(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003770
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】ポリオレフィン樹脂用帯電防止剤
(51)【国際特許分類】
C09K 3/16 20060101AFI20240105BHJP
C08L 87/00 20060101ALI20240105BHJP
C08K 5/42 20060101ALI20240105BHJP
C08G 81/02 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
C09K3/16 113
C08L87/00
C08K5/42
C08G81/02
C09K3/16 108D
C09K3/16 102J
C09K3/16 102K
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097710
(22)【出願日】2023-06-14
(31)【優先権主張番号】P 2022102315
(32)【優先日】2022-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】矢嶋 理代
(72)【発明者】
【氏名】杉本 佑子
(72)【発明者】
【氏名】冨士田 真市
【テーマコード(参考)】
4J002
4J031
【Fターム(参考)】
4J002CA001
4J002CL031
4J002EV256
4J002EV257
4J002FD116
4J002FD117
4J002FD201
4J002GG01
4J002GL00
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4J002GQ00
4J031AA12
4J031AA53
4J031AB01
4J031AC03
4J031AC07
4J031AD01
4J031AF10
4J031AF11
4J031AF19
(57)【要約】
【課題】 本発明の目的は、熱可塑性樹脂に優れた帯電防止性を付与する帯電防止剤を提供することにある。
【解決手段】 ポリオレフィン(a2)のブロックとポリエーテル(b1)のブロックとを構成単位として有するブロックポリマー(A)と、アルキル(アルキルの炭素数6~18)ベンゼンスルホン酸塩(S1)と、トリフルオロメタンスルホン酸塩(S2)とを含有してなるポリオレフィン樹脂用帯電防止剤(Z)。ポリオレフィン樹脂用帯電防止剤(Z)とポリオレフィン樹脂(E)とを含有してなる帯電防止性樹脂組成物(Y)。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン(a2)のブロックとポリエーテル(b1)のブロックとを構成単位として有するブロックポリマー(A)と、アルキル(アルキルの炭素数6~18)ベンゼンスルホン酸塩(S1)と、トリフルオロメタンスルホン酸塩(S2)とを含有してなるポリオレフィン樹脂用帯電防止剤(Z)。
【請求項2】
前記アルキル(アルキルの炭素数6~18)ベンゼンスルホン酸塩(S1)を構成するカチオンが、イミダゾリウム又はナトリウムである請求項1記載のポリオレフィン樹脂用帯電防止剤。
【請求項3】
前記トリフルオロメタンスルホン酸塩(S2)を構成するカチオンが、リチウムである請求項1記載のポリオレフィン樹脂用帯電防止剤。
【請求項4】
前記ブロックポリマー(A)と、アルキル(アルキルの炭素数6~18)ベンゼンスルホン酸塩(S1)とトリフルオロメタンスルホン酸塩(S2)との合計との重量比[(A)/{(S1)+(S2)}]が、90/10~99/1である請求項1記載のポリオレフィン樹脂用帯電防止剤。
【請求項5】
前記アルキル(アルキルの炭素数6~18)ベンゼンスルホン酸塩(S1)とトリフルオロメタンスルホン酸塩(S2)との重量比[(S1)/(S2)]が、30/70~95/5である請求項1記載のポリオレフィン樹脂用帯電防止剤。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか記載のポリオレフィン樹脂用帯電防止剤(Z)とポリオレフィン樹脂(E)とを含有してなる帯電防止性樹脂組成物(Y)。
【請求項7】
ポリオレフィン樹脂用帯電防止剤(Z)とポリオレフィン樹脂(E)との重量比[(Z)/(E)]が、3/97~20/80である請求項6記載の帯電防止性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項6記載の帯電防止性樹脂組成物(Y)を成形してなる成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリオレフィン樹脂用帯電防止剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、絶縁性の高い熱可塑性樹脂に帯電防止性を付与する方法として帯電防止剤を用いることが一般的である。帯電防止剤を用いて帯電防止性を付与する方法としては、高分子型帯電防止剤であるポリエーテルエステルアミド(例えば、特許文献1参照)を樹脂中に少量練り込む方法が知られている。
しかしながら、上記の高分子型帯電防止剤を練り込む方法においても、帯電防止性について十分に満足できるとは言えなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、熱可塑性樹脂に優れた帯電防止性を付与する帯電防止剤を提供することにある。
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち本発明は、ポリオレフィン(a2)のブロックとポリエーテル(b1)のブロックとを構成単位として有するブロックポリマー(A)と、アルキル(アルキルの炭素数6~18)ベンゼンスルホン酸塩(S1)と、トリフルオロメタンスルホン酸塩(S2)とを含有してなるポリオレフィン樹脂用帯電防止剤(Z)である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のポリオレフィン樹脂用帯電防止剤(Z)は以下の効果を奏する。
(1)成形品に、優れた帯電防止性を付与する。
(2)成形品は、耐汚染性、ハンドリング性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<ポリオレフィン(a2)>
【0008】
本発明におけるポリオレフィン(a2)は、好ましくは反応性基を有するポリオレフィンである。ポリオレフィン(a2)としては、例えば、反応性基を両末端に有するポリオレフィン(a21)及び反応性基を片末端に有するポリオレフィン(a22)が挙げられる。
なお、反応性基とは、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、水酸基、アミノ基及びイソシアネート基を指す。
【0009】
<反応性基を両末端に有するポリオレフィン(a21)>
反応性基を両末端に有するポリオレフィン(a21)としては、カルボキシル基又はカルボン酸無水物基をポリマーの両末端に有するポリオレフィン(a21-1)、水酸基をポリマーの両末端に有するポリオレフィン(a21-2)、アミノ基をポリマーの両末端に有するポリオレフィン(a21-3)及びイソシアネート基をポリマーの両末端に有するポリオレフィン(a21-4)等が挙げられる。これらの内で、変性の容易さ及び成形時の耐熱性の観点から好ましいのはカルボキシル基又はカルボン酸無水物基をポリマーの両末端に有するポリオレフィン(a21-1)である。
尚、本明細書における「末端」とは、ポリマーを構成するモノマー単位の繰り返し構造が途切れる終端部を意味する。また、「両末端」とは、ポリマーの主鎖における両方の末端を意味する。
【0010】
反応性基を両末端に有するポリオレフィン(a21)は、例えば、両末端が変性可能なポリオレフィンを主成分とするポリオレフィン(a21-0)の両末端に、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、水酸基、アミノ基又はイソシアネート基を導入することによって得ることができる。
なお、ここでの「主成分」とは、ポリオレフィン全体の重量に占める両末端が変性可能なポリオレフィンの重量が、ポリオレフィン全体の重量の50重量%以上であることを意味する。
ただし、両末端が変性可能なポリオレフィンの重量がポリオレフィン全体の重量の50重量%未満であっても、両末端が変性可能なポリオレフィンの重量と、後述する片末端が変性可能なポリオレフィンの重量の合計がポリオレフィン全体の重量の50重量%以上であり、両末端が変性可能なポリオレフィンの重量が片末端が変性可能なポリオレフィンの重量以上である場合には、両末端が変性可能なポリオレフィンを主成分とするポリオレフィン(a21-0)であるとする。
【0011】
両末端が変性可能なポリオレフィンを主成分とするポリオレフィン(a21-0)には、炭素数2~30(好ましくは2~12、更に好ましくは2~10)のオレフィンの1種又は2種以上の混合物の(共)重合によって得られ、プロピレンに由来する構成単位をポリオレフィン中に30モル%以上含有するポリオレフィン及び減成されたポリオレフィン{高分子量[好ましくはMn10,000~150,000]のポリオレフィンを機械的、熱的又は化学的に減成してなるもの}が含まれる。なお、「(共)重合」は、重合又は共重合を意味する。
【0012】
これらの内、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、水酸基、アミノ基又はイソシアネート基を導入する際の変性のし易さ及び入手のし易さの観点から好ましいのは、減成されたポリオレフィンであり、更に好ましいのは熱減成されたポリオレフィンである。熱減成によれば、後述の通り1分子当たりの末端二重結合数が1~2個の低分子量ポリオレフィンが容易に得られ、上記低分子量ポリオレフィンはカルボキシル基、カルボン酸無水物基、水酸基、アミノ基又はイソシアネート基等を導入して変性することが容易である。
【0013】
熱減成されたポリオレフィンとしては、例えば、高分子量ポリオレフィンを、不活性ガス中で加熱して得られたもの(300~450℃で0.5~10時間、例えば特開平3-62804号公報に記載の方法で得られたもの)及び空気中で加熱することにより熱減成されたもの等が挙げられる。
【0014】
熱減成法に用いられる高分子量ポリオレフィンとしては、炭素数2~30(好ましくは2~12、更に好ましくは2~10)のオレフィンの1種又は2種以上の混合物の(共)重合体[Mnは好ましくは10,000~150,000、更に好ましくは15,000~70,000:メルトフローレート(以下MFRと略記:単位はg/10min)は好ましくは0.5~150、更に好ましくは1~100]であって、プロピレンに由来する構成単位をポリオレフィン中に30モル%以上有するもの等が挙げられる。ここでMFRとは、樹脂の溶融粘度を表す数値であり、数値が大きいほど溶融粘度が低いことを表す。MFRの測定は、JIS K7210-1(2014)で規定した方法に準拠する。例えばポリプロピレンの場合は、230℃、荷重2.16kgfの条件で測定される。
【0015】
炭素数2~30のオレフィンとしては、炭素数2~30のα-オレフィン及び炭素数4~30のジエンが挙げられる。
炭素数2~30のα-オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-イコセン及び1-テトラコセン等が挙げられる。
炭素数4~30のジエンとしては、ブタジエン、イソプレン、シクロペンタジエン及び1,11-ドデカジエン等が挙げられる。
炭素数2~30のオレフィンの内、分子量制御の観点から好ましいのは、炭素数2~12のα-オレフィン、ブタジエン、イソプレン及びこれらの混合物であり、更に好ましいのは、炭素数2~10のα-オレフィン、ブタジエン及びこれらの混合物であり、特に好ましいのは、炭素数2~3のα-オレフィンであるエチレン及びプロピレン並びにこれらの混合物である。
【0016】
<反応性基を片末端に有するポリオレフィン(a22)>
反応性基を片末端に有するポリオレフィン(a22)としては、カルボキシル基又はカルボン酸無水物基をポリマーの片末端に有するポリオレフィン(a22-1)、水酸基をポリマーの片末端に有するポリオレフィン(a22-2)、アミノ基をポリマーの片末端に有するポリオレフィン(a2-3)、イソシアネート基をポリマーの片末端に有するポリオレフィン(a22-4)及びカルボキシル基及び水酸基の両方をポリマーの片末端に有するポリオレフィン(a22-5)等が挙げられる。
これらの内で、変性の容易さ及び成形時の耐熱性の観点から好ましいのは、カルボキシル基又はカルボン酸無水物基をポリマーの片末端に有するポリオレフィン(a22-1)である。
尚、「片末端」とは、ポリマーの主鎖におけるいずれか一方の末端を意味する。
【0017】
反応性基を片末端に有するポリオレフィン(a22)は、例えば、片末端が変性可能なポリオレフィンを主成分とするポリオレフィン(a22-0)に、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、水酸基、アミノ基又はイソシアネート基を導入することによって得ることができる。
なお、ここでの「主成分」とは、ポリオレフィン全体の重量に占める片末端が変性可能なポリオレフィンの重量が、ポリオレフィン全体の重量の50重量%以上であることを意味する。
ただし、片末端が変性可能なポリオレフィンの重量がポリオレフィン全体の重量の50重量%未満であっても、片末端が変性可能なポリオレフィンの重量と、上述した両末端が変性可能なポリオレフィンの重量の合計がポリオレフィン全体の重量の50重量%以上であり、片末端が変性可能なポリオレフィンの重量が両末端が変性可能なポリオレフィンの重量よりも多い場合には、片末端が変性可能なポリオレフィンを主成分とするポリオレフィン(a22-0)であるとする。
【0018】
片末端が変性可能なポリオレフィンを主成分とするポリオレフィン(a22-0)は、両末端が変性可能なポリオレフィンを主成分とするポリオレフィン(a21-0)と同様にして得ることができる。
【0019】
両末端が変性可能なポリオレフィンを主成分とするポリオレフィン(a21-0)及び片末端が変性可能なポリオレフィンを主成分とするポリオレフィン(a22-0)は、一般的にこれらの混合物として得られるが、混合物をそのまま使用してもよく、精製分離してから使用してもよい。これらの内、製造コスト等の観点から好ましいのは、混合物である。
【0020】
以下、両末端が変性可能なポリオレフィンを主成分とするポリオレフィン(a21-0)の両末端にカルボキシル基、カルボン酸無水物基、水酸基、アミノ基又はイソシアネート基を有する上記各ポリオレフィン(a21-1)~(a21-4)について説明するが、片末端が変性可能なポリオレフィンを主成分とするポリオレフィン(a22-0)の片末端にこれらの基を有する上記各ポリオレフィン(a22-1)~(a22-4)については、両末端が変性可能なポリオレフィンを主成分とするポリオレフィン(a21-0)を片末端が変性可能なポリオレフィンを主成分とするポリオレフィン(a22-0)に置き換えたものについて、上記各ポリオレフィン(a21-1)~(a21-4)と同様にして得ることができる。また、好ましいものについても反応性基を両末端に有するポリオレフィン(a21)と反応性基を片末端に有するポリオレフィン(a22)とは、同様である。
【0021】
カルボキシル基又はカルボン酸無水物基をポリマーの両末端に有するポリオレフィン(a21-1)としては、両末端が変性可能なポリオレフィンを主成分とするポリオレフィン(a21-0)の末端をα,β-不飽和カルボン酸(無水物)で変性した構造を有するポリオレフィン(a21-1-1)、該ポリオレフィン(a21-1-1)をラクタム又はアミノカルボン酸で二次変性した構造を有するポリオレフィン(a21-1-2)、両末端が変性可能なポリオレフィンを主成分とするポリオレフィン(a21-0)を酸化又はヒドロホルミル化により変性した構造を有するポリオレフィン(a21-1-3)、該ポリオレフィン(a21-1-3)をラクタム又はアミノカルボン酸で二次変性した構造を有するポリオレフィン(a21-1-4)及びこれらの2種以上の混合物等が使用できる。
なお、「α,β-不飽和カルボン酸(無水物)」は、α,β-不飽和カルボン酸又はその無水物を意味する。
【0022】
上記ポリオレフィン(a21-1-1)は、両末端が変性可能なポリオレフィンを主成分とするポリオレフィン(a21-0)をα,β-不飽和カルボン酸(無水物)で変性することにより得ることができる。
変性に用いられるα,β-不飽和カルボン酸(無水物)としては、モノカルボン酸、ジカルボン酸又はこれらの酸無水物が挙げられ、具体的には(メタ)アクリル酸、マレイン酸(又はその無水物)、フマル酸、イタコン酸(又はその無水物)及びシトラコン酸(又はその無水物)等が挙げられる。
これらの内、変性の容易さの観点から、好ましいのはモノ若しくはジカルボン酸の無水物並びにジカルボン酸であり、さらに好ましいのはマレイン酸(又はその無水物)及びフマル酸であり、特に好ましいのはマレイン酸(又はその無水物)である。
なお、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸又はメタアクリル酸を意味する。
【0023】
上記ポリオレフィン(a21-1-2)は、上記ポリオレフィン(a21-1-1)を前記ラクタム又はアミノカルボン酸で二次変性することにより得ることができる。
【0024】
上記ポリオレフィン(a21-1-3)は、両末端が変性可能なポリオレフィンを主成分とするポリオレフィン(a21-0)に対し、酸素及び/又はオゾンにより酸化する方法(酸化法)やオキソ法によるヒドロホルミル化により、カルボキシル基を導入することにより得ることができる。
酸化法によるカルボキシル基の導入は、公知の方法、例えば米国特許第3,692,877号明細書記載の方法で行うことができる。ヒドロホルミル化によるカルボキシル基の導入は、公知の方法を含む種々の方法、例えば、Macromolecules、VOl.31、5943頁記載の方法で行うことができる。
上記ポリオレフィン(a21-1-4)は、上記ポリオレフィン(a21-1-3)をラクタム又はアミノカルボン酸で二次変性することにより得ることができる。
【0025】
カルボキシル基又はカルボン酸無水物基をポリマーの両末端に有するポリオレフィン(a21-1)の酸価は、親水性ポリマー(b)との反応性の観点から、好ましくは4~100mgKOH/g、さらに好ましくは4~50mgKOH/g、特に好ましくは5~30mgKOH/gである。
【0026】
水酸基をポリマーの両末端に有するポリオレフィン(a21-2)としては、カルボキシル基又はカルボン酸無水物基をポリマーの両末端に有するポリオレフィン(a21-1)を、水酸基を有するアミンで変性したヒドロキシル基を有するポリオレフィン及びこれらの2種以上の混合物が使用できる。
変性に使用できる水酸基を有するアミンとしては、炭素数2~10の水酸基を有するアミンが挙げられ、具体的には2-アミノエタノール、3-アミノプロパノール、1-アミノ-2-プロパノール、4-アミノブタノール、5-アミノペンタノール、6-アミノヘキサノール及び3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサノール等が挙げられる。
【0027】
水酸基をポリマーの両末端に有するポリオレフィン(a21-2)の水酸基価は、親水性ポリマー(b)との反応性の観点から、好ましくは4~100mgKOH/gであり、さらに好ましくは4~50mgKOH/g、特に好ましくは5~30mgKOH/gである。
【0028】
アミノ基をポリマーの両末端に有するポリオレフィン(a21-3)としては、上記ポリオレフィン(a21-1)を、ジアミンで変性したアミノ基を有するポリオレフィン及びこれらの2種以上の混合物が使用できる。
ジアミンとしては、炭素数2~12のジアミン等が使用でき、具体的には、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン及びデカメチレンジアミン等が挙げられる。
これらの内、変性の容易さの観点から好ましいのは、炭素数2~8のジアミン(エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン及びオクタメチレンジアミン等)であり、更に好ましいのはエチレンジアミン及びヘキサメチレンジアミン、特に好ましいのはエチレンジアミンである。
【0029】
アミノ基をポリマーの両末端に有するポリオレフィン(a21-3)のアミン価は、親水性ポリマー(b)との反応性の観点から、好ましくは4~100mgKOH/gであり、更に好ましくは4~50mgKOH/g、特に好ましくは5~30mgKOH/gである。
【0030】
イソシアネート基をポリマーの両末端に有するポリオレフィン(a21-4)としては、上記ポリオレフィン(a21-2)をポリ(2~3又はそれ以上)イソシアネートで変性したイソシアネート基を有するポリオレフィン及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
ポリイソシアネートとしては、炭素数(イソシアネート基中の炭素原子を除く。以下同様。)6~20の芳香族ポリイソシアネート、炭素数2~18の脂肪族ポリイソシアネート、炭素数4~15の脂環式ポリイソシアネート、炭素数8~15の芳香脂肪族ポリイソシアネート、これらのポリイソシアネートの変性体及びこれらの2種以上の混合物が含まれる。
【0031】
カルボキシル基及び水酸基の両方をポリマーの片末端に有するポリオレフィン(a22-5)としては、片末端が変性可能なポリオレフィンを主成分とするポリオレフィン(a22-0)の片末端をα,β-不飽和カルボン酸無水物で変性した構造を有するポリオレフィンを、さらにジオールアミンで二次変性した構造を有するポリオレフィン(a22-5-1)が使用できる。
二次変性に用いるジオールアミンとしては、例えば、ジエタノールアミンが挙げられる。
【0032】
反応性基を両末端に有するポリオレフィン(a21)及び反応性基を片末端に有するポリオレフィン(a22)のMnは、耐汚染性、ハンドリング性及び帯電防止性の観点から、それぞれ、好ましくは1,000~25,000であり、さらに好ましくは1,500~12,000、特に好ましくは2,000~7,000である。
【0033】
なお、本明細書におけるポリマーの数平均分子量(以下、Mnと略記)、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定した値である。
・装置:「HLC-8120」[東ソー(株)製]
・カラム:「TSKgelGMHXL」[東ソー(株)製](2本)、及び、「TSKgelMultiporeHXL-M」[東ソー(株)製](1本)
・試料溶液:0.3重量%のオルトジクロロベンゼン溶液
・溶液注入量:100μl
・流量:1ml/分
・測定温度:135℃
・検出装置:屈折率検出器
・基準物質:標準ポリスチレン(TSKstandardPOLYSTYRENE)12点(分子量:500、1,050、2,800、5,970、9,100、18,100、37,900、96,400、190,000、355,000、1,090,000、2,890,000)[東ソー(株)製]
【0034】
<ポリエーテル(b1)>
ポリエーテル(b1)としては、ポリエーテルジオール(b1-1)、ポリエーテルジアミン(b1-2)及びこれらの変性物(b1-3)が挙げられる。
ポリエーテルジオール(b1-1)としては、ジオール(b0)にアルキレンオキサイド(以下AOと略記する。)を付加反応させることにより得られるものが挙げられ、具体的には一般式(1)で表されるものが挙げられる。
H-(OR1)a-O-E1-O-(R2O)b-H (1)
一般式(1)におけるE1は、ジオール(b0)からすべての水酸基を除いた残基である。
一般式(1)におけるR1及びR2は、それぞれ独立に炭素数2~12のアルキレン基、スチレン基及びクロロメチル基である。これらのなかでは炭素数2~4のアルキレン基が好ましい。炭素数2~4のアルキレン基としては、エチレン基、1,2-若しくは1,3-プロピレン基並びに1,2-、1,3-、1,4-若しくは2,3-ブチレン基等が挙げられる。
一般式(1)におけるa及びbは、(OR1)及び(R2O)の平均付加モル数であり、それぞれ独立に1~300であり、好ましくは2~250、更に好ましくは10~100である。
一般式(1)におけるa、bがそれぞれ2以上の場合のR1、R2は、同一でも異なっていてもよく、(OR1)a、(R2O)b部分はランダム結合でもブロック結合でもよい。
【0035】
ジオール(b0)としては、炭素数2~12の脂肪族2価アルコール、炭素数5~12の脂環式2価アルコール、炭素数6~18の芳香族2価アルコール、及び、3級アミノ基含有ジオール等が挙げられる。
【0036】
炭素数2~12の脂肪族2価アルコールとしては、エチレングリコール(以下EGと略記する。)、1,2-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール及び1,12-ドデカンジオールが挙げられる。
炭素数5~12の脂環式2価アルコールとしては、1,4-ジ(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン及び1,5-ジ(ヒドロキシメチル)シクロヘプタン等が挙げられる。
炭素数6~18の芳香族2価アルコールとしては、単環芳香族2価アルコール(キシリレンジオール、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン及びウルシオール等)及び多環芳香族2価アルコール(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4’-ジヒドロキシジフェニル-2,2-ブタン、ジヒドロキシビフェニル、ジヒドロキシナフタレン及びビナフトール等)等が挙げられる。
【0037】
3級アミノ基含有ジオールとしては、炭素数1~12の脂肪族又は脂環式1級アミン(メチルアミン、エチルアミン、シクロプロピルアミン、1-プロピルアミン、2-プロピルアミン、ペンチルアミン、イソペンチルアミン、シクロペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ヘプチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン及びドデシルアミン等)のビスヒドロキシアルキル化物及び炭素数6~12の芳香族1級アミン(アニリン及びベンジルアミン等)のビスヒドロキシアルキル化物が挙げられる。
これらのうち、ビスヒドロキシアルキル化物との反応性の観点からジオール(b0)として好ましいのは、炭素数2~12の脂肪族2価アルコール及び炭素数6~18の芳香族2価アルコールであり、更に好ましいのはEG及びビスフェノールAである。
【0038】
ポリエーテルジオール(b1-1)は、ジオール(b0)にAOを付加反応させることにより製造することができる。
AOとしては、炭素数2~4のAO[エチレンオキサイド(以下EOと略記する。)、1,2-又は1,3-プロピレンオキサイド、1,2-、1,3-、1,4-又は2,3-ブチレンオキサイド、及びこれらの2種以上の併用系]が用いられるが、必要により他のAO[炭素数5~12のα-オレフィンオキサイド、スチレンオキサイド及びエピハロヒドリン(エピクロルヒドリン等)等]を少しの割合(AOの全重量に基づいて30重量%以下)で併用することもできる。
2種以上のAOを併用するときの結合形式は、ランダム結合、ブロック結合のいずれでもよい。AOとして好ましいのは、EO単独及びEOと他のAOとの併用である。
【0039】
AOの付加反応は、公知の方法、例えばアルカリ触媒の存在下、100~200℃の温度で行うことができる。
一般式(1)で表されるポリエーテルジオール(b1-1)の重量に基づく、(OR1)a及び(R2O)bの含有率は、好ましくは5~99.8重量%であり、更に好ましくは8~99.6重量%、特に好ましくは10~98重量%である。
一般式(1)における(OR1)a及び(R2O)bの重量に基づくオキシエチレン基の含有率は、好ましくは5~100重量%であり、更に好ましくは10~100重量%、特に好ましくは50~100重量%、最も好ましくは60~100重量%である。
ポリエーテルジオール(b1-1)としては、ビスフェノールAのEO付加物、及び、ポリエチレングリコールが好ましい。
【0040】
ポリエーテルジアミン(b1-2)としては、一般式(2)で表されるものが挙げられる。
H2N-R3-(OR4)c-O-E2-O-(R5O)d-R6-NH2 (2)
一般式(2)におけるE2は、ジオール(b0)からすべての水酸基を除いた残基である。
ジオール(b0)としては、上記ポリエーテルジオール(b1-1)について例示したものと同様のものが挙げられ、好ましい範囲も同様である。
一般式(2)におけるR3、R4、R5及びR6は、それぞれ独立に炭素数2~4のアルキレン基、炭素数5~12のアルキレン基、スチレン基及びクロロメチル基である。炭素数2~4のアルキレン基としては、一般式(1)におけるR1及びR2として例示したものと同様のものが挙げられる。
一般式(2)におけるc及びdは、(OR4)及び(R5O)の平均付加モル数であり、それぞれ独立に1~300であり、好ましくは2~250、更に好ましくは10~100である。
一般式(2)におけるc、dがそれぞれ2以上の場合のR4、R5は、同一でも異なっていてもよく、(OR4)c、(R5O)d部分はランダム結合でもブロック結合でもよい。
【0041】
ポリエーテルジアミン(b1-2)は、ポリエーテルジオール(b1-1)が有するすべての水酸基を、アルキルアミノ基に変換することにより得ることができる。例えばポリエーテルジオール(b1-1)とアクリロニトリルとを反応させ、得られたシアノエチル化物を水素添加することにより製造することができる。
【0042】
変性物(b1-3)としては、ポリエーテルジオール(b1-1)又はポリエーテルジアミン(b1-2)のアミノカルボン酸変性物(末端アミノ基)、イソシアネート変性物(末端イソシアネート基)及びエポキシ変性物(末端エポキシ基)等が挙げられる。
アミノカルボン酸変性物は、ポリエーテルジオール(b1-1)又はポリエーテルジアミン(b1-2)と、アミノカルボン酸又はラクタムとを反応させることにより得ることができる。
イソシアネート変性物は、ポリエーテルジオール(b1-1)又はポリエーテルジアミン(b1-2)と、ポリイソシアネートとを反応させるか、ポリエーテルジアミン(b1-2)とホスゲンとを反応させることにより得ることができる。
エポキシ変性物は、ポリエーテルジオール(b1-1)又はポリエーテルジアミン(b1-2)と、ジエポキシド(ジグリシジルエーテル、ジグリシジルエステル及び脂環式ジエポキシド等のエポキシ樹脂:エポキシ当量85~600)とを反応させるか、ポリエーテルジオール(b1-1)とエピハロヒドリン(エピクロロヒドリン等)とを反応させることにより得ることができる。
【0043】
ポリエーテル(b1)のMnは、耐熱性及びポリオレフィン(a2)との反応性の観点から、好ましくは150~20,000であり、更に好ましくは300~18,000、特に好ましくは2,000~10,000、最も好ましくは2,500~5,000である。
【0044】
<ブロックポリマー(A)>
本発明におけるブロックポリマー(A)は、上記ポリオレフィン(a2)のブロックとポリエーテル(b1)のブロックとを構成単位として有する。ブロックポリマー(A)を構成するポリオレフィン(a2)及びポリエーテル(b1)は、それぞれ1種又は2種以上であってもよい。
【0045】
ブロックポリマー(A)を構成するポリオレフィン(a2)のブロックと、ポリエーテル(b1)のブロックとの重量比[(a2)/(b1)]は、帯電防止性及び耐水性の観点から、好ましくは10/90~80/20であり、更に好ましくは20/80~75/25である。
【0046】
ブロックポリマー(A)を構成するポリオレフィン(a2)のブロックと、ポリエーテル(b1)のブロックとが結合した構造には、(a2)-(b1)型、(a2)-(b1)-(a2)型、(b1)-(a2)-(b1)型及び[(a2)-(b1)]n型(nは平均繰り返し数を表す。)が含まれる。
ブロックポリマー(A)の構造としては、導電性の観点からポリオレフィン(a2)とポリエーテル(b1)とが繰り返し交互に結合した[(a2)-(b1)]n型のものが好ましい。
[(a2)-(b1)]n型の構造におけるnは、帯電防止性及び機械的強度(機械物性)の観点から、好ましくは2~50であり、更に好ましくは2.3~30、特に好ましくは2.7~20、最も好ましくは3~10である。nは、ブロックポリマー(A)のMn及び1H-NMR分析により求めることができる。
【0047】
ブロックポリマー(A)のMnは、後述する成形品の機械的強度(機械物性)及び帯電防止性の観点から、好ましくは2,000~100,000、さらに好ましくは5,000~60,000、特に好ましくは10,000~40,000である。
【0048】
ブロックポリマー(A)が、ポリオレフィン(a2)のブロックとポリエーテル(b1)のブロックとが、エステル結合、アミド結合、エーテル結合又はイミド結合を介して結合した構造を有するものである場合、例えば、下記の方法で製造することができる。
上記結合のうち、工業的な観点から、好ましいのは、エステル結合、アミド結合である。
【0049】
ポリオレフィン(a2)とポリエーテル(b1)を反応容器に投入し、撹拌下、反応温度100~250℃、圧力0.003~0.1MPaで、アミド化反応、エステル化反応、エーテル化反応又はイミド化反応で生成する水(以下生成水と略記する。)を反応系外に除去しながら、1~50時間反応させる方法が挙げられる。
【0050】
<アルキル(アルキルの炭素数6~18)ベンゼンスルホン酸塩(S1)>
本発明におけるアルキル(アルキルの炭素数6~18)ベンゼンスルホン酸塩(S1)(以下塩(S1)とも言う)は、カチオンとアルキルベンゼンスルホン酸のアニオンとから構成される。
【0051】
アルキル(アルキルの炭素数6~18、好ましくは炭素数10~14)ベンゼンスルホン酸としては、例えば、ヘキシルベンゼンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、テトラデシルベンゼンスルホン酸、オクタデシルスルホン酸が挙げられる。
上記アルキル(アルキルの炭素数6~18)ベンゼンスルホン酸のうち、好ましいのはドデシルベンゼンスルホン酸である。
【0052】
塩(S1)を構成するカチオンとしては、アルカリ金属(例えばリチウム、ナトリウム、カリウム)カチオン、イミダゾリウムカチオンが挙げられる。
【0053】
上記イミダゾリウムカチオンとしては、C5~15のイミダゾリウムカチオン、例えば、1,3-ジメチルイミダゾリウムカチオン、1,3-ジエチルイミダゾリウムカチオン、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1,2,3-トリメチルイミダゾリウムカチオン、1,2,3,4-テトラメチルイミダゾリウムカチオン、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムカチオン、1,3-ジメチル-2-エチルイミダゾリウムカチオン、1,2-ジメチル-3-エチル-イミダゾリウムカチオン、1,2,3-トリエチルイミダゾリウムカチオン、1,2,3,4-テトラエチルイミダゾリウムカチオン、1,3-ジメチル-2-フェニルイミダゾリウムカチオン、1,3-ジメチル-2-ベンジルイミダゾリウムカチオン、1-ベンジル-2,3-ジメチル-イミダゾリウムカチオン、4-シアノ-1,2,3-トリメチルイミダゾリウムカチオン、3-シアノメチル-1,2-ジメチルイミダゾリウムカチオン、2-シアノメチル-1,3-ジメチル-イミダゾリウムカチオン、4-アセチル-1,2,3-トリメチルイミダゾリウムカチオン、3-アセチルメチル-1,2-ジメチルイミダゾリウムカチオン、4-メチルカルボキシメチル-1,2,3-トリメチルイミダゾリウムカチオン、3-メチルカルボキシメチル-1,2-ジメチルイミダゾリウムカチオン、4-メトキシ-1,2,3-トリメチルイミダゾリウムカチオン、3-メトキシメチル-1,2-ジメチルイミダゾリウムカチオン、4-ホルミル-1,2,3-トリメチルイミダゾリウムカチオン、3-ホルミルメチル-1,2-ジメチルイミダゾリウムカチオン、3-ヒドロキシエチル-1,2-ジメチルイミダゾリウムカチオン、4-ヒドロキシメチル-1,2,3-トリメチルイミダゾリウムカチオン、2-ヒドロキシエチル-1,3-ジメチルイミダゾリウムカチオン等が挙げられる。
【0054】
塩(S1)を構成するカチオンのうち、帯電防止性の観点から、好ましいのは、ナトリウムカチオン及びイミダゾリウムカチオンであり、さらに好ましいのはナトリウムカチオン及び1-アルキル(アルキルの炭素数1~3)3-アルキル(アルキルの炭素数1~3)イミダゾリウムカチオンであり、特に好ましいのは1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオンである。
【0055】
<トリフルオロメタンスルホン酸塩(S2)>
本発明におけるトリフルオロメタンスルホン酸塩(S2)はトリフルオロメタンスルホン酸のアニオンと、カチオンとから構成される。
【0056】
塩(S2)を構成するカチオンとしては、上記(S1)を構成するカチオンと同じものが挙げられる。
前記塩(S2)を構成するカチオンのうち、好ましいのはリチウムカチオンである。
【0057】
<ポリオレフィン樹脂用帯電防止剤(Z)>
本発明のポリオレフィン樹脂用帯電防止剤(Z)は、上記ブロックポリマー(A)と、アルキル(アルキルの炭素数6~18)ベンゼンスルホン酸塩(S1)と、トリフルオロメタンスルホン酸塩(S2)とを含有してなる。
帯電防止剤(Z)は、種々の用途のポリオレフィン樹脂用帯電防止剤として好適である。
【0058】
前記ブロックポリマー(A)と、アルキル(アルキルの炭素数6~18)ベンゼンスルホン酸塩(S1)とトリフルオロメタンスルホン酸塩(S2)との合計との重量比[(A)/{(S1)+(S2)}]は、好ましくは90/10~99/1であり、さらに好ましくは92/8~98/2である。
また、前記アルキル(アルキルの炭素数6~18)ベンゼンスルホン酸塩(S1)とトリフルオロメタンスルホン酸塩(S2)との重量比[(S1)/(S2)]は、好ましくは30/70~95/5であり、さらに好ましくは70/30~90/10である。
【0059】
帯電防止剤(Z)は、例えば、以下の(1)又は(2)の方法により、製造できる。
(1)ブロックポリマー(A)と塩(S1)と塩(S2)とを混合する。
(2)ポリオレフィン(a2)のポリマーとポリエーテル(b1)のポリマーを、公知の方法で反応させて、ブロックポリマー(A)を得る際に、反応前又は反応途中で、塩(S1)、塩(S2)を加える。
なお、帯電防止剤(Z)には、前記(A)、(S1)、(S2)以外の成分[例えば、後述の公知の樹脂用添加剤(G)]を含有していてもよいが、その重量は、(Z)の重量に基づいて、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは0.1~5重量%である。
【0060】
<帯電防止性樹脂組成物(Y)>
本発明の帯電防止性樹脂組成物(Y)は、上記帯電防止剤(Z)と、後述のポリオレフィン樹脂(E)とを含有してなる。
帯電防止剤(Z)とポリオレフィン樹脂(E)との重量比[(Z)/(E)]は、帯電防止性及び機械的強度(機械物性)の観点から、好ましくは3/97~20/80、さらに好ましくは4/96~15/85である。
【0061】
<ポリオレフィン樹脂(E)>
ポリオレフィン樹脂(E)としては、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、プロピレン-エチレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、エチレン-エチルアクリレート共重合樹脂が挙げられる。
上記ポリオレフィン樹脂(E)のうち、好ましいのはポリプロピレン、ポリエチレン、プロピレン-エチレン共重合体、さらに好ましいのはポリエチレンである。
【0062】
本発明の帯電防止性樹脂組成物(Y)には、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要により、さらに公知の樹脂用添加剤(G)を含有してもよい。
樹脂用添加剤(G)としては、相溶化剤(カルボン酸変性ポリプロピレン等)、難燃剤(グアナミン等)、顔料(酸化チタン等)、染料(アゾ系染料等)、核剤(タルク等)、滑剤(カルバナロウワックス等)、可塑剤(ジオクチルフタレート等)、酸化防止剤(トリフェニルホスファイト等)、紫外線吸収剤[2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等]が挙げられる。
樹脂用添加剤(G)の含有量は、用途によって異なるが、帯電防止剤(Z)とポリオレフィン樹脂(E)との合計重量に基づいて、例えば45重量%以下、添加効果の観点から、好ましくは0.01~30重量%、さらに好ましくは0.1~10重量%である。
【0063】
本発明の帯電防止性樹脂組成物(Y)は、上記帯電防止剤(Z)、ポリオレフィン樹脂(E)及び必要により樹脂用添加剤(G)を溶融混合することにより得られる。
溶融混合する方法としては、一般的にはペレット状又は粉体状の成分を適切な混合機、例えばヘンシェルミキサー等で混合した後、押出機で溶融混合してペレット化する方法が適用できる。
【0064】
<成形品>
本発明の成形品は、上記帯電防止性樹脂組成物(Y)を成形して得られる。該成形方法としては、射出成形、圧縮成形、カレンダ成形、スラッシュ成形、回転成形、押出成形、ブロー成形、発泡成形、フィルム成形(キャスト法、テンター法、インフレーション法等)等が挙げられ、目的に応じて任意の方法で成形できる。
上記成形方法のうち、好ましいのは発泡成形である。
【0065】
本発明の帯電防止剤(Z)は、帯電防止性に優れる。また、成形品に優れた耐汚染性、ハンドリング性を付与する。
このため、各種成形法[射出成形、圧縮成形、カレンダ成形、スラッシュ成形、回転成形、押出成形、ブロー成形、発泡成形及びフィルム成形(例えばキャスト法、テンター法及びインフレーション法)等]で成形されるハウジング製品[家電・OA機器、ゲーム機器及び事務機器用等]、プラスチック容器材[クリーンルームで使用されるトレー(ICトレー等)、その他容器等]、各種緩衝材、被覆材(包材用フィルム、保護フィルム等)、床材用シート、人工芝、マット、テープ基材(半導体製造プロセス用等)、並びに各種成形品(自動車部品等)用材料とし幅広く用いることができ、極めて有用である。
【実施例0066】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下において、部は重量部を示す。
【0067】
<製造例1>[酸変性ポリオレフィン(a1-1)の製造]
撹拌機、温度計、加熱冷却装置、窒素導入管及び減圧装置を備えたステンレス製耐圧反応容器に、熱減成法〔メタロセン触媒を用いて製造されたポリプロピレン[商品名「ウィンテックWSX03」、日本ポリプロ(株)製、MFR25(単位はg/10分、230℃、以下数値のみを示す。)、融点(示差走査熱量計による、以下同じ。)130℃]を370±0.1℃、窒素通気下(80mL/分)、75分間で熱減成〕で得られた低分子量ポリプロピレン(Mn4,400、炭素数1,000当たりの二重結合量4.8個)100部、無水マレイン酸10部およびキシレン27部を仕込み、均一混合後、窒素ガス雰囲気下(密閉下)、撹拌しながら、200℃で溶融させ10時間反応させた。
その後、過剰の無水マレイン酸とキシレンを減圧下(1.3kPa以下)、200℃、3時間で留去して、酸変性ポリオレフィン(a1-1)95部を得た。(a1-1)の酸価(mgKOH/g)は18.5、Mnは4,600、融点は120℃であった。
【0068】
<製造例2>[酸変性ポリオレフィン(a2-1)の製造]
撹拌機、温度計、加熱冷却装置、窒素導入管及び減圧装置を備えたステンレス製耐圧反応容器に、熱減成法〔プロピレン98重量%、エチレン2重量%を構成単位とするポリオレフィン[商品名「サンアロマーPZA20A」、サンアロマー(株)製、Mn100,000、以下同じ。]を370±0.1℃、窒素通気下(80mL/分)、75分間で熱減成〕で得られた低分子量ポリプロピレン(Mn4,400、炭素数1,000当たりの二重結合量4.6個)100部、無水マレイン酸10部およびキシレン25部を仕込み、均一混合後、窒素ガス雰囲気下(密閉下)、撹拌しながら、200℃で溶融させ10時間反応させた。その後、過剰の無水マレイン酸とキシレンを減圧下(1.3kPa以下)、200℃、3時間で留去して、酸変性ポリオレフィン(a2-1)95部を得た。(a2-1)の酸価(mgKOH/g)は17.3、Mnは4,600、融点は140℃であった。
【0069】
<製造例3>[二次変性した酸変性ポリオレフィン(a2-2)の製造]
撹拌機、温度計、加熱冷却装置、窒素導入管及び減圧装置を備えたステンレス製耐圧反応容器に、(a2-1)100部、12-アミノドデカン酸5.6部を仕込み、窒素ガス雰囲気下、撹拌しながら200℃で溶融し、3時間、減圧下(1.3kPa以下)で反応させ、二次変性した酸変性ポリオレフィン(a2-2)96部を得た。(a2-2)の酸価は16.6、Mnは、4,800、融点は140℃であった。
【0070】
<製造例4>[ブロックポリマー(A-1)の製造]
撹拌機、温度計、加熱冷却装置、窒素導入管及び減圧装置を備えたステンレス製耐圧反応容器に、酸変性ポリオレフィン(a1-1)64.7部、α、ω-ジアミノPEG(Mn2,000、体積固有抵抗値1×107Ω・cm)(b1-1)34.7部、酸化防止剤[商品名「イルガノックス1010」、BASFジャパン(株)製]0.1部および酢酸ジルコニル0.5部を仕込み、220℃、0.13kPa以下の減圧下で3時間重合させ粘稠なポリマーを得た。このポリマ-をベルト上にストランド状で取り出し、ペレット化することによって(a1-1)のブロックと(b1-1)のブロックからなるブロックポリマー(A-1)(Mn25,000、融点は120℃)を得た。
【0071】
<製造例5>[ブロックポリマー(A-2)の製造]
製造例4において、(a1-1)64.7部、(b1-1)34.7部に変えて、二次変性した酸変性ポリオレフィン(a2-2)66.1部、PEG(Mn3,000、体積固有抵抗値1×107Ω・cm)(b1-2)33.2部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、(a2-2)のブロックと(b1-2)のブロックからなるブロックポリマー(A-2)(Mn32,000、融点は140℃)を得た。
【0072】
<実施例1>
撹拌機、温度計及び加熱冷却装置を備えた反応容器に、ブロックポリマー(A-1)95.5部、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムドデシルベンゼンスルホン酸塩(S1-1)4部、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(S2-1)0.5部を仕込み、220℃で1時間混合、撹拌した後、ベルト上にストランド状で取出し、ペレット化し、帯電防止剤(Z-1)を得た。
【0073】
<実施例2~5、比較例1>
表1に示す配合組成(部)に従った以外は、実施例1と同様にして、各帯電防止剤(Z)を得た。結果を表1に示す。
【0074】
【0075】
<実施例11~17、比較例11>
表2に示す配合組成に従って、帯電防止剤(Z)、ポリオレフィン樹脂(E)をヘンシェルミキサーで3分間ブレンドした後、ベント付き2軸押出機にて、回転速度100rpm、滞留時間3分間の条件で、230℃で溶融混錬して、各帯電防止性樹脂組成物(Y)を得た。
得られた各帯電防止性樹脂組成物(Y)について、後述の<評価方法>に従って、評価した。結果を表2に示す。
【0076】
(1)帯電防止性[ASTMD257に準拠]
各樹脂組成物について環状ダイを備えた押出成形機[型番「2D25S」、(株)東洋精機製作所製、シリンダー温度130℃]を使用し、発泡剤としてブタンを圧入し(樹脂組成物100重量部に対して5重量部)、混練押出しして、発泡シート(厚さ1mm、0.1g/cm3)を得た。発泡シートから切り出した試験片(100×100mm)を用い、23℃、湿度50%RHの条件で48時間静置後、超絶縁計「DSM-8103」[日置電機(株)製]を用いて同条件の雰囲気下で測定した。
【0077】
(2)ガラス板汚染性(耐汚染性の評価)
上記(1)で成形した発泡シートについて、シートから切り出した各試験片(100×100mm)と2枚のガラス板(120×120×2mm)を、それぞれ超純水(比抵抗17.5MΩ・cm)を用いて充分に水洗した後、循風乾燥機内50℃で2時間乾燥させる。該試験片を表裏面から該2枚のガラス板で挟んで密着させ、さらに片面のガラス板上に1kgの重しを置き、95℃で62時間静置する。その後、試験片を取り除き、2枚のガラス板の試験片接触面を観察し、付着物の有無でガラス板汚染性を以下の<評価基準>で評価した。なお、ガラス板汚染性によりシート表面析出物の有無を評価できる。
【0078】
<評価基準>
◎:付着物が全くない。
○:わずかに付着物あり。
△:付着物あり。
×:付着物が極めて多い。
【0079】
(3)ガラス板搬送性(ハンドリング性の評価)
上記(1)で成形した発泡シートについて、発泡シートから切り出した各試験片(200×200mm)をアクリル板(200×300×5mm)の上に張り付ける。該試験片の上にガラス板(120×120×3mm)を乗せ、アクリル板を傾けてガラス板が滑り落ち始める角度を測定し、以下の<評価基準>で評価した。
【0080】
<評価基準>
◎:30°以上
○:20以上、30°未満
△:10°以上、20°未満
×:10°未満
【0081】
【0082】
<実施例21~25、比較例21>
表3に示す配合組成に従って、帯電防止剤(Z)、ポリオレフィン樹脂(E)をヘンシェルミキサーで3分間ブレンドした後、ベント付き2軸押出機にて、回転速度100rpm、滞留時間3分間の条件で、230℃で溶融混錬して、各帯電防止性樹脂組成物(Y)を得ながら、得られた各帯電防止性樹脂組成物(Y)を、T型ダイを備えた2軸押出機を用いて、200℃、滞留時間5分の条件で溶融押出した後、引き取り速度2m/minで引き取りながら10~20℃の冷却ロールで急冷することにより、厚さ100μmのフィルムの成形を60分間、実施した。 各実施例の結果を後述の<評価方法>に従って、評価した。 結果を表3に示す。
【0083】
(1)帯電防止性[ASTMD257に準拠]
得られたフィルムから切り出した試験片(100×100mm)を用い、23℃、湿度50%RHの条件で48時間静置後、超絶縁計「DSM-8103」[日置電機(株)製]を用いて同条件の雰囲気下で測定した。
【0084】
(2)ロール汚染性(耐汚染性の評価)
60分間成形した後の冷却ロールの金属面について、目視で汚れの有無を以下の<評価 基準>で評価した。
【0085】
<評価基準>
◎:付着物が全くない。
○:わずかに付着物あり。
△:付着物あり。
×:付着物が極めて多い。
【0086】
(3)ガラス板搬送性(ハンドリング性の評価)
得られたフィルムから切り出した各試験片(200×200mm)をアクリル板(200×300×5mm)の上に張り付ける。該試験片の上にガラス板(120×120×3mm)を乗せ、アクリル板を傾けてガラス板が滑り落ち始める角度を測定し、以下の<評価基準>で評価した。
【0087】
<評価基準>
◎:30°以上
○:20以上、30°未満
△:10°以上、20°未満
×:10°未満
【0088】
【0089】
<実施例31~35、比較例31>
表4に示す配合組成に従って、帯電防止剤(Z)、ポリオレフィン樹脂(E)をヘンシェルミキサーで3分間ブレンドした後、ベント付き2軸押出機にて、回転速度100rpm、滞留時間3分間の条件で、230℃で溶融混錬して、各帯電防止性樹脂組成物(Y)を得た。得られた各帯電防止性樹脂組成物(Y)について、後述の<評価方法>に従って、評価した。 結果を表4に示す。
【0090】
(1)帯電防止性[ASTM D257に準拠]
各樹脂組成物について射出成型機[商品名「PS40E5ASE」、日精樹脂工業(株)]を用い、シリンダー温度230℃、金型温度50℃にて、成形サイクル30秒にて、平板試験片(縦100mm、横100mm、厚さ2mm)を作成した。平板試験片について、23℃、湿度50%RHの条件で48時間静置後、超絶縁計「DSM-8103」[日置電機(株)製]を用いて同条件の雰囲気下で測定した。
【0091】
(2)金型板汚染性(耐汚染性の評価)
各樹脂組成物について射出成形機[ 商品名「PS40E5ASE」、日精樹脂工業(株)]を用い、シリンダー温度230℃、金型温度50℃、成形サイクル30秒にて、平板試験片(縦70mm、横70mm、厚さ2mm) を1000ショット射出成形後、下記の<評価基準>により金型汚染性の評価を行った。
【0092】
<評価基準>
◎:金型表面に変化がみられない。
○:金型表面に汚れがわずか。
△:金型表面に汚れが認められる。
×:金型表面が極めて汚れ、成形品の外観が悪い。
【0093】
【0094】
表1~4の結果から、ポリオレフィン樹脂用帯電防止剤(Z)は、比較のものと比べて、成形品に、優れた帯電防止性を付与し、さらに成形品は、耐汚染性、ハンドリング性に優れることが分かる。