(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037603
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】スラストフォイル軸受、圧縮機、及び冷凍装置
(51)【国際特許分類】
F16C 27/02 20060101AFI20240312BHJP
F04B 39/00 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
F16C27/02 A
F04B39/00 103Q
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142546
(22)【出願日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大森 直陸
【テーマコード(参考)】
3H003
3J012
【Fターム(参考)】
3H003AA05
3H003AC03
3H003CA02
3J012AB20
3J012BB02
3J012EB08
3J012EB10
3J012FB01
(57)【要約】
【課題】スラストフォイル軸受の負荷能力を向上させる。
【解決手段】スラストフォイル軸受(27)では、第1端辺(75)は第1境界線(74)に対して、又は第2端辺(87)は第2境界線(86)に対して、所定の角度を有する。バックフォイル(70)の第1固定代(73)は、該バックフォイル(70)の隣に位置する他のバックフォイル(70)に支持されるトップフォイル(80)の第2固定代(85)と互いに重なった状態でベースプレート(60)に固定される。
【選択図】
図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸(35)に設けられたスラストディスク(36)に対向して配置されるスラストフォイル軸受であって、
前記スラストディスク(36)に対向して配置されるトップフォイル(80)と、
前記トップフォイル(80)における前記スラストディスク(36)の反対側に配置されるバックフォイル(70)と、
前記バックフォイル(70)における前記トップフォイル(80)の反対側に配置され、前記バックフォイル(70)を支持する円環状のベースプレート(60)とを備え、
前記バックフォイル(70)は、前記ベースプレート(60)の周方向に沿って配置される複数のバックフォイル片(71)を有し、
前記バックフォイル片(71)は、
前記トップフォイル(80)を支持する支持部(72)と、
前記支持部(72)における前記回転軸(35)の回転方向の前側に該支持部(72)と連続して形成され、前記ベースプレート(60)に固定される第1固定代(73)と、
前記第1固定代(73)における前記回転方向前側の端辺である第1端辺(75)と、
前記支持部(72)と前記第1固定代(73)との境界に形成される第1境界線(74)とを含み、
前記トップフォイル(80)は、前記複数のバックフォイル片(71)のそれぞれに重なって配置される複数のトップフォイル片(81)を有し、
前記トップフォイル片(81)は、
前記支持部(72)に支持される本体部(82)と、
前記本体部(82)における前記回転方向の後側に該本体部(82)と連続して形成され、前記ベースプレート(60)に固定される第2固定代(85)と、
前記第2固定代(85)における前記回転方向後側の端辺である第2端辺(87)と、
前記本体部(82)と前記第2固定代(85)との境界に形成される第2境界線(86)とを含み、
前記第1端辺(75)は前記第1境界線(74)に対して、又は前記第2端辺(87)は前記第2境界線(86)に対して、所定の角度を有し、
前記バックフォイル片(71)の前記第1固定代(73)は、該バックフォイル片(71)の隣に位置する他の前記バックフォイル片(71)に支持される前記トップフォイル片(81)の前記第2固定代(85)と互いに重なった状態で前記ベースプレート(60)に固定される
スラストフォイル軸受。
【請求項2】
前記第1端辺(75)が前記第1境界線(74)に対して所定の角度を有するとき、前記バックフォイル片(71)の前記第1端辺(75)は、該バックフォイル片(71)の隣に位置する他の前記バックフォイル片(71)に支持される前記トップフォイル片(81)の前記第2境界線(86)に沿って配置される
請求項1に記載のスラストフォイル軸受。
【請求項3】
前記第2端辺(87)が前記第2境界線(86)に対して所定の角度を有するとき、前記トップフォイル片(81)の前記第2端辺(87)は、該トップフォイル片(81)の隣に位置する他の前記トップフォイル片(81)を支持する前記バックフォイル片(71)の前記第1境界線(74)に沿って配置される
請求項1に記載のスラストフォイル軸受。
【請求項4】
前記トップフォイル片(81)の前記第2固定代(85)は、該トップフォイル片(81)の隣に位置する他の前記トップフォイル片(81)を支持する前記バックフォイル片(71)の前記第1固定代(73)を介して、 前記ベースプレート(60)に固定される
請求項1~3のいずれか1つに記載のスラストフォイル軸受。
【請求項5】
前記バックフォイル片(71)の前記支持部(72)は、前記回転軸(35)の径方向からみて山部(76)と谷部(77)とが交互に形成される
請求項1~3のいずれか1つに記載のスラストフォイル軸受。
【請求項6】
前記山部(76)の高さは、前記回転方向の前側に向かうに従って高くなる
請求項5に記載のスラストフォイル軸受。
【請求項7】
前記ベースプレート(60)は、前記バックフォイル片(71)の前記支持部(72)を支持するとともに、前記回転方向の後側に向かうに従って前記スラストディスク(36)から離れるように傾斜する傾斜面(62)を含む
請求項5に記載のスラストフォイル軸受。
【請求項8】
前記スラストディスク(36)を有する前記回転軸(35)と、
請求項1~3のいずれか1つに記載のスラストフォイル軸受(27)とを備える
圧縮機。
【請求項9】
請求項8に記載の圧縮機(20)と、
前記圧縮機(20)で圧縮された冷媒が流れる冷媒回路(1a)とを備える
冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スラストフォイル軸受、圧縮機、及び冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速回転体用の軸受として、スラストフォイル軸受が知られている。特許文献1には、回転軸に設けられたスラストカラー(スラストディスク)に対向して配置されるスラストフォイル軸受が開示されている。
【0003】
特許文献1のスラストフォイル軸受は、振動や衝撃によって発生する回転軸の動き(スラストカラーの軸方向変位と傾き)を吸収できるように、軸受面が柔軟な金属製薄板(フォイル)によって形成される。スラストフォイル軸受は、軸受面の下に該軸受面を柔軟に支持するフォイル構造を有する。
【0004】
特許文献1のスラストフォイル軸受には、複数のトップフォイル片と複数のバックフォイル片とが重なって周方向に配列される。トップフォイル片は、バックフォイル片に支持される。スラストカラーの回転によって、トップフォイル片とスラストカラーとの間に潤滑流体が導入される。この潤滑流体によってトップフォイル片とスラストカラーとの間に楔状の流体潤滑膜が形成され、スラストフォイル軸受の負荷能力が発揮される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2020/171021号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のスラストフォイル軸受では、トップフォイル片及びバックフォイル片のそれぞれは、ベースプレートからの脱落を抑制するためにベースプレートに固定されている。具体的には、トップフォイル片は、回転軸の回転方向後側の縁部に固定代が設けられ、該固定代がベースプレートに固定される。バックフォイル片は、回転軸の回転方向前側の縁部に固定代が設けられ、該固定代がベースプレートに固定される。
【0007】
特許文献1のスラストフォイル軸受では、トップフォイル片の固定代と該トップフォイル片に隣接するバックフォイル片の固定代とが互いに干渉しないように、両固定代の間に隙間が形成されている。加えて、両固定代を固定するための作業スペースを確保するために、両固定代の間には、ある程度の大きさの隙間が形成される。
【0008】
このように両固定代の間に隙間を必要とするスラストフォイル軸受では、軸受として機能する軸受面の面積を減らさざるを得えず、スラストフォイル軸受の負荷能力が十分に得られていない場合があった。
【0009】
本開示の目的は、スラストフォイル軸受の負荷能力を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の態様は、回転軸(35)に設けられたスラストディスク(36)に対向して配置されるスラストフォイル軸受であって、前記スラストディスク(36)に対向して配置されるトップフォイル(80)と、前記トップフォイル(80)における前記スラストディスク(36)の反対側に配置されるバックフォイル(70)と、前記バックフォイル(70)における前記トップフォイル(80)の反対側に配置され、前記バックフォイル(70)を支持する円環状のベースプレート(60)とを備える。
【0011】
前記バックフォイル(70)は、前記ベースプレート(60)の周方向に沿って配置される複数のバックフォイル片(71)を有する。前記バックフォイル片(71)は、前記トップフォイル(80)を支持する支持部(72)と、前記支持部(72)における前記回転軸(35)の回転方向の前側に該支持部(72)と連続して形成され、前記ベースプレート(60)に固定される第1固定代(73)と、前記第1固定代(73)における前記回転方向前側の端辺である第1端辺(75)と、前記支持部(72)と前記第1固定代(73)との境界に形成される第1境界線(74)とを含む。
【0012】
前記トップフォイル(80)は、前記複数のバックフォイル片(71)のそれぞれに重なって配置される複数のトップフォイル片(81)を有する。前記トップフォイル片(81)は、前記支持部(72)に支持される本体部(82)と、前記本体部(82)における前記回転方向の後側に該本体部(82)と連続して形成され、前記ベースプレート(60)に固定される第2固定代(85)と、前記第2固定代(85)における前記回転方向後側の端辺である第2端辺(87)と、前記本体部(82)と前記第2固定代(85)との境界に形成される第2境界線(86)とを含む。
【0013】
前記第1端辺(75)は前記第1境界線(74)に対して、又は前記第2端辺(87)は前記第2境界線(86)に対して、所定の角度を有する。前記バックフォイル片(71)の前記第1固定代(73)は、該バックフォイル片(71)の隣に位置する他の前記バックフォイル片(71)に支持される前記トップフォイル片(81)の前記第2固定代(85)と互いに重なった状態で前記ベースプレート(60)に固定される。
【0014】
第1の態様では、バックフォイル片(71)の第1固定代(73)と該バックフォイル片(71)に隣接する他のバックフォイル片(71)に支持されるトップフォイル片(81)の第2固定代(85)とが互いに重なった状態でベースプレート(60)に固定される。そのため、スラストフォイル軸受において軸受面として機能しない領域を小さくできる。これにより、軸受面として機能する領域を大きくでき、スラストフォイル軸受の負荷能力を向上できる。
【0015】
加えて、第1の態様では、第1端辺(75)が第1境界線(74)に対して所定の角度を有する、又は第2端辺(87)が第2境界線(86)に対して所定の角度を有する。そのため、第1固定代(73)と該第1固定代(73)に隣接する第2固定代(85)とを互いに重ねて固定する際、第1境界線(74)と第2境界線(86)との間隔を広くすることができる。これにより、第1固定代(73)及び第2固定代(85)をベースプレートに固定する作業を容易にできる。
【0016】
第2の態様は、第1の態様において、前記第1端辺(75)が前記第1境界線(74)に対して所定の角度を有するとき、前記バックフォイル片(71)の前記第1端辺(75)は、該バックフォイル片(71)の隣に位置する他の前記バックフォイル片(71)に支持される前記トップフォイル片(81)の前記第2境界線(86)に沿って配置される。
【0017】
第2の態様では、バックフォイル片(71)の第1端辺(75)が、該バックフォイル片(71)に隣接する他のバックフォイル片(71)に支持されるトップフォイル片(81)の第2境界線(86)に沿って配置される。そのため、第1固定代(73)と該第1固定代(73)に隣接する第2固定代(85)とを重ねて固定する際の位置決めを容易にできる。これにより、バックフォイル片(71)及びトップフォイル片(81)の固定作業の効率を向上できる。
【0018】
第3の態様は、第1の態様において、前記第2端辺(87)が前記第2境界線(86)に対して所定の角度を有するとき、前記トップフォイル片(81)の前記第2端辺(87)は、該トップフォイル片(81)の隣に位置する他の前記トップフォイル片(81)を支持する前記バックフォイル片(71)の前記第1境界線(74)に沿って配置される。
【0019】
第3の態様では、トップフォイル片(81)の第2端辺(87)が、該トップフォイル片(81)に隣接する他のトップフォイル片(81)を支持するバックフォイル片(71)の第1境界線(74)に沿って配置される。そのため、第1固定代(73)と該第1固定代(73)に隣接する第2固定代(85)とを重ねて固定する際の位置決めを容易にできる。これにより、バックフォイル片(71)及びトップフォイル片(81)の固定作業の効率を向上できる。
【0020】
第4の態様は、第1~第3のいずれか1つの態様において、前記トップフォイル片(81)の前記第2固定代(85)は、該トップフォイル片(81)の隣に位置する他の前記トップフォイル片(81)を支持する前記バックフォイル片(71)の前記第1固定代(73)を介して、 前記ベースプレート(60)に固定される。
【0021】
第4の態様では、バックフォイル片(71)及びトップフォイル片(81)は、ベースプレート(60)に対して第1固定代(73)及び第2固定代(85)の順に配列されて固定される。これは、スラストフォイル軸受の構成要素であるベースプレート、バックフォイル、及びトップフォイルの配列順と同じである。これにより、スラストフォイル軸受(27)の組み立てを容易にできる。
【0022】
第5の態様は、第1~第4のいずれか1つの態様において、前記バックフォイル片(71)の前記支持部(72)は、前記回転軸(35)の径方向からみて山部(76)と谷部(77)とが交互に形成される。
【0023】
第5の態様では、支持部(72)は、山部(76)と谷部(77)とが交互に形成されるので、トップフォイル片(81)を弾性的に支持できる。
【0024】
第6の態様は、第5の態様において、前記山部(76)の高さは、前記回転方向の前側に向かうに従って高くなる。
【0025】
第6の態様では、山部(76)の高さが回転方向前側に向かうに従って高くなる。そのため、スラストディスク(36)とトップフォイル片(81)との間に楔状の隙間を形成できる。
【0026】
第7の態様は、第5の態様において、前記ベースプレート(60)は、前記バックフォイル片(71)の前記支持部(72)を支持するとともに、前記回転方向の後側に向かうに従って前記スラストディスク(36)から離れるように傾斜する傾斜面(62)を含む。
【0027】
第7の態様では、ベースプレート(60)が傾斜面(62)を有する。そのため、スラストディスク(36)とトップフォイル片(81)との間に楔状の隙間を形成することができる。
【0028】
第8の態様は、前記スラストディスク(36)を有する前記回転軸(35)と、第1~第7のいずれか1つの態様のスラストフォイル軸受(27)とを備える圧縮機である。
【0029】
第8の態様では、負荷能力が向上したスラストフォイル軸受(27)を備える圧縮機を提供できる。
【0030】
第9の態様は、第8の態様の圧縮機(20)と、前記圧縮機(20)で圧縮された冷媒が流れる冷媒回路(1a)とを備える冷凍装置である。
【0031】
第9の態様では、負荷能力が向上したスラストフォイル軸受(27)を備える冷凍装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る冷凍装置の概略の構成図である。
【
図2】
図2は、ターボ圧縮機の全体構成を示す概略の縦断面図である。
【
図3】
図3は、本開示のスラストフォイル軸受を示す側面図である。
【
図4】
図4は、本開示のスラストフォイル軸受を示すの平面図である。
【
図5】
図5は、実施形態1に係るバックフォイル片の平面図である。
【
図6】
図6は、実施形態1に係るトップフォイル片の平面図である。
【
図7】
図7は、実施形態1に係るバックフォイル片及びトップフォイル片の固定の様子を示す説明図である。
【
図9】
図9は、実施形態1の変形例に係る
図8に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示される実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。各図面は、本開示を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために必要に応じて寸法、比または数を誇張または簡略化して表す場合がある。
【0034】
《実施形態1》
実施形態1のスラストフォイル軸受について図面を参照しながら説明する。本開示のスラストフォイル軸受(27)は、例えば冷凍装置(1)のターボ圧縮機(20)に適用される。
【0035】
(1)冷凍装置の概要
図1に示す冷凍装置(1)は、ターボ圧縮機(以下、圧縮機ともいう)(20)と、該圧縮機(20)で圧縮された冷媒が流れる冷媒回路(1a)とを備える。冷媒回路(1a)には、冷媒が充填される。冷媒回路(1a)は、圧縮機(20)、放熱器(2)、減圧機構(3)、および蒸発器(4)を有する。減圧機構(3)は、膨張弁である。冷媒回路(1a)は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う。
【0036】
冷凍サイクルでは、圧縮機(20)によって圧縮された冷媒が、放熱器(2)において空気に放熱する。放熱した冷媒は、減圧機構(3)によって減圧され、蒸発器(4)において蒸発する。蒸発した冷媒は、圧縮機(20)に吸入される。
【0037】
冷凍装置(1)は、空気調和装置である。空気調和装置は、冷房専用機、暖房専用機、あるいは冷房と暖房とを切り換える空気調和装置であってもよい。この場合、空気調和装置は、冷媒の循環方向を切り換える切換機構(例えば四方切換弁)を有する。冷凍装置(1)は、給湯器、チラーユニット、庫内の空気を冷却する冷却装置などであってもよい。冷却装置は、冷蔵庫、冷凍庫、コンテナなどの内部の空気を冷却する。膨張機構は、電子膨張弁、感温式膨張弁、膨張機、またはキャピラリーチューブで構成される。
【0038】
(2)圧縮機の概要
圧縮機(20)の概要について
図2を参照しながら説明する。本実施形態の圧縮機(20)は、1つの圧縮機構(50)を有する単段式である。圧縮機(20)は、ケーシング(21)、モータ(30)、回転軸(35)、及び圧縮機構(50)を有する。ケーシング(21)は、モータ(30)、回転軸(35)、及び圧縮機構(50)を収容する。圧縮機(20)は、回転軸(35)を支える軸受を有する。軸受は、ラジアル軸受(26)及びスラストフォイル軸受(27)を含む。
【0039】
(2-1)ケーシング
ケーシング(21)は、胴部(22)と、第1閉塞部(23)と、第2閉塞部(24)とを有する。胴部(22)は、軸方向の両端が開放する筒状に形成される。第1閉塞部(23)は、胴部(22)の軸方向の一端側の開放部を閉塞する。第1閉塞部(23)は、その中央に位置するハウジング(25)を含む。第2閉塞部(24)は、胴部(22)の軸方向の他端側の開放部を閉塞する。
【0040】
(2-2)モータ
モータ(30)は、固定子(31)と回転子(32)とを有する。固定子(31)は、筒状に形成される。固定子(31)は、ケーシング(21)の胴部(22)の内周面に固定される。回転子(32)は、固定子(31)の内部に設けられる。モータ(30)は、インバータ装置によって運転周波数(回転数)が調節される。言い換えると、圧縮機(20)は、回転数が可変なインバータ式である。このため、モータ(30)の回転数は、比較的低速の回転数から比較的高速の回転数までの間で変化する。
【0041】
(2-3)回転軸
回転軸(35)は、回転子(32)の軸心に固定される。回転軸(35)は、モータ(30)によって回転駆動される。回転軸(35)は、ケーシング(21)の軸方向に沿って延びる。
【0042】
回転軸(35)は、スラストディスク(36)を有する。スラストディスク(36)は、回転軸(35)における圧縮機構(50)の近くに形成される。スラストディスク(36)は、回転軸(35)において拡径された部分である。スラストディスク(36)は、後述する一対のスラストフォイル軸受(27)によって挟持される。
【0043】
(2-4)ラジアル軸受
ラジアル軸受(26)は、回転軸(35)に作用する荷重のうち、回転軸(35)の径方向に作用する荷重(ラジアル荷重)を支持する。本実施形態の圧縮機(20)は、2つのラジアル軸受(26)を有する。ラジアル軸受(26)の数、および位置は単なる一例である。
【0044】
一方のラジアル軸受(26)は、回転軸(35)の一端部寄りに配置される。他方のラジアル軸受(26)は、回転軸(35)の他端部寄りに配置される。各ラジアル軸受(26)は、軸受サポート(28)を介して、ケーシング(21)の胴部(22)に固定される。各ラジアル軸受(26)は、回転軸(35)を回転可能に支持する。
【0045】
(2-5)スラストフォイル軸受
スラストフォイル軸受(27)は、回転軸(35)に作用する荷重のうち、回転軸(35)の軸方向に作用する荷重(スラスト荷重)を支持する。本実施形態の圧縮機(20)は、2つのスラストフォイル軸受(27)を有する。スラストフォイル軸受(27)の数、および位置は単なる一例である。
【0046】
スラストフォイル軸受(27)は、回転軸(35)の一端部寄り(圧縮機構(50)寄り)に位置する。スラストフォイル軸受(27)は、回転軸(35)の一端部寄りに配置された軸受サポート(28)の中央部に固定される。スラストフォイル軸受(27)は、回転軸(35)の軸方向の移動を規制する。
【0047】
(2-6)圧縮機構
圧縮機構(50)は、羽根車(51)の遠心力により流体に運動エネルギーを与え、この運動エネルギーを圧力に変換する遠心式の圧縮機構である。圧縮機構(50)は、ハウジング(25)および羽根車(51)を含む。羽根車(51)は、複数の羽根を有する。圧縮機構(50)では、ハウジング(25)と羽根車(51)との間に圧縮室(52)が形成される。ハウジング(25)には、流体(冷媒)を圧縮室(52)に送る吸入通路(53)が形成される。
【0048】
(3)スラストフォイル軸受の詳細
スラストフォイル軸受(27)について、
図3~
図8を参照しながら詳細に説明する。
【0049】
図3に示すように、2つのスラストフォイル軸受(27)は、スラストディスク(36)を挟んで両側に設けられている。言い換えると、圧縮機(20)は、一対のスラストフォイル軸受(27)を有する。スラストフォイル軸受(27)のそれぞれは、同じ構成である。各スラストフォイル軸受(27)は、スラストディスク(36)に対向して配置される。
【0050】
スラストフォイル軸受(27)は、トップフォイル(80)と、バックフォイル(70)と、ベースプレート(60)とを有する。トップフォイル(80)は、スラストディスク(36)に対向して配置される。バックフォイル(70)は、トップフォイル(80)におけるスラストディスク(36)と反対側に配置される。ベースプレート(60)は、バックフォイル(70)におけるトップフォイル(80)の反対側に配置される。
【0051】
バックフォイル(70)は、複数枚のバックフォイル片(71)によって構成される。トップフォイル(80)は、複数枚のトップフォイル片(81)によって構成される。本実施形態のバックフォイル片(71)及びトップフォイル片(81)は、同じ枚数設けられる。1枚のトップフォイル片(81)には、1枚のバックフォイル片(71)が対応して設けられる。なお、トップフォイル片(81)及びバックフォイル片(71)は、同数設けられなくてもよい。
【0052】
一対のスラストフォイル軸受(27)のそれぞれのベースプレート(60)の間には、
図3における二点鎖線で示す円筒状の軸受スペーサ(40)が挟持される。これらのベースプレート(60)は、締結ボルト(41)によって軸受スペーサ(40)を介して連結される。
【0053】
図4に示すように、ベースプレート(60)の外周部には、締結ボルト(41)を挿通するための複数(本実施形態では、3つ)の貫通孔(42)が形成される。なお、このように連結されたベースプレート(60)のうち一方は、締結ボルト(41)による締め付けによって、軸受サポート(28)に当接する。
【0054】
なお、以下の説明において、特にことわらない限り、「軸方向」とは、回転軸(35)の軸心の方向のことであり、「径方向」とは、回転軸(35)の軸心に直交する方向のことであり、「周方向」とは、回転軸(35)の軸心を基準とした周方向である。「径方向内側」とは、回転軸(35)の軸心に近い側であり、「径方向外側」とは、回転軸(35)の軸心に遠い側である。「回転方向」とは、
図4に矢印Qで示す回転軸(35)の回転方向である。
【0055】
(3-1)ベースプレート
図3に示すように、ベースプレート(60)は、軸方向におけるスラストフォイル軸受(27)の最外部を構成する。言い換えると、ベースプレート(60)は、各スラストフォイル軸受(27)において、軸方向におけるスラストディスク(36)に最も遠い位置に配置されている。
【0056】
ベースプレート(60)は、金属で構成され、厚さ数mm程度の板状の部材である。
図4に示すように、ベースプレート(60)は、円環状である。本実施形態のベースプレート(60)の表面は、段差のない平らな面である。
【0057】
ベースプレート(60)のスラストディスク(36)側の面には、複数の支持領域(61)が形成される。支持領域(61)は、バックフォイル片(71)及び該バックフォイル片(71)に対応するトップフォイル片(81)を支持するための部分である。トップフォイル片(81)は、バックフォイル片(71)に支持され、バックフォイル片(71)は、ベースプレート(60)の支持領域(61)に支持される。言い換えると、トップフォイル片(81)は、バックフォイル片(71)を介して、ベースプレート(60)の支持領域(61)に支持される。本実施形態では、ベースプレート(60)には、周方向に等分割された6つの支持領域(61)が形成される。なお、本実施形態の全ての支持領域(61)は、一つの平坦な面に形成される。
【0058】
(3-2)バックフォイル
バックフォイル(70)は、トップフォイル(80)を弾性的に支持する。バックフォイル(70)は、ベースプレート(60)に支持される。本実施形態のバックフォイル(70)は、薄板をプレス成形によって波板状に成形されるバンプフォイルである。
【0059】
図4に示すように、バックフォイル(70)は、ベースプレート(60)の周方向に沿って配置される6枚のバックフォイル片(71)を有する。バックフォイル片(71)の数は、単なる一例である。各バックフォイル片(71)は、ベースプレート(60)の各支持領域(61)の上に配置される。
【0060】
バックフォイル片(71)は、金属製の厚さ数十μm~数百μm程度の薄板(フォイル)である。バックフォイル片(71)は、支持部(72)と、第1固定代(73)と、第1境界線(74)と、第1端辺(75)とを有する。
【0061】
支持部(72)は、トップフォイル片(81)を支持する部分である。
図5に示すように、支持部(72)は、扇形の頂点側を切り欠いて、内周側の端辺及び外周側の端辺のそれぞれを円弧状とした、略台形状に形成される。
【0062】
図8に示すように、支持部(72)は、複数の山部(76)と複数の谷部(77)とを有する。言い換えると、支持部(72)は、回転軸(35)の径方向からみて波板状に形成される。具体的には、支持部(72)では、該支持部(72)の周方向一方側(回転方向Qの前側)の端辺と直交する法線方向(以下、第1方向という)において、谷部(77)と山部(76)とが交互に連なって形成される。この第1方向は、山部(76)の稜線と直交する方向ともいう。ここで、第1方向一方側とは
図5における右側を示し、第1方向他方側とは
図5における左側を示す。なお、「周方向」と「第1方向」とは、異なる方向である。
【0063】
図8に示すように、谷部(77)は、平坦な面である。谷部(77)は、ベースプレート(60)に対向する。谷部(77)は、ベースプレート(60)に当接可能である。山部(76)は、隣接する谷部(77)同士を繋ぐアーチ状に形成される。
【0064】
本実施形態では、谷部(77)及び山部(76)のそれぞれは、概ね等しいピッチで形成される。
図8に示すように、山部(76)の高さ(谷部(77)と山部(76)との高さの差)は、回転軸(35)の回転方向Qの前側に向かうに従って、順に高くなっている。本実施形態の支持部(72)は、周方向一方側(回転方向Qの前側)は山部(76)で構成され、周方向他方側(回転方向Qの後側)は谷部(77)で構成される。
【0065】
第1固定代(73)は、ベースプレート(60)に固定される部分である。
図5に示すように、第1固定代(73)は、支持部(72)の周方向一方側(本実施形態では、回転方向Qの前側)の端辺に形成される。第1固定代(73)は、支持部(72)と連続して形成される。
【0066】
第1固定代(73)は、径方向に延びる平坦な帯状に形成される。言い換えると、第1固定代(73)は、支持部(72)の周方向一方側の端辺から、更に周方向一方側に延長された部分である。第1固定代(73)は、谷部(77)と面一の平坦な面に構成される。
【0067】
なお、支持部(72)の周方向他方側(本実施形態では、回転方向Qの後側)の端辺は、ベースプレート(60)に固定されていない自由端である。
【0068】
第1境界線(74)は、支持部(72)と第1固定代(73)との境界に形成される。具体的には、第1境界線(74)は、支持部(72)における周方向一方側の端辺であり、第1固定代(73)における周方向他方側の端辺である。第1境界線(74)は、径方向に延びる。
【0069】
第1端辺(75)は、第1固定代(73)における周方向一方側(回転方向Qの前側)の端辺であるとともに、バックフォイル片(71)における周方向一方側(回転方向Qの前側)の端辺である。
【0070】
バックフォイル片(71)の第1端辺(75)は、第1境界線(74)に対して回転方向Qの前側に所定の角度を有する。第1端辺(75)と第1境界線(74)とは、平行に配置されていない。このため、第1端辺(75)と第1境界線(74)との間に形成される第1固定代(73)の幅(周方向の長さ)は、径方向内端から外端に向かうに従って徐々に広がっている。
【0071】
図5に示すように、支持部(72)には、周方向他方側から一方側に向かって周方向に延びる複数本(本実施形態では、2本)のスリット(78)が形成される。スリット(78)は、円弧状に形成される。スリット(78)は、第1固定代(73)に隣接する山部(76)まで延びている。
【0072】
この複数本のスリット(78)によって、支持部(72)は、径方向において複数(本実施形態では、3つ)の分割領域(79)に分割される。3つの分割領域(79)は、それぞれ第1方向に変位可能である。
【0073】
(3-3)トップフォイル
トップフォイル(80)は、スラストフォイル軸受(27)の作動中において、軸受面として作用する。トップフォイル(80)は、バックフォイル(70)に支持される。
【0074】
図4に示すように、トップフォイル(80)は、周方向に沿って配置される6枚のトップフォイル片(81)を有する。トップフォイル片(81)の数は、単なる一例である、各トップフォイル片(81)は、対応するバックフォイル片(71)の上に重なって配置される。
【0075】
トップフォイル片(81)は、金属製の厚さ数十μm~数百μm程度の薄板(フォイル)である。トップフォイル片(81)は、本体部(82)と、第2固定代(85)と、第2境界線(86)と、第2端辺(87)とを有する。
【0076】
本体部(82)は、対応するバックフォイル片(71)に支持される部分である。
図6に示すように、本体部(82)は、扇状の頂点側を切り欠いて、内周側の端辺及び外周側の端辺のそれぞれを円弧状とした、略台形状に形成される。本体部(82)は、被支持部(83)と、立上げ部(84)とを有する。
【0077】
図8に示すように、被支持部(83)は、対応するバックフォイル片(71)の支持部(72)に支持される。被支持部(83)は、支持部(72)における山部(76)の頂部に載るように配置される。被支持部(83)は、周方向一方側(回転方向Qの前側)に向かってスラストディスク(36)に近づくように(
図8における上方)に初期傾斜角で傾斜する。ここで、初期傾斜角とは、スラストフォイル軸受(27)にかかる荷重がゼロのときのベースプレート(60)に対するトップフォイル片(81)の傾斜角のことである。被支持部(83)は、ベースプレート(60)の支持領域(61)に対して傾斜して設けられる。
【0078】
立上げ部(84)は、被支持部(83)と第2固定代(85)とを接続させるとともに、被支持部(83)とスラストディスク(36)との間に形成される隙間の大きさを調整するための部分である。立上げ部(84)は、被支持部(83)の周方向他方側(回転方向Qの後側)の端辺に形成される。立上げ部(84)は、径方向に延びるとともに、帯状に形成される。立上げ部(84)は、階段状に形成されている。詳細には、立上げ部(84)は、第1屈曲部(84a)及び第2屈曲部(84b)を有する。
【0079】
第1屈曲部(84a)は、立上げ部(84)の周方向他方側に位置する部分である。第1屈曲部(84a)は、立上げ部(84)におけるベースプレート(60)に対向する面と反対側に屈曲している。第2屈曲部(84b)は、立上げ部(84)の周方向一方側に位置する屈曲した部分である。第2屈曲部(84b)は、立上げ部(84)におけるベースプレート(60)に対向する面側に屈曲している。なお、第1屈曲部(84a)及び第2屈曲部(84b)は、いずれもベースプレート(60)に対して鈍角に屈曲している。
【0080】
第2固定代(85)は、ベースプレート(60)に固定される部分である。詳細には、
図8に示すように、第2固定代(85)は、周方向他方側に隣接するバックフォイル片(71)の第1固定代(73)を介して、ベースプレート(60)に固定される。
【0081】
図6に示すように、第2固定代(85)は、本体部(82)の周方向他方側(回転方向Qの後側)の端辺に形成される。詳細には、第2固定代(85)は、立上げ部(84)の周方向他方側の端辺に形成される。第2固定代(85)は、本体部(82)と連続して形成される。
【0082】
第2固定代(85)は、径方向に延びる平坦な帯状に形成される。言い換えると、第2固定代(85)は、本体部(82)の周方向他方側の端辺から、更に周方向他方側に延長された部分である。
【0083】
なお、本体部(82)の周方向一方側(回転方向Qの前側)の端辺は、ベースプレート(60)に固定されていない自由端である。
【0084】
第2境界線(86)は、本体部(82)と第2固定代(85)との境界に形成される。具体的には、第2境界線(86)は、本体部(82)の立上げ部(84)における周方向他方側の端辺であり、第2固定代(85)における周方向一方側の端辺である。第2境界線(86)は、径方向に延びる。
【0085】
第2端辺(87)は、第2固定代(85)における周方向他方側(回転方向Qの後側)の端辺である。本実施形態では、第2端辺(87)は、トップフォイル片(81)における周方向他方側(回転方向Qの前側)の端辺である。第2端辺(87)は、第2境界線(86)と概ね平行である。このため、第2端辺(87)と第2境界線(86)との間に形成される第2固定代(85)の幅(周方向の長さ)は、径方向内端から外端に亘って概ね同じである。
【0086】
(3-4)トップフォイル及びバックフォイルの固定
図7及び
図8に示すように、バックフォイル片(71)の第1固定代(73)は、該バックフォイル片(71)の周方向一方側に隣接する他のバックフォイル片(71)に支持されるトップフォイル片(81)の第2固定代(85)と、互いに重なった状態でベースプレート(60)に固定される。言い換えると、トップフォイル片(81)の第2固定代(85)は、該トップフォイル片(81)における周方向他方側に隣接するバックフォイル片(71)の第1固定代(73)を介して、ベースプレート(60)に固定される。
【0087】
このように、バックフォイル片(71)の第1固定代(73)と、該バックフォイル片(71)に隣接するトップフォイル片(81)の第2固定代(85)とが、重なった状態でベースプレート(60)に固定される。これにより、スラストフォイル軸受(27)において軸受面として機能しない領域(バックフォイル片(71)及びトップフォイル片(81)の固定代の部分)を小さくできる。これに伴い、スラストフォイル軸受(27)において軸受面と機能する領域の面積を大きくできるので、スラストフォイル軸受(27)の負荷能力を向上できる。
【0088】
加えて、バックフォイル片(71)の第1端辺(75)が第1境界線(74)に対して回転方向Qの前側に所定の角度を有するので、第1固定代(73)と該第1固定代(73)に隣接する第2固定代(85)とを重ね合わせて固定する際に、第1境界線(74)と第2境界線(86)との間隔を広くできる。これにより、トップフォイル片(81)及びバックフォイル片(71)をベースプレート(60)に固定する作業を容易にできる。
【0089】
なお、第1固定代(73)と第2固定代(85)とが重なる領域(以下、固定領域という)(90)は、スラストフォイル軸受(27)における最も上に配置されるトップフォイル片(81)の第2固定代(85)によって決まる。そのため、
図7に示すように、本実施形態の固定領域(90)の幅は、径方向内端から外端に亘って概ね同じに形成される。
【0090】
本実施形態では、第1固定代(73)及び第2固定代(85)は、ベースプレート(60)に対してスポット溶接されることによって固定される。
図7に示すように、複数の固定部(本実施形態では、溶接部)(91)が固定領域(90)において径方向に一列に形成される。なお、ベースプレート(60)に対する、バックフォイル片(71)及びトップフォイル片(81)の固定は、スポット溶接以外の手段で行われてもよい。例えば、バックフォイル片(71)及びトップフォイル片(81)は、カシメ、リベット留め、ネジ留めなどの手段によって、ベースプレート(60)に固定されてもよい。
【0091】
トップフォイル片(81)及びバックフォイル片(71)を固定する際に、
図8に示すように、バックフォイル片(71)の第1端辺(75)は、該バックフォイル片(71)の隣に位置する他のバックフォイル片(71)に支持されるトップフォイル片(81)の第2境界線(86)に沿って配置される。言い換えると、バックフォイル片(71)の第1端辺(75)は、隣接するトップフォイル片(81)の第2境界線(86)と平行に配置される。
【0092】
これにより、トップフォイル片(81)及びバックフォイル片(71)をベースプレート(60)に固定する際に、バックフォイル片(71)の第1端辺(75)を位置決めの目印にしてトップフォイル片(81)を重ねて配置できる。具体的には、バックフォイル片(71)の第1端辺(75)とトップフォイル片(81)の第2境界線(86)とが重なるように、トップフォイル片(81)を配置する。そのため、バックフォイル片(71)に位置決めの目印を付与する必要がなくなるとともに、トップフォイル片(81)の位置決めを容易にできる。これにより、トップフォイル片(81)及びバックフォイル片(71)の固定作業の効率を向上できる。
【0093】
(4)圧縮機の運転動作
次に、圧縮機(20)の運転動作について説明する。
【0094】
モータ(30)に電力が供給されると、モータ(30)の回転子(32)が回転する。これにより、回転軸(35)及びインペラが回転する。羽根車(51)が回転することにより、吸入通路(53)から圧縮室(52)へ冷媒が吸入され、圧縮される。圧縮されて高圧となった冷媒は、吐出通路(図示省略)を経由して、圧縮室(52)から外部へ吐出される。
【0095】
(5)スラストフォイル軸受の作用
次に、スラストフォイル軸受(27)の作用について説明する。
【0096】
スラストフォイル軸受(27)は、
図2に示すように、スラストディスク(36)を挟んだ両側に設けられている。これにより、回転軸(35)のスラスト方向両側の移動を抑制できる。
【0097】
このような状態で回転軸(35)が回転し、スラストディスク(36)が回転を始めると、スラストディスク(36)とトップフォイル片(81)は擦れ合いつつ、両者の間に形成されたくさび形の空間に周囲流体が押し込まれる。そして、スラストディスク(36)が一定の回転速度に達すると、両者の間に流体潤滑膜が形成される。この流体潤滑膜の圧力によって、トップフォイル片(81)は、バックフォイル片(71)側へ押し付けられ、スラストディスク(36)は、トップフォイル片(81)との接触状態を脱し、非接触で回転するようになる。
【0098】
(6)特徴
(6-1)
ここで、スラストフォイル軸受(27)は、トップフォイル片(81)と該トップフォイル片(81)を支持するバックフォイル片(71)とが対になったもの(以下、パッドという)が複数設けられている。従来のスラストフォイル軸受(27)では、パッドと該パッドに隣接する他のパッドとの間のスペースに、トップフォイル片(81)の固定代とバックフォイル片(71)の固定代とが配置され、それぞれがベースプレート(60)に直接固定される。
【0099】
このような従来のスラストフォイル軸受(27)では、隣り合うパッド同士の間において、トップフォイル片(81)の固定代の幅と、バックフォイル片(71)の固定代の幅と、組み立てに必要な公差幅とを合わせた大きさの隙間が必要になる。従来のスラストフォイル軸受(27)では、パッド同士の間に、上述のような軸受面として機能しない領域を設けなければならない。そのため、軸受面として機能する領域の面積が十分に確保できず、スラストフォイル軸受としての負荷能力が十分に発揮されていなかった。
【0100】
これに対し、本実施形態のスラストフォイル軸受(27)では、バックフォイル片(71)の第1端辺(75)は、第1境界線(74)に対して所定の角度を有する。そして、バックフォイル片(71)の第1固定代(73)は、該バックフォイル片(71)の隣に位置する他のバックフォイル片(71)に支持されるトップフォイル片(81)の第2固定代(85)と互いに重なった状態で、ベースプレート(60)に固定される。
【0101】
第1固定代(73)と第2固定代(85)とが重なった状態でベースプレート(60)に固定されることにより、軸受面として機能しない領域の面積を小さくできる。これにより、軸受面として機能する領域の面積を大きくできるので、スラストフォイル軸受(27)の負荷能力を向上できる。
【0102】
更に、従来では、第1固定代(73)及び第2固定代(85)のそれぞれを個別にベースプレート(60)に固定する作業を行っていた。これに対し、本実施形態のスラストフォイル軸受(27)では、第1固定代(73)と第2固定代(85)とが重なった状態でベースプレート(60)に固定される。これにより、固定箇所が半減するので、固定作業にかかる時間を低減できるとともに、固定作業の失敗による不良品数も低減できる。
【0103】
加えて、第1端辺(75)が第1境界線(74)に対して所定の角度を有するので、第1固定代(73)と第2固定代(85)とを互いに重ねて固定する際に、第1境界線(74)と第2境界線(86)との間隔を広くできる。これにより、第1固定代(73)及び第2固定代(85)をベースプレート(60)に固定するための作業スペースを確保できるので、固定作業を容易にできる。
【0104】
(6-2)
バックフォイル片(71)の第1端辺(75)は、該バックフォイル片(71)の隣に位置する他のバックフォイル片(71)に支持されるトップフォイル片(81)の第2境界線(86)に沿って配置される。
【0105】
これにより、第1固定代(73)と該第1固定代(73)に隣接する第2固定代(85)とを重ねて固定する際の位置決めを容易にできる。これにより、固定作業の効率を向上できる。
【0106】
(6-3)
トップフォイル片(81)の第2固定代(85)は、該トップフォイル片(81)の隣に位置する他のトップフォイル片(81)を支持するバックフォイル片(71)の第1固定代(73)を介して、ベースプレート(60)に固定される。
【0107】
これにより、スラストフォイル軸受(27)の構成要素であるベースプレート(60)、バックフォイル(70)、及びトップフォイル(80)の配列順と同じになるので、スラストフォイル軸受(27)の組み立てを容易にできる。
【0108】
(6-4)
バックフォイル片(71)の支持部(72)は、回転軸(35)の径方向からみて山部(76)と谷部(77)とが交互に形成される。これにより、バックフォイル片(71)は、トップフォイル片(81)を弾性的に支持できる。
【0109】
(6-5)
バックフォイル片(71)の支持部(72)における山部(76)の高さは、回転方向Qの前側に向かうに従って高くなる。これにより、スラストディスク(36)とトップフォイル片(81)との間に楔状の隙間を形成できる。
【0110】
(7)変形例
上記実施形態については以下のような変形例としてもよい。なお、以下の説明では、原則として上記実施形態と異なる点について説明する。
【0111】
図9に示すように、本変形例では、上記実施形態のスラストフォイル軸受(27)において、バックフォイル片(71)及びベースプレート(60)の構成を変更したものである。本変形例のバックフォイル片(71)では、支持部(72)における複数の山部(76)の高さは、それぞれが同じ高さで形成されている。
【0112】
本変形例のベースプレート(60)では、各支持領域(61)には、傾斜面(62)と、該傾斜面(62)に連続して形成される平坦面(63)とが形成される。傾斜面(62)は、支持領域(61)における回転方向Qの後側に形成される。傾斜面(62)は、回転方向Qに沿って高さが増加する。すなわち、傾斜面(62)の高さ(回転軸(35)の軸方向での高さ)が、回転方向Qの前側に向かうに従って増加する。言い換えると、傾斜面(62)は、回転方向Qの後側に向かうに従ってスラストディスク(36)から離れるように傾斜する。
【0113】
平坦面(63)は、支持領域(61)における回転方向Qの前側に形成される。平坦面(63)は、支持領域(61)において傾斜していない平坦な面である。平坦面(63)は、傾斜面(62)の最も高い位置(回転方向Q前側の端部)から、相隣り合う支持領域(61)の間に形成される支持領域境界線(64)まで続く面である。平坦面(63)は、ベースプレート(60)の裏面と概ね平行な面である。平坦面(63)は、径方向に延びる帯状に形成される。
【0114】
傾斜面(62)と平坦面(63)との間の面境界線(65)は、ベースプレート(60)の径方向に沿って形成される。また、支持領域境界線(64)も、ベースプレート(60)の径方向に沿って形成される。
【0115】
傾斜面(62)の高さは、面境界線(65)と直交する方向に徐々に低くなるように傾斜する。そのため、各支持領域境界線(64)が形成された部分(各支持領域境界線(64)を挟んで隣り合う支持領域(61)の間)に、段差が形成される。
【0116】
バックフォイル片(71)は、支持領域(61)の傾斜面(62)及び平坦面(63)の上に配置される。これにより、トップフォイル片(81)とスラストディスク(36)との間にくさび形の隙間を形成できる。
【0117】
本変形例のベースプレート(60)では、互いに隣り合う支持領域(61)同士の間に支持領域境界線(64)が形成される。支持領域境界線(64)とバックフォイル片(71)の第1端辺(75)とは重なるように配置される。このように、スラストフォイル軸受(27)を組み立てる際に、ベースプレート(60)の支持領域境界線(64)を目印にして、バックフォイル片(71)の第1端辺(75)を重ねることができるので、バックフォイル片(71)の位置決め作業を容易にすることができる。
【0118】
加えて、上記実施形態と同様に、バックフォイル片(71)の第1端辺(75)が、隣接するトップフォイル片(81)の第2境界線(86)に沿って配置されるので、第1固定代(73)と第2固定代(85)とを重ねて固定する際の位置決め作業を容易にできる。これにより、固定作業の効率をより向上できる。
【0119】
《実施形態2》
実施形態2のスラストフォイル軸受(27)について説明する。本実施形態のスラストフォイル軸受(27)は、実施形態1のスラストフォイル軸受(27)において、バックフォイル片(71)及びトップフォイル片(81)の構成を変更したものである。ここでは、本実施形態のスラストフォイル軸受(27)について、実施形態1と異なる点を説明する。
【0120】
(1)バックフォイル片及びトップフォイル片
図10に示すように、本実施形態のバックフォイル片(71)の第1端辺(75)は、第1境界線(74)と概ね平行である。このため、第1端辺(75)と第1境界線(74)との間に形成される第1固定代(73)の幅(周方向の長さ)は、径方向の内端から外端に亘って概ね同じである。
【0121】
図11に示すように、本実施形態のトップフォイル片(81)の第2端辺(87)は、第2境界線(86)に対して回転方向Qの後側に所定の角度を有する。第2端辺(87)と第2境界線(86)とは平行に配置されていない。このため、第2端辺(87)と第2境界線(86)との間に形成される第2固定代(85)の幅(周方向の長さ)は、径方向の内端から外端に向かうに従って徐々に広がっている。
【0122】
図12及び
図13に示すように、バックフォイル片(71)の第1固定代(73)は、該バックフォイル片(71)の周方向一方側に隣接する他のバックフォイル片(71)に支持されるトップフォイル片(81)の第2固定代(85)と、互いに重なった状態でベースプレート(60)に固定される。
【0123】
これにより、スラストフォイル軸受(27)において軸受面として機能しない領域(バックフォイル片(71)及びトップフォイル片(81)の固定代の部分)を小さくできる。これに伴い、スラストフォイル軸受(27)において軸受面と機能する領域の面積を大きくできるので、スラストフォイル軸受(27)の負荷能力を向上できる。
【0124】
加えて、トップフォイル片(81)の第2端辺(87)が第2境界線(86)に対して回転方向Qの後側に所定の角度を有するので、第1固定代(73)と該第1固定代(73)に隣接する第2固定代(85)とを重ね合わせて固定する際に、第1境界線(74)と第2境界線(86)との間隔を広くできる。これにより、トップフォイル片(81)及びバックフォイル片(71)をベースプレート(60)に固定する作業を容易にできる。なお、
図12に示すように、本実施形態の固定領域(90)の幅は、径方向内端から外端に向かうに従って徐々に広くなるように形成される。
【0125】
トップフォイル片(81)及びバックフォイル片(71)を固定する際に、
図13に示すように、トップフォイル片(81)の第2端辺(87)は、該トップフォイル片(81)の隣に位置する他のトップフォイル片(81)を支持するバックフォイル片(71)の第1境界線(74)に沿って配置される。言い換えると、トップフォイル片(81)の第2端辺(87)は、隣接するバックフォイル片(71)の第1境界線(74)と平行に配置される。
【0126】
これにより、トップフォイル片(81)及びバックフォイル片(71)をベースプレート(60)に固定する際に、バックフォイル片(71)の第1境界線(74)を位置決めの目印にしてトップフォイル片(81)を重ねて配置できる。具体的には、バックフォイル片(71)の第1境界線(74)とトップフォイル片(81)の第2端辺(87)とが重なるように、トップフォイル片(81)を配置する。そのため、バックフォイル片(71)に位置決めの目印を付与する必要がなくなるとともに、トップフォイル片(81)の位置決めを容易にできる。これにより、トップフォイル片(81)及びバックフォイル片(71)の固定作業の効率を向上できる。
【0127】
(2)変形例
上記実施形態については以下のような変形例としてもよい。なお、以下の説明では、原則として上記実施形態と異なる点について説明する。
【0128】
図14に示すように、本変形例では、上記実施形態のスラストフォイル軸受(27)において、実施形態1の変形例と同様に、バックフォイル片(71)及びベースプレート(60)の構成を変更したものである。本変形例のバックフォイル片(71)では、支持部(72)における複数の山部(76)の高さは、それぞれが同じ高さで形成されている。本変形例のベースプレート(60)では、各支持領域(61)には、傾斜面(62)と、該傾斜面(62)に連続して形成される平坦面(63)とが形成される。傾斜面(62)及び平坦面(63)の構成は、実施形態1の変形例と同様の構成である。
【0129】
本変形例においても、実施形態2と同様に、トップフォイル片(81)の第2端辺(87)が、隣接するバックフォイル片(71)の第1境界線(74)に沿って配置されるので、第1固定代(73)と第2固定代(85)とを重ねて固定する際の位置決め作業を容易にできる。これにより、固定作業の効率をより向上できる。
【0130】
《実施形態3》
実施形態3のスラストフォイル軸受(27)について説明する。本実施形態のスラストフォイル軸受(27)は、実施形態1のスラストフォイル軸受(27)において、バックフォイル片(71)及びトップフォイル片(81)の構成を変更したものである。ここでは、本実施形態のスラストフォイル軸受(27)について、実施形態1と異なる点を説明する。
【0131】
(1)バックフォイル片及びトップフォイル片
本変形例のバックフォイル片(71)は、実施形態1のバックフォイル片(71)と同様の構成である。具体的には、バックフォイル片(71)の第1端辺(75)は、第1境界線(74)に対して回転方向Qの前側に所定の角度を有する。第1端辺(75)と第1境界線(74)とは、平行に配置されていない。このため、第1端辺(75)と第1境界線(74)との間に形成される第1固定代(73)の幅(周方向の長さ)は、径方向内端から外端に向かうに従って徐々に広がっている。具体的には、本実施形態の第1固定代(73)は、中心角が小さい扇形に形成される。
【0132】
本変形例のトップフォイル片(81)は、実施形態2のトップフォイル片(81)と同様の構成である。具体的には、トップフォイル片(81)の第2端辺(87)は、第2境界線(86)に対して回転方向Qの後側に所定の角度を有する。第2端辺(87)と第2境界線(86)とは平行に配置されていない。このため、第2端辺(87)と第2境界線(86)との間に形成される第2固定代(85)の幅(周方向の長さ)は、径方向の内端から外端に向かうに従って徐々に広がっている。具体的には、本実施形態の第2固定代(85)は、中心角が小さい扇形に形成される。
【0133】
図15及び
図16に示すように、バックフォイル片(71)の第1固定代(73)は、該バックフォイル片(71)の周方向一方側に隣接する他のバックフォイル片(71)に支持されるトップフォイル片(81)の第2固定代(85)と、互いに重なった状態でベースプレート(60)に固定される。
【0134】
本実施形態では、第1固定代(73)及び第2固定代(85)のそれぞれは、径方向の内端から外端に向かうに従って徐々に広がっている。そのため、第1固定代(73)及び第2固定代(85)が重なり合う固定領域(90)は、扇形に形成される。本実施形態の固定領域(90)は、第1固定代(73)及び第2固定代(85)を重ねてベースプレート(60)に固定する場合において、最も面積が小さい。言い換えると、本実施形態では、隣り合うパッド同士の間隔を最も狭くできる。これにより、本実施形態では、軸受面として機能しない領域を最小にすることができる。これに伴い、軸受面として機能する領域の面積をより大きく確保できるので、スラストフォイル軸受としての負荷能力をより向上できる。
【0135】
加えて、本実施形態では、固定領域(90)は中心角の小さな細い扇形に形成されるので、固定部(91)は、固定領域(90)における径方向外側にのみ設けられる。言い換えると、固定部(91)は、固定領域(90)における径方向内側には設けられていない。これにより、固定部(91)を形成するための作業工数が低減される。
【0136】
更に、
図16に示すように、本実施形態では、バックフォイル片(71)の第1端辺(75)は、隣接するトップフォイル片(81)の第2境界線(86)に沿って配置されるとともに、トップフォイル片(81)の第2端辺(87)は、隣接するバックフォイル片(71)の第1境界線(74)に沿って配置される。これにより、第1固定代(73)と第2固定代(85)とを重ねてベースプレート(60)に固定する際の位置決めをより容易にできる。これにより、固定作業の効率を向上できる。
【0137】
(2)変形例
上記実施形態については以下のような変形例としてもよい。なお、以下の説明では、原則として上記実施形態と異なる点について説明する。
【0138】
図17に示すように、本変形例では、上記実施形態のスラストフォイル軸受(27)において、実施形態1の変形例と同様に、バックフォイル片(71)及びベースプレート(60)の構成を変更したものである。本変形例のバックフォイル片(71)では、支持部(72)における複数の山部(76)の高さは、それぞれが同じ高さで形成されている。本変形例のベースプレート(60)では、各支持領域(61)には、傾斜面(62)と、該傾斜面(62)に連続して形成される平坦面(63)とが形成される。傾斜面(62)及び平坦面(63)の構成は、実施形態1の変形例と同様の構成である。
【0139】
本変形例においても、実施形態3と同様に、バックフォイル片(71)の第1端辺(75)は、隣接するトップフォイル片(81)の第2境界線(86)に沿って配置されるとともに、トップフォイル片(81)の第2端辺(87)は、隣接するバックフォイル片(71)の第1境界線(74)に沿って配置される。これにより、第1固定代(73)と第2固定代(85)とを重ねてベースプレート(60)に固定する際の位置決めをより容易にできる。これにより、固定作業の効率を向上できる。
【0140】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0141】
上記各実施形態のバックフォイル(70)は、波板状のバンプフォイル以外のものであってもよい。具体的には、特開2004-270904号公報などのようなスプリングフォイル、特開2009-299748号公報や特開2017-180685号公報などに記載のバックフォイルであってもよい。なお、上記公報に記載のバックフォイルは、ラジアル軸受に用いられるフォイルであるが、これらを平面状に展開して円環板状に形成することにより、スラストフォイル軸受に用いられるフォイルに適用可能である。
【0142】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態、変形例、その他の実施形態に係る要素を適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【0143】
以上に述べた「第1」、「第2」、「第3」…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0144】
以上説明したように、本開示は、スラストフォイル軸受、圧縮機、及び冷凍装置について有用である。
【符号の説明】
【0145】
1 冷凍装置
1a 冷媒回路
20 ターボ圧縮機(圧縮機)
27 スラストフォイル軸受
35 回転軸
36 スラストディスク
60 ベースプレート
62 傾斜面
70 バックフォイル
71 バックフォイル片
72 支持部
73 第1固定代
74 第1境界線
75 第1端辺
76 山部
77 谷部
80 トップフォイル
81 トップフォイル片
82 本体部
85 第2固定代
86 第2境界線
87 第2端辺
【手続補正書】
【提出日】2023-12-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸(35)に設けられたスラストディスク(36)に対向して配置されるスラストフォイル軸受であって、
前記スラストディスク(36)に対向して配置されるトップフォイル(80)と、
前記トップフォイル(80)における前記スラストディスク(36)の反対側に配置されるバックフォイル(70)と、
前記バックフォイル(70)における前記トップフォイル(80)の反対側に配置され、前記バックフォイル(70)を支持する円環状のベースプレート(60)とを備え、
前記バックフォイル(70)は、前記ベースプレート(60)の周方向に沿って配置される複数のバックフォイル片(71)を有し、
前記バックフォイル片(71)は、
前記トップフォイル(80)を支持する支持部(72)と、
前記支持部(72)における前記回転軸(35)の回転方向の前側に該支持部(72)と連続して形成され、前記ベースプレート(60)に固定される第1固定代(73)と、
前記第1固定代(73)における前記回転方向前側の端辺である第1端辺(75)と、
前記支持部(72)と前記第1固定代(73)との境界に形成される第1境界線(74)とを含み、
前記トップフォイル(80)は、前記複数のバックフォイル片(71)のそれぞれに重なって配置される複数のトップフォイル片(81)を有し、
前記トップフォイル片(81)は、
前記支持部(72)に支持される本体部(82)と、
前記本体部(82)における前記回転方向の後側に該本体部(82)と連続して形成され、前記ベースプレート(60)に固定される第2固定代(85)と、
前記第2固定代(85)における前記回転方向後側の端辺である第2端辺(87)と、
前記本体部(82)と前記第2固定代(85)との境界に形成される第2境界線(86)とを含み、
前記第1端辺(75)は前記第1境界線(74)に対して、及び前記第2端辺(87)は前記第2境界線(86)に対して、所定の角度を有し、
前記所定の角度は、前記端辺(75,87)と該端辺(75,87)に対応する境界線(74,86)との間に形成される前記固定代(73,85)の幅が前記回転軸(35)の径方向内端から外端に向かうに従って徐々に広がるような角度であり、
前記バックフォイル片(71)の前記第1固定代(73)は、該バックフォイル片(71)の隣に位置する他の前記バックフォイル片(71)に支持される前記トップフォイル片(81)の前記第2固定代(85)と互いに重なった状態で前記ベースプレート(60)に固定され、
前記第1固定代(73)及び前記第2固定代(85)が重なる領域である固定領域(90)は、扇状に形成され、
前記固定領域(90)には、前記第1固定代(73)及び前記第2固定代(85)を固定する固定部(91)が形成され、
前記固定部(91)は、前記固定領域(90)における径方向外側にだけ形成される
スラストフォイル軸受。
【請求項2】
前記第1端辺(75)が前記第1境界線(74)に対して所定の角度を有するとき、前記バックフォイル片(71)の前記第1端辺(75)は、該バックフォイル片(71)の隣に位置する他の前記バックフォイル片(71)に支持される前記トップフォイル片(81)の前記第2境界線(86)に沿って配置される
請求項1に記載のスラストフォイル軸受。
【請求項3】
前記第2端辺(87)が前記第2境界線(86)に対して所定の角度を有するとき、前記トップフォイル片(81)の前記第2端辺(87)は、該トップフォイル片(81)の隣に位置する他の前記トップフォイル片(81)を支持する前記バックフォイル片(71)の前記第1境界線(74)に沿って配置される
請求項1に記載のスラストフォイル軸受。
【請求項4】
前記トップフォイル片(81)の前記第2固定代(85)は、該トップフォイル片(81)の隣に位置する他の前記トップフォイル片(81)を支持する前記バックフォイル片(71)の前記第1固定代(73)を介して、前記ベースプレート(60)に固定される
請求項1~3のいずれか1つに記載のスラストフォイル軸受。
【請求項5】
前記バックフォイル片(71)の前記支持部(72)は、前記回転軸(35)の径方向からみて山部(76)と谷部(77)とが交互に形成される
請求項1~3のいずれか1つに記載のスラストフォイル軸受。
【請求項6】
前記山部(76)の高さは、前記回転方向の前側に向かうに従って高くなる
請求項5に記載のスラストフォイル軸受。
【請求項7】
前記ベースプレート(60)は、前記バックフォイル片(71)の前記支持部(72)を支持するとともに、前記回転方向の後側に向かうに従って前記スラストディスク(36)から離れるように傾斜する傾斜面(62)を含む
請求項5に記載のスラストフォイル軸受。
【請求項8】
前記スラストディスク(36)を有する前記回転軸(35)と、
請求項1~3のいずれか1つに記載のスラストフォイル軸受(27)とを備える
圧縮機。
【請求項9】
請求項8に記載の圧縮機(20)と、
前記圧縮機(20)で圧縮された冷媒が流れる冷媒回路(1a)とを備える
冷凍装置。