(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037627
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】除電装置およびイオンバランス制御方法
(51)【国際特許分類】
H05F 3/04 20060101AFI20240312BHJP
H01T 23/00 20060101ALI20240312BHJP
H01T 19/04 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
H05F3/04 A
H01T23/00
H01T19/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142588
(22)【出願日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000129253
【氏名又は名称】株式会社キーエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】梁 世英
【テーマコード(参考)】
5G067
【Fターム(参考)】
5G067DA01
5G067DA18
5G067DA21
5G067DA22
5G067EA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】長期的なイオンバランスと短期的なイオンバラスとの両方を適切に制御する。
【解決手段】接地電極Teを介してアースEと除電装置との間に流れる電流Idlが検出されて、電流Idlが目標電流になるように負極性高圧電源92に対してフィードバック制御が実行される。さらに、電極針Npおよび電極針Nmによって発生されたプラスイオンおよびマイナスイオンが到達する位置に、接地電極Teと異なる検知電極として機能するフロント金網115が配置されている。そして、このフロント金網115に到達したプラスイオンおよびマイナスイオンによって生じる電流Idhが検出されて、電流Idhが目標電流Ithになるように負極性高圧電源92に対してフィードバック制御が実行される。
【選択図】
図11A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に対してイオンを放出して当該対象物を除電する除電装置であって、
正極性高電圧の印加に応じてコロナ放電を発生させてプラスイオンを発生させ、負極性高電圧の印加に応じてコロナ放電を発生させてマイナスイオンを発生させるイオン発生部と、
前記正極性高電圧および前記負極性高電圧を前記イオン発生部に印加する高電圧印加部と、
アースに短絡された接地電極と、
前記接地電極を介して前記アースと前記除電装置との間に流れる第1イオン電流を検出する第1検出回路と、
前記イオン発生部により発生された前記プラスイオンおよび前記マイナスイオンが到達する位置に配置された、前記接地電極と異なる検出電極と、
前記検出電極に到達した前記プラスイオンおよび前記マイナスイオンによって生じる第2イオン電流を検出する第2検出回路と、
前記第1検出回路によって検出される前記第1イオン電流が第1目標値になるように前記高電圧印加部に対してフィードバック制御を実行し、前記第2検出回路によって検出される前記第2イオン電流が第2目標値になるように前記高電圧印加部に対してフィードバック制御を実行するフィードバック制御部と
を備える除電装置。
【請求項2】
前記第1検出回路は、前記第1イオン電流が流れる第1抵抗を有し、前記第1イオン電流が流れることで前記第1抵抗に発生する第1電圧に基づき前記第1イオン電流を検出し、
前記第2検出回路は、前記第2イオン電流が流れる第2抵抗を有し、前記第2イオン電流が流れることで前記第2抵抗に発生する第2電圧に基づき前記第2イオン電流を検出し、
前記第1抵抗の抵抗値は、前記第2抵抗の抵抗値より大きい請求項1に記載の除電装置。
【請求項3】
送風方向に流れる風を生成するファンをさらに備え、
前記検出電極は、前記送風方向において前記イオン発生部の下流側に配置される請求項1に記載の除電装置。
【請求項4】
前記ファンは、前記送風方向において前記イオン発生部と前記検出電極との間に配置される請求項3に記載の除電装置。
【請求項5】
前記第2目標値は、所定のオフセット量だけゼロからずれた値である請求項1に記載の除電装置。
【請求項6】
前記イオン発生部は、前記正極性高電圧の印加に応じてコロナ放電を発生させる先端部を有する正極電極針と、前記負極性高電圧の印加に応じてコロナ放電を発生させる先端部を有する負極電極針とを有し、前記正極電極針のコロナ放電によってプラスイオンを発生させ、前記負極電極針のコロナ放電によってマイナスイオンを発生させ、
前記高電圧印加部は、前記正極電極針に接続されて、前記正極電極針に前記正極性高電圧を印加する正極性高電圧印加回路と、前記負極電極針に接続されて、前記負極電極針に前記負極性高電圧を印加する負極性高電圧印加回路とを有する請求項1ないし5のいずれか一項に記載の除電装置。
【請求項7】
前記正極電極針および前記負極電極針のうち一方の電極針がコロナ放電によって発生させるイオンの量を検出するイオン量検出部と、
前記正極性高電圧印加回路および前記負極性高電圧印加回路のうち、前記一方の電極針に接続された一方の高電圧印加回路が前記一方の電極針に印加する電圧に対して、前記イオン量検出部によって検出されたイオンの量に基づくフィードバック制御を実行することで、前記一方の電極針によって発生されるイオンの量を所定量に収束させる高電圧制御部と
をさらに備え、
前記フィードバック制御部は、前記第1検出回路によって検出される前記第1イオン電流が前記第1目標値になるように制御するフィードバック制御と、前記第2検出回路によって検出される前記第2イオン電流が前記第2目標値になるように制御するフィードバック制御とを、前記正極性高電圧印加回路および前記負極性高電圧印加回路のうち、他方の高電圧印加回路に対して実行する請求項6に記載の除電装置。
【請求項8】
対象物の除電のために当該対象物に対して除電装置から放出されるイオンのイオンバランスを制御するイオンバランス制御方法であって、
正極性高電圧の印加に応じてコロナ放電を発生させてプラスイオンを発生させ、負極性高電圧の印加に応じてコロナ放電を発生させてマイナスイオンを発生させるイオン発生部に対して高電圧印加部から前記正極性高電圧および前記負極性高電圧を印加する工程と、
アースに短絡された接地電極を介して前記アースと前記除電装置との間に流れる第1イオン電流を検出する工程と、
前記イオン発生部によって発生された前記プラスイオンおよび前記マイナスイオンが到達する位置に配置された、前記接地電極と異なる検出電極に到達した前記プラスイオンおよび前記マイナスイオンによって生じる第2イオン電流を検出する工程と、
前記第1イオン電流が第1目標値になるように前記高電圧印加部に対してフィードバック制御を実行し、前記第2イオン電流が第2目標値になるように前記高電圧印加部に対してフィードバック制御を実行する工程と
を備えるイオンバランス制御方法。
【請求項9】
対象物に対してイオンを放出して当該対象物を除電する除電装置であって、
正極性高電圧の印加に応じてコロナ放電を発生させてプラスイオンを発生させ、負極性高電圧の印加に応じてコロナ放電を発生させてマイナスイオンを発生させるイオン発生部と、
前記正極性高電圧および前記負極性高電圧を前記イオン発生部に印加する高電圧印加部と、
前記除電装置の装置本体の外部の所定の領域に到達する、前記イオン発生部により発生された前記プラスイオンおよび前記マイナスイオンの比率に対応する第1イオン電流を検出する第1検出回路と、
前記イオン発生部により発生された前記プラスイオンおよび前記マイナスイオンが到達する位置に配置される検出電極と、
前記検出電極に到達した前記プラスイオンおよび前記マイナスイオンによって生じる第2イオン電流を検出する第2検出回路と、
前記第1検出回路によって検出される前記第1イオン電流が第1目標値になるように前記高電圧印加部に対してフィードバック制御を実行し、前記第2検出回路によって検出される前記第2イオン電流が第2目標値になるように前記高電圧印加部に対してフィードバック制御を実行するフィードバック制御部と
を備える除電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、対象物の除電のために当該対象物に対して除電装置から放出されるイオンのイオンバランスを制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、正および負の電極針のそれぞれに正および負の高電圧を印加することでコロナ放電を発生させて、プラスイオンおよびマイナスイオンを発生させる除電装置が開示されている。このような除電装置によって対象物を確実に除電するにあたっては、プラスイオンおよびマイナスイオンそれぞれの発生量を等しくバランスさせることが重要となる。そこで、この除電装置は、当該除電装置とアースとの間で流れる電流を検出する検出抵抗を備え、この検出抵抗に発生する電圧に基づき、正および負の電極針のそれぞれに印加される正および負の高電圧に対してフィードバック制御を行う。これによって、プラスイオンの発生量とマイナスイオンの発生量との差を抑えて、適切なイオンバランスを実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ただし、主としてアースが有する大きな容量に起因して、除電装置とアースとの間の電流に基づくフィードバック制御は、低い応答性を有する。そのため、長期的には適切なイオンバランスを実現できる一方、短期的にはイオンバランスが不安定になる場合があった。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、長期的なイオンバランスと短期的なイオンバラスとの両方を適切に制御可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る除電装置は、対象物に対してイオンを放出して当該対象物を除電する除電装置であって、正極性高電圧の印加に応じてコロナ放電を発生させてプラスイオンを発生させ、負極性高電圧の印加に応じてコロナ放電を発生させてマイナスイオンを発生させるイオン発生部と、正極性高電圧および負極性高電圧をイオン発生部に印加する高電圧印加部と、アースに短絡された接地電極と、接地電極を介してアースと除電装置との間に流れる第1イオン電流を検出する第1検出回路と、イオン発生部により発生されたプラスイオンおよびマイナスイオンが到達する位置に配置された、接地電極と異なる検出電極と、検出電極に到達したプラスイオンおよびマイナスイオンによって生じる第2イオン電流を検出する第2検出回路と、第1検出回路によって検出される第1イオン電流が第1目標値になるように高電圧印加部に対してフィードバック制御を実行し、第2検出回路によって検出される第2イオン電流が第2目標値になるように高電圧印加部に対してフィードバック制御を実行するフィードバック制御部とを備える。
【0007】
本発明の第1態様にかかるイオンバランス制御方法は、対象物の除電のために当該対象物に対して除電装置から放出されるイオンのイオンバランスを制御するイオンバランス制御方法であって、正極性高電圧の印加に応じてコロナ放電を発生させてプラスイオンを発生させ、負極性高電圧の印加に応じてコロナ放電を発生させてマイナスイオンを発生させるイオン発生部に対して高電圧印加部から正極性高電圧および負極性高電圧を印加する工程と、アースに短絡された接地電極を介してアースと除電装置との間に流れる第1イオン電流を検出する工程と、イオン発生部によって発生されたプラスイオンおよびマイナスイオンが到達する位置に配置された、接地電極と異なる検出電極に到達したプラスイオンおよびマイナスイオンによって生じる第2イオン電流を検出する工程と、第1イオン電流が第1目標値になるように高電圧印加部に対してフィードバック制御を実行し、第2イオン電流が第2目標値になるように高電圧印加部に対してフィードバック制御を実行する工程とを備える。
【0008】
このように構成された本発明(除電装置およびイオンバランス制御方法)によれば、プラスイオンおよびマイナスイオンを発生させるイオン発生部と、イオン発生部に正極性高電圧および負極性高電圧を印加する高電圧印加部とが設けられる。そして、高電圧印加部がイオン発生部に正極性高電圧を印加すると、イオン発生部がプラスイオンを発生させ、高電圧印加部がイオン発生部に負極性高電圧を印加すると、イオン発生部がマイナスイオンを発生させる。また、接地電極を介してアースと除電装置との間に流れる第1イオン電流が検出されて、第1イオン電流が第1目標値になるように高電圧印加部に対してフィードバック制御が実行される。この第1イオン電流に基づくフィードバック制御によって、長期的なイオンバランスを適切に制御することができる。さらに、イオン発生部によって発生されたプラスイオンおよびマイナスイオンが到達する位置に、接地電極と異なる検出電極が配置されている。そして、この検出電極に到達したプラスイオンおよびマイナスイオンによって生じる第2イオン電流が検出されて、第2イオン電流が第2目標値になるように高電圧印加部に対してフィードバック制御が実行される。この第2イオン電流に基づくフィードバック制御によって、短期的なイオンバランスを適切に制御することができる。こうして長期的なイオンバランスと短期的なイオンバラスとの両方を適切に制御することが可能となっている。
【0009】
本発明の第2態様に係る除電装置は、対象物に対してイオンを放出して当該対象物を除電する除電装置であって、正極性高電圧の印加に応じてコロナ放電を発生させてプラスイオンを発生させ、負極性高電圧の印加に応じてコロナ放電を発生させてマイナスイオンを発生させるイオン発生部と、正極性高電圧および負極性高電圧をイオン発生部に印加する高電圧印加部と、除電装置の装置本体の外部の所定の領域に到達する、イオン発生部により発生されたプラスイオンおよびマイナスイオンの比率に対応する第1イオン電流を検出する第1検出回路と、イオン発生部により発生されたプラスイオンおよびマイナスイオンが到達する位置に配置される検出電極と、検出電極に到達したプラスイオンおよびマイナスイオンによって生じる第2イオン電流を検出する第2検出回路と、第1検出回路によって検出される第1イオン電流が第1目標値になるように高電圧印加部に対してフィードバック制御を実行し、第2検出回路によって検出される第2イオン電流が第2目標値になるように高電圧印加部に対してフィードバック制御を実行するフィードバック制御部とを備える。
【0010】
このように構成された本発明(除電装置)によれば、プラスイオンおよびマイナスイオンを発生させるイオン発生部と、イオン発生部に正極性高電圧および負極性高電圧を印加する高電圧印加部とが設けられる。そして、高電圧印加部がイオン発生部に正極性高電圧を印加すると、イオン発生部がプラスイオンを発生させ、高電圧印加部がイオン発生部に負極性高電圧を印加すると、イオン発生部がマイナスイオンを発生させる。また、除電装置の装置本体の外部の所定の領域に到達する、イオン発生部により発生されたプラスイオンおよびマイナスイオンの比率に対応する第1イオン電流が検出されて、第1イオン電流が第1目標値になるように高電圧印加部に対してフィードバック制御が実行される。この第1イオン電流に基づくフィードバック制御によって、長期的なイオンバランスを適切に制御することができる。さらに、イオン発生部によって発生されたプラスイオンおよびマイナスイオンが到達する位置に、検出電極が配置されている。そして、この検出電極に到達したプラスイオンおよびマイナスイオンによって生じる第2イオン電流が検出されて、第2イオン電流が第2目標値になるように高電圧印加部に対してフィードバック制御が実行される。この第2イオン電流に基づくフィードバック制御によって、短期的なイオンバランスを適切に制御することができる。こうして長期的なイオンバランスと短期的なイオンバラスとの両方を適切に制御することが可能となっている。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、長期的なイオンバランスと短期的なイオンバラスとの両方を適切に制御することが可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る除電装置の一例の外観を示す前方斜視図。
【
図2】
図1の除電装置の一例の外観を示す後方斜視図。
【
図5A】マイナス電極ユニットの一例を示す背面図。
【
図6A】マイナス電極ユニットの固定ベースへの固定態様を示す後方斜視図。
【
図6B】プラス電極ユニットの固定ベースへの固定態様を示す後方斜視図。
【
図6C】マイナス電極ユニットおよびプラス電極ユニットの固定ベースへの固定態様を示す後方斜視図。
【
図6D】マイナス電極ユニットおよびプラス電極ユニットの固定ベースへの固定態様を拡大して示す拡大斜視図。
【
図7A】マイナス電極ユニットに電圧を印加する構成を示す斜視図。
【
図7B】プラス電極ユニットに電圧を印加する構成を示す斜視図。
【
図9】
図1の除電装置の電装系であるコントローラの構成を簡略的に示すブロック図。
【
図10】
図9のコントローラによって実行される動作の一例を示すフローチャート。
【
図11A】電極ユニットコントローラの詳細を示すブロック図。
【
図11B】
図10の動作で実行される電圧制御の一例を示すフローチャート。
【
図12】マイナス電極ユニットおよびプラス電極ユニットの変形例を模式的に示す斜視図。
【
図13】長期的および短期的なフィードバックを行う2個の系を模式的に示す図。
【
図14】イオンバランスセンサの一例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は本発明に係る除電装置の一例の外観を示す前方斜視図であり、
図2は
図1の除電装置の一例の外観を示す後方斜視図であり、
図3は
図1の除電装置の一例の分解組立斜視図であり、
図4は
図1の除電装置の内部を示す背面図である。なお、本明細書では、水平方向であるX方向、X方向に直交する水平方向であるY方向および鉛直方向であるZ方向を適宜示しつつ説明を行う。また、X方向の両側のうち一方側を前側Xfと、他方側を後側Xbと適宜称する。
【0014】
除電装置1は、フロントカバー11、ハウジング2、ファンユニット3、固定ベース4、マイナス電極ユニット5、プラス電極ユニット6、清掃ユニット7およびリアカバー12を備える。ハウジング2は、上側部分2Uと、当該上側部分2Uの下側に設けられた下側部分2Lに大別され、ハウジング2の上側部分2Uには収納室201が設けられ、ハウジング2の下側部分2Lには電装収納部202が設けられている。収納室201は、X方向から見て矩形を有し、X方向に開口する。ファンユニット3、固定ベース4、マイナス電極ユニット5、プラス電極ユニット6および清掃ユニット7はX方向に配列されて収納室201に収納される。電装収納部202には、除電装置1の電装系が収納される。また、フロントカバー11は、前側Xfから収納室201に対向してハウジング2に取り付けられ、リアカバー12は、後側Xbから収納室201に対向してハウジング2に取り付けられる。
【0015】
ハウジング2は、フロントフレーム21と、フロントフレーム21の後側Xbに設けられたリアフレーム25とを有する。フロントフレーム21とリアフレーム25とは、X方向に配列されて、互いに取り付けられている。フロントフレーム21と、リアフレーム25とは、帯電防止樹脂で構成されて導電性を有する。帯電防止樹脂は、帯電防止剤を樹脂に練り込むあるいは帯電防止剤を樹脂の表面に塗布することで構成することができる。本実施形態における帯電防止樹脂とはハウジング2を構成した時に、当該ハウジング2の表面で発生した電荷が比較的短時間、例えば数秒で、グランドGに流れるような抵抗値を有する樹脂である。ハウジング2を抵抗値が109Ω~1012Ωの範囲の樹脂で構成することにより、ハウジング2の表面で発生した電荷が数秒でグランドGに流れる実験結果が得られている。また、ハウジング2は外表面の大部分が帯電防止樹脂で構成されていれば良い。本実施形態では表示部23が帯電防止樹脂で構成されていないが、ハウジング2の一部が帯電することによる影響は小さい。
【0016】
フロントフレーム21は、メインフレーム22と、メインフレーム22の前側Xfに設けられた表示部23とを有する。メインフレーム22および表示部23は、X方向に配列されて、互いに取り付けられている。メインフレーム22は、X方向に開口する。表示部23は、下側部分2Lにおいて、メインフレーム22の開口に設けられ前側Xfから視認可能に配置される。つまり、メインフレーム22の開口のうち、上側部分2Uの範囲が収納室201の一部を構成する。また、メインフレーム22のうち、下側部分2Lの範囲が電装収納部202の一部を構成する。
【0017】
リアフレーム25はX方向に開口する。リアフレーム25のうち、上側部分2Uの範囲の開口が収納室201の一部を構成する。また、リアフレーム25のうち、下側部分2Lの範囲が電装収納部202の一部を構成する。
【0018】
フロントカバー11は、帯電防止樹脂製のカバーフレーム111を有し、このカバーフレーム111は、上側部分2Uにおいて、ハウジング2のフロントフレーム21に前側Xfから取り付けられている。このカバーフレーム111は、収納室201を前側Xfから覆う。また、カバーフレーム111は、複数のスリットが設けられたメッシュ部112を有し、このメッシュ部112は、収納室201に前側Xfから対向する。また、フロントフレーム21には、X方向から見て円形を有するフロント金網115(金属製の網)が取り付けられている。フロント金網115は、前側Xfから収納室201に対向するとともに、後側Xbからメッシュ部112に対向する。これらメッシュ部112およびフロント金網115は、X方向への風の通過を許容する。なお、本実施形態では、カバーフレーム111は、複数のスリットが設けられたメッシュ部112を有するが、後述するファン33により発生する風を所望の領域に誘導できる形状であれば良い。また、フロントカバー11はハウジング2に取り付けられるが、カバーフレーム111の形状が異なる複数のフロントカバー11から選択されるフロントカバー11がハウジング2に取り付けられる構成であってもよい。この構成によれば、ユーザは、除電装置1の使用環境に応じて選択したフロントカバー11をハウジング2に取り付けることができる。例えば、除電装置1と除電の対象物との距離が小さい場合には、近傍に風を誘導するのに適したフロントカバー11を装着し、除電装置1と除電の対象物との距離が大きい場合には、遠方に風を誘導するのに適したフロントカバー11を装着する、と言った使い方が可能である。さらに、フロントカバー11が付け替え可能な構成において、ハウジング2に取り付けられるフロントカバー11の種類に応じて、除電装置1の運転に関するパラメータが設定されるような構成であっても良い。
【0019】
リアカバー12は、帯電防止樹脂製のカバーフレーム121を有し、このカバーフレーム121は、上側部分2Uにおいて、ハウジング2のリアフレーム25に後側Xbから取り付けられている。このカバーフレーム111は、X方向から見て円形を有する開口122を有し、この開口122は、収納室201に後側Xbから対向する。さらに、リアカバー12は、X方向から見て円形を有するリア金網125(金属製の網)を有する。リア金網125は、開口122に嵌め込まれてカバーフレーム121に取り付けられ、後側Xbから収納室201に対向する。このリア金網125は、X方向への風の通過を許容する。また、リア金網125は、グランドG(
図9)に短絡されている。なお、リア金網125とグランドGとを電気的に接続する態様は短絡に限られず、抵抗を介してこれらを接続しても構わない。
【0020】
ファンユニット3は、ハウジング2の収納室201内に配置されて、フロントカバー11のフロント金網115の後側Xbに位置する。ファンユニット3は、X方向から見て矩形を有するサポートフレーム31を有し、サポートフレーム31は、収納室201内に配置されてハウジング2に取り付けられている。サポートフレーム31では、X方向から見て円形の通風口32がX方向に開口する。通風口32は、フロントカバー11のフロント金網115に後側Xbから対向する。さらに、ファンユニット3は、X方向から見て円形を有するファン33を有する。ファン33は、X方向に平行に設けられた回転軸331と、回転軸331の周囲に設けられた複数の羽根332とを有する。また、ファン33は、サポートフレーム31の通風口32内に配置されて、フロントカバー11のフロント金網115に後側Xbから対向する。このファン33は、X方向に平行な回転中心の周りで回転可能にサポートフレーム31に支持されており、当該回転中心の周りで回転することで、X方向の後側Xbから前側Xfへ向かう送風方向Dwへの風(換言すれば、気流)を生成する。
【0021】
固定ベース4は、ハウジング2の収納室201に配置されてファンユニット3の後側Xbに位置する。この固定ベース4は、X方向から見て矩形を有する固定フレーム41を有し、固定フレーム41は、収納室201内に配置されてハウジング2に取り付けられている。固定フレーム41では、通風口42がX方向に開口する。この通風口42は、X方向から見て四隅を円弧状に切り欠いた矩形を有する。また、固定ベース4は、固定フレーム41の四隅に設けられた固定部43、44、45、46を有する。これら固定部43、44、45、46は、通風口42の四隅それぞれの外側に位置する。さらに、固定ベース4では、後述するように、固定フレーム41に対して、清掃ユニット7を支持するI字型の部分が設けられている。
【0022】
マイナス電極ユニット5は、ハウジング2の収納室201に配置されて、固定ベース4の固定フレーム41に後側Xbから固定される。このマイナス電極ユニット5は、
図5Aに示す構成を具備する。ここで、
図5Aはマイナス電極ユニットの一例を示す背面図である。
図5Aでは、X方向から見て中心点Pcを中心とする円形を有する仮想円Cv(破線で示す円)と、中心点Pcを中心とする円周方向Dcとが示されている。
【0023】
図5Aに示すように、マイナス電極ユニット5は、仮想円Cに沿って設けられた第1ユニットフレーム51を有する。換言すれば、第1ユニットフレーム51は、仮想円Cに沿った円弧形状を有する。さらに、マイナス電極ユニット5は、仮想円Cvに沿った円周方向Dcに一定の配列ピッチ(90度)で配列された複数(4本)の電極針Nmを有する。これら複数の電極針Nmは、第1ユニットフレーム51の内壁511に沿って配列されて、この内壁511から内側(換言すれば、仮想円Cvの中心点Pc側)に向かって突出する。第1ユニットフレーム51には、各電極針Nmに電気的に接続されたケーブル(配線)が内蔵されており、このケーブルを介して各電極針Nmに電圧が印加される。
【0024】
また、マイナス電極ユニット5は、円周方向Dcに一定の配列ピッチ(90度)で配列された複数(4個)の固定部53、54、55、56を有する。ここの例では、電極針Nmの個数と、固定部53、54、55、56の個数とは等しい。これら複数の固定部53、54、55、56は、第1ユニットフレーム51の外壁512に沿って配列されて、この外壁512から外側(換言すれば、仮想円Cvの中心点Pcの逆側)に向かって突出する。円周方向Dcにおいて、複数の固定部53、54、55、56の配列の位相と、複数の電極針Nmの配列の位相とはずれている。つまり、各固定部53、54、55、56は電極針Nmに対して円周方向Dcにずれた位置に設けられる。これら固定部53、54、55、56のそれぞれは、固定ベース4の固定部43、44、45、46にネジSによって締結される。
【0025】
上述のファンユニット3のファン33によって生成される風は、マイナス電極ユニット5の第1ユニットフレーム51によって囲まれた流路Fwを送風方向Dwに通過する。換言すれば、マイナス電極ユニット5の第1ユニットフレーム51は、ファン33が生成する風が通過する流路Fwを囲むように湾曲した形状(円弧形状)を有する。
【0026】
図3に示すように、プラス電極ユニット6は、ハウジング2の収納室201に配置されて、固定ベース4の固定フレーム41に後側Xbから固定される。このプラス電極ユニット6は、
図5Bに示す構成を具備する。ここで、
図5Bはプラス電極ユニットの一例を示す背面図である。
図5Bでは、
図5Aと同様に、仮想円Cvおよび円周方向Dcが示されている。
【0027】
図5Bに示すように、プラス電極ユニット6は、仮想円Cに沿って設けられた第2ユニットフレーム61を有する。換言すれば、第2ユニットフレーム61は、仮想円Cに沿った円弧形状を有する。さらに、プラス電極ユニット6は、仮想円Cvに沿った円周方向Dcに一定の配列ピッチ(90度)で配列された複数(4本)の電極針Npを有する。これら複数の電極針Npは、第2ユニットフレーム61の内壁611に沿って配列されて、この内壁611から内側(換言すれば、仮想円Cvの中心点Pc側)に向かって突出する。第2ユニットフレーム61には、各電極針Npに電気的に接続されたケーブル(配線)が内蔵されており、このケーブルを介して各電極針Npに電圧が印加される。
【0028】
また、プラス電極ユニット6は、円周方向Dcに一定の配列ピッチ(90度)で配列された複数(4個)の固定部63、64、65、66を有する。ここの例では、電極針Npの個数と、固定部63、64、65、66の個数とは等しい。これら複数の固定部63、64、65、66は、第2ユニットフレーム61の外壁612に沿って配列されて、この外壁612から外側(換言すれば、仮想円Cvの中心点Pcの逆側)に向かって突出する。円周方向Dcにおいて、複数の固定部63、64、65、66の配列の位相と、複数の電極針Npの配列位相とはずれている。つまり、各固定部63、64、65、66は電極針Npに対して円周方向Dcにずれた位置に設けられる。これら固定部63、64、65、66のそれぞれは、固定ベース4の固定部43、44、45、46にネジSによって締結される。
【0029】
上述のファンユニット3のファン33によって生成される風は、プラス電極ユニット6の第2ユニットフレーム61によって囲まれた流路Fwを送風方向Dwに通過する。換言すれば、プラス電極ユニット6の第2ユニットフレーム61は、ファン33が生成する風が通過する流路Fwを囲むように湾曲した形状(円弧形状)を有する。
【0030】
かかるマイナス電極ユニット5とプラス電極ユニット6とは、収納室201内においてX方向に配列され、プラス電極ユニット6は、マイナス電極ユニット5の後側Xbに配置される。また、マイナス電極ユニット5の第1ユニットフレーム51と、プラス電極ユニット6の第2ユニットフレーム61とがX方向から見て重複するように、マイナス電極ユニット5およびプラス電極ユニット6は、固定ベース4に固定される。固定ベース4は、マイナス電極ユニット5とプラス電極ユニット6とが所望の配置関係になるように固定する部材であればよく、固定ベース4は単一の部材により構成されても良いし複数の部材で構成されても良い。また、ハウジング2を構成する部材など他の部材が、固定ベース4を兼ねる構成であっても良い。
【0031】
図6Aはマイナス電極ユニットの固定ベースへの固定態様を示す後方斜視図であり、
図6Bはプラス電極ユニットの固定ベースへの固定態様を示す後方斜視図であり、
図6Cはマイナス電極ユニットおよびプラス電極ユニットの固定ベースへの固定態様を示す後方斜視図であり、
図6Dはマイナス電極ユニットおよびプラス電極ユニットの固定ベースへの固定態様を拡大して示す拡大斜視図である。
【0032】
固定部43は、X方向から見て、第1および第2ユニットフレーム51、61より外側に突出した突出プレート431を有する。この突出プレート431は、背面視において第1および第2ユニットフレーム51、61より左上側に突出する。さらに、固定部43は、突出プレート431からX方向の後側Xbに突出する締結部432と、突出プレート431からX方向の後側Xbに突出する締結部433とを有する。締結部432では、X方向に延設されたネジ孔432hが後側Xbに開口し、締結部433では、X方向に延設されたネジ孔433hが後側Xbに開口する。これらネジ孔432h、433hにはネジSが螺合する。円周方向Dcにおいて、締結部432と締結部433とは互いにずれて設けられ、締結部432は締結部433の一方側(背面視において時計回り側)に位置する。
【0033】
固定部44は、X方向から見て、第1および第2ユニットフレーム51、61より外側に突出した突出プレート441を有する。この突出プレート441は、背面視において第1および第2ユニットフレーム51、61より左下側に突出する。さらに、固定部44は、突出プレート441からX方向の後側Xbに突出する締結部442と、突出プレート441からX方向の後側Xbに突出する締結部443とを有する。締結部442では、X方向に延設されたネジ孔442hが後側Xbに開口し、締結部443では、X方向に延設されたネジ孔443hが後側Xbに開口する。これらネジ孔442h、443hにはネジSが螺合する。円周方向Dcにおいて、締結部442と締結部443とは互いにずれて設けられ、締結部442は締結部443の一方側(背面視において時計回り側)に位置する。
【0034】
固定部45は、X方向から見て、第1および第2ユニットフレーム51、61より外側に突出した突出プレート451を有する。この突出プレート451は、背面視において第1および第2ユニットフレーム51、61より右下側に突出する。さらに、固定部45は、突出プレート451からX方向の後側Xbに突出する締結部452と、突出プレート441からX方向の後側Xbに突出する締結部453とを有する。締結部452では、X方向に延設されたネジ孔452hが後側Xbに開口し、締結部453では、X方向に延設されたネジ孔453hが後側Xbに開口する。これらネジ孔452h、453hにはネジSが螺合する。円周方向Dcにおいて、締結部452と締結部453とは互いにずれて設けられ、締結部452は締結部453の一方側(背面視において時計回り側)に位置する。
【0035】
固定部46は、X方向から見て、第1および第2ユニットフレーム51、61より外側に突出した突出プレート461を有する。この突出プレート461は、背面視において第1および第2ユニットフレーム51、61より右上側に突出する。さらに、固定部46は、突出プレート461からX方向の後側Xbに突出する締結部462と、突出プレート441からX方向の後側Xbに突出する締結部463とを有する。締結部462では、X方向に延設されたネジ孔462hが後側Xbに開口し、締結部463では、X方向に延設されたネジ孔463hが後側Xbに開口する。これらネジ孔462h、463hにはネジSが螺合する。円周方向Dcにおいて、締結部462と締結部463とは互いにずれて設けられ、締結部462は締結部463の一方側(背面視において時計回り側)に位置する。
【0036】
マイナス電極ユニット5の固定部53、54、55、56のそれぞれは、固定ベース4の締結部432、442、452、462に対してネジSによって締結される。具体的には、固定部53にはX方向に延設された挿入孔が開口している。そして、締結部432に後側Xbから隣接する固定部53の挿入孔と締結部432のネジ孔432hとがX方向に対向した状態で、固定部53の挿入孔に挿入されたネジSが締結部432のネジ孔432hにねじ込まれる。こうして固定部53が締結部432に締結される。また、固定部54、55、56も同様にして締結される。
【0037】
プラス電極ユニット6の固定部63、64、65、66のそれぞれは、固定ベース4の締結部433、443、453、463に対してネジSによって締結される。具体的には、固定部63にはX方向に延設された挿入孔が開口している。そして、締結部433に後側Xbから隣接する固定部63の挿入孔と締結部433のネジ孔433hとがX方向に対向した状態で、固定部63の挿入孔に挿入されたネジSが締結部433のネジ孔433hにねじ込まれる。こうして固定部63が締結部433に締結される。また、固定部64、65、66も同様にして締結される。
【0038】
ちなみに、締結部433、443、453、463は互いに同じ長さを有し、締結部432、442、452、462は互いに同じ長さを有する。一方、締結部433、443、453、463は、締結部432、442、452、462よりも長い。したがって、締結部433、443、453、463に締結されるプラス電極ユニット6は、締結部432、442、452、462に締結されるマイナス電極ユニット5より後側Xbに位置する。特に、X方向において、マイナス電極ユニット5とプラス電極ユニット6との間に隙間が空くように、締結部433、443、453、463と締結部432、442、452、462との長さが設定されている。
【0039】
また、マイナス電極ユニット5が有する電極針Nmの個数と、プラス電極ユニット6が有する電極針Npの個数とは等しく(4個)、マイナス電極ユニット5における電極針Nmの配列ピッチとプラス電極ユニット6における電極針Npの配列ピッチとは等しい(90度)。一方、例えば
図4に示すように、マイナス電極ユニット5における複数の電極針Nmの配列の位相と、プラス電極ユニット6における複数の電極針Npの配列の位相とは、45度だけずれている。したがって、X方向から見て、電極針Npと電極針Nmとが上記の配列ピッチの半分となる半ピッチ(45度)で交互に配列される。これら電極針Npおよび電極針Nmは、ファン33によって生成される送風方向Dwへ向かう風の流路Fwを囲むように円周方向Dcに配列され、電極針Npおよび電極針Nmそれぞれの先端部は、流路Fwに突出している。
【0040】
図7Aはマイナス電極ユニットに電圧を印加する構成を示す斜視図である。除電装置1は、電装収納部202に収納された電装系からマイナス電極ユニット5の固定部55まで延設されたハーネスHmを有し、このハーネスHmの先端では、電極端子が露出している。また、固定部55の前側Xfの側面では、電極針Nmに電気的接続されたケーブルの電極端子が露出している。そして、ハーネスHmの電極端子が締結部452と、マイナス電極ユニット5の固定部55の電極端子との間に挟まれた状態で、固定部55が締結部452に締結される。これによって、ハーネスHmの電極端子とマイナス電極ユニット5のケーブルの電極端子とが電気的に接触して、ハーネスHmを介して電装系から供給される電圧が、マイナス電極ユニット5の電極針Nmに印加される。
【0041】
図7Bはプラス電極ユニットに電圧を印加する構成を示す斜視図である。除電装置1は、電装収納部202に収納された電装系からプラス電極ユニット6の固定部64まで延設されたハーネスHpを有し、このハーネスHpの先端では、電極端子が露出している。また、固定部64の前側Xfの側面では、電極針Npに電気的接続されたケーブルの電極端子が露出している。そして、ハーネスHpの電極端子が締結部443と、プラス電極ユニット6の固定部64の電極端子との間に挟まれた状態で、固定部64が締結部443に締結される。これによって、ハーネスHpの電極端子とプラス電極ユニット6のケーブルの電極端子とが電気的に接触して、ハーネスHpを介して電装系から供給される電圧が、プラス電極ユニット6の電極針Npに印加される。
【0042】
図8Aは清掃ユニットの構成を示す背面図であり、
図8Bは清掃ユニットの構成を示す斜視図である。清掃ユニット7は、清掃ブラシ71m、71pと、モータ72と、モータ72によって駆動される回転プレート73と、回転プレート73に対して清掃ブラシ71m、71pを支持するブラシサポータ74とを有する。
【0043】
モータ72は、固定ベース4のうちX方向に平行な軸を中心とする円筒形の部分に収容される。回転プレート73は、当該軸を中心とする円盤形状を有する。また、モータ72および回転プレート73は、X方向から見て仮想円Cvの中央に配置され、モータ72および回転プレート73それぞれの外周から第1および第2ユニットフレーム51、61の内壁511、611の間には間隔CLが設けられている。この間隔CLは、ファン33の複数の羽根332に対向し、ファン33によって生成される風は、流路Fwのうちの間隔CLを通過する。モータ72は、中心点Pcを通ってX方向に平行な回転軸を有し、回転プレート73は、モータ72に同軸に設けられている。この回転プレート73は、モータ72によって駆動されることで、モータ72の回転軸を中心に円周方向Dcに回転する。ここの例では、モータ72はステッピングモータである。ただし、モータ72の種類はこの例に限られない。
【0044】
ブラシサポータ74は、回転プレート73の背面に取り付けられる取付部741と、取付部741を回転プレート73の背面に締結するネジ742とを有する。取付部741の先端は回転プレート73の外側に突出し、ブラシサポータ74は、回転プレート73の先端からX方向の前側Xfに延設された延設部743と、延設部743から中心点Pcを中心とする径方向の外側に突出する2個の支持部744m、744pを有する。支持部744m、744pのそれぞれは、回転プレート73の径方向の外側に延設部743から延設されている。支持部744m、744pはX方向に配列されており、支持部744pは支持部744mの後側Xbに位置する。さらに、ブラシサポータ74は、支持部744m、744pの先端にそれぞれ取り付けられたブラシホルダ745m、745pを有する。ブラシホルダ745m、745pはX方向に配列されており、ブラシホルダ745pはブラシホルダ745mの後側Xbに位置する。
【0045】
清掃ブラシ71mはブラシホルダ745mによって保持され、清掃ブラシ71pはブラシホルダ745pによって保持される。清掃ブラシ71mおおよび清掃ブラシ71pは、それぞれ電極針Nmおよび電極針Npに対応して設けられ、中心点Pcを中心とする径方向に延設されている。清掃ブラシ71mおよび清掃ブラシ71pは、X方向に配列されており、清掃ブラシ71pは清掃ブラシ71mの後側Xbに位置する。清掃ブラシ71mは、第1ユニットフレーム51の内壁511に対向し、清掃ブラシ71pは、第2ユニットフレーム61の内壁611に対向する。かかる構成では、清掃ブラシ71m、71pは、モータ72の駆動力によって円周方向Dcに移動する。そして、清掃ユニット7は、モータ72によって清掃ブラシ71m、71pを駆動することで、次のようにして電極針Nm、Npを清掃する。
【0046】
つまり、円周方向Dcに配列された複数の清掃位置Lmが設けられており、複数の清掃位置Lmはそれぞれ複数の電極針Nmに対応する。そして、清掃ブラシ71mは、複数の電極針Nmのうち清掃対象となる一の電極針Nmに対応する一の清掃位置Lmに位置することで、当該一の電極針Nmに接触する。特に、モータ72は、一の清掃位置Lmで一の電極針Nmに接触する清掃ブラシ71mを円周方向Dcに僅かに往復させることで、清掃ブラシ71mの先端によって一の電極針Nmに付着した汚れを擦り取ることができる。
【0047】
同様に、円周方向Dcに配列された複数の清掃位置Lpが設けられており、複数の清掃位置Lpはそれぞれ複数の電極針Npに対応する。そして、清掃ブラシ71pは、複数の電極針Npのうち清掃対象となる一の電極針Npに対応する一の清掃位置Lpに位置することで、当該一の電極針Npに接触する。特に、モータ72は、一の清掃位置Lpで一の電極針Npに接触する清掃ブラシ71pを円周方向Dcに僅かに往復させることで、清掃ブラシ71pの先端によって一の電極針Npに付着した汚れを擦り取ることができる。
【0048】
また、清掃ユニット7は、清掃ブラシ71m、71pを清掃するブラシクリーナ75を有する。ブラシクリーナ75は、清掃ブラシ71m、71pを収納する収納ボックス751を有する。収納ボックス751は、円周方向Dc(換言すれば、Y方向)に開口しており、モータ72によって清掃ブラシ71m、71pを円周方向Dcに移動させることで、清掃ブラシ71m、71pを収納ボックス751に入れたり、収納ボックス751から出したりできる。ちなみに、
図8Aおよび
図8Bでは、清掃ブラシ71m、71pが収納ボックス751から出た状態が示され、
図4では、清掃ブラシ71m、71pが収納ボックス751に入った状態が示されている。
【0049】
ブラシクリーナ75は、収納ボックス751内に設けられた摺接部材によって清掃ブラシ71m、71pから汚れを取り除く。つまり、収納ボックス751内では、当該収納ボックス751の円周方向Dcの両側の各開口に対応して摺接部材が設けられている。そして、モータ72の駆動力によって円周方向Dcに移動する清掃ブラシ71m、71pの先端が、ブラシクリーナ75の摺接部材に摺動される。これによって、清掃ブラシ71m、71pに付着した汚れがブラシクリーナ75の摺接部材に擦り取られて、清掃ブラシ71m、71pのクリーニングが実行される。このクリーニングは、清掃ブラシ71m、71pが収納ボックス751に入る際および収納ボックス751から出る際の両方で実行される。
【0050】
かかる清掃ユニット7は、上述の固定ベース4のうちのI字型の部分によって支持される。具体的には、当該I字型の部分の中央においてモータ72は固定ベース4によって支持されている。また、固定ベース4の底部における平板形状の部分にブラシクリーナ75が取り付けられている。
【0051】
図9は
図1の除電装置の電装系であるコントローラの構成を簡略的に示すブロック図である。除電装置1は、電装収納部202に収納されたコントローラ8を備える。コントローラ8は、ファンユニット3を制御するファンユニットコントローラ81と、清掃ユニット7を制御する清掃ユニットコントローラ83と、マイナス電極ユニット5およびプラス電極ユニット6を制御する電極ユニットコントローラ9とを有する。
【0052】
ファンユニットコントローラ81は、ファンユニット3が有するファン33を回転させることで、送風方向Dwに向かう風をファン33に発生させる。この風は、後側Xbからリア金網125を介してハウジング2内に流入する。さらに、この風は、ハウジング2内の流路Fwを通過した後に、フロント金網115およびメッシュ部112を介してハウジング2から前側Xfに流出する。こうしてハウジング2から流出した風は、除電の対象物に到達する。
【0053】
清掃ユニットコントローラ83は、清掃ユニット7のモータ72の回転位置を制御することで、清掃ブラシ71m、71pに電極針Nm、Npの清掃を実行させる。つまり、複数の電極針Nmのうち、一の電極針Nmを清掃する際には、清掃ユニットコントローラ83はモータ72の回転位置を制御することで、当該一の電極針Nmに対向する清掃位置Lmに清掃ブラシ71mを移動させてから、清掃ブラシ71mを円周方向Dcに僅かに往復させる(清掃動作)。また、複数の電極針Nmの間で清掃対象となる一の電極針Nmを順番に変更しつつ清掃動作を実行することで、複数の電極針Nmの全てを清掃することができる。同様に、複数の電極針Npのうち、一の電極針Npを清掃する際には、清掃ユニットコントローラ83はモータ72の回転位置を制御することで、当該一の電極針Npに対向する清掃位置Lpに清掃ブラシ71pを移動させてから、清掃ブラシ71pを円周方向Dcに僅かに往復させる(清掃動作)。また、複数の電極針Npの間で清掃対象となる一の電極針Npを順番に変更しつつ清掃動作を実行することで、複数の電極針Npの全てを清掃することができる。
【0054】
電極ユニットコントローラ9は、上述の通り、ハーネスHmによってマイナス電極ユニット5に接続されるとともに、ハーネスHpによってプラス電極ユニット6に接続される。この電極ユニットコントローラ9は、ハーネスHmを介してマイナス電極ユニット5の電極針Nmに印加する電圧と、ハーネスHpを介してプラス電極ユニット6の電極針Npに印加する電圧とを制御することで、電極針Nmの先端部と電極針Npの先端部との間にコロナ放電を発生させる。このコロナ放電によって、電極針Nmの先端部の周囲にマイナスイオンが発生するとともに、電極針Npの先端部の周囲にプラスイオンが発生する。さらに、送風方向Dwに順にリア金網125、プラス電極ユニット6およびマイナス電極ユニット5が配列されており、リア金網125はグランドGに接続されている。したがって、電極針Npとリア金網125との間でコロナ放電が発生して、電極針Npの周囲にプラスイオンが発生する。同様に、電極針Nmとリア金網125との間でコロナ放電が発生して、電極針Nmの周囲にマイナスイオンが発生する。
【0055】
上述の通り、電極針Nmおよび電極針Npは、流路Fwに突出しており、ファン33によって生成された風は、電極針Nmおよび電極針Npそれぞれの先端部を通過する。そのため、電極針Nmの先端部の周囲に生じたマイナスイオンと、電極針Npの先端部の周囲に生じたプラスイオンとは、流路Fwを送風方向Dwに通過する風に伴って、前側Xfへ進行する。また、風を生成するファン33は、プラス電極ユニット6およびマイナス電極ユニット5より前側Xf、換言すれば、送風方向Dwの下流側に位置する。したがって、マイナスイオンおよびプラスイオンは、ファン33によって撹拌された後に、フロント金網115およびメッシュ部112を介してハウジング2から前側Xfに流出する。
【0056】
図10は
図9のコントローラによって実行される動作の一例を示すフローチャートである。ステップS101では、清掃ユニットコントローラ83は、電極針Nmおよび電極針Npの清掃を開始する。
図8Aに示すように、除電装置1では、円周方向Dcの時計回りに電極針Nmと電極針Npとが交互に並んで、合計8個の電極針Nm、Npが並ぶ。これに対して、時計回りにおいて収納ボックス751から近い順に、8個の電極針Nm、Npに対する清掃動作が実行される。より詳細には個別の電極針Nm、Np毎に、当該電極針Nm、Npを通過するように清掃ブラシ71m、71pを往復移動させてから、次の電極針Nm、Npを清掃するように清掃ブラシ71m、71pを移動させる。本実施形態では、個別の電極針Nm、Np毎に清掃動作が実行されるように清掃ブラシ71m、71pを移動させるが移動方法はこれに限られない。例えば、清掃ブラシ71m、71pを一方向に移動させることで、全ての電極針Nm、Npを清掃する構成であっても良い。また、電極針Nm、Npに対する清掃動作は、反時計回りにおいて収納ボックス751から近い順に実行されても良い。
【0057】
つまり、清掃ユニットコントローラ83は、モータ72の回転位置を制御することで、ブラシクリーナ75から、最初(1番目)の電極針Nmに対向する清掃位置Lmに清掃ブラシ71m、71pを移動させて、当該電極針Nmに対して清掃動作を実行する。この際、収納ボックス751から当該清掃位置Lmに移動する清掃ブラシ71m、71pは、ブラシクリーナ75の摺接部材に摺動されて、清掃ブラシ71m、71pのクリーニングが実行される。また、最後(8番目)の電極針Npに対する清掃動作が完了すると、清掃ユニットコントローラ83は、モータ72の回転位置を制御することで、最後の電極針Npに対向する清掃位置Lpから収納ボックス751に清掃ブラシ71m、71pを移動させる。この際、当該清掃位置Lpから収納ボックス751に移動する清掃ブラシ71m、71pは、ブラシクリーナ75の摺接部材に摺動されて、清掃ブラシ71m、71pのクリーニングが実行される。ちなみに、清掃ユニットコントローラ83は、清掃ブラシ71m、71pを収納ボックス751から出す際の清掃ブラシ71m、71pの速度を、清掃ブラシ71m、71pを収納ボックス751に入れる際の清掃ブラシ71m、71pの速度をよりも遅くする。
【0058】
ステップS102では、ファンユニットコントローラ81は、ファン33の回転を開始して、送風方向Dwへの風を生成する。ステップS103では、電極ユニットコントローラ9は、マイナス電極ユニット5の電極針Nmへの電圧の印加と、プラス電極ユニット6の電極針Npへの電圧の印加を開始する。これによって、電極針Nmには、グランドGの電圧より低い直流のマイナス電圧Vmが印加され、電極針Npには、グランドGの電圧より高い直流のプラス電圧Vpが印加される。また、リア金網125はグランドGに接続されている。したがって、電極針Nmとリア金網125との間には電位差Vmが発生し、電極針Nmとリア金網125との間には電位差Vpが発生し、電極針Npと電極針Nmとの間には電位差Vpm(=Vp-Vm)が発生する。そして、電位差Vm、電位差Vpおよび電位差Vpmそれぞれによって生じたコロナ放電によって、マイナスイオンおよびプラスイオンが発生する。こうして発生したマイナスイオンおよびプラスイオンは、風によって送風方向Dwに進行して、除電装置1から前側Xfに放出される(除電動作)。なお、除電動作の実行中は、清掃ユニットコントローラ83は、モータ72の回転位置を制御することで、清掃ブラシ71m、71pを収納ボックス751内に位置させる。
【0059】
ステップS104の電圧制御では、イオンバランスを長期的および短期的に制御するためのフィードバック制御が実行される。この電圧制御の詳細は、
図11Aおよび
図11Bを用いて後述する。ステップS104に続くステップS105で、電極ユニットコントローラ9が電極針Nmおよび電極針Npへの電圧の印加を終了すると、ステップS106で、ファンユニットコントローラ81がファン33を停止させて、ファン33による送風を終了する。
【0060】
図11Aは電極ユニットコントローラの詳細を示すブロック図である。電極ユニットコントローラ9は、CPU(Central Processing Unit)91と、電極針Nmに印加される電圧Vmを発生する負極性高圧電源92と、電極針Npに印加される電圧Vpを発生する正極性高圧電源93とを有する。CPU91は、負極性高圧電源92および正極性高圧電源93を制御するためのデジタル信号処理を実行する。このCPU91は、電極針Npに印加される電圧Vp(高電圧)を制御する高電圧制御部911と、電極針Np、Nmへの電圧Vp、Vmの印加によって発生するマイナスイオンとプラスイオンとのバランス(イオンバランス)を制御する第1バランス制御部912とを有する。具体的には、CPU91は、所定のプログラムを実行することで、高電圧制御部911および第1バランス制御部912を構成する。
【0061】
負極性高圧電源92は、一次側回路921および二次側回路922を有するトランスである。一次側回路921には電圧信号Vimが入力され、二次側回路922は、ハーネスHmによってマイナス電極ユニット5の各電極針Nmに接続されている。そして、一次側回路921に入力された電圧信号Vimに応じた電圧Vmが二次側回路922からハーネスHmを介して各電極針Nmに印加される。
【0062】
正極性高圧電源93は、一次側回路931および二次側回路932を有するトランスである。一次側回路931には電圧信号Vipが入力され、二次側回路932は、ハーネスHpによってプラス電極ユニット6の各電極針Npに接続されている。そして、一次側回路931に入力された電圧信号Vipに応じた電圧Vpが二次側回路932からハーネスHpを介して各電極針Npに印加される。
【0063】
ハウジング2内では、上述のグランドG(内部グランド)が設けられている。このグランドGには、ハウジング2のうち、帯電防止樹脂で構成されたリアフレーム25が短絡されている。なお、リアフレーム25とグランドGとを電気的に接続する態様は短絡に限られず、抵抗を介してこれらを接続しても構わない。
【0064】
また、電極ユニットコントローラ9は、アースE(外部グランド)に短絡された接地電極Teと、接地電極TeとグランドGとの間に設けられた低応答検出回路94とを有する。低応答検出回路94は、接地電極TeとグランドGとを接続する検出抵抗R94を有する。この検出抵抗R94は、接地電極Teを介してアースEから除電装置1に流入する電流Idlを検出するために設けられる。つまり、除電装置1から放出されたマイナスイオンおよびプラスイオンそれぞれの量に差があると、この差に応じた電荷がアースEから接地電極Teに流入して、この電荷による電流Idlが検出抵抗R94に流れる。その結果、検出抵抗R94とグランドGとの間の検出点941には、電流Idlに応じた電圧Vdlが発生する。このように、低応答検出回路94は、アースEから接地電極Teを介してハウジング2内に流入する電荷による電流Idlを検出抵抗R94によって電圧Vdlに変換する。換言すれば、低応答検出回路94は、除電装置1により発生されてアースEに吸収されたマイナスイオンおよびプラスイオンのイオンバランスを示す電圧Vdlを検出する。
【0065】
さらに、電極ユニットコントローラ9は、フロント金網115と、グランドGとの間に設けられた高応答検出回路95を有する。高応答検出回路95は、フロント金網115とグランドGとを接続する検出抵抗R95を有する。この検出抵抗R95は、フロント金網115からグランドGに流れる電流Idhを検出するために設けられる。つまり、電極針Nmおよび電極針Npの周囲に発生したマイナスイオンおよびプラスイオンは、送風方向Dwに移動してフロント金網115に到達する。こうしてフロント金網115に到達したマイナスイオンおよびプラスイオンの一部は、フロント金網115に吸収される。そのため、フロント金網115に吸収されたマイナスイオンおよびプラスイオンそれぞれの量の差に応じた電荷がフロント金網115からグランドGに向かって、この電荷による電流Idhが検出抵抗R95に流れる。その結果、検出抵抗R95とフロント金網115との間の検出点951には、電流Idhに応じた電圧Vdhが発生する。このように高応答検出回路95は、フロント金網115からグランドGに流れる電荷による電流Idhを検出抵抗R95によって電圧Vdhに変換する。換言すれば、高応答検出回路95は、除電装置1により発生されてフロント金網115に吸収されたマイナスイオンおよびプラスイオンのイオンバランスを示す電圧Vdhを検出する。
【0066】
ここで、低応答検出回路94の検出抵抗R94は、高応答検出回路95の検出抵抗R95より大きい。また、アースEの容量は、フロント金網115の容量より大きい。したがって、高応答検出回路95の時定数は、低応答検出回路94の時定数より小さく、換言すれば、高応答検出回路95の応答速度は低応答検出回路94の応答速度より速い。つまり、高応答検出回路95は、イオンバランスの変動のうち高周波の変動を検出し、低応答検出回路94は、イオンバランスの変動のうち当該高周波より低い低周波の変動を検出する。
【0067】
電極ユニットコントローラ9は、このように低応答検出回路94および高応答検出回路95によって検出されたイオンバランスの変動に基づき、電極針Nm、Npに印加される電圧Vm、Vpに対してフィードバック制御を実行することで、イオンバランスを制御する。具体的には、電極ユニットコントローラ9は、イオンバランスの変動(ふらつき)を抑制するように電極針Np、Nmへの電圧Vp、Vmの印加によって発生するマイナスイオンとプラスイオンとのバランス(イオンバランス)を制御する第2バランス制御部96を有し、この第2バランス制御部96によってフィードバック制御が実行される。
【0068】
詳述すると、低応答検出回路94は、低周波でのイオンバランスの変動を示す電圧VdlをCPU91の第1バランス制御部912に出力する。第1バランス制御部912は、電圧Vdlの目標値である目標電圧Vtlを保持しており、電圧Vdlと目標電圧Vtlとの差に応じた電圧信号Vsを生成して、当該電圧信号Vsを第2バランス制御部96に出力する。ちなみに、目標電圧Vtlはゼロボルトに設定されている。つまり、除電装置1から放出されるマイナスイオンおよびプラスイオンそれぞれの量が等しくなって、アースEから除電装置1に流入する電荷がゼロとなる状態が目標状態となる。
【0069】
また、高応答検出回路95は、高周波でのイオンバランスの変動を示す電圧Vdhを第2バランス制御部96に出力する。これに対して、第2バランス制御部96は、電圧Vdhの目標値である目標電圧Vthを保持しており、電圧Vdhと目標電圧Vthとの差および電圧信号Vsに応じて電圧Vmをフィードバック制御するための制御信号である電圧信号Vimを生成して、当該電圧信号Vimを負極性高圧電源92の一次側回路921に出力する。ちなみに、目標電圧Vthは、ゼロボルトではなく、所定のオフセット電圧だけゼロからずれた電圧に設定されている。つまり、フロント金網115によるマイナスイオンの吸収のしやすさ、フロント金網115によるプラスイオンの吸収のしやすさとの間には差が存在する。そのため、それぞれ等しい量のマイナスイオンとプラスイオンとがフロント金網115に到達する目標状態において、電流Idhはゼロにならず、電圧VdhはグランドGの電圧(ゼロボルト)に対してオフセット電圧Vo(オフセット量)だけずれる。したがって、電圧Vdhの目標電圧Vthはオフセット電圧Voに設定されている。なお、オフセット電圧Voは、電極針Np、Nmの状態変化(摩耗等)によるプラスイオンとマイナスイオンとの発生比率の変化が反映される電圧信号Vsに応じて、第2バランス制御部96に設定される。
【0070】
こうして、電圧Vdlを目標電圧Vtlに向けて収束させるフィードバック制御と、電圧Vdhを目標電圧Vthに向けて収束させるフィードバック制御とが実行される。換言すれば、電流Idlを目標電流Itl(=Vtl/R97)に収束させるフィードバック制御と、電流Idhを目標電流Ith(=Vth/R95)に収束させるフィードバック制御が実行される。なお、このような制御を実行する第2バランス制御部96は、オペアンプ等のアナログ回路で構成されてもよいし、プロセッサ等のデジタル回路で構成されてもよい。
【0071】
また、電極ユニットコントローラ9は、電極針Np、Nmがコロナ放電を発生するために必要十分となる電圧Vp、Vmを電極針Np、Nmに印加するための制御を、リア金網125を用いて実行する。詳述すると、リア金網125はグランドGに短絡されているため、リア金網125に生じた電荷はリア金網125からグランドGに流れる。なお、リア金網125とグランドGとを電気的に接続する態様は短絡に限られず、抵抗を介してこれらを接続しても構わない。
【0072】
具体的には、電極針Nmとリア金網125との間のコロナ放電によって形成される回路に沿って、当該コロナ放電で発生した電荷に応じた電流Irnがリア金網125からグランドGに流れる。また、電極針Npとリア金網125との間のコロナ放電によって形成される回路に沿って、当該コロナ放電で発生した電荷に応じた電流Irpがリア金網125からグランドGに流れる。これに対して、負極性高圧電源92の二次側回路922がグランドGに接続され、正極性高圧電源93の二次側回路932がグランドGに接続される。したがって、リア金網125からグランドGに到達した電流Irnを主とする電流IgnはグランドGから二次側回路922に流れ、リア金網125からグランドGに到達した電流Irpを主とする電流IgpはグランドGから二次側回路932に流れる。
【0073】
また、電極ユニットコントローラ9は、正極性高圧電源93の二次側回路932とグランドGとの間に設けられた放電量検出回路97を有する。放電量検出回路97は、この二次側回路932とグランドGとを接続する検出抵抗R97を有する。したがって、グランドGから二次側回路932に向かう電流Igpは検出抵抗R97を流れる。その結果、検出抵抗R97と二次側回路932との間の検出点971には、電流Igpに応じた電圧Vgpが発生する。このように放電量検出回路97は、リア金網125からグランドGを介して正極性高圧電源93の二次側回路932に流れる電流Igpを検出抵抗R97によって電圧Vgpに変換する。換言すれば、放電量検出回路97は、電極針Npへの電圧Vpの印加に応じて発生したプラスイオンの量を示す電圧Vgpを検出する。
【0074】
放電量検出回路97は、検出した電圧VgpをCPU91の高電圧制御部911に出力する。高電圧制御部911は、電圧Vgpの目標値である目標電圧Vtpを保持しており、電圧Vgpと目標電圧Vtpとの差に応じて電圧Vpをフィードバック制御するための制御信号である電圧信号Vipを生成して、当該電圧信号Vipを正極性高圧電源93の一次側回路931に出力する。これによって、電圧Vgpを目標電圧Vtpに向けて収束させるフィードバック制御が実行される。その結果、目標電圧Vtpに応じた量のプラスイオンが電極針Npの周囲に発生する。なお、上述の通り、第2バランス制御部96等によってマイナスイオンおよびプラスイオンそれぞれの発生量をバランスさせるフィードバック制御が併せて実行される。そのため、電極針Npの周囲に発生するプラスイオンに追従するように、電極針Nmの周囲にマイナスイオンが発生する。その結果、目標電圧Vtpに応じた量のマイナスイオンが電極針Nmの周囲に発生する。かかる制御は、電極針Nm、Npの摩耗の進行に応じて、電極針Nm、Npに印加される電圧を上昇させて、電極針Nm、Npによるコロナ放電に応じて発生するマイナスイオン量およびプラスイオン量を一定に維持する。
【0075】
図11Bは
図10の動作で実行される電圧制御の一例を示すフローチャートである。ステップS201では、長期的にイオンバランスを制御するための目標電圧Vtlと、短期的にイオンバランスを制御するための目標電圧Vthとが、第1バランス制御部912および第2バランス制御部96によって取得される。そして、ステップS202では、低応答検出回路94により検出された電圧Vdlが第1バランス制御部912によって取得され、ステップS203では、高応答検出回路95によって検出された電圧Vdhが第2バランス制御部96によって取得される。そして、電圧Vdlが一定量変化した場合(ステップS204で「YES」の場合)には、第2バランス制御部96は、目標電圧Vtlと電圧Vdlとに基づくフィードバック制御と、目標電圧Vthと電圧Vdhとに基づくフィードバック制御とを実行して、電圧信号Vimを負極性高圧電源92に入力する(ステップS205)。一方。電圧Vdlが一定量変化していない場合(ステップS204で「NO」の場合)には、第2バランス制御部96は、目標電圧Vthと電圧Vdhとに基づくフィードバック制御を実行して、電圧信号Vimを負極性高圧電源92に入力する(ステップS206)。
【0076】
以上に説明する除電装置1では、プラスイオンおよびマイナスイオンを発生させる電極針Npおよび電極針Nm(イオン発生部)と、電極針Npおよび電極針Nmに電圧Vp(正極性高電圧)および電圧Vm(負極性高電圧)を印加する正極性高圧電源93および負極性高圧電源92(高電圧印加部)とが設けられる。そして、正極性高圧電源93が電極針Npに電圧Vpを印加すると、電極針Npの周囲にプラスイオンが発生し、負極性高圧電源92が電極針Nmに電圧Vmを印加すると、電極針Nmの周囲にマイナスイオンが発生する。また、接地電極Teを介してアースEと除電装置1との間に流れる電流Idl(第1イオン電流)が検出されて、電流Idlが目標電流Itl(第1目標値)になるように負極性高圧電源92に対してフィードバック制御が実行される。この電流Idlに基づくフィードバック制御によって、長期的なイオンバランスを適切に制御することができる。さらに、電極針Npおよび電極針Nmによって発生されたプラスイオンおよびマイナスイオンが到達する位置に、接地電極Teと異なる検知電極として機能するフロント金網115が配置されている。そして、このフロント金網115に到達したプラスイオンおよびマイナスイオンによって生じる電流Idh(第2イオン電流)が検出されて、電流Idhが目標電流Ith(第2目標値)になるように負極性高圧電源92に対してフィードバック制御が実行される。この電流Idhに基づくフィードバック制御によって、短期的なイオンバランスを適切に制御することができる。こうして長期的なイオンバランスと短期的なイオンバラスとの両方を適切に制御することが可能となっている。
【0077】
また、低応答検出回路94(第1検出回路)は、電流Idlが流れる検出抵抗R94(第1抵抗)を有し、電流Idlが流れることで検出抵抗R94に発生する電圧Vdl(第1電圧)に基づき電流Idlを検出する。また、高応答検出回路95(第2検出回路)は、電流Idhが流れる検出抵抗R95(第2抵抗)を有し、電流Idhが流れることで検出抵抗R95に発生する電圧Vdh(第2電圧)に基づき電流Idhを検出する。この際、検出抵抗R94の抵抗値は、検出抵抗R95の抵抗値より大きい。かかる構成では、検出抵抗R94の抵抗値が検出抵抗R95の抵抗値より大きいため、検出抵抗R94によって電流Idlを検出する系の応答性より、検出抵抗R95によって電流Idhを検出する系の応答性を高くすることができる。これによって、検出抵抗R94によって検出した電流Idlに基づき、長期的なイオンバランス(換言すれば、イオンバランスにおける低周波成分)を適切に制御できるとともに、検出抵抗R95によって検出した電流Idhに基づき、短期的なイオンバランス(換言すれば、イオンバランスにおける高周波成分)を適切に制御できる。
【0078】
また、送風方向Dwに流れる風を生成するファン33が具備されており、フロント金網115は、送風方向Dwにおいて電極針Npおよび電極針Nmの下流側に配置されている。かかる構成では、電極針Npおよび電極針Nmによって発生されたプラスイオンおよびマイナスイオンを、ファン33によって生成される送風方向Dwの風によって、フロント金網115に確実に到達させることができる。
【0079】
また、ファン33は、送風方向Dwにおいて電極針Np、Nmとフロント金網115との間に配置されている。かかる構成では、電極針Npおよび電極針Nmで発生されたプラスイオンとマイナスイオンとが、ファン33の攪拌により一様に分散した状態でフロント金網115に到達する。そのため、電流Idhを安定して検出することが可能となる。
【0080】
また、電流Idhの目標電流Ithは、所定のオフセット量(=Vo/R95)だけゼロからずれた値である。つまり、プラスイオンおよびマイナスイオンが同量ずつフロント金網115に到達した場合において、フロント金網115の特性に起因して、電流Idhの値がゼロとならずに、電流Idhは一定のオフセット量をする。そこで、このオフセット量を目標電流Ithとすることで、短期的なイオンバランスを適切に制御することができる。
【0081】
また、電圧Vpの印加に応じてコロナ放電を発生させる先端部を有する電極針Np(正極電極針)と、電圧Vmの印加に応じてコロナ放電を発生させる先端部を有する電極針Nm(負極電極針)とが設けられており、電極針Npによるコロナ放電によってプラスイオンが発生し、電極針Nmによるコロナ放電によってマイナスイオンが発生する。また、電極針Npに接続されて、電極針Npに電圧Vpを印加する正極性高圧電源93(正極性高電圧印加回路)と、電極針Nmに接続されて、電極針Nmに電圧Vmを印加する負極性高圧電源92(負極性高電圧印加回路)とが設けられている。かかる構成では、電極針Npによるコロナ放電によって発生するプラスイオンと、電極針Nmによるコロナ放電によって発生するマイナスイオンとのイオンバランスを長期的かつ短期的に適切に制御することができる。
【0082】
また、電極針Np(一方の電極針)がコロナ放電によって発生させるプラスイオンの量を示す電圧Vgpを検出する放電量検出回路97(イオン量検出部)が設けられている。そして、高電圧制御部911は、電極針Npに接続された正極性高圧電源93(一方の高電圧印加回路)が電極針Npに印加する電圧Vpに対して、放電量検出回路97によって検出された電圧Vgp(イオンの量)に基づくフィードバック制御を実行することで、電極針Npによって発生されるプラスイオンの量を所定量(目標電圧Vtpに応じた量)に収束させる。また、第2バランス制御部96(フィードバック制御部)は、低応答検出回路94によって検出される電流Idlが目標電流Itlになるように制御するフィードバック制御と、高応答検出回路95によって検出される電流Idhが目標電流Ithになるように制御するフィードバック制御とを、負極性高圧電源92(他方の高電圧印加回路)に対して実行する。かかる構成では、電極針Np、Nmの摩耗の進行によらず一定量のイオンを発生させるための制御が正極性高圧電源93に対して実行され、適切なイオンバランスを実現するための制御が負極性高圧電源92に対して実行される。こうして制御の内容に応じて、当該制御の対象を分けることで、制御の簡素化を図ることができる。
【0083】
以上に説明するように本実施形態では、除電装置1が本発明の「除電装置」の一例に相当し、フロント金網115が本発明の「検出電極」の一例に相当し、ファン33が本発明の「ファン」の一例に相当し、負極性高圧電源92および正極性高圧電源93が協働して本発明の「高電圧印加部」の一例にとして機能し、負極性高圧電源92が本発明の「負極性高電圧印加回路」の一例に相当し、正極性高圧電源93が本発明の「正極性高電圧印加回路」の一例に相当し、低応答検出回路94が本発明の「第1検出回路」の一例に相当し、高応答検出回路95が本発明の「第2検出回路」の一例に相当し、高電圧制御部911が本発明の「高電圧制御部」の一例に相当し、バランス制御部912および第2バランス制御部96が協働して本発明の「フィードバック制御部」の一例として機能し、放電量検出回路97が本発明の「イオン量検出部」の一例に相当し、送風方向Dwが本発明の「送風方向」の一例に相当し、アースEが本発明の「アース」の一例に相当し、接地電極Teが本発明の「接地電極」の一例に相当し、電流Idlが本発明の「第1イオン電流」の一例に相当し、電流Idhが本発明の「第2イオン電流」の一例に相当し、目標電流Itlが本発明の「第1目標値」の一例に相当し、目標電流Ithが本発明の「第2目標値」の一例に相当し、電極針Np、Nmが本発明の「イオン発生部」の一例に相当し、電極針Npが本発明の「正極電極針」の一例に相当し、電極針Nmが本発明の「負極電極針」の一例に相当し、検出抵抗R94が本発明の「第1抵抗」の一例に相当し、検出抵抗R95が本発明の「第2抵抗」の一例に相当し、電圧Vpが本発明の「正極性高電圧」の一例に相当し、
電圧Vmが本発明の「負極性高電圧」の一例に相当し、電圧Vdlが本発明の「第1電圧」の一例に相当し、電圧Vdhが本発明の「第2電圧」の一例に相当する。
【0084】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、第1ユニットフレーム51および第2ユニットフレーム61は円弧状である必要はなく、円形状であってよい。
【0085】
また、第1および第2ユニットフレーム51、61における電極針Nm、Npの配置態様を変更してもよい。例えば、第1および第2ユニットフレーム51、61の外壁512、612から外側に突出するように電極針Nm、Npを設けてもよい。
【0086】
また、電極針Nm、Npの個数あるいは配列態様を適宜変更してもよい。
【0087】
また、マイナス電極ユニット5とプラス電極ユニット6とのX方向への配列順序を逆転させてもよい。
【0088】
また、マイナス電極ユニット5およびプラス電極ユニット6に対して送風方向Dwの上流側にファンユニット3を配置してもよい。
【0089】
また、高電圧制御部911によって実行されるイオン発生量の制御の具体的内容は、上記の例に限られない。つまり、グランドGから負極性高圧電源92の二次側回路922に流れる電流Ignに基づき電圧Vmに対してフィードバック制御を実行することで、イオン発生量を制御してもよい。
【0090】
また、電極針Nm、Npの摩耗の進行によらず所定量のイオンを発生させるための制御(高電圧制御部911による制御)が、正極性高圧電源93に対して実行される一方、適切なイオンバランスを実現するための制御(第2バランス制御部96による制御)が、負極性高圧電源92に対して実行される。しかしながら、前者の制御を負極性高圧電源92に対して実行し、後者の制御を正極性高圧電源93に実行してもよい。
【0091】
また、それぞれ異なる直流電圧Vp、Vmが印加される2種類の電極針Npおよび電極針Nmが設けられて、電極針Npによりプラスイオンを発生させ、電極針Nmによりマイナスイオンを発生させている。しかしながら、電圧Vpと電圧Vmとの間で時間的に変動する交流電圧を1種類の電極針に印加することで生じるコロナ放電によって、プラスイオンおよびマイナスイオンを発生させてもよい。
【0092】
また、マイナス電極ユニット5およびプラス電極ユニット6を
図12に示すように構成してもよい。ここで、
図12はマイナス電極ユニットおよびプラス電極ユニットの変形例を模式的に示す斜視図である。
図12に示す変形例では、マイナス電極ユニット5は、Y方向に延設された平板形状を有する第1ユニットフレーム51を有し、第1ユニットフレーム51の後端面において複数の電極針NmがY方向に配列されている。各電極針Nmは、第1ユニットフレーム51の後端面からX方向の後側Xbに突出する。また、プラス電極ユニット6は、Y方向に延設された平板形状を有する第2ユニットフレーム61を有し、第2ユニットフレーム61の後端面において複数の電極針NpがY方向に配列されている。各電極針Npは、第2ユニットフレーム61の後端面からX方向の後側Xbに突出する。そして、電極針Nmおよび電極針Npは電圧の印加によってマイナスイオンとプラスイオンとを発生させる。これらマイナスイオンおよびプラスイオンは、X方向に平行な送風方向Dwへの風によって除電装置1から放出される。
【0093】
この変形例では、Y方向(針配列方向)に配列された複数の電極針Nm(第1電極針)を有するマイナス電極ユニット5(第1電極ユニット)と、Y方向に配列された複数の電極針Np(第2電極針)を有するプラス電極ユニット6とが具備される。このように電極針Nmおよび電極針Npがそれぞれ異なるマイナス電極ユニット5およびプラス電極ユニット6に設けられている。そのため、電極針Nmと電極針Npとの間の沿面距離は、電極針Nmからマイナス電極ユニット5およびプラス電極ユニット6を経由して電極針Npに至る経路の距離となる。これによって、沿面距離を広く確保することができる。また、マイナス電極ユニット5とプラス電極ユニット6とは、Z方向(ユニット配列方向)に並び、換言すれば、Z方向に隣り合う。したがって、マイナス電極ユニット5の電極針Nmとプラス電極ユニット6の電極針Npとの間の空間距離を抑えることができる。その結果、電極針Nmおよび電極針Npの間の沿面距離を確保して異常放電の発生を防止しつつ、電極針Nmと電極針Npとの間の空間距離を抑えてコロナ放電に要する電圧を抑えることで電極針Nmおよび電極針Npの摩耗の進行を抑制することが可能となっている。
【0094】
また、上記の除電装置1では、イオンバランスを長期的にフィードバック制御する系と、イオンバランスを短期的にフィードバック制御する系とが設けられている。このような2個のフィードバック制御系を実行する具体的な構成は、
図11Aの例に限られない。つまり、
図13に概念的に示す2個のフィードバック系を実現する任意の構成を採用できる。
【0095】
図13は長期的および短期的なフィードバックを行う2個の系を模式的に示す図である。イオン出力制御981によってイオンバランスが制御されたプラスイオンおよびマイナスイオンがハウジング2からフロントカバー11を介して外部の対象空間に放出される。そして、対象空間におけるイオンバランスを示す第1イオンバランス982が検出されて、当該第1イオンバランス982がフィードバックループ983によってイオン出力制御981にフィードバックされる。イオン出力制御981は、第1イオンバランス982を目標値に近づけるための長期的なフィードバック制御(すなわち、応答速度の低いフィードバック制御)を、イオン出力制御981から放出されるイオンバランスに対して実行する。
【0096】
また、第1イオンバランス982とは異なる位置(例えば、フロントカバー11の内側)におけるイオンバランスを示す第2イオンバランス984が検出されて、当該第2イオンバランス984がフィードバックループ985によってイオン出力制御981にフィードバックされる。イオン出力制御981は、第2イオンバランス984に基づく短期的なフィードバック制御(すなわち、応答速度の高いフィードバック制御)を、イオン出力制御981から放出されるイオンバランスに対して実行する。
【0097】
つまり、第1イオンバランス982に基づく第1フィードバック制御と、第2イオンバランス984に基づく第2フィードバック制御とが実行され、第2フィードバック制御の応答性は、第1フィードバック制御の応答性より高い。これによって、長期的および短期的にイオンバランスを適切に保つことができる。
【0098】
また、長期的なフィードバック制御を実行するために、
図14に示すイオンバランスセンサを用いてもよい。
図14はイオンバランスセンサの一例を示す斜視図である。
図14のイオンバランスセンサ99は、イオンバランスを検出するセンサプレート991と、センサプレート991によって検出されたイオンバランスに応じた電流(第1イオン電流)を出力する出力端子992とを有する。このイオンバランスセンサ99の少なくともセンサプレート991は、ハウジング2およびフロントカバー11で構成される除電装置1の装置本体の外部の外部検出位置に配置される。そして、外部検出位置でのイオンバランス(すなわち第1イオンバランス982)がセンサプレート991によって検出されて、出力端子992から第1イオン電流が出力される。出力端子992から出力された第1イオン電流は、フィードバックループ983によってイオン出力制御981にフィードバックされる。
【0099】
なお、
図11Aの電極ユニットコントローラ9に対してイオンバランスセンサ99を用いる場合には、イオンバランスセンサ99の出力端子992から出力される第1イオン電流は、例えば検出抵抗R94と並列に設けられた検出抵抗に入力されて、第1イオン電流はこの検出抵抗によって電圧に変換される。そして、第1イオン電流に応じた当該電圧が所定の目標電圧となるように(換言すれば、第1イオン電流が所定の目標電流となるように)、第1バランス制御部912および第2バランス制御部96によってフィードバック制御が実行される。なお、アースEからの電流Idlを変換した電圧Vdlはフィードバック制御に反映されず、無視される。つまり、第1バランス制御部912および第2バランス制御部96は、アースEからの電流Idlではなく、イオンバランスセンサ99が検出した第1イオン電流に基づき、長期的なフィードバック制御を実行する。かかる変形例では、イオンバランスセンサ99が本発明の「第1検出回路」の一例に相当する。
【産業上の利用可能性】
【0100】
この発明は、電極に電圧を印加することで発生したイオンを対象物に放出して対象物を除電する技術全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0101】
1…除電装置
115…フロント金網(検出電極)
33…ファン
Dw…送風方向
Nm…電極針(イオン発生部、負極電極針)
Np…電極針(イオン発生部、正極電極針)
Vm…電圧(負極性高電圧)
Vp…電圧(正極性高電圧)
92…負極性高圧電源(高電圧印加部、負極性高電圧印加回路)
911…高電圧制御部(高電圧制御部)
912…バランス制御部(フィードバック制御部)
E…アース
Te…接地電極
94…低応答検出回路(第1検出回路)
R94…検出抵抗(第1抵抗)
Idl…電流(第1イオン電流)
Vdl…電圧(第1電圧)
95…高応答検出回路(第2検出回路)
R95…検出抵抗(第2抵抗)
Idh…電流(第2イオン電流)
Vdh…電圧(第2電圧)
96…第2バランス制御部(フィードバック制御部)
Itl…目標電流(第1目標値)
Ith…目標電流(第2目標値)
97…放電量検出回路(イオン量検出部)