(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003753
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】固体複合高分子電解質膜及び全固体リチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
H01B 1/06 20060101AFI20240105BHJP
H01M 10/056 20100101ALI20240105BHJP
H01M 10/0565 20100101ALI20240105BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240105BHJP
C08F 20/26 20060101ALI20240105BHJP
C08F 299/02 20060101ALI20240105BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
H01B1/06 A
H01M10/056
H01M10/0565
H01M10/052
C08F20/26
C08F299/02
C08F2/44 Z
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061180
(22)【出願日】2023-04-05
(31)【優先権主張番号】111123910
(32)【優先日】2022-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】521318952
【氏名又は名称】明志科技大學
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤン チュン チョン
(72)【発明者】
【氏名】ウー イー シュアン
(72)【発明者】
【氏名】ホアイ カン トラン
【テーマコード(参考)】
4J011
4J100
4J127
5G301
5H029
【Fターム(参考)】
4J011AA05
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5G301CA12
5G301CA16
5G301CA28
5G301CD01
5H029AJ06
5H029AK03
5H029AL12
5H029AM11
5H029CJ02
5H029CJ28
5H029HJ01
5H029HJ14
(57)【要約】
【課題】高いリチウムイオン導電率を有する固体複合高分子電解質膜を提供する。
【解決手段】フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体と、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムと、スクシノニトリルと、アルミニウムドープリチウムランタンジルコニウム酸化物と、を含む固体電解質層と、前記固体電解質層に設置されているものであって、アクリレート系材料とビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムとスクシノニトリルとを含む第1の組成分と、開始剤と、を有する第1の組成物が重合反応してなった第1の固化電解質層と、を備え、前記アクリレート系材料は、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレートまたはそれらの任意の組み合わせから選ばれたものである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体と、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムと、スクシノニトリルと、アルミニウムドープリチウムランタンジルコニウム酸化物と、を含む固体電解質層と、
前記固体電解質層に設置されているものであって、アクリレート系材料とビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムとスクシノニトリルとを含む第1の組成分と、開始剤と、を有する第1の組成物の重合反応物により構成された第1の固化電解質層と、を備え、
前記固体電解質層の総量を100wt%として、前記アルミニウムドープリチウムランタンジルコニウム酸化物の含有量は、50wt%~80wt%の範囲内にあり、
前記アクリレート系材料は、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレートまたはそれらの任意の組み合わせから選ばれたものであることを特徴とする固体複合高分子電解質膜。
【請求項2】
前記第1の固化電解質層と共に前記固体電解質層を挟んでいるものであって、アクリレート系材料とビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムとスクシノニトリルとを含む第2の組成分と、開始剤と、を有する第2の組成物の重合反応物により構成された第2の固化電解質層とを更に含み、
前記第2の組成物におけるアクリレート系材料は、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレートまたはそれらの任意の組み合わせから選ばれたものであることを特徴とする請求項1に記載の固体複合高分子電解質膜。
【請求項3】
前記第2の組成分は、セラミックフィラーを更に含むことを特徴とする請求項2に記載の固体複合高分子電解質膜。
【請求項4】
前記第2の組成分におけるセラミックフィラーは、酸化アルミニウム(III)、二酸化ケイ素、表面にリチウム置換のポリ(4-スチレンスルホン酸) を有する酸化アルミニウム(III)粒またはそれらの任意の組み合わせから選ばれたものであることを特徴とする請求項3に記載の固体複合高分子電解質膜。
【請求項5】
前記重合反応物は、前記第2の組成物を紫外線で1分~60分間照射することによる光重合反応物であることを特徴とする請求項2に記載の固体複合高分子電解質膜。
【請求項6】
前記重合反応物は、前記第2の組成物を80℃で0.5時間~4時間反応させることによる熱架橋反応物であることを特徴とする請求項2に記載の固体複合高分子電解質膜。
【請求項7】
前記第1の組成分は、セラミックフィラーを更に含むことを特徴とする請求項1に記載の固体複合高分子電解質膜。
【請求項8】
前記第1の組成分におけるセラミックフィラーは、酸化アルミニウム(III)、二酸化ケイ素、表面にリチウム置換のポリ(4-スチレンスルホン酸) を有する酸化アルミニウム(III)粒またはそれらの任意の組み合わせから選ばれたものであることを特徴とする請求項7に記載の固体複合高分子電解質膜。
【請求項9】
前記重合反応物は、前記第1の組成物を紫外線で1分~60分間照射することによる光重合反応物であることを特徴とする請求項1に記載の固体複合高分子電解質膜。
【請求項10】
前記重合反応物は、前記第1の組成物を80℃で0.5時間~4時間反応させることによる熱架橋反応物であることを特徴とする請求項1に記載の固体複合高分子電解質膜。
【請求項11】
正極と、
負極と、
前記正極と前記負極との間に設置されている、請求項1~請求項10のいずれかに記載の固体複合高分子電解質膜と、を備えることを特徴とする全固体リチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解質及びリチウムイオン二次電池に関し、特に固体複合高分子電解質膜及び全固体リチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、電子製品や交通運輸施設においてエネルギーの貯蔵及び電気の提供の装置として広く応用されている。
液体電解質を使用するリチウムイオン二次電池には、リチウム樹枝状結晶(lithium dendrites)が生成しやすく、短絡及び電解液の漏れなどの安全性問題をもたらすことがある。
【0003】
液体電解質と比べて、固体電解質を使用すると、上記の安全性問題を有効的に回避できる。
【0004】
特許文献1には、層N及び層Pを含むリチウム電池用二層電解質が開示されている。
【0005】
層N及び層Pのそれぞれは、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体及びビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムを含む。
【0006】
非特許文献1には、光固化固体高分子電解質膜が開示されている。該光固化固体高分子電解質膜は、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム、ポリジメチルシロキサン、溶剤及び光開始剤を含む組成物が光重合反応を経ることにより形成されたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】中国特許出願公開第101124693号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Sandugash Kalybekkyzyら,「Fabrication of UV-Crosslinked Flexible Solid Polymer Electrolyte with PDMS for Li-Ion Batteries」, Polymers,2021
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1におけるリチウム電池用二層電解質及び非特許文献1における光固化固体高分子電解質膜は、従来のリチウムイオン二次電池にある短絡及び電解液の漏れの問題を解消できるが、上記の固体電解質には、リチウムイオン導電率が悪いという問題点がある。
【0010】
従って、本発明は、高いリチウムイオン導電率を有する固体複合高分子電解質膜及び該固体複合高分子電解質膜を含む全固体リチウムイオン二次電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成すべく、本発明は、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体[poly(vinylidene fluoride-co-hexafluoropropylene)、略称:PVDF-HFP]と、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム[lithium bis(trifluoromethanesulfonyl)imide、略称:LiTFSI]と、スクシノニトリル(succinonitrile、略称:SN)と、アルミニウムドープリチウムランタンジルコニウム酸化物(aluminum-doped Lithium lanthanum zirconium oxide、略称:Al-LLZO)と、を含む固体電解質層と、
前記固体電解質層に設置されているものであって、アクリレート系材料(acrylate material)とビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムとスクシノニトリルとを含む第1の組成分と、開始剤と、を有する第1の組成物の重合反応物により構成された第1の固化電解質層と、を備え、
前記固体電解質層の総量を100wt%として、前記アルミニウムドープリチウムランタンジルコニウム酸化物の含有量は、50wt%~80wt%の範囲内にあり、
前記アクリレート系材料は、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート(ethoxylated trimethylolpropane triacrylate、略称:ETPTA)、ポリエチレングリコールジメタクリレート[poly(ethylene glycol) dimethacrylate、略称:PEGDMA]、ポリエチレングリコールメタクリレート[poly(ethylene glycol) methacrylate、略称:PEGMA]またはそれらの任意の組み合わせから選ばれたものであることを特徴とする固体複合高分子電解質膜を提供する。
【0012】
また、本発明は、正極と、
負極と、
前記正極と前記負極との間に設置されている、上記の固体複合高分子電解質膜と、を備えることを特徴とする全固体リチウムイオン二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0013】
上記の構成により、本発明の固体複合高分子電解質膜は、固体電解質層及び第1の固化電解質層の組み合わせにより、25℃において高いリチウムイオン導電率を有する。
【0014】
また、本発明の全固体リチウムイオン二次電池は、該固体複合高分子電解質膜により高い比容量(specific capacity)を有する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0016】
<固体複合高分子電解質膜>
本発明の固体複合高分子電解質膜は、全固体リチウムイオン二次電池に適用するものであって、固体電解質層と、第1の固化電解質層とを備える。
【0017】
該固体電解質層は、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体と、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムと、スクシノニトリルと、アルミニウムドープリチウムランタンジルコニウム酸化物と、を含む。
【0018】
該第1の固化電解質層は、該固体電解質層に設置されているものである。また、該第1の固化電解質層は、アクリレート系材料とビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムとスクシノニトリルとを含む第1の組成分と、開始剤とを有する第1の組成物の重合反応物により構成されたものである。
【0019】
アクリレート系材料は、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレートまたはそれらの任意の組み合わせから選ばれるものである。
【0020】
<固体電解質層>
本発明の一部の実施形態において、固体電解質層の総量を100wt%として、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体の含有量は、5wt%~70wt%の範囲内にある。
フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体の含有量が5wt%以上にあると、固体電解質層に良好なフィルム形成性(film forming)及び良好な可撓性が備わることを促進して、固体電解質層をフィルムに形成しやすくなり且つ破れにくくなる。
【0021】
フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体の含有量が70wt%以下にあると、固体複合高分子電解質膜が良好なリチウムイオン導電率を備えるようにすることができる。
【0022】
本発明の一部の実施形態において、固体電解質層の総量を100wt%として、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムの含有量は、5wt%~70wt%の範囲内にある。
ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムの含有量が5wt%以上にあると、固体複合高分子電解質膜に良好なリチウムイオン導電率が備わることを促進する。
【0023】
ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムの含有量が70wt%以下にあると、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムの量が多すぎて完全に溶解できなくなり且つビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムが吸湿して水酸化リチウムまたは炭酸リチウムなどの副産物が生成して固体複合高分子電解質膜のリチウムイオン導電率に影響するなどの問題点の出現を回避できる。
【0024】
固体電解質層に良好な柔軟性、良好な弾性及び良好な可撓性を備えさせるために、且つ固体電解質層におけるビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムが充分な量のリチウムイオンを解離することで固体複合高分子電解質膜のリチウムイオン導電率を上げるために、本発明の部分の実施形態において、固体電解質層の総量を100wt%として、スクシノニトリルの含有量は、0wt%より大きく且つ40wt%以下の範囲内にある。
【0025】
固体電解質層に良好なフィルム形成性及び良好な可撓性を備えさせて固体電解質層をフィルムに形成しやすく且つ破れにくくするために、且つ固体複合高分子電解質膜が良好なリチウムイオン導電率を備えるようにするために、本発明の一部の実施形態において、固体電解質層の総量を100wt%として、アルミニウムドープリチウムランタンジルコニウム酸化物の含有量は、0wt%より大きく且つ80wt%以下の範囲内にある。
【0026】
固体複合高分子電解質膜が良好な熱安定性を有するようにすると共に、固体複合高分子電解質膜の機械強度を上げることによりリチウム樹枝状結晶が固体複合高分子電解質膜において発生することを抑えるために、本発明の一部の実施形態において、固体電解質層の総量を100wt%として、アルミニウムドープリチウムランタンジルコニウム酸化物の含有量は、50wt%~80wt%の範囲内にあり、その場合、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体及びビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムの含有量は、5wt%~44.9wt%の範囲内にある。
【0027】
固体電解質層の形成方法は、例えば、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体と、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムと、スクシノニトリルと、アルミニウムドープリチウムランタンジルコニウム酸化物とを混合して混合物を得た後、該混合物を押出し処理することにより形成されるが、それに限らない。
【0028】
該押出し処理は、二軸押出機を使用して行う。
【0029】
<第1の固化電解質層>
第1の固化電解質層が良好なフィルム形成性、良好な柔軟性、良好な弾性、良好な可撓性及び良好な機械強度を有するようにするために、且つ固体複合高分子電解質膜が良好なリチウムイオン導電率を有するようにするために、本発明の一部の実施形態において、アクリレート系材料とビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムとスクシノニトリルとを含む第1の組成分の総量を100wt%として、アクリレート系材料の含有量は、10wt%~65wt%の範囲内にある。
【0030】
本発明の一部の実施形態において、アクリレート系材料がトリメチロールプロパンEO変性トリアクリレートであり、第1の組成分の総量を100wt%として、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレートの含有量は、10wt%~65wt%の範囲内にある。
【0031】
トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレートの含有量が10wt%以上にあると、第1の固化電解質層に良好なフィルム形成性及び良好な機械強度が備わることを促進する。
【0032】
トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレートの含有量が65wt%以下にあると、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレートが後の重合反応において、架橋度(degree of crosslinking)が高くなりすぎることを回避して、第1の固化電解質層が良好な柔軟性、良好な弾性及び良好な可撓性を有するようになり、且つ固体複合高分子電解質膜が良好なリチウムイオン導電率を有するようになる。
【0033】
本発明の一部の実施形態において、アクリレート系材料がポリエチレングリコールジメタクリレート及びポリエチレングリコールメタクリレートであり、第1の組成分の総量を100wt%として、ポリエチレングリコールジメタクリレートの含有量は、5wt%~50wt%の範囲内にあり、ポリエチレングリコールメタクリレートの含有量は、5wt%~60wt%の範囲内にある。
【0034】
ポリエチレングリコールジメタクリレートの含有量が5wt%以上にあると、第1の固化電解質層に良好なフィルム形成性及び良好な機械強度が備わることを促進する。
【0035】
ポリエチレングリコールジメタクリレートの含有量が50wt%以下にあると、ポリエチレングリコールジメタクリレートが後の重合反応において、架橋度が高くなりすぎることを回避して、第1の固化電解質層が良好な柔軟性、良好な弾性及び良好な可撓性を有するようになり、且つ固体複合高分子電解質膜が良好なリチウムイオン導電率を有するようになる。
【0036】
ポリエチレングリコールメタクリレートの含有量が5wt%以上にあると、第1の固化電解質層に良好なフィルム形成性及び良好な機械強度が備わることを促進する。
【0037】
ポリエチレングリコールメタクリレートの含有量が60wt%以下にあると、ポリエチレングリコールメタクリレートが後の重合反応において、架橋度が高くなりすぎることを回避して、第1の固化電解質層が良好な柔軟性、良好な弾性及び良好な可撓性を有するようになり、且つ固体複合高分子電解質膜が良好なリチウムイオン導電率を有するようになる。
【0038】
本発明の一部の実施形態において、第1の組成分の総量を100wt%として、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムの含有量は、5wt%~50wt%の範囲内にある。
ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムの含有量が5wt%以上にあると、固体複合高分子電解質膜に良好なリチウムイオン導電率が備わることを促進する。
【0039】
ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムの含有量が50wt%以下にあると、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムの量が多すぎて完全に溶解できなく且つビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムが吸湿して水酸化リチウムまたは炭酸リチウムなどの副産物が生成して固体複合高分子電解質膜のリチウムイオン導電率に影響するなどの問題点の出現を回避できる。
【0040】
第1の固化電解質層が良好な柔軟性、良好な弾性及び良好な可撓性を有するようにするために、且つ第1の固化電解質層におけるビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムが充分な量のリチウムイオンを解離させることができて固体複合高分子電解質膜のリチウムイオン導電率を上げることができるようにするために、本発明の一部の実施形態において、第1の組成分の総量を100wt%として、スクシノニトリルの含有量は、5wt%~65wt%の範囲内にある。
【0041】
本発明の一部の実施形態において、開始剤は、光開始剤または熱開始剤である。
【0042】
光開始剤は、例えば、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(2,2,-dimethoxy-2-phenylacetophenone、略称:DMPA)であるが、それに限らない。
【0043】
熱開始剤は、例えば、アゾビスイソブチロニトリル[azobis(isobutyronitrile)、略称:AIBN]であるが、それに限らない。
【0044】
本発明の一部の実施形態において、第1の組成分におけるアクリレート系材料の総量を100重量部として、開始剤の含有量は、0.5重量部~5重量部の範囲内にある。
【0045】
開始剤の含有量が0.5重量部以上にあると、第1の固化電解質層に良好なフィルム形成性が備わることを促進する。
【0046】
開始剤の含有量が5重量部以下にあると、第1の固化電解質層に良好な可撓性及び良好な機械強度が備わり、且つ固体複合高分子電解質膜に良好なリチウムイオン導電率が備わることを促進する。
【0047】
固体複合高分子電解質膜が良好なリチウムイオン導電率を有すると共に良好な耐熱性も備えるようにするために、本発明の一部の実施形態において、第1の組成分は、セラミックフィラーを更に含む。
【0048】
第1の組成分におけるセラミックフィラーは、例えば酸化アルミニウム(III)、二酸化ケイ素、表面にリチウム置換のポリ(4-スチレンスルホン酸)[lithium-substituted poly(4-styrenesulfonic acid)、略称:Li-PSS]を有する酸化アルミニウム(III)粒(略称:Li-PSS@Al2O3、即ち、Li-PSS@Al2O3は、表面にLi-PSSを有する酸化アルミニウム(III)粒を指す)などが挙げられるが、それらに限らない。
【0049】
Li-PSS@Al2O3は、ポリ(4-スチレンスルホン酸) 溶液[分子量(Mw):75000、H2O中で18wt%、米Sigma-Aldrich社から購入]、水酸化リチウム一水和物(lithium hydroxide monohydrate、LiOH・H2O、Wako Pure Chemical Industries, Ltd.社から購入)、酸化アルミニウム(III)粒及び脱イオン水(deionized water)を含む混合溶液(pH値を約7.0に調整する)に対し、噴霧乾燥処理(spray drying)を行うことにより得る。
【0050】
本発明の一部の実施形態において、第1の組成分におけるセラミックフィラーは、酸化アルミニウム(III)、二酸化ケイ素、Li-PSS@Al2O3またはそれらの任意の組み合わせから選ばれるものである。
【0051】
本発明の一部の実施形態において、第1の組成分の総量を100wt%として、セラミックフィラーの含有量は、0wt%より大きく且つ10wt%以下の範囲内にある。
【0052】
本発明の一部の実施形態において、重合反応物における重合反応は、紫外線で行う光重合反応または熱で行う熱架橋反応である。
【0053】
該紫外線の波長は、例えば365nmであるが、それに限らない。
【0054】
該紫外線の強度は、例えば30mW/cm2であるが、それに限らない。
【0055】
重合反応を紫外線で行う場合、該重合反応の反応時間は、1分~60分間である。
【0056】
重合反応を熱で行う場合、該重合反応の反応時間は、0.5時間~4時間である。
【0057】
<第2の固化電解質層>
固体複合高分子電解質膜に更に良好なリチウムイオン導電率を与えるために、本発明の一部の実施形態において、本発明の固体複合高分子電解質膜は、第1の固化電解質層と共に固体電解質層を挟んでいる第2の固化電解質層を更に含む。
【0058】
第2の固化電解質層は、アクリレート系材料とビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムとスクシノニトリルとを含む第2の組成分と、開始剤と、を有する第2の組成物の重合反応物により構成されたものである。
【0059】
第2の組成分におけるアクリレート系材料は、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレートまたはそれらの任意の組み合わせから選ばれるものである。
【0060】
第2の組成分におけるアクリレート系材料、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム、スクシノニトリル及び開始剤については、上記の第1の組成分におけるアクリレート系材料、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム、スクシノニトリル及び開始剤と類似しているので、ここで説明を省略する。
【0061】
固体複合高分子電解質膜が更に良好なリチウムイオン導電率を有すると共に良好な耐熱性も備えるようにするために、本発明の一部の実施形態において、第2の組成分は、セラミックフィラーを更に含む。
【0062】
第2の組成分におけるセラミックフィラーは、上記の第1の組成分におけるセラミックフィラーと類似しているので、ここで説明を省略する。
【0063】
第2の組成分の組成分種類及び用量は、第1の組成分と相同または相異する。
【0064】
第2の固化電解質層における重合反応は、上記の第1の固化電解質層における重合反応と類似しているので、ここで説明を省略する。
【0065】
第2の固化電解質層における重合反応の反応条件は、第1の固化電解質層における重合反応と相同または相異する。
【0066】
<全固体リチウムイオン二次電池>
本発明の全固体リチウムイオン二次電池は、正極と、負極と、上記本発明の固体複合高分子電解質膜とを備える。
【0067】
前記正極は、アルミニウム箔集電層及び該アルミニウム箔集電層に設置されている電極活性層とを含む。
【0068】
電極活性層は、正極活性材料、導電剤、粘着剤及びビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムを有する。
【0069】
正極活性材料は、例えばリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(lithium nickel cobalt manganese oxide、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2、NCM811)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(lithium nickel cobalt aluminum oxide、NCA)などが挙げられるが、それらに限らない。
【0070】
本発明の一部の実施形態において、正極活性材料は、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物またはリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物である。
【0071】
導電剤は、例えば導電性カーボンブラック(conductive carbon black)などが挙げられるが、それに限らない。
【0072】
本発明の一部の実施形態において、導電剤は、導電性カーボンブラックである。
【0073】
粘着剤は、例えばフッ化ポリビニリデン(polyvinylidene fluoride、PVDF)などが挙げられるが、それに限らない。
【0074】
本発明の一部の実施形態において、粘着剤は、フッ化ポリビニリデンである。
【0075】
電極活性層がより良好な電気伝導性(electronic conductivity)を有するようにするために、本発明の一部の実施形態において、電極活性層は、気相成長炭素繊維(vapor grown carbon fiber)を更に含む。
【0076】
本発明の一部の実施形態において、電極活性層の総量を100wt%として、正極活性材料の含有量は、70wt%~84wt%の範囲内にある。
【0077】
本発明の一部の実施形態において、電極活性層の総量を100wt%として、導電剤の含有量は、5wt%~10wt%の範囲内にある。
【0078】
本発明の一部の実施形態において、電極活性層の総量を100wt%として、粘着剤の含有量は、5wt%~10wt%の範囲内にある。
【0079】
本発明の一部の実施形態において、電極活性層の総量を100wt%として、気相成長炭素繊維の含有量は、0.1wt%~1.5wt%の範囲内にある。
【0080】
本発明の一部の実施形態において、電極活性層の総量を100wt%として、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムの含有量は、5wt%~19wt%の範囲内にある。
【0081】
前記負極は、前記正極と間隔を開けて設置されている。
【0082】
また、前記負極は、例えばリチウム箔負極またはリチウム合金負極が挙げられるが、それらに限らない。
【0083】
前記固体複合高分子電解質膜は、前記正極と前記負極との間に設置されている。
本発明の全固体リチウムイオン二次電池は、例えばコイン型リチウム電池が挙げられるが、それに限らない。
【0084】
本発明の一部の実施形態において、本発明の全固体リチウムイオン二次電池は、コイン型リチウム電池である。
【実施例0085】
以下、本発明の実施例について説明する。これらの実施例は、例示的かつ説明的なものであり、且つ、本発明を限定するものと解釈されるべきではないことを理解されたい。
【0086】
[実施例1]固体複合高分子電解質膜
ステップa:23.81wt%且つ平均分子量(average molecular weight)が40万のフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF-HFP)と、23.81wt%のビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiTFSI)と、2.38wt%のスクシノニトリル(SN)と、50wt%のアルミニウムドープリチウムランタンジルコニウム酸化物(Al-LLZO)とを、二軸押出機(メーカー:Xplore社、型番:MC15HT)に投入し、160℃で1時間の混合処理を行って混合物を得た。
そして、該二軸押出機を使用して圧力が100kgf/cm2の条件で該混合物に対して10分間の圧延(rolling)処理を行って、厚さが400μm且つ円形シート状の無溶剤固体電解質層を得た。
【0087】
ステップb:19wt%のトリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート(アクリレート系材料として)と、38wt%のビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムと、43wt%のスクシノニトリルを混合して、25℃で8時間撹拌して第1の組成分を得た。
該第1の組成分と、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(DMPA、光開始剤として)とを2時間混合且つ撹拌して、第1の組成物を得た。
該第1の組成分におけるトリメチロールプロパンEO変性トリアクリレートの総量を100重量部として、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノンの含有量は、0.6重量部である。
【0088】
ステップc:該第1の組成物を該固体電解質層の上表面に塗布し、且つアルゴン雰囲気中で波長が365nm且つ強度が30mW/cm2の紫外線で該第1の組成物を照射して15分間の光重合反応を行って、該固体電解質層に第1の固化電解質層を形成して、固体複合高分子電解質膜を得た。
【0089】
[実施例2]固体複合高分子電解質膜
ステップa:23.81wt%且つ平均分子量が40万のフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体と、23.81wt%のビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムと、2.38wt%のスクシノニトリルと、50wt%のアルミニウムドープリチウムランタンジルコニウム酸化物とを、二軸押出機(メーカー:Xplore社、型番:MC15HT)に投入し、160℃で1時間の混合処理を行って混合物を得た。
そして、該二軸押出機を使用して圧力が100kgf/cm2の条件で該混合物に対して10分間の圧延処理を行って、厚さが400μm且つ円形シート状の無溶剤固体電解質層を得た。
【0090】
ステップb:19wt%のトリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート(アクリレート系材料として)と、38wt%のビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムと、43wt%のスクシノニトリルを混合して、25℃で8時間撹拌して第1の組成分を得た。
該第1の組成分と、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(光開始剤として)とを混合且つ2時間撹拌して、第1の組成物を得た。
該第1の組成分におけるトリメチロールプロパンEO変性トリアクリレートの総量を100重量部として、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノンの含有量は、0.6重量部である。
【0091】
ステップc:19wt%のトリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート(アクリレート系材料として)と、38wt%のビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムと、43wt%のスクシノニトリルを混合して、25℃で8時間撹拌して第2の組成分を得た。
該第2の組成分と、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(光開始剤として)とを2時間混合且つ撹拌して、第2の組成物を得た。
該第2の組成分におけるトリメチロールプロパンEO変性トリアクリレートの総量を100重量部として、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノンの含有量は、0.6重量部である。
【0092】
ステップd:該第1の組成物を該固体電解質層の上表面に塗布し、該第2の組成物を該固体電解質層の上表面の反対面である下表面に塗布し、且つアルゴン雰囲気中で波長が365nm且つ強度が30mW/cm2の紫外線で該第1の組成物及び該第2の組成物を照射して15分間の光重合反応を行って、該固体電解質層の上表面に第1の固化電解質層を形成し且つ該固体電解質層の下表面に第2の固化電解質層を形成して、固体複合高分子電解質膜を得た。
【0093】
[実施例3~5]固体複合高分子電解質膜
実施例3~5の固体複合高分子電解質膜は、実施例2の固体複合高分子電解質膜の製造方法と類似し、その相異点は、表1に示されるように第1の組成物及び第2の組成物の組成及び用量を替えた点である。
【0094】
即ち、実施例3~5において、第1の組成分及び第2の組成分は、1wt%のセラミックフィラーを更に含む。該セラミックフィラーは、酸化アルミニウム(III)(Al2O3)、二酸化ケイ素(SiO2)またはLi-PSS@Al2O3である。
【0095】
[実施例6]固体複合高分子電解質膜
実施例6の固体複合高分子電解質膜は、実施例2の固体複合高分子電解質膜の製造方法と類似し、その相異点は以下で説明する。
【0096】
実施例6におけるステップbにおいて、10wt%のポリエチレングリコールジメタクリレート(PEGDMA、アクリレート系材料として)と、30wt%のポリエチレングリコールメタクリレート(PEGMA、アクリレート系材料として)と、20wt%のビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムと、40wt%のスクシノニトリルを混合して、25℃で8時間撹拌して第1の組成分を得た。
該第1の組成分と、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(光開始剤として)とを混合且つ2時間撹拌して、第1の組成物を得た。
該第1の組成分におけるポリエチレングリコールジメタクリレートとポリエチレングリコールメタクリレートとの総量を100重量部として、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノンの含有量は、1重量部である。
【0097】
実施例6におけるステップcにおいて、10wt%のポリエチレングリコールジメタクリレート(アクリレート系材料として)と、30wt%のポリエチレングリコールメタクリレート(アクリレート系材料として)と、20wt%のビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムと、40wt%のスクシノニトリルを混合して、25℃で8時間撹拌して第2の組成分を得た。
該第2の組成分と、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(光開始剤として)とを混合且つ2時間撹拌して、第2の組成物を得た。
該第2の組成分におけるポリエチレングリコールジメタクリレートとポリエチレングリコールメタクリレートとの総量を100重量部として、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノンの含有量は、1重量部である。
【0098】
[実施例7~9]固体複合高分子電解質膜
実施例7~9の固体複合高分子電解質膜は、実施例6の固体複合高分子電解質膜の製造方法と類似し、その相異点は、表1に示されるように第1の組成物及び第2の組成物の組成及び用量を替えた点である。
即ち、実施例7~9において、第1の組成分及び第2の組成分は、1wt%のセラミックフィラーを更に含む。該セラミックフィラーは、酸化アルミニウム(III)(Al2O3)、二酸化ケイ素(SiO2)またはLi-PSS@Al2O3である。
【0099】
[実施例10]固体複合高分子電解質膜
実施例10の固体複合高分子電解質膜は、実施例2の固体複合高分子電解質膜の製造方法と類似し、その相異点は以下で説明する。
【0100】
実施例10におけるステップbにおいて、実施例2の第1の組成分と、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN、熱開始剤として)とを混合且つ2時間撹拌して、第1の組成物を得た。該第1の組成分におけるトリメチロールプロパンEO変性トリアクリレートの総量を100重量部として、アゾビスイソブチロニトリルの含有量は、1.5重量部である。
【0101】
実施例10におけるステップcにおいて、実施例2の第2の組成分と、アゾビスイソブチロニトリル(熱開始剤として)とを混合且つ2時間撹拌して、第2の組成物を得た。該第2の組成分におけるトリメチロールプロパンEO変性トリアクリレートの総量を100重量部として、アゾビスイソブチロニトリルの含有量は、1.5重量部である。
【0102】
実施例10におけるステップdにおいて、該第1の組成物を該固体電解質層の上表面に塗布し、該第2の組成物を該固体電解質層の上表面の反対面である下表面に塗布し、且つ温度を80℃に設定したオーブン内で該第1の組成物及び該第2の組成物に対して2時間の熱架橋反応を行って、該固体電解質層の上表面に第1の固化電解質層を形成し且つ該固体電解質層の下表面に第2の固化電解質層を形成して、固体複合高分子電解質膜を得た。
【0103】
[実施例11~13]固体複合高分子電解質膜
実施例11~13の固体複合高分子電解質膜は、実施例10の固体複合高分子電解質膜の製造方法と類似し、その相異点は、表2に示されるように第1の組成物及び第2の組成物の組成及び用量を替えた点である。
【0104】
即ち、実施例11~13において、第1の組成分及び第2の組成分は、1wt%のセラミックフィラーを更に含む。該セラミックフィラーは、酸化アルミニウム(III)(Al2O3)、二酸化ケイ素(SiO2)またはLi-PSS@Al2O3である。
【0105】
[実施例14]固体複合高分子電解質膜
実施例14の固体複合高分子電解質膜は、実施例10の固体複合高分子電解質膜の製造方法と類似し、その相異点は、以下で説明する。
【0106】
実施例14におけるステップbにおいて、10wt%のポリエチレングリコールジメタクリレート(アクリレート系材料として)と、30wt%のポリエチレングリコールメタクリレート(アクリレート系材料として)と、20wt%のビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムと、40wt%のスクシノニトリルを混合して、25℃で8時間撹拌して第1の組成分を得た。
該第1の組成分と、アゾビスイソブチロニトリルとを混合且つ2時間撹拌して、第1の組成物を得た。
該第1の組成分におけるポリエチレングリコールジメタクリレートとポリエチレングリコールメタクリレートとの総量を100重量部として、アゾビスイソブチロニトリルの含有量は、1.5重量部である。
【0107】
実施例14におけるステップcにおいて、10wt%のポリエチレングリコールジメタクリレート(アクリレート系材料として)と、30wt%のポリエチレングリコールメタクリレート(アクリレート系材料として)と、20wt%のビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムと、40wt%のスクシノニトリルを混合して、25℃で8時間撹拌して第2の組成分を得た。
該第2の組成分と、アゾビスイソブチロニトリルとを混合且つ2時間撹拌して、第2の組成物を得た。
該第2の組成分におけるポリエチレングリコールジメタクリレートとポリエチレングリコールメタクリレートとの総量を100重量部として、アゾビスイソブチロニトリルの含有量は、1.5重量部である。
【0108】
[実施例15~17]固体複合高分子電解質膜
実施例15~17の固体複合高分子電解質膜は、実施例14の固体複合高分子電解質膜の製造方法と類似し、その相異点は、表2に示されるように第1の組成物及び第2の組成物の組成及び用量を替えた点である。
【0109】
即ち、実施例15~17において、第1の組成分及び第2の組成分は、1wt%のセラミックフィラーを更に含む。該セラミックフィラーは、酸化アルミニウム(III)(Al2O3)、二酸化ケイ素(SiO2)またはLi-PSS@Al2O3である。
【0110】
[比較例1]
23.81wt%且つ平均分子量が40万のフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体と、23.81wt%のビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムと、2.38wt%のスクシノニトリルと、50wt%のアルミニウムドープリチウムランタンジルコニウム酸化物とを、二軸押出機(メーカー:Xplore社、型番:MC15HT)に投入し、160℃で1時間の混合処理を行って混合物を得た。
そして、該二軸押出機を使用して圧力が100kgf/cm2の条件で該混合物に対して10分間の圧延処理を行って、厚さが480μm且つ円形シート状の無溶剤固体電解質膜を得た。
【0111】
[比較例2]
19wt%のトリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート(アクリレート系材料として)と、38wt%のビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムと、43wt%のスクシノニトリルを混合して、25℃で8時間撹拌して原料組成分を得た。
該原料組成分と、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(光開始剤として)とを混合且つ2時間撹拌して、混合物を得た。
該原料組成分におけるトリメチロールプロパンEO変性トリアクリレートの総量を100重量部として、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノンの含有量は、0.6重量部である。
該混合物を市販のポリエチレンテレフタレート膜(polyethylene terephthalate、PET、厚さ90μm)の一面に塗布し、且つアルゴン雰囲気中で波長が365nm且つ強度が30mW/cm2の紫外線で該混合物を照射して15分間の光重合反応を行ってから、光重合反応された該混合物をポリエチレンテレフタレート膜から外して、固化電解質膜を得た。
【0112】
評価項目
[リチウムイオン導電率の測定]
電池のFRA内蔵ポテンショスタット/ガルバノスタット器(メーカー:仏Bio-Logic Science Instruments社、型番:SP-300)を使用して、実施例1~17及び比較例1~2の電解質膜のバルク抵抗(bulk resistance、Rb)を測定し、各電解質膜の厚さ、面積及びバルク抵抗により各電解質膜のリチウムイオン導電率(ionic conductivity、σi)を算出した。
バルク抵抗の測定条件は、環境温度が25℃であり、周波数範囲が1MHz~100mHz、振幅が10mVである。
リチウムイオン導電率(σi、単位:10-4S/cm)=[電解質膜の厚さ/電解質膜のバルク抵抗(Rb)×電解質膜の面積]
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
表3に示されるように、固体電解質層、第1の固化電解質層及び第2の固化電解質層の組み合わせにより、実施例1~17の固体複合高分子電解質膜は、0.98×10-4S/cm~3.83×10-4S/cmのリチウムイオン導電率を有する。
【0117】
それに対して、比較例1の固体電解質膜は、固化電解質層と組み合わせていないので、リチウムイオン導電率が悪く、比較例2の固化電解質膜は、固体電解質層と組み合わせていないので、リチウムイオン導電率が悪い。
【0118】
また、比較例1及び比較例2のリチウムイオン導電率に比べて、実施例1~17の固体複合高分子電解質膜のリチウムイオン導電率は、11.4%[即ち(0.98-0.88)/0.88×100%]~569.6%[即ち(5.29-0.79)/0.79×100%]上がった。実施例1~17の固体複合高分子電解質膜は、従来の高分子電解質膜のリチウムイオン導電率が悪いという問題点を有効的に解消できることを確かに示す。
【0119】
[応用例1]全固体リチウムイオン二次電池
ステップa:75wt%のAl2O3@C塗布のNCM811(0.00378g、正極活性材料として)と、10wt%の導電性カーボンブラックSuper P(メーカー:TIMCAL社、型番:Super P(登録商標)-Li、導電剤として)と、9wt%のフッ化ポリビニリデン(粘着剤として)と、1wt%の気相成長炭素繊維と、5wt%のビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムとを混合し且つN,N-ジメチルホルムアミド(N,N-dimethylformamide、DMF)に分散して、混合溶液を得た。
【0120】
メノウボールを用いる遊星型ボールミル(メーカー:独Fritsch社、型番:pulverisette 7)を使用して、400rpmの速度で該混合溶液に対して2時間のボールミル処理を行って、スラリー組成分を得た。
【0121】
該スラリー組成分をアルミニウム箔(集電層として)の一面に塗布してから、60℃で該スラリー組成分に対して真空乾燥処理を行い、そして、120℃で12時間加熱してN,N-ジメチルホルムアミドを除去し、最後に、ローラープレス装置(メーカー:台湾LEMON-ONE INDUSTRIAL CO., LTD社、型番:LR-3020)を使用して圧延処理及び切断処理を行って、直径が1.3cmであり且つアルミニウム箔と該アルミニウム箔の表面に形成されている電極活性層を含む円形シート状正極を得た。
【0122】
正極における正極活性材料の充填密度(loading density)は2.8mg/cm2である。
【0123】
Al2O3@C塗布のNCM811は、メカノフュージョン(mechanofusion)方法を使用して得られた、表面にAl2O3@Cが塗布されているNCM811を指す。
【0124】
Al2O3@Cは、表面が炭素に包まれている酸化アルミニウム(III)粒を指す。
且つ、Al2O3@Cは、スクロース、酸化アルミニウム(III)粒及び脱イオン水を含む混合溶液を噴霧乾燥処理することにより、表面がスクロースに包まれている酸化アルミニウム(III)粒を得てから、その表面がスクロースに包まれている酸化アルミニウム(III)粒を焼結(sintering)処理することにより得た。
【0125】
ステップb:ステップaで得られた正極、実施例2の固体複合高分子電解質膜及びリチウム箔負極を、アルゴン雰囲気中でCR2032コイン型電池(CR2032 Coin Cell)に組立てた後、25℃の条件で1日放置して、開路電圧(open circuit voltage)が3.2Vの全固体リチウムイオン二次電池を形成した。
【0126】
[応用例2]全固体リチウムイオン二次電池
応用例2の全固体リチウムイオン二次電池は、応用例1の全固体リチウムイオン二次電池の製造方法と類似し、その相異点は以下で説明する。
【0127】
応用例2におけるステップaにおいて、各材料のwt%を応用例1と同じように維持する上、Al2O3@C塗布のNCAを正極活性材料として使用し、正極活性材料の含有量が0.00462gであり、該正極活性材料の充填密度が6.26mg/cm2である。
Al2O3@C塗布のNCAとは、メカノフュージョン方法を使用して得られた、表面にAl2O3@Cが塗布されているNCAを指す。
応用例2におけるAl2O3@Cは、上記の応用例1におけるAl2O3@Cと類似しているので、ここで説明を省略する。
【0128】
[応用例3]全固体リチウムイオン二次電池
応用例3の全固体リチウムイオン二次電池は、応用例1の全固体リチウムイオン二次電池の製造方法と類似し、その相異点は、ステップaにおいて、各材料のwt%を応用例1と同じように維持する上、正極活性材料の含有量が0.00401gであり、該正極活性材料の充填密度が5.94mg/cm2であり、ステップbにおいて、実施例7の固体複合高分子電解質膜を使用した点である。
【0129】
[応用例4]全固体リチウムイオン二次電池
応用例4の全固体リチウムイオン二次電池は、応用例2の全固体リチウムイオン二次電池の製造方法と類似し、その相異点は、ステップaにおいて、各材料のwt%を応用例1と同じように維持する上、正極活性材料の含有量が0.00401gであり、該正極活性材料の充填密度が5.94mg/cm2であり、ステップbにおいて、実施例7の固体複合高分子電解質膜を使用した点である。
【0130】
[応用例5]全固体リチウムイオン二次電池
応用例5の全固体リチウムイオン二次電池は、応用例1の全固体リチウムイオン二次電池の製造方法と類似し、その相異点は、ステップaにおいて、各材料のwt%を応用例1と同じように維持する上、正極活性材料の含有量が0.00462gであり、該正極活性材料の充填密度が6.26mg/cm2であり、ステップbにおいて、実施例11の固体複合高分子電解質膜を使用した点である。
【0131】
[電気化学性質の測定]
電池の電気化学性質測定装置(メーカー:台湾ACUTECH SYSTEMS CO., LTD.社、型番:BAT-750B)を使用して、応用例1~応用例5の全固体リチウムイオン二次電池の充電の可逆比容量(reversible specific capacity、Qsp)及び放電の可逆比容量を測定し、且つ、各サイクルの充電容量(capacity)及び放電容量を記録した。そして、各全固体リチウムイオン二次電池の充電の可逆比容量及び放電の可逆比容量により、各全固体リチウムイオン二次電池のクーロン効率(coulombic efficiency、CE)を算出し、且つ、各全固体リチウムイオン二次電池の放電容量及び正極活性材料の含有量により、各全固体リチウムイオン二次電池の放電比容量を算出した。
各全固体リチウムイオン二次電池の充電の可逆比容量及び放電の可逆比容量の測定条件は、環境温度が25℃であり、充電電流レートが0.1Cであり、放電電流レートが0.1Cであり、3回ないし30回の充放電サイクルを行い、カットオフ電圧(cut-off voltage)の範囲は2.8V~4.2Vや2.8V~4.3Vである。
クーロン効率(CE、単位:%)=(放電の可逆比容量/充電の可逆比容量)×100%
放電比容量(単位:mAh/g)=放電容量(mAh)/正極活性材料の重量(g)
【0132】
【0133】
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【0135】
【0136】
【0137】
表4~表7に示されるように、本発明の固体複合高分子電解質膜を使用して形成された全固体リチウムイオン二次電池は、カットオフ電圧の範囲が2.8V~4.3Vにおけるクーロン効率及び放電比容量の結果が優れており、高充電電圧の全固体リチウムイオン二次電池に応用することができる。
【0138】
また、本発明の全固体リチウムイオン二次電池において、カットオフ電圧の範囲が2.8V~4.3Vにおける平均放電比容量は、すべてカットオフ電圧の範囲が2.8V~4.2Vにおける平均放電比容量より大きいので、それは本発明の全固体リチウムイオン二次電池が良好な電池持続時間を有することを示す。
【0139】
また、表8に示されるように、応用例5の全固体リチウムイオン二次電池は、10回の充放電サイクルを経た後に充分に活性化されて最も高い放電比容量を有し、また、30回の充放電サイクルを経た後の容量維持率(capacity retention(CR))が87.66%[即ち、(充放電サイクル30回目の放電比容量/充放電サイクル10回目の放電比容量)×100%]であるので、それは本発明の固体複合高分子電解質膜を含む全固体リチウムイオン二次電池がより長い使用寿命を有することを示す。
【0140】
上記の内容によれば、固体電解質層と固化電解質層との組み合わせにより、本発明の固体複合高分子電解質膜は、25℃において高いリチウムイオン導電率を有し、且つ、単一の固体電解質層または単一の固化電解質層に比べて、リチウムイオン導電率が47%~336.7%も上がった。
【0141】
また、該固体複合高分子電解質膜により、本発明の全固体リチウムイオン二次電池は、高充電電圧において高い比容量を有する。
【0142】
従って、本発明の目的を確実に達成できる。
【0143】
上記実施形態は例示的に本発明の原理及び効果を説明するものであり、本発明を制限するものではない。本技術を熟知する当業者であれば本発明の精神及び範囲から離れないという前提の下、上記の実施形態に対して若干の変更や修飾が可能で有る。従って、当業者が本発明の主旨から離れないという前提の下、行った全ての変更や修飾も本発明の保護範囲に含まれるものとされるべきである。