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特開2024-37648除電システム、制御装置、管理方法および管理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037648
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】除電システム、制御装置、管理方法および管理プログラム
(51)【国際特許分類】
   H05F 3/04 20060101AFI20240312BHJP
   H01T 19/00 20060101ALI20240312BHJP
   H01T 23/00 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
H05F3/04 A
H01T19/00
H01T23/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177305
(22)【出願日】2022-11-04
(31)【優先権主張番号】P 2022142586
(32)【優先日】2022-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000129253
【氏名又は名称】株式会社キーエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】大上 由里
【テーマコード(参考)】
5G067
【Fターム(参考)】
5G067AA21
5G067DA01
5G067DA21
5G067DA22
5G067EA01
(57)【要約】
【課題】除電器の除電性能を容易にかつ高い信頼性で記録することが可能な除電システム、制御装置、管理方法および管理プログラムを提供する。
【解決手段】除電システム1は、イオンを放出して対象物を除電する除電器200と、制御装置300とを備える。また、除電システム1は、イオン発生部、測定値取得部351およびレポート出力部357を含む。イオン発生部は、イオンを発生させる。測定値取得部351は、イオン量の測定値を取得する。レポート出力部357は、測定値を除電性能として、基準状態におけるイオン量の値と対比した除電情報を表示するレポートを出力する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンを放出して対象物を除電する除電器と、制御装置とを備える除電システムであって、
前記イオンを発生させるイオン発生部と、
イオン量の測定値を取得する測定値取得部と、
前記測定値を除電性能として、基準状態におけるイオン量の値と対比した除電情報を表示するレポートを出力するレポート出力部とを備える、除電システム。
【請求項2】
前記基準状態におけるイオン量の値に対する前記測定値の比を前記除電情報として算出する算出部をさらに備える、請求項1記載の除電システム。
【請求項3】
前記基準状態におけるイオン量の値を記憶する記憶部をさらに備え、
前記算出部は、前記記憶部に記憶されたイオン量の値に基づいて前記除電情報を算出する、請求項2記載の除電システム。
【請求項4】
前記レポート出力部は、所定の時間間隔で記録される前記除電情報を表示する前記レポートを定期レポートとして出力する、請求項1~3のいずれか一項に記載の除電システム。
【請求項5】
前記レポート出力部は、前記イオン発生部の清掃が行われたときの前記除電情報を表示する前記レポートをクリーンレポートとして出力する、請求項1~3のいずれか一項に記載の除電システム。
【請求項6】
前記クリーンレポートは、前記イオン発生部の清掃が行われたときの前記除電情報を、前記イオン発生部の清掃が行われる前後の前記除電情報と比較可能に表示する、請求項5記載の除電システム。
【請求項7】
前記レポートは、前記測定値が取得された時間帯をさらに表示する、請求項1~3のいずれか一項に記載の除電システム。
【請求項8】
前記除電性能の良否を判定する判定部をさらに備え、
前記レポートは、前記判定部による判定結果をさらに表示する、請求項1~3のいずれか一項に記載の除電システム。
【請求項9】
前記除電情報に付帯する付帯情報を取得する付帯情報取得部をさらに備え、
前記レポートは、前記付帯情報取得部により取得された前記付帯情報をさらに表示する、請求項1~3のいずれか一項に記載の除電システム。
【請求項10】
前記付帯情報は、温度、湿度、イオンバランスおよび前記イオン発生部の駆動パラメータの少なくとも1つを含む、請求項9記載の除電システム。
【請求項11】
前記除電情報に付帯する付帯情報の入力を受け付ける付帯情報受付部をさらに備え、
前記レポートは、前記付帯情報受付部により受け付けられた前記付帯情報をさらに表示する、請求項1~3のいずれか一項に記載の除電システム。
【請求項12】
前記イオン発生部による発生イオン量を測定する測定部をさらに備え、
前記測定値取得部は、前記測定部による前記測定値を取得し、
前記レポートは、前記測定値を前記除電性能として、前記基準状態における発生イオン量の値と対比した前記除電情報を表示する、請求項1~3のいずれか一項に記載の除電システム。
【請求項13】
前記イオン発生部による発生イオンの送り出し量を示す付帯情報を取得する付帯情報取得部をさらに備える、請求項12記載の除電システム。
【請求項14】
前記イオン発生部による発生イオンの前記対象物への到達有無を示す付帯情報を取得する付帯情報取得部をさらに備える、請求項12記載の除電システム。
【請求項15】
前記対象物への到達イオン量を測定するセンサをさらに備え、
前記測定値取得部は、前記センサによる前記測定値を取得し、
前記レポートは、前記測定値を前記除電性能として、前記基準状態における到達イオン量の値と対比した前記除電情報を表示する、請求項1~3のいずれか一項に記載の除電システム。
【請求項16】
イオンを放出して対象物を除電する除電器と通信可能な制御装置であって、
イオン量を測定した測定値を取得する測定値取得部と、
前記測定値を除電性能として、基準状態におけるイオン量の値と対比した除電情報を表示するレポートを出力するレポート出力部とを備える、制御装置。
【請求項17】
イオンを放出して対象物を除電する除電器と通信可能な制御装置で実行される管理方法あって、
イオン量を測定した測定値を取得する測定値取得ステップと、
前記測定値を除電性能として、基準状態におけるイオン量の値と対比した除電情報を表示するレポートを出力するレポート出力ステップと、を制御装置に実行させる管理方法。
【請求項18】
イオンを放出して対象物を除電する除電器と通信可能なコンピュータで実行される管理プログラムあって、
イオン量を測定した測定値を取得する測定値取得ステップと、
前記測定値を除電性能として、基準状態におけるイオン量の値と対比した除電情報を表示するレポートを出力するレポート出力ステップと、を管理コンピュータに実行させる管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除電対象物を除電する除電システム、制御装置、管理方法および管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスまたは液晶表示装置等の製造ラインにおいて、製造に用いられる各部品が帯電していると、当該部品に異物が付着することにより製品の歩留まりが低下する可能性がある。各部品が帯電することに起因する歩留まりの低下を抑制するために、除電器が用いられる。
【0003】
特許文献1に記載された除電装置(除電器)においては、正イオンおよび負イオンを含むエアが、ノズルから被除電物に向けて噴射される。また、除電装置においては、被除電物の周囲のイオンバランスが測定される。測定結果に基づいて、ノズルから被除電物に供給される正イオンの量および負イオンの量が調整される。これにより、被除電物に蓄積された電荷が除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-258108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
除電器の経時的な性能の変化を把握するため、各種規格に従って、定期的に除電性能を示すパラメータの測定および記録が行われることがある。除電性能を示すパラメータは、一般にイオンバランスおよび除電時間であり、除電時間はチャージプレートモニタにより測定することが可能である。しかしながら、チャージプレートモニタを用いて除電時間を測定するためには、製造ラインの稼働を停止させる必要がある。また、除電時間の測定および記録を頻繁に行うと、使用者の負担が増加する。さらに、記録の改ざんを行うことは比較的容易であるため、作成された記録の信頼性は高いとは限らない。
【0006】
本発明の目的は、除電器の除電性能を容易にかつ高い信頼性で記録することが可能な除電システム、制御装置、管理方法および管理プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に従う除電システムは、イオンを放出して対象物を除電する除電器と、制御装置とを備える除電システムであって、前記イオンを発生させるイオン発生部と、イオン量の測定値を取得する測定値取得部と、前記測定値を除電性能として、基準状態におけるイオン量の値と対比した除電情報を表示するレポートを出力するレポート出力部とを備える。
【0008】
本発明の他の局面に従う制御装置は、イオンを放出して対象物を除電する除電器と通信可能な制御装置であって、イオン量を測定した測定値を取得する測定値取得部と、前記測定値を除電性能として、基準状態におけるイオン量の値と対比した除電情報を表示するレポートを出力するレポート出力部とを備える。
【0009】
本発明のさらに他の局面に従う管理方法は、イオンを放出して対象物を除電する除電器と通信可能な制御装置で実行される管理方法あって、イオン量を測定した測定値を取得する測定値取得ステップと、前記測定値を除電性能として、基準状態におけるイオン量の値と対比した除電情報を表示するレポートを出力するレポート出力ステップと、を制御装置に実行させる。
【0010】
本発明のさらに他の局面に管理プログラムは、イオンを放出して対象物を除電する除電器と通信可能なコンピュータで実行される管理プログラムあって、イオン量を測定した測定値を取得する測定値取得ステップと、前記測定値を除電性能として、基準状態におけるイオン量の値と対比した除電情報を表示するレポートを出力するレポート出力ステップと、を管理コンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、除電器の除電性能を容易にかつ高い信頼性で記録することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施の形態に係る除電システムの構成の概略および使用例を説明するための図である。
図2】帯電検出システムの簡易的な構成を示すブロック図である。
図3図1のイオンバランスセンサの基本構成を説明するための除電システムのブロック図である。
図4図1の除電器の基本構成を説明するための除電システムのブロック図である。
図5図4の除電器の構成を示すブロック図である。
図6図1の除電器の基本構成を説明するための除電システムのブロック図である。
図7】出力されたレポートの一例を示す図である。
図8】定期レポート情報およびクリーンレポート情報が記録されるタイミングを説明するための図である。
図9】除電システムにより実行されるレポート出力処理のアルゴリズムの一例を示すフローチャートである。
図10】除電システムにより実行されるレポート出力処理のアルゴリズムの一例を示すフローチャートである。
図11】他の実施において除電器により実行されるレポート出力処理のアルゴリズムの一例を示すフローチャートである。
図12】他の実施において除電器により実行されるレポート出力処理のアルゴリズムの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.除電システムの構成の概略および使用例
以下、本発明の一実施の形態に係る除電システム、制御装置、管理方法および管理プログラムについて、図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る除電システムの構成の概略および使用例を説明するための図である。図1に示すように、本実施の形態に係る除電システム1は、主としてイオンバランスセンサ100、除電器200および制御装置300を備える。除電システム1は、帯電検出システム400をさらに備えてもよい。
【0014】
除電器200は、除電器筐体11を含み、その除電器筐体11内に、正イオンおよび負イオンを発生させるための各種高圧回路等が収容された構成を有する。除電器筐体11には、送風口12が形成されている。除電器筐体11には、後述するファン201の前方を覆うようにカバー13が取り付けられてもよい。この場合、送風口12は、カバー13に形成される。また、除電器筐体11には、カバー13の取付部にカバー13が取り付けられていることを検出するカバー検出センサが設けられてもよい。
【0015】
除電器200は、除電器筐体11内で発生した正イオンおよび負イオンを送風口12を通して除電器200の外方に送り出す。図1では、除電器筐体11の送風口12から、除電器200の外方に流れる除電気体(本例では、正イオンおよび負イオンを含むエア)の流れが、複数の太い一点鎖線の矢印ifで示される。カバー13は、除電気体の拡散角を調整するルーバとして機能する。また、除電器筐体11には、除電気体の拡散角が異なる複数種類のカバー13を取り付け可能であってもよい。この場合、除電器筐体11に取り付けられたカバー13の種類は、カバー検出センサにより特定される。
【0016】
以下の説明では、除電器200から送り出される除電気体が供給されるべき空間、すなわち対象物9の除電が行われるべき除電対象空間を対象空間と呼ぶ。図1の例では、除電器200は、除電気体がベルトコンベア2の一部を含む対象空間3を流れるように、図示しない設置面上に設けられている。この場合、ベルトコンベア2が動作することにより複数の対象物9がベルトコンベア2の方向(図1の太い二点鎖線の矢印参照)に移動すると、各対象物9は対象空間3の通過時に除電気体により除電される。
【0017】
複数のベルトコンベア2が準備され、各ベルトコンベア2により複数の対象物9が順次運搬されることがある。この場合、除電システム1は、複数の除電器200を備えてもよい。この構成においては、複数の除電器200により、複数のベルトコンベア2上の対象空間3にそれぞれ除電気体が供給される。これにより、各ベルトコンベア2上の対象空間3において、各対象物9の除電が行われる。
【0018】
対象空間3のイオンバランスに偏りがあると、各対象物9を適切に除電することができない。そこで、対象空間3のイオンバランスを検出するために、対象空間3にイオンバランスセンサ100が設けられる。本実施の形態においては、対象空間3のイオンバランスとは、対象空間3内の電気的な極性の偏りの度合いである。
【0019】
対象空間3のイオンバランスは、例えば除電器200から対象空間3に流れる除電気体に含まれる正イオンの量と負イオンの量とが等しいかまたはほぼ等しい場合に0に近づく。一方、対象空間3のイオンバランスは、例えば除電器200から対象空間3に流れる除電気体に含まれる正イオンの量と負イオンの量とが異なることにより0から乖離する(偏る)。イオンバランスセンサ100は、導電性の検出プレート110Aを有する。検出プレート110Aの電位に基づいて対象空間3のイオンバランスが検出される。イオンバランスセンサ100の構造の詳細については後述する。
【0020】
本実施の形態に係るイオンバランスセンサ100は、対象空間3に設けられることにより、対象空間3のイオンバランスに加えて、対象空間3の環境に関する情報を検出することが可能である。具体的には、イオンバランスセンサ100は、対象空間3の環境に関する情報として、単位時間当たりに対象空間3を流れるイオンの量(以下、対象空間3のイオン電流と呼ぶ。)を検出することが可能である。さらに、イオンバランスセンサ100は、対象空間3の環境に関する情報として、対象空間3の温度および湿度を検出することが可能である。
【0021】
イオンバランスセンサ100は、中継ケーブルCA1を含む。イオンバランスセンサ100から延びる中継ケーブルCA1の先端部(一端部)は、除電器200に接続される。イオンバランスセンサ100において検出される上記の各種情報は、中継ケーブルCA1を通して除電器200に伝送される。この場合、除電器200においては、対象空間3のイオンバランスの検出結果に基づいて当該除電器200における正イオンの発生状態および負イオンの発生状態を調整することができる。それにより、複数の対象物9の除電に適切な除電気体が対象空間3に供給される。
【0022】
ここで、除電器200の送風口12が対象空間3からずれた位置に向いていると、除電気体が除電器200から対象空間3に流れない。この場合、イオン電流は0または0に近い値で検出される。一方、除電器200の送風口12が対象空間3に向いていると、除電気体は除電器200から対象空間3に適切に流れる。この場合、イオン電流は、除電気体に含まれるイオンの量に応じた値で検出される。
【0023】
したがって、除電器200においては、イオン電流の検出結果に基づいて、除電器200の位置および姿勢(設置状態)が適切であるか否かを判定することができる。具体的には、イオン電流の値が予め定められたイオン電流しきい値以下である場合に除電器200の設置状態が適切でないと判定することができる。また、イオン電流の値がイオン電流しきい値よりも大きい場合に除電器200の設置状態が適切であると判定することができる。このような判定結果が使用者に提示されることにより、使用者は、除電器200の設置状態の調整の要否を容易に把握することができる。
【0024】
さらに、除電器200においては、対象空間3の温度および湿度の検出結果をメモリに記憶させておくことにより、複数の対象物9の除電時における対象空間3の環境状態の変化を管理することができる。
【0025】
除電器200は、中継ケーブルCA2を介して制御装置300に接続されている。制御装置300は、例えばパーソナルコンピュータであり、例えばCPU(中央演算制御装置)、ROM(リードオンリメモリ)およびRAM(ランダムアクセスメモリ)を含む。制御装置300には、本体表示部310および本体操作部320が接続されている。本体表示部310は、LCD(液晶ディスプレイ)パネルまたは有機EL(エレクトロルミネッセンス)パネルにより構成される。操作装置は、キーボードおよびポインティングデバイスを含み、使用者により操作可能に構成される。
【0026】
制御装置300は、例えば除電器200についての各種動作条件の設定または除電器200の動作状態の監視等に用いられる。除電器200の複数の動作条件には、後述する除電器200のファン201(図4)の回転速度、除電器200から制御装置300に出力される各種信号の出力条件、または除電器200における後述する操作部260(図4)の操作を無効にするための条件等が含まれる。制御装置300は、帯電検出システム400により検出される帯電量の監視に用いられてもよい。
【0027】
2.帯電検出システムの構成
図2は、帯電検出システム400の簡易的な構成を示すブロック図である。図2に示すように、帯電検出システム400は、帯電検出装置410、複数の帯電検出装置420および通信装置430を含む。帯電検出装置410、複数の帯電検出装置420および通信装置430の各々は、CPUを含むとともに、通信機能を有する。
【0028】
帯電検出装置410には、検出ヘッド411が接続される。検出ヘッド411は、複数のベルトコンベア2のうち、いずれかのベルトコンベア2上の対象空間3よりも下流の空間に配置される。検出ヘッド411は、帯電検出装置410による制御に従って、検出ヘッド411が配置された空間の帯電量を検出する。また、検出ヘッド411は、検出された帯電量を帯電検出装置410に与える。これにより、帯電検出装置410は、検出ヘッド411により検出された帯電量を取得する。
【0029】
複数の帯電検出装置420には、複数の検出ヘッド421がそれぞれ接続される。複数の検出ヘッド421は、複数のベルトコンベア2のうち、残りの複数のベルトコンベア2上の対象空間3よりも下流の空間にそれぞれ配置される。各検出ヘッド421は、対応する帯電検出装置420による制御に従って、当該検出ヘッド421が配置された空間の帯電量を検出する。また、各検出ヘッド421は、検出された帯電量を対応する帯電検出装置420に与える。これにより、各帯電検出装置420は、対応する検出ヘッド421により検出された帯電量を取得する。
【0030】
帯電検出装置410は、各帯電検出装置420により取得された帯電量を各帯電検出装置420から取得する。通信装置430は、帯電検出装置410と制御装置300との間の通信プロトコル変換を行うことにより、帯電検出装置410により取得された帯電量を図1の中継ケーブルCA3を通して制御装置300に送信する。
【0031】
この構成によれば、複数のベルトコンベア2が配置された作業場において、各ベルトコンベア2上の対象空間3で、対応する除電器200により複数の対象物9の除電が行われる。また、対象空間3の下流に順次運搬される複数の対象物9の帯電量が、検出ヘッド411および複数の検出ヘッド421のいずれかにより検出される。これにより、各対象物9の除電が適切に行われたか否かを制御装置300において監視することができる。
【0032】
3.イオンバランスセンサの基本構成
図3は、図1のイオンバランスセンサ100の基本構成を説明するための除電システム1のブロック図である。図3に示すように、イオンバランスセンサ100は、検出プレート110A、イオン検出回路110B、温度検出素子120、湿度検出素子130、センサ表示灯140、センサ通信部150、センサ電源部160およびセンサ制御部190を含む。
【0033】
検出プレート110Aは、導電性を有する材料(例えば金属材料)で構成され、イオンバランスセンサ100を取り囲む空間に露出するように設けられる。イオン検出回路110Bは、検出プレート110Aに接続され、検出プレート110Aの経時的な電位の変化に基づいて、対象空間3のイオンバランスおよびイオン電流に対応する信号を出力する。イオン検出回路110Bの具体的な構成については後述する。
【0034】
温度検出素子120は、当該温度検出素子120が配置される空間の温度に対応する信号を出力する素子であり、例えば熱電対または測温抵抗体である。イオンバランスセンサ100は、温度検出素子120が配置される空間とイオンバランスセンサ100を取り囲む空間とが連通するように構成されるため、温度検出素子120は、イオンバランスセンサ100を取り囲む空間(対象空間3)の温度に対応する信号を出力する。湿度検出素子130は、例えば高分子湿度検出素子であり、イオンバランスセンサ100を取り囲む空間(対象空間3)の湿度に対応する信号を出力する。
【0035】
センサ表示灯140は、例えば異なる色で発光する複数の発光ダイオードを含む。センサ通信部150は、センサ制御部190から出力される各種信号を中継ケーブルCA1を介して除電器200に送信する。また、センサ通信部150は、中継ケーブルCA1を介して除電器200から送信される各種情報を受信し、センサ制御部190に与える。
【0036】
センサ電源部160は、中継ケーブルCA1を介して除電器200から供給される電力を受け、受けた電力を適宜変換してイオンバランスセンサ100の各構成要素に供給する。
【0037】
センサ制御部190は、マイクロコンピュータを含み、各種情報の生成および各構成要素の制御を行う。なお、センサ制御部190は、マイクロコンピュータに代えて、CPU(中央演算制御装置)およびメモリを含んでもよい。センサ制御部190のマイクロコンピュータまたはメモリには、主として対象空間3のイオンバランス、イオン電流、温度および湿度を検出するため、ならびに除電器200との間で各種情報の授受を行うためのプログラムが記憶されている。センサ制御部190においては、マイクロコンピュータまたはCPUが当該センサ制御部190に記憶されたプログラムを実行することにより、複数の機能部が実現される。
【0038】
センサ制御部190は、複数の機能部として、バランス情報生成部191、イオン量情報生成部192、温度情報生成部193、湿度情報生成部194および表示灯制御部195を含む。なお、これらの複数の機能部の一部または全ては、電子回路等のハードウェアにより実現されてもよい。
【0039】
バランス情報生成部191は、イオン検出回路110Bから出力される信号に基づいて対象空間3のイオンバランスを検出し、検出結果を示す信号をイオンバランス信号として生成する。換言すれば、バランス情報生成部191は、検出プレート110Aの経時的な電位の変化に基づいてイオンバランス信号を生成する。生成されたイオンバランス信号は、センサ制御部190から出力される。バランス情報生成部191によるイオンバランスの検出方法の具体例については後述する。
【0040】
イオン量情報生成部192は、イオン検出回路110Bから出力される信号に基づいて対象空間3のイオン電流を検出し、検出結果を示す信号をイオン電流信号として生成する。換言すれば、イオン量情報生成部192は、検出プレート110Aの経時的な電位の変化に基づいてイオン電流信号を生成する。生成されたイオン電流信号は、センサ制御部190から出力される。イオン量情報生成部192によるイオン電流の検出方法の具体例については後述する。
【0041】
温度情報生成部193は、温度検出素子120から出力される信号に基づいて対象空間3の温度を検出し、検出結果を示す信号を温度信号として生成する。生成された温度信号は、センサ制御部190から出力される。湿度情報生成部194は、湿度検出素子130から出力される信号に基づいて対象空間3の湿度を検出し、検出結果を示す信号を湿度信号として生成する。生成された湿度信号は、センサ制御部190から出力される。
【0042】
表示灯制御部195は、センサ表示灯140の発光状態を制御する。表示灯制御部195は、例えばイオンバランスセンサ100において検出されたイオンバランスおよびイオン電流が予め定められた許容条件を満たす場合に、特定の一の色(例えば、緑色)で発光するようにセンサ表示灯140を制御する。一方、表示灯制御部195は、例えばイオンバランスセンサ100において検出されたイオンバランスおよびイオン電流が上記の許容条件を満たさない場合に、特定の他の色(例えば、赤色)で発光するようにセンサ表示灯140を制御する。
【0043】
4.除電器の基本構成
図4は、図1の除電器200の基本構成を説明するための除電システム1のブロック図である。図5は、図4の除電器200の構成を示すブロック図である。図4および図5に示すように、除電器200は、ファン201、ファン駆動部202、検知電極203、正イオン発生部211、正極側高圧回路212、負イオン発生部221、負極側高圧回路222、除電器制御部230およびイオン情報生成部240を含む。これらの構成要素は、除電器筐体11内に収容される。
【0044】
図4では、正イオン発生部211および負イオン発生部221の模式的正面図がそれぞれ吹き出し内に示される。正イオン発生部211は、円環状部材211aおよび複数(本例では4つ)の電極針en1を含む。複数の電極針en1は、円環状部材211aの中心に向かって延びるように、円環状部材211aの内周部に等間隔で設けられている。負イオン発生部221は、正イオン発生部211と同様に、円環状部材221aおよび複数の電極針en2を含む。複数の電極針en2は、円環状部材221aの中心に向かって延びるように、円環状部材221aの内周部に等間隔で設けられている。
【0045】
正イオン発生部211には、正極側高圧回路212が接続されている。正極側高圧回路212は、抵抗および昇圧回路を含み、除電器制御部230の制御に基づいて正イオン発生部211の複数の電極針en1に高電圧を印加する。それにより、コロナ放電が発生し、正イオンが生成される。負イオン発生部221には、負極側高圧回路222が接続されている。負極側高圧回路222は、抵抗および昇圧回路を含み、除電器制御部230の制御に基づいて負イオン発生部221の複数の電極針en2に高電圧を印加する。それにより、コロナ放電が発生し、負イオンが生成される。
【0046】
ファン201は、図1の除電器筐体11の内部で、送風口12に対向するようにかつ所定の回転軸201aの周りで回転可能となるように設けられている。ファン駆動部202は、例えばモータを含み、除電器制御部230の制御に基づいてファン201を回転軸201aの周りで回転させる。
【0047】
ファン201、負イオン発生部221および正イオン発生部211は、この順で図1の送風口12からファン201の回転軸201aの方向に並ぶように配置されている。正イオン発生部211および負イオン発生部221の円環状部材211a,221aの中心は、ファン201の回転軸201a上に位置する。
【0048】
正イオン発生部211および負イオン発生部221においては、正極側高圧回路212および負極側高圧回路222が動作することにより、正イオンおよび負イオンがそれぞれ生成される。この状態で、ファン201が回転する。それにより、正イオンおよび負イオンを含む除電気体が除電器筐体11の送風口12を通して除電器200の外方に流れる。図4では、図1の例と同様に、除電器筐体11の送風口12から除電器200の外方に流れる除電気体の流れが、複数の太い一点鎖線の矢印ifで示される。検知電極203は、ファン201により送られる除電気体の流路上に配置される。検知電極203には、除電気体に起因するイオン電流が流れる。
【0049】
イオン情報生成部240は、除電器200において発生される正イオンおよび負イオンの全体的なイオンバランスをイオン情報として検出する。イオン情報は、除電器制御部230が正極側高圧回路212または負極側高圧回路222を制御するときに用いる情報である。イオン情報は、イオンバランスセンサ100により検出される対象空間3のイオンバランスとは異なり、除電器200の送風口12を流れる除電気体のイオンバランスを含んでもよい。また、イオン情報は、対象空間3および除電器200を取り囲む空間のイオンバランスを含んでもよい。したがって、イオン情報は、例えばファン201の近傍を流れる除電気体のイオンバランスを検出するとともに、対象空間3および除電器200を取り囲む空間のイオンバランスを検出することにより、それらの検出結果に基づいて生成される。
【0050】
本例では、図5に示すように、イオン情報生成部240は、内部イオン電流検出回路241および外部イオン電流検出回路242を含む。内部イオン電流検出回路241は、検知電極203に接続されるとともに、除電器筐体11に接続される。内部イオン電流検出回路241は、検知電極203を流れるイオン電流と、除電器筐体11の表面を流れるイオン電流とを内部イオン電流として検出する。外部イオン電流検出回路242は、アース電位に維持されたアース電極に接続される。外部イオン電流検出回路242は、対象空間3からアースを経由して除電器200に戻るイオン電流を外部イオン電流として検出する。これらの内部イオン電流および外部イオン電流が検出されることにより、正イオン発生部211および正極側高圧回路212による発生イオン量が測定される。
【0051】
除電器制御部230は、CPUおよびメモリまたはマイクロコンピュータを含む。除電器制御部230は、除電器200による複数の対象物9の除電時に、予め定められた回転速度でファン201が回転するようにファン駆動部202を制御する。また、除電器制御部230は、イオン情報生成部240により生成されるイオン情報に基づいて、除電気体のイオンバランスが0に近づくように正極側高圧回路212および負極側高圧回路222を制御する。内部イオン電流は短期的なイオンバランスの変化を抑制するために用いられ、外部イオン電流は長期的なイオンバランスの変化を抑制するために用いられる。
【0052】
除電器200は、上記の各構成要素(201,202,211,212,221,222,230,240)に加えて、表示部250、操作部260、除電器記憶部270、一時記憶部271、除電器通信部280および除電器電源部290をさらに含む。表示部250および操作部260は、図1の除電器筐体11の一部に取り付けられる。除電器記憶部270、一時記憶部271、除電器通信部280および除電器電源部290は、図1の除電器筐体11内に収容される。
【0053】
表示部250は、LCD(液晶ディスプレイ)パネルまたは有機EL(エレクトロルミネッセンス)パネルにより構成されている。表示部250は、図1に示すように、除電器200の送風口12の下方の位置で、除電器200の前方に向いて露出するように除電器筐体11に設けられている。表示部250は、除電器制御部230の制御に基づいて除電器200の各種設定情報および警報等を表示する。
【0054】
操作部260は、図1に示すように、複数の操作ボタンを含み、表示部250に隣り合うように除電器筐体11に設けられている。使用者は、操作部260を操作することにより、除電器200についての各種設定を行うこと、またはイオンバランスセンサ100によるイオンバランスの検出結果等を表示部250に表示させること等が可能である。
【0055】
また、除電器200には、図示しないブラシを用いて正イオン発生部211の複数の電極針en1および負イオン発生部221の複数の電極針en2を清掃するオートクリーン機能が設けられている。使用者は、操作部260を操作することにより、オートクリーン機能の実行を除電器200に指示することができる。あるいは、使用者は、操作部260を操作することにより、オートクリーン機能を実行するタイミングを設定することができる。この場合、設定されたタイミングで、オートクリーン機能が実行される。オートクリーン機能が実行された場合、その旨を示す清掃信号が制御装置300に与えられる。
【0056】
除電器通信部280は、中継ケーブルCA1を介してイオンバランスセンサ100のセンサ通信部150(図3)から送信される各種情報の信号を受信し、除電器制御部230に与える。また、除電器通信部280は、図1の中継ケーブルCA2を介して制御装置300から送信される各種情報の信号を受信し、除電器制御部230に与える。さらに、除電器通信部280は、除電器制御部230から出力される各種情報の信号を中継ケーブルCA2を介して制御装置300に送信する。
【0057】
一時記憶部271は、揮発性記憶部であり、例えばRAMにより実現される。一時記憶部271には、各種情報が一定の時間間隔(本例では0.1秒)で順次記憶される。一時記憶部271の全記憶領域に情報が記憶された場合、最先に記憶された情報が削除され、それにより生じた記憶領域に最新の情報が記憶される。これにより、最先の情報が最新の情報に上書きされる。したがって、一時記憶部271は、リングバッファとして機能し、リングバッファに一度記憶された情報は、最新の情報により上書きされるまで一定期間保持される。
【0058】
除電器制御部230は、除電器通信部280がイオンバランスセンサ100からイオンバランス信号を受信することにより、対象空間3のイオンバランスを時間情報とともに一時記憶部271に記憶させる。このとき、除電器制御部230は、上記の記憶動作に加えて、対象空間3におけるイオンバランスが0に近づくように、受信したイオンバランス信号に基づいて正極側高圧回路212および負極側高圧回路222を制御してもよい。
【0059】
また、除電器制御部230は、除電器通信部280がイオンバランスセンサ100からイオン電流信号を受信することにより、対象空間3におけるイオン電流を時間情報とともに一時記憶部271に記憶させる。このとき、除電器制御部230は、上記の記憶動作に加えて、受信したイオン電流の値が上記のイオン電流しきい値以下である場合に除電器200の設置状態が適切でないことを示すメッセージを表示部250に表示させてもよい。
【0060】
さらに、除電器制御部230は、除電器通信部280がイオンバランスセンサ100から温度信号および湿度信号を受信することにより、対象空間3の温度および湿度を時間情報とともに一時記憶部271に記憶させる。また、除電器制御部230は、イオン情報生成部240による発生イオンの測定値を一時記憶部271に記憶させる。除電器制御部230は、ファン201の回転速度を時間情報とともに一時記憶部271に記憶させてもよい。
【0061】
また、除電の結果は、図1の除電器筐体11に取り付けられたカバー13による除電気体の拡散角により異なる。そこで、除電器制御部230は、除電時に除電器筐体11に取り付けられていたカバー13の種類をカバー検出センサから取得し、取得結果を示す情報を時間情報とともに一時記憶部271に記憶させてもよい。さらに、除電器制御部230は、外部イオン電流検出回路242により検出される外部電流に基づいて対象空間3の帯電量を評価し、評価された帯電量を時間情報とともに一時記憶部271に記憶させてもよい。
【0062】
除電器記憶部270は、不揮発性記憶部であり、メモリまたはハードディスクで構成される。除電器制御部230は、一時記憶部271に記憶された各種情報をサンプリングして除電器記憶部270に記憶させる。本例では、1時間に1度、特定の時点に一時記憶部271に記憶された各種情報のみが除電器記憶部270に記憶される。これにより、除電器記憶部270に記憶されるデータ量が増大することを抑制しつつ、除電器記憶部270に記憶された対象空間3の環境に関する各種情報に基づいて、複数の対象物9の除電状態を管理することが可能になる。
【0063】
また、除電器記憶部270には、基準状態における発生イオン量の値が予め記憶されている。基準状態とは、除電性能を評価するための基準となる除電器200の状態である。基準状態は、例えば、除電器200の出荷時の状態であってもよい。さらに、除電器記憶部270には、後述する除電情報の良否を判定するための除電しきい値が予め記憶されている。除電器記憶部270に記憶された各種情報は、制御装置300に与えられる。
【0064】
除電器電源部290は、図示しない電源ケーブルを通して商用電源から供給される電力を受けるとともに、受けた電力の一部を除電器200に設けられる他の構成要素に供給する。また、除電器電源部290は、受けた電力の残りを中継ケーブルCA1を通してイオンバランスセンサ100のセンサ電源部160(図3)に供給する。本例では、除電器200の電源が投入されることにより、除電器200が起動し、除電器200の各構成要素への電力の供給が開始される。また、除電器200が起動した時点を起点として、経過時間が起算される。
【0065】
5.制御装置の基本構成
図6は、図1の除電器200の基本構成を説明するための除電システム1のブロック図である。図6に示すように、制御装置300は、主通信部330、主記憶部340および主制御部350を含む。主通信部330は、中継ケーブルCA2を介して除電器200から送信される各種情報を受信し、主制御部350に与える。また、主通信部330は、制御装置300で受け付けられた各種動作条件の設定を中継ケーブルCA2を介して除電器200に送信する。
【0066】
主記憶部340は、例えばハードディスク、ROMおよびRAMを含む。主制御部350は、例えばCPUを含む。主記憶部340および主制御部350は、マイクロコンピュータにより実現されてもよい。主記憶部340には、除電器200の制御および管理を行うための管理プログラムが記憶されている。管理プログラムは、主記憶部340に代えて、コンピュータが読み取り可能なCD(Compact Disc)-ROM等の記憶媒体341に記憶されていてもよい。あるいは、管理プログラムは、記憶媒体341に格納された形態で提供され、主記憶部340にインストールされてもよい。
【0067】
主制御部350においては、マイクロコンピュータまたはCPUが管理プログラムを実行することにより、複数の機能部が実現される。主制御部350は、複数の機能部として、測定値取得部351、算出部352、判定部353、付帯情報取得部354、付帯情報受付部355、清掃信号取得部356およびレポート出力部357を含む。なお、これらの複数の機能部の一部または全ては、電子回路等のハードウェアにより実現されてもよい。
【0068】
測定値取得部351は、発生イオンの測定値を除電器200から取得する。一般に、除電器200の除電性能は除電時間とオフセット電圧とにより規格化されている。オフセット電圧はイオンバランスセンサ100から取得されるイオンバランスに対応する。除電時間は、規格で規定された電荷量を保持した金属板に対して、除電器200がイオンを発生させることにより、金属板の電荷を中和するために要する時間を意味する。
【0069】
ここで、除電時間はイオンの発生量が多いほど短い。すなわち、除電時間と発生イオン量とは強い相関関係を有し、具体的には、除電時間は発生イオン量に概ね反比例する。そこで、本例では、除電時間に代えて、測定値取得部351により取得された発生イオンの測定値が除電器200の除電性能を示す値として扱われる。
【0070】
さらに、除電時間とは、単位時間当たりの対象空間3に到達するイオン量である到達イオン量と強い相関関係を有する。除電時間は対象空間3に、電荷量を保持した金属板を配置して計測するため、単位時間当たりで対象空間3に到達するイオン量が多ければ多いほど、金属板の電荷が中和するために要する時間が短くなるためである。使用者が除電器200を一定の設定で動作させているとき、単位時間当たりで対象空間3に到達するイオン量が維持されることは、電極針en1,en2による単位時間当たりのイオンの発生量が維持されること、除電器200が単位時間当たりに除電気体を送り出す量が維持されること、および、除電気体が対象空間3に到達すること、により確認される。除電気体はファン201の回転によって送り出されるため、除電器200の除電気体を送り出す量はファン201の回転速度(回転数)が低下すること等により低下する。除電気体が対象空間3に到達しないこと、は、除電器200と対象空間3との間に遮蔽物が置かれる、除電器200のファン201の送風向きが対象空間3と異なる方向に向けられている、場合に生じる。本実施例では、除電器制御部230がファン201の回転速度を記憶し、また、イオンバランスセンサ100が対象空間3へのイオンの到達有無を検出するため、除電器200が単位時間当たりに除電気体を送り出す量が維持されることと、除電気体が対象空間3に到達することとが確認され得る。
【0071】
なお、本実施例においては、イオンバランスセンサ100が対象空間3へのイオンの到達を検出するため、対象空間3へのイオンの到達があることとファンの回転速度が維持されていることを前提として、発生イオン量が除電時間に代わる値として扱われるが、イオンバランスセンサ100が対象空間3へのイオンの到達量である到達イオン量を検出する場合、到達イオン量が除電時間に代わる値として扱われてもよい。
【0072】
算出部352は、基準状態における発生イオン量の値を除電器200から取得する。また、算出部352は、測定値取得部351により取得された測定値を基準状態における発生イオン量の値で除算する。これにより、基準状態における発生イオン量の値に対する測定値の比が除電情報として算出される。算出される除電情報は、0%~100%の値を有する。除電情報の値が100%に近いほど除電性能が高いことが示され、除電情報の値が0%に近いほど除電性能が低いことが示される。
【0073】
判定部353は、除電しきい値を除電器200から取得する。また、判定部353は、算出部352により算出された除電情報の値を除電しきい値と比較することにより、除電性能の良否を判定する。除電情報の値が除電しきい値よりも大きい場合に、除電性能が良好であると判定することができる。一方、除電情報の値が除電しきい値以下である場合に、除電性能が良好ではないと判定することができる。
【0074】
付帯情報取得部354は、除電情報に付帯する付帯情報として、発生イオン量の測定日時、対象空間3の温度、対象空間3の湿度、イオンバランスおよび除電器200の駆動パラメータの一部または全部を除電器200から取得する。除電器200の駆動パラメータは、図4のファン201の回転速度、正イオン発生部211に印加される電圧または負イオン発生部221に印加される電圧を含む。除電情報は、イオンバランスセンサ100の型番、除電器200の型番または除電器200の各種設定をさらに含んでもよい。除電器200から取得されるこれらの付帯情報は、基本的に除電器記憶部270に記憶されている。
【0075】
ファン201の回転速度が付帯情報として取得されることにより、除電器200から送り出される除電気体の量が不変であるか否かを容易に判断することが可能になる。したがって、除電情報として算出される発生イオン量と合わせて評価することにより、除電器200から送り出される除電気体に含まれるイオン量が維持されているかどうかを容易に判断することが可能になる。また、付帯情報取得部354は、除電器200に取り付けられているカバー13の種類を取得してもよい。カバー13はその種類に応じて除電気体の拡散角を調整するため、ファン201の回転速度、および発生イオン量と合わせて評価することにより、除電器200外に送り出される除電気体に含まれるイオン量が維持されているかどうかを容易に判断することができる。
【0076】
付帯情報取得部354は、イオンバランスセンサ100による検出結果を付帯情報として取得てもよい。イオンバランスセンサ100が配置される対象空間3に到達するイオンの有無が検出結果である場合、イオンバランスセンサ100による検出結果が取得されることにより、除電器200から対象空間3へイオンが到達しているか否かを容易に判断することが可能になる。ファン201の回転数と、対象空間3へのイオンの到達有無に関する検出結果とを合わせて評価することにより、イオンを含み、単位時間当たり決められた量送り出される除電気体が対象空間3にイオンを到達させているか否かを容易に判断することができる。さらに、発生イオン量と、ファン201の回転数と、対象空間3へのイオンの到達有無に関する検出結果とを合わせて評価することにより、単位時間当たりに対象空間3に到達するイオン量、すなわち、除電時間と強い相関を持つ値が、維持されているかどうかを容易に判断することができる。このように、除電器200から送り出される除電気体量、および対象空間3への発生イオンの到達有無を示す付帯情報が取得されることにより、除電性能を扱う値として、除電時間に代えて発生イオンの測定値を用いることがより妥当になる。
【0077】
また、制御装置300に図2の帯電検出システム400が接続されている場合には、付帯情報取得部354は、除電情報に付帯する付帯情報として、対象物9の帯電量を帯電検出システム400から取得してもよい。取得された帯電量は、時間情報と対応付けられた状態で管理される。
【0078】
付帯情報受付部355は、他の付帯情報の入力を受け付ける。使用者は、本体操作部320を操作することにより、上記の付帯情報には含まれない他の付帯情報、すなわち除電器記憶部270に記憶されていない付帯情報を付帯情報受付部355に入力することができる。他の付帯情報としては、例えば、発生イオン量の測定場所、測定場所の風速、測定担当者または測定場所の結露の有無が挙げられるが、実施の形態はこれに限定されない。使用者は、これ以外の任意の付帯情報を付帯情報受付部355に入力することができる。付帯情報受付部355に付帯情報が入力された場合、付帯情報取得部354は、入力された付帯情報を取得する。
【0079】
清掃信号取得部356は、除電器200のオートクリーン機能が実行された場合、その旨を示す清掃信号を除電器200から取得する。レポート出力部357は、除電器200の除電性能を示すレポートを出力する。レポートは、例えばPDF(Portable Document Format)形式の電子ファイルである。レポートは、Excel(登録商標)形式等の他の形式を有してもよい。
【0080】
主記憶部340には、所定のレポートフォーマットが予め記憶されている。レポート出力部357は、主記憶部340からレポートフォーマットを取得し、算出部352により算出された除電情報をレポートフォーマットの所定の箇所に転記することによりレポートを出力する。出力されたレポートは、主記憶部340に記憶される。また、出力されたレポートは、本体表示部310に表示することが可能である。使用者は、レポートを確認することにより、除電器200の稼働状況、除電状況および性能状況を認識することができる。
【0081】
図7は、出力されたレポートの一例を示す図である。図7に示すように、レポートには、除電情報の他に、測定値が取得された日付および時間帯がさらに表示されてもよい。この場合、使用者は、除電性能の経時的な変化をより容易に認識することができる。また、除電性能に異変が発生した場合、その時点を特定することが容易になる。レポートには、判定部353による除電性能の判定結果がさらに表示されてもよい。この場合、使用者は、除電性能の良否を容易に認識することができる。
【0082】
また、付帯情報受付部355により付帯情報が取得された場合には、レポートには、取得された付帯情報がさらに表示されてもよい。この場合、除電情報に付帯する付帯情報を除電情報に対応付けて記録することができる。レポート出力部357は、付帯情報受付部355により取得された付帯情報をレポートフォーマットの所定の箇所に転記することにより、レポートに付帯情報を表示させることができる。
【0083】
上記の処理により出力されたレポートには、各種情報が自動的に転記されるため、情報を改ざんする余地がない。また、使用者による情報の転記ミスが発生しない。したがって、出力されたレポートは、高い信頼性を有する。また、使用者はレポートを手作業で作成する必要がない。これにより、使用者の負担が低減される。
【0084】
図7の例では、付帯情報として、対象空間3の温度、対象空間3の湿度、イオンバランス、ファン201の回転速度および担当測定者が表示されている。レポートに温度、湿度、イオンバランスまたは除電器200の駆動パラメータ等が表示されることにより、除電性能をより正確に評価することができる。
【0085】
予め準備されたレポートフォーマットには、いくつかの付帯情報を転記するための領域が設けられていないことがある。この場合でも、使用者は、レポートフォーマットを編集することにより、所望の付帯情報を転記するための領域を追加することができる。これにより、使用者は、所望の付帯情報の全部をレポートに表示させることができる。また、編集されたレポートフォーマットを登録することができる。登録されたレポートフォーマットは、主記憶部340に記憶される。そのため、以降、登録されたレポートフォーマットを使用することにより、同様の付帯情報の記録を容易に行うことができる。
【0086】
レポート出力部357により出力されるレポートは、定期レポートと、クリーンレポートとを含む。定期レポートは、所定の時間間隔で記録される測定値、除電情報または除電性能の判定結果等の情報(以下、定期レポート情報と呼ぶ。)に基づいて出力されるレポートである。使用者は、定期レポートを確認することにより、除電性能の経時的な変化を認識することができる。定期レポート情報が記録される時間間隔は、例えば1時間であるが、使用者により設定されてもよい。また、定期レポート情報が記録されるタイミングは、絶対時刻により定められてもよいし、除電器200が起動した時点を起点とする相対時刻により定められてもよい。
【0087】
クリーンレポートは、除電器200の清掃が行われたときに記録される測定値、除電情報または除電性能の判定結果等の情報(以下、クリーンレポート情報と呼ぶ。)に基づいて出力されるレポートである。クリーンレポート情報は、清掃信号取得部356が清掃信号を取得することに応答して記録される。使用者は、クリーンレポートを確認することにより、除電器200の清掃が行われたときの除電性能を認識することができる。
【0088】
クリーンレポートにおいては、除電器200の清掃が行われたときの除電情報が、除電器200の清掃が行われる前後の除電情報と比較可能に表示されてもよい。この場合、使用者は、クリーンレポートを確認することにより、除電器200の清掃による除電性能の変化を容易に認識することができる。
【0089】
クリーンレポートとして除電器200の清掃が行われる前後の除電情報が比較可能に表示される場合、除電器200の清掃による除電性能の変化が微小であっても変化があったことを認識しやすく、また、他のクリーンレポートと比較することにより除電器200の清掃による除電性能の変化の大小を確認することができる。つまり、正イオン発生部211の電極針en1および負極側高圧回路222の電極針en2の各々による発生イオン量が改善されたか否かを容易に確認することができる。ここで、発生イオン量は、常に一定であることが好ましい。そのため、電極針en1,en2により発生イオン量が大きく改善された場合には、電極針en1,en2の清掃の頻度が不足していた可能性がある。したがって、使用者は、クリーンレポートを確認することにより、電極針en1,en2の清掃の頻度が適正か否かを検討することができる。
【0090】
図8は、定期レポート情報およびクリーンレポート情報が記録されるタイミングを説明するための図である。図8の例では、9:00に除電器200が起動され、10:30に除電器200が清掃され、12:30に除電器200が停止される。この場合、除電器200が起動された9:00から1時間後の10:00に、9:00~10:00の時間帯の定期レポート情報が記録される。10:30に、除電器200が清掃されたことに応答して、クリーンレポート情報が記録される。
【0091】
10:00から1時間後の11:00に、10:00~11:00の時間帯の定期レポート情報が記録される。11:00から1時間後の12:00に、11:00~12:00の時間帯の定期レポート情報が記録される。12:30に除電器200が停止されることにより、以降の時間帯の定期レポート情報およびクリーンレポート情報は記録されない。
【0092】
なお、図8の例では、10:30に清掃が行われたことに応答して、10:30にクリーンレポート情報が記録されるが、実施の形態はこれに限定されない。上記のように、クリーンレポートには、除電器200の清掃が行われる前後の除電情報と比較可能に表示されてもよい。ここで、清掃前の除電情報は9:00~10:00の時間帯の定期レポート情報に含まれる。そこで、この時間帯の定期レポート情報が清掃前のクリーンレポート情報として用いられてもよい。同様に、清掃後の除電情報は11:00~12:00の時間帯の定期レポート情報に含まれる。そこで、この時間帯の定期レポート情報が清掃後のクリーンレポート情報として用いられてもよい。
【0093】
6.レポート出力処理
図9および図10は、除電システム1により実行されるレポート出力処理のアルゴリズムの一例を示すフローチャートである。以下、図6の主制御部350と、図9および図10のフローチャートとを用いてレポート出力処理を説明する。
【0094】
まず、付帯情報受付部355は、付帯情報の入力が受け付けられたか否かを判定する(ステップS1)。付帯情報の入力が受け付けられない場合、処理はステップS3に進む。付帯情報の入力が受け付けられた場合、付帯情報取得部354は、ステップS1の付帯情報を取得する(ステップS2)。ステップS2で取得される付帯情報は、図4の除電器200の除電器記憶部270に記憶されていない付帯情報である。
【0095】
また、算出部352は、基準状態における発生イオン量の値を除電器200から取得する(ステップS3)。さらに、判定部353は、除電しきい値を除電器200から取得する(ステップS4)。ステップS1,S2と、ステップS3と、ステップS4とは、いずれが先に実行されてもよいし、同時に実行されてもよい。
【0096】
ステップS1~S4が実行された後、レポート出力部357は、現時点が定期レポート情報の記録タイミングであるか否かを判定する(ステップS5)。現時点が定期レポート情報の記録タイミングである場合、測定値取得部351は、発生イオンの測定値を除電器200から取得する(ステップS6)。算出部352は、ステップS6で取得された測定値をステップS3で取得された基準状態における発生イオン量の値で除算することにより、除電情報を算出する(ステップS7)。判定部353は、ステップS4で取得された除電しきい値とステップS7で算出された除電情報とを比較することにより、除電性能の良否を判定する(ステップS8)。
【0097】
また、付帯情報取得部354は、付帯情報を除電器200から取得する(ステップS9)。ステップS9で取得される付帯情報は、図4の除電器200の除電器記憶部270に記憶されている付帯情報である。ステップS6~S8と、ステップS9とは、いずれが先に実行されてもよいし、同時に実行されてもよい。
【0098】
ステップS6~S9が実行された後、レポート出力部357は、ステップS2,S6~S9で取得された情報を、時刻と関連付けて定期レポート情報として記録する(ステップS10)。また、レポート出力部357は、ステップS10で記録された定期レポート情報に基づいて定期レポートを出力する(ステップS11)。具体的には、定期レポートは、ステップS6で取得された測定値と、ステップS7で算出された除電情報と、ステップS8で判定された除電性能の良否結果と、ステップS2,S9で取得された付帯情報とがレポートフォーマットの所定の箇所に転記されることにより出力される。
【0099】
次に、レポート出力部357は、クリーンレポート情報を記録中であるか否かを判定する(ステップS12)。後述するステップS15で清掃信号が取得された場合、すなわちステップS15で「Yes」と判定された場合、クリーンレポート情報を記録中であると判定される。クリーンレポート情報を記録中でない場合、処理はステップS5に戻される。
【0100】
クリーンレポート情報を記録中である場合、レポート出力部357は、清掃後のクリーンレポート情報を取得済みであるか否かを判定する(ステップS13)。クリーンレポート情報を記録中にステップS10が1回以上実行されることにより、清掃後の定期レポート情報から清掃後のクリーンレポート情報が取得される。清掃後のクリーンレポート情報を取得済みでない場合、処理はステップS5に戻される。なお、清掃前のクリーンレポート情報は、清掃前の定期レポート情報から既に取得済みである。
【0101】
清掃後のクリーンレポート情報を取得済みである場合、レポート出力部357は、後述するステップS20で記録されたクリーンレポート情報および清掃が行われる前後のクリーンレポート情報に基づいてクリーンレポートを出力する(ステップS14)。具体的には、クリーンレポートは、清掃が行われたときの除電情報(後述するステップS17で算出された除電情報)と、清掃が行われる前後にステップS7で算出された除電情報が比較可能にレポートフォーマットの所定の箇所に転記されることにより出力される。また、クリーンレポートの所定箇所には、ステップS16で取得された測定値、ステップS18(後述)で判定された除電性能の良否結果およびステップS2,S19(後述)で取得された付帯情報等も転記される。同様に、清掃が行われる前後に取得された各種情報がクリーンレポートの所定箇所に転記される。その後、処理はステップS5に戻される。
【0102】
ステップS5で、現時点が定期レポート情報の記録タイミングでない場合、清掃信号取得部356は、清掃信号が取得されたか否かを判定する(ステップS15)。清掃信号が取得されない場合、処理はステップS5に戻される。清掃信号が取得された場合、測定値取得部351は、発生イオンの測定値を除電器200から取得する(ステップS16)。算出部352は、ステップS16で取得された測定値をステップS3で取得された基準状態における発生イオン量の値で除算することにより、除電情報を算出する(ステップS17)。判定部353は、ステップS4で取得された除電しきい値とステップS17で算出された除電情報とを比較することにより、除電性能の良否を判定する(ステップS18)。
【0103】
また、付帯情報取得部354は、付帯情報を除電器200から取得する(ステップS19)。ステップS19で取得される付帯情報は、図4の除電器200の除電器記憶部270に記憶されている付帯情報である。ステップS16~S18と、ステップS19とは、いずれが先に実行されてもよいし、同時に実行されてもよい。ステップS16~S19が実行された後、レポート出力部357は、ステップS2,S16~S19で取得された情報を、時刻と関連付けてクリーンレポート情報として記録する(ステップS20)。その後、処理はステップS5に戻される。
【0104】
上記のレポート出力処理においては、定期レポート情報が記録されるごとに定期レポートが出力されるが、実施の形態はこれに限定されない。定期レポート情報が所定の時間間隔で記録されればよく、定期レポートは定期レポート情報が記録されるごとに出力されなくてもよい。すなわち、定期レポートは所定の時間間隔で出力されなくてもよい。定期レポートは、任意の時点で出力されてもよく、使用者の指示に応答して出力されてもよい。また、定期レポート情報が記録された全期間の定期レポートが出力されなくてもよく、使用者により指定された期間の定期レポートのみが出力されてもよい。
【0105】
同様に、上記のレポート出力処理においては、清掃が実行されるごとにクリーンレポートが出力されるが、実施の形態はこれに限定されない。清掃が実行されるごとにクリーンレポート情報が記録されればよく、クリーンレポートは清掃が実行されるごとに出力されなくてもよい。クリーンレポートは、任意の時点で出力されてもよく、使用者の指示に応答して出力されてもよい。また、実行された全部の清掃についてのクリーンレポートが出力されなくてもよく、使用者により指定された時点の清掃についてのクリーンレポートのみが出力されてもよい。
【0106】
7.効果
本実施の形態に係る除電システム1においては、イオンが正イオン発生部211および負イオン発生部221により発生される。正イオン発生部211および負イオン発生部221による発生イオン量がイオン情報生成部240により測定される。イオン情報生成部240による測定値が測定値取得部351により取得される。測定値を除電性能として、基準状態における発生イオン量の値と対比した除電情報を表示するレポートがレポート出力部357により出力される。
【0107】
この構成によれば、発生イオン量は対象物9の除電を継続しつつ測定可能であるので、発生イオン量を測定するために対象物9の製造ラインの稼働を停止させる必要がない。また、使用者は、測定結果をレポートに転記する等の作業を行う必要がないので、頻繁に除電性能を記録する場合でも、使用者の負担が増加しない。また、除電情報が自動的にレポートに表示されるので、記録の改ざんを行う余地がない。これらの結果、除電器200の除電性能を容易にかつ高い信頼性で記録することができる。
【0108】
また、本実施の形態では、基準状態における発生イオン量の値に対する測定値の比が除電情報として算出部352により算出される。この場合、使用者は、除電器200の除電性能をより容易に認識することができる。ここで、基準状態における発生イオン量の値は、除電器200の除電器記憶部270に予め記憶されている。この場合、基準状態における発生イオン量の値に対する測定値が容易に取得される。そのため、除電情報を容易に算出することができる。
【0109】
8.他の実施の形態
(1)上記実施の形態において、除電時間は測定されないが、実施の形態はこれに限定されない。除電器200の据え付け時に、例えばチャージプレートモニタを用いて除電時間が測定されてもよい。また、除電器200の据え付け時に測定された除電時間が付帯情報としてレポートに表示されてもよい。あるいは、除電器200の据え付け時に測定された除電時間と、除電情報とにより推定される現時点の除電時間が付帯情報としてレポートに表示されてもよい。これらの場合、使用者は、レポートを確認することにより、除電性能をより直感的に認識することができる。
【0110】
(2)上記実施の形態において、基準状態における発生イオン量の値に対する発生イオン量の測定値の比が除電情報としてレポートに表示されるが、実施の形態はこれに限定されない。レポートには、発生イオン量の測定値が、基準状態における発生イオン量の値と対比可能に表示されていればよい。したがって、レポートには、発生イオン量の測定値と、基準状態における発生イオン量の値とが併記されていてもよい。この場合、主制御部350は算出部352を含まなくてもよい。
【0111】
(3)上記実施の形態において、除電しきい値および基準状態における発生イオン量の値が除電器200の除電器記憶部270に記憶されているが、実施の形態はこれに限定されない。除電しきい値または基準状態における発生イオン量の値、制御装置300の主記憶部340に記憶されていてもよい。
【0112】
また、上記実施の形態において、除電性能の判定結果がレポートに表示されるが、実施の形態はこれに限定されない。除電性能の判定結果は、レポートに表示されなくてもよい。この場合、除電しきい値は除電器記憶部270または主記憶部340に記憶されなくてもよい。
【0113】
(4)上記実施の形態において、発生イオン量の測定値が取得された時間帯がレポートに表示されるが、実施の形態はこれに限定されない。発生イオン量の測定値が取得された時間帯は、レポートに表示されなくてもよい。
【0114】
(5)上記実施の形態において、測定値取得部351および付帯情報取得部354は除電器200の除電器記憶部270に記憶された測定値および付帯情報をそれぞれ取得するが、実施の形態はこれに限定されない。一時記憶部271には、除電器記憶部270よりも短い時間間隔で測定値および一部の付帯情報が一時的に記憶されている。そこで、測定値取得部351および付帯情報取得部354は、一時記憶部271に記憶された測定値および付帯情報をそれぞれ取得してもよい。
【0115】
(6)上記実施の形態において、主制御部350は付帯情報受付部355を含むが、実施の形態はこれに限定されない。除電器記憶部270に記憶されている付帯情報のみがレポートに表示される場合には、主制御部350は付帯情報受付部355を含まなくてもよい。
【0116】
また、上記実施の形態において、付帯情報がレポートに表示されるが、実施の形態はこれに限定されない。付帯情報は、レポートに表示されなくてもよい。この場合、主制御部350は、付帯情報取得部354を含まなくてもよい。
【0117】
(7)上記実施の形態において、クリーンレポートには、除電器200の清掃が行われたときの除電情報が、除電器200の清掃が行われる前後の除電情報と比較可能に表示されるが、実施の形態はこれに限定されない。クリーンレポートには、除電器200の清掃が行われたときの除電情報が表示されればよく、除電器200の清掃が行われたときの除電情報が除電器200の清掃が行われる前後の除電情報と比較可能に表示されなくてもよい。この場合、レポート出力処理のステップS14は、ステップS20の後に実行される。また、ステップS12,S13は実行されない。
【0118】
(8)上記実施の形態において、定期レポートおよびクリーンレポートの両方が出力されるが、実施の形態はこれに限定されない。定期レポートおよびクリーンレポートの一方が出力されなくてもよい。クリーンレポートが出力されない場合には、主制御部350は清掃信号取得部356を含まなくてもよい。また、レポート出力部357が使用者の要求に応答してレポートを出力する場合には、定期レポートおよびクリーンレポートの両方が出力されなくてもよい。
【0119】
(9)上記実施の形態において、イオンバランスセンサ100により検出された対象空間3のイオン電流が対象空間3への発生イオンの到達有無を示す付帯情報として用いられるが、実施の形態はこれに限定されない。除電器200からの除電気体が対象空間3に向けられているか否かを示す情報が対象空間3への発生イオンの到達有無を示す付帯情報として用いられてもよい。したがって、除電器200に自身の姿勢を検出するジャイロセンサ等の姿勢検出センサが設けられている場合には、姿勢検出センサによる検出結果を示す情報が対象空間3への発生イオンの到達有無を示す付帯情報として用いられてもよい。
【0120】
(10)上記実施の形態において、電極針en1,en2による発生イオン量の測定値が除電器200の除電性能を示す値として扱われるが、実施の形態はこれに限定されない。イオンバランスセンサ100が単位時間に対象空間3に到達したイオンの量を測定可能である場合には、イオンバランスセンサ100による単位時間当たりの到達イオン量の測定値が除電器200の除電性能を示す値として扱われてもよい。
【0121】
この構成においては、レポートは、イオンバランスセンサ100による測定値を除電性能として、基準状態における到達イオン量の値と対比した除電情報を表示する。基準状態における到達イオン量は、例えば除電器記憶部270に予め記憶されている。到達イオン量の測定値が除電器200の除電性能を示す値として扱われる場合には、電極針en1,en2による発生イオン量は測定されなくてもよい。また、付帯情報は、除電器200から送り出される除電気体量、および対象空間3への発生イオンの到達有無を評価するための情報を含まなくてもよい。
【0122】
(11)上記実施の形態において、主制御部350の機能部が制御装置300に設けられるが、実施の形態はこれに限定されない。主制御部350の機能部の一部または全部は、除電器200に設けられてもよい。この場合、除電器200の除電器制御部230により主制御部350の機能部の一部または全部が実現されてもよい。
【0123】
例えば、測定値取得部351、算出部352および判定部353と、レポート出力部357の一部とが除電器200に設けられてもよい。この場合、付帯情報取得部354および付帯情報受付部355と、レポート出力部357の他の一部とが制御装置300に設けられる。また、清掃信号取得部356は除電器200および制御装置300のいずれにも設けられない。
【0124】
図11および図12は、他の実施において除電器200により実行されるレポート出力処理のアルゴリズムの一例を示すフローチャートである。図11および図12のレポート出力処理においては、図10のステップS15に代えて、ステップS15a,S15bが実行される。
【0125】
具体的には、ステップS3~S5が順次実行される。ここで、ステップS5において、現時点が定期レポート情報の記録タイミングである場合、ステップS6~S8,S10が順次実行される。その後、処理はステップS5に戻される。
【0126】
一方、ステップS5において、現時点が定期レポート情報の記録タイミングでない場合、除電器制御部230は清掃が要求されたか否かを判定する(ステップS15a)。清掃が要求されていない場合、処理はステップS5に戻される。清掃が要求された場合、除電器制御部230は、オートクリーン機能を実行することにより清掃を行う(ステップS15b)。その後、ステップS16~S18,S20が順次実行される。ステップS20が実行された後、処理はステップS5に戻される。
【0127】
図11および図12のレポート出力処理におけるステップS1,S2,S9,S11~S14,S19は、図9および図10のレポート出力処理と同様に、制御装置300において行われる。この構成においては、制御装置300は、ステップS10で記録された定期レポート情報を除電器200から取得することにより、定期レポートを出力することができる。また、制御装置300は、ステップS20で記録されたクリーンレポート情報を除電器200から取得することにより、クリーンレポートを出力することができる。
【0128】
9.請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることができる。
【0129】
上記実施の形態においては、対象物9が対象物の例であり、除電器200が除電器の例であり、制御装置300が制御装置またはコンピュータの例であり、除電システム1が除電システムの例である。正イオン発生部211および負イオン発生部221がイオン発生部の例であり、イオン情報生成部240が測定部の例であり、測定値取得部351が測定値取得部の例であり、レポート出力部357がレポート出力部の例である。算出部352が算出部の例であり、除電器記憶部270が記憶部の例であり、判定部353が判定部の例であり、付帯情報取得部354が付帯情報取得部の例であり、付帯情報受付部355が付帯情報受付部の例であり、イオンバランスセンサ100がセンサの例である。
【0130】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、また、上記の実施の形態の一部の構成を組み合わせて実施することが可能である。
【符号の説明】
【0131】
1…除電システム,2…ベルトコンベア,3…対象空間,9…対象物,11…除電器筐体,12…送風口,13…カバー,100…イオンバランスセンサ,110A…検出プレート,110B…イオン検出回路,120…温度検出素子,130…湿度検出素子,140…センサ表示灯,150…センサ通信部,160…センサ電源部,190…センサ制御部,191…バランス情報生成部,192…イオン量情報生成部,193…温度情報生成部,194…湿度情報生成部,195…表示灯制御部,200…除電器,201…ファン,201a…回転軸,202…ファン駆動部,203…検知電極,211…正イオン発生部,211a,221a…円環状部材,212…正極側高圧回路,221…負イオン発生部,222…負極側高圧回路,230…除電器制御部,240…イオン情報生成部,241…内部イオン電流検出回路,242…外部イオン電流検出回路,250…表示部,260…操作部,270…除電器記憶部,271…一時記憶部,280…除電器通信部,290…除電器電源部,300…制御装置,310…本体表示部,320…本体操作部,330…主通信部,340…主記憶部,341…記憶媒体,350…主制御部,351…測定値取得部,352…算出部,353…判定部,354…付帯情報取得部,355…付帯情報受付部,356…清掃信号取得部,357…レポート出力部,400…帯電検出システム,410,420…帯電検出装置,411,421…検出ヘッド,430…通信装置,CA1~CA3…中継ケーブル,en1,en2…電極針
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12