(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037589
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】車両の運転支援装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/095 20120101AFI20240312BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240312BHJP
B60W 40/06 20120101ALI20240312BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240312BHJP
G06V 10/70 20220101ALI20240312BHJP
【FI】
B60W30/095
G08G1/16 C
B60W40/06
G06T7/00 650A
G06V10/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142522
(22)【出願日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 玲央
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 聖也
(72)【発明者】
【氏名】倉持 拓明
(72)【発明者】
【氏名】間庭 宏貴
(72)【発明者】
【氏名】宗村 亘
(72)【発明者】
【氏名】向井 成樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和志
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
5L096
【Fターム(参考)】
3D241BA31
3D241CC02
3D241CC08
3D241CC17
3D241CD09
3D241CE06
3D241DA13Z
3D241DA23Z
3D241DA39Z
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DB12Z
3D241DC33Z
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181LL01
5H181LL09
5L096BA04
5L096FA02
5L096FA66
5L096FA69
(57)【要約】
【課題】道路上に複数のリスク領域が存在する場合にも、各リスク領域に対して最適な回避経路を策定することができる車両の運転支援装置を提供する。
【解決手段】運転支援装置1は、走行_ECU14において、複数の小物体を包含するリスク領域Arを設定し、リスク領域Ar内における小物体の分布状態に基づいてリスク領域ArのリスクレベルLを設定し、リスク領域Arから受けるリスクを回避するための経路候補Riを複数パターン設定し、経路候補Ri毎に経路評価値Esumを算出し、経路評価値Esumが最適となる経路候補Riを自車走行経路(回避経路)として設定する。その際、走行_ECU14は、経路候補Riに沿って移動する自車両Mの位置を設定距離x毎に算出し、自車両Mがリスク領域Arを通過する位置に存在する毎に、リスク領域ArのリスクレベルLに応じて経路評価値Esumを減少させる。
【選択図】
図17
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の前方に存在する物体を認識する物体認識手段と、
前記物体の周囲に複数の小物体が存在するとき、前記複数の小物体を包含するリスク領域を設定するリスク領域設定手段と、
前記リスク領域内における前記小物体の分布状態に基づいて前記リスク領域のリスクレベルを設定するリスクレベル設定手段と、
前記リスク領域から受けるリスクを回避するための経路候補を複数パターン設定する経路候補設定手段と、
前記経路候補毎に経路評価値を算出する経路評価値算出手段と、
前記経路評価値が最適となる前記経路候補を自車走行経路として設定する自車走行経路設定手段と、を備え、
前記経路評価値算出手段は、前記経路候補に沿って移動する前記自車両の位置を設定距離毎に算出し、前記自車両が前記リスク領域を通過する位置に存在する毎に、前記リスク領域の前記リスクレベルに応じて前記経路評価値を減少させることを特徴とする車両の運転支援装置。
【請求項2】
前記経路評価値算出手段は、前記リスク領域が複数存在する場合には互いの前記リスク領域を結ぶ最短直線を設定し、前記自車両が前記最短直線を通過する位置に存在する毎に前記経路評価値を増加させることを特徴とする請求項1に記載の車両の運転支援装置。
【請求項3】
前記経路評価値算出手段は、前記経路候補について前記設定距離毎に傾きを算出し、前記設定距離毎の前記傾きの合算値が大きいほど前記経路評価値を減少させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両の運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車前方のリスク領域をリアルタイムで認識してドライバの運転支援を行う車両の運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両においては、ドライバの運転操作の負担を軽減するとともに、安全性の向上を実現することを目的として、ドライバの運転操作を支援するための運転支援装置が実用化されている。この運転支援装置による運転支援制御は、基本的には、追従車間距離制御(ACC:Adaptive Cruise Control)機能と車線中央維持(ALKC:Active Lane Keep Centering)制御機能等とを備えることによって実現される。
【0003】
このような運転支援制御を実現するためには、自車両の走行環境情報をリアルタイムで認識する必要がある。自車両の走行環境情報には、一般に、自車走行路上を走行する先行車情報の他、自車両と衝突する可能性がある停止車両等のような、自車両に対して所定のリスクを有する物体の情報(以下、「リスク情報」と称する)が含まれる。
【0004】
従って、運転支援制御をより安全に行うためには、走行環境情報に含まれるリスク情報をより詳細に認識することが望ましい。例えば、リスク情報については、自車両と衝突する可能性の高い物体のみならず、車輪のスリップやバースト等を誘発するような物体についても認識することが望ましい。これに対し、例えば、特許文献1には、赤外線サーモグラフィからの第1の検出情報が入力され、且つ、道路の路面が平坦性のある路面であることを検出するレーダ部又はソナー部からの第2の検出情報が入力されると共に、第1の検出情報に基づいて所定面積以上の凍結領域が検出され、且つ、凍結領域が第2の検出情報に基づいて検出された平坦性がある路面上に存在するときに、凍結路面領域についての情報を表示部に表示する車両用表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、例えば、路面上に複数のリスク情報が存在する場合において、安全且つ乗員に違和感の少ない運転支援制御を行うためには、自車両が各リスク領域から受ける影響を抑制しつつ、過剰な操舵介入の少ない自然な回避経路を策定する必要がある。
【0007】
しかしながら、各リスク領域が自車両に及ぼすリスクは一様でなく、しかも、道路上における各リスク領域の配置も様々である。従って、道路上に複数のリスク領域が存在する場合に、各リスク領域に対して最適な回避経路を一義的に策定することは困難となる。
【0008】
本発明は、道路上に複数のリスク領域が存在する場合にも、各リスク領域に対して最適な回避経路を策定することができる車両の運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様による車両の運転支援装置は、自車両の前方に存在する物体を認識する物体認識手段と、前記物体の周囲に複数の小物体が存在するとき、前記複数の小物体を包含するリスク領域を設定するリスク領域設定手段と、前記リスク領域内における前記小物体の分布状態に基づいて前記リスク領域のリスクレベルを設定するリスクレベル設定手段と、前記リスク領域から受けるリスクを回避するための経路候補を複数パターン設定する経路候補設定手段と、前記経路候補毎に経路評価値を算出する経路評価値算出手段と、前記経路評価値が最適となる前記経路候補を自車走行経路として設定する自車走行経路設定手段と、を備え、前記経路評価値算出手段は、前記経路候補に沿って移動する前記自車両の位置を設定距離毎に算出し、前記自車両が前記リスク領域を通過する位置に存在する毎に、前記リスク領域の前記リスクレベルに応じて前記経路評価値を減少させるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の車両の運転支援装置によれば、道路上に複数のリスク領域が存在する場合にも、各リスク領域に対して最適な回避経路を策定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】ステレオカメラ及びレーダの監視領域を示す説明図
【
図3】自車両の目標進行路に存在する障害物を示す説明図
【
図4】積み荷が落下した際の物体の散乱状況の一例を示す説明図
【
図5】散乱物によるエッジの度数分布と外接円との関係を例示する説明図
【
図6】路上の散乱物によって形成されたリスク領域を例示する説明図
【
図7】道路上に設定されたリスク領域の分布を例示する説明図
【
図8】リスク領域内に設定される小領域を例示する説明図
【
図9】リスク領域内の各小領域と高さ情報の乱雑さとの関係を例示する特性図
【
図10】リスク領域内の各小領域と高さ情報の最大値との関係を例示する特性図
【
図11】リスク領域内の各小領域と高さ情報の乱雑さとの関係の経時変化を例示する特性図
【
図13】経路候補に対する評価値の算出方法を示す説明図
【
図14】リスク領域設定ルーチンを示すフローチャート
【
図15】リスクレベル設定ルーチンを示すフローチャート(その1)
【
図16】リスクレベル設定ルーチンを示すフローチャート(その2)
【
図17】自車走行経路設定ルーチンを示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に図面を参照しながら、本発明の一態様の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明に用いる図においては、各構成要素を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、構成要素毎に縮尺を異ならせてあるものである。従って、本発明は、これらの図に記載された構成要素の数量、構成要素の形状、構成要素の大きさの比率、および各構成要素の相対的な位置関係のみに限定されるものではない。
【0013】
図1,2に示すように、運転支援装置1は、例えば、車両(自車両)Mの車室内の前部且つ上部の中央に固定されたカメラユニット10を有する。
【0014】
このカメラユニット10は、ステレオカメラ11と、画像処理ユニット(IPU)12と、画像認識ユニット(画像認識_ECU)13と、走行制御ユニット(走行_ECU)14と、を有して構成されている。
【0015】
ステレオカメラ11は、メインカメラ11aと、サブカメラ11bと、を有する。メインカメラ11a及びサブカメラ11bは、例えば、CMOS等の撮像素子を有して構成されている。これら、メインカメラ11a及びサブカメラ11bは、車幅方向の中央を挟んで左右対称な位置に配置されている。
【0016】
メインカメラ11a及びサブカメラ11bは、車外前方の領域Af(
図2参照)の走行環境を異なる視点からステレオ撮像する。これらメインカメラ11a及びサブカメラ11bの撮像周期は、互いに同期されている。
【0017】
IPU12は、ステレオカメラ11によって撮像した走行環境画像を所定に画像処理する。これにより、IPU12は、画像上に表された立体物や路面上の区画線等の各種対象のエッジを検出する。そして、IPU12は、左右の画像上において対応するエッジの位置ズレ量から距離情報を求める。これにより、IPU12は、距離情報を含む画像情報(距離画像情報)を生成する。
【0018】
画像認識_ECU13は、IPU12から受信した距離画像情報などに基づき、自車両Mが走行する車線(自車進行路)の左右を区画する区画線の道路曲率〔1/m〕、及び左右区画線間の幅(車線幅)を求める。また、画像認識_ECU13は、自車両Mが走行する車線に隣接する車線等の左右を区画する区画線の道路曲率及び左右区画線間の幅についても求める。これらの道路曲率及び車線幅の求め方は種々知られている。例えば、画像認識_ECU13は、距離画像上の各画素に対して輝度に基づく二値化処理を行う。これにより、画像認識_ECU13は、道路上の区画線候補点を抽出する。また、画像認識_ECU13は、抽出した区画線候補点の点列に対し、最小二乗法等を用いた曲線近似を行う。これにより、画像認識_ECU13は、左右区画線の曲率を所定区間毎に求める。さらに、画像認識_ECU13は、左右両区画線の曲率の差分から車線幅を算出する。
【0019】
また、画像認識_ECU13は、距離画像情報に対して所定のパターンマッチングなどを行う。これにより、画像認識_ECU13は、道路に沿って延在するガードレール、縁石、中央分離帯、及び、周辺車両等の立体物を含む各種物体の認識を行う。ここで、画像認識_ECU13における立体物の認識では、例えば、物体の種別、物体までの距離、物体の速度、物体と自車両Mとの相対速度などの認識が行われる。
【0020】
これらの物体には、自車両Mとの衝突回避制御の対象外となる小物体(例えば、自車両Mの最低地上高未満の小物体)も含まれる。但し、メインカメラ11a及びサブカメラ11bの解像度や画像認識_ECU13の処理能力等の要因に基づき、画像認識_ECU13において認識される小物体は所定に制限される。具体的には、本実施形態の画像認識_ECU13では、所定の大きさ未満の小物体(微小物体)の認識が制限される。ここで、道路上において認識される小物体としては、例えば、トラック等から落下した積み荷の散乱物等が想定される。
【0021】
これら画像認識_ECU13において認識された物体等の各種情報は、走行環境情報として走行_ECU14に出力される。
【0022】
このように、本実施形態において、画像認識_ECU13は、ステレオカメラ11及びIPU12とともに、物体認識手段としての一具体例に相当する。
【0023】
走行_ECU14は、運転支援装置1を統括制御するための制御ユニットである。
【0024】
この走行_ECU14には、各種の制御ユニットとして、コックピット制御ユニット(CP_ECU)21と、エンジン制御ユニット(E/G_ECU)22と、トランスミッション制御ユニット(T/M_ECU)23と、ブレーキ制御ユニット(BK_ECU)24と、パワーステアリング制御ユニット(PS_ECU)25と、がCAN(Controller Area Network)等の車内通信回線を介して接続されている。
【0025】
さらに、走行_ECU14には、各種のセンサ類として、ロケータユニット36と、左前側方センサ37lfと、右前側方センサ37rfと、左後側方センサ37lrと、右後側方センサ37rrと、が接続されている。
【0026】
CP_ECU21には、運転席の周辺に配設されたヒューマン・マシーン・インターフェース(HMI)31が接続されている。HMI31には、例えば、各種の運転支援制御の設定及び実行等を行うための操作スイッチ、運転支援モードの切り換えを行うためのモード切換スイッチ、ドライバの保舵状態を検出するステアリングタッチセンサ、ターンシグナルスイッチ、ドライバの顔認証や視線検出等を行うドライバモニタリングシステム(DMS)、タッチパネル式のディスプレイ、コンビネーションメータ、及び、スピーカ等が含まれる。
【0027】
CP_ECU21は、走行_ECU14からの制御信号を受信すると、先行車等に対する各種警報、運転支援制御の実施状況、及び、自車両Mの走行環境等に関する各種情報を、HMI31を通じた表示や音声等により、ドライバに適宜報知する。
【0028】
また、CP_ECU25は、HMI31を通じてドライバにより入力された各種運転支援制御に対するオンまたはオフ操作状態、自車両Mに対する設定車速(セット車速)Vs、ターンシグナルスイッチの操作状態等の各種入力情報を、走行_ECU14に出力する。
【0029】
E/G_ECU22の出力側には、電子制御スロットルのスロットルアクチュエータ32等が接続されている。また、E/G_ECU22の入力側には、図示しないアクセルセンサ等の各種センサ類が接続されている。
【0030】
E/G_ECU22は、走行_ECU14からの制御信号或いは各種センサ類からの検出信号等に基づき、スロットルアクチュエータ32に対する駆動制御を行う。これにより、E/G_ECU22は、エンジンの吸入空気量を調整し、所望のエンジン出力を発生させる。また、E/G_ECU22は、各種センサ類において検出されたアクセル開度等の信号を、走行_ECU14に出力する。
【0031】
T/M_ECU23の出力側には、油圧制御回路33が接続されている。また、T/M_ECU23の入力側には、図示しないシフトポジションセンサ等の各種センサ類が接続されている。T/M_ECU23は、E/G_ECU22において推定されたエンジントルク信号や各種センサ類からの検出信号等に基づき、油圧制御回路33に対する油圧制御を行う。これにより、T/M_ECU23は、自動変速機に設けられている摩擦係合要素やプーリ等を動作させ、エンジン出力を所望の変速比にて変速する。また、T/M_ECU23は、各種センサ類において検出されたシフトポジション等の信号を、走行_ECU14に出力する。
【0032】
BK_ECU24の出力側には、ブレーキアクチュエータ34が接続されている。ブレーキアクチュエータ34は、各車輪に設けられているブレーキホイールシリンダに出力するブレーキ液圧を各々調整する。また、BK_ECU24の入力側には、図示しないブレーキペダルセンサ、ヨーレートセンサ、前後加速度センサ、及び、車速センサ等の各種センサ類が接続されている。
【0033】
BK_ECU24は、走行_ECU14からの制御信号或いは各種センサ類からの検出信号に基づき、ブレーキアクチュエータ34に対する駆動制御を行う。これにより、BK_ECU24は、自車両Mに対する強制的な制動制御やヨーレート制御等を行うためのブレーキ力を各車輪に適宜発生させる。また、BK_ECU24は、各種センサにおいて検出されたブレーキ操作状態、ヨーレート、前後加速度、及び、車速(自車速)V等の信号を、走行_ECU14に出力する。
【0034】
PS_ECU25の出力側には、電動パワステモータ35が接続されている。電動パワステモータ35は、モータの回転力による操舵トルクをステアリング機構に付与する。また、PS_ECU25の入力側には、操舵トルクセンサや舵角センサ等の各種センサ類が接続されている。
【0035】
PS_ECU25は、走行_ECU14からの制御信号或いは各種センサ類からの検出信号に基づき、電動パワステモータ35に対する駆動制御を行う。これにより、PS_ECU25は、ステアリング機構に対する操舵トルクを発生させる。また、PS_ECU25は、各種センサにおいて検出された操舵トルク、及び、舵角等の信号を、走行_ECU14に出力する。
【0036】
ロケータユニット36は、GNSSセンサ36aと、高精度道路地図データベース(道路地
図DB)36bと、受信器36cと、を有して構成されている。
【0037】
GNSSセンサ36aは、複数の測位衛星から発信される測位信号を受信することにより、自車両Mの位置(緯度、経度、高度等)を測位する。
【0038】
道路地
図DB36bは、HDDなどの大容量記憶媒体である。この道路地
図DB36bには、高精度な道路地図情報(ダイナミックマップ)が記憶されている。道路地図情報には、例えば、自動運転を行う際に必要とする車線データとして、車線幅データ、車線中央位置座標データ、車線の進行方位角データ、制限速度データなどが含まれる。車線データは、道路地図上の各車線に、数メートル間隔で格納されている。道路地
図DB36bは、例えば、走行_ECU14からの要求信号に基づき、GNSSセンサ36aにおいて測位された自車位置を基準とする設定範囲の道路地図情報を、走行環境情報として走行_ECU14に出力する。
【0039】
受信器36cは、例えば、路車間通信により、道路交通情報通信システム(VICS(登録商標):Vehicle Information Communication System)等から送信される各種の交通情報を受信する。受信器36cが受信する交通情報には、例えば、渋滞情報、事故や天候等による道路の規制情報等が含まれている。
【0040】
左前側方センサ37lf及び右前側方センサ37rfは、例えば、ミリ波レーダによって構成されている。これら左前側方センサ37lf及び右前側方センサ37rfは、例えば、フロントバンパの左右側部にそれぞれ配設されている。左前側方センサ37lf及び右前側方センサ37rfは、ステレオカメラ11の画像では認識することが困難な自車両Mの左右斜め前方及び側方の領域Alf、Arf(
図2参照)に存在する立体物を走行環境情報として検出する。
【0041】
左後側方センサ37lr及び右後側方センサ37rrは、例えば、ミリ波レーダによって構成されている。これら左後側方センサ37lr及び右後側方センサ37rrは、例えば、リアバンパの左右側部にそれぞれ配設されている。左後側方センサ37lr及び右後側方センサ37rrは、左前側方センサ37lf及び右前側方センサ37rfでは認識することが困難な自車両Mの左右斜め側方及び後方の領域Alr、Arr(
図2参照)に存在する立体物を走行環境情報として検出する。
【0042】
ここで、各レーダがミリ波レーダにより構成されている場合、ミリ波レーダは、出力した電波に対し、物体からの反射波を解析することにより、主として併走車及び後続車等の立体物を検出する。具体的には、各レーダは、立体物に関する情報として、立体物の横幅、立体物の代表点の位置(自車両Mとの相対位置)、及び、速度等を検出する。
【0043】
なお、画像認識_ECU13、ロケータユニット36、左前側方センサ37lf、右前側方センサ37rf、左後側方センサ37lf、及び、右後側方センサ37rrにおいてそれぞれ認識された走行環境情報に含まれる車外の各対象の座標は、何れも、走行_ECU14において、例えば、自車両Mの中心を原点とする三次元座標系(
図2参照)の座標に変換される。
【0044】
走行_ECU14には、運転モードとして、手動運転モードと、第1の走行制御モード及び第2の走行制御モードと、退避モードと、が設定されている。これらの各運転モードは、例えば、HMI31に設けられているモード切換スイッチに対する操作状況等に基づき、走行_ECU14において選択的に切換可能となっている。
【0045】
ここで、手動運転モードは、ドライバによる保舵を必要とする運転モードである。すなわち、手動運転モードは、例えば、ドライバによるステアリング操作、アクセル操作およびブレーキ操作などの運転操作に従って、自車両Mを走行させる運転モードである。
【0046】
第1の走行制御モードも同様に、ドライバによる保舵を必要とする運転モードである。すなわち、第1の走行制御モードは、ドライバによる運転操作を反映しつつ、自車両Mを走行させる、いわば半自動運転モードである。この第1の走行制御モードは、例えば、走行_ECU14が、E/G_ECU22、BK_ECU24、及び、PS_ECU25に対して各種制御信号を出力することにより実現される。第1の走行制御モードでは、主として、追従車間距離制御(ACC:Adaptive Cruise Control)、車線中央維持制御(ALKC:Active Lane Keep Centering)、及び、車線逸脱抑制制御(ALKB:Active Lane Keep Bouncing)等が適宜組み合わせて行われる。これにより、自車両Mは、目標走行経路Rmに沿って走行することが可能となっている。
【0047】
ここで、追従車間距離制御は、基本的には、画像認識_ECU13等から入力される走行環境情報に基づいて行われる。
【0048】
具体的に説明すると、走行_ECU14は、例えば、画像認識_ECU13等において自車両Mの前方に先行車が認識されている場合には、追従車間距離制御の一環として追従走行制御を行う。この追従走行制御において、走行_ECU14は、先行車の車速Vl等に基づいて、目標車間距離Lt及び目標車速Vtを設定する。そして、走行_ECU14は、目標車間距離Lt及び目標車速Vtに基づいて、自車両Mに対する加減速制御を行う。これにより、走行_ECU14は、基本的には、車間距離Lを目標車間距離Ltに維持しつつ、車速Vを目標車速Vtに維持した状態にて、自車両Mを先行車に追従して走行させる。
【0049】
一方、走行_ECU14は、例えば、画像認識_ECU14等において自車両Mの前方に先行車が認識されていない場合には、追従車間距離制御の一環として定速走行制御を行う。この定速走行制御において、走行_ECU14は、ドライバにより入力された設定車速Vsを目標車速Vtとして設定する。そして、走行_ECU14は、目標車速Vtに基づいて、自車両Mに対する加減速制御を行う。これにより、走行_ECU14は、自車両Mの車速Vを設定車速Vsに維持する。
【0050】
また、車線中央維持制御および車線逸脱抑制制御は、基本的には、画像認識_ECU13及びはロケータユニット36のうちの少なくとも何れか一方から入力される走行環境情報に基づいて行われる。すなわち、走行_ECU14は、例えば、走行環境情報に含まれる車線区画線情報等に基づき、自車走行車線の中央に、左右の車線区画線に沿った目標進行路Rmを設定する。そして、走行_ECU14は、目標進行路Rmに基づき、操舵に対するフィードフォワード制御及びフィードバック制御等を行うことにより、自車両Mを車線中央に維持する。また、走行_ECU14は、横風や道路のカント等の影響により、自車両Mが自車走行車線を逸脱する可能性が高いと判断したとき、強制的な操舵制御により車線逸脱を抑制する。
【0051】
第2の走行制御モードとは、ドライバによる保舵、アクセル操作およびブレーキ操作を必要とすることなく、自車両Mを走行させる運転モードである。すなわち、第2の走行制御モードは、ドライバによる運転操作を必要とすることなく、自車両Mを自律走行させる、いわば自動運転モードである。この第2の走行制御モードは、例えば、走行_ECU14が、E/G_ECU22、BK_ECU24、及び、PS_ECU25に対して各種制御信号を出力することにより実現される。第2の走行制御モードでは、主として、先行車追従制御と、車線中央維持制御および車線逸脱抑制制御等が適宜組み合わせて行われる。これにより、自車両Mは、目標ルート(ルート地図情報)に従って走行することが可能となっている。
【0052】
退避モードは、自車両Mを路側帯などに自動的に停止させるためのモードである。この退避モードは、例えば、第2の走行制御モードによる走行中に、当該モードによる走行が継続不能となり、且つ、ドライバに運転操作を引き継ぐことができなかった場合(すなわち、手動運転モード、または、第1の走行制御モードに遷移できなかった場合)に実行される。
【0053】
また、走行_ECU14は、上述の各運転モードにおいて、自車両Mと衝突する可能性の高い車両等の障害物に対し、適宜、緊急回避制御を行う。この緊急回避制御には、例えば、緊急ブレーキ制御(AEB:Autonomous Emergency Braking)と、緊急操舵制御と、が含まれる。
【0054】
緊急ブレーキ制御は、基本的には、自車両Mの目標進行路Rm上の前方に存在する停止車両等の障害物との衝突を、制動によって回避するための制御である。緊急ブレーキ制御に際し、走行_ECU14は、例えば、
図3に示すように、自車両Mの前方に、目標進行領域Amを設定する。この目標進行領域Amは、目標進行路Rmを中心とする所定幅(例えば、自車両Mの車幅以上)を有する。また、走行_ECU14は、走行環境情報に基づき、目標進行領域Am上に存在する先行車や停止車両等の障害物を検出する。さらに、走行_ECU14は、障害物に対する衝突予測時間TTCを算出する。この衝突予測時間TTCは、自車両Mと障害物との相対速度及び相対距離に基づいて算出される。
【0055】
そして、走行_ECU14は、衝突予測時間TTCが予め設定された第1の閾値Tth1よりも小さくなったとき、一次ブレーキ制御を実行する。一次ブレーキ制御が開始されると、走行_ECU14は、予め設定された第1の目標減速度a1(例えば、0.4G)を用いて自車両Mを減速させる。
【0056】
さらに、走行_ECU14は、衝突予測時間TTCが予め設定された第2の閾値Tth2(但し、Tth2<Tth1)よりも小さくなったとき、二次ブレーキ制御を実行する。二次ブレーキ制御が開始されると、走行_ECU14は、予め設定された第2の目標減速度a2(例えば、1G)を用いて、障害物との相対速度が「0」となるまで自車両Mを減速させる。
【0057】
緊急操舵制御は、自車両Mの目標進行路上の前方に存在する障害物との衝突を、操舵によって回避するための制御である。走行_ECU14は、例えば、二次ブレーキ制御によって障害物との衝突を回避できないと判断されたとき、緊急ブレーキ制御に代えて或いは緊急ブレーキ制御と併用して緊急操舵制御を実行する。
【0058】
具体的には、走行_ECU14は、衝突予測時間TTCが予め設定された第3の閾値Tth3(但し、Tth3<Tth2)よりも小さくなったとき、緊急操舵制御を実行する(例えば、
図3中の自車両M'参照)。
【0059】
この緊急操舵制御に際し、走行_ECU14は、障害物の側方に目標横位置を設定する。また、走行_ECU14は、自車両Mを目標横位置に到達させるまでの新たな目標進行路Ravoを設定する。この新たな目標進行路Ravoは、例えば、自車両Mを障害物の側方に回避させるための切り増し区間と、自車両Mの姿勢を自車走行路に沿う方向に回復させるための切り戻し区間と、に分割して設定される。そして、走行_ECU14は、新たな目標進行路Ravoに沿った操舵制御を実行する。
【0060】
なお、走行_ECU14は、自車両Mに対する障害物の車幅方向のラップ率に応じて、第1~第3の閾値Tth1~Tth3を、それぞれ可変に設定することも可能である。このラップ率Rrは、例えば、目標進行領域Amに対する障害物の侵入量に基づいて算出される。そして、走行_ECU14は、例えば、予め設定されたマップ等を用いて、ラップ率Rrが高くなるほど、第1~第3の閾値Tth1~Tth3が大きくなるように設定する。
【0061】
さらに、走行_ECU14は、例えば、緊急回避制御における拡張制御として、自車両Mの安定的な走行を阻害するリスクがある物体(リスク物体)に対する回避制御を行う。ここで、本実施形態のリスク物体には、例えば、トラックから道路上に落下した積み荷等の散乱物が該当する。このような散乱物は、例えば、自車両Mの最低地上高よりも低い高さの物体である場合、基本的には自車両Mとの衝突回避制御の制御対象から除外される。その一方で、散乱物が道路上に大量に存在する場合、当該散乱物は、自車両Mの安定的な走行を阻害するリスクを有する場合がある。例えば、道路上に大量に存在する散乱物は、自車両Mの車輪のスリップやバースト等を誘発するリスクを有する場合がある。そこで、走行_ECU14は、散乱物等のリスク物体に対する回避制御を行う。
【0062】
リスク物体に対する回避制御に際し、走行_ECU14は、画像認識_ECU13において認識された各種物体の中から、自車両Mの前方に存在する所定の大きさ以上の物体(所定の高さ以上の物体)を抽出する。なお、本実施形態において、この物体の抽出対象からは、例えば、パターンマッチング等によって認識された車両等の物体は除外される。また、走行_ECU14は、抽出した物体の周囲において、輝度値が分散する路面上の領域を抽出する。そして、走行_ECU14は、抽出した輝度値の分散領域を内包する領域を、散乱物等の小物体が分布するリスク領域Arとして設定する。
【0063】
具体的に説明すると、例えば、
図4に示すように、散乱物の多くは、トラック等に積載された積み荷が道路上に落下することによって発生する。このような積み荷の多くは、段ボール箱等の梱包容器に梱包された状態で落下し、落下の衝撃によって道路上に散乱する。このような積み荷の散乱の起点となる梱包容器等は、通常、所定以上の大きさ(高さ)を有する。このため、梱包容器等は、画像認識_ECU13においても物体として十分に認識され得る。そこで、走行_ECU14は、例えば、走行環境情報として認識された物体の中から、自車両Mの前方に存在する設定高さ以上の物体を中心物体として抽出する。
【0064】
その一方で、散乱物等の中には、画像認識_ECU13において物体認識される大きさ未満の小物体も多く存在する。ここで、小物体の輝度値は、通常、路面の輝度値と相違する。従って、中心物体の周囲に小物体が散乱している場合、当該小物体が散乱している路面上の領域では、輝度値の分散(バラツキ)が生じる。このような輝度値の分散は、路面上に小物体が存在すれば発生する。すなわち、輝度値の分散は、路面上に存在する小物体が画像認識_ECU13によって物体認識可能な大きさであるか否かにかかわらず発生する。そこで、走行_ECU14は、抽出した各中心物体の周囲において輝度値が所定に分散する路面上の領域を、分散領域として抽出する。
【0065】
ところで、例えば、IPU12において生成された距離画像には、通常、路面と小物体との間で輝度値が変化する箇所にエッジ点が存在する。そこで、走行_ECU14は、例えば、中心物体の周囲に存在するエッジ点の分布に基づいて、分散領域を抽出することが可能である。この分散領域の抽出に際し、走行_ECU14は、例えば、中心物体から延在する複数の輝度評価ラインを設定する。これらの輝度評価ラインは、例えば、
図5中に一点鎖線で示すように、中心物体を中心として、路面に沿った放射方向(設定角度毎の各放射方向)に設定される。また、走行_ECU14は、各輝度評価ラインに沿った所定間隔毎に、エッジ点の数(度数)をカウントする。さらに、走行_ECU14は、輝度評価ライン毎にエッジ点の度数分布を評価する。これにより、走行_ECU14は、路面上における輝度値の分散領域を抽出する。例えば、走行_ECU14は、中心物体から、設定度数以上のエッジ点が存在する終端位置までの距離を輝度評価ライン(放射方向)毎に抽出する。そして、走行_ECU14は、輝度評価ライン毎に抽出した各距離内の領域を輝度値の分散領域として設定する。
【0066】
さらに、走行_ECU14は、分散領域を内包する領域を、小物体が分布するリスク領域Arとして設定する。このリスク領域Arは、可能な限り小さい領域であることが望ましい。そこで、リスク領域Arは、例えば、分布領域に外接する楕円を輪郭として設定されることが望ましい。この場合において、走行_ECU14は、各放射方向のうち、中心物体から終端位置までの距離が最も長い方向に外接楕円の長軸を設定することが望ましい。
【0067】
なお、走行_ECU14は、リスク領域Arの設定に際し、経路探索領域を併せて設定する(例えば、
図6参照)。この経路探索領域は、自車両Mがリスク領域Arを回避しながら走行するために最適な経路を探索するための領域である。このため、経路探索領域は、リスク領域Arよりも手前の所定区間に設定される。なお、経路探索領域において探索された最適な経路は、自車走行経路として設定される。
【0068】
また、走行_ECU14は、設定した各リスク領域Arに対し、それぞれリスクレベルLを設定する。このリスクレベルLの設定は、主として、リスク領域Ar内における小物体の分布状態に基づいて行われる。より具体的には、リスクレベルLの設定は、リスク領域Ar内における高さ情報の分布に基づいて行われる。
【0069】
ここで、走行_ECU14は、リスク領域Arを複数の小領域に分割し、分割した小領域毎にリスクレベルLを設定することが望ましい。この場合において、走行_ECU14は、例えば、
図8に示すように、リスク領域Arの外殻となる外接楕円に相似する多重の楕円によって各小領域を区画する。なお、小領域を区画する各楕円は、中心物体の位置を基準として設定されていることが望ましい。
【0070】
リスクレベルLの設定に際し、走行_ECU14は、路面の高さを基準として、リスク領域Ar内における高さ情報の乱雑さEを算出する。また、走行_ECU14は、リスク領域Ar内における高さ情報の最大値Hを抽出する。さらに、走行_ECU14は、リスク領域Ar内における高さ情報の変化量Iを算出する。そして、走行_ECU14は、これら高さ情報の乱雑さE、高さ情報の最大値H、及び、高さ情報の変化量Iに基づき、リスク領域Ar内における散乱物の評価値Xを算出する。なお、散乱物の評価値Xの算出に際し、上述の高さ情報の乱雑さE、高さ情報の最大値H、及び、高さ情報の変化量Iの何れかを適宜省略することが可能である。さらに、散乱物の評価値Xの算出に際し、他の評価値を追加することも可能である。
【0071】
ここで、本実施形態にける散乱物の評価値Xは、例えば、リスク領域Ar内の散乱物が自車両Mに及ぼすリスクの高さを示す評価値である。このため、走行_ECU14は、散乱物の評価値Xに基づいて、リスク領域Arの自車両Mに対するリスクレベルLを設定することが可能となる。なお、リスク領域Arを複数の小領域As(As1,As2,・・・)に分割した場合、走行_ECU14は、小領域As毎にリスクレベルLを設定する。
【0072】
具体的に説明すると、高さ情報の乱雑さEの算出において、走行_ECU14は、例えば、IPUにおいて生成された距離画像から、小領域As内に設定されたサンプリング点i毎の高さ情報hiを抽出する。
【0073】
ここで、サンプリング点iとしては、例えば、小領域As内における全ての画素、或いは、小領域As内に設定された所定の探索ライン上の画素を設定することが可能である。また、各高さ情報hiとしては、例えば、ステレオカメラ11と各サンプリング点iとの高さ方向の差(相対高さ)が用いられる。
【0074】
そして、走行_ECU14は、例えば、以下の(1)式を用いて、小領域As内における高さ情報の乱雑さEを算出する。
【数1】
【0075】
ここで、(1)式において、nは小領域As内において抽出したデータ総数である。また、h0は、ステレオカメラ11の路面からの高さ(取り付け高さ)である。これにより、例えば、
図9に示すように、リスク領域Ar内の各小領域Asにおいて、路面に対する高さ情報の乱雑さEが算出される。
【0076】
また、高さ情報の最大値Hの抽出において、走行_ECU14は、小領域As内に設定されたサンプリング点i毎の高さ情報hiを抽出する。そして、走行_ECU14は、抽出した高さ情報hiのうちの最大値を、高さ情報の最大値Hとして抽出する。これにより、例えば、
図10に示すように、リスク領域Ar内の各小領域Asにおいて、高さ情報の最大値Hが抽出される。
【0077】
また、高さ情報の変化量Iの算出に際し、走行_ECU14は、設定時間前(例えば、数十フレーム前)に算出された小領域Asの高さ情報の乱雑さEを読み出す。そして、走行_ECU14は、設定時間前に算出された小領域Asの高さ情報の乱雑さEと、今回算出された小領域Asの高さ情報の乱雑さEとの差を、高さ情報の変化量Iとして算出する(例えば、
図11参照)。
【0078】
そして、走行_ECU14は、例えば、以下の(2)式を用いて、散乱物の評価値Xを算出する。
【数2】
【0079】
ここで、(2)式において、a,b,cは、予め設定された定数(ゲイン)を示す。(2)式から明らかなように、散乱物の評価値X(リスク評価値)は、高さ情報の乱雑さEが大きいほど、大きな値となる。散乱物の高さ情報の乱雑さEが大きいほど、散乱物が自車両Mに及ぼす影響が大きくなるためである。また、散乱物の評価値Xは、高さ情報の最大値Hが大きいほど、大きな値となる。高さ情報の最大値Hが大きいほど、散乱物が自車両Mに及ぼす影響が大きくなるためである。また、散乱物の評価値Xは、高さ情報に変化量Iが大きいほど、小さな値となる。高さ情報の変化量Iが大きい場合、散乱物は、風等による移動が容易な軽量の物体(例えば、樹脂や紙などからなる物体)であることが想定される。そして、このような散乱物は、自車両Mに及ぼす影響が小さくなるためである。
【0080】
ここで、リスク領域Arの小領域As毎に算出された散乱物の評価値Xは、各小領域Asにおける評価値Xの相対関係に基づいて、適宜補正されることが望ましい。例えば、リスク領域Ar内における各小領域Asのうち、内周側に位置する小領域Asの評価値Xよりも外周側に位置する小領域Asの評価値Xが大きい場合、内周側に位置する小領域Asの評価値Xが、外周側に位置する小領域Asの評価値X以上の値となるように補正することが望ましい。
【0081】
さらに、走行_ECU14は、算出した各小領域Asの散乱物の評価値Xに基づいて、各小領域AsのリスクレベルLを設定する。このリスクレベルLの設定は、例えば、
図12に示すように、主として、評価値Xと予め設定された閾値S1,S2,S3(但し、S1<S2<S3)との比較に基づいて行われる。
【0082】
その際、走行_ECU14は、各閾値S1~S3を、外部要因に応じて補正する。例えば、走行_ECU14は、自車両Mの走行速度(自車速V)に基づいて補正する。すなわち、同じ散乱物であっても、自車両Mが散乱物から受ける衝撃は、自車速Vが大きくなるほど大きくなる。そこで、走行_ECU14は、例えば、自車速Vの速度域(例えば、高速域(80km/h以上)、中速域(50km/h以上~80km/h未満)、或いは、低速域(50km/h未満)に応じて、各閾値S1~S3を補正する。具体的には、走行_ECU14は、自車速Vが高速になるほど、各閾値S1~S3を小さな値に補正することが可能である。また、走行_ECU14は、リスク領域Ar内に存在する各物体の認識精度に応じて各閾値S1~S3を補正することが可能である。この場合、走行_ECU14は、リスク領域Ar内に存在する各物体の認識精度が低いほど、各閾値S1~S3を小さな値に補正することが可能である。
【0083】
このように補正された各閾値S1~S3を用いて、走行_ECU14は、各小領域Asの評価値Xに基づくリスクレベルLを設定する。例えば、
図12に示すように、走行_ECU14は、評価値Xと各閾値S1~S3との関係に基づいて、リスクレベルL=2~5を設定する。
【0084】
ここで、自車両Mの前方にリスク領域Arを設定した場合であっても、リスク領域Arが自車両Mの進行領域に存在しない場合、当該リスク領域Arに対する緊急回避制御を行う必要はない。そこで、走行_ECU14は、設定したリスク領域Arの何れもが自車両Mの進行領域に存在しない場合には、適宜、評価値Xの値に係わらず、リスクレベルLを「1」に設定する。
【0085】
走行_ECU14は、リスク領域Arが設定されている場合であって、且つ、リスクレベルLが高い場合(例えば、リスクレベルLが3以上の場合)に、リスク領域Arに対する回避制御を行う。
【0086】
この回避制御に際し、走行_ECU14は、リスク領域Arを回避しながら自車両Mを走行させるための回避経路である自車走行経路を設定する。この自車走行経路の設定は、自車両Mが経路探索領域内を走行している間に行われる。
【0087】
具体的に説明すると、走行_ECU14は、自車両Mがリスク領域Arから受けるリスクを回避するための経路候補Riを複数パターン設定する。そして、走行_ECU14は、経路候補Ri毎に、経路評価値Esumを算出する。
【0088】
この経路評価値Esumは、例えば、道路上におけるリスク領域Arの配置に基づく第1の評価値Ssumと、リスク領域Arと自車両Mとの相対位置に基づく第2の評価値Rsumと、経路候補Riの形状に基づく第3の評価値Dsumと、を用いて算出される。なお、経路評価値Esumの算出に際し、上述の第1~第3の評価値の何れかを適宜省略することも可能である。さらに、経路評価値Esumの算出に際し、他の評価値を追加することも可能である。
【0089】
第1の評価値Ssumは、例えば、自車両Mの前方に、複数のリスク領域Arが存在する場合に算出される。この第1の評価値Ssumの算出に際し、走行_ECU14は、各リスク領域Arを結ぶ所定の最短直線を結合線Sとして設定する(
図13参照)。そして、走行_ECU14は、結合線Sの合計線長を第1の評価値Ssumとして算出する。但し、第1の評価値Ssumの算出に際し、自車両Mの走行経路に関係のない位置に存在する最短直線の線長は除外される。
【0090】
第2の評価値は、経路候補Riに沿って自車両Mを走行させたと仮定した場合に、推定される自車両Mとリスク領域Arとの相対関係に基づいて算出される。この第2の評価値Rsumの算出に際し、走行_ECU14は、自車両Mの前方の設定距離(分解能x)毎の位置に、評価地点xi(x1,x2,・・・xn)を設定する(
図13参照)。
【0091】
また、走行_ECU14は、経路候補Riに沿って自車両Mを走行させたと仮定した場合における、自車両Mとリスク領域Arとの相対関係を推定する。この自車両Mとリスク領域Arとの相対関係は、自車両Mが評価地点xiに到達する毎に推定される。さらに、走行_ECU14は、各評価地点xiにおける自車両Mとリスク領域Arとの相対関係に基づいて、報酬Riを算出する。そして、走行_ECU1414は、各評価地点xiにおいて得られる報酬Riを合算することにより、経路候補Riに対する第2の評価値Rsumを算出する。
【0092】
ここで、各報酬Riは、自車両Mが各評価地点xiに到達する毎の各車輪(左前輪、右前輪、左後輪、及び、右後輪)の位置と、各リスク領域Ar及び各結合線S(最短直線)と、の関係に基づいて算出される。例えば、自車両Mが評価地点xiに到達したタイミングにおいて、何れかの車輪がリスク領域Arを通過する位置に存在する場合、走行_ECU14は、当該リスク領域Ar内のリスクレベルLに応じたマイナスの報酬を当該車輪に付与する。また、例えば、自車両Mが評価地点xiに到達したタイミングにおいて、何れかの車輪が結合線Sを通過する位置に存在する場合、走行_ECU14は、予め設定されたプラスの報酬を当該車輪に付与する。そして、走行_ECU14は、各車輪の状態に応じて付与した報酬を合算することにより、評価地点xi毎の報酬Riを算出する。さらに、走行_ECU14は、各評価地点xiの報酬Riを合算することにより、第2の評価値Rsumを算出する。
【0093】
第3の評価値Dsumは、例えば、各評価地点xiにおける経路候補Riの傾き(傾きの絶対値)を合算することにより算出される。ここで、経路候補Riの傾きとは、例えば、自車両Mの進行方向に対する傾きである。従って、傾きが大きい評価地点xiにおいて、自車両Mは、経路候補Riに沿って走行するために大きな操舵を必要とすることとなる。
【0094】
そして、走行_ECU14は、第1の評価値Ssum、第2の評価値Rsum、及び、第3の評価値Dsumに基づいて、経路候補Riの経路評価値Esumを算出する。この経路評価値Esumは、例えば、以下の(3)式によって算出される。
【数3】
【0095】
ここで、(3)式において、a,b,cは、予め設定された定数(ゲイン)を示す。
【0096】
このような経路評価値Esumの算出は、設定された経路候補Ri毎に行われる。さらに、自車両Mが経路探索領域内を走行中である場合において、走行_ECU14は、適宜、リスク領域Arの大きさを補正して、同様の処理(経路評価値Esumの算出処理)を繰り返し行う。
【0097】
そして、走行_ECU14は、最適な経路評価値Esumが算出された経路候補Riを、自車走行経路として設定する。
【0098】
ここで、上述の(3)式に基づいて経路評価値Esumが算出される本実施形態において、走行_ECU14は、複数の経路評価値Esumうちの最小値を、最適な経路評価値Esumとして抽出する。第2の評価値Rsumが大きくなる場合とは、リスク領域Arに対する自車両Mの干渉が小さくなる場合である。そして、(3)式からも明らかなように、経路評価値Esumは、第2の評価値Rsumが大きくなるほど小さくなるためである。また、第3の評価値Dsumが小さくなる場合とは、経路候補Riが過剰な操舵を必要としない自然な経路である場合である。そして、(3)式からも明らかなように、経路評価値Esumは、第3の評価値Dsumが大きくなるほど大きくなるためである。また、第2の評価値Dsumが小さくなる場合とは、リスク領域Arの外殻が大きくなる場合である。この場合、リスク領域Arは、可能な限り多くのリスク物体を包含することとなる。そして、(3)式からの明らかなように、経路評価値Esumは、第1の評価値Ssumが大きくなるほど大きくなるためである。
【0099】
このようにリスク領域Arに対する自車走行経路を設定した場合、走行_ECU14は、例えば、割り込み制御として、設定した自車走行経路に従った走行制御を行う。
【0100】
このように、本実施形態において、走行_ECU14は、分散値抽出手段、リスク領域設定手段、リスクレベル設定手段、経路候補設定手段、経路評価値算出手段、及び、自車走行経路設定手段の一具体例に相当する。
【0101】
次に、走行_ECU14において行われるリスク領域Arの設定について、
図14に示すリスク領域設定ルーチンのフローチャートに従って説明する。このルーチンは、走行_ECU14において、設定時間毎に繰り返し実行されるものである。
【0102】
ルーチンがスタートすると、走行_ECU14は、ステップS101において、自車両Mの前方の物体情報を読み込む。すなわち、走行_EWCU14は、例えば、画像認識_ECU13において認識された走行環境情報のうち、自車両Mの前方に存在する物体情報を読み込む。
【0103】
続くステップS102において、走行_ECU14は、物体情報に基づき、自車両Mの前方に所定高さ以上の物体が存在するか否かを調べる。
【0104】
そして、ステップS102において、所定高さ以上の物体が存在しないと判定した場合(ステップS102:NO)、走行_ECU14は、そのままルーチンを抜ける。
【0105】
一方、ステップS102において、所定高さ以上の物体が存在すると判定した場合(ステップS102:YES)、走行_ECU14は、ステップS103に進む。
【0106】
ステップS103において、走行_ECU14は、自車両Mの前方に存在する所定高さ以上の物体を、中心物体として抽出する。
【0107】
続くステップS104において、走行_ECU14は、経路探索領域を設定する。すなわち、走行_ECU14は、例えば、各中心物体のうち、自車両Mに最も近い中心物体を選定する。そして、走行_ECU14は、例えば、選定した中心物体から自車両M側に設定距離離れた位置に経路探索領域を設定する(
図6,13参照)。
【0108】
続くステップS105において、走行_ECU14は、各中心物体の周囲における輝度値の分散領域を抽出する。すなわち、走行_ECU14は、例えば、中心物体から放射方向に延在する複数の輝度値評価ラインを設定する。そして、走行_ECU14は、例えば、輝度値評価ライン毎にエッジ点の分布を評価することにより、輝度値の分散領域を抽出する。
【0109】
続くステップS106において、走行_ECU14は、抽出した各分散領域をそれぞれ内包する領域をリスク領域Arとして設定した後、ルーチンを抜ける。
【0110】
次に、リスク領域Arに対するリスクレベルの設定について、
図15,16に示すリスクレベル設定ルーチンのフローチャートに従って説明する。このルーチンは、例えば、上述のリスク領域設定ルーチンが終了する毎に、走行_ECU14において実行される。
【0111】
ルーチンがスタートすると、ステップS201において、走行_ECU14は、上述のリスク領域設定ルーチンによってリスク領域Arが設定されているか否かを調べる。
【0112】
そして、ステップS201において、リスク領域Arが設定されていないと判定した場合(ステップS201:NO)、走行_ECU1414は、そのままルーチンを抜ける。
【0113】
一方、ステップS201において、リスク領域Arが設定されていると判定した場合(ステップS201:YES)、走行_ECU14は、ステップS202に進む。
【0114】
ステップS202において、走行_EUC14は、自車走行領域及び回避領域を設定する。このステップS202において設定される自車走行領域は、例えば、自車両Mの前方にリスク領域Arが存在しないと仮定した場合に設定される走行領域である。従って、例えば、
図7に示すように、自車走行領域としては、自車両Mの目標走行経路Rmが設定された道路上の車線(自車走行車線)が設定される。また、回避領域としては、例えば、自車走行車線に隣接する車線が設定される。
【0115】
続くステップS203において、走行_ECU14は、現在設定されているリスク領域Arの中から、何れか1つのリスク領域Arを抽出する。
【0116】
続くステップS204において、走行_ECU14は、抽出したリスク領域Arが自車走行領域内に侵入しているか否かを調べる。
【0117】
そして、ステップS204において、抽出したリスク領域Arの少なくとも一部が自車走行領域内に侵入していると判定した場合(ステップS204:YES)、走行_ECU14は、ステップS205に進む。
【0118】
ステップS205において、走行_ECU14は、抽出したリスク領域Arが自車走行領域に属すると判定した後、ステップS209に進む。
【0119】
一方、ステップS204において、抽出したリスク領域Arが自車走行領域内に侵入していないと判定した場合(ステップS204:NO)、走行_ECU14は、ステップS206に進む。
【0120】
ステップS206において、走行_ECU14は、抽出したリスク領域Arが回避領域内に侵入しているか否かを調べる。
【0121】
そして、ステップS206において、抽出したリスク領域Arの少なくとも一部が回避領域内に侵入していると判定した場合(ステップS206:YES)、走行_ECU14は、ステップS207に進む。
【0122】
ステップS207において、走行_ECU14は、抽出したリスク領域Arが回避領域に属すると判定した後、ステップS209に進む。
【0123】
一方、ステップS206において、抽出したリスク領域Arが回避領域内に侵入していないと判定した場合(ステップS206:NO)、走行_ECU14は、ステップS208に進む。
【0124】
ステップS208において、走行_ECU14は、抽出したリスク領域ArのリスクレベルLを「1」に設定した後、ステップS209に進む。すなわち、自車走行領域及び回避領域のどちらにも侵入していないリスク領域Arは、自車両Mと干渉する可能性が低い。そこで、走行_ECU14は、このようなリスク領域ArのリスクレベルLを「1」に設定する。
【0125】
ステップS205、ステップS207、或いは、ステップS208からステップS209に進むと、走行_ECU14は、現在設定されている全てのリスク領域Arを、ステップS203の抽出処理によって抽出したか否かを調べる。
【0126】
そして、ステップS209において、全てのリスク領域Arが抽出されていないと判定した場合(ステップS209:NO)、走行_ECU14は、ステップS203に戻る。
【0127】
一方、ステップS209において、全てのリスク領域Arが抽出されたと判定した場合(ステップS209:YES)、走行_ECU14は、ステップS210に進む。
【0128】
ステップS210において、走行_ECU14は、自車走行領域に属するリスク領域Arが存在するか否かを調べる。
【0129】
そして、ステップS210において、自車走行領域に属するリスク領域Arが存在しないと判定した場合(ステップS210:NO)、走行_ECU14は、ステップS211に進む。
【0130】
ステップS211において、走行_ECU14は、現在の走行状態を継続する旨の判定を行った後、ルーチンを抜ける。すなわち、自車走行領域にリスク領域Arが存在しない場合、自車両Mはリスク領域Arの影響を受けることなく、自車走行領域を走行することが可能である。従って、走行_ECU14は、現在の走行状態を継続する。
【0131】
一方、ステップS210において、自車走行領域に属するリスク領域Arが存在すると判定した場合(ステップS210:YES)、走行_ECU14は、ステップS212に進む。
【0132】
ステップS212において、走行_ECU14は、リスクレベルLが「1」に設定されたリスク領域Arが存在する場合、当該リスク領域Arを削除した後、ステップS213に進む。すなわち、走行_ECU14は、リスクレベルLが「1」に設定されたリスク領域Arを、ステップS213以降の処理対象から排除する。
【0133】
ステップS213からステップS224において、走行_ECU14は、削除されなかったリスク領域Ar(上述のステップS208においてリスクレベルL=1が設定されなかったリスク領域Ar)について、リスクレベルLの設定を行う。
【0134】
このため、ステップS213において、走行_ECU14は、削除されずに残存しているリスク領域Arの中から何れか1つのリスク領域Arを抽出する。
【0135】
続くステップS214において、走行_ECU14は、抽出したリスク領域Arにおける散乱物の評価値Xを算出する。すなわち、走行_ECU14は、リスク領域Ar内の各小領域Asについて、例えば、高さ情報の乱雑さE、高さ情報の最大値H、及び、高さ情報の変化量Iを算出する。そして、走行_ECU14は、算出した高さ情報の乱雑さE、高さ情報の最大値H、及び、高さ情報の変化量Iに基づいて、小領域As毎の散乱物の評価値Xを算出する。
【0136】
続くステップSS215において、走行_ECU14は、算出した小領域As毎の散乱物の評価値Xを検証する。すなわち、走行_ECU14は、リスク領域Ar内における各小領域Asのうち、内周側に位置する小領域Asよりも大きな評価値Xを有する小領域Asが存在するか否かを検証する。そして、内周側の小領域Asよりも大きな評価値Xを有する小領域Asが存在する場合、内周側の小領域Asの評価値Xを外周側の小領域Asの評価値X以上の値に補正する。
【0137】
続くステップS216において、走行_ECU14は、予め設定されている閾値Si(S1,S2,S3)の補正を行う。すなわち、走行_ECU14は、例えば、自車速V、及び、リスク領域Ar内の各物体の認識精度等に基づいて、閾値Siを補正する。
【0138】
続くステップS217からステップS223において、走行_ECU14は、リスクレベルLの設定を行う。なお、
図16において詳細は省略するが、リスク領域Arに小領域Asが設定されている場合、ステップS217からステップS223によるリスクレベルLの設定処理は、小領域Asの評価値X毎に繰り返し行われる。
【0139】
ステップS217において、走行_ECU14は、小領域Asの評価値Xが閾値S1以下であるか否かを調べる。
【0140】
そして、ステップS217において、評価値Xが閾値S1以下であると判定した場合(ステップS217:YES)、走行_ECU14は、ステップS218に進む。
【0141】
ステップS218において、走行_ECU14は、小領域AsのリスクレベルLを「2」に設定した後、ステップS224に進む。
【0142】
一方、ステップS217において、評価値Xが閾値S1よりも大きいと判定した場合(ステップS217:NO)、走行_EXU14は、ステップS219に進む。
【0143】
ステップS219において、走行_ECU14は、評価値Xが閾値S2以下であるか否かを調べる。
【0144】
そして、ステップS219において、評価値Xが閾値S2以下であると判定した場合(ステップS219:YES)、走行_ECU14は、ステップS220に進む。
【0145】
ステップS220において、走行_ECU14は、小領域AsのリスクレベルLを「3」に設定した後、ステップS224に進む。
【0146】
一方、ステップS219において、評価値Xが閾値S2よりも大きいと判定した場合(ステップS219:NO)、走行_ECU14は、ステップS221に進む。
【0147】
ステップS221において、走行_ECU14は、評価値Xが閾値S3以下であるか否かを調べる。
【0148】
そして、ステップS221において、評価値Xが閾値S3以下であると判定した場合(ステップS221:YES)、走行_ECU14はステップS222に進む。
【0149】
ステップS222において、走行_ECU14は、小領域AsのリスクレベルLを「4」に設定した後、ステップS224に進む。
【0150】
一方、ステップS221において、評価値Xが閾値S3よりも大きいと判定した場合(ステップS221:NO)、走行_ECU14は、ステップS223に進む。
【0151】
ステップS223において、走行_ECU14は、小領域AsのリスクレベルLを「5」に設定した後、ステップS224に進む。
【0152】
ステップS218、ステップS220、ステップS222、ステップS223からステップS224に進むと、走行_ECU14は、ステップS213の抽出処理により残存している全てのリスク領域Asを抽出したか否かを調べる。
【0153】
そして、ステップS224において、全てのリスク領域Asを抽出していないと判定した場合(ステップS224:NO)、走行_ECU14は、ステップS213に戻る。
【0154】
一方、ステップS224において、全てのリスク領域Asを抽出したと判定した場合(ステップS224:YES)、走行_ECU14は、ステップS225に進む。
【0155】
ステップS225において、走行_ECU14は、各リスク領域Ar(各小領域As)において設定されたリスクレベルLのうち、リスクレベルLの最大値が「2」以下であるか否かを調べる。
【0156】
そして、ステップS225において、リスクレベルLの最大値が「2」以下であると判定した場合(ステップS225:YES)、走行_ECU14は、ステップS226に進む。
【0157】
そして、ステップS226において、走行_ECU14は、ドライバに対する注意喚起を行いつつ現在の走行状態を継続する旨の判定を行った後、ルーチンを抜ける。
【0158】
一方、ステップS225において、リスクレベルLの最大値が「2」よりも大きいと判定した場合(ステップS225:NO)、走行_ECU14は、ステップS227に進む。
【0159】
そして、ステップs227において、走行_ECU14は、リスク領域Asに対する回避制御を行う旨の判定を行った後、ルーチンを抜ける。
【0160】
次に、リスク領域を回避するための自車走行経路の設定について、
図17に示す自車走行経路設定ルーチンのフローチャートに従って説明する。このルーチンは、例えば、上述のリスクレベル設定ルーチンにおいて、回避制御を行う旨の判定が行われた場合に限り、走行_ECU14において実行される。また、このルーチンは、上述のリスク領域設定ルーチンにおいて設定された経路探索領域を自車両Mが走行している場合に限り、実行される。
【0161】
ルーチンがスタートすると、走行_ECU14は、ステップS301において、自車両Mの経路候補Riを設定する。このステップS301において設定される経路候補Riは、現在設定されているリスク領域Arに対して最初に設定される経路候補である。この場合、走行_ECU14は、例えば、自車両Mの左右の車線区画線に沿った目標進行路Rmを、そのまま、経路候補Riとして設定する。
【0162】
続くステップS302において、走行_ECU14は、経路候補Ri上の結合線Sを設定する。この経路候補Ri上の結合線Sの設定に際し、走行_ECU14は、例えば、各リスク領域Ar間を結ぶ最短直線をそれぞれ設定する。そして、走行_ECU14は、例えば、設定した最短直線のうち、経路候補Riと交差する最短直線を結合線Sとして設定する。
【0163】
続くステップS303において、走行_ECU14は、第1の評価値Ssumを算出する。すなわち、走行_ECU14は、ステップS302において設定した結合線Sの合計線長を、第1の評価値Ssumとして算出する。
【0164】
続くステップS304において、走行_ECU14は、第2の評価値Rsumを算出する。すなわち、走行_ECU14は、経路候補Ri上の評価地点xi毎に自車両Mの姿勢を推定し、自車両Mの各車輪と各リスク領域Ar及び各結合線Sとの位置関係に基づいて第2の評価値Rsumを算出する。
【0165】
続くステップS305において、走行_ECU14は、第3の評価値Dsumを算出する。すなわち、走行_ECU14は、各評価地点xiにおける経路候補Riの傾きに基づいて第3の評価値Dsumを算出する。
【0166】
続くステップS306において、走行_ECU14は、経路評価値Esumを算出する。すなわち、走行_ECU14は、第1の評価値Ssum、第2の評価値Rsum、及び、第3の評価値Dsumに基づいて、経路評価値Esumを算出する。
【0167】
そして、ステップS307において、走行_ECU14は、現在設定されているリスク領域Arに対し、経路評価値Esumの算出が設定回数行われたか否かを調べる。すなわち、走行_ECU14は、現在設定されているリスク領域Arに対し、経路候補Riを設定回数変化させた状態にて、それぞれ経路評価値Esumの算出を行ったか否かを調べる。
【0168】
そして、ステップS307において、経路評価値Esumの算出が設定回数終了していないと判定した場合(ステップS307:NO)、走行_ECU14は、ステップS308に進む。
【0169】
ステップS308において、走行_ECU14は、現在設定されている経路候補Riに所定の補正を加えることにより、経路候補Riを再設定した後、ステップS304に戻る。
【0170】
一方、ステップS307において、経路評価値Esumの算出が設定回数終了していると判定した場合(ステップS307:YES)、走行_ECU14は、ステップS309に進む。
【0171】
ステップS309において、走行_ECU14は、現在の自車両Mが経路探索領域内に存在するか否かを調べる。
【0172】
そして、ステップS309において、自車両Mが経路探索領域内に存在すると判定した場合(ステップS309:YES)、走行_ECU14は、ステップS310に進む。
【0173】
ステップS310において、走行_ECU14は、現在設定されているリスク領域Arに所定の補正を加えることにより、リスク領域Arを再設定した後、ステップS301に戻る。このリスク領域Arの再設定において、走行_ECU14は、例えば、リスク領域Arの外殻形状を維持したまま、リスク領域Arを縮小させることが可能である。
【0174】
一方、ステップS309において、自車両Mが経路探索領域を脱したと判定した場合(ステップS309:YES)、走行_ECU14は、ステップS311に進む。
【0175】
ステップS311において、走行_ECU14は、上述の複数パターンの経路候補Riに基づいて算出された経路評価値Esumの中から、最適な経路評価値Esumとして、最小の経路評価値Esumを抽出する。
【0176】
続くステップs312において、走行_ECU14は、最小の経路評価値Esumに対応する経路候補Riを自車走行経路として確定した後、ルーチンを抜ける。
【0177】
なお、自車走行経路を設定した場合、走行_ECU14は、自車両Mに対する運転支援制御の割り込み制御として、自車走行経路に沿った走行制御を行う。
【0178】
このような実施形態によれば、運転支援装置1は、画像認識_ECU13において自車両Mの前方に存在する物体を認識し、走行_ECU14において、自車両Mの前方に存在する物体の周囲において輝度値が分算する分散領域を抽出し、分散領域を内包する領域を小物体が分布するリスク領域Arとして設定する。これにより、運転支援制御をより高いレベルで実現するための適切なリスク領域Arを設定することができる。
【0179】
すなわち、走行_ECU14は、小物体の散乱の起点となる物体(中心物体)を抽出し、中心物体の周囲において輝度値が分散する分散領域を抽出することにより、画像認識_ECU13において認識されない微小物体の散乱する領域についても適切に抽出することができる。そして、走行_ECU14は、輝度値の分散領域を内包する領域を小物体が分布する一括りのリスク領域Arとして設定することにより、散乱物等に対して適切なリスク領域Arを設定することができる。特に、散乱物等に対するリスク領域Arは、各散乱物に対して個別に設定されるのではなく、一群の散乱物を一括りの領域として設定されるものである。このため、走行_ECU14に過剰な演算負荷をかけることなく、適切なリスク領域Arを設定することができる。
【0180】
この場合において、走行_ECU14は、中心物体を中心とする路面に沿った放射方向毎に輝度値の変化を評価し、輝度値の変化する点が閾値以上分布する範囲を輝度値の分散領域として抽出する。これにより、簡単な演算処理により、輝度値の分散領域を精度良く抽出することができる。
【0181】
また、走行_ECU14は、分散領域に外接する楕円を輪郭としてリスク領域Arを設定する。これにより、過剰に広い範囲にリスク領域Arを設定することを防止することができる。
【0182】
また、本実施形態の運転支援装置1は、画像認識_ECU13において、自車両Mの前方に存在する物体を認識し、走行_ECU14において、物体の周囲に複数の小物体が存在するとき、これら複数の小物体を包含するリスク領域Arを設定し、リスク領域Ar内における高さ情報の分布に基づいてリスク領域Arの自車両Mに対するリスクレベルLを設定する。これにより、道路上に存在する散乱物に対して適切な運転支援制御を実現することができる。
【0183】
すなわち、走行_ECU14は、各散乱物が自車両Mに及ぼす影響を各散乱物の高さ情報に基づいて推定することにより、各リスク領域ArにおけるリスクレベルLを個別に評価することができる。
【0184】
この場合において、走行_ECU14は、路面の高さを基準として、リスク領域Ar内における高さ情報の乱雑さEを算出し、高さ情報の乱雑さEが大きいほどリスクレベルLを高く設定する。これにより、各リスク領域Ar内における散乱物等の状態に応じて適切なリスクレベルLを設定することができる。
【0185】
また、走行_ECU14は、リスク領域Ar内における高さ情報の最大値Hを抽出し、高さ情報の最大値Hが大きいほどリスクレベルLを高く設定する。これにより、各リスク領域Ar内における散乱物等の状態に応じて適切なリスクレベルLを設定することができる。
【0186】
また、走行_ECU14は、リスク領域Ar内における高さ情報の変化量Iを算出し、高さ情報の変化量Iが小さいほどリスクレベルLを高く設定する。これにより、各散乱物の属性(素材や質量等)に応じた適切なリスクレベルLを設定することができる。
【0187】
さらに、走行_ECU14は、リスク領域Arを複数の小領域Asに分割し、分割した小領域As毎にリスクレベルLを設定する。これにより、物体の散乱状態等を反映させた適切なリスクレベルLを設定することができる。
【0188】
さらに、本実施形態の運転支援装置1は、画像認識_ECU13において、自車両Mの前方に存在する物体を認識し、走行_ECU14において、物体の周囲に複数の小物体が存在するとき、これら複数の小物体を包含するリスク領域Arを設定し、リスク領域Ar内における小物体の分布状態に基づいてリスク領域ArのリスクレベルLを設定し、リスク領域Arから受けるリスクを回避するための経路候補Riを複数パターン設定し、経路候補Ri毎に経路評価値Esumを算出し、経路評価値Esumが最適となる経路候補Riを自車走行経路(回避経路)として設定する。この経路評価値Esumの算出に際し、走行_ECU14は、経路候補Riに沿って移動する自車両Mの位置を設定距離x毎に算出し、自車両Mがリスク領域Arを通過する位置に存在する毎に、リスク領域ArのリスクレベルLに応じて経路評価値Esumを減少させる。これにより、道路上に複数のリスク領域Arが存在する場合にも、各リスク領域Arに対して最適な回避経路を策定することができる。
【0189】
すなわち、自車両Mがリスク領域Arを通過する位置に存在する毎に、リスク領域ArのリスクレベルLに応じて経路評価値Esumを減少させることにより、各リスク領域ArのリスクレベルLを適切に反映させた回避経路を設定することができる。
【0190】
この場合において、走行_ECU14は、リスク領域Arが複数存在する場合には互いのリスク領域Arを結ぶ最短直線を設定し、自車両Mが最短直線を通過する位置に存在する毎に経路評価値Esumを増加させる。これにより、2つのリスク領域As間において、これらのリスク領域Arと自車両Mとの干渉を回避可能な経路候補Riについての評価値(経路評価値Esum)を高く算出することができる。
【0191】
また、走行_ECU14は、経路候補Riについて設定距離x毎に傾きを算出し、設定距離x毎の傾きの合算値が大きいほど経路評価値Esumを減少させる。これにより、操舵量が小さくなる経路候補Riよりも操舵量が大きくなる経路候補Riの経路評価値Esumを相対的に低く算出することができ、乗員の乗り心地にも配慮した適切な自車走行経路(回避経路)を設定することができる。
【0192】
ここで、上述の実施形態において、画像認識_ECU13、走行_ECU14、CP_ECU21、E/G_ECU22、T/M_ECU23、BK_ECU24、及び、PS_ECU25等は、CPU,RAM,ROM、不揮発性記憶部等を備える周知のマイクロコンピュータ、及びその周辺機器で構成されており、ROMにはCPUで実行するプログラムやデータテーブル等の固定データ等が予め記憶されている。なお、プロセッサの全部若しくは一部の機能は、論理回路あるいはアナログ回路で構成してもよく、また各種プログラムの処理を、FPGAなどの電子回路により実現するようにしてもよい。
【0193】
以上の実施の形態に記載した発明は、それらの形態に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。さらに、上記各形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより種々の発明が抽出され得るものである。
【0194】
例えば、各形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、述べられている課題が解決でき、述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得るものである。
【符号の説明】
【0195】
1 … 運転支援装置
10 … カメラユニット
11 … ステレオカメラ
11a … メインカメラ
11b … サブカメラ
12 … IPU
13 … 画像認識_ECU
14 … 走行_ECU
21 … CP_ECU
22 … E/G_ECU
23 … T/M_ECU
24 … BK_ECU
25 … PS_ECU
31 … HMI
32 … スロットルアクチュエータ
33 … 油圧制御回路
34 … ブレーキアクチュエータ
35 … 電動パワステモータ
36 … ロケータユニット
36a … GNSSセンサ
36b … 道路地
図DB
37lf … 左前側方センサ
37lr … 左後側方センサ
37rf … 右前側方センサ
37rr … 右後側方センサ