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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000377
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】出没式筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 24/02 20060101AFI20231225BHJP
   B43K 24/04 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
B43K24/02 110
B43K24/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】36
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099128
(22)【出願日】2022-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】坂元 大介
【テーマコード(参考)】
2C353
【Fターム(参考)】
2C353HA01
2C353HA09
2C353HC10
2C353HC17
2C353HG04
2C353HJ02
2C353HL03
(57)【要約】
【課題】 筆記時にチップのガタつきが防止されて安定した筆記感が得られる一方、作動不良の虞が小さい出没式筆記具を提供すること。
【解決手段】 本発明は、前端に開口を有する軸筒と、軸筒の軸方向に移動可能なチップホルダーと、チップホルダーの移動に伴って出没可能なチップと、軸筒の開口の内周に遊嵌され軸方向に移動可能な環状部材と、チップホルダーと環状部材とを互いに相対移動可能に接続可能な弾性部材と、を備える。環状部材の外周の少なくとも一部には、前端に向かって先細状の当接面が形成されており、環状部材の一部には、切欠きが形成されており、前記当接面において荷重を受ける時に環状部材の内径が縮径するようになっている。切欠きは、環状部材の周方向に等間隔に複数が配置されており、当接面は、周方向に見て前記複数の切欠きの周方向に隣接する2つの切欠きの中間位置の各々において、径方向外側に隆起するように設けられている。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端に開口を有する軸筒と、
前記軸筒の内部に収容され、前記軸筒の軸方向に移動可能なチップホルダーと、
前記チップホルダーの前端に固定され、前記チップホルダーの移動に伴って前記軸筒の前記開口から出没可能なチップと、
前記軸筒の前記開口の内周に遊嵌され、当該軸筒に対して当該軸筒の軸方向に移動可能な環状部材と、
前記チップホルダーと前記環状部材とを互いに相対移動可能に接続可能な弾性部材と、
を備え、
前記環状部材の外周の少なくとも一部には、前記チップホルダーの前端側への移動に伴って前記軸筒の内面の一部に当接する当接面が形成されており、
前記環状部材の一部には、切欠きが形成されており、前記当接面において荷重を受ける時に当該環状部材の内径が縮径するようになっており、
前記軸筒の内面の一部には、前記チップホルダーの前端側への移動に伴って前記当接面が当接する案内面が形成されており、
前記当接面は、前記チップホルダーの前端側への移動に伴って、前記案内面から前記荷重を受けるようになっており、
前記切欠きは、前記環状部材の周方向に等間隔に複数が配置されており、
前記当接面は、周方向に見て前記複数の切欠きの周方向に隣接する2つの切欠きの中間位置の各々において、径方向外側に隆起するように設けられている
ことを特徴とする出没式筆記具。
【請求項2】
前記当接面は、前記環状部材の軸方向に延在するリブ状に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の出没式筆記具。
【請求項3】
前端に開口を有する軸筒と、
前記軸筒の内部に収容され、前記軸筒の軸方向に移動可能なチップホルダーと、
前記チップホルダーの前端に固定され、前記チップホルダーの移動に伴って前記軸筒の前記開口から出没可能なチップと、
前記軸筒の前記開口の内周に遊嵌され、当該軸筒に対して当該軸筒の軸方向に移動可能な環状部材と、
前記チップホルダーと前記環状部材とを互いに相対移動可能に接続可能な弾性部材と、
を備え、
前記環状部材の外周の少なくとも一部には、前記チップホルダーの前端側への移動に伴って前記軸筒の内面の一部に当接する当接面が形成されており、
前記環状部材の一部には、切欠きが形成されており、前記当接面において荷重を受ける時に当該環状部材の内径が縮径するようになっており、
前記軸筒の内面の一部には、前記チップホルダーの前端側への移動に伴って前記当接面が当接する案内面が形成されており、
前記当接面は、前記チップホルダーの前端側への移動に伴って、前記案内面から前記荷重を受けるようになっており、
前記切欠きは、前記環状部材の周方向に等間隔に複数が配置されており、
前記環状部材の内周面には、周方向に見て前記複数の切欠きの周方向に隣接する2つの切欠きの中間位置の各々において、径方向内側に隆起する隆起部が設けられている
ことを特徴とする出没式筆記具。
【請求項4】
前記隆起部は、前記環状部材の軸方向に延在するリブ状に形成されている
ことを特徴とする請求項3に記載の出没式筆記具。
【請求項5】
前記環状部材の内周面には、周方向に見て前記複数の切欠きの周方向に隣接する2つの切欠きの中間位置の各々において、径方向内側に隆起する隆起部が設けられている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の出没式筆記具。
【請求項6】
前記隆起部は、前記環状部材の軸方向に延在するリブ状に形成されている
ことを特徴とする請求項5に記載の出没式筆記具。
【請求項7】
前端に開口を有する軸筒と、
前記軸筒の内部に収容され、前記軸筒の軸方向に移動可能なチップホルダーと、
前記チップホルダーの前端に固定され、前記チップホルダーの移動に伴って前記軸筒の前記開口から出没可能なチップと、
前記軸筒の前記開口の内周に遊嵌され、当該軸筒に対して当該軸筒の軸方向に移動可能な環状部材と、
前記チップホルダーと前記環状部材とを互いに相対移動可能に接続可能な弾性部材と、
を備え、
前記環状部材の外周の少なくとも一部には、前記チップホルダーの前端側への移動に伴って前記軸筒の内面の一部に当接する当接面が形成されており、
前記環状部材の一部には、切欠きが形成されており、前記当接面において荷重を受ける時に当該環状部材の内径が縮径するようになっており、
前記軸筒の内面の一部には、前記チップホルダーの前端側への移動に伴って前記当接面が当接する案内面が形成されており、
前記当接面は、前記チップホルダーの前端側への移動に伴って、前記案内面から前記荷重を受けるようになっており、
前記切欠きは、前記環状部材の周方向に等間隔に複数が配置されており、
前記案内面は、周方向に見て前記複数の切欠きの周方向に隣接する2つの切欠きの中間位置の各々において、径方向内側に隆起するように設けられている
ことを特徴とする出没式筆記具。
【請求項8】
前記案内面は、前記環状部材の軸方向に延在するリブ状に形成されている
ことを特徴とする請求項7に記載の出没式筆記具。
【請求項9】
前記軸筒及び/または前記環状部材に設けられ、前記環状部材の後方側の移動限界を規定するストッパ要素
を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の出没式筆記具。
【請求項10】
前記複数の切欠きの各々は、前記環状部材の軸方向に延びるスリットである
ことを特徴とする請求項1乃至9に記載の出没式筆記具。
【請求項11】
前記当接面は、前端に向かって先細状であり、
前記案内面も、前端に向かって先細状である
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の出没式筆記具。
【請求項12】
前記当接面は、切頭円錐面を有している
ことを特徴とする請求項11に記載の出没式筆記具。
【請求項13】
前記弾性部材は、コイルバネである
ことを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載の出没式筆記具。
【請求項14】
前記環状部材と前記弾性部材とは、互いに固定されており、
前記弾性部材は、前記チップホルダーの環状カラーに接続可能であり、
前記弾性部材は、前記チップホルダーの前記環状カラーから離間可能である
ことを特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載の出没式筆記具。
【請求項15】
前記当接面と前記案内面とは、常時当接している
ことを特徴とする請求項1乃至14のいずれかに記載の出没式筆記具。
【請求項16】
前記環状部材は、前記軸筒の前記開口から前方側に突出している
ことを特徴とする請求項1乃至15のいずれかに記載の出没式筆記具。
【請求項17】
前記チップの出没操作のための操作部、または、前記軸筒の後部に、軟質部材が設けられている
ことを特徴とする請求項1乃至16のいずれかに記載の出没式筆記具。
【請求項18】
前記軸筒に対して前後方向にスライド可能に設けられたノック部材
を更に備え、
前記チップは、前記ノック部材が前方に移動される度に、前記軸筒の前記開口から突出ないし没入を交互に繰り返すよう前後に移動されるようになっており、
前記環状部材は、前記ノック部材が前方に移動される度に、前記軸筒に対して回転されるようになっていることを特徴とする請求項1乃至17のいずれかに記載の出没式筆記具。
【請求項19】
前端にチップが固定されたチップホルダーを軸方向に移動可能に収容可能であって、前端に開口を有し、前記チップホルダーの移動に伴って前記チップを前記開口から出没させることが可能な出没式筆記具用の軸筒であって、
当該軸筒の前記開口の内周に遊嵌され、当該軸筒に対して当該軸筒の軸方向に移動可能な環状部材と、
前記チップホルダーと前記環状部材とを互いに相対移動可能に接続可能な弾性部材と、
前記環状部材の外周の少なくとも一部には、前記チップホルダーの前端側への移動に伴って前記軸筒の内面の一部に当接する当接面が形成されており、
前記環状部材の一部には、切欠きが形成されており、前記当接面において荷重を受ける時に当該環状部材の内径が縮径するようになっており、
前記軸筒の内面の一部には、前記チップホルダーの前端側への移動に伴って前記当接面が当接する案内面が形成されており、
前記当接面は、前記チップホルダーの前端側への移動に伴って、前記案内面から前記荷重を受けるようになっており、
前記切欠きは、前記環状部材の周方向に等間隔に複数が配置されており、
前記当接面は、周方向に見て前記複数の切欠きの周方向に隣接する2つの切欠きの中間位置の各々において、径方向外側に隆起するように設けられている
ことを特徴とする出没式筆記具用の軸筒。
【請求項20】
前記当接面は、前記環状部材の軸方向に延在するリブ状に形成されている
ことを特徴とする請求項19に記載の出没式筆記具用の軸筒。
【請求項21】
前端にチップが固定されたチップホルダーを軸方向に移動可能に収容可能であって、前端に開口を有し、前記チップホルダーの移動に伴って前記チップを前記開口から出没させることが可能な出没式筆記具用の軸筒であって、
当該軸筒の前記開口の内周に遊嵌され、当該軸筒に対して当該軸筒の軸方向に移動可能な環状部材と、
前記チップホルダーと前記環状部材とを互いに相対移動可能に接続可能な弾性部材と、
前記環状部材の外周の少なくとも一部には、前記チップホルダーの前端側への移動に伴って前記軸筒の内面の一部に当接する当接面が形成されており、
前記環状部材の一部には、切欠きが形成されており、前記当接面において荷重を受ける時に当該環状部材の内径が縮径するようになっており、
前記軸筒の内面の一部には、前記チップホルダーの前端側への移動に伴って前記当接面が当接する案内面が形成されており、
前記当接面は、前記チップホルダーの前端側への移動に伴って、前記案内面から前記荷重を受けるようになっており、
前記切欠きは、前記環状部材の周方向に等間隔に複数が配置されており、
前記環状部材の内周面には、周方向に見て前記複数の切欠きの周方向に隣接する2つの切欠きの中間位置の各々において、径方向内側に隆起する隆起部が設けられている
ことを特徴とする出没式筆記具用の軸筒。
【請求項22】
前記隆起部は、前記環状部材の軸方向に延在するリブ状に形成されている
ことを特徴とする請求項21に記載の出没式筆記具用の軸筒。
【請求項23】
前記環状部材の内周面には、周方向に見て前記複数の切欠きの周方向に隣接する2つの切欠きの中間位置の各々において、径方向内側に隆起する隆起部が設けられている
ことを特徴とする請求項21または22に記載の出没式筆記具。
【請求項24】
前記隆起部は、前記環状部材の軸方向に延在するリブ状に形成されている
ことを特徴とする請求項23に記載の出没式筆記具。
【請求項25】
前端にチップが固定されたチップホルダーを軸方向に移動可能に収容可能であって、前端に開口を有し、前記チップホルダーの移動に伴って前記チップを前記開口から出没させることが可能な出没式筆記具用の軸筒であって、
当該軸筒の前記開口の内周に遊嵌され、当該軸筒に対して当該軸筒の軸方向に移動可能な環状部材と、
前記チップホルダーと前記環状部材とを互いに相対移動可能に接続可能な弾性部材と、
前記環状部材の外周の少なくとも一部には、前記チップホルダーの前端側への移動に伴って前記軸筒の内面の一部に当接する当接面が形成されており、
前記環状部材の一部には、切欠きが形成されており、前記当接面において荷重を受ける時に当該環状部材の内径が縮径するようになっており、
前記軸筒の内面の一部には、前記チップホルダーの前端側への移動に伴って前記当接面が当接する案内面が形成されており、
前記当接面は、前記チップホルダーの前端側への移動に伴って、前記案内面から前記荷重を受けるようになっており、
前記切欠きは、前記環状部材の周方向に等間隔に複数が配置されており、
前記案内面は、周方向に見て前記複数の切欠きの周方向に隣接する2つの切欠きの中間位置の各々において、径方向内側に隆起するように設けられている
ことを特徴とする出没式筆記具用の軸筒。
【請求項26】
前記案内面は、前記環状部材の軸方向に延在するリブ状に形成されている
ことを特徴とする請求項25に記載の出没式筆記具用の軸筒。
【請求項27】
前記軸筒及び/または前記環状部材に設けられ、前記環状部材の後方側の移動限界を規定するストッパ要素
を更に備えたことを特徴とする請求項19乃至26のいずれかに記載の出没式筆記具用の軸筒。
【請求項28】
前記切欠きは、前記環状部材の周方向に等間隔に複数が配置されており、
前記複数の切欠きの各々は、前記環状部材の軸方向に延びるスリットである
ことを特徴とする請求項19乃至27のいずれかに記載の出没式筆記具用の軸筒。
【請求項29】
前記当接面は、前端に向かって先細状であり、
前記案内面も、前端に向かって先細状である
ことを特徴とする請求項19乃至28のいずれかに記載の出没式筆記具用の軸筒。
【請求項30】
前記当接面は、切頭円錐面を有している
ことを特徴とする請求項29に記載の出没式筆記具用の軸筒。
【請求項31】
前記弾性部材は、コイルバネである
ことを特徴とする請求項19乃至30のいずれかに記載の出没式筆記具用の軸筒。
【請求項32】
前記環状部材と前記弾性部材とは、互いに固定されており、
前記弾性部材は、前記チップホルダーの環状カラーに接続可能であり、
前記弾性部材は、前記チップホルダーの前記環状カラーから離間可能である
ことを特徴とする請求項19乃至31のいずれかに記載の出没式筆記具用の軸筒。
【請求項33】
前記当接面と前記案内面とは、常時当接している
ことを特徴とする請求項19乃至32のいずれかに記載の出没式筆記具用の軸筒。
【請求項34】
前記環状部材は、前記軸筒の前記開口から前方側に突出している
ことを特徴とする請求項19乃至33のいずれかに記載の出没式筆記具用の軸筒。
【請求項35】
前記チップの出没操作のための操作部、または、前記軸筒の後部に、軟質部材が設けられている
ことを特徴とする請求項19乃至34のいずれかに記載の出没式筆記具用の軸筒。
【請求項36】
前記軸筒に対して前後方向にスライド可能に設けられたノック部材
を更に備え、
前記チップは、前記ノック部材が前方に移動される度に、前記軸筒の前記開口から突出ないし没入を交互に繰り返すよう前後に移動されることが可能であり、
前記環状部材は、前記ノック部材が前方に移動される度に、前記軸筒に対して回転されるようになっている
ことを特徴とする請求項19乃至35のいずれかに記載の出没式筆記具用の軸筒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップホルダーの移動に伴って軸筒の開口からチップが出没可能な出没式筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、筆記先端部の振れ防止装置が開示されている。当該装置の構成は、筆記先端部の適宜位置に凹溝を設け、軸筒先端部の内径とほぼ等しい外径の弾性を有するOリングを前記凹溝に嵌着したものである。当該装置によれば、鉛筆タイプ及びノック式筆記具において、筆記時の筆記先端部が軸筒先端部の先端孔に当接しておこるガタツキ音を防止することができる。
【0003】
特許文献2にも、筆記先端部の振れ防止装置が開示されている。当該装置の構成は、軸筒の先端内に設けた係止段部に、筆記先端部外径より僅かに小内径の弾性リングを係合したものである。当該装置によれば、弾性リングが筆記先端部を係止するため、軸筒の先端内径と筆記先端部との間に隙間があっても、筆記時にガタつく事を防止することができる。
【0004】
特許文献3には、軸筒に対し前後方向に摺動して該軸筒の開口部から筆記体の筆記部を繰り出す筆記具が開示されている。筆記体の先端部外周に環状部材が配設されていて、筆記部が出没する軸筒先端の開口部周辺の内側面に、環状部材が当接する略球面状の内面が形成されている。環状部材は、筆記体に対してスプリングを介して固定されていて、前方に向けて付勢されている。筆記部が繰り出されると、スプリングの弾発力によって環状部材が軸筒先端の内側面に密着される。これにより、筆記時にガタつく事を防止することができる。
【0005】
本件出願人による特許文献4は、チップのガタつきを防止した出没式筆記具として、4タイプの構成を開示している。
【0006】
更に、本件出願人による特許文献5は、特許文献1~4の問題点を改善した出没式筆記具の構成を開示している(但し、特許文献5(及びそこに開示された内容)は、本願出願の時点では未公開である)。
【0007】
図13は、特許文献5の第1実施形態における出没式筆記具10の概略縦断面図であって、チップ14(筆記体)が突出していない状態を示す図である。図14は、当該実施形態の出没式筆記具10の先端部分の拡大縦断面図である。
【0008】
また、図15(a)は、本実施形態の出没式筆記具10の環状部材15の斜視図であり、図15(b)は、図15(a)の環状部材15の平面図であり、図15(c)は、図15(a)の環状部材15の側面図であり、図15(d)は、図15(a)の環状部材の底面図であり、図15(e)は、図15(c)のA-A線断面図であり、図15(f)は、図15(a)の環状部材の正面図(先端側から見た図)であり、図15(g)は、図15(a)の環状部材の背面図である。
【0009】
更に、図16は、本実施形態の出没式筆記具10において、チップ14の突出操作の過程で、チップ14が環状部材15と接触した状態を示す概略図であり、図17は、本実施形態の出没式筆記具10において、チップ14の突出操作の過程で、チップ14が最も突出した状態を示す概略図であり、図18は、本実施形態の出没式筆記具10において、チップ14の突出操作が終了した後の、チップ14が突出した状態を示す概略図である。
【0010】
図13乃至図18に示す第1実施形態の出没式筆記具10は、前端に開口を有する円筒形状の軸筒11を備えている。図13乃至図15に示すように、当該軸筒11は、本実施形態では、後方部11rと、前方部11mと、を有している。後方部11rと前方部11mとは、ネジ結合(螺合)によって取り外し可能に固定されている。もっとも、後方部11rと前方部11mとは、嵌め合い結合によって固定されていてもよいし、一体に形成されていてもよい。
【0011】
軸筒11の内部には、軸筒11の軸方向に移動可能なチップホルダー13が収容されている。チップホルダー13の前端に、筆記体であるチップ14が固定されている。チップ14は、チップホルダー13の移動に伴って、図16乃至図18に示すように、軸筒11の開口から出没可能となっている。
【0012】
チップホルダー13は、図14に示すように、基端側から先端側に向かって、基端部13a、第1カラー部13b及び第2カラー部13cを当該順序で有している。基端部13a及び第1カラー部13bは、本実施形態ではいずれも円筒形状の部位であり、第2カラー部13cは、本実施形態では切頭円錐形状の部位であり、それらの断面直径の相互関係は、基端部13a>第1カラー部13b>第2カラー部13cとなっている。
【0013】
本実施形態では、図14に示すように、軸筒11の開口の内周に、当該軸筒11に対して当該軸筒11の軸方向に移動可能な環状部材15が遊嵌されている。環状部材15の前方端は、軸筒11の前方端よりも前方側に位置している。環状部材15の後方側は、外径も内径も拡径されていて、チップ14(φ2.5とする)の周囲を非接触に覆っている。
【0014】
また、環状部材15は、コイルバネ16(弾性部材の一例)の前方端に固定されている。コイルバネ16は、チップホルダー13の第2カラー部13c及びチップ14を遊嵌状態で(隙間を空けて)取り囲んでおり、コイルバネ16の後方端がチップホルダー13の基端部13aによって常時押圧されている(固定はされていない)。これにより、コイルバネ16は、チップホルダー13と環状部材15とを互いに相対移動可能に接続している。そして、図16乃至図18に示すように、チップホルダー13の移動及びコイルバネ16の伸縮変形に伴って、環状部材15は、軸筒11に対して当該軸筒11の軸方向に移動可能となっている。
【0015】
環状部材15は、樹脂製(例えばポリアセタール、ポリプロピレン、ポリエチレン製)または金属製(例えば真鍮製)である。
【0016】
また、図15(a)乃至図15(g)に示すように、環状部材15の外周面は、前方側から、小外径円筒面15a(φ3.6mm、軸方向長さ1.6mm)と、先細状の当接面としての第1切頭円錐外面15b(軸方向長さ1.1mm)と、中外径円筒面15c(φ4.85mm、軸方向長さ1.5mm)と、先細状の当接面としての第2切頭円錐外面15d(軸方向長さ1.6mm)と、第1大外径円筒面15e(φ6.3mm、軸方向長さ0.8mm)と、先細状の当接面としての第3切頭円錐外面15f(軸方向長さ0.4mm)と、第2大外径円筒面15g(φ6.6mm、軸方向長さ3.3mm)と、が当該順序で設けられている。
【0017】
また、図15(e)に示すように、環状部材15の内周面は、前方側から、小内径円筒面15ia(φ3.0mm、軸方向長さ2mm)と、第1切頭円錐内面15ib(軸方向長さ0.5mm)と、中内径円筒面15ic(φ3.6mm、軸方向長さ3.9mm)と、第2切頭円錐内面15id(軸方向長さ0.4mm)と、四面払い部15ie(内接円φ5.28mm、軸方向長さ0.9mm)と、大内径円筒面15if(φ5.43mm、軸方向長さ2.1mm)と、第3切頭円錐内面15ig(軸方向長さ0.4mm)と、が当該順序で設けられている。図14に示すように、本実施形態では、四面払い部15ie上に、コイルバネ16の前方端が固定(嵌合固定)されている。
【0018】
また、本実施形態の環状部材15には、切欠きとして、3本のスリット15sが設けられている。図15(a)乃至図15(g)に示すように、3本のスリット15sは、環状部材15の周方向に等間隔に(120°おきに)配置されている。また、3本のスリット15sは、いずれも、幅0.8mmで、環状部材15の軸方向に前端から第2切頭円錐外面15dの略中央まで延びている(軸方向最大長さ5.5mm)。
【0019】
これにより、第1切頭円錐外面15b(当接面)において荷重を受ける時、環状部材15の内径は柔軟に縮径するようになっており、且つ、当該荷重が解除される時、環状部材15の内径は弾性的に復帰するようになっている。
【0020】
一方、図14図17又は図18に示すように、軸筒11の開口近傍の内周面は、前方側から、小内径円筒面11ia(φ3.7mm、軸方向長さ1.2mm)と、先細状の案内面としての第1切頭円錐内面11ib(軸方向長さ1.1.mm)と、中内径円筒面11ic(φ4.95mm、軸方向長さ1.3mm)と、先細状の案内面としての第2切頭円錐内面11id(軸方向長さ1.7mm)と、第1大内径円筒面11ie(φ6.5mm、軸方向長さ0.8mm)と、第3切頭円錐内面11if(軸方向長さ0.3mm)と、第2大内径円筒面11ig(φ6.7mm、軸方向長さ4.2mm)と、規制要素としての環状突起11ih(最小絞り径φ6.5mm)と、が当該順序で設けられている。
【0021】
これにより、第1切頭円錐外面15b(当接面)は、それぞれ、チップホルダー13の前端側への移動に伴って、第1切頭円錐内面11ib及び第2切頭円錐内面11id(案内面)から荷重を受けるようになっている。
【0022】
なお、本実施形態のコイルバネ16は、チップ14の没入操作(例えばチップ14の突出状態を維持するロック機構を解除するための筆記具側面に設けられた操作部のスライド操作)がなされた時に、チップホルダー13を自動的に没入させる機能を併せ持つ。すなわち、コイルバネ16は、いわゆるノックバネとして機能するようになっている。(操作荷重は50gf~300gf程度(0.49N~2.94N程度)である。例えば、非使用時(図14)からの操作荷重は68gf、フルストローク時(図17)の荷重は288gf、筆記時(図18)からの操作荷重は227gfである。また、バネ定数は0.23N/mmである。)
【0023】
以上のような構成の出没式筆記具10は、以下のように作用する。
【0024】
非使用時においては、出没式筆記具10のチップ14(筆記体)は、図13及び図14に示すような没入状態にある。この時、コイルバネ16の軸方向長さは17mmであり、環状部材15は縮径しておらず、環状部材15の小内径円筒面15iaはφ3.0(>チップ14の外径)のままである。
【0025】
そして、チップの突出操作(例えば筆記具側面に設けられた操作部のスライド操作)がなされると、出没式筆記具10のチップ14(筆記体)は、図16に示す状態に至る。
【0026】
図16の状態では、チップ14の突出操作によって、チップホルダー13の第2カラー部13cが前方側に移動されている。これにより、コイルバネ16を介して、環状部材15が軸筒11の内面の前方側に移動され更に当該内面の前方側に対して押圧され、第1切頭円錐外面15b(当接面)が、第1切頭円錐内面11ib(案内面)から荷重を受け、環状部材15の3本のスリット15sの存在によって環状部材15の内径が縮径している。
【0027】
この縮径時の内径が、チップ14の外径に対応するようになっている。すなわち、この縮径時の最小内径(例えば2.35mm~2.45mm程度)が、軸方向にはチップ14(例えばφ2.5mm)の滑らかな摺動を許容する一方で、径方向にはチップ14の効果的な振れ止め作用を奏する寸法となっている。また、チップ14の外径が前述のφ2.5mmより小さい(例えばφ2.4mm)か大きい(例えばφ2.6mm)場合でも、同一の(同一寸法の)環状部材15によって同様に効果的な振れ止め作用を得ることができる。すなわち、本実施形態の出没式筆記具10は、振れ止め作用について、異なるチップ外径を有する異なるタイプのレフィルについて互換性がある。これにより、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0028】
なお、本実施形態では、第2切頭円錐外面15dが第2切頭円錐内面11idと当接することによって、環状部材15の前方側への移動限界が規定されている。すなわち、本実施形態では、環状部材15の第2切頭円錐外面15dと軸筒11の第2切頭円錐内面11idとが、環状部材15の前方側への移動限界を規定するストッパ要素として機能するようになっている。もっとも、このようなストッパ要素は、省略可能である。
【0029】
続いて、チップの突出操作(例えば筆記具側面に設けられた操作部のスライド操作)が継続されると、出没式筆記具10のチップ14(筆記体)は、図17に示す状態に至る。
【0030】
そして、チップの突出操作が終了する(例えば筆記具側面に設けられた操作部のスライド操作が解除される)と、出没式筆記具10のチップ14(筆記体)は、図18に示す状態に至る。通常は、図18の突出状態においてチップホルダー13の位置がロックされ、その後にチップの没入操作がなされるまで、チップ14の突出状態が維持される。この時、コイルバネ16の軸方向長さは9.9mmであり(10.1mm圧縮)、当該コイルバネ16の復元力によって環状部材15は縮径状態に維持される。これにより、チップ14をガタつき(遊び)の無い態様で把持することができる。
【0031】
ここで、環状部材15の前方側への移動限界を規定するストッパ要素が機能する場合であっても、環状部材15の内周面の小内径円筒面15iaの寸法がチップ14の外径よりも十分に小さい場合(直径差が0.05mm程度以上ある場合:段落0110参照)には、チップホルダー13と環状部材15とがコイルバネ16によって互いに相対移動可能に接続されていることにより、環状部材15の内径の縮径の程度等について高精度の寸法管理をしなくても、チップ14をガタつき(遊び)の無い態様で効果的に把持することを保証できる。
【0032】
その後、チップの没入操作(例えば筆記具側面に設けられた操作部の再スライド操作)がなされると、例えば不図示のロック機構が解除され、出没式筆記具10のチップ14(筆記体)は再び図17の状態となり、更にコイルバネ16の作用(復元力)によって、図16の状態を経由して図14の没入状態に戻る。
【0033】
図16の状態から図14の没入状態に至る過程において、チップホルダー13が後方側に移動されるため、第1切頭円錐外面15b(当接面)が、第1切頭円錐内面11ib(案内面)から受けていた荷重が消失する。これに伴って、縮径していた環状部材15の内径が元の状態に戻る。
【0034】
なお、チップの出没操作の前述の過程において、環状部材15の当接面(第1切頭円錐外面15b)と軸筒11の案内面(第1切頭円錐内面11ib)とは、常時当接している。
【0035】
以上の通り、本実施形態の出没式筆記具10によれば、チップホルダー13の前端側への移動に伴って環状部材15の当接面(第1切頭円錐外面15b)が軸筒11の案内面(第1切頭円錐内面11ib)から荷重を受けることによって、環状部材15のスリット15sの存在によって環状部材15の内径が縮径する。これにより、軸筒11と環状部材15とが協働してチップ14をガタつき(遊び)の無い態様で把持することができる。更に、本実施形態の出没式筆記具10によれば、環状部材15の前方側への移動限界を規定するストッパ要素が機能しているが、環状部材15の内周面の小内径円筒面15iaの寸法がチップ14の外径よりも十分に小さいため(直径差が0.05mm程度以上ある:段落0110参照)、チップホルダー13と環状部材15とがコイルバネ16によって互いに相対移動可能に接続されていることにより、環状部材15の内径の縮径の程度等について高精度の寸法管理をしなくても、チップ14をガタつき(遊び)の無い態様で効果的に把持することを保証できる。
【0036】
また、本実施形態の出没式筆記具10によれば、切欠きとしての3本のスリット15sが環状部材15の周方向に等間隔に配置されており、各スリット15sが環状部材15の軸方向に延びているため、環状部材15の内径が周方向にバランス良く縮径することができる。
【0037】
また、環状部材15の当接面(第1切頭円錐外面15b)と軸筒11の案内面(第1切頭円錐内面11ib)とが、互いに対応する切頭円錐外面と切頭円錐内面であることにより、環状部材15の当接面は周方向にバランスよく荷重を受けることができ、結果的に環状部材15が周方向にバランス良く縮径することができる。このように、環状部材15の当接面(第1切頭円錐外面15b)と軸筒11の案内面(第1切頭円錐内面11ib)とは、互いに前端に向かって先細状であることが好ましい。先細状の当接面は、軸線周りに回転対称な凸曲面を有していて、先細状の案内面は、軸線周りに回転対称であって前記凸曲面の曲率よりも緩やかな曲率の凹曲面または凹切頭円錐面であってもよい。
【0038】
また、スリット15sの数、サイズ、形状等を適宜に変更することによって、環状部材15の弾性(縮径のしやすさ)の程度を調整することができる。また、環状部材15の材料及び/または肉厚を変更することによっても、環状部材15の弾性(縮径のしやすさ)の程度を調整することができる。
【0039】
また、本実施形態では、軸筒11の内周面に環状突起11ihが設けられており、環状部材15の後方側の移動限界が規定されている。これにより、環状部材15の後方側への過剰な移動(特には脱落)を効果的に防止することができる。
【0040】
また、本実施形態の出没式筆記具10によれば、環状部材15においてチップ14を把持する把持部(縮径時の最小内径部)は、当該環状部材15の当接面(第1切頭円錐外面15b)よりも前方に位置している(前記当接面の径方向内方には把持部がない)。これにより、チップ14をより前方側で把持することができ、より効果的にチップ14をガタつき(遊び)の無い態様で把持することができる。
【0041】
また、本実施形態の出没式筆記具10によれば、スリット15sの後方端は、コイルバネ16よりも前方に位置している。これにより、スリット15sの存在によって環状部材15が撓んだ状態においても、コイルバネ16と環状部材15との安定的な接続を維持することができる。
【0042】
また、本実施形態の出没式筆記具10によれば、環状部材15の当接面(第1切頭円錐外面15b)と軸筒11の案内面(第1切頭円錐内面11ib)とが、常時当接している。これにより、チップ14の出没操作の度に環状部材15の当接面と軸筒11の案内面とが当接と離間とを繰り返すということがないため、動作が安定し、ユーザの操作感も滑らかである(違和感がない)。
【0043】
また、本実施形態の出没式筆記具10によれば、環状部材15は、軸筒11の開口から前方側に突出している。これにより、チップ14をより長い軸方向範囲で把持することができるため、チップ14をガタつき(遊び)の無い態様でより効果的に把持することを保証できる。更に、出没式筆記具10に振れ止め作用を奏する部品(環状部材15)が搭載されていることを、ユーザに対して視覚的にアピールすることができる。更に、チップ14が突出した状態の出没式筆記具10の前端近傍の外観形状について、後方からペン先にかけて滑らかな形状でつなげることができ、美観を向上させる効果も奏することができる。
【0044】
また、本実施形態の出没式筆記具10によれば、環状部材15が軸筒11の開口から前方側に突出する量(長さ)は、環状部材15の軸方向の可動範囲よりも小さい。これにより、環状部材15が軸筒11の開口内に没入されるように押し込まれる場合でも、依然として環状部材15が軸方向の可動範囲内にあるため、環状部材15の不所望の脱落等が有効に防止され得る。
【0045】
また、本施形態の出没式筆記具10において、チップ14の出没操作のためのノック操作部、または、軸筒11の後部に、熱変色性筆記具用の軟質部材(擦過部材)が設けられることが好ましい。従来の構成を熱変色性筆記具に採用した場合、筆跡擦過時の振動によってチップ(またはチップホルダー)のガタつきが生じ、ノイズを発生させる虞があったが、本実施形態の構成ではそのような虞がない。従って、本実施形態の構成は、熱変色性筆記具に採用することも推奨される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0046】
【特許文献1】実開平5-85683
【特許文献2】実開平5-93884
【特許文献3】特開2013-220602
【特許文献4】特開2019-111657
【特許文献5】PCT/JP2021/046938(本願出願の時点で未公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0047】
特許文献1及び特許文献2に開示された技術では、Oリングが径方向に変形し得るため、ガタつきを防止する効果が不十分である。また、Oリングの表面に筆記部が食いついてしまうことがあり、繰り出した筆記部をスムーズに収納することができない場合がある。
【0048】
一方、特許文献3に開示された技術では、筆記時のガタツキを防止する効果を高めるためには、環状部材の内面と筆記部の外周面との間の寸法関係を適切に管理する必要がある。例えば、筆記部の外周面と軸筒の先端部内面との間の隙間寸法より筆記部の外周面と環状部材の内面との間の隙間寸法の方が大きければ、筆記時のガタツキを防止する効果を得られない。このため、高い寸法精度が要求され、生産性の点で問題がある。
【0049】
また、特許文献4の第1タイプの構成及び第4タイプの構成では、2種類のコイルバネが併用されているため、これらのコイルバネが組立時やレフィル交換時に引っ掛かり合って、作業の円滑性が損なわれる場合がある。更に、チップホルダーの出没動作に伴うコイルバネの収縮時に、これらのコイルバネが絡み合って作動不良を生じてしまう虞がある(特許文献5の段落0040等参照)。
【0050】
一方、特許文献4の第2タイプの構成及び第3タイプの構成では、樹脂バネ部の伸縮の程度(撓み量)を大きくすることが難しいため、設計の自由度が低い(特許文献5の段落0041等参照)。
【0051】
特許文献5の第1実施形態の構成によれば、前述の通り、本実施形態の出没式筆記具10によれば、チップホルダー13の前端側への移動に伴って環状部材15の当接面(第1切頭円錐外面15b)が軸筒11の案内面(第1切頭円錐内面11ib)から荷重を受けることによって、環状部材15のスリット15sの存在によって環状部材15の内径が縮径する。これにより、軸筒11と環状部材15とが協働してチップ14をガタつき(遊び)の無い態様で把持することができる。
【0052】
しかしながら、特許文献5の第1実施形態の構成においては、軸筒11の断面の真円度に歪みが生じている場合、環状部材15の当接面(第1切頭円錐外面15b)と軸筒11の案内面(第1切頭円錐内面11ib)との間の当接状態が所望の面接触状態とならず偏った局所的な線接触状態となり(図4(b)参照)、そのような接触状態を介して荷重を受ける環状部材15はチップの中心軸方向に精度良く(真円度を維持した状態で)縮径しない場合がある。このような場合には、チップ14の把持力が不十分となったり、アンバランスな把持力がチップ14を曲げるように作用する可能性さえある。
【0053】
また、図14に示すようなチップ14(筆記体)の没入状態においても、コイルバネ16が環状部材15を前方側に付勢している。このため、環状部材15の当接面が軸筒11の案内面から荷重を受けて、環状部材15の内径が(僅かではあるが)縮径した状態となっている。そして、このような状態が長時間継続すると(チップ14(筆記体)を突出させない期間が長いと)、コイルバネ16の継続的な作用によって縮径が所望値を超える程度にまで進行してしまう(「クリープ」と呼ばれる)(チップ14を突出させることが時々あれば、当該チップ14が環状部材15内を貫通することで過剰な縮径状態を元に戻すということが期待できる)。縮径の程度が所望値を超えてしまうと、その後にチップ14を突出させる動作を実施する際に、ユーザが不快な抵抗感を感じてしまう虞がある。この問題を考慮すると、コイルバネ16の付勢力をあまり大きく設計することは難しい。
【0054】
本発明は、以上のような知見に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、筆記時にチップのガタつきが防止されて安定した筆記感が得られる一方、作動不良の虞がより一層小さい出没式筆記具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0055】
本発明は、前端に開口を有する軸筒と、前記軸筒の内部に収容され、前記軸筒の軸方向に移動可能なチップホルダーと、前記チップホルダーの前端に固定され、前記チップホルダーの移動に伴って前記軸筒の前記開口から出没可能なチップと、前記軸筒の前記開口の内周に遊嵌され、当該軸筒に対して当該軸筒の軸方向に移動可能な環状部材と、前記チップホルダーと前記環状部材とを互いに相対移動可能に接続可能な弾性部材と、を備え、前記環状部材の外周の少なくとも一部には、前記チップホルダーの前端側への移動に伴って前記軸筒の内面の一部に当接する当接面が形成されており、前記環状部材の一部には、切欠きが形成されており、前記当接面において荷重を受ける時に当該環状部材の内径が縮径するようになっており、前記軸筒の内面の一部には、前記チップホルダーの前端側への移動に伴って前記当接面が当接する案内面が形成されており、前記当接面は、前記チップホルダーの前端側への移動に伴って、前記案内面から前記荷重を受けるようになっており、前記切欠きは、前記環状部材の周方向に等間隔に複数が配置されており、前記当接面は、周方向に見て前記複数の切欠きの周方向に隣接する2つの切欠きの中間位置の各々において、径方向外側に隆起するように設けられていることを特徴とする出没式筆記具である。
【0056】
本発明によれば、チップホルダーの前端側への移動に伴って環状部材の当接面が軸筒の案内面から荷重を受けることによって、環状部材の切欠きの存在によって環状部材の内径が縮径する。これにより、軸筒と環状部材とが協働してチップまたはチップホルダーをガタつき(遊び)の無い態様で把持することができる。
【0057】
また、本発明によれば、環状部材の当接面が、周方向に見て複数の切欠きの周方向に隣接する2つの切欠きの中間位置の各々において、径方向外側に隆起するように設けられているため、軸筒の断面の真円度に歪みが生じている場合であっても、環状部材がチップの中心軸方向に比較的精度良く(真円度を維持した状態で)縮径することができる(図3(b)参照)。このことにより、作動不良の虞がより一層小さい。
【0058】
好ましくは、前記当接面は、前記環状部材の軸方向に延在するリブ状に形成されている。このような環状部材の当接面は、よりバランス良く軸筒の案内面から荷重を受けることができる。
【0059】
本発明は、前端に開口を有する軸筒と、前記軸筒の内部に収容され、前記軸筒の軸方向に移動可能なチップホルダーと、前記チップホルダーの前端に固定され、前記チップホルダーの移動に伴って前記軸筒の前記開口から出没可能なチップと、前記軸筒の前記開口の内周に遊嵌され、当該軸筒に対して当該軸筒の軸方向に移動可能な環状部材と、前記チップホルダーと前記環状部材とを互いに相対移動可能に接続可能な弾性部材と、を備え、前記環状部材の外周の少なくとも一部には、前記チップホルダーの前端側への移動に伴って前記軸筒の内面の一部に当接する当接面が形成されており、前記環状部材の一部には、切欠きが形成されており、前記当接面において荷重を受ける時に当該環状部材の内径が縮径するようになっており、前記軸筒の内面の一部には、前記チップホルダーの前端側への移動に伴って前記当接面が当接する案内面が形成されており、前記当接面は、前記チップホルダーの前端側への移動に伴って、前記案内面から前記荷重を受けるようになっており、前記切欠きは、前記環状部材の周方向に等間隔に複数が配置されており、前記環状部材の内周面には、周方向に見て前記複数の切欠きの周方向に隣接する2つの切欠きの中間位置の各々において、径方向内側に隆起する隆起部が設けられていることを特徴とする出没式筆記具である。
【0060】
本発明によっても、チップホルダーの前端側への移動に伴って環状部材の当接面が軸筒の案内面から荷重を受けることによって、環状部材の切欠きの存在によって環状部材の内径が縮径する。これにより、軸筒と環状部材とが協働してチップまたはチップホルダーをガタつき(遊び)の無い態様で把持することができる。
【0061】
また、本発明によれば、環状部材の内周面に、周方向に見て前記複数の切欠きの周方向に隣接する2つの切欠きの中間位置の各々において、径方向内側に隆起する隆起部が設けられているため、軸筒の断面の真円度に歪みが生じている場合であっても、環状部材がチップの中心軸方向に比較的精度良く把持力を与えることができる(図7(b)参照)。このことにより、作動不良の虞がより一層小さい。
【0062】
好ましくは、前記隆起部は、前記環状部材の軸方向に延在するリブ状に形成されている。このような環状部材は、よりバランス良くチップの中心軸方向に把持力を与えることができる。
【0063】
また、前記当接面が、周方向に見て前記複数の切欠きの周方向に隣接する2つの切欠きの中間位置の各々において、径方向外側に隆起するように設けられているという特徴と、前記環状部材の内周面に、周方向に見て前記複数の切欠きの周方向に隣接する2つの切欠きの中間位置の各々において、径方向内側に隆起する隆起部が設けられているという特徴と、両方を同時に具備した態様を採用することも好ましい。
【0064】
この場合には、軸筒の断面の真円度に歪みが生じている場合であっても、環状部材がチップの中心軸方向に比較的精度良く(真円度を維持した状態で)縮径することができ、且つ、環状部材がチップの中心軸方向に比較的精度良く把持力を与えることができる(図9(b)参照)。このことにより、作動不良の虞がより一層小さい。
【0065】
本発明は、前端に開口を有する軸筒と、前記軸筒の内部に収容され、前記軸筒の軸方向に移動可能なチップホルダーと、前記チップホルダーの前端に固定され、前記チップホルダーの移動に伴って前記軸筒の前記開口から出没可能なチップと、前記軸筒の前記開口の内周に遊嵌され、当該軸筒に対して当該軸筒の軸方向に移動可能な環状部材と、前記チップホルダーと前記環状部材とを互いに相対移動可能に接続可能な弾性部材と、を備え、前記環状部材の外周の少なくとも一部には、前記チップホルダーの前端側への移動に伴って前記軸筒の内面の一部に当接する当接面が形成されており、前記環状部材の一部には、切欠きが形成されており、前記当接面において荷重を受ける時に当該環状部材の内径が縮径するようになっており、前記軸筒の内面の一部には、前記チップホルダーの前端側への移動に伴って前記当接面が当接する案内面が形成されており、前記当接面は、前記チップホルダーの前端側への移動に伴って、前記案内面から前記荷重を受けるようになっており、前記切欠きは、前記環状部材の周方向に等間隔に複数が配置されており、前記案内面は、周方向に見て前記複数の切欠きの周方向に隣接する2つの切欠きの中間位置の各々において、径方向内側に隆起するように設けられていることを特徴とする出没式筆記具である。
【0066】
本発明によっても、チップホルダーの前端側への移動に伴って環状部材の当接面が軸筒の案内面から荷重を受けることによって、環状部材の切欠きの存在によって環状部材の内径が縮径する。これにより、軸筒と環状部材とが協働してチップまたはチップホルダーをガタつき(遊び)の無い態様で把持することができる。
【0067】
また、本発明によれば、軸筒の案内面が、周方向に見て複数の切欠きの周方向に隣接する2つの切欠きの中間位置の各々において、径方向内側に隆起するように設けられているため、軸筒の断面の真円度に歪みが生じている場合であっても、環状部材がチップの中心軸方向に比較的精度良く(真円度を維持した状態で)縮径することができる(図11(b)及び図12(b)参照)。このことにより、作動不良の虞がより一層小さい。
【0068】
また、本発明によれば、弾性部材を「ノックバネ」として機能させることができるため、別途にノックバネ用のコイルバネを併用する必要がない。これにより、部品点数が低減され、組立作業が容易化され、作動不良の虞が顕著に低減され得る。
【0069】
好ましくは、環状部材においてチップまたはチップホルダーを把持する把持部は、当該環状部材の前記当接面よりも前方に位置している(前記当接面の径方向内方には把持部がない)。これによれば、チップまたはチップホルダーをより前方側で把持することができ、より効果的にチップまたはチップホルダーをガタつき(遊び)の無い態様で把持することができる。
【0070】
好ましくは、前記軸筒及び/または前記環状部材に、前記環状部材の後方側の移動限界を規定するストッパ要素が設けられる。この場合、環状部材の過剰な移動(特には脱落)を効果的に防止することができる。
【0071】
好ましくは、前記複数の切欠きの各々は、前記環状部材の軸方向に延びるスリットである。この場合、環状部材の内径が周方向にバランス良く縮径することができる。
【0072】
また、この場合、前記スリットの後方端は、前記弾性部材よりも前方に位置することが更に好ましい。これによれば、スリットの存在によって環状部材が撓んだ状態においても、弾性部材と環状部材との安定的な接続を維持することができる。
【0073】
前記当接面は、前端に向かって先細状であることが好ましく、前記案内面も、前端に向かって先細状であることが好ましい。前記当接面は、例えば切頭円錐面を有していることが好ましい。この場合、前記案内面は、対応する凹切頭円錐面であることが好ましい。あるいは、前記当接面は、軸線周りに回転対称な凸曲面を有していることが好ましい。この場合、前記案内面は、軸線周りに回転対称であって前記凸曲面の曲率よりも緩やかな曲率の凹曲面または凹切頭円錐面であることが好ましい。
【0074】
また、好ましくは、前記弾性部材は、コイルバネである。
【0075】
また、好ましくは、前記環状部材と前記弾性部材とは、互いに固定されており、前記弾性部材は、前記チップホルダーの環状カラーに接続可能であり、前記弾性部材は、前記チップホルダーの前記環状カラーから離間可能である。この場合、環状部材及び弾性部材は軸筒側のみに保持された態様となるため、従来のチップホルダーを有する既存の交換用レフィルを利用することができる。
【0076】
また、好ましくは、前記当接面と前記案内面とは、常時当接している。この場合、チップの出没操作の度に環状部材と軸筒内面とが当接と離間とを繰り返すということがないため、動作が安定し、ユーザの操作感も滑らかである(違和感がない)。
【0077】
また、好ましくは、前記環状部材は、前記軸筒の前記開口から前方側に突出している。この場合、チップまたはチップホルダーをより長い範囲で把持することができるため、チップまたはチップホルダーをガタつき(遊び)の無い態様でより効果的に把持することを保証できる。
【0078】
また、この場合、環状部材が軸筒の開口から前方側に突出する量(長さ)は、環状部材の軸方向の可動範囲よりも小さいことが更に好ましい。これによれば、環状部材が軸筒の開口内に没入されるように押し込まれる場合でも、依然として環状部材が軸方向の可動範囲内にあるため、環状部材の不所望の脱落等を防止することができる。
【0079】
また、好ましくは、前記チップの出没操作のための操作部、または、前記軸筒の後部に、軟質部材が設けられている。従来の構成を熱変色性筆記具に採用した場合、筆跡擦過時の振動によってチップまたはチップホルダーのガタつきが生じ、ノイズを発生させる虞があったが、本発明の構成ではそのような虞がない。従って、本発明の構成は、熱変色性筆記具に採用することも推奨される。
【0080】
また、好ましくは、前記軸筒に対して前後方向にスライド可能に設けられたノック部材を更に備え、前記チップは、前記ノック部材が前方に移動される度に、前記軸筒の前記開口から突出ないし没入を交互に繰り返すよう前後に移動されるようになっており、前記環状部材は、前記ノック部材が前方に移動される度に、前記軸筒に対して回転されるようになっている。これによれば、ノック部材の前方への移動(操作)に伴って環状部材が回転されるため、ユーザは環状部材の回転を視認可能である。これにより、ユーザに視覚的な面白さを提供することができる。
【0081】
また、本発明は、以上の出没式筆記具の軸筒のみをも対象とするものである。すなわち、本発明は、前端にチップが固定されたチップホルダーを軸方向に移動可能に収容可能であって、前端に開口を有し、前記チップホルダーの移動に伴って前記チップを前記開口から出没させることが可能な出没式筆記具用の軸筒であって、当該軸筒の前記開口の内周に遊嵌され、当該軸筒に対して当該軸筒の軸方向に移動可能な環状部材と、前記チップホルダーと前記環状部材とを互いに相対移動可能に接続可能な弾性部材と、前記環状部材の外周の少なくとも一部には、前記チップホルダーの前端側への移動に伴って前記軸筒の内面の一部に当接する当接面が形成されており、前記環状部材の一部には、切欠きが形成されており、前記当接面において荷重を受ける時に当該環状部材の内径が縮径するようになっており、前記軸筒の内面の一部には、前記チップホルダーの前端側への移動に伴って前記当接面が当接する案内面が形成されており、前記当接面は、前記チップホルダーの前端側への移動に伴って、前記案内面から前記荷重を受けるようになっており、前記切欠きは、前記環状部材の周方向に等間隔に複数が配置されており、前記当接面は、周方向に見て前記複数の切欠きの周方向に隣接する2つの切欠きの中間位置の各々において、径方向外側に隆起するように設けられていることを特徴とする出没式筆記具用の軸筒である。
【0082】
あるいは、本発明は、前端にチップが固定されたチップホルダーを軸方向に移動可能に収容可能であって、前端に開口を有し、前記チップホルダーの移動に伴って前記チップを前記開口から出没させることが可能な出没式筆記具用の軸筒であって、当該軸筒の前記開口の内周に遊嵌され、当該軸筒に対して当該軸筒の軸方向に移動可能な環状部材と、前記チップホルダーと前記環状部材とを互いに相対移動可能に接続可能な弾性部材と、前記環状部材の外周の少なくとも一部には、前記チップホルダーの前端側への移動に伴って前記軸筒の内面の一部に当接する当接面が形成されており、前記環状部材の一部には、切欠きが形成されており、前記当接面において荷重を受ける時に当該環状部材の内径が縮径するようになっており、前記軸筒の内面の一部には、前記チップホルダーの前端側への移動に伴って前記当接面が当接する案内面が形成されており、前記当接面は、前記チップホルダーの前端側への移動に伴って、前記案内面から前記荷重を受けるようになっており、前記切欠きは、前記環状部材の周方向に等間隔に複数が配置されており、前記環状部材の内周面には、周方向に見て前記複数の切欠きの周方向に隣接する2つの切欠きの中間位置の各々において、径方向内側に隆起する隆起部が設けられていることを特徴とする出没式筆記具用の軸筒である。
【0083】
あるいは、本発明は、以上の出没式筆記具の軸筒のみをも対象とするものである。すなわち、本発明は、前端にチップが固定されたチップホルダーを軸方向に移動可能に収容可能であって、前端に開口を有し、前記チップホルダーの移動に伴って前記チップを前記開口から出没させることが可能な出没式筆記具用の軸筒であって、当該軸筒の前記開口の内周に遊嵌され、当該軸筒に対して当該軸筒の軸方向に移動可能な環状部材と、前記チップホルダーと前記環状部材とを互いに相対移動可能に接続可能な弾性部材と、前記環状部材の外周の少なくとも一部には、前記チップホルダーの前端側への移動に伴って前記軸筒の内面の一部に当接する当接面が形成されており、前記環状部材の一部には、切欠きが形成されており、前記当接面において荷重を受ける時に当該環状部材の内径が縮径するようになっており、前記軸筒の内面の一部には、前記チップホルダーの前端側への移動に伴って前記当接面が当接する案内面が形成されており、前記当接面は、前記チップホルダーの前端側への移動に伴って、前記案内面から前記荷重を受けるようになっており、前記切欠きは、前記環状部材の周方向に等間隔に複数が配置されており、前記案内面は、周方向に見て前記複数の切欠きの周方向に隣接する2つの切欠きの中間位置の各々において、径方向内側に隆起するように設けられていることを特徴とする出没式筆記具用の軸筒である。
【発明の効果】
【0084】
本発明によれば、チップホルダーの前端側への移動に伴って環状部材の当接面が軸筒の案内面から荷重を受けることによって、環状部材の切欠きの存在によって環状部材の内径が縮径する。これにより、軸筒と環状部材とが協働してチップまたはチップホルダーをガタつき(遊び)の無い態様で把持することができる。
【0085】
また、本発明によれば、環状部材の当接面が、周方向に見て複数の切欠きの周方向に隣接する2つの切欠きの中間位置の各々において、径方向外側に隆起するように設けられているため、軸筒の断面の真円度に歪みが生じている場合であっても、環状部材がチップの中心軸方向に比較的精度良く(真円度を維持した状態で)縮径することができる(図3(b)参照)。あるいは、本発明によれば、環状部材の内周面に、周方向に見て前記複数の切欠きの周方向に隣接する2つの切欠きの中間位置の各々において、径方向内側に隆起する隆起部が設けられているため、軸筒の断面の真円度に歪みが生じている場合であっても、環状部材がチップの中心軸方向に比較的精度良く把持力を与えることができる(図7(b)参照)。あるいは、本発明によれば、軸筒の案内面が、周方向に見て複数の切欠きの周方向に隣接する2つの切欠きの中間位置の各々において、径方向内側に隆起するように設けられているため、軸筒の断面の真円度に歪みが生じている場合であっても、環状部材がチップの中心軸方向に比較的精度良く(真円度を維持した状態で)縮径することができる(図11(b)及び図12(b)参照)。これらの特徴の任意の1つまたは任意の組合せ(図14(b)参照)により、作動不良の虞がより一層小さい。
【0086】
また、本発明によれば、弾性部材を「ノックバネ」として機能させることができるため、別途にノックバネ用のコイルバネを併用する必要がない。これにより、部品点数が低減され、組立作業が容易化され、作動不良の虞が顕著に低減され得る。
【図面の簡単な説明】
【0087】
図1】本発明の第1実施形態における出没式筆記具の概略縦断面図であって、チップ(筆記体)が突出していない状態を示す図である。
図2図2は、図1の出没式筆記具の先端部分の拡大縦断面図である。
図3図3(a)は、図2のA-A線断面図であり、図3(b)は、軸筒の断面の真円度が低い場合の図3(a)に相当する図である。
図4図4(a)は、特許文献5の第1実施形態における図3(a)に相当する図(図14のA-A線断面図)であり、図4(b)は、軸筒の断面の真円度が低い場合の図4(a)に相当する図である。
図5図5(a)は、図1の出没式筆記具の環状部材の平面図である。図5(b)は、図5(a)の環状部材の側面図である。図5(c)は、図5(a)の環状部材の底面図である。図5(d)は、図5(b)のA-A線断面図である。図5(e)は、図5(a)の環状部材の正面図(先端側から見た図)である。図5(f)は、図5(a)の環状部材の背面図である。
図6図6は、図1の出没式筆記具において、チップの突出操作の過程で、チップが環状部材と接触した状態を示す概略図である。
図7図7(a)は、本発明の第2実施形態における出没式筆記具の図3(a)に相当する図であり、図7(b)は、軸筒の断面の真円度が低い場合の図3(a)に相当する図である。
図8図8(a)は、図7の出没式筆記具の環状部材の平面図である。図8(b)は、図8(a)の環状部材の側面図である。図8(c)は、図8(a)の環状部材の底面図である。図8(d)は、図8(b)のA-A線断面図である。図8(e)は、図8(a)の環状部材の正面図(先端側から見た図)である。図8(f)は、図8(a)の環状部材の背面図である。
図9図9(a)は、本発明の第3実施形態における出没式筆記具の図3(a)に相当する図であり、図9(b)は、軸筒の断面の真円度が低い場合の図9(a)に相当する図である。
図10図10(a)は、図9の出没式筆記具の環状部材の平面図である。図10(b)は、図10(a)の環状部材の側面図である。図10(c)は、図10(a)の環状部材の底面図である。図10(d)は、図10(b)のA-A線断面図である。図8(e)は、図10(a)の環状部材の正面図(先端側から見た図)である。図10(f)は、図10(a)の環状部材の背面図である。
図11図11(a)は、本発明の第4実施形態における出没式筆記具の図3(a)に相当する図であり、図11(b)は、軸筒の断面の真円度が低い場合の図11(a)に相当する図である。
図12図12(a)は、本発明の第5実施形態における出没式筆記具の図3(a)に相当する図であり、図12(b)は、軸筒の断面の真円度が低い場合の図12(a)に相当する図である。
図13】特許文献5の第1実施形態における出没式筆記具の概略縦断面図であって、チップ(筆記体)が突出していない状態を示す図である。
図14図14は、図13の出没式筆記具の先端部分の拡大縦断面図である。
図15図15(a)は、図1の出没式筆記具の環状部材の斜視図である。図15(b)は、図15(a)の環状部材の平面図である。図15(c)は、図15(a)の環状部材の側面図である。図15(d)は、図15(a)の環状部材の底面図である。図15(e)は、図15(c)のA-A線断面図である。図15(f)は、図15(a)の環状部材の正面図(先端側から見た図)である。図15(g)は、図15(a)の環状部材の背面図である。
図16図13の出没式筆記具において、チップの突出操作の過程で、チップが環状部材と接触した状態を示す概略図である。
図17図13の出没式筆記具において、チップの突出操作の過程で、チップが最も突出した状態を示す概略図である。
図18図13の出没式筆記具において、チップの突出操作が終了した後の、チップが突出した状態を示す概略図である。
図19】レフィルの縦断面図である。
図20】レフィルの後端部の斜視図である。
図21】レフィルの後端部の平面図である。
図22】例示的な軸筒の前軸の縦断面図である。
図23】例示的な軸筒の中間軸の縦断面図である。
図24】例示的な軸筒の後軸の縦断面図である。
図25】ノック部材の縦断面図である。
図26】出没回転部材の斜視図である。
図27】出没回転部材の正面図である。
図28】出没回転部材の底面図である。
図29図26のC-C線断面図である。
図30】回転カム機構の原理を説明する概略図である。
図31】出没回転部材とレフィル後端との当接状態を示す縦断面図である。
図32】出没回転部材とレフィル後端との当接状態を示す斜視図である。
図33図2の拡大図に対応する図であって、コイルバネの巻き方向を逆にした態様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0088】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0089】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態における出没式筆記具110の概略縦断面図であって、チップ114(筆記体)が突出していない状態を示す図である。図2は、本実施形態の出没式筆記具110の先端部分の拡大縦断面図である。図3(a)は、図2のA-A線断面図であり、図3(b)は、軸筒の断面の真円度が低い場合の図3(a)に相当する図である。比較のため、図4(a)は、特許文献5の第1実施形態における図3(a)に相当する図(図14のA-A線断面図)であり、図4(b)は、軸筒の断面の真円度が低い場合の図4(a)に相当する図である。
【0090】
また、図5(a)は、本実施形態の出没式筆記具110の環状部材115の平面図であり、図5(b)は、図5(a)の環状部材115の側面図であり、図5(c)は、図5(a)の環状部材の底面図であり、図5(d)は、図5(b)のA-A線断面図であり、図5(e)は、図5(a)の環状部材の正面図(先端側から見た図)であり、図5(f)は、図5(a)の環状部材の背面図である。
【0091】
更に、図6は、本実施形態の出没式筆記具110において、チップ114の突出操作の過程で、チップ114が環状部材115と接触した状態を示す概略図である。本実施形態の出没式筆記具110は、図6に示す状態を経由して、チップ114が最も突出した状態となり(図17と概ね同じ状態)、チップ114の突出操作が終了した後、チップ114が筆記用に突出した状態に位置決めされる(図18と概ね同じ状態)。
【0092】
図1乃至図6に示す第1実施形態の出没式筆記具110は、前端に開口を有する円筒形状の軸筒111を備えている。図1に示すように、当該軸筒111は、本実施形態では、後方部111rと、前方部111mと、を有している。後方部111rと前方部111mとは、ネジ結合(螺合)によって取り外し可能に固定されている。もっとも、後方部111rと前方部111mとは、嵌め合い結合によって固定されていてもよいし、一体に形成されていてもよい。
【0093】
軸筒111の内部には、軸筒111の軸方向に移動可能なチップホルダー113が収容されている。チップホルダー113の前端に、筆記体であるチップ114が固定されている。チップ114は、チップホルダー113の移動に伴って、図6に示すように、軸筒111の開口から出没可能となっている。
【0094】
チップホルダー113は、図2に示すように、基端側から先端側に向かって、基端部113a、第1カラー部113b及び第2カラー部113cを当該順序で有している。基端部113a及び第1カラー部113bは、本実施形態ではいずれも円筒形状の部位であり、第2カラー部113cは、本実施形態では切頭円錐形状の部位であり、それらの断面直径の相互関係は、基端部113a>第1カラー部113b>第2カラー部113cとなっている。
【0095】
本実施形態では、図1に示すように、軸筒111の開口の内周に、当該軸筒111に対して当該軸筒111の軸方向に移動可能な環状部材115が遊嵌されている。環状部材115の前方端は、軸筒111の前方端よりも前方側に位置している。環状部材115の後方側は、外径も内径も拡径されていて、チップ114(φ2.5とする)の周囲を非接触に覆っている。
【0096】
また、環状部材115は、コイルバネ116(弾性部材の一例)の前方端に固定されている。コイルバネ116は、チップホルダー113の第2カラー部113c及びチップ114を遊嵌状態で(隙間を空けて)取り囲んでおり、コイルバネ116の後方端がチップホルダー113の基端部113aによって常時押圧されている(固定はされていない)。これにより、コイルバネ116は、チップホルダー113と環状部材115とを互いに相対移動可能に接続している。そして、図6に示すように、チップホルダー113の移動及びコイルバネ116の伸縮変形に伴って、環状部材115は、軸筒111に対して当該軸筒111の軸方向に移動可能となっている。
【0097】
環状部材115は、樹脂製(例えばポリアセタール、ポリプロピレン、ポリエチレン製)または金属製(例えば真鍮製)である。
【0098】
また、図5(a)乃至図5(f)に示すように、環状部材115の外周面は、前方側から、小外径円筒面115a(φ3.6mm、軸方向長さ1.6mm)と、先細状の当接面としての第1切頭円錐外面115b(軸方向長さ1.1mm)と、中外径円筒面115c(φ4.85mm、軸方向長さ1.5mm)と、先細状の当接面としての第2切頭円錐外面115d(軸方向長さ1.6mm)と、第1大外径円筒面115e(φ6.3mm、軸方向長さ0.8mm)と、先細状の当接面としての第3切頭円錐外面115f(軸方向長さ0.4mm)と、第2大外径円筒面115g(φ6.6mm、軸方向長さ3.3mm)と、が当該順序で設けられている。
【0099】
また、図5(d)に示すように、環状部材115の内周面は、前方側から、小内径円筒面115ia(φ3.0mm、軸方向長さ2mm)と、第1切頭円錐内面115ib(軸方向長さ0.5mm)と、中内径円筒面115ic(φ3.6mm、軸方向長さ3.9mm)と、第2切頭円錐内面115id(軸方向長さ0.4mm)と、四面払い部115ie(内接円φ5.28mm、軸方向長さ0.9mm)と、大内径円筒面115if(φ5.43mm、軸方向長さ2.1mm)と、第3切頭円錐内面115ig(軸方向長さ0.4mm)と、が当該順序で設けられている。図2に示すように、本実施形態では、四面払い部115ie上に、コイルバネ116の前方端が固定(嵌合固定)されている。
【0100】
また、本実施形態の環状部材115には、切欠きとして、3本のスリット115sが設けられている。図5(a)乃至図5(f)に示すように、3本のスリット115sは、環状部材115の周方向に等間隔に(120°おきに)配置されている。また、3本のスリット115sは、いずれも、幅0.8mm(組付前の寸法)で、環状部材115の軸方向に前端から第2切頭円錐外面115dの略中央まで延びている(軸方向最大長さ5.5mm)。
【0101】
そして、本実施形態では、第1切頭円錐外面115b上であって周方向に隣接する(隣り合う)2本のスリット115sの周方向中間位置の各々において(すなわち、周方向に等間隔の3箇所において)、当接面としての外側隆起部115pが、径方向外側に隆起するように設けられている(隆起高さは、例えば0.15mm程度、周方向幅は、例えば0.7mm程度、軸方向長さは、例えば1.1mm程度、上面は切頭円錐面の一部状、である)。本実施形態では、当接面としての外側隆起部115pは、環状部材115の軸方向に延在するリブ状に形成されている。
【0102】
これにより、外側隆起部115p(当接面)において荷重を受ける時、環状部材115の内径は柔軟に縮径するようになっており、且つ、当該荷重が解除される時、環状部材115の内径は弾性的に復帰するようになっている。
【0103】
一方、図2及び図6に示すように、軸筒111の開口近傍の内周面は、前方側から、小内径円筒面111ia(φ3.7mm、軸方向長さ1.2mm)と、先細状の案内面としての第1切頭円錐内面111ib(軸方向長さ1.1mm)と、中内径円筒面111ic(φ4.95mm、軸方向長さ1.3mm)と、先細状の案内面としての第2切頭円錐内面111id(軸方向長さ1.7mm)と、第1大内径円筒面111ie(φ6.5mm、軸方向長さ0.8mm)と、第3切頭円錐内面111if(軸方向長さ0.3mm)と、第2大内径円筒面111ig(φ6.7mm、軸方向長さ4.2mm)と、規制要素としての環状突起111ih(最小絞り径φ6.5mm)と、が当該順序で設けられている。
【0104】
これにより、外側隆起部115p(当接面)は、それぞれ、チップホルダー113の前端側への移動に伴って、第1切頭円錐内面111ib(案内面)から荷重を受けるようになっている。
【0105】
なお、本実施形態のコイルバネ116は、チップ114の没入操作(例えばチップ114の突出状態を維持するロック機構を解除するための筆記具側面に設けられた操作部のスライド操作)がなされた時に、チップホルダー113を自動的に没入させる機能を併せ持つ。すなわち、コイルバネ116は、いわゆるノックバネとして機能するようになっている。(操作荷重は50gf~300gf程度(0.49N~2.94N程度)である。例えば、非使用時(図2)からの操作荷重は68gf、フルストローク時(図17参照)の荷重は288gf、筆記時(図18参照)からの操作荷重は227gfである。また、バネ定数は0.23N/mmである。)
【0106】
以上のような構成の出没式筆記具110は、以下のように作用する。
【0107】
非使用時においては、出没式筆記具110のチップ114(筆記体)は、図1に示すような没入状態にある。製造直後においては、コイルバネ116の軸方向長さは17mmであり(予め2mm程度圧縮された長さである)、環状部材115は縮径しておらず、環状部材115の小内径円筒面115iaはφ3.0(>チップ114の外径)のままである。一方、製造後に非使用状態のまま長時間が経過する等して前述の「クリープ」が生じている場合には、コイルバネ116の軸方向長さが17mmよりも長くなっていて環状部材115が既に縮径していて、環状部材115の小内径円筒面115iaはφ3.0よりも小さくなっている(チップ114の外径より大きい範囲を維持している場合もあり得るし、チップ114の外径以下になっている場合もあり得る)。
【0108】
そして、チップの突出操作(例えば筆記具側面に設けられた操作部のスライド操作)がなされると、出没式筆記具110のチップ114(筆記体)は、図6に示す状態に至る。
【0109】
図6の状態では、チップ114の突出操作によって、チップホルダー113の第2カラー部113cが前方側に移動されている。これにより、コイルバネ116を介して、環状部材115が軸筒111の内面の前方側に移動され更に当該内面の前方側に対して押圧され、外側隆起部115p(当接面)が、第1切頭円錐内面111ib(案内面)から荷重を受け、環状部材115の3本のスリット15sの存在によって環状部材115の内径が縮径している(前述の「クリープ」のためにチップ114の突出操作前において既に縮径している場合、チップ114の突出操作によって更に縮径の程度が増大される)。
【0110】
この縮径時の(図6の状態での)内径が、チップ114の外径に対応するように設計されている。すなわち、この縮径時の最小内径(例えば2.35mm~2.45mm程度)が、軸方向にはチップ114(例えばφ2.5mm)の滑らかな摺動を許容する一方で、径方向にはチップ114の効果的な振れ止め作用を奏する寸法となっている。また、チップ114の外径が前述のφ2.5mmより小さい(例えばφ2.4mm)か大きい(例えばφ2.6mm)場合でも、同一の(同一寸法の)環状部材115によって同様に効果的な振れ止め作用を得ることができる。すなわち、本実施形態の出没式筆記具110は、振れ止め作用について、異なるチップ外径を有する異なるタイプのレフィルについて互換性がある。これにより、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0111】
また、本実施形態によれば、環状部材115の外側隆起部115p(当接面)が、周方向に隣接する(隣り合う)2つのスリット115sの周方向中間位置の各々において、径方向外側に隆起するように設けられているため、軸筒111の断面の真円度に歪みが生じている場合であっても、環状部材115がチップの中心軸方向に比較的精度良く(真円度を維持した状態で)縮径することができる(図3(b)参照)。このことにより、作動不良の虞がより一層小さい。特許文献5に記載された実施形態では、軸筒の断面の真円度に歪みが生じている場合、環状部材がチップの中心軸方向に精度良く縮径しない場合があった(図4(b)参照)。
【0112】
本実施形態では、更に、外側隆起部115p(当接面)が、環状部材115の軸方向に延在するリブ状に形成されているため、よりバランス良く軸筒111の案内面から荷重を受けることができる。
【0113】
また、外側隆起部115pが当接面としてバランス良く機能することにより、コイルバネ116の付勢力を大きく設計する必要がない。これにより、前述のクリープの程度を抑制することができ、チップの突出操作の際にユーザが不快な抵抗感を感じてしまう虞も低減することができる。
【0114】
なお、本実施形態では、第2切頭円錐外面115dが第2切頭円錐内面111idと当接することによって、環状部材115の前方側への移動限界が規定されている。すなわち、本実施形態では、環状部材115の第2切頭円錐外面115dと軸筒111の第2切頭円錐内面111idとが、環状部材115の前方側への移動限界を規定するストッパ要素として機能するようになっている。もっとも、このようなストッパ要素は、省略可能である。
【0115】
続いて、チップの突出操作(例えば筆記具側面に設けられた操作部のスライド操作)が継続されると、チップ114が最も突出した状態(図17と概ね同じ状態)となり、チップの突出操作が終了する(例えば筆記具側面に設けられた操作部のスライド操作が解除される)と、チップ114が筆記用に突出した状態(図18と概ね同じ状態)に位置決めされる。通常は、この突出状態においてチップホルダー113の位置がロックされ、その後にチップの没入操作がなされるまで、チップ114の突出状態が維持される。この時、コイルバネ116の軸方向長さは9.9mmであり(図1の状態から10.1mm圧縮)、当該コイルバネ116の復元力によって環状部材115は縮径状態に維持される。これにより、チップ114をガタつき(遊び)の無い態様で把持することができる。
【0116】
ここで、環状部材115の前方側への移動限界を規定するストッパ要素が機能する場合であっても、環状部材115の内周面の小内径円筒面115iaの寸法がチップ114の外径よりも十分に小さい場合(直径差が0.05mm程度以上ある場合:段落0110)参照)には、チップホルダー113と環状部材115とがコイルバネ116によって互いに相対移動可能に接続されていることにより、環状部材115の内径の縮径の程度等について高精度の寸法管理をしなくても、チップ114をガタつき(遊び)の無い態様で効果的に把持することを保証できる。
【0117】
その後、チップの没入操作(例えば筆記具側面に設けられた操作部の再スライド操作)がなされると、例えば不図示のロック機構が解除され、出没式筆記具110のチップ114(筆記体)は再び最も突出した状態(図17と概ね同じ状態)となり、更にコイルバネ116の作用(復元力)によって、図6の状態を経由して図1の没入状態に戻る。
【0118】
図6の状態から図1の没入状態に至る過程において、チップホルダー113が後方側に移動されるため、外側隆起部115p(当接面)が、第1切頭円錐内面111ib(案内面)から受けていた荷重が消失する。これに伴って、縮径していた環状部材115の内径が元の状態に戻る(縮径していない状態か、あるいは、クリープによる縮径状態に戻る)。
【0119】
なお、チップの出没操作の前述の過程において、環状部材115の当接面(外側隆起部115p)と軸筒111の案内面(第1切頭円錐内面111ib)とは、常時当接している。
【0120】
以上の通り、本実施形態の出没式筆記具110によれば、チップホルダー113の前端側への移動に伴って環状部材115の当接面(外側隆起部115p)が軸筒111の案内面(第1切頭円錐内面111ib)から荷重を受けることによって、環状部材115のスリット115sの存在によって環状部材115の内径が縮径する。これにより、軸筒111と環状部材115とが協働してチップ114をガタつき(遊び)の無い態様で把持することができる。
【0121】
また、本実施形態の出没式筆記具110によれば、環状部材115の当接面が、周方向に見て3つのスリット115の周方向に隣接する2つずつのスリット115の各中間位置において、径方向外側に隆起する外側隆起部115pとして設けられているため、軸筒111の断面の真円度に歪みが生じている場合であっても、環状部材115がチップ114の中心軸方向に比較的精度良く(真円度を維持した状態で)縮径することができる(図3(b)参照)。このことにより、作動不良の虞がより一層小さい。
【0122】
更に、本実施形態の出没式筆記具110によれば、外側隆起部115p(当接面)が環状部材115の軸方向に延在するリブ状に形成されているため、よりバランス良く軸筒111の案内面(第1切頭円錐内面111ib)から荷重を受けることができる。
【0123】
その他、本実施形態の出没式筆記具110によれば、環状部材115の前方側への移動限界を規定するストッパ要素が機能しているが、環状部材115の内周面の小内径円筒面115iaの寸法がチップ114の外径よりも十分に小さいため(直径差が0.05mm程度以上ある:段落0110参照)、チップホルダー113と環状部材115とがコイルバネ116によって互いに相対移動可能に接続されていることにより、環状部材115の内径の縮径の程度等について高精度の寸法管理をしなくても、チップ114をガタつき(遊び)の無い態様で効果的に把持することを保証できる。
【0124】
また、本実施形態の出没式筆記具110によれば、切欠きとしての3本のスリット115sが環状部材115の周方向に等間隔に配置されており、各スリット115sが環状部材115の軸方向に延びているため、環状部材115の内径が周方向にバランス良く縮径することができる。
【0125】
また、環状部材115の当接面(外側隆起部115p)と軸筒111の案内面(第1切頭円錐内面111ib)とが、互いに対応する切頭円錐外面と切頭円錐内面であることにより、環状部材115の当接面は周方向にバランスよく荷重を受けることができ、結果的に環状部材115が周方向にバランス良く縮径することができる。このように、環状部材115の当接面(外側隆起部115p)と軸筒111の案内面(第1切頭円錐内面111ib)とは、互いに前端に向かって先細状であることが好ましい。先細状の当接面は、軸線周りに回転対称な凸曲面を有していて、先細状の案内面は、軸線周りに回転対称であって前記凸曲面の曲率よりも緩やかな曲率の凹曲面または凹切頭円錐面であってもよい。
【0126】
また、スリット115sの数、サイズ、形状等を適宜に変更することによって、環状部材115の弾性(縮径のしやすさ)の程度を調整することができる。また、環状部材115の材料及び/または肉厚を変更することによっても、環状部材115の弾性(縮径のしやすさ)の程度を調整することができる。
【0127】
また、本実施形態では、軸筒111の内周面に環状突起111ihが設けられており、環状部材115の後方側の移動限界が規定されている。これにより、環状部材115の後方側への過剰な移動(特には脱落)を効果的に防止することができる。
【0128】
また、本実施形態の出没式筆記具110によれば、環状部材115においてチップ114を把持する把持部(縮径時の最小内径部)は、当該環状部材115の当接面(外側隆起部115p)よりも前方に位置している(前記当接面の径方向内方には把持部がない)。これにより、チップ114をより前方側で把持することができ、より効果的にチップ114をガタつき(遊び)の無い態様で把持することができる。
【0129】
また、本実施形態の出没式筆記具110によれば、スリット115sの後方端は、コイルバネ116よりも前方に位置している。これにより、スリット115sの存在によって環状部材115が撓んだ状態においても、コイルバネ116と環状部材115との安定的な接続を維持することができる。
【0130】
また、本実施形態の出没式筆記具110によれば、環状部材115の当接面(外側隆起部115p)と軸筒111の案内面(第1切頭円錐内面111ib)とが、常時当接している。これにより、チップ114の出没操作の度に環状部材115の当接面と軸筒111の案内面とが当接と離間とを繰り返すということがないため、動作が安定し、ユーザの操作感も滑らかである(違和感がない)。
【0131】
また、本実施形態の出没式筆記具110によれば、環状部材115は、軸筒111の開口から前方側に突出している。これにより、チップ114をより長い軸方向範囲で把持することができるため、チップ114をガタつき(遊び)の無い態様でより効果的に把持することを保証できる。更に、出没式筆記具110に振れ止め作用を奏する部品(環状部材115)が搭載されていることを、ユーザに対して視覚的にアピールすることができる。更に、チップ114が突出した状態の出没式筆記具110の前端近傍の外観形状について、後方からペン先にかけて滑らかな形状でつなげることができ、美観を向上させる効果も奏することができる。
【0132】
また、本実施形態の出没式筆記具110によれば、環状部材115が軸筒111の開口から前方側に突出する量(長さ)は、環状部材115の軸方向の可動範囲よりも小さい。これにより、環状部材115が軸筒111の開口内に没入されるように押し込まれる場合でも、依然として環状部材115が軸方向の可動範囲内にあるため、環状部材115の不所望の脱落等が有効に防止され得る。
【0133】
また、本施形態の出没式筆記具110において、チップ114の出没操作のためのノック操作部、または、軸筒111の後部に、熱変色性筆記具用の軟質部材(擦過部材)が設けられることが好ましい。従来の構成を熱変色性筆記具に採用した場合、筆跡擦過時の振動によってチップ(またはチップホルダー)のガタつきが生じ、ノイズを発生させる虞があったが、本実施形態の構成ではそのような虞がない。従って、本実施形態の構成は、熱変色性筆記具に採用することも推奨される。
【0134】
(第2実施形態)
次に、図7(a)は、本発明の第2実施形態における出没式筆記具の図3(a)に相当する図であり、図7(b)は、軸筒の断面の真円度が低い場合の図3(a)に相当する図である。また、図8(a)は、図7の出没式筆記具の環状部材の平面図であり、図8(b)は、図8(a)の環状部材の側面図であり、図8(c)は、図8(a)の環状部材の底面図であり、図8(d)は、図8(b)のA-A線断面図であり、図8(e)は、図8(a)の環状部材の正面図(先端側から見た図)であり、図8(f)は、図8(a)の環状部材の背面図である。
【0135】
図8(a)乃至図8(f)に示すように、環状部材215の外周面は、前方側から、小外径円筒面215a(φ3.6mm、軸方向長さ1.6mm)と、先細状の当接面としての第1切頭円錐外面215b(軸方向長さ1.1mm)と、中外径円筒面215c(φ4.85mm、軸方向長さ1.5mm)と、先細状の当接面としての第2切頭円錐外面215d(軸方向長さ1.6mm)と、第1大外径円筒面215e(φ6.3mm、軸方向長さ0.8mm)と、先細状の当接面としての第3切頭円錐外面215f(軸方向長さ0.4mm)と、第2大外径円筒面215g(φ6.6mm、軸方向長さ3.3mm)と、が当該順序で設けられている。これらの要素の形状及びサイズは、第1実施形態の環状部材115と同様である。
【0136】
また、図8(d)に示すように、環状部材215の内周面は、前方側から、小内径円筒面215ia(φ3.0mm、軸方向長さ2mm)と、第1切頭円錐内面215ib(軸方向長さ0.5mm)と、中内径円筒面215ic(φ3.6mm、軸方向長さ3.9mm)と、第2切頭円錐内面215id(軸方向長さ0.4mm)と、四面払い部215ie(内接円φ5.28mm、軸方向長さ0.9mm)と、大内径円筒面215if(φ5.43mm、軸方向長さ2.1mm)と、第3切頭円錐内面215ig(軸方向長さ0.4mm)と、が当該順序で設けられている。これらの要素の形状及びサイズについても、第1実施形態の環状部材115と同様である。また、本実施形態でも、四面払い部215ie上に、コイルバネ116の前方端が固定(嵌合固定)されている(図2参照)。
【0137】
また、本実施形態の環状部材215には、切欠きとして、3本のスリット215sが設けられている。図8(a)乃至図8(f)に示すように、3本のスリット215sは、環状部材215の周方向に等間隔に(120°おきに)配置されている。また、3本のスリット215sは、いずれも、幅0.8mm(組付前の寸法)で、環状部材215の軸方向に前端から第2切頭円錐外面215dの略中央まで延びている(軸方向最大長さ5.5mm)。スリット215sの形状及びサイズについても、第1実施形態の環状部材115のスリット115sと同様である。
【0138】
そして、本実施形態では、環状部材215の前方側の内周面上、具体的には、小内径円筒面215iaの前方端から当該小内径円筒面215ia及び第1切頭円錐内面215ibの全体を経て中内径円筒面215icの前端部までの範囲(軸方向長さ3.0mmの範囲)であって、周方向に隣接する(隣り合う)2本のスリット215sの周方向中間位置の各々において(すなわち、周方向に等間隔の3箇所において)、内側隆起部215ipが、径方向内側に隆起するように設けられている(小内径円筒面215ia上においては、隆起高さは、例えば0.15mm程度、周方向幅は、例えば0.7mm程度、上面は凹円筒面の一部状、であり、第1切頭円錐内面215ibにおいては、隆起高さは、例えば0.15mm程度、周方向幅は、例えば0.7mm程度、上面は凹切頭円錐面の一部状、であり、中内径円筒面215icの前端部においては、第1切頭円錐内面215ibの後方端における内側隆起部215pに向けて立ち上がるスロープ状になっている)。また、本実施形態では、内側隆起部215ipは、環状部材215の軸方向に延在するリブ状に形成されている。
【0139】
本実施形態の出没式筆記具によっても、チップホルダー113の前端側への移動に伴って環状部材215の当接面(第1切頭円錐外面215b)が軸筒111の案内面(第1切頭円錐内面111ib)から荷重を受けることによって、環状部材215のスリット215sの存在によって環状部材215の内径が縮径する。これにより、軸筒111と環状部材215とが協働してチップ114をガタつき(遊び)の無い態様で把持することができる。
【0140】
また、本実施形態の出没式筆記具によれば、環状部材215の内周面に、周方向に見て3つのスリット215の周方向に隣接する2つずつのスリット215の各中間位置において、径方向内側に隆起する内側隆起部215ipが設けられているため、軸筒111の断面の真円度に歪みが生じている場合であっても、環状部材215がチップ114の中心軸方向に比較的精度良く把持力を与えることができる(図7(b)参照)。このことにより、作動不良の虞がより一層小さい。
【0141】
更に、本実施形態の出没式筆記具によれば、内側隆起部215ipが環状部材215の軸方向に延在するリブ状に形成されているため、よりバランス良くチップ114の中心軸方向に把持力を与えることができる。
【0142】
その他、第2実施形態の出没式筆記具によっても、第1実施形態の出没式筆記具110の作用効果を略同様に得ることができる。
【0143】
(第3実施形態)
次に、図9(a)は、本発明の第3実施形態における出没式筆記具の図3(a)に相当する図であり、図9(b)は、軸筒の断面の真円度が低い場合の図8(a)に相当する図である。また、図10(a)は、図9の出没式筆記具の環状部材の平面図であり、図10(b)は、図10(a)の環状部材の側面図であり、図10(c)は、図10(a)の環状部材の底面図であり、図10(d)は、図10(b)のA-A線断面図であり、図10(e)は、図10(a)の環状部材の正面図(先端側から見た図)であり、図10(f)は、図10(a)の環状部材の背面図である。第3実施形態の出没式筆記具は、第1実施形態の出没式筆記具110の外側隆起部115pの特徴と、第2実施形態の出没式筆記具の内側隆起部215ipの特徴と、を併せ持つものである。
【0144】
図10(a)乃至図10(f)に示すように、環状部材315の外周面は、前方側から、小外径円筒面315a(φ3.6mm、軸方向長さ1.6mm)と、先細状の当接面としての第1切頭円錐外面315b(軸方向長さ1.1mm)と、中外径円筒面315c(φ4.85mm、軸方向長さ1.5mm)と、先細状の当接面としての第2切頭円錐外面315d(軸方向長さ1.6mm)と、第1大外径円筒面315e(φ6.3mm、軸方向長さ0.8mm)と、先細状の当接面としての第3切頭円錐外面315f(軸方向長さ0.4mm)と、第2大外径円筒面315g(φ6.6mm、軸方向長さ3.3mm)と、が当該順序で設けられている。これらの要素の形状及びサイズは、第1実施形態の環状部材115及び第2実施形態の環状部材215と同様である。
【0145】
また、図10(d)に示すように、環状部材315の内周面は、前方側から、小内径円筒面315ia(φ3mm、軸方向長さ2mm)と、第1切頭円錐内面315ib(軸方向長さ0.5mm)と、中内径円筒面315ic(φ3.6mm、軸方向長さ3.9mm)と、第2切頭円錐内面315id(軸方向長さ0.4mm)と、四面払い部315ie(内接円φ5.28mm、軸方向長さ0.9mm)と、大内径円筒面315if(φ5.43mm、軸方向長さ2.1mm)と、第3切頭円錐内面315ig(軸方向長さ0.4mm)と、が当該順序で設けられている。これらの要素の形状及びサイズについても、第1実施形態の環状部材115及び第2実施形態の環状部材215と同様である。また、本実施形態でも、四面払い部315ie上に、コイルバネ116の前方端が固定(嵌合固定)されている(図2参照)。
【0146】
また、本実施形態の環状部材315には、切欠きとして、3本のスリット315sが設けられている。図10(a)乃至図10(f)に示すように、3本のスリット315sは、環状部材315の周方向に等間隔に(120°おきに)配置されている。また、3本のスリット315sは、いずれも、幅0.8mm(組付前の寸法)で、環状部材315の軸方向に前端から第2切頭円錐外面315dの略中央まで延びている(軸方向最大長さ5.5mm)。スリット315sの形状及びサイズについても、第1実施形態の環状部材115のスリット115s及び第2実施形態の環状部材215のスリット215sと同様である。
【0147】
そして、本実施形態では、第1切頭円錐外面315b上であって周方向に隣接する(隣り合う)2本のスリット315sの周方向中間位置の各々において(すなわち、周方向に等間隔の3箇所において)、当接面としての外側隆起部315pが、径方向外側に隆起するように設けられている(隆起高さは、例えば0.15mm程度、周方向幅は、例えば0.7mm程度、軸方向長さは、例えば1.1mm程度、上面は切頭円錐面の一部状、である)。本実施形態では、当接面としての外側隆起部315pは、環状部材315の軸方向に延在するリブ状に形成されている。
【0148】
更に、本実施形態では、環状部材315の前方側の内周面上、具体的には、小内径円筒面315iaの前方端から当該小内径円筒面315ia及び第1切頭円錐内面315ibの全体を経て中内径円筒面315icの前端部までの範囲(軸方向長さ3.0mmの範囲)であって、周方向に隣接する(隣り合う)2本のスリット315sの周方向中間位置の各々において(すなわち、周方向に等間隔の3箇所において)、内側隆起部315ipが、径方向内側に隆起するように設けられている(小内径円筒面315ia上においては、隆起高さは、例えば0.15mm程度、周方向幅は、例えば0.7mm程度、上面は凹円筒面の一部状、であり、第1切頭円錐内面315ibにおいては、隆起高さは、例えば0.15mm程度、周方向幅は、例えば0.7mm程度、上面は凹切頭円錐面の一部状、であり、中内径円筒面315icの前端部においては、第1切頭円錐内面315ibの後方端における内側隆起部315pに向けて立ち上がるスロープ状になっている)。また、本実施形態では、内側隆起部315ipは、環状部材315の軸方向に延在するリブ状に形成されている。
【0149】
本実施形態の出没式筆記具によっても、チップホルダー113の前端側への移動に伴って環状部材315の当接面(外側隆起部315p)が軸筒111の案内面(第1切頭円錐内面111ib)から荷重を受けることによって、環状部材315のスリット315sの存在によって環状部材315の内径が縮径する。これにより、軸筒111と環状部材315とが協働してチップ114をガタつき(遊び)の無い態様で把持することができる。
【0150】
また、本実施形態の出没式筆記具によれば、環状部材315の当接面が、周方向に見て3つのスリット315の周方向に隣接する2つずつのスリット315の各中間位置において、径方向外側に隆起する外側隆起部315pとして設けられているため、軸筒111の断面の真円度に歪みが生じている場合であっても、環状部材315がチップ114の中心軸方向に比較的精度良く(真円度を維持した状態で)縮径することができる(図9(b)参照)。このことにより、作動不良の虞がより一層小さい。
【0151】
更に、本実施形態の出没式筆記具によれば、外側隆起部315p(当接面)が環状部材315の軸方向に延在するリブ状に形成されているため、よりバランス良く軸筒111の案内面(第1切頭円錐内面111ib)から荷重を受けることができる。
【0152】
また、本実施形態の出没式筆記具によれば、環状部材315の内周面に、周方向に見て3つのスリット315の周方向に隣接する2つずつのスリット315の各中間位置において、径方向内側に隆起する内側隆起部315ipが設けられているため、軸筒111の断面の真円度に歪みが生じている場合であっても、環状部材315がチップ114の中心軸方向に比較的精度良く把持力を与えることができる(図9(b)参照)。このことによっても、作動不良の虞がより一層小さい。
【0153】
更に、本実施形態の出没式筆記具によれば、内側隆起部315ipが環状部材315の軸方向に延在するリブ状に形成されているため、よりバランス良くチップ114の中心軸方向に把持力を与えることができる。
【0154】
その他、第3実施形態の出没式筆記具によっても、第1実施形態の出没式筆記具110の作用効果を略同様に得ることができる。
【0155】
(第4実施形態)
次に、図11(a)は、本発明の第4実施形態における出没式筆記具の図3(a)に相当する図であり、図11(b)は、軸筒の断面の真円度が低い場合の図11(a)に相当する図である。第4実施形態の出没式筆記具は、第1実施形態の出没式筆記具110における外側隆起部115pの特徴を、軸筒の方に持たせたものである。
【0156】
本実施形態では、環状部材115の代わりに、特許文献5の第1実施形態と同様の環状部材15が用いられる(図15等参照)。
【0157】
一方で、本実施形態の軸筒411は、基本構成としては、図2及び図6に示す軸筒111と同様であって、軸筒411の開口近傍の内周面は、前方側から、小内径円筒面111ia(φ3.7mm、軸方向長さ1.2mm)と、先細状の案内面としての第1切頭円錐内面111ib(軸方向長さ1.1mm)と、中内径円筒面111ic(φ4.95mm、軸方向長さ1.3mm)と、先細状の案内面としての第2切頭円錐内面111id(軸方向長さ1.7mm)と、第1大内径円筒面111ie(φ6.5mm、軸方向長さ0.8mm)と、第3切頭円錐内面111if(軸方向長さ0.3mm)と、第2大内径円筒面111ig(φ6.7mm、軸方向長さ4.2mm)と、規制要素としての環状突起111ih(最小絞り径φ6.5mm)と、が当該順序で設けられている。
【0158】
そして、本実施形態では、第2切頭円錐内面111id上であって、周方向に隣接する(隣り合う)2本のスリット115sの周方向中間位置の各々において(すなわち、周方向に等間隔の3箇所において)、案内面としての内側隆起部411pが、径方向内側に隆起するように設けられている(隆起高さは、例えば0.15mm程度、周方向幅は、例えば0.7mm程度、軸方向長さは、例えば0.7mm程度、上面(内面)は凹切頭円錐面の一部状、である)。本実施形態では、案内面としての内側隆起部411pは、軸筒411の軸方向(=環状部材15の軸方向)に延在するリブ状に形成されている。
【0159】
本実施形態の出没式筆記具によっても、チップホルダー113の前端側への移動に伴って環状部材15の当接面(第1切頭円錐外面15b)が軸筒411の案内面(内側隆起部411p)から荷重を受けることによって、環状部材15のスリット15sの存在によって環状部材15の内径が縮径する。これにより、軸筒411と環状部材15とが協働してチップ114をガタつき(遊び)の無い態様で把持することができる。
【0160】
また、本実施形態の出没式筆記具によれば、軸筒411の当接面が、周方向に見て3つのスリット15の周方向に隣接する2つずつのスリット15の各中間位置において、径方向内側に隆起する内側隆起部411pとして設けられているため、軸筒411の断面の真円度に歪みが生じている場合であっても、環状部材15がチップ114の中心軸方向に比較的精度良く(真円度を維持した状態で)縮径することができる(図11(b)参照)。このことにより、作動不良の虞がより一層小さい。
【0161】
更に、本実施形態の出没式筆記具によれば、内側隆起部411pが環状部材15の軸方向に延在するリブ状に形成されているため、よりバランス良く環状部材15に荷重を与えて縮径させることができる。
【0162】
(第5実施形態)
次に、図12(a)は、本発明の第5実施形態における出没式筆記具の図3(a)に相当する図であり、図12(b)は、軸筒の断面の真円度が低い場合の図12(a)に相当する図である。第5実施形態の出没式筆記具は、第4実施形態の出没式筆記具における環状部材15を第2実施形態の環状部材215に置換したものである。また、第5実施形態の出没式筆記具は、第3実施形態の出没式筆記具における外側隆起部315pの特徴を、軸筒の方に持たせたものでもある。
【0163】
本実施形態の出没式筆記具によっても、チップホルダー113の前端側への移動に伴って環状部材215の当接面(第1切頭円錐外面215b)が軸筒411の案内面(内側隆起部411p)から荷重を受けることによって、環状部材215のスリット215sの存在によって環状部材215の内径が縮径する。これにより、軸筒411と環状部材215とが協働してチップ114をガタつき(遊び)の無い態様で把持することができる。
【0164】
また、本実施形態の出没式筆記具によれば、軸筒411の当接面が、周方向に見て3つのスリット215の周方向に隣接する2つずつのスリット215の各中間位置において、径方向内側に隆起する内側隆起部411pとして設けられているため、軸筒411の断面の真円度に歪みが生じている場合であっても、環状部材215がチップ114の中心軸方向に比較的精度良く(真円度を維持した状態で)縮径することができる(図12(b)参照)。このことにより、作動不良の虞がより一層小さい。
【0165】
更に、本実施形態の出没式筆記具によれば、内側隆起部411pが環状部材215の軸方向に延在するリブ状に形成されているため、よりバランス良く環状部材215に荷重を与えて縮径させることができる。
【0166】
また、本実施形態の出没式筆記具によれば、環状部材215の内周面に、周方向に見て3つのスリット215の周方向に隣接する2つずつのスリット215の各中間位置において、径方向内側に隆起する内側隆起部215ipが設けられているため、軸筒411の断面の真円度に歪みが生じている場合であっても、環状部材215がチップ114の中心軸方向に比較的精度良く把持力を与えることができる(図12(b)参照)。このことによっても、作動不良の虞がより一層小さい。
【0167】
更に、本実施形態の出没式筆記具によれば、内側隆起部215ipが環状部材215の軸方向に延在するリブ状に形成されているため、よりバランス良くチップ114の中心軸方向に把持力を与えることができる。
【0168】
(レフィルについての補足)
以上の各実施形態の出没式筆記具110は、軸筒111、411と、当該軸筒111、411内に収容されるレフィル(筆記体)と、当該レフィルのチップ114を軸筒111、411の開口より出没自在にさせる出没機構と、を備えた筆記具である。
【0169】
レフィルの一例について、図19乃至図21を用いて補足説明する。図19を参照して、レフィル6は、例えば、ペン先(チップ)61と、当該ペン先61が前端開口部に圧入固着されたインキ収容管62と、当該インキ収容管62内に充填された熱変色性インキと、当該熱変色性インキの後端側に隣接して充填され当該熱変色性インキの消費に伴って前進する追従体(例えば高粘度流体)と、インキ収容管62の後端開口部に取り付けられた尾栓63と、からなる。尾栓63には、後端に向けて開口する空気孔63aが設けられている。空気孔63aは、インキ収容管62の内部と外部とを通気可能としている。
【0170】
ペン先61は、例えば、前端に回転可能にボールを抱持した金属製のボールペンチップのみからなる構成、または、そのようなボールペンチップと当該ボールペンチップの後部外面を保持した合成樹脂製のペン先ホルダーとの組合せからなる構成、のいずれかである。ペン先61の内部には、前端のボールを前方に押圧するスプリングが収容されている。当該スプリングは、例えば、圧縮コイルスプリングの前端部にロッド部を備えた構成となっており、当該ロッド部の前端がボールの後面と接触している。非筆記時には、当該スプリングの前方付勢により、ボールはボールペンチップ前端の内向きの前端縁部内面に密接されている。これにより、ペン先61の前端からのインキの漏出及びインキの蒸発が防止されている。
【0171】
(軸筒111、411の後端部についての補足)
本実施形態の軸筒111、411は、例えば、先細円筒状の前軸3(図22参照)と、当該前軸3の後端部に連結される円筒状の中間軸4(図23参照)と、当該中間軸4の後端部に連結される円筒状の後軸5(図24参照)と、からなる。
【0172】
例えば、図24に示すように、後軸5の後端部に、取付孔52が前後方向に貫設され得て、当該取付孔52に、弾性材料からなる摩擦部53が圧入嵌合され得る。これにより、後軸5の後端部の外面に、摩擦部53が固定され得る。また、後軸5の内面には、内向突起54が一体に形成され得る。
【0173】
摩擦部53を構成する弾性材料は、例えば、弾性を有する合成樹脂(ゴム、エラストマー)が好ましく、例えば、シリコーン樹脂、SBS樹脂(スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体)、SEBS樹脂(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体)、フッ素系樹脂、クロロプレン樹脂、ニトリル樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)又は2種以上のゴム弾性材料の混合物、及び、ゴム弾性材料と合成樹脂との混合物等が挙げられる。
【0174】
摩擦部53を構成する弾性を有する合成樹脂は、高摩耗性の弾性材料(例えば、消しゴム等)ではなく、摩擦時に摩耗カス(消しカス)が殆ど生じない低摩耗性の弾性材料からなることが好ましい。また、摩擦部53は、様々な態様で軸筒111、411の後端部外面に設けられ得る。例えば、軸筒111、411の後端部の外面もしくは後軸5の後端部の外面に弾性材料よりなる摩擦部53を圧入、係合、螺合、嵌合、接着、2色成形等によって設ける態様の他、軸筒111、411の全体もしくは後軸5の全体を弾性材料によって一体に形成する態様でもよい。
【0175】
(ノック部材8についての補足)
図25を参照して、ノック部材8には、前後方向に延びるクリップ83が固定され得る。クリップ83の裏面には、玉部が突設され得る。ノック部材8は、例えば、クリップ83の後端部が固定される基部81と、当該基部81と一体に連設され且つ当該基部81より前方に延びる円筒状の軸部82と、からなる。
【0176】
ノック部材8は、例えば合成樹脂(例えば、ポリカーボネート樹脂)の成形体により得られる。クリップ83は、例えば合成樹脂(例えば、ポリカーボネート樹脂)の成形体又は金属材料(例えばステンレス鋼)から得られる。ノック部材8とクリップ83は合成樹脂により一体に形成されてもよい。
【0177】
図25に示すように、軸部82の前端には、出没回転部材7の突条71の後端(図26乃至図29参照)と係合するカム歯82aが一体に形成され得る。
【0178】
ノック部材8の組付けについては、ノック部材8の基部81を、中間軸4の第1の長孔41の後端(開放部)より、当該第1の長孔41内へと挿入すると共に、ノック部材8の軸部82を中間軸4内に挿入する。その後、中間軸4の第1の長孔41と後軸5の第2の長孔51とが径方向に連通するように(径方向に重なるように)、後軸5の内面を中間軸4の縮径部の外面に嵌合させながら、ノック部材8の基部81を、後軸5の第2の長孔51の前端(開放部)より、当該第2の長孔51内へと挿入する。これにより、中間軸4と後軸5とが連結される(中間軸4の外向突起44と後軸5の内向突起54とが乗り越え係合される)と共に、第1の長孔41と第2の長孔51とによって前後方向に延びるスライド孔21が形成され、当該スライド孔21から径方向外方にノック部材8が突出された状態となる。ノック部材8は、スライド孔21に沿って、前後方向にスライド可能(前後方向に摺動可能)となっている。
【0179】
後端に摩擦部53が固定された後軸5が、中間軸4の後端部に連結されることによって、摩擦部53は軸筒111、411の後端に常時固定された状態となる。また、前軸3と中間軸4とが螺合によって着脱自在に連結されているため、レフィル6は随時に交換可能である。
【0180】
(出没機構についての補足)
本実施形態の出没機構は、回転カム機構を用いたサイドスライド式出没機構であり、前述のノック部材8と、ノック部材8が前方に移動される度に軸筒111、411の開口からペン先61を突出または没入させるよう前後に移動すると共にレフィル6(従ってペン先61)を回転させる出没回転部材7と、軸筒111、411内に設けられノック部材8の位置に応じて出没回転部材7と係合または係合解除可能な前述のカム部43と、軸筒111、411内に設けられ且つレフィル6を後方に付勢するノックバネ12(例えば圧縮コイルスプリング)と、からなる。
【0181】
本実施の形態の出没機構は、ペン先突出操作及びペン先没入操作のいずれもがノック部材8を前方に押圧操作(前方にスライド操作)するダブルノック式である。
【0182】
(熱変色性インキについての補足)
本実施形態において、熱変色性インキは、可逆熱変色性インキであることが好ましい。可逆熱変色性インキは、発色状態から加熱により消色する加熱消色型、発色状態または消色状態を互変的に特定温度域で記憶保持する色彩記憶保持型、または、消色状態から加熱により発色し、発色状態からの冷却により消色状態に復する加熱発色型等、種々のタイプを単独または併用して構成することができる。
【0183】
可逆熱変色性インキに含有される色材としては、例えば、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、及び、(ハ)前記両者が化学的に結びつく反応(呈色反応)の生起温度を決める反応媒体、の必須三成分を少なくとも含む可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル中に内包させた可逆熱変色性顔料が好適に用いられる。
【0184】
(レフィル6の回転についての補足)
前述のように、本実施形態では、ノック部材8が前方に移動される度に、軸筒111、411の開口からペン先61を突出または没入させるよう前後に移動すると共に、レフィル6(従ってペン先61)が回転される。このようにペン先61が回転する筆記具は、ペン先61の摩耗を均等化することができるため、市場において人気がある。
【0185】
図30は、回転カム機構の原理を説明する概略図である。図30を参照して、ペン先没入状態(図30(a)参照)からノック部材8が弾発体(不図示)による後方付勢に抗して前方に押圧操作(スライド操作)されると、ノック部材8の軸部82の前端のカム歯82aを介して、当該カム歯82aに係合していた出没回転部材7の突条71が前方に押圧される。出没回転部材7の突条71は、カム溝43bに沿って、前方に移動されていく。
【0186】
出没回転部材7の突条71が前方に移動される際、当該出没回転部材7は、当接部73と尾栓63の突片63bとの当接関係を介して、レフィル6を前方に押圧する。そして、ペン先61を軸筒111、411の開口より外部に突出させる。
【0187】
ノック部材8のノック操作の最深位置において、突条71の後端は、カム部43のカム溝43bを抜け出て、ノック部材8のカム歯82aの谷部に落ち込むように移動し、これに伴って出没回転部材7は僅かに周方向に回転する(図30(b)参照)。
【0188】
引き続いて、弾発体による後方付勢によってノック部材8が元の位置に戻ると、突条71の後端は、カム部43のカム歯43aの谷部に落ち込むように移動し、これに伴って出没回転部材7は更に周方向に回転する(図30(c)参照)。また、突条71の後端は、カム部43のカム歯43aの谷部の位置に留まるため、ペン先突出状態が維持される。
【0189】
次に、ペン先突出状態(図30c)参照)からノック部材8が前方に押圧操作(スライド操作)されると、ノック部材8の軸部82の前端のカム歯82aによって再び出没回転部材7の突条71の後端が係合されて前方に押圧される。
【0190】
ノック部材8のノック操作の最深位置において、突条71の後端は、カム部43のカム歯43aの山部(歯)を乗り越え、ノック部材8のカム歯82aの谷部に落ち込むように移動し、これに伴って、出没回転部材7は僅かに周方向に回転する(図30(d)参照)。また、引き続いて、弾発体による後方付勢によってノック部材8が元の位置に戻ると、突条71は、カム溝43b内に導入され、ペン先没入状態が維持される(図30(a)参照)。
【0191】
図31及び図32に、尾栓63の突片63bと出没回転部材7の当接部73との当接状態が示されている。
【0192】
出没回転部材7の前面の当接部73が、レフィル6の後端の尾栓63の突片63bに当接されると共に、出没回転部材7の前面の複数の突起部72が、レフィル6の後端の尾栓63の突片63bの間の隙間63cに挿入されて、周方向に係合されている。これにより、出没回転部材7の周方向の回転に伴って、レフィル6も周方向に回転される。
【0193】
以上の通り、本実施形態では、出没回転部材7の前面の当接部73が、レフィル6の後端の尾栓63を回転させるようになっている。もっとも、出没回転部材7がレフィル6の他の部分に回転力を伝達する態様も採用され得る。例えば、尾栓63を有しておらず、レフィル6の後端に複数の突片が一体的に形成された態様が採用されてもよい。
【0194】
(環状部材115、215、315の回転についての補足)
ノック部材8の押圧操作によってレフィル6が軸筒111、411に対して回転される際、当該レフィル6にコイルバネ116を介して接続された環状部材115、215、315も、軸筒111、411に対して回転される。
【0195】
この時、コイルバネ116の前方端は環状部材115に固定されている。これにより、コイルバネ116の前方端は環状部材115の内面を摺動することがないため、当該前方端が環状部材115を損傷させる虞がない。また、レフィル6にコイルバネ116を介して接続された環状部材115も軸筒111、411に対して回転されることにより、レフィル6とコイルバネ116とが一体となって回転することができる。これにより、コイルバネ116の後方端がチップホルダー113上を摺動することがないため、当該後方端がチップホルダー113を損傷させる虞がない。また、レフィル6と環状部材115とコイルバネ116とが一体となって回転することにより、レフィル6の円滑な回転(ひいてはノック部材8の押圧操作)が阻害される虞もない。更に、環状部材115の回転が視認可能であるため、ユーザに視覚的な面白さを提供することができる。
【0196】
(レフィル6の回転方向とコイルバネ116の巻き方向)
以上に説明された実施形態では、後端側から見てレフィル6の回転方向は右回転であり、コイルバネ116の巻き方向は左回転(いわゆる、左巻きのバネ)となっている(巻き始めから反時計回りに延びている:図2参照)。
【0197】
しかしながら、レフィル6の回転方向とコイルバネ116の巻き方向とを揃えておけば、レフィル6の回転の際にチップホルダー113(のコイルバネ当接部)がコイルバネ116の後方端を押し込むような向きとなるため、チップホルダー113とコイルバネ116との間の接続が堅固となって(例えば両者が引っ掛かるような態様となって)、コイルバネ116がレフィル6の回転力を環状部材115に伝達しやすくなって好ましい。
【0198】
図2に対応する図であって、コイルバネ116の巻き方向を逆にした態様の図を、図33に示す。
【0199】
ここで、チップホルダー113コイルバネ当接部に、コイルバネ116の後方端との接続をより堅固とするような凹凸形状等が設けられることも更に好適である。
【0200】
(環状部材115の内周面のR面取り)
図5(d)、図8(d)及び10(d)を参照して説明した通り、環状部材115、215、315の内周面は、内側隆起部215ip、315ipを除いて、前方側から、小内径円筒面115ia、215ia、315iaと、第1切頭円錐内面115ib、215ib、315ibと、中内径円筒面115ic、215ic、315icと、第2切頭円錐内面115id、215id、315idと、四面払い部115ie、215ie、315ieと、大内径円筒面115if、215if、315ifと、第3切頭円錐内面115ig、215ig、315igと、が当該順序で設けられている。ここで、小内径円筒面115ia、215ia、31ia5と第1切頭円錐内面115ib、215ib、315ibとの間の接続領域(境界)に、R面取りが設けられてもよい。この場合、チップ114が小内径円筒面115ia、215ia、315ia内に挿入される際に、引っ掛かりがないため、より滑らかな挿入が実現され得る。
【0201】
更に、第1切頭円錐内面を設ける代わりに、小内径円筒面と中内径円筒面とがR面取り部によって接続された(第1切頭円錐内面が面取り部によって置換された)態様が採用されてもよい。この場合も、チップ114が小内径円筒面内に挿入される際に、引っ掛かりがないため、より滑らかな挿入が実現され得る。
【0202】
(切欠きの他の態様)
以上に説明された実施形態では、切欠きとして、スリット115sが設けられていた。すなわち、切欠きは、環状部材115の内周側から外周側まで貫通するものとして形成されていた。
【0203】
しかしながら、切欠きは、そのような態様に限定されないで、周囲と比べて薄肉の部分(厚みの一部が切り欠かれた態様)として形成されてもよい。例えば、スリット115sの部分に薄肉部(例えば、0.2mmの肉厚)が残存する態様が採用されてもよい。
【0204】
このような変形例であっても、第1切頭円錐外面または外側隆起部(当接面)において荷重を受ける時、環状部材の内径は柔軟に縮径することができ、且つ、当該荷重が解除される時、環状部材の内径は弾性的に復帰することができる。
【符号の説明】
【0205】
10 出没式筆記具(特許文献5)
11 軸筒
11ia 小内径円筒面
11ib 第1切頭円錐内面
11ic 中内径円筒面
11id 第2切頭円錐内面
11ie 第1大内径円筒面
11if 第3切頭円錐内面
11ig 第2大内径円筒面
11ih 環状突起
11m 前方部
11r 後方部
13 チップホルダー
13a 基端部
13b 第1カラー部
13c 第2カラー部
14 チップ
15 環状部材(特許文献5、第4実施形態)
15a 小外径円筒面
15b 第1切頭円錐外面
15c 中外径円筒面
15d 第2切頭円錐外面
15e 第1大外径円筒面
15f 第3切頭円錐外面
15g 第2大外径円筒面
15ia 小内径円筒面
15ib 第1切頭円錐内面
15ic 中内径円筒面
15id 第2切頭円錐内面
15ie 四面払い部
15if 大内径円筒面
15ig 第3切頭円錐内面
15s スリット
16 コイルバネ
110 出没式筆記具
111 軸筒
111ia 小内径円筒面
111ib 第1切頭円錐内面
111ic 中内径円筒面
111id 第2切頭円錐内面
111ie 第1大内径円筒面
111if 第3切頭円錐内面
111ig 第2大内径円筒面
111ih 環状突起
111m 前方部
111r 後方部
113 チップホルダー
113a 基端部
113b 第1カラー部
113c 第2カラー部
114 チップ
115 環状部材(第1実施形態)
115a 小外径円筒面
115b 第1切頭円錐外面
115c 中外径円筒面
115d 第2切頭円錐外面
115e 第1大外径円筒面
115f 第3切頭円錐外面
115g 第2大外径円筒面
115p 外側隆起部
115ia 小内径円筒面
115ib 第1切頭円錐内面
115ic 中内径円筒面
115id 第2切頭円錐内面
115ie 四面払い部
115if 大内径円筒面
115ig 第3切頭円錐内面
115s スリット
116 コイルバネ
215 環状部材(第2実施形態、第5実施形態)
215a 小外径円筒面
215b 第1切頭円錐外面
215c 中外径円筒面
215d 第2切頭円錐外面
215e 第1大外径円筒面
215f 第3切頭円錐外面
215g 第2大外径円筒面
215ia 小内径円筒面
215ib 第1切頭円錐内面
215ic 中内径円筒面
215id 第2切頭円錐内面
215ie 四面払い部
215if 大内径円筒面
215ig 第3切頭円錐内面
215ip 内側隆起部
215s スリット
315 環状部材(第3実施形態)
315a 小外径円筒面
315b 第1切頭円錐外面
315c 中外径円筒面
315d 第2切頭円錐外面
315e 第1大外径円筒面
315f 第3切頭円錐外面
315g 第2大外径円筒面
315p 外側隆起部
315ia 小内径円筒面
315ib 第1切頭円錐内面
315ic 中内径円筒面
315id 第2切頭円錐内面
315ie 四面払い部
315if 大内径円筒面
315ig 第3切頭円錐内面
315ip 内側隆起部
315s スリット
411 軸筒(第4実施形態、第5実施形態)
411p 内側隆起部
3 前軸
32 本体
33 把持部
4 中間軸
41 第1の長孔
42 段部
43 カム部
43a カム歯
43b カム溝
44 外向突起
5 後軸
51 第2の長孔
52 取付孔
53 摩擦部
54 内向突起
6 レフィル(筆記体)
61 ペン先
62 インキ収容管
63 尾栓
63a 空気孔
63b 突片
63c 隙間
63d 小径部
63e 大径部
63f 鍔部
63g 係合面
63p 外向突起
63t 補助テーパ部
7 出没回転部材
71 突条
72 突起部
72a 係合面
73 当接部
74 環状補助突起部
74t 補助当接面
78 外向突起
8 ノック部材
81 基部
82 軸部
82a カム歯
83 クリップ
88 内向突起
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33