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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037670
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】廃棄物処理設備
(51)【国際特許分類】
   F23J 15/00 20060101AFI20240312BHJP
   F28F 9/02 20060101ALI20240312BHJP
   F28F 21/08 20060101ALI20240312BHJP
   F27D 17/00 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
F23J15/00 Z
F28F9/02 301D
F28F21/08 G
F28F21/08 F
F27D17/00 101A
F27D17/00 105A
F27D17/00 104G
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053838
(22)【出願日】2023-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2022142358
(32)【優先日】2022-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】松井 朗
(72)【発明者】
【氏名】島村 育幸
(72)【発明者】
【氏名】中原 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】玉置 将吾
【テーマコード(参考)】
3K070
4K056
【Fターム(参考)】
3K070DA03
3K070DA04
3K070DA27
3K070DA35
3K070DA48
4K056AA19
4K056CA20
4K056DA02
4K056DA22
4K056DA29
4K056DA32
4K056DB05
4K056DB08
4K056DB13
(57)【要約】
【課題】熱交換器の耐久性を高めることができる廃棄物処理設備を提供する。
【解決手段】廃棄物処理設備は、廃棄物を焼却する焼却炉と、焼却炉から排出される排ガスに含まれる塵を捕集する集塵装置と、集塵装置よりも排ガスの排ガス流通方向の下流側に設けられ、排ガスを浄化する洗煙処理を行う洗煙装置と、集塵装置と洗煙装置との間に設けられ、排ガスと熱交換気体との間で熱交換を行うことにより、排ガスの熱を回収する低温熱交換器50と、を備え、低温熱交換器50は、熱交換気体が流れる熱交換気体路と排ガスが流れる排ガス路とを仕切る複数の仕切り部材522を有し、仕切り部材522は、第1の材料で構成される第1仕切り部材522aと、第1の材料よりも酸腐食耐性が高い第2の材料で構成される第2仕切り部材522bと、を含み、伝熱面の温度が硫酸露点以下となり得る領域RSに第2仕切り部材522bが配置される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を焼却する焼却炉と、
前記焼却炉から排出される排ガスに含まれる塵を捕集する集塵装置と、
前記集塵装置よりも前記排ガスの排ガス流通方向の下流側に設けられ、前記排ガスを浄化する洗煙処理を行う洗煙装置と、
前記集塵装置と前記洗煙装置との間に設けられ、前記排ガスと熱交換気体との間で熱交換を行うことにより、前記排ガスの熱を回収する低温熱交換器と、を備え、
前記低温熱交換器は、前記熱交換気体が流れる熱交換気体路と前記排ガスが流れる排ガス路とを仕切る複数の仕切り部材を有し、
前記仕切り部材は、第1の材料で構成される第1仕切り部材と、前記第1の材料よりも酸腐食耐性が高い第2の材料で構成される第2仕切り部材と、を含み、
前記仕切り部材の伝熱面の温度が硫酸露点以下となり得る領域に前記第2仕切り部材が配置される、廃棄物処理設備。
【請求項2】
前記第2仕切り部材は、前記第1仕切り部材よりも前記排ガス流通方向の下流側に配置される、請求項1に記載の廃棄物処理設備。
【請求項3】
前記第1の材料は、ステンレス鋼であり、
前記第2の材料は、純チタン、チタンを50質量%以上含むチタン合金、及びニッケルを40質量%以上含むニッケル合金のうちのいずれかである、請求項1又は2に記載の廃棄物処理設備。
【請求項4】
前記廃棄物は、アンモニア成分を含んでいる、請求項1又は2に記載の廃棄物処理設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物処理設備に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物を焼却して処理する廃棄物処理設備の中には、排ガスと熱媒との間で熱交換を行う熱交換器を備えている設備がある(例えば特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1に開示の加圧流動炉システムは、被処理物を燃焼する加圧流動炉と、加圧流動炉から排出された燃焼排ガスによって加圧流動炉に供給する燃焼ガスを加熱する空気予熱器と、加圧流動炉から排出された燃焼排ガス中の粉塵等を除去する集塵機と、燃焼排ガスによって駆動され加圧流動炉に燃焼空気を供給する過給機と、過給機から供給された燃焼排ガスによって白煙防止用空気を加熱する白煙防止用熱交換器と、燃焼排ガス内の不純物を除去する排煙処理装置とを備えている。白煙防止用熱交換器は、過給機のタービンから排出された燃焼排ガスと白煙防止ブロワから供給される白煙防止用空気とを間接的に熱交換することにより、白煙防止用空気を昇温し、燃焼排ガスを降温する。
【0004】
特許文献2に開示の設備は、ボイラ或いは塵芥焼却炉(以下、「焼却炉」という)と、空気予熱器と、高温熱交換器と、湿式排煙処理装置と、低温熱交換器とを備え、焼却炉で発生した燃焼ガスが流れるガスダクトにこの順で接続されている。低温熱交換器と高温熱交換器とは、押込送風機によって供給される空気が流れる空気ダクトで接続されている。燃焼ガスは、ガスダクトを通って、高温熱交換器に入り、低温熱交換器からの空気と熱交換を行う。高温熱交換器を出た燃焼ガスは、湿式排煙装置で脱硫もしくは脱硝されて、低温熱交換器に導かれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-15485号公報
【特許文献2】特開昭52―74133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2に開示されるような排ガスと熱媒との間で熱交換を行う熱交換器では、排ガスと熱媒との伝熱面の温度が硫酸露点以下になる部分が存在する場合がある。熱交換器の伝熱面の温度が硫酸露点以下になる部分では、排ガス中のSOxに含まれる三酸化硫黄等が凝縮して熱交換器の伝熱面に付着する。この凝縮物が熱交換器の伝熱面に付着すると、熱交換器の伝熱面の腐食が問題となる。特に、廃棄物のように性状が安定しない被燃焼物を燃焼した場合に発生する排ガスは、様々な成分を含むため、様々な成分の凝縮物が伝熱面に付着し、熱交換器の伝熱面の腐食が発生する。このような現象は、排ガスの流通方向において集塵装置よりも下流側を流れる比較的低温の排ガスで発生しやすい。
【0007】
このような理由から、熱交換器の耐久性を高めることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る廃棄物処理設備の特徴は、廃棄物を焼却する焼却炉と、前記焼却炉から排出される排ガスに含まれる塵を捕集する集塵装置と、前記集塵装置よりも前記排ガスの排ガス流通方向の下流側に設けられ、前記排ガスを浄化する洗煙処理を行う洗煙装置と、前記集塵装置と前記洗煙装置との間に設けられ、前記排ガスと熱交換気体との間で熱交換を行うことにより、前記排ガスの熱を回収する低温熱交換器と、を備え、前記低温熱交換器は、前記熱交換気体が流れる熱交換気体路と前記排ガスが流れる排ガス路とを仕切る複数の仕切り部材を有し、前記仕切り部材は、第1の材料で構成される第1仕切り部材と、前記第1の材料よりも酸腐食耐性が高い第2の材料で構成される第2仕切り部材と、を含み、前記仕切り部材の伝熱面の温度が硫酸露点以下となり得る領域に前記第2仕切り部材が配置される点にある。
【0009】
本構成によれば、熱交換気体が流れる熱交換気体路と排ガスが流れる排ガス路とを仕切る複数の仕切り部材が第1の材料で構成される第1仕切り部材と、第1の材料よりも酸腐食耐性が高い第2の材料で構成される第2仕切り部材とを含み、仕切り部材の伝熱面の温度が硫酸露点以下となり得る領域に第2仕切り部材が配置される。つまり、仕切り部材の伝熱面の温度が硫酸露点以下となり得る領域に、酸腐食耐性の高い第2の材料で構成される第2仕切り部材を配置することで仕切り部材の酸腐食を抑制することができ、仕切り部材の耐久性を高めることができる。したがって、低温熱交換器の耐久性を高めることができる。また、一般的に酸腐食耐性が高い材料は高価であるが、硫酸露点以下となり得る領域に第2仕切り部材を配置することで、低温熱交換器の低コスト化を図ることができる。
【0010】
また、本構成によれば、排ガスの流通方向において集塵装置よりも下流側に低温熱交換器が設けられるため、より低温の排ガスの熱エネルギを回収することができる。これにより、排ガスの熱を無駄なく回収することができ排ガスの熱回収率が向上する。しかも、低温熱交換器が仕切り部材を介して排ガスと熱交換気体との間で気体間熱交換を行うため、清浄な熱交換気体の温度を上昇させて発電等の様々な用途に用いることが可能となる。
【0011】
他の特徴として、前記第2仕切り部材は、前記第1仕切り部材よりも前記排ガス流通方向の下流側に配置されてもよい。
【0012】
排ガスの温度は、排ガス流通方向の下流側ほど低下し、仕切り部材の温度も排ガスの温度に比例して低下する。本構成によれば、仕切り部材の伝熱面の温度が硫酸露点以下となり得る排ガス流通方向の下流側に第2仕切り部材が配置されるため、仕切り部材の酸腐食を効率的に抑制することができる。
【0013】
他の特徴として、前記第1の材料は、ステンレス鋼であり、前記第2の材料は、純チタン、チタンを50質量%以上含むチタン合金、及びニッケルを40質量%以上含むニッケル合金のうちのいずれかであってもよい。
【0014】
本構成によれば、第2仕切り部材の材料(第2の材料)を、第1仕切り部材の材料(第1の材料)であるステンレス鋼よりも酸腐食性が高い純チタン、チタンを50質量%以上含むチタン合金、及びニッケルを40質量%以上含むニッケル合金のうちのいずれかとすることで、仕切り部材の酸腐食を確実に抑制することができる。
【0015】
他の特徴として、前記廃棄物は、アンモニア成分を含んでいてもよい。
【0016】
本構成によれば、廃棄物がアンモニア成分を含んでいるため、硫酸露点を下げることが可能となり、排ガスに起因する仕切り部材の腐食を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係る廃棄物処理設備の模式図である。
図2】実施形態に係る白煙防止予備熱交換器の構成を示す模式図である。
図3】実施形態に係る熱交換部及び洗浄部の構成を示す図である。
図4】実施形態に係るプレート部材を示す斜視図である。
図5】実施形態に係る洗浄部の構成を示す図である。
図6】実施形態に係る白煙防止予備熱交換器の構成を示すブロック図である。
図7】実施形態に係るプレート部材の温度に対する排ガス中のSOx成分が凝縮した凝縮液の硫酸濃度を示す図である。
図8】実施形態に係るプレート部材の主面における浸食メカニズムを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る低温熱交換器としての白煙防止予備熱交換器を備える廃棄物処理設備の実施形態について、図面に基づいて説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0019】
〔廃棄物処理設備の概要〕
図1に示すように、廃棄物処理設備100は、焼却炉10と、燃焼用空気供給装置20と、白煙防止主熱交換器30と、集塵装置40と、白煙防止予備熱交換器50(低温熱交換器の一例)と、湿式洗煙装置60と、発電設備70とを備える。
【0020】
また、廃棄物処理設備100は、焼却炉10で廃棄物を燃焼する際に発生する排ガスが流れる排ガス路R1を更に備える。焼却炉10と、燃焼用空気供給装置20と、白煙防止主熱交換器30と、集塵装置40と、白煙防止予備熱交換器50と、湿式洗煙装置60と、煙突(不図示)とは、排ガス路R1を介して接続する。以下では、排ガス路R1を流れる排ガスの流通方向を「排ガス流通方向D1」という。
【0021】
〔排ガス路〕
焼却炉10は、脱水汚泥等の廃棄物(例えば、下水汚泥を脱水した脱水汚泥等のアンモニア含有廃棄物)を焼却する。廃棄物を燃焼することにより発生した排ガスは、排ガス路R1を介して燃焼用空気供給装置20へ向けて排出される。排ガスには、塩化水素といった塩素化合物、硫黄酸化物等の腐食性物質が含まれる。本実施形態では、焼却炉10は、流動床式の焼却炉である。ただし、焼却炉10は、流動床式以外の焼却炉(例えばストーカ式焼却炉)であってもよい。
【0022】
燃焼用空気供給装置20は、焼却炉10で廃棄物を燃焼する際に利用される燃焼用空気を焼却炉10に供給する。燃焼用空気供給装置20は、排ガス流通方向D1において焼却炉10の下流側に設けられ、燃焼用空気供給装置20には、焼却炉10から排出される排ガスが導入される。
【0023】
燃焼用空気供給装置20は、燃焼用空気熱交換器21と、過給機22とを有する。なお、燃焼用空気供給装置20は、過給機22に代えて流動ブロアを有していてもよい。
【0024】
燃焼用空気熱交換器21は、焼却炉10から排出される排ガスと燃焼用空気との間で熱交換を行う。これにより、排ガスが冷却され、燃焼用空気が加熱される。燃焼用空気供給装置20によって加熱された燃焼用空気は、過給機22を介して焼却炉10に供給される。
【0025】
過給機22は、燃焼用空気熱交換器21へ圧縮した燃焼用空気を供給する。過給機22は、タービン221と、軸222と、圧縮機223とを含む。タービン221は、燃焼用空気熱交換器21で加熱された空気の圧力及び熱エネルギにより回転する。軸222は、タービン221の回転力を圧縮機223へ伝達する。圧縮機223は、軸222によって伝達された回転力を利用して燃焼用空気を圧縮する。圧縮機223によって圧縮された燃焼用空気は、燃焼用空気熱交換器21に導入される。
【0026】
白煙防止主熱交換器30は、排ガス流通方向D1において燃焼用空気供給装置20の下流側に設けられ、白煙防止主熱交換器30には、燃焼用空気供給装置20で熱交換が行われた後の排ガスが導入される。白煙防止主熱交換器30は、熱交換器の一種であって、多管式熱交換器又はプレート式熱交換器である。
【0027】
白煙防止主熱交換器30は、煙突から排出される排ガスが大気中で冷却されて白煙となることを防止するために設けられる。白煙防止主熱交換器30は、燃焼用空気供給装置20から導入された排ガスと空気(以下、「白煙防止空気」という)との間で熱交換を行う。これにより、排ガスが冷却され、白煙防止空気が加熱される。白煙防止空気は、廃棄物処理設備100が更に備えるブロアBから押し出されることにより導入される。なお、白煙防止空気が流れる経路(以下、「白煙防止空気経路R2」という)については後述する。
【0028】
集塵装置40は、排ガス流通方向D1において白煙防止主熱交換器30の下流側に設けられ、集塵装置40には、白煙防止主熱交換器30で熱交換が行われた後の排ガスが導入される。集塵装置40は、排ガスに含まれる塵を捕集する。本実施形態では、集塵装置40は、バグフィルタで構成される。ただし、集塵装置40は、バグフィルタで構成されるものに限定されず、セラミックフィルタ等で構成されてもよい。
【0029】
白煙防止予備熱交換器50は、排ガス流通方向D1において集塵装置40の下流側に設けられ、白煙防止予備熱交換器50には、集塵装置40で集塵された後の排ガスが導入される。白煙防止予備熱交換器50は、熱交換器の一種であって、本実施形態ではプレート式熱交換器である。白煙防止予備熱交換器50がプレート式熱交換器であることにより広い伝熱面での熱交換が行われる。
【0030】
白煙防止予備熱交換器50は、煙突から排出される排ガスが大気中で冷却されて白煙となることを防止するために設けられる。白煙防止予備熱交換器50には、白煙防止主熱交換器30に導入される排ガスよりも低温の排ガスが導入される。このため、白煙防止予備熱交換器50を「低温熱交換器」といい、白煙防止主熱交換器30を「高温熱交換器」という場合がある。
【0031】
白煙防止予備熱交換器50は、導入された排ガスの熱エネルギを利用して白煙防止空気(熱交換気体の一例)を加熱する。詳しくは、白煙防止予備熱交換器50は、集塵装置40から導入された排ガス、すなわち、塵が除去された後の排ガスと白煙防止空気との間で熱交換を行う。これにより排ガスを冷却し(排ガスの熱を回収し)、白煙防止空気を加熱する。なお、白煙防止予備熱交換器50に導入される排ガスの温度は、160度以上250度以下である。白煙防止予備熱交換器50において熱交換を行うことにより、排ガスの温度は、50度以上150度以下まで低下する。
【0032】
湿式洗煙装置60は、排ガス流通方向D1において白煙防止予備熱交換器50の下流側に設けられ、湿式洗煙装置60には、白煙防止予備熱交換器50で熱交換が行われた後の排ガスが導入される。湿式洗煙装置60(洗煙装置の一例)は、排ガスを浄化する洗煙処理を行う。本実施形態において、湿式洗煙装置60は、湿式洗煙処理によって排ガスを浄化し、減湿冷却によって排ガス中の水分を除去する。排ガスの浄化では、薬剤を含む循環水が利用される。排ガスの減湿冷却では、冷却水が利用される。減湿冷却によって排ガス中の水分が除去されることにより、排ガスの量が削減される。浄化された排ガスは、煙突(不図示)へ向けて流れる。
【0033】
〔白煙防止空気経路〕
廃棄物処理設備100は、白煙防止空気が流れる白煙防止空気経路R2を更に備える。以下では、白煙防止空気経路R2を流れる白煙防止空気の流通方向を「空気流通方向D2」という。
【0034】
白煙防止空気経路R2は、白煙防止空気を送り出すブロアBと、白煙防止予備熱交換器50と、白煙防止主熱交換器30と、発電設備70と、煙突(不図示)とを接続する。
【0035】
白煙防止予備熱交換器50は、空気流通方向D2において、ブロアBの下流側に設けられ、白煙防止予備熱交換器50には、ブロアBから送り出された白煙防止空気が導入される。白煙防止予備熱交換器50に導入される白煙防止空気の温度は、外気温と同等であって、0度以上50度以下である。白煙防止空気は、排ガスとの間で熱交換を行うことにより、50度以上220度以下まで温度が上昇する。
【0036】
白煙防止主熱交換器30は、空気流通方向D2において、白煙防止予備熱交換器50よりも下流側に設けられ、白煙防止主熱交換器30には、白煙防止予備熱交換器50で熱交換が行われた後の白煙防止空気が導入される。白煙防止主熱交換器30に導入される白煙防止空気の温度は、50度以上220度以下(例えば125度前後)である。白煙防止空気は、白煙防止主熱交換器30において熱交換を行うことにより、220度以上550度以下まで温度が上昇する。白煙防止主熱交換器30の熱回収量は、白煙防止予備熱交換器50の熱回収量と同等又はそれ以上(例えば1以上5倍以下)となるように構成されることが好ましい。
【0037】
発電設備70は、空気流通方向D2において、白煙防止主熱交換器30よりも下流側に設けられ、発電設備70には、白煙防止主熱交換器30で熱交換が行われた(加熱)された後の白煙防止空気が導入される。発電設備70は、白煙防止主熱交換器30で加熱された後の白煙防止空気の熱エネルギを利用して発電を行う。
【0038】
発電設備70は、温水ボイラ71と、循環路72と、発電装置73とを有する。
【0039】
温水ボイラ71は、白煙防止空気の熱エネルギを利用して水を加熱する。加熱された水(温水)は、発電装置73に循環路72を介して導入される。
【0040】
循環路72は、温水ボイラ71と発電装置73とを接続し、温水ボイラ71と発電装置73との間で水を循環させる。
【0041】
発電装置73は、温水ボイラ71から循環路72を介して導入された水(温水)を熱源として発電を行う。発電に利用された後の水は、循環路72を介して温水ボイラ71に導入される。本実施形態において、発電装置73は、バイナリ発電装置である。
【0042】
温水ボイラ71で熱エネルギが回収された白煙防止空気は、排ガス路R1の湿式洗煙装置60よりも下流側に導入され、湿式洗煙装置60から排出された排ガスと合流する。排ガスと合流する白煙防止空気の温度は、100度以上200度以下である。
【0043】
湿式洗煙装置60から排出された排ガスは、白煙防止空気と合流することにより、加熱される。白煙防止空気によって加熱された排ガスは、煙突(不図示)から大気中に排出される。上述のように、排ガスは、白煙防止主熱交換器30及び白煙防止予備熱交換器50で段階的に冷却され、最終的に湿式洗煙装置60で冷却された後、発電設備70を通過した白煙防止空気によって煙突から排出される前に加熱される。煙突から排出される前の排ガスの水分含有率の低下と排ガスの高温化との効果によって、煙突から排出される排ガスが白煙となることが防止される。
【0044】
〔白煙防止予備熱交換器〕
図2に示すように、白煙防止予備熱交換器50は、ハウジング51、熱交換部52及び洗浄部53(洗浄装置の一例)を有する。熱交換部52と洗浄部53の一部とは、ハウジング51に収容される。
【0045】
〔熱交換部〕
熱交換部52は、排ガスと白煙防止空気との間で熱交換を行う熱交換ユニット521を含む。本実施形態において、熱交換部52は、2つの熱交換ユニット521を含み、2つの熱交換ユニット521は排ガス流通方向D1に沿って配置される。以下、2つの熱交換ユニット521のうちの排ガス流通方向D1の上流側の熱交換ユニット521を「第1熱交換ユニット521a」といい、下流側の熱交換ユニット521を「第2熱交換ユニット521b」という。本実施形態において、第2熱交換ユニット521bは、第1熱交換ユニット521aよりも下方に配置される。
【0046】
なお、白煙防止空気は、白煙防止予備熱交換器50の外部から第2熱交換ユニット521bと第1熱交換ユニット521aとの順に流れ、白煙防止予備熱交換器50の外部へ排出される。第2熱交換ユニット521bと第1熱交換ユニット521aとは、例えばダクト(不図示)を介して接続され、白煙防止空気は、第2熱交換ユニット521bから第1熱交換ユニット521aへとダクト(不図示)を介して流入する。
【0047】
第1熱交換ユニット521aと第2熱交換ユニット521bとは、それぞれ複数のプレート部材522(仕切り部材の一例)を含む。
【0048】
〔プレート部材〕
図3に示すように、プレート部材522は、白煙防止予備熱交換器50の内部において、排ガスが流れる熱交換排ガス路R51(排ガス路の一例)と白煙防止空気が流れる熱交換空気路R52(熱交換気体路の一例)とを仕切る。白煙防止予備熱交換器50の内部では、複数の熱交換排ガス路R51と複数の熱交換空気路R52とがそれぞれ並列に形成され、熱交換排ガス路R51と熱交換空気路R52とが交互に設けられる。なお、熱交換排ガス路R51は、白煙防止予備熱交換器50の内部における排ガス路R1であり、熱交換空気路R52は、白煙防止予備熱交換器50の内部における白煙防止空気経路R2である。
【0049】
図3及び図4に示すように、プレート部材522は、平板状であって主面522sを有する。複数のプレート部材522は、それぞれの主面522sが平行となるように離間して配置される。本実施形態では、主面522sは、平坦な面であるが、主面522sは、少なくとも一方に、溝、突起といった微小な凹凸が形成されていてもよい。
【0050】
熱交換排ガス路R51は、対向するプレート部材522の間に形成される。図4に示すように、熱交換排ガス路R51は、例えば、対向するプレート部材522の一方の端部522e(以下、「第1端部522e」という)が溶接等によって接合されることにより形成される。なお、図4に示す一点鎖線は、溶接部分を示す。以下、熱交換排ガス路R51を挟んで対向する2つのプレート部材522を「一対のプレート部材522t」という。
【0051】
図3に示すように、熱交換空気路R52は、互いに隣り合う熱交換排ガス路R51の間に形成される。熱交換空気路R52は、図4に示すように、第1接合プレート522Aと、隣接する一対のプレート部材522tの第2接合プレート522Bとの第2端部522fが接合されることにより形成される。第2端部522fは、プレート部材522のうちの第1端部522eと直交する方向の端部であり、平面視(主面522sに沿う方向視)において隣り合う第1端部522eの間に形成されている。第1接合プレート522Aは、一対のプレート部材522tのうちの1つのプレート部材522である。第2接合プレート522Bは、第1接合プレート522Aに隣接する一対のプレート部材522tのうち熱交換空気路R52を介して第1接合プレート522Aに対向するプレート部材522である。
【0052】
熱交換排ガス路R51と熱交換空気路R52とはプレート部材522の主面522sに直交する方向から見たときに、主面522sを挟むように重複している。そのため、プレート部材522の主面522sは、熱交換排ガス路R51を流れる排ガスと熱交換空気路R52を流れる白煙防止空気とが熱交換を行うための伝熱面として機能する。
【0053】
〔洗浄部〕
図3に示すように、洗浄部53は、プレート部材522を洗浄液L1で洗浄する。洗浄液L1は、プレート部材522に付着した付着物(凝縮物)を除去するための液体であって、本実施形態では、水(上水、工業用水、砂ろ過水、下水処理水等)である。なお、洗浄液L1は、水酸化ナトリウム等を含むアルカリ性の水溶液であってもよい。
【0054】
排ガスの熱回収によってプレート部材522の伝熱面(主面522s)の温度が低下すると、排ガスに含まれる成分が凝縮してプレート部材522に付着する。本実施形態では、洗浄部53は、所定の間隔(予め設定された頻度)でプレート部材522を洗浄する。これにより、プレート部材522に付着した付着物が除去されて、プレート部材522の酸腐食を抑制することができる。また、洗浄部53は廃棄物処理設備100に組み込まれているため、凝縮物が付着したプレート部材522を運転中に洗浄することが可能となり、プレート部材522に凝縮物が長時間付着し続ける事態を防止することができる。この結果、プレート部材522の酸腐食を抑制することができる。
【0055】
図5に示すように、洗浄部53は、第1タンク531、洗浄液供給部532及び洗浄ユニット533を含む。
【0056】
第1タンク531には、洗浄液L1が貯留される。第1タンク531は、ハウジング51(図2参照)の外部に設けられる。
【0057】
洗浄液供給部532は、第1ポンプ532a及び洗浄液供給路532bを含む。第1ポンプ532aは、第1タンク531に貯留された洗浄液L1を移送する。洗浄液供給路532bには、第1ポンプ532aによって移送された洗浄液L1が流れる。洗浄液供給路532bは、洗浄ユニット533と接続され、洗浄液供給路532bを流れる洗浄液L1が洗浄ユニット533に供給される。
【0058】
洗浄ユニット533は、ノズルパイプ535と、複数のノズル536と、制御バルブ537とを含む。ノズルパイプ535と複数のノズル536とは、ハウジング51の内部に設けられ、制御バルブ537は、ハウジング51の外部に設けられる。
【0059】
ノズルパイプ535は、制御バルブ537を介して洗浄液供給路532bと接続され、洗浄液供給路532bから洗浄液L1が供給される。
【0060】
図2に示すように、洗浄ユニット533は、複数のノズルパイプ535を含み、複数のノズルパイプ535は、プレート部材522の主面522sと平行な仮想平面において排ガス流通方向D1と直交する方向に並んで設けられる。なお、本実施形態では、洗浄ユニット533は、2つのノズルパイプ535を含み、1つの制御バルブ537に2つのノズルパイプ535が接続されている。
【0061】
図3に示すように、ノズルパイプ535は、プレート部材522の主面522sと直交する方向に延在し、その延在方向に沿って複数のノズル536が設けられる。なお、図3では、1つの制御バルブ537に接続される2つのノズルパイプ535の一方を図示している。
【0062】
ノズル536は、洗浄液L1を噴射する。本実施形態において、ノズル536は、洗浄液L1を高圧で噴射する。ただし、ノズル536は、洗浄液L1を低圧で噴射するノズルであってもよい。
【0063】
制御バルブ537は、ノズルパイプ535を流れる洗浄液L1の流量を制御する。制御バルブ537がノズルパイプ535を流れる洗浄液L1の流量を制御することにより、ノズル536からプレート部材522へ供給される洗浄液L1の量(以下、「供給量」という)が制御される。本実施形態では、制御バルブ537は、弁開度を全開と全閉との間の所定の開度に調整可能な手動弁と、タイマー動作によってON(全開)/OFF(全閉)切り替わる電磁弁との組み合わせで構成される。
【0064】
ここで、供給量とは、熱交換ユニット521に対して、その熱交換ユニット521に対応する洗浄ユニット533を構成する複数のノズル536から、単位時間当たり(例えば24時間)に供給される洗浄液L1の量である。具体的には、供給量は、洗浄ユニット533を構成するノズル536の数量と、1つのノズル536から1回に噴射される洗浄液L1の噴射量(L/個)と、単位時間当たり(例えば24時間)にノズル536が洗浄液L1を噴射する頻度(以下、「噴射頻度」という)とを乗算して得た値に基づいて求められる。なお、噴射量(L/個)は、1つのノズル536から単位時間当たりに噴射される洗浄液L1の量(L/min・個)と、1つのノズル536の1回の噴射時間(min)とを乗算することにより求められる。噴射頻度、噴射量、噴射時間等の噴射条件は、図6に示すように、白煙防止予備熱交換器50が更に備える制御装置55によって設定される。
【0065】
制御装置55は、洗浄部53(制御バルブ537)の動作を制御する。制御装置55は、例えば、シーケンサ(Programmable Logic Controller)、又は、DCS(distributed control system)の一部で構成される。あるいは、制御装置55は、洗浄時間などの時間を計測するハードタイマーで構成されてもよい。なお、制御装置55は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ、ROM(Read Only Memory)等の半導体メモリで構成される記憶領域を含んでもよい。記憶領域には、洗浄部53の動作を制御するための制御プログラムが記憶されてもよい。
【0066】
〔プレート部材の材料〕
図2に示すように、熱交換部52は、プレート部材522の伝熱面(主面522s)の温度が硫酸露点Ts以下になり得る領域RSを含む。本実施形態において、領域RSは、第1熱交換ユニット521aよりも排ガス流通方向D1の下流側に配置される第2熱交換ユニット521b内に位置する。
【0067】
領域RSは、プレート部材522の伝熱面(主面522s)の温度が硫酸露点Ts以下となる得る領域である(図7参照)。図7は、プレート部材522の温度に対する排ガス中のSOx成分が凝縮した凝縮液の硫酸濃度Cを模式的に示す図である。図7に示す縦軸は、プレート部材522の伝熱面(主面522s)の温度を示し、曲線は、排ガス中のSOx成分が凝縮した凝縮液の硫酸濃度Cを示す。
【0068】
硫酸露点Tsは、排ガスに含まれる硫酸と水との濃度によって異なるが、例えば130度~150度である。
【0069】
図7に示すように、領域RSでは、プレート部材522の伝熱面の温度が低下するにつれて凝縮液の硫酸濃度Cが低下する。
【0070】
図7の曲線が示すように、凝縮液の硫酸濃度Cが低い部分ほど、凝縮液(凝縮物)がプレート部材522に付着し難く、プレート部材522の酸腐食が穏やかであるが、凝縮液の硫酸濃度Cが高い部分ほど凝縮液(凝縮物)がプレート部材522に付着しやすく、プレート部材522の酸腐食が発生しやすい。このため、本実施形態では、領域RSに配置されるプレート部材522(領域RSが位置する第2熱交換ユニット521bに配置されるプレート部材522)の材料(第2の材料)として、領域RS以外に配置されるプレート部材522(領域RSが位置しない第1熱交換ユニット521aに配置されるプレート部材522)の材料(第1の材料)よりも酸腐食耐性が高い材料が選択される。これにより、プレート部材522の酸腐食を抑制することができる。以下、第1の材料で構成されるプレート部材522を「第1プレート部材522a」(第1仕切り部材の一例)といい、第2の材料で構成されるプレート部材522を「第2プレート部材522b」(第2仕切り部材の一例)という。
【0071】
プレート部材522は、例えば、純チタン、チタン合金、ステンレス鋼又はニッケル合金を材料として選択することができる。本実施形態では、第1の材料としてステンレス鋼が選択され、第2の材料としてニッケル合金が選択されている。ステンレス鋼としては、SUS316(ニッケル10~18質量%、クロム16~18質量%、モリブデン2~3質量%、残部として鉄)、SUS304(ニッケル8~10.5質量%、クロム18~20質量%、残部として鉄)等のオーステナイト系ステンレス鋼が挙げられる。なお、第2の材料としてニッケル合金以外の純チタン、チタンを50質量%チタン合金が選択されてもよい。
【0072】
ニッケル合金としては、ハステロイ(登録商標)、ALLOY、インコネル(登録商標)等が挙げられる。ハステロイとしては、例えば、ハステロイC-22(鉄3質量%、ニッケル56質量%、クロム22質量%、モリブデン13質量%、タングステン3質量%)、ハステロイC-276(鉄5質量%、ニッケル57質量%、クロム16質量%、モリブデン16質量%、タングステン4質量%)、その他のハステロイ等が挙げられる。その他のハステロイとしては、ニッケルを43~71質量%含むハステロイであって、例えば、ハステロイC-4(ニッケル65質量%、クロム16質量%、モリブデン16質量%)、ハステロイC-22HS(ニッケル61質量%、クロム21質量%、モリブデン17質量%)、ハステロイC-2000(ニッケル59質量%、クロム23質量%、モリブデン16質量%、銅1.6質量%)、ハステロイHYBRID-BC1(ニッケル62質量%、クロム15質量%、モリブデン22質量%、マンガン0.25質量%)が挙げられる。
【0073】
ALLOYとしては、例えば、ALLOY22(鉄2~6質量%、ニッケル約56質量%、クロム20~22.5質量%、モリブデン12.5~14.5質量%、タングステン2.5~3.5質量%)、ALLOY C-276(鉄4~7質量%、ニッケル約57質量%、クロム14.5~16.5質量%、モリブデン15~17質量%、タングステン3~4.5質量%)等が挙げられる。
【0074】
インコネルとしては、インコネル600(鉄6~10質量%、ニッケル72質量%、クロム14~17質量%)、インコネル625(ニッケル58質量%、クロム20~23質量%、モリブデン8~10質量%、ニオブ3.15~4.15質量%)、インコネル718(鉄少量、ニッケル50~55質量%、クロム17~21質量%、モリブデン2.8~3.3質量%、ニオブ4.75~5.5質量%、チタン0.65~1.15質量%、アルミニウム0.2~0.8質量%)等が挙げられる。
【0075】
つまり、第2の材料は、ニッケル40質量%~75質量%を主成分として含み、クロムが0より大きく25質量%以下を必須成分として、残部としてモリブデン、鉄、タングステン、銅、マンガン、ニオブ、チタン、アルミニウム、不純物等を含んでいる。
【0076】
上述のように、本実施形態では、プレート部材522の伝熱面(主面522s)の温度が硫酸露点Ts以下となり得る領域RSは、第2熱交換ユニット521b内の領域である。したがって、本実施形態では、第2熱交換ユニット521bに、第2の材料で構成される第2プレート部材522bが配置され、第1熱交換ユニット521aに第1の材料で構成される第1プレート部材522aが配置される。すなわち、プレート部材522は、第1の材料で構成される第1プレート部材522aと、第1の材料よりも酸腐食耐性が高い第2の材料で構成される第2プレート部材522bとを含み、第2プレート部材522bは、第1プレート部材522aよりも排ガス流通方向D1の下流側に配置される。熱交換部52を構成するプレート部材522のうち排ガス流通方向D1の下流側に配置されるプレート部材522の材料を酸腐食耐性が高い第2の材料とすることにより、プレート部材522の酸腐食を効率よく抑制することができる。
【0077】
なお、石炭ボイラといった石炭(化石燃料)を燃焼することにより発生する排ガスに含まれる硫酸成分(三酸化硫黄)の濃度は、廃棄物を燃焼することによって発生する排ガスに含まれる硫酸成分(三酸化硫黄)の濃度よりも高い。一方、廃棄物を燃焼することによって発生する排ガスの硫酸成分の濃度は化石燃料によって発生する排ガスよりも低く、従来から廃棄物処理設備に配置される熱交換器では化石燃料の場合と比べて酸腐食の影響が問題とされ難いが、本実施形態では白煙防止予備熱交換器50で領域RSが存在することを突き止め、領域RSに酸腐食耐性の高い材料で構成されるプレート部材522を配置することよって、熱交換器を低温域に配置しても耐久性を高めることを可能とした。
【0078】
また、化石燃料を燃焼することにより発生する排ガスは、その排ガスに含まれる硫黄分が石炭の種類ごとにある程度定まっており、排ガス中の三酸化硫黄の濃度を推定しやすい。一方で、廃棄物は、その性状が安定しないため、廃棄物を燃焼することにより発生する排ガス中の三酸化硫黄の濃度の推定は容易ではない。このため、領域RSを、既設の廃棄物処理設備に実験用熱交換器を設置した実験結果に基づいて決定してもよい。
【0079】
例えば、既存の廃棄物処理設備であって、白煙防止予備熱交換器が設けられていない廃棄物処理設備に実験用熱交換器を設置し、実験用熱交換器内に配置されたテストピースの腐食の進行度合を求めて、テストピースの腐食の進行度合の高い領域に相当する実機の領域を領域RSとして決定してもよい。テストピースの腐食の進行度合は、非接触によってテストピースの厚みを測定することにより求めてもよいし、実験用熱交換器にあらかじめ設けられた点検口からテストピースを取り出してテストピースの厚みを測定することにより求めてもよい。実験によって決定した領域RSに第2プレート部材522bを配置することにより、プレート部材522の腐食をより確実に抑制することができ、白煙防止予備熱交換器50の耐久性を高めることができる。なお、実験用熱交換機は、排ガスの流通方向において既存の廃棄物処理設備の集塵装置と湿式洗煙装置との間に設けられる。
【0080】
〔実施形態の作用効果〕
以上説明したように、本実施形態によれば、排ガス流通方向D1において集塵装置40よりも下流側に白煙防止予備熱交換器50が設けられるため、より低温の排ガスの熱エネルギを回収することができる。これにより、排ガスの熱を無駄なく回収することができ排ガスの熱回収率が向上する。しかも、白煙防止予備熱交換器50がプレート部材522を介して排ガスと白煙防止空気との間で気体間熱交換を行うため、清浄な白煙防止空気の温度を上昇させて発電等の様々な用途に用いることが可能となる。
【0081】
また、白煙防止空気が流れる熱交換空気路R52と排ガスが流れる熱交換排ガス路R51とを仕切る複数のプレート部材522が第1の材料で構成される第1プレート部材522aと、第1の材料よりも酸腐食耐性が高い第2の材料で構成される第2プレート部材522bとを含み、プレート部材522の伝熱面の温度が硫酸露点Ts以下となり得る領域RSに第2プレート部材522bが配置される。つまり、プレート部材522の伝熱面の温度が硫酸露点Ts以下となり得る領域RSに、酸腐食耐性の高い第2の材料で構成される第2プレート部材522bを配置される。これにより、プレート部材522の酸腐食を抑制することができ、プレート部材522の耐久性を高めることができる。したがって、白煙防止予備熱交換器50の耐久性を高めることができる。また、一般的に酸腐食耐性が高い材料は高価であるが、硫酸露点以下となり得る領域RSに第2プレート部材522bを配置することで、低温熱交換器の低コスト化を図ることができる。
【0082】
また、廃棄物が下水汚泥を脱水した脱水汚泥等のアンモニア含有廃棄物の場合は、白煙防止予備熱交換器50を流通する排ガス中にNH(アンモニア)を加えることなく、廃棄物由来のアンモニアが依然として存在し、図8に示すように、プレート部材522の主面522s(伝熱面)及びその近傍では、排ガス中のSOxとNHとが反応し、SOxは、SOxよりも比較的浸食性の低い(NHSO(硫酸アンモニウム)に変化する。また、排ガス中のHCl(塩酸)は、NHと反応してNHCl(塩化アンモニウム)に変化する。図8は、プレート部材522の主面522s(伝熱面)を洗浄しない場合の浸食メカニズムを模式的に示す図である。図8に示す縦軸は、プレート部材522の主面522s(伝熱面)の温度を示し、横軸は、プレート部材522の主面522s付近で生成される生成物の量を相対的に示している。なお、縦軸は下側ほど温度が低いことを示す。また、図8の左から順に、黒墨ハッチングは、FeО(酸化鉄(III))の相対量を示し、左上がりハッチングは、NHClの相対量を示し、右上がりハッチングは、(NHSOの相対量を示し、薄墨ハッチングは、HOの相対量を示す。図8に示されるように、FeО、(NHSOは、硫酸に比べてプレート部材522が酸腐食し難く、また、硫酸濃度を低下させる効果があるため、プレート部材522の耐久性を高めることができる。特に、硫酸露点Ts以下では、硫酸の凝縮が開始し、水の凝縮量に応じてNHと反応して(NHSOに変化することが知見として得られた。これらの知見によれば、廃棄物が下水汚泥等のアンモニア含有廃棄物である場合、水の凝縮量が少なく硫酸濃度が高まりやすい硫酸露点Ts付近でも、硫酸に代えて(NHSOの生成が優勢となり、硫酸露点Ts以下の硫酸濃度を下げることが可能となる。その結果、上述したノズル536から噴射される洗浄液L1を用いた洗浄により、プレート部材522の酸腐食を抑制できる。また、NHClは水に溶解することによりpHが高くなるが、ノズル536から噴射される洗浄液L1を用いた洗浄により、NHCl水溶液の付着を防止できる。なお、プレート部材522を洗浄液L1で洗浄しない場合、Feを主体とした固体物質がプレート部材522の主面522s全体に亘って付着されることも確認されたことから、錆を防ぐ観点からも洗浄液L1を用いた洗浄が有効に機能する。
【0083】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成してもよい(実施形態と同じ機能を有するものには、実施形態と共通の番号、符号を付している)。
【0084】
(1)本実施形態では、白煙防止予備熱交換器50が直交流式のプレート式の熱交換器である場合を例に説明したが、白煙防止予備熱交換器50は、対向流、並行流等のプレート式の熱交換器であってもよい。また、白煙防止予備熱交換器50における排ガスの導入口50a、排ガスの排出口50b、白煙防止空気の導入口50c及び白煙防止空気の排出口50d(図2参照)は、実施形態で説明した内容に限定されず、適宜変更可能である。この場合、白煙防止予備熱交換器50における排ガス及び白煙防止空気の流通方向は適宜変更され得る。
【0085】
(2)本実施形態において、白煙防止主熱交換器30が1つである場合を説明したが、白煙防止主熱交換器30は、複数で構成されてもよい。
【0086】
(3)本実施形態では、白煙防止主熱交換器30及び白煙防止予備熱交換器50が白煙を防止するために白煙防止空気を加熱する構成を例に説明したが、白煙防止主熱交換器30及び白煙防止予備熱交換器50は、単に排ガスから熱を回収するために設けられる熱交換器であってもよい。
【0087】
(4)本実施形態では、集塵装置40が排ガス流通方向D1において白煙防止主熱交換器30の下流側に設けられたが、集塵装置40は、白煙防止主熱交換器30よりも排ガス流通方向D1の上流側に設けられてもよい。
【0088】
(5)本実施形態では、第2熱交換ユニット521bが第1熱交換ユニット521aよりも下方に設けられたが、第2熱交換ユニット521bは、第1熱交換ユニット521aよりも排ガス流通方向D1の下流側となる限り、第1熱交換ユニット521aよりも下方に設けられなくてもよく、第1熱交換ユニット521aと並列又は第1熱交換ユニット521aよりも上方に設けられてもよい。
【0089】
(6)本実施形態では、熱交換ユニット521が2つである場合を説明したが、熱交換ユニット521は、1つ、又は3つ以上であってもよい。熱交換ユニット521が3つ以上の場合、第1熱交換ユニット521aの数と第2熱交換ユニット521bとの数の組み合わせは、任意に設定される。
【0090】
(7)本実施形態では、第2の材料で構成される第2プレート部材522bが第2熱交換ユニット521bに配置されたが、第2プレート部材522bは、プレート部材522の主面522sの温度が硫酸露点Ts以下となり得る領域RSに配置されればよい。例えば、第2プレート部材522bは、第2熱交換ユニット521bの一部に配置されるプレート部材522であってもよい。あるいは、第1熱交換ユニット521aの一部と第2熱交換ユニット521bのすべてに配置されるプレート部材522であってもよいし、第1熱交換ユニット521aの一部のみに配置されるプレート部材522であってもよい。
【0091】
(8)洗浄ユニット533が含むノズルパイプ535の数は任意に変更可能である。また、ノズルパイプ535に設けられるノズル536の数も任意に変更可能である。また、1つの制御バルブ537に接続されるノズルパイプ535の数も任意に変更可能である。
【0092】
(9)本実施形態では、洗浄部53が第1タンク531を含む場合を説明したが、洗浄部53は、第1タンク531を省略可能である。この場合、ノズル536には、上水、工業用水、砂ろ過水、下水処理水等が供給される。また、制御バルブ537が手動弁と電磁弁との組み合わせである場合を説明したが、制御バルブ537は、弁開度を制御可能な弁であればよい。
【0093】
(10)本実施形態では、ノズル536の噴射条件(洗浄条件)が制御装置55によって設定される場合を説明したが、噴射条件は、人為的に設定されてもよい。例えば、1年、半年といった定期的に実施される定期点検において、技術者が、プレート部材522の腐食の進行度合い等に基づいてノズル536の噴射条件を設定してもよい。なお、噴射条件は、技術者に限定されず、作業員、運転員等によって設定されてもよい。
【0094】
(11)本実施形態では、洗浄部53は、複数のノズル536から洗浄液L1を噴射することにより、プレート部材522を洗浄液L1で洗浄したが、洗浄部53がプレート部材522を洗浄する方法はこれに限定されない。例えば、洗浄部53は、パイプに設けられた穴から洗浄液L1を滴下することにより、プレート部材522を洗浄してもよい。
【0095】
(12)本実施形態では、仕切り部材としての平板状のプレート部材522を例に説明したが、平板状のプレート部材522に代えて、凹凸状に屈曲された板材等、屈曲部を有する板材であってもよい。
【0096】
(13)本実施形態では、一対のプレート部材522tは、互いに対向する主面522sが平行となるように離間して並列に設けられたが、一対のプレート部材522の互いに対向する主面522sは、排ガス流通方向D1の下流側ほど接近するように傾斜して設けられてもよい。これにより、例えば、互いに対向する主面522sの排ガス流通方向D1の下流側において洗浄液L1が滞留し、結果、主面522sに付着した付着物をより確実に除去することができる。
【0097】
(14)本実施形態では、発電設備70が温水ボイラ71と、循環路72と、発電装置73とを有する場合を例に説明したが、発電設備70は、蒸気ボイラ、給水ポンプ、給水タンク等で構成されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、廃棄物処理設備に利用できる。
【符号の説明】
【0099】
10 :焼却炉
40 :集塵装置
50 :白煙防止予備熱交換器(低温熱交換器)
53 :洗浄部(洗浄装置)
60 :洗煙装置(湿式洗煙装置)
100 :廃棄物処理設備
522 :プレート部材(仕切り部材)
522a :第1プレート部材(第1仕切り部材)
522b :第2プレート部材(第2仕切り部材)
D1 :排ガス流通方向
R51 :熱交換排ガス路(排ガス路)
R52 :熱交換空気路(熱交換気体路)
RS :硫酸露点以上となり得る領域
Ts :硫酸露点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8