(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037498
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
E06B 1/18 20060101AFI20240312BHJP
E06B 1/12 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
E06B1/18 X
E06B1/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142400
(22)【出願日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奈良 栄達
(72)【発明者】
【氏名】北尾 貢
【テーマコード(参考)】
2E011
【Fターム(参考)】
2E011BA00
(57)【要約】
【課題】意匠性により優れた建具を提供する。
【解決手段】面材が横方向に並べて配置される連窓の前記面材の間に配置される縦骨を備える建具であって、前記面材は、前記縦骨の見込み方向における一方側にて前記横方向の両側に各々突出する突出部と、前記見込み方向における他方側にて前記縦骨に係止される押縁により保持されており、前記縦骨に係止された前記押縁と、前記縦骨との境界部は、当該縦骨の前記他方側に設けられるカバー材により覆われている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
面材が横方向に並べて配置される連窓の前記面材の間に配置される縦骨を備える建具であって、
前記面材は、前記縦骨の見込み方向における一方側にて前記横方向の両側に各々突出する突出部と、前記見込み方向における他方側にて前記縦骨に係止される押縁により保持されており、
前記縦骨に係止された前記押縁と、前記縦骨との境界部は、当該縦骨の前記他方側に設けられるカバー材により覆われていることを特徴とする建具。
【請求項2】
請求項1に記載の建具であって、
前記カバー材は、前記縦骨において前記押縁よりも前記他方側に延出された延出部に、断熱材を介して固定されるカバー係止材に係止されており、
前記カバー材は、前記縦骨及び前記押縁と接触していないことを特徴とする建具。
【請求項3】
請求項2に記載の建具であって、
前記他方側は、屋外側であり、
前記縦骨は、前記面材の上方に位置する上枠、及び、前記面材の下方に位置する下枠に接合されており、
前記カバー材の上下方向の長さは、前記上枠と前記下枠との間隔よりも短いことを特徴とする建具。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の建具であって、
前記面材よりも前記他方側に左右方向にスライド可能な障子を有し、
前記障子が備える框の前記他方側の見付け面と、前記カバー材の前記他方側の見付け面とは、見込み方向における位置がほぼ一致していることを特徴とする建具。
【請求項5】
請求項4に記載の建具であって、
前記框及び前記カバー材は同系色をなしており、前記押縁は、前記框及び前記カバー材と異なる色をなしていることを特徴とする建具。
【請求項6】
請求項2に記載の建具であって、
前記カバー係止材は、上下方向に長い長孔を有し、前記長孔に挿通された固定具により前記延出部に固定されていることを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横方向に並べて配置される面材の間に配置される縦骨を備える建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から連窓として、例えば、特許文献1のように、嵌め殺しサッシと可動サッシとを備え、各々窓枠において近接して設けられた縦枠同士を、連窓方立を介して連結することは知られている。このような建具は、嵌め殺しサッシと可動サッシとの接合部分に2つの縦枠と連窓方立とが並ぶため、見付け幅が広く意匠性が悪い。このため、特許文献2のように、縦骨で仕切られた一方側に設けられる嵌め殺し窓の固定ガラスパネルを、縦骨に係止する押縁と縦骨により支持する建具も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004―300759号公報
【特許文献2】特開2009―127401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の建具は、固定ガラスパネルなどの面材を、押縁と縦骨により支持することにより見付け幅を狭くできるものの、縦骨と押縁との境界部分が外部に露出するので、意匠性が損なわれるという課題があった。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、意匠性により優れた建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成するための主たる発明は、面材が横方向に並べて配置される連窓の前記面材の間に配置される縦骨を備える建具であって、前記面材は、前記縦骨の見込み方向における一方側にて前記横方向の両側に各々突出する突出部と、前記見込み方向における他方側にて前記縦骨に係止される押縁により保持されており、前記縦骨に係止された前記押縁と、前記縦骨との境界部は、当該縦骨の前記他方側に設けられるカバー材により覆われていることを特徴とする建具である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、意匠性により優れた建具を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図4】
図1におけるB部の構成を示す分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態に係る建具について図面を参照して説明する。
本実施形態に係る建具の一例として、
図1、
図2に示すように、左右に並ぶ2枚の面材としての複層ガラス1aが嵌め込まれた2つのFIX窓1と、FIX窓1の室外側に設けられた障子2aが左右方向にスライドして開閉可能な片引き窓2と、を備えた連窓用の建具3を例に挙げて説明する。
【0009】
以下の説明においては、建物等に取り付けられた状態の建具3を、屋内側から見たときに、上下となる方向を上下方向、左右となる方向を左右方向、屋内外方向である奥行き方向を見込み方向として示す。また、建具3の各部位であっても、また、建具3を構成する各部材については単体の状態であっても、建具3が建物に取り付けられている状態にて上下方向、左右方向、見込み方向となる方向にて方向を特定して説明する。
【0010】
建具3は、左右に設けられた一対の縦枠4と、一対の縦枠4の上端同士または下端同士を連結する上枠5及び下枠6と、上枠5と下枠6との間に設けられ、上枠5及び下枠6に固定される召合わせ縦材7及び縦骨8と、により枠体が形成されている。
【0011】
召合わせ縦材7と縦骨8とは、左右に間隔を空けて配置される一対の縦枠4の間をほぼ3等分する位置に配置され、左側に召合わせ縦材7が設けられ、右側に縦骨8が設けられている。
【0012】
右の縦枠4と召合わせ縦材7との中間位置に縦骨8が設けられており、召合わせ縦材7と縦骨8との間、及び、縦骨8と右の縦枠4との間にそれぞれ複層ガラス1aが嵌め込まれた2つのFIX窓1が設けられている。また、左の縦枠4と召合わせ縦材7と、上枠5及び下枠6とにより開口が形成されており、召合わせ縦材7よりも屋外側に設けられた障子2aが、上枠5及び下枠6に設けられたレール5b、6bに案内されてスライド自在に設けられている。障子2aは、開口と左側のFIX窓1との屋外側をスライドすることにより開口を開閉可能である。
【0013】
2つのFIX窓1を構成する縦骨8は、上下方向を押し出し方向とするアルミニウム製の押し出し形材である。縦骨8は、平面視が矩形状をなして上下方向に貫通する中空枠部8aと、中空枠部8aの左右方向におけるほぼ中央から屋外側に延出された見込み壁部8bと、見込み壁部8bの屋外側の端部に設けられ左右方向における両側に張り出して見付け面を形成する見付け壁部8cと、見付け壁部8cの屋外側に間隔を空けて対向する対向壁部8dと、見付け壁部8cと対向壁部8dとを連結する連結部8eと、中空枠部8aの屋外側の端部から左右方向に突出する突出部8fと、を有している。
【0014】
見込み壁部8bは、上下方向に沿ってビス9(
図2)が螺合されるビス螺合部8gが設けられており、縦骨8は、上枠5及び下枠6に各々設けられたビス孔(不図示)に挿通されたビス9がビス螺合部8gに螺合されて上枠5及び下枠6と接合されている。また、見込み壁部8bの屋外側の部位と、見付け壁部8cの先端とに、押縁10が係止される押縁係止部8hが設けられている。
【0015】
2つのFIX窓1を構成する2枚の複層ガラス1aは、見込み壁部8bの両側に側面が対向するように配置され、見込み壁部8b側の端部は、押縁係止部8hに係止された押縁10と突出部8fとの間に、バックアップ材11及びシール材12を介して保持される。
【0016】
縦骨8の屋外側には、カバー材13が取り付けられている。カバー材13は、縦骨8の対向壁部8dに、断熱材14を介して固定されるカバー係止材15に係止されて取り付けられている。
【0017】
カバー材13及びカバー係止材15は、上下方向を押し出し方向とするアルミニウム製の押し出し形材であり、熱による伸縮を許容すべく、
図2に示すように、縦骨8が固定されている上枠5と下枠6において、カバー材13の上及び下に位置する部位5a、6aとの間隔より僅かに短く形成されている。尚、上枠5及び下枠6に設けられ、障子2aを案内するレール5b、6bは、カバー材13と干渉する部位が切除されている。
【0018】
カバー材13は、左右方向に間隔を空けて対向する平板状の一対のカバー壁部13aと、一対のカバー壁部13aの屋外側の端部同士を繋ぎ見付け面を形成するカバー見付け面部13bと、を有している。一対のカバー壁部13aには、互いに対向する側における屋内側の部位と屋内側の縁とにカバー係止材15に係止される被係止部13cが設けられている。
【0019】
カバー係止材15は、縦骨8の対向壁部8dと屋外側で対面する対面部15aと対面部15aの左右方向の端から屋内側に各々延出された係止延出片15bとを有している。カバー係止材15は、対向壁部8dと対面部15aとの間に断熱材14が介在され、対面部15aに設けられた長孔15c(
図2)に挿通された固定具としてのビス16が対向壁部8dに螺合されて取り付けられている。ここで、固定具はビス16に限らず、例えば、リベットなど長孔に挿通されて固定可能であれば構わない。
【0020】
対面部15aに設けられた長孔15cは、カバー係止材15の熱による伸縮を許容すべく、上下方向に長く形成されている。ここで、縦骨に係止される押縁が係止されている屋外側が、見込み方向における他方側に相当し、縦骨8の連結部8e及び対向壁部8dが、縦骨において押縁よりも屋外側に延出された延出部に相当する。尚、カバー材13は、例えば、
図2に示すように、上端側に設けられた縦方向に長い長孔(不図示)を挿通するビス17によりカバー係止材15に固定されていることが望ましい。
【0021】
縦骨8に取り付けられたカバー係止材15は、
図3に示すように、左右に設けられた係止延出片15bは、縦骨8の見付け壁部8cの左右端に設けられた押縁係止部8hよりも横方向に張り出している。すなわち、押縁係止部8hに係止された押縁10の、押縁係止部8hと押縁10との境界部3aは、屋外側からカバー係止材15及びカバー係止材15に係止されたカバー材13により覆われている。
【0022】
カバー材13がカバー係止材15に係止された状態では取り付けられた状態では、
図3に示すように、カバー材13の屋内側の端は、押縁10と接触しておらず、カバー見付け面部13bの見込み方向の位置は、
図1に示すように、障子2aが有する框2bにおける屋外側の見付け面2cの位置とほぼ一致している。このとき、カバー見付け面部13bと障子2aの屋外側の見付け面2cとの位置は、正確に一致していなくとも、ほぼ同じ位置に見える程度に一致していれば構わない。
【0023】
本実施形態の建具3によれば、見込み方向における屋外側にて複層ガラス1aを支持し、縦骨8に係止される押縁10と縦骨8との境界部3aは、縦骨8の屋外側に設けられるカバー材13により覆われているので、外部に露出しない。このため、意匠性により優れた建具3を提供することが可能となる。
【0024】
また、カバー材13は、押縁10よりも屋外側に延出されている対向壁部8dに断熱材14を介して固定されるカバー係止材15に係止されており、且つ、縦骨及び押縁と接触していないので、カバー材及びカバー係止材は、縦骨8及び押縁10と熱的に縁切りされている。このため、見込み方向における熱の伝達を防止することが可能となる。
【0025】
また、上枠5及び下枠6に接合されている縦骨8は、屋外側に設けられているカバー材13と、断熱材14を介して接合されているので、カバー材13からの熱が伝達されにくい。このため、縦骨8には熱伸びが生じにくいので、縦骨8が座屈することを防止することが可能である。また、カバー材13の上下方向の長さは、上枠5と下枠6との間隔よりも短いので、カバー材13の熱伸びをも許容することが可能である。
【0026】
また、障子2aが備える框2bの屋外側の見付け面2cと、カバー材13のカバー見付け面部13bとは、見込み方向における位置がほぼ一致しているので、屋外側から見た際の意匠性に優れている。
【0027】
また、障子2aが備える框2b及びカバー材13の色を同系色とすることにより、建具3を全体として統一されたデザインとすることが可能となるので、より意匠性に優れている。また、カバー材13と押縁10は、別部材なので、押縁10を框2b及びカバー材13と異なる色とすることにより、押縁10が、カバー材13よりも左右方向に露出しても、連窓の間に位置する縦骨8の見付け幅を狭く印象づけることが可能である。このため、より意匠性に優れている。また、露出する押縁10の色を、框2b及びカバー材13の色よりも暗い色とすることにより、押縁10を目立ちにくくすることができるので、より意匠性に優れた建具3を提供することが可能である。
【0028】
また、カバー係止材15は、上下方向に長い長孔15cに挿通されたビス16により対向壁部8dに固定されているので、カバー係止材15の熱伸びも許容することが可能となる。
【0029】
上記実施形態においては、2つのFIX窓1を有する建具3を例に挙げて説明したが、これに限らず、3つ以上のFIX窓を備え、それらFIX窓の間にそれぞれ上述した縦骨が設けられる建具であっても構わない。
【0030】
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【0031】
本実施形態には、少なくとも以下の発明が含まれる。
態様1:面材が横方向に並べて配置される連窓の前記面材の間に配置される縦骨を備える建具であって、前記面材は、前記縦骨の見込み方向における一方側にて前記横方向の両側に各々突出する突出部と、前記見込み方向における他方側にて前記縦骨に係止される押縁により保持されており、前記縦骨に係止された前記押縁と、前記縦骨との境界部は、当該縦骨の前記他方側に設けられるカバー材により覆われていることを特徴とする建具である。
【0032】
態様1の建具によれば、見込み方向における他方側にて面材を支持し、縦骨に係止される押縁と縦骨との境界部は、縦骨の他方側に設けられるカバー材により覆われているので、外部に露出しない。このため、意匠性により優れた建具を提供することが可能となる。
【0033】
態様2:態様1に記載の建具であって、前記カバー材は、前記縦骨において前記押縁よりも前記他方側に延出された延出部に、断熱材を介して固定されるカバー係止材に係止されており、前記カバー材は、前記縦骨及び前記押縁と接触していないことを特徴とする。
【0034】
態様2の建具によれば、カバー材は、押縁よりも他方側に延出された延出部に断熱材を介して固定されるカバー係止材に係止されており、且つ、縦骨及び押縁と接触していないので、カバー材及びカバー係止材は、縦骨及び押縁と熱的に縁切りされている。このため、見込み方向における熱の伝達を防止することが可能となる。
【0035】
態様3:態様2に記載の建具であって、前記他方側は、屋外側であり、前記縦骨は、前記面材の上方に位置する上枠、及び、前記面材の下方に位置する下枠に接合されており、前記カバー材の上下方向の長さは、前記上枠と前記下枠との間隔よりも短いことを特徴とする。
【0036】
態様3の建具によれば、上枠及び下枠に接合されている縦骨は、屋外側に設けられているカバー材と断熱材を介して接合されているので、カバー材からの熱が伝達されにくいため熱伸びが生じにくい。このため、縦骨の熱伸びにより座屈することを防止することが可能である。また、カバー材の上下方向の長さは、上枠と下枠との間隔よりも短いので、カバー材の熱伸びを許容することが可能である。
【0037】
態様4:態様1乃至態様3のいずれかに記載の建具であって、前記面材よりも前記他方側に左右方向にスライド可能な障子を有し、前記障子が備える框の前記他方側の見付け面と、前記カバー材の前記他方側の見付け面とは、見込み方向における位置がほぼ一致していることを特徴とする。
【0038】
態様4の建具によれば、障子が備える框の他方側の見付け面と、カバー材の他方側の見付け面とは、見込み方向における位置がほぼ一致しているので、他方側から見た際の意匠性に優れている。
【0039】
態様5:態様4に記載の建具であって、前記框及び前記カバー材は同系色をなしており、前記押縁は、前記框及び前記カバー材と異なる色をなしていることを特徴とする。
【0040】
態様5の建具によれば、框及びカバー材は同系色をなしているので、建具全体として統一されたデザインをなし、より意匠性に優れている。また、押縁は、框及びカバー材と異なる色をなしているので、押縁が、カバー材よりも外側に露出していても、連窓の間に位置する縦骨の見付け幅を狭く印象づけることが可能であり、より意匠性に優れている。また、押縁が露出する場合には、押縁の色を框及びカバー材の色よりも暗い色とすることにより、押縁を目立ちにくくすることができるので、より意匠性に優れた建具を提供することが可能である。
【0041】
態様6:態様2に記載の建具であって、前記カバー係止材は、上下方向に長い長孔を有し、前記長孔に挿通された固定具により前記延出部に固定されていることを特徴とする。
【0042】
態様6の建具によれば、カバー係止材は、上下方向に長い長孔に挿通された固定具により延出部に固定されているので、カバー係止材の熱伸びも許容することが可能となる。
【符号の説明】
【0043】
1 FIX窓、1a 複層ガラス、2 片開き窓、2a 障子、2b 框、
2c 見付け面、3 建具、3a 境界部、5 上枠、6 下枠、
8 縦骨、8d 対向壁部、8f 突出部、10 押縁、13 カバー材、
13b カバー見付け面部、14 断熱材、15 カバー係止材、
15c 長孔、16 ビス、