(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037577
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】研磨パッド
(51)【国際特許分類】
B24B 37/26 20120101AFI20240312BHJP
【FI】
B24B37/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142504
(22)【出願日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005359
【氏名又は名称】富士紡ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】小池 堅一
(72)【発明者】
【氏名】高木 正孝
(72)【発明者】
【氏名】満田 好昭
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼見沢 大和
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 基文
(72)【発明者】
【氏名】劉 澤南
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 孝太
【テーマコード(参考)】
3C158
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158EB19
3C158EB20
3C158EB22
3C158ED00
(57)【要約】
【課題】ワークを好適に研磨加工できる研磨パッドを提供する。
【解決手段】研磨パッドは、金属により構成されるワークを遊離砥粒を用いて研磨加工するための研磨パッドである。研磨パッドは、弾性シートによって構成されるパッド本体を有し、前記パッド本体は、円環状の基部と、前記基部と繋がり、平面視において前記基部の径方向に対して傾斜するように延びる突出部と、を含み、前記突出部は、前記ワークに追従するような先細り形状である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属により構成されるワークを遊離砥粒を用いて研磨加工するための研磨パッドであって、
弾性シートによって構成されるパッド本体を有し、
前記パッド本体は、
円環状の基部と、
前記基部と繋がり、平面視において前記基部の径方向に対して傾斜するように延びる突出部と、を含み、
前記突出部は、前記ワークに追従するような先細り形状である
研磨パッド。
【請求項2】
前記突出部は、
先端部を含むワーク接触部と、
前記ワーク接触部と前記基部とを繋ぐワーク非接触部と、を含む
請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項3】
前記ワーク接触部は、前記先端部を含む第1部分、および、前記第1部分と前記ワーク非接触部とを繋ぐ第2部分を含み、
前記第1部分の研磨力は、前記第2部分の研磨力よりも弱い
請求項2に記載の研磨パッド。
【請求項4】
前記突出部の外縁は、円弧であり、
前記ワーク接触部の外縁の曲率半径は、前記ワーク非接触部の外縁の曲率半径よりも大きい
請求項2または3に記載の研磨パッド。
【請求項5】
前記ワーク接触部の外縁に沿う仮想円において、前記ワーク接触部の外縁の長さは、前記仮想円の円周の30%以上70%以下の範囲に含まれる
請求項4に記載の研磨パッド。
【請求項6】
前記弾性シートを構成する材料は、
A硬度が、50°以上95°以下の範囲に含まれ、
密度が、0,20g/cm3以上0.80g/cm3以下の範囲に含まれる
請求項1~3のいずれか一項に記載の研磨パッド。
【請求項7】
前記パッド本体は、複数重ねられており、
前記基部の中央に配置され、複数の前記パッド本体を保持する軸部を有し、
前記軸部は、前記基部に形成される凹部または凸部と噛み合う凸部または凹部を有する
請求項1~3のいずれか一項に記載の研磨パッド。
【請求項8】
前記パッド本体に取り付けられる円盤状の治具を有し、
前記治具は、
重ねられた前記パッド本体のうちの最も上のパッド本体に重ねられる上部プレートと、
重ねられた前記パッド本体のうちの最も下のパッド本体に重ねられる下部プレートと、を含み、
前記治具が前記パッド本体に取り付けられた状態において、前記突出部は、前記上部プレートおよび前記下部プレートから露出している
請求項7に記載の研磨パッド。
【請求項9】
前記上部プレートは、前記最も上の前記パッド本体に面する上部対向面を有し、
前記下部プレートは、前記最も下の前記パッド本体に面する下部対向面を有し、
前記上部対向面は、周方向に沿って厚み方向の凹部および厚み方向の凸部を有し、
前記下部対向面は、前記上部対向面の前記凹部に対応する凸部、および、前記上部対向面の前記凸部に対応する凹部を有する
請求項8に記載の研磨パッド。
【請求項10】
前記上部対向面の前記凹部および前記凸部の1組と、前記下部対向面の前記凸部および前記凹部の1組との間には、前記突出部が2~8個存在する
請求項9に記載の研磨パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ワークを研磨加工する研磨パッドを開示している。この研磨パッドは、円環状の基部と、基部の径方向に突出する複数の突出部と、を有する。突出部の先端面は、長方形である。この研磨パッドは、回転しながら先端面とワークとが接触することによってワークの表面を研磨加工する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記研磨パッドは、突出部の厚さが根本から先端まで概ね一定であり、曲面を有するワークを研磨しているときに突出部の形状が変形しにくく、ほぼ平面状態で角R面に接触する。このため、ワークに対する追従性が低く平面部と角R面を連続した面に仕上げることが難しく、ワークを好適に研磨加工できない。
【0005】
本発明の目的は、曲面および平面を有するワークを好適に研磨加工できる研磨パッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点に係る研磨パッドは、金属により構成されるワークを遊離砥粒を用いて研磨加工するための研磨パッドであって、弾性シートによって構成されるパッド本体を有し、前記パッド本体は、円環状の基部と、前記基部と繋がり、平面視において前記基部の径方向に対して傾斜するように延びる突出部と、を含み、前記突出部は、前記ワークに追従するような先細り形状である。
【0007】
本発明の第2観点に係る研磨パッドは、第1観点に係る研磨パッドであって、前記突出部は、先端部を含むワーク接触部と、前記ワーク接触部と前記基部とを繋ぐワーク非接触部と、を含む。
【0008】
本発明の第3観点に係る研磨パッドは、第2観点に係る研磨パッドであって、前記ワーク接触部は、前記先端部を含む第1部分、および、前記第1部分と前記ワーク非接触部とを繋ぐ第2部分を含み、前記第1部分の研磨力は、前記第2部分の研磨力よりも弱い。
【0009】
本発明の第4観点に係る研磨パッドは、第2観点または第3観点に係る研磨パッドであって、前記突出部の外縁は、円弧であり、前記ワーク接触部の外縁の曲率半径は、前記ワーク非接触部の外縁の曲率半径よりも大きい。
【0010】
本発明の第5観点に係る研磨パッドは、第4観点に係る研磨パッドであって、前記ワーク接触部の外縁に沿う仮想円において、前記ワーク接触部の外縁の長さは、前記仮想円の円周の30%以上70%以下の範囲に含まれる。
【0011】
本発明の第6観点に係る研磨パッドは、第1観点~第5観点のいずれか1つに係る研磨パッドであって、前記弾性シートを構成する材料は、A硬度が、50°以上95°以下の範囲に含まれ、密度が、0.20g/cm3以上0.80g/cm3以下の範囲に含まれる。
【0012】
本発明の第7観点に係る研磨パッドは、第1観点~第6観点のいずれか1つに係る研磨パッドであって、前記パッド本体は、複数重ねられており、前記基部の中央に配置され、複数の前記パッド本体を保持する軸部を有し、前記軸部は、前記基部に形成される凹部または凸部と噛み合う凸部または凹部を有する。
【0013】
本発明の第8観点に係る研磨パッドは、第7観点に係る研磨パッドであって、前記パッド本体に取り付けられる円盤状の治具を有し、前記治具は、重ねられた前記パッド本体のうちの最も上のパッド本体に重ねられる上部プレートと、重ねられた前記パッド本体のうちの最も下のパッド本体に重ねられる下部プレートと、を含み、前記治具が前記パッド本体に取り付けられた状態において、前記突出部は、前記上部プレートおよび前記下部プレートから露出している。
【0014】
本発明の第9観点に係る研磨パッドは、第8観点に係る研磨パッドであって、前記上部プレートは、前記最も上の前記パッド本体に面する上部対向面を有し、前記下部プレートは、前記最も下の前記パッド本体に面する下部対向面を有し、前記上部対向面は、周方向に沿って厚み方向の凹部および厚み方向の凸部を有し、前記下部対向面は、前記上部対向面の前記凹部に対応する凸部、および、前記上部対向面の前記凸部に対応する凹部を有する。
【0015】
本発明の第10観点に係る研磨パッドは、第9観点に係る研磨パッドであって、前記上部対向面の前記凹部および前記凸部の1組と、前記下部対向面の前記凸部および前記凹部の1組との間には、前記突出部が2~8個存在する。
【発明の効果】
【0016】
本発明に関する研磨パッドによれば、曲面および平面を有するワークを好適に研磨加工できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】
図1の研磨パッドによって研磨加工されるワークの正面図。
【
図3】
図1の研磨パッドが備えるパッド本体の平面図。
【
図5】
図1の研磨パッドが備える上部プレートの底面図。
【
図7】
図1の研磨パッドが備えるスペーサの平面図。
【
図8】
図1の研磨パッドの作用を説明するための図。
【
図9】実施形態の第1変形例の研磨パッドが備えるパッド本体の平面図。
【
図10】実施形態の第2変形例の研磨パッドが備えるパッド本体の平面図。
【
図11】実施形態の第3変形例の研磨パッドが備えるパッド本体の平面図。
【
図12】実施形態の第4変形例の研磨パッドが備えるパッド本体の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る研磨パッドの一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
<1.研磨パッドの全体構成>
図1は、実施形態の研磨パッド10の斜視図である。
図2は、研磨パッド10によって研磨加工されるワーク300の正面図である。研磨パッド10は、ワーク300の側面を遊離砥粒を用いて研磨加工する。ワーク300は、スマートフォン、または、タブレット端末等のフレームである。ワーク300は、金属によって構成される。ワーク300を構成する金属は、例えば、アルミニウム、チタン、または、ステンレス等である。ワーク300は、例えば、R加工が施された角部310、および、直線部320を有する。本実施形態の研磨パッド10は、ワーク300の角部310、および、直線部320の側面を好適に研磨加工できるように構成される。研磨パッド10は、パッド部20と、軸部60と、治具70と、一対のスペーサ110(
図6参照)と、を備える。
【0020】
<2.パッド部>
図3は、パッド部20を構成するパッド本体30の平面図である。パッド部20は、複数のパッド本体30を有する。複数のパッド本体30は、外縁が仮想円と一致するように重ねられている。パッド本体30を構成する材料は遊離砥粒を含浸できる材料であれば任意に選択可能である。パッド本体30を構成する材料は、例えば、特許第5091613号公報に記載の弾性シート(研磨布)を好適に用いることができる。パッド本体30を構成する材料は、単位時間あたりの研磨量(以下では、「研磨レート」という)が高くなるように、高い剛性を有することが好ましい。本実施形態では、パッド本体30を構成する材料のA硬度は、50°以上95°以下、好ましくは55°以上90°以下、より好ましくは60°以上85°以下の範囲に含まれる。パッド本体30を構成する材料の密度は、0.20g/cm
3以上0.80g/cm
3以下、好ましくは0.30g/cm
3以上0.60g/cm
3以下、より好ましくは0.35g/cm
3以上0.55g/cm
3以下の範囲に含まれる。
【0021】
パッド部20を構成するパッド本体30は、単層で構成されてもよいし、複数枚積層して構成されてもよく任意に選択可能である。研磨レートを高める観点から、パッド部20は、複数枚のパッド本体30によって構成されることが好ましい。本実施形態では、パッド部20は、5枚のパッド本体30が接着剤を介さずに積層されることによって構成される。パッド部20は、1枚~4枚、または、6枚以上のパッド本体30によって構成されてもよい。パッド部20が複数枚のパッド本体30によって構成される場合、複数のパッド本体30を構成する材料は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0022】
パッド本体30は、円環状の基部40、および、基部40から突出する突出部50を有する。基部40には、突出部50に向かって凹む複数の凹部41が形成されている。凹部41の底面41Aは、湾曲している。複数の凹部41は、基部40の周方向に沿って一定の間隔毎に形成されている。複数の凹部41の先端は、仮想円CA上に位置する。仮想円CAは、基部40の中心OAを中心とする円である。換言すれば、仮想円CAと基部40とは、同心円である。
【0023】
突出部50は、平面視において、基部40の径方向と傾斜する方向に延びる。1つのパッド本体30が有する突出部50の数は、任意に選択可能である。研磨レートを高める観点から、1つのパッド本体30は、複数の突出部50を有していることが好ましい。本実施形態では、1つのパッド本体30は、8個の突出部50を有する。8個の突出部50の形状は、実質的に同一である。1つのパッド本体30は、1~7、または、9個の突出部50を有していてもよい。8個の突出部50は、基部40の周方向に一定の間隔で形成されている。
【0024】
突出部50は、平面視において、ワーク300への追従性を向上させる先細り形状である。換言すれば、突出部50は、基部40の径方向と傾斜する方向に延びる鋸形状である。突出部50の厚さは、根本から先端部50Aにわたり概ね一定である。突出部50は、先端部50Aを含むワーク接触部51、および、ワーク接触部51と基部40とを繋ぐワーク非接触部52を有する。
【0025】
ワーク接触部51は、回転しながらワーク300と接触することによって、ワーク300の側面を研磨加工する。ワーク接触部51は、外縁51Xを有する。外縁51Xは、円弧である。外縁51Xは、仮想円CBに沿う。仮想円CBは、基部40の中心OAを中心とする円である。換言すれば、仮想円CBと基部40とは、同心円である。
【0026】
ワーク接触部51は、先端部50Aを含む第1部分51A、および、第1部分51Aとワーク非接触部52とを繋ぐ第2部分51Bを含む。平面視における第1部分51Aの最大の幅LAは、第2部分51Bの最大の幅LBよりも小さい。このため、ワーク接触部51がワーク300と接触した場合の研磨応力、換言すれば研磨力は、第1部分51Aのほうが第2部分51Bよりも小さい。本実施形態では、ワーク接触部51が、研磨力の異なる第1部分51Aおよび第2部分51Bを有するため、研磨力に強弱をつけながらワーク300を研磨加工できる。このため、研磨パッド10の回転中、沈みこませたワーク300をパッド本体30によって押さえ込むことができるため、研磨パッド10の回転に伴う研磨力をワーク300に好適に伝達できる。
【0027】
ワーク非接触部52は、研磨パッド10の回転中、ワーク300と接触しない。ワーク非接触部52は、外縁52Xを有する。外縁52Xの形状は、任意に選択可能である。本実施形態では、外縁52Xの形状は、円弧である。外縁52Xは、直線であってもよい。
【0028】
本実施形態では、ワーク接触部51の外縁51Xの曲率半径は、ワーク非接触部52の外縁52Xの曲率半径よりも大きい。仮想円CBの円周に対する外縁51Xの長さの割合RAは、任意に選択可能である。研磨レートを高める観点、および、ワーク接触部51のワーク300に対する追従性を高める観点から、割合RAは、30%以上70%以下の範囲に含まれることが好ましく、40%以上60%以下の範囲に含まれることがより好ましい。なお、外縁51Xの長さの割合RAは、仮想円CBの半径(中心OAと先端部50Aの長さ)と外縁51Xの円弧とから形成される扇形の中心角θAを求め、突出部50の個数と中心角θAとを積算することで外縁51Xに対応する総中心角が求められる。総中心角を360°で除算することによって、割合RAを算出することができる。本実施形態では、割合RAは、50%である。
【0029】
<3.軸部>
図4は、軸部60の平面図である。軸部60は、複数のパッド本体30を保持する。軸部60を構成する材料は、任意に選択可能である。複数のパッド本体30を好適に保持する観点から、軸部60を構成する材料は、パッド本体30を構成する材料よりも剛性の高い材料であることが好ましく、ステンレス等の金属、ガラスファイバプラスチック、または、繊維強化プラスチック等が好ましい。本実施形態では、軸部60を構成する材料は、金属である。金属は、例えば、ステンレスである。
【0030】
軸部60は、円環状の基部61、および、基部61から突出する複数の凸部62を有する。基部61には、凸部62と対応する位置に4つの貫通孔61Aが形成されている。貫通孔61Aには、基部61の表面側から軸部60と治具70の上部プレート80とを結合するためのねじ210(
図1参照)が挿入される。貫通孔61Aには、基部61の裏面側から軸部60と治具70の下部プレート90とを結合するためのねじ(図示略)が挿入される。基部61の表面には、2つの非貫通孔61Bが形成される。非貫通孔61Bには、上部プレート80を取り付けるときの位置決めとなるねじ220(
図1参照)が挿入される。基部61の裏面には、下部プレート90を取り付けることに位置決めとなるねじ(図示略)が挿入される。
【0031】
複数の凸部62は、パッド本体30の複数の凹部41(
図3参照)と噛み合う。複数の凸部62の外郭形状は、凹部41の内郭形状と一致する。複数の凸部62が複数の凹部41と噛み合うようにパッド部20および軸部60が配置される。軸部60によってパッド部20が保持されるため、研磨時の回転によってパッド本体30が軸部60から外れることなく複数のパッド本体30が重ねられた状態が維持される。
【0032】
<4.治具>
治具70は、パッド部20を挟む上部プレート80および下部プレート90を含む。治具70を構成する材料は、任意に選択可能である。複数のパッド本体30を好適に保持する観点から、治具70を構成する材料は、パッド本体30を構成する材料よりも剛性の高い材料であることが好ましい。具体的には、治具70は、アルミニウム、鉄、銅、ステンレス、鉛、クロム等の金属、紙基材フェノール樹脂、布基材フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、プロピレン樹脂、スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、または、FRP等の剛性の高い材質の板を使用して製造することができる。本実施形態では、治具70を構成する材料は、布基材フェノール樹脂板である。
【0033】
図5は、上部プレート80の底面図である。上部プレート80は、複数のパッド本体30のうちの最も上のパッド本体30にスペーサ110を介して重ねられる。上部プレート80は、円環状の基部81、および、基部81から張り出す円盤状のプレート部82を有する。
【0034】
基部81は、4つの貫通孔81Aを有する。4つの貫通孔81Aには、軸部60と治具70の上部プレート80とを結合するためのねじ210(
図1参照)が挿入される。基部81は、径方向に凹む2つの凹部81Xを有する。2つの凹部81Xは、上部プレート80を軸部60に取り付けるときの位置決めとなるねじ220(
図1参照)が配置される。2つの凹部81Xの底面81Yは湾曲している。
【0035】
プレート部82は、スペーサ110を介して、複数のパッド本体30のうちの最も上のパッド本体30と面している。プレート部82の外縁は、仮想円CA(
図3参照)と平面視において実質的に重なる。このため、研磨パッド10の平面視において、パッド本体30の突出部50は、上部プレート80から露出している。上部プレート80と突出部50とが干渉しにくいため、ワーク300を研磨しているときの突出部50の変形の自由度が確保される。下部プレート90の構成は、後述するプレート部92の下部対向面92Aの構成を除いて上部プレート80と実質的に同じであるため、詳細な説明を省略する。なお、研磨パッド10の底面視において、パッド本体30の突出部50は、下部プレート90から露出している。下部プレート90と突出部50とが干渉しにくいため、ワーク300を研磨しているときの突出部50の変形の自由度が確保される。
【0036】
図6は、
図1のD6-D6線に沿う断面図である。上部プレート80のプレート部82は、複数のパッド本体30のうちの最も上のパッド本体30とスペーサ110を介して対向する上部対向面82Aを有する。上部対向面82Aは、厚み方向の凹部82X、および、厚み方向の凸部82Yの組を有する。本実施形態では、上部プレート80は、プレート部82の周方向に沿って、凹部82Xおよび凸部82Yの組を4つ有する。
【0037】
下部プレート90のプレート部92は、複数のパッド本体30のうちの最も下のパッド本体30とスペーサ110を介して対向する下部対向面92Aを有する。下部対向面92Aは、厚み方向の凹部92X、および、厚み方向の凸部92Yの組を有する。凹部92Xは、上部プレート80の凸部82Yと対応する形状である。凸部92Yは、上部プレート80の凹部82Xと対応する形状である。本実施形態では、下部プレート90は、プレート部92の周方向に沿って、凹部92Xおよび凸部92Yの組を4つ有する。
【0038】
本実施形態では、上部対向面82Aの凹部82Xと下部対向面92Aの凸部92Yとが平面視において重なるように、かつ、上部対向面82Aの凸部82Yと下部対向面92Aの凹部92Xとが平面視において重なるように、上部プレート80および下部プレート90が配置される。
図6に示されるように、上部プレート80の上部対向面82Aおよび下部プレート90の下部対向面92Aは非平面となっている。上部プレート80および下部プレート90で挟まれたパッド本体30が上部プレート80および下部プレート90の形状に沿うよう変形するため、複数のパッド本体30の重ね合わせ面が、非直線となっている。このため、パッド本体30の特定箇所が研磨対象であるワーク300と接触することに起因して、パッド本体30の特定箇所のみが偏って摩耗することが抑制される。
【0039】
上部対向面82Aの1組の凹部82Xおよび凸部82Yと、下部対向面92Aの1組の凹部92Xおよびと凸部92Yとの間に位置する突出部50の数NAは、任意に選択可能である。数NAは、例えば、2~8個である。本実施形態では、数NAは、2個である。数NAは、1個であってもよく、9個以上であってもよい。
【0040】
<5.スペーサ>
図7は、スペーサ110の平面図である。一対のスペーサ110のうちの一方は、上部プレート80と複数のパッド本体30のうちの最も上のパッド本体30との間に配置される。一対のスペーサ110のうちの他方は、下部プレート90と複数のパッド本体30のうちの最も下のパッド本体30との間に配置される。一方のスペーサ110は、上部プレート80の上部対向面82Aと例えば、接着剤によって接合される。他方のスペーサ110は、下部プレート90の下部対向面92Aと接着剤によって接合される。
【0041】
スペーサ110を構成する材料は、任意に選択可能である。パッド本体30を保護する観点、高剛性の上部プレート80および下部プレート90と、パッド本体30との隙間を埋め、上部プレート80および下部プレート90でパッド本体30を挟み込む力を向上させる観点、および、パッド本体30の重ね合わせ面を非直線とする観点から、スペーサ110を構成する材料は、軟らかい材料であることが好ましい。具体的には、スペーサ110を構成する材料は、例えば、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリプロピレン、ポリアミド、エチレン-メタクリレート共重合体等からなる単層シート、または、上記単層シートが積層された積層シートが挙げられる。積層シートの具体的層構成としては、例えば、ナイロン/ポリエチレン、ナイロン/ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート/ポリプロピレン、ポリプロピレン/ポリエチレン、ナイロン/ポリプロピレン/ポリエチレン等が挙げられる。本実施形態では、スペーサ110を構成する材料は、ポリプロピレンである。
【0042】
スペーサ110は、外郭が上部プレート80および下部プレート90よりも若干大きい円環形状である。スペーサ110の内縁は、複数の凹部111が形成されている。複数の凹部111は、軸部60の凸部62(
図4参照)と噛み合う形状である。軸部60の凸部62は、凹部111に挿入される。
【0043】
<6.研磨パッドの作用>
図8は、研磨パッド10の作用を説明するための図である。なお、
図8では、研磨パッド10を構成する要素のうちのパッド部20のみを図示している。
【0044】
研磨パッド10は、パッド本体30のワーク接触部51がワーク300の側面と接触するように配置される。研磨パッド10は、
図8の矢印の方向に回転するようにアクチュエータによって駆動される。このため、複数の突出部50のワーク接触部51が連続的にワーク300の側面を研磨加工する。
【0045】
ワーク300は、研磨パッド10に対して移動可能である。研磨パッド10が回転している状態で、ワーク300が研磨パッド10に対して移動することによって、ワーク300の角部310、および、直線部320が研磨加工される。
【0046】
<7.研磨パッドの特徴>
本実施形態の研磨パッド10によれば、以下の効果が得られる。
【0047】
<7-1>
研磨パッド10は、突出部50が基部40の径方向に対して傾斜するように延びる。突出部50は、先細り形状であるため、ワーク300の形状に沿うように容易に変形できる。ワーク300の直線部320のみならずR加工が施された角部310にも追従した研磨が可能である。さらには、ワーク300の側面が曲率を有している場合にも、複数枚のパッド本体30が、ワーク300の側面の曲面に応じて1枚ずつ径方向に弾性変形することができる。研磨パッド10は、ワーク300に対する追従性が高いため、ワーク300を好適に研磨加工できる。
【0048】
<7-2>
突出部50は、先細り形状であるため、R加工が施されているワーク300の側面等、マクロな曲面形状にフィットする追従性を有する。その一方、パッド本体30は、剛性が高い材料によって構成されるため、ワーク300の表面のミクロな凸部のみを除去することができる。このため、様々な形状のワーク300を好適に研磨加工することができる。
【0049】
<7-3>
例えば、国際公開WO2015/020082号公報に開示される研磨パッドのように、ワークを研磨加工するための凹部を有する研磨パッドの場合、凹部に研磨くず等が詰まり、目詰まりが生じるおそれがある。本実施形態の研磨パッド10によれば、突出部50によって、ワーク300の表面を研磨加工するため、目詰まりが生じるおそれが低減される。
【0050】
<7-4>
公知のブラシ状の研磨具では、ブラシの根本のみが固定され、ブラシの概ね全体が自由に動くため、ワークに対して研磨力が十分に伝達されない。本実施形態の研磨パッド10によれば、突出部50が、先細り形状であるため、ワーク300に対する追従性が高い。このため、ワーク300に対して、十分な研磨力を伝達できる。
【0051】
<7-5>
研磨パッド10によれば、基部40から突出する突出部50によってワーク300を研磨加工するため、国際公開WO2015/020082号公報に開示される研磨パッドよりもスラリーの供給性および排出性が好適に確保される。このため、スラリーが目詰まりしにくい。
【0052】
<7-6>
研磨パッド10によれば、パッド本体30、および、任意の突出部50の先端部50Aと別の突出部50の根本との間の隙間にスラリーを保持できるため、熱によるパッド本体30の劣化を抑制できる。
【0053】
<7-7>
研磨パッド10によれば、ワーク300の水平方向の研磨加工に加えて、研磨パッド10に対するワーク300の角度を変更することによって、ワーク300の斜め方向に対しても研磨加工を施すことができる。
【0054】
<7-8>
研磨パッド10によれば、パッド本体30が剛性の高い材料によって構成されるため、突出部50がブラシのようにワーク300に対する追従性を有しつつ、ブラシよりもワーク300に密着する。このため、ワーク300が金属等の剛性の高い材料によって構成される場合であっても、好適に研磨加工を施すことができる。
【0055】
<8.変形例>
上記実施形態は本発明に関する研磨パッドが取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に関する研磨パッドは、実施形態に例示された形態とは異なる形態を取り得る。その一例は、実施形態の構成の一部を置換、変更、もしくは、省略した形態、または、実施形態に新たな構成を付加した形態である。以下に実施形態の変形例の幾つかの例を示す。なお、以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲において、互いに組み合わせることができる。
【0056】
<8―1>
パッド本体30の形状は、突出部50がワーク300に追従するような先細り形状であれば任意に変更可能である。
図9は、実施形態の第1変形例の研磨パッド10が備えるパッド本体130の平面図である。パッド本体130は、突出部150を備える。突出部150は、ワーク接触部151およびワーク非接触部152を有する。ワーク接触部151の外縁151Xの形状、および、ワーク非接触部152の外縁152Xの形状は、円弧である。外縁151Xの曲率半径、および、外縁152Xの曲率半径は、等しい。
【0057】
図10は、実施形態の第2変形例の研磨パッド10が備えるパッド本体230の平面図である。パッド本体230は、突出部250を備える。突出部250は、ワーク接触部251およびワーク非接触部252を有する。ワーク接触部251の外縁251Xの形状、および、ワーク非接触部252の外縁252Xの形状は、円弧である。外縁251Xの曲率半径、および、外縁252Xの曲率半径は、等しい。
【0058】
図11は、実施形態の第3変形例の研磨パッド10が備えるパッド本体330Xの平面図である。パッド本体330Xは、突出部350Xを備える。突出部350Xは、実施形態のパッド本体30の突出部50よりも短い。突出部350Xは、ワーク接触部351Xおよびワーク非接触部352Xを有する。ワーク接触部351の外縁351XAの形状、および、ワーク非接触部352の外縁352XAの形状は、円弧である。ワーク接触部351Xの外縁351XAは、
図9に示される第1変形例のパッド本体130のワーク接触部151の外縁151Xよりも長い。このため、第3変形例のパッド本体330Xは、第1変形例のパッド本体130よりも、割合RAが大きくなるように構成される。
【0059】
図12は、実施形態の第4変形例の研磨パッド10が備えるパッド本体430の平面図である。パッド本体430は、4つの突出部250を備える。突出部450は、ワーク接触部451およびワーク非接触部452を有する。ワーク接触部451の外縁451Xの形状、および、ワーク非接触部452の外縁452Xの形状は、円弧である。外縁451Xの曲率半径、および、外縁452Xの曲率半径は、等しい。第4変形例では、パッド本体430の基部40は、凹部41が省略される。基部40には、パッド本体30を構成する他の要素と結合するためのねじが挿入される貫通孔41Xが形成される。
【0060】
<8―2>
上記実施形態では、パッド本体30の基部40に凹部41が形成され、軸部60の基部61に凸部62が形成されたが、これらの凹凸関係は逆であってもよい。すなわち、パッド本体30の基部40に凸部が形成され、軸部60の基部61に基部40の凸部と噛み合う凹部が形成されてもよい。
【符号の説明】
【0061】
10 :研磨パッド
30、230、330X、430:パッド本体
40 :基部
41 :凹部
50 :突出部
50A :先端部
51 :ワーク接触部
51A :第1部分
51B :第2部分
51X :外縁
52 :ワーク非接触部
52X :外縁
60 :軸部
62 :凸部
70 :治具
80 :上部プレート
82A :上部対向面
82X :凹部
82Y :凸部
90 :下部プレート
92A :下部対向面
92X :凹部
92Y :凸部
300 :ワーク