の開リングの端部間の隙間に配置される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダー本体と、
前記シリンダー本体内に挿入される挿入部及び前記シリンダー本体外に突出している突出部を有し、前記突出部の突出長さが調整可能なロッドと、
前記ロッドの前記突出部を覆うカバーと、
を備えるシリンダーであって、
前記カバーは、前記シリンダー本体の外周面に固定される筒状の第一首部と、第一首部と同軸状の筒状の第二首部であって、前記ロッドの前記突出部の外周面に固定される第二首部と、第一首部と同軸状の筒状の胴体部であって、第一首部及び第二首部の間に配置され、第一首部よりも大きな外径の第一端部及び第二首部よりも大きな外径の第二端部を有し、前記突出部の突出長さに応じて前記ロッドの軸方向に伸縮自在である胴体部と、第一首部及び前記胴体部の第一端部を連結する第一連結部と、第二首部及び前記胴体部の第二端部を連結する第二連結部とを有しており、
前記胴体部には、前記胴体部の外径を画定する複数の開リングが前記ロッドの軸方向に並んで固定されており、
前記複数の開リングは、前記胴体部の第一端部及び第二端部に設置されると共に、第一端部及び第二端部の間に少なくとも一つ設置されており、
前記カバーは、第一首部の先端から第一連結部、前記胴体部、及び第二連結部をこの順に通過して第二首部の先端まで連続する分割部を有しており、
前記胴体部は、前記分割部の開閉を制御可能なファスナーを有しており、
前記ファスナーは、前記複数の開リングの端部間の隙間に配置される、
シリンダー。
【請求項2】
前記複数の開リングの内周の最小半径をR(単位:mm)、前記ロッドを最大限に突出させたときの前記突出部のうち、前記胴体部に覆われている部分の外周の最大半径をr(単位:mm)、前記胴体部をロッドの軸方向に最大限に伸ばしたときに隣り合う前記開リング同士の最大距離をL(単位:mm)とすると、0≦R-r-L/2≦20が成立する請求項1に記載のシリンダー。
【請求項3】
前記ロッドの前記突出部は、前記突出部の突出長さの最小値を定めるための前記シリンダー本体と当接可能なストッパーを有する請求項1又は2に記載のシリンダー。
【請求項4】
前記胴体部の第一端部及び第二端部の間に設置される前記複数の開リングの数が1本以上3本以下である請求項1又は2に記載のシリンダー。
【請求項5】
第一連結部及び第二連結部は、前記分割部の開閉を制御可能なファスナーを有する請求項1又は2に記載のシリンダー。
【請求項6】
第一首部及び第二首部の一方又は両方は、前記分割部の開閉を制御可能なファスナーを有しない請求項1又は2に記載のシリンダー。
【請求項7】
第一首部及び第二首部の一方又は両方は、前記分割部に重ね代を有する請求項6に記載のシリンダー。
【請求項8】
前記複数の開リングの端部間の隙間の中心角がそれぞれ、30°~90°である請求項1又は2に記載のシリンダー。
【請求項9】
前記複数の開リングの端部間の隙間の長さをG(単位:mm)とし、ロッドを最大限に突出させたときの前記突出部のうち、前記胴体部に覆われている部分の外周の最大半径をr(単位:mm)とすると、2r+40≧G≧2rが成立する請求項1又は2に記載のシリンダー。
【請求項10】
前記複数の開リングは、前記胴体部に縫着されている請求項1又は2に記載のシリンダー。
【請求項11】
第一首部は前記シリンダー本体の外周面にホースバンドによって固定される請求項1又は2に記載のシリンダー。
【請求項12】
第二首部は前記ロッドの前記突出部の外周面にホースバンドによって固定される請求項1又は2に記載のシリンダー。
【請求項13】
ピン軸に軸支されていると共にマンホール蓋に連結されているヒンジと、前記ヒンジの動きに応じ、前記ロッドの前記突出部の突出長さが調整される請求項1又は2に記載のシリンダーと、を備えるマンホール蓋開閉補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシリンダーに関する。また、本発明はシリンダーを備えたマンホール蓋開閉補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
化学工業、医薬品工業、食品工業、電子産業等の工業分野においては、種々の処理を行うために圧力容器、攪拌槽及び反応容器等の各種容器が用いられる。これらの容器には原料や薬品等の物質を投入するため、又は、人が内部への出入りを行うためのマンホールが設けられることがある。マンホールには蓋が設置されるが、この蓋は重量物のため、ヒンジ周辺に蓋の開閉を容易にするための開閉補助機構が設けられるのが一般的である。
【0003】
特許文献1(実全平3-111999号公報)には、グラスライニング機器用マンホールカバー装置が記載されている。当該文献には、開閉補助機構としてのバネバランス装置に連結されたマンホールカバーが開示されており、バネバランス装置のシリンダー本体から突出したロッドがジャバラによって覆われている様子が図示されている。
【0004】
一方、特許文献2(実全昭51-094361号公報)には、スライド面保護部品におけるジャバラにおいて、分割可能なファスナーを設けたことを特徴とする分割式ジャバラが記載されている。この分割式ジャバラは、ミシン糸にてボディーに固定されている複数のリングを有している。ボディーの中心は分割されており、その中心部分の両端には取付リングの付いたファスナーが接合されている。当該文献には取付リングの付いたファスナーが、リングの端部に連結されている様子が図示されている。
【0005】
特許文献3(特開2010-156409号公報)には、昇降装置の各軸に取り付けられるカバーであって、着脱が容易であるカバーが記載されている。当該カバーは、シート部と、前記シート部が前記軸を覆う筒状になるように前記シート部の一端と他端とを接続するファスナー部と、を備え、前記シート部には、前記シート部を前記ファスナー部で筒状にして前記軸に取り付けたときに前記シート部が蛇腹状になるように前記軸の軸線(CL)方向に等間隔で並ぶ複数のワイヤ部材が設けられている。各ワイヤ部材の一端には、その一端と他端とを連結してワイヤ部材をリング状にする連結部材がそれぞれ設けられる。
【0006】
特許文献4(特開2000-211506号公報)には、防雪・防塵カバーを装備する鉄道車両用ダンパ装置が記載されている。防雪・防塵カバーは、周方向1個所においてスライド式ファスナにより分離及び結合自在である。また、縦方向へ配列された複数本の骨用円環リングは、周方向へスライド式ファスナと一致する個所において分離端部をもち、分離端部の他方は、常時は、ジョイントパイプの他端側へ挿入されて、分離端部の一方と相互に結合状態になる。防雪・防塵カバーの交換時には、分離端部の他方は、ジョイントパイプの他端側から抜かれて、分離端部の一方と相互に分離状態になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実全平3-111999号公報
【特許文献2】実全昭51-094361号公報
【特許文献3】特開2010-156409号公報
【特許文献4】特開2000-211506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載されるような、シリンダー本体から突出したロッドを覆うジャバラ等のカバーを有する開閉補助機構においては、経年劣化又は作業ミス等によりカバーが破損する場合がある。破損したカバーを新品のカバーに交換するためには、ロッドから破損したカバーを抜き取る作業や、新品のカバーをロッドに挿通する作業が必要となる。このため、カバーの交換作業を実施する際には、開閉補助機構の分解・再組立が発生するという問題がある。また、分解・再組立後に蓋からの圧力漏れが発生すると開閉補助機構の調整作業が必要となるため、専門的な技術をもつ作業者しか交換作業が出来ないといった問題もある。
【0009】
この点、特許文献2~4に記載されるような、ファスナー式の分割部を有するカバーを利用することでカバーの交換作業の効率は向上すると考えられる。しかしながら、これらの文献に記載されているファスナー付きのカバーにおいても、交換作業の効率は十分とは言えず、未だに改善の余地が残されている。
【0010】
具体的には、従来技術においては、ファスナー式の分割部において複数のリングの両端をそれぞれ連結及び分離可能な構造を有していた。しかしながら、ファスナーを閉じる際に複数のリングの両端を一つ一つ連結する作業が発生し、ファスナーを開けるときには複数のリングの両端を一つ一つ分離する作業が発生する。これらの作業はカバーを交換する際の作業効率を低下させる要因となる。また、従来技術において、複数のリングの両端をそれぞれ連結及び分離可能にする分割部の構造は複雑であり、製造コストを押し上げる要因となっていた。
【0011】
上記事情に鑑みて創作された本発明は一実施形態において、分割部の構造がシンプルであり、且つ、高い効率で交換作業を行うことができるカバーを有するシリンダーを提供することを課題とする。また、本発明は別の一実施形態において、そのようなシリンダーを備えたマンホール蓋開閉補助装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、複数の開リングの端部間の隙間にファスナーを配置したカバーを有するシリンダーが有利であることを見出し、以下に例示される本発明を創作した。
【0013】
[1]
シリンダー本体と、
前記シリンダー本体内に挿入される挿入部及び前記シリンダー本体外に突出している突出部を有し、前記突出部の突出長さが調整可能なロッドと、
前記ロッドの前記突出部を覆うカバーと、
を備えるシリンダーであって、
前記カバーは、前記シリンダー本体の外周面に固定される筒状の第一首部と、第一首部と同軸状の筒状の第二首部であって、前記ロッドの前記突出部の外周面に固定される第二首部と、第一首部と同軸状の筒状の胴体部であって、第一首部及び第二首部の間に配置され、第一首部よりも大きな外径の第一端部及び第二首部よりも大きな外径の第二端部を有し、前記突出部の突出長さに応じて前記ロッドの軸方向に伸縮自在である胴体部と、第一首部及び前記胴体部の第一端部を連結する第一連結部と、第二首部及び前記胴体部の第二端部を連結する第二連結部とを有しており、
前記胴体部には、前記胴体部の外径を画定する複数の開リングが前記ロッドの軸方向に並んで固定されており、
前記複数の開リングは、前記胴体部の第一端部及び第二端部に設置されると共に、第一端部及び第二端部の間に少なくとも一つ設置されており、
前記カバーは、第一首部の先端から第一連結部、前記胴体部、及び第二連結部をこの順に通過して第二首部の先端まで連続する分割部を有しており、
前記胴体部は、前記分割部の開閉を制御可能なファスナーを有しており、
前記ファスナーは、前記複数の開リングの端部間の隙間に配置される、
シリンダー。
[2]
前記複数の開リングの内周の最小半径をR(単位:mm)、前記ロッドを最大限に突出させたときの前記突出部のうち、前記胴体部に覆われている部分の外周の最大半径をr(単位:mm)、前記胴体部をロッドの軸方向に最大限に伸ばしたときに隣り合う前記開リング同士の最大距離をL(単位:mm)とすると、0≦R-r-L/2≦20が成立する[1]に記載のシリンダー。
[3]
前記ロッドの前記突出部は、前記突出部の突出長さの最小値を定めるための前記シリンダー本体と当接可能なストッパーを有する[1]又は[2]に記載のシリンダー。
[4]
前記胴体部の第一端部及び第二端部の間に設置される前記複数の開リングの数が1本以上3本以下である[1]~[3]の何れか一項に記載のシリンダー。
[5]
第一連結部及び第二連結部は、前記分割部の開閉を制御可能なファスナーを有する[1]~[4]の何れか一項に記載のシリンダー。
[6]
第一首部及び第二首部の一方又は両方は、前記分割部の開閉を制御可能なファスナーを有しない[1]~[5]の何れか一項に記載のシリンダー。
[7]
第一首部及び第二首部の一方又は両方は、前記分割部に重ね代を有する[1]~[6]の何れか一項に記載のシリンダー。
[8]
前記複数の開リングの端部間の隙間の中心角がそれぞれ、30°~90°である[1]~[7]の何れか一項に記載のシリンダー。
[9]
前記複数の開リングの端部間の隙間の長さをG(単位:mm)とし、ロッドを最大限に突出させたときの前記突出部のうち、前記胴体部に覆われている部分の外周の最大半径をr(単位:mm)とすると、2r+40≧G≧2rが成立する[1]~[8]の何れか一項に記載のシリンダー。
[10]
前記複数の開リングは、前記胴体部に縫着されている[1]~[9]の何れか一項に記載のシリンダー。
[11]
第一首部は前記シリンダー本体の外周面にホースバンドによって固定される[1]~[10]の何れか一項に記載のシリンダー。
[12]
第二首部は前記ロッドの前記突出部の外周面にホースバンドによって固定される[1]~[11]の何れか一項に記載のシリンダー。
[13]
ピン軸に軸支されていると共にマンホール蓋に連結されているヒンジと、前記ヒンジの動きに応じ、前記ロッドの前記突出部の突出長さが調整される[1]~[12]の何れか一項に記載のシリンダーと、を備えるマンホール蓋開閉補助装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一実施形態に係るシリンダーが備えるカバーは、カバーの着脱時において複数のリングの両端を連結・分離する操作が不要であるため、高い効率でカバーの交換作業を行うことができる。また、当該カバーは、複数のリングの両端を連結・分離することを可能にする構造を有しないため、分割部の構造がシンプルになる。この結果、部品点数の減少及び製造工程の簡素化が可能になるので、製造コストを低減することに寄与する。
【0015】
また、本発明の一実施形態に係るシリンダーが備えるカバーは、開リングの端部間の隙間にファスナーが配置されているので、ファスナーが開いた状態にあっても、開リングが露出しない。よって、カバーの交換作業中に開リングの端部が作業者の手に刺さって怪我をしたり、開リングの露出部がカバーの交換作業の妨げになったりするおそれを低下できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係るマンホール付き容器の全体構造を模式的に示す。
【
図2-1】マンホール蓋に取り付けられた本発明の一実施形態に係るマンホール蓋開閉補助装置の模式的な側面図及びマンホールの部分的な断面構造を示す(マンホール蓋が完全に閉じている状態)。理解を助けるため、カバーで覆われているロッドの突出部の様子も示されている。
【
図2-2】マンホール蓋に取り付けられた本発明の一実施形態に係るマンホール蓋開閉補助装置の模式的な側面図及びマンホールの部分的な断面構造を示す(ストッパーによってマンホール蓋がそれ以上開かない状態)。理解を助けるため、カバーで覆われているロッドの突出部の様子も示されている。
【
図3-1】本発明の一実施形態に係るマンホール蓋開閉補助装置についての模式的な斜視図を示す。
【
図3-2】本発明の一実施形態に係るマンホール蓋開閉補助装置について、シリンダーの中心軸に平行な切断面で当該中心軸を鉛直方向に切断したときの斜視断面図を示す。
【
図4】本発明の一実施形態に係るカバーの模式的な斜視図を示す。
【
図5】本発明の一実施形態に係るカバーをロッドの軸方向に垂直な方向から観察したときの、ロッド、胴体部、開リング、シリンダー本体の模式的な位置関係を示す。
【
図6-1】
図2-1のカバー付近の部分拡大図を示す。
【
図6-2】
図2-2のカバー付近の部分拡大図を示す。
【
図7-1】本発明の一実施形態に係るカバーを第一連結部の側から見た時の側面図を示す。
【
図7-2】本発明の一実施形態に係るカバーを第二連結部の側から見た時の側面図を示す。
【
図8】一つの円弧状の開リングをその径方向に対して垂直な方向から見たときの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず、本発明の一実施形態に係るマンホール付き容器10の全体構造について
図1を参照しながら説明する。マンホール300は、圧力容器、攪拌槽及び反応容器等の各種容器に設けることができるが、容器10の用途には特段の制約はない。容器10の上部外面にはマンホール300を設けることができる。マンホール300は、容器10の上部外面から突出する筒状のカラー310と、カラー310の内周側に形成される開口320と、開口320を塞ぐためのマンホール蓋330と、マンホール蓋330に取り付けられたマンホール蓋開閉補助装置100とを備えることができる。容器10の必要箇所、例えば、容器10内に投入される物質等と接触の可能性がある部位(例:カラー、プロテクターリング、マンホール蓋、容器内面)にはグラスライニング加工を施してもよい。
【0018】
マンホール300の開口320の大きさについては特に制限はないが、マンホールとしての機能をもたせる場合、人が出入りするための過不足のない大きさであることが好ましい。マンホール300における開口320の周長は1100~1600mmであることが典型的である。
【0019】
図2-1及び
図2-2を参照すると、カラー310の上端は、開口320の周縁を形成するフランジ部305を有する。開口周縁のグラスライニング面を保護する目的で、フランジ部305の上面とマンホール蓋330の間にプロテクターリング304を設置してもよい。マンホール蓋330とプロテクターリング304の間には第一ガスケット302が介装されてもよく、フランジ部305の上面とプロテクターリング304の間には、第二ガスケット303が介装されてもよい。第一ガスケット302、第二ガスケット303、及びプロテクターリング304は何れもフランジ部305の上面輪郭に沿う環状体とすることができる。フランジ部305とマンホール蓋330の間の圧力は、クランプ等の締付部材(図示せず)によって、調節可能である。なお、フランジ部305の上面とマンホール蓋330の間に、プロテクターリング304が存在しない場合でも、マンホール蓋330を閉めたときの密閉性を高めるためにガスケットを介装することが好ましい。
【0020】
次に、
図2-1、
図2-2、
図3-1及び
図3-2を参照しながら、本発明の一実施形態に係るマンホール蓋開閉補助装置100の構成について説明する。マンホール蓋開閉補助装置100は、ピン軸102に軸支されていると共にマンホール蓋330に(直接的に又は間接的に)連結されているヒンジ103と、ヒンジ103の動きに応じ、ロッド112の突出部112aの突出長さが調整されるシリンダー110と、を備えることができる。シリンダー110は、シリンダー本体111と、シリンダー本体111内に挿入される挿入部112b及びシリンダー本体111外に突出している突出部112aを有し、突出部112aの突出長さが調整可能なロッド112と、ロッド112の突出部112aを覆うカバー200とを備えることができる。ヒンジ103の動きに応じ、シリンダー110のロッド112の突出部112aの突出長さを調整する手段としては、例えば、ヒンジ103をカムとして用いることで、ヒンジ103の回転運動をロッド112の往復運動に変換するカム機構が挙げられる。
【0021】
ピン軸102は支持アーム105に設けることができる。図示の実施形態に係るマンホール蓋開閉補助装置100において、支持アーム105はプロテクターリング304に連結固定されているが、支持アーム105の連結固定箇所はプロテクターリング304に限定されず、例えば、カラー310に連結固定してもよい。支持アーム105には更に、シリンダー110のシリンダー本体111を軸支するためのピン軸108を設けることができる。また、図示の実施形態に係るマンホール蓋開閉補助装置100においては、マンホール蓋330には蓋連結アーム104が連結固定されており、蓋連結アーム104はヒンジ103に連結固定されている。蓋連結アーム104とヒンジ103は一体成形品として提供されてもよい。
【0022】
支持アーム105及び蓋連結アーム104のそれぞれの連結固定の方法には特に制限はない。図示の実施形態に係るマンホール蓋開閉補助装置100において、支持アーム105とプロテクターリング304の間、及び、蓋連結アーム104とヒンジ103の間の連結固定には、ボルト及びナットを利用した連結固定方法を採用している。その他の連結固定方法としては、溶接、溶射が挙げられる。例えば、蓋連結アーム104とマンホール蓋330の間の連結固定には溶接を利用した連結固定方法を採用している。
【0023】
ヒンジ103がピン軸102を回転中心として回転するに伴い、マンホール蓋330は閉じた状態(
図2-1)から開いた状態(
図2-2)に遷移することができ、逆も然りである。図示の実施形態に係るマンホール蓋開閉補助装置100においては、ヒンジ103には、シリンダー110のロッド112を軸支するためのピン軸107を設けることができ、支持アーム105には、シリンダー110のシリンダー本体111を軸支するためのピン軸108を設けることができる。
【0024】
図示の実施形態に係るマンホール蓋開閉補助装置100においては、シリンダー本体111は支持アーム105に設けられたピン軸108に軸支されている一方で、ロッド112はヒンジ103に設けられたピン軸107に軸支されている。このため、マンホール蓋330が開く方向にヒンジ103がピン軸102を回転中心として回転すると、ピン軸107とピン軸108の間の距離が短くなり、これに連動してロッド112の突出部112aの突出長さが短くなる。逆に、マンホール蓋330が閉じる方向にヒンジ103が回転すると、ピン軸107とピン軸108の間の距離が長くなり、これに連動してロッド112の突出部112aの突出長さが長くなる。なお、ピン軸102、ピン軸107、及びピン軸108は、互いに平行な位置関係にある。
【0025】
図3-2を参照すると、ロッド112の突出部112aは、突出部112aの突出長さの最小値を定めるためのシリンダー本体111と当接可能なストッパー113を有してもよい。図示の実施形態において、ストッパー113はロッド112の突出部112aの外周面に同軸状に固定されている筒状の形態にあり、例えばストッパー113としてナットを使用することができる。マンホール蓋330が開く方向にヒンジ103がピン軸102を回転中心として回転すると、ロッド112の突出部112aの突出長さが短くなり、これに応じてストッパー113はシリンダー本体111に近づく方向に移動する。一方、シリンダー本体111には、ロッド112の出入口となる開口115を有する壁114が設けられており、ロッド112の突出部112aの突出長さが短くなると、ストッパー113はやがて壁114に当接する。壁114に当接すると、ロッド112はシリンダー本体111内へ更に進入できない。従って、ストッパー113が壁114に当接する位置が、突出部112aの突出長さが最小となる位置である。
【0026】
図示の実施形態においては、ストッパー113はロッド112の突出部112aに同軸状に固定されている筒状の形態にあるが、ストッパー113の形態はこれに限られない。例えば、ロッド112の突出部112aの外周面にロッド112の径方向に部分的に凸となる突起部を設け、この突起部をシリンダー本体111に当接可能となるようにしてもよい。また、図示の実施形態においては、ストッパー113は、シリンダー本体111の壁114に当接可能に構成されているが、突出部112aの突出長さの最小値を定めることができれば、シリンダー本体111のその他の部位、例えば壁114よりも内部にある壁116に当接可能となるように構成してもよい。
【0027】
図3-2を参照すると、シリンダー本体111はコイルバネ117を内蔵することができる。コイルバネ117はロッド112の挿入部112bとの連結部118を有している。コイルバネ117は、挿入部112bの挿入長さが長くなる(突出部112aの突出長さが短くなる)につれて伸長する一方、挿入部112bの挿入長さが短くなる(突出部112aの突出長さが長くなる)につれて収縮するように構成されている。マンホール蓋330が開く方向にヒンジ103がピン軸102を回転中心として回転し、これに連動してロッド112の突出部112aの突出長さが短くなる場合、収縮したコイルバネ117が伸長しようとする反力の作用により、マンホール蓋330を開く力を軽減可能である。一方、マンホール蓋330が閉じる方向にヒンジ103がピン軸102を回転中心として回転し、これに連動してロッド112の突出部112aの突出長さが長くなる場合、コイルバネ117を収縮させる力の作用により、マンホール蓋330が自重で急激に閉じるのを抑制可能である。よって、マンホール蓋330を開くとき及び閉じるときの何れの操作も容易化される。
【0028】
次に、本発明の一実施形態に係るカバー200の構成について、主に
図4を参照しながら説明する。カバー200は、マンホール蓋330の開閉操作に伴ってロッド112がストロークする際の安全対策、及び防塵性を高める目的で設置される。カバー200は、シリンダー本体111の外周面に固定される筒状の第一首部201と、第一首部201と同軸状の筒状の第二首部202であって、ロッド112の突出部112aの外周面に固定される第二首部202と、第一首部201と同軸状の筒状の胴体部203であって、第一首部201及び第二首部202の間に配置され、第一首部201よりも大きな外径の第一端部203a及び第二首部202よりも大きな外径の第二端部203bを有し、突出部112aの突出長さに応じてロッド112の軸方向に伸縮自在である胴体部203と、第一首部201及び胴体部203の第一端部203aを連結する第一連結部204と、第二首部202及び胴体部203の第二端部203bを連結する第二連結部205とを有する。
【0029】
第一首部201、第二首部202、胴体部203、第一連結部204、及び第二連結部205を構成するカバー材は、限定的ではないが、例えば、ゴム製シート、織布、不織布、ウレタン、PVC、ポリプロピレン、PET等の樹脂などを一種又は二種以上用いた可撓性の材料で構成することができる。具体的には、カバー材は、ゴム製シートと樹脂フィルムが積層されたシート(ゴムを樹脂フィルムにコートしたものを含む。)、ゴム製シートと織布が積層されたシート(ゴムを織布にコートしたものを含む。)、織布と樹脂フィルムが積層されたシート等で構成することができる。これらの中でも、耐水性及び高強度の理由により、カバー材はゴム製シートと織布が積層されたシートで構成することが好ましい。
【0030】
第一首部201、第二首部202、及び胴体部203の形状は、筒状であれば特に制限はなく、円筒状の他、角筒(例:四角筒、六角筒等)状とすることができる。但し、カバー200を安定して固定する観点からは、第一首部201は、シリンダー本体111の外周面に対応する形状及び寸法を有することが好ましく、第二首部202は、ロッド112の突出部112aの外周面に対応する形状及び寸法を有することが好ましい。例えば、シリンダー本体111の外周面及びロッド112の突出部112aの外周面が円筒状であれば、第一首部201及び第二首部202も円筒状とすることが好ましい。また、第一首部201の内径は、第一首部201を固定するシリンダー本体111の外周面の外径に対応させることが好ましく、第二首部202の内径は、第二首部202を固定するロッド112の突出部112aの外周面の外径に対応させることが好ましい。
【0031】
第一首部201はシリンダー本体111の外周面に固定され、第二首部202はロッド112の突出部112aの外周面に固定される。第一首部201及び第二首部202の固定方法に特段の制限はないが、例えば、ホースバンド等の留め具210によって固定する方法が挙げられる。ホースバンドにはネジ式、インターロック式、クリップ式、ワイヤ式、安全キャップ式等が挙げられ、何れを使用してもよいが、これらの中では確実性の観点からネジ式が好ましい。また、その他の固定方法としては、第一首部201及びシリンダー本体111の外周面、及び/又は、第二首部202及びロッドの突出部112aの外周面にネジ穴を設け、当該ネジ穴を用いてネジ締結する方法が挙げられる。
【0032】
胴体部203の形状は、第一首部201及び第二首部202に比べて自由度が高いが、胴体部203がロッド112の軸方向に収縮した時に胴体部203がロッド112に接触しないようにするための胴体部203の寸法を算出しやすく、更には胴体部203をコンパクトにできるので、円筒状とすることが好ましい。胴体部203の好ましい寸法条件については、後述する。
【0033】
第一首部201及び胴体部203の第一端部203aを連結する第一連結部204の形状については、第一首部201及び胴体部203の第一端部203aを連結することができれば特に制限はないが、一実施形態においては、第一連結部204及び第二連結部205は環状であり、典型的には円環状である。
【0034】
胴体部203には、胴体部203の外径を画定する複数の開リング206がロッド112の軸方向に並んで固定される。複数の開リング206は、胴体部203における径方向の形状安定性の観点から、胴体部203の第一端部203a及び第二端部203bに設置されると共に、第一端部203a及び第二端部203bの間に少なくとも一つ設置される。従って、開リング206の数は、三本以上が必要である。図示の実施形態に係るカバー200は、開リング206を三本有する。開リングの数に上限は特に設定されないが、開リング206の数が多くなると、開リング206の交換作業の手間が増加し、また、部品コストも増大する。更には、カバー200の収縮時にファスナー209の屈曲回数を増大させるためファスナー209に負担が掛かりやすい。そのため、第一端部203a及び第二端部203bに設置される開リング206の他に、胴体部203の第一端部203a及び第二端部203bの間に設置される複数の開リング206の数は1本以上3本以下であることが好ましく、1本又は2本であることが好ましい。また、複数の開リング206は等間隔に設置することが好ましい。なお、同一箇所に複数本の開リング206を重ねて設置してもよいが、重ねて設置されている複数本の開リング206はまとめて1本として数える。
【0035】
但し、開リング206の数を減らすと、開リング206同士の間隔が大きくなるため、カバー200の収縮時に胴体部203を構成するカバー材が内側に屈曲することで、カバー200に覆われているロッド112に接触しやすくなる(
図6-2参照)。胴体部203を構成するカバー材がロッド112に接触すると、ストッパー113とシリンダー本体111の間に挟まれたり、ロッド112と干渉したりして、胴体部203を構成するカバー材が破損するおそれがある。なお、ロッド112とは、ロッド112の外周面に固定されている部材、例えばストッパー113及びナックル部119を含む概念である。
【0036】
図5には、カバー200をロッド112の軸方向に垂直な方向から観察したときの、ロッド112の突出部112a、胴体部203、開リング206、シリンダー本体111の模式的な位置関係が示されている。複数の開リング206の内周の最小半径をR(単位:mm)、ロッド112を最大限に突出させたときの突出部112aのうち、胴体部203に覆われている部分の外周の最大半径をr(単位:mm)、胴体部203をロッド112の軸方向に最大限に伸ばしたときに隣り合う開リング206同士の最大距離をL(単位:mm)とすると、0≦R-r-L/2≦20が成立することが好ましく、3≦R-r-L/2≦15が成立することがより好ましく、5≦R-r-L/2≦10が成立することが更により好ましい。R-r-L/2は、カバー200をロッド112の軸方向に最大限に収縮させたときに内側に折り曲げられる胴体部203を構成するカバー材と、ロッド112の間のクリアランスに概ね対応する。R-r-L/2が上記範囲であると、開リング206の数を減らしながらも、カバー200の収縮時に胴体部203を構成するカバー材がロッド112の突出部112aに接触するのを予防できる。
【0037】
複数の開リング206の内周の最小半径Rは、ロッド112の中心軸Aから複数の開リング206の内周面までの距離のうち、最小値を意味する。
突出部112aの外周の最大半径rは、ロッド112の中心軸Aからロッド112の突出部112aの外周面までの距離のうち、最大値を意味する。先述した通り、ストッパー113等のロッド112の外周面に固定されている部材もロッド112の一部として捉える。
ロッド112を最大限に突出させたときというのは、マンホール蓋330が完全に閉じた状態に対応する。
胴体部203をロッド112の軸方向に最大限に伸ばしたときというのは、カバー200をロッドの軸方向に垂直な方向から観察したときに、胴体部203を構成するカバー材が弾性伸びの無い状態でたるみなく実質的に直線状に伸びている状態を指す。
隣り合う開リング206同士の最大距離Lは、隣り合う開リング206を構成するワイヤ等の線状部材の中心軸同士の距離のうち、最大値を意味する。
【0038】
また、複数の開リング206の向きに関し、カバー200をロッド112の軸方向に対して垂直な方向から観察したとき、複数の開リング206の径方向と、ロッド112の中心軸Aのなす角度α(0°~90°となる側の角度を採用する。)はそれぞれ垂直に近いことが好ましい(
図5参照)。角度αが垂直に近いことで、カバー200の形状及び伸縮動作が安定する。具体的には、80°≦α≦90°であることが好ましく、83°≦α≦90°であることがより好ましく、85°≦α≦90°であることが更により好ましい。
【0039】
開リング206は、限定的ではないが、例えば、金属、樹脂などを一種又は二種以上用いた硬質材料で構成することができる。強度の観点からは、開リング206は金属で構成することが好ましい。
【0040】
複数の開リング206を定位置に保持し、カバー200の形状安定性及び伸縮動作の安定性を高めるという観点からは、複数の開リング206は胴体部203に縫着されていることが好ましい。縫着の方法には特段の制限はないが、例えば、開リング206を構成するワイヤ等の線状部材を、カバー200の胴体部203を構成するカバー材で挟むようにして包み、根元をミシン糸等の糸207で縫い付ける間接的な縫着方法が挙げられる。別法として、胴体部203とは別の可撓性の被覆材によって開リング206を構成するワイヤ等の線状部材を包み、被覆体を作製した上で、この被覆体を胴体部203にミシン糸等の糸207で縫い付ける間接的な縫着方法が挙げられる。更には、開リング206自体に糸の通し穴を複数設け、開リング206を胴体部203にミシン糸等の糸207で直接縫い付ける縫着方法を採用することもできる。
【0041】
開リング206を構成するワイヤ等の線状部材の線径については、特に制限はないが、カバー200の伸縮動作のし易さ、開リング206の強度等を考慮すると、例えば0.8mm~3.2mmが好ましく、1.2mm~2.6mmがより好ましく、1.6mm~2mmが更により好ましい。開リング206を構成するワイヤ等の線状部材の線径は、線状部材をその径方向に切断したときの断面積の円相当径を指す。線状部材をその径方向に切断したときの断面形状には特段の制限はなく、円形、楕円形等のラウンド形状の他、四角形、六角形等の多角形、その他の形状とすることができる。
【0042】
複数の開リング206はすべて同じ形状、寸法、向き及び材質を有することができる。
【0043】
図4を参照すると、本発明の一実施形態に係るカバー200は、第一首部201の先端201aから第一連結部204、胴体部203、及び第二連結部205をこの順に通過して第二首部202の先端202aまで連続する分割部208を有する。また、胴体部203は、分割部208の開閉を制御可能なファスナー209を有する。ファスナー209には、図示のスライドファスナーの他、面ファスナー、点ファスナー等が挙げられる。これらの中でも、密閉性及び締結の確実性の理由により、スライドファスナーが好ましい。カバー200の分割部208にファスナー209を設けたことで、カバー200の交換作業を行う際には、ファスナー209を操作して分割部208を開くことで、カバー200をロッド112から容易に取り外すことができる。また、新たなカバー200を取り付けるときも同様である。このため、カバー200の交換作業の効率が大幅に向上する。また、マンホール蓋開閉補助装置100の分解・再組立て作業が不要になるため、カバー交換後のマンホール蓋開閉補助装置100の再調整作業も不要となる。このため、専門的な技術をもつ作業者でなくともカバー200の交換作業を行うことが可能である。また、カバー交換後にマンホール蓋330の密閉性試験のような確認作業も不要となる。一方、通常使用時は、ファスナー209を閉じることで、ロッド112に対する防塵性を高めつつ、安全にマンホール蓋330の開閉動作を行うことができる。
【0044】
安全性及び防塵性を高めるため、分割部208の開閉を制御可能なファスナー209は胴体部203を通過する分割部208の部分に設けられることが好ましく、胴体部203を通過する分割部208の部分の全域に亘って設けられることが好ましい。分割部208が胴体部203を通過する方向(ファスナーが延びる方向)は、限定的ではないが、分割部208を短くでき、分割部208の開閉動作を短時間で行えることから、ロッド112の軸方向に平行であることが好ましい。
【0045】
また、安全性及び防塵性を高めるため、分割部208の開閉を制御可能なファスナー209は、第一連結部204及び第二連結部205の少なくとも一方に設けられることが好ましく、少なくとも第一連結部204に設けられることがより好ましく、両方に設けられることが更により好ましい。第一連結部204にファスナー209が設けられる場合には、第一連結部204を通過する分割部208の部分の全域に亘って設けられることが好ましい。第二連結部205にファスナー209が設けられる場合には、第二連結部205を通過する分割部208の部分の全域に亘って設けられることが好ましい。
【0046】
一方で、第一首部201及び第二首部202の少なくとも一方は、分割部208の開閉を制御可能なファスナー209を有しないことが好ましく、第一首部201及び第二首部202の両方が分割部208の開閉を制御可能なファスナー209を有しないことがより好ましい。第一首部201がファスナー209を有している場合、ホースバンド等の留め具210で第一首部201をシリンダー本体111の外周面に固定する際にファスナー209が邪魔になり、固定強度が低下するおそれがある。また、ファスナー209が破損するおそれもある。同様に、第二首部202がファスナー209を有している場合、ホースバンド等の留め具210で第二首部202をロッド112の突出部112aの外周面に固定する際にファスナー209が邪魔になり、固定強度が低下するおそれや、ファスナー209が破損するおそれがある。
【0047】
第一首部201及び第二首部202における分割部208はそれぞれ、
図4に示すように、筒状体の外周面にその軸方向に沿って延びる分割線208aを有するだけでもよい。この場合、第一首部201及び第二首部202は重ね代を有しない。しかしながら、第一首部201及び第二首部202の少なくとも一方、好ましくは両方は、分割部208に重ね代を有することが望ましい(
図7-1及び
図7-2参照)。重ね代とは、第一首部201(第二首部202)を構成するカバー材が周方向に重なり合う部分を指す。重ね代を有することで、密閉性を高めることができるという利点が得られる。当該利点を大きく得る上では、重ね代の周方向の長さBは、5mm以上であることが好ましく、10mm以上であることがより好ましい。但し、カバー交換作業の効率の観点からは、重ね代の周方向の長さBは、50mm以下であることが好ましく、40mm以下であることがより好ましい。従って、例示的には、重ね代の周方向の長さBは、5~50mmであることが好ましく、10~40mmであることがより好ましい。
【0048】
図8には、一つの円弧状の開リング206をその径方向Dに対して垂直な方向から見たときの模式図が示されている。複数の開リング206のそれぞれは、端部206a、206b間に隙間Gを有しており、ファスナー209は隙間Gに配置されることが好ましい。ファスナー209が隙間Gに配置されることで、開リング206がファスナー209による分割部208の開閉操作を妨げることが抑制されるため、分割部208の開閉操作をスムーズに行うことができるという効果が得られる。また、ファスナー209が開いた状態にあっても、開リング206、特に開リング206の端部206a、206bが露出しないので、カバー200の交換作業中に開リング206の端部206a、206bが作業者の手に刺さって怪我をしたり、開リング206の露出部がカバー200の交換作業の妨げになったりするおそれを低下できるという効果も得られる。
【0049】
上記効果を大きく発揮するためには、複数の開リング206の端部206a、206b間の隙間Gの中心角Cがそれぞれ、30°以上であることが好ましく、40°以上であることがより好ましく、50°以上であることが更により好ましい。一方で、カバー200の径方向における形状安定性を高めるためには、複数の開リング206の端部206a、206b間の隙間Gの中心角Cがそれぞれ、90°以下であることが好ましく、80°以下であることがより好ましく、70°以下であることが更により好ましい。従って、例示的には、複数の開リング206の端部206a、206b間の隙間Gの中心角Cがそれぞれ、30°~90°であることが好ましく、40°~80°であることがより好ましく、50°~70°であることが更により好ましい。
【0050】
カバー200をシリンダー110から取り外したりシリンダー110に取り付けたりする際には、開リング206を弾性変形させることで分割部208を周方向に開く操作を適宜行ってもよい。しかしながら、分割部208を周方向に開く動きが大きくなると、開リング206に大きな負荷が掛かったり、分割部208を開くために要する力が大きくなったりするおそれがある。そこで、開リング206へ掛かる負荷を軽減すると共に、カバー200の交換作業の効率を向上する観点から、複数の開リング206の端部206a、206b間の隙間Gの長さ(複数の開リング206の内周側の端部206a、206b間の距離を指す。)をG(単位:mm)とし、ロッド112を最大限に突出させたときの突出部112aのうち、胴体部203に覆われている部分の外周の最大半径をr(単位:mm)とすると、G≧2rであることが好ましく、G≧2r+5であることがより好ましく、G≧2r+10であることが更により好ましい。但し、カバー200の径方向における形状安定性を高めるためには、隙間Gを過度に広げる必要はないため、2r+40≧Gであることが好ましく、2r+30≧Gであることがより好ましく、2r+20≧Gであることが更により好ましい。従って、例示的には、2r+40≧G≧2rが成立することが好ましく、2r+30≧G≧2r+5が成立することがより好ましく、2r+20≧G≧2r+10が成立することが更により好ましい。
【実施例0051】
以下、本発明及びその利点の理解を助ける実施例を示すが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0052】
(実施例1)
以下の仕様をもつマンホール蓋開閉補助装置100を、
図1に示すようなマンホール付き容器10のマンホール蓋330に装着した。
<マンホール蓋開閉補助装置の仕様>
・カバー200の第一首部201を固定するシリンダー本体111の外径:76mm
・カバー200の第二首部202を固定するロッド112のナックル部119の外径:30mm
・マンホール蓋330の開閉に伴うロッド112の突出部112aの突出長さの変化量:74mm
・ロッド112を最大限に突出させたときの突出部112aの外周の最大半径r:14mm(ストッパー113の突起部分)
【0053】
以下に記載の仕様のカバー200を用意し、上記仕様をもつマンホール蓋開閉補助装置100のロッド112の突出部112aを以下の取付条件で覆った。マンホール蓋開閉補助装置100のロッド112の突出部112a付近は、三方向が壁となっており、一方向からしかアクセスができなかったが、特に問題なくカバー200を取り付けることができた。
<カバーの仕様>
・カバー200の第一首部201、第二首部202、胴体部203、第一連結部204、及び第二連結部205を構成するカバー材の種類:ナイロン製織布の両面にクロロプレン(CR)ゴムをコーティングしたシート(厚み:0.35mm)
・第一首部201、第二首部202、及び胴体部203の形状:円筒形
・第一連結部204及び第二連結部205の形状:円環状
・第一首部201の外径:76mm
・第二首部202の外径:31mm
・胴体部203の外径:95mm
・分割部208の有無:有り
・分割部208が胴体部203を通過する方向:ロッド112の軸方向に平行
・分割部208の開閉を制御可能なファスナーの種類:スライドファスナー
・ファスナーの設置位置:胴体部203及び第二連結部205を通過する分割部208の部分の全域
・第一首部201の重ね代の周方向の長さB:15mm
・第二首部202の重ね代の周方向の長さB:15mm
・複数の開リング206はすべて同じ形状、寸法、向き及び材質とした。
・複数の開リング206の位置及び数:胴体部203の第一端部203a及び第二端部203b、並びに、第一端部203aと第二端部203bの間の距離を二等分する位置(合計3本)
・複数の開リング206の内周の最小半径R(単位:mm):47mm
・胴体部203をロッド112の軸方向に最大限に伸ばしたときに隣り合う開リング206同士の最大距離L:54mm
・R-r-L/2:6mm
・それぞれの開リング206の材料:硬鋼線
・それぞれの開リング206の形状:円弧状
・それぞれの開リング206を構成するワイヤの線径:2mm
・それぞれの開リング206を構成するワイヤを径方向に切断したときの断面形状:円形
・それぞれの開リング206の端部206a、206b間の隙間Gの中心角C:50.4°
・それぞれの開リング206の端部206a、206b間の隙間Gの長さ:40mm
【0054】
<カバーの取付条件>
・第一首部201及び第二首部202の固定方法:ネジ式のホースバンド
・カバー200をロッド112の軸方向に対して垂直な方向から観察したとき、それぞれの開リング206の径方向と、ロッド112の中心軸Aのなす角度α:90°
・それぞれの開リング206の固定方法:カバー200の胴体部203を構成するカバー材で開リング206を挟むようにして包み、根元を糸207(ミシン糸)で縫い付ける間接的な方法によって縫着する。
【0055】
上記条件で取り付けたカバー200を有するシリンダー110に対して、マンホール蓋330の開閉動作を1000回実施した。開閉動作の試験中、カバー200がロッド112と干渉することは一度もなかった。従って、カバー200がストッパー113とシリンダー本体111の間に挟まれることもなく、マンホール蓋330のスムーズな開閉動作を継続的に行うことができた。
【0056】
別途、上記のマンホール蓋330の開閉時と実質的に同じ伸縮条件でカバー200を伸縮させる試験を実施可能な装置にカバー200を取り付けて、10000回の伸縮動作を行った。10000回の伸縮動作を行った後、目視により破損、擦れやほつれを観察する方法で耐久性を確認したが、問題は見つからなかった。
【0057】
(実施例2)
以下の仕様をもつマンホール蓋開閉補助装置100を、
図1に示すようなマンホール付き容器10のマンホール蓋330に装着した。
<マンホール蓋開閉補助装置の仕様>
・カバー200の第一首部201を固定するシリンダー本体111の外径:62.5mm
・カバー200の第二首部202を固定するロッド112のナックル部119の外径:30mm
・マンホール蓋330の開閉に伴うロッド112の突出部112aの突出長さの変化量:54mm
・ロッド112を最大限に突出させたときの突出部112aの外周の最大半径r:14mm(ストッパー113の突起部分)
【0058】
以下に記載の仕様のカバー200を用意し、上記仕様をもつマンホール蓋開閉補助装置100のロッド112の突出部112aを以下の取付条件で覆った。マンホール蓋開閉補助装置100のロッド112の突出部112a付近は、三方向が壁となっており、一方向からしかアクセスができなかったが、特に問題なくカバー200を取り付けることができた。
<カバーの仕様>
・カバー200の第一首部201、第二首部202、胴体部203、第一連結部204、及び第二連結部205を構成するカバー材の種類:ナイロン製織布の両面にクロロプレン(CR)ゴムをコーティングしたシート(厚み:0.35mm)
・第一首部201、第二首部202、及び胴体部203の形状:円筒形
・第一連結部204及び第二連結部205の形状:円環状
・第一首部201の外径:63mm
・第二首部202の外径:31mm
・胴体部203の外径:75mm
・分割部208の有無:有り
・分割部208が胴体部203を通過する方向:ロッド112の軸方向に平行
・分割部208の開閉を制御可能なファスナーの種類:スライドファスナー
・ファスナーの設置位置:胴体部203及び第二連結部205を通過する分割部208の部分の全域
・第一首部201の重ね代の周方向の長さB:15mm
・第二首部202の重ね代の周方向の長さB:15mm
・複数の開リング206はすべて同じ形状、寸法、向き及び材質とした。
・複数の開リング206の位置及び数:胴体部203の第一端部203a及び第二端部203b、並びに、第一端部203aと第二端部203bの間の距離を二等分する位置(合計3本)
・複数の開リング206の内周の最小半径R(単位:mm):37mm
・胴体部203をロッド112の軸方向に最大限に伸ばしたときに隣り合う開リング206同士の最大距離L:36mm
・R-r-L/2:5mm
・それぞれの開リング206の材料:硬鋼線
・それぞれの開リング206の形状:円弧状
・それぞれの開リング206を構成するワイヤの線径:2mm
・それぞれの開リング206を構成するワイヤを径方向に切断したときの断面形状:円形
・それぞれの開リング206の端部206a、206b間の隙間Gの中心角C:65°
・それぞれの開リング206の端部206a、206b間の隙間Gの長さ:40mm
【0059】
<カバーの取付条件>
・第一首部201及び第二首部202の固定方法:ネジ式のホースバンド
・カバー200をロッド112の軸方向に対して垂直な方向から観察したとき、それぞれの開リング206の径方向と、ロッド112の中心軸Aのなす角度α:90°
・それぞれの開リング206の固定方法:カバー200の胴体部203を構成するカバー材で開リング206を挟むようにして包み、根元を糸207(ミシン糸)で縫い付ける間接的な方法によって縫着する。
【0060】
上記条件で取り付けたカバー200を有するシリンダー110に対して、マンホール蓋330の開閉動作を1000回実施した。開閉動作の試験中、カバー200がロッド112と干渉することは一度もなかった。従って、カバー200がストッパー113とシリンダー本体111の間に挟まれることもなく、マンホール蓋330のスムーズな開閉動作を継続的に行うことができた。
【0061】
別途、上記のマンホール蓋330の開閉時と実質的に同じ伸縮条件でカバー200を伸縮させる試験を実施可能な装置にカバー200を取り付けて、10000回の伸縮動作を行った。10000回の伸縮動作を行った後、目視により破損、擦れやほつれを観察する方法で耐久性を確認したが、問題はなかった。
【0062】
(比較例1)
実施例1と同じ仕様をもつマンホール蓋開閉補助装置100を、
図1に示すようなマンホール付き容器10のマンホール蓋330に装着した。
【0063】
実施例1と同程度の寸法の市販のカバー200を用意し、上記で用意したマンホール蓋開閉補助装置100のロッド112の突出部112aを覆うことを試みた。しかしながら、比較例1に係るカバー200は、開リング206を合計7本有していると共に、それぞれの開リング206の端部同士を連結するための連結金具を有しており、カバー200の分割部208を閉じる際に開リング206の端部206a、206b同士を連結する操作が必要であった。マンホール蓋開閉補助装置100のロッド112の突出部112a付近は、三方向が壁となっており、一方向からしかアクセスができなかったことで、すべての開リング206の端部同士を連結することができなかった。そのため、以降の試験は行わなかった。
【0064】
(比較例2)
実施例1と同じ仕様をもつマンホール蓋開閉補助装置100を、
図1に示すようなマンホール付き容器10のマンホール蓋330に装着した。
【0065】
実施例1で使用したカバー200に対して、第一端部203aと第二端部203bの間に配置していた開リング206を取り除いたカバー200を使用した以外は、実質的に実施例1と同じ条件で、マンホール蓋開閉補助装置100のロッド112の突出部112aを覆った。マンホール蓋開閉補助装置100のロッド112の突出部112a付近は、三方向が壁となっており、一方向からしかアクセスができなかったが、特に問題なくカバー200を取り付けることができた。
【0066】
上記条件で取り付けたカバー200を有するシリンダー110に対して、マンホール蓋330の開閉動作を実施したところ、10回程度の開閉動作で、ストッパー113とシリンダー本体111の間に挟まれる事象が生じ、カバー材に擦り傷が発生した。