特開 2024-37481 芯上下式石油燃焼器

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2024037481

(43)【公開日】2024-03-19

(54)【発明の名称】芯上下式石油燃焼器

(51)【国際特許分類】

   F23D 3/18 20060101AFI20240312BHJP

   F23D 3/04 20060101ALI20240312BHJP

   F23D 3/10 20060101ALI20240312BHJP

   F23D 3/24 20060101ALI20240312BHJP

【ＦＩ】

F23D3/18 Z

F23D3/04 D

F23D3/10 A

F23D3/24 610Z

【審査請求】未請求

【請求項の数】3

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2022142375

(22)【出願日】2022-09-07

(71)【出願人】

【識別番号】000003229

【氏名又は名称】株式会社トヨトミ

(72)【発明者】

【氏名】五反田 邦博

(57)【要約】

【課題】 安定した燃焼状態を得ることができる芯上下式石油燃焼器を提供する。
【解決手段】 芯内筒２と芯外筒３とで構成される芯収容筒４の間隙に芯５を上下動自在に装着し、芯内筒２と芯外筒３と芯５の上には燃焼筒６を配置する。枠体１の燃焼筒６よりも下側の領域には枠体１内に空気を導入する複数の通気孔７を形成し、枠体１の燃焼筒６よりも上側の領域には枠体１内の燃焼ガスを外部に排出する複数の排気孔８を形成する。排気孔８とは間隔をあけて対向する位置で、枠体１の外周を囲む空気制御部材９を配置し、排気孔８が空気制御部材９で隠れるように構成する。枠体１の周囲に風が発生したときに、空気制御部材９によって排気孔８から直接枠体１内に空気が流入するのを阻止し、燃焼ガスが排気孔８を通過するときに枠体１内に押し戻されることなく排出され、燃焼のドラフトによる上昇気流によって芯５から気化した燃料が燃焼筒６を上昇する。
【選択図】 図１

【特許請求の範囲】

【請求項1】

枠体内に芯内筒と、前記芯内筒の外側に配置された芯外筒と、前記芯内筒と前記芯外筒とで構成される芯収容筒の間隙に上下動自在に装着された芯と、前記芯内筒と前記芯外筒と前記芯の上に配置された燃焼筒とを設け、
前記枠体には、前記燃焼筒よりも下側の領域で前記枠体内に空気を導入する複数の通気孔と、前記燃焼筒よりも上側の領域で前記枠体内の燃焼ガスを外部に排出する複数の排気孔とを備え、
前記芯内筒の内部を上昇する空気及び前記通気孔から前記枠体内に流入する空気が前記燃焼筒に供給され、前記燃焼筒の上部から排出される燃焼ガスが前記排気孔から前記枠体外に排気される石油燃焼器において、
前記枠体の前記排気孔と間隔をあけて対向し、前記枠体の外周を囲んで配置された空気制御部材を設け、
前記空気制御部材は、高さ方向の寸法を前記排気孔の高さ方向の寸法よりも大きくし、前記枠体を周方向から見た場合に、前記空気制御部材によって前記排気孔が隠れるように構成されていることを特徴とする芯上下式石油燃焼器。

【請求項2】

前記排気孔の上端位置と前記空気制御部材の上端位置を結ぶ仮想線及び前記排気孔の下端位置と前記空気制御部材の下端位置を結ぶ仮想線の、水平方向に対する角度が２０度以上となるように設定されている請求項１記載の石油燃焼器。

【請求項3】

前記空気制御部材は、前記枠体に着脱可能に取り付けられた２枚以上の円弧状の湾曲板によって構成されていることを特徴とする請求項１または２に記載の石油燃焼器。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

この発明は芯上下式石油燃焼器に関するものである。

【背景技術】

【0002】

対流型ストーブとよばれる芯上下式石油燃焼器は、芯内筒と芯外筒で構成する芯収容筒の間隙に上下動自在に芯が装着され、芯の上方には燃焼筒が配置されている。芯収容筒の下部には燃料タンクを備え、燃料タンクの上には円筒状の枠体が配置され、枠体内には芯収容筒と燃焼筒が配置され、枠体の側面の燃焼筒よりも下側の領域に多数の通気孔が形成され、枠体の側面の燃焼筒よりも上側の領域に多数の排気孔が形成されている。

【0003】

芯を燃焼位置にセットすると芯の上端部が芯収容筒の上方に突出し、芯の下端で吸い上げられた燃料タンクの燃料が芯の上端部で気化し、芯内筒の内部を上昇してきた空気と、枠体の空気孔から流入する空気が燃焼筒の空気孔から燃焼筒内の芯の上方に供給され、芯の上端から気化した燃焼ガスと混合して燃焼する。燃焼筒の上部から出た燃焼ガスは排気孔から枠体外に排気される（特許文献１参照）。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0004】

【特許文献1】特開２０１０－９１２６１号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

石油燃焼器の使用場所は屋内に限定されているが、対流型ストーブは事務所や体育館のような広い場所で使用される場合があり、これらの場所は屋外ではないものの、石油燃焼器の周囲に風が発生しやすい環境となっている。また、最近はキャンプ場などアウトドアで使用されるケースが増えており、完全な屋外ではなくテントやタープの中での使用ではあるが、こういった場所も非常に風が発生しやすい環境となっている。

【0006】

石油燃焼器の周囲に風が発生した場合に、流速の速い空気が枠体の側面上部の排気孔から枠体内に流入すると、燃焼筒から枠体内に放出されて排気孔に向かう燃焼ガスが風で押し戻されて排気孔を通過できなくなり、枠体内の上部空間の風圧が高くなるため、燃焼のドラフトによる上昇気流が作用しなくなる。

【0007】

この場合、芯から気化した燃料が燃焼筒内を上昇できなくなり、燃焼筒の空気孔から外側に流出し、燃焼筒の外側で枠体内の空気と混合して燃焼炎が形成される。燃焼筒の外側では燃料と空気のバランスが悪く、燃焼炎が長く伸びることがあり、枠体内に配置された芯上下装置や点火装置などの部品に届いて、トラブルにつながる恐れがあった。また、通気孔から燃焼炎が見えた場合に、使用者に不安を与えることがある。

【課題を解決するための手段】

【0008】

この発明は上記の課題を解決するもので、枠体１内に芯内筒２と、前記芯内筒２の外側に配置された芯外筒３と、前記芯内筒２と前記芯外筒３とで構成される芯収容筒４の間隙に上下動自在に装着された芯５と、前記芯内筒２と前記芯外筒３と前記芯５の上に配置された燃焼筒６とを設け、前記枠体１には、前記燃焼筒６よりも下側の領域で前記枠体１内に空気を導入する複数の通気孔７と、前記燃焼筒６よりも上側の領域で前記枠体１内の燃焼ガスを外部に排出する複数の排気孔８とを備え、前記芯内筒２の内部を上昇する空気及び前記通気孔７から前記枠体１内に流入する空気が前記燃焼筒６に供給され、前記燃焼筒６の上部から排出される燃焼ガスが前記排気孔８から前記枠体１外に排気される石油燃焼器において、前記枠体１の前記排気孔８と間隔をあけて対向し、前記枠体１の外周を囲んで配置された空気制御部材９を設け、前記空気制御部材９は、高さ方向の寸法を前記排気孔８の高さ方向の寸法よりも大きくし、前記枠体１を周方向から見た場合に、前記空気制御部材９によって前記排気孔８が隠れるように構成されていることを特徴とする芯上下式石油燃焼器である。

【0009】

また、前記排気孔８の上端位置と前記空気制御部材９の上端位置を結ぶ仮想線Ｌ及び前記排気孔８の下端位置と前記空気制御部材９の下端位置を結ぶ仮想線Ｌの、水平方向に対する角度が２０度以上となるように設定されており、前記排気孔８から前記枠体１外に排出される燃焼ガスの流れを妨げることなく、前記枠体１の周囲で風が発生した場合には、前記排気孔８に向かう風が前記空気制御部材９によって遮られて前記排気孔８から前記枠体１内に直接流入するのを阻止することができる。

【0010】

また、前記空気制御部材９は、前記枠体１に着脱可能に取り付けられた２枚以上の円弧状の湾曲板９０によって構成されており、空気制御部材９を必要とする場合だけ、枠体１に取り付けて使用するようにしてもよい。

【発明の効果】

【0011】

この発明の石油燃焼器は、枠体１の排気孔８と対向する位置で、枠体１の外周を囲むように空気制御部材９を配置し、空気制御部材９の高さ方向の寸法を排気孔８の高さ方向の寸法よりも大きくすることで、排気孔８が空気制御部材９で隠れるように構成している。

【0012】

空気制御部材９は排気孔８とは間隔をあけて配置されているから、通常時は排気孔８を通過する燃焼ガスの流れを妨げることなく、燃焼ガスがスムーズに排出される。一方、枠体１の周囲に風が発生した場合には、空気制御部材９の働きによって排気孔８から直接枠体１内へ空気が流入するのを阻止するから、枠体１内の燃焼ガスが排気孔８から排出されるときに枠体１内に押し戻されることがなくなり、燃焼のドラフトによる上昇気流が発生して安定した燃焼状態を維持できるものとなり、風の影響を受けることなく使用することができる石油燃焼器が提供できるものとなった。

【図面の簡単な説明】

【0013】

【図1】この発明の実施例を示す芯上下式石油燃焼器の一部切り欠き縦断面図である。

【図2】この発明の実施例を示す芯上下式石油燃焼器の要部の断面図である。

【図3】この発明の実施例である空気制御部材を湾曲板で構成した芯上下式石油燃焼器の横断面図である。

【図4】この発明の実施例である空気制御部材を湾曲板で構成した芯上下式石油燃焼器の要部の側面図である。

【発明を実施するための形態】

【0014】

図に示す実施例によって本発明を説明する。本発明の芯上下式石油燃焼器は、床等の被設置面に置かれる置台１０の上に、支持脚１１を介して固定された燃料タンク１２と、燃料タンク１２の底面中央部から立設された芯内筒２と、燃料タンク１２の上面に取り付けられた芯外筒３と、芯５を備えている。

【0015】

芯５は、芯内筒２と芯外筒３とで構成される芯収容筒４の間隙に上下動自在に装着され、芯５の下端部が燃料タンク１２の燃料中に伸ばされており、芯５の下端部で燃料を吸い上げて芯５の上端部に供給する。芯５は図示しない芯上下装置によって上下動し、芯５を燃焼位置にセットすると芯５の上端部が芯収容筒４の上に突出する。

【0016】

芯収容筒４の上には燃焼筒６が載置されている。燃焼筒６は、芯内筒２の上に位置する内炎筒６０と、芯外筒３の上に位置する外炎筒６２と、芯外筒３の上端部に形成された環状のフランジ部３ａの上に位置する外筒６４と、外筒６４の外側に位置するカバー６６と、内炎筒６０の上端部に位置する拡炎装置６７とを備えている。内炎筒６０と外炎筒６２との間に芯収容筒４の上方に突出した芯５の上端部がのぞむ間隙６ａが形成される。内炎筒６０、外炎筒６２及び外筒６４には間隙６ａに燃焼用空気を供給するための複数の空気孔６１、６３及び６５が形成されている。

【0017】

拡炎装置６７は内炎筒６０の上に配置された円筒６８と、円筒６８の上端部に設けられた拡炎板６９で構成されている。また、外筒６４の上端部に外筒天板７０が配置され、外筒天板７０の内縁は内炎筒６０と外炎筒６２の間隙の上方にのぞませている。

【0018】

燃料タンク１２の上には、円筒状の枠体１を備えており、枠体１内に芯収容筒４と燃焼筒６の他、図示しない芯上下装置や点火装置などを備えている。枠体１の側壁には、燃焼筒６よりも下側の領域に通気孔７が形成され、燃焼筒６よりも上側の領域に排気孔８が形成されている。通気孔７及び排気孔８は、複数の縦長のスリット状の長孔７ａ及び長孔８ａで構成されている。また、枠体１の上端開口部には天板１ａが設置され、枠体１の外周には線材で構成された保護ガード１ｂが取り付けられている。

【0019】

実施例の芯上下式石油燃焼器は、芯上下装置を操作して芯５を燃焼位置にセットし、点火装置を用いて着火すると、燃焼が開始される。なお、点火装置は電池を電源として、芯５の側方に配置された電極間に放電火花を発生させて着火する構成となっている。点火装置の構成は任意である。

【0020】

燃焼を開始すると、芯５で吸い上げられた燃料が芯５の上端部から気化し、内炎筒６０と外炎筒６２との間隙６ａ内を上昇する。芯５から気化した燃料は、通気孔７から枠体１内を経由して外炎筒６２に形成された複数の空気孔６３から間隙６ａに流入する空気と、芯内筒２内を上昇して内炎筒６０内に流入し、内炎筒６０に形成された複数の空気孔６１から間隙６ａに流入した空気と混合して燃焼する。燃焼炎は複数の空気孔６１、６３から間隙６ａ内に伸びるように形成される。内炎筒６０と外炎筒６２との間隙６ａで発生する燃焼炎は、拡炎板６９と外筒天板７０との間から枠体１内の上部空間に伸び出るように発生している。外筒天板７０と拡炎板６９との間から枠体１内の上部空間に放出された燃焼ガスは、天板１ａまで上昇し、排気孔８から枠体１外に排気される。

【0021】

本発明の芯上下式石油燃焼器は、枠体１の外径寸法よりも大きい外径寸法を持つリング状の空気制御部材９を備えている。空気制御部材９は排気孔８とは所定の間隔をあけて対向する位置で枠体１の外周を囲むように配置されている。空気制御部材９の高さ方向の寸法は、排気孔８の高さ方向の寸法よりも大きくなるよう設定されており、石油燃焼器の枠体１の周方向から見た場合に、空気制御部材９によって排気孔８が隠れて見えないようになっている。

【0022】

空気制御部材９の固定方法は任意であり、溶接やカシメなどの方法によって枠体１もしくはガード１ｂに一体に固定するか、固定ねじなどを用いてもよい。固定ねじを用いる場合は、枠体１もしくはガード１ｂに着脱可能に取り付けることで、空気制御部材９をオプション部品として用意することができる。

【0023】

図３に示すように、本発明の実施例では、空気制御部材９が２枚の円弧状の湾曲板９０で構成されている。湾曲板９０はガード１ｂの内側に取り付けられ、湾曲板９０の両端部には湾曲板９０をガード１ｂに固定するための固定部材９１が装着されている。湾曲板９０と固定部材９１にはねじ孔が形成されており、固定部材９１と湾曲板９０の間にガード１ｂの線材を挟んだ状態でねじ孔に固定ねじ９２を装着することで湾曲板９０がガード１ａの内側に固定される。空気制御部材９を構成する湾曲板９０の枚数と固定位置は任意であり、空気制御部材９をガード１ｂの外側に取り付けるようにしてもよい。

【0024】

図２に示すように、空気制御部材９の上端位置と排気孔８の上端位置とを結ぶ仮想線Ｌ１及び、空気制御部材９の下端位置と排気孔８の下端位置とを結ぶ仮想線Ｌ２が、水平方向に対する角度が２０度以上になるよう、空気制御部材９の高さ方向の寸法と枠体１の側壁との間の距離を設定している。

【0025】

このようにすれば、通常時は、燃焼筒６から枠体１内の上部空間に放出された燃焼ガスは、上部空間を上昇して天板１ａ付近に集まり、排気孔８から排気される。枠体１の側壁と空気制御部材９との隙間にも上昇気流が発生しており、排気孔８を通過した燃焼ガスはこの隙間にとどまることなく、上方に向かって流れて枠体１の上方に拡散することができ、空気制御部材９は枠体１内の燃焼ガスの流れには何ら影響を与えず、燃焼筒６の間隙６ａ内で正常に燃焼する。

【0026】

また、石油燃焼器の周囲に風が発生した場合には、石油燃焼器の側方から枠体１の側壁に向かう空気流は空気制御部材９にあたり、空気制御部材９の周方向に沿って流れ、あるいは上方もしくは下方に分かれて枠体１の側面に沿って流れるので、枠体１の側壁と空気制御部材９との隙間への空気の流入が抑制され、流速の速い空気が排気孔８から枠体１内に流入することがなくなった。

【0027】

排気孔８から枠体１内への空気の流入がなくなることで、枠体１内の天板１ａ付近に集まった燃焼ガスが排気孔８を通過するときに枠体１内に押し戻されることがなくなる。排気孔８を通過して枠体１の側壁と空気制御部材９との隙間に流出した燃焼ガスは、この隙間に発生する上昇気流によって上方に向かって流れて枠体１の上方に拡散する。

【0028】

このように、枠体１内の燃焼ガスがスムーズに排出されることで、枠体１内の上部空間の内圧の上昇が抑えられるので、燃焼のドラフトによる上昇気流によって芯５から気化した燃料が燃焼筒６の間隙６ａ内を上昇し、内炎筒６０の空気孔６１及び外炎筒６２の空気孔６３から間隙６ａに空気が流入することができる。そのため、燃焼炎は複数の空気孔６１、６３から間隙６ａ内に伸びるように形成され、さらに拡炎板６９と外筒天板７０との間から枠体１内の上部空間に伸び出るように発生するものとなり、燃焼筒６の外側に燃焼炎が形成されるといった問題は起こらなくなった。

【0029】

また、流速の速い空気は置台１０と燃料タンク１２の底面との隙間にも流入するが、この空気流はそのままこの隙間を通過して外部へ流出しており、芯内筒２内を上昇して内炎筒６０内に流入する空気に大きな変化はなく、内炎筒６０の空気孔６１から間隙６ａには、燃焼のドラフトによる上昇気流によって一定量の空気が流入する。さらに、流速の速い空気は通気孔７から枠体１内の下部空間にも流入するが、燃焼筒６の外筒６４の整流作用によって流速の速い空気の流入が制限され、外炎筒６２の周囲には外筒６４の空気孔６５を通過した流速の遅い空気が供給されるから、外炎筒６２の空気孔６３から間隙６ａには、燃焼のドラフトによる上昇気流によって一定量の空気が流入するものとなっている。

【0030】

したがって、燃焼のドラフトに対して燃焼筒６内に供給される空気量が多くなりすぎることはなく、芯５から気化して燃焼筒６の間隙６ａを上昇する燃料と内炎筒６０の空気孔６１及び外炎筒６２の空気孔６３から間隙６ａに流入する空気とがバランスして安定した燃焼状態を維持できるものとなった。

【符号の説明】

【0031】

１ 枠体
２ 芯内筒
３ 芯外筒
４ 芯収容筒
５ 芯
６ 燃焼筒
７ 通気孔
８ 排気孔
９ 空気制御部材

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】