(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037480
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】酸素吸収性樹脂組成物、成形体、多層構造体及び容器
(51)【国際特許分類】
C08L 23/00 20060101AFI20240312BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20240312BHJP
C08L 23/20 20060101ALI20240312BHJP
C08K 3/08 20060101ALI20240312BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
C08L23/00
B32B27/32 Z
C08L23/20
C08K3/08
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142373
(22)【出願日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 正隆
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 隆欣
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AB02
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3E086AD01
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4J002GG00
(57)【要約】
【課題】優れた酸素吸収性能及び高いヤング率(コシがある)を発揮でき、多層構成で用いる場合には他の層との密着性が良好となる、酸素吸収性樹脂組成物、並びにこれを用いた成形体、多層構造体及び容器を提供する。
【解決手段】ポリメチルペンテン樹脂(A)と、該ポリメチルペンテン樹脂(A)以外のポリオレフィン樹脂(B)と、脱酸素剤組成物(C)とを含む酸素吸収性樹脂組成物であって、前記ポリオレフィン樹脂(B)に対する前記ポリメチルペンテン樹脂(A)の質量比〔(A)/(B)〕が、1/99以上65/35以下である、酸素吸収性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリメチルペンテン樹脂(A)と、該ポリメチルペンテン樹脂(A)以外のポリオレフィン樹脂(B)と、脱酸素剤組成物(C)とを含む酸素吸収性樹脂組成物であって、
前記ポリオレフィン樹脂(B)に対する前記ポリメチルペンテン樹脂(A)の質量比〔(A)/(B)〕が、1/99以上65/35以下である、酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項2】
前記脱酸素剤組成物(C)が、鉄粉を主成分として含む、請求項1に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項3】
前記脱酸素剤組成物(C)の含有量が、10質量%以上85質量%以下である、請求項1又は2に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリオレフィン樹脂(B)が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン及びエチレン-プロピレンコポリマーからなる群から選択される1種以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の酸素吸収性樹脂組成物からなる、成形体。
【請求項6】
前記成形体が、フィルム又はシートである、請求項5に記載の成形体。
【請求項7】
請求項6に記載の成形体であるフィルム又はシートを含む、多層構造体。
【請求項8】
ガスバリア層、接着層及び酸素吸収層がこの順に積層された多層構造を有する多層構造体であって、
前記酸素吸収層が請求項6に記載の成形体であるフィルム又はシートからなる、請求項7に記載の多層構造体。
【請求項9】
前記多層構造体が、多層フィルム又は多層シートである、請求項7又は8に記載の多層構造体。
【請求項10】
請求項7~9のいずれか1項に記載の多層構造体からなる、容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素吸収性樹脂組成物、並びにこれを用いた成形体、多層構造体及び容器に関する。
【背景技術】
【0002】
食品や医薬品、金属製品に代表される、酸素の影響を受けて変質し易い各種製品の酸化を防止する目的で、酸素除去を行う脱酸素剤が従来より使用されている。この脱酸素剤として初期に開発され現在も多く使用されている形態は、粒状又は粉状の脱酸素剤組成物を小袋に詰めたものである。これを改良するものとして、より取扱いが容易で適用範囲が広く、誤食などの問題のない安全な脱酸素体として、脱酸素剤組成物を固定したフィルム又はシート状の形態が考えられている。このようなフィルム又はシート状の脱酸素体は、例えば包装容器や包装袋として用いることができ、包装容器や包装袋自体に酸素吸収性能を持たせることができる。
【0003】
一般に、脱酸素剤組成物をフィルム又はシートの形状とするためには、熱可塑性樹脂をマトリックス成分に利用して、粒状又は粉状の脱酸素剤組成物を複合化する方法が簡便に用いられている。
しかし、この複合化したフィルム又はシートをそのまま容器等に用いると、その両面、すなわち容器の内外両方向から酸素を吸収してしまい、容器内の酸素除去を効率的に行うことができない。そのため、実用上は、この複合化したフィルム又はシートを酸素吸収層とし、その一方の面側にガスバリア性を有する層(外層)を配した構成(多層構成)で使用されるのが一般的である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような酸素吸収性能を有するフィルム又はシートには、成形のし易さや、脱酸素剤組成物粒子の突き出し防止等の観点から、通常、比較的柔らかい熱可塑性樹脂がマトリックスとして用いられていたが、フィルム又はシートとしてのコシが不足する場合があった。
そのため、フィルム又はシートのハンドリング性や成形加工性を向上する観点から、コシのあるフィルム又はシートが求められていた。
また、このようなフィルム又はシートを上記のような多層構成で用いるような場面では、他の層との密着性が良好となるフィルム又はシートが求められていた。
【0006】
そこで本発明は、優れた酸素吸収性能及び高いヤング率(コシがある)を発揮でき、多層構成で用いる場合には他の層(例えば接着層)との密着性が良好となる、酸素吸収性樹脂組成物、並びにこれを用いた成形体、多層構造体及び容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
[1] ポリメチルペンテン樹脂(A)と、該ポリメチルペンテン樹脂(A)以外のポリオレフィン樹脂(B)と、脱酸素剤組成物(C)とを含む酸素吸収性樹脂組成物であって、
前記ポリオレフィン樹脂(B)に対する前記ポリメチルペンテン樹脂(A)の質量比〔(A)/(B)〕が、1/99以上65/35以下である、酸素吸収性樹脂組成物。
[2] 前記脱酸素剤組成物(C)が、鉄粉を主成分として含む、上記[1]に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
[3] 前記脱酸素剤組成物(C)の含有量が、10質量%以上85質量%以下である、上記[1]又は[2]に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
[4] 前記ポリオレフィン樹脂(B)が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン及びエチレン-プロピレンコポリマーからなる群から選択される1種以上である、上記[1]~[3]のいずれか1項に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
[5] 上記[1]~[4]のいずれか1項に記載の酸素吸収性樹脂組成物からなる、成形体。
[6] 前記成形体が、フィルム又はシートである、上記[5]に記載の成形体。
[7] 上記[6]に記載の成形体であるフィルム又はシートを含む、多層構造体。
[8] ガスバリア層、接着層及び酸素吸収層がこの順に積層された多層構造を有する多層構造体であって、
前記酸素吸収層が上記[6]に記載の成形体であるフィルム又はシートからなる、上記[7]に記載の多層構造体。
[9] 前記多層構造体が、多層フィルム又は多層シートである、上記[7]又は[8]に記載の多層構造体。
[10] 上記[7]~[9]のいずれか1項に記載の多層構造体からなる、容器。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、優れた酸素吸収性能及び高いヤング率(コシがある)を発揮でき、多層構成で用いる場合には他の層(例えば接着層)との密着性が良好となる、酸素吸収性樹脂組成物、並びにこれを用いた成形体、多層構造体及び容器を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に従う酸素吸収性樹脂組成物、並びにこれを用いた成形体、多層構造体及び容器の実施形態について、以下で詳細に説明する。
なお、本明細書において、数値の記載に関する「A~B」という用語は、「A以上B以下」(A<Bの場合)又は「A以下B以上」(A>Bの場合)を意味する。また、本発明において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0010】
[酸素吸収性樹脂組成物]
本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、ポリメチルペンテン樹脂(A)と、該ポリメチルペンテン樹脂(A)以外のポリオレフィン樹脂(B)と、脱酸素剤組成物(C)とを含み、前記ポリオレフィン樹脂(B)に対する前記ポリメチルペンテン樹脂(A)の質量比〔(A)/(B)〕が、1/99以上65/35以下である。
【0011】
本発明の酸素吸収性樹脂組成物は上記構成であることにより、優れた酸素吸収性能及び高いヤング率(コシがある)を発揮でき、多層構成で用いる場合には他の層(例えば接着層)との密着性が良好となる。
本発明の酸素吸収性樹脂組成物が上記効果を奏する理由については定かではないが、一つには以下の理由が考えられる。
【0012】
従来、マトリックス成分としての熱可塑性樹脂には、(1)樹脂としての加工性に優れる、(2)マトリックス成分として、粒状又は粉状の脱酸素剤組成物を比較的均一に分散できる、(3)適度な酸素透過性を有する、(4)他の樹脂との相溶性に優れる、(5)適度な柔軟性を有し、フィルム又はシート状に成形した際に脱酸素剤組成物粒子の突き出しを防止できる等の理由から、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂が広く用いられてきた。
しかし、例えば熱可塑性樹脂としてポリエチレン樹脂等を用いた場合には、得られるフィルム又はシートは、ヤング率が低く、コシが不足する問題があった。
そこで、本発明者等は、上記問題点を解決する観点からポリメチルペンテン樹脂(A)に着目し、該ポリメチルペンテン樹脂(A)以外のポリオレフィン樹脂(B)に、ポリメチルペンテン樹脂(A)を配合することで、酸素吸収性能に優れ、コシのあるフィルム又はシートが得られることを見出した。
一方で、ポリメチルペンテン樹脂(A)は、他の樹脂との相溶性に劣る傾向があり、酸素吸収性樹脂組成物において、ポリメチルペンテン樹脂(A)の含有量が増す程、(i)均一な酸素吸収性樹脂組成物を作製するのが困難である、(ii)フィルム又はシート状に成形して、多層構成で用いるような場面では、他の層(例えば接着層)との密着性が低下する、といった問題があった。
そのため、本発明者等は更なる検討を重ねた結果、酸素吸収性樹脂組成物において、ポリメチルペンテン樹脂(A)と、ポリオレフィン樹脂(B)とを、特定の比率で調製することにより、優れた酸素吸収性能及び高いヤング率(コシがある)を発揮でき、多層構成で用いる場合には他の層(例えば接着層)との密着性が良好となるフィルム及びシートが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
以下、本実施形態に係る酸素吸収性樹脂組成物について、詳細を説明する。
【0014】
<ポリメチルペンテン樹脂(A)>
ポリメチルペンテン樹脂(A)は熱可塑性樹脂であり、酸素吸収性樹脂組成物のマトリックス成分として機能する。
本発明で用いられるポリメチルペンテン樹脂(A)としては、例えば4-メチル-1-ペンテン及び3-メチル-1-ペンテンからなる群から選択される1種を重合体成分として用いて得られた重合体、或いはこれらのメチルペンテンを共重合体成分として用いて得られた共重合体を好ましく用いることができる。中でも、入手容易性の観点で、4-メチル-1-ペンテン(共)重合体が好ましい。
【0015】
上記(共)重合体は、4-メチル-1-ペンテン及び3-メチル-1-ペンテンからなる群から選択される1種以上のオレフィンを(共)重合体成分として用いて得られたものである。この特定のオレフィン(共)重合体は、4-メチル-1-ペンテン又は3-メチル-1-ペンテンの単独重合体、若しくはこれら相互の共重合体、更に他の共重合可能なモノマー、例えばエチレン又は炭素数3~20のα-オレフィン、スチレン、アクリロニトリル、塩化ビニル、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等との共重合体が例示できる。なお、他の共重合可能なモノマーの中でも、炭素数7~20のα-オレフィンが好ましく、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、および1-オクタデセンからなる群から選択される1種以上が特に好ましい。(共)重合体の構成単位中、4-メチル-1-ペンテン又は3-メチル-1-ペンテンに由来する構成単位は、合計で、好ましくは50~100モル%、さらに好ましくは80~100モル%である。
【0016】
本発明において好ましく用いられる4-メチル-1-ペンテン(共)重合体の、ASTM D1238に準じ、荷重5kg、温度260℃の条件で測定したメルトフローレート(MFR)は、用途に応じ種々決定されるが、通常1~50g/10分、好ましくは2~40g/10分、さらに好ましくは5~30g/10分の範囲である。4-メチル-1-ペンテン(共)重合体のメルトフローレートが上記のような範囲内にあると、得られるフィルムの外観及びフィルム成形性が良好である。
また、本発明において好ましく用いられる4-メチル-1-ペンテン(共)重合体の融点は、例えば100~250℃、好ましくは150~240℃、より好ましくは200~240℃の範囲にあるのが望ましい。
【0017】
本発明で用いられるポリメチルペンテン樹脂(A)の市販品例としては、三井化学株式会社製のTPX(登録商標)シリーズ等挙げられる。
【0018】
酸素吸収性樹脂組成物中のポリメチルペンテン樹脂(A)の含有量は、例えば0.15質量%以上60質量%以下、好ましくは0.5質量%以上58.5質量%以下、より好ましくは3質量%以上50質量%以下、更に好ましくは3質量%以上45質量%以下である。
【0019】
<ポリオレフィン樹脂(B)>
本発明で用いられるポリオレフィン樹脂(B)は、上記ポリメチルペンテン樹脂(A)以外のポリオレフィン樹脂である。
ポリオレフィン樹脂(B)は熱可塑性樹脂であり、酸素吸収性樹脂組成物のマトリックス成分として機能する。
本発明で用いられるポリオレフィン樹脂(B)は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、エチレン-プロピレンランダムコポリマー、エチレン-プロピレンブロックコポリマー等のポリオレフィン類;エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸エステル共重合体等のポリオレフィン共重合体;上記ポリオレフィン類又は上記ポリオレフィン共重合体とシリコン樹脂とのグラフト重合物等が挙げられる。中でも、ポリオレフィン樹脂(B)は、好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン及びエチレン-プロピレンコポリマーからなる群から選択される1種以上、より好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン及びエチレン-プロピレンコポリマーからなる群から選択される1種以上、更に好ましくはポリエチレン及びポリプロピレンからなる群から選択される1種以上、より更に好ましくはポリエチレンである。ポリエチレンの中でも、ガス透過性の観点から低密度ポリエチレンが好ましく、直鎖状低密度ポリエチレンがより好ましい。
ポリオレフィン樹脂(B)は、上記成分を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
酸素吸収性樹脂組成物中のポリオレフィン樹脂(B)の含有量は、例えば5質量%以上89質量%以下、好ましくは7質量%以上85.5質量%以下、より好ましくは20質量%以上75質量%以下、更に好ましくは23質量%以上70質量%以下である。
【0021】
酸素吸収性樹脂組成物中のポリメチルペンテン樹脂(A)及びポリオレフィン樹脂(B)の合計含有量は、例えば10質量%以上90質量%以下、好ましくは15質量%以上90質量%以下である。
【0022】
酸素吸収性樹脂組成物中のポリオレフィン樹脂(B)に対するポリメチルペンテン樹脂(A)の質量比〔(A)/(B)〕は、1/99以上65/35以下である。上記範囲内であることで、優れた酸素吸収性能及び高いヤング率(コシがある)を発揮でき、多層構成で用いる場合には他の層との密着性が良好となる、酸素吸収性樹脂組成物が得られる。
特に、質量比〔(A)/(B)〕が1/99未満の酸素吸収性樹脂組成物は、ヤング率が低く、コシが不足する。したがって、高いヤング率を有する酸素吸収性樹脂組成物を得る観点から、質量比〔(A)/(B)〕は、1/99以上であり、好ましくは5/95以上、より好ましくは10/90以上、更に好ましくは20/80以上、より更に好ましくは25/75以上、より更に好ましくは30/70以上、より更に好ましくは40/60以上である。
また、特に、質量比〔(A)/(B)〕が65/35超の酸素吸収性樹脂組成物は、他の層との密着性が悪化する。したがって、他の層との密着性が良好となる酸素吸収性樹脂組成物を得る観点から、質量比〔(A)/(B)〕は、65/35以下であり、好ましくは60/40以下、より好ましくは55/45以下である。また、酸素吸収性樹脂組成物において更に他の層との密着性を高める観点では、好ましくは1/99以上、より好ましくは5/95以上である。
本発明の酸素吸収性樹脂組成物において、特にヤング率及び他の層との密着性を向上する観点からは、質量比〔(A)/(B)〕は、好ましくは5/95以上65/35以下、より好ましくは10/90以上65/35以下であり、更に好ましくは20/80以上65/35以下、より更に好ましくは25/75以上60/40以下、より更に好ましくは30/70以上60/40以下、より更に好ましくは40/60以上55/45以下である。
また、本発明の酸素吸収性樹脂組成物において、特に酸素吸収性能を向上する観点からは、質量比〔(A)/(B)〕は、好ましくは5/95以上65/35以下、より好ましくは10/90以上55/45以下、更に好ましくは25/75以上55/45以下、より更に好ましくは25/75以上50/50以下である。
【0023】
<脱酸素剤組成物(C)>
脱酸素剤組成物(C)は、粒状又は粉状で用いられ、上記ポリメチルペンテン樹脂(A)及びポリオレフィン樹脂(B)の樹脂マトリックス中に分散して、酸素吸収性能を発揮する成分である。
【0024】
脱酸素剤組成物(C)としては、特に限定されず、公知の脱酸素剤組成物を用いることができる。例えば、鉄粉等の金属粉、鉄化合物等の還元性無機物質、多価フェノール類、多価アルコール類、アスコルビン酸又はその塩等の還元性有機物質又は金属錯体等を酸素吸収反応の主剤とする脱酸素剤組成物が挙げられる。これらの中でも、酸素吸収性能の観点から、鉄粉を主成分として含む脱酸素剤組成物が好ましく、特に鉄粉とハロゲン化金属とからなる脱酸素剤組成物がより好ましく、鉄粉にハロゲン化金属を付着させた脱酸素剤組成物が更に好ましい。
なお、脱酸素剤組成物が、鉄粉を主成分として含む場合、脱酸素剤組成物中の鉄粉の含有量は、例えば80質量%以上、好ましくは85質量%以上、より好ましくは86質量%以上であり、また例えば100質量%以下であり、好ましくは99質量%以下である。具体的には、脱酸素剤組成物中の鉄粉の含有量は、例えば80質量%以上100質量%以下、好ましくは85質量%以上100質量%以下、より好ましくは86質量%以上99質量%以下である。
【0025】
脱酸素剤組成物に用いられる鉄粉としては、樹脂中に分散可能で脱酸素反応を起こすことができるものであれば特に制限はなく、通常脱酸素剤組成物として用いられる鉄粉を使用することができる。鉄粉は、鉄(0価の金属鉄)の表面が露出したものが好ましいが、本発明の効果を妨げない範囲で、通常の金属表面のように極薄い酸化被膜を有するものであってもよい。鉄粉の具体例としては、還元鉄粉、海綿鉄粉、噴霧鉄粉、鉄研削粉、電解鉄粉、粉砕鉄等を用いることができる。また、不純物としての酸素及びケイ素等の含量が少ない鉄粉が好ましく、金属鉄含量が95質量%以上である鉄粉が特に好ましい。
【0026】
鉄粉の平均粒子径は、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下、更に好ましくは10~200μm、更に好ましくは20~100μmである。また鉄粉の最大粒子径は、好ましくは500μm以下、より好ましくは400μm以下、更に好ましくは50~350μm、更に好ましくは50~300μmである。外観が良好な成形体を得るの観点からは、鉄粉の粒子径は小さいほど平滑な酸素吸収層を形成できるので好ましいが、コストの観点からは、成形体の外観に大きな影響を与えない範囲であれば鉄粉の粒子径は多少大きくてもよい。
なお、鉄粉の最大粒子径及び平均粒子径は実施例に記載の方法により測定される。
【0027】
脱酸素剤組成物(C)は、必要に応じて、上記主剤以外の成分を含んでいてもよい。
具体的には、脱酸素剤組成物(C)が、鉄粉を主剤とするものである場合、例えば、ハロゲン化金属を含有することが好ましい。
【0028】
ハロゲン化金属は、金属鉄の酸素吸収反応に触媒的に作用するものである。金属の好ましい具体例としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、銅、亜鉛、アルミニウム、スズ、鉄、コバルト及びニッケルからなる群から選択される1種以上が挙げられる。特に、リチウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム及び鉄からなる群から選択される1種以上が好ましい。また、ハロゲン化物の好ましい具体例としては、塩化物、臭化物、ヨウ化物が挙げられ、特に塩化物が好ましい。
脱酸素剤組成物中のハロゲン化金属の含有量は、鉄粉100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上20質量部以下であり、より好ましくは0.1質量部以上5質量部以下である。ハロゲン化金属の金属は実質的に全量が鉄粉に付着して、脱酸素剤組成物中に遊離しているハロゲン化金属が殆どない状態が好ましく、ハロゲン化金属が有効に作用する際には、0.1質量%以上5質量部以下で十分である。
また、ハロゲン化金属は、水溶液にして鉄粉に被覆させることが好ましい。
【0029】
本発明では、脱酸素剤組成物として、ハロゲン化金属で表面を被覆した鉄粉組成物を好適に使用することができる。該鉄粉組成物は、鉄粉にハロゲン化金属水溶液を混合した後、乾燥して水分を除去することで調製することができる。
上記ハロゲン化金属は、鉄粉と容易に分離しない方法で添加することが好ましく、例えば、ボールミル、スピードミル等を用いて、粉砕かつ混合し、鉄粉表面の凹部にハロゲン化金属微粒子を埋め込む方法や、バインダーを用いて鉄粉表面にハロゲン化金属微粒子を付着させる方法、ハロゲン化金属水溶液と鉄粉とを混合乾燥して金属鉄表面にハロゲン化金属微粒子を付着させる方法が好ましい。
【0030】
酸素吸収性樹脂組成物中の脱酸素剤組成物(C)の含有量は、好ましくは10質量%以上85質量%以下であり、より好ましくは20質量%以上60質量%以下であり、更に好ましくは20質量%以上50質量%以下である。脱酸素剤組成物(C)の含有量が上記範囲内であると、酸素吸収性能が向上し、成形加工性も良好となる。
【0031】
<他の成分(D)>
酸素吸収性樹脂組成物は、上記成分(A)~(C)以外の他の成分(D)を含有してもよい。
他の成分(D)としては、例えば上記成分(A)及び(B)以外の熱可塑性樹脂(d)や、各種添加剤が挙げられる。
熱可塑性樹脂(d)としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド;アイオノマー;エラストマー等が挙げられる。
また、添加剤としては、酸化カルシウム等の消泡剤や、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の滑剤、フェノール系又はリン系等の酸化防止剤、酸化チタン等の有機系若しくは無機系の染料又は顔料等の着色剤、シラン系又はチタネート系等の分散剤、ポリアクリル酸系の吸水剤、シリカ又はクレー等の充填剤、ゼオライト又は活性炭等のガス吸着剤等が挙げられる。
【0032】
酸素吸収性樹脂組成物が上記成分(A)及び(B)以外の熱可塑性樹脂(d)を含む場合、酸素吸収性樹脂組成物中の成分(A)及び(B)の合計含有量に対する該熱可塑性樹脂(d)の質量比〔(d)/(A)+(B)〕は、例えば0.5/99.5以下、好ましくは0.1/99.9以下である。また、酸素吸収性樹脂組成物は、上記成分(A)及び(B)以外の熱可塑性樹脂(d)を含まないことが好ましい。
【0033】
また、酸素吸収性樹脂組成物が添加剤を含む場合、酸素吸収性樹脂組成物中の添加剤の含有量は、例えば5質量%以下である。
【0034】
<製造方法>
本発明の酸素吸収性樹脂組成物の製造方法は、特に限定されないが、例えば以下の好適例が挙げられる。
酸素吸収性樹脂組成物は、ポリメチルペンテン樹脂(A)と、ポリオレフィン樹脂(B)と、脱酸素剤組成物(C)とを混練し、更に必要に応じて熱可塑性樹脂(d)や、添加剤を混練し、樹脂中に脱酸素剤組成物を均一に分散させることで得られる。
なお、均一な酸素吸収性樹脂組成物を得る観点から、まず、ポリメチルペンテン樹脂(A)及びポリオレフィン樹脂(B)、並びに、必要に応じて熱可塑性樹脂(d)を予め混練して、樹脂混合物を作製しておくことが好ましい。また、添加剤を添加する場合、添加剤を均一に分散させる観点から、まず添加剤を樹脂混合物に混練して添加剤含有樹脂組成物を調製し、次いで、脱酸素剤組成物と樹脂混合物と添加剤含有樹脂組成物とを混練することで酸素吸収性樹脂組成物を調製することが好ましい。
【0035】
[成形体]
本発明の成形体は、本発明の酸素吸収性樹脂組成物からなる。このような成形体は、優れた酸素吸収性能及び高いヤング率(コシがある)を発揮でき、多層構成で用いる場合には他の層との密着性が良好となる。
【0036】
本成形体は、本発明の酸素吸収性樹脂組成物を成形したものであれば特に限定はされないが、例えば、フィルム又はシートあることが好ましい。
なお、本明細書では、JIS Z0108:2012の「包装用語」規格に基づき、厚さが250μm未満の膜状の成形体を「フィルム」と称し、厚さ250μm以上の板状の成形体を「シート」と称する。
【0037】
成形体の厚さや形状等は特に限定されないが、成形体がフィルムである場合、その厚さは、例えば10μm以上250μm未満、好ましくは10μm以上200μm以下、より好ましくは50μm以上200μm以下であり、また成形体がシートである場合、その厚さは、例えば250μm以上1000μm以下であり、好ましくは300μm以上600μm以下である。成形体の厚さは、用途に応じて適宜選択することが好ましい。
【0038】
上記成形体は公知の方法により作製することができる。
具体的には、成形体が、フィルム又はシートである場合、(1)押出機で酸素吸収性樹脂組成物を溶融混練した後、ストランドダイより押出、冷却し、ペレタイザーでペレット化し、酸素吸収性樹脂組成物からなるペレットをプレスしてフィルム又はシートを得てもよいし、(2)押出機で酸素吸収性樹脂組成物を溶融混練した後、Tダイより製膜してフィルム又はシートを得てもよい。
【0039】
[多層構造体]
本発明の多層構造体は、本発明の成形体であるフィルム又はシートを含む。このような多層構造体は、酸素吸収性能に優れ、コシがあり、多層構成で用いる場合には他の層との密着性が良好なものとなる。
多層構造体の構成は特に限定されないが、例えばガスバリア層、接着層及び酸素吸収層がこの順に積層された多層構造を有するものが好ましい。
【0040】
<ガスバリア層>
上記ガスバリア層は、外部から進入する酸素を遮断する役割を果たす。
ガスバリア層は、その目的に応じて、上記多層構造体中に1層でもよく、2層以上設けてもよい。2層以上設けることで、外部からの酸素の侵入をより効率的に抑制することができる。
ガスバリア層は、無機蒸着フィルム、金属薄膜、又はエチレンビニルアルコール共重合体及びポリアミド樹脂等のガスバリア樹脂からなる群から選択される1種以上を含む層であることが好ましく、ガスバリア性の観点から、無機蒸着フィルムがより好ましい。
【0041】
ガスバリア層の厚さは、構成する材料によって異なるが、例えば無機蒸着フィルムである場合、好ましくは0.01~100μmであり、より好ましくは0.5~50μmであり、より更に好ましくは1~30μmである。
ガスバリア層は1種類の材料からなっていてもよく、複数の材料からなっていてもよい。複数の材料からなる場合、積層して用いてもよく、積層して用いることでより高いバリア効果を発揮することができる。
【0042】
<接着層>
接着層は、接着性樹脂を主成分として含む。
接着性樹脂としては、特に限定されず、公知の接着性熱可塑性樹脂を用いることができる。例えば、オレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン類、ポリエステル系樹脂、ポリイソシアネート系樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
<酸素吸収層>
酸素吸収層は、本発明の成形体であるフィルム又はシートからなる。すなわち、酸素吸収層は、ポリメチルペンテン樹脂(A)と、該ポリメチルペンテン樹脂(A)以外のポリオレフィン樹脂(B)と、脱酸素剤組成物(C)とを含み、ポリオレフィン樹脂(B)に対するポリメチルペンテン樹脂(A)の質量比〔(A)/(B)〕が、1/99以上65/35以下である酸素吸収性樹脂組成物からなる。したがって、酸素吸収層は、前記[酸素吸収性樹脂組成物]の項に記載した各成分及び各比率であることが好ましい。
【0044】
好適な酸素吸収層の厚さは、成形体がフィルム又はシートである場合の厚さと同様であり、成形体がフィルムである場合は、例えば10μm以上250μm未満、好ましくは10μm以上200μm以下、より好ましくは50μm以上200μm以下であり、成形体がシートである場合は、例えば250μm以上1000μm以下であり、好ましくは300μm以上600μm以下である。
酸素吸収層の厚さが上記の範囲であると、酸素吸収性能に優れ、また経済性及び加工性が良好となる。
【0045】
<その他の層>
また、上記多層構造体は、必要に応じて、上記ガスバリア層、接着層、及び酸素吸収層以外の他の層を有していてもよい。
他の層としては、例えば表基材層や、酸素透過層、シーラント層等が挙げられる。
【0046】
表基材層は、上記ガスバリア層側に配置される層であり、ガスバリア層の保護層の役割を果たすと共に、本多層積層体の意匠性や強度を向上する役割を果たす。
酸素透過層は、上記酸素吸収層側に配置される層であり、容器内の収納物が酸素吸収層に直接接触するのを防ぐ隔離層の役割を果たすと共に、酸素吸収層がその酸素吸収機能を十分に発揮できるように容器内の酸素を迅速かつ効率よく透過する役割を果たす。
シーラント層は、上記酸素吸収層側に配置される層であり、本発明の多層構造体を例えば袋状の包装材として用いる場合などに、最内層としてヒートシールする役割を果たす。なお、酸素透過層は、シーラント層を兼ねてもよい。
上記他の層は、特に限定されるものではなく、各層として公知のものを使用することができる。
【0047】
本発明の多層構造体は、本発明の成形体であるフィルム又はシートを含むものであれば特に限定はされないが、好ましくは多層フィルム又は多層シートであり、より好ましくは多層フィルムである。
なお、本明細書では、JIS Z0108:2012の「包装用語」規格に基づき、厚さが250μm未満の膜状の多層構造体を「多層フィルム」と称し、厚さ250μm以上の板状の多層構造体を「多層シート」と称する。
【0048】
また、多層構造体の厚さは特に限定されないが、多層構造体が多層フィルムである場合、その厚さは、例えば20μm以上250μm未満、好ましくは50μm以上250μm未満、より好ましくは100μm以上220μm以下であり、また多層構造体が多層シートである場合、その厚さは、例えば250μm以上1000μm以下であり、好ましくは300μm以上600μm以下である。
【0049】
上記多層構造体は公知の方法により作製することができる。
具体的には、上記の各層は、各層材料の性状、加工目的、加工工程等に応じて、共押出し法、各種ラミネート法、各種コーティング法などの公知の方法を適宜組み合わせて積層することができる。具体的には、(1)ガスバリア層及び酸素吸収層の各層に対応するフィルム又はシートを予め作製又は準備し、少なくとも一方の層に、接着性樹脂を酢酸エチル等の溶剤に溶かした接着剤を塗布して乾燥し、ラミネーターにより2層をドライラミネートして、ガスバリア層、接着層及び酸素吸収層が外層から内層へこの順に積層された層構成を有する多層構造体を得る方法や、(2)ガスバリア層、接着層及び酸素吸収層の各層に対応する押出機で各層を構成する材料を溶融混練した後、T-ダイ、サーキュラーダイ等の多層多重ダイスを通して同時溶融押出することによって、ガスバリア層、接着層及び酸素吸収層が外層から内層へこの順に積層された層構成を有する多層構造体を得る方法等が挙げられる。
【0050】
[容器]
本発明の容器は、本発明の多層構造体からなる。本発明の多層構造体は、酸素バリア性及び酸素吸収性能に優れ、コシがあり、多層構成で用いる場合には他の層との密着性が良好となるため、種々の物品の包装容器に適している。
【0051】
本発明の容器の形態は特に限定されず、蓋材、トレー、パウチ及びラミネートチューブ等が挙げられ、これらの中でもトレーが好ましい。
【0052】
また、容器の被保存物としては、例えば牛乳、乳製品、ジュース、茶類、アルコール飲料等の飲料;ソース、醤油、ドレッシング等の液体調味料、スープ、シチュー、カレー、乳幼児用調理食品、介護調理食品等の調理食品;ジャム、マヨネーズ、ケチャップ、ゼリー等のペースト状食品;ツナ、魚貝等の水産製品;チーズ、バター等の乳加工品;肉、サラミ、ソーセージ、ハム等の畜肉加工品;にんじん、じゃがいも等の野菜類;卵;麺類;調理前の米類、調理された炊飯米、米粥等の加工米製品;粉末調味料、粉末コーヒー、乳幼児用粉末ミルク、粉末ダイエット食品等の乾燥食品;農薬、殺虫剤等の化学品;医薬品;化粧品;ペットフード;シャンプー、リンス、洗剤等の雑貨品;種々の物品を挙げることができる。これらの中でもボイル処理、レトルト処理等の熱殺菌処理を施す、果肉、果実汁、コーヒー等を用いたゼリー、羊羹、調理炊飯米、加工米製品、乳幼児用調理食品、介護調理食品、カレー、スープ、シチュー、ジャム、マヨネーズ、ケチャップ、ペットフード、及び水産加工品に好適である。
【0053】
上記容器は公知の方法により作製することができる。
例えば、本発明の多層シートを加熱成形することで、所定の形状の容器に成形することができる。成形方法としては、真空成形、圧空成形、プラグアシスト成形等を適用することができる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【実施例0055】
以下、実施例及び比較例を用いて本実施形態を詳しく説明するが、本実施形態は本発明の作用効果を奏する限りにおいて適宜変更することができる。
【0056】
<材料>
実施例及び比較例で使用した材料を以下に示す。
・ポリメチルペンテン樹脂(A):4-メチル-1-ペンテンをベースとする共重合体(三井化学株式会社製「TPX(登録商標) DX845」)
・ポリオレフィン樹脂(B):直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE、日本ポリエチレン株式会社製「KC580S」)
・鉄粉:平均粒子径31.9μm、最大粒子径55.0μm
[鉄粉の粒子径の測定]
上記鉄粉の粒子径の測定は、レーザー回折散乱式粒度分布測定器(株式会社セイシン企業製「SKレーザーマイクロンサイザーLMS-2000e」)を用いて、JIS Z8825:2013に準拠して行った。
試料調整は、ミクロスパーテル2杯の鉄粉をイソプロピルアルコール120mlに投入し、超音波処理を1分間行い、分散処理を行った。
続いて、着磁器/脱磁器(新潟精機株式会社製「マグネタッチMT-F」)を使用して脱磁処理を行った後、上記測定器の分散ユニットに試料を入れて循環式にて鉄粉の粒子径の測定を行った。
なお、鉄粉の平均粒子径及び最大粒子径はそれぞれ、体積基準粒度分布における累積頻度50%の粒子径(D50)及び累積頻度90%の粒子径(D90)の値とした。
・塩化カルシウム:株式会社トクヤマ社製、試薬
・接着剤:ドライラミネート接着剤(東洋モートン株式会社製「TM-250HV」)と、ドライラミネート接着剤(東洋モートン株式会社製「CAT-RT86L-60」)と、酢酸エチル(富士フイルム和光純薬株式会社製、試薬)との混合液(質量比=15.0:2.1:20.9)
【0057】
(製造例1:脱酸素剤組成物(C)の作製)
まず、水に塩化カルシウムを質量比1:1の割合で混合して、塩化カルシウム混合水溶液を得た。
次に、鉄粉を加熱ジャケット付き真空混合乾燥機中に入れ、130℃、10mmHgの減圧下で加熱乾燥しつつ、鉄粉100質量部に対し、塩化カルシウム混合水溶液2質量部を、噴霧して、塩化カルシウムを鉄粉表面に付着させた粒状の脱酸素剤組成物(C)を調製した。
【0058】
<酸素吸収性樹脂組成物、並びにこれを用いた成形体及び多層構造体の作製>
(実施例1)
[1]フィルム(成形体)の作製
ポリメチルペンテン樹脂(A)と、ポリオレフィン樹脂(B)とを、質量比〔(A)/(B)〕が5/95となるように配合し、ドライブレンドした後、酸素吸収性樹脂組成物中の脱酸素剤組成物(C)の含有量が30質量%となるように、製造例1で作製した脱酸素剤組成物(C)を加え、小型二軸セグメント押出機(株式会社東洋精機製作所製「2D15W」)を用いて、260~270℃にて、溶融混練し、ストランドダイより押出、冷却し、ペレタイザーで切断してペレット(酸素吸収性樹脂組成物)を得た。
得られたペレットを、厚さが150μmになるように、230℃、70kPaの条件でプレスして、酸素吸収性樹脂組成物からなる成形体であるフィルム(単層)を得た。
【0059】
[2]多層フィルム(多層構造体)の作製
ポリメチルペンテン樹脂(A)と、ポリオレフィン樹脂(B)とを、質量比〔(A)/(B)〕が5/95となるように配合し、ドライブレンドした後、酸素吸収性樹脂組成物中の脱酸素剤組成物(C)の含有量が30質量%となるように、製造例1で作製した脱酸素剤組成物を加え、ラボプラストミル(株式会社東洋精機製作所製「4C150」)を用い、押出温度260~270℃にて、混練押出をし、Tダイより製膜を行い、酸素吸収性樹脂組成物からなる成形体であるフィルム(単層、厚さ:100μm)を得た。
得られたフィルムに、接着剤を塗布し、80℃で1分間乾燥させ、ラミネーターにより透明バリアフィルム(凸版印刷株式会社製「GL-ARH-F」、厚さ:12μm、無機蒸着PETフィルム)とドライラミネートして、多層構造体である多層フィルム(構成:透明バリアフィルム(ガスバリア層)/接着層/酸素吸収性樹脂組成物からなる成形体であるフィルム(酸素吸収層)、厚さ:120μm)を得た。
【0060】
(実施例2~5並びに比較例2)
実施例2~5並びに比較例2は、ポリメチルペンテン樹脂(A)と、ポリオレフィン樹脂(B)との配合比を表1に示す値に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、フィルム及び多層フィルムを作製した。
【0061】
(比較例1)
比較例1は、ポリメチルペンテン樹脂(A)を用いなかった以外は、実施例1と同様の方法で、フィルム及び多層フィルムを作製した。
【0062】
<評価>
実施例及び比較例で作製したフィルム又は多層フィルムを用いて以下の評価を行った。結果を表1に示す。なお、下記評価について一部実施しなかった実施例及び比較例の結果については、表1の該当する欄に「-」の記号を付した。
【0063】
(酸素吸収量)
酸素吸収量の測定は、上記[1]で作製したフィルムを用いて、以下の方法により行った。
まず、上記[1]で作製したフィルムを63mm×76mmの寸法でカットし、測定用サンプルを得た。
上記測定用サンプル1枚を、25℃の空気500mlと、10mlのイオン交換水で濡らした脱脂綿と共に、アルミニウム箔ラミネートプラスチックフィルム袋(株式会社サンエー化研製、サイズ220mm×200mm、以下「アルミバリア袋」という)に収容し、開口部をヒートシールして封止した。更に、この時のアルミバリア袋内の酸素濃度(初期酸素濃度)を測定した。
そして、上記アルミバリア袋を速やかに40℃の恒温槽に入れ、5日間保持した後、アルミバリア袋内の酸素濃度(保存後の酸素濃度)を測定し、酸素吸収量(初期酸素濃度-保存後の酸素濃度)を算出した。
なお、酸素濃度は、ガス分析計(MOCON社製「Check Mate 3」)を使用して測定した。測定は、ガス分析計に付随しているサンプルリング用シリコンチューブの先端にある中空針を、アルミバリア袋に予め貼り付けておいたサンプリング用ゴムシートから袋内部に挿入して、アルミバリア袋内の酸素濃度を計測することにより行った。
上記測定は5回行い、その平均値を各実施例又は比較例のサンプルの酸素吸収量として評価した。酸素吸収量が多いものほど、酸素吸収性能が優れることを意味する。本実施例では、酸素吸収量が35.5ml以上であるものを良好と評価した。
【0064】
(ヤング率)
ヤング率の測定は、上記[1]で作製したフィルムを用いて、以下の方法により行った。
まず、上記[1]で作製したフィルム(厚さ:150μm)を幅15mm×長さ150mmの寸法でカットし、測定用サンプルを得た。
測定用サンプルの長手方向を引張方向とし、テンシロン万能材料試験機(株式会社エー・アンド・デイ製「RTG-1210」)を用いて、JIS K7127:1999の規定に準じて、チャック間距離100mm、引張速度50mm/minの条件で、ヤング率の測定を行った。
上記測定は5回行い、その平均値を各実施例又は比較例のサンプルのヤング率として評価した。ヤング率は値が大きい程、剛性が高く、コシがあることを意味する。本実施例では、ヤング率が240MPa以上であるものを良好と評価した。
【0065】
(剥離強度)
剥離強度の測定は、上記[2]で作製した多層フィルムを用いて、以下の方法により行った。
まず、上記[2]で作製した多層フィルム(構成:ガスバリア層/接着層/酸素吸収層)を幅15mm×長さ100mmの寸法でカットし、多層フィルム片を得た。
次に、得られた多層フィルム片2枚を、酸素吸収層(酸素吸収性樹脂組成物からなる成形体であるフィルム)が向かい合うように重ね合わせ、上部170℃下部100℃に加熱したシールバーを用いて、0.2MPaで1秒間ヒートシールして、測定用サンプルを得た。
測定用サンプルの長手方向を引張方向とし、テンシロン万能材料試験機(株式会社エー・アンド・デイ製「RTG-1210」)を用いて、JIS K7127:1999の規定に準じて、チャック間距離50mm、引張速度300mm/minの条件で、剥離強度の測定を行った。
上記測定は3回行い、その平均値を各実施例又は比較例のサンプルの剥離強度として評価した。なお、剥離面は概ね酸素吸収層と接着層の界面であった。したがって、剥離強度は値が大きい程、酸素吸収層と他の層との密着性が高いことを意味する。本実施例では、剥離強度が5N/15mm以上であるものを良好と評価した。
【0066】
【0067】
表1に示すように、ポリメチルペンテン樹脂(A)と、ポリオレフィン樹脂(B)と、脱酸素剤組成物(C)とを含む酸素吸収性樹脂組成物において、ポリオレフィン樹脂(B)に対するポリメチルペンテン樹脂(A)の質量比〔(A)/(B)〕が、1/99以上65/35以下の範囲内にある酸素吸収性樹脂組成物は、優れた酸素吸収性能と、高いヤング率(コシがある)を発揮し得ることが確認された(実施例1~5)。また、質量比〔(A)/(B)〕が所定の範囲内にある酸素吸収性樹脂組成物は、多層構成とした場合には他の層である接着層との密着性が良好となることが確認された(実施例1及び5)。
【0068】
一方、ポリメチルペンテン樹脂(A)を含まない酸素吸収性樹脂組成物は、上記本発明の酸素吸収性樹脂組成物(実施例1~5)に比べて、酸素吸収量が低く、またヤング率も低い(コシがない)ことが確認され、特に質量比〔(A)/(B)〕が5/95である酸素吸収性樹脂組成物(実施例1)と比較して、多層構成とした場合の剥離強度でも劣ることが確認された(比較例1)。
また、ポリオレフィン樹脂(B)に対するポリメチルペンテン樹脂(A)の質量比〔(A)/(B)〕が65/35を超える場合は、多層構成とした場合の剥離強度が著しく低下することが確認された(比較例2)。