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特開2024-37490タイヤ接地形状解析装置およびタイヤ接地形状解析方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037490
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】タイヤ接地形状解析装置およびタイヤ接地形状解析方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
G01B11/24 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142388
(22)【出願日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 昌志
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA12
2F065AA52
2F065AA58
2F065CC13
2F065FF04
2F065FF61
2F065GG03
2F065HH12
2F065JJ03
2F065JJ26
2F065QQ04
2F065QQ07
2F065QQ29
2F065QQ34
2F065SS13
(57)【要約】
【課題】カメラで撮影してデジタル画像を取得する場合に、適切な接地形状を取得する。
【解決手段】タイヤ接地形状解析装置は、タイヤの接地面画像を取得する画像取得部と、取得した接地面画像について、所定閾値を基準とする二値化処理を行って仮GCA画像を求める仮GCA算出部と、仮GCA画像について、境界線上の画素それぞれに垂直線を設置する垂直線設置処理部と、設置した垂直線それぞれについて、その垂直線に沿った輝度の分布を微分し、さらに微分して極大点および極小点を求める輝度微分処理部と、得られた極大点および極小点に基づいて、仮GCA画像に境界を設定する境界設定処理部と、境界が設定された仮GCA画像について、境界を平滑にする平滑化処理部と、境界が平滑にされた仮GCA画像に、接地面画像から求めた溝画像を重ね合わせて接地形状を求める重ね合わせ処理部と、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤの接地面画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部が取得した接地面画像について、所定閾値を基準とする二値化処理を行って暫定的な総接地面積画像である仮GCA画像を求める仮GCA算出部と、
前記仮GCA画像について、境界線上の画素それぞれに垂直線を設置する垂直線設置処理部と、
前記垂直線設置処理部が設置した垂直線それぞれについて、その垂直線に沿った輝度の分布を微分し、さらに微分して極大点および極小点を求める輝度微分処理部と、
前記輝度微分処理部によって得られた極大点および極小点に基づいて、前記仮GCA画像に境界を設定する境界設定処理部と、
前記境界設定処理部によって境界が設定された前記仮GCA画像について、前記境界を平滑にする平滑化処理部と、
前記平滑化処理部によって境界が平滑にされた前記仮GCA画像に、前記接地面画像から求めた溝画像を重ね合わせて接地形状を求める重ね合わせ処理部と、
を含むタイヤ接地形状解析装置。
【請求項2】
前記接地面画像に基づいて、前記溝画像を求める溝画像抽出処理部を更に含む請求項1に記載のタイヤ接地形状解析装置。
【請求項3】
前記垂直線設置処理部において設置する前記垂直線の長さは、前記仮GCA画像の境界線上を始点として、タイヤ内側に向かう方向の長さと定義し、その長さはタイヤ外径の1%以上5%以下である請求項1または請求項2に記載のタイヤ接地形状解析装置。
【請求項4】
前記仮GCA算出部の前記二値化処理において、前記所定閾値は前記接地面画像における最大輝度値より小さい請求項1または請求項2に記載のタイヤ接地形状解析装置。
【請求項5】
前記境界設定処理部は、グラフにプロットした輝度の極大点および極小点について、
極大点が1個の場合には、第1極大点の位置から第1極大点の位置+βまでのプロット点のうち、2次微分値が最大である位置を境界と定義し、
極大点が2個の場合には、極小点が1個以上、かつ、第1極大点の位置、第1極小点の位置、第2極大点の位置の順にプロット点が並んでいれば、第1極小点の位置から第2極大点の位置までのプロット点のうち、2次微分値が最大である位置を境界と定義し、極大点が2個で上記以外の場合であれば第2極大点の位置を境界と定義し、
極大点が3個以上の場合には、グラフの立下がり部分に最も近い極大点の位置から極大点の位置+γまでのプロット点のうち、2次微分値が最大となる位置を境界と定義し、
極大点が0個の場合には、境界を定義しない、
請求項1または請求項2に記載のタイヤ接地形状解析装置。
【請求項6】
タイヤの接地面画像を取得する画像取得ステップと、
前記画像取得ステップにおいて取得した接地面画像について、所定閾値を基準とする二値化処理を行って暫定的な総接地面積画像である仮GCA画像を求める仮GCA算出ステップと、
前記仮GCA画像について、境界線上の画素それぞれに垂直線を設置する垂直線設置処理ステップと、
前記垂直線設置処理ステップにおいて設置した垂直線それぞれについて、その垂直線に沿った輝度の分布を微分し、さらに微分して極大点および極小点を求める輝度微分処理ステップと、
前記輝度微分処理ステップによって得られた極大点および極小点に基づいて、前記仮GCA画像に境界を設定する境界設定処理ステップと、
前記境界設定処理ステップによって境界が設定された前記仮GCA画像について、前記境界を平滑にする平滑化処理ステップと、
前記平滑化処理ステップによって境界が平滑にされた前記仮GCA画像に、前記接地面画像から求めた溝画像を重ね合わせて接地形状を求める重ね合わせ処理ステップと、
を含むタイヤ接地形状解析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ接地形状解析装置およびタイヤ接地形状解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透明板の上側面のタイヤの接地面を透明板の下側からカメラで撮影することによってタイヤ踏み跡のデジタル画像を取得する技術が知られている(例えば、特許文献1)。また、タイヤの接地面に光を照射して透明板の下側からカメラで撮影する技術が知られている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3293670号公報
【特許文献2】特開2020-019437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、カメラで撮影してデジタル画像を取得する場合に、一定の閾値を採用すると、適切な接地形状画像を取得できない場合がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、カメラで撮影してデジタル画像を取得する場合に、適切な接地形状を取得できるタイヤ接地形状解析装置およびタイヤ接地形状解析方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のある態様によるタイヤ接地形状解析装置は、タイヤの接地面画像を取得する画像取得部と、前記画像取得部が取得した接地面画像について、所定閾値を基準とする二値化処理を行って暫定的な総接地面積画像である仮GCA画像を求める仮GCA算出部と、前記仮GCA画像について、境界線上の画素それぞれに垂直線を設置する垂直線設置処理部と、前記垂直線設置処理部が設置した垂直線それぞれについて、その垂直線に沿った輝度の分布を微分し、さらに微分して極大点および極小点を求める輝度微分処理部と、前記輝度微分処理部によって得られた極大点および極小点に基づいて、前記仮GCA画像に境界を設定する境界設定処理部と、前記境界設定処理部によって境界が設定された前記仮GCA画像について、前記境界を平滑にする平滑化処理部と、前記平滑化処理部によって境界が平滑にされた前記仮GCA画像に、前記接地面画像から求めた溝画像を重ね合わせて接地形状を求める重ね合わせ処理部と、を含む。
【0007】
本発明のある態様によるタイヤ接地形状解析方法は、タイヤの接地面画像を取得する画像取得ステップと、前記画像取得ステップにおいて取得した接地面画像について、所定閾値を基準とする二値化処理を行って暫定的な総接地面積画像である仮GCA画像を求める仮GCA算出ステップと、前記仮GCA画像について、境界線上の画素それぞれに垂直線を設置する垂直線設置処理ステップと、前記垂直線設置処理ステップにおいて設置した垂直線それぞれについて、その垂直線に沿った輝度の分布を微分し、さらに微分して極大点および極小点を求める輝度微分処理ステップと、前記輝度微分処理ステップによって得られた極大点および極小点に基づいて、前記仮GCA画像に境界を設定する境界設定処理ステップと、前記境界設定処理ステップによって境界が設定された前記仮GCA画像について、前記境界を平滑にする平滑化処理ステップと、前記平滑化処理ステップによって境界が平滑にされた前記仮GCA画像に、前記接地面画像から求めた溝画像を重ね合わせて接地形状を求める重ね合わせ処理ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、カメラで撮影してデジタル画像を取得する場合に、適切な接地形状を取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係るタイヤ接地形状解析装置を模式的に示す構成図である。
図2図2は、図1に示すタイヤ接地形状解析装置の機能を示すブロック図である。
図3図3は、透明板の移動とトリガー装置の動作とを説明する図である。
図4図4は、透明板の移動とトリガー装置の動作とを説明する図である。
図5図5は、タイヤ接地形状解析装置の動作を示すフロー図である。
図6図6は、垂直線を利用して溝を抽出する処理を説明する図である。
図7図7は、垂直線を利用して溝を抽出する処理を示すフロー図である。
図8図8は、溝の抽出処理の手順を示すフロー図である。
図9図9は、接地面画像上の溝に垂直線を付加した図である。
図10図10は、2箇所の最大輝度位置の例を示す図である。
図11図11は、仮GCA算出部の処理の内容を説明する図である。
図12図12は、各照明ランプの配置を説明する図である。
図13図13は、各照明ランプの配置を説明する図である。
図14図14は、各照明ランプの配置を説明する図である。
図15図15は、各照明ランプの配置を説明する図である。
図16図16は、メディアンフィルタの例を示す図である。
図17図17は、収縮処理の説明図である。
図18図18は、膨張処理の説明図である。
図19図19は、垂直線設置処理部の処理内容を示すフロー図である。
図20図20は、垂直線設置処理部の処理によって垂直線を設置する手順を説明する図である。
図21図21は、輝度微分処理部の処理を説明する図である。
図22図22は、線形補間によって輝度を求める処理を説明する図である。
図23図23は、接地面画像を平滑化する処理を説明する図である。
図24図24は、輝度分布の例を示す図である。
図25図25は、接地面画像の例を示す図である。
図26図26は、図25に示す垂直線に沿った輝度分布を示す図である。
図27図27は、図26について境界判定処理を行った場合の誤判定マップである。
図28図28は、図26について第1極大点の位置を境界と判定した場合の誤判定マップである。
図29図29は、図25に示す垂直線に沿った輝度分布を示す図である。
図30図30は、図29について第1極小点の位置を境界と判定した場合の誤判定マップである。
図31図31は、図29について第2極大点の位置を境界と判定した場合の誤判定マップである。
図32図32は、図29について他の条件によって境界を判定した場合の誤判定マップである。
図33図33は、図25に示す垂直線に沿った輝度分布を示す図である。
図34図34は、他の条件によって境界を判定した場合の誤判定マップである。
図35図35は、輪郭を求める手順を説明する図である。
図36図36は、画素それぞれについて垂直線を設定した状態を示す図である。
図37図37は、境界位置の座標の例を示す図である。
図38図38は、輪郭平滑化前の境界判定結果の例を示す図である。
図39図39は、輪郭平滑化後の境界判定結果の例を示す図である。
図40図40は、重ね合わせ処理を説明する図である。
図41図41は、垂直線設置処理部が設定する垂直線の長さを説明する図である。
図42図42は、仮GCA算出部において、接地面画像を二値化した結果の例を示す図である。
図43図43は、仮GCA算出部において、接地面画像を二値化した結果の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の各実施形態の説明において、他の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。各実施形態により本発明が限定されるものではない。また、各実施形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。なお、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0011】
図1は、実施形態に係るタイヤ接地形状解析装置1を模式的に示す構成図である。図2は、図1に示すタイヤ接地形状解析装置1の機能を示すブロック図である。これらの図において、図1は、タイヤ接地形状解析装置1の全体構成を模式的に示し、図2は、タイヤ接地形状解析装置1の主たる機能を示している。
【0012】
本実施形態に係るタイヤ接地形状解析装置1は、空気入りタイヤ60の接地面61の画像を取得することにより、接地面61の解析を行うシステムに適用される。タイヤ接地形状解析装置1は、タイヤ試験機2と、撮影装置10と、タイヤ接地面解析装置20とを備える。
【0013】
タイヤ試験機2は、解析対象である空気入りタイヤ60(以下、タイヤ60と呼ぶ)に試験条件を付与する装置である。図1の構成では、タイヤ試験機2は、支持装置3と、駆動装置5と、透明板11とを有する。支持装置3は、タイヤ60を回転可能に支持する装置であり、タイヤ60を装着するリム4を有する。駆動装置5はタイヤ60および透明板11に駆動力を付与する装置である。駆動装置5は、タイヤ60および透明板11を駆動するモータ6と、モータ6を制御するモータ制御装置7とから構成される。なお、駆動装置5は、図示せぬギヤなどを含み、透明板11を水平に駆動する。
【0014】
このタイヤ試験機2では、支持装置3がリム4に装着されたタイヤ60を支持し、タイヤ60が透明板11の一主面である上面11Uに押圧されてタイヤ60に荷重を付与する。透明板11は、フラットな路面を再現する。透明板11に押圧されたタイヤ60は、フラットな路面を走行している状態と同様に接地面61が変形する。透明板11を水平に駆動することにより、車両走行時におけるタイヤ60の転動状態が、透明板11の表面を路面として再現され、動的接地特性を解析できる。駆動装置5は、モータ制御装置7によりモータ6を駆動してリム4を所定角度回転させることができる。
【0015】
透明板11は、光を透過する性質を有する光透過板である。透明板11は光を100%透過しなくてもよく、透明板11を介してタイヤ60の表面を撮影することができる光透過率を有していればよい。透明板11は、例えば、アクリル樹脂製の平面板又はガラス製の平面板である。タイヤ60と平面板との接触状態を撮影して画像解析するので、タイヤ60の、より現実に近い接地状態を解析できる。透明板11について、板の厚み、屈折角などの仕様の指定はない。
【0016】
撮影装置10は、タイヤ60を撮影する撮影部であるカメラ15と、光源である照明用ランプ16と、トリガー装置17とを有する。カメラ15は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)カメラにより構成される。カメラ15は、撮影装置10内に固定されている。カメラ15は、透明板11を介してタイヤ60を撮影することにより、透明板11に押し付けられているタイヤ60の接地面61を撮影する。詳しくは、カメラ15は、透明板11の他主面である下面11D側に、光軸が下面11D側に対して直交する向きで配設され、下面11D側から、透明板11を介してタイヤ60を撮影する。これにより、カメラ15は、少なくとも接地面61を含んでタイヤ60を撮影し、接地面61を含んだタイヤ60のデジタル画像データを生成する。
【0017】
照明用ランプ16は、カメラ15の撮影範囲を照らすランプであり、例えば、ハロゲンランプにより構成される。この照明用ランプ16は、後述するように複数設けられているランプ161から168の総称である。照明用ランプ16は、透明板11に押し付けられているタイヤ60の接地面61に、光を照射する。照明用ランプ16は、光を、透明板11の下面11D側から透明板11を介して、または透明板11の上面11U側とタイヤ60との間から照射する。複数の照明用ランプ16は、透明板11が移動する位置以外の位置に、それぞれ配置されている。なお、撮影装置10の移動に伴い、撮影装置10内のカメラ15と照明用ランプ16とが一緒に移動する。
【0018】
なお、これらの照明用ランプ16は、タイヤ試験機2での試験の条件に応じて数を異ならせてもよい。例えば、透明板11に対してタイヤ60を押し付ける際の荷重が小さい場合は、接地領域が狭くなるため、接地面61と非接地面との輝度差が明確になる。このため、この場合は、照明用ランプ16は、比較的数が少なくてもよく、透明板11の移動方向に対して斜め方向になる2箇所に配置する程度でもよい。これに対し、透明板11に対してタイヤ60を押し付ける際の荷重が大きい場合は、接地領域が広くなるため、接地面61に対してより多くの方向から光を照射する必要がある。このため、この場合は、照明用ランプ16は接地面61を囲んだ4箇所以上に配置する。また、これらの照明用ランプ16は、常時点灯タイプであってもよく、フラッシュ点灯タイプであってもよい。
【0019】
トリガー装置17は、カメラ15による撮影のタイミングを示すトリガー信号を出力する装置である。トリガー装置17は、半導体レーザを出力し、その反射光を検出した時にトリガー信号を出力する。本例では、透明板11の側面に再帰性反射シート18が貼付されており、トリガー装置17が出力した半導体レーザが再帰性反射シート18によって反射され、トリガー装置17の検出部171がその反射光を検出した時にトリガー信号を出力する。再帰性反射シート18の貼付位置とカメラ15の位置との関係が固定されていれば、撮影を複数回行った場合でもタイヤ60の同じ位置の接地面61を撮影することができる。
【0020】
タイヤ接地面解析装置20は、例えば、所定の解析プログラムをインストールしたPC(Personal Computer)であり、撮影装置10から入力されるタイヤ60の画像を処理してタイヤ60の接地面61を解析する処理を行う。タイヤ60の接地面61を解析する処理は、撮影したタイヤ60の画像に基づき、接地面61を算出する処理を含む。タイヤ接地面解析装置20は、接地面61の解析等の演算処理やデータの保存等を行う処理装置30と、オペレータがタイヤ接地面解析装置20への入力操作を行う入力部21と、解析結果や各種情報を表示する表示部22と、を有している。入力部21には、キーボードや、マウス等のポインティングデバイスが用いられており、表示部22には、液晶ディスプレイ等のディスプレイ装置が用いられている。入力部21と表示部22とは、処理装置30に電気的に接続されており、これによりタイヤ接地面解析装置20は、オペレータが表示部22を視認しながら入力部21で入力操作をすることが可能になっている。また、カメラ15は、タイヤ接地面解析装置20の処理装置30に接続されており、これによりタイヤ接地面解析装置20は、カメラ15で撮影した画像を取得することが可能になっている。
【0021】
タイヤ接地面解析装置20が有する処理装置30は、CPU(Central Processing Unit)等を有する処理部31や、RAM(Random Access Memory)等の記憶部32を備えて構成されている。このように構成される処理部31と記憶部32とは、同一筐体内に設けられていてもよく、異なる筐体内に設けられていてもよく、或いは、複数の記憶部32が双方の形態で設けられていてもよい。
【0022】
処理装置30が有する処理部31は、画像取得部33と、仮GCA算出部34と、垂直線設置処理部35と、輝度微分処理部36と、境界設定処理部37と、平滑化処理部38と、重ね合わせ処理部39と、溝画像抽出処理部40と、を機能的に有している。また、処理部31では、画像取得部33によって取得した接地面画像に基づいて、タイヤ60の接地域を示す接地域画像を作成する。以下の説明において、画像は全て256階調からなるものとし、黒を輝度「255」、白を輝度「0」と定義する。
【0023】
ここで、タイヤ60の溝とは、タイヤ60のトレッド面に設けられた、主溝、サブ溝、および、それらの溝の開口部に設けられた面取りの総称である。主溝とは、JATMAに規定されるウェアインジケータの表示義務を有する溝である。また、サブ溝とは、タイヤ幅方向に延在する横溝であり、タイヤ接地時に開口して溝として機能する。
【0024】
画像取得部33は、タイヤの接地面画像を取得する。接地面画像は、カメラ15によって撮影したデジタル画像である。
【0025】
仮GCA算出部34は、画像取得部33が取得した接地面画像について、所定閾値を基準とする二値化処理を行って仮GCA画像を算出する。仮GCA画像は、正確な総接地面積画像(Ground Contact Area、以下GCAと略称することがある)ではなく、暫定的な総接地面積画像である。
【0026】
垂直線設置処理部35は、仮GCA算出部34が算出した仮GCA画像について、境界線上の画素それぞれに垂直線を設置する処理を行う。輝度微分処理部36は、垂直線設置処理部35が設置した垂直線それぞれについて、その垂直線に沿った輝度の分布を微分し、さらに微分して極大点および極小点を求める。
【0027】
境界設定処理部37は、輝度微分処理部36によって得られた極大点および極小点に基づいて、仮GCA画像に境界を設定する。平滑化処理部38は、境界設定処理部37によって境界が設定された仮GCA画像について、境界を平滑にする処理を行う。
【0028】
重ね合わせ処理部39は、平滑化処理部38によって境界が平滑にされた仮GCA画像に、接地面画像から求めた溝画像を重ね合わせて接地形状を求める。溝画像抽出処理部40は、接地面画像に基づいて、重ね合わせ処理部39において用いる溝画像を求める処理を行う。
【0029】
記憶部32には、タイヤ接地面解析装置20で用いられる解析プログラムが、予め記憶されている。タイヤ60の接地面61の接地特性を取得する際には、記憶部32に記憶されているプログラムを処理部31が呼び出し、プログラムに沿った動作を処理部31で実行することにより、各機能を実行する。
【0030】
本実施形態に係るタイヤ接地形状解析装置1は、以上のような構成からなる。以下、タイヤ接地形状解析装置1の作用について説明する。タイヤ接地形状解析装置1によってタイヤ60の接地面61の解析を行う際には、タイヤ60をタイヤ試験機2の支持装置3に装着し、タイヤ60を透明板11に押し付けた状態で回転させながら、カメラ15によって接地面61を撮影する。その際に、タイヤ60に対しては、複数の方向から複数の照明用ランプ16によって光を照射した状態で撮影する。このため、カメラ15は、接地面61と接地面61以外の部分とで、輝度差をつけてタイヤ60を撮影することができる。撮影した画像は、タイヤ接地面解析装置20で取得し、タイヤ接地面解析装置20は、取得した画像に基づいて、接地面61の解析を行う。
【0031】
タイヤ60の溝部分の抽出については、三角測量法を利用して高さ(深さ)の違いを検出する距離センサーを用いることもできる。しかしながら、接地面61の全体について溝部分を検出するには、距離センサーの検出範囲を走査する必要がある。したがって、距離センサーを用いるだけでは、タイヤ60が転動する状態での動的接地特性を解析することが困難である。
【0032】
(撮影における照明条件)
タイヤ60の接地面61の接地域の画像を取得する場合、透明板11の上面11U側において、接地面61を包囲するように透明板11の上面11U側に照明用ランプ16を配置することが好ましい。タイヤ60の接地面61の接地域の画像を取得する場合、上面11U側に接触部分を包囲するように配置された照明用ランプ16によってタイヤ60に光を照射して画像を取得することが好ましい。
【0033】
(透明板の移動とトリガー装置の動作)
図3および図4は、透明板11の移動とトリガー装置17の動作とを説明する図である。図3は、透明板11が移動する前の状態であり、かつ、トリガー装置17が再帰性反射シート18による反射光を検出する前の状態を示す。図4は、透明板11が移動した後の状態であり、かつ、トリガー装置17が再帰性反射シート18による反射光を検出した時の状態を示す。
【0034】
図3において、透明板11の上面11Uは平らであり、上面11Uはタイヤ60が転動するためのフラットな路面となる。図3において、タイヤ60は透明板11の上面11Uに接した状態で支持装置3のリム4に固定されている。このため、透明板11の移動に伴い、タイヤ60は回動する。タイヤ接地形状解析装置1は、透明板11を矢印Y1の方向に移動させる。透明板11が矢印Y1の方向に移動することにより、タイヤ60は矢印Y2の方向に回動する。図3に示す状態では、トリガー装置17の検出部171は再帰性反射シート18による反射光を検出していない。トリガー装置17が再帰性反射シート18による反射光を検出しない限り、透明板11は矢印Y1の方向に移動し続ける。撮影装置10は透明板11に固定されているため、透明板11の移動に伴って撮影装置10も移動する。透明板11の移動速度は、例えば時速0.5kmである。なお、透明板11の代わりに、外周面が透明な回転ドラムを用いてもよい。
【0035】
透明板11が矢印Y1の方向に移動し、図4に示す状態になると、トリガー装置17の検出部171は再帰性反射シート18による反射光を検出する。トリガー装置17の検出部171が反射光を検出した時、タイヤ接地形状解析装置1は、カメラ15に撮影指示の信号を出力する。これにより、タイヤ60の接地面61を撮影することができる。なお、透明板11は、カメラ15の撮影範囲に対応する部分110が透明であれば良く、部分110以外の部分が不透明であってもよい。つまり、透明板11は、全体が透明であってもよいし、撮影範囲に対応する部分110だけが透明であってもよい。
【0036】
(タイヤ接地形状解析装置の動作)
図5は、タイヤ接地形状解析装置1の動作を示すフロー図である。タイヤ接地形状解析装置1は、タイヤ60の解析を行う場合、透明板11に押し付けられているタイヤ60に、照明用ランプ16から光を照射する(ステップST11)。次に、タイヤ接地形状解析装置1は、モータ制御装置7によって、モータ6の駆動を開始する(ステップST12)。タイヤ接地形状解析装置1は、モータ6の駆動を継続しているとき(ステップST13)、トリガー装置17が再帰性反射シート18を検出したか否か判定する(ステップST14)。タイヤ接地形状解析装置1は、トリガー装置17が再帰性反射シート18を検出していない場合(ステップST14においてNo)、モータ6の駆動を継続する(ステップST13)。
【0037】
タイヤ接地形状解析装置1は、トリガー装置17が再帰性反射シート18を検出した場合(ステップST14においてYes)、タイヤ60をカメラ15によって撮影する(ステップST15)。その後、タイヤ接地形状解析装置1は、モータ6の駆動および光の照射を停止する(ステップST16)。
【0038】
(溝画像抽出処理部)
溝画像抽出処理部40は、垂直線を利用して溝を抽出する処理を行う。図6は、垂直線を利用して溝を抽出する処理を説明する図である。図7は、垂直線を利用して溝を抽出する処理を示すフロー図である。
【0039】
図6において、最初に、カメラ15で撮影することによって取得した接地面画像SGに垂直線71を設置する。垂直線71は、仮GCA画像KG1の境界線に対する法線である。
【0040】
図7において、最初に、接地面画像SGについて、仮GCA画像KG1の境界線に対する垂直線71を設置する(ステップST21)。垂直線71における輝度プロファイルを抽出する(ステップST22)。輝度プロファイルを利用し、溝の抽出処理を行う(ステップST23)。溝の抽出処理については、後述する。
【0041】
垂直線71をそれ自体に平行な方向にずらす(ステップST24)。本例では、図6の接地面画像SG1の矢印Yで示す方向に垂直線71を移動させる。垂直線71を移動させた結果、垂直線71が接地面画像SG1の端部に到達したか否かを判定する(ステップST25)。ステップST25において、垂直線71が接地面画像SG1の端部に到達していないと判定した場合(ステップST25においてNo)、ステップST22に戻り、処理を継続する。以後、同様の処理を繰り返し行う。
【0042】
同様の処理を繰り返し行った結果、接地面画像SGnのように垂直線71が端部に到達した場合、ステップST25において、垂直線71が接地面画像の端部に到達したと判定する(ステップST25においてYes)。その場合、次に、全ての垂直線71について処理を行ったか否かを判定する(ステップST26)。ステップST26の判定の結果、全ての垂直線71についての処理を行っていない(つまり、処理を行っていない垂直線がある)と判定した場合(ステップST26においてNo)、ステップST22に戻り、処理を継続する。
【0043】
ステップST26の判定の結果、全ての垂直線71について処理を行った場合、処理は終了となる(ステップST26においてYes)。以上の処理によって、接地面画像SGから溝画像MGを作成することができる。
【0044】
(溝の抽出処理)
図7中のステップST23の溝の抽出処理を行う。溝の抽出処理については、例えば、特開2017-129491号公報に開示されている方法を採用する。溝の抽出処理の概要について、図8を参照して説明する。図8は、溝の抽出処理の手順を示すフロー図である。図9は、接地面画像SG上の溝に垂直線71を付加した図である。図9において、垂直線71の中点位置の画素を中心画素74とする。図10は、2箇所の最大輝度位置PA,PBの例を示す図である。
【0045】
図8において、接地面画像SG上の溝の抽出処理を行う場合は、まず、輝度算出ラインである垂直線71を設定する(ステップST31)。輝度算出ラインである垂直線71は、陸部局所的輝度を算出するためのラインである。
【0046】
次に、接地面画像SGからはみ出た垂直線71があるか否かを判定する(ステップST32)。この判定により、接地面画像SGからはみ出た垂直線71があると判定された場合(ステップST32においてYes)には、溝の抽出処理のフローから抜け出る。
【0047】
接地面画像SGからはみ出た垂直線71がないと判定された場合(ステップST32においてNo)には、陸部局所的輝度を算出する(ステップST33)。陸部局所的輝度は、接地面画像SG上において垂直線71が位置する領域であり、垂直線71と近傍領域とからなる領域である輝度算出領域に位置する画素の輝度情報を用いて算出する。
【0048】
なお、陸部局所的輝度は、陸部の局所的な輝度であるため、陸部局所的輝度を算出する際には、接地面画像SG上において溝に相当する画素を除外して算出するのが好ましい。具体的には、溝に相当する画素は輝度が低いため、輝度が所定の閾値よりも低い画素を除外することにより、溝に相当する画素を除外して平均輝度の算出から除外する。
【0049】
また、非接地領域の輝度は、接地領域の輝度とは大きく異なるため、陸部局所的輝度を算出する際には、非接地領域に相当する画素も除外して平均輝度を算出するのが好ましい。具体的には、非接地領域に相当する画素は、接地領域に相当する画素と比較して輝度が高いため、輝度が所定の閾値よりも高い画素を除外することにより、非接地領域82に相当する画素を除外して平均輝度の算出から除外する。
【0050】
陸部局所的輝度を算出したら、次に、垂直線71の中心画素74の輝度は、溝局所的輝度よりも小さいか否かを判定する(ステップST34)。
【0051】
溝抽出処理においては、垂直線71の中心画素74の輝度を抽出し、中心画素74の輝度と溝局所的輝度とを比較する。比較した結果、垂直線71の中心画素74の輝度は、溝局所的輝度よりも小さくないと判定された場合(ステップST34においてNo)には、溝の抽出処理のフローから抜け出る。
【0052】
これに対し、垂直線71の中心画素74の輝度は、溝局所的輝度よりも小さいと判定された場合(ステップST34においてYes)には、その中心画素74を溝の構成要素とすると共に、中心画素74を基点として垂直線71の長さ方向における両方向に走査して局所的最大輝度を抽出し、最大輝度位置を求める(ステップST35)。
【0053】
中心画素74の輝度が溝局所的輝度よりも小さいと判定された場合には、中心画素74から、垂直線71の長さ方向に所定の範囲で走査を行って輝度を抽出し、走査を行った範囲内における最大輝度を、局所的最大輝度とする。局所的最大輝度は、中心画素74を基点とする走査範囲の長さ方向における両方向のそれぞれで抽出する。さらに、走査範囲の長さ方向において、局所的最大輝度となる画素が位置している位置を、最大輝度位置PA,PBとして求める。図10において、縦軸は輝度を示し、横軸はタイヤ周方向の位置[画素]を示す。垂直線71の範囲の中点は中心画素74である。
【0054】
次に、局所的最大輝度の少なくとも一方は、陸部局所的輝度+α以上であるか否かを判定する(ステップST36)。ここで、画素の輝度は、陸部よりも溝の方が小さくなっており、中心画素74は、輝度が溝局所的輝度よりも小さいことにより溝の構成要素として判断された位置になっている。このため、走査範囲の長さ方向に輝度を走査した際における局所的最大輝度が、陸部局所的輝度以上である場合には、最大輝度位置PA,PBは、溝と陸部との境界部分であると推定することができる。
【0055】
なお、この場合におけるαは、予め一定値を設定してもよく、垂直線71の複数の位置での輝度分布を調べて値を決定してもよい。本実施形態では、輝度が256階調で表される接地面画像80に対して、α=35を設定する。
【0056】
これらのように設定される陸部局所的輝度+αと、2箇所の最大輝度位置PA,PBのそれぞれの局所的最大輝度とを比較し、少なくとも一方の局所的最大輝度は、陸部局所的輝度+α以上であるか否かを判定する。この判定により、いずれの局所的最大輝度も、陸部局所的輝度+α以上ではないと判定された場合(ステップST36においてNo)には、溝65の抽出処理のフローから抜け出る。
【0057】
これに対し、局所的最大輝度の少なくとも一方は、陸部局所的輝度+α以上であると判定された場合(ステップST36においてYes)には、次に、局所的最大輝度は、2箇所とも陸部局所的輝度+α以上であるか否かを判定する(ステップST37)。この判定により、局所的最大輝度は2箇所とも陸部局所的輝度+α以上であると判定された場合(ステップST37においてYes)には、2箇所の最大輝度位置PA,PBで囲まれた範囲を溝として判定する(ステップST38)。
【0058】
これに対し、局所的最大輝度は2箇所とも陸部局所的輝度+α以上ではないと判定された場合(ステップST37においてNo)には、一方の最大輝度位置と中心画素74とで囲まれた範囲を溝65の構成要素として判定する(ステップST39)。
【0059】
(仮GCA算出部)
図11は、仮GCA算出部34の処理の内容を説明する図である。カメラ15で撮影して得られた接地面画像SGを平滑化することによって、平滑化画像HGを得る。平滑化画像について、画素毎に一律の閾値で二値化することにより、二値画像BGを得る。二値画像から、溝画像MGを差し引くことによって仮の接地形状KSを得る。
【0060】
溝画像MGは、図6中の溝画像MGである。接地面画像SGについて、タイヤ60のトレッドの溝の面取りの輪郭(トレッド陸部側)に沿ってトリミングし、溝を抽出して溝画像MGを得てもよい。仮の接地形状KSについて、溝埋め処理を行うことによって仮GCA画像KG1を得る。溝埋め処理は、タイヤ60の溝に相当する部分を黒画素で埋める処理である。
【0061】
(照明用ランプ)
図12から図15は、各照明ランプ16の配置を説明する図である。図12は、タイヤ60の回転軸に沿った方向から各照明用ランプ16の配置を見た図である。図12に示すように、透明板11の一主面である上面11U側に、ランプ161、162が設けられている。ランプ161、162は、ともに、タイヤ幅方向を長手方向とするライン照明であってもよい。ランプ161、162は、タイヤ60のタイヤ周方向に離れた位置に配置されている。ランプ161とランプ162とは、タイヤ60を挟んで互いに異なる側に設けられている。つまり、ランプ161、ランプ162は、タイヤ周方向の外側から内側に向けて、接地面61に光を照射する周方向ランプである。このようにランプ161、162は、タイヤ60の接地面61にタイヤ周方向に光を照射するように配置される。ランプ161、162により、サブ溝の面取りの輝度を高めることができる。
【0062】
また、透明板11の他主面である下面11D側に、他主面側ランプとしてランプ165、166、167、168が設けられていることが好ましい。ランプ165、166、167、168は、ともに、タイヤ幅方向を長手方向とするライン照明であってもよい。ランプ167、168は、タイヤ60のタイヤ周方向に離れた位置に配置されている。ランプ167とランプ168とは、タイヤ60を挟んで互いに異なる側に設けられている。つまり、ランプ167、ランプ168は、タイヤ周方向の外側から内側に向けて、接地面61に光を照射する周方向ランプである。このようにランプ167、168は、タイヤ60の接地面61にタイヤ周方向に光を照射するように配置される。ランプ167、168により、サブ溝の面取りの輝度を高めることができる。
【0063】
図12において、ランプ161、162の発光面中心から上面11Uまでの高さをH1、H2とする。図12において、ランプ161、162の傾斜角度、すなわち透明板11の上面11Uに対する、光照射方向のなす角度をθ1、θ2とする。角度θ1は好ましくは9.7°、角度θ2は好ましくは11.6°である。本実施形態では、好ましくは高さH1=30mm、高さH2=30mmである。
【0064】
また、図12において、ランプ167、168の発光面中心から下面11Dまでの高さをH7、H8とする。図12において、ランプ167、168の傾斜角度、すなわち透明板11の下面11Dに対する、光照射方向のなす角度をθ7、θ8とする。角度θ7は好ましくは4.2°、角度θ8は好ましくは4.9°である。本実施形態では、好ましくは高さH7=30mm、高さH8=30mmである。
【0065】
図13は、透明板11の上面11U側から各照明用ランプ16の配置を見た図である。図13において、距離D1はランプ161の発光面中心からタイヤ中心までの距離、距離D2はランプ162の発光面中心からタイヤ中心までの距離、距離D3はランプ163の発光面中心からタイヤ中心までの距離、距離D4はランプ164の発光面中心からタイヤ中心までの距離、距離D5はランプ165の発光面中心からタイヤ中心までの距離、距離D6はランプ166の発光面中心からタイヤ中心までの距離、である。好ましくは、距離D1=260mm、距離D2=260mm、距離D3=230mm、距離D4=230mm、距離D5=215mm、距離D6=215mm、である。
【0066】
図14は、タイヤ60の回転軸に対して垂直に離れた方向から各照明用ランプ16の配置を見た図である。高さH3は透明板11の上面11Uからランプ163の発光面中心までの距離、高さH4は透明板11の上面11Uからランプ164の発光面中心までの距離、高さH5は透明板11の下面11Dからランプ165の発光面中心までの距離、高さH6は透明板11の下面11Dからランプ166の発光面中心までの距離、である。ランプ163、164の傾斜角度、すなわち透明板11の上面11Uに対する、光照射方向のなす角度をθ3、θ4とする。角度θ3は好ましくは0°、角度θ4は好ましくは0°である。ランプ165、166の傾斜角度、すなわち透明板11の下面11Dに対する、光照射方向のなす角度をθ5、θ6とする。角度θ5は好ましくは21.8°、角度θ6は好ましくは20.1°である。本実施形態では、好ましくは高さH3=13mm、高さH4=13mm、高さH5=62mm、高さH6=62mm、である。
【0067】
図15は、透明板11を下面11D側の真下から見た図である。図15において、各ランプ167、168の発光面中心からタイヤ60の中心までのタイヤ周方向の距離をD7、D8とする。本実施形態では、好ましくは距離D7=183mm、距離D8=183mm、である。ランプ167およびランプ168は、タイヤ周方向に平行に光を照射することが好ましい。
【0068】
(平滑化処理)
本実施例では、接地面画像SGにメディアンフィルタを用いる処理(以下、メディアン処理と呼ぶ)によって、図11中の平滑化画像HGを得る。メディアンフィルタ処理は、注目画素とその周辺画素について輝度の大きい順に並び替え、その中間値を注目画素の輝度値に置換する処理である。図16は、メディアンフィルタの例を示す図である。図16は、注目画素1個(中央の画素)を含む3×3サイズについての計算内容を示す。メディアンフィルタ処理を行うことにより、本例では注目画素の輝度が中間値「79」に置換される。メディアンフィルタ処理による平滑化はノイズ除去を目的として行われる。このため、平滑化処理は必須の処理ではないが、平滑化処理を行うことが好ましい。
【0069】
(収縮処理、膨張処理)
図11中の仮GCA画像KG1を得るための溝埋め処理について図16から図18を参照して説明する。
【0070】
図17は、収縮処理の説明図である。図18は、膨張処理の説明図である。収縮処理は、例えば注目画素を黒画素とする場合に、図17に示すように、注目画素の周辺に1画素でも白画素があれば、注目画素を白画素に置き換える処理である。つまり、収縮処理は、黒画素をそれぞれ中心画素とし、その周辺の8画素(中心画素から最も近い左上、上、右上、右、右下、下、左下、左の各1画素)のうち1つでも白画素が存在すれば、その中心画素を白画素に置き換える処理になっている。反対に膨張処理は、図18に示すように、注目画素の周辺に1画素でも黒画素があれば、注目画素を黒画素に置き換える処理である。つまり、膨張処理は、白画素をそれぞれ中心画素とし、その周辺の8画素(中心画素から最も近い左上、上、右上、右、右下、下、左下、左の各1画素)のうち1つでも黒画素が存在すれば、その中心画素を黒画素に置き換える処理である。
【0071】
本実施形態では、中心画素から半径Dd画素以内の領域を周辺画素と定義する。そして、Dd=1.5で膨張処理、Dd=1.5で収縮処理、Dd=1.5で収縮処理、Dd=1.5で膨張処理、Dd=2.5で膨張処理、Dd=2.5で収縮処理、Dd=2.5で収縮処理、Dd=2.5で膨張処理、Dd=3.5で膨張処理、Dd=3.5で収縮処理、Dd=3.5で収縮処理、Dd=3.5で膨張処理、Dd=20.5で膨張処理、Dd=20.5で収縮処理、Dd=20.5で収縮処理、Dd=20.5で膨張処理、を順に行う。ここまではノイズを除去する目的で行う処理である。その後、溝埋めし、仮GCA画像を得るために、Dd=110.5で膨張処理、Dd=110.5で収縮処理を行う。以上の処理により、仮GCA画像を得ることができる。
【0072】
(垂直線設置処理部)
垂直線設置処理部35は、仮GCA画像について、境界線上の画素それぞれに垂直線を設置する処理を行う。図19は、垂直線設置処理部35の処理内容を示すフロー図である。図20は、垂直線設置処理部35の処理によって垂直線を設置する手順を説明する図である。図20は、仮GCA画像の一部分を拡大して示している。図20において、網掛けのある部分は仮GCA内の領域であり、網掛けの無い部分は仮GCA外の領域である。図20においては、境界線上の画素を矩形で表している。
【0073】
図19において、最初に、仮GCAの境界線上における任意の画素を、中心画素と定義する(ステップST41)。次に、中心画素を基点とし、隣接画素同士の距離を足し合わせた値を境界線上に沿った長さと定義する(ステップST42)。以上の処理により、図20に往復矢印で示す距離を足し合わせた値が、境界線上に沿った長さとなる。
【0074】
図19に戻り、境界線上に沿った長さを指定し、その指定値に最も近い画素を周辺画素と定義する(ステップST43)。中心画素を挟む2個の周辺画素を検出する。そして、周辺画素の各中心を通る直線L0を生成する(ステップST44)。中心画素を通り、ステップST44において生成した直線L0に垂直な線である垂直線71を仮GCA内に生成する(ステップST45)。
【0075】
次に、仮GCAの境界線上における全ての画素について処理を行ったか判定する(ステップST46)。ステップST46の判定の結果、全ての画素について処理を行っていない場合(つまり、処理を行っていない画素がある)と判定した場合(ステップST46においてNo)、ステップST41に戻り、処理を継続する。これにより、仮GCAの境界線上における他の画素について、同様の処理が行われる。
【0076】
ステップST46の判定の結果、全ての画素について処理を行った場合(ステップST46においてYes)、垂直線設置処理部35による処理は終了となる。なお、本処理の前提条件として、仮GCA外は接地/非接地の境界が存在しないとしている。よって、仮GCA外について解析は行わないので、垂直線VLは仮GCA外では表示しない。
【0077】
(輝度微分処理部)
次に、輝度微分処理部36により、垂直線それぞれについて、その垂直線に沿った輝度の分布を微分し、さらに微分して極大点および極小点を求める。以下、これらの処理について説明する。図21は、輝度微分処理部36の処理を説明する図である。図21は、仮GCA画像の一部分を拡大して示している。図21において、網掛けのある部分は仮GCA内の領域であり、網掛けの無い部分は仮GCA外の領域である。図21においては、境界線上の画素を矩形で表している。
【0078】
(事前準備)
解析の事前準備として、以下の処理を行う。すなわち、垂直線のプロット点ごとに、画面内座標を(X(N),Y(N))と定義する。本例においては、「N」を-150から+150までの範囲の値に設定する。図21に示すように、N=-150は垂直線の左端に対応し、N=+150は垂直線の右端に対応する。垂直線の傾き角度である角度θはX座標軸(正方向)を基準(θ=0°)に設定する。垂直線が通る、中心画素の座標は(Xc、Yc)と定義する。
【0079】
また、図21において、中心画素を基準として角度θ=0°からθ=90°までの領域を第1象限、同じく角度θ=90°からθ=180°までの領域を第2象限、同じく角度θ=180°からθ=270°までの領域を第3象限、同じく角度θ=270°からθ=0°までの領域を第4象限、と定義する。
【0080】
上記の処理を前提とし、以下の処理を行う。
(手順S11)
画面内座標X(N),Y(N)を計算する。角度θが第1象限または第3象限である場合、
X(N)=N×|cosθ|+Xc
Y(N)=-N×|sinθ|+Yc
である。また、角度θが第2象限または第4象限である場合、
X(N)=N×|cosθ|+Xc
Y(N)=N×|sinθ|+Yc
である。
【0081】
(手順S12)
手順S11によって得られた画面内座標X(N),Y(N)は実数であるが、輝度情報がない。一方、デジタル画像については、画素単位で輝度情報が格納されている。そこで、デジタル画像の輝度情報を使い、画面内座標X(N),Y(N)の輝度を線形補間によって求める。
【0082】
図22は、線形補間によって輝度を求める処理を説明する図である。図22において、デジタル画像の画素位置の座標を、(x、y)、(x+1、y)、(x+1、y+1)および(x、y+1)とする。図22において、左側から右側に向かう方向がX座標の正方向、上側から下側に向かう方向がY座標の正方向である。
【0083】
座標(x、y)の輝度を「C1」、座標(x+1、y)の輝度を「C2」、座標(x+1、y+1)の輝度を「C3」、座標(x、y+1)の輝度を「C4」とする。輝度C1、C2、C3およびC4は、デジタル画像の画素の輝度である。
【0084】
距離Xr=X(N)-x、距離Yr=Y(N)-yとすると、座標(x、y)と座標(x+1、y)との間の輝度Dは、線形補間によって、
輝度D=C1×(1.0-Xr)+C2×Xr
と求めることができる。
【0085】
また、座標(x、y+1)と座標(x+1、y+1)との間の輝度Eは、線形補間によって、
輝度E=C4×(1.0-Xr)+C3×Xr
と求めることができる。そして、輝度Dと輝度Eとを用いた線形補間によって、
輝度F=D×(1.0-Yr)+E×Yr
と求めることができる。輝度Fは線形補間によって求めた画面内座標X(N),Y(N)の輝度である。以上の線形補間による輝度の計算は、全てのNの値について行う。本例では、本例では、N=-150からN=+150まで、について行う。
【0086】
ところで、接地面には輝度ムラや汚れ等といったノイズがある。そのノイズの除去を目的として、なお、上記の手順S12を行う前に、接地面画像を平滑化することが好ましい。図23は、接地面画像を平滑化する処理を説明する図である。図23は、平滑化処理の前後の画像の例を示す。図23に示すように、仮GCA境界線KKに対する垂直線71が設置されている接地面画像SGについて、例えば、メディアン処理によって平滑化する。これにより、平滑化済の接地面画像SG’が得られる。
【0087】
(手順S13)
図24は、輝度分布の例を示す図である。図24は、上記の手順S12によって得られた輝度をプロットしたグラフである。図24において、左側がタイヤ外側、右側がタイヤ内側である。図24中の白抜きの丸印は、輝度をプロットした点である。なお、図23に示す平滑化を行わない場合、手順S13においてプロットした点が大きく変動し、以降の手順において求める極大点および極小点を確実に検出できないことがある。
【0088】
(手順S14)
次に、プロットした輝度を微分する。ここでは、注目しているプロット点に対し、その前後のプロット点の輝度を引用し、その差分を微分処理として行う。すなわち、差分を微分値とみなす。例えば注目しているプロット点が「50」のとき、プロット点「49」の輝度Dとプロット点「51」の輝度Eとを引用する。本実施例では、プロット点の絶対値が大きいほうの輝度Eから、小さいほうの輝度Dを差し引いて差分を求める。この差分を微分値とみなす。
【0089】
(手順S15)
極大点/極小点を正確に検出するため、平滑化を行う。本例では注目しているプロット点の輝度とその前後のプロット点の輝度とを使い、それらの算術平均を平滑化とする。手順S13の平滑化は、集めた輝度情報の中間値を求める処理である。これに対し、手順S15の平滑化は輝度を足し合わせ、データの数で割った処理である。図24中の斜線入りの丸印は、手順S14によって輝度を微分し、さらに手順S15によって平滑化した点である。図24中の点P11および点P13は極大点であり、点P12は極小点である。
【0090】
(手順S16)
さらに、図24中の斜線入りの丸印に対して、微分処理を行う。例えば、注目しているプロット点が「50」のとき、プロット点「49」の輝度微分値とプロット点「51」の輝度微分値とを引用する。本例では、プロット点の絶対値が大きいほうの輝度微分値から、小さいほうの輝度微分値を差し引いて差分を求める。この差分を2次微分値とみなす。図24中の黒い丸印は、2次微分値をプロットした点である。2次微分を行うことにより、2次微分値が最大である点を境界点P14として検出することができる。なお、他のすべての垂直線71についても、上記の事前準備の後、手順S11から手順S16を行う。
【0091】
(境界設定処理)
境界設定処理部37による境界設定処理について説明する。境界設定処理部37は、輝度微分処理部36によって得られた極大点および極小点に基づいて、仮GCA画像に境界を設定する。境界設定処理部37は、プロットした輝度の2次微分結果における極大点の数に基づいて場合分けし、極大点、極小点の数などに応じて、境界条件を設定および判定する。
【0092】
(極大点が0個の場合)
輝度微分の結果において極大点が0個の場合、境界設定処理部37は、境界条件の設定および判定を行わない。つまり、極大点が0個の場合には、境界を定義しない。この場合、垂直線71が接地ブロックを一度も通過せず、主溝の部分を通っているためである。
【0093】
(極大点が1個の場合)
輝度微分の結果において極大点が1個の場合、第1極大点の位置から第1極大点位置+βまでのプロット点のうち、2次微分が最大となる位置を境界と定義する。図25は、接地面画像の例を示す図である。本例ではβ=30とする。図26は、図25に示す垂直線71Aに沿った輝度分布を示す図である。
【0094】
図26中の白抜きの丸印は、輝度をプロットした点である。図26中の斜線入りの丸印は、輝度を微分し、さらに平滑化した点である。図26中の点P21は極大点である。すなわち、極大点は1つである。図26中の黒い丸印は、2次微分値をプロットした点である。2次微分を行うことにより、2次微分値が最大である点を境界点P24として検出することができる。
【0095】
図27は、図26について本例による境界判定処理を行った場合の誤判定マップである。図27の楕円J2、J3で示すように、誤差は少なく、誤差11.6%である。図28は、図26について第1極大点の位置を境界と判定した場合の誤判定マップである。図28の楕円J2’、J3’で示すように図27の場合よりも誤差が多く、誤差12.1%である。したがって、極大点が1個の場合、上記のように境界を定義すれば、誤差を少なくすることができる。図25に示す垂直線71Aについての境界設定処理は、主に、タイヤのショルダー側の判定精度に影響し、タイヤのセンター側の判定精度に対する影響は少ない。
【0096】
(極大点が2個の場合)
輝度微分の結果において極大点が2個の場合、極小点が1個以上で、かつ、第1極大点の位置、第1極小点の位置、第2極大点位置の順にプロット点が並んでいる場合、第1極小点の位置から第2極大点の位置までのプロット点のうち、2次微分値が最大となる位置を境界と定義する。それ以外であれば、第2極大点の位置を境界と定義する。
【0097】
図29は、図25に示す垂直線71Bに沿った輝度分布を示す図である。図29中の白抜きの丸印は、輝度をプロットした点である。図29中の斜線入りの丸印は、輝度を微分し、さらに平滑化した点である。図29中の点P31、点P33は極大点、点P32は極小点である。すなわち、極小点が1個以上で、かつ、第1極大点の位置、第1極小点の位置、第2極大点位置の順にプロット点が並んでいる。そこで、第1極小点P32の位置から第2極大点P33の位置までのプロット点のうち、2次微分値が最大である点を境界点P34として検出することができる。
【0098】
図27は、図29について本例による境界判定処理を行った場合の誤判定マップである。図27の楕円J4、J5で示すように、誤差は少なく、誤差11.6%である。図30は、図29について第1極小点の位置を境界と判定した場合の誤判定マップである。図30の楕円J4’で示すように図27の場合よりも誤差が多く、誤差12.3%である。図31は、図29について第2極大点の位置を境界と判定した場合の誤判定マップである。図31の楕円J5’で示すように図27の場合よりも誤差が多く、誤差11.8%である。
【0099】
したがって、極大点が2個の場合、上記のように境界を定義すれば、誤差を少なくすることができる。図25に示す垂直線71Bについての境界設定処理は、タイヤのショルダー側およびセンター側の判定精度に影響する。
【0100】
ここで、図32は、図29について他の条件によって境界を判定した場合の誤判定マップである。図32は、図29について第2極大点の位置から第2極大点の位置+30までのプロット点から、2次微分が最大となるプロット点を境界と判定した場合の誤判定マップを示す。この場合、誤差は少なく、誤差11.7%である。このため、第2極大点の位置から第2極大点の位置+30までのプロット点から、2次微分が最大となるプロット点を境界と判定してもよい。
【0101】
(極大点が3個以上の場合)
図33は、図25に示す垂直線71Cに沿った輝度分布を示す図である。図33中の白抜きの丸印は、輝度をプロットした点である。図33中の斜線入りの丸印は、輝度を微分し、さらに平滑化した点である。図33の斜線入りの丸印には多数の極大点および極小点が存在するとともに、立ち下がり部分TDがある。輝度微分の結果において、図33に示すように極大点が3個以上の場合、以下のように判定する。
【0102】
(手順S31)
第1極大点の位置から第1極大点の位置+γまでのプロット点から、立下がり部分TDに最も近い極大点の位置を探索する。ただし、ノイズ対策のため、第1極大点における輝度微分値のδ%未満は、探索の対象外とする。なお、本例ではγ=50、δ=80である。
【0103】
多数の極大点、極小点はノイズの影響によって生じたものとみなし、あたかも極大点1個のように扱う。あたかも極大点1個とは、立下がり部分に最も近い極大点位置と定義する。つまり、判定条件は極大点1個と場合と同一とし、次の手順S32を行う。
【0104】
(手順S32)
手順S31で検出した立下がり部分TDに最も近い極大点の位置から、その極大点位置+γまでのプロット点のうち、2次微分が最大となる位置を境界と定義する。そして、立ち下がり部分TDに最も近い極大点P40の位置から、その極大点位置+γまでのプロット点のうち、2次微分値が最大である点を境界点P44として検出することができる。
【0105】
図27に戻り、図27は、図33について本例による境界判定処理を行った場合の誤判定マップである。図27の楕円J3、J6で示すように、誤差は少なく、誤差11.6%である。図34は、他の条件によって境界を判定した場合の誤判定マップである。図34は、図33について立下り部分TDに最も近い極大点の位置を境界と判定した場合の誤判定マップを示す。図34の楕円J3’、J6’で示すように図27の場合よりも誤差が多く、誤差12.3%である。
【0106】
したがって、極大点が3個以上の場合、上記のように境界を定義すれば、誤差を少なくすることができる。図25に示す垂直線71Cについての境界設定処理は、主に、タイヤのショルダー側の判定精度に影響し、タイヤのセンター側の判定精度に対する影響は少ない。
【0107】
(平滑化処理部)
次に、平滑化処理部38による平滑化処理について説明する。平滑化処理部38は、境界設定処理部37によって境界が設定された仮GCA画像について、境界を平滑にする平滑化処理を行う。平滑化処理部38は、境界が設定された仮GCA画像の輪郭を求め、その輪郭を平滑にする。
【0108】
図35は、輪郭を求める手順を説明する図である。図35は、仮GCA画像の一部分を拡大して示している。図35において、網掛けのある部分は仮GCA内の領域であり、網掛けの無い部分は仮GCA外の領域である。図35においては、境界線上の画素を矩形で表している。
【0109】
図35において、仮GCAの境界線を構成する画素は、時計回り(図中の矢印の方向)に番号でラベリングされている。図35の各矩形内の数字は、ラベリング番号である。画素それぞれに垂直線71を設ける。輝度分布に基づいて算出した接地/非接地の境界位置(X(m)、Y(m))は、カッコ内の引数mをラベリングの番号に一致させている。図35は、(X(1)、Y(1))、(X(14)、Y(14))をそれぞれ通る垂直線71だけを示している。図36は、画素それぞれについて垂直線71を設定した状態を示す図である。
【0110】
なお、境界位置(X(m)、Y(m))を判定しない垂直線も含まれる。前述したように、極大点の数が「0」の場合には、境界位置を判定しない。本例では、ラベリング番号「2」の画素については境界位置を判定しない。このため、本例では、(X(2)、Y(2))については、境界位置を判定できない例として垂直線71を表示していない。したがって、輪郭を作成するときは、求まっている境界位置だけを使い、カッコ内の引数を順番どおり(つまり、昇順に)、直線SSで結ぶ。例えば、境界位置が求まっていないm=2がある場合、m=1での境界位置とm=3での境界位置とを直線SSで結ぶ。
【0111】
(輪郭の平滑化)
接地面画像には輝度ムラやトレッド表面の汚れなどの影響で、接地/非接地の境界位置が安定しないことが多い。その安定化を図るため、輪郭を平滑化することが好ましい。輪郭を平滑化するため、例えば、次の処理を行う。
【0112】
(手順S21)
図37は、境界位置の座標の例を示す図である。図37は、ラベリングの番号順に、求まっている境界位置の座標を並べた例を示す。求まっていない境界位置については、図37中に存在しない。例えば、旧番号「2」、「6」については、境界位置が求まっていないので除かれており、これらについては対応する新番号が存在しない。
【0113】
(手順S22)
境界位置について、算術平均によって平滑化を行う。具体的には、注目している新番号に対して、その前後の境界位置を取り込み、算術平均化する。例えば、注目している新番号を「3」とし、その前後2個分、すなわち新番号が「1」,「2」,「4」,「5」の境界位置を取り込み、新番号「3」を合わせた合計5個の境界位置を算術平均化する。
【0114】
(境界判定結果)
図38および図39は、輪郭平滑化前後の境界判定結果を説明する図である。図38は、輪郭平滑化前の境界判定結果の例を示す図である。図39は、輪郭平滑化後の境界判定結果の例を示す図である。
【0115】
図38において、境界判定結果の輪郭平滑化前の画像RG1に対する誤判定マップGM1は、例えば、楕円J1で示すように、境界が安定していない。このため、画像RG1については、誤差が増大する。本例では、輪郭平滑化前の画像RG1については、誤差13.5%である。
【0116】
誤判定マップは、インク付き踏み跡の接地形状について、接地判定が一致しない領域を黒で可視化した画像である。接地判定が一致しない領域は、カメラ15で撮影して得た接地形状とインク付き踏み跡の接地形状とが一致しない領域である。インク付き踏み跡は、トレッド部にインクを付けたタイヤを押し当てることによって取得できる踏み跡である。誤判定マップによって得られる誤差は、接地判定が一致しない領域の面積を、インク付き踏み跡の接地形状の実接地面積(Actual Contact Area、以下ACAと略称する)で除した値の百分率である。
【0117】
図38に示す輪郭平滑化前の画像RG1に対し、図39に示す、境界判定結果の輪郭平滑化後の画像RG2に対する誤判定マップGM2は、境界が安定している。このため、輪郭平滑化後の画像RG2については、誤差11.6%である。したがって、輪郭を平滑化することが好ましい。
【0118】
(重ね合わせ処理部)
次に、重ね合わせ処理部39による重ね合わせ処理について説明する。図40は、重ね合わせ処理を説明する図である。図40において、画像RG2は、平滑化処理部38によって境界、すなわち輪郭が平滑にされた仮GCA画像である。重ね合わせ処理部39は、
この輪郭平滑化後の画像RG2と、溝画像MGとを重ね合わせる。重ね合わせ処理部39による重ね合わせ処理は、溝画像MGの白黒を反転させて、画像RG2から差し引く処理である。この重ね合わせ処理によって、接地形状画像SKが得られる。
【0119】
(垂直線の長さ)
仮GCAの境界線に対する垂直線71を設置する垂直線設置処理部35において、垂直線71の長さについて説明する。図41は、垂直線設置処理部35が設定する垂直線の長さを説明する図である。図41において、垂直線71の長さL71は仮GCA境界線KK(図41中の灰色線)上を始点SPとして、タイヤ内側に向かう方向の長さと定義する。長さL71は、例えば、タイヤ外径の1%以上5%以下であることが好ましく、1.5%以上3.8%以下であることがより好ましい。垂直線71の長さL71をこのような数値範囲にすることにより、接地/非接地の境界判定精度が更に向上する。垂直線の長さがタイヤ外径の1%未満の場合、輝度微分の極大点/極小点に関する情報が不足し、境界判定精度が低下する。垂直線71の長さがタイヤ外径の5%を超える場合、垂直線が接地画像において主溝やサブ溝の面取りの部分に到達する。その面取りは高輝度であるため、極大点が存在する。このため、境界判定精度が低下するので好ましくない。
【0120】
(仮GCA算出部の閾値)
仮GCA算出部34において、接地面画像を二値化する場合の閾値は、接地面画像における最大輝度値より小さいことが好ましい。接地面画像を二値化する場合の閾値を適切に設定することにより、接地/非接地の境界判定精度を高めることができる。
【0121】
ここで、本例では、接地面画像は256階調であり、最小輝度値は「0」、最大輝度値は「255」である。なお、閾値は最小輝度「0」であってもよい。接地ブロックの輝度が0となるタイヤ接地面画像が存在するためである。
【0122】
図42図43は、仮GCA算出部34において、接地面画像を二値化した結果の例を示す図である。図42は、最大輝度値「255」より小さい閾値である、220階調を閾値とした場合の例を示す図である。図42において、黒色部分は仮GCA画像KG1であり、灰色部分はインク付き踏み跡の接地形状である。図42において、インク付き踏み跡の接地形状の境界位置が仮GCA画像KG1に含まれている。このため、接地/非接地の境界判定精度を確保できる。
【0123】
図43は、最大輝度値「255」より1つ小さい閾値である、254階調を閾値とした場合の例を示す図である。図43において、黒色部分は仮GCA画像KG1であり、灰色部分はインク付き踏み跡の接地形状である。図43において、インク付き踏み跡の接地形状の境界位置が仮GCA画像KG1に含まれている。このため、接地/非接地の境界判定精度を確保できる。
【0124】
なお、閾値を最大輝度値「255」に設定すると、非接地ブロックが全て取り込まれて仮GCAとして形成される。このため、仮GCA画像は、画像の全領域で真っ黒となる。この影響で非接地領域の溝を境界と誤って判定され、接地/非接地の境界判定精度が低下する。このため、総接地領域として不適切である。したがって、上記のように、接地面画像を二値化する場合の閾値は、接地面画像における最大輝度値より小さいことが好ましい。
【0125】
(まとめ)
以上説明したタイヤ接地形状解析装置によれば、プロットした輝度の2次微分値の極大点または極小点に基づいて、接地または非接地の境界条件を設定し、接地形状を適切に求めることができる。
【0126】
(タイヤ接地形状解析方法)
上述したタイヤ接地形状解析装置においては、以下のタイヤ接地形状解析方法を実現できる。すなわち、タイヤの接地面画像を取得する画像取得ステップと、前記画像取得ステップにおいて取得した接地面画像について、所定閾値を基準とする二値化処理を行って暫定的な総接地面積画像である仮GCA画像を求める仮GCA算出ステップと、前記仮GCA画像について、境界線上の画素それぞれに垂直線を設置する垂直線設置処理ステップと、前記垂直線設置処理ステップにおいて設置した垂直線それぞれについて、その垂直線に沿った輝度の分布を微分し、さらに微分して極大点および極小点を求める輝度微分処理ステップと、前記輝度微分処理ステップによって得られた極大点および極小点に基づいて、前記仮GCA画像に境界を設定する境界設定処理ステップと、前記境界設定処理ステップによって境界が設定された前記仮GCA画像について、前記境界を平滑にする平滑化処理ステップと、前記平滑化処理ステップによって境界が平滑にされた前記仮GCA画像に、前記接地面画像から求めた溝画像を重ね合わせて接地形状を求める重ね合わせ処理ステップと、を含むタイヤ接地形状解析方法を実現できる。このタイヤ接地形状解析方法によれば、プロットした輝度の2次微分値の極大点または極小点の数に基づいて、接地または非接地の境界条件を設定し、接地形状を適切に求めることができる。
【0127】
本開示は、以下の発明を包含する。
発明[1]
タイヤの接地面画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部が取得した接地面画像について、所定閾値を基準とする二値化処理を行って暫定的な総接地面積画像である仮GCA画像を求める仮GCA算出部と、
前記仮GCA画像について、境界線上の画素それぞれに垂直線を設置する垂直線設置処理部と、
前記垂直線設置処理部が設置した垂直線それぞれについて、その垂直線に沿った輝度の分布を微分し、さらに微分して極大点および極小点を求める輝度微分処理部と、
前記輝度微分処理部によって得られた極大点および極小点に基づいて、前記仮GCA画像に境界を設定する境界設定処理部と、
前記境界設定処理部によって境界が設定された前記仮GCA画像について、前記境界を平滑にする平滑化処理部と、
前記平滑化処理部によって境界が平滑にされた前記仮GCA画像に、前記接地面画像から求めた溝画像を重ね合わせて接地形状を求める重ね合わせ処理部と、
を含むタイヤ接地形状解析装置。
発明[2]
前記接地面画像に基づいて、前記溝画像を求める溝画像抽出処理部を更に含む発明[1]に記載のタイヤ接地形状解析装置。
発明[3]
前記垂直線設置処理部において設置する前記垂直線の長さは、前記仮GCA画像の境界線上を始点として、タイヤ内側に向かう方向の長さと定義し、その長さはタイヤ外径の1%以上5%以下である発明[1]または発明[2]に記載のタイヤ接地形状解析装置。
発明[4]
前記仮GCA算出部の前記二値化処理において、前記所定閾値は前記接地面画像における最大輝度値より小さい発明[1]から発明[3]までのいずれか1つに記載のタイヤ接地形状解析装置。
発明[5]
前記境界設定処理部は、グラフにプロットした輝度の極大点および極小点について、
極大点が1個の場合には、第1極大点の位置から第1極大点の位置+βまでのプロット点のうち、2次微分値が最大である位置を境界と定義し、
極大点が2個の場合には、極小点が1個以上、かつ、第1極大点の位置、第1極小点の位置、第2極大点の位置の順にプロット点が並んでいれば、第1極小点の位置から第2極大点の位置までのプロット点のうち、2次微分値が最大である位置を境界と定義し、極大点が2個で上記以外の場合であれば第2極大点の位置を境界と定義し、
極大点が3個以上の場合には、グラフの立下がり部分に最も近い極大点の位置から極大点の位置+γまでのプロット点のうち、2次微分値が最大となる位置を境界と定義し、
極大点が0個の場合には、境界を定義しない、発明[1]から発明[4]までのいずれか1つに記載のタイヤ接地形状解析装置。
発明[6]
タイヤの接地面画像を取得する画像取得ステップと、
前記画像取得ステップにおいて取得した接地面画像について、所定閾値を基準とする二値化処理を行って暫定的な総接地面積画像である仮GCA画像を求める仮GCA算出ステップと、
前記仮GCA画像について、境界線上の画素それぞれに垂直線を設置する垂直線設置処理ステップと、
前記垂直線設置処理ステップにおいて設置した垂直線それぞれについて、その垂直線に沿った輝度の分布を微分し、さらに微分して極大点および極小点を求める輝度微分処理ステップと、
前記輝度微分処理ステップによって得られた極大点および極小点に基づいて、前記仮GCA画像に境界を設定する境界設定処理ステップと、
前記境界設定処理ステップによって境界が設定された前記仮GCA画像について、前記境界を平滑にする平滑化処理ステップと、
前記平滑化処理ステップによって境界が平滑にされた前記仮GCA画像に、前記接地面画像から求めた溝画像を重ね合わせて接地形状を求める重ね合わせ処理ステップと、
を含むタイヤ接地形状解析方法。
【符号の説明】
【0128】
1 タイヤ接地形状解析装置
2 タイヤ試験機
3 支持装置
4 リム
5 駆動装置
6 モータ
7 モータ制御装置
10 撮影装置
11 透明板
15 カメラ
16 照明用ランプ
17 トリガー装置
18 再帰性反射シート
20 タイヤ接地面解析装置
21 入力部
22 表示部
30 処理装置
31 処理部
32 記憶部
33 画像取得部
34 仮GCA算出部
35 垂直線設置処理部
36 輝度微分処理部
37 境界設定処理部
38 平滑化処理部
39 重ね合わせ処理部
40 溝画像抽出処理部
60 タイヤ
61 接地面
71、71A、71B、71C 垂直線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
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図26
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図28
図29
図30
図31
図32
図33
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図39
図40
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図43