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特開2024-37687有機EL表示素子封止用構造体、有機EL表示素子封止用構造体の製造方法、有機EL表示素子封止用樹脂シート、及び、有機EL表示素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037687
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】有機EL表示素子封止用構造体、有機EL表示素子封止用構造体の製造方法、有機EL表示素子封止用樹脂シート、及び、有機EL表示素子
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/844 20230101AFI20240312BHJP
   H10K 85/10 20230101ALI20240312BHJP
   H10K 71/40 20230101ALI20240312BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20240312BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20240312BHJP
   C08F 22/40 20060101ALI20240312BHJP
   C08G 73/12 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
H10K50/844
H10K85/10
H10K71/40
G09F9/30 309
G09F9/30 365
G09F9/00 338
C08F22/40
C08G73/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023130908
(22)【出願日】2023-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2022142183
(32)【優先日】2022-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】安井 伸宜
(72)【発明者】
【氏名】土居 智
【テーマコード(参考)】
3K107
4J043
4J100
5C094
5G435
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC23
3K107EE47
3K107EE48
3K107EE49
3K107EE50
3K107FF02
3K107FF15
3K107GG26
4J043QC07
4J043RA08
4J043SA06
4J043SA39
4J043SA44
4J043SA46
4J043SA47
4J043SB01
4J043TA68
4J043TA73
4J043TB01
4J043UA041
4J043UA042
4J043UA431
4J043UA432
4J043UB011
4J043UB012
4J043WA07
4J043XA14
4J043XB26
4J043ZB02
4J100AM55P
4J100BC04P
4J100BC66P
4J100CA01
4J100DA49
4J100JA46
5C094AA31
5C094BA27
5C094DA07
5G435AA14
5G435BB05
5G435KK05
(57)【要約】
【課題】金属層や配線等の劣化や腐食を抑制することができ、かつ、バリア性に優れる有機EL表示素子封止用構造体を提供する。また、該有機EL表示素子封止用構造体の製造方法、有機EL表示素子封止用樹脂シート、及び、有機EL表示素子を提供する。
【解決手段】硬化性樹脂組成物の硬化物を含む樹脂層を有し、前記硬化性樹脂組成物は、ビスマレイミド化合物を含有する有機EL表示素子封止用構造体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂組成物の硬化物を含む樹脂層を有し、
前記硬化性樹脂組成物は、ビスマレイミド化合物を含有する
ことを特徴とする有機EL表示素子封止用構造体。
【請求項2】
前記ビスマレイミド化合物は、炭素数27以上の飽和の2価の炭化水素基を有する構成単位を含む請求項1記載の有機EL表示素子封止用構造体。
【請求項3】
前記樹脂層は、100℃における貯蔵弾性率が1MPa以上である請求項1又は2記載の有機EL表示素子封止用構造体。
【請求項4】
前記樹脂層は、端部に斜め側面を有する請求項1又は2記載の有機EL表示素子封止用構造体。
【請求項5】
前記斜め側面は、隣接する面となす角度の少なくとも1つが60°以下である請求項4記載の有機EL表示素子封止用構造体。
【請求項6】
前記樹脂層における前記斜め側面部分の厚みの最大値が、前記樹脂層における前記斜め側面以外の部分の厚みの最大値以下である請求項4記載の有機EL表示素子封止用構造体。
【請求項7】
前記樹脂層の少なくとも一方の面に、金属層又は金属酸化物層が直接又は別の層を介して積層されている請求項4記載の有機EL表示素子封止用構造体。
【請求項8】
前記樹脂層における前記斜め側面上に、前記金属層又は前記金属酸化物層が直接又は別の層を介して積層されている請求項7記載の有機EL表示素子封止用構造体。
【請求項9】
前記金属層又は前記金属酸化物層は、前記樹脂層側の表面に凹凸を有する請求項7記載の有機EL表示素子封止用構造体。
【請求項10】
前記樹脂層と、前記金属層又は前記金属酸化物層との間に気泡又は空隙を有さない請求項7記載の有機EL表示素子封止用構造体。
【請求項11】
請求項4記載の有機EL表示素子封止用構造体の製造において、
前記硬化性樹脂組成物を加熱することにより、前記樹脂層における前記斜め側面となる面を形成する工程を有する有機EL表示素子封止用構造体の製造方法。
【請求項12】
前記樹脂層における前記斜め側面となる面を加熱により形成する工程の後に、光を照射することにより前記硬化性樹脂組成物を硬化させて前記樹脂層を得る工程を有する請求項11記載の有機EL表示素子封止用構造体の製造方法。
【請求項13】
ビスマレイミド化合物を含有する硬化性樹脂組成物層を有する有機EL表示素子封止用樹脂シート。
【請求項14】
請求項1又は2記載の有機EL表示素子封止用構造体と有機発光材料層とを有する有機EL表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL表示素子封止用構造体に関する。また、本発明は、該有機EL表示素子封止用構造体の製造方法、有機EL表示素子封止用樹脂シート、及び、有機EL表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示素子は、互いに対向する一対の電極間に有機発光材料層が挟持された積層体構造を有し、この有機発光材料層に一方の電極から電子が注入されるとともに他方の電極から正孔が注入されることにより有機発光材料層内で電子と正孔とが結合して発光する。このように有機EL表示素子は自己発光を行うことから、バックライトを必要とする液晶表示素子等と比較して視認性がよく、より薄型化が可能であり、かつ、直流低電圧駆動が可能であるという利点を有している。このような有機EL表示素子としては、有機発光材料層から発せられた光を、薄膜トランジスタ基板を形成した基板面側から取り出すボトムエミッション型の有機EL表示素子が生産性の高さから採用されるケースがある。
【0003】
有機EL表示素子を構成する有機発光材料層や電極は、水分や酸素等により特性が劣化しやすいという問題がある。従って、実用的な有機EL表示素子を得るためには、有機発光材料層や電極を大気と遮断して長寿命化を図る必要がある。有機発光材料層や電極を大気と遮断する方法としては、樹脂層を有する有機EL表示素子封止用構造体を形成して有機EL表示素子を封止することが行われている(例えば、特許文献1)。有機EL表示素子封止用構造体を形成して有機EL表示素子を封止する場合、通常、水分や酸素等の透過を充分に抑えるため、上記樹脂層に加えて金属層又は金属酸化物層を蒸着等により形成して封止する方法が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-115692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記金属層又は上記金属酸化物層を蒸着等により形成して有機EL表示素子を封止する場合、従来の樹脂層では、硬度を上げるために硬化性樹脂組成物を高温で加熱することにより硬化させることがあり、金属層や配線等を劣化させることがあった。一方、低温で硬化させるために硬化性樹脂組成物に特定の硬化剤を配合した場合、該硬化剤により金属層や配線等に劣化や腐食が生じることがあった。
【0006】
本発明は、金属層や配線等の劣化や腐食を抑制することができ、かつ、バリア性に優れる有機EL表示素子封止用構造体を提供することを目的とする。また、本発明は、該有機EL表示素子封止用構造体の製造方法、有機EL表示素子封止用樹脂シート、及び、有機EL表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示1は、硬化性樹脂組成物の硬化物を含む樹脂層を有し、上記硬化性樹脂組成物は、ビスマレイミド化合物を含有する有機EL表示素子封止用構造体である。
本開示2は、上記ビスマレイミド化合物は、炭素数27以上の飽和の2価の炭化水素基を有する構成単位を含む本開示1の有機EL表示素子封止用構造体である。
本開示3は、上記樹脂層は、100℃における貯蔵弾性率が1MPa以上である本開示1又は2の有機EL表示素子封止用構造体である。
本開示4は、上記樹脂層は、端部に斜め側面を有する本開示1、2又は3の有機EL表示素子封止用構造体である。
本開示5は、上記斜め側面は、隣接する面となす角度の少なくとも1つが60°以下である本開示4の有機EL表示素子封止用構造体である。
本開示6は、上記樹脂層における上記斜め側面部分の厚みの最大値が、上記樹脂層における上記斜め側面以外の部分の厚みの最大値以下である本開示4又は5の有機EL表示素子封止用構造体である。
本開示7は、上記樹脂層の少なくとも一方の面に、金属層又は金属酸化物層が直接又は別の層を介して積層されている本開示4、5又は6の有機EL表示素子封止用構造体である。
本開示8は、上記樹脂層における上記斜め側面上に、上記金属層又は上記金属酸化物層が直接又は別の層を介して積層されている本開示7の有機EL表示素子封止用構造体である。
本開示9は、上記金属層又は上記金属酸化物層は、上記樹脂層側の表面に凹凸を有する本開示7又は8の有機EL表示素子封止用構造体である。
本開示10は、上記樹脂層と、上記金属層又は上記金属酸化物層との間に気泡又は空隙を有さない本開示7、8又は9の有機EL表示素子封止用構造体である。
本開示11は、本開示4、5、6、7、8、9又は10の有機EL表示素子封止用構造体の製造において、上記硬化性樹脂組成物を加熱することにより、上記樹脂層における上記斜め側面となる面を形成する工程を有する有機EL表示素子封止用構造体の製造方法である。
本開示12は、上記樹脂層における上記斜め側面となる面を加熱により形成する工程の後に、光を照射することにより上記硬化性樹脂組成物を硬化させて上記樹脂層を得る工程を有する本開示11の有機EL表示素子封止用構造体の製造方法である。
本開示13は、ビスマレイミド化合物を含有する硬化性樹脂組成物層を有する有機EL表示素子封止用樹脂シートである。
本開示14は、本開示1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10の有機EL表示素子封止用構造体と有機発光材料層とを有する有機EL表示素子である。
以下に、本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、金属層や配線等に劣化や腐食が生じさせやすい特定の硬化剤を必要とせずに光照射により低温で硬化させることができるため、有機EL表示素子封止用構造体の樹脂層の形成に用いる硬化性樹脂組成物にビスマレイミド化合物を用いることを検討した。その結果、金属層や配線等の劣化や腐食を抑制することができ、かつ、バリア性に優れる有機EL表示素子封止用構造体を得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明の有機EL表示素子封止用構造体は、硬化性樹脂組成物の硬化物を含む樹脂層を有する。
上記硬化性樹脂組成物は、ビスマレイミド化合物を含有する。上記ビスマレイミド化合物を含有することにより、上記硬化性樹脂組成物は、特定の硬化剤を必要とせずに光照射により低温で硬化させることができるものとなり、その結果、本発明の有機EL表示素子封止用構造体は、金属層や配線等の劣化や腐食を抑制することができ、かつ、バリア性に優れるものとなる。また、上記ビスマレイミド化合物を含有することにより、上記硬化性樹脂組成物は、加熱により軟化し、凹凸に追従させることが容易となり、かつ、後述する樹脂層における斜め側面となる面を容易に形成することができるものとなる。
なお、本明細書において上記「硬化性樹脂組成物の硬化物」とは、下記方法により得られた硬化度が90質量%以上であることを意味する。
(硬化度の測定)
上記硬化性樹脂組成物を10g採取して秤量し(重量W)、200メッシュの金属メッシュを用いて、100℃30分加熱後の溶融成分を除去した後、残った未溶融成分を秤量する(重量W)。得られた重量W、Wから、下記式(0)の算出式を用いて、硬化度を算出する。
硬化度(質量%)=W/W×100 (0)
【0010】
上記ビスマレイミド化合物は、下記式(1)で表される化合物である。なお、上記硬化性樹脂組成物は、上記ビスマレイミド化合物を複数種含有していてもよい。
【0011】
【化1】
【0012】
式(1)中、Qは任意の2価の基である。
【0013】
上記硬化性樹脂組成物の硬化物は、上記ビスマレイミド化合物の硬化物を含む。上記ビスマレイミド化合物の硬化物とは、下記式(2)で表される構造を有するポリビスマレイミドを意味する。
【0014】
【化2】
【0015】
式(2)中、Qは任意の2価の基である。
【0016】
上記式(1)で表されるビスマレイミド化合物としては、例えば、下記式(3)で表される化合物等が挙げられる。
【0017】
【化3】
【0018】
式(3)中、Aは、飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を表し、Bは、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基を表し、nは、0以上の整数を表し、好ましくは1以上10以下の整数である。
【0019】
上記ビスマレイミド化合物は、炭素数27以上の飽和の2価の炭化水素基を有する構成単位を含むことが好ましい。上記炭素数27以上の飽和の2価の炭化水素基を有する構成単位を含むことにより、得られる樹脂層が金属層や金属酸化物層等に段差があっても気泡なく追従することが容易となる。上記飽和の2価の炭化水素基の炭素数のより好ましい下限は30である。
また、上記飽和の2価の炭化水素基の炭素数の好ましい上限は72である。
上記炭素数27以上の飽和の2価の炭化水素基としては、例えば、下記式(4)で表される構造等が挙げられる。上記式(3)で表される化合物において、Aが下記式(4)で表される構造を有するものであってもよい。
【0020】
【化4】
【0021】
式(4)中、*は、結合位置を表す。
【0022】
上記ビスマレイミド化合物は、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の構成単位を含むことが好ましい。上記ビスマレイミド化合物が少なくとも2つのイミド結合を有する2価の構成単位を含むことにより、ビスマレイミド化合物の硬化物であるポリビスマレイミドの100℃における貯蔵弾性率が上昇し、金属層の形成が容易となる。
上記少なくとも2つのイミド結合を有する2価の構成単位としては、下記式(5-1)、(5-2)、又は、(5-3)で表される構造が好ましく、下記式(5-1)又は(5-2)で表される構造がより好ましい。上記式(3)で表される化合物において、Bが下記式(5-1)、(5-2)、又は、(5-3)で表される構造を有するものであってもよい。
【0023】
【化5】
【0024】
式(5-1)~(5-3)中、*は、結合位置を表す。
【0025】
上記ビスマレイミド化合物の市販品としては、例えば、BMI-3000GEL、BMI-6100、BMI-689、BMI-1500、BMI-1700、BMI-2500(いずれもDesigner Molecules社製)等が挙げられる。
【0026】
上記硬化性樹脂組成物100質量部中における上記ビスマレイミド化合物の含有量は、100質量部、即ち、上記硬化性樹脂組成物は上記ビスマレイミド化合物のみで構成されていてもよいが、他の成分を含有してもよい。
上記硬化性樹脂組成物は他の成分を含有する場合、上記硬化性樹脂組成物100質量部中における上記ビスマレイミド化合物の含有量の好ましい下限は50質量部である。上記ビスマレイミド化合物が50質量部以上であることにより、後述する樹脂層の端部の斜め側面の形成がより容易となる。上記ビスマレイミド化合物の含有量のより好ましい下限は75質量部である。
また、上記硬化性樹脂組成物は他の成分を含有する場合、上記硬化性樹脂組成物100質量部中における上記ビスマレイミド化合物の含有量の好ましい上限は85質量部である。上記ビスマレイミド化合物の含有量が85質量部以下であることにより、上記他の成分により、上記硬化性樹脂組成物に更なる性能を付与することができる。
【0027】
上記硬化性樹脂組成物は、上記他の成分として、上記ビスマレイミド化合物の硬化に用いられる重合開始剤を含んでいてもよい。
上記重合開始剤は、光重合開始剤であってもよいし、熱重合開始剤であってもよいが、低温で硬化させる観点から、光重合開始剤が好ましい。
上記光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤を用いることができる。上記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
上記熱重合開始剤としては、熱ラジカル重合開始剤を用いることができる。上記熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、2-ブタノンパーオキサイド、tert-ブチルパーベンゾエイト、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,1-ジ(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ビス(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、tert-ブチルヒドロパーオキシド、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパンニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブタンニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)等が挙げられる。
【0028】
上記硬化性樹脂組成物100質量部中における上記重合開始剤の含有量の好ましい下限は0.05質量部、好ましい上限は5質量部である。上記重合開始剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる硬化性樹脂組成物が硬化性及び保存安定性により優れるものとなる。上記重合開始剤の含有量のより好ましい下限は0.2質量部、より好ましい上限は3質量部である。
【0029】
上記硬化性樹脂組成物は、上記ビスマレイミド化合物に加えて、上記他の成分としてポリイミドを含有してもよい。上記ポリイミドを含有することにより、後述する、上記樹脂層における斜め側面部分の厚みの最大値を、上記樹脂層における斜め側面以外の部分の厚みの最大値以下とすることがより容易となる。
【0030】
上記ポリイミドとしては、例えば、下記式(6)で表される化合物等が挙げられる。
【0031】
【化6】
【0032】
式(6)中、Aは、飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を表し、Bは、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基を表し、mは、1以上の整数を表し、好ましくは1以上200以下の整数である。
【0033】
上記ポリイミドは、炭素数27以上の飽和の2価の炭化水素基を有する構成単位を含むことが好ましい。上記炭素数27以上の飽和の2価の炭化水素基を有する構成単位を含むことにより、ビスマレイミド化合物と相溶しやすくなり、樹脂層における斜め側面部分の厚みの最大値を、上記樹脂層における斜め側面以外の部分の厚みの最大値以下とすることがより容易となる。上記飽和の2価の炭化水素基の炭素数のより好ましい下限は30である。また、上記飽和の2価の炭化水素基の炭素数の好ましい上限は72である。
上記炭素数27以上の飽和の2価の炭化水素基としては、例えば、上記式(4)で表される構造等が挙げられる。上記式(6)で表される化合物において、Aが上記式(4)で表される構造を有するものであってもよい。
【0034】
上記ポリイミドは、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の構成単位を含むことが好ましい。上記ポリイミドが少なくとも2つのイミド結合を有する2価の構成単位を含むことにより、ビスマレイミド化合物の硬化物であるポリビスマレイミドの100℃における貯蔵弾性率が上昇し、金属層の形成が容易となる。
上記少なくとも2つのイミド結合を有する2価の構成単位としては、上記式(5-1)、(5-2)、又は、(5-3)で表される構造が好ましく、上記式(5-1)又は(5-2)で表される構造がより好ましい。上記式(6)で表される化合物において、Bが上記式(5-1)、(5-2)、又は、(5-3)で表される構造を有するものであってもよい。
【0035】
上記硬化性樹脂組成物100質量部中における上記ポリイミドの含有量の好ましい下限は5質量部、好ましい上限は50質量部である。上記ポリイミドの含有量がこの範囲であることにより、後述する、上記樹脂層における斜め側面部分の厚みの最大値を、上記樹脂層における斜め側面以外の部分の厚みの最大値以下とすることがより容易となる。上記ポリイミドの含有量のより好ましい下限は10質量部、より好ましい上限は25質量部である。
【0036】
上記硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、無機充填剤、吸湿剤、粘土鉱物等の公知の各種添加剤を含有してもよい。
【0037】
上記樹脂層は、100℃における貯蔵弾性率の好ましい下限が1MPaである。上記樹脂層の貯蔵弾性率が1MPa以上であることにより、後述する金属層又は金属酸化物層を容易に形成することができる。上記樹脂層の貯蔵弾性率のより好ましい下限は5MPaである。
また、上記樹脂層の貯蔵弾性率の好ましい上限は特にないが、実質的な上限は100MPaである。
なお、上記100℃における貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定装置(例えば、アイティー計測制御社製、「DVA-200」等)を用いて、引張方向、周波数1Hz、昇温速度5℃/分の条件で測定することができる。上記貯蔵弾性率を測定する樹脂層は、上記硬化性樹脂組成物を離型フィルム上に塗工し、乾燥させることにより、厚さ10μmの樹脂シートとし、得られた樹脂シートにケミカルランプを用いて照度5mW/cmの光を5000秒照射した後、離型フィルムを剥離することにより作製することができる。
【0038】
上記樹脂層は、端部に斜め側面を有することが好ましい。端部に上記斜め側面を有することにより、上記樹脂層の端面に後述する金属層又は金属酸化物層を容易に形成することができ、得られる有機EL表示素子封止用構造体がバリア性により優れるものとなる。
なお、本明細書において上記「端部に斜め側面を有する」とは、上記樹脂層を水平面に配置した場合に、上記樹脂層の水平面に接する面と上記樹脂層の端部とのなす角度が90°未満の部分を有することを意味する。
上記斜め側面を有するか否かの判断基準を示す模式図を図1に示す。図1における、(a)及び(f)の場合は、樹脂層1の端部が斜めになっており、斜め側面を有すると判断される。一方、図1における、(c)及び(g)の場合は、樹脂層1の端部が斜めになっておらず、斜め側面を有していないと判断される。
【0039】
上記斜め側面は、隣接する面となす角度の少なくとも1つが60°以下であることが好ましい。隣接する面となす角度の少なくとも1つが60°以下である斜め側面を有することにより、上記樹脂層の端面に後述する金属層又は金属酸化物層をより容易に形成することができる。
なお、上記斜め側面が隣接する面となす角度は、カッターナイフ等により裁断した有機EL表示素子封止用構造体について、走査型電子顕微鏡を用いて断面を観察することにより測定することができる。
上記斜め側面が隣接する面となす角度の少なくとも1つが60°以下であるか否かの判断基準を示す模式図を図2に示す。図2(a)の場合、樹脂層1の斜め側面が隣接する面となす角度の少なくとも1つが60°以下となっている。
【0040】
上記斜め側面上に金属層又は金属酸化物層が形成された状態を示す模式図を図3に示す。図3に示したように、上記樹脂層が端部に上記斜め側面を有することにより、上記樹脂層の端面に金属層又は金属酸化物層を容易に形成することができ、バリア性を向上させることができる。
【0041】
本発明の有機EL表示素子封止用構造体は、上記樹脂層における上記斜め側面部分の厚みの最大値が、上記樹脂層における上記斜め側面以外の部分の厚みの最大値以下であることが好ましい。上記樹脂層における上記斜め側面部分の厚みの最大値が、上記樹脂層における上記斜め側面以外の部分の厚みの最大値以下であることにより、上記樹脂層の端面に後述する金属層又は金属酸化物層をより容易に形成することができる。
なお、上記斜め側面部分の厚みの最大値及び上記斜め側面以外の部分の厚みの最大値は、カッターナイフ等により裁断した有機EL表示素子封止用構造体について、走査型電子顕微鏡を用いて断面を観察することにより測定することができる。
上記樹脂層における上記斜め側面部分の厚みの最大値が、上記樹脂層における上記斜め側面以外の部分の厚みの最大値以下であるか否かの判断基準を示す模式図を図4に示す。図4における、(a)、(b)、及び、(e)の場合、樹脂層1における斜め側面部分の厚みの最大値2は、樹脂層1における斜め側面以外の部分の厚みの最大値3以下となっている。一方、図4における、(c)及び(d)の場合、樹脂層1における斜め側面部分の厚みの最大値2は、樹脂層1における斜め側面以外の部分の厚みの最大値3を超えている。
【0042】
上記樹脂層を形成する方法としては、以下の方法等が挙げられる。
即ち、まず、上記硬化性樹脂組成物を離型フィルム上に塗工し、乾燥させることにより、樹脂シートとする。得られた樹脂シートを被着体に重ねた後、光を照射して硬化性樹脂組成物を硬化させる。その後、離型フィルムを剥離することにより上記樹脂層を形成することができる。ビスマレイミド化合物を含有する硬化性樹脂組成物層を有する有機EL表示素子封止用樹脂シートもまた、本発明の1つである。
【0043】
本発明の有機EL表示素子封止用構造体は、上記樹脂層の少なくとも一方の面に、金属層又は金属酸化物層が直接又は別の層を介して積層されていることが好ましい。上記樹脂層の少なくとも一方の面に、上記金属層又は上記金属酸化物層が積層されていることにより、得られる有機EL表示素子封止用構造体がバリア性により優れるものとなる。
【0044】
上記金属層又は上記金属酸化物層は、通常、発光素子の配線等により、上記樹脂層側の表面に凹凸を有する。
【0045】
本発明の有機EL表示素子封止用構造体は、上記樹脂層と、上記金属層又は上記金属酸化物層との間に気泡又は空隙を有さないことが好ましい。上記樹脂層と、上記金属層又は上記金属酸化物層との間に気泡又は空隙を有さないことにより、得られる有機EL表示素子封止用構造体がバリア性により優れるものとなる。
なお、上記気泡又は空隙の有無は、光学顕微鏡を用いて、上記樹脂層と、上記金属層又は上記金属酸化物層との間を観察することにより確認することができる。
上記樹脂層と、上記金属層又は上記金属酸化物層との間に気泡又は空隙を有するか否かの判断基準を示す模式図を図5に示す。図5における、(a)、(d)、(e)、(f)、及び、(g)の場合は、別の固体層6の有無に関わらず、樹脂層1と、金属層又は金属酸化物層4との間には、気泡又は空隙5は存在しない。一方、図5における、(b)及び(c)の場合は、樹脂層1と、金属層又は金属酸化物層4との間に気泡又は空隙5が存在している。
【0046】
上述したように、上記ビスマレイミド化合物を含有することにより、上記硬化性樹脂組成物は、加熱により軟化し、凹凸に追従させることが容易となり、かつ、上記樹脂層における斜め側面となる面を容易に形成することができるものとなる。
本発明の有機EL表示素子封止用構造体の製造において、上記硬化性樹脂組成物を加熱することにより、上記樹脂層における上記斜め側面となる面を形成する工程を有する有機EL表示素子封止用構造体の製造方法もまた、本発明の1つである。
【0047】
本発明の有機EL表示素子封止用構造体の製造方法は、上記金属層又は上記金属酸化物層を積層することが容易となることから、上記樹脂層における上記斜め側面となる面を加熱により形成する工程の後に、光を照射することにより上記硬化性樹脂組成物を硬化させて上記樹脂層を得る工程を有することが好ましい。
【0048】
本発明の有機EL表示素子封止用構造体と有機発光材料層とを有する有機EL表示素子もまた、本発明の1つである。
【発明の効果】
【0049】
本発明によれば、金属層や配線等の劣化や腐食を抑制することができ、かつ、バリア性に優れる有機EL表示素子封止用構造体を提供することができる。また、本発明によれば、該有機EL表示素子封止用構造体の製造方法、有機EL表示素子封止用樹脂シート、及び、有機EL表示素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】斜め側面を有するか否かの判断基準を示す模式図である。
図2】斜め側面が隣接する面となす角度の少なくとも1つが60°以下であるか否かの判断基準を示す模式図である。
図3】樹脂層の斜め側面上に金属層又は金属酸化物層が形成された状態を示す模式図である。
図4】樹脂層における斜め側面部分の厚みの最大値が、樹脂層における斜め側面以外の部分の厚みの最大値以下であるか否かの判断基準を示す模式図である。
図5】樹脂層と、金属層又は金属酸化物層との間に気泡又は空隙を有するか否かの判断基準を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0052】
(実施例1)
(硬化性樹脂組成物溶液の作製)
ビスマレイミド化合物(Designer Molecules社製、「BMI-3000GEL」)100質量部と、光ラジカル重合開始剤としてOmnirad 819(IGM Resins社製)0.3質量部とを、固形分70%になるようにトルエンに溶解させて充分に撹拌し、硬化性樹脂組成物溶液Aを得た。BMI-3000GELは、下記式(7)で表されるビスマレイミド化合物であり、Omnirad 819は、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドである。
【0053】
【化7】
【0054】
式(7)中、nは1以上10以下の整数である。
【0055】
(有機EL表示素子封止用樹脂シートの作製)
得られた熱硬化性樹脂組成物溶液Aを、アプリケーターを用いて、厚さ50μmの離型PETフィルム(東洋クロス社製、「SP4030」)の離型面上に塗工し、70℃で加熱乾燥させて厚さ10μmの硬化性樹脂組成物層Bを形成した。その後、得られた硬化性樹脂組成物層B上に厚さ38μmの離型PETフィルム(東洋クロス社製、「SP3000」)の離型面をラミネートし、硬化性樹脂組成物層を1層有する有機EL表示素子封止用樹脂シートCを得た。
【0056】
(貯蔵弾性率E’の測定)
貯蔵弾性率測定用として有機EL表示素子封止用樹脂シートCを別に作製し、ケミカルランプを用いて、SP4030の面から照度5mW/cmの光を5000秒照射して硬化性樹脂組成物を硬化させた後、SP3000及びSP4030を剥離することで、硬化性樹脂組成物層Bの硬化物である試験片を得た。得られた試験片について、動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御社製、「DVA-200」)を用いて、引張方向、周波数1Hz、昇温速度5℃/分の条件にて、100℃における貯蔵弾性率E’を測定した。
【0057】
(有機EL表示素子封止用構造体の作製)
厚さ50μmのアルミニウム箔上に、凹凸として片面テープ(厚さ5μm、3×3cm)を貼り合わせた。カッターナイフで5×5cmに裁断した有機EL表示素子封止用樹脂シートCのSP3000を剥離し、アルミニウム箔の片面テープを貼り合わせた面上に、真空加熱プレス(温度70℃、加圧力0.3MPa、加圧時間30秒、真空度3kPa)で硬化性樹脂組成物層を積層させた。
その後、ホットプレート上で90℃、30秒加熱し、1層の金属層と1層の硬化性樹脂組成物層を有する積層体Dを得た。得られた積層体Dを、SP4030の面から、光学顕微鏡を用いて観察し、倍率20倍で視認可能な気泡又は空隙が確認されなかった場合を「○」、確認された場合を「×」とした。結果を表1に示した。
続いて、得られた積層体Dに、ケミカルランプを用いて、SP4030の面から照度5mW/cmの光を5000秒照射して硬化性樹脂組成物を硬化させ、1層の金属層と1層の樹脂層とを有する積層体Eを得た。
その後、得られた積層体EのSP4030を剥離し、樹脂層面に、真空プラズマ処理(到達真空度0.2Pa、アルゴンガス、ガス導入時真空度10Pa、プラズマ照射時間300秒、加圧電力1000W)を行った。樹脂層面上の水接触角が50°以下になっていることを確認した後、真空蒸着装置(真空デバイス社製、「VE-2013」)を用いて、到達真空度0.2Pa、電極間電圧15V、蒸着時間60秒の条件で樹脂層面上にアルミニウム層を積層させて、2層の金属層と1層の樹脂層とを有する有機EL表示素子封止用構造体Fを得た。
【0058】
(樹脂層の斜め側面が隣接する面となす角度の測定)
得られた有機EL表示素子封止用構造体Fをカッターナイフにて裁断し、その断面を、走査型電子顕微鏡(日立ハイテク社製、「SU3500」)を用いて3000倍の倍率で観察し、樹脂層の斜め側面が隣接する面となす角度を測定した。結果を表1に示した。
【0059】
(金属層の形成の有無の確認)
得られた有機EL表示素子封止用構造体Fをカッターナイフにて裁断し、その断面を、走査型電子顕微鏡(日立ハイテク社製、「SU3500」)を用いて400倍の倍率で観察した。樹脂層の斜め側面部分及び斜め側面以外の部分において蒸着金属層の形成が確認できた場合を「○」、樹脂層の斜め側面以外の部分においては蒸着金属層の形成が確認できたものの、斜め側面部分には確認できなかった場合を「△」、樹脂層の斜め側面以外の部分において蒸着金属層の形成が確認できなかった場合を「×」とした。結果を表1に示した。
【0060】
(樹脂層の斜め側面部分の厚みの最大値と斜め側面以外の部分の厚みの最大値との関係)
得られた有機EL表示素子封止用構造体Fをカッターナイフにて裁断し、その断面を、走査型電子顕微鏡(日立ハイテク社製、「SU3500」)を用いて3000倍の倍率で観察した。樹脂層の斜め側面部分の厚みの最大値が、斜め側面以外の部分の厚みの最大値を超えない場合を「○」、斜め側面以外の部分の厚みの最大値を超えた場合において、斜め側面以外の部分の厚みの最大値の110%を超えない場合を「△」、斜め側面以外の部分の厚みの最大値の110%を超えた場合を「×」とした。結果を表1に示した。
【0061】
実施例1で得られた有機EL表示素子封止用構造体Fの樹脂層の断面は、上述した図4(c)様の形状を有していた。これは、積層体Dを得る際の加熱時に、離型PETフィルムに沿って樹脂層の斜め側面部分の厚みが増加したことが要因と推察される。
【0062】
(実施例2)
(ポリイミドXの合成)
撹拌子を装備した1000mL容の丸底フラスコに、アニソール300mL、及び、N-メチル-2-ピロリドン100mLを投入した。次いで、ダイマージアミン(クローダ・インターナショナル社製、「Priamine1075」)94.2g(0.18モル)、及び、ベンゼン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物38.0g(0.17モル)を丸底フラスコに加えた。ディーン・スターク装置と冷却管とを丸底フラスコに取り付けた後、混合物を2時間加熱還流させた。得られた反応混合物の溶液を真空下で除去し、ポリイミドXを得た。得られたポリイミドXは、下記式(8)で表される化合物である。
【0063】
【化8】
【0064】
上記式(8)中、mは1以上200以下の整数である。
【0065】
(有機EL表示素子封止用構造体の作製)
BMI-3000GEL100質量部に代えて、BMI-3000GEL85質量部及びポリイミドX15質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、有機EL表示素子封止用構造体Fを作製した。
実施例1と同様にして、貯蔵弾性率E’の測定、気泡又は空隙の有無の確認、樹脂層の斜め側面が隣接する面となす角度の測定、金属層の形成の有無の確認、及び、樹脂層の斜め側面部分の厚みの最大値及び斜め側面以外の部分の厚みの最大値の測定を行った。結果を表1に示した。
実施例2で得られた有機EL表示素子封止用構造体Fの樹脂層の断面は、上述した図4(c)様の形状を有していたが、斜め側面部分の厚みの最大値が斜め側面以外の部分の厚みの最大値の110%を超えなかった。
【0066】
(実施例3)
(有機EL表示素子封止用構造体の作製)
真空加熱プレス後、ホットプレート上で加熱する前にSP4030を剥離し、硬化性樹脂組成物層上に別のSP4030(6×6cm)の離型面をラミネートしたこと以外は実施例2と同様にして、有機EL表示素子封止用構造体Fを作製した。
実施例1と同様にして、貯蔵弾性率E’の測定、気泡又は空隙の有無の確認、樹脂層の斜め側面が隣接する面となす角度の測定、金属層の形成の有無の確認、及び、樹脂層の斜め側面部分の厚みの最大値及び斜め側面以外の部分の厚みの最大値の測定を行った。結果を表1に示した。
実施例3で得られた有機EL表示素子封止用構造体Fの樹脂層の断面は、上述した図4(a)様の形状を有していた。
【0067】
(実施例4)
(ビスマレイミド化合物Yの合成)
撹拌子を装備した1000mL容の丸底フラスコに、トルエン380mL、及び、N-メチル-2-ピロリドン130mLを投入した。ダイマージアミン(クローダ・インターナショナル社製、「Priamine1075」)150g(0.28モル)、及び、ビシクロ[2.2.2]オクトー7-エンー2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物52.1g(0.21モル)を丸底フラスコに加え、次いで、メタンスルホン酸6.72g(0.070モル)を加えた。ディーン・スターク装置と冷却管を丸底フラスコに取り付けた後、混合物を2時間加熱還流させ、アミン末端のポリイミドを形成した。反応混合物を室温まで冷却した後、丸底フラスコに無水マレイン酸14.4g(0.15モル)を加え、混合物を9時間加熱還流させた。反応混合物を1000mL容の分液漏斗に移し、次いで、10質量%エタノール水溶液80mLを加えて振とうした後、水相を除去する工程を10回繰り返した。得られた反応混合物の溶液を真空下で除去し、ビスマレイミド化合物Yを得た。得られたビスマレイミド化合物Yは、下記式(9)で表される化合物である。
【0068】
【化9】
【0069】
上記式(9)中、nは1以上10以下の整数である。
【0070】
(有機EL表示素子封止用構造体の作製)
BMI-3000GELに代えて、ビスマレイミド化合物Y100質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、有機EL表示素子封止用構造体Fを作製した。
実施例1と同様にして、貯蔵弾性率E’の測定、気泡又は空隙の有無の確認、樹脂層の斜め側面が隣接する面となす角度の測定、金属層の形成の有無の確認、及び、樹脂層の斜め側面部分の厚みの最大値及び斜め側面以外の部分の厚みの最大値の測定を行った。結果を表1に示した。
実施例4で得られた有機EL表示素子封止用構造体Fの樹脂層の断面は、上述した図4(c)様の形状を有していた。斜め側面以外の部分の厚みの最大値に対する斜め側面部分の厚みの最大値の割合が、実施例1で得られた有機EL表示素子封止用構造体Fよりも大きな値を示した。
【0071】
(実施例5)
(ビスマレイミド化合物Zの合成)
撹拌子を装備した1000mL容の丸底フラスコに、トルエン300mL、及び、N-メチル-2-ピロリドン100mLを投入した。ダイマージアミン(クローダ・インターナショナル社製、「Priamine1075」)112g(0.21モル)、及び、ジフェニル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物41.2g(0.14モル)を丸底フラスコに加え、次いで、メタンスルホン酸6.72g(0.070モル)を加えた。ディーン・スターク装置と冷却管を丸底フラスコに取り付けた後、混合物を2時間加熱還流させ、アミン末端のポリイミドを形成した。反応混合物を室温まで冷却した後、丸底フラスコに無水マレイン酸14.4g(0.15モル)を加え、混合物を9時間加熱還流させた。反応混合物を1000mL容の分液漏斗に移し、次いで、10質量%エタノール水溶液80mLを加えて振とうした後、水相を除去する工程を10回繰り返した。得られた反応混合物の溶液を真空下で除去し、ビスマレイミド化合物Zを得た。得られたビスマレイミド化合物Zは、下記式(10)で表される化合物である。
【0072】
【化10】
【0073】
上記式(10)中、nは1以上10以下の整数である。
【0074】
(有機EL表示素子封止用構造体の作製)
BMI-3000GELに代えて、ビスマレイミド化合物Z100質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、有機EL表示素子封止用構造体Fを作製した。
実施例1と同様にして、貯蔵弾性率E’の測定、気泡又は空隙の有無の確認、樹脂層の斜め側面が隣接する面となす角度の測定、金属層の形成の有無の確認、及び、樹脂層の斜め側面部分の厚みの最大値及び斜め側面以外の部分の厚みの最大値の測定を行った。結果を表1に示した。
実施例5で得られた有機EL表示素子封止用構造体Fの樹脂層の断面は、上述した図4(c)様の形状を有していた。斜め側面以外の部分の厚みの最大値に対する斜め側面部分の厚みの最大値の割合が、実施例4で得られた有機EL表示素子封止用構造体Fよりも更に大きな値を示した。
【0075】
(実施例6)
(有機EL表示素子封止用構造体の作製)
実施例1と同様にして得られた有機EL表示素子封止用樹脂シートCに、ケミカルランプを用いて、SP4030の面から照度5mW/cmの光を5000秒照射して硬化性樹脂組成物を硬化させ、積層体を得た。厚さ50μmのアルミニウム箔上に、凹凸として片面テープ(厚さ5μm、3×3cm)を貼り合わせた。カッターナイフで5×5cmに裁断した積層体のSP3000を剥離し、アルミニウム箔の片面テープを貼り合わせた面上に、真空加熱プレス(温度70℃、加圧力0.3MPa、加圧時間30秒、真空度3kPa)で樹脂層を積層させた。
その後、90℃のホットプレート上で30秒加熱し、1層の金属層と1層の樹脂層とを有する積層体E’を得た。
その後、得られた積層体E’のSP4030を剥離し、樹脂層面に、真空プラズマ処理(到達真空度0.2Pa、アルゴンガス、ガス導入時真空度10Pa、プラズマ照射時間300秒、加圧電力1000W)を行った。樹脂層面上の水接触角が50°以下になっていることを確認した後、真空蒸着装置(真空デバイス社製、「VE-2013」)を用いて、到達真空度0.2Pa、電極間電圧15V、蒸着時間60秒の条件で樹脂層面上にアルミニウム層を積層させて、2層の金属層と1層の樹脂層とを有する有機EL表示素子封止用構造体F’を得た。
実施例1と同様にして、貯蔵弾性率E’の測定、気泡又は空隙の有無の確認、樹脂層の斜め側面が隣接する面となす角度の測定、金属層の形成の有無の確認、及び、樹脂層の斜め側面部分の厚みの最大値及び斜め側面以外の部分の厚みの最大値の測定を行った。結果を表1に示した。
実施例6で得られた有機EL表示素子封止用構造体F’の樹脂層の断面は、上述した図1(c)様の形状を有していた。
【0076】
(比較例1)
(有機EL表示素子封止用構造体の作製)
積層体Dへの光照射を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして、有機EL表示素子封止用構造体Fを作製した。
実施例1と同様にして、貯蔵弾性率E’の測定、気泡又は空隙の有無の確認、樹脂層の斜め側面が隣接する面となす角度の測定、金属層の形成の有無の確認、及び、樹脂層の斜め側面部分の厚みの最大値及び斜め側面以外の部分の厚みの最大値の測定を行った。なお、比較例1では硬化物である樹脂層が得られなかったため、未硬化の硬化性樹脂組成物層の状態でこれらの確認や測定を行った。結果を表1に示した。
比較例1で得られた有機EL表示素子封止用構造体Fの樹脂層の断面は、上述した図4(c)様の形状を有していた。
【0077】
(比較例2)
(有機EL表示素子封止用構造体の作製)
BMI-3000GELに代えて、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC社製、「EPICLON 840」)100質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、有機EL表示素子封止用構造体Fを作製した。
実施例1と同様にして、貯蔵弾性率E’の測定、気泡又は空隙の有無の確認、樹脂層の斜め側面が隣接する面となす角度の測定、金属層の形成の有無の確認、及び、樹脂層の斜め側面部分の厚みの最大値及び斜め側面以外の部分の厚みの最大値の測定を行った。なお、比較例2では硬化物である樹脂層が得られなかったため、未硬化の硬化性樹脂組成物層の状態でこれらの確認や測定を行った。結果を表1に示した。
比較例2で得られた有機EL表示素子封止用構造体Fの樹脂層の断面は、上述した図1(c)様の形状を有していた。
【0078】
(比較例3)
(有機EL表示素子封止用構造体の作製)
BMI-3000GELに代えて、EPICLON 840(DIC社製)100質量部を用い、Omnirad 819に代えて光カチオン重合開始剤としてOmnicat 270(IGM Resins社製)0.3質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、有機EL表示素子封止用構造体Fを作製した。Omnicat 270は、トリス(4-((4-アセチルフェニル)スルファニル)フェニル)スルフォニウムヘキサフルオロフォスフェートである。
実施例1と同様にして、貯蔵弾性率E’の測定、気泡又は空隙の有無の確認、樹脂層の斜め側面が隣接する面となす角度の測定、金属層の形成の有無の確認、及び、樹脂層の斜め側面部分の厚みの最大値及び斜め側面以外の部分の厚みの最大値の測定を行った。結果を表1に示した。
比較例3で得られた有機EL表示素子封止用構造体Fの樹脂層の断面は、上述した図1(c)様の形状を有していた。
【0079】
<評価>
実施例及び比較例で得られた各有機EL表示素子封止用構造体について以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0080】
(金属の劣化及び腐食抑制性)
得られた有機EL表示素子封止用構造体の室温環境下におけるシート抵抗値を、非破壊抵抗測定器(ナプソン社製、「EC-80P」)を用いて測定し(抵抗値R)、その後、有機EL表示素子封止用構造体を85℃、85%RHの環境下に240時間曝し、室温まで冷却した後、再びシート抵抗値を測定した(抵抗値R)。得られたR、Rより、下記式(I)の算出式を用いて、抵抗値変化率を算出した。
抵抗値変化率(%)=(R/R-1)×100 (I)
抵抗値変化率が20%以下であった場合を「○」、20%を超えた場合を「×」として、金属の劣化及び腐食抑制性を評価した。
【0081】
(バリア性(金属層の形成性総合評価))
得られた有機EL表示素子封止用構造体のバリア性を、金属層の形成性の観点から、以下の通りに評価した。
上記金属層の形成の有無の観察結果が「○」の場合において、上記樹脂層の斜め側面部分の厚みの最大値と斜め側面以外の部分の厚みの最大値との関係が「○」の場合を「S」、「△」の場合を「A」、「×」の場合を「B」とした。また、上記金属層の形成の有無の観察結果が「△」の場合を「C」とした。更に、上記金属層の形成の有無の観察結果が「×」の場合を「D」とした。
なお、S、A、B、C、Dの順に金属層を形成することが困難となっていき、バリア性が悪くなる。
【0082】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明によれば、金属層や配線等の劣化や腐食を抑制することができ、かつ、バリア性に優れる有機EL表示素子封止用構造体を提供することができる。また、本発明によれば、該有機EL表示素子封止用構造体の製造方法、有機EL表示素子封止用樹脂シート、及び、有機EL表示素子を提供することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 樹脂層
2 斜め側面部分の厚みの最大値
3 斜め側面以外の部分の厚みの最大値
4 金属層又は金属酸化物層
5 気泡又は空隙
6 別の固体層
図1
図2
図3
図4
図5