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特開2024-37635プロペラシャフトの組み付け方法及び空気抜き治具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037635
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】プロペラシャフトの組み付け方法及び空気抜き治具
(51)【国際特許分類】
   F16D 3/84 20060101AFI20240312BHJP
   F16J 3/04 20060101ALI20240312BHJP
   F16J 15/52 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
F16D3/84 R
F16D3/84 U
F16D3/84 Z
F16J3/04 C
F16J15/52 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142599
(22)【出願日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【弁理士】
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】向井 崇貴
【テーマコード(参考)】
3J043
3J045
【Fターム(参考)】
3J043AA03
3J043CB13
3J043DA09
3J043FA02
3J043FA04
3J043FB04
3J045AA14
3J045BA02
3J045CB14
3J045CB16
3J045CB25
3J045EA10
(57)【要約】
【課題】プロペラシャフトを被対象物に容易に組み付け可能なプロペラシャフトの組み付け方法を提供する。
【解決手段】等速ジョイント3は、ブーツ10を備え、ブーツ10が、バンド締結部15と、プロペラシャフト2の外周側を覆うブーツリップ部20と、バンド締結部15に設けられ、等速ジョイント3の内部と連通する通気路30とを有する。プロペラシャフトの組み付け方法は、前記被対象物にプロペラシャフト2を組み付けるのに先立って、プロペラシャフト2及びブーツリップ部20の間に挿入可能、かつブーツ10の外部及び通気路30を連通させることが可能な空気抜き治具1を準備し、前記被対象物にプロペラシャフト2を組み付ける際に、空気抜き治具1をブーツリップ部20の先端側から通気路30に到達するように挿入し、前記被対象物にプロペラシャフト2が組み付けられた後、空気抜き治具1が、ブーツ10から取り外されることを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
等速ジョイントが接続されたプロペラシャフトを被対象物に組み付けるプロペラシャフトの組み付け方法であって、
前記等速ジョイントは、前記プロペラシャフトの外周側を覆うブーツを備えており、
前記ブーツは、
外周側から締め付けることにより前記プロペラシャフトと締結するバンド締結部と、
前記プロペラシャフトの軸線方向に沿って延びるように形成されると共に、前記プロペラシャフトの外周側を覆うブーツリップ部と、
前記バンド締結部が設けられた位置において、前記プロペラシャフトの軸線方向に沿って形成されると共に、前記等速ジョイントの内部と連通する通気路と、
を有するものであり、
前記被対象物に前記プロペラシャフトを組み付けるのに先立って、前記プロペラシャフト及び前記ブーツリップ部の間に挿入可能、かつ前記ブーツの外部及び前記通気路を連通させることが可能な空気抜き治具を準備し、
前記被対象物に前記プロペラシャフトを組み付ける際に、前記空気抜き治具を前記ブーツリップ部の先端側から前記通気路に到達するように挿入し、前記被対象物に前記プロペラシャフトが組み付けられた後、前記空気抜き治具が、前記ブーツから取り外されること、を特徴とするプロペラシャフトの組み付け方法。
【請求項2】
等速ジョイントが接続されたプロペラシャフトを被対象物に組み付けるプロペラシャフトの組み付け方法であって、
前記等速ジョイントは、前記プロペラシャフトの外周側を覆うブーツを備えており、
前記ブーツは、
外周側から締め付けることにより前記プロペラシャフトと締結するバンド締結部と、
前記プロペラシャフトの軸線方向に沿って延びるように形成されると共に、前記プロペラシャフトの外周側を覆うブーツリップ部と、
前記バンド締結部及び前記ブーツリップ部に対して前記軸線方向の中間に形成された中間部と、
前記バンド締結部が設けられた位置において、前記プロペラシャフトの軸線方向に沿って形成されると共に、前記等速ジョイントの内部に連通する通気路と、
を有するものであり、
前記中間部の内壁に、前記プロペラシャフトの外周に沿って、前記通気路と連通する周溝が形成されており、
前記被対象物に前記プロペラシャフトを組み付けるに先立って、前記プロペラシャフト及び前記ブーツリップ部の間に挿入可能、かつ前記ブーツの外部及び前記中間部を連通させることが可能な空気抜き治具を準備し、
前記被対象物に前記プロペラシャフトを組み付ける際に、前記空気抜き治具を前記ブーツリップ部の先端側から前記中間部に到達するように挿入し、前記被対象物に前記プロペラシャフトが組み付けられた後、前記空気抜き治具が、前記ブーツから取り外されること、を特徴とするプロペラシャフトの組み付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロペラシャフトの組み付け方法及び空気抜き治具に関する。さらに詳しくは、プロペラシャフトを車両等の被対象物に組み付ける組み付け方法、及びプロペラシャフトの組み付けに用いられる空気抜き治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の車両にプロペラシャフトが用いられている。前記プロペラシャフトは、FR(Front engine Rear drive)方式の後輪駆動車や、フルタイム4WDやパートタイム4WD等の四輪駆動車等に用いられている。前記プロペラシャフトは、例えば前方側のエンジン等からの駆動力を後方側の駆動輪(後輪)に伝達するものとして利用されている。ここで、前記プロペラシャフトは、エンジンから駆動輪に亘ってシャフトが到達するように複数のシャフトを等速ジョイントで連結することで延長されている。また、等速ジョイントは、シャフト間の相対的な移動を吸収するものとされている(例えば、特許文献1)。
【0003】
前記等速ジョイントは、内部のグリスが外部に漏れることを抑制しつつ、外部からの異物の侵入を抑制するために、シール部材としてのブーツが設けられている。ここで、前記ブーツは、気密性を高めた場合、等速ジョイントをプロペラシャフトに組み付ける際に、等速ジョイント内部の内圧が高まって抵抗となり組み付けが困難となる問題があった。
【0004】
また、前記ブーツは、プロペラシャフトの回転に伴って等速ジョイントの内圧が高まることで変形する問題があった。そのため、上記特許文献1に記載の等速ジョイントは、等速ジョイントの内圧の高まりを抑制するため、等速ジョイント内部の膨張した空気を外部に漏洩させる通気路が形成されている。前記通気路は、ブーツにおける締付バンドの締結部(装着部に相当)の内壁に通気溝として形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平7-44969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の等速ジョイントは、ブーツリップを採用した場合に、ブーツリップの先端部がプロペラシャフトと密接することによって、気密性が高まるため、内圧の高まりを抑制できなくなる懸念があった。したがって、プロペラシャフトを車両等の被対象物に組み付ける際に、ブーツの内圧が高まり、組み付け抵抗が増大する懸念があった。そのため、プロペラシャフトの組み付けに時間を要し、組立コストの増大に繋がる懸念があった。
【0007】
そこで、本発明は、プロペラシャフトを被対象物に容易に組み付けることが可能なプロペラシャフトの組み付け方法を提供することを目的とする。また、本発明は、プロペラシャフトを被対象物に組み付ける際に、等速ジョイントにおけるブーツ内部の空気を抜くことが可能な空気抜き治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上述した課題を解決すべく提供される本発明のプロペラシャフトの組み付け方法は、等速ジョイントが接続されたプロペラシャフトを被対象物に組み付けるプロペラシャフトの組み付け方法であって、前記等速ジョイントは、前記プロペラシャフトの外周側を覆うブーツを備えており、前記ブーツは、外周側から締め付けることにより前記プロペラシャフトと締結するバンド締結部と、前記プロペラシャフトの軸線方向に沿って延びるように形成されると共に、前記プロペラシャフトの外周側を覆うブーツリップ部と、前記バンド締結部が設けられた位置において、前記プロペラシャフトの軸線方向に沿って形成されると共に、前記等速ジョイントの内部と連通する通気路と、を有するものであり、前記被対象物に前記プロペラシャフトを組み付けるのに先立って、前記プロペラシャフト及び前記ブーツリップ部の間に挿入可能、かつ前記ブーツの外部及び前記通気路を連通させることが可能な空気抜き治具を準備し、前記被対象物に前記プロペラシャフトを組み付ける際に、前記空気抜き治具を前記ブーツリップ部の先端側から前記通気路に到達するように挿入し、前記被対象物に前記プロペラシャフトが組み付けられた後、前記空気抜き治具が、前記ブーツから取り外されること、を特徴とするものである。
【0009】
上述したプロペラシャフトの組み付け方法は、被対象物にプロペラシャフトを組み付ける際に、空気抜き治具をブーツリップ部の先端側から通気路に到達するように挿入するものとされている。また、前記空気抜き治具は、ブーツリップ部の間に挿入可能、かつブーツの外部及び通気路を連通させることが可能なものとされている。したがって、上述したプロペラシャフトの組み付け方法は、プロペラシャフトを組み付ける際に、ブーツの内部の空気を外部に排気(漏洩)できる。これにより、上述したプロペラシャフトの組み付け方法は、プロペラシャフトを組み付ける際に、ブーツの内圧が高まることを抑制できる。また、上述したプロペラシャフトの組み付け方法によれば、プロペラシャフトを組み付ける際の抵抗が低減されるので、組立性の向上及び組立コストの低減が期待できる。ここで、被対象物は、駆動源による動力を、プロペラシャフトを介して伝達する各種の移動体や装置などに利用できる。例えば、被対象物は、自動車等の車両に好ましく利用できる。
【0010】
また、上述したプロペラシャフトの組み付け方法は、被対象物にプロペラシャフトが組み付けられた後、空気抜き治具が、ブーツリップ部(ブーツ)から取り外されるものとされている。ここで、ブーツリップ部(ブーツ)は、ゴムや樹脂などの弾性部材で形成されているので、空気抜き治具が、ブーツリップ部から取り外されると、ブーツリップ部が弾性力により、プロペラシャフトと当接する。これにより、等速ジョイント内の気密性が保たれる。したがって、上述したプロペラシャフトの組み付け方法は、プロペラシャフトの組み付け後に、通気路が外部と遮断されるので、ブーツリップ部からブーツ内部に異物が侵入することを抑制できる。これにより、プロペラシャフトや等速ジョイントの寿命向上が期待できる。
【0011】
(2)上述した課題を解決すべく提供される本発明のプロペラシャフトの組み付け方法は、等速ジョイントが接続されたプロペラシャフトを被対象物に組み付けるプロペラシャフトの組み付け方法であって、前記等速ジョイントは、前記プロペラシャフトの外周側を覆うブーツを備えており、前記ブーツは、外周側から締め付けることにより前記プロペラシャフトと締結するバンド締結部と、前記プロペラシャフトの軸線方向に沿って延びるように形成されると共に、前記プロペラシャフトの外周側を覆うブーツリップ部と、前記バンド締結部及び前記ブーツリップ部に対して前記軸線方向の中間に形成された中間部と、前記バンド締結部が設けられた位置において、前記プロペラシャフトの軸線方向に沿って形成されると共に、前記等速ジョイントの内部と連通する通気路と、を有するものであり、前記中間部の内壁に、前記プロペラシャフトの外周に沿って、前記通気路と連通する周溝が形成されており、前記被対象物に前記プロペラシャフトを組み付けるに先立って、前記プロペラシャフト及び前記ブーツリップ部の間に挿入可能、かつ前記ブーツの外部及び前記中間部を連通させることが可能な空気抜き治具を準備し、前記被対象物に前記プロペラシャフトを組み付ける際に、前記空気抜き治具を前記ブーツリップ部の先端側から前記中間部に到達するように挿入し、前記被対象物に前記プロペラシャフトが組み付けられた後、前記空気抜き治具が、前記ブーツから取り外されること、を特徴とするものである。
【0012】
上述したプロペラシャフトの組み付け方法は、被対象物にプロペラシャフトを組み付ける際に、空気抜き治具をブーツリップ部の先端側から中間部(周溝)に到達するように挿入するものとされている。ここで、中間部25(周溝32)は、周方向に形成されており、通気路30と連通するものとされている。そのため、空気抜き治具200は、通気路30が形成されている位置を問わず、ブーツリップ部20の周方向のいずれかの位置から挿入すればよい。これにより、プロペラシャフト2の組付性が向上する。また、前記空気抜き治具は、ブーツリップ部の間に挿入可能、かつブーツの外部及び中間部を連通させることが可能なものとされている。したがって、上述したプロペラシャフトの組み付け方法は、プロペラシャフトを組み付ける際に、ブーツの内部の空気を外部に排気(漏洩)できる。これにより、上述したプロペラシャフトの組み付け方法は、プロペラシャフトを組み付ける際に、ブーツの内圧が高まることを抑制できる。また、上述したプロペラシャフトの組み付け方法によれば、プロペラシャフトを組み付ける際の抵抗が低減されるので、組立性の向上及び組立コストの低減が期待できる。
【0013】
また、上述したプロペラシャフトの組み付け方法は、ブーツにおける中間部が、プロペラシャフトの外周に沿って周溝として形成されているので、ブーツがプロペラシャフトの軸線方向に延びることを抑制できる。これにより、等速ジョイントの小型化が期待できる。また、上述したプロペラシャフトの組み付け方法は、中間部の周溝を起点として、ブーツリップ部の先端側を、空気抜き治具の挿入に伴って弾性変形させることができる。これにより、空気抜き治具の脱着が容易となる。ここで、被対象物は、駆動源による動力を、プロペラシャフトを介して伝達する各種の移動体や装置などに利用できる。例えば、被対象物は、自動車等の車両に好ましく利用できる。
【0014】
また、上述したプロペラシャフトの組み付け方法は、被対象物にプロペラシャフトが組み付けられた後、空気抜き治具が、ブーツリップ部(ブーツ)から取り外されるものとされている。ここで、ブーツリップ部(ブーツ)は、ゴムや樹脂などの弾性部材で形成されているので、空気抜き治具が、ブーツリップ部から取り外されると、ブーツリップ部が弾性力により、プロペラシャフトと当接する。これにより、等速ジョイント内の気密性が保たれる。したがって、上述したプロペラシャフトの組み付け方法は、プロペラシャフトの組み付け後に、通気路が外部と遮断されるので、ブーツリップ部からブーツ内部に異物が侵入することを抑制できる。これにより、プロペラシャフトや等速ジョイントの寿命向上が期待できる。
【0015】
(3)上述した本発明のプロペラシャフトの組み付け方法は、前記空気抜き治具により形成される空気抜き通路が、前記空気抜き治具の挿入方向における先端側から基端側に向かうにつれ拡径する通路であること、を特徴とするとよい。
【0016】
上述したプロペラシャフトの組み付け方法は、かかる構成とすることにより、空気抜き通路を流れる空気を狭径な先端側(内部側)から、拡径された基端側(外部側)に向けて円滑に排気(漏洩)できる。
【0017】
(4)上述した本発明のプロペラシャフトの組み付け方法は、前記空気抜き治具が、前記ブーツリップ部の径方向外側に向けて突出する把持部を有していること、を特徴とするとよい。
【0018】
上述したプロペラシャフトの組み付け方法は、空気抜き治具が把持部を有しているので、当該把持部を掴んで空気抜き治具をブーツに対して容易に脱着することができる。これにより、プロペラシャフトを被対象物に組み付ける際の組立性の向上が期待できる。
【0019】
(5)上述した本発明のプロペラシャフトの組み付け方法は、前記空気抜き治具が、前記ブーツリップ部の径方向外側に向けて突出する把持部を有しており、前記把持部は、前記空気抜き治具を前記ブーツリップ部の先端側から挿入するのに伴って、前記空気抜き治具の先端側が、前記通気路に到達することを条件として、前記ブーツリップ部の先端側に係止されるものであること、を特徴とするとよい。
【0020】
上述したプロペラシャフトの組み付け方法は、かかる構成とすることにより、空気抜き治具における把持部をストッパとして機能させることができる。したがって、上述したプロペラシャフトの組み付け方法は、空気抜き治具を正確に通気路に到達させることができる。また、上述したプロペラシャフトの組み付け方法は、空気抜き治具が必要以上にブーツリップ部に挿入されることを抑制できるので、ブーツの破損や変形を抑制できる。
【0021】
(6)上述した本発明のプロペラシャフトの組み付け方法は、前記空気抜き治具が、前記ブーツリップ部の径方向外側に向けて突出する把持部を有しており、前記把持部は、前記空気抜き治具を前記ブーツリップ部の先端側から挿入するのに伴って、前記空気抜き治具の先端側が、前記中間部に到達することを条件として、前記ブーツリップ部の先端側に係止されるものであること、を特徴とするとよい。
【0022】
上述したプロペラシャフトの組み付け方法は、かかる構成とすることにより、空気抜き治具における把持部をストッパとして機能させることができる。したがって、上述したプロペラシャフトの組み付け方法は、空気抜き治具を正確に中間部に到達させることができる。また、上述したプロペラシャフトの組み付け方法は、空気抜き治具が必要以上にブーツリップ部に挿入されることを抑制できるので、ブーツの破損や変形を抑制できる。
【0023】
(7)上述した課題を解決すべく提供される本発明の空気抜き治具は、上述したプロペラシャフトの組み付け方法に用いられる空気抜き治具であり、先端側から基端側に向かうにつれ拡径された筒状部材を備え、前記筒状部材は、前記ブーツリップ部の先端側から前記通気路に到達する長さに形成されていること、を特徴とするものである。
【0024】
上述した空気抜き治具は、かかる構成とすることにより、必要以上に挿入されることを抑制できるので、ブーツの破損や変形を抑制できる。また、上述した空気抜き治具は、ブーツリップ部に挿入した際に確実に通気路に到達させることができるので、プロペラシャフトを組み付ける際の組立性向上が期待できる。ここで、筒状部材は、円形や多角形など各種の形状の筒体として形成できる。
【0025】
(8)上述した解決すべく提供される本発明の空気抜き治具は、上述したプロペラシャフトの組み付け方法に用いられる空気抜き治具であり、先端側から基端側に向かうにつれ拡径された筒状部材を備え、前記筒状部材は、前記ブーツリップ部の先端側から前記中間部に到達する長さに形成されていること、を特徴とするものである。
【0026】
上述した空気抜き治具は、かかる構成とすることにより、必要以上に挿入されることを抑制できるので、ブーツの破損や変形を抑制できる。また、上述した空気抜き治具は、ブーツリップ部に挿入した際に確実に中間部(周溝)に到達させることができるので、プロペラシャフトを組み付ける際の組立性向上が期待できる。ここで、筒状部材は、円形や多角形など各種の形状の筒体として形成できる。
【0027】
(9)上述した本発明の空気抜き治具は、前記筒状部材における外周の少なくとも一部が、前記プロペラシャフトに沿って開放されていること、を特徴とするとよい。
【0028】
上述した空気抜き治具は、かかる構成とすることにより、形成を容易に行うことができる。例えば、上述した空気抜き治具は、円形や多角形で形成された柱状部材をプロペラシャフトに沿う軸線方向に切削等して溝を形成することで作製できる。これにより、上述した空気抜き治具における製造コストの低減が期待できる。
【0029】
(10)上述した本発明の空気抜き治具は、前記筒状部材が、前記ブーツリップ部の径方向外側に向けて突出する把持部を有していること、を特徴とするとよい。
【0030】
上述した空気抜き治具は、把持部を有しているので、当該把持部を掴んで空気抜き治具をブーツに対して容易に脱着することができる。これにより、プロペラシャフトを被対象物に組み付ける際の組立性の向上が期待できる。
【0031】
(11)上述した本発明の空気抜き治具は、前記筒状部材が、前記ブーツリップ部の径方向外側に向けて突出する把持部を有しており、前記把持部は、前記空気抜き治具を前記ブーツリップ部の先端側から挿入するのに伴って、前記空気抜き治具の先端側が、前記通気路に到達することを条件として、前記ブーツリップ部の先端側に係止されるものであること、を特徴とするとよい。
【0032】
上述した空気抜き治具は、かかる構成とすることにより、把持部をストッパとして機能させることができる。したがって、上述した空気抜き治具は、正確に通気路に到達させることができる。また、上述した空気抜き治具は、必要以上にブーツリップ部に挿入されることを抑制できるので、ブーツの破損や変形を抑制できる。
【0033】
(12)上述した本発明の空気抜き治具は、前記筒状部材が、前記ブーツリップ部の径方向外側に向けて突出する把持部を有しており、前記把持部は、前記空気抜き治具を前記ブーツリップ部の先端側から挿入するのに伴って、前記空気抜き治具の先端側が、前記中間部に到達することを条件として、前記ブーツリップ部の先端側に係止されるものであることを特徴とするとよい。
【0034】
上述した空気抜き治具は、かかる構成とすることにより、把持部をストッパとして機能させることができる。したがって、上述した空気抜き治具は、正確に中間部に到達させることができる。また、上述した空気抜き治具は、必要以上にブーツリップ部に挿入されることを抑制できるので、ブーツの破損や変形を抑制できる。
【発明の効果】
【0035】
本発明は、プロペラシャフトを被対象物に容易に組み付けることが可能なプロペラシャフトの組み付け方法を提供することができる。また、本発明は、プロペラシャフトを被対象物に組み付ける際に、等速ジョイントにおけるブーツ内部の空気を抜くことが可能な空気抜き治具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明のプロペラシャフトの組み付け方法に利用されるプロペラシャフト及び等速ジョイントの一部切欠き全体図である。
図2】本発明の一実施形態に係る空気抜き治具、並びに本発明のプロペラシャフトの組み付け方法に利用されるプロペラシャフト及び等速ジョイントの断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る空気抜き治具が等速ジョイントにおけるブーツリップ部に挿入された状態を表す断面図である。
図4】(a)は、図3の概略断面図であり、(b)は、(a)のA-A方向矢視図である。
図5】(a)は、本発明の第1変形例に係る概略断面図であり、(b)は、本発明の第2変形例に係る概略断面図である。
図6】(a)は、本発明の第3変形例に係る空気抜き治具の斜視図であり、(b)は、第3変形例に係る空気抜き治具がブーツリップ部に挿入された状態を表す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の一実施形態に係るプロペラシャフトの組み付け方法ついて、図1図4を参照しながら以下に詳細を説明する。本実施形態では、ブーツ10を備える等速ジョイント3がプロペラシャフト2に接続されている場合を例として説明する。また、本実施形態では、プロペラシャフト2が、被対象物としての四輪駆動車(車両)に組み付けられる場合を例として説明する。なお、各図において、実際の大きさと異なる場合があることに留意されたい。また、図1においては、プロペラシャフト2に接続されるトランスファや駆動輪等は、省略していることに留意されたい。
【0038】
まず、プロペラシャフトの組み付け方法の説明に先立ち、プロペラシャフト2及び等速ジョイント3の構成について説明する。
【0039】
図1に示すように、プロペラシャフト2は、トランスファ側の第1プロペラシャフト2A(インタミディエイトシャフト2Aとも称する)と、駆動輪側の第2プロペラシャフト2Bとに分割形成されている。第1プロペラシャフト2Aは、第2ジョイント3(等速ジョイント3とも称する)を介して第2プロペラシャフト2Bと接続されている。なお、第1プロペラシャフト2A及び第2プロペラシャフト2Bは、プロペラシャフト2と総称することがある。
【0040】
第1プロペラシャフト2Aは、第1ジョイント4を介してトランスファに接続されている。第1ジョイント4は、トランスファから出力される動力を第1プロペラシャフト2Aに伝達するものとされている。したがって、トランスファから出力された動力は、第1ジョイント4を介して第1プロペラシャフト2Aに伝達される。
【0041】
等速ジョイント3は、第1プロペラシャフト2Aに伝達された動力を等速で第2プロペラシャフト2Bに伝達するものとされている。したがって、第1プロペラシャフト2Aに伝達された動力は、等速ジョイント3を介して第2プロペラシャフト2Bに伝達される。また、等速ジョイント3は、第1プロペラシャフト2Aと第2プロペラシャフト2Bとの相対的な移動(角度変化)を吸収するものとされている。等速ジョイント3は、後端側にジョイントカップ40(図2参照)を備えている。
【0042】
ジョイントカップ40には、第2プロペラシャフト2Bが接続されている。ジョイントカップ40は、前端側に第1プロペラシャフト2Aが接続され、後端側に第2プロペラシャフト2Bが接続されている。
【0043】
第2プロペラシャフト2Bには、等速ジョイント3を介して第1プロペラシャフト2Aの動力(回転)が伝達される。第2プロペラシャフト2Bには、ダイナミックダンパ43が設けられている。ダイナミックダンパ43は、第2プロペラシャフト2Bの共振を抑制するものとされている。また、第2プロペラシャフト2Bは、後端側に第3ジョイント5が接続されている。
【0044】
第3ジョイント5は、駆動輪(後輪)のデファレンシャルギヤ(図示せず)に接続されている。したがって、第2プロペラシャフト2Bに伝達された動力は、第3ジョイント5及びデファレンシャルギヤを介して駆動輪に伝達される。
【0045】
等速ジョイント3は、図2に示すように、ブーツ10を備えている。ブーツ10は、例えば、ゴム等の弾性を有する部材で略円筒状に形成されており、中心に第1プロペラシャフト2A(プロペラシャフト2)が挿し通されている。言い換えると、第1プロペラシャフト2Aの外周側を覆うようにブーツ10が設けられている。ブーツ10は、バンド締結部15、ブーツリップ部20、中間部25、及び通気路30等を備えている。
【0046】
バンド締結部15は、ブーツ10における後端側(基端側)に位置している。バンド締結部15は、バンド42でブーツ10を外周側から締め付けることによりプロペラシャフト2と締結することができる。ここで、バンド42は、例えば、樹脂や金属を素材として円環状に形成されており、かしめ若しくはネジ等で締め付けることにより、縮径されるものとされている。
【0047】
また、バンド締結部15は、後端側にテーパ状に拡径されたブーツ内筒部16を備えている。ブーツ内筒部16の後端側には、前方側に向けて屈曲された屈曲部17が形成されている。屈曲部17は、ジョイントカップ40の前面に位置している。また、屈曲部17で前方側に折り返された前端側(先端側)には、ブーツ外筒部18が形成されている。ブーツ外筒部18は、ジョイントカップ40の外筒に係止されている。これにより、ブーツ10は、第1プロペラシャフト2A(プロペラシャフト2)と、等速ジョイント3の内部との間のグリスが、外部に漏れ出すことを抑制している。
【0048】
ブーツリップ部20は、ブーツ10として一体的に形成されている。ブーツリップ部20は、第1プロペラシャフト2A(プロペラシャフト2)の軸線方向に沿って延びるように形成されると共に、第1プロペラシャフト2Aの外周側を覆うものとされている。ブーツリップ部20は、先端側がリップ状に形成されており、適度な弾性により、内径方向に弾性変形し、内周面が、第1プロペラシャフト2Aに当接するものとされている。これにより、ブーツ10によるシール性(気密性)が高められる。詳細は後述するが、ブーツリップ部20の外周側において、通気路30が設けられる位置には、マーキング(図示せず)が施されている。前記マーキングは、後述する空気抜き治具1を挿入する際の目印とされるものである。
【0049】
中間部25は、図2及び図3に示すように、ブーツ10として一体的に形成されている。中間部25は、プロペラシャフト2の軸線方向に沿って形成されると共に、バンド締結部15及びブーツリップ部20に対して前記軸線方向の中間に形成されている。中間部25の内壁には、周溝32が形成されている。
【0050】
周溝32は、中間部25が設けられた位置に形成されている。周溝32は、中間部25の内壁に、第1プロペラシャフト2Aの外周に沿って形成されている。すなわち、周溝32は、第1プロペラシャフト2Aの外周周りに円環状に形成されている。周溝32は、通気路30と連通している。したがって、周溝32は、通気路30として機能する。また、周溝32は、中間部25における径方向の厚みを薄くすることにより、中間部25の剛性を下げるものとされている。これにより、周溝32は、ブーツリップ部20の先端側を、周溝32を起点に内径方向に弾性変形させることができる。
【0051】
このように、本実施形態では、周溝32が、中間部25の内壁の周方向に沿って形成されているので、中間部25がプロペラシャフト2の軸線方向に延びることを抑制できる。したがって、ブーツ10の小型化が期待できる。また、周溝32は、ブーツリップ部20の先端側を、周溝32を起点に内径方向に弾性変形させることができるので、ブーツリップ部20の先端側を、第1プロペラシャフト2Aに当接させることができる。これにより、ブーツ10は、ブーツリップ部20の先端側から、等速ジョイント3の内部に異物等が侵入することを効果的に抑制すると共に、等速ジョイント3の内部側から外部にグリスが漏出することを抑制するものとされている。
【0052】
通気路30は、バンド締結部15が設けられた位置において、第1プロペラシャフト2Aの軸線方向に沿って形成されている。また、通気路30は、バンド締結部15の基端側から先端側に亘って形成されている。通気路30は、例えば筒状に形成され、等速ジョイント3の内部と中間部25とを連通させている。通気路30は、バンド42でバンド締結部15を締め付けた場合において、通気が可能な程度(例えば、2mm径)に縮径される。また、通気路30は、バンド締結部15の周方向において所定角度(本実施形態では、上方側90度方向)に配されている。なお、通気路30は、バンド42により締め付けた際に、中間部25と連通する程度の径に形成すればよい。これにより、バンド42により締め付けた場合であっても、通気路30による通気が確保できる。
【0053】
次に、プロペラシャフト2を車両(被対象物)に組み付ける際に用いられる本発明の空気抜き治具1についての詳細を説明する。
【0054】
図2及び図3に示すように、空気抜き治具1は、筒状部材50、空気抜き通路51、及び把持部52等を備える。空気抜き治具1は、車両にプロペラシャフト2を組み付けるのに先立って、プロペラシャフト2及びブーツリップ部20の間に挿入可能なものとされている。なお、以下では、空気抜き治具1をプロペラシャフト2及びブーツリップ部20の間に挿入した状態を、単に、挿入状態と称することがある。また、空気抜き治具1は、ブーツ10の外部及び通気路30を連通させることが可能なものとされている。詳細は後述するが、空気抜き治具1は、プロペラシャフト2を車両に組み付ける際に挿入状態とされるものであり、組み付けが完了した際にブーツ10から取り外される(抜去される)ものとされている。
【0055】
図3及び図4は、空気抜き治具1をブーツリップ部20の先端側から挿入した状態を表す断面図である。筒状部材50は、軸線方向から見た断面が円形状に形成されており(図4(b)参照)、空気抜き治具1の挿入方向における先端側から基端側に向かうにつれ拡径するように形成されている。空気抜き治具1の拡径の度合いは、適宜変更可能であるが、例えば、空気抜き治具1の先端側を2mm径程度に形成し、基端側を5mm径程度に形成するとよい。これにより、空気抜き治具1は、ブーツリップ部20の先端側を適度に持ち上げて開口させることができる。また、空気抜き治具1は、先端側が、基端側に比べて縮径されているので、円滑にプロペラシャフト2及びブーツリップ部20の間に挿入できる。
【0056】
また、本実施形態では、図3及び図4(a)に示すように、筒状部材50が、ブーツリップ部20の先端側から通気路30に到達可能な長さに形成されている。これにより、空気抜き治具1は、筒状部材50が必要以上に挿入されることを抑制できるので、ブーツ10の破損や変形を抑制できる。また、空気抜き治具1は、ブーツリップ部20に挿入した際に確実に通気路30に到達させることができるので、プロペラシャフト2を組み付ける際の組立性向上が期待できる。筒状部材50は、円形のものだけではなく、多角形など各種の形状の筒体として形成できる。
【0057】
また、筒状部材50の内部には、当該筒状部材50の外形に沿うように空気抜き通路51が形成されている。
【0058】
空気抜き通路51は、筒状部材50の先端側から基端側に亘って延びるように形成されている。また、空気抜き通路51は、筒状部材50の先端側と基端側とが連通されている。したがって、空気抜き通路51は、空気抜き治具1の挿入状態において、ブーツ10(等速ジョイント3)の内部側と、外部側とを連通させることができる。これにより、上述した空気抜き通路51は、当該空気抜き通路51を流れる空気を狭径な先端側(内部側)から、拡径された基端側(外部側)に向けて円滑に排気(漏洩)できる。
【0059】
把持部52は、筒状部材50の基端側(拡径側)に設けられている。把持部52は、空気抜き治具1の挿入状態において、ブーツリップ部20の径方向外側に向けて突出するように形成されている。本実施形態では、把持部52が板状部材で形成されており、空気抜き通路51を外部と連通させるための開口52Aが形成されている。把持部52は、空気抜き治具1を挿入したり、取り外したりする場合に、作業者が空気抜き治具1を保持しやすくするために設けられている。把持部52は、各種の形状に形成することが可能である。
【0060】
このように、上述した空気抜き治具1は、把持部52を有しているので、当該把持部52を掴んで空気抜き治具1をブーツ10に対して容易に脱着することができる。これにより、プロペラシャフト2を車両(被対象物)に組み付ける際の組立性の向上が期待できる。
【0061】
以上が、本発明の空気抜き治具1、並びに本発明のプロペラシャフトの組み付け方法が適用されるプロペラシャフト2及び等速ジョイント3の構成であり、次に本発明のプロペラシャフトの組み付け方法及びその作用効果についての詳細を説明する。
【0062】
図2に示すように、プロペラシャフト2を車両に組み付けるにあたって、プロペラシャフト2及びブーツリップ部20の間に空気抜き治具1が挿入される。このとき、作業者は、ブーツリップ部20の外周に施されたマーキング(図示せず)の位置を目印として空気抜き治具1を挿入する。すなわち、マーキングは、通気路30が形成されている周方向の位置に施されているため、作業者がマーキングを目印に空気抜き治具1を挿入することで、空気抜き通路51を確実に通気路30に連通させることができる。なお、マーキングは必要に応じて設ければよい。
【0063】
図3及び図4(a)に示すように、空気抜き治具1は、先端側が通気路30に到達するまで挿入される。これにより、空気抜き通路51が、通気路30と連通し、ブーツ10の内部側と外部側とが連通する。すなわち、ブーツ10の内部側の空気が、通気路30及び空気抜き通路51を介して、ブーツ10の外部側に排気(漏洩)される。これにより、上述したプロペラシャフトの組み付け方法は、プロペラシャフト2を組み付ける際に、ブーツ10(等速ジョイント3)の内圧が高まることを抑制できる。また、上述したプロペラシャフトの組み付け方法によれば、プロペラシャフト2を組み付ける際の抵抗が低減されるので、組立性の向上及び組立コストの低減が期待できる。
【0064】
車両(被対象物)へのプロペラシャフト2の組み付けが完了すると、空気抜き治具1が、ブーツ10から取り外される。
【0065】
このように、上述したプロペラシャフトの組み付け方法では、車両(被対象物)にプロペラシャフト2が組み付けられた後、空気抜き治具1が、ブーツリップ部20(ブーツ10)から取り外されるものとされている。ここで、ブーツリップ部20(ブーツ10)は、例えばゴムや樹脂などの弾性部材で形成されているので、空気抜き治具1が、ブーツリップ部20から取り外されると、ブーツリップ部20が弾性力により、プロペラシャフト2と当接する。これにより、等速ジョイント3内の気密性が保たれる。したがって、上述したプロペラシャフトの組み付け方法は、プロペラシャフト2の組み付け後に、通気路30が外部と遮断されるので、ブーツリップ部20からブーツ10内部に異物が侵入することを抑制できる。これにより、プロペラシャフト2や等速ジョイント3の寿命向上が期待できる。
【0066】
また、上述したプロペラシャフトの組み付け方法においては、中間部25の周溝32を起点として、ブーツリップ部20の先端側を、空気抜き治具1の挿入に伴って弾性変形させることができる。これにより、空気抜き治具1の脱着が容易となる。
【0067】
以上が、本発明のプロペラシャフトの組み付け方法及びその作用効果であり、次に本発明の第1変形例~第3変形例に係る空気抜き治具100,200,300、及びプロペラシャフトの組み付け方法について、以下に説明する。
【0068】
≪第1変形例≫
本発明の第1変形例に係る空気抜き治具100、及び空気抜き治具100を用いたプロペラシャフトの組み付け方法について、図5(a)を参照しつつ以下に説明する。なお、第1変形例に係る空気抜き治具100は、把持部52が設けられる位置及び筒状部材50の長さ以外の構成が上述した実施形態と同様であるので、同様部分の詳細な説明は省略する。また、上述した実施形態と同一の部材については、同一の符号を付していることに留意されたい。
【0069】
空気抜き治具100は、上述した実施形態と同様に、プロペラシャフト2の組み付けの際に、ブーツリップ部20の先端側から挿入される。空気抜き治具100は、先端側と基端側(拡径側)との間の長さが、ブーツリップ部20の先端側から通気路30に到達する長さに設定されている。空気抜き治具100は、ブーツリップ部20の先端側から挿入するのに伴って、空気抜き治具100の先端側が、通気路30に到達することを条件として、把持部52がブーツリップ部20の先端側に係止されるものとされている。すなわち、上述した空気抜き治具100は、把持部52をストッパとして機能させることができる。したがって、上述した空気抜き治具100は、正確に通気路30に到達させることができる。また、上述した空気抜き治具100は、必要以上にブーツリップ部20に挿入されることを抑制できるので、ブーツ10の破損や変形を抑制できる。
【0070】
空気抜き治具100は、上述した実施形態と同様に、プロペラシャフト2の組み付けが完了した後、ブーツリップ部20から取り外される。
【0071】
以上が、本発明の第1変形例に係る空気抜き治具100、並びに空気抜き治具100を用いたプロペラシャフトの組み付け方法の構成及び作用効果であり、次に本発明の第2変形例に係る空気抜き治具200、及び空気抜き治具200を用いたプロペラシャフトの組み付け方法についての詳細を説明する。
【0072】
≪第2変形例≫
本発明の第2変形例に係る空気抜き治具200、及び空気抜き治具200を用いたプロペラシャフトの組み付け方法について、図5(b)を参照しつつ以下に説明する。なお、第2変形例に係る空気抜き治具100は、筒状部材50の長さが異なる以外の構成が上述した実施形態と同様であるので、同様部分の詳細な説明は省略する。また、上述した実施形態と同一の部材については、同一の符号を付していることに留意されたい。
【0073】
空気抜き治具200は、筒状部材50が、ブーツリップ部20の先端側から中間部25に到達する長さに形成されている。したがって、空気抜き治具200は、筒状部材50が、必要以上に挿入されることを抑制できるので、ブーツ10の破損や変形を抑制できる。また、空気抜き治具200は、ブーツリップ部20に挿入した際に確実に中間部25(周溝32)に到達させることができるので、プロペラシャフト2を組み付ける際の組立性向上が期待できる。
【0074】
空気抜き治具200は、ブーツリップ部20の先端側から挿入するのに伴って、空気抜き治具200の先端側が、中間部25に到達することを条件として、ブーツリップ部20の先端側に係止されるものとされている。すなわち、上述した空気抜き治具200は、把持部52をストッパとして機能させることができる。したがって、上述した空気抜き治具200は、正確に中間部25に到達させることができる。また、上述した空気抜き治具200は、必要以上にブーツリップ部20に挿入されることを抑制できるので、ブーツ10の破損や変形を抑制できる。
【0075】
ここで、中間部25(周溝32)は、周方向に形成されており、通気路30と連通するものとされている。そのため、空気抜き治具200は、通気路30が形成されている位置を問わず、ブーツリップ部20の周方向のいずれかの位置から挿入すればよい。これにより、プロペラシャフト2の組付性が向上する。また、空気抜き治具200は、プロペラシャフト2を組み付ける際に、通気路30、周溝32、及び空気抜き通路51を介して、ブーツ10の内部の空気を外部に排気(漏洩)できる。これにより、上述した空気抜き治具200は、プロペラシャフト2を組み付ける際に、ブーツ10の内圧が高まることを抑制できる。また、プロペラシャフト2を組み付ける際の抵抗を低減できるので、組立性の向上及び組立コストの低減が期待できる。
【0076】
空気抜き治具200は、上述した実施形態と同様に、プロペラシャフト2の組み付けが完了した後、ブーツリップ部20から取り外される。
【0077】
以上が、本発明の第2変形例に係る空気抜き治具200、並びに空気抜き治具200を用いたプロペラシャフトの組み付け方法の構成及び作用効果であり、次に本発明の第3変形例に係る空気抜き治具300についての詳細を説明する。
【0078】
≪第3変形例≫
本発明の第3変形例に係る空気抜き治具300について、図6を参照しつつ以下に説明する。なお、第3変形例に係る空気抜き治具300は、筒状部材50における外周の少なくとも一部が、プロペラシャフト2に沿って開放されている以外の構成は、上述した実施形態と同様であるので、同様部分の詳細な説明は省略する。また、上述した実施形態と同一の部材については、同一の符号を付していることに留意されたい。
【0079】
図6(b)に示すように、空気抜き治具300は、上述した実施形態と同様に、プロペラシャフト2の組み付けの際に、ブーツリップ部20の先端側から挿入される。図6(a)に示すように、空気抜き治具300は、筒状部材50における外周の少なくとも一部が、プロペラシャフト2に沿って開放されている。言い換えると、空気抜き治具300は、樋状、あるいは溝形状に形成されており、プロペラシャフト2に沿う側が開放されるように、プロペラシャフト2及びブーツリップ部20の間に挿入される。これにより、空気抜き治具300により形成される空気抜き通路51が、空気抜き治具300の挿入方向における先端側から基端側に向かうにつれ拡径する通路として形成される。
【0080】
ここで、空気抜き治具300は、例えば、円形や多角形で形成された柱状部材をプロペラシャフト2に沿う軸線方向に切削等して溝を形成することで作製できる。したがって、上述した空気抜き治具300は、形成を容易に行うことができる。そのため、上述した空気抜き治具300における製造コストの低減が期待できる。なお、空気抜き治具300は、上述した製法だけではなく、例えば、筒状部材を軸線方向に沿って切断したり、成型により形成したりするなど、各種の方法で作製できる。
【0081】
空気抜き治具300は、上述した実施形態と同様に、プロペラシャフト2の組み付けが完了した後、ブーツリップ部20から取り外される。
【0082】
以上が、本発明の第1変形例~第3変形例に係る空気抜き治具100,200,300、並びにこれらを用いたプロペラシャフトの組み付け方法の構成及び作用効果であるが、本発明の空気抜き治具1,100,200,300、及びプロペラシャフトの組み付け方法は、上述した実施形態や変形例には限定されず、各種の変形を行うことができる。
【0083】
本実施形態では、等速ジョイント3を備えるプロペラシャフト2を被対象物に組み付ける場合を例示したが、本発明のプロペラシャフトの組み付け方法は、各種の回転軸を車両等の被対象物に組み付ける場合に利用することができる。また、ブーツ10の形状や大きさは、プロペラシャフト2や等速ジョイント3の形状や大きさに応じて、各種の形状や大きさに変更することができる。また、本実施形態では、被対象物として四輪駆動車を例示したが、本発明のプロペラシャフトの組み付け方法は、駆動源による動力をプロペラシャフト2等の回転軸を介して伝達する各種の移動体や装置などに利用できる。
【0084】
本実施形態では、ブーツ10に中間部25が設けられているが、中間部25は、必要に応じて設ければよく、中間部25を有しない構成とすることも可能である。また、ブーツ10(バンド締結部15、中間部25、ブーツリップ部20を含む)の形状や大きさ等は、適宜変更することができる。
【0085】
また、本実施形態では、空気抜き治具1が筒状部材50により形成されているが、空気抜き治具1は、筒状や溝形状(樋状)のものだけではなく、各種の形状に形成することができる。また、空気抜き治具1は、外形のみが先端側から基端側に向かうにつれ拡径され、空気抜き通路51が直線状に形成されているものや、空気抜き通路51が、外形と共に、先端側から基端側に向かうにつれ拡径されているものなど、各種の形態のものが利用できる。また、空気抜き治具1及び空気抜き通路51を先端側から基端側に向かうにつれ拡径する場合の拡径の度合いは、ブーツ10や通気路30の形状等に応じて、各種の度合いに変更できる。また、空気抜き治具1は、外形や空気抜き通路51が、先端側から基端側に向かうにつれ拡径されているものだけではなく、拡径等されていない直線状のものや先端のみが縮径されているものなど、各種の形状や大きさのものが利用できる。また、空気抜き治具1及び空気抜き通路51の長さや径は、ブーツ10の形状や大きさに応じて、各種の長さに変更することができる。
【0086】
本実施形態では、把持部52が設けられているが、把持部52は必要に応じて設ければよく、把持部52を有しない構成とすることも可能である。また、把持部52を設ける場合において、把持部52の形状や大きさは、プロペラシャフト2や等速ジョイント3の形状や大きさ等に応じて、各種のものに変更することができる。また、把持部52は、ブーツリップ部20に係止されるものだけではなく、空気抜き治具1の使用形態に応じて適宜、変更することができる。
【0087】
本実施形態では、中間部25の内壁に周溝32が形成されているが、周溝32に限定されるものではなく、各種の形状・大きさに形成することができる。また、本実施形態では、ブーツリップ部20の先端側を、周溝32を起点に内径方向に弾性変形させるものとしたが、これには限定されず、ブーツリップ部20の先端側は、各種の手段で弾性変形させることができる。例えば、ブーツリップ部20の先端側及び基端側の剛性を、素材の変化で変化させるものや、別部材を用いて変化させるものなど、各種の手段が採用できる。また、本実施形態では、通気路30が、単数形成されているが、通気路30は、単数のものだけではなく、必要に応じて複数形成されていてもよい。
【0088】
以上が、本発明に係るプロペラシャフトの組み付け方法及び空気抜き治具の各種の実施形態や変形例であるが、本発明は上述した実施形態や変形例において例示したものに限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲でその教示及び精神から他の実施形態があり得ることは当業者に容易に理解できよう。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明のプロペラシャフトの組み付け方法及び空気抜き治具は、各種の回転軸(プロペラシャフト等)を車両等の移動体や装置等に組み付ける際に利用することができる。
【符号の説明】
【0090】
1 :空気抜き治具
2 :プロペラシャフト
2A:インタミディエイトシャフト(第1プロペラシャフト)
2B:第2プロペラシャフト
3 :等速ジョイント(第2ジョイント)
10 :ブーツ
15 :バンド締結部
20 :ブーツリップ部
25 :中間部
30 :通気路
32 :周溝
50 :筒状部材
51 :空気抜き通路
52 :把持部
100 :空気抜き治具
200 :空気抜き治具
300 :空気抜き治具
図1
図2
図3
図4
図5
図6