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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037605
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】防振装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/54 20060101AFI20240312BHJP
   F16F 9/02 20060101ALI20240312BHJP
   F16F 9/10 20060101ALI20240312BHJP
   F16F 9/32 20060101ALI20240312BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
F16F9/54
F16F9/02
F16F9/10
F16F9/32 A
F16F15/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142549
(22)【出願日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】522297236
【氏名又は名称】株式会社プロスパイラ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100174023
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 怜愛
(72)【発明者】
【氏名】大津 一高
【テーマコード(参考)】
3J048
3J069
【Fターム(参考)】
3J048AA02
3J048AD07
3J048BA08
3J048BA17
3J048BB03
3J048DA01
3J048EA16
3J069AA01
3J069AA50
3J069CC02
3J069CC35
(57)【要約】
【課題】コストの削減が可能となる、防振装置を、提供する。
【解決手段】防振装置1は、サスペンションに用いられるように構成された防振装置であって、ダンパーロッド121及びシリンダー122を有する、伸縮部12と、前記ダンパーロッドに取り付けられた、ストラットマウント部13と、前記伸縮部の外周側に配置された、懸架バネ部17と、前記懸架バネ部の上端部を支持するように構成された、剛体からなる支持部16と、前記ダンパーロッドの外周側に配置され、前記ストラットマウント部と前記支持部との間に連結された、積層部14と、を備え、前記積層部は、軸線方向に交互に積層された環状ゴム層141及び環状剛体層142を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サスペンションに用いられるように構成された防振装置であって、
ダンパーロッド及びシリンダーを有する、伸縮部と、
前記ダンパーロッドに取り付けられた、ストラットマウント部と、
前記伸縮部の外周側に配置された、懸架バネ部と、
前記懸架バネ部の上端部を支持するように構成された、剛体からなる支持部と、
前記ダンパーロッドの外周側に配置され、前記ストラットマウント部と前記支持部との間に連結された、積層部と、
を備え、
前記積層部は、軸線方向に交互に積層された環状ゴム層及び環状剛体層を有する、防振装置。
【請求項2】
前記防振装置は、一体成形品を備えており、
前記一体成形品は、前記ストラットマウント部及び前記積層部を有している、請求項1に記載の防振装置。
【請求項3】
前記一体成形品は、前記ダンパーロッドの外周側に配置され、前記支持部の下側に配置された、バンプゴム部をさらに有している、請求項2に記載の防振装置。
【請求項4】
前記一体成形品は、前記伸縮部の外周側に配置された、ゴムからなるダストカバー部を、さらに有している、請求項2に記載の防振装置。
【請求項5】
前記懸架バネ部は、
前記伸縮部の外周側に配置された、最外筒状剛体層と、
前記シリンダーの外周面と前記最外筒状剛体層の内周面との間に連結された、筒状ゴム層と、
を有し、
前記最外筒状剛体層の上端部は、前記支持部に連結されている、請求項1に記載の防振装置。
【請求項6】
前記防振装置は、前記ダンパーロッドの外周側に配置され、前記支持部の下側に配置された、バンプゴム部を、さらに備え、
前記シリンダーの上端部が前記バンプゴム部に接触した状態において、前記支持部と前記懸架バネ部と前記伸縮部との間に区画される主空気室は、閉鎖された空間となる、請求項5に記載の防振装置。
【請求項7】
前記伸縮部は、縮みストローク中において、前記支持部と前記懸架バネ部と前記伸縮部との間に区画される主空気室内に空気を送り込むように構成されている、請求項5に記載の防振装置。
【請求項8】
前記ストラットマウント部は、
車体側に取り付けられるように構成された、ブラケットと、
前記ダンパーロッドに取り付けられた、取付部材と、
前記ブラケット及び前記取付部材どうしを連結する、マウント本体ゴムと、
を備え、
前記ブラケット及び前記取付部材は、それぞれ、同一の中心点を有する球面形状に沿って湾曲した湾曲部を有している、請求項1に記載の防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、防振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ストラットマウントと、コイルスプリングを支持する支持部材との間に、ベアリングが設けられた、防振装置がある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-285002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、コストに関し、向上の余地があった。
【0005】
この発明は、コストの削減が可能となる、防振装置を、提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔1〕サスペンションに用いられるように構成された防振装置であって、
ダンパーロッド及びシリンダーを有する、伸縮部と、
前記ダンパーロッドに取り付けられた、ストラットマウント部と、
前記伸縮部の外周側に配置された、懸架バネ部と、
前記懸架バネ部の上端部を支持するように構成された、剛体からなる支持部と、
前記ダンパーロッドの外周側に配置され、前記ストラットマウント部と前記支持部との間に連結された、積層部と、
を備え、
前記積層部は、軸線方向に交互に積層された環状ゴム層及び環状剛体層を有する、防振装置。
【0007】
〔2〕前記防振装置は、一体成形品を備えており、
前記一体成形品は、前記ストラットマウント部及び前記積層部を有している、〔1〕に記載の防振装置。
【0008】
〔3〕前記一体成形品は、前記ダンパーロッドの外周側に配置され、前記支持部の下側に配置された、バンプゴム部をさらに有している、〔2〕に記載の防振装置。
【0009】
〔4〕前記一体成形品は、前記伸縮部の外周側に配置された、ゴムからなるダストカバー部を、さらに有している、〔2〕又は〔3〕に記載の防振装置。
【0010】
〔5〕前記懸架バネ部は、
前記伸縮部の外周側に配置された、最外筒状剛体層と、
前記シリンダーの外周面と前記最外筒状剛体層の内周面との間に連結された、筒状ゴム層と、
を有し、
前記最外筒状剛体層の上端部は、前記支持部に連結されている、〔1〕~〔4〕のいずれか1つに記載の防振装置。
【0011】
〔6〕前記防振装置は、前記ダンパーロッドの外周側に配置され、前記支持部の下側に配置された、バンプゴム部を、さらに備え、
前記シリンダーの上端部が前記バンプゴム部に接触した状態において、前記支持部と前記懸架バネ部と前記伸縮部との間に区画される主空気室は、閉鎖された空間となる、〔5〕に記載の防振装置。
【0012】
〔7〕前記伸縮部は、縮みストローク中において、前記支持部と前記懸架バネ部と前記伸縮部との間に区画される主空気室内に空気を送り込むように構成されている、〔5〕又は〔6〕に記載の防振装置。
【0013】
〔8〕前記ストラットマウント部は、
車体側に取り付けられるように構成された、ブラケットと、
前記ダンパーロッドに取り付けられた、取付部材と、
前記ブラケット及び前記取付部材どうしを連結する、マウント本体ゴムと、
を備え、
前記ブラケット及び前記取付部材は、それぞれ、同一の中心点を有する球面形状に沿って湾曲した湾曲部を有している、〔1〕~〔7〕のいずれか1つに記載の防振装置。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、コストの削減が可能となる、防振装置を、提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態に係る防振装置を示す、縦断面図である。
図2図1の防振装置を図1のA-A線に沿った断面により示す、A-A断面図である。
図3】本発明の第2実施形態に係る防振装置の一部を示す、縦断面図である。
図4】本発明の第3実施形態に係る防振装置を示す、縦断面図である。
図5図4の防振装置の動作を説明するための図面である。
図6図4の防振装置の動作を説明するための図面である。
図7】本発明の第4実施形態に係る防振装置を示す、縦断面図である。
図8】本発明の第5実施形態に係る防振装置を示す、縦断面図である。
図9図8の防振装置の動作を説明するための図面である。
図10図8の防振装置の動作を説明するための図面である。
図11】本発明の第6実施形態に係る防振装置を示す、縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る防振装置は、ストラット式サスペンションに適用されると好適なものであり、マクファーソン・ストラット式サスペンションに適用されると特に好適なものである。また、本発明に係る防振装置は、任意の種類の車両に適用できるが、例えば超小型モビリティ等の比較的安価で軽量な車両に適用されると好適なものである。
以下に、図面を参照しつつ、この発明に係る防振装置の実施形態を例示説明する。
【0017】
〔第1実施形態〕
図1図2は、本発明の第1実施形態に係る防振装置1を説明するための図面である。
本実施形態の防振装置1は、車両に備えられるサスペンションに用いられるように構成されている。防振装置1が用いられるサスペンションとしては、ストラット式サスペンションが好適であり、マクファーソン・ストラット式サスペンションがより好適である。また、本実施形態の防振装置1は、任意の種類の車両に適用できるが、例えば超小型モビリティ等の比較的安価で軽量な車両に適用されると好適なものである。
【0018】
図1に示すように、第1実施形態において、防振装置1は、伸縮部12と、ストラットマウント部13と、懸架バネ部17と、支持部16と、積層部14と、受けゴム部18と、バンプゴム部19と、ダストカバー部20と、を備えている。
防振装置1を備えるサスペンション(図示せず)は、防振装置1に加えて、ハブ(図示せず)、ナックル(図示せず)等を備えている。
【0019】
伸縮部12は、ダンパーロッド121とシリンダー122とを有している。シリンダー122は、ダンパーロッド121の中心軸線(以下、「ロッド軸線RA」という。)と同軸に配設されており、ダンパーロッド121の外周側に位置している。ダンパーロッド121とシリンダー122とは、互いに対して摺動可能であり、それにより、伸縮部12はロッド軸線RAに平行な方向(軸線方向)に伸縮可能に構成されている。シリンダー122の上端は、ダンパーロッド121の上端よりも下側に位置する。本実施形態において、伸縮部12は、ショックアブソーバとして構成されている。伸縮部12は、従来公知のショックアブソーバと同様の構成を有してもよい。
【0020】
サスペンション(図示せず)において、ナックル(図示せず)は、ハブ(図示せず)から車両左右方向内側に突出している。ハブ(図示せず)は、車輪(図示せず;例えば、前輪)を回転可能に支持する。
伸縮部12のシリンダー122の下端部(図示せず)は、ナックル(図示せず)に連結されるように構成されている。
【0021】
なお、本明細書において、車両左右方向内側とは、車両左右方向において車両の車両左右方向の中心に近い側を指す。一方、車両左右方向外側とは、車両左右方向において車両の車両左右方向の中心から遠い側を指す。
【0022】
車両が静止した状態において、ロッド軸線RAは、車両上下方向に略平行である。ロッド軸線RAは、車両上下方向に対して鋭角をなすように傾斜していてもよく、例えば、上側へ向かうほど車両左右方向内側に向かうように延在していてもよい。
【0023】
図1に示すように、防振装置1は、防振装置軸線Oに沿って延在している。
車両が静止した状態において、ロッド軸線RAは、防振装置軸線Oと一致している。一方、車両のサスペンションが動いている間、ダンパーロッド121は、防振装置軸線Oに対するロッド軸線RAの角度を変えながら、所定の揺動中心点Pの周りで揺動(こじり変位)し得る。
【0024】
本明細書では、特に断りが無い限り、車両が静止した状態における防振装置1の構成について説明する。
また、本明細書では、特に断りが無い限り、防振装置軸線O又はロッド軸線RAに平行な方向を、「軸線方向」といい、防振装置軸線O又はロッド軸線RAに近い側を「内周側」といい、防振装置軸線O又はロッド軸線RAから遠い側を「外周側」といい、防振装置軸線O又はロッド軸線RAを中心とする周方向を「周方向」といい、防振装置軸線O又はロッド軸線RAを中心とする径方向を「径方向」といい、軸線方向に垂直な方向を「軸直方向」という。
【0025】
ストラットマウント部13は、ダンパーロッド121の上端部に取り付けられている。本実施形態において、ストラットマウント部13は、ブラケット131と、取付部材132と、マウント本体ゴム133と、を有している。
【0026】
ブラケット131は、金属等の剛体から構成されており、車体側に取り付けられるように構成されている。
ブラケット131は、環状に構成されおり、軸線方向にブラケット131を貫通する中央貫通穴1313を有している。中央貫通穴1313の中心軸線は、防振装置軸線Oと一致している。
本実施形態において、ブラケット131は、湾曲部1311と、フランジ部1312と、を有している。
中央貫通穴1313は、湾曲部1311の中央に形成されている。
湾曲部1311は、下側へ向かって凸に湾曲している。湾曲部1311は、球面形状に沿って湾曲している。湾曲部1311が沿う当該曲面形状の中心点Pは、防振装置軸線O上に位置している。
フランジ部1312は、湾曲部1311の上側かつ外周側の端部から外周側へ張り出している。フランジ部1312は、複数の締結穴1314を有している。フランジ部1312は、複数の締結具F1がこれらの締結穴1314に通されて車体側に対して締め付けられることによって、車体側に取り付けられるように構成されている。締結具F1は、例えばボルトである。
ただし、ブラケット131は、締結具F1による締結とは異なる手段によって車体側に取り付けられるように構成されてもよい。
【0027】
取付部材132は、金属等の剛体から構成されており、ダンパーロッド121の上端部に取り付けられている。
本実施形態において、取付部材132は、環状に構成されおり、軸線方向に取付部材132を貫通する中央貫通穴1323を有している。中央貫通穴1323の中心軸線は、防振装置軸線Oと一致している。一方、ダンパーロッド121は、その上端部に取付部1211を有している。取付部1211は、ダンパーロッド121のうち取付部1211よりも下側の部分よりも小径である。取付部1211の外周側の面には、おねじが形成されている。ダンパーロッド121は、取付部1211の下端から外周側へ延在するとともに上側を向く段差面1212を有している。取付部材132は、取付部材132の中央貫通穴1323にダンパーロッド121の取付部1211が挿通され、取付部材132の下面がダンパーロッド121の段差面1212に接した状態で、ナット等の締結具F2によって上側から締め付けられることによって、ダンパーロッド121に取り付けられるように構成されている。
ただし、取付部材132は、本例とは異なる構造によって、ダンパーロッド121に取り付けられてもよい。
本実施形態において、取付部材132は、湾曲部1321と、取付部1322と、と有している。
中央貫通穴1323は、取付部1322の中央に形成されている。取付部1322は、軸直方向に平行に延在している。
湾曲部1321は、取付部1322の外周側の端部から外周側へ延在している。湾曲部1321は、下側へ向かって凸に湾曲している。湾曲部1321は、球面形状に沿って湾曲している。湾曲部1321が沿う当該曲面形状の中心点Pは、防振装置軸線O上に位置している。
本実施形態において、取付部材132は、ブラケット131よりも下側に離間した位置に位置している。
【0028】
マウント本体ゴム133は、ゴムからなる。マウント本体ゴム133は、ブラケット131及び取付部材132どうしの間に位置しており、ブラケット131及び取付部材132どうしを連結している。
マウント本体ゴム133及びブラケット131どうし、並びに、マウント本体ゴム133及び取付部材132どうしは、加硫接着等によって固着されている。
【0029】
本実施形態において、ブラケット131及び取付部材132のそれぞれの湾曲部1311、1321は、同一の中心点Pを有する球面形状に沿って湾曲している。これにより、これら球面形状の中心点Pが、マウント本体ゴム133の弾性中心となるようにされる。
これにより、互いに同じように湾曲したブラケット131及び取付部材132どうしが、比較的柔らかいマウント本体ゴム133を介して連結されているので、取付部材132及びこれに取り付けられたダンパーロッド121が、上記中心点Pを揺動中心点として、ブラケット131に対して容易に任意の方向に揺動(こじり変位)することができる。したがって、ストラットマウント部13は、例えばサスペンションのストローク時等において、ダンパーロッド121が揺動(こじり変位)する際に、当該こじり変位を効果的に吸収できるので、車内騒音の低減や乗り心地の向上が可能である。
【0030】
なお、ストラットマウント部13の構成は、上述のものに限られず、任意でよく、例えば、従来公知のストラットマウントと同様の構成でもよい。
【0031】
懸架バネ部17は、伸縮部12の外周側に配置されている。
本実施形態において、懸架バネ部17は、金属からなるコイルバネとして構成されている。懸架バネ部17の上端部は、支持部16によって上側から支持されている。懸架バネ部17の下端部は、伸縮部12のシリンダー122に固定された受部(図示せず)によって支持されている。懸架バネ部17は、伸び方向に付勢されている。
【0032】
支持部16は、金属等の剛体から構成されており、受けゴム部18を介して、懸架バネ部17の上端部を支持するように構成されている。
本実施形態において、支持部16は、環状をなしており、ダンパーロッド121の外周側に配置されており、軸直方向に沿って延在している。ただし、支持部16の形状は、任意でよい。
本実施形態において、支持部16は、ストラットマウント部13よりも下側に離間した位置に位置している。
【0033】
受けゴム部18は、ゴムからなり、懸架バネ部17の上端部を受けるように構成されている。受けゴム部18は、支持部16と懸架バネ部17の上端部との間に位置している。本実施形態において、受けゴム部18は、外周側が開放した受け溝18gを有しており、受け溝18gに、懸架バネ部17の上端部が圧入等により嵌め込まれ、それにより、懸架バネ部17の上端部を受けるように構成されている。これにより、受けゴム部18に懸架バネ部17の上端部がしっかりと固定されるので、積層部14のゴム部分の反力等によって懸架バネ部17が滑るのを効果的に抑制できる。ただし、受けゴム部18の形状は、任意でよい。
受けゴム部18があることにより、懸架バネ部17から伝わる振動を吸収でき、当該振動が車体側に伝わるのを抑制できる。
本実施形態において、受けゴム部18及び支持部16どうしは、加硫接着等によって固着されている。
【0034】
積層部14は、筒状に構成されており、ダンパーロッド121の外周側に配置されている。積層部14は、ストラットマウント部13と支持部16との間に位置しており、ストラットマウント部13と支持部16との間に連結されている。より具体的に、本実施形態において、積層部14は、ストラットマウント部13と支持部16とを連結している。ただし、ストラットマウント部13と積層部14の間、及び/又は、支持部16と積層部14との間に、さらなる構成要素が連結されてもよい。
積層部14は、軸線方向に交互に積層された環状ゴム層141及び環状剛体層142を有している。積層部14は、環状ゴム層141及び環状剛体層142を、それぞれ1層又は複数層有する。環状ゴム層141及び環状剛体層142は、それぞれ、周方向に沿って全周にわたって延在する環状に構成されている。環状ゴム層141は、ゴムからなる。環状剛体層142は、金属等の剛体からなる。
積層部14の上端部は、環状ゴム層141から構成されており、ストラットマウント部13(具体的には、取付部材132)に連結されている。
積層部14の下端部は、環状ゴム層141から構成されており、支持部16に連結されている。
本実施形態において、環状ゴム層141及び環状剛体層142どうし、環状ゴム層141及びストラットマウント部13(具体的には、取付部材132)どうし、並びに、環状ゴム層141及び支持部16どうしは、加硫接着等によって固着されている。
【0035】
このように、積層部14は、環状ゴム層141を有しているので、周方向において剛性が低く構成される。これにより、ストラットマウント部13は、積層部14を介して、支持部16に対して相対的に、ロッド軸線RAの周りで容易に回転できるように支持される。そのため、例えば、車両が転陀する際等におけるロッド軸線RAの周りでの懸架バネ部17の回転を、積層部14によって効果的に吸収することができる。
また、積層部14は、環状剛体層142を有しているので、上下方向においては剛性が高く構成される。よって、車体側からの荷重をしっかりと支持することが可能である。
なお、積層部14は、従来一般的な防振装置においてストラットマウントとコイルスプリングを支持する支持部材との間に設けられたベアリングと同等の機能を有しており、それにより、ベアリングを不要にすることができる。積層部14は、ベアリングよりも、低コストで得ることが可能であり、また、防振装置の組付け工数を減らすことができる。したがって、防振装置1は、ベアリングの代わりに積層部14を備えることにより、ベアリングと同様の機能を持ちつつも、コストの削減や組付け工数の削減が可能である。また、一般的に、ベアリングは、内部へ埃が侵入すると、滑りが悪くなって、ステアフィールの悪化や異音の発生に繋がるおそれがあるが、積層部14はそのような問題がない。
一般的に、例えば超小型モビリティ等の比較的安価で軽量な車両においては、シンプルで安価な構造への要望が高い。積層部14によって、そのような要望に応えることができる。
【0036】
図1に示すように、本実施形態において、積層部14は、各環状ゴム層141及び各環状剛体層142の内周面を覆うゴム膜143を有しており、ゴム膜143は、積層部14 の内周面を構成している。ゴム膜143によって、各環状ゴム層141どうしが連結されている。
図示は省略するが、積層部14は、この内周側のゴム膜143に加えて又は代えて、各環状ゴム層141及び各環状剛体層142の外周面を覆うとともに、積層部14の外周面を構成する、ゴム膜143を、有してもよい。また、積層部14は、内周側及び外周側のいずれにもゴム膜143を有していなくてもよい。
【0037】
図1に示すように、本実施形態において、積層部14の内周面は、ダンパーロッド121の外周面から外周側へ離間している。これにより、積層部14とダンパーロッド121との接触面積を減らし、積層部14がダンパーロッド121に対して容易に周方向に回転変位できるようにされている。
【0038】
図1に示すように、本実施形態において、積層部14は、その内周面から内周側から突出する複数の突起144を有している。これら複数の突起144は、1つ又は複数(図1の例では2つ)の軸線方向位置において、周方向に沿って互いから間隔を空けて配列されている(図2)。これら複数の突起144の先端部は、ダンパーロッド121の外周面に接触している。これら複数の突起144があることにより、積層部14とダンパーロッド121との接触面積の増大を抑制しつつも、より確実に、積層部14をダンパーロッド121と同軸に維持することができる。
本実施形態において、これらの突起144は、ゴムで構成されている。
【0039】
なお、図示は省略するが、積層部14の内周面は、ダンパーロッド121の外周面と全周にわたって接触するようにされていてもよい。この場合、突起144は無くてよい。その場合、積層部14の内周面とダンパーロッド121の外周面との間には、グリース又はオイル等を介在させると好適であり、それにより、積層部14とダンパーロッド121との間の摩擦を低減でき、積層部14がダンパーロッド121に対して容易に周方向に回転変位できるようになる。
【0040】
バンプゴム部19は、ゴムからなる。バンプゴム部19は、筒状に構成されており、ダンパーロッド121の外周側に配置されている。バンプゴム部19は、支持部16の下側に配置されている。バンプゴム部19の外周側には、受けゴム部18が位置している。
バンプゴム部19の下面は、接触部12の伸縮動作中においてシリンダー122の上端部と接触できるように構成されている。
バンプゴム部19は、シリンダー122がダンパーロッド121に対して相対的に上側へある程度移動して、シリンダー122の上端部がバンプゴム部19の下面に当たることにより、シリンダー122のさらなる上側への相対移動を規制する(ひいては、伸縮部12の縮みストロークを止める)ように構成されている。バンプゴム部19は、ゴムからなるので、シリンダー122とバンプゴム部19との衝突時の衝撃を緩和することができる。
本実施形態において、バンプゴム部19の外周面は、図1のような軸線方向に沿った断面において、軸直方向に振幅する波形状をなしている。ただし、バンプゴム部19の形状は、任意でよい。
本実施形態において、バンプゴム部19の内周面は、ダンパーロッド121の外周面よりも外周側へ離間している。
本実施形態において、バンプゴム部19及び支持部16どうしは、加硫接着等によって固着されている。また、バンプゴム部19と受けゴム部18とは、一体に構成されている。
【0041】
図1に示すように、本実施形態において、バンプゴム部19は、支持部16の内周面を覆う環状の連結ゴム部25を介して、積層部14のゴム部分(より具体的に、図1の例では、ゴム膜143)と連結されている。連結ゴム部25の内周面は、ダンパーロッド121の外周面よりも外周側へ離間している。
ただし、連結ゴム部25は、設けられなくてもよい。
【0042】
ダストカバー部20は、ゴムからなる。ダストカバー部20は、筒状に構成されており、伸縮部12の外周側に配置されている。ダストカバー部20により、伸縮部12を外傷や埃などから保護することができる。
本実施形態において、ダストカバー部20は、バンプゴム部19の下端部の外周端部から下側へ延在している。また、ダストカバー部20は、軸直方向において、シリンダー122と懸架バネ部17との間に位置している。ダストカバー部20の内径は、シリンダー122の外径よりも大きい。
本実施形態において、ダストカバー部20は、その外周面に、外周側へ突出するリブ201を、1つ又は複数(図1の例では、複数)、有している。リブ201は、周方向に沿って延在していると、好適である。これにより、ダストカバー部20をゴムで構成しつつも、ダストカバー部20の強度を向上できる。
ただし、ダストカバー部20の構成は、任意でよい。
【0043】
本実施形態において、防振装置1は、一体成形品24を備えている。一体成形品24は、ゴムの射出成形によって、複数の構成要素が1つの部品として一体に形成されたものである。一体成形品24における各ゴム部分のゴムは、すべて同じ組成のゴムである。本実施形態において、一体成形品24は、ゴムからなる構成要素と剛体(金属等)からなる構成要素とが一体に形成されてなるものであり、より具体的には、ストラットマウント部13と、積層部14と、支持部16と、連結ゴム部25と、バンプゴム部19と、受けゴム部18と、ダストカバー部20と、を有している。防振装置1は、一体成形品24を備えていることにより、部品点数の削減や組付け工数の削減によって、コストの削減が可能である。
ただし、一体成形品24は、少なくともゴムからなる構成要素を含む限り、ゴム防振装置1の任意の複数の構成要素を有してよい。そのような場合でも、部品点数の削減や組付け工数の削減によって、コストの削減が可能である。
一般的に、例えば超小型モビリティ等の比較的安価で軽量な車両においては、シンプルで安価な構造への要望が高い。一体成形品24によって、そのような要望に応えることができる。
【0044】
〔第2実施形態〕
本明細書で説明する各実施形態において、防振装置1は、図3に示す第2実施形態のように、抜け止めプレート23を備えていてもよい。抜け止めプレート23は、環状に構成されており、ダンパーロッド121の取付部1211に取り付けられている。抜け止めプレート23の外径は、ブラケット131の中央貫通穴1323の径よりも大きい。抜け止めプレート23は、ブラケット131の中央貫通穴1323よりも上側に位置している。これにより、抜け止めプレート23は、仮にゴムの接着不良等によりストラットマウント部13や積層部14等が破断又は分離した場合に、破断又は分離した部分がダンパーロッド121の取付部1211から抜けて外れるのを防止することができる。
図3の実施形態において、防振装置1は、取付部材132の取付部1322と抜け止めプレート23との間に設けられた、筒状のスリーブ22を、備えている。抜け止めプレート23は、スリーブ22と締結具F2との間に挟まれている。
【0045】
〔第3実施形態〕
図4図6は、本発明の第3実施形態に係る防振装置1を説明するための図面である。第3実施形態は、主に、懸架バネ部17と伸縮部12との構成が、第1実施形態とは異なる。ストラットマウント部13及び積層部14の構成は、第1実施形態に関して上述したものと同様でよい。
以下の説明では、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。その他の点については、第1実施形態に関して上述したものと同様でよい。
【0046】
図4に示すように、第3実施形態において、懸架バネ部17は、ゴムを含んで構成されている。より具体的に、懸架バネ部17は、径方向に沿って交互に積層された筒状ゴム層171と筒状剛体層172とを有している。懸架バネ部17は、筒状ゴム層171及び筒状剛体層172を、それぞれ1層又は複数層有する。筒状ゴム層171及び筒状剛体層172は、それぞれ、防振装置軸線O(ひいてはロッド軸線RA)と同軸の筒状に構成されている。各筒状ゴム層171は、それぞれ、シリンダー122の外周面と最外筒状剛体層172aとの間に連結されている。筒状ゴム層171は、ゴムからなる。筒状剛体層172は、金属等の剛体からなる。
懸架バネ部17の内周端部は、筒状ゴム層171から構成されており、当該筒状ゴム層171の内周面は、シリンダー122の外周面に連結されている。懸架バネ部17の外周端部は、筒状剛体層172(以降、「最外筒状剛体層172a」ともいう。)から構成されている。最外筒状剛体層172aは、伸縮部12から外周側へ離間した位置に配置されている。最外筒状剛体層172aの上端部172acは、支持部16の外周端部にカシメ等によって固着されることによって、支持部16に連結されている。これによって、支持部16は、懸架バネ部17の上端部を支持している。
なお、図4の例において、最外筒状剛体層172aの内周面に接触している筒状ゴム層171aの上端部171acは、支持部16の外周端部と最外筒状剛体層172aの上端部172acとの間に介在しており、最外筒状剛体層172aの上端部172acと共に支持部16の外周端部にカシメ等によって固着されることによって、支持部16に連結されている。これにより、支持部16と懸架バネ部17との連結部分において、空気漏れを抑制し、気密性を向上できる。
懸架バネ部17には、車両相当の重量が負荷される。
本実施形態において、筒状ゴム層171及び筒状剛体層172どうし、並びに、筒状ゴム層171及びシリンダー122どうしは、加硫接着等によって固着されている。
なお、懸架バネ部17は、筒状剛体層172として、最外筒状剛体層172aのみを有してもよい。その場合、懸架バネ部17は、筒状ゴム層171を1層のみ有する単層構造となり、この筒状ゴム層171は、シリンダー122の外周面と最外筒状剛体層172aとを連結することとなる。ただし、図4の例のように筒状剛体層172を最外筒状剛体層172a以外にも有して積層構造とすることにより、軸直方向の剛性を高めることができる。
【0047】
第3実施形態において、伸縮部12は、従来一般的なショックアブソーバとは異なる構成を有している。
【0048】
ダンパーロッド121は、中実に構成された中実部1213と、筒状に構成された筒状部1214と、連結部1215と、を有している。
筒状部1214の外径は、中実部1213の外径よりも、大きい。筒状部1214の上端部は、中実部1213の下端部に、連結部1215を介して連結されている。連結部1215は、ロッド軸線RAと同軸の環状に構成されており、これにより、中実部1213と筒状部1214との間の隙間を塞いでいる。連結部1215は、連結部1215を軸線方向に貫通するロッド上側穴1216を有している。筒状部1214の下側の端面は、開放されている。
中実部1213の外周側には、第1実施形態と同様に、ストラットマウント部13、積層部14、支持部16、及び、連結ゴム部25が、配置されている。
筒状部1214の外径が中実部1213の外径よりも大きいことにより、仮に筒状部1214の外径を中実部1213の外径と同じにした場合に比べて、ダンパーロッド121の剛性を高くし、ひいては、キングピンの剛性を高くすることができる。
【0049】
シリンダー122の上端部には、上側ガイド41が固定されている。上側ガイド41は、ロッド軸線RAと同軸の環状に構成されている。上側ガイド41は、シリンダー122の内周面に固定されているとともに、ダンパーロッド121の筒状部1214の外周面に接触しており、ダンパーロッド121の筒状部1214の外周面上を摺動可能に構成されている。
上側ガイド41は、金属等の剛体から構成されると、好適である。
上側ガイド41の内周面には、テフロン等の樹脂が塗布されていると、ダンパーロッド121の筒状部1214の外周面上を摺動しやすくなるので、好適である。
図4の例において、上側ガイド41は、シリンダー122の上端面を上側から覆っており、それにより、伸縮部12の伸縮動作中においてシリンダー122の上端部が、上側ガイド41を介して、バンプゴム部19の下面に当たることができるようにされている。
ただし、上側ガイド41は、シリンダー122の上端面を覆っていなくてもよく、シリンダー122の上端部が、直接、バンプゴム部19の下面に当たることができるようにされていてもよい。
【0050】
ダンパーロッド121の筒状部1214の下端部には、下側ガイド42が固定されている。下側ガイド42は、ロッド軸線RAと同軸の環状に構成されている。下側ガイド42は、ダンパーロッド121の筒状部1214の外周面に固定されているとともに、シリンダー122の内周面に接触しており、シリンダー122の内周面上を摺動可能に構成されている。下側ガイド42は、上側ガイド41よりも下側に位置している。
下側ガイド42は、金属等の剛体から構成されると、好適である。
下側ガイド42の外周面には、テフロン等の樹脂が塗布されていると、シリンダー122の内周面上を摺動しやすくなるので、好適である。
【0051】
上側ガイド41及び下側ガイド42があることにより、シリンダー122とダンパーロッド121とが、同軸状態を維持したまま、互いに軸線方向にスムーズに相対移動することができる。
【0052】
ダンパーロッド121の筒状部1214の外周面には、上側ガイド41と下側ガイド42との間において、ストッパーゴム43が固定されている。ストッパーゴム43は、ゴムからなる。
ストッパーゴム43の上面は、伸縮部12の伸縮動作中において上側ガイド41の下面と接触できるように構成されている。
ストッパーゴム43は、シリンダー122がダンパーロッド121に対して相対的に下側へある程度移動して、上側ガイド41の下面がストッパーゴム43の上面に当たることにより、シリンダー122のさらなる下側への相対移動を規制する(ひいては、伸縮部12の伸びストロークを止める)ように構成されている。
本実施形態において、ストッパーゴム43の外周面は、図4のような軸線方向に沿った断面において、軸直方向に振幅する波形状をなしている。ただし、ストッパーゴム43の形状は、任意でよい。
本実施形態において、ストッパーゴム43の外周面は、シリンダー122の内周面よりも内周側へ離間している。
【0053】
伸縮部12の内部空間は、空気で充填されている。
【0054】
第3実施形態においては、第1実施形態と同様に、シリンダー122の下端部が、ナックル(図示せず)に連結される。
【0055】
支持部16と懸架バネ部17と伸縮部12との間には、主空気室46が区画されている。主空気室46は、空気で充填されている。
【0056】
第3実施形態においては、図4に示すように、バンプゴム部19が、ダンパーロッド121の筒状部1214の上端部の外周側に位置している。
積層部14のゴム部分(図4の例では、ゴム膜143)とバンプゴム部19とを連結する連結ゴム部25は、ダンパーロッド121の中実部1213の外周側に位置している。連結ゴム部25は、支持部16の内周面を覆っているとともに、バンプゴム部19の内周側において、支持部16の下面を覆っている。連結ゴム部25の下側には、ダンパーロッド121の連結部1215及び筒状部1214が位置している。
連結ゴム部25とダンパーロッド121の連結部1215及び筒状部1214との間には、隙間が存在する。また、バンプゴム部19とダンパーロッド121の筒状部1214との間には、隙間が存在する。これらの隙間は、ロッド上側穴1216と主空気室46とを連通する、通路47を構成している。
【0057】
第3実施形態において、一体成形品24は、ストラットマウント部13と、積層部14と、支持部16と、連結ゴム部25と、バンプゴム部19と、を有している。また、懸架バネ部17は、他の一体成形品24を構成している。防振装置1は、一体成形品24を備えていることにより、部品点数の削減や組付け工数の削減によって、コストの削減が可能である。
【0058】
上述のように構成された第3実施形態においては、通常時は、図5に示すように、シリンダー122の上端部(より具体的には、上側ガイド41の上面)がバンプゴム部19の下面から下側に離れている。そのため、主空気室46は、通路47を介して開放された空気室となり、より具体的には、通路47及びロッド上側穴1216を介して、ダンパーロッド121の筒状部1214の内部空間との間で、空気の出入りが可能にされている。
一方、例えば車両が大きな段差を乗り越えた等して、大きな縮みストロークが発生した時は、図6に示すように、シリンダー122の上端部が、上側ガイド41を介して、バンプゴム部19の下面に衝突(ひいては、接触)する。この状態においては、主空気室46と通路47との間が遮断され、主空気室46は、閉鎖(密閉)された空間となる。そして、この衝突の間、シリンダー122の上端部は、上側ガイド41を介して、バンプゴム部19を圧縮しようとするとともに、懸架バネ部17のうちのシリンダー122と最外筒状剛体層172aとの間の部分は、慣性や弾性変形によって、上側へ変位しようとする。それらにより、主空気室46は、徐々に圧縮されて内部の圧力が高くなり、空気ばねの機能を発揮する。このようにして生じる主空気室46からの空気反力と、バンプゴム部19からの弾性反力とによって、シリンダー122とバンプゴム部19との衝突時の衝撃は緩和されるとともに、伸縮部12の縮みストロークは徐々に止められる。よって、大きな縮みストロークが発生した時における乗り心地を向上できる。
【0059】
また、第3実施形態においては、懸架バネ部17が、上述のように、シリンダー122の外周面と最外筒状剛体層172aの内周面との間に連結された、筒状ゴム層171を有しており、最外筒状剛体層172aの上端部172acは、支持部16に連結されている。これにより、懸架バネ部17は、上下方向に容易に伸縮可能であるとともに、周方向に容易に回転変位(伸縮)も可能である。そのため、本実施形態の懸架バネ部17は、例えば第1実施形態の懸架バネ部17を構成し得る、従来一般的なコイルバネと同等の機能を有する。したがって、コイルバネが不要となる。従来一般的に、コイルバネを用いる場合、コイルバネが腐食や繰り返し荷重が付加されること等により折損したときに脱落するのを抑制するために、コイルバネの上下両端部をしっかりと固定する構造や、コイルバネの下端部を受ける受部にガードを設置する必要があり、これらが、コストや重量の増加に繋がるおそれがある。本実施形態の懸架バネ部17であれば、そのような構造が不要であり、コストや重量を削減できる。さらに懸架バネ部17は、筒状ゴム層171を有することにより、例えば第1実施形態の伸縮部12を構成し得る、従来一般的なショックアブソーバの振動減衰機能をも有する。したがって、ショックアブソーバ(より具体的には、ショックアブソーバにおいて一般的に内部に封入される粘性流体等)が不要となり、伸縮部12の内部に粘性流体を封入させること等が不要となる。そして、本実施形態の構成によれば、コイルバネやショックアブソーバを用いる場合に比べて、コストや組付け工数を削減できる。
【0060】
〔第4実施形態〕
本明細書で説明する各実施形態においては、図7に示す第4実施形態のように、防振装置1は、錘45を備えていてもよい。図7の例において、錘45は、支持部16の上に設置されている。
一般的に、防振装置が備えるゴム部分は、ゴムの特性上、ロードノイズ等の微小(高周波)振動の発生時において、ペイン効果によって剛性が高くなって微小振動が伝わりやすくなる傾向がある。
その点、上述のように錘45を設けることにより、ロードノイズ等の微小振動の発生時において、錘45が微小振動を効果的に吸収でき、2重防振の効果により、車内騒音を低減できる。
【0061】
〔第5実施形態〕
図8図10は、本発明の第5実施形態に係る防振装置1を説明するための図面である。第5実施形態は、主に、伸縮部12の構成が、第3実施形態とは異なる。ストラットマウント部13、積層部14、懸架バネ部17、バンプゴム部19、連結ゴム部25の構成は、第3実施形態に関して上述したものと同様でよい。
以下の説明では、第3実施形態と異なる点を中心に説明する。その他の点については、第3実施形態に関して上述したものと同様でよい。
【0062】
第5実施形態において、伸縮部12は、第3実施形態と同様に、上側ガイド41とストッパーゴム43とを有しており、それらの構成は、第3実施形態と同様でよい。
【0063】
第5実施形態において、伸縮部12は、第3実施形態と同様に、下側ガイド42を有している。下側ガイド42は、ダンパーロッド121の筒状部1214の下端部に固定されている。下側ガイド42は、金属等の剛体から構成されると、好適である。
本実施形態において、下側ガイド42は、蓋部422と、押し部421と、を有している。
蓋部422は、ダンパーロッド121の筒状部1214の下側の開放端面と、筒状部1214とシリンダー122との間の隙間とを、塞いでいる。また、蓋部422は、シリンダー122の内周面に接触しており、シリンダー122の内周面上を摺動可能に構成されている。蓋部422の外周面には、テフロン等の樹脂が塗布されていると、シリンダー122の内周面上を摺動しやすくなるので、好適である。
押し部421は、筒状部1214とシリンダー122との間において、蓋部422から上側へ延在している。押し部421は、リリースバルブ68を押すことができるように構成されている。
【0064】
ダンパーロッド121の筒状部1214には、軸線方向におけるストッパーゴム43とリリースバルブ68との間において、筒状部1214を径方向に貫通する横穴1214hを有している。
【0065】
第5実施形態において、伸縮部12は、シリンダー蓋部材64を有している。シリンダー蓋部材64は、シリンダー122の下側の開放端面を塞いでいる。
【0066】
伸縮部12の内部には、中間空気室61とロッド下空気室62とが区画されている。
中間空気室61は、ダンパーロッド121の筒状部1214の内部において、軸線方向における連結部1215と下側ガイド42との間に区画される内部空間と、筒状部1214とシリンダー122との間において、軸線方向における上側ガイド41と下側ガイド42との間に区画される内部空間と、を有しており、これらの内部空間が、横穴1214hを介して連通されている。
ロッド下空気室62は、シリンダー122の内部において、軸線方向における下側ガイド42とシリンダー蓋部材64との間に区画されている。
【0067】
ダンパーロッド121及び下側ガイド42は、一体として、シリンダー122の内部を摺動する、ピストンの機能を有する。
【0068】
図8に示すように、下側ガイド42の外周面とシリンダー122の内周面との間には、Oリング等の封止部材63が設けられていると、好適である。封止部材63は、周方向に沿って全周にわたって延在する環状をなしており、下側ガイド42の外周面に形成された環状溝内に収容されている。これにより、下側ガイド42とシリンダー122との間の気密性を向上し、中間空気室61とロッド下空気室62との間の不所望な空気の流れを抑制できる。
【0069】
下側ガイド42の蓋部422は、蓋部422を貫通する貫通穴422hを有している。貫通穴422hは、中間空気室61とロッド下空気室62とを連通している。貫通穴422hには、ロッドワンウェイバルブ65が設けられている。ロッドワンウェイバルブ65は、貫通穴422hを介したロッド下空気室62から中間空気室61への空気の流れは許容するとともに、貫通穴422hを介した中間空気室61からロッド下空気室62への空気の流れは阻止するように、構成されている。
【0070】
シリンダー蓋部材64は、シリンダー蓋部材64を貫通する貫通穴64hを有している。貫通穴64hは、ロッド下空気室62とシリンダー122の外部とを連通している。貫通穴64hには、シリンダーワンウェイバルブ66が設けられている。シリンダーワンウェイバルブ66は、貫通穴64hを介したシリンダー122の外部からロッド下空気室62への空気の流れは許容するとともに、貫通穴64hを介したロッド下空気室62からシリンダー122の外部への空気の流れは阻止するように、構成されている。
【0071】
シリンダー122は、シリンダー122を径方向に貫通する貫通穴122hを有している。図8の例において、貫通穴122hの内面は、筒状の被覆ゴム膜69によって被覆されている。被覆ゴム膜69は、懸架バネ部17の筒状ゴム層171と一体に連結されているが、筒状ゴム層171と別体に構成されていてもよい。
貫通穴122hには、リリースバルブ68が設けられている。被覆ゴム膜69は、貫通穴122hの内面とリリースバルブ68との間に介在している。これにより、貫通穴122hとリリースバルブ68との間において、不所望な空気漏れを抑制し、気密性を向上できる。ただし、被覆ゴム膜69は、無くてもよい。
リリースバルブ68は、下側ガイド42の押し部421によって内周側から押されたときに、貫通穴122hの内面とリリースバルブ68との間に隙間を形成して、中間空気室61とシリンダー122の外部とを連通させるように、構成されている。
【0072】
積層部14は、その内周面から内周側へ突出する環状凸部145を有している。環状凸部145は、周方向に沿って全周にわたって延在する環状に構成されている。環状凸部145の先端部は、ダンパーロッド121の中実部1213の外周面と接触している。環状凸部145は、積層部14をダンパーロッド121と同軸に維持するとともに、積層部14とダンパーロッド121の中実部1213との間を気密に封止する。
本実施形態において、環状凸部145は、ゴムで構成されている。
防振装置1は、環状凸部145に加えて、複数の突起144を有してもよい。
【0073】
以上のように構成された第5実施形態においては、つぎのように動作する。
縮みストローク中においては、図9に示すように、シリンダー122がダンパーロッド121に対して上側へ相対移動した後に、シリンダー122の上端部が、上側ガイド41を介して、バンプゴム部19の下面に衝突(ひいては、接触)する。シリンダー122がダンパーロッド121に対して上側へ相対移動する間、ロッド下空気室62内の圧力が上昇し、ロッドワンウェイバルブ65が開放し、ロッドワンウェイバルブ65を介して、ロッド下空気室62から中間空気室61へ空気が流れ込む。それに伴い、中間空気室61からロッド上側穴1216及び通路47を介して、主空気室46へ空気が流れ込む。このように、伸縮部12は、縮みストローク中において、主空気室46内に空気を送り込むように構成されている。なお、この縮みストロークが、例えば車両が大きな段差を乗り越えた等して、大きな縮みストロークである場合には、その後、第3実施形態と同様に、シリンダー122が、上側ガイド41を介して、バンプゴム部19に衝突(ひいては、接触)し、主空気室46と通路47との間が遮断され、主空気室46は、閉鎖(密閉)された空間となる。そして、この衝突の間、シリンダー122の上端部は、上側ガイド41を介して、バンプゴム部19を圧縮しようとするとともに、懸架バネ部17のうちのシリンダー122と最外筒状剛体層172aとの間の部分は、慣性や弾性変形によって、上側へ変位しようとする。それらにより、主空気室46は、徐々に圧縮されて内部の圧力が高くなり、空気ばねの機能を発揮する。このようにして生じる主空気室46からの空気反力と、バンプゴム部19からの弾性反力とによって、シリンダー122とバンプゴム部19との衝突時の衝撃は緩和されるとともに、伸縮部12の縮みストロークは徐々に止められる。
一方、伸びストローク中においては、図10に示すように、ロッド下空気室62内の圧力が下降し、シリンダーワンウェイバルブ66が開放し、シリンダーワンウェイバルブ66を介して、外部からの空気がロッド下空気室62へ流れ込む。
このようにして、縮みストローク及び伸びストロークを繰り返す間、防振装置1は、上記のようなポンプ作用によって内部空間(主空気室46、中間空気室61、ロッド下空気室62)に空気を送り込み続け、内部空間の圧力が高くなっていく。
防振装置1の内部空間(主空気室46、中間空気室61、ロッド下空気室62)の圧力がある程度高くなると(概略的に言えば、内部空間の圧力や懸架バネ部17による反力が防振装置1全体の荷重を上回ると)、伸縮部12が伸びて下側ガイド42の押し部421がリリースバルブ68を押すことによってリリースバルブ68を開放し、そこから、主空気室46及び中間空気室61内の空気が外部へ流れ出る。これにより、主空気室46及び中間空気室61内の圧力が下がる。その後、主空気室46及び中間空気室61内の圧力がある程度下がると、下側ガイド42の押し部421がリリースバルブ68から離れ、リリースバルブ68が閉鎖状態に戻る。
このようにして、防振装置1は、自動的に、内部空間の圧力が所定の圧力範囲内の状態(概略的に言えば、内部空間の圧力による空気反力や懸架バネ部17による弾性反力が防振装置1全体の荷重を支える状態)に落ち着くようにされており、それにより、車高を所定の車高範囲内に維持することが可能になる。言い換えれば、防振装置1は、車高を自動的に調節するセルフレベリング機能を有している。このセルフレベリング機能を実現するにあたって、外部にポンプ、タンク、制御装置等は不要であるので、その分、低コスト化が可能である。本実施形態によれば、懸架バネ部17の変位量を最小化し、防振装置1の内部空間の空気圧によって1G荷重負担を分担することで、積載変化等による車高変化を抑制できる。
なお、上記所定の車高範囲は、例えば、ロッドワンウェイバルブ65の構成(例えば、ロッドワンウェイバルブ65の内部のバネの押し付け力等)を調整すること等により、調整することが可能である。
【0074】
第5実施形態においては、図8に示すように、防振装置1は、調整バルブ67を備えていてもよい。調整バルブ67は、防振装置1の外部のポンプ(図示せず)から加圧した空気を防振装置1の内部空間(主空気室46、中間空気室61、及び/又は、ロッド下空気室62)に注入できるように構成される。図8に示すように、例えば、調整バルブ67は、シリンダー蓋部材64に設けられ、外部のポンプ(図示せず)から加圧した空気をロッド下空気室62に注入できるように構成されてもよい。調整バルブ67を備えることにより、例えば、初期やメンテナンス時に、調整バルブ67を用いて防振装置1の外部のポンプ(図示せず)から加圧した空気を防振装置1の内部空間(主空気室46、中間空気室61、及び/又は、ロッド下空気室62)に注入することで、車両の車高を調整することが可能である。
【0075】
〔第6実施形態〕
本明細書で説明する各実施形態においては、防振装置1が上述の主空気室46を有している場合、図11に示す第6実施形態のように、支持部16が、主空気室拡張部16mを有していてもよい。
図11の例において、支持部16は、内周側部16kと、主空気室拡張部16mとを、有している。内周側部16kは、積層部15とバンプゴム部19との間に連結されている。主空気室拡張部16mは、内周側部16kの外周側に位置しており、図11に示すような軸線方向断面において、上に凸の略逆U字状をなしている。主空気室拡張部16mの上端は、内周側部16kの上端よりも上側にある。
支持部16が主空気室拡張部16mを有することにより、主空気室46の体積を増やすことができ、ひいては、主空気室46が発揮する空気ばね機能の性能を調整して、乗り心地を向上させることができる。
内周側部16kと主空気室拡張部16mとは、別体に構成されていてもよいし、一体に構成されていてもよい。
【0076】
防振装置1の構成は、以上に説明したものに限られず、様々な変形例が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明に係る防振装置は、ストラット式サスペンションに適用されると好適なものであり、マクファーソン・ストラット式サスペンションに適用されると特に好適なものである。また、本発明に係る防振装置は、任意の種類の車両に適用できるが、例えば超小型モビリティ等の比較的安価で軽量な車両に適用されると好適なものである。
【符号の説明】
【0078】
1:防振装置、
12:伸縮部、
121:ダンパーロッド、 1211:取付部、 1212:段差面、 1213:中実部、 1214:筒状部、 1214h:横穴、 1215:連結部、 1216:ロッド上側穴、
122:シリンダー、 122h:貫通穴、
13:ストラットマウント部、
131:ブラケット、 1311:湾曲部、 1312:フランジ部、 1313:中央貫通穴、 1314:締結穴、
132:取付部材、 1321:湾曲部、 1322:取付部、 1323:中央貫通穴、
133:マウント本体ゴム、 1333:中央貫通穴、
14:積層部、 141:環状ゴム層、 142:環状剛体層、 143:ゴム膜、 144:突起、 145:環状凸部、
16:支持部、 16k:内周側部、 16m:主空気室拡張部、
17:懸架バネ部、 171、171a:筒状ゴム層、 171ac:上端部、 172:筒状剛体層、 172a:最外筒状剛体層(筒状剛体層)、 172ac:上端部、
18:受けゴム部、 18g:受け溝、
19:バンプゴム部、
20:ダストカバー部、 201:リブ、
21:連結ゴム部、
22:スリーブ、
23:抜け止めプレート
24:一体成形品、
25:連結ゴム部、
41:上側ガイド、
42:下側ガイド、 421:押し部、 422:蓋部、 422h:貫通穴、
43:ストッパーゴム、
45:錘、
46:主空気室、
47:通路、
61:中間空気室、
62:ロッド下空気室、
63:封止部材、
64:シリンダー蓋部材、 64h:貫通穴、
65:ロッドワンウェイバルブ、
66:シリンダーワンウェイバルブ、
67:調整バルブ、
68:リリースバルブ
69:被覆ゴム膜、
F1、F2:締結具、
RA:ロッド軸線
O:防振装置軸線
P:揺動中心点、中心点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11