(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000376
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】レンズ駆動装置、レンズユニット、及びカメラ
(51)【国際特許分類】
G02B 7/04 20210101AFI20231225BHJP
G02B 7/08 20210101ALI20231225BHJP
G02B 7/02 20210101ALI20231225BHJP
H04N 23/54 20230101ALI20231225BHJP
H04N 23/50 20230101ALI20231225BHJP
【FI】
G02B7/04 E
G02B7/04 D
G02B7/08 A
G02B7/02 Z
H04N5/225 300
H04N5/225 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099126
(22)【出願日】2022-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000133227
【氏名又は名称】株式会社タムロン
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】武田 義弘
【テーマコード(参考)】
2H044
5C122
【Fターム(参考)】
2H044AF07
2H044AJ06
2H044BD11
2H044BE02
2H044BE07
2H044BE10
2H044BE14
2H044DA01
2H044DB02
5C122DA04
5C122EA05
5C122FB03
5C122FB08
5C122GE05
5C122GE07
5C122GE11
5C122HA82
(57)【要約】
【課題】ボイスコイルモータの高推力化を図りつつ、レンズ駆動装置の耐衝撃性を高める。
【解決手段】ヨーク(36)内にコイル(44)が光軸方向へ相対的に移動可能に挿通され、ヨーク(36)内における光軸方向の両端側に、楔作用によってマグネット(42)をヨーク(36)の内側面側に押える押え部(48)がそれぞれ設けられ、各押え部(48)は、マグネット(42)における光軸方向の端面に圧接する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ鏡筒内にレンズの光軸方向又はそれに直交する方向である所定方向へ移動可能に設けられ、前記レンズを保持するレンズホルダと、
前記レンズホルダを前記所定方向へ移動させるためのボイスコイルモータと、を備え、
前記ボイスコイルモータは、
前記レンズ鏡筒の内周壁側及び前記レンズホルダの外周壁側のうちの一方に設けられた箱型のヨークと、
前記ヨークの内側面に設けられたマグネットと、
前記レンズ鏡筒の内周壁側及び前記レンズホルダの外周壁側のうちの他方に設けられ、前記ヨーク内に前記所定方向へ相対的に移動可能に挿通され、前記マグネットに対向したコイルと、
前記ヨーク内における前記所定方向の両端側にそれぞれ設けられ、前記マグネットにおける前記所定方向の端面に圧接し、楔作用によって前記マグネットを前記ヨークの内側面側に押える押え部と、を有するレンズ駆動装置。
【請求項2】
前記マグネットにおける前記所定方向の両端面に前記マグネットの厚み方向に対して傾斜した傾斜面がそれぞれ形成され、各押え部に前記マグネットの各傾斜面に平行な押圧面が形成され、各押え部の前記押圧面が前記マグネットの前記傾斜面に圧接する、請求項1に記載のレンズ駆動装置。
【請求項3】
前記ヨークは、その周方向に沿って分割された複数のヨークセグメントを有しており、一方の前記押え部は、前記複数のヨークセグメントのうちのいずれかのヨークセグメントに設けられており、他方の前記押え部は、他のヨークセグメントに設けられている、請求項2に記載のレンズ駆動装置。
【請求項4】
一対の前記押え部のうちの少なくともいずれかの押え部は、前記ヨークとは別部品により構成され、前記ヨークに対して前記マグネットの厚み方向の移動が許容されている、請求項3に記載のレンズ駆動装置。
【請求項5】
レンズ鏡筒と、
該レンズ鏡筒内に配設されたレンズと、
前記レンズを前記所定方向へ移動させる請求項1から4のいずれか1項に記載のレンズ駆動装置と、を備える、レンズユニット。
【請求項6】
カメラボディと、
該カメラボディに設けられた請求項5に記載のレンズユニットと、を備えるカメラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズを光軸方向又はそれに直交する方向である所定方向へ移動させるレンズ駆動装置、レンズユニット、及びカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
レンズ駆動装置の先行技術として特許文献1に示すものがある。その先行技術に係るレンズ駆動装置は、レンズを保持するレンズホルダ(特許文献1ではレンズ枠と称される)を備えており、レンズホルダは、レンズ鏡筒内に所定方向としての光軸方向へ移動可能に設けられている。レンズ駆動装置は、レンズホルダを光軸方向へ移動させるためのボイスコイルモータを備えている。
【0003】
ボイスコイルモータは、レンズ鏡筒の内周壁側に設けられた箱型のヨークと、ヨークの内側面に設けられたマグネットと、レンズホルダの外周壁側に設けられたコイル(特許文献1では電磁コイルと称される)とを有している。コイルは、マグネットに対向しており、ヨーク内に光軸方向へ移動可能に挿通されている。また、ボイスコイルモータは、ヨークの内側面からマグネットが離脱しないようにマグネットを押える一対の押え部(特許文献1では抑え部材と称される)を有している。一対の押え部は、ヨーク内における光軸方向の両端側にそれぞれ設けられている。各押え部は、板金材からなり、曲げ成形された押え片(特許文献1では抑え片と称される)を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、先行技術に係るレンズ駆動装置においては、押え部の押え片の厚み分だけマグネットとコイルとの間を広げる必要があり、ボイスコイルモータの推力の発生に寄与する有効磁束が低下して、ボイスコイルモータの高推力化の妨げになる。一方、有効磁束を増やすために、大型のマグネット又は異なる磁極を対向させた2つのマグネットを用いると、レンズ駆動装置に働く衝撃によってマグネットがヨークの内側面から離脱(剥離)し易くなり、レンズ駆動装置の耐衝撃性が低下する。
【0006】
そこで、本発明の一態様は、ボイスコイルモータの高推力化を図りつつ、レンズ駆動装置の耐衝撃性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の課題を解決するため、本発明の態様1に係るレンズ駆動装置は、レンズ鏡筒内にレンズの光軸方向又はそれに直交する方向である所定方向(移動方向)へ移動可能に設けられ、前記レンズを保持するレンズホルダと、前記レンズホルダを前記所定方向へ移動させるためのボイスコイルモータと、を備える。前記ボイスコイルモータは、前記レンズ鏡筒の内周壁側及び前記レンズホルダの外周壁側のうちの一方に設けられた箱型のヨークと、前記ヨークの内側面に設けられたマグネットと、前記レンズ鏡筒の内周壁側及び前記レンズホルダの外周壁側のうちの他方に設けられ、前記ヨーク内に前記所定方向へ相対的に移動可能に挿通され、前記マグネットに対向したコイルと、前記ヨーク内における前記所定方向の両端側にそれぞれ設けられ、前記マグネットにおける前記所定方向の端面に圧接し、楔作用によって前記マグネットを前記ヨークの内側面側に押える押え部(押え部材)と、を有する。
【0008】
また、本発明の一態様に係るレンズユニットは、レンズ鏡筒と、該レンズ鏡筒内に配設されたレンズと、前記レンズを前記所定方向へ移動させる本発明の一態様に係るレンズ駆動装置と、を備える。
【0009】
また、本発明の一態様に係るカメラは、カメラボディと、該カメラボディに設けられた本発明の一態様に係るレンズユニットと、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、ボイスコイルモータの高推力化を図りつつ、レンズ駆動装置の耐衝撃性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係るカメラの模式的な側面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るレンズ駆動装置の模式的な斜視図である。
【
図3】
図2に示すレンズ駆動装置の模式的な断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るボイスコイルモータの光軸方向に沿った模式的な断面図である。
【
図5】
図4に示すボイスコイルモータにおけるヨークセグメント同士を組み立てる前の様子を示す模式的な断面図である。
【
図6】
図4に示すボイスコイルモータの正面図である。
【
図7】
図6におけるVII-VII線に沿った模式的な部分断面図である。
【
図8】
図6におけるVIII-VIII線に沿った模式的な部分断面図である。
【
図9】本実施形態の変形例1に係るボイスコイルモータの光軸方向に沿った模式的な断面図である。
【
図10】本実施形態の変形例2に係るボイスコイルモータの光軸方向に沿った模式的な断面図である。
【
図11】本実施形態の変形例3に係るボイスコイルモータの光軸方向に沿った模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本実施形態について図面を参照して説明する。「光軸」とは、フォーカスレンズ等のレンズの光軸又はレンズユニットの光軸のことをいう。「光軸方向」とは、光軸の軸方向のことをいい、本実施形態においては、前後方向のことである。「径方向」とは、レンズの半径方向又はレンズ鏡筒の半径方向のことをいう。図面中、「OA」は光軸、「AD」は光軸方向、「FF」は前方向、「FR」は後方向をそれぞれ指している。
【0013】
〔本実施形態〕
図1を参照して、本実施形態に係るカメラの概要について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るカメラの模式的な側面図である。
【0014】
(カメラ10の概要)
図1に示すように、本実施形態に係るカメラ10は、カメラボディ12と、カメラボディ12に設けられたレンズユニット14とを備えている。レンズユニット14は、入射した光をカメラボディ12内のフィルム面(撮像素子面)Fに結像する。
【0015】
レンズユニット14は、カメラボディ12に設けられたレンズ鏡筒16を備えている。レンズ鏡筒16内には、複数の固定レンズ18が配設されている。レンズ鏡筒16内には、フォーカス調整するためのフォーカスレンズ20が光軸方向(前後方向)へ移動可能に配設されている。また、レンズユニット14は、フォーカスレンズ20を所定方向としての光軸方向へ移動させるレンズ駆動装置22を備えている。
【0016】
レンズ鏡筒16の外周壁には、フォーカスレンズ20の移動量を手動で操作するためのフォーカスリング24が回動可能に設けられている。撮影者がフォーカスリング24を回動操作すると、レンズ駆動装置22は、その操作量に基づいてフォーカスレンズ20を光軸方向へ移動させる。
【0017】
カメラボディ12の外壁には、自動フォーカスによる焦点合わせを行うためのレリーズボタン26が設けられている。撮影者がレリーズボタン26を半押しすると、レンズ駆動装置22は、カメラボディ12に内蔵した自動フォーカス制御部28からの制御信号に基づいて、被写体の像がフィルムFに合焦するようにフォーカスレンズ20を光軸方向へ移動させる。
【0018】
続いて、
図2から
図8を参照して、本実施形態に係るレンズ駆動装置22の構成について説明する。
図2は、本発明の実施形態に係るレンズ駆動装置の模式的な斜視図である。
図3は、
図2に示すレンズ駆動装置の模式的な断面図である。
図4は、本発明の実施形態に係るボイスコイルモータの光軸方向に沿った模式的な断面図である。
図5は、
図4に示すボイスコイルモータにおけるヨークセグメント同士を組み立てる前の様子を示す模式的な断面図である。
図6は、
図4に示すボイスコイルモータの正面図である。
図6において、コイルの図示を省略している。
図7は、
図6におけるVII-VII線に沿った模式的な部分断面図である。
図8は、
図6におけるVIII-VIII線に沿った模式的な部分断面図である。
【0019】
(レンズ駆動装置22の概要、レンズホルダ30、ボイスコイルモータ34)
図2及び
図3に示すように、本実施形態に係るレンズ駆動装置22は、前述のように、フォーカスレンズ20を光軸方向(前後方向)へ移動させる装置である。レンズ駆動装置22は、フォーカスレンズ20を保持するレンズホルダ30を備えている。レンズホルダ30は、一対のガイドロッド32を介してレンズ鏡筒16内に光軸方向へ移動可能に設けられている。レンズ駆動装置22は、レンズホルダ30を光軸方向へ移動させるための一対のボイスコイルモータ34を備えている。
【0020】
(ヨーク36、ヨークセグメント38,40)
図2から
図4に示すように、各ボイスコイルモータ34は、レンズ鏡筒16の内周壁16i側に設けられた箱型のヨーク36を有している。各ヨーク36における径方向に直交する方向の両側は、それぞれ開口されている。各ヨーク36は、磁性材料により構成されている。各ヨーク36は、その周方向に沿って分割された2つのヨークセグメント38,40を有しており、2つのヨークセグメント38,40の断面形状は、L字状にそれぞれ形成されている。
【0021】
図4から
図6に示すように、第1のヨークセグメント38の一端部には、光軸方向に直交する方向の一方側に突出した係合凸部38sが形成されている。第1のヨークセグメント38の他端部には、光軸方向の一方側に窪んだ係合凹部38dが形成されている。第2のヨークセグメント40の一端部には、光軸方向の他方側に窪んだ係合凹部40dが形成されている。第2のヨークセグメント40の他端部には、光軸方向に直交する方向の他方側に突出した係合凸部40sが形成されている。第1のヨークセグメント38の係合凸部38sは、第2のヨークセグメント40の係合凹部40dに係合する。第2のヨークセグメント40の係合凸部40sは、第1のヨークセグメント38の係合凹部38dに係合する。
【0022】
(マグネット42)
図3及び
図4に示すように、各ボイスコイルモータ34は、ヨーク36における光軸方向に直交する方向の両内側面36iにそれぞれ設けられたマグネット42を有している。各ボイスコイルモータ34のヨーク36内において、一対のマグネット42は、異なる磁極が対向するように配置されている。各マグネット42は、矩形板状の永久磁石であり、ヨーク36の内側面36iに接着されるようにしてもよい。各マグネット42における光軸方向の両端面には、各マグネット42の厚み方向に対して傾斜した傾斜面42fがそれぞれ形成されている。
【0023】
(コイル44)
図2から
図4に示すように、各ボイスコイルモータ34は、レンズホルダ30の外周壁30e側に設けられた平板状のコイル44を有している。各コイル44は、環状(枠状)に形成されており、各コイル44の輪郭形状は、略矩形状に形成されている。各コイル44の巻線は、光軸方向に直交する軸回りに巻回されている。各コイル44は、2つのマグネット42に対向しており、ヨーク36内に光軸方向へ移動可能に相対的に挿通されている。また、各コイル44の両端部側は、ヨーク36からそれぞれ突出している。各コイル44の各端部側は、フォーカスレンズ20の光軸(フォーカスレンズ20の中心)に近づくようにレンズホルダ30の外周壁30eに沿って折曲げられている。なお、各コイル44の輪郭形状を略矩形状に形成する代わりに、例えば、円形状、扇形状、菱形形状、又は台形状に形成してもよい。
【0024】
(挟持部材46)
図2及び
図3に示すように、レンズホルダ30の外周壁30eには、3つの取付部30mが周方向に間隔を置いて形成されている。レンズホルダ30の各取付部30mには、各ボイスコイルモータ34のコイル44の端部側を挟持する挟持部材46が設けられている。レンズホルダ30の3つの取付部30mのうちの1つの取付部30mには、2つの挟持部材46が設けられている。前記2つの挟持部材46のうちの一方の挟持部材46は、一方のボイスコイルモータ34のコイル44の端部側を挟持する。前記2つの挟持部材46のうちの他方の挟持部材46は、他方のボイスコイルモータ34のコイル44の端部側を挟持する。各挟持部材46は、合成樹脂により構成されている。前述のように、各挟持部材46が各コイル44の端部側を挟持することによって、各コイル44がレンズホルダ30の外周壁30e側に2つの挟持部材46を介して設けられる。
【0025】
(磁気回路等)
各ボイスコイルモータ34において、ヨーク36は、マグネット42の磁気をコイル44側に導くように構成されており、環状の閉磁路を形成する。ヨーク36と2つのマグネット42は、磁気回路を形成する。そして、各ボイスコイルモータ34において、コイル44の巻線に電流が流れると、磁気回路の作用によって光軸方向の駆動力が発生して、コイル44がヨーク36に対して相対的に光軸方向へ移動する。その結果、レンズホルダ30及びフォーカスレンズ20が光軸方向へコイル44と一体的に移動する。
【0026】
(押え部48)
図4、
図7、及び
図8に示すように、各ボイスコイルモータ34において、ヨーク36内における光軸方向の両端側には、楔作用によって2つのマグネット42をヨーク36の内側面36i側に押える押え部(押え部材)48がそれぞれ設けられている。各押え部48は、ヨーク36とは別部品により構成されており、非磁性材料又は磁性材料のいずれであってもよい。2つの押え部48のうちの一方の押え部48は、第1のヨークセグメント38に設けられており、他方の押え部48は、第2のヨークセグメント40に設けられている。
【0027】
図7及び
図8に示すように、各押え部48には、2つのマグネット42の傾斜面42fにそれぞれ平行な2つの押圧面48fが形成されている。各押え部48の2つの押圧面48fのうちの一方の押圧面48fは、2つのマグネット42のうちの一方のマグネット42の傾斜面42fに圧接する。各押え部48の2つの押圧面48fのうちの他方の押圧面48fは、2つのマグネット42のうちの他方のマグネット42の傾斜面42fに圧接する。換言すれば、各押え部48の各押圧面48fは、各マグネット42の端面である傾斜面42fに圧接する。
【0028】
図6及び
図8に示すように、各押え部48の中央部には、ボス部48bが形成されている。各押え部48のボス部48bは、ヨーク36に形成した支持穴36hにマグネット42の厚み方向へ移動可能に支持されている。換言すれば、各押え部48のボス部48bとヨーク36の支持穴36hによって、各押え部48は、マグネット42の厚み方向の移動が許容されている。
【0029】
(作用効果)
続いて、本発明の実施形態の作用効果について説明する。
【0030】
レンズ駆動装置22においては、前述のように、ヨーク36内における光軸方向の両端側に、楔作用によって2つのマグネット42をヨーク36の内側面36i側に押える押え部48がそれぞれ設けられている。各押え部48の各押圧面48fは、各マグネット42の端面である傾斜面42fに圧接する。そのため、マグネット42とコイル44との間を微小間隙に保ちつつ、押え部48による楔作用を効果的に発揮させて、ヨーク36の内側面36iに対するマグネット42の固定力(密着力)を十分に高めることができる。これにより、異なる磁極を対向させた2つのマグネット42を用いた場合でも、レンズ駆動装置22に働く衝撃によってマグネット42がヨーク36の内側面36iから離脱(剥離)することを防止することができる。よって、本実施形態によれば、ボイスコイルモータ34の推力に寄与する有効磁束を増やして、ボイスコイルモータ34の高推力化を図りつつ、レンズ駆動装置22の耐衝撃性、換言すれば、レンズユニット14の耐衝撃性及びカメラ10の耐衝撃性を高めることができる。
【0031】
また、レンズ駆動装置22においては、前述のように、各押え部48に、2つのマグネット42の傾斜面42fにそれぞれ平行な2つの押圧面48fが形成されている。そのため、本実施形態によれば、ヨーク36内に押え部48を配置するための配置スペースを小さくして、レンズ駆動装置22の小型化、換言すれば、レンズユニット14の小型化及びカメラ10の小型化を図ることができる。
【0032】
更に、レンズ駆動装置22においては、前述のように、ヨーク36は、その周方向に沿って分割された2つのヨークセグメント38,40を有している。2つの押え部48のうちの一方の押え部48は、第1のヨークセグメント38に設けられており、他方の押え部48は、第2のヨークセグメント40に設けられている。そのため、複数のヨークセグメント38,40からヨーク36を組み立てる際に、各押え部48の各押圧面48fがマグネット42の各傾斜面42fに圧接(密着)させることができる。これにより、本実施形態によれば、レンズ駆動装置22の製造が簡単になり、レンズ駆動装置22の製造コストの低下、換言すれば、レンズユニット14の製造コストの低下及びカメラ10の製造コストの低下を図ることができる。
【0033】
また、レンズ駆動装置22においては、前述のように、各押え部48は、マグネット42の厚み方向の移動が許容されている。そのため、マグネット42の寸法にバラツキがあっても、いずれかの押え部48がヨーク36に対してマグネット42の厚み方向へ移動することにより、そのバラツキを吸収することができる。これにより、本実施形態によれば、各押え部48の各押圧面48fを各マグネット42の傾斜面42fに密着させて、ヨーク36の内側面36iに対するマグネット42の固定力を十分に高めることができる。
【0034】
〔本実施形態の変形例1〕
図9を参照して、本実施形態の変形例1に係るボイスコイルモータについて説明する。
図9は、本実施形態の変形例1に係るボイスコイルモータの光軸方向に沿った模式的な断面図である。なお、説明の便宜上、本実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0035】
(ヨークセグメント50,52)
図9に示すように、本実施形態の変形例1に係るボイスコイルモータ34Aにおいては、ヨーク36は、その周方向に沿って分割された2つのヨークセグメント50,52を有している。第1のヨークセグメント50の断面形状は、横U字状に形成されており、第2のヨークセグメント52は、板状に形成されている。第1のヨークセグメント50の両端部には、光軸方向の一方側に突出した係合凸部50sがそれぞれ形成されている。第2のヨークセグメント52の両端部には、光軸方向に直交する方向の一方側又は他方側に窪んだ係合凹部52dがそれぞれ形成されている。第1のヨークセグメント50の各係合凸部50sは、第2のヨークセグメント52の各係合凹部52dに係合する。2つの押え部48のうちの一方の押え部48は、第1のヨークセグメント50に設けられており、他方の押え部48は、第2のヨークセグメント52に設けられている。
【0036】
(コイル54)
ボイスコイルモータ34Aは、レンズホルダ30の外周壁30e側(
図3参照)に設けられた筒状のコイル54を有している。コイル54の巻線は、光軸方向に平行な軸回りに巻回されている。コイル54は、2つのマグネット42に対向しており、ヨーク36内に光軸方向へ移動可能に相対的に挿通されている。
【0037】
(作用効果)
そして、本実施形態の変形例1においても、前述の本実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0038】
〔実施形態の変形例2〕
図10を参照して、本実施形態の変形例2に係るボイスコイルモータについて説明する。
図10は、本実施形態の変形例2に係るボイスコイルモータの光軸方向に沿った模式的な断面図である。なお、説明の便宜上、本実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0039】
(押え部48)
本実施形態の変形例2に係るボイスコイルモータ34Bにおいては、ヨーク36内における光軸方向の一端側には、押え部(押え部材)48が設けられている。押え部48は、ヨーク36とは別部品により構成されている。ヨーク36内における光軸方向の他端側には、楔作用によって2つのマグネット42をヨーク36の内側面36i側に押える押え部36pが設けられている。押え部36pは、ヨーク36の一部により構成されている。押え部36pには、2つのマグネット42の傾斜面42fにそれぞれ平行な2つの押圧面36fが形成されている。押え部36pの2つの押圧面36fのうちの一方の押圧面36fは、2つのマグネット42のうちの一方のマグネット42の傾斜面42fに圧接する。押え部36pの2つの押圧面36fのうちの他方の押圧面36fは、2つのマグネット42のうちの他方のマグネット42の傾斜面42fに圧接する。換言すれば、押え部36pの各押圧面36fは、各マグネット42の端面である傾斜面42fに圧接する。
【0040】
(作用効果)
そして、本実施形態の変形例2においても、前述の本実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0041】
〔実施形態の変形例3〕
図11を参照して、本実施形態の変形例3に係るボイスコイルモータについて説明する。
図11は、本実施形態の変形例3に係るボイスコイルモータの光軸方向に沿った模式的な断面図である。なお、説明の便宜上、本実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0042】
(マグネット42)
図11に示すように、本実施形態の変形例3に係るボイスコイルモータ34Cにおいては、ヨーク36における光軸方向に直交する方向の片方の内側面36iのみに、大型のマグネット42が設けられている。
【0043】
(作用効果)
そして、本実施形態の変形例3においても、マグネット42とコイル44との間を微小間隙に保ちつつ、押え部48による楔作用を効果的に発揮させて、ヨーク36の内側面36iに対するマグネット42の固定力(密着力)を十分に高めることができる。これにより、大型のマグネット42を用いた場合でも、レンズ駆動装置22(
図2参照)に働く衝撃によってマグネット42がヨーク36の内側面36iから離脱(剥離)することを防止することができる。よって、本実施形態の変形例3によれば、ボイスコイルモータ34の推力に寄与する有効磁束を増やして、ボイスコイルモータ34の高推力化を図りつつ、レンズ駆動装置22の耐衝撃性を高めることができる。
【0044】
その他、本実施形態の変形例3においても、前述の本実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0045】
〔本実施形態の他の態様〕
ヨーク36をレンズ鏡筒16の内周壁16i側に設ける代わりに、レンズホルダ30の外周壁30e側に設けてもよい。この場合には、コイル44は、レンズ鏡筒16の内周壁16i側に設けられる。また、前述のレンズ駆動装置22の構成を、ズーム調整を行うためのズームレンズ(不図示)を所定方向としての光軸方向へ移動させる他のレンズ駆動装置(不図示)に適用してもよい。
【0046】
前述のレンズ駆動装置22の構成を、像振れ補正を行うための補正レンズ(不図示)を光軸方向に直交する方向である所定方向へ移動させる他のレンズ駆動装置(不図示)に適用してもよい。この場合、箱型のヨーク(不図示)又はコイル(不図示)は、レンズ鏡筒16の内周壁側に固定部材(不図示)を介して設けられる。
【0047】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係るレンズ駆動装置は、レンズ鏡筒内にレンズの光軸方向又はそれに直交する方向である所定方向(移動方向)へ移動可能に設けられ、前記レンズを保持するレンズホルダと、前記レンズホルダを前記所定方向へ移動させるためのボイスコイルモータと、を備え、前記ボイスコイルモータは、前記レンズ鏡筒の内周壁側及び前記レンズホルダの外周壁側のうちの一方に設けられた箱型のヨークと、前記ヨークの内側面に設けられたマグネットと、前記レンズ鏡筒の内周壁側及び前記レンズホルダの外周壁側のうちの他方に設けられ、前記ヨーク内に前記所定方向へ相対的に移動可能に挿通され、前記マグネットに対向したコイルと、前記ヨーク内における前記所定方向の両端側にそれぞれ設けられ、前記マグネットにおける前記所定方向の端面に圧接し、楔作用によって前記マグネットを前記ヨークの内側面側に押える押え部(押え部材)と、を有する。
【0048】
前記の構成によれば、前述のように、前記ヨーク内における前記所定方向の両端側には、楔作用によって前記マグネットを前記ヨークの内側面側に押える前記押え部がそれぞれ設けられている。各押え部は、前記マグネットにおける前記所定方向の端面に圧接する。そのため、前記マグネットと前記コイルとの間を微小間隙に保ちつつ、前記ヨークの内側面に対する前記マグネットの固定力(密着力)を高めることができる。これにより、大型のマグネット又は異なる磁極を対向させた2つのマグネットを用いた場合でも、前記レンズ駆動装置に働く衝撃によって前記マグネットが前記ヨークの内側面から離脱(剥離)することを防止することができる。よって、前記ボイスコイルモータの推力に寄与する有効磁束を増やして、前記ボイスコイルモータの高推力化を図りつつ、前記レンズ駆動装置の耐衝撃性を高めることができる。
【0049】
本発明の態様2に係るレンズ駆動装置は、前記態様1において、前記マグネットにおける前記所定方向の両端面に前記マグネットの厚み方向に対して傾斜した傾斜面がそれぞれ形成され、各押え部に前記マグネットの各傾斜面に平行な押圧面が形成され、各押え部の前記押圧面が前記マグネットの前記傾斜面に圧接してもよい。
【0050】
前記の構成によれば、各押え部の前記押圧面が前記マグネットの前記傾斜面に圧接することにより、前記押え部による楔作用を効果的に発揮させて、前記ヨークの内側面に対する前記マグネットの固定力(密着力)を十分に高めることができる。また、前記ヨーク内に前記押え部を配置するための配置スペースを小さくして、前記レンズ駆動装置の小型化を図ることができる。
【0051】
本発明の態様3に係るレンズ駆動装置は、前記態様2において、前記ヨークは、その周方向に沿って分割された複数のヨークセグメントを有しており、一方の前記押え部は、前記複数のヨークセグメントのうちのいずれかのヨークセグメントに設けられており、他方の前記押え部は、他のヨークセグメントに設けられてもよい。
【0052】
前記の構成によれば、前記複数のヨークセグメントから前記ヨークを組み立てる際に、各押え部の前記押圧面が前記マグネットの前記傾斜面に圧接(密着)させることができる。これにより、前記レンズ駆動装置の製造が簡単になり、前記レンズ駆動装置の製造コストの低下を図ることができる。
【0053】
本発明の態様4に係るレンズ駆動装置は、前記態様3において、一対の前記押え部のうちの少なくともいずれかの押え部は、前記ヨークとは別部品により構成され、前記ヨークに対して前記マグネットの厚み方向の移動が許容されてもよい。
【0054】
前記の構成によれば、前記マグネットの寸法にバラツキがあっても、前記いずれかの押え部が前記ヨークに対して前記マグネットの厚み方向へ移動することにより、そのバラツキを吸収することができる。これにより、各押え部の前記押圧面を前記マグネットの前記傾斜面に密着させて、前記ヨークの内側面に対する前記マグネットの固定力を十分に高めることができる。
【0055】
本発明の態様5に係るレンズユニットは、レンズ鏡筒と、該レンズ鏡筒内に配設されたレンズと、前記レンズを前記所定方向へ移動させる前記態様1から4のいずれかに係るレンズ駆動装置と、を備える。
【0056】
前記の構成によれば、前記ボイスコイルモータの高推力化を図りつつ、前記レンズ駆動装置を備えた前記レンズユニットの耐衝撃性を高めることができる。
【0057】
本発明の態様6に係るカメラは、カメラボディと、該カメラボディに設けられた前記態様5に係るレンズユニットと、を備える。
【0058】
前記の構成よれば、前記ボイスコイルモータの高推力化を図りつつ、前記レンズユニットを備えた前記カメラの耐衝撃性を高めることができる。
【0059】
〔付記事項〕
本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0060】
10 カメラ
12 カメラボディ
14 レンズユニット
16 レンズ鏡筒
16i 内周壁
18 固定レンズ
20 フォーカスレンズ(レンズ)
22 レンズ駆動装置
24 フォーカスリング
26 レリーズボタン
28 自動フォーカス制御部
30 レンズホルダ
30m 取付部
30e 外周壁
32 ガイドロッド
34 ボイスコイルモータ
36 ヨーク
36i 内側面
36h 支持穴
38 第1のヨークセグメント
38s 係合凸部
38d 係合凹部
40 第2のヨークセグメント
40s 係合凸部
40d 係合凹部
42 マグネット
42f 傾斜面
44 コイル
46 挟持部材
48 押え部
48f 押圧面
48b ボス部
34A ボイスコイルモータ
50 第1のヨークセグメント
50s 係合凸部
52 第2のヨークセグメント
52d 係合凹部
54 コイル
34B ボイスコイルモータ
36p 押え部
36f 押圧面
34C ボイスコイルモータ