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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037511
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】熱分解装置
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/40 20220101AFI20240312BHJP
   C08J 11/12 20060101ALI20240312BHJP
   B09B 101/80 20220101ALN20240312BHJP
   B09B 101/85 20220101ALN20240312BHJP
   B09B 101/70 20220101ALN20240312BHJP
   B09B 101/78 20220101ALN20240312BHJP
   B09B 101/75 20220101ALN20240312BHJP
   B09B 101/65 20220101ALN20240312BHJP
【FI】
B09B3/40 ZAB
C08J11/12
B09B101:80
B09B101:85
B09B101:70
B09B101:78
B09B101:75
B09B101:65
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142422
(22)【出願日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】399049981
【氏名又は名称】株式会社オメガ
(72)【発明者】
【氏名】中村 信一
【テーマコード(参考)】
4D004
4F401
【Fターム(参考)】
4D004AA03
4D004AA04
4D004AA07
4D004AA11
4D004AA12
4D004AA48
4D004BA03
4D004BA04
4D004BA06
4D004CA04
4D004CA24
4D004CB13
4D004CB32
4D004CB34
4D004CC11
4D004DA11
4F401AA03
4F401AA26
4F401AA40
4F401AC02
4F401AC10
4F401AD04
4F401AD05
4F401AD09
4F401BA02
4F401BA03
4F401BA20
4F401CA26
4F401CA70
4F401CB01
4F401CB02
4F401CB15
4F401EA13
4F401FA01X
4F401FA04X
(57)【要約】
【課題】燃焼をともなわない熱分解装置を提供しようとするもの。
【解決手段】高比重耐熱液体Mと前記高比重耐熱液体Mより比重が重い固体Hとを貯留する熱分解槽1を有し、前記熱分解槽1で下方の固体H付近に処理対象物Xを供給するようにした。前記高比重耐熱液体Mより比重が軽い固体Lを熱分解槽1に貯留し、前記熱分解槽1で処理対象物Xの熱分解物を浮上させて回収するようにしてもよい。前記熱分解槽で下方の固体付近に処理対象物を供給(例えば圧入)するようにしたので、処理対象物は下方の固体表面に沿って加熱されることとなる。また、処理対象物が液体の場合は固体表面(気泡の核となる)に沿って広がって加熱されることとなり突沸を抑制することができる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高比重耐熱液体(M)と前記高比重耐熱液体(M)より比重が重い固体(H)とを貯留する熱分解槽(1)を有し、前記熱分解槽(1)で下方の固体(H)付近に処理対象物(X)を供給するようにしたことを特徴とする熱分解装置。
【請求項2】
前記高比重耐熱液体(M)より比重が軽い固体(L)を熱分解槽(1)に貯留し、前記熱分解槽(1)で処理対象物(X)の熱分解物を浮上させて回収するようにした請求項1記載の熱分解装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱分解装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴム等の廃棄物を燃焼し熱を回収するリサイクルシステムに関する提案があった(特許文献1)。
すなわち、タイヤを含めたゴム製品等の廃棄に大きな問題となっていた。タイヤを含む自動車部品の処分は環境汚染などの観点により、粗大ごみで捨てることができず、廃棄物処理法で適正処理困難物に指定されており、適切な方法で処分する必要があった。
この従来提案は、ゴムの廃棄物を焼却することで発生した熱を回収し、その熱によって蒸気を発生させる蒸気発生装置と、前記蒸気を熱プレス成型機まで運ぶ蒸気搬送経路と、前記ゴムの廃棄物又はゴムの原料を型に供給し、前記蒸気の熱を利用して熱プレスによってゴムの成形品を形成する熱プレス成型機と、を備えたこととし、廃棄物を燃焼させ、廃棄物の燃焼から生成した熱をゴムの成形品を成形する際に利用することによって、熱を有効に活用することが可能である、というものである。
これに対し、燃焼をともなわない熱分解装置に対する要望があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7050258号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこでこの発明は、燃焼をともなわない熱分解装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するためこの発明では次のような技術的手段を講じている。
(1)この発明の熱分解装置は、高比重耐熱液体と前記高比重耐熱液体より比重が重い固体とを貯留する熱分解槽を有し、前記熱分解槽で下方の固体付近に処理対象物を供給するようにしたことを特徴とする。
この熱分解装置は、高比重耐熱液体と前記高比重耐熱液体より比重が重い固体とを貯留する熱分解槽を有するので、高比重耐熱液体中で比重が重い固体は下方に沈むこととなる。
【0006】
そして、前記熱分解槽で下方の固体付近に処理対象物を供給(例えば圧入)するようにしたので、処理対象物は下方の固体表面に沿って加熱されることとなる。また、処理対象物が液体の場合は固体表面(気泡の核となる)に沿って広がって加熱されることとなり突沸を抑制することができる。
【0007】
ここで、前記高比重耐熱液体(熱処理時に液状であればよい)として、錫(熱伝導率 64W/mK、融点232℃、沸点2,063℃、溶融時密度6.99g/cm3)、鉛(熱伝導率 31W/mK、融点327.5℃、沸点1,750℃、密度11g/cm3)、インジウム(熱伝導率 82W/mK、融点156℃、沸点2,072℃、密度22 g/cm3)、ガリウム(熱伝導率 88W/mK、融点29.78℃、沸点2,208℃、密度6g/cm3)、ビスマス(熱伝導率 8W/mK、融点272℃、沸点1,564℃、密度10g/cm3)などの低融点金属(比重6以上)を例示することができる。
【0008】
高比重耐熱液体として錫(融点232℃、沸点2,063℃、溶融時密度6.99g/cm3、比重6.99)を、一方、前記固体として複数の鋼球(φ11mm 玉、比重7.8)を例示することができる。剛球(比重7.8)は溶融状態(液状)の錫(比重6.99)より比重が大きいので、熱分解槽中で下方に沈むこととなる。
【0009】
前記熱分解槽の温度として、450~900℃を例示することができる。このうち、例えば650℃に設定することができる。熱分解槽で高比重耐熱液体を昇温する熱源として、電熱ヒーター、LNGバーナー、LPGバーナー、またこの熱分解槽で得たメタンガス、油状成分などを例示することができる。熱分解槽の排ガス(廃棄ガス)は、煙道を介して外部に排出することができる。
【0010】
前記処理対象物の態様として、液(状)体、固体を例示することができる。処理対象物として、固体有機物や、高濃度有機液体を例示することができる。
処理対象物の液(状)体として、排水、廃水、高濃度廃液(例えばCOD 50,000ppm)などの有機成分を含むものを例示することができる。
【0011】
処理対象物の固体(処理により減容化、資源化の効用がある)として、廃タイヤ類、廃プラスチック類(ポリウレタン、発泡スチロールなど)、段ボール類、布切れ、医療用廃棄物(血液に汚染された衣類等)、貝殻(炭酸カルシウムであり熱処理により生石灰にできる)などを例示することができる。固体の処理対象物は、クラッシャー等により細分化し分断して供給することができる。
【0012】
処理対象物の固体の湿潤物、軟体物として、生ごみ(処理により腐敗防止、異臭防止の効用がある)、残飯、コーヒー滓、汚泥、使用済みおむつ、ぺフなどを例示することができる。
【0013】
熱分解槽でできた熱分解物・炭化物は、肥料(廃液含有成分の熱分解後のリン酸カルシウム)として、気化物・液化物は燃料(廃タイヤの揮発成分の液化物、有機物から揮発したメタンなどの炭化水素ガス)などとして利用することができる。また、熱分解槽でできた炭化物(有機物の炭素成分)を水処理用の活性炭、カーボン・パウダー、土壌改良材、土壌湿度調整材などとして利用することができる。
【0014】
(2)前記高比重耐熱液体より比重が軽い固体を熱分解槽に貯留し、前記熱分解槽で処理対象物の熱分解物を浮上させて回収するようにしてもよい。
このように、高比重耐熱液体より比重が軽い固体を熱分解槽に貯留するようにすると、高比重耐熱液体中で比重が軽い固体は上方に浮くこととなる。
そして、前記熱分解槽で処理対象物の熱分解物を浮上させて回収するようにすると、高比重耐熱液体の上方に浮いた比重が軽い固体領域から熱分解物を回収することとなり、高比重耐熱液体の損耗を抑制することができる。
【0015】
ここで、高比重耐熱液体より比重が軽い固体として、SiC(比重3.2)、アルミナ(φ5mm 玉 、比重4.8)を例示することができる。
例えば、高比重耐熱液体としての錫(溶融時比重6.99)中で、熱分解物たる炭化物粒子(比重約0.5)を浮上させ、高比重耐熱液体の上方に浮いた比重が軽い固体(SiC、アルミナ)領域から回収することができる。
そして、高比重耐熱液体の表面に浮上した炭化物を、モータにより回転駆動されるスパイラルコンベアによって外部に取り出すことができる。また処理対象物を、前記スパイラルコンベアにより供給することができる。
【0016】
(3)前記熱分解槽の加熱バーナーの火炎の位置を調整できるようにししてもよい。このようにすると、加熱バーナーの火炎部分の酸素の吸い込み量を加減して燃焼雰囲気(還元雰囲気など)を制御することができる。また、加熱バーナー自体の空気の混合比率の調整と併せて、燃焼ガス量の増大を回避しつつ燃焼雰囲気を制御することができる。
【0017】
(4)熱分解槽の外周に冷却水循環機構を設けることができる。このようにすると、熱分解槽を取り囲む冷却水循環機構により作業者の安全性を担保することができ火災のガードにもなる。
【0018】
(5)冷却水循環機構は、熱分解槽の排ガスを注入するスクラバー槽として機能させることもできる。冷却水循環機構には電解水を循環することができる。前記電解水として、オゾン(O3)を注入して酸素ラジカル(・O)を生成させた酸素ラジカル含有水を用いることもできる。
【発明の効果】
【0019】
この発明は上述のような構成であり、次の効果を有する。
処理対象物は下方の固体表面に沿って加熱されることとなり、燃焼をともなわない熱分解装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】この発明の熱分解装置の実施形態を説明する説明図。
図2】この発明の熱分解装置の実施形態の要部の説明図。
図3図2の説明図の部分拡大図。
図4図3の説明図の部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図4に示すように、この実施形態の熱分解装置は、高比重耐熱液体M(図4参照)と前記高比重耐熱液体Mより比重が重い固体H(図4参照)とを貯留する熱分解槽1を有し、前記熱分解槽1で下方の固体H付近に処理対象物Xを供給するようにした。
【0022】
処理対象物Xの液(状)体として、有機成分を含む高濃度廃液を挿入管2から熱分解槽1に圧入した。また固体として、細分化し分断した廃プラスチック・フィルムを、モータにより回転駆動されるスパイラルコンベアSを介して熱分解槽1に供給した。
【0023】
高比重耐熱液体Mとして錫(比重6.99)を、これより比重が重い固体Hとして複数の鋼球(φ11mm 玉、比重7.8)を用いた。剛球(比重7.8)は溶融状態(液状)の錫(比重6.99)より比重が大きいので、熱分解槽1中で下方に沈んだ。
【0024】
また、前記高比重耐熱液体Mより比重が軽い固体L(図4参照)を熱分解槽に貯留し、前記熱分解槽1で処理対象物Xの熱分解物を浮上させて回収するようにした。高比重耐熱液体Mより比重が軽い固体Lとして、複数のアルミナ球(φ5mm、比重4.8)を用いた。高比重耐熱液体Mの表面に浮上した熱分解物(炭化物)は、スパイラルコンベアSによって外部に取り出すようにした。
【0025】
熱分解槽1で高比重耐熱液体Hを昇温する熱源として、LNGバーナーBを用いた。前記熱分解槽1の温度は650℃に設定した。熱分解槽1の排ガス(廃棄ガス)は、煙道3を介して外部に排出した。
【0026】
熱分解槽1の外周に冷却水循環機構Cを設けた。熱分解槽1を取り囲む冷却水循環機構Cにより、作業者の安全性を担保することができ火災のガードにもなった。前記冷却水循環機構Cは、熱分解槽1の排ガスを注入するスクラバー槽としても機能させた。
冷却水循環機構Cには電解機構Eによる電解水を循環した。前記電解水として、オゾン(O3)を注入して酸素ラジカル(・O)を生成させた酸素ラジカル含有水を用いた。
【0027】
次に、この実施形態の熱分解装置の使用状態を説明する。
この熱分解装置は、高比重耐熱液体Mと前記高比重耐熱液体Mより比重が重い固体Hとを貯留する熱分解槽1を有するので、高比重耐熱液体M中で比重が重い固体Hは下方に沈んだ。
【0028】
そして、前記熱分解槽1で下方の固体H付近に処理対象物X(廃液)を供給するようにしたので、処理対象物Xは下方の固体H表面に沿って加熱されることとなり、燃焼をともなわないものであった。
また、処理対象物X(廃液)は固体H表面(気泡の核となる)に沿って広がって加熱されることとなり突沸を抑制することができた。
【0029】
さらに、高比重耐熱液体Mより比重が軽い固体Lを熱分解槽1に貯留するようにしたので、高比重耐熱液体M中で比重が軽い固体Lは上方に浮くこととなった。
そして、前記熱分解槽1で処理対象物Xの熱分解物を浮上させて回収するようにしたので、高比重耐熱液体Mの上方に浮いた比重が軽い固体L領域から熱分解物を回収することとなり、高比重耐熱液体Mの損耗を抑制することができた。
【0030】
すなわち、高比重耐熱液体Mとしての錫(溶融時比重6.99)中で、熱分解物たる炭化物粒子(比重約0.5)を浮上させ、高比重耐熱液体Mの上方に浮いた比重が軽い固体L領域から回収することができた。
【産業上の利用可能性】
【0031】
燃焼をともなわないことによって、種々の熱分解装置の用途に適用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 熱分解槽
M 高比重耐熱液体
H 高比重耐熱液体より比重が重い固体
L 高比重耐熱液体より比重が軽い固体
X 処理対象物
図1
図2
図3
図4