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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037672
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】廃棄物処理設備及び廃棄物処理方法
(51)【国際特許分類】
   F23J 15/04 20060101AFI20240312BHJP
   F23J 15/00 20060101ALI20240312BHJP
   F28D 9/00 20060101ALI20240312BHJP
   F28G 1/16 20060101ALI20240312BHJP
   F27D 17/00 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
F23J15/04
F23J15/00 Z
F28D9/00
F28G1/16 Z
F27D17/00 101A
F27D17/00 104G
F27D17/00 105A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053840
(22)【出願日】2023-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2022142361
(32)【優先日】2022-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】松井 朗
(72)【発明者】
【氏名】島村 育幸
(72)【発明者】
【氏名】中原 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】玉置 将吾
【テーマコード(参考)】
3K070
3L103
4K056
【Fターム(参考)】
3K070DA03
3K070DA04
3K070DA35
3K070DA48
3L103AA31
4K056AA19
4K056BB01
4K056CA20
4K056DA02
4K056DA22
4K056DA32
4K056DB05
4K056DB08
4K056DB13
(57)【要約】
【課題】熱交換器の腐食を抑制することができる廃棄物処理設備を提供する。
【解決手段】廃棄物処理設備は、廃棄物を焼却する焼却炉と、焼却炉から排出される排ガスに含まれる塵を捕集する集塵装置と、集塵装置よりも排ガスの排ガス流通方向の下流側に設けられ、排ガスを浄化する洗煙処理を行う洗煙装置と、集塵装置と洗煙装置との間に設けられ、排ガスと熱交換気体との間で熱交換を行うことにより、排ガスの熱を回収する低温熱交換器50と、を備え、低温熱交換器50は、熱交換気体が流れる熱交換気体路R52と排ガスが流れる排ガス路R51とを仕切る複数の仕切り部材522と、仕切り部材522を洗浄液L1で洗浄する洗浄装置53と、を有し、洗浄装置53は、複数のノズル536を含み、複数のノズル536から供給される洗浄液L1の供給量は、仕切り部材522の温度に基づいて設定される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を焼却する焼却炉と、
前記焼却炉から排出される排ガスに含まれる塵を捕集する集塵装置と、
前記集塵装置よりも前記排ガスの排ガス流通方向の下流側に設けられ、前記排ガスを浄化する洗煙処理を行う洗煙装置と、
前記集塵装置と前記洗煙装置との間に設けられ、前記排ガスと熱交換気体との間で熱交換を行うことにより、前記排ガスの熱を回収する低温熱交換器と、を備え、
前記低温熱交換器は、前記熱交換気体が流れる熱交換気体路と前記排ガスが流れる排ガス路とを仕切る複数の仕切り部材と、前記仕切り部材を洗浄液で洗浄する洗浄装置と、を有し、
前記洗浄装置は、複数のノズルを含み、
複数の前記ノズルから供給される前記洗浄液の供給量は、前記仕切り部材の温度に基づいて設定される、廃棄物処理設備。
【請求項2】
前記供給量は、前記洗浄液が供給されることによる前記仕切り部材の温度変化に基づいて設定される、請求項1に記載の廃棄物処理設備。
【請求項3】
前記仕切り部材の温度を取得する温度取得部と、
前記洗浄装置の動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記温度取得部によって取得された前記仕切り部材の温度に基づいて、前記供給量を設定する、請求項1又は2に記載の廃棄物処理設備。
【請求項4】
前記温度取得部は、前記低温熱交換器に導入される前記排ガスの導入温度、前記低温熱交換器から排出される前記排ガスの排出温度、前記排ガスの流量、前記低温熱交換器に導入される前記熱交換気体の導入温度、前記低温熱交換器から排出される前記熱交換気体の排出温度、及び前記熱交換気体の流量のうちの少なくとも1つに基づいて前記仕切り部材の温度を取得する、請求項3に記載の廃棄物処理設備。
【請求項5】
前記排ガスの導入温度、前記排ガスの排出温度、前記排ガスの流量、前記熱交換気体の導入温度、前記熱交換気体の排出温度、及び前記熱交換気体の流量のうちの少なくとも1つは実測値である、請求項4に記載の廃棄物処理設備。
【請求項6】
前記洗浄液の温度を調節する温度調整部を更に備え、
前記制御部は、前記仕切り部材の温度に基づいて、前記温度調整部の動作を制御することにより前記洗浄液の温度を調整する、請求項3に記載の廃棄物処理設備。
【請求項7】
前記洗浄装置は、複数の前記ノズルで構成される洗浄ユニットを更に含み、
前記洗浄ユニットは、第1洗浄ユニットと、前記第1洗浄ユニットと異なる位置に配置される第2洗浄ユニットとを含み、
前記第1洗浄ユニットを構成するノズルから前記仕切り部材に供給される前記洗浄液の第1供給量は、前記第2洗浄ユニットを構成するノズルから前記仕切り部材に供給される前記洗浄液の第2供給量と異なる、請求項1に記載の廃棄物処理設備。
【請求項8】
前記廃棄物は、アンモニア成分を含んでいる、請求項1又は2に記載の廃棄物処理設備。
【請求項9】
廃棄物を焼却する焼却炉を備える廃棄物処理設備における廃棄物処理方法であって、
前記焼却炉から排出される排ガスに含まれる塵を捕集する集塵ステップと、
集塵された前記排ガスと熱交換気体との間で熱交換を行うことにより、前記排ガスの熱を回収する熱回収ステップと、
熱回収された前記排ガスを浄化する洗煙ステップと、を含み、
前記熱回収ステップは、前記熱交換気体が流れる熱交換気体路と前記排ガスが流れる排ガス路とを仕切る複数の仕切り部材を洗浄装置によって洗浄する洗浄ステップを含み、
前記洗浄ステップにおいて、前記洗浄装置が有するノズルから供給される洗浄液の供給量は、前記仕切り部材の温度に基づいて設定される、廃棄物処理方法。
【請求項10】
前記廃棄物は、アンモニア成分を含んでいる、請求項9に記載の廃棄物処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物処理設備及び廃棄物処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物を焼却して処理する廃棄物処理設備の中には、排ガスと熱媒との間で熱交換を行う熱交換器を備えている設備がある(例えば特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1に開示の加圧流動炉システムは、被処理物を燃焼する加圧流動炉と、加圧流動炉から排出された燃焼排ガスによって加圧流動炉に供給する燃焼ガスを加熱する空気予熱器と、加圧流動炉から排出された燃焼排ガス中の粉塵等を除去する集塵機と、燃焼排ガスによって駆動され加圧流動炉に燃焼空気を供給する過給機と、過給機から供給された燃焼排ガスによって白煙防止用空気を加熱する白煙防止用熱交換器と、燃焼排ガス内の不純物を除去する排煙処理装置とを備えている。白煙防止用熱交換器は、過給機のタービンから排出された燃焼排ガスと白煙防止ブロワから供給される白煙防止用空気とを間接的に熱交換することにより、白煙防止用空気を昇温し、燃焼排ガスを降温する。
【0004】
特許文献2に開示の設備は、ボイラ或いは塵芥焼却炉(以下、「焼却炉」という)と、空気予熱器と、高温熱交換器と、湿式排煙処理装置と、低温熱交換器とを備え、焼却炉で発生した燃焼ガスが流れるガスダクトにこの順で接続されている。低温熱交換器と高温熱交換器とは、押込送風機によって供給される空気が流れる空気ダクトで接続されている。燃焼ガスは、ガスダクトを通って、高温熱交換器に入り、低温熱交換器からの空気と熱交換を行う。高温熱交換器を出た燃焼ガスは、湿式排煙装置で脱硫もしくは脱硝されて、低温熱交換器に導かれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-15485号公報
【特許文献2】特開昭52―74133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2に開示されるような排ガスと熱媒との間で熱交換を行う熱交換器では、排ガスと熱媒との伝熱面の温度が硫酸露点以下になる部分が存在する場合がある。熱交換器の伝熱面の温度が硫酸露点以下になる部分では、排ガス中のSOxに含まれる三酸化硫黄等が凝縮して熱交換器の伝熱面に付着する。この凝縮物が熱交換器の伝熱面に付着すると、熱交換器の伝熱面の腐食が問題となる。特に、廃棄物のように性状が安定しない被燃焼物を燃焼した場合に発生する排ガスは、様々な成分を含むため、様々な成分の凝縮物が伝熱面に付着し、熱交換器の伝熱面の腐食が発生する。このような現象は、排ガスの流通方向において集塵装置よりも下流側を流れる比較的低温の排ガスで発生しやすい。
【0007】
このような理由から、熱交換器の腐食を抑制することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る廃棄物処理設備の特徴は、廃棄物を焼却する焼却炉と、前記焼却炉から排出される排ガスに含まれる塵を捕集する集塵装置と、前記集塵装置よりも前記排ガスの排ガス流通方向の下流側に設けられ、前記排ガスを浄化する洗煙処理を行う洗煙装置と、前記集塵装置と前記洗煙装置との間に設けられ、前記排ガスと熱交換気体との間で熱交換を行うことにより、前記排ガスの熱を回収する低温熱交換器と、を備え、前記低温熱交換器は、前記熱交換気体が流れる熱交換気体路と前記排ガスが流れる排ガス路とを仕切る複数の仕切り部材と、前記仕切り部材を洗浄液で洗浄する洗浄装置と、を有し、前記洗浄装置は、複数のノズルを含み、複数の前記ノズルから供給される前記洗浄液の供給量は、前記仕切り部材の温度に基づいて設定される点にある。
【0009】
本構成によれば、仕切り部材に付着した凝縮物は、洗浄装置によって洗浄液で洗浄されることにより除去される。この洗浄装置は廃棄物処理設備に組み込まれているため、凝縮物が付着した仕切り部材を運転中に洗浄することが可能となり、仕切り部材に凝縮物が長時間付着し続ける事態を防止することができる。この結果、仕切り部材の酸腐食を抑制することができる。
【0010】
また、伝熱面に付着した凝縮物を除去する方法として伝熱面を洗浄する方法があるが、伝熱面に付着した凝縮物をより効果的に除去するために(伝熱面に対する洗浄効果を増大させるために)洗浄液の量を増加させると、伝熱面の温度が低下して排ガスの熱回収率が低下する。つまり、伝熱面に対する洗浄効果と、排ガスの熱回収率とはトレードオフの関係にある。本構成によれば、複数のノズルから供給される洗浄液の供給量は、仕切り部材の温度に基づいて設定されるため、仕切り部材に対する洗浄効果と仕切り部材(伝熱面)の熱回収率とのバランスを図ることができる。
【0011】
更に、本構成によれば、排ガスの流通方向において集塵装置よりも下流側に低温熱交換器が設けられるため、より低温の排ガスの熱エネルギを回収することができる。これにより、排ガスの熱を無駄なく回収することができ排ガスの熱回収率が向上する。しかも、低温熱交換器が仕切り部材を介して排ガスと熱交換気体との間で気体間熱交換を行うため、清浄な熱交換気体の温度を上昇させて発電等の様々な用途に用いることが可能となる。したがって、伝熱面の腐食を抑制して排ガスの熱回収率の低下を抑制することができる。
【0012】
他の特徴として、供給量は、前記洗浄液が供給されることによる前記仕切り部材の温度変化に基づいて設定してもよい。
【0013】
本構成によれば、供給量は、洗浄液が供給されることによる仕切り部材の温度変化に基づいて設定されるため、仕切り部材の温度低下が適度なものとなり、排ガスの熱回収率と仕切り部材に対する洗浄効果とのバランスを図ることができる。
【0014】
他の特徴として、前記仕切り部材の温度を取得する温度取得部と、前記洗浄装置の動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記温度取得部によって取得された前記仕切り部材の温度に基づいて、前記供給量を設定してもよい。
【0015】
本構成によれば、制御部が仕切り部材の温度に基づいて供給量を設定するため、例えば、作業者、運転員等によって供給量が設定される場合と比べて、供給量を運転状況に応じて設定することができ、排ガスの熱回収率と仕切り部材に対する洗浄効果とのバランスを図ることができる。
【0016】
他の特徴として、前記温度取得部は、前記低温熱交換器に導入される前記排ガスの導入温度、前記低温熱交換器から排出される前記排ガスの排出温度、前記排ガスの流量、前記低温熱交換器に導入される前記熱交換気体の導入温度、前記低温熱交換器から排出される前記熱交換気体の排出温度、及び前記白煙防止空気の流量のうちの少なくとも1つに基づいて前記仕切り部材の温度を取得してもよい。
【0017】
本構成によれば、前記温度取得部は、前記低温熱交換器に導入される前記排ガスの導入温度、前記低温熱交換器から排出される前記排ガスの排出温度、前記排ガスの流量、前記低温熱交換器に導入される前記熱交換気体の導入温度、前記低温熱交換器から排出される前記熱交換気体の排出温度、及び前記熱交換気体の流量のうちの少なくとも1つに基づいて仕切り部材の温度が取得されるため、例えば、仕切り部材の温度を測定するための機器を別途設ける必要がない。したがって、簡便な構成で排ガスの熱回収率と仕切り部材に対する洗浄効果とのバランスを図ることができる。
【0018】
他の特徴として、前記排ガスの導入温度、前記排ガスの排出温度、前記排ガスの流量、前記熱交換気体の導入温度、前記熱交換気体の排出温度、及び前記熱交換気体の流量のうちの少なくとも1つは実測値であってもよい。
【0019】
本構成によれば、排ガスの導入温度、排ガスの排出温度、排ガスの流量、熱交換気体の導入温度、熱交換気体の排出温度、及び熱交換気体の流量のうちの少なくとも1つは実測値である、すなわち、排ガスの導入温度、排ガスの排出温度、排ガスの流量、熱交換気体の導入温度、熱交換気体の排出温度、及び熱交換気体の流量のうちの実測値以外は概算値であってもよい。このため、例えば、温度、流量を測定する機器の数量を削減することができる。したがって、簡便な構成で排ガスの熱回収率と仕切り部材に対する洗浄効果とのバランスを図ることができる。
【0020】
他の特徴として、前記洗浄液の温度を調節する温度調整部を更に備え、前記制御部は、前記仕切り部材の温度に基づいて、前記温度調整部の動作を制御することにより前記洗浄液の温度を調整してもよい。
【0021】
本構成によれば、洗浄液の温度が調整されるため、洗浄液に触れた仕切り部材の熱が洗浄液に奪われることが抑制され、排ガスの熱回収率の低下を抑制することができる。
【0022】
他の特徴として、前記洗浄装置は、複数の前記ノズルで構成される洗浄ユニットを更に含み、前記洗浄ユニットは、第1洗浄ユニットと、前記第1洗浄ユニットと異なる位置に配置される第2洗浄ユニットとを含み、前記第1洗浄ユニットを構成するノズルから前記仕切り部材に供給される前記洗浄液の第1供給量は、前記第2洗浄ユニットを構成するノズルから前記仕切り部材に供給される前記洗浄液の第2供給量と異なってもよい。
【0023】
上述のように、性状が安定しない廃棄物を燃焼することにより発生する排ガスに含まれる硫酸成分が凝縮する硫酸露点以下となる得る領域は環境等によって異なる。本構成によれば、仕切り部材に凝縮物が付着しやすい(硫酸露点以下となり得る)領域に応じて、第1洗浄ユニットと、第2洗浄ユニットとの洗浄条件を異ならせることができる。これにより、仕切り部材の酸腐食を抑制して排ガスの熱回収率の低下を抑制することができる。
【0024】
他の特徴として、前記廃棄物は、アンモニア成分を含んでいてもよい。
【0025】
本構成によれば、廃棄物がアンモニア成分を含んでいるため、硫酸露点を下げることが可能となり、排ガスに起因する仕切り部材の腐食を抑制することができる。
【0026】
本発明に係る廃棄物処理方法の特徴は、廃棄物を焼却する焼却炉を備える廃棄物処理設備における廃棄物処理方法であって、前記焼却炉から排出される排ガスに含まれる塵を捕集する集塵ステップと、集塵された前記排ガスと熱交換気体との間で熱交換を行うことにより、前記排ガスの熱を回収する熱回収ステップと、熱回収された前記排ガスを浄化する洗煙ステップと、を含み、前記熱回収ステップは、前記熱交換気体が流れる熱交換気体路と前記排ガスが流れる排ガス路とを仕切る複数の仕切り部材を洗浄装置によって洗浄する洗浄ステップを含み、前記洗浄ステップにおいて、前記洗浄装置が有するノズルから供給される洗浄液の供給量は、前記仕切り部材の温度に基づいて設定される点にある。
【0027】
本方法によれば、上述した廃棄物処理設備と同様の作用効果を奏することができる。
【0028】
他の特徴として、前記廃棄物は、アンモニア成分を含んでいてもよい。
【0029】
本方法によれば、廃棄物がアンモニア成分を含んでいるため、硫酸露点を下げることが可能となり、仕切り部材の酸腐食を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】実施形態に係る廃棄物処理設備の模式図である。
図2】実施形態に係る白煙防止予備熱交換器の構成を示す模式図である。
図3】実施形態に係る熱交換部及び洗浄部の構成を示す図である。
図4】実施形態に係るプレート部材を示す斜視図である。
図5】実施形態に係る洗浄部の構成を示す図である。
図6】実施形態に係る白煙防止予備熱交換器の構成を示すブロック図である。
図7】実施形態に係る制御装置による洗浄条件設定処理を示すフローチャートである。
図8】実施形態に係る制御装置による供給量調整処理を示すフローチャートである。
図9】実施形態に係るプレート部材の主面における浸食メカニズムを模式的に示す図である。
図10】別実施形態に係る洗浄部の構成を示す図である。
図11】別実施形態に係る白煙防止予備熱交換器の構成を示すブロック図である。
図12】別実施形態に係る制御装置による温度調整処理を示すフローチャートである。
図13】別実施形態に係る白煙防止予備熱交換器の構成を示す模式図である。
図14】別実施形態に係るプレート部材における等温線及び温度センサを示す図である。
図15】別実施形態に係るプレート部材における等温線及び温度センサを示す図である。
図16】実施形態及び別実施形態に係るプレート温度の算出に使用されるパラメータが実測値及び概算値のいずれであるかを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る低温熱交換器としての白煙防止予備熱交換器を備える廃棄物処理設備及び廃棄物処理方法の実施形態について、図面に基づいて説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0032】
〔廃棄物処理設備の概要〕
図1に示すように、廃棄物処理設備100は、焼却炉10と、燃焼用空気供給装置20と、白煙防止主熱交換器30と、集塵装置40と、白煙防止予備熱交換器50(低温熱交換器の一例)と、湿式洗煙装置60と、発電設備70とを備える。
【0033】
また、廃棄物処理設備100は、焼却炉10で廃棄物を燃焼する際に発生する排ガスが流れる排ガス路R1を更に備える。焼却炉10と、燃焼用空気供給装置20と、白煙防止主熱交換器30と、集塵装置40と、白煙防止予備熱交換器50と、湿式洗煙装置60と、煙突(不図示)とは、排ガス路R1を介して接続する。以下では、排ガス路R1を流れる排ガスの流通方向を「排ガス流通方向D1」という。
【0034】
〔排ガス路〕
焼却炉10は、脱水汚泥等の廃棄物(例えば、下水汚泥を脱水した脱水汚泥等のアンモニア含有廃棄物)を焼却する。廃棄物を燃焼することにより発生した排ガスは、排ガス路R1を介して燃焼用空気供給装置20へ向けて排出される。排ガスには、塩化水素といった塩素化合物、硫黄酸化物等の腐食性物質が含まれる。本実施形態では、焼却炉10は、流動床式の焼却炉である。ただし、焼却炉10は、流動床式以外の焼却炉(例えばストーカ式焼却炉)であってもよい。
【0035】
燃焼用空気供給装置20は、焼却炉10で廃棄物を燃焼する際に利用される燃焼用空気を焼却炉10に供給する。燃焼用空気供給装置20は、排ガス流通方向D1において焼却炉10の下流側に設けられ、燃焼用空気供給装置20には、焼却炉10から排出される排ガスが導入される。
【0036】
燃焼用空気供給装置20は、燃焼用空気熱交換器21と、過給機22とを有する。なお、燃焼用空気供給装置20は、過給機22に代えて流動ブロアを有していてもよい。
【0037】
燃焼用空気熱交換器21は、焼却炉10から排出される排ガスと燃焼用空気との間で熱交換を行う。これにより、排ガスが冷却され、燃焼用空気が加熱される。燃焼用空気供給装置20によって加熱された燃焼用空気は、過給機22を介して焼却炉10に供給される。
【0038】
過給機22は、燃焼用空気熱交換器21へ圧縮した燃焼用空気を供給する。過給機22は、タービン221と、軸222と、圧縮機223とを含む。タービン221は、燃焼用空気熱交換器21で加熱された空気の圧力及び熱エネルギにより回転する。軸222は、タービン221の回転力を圧縮機223へ伝達する。圧縮機223は、軸222によって伝達された回転力を利用して燃焼用空気を圧縮する。圧縮機223によって圧縮された燃焼用空気は、燃焼用空気熱交換器21に導入される。
【0039】
白煙防止主熱交換器30は、排ガス流通方向D1において燃焼用空気供給装置20の下流側に設けられ、白煙防止主熱交換器30には、燃焼用空気供給装置20で熱交換が行われた後の排ガスが導入される。白煙防止主熱交換器30は、熱交換器の一種であって、多管式熱交換器又はプレート式熱交換器である。
【0040】
白煙防止主熱交換器30は、煙突から排出される排ガスが大気中で冷却されて白煙となることを防止するために設けられる。白煙防止主熱交換器30は、燃焼用空気供給装置20から導入された排ガスと空気(以下、「白煙防止空気」という)との間で熱交換を行う。これにより、排ガスが冷却され、白煙防止空気が加熱される。白煙防止空気は、廃棄物処理設備100が更に備えるブロアBから押し出されることにより導入される。なお、白煙防止空気が流れる経路(以下、「白煙防止空気経路R2」という)については後述する。
【0041】
集塵装置40は、排ガス流通方向D1において白煙防止主熱交換器30の下流側に設けられ、集塵装置40には、白煙防止主熱交換器30で熱交換が行われた後の排ガスが導入される。集塵装置40は、排ガスに含まれる塵を捕集する(集塵ステップ)。本実施形態では、集塵装置40は、バグフィルタで構成される。ただし、集塵装置40は、バグフィルタで構成されるものに限定されず、セラミックフィルタ等で構成されてもよい。
【0042】
白煙防止予備熱交換器50は、排ガス流通方向D1において集塵装置40の下流側に設けられ、白煙防止予備熱交換器50には、集塵装置40で集塵された後の排ガスが導入される。白煙防止予備熱交換器50は、熱交換器の一種であって、本実施形態ではプレート式熱交換器である。白煙防止予備熱交換器50がプレート式熱交換器であることにより広い伝熱面での熱交換が行われる。
【0043】
白煙防止予備熱交換器50は、煙突から排出される排ガスが大気中で冷却されて白煙となることを防止するために設けられる。白煙防止予備熱交換器50には、白煙防止主熱交換器30に導入される排ガスよりも低温の排ガスが導入される。このため、白煙防止予備熱交換器50を「低温熱交換器」といい、白煙防止主熱交換器30を「高温熱交換器」という場合がある。
【0044】
白煙防止予備熱交換器50は、導入された排ガスの熱エネルギを利用して白煙防止空気(熱交換気体の一例)を加熱する。詳しくは、白煙防止予備熱交換器50は、集塵装置40から導入された排ガス、すなわち、塵が除去された後の排ガスと白煙防止空気との間で熱交換を行う。これにより排ガスを冷却し(排ガスの熱を回収し)、白煙防止空気を加熱する(熱回収ステップ)。なお、白煙防止予備熱交換器50に導入される排ガスの温度は、160度以上250度以下である。白煙防止予備熱交換器50において熱交換を行うことにより、排ガスの温度は、50度以上150度以下まで低下する。
【0045】
湿式洗煙装置60は、排ガス流通方向D1において白煙防止予備熱交換器50の下流側に設けられ、湿式洗煙装置60には、白煙防止予備熱交換器50で熱交換が行われた後の排ガスが導入される。湿式洗煙装置60(洗煙装置の一例)は、排ガスを浄化する洗煙処理を行う(洗煙ステップ)。本実施形態において、湿式洗煙装置60は、湿式洗煙処理によって排ガスを浄化し、減湿冷却によって排ガス中の水分を除去する。排ガスの浄化では、薬剤を含む循環水が利用される。排ガスの減湿冷却では、冷却水が利用される。減湿冷却によって排ガス中の水分が除去されることにより、排ガスの量が削減される。浄化された排ガスは、煙突(不図示)へ向けて流れる。
【0046】
〔白煙防止空気経路〕
廃棄物処理設備100は、白煙防止空気が流れる白煙防止空気経路R2を更に備える。以下では、白煙防止空気経路R2を流れる白煙防止空気の流通方向を「空気流通方向D2」という。
【0047】
白煙防止空気経路R2は、白煙防止空気を送り出すブロアBと、白煙防止予備熱交換器50と、白煙防止主熱交換器30と、発電設備70と、煙突(不図示)とを接続する。
【0048】
白煙防止予備熱交換器50は、空気流通方向D2において、ブロアBの下流側に設けられ、白煙防止予備熱交換器50には、ブロアBから送り出された白煙防止空気が導入される。白煙防止予備熱交換器50に導入される白煙防止空気の温度は、外気温と同等であって、0度以上50度以下である。白煙防止空気は、排ガスとの間で熱交換を行うことにより、50度以上220度以下まで温度が上昇する。
【0049】
白煙防止主熱交換器30は、空気流通方向D2において、白煙防止予備熱交換器50よりも下流側に設けられ、白煙防止主熱交換器30には、白煙防止予備熱交換器50で熱交換が行われた後の白煙防止空気が導入される。白煙防止主熱交換器30に導入される白煙防止空気の温度は、50度以上220度以下(例えば125度前後)である。白煙防止空気は、白煙防止主熱交換器30において熱交換を行うことにより、220度以上550度以下まで温度が上昇する。白煙防止主熱交換器30の熱回収量は、白煙防止予備熱交換器50の熱回収量と同等又はそれ以上(例えば1以上5倍以下)となるように構成されることが好ましい。
【0050】
発電設備70は、空気流通方向D2において、白煙防止主熱交換器30よりも下流側に設けられ、発電設備70には、白煙防止主熱交換器30で熱交換が行われた(加熱)された後の白煙防止空気が導入される。発電設備70は、白煙防止主熱交換器30で加熱された後の白煙防止空気の熱エネルギを利用して発電を行う。
【0051】
発電設備70は、温水ボイラ71と、循環路72と、発電装置73とを有する。
【0052】
温水ボイラ71は、白煙防止空気の熱エネルギを利用して水を加熱する。加熱された水(温水)は、発電装置73に循環路72を介して導入される。
【0053】
循環路72は、温水ボイラ71と発電装置73とを接続し、温水ボイラ71と発電装置73との間で水を循環させる。
【0054】
発電装置73は、温水ボイラ71から循環路72を介して導入された水(温水)を熱源として発電を行う。発電に利用された後の水は、循環路72を介して温水ボイラ71に導入される。本実施形態において、発電装置73は、バイナリ発電装置である。
【0055】
温水ボイラ71で熱エネルギが回収された白煙防止空気は、排ガス路R1の湿式洗煙装置60よりも下流側に導入され、湿式洗煙装置60から排出された排ガスと合流する。排ガスと合流する白煙防止空気の温度は、100度以上200度以下である。
【0056】
湿式洗煙装置60から排出された排ガスは、白煙防止空気と合流することにより、加熱される。白煙防止空気によって加熱された排ガスは、煙突(不図示)から大気中に排出される。上述のように、排ガスは、白煙防止主熱交換器30及び白煙防止予備熱交換器50で段階的に冷却され、最終的に湿式洗煙装置60で冷却された後、発電設備70を通過した白煙防止空気によって煙突から排出される前に加熱される。煙突から排出される前の排ガスの水分含有率の低下と排ガスの高温化との効果によって煙突から排出される排ガスが白煙となることが防止される。
【0057】
〔白煙防止予備熱交換器〕
図2に示すように、白煙防止予備熱交換器50は、ハウジング51、熱交換部52及び洗浄部53(洗浄装置の一例)を有する。熱交換部52と洗浄部53の一部とは、ハウジング51に収容される。
【0058】
〔熱交換部〕
熱交換部52は、排ガスと白煙防止空気との間で熱交換を行う熱交換ユニット521を含む。熱交換ユニット521は、複数のプレート部材522(仕切り部材の一例)を含む。
【0059】
〔プレート部材〕
図3に示すように、プレート部材522は、白煙防止予備熱交換器50の内部において、排ガスが流れる熱交換排ガス路R51(排ガス路の一例)と白煙防止空気が流れる熱交換空気路R52(熱交換気体路の一例)とを仕切る。白煙防止予備熱交換器50の内部では、複数の熱交換排ガス路R51と複数の熱交換空気路R52とがそれぞれ並列に形成され、熱交換排ガス路R51と熱交換空気路R52とが交互に設けられる。なお、熱交換排ガス路R51は、白煙防止予備熱交換器50の内部における排ガス路R1であり、熱交換空気路R52は、白煙防止予備熱交換器50の内部における白煙防止空気経路R2である。
【0060】
図3及び図4に示すように、プレート部材522は、平板状であって主面522sを有する。複数のプレート部材522は、それぞれの主面522sが平行となるように離間して配置される。本実施形態では、主面522sは、平坦な面であるが、主面522sは、少なくとも一方に、溝、突起といった微小な凹凸が形成されていてもよい。
【0061】
熱交換排ガス路R51は、対向するプレート部材522の間に形成される。図4に示すように、熱交換排ガス路R51は、例えば、対向するプレート部材522の一方の端部522e(以下、「第1端部522e」という)が溶接等によって接合されることにより形成される。なお、図4に示す一点鎖線は、溶接部分を示す。以下、熱交換排ガス路R51を挟んで対向する2つのプレート部材522を「一対のプレート部材522t」という。
【0062】
図3に示すように、熱交換空気路R52は、互いに隣り合う熱交換排ガス路R51の間に形成される。熱交換空気路R52は、図4に示すように、第1接合プレート522Aと、隣接する一対のプレート部材522tの第2接合プレート522Bとの第2端部522fが接合されることにより形成される。第2端部522fは、プレート部材522のうちの第1端部522eと直交する方向の端部であり、平面視(主面522sに沿う方向視)において隣り合う第1端部522eの間に形成されている。第1接合プレート522Aは、一対のプレート部材522tのうちの1つのプレート部材522である。第2接合プレート522Bは、第1接合プレート522Aに隣接する一対のプレート部材522tのうち熱交換空気路R52を介して第1接合プレート522Aに対向するプレート部材522である。
【0063】
熱交換排ガス路R51と熱交換空気路R52とはプレート部材522の主面522sに直交する方向から見たときに、主面522sを挟むように重複している。そのため、プレート部材522の主面522sは、熱交換排ガス路R51を流れる排ガスと熱交換空気路R52を流れる白煙防止空気とが熱交換を行うための伝熱面として機能する。
【0064】
プレート部材522は、純チタン、チタン合金、ステンレス鋼、ニッケル合金等を材料として選択することができる。ニッケル合金は、例えば、ハステロイ(登録商標)(ハステロイC-22、ハステロイC-276、ハステロイC-4、ハステロイC-22HS、ハステロイC-2000、ハステロイHYBRID-BC1、その他のハステロイ)、ALLOY(ALLOY22、ALLOY C-276)、インコネル(登録商標)(インコネル600、インコネル625、インコネル718)等を含む。ニッケル合金は、耐酸腐食性に優れるため、プレート部材522の材料として好適である。
【0065】
〔洗浄部〕
図3に示すように、洗浄部53は、プレート部材522を洗浄液L1で洗浄する(洗浄ステップ)。洗浄液L1は、プレート部材522に付着した付着物(凝縮物)を除去するための液体であって、本実施形態では、水(上水、工業用水、砂ろ過水、下水処理水等)である。なお、洗浄液L1は、水酸化ナトリウム等を含むアルカリ性の水溶液であってもよい。洗浄部53は、所定の間隔(予め設定された頻度)でプレート部材522を洗浄する。これにより、プレート部材522に付着した付着物が除去されて、プレート部材522の酸腐食を抑制することができる。
【0066】
図5に示すように、洗浄部53は、第1タンク531、洗浄液供給部532及び洗浄ユニット533を含む。
【0067】
図5に示すように、第1タンク531には、洗浄液L1が貯留される。第1タンク531は、ハウジング51(図2参照)の外部に設けられる。
【0068】
洗浄液供給部532は、第1ポンプ532a及び洗浄液供給路532bを含む。第1ポンプ532aは、第1タンク531に貯留された洗浄液L1を移送する。洗浄液供給路532bには、第1ポンプ532aによって移送された洗浄液L1が流れる。洗浄液供給路532bは、洗浄ユニット533と接続され、洗浄液供給路532bを流れる洗浄液L1が洗浄ユニット533に供給される。
【0069】
洗浄ユニット533は、ノズルパイプ535と、複数のノズル536と、制御バルブ537とを含む。ノズルパイプ535と複数のノズル536とは、ハウジング51の内部に設けられ、制御バルブ537は、ハウジング51の外部に設けられる。
【0070】
ノズルパイプ535は、制御バルブ537を介して洗浄液供給路532bと接続され、洗浄液供給路532bから洗浄液L1が供給される。
【0071】
図3に示すように、ノズルパイプ535は、プレート部材522の主面522sと直交する方向に延在し、その延在方向に沿って複数のノズル536が設けられる。
【0072】
ノズル536は、洗浄液L1を噴射する。本実施形態において、ノズル536は、洗浄液L1を高圧で噴射する。ただし、ノズル536は、洗浄液L1を低圧で噴射するノズルであってもよい。
【0073】
制御バルブ537は、ノズルパイプ535を流れる洗浄液L1の流量を制御する。制御バルブ537がノズルパイプ535を流れる洗浄液L1の流量を制御することにより、ノズル536からプレート部材522へ供給される洗浄液L1の量(以下、「供給量」という)が制御される。本実施形態では、制御バルブ537は、弁開度を全開と全閉との間の所定の開度に調整可能な手動弁と、タイマー動作によってON(全開)/OFF(全閉)切り替わる電磁弁との組み合わせで構成される。
【0074】
ここで、供給量とは、熱交換ユニット521に対して、その熱交換ユニット521に対応する洗浄ユニット533を構成する複数のノズル536から、単位時間当たり(例えば24時間)に供給される洗浄液L1の量である。具体的には、供給量は、洗浄ユニット533を構成するノズル536の数量と、1つのノズル536から1回に噴射される洗浄液L1の噴射量(L/個)と、単位時間当たり(例えば24時間)にノズル536が洗浄液L1を噴射する頻度(以下、「噴射頻度」という)とを乗算して得た値に基づいて求められる。なお、噴射量(L/個)は、1つのノズル536から単位時間当たりに噴射される洗浄液L1の量(L/min・個)と、1つのノズル536の1回の噴射時間(min)とを乗算することにより求められる。
【0075】
供給量は、例えば、熱交換部52の硫酸凝縮領域(プレート部材522の伝熱面の温度が、硫酸露点以下となり得る領域)に含まれるプレート部材522の部分の総面積(以下、「硫酸凝縮総面積」という)に基づいて設定される。供給量は、硫酸凝縮総面積が大きいほど多く設定され、硫酸凝縮総面積が小さいほど少なく設定される。例えば、硫酸凝縮総面積が閾値未満であれば洗浄ユニット533の供給量をゼロにし、硫酸凝縮総面積が閾値以上であれば、面積に比例して洗浄ユニット533の供給量を増加させる。これにより、排ガスの熱回収率とプレート部材522に対する洗浄効果とのバランスを図ることができる。なお、廃棄物は性状が安定しないため、廃棄物を燃焼することによって発生する排ガスの硫酸成分(例えば三酸化硫黄)の濃度の推定は、石炭といった化石燃料を燃焼することにより発生する排ガスと比べて容易ではなく、プレート部材522の硫酸凝縮総面積の推定も容易ではない。このため、本実施形態では、既存の廃棄物処理設備に実験用の熱交換器を設け、その実験結果に基づいて、プレート部材522の硫酸凝縮総面積を求めてもよく、硫酸凝縮総面積と供給量とは、例えば、実験用の熱交換器を用いた実験結果、試運転により得られた結果等に基づいて予め関連付けられてもよい。
【0076】
噴射頻度、噴射量及び噴射時間の噴射条件(洗浄条件)は、設定された供給量となるように設定される。本実施形態では、噴射条件(供給量)は、図6に示すように、白煙防止予備熱交換器50が更に備える制御装置55によって設定される。これにより、供給量を簡便に設定することができる。
【0077】
制御装置55は、洗浄部53(制御バルブ537)の動作を制御する。制御装置55は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサで構成される。また、制御装置55は、ROM(Read Only Memory)等の半導体メモリで構成される記憶領域を含む。記憶領域には、洗浄部53の動作を制御するための制御プログラムが記憶される。制御装置55は、プロセッサが制御プログラムを実行することにより、温度取得部551と、供給量設定部552と、条件設定部553と、洗浄制御部554(制御部の一例)として機能する。
【0078】
温度取得部551は、プレート温度を取得する。なお、熱交換ユニット521には、複数のプレート部材522が含まれるが、温度取得部551は、複数のプレート部材522の温度変化は一様であるものとしてプレート温度を取得する。温度取得部551は、白煙防止予備熱交換器50に導入される排ガスの導入温度と、白煙防止予備熱交換器50から排出される排ガスの排出温度と、白煙防止予備熱交換器50に導入される白煙防止空気の導入温度と、白煙防止予備熱交換器50から排出される白煙防止空気の排出温度と、排ガスの流量と、白煙防止空気の流量とに基づいてプレート温度を取得する。これにより、プレート部材522の温度を測定するための機器を別途設ける必要がなく、簡便な構成で排ガスの熱回収率とプレート部材522に対する洗浄効果とのバランスを図ることができる。なお、本実施形態では、排ガスの導入温度、排ガスの排出温度、白煙防止空気の導入温度、白煙防止空気の排出温度、排ガスの流量、及び白煙防止空気の流量は、それぞれ実測値が用いられる。
【0079】
排ガスの温度及び白煙防止空気の温度は、白煙防止予備熱交換器50が更に備える温度センサSから出力される情報に基づいて取得される。温度センサSは、例えば、熱電対、測温抵抗体等である。温度センサSは、測定対象の温度を取得し、温度を示す情報を出力する。
【0080】
温度センサSは、第1温度センサS1、第2温度センサS2、第3温度センサS3、及び第4温度センサS4を含む。第1温度センサS1は、図2に示す排ガスが導入される導入口50aに接続されたダクト(不図示)に差し込まれ、そのダクト内の排ガスの流れの中心部を測定する。同様に、第2温度センサS2は排ガスが排出される排出口50bに接続されたダクト、第3温度センサS3は白煙防止空気が導入される導入口50cに接続されたダクト、第4温度センサS4は白煙防止空気が排出される排出口50dに接続されたダクトにそれぞれ差し込まれ、それらのダクト内の排ガスの流れの中心部を測定する。
【0081】
排ガス及び白煙防止空気の流量は、白煙防止予備熱交換器50が更に備える流量計Fから出力される情報に基づいて取得される。流量計Fは、第1流量計F1及び第2流量計F2を含む。第1流量計F1は、例えば、排ガスが導入される導入口50aに接続されたダクトの内部に設けられる。第2流量計F2は、例えば、発電設備70から白煙防止空気が排出される排出口に接続されたダクトの内部に設けられる。なお、第1流量計F1及び第2流量計F2が設けられる位置は、任意に変更可能である。
【0082】
図6に示す温度取得部551は、第1温度センサS1によって取得された排ガスの導入温度と、第2温度センサS2によって取得された排ガスの排出温度とを取得する。同様に、温度取得部551は、第3温度センサS3によって取得された白煙防止空気の導入温度と、第4温度センサS4によって取得された白煙防止空気の排出温度とを取得する。更に、温度取得部551は、第1流量計F1によって取得された排ガスの流量と、第2流量計F2によって取得された白煙防止空気の流量とを取得する。温度取得部551は、取得した排ガスの導入温度及び排出温度と、白煙防止空気の導入温度及び排出温度と、排ガスの流量と、白煙防止空気の流量とに基づいてプレート温度を求める。例えば、排ガスの導入温度が200度、排ガスの排出温度が100度、白煙防止空気の導入温度が20度、白煙防止空気の排出温度が125度である場合、温度取得部551は、伝熱量を考慮して排ガスの流通方向に沿って160度から60度の範囲でプレート部材522の温度が概ね直線的に変化すると推定してプレート温度を求める。
【0083】
供給量設定部552は、温度取得部551によって取得されたプレート温度に基づいて洗浄液L1の供給量を設定する。本実施形態では、供給量設定部552は、プレートの硫酸凝縮総面積に基づいて供給量を設定する。なお、硫酸凝縮総面積と供給量との関連付け情報は、制御装置55の記憶領域に予め記憶される。供給量設定部552は、記憶領域に記憶された硫酸凝縮総面積と供給量との関連付け情報を参照することにより、洗浄液L1の供給量を設定する。
【0084】
また、供給量設定部552は、洗浄液L1が供給されることによるプレート温度の変化(低下)に基づいて供給量を調整する。例えば、ノズル536による1回の噴射によってプレート部材522の低下温度が予め設定された第1低下温度閾値以上である場合、供給量は、設定された供給量よりも小さい値が設定される(供給量を減少させる)。一方、ノズル536による1回の噴射によってプレート部材522の低下温度が予め設定された第2低下温度閾値以上第1低下温度閾値未満である場合、供給量は、設定された供給量と同じ値が設定される(供給量を維持させる)。更に、ノズル536による1回の噴射によってプレート部材522の低下温度が予め設定された第2低下温度閾値未満である場合、供給量は、設定された供給量よりも大きい値が設定される(供給量を増加させる)。これにより、プレート部材522の温度低下を抑制することができ、排ガスの熱回収率の低下を抑制することができる。なお、第1低下温度閾値は第2温度低下閾値よりも大きい値である。また、第1低下温度閾値を示す情報及び第2温度低下閾値を示す情報は、制御装置55の記憶領域に予め記憶される。
【0085】
条件設定部553は、設定された供給量の洗浄液L1がプレート部材522に供給されるようにノズル536の噴射条件(噴射量、噴射時間及び噴射頻度の各々)を設定する。
【0086】
洗浄制御部554は、制御バルブ537の動作を制御する。詳しくは、洗浄制御部554は、条件設定部553によって設定された噴射頻度、噴射時間及び噴射量となるように、制御バルブ537の動作(開頻度、開時間、及び弁開度)を制御する。また、洗浄制御部554は、第1ポンプ532aの動作も制御する。これにより、設定された供給量となるようにノズル536から洗浄液L1が噴射される。
【0087】
以下、図7を参照して、制御装置55によって実行される洗浄条件設定処理について説明する。洗浄条件設定処理は、例えば、廃棄物処理設備100の運転が開始されてから定常運転(例えば、第1温度センサS1によって取得された排ガスの導入温度が200度以上)となったとき、作業者、運転員等の操作者による入力ボタン、タッチセンサー等の入力装置(不図示)から洗浄条件設定処理の開始を指示する信号を制御装置55が受信すると開始される。なお、制御装置55には、洗浄条件設定処理が開始される前に、供給量を設定するために必要な情報(実験用の熱交換器を用いた実験結果等を示す情報)が、入力装置(不図示)によって予め入力される。
【0088】
図7に示すように、温度取得部551は、プレート温度を取得する(ステップS102)。本実施形態では、温度取得部551は、温度センサSから出力された情報に基づいてプレート温度を求める。温度取得部551は、プレート温度を示す情報を制御装置55の記憶領域に記憶させる。
【0089】
次に、供給量設定部552は、温度取得部551によって求められたプレート温度に基づいて洗浄液L1の供給量を設定する(ステップS104)。詳しくは、供給量設定部552は、温度取得部551によって取得され、制御装置55の記憶領域に記憶されたプレート温度を示す情報に基づいて硫酸凝縮総面積を求め、関連付け情報に基づいて硫酸凝縮総面積に対応する供給量を、ノズル536から供給される洗浄液L1の供給量として設定する。硫酸凝縮総面積は、温度取得部551によって取得されたプレート温度から求めることができる。
【0090】
次に、条件設定部553は、設定された供給量の洗浄液L1がプレート部材522に供給されるようにノズル536の噴射条件(噴射量、噴射時間及び噴射頻度の各々)を設定し(ステップS106)、洗浄制御部554が制御バルブ537(洗浄部53)の動作を制御し(ステップS108)、設定された噴射条件で洗浄処理が実行される。
【0091】
次に、供給量設定部552は、洗浄処理が行われたか(ノズル536から洗浄液L1が噴射されたか)否かを判定する(ステップS110)。洗浄処理が行われていないと供給量設定部552が判定すると(ステップS110;No)、処理は、ステップS114へ進む。
【0092】
一方、供給量設定部552は、洗浄処理が行われたと判定すると(ステップS110;Yes)、図8に示す供給量調整処理を実行する(ステップS112)。
【0093】
図8に示す供給量調整処理では、供給量設定部552は、ノズル536による1回の噴射によって、プレート部材522の低下温度が第1低下温度閾値(例えば10度~30度の任意の値)以上であるか否かを判定する(ステップS202)。
【0094】
供給量設定部552は、プレート部材522の低下温度が第1低下温度閾値以上であると判定すると(ステップS202;Yes)、設定した供給量よりも小さい値に供給量を設定して(ステップS204)、供給量調整処理を終了する。
【0095】
一方、供給量設定部552は、プレート部材522の低下温度が第1低下温度閾値未満であると判定すると(ステップS202;No)、プレート部材522の低下温度が第1低下温度閾値よりも小さい第2低下温度閾値(例えば1度~5度の任意の値)以上であるか否かを判定する(ステップS206)。
【0096】
供給量設定部552は、プレート部材522の低下温度が第2低下温度閾値未満であると判定すると(ステップS206;No)、設定した供給量よりも大きい値に供給量を設定して(ステップS208)、供給量調整処理を終了する。
【0097】
一方、供給量設定部552は、プレート部材522の低下温度が第2低下温度閾値以上であると判定すると(ステップS206;Yes)、設定した供給量の値を変更することなく、供給量調整処理を終了する。供給量調整処理が終了すると、図7に示す洗浄条件設定処理に戻り、ステップS114の処理が実行される。
【0098】
ステップS114では、制御装置55は、操作者によって入力された洗浄条件設定処理の終了を指示する旨の信号を、入力装置(不図示)から受信するまで、ステップS102からステップS114の処理を繰り返す(ステップS114;No)。一方、制御装置55は、洗浄条件設定処理の終了を指示する旨の信号を入力装置(不図示)から受信すると(ステップS114;Yes)、洗浄条件設定処理を終了する。なお、洗浄条件設定処理は、上述した順番に限定されない。例えば、洗浄処理が実行されたか否かの判定ステップ(ステップS110)及び供給量調整処理を実行するステップ(ステップS112)は、噴射条件を設定するステップ(ステップS106)の前に実行されてもよい。この場合、1回試し洗浄をしてから噴射条件を設定することが可能となる。
【0099】
〔実施形態の作用効果〕
以上説明したように、本実施形態によれば、排ガス流通方向D1において集塵装置40よりも下流側に白煙防止予備熱交換器50が設けられるため、より低温の排ガスの熱エネルギを回収することができる。これにより、排ガスの熱を無駄なく回収することができ排ガスの熱回収率が向上する。しかも、白煙防止予備熱交換器50がプレート部材522を介して排ガスと白煙防止空気との間で気体間熱交換を行うため、清浄な白煙防止空気の温度を上昇させて発電等の様々な用途に用いることが可能となる。
【0100】
なお、石炭ボイラといった石炭(化石燃料)を燃焼することにより発生する排ガスに含まれる硫酸成分(三酸化硫黄)の濃度は、廃棄物を燃焼することによって発生する排ガスに含まれる硫酸成分(三酸化硫黄)の濃度よりも高い。一方、廃棄物を燃焼することによって発生する排ガスの硫酸成分の濃度は化石燃料による排ガスよりも低く、従来から廃棄物処理設備に配置される熱交換器では化石燃料の場合と比べて酸腐食の影響が問題とされ難い。しかしながら、本実施形態では、伝熱面の温度低下によって排ガスに含まれる硫酸成分の凝縮物が仕切り部材に付着しやすい(仕切り部材の伝熱面の温度が硫酸露点以下となり得る)領域が白煙防止予備熱交換器50に存在することを突き止め、洗浄部53によって洗浄液L1で洗浄することにより凝縮物を除去することを可能とした。この洗浄部53は廃棄物処理設備100に組み込まれているため、凝縮物が付着したプレート部材522を運転中に洗浄することが可能となり、プレート部材522に凝縮物が長時間付着し続ける事態を防止することができる。この結果、プレート部材522の酸腐食を抑制することができる。
【0101】
また、複数のノズル536から供給される洗浄液L1の供給量は、プレート部材522の温度に基づいて設定されるため、プレート部材522の洗浄効果とプレート部材522(伝熱面)の熱回収率とのバランスを図ることができる。したがって、排ガスの熱回収率の低下を抑制することができる。
【0102】
また、廃棄物が下水汚泥を脱水した脱水汚泥等のアンモニア含有廃棄物の場合は、白煙防止予備熱交換器50を流通する排ガス中にNH(アンモニア)を加えることなく、廃棄物由来のアンモニアが依然として存在し、図9に示すように、プレート部材522の主面522s(伝熱面)及びその近傍では、排ガス中のSOxとNHとが反応し、SOxは、SOxよりも比較的浸食性の低い(NHSO(硫酸アンモニウム)に変化する。また、排ガス中のHCl(塩酸)は、NHと反応してNHCl(塩化アンモニウム)に変化する。図9は、プレート部材522の主面522s(伝熱面)を洗浄しない場合の浸食メカニズムを模式的に示す図である。図9に示す縦軸は、プレート部材522の主面522s(伝熱面)の温度を示し、横軸は、プレート部材522の主面522s付近で生成される生成物の量を相対的に示している。なお、縦軸は下側ほど温度が低いことを示す。また、図9の左から順に、黒墨ハッチングは、FeО(酸化鉄(III))の相対量を示し、左上がりハッチングは、NHClの相対量を示し、右上がりハッチングは、(NHSOの相対量を示し、薄墨ハッチングは、HOの相対量を示す。図9に示されるように、FeО、(NHSOは、硫酸に比べてプレート部材522が酸腐食し難く、また、硫酸濃度を低下させる効果があるため、プレート部材522の耐久性を高めることができる。特に、硫酸露点Ts以下では、硫酸の凝縮が開始し、水の凝縮量に応じてNHと反応して(NHSOに変化することが知見として得られた。これらの知見によれば、廃棄物が下水汚泥等のアンモニア含有廃棄物である場合、水の凝縮量が少なく硫酸濃度が高まりやすい硫酸露点Ts付近でも、硫酸に代えて(NHSOの生成が優勢となり、硫酸露点Ts以下の硫酸濃度を下げることが可能となる。その結果、上述したノズル536から噴射される洗浄液L1を用いた洗浄により、プレート部材522の酸腐食を抑制できる。また、NHClは水に溶解することによりpHが高くなるが、ノズル536から噴射される洗浄液L1を用いた洗浄により、NHCl水溶液の付着を防止できる。なお、プレート部材522を洗浄液L1で洗浄しない場合、Feを主体とした固体物質がプレート部材522の主面522s全体に亘って付着されることも確認されたことから、錆を防ぐ観点からも洗浄液L1を用いた洗浄が有効に機能する。
【0103】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成してもよい(実施形態と同じ機能を有するものには、実施形態と共通の番号、符号を付している)。
【0104】
(1)例えば、図10及び図11に示すように、洗浄ユニット533は、加熱部538(温度調整部の一例)を更に含んでもよい。なお、加熱部538は、ハウジング51の外部に設けられる。洗浄制御部554は、プレート温度に基づいて加熱部538の動作を制御することにより、洗浄液L1の温度を調整してもよい。これにより、洗浄液L1に触れたプレート部材522の熱が洗浄液L1に奪われることが抑制され、排ガスの熱回収率の低下を抑制することができる。
【0105】
加熱部538は、洗浄液L1の温度を調整(加熱)するために設けられる。加熱部538は、例えばヒータであって、洗浄液L1を加熱する。詳しくは、図10に示すように、加熱部538は、ノズルパイプ535を流れる洗浄液L1の流通方向において複数のノズル536よりも上流側に設けられ、ノズルパイプ535を流れる洗浄液L1を加熱する。なお、加熱部538は、洗浄液L1の流通方向において制御バルブ537よりも下流側に配置されるが、加熱部538は、制御バルブ537よりも上流側に配置されてもよい。
【0106】
洗浄制御部554は、所定の領域(例えば排ガス流通方向D1の下流側の領域)におけるプレート温度を取得すると、図12に示す温度調整処理を実行する。なお、図7を参照して説明した洗浄条件設定処理と、温度調整処理とは同じタイミングで実行されてもよいし、それぞれ異なるタイミングで実行されてもよい。
【0107】
図12に示すように、洗浄制御部554は、プレート温度が、予め設定された第1加熱閾値(例えば、排ガスの排出口50b側のプレート温度が50度)未満であるか否かを判定する(ステップS302)。
【0108】
洗浄制御部554は、プレート温度が第1加熱閾値未満である場合(ステップS302;Yes)、加熱部538がON状態となるように加熱部538を制御(ステップS304)する。詳しくは、洗浄制御部554は、加熱部538がOFF状態の場合は、ON状態に遷移させる。なお、加熱部538は、ON状態の場合、ON状態に維持される。次に、温度調整処理は、ステップS310へ進む。
【0109】
一方、洗浄制御部554は、プレート温度が第1加熱閾値以上である場合(ステップS302;No)、プレート温度が予め設定された第2加熱閾値(例えば、排ガスの排出口50b側のプレート温度が60度)未満であるか否かを判定する(ステップS306)。なお、第2加熱閾値は、第1加熱閾値よりも大きい値が設定される。第1加熱閾値及び第2加熱閾値(設定温度範囲)を示す情報は、制御装置55の記憶領域に予め記憶される。
【0110】
洗浄制御部554は、プレート温度が第2加熱閾値未満である場合(ステップS306;Yes)、加熱部538の動作を制御することなく、洗浄条件設定処理は、ステップS310へ進む。
【0111】
一方、洗浄制御部554は、プレート温度が予め設定された第2加熱閾値以上であると判定すると(ステップS306;No)、加熱部538がOFF状態となるように加熱部538を制御して(ステップS308)、ステップS310へ進む。詳しくは、洗浄制御部554は、加熱部538がON状態の場合は、OFF状態に遷移させる。なお、加熱部538はOFF状態の場合、OFF状態に維持される。
【0112】
ステップS310では、制御装置55は、温度調整処理の終了を指示する旨の信号を例えば操作者によって入力される入力装置(不図示)から受信するまで、ステップS302からステップS310の処理を繰り返す(ステップS310;No)。一方、制御装置55は、洗浄条件設定処理の終了を指示する旨の信号を入力装置(不図示)から受信すると(ステップS310;Yes)、加熱調整処理を終了する。
【0113】
以上の処理により、洗浄液L1に触れたプレート部材522の熱が洗浄液L1に奪われることが抑制され、排ガスの熱回収率の低下を抑制することができる。
【0114】
(2)本実施形態では、白煙防止予備熱交換器50が直交流式のプレート式の熱交換器である場合を例に説明したが、白煙防止予備熱交換器50は、対向流、並行流等のプレート式の熱交換器であってもよい。また、白煙防止予備熱交換器50における排ガスの導入口50a、排ガスの排出口50b、白煙防止空気の導入口50c及び白煙防止空気の排出口50d(図2参照)は、実施形態で説明した内容に限定されず、適宜変更可能である。この場合、白煙防止予備熱交換器50における排ガス及び白煙防止空気の流通方向は適宜変更され得る。
【0115】
(3)本実施形態において、白煙防止主熱交換器30が1つである場合を説明したが、白煙防止主熱交換器30は、複数で構成されてもよい。
【0116】
(4)本実施形態では、白煙防止主熱交換器30及び白煙防止予備熱交換器50が白煙を防止するために白煙防止空気を加熱する構成を例に説明したが、白煙防止主熱交換器30及び白煙防止予備熱交換器50は、単に排ガスから熱を回収するために設けられる熱交換器であってもよい。
【0117】
(5)本実施形態では、集塵装置40が排ガス流通方向D1において白煙防止主熱交換器30の下流側に設けられたが、集塵装置40は、白煙防止主熱交換器30よりも排ガス流通方向D1の上流側に設けられてもよい。
【0118】
(6)本実施形態では、発電設備70が温水ボイラ71と、循環路72と、発電装置73とを有する場合を例に説明したが、発電設備70は、蒸気ボイラ、給水ポンプ、給水タンク等で構成されてもよい。
【0119】
(7)本実施形態では、洗浄ユニット533が1つである場合を説明したが、洗浄ユニット533は、2つ以上であってもよい。例えば、図13に示すように、洗浄ユニット533は、第1洗浄ユニット533aと、第1洗浄ユニット533aとは異なる位置に設けられる第2洗浄ユニット533bとを含んでもよい。図13に示す例では、熱交換部52は、第1熱交換ユニット521aと、第1熱交換ユニット521aよりも排ガス流通方向D1の下流側に配置される第2熱交換ユニット521bとを含み、第1洗浄ユニット533aは、第1熱交換ユニット521aを洗浄するために第1熱交換ユニット521aに対応して設けられ、第2洗浄ユニット533bは、第2熱交換ユニット521bを洗浄するために第2熱交換ユニット521bに対応して設けられる。第2熱交換ユニット521bにおいて、プレート部材522の伝熱面(主面522s)の温度が硫酸露点以下となる領域に含まれる部分の総面積(硫酸凝縮総面積)は、第1熱交換ユニット521aに含まれるプレート部材522の硫酸凝縮総面積よりも大きい。このため、第1洗浄ユニット533aを構成するノズル536(以下、「第1ノズル536a」という)から噴射される洗浄液L1のプレート部材522(以下、「第1プレート部材522a」という)への供給量(以下、「第1供給量」という)は、第2洗浄ユニット533bを構成するノズル536(以下、「第2ノズル536b」という)から噴射される洗浄液L1のプレート部材522(以下、「第2プレート部材522b」という)への供給量(以下、「第2供給量」という)と異なり、第2供給量は、第1供給量よりも多くなるように設定されてもよい。ただし、廃棄物の中でも下水汚泥物を燃焼することによって発生する排ガスの析出物は、主に硫酸アンモニウムであり、硫酸アンモニウムは、化石燃料を燃焼することによって発生する排ガスの析出物(硫酸水素アンモニウム)と比べて、水に溶解し難い。このため、硫酸アンモニウムが付着しやすい領域(130度以上250度以下)を含む第1熱交換ユニット521aへの洗浄液L1の供給量を、硫酸アンモニウムが付着し難い領域を含む第2熱交換ユニット521bに供給する供給量よりも多くしてもよい。これにより、伝熱面へ付着した析出物を確実に除去でき、熱交換空気路R52の閉塞を抑制することができる。なお、洗浄ユニット533が2つ以上の場合、加熱部538は、洗浄ユニット533ごとに設けられてもよいし、洗浄部53の第1タンク531を加熱するために1つだけ設けられてもよい。
【0120】
(8)洗浄ユニット533が含むノズルパイプ535の数は任意に変更可能である。また、ノズルパイプ535に設けられるノズル536の数も任意に変更可能である。また、1つの制御バルブ537に接続されるノズルパイプ535の数も任意に変更可能である。
【0121】
(9)本実施形態では、洗浄部53が第1タンク531を含む場合を説明したが、洗浄部53は、第1タンク531を省略可能である。この場合、ノズル536には、上水、工業用水、砂ろ過水、下水処理水等が供給される。また、制御バルブ537が手動弁と電磁弁との組み合わせである場合を説明したが、制御バルブ537は、弁開度を制御可能な弁であればよい。
【0122】
(10)本実施形態では、加熱部538がヒータである場合を説明したが、加熱部538は、洗浄液L1の温度を調整できる限りヒータに限定されない。また、加熱部538は、例えば、熱交換器のような洗浄液L1を加熱する機能以外の例えば冷却する機能を有していてもよい。
【0123】
(11)本実施形態では、ノズル536の噴射条件(洗浄条件)が制御装置55によって設定される場合を説明したが、噴射条件は、人為的に設定されてもよい。例えば、1年、半年といった定期的に実施される定期点検において、技術者が、プレート部材522の腐食の進行度合い等に基づいてノズル536の噴射条件を設定してもよい。なお、噴射条件は、技術者に限定されず、作業員、運転員等によって設定されてもよい。
【0124】
(12)本実施形態では、温度取得部551は、白煙防止予備熱交換器50に導入される排ガスの導入温度と、白煙防止予備熱交換器50から排出される排ガスの排出温度と、白煙防止予備熱交換器50に導入される白煙防止空気の導入温度と、白煙防止予備熱交換器50から排出される白煙防止空気の排出温度と、排ガスの流量と、白煙防止空気の流量とに基づいてプレート温度を取得した。しかしながら、温度取得部551がプレート温度を取得する方法は、これに限定されない。例えば、白煙防止予備熱交換器50は、図14及び図15に示すように、プレート部材522の温度を取得するための温度センサ54を更に備える。温度センサ54は、複数のプレート部材522の中から予め設定されたプレート部材522に設けられ、当該プレート部材522の温度を示す情報を出力する。温度取得部551は、温度センサ54から出力された情報に基づいてプレート温度を取得してもよい。図14は、プレート部材522における等温線T1及び温度センサ54を示す図であり、図15は、白煙防止空気の導入口50cの位置が図14の構成と異なる構成における等温線T1及び温度センサ54を示す図である。なお、図14及び図15に示す例では、温度センサ54は、1つのプレート部材522に2つ設けられる。また、温度センサ54は、2つに限定されず、1つ又は3つ以上であってもよい。温度センサ54が2つ以上である場合、複数の温度センサ54は、1つのプレート部材522に設けられてもよいし、異なるプレート部材522にそれぞれ設けられてもよい。1つのプレート部材522に対して設けられる温度センサ54の数が多いほど精度が向上する。温度取得部551は、複数の温度センサ54によって取得された複数のプレート部材522の温度の最高値、最低値又は複数のプレート部材522の平均値をプレート温度として取得する。
【0125】
温度センサ54は、熱電対、測温抵抗体等である。温度センサ54は、プレート部材522の熱交換空気路R52側の主面522sに設けられる。図14及び図15に示すように、温度センサ54の各々と制御装置55とを接続するケーブルCaは、例えば白煙防止空気が流れるダクトDaを介して温度センサ54と制御装置55とを接続する。なお、ケーブルCaは、ダクトを介さずハウジング51の外部を経て温度センサ54と制御装置55とを接続してもよい。本実施形態では、ダクトDaは、白煙防止予備熱交換器50に白煙防止空気が導入される導入口50cに接続される第1ダクトDa1と白煙防止予備熱交換器50から白煙防止空気が排出される排出口50dに接続される第2ダクトDa2とを含み、ケーブルCaは、第1ダクトDa1に配置される第1ケーブルCa1と第2ダクトDa2に配置される第2ケーブルCa2とを含む。
【0126】
(13)本実施形態において、温度取得部551は、白煙防止予備熱交換器50に導入される排ガスの導入温度と、白煙防止予備熱交換器50から排出される排ガスの排出温度と、白煙防止予備熱交換器50に導入される白煙防止空気の導入温度と、白煙防止予備熱交換器50から排出される白煙防止空気の排出温度と、排ガスの流量と、白煙防止空気の流量とに基づいてプレート温度を取得したが、温度取得部551は、排ガスの導入温度、排ガスの排出温度、白煙防止空気の導入温度、白煙防止空気の排出温度、排ガスの流量、及び白煙防止空気の流量のうちの少なくとも1つに基づいてプレート温度を取得してもよい。つまり、温度取得部551は、排ガスの温度(導入温度及び排出温度の少なくとも一方)に基づいてプレート温度を取得してもよいし、白煙防止空気の温度(導入温度及び排出温度の少なくとも一方)に基づいてプレート温度を取得してよい。
【0127】
(14)排ガスの導入温度、排ガスの排出温度、排ガスの流量、白煙防止空気の導入温度、白煙防止空気の排出温度及び白煙防止空気の流量のうちの少なくとも1つは、実測値であればよく、他の温度又は流量は概算値であってもよい。例えば、図16に示すように、排ガスの導入温度Tg1、排ガスの排出温度Tg2、排ガスの流量Vg、白煙防止空気の導入温度Ta1、白煙防止空気の排出温度Ta2及び白煙防止空気の流量Vaのうちの少なくとも1つは、実測値であり、他の温度及び流量は実験等に基づいて算出される概算値であってもよい。温度取得部551は、制御装置55が有する記憶領域に予め記憶された実験結果等の情報に基づいて各値の概算値を取得する。これにより、廃棄物処理設備100のコストダウンを図ることができる。なお、図16は、プレート温度の算出に使用されるパラメータが実測値及び概算値のいずれであるかを示す図である。
【0128】
(15)本実施形態では、洗浄部53は、複数のノズル536から洗浄液L1を噴射することにより、プレート部材522を洗浄液L1で洗浄したが、洗浄部53がプレート部材522を洗浄する方法はこれに限定されない。例えば、洗浄部53は、パイプに設けられた穴から洗浄液L1を滴下することにより、プレート部材522を洗浄してもよい。
【0129】
(16)本実施形態では、仕切り部材としての平板状のプレート部材522を例に説明したが、平板状のプレート部材522に代えて、凹凸状に屈曲された板材等、屈曲部を有する板材であってもよい。
【0130】
(17)本実施形態では、一対のプレート部材522tは、互いに対向する主面522sが平行となるように離間して並列に設けられたが、一対のプレート部材522の互いに対向する主面522sは、排ガス流通方向D1の下流側ほど接近するように傾斜して設けられてもよい。これにより、例えば、互いに対向する主面522sの排ガス流通方向D1の下流側において洗浄液L1が滞留し、結果、主面522sに付着した付着物をより確実に除去することができる。
【0131】
(18)本実施形態では、供給量設定部552が供給量を調整する供給量調整処理(図7のステップS112)を実行したが、図7のステップS112は省略可能であって、供給量設定部552は、供給量を調整しなくてもよい(供給量調整処理を実行しなくてもよい)。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明は、廃棄物処理設備及び廃棄物処理方法に利用できる。
【符号の説明】
【0133】
10 :焼却炉
40 :集塵装置
50 :白煙防止予備熱交換器(低温熱交換器)
53 :洗浄部(洗浄装置)
60 :洗煙装置(湿式洗煙装置)
100 :廃棄物処理設備
522 :プレート部材(仕切り部材)
533 :洗浄ユニット
533a :第1洗浄ユニット
533b :第2洗浄ユニット
536 :ノズル
538 :加熱部(温度調整部の一例)
551 :温度取得部
554 :洗浄制御部(制御部の一例)
D1 :排ガス流通方向
L1 :洗浄液
R51 :熱交換排ガス路(排ガス路)
R52 :熱交換空気路(熱交換気体路)
Ta1 :熱交換気体の導入温度
Ta2 :熱交換気体の排出温度
Tg1 :排ガスの導入温度
Tg2 :排ガスの排出温度
Va :熱交換気体の流量
Vg :排ガスの流量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16