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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037583
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】無線計測装置
(51)【国際特許分類】
   G08C 17/00 20060101AFI20240312BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20240312BHJP
【FI】
G08C17/00 Z
G08C17/00 A
G01M99/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142510
(22)【出願日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】390000011
【氏名又は名称】JFEアドバンテック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】花村 信幸
(72)【発明者】
【氏名】高田 基樹
【テーマコード(参考)】
2F073
2G024
【Fターム(参考)】
2F073AA01
2F073AA31
2F073AB01
2F073BB01
2F073BC02
2F073CC03
2F073CD11
2F073DD01
2F073DE01
2F073EF08
2F073EF09
2F073FF01
2F073FG02
2F073FG04
2F073GG01
2F073GG09
2G024AD25
2G024BA27
2G024CA13
2G024CA27
2G024DA09
(57)【要約】
【課題】
通信量の制限が大きい通信規格の下でも診断に必要なデータを測定及び送信できる無線計測装置を提供する。
【解決手段】
無線計測装置1は、測定対象設備の測定対象に対して測定を行うセンサー5A~5Dと、センサー5A~5Dから測定信号が入力され、測定信号に対して予め定められた処理を行い、処理結果を予め定められた通信規格に従って無線送信する送信機器11と、送信機器11から送信された処理結果を受信する受信機器21とを備える。送信機器11は、測定信号の時系列データから、予め定められた時間間隔τ毎の波形特徴量を算出するデータ処理部12と、算出された波形特徴量を記憶する記憶部13と、記憶部13に記憶された前記波形特徴量の個数が予め定められた1より大きいTt個に達する度に、当該Tt個の前記波形特徴量をまとめた送信データを受信機器21に対して無線送信する操作を繰り返す通信制御部14とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象設備の測定対象に対して測定を行うセンサーと、
前記センサーから前記測定の結果を示す測定信号が入力され、入力された前記測定信号に対して予め定められた処理を行い、処理結果を予め定められた通信規格に従って無線送信する送信機器と、
前記送信機器から送信された前記処理結果を受信する受信機器と
を備え、
前記送信機器は、
前記測定信号の時系列データから、予め定められた時間間隔τ毎の波形特徴量を算出するデータ処理部と、
算出された前記波形特徴量を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記波形特徴量の個数が予め定められた1より大きいTt個に達する度に、当該Tt個の前記波形特徴量をまとめた送信データを前記受信機器に対して無線送信する操作を繰り返す通信制御部と
を備える、無線計測装置。
【請求項2】
前記受信機器は、前記送信機器の前記通信制御部から繰り返し受信した前記送信データを、前記波形特徴量の時系列順に連続したデータに変換するデータ変換部を備える、請求項1に記載の無線計測装置。
【請求項3】
前記通信規格は、920MHz帯の特定小電力無線である、請求項1又は2に記載の無線計測装置。
【請求項4】
前記送信機器と前記受信機器との間で同時に使用される回線数が1回線であり、前記時間間隔τは29ms以上に設定されている、請求項3に記載の無線計測装置。
【請求項5】
前記Tt個は3個以上61個以下の範囲で設定されている、請求項1又は2に記載の無線計測装置。
【請求項6】
前記データ処理部は、
前記測定信号の時系列データに対して、予め定められた異なる一次変換処理をそれぞれ実施して、異なる一次変換データをそれぞれ得る複数の一次変換処理部と、
前記測定信号の時系列データと、個々の前記一次変換処理部で得られた前記一次変換データとについて、前記時間間隔τ毎の前記波形特徴量を算出する特徴量算出部と
を備える、請求項1又は2に記載の無線計測装置。
【請求項7】
前記測定信号は、振動加速度、振動速度、振動変位、AE、音響、トルク、電流、及び電圧のいずれかである、請求項1又は2に記載の無線計測装置。
【請求項8】
前記複数の一次変換処理部が実施する前記一次変換処理は、フィルタ処理、1回積分、及び2回積分のいずれかである、請求項6に記載の無線計測装置。
【請求項9】
前記特徴量算出部で算出される前記波形特徴量は、RMS値、PEAK値、等価ピーク値、波高率、尖り度、歪度、確率密度、及びE_area値、E_ratio値、変動差、及び変動率のいずれかである、請求項6に記載の無線計測装置。
【請求項10】
前記Tt個、送信する特徴量の種類の数n、前記波形特徴量1個あたりのデータサイズDs(Byte)、及び前記時間間隔τ(秒)は、1回の無線送信に要するヘッダー情報のデータサイズDh(Byte)と通信規格における1時間あたりの信号伝送制限DI(Byte)に対して以下の関係を満たす、請求項1又は2記載の無線伝送装置。
【数1】
【請求項11】
前記測定対象は回転体であり、
前記時間間隔τは、前記回転体の最も短い回転周期の1/25を超えて前記回転体の最も短い回転周期未満の範囲で設定されている、請求項1又は2に記載の無線計測装置。
【請求項12】
前記計測対象設備は移動体設備であり、前記測定対象はレール、車輪、回転機構のうちの少なくとも1つである、請求項1又は2に記載の無線計測装置。
【請求項13】
前記測定対象は前記車輪であり、
前記時間間隔τは、前記移動体設備の移動速度Sm(m/s)と、前記車輪の外周距離Do(m)、前記車輪の回転速度Sr(rpm)に対して以下の関係を満たすように設定される、請求項12に記載の無線計測装置。
【数2】
【請求項14】
前記受信機器は、前記移動体と間欠動作機器の少なくとも一方の動作情報に基づいて、前記センサーによる測定開始を指示するトリガー信号を前記送信機器に送信するトリガー信号送信部を備える、請求項12に記載の無線計測装置。
【請求項15】
前記センサーが複数あり、
前記複数のセンサーで同時に測定を行い、
前記送信機器は、前記複数のセンサーから入力される前記測定信号に対して前記予め定められた処理を行う、請求項1又は2に記載の無線計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
設備診断では設備の振動やAE等を各種センサーで電気信号に変換してデータ処理し、上位機器に保存することでデータの傾向管理や詳細解析に供している。
【0003】
センサー側の機器と上位機器を有線接続する場合、工事費用や配線長限界が問題となる。そのため、近年、センサー側の機器と上位機器を無線接続する設備診断用の無線計測装置も現れてきている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
設備診断用の無線計測装置で利用可能な周波数帯としては、広く使用されている2.4GHz帯に加え、920MHz帯が知られている。920MHz帯は2.4GHz帯と比較すると、通信距離が長く、電波の回り込みによって障害物で遮られた場所でも通信できる可能性が高いという利点がある。また、920MHz帯は2.4GHzのように広く使用されていないため、新たな割り当ての余地(空き)が大きい。
【0005】
しかし、通信速度の点では、2.4GHz帯は数10Mbpsのオーダーであるのに対して、920MHz帯は50kbpsのオーダーである。また、920MHz帯では、法令により、送信時間の総和が無線設備あたり360s/h以下(10%Duty)に規制されている。そして、低い通信速度と送信時間の規制のため、920MHz帯は通信量の制限が大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-115916号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、通信量の制限が大きい通信規格の下でも診断に必要なデータを測定及び送信できる無線計測装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、測定対象設備の測定対象に対して測定を行うセンサーと、前記センサーから前記測定の結果を示す測定信号が入力され、入力された前記測定信号に対して予め定められた処理を行い、処理結果を予め定められた通信規格に従って無線送信する送信機器と、前記送信機器から送信された前記処理結果を受信する受信機器とを備え、前記送信機器は、前記測定信号の時系列データから、予め定められた時間間隔τ毎の波形特徴量を算出するデータ処理部と、算出された前記波形特徴量を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された前記波形特徴量の個数が予め定められた1より大きいTt個に達する度に、当該Tt個の前記波形特徴量をまとめた送信データを前記受信機器に対して無線送信する操作を繰り返す通信制御部とを備える、無線計測装置を提供する。
【0009】
通信制御部は、記憶部に記憶された時間間隔τ毎の波形特徴量がTt個に達する度に当該Tt個の波形特徴量を無線送信する。つまり、送信機器は、連続的な測定データであるセンサーの測定信号の時系列データを、時間間隔τ毎の波形特徴量にまとめて間欠的に無線送信する。そのため、この無線計測装置によれば、通信量の制限が大きい通信規格の下でも診断に必要なデータの測定及び送信が可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の無線計測装置によれば、通信量の制限が大きい通信規格の下でも診断に必要なデータを測定及び送信できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態に係る無線計測装置の模式図。
図2】振動加速度波形、振動加速度の時間間隔τ毎のPEAK値の波形、及び振動加速度波形の時間間隔τ毎のRMS値の波形を示すグラフ。
図3】本発明の第2実施形態に係る無線計測装置の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0013】
(第1実施形態)
図1を参照すると、本発明の第1実施形態の無線計測装置1の測定対象設備は回転機械2である。測定対象であるモータ3に、2個の加速度センサー5A,5Bが取り付けられ、同じく測定対象である負荷4に、それぞれ2個の加速度センサー5C,5Dが取り付けられている。加速度センサー5A,5Bによりモータ3の振動加速度が測定され、加速度センサー5C,5Dによりそれぞれ負荷4の振動加速度が測定される。
【0014】
無線計測装置1は、上述の加速度センサー5A~5Dに加え、送信機器11と受信機器21を備える。
【0015】
送信機器11は加速度センサー5A~5Dの測定結果、つまり振動加速度に対して後に詳述する予め定められたデータ処理を行い、処理結果を受信機器21に送信する。受信機器21は、送信機器11により送信された処理結果を受信する。本実施形態では、送信機器11と受信機器21との間の無線通信は、予め定められた通信規格、具体的には920MHz帯の特定小電力無線通信(以下、単に「920MHz帯無線通信」という。)による。
【0016】
無線計測装置1で採用している920MHz帯無線通信は、広く利用されている2.4GHz帯無線通信との対比において以下の長所がある。まず、通信距離が長い。より具体的には500mから600mの通信距離が期待でき、屋外では1kmの通信距離が見込める場合もある。また、電波の回り込みにより障害物(例えば建物)で遮られた場所でも通信できる可能性が高い。さらに、また、920MHz帯は2.4GHzのように広く使用されていないため、新たな割り当ての余地(空き)が大きい。
【0017】
以上の長所を有するものの、920MHz帯無線通信には以下の短所がある。まず、通信速度が低い。具体的には、1回線の場合の通信速度は50kbpsで、2回線同時使用でも100kbpsである。次に、法令により、送信時間の総和が無線設備あたり360s/h以下(10%Duty)に規制されている。低い通信速度と通信時間の規制のため、920MHz帯無線通信では、通信量が大きく制限される。通信に関するヘッダ情報等を無視した単純計算としても1回線の送信量は2,250kB/h(50kbps×60s×60min÷8bit×0.1)で、2回線同時使用でも4,500kB/h(100kbps×60s×60min÷8bit×0.1)である。そのため、センサー情報の1データが4Byte、サンプリングレートを51.2kS/sとしてデータをそのまま送信する場合、920MHz帯では1回線あたり1時間に約11s分しか送信できない。そのため、この場合、センサーで測定されたすべてのデータを送信することはできず、間欠データの送信となるため、測定対象設備(本実施形態では回転機械2)を適切に監視することができない。
【0018】
本実施形態の無線計測装置1では、後に詳述するように、かかる920MHz帯無線通信における通信量の制限下においても、加速度センサー5A~5Dの測定結果に基づく連続的なデータを送信機器11から受信機器21に送信できる。
【0019】
送信機器11は、アンプ(図示せず)、エイリアシングフィルタ6、A/D変換器7、データ処理部12、記憶部13、及び通信制御部14を備える。データ処理部12は、一次変換処理部15と特徴量算出部16を備える。
【0020】
データ処理部12には、アンプ(図示せず)、エイリアシングフィルタ6、及びA/D変換器7を介して、加速度センサー5A~5Dから測定信号の時系列データ、つまり加速度波形が入力される。本実施形態では、振動加速度のサンプリング周波数は51.2kHzである。データ処理部12は、加速度波形から予め定められた時間間隔τ毎(本実施形態では0.1s毎)の波形特徴量を算出して出力する。以下、本実施形態における時間間隔τ毎の波形特徴量の算出までの詳細を説明する。
【0021】
データ処理部12の一次変換処理部15は、フィルタ処理部15a、1回積分処理部15b、及び2回積分処理部15cを備える。フィルタ処理部15a、1回積分処理部15b、及び2回積分処理部15cには、加速度波形がそれぞれ入力される。
【0022】
フィルタ処理部15aは、加速度波形に対して、ハイパスフィルタ処理(例えば1kHz以上を通過)を行い。加速度波形の高周波成分を強調ないし抽出する。フィルタ処理部15aは、加速度波形に対してフィルタ処理を施した時間波形(図1の符号ACCB)を、特徴量算出部16に出力する。
【0023】
1回積分処理部15bは、加速度波形に対して1回積分処理を行い、加速度波形を速度波形に変換することで、加速度波形の低域周波数成分を強調する。1回積分処理部15bは、加速度波形に対して1回積分処理を施した時間波形、つまり速度波形(図1の符号VEL)を、特徴量算出部16に出力する。
【0024】
2回積分処理部15cは、加速度波形に対して2回積分処理を行い、加速度波形を変位波形に変換することで、加速度波形の低域周波数成分をより強調し、逆に高周波成分を相対的に減衰させる。2回積分処理部15cは、加速度波形に対して2回積分処理を施した時間波形、つまり変位波形(図1の符号DISP)を特徴量算出部16に出力する。
【0025】
データ処理部12の特徴量算出部16には、以下の4種類の時間波形が入力される。
・加速度波形(図1の符号ACCT)、つまり一次変換処理部15での処理がされていない時間波形。
・加速度波形に対してフィルタ処理部15aでフィルタ処理を施した時間波形(図1の符号ACCB)。
・加速度波形に対して1回積分処理部15bで1回積分処理を施した波形、つまり速度波形(図1の符号VEL)。
・加速度波形に対して2回積分処理部15cで2回積分処理を施した波形、つまり変位波形(図1の符号DISP)。
【0026】
特徴量算出部16は、入力された4種類の時間波形のそれぞれについて時間間隔τ毎(本実施形態では0.1s毎)の5種類の波形特徴量を算出し、記憶部13に記憶(バッファリング)する。
【0027】
具体的には、特徴量算出部16は、一次変換処理部15での処理を経ていない加速度波形について、時間間隔τ毎にRMS値を算出し、記憶部13に記憶する(図1の符号ACCT(RMS))。また、特徴量算出部16は、フィルタ処理部15aから入力されたフィルタ処理後の加速度波形について、時間間隔τ毎にRMS値を算出し、記憶部13に記憶する(図1の符号ACCB(RMS))。さらに、特徴量算出部16は、フィルタ処理部15aから入力されたフィルタ処理後の加速度波形について、時間間隔τ毎にPEAK値を算出し、記憶部13に記憶する(図1の符号ACCB(PEAK))。さらにまた、特徴量算出部16は、1回積分処理部15bから入力された速度波形について、時間間隔τ毎にRMS値を算出し、記憶部13に記憶する(図1の符号VEL(RMS))。さらにまた、特徴量算出部16は、2回積分処理部15cから入力された変位波形について、時間間隔τ毎に等価ピーク値を算出し、記憶部13に記憶する(図1の符号DISP(OA))。
【0028】
図2の上段のグラフは、データ処理部12に入力される加速度波形を模式的に示す。また、図2の中段のグラフは、特徴量算出部16から出力されて記憶部13に記憶される、フィルタ処理後の加速度波形の時間間隔τ毎のPEAK値(図1の符号ACCB(PEAK)))、つまり時間間隔τによるPEAK値の波形を模式的に示す。さらに、図2の下段のグラフは、特徴量算出部16から出力されて記憶部13に記憶される、フィルタ処理後の加速度波形の時間間隔τ毎のRMS値(図1の符号ACCB(RMS))、つまり時間間隔τによるRMS値の波形を模式的に示す。
【0029】
通信制御部14は、5種類の時間間隔τ毎の波形特徴量、つまり加速度波形のRMS値(図1の符号ACCT(RMS))、フィルタ処理後の加速度波形のRMS値(図1の符号ACCB(RMS))、フィルタ処理後の加速度波形のPEAK値(図1の符号ACCB(PEAK))、速度波形のRMS値(図1の符号VEL(RMS))、及び変位波形の等価ピーク値(図1の符号DISP(OA))のそれぞれについて、記憶部13に記憶された個数が予め定められた1より大きいTt個に達する度に、当該Tt個の波形特徴量を受信機器21に間欠的にパケット送信する操作を繰り返す。本実施形態では、Tt個は20個である。
【0030】
前述のように、本実施形態の無線計測装置1で採用している920MHz帯無線通信は、通信量が制限されている。しかし、本実施形態では、データ処理部12の特徴量算出部16で0.1sの時間間隔τで波形特徴量(加速度波形についてのRMS値、フィルタ処理後の加速度波形についてのRMS値、フィルタ処理後の加速度波形についてのPEAK値、速度波形についてのRMS値、及び変位波形についての等価ピーク値)を算出している。これは、振動の特徴をなくすことなく、もとの波形、つまり、加速度波形、フィルタ処理部15aで得られるフィルタ処理後の加速度波形、1回積分処理部15bで得られる速度波形、及び変位波形のデータ量を1/5120(51.2kS/sの0.1s分)に圧縮することを意味する。このように、本実施形態の無線計測装置1では、振動の特徴をなくすことなくデータ量を圧縮することで、920MHz帯無線通信における通信量制限下でも、連続したデータ送信を実現している。なお、本実施形態で算出している波形特徴量は例示に過ぎず、測定対象設備に応じて異なる波形特徴量を選択して採取してもよい。
【0031】
さらに詳述すると、バッファリングされる波形特徴量の個数であるTt個、つまり20個を時間換算すると2秒(0.1s×20)となる。従って、各特徴量について1時間あたりのデータ通信するパケット数は1800回/h(3600s÷2s)である。前述のように920MHz帯無線通信における1時間あたりの通信時間の総和は360s/h以下(10%Duty)に制限されているが、1回のパケット通信に要する時間は約0.1s以下であり(時間間隔τに演算される波形特徴量のデータサイズは2Byteであり、20個で40Byteであるから、4種類の波形特徴量を同時に送るとして160Byteである。これに通信のフッターとヘッダーを追加すると約200Byteとなり、920MHzの無線通信レートである50kbpsで通信すると通信時間は約32ms)、1時間あたりにパケット通信に要する時間は約180s以下(180回/h×0.1s)であるので、10%Dutyの制約下でも連続したデータ送信が可能である。
【0032】
受信機器21は、通信制御部22、記憶部23、データ変換部24、及びトリガー信号生成部25を備える。
【0033】
受信機器21の通信制御部22は、送信機器11の通信制御部14から送信されるTt個の波形特徴量のパケットを繰り返し受信し、受信したパケットデータを記憶部23に記憶する。
【0034】
データ変換部24は、記憶部23に記憶されたパケットデータを、つまり加速度波形の時間間隔τ毎のRMS値、フィルタ処理後の加速度波形の時間間隔τ毎のRMS値、フィルタ処理後の加速度波形の時間間隔τ毎のPEAK値、速度波形の時間間隔τ毎のRMS値、及び変位波形の時間間隔τ毎の等価ピーク値から選択された4種類の時系列データをそれぞれ結合する。データ変換部24で生成された時系列データは、記憶部23に記憶され、分析に供される。データ変換部24での時系列データの生成の対象となる波形特徴量は4種類に限定されない。
【0035】
トリガー信号生成部25は、例えば回転機器2の運転状態に関する情報に基づいて、測定開始を指定するトリガー信号を生成し、生成されたトリガー信号は、通信制御部22により、送信機器11に送信される。トリガー信号を受信した送信機11は、加速度センサー5A~5Dによる測定を開始する。
【0036】
本実施形態に係る無線計測装置1は、以下の特徴を有する。
【0037】
送信機器11が受信機器21からのトリガー信号により測定開始をするトリガー機能を有するので、モータ3が間欠動作する場合でもモータ3が動作するタイミングで確実に測定を行うことができる。
【0038】
上述のように、920MHz帯の周波数を用いることによって、送信機器11から受信機器21に送信する情報量が制限されるが、送信機器11において、測定したデータを測定対象設備である回転機械2の動作状態を示す信号の特徴を残しつつデータ量を減らし一定量のデータをバッファリングしてパケット送信し、受信機器21においてパケットデータを時系列データとすることにより、データ量と通信回数の削減しつつ各センサーの波形特徴量の時系列データを得ることができる。
【0039】
データ処理部12の一次変換処理部15において加速度波形を速度や変位に変化することで、データ量を減らした分の信頼性を補完できる。
【0040】
同時に4か所の連続測定データの測定と比較が可能であり、4つの加速度センサー5A~5Dそれぞれの測定箇所について、同一時間における測定データの比較も可能である。
【0041】
本実施形態では、時間間隔τは、モータ3の最も短い回転周期の1/25を超えてモータ3の最も短い回転周期未満の範囲で設定することが好ましい。このように設定することで、通信するデータ量を大幅に低減しつつ、モータ3や負荷4の詳細な連続データを測定でき、異常をより高精度に検出できる。
【0042】
送信機器11と受信機器21との間で同時に使用される回線数が1回線である場合、時間間隔τは計算上29ms以上に限定される。以下、この点について説明する。前述のように、1回線の送信量は2,250kB/h(50kbps×60s×60min÷8bit×0.1)、1個のデータが2Byteであり、4つの加速度センサーから演算された各5種類の特徴量から4種類の特徴量を選択し、通信に必要なヘッダー情報が10Byteであるとすると、1時間に送信機器11から受信機器21に送ることができるデータ個数は、125,000個であり(2,250,000Byte÷(2Byte×4+10Byte))、1秒に送ることができるデータ(パケット)個数は34.7個である(125,000個÷3,600s)。そして、この34.7個の逆数が約0.029sである。
【0043】
一般に、Tt個、送信する特徴量の種類の数n、波形特徴量1個あたりのデータサイズDs(Byte)、及び時間間隔τは、1回の無線送信に要するヘッダー情報のデータサイズDh(Byte)と通信規格における1時間あたりの信号伝送制限DI(Byte)に対して以下の式(1)の関係を満たすように設定する必要がある。
【0044】
【数1】
【0045】
Tt個は、上記式(1)を満たすように、3個以上61個以下の範囲で設定するのが好ましい。
【0046】
(第2実施形態)
次に、図3に示す本発明の第2実施形態を説明する。本実施形態に関する説明で特に言及しない点は、第1実施形態と同様である。また、図3において、図1と同一ないし同様の要素には、同一の符号を付している。
【0047】
本実施形態の無線計測装置1の測定対象設備は移動体設備32である。測定対象である移動体33の車輪34A,34B毎に、振動測定のための加速度センサー35A,35Bが設けられている。レール36も測定対象とし、振動測定のための加速度センサーを設けてもよい。また、移動体33が備えるモータ等の回転機構も測定対象とし、振動測定のための加速度センサーを設けてもよい。
【0048】
本実施形態では、時間間隔τ(s)は、移動体33の移動速度Sm(m/s)と、車輪34A,34Bの外周距離Do(m)、車輪34A,34Bの回転速度Sr(rpm)に対して以下の式(2)の関係を満たすように設定される。
【0049】
【数2】
【0050】
時間間隔τ(s)をこのように設定することで、車輪34A,34Bの異常をより高精度で判断できる。
【0051】
2個の加速度センサー35A,35Bで同時に測定することで、2個の車輪34A,34B間の比較測定が可能である。一つの送信機器11に入力される2個のセンサー35A,35Bからのセンサー信号について、AD変換器7で0.025msec以下の時間精度で同時にサンプリング測定を行い、それぞれのセンサー信号の波形データから得られた波形特徴量を比較することで車輪34A,34Bの異常を高精度で診断できる。また、同時にサンプリング測定を行うセンサーに前述のようにレール36に設けたセンサーを加えることでレールの異常も高精度で診断できる。
【0052】
送信機器11から受信機器21に送信されるのは、データを圧縮した測定結果であるが、振動の大小をとらえることができ、複数の波形特徴量を比較することで突発的な振動なのか常態的に発生しているものなのかの検出が可能である。例えば、例えば、レール36の振動検出のための加速度センサーを設けた場合、レール36の上に異物があったり、レール36自体に亀裂があった場合、それを車輪34A,34Bが乗り越えることで振動が発生するが、そういった原因のものでも、兆候をとらえることが可能である。
【0053】
本発明は、実施形態に限定されず、種々の変形が可能である。
【0054】
また、測定信号は、実施形態のような振動加速度に限定されず、振動速度、振動変位、AE、音響、トルク、電流、及び電圧のいずれかであってもよい。
【0055】
また、波形特徴量は、実施形態のようなRMS値、PEAK値、センサー出力の積分値、及び等価ピーク値に限定されず、等価ピーク値、波高率、尖り度、歪度、確率密度、E_area値、E_ratio値、変動差、及び変動率のいずれかであってもよい。E_area値は特許第5143863号に、E_ratio値は特許第4874406号開示されている、AE信号から演算する軸受診断の特徴量である。
【0056】
同時に測定するセンサーの数は2個に限定されず、3個以上であってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 無線計測装置
2 回転機械(測定対象設備)
3 モータ(測定対象)
4 負荷(測定対象)
5A,5B,5C,5D 加速度センサー
6 フィルタ
7 A/D変換器
11 送信機器
12 データ処理部
13 記憶部
14 通信制御部
15 一次変換処理部
15a フィルタ処理部
15b 1回積分処理部
15c 2回積分処理部
16 特徴量算出部
21 受信機器
22 通信制御部
23 記憶部
24 データ変換部
25 トリガー信号生成部
32 移動体設備(測定対象設備)
33 移動体
34A,34B 車輪(測定対象)
35A,35B 加速度センサー
36 レール
図1
図2
図3