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特開2024-37647イオンバランスセンサおよび除電システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037647
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】イオンバランスセンサおよび除電システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/60 20060101AFI20240312BHJP
   H01T 23/00 20060101ALI20240312BHJP
   H05F 3/04 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
G01N27/60 D
H01T23/00
H05F3/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177304
(22)【出願日】2022-11-04
(31)【優先権主張番号】P 2022142582
(32)【優先日】2022-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000129253
【氏名又は名称】株式会社キーエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】桂田 雅章
【テーマコード(参考)】
2G041
5G067
【Fターム(参考)】
2G041BA03
5G067AA21
5G067DA01
5G067DA19
5G067DA21
5G067DA22
5G067EA01
(57)【要約】
【課題】対象空間のイオンバランスに加えて、対象空間の環境に関するさらなる情報を把握することを可能にするイオンバランスセンサおよび除電システムを提供する。
【解決手段】イオンバランスセンサ100は、対象空間3内に配置される導電性の検出プレート110Aを備える。そのイオンバランスセンサ100においては、検出プレート110Aの電位に基づいて対象空間3のイオンバランスが検出される。検出結果を示すイオンバランス信号が生成される。また、イオンバランスに加えて、対象空間3の環境に関する物理量が検出される。検出結果に基づいて対象空間3の環境に関する情報を示す他の信号が生成される。イオンバランス信号と他の信号とが出力される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象空間内に配置される導電性の検出プレートと、
前記検出プレートの電位に基づいて前記対象空間のイオンバランスを検出し、検出結果を示す第1の情報信号を生成する第1の情報生成部と、
前記対象空間の環境に関する物理量を検出し、検出結果に基づいて前記対象空間の環境に関する情報を示す第2の情報信号を生成する第2の情報生成部と、
前記第1の情報信号および前記第2の情報信号を出力するセンサ通信部とを備える、イオンバランスセンサ。
【請求項2】
前記第2の情報生成部は、
固定抵抗と、
前記検出プレートに電気的に接続されたノードに前記固定抵抗を介して電気的に接続され、周期性を有する変調電圧を発生する変調電圧源と、
前記ノードの電位を経時的に検出する電位検出部と、
前記電位検出部により検出される電圧波形の振幅の大きさに基づいて前記対象空間を流れるイオンの量を検出するイオン量検出部とを含み、
前記第2の情報信号は、前記イオン量検出部により検出されたイオン量を示す信号を含む、請求項1記載のイオンバランスセンサ。
【請求項3】
前記第1の情報生成部は、
前記第2の情報生成部の前記電位検出部により検出される電位の変動中心を前記対象空間のイオンバランスとして検出する、請求項2記載のイオンバランスセンサ。
【請求項4】
前記対象空間は、除電器による除電が行われるべき空間であり、
前記第1の情報生成部、前記第2の情報生成部および前記センサ通信部は、1または複数の回路基板上に実装され、
前記イオンバランスセンサは、
前記1または複数の回路基板を収容するとともに、前記検出プレートが取り付けられたセンサ筐体と、
前記1または複数の回路基板のいずれかと前記除電器とを接続可能に構成され、前記センサ通信部から出力される前記第1の情報信号および前記第2の情報信号を前記除電器に伝送する中継ケーブルとをさらに備える、請求項1~3のいずれか一項に記載のイオンバランスセンサ。
【請求項5】
前記検出プレートは、前記対象空間のイオンを受ける一面を有し、前記一面が露出するように前記センサ筐体に取り付けられた、請求項4記載のイオンバランスセンサ。
【請求項6】
前記物理量として前記対象空間の温度および湿度のうち少なくとも一方を検出するための検出素子をさらに備え、
前記第2の情報生成部は、前記検出素子を用いて前記物理量を検出し、
前記第2の情報信号は、前記検出素子により検出された温度および湿度のうち少なくとも一方を示す信号を含む、請求項4記載のイオンバランスセンサ。
【請求項7】
前記センサ筐体は、第1の端部および第2の端部を有し、前記第1の端部から前記第2の端部にかけて一方向に延びるとともに、前記一方向に延びる収容空間を有し、
前記検出素子は、前記収容空間内で前記センサ筐体の前記第1の端部に隣り合うように配置され、
前記第1の情報生成部および前記第2の情報生成部は、前記収容空間内で前記検出素子から一定距離離間するように配置された、請求項6記載のイオンバランスセンサ。
【請求項8】
前記センサ筐体を保持可能に構成された保持具をさらに備え、
前記センサ筐体は、前記第2の端部に、当該センサ筐体を前記保持具に取り付けるための取付部を有し、
前記センサ筐体が前記保持具に取り付けられた状態で、前記保持具は前記センサ筐体の前記第1の端部に接触しない、請求項7記載のイオンバランスセンサ。
【請求項9】
導電性の検出プレートと、
固定抵抗と、
前記検出プレートに電気的に接続されたノードに前記固定抵抗を介して電気的に接続され、周期性を有する変調電圧を発生する変調電圧源と、
前記ノードの電位を経時的に検出する電位検出部とを備える、イオンバランスセンサ。
【請求項10】
除電が行われるべき対象空間に向けてイオンを出力する除電器と、
前記除電器に接続可能なイオンバランスセンサとを備え、
前記イオンバランスセンサは、
前記対象空間内に配置される導電性の検出プレートと、
前記検出プレートの電位に基づいて前記対象空間のイオンバランスを検出し、検出結果を示す第1の情報信号を生成する第1の情報生成部と、
前記対象空間の環境に関する物理量を検出し、検出結果に基づいて前記対象空間の環境に関する情報を示す第2の情報信号を生成する第2の情報生成部と、
前記第1の情報信号および前記第2の情報信号を前記除電器に出力するセンサ通信部とを含み、
前記除電器は、
前記対象空間に向けて出力されるべきイオンを発生するイオン発生部と、
前記イオンバランスセンサの前記センサ通信部から出力された前記第1の情報信号および前記第2の情報信号を受ける除電器通信部と、
前記除電器通信部が受けた前記第1の情報信号に基づいて前記イオン発生部を制御するイオン制御部と、
前記除電器通信部が受けた前記第2の情報信号に基づいて前記対象空間の環境に関する情報を記憶する環境状態記憶部とを含む、除電システム。
【請求項11】
前記第1の情報生成部、前記第2の情報生成部および前記センサ通信部は、1または複数の回路基板上に実装され、
前記イオンバランスセンサは、
前記1または複数の回路基板を収容するとともに、前記検出プレートが取り付けられたセンサ筐体と、
前記1または複数の回路基板のいずれかと前記除電器とを接続可能に構成され、前記センサ通信部から出力される前記第1の情報信号および前記第2の情報信号を前記除電器に伝送する中継ケーブルと、
第1の情報生成部、第2の情報生成部および前記情報送信部に電力を供給する第1の電源部とをさらに含み、
前記除電器は、第2の電源部をさらに含み、
前記中継ケーブルは、前記第2の電源部から前記第1の電源部に電力を供給可能にさらに構成された、請求項10記載の除電システム。
【請求項12】
前記第2の情報生成部は、
固定抵抗と、
前記検出プレートに電気的に接続されたノードに前記固定抵抗を介して電気的に接続され、周期性を有する変調電圧を発生する変調電圧源と、
前記ノードの電位を経時的に検出する電位検出部と、
前記電位検出部により検出される電圧波形の振幅の大きさに基づいて前記対象空間を流れるイオンの量を検出するイオン量検出部とを含み、
前記第2の情報信号は、前記イオン量検出部により検出されたイオン量を示す信号を含む、請求項10または11記載の除電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象空間のイオンバランスを検出するイオンバランスセンサおよび除電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスおよび液晶表示装置等の製造ラインにおいて、製造に用いられる各部品が帯電していると、当該部品に異物が付着することにより製品の歩留まりが低下する可能性がある。各部品が帯電することに起因する歩留まりの低下を抑制するために、除電器が用いられる。
【0003】
特許文献1に記載された除電装置(除電器)においては、正イオンおよび負イオンを含むエアが、ノズルから被除電物に向けて噴射される。また、その除電装置においては、被除電物の周囲のイオンバランスが測定される。測定結果に基づいて、ノズルから被除電物に供給される正イオンの量および負イオンの量が調整される。これにより、被除電物に蓄積された電荷が除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-258108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の除電装置においては、除電の条件を適切に調整するために、イオンバランスが測定される。しかしながら、除電の条件を適切にするための調整は、被除電物に供給される正イオンの量および負イオンの量を調整することに限られない。
【0006】
例えば、ノズルの向きが適切に設定されていないことにより正イオンおよび負イオンを含むエアが被除電物からずれた位置に噴射されると、被除電物を適切に除電することはできない。この場合、ノズルの向きを調整することが望ましい。あるいは、被除電物を取り囲む空間の温度環境または湿度環境が、被除電物が帯電しやすい状態にあると、除電の効率が低下する。この場合、被除電物を取り囲む空間の温度環境または湿度環境を調整することが望ましい。このように、除電の条件を適切にするための多様な調整を可能にするためには、被除電物を取り囲む空間(対象空間)の環境に関するより多くの情報が必要となる。
【0007】
本発明の目的は、対象空間のイオンバランスに加えて、対象空間の環境に関するさらなる情報を把握することを可能にするイオンバランスセンサおよび除電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面に従うイオンバランスセンサは、対象空間内に配置される導電性の検出プレートと、前記検出プレートの電位に基づいて前記対象空間のイオンバランスを検出し、検出結果を示す第1の情報信号を生成する第1の情報生成部と、前記対象空間の環境に関する物理量を検出し、検出結果に基づいて前記対象空間の環境に関する情報を示す第2の情報信号を生成する第2の情報生成部と、前記第1の情報信号および前記第2の情報信号を出力するセンサ通信部とを備える。
【0009】
本発明の他の局面に従うイオンバランスセンサは、導電性の検出プレートと、固定抵抗と、前記検出プレートに電気的に接続されたノードに前記固定抵抗を介して電気的に接続され、周期性を有する変調電圧を発生する変調電圧源と、前記ノードの電位を経時的に検出する電位検出部とを備える。
【0010】
本発明のさらに他の局面に従う除電システムは、除電が行われるべき対象空間に向けてイオンを出力する除電器と、前記除電器に接続可能なイオンバランスセンサとを備え、前記イオンバランスセンサは、前記対象空間内に配置される導電性の検出プレートと、前記検出プレートの電位に基づいて前記対象空間のイオンバランスを検出し、検出結果を示す第1の情報信号を生成する第1の情報生成部と、前記対象空間の環境に関する物理量を検出し、検出結果に基づいて前記対象空間の環境に関する情報を示す第2の情報信号を生成する第2の情報生成部と、前記第1の情報信号および前記第2の情報信号を前記除電器に出力するセンサ通信部とを含み、前記除電器は、前記対象空間に向けて出力されるべきイオンを発生するイオン発生部と、前記イオンバランスセンサの前記センサ通信部から出力された前記第1の情報信号および前記第2の情報信号を受ける除電器通信部と、前記除電器通信部が受けた前記第1の情報信号に基づいて前記イオン発生部を制御するイオン制御部と、前記除電器通信部が受けた前記第2の情報信号に基づいて前記対象空間の環境に関する情報を記憶する環境状態記憶部とを含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、対象空間のイオンバランスに加えて、対象空間の環境に関するさらなる情報を把握することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施の形態に係る除電システムの構成の概略および使用例を説明するための図である。
図2図1のイオンバランスセンサの基本構成を説明するための除電システムのブロック図である。
図3図1の除電器の基本構成を説明するための除電システムのブロック図である。
図4】表示部、操作部および表示灯の配置の一例を示す図である。
図5図1のイオンバランスセンサによるイオンバランスおよびイオン電流の検出方法を説明するための図である。
図6図1のイオンバランスセンサによるイオンバランスおよびイオン電流の検出方法を説明するための図である。
図7図1のイオンバランスセンサの外観斜視図である。
図8】イオンバランスセンサが図7の仮想面で切断された状態を示す模式的断面図である。
図9】保持具の一例を示す外観斜視図である。
図10】センサ筐体が保持具に取り付けられた状態の一例を示す外観斜視図である。
図11】第1階層画面の一例を示す図である。
図12】風量調整画面の一例を示す図である。
図13】第1モニタ画面の一例を示す図である。
図14】第2モニタ画面の一例を示す図である。
図15】イベント履歴画面の一例を示す図である。
図16】第2階層画面の一例を示す図である。
図17】帯電レベル校正時における表示部の画面遷移の一例を示す図である。
図18】イオンバランス校正時における表示部の画面遷移の一例を示す図である。
図19】制御切替プログラムが実行されることにより実現される除電器制御部の各種機能部を示すブロック図である。
図20】制御切替処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態に係るイオンバランスセンサおよび除電システムについて、図面を参照しつつ説明する。
【0014】
1.除電システムの構成の概略および使用例
図1は、本発明の一実施の形態に係る除電システムの構成の概略および使用例を説明するための図である。図1に示すように、本実施の形態に係る除電システム1は、主としてイオンバランスセンサ100、除電器200および処理装置300を備える。
【0015】
除電器200は、除電器筐体11を含み、その除電器筐体11内に、正イオンおよび負イオンを発生させるための各種高圧回路等が収容された構成を有する。除電器筐体11には、送風口12が形成されている。除電器200は、除電器筐体11内で発生した正イオンおよび負イオンを送風口12を通して除電器200の外方に送り出す。図1では、除電器筐体11の送風口12から、除電器200の外方に流れる除電気体(本例では、正イオンおよび負イオンを含むエア)の流れが、複数の太い一点鎖線の矢印ifで示される。
【0016】
以下の説明では、除電器200から送り出される除電気体が供給されるべき空間、すなわち対象物9の除電が行われるべき除電対象空間を対象空間と呼ぶ。図1の例では、除電器200は、除電気体がベルトコンベア2の一部を含む対象空間3を流れるように、図示しない設置面上に設けられている。この場合、ベルトコンベア2が動作することにより複数の対象物9がベルトコンベア2の方向(図1の太い二点鎖線の矢印参照)に移動すると、各対象物9は対象空間3の通過時に除電気体により除電される。
【0017】
対象空間3のイオンバランスに偏りがあると、各対象物9を適切に除電することができない。そこで、対象空間3のイオンバランスを検出するために、対象空間3にイオンバランスセンサ100が設けられる。本実施の形態においては、対象空間3のイオンバランスとは、対象空間3内の電気的な極性の偏りの度合いである。イオンバランスセンサ100が対象空間3に配置されることにより、対象物9が通過する対象空間3のイオンバランスが局所的に検出される。したがって、イオンバランスセンサ100により検出されるイオンバランスを用いて除電器200の制御を行う場合には、対象物9をより適切に除電することができる。
【0018】
対象空間3のイオンバランスは、例えば除電器200から対象空間3に流れる除電気体に含まれる正イオンの量と負イオンの量とが等しいかまたはほぼ等しい場合に0に近づく。一方、対象空間3のイオンバランスは、例えば除電器200から対象空間3に流れる除電気体に含まれる正イオンの量と負イオンの量とが異なることにより0から乖離する(偏る)。イオンバランスセンサ100は、導電性の検出プレート110Aを有する。検出プレート110Aの電位に基づいて対象空間3のイオンバランスが検出される。イオンバランスセンサ100の構造の詳細については後述する。
【0019】
本実施の形態に係るイオンバランスセンサ100は、対象空間3に設けられることにより、対象空間3のイオンバランスに加えて、対象空間3の環境に関する情報を検出することが可能である。具体的には、イオンバランスセンサ100は、対象空間3の環境に関する情報として、単位時間当たりに対象空間3を流れるイオンの量(以下、対象空間3のイオン電流と呼ぶ。)を検出することが可能である。さらに、イオンバランスセンサ100は、対象空間3の環境に関する情報として、対象空間3の温度および湿度を検出することが可能である。
【0020】
イオンバランスセンサ100は、中継ケーブルCA1を含む。イオンバランスセンサ100から延びる中継ケーブルCA1の先端部(一端部)は、除電器200に接続される。イオンバランスセンサ100において検出される上記の各種情報は、中継ケーブルCA1を通して除電器200に伝送される。この場合、除電器200においては、対象空間3のイオンバランスの検出結果に基づいて当該除電器200における正イオンの発生状態および負イオンの発生状態を調整することができる。それにより、複数の対象物9の除電に適切な除電気体が対象空間3に供給される。
【0021】
ここで、除電器200の送風口12が対象空間3からずれた位置に向いていると、除電気体が除電器200から対象空間3に流れない。この場合、イオン電流は0または0に近い値で検出される。一方、除電器200の送風口12が対象空間3に向いていると、除電気体は除電器200から対象空間3に適切に流れる。この場合、イオン電流は、除電気体に含まれるイオンの量に応じた値で検出される。
【0022】
したがって、除電器200においては、イオン電流の検出結果に基づいて、除電器200の位置および姿勢(設置状態)が適切であるか否かを判定することができる。具体的には、イオン電流の値が予め定められたイオン電流しきい値以下である場合に除電器200の設置状態が適切でないと判定することができる。また、イオン電流の値がイオン電流しきい値よりも大きい場合に除電器200の設置状態が適切であると判定することができる。このような判定結果が使用者に提示されることにより、使用者は、除電器200の設置状態の調整の要否を容易に把握することができる。
【0023】
さらに、除電器200においては、対象空間3の温度および湿度の検出結果をメモリに記憶させておくことにより、複数の対象物9の除電時における対象空間3の環境状態の変化を管理することができる。
【0024】
除電器200は、中継ケーブルCA2を介して処理装置300に接続されている。処理装置300は、例えばパーソナルコンピュータであり、例えばCPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)およびRAM(ランダムアクセスメモリ)を含む。処理装置300には、本体表示部310および本体操作部320が接続されている。本体表示部310は、LCD(液晶ディスプレイ)パネルまたは有機EL(エレクトロルミネッセンス)パネルにより構成される。操作装置は、キーボードおよびポインティングデバイスを含み、使用者により操作可能に構成される。
【0025】
処理装置300は、例えば除電器200についての各種動作条件の設定、除電器200の動作状態の監視等に用いられる。除電器200の複数の動作条件には、後述する除電器200のファン201(図3)により対象空間3に送られる気体の流量(風量)、除電器200から処理装置300に出力される各種信号の出力条件、除電器200における後述する操作部260(図3)の操作を無効にするための条件等が含まれる。
【0026】
2.イオンバランスセンサ100の基本構成
図2は、図1のイオンバランスセンサ100の基本構成を説明するための除電システム1のブロック図である。図2に示すように、イオンバランスセンサ100は、検出プレート110A、イオン検出回路110B、温度検出素子120、湿度検出素子130、センサ表示灯140、センサ通信部150、センサ電源部160およびセンサ制御部190を含む。
【0027】
検出プレート110Aは、導電性を有する材料(例えば金属材料)で構成され、イオンバランスセンサ100を取り囲む空間で露出するように設けられる。イオン検出回路110Bは、検出プレート110Aに接続され、検出プレート110Aの経時的な電位の変化に基づいて、対象空間3のイオンバランスおよびイオン電流に対応する信号を出力する。イオン検出回路110Bの具体的な構成については後述する。
【0028】
温度検出素子120は、例えば半導体温度センサであり、イオンバランスセンサ100を取り囲む空間(対象空間3)の温度に対応する信号を出力する。湿度検出素子130は、例えば高分子湿度検出素子であり、イオンバランスセンサ100を取り囲む空間(対象空間3)の湿度に対応する信号を出力する。温度検出素子120は、熱電対または測温抵抗体であってもよい。
【0029】
センサ表示灯140は、例えば異なる色で発光する複数の発光ダイオードを含む。センサ通信部150は、センサ制御部190から出力される各種信号を中継ケーブルCA1を介して除電器200に送信する。また、センサ通信部150は、中継ケーブルCA1を介して除電器200から送信される各種情報を受信し、センサ制御部190に与える。
【0030】
センサ電源部160は、中継ケーブルCA1を介して除電器200から供給される電力を受けるとともに蓄積する。さらに、センサ電源部160は、除電器200から受けた電力または蓄積された電力をイオンバランスセンサ100の各構成要素に供給する。
【0031】
センサ制御部190は、マイクロコンピュータを含み、各種情報の生成および各構成要素の制御を行う。なお、センサ制御部190は、マイクロコンピュータに代えて、CPU(中央演算処理装置)およびメモリを含んでもよい。センサ制御部190のマイクロコンピュータまたはメモリには、主として対象空間3のイオンバランス、イオン電流、温度および湿度を検出するため、ならびに除電器200との間で各種情報の授受を行うためのプログラムが記憶されている。センサ制御部190においては、マイクロコンピュータまたはCPUが当該センサ制御部190に記憶されたプログラムを実行することにより、複数の機能部が実現される。
【0032】
センサ制御部190は、複数の機能部として、バランス情報生成部191、イオン量情報生成部192、温度情報生成部193、湿度情報生成部194および表示灯制御部195を含む。なお、これらの複数の機能部の一部または全ては、電子回路等のハードウェアにより実現されてもよい。
【0033】
バランス情報生成部191は、イオン検出回路110Bから出力される信号に基づいて対象空間3のイオンバランスを検出し、検出結果を示す信号をイオンバランス信号として生成する。換言すれば、バランス情報生成部191は、検出プレート110Aの経時的な電位の変化に基づいてイオンバランス信号を生成する。生成されたイオンバランス信号は、センサ制御部190から出力される。バランス情報生成部191によるイオンバランスの検出方法の具体例については後述する。
【0034】
イオン量情報生成部192は、イオン検出回路110Bから出力される信号に基づいて対象空間3のイオン電流を検出し、検出結果を示す信号をイオン電流信号として生成する。換言すれば、イオン量情報生成部192は、検出プレート110Aの経時的な電位の変化に基づいてイオン電流信号を生成する。生成されたイオン電流信号は、センサ制御部190から出力される。イオン量情報生成部192によるイオン電流の検出方法の具体例については後述する。
【0035】
温度情報生成部193は、温度検出素子120から出力される信号に基づいて対象空間3の温度を検出し、検出結果を示す信号を温度信号として生成する。生成された温度信号は、センサ制御部190から出力される。湿度情報生成部194は、湿度検出素子130から出力される信号に基づいて対象空間3の湿度を検出し、検出結果を示す信号を湿度信号として生成する。生成された湿度信号は、センサ制御部190から出力される。
【0036】
表示灯制御部195は、センサ表示灯140の発光状態を制御する。表示灯制御部195は、例えばイオンバランスセンサ100において検出されたイオンバランスおよびイオン電流が予め定められた許容条件を満たす場合に、特定の一の色(例えば、緑色)で発光するようにセンサ表示灯140を制御する。一方、表示灯制御部195は、例えばイオンバランスセンサ100において検出されたイオンバランスおよびイオン電流が上記の許容条件を満たさない場合に、特定の他の色(例えば、赤色)で発光するようにセンサ表示灯140を制御する。
【0037】
本実施の形態に係るイオンバランスセンサ100においては、検出プレート110Aとイオン検出回路110Bとが、当該イオンバランスセンサ100内部(後述する図7のセンサ筐体400の内部)で電気的に接続されている。この場合、検出プレート110Aとイオン検出回路110Bとの間の距離を比較的短くすることができるので、イオン検出回路110Bにおけるイオンバランスおよびイオン電流の検出精度は、イオンバランスセンサ100の外部からのノイズの影響を受けにくい。
【0038】
また、イオンバランスセンサ100においては、イオン検出回路110Bとセンサ制御部190とが、当該イオンバランスセンサ100内部(後述する図7のセンサ筐体400の内部)で電気的に接続されている。この場合、イオン検出回路110Bとセンサ制御部190との間の距離を比較的短くすることができるので、イオン検出回路110Bからセンサ制御部190に伝達される信号は、イオンバランスセンサ100の外部からのノイズの影響を受けにくい。
【0039】
さらに、イオンバランスセンサ100における信号処理に関して、イオン検出回路110Bは、後述するように、オペアンプ111(図5)を含む。オペアンプ111は、イオン検出回路110Bにおいて生成されるイオンバランスおよびイオン電流に対応する微弱な信号(電流)を増幅する。そのため、イオン検出回路110Bからセンサ制御部190には、イオンバランスおよびイオン電流に対応しかつ増幅されたアナログ信号が与えられる。
【0040】
ここで、本実施の形態に係るセンサ制御部190は、AD変換器またはアナログ信号をデジタル信号に変換する機能を有する。そのため、センサ制御部190においては、イオン検出回路110Bから与えられる増幅されたアナログ信号がデジタル信号に変換され、出力される。これにより、センサ通信部150と除電器200との間では、中継ケーブルCA1を介してデジタル信号のやり取りが行われる。すなわち、イオンバランスセンサ100から中継ケーブルCA1を介して除電器200に送信される信号は、検出プレート110Aから流れる電流が、少なくともイオンバランスセンサ100が備えるオペアンプ111により増幅された後のデジタル信号である。
【0041】
デジタル信号は、アナログ信号に比べてノイズの影響を受けにくい。そのため、中継ケーブルCA1を伝送される信号がノイズの影響を受けにくいので、中継ケーブルCA1として、漏れ電流の少ないケーブルやシールドケーブルを用いる必要がない。したがって、本実施の形態に係る中継ケーブルCA1としては、外部被覆層が汎用のポリ塩化ビニルで形成されたケーブルを用いることができる。
【0042】
なお、検出プレート110Aとイオン検出回路110Bとが別体で互いに離間するように設けられかつ、検出プレート110Aとイオン検出回路110Bとが一のケーブルで接続された構成を想定する。あるいは、イオン検出回路110Bとセンサ制御部190とが別体で互いに離間するように設けられかつ、検出プレート110Aとイオン検出回路110Bとが一のケーブルで接続された構成を想定する。これらの場合、一のケーブルは、検出プレート110Aとイオン検出回路110Bとの間、あるいはイオン検出回路110Bとセンサ制御部190との間で、アナログ信号を伝送する必要がある。そのため、一のケーブルとしては、イオンバランスセンサ100の検出精度の低下を低減するために、ノイズ耐性に優れたケーブルを用いる必要がある。
【0043】
3.除電器200の基本構成
図3は、図1の除電器200の基本構成を説明するための除電システム1のブロック図である。図3に示すように、除電器200は、ファン201、ファン駆動部202、検知電極203、正イオン発生部211、正極側高圧回路212、負イオン発生部221、負極側高圧回路222、除電器制御部230およびイオン情報生成部240を含む。これらの構成要素は、図3に太い一点鎖線で示すように、図1の除電器筐体11内に収容される。
【0044】
図3では、正イオン発生部211および負イオン発生部221の模式的正面図がそれぞれ吹き出し内に示される。正イオン発生部211は、円環状部材211aおよび複数(本例では4つ)の電極針en1を含む。複数の電極針en1は、円環状部材211aの中心に向かって延びるように、円環状部材211aの内周部に等間隔で設けられている。負イオン発生部221は、正イオン発生部211と同様に、円環状部材221aおよび複数の電極針en2を含む。複数の電極針en2は、円環状部材221aの中心に向かって延びるように、円環状部材221aの内周部に等間隔で設けられている。
【0045】
正イオン発生部211には、正極側高圧回路212が接続されている。正極側高圧回路212は、抵抗および昇圧回路を含み、除電器制御部230の制御に基づいて正イオン発生部211の複数の電極針en1に高電圧を印加する。それにより、コロナ放電が発生し、正イオンが生成される。負イオン発生部221には、負極側高圧回路222が接続されている。負極側高圧回路222は、抵抗および昇圧回路を含み、除電器制御部230の制御に基づいて負イオン発生部221の複数の電極針en2に高電圧を印加する。それにより、コロナ放電が発生し、負イオンが生成される。
【0046】
ファン201は、図1の除電器筐体11の内部で、送風口12に対向するようにかつ所定の回転軸201aの周りで回転可能となるように設けられている。ファン駆動部202は、例えばモータを含み、除電器制御部230の制御に基づいてファン201を回転軸201aの周りで回転させる。
【0047】
ファン201、負イオン発生部221および正イオン発生部211は、この順で図1の送風口12からファン201の回転軸201aの方向に並ぶように配置されている。正イオン発生部211および負イオン発生部221の円環状部材211a,221aの中心は、ファン201の回転軸201a上に位置する。
【0048】
正イオン発生部211および負イオン発生部221においては、正極側高圧回路212および負極側高圧回路222が動作することにより、正イオンおよび負イオンがそれぞれ生成される。この状態で、ファン201が回転する。それにより、正イオンおよび負イオンを含む除電気体が除電器筐体11の送風口12を通して除電器200の外方に流れる。図3では、図1の例と同様に、除電器筐体11の送風口12から除電器200の外方に流れる除電気体の流れが、複数の太い一点鎖線の矢印ifで示される。検知電極203は、ファン201により送られる除電気体の除電気体の流路上に配置される。検知電極203には、除電気体に起因するイオン電流が流れる。
【0049】
イオン情報生成部240は、除電器200において発生される正イオンおよび負イオンの全体的なイオンバランスをイオン情報として検出する。イオン情報は、イオンバランスセンサ100により検出される対象空間3のイオンバランスとは異なり、除電器200の送風口12を流れる除電気体のイオンバランスを含む。また、イオン情報は、対象空間3および除電器200を取り囲む空間のイオンバランスを含む。したがって、イオン情報は、例えばファン201の近傍を流れる除電気体のイオンバランスを検出するとともに、対象空間3および除電器200を取り囲む空間のイオンバランスを検出することにより、それらの検出結果に基づいて生成される。
【0050】
より具体的には、イオン情報生成部240は、図3の点線の枠内に示すように、内部イオン電流検出回路241および外部イオン電流検出回路242を含む。内部イオン電流検出回路241は、検知電極203に接続されるとともに、除電器筐体11に接続される。内部イオン電流検出回路241は、検知電極203を流れるイオン電流と、除電器筐体11の表面を流れるイオン電流とを内部イオン電流として検出する。外部イオン電流検出回路242は、アース電位に維持されたアース電極に接続される。外部イオン電流検出回路242は、対象空間3からアースを経由して除電器200に戻るイオン電流(戻り電流)を外部イオン電流として検出する。外部イオン電流が検出されることにより、対象空間3および除電器200を取り囲む空間に向けて除電器筐体11から送り出された除電気体のイオンバランスが検出される。以下の説明では、外部イオン電流に基づいて検出されるイオンバランスを、戻り電流に基づいて検出されたことが理解しやすいように、戻りイオンバランスと呼ぶ。内部イオン電流および外部イオン電流がそれぞれ検出されることにより、正イオン発生部211および負イオン発生部221により発生するイオン量が測定される。
【0051】
除電器制御部230は、CPUおよびメモリまたはマイクロコンピュータを含む。除電器制御部230は、除電器200による複数の対象物9の除電時に、予め定められた回転速度でファン201が回転するようにファン駆動部202を制御する。なお、本実施の形態においては、除電器200は、エコモードで動作可能に構成される。エコモードにおいては、消費電力が極力小さい状態で上記の除電が行われる。例えば、エコモードにおいては、ファン201による風量が最も小さい状態(後述する風量レベル「1」)で除電が行われる。
【0052】
また、除電器制御部230は、除電器200にイオンバランスセンサ100が接続されている場合に、イオンバランスセンサ100により検出されるイオンバランスが0に近づくように、正極側高圧回路212および負極側高圧回路222を制御する。一方、除電器制御部230は、除電器200にイオンバランスセンサ100が接続されていない場合に、イオン情報生成部240により生成されるイオン情報に基づいて、イオンバランス(例えば、戻りイオンバランス)が0に近づくように正極側高圧回路212および負極側高圧回路222を制御する。
【0053】
除電器200にイオンバランスセンサ100が接続されていない場合の除電器制御部230の動作についてより具体的に説明する。本実施の形態においては、除電器制御部230は、イオンバランスセンサ100が除電器200に接続されていない場合に、外部イオン電流検出回路242により検出される戻りイオンバランスに基づいて、正極側高圧回路212および負極側高圧回路222を制御する。戻りイオンバランスは、除電器200において発生される正イオンおよび負イオンのうち、除電器200の内部から外部に送り出される正イオンおよび負イオンの全体的なイオンバランスといえる。このように、イオンバランスセンサ100が除電器200に接続されていない場合、除電器制御部230は、戻りイオンバランスが0になるように正極側高圧回路212および負極側高圧回路222を制御する。
【0054】
また、本実施の形態に係る除電システム1においては、除電器200に、予め複数種類のイベント(事象)が定義される。除電器制御部230は、イオンバランスセンサ100により検出される各種物理量等に基づいて、当該除電器200において複数種類のイベントの発生を検出する。複数種類のイベントは、除電器200の電源がオンまたはオフにされること、除電が開始または終了されること、および後述するクリーン装置291が動作すること等を含む。
【0055】
除電器200は、上記の各構成要素(201,202,211,212,221,222,230,240)に加えて、表示部250、操作部260、除電器記憶部270、除電器通信部280、除電器電源部290、クリーン装置291および表示灯292をさらに含む。表示部250、操作部260および表示灯292は、除電器筐体11の一部に取り付けられる。除電器記憶部270、除電器通信部280、除電器電源部290およびクリーン装置291は、図1の除電器筐体11内に収容される。
【0056】
図4は、表示部250、操作部260および表示灯292の配置の一例を示す図である。図4に示すように、表示部250は、除電器筐体11の正面の下部における中央領域に配置される。表示部250は、LCD(液晶ディスプレイ)パネルまたは有機EL(エレクトロルミネッセンス)パネルにより構成されている。表示部250は、除電器制御部230の制御に基づいて除電器200の各種設定情報および警報等を表示する。
【0057】
操作部260は、複数の操作ボタンを含み、表示部250に隣り合うように除電器筐体11に設けられている。具体的には、操作部260は、上ボタン261、下ボタン262、左ボタン263、右ボタン264、決定ボタン265、取消ボタン266およびパワーボタン267を含む。上ボタン261、下ボタン262、左ボタン263、右ボタン264、決定ボタン265および取消ボタン266は、表示部250の一方の側方(本例では右)に配置される。パワーボタン267は、表示部250の他方の側方(本例では左)に配置される。また、除電器筐体11には、除電器200をオンオフするための図示しない主電源スイッチが設けられる。
【0058】
後述するように、除電器200は、クリーン装置291により電極針en1,en2をクリーニングすることが可能である。決定ボタン265は、表示部250に表示される内容に応じた指示を受け付けることに加えて、クリーニングの開始の指示も受け付ける。使用者は、除電器200に対して、決定ボタン265を短押しすることにより表示部250に表示される内容に応じた指示を、決定ボタン265を2秒間以上長押しすることによりクリーニングの開始の指示を、行うことができる。除電器200において、クリーニングの実行中には除電が実行されない。そのため、決定ボタン265の長押しをクリーニング開始の指示に割り当てることにより、使用者による操作部260の誤操作により除電が実行されない期間が設けられることを防止することができる。
【0059】
パワーボタン267は、除電の開始の指示と除電の停止の指示とを受け付ける。すなわち、使用者は、パワーボタン267を押すことにより、除電の開始と除電の停止とを除電器200に指示することができる。除電器200が除電を停止した状態でパワーボタン267が押されると除電器200は除電を開始し、除電器200が除電を実行している状態でパワーボタン267が押されると除電器200は除電を停止する。
【0060】
さらに、使用者は、操作部260を操作することにより、除電器200についての各種設定を行うこと、イオンバランスセンサ100によるイオンバランスの検出結果等を表示部250に表示させること等が可能である。上ボタン261、下ボタン262、左ボタン263、右ボタン264、決定ボタン265および取消ボタン266等の他のボタンの操作例については、表示部250の表示例と合わせて後述する。
【0061】
また、本実施の形態においては、除電器200は、ロックモードで動作可能に構成されてもよい。ロックモードにおいては、各種動作条件を変更できる使用者を、特定の使用者に限定する。したがって、除電器200に設定された各種動作条件を変更する際には、パスワードの入力が要求される。使用者は、操作部260を操作することにより、パスワードを除電器200に入力することができる。パスワードが入力されることにより、ロックが一時的に解除され、各種動作条件の設定を変更することが可能になる。このように、パスワードの入力を要求することにより、パスワードを知る特定の使用者のみが各種動作条件を変更できるようにすることができる。
【0062】
図3の除電器通信部280は、中継ケーブルCA1を介してイオンバランスセンサ100のセンサ通信部150(図2)から送信される各種情報の信号を受信し、除電器制御部230に与える。
【0063】
ところで、イオンバランスセンサ100は、対象空間3に配置されるので対象物9の近傍に位置する。そのため、イオンバランスセンサ100により検出されるイオンバランスは、対象物9の近傍空間のイオンバランスである。これに対して、外部イオン電流検出回路242により検出される戻りイオンバランスは、上記のように、除電器200において発生される正イオンおよび負イオンのうち、除電器200の内部から外部に送り出される正イオンおよび負イオンの全体的なイオンバランスといえる。
【0064】
イオンバランスは、空間によって偏りが生じやすい。そのため、外部イオン電流検出回路242により検出される戻りイオンバランスが0に近い状態であっても、対象物9の近傍空間のみに着目すると、イオンバランスに偏りが生じていることが多い。したがって、イオンバランスセンサ100により検出されるイオンバランスに基づいて正極側高圧回路212および負極側高圧回路222を制御する方が、対象物9に対して高い除電効果を得ることができる。
【0065】
このため、本実施の形態においては、除電器制御部230は、上記のように、除電器200にイオンバランスセンサ100が接続されている場合に、除電器通信部280に与えられる信号、すなわちイオンバランスセンサ100により検出されるイオンバランスに基づいて、正極側高圧回路212および負極側高圧回路222を制御する。つまり、外部イオン電流検出回路242による戻りイオンバランスの検出が可能でかつイオンバランスセンサ100による対象空間3のイオンバランスの検出が可能な状態にある場合、除電器制御部230は、イオンバランスセンサ100により検出されるイオンバランスを優先して制御に用いる。
【0066】
このような構成によれば、使用者は、イオンバランスセンサ100を除電器200に接続することによって、除電器200の除電の精度の向上させることができる。
【0067】
なお、後述するように、イオンバランスセンサ100は、入力を増幅するオペアンプ111(図5)と、オペアンプ111からの出力を処理してデジタル信号を出力するセンサ制御部190(図5)とを備える。そのため、除電器200の除電器制御部230がイオンバランスセンサ100により検出されるイオンバランスの信号(イオンバランス信号)に基づく制御を行うために、イオンバランスセンサ100と除電器200との間に信号形式を変換したりするような中継機器が不要である。
【0068】
除電器記憶部270は、メモリまたはハードディスクで構成される。除電器制御部230は、除電器通信部280がイオンバランスセンサ100からイオンバランス信号を受信することにより、対象空間3のイオンバランスを時間情報とともに除電器記憶部270に記憶させる。このとき、除電器制御部230は、上記のように、記憶動作に加えて、対象空間3におけるイオンバランスが0に近づくように、受信したイオンバランス信号に基づいて正極側高圧回路212および負極側高圧回路222を制御する。
【0069】
また、除電器制御部230は、除電器通信部280がイオンバランスセンサ100からイオン電流信号を受信することにより、対象空間3におけるイオン電流を時間情報とともに除電器記憶部270に記憶させる。このとき、除電器制御部230は、上記の記憶動作に加えて、受信したイオン電流の値が上記のイオン電流しきい値以下である場合に除電器200の設置状態が適切でないことを示すメッセージを表示部250に表示させてもよい。
【0070】
さらに、除電器制御部230は、除電器通信部280がイオンバランスセンサ100から温度信号および湿度信号を受信することにより、対象空間3の温度および湿度を時間情報とともに除電器記憶部270に記憶させる。これにより、除電器記憶部270に記憶された対象空間3の環境に関する各種情報に基づいて、複数の対象物9の除電状態を管理することが可能になる。
【0071】
また、除電器制御部230は、除電器200において複数種類のイベントのいずれかが発生した場合に、当該イベントの発生を検出し、イベントの内容および発生時刻等を除電器記憶部270に記憶させる。なお、複数種類のイベントは、例えばエラーイベント、警報イベントおよび通知イベントのいずれかに属するように分類され、定義される。
【0072】
エラーイベントは、適切に除電を継続することができない状況が発生したことを示すイベントである。そのため、エラーイベントが検出された場合には、自動的に除電が停止される。警報イベントは、除電器200が予め想定された挙動とは異なる挙動を示した場合に、使用者に確認を促すためのイベントであり、除電器200に固定値として予め設定された各種しきい値等に基づいて検出される。通知イベントは、除電器200が使用者により想定された挙動とは異なる挙動を示した場合に、使用者に報知するためのイベントであり、使用者により除電器200に設定された各種しきい値等に基づいて検出される。
【0073】
除電器電源部290は、図示しない電源ケーブルおよびACアダプタ等を通して商用電源から供給される電力を受けるとともに、受けた電力の一部を除電器200に設けられる他の構成要素に供給する。また、除電器電源部290は、受けた電力の残りを中継ケーブルCA1を通してイオンバランスセンサ100のセンサ電源部160(図2)に供給する。除電器200およびセンサ電源部160には、商用電源に対して、DC電源からの電力またはACアダプタで適宜変換された電力が供給される。
【0074】
クリーン装置291は、例えばブラシにより正イオン発生部211および負イオン発生部221の複数の電極針en1,en2をクリーニング可能に構成され、除電器制御部230の制御に基づいて動作する。表示灯292は、1または複数の発光ダイオードを含み、除電器制御部230の制御に基づいて発光し、消灯し、または点滅する。表示灯292は、除電器筐体11において、操作部260のパワーボタン267の上方に配置される(図4参照)。
【0075】
なお、クリーン装置291および表示灯292は、本発明に必須の構成要素ではない。そのため、除電器200は、クリーン装置291および表示灯292を含まなくてもよい。
【0076】
4.イオンバランスおよびイオン電流の検出方法
ここで、対象空間3のイオンバランスおよびイオン電流の検出方法の具体例を説明する。図5および図6は、図1のイオンバランスセンサ100によるイオンバランスおよびイオン電流の検出方法を説明するための図である。図5の上段に、検出プレート110Aおよびイオン検出回路110Bを模式的に表した回路図が示される。イオン検出回路110Bは、オペアンプ111、固定抵抗112および変調電圧源113を含む。オペアンプ111はバッファ回路として用いられ、当該オペアンプ111の非反転入力端子は、検出プレート110Aに電気的に接続されている。また、オペアンプ111の出力端子は、当該オペアンプ111の反転入力端子に接続されるとともにセンサ制御部190に接続されている。
【0077】
変調電圧源113は、周期性を有する変調電圧として、交流電圧を発生する。変調電圧源113は、固定抵抗112を介して検出プレート110Aとオペアンプ111の非反転入力端子との間のノードNに電気的に接続されている。なお、ノードNは、検出プレート110A上に位置してもよい。この場合、変調電圧源113は、固定抵抗112を介して検出プレート110Aに電気的に接続される。
【0078】
上記のように、検出プレート110Aは、イオンバランスセンサ100を取り囲む空間(本例では対象空間3)で露出するように設けられる。また、本例の対象空間3には、除電器200から正イオンおよび負イオンを含む除電気体が流れる。
【0079】
対象空間3のイオンバランスおよびイオン電流と検出プレート110Aの電位との関係は、図5の下段に示すように、例えば仮想の可変抵抗114を介して仮想の電圧源115がノードNに接続された回路構成にモデル化することができる。モデル化されたその回路構成においては、仮想の可変抵抗114の抵抗値が対象空間3のイオン電流に対応する。可変抵抗114の抵抗値は、対象空間3のイオン電流が小さいほど大きく、対象空間3のイオン電流が大きいほど小さい。
【0080】
また、モデル化された上記の回路構成においては、仮想の電圧源115の電圧が対象空間3のイオンバランスに対応する。電圧源115の電圧は、対象空間3のイオンバランスの偏りの程度が大きいほど0から大きく乖離し、対象空間3のイオンバランスの偏りの程度が小さいほど0に近づく。
【0081】
上記のようにモデル化された回路構成を考慮した場合、ノードNの電位は、固定抵抗112および仮想の可変抵抗114により分圧された変調電圧源113および仮想の電圧源115の電圧の合計で表すことができる。具体的には、ノードNの電位をVinとし、可変抵抗114の抵抗値をRinとし、仮想の電圧源115の電圧をVIBとし、固定抵抗112の抵抗値をRmとし、変調電圧源113の電圧をVmとした場合に、下記式(1)で表すことができる。
【0082】
Vin=[{Rin/(Rm+Rin)}×Vm]+[{Rm/(Rm+Rin)}×VIB] …(1)
上記の式(1)においては、[{Rin/(Rm+Rin)}×Vm]が分圧された変調電圧源113の電圧成分を表し、[{Rm/(Rm+Rin)}×VIB]が分圧された電圧源115の電圧成分を表す。
【0083】
上記のように、ノードNの電位は、分圧された変調電圧源113の電圧成分を含む。そのため、分圧された変調電圧源113の電圧成分の変調の程度、すなわち一周期当たりの振幅の大きさは、仮想の可変抵抗114の抵抗値に応じて変化する。例えば、対象空間3のイオン電流が小さいことにより仮想の可変抵抗114の抵抗値が大きくなると、分圧された変調電圧源113の電圧成分は大きくなる(大きく変動する)。一方、対象空間3のイオン電流が大きいことにより仮想の可変抵抗114の抵抗値が小さくなると、分圧された変調電圧源113の電圧成分は小さくなる(小さく変動する)。これに対して、分圧された電圧源115の電圧成分は、仮想の電圧源115の電圧が周期的に変動するものではないため、ノードNの電位の変調に寄与しない。
【0084】
図6には、図5のオペアンプ111から出力される信号の電圧波形の一例が示される。図6においては、縦軸が電圧を表し、横軸が時間を表す。また、実線で図5のオペアンプ111から出力される信号の電圧波形が示される。図6の電圧波形は、図5のノードNの電位に対応する。なお、図6の例では、対象空間3に対して一定量の正イオンおよび負イオンを含む除電気体が一定流量で流れるとともに、対象空間3のイオンバランスが一定に保たれているものとする。
【0085】
上記の理由により、ノードNの電位は、仮想の可変抵抗114の抵抗値の値に依存して変動する。そこで、図2のイオン量情報生成部192は、図6に一点鎖線の矢印Vamで示すように、図5のオペアンプ111から出力される信号(電圧信号)の電圧波形の振幅の大きさまたはそれに対応する値を対象空間3のイオン電流として検出する。さらに、図2のバランス情報生成部191は、図6の縦軸に符号VIBで示すように、図5のオペアンプ111から出力される信号(電圧信号)の電圧波形の変動中心の値またはそれに対応する値を対象空間3のイオンバランスとして検出する。
【0086】
上記の検出方法に従って対象空間3のイオンバランスがイオンバランスセンサ100で検出される。この場合、対象空間3のイオンバランスを実際の対象空間3のイオンバランスに対して±1.0Vの誤差の範囲内で検出することが可能になる。なお、イオンバランスセンサ100によるイオンバランスの検出時には、適宜後述するイオンバランス校正が行われることが好ましい。
【0087】
上記の検出方法においては、イオンバランスおよびイオン電流を検出するための電圧波形のサンプリング周期およびサンプリング期間は、より適切な検出結果が得られるように、実験またはシミュレーション等により求めることが好ましい。また、上記の検出方法においては、変調電圧源113から発生されるべき変調電圧の周期および振幅は、より適切な検出結果が得られるように、実験またはシミュレーション等により求めることが好ましい。
【0088】
なお、対象空間3に配置された検出プレート110Aに所定の電位を有する低インピーダンスの部材(他の電圧源に接続された配線等)が接触する場合には、オペアンプ111の出力が一定の値に保持され、電圧波形の振幅が0となる。したがって、電圧波形の振幅が0である場合、表示灯制御部195は、イオン電流が予め定められた許容条件を満たさないものとして、上記の特定の他の色(例えば、赤色)で発光するようにセンサ表示灯140を制御してもよい。
【0089】
5.イオンバランスセンサ100の構造
図7は、図1のイオンバランスセンサ100の外観斜視図である。図7に示すように、イオンバランスセンサ100は、一方向に延びるように形成されたセンサ筐体400を有する。以下の説明では、イオンバランスセンサ100に関して、センサ筐体400が延びる方向を筐体長手方向DLと呼ぶ。
【0090】
センサ筐体400は、略直方体の箱形状を有し、筐体長手方向DLに延びる内部空間を有する。センサ筐体400の内部空間には、1枚の回路基板440が収容されている。図7では、センサ筐体400内に収容される回路基板440が太い点線で示される。筐体長手方向DLにおけるセンサ筐体400の一方の端部を第1の端部410と呼び、他方の端部を第2の端部420と呼ぶ。また、筐体長手方向DLにおけるセンサ筐体400の中央部分を筐体中央部430と呼ぶ。
【0091】
中継ケーブルCA1は、センサ筐体400の第2の端部420から延びるように設けられている。第2の端部420には、センサ筐体400を後述する保持具900(図9)に取り付けるための複数(本例では2つ)の取付孔421が形成されている。一方、センサ筐体400の第1の端部410には、当該センサ筐体400の内部空間とセンサ筐体400の外部とを連通させる複数の貫通孔411が形成されている。
【0092】
センサ筐体400の筐体中央部430の外周面の一部には、検出プレート110Aを取り付けるためのプレート取付部431が形成されている。検出プレート110Aは、例えば所定形状に切り抜かれた金属板を折り曲げ加工することにより作製され、イオンバランスおよびイオン電流を検出するための検出面110Sを有する。図7に白抜きの矢印で示すように、検出プレート110Aは、センサ筐体400のプレート取付部431に取り付けられる。この状態で、検出プレート110Aの検出面110Sは、イオンバランスセンサ100を取り囲む空間内で露出する。これにより、イオンバランスセンサ100が対象空間3に配置される際には、対象空間3内に存在する正イオンおよび負イオンが検出面110Sに触れやすい。したがって、対象空間3のイオンバランスおよびイオン電流を適切に検出することが可能になる。
【0093】
センサ筐体400の筐体中央部430には、筐体長手方向DLにおけるプレート取付部431に隣り合う位置に表示灯開口432が形成されている。表示灯開口432は、後述するようにセンサ筐体400内の回路基板440に実装されるセンサ表示灯140から発生される光を、センサ筐体400の外部に導くために形成されている。
【0094】
図8は、イオンバランスセンサ100が図7の仮想面VSで切断された状態を示す模式的断面図である。図7の仮想面VSは、筐体長手方向DLに平行な面である。図8に示すように、回路基板440は、センサ筐体400内で第1の端部410から第2の端部420にかけて延びるように設けられている。その回路基板440には、図2のイオン検出回路110B、温度検出素子120、湿度検出素子130、センサ表示灯140、センサ通信部150、センサ電源部160およびセンサ制御部190が実装されている。
【0095】
また、その回路基板440には、中継ケーブルCA1が接続されている。これにより、イオンバランスセンサ100のセンサ通信部150(図2)と除電器200の除電器通信部280(図3)との間で、各種信号の授受が行われる。また、除電器200の除電器電源部290(図3)からイオンバランスセンサ100のセンサ電源部160(図2)に電力が供給される。
【0096】
さらに、その回路基板440には、検出プレート110Aが接続されている。これにより、回路基板440に実装されたイオン検出回路110Bおよびセンサ制御部190により対象空間3のイオンバランスおよびイオン電流が検出される。
【0097】
ここで、温度検出素子120および湿度検出素子130は、筐体長手方向DLにおいてセンサ筐体400の第1の端部410に隣り合うように、回路基板440の一端部近傍に実装されている。一方、イオン検出回路110B、センサ表示灯140、センサ通信部150、センサ電源部160およびセンサ制御部190は、筐体長手方向DLにおいて温度検出素子120および湿度検出素子130から一定距離離間するように回路基板440上に実装されている。
【0098】
イオン検出回路110B、センサ表示灯140、センサ通信部150、センサ電源部160およびセンサ制御部190は、イオンバランスセンサ100の動作時に発熱源となる。このような場合でも、上記の構成によれば、温度検出素子120および湿度検出素子130は、センサ筐体400内で少なくとも上記の発熱源から一定距離離間している。したがって、イオンバランスセンサ100の動作時に発熱源から熱が直接伝達されることが防止される。それにより、対象空間3の温度および湿度の検出精度の低下が抑制される。
【0099】
また、上記のように、センサ筐体400の第1の端部410には、複数の貫通孔411が形成されている。複数の貫通孔411は、当該センサ筐体400の内部空間とセンサ筐体400の外部との間で雰囲気を流通させる通気孔として機能する。それにより、センサ筐体400内で発熱源から発生した熱は、センサ筐体400内に滞留することなく複数の貫通孔411からセンサ筐体400の外部に放散される。また、センサ筐体400の外部の雰囲気が、複数の貫通孔411を通して温度検出素子120および湿度検出素子130に接しやすい。それにより、対象空間3の温度および湿度の検出精度が向上する。
【0100】
6.イオンバランスセンサ100の保持具
センサ筐体400は、除電が行われるべき対象空間3の所望の位置に所望の姿勢で固定されることが望ましい。そこで、本実施の形態に係るイオンバランスセンサ100は、センサ筐体400を保持するための保持具をさらに備えてもよい。
【0101】
図9は、保持具の一例を示す外観斜視図である。図9の保持具900は、例えば高い剛性を有する金属板を折り曲げることにより形成され、センサ保持部910および固定部920を有する。
【0102】
センサ保持部910および固定部920は、それぞれ平板状に形成され、90°屈曲した状態で互いに隣り合う。センサ保持部910には、等間隔で離間するように複数(本例では4つ)の取付孔911が形成されている。複数の取付孔911は、センサ筐体400の2つの取付孔421に対応する。固定部920には、ケーブル用開口921および複数(本例では2つ)の長孔922が形成されている。
【0103】
保持具900の使用時には、センサ保持部910にセンサ筐体400が取り付けられる。この場合、固定部920のケーブル用開口921にイオンバランスセンサ100の中継ケーブルCA1が挿入される。また、センサ筐体400の2つの取付孔421(図7)がセンサ保持部910の4つの取付孔911のうちいずれか2つの取付孔911上に位置決めされる。この状態で、センサ筐体400の2つの取付孔421およびセンサ保持部910の2つの取付孔911にねじが挿入され、センサ筐体400とセンサ保持部910とがねじ止めされる。さらに、固定部920の2つの長孔922にねじが挿入され、固定部920が、例えば対象空間3またはその周辺に設けられたスタンド等の他の固定具にねじ止めされる。
【0104】
図10は、センサ筐体400が保持具900に取り付けられた状態の一例を示す外観斜視図である。図10に示すように、センサ筐体400は、その第2の端部420が、2つのねじSCを用いてセンサ保持部910にねじ止めされる。この状態で、保持具900は、センサ筐体400の第1の端部410に接触しないように構成されている。
【0105】
上記の構成によれば、センサ筐体400の第2の端部420が金属製の保持具900に取り付けられるので、イオンバランスセンサ100の動作時にセンサ筐体400内で発生する熱が第2の端部420を通して保持具900に伝達される。また、保持具900は、センサ筐体400が取り付けられた状態でセンサ筐体400の第1の端部410に接触しない。それにより、第1の端部410に隣り合う温度検出素子120および湿度検出素子130に、保持具900から熱が伝達されることが抑制される。これらの結果、温度検出素子120および湿度検出素子130による対象空間3の温度および湿度の検出精度が向上する。
【0106】
7.表示部の表示例
除電器筐体11の図示しない主電源スイッチがオンされることにより、除電器200が起動する。除電器200の起動後、表示部250には、所定の起動画面が表示された後、第1階層画面が表示される。図11は、第1階層画面の一例を示す図である。図11に示すように、第1階層画面500は、除電器200の状態を監視するための画面、または変更の頻度が高い設定項目を設定するための画面を含み、複数種類(本例では4種類)の画面を含む。4種類の第1階層画面500をそれぞれ風量調整画面510、第1モニタ画面520、第2モニタ画面530およびイベント履歴画面540と呼ぶ。
【0107】
表示部250には、上記の4種類の第1階層画面500のいずれか1つが表示される。図4の操作部260の左ボタン263が操作されるごとに、表示部250に表示される第1階層画面500が、所定の順序で切り替わる。また、操作部260の右ボタン264が操作されるごとに、表示部250に表示される第1階層画面500が、左ボタン263が操作されたときとは逆の順序で切り替わる。
【0108】
第2モニタ画面530は、除電器200にイオンバランスセンサ100が接続されている場合にのみ表示部250に表示可能である。したがって、除電器200がイオンバランスセンサ100に接続されている場合、表示部250に第1モニタ画面520が表示されている状態で左ボタン263が操作されることにより、第1モニタ画面520が第2モニタ画面530に切り替わる。あるいは、表示部250にイベント履歴画面540が表示されている状態で右ボタン264が操作されることにより、第1イベント履歴画面540が第2モニタ画面530に切り替わる。
【0109】
一方、除電器200がイオンバランスセンサ100に接続されていない場合、表示部250に第1モニタ画面520が表示されている状態で左ボタン263が操作されると、第2モニタ画面530がスキップされ、第1モニタ画面520がイベント履歴画面540に切り替わる。同様に、表示部250にイベント履歴画面540が表示されている状態で右ボタン264が操作されると、第2モニタ画面530がスキップされ、イベント履歴画面540が第1モニタ画面520に切り替わる。
【0110】
このように、除電器200にイオンバランスセンサ100が接続されていないときに第1階層画面500として表示される画面の数は、除電器200にイオンバランスセンサ100が接続されているときに第1階層画面500として表示される画面の数より少ない。このため、使用者が第1階層画面500の所望の画面を表示させるときの操作手順を低減することができる。本例では、除電器200にイオンバランスセンサ100が接続されていないときに第2モニタ画面540を表示せず、第1階層画面500の他の画面のみを表示するが、除電器200にイオンバランスセンサ100が接続されていないときに、第1階層画面として、第2モニタ画面540の代替の画面を表示する構成であってもよい。
【0111】
第1階層画面500は、使用者が表示しやすい画面であるため、除電器200による除電の状態を表示するための画面が含まれる。実用上、使用者にとって、除電器200の各種動作条件を変更する作業の頻度は、除電器200の除電の状態を確認する作業の頻度と比較して低いため、各種動作条件の設定は、第1階層画面500よりも深い第2階層画面以降で行われる。しかしながら、実用上、除電器200についての各種動作条件のうち、風量は、他の動作条件と比較して変更される頻度が高い。そこで、本例では、除電器200による除電の状態として、当該時点に設定されている風量を表示し、かつ、風量の変更を受け付けるための、風量調整画面510が第1階層画面500に含まれる。すなわち、除電器200についての各種動作条件のうち、風量は、使用者が第1階層画面500において設定可能である。
【0112】
図12は、風量調整画面510の一例を示す図である。図12に示すように、風量調整画面510には、運転状態表示領域501、イベント表示領域502、エコモード表示領域503およびロックモード表示領域504が表示される。また、風量調整画面510には、風量値表示領域511、風量ゲージ表示領域512および説明表示領域513がさらに表示される。運転状態表示領域501、イベント表示領域502、エコモード表示領域503およびロックモード表示領域504は、他の第1階層画面500においても表示される。
【0113】
運転状態表示領域501には、除電器200の運転状態が表示される。除電の実行中には「RUN」の文字列が表示され、除電の停止中には「STOP」の文字列が表示される。これらの表示は、図4の操作部260のパワーボタン267が短押しされるごとに切り替わる。イベント表示領域502には、エラーイベント、警報イベントおよび通知イベントに属するいずれかのイベントが検出されたとき、イベントの種類を示すアイコンおよび文字列が表示される。イベント表示領域502の詳細については、第1モニタ画面520において説明する。
【0114】
エコモード表示領域503には、除電器200がエコモードで動作しているか否かが表示される。除電器200がエコモードで動作している場合には「ECO」の文字列が表示され、除電器200がエコモードで動作していない場合には何も表示されない。ロックモード表示領域504には、除電器200がロックモードで動作しているか否かが表示される。除電器200がロックモードで動作している場合には鍵マークが表示され、除電器200がロックモードで動作していない場合には何も表示されない。また、ロックモードにおいて、パスワードが入力された場合、すなわちロックが一時的に解除された場合には、鍵マークが薄く(グレーアウト)表示される。
【0115】
風量値表示領域511には、「Air Vol. Level」の文字列が表示される。また、本実施の形態では、ファン201の回転速度に基づいて、ファン201による風量が風量レベル「1」~「7」の7段階にレベル分けされる。風量値表示領域511には、現在の風量レベルが数値により表示される。なお、図12の例では、除電器200がエコモードで動作している。そのため、風量レベルは、最も小さい「1」である。この状態で風量レベルを変更する場合には、エコモードを解除することの確認メッセージが風量調整画面510に表示されてもよい。
【0116】
風量ゲージ表示領域512には、現在の風量レベルがゲージにより表示される。本例では、ゲージは、横方向に延びる7つのバーを含む。7つのバーは、風量レベル「1」~「7」にそれぞれ対応する長さを有する。現在の風量レベルおよびそれ以下の風量レベルに対応するバーはカラー表示され、他のバーはグレーアウト表示される。カラーは風量レベルの範囲ごとに異なってもよい。例えば、風量レベル「1」および「2」のバーは緑色で表示され、風量レベル「3」~「5」のバーは黄色で表示され、風量レベル「6」および「7」のバーは赤色で表示されてもよい。
【0117】
説明表示領域513には、操作部260の一部のボタンについての簡易的な説明が表示される。図12の例では、左ボタン263または右ボタン264が操作されることにより、風量調整画面510が他の第1階層画面500に切り替わることが示される。また、決定ボタン265が操作されることにより、第1階層画面500が各種設定を行うためのメニュー画面(第2階層画面)に遷移することが示される。さらに、パワーボタン267が長押しされることにより、クリーン装置291による電極針en1,en2のクリーニングが開始されることが示される。
【0118】
風量調整画面510においては、上ボタン261が操作されることにより、風量レベルが「7」になるまで、上ボタン261が操作された回数だけ風量レベルが増加する。また、下ボタン262が操作されることにより、風量レベルが「1」になるまで、下ボタン262が操作された回数だけ風量レベルが減少する。
【0119】
図13は、第1モニタ画面520の一例を示す図である。図13に示すように、第1モニタ画面520には、運転状態表示領域501、イベント表示領域502、エコモード表示領域503およびロックモード表示領域504が表示される。また、第1モニタ画面520には、帯電レベル表示領域521、入出力表示領域522、除電性能表示領域523および説明表示領域524が表示される。
【0120】
本実施の形態に係る除電システム1においては、上記のように、外部イオン電流検出回路242により戻りイオンバランスが検出される。戻りイオンバランスによれば、対象物9の大まかな帯電量のレベル(帯電レベル)を算出し、算出結果を評価することができる。
【0121】
帯電レベル表示領域521には、「Charge Level」の文字列が表示される。また、帯電レベル表示領域521には、戻りイオンバランスに基づいて算出される対象物の帯電レベルがゲージにより表示される。なお、戻りイオンバランスが帯電レベルとして扱われてもよい。さらに、帯電レベル表示領域521には、帯電レベルのしきい値を示すラインが表示される。本例では、上下方向に延びるバーが左右方向に移動することにより、帯電レベルが表示される。
【0122】
具体的には、帯電レベルが0に近いときには、バーは中央に位置する。帯電レベルが負に大きいときには、バーは左方向に移動する。帯電レベルが正に大きいときには、バーは右方向に移動する。帯電レベルがしきい値の範囲内にあるか否かに応じて、表示されるバーの色が異なってもよい。図13の例では、帯電レベルがしきい値の範囲内にある。そのため、バーが例えば緑色で表示される。一方、帯電レベルがしきい値の範囲外にあるときには、バーが赤色で表示される。
【0123】
本実施の形態に係る除電器200には、図示しない第1~第3の入力端子と、図示しない第1~第3の出力端子とが設けられている。各端子には、プログラマブルコントローラ等の制御機器が接続可能である。
【0124】
入出力表示領域522には、「IN」の文字列とともに、第1~第3の入力端子をそれぞれ表すアイコンが左から右に順に並ぶように表示されている。また、「OUT」の文字列とともに、第1~第3の出力端子をそれぞれ表すアイコンが左から右に順に並ぶように表示されている。各アイコンは、当該アイコンに対応する入力端子または出力端子が使用状態にある場合に、第1の態様(例えば緑色)で表示される。一方、各アイコンは、当該アイコンに対応する入力端子または出力端子が不使用状態にある場合に、第2の態様(例えば白色)で表示される。図13の例においては、第1の態様で表示されるアイコンにハッチングが施されている。この場合、第2の入力端子および第2の出力端子が使用状態にあることがわかる。
【0125】
除電性能表示領域523には、除電性能に関連する測定値と、測定値に対応する所定の文字列が表示される。本例では、除電性能表示領域523には、除電性能のうち、除電時間に関連する測定値として、ファン201の風量レベルと、正イオン発生部211および正極側高圧回路212により発生するイオン量とが表示される。また、除電性能表示領域523には、「FAN」および「ION」の文字列が表示される。なお、除電時間は、規格で規定された電荷量を保持した金属板の電荷を中和するために要する時間を意味する。
【0126】
本例では、イオン量は、絶対値ではなく、除電器200の基準状態(例えば出荷時の状態)における発生イオン量と比較した相対値として表示される。そのため、イオン量の単位は%である。使用者は、除電性能表示領域523に表示された風量レベルおよびイオン量に基づいて、除電時間を評価することができる。具体的には、風量レベルが大きく、イオン量が大きいほど、多くのイオンを供給可能であるため、除電時間が短くなる。
【0127】
説明表示領域524には、風量調整画面510の説明表示領域513と同様に、操作部260の一部のボタンについての簡易的な説明が表示される。なお、図13の例では、説明表示領域524にパワーボタン267の長押しについての説明が表示されていないが、実施の形態はこれに限定されない。説明表示領域524が十分に広い表示スペースを有する場合には、説明表示領域513と同様に、説明表示領域524にパワーボタン267の長押しについての説明が表示されてもよい。
【0128】
上記のように、イベント表示領域502には、エラーイベント、警報イベントおよび通知イベントに属するいずれかのイベントが検出されたとき、イベントの種類を示すアイコンおよび文字列が表示される。図13では、エラーイベント、警報イベントおよび通知イベントの発生時に、それらのイベントにそれぞれ対応してイベント表示領域502に表示される3つの画像i1,i2,i3が示される。
【0129】
エラーイベントに対応する画像i1は、エラーイベントを示す円形状のアイコンと「ERROR」の文字列とが、特定の色(例えば赤色)で装飾された状態でイベント表示領域502に表示される。警報イベントに対応する画像i2は、警報イベントを示す三角形状のアイコンと「ALARM」の文字列とが、他の色(例えば黄色)で装飾された状態でイベント表示領域502に表示される。通知イベントに対応する画像i3は、通知イベントを示す菱形状のアイコンと「NOTICE」の文字列とを含み、さらに他の色(例えば橙色)でイベント表示領域502に表示される。
【0130】
図14は、第2モニタ画面530の一例を示す図である。図14に示すように、第2モニタ画面530には、運転状態表示領域501、イベント表示領域502、エコモード表示領域503およびロックモード表示領域504が表示される。また、第2モニタ画面530には、イオンバランス表示領域531、入出力表示領域532、温湿度表示領域533および説明表示領域534が表示される。
【0131】
イオンバランス表示領域531には、「Ion Balance」の文字列が表示される。また、イオンバランス表示領域531には、イオンバランスセンサ100により測定されたイオンバランスの数値が表示される。イオンバランスの単位はV(ボルト)である。さらに、イオンバランス表示領域531には、イオンバランスについて予め設定された上限のしきい値(後述するイオンバランスしきい値)が「Hi」の文字列とともに表示される。また、イオンバランスについて予め設定された下限のしきい値(後述するイオンバランスしきい値)が「Lo」の文字列とともに表示される。入出力表示領域532には、第1モニタ画面520の入出力表示領域522と同様に、入力端子および出力端子の使用状態が表示される。
【0132】
温湿度表示領域533には、イオンバランスセンサ100により測定された温度が「TMP」の文字列とともに表示される。また、温湿度表示領域533には、イオンバランスセンサ100により測定された湿度が「HUM」の文字列とともに表示される。説明表示領域534には、第1モニタ画面520の説明表示領域524と同様に、操作部260の一部のボタンについての簡易的な説明が表示される。
【0133】
第2モニタ画面530においても、イオンバランス、温度または湿度に関するイベントの発生が検出された場合には、イベント表示領域502にイベントの種類を示す図13の画像i1~i3のいずれかが表示される。また、「Ion Balance」、「TMP」または「HUM」等の文字列が、イベント表示領域502に表示される画像i1~i3の装飾色と同様の色で装飾された状態で表示される。
【0134】
図15は、イベント履歴画面540の一例を示す図である。図16に示すように、イベント履歴画面540には、運転状態表示領域501、イベント表示領域502、エコモード表示領域503およびロックモード表示領域504が表示される。また、イベント履歴画面540には、全イベント表示領域541および説明表示領域542が表示される。
【0135】
全イベント表示領域541には、「All Event」の文字列が表示される。また、全イベント表示領域541には、検出された全イベントの発生日時が上下方向に並ぶように表示される。検出されたイベントの各々について、当該イベントの種類を示すアイコンが発生日時の隣に表示される。このアイコンは、イベントの検出時にイベント表示領域502に表示されるアイコンと同じである。
【0136】
使用者は、全イベント表示領域541のアイコンの種類を視認することにより、発生した各イベントの種類を容易に認識することができる。図15の例では、全イベント表示領域541に3つのイベントの発生日時が表示されている。これらの3つのイベントの種類は、上からそれぞれエラーイベント、警報イベントおよびエラーイベントである。
【0137】
全イベント表示領域541に1または複数の発生日時が表示される場合には、1または複数の発生日時のうち一の発生日時が、使用者により選択されているイベントの発生日時として他の発生日時と区別可能な態様で表示される。使用者は、操作部260の上ボタン261または下ボタン262を操作することにより、所望のイベントを選択することができる。
【0138】
説明表示領域542には、操作部260の一部のボタンについての簡易的な説明が表示される。図15の例では、左ボタン263または右ボタン264が操作されることにより、イベント履歴画面540が他の第1階層画面500に切り替わることが示される。また、決定ボタン265が操作されることにより、使用者が選択したイベントの詳細を示すイベント詳細画面に遷移することが示される。
【0139】
本例では、第1階層画面500として、一のイベント履歴画面540が表示されるが、実施の形態はこれに限定されない。第1階層画面500は、上記のイベント履歴画面540に加えて、検出された全てのイベントから特定の種類のイベントの発生日時のみを表示する他の1または複数のイベント履歴画面を含んでもよい。この場合、第1モニタ画面520、第2モニタ画面530およびイベント履歴画面540に加えて、他の1または複数のイベント履歴画面が、第1階層画面500として表示部250に切替可能に表示される。
【0140】
表示部250に風量調整画面510、第1モニタ画面520または第2モニタ画面530が表示された状態で、操作部260の決定ボタン265が操作されることにより、第2階層画面が表示部250に表示される。図16は、第2階層画面の一例を示す図である。図16の第2階層画面600は、各種設定を行うためのメニュー画面である。なお、表示部250に第2階層画面600が表示された状態で、操作部260の取消ボタン266が操作されることにより、表示部250の表示が直前の第1階層画面500に戻る。
【0141】
図16に示すように、第2階層画面600には、複数の設定対象の項目が上下方向に並ぶように表示される。複数の設定対象の項目は、除電器200の基本設定、イオンバランスセンサ100に関する設定、および除電器200の高度な設定等を含む。
【0142】
具体的には、第2階層画面600においては、除電器200の基本設定の項目が「A:Basic Setting」の文字列で示される(図16の白抜きの矢印A1)。また、イオンバランスセンサ100に関する設定の項目が「B:FB Sensor」の文字列で示される(図16の白抜きの矢印A2)。さらに、除電器200の高度な設定の項目が「E:Advance Setting」の文字列で示される(図16の白抜きの矢印A3)。使用者は、操作部260の上ボタン261または下ボタン262を操作することにより、所望の項目を選択することができる。選択された項目は、他の項目と区別可能な態様で表示される。図16の例では、ハッチングで示すように、除電器200の基本設定の項目が選択されている。
【0143】
ここで、イオンバランスセンサ100に関する設定は、除電器200にイオンバランスセンサ100が接続されていない場合に不要な設定対象である。そのため、イオンバランスセンサ100に関する設定の項目は、除電器200にイオンバランスセンサ100が接続されている場合に、使用者により選択可能となる。一方、イオンバランスセンサ100に関する設定の項目は、除電器200にイオンバランスセンサ100が接続されていない場合に、使用者により選択不可能となり、他の項目に比べて薄く(グレーアウト)表示される。
【0144】
第2階層画面600においていずれかの設定対象の項目が選択された状態で決定ボタン265が操作されると、選択された項目に対応する設定を行うための第3階層画面以降の設定画面が表示部250に表示される。
【0145】
除電器200の経年的な使用あるいは除電器200の使用環境等により、帯電レベルの算出性能が変化する可能性がある。この場合、図13の帯電レベル表示領域521に表示される帯電レベルの信頼性が低下する。そこで、除電器200は、図13の帯電レベル表示領域521に表示される帯電レベルについての校正(以下、帯電レベル校正と呼ぶ。)が可能に構成されている。
【0146】
帯電レベル校正は、例えば帯電レベル表示領域521に表示される帯電レベルを他の計測機器により測定された実際の対象物9の帯電量に応じた値に調整することを意味する。本例の帯電レベル校正では、対象物9の実際の帯電量が0である場合に帯電レベルが基準値を示すように、除電器200内部で算出される帯電レベルにオフセットが設定される(帯電レベルのゼロ点設定)。
【0147】
使用者は、除電器200にイオンバランスセンサ100が接続されているか否かにかかわらず、操作部260を操作することにより帯電レベル校正を行うことができる。使用者が、帯電レベル校正を行う場合の操作部260の操作例を、表示部250に表示される画面の遷移とともに説明する。
【0148】
図17は、帯電レベル校正時における表示部250の画面遷移の一例を示す図である。帯電レベル校正が行われる場合には、図16の第2階層画面600において、操作部260の上ボタン261または下ボタン262が操作されることにより、除電器200の基本設定の項目(図16の白抜きの矢印A1で示される項目)が選択される。また、除電器200の基本設定の項目が選択された状態で、決定ボタン265が操作される。
【0149】
これにより、図17の上段に示すように、表示部250に、除電器200の基本設定に対応する第3階層画面610が表示される。図17の第3階層画面610には、除電器200の基本設定として分類された複数の設定対象の項目が上下方向に並ぶように表示される。第3階層画面610に示される複数の設定対象の項目は、帯電レベル校正、エコモードに関する設定および帯電レベルのしきい値設定を含む。
【0150】
具体的には、図17の第3階層画面610においては、帯電レベル校正の項目が「Ion Balance Adjustment」の文字列で示される。また、エコモードに関する設定の項目が「ECO-Mode」の文字列で示される。さらに、帯電レベルのしきい値設定の項目が「Cheg Lvl Threshold」の文字列で示される。さらに、第3階層画面610においては、上記の各種設定項目とともに、表示部250に表示される画面を直前の画面(図16の第2階層画面600)に戻すための項目が「Return」の文字列で示される。
【0151】
この状態で、操作部260の上ボタン261または下ボタン262が操作されることにより、帯電レベル校正の項目が選択され、決定ボタン265が操作される。これにより、図17の中段に示すように、表示部250に、帯電レベル校正画面691が表示される。
【0152】
帯電レベル校正画面691においては、画面略中央に数値表示枠692およびレベルゲージ693が表示される。数値表示枠692には、帯電レベル校正として調整される帯電レベルのオフセット値が表示される。また、レベルゲージ693においては、数値表示枠692に数値表示される帯電レベルのオフセット値が帯状のゲージにより表示される。より具体的には、レベルゲージ693は、横方向に延びるように表示され、一定範囲内のオフセット値を表すバー部分を含む。また、レベルゲージ693は、バー部分上で左右方向に移動可能に表示されるマーカを含む。バー部分におけるマーカの位置が、数値表示枠692に表示される帯電レベルのオフセット値に対応する。操作部260の左ボタン263または右ボタン264が操作されることにより、帯電レベルのオフセット値が増減する。図17の下段には、帯電レベルの校正中の帯電レベル校正画面691の一例が示される。
【0153】
数値表示枠692およびレベルゲージ693に表示される帯電レベルのオフセット値が使用者の所望の値に調整された後、決定ボタン265が操作される。それにより、数値表示枠692およびレベルゲージ693により表示された帯電レベルのオフセット値が設定される。また、表示部250に表示される画面が、帯電レベル校正画面691から第3階層画面610に戻る。
【0154】
帯電レベル校正で設定される帯電レベルのオフセット値は、図13の第1モニタ画面520で帯電レベルを表示するための情報として図3の除電器記憶部270に記憶される。
【0155】
イオンバランスセンサ100および除電器200の経年的な使用あるいはイオンバランスセンサ100および除電器200の使用環境等により、イオンバランスセンサ100による各種物理量の検出性能が変化する可能性がある。この場合、図14のイオンバランス表示領域531に表示されるイオンバランスの数値の信頼性が低下する。そこで、除電器200は、図14のイオンバランス表示領域531に表示されるイオンバランスについての校正(以下、イオンバランス校正と呼ぶ。)が可能に構成されている。
【0156】
イオンバランス校正は、帯電レベル校正とほぼ同様に、例えばイオンバランス表示領域531に表示される対象空間3のイオンバランスの値を他の計測機器により測定された実際の対象空間3のイオンバランスの値に調整することを意味する。本例のイオンバランス校正では、対象空間3の実際のイオンバランスの値が0である場合にイオンバランス表示領域531に表示されるイオンバランスの値が基準値(0)を示すように、除電器200またはイオンバランスセンサ100内部で検出されるイオンバランスにオフセットが設定される(イオンバランスのゼロ点設定)。
【0157】
使用者は、除電器200にイオンバランスセンサ100が接続されている場合に、操作部260を操作することによりイオンバランス校正を行うことができる。使用者が、イオンバランス校正を行う場合の操作部260の操作例を、表示部250に表示される画面の遷移とともに説明する。
【0158】
図18は、イオンバランス校正時における表示部250の画面遷移の一例を示す図である。上記のように、除電器200にイオンバランスセンサ100が接続されている場合には、図16の第2階層画面600においてイオンバランスセンサ100に関する設定の項目(図16の白抜きの矢印A2で示される項目)が選択可能となっている。そこで、イオンバランス校正が行われる場合には、図16の第2階層画面600において、操作部260の上ボタン261または下ボタン262が操作されることにより、イオンバランスセンサ100に関する設定の項目が選択される。また、イオンバランスセンサ100に関する設定の項目が選択された状態で、決定ボタン265が操作される。
【0159】
これにより、図18の上段に示すように、表示部250に、イオンバランスセンサ100に関する設定に対応する第3階層画面620が表示される。図18の第3階層画面620には、イオンバランスセンサ100に関する設定として分類された複数の設定対象の項目が上下方向に並ぶように表示される。第3階層画面620に示される複数の設定対象の項目は、センサ接続設定、設置異常設定およびイオンバランス検出設定を含む。
【0160】
具体的には、第3階層画面620においては、センサ接続設定の項目が「Connection Settings」の文字列で示される。また、設置異常設定の項目が「Incorrect Pos.Alarm」の文字列で示される。さらに、イオンバランス検出設定の項目が「Ion Balance」の文字列で示される。さらに、第3階層画面620においては、上記の各種設定項目とともに、表示部250に表示される画面を直前の画面(図16の第2階層画面600)に戻すための項目が「Return」の文字列で示される。
【0161】
この状態で、操作部260の上ボタン261または下ボタン262が操作されることにより、イオンバランス検出設定の項目が選択され、決定ボタン265が操作される。これにより、図18の中段に示すように、表示部250に、イオンバランス検出設定に対応する第4階層画像630が表示される。
【0162】
図18の第4階層画像630には、イオンバランス検出設定として分類された複数の設定対象の項目が上下方向に並ぶように表示される。第4階層画像630に示される複数の設定対象の項目は、イオンバランスしきい値設定、イオンバランスの平均化設定およびイオンバランス校正を含む。
【0163】
具体的には、第4階層画像630においては、イオンバランスしきい値設定の項目が「Ion Balance Threshold」の文字列で示される。また、イオンバランスの平均化設定の項目が「Ion bal.averaging rate」の文字列で示される。さらに、イオンバランス校正の項目が「Ion Balance Offset」の文字列で示される。さらに、第4階層画像630においては、上記の各種設定項目とともに、表示部250に表示される画面を直前の画面(図18の上段の第3階層画面620)に戻すための項目が「Return」の文字列で示される。
【0164】
なお、イオンバランスしきい値は、上記のように図14のイオンバランス表示領域531に表示される値であり、例えば対象空間3のイオンバランスが除電条件として予め許容された範囲から逸脱したか否かを判定するために用いられる。また、本実施の形態に係る除電器200においては、所定の周期でイオンバランスセンサ100により検出されたイオンバランスの複数の検出値が平均化される。平均化された検出値が、図14のイオンバランス表示領域531に表示される。イオンバランスの平均化設定は、平均化対象となる検出値の個数を設定するものである。
【0165】
表示部250に図18の中段の第4階層画像630が表示された状態で、操作部260の上ボタン261または下ボタン262が操作されることにより、イオンバランス校正の項目が選択され、決定ボタン265が操作される。これにより、図18の下段に示すように、表示部250に、イオンバランス校正に対応するイオンバランス校正画面694が表示される。
【0166】
イオンバランス校正画面694においては、画面略中央に数値表示枠695が表示される。数値表示枠695には、イオンバランス校正として調整されるイオンバランスのオフセット値が表示される。また、数値表示枠695の右側には、イオンバランスの単位を示すV(ボルト)が表示される。本例では、操作部260の上ボタン261または下ボタン262が操作されることにより、イオンバランスのオフセット値が増減する。
【0167】
イオンバランスのオフセット値が使用者の所望の値に調整された後、決定ボタン265が操作される。それにより、数値表示枠695により表示された帯電レベルのオフセット値(図18の例では-50.0V)が設定される。また、表示部250に表示される画面が、イオンバランス校正画面694から、イオンバランス検出設定に対応する第4階層画像630に戻る。
【0168】
イオンバランス校正で設定されるイオンバランスのオフセット値は、図14の第2モニタ画面530でイオンバランスを表示するための情報として図3の除電器記憶部270に記憶される。
【0169】
図18の例では、第4階層画像630に表示される複数の項目のうちイオンバランス校正を行う場合の操作例について説明したが、使用者は、第4階層画像630でイオンバランスしきい値設定の項目を選択することによりイオンバランスしきい値を設定することもできる。また、使用者は、第4階層画像630でイオンバランスの平均化設定を選択することにより、表示部250に表示されるイオンバランスの値を得るための平均化対象となる検出値の個数を設定することもできる。これらの設定時には、図18の下段に示されるイオンバランス校正画面694と同様に、各項目を設定するための専用画面が表示部250に表示される。
【0170】
除電システム1においては、使用者は、イオンバランスセンサ100に関連する除電条件として、上記の各種設定項目の他に、イオンバランスセンサ100により検出される温度および湿度について温度しきい値および湿度しきい値を設定することができる。
【0171】
この場合においても、表示部250には、使用者の操作部260の操作に応じて、温度しきい値を設定するための画面および湿度しきい値を設定するための画面が表示される。しかしながら、除電器200においてはイオンバランスセンサ100が接続されていない限り、対象空間3の温度および湿度に関する情報は取得されない。そのため、除電器200にイオンバランスセンサ100が接続されていない場合には、使用者による操作部260の操作が行われる場合でも、温度しきい値および湿度しきい値を設定するための画面は、表示部250には表示されない。
【0172】
8.イオンバランスセンサ100と除電器200との接続状態に応じた処理
上記のように、図3の除電器制御部230は、除電器200にイオンバランスセンサ100が接続されている場合と、除電器200にイオンバランスセンサ100が接続されている場合とで異なる制御を行う。この制御の切替処理を、制御切替処理と呼ぶ。制御切替処理は、除電器制御部230のCPUが、図3の除電器記憶部270または除電器制御部230のメモリに予め記憶された制御切替プログラムを実行することにより行われる。
【0173】
図19は、制御切替プログラムが実行されることにより実現される除電器制御部230の各種機能部を示すブロック図である。図19では、除電器制御部230の機能部とともに、除電器制御部230の複数の構成要素のうち一部の構成要素が示される。
【0174】
図19に示すように、除電器制御部230は、機能部として、接続判定部231、高圧回路制御部232、設定表示管理部233および表示制御部234を含む。なお、これらの複数の機能部の一部または全ては、電子回路等のハードウェアにより実現されてもよい。
【0175】
図19の各機能部(231,232,233,234)の動作について、制御切替処理のフローチャートを用いて説明する。図20は、制御切替処理の一例を示すフローチャートである。図20の制御切替処理は、除電器200がオン状態にある間、一定周期で繰り返される。
【0176】
制御切替処理が開始されると、図19の接続判定部231は、除電器200にイオンバランスセンサ100が接続されているか否かを判定する(ステップS101)。この判定処理は、例えば除電器通信部280にイオンバランスセンサ100から何らかの信号が受信されたか否かに基づいて行われてもよい。
【0177】
なお、除電器200において、中継ケーブルCA1が接続される端子部が、当該端子部に中継ケーブルCA1が接続されているか否かを検出可能に構成されている場合を想定する。この場合、接続判定部231は、当該端子部の検出結果に基づいて除電器200にイオンバランスセンサ100が接続されているか否かを判定してもよい。
【0178】
次に、除電器200にイオンバランスセンサ100が接続されている場合、高圧回路制御部232は、イオンバランスセンサ100により検出されるイオンバランスに基づいて、正極側高圧回路212および負極側高圧回路222を制御する(ステップS102)。また、設定表示管理部233は、除電器200の各構成要素に対してイオンバランスセンサ100に関する制御動作および設定動作を許容し(ステップS103)、制御切替処理を終了する。
【0179】
上記のステップS101において、除電器200にイオンバランスセンサ100が接続されていない場合、高圧回路制御部232は、外部イオン電流検出回路242により検出される戻りイオンバランスに基づいて、正極側高圧回路212および負極側高圧回路222を制御する(ステップS104)。また、設定表示管理部233は、除電器200の各構成要素に対してイオンバランスセンサ100に関する制御動作および設定動作を制限し(ステップS105)、制御切替処理を終了する。
【0180】
イオンバランスセンサ100に関する制御動作および設定動作が許容される場合、表示制御部234は、外部イオン電流検出回路242による戻りイオンバランスの検出結果に関連する情報とともに、イオンバランスセンサ100によるイオンバランスの検出結果に関連する情報を表示部250に表示させる。
【0181】
一方、イオンバランスセンサ100に関する制御動作および設定動作が制限される場合、表示制御部234は、外部イオン電流検出回路242による戻りイオンバランスの検出結果に関連する情報を表示部250に表示させるが、イオンバランスセンサ100に関連する情報を表示部250に表示させない。あるいは、表示制御部234は、イオンバランスセンサ100に関連する情報については、設定作業が不能であることを示しつつ表示部250に表示させる(グレーアウト等)。
【0182】
具体例として、上記の図11の例においては、第1モニタ画面520が外部イオン電流検出回路242による戻りイオンバランスの検出結果に関連する情報を示す画面に相当する。また、第2モニタ画面530がイオンバランスセンサ100に関連する情報を示す画面に相当する。
【0183】
これにより、表示制御部234は、イオンバランスセンサ100に関する制御動作および設定動作が許容される場合、使用者の操作部260の操作に基づいて、第1モニタ画面520および第2モニタ画面530を含む4つの第1階層画面500を表示部250に表示させる。一方、表示制御部234は、イオンバランスセンサ100に関する制御動作および設定動作が制限される場合、使用者の操作部260の操作に基づいて、第2モニタ画面530を除く3つの第1階層画面500を表示部250に表示させる。
【0184】
9.効果
(a)上記のイオンバランスセンサ100によれば、対象空間3に検出プレート110Aが配置されることにより、イオン検出回路110Bから出力される信号の電圧波形に基づいて、対象空間3のイオンバランスが検出される。また、イオンバランスの検出結果を示すイオンバランス信号が生成される。これにより、イオンバランス信号に基づいて、対象空間3のイオンバランスを把握することができる。
【0185】
さらに、イオン検出回路110Bから出力される信号の電圧波形に基づいて、対象空間3の環境に関する情報として対象空間3のイオン電流が検出される。また、イオン電流の検出結果を示すイオン電流信号が生成される。これにより、イオン電流信号に基づいて、対象空間3のイオン電流を把握することができる。この場合、使用者は、対象空間3のイオン電流の大きさに基づいて、除電器200の設置状態を調整すること等が可能になる。
【0186】
(b)上記のイオンバランスセンサ100によれば、対象空間3にセンサ筐体400が配置されることにより、温度検出素子120の出力に基づいて対象空間3の温度を管理することができる。また、湿度検出素子130の出力に基づいて対象空間3の湿度を管理することができる。
【0187】
(c)上記のイオンバランスセンサ100においては、対象空間3のイオンバランス、イオン電流、温度および湿度をそれぞれ検出するための構成と、センサ通信部150と、センサ電源部160とが、検出プレート110Aとともにセンサ筐体400に一体的に設けられる。センサ筐体400は、中継ケーブルCA1を介して除電器200に接続されている。したがって、センサ筐体400は、除電器200から離間した対象空間3内に容易に配置することができる。それにより、イオンバランスセンサ100の取り扱い性が向上する。
【0188】
さらに、除電器200には、イオンバランスセンサ100からイオンバランス信号、イオン電流信号、温度信号および湿度信号が送られる。それにより、除電器200においては、イオンバランス信号、イオン電流信号、温度信号および湿度信号に基づく動作状態の制御および設置状態の調整が可能になる。
【0189】
10.他の実施の形態
(a)上記実施の形態に係るイオンバランスセンサ100は、除電システム1の一部の構成要素として除電器200に接続された状態で用いられるが、本発明はこれに限定されない。
【0190】
イオンバランスセンサ100は、除電器200に接続されることなく、除電器200とは別体で構成されてもよい。この場合、イオンバランスセンサ100は、バッテリ等により除電器200とは分離された電源装置を有するとともに、当該電源装置の電力により動作可能に構成される。また、この場合、そのイオンバランスセンサ100は、検出プレート110Aを取り囲む空間のイオンバランスおよびイオン電流の検出結果を使用者に提示する表示装置を有してもよい。
【0191】
(b)上記のイオンバランスセンサ100および除電器200のうち少なくとも一方は、音声出力装置を有してもよい。この場合、音声出力装置は、イオンバランスセンサ100において検出されたイオンバランスおよびイオン電流が許容条件を満たさない場合に、イオンバランスおよびイオン電流が許容条件を満たさない旨のメッセージまたは警報を音声出力してもよい。
【0192】
(c)上記実施の形態に係るイオンバランスセンサ100は、温度検出素子120および湿度検出素子130を有するが、対象空間3のイオン電流が検出可能である場合、温度検出素子120および湿度検出素子130は一方が設けられなくてもよいし、両方が設けられなくてもよい。また、イオンバランスセンサ100が温度検出素子120および湿度検出素子130のうち少なくとも一方を有する場合、イオンバランスセンサ100は対象空間3のイオン電流を検出不可能に構成されていてもよい。
【0193】
(d)上記実施の形態に係るイオンバランスセンサ100においては、センサ筐体400と除電器200とをつなぐ中継ケーブルCA1は、その一部または全体がセンサ筐体400に対して着脱可能に構成されてもよい。また、中継ケーブルCA1は、除電器200に対して着脱可能に構成されてもよい。
【0194】
(e)上記実施の形態に係るイオン検出回路110Bにおいて、変調電圧源113は、周期性を有する変調電圧として交流電圧を発生するが、本発明はこれに限定されない。変調電圧源113は、周期性を有する変調電圧として矩形波またはのこぎり波等の他の変調電圧を発生してもよい。
【0195】
(f)上記実施の形態に係るイオンバランスセンサ100においては、センサ筐体400内に1枚の回路基板440が設けられるが、センサ筐体400内には複数の回路基板が設けられてもよい。この場合、複数の回路基板に図2のイオン検出回路110B、温度検出素子120、湿度検出素子130、センサ表示灯140、センサ通信部150、センサ電源部160およびセンサ制御部190が実装される。このように、複数の回路基板を用いる場合には、温度検出素子120および湿度検出素子130を、発熱源(イオン検出回路110B、センサ表示灯140、センサ通信部150、センサ電源部160およびセンサ制御部190)が実装される回路基板と異なる回路基板に実装することが好ましい。
【0196】
(g)上記実施の形態に係るイオンバランスセンサ100においては、イオン電流、温度、湿度に加えて、またはイオン電流、温度、湿度に代えて、対象空間3の環境に関する情報として、対象空間3の圧力等の他の物理量が検出されてもよい。
【0197】
(h)上記実施の形態に係る除電器200は、エコモードで動作可能に構成されるが、本発明はこれに限定されない。除電器200は、エコモードで動作不可能に構成されてもよい。また、上記実施の形態に係る除電器200は、ロックモードで動作可能に構成されるが、本発明はこれに限定されない。除電器200は、ロックモードで動作不可能に構成されてもよい。
【0198】
11.請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることができる。
【0199】
上記実施の形態においては、対象空間3が対象空間の例であり、検出プレート110Aが検出プレートの例であり、イオンバランス信号が第1の情報信号の例であり、イオン検出回路110Bおよびバランス情報生成部191が第1の情報生成部の例であり、イオン電流信号、温度信号および湿度信号が第2の情報信号の例であり、イオン検出回路110B、イオン量情報生成部192、温度情報生成部193および湿度情報生成部194が第2の情報生成部の例であり、センサ通信部150がセンサ通信部の例であり、イオンバランスセンサ100がイオンバランスセンサの例である。
【0200】
また、固定抵抗112が固定抵抗の例であり、ノードNがノードの例であり、変調電圧源113が変調電圧源の例であり、オペアンプ111、バランス情報生成部191およびイオン量情報生成部192が電位検出部の例であり、イオン量情報生成部192がイオン量検出部の例であり、回路基板440が1または複数の回路基板の例であり、センサ筐体400がセンサ筐体の例であり、中継ケーブルCA1が中継ケーブルの例である。
【0201】
また、検出面110Sが検出プレートの一面の例であり、温度検出素子120および湿度検出素子130が検出素子の例であり、第1の端部410がセンサ筐体の第1の端部の例であり、第2の端部420がセンサ筐体の第2の端部の例であり、保持具900が保持具の例であり、センサ筐体400の2つの取付孔421が取付部の例である。
【0202】
また、除電器200の正イオン発生部211、正極側高圧回路212、負イオン発生部221および負極側高圧回路222がイオン発生部の例であり、除電器通信部280が除電器通信部の例であり、除電器制御部230がイオン制御部の例であり、除電器記憶部270が環境状態記憶部の例であり、除電システム1が除電システムの例であり、センサ電源部160が第1の電源部の例であり、除電器電源部290が第2の電源部の例である。
【0203】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、また、上記の実施の形態の一部の構成を組み合わせて実施することが可能である。
【符号の説明】
【0204】
1…除電システム,2…ベルトコンベア,3…対象空間,9…対象物,11…除電器筐体,12…送風口,100…イオンバランスセンサ,110A…検出プレート,110B…イオン検出回路,110S…検出面,111…オペアンプ,112…固定抵抗,113…変調電圧源,114…可変抵抗,115…電圧源,120…温度検出素子,130…湿度検出素子,140…センサ表示灯,150…センサ通信部,160…センサ電源部,190…センサ制御部,191…バランス情報生成部,192…イオン量情報生成部,193…温度情報生成部,194…湿度情報生成部,195…表示灯制御部,200…除電器,201…ファン,201a…回転軸,202…ファン駆動部,203…検知電極,211…正イオン発生部,211a,221a…円環状部材,212…正極側高圧回路,221…負イオン発生部,222…負極側高圧回路,230…除電器制御部,231…接続判定部,232…高圧回路制御部,233…設定表示管理部,234…表示制御部,240…イオン情報生成部,241…内部イオン電流検出回路,242…外部イオン電流検出回路,250…表示部,260…操作部,261…上ボタン,262…下ボタン,263…左ボタン,264…右ボタン,265…決定ボタン,266…取消ボタン,267…パワーボタン,270…除電器記憶部,280…除電器通信部,290…除電器電源部,291…クリーン装置,292…表示灯,300…処理装置,310…本体表示部,320…本体操作部,400…センサ筐体,410…第1の端部,411…貫通孔,420…第2の端部,421…取付孔,430…筐体中央部,431…プレート取付部,432…表示灯開口,440…回路基板,500…第1階層画面,501…運転状態表示領域,502…イベント表示領域,503…エコモード表示領域,504…ロックモード表示領域,510…風量調整画面,511…風量値表示領域,512…風量ゲージ表示領域,513…説明表示領域,520…第1モニタ画面,521…帯電レベル表示領域,522…入出力表示領域,523…除電性能表示領域,524…説明表示領域,530…第2モニタ画面,531…イオンバランス表示領域,532…入出力表示領域,533…温湿度表示領域,534…説明表示領域,540…イベント履歴画面,541…全イベント表示領域,542…説明表示領域,600…第2階層画面,610…第3階層画面,620…第3階層画面,630…第4階層画像,691…帯電レベル校正画面,692…数値表示枠,693…レベルゲージ,694…イオンバランス校正画面,695…数値表示枠,900…保持具,910…センサ保持部,911…取付孔,920…固定部,921…ケーブル用開口,922…長孔,CA1,CA2…中継ケーブル,N…ノード,Rm…抵抗値,SC…ねじ,VS…仮想面,en1,en2…電極針,i1~i3…画像
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