(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037497
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】防振装置
(51)【国際特許分類】
F16F 13/10 20060101AFI20240312BHJP
B60K 5/12 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
F16F13/10 F
F16F13/10 J
F16F13/10 L
B60K5/12 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142396
(22)【出願日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】松居 宏渉
(72)【発明者】
【氏名】村岡 睦
(72)【発明者】
【氏名】梅村 聡
【テーマコード(参考)】
3D235
3J047
【Fターム(参考)】
3D235BB45
3D235EE05
3D235EE09
3D235EE14
3J047AA03
3J047CA04
3J047CB06
3J047CC02
3J047CD04
3J047DA02
3J047FA01
3J047GA01
(57)【要約】
【課題】第二の取付部材を構成する本体ゴムアウタ部材と絞り金具の縮径による固定に際して、本体ゴムアウタ部材の絞り金具からの抜けを抑えることができる、新規な構造の防振装置を提供すること。
【解決手段】防振装置10であって、第二の取付部材18は、本体ゴム弾性体20の外周端部に固着される第一の筒状部36を備えた本体ゴムアウタ部材34と、本体ゴムアウタ部材34の第一の筒状部36に外挿状態で取り付けられる第二の筒状部54を備えた絞り金具54とを含んで構成されており、本体ゴムアウタ部材34の第一の筒状部36が絞り金具54の第二の筒状部54に対して軸方向に挿入されて、第二の筒状部54が縮径加工によって第一の筒状部36の外周面に嵌着されており、それら第一の筒状部36と第二の筒状部54の嵌着部分は、第一の筒状部36の第二の筒状部54への挿入方向と反対の抜け方向に向けて小径となるテーパ部42,66を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の取付部材と第二の取付部材とが本体ゴム弾性体によって連結された防振装置であって、
前記第二の取付部材は、前記本体ゴム弾性体の外周端部に固着される第一の筒状部を備えた本体ゴムアウタ部材と、該本体ゴムアウタ部材の該第一の筒状部に外挿状態で取り付けられる第二の筒状部を備えた絞り金具とを含んで構成されており、
該本体ゴムアウタ部材の該第一の筒状部が該絞り金具の該第二の筒状部に対して軸方向に挿入されて、該第二の筒状部が縮径加工によって該第一の筒状部の外周面に嵌着されており、
それら第一の筒状部と第二の筒状部の嵌着部分は、該第一の筒状部の該第二の筒状部への挿入方向と反対の抜け方向に向けて小径となるテーパ部をそれぞれ備えている防振装置。
【請求項2】
前記テーパ部が前記第一の筒状部の軸方向全体にわたって設けられている請求項1に記載の防振装置。
【請求項3】
前記テーパ部の重ね合わせ面間には、シールゴムが介在している請求項1又は2に記載の防振装置。
【請求項4】
第一の取付部材と第二の取付部材とが本体ゴム弾性体によって連結された防振装置であって、
前記第二の取付部材は、前記本体ゴム弾性体の外周端部に固着される第一の筒状部を備えた本体ゴムアウタ部材と、該本体ゴムアウタ部材の該第一の筒状部に外挿状態で取り付けられる第二の筒状部を備えた絞り金具とを含んで構成されており、
該本体ゴムアウタ部材の該第一の筒状部が該絞り金具の該第二の筒状部に対して軸方向に挿入されて、それら第一の筒状部と第二の筒状部の間にはシールゴムが介在しており、
該第二の筒状部が縮径加工によって該シールゴムに押し当てられて該第一の筒状部の外周面に嵌着されており、
該第二の筒状部における該シールゴムへの当接部分は、該第一の筒状部の該第二の筒状部への挿入方向と反対の抜け方向に向けて小径となるテーパ部を備えている防振装置。
【請求項5】
前記本体ゴムアウタ部材の前記第一の筒状部の軸方向一方の端部には、外周へ突出する第一の外フランジ部が設けられており、
前記絞り金具の前記第二の筒状部の軸方向一方の端部には、外周へ突出する第二の外フランジ部が設けられており、
該第一の筒状部と該第二の筒状部との少なくとも一方に設けられた前記テーパ部が、軸方向で該第一の外フランジ部及び該第二の外フランジ部へ向けて次第に小径となっており、
当接状態で相互に重ね合わされた該第一の外フランジ部と該第二の外フランジ部とをかしめ固定するかしめ金具が設けられている請求項1又は4に記載の防振装置。
【請求項6】
壁部の一部が前記本体ゴム弾性体で構成された受圧室と壁部の一部が可撓性膜で構成された平衡室とが設けられて、それら受圧室と平衡室に非圧縮性流体が封入されており、それら受圧室と平衡室とを相互に連通するオリフィス通路が設けられた流体封入式防振装置とされており、
前記絞り金具が該可撓性膜の外周端部に固着されたダイヤフラムアウタ金具とされている請求項1又は4に記載の防振装置。
【請求項7】
前記本体ゴムアウタ部材の前記第一の筒状部の下端部には、内周へ突出する第一の内フランジ部が設けられており、
前記絞り金具の前記第二の筒状部の下端部には、内周へ突出する第二の内フランジ部が設けられており、
それら第一の内フランジ部と第二の内フランジ部とが上下方向で相互に離れて対向して、それら第一の内フランジ部と第二の内フランジ部の対向間で前記受圧室と前記平衡室とを仕切る仕切部材が挟持されている請求項6に記載の防振装置。
【請求項8】
第一の取付部材と第二の取付部材とが本体ゴム弾性体によって連結された構造を有する防振装置の製造方法であって、
前記本体ゴム弾性体の外周端部に固着される第一の筒状部を備えた本体ゴムアウタ部材と、該本体ゴムアウタ部材の該第一の筒状部に外挿状態で取り付けられる第二の筒状部を備えた絞り金具とを準備する工程と、
該第一の筒状部を該第二の筒状部に挿入して該本体ゴムアウタ部材に該絞り金具を組み付ける工程と、
該第二の筒状部における該第一の筒状部との重ね合わせ部分において、該第二の筒状部をテーパ状に絞り加工して、該第一の筒状部の該第二の筒状部への挿入方向と反対の抜け方向に向けて小径となるテーパ部を該第二の筒状部に形成し、該テーパ部を該第一の筒状部の外周面に嵌着固定して該本体ゴムアウタ部材と該絞り金具とを軸方向で相互に位置決めする工程と
を、含む防振装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のエンジンマウント等に適用される防振装置と防振装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車のパワーユニットと車両ボデーを防振連結するエンジンマウント等に適用される防振装置が知られている。防振装置は、例えば、特開平7-190130号公報(特許文献1)等に記載されているように、第一の取付部材と第二の取付部材が本体ゴム弾性体によって連結された構造を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1では、本体ゴム弾性体の外周端部に筒状の連結金具が固着されており、連結金具に対して筒状の嵌着筒部が外挿された状態で、嵌着筒部に縮径加工が施されることにより、連結金具と嵌着筒部とが相互に固定されて、第二の取付部材が構成される。
【0005】
しかしながら、上記の如き嵌着筒部の縮径による連結金具との嵌着固定では、縮径時に嵌着筒部から連結金具に及ぼされる力によって、連結金具が嵌着筒部に対して抜け方向へ押し出されて、連結金具と嵌着筒部との軸方向における位置が相対的にずれてしまうことも考えられた。
【0006】
本発明の解決課題は、第二の取付部材を構成する本体ゴムアウタ部材と絞り金具の縮径による固定に際して、本体ゴムアウタ部材の絞り金具に対する抜け方向への相対移動を抑えることができる、新規な構造の防振装置と、新規な防振装置の製造方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0008】
第一の態様は、第一の取付部材と第二の取付部材とが本体ゴム弾性体によって連結された防振装置であって、前記第二の取付部材は、前記本体ゴム弾性体の外周端部に固着される第一の筒状部を備えた本体ゴムアウタ部材と、該本体ゴムアウタ部材の該第一の筒状部に外挿状態で取り付けられる第二の筒状部を備えた絞り金具とを含んで構成されており、該本体ゴムアウタ部材の該第一の筒状部が該絞り金具の該第二の筒状部に対して軸方向に挿入されて、該第二の筒状部が縮径加工によって該第一の筒状部の外周面に嵌着されており、それら第一の筒状部と第二の筒状部の嵌着部分は、該第一の筒状部の該第二の筒状部への挿入方向と反対の抜け方向に向けて小径となるテーパ部をそれぞれ備えているものである。
【0009】
本態様に従う構造とされた防振装置によれば、絞り金具の縮径加工による本体ゴムアウタ部材への嵌着固定に際して、本体ゴムアウタ部材の第一の筒状部に設けられたテーパ部と、絞り金具の第二の筒状部に設けられたテーパ部とが嵌着されることにより、絞り金具を縮径させる力が、本体ゴムアウタ部材に対して、絞り金具への挿入方向の分力をもって伝達される。それゆえ、本体ゴムアウタ部材の絞り金具に対する挿入方向と逆側への抜けが防止されて、本体ゴムアウタ部材の絞り金具に対する相対的な位置のずれを抑えることができる。
【0010】
第二の態様は、第一の態様に記載された防振装置において、前記テーパ部が前記第一の筒状部の軸方向全体にわたって設けられているものである。
【0011】
本態様に従う構造とされた防振装置によれば、第二の筒状部の内周に位置する第一の筒状部においてテーパ部が全体にわたって設けられることにより、第一の筒状部のテーパ部と第二の筒状部のテーパ部との位置合わせが容易になって、テーパ部同士をより確実に嵌着させることができる。
【0012】
第三の態様は、第一又は第二の態様に記載された防振装置において、前記テーパ部の重ね合わせ面間には、シールゴムが介在しているものである。
【0013】
本態様に従う構造とされた防振装置によれば、第一の筒状部のテーパ部と第二の筒状部のテーパ部とがシールゴムを介して押し当てられることにより、本体ゴムアウタ部材に対して軸方向の分力がより効率的に及ぼされ得る。また、テーパ部の重ね合わせ面間をシールゴムによって封止することができる。
【0014】
第四の態様は、第一の取付部材と第二の取付部材とが本体ゴム弾性体によって連結された防振装置であって、前記第二の取付部材は、前記本体ゴム弾性体の外周端部に固着される第一の筒状部を備えた本体ゴムアウタ部材と、該本体ゴムアウタ部材の該第一の筒状部に外挿状態で取り付けられる第二の筒状部を備えた絞り金具とを含んで構成されており、該本体ゴムアウタ部材の該第一の筒状部が該絞り金具の該第二の筒状部に対して軸方向に挿入されて、それら第一の筒状部と第二の筒状部の間にはシールゴムが介在しており、
該第二の筒状部が縮径加工によって該シールゴムに押し当てられて該第一の筒状部の外周面に嵌着されており、該第二の筒状部における該シールゴムへの当接部分は、該第一の筒状部の該第二の筒状部への挿入方向と反対の抜け方向に向けて小径となるテーパ部を備えているものである。
【0015】
本態様に従う構造とされた防振装置によれば、絞り金具の縮径加工による本体ゴムアウタ部材への取付けに際して、本体ゴムアウタ部材の第一の筒状部に設けられたテーパ部と、絞り金具の第二の筒状部に設けられたテーパ部とが嵌着されることにより、絞り金具を縮径させる力が、本体ゴムアウタ部材に対して、絞り金具への挿入方向の分力をもって伝達される。それゆえ、本体ゴムアウタ部材の絞り金具に対する挿入方向と逆側への抜けが防止されて、本体ゴムアウタ部材の絞り金具に対する相対的な位置のずれを抑えることができる。
【0016】
第五の態様は、第一~第四の何れか1つの態様に記載された防振装置において、前記本体ゴムアウタ部材の前記第一の筒状部の軸方向一方の端部には、外周へ突出する第一の外フランジ部が設けられており、前記絞り金具の前記第二の筒状部の軸方向一方の端部には、外周へ突出する第二の外フランジ部が設けられており、該第一の筒状部と該第二の筒状部との少なくとも一方に設けられた前記テーパ部が、軸方向で該第一の外フランジ部及び該第二の外フランジ部へ向けて次第に小径となっており、当接状態で相互に重ね合わされた該第一の外フランジ部と該第二の外フランジ部とをかしめ固定するかしめ金具が設けられているものである。
【0017】
本態様に従う構造とされた防振装置によれば、本体ゴムアウタ部材と絞り金具の軸方向での相対的な位置のずれが、第一の外フランジ部と第二の外フランジ部の当接によって、第一の筒状部の第二の筒状部への挿入方向において防止される。それゆえ、本体ゴムアウタ部材と絞り金具の軸方向での相対的な位置のずれを、第一の筒状部のテーパ部と第二の筒状部のテーパ部との嵌着によって、第一の筒状部の第二の筒状部からの抜け方向において抑えることにより、本体ゴムアウタ部材と絞り金具とを軸方向の両側において位置決めすることができる。
【0018】
また、第一の外フランジ部と第二の外フランジ部がかしめ金具によって当接状態でかしめ固定されることによって、本体ゴムアウタ部材と絞り金具を軸方向でより強固に位置決めすることができる。
【0019】
第六の態様は、第一~第五の何れか1つの態様に記載された防振装置において、壁部の一部が前記本体ゴム弾性体で構成された受圧室と壁部の一部が可撓性膜で構成された平衡室とが設けられて、それら受圧室と平衡室に非圧縮性流体が封入されており、それら受圧室と平衡室とを相互に連通するオリフィス通路が設けられた流体封入式防振装置とされており、前記絞り金具が該可撓性膜の外周端部に固着されたダイヤフラムアウタ金具とされているものである。
【0020】
本態様に従う構造とされた防振装置は、内部に非圧縮性流体が封入された流体封入式防振装置とされており、例えば液漏れを防ぐ等の観点から、本体ゴムアウタ部材とダイヤフラムアウタ金具とが軸方向で適切な相対位置に配されることがより重要になる。そこで、流体封入式防振装置において、テーパ部の嵌着による本体ゴムアウタ部材とダイヤフラムアウタ金具との軸方向での位置決めを採用することにより、封入流体の漏れ等の不具合を防ぐことができる。
【0021】
第七の態様は、第六の態様に記載された防振装置において、前記本体ゴムアウタ部材の前記第一の筒状部の下端部には、内周へ突出する第一の内フランジ部が設けられており、前記絞り金具の前記第二の筒状部の下端部には、内周へ突出する第二の内フランジ部が設けられており、それら第一の内フランジ部と第二の内フランジ部とが上下方向で相互に離れて対向して、それら第一の内フランジ部と第二の内フランジ部の対向間で前記受圧室と前記平衡室とを仕切る仕切部材が挟持されているものである。
【0022】
本態様に従う構造とされた防振装置によれば、第一の内フランジ部を備える本体ゴムアウタ部材と第二の内フランジ部を備えるダイヤフラムアウタ金具とが、テーパ部の嵌着によって軸方向で適切な位置に位置決めされることから、仕切部材が第一の内フランジ部と第二の内フランジ部との間で適切に挟持されて、受圧室と平衡室の間における封入流体の意図しない短絡や、仕切部材のがたつきによる異音の発生等が防止される。
【0023】
第八の態様は、第一の取付部材と第二の取付部材とが本体ゴム弾性体によって連結された構造を有する防振装置の製造方法であって、前記本体ゴム弾性体の外周端部に固着される第一の筒状部を備えた本体ゴムアウタ部材と、該本体ゴムアウタ部材の該第一の筒状部に外挿状態で取り付けられる第二の筒状部を備えた絞り金具とを準備する工程と、該第一の筒状部を該第二の筒状部に挿入して該本体ゴムアウタ部材に該絞り金具を組み付ける工程と、該第二の筒状部における該第一の筒状部との重ね合わせ部分において、該第二の筒状部をテーパ状に絞り加工して、該第一の筒状部の該第二の筒状部への挿入方向と反対の抜け方向に向けて小径となるテーパ部を該第二の筒状部に形成し、該テーパ部を該第一の筒状部の外周面に嵌着固定して該本体ゴムアウタ部材と該絞り金具とを軸方向で相互に位置決めする工程とを、含むものである。
【0024】
本態様に従う構造とされた防振装置の製造方法によれば、絞り金具を縮径加工することによって第二の筒状部を第一の筒状部に嵌着固定する際に、テーパ部が形成されるように第二の筒状部をテーパ状に縮径加工して、第二の筒状部のテーパ部を第一の筒状部の外周面に嵌着固定することにより、本体ゴムアウタ部材の絞り金具からの抜けを防止することができて、本体ゴムアウタ部材と絞り金具を軸方向で相互に位置決めすることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、防振装置の第二の取付部材を構成する本体ゴムアウタ部材と絞り金具を縮径によって固定するに際して、本体ゴムアウタ部材の絞り金具に対する抜け方向への相対移動を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の第一の実施形態としてのエンジンマウントを示す断面図
【
図2】
図1に示すエンジンマウントを構成する第一の一体加硫成形品の断面図
【
図3】
図1に示すエンジンマウントを構成する第二の一体加硫成形品の断面図
【
図4】
図1に示すエンジンマウントを構成するマウント本体の一部を示す断面図
【
図5】本発明の別の一実施形態としてのエンジンマウントを構成するマウント本体の一部を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0028】
図1には、本発明に従う構造とされた防振装置の第一の実施形態として、自動車用のエンジンマウント10が示されている。エンジンマウント10は、マウント本体12にアウタブラケット14が取り付けられた構造を有している。マウント本体12は、第一の取付部材16と第二の取付部材18が本体ゴム弾性体20によって連結された第一の一体加硫成形品22(
図2参照)を備えている。以下の説明において、上下方向とは、原則として、マウント中心軸の延伸方向である
図1中の上下方向を言う。
【0029】
第一の取付部材16は、金属等で形成された硬質の部材であって、略円板形状のストッパ部24と、ストッパ部24から下方へ突出して下方へ向けて小径となる略逆円錐形状の固着部26と、ストッパ部24から上方へ突出して略円柱形状とされた螺合部28とを、一体的に備えている。第一の取付部材16には、螺合部28の上面に開口して上下方向に延びるねじ穴30が形成されており、ねじ穴30に植込みボルト32が螺着されて上方へ突出している。
【0030】
第二の取付部材18は、本体ゴムアウタ部材34を含んでいる。本体ゴムアウタ部材34は、第一の取付部材16と同様に金属等で形成された硬質の部材であって、大径の環状とされている。より具体的には、本体ゴムアウタ部材34は、略筒状とされた第一の筒状部36を備えており、第一の筒状部36の上端から外周へ突出する第一の外フランジ部38と、第一の筒状部36の下端から内周へ突出する第一の内フランジ部40とを、一体的に備えている。第一の筒状部36は、
図2に示すように、全体が上方へ向けて小径となるテーパ筒状とされており、全体がテーパ部としての第一のテーパ部42とされている。第一のテーパ部42の軸方向に対する傾斜角度は、5~30°の範囲内であることが望ましく、それによって、後述する第二のテーパ部66の嵌着時に、第一のテーパ部42と第二のテーパ部66の嵌着固定を有効に実現しつつ、本体ゴムアウタ部材34に下向きの分力を有効に及ぼすことができる。第一の外フランジ部38の径方向幅寸法は、第一の内フランジ部40の径方向幅寸法よりも大きくされている。また、第一の筒状部36と第一の外フランジ部38とをつなぐ湾曲部分の曲率は、第一の筒状部36と第一の内フランジ部40とをつなぐ湾曲部分の曲率よりも大きくされている。
【0031】
第一の取付部材16と本体ゴムアウタ部材34は、本体ゴム弾性体20によって連結されている。本体ゴム弾性体20は、略円錐台形状とされており、小径とされた上端部に第一の取付部材16の固着部26が加硫接着されていると共に、大径とされた下端部の外周面に本体ゴムアウタ部材34が加硫接着されている。第一の取付部材16は、ストッパ部24の外周面及び上面には、本体ゴム弾性体20と一体形成されたストッパゴム44が固着されている。本体ゴムアウタ部材34は、第一の筒状部36の内周面全体と、第一の外フランジ部38の内周部分の上面と、第一の内フランジ部40の表面全体とが、本体ゴム弾性体20に固着されている。本体ゴム弾性体20には、第一の内フランジ部40よりも内周側で下面に開口する凹所46が形成されている。
【0032】
また、マウント本体12は、
図3に示す可撓性膜48に絞り金具としてのダイヤフラムアウタ金具50が加硫接着された第二の一体加硫成形品52を備えている。可撓性膜48は、径方向の中央部分が薄肉の円形ドーム状とされていると共に、外周部分が外周へ向けて上傾する縦断面形状とされており、上下方向に弛みを有している。
【0033】
可撓性膜48の外周端部は、ダイヤフラムアウタ金具50に固着されている。ダイヤフラムアウタ金具50は、略円筒形状とされた第二の筒状部54と、第二の筒状部54の上側において外周へ突出する第二の外フランジ部56と、第二の筒状部54の下側において内周へ突出する第二の内フランジ部58とを、一体的に備えている。可撓性膜48の外周端部は、ダイヤフラムアウタ金具50の第二の内フランジ部58に固着されている。第二の筒状部54は、後述する縮径加工前の
図3に示す状態において、軸方向の下部が上方へ向けて大径となる拡開部60とされており、拡開部60よりも上側が略一定の径寸法で軸方向に延びている。
【0034】
ダイヤフラムアウタ金具50の第二の筒状部54の内周面は、可撓性膜48と一体形成された筒状のシールゴム62によって覆われている。シールゴム62の上端部分には、内周へ向けて突出するシールリップ64が全周に亘って連続して設けられている。なお、シールゴム62の上端は、ダイヤフラムアウタ金具50における第二の筒状部54と第二の外フランジ部56とをつなぐ湾曲部分よりも下方に位置している。
【0035】
かくの如き構造とされた第一の一体加硫成形品22と第二の一体加硫成形品52は、本体ゴムアウタ部材34の第一の筒状部36と、ダイヤフラムアウタ金具50の第二の筒状部54とが固定されることで、相互に組み合わされる。より具体的には、第一の筒状部36が第二の筒状部54に上側から下向きに軸方向で挿入されて、第一の筒状部36に外挿された第二の筒状部54の上部が縮径加工されることにより、第二の筒状部54の上部が第一の筒状部36の外周面に嵌着される。これにより、本体ゴムアウタ部材34とダイヤフラムアウタ金具50が仮固定されて、第二の取付部材18が本体ゴムアウタ部材34とダイヤフラムアウタ金具50とによって構成される。本実施形態では、第一の筒状部36の第二の筒状部54への挿入方向が下向きであると共に、第一の筒状部36の第二の筒状部54からの抜け方向が上向きである。
【0036】
本体ゴムアウタ部材34とダイヤフラムアウタ金具50とが嵌着固定された状態において、第一の筒状部36と第二の筒状部54の間には、シールゴム62の上部が介在しており、第一の筒状部36と第二の筒状部54がシールゴム62を介して嵌着されている。従って、第一の筒状部36と第二の筒状部54の重ね合わせ面間は、シールゴム62によって封止されている。
【0037】
ダイヤフラムアウタ金具50の第二の筒状部54は、縮径加工によって、
図4に示すように、本体ゴムアウタ部材34の第一の筒状部36(第一のテーパ部42)に対応する第二のテーパ部66が上部に形成される。即ち、第二の筒状部54における拡開部60よりも上側には、縮径加工によって、上方へ向けて小径となる第二のテーパ部66が形成されている。要するに、ダイヤフラムアウタ金具50の縮径加工において、第二の筒状部54の上端部分は、上方に行くほど縮径変形量が大きくされている。第二のテーパ部66の軸方向に対する傾斜角度は、第一のテーパ部42と異なっていてもよいが、好適には第一のテーパ部42と略同じとされる。また、縮径加工後の拡開部60は、
図1に示すように、上端部がテーパ形状とされている一方、それよりも下側は略一定の径寸法で延びるストレート形状とされている。なお、
図4には、縮径加工前のダイヤフラムアウタ金具50を、二点鎖線で仮想的に示した。
【0038】
このように、第二の筒状部54の上端部分に第二のテーパ部66が形成されるように縮径加工を施すことにより、第二の筒状部54の上端部分から第一の筒状部36へ縮径加工による力が伝達される際に、第一の筒状部36に下向きの分力が作用して、第一の筒状部36が第二の筒状部54から抜ける向きである上側への相対移動を生じ難くなる。本実施形態では、第一の筒状部36における第二の筒状部54の嵌着部分が上方へ向けて小径となる第一のテーパ部42とされていることから、縮径加工時の入力が第二の筒状部54から第一の筒状部36へ伝達される際に、下向きの分力がより効率的に作用する。
【0039】
第一のテーパ部42が第一の筒状部36の全体にわたって設けられていることにより、第一の筒状部36が第二の筒状部54で覆われて第一のテーパ部42の目視等での確認が難しい状態で、縮径加工によって第二の筒状部54に第二のテーパ部66を形成しても、第二のテーパ部66を第一のテーパ部42と対応する位置に形成して、第二のテーパ部66を第一のテーパ部42に嵌着することができる。
【0040】
第一の筒状部36の第一のテーパ部42と第二の筒状部54の第二のテーパ部66との嵌着面間にシールゴム62が介在していることにより、第一のテーパ部42と第二のテーパ部66の嵌着部分の損傷が防止されると共に、第二のテーパ部66からの入力を第一のテーパ部42に対して分散させて効率的に作用させることもできる。
【0041】
第一の筒状部36と第二の筒状部54の間でシールゴム62が挟み込まれて圧縮されていることにより、第一の筒状部36と第二の筒状部54との径方向での重ね合わせ面間が液密に封止されている。特に本実施形態では、シールゴム62における第一の筒状部36への当接部分にシールリップ64が設けられていることから、液密性の安定した確保が実現されている。
【0042】
上記した縮径加工による本体ゴムアウタ部材34とダイヤフラムアウタ金具50の組み付けでは、本体ゴムアウタ部材34の第一の外フランジ部38とダイヤフラムアウタ金具50の第二の外フランジ部56とは、上下方向で相互に当接していてもよいし、僅かに離れた状態で重なり合っていてもよい。また、本体ゴムアウタ部材34の第一の内フランジ部40とダイヤフラムアウタ金具50の第二の内フランジ部58とは、上下方向で相互に離れて対向している。なお、第一の筒状部36の第一のテーパ部42が第一の外フランジ部38へ向けて小径となっていると共に、第二の筒状部54の第二のテーパ部66が第二の外フランジ部56へ向けて小径となっている。
【0043】
第一の一体加硫成形品22と第二の一体加硫成形品52の間には、流体室68が形成されている。流体室68は、第二の取付部材18の内周側において、本体ゴム弾性体20と可撓性膜48の軸方向間に設けられており、外部から液密に隔てられている。流体室68には、水やエチレングリコール等の液体からなる非圧縮性流体が封入されている。
【0044】
流体室68には、仕切部材70が収容されている。仕切部材70は、全体として略円板形状とされており、仕切部材本体72の上面に蓋部材74が取り付けられた構造を有している。
【0045】
仕切部材本体72は、略円板形状とされており、例えば金属や硬質の合成樹脂によって形成されている。仕切部材本体72の中央部分には、上面に開口する略円形の収容凹所76が形成されている。仕切部材本体72の外周部分には、上面及び外周面に開口して周方向に一周未満の長さで延びる周溝78が形成されている。仕切部材本体72における周溝78の形成部分は、収容凹所76の形成部分よりも下方に突出しており、上下寸法が大きくされている。
【0046】
蓋部材74は、仕切部材本体72よりも薄肉の略円板形状とされており、本実施形態では金属プレートで構成されている。蓋部材74は、仕切部材本体72の上面に重ね合わされており、例えば、仕切部材本体72から上方へ突出する固定ピン80が、蓋部材74を貫通する固定孔に挿通された状態で先端部分を拡径加工されることにより、仕切部材本体72に固定されている。
【0047】
蓋部材74で開口を覆われた収容凹所76には、可動膜82が収容されている。可動膜82は、略円板形状とされており、ゴムや樹脂エラストマ等の弾性体で形成されている。可動膜82は、外周端部が上下方向で厚肉とされていると共に、中央部分が外周端部よりも薄肉とされている。そして、可動膜82は、収容凹所76に挿入されて、厚肉とされた外周端部が収容凹所76の底壁と蓋部材74との間で上下方向に挟み込まれて支持されていると共に、薄肉とされた中央部分が収容凹所76の底壁と蓋部材74との何れからも上下方向で離れて位置しており、上下方向の変形を許容されている。
【0048】
このような可動膜82を備える仕切部材70は、流体室68内で軸直角方向に広がるように配されている。仕切部材70は、外周端部が本体ゴムアウタ部材34の第一の内フランジ部40とダイヤフラムアウタ金具50の第二の内フランジ部58との上下間に挿し入れられて、上下面がそれら第一,第二の内フランジ部40,58に対してそれぞれゴムを介して間接的に重ね合わされており、それら第一,第二の内フランジ部40,58によって挟持されている。また、仕切部材70の外周面は、ダイヤフラムアウタ金具50の内周面を覆うシールゴム62に押し当てられており、ダイヤフラムアウタ金具50によって外周面を支持されていると共に、ダイヤフラムアウタ金具50との重ね合わせ面間がシールゴム62によって液密に封止されている。なお、仕切部材70の外周端部の上下面は、後述する第二の取付部材18とアウタブラケット14の取付けによって、第一,第二の内フランジ部40,58に対してゴムを介して押し当てられて封止されるが、例えば、本体ゴムアウタ部材34に対するダイヤフラムアウタ金具50の嵌着時に封止されてもよい。
【0049】
仕切部材70が流体室68に配されることにより、流体室68が上下に二分されている。そして、流体室68における仕切部材70よりも上側部分は、壁部の一部が本体ゴム弾性体20によって構成されて、振動入力時に内圧変動が惹起される受圧室84とされている。また、流体室68における仕切部材70よりも下側部分は、壁部の一部が可撓性膜48によって構成されて、可撓性膜48の変形によって容積変化が許容される平衡室86とされている。要するに、受圧室84と平衡室86は、仕切部材70によって仕切られている。受圧室84と平衡室86には、何れも上記した非圧縮性流体が封入されている。
【0050】
受圧室84と平衡室86は、周溝78で構成されたオリフィス通路88によって相互に連通されている。即ち、周溝78は、上側の開口が蓋部材74で覆われると共に、外周側の開口がダイヤフラムアウタ金具50で覆われることによって、トンネル状とされており、一方の端部が蓋部材74に形成された第一の連通孔90を通じて受圧室84に連通されていると共に、他方の端部が仕切部材本体72に形成された第二の連通孔92を通じて平衡室86に連通されている。これにより、受圧室84と平衡室86を相互に連通するオリフィス通路88が、仕切部材70の外周端部を周方向に延びる周溝78によって構成されている。オリフィス通路88は、通路長と通路断面積の比に基づいてチューニングされる流動流体の共振周波数(チューニング周波数)が、エンジンシェイクに相当する低周波に調節設定されている。そして、第一の取付部材16と第二の取付部材18の間にエンジンシェイク等の低周波大振幅振動が入力されると、受圧室84と平衡室86の相対的な内圧差に基づいて、受圧室84と平衡室86との間でオリフィス通路88を通じた流体流動が共振状態で積極的に生じて、封入液体の流動作用に基づく防振効果(高減衰作用)が発揮される。
【0051】
仕切部材70の収容凹所76に配された可動膜82は、上面に受圧室84の液圧が及ぼされていると共に、下面に平衡室86の液圧が及ぼされている。即ち、蓋部材74における収容凹所76の開口を覆う部分には、上下方向に貫通する複数の第一の透孔94が設けられており、可動膜82の中央部分の上面には、第一の透孔94を通じて受圧室84の液圧が及ぼされている。また、収容凹所76の底壁には、上下方向に貫通する複数の第二の透孔96が設けられており、可動膜82の中央部分の下面には、第二の透孔96を通じて平衡室86の液圧が及ぼされている。そして、可動膜82の中央部分は、受圧室84と平衡室86の相対的な液圧差に基づいて、上下方向に変形可能とされている。そして、第一の取付部材16と第二の取付部材18の間にアイドリング振動や走行こもり音等の中乃至高周波の小振幅振動が入力されると、受圧室84と平衡室86の相対的な内圧差に基づいて可動膜82が厚さ方向に微小変形することから、受圧室84の内圧を平衡室86に伝達して吸収する液圧吸収作用に基づいた防振効果(低動ばね作用)が発揮される。
【0052】
ところで、マウント本体12は、例えば、以下の各工程によって製造することができる。
【0053】
すなわち、先ず、第一の取付部材16と第一の筒状部36を備えた本体ゴムアウタ部材34とを準備する。そして、準備した第一の取付部材16と本体ゴムアウタ部材34を本体ゴム弾性体20の成形用金型にセットし、本体ゴム弾性体20を加硫成形することによって、第一の一体加硫成形品22を形成する。
【0054】
また、第二の筒状部54を備えたダイヤフラムアウタ金具50を準備する。そして、準備したダイヤフラムアウタ金具50を可撓性膜48の成形用金型にセットし、可撓性膜48を加硫成形することにより、第二の一体加硫成形品52を形成する。
【0055】
次に、別に準備した仕切部材70を第二の一体加硫成形品52のダイヤフラムアウタ金具50の内周へ上方から下向きに挿入した後、第一の一体加硫成形品22をダイヤフラムアウタ金具50の内周へ上方から下向きに挿入する。換言すれば、仕切部材70が挿入されたダイヤフラムアウタ金具50の第二の筒状部54に対して、第一の一体加硫成形品22を構成する本体ゴムアウタ部材34の第一の筒状部36を挿入することで、本体ゴムアウタ部材34にダイヤフラムアウタ金具50を組み付ける。
【0056】
そして、ダイヤフラムアウタ金具50の第二の筒状部54の上部を縮径加工して第二のテーパ部66を形成し、第二のテーパ部66を第一の筒状部36の第一のテーパ部42に押し当てて嵌着固定する。これにより、第一の一体加硫成形品22と第二の一体加硫成形品52と仕切部材70とが相互に連結されて、内部に流体室68を備えたマウント本体12を得ることができる。
【0057】
本体ゴムアウタ部材34とダイヤフラムアウタ金具50の嵌着固定に際して、第二のテーパ部66が第一のテーパ部42に押し当てられることで、本体ゴムアウタ部材34(第一の一体加硫成形品22)がダイヤフラムアウタ金具50(第二の一体加硫成形品52)に対して挿入方向と反対の抜け方向である上方へ抜け出し難い。従って、本体ゴムアウタ部材34(第一の一体加硫成形品22)とダイヤフラムアウタ金具50(第二の一体加硫成形品52)を軸方向で相互に位置決めすることができる。
【0058】
なお、上記の第二の一体加硫成形品52への仕切部材70及び第一の一体加硫成形品22の挿入工程と、ダイヤフラムアウタ金具50の縮径工程とは、好適には、非圧縮性流体中で行うことによって、内部に形成される流体室68に非圧縮性流体を封入することができる。
【0059】
このようなマウント本体12には、第二の取付部材18に対してかしめ金具としてのアウタブラケット14が取り付けられている。本実施形態のアウタブラケット14は、マウント本体12の上側を覆うストッパ金具98と、マウント本体12の下側を覆う連結部材100とによって構成されている。
【0060】
ストッパ金具98は、金属によって形成された高剛性の部材であって、全体として略円筒形状とされている。ストッパ金具98の上端部には、内周へ突出する内フランジ状のストッパ受部102が設けられている。ストッパ金具98の下端部には、外周へ広がる外フランジ状の段差部104が設けられていると共に、段差部104の外周端から下方へ向けて突出する筒状のかしめ片106が設けられている。かしめ片106は、好適には、突出先端へ向けて僅かに薄肉となっている。
【0061】
連結部材100は、金属等で形成された高剛性の部材であって、略有底円筒形状とされている。連結部材100の底壁部には、連結ボルト108が圧入固定されて下方へ突出している。連結部材100の上端部には、外周へ突出する外フランジ状の連結フランジ110が設けられている。連結フランジ110は、外周端面の下部が下方へ向けて内周へ傾斜するかしめ受面112とされている。
【0062】
アウタブラケット14は、マウント本体12の第二の取付部材18に固定される。即ち、ストッパ金具98のかしめ片106が本体ゴムアウタ部材34の第一の外フランジ部38とダイヤフラムアウタ金具50の第二の外フランジ部56とに外挿されると共に、ストッパ金具98の段差部104が第一の外フランジ部38に上側から重ね合わされる。また、連結部材100の上端部がかしめ片106の内周へ挿入されて、第二の外フランジ部56に下側から重ね合わされる。そして、かしめ片106の下端部が内周側へ折り曲げられて、連結部材100の連結フランジ110のかしめ受面112にかしめ固定される。
【0063】
ストッパ金具98と連結部材100とがかしめ固定されることにより、本体ゴムアウタ部材34の第一の外フランジ部38とダイヤフラムアウタ金具50の第二の外フランジ部56とが、ストッパ金具98の段差部104と連結部材100の連結フランジ110との間に挟み込まれる。このように、アウタブラケット14が第一の外フランジ部38と第二の外フランジ部56とにかしめ固定されることにより、アウタブラケット14が第二の取付部材18に取り付けられている。
【0064】
かしめ片106がかしめ受面112に押し当てられることによって、ストッパ金具98と連結部材100の間には上下方向で相互に接近する向きの力が作用し、第二の取付部材18における第一の外フランジ部38と第二の外フランジ部56とが接近方向へ付勢されて相互に当接する。これにより、本体ゴムアウタ部材34とダイヤフラムアウタ金具50とが上下方向で適切な相対位置に位置決めされて、第二の取付部材18の形状の安定化が図られる。
【0065】
アウタブラケット14が装着される前のマウント本体12の単体状態において、本体ゴムアウタ部材34とダイヤフラムアウタ金具50は、第一,第二のテーパ部42,66の嵌着によって、上下方向の相対位置の大きなずれが防止されている。それゆえ、例えば、第一の外フランジ部38と第二の外フランジ部56が大きく離隔して、かしめ片106の連結フランジ110へのかしめ固定が難しくなることがなく、アウタブラケット14のマウント本体12への装着が安定して実現される。従って、エンジンマウント10によれば、上下方向の高い寸法精度や、仕切部材70の外周端部における液密性の確保による防振性能の安定化等が実現される。
【0066】
本体ゴムアウタ部材34とダイヤフラムアウタ金具50は、第一の外フランジ部38と第二の外フランジ部56とがかしめ金具としてのアウタブラケット14によってかしめ固定されて当接状態で強固に位置決めされている。これにより、本体ゴムアウタ部材34を備える第一の一体加硫成形品22とダイヤフラムアウタ金具50を備える第二の一体加硫成形品52との相対的な位置が精度よく設定されている。それゆえ、例えば、第一,第二の内フランジ部40,58が仕切部材70の外周端部に対して軸方向で所定の力で押し当てられて、それら第一,第二の内フランジ部40,58と仕切部材70との間の液密性が確保されると共に、仕切部材70のがたつきによる異音の発生等も防止される。このように、本体ゴムアウタ部材34とダイヤフラムアウタ金具50との軸方向の相対位置が防振性能、液密性、静音性等に影響し易い流体封入式防振装置において、第一,第二のテーパ部42,66の嵌着による抜け防止機構を設けることにより、目的とする性能を安定して得ることができる。
【0067】
なお、エンジンマウント10において、第一の内フランジ部40は、下面に固着された本体ゴム弾性体20の一部を介して仕切部材70の上面に間接的に重ね合わされており、当該本体ゴム弾性体20の一部が、第一の内フランジ部40と仕切部材70との重ね合わせ面間を封止する封止ゴムとされている。また、第二の内フランジ部58は、上面に固着された可撓性膜48の外周端部を介して仕切部材70の下面に間接的に重ね合わされており、当該可撓性膜48の外周端部が、第二の内フランジ部58と仕切部材70との重ね合わせ面間を封止する封止ゴムとされている。
【0068】
図5には、本発明の第二の実施形態としてのエンジンマウントを構成するマウント本体120の一部が示されている。マウント本体120は、第二の取付部材122が本体ゴムアウタ部材124とダイヤフラムアウタ金具50とによって構成されている。以下の説明において、第一の実施形態と実質的に同一の部材及び部位については、図中に同じ符号を付して説明を省略する。また、
図5中に示されない部分については、第一の実施形態と同様である。
【0069】
本実施形態の本体ゴムアウタ部材124は、第一の筒状部36が軸方向に対して傾斜せずに延びる略円筒形状とされており、第一の実施形態のような第一のテーパ部が設けられていない。また、第一の筒状部126の外周面には、本体ゴム弾性体20と一体形成されたシールゴム128が固着されている。シールゴム128は、第一の一体加硫成形品22の単体状態において、略一定の厚さ寸法とされている。本体ゴムアウタ部材124側にシールゴム128が設けられていることから、ダイヤフラムアウタ金具50の第二の筒状部54の内周面に固着されたシールゴム130は、シールゴム128よりも下方に位置している。
【0070】
本体ゴムアウタ部材124とダイヤフラムアウタ金具50は、第二の筒状部54の縮径によって嵌着固定されている。即ち、本体ゴムアウタ部材124の第一の筒状部126に対して、ダイヤフラムアウタ金具50の第二の筒状部54の上部が外挿されて、第二の筒状部54の第一の筒状部126への外挿部分が縮径加工されることにより、第二の筒状部54が第一の筒状部126に対してシールゴム128を介して押し当てられて、本体ゴムアウタ部材124にダイヤフラムアウタ金具50が嵌着固定される。
【0071】
ダイヤフラムアウタ金具50における第二の筒状部54は、上部が上方へ向けて小径となるように、上方へ向けてより大きな縮径変形量で縮径される。これにより、縮径加工後のダイヤフラムアウタ金具50には、上方へ向けて小径となるテーパ部としての第二のテーパ部66が、第二の筒状部54の上部に形成されている。
【0072】
第二のテーパ部66は、縮径加工に際して、第一の筒状部126と第二の筒状部54との間に介在するシールゴム128に押し当てられる。これにより、第二のテーパ部66に入力される縮径加工の力が、本体ゴムアウタ部材124に対して、径方向内向きの力だけでなく、下向きの力としても作用する。それゆえ、縮径加工に際して、本体ゴムアウタ部材124のダイヤフラムアウタ金具50に対する上方への浮き上がりが防止されて、本体ゴムアウタ部材124とダイヤフラムアウタ金具50が軸方向で適切な相対位置に位置決めされる。
【0073】
このように、第一の筒状部126と第二の筒状部54の間にシールゴム128が介在している場合には、第一の筒状部126にテーパ部を設けることなく、第二の筒状部54に設けられたテーパ部66だけによって、第二の筒状部54の縮径加工時に本体ゴムアウタ部材124に下向きの分力を及ぼすこともできる。
【0074】
なお、第一の筒状部126と第二の筒状部54の間に介在するシールゴムは、第一の筒状部126の外周面に固着されていることが望ましいが、例えば、第一の実施形態のように第二の筒状部54の内周面に固着されて、第一の筒状部126の外周面に押し当てられていてもよく、その場合にもテーパ部のない第一の筒状部126によって、本体ゴムアウタ部材124に下向きの分力を作用させることができる。
【0075】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、第一の実施形態の第一の筒状部36と第二の筒状部54のように、それぞれにテーパ部が設けられている場合には、第一の筒状部36のテーパ部42と第二の筒状部54のテーパ部66とは、シールゴムを介さずに直接的に重ね合わされて嵌着されていてもよい。
【0076】
第一の実施形態では、第一のテーパ部42が第一の筒状部36の全長にわたって設けられた構造を例示したが、第一のテーパ部42は、第一の筒状部36において部分的に設けられていてもよい。また、第一の実施形態では、第二のテーパ部66が第二の筒状部54の上端部に部分的に設けられた構造を例示したが、第二のテーパ部66は、第二の筒状部54の全長にわたって設けられていてもよい。
【0077】
アウタブラケット14は必須ではなく、本体ゴムアウタ部材と絞り金具は、必ずしもアウタブラケット14のかしめ固定によって上下接近方向に付勢されて位置決めされている必要はない。例えば、本体ゴムアウタ部材と絞り金具は、絞り金具の縮径による本体ゴムアウタ部材への嵌着をもって、相互に位置決めされるようにもできる。
【0078】
本発明の適用対象は、前記実施形態のような防振装置に限定されず、ソリッドタイプの防振装置にも適用可能である。ソリッドタイプの防振装置に適用する場合に、絞り金具は、例えばブラケット金具等のダイヤフラムアウタ金具以外の部材によって構成することができる。
【符号の説明】
【0079】
10 エンジンマウント(防振装置、第一の実施形態)
12 マウント本体
14 アウタブラケット(かしめ金具)
16 第一の取付部材
18 第二の取付部材
20 本体ゴム弾性体
22 第一の一体加硫成形品
24 ストッパ部
26 固着部
28 螺合部
30 ねじ穴
32 植込みボルト
34 本体ゴムアウタ部材
36 第一の筒状部
38 第一の外フランジ部
40 第一の内フランジ部
42 第一のテーパ部(第一の筒状部のテーパ部)
44 ストッパゴム
46 凹所
48 可撓性膜
50 ダイヤフラムアウタ金具(絞り金具)
52 第二の一体加硫成形品
54 第二の筒状部
56 第二の外フランジ部
58 第二の内フランジ部
60 拡開部
62 シールゴム
64 シールリップ
66 第二のテーパ部(第二の筒状部のテーパ部)
68 流体室
70 仕切部材
72 仕切部材本体
74 蓋部材
76 収容凹所
78 周溝
80 固定ピン
82 可動膜
84 受圧室
86 平衡室
88 オリフィス通路
90 第一の連通孔
92 第二の連通孔
94 第一の透孔
96 第二の透孔
98 ストッパ金具
100 連結部材
102 ストッパ受部
104 段差部
106 かしめ片
108 連結ボルト
110 連結フランジ
112 かしめ受面
120 マウント本体(第二の実施形態)
122 第二の取付部材
124 本体ゴムアウタ部材
126 第一の筒状部
128 シールゴム
130 シールゴム