IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社JERAの特許一覧

<>
  • 特開-電源システム 図1
  • 特開-電源システム 図2
  • 特開-電源システム 図3
  • 特開-電源システム 図4
  • 特開-電源システム 図5
  • 特開-電源システム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037547
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】電源システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20240312BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20240312BHJP
   H02M 7/501 20070101ALI20240312BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20240312BHJP
【FI】
H02J7/00 B
H02J7/02 H
H02M7/501
H02M7/48 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142470
(22)【出願日】2022-09-07
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度環境省「脱炭素型金属リサイクルシステムの早期社会実装化に向けた実証事業(国庫債務負担行為に係るもの)」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】515177088
【氏名又は名称】株式会社JERA
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三木 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】泉 純太
(72)【発明者】
【氏名】伴 尊行
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 亮一
(72)【発明者】
【氏名】森山 友広
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 勇太
(72)【発明者】
【氏名】▲吉▼田 拓司
【テーマコード(参考)】
5G503
5H770
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA03
5G503BB01
5G503CA11
5G503CC02
5G503DA04
5G503GA01
5H770AA15
5H770BA11
5H770CA06
5H770DA03
5H770DA23
5H770DA30
5H770EA01
5H770HA02Z
5H770HA03Z
5H770HA06Z
5H770HA14Z
5H770JA17Y
5H770JA17Z
5H770KA01Y
(57)【要約】
【課題】電池ストリングの入出力を制御しながら電池ストリングに含まれる各電池の状態を調整しやすくする。
【解決手段】電源システムが、電池ストリングStと、電池ストリングStを制御するSCU200(制御装置)とを備える。電池ストリングStは、直列に接続された複数の電池回路モジュール10を含む。複数の電池回路モジュール10の各々は、電池20と、出力端子OT1,OT2と、電池20と出力端子OT1,OT2との接続/切離しを切り替えるスイッチ回路SWCとを含む。SCU200は、出力端子OT1,OT2が電池20の電圧を出力する接続期間と出力端子OT1,OT2が電池20の電圧を出力しない切離し期間との比を示すデューティ比に従ってスイッチ回路SWCを制御するスイッチング制御を、電池回路モジュール10ごと個別に実行するように構成される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池ストリングと、前記電池ストリングを制御する制御装置とを備える電源システムであって、
前記電池ストリングは、直列に接続された複数の電池回路モジュールを含み、
前記複数の電池回路モジュールの各々は、電池と、出力端子と、前記電池と前記出力端子との接続/切離しを切り替えるスイッチ回路とを含み、
前記制御装置は、前記出力端子が前記電池の電圧を出力する接続期間と前記出力端子が前記電池の電圧を出力しない切離し期間との比を示すデューティ比に従って前記スイッチ回路を制御するスイッチング制御を、前記電池回路モジュールごと個別に実行するように構成される、電源システム。
【請求項2】
当該電源システムは、前記電池ストリングとして、U相用電池ストリングと、V相用電池ストリングと、W相用電池ストリングとを備え、
前記U相用電池ストリングと前記V相用電池ストリングと前記W相用電池ストリングとは、三相交流電力を出力するようにY結線されており、
前記制御装置は、前記U相用電池ストリングと前記V相用電池ストリングと前記W相用電池ストリングとの各々の前記スイッチング制御において、要求された充電または放電のパワーと、要求された充電または放電のエネルギーと、前記電池の特性と、前記電池の状態との少なくとも1つを用いて前記電池回路モジュールごとの前記デューティ比を決定する、請求項1に記載の電源システム。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記電池ストリングに含まれる各電池を、出力型電池と、前記出力型電池よりも出力電力が小さい容量型電池とに分類し、
要求された充電または放電のパワーが第1値よりも大きい場合には、前記出力型電池の前記切離し期間に対する前記接続期間の割合を、要求された充電または放電のパワーが前記第1値よりも小さい場合よりも大きくし、
要求された充電または放電のエネルギーが第2値よりも大きい場合には、前記容量型電池の前記切離し期間に対する前記接続期間の割合を、要求された充電または放電のエネルギーが前記第2値よりも小さい場合よりも大きくする、請求項2に記載の電源システム。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記電池ストリングに含まれる前記出力型電池を、現在の蓄電残量が第3値よりも小さい第1出力型電池と、現在の蓄電残量が前記第3値よりも大きい第2出力型電池とに分類し、
前記電池ストリングに含まれる前記容量型電池を、要求された充電または放電によって到達する蓄電残量である到達蓄電残量が第4値よりも小さい第1容量型電池と、前記到達蓄電残量が前記第4値よりも大きい第5値よりも大きい第2容量型電池とに分類し、
要求された放電のパワーが前記第1値よりも大きい場合には、前記三相交流電力の正側で前記第1出力型電池の前記切離し期間に対する前記接続期間の割合を減少させる第1切離処理を行うとともに、前記三相交流電力の負側で前記第2出力型電池の前記切離し期間に対する前記接続期間の割合を減少させる第2切離処理を行い、
要求された充電のパワーが前記第1値よりも大きい場合には、前記三相交流電力の負側で前記第1出力型電池の前記切離し期間に対する前記接続期間の割合を増加させる第1接続処理を行うとともに、前記三相交流電力の正側で前記第2出力型電池の前記切離し期間に対する前記接続期間の割合を増加させる第2接続処理を行い、
要求された放電のエネルギーが前記第2値よりも大きい場合には、前記三相交流電力の正側で前記第1容量型電池の前記切離し期間に対する前記接続期間の割合を減少させる第3切離処理を行うとともに、前記三相交流電力の負側で前記第2容量型電池の前記切離し期間に対する前記接続期間の割合を減少させる第4切離処理を行い、
要求された充電のエネルギーが前記第2値よりも大きい場合には、前記三相交流電力の負側で前記第1容量型電池の前記切離し期間に対する前記接続期間の割合を増加させる第3接続処理を行うとともに、前記三相交流電力の正側で前記第2容量型電池の前記切離し期間に対する前記接続期間の割合を増加させる第4接続処理を行う、請求項3に記載の電源システム。
【請求項5】
前記制御装置は、
要求された放電のパワーが前記第1値よりも大きい場合には、前記第1出力型電池の現在の蓄電残量と前記第3値との乖離度合いを用いて前記第1切離処理における前記接続期間の割合の減少量を決定するとともに、前記第2出力型電池の現在の蓄電残量と前記第3値との乖離度合いを用いて前記第2切離処理における前記接続期間の割合の減少量を決定し、
要求された充電のパワーが前記第1値よりも大きい場合には、前記第1出力型電池の現在の蓄電残量と前記第3値との乖離度合いを用いて前記第1接続処理における前記接続期間の割合の増加量を決定するとともに、前記第2出力型電池の現在の蓄電残量と前記第3値との乖離度合いを用いて前記第2接続処理における前記接続期間の割合の増加量を決定し、
要求された放電のエネルギーが前記第2値よりも大きい場合には、前記第1容量型電池の前記到達蓄電残量と前記第4値との乖離度合いを用いて前記第3切離処理における前記接続期間の割合の減少量を決定するとともに、前記第2容量型電池の前記到達蓄電残量と前記第5値との乖離度合いを用いて前記第4切離処理における前記接続期間の割合の減少量を決定し、
要求された充電のエネルギーが前記第2値よりも大きい場合には、前記第1容量型電池の前記到達蓄電残量と前記第4値との乖離度合いを用いて前記第3接続処理における前記接続期間の割合の増加量を決定するとともに、前記第2容量型電池の前記到達蓄電残量と前記第5値との乖離度合いを用いて前記第4接続処理における前記接続期間の割合の増加量を決定する、請求項4に記載の電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2021-191095号公報(特許文献1)には、電力系統に電力を出力する蓄電デバイスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-191095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、蓄電デバイスの大容量化のために、例えば電池ストリングのような蓄電デバイスが提案されている。電池ストリングは、直列に接続された複数の電池回路モジュールを含む。そして、これら電池回路モジュールの各々は、電池と、出力端子と、電池と出力端子との接続/切離しを切り替えるスイッチ回路とを含む。各電池回路モジュールにおいて電池の電圧が出力端子に印加されることによって、各電池回路モジュールの出力電圧(出力端子に印加される電圧)が合わさった電圧が電池ストリングの出力電圧となる。
【0005】
電池ストリングの制御方法としては、各電池回路モジュールに遅延回路を設けて、1つの信号を各電池回路モジュールの遅延回路で遅延させることにより、1つの信号から各電池回路モジュールに対する指令を生成する方法が公知である。以下、こうした方法による電池ストリングの制御を、「スイープ制御」とも称する。
【0006】
しかしながら、近年、環境保護の観点から電池の再利用が推進されている。このため、電池ストリングにおいても中古電池が使用されるかもしれない。中古電池の特性は、電池の劣化度合いによって変わる。あるいは、電池ストリングの性能を向上させるために、異なる種類の複数の電池(例えば、出力型電池および容量型電池)を1つの電池ストリングに搭載することも考えられる。特性が異なる複数の電池を含む電池ストリングに上述のスイープ制御を適用した場合には、必ずしも電池ストリングの入出力電力が所望の大きさになるとは限らない。また、電池ストリングに上述のスイープ制御を適用した場合、電池ストリングの入出力を制御しながら電池ストリングに含まれる各電池の状態(例えば、蓄電残量)を調整することが難しい。
【0007】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、電池ストリングの入出力を制御しながら電池ストリングに含まれる各電池の状態を調整しやすくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1の観点に係る電源システムは、電池ストリングと、電池ストリングを制御する制御装置とを備える。電池ストリングは、直列に接続された複数の電池回路モジュールを含む。複数の電池回路モジュールの各々は、電池と、出力端子と、電池と出力端子との接続/切離しを切り替えるスイッチ回路とを含む。制御装置は、出力端子が電池の電圧を出力する接続期間と出力端子が電池の電圧を出力しない切離し期間との比を示すデューティ比に従ってスイッチ回路を制御するスイッチング制御を、電池回路モジュールごと個別に実行するように構成される。
【0009】
上記制御装置は、電池ストリングの制御において、デューティ比(接続期間:切離し期間)に従ってスイッチ回路を制御するスイッチング制御を電池回路モジュールごと個別に実行する。こうした制御装置によれば、電池ごとにデューティ比(接続期間:切離し期間)を調整できるため、電池ストリングの入出力電力を要求値に近づけるために、いずれの電池を接続し、いずれの電池を切り離すかを、自由に選択しやすくなる。このため、電池ストリングの入出力を制御しながら電池ストリングに含まれる各電池の状態(電流、電圧、温度、蓄電残量など)を調整しやすくなる。
【0010】
上記電源システムは、電池ストリングとして、U相用電池ストリングと、V相用電池ストリングと、W相用電池ストリングとを備えてもよい。U相用電池ストリングとV相用電池ストリングとW相用電池ストリングとは、三相交流電力を出力するようにY結線されてもよい。制御装置は、U相用電池ストリングとV相用電池ストリングとW相用電池ストリングとの各々のスイッチング制御において、要求された充電または放電のパワーと、要求された充電または放電のエネルギーと、電池の特性と、電池の状態との少なくとも1つを用いて電池回路モジュールごとのデューティ比を決定するように構成されてもよい。
【0011】
上記構成によれば、3つの電池ストリング(U相,V相,W相用電池ストリング)によって出力される三相交流電力を制御しながら電池ストリングに含まれる各電池の状態(電流、電圧、温度、蓄電残量など)を調整しやすくなる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、電池ストリングの入出力を制御しながら電池ストリングに含まれる各電池の状態を調整しやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の実施の形態に係る電源システムの回路構成の概要を示す図である。
図2図1に示した電池ストリングの構成を示す図である。
図3】本開示の実施の形態に係る電源システムにおいて、制御装置からの指令に従って生成された駆動信号に従うスイッチ回路の動作例を示すタイムチャートである。
図4】本開示の実施の形態に係る電源システムにおいて、制御装置が実行するスイッチング制御に係る処理を示すフローチャートである。
図5】本開示の実施の形態に係る電源システムによって実行されるエネルギーマネジメントについて説明するための図である。
図6図4に示した処理において実行される補充電および補放電について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0015】
図1は、この実施の形態に係る電源システムの回路構成の概要を示す図である。図1を参照して、この実施の形態に係る電源システムは、電池ストリングSt1~St3と、EMS(Energy Management System)100とを備える。電池ストリングSt1~St3は、三相交流電力を出力するようにY結線されている。電池ストリングSt1、St2、St3は、それぞれU相用電池ストリング、V相用電池ストリング、W相用電池ストリングに相当する。電池ストリングSt1~St3は、図示しない電力系統(商用電源)と電気的に接続され、電力系統との間で電力をやり取りするように構成される。
【0016】
電池ストリングSt1~St3は、三相交流電力を出力端子Tu、Tv、およびTwへ出力可能に構成される。具体的には、電池ストリングSt1~St3の各々の負極端子は中性点N1に接続されている。そして、電線PL1、PL2、PL3が、電池ストリングSt1、St2、St3の正極端子と出力端子Tu、Tv、Twとをそれぞれ接続している。電線PL1,PL2,PL3には、中性点N2に接続されたLCLフィルタFが設けられている。LCLフィルタFは、Y結線システム/他電源を複数並列で使用した際の横流を抑制したり、電線PL1,PL2,PL3の各々における電流リプル成分を減衰させたりする。
【0017】
LCLフィルタFと出力端子Tu、Tv、Twとの間には、それぞれ電線PL1,PL2,PL3の導通/遮断を切り替えるリレーRU、RV、RWが設けられている。リレーRU,RV,RWの各々は、例えば電磁式のメカニカルリレーである。リレーRU,RV,RWの各々は、ユーザ操作に応じて導通/遮断を切り替えてもよい。電源システムの使用中は、基本的にはリレーRU,RV,RWが導通状態に維持される。ユーザは、電源システムの使用を中断するとき(例えば、メンテナンス時)に、リレーRU,RV,RWを遮断状態にしてもよい。
【0018】
LCLフィルタFと電池ストリングSt1、St2、St3との間には、それぞれ電線PL1、PL2、PL3に流れる電流を検出する電流センサIa、Ib、Icが設けられている。電流センサIa,Ib,Icの各々は、検出値をEMS100へ出力する。電池ストリングSt1~St3の各々の電圧は、オフセットを持った0V以上の電圧波形になる。図1中の波形D11、D12、D13は、それぞれ電池ストリングSt1、St2、St3の電圧の一例を示している。これらのストリング電圧は、LCLフィルタFを経て、出力端子Tu,Tv,Twに出力される。具体的には、出力端子Tu,Tv間には線間電圧Vuv、出力端子Tw,Tuの間には線間電圧Vwu、出力端子Tv,Tw間には線間電圧Vvwが印加される。各線間電圧は、周期的に極性(正/負)が変わる交流電圧波形になる。図1中の波形D21、D22、D23は、それぞれ線間電圧Vuv、Vwu、Vvwの一例を示している。図1には示していないが、電源システムは、線間電圧Vuv,Vwu,Vvwを検出し、各検出値をEMS100へ出力する電圧センサをさらに備える。EMS100は、電流センサおよび電圧センサによる検出結果を用いて、電池ストリングSt1~St3から出力される三相交流電力を逐次検出する。
【0019】
電池ストリングSt1~St3は互いに異なる構成を有してもよいが、この実施の形態では、電池ストリングSt1~St3が互いに同じ構成を有する。以下では、区別して説明する場合を除いて、電池ストリングSt1~St3の各々を「電池ストリングSt」、電線PL1~PL3の各々を「電線PL」と記載する。
【0020】
図2は、電池ストリングStの構成を示す図である。図2を参照して、この実施の形態に係る電源システムは、電池ストリングStを制御するSCU(String Control Unit)200をさらに備える。SCU200は、プロセッサ210と、RAM(Random Access Memory)220と、記憶装置230とを備える。記憶装置230に記憶されているプログラムをプロセッサ210が実行することで、各種の処理(例えば、後述する図4に示す制御)が実行される。ただし、これらの各種処理は、ソフトウェアによる実行に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で実行することも可能である。なお、SCU200は、スイープ制御を実行するための機能が実装されたFPGA(Field Programmable Gate Array)をさらに備えてもよい。SCU200は、本開示に係る「制御装置」の一例に相当する。
【0021】
この実施の形態に係る電源システムでは、電池ストリングSt1~St3の各々にSCU200が設けられている。例えば、EMS100(図1)が、電力系統を管理するサーバから電力系統に関するエネルギーマネジメント要請を受けると、EMS100は、その要請に応じて、充電または放電を要求する信号(以下、「EMS信号」とも称する)を各電池ストリングStのSCU200へ送信する。EMS信号は、要求するパワー(以下、「要求W」と表記する)と、要求するエネルギー(以下、「要求Wh」と表記する)との少なくとも一方を示す。この実施の形態に係るEMS信号は、放電側の電力を正(+)、充電側の電力を負(-)で表わす。
【0022】
電池ストリングStは、直列に接続された複数の電池回路モジュール10を備える。また、電池回路モジュール10ごとに、SCU200からの指令に従って電池回路モジュール10を駆動するGD(ゲートドライバ)300が設けられている。電池ストリングStに含まれる電池回路モジュール10の数は任意であり、5~50個であってもよいし、100個以上であってもよい。
【0023】
各電池回路モジュール10は、スイッチ回路SWCと、カートリッジCgと、遮断器RB1,RB2と、出力端子OT1,OT2とを含む。カートリッジCgは、電池20と、監視ユニット30とを含む。電池20としては任意の二次電池が採用される。電池20は中古電池であってもよい。この実施の形態では、1つの電池ストリングStに出力型電池および容量型電池が搭載される。すなわち、ある電池回路モジュール10には電池20として出力型電池を含むカートリッジCgがセットされ、別の電池回路モジュール10には電池20として容量型電池を含むカートリッジCgがセットされる。出力型電池の定格出力(W)は、容量型電池の定格出力(W)よりも大きい。定格出力は、電池メーカによって示される設計上の最大放電電力である。容量型電池の容量(Wh)は、出力型電池の容量(Wh)よりも大きくてもよい。電池容量は、満充電状態の電池に蓄えられた電気量に相当する。なお、出力型電池のパワー密度は、容量型電池のパワー密度よりも高くてもよい。容量型電池のエネルギー密度は、出力型電池のエネルギー密度よりも高くてもよい。
【0024】
この実施の形態では、カートリッジCgがスイッチ回路SWCに対して着脱可能に構成される。具体的には、遮断器RB1,RB2(以下、区別しない場合は「遮断器RB」と称する)が、スイッチ回路SWCとカートリッジCgとをつなぐ電線の導通/遮断を切り替える。遮断器RBは、例えば電磁式のメカニカルリレーである。遮断器RB1,RB2の各々は、ユーザ操作に応じて導通/遮断を切り替えてもよい。電池回路モジュール10の使用中は、基本的には遮断器RB1,RB2が導通状態に維持される。ユーザは、電池回路モジュール10の使用を中断するとき(例えば、電池交換時)に、遮断器RB1,RB2を遮断状態にして、カートリッジCgをスイッチ回路SWCから取り外してもよい。電池ストリングStは空きカートリッジがあっても動作可能であるため、ユーザは、電池ストリングStに含まれるカートリッジCgの数を増減しやすい。こうした電池ストリングStは、電池の再利用に適している。
【0025】
監視ユニット30は、電池20の状態を監視するBMS(Battery Management System)を含む。BMSは、電池20の状態(例えば、電圧、電流、および温度)を検出する各種センサと、各種センサによる検出信号が入力される監視IC(集積回路)とを含む。監視ICは、上記各種センサによる検出信号を用いて電池20の状態を示す信号(以下、「BMS信号」とも称する)を生成し、生成されたBMS信号をSCU200へ出力する。SCU200は、上記BMS信号に基づいて電池20の状態(例えば、温度、電流、電圧、SOC(State Of Charge)、およびSOH(State of Health))を取得することができる。SOCは、蓄電残量を示し、例えば満充電状態の蓄電量に対する現在の蓄電量の割合を0~100%で表わしたものである。SOHは、健全度または劣化度を示し、例えば初期の容量に対する現在の容量の割合を0~100%で表わしたものである。
【0026】
監視ユニット30は、電池20の充電性能および放電性能に関する情報(定格出力、容量など)を記憶する記憶装置をさらに含む。記憶装置はタグであってもよい。監視ユニット30は、カートリッジCgが電池回路モジュール10にセットされたときに、上記記憶装置に記憶された情報をSCU200へ出力してもよい。
【0027】
記憶装置230は、電池ストリングStに含まれる各電池20に関する情報(以下、「電池情報」と称する)を、電池20の識別情報(電池ID)で区別して記憶している。電池IDは、電池20の位置を示す。すなわち、SCU200は、電池IDに基づいて、電池ストリングStの正極側の端から何番目の電池回路モジュール10にセットされた電池20であるかを識別することができる。電池情報は、電池20の特性を示す情報(例えば、定格出力(W)、容量(Wh)、パワー密度(W/kg)、およびエネルギー密度(Wh/kg))と、電池20の状態を示す情報(例えば、BMSによって検出された温度、電流、電圧、SOC、およびSOH)とを含む。SCU200は、監視ユニット30から最新の電池情報を取得し、記憶装置230内の電池情報を逐次更新する。
【0028】
電池ストリングStは、電池回路モジュール10同士をつなぐ電線SL(ストリング線)を有する。電線SLは、各電池回路モジュール10の出力端子OT1,OT2を含む。ある電池回路モジュール10の出力端子OT2が、当該電池回路モジュール10に隣接する別の電池回路モジュール10の出力端子OT1と接続されることによって、電池回路モジュール10同士が接続されている。電線SLは正極側で電線PLに接続される。
【0029】
スイッチ回路SWCは、電池20と出力端子OT1,OT2との接続/切離しを切り替えるように構成される。具体的には、スイッチ回路SWCは、第1スイッチ11(以下、「SW11」と表記する)と、第2スイッチ12(以下、「SW12」と表記する)と、SW11の並列ダイオード13と、SW12の並列ダイオード14と、チョークコイル15と、コンデンサ16とを含む。SW11は、電線SL上に位置し、出力端子OT1,OT2間で導通/遮断を切り替える。SW12およびチョークコイル15は、出力端子OT1と遮断器RB1(電池20の正極)とをつなぐ電線BL1上に位置する。出力端子OT2は電線BL2を介して遮断器RB2(電池20の負極)と電気的に接続されている。コンデンサ16は、電線BL1と電線BL2との各々に接続されている。SW11,SW12の各々は、例えばFET(電界効果トランジスタ)のような半導体スイッチである。なお、図2に示すスイッチ回路SWCの構成は、一例にすぎず、適宜変更可能である。例えば、回路からチョークコイル15が取り除かれてもよい。回路構成に応じて配線インダクタンスが調整されてもよい。
【0030】
電池20が出力端子OT1,OT2に接続されている期間(接続期間)においては、電池20の電圧が出力端子OT1,OT2間に出力される。接続期間においては、電池20と直列に接続されたSW12がON状態(導通状態)に、かつ、電池20と並列に接続されたSW11がOFF状態(遮断状態)に制御される。電池20が出力端子OT1,OT2から切り離されている期間(切離し期間)においては、電池20の電圧が出力端子OT1,OT2間に出力されない。切離し期間においては、SW12がOFF状態(遮断状態)に制御される。また、SW11は、切離し期間において、過渡期を除いてON状態(導通状態)に制御される。SCU200は、接続期間と切離し期間との比を示すデューティ比に従ってスイッチ回路SWCを制御することにより、出力端子OT1,OT2間に出力される電圧を制御するように構成される。デューティ比は、例えば、接続期間と切離し期間との合計長さに対する接続期間の長さの割合(以下、「接続Duty」と称する)で表わすことができる。接続Dutyが大きくなるほど、切離し期間に対する接続期間の割合が大きくなる。例えば、接続Dutyが0.8(80%)であることは、デューティ比(接続期間:切離し期間)が「8:2」であることを意味する。デューティ比に従う制御は、一般に「PWM(Pulse Width Modulation)制御」とも称される。
【0031】
この実施の形態では、SCU200が、EMS信号に基づいてデューティ比を電池回路モジュール10ごと個別に決定し、決定されたデューティ比に従うスイッチ回路SWCの制御(スイッチング制御)を電池回路モジュール10ごと個別に実行する。具体的には、SCU200は、デューティ比を示す信号(以下、「SC信号」と表記する)をGD300へ送信する。GD300は、SC信号に応じて、SCU200が指定したデューティ比に従う電圧が出力端子OT1,OT2間に出力されるように、SW11およびSW12を駆動するための駆動信号を生成し、その駆動信号によってSW11およびSW12を駆動する。
【0032】
図3は、GD300が生成した駆動信号に従うスイッチ回路SWCの動作例を示すタイムチャートである。図3において、線L101、L102は、それぞれSW11、SW12の駆動信号を示す。線L103は、出力端子OT1,OT2間に出力される電圧の推移を示す。線L110は、電池20の状態(接続/切離し)の推移を示す。以下では、タイムチャート中の各タイミングを、単に「t」と表記する。
【0033】
図1図2とともに図3を参照して、この例では、t1で接続期間から切離し期間に切り替わる。t1では、SW11がOFF状態のまま、SW12がOFF状態になる。そして、t1から所定時間(以下、「dt1」と表記する)だけ遅れたタイミング(t2)で、SW11がON状態になる。その後、t3でSW11がOFF状態になる。さらに、t3から所定時間(以下、「dt2」と表記する)だけ遅れたタイミング(t4)で、SW12がON状態になる。これにより、切離し期間から接続期間に切り替わる。接続期間においては、電池20の電圧Vmが出力端子OT1,OT2間に出力される。さらにその後、t5で、SW12がOFF状態になり、再び接続期間から切離し期間に切り替わる。
【0034】
線L110で示される接続Dutyは0.5である。線L101、L102で示される駆動信号は、接続Duty「0.5」に従う電圧が出力端子OT1,OT2間に出力されるようにGD300が生成した駆動信号である。詳細は後述するが、この実施の形態では、SCU200が、電池回路モジュール10ごとに所定の接続条件が成立するか否かを判断し、接続条件が成立する電池回路モジュール10について、接続Dutyを増加させる処理(以下、「接続処理」とも称する)を実行する。具体的には、SCU200は、現在の接続Dutyを所定量だけ増加させた接続Dutyを示すSC信号を、GD300へ送信する。これにより、増加した接続Dutyに対応する駆動信号がGD300によって生成され、例えば、線L110で示される接続Duty(0.5)が、線L120で示される接続Duty(0.8)になる。また、SCU200は、電池回路モジュール10ごとに所定の切離条件が成立するか否かを判断し、切離条件が成立する電池回路モジュール10について、接続Dutyを減少させる処理(以下、「切離処理」とも称する)を実行する。具体的には、SCU200は、現在の接続Dutyを所定量だけ減少させた接続Dutyを示すSC信号を、GD300へ送信する。これにより、減少した接続Dutyに対応する駆動信号がGD300によって生成され、例えば、線L110で示される接続Duty(0.5)が、線L130で示される接続Duty(0.2)になる。
【0035】
図4は、SCU200が実行するスイッチング制御に係る処理を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、例えばSCU200がEMS信号を受信している間は、SCU200によって繰り返し実行される。ただし、処理開始時には、全ての電池20の接続Dutyが所定の初期値(例えば、0.5)にされる。初期値は、EMS信号に応じて設定されてもよい。SCU200は、図4に示す一連の処理を電池ストリングStごとに実行する。フローチャート中の各ステップは、単に「S」と表記される。
【0036】
図1図2とともに図4を参照して、S11では、EMS信号が示す要求Wの大きさ(絶対値)が所定の第1値(以下、「Th1」と表記する)よりも大きいか否かを、SCU200が判断する。そして、要求Wの大きさ(絶対値)がTh1よりも大きい場合には(S11にてYES)、SCU200が、S12において、電池ストリングStに含まれる各電池20を、出力型電池と、出力型電池よりも出力電力が小さい容量型電池とに分類し、出力型電池について接続処理を実行する。SCU200は、電池情報(図2)を参照して、電池20の定格出力(W)が所定の閾値よりも大きいか否かに基づいて、電池ストリングStに含まれる各電池20を出力型電池と容量型電池とのいずれかに分類してもよい。上記接続処理により、電池ストリングStに含まれる各出力型電池の接続Dutyが上昇する。SCU200は、要求Wの大きさに応じて上昇量を決定してもよい。出力型電池の接続Dutyが上昇することで、EMS100からの要求Wに応えるために出力型電池が優先的に使用される。SCU200は、必要に応じて、出力型電池の接続Dutyを増加させる処理に加えて、容量型電池の接続Dutyを減少させる処理を実行してもよい。
【0037】
続くS13では、SCU200が、電池ストリングStに含まれる各出力型電池を、現在のSOC値が所定の基準SOC値(第3値)よりも小さい第1出力型電池(以下、「電池α」と表記する)と、現在のSOC値が上記基準SOC値(第3値)よりも大きい第2出力型電池(以下、「電池β」と表記する)とにさらに分類する。そして、SCU200は、S14において電池αの補充電量と電池βの補放電量とを取得し、続くS15において電池αの補充電と電池βの補放電とを実行する。S14,S15の詳細については後述する(図6参照)。
【0038】
続くS16では、電池ストリングStに含まれる各出力型電池のSOCが上記基準SOC値近傍に収束しているか否かを、SCU200が判断する。具体的には、電池ストリングStに含まれる各出力型電池のSOCが、基準SOC値を基準とする所定SOC範囲(例えば、基準SOC値±ヒステリシスの範囲)内に入っていれば、S16においてYESと判断され、そうでなければS16においてNOと判断される。S16においてNOと判断された場合には、処理がS13に戻り、各出力型電池のSOCを基準SOC値に近づけるための補充放電が再び実行される。他方、S16においてYESと判断された場合には、図4に示す一連の処理は終了する。
【0039】
要求Wの大きさ(絶対値)がTh1以下である場合には(S11にてNO)、S21において、EMS信号が示す要求Whの大きさ(絶対値)が所定の第2値(以下、「Th2」と表記する)よりも大きいか否かを、SCU200が判断する。そして、要求Whの大きさ(絶対値)がTh2よりも大きい場合には(S21にてYES)、SCU200は、S22において、電池ストリングStに含まれる各電池20を、S12と同様に出力型電池と容量型電池とに分類し、容量型電池について接続処理を実行する。この接続処理により、電池ストリングStに含まれる各容量型電池の接続Dutyが上昇する。SCU200は、要求Wおよび要求Whの大きさに応じて上昇量を決定してもよい。容量型電池の接続Dutyが上昇することで、EMS100からの要求Whに応えるために容量型電池が優先的に使用される。SCU200は、必要に応じて、容量型電池の接続Dutyを増加させる処理に加えて、出力型電池の接続Dutyを減少させる処理を実行してもよい。
【0040】
続くS23では、SCU200が、要求Whに基づいて到達SOC値を算出する。到達SOC値は、到達蓄電残量を示し、EMS信号が要求する充電または放電を電池20が実行することによって電池20のSOCが到達する値に相当する。そして、SCU200は、電池ストリングStに含まれる各容量型電池を、到達SOC値が所定の下限SOC値(第4値)よりも小さい第1容量型電池(以下、「電池γ」と表記する)と、到達SOC値が所定の上限SOC値(第5値)よりも大きい第2容量型電池(以下、「電池σ」と表記する)とにさらに分類する。上限SOC値は、下限SOC値よりも大きいSOC値である。そして、SCU200は、S24において電池γの補充電量と電池σの補放電量とを取得し、続くS25において電池γの補充電と電池σの補放電とを実行する。S24,S25の詳細については後述する(図6参照)。S25の処理が実行されると、処理はS13に進み、前述したS13~S16の処理により出力型電池の補充放電が実行される。
【0041】
要求Whの大きさ(絶対値)がTh2以下である場合には(S21にてNO)、SCU200が、S31において、電池ストリングStに含まれる各電池20のSOCを取得し、それらの最大SOC値と最小SOC値との差(SOC差)を算出する。さらに、SCU200は、S31において、SOC差が所定値(以下、「Th3」と表記する)よりも大きいか否かを判断する。SOC差がTh3以下である場合には(S31にてNO)、SCU200は、S34において、電池ストリングStに含まれる各電池20(各電池回路モジュール10)の接続Dutyを、要求Wおよび要求Whに応じた値にする。その後、処理はS23に進む。他方、SOC差がTh3よりも大きい場合には(S31にてYES)、処理がS32に進む。
【0042】
S32では、SCU200が、電池ストリングStに含まれる各電池20のSOCの平均値または中央値を基準にして均等化範囲(SOC均等化の目標範囲)を設定し、電池ストリングStに含まれる各電池20を、SOCが均等化範囲の下限値よりも低い電池(以下、「電池ε」と表記する)と、SOCが均等化範囲の上限値よりも高い電池(以下、「電池ζ」と表記する)と、電池ε,ζ以外の電池とに分類する。そして、SCU200は、S33において電池εの補充電と電池ζの補放電とを実行する。詳細は後述するが、SCU200は、S33において、要求Wおよび要求Whに応じた電力が電池ストリングStに入力または電池ストリングStから出力され、かつ、電池ストリングStに含まれる各電池20のSOCが均等化範囲内に入るように、電池ε,ζの接続Dutyを増減させる(図6参照)。S33の処理が実行されると、図4に示す一連の処理は終了する。
【0043】
図5は、電池ストリングSt1~St3によって実行されるエネルギーマネジメントについて説明するための図である。図5を参照して、SCU200は、エネルギーマネジメントのための充電要求または放電要求を、EMS100から受信する。SCU200は、所定のパワーでの放電または充電を要求するパワー要求と、継続的な放電または充電によって所定のエネルギーの出力または蓄電を要求するエネルギー要求とを受信してもよい。
【0044】
図5に示すパワー要求は、発電設備から出力される発電電力の変動を抑制するためのエネルギーマネジメントを要求する。電池ストリングSt1~St3は、こうしたパワー要求に応じて、発電電力の実績値L12を目標値L11に近づけるための充放電を実行してもよい。パワー要求では、短時間における大電力の放電または充電が要求されることが多い。パワー要求は、例えば、気象条件によって発電出力が変動する自然変動電源(太陽光発電設備など)のエネルギーマネジメントに利用される。また、図5に示すエネルギー要求は、電力系統の需給バランスを調整するためのエネルギーマネジメントを要求する。電池ストリングSt1~St3は、こうしたエネルギー要求に応じて、電力系統の電力需要量L21と電力供給量L22とを一致させるための充放電を実行してもよい。
【0045】
ここで、電池ストリングStに、要求WhがXであるエネルギー要求と要求WがYであるパワー要求との両方に応える特性(要求特性)を持たせることを考える。図5において、線L1は、出力型電池のみで構成される電池ストリングStに関して、出力型電池の個数を増減させたときの定格出力(W)および容量(Wh)の変化を示す。出力型電池のみで構成される電池ストリングStで容量Xを確保するためには、たくさんの出力型電池が必要になる。また、線L2は、容量型電池のみで構成される電池ストリングStに関して、容量型電池の個数を増減させたときの定格出力(W)および容量(Wh)の変化を示す。容量型電池のみで構成される電池ストリングStで定格出力Yを確保するためには、たくさんの容量型電池が必要になる。この実施の形態に係る電源システムでは、1つの電池ストリングStに出力型電池および容量型電池を搭載し、SCU200が前述の図4に示した処理を実行することで、電池の数を過剰に増やすことなく、上記要求特性を電池ストリングStに付与することが可能になる。
【0046】
この実施の形態に係る電源システムでは、SCU200が、要求された充電または放電のパワーがTh1よりも大きい場合には(図4のS11にてYES)、出力型電池の切離し期間に対する接続期間の割合を、要求された充電または放電のパワーがTh1よりも小さい場合(図4のS11にてNO)よりも大きくする(図4のS12)。また、SCU200は、要求された充電または放電のエネルギーがTh2よりも大きい場合には(図4のS21にてYES)、容量型電池の切離し期間に対する接続期間の割合を、要求された充電または放電のエネルギーがTh2よりも小さい場合(図4のS21にてNO)よりも大きくする(図4のS22)。こうした電源システムでは、SCU200(制御装置)が、要求に応じて出力型電池と容量型電池との各々のデューティ比を調整することにより、各電池ストリングStが、要求されたパワーに応じた充電または放電、あるいは要求されたエネルギーに応じた充電または放電を実行しやすくなる。
【0047】
図6は、図4に示した処理において実行される補充電および補放電について説明するための図である。
【0048】
図6を参照して、図4のS14では、SCU200が、例えば記憶装置230に記憶されたマップM1に基づいて、現在のSOC値と基準SOC値との差に応じた電池αの補充電量と、現在のSOC値と基準SOC値との差に応じた電池βの補放電量とを取得する。例えば、SCU200は、現在のSOC値がV1である電池αについては、補充電量としてΔP1を取得し、現在のSOC値がV2である電池βについては、補放電量としてΔP2を取得する。SCU200は、電池αの補充電量および電池βの補放電量を用いて、電池αおよびβに関する後述の切離処理(S15)における接続Dutyの減少量と、電池αおよびβに関する後述の接続処理(S15)における接続Dutyの増加量とを決定する。なお、SCU200は、現在のSOC値が基準SOC値と一致する出力型電池については補充放電を実行しない。
【0049】
図4のS24では、SCU200が、例えば記憶装置230に記憶されたマップM2に基づいて、到達SOC値と下限SOC値との差に応じた電池γの補充電量と、到達SOC値と上限SOC値との差に応じた電池σの補放電量とを取得する。例えば、SCU200は、到達SOC値がV3である電池γについては補充電量としてΔP3を取得し、到達SOC値がV4である電池σについては補放電量としてΔP4を取得する。SCU200は、電池γの補充電量および電池σの補放電量を用いて、電池γおよびσに関する後述の切離処理(S25)における接続Dutyの減少量と、電池γおよびσに関する後述の接続処理(S25)における接続Dutyの増加量とを決定する。なお、SCU200は、到達SOC値が下限SOC値以上かつ上限SOC値以下である容量型電池については補充放電を実行しない。
【0050】
図4のS15,S25,S33の各々では、SCU200が、EMS100から充電と放電とのいずれを要求されたかに基づいて、以下に説明するように接続処理または切離処理を実行する。以下では、電池ストリングSt1~St3から出力される三相交流電力を、単に「三相交流電力」と称する。三相交流電力の正側、負側は、それぞれ放電側、充電側に相当する。SCU200は、S15、S25、S33において、電池α、γ、εをそれぞれ充電対象とし、電池β、σ、ζをそれぞれ放電対象とする。
【0051】
EMS100から放電を要求された場合には、SCU200は、三相交流電力の正側で充電対象(電池α、γ、ε)の接続Dutyを減少させる切離処理を行うとともに、三相交流電力の負側で放電対象(電池β、σ、ζ)の接続Dutyを減少させる切離処理を行う。こうした処理により、SOCが低い充電対象のSOCを上昇させるとともに、SOCが高い放電対象のSOCを低下させることができる。
【0052】
要求された放電のパワーがTh1よりも大きい場合には(図4のS11にてYES)、S15で切離処理による補充放電が実行される。具体的には、三相交流電力の正側で、S14で取得した補充電量の分だけSCU200が電池αの接続Dutyを減少させ、三相交流電力の負側で、S14で取得した補放電量の分だけSCU200が電池βの接続Dutyを減少させる。S15における電池α、βに関する切離処理は、それぞれ本開示に係る「第1切離処理」、「第2切離処理」の一例に相当する。
【0053】
また、要求された放電のエネルギーがTh2よりも大きい場合には(図4のS21にてYES)、S25で切離処理による補充放電が実行される。具体的には、三相交流電力の正側で、S24で取得した補充電量の分だけSCU200が電池γの接続Dutyを減少させ、三相交流電力の負側で、S24で取得した補放電量の分だけSCU200が電池σの接続Dutyを減少させる。S25における電池γ、σに関する切離処理は、それぞれ本開示に係る「第3切離処理」、「第4切離処理」の一例に相当する。
【0054】
EMS100から充電を要求された場合には、SCU200は、三相交流電力の負側で充電対象(電池α、γ、ε)の接続Dutyを増加させる接続処理を行うとともに、三相交流電力の正側で放電対象(電池β、σ、ζ)の接続Dutyを増加させる接続処理を行う。こうした処理により、SOCが低い充電対象のSOCを上昇させるとともに、SOCが高い放電対象のSOCを低下させることができる。
【0055】
要求された充電のパワーがTh1よりも大きい場合には(図4のS11にてYES)、S15で接続処理による補充放電が実行される。具体的には、三相交流電力の負側で、S14で取得した補充電量の分だけSCU200が電池αの接続Dutyを増加させ、三相交流電力の正側で、S14で取得した補放電量の分だけSCU200が電池βの接続Dutyを増加させる。S15における電池α、βに関する接続処理は、それぞれ本開示に係る「第1接続処理」、「第2接続処理」の一例に相当する。
【0056】
また、要求された充電のエネルギーがTh2よりも大きい場合には(図4のS21にてYES)、S25で接続処理による補充放電が実行される。具体的には、三相交流電力の負側で、S24で取得した補充電量の分だけSCU200が電池γの接続Dutyを増加させ、三相交流電力の正側で、S24で取得した補放電量の分だけSCU200が電池σの接続Dutyを増加させる。S25における電池γ、σに関する切離処理は、それぞれ本開示に係る「第3接続処理」、「第4接続処理」の一例に相当する。
【0057】
この実施の形態に係る電源システムでは、大きなパワー(大電力)の放電または充電を要求されたときに、SCU200(制御装置)が、3つの電池ストリングSt1~St3(U相,V相,W相用電池ストリング)によって出力される三相交流電力に応じて出力型電池のデューティ比を調整することにより、電池ストリングSt1~St3の各々において、各出力型電池の蓄電残量が基準値(第3値)から大きく乖離することを抑制できる。また、上記の電源システムでは、大きなエネルギー(大電力量)の放電または充電を要求されたときに、SCU200(制御装置)が、3つの電池ストリングSt1~St3(U相,V相,W相用電池ストリング)によって出力される三相交流電力に応じて容量型電池のデューティ比を調整することにより、電池ストリングSt1~St3の各々において、各容量型電池の蓄電残量が、下限値(第4値)よりも小さくなったり、上限値(第5値)よりも大きくなったりすることを抑制できる。
【0058】
この実施の形態に係る電源システムでは、SCU200(制御装置)が、出力型電池の現在の蓄電残量と基準値(第3値)との乖離度合いを用いて第1,第2切離処理および第1,第2接続処理の各々における接続期間の割合の制御量(減少量または増加量)を決定する。こうした制御装置は、例えば電池ストリングSt1~St3がパワー要求に従う放電または充電を実行する場合に、各出力型電池の蓄電残量が基準値(第3値)から乖離することを抑制するように、各出力型電池のデューティ比を制御しやすい。また、SCU200(制御装置)は、容量型電池の蓄電残量が到達する値と閾値(第4値または第5値)との乖離度合いを用いて第3,第4切離処理および第3,第4接続処理の各々における接続期間の割合の制御量(減少量または増加量)を決定する。こうした制御装置は、例えば電池ストリングSt1~St3がエネルギー要求に従う放電または充電を実行する場合に、各容量型電池の蓄電残量が閾値(第4値または第5値)から乖離することを抑制するように、各容量型電池のデューティ比を制御しやすい。なお、乖離度合いは、差で表してもよいし、比率で表してもよい。比率が1に近いほど乖離度合いが小さいことになる。
【0059】
図6において、波形D1~D4の各々は、SCU200が図4に示した処理を実行したときの電池ストリングStの状態推移を示している。波形D1は、ストリング電圧(Estr)を示している。ストリング電圧は、「Estr(t)=Esinωt+Voffset」(E:出力相電圧振幅、Voffset:オフセット電圧)のような式で表される。波形D2は、ストリング電流(Istr)を示している。ストリング電流は、「Istr(t)=Isinωt」(I:出力電流振幅)のような式で表される。波形D3は、ストリング電圧のデューティ(duty)を示している。ストリング電圧のデューティは、「duty(t)=Estr(t)/Vall」(Vall:ストリング全電圧)のような式で表される。ストリング全電圧は、電池ストリングStに含まれる電池20の数と電池1個あたりの電圧(Vm)との乗算値に相当する。波形D4は、電池電流(Ibat(t))を示している。電池電流は、電池ストリングStにおける電池1個あたりの平均電流値に相当し、「Ibat(t)=Asinωt+Bsinωt」(A=E/Vall、B=Voffset/Vall)のような式で表される。
【0060】
電池ストリングSt1~St3が三相交流電力を出力しているときには、各電池ストリングStの電流は、波形D2で示すように推移する。このため、電池ストリングStとしては充電しているときでも、交流周波数の時間レベルでみると、電池電流は充電側と放電側とに電流が流れている。したがって、上記図4のS15,S25,S33の処理により、特定の電池のみを放電することが可能になる。また、電池ストリングStとしては放電しているときに、上記図4のS15,S25,S33の処理により、特定の電池のみを充電することも可能である。
【0061】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0062】
10 電池回路モジュール、11 第1スイッチ、12 第2スイッチ、20 電池、30 監視ユニット、100 EMS、200 SCU、210 プロセッサ、220 RAM、230 記憶装置、Cg カートリッジ、OT1,OT2 出力端子、SWC スイッチ回路、St,St1~St3 電池ストリング。
図1
図2
図3
図4
図5
図6