(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037704
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】循環区画を有する混合装置および関連する方法
(51)【国際特許分類】
B01J 14/00 20060101AFI20240312BHJP
B01J 19/00 20060101ALI20240312BHJP
B01J 19/08 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
B01J14/00 Z
B01J19/00 321
B01J19/08 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023144264
(22)【出願日】2023-09-06
(31)【優先権主張番号】FR2208946
(32)【優先日】2022-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】523340557
【氏名又は名称】クフルイディクス
(71)【出願人】
【識別番号】509257684
【氏名又は名称】ユニベルシテ ドゥ ストラスブール
(71)【出願人】
【識別番号】501089863
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ サイアンティフィク
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】バンサン パスカル マリシェ
(72)【発明者】
【氏名】トマ エルマン
(72)【発明者】
【氏名】カロリーヌ ジュリー テボー
(72)【発明者】
【氏名】リュカ ジャン ダニエル ジャシェティ
【テーマコード(参考)】
4G075
【Fターム(参考)】
4G075AA13
4G075AA23
4G075AA39
4G075BA10
4G075BB05
4G075BD15
4G075BD16
4G075CA42
4G075DA02
4G075EB01
4G075EB50
4G075FC20
(57)【要約】
【課題】循環区画を有する混合装置および関連した方法を提供する。
【解決手段】本発明は、循環区画(16)を画定するチャンバ(12)を有する混合装置(10)に関し、循環区画(16)は、少なくとも1種の基液(20)と混合用流体(22)を含み、混合用流体(22)は基液(20)よりも常磁性が小さく、混合用流体(22)は少なくとも1種の第1の流体、を含み、および/または、からなり、混合装置(10)は少なくとも1つの磁気要素を有しており、それが循環区画(16)中に磁場を発生させ、それによって混合用流体(22)が基液(20)中に流入し、チャンバ(12)は、第1の流体の循環区画(16)中への少なくとも1つの注入点(24)を有し、第1の注入点(24)は基液(20)中に開口している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環区画(16、116)を画定するチャンバ(12、112)を有する混合装置(10、110)であって、前記循環区画(16、116)は、少なくとも1種の基液(20、120)および混合用流体(22、122)を含み、前記混合用流体(22、122)は前記基液(20、120)よりも常磁性が低く、前記混合用流体(22、122)は、少なくとも1種の第1の流体、を含み、および/または、からなり、前記混合装置(10、110)は、前記循環区画(16、116)中に磁場を発生させる少なくとも1つの磁気要素(14、114)を有しており、それによって前記混合用流体(22、122)は前記基液(20、120)内を流れ、前記チャンバ(12、112)は、前記循環区画(16、116)中に前記第1の流体の、少なくとも第1の注入点(24、124)を有しており、前記第1の注入点(24、124)は、前記基液(20、120)中に、または前記混合用流体(22、122)中に、開口しており、前記第1の流体は、前記基液(20、120)と非混和性である、混合装置。
【請求項2】
前記混合用流体(22)が、少なくとも1種の第2の流体、を含む、および/または、からなり、前記チャンバ(12)が、前記循環区画(16)中への前記第2の流体の第2の注入点(26)を有し、前記第2の注入点(26)は、前記基液(20)中に開口している、請求項1記載の混合装置。
【請求項3】
前記第1の注入点(24)および前記第2の注入点(26)が、前記チャンバ(12)の両方の側面に、前記チャンバ(12)の短手方向(Y)に沿って、配置されている、請求項2記載の混合装置。
【請求項4】
前記第1の流体および前記第2の流体が、同じ常磁性の特性を有する、請求項2または3記載の混合装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの第1の注入点(24、124)が、前記循環区画(16)の外郭に配置されている、請求項1~3のいずれか1項記載の混合装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの磁気要素(14、114)が、前記チャンバ(12、112)を少なくとも部分的に取り囲む磁気多重極(32、132)を有しており、前記磁気多重極(32、132)が、磁場を発生させるのに好適であり、それによって前記磁場が、前記循環区画(16、116)の中心において、前記循環区画(16、116)中で最小値を有する、請求項1~3のいずれか1項記載の混合装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの磁気要素(14)が、前記チャンバ(12)の閉鎖された端部に配置された付加的な要素(34)を有する、請求項1~3のいずれか1項記載の混合装置。
【請求項8】
前記基液(20、120)が、強磁性流体である、請求項1~3のいずれか1項記載の混合装置。
【請求項9】
前記混合用流体(22、122)が、少なくとも1種の第2の流体、を含む、および/または、からなり、前記チャンバ(12、112)が、前記第2の流体の、前記循環区画(16、116)中への第2の注入点(26、126)を有しており、前記第2の注入点(26、126)が、前記循環区画(16、116)の外郭に配置されている、請求項1~3のいずれか1項記載の混合装置。
【請求項10】
前記第2の注入点(126)が、前記チャンバ(112)の端部(118)に配置されており、前記端部(118)が、流れの方向(X)に沿った、前記チャンバ(112)の端部である、請求項9記載の混合装置。
【請求項11】
以下の工程、
・請求項1~3のいずれか1項記載の混合装置(10)を準備すること、
・前記少なくとも1種の流体の前記循環区画(16)中への前記少なくとも1つの第1の注入点(24)を介した注入、前記第1の流体は、前記基液(20)と非混和性である、を含む混合方法。
【請求項12】
前記循環区画(16)において、酸塩基反応、酸化反応、還元反応、アミド化反応、縮合反応、加水分解反応、シアノ化反応、カップリング反応、エステル化反応、ハロゲン化反応、有機反応、または無機反応の中の化学的方法が引き起こされる、請求項11記載の混合方法。
【請求項13】
前記混合装置が、請求項2記載の混合装置であり、沈殿および/または結晶化および/またはペプチゼーションおよび/またはフロキュレーションおよび/または凝集および/または重合および/または固体不均一系触媒を含む反応を含む少なくとも1つの反応が、前記循環区画(16)において、前記第1の流体と前記第2の流体との間で引き起こされ、および/または前記薬品が固体である反応、請求項11記載の混合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合装置および関連する混合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
混合装置は、例えば、互に反応する2種の液体を混合するのに用いられる。
【0003】
そのような混合装置は、例えば、Yリンクを備えたマイクロ反応器であり、そこでは2種の反応物が、それぞれの分岐を介して到達して、そして1つの分岐へと合流する。
【0004】
マイクロ反応器の経路は、例えば、50μm~1mmの範囲の直径を有し、通常は10mL/分未満の流量を有し、これは、小さなレイノルズ数に相当する。
【0005】
それによって、経路中の流れは層流であり、それによって2つの液体は、対流によってよりも、より拡散によって混合する。
【0006】
例えば、溶媒の分子が、拡散のみによって1mmの経路の距離を横切るためには約250秒間かかり、そして従って、非常に低いレイノルズ数の純粋な層流条件の下で、拡散のみによって混合される特定の場合において、1mmの経路で2つの液体が合流する場合には、2つの水性液体が混合されたと考えるには約250秒間かかる。
【0007】
2つの薬品の間の混合を向上させるためには、その2つの薬品の合流の後に、スタティックマイクロミキサーまたは動的ミキサーを加えることが可能である。
【0008】
しかしながら、そのようなマイクロ反応器の適正な機能は、固体の出現、例えば沈殿物の形成によって、損なわれる。そのようなマイクロ反応器は、従って、特に経路の大きさを考慮すると、固体によって閉塞される可能性がある。
【0009】
従って、本発明の目標は、流体を迅速に混合し易く、そして起こり得る固体の出現を操り易い、混合装置を提案することである。
【0010】
この目的で、本発明の主題は、循環区画を画定するチャンバを含む混合装置であり、循環区画は、少なくとも1種の基液と1種の混合用流体を含み、混合用流体は、基液よりも常磁性が低く、混合用流体は、少なくとも1種の第1の流体、を含み、および/または、からなり、混合装置は、循環区画内に磁場を発生させる少なくとも1つの磁気要素を含んでいて、それによって混合用流体が、基液内に流れ、チャンバは、第1の流体の循環区画中への少なくとも第1の注入点を有しており、第1の注入点は、基液中に、又は混合用流体中に、好ましくは基液中に、開口し、第1の流体は、基液とは非混和性である。
【0011】
基液によって形成される液体の壁は、循環区画を閉塞することなしに、固体を操り易くする。
【0012】
更には、好ましくは、少なくとも1種の第1の流体の基液への注入は、これ以降により詳細に説明されるように、慣用のマイクロ反応器よりもより有効な混合をもたらす。
【0013】
本発明の他の詳細な態様によれば、混合装置は、個別に、または技術的に可能なすべての組み合わせに従って、下記の特徴の1つもしくは複数を有している。
・混合用流体は、少なくとも1種の第2の流体、を含む、および/または、からなり、チャンバは、第2の流体の循環区画中への第2の注入点を含んでおり、第2の注入点は、基液中に開口している。
・第1の注入点および第2の注入点は、チャンバの両側に、チャンバの横方向に配置されている。
・第1の流体および第2の流体は、同じ常磁性を有している。
・少なくとも1つの第1の注入点は、循環区画の外郭上に配置される。
・少なくとも1つの磁気要素が、チャンバを少なくとも部分的に取り囲む磁気多重極を含んでおり、磁気多重極は、磁場が循環区画において、循環区画の中心で最小値を有するように、磁場を発生させるのに好適である。
・少なくとも1つの磁気要素は、チャンバの閉鎖された端部に配置された更なる要素を含んでいる。
・基液は、強磁性流体である。
・混合用流体は、少なくとも1種の第2の流体、を含む、および/または、からなり、チャンバは、第2の流体の循環区画中への第2の注入点を含み、第2の注入点は、循環区画の外郭上に配置されている。ならびに/あるいは、
・第2の注入点は、チャンバの一方の端部に配置されており、そしてこの端部は、循環の方向に沿ったチャンバの一方の端部である。
【0014】
本発明は、以下の工程を含む混合方法に更に関係している。
・混合装置、例えば上記で説明したものへ供給する工程、
・少なくとも1つの第1の注入点を介した、循環区画中への少なくとも第1の流体の注入、第1の流体は基液と非混和性である。
【0015】
混合方法は、例えば、循環区画において、酸塩基反応、酸化反応、還元反応、アミド化反応、凝縮反応、加水分解反応、シアノ化反応、カップリング反応、エステル化反応、ハロゲン化反応、有機反応、又は無機反応の中の化学的方法、が行われるようなものである。
【0016】
本発明の特定の態様によれば、混合方法は、以下の特徴を有している:混合装置において、第1の流体と第2の流体の間の循環区画で、沈殿および/または結晶化および/またはペプチゼーションおよび/またはフロキュレーションおよび/または凝集および/または重合および/または固体不均一系触媒を含む反応を含む少なくとも1つの反応、ならびに/あるいは反応体が固体である反応、が行われる。
【0017】
本発明の他の特徴および利点が、例としてのみ与えられる以下の説明を読むこと、および添付の図面を参照することによって明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明による混合装置の第1の例の平面Aに沿った断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示された混合装置の平面Bに沿った断面図である。
【
図4】
図4は、本発明による混合装置のための磁界強度の分布の例である。
【
図5】
図5は、本発明による混合装置の第2の例の平面Vに沿った断面図である。
【
図6】
図6は、
図5に示された混合装置の平面VIに沿った断面図である。
【0019】
本発明の第1の態様による混合装置が
図1および3に示されている。
混合装置10は、チャンバ12および少なくとも1つの磁気要素14を含んでいる。
チャンバ12は、循環区画16を画定する。
循環区画16は、循環の方向Xに沿って延在する。
【0020】
ここで、用語「上流」および「下流」は、循環区画16における流体の流れの全体的な方向に沿った流れの方向Xに沿って規定される。
【0021】
循環区画16は、いずれかの所望の形状を有している。
循環区画16は、例えば、循環の方向Xに沿って不変の断面を有している。
循環区画16は、例えば基部を備えた円筒である。
基部は、例えば円筒形である。あるいは、基部は、示されているように正方形、または矩形である。
【0022】
1つの態様では、循環区画は、例えば3mmの直径を有する円筒形の基部を有している。
チャンバ12は、そして従って循環区画16は、ここでは循環の方向Xに沿って、閉鎖された端部18を有している。
閉鎖された端部18は、ここでは循環区画16の上流の端部に相当する。
循環の方向Xに沿った反対側に、チャンバ12は、開放端部を有しており、下流端部と称され、例えば他の装置と連結される。
【0023】
循環区画16は、循環の方向Xに沿って1cm~100mの範囲の大きさを有している。
循環区画16は、少なくとも1種の基液20および混合用流体22,ここでは基液20と混合用流体22、を含んでいる。
混合用流体22は、例えば、液体、例えば液体エマルジョン、または固体を含む液体、例えば「スラリー」と称されるもの、あるいは気体である。
混合用流体22は、基液20よりも、常磁性が低いか、またはより低い常磁性の感受性を有している。
【0024】
基液20は、例えば、強磁性流体である。
あるいは、基液20は、常磁性流体のいずれかの他の種類、例えば、室温で常磁性である以下の材料の1つである:硫酸銅、他の第一鉄塩、パラジウムまたは白金。
あるいは、基液20は、レアアースイオン、例えばGd3+、Tb3+、Dy3+、Ho3+、Er3+、Tm3+を含む溶液である。
【0025】
可能性のある基液20の他の例としては、安定ラジカルを有する物質、例えば窒素酸化物、例えばTEMPO(2,2,6,6-tetramethylpiperidin-1-yl)oxyl)、遷移金属の、もしくはランタニドのイオン性液体、例えば[PR4]2[CoCl4]、ここで[PR4]はトリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムであり、ランタニドを含む液晶、例えば[Dy(LH)3(no3)3、ここでLHは、シッフ塩基の配位子、レアアース金属または安定カルベン(三重項)が挙げられる。
【0026】
混合用流体22は、少なくとも第1の流体、ここでは第1の流体と第2の流体、を含む、および/または、からなる。
第1の流体および第2の流体は、基液よりも、それぞれより低い常磁性である。
第1の流体および第2の流体は、例えば反磁性である。
第1の流体および第2の流体のそれぞれは、それぞれが例えば基液と非混和性である。
第1の流体および第2の流体は、例えば同じ常磁性の特性を有している。
第1の流体は、例えば、液体、気体または固体を含む液体である。
第2の流体は、例えば、液体、気体または固体を含む液体である。
【0027】
1つの態様では、第1の流体および第2の流体の中の少なくとも一方は、液体または固体を含む液体であり、そして混合用流体は液体または固体を含む液体である。
混合用流体22は、これ以降に記載される少なくとも1つの磁気要素によって、基液の内部を流れる。
より具体的には、基液20が、循環の方向Xの放射状のまわりで、そしてここでは有利には閉鎖された端部18で、混合用流体、ここでは液体、の周りを、取り囲む。
【0028】
混合用流体22は、循環区画16の境界を定める内壁と接触しない。
ここでは、混合用流体22は、基液の内部で、円筒系の流れを形成する。
あるいは、混合用流体22は、基液の内部で、三角形または正方形の基部を有する円筒形の流れを形成する。
【0029】
この流れは、10μm~10cmの範囲の直径、より詳細には100μm~1mmの範囲、例えば1mmに等しい直径を有している。
閉鎖された端部18を覆う基液層20は、例えば流れの方向Xに沿って、10μm以上、例えば0.5mm以上の大きさを有している。
チャンバ12は、第1の流体の循環区画16中への少なくとも1つの第1の注入点、ここでは第1の流体の第1の注入点24および第2の流体の第2の注入点26、を有している。
【0030】
第1の流体を供給する第1の供給ライン28は、第1の注入点24で循環区画に開口している。
第1の注入点24は、例えば、第1の流体の供給源に連結されている。
第2の流体を供給する第2の供給ライン30は、第2の注入点24で、循環区画に開口している。
第2の注入点26は、例えば、第2の流体の供給源に連結されている。
それぞれの注入点24、26は、基液20中に開口している。
より具体的には、それぞれの注入点24、26は、循環区画16の外郭に配置されている。
それぞれの注入点24、26は、例えば循環区画16の境界を定めるチャンバ12のそれぞれの壁に配置されている。
より具体的には、それぞれの供給ライン28、30は、それぞれの壁に開口している。
【0031】
示された態様では、第1の注入点24および第2の注入点26は、チャンバの両方の側面に、例えば、ここではチャンバ12の短手方向Yに沿って、配置されており、チャンバ12の短手方向Yは、循環の方向Xに垂直である。
より具体的には、第1の注入点24および第2の注入点26は、短手方向Yに沿って一列になっている。
それぞれの供給ライン28、30が、その供給ラインが開放された場合に、その供給ラインが循環区画16の上流を向くように方向づけられている。
【0032】
あるいは、それぞれの供給ライン28、30は、流体の流れが全体としてY型を有するように、ラインが開放された場合に、循環区画の下流に方向づけられている。
それぞれの供給ライン28、30は、それぞれの供給方向D1、D2を有している。
それぞれの供給方向D1、D2は、短手方向Yに、そして循環の方向Xに、平行な平面内に延在している。
【0033】
より具体的には、ここでは、供給の方向は、ここでは単一の平面内に延在している。
それぞれの供給方向D1、D2は、それぞれが、循環の方向Xとそれぞれの角度α、βを形成する。
角度α、βは、例えば20°~90°の範囲である。
角度α、βは、例えば等しい。
チャンバ12は、ここでは正中面Pに対して、対称的である。
【0034】
示された例では、正中面Pは、循環の方向Xに、そして加えてここでは、横方向Zに平行であり、横方向Zは、循環の方向Xに対して、そして短手方向Yに対して垂直である。
それぞれの供給ラインは、ここでは100μm~1mmの範囲の、ここでは実質的に0.8mmに等しい、直径を有している。
別の態様では、第1の注入位置における、および第2の注入位置における、注入は、それぞれ横方向Zに沿って方向づけられている。
【0035】
他の態様(示されてはいない)では、チャンバは、上記に記載した第1と第2の注入点と同様の、厳密に3つ以上の注入点を有しており、混合用流体は、注入点において注入された全ての流体、を含む、および/または、からなっている。
【0036】
少なくとも1つの磁気要素14が循環区画内に磁場を発生させ、それによって混合用流体、ここでは液体が、より具体的には、基液20が混合用流体、ここでは液体を、循環の方向Xの周りを放射状に、そしてここでは有利には、閉鎖された端部18において、取り囲むように、上記のように、基液内を流れる。
【0037】
示された例では、少なくとも1つの磁気要素14は、磁気多重極を含み、示された例では、磁気四重極が、少なくとも部分的にチャンバ12を取り囲む。少なくとも1つの磁気要素14は、ここでは、閉鎖された端部18に配置された付加的な要素34を更に含んでいる。
【0038】
磁気多重極32は、物を形成する部品もしくは一群の部品(例えば、ばらばらの部品および離れた部品を含む)を表し、この物は複数の磁極を有している。
磁気多重極32は、流れの方向Xに沿って、チャンバの全延長範囲に亘って延在している。
磁気多重極32は、
図4に示された例において示されるように、磁場が、循環区画16の中心において最も弱くなるように、磁場を発生させるために好適である。
【0039】
磁気多重極32は、ここではチャンバの外部壁に対して延在しており、この壁は、横方向Zに沿ったチャンバの一方の端部である。
より具体的には、磁気多重極32は、循環の方向Xおよび短手方向Yに沿って、循環区画16を取り囲む。
【0040】
示された態様において、磁気多重極32は、複数の磁石、例えば4つの磁石、を含む、より具体的には、によって形成される。
例えば、それぞれの磁石は、ここでは磁気多重極の極を形成する。
【0041】
あるいは、磁気多重極32は、ここでは循環の方向Xに沿って、特には循環の方向Xに沿って、循環区画16の大きさをカバーするように、順々に配置された複数の磁石を含んでいる。例えば、磁気多重極32は、複数の磁石、を含む、より具体的には、からなり、複数の磁石からなる磁気多重極は、循環の方向に沿って、端と端を接して配置される。
【0042】
それぞれの磁石は、例えば永久磁石、例えばネオジム磁石であり、すなわちネオジウム、鉄およびホウ素の合金から本質的に構成されているか、あるいはフェライト磁石、あるいはアルミニウム、ニッケルおよびコバルトから主に構成された、AlNiCo磁石と称される磁石、あるいはサマリウム-コバルト磁石で、SmCo磁石と称される磁石である。
それぞれの磁石は、例えば等級N42のものである。
【0043】
あるいは、それぞれの磁石は、電磁石である。
あるいは、磁気多重極は、ブロックで、より具体的には、その磁石内部に、複数の磁化方向を有する多重極磁石で作られている。
あるいは、多重極は、それぞれが、その磁石内に、複数の磁化方向を有する、複数の多重極磁石で作られている。
【0044】
示された例では、磁気四重極32は、第1の帯磁方向を有する2つの第1の磁石および第2の帯磁方向を有する2つの第2の磁石を有している。
それぞれの第1の磁石は、第2の磁石の一方に隣接して、そして他の第1の磁石の反対側に配置されている。
【0045】
第1および第2の磁石は、それぞれ同じ強度の磁場を発生させる。
磁場の強度は、例えば0T~5Tの範囲、より好ましくはここでは0T~0.5Tの範囲である。
磁場の最大強度、すなわち磁場が最大の位置における磁場の強度は、例えば1mT超、例えば0.05T~0.5Tの範囲である。
【0046】
より具体的には、示された例では、磁気四重極32は、横方向Zに沿った第1の帯磁方向を有する2つの第1の磁石36、38、および横方向Zに沿った第2の帯磁方向を有する2つの第2の磁石40、42を含んでおり、第2の帯磁方向は、第1の帯磁方向と逆である。
【0047】
第1の磁石36、38は、横方向Zに沿って、チャンバ12の両方の側面に配置されている。
第1の磁石36、38は、ここでは50μm~10cmの範囲の、ここでは4mmに等しい距離で間隔が空いている。
第1の磁石36、38は、横方向Zに沿って一列になっている。
【0048】
第2の磁石40、42は、横方向Zに沿って、チャンバ12の両側の側面に配置されている。
第2の磁石40、42は、ここでは50μm~10cmの範囲の、ここでは4mmに等しい距離で間隔が空いている。
第2の磁石40、42は、横方向Zに沿って一列になっている。
【0049】
それぞれの第1の磁石36、38は、短手方向Yに沿って、対応する第2の磁石40、42の隣に配置されている。
ここでは、第1の磁石36、38と対応する第2の磁石40、42との間には、空間はない。
【0050】
あるいは、第1の磁石36、38および対応する第2の磁石40、42は、10mm以下の、より好ましくは2mm以下の距離で間隔が空けられている。
第1の磁石36、38と対応する第2の磁石40、42との間の距離は、例えばその距離の方向に沿って測定された磁石のそれぞれの大きさよりも小さい。
【0051】
それぞれの第1の磁石36、38および対応する第2の磁石49、42は、上述の外部壁の全体に亘って延在している。
【0052】
他の態様(示されてはいない)では、第1の磁石および第2の磁石は、示された態様と同じ方法で配置されているが、しかしながら第1の磁石は、横方向Zに沿った第1の帯磁方向を有しており、そして第2の磁石は、横方向Zに沿った第2の帯磁方向を有しており、第2の帯磁方向は、第1の帯磁方向と逆である。
【0053】
他の態様(示されてはいない)では、多重極は、3以上の数の極を、4と等しいか否かにかかわらず、有している。
【0054】
多重極は、例えば欧州特許第3571405B1の
図17~21に示されたように、チャンバの周りに配置されている。
【0055】
付加的な要素34は、基液20をそれに向かって引き寄せるように、循環の方向Xに沿った帯磁方向を有している。
付加的な要素34は、例えば付加的な磁石である。
付加的な要素34は、チャンバ18の閉鎖された端部に対して配置されている。
【0056】
ここで、付加的な要素34は、横方向Zおよび短手方向Yに沿って、循環区画16に関して、中心に置かれている。
付加的な磁石34は、例えば永久磁石、例えばネオジム磁石であり、すなわち、ネオジム、鉄およびホウ素の合金から本質的に構成されているか、あるいはフェライト磁石、あるいは主にアルミニウム、ニッケルおよびコバルトで構成された、AlNiCo磁石と称される磁石、あるいはサマリウム-コバルト磁石で、SmCo磁石と称される磁石である。
【0057】
あるいは、付加的な磁石34は、電磁石である。
付加的な磁石34によって生成される磁場は、ここでは循環区画16中の閉鎖された端部18で最大である。
1つの例が、特には、
図4に示されている。
【0058】
特には、このような方法で、基液が、混合用流体、ここでは液体を、閉鎖された端部18において、取り囲むことが可能となり、それによって混合用流体22は、閉鎖された端部18とは接触しない。
【0059】
基液20は、閉鎖された端部18と混合用流体22の間に所定の厚さを形成する。この所定の厚さは、例えば混合用流体、ここでは液体、の流れの直径の0~100倍、より具体的には0.5mm~10cmの範囲である。
【0060】
他の態様(示されてはいない)では、混合用流体、ここでは液体は、第1の流体のみからなる。チャンバは、第1の流体のための単一の注入点を有している。第1の流体は、例えば多成分流体である。本発明の装置は、例えば第1の流体を、次いで、その流体を構成する複数の成分を混合するように、混合するのに用いられることができる。
【0061】
別の代替の態様(示されてはいない)では、チャンバは、異なる流体のための厳密に2つより多い注入点を含んでいる。それらの注入点は、例えば循環区画の外縁で、循環の方向に垂直な平面に亘って分布されている。混合用流体、ここでは液体は、異なる流体の混合物である。
【0062】
混合方法が、上記の混合装置について、ここに説明される。
混合装置10が提供される。
【0063】
示されている例では、第1の流体は、第1の注入点24で循環区画中に注入される。これによって、第1の流体は、基液20中に流入する。
【0064】
示されている例では、第2の流体は、第2の注入点26で循環区画中に注入される。これによって、第2の流体は、基液20中に流入する。
第1の流体および第2の流体のそれぞれは、基液20によって、循環区画の中心、より具体的には、磁場が最も弱いところ、に向かって押し流される。
【0065】
更に、第1の流体および第2の流体のそれぞれは、基液20によって、閉鎖された端部18から第1の流体および第2の流体が離れて動くように、置き換えられる。
第1の流体および第2の流体は、それによって中心の区画、より具体的には基液20によって形成される閉鎖された端部から離れたところで混合されて、混合用流体22を形成する。
混合用流体22は、次いで循環の方向Xに沿って、基液20に取り囲まれて、流れる。
【0066】
チャンバが、異なる流体の、厳密に2つよりも多い注入点を有する態様では、異なる流体のそれぞれは、循環区画の中心に向かって、そしてここでは閉鎖された端部から離れて、基液によって置き換えられる。これらの異なる流体の混合は、従って高められる。
【0067】
チャンバが単一の流体注入点を有する態様では、その流体は、基液によって、循環区画の中心に向かって、そしてここでは閉鎖された端部から離れて、置き換えられる。第1の流体の混合は、それによって起こる、第1の流体の異なる成分の間の反応を促進する可能性が高い。
【0068】
循環区画では、目標の、もしくは二次的製品として、少なくとも1種の沈殿、および/または結晶化および/またはペプチゼーションおよび/またはフロキュレーションおよび/または凝集および/または重合および/または固体不均一系触媒を含む反応、ならびに/あるいは反応体が固体である反応を含む少なくとも1つの反応が、第1の流体と第2の流体の間で起こる。
【0069】
前記反応の全てには、混合装置による固体の旨い処理が含まれている。
本発明の場合には、基液の存在が、固体が旨く処理されることを可能にさせる。
実際に、固体が蓄積しそして流体の流れを閉塞するスタティックミキサーとは異なり、固体は、基液の液体の性質によって、基液に対して蓄積することはできない。同様に、能動的ミキサーの羽根は、付着物が付き易い。
最後に、基液の存在が、固体の排出のために用いられる本発明とは異なり、慣用の装置の下流のマイクロ流体経路の壁は、閉塞し易い。
【0070】
それによって、本混合装置は、固体の存在によって閉塞されてしまわず、反対に、固体が循環区画中を循環することを可能にさせる。
【0071】
沈殿を伴う少なくとも1つの反応は、例えば、以下の反応の1つを含んでいる:塩化銀の形成(塩化ナトリウムと硝酸銀との間の反応による)、グリニャール化合物および/または有機リチウム薬品および/または有機銅化合物との反応、金属の、例えば尿素を用いた、水中での、沈殿(例えば、アルミニウム、ガリウム、トリウム、ビスマス、鉄および/または錫)。
【0072】
固体不均一系触媒を含む少なくとも1つの反応、例えばパラジウム(Pd)を触媒として用いる反応、例えば以下の反応の1つ、を含んでいる。
・酸化反応、例えばアルコール酸化、
・還元反応、例えば選択的水素添加、CC結合の還元、CO部分の還元、ニトロ部分の還元、脱カルボニル、イミネーション(imination)、SO3H部分の還元、またはニトリル部分の還元、あるいは、
・カップリング反応、例えば以下の反応の1つ:薗頭・萩原グレーサーカップリング、ウルマン反応、クロスカップリング環化、C-Xカップリング、または鈴木・宮浦。
【0073】
固体不均一系触媒を含む少なくとも1つの反応は、例えばゼオライトを触媒として用いる反応、例えば以下の反応の1つを含んでいる:水素添加分解、アレーン類のフェノールへのヒドロキシル化反応、ベンゼンのアルキル化反応、ケトンのアンモキシメーション、プロピレンのエポキシ化、またはプロピレンオキシドの異性化。
【0074】
固体不均一系触媒を含む少なくとも1つの反応、例えばニッケルを触媒として用いる反応は、例えば以下の反応の1つを含んでいる:求電子的アルキルのクロスカップリングまたは鈴木・宮浦カップリング。
【0075】
固体不均一系触媒を含む少なくとも1つの反応、例えば金(Au)を触媒として用いる反応は、例えば以下の反応の1つを含んでいる:酸化反応、例えばCO部分の酸化。
【0076】
固体不均一系触媒を含む少なくとも1つの反応、例えば白金(Pt)を触媒として用いる反応は、以下の反応の1つを含んでいる:酸化反応、例えばCO部分の酸化またはアルコールの酸化、あるいは還元反応、例えば選択的水素添加。
【0077】
固体不均一系触媒を含む少なくとも1つの反応、例えばルテニウム(Ru)を触媒として用いる反応は、例えば還元反応、例えば選択的水素添加、を含んでいる。
【0078】
固体不均一系触媒を含む少なくとも1つの反応、例えばロジウム(Rh)を触媒として用いる反応、例えばヒドロホルミル化反応を含んでいる。
【0079】
薬品が固体である少なくとも1つの反応は、硝酸中に炭酸マグネシウムを溶解する反応を含んでいる。
【0080】
固体と同様に、高度に粘稠な液体を含む反応は、本発明による混合装置で行われるのが適当である。
そのような反応は、例えば重合反応またはコロイドの形成である。
【0081】
循環区画では、化学的方法、例えば以下のリストからの化学的方法が実施される。
・酸-塩基反応、例えば硫酸と水酸化カリウムとの反応、または、
・酸化反応、例えば第1級、第2級、もしくはベンジルアルコールの酸化、または、
・還元反応、例えばエステル還元反応、選択的水素添加、CC結合の還元、CO部分の還元、ニトロ部分の還元、脱カルボニル、イミネーション、SO3Hの還元、またはニトリル部分の還元、または、
・アミド化反応、例えばペプチド合成または環状分子官能化、または、
・縮合反応、例えばアドール縮合またはアシル化、または、
・加水分解反応、例えばエステルの、アセタールの、もしくはアミドの、加水分解、または、
・シアノ化反応、例えばニトリル部分によるアレーンの官能化またはアルデヒドのシアノ化、または、
・カップリング反応、例えば以下の反応の1つ:薗頭、檜山、グレーサーカップリング、ウルマン反応、クロスカップリング環化、C-Xカップリング、または均一系触媒を用いた鈴木・宮浦カップリング。
・エステル化反応、例えばカルボン酸の、酸塩化物の、または酸無水物の、エステル化、または、
・ハロゲン化反応、例えば臭素化または塩素化、または、
・他の種類の有機反応、例えばジアゾ化または環状付加反応、または、
・無機反応、例えば水酸化リチウムの、または他の金属塩の形成。
【実施例0082】
例1
Villermaux-Dushmanプロトコルが、混合装置によって行われた薬品の混合を観察するために用いられる。
そのようなプロトコルは、以下の文献に詳細に説明されている:Commenge, J.-M. & Falk, L. Villermaux-Dushman protocol for experimental characterization of micromixers. Chemical Engineering and Processing: Process Intensification 50, 979-990 (2011)。
【0083】
第1の流体は硫酸もしくはH2SO4を含んでいる。より具体的には、第1の流体は、15mMもしくはミリモルのモル濃度を有する硫酸水溶液である。
【0084】
第2の流体は、NaOH中のKI(aq)+KIO3混合物およびH2BO3/H3BO3(aq)である。
第2の流体は、第1の溶液と第2の溶液の混合物である。
【0085】
第1の溶液は、16mMのモル濃度を有するヨウ化カリウムKI、45mMのモル濃度を有する水酸化ナトリウムNaOH、および45mMのモル濃度を有するホウ酸H3BO3を含んでいる。
【0086】
第2の溶液は、3mMのモル濃度を有するヨウ化カリウムKIO3、45mMのモル濃度を有する水酸化ナトリウムNaOH、および45mMのモル濃度を有するホウ酸H3BO3を含んでいる。
【0087】
2つの反応が、第2の流体が第1の流体とマイクロ反応器内で混合されたときに、同時に起こる。
・ホウ酸塩イオンを含む緩衝液の中和反応:
H2BO3
--+H+ → B(OH)3、および
・ヨウ化物-ヨウ素酸塩反応:
IO3
-+5I-+6H+ → 3I2+3H2O
それに続く、三ヨウ化物反応:
I2+I- → I3
【0088】
中和反応は、ヨウ化物-ヨウ素酸塩反応よりもはるかに速い。
最も遅い反応は、三ヨウ化物の生成をもたらし、それは紫外-可視(UV-Vis)分光計によって検出されることができる。
混合が良好であれば、酸は第1の反応によって最初に消費される。混合が良好でなければ、酸は第2の反応によって消費されることができ、そしてヨウ素を形成し、それはそれ自体で、三ヨウ化物イオンを形成し、それはUVを用いて検出される。
そのために、流体間の混合が良好であれば良好であるほど、完全な混合の前に第2の反応がより起こることが可能であり、そして紫外-可視分光計によって検出される信号はより高くなる。
【0089】
下記の関係によって、1mmの光の進行についての測定された信号強度Sと個々の成分の初期濃度から、完全な混合のための時間t
mを計算することが可能である。
【数1】
【0090】
この例は、5cmの長さに亘って1mmの直径を有している、混合物の流体、ここでは液体の流れについて、
図1~3を参照して説明されたような、混合装置で実施された。基液は、閉鎖された端部と、混合物の流体、ここでは液体との間に0.75mmの厚さを形成する。チャンバの両方の側面の磁石は、4mmの距離で分離されている。この磁石は、品番N42のものである。
この例では、3mmに等しい直径を有する円形の基底を有する循環区画が用いられる。
供給ラインは、それぞれが0.8mmの直径を有している。
【0091】
上記のものは、Little Things Factory GmbHの、MR-labシリーズの、LTF-MSマイクロ反応器と、そしてLTF-MXマイクロ反応器と比較される。それぞれのマイクロ反応器は、1mmに等しい循環経路直径を有している。
【0092】
0.4mL/分の、全体の流量、すなわち第1の流体と第2の流体の互いに足し合わされた流量について、以下のものが計算される。
・本発明の混合装置について、0.2秒間の時間tm、
・LTF-MSマイクロ反応器について、9秒間の時間tm、および、
・LTF-MXマイクロ反応器について、10秒間の時間tm。
【0093】
1mL/分の全体の流量について、以下のものが計算される。
・本発明の混合装置について、0.3秒間未満の時間tm、
・LTF-MSマイクロ反応器について、8~9秒間の時間tm、および、
・LTF-MXマイクロ反応器について、6秒間の時間tm。
【0094】
2mL/分の全体の流量について、以下のものが計算される。
・本発明の混合装置について、0.3秒間の時間tm、
・LTF-MSマイクロ反応器について、6~7秒間の時間tm、および、
・LTF-MXマイクロ反応器について、4~5秒間の時間tm。
【0095】
従って、本発明の混合装置は、現存するマイクロ反応器よりも、より迅速な混合に用いられることができる。
【0096】
例2
本混合装置による固体の旨い取り扱いを観察するために、第2の例が行われる。
第1の流体は、塩化ナトリウムの水溶液である。第1の流体は、0.1mL/分の流量で注入される。
第2の流体は、エタノールである。第2の流体は0.1mL/分の流量で注入される。
第1の流体と第2の流体との混合は、NaCl結晶の沈殿をもたらす。
【0097】
例2は、例1と同様の装置で行われた。
この例は、5cmの長さに亘って1mmの直径を有している、混合物の流体、ここでは液体の流れについて、
図1~3を参照して説明されたような、混合装置で実施された。基液は、閉鎖された端部と、混合物の流体、ここでは液体との間に0.75mmの厚さを形成する。チャンバの両方の側面の磁石は、4mmの距離で分離されている。この磁石は、品番N42のものである。
この例では、3mmに等しい直径を有する円形の基底を有する循環区画が用いられる。
供給ラインは、それぞれが0.8mmの直径を有している。
【0098】
上記のものは、Little Things Factory GmbHの、MR-labシリーズの、LTF-MSマイクロ反応器と、そしてLTF-MXマイクロ反応器と比較される。それぞれのマイクロ反応器は、1mmに等しい循環経路直径を有している。
【0099】
LTF-MSマイクロ反応器の循環経路は、2分間の内にNaCl結晶によって閉塞される。LTF-MXマイクロ反応器の循環経路は、10分間の内に、NaCl結晶によって閉塞される。
本発明の混合装置は、閉塞せずに、そして詰まりの出現なしに、少なくとも2時間に亘って連続的に作動する。その2時間の最後に、この例は停止されたが、本発明の装置内には、予測可能な詰まりの兆候はなかった。
【0100】
従って、本発明の混合装置は、現存するマイクロ反応器よりも、より良好な固体の取り扱いを可能にさせる。
【0101】
本発明による混合装置の第2の態様110が、
図5および6を参照してここに説明される。
混合装置110は、チャンバ112および少なくとも1つの磁気要素114を有している。
チャンバ112は、循環区画116を画定する。
循環区画116は、循環の方向Xに沿って延在している。
【0102】
ここで、用語「上流」および「下流」は、循環区画16中の流体の流れの一般的な方向に沿った、流れの方向Xに沿って規定される。
循環区画116は、いずれかの所望の形状を有している。
循環区画116は、例えば循環の方向Xに沿って、一定の断面を有している。
循環区画116は、例えば基部を備えた円筒である。
この基部は、例えば円筒形である。あるいは、この基部は、示されているように、正方形であるか、または矩形である。
【0103】
1つの態様では、循環区画116は、例えば3mmの直径を有する、円形の基部を有している。
チャンバ112、そして従って循環区画116は、循環の方向Xに沿って端部118を有している。
端部118は、ここでは循環区画16の上流の端部に相当する。
端部118は、ここでは開口部、より具体的には単一の開口部を有している。
【0104】
この開口部は、例えば循環区画116に関して、循環の方向Xに対して垂直に中心を有する。
流れの方向Xに沿って端部118の反対に、チャンバ112は、下流端部と称される、開放端部を有しており、例えば他の装置と連結される。
循環区画116は、循環の方向Xに沿って、1cm~100mの範囲の大きさを有している。
循環区画116は、少なくとも1種の基液120および混合用流体122、ここでは基液120と混合用流体122、を有している。
基液20および混合用流体22は、第1の態様に関して上記で説明したとおりである。
【0105】
同様に、これ以降説明される少なくとも1つの磁気要素114によって、混合用流体122が、基液120内を流れる。
より具体的には、基液120は、循環の方向Xの放射状の周りで、混合用流体を取り囲む。
混合用流体122は、循環区画16の境界を定める内部壁と接触しない。
ここでは、混合用流体122は、基液内で、円筒形の流れを形成する。
【0106】
あるいは、混合用流体122は、基液内に、三角もしくは正方形の基部を有する円筒形の流れを形成する。
この流れは、10μm~10cm、より具体的には100μm~1mm、例えば1mmに等しい直径を有している。
【0107】
示された例では、チャンバ112は、第1の流体のための第1の注入点124および第2の流体のための第2の注入点126を有している。
第1の注入点124は、例えば第1の流体源に連結されている。
第1の流体を供給する第1の供給ライン128は、第1の注入点124で、循環区画に開口している。
第2の注入点126は、例えば第2の流体源に連結されている。
第2の流体のための第2の供給ライン130は、例えば第2の注入点124で循環区画中に開口している。
【0108】
あるいは、第2の流体源は、第2の流体を含む内部体積を有するタンクを有しており、端部118は、端部118の開口部が、タンクの内部体積中に配置されるように、タンク中に配置されている。
タンクの内部体積および循環区画116は、ここではその開口部で、流体的に連結されている。
端部118は、例えば流体圧力を調製する手段、例えば減圧弁によって、内部体積の内容物と連結されている。
第1の注入点124は、基液20中に開口している。
それぞれの注入点124、126は、循環区画116の外郭に配置されている。
それぞれの注入点124、126は、例えば循環区画116の境界を定めるチャンバ112のそれぞれの壁に配置されている。
より具体的には、それぞれの供給ライン128、130は、それぞれの壁のレベルで開口している。
【0109】
示されている例では、第1の注入点124は、短手方向Yに沿ってチャンバ112の境界を定めるチャンバの横方向の壁に配置され、チャンバ112の短手方向Yは、循環の方向Xに垂直である。
示された態様では、第2の注入点126は、端部118に、より具体的には開口部に、配置されている。
第1の供給ライン128は、ここでは、前記ラインが現れるときに循環区画116の上流を指すように配向されている。
あるいは、第1の供給ライン28は、ここでは、前記ラインが現れるときに循環区画116の下流を指すように配向されている。
【0110】
第2の供給ライン130は、ここでは循環の方向Xに沿って配向されている。
第2の供給ライン130は、ここではチャンバ112に、端部118の開口部で、漏れのない方法で、例えば直接に(ここで示されているように)または連結装置によって、連結されている。
それぞれの供給ライン128、130は、それぞれの供給方向D1、D2を有している。
それぞれの供給方向D1、D2は、短手方向Yに、そして循環の方向Xに平行な平面に延在している。
【0111】
より具体的には、ここでは供給の方向は、ここでは単一の平面内に延在している。
それぞれの供給方向D1、D2は、それぞれが、循環の方向Xとそれぞれの角度α、βを形成する。
角度αは、更に、例えば0°~80°の範囲である。
角度βは、ここでは零である。
チャンバ112は、ここでは例えば正中面に対して対称的である。
【0112】
示された例では、正中面は、循環の方向Xに、加えて、ここでは横方向Zに、平行であり、横方向Zは、循環の方向Xに、そして短手方向Yに垂直である。
それぞれの供給ラインは、ここでは100μm~1mmの範囲、ここでは実質的に0.8mmに等しい、直径を有している。
【0113】
具体的な態様では、チャンバは、厳密に2つ超の注入点を有しており、付加的な注入点144(単数または複数)は、上記の第1の注入点と同様であり、混合用流体は、その注入点で注入された全ての流体、を含む、および/または、からなっている。
付加的な注入点144(単数または複数)は、例えば第1の注入点124の後に配置される。
連続した注入が、更に連続して行われる。
付加的な注入点144(単数または複数)は、第1の注入点と同様に、例えばチャンバの同じ側壁に開口している。
【0114】
あるいは、付加的な注入点144(単数または複数)は、循環の方向Xに垂直な、チャンバの境界を定めるチャンバのいずれかの側壁に開口している。
それぞれの付加的な注入点144は、対応する供給ライン146によって供給される。
それぞれの対応する供給ライン144は、例えば循環区画116の上流に向けられる。
それぞれの付加的な注入点144のそれぞれの供給の方向は、循環の方向Xと角度αiを形成する。
この角度αiは、更には例えば0°~80°の範囲である。
この角度αiは、例えば角度αに等しい。
【0115】
更には、もしくは、あるいは、付加的な注入点の少なくとも1つは、端部118に、例えば開口部で、または端部118によって境界を定められた付加的な開口部で、開口している。
端部118は、更には、例えば 注入点ごとに端部に現れる開口部を有している。
【0116】
あるいは、端部118は、単一の、より具体的には中心に置かれた、開口部を有しており、全ての注入点が、前記の開口部に存在する。この開口部のそれぞれの注入点は、例えば供給ラインに連結されており、全てのそれらの供給ラインは、その開口部に漏れのない方法で連結されている。
少なくとも1つの磁気要素114が、循環区画内に磁場を発生させ、それによって混合用流体は、上記のように、より具体的には、基液120が、混合用流体、ここでは液体を、循環の方向Xの周りを放射状に取り囲むように、基液内を流れる。
【0117】
示された例では、少なくとも1つの磁気要素114は、磁気多重極、示された例では磁気四重極132、を含んでおり、チャンバ112を少なくとも部分的に取り囲んでいる。
第1の例とは異なり、少なくとも1つの磁気要素114は、ここでは端部118に配置された付加的な要素がない。
ここでは、磁気多重極132は、例えば第1の態様を参照して説明したものと同様である。
【0118】
示された例では。少なくとも1つの磁気要素114は、磁気多重極132からなっている。
しかしながら、少なくとも1つの磁気要素114は、循環区画内に磁場を発生させるように、いずれかの配置で存在していると考えられ、それによって混合用流体は、上記のように基液内を、より具体的には基液120が、混合用流体、例えば液体を、循環の方向Xの周りを放射状に取り囲むように、流れる。
【0119】
第1の態様と同様に、少なくとも1つの磁気要素114は、混合用流体122が、チャンバ112の境界を定める物理的な壁と接触しないことを可能にし、混合用流体122は、基液120によって取り囲まれている。
【0120】
本混合装置は、従って流体を迅速に混合するのに好適であり、そして特には、固体の起こり得る出現を、その混合装置の運転の中断なしに、旨く取り扱うのに適している。
【0121】
他の態様では(示されてはいない)、注入点は、それが単一の注入点である場合には、または注入点のそれぞれがそうでない場合には、端部118に開口している。
注入点は、循環区画の外郭に配置されている。
ここでは、それぞれの注入点は、例えば混合用流体に開口している。
それぞれの注入点は、基液の反対側には開口していない。
【0122】
より具体的には、それぞれの注入点は、端部の中心から、循環区画内の混合用流体の直径よりも小さい距離に開口するように配置される。
複数の注入点の場合には、それぞれの注入点は、端部118に境界を定められたそれぞれの開口部で開口している。
あるいは、端部118は、注入点よりも少ない開口部を有しており、少なくとも2つの注入点が、同じ開口部に開口している。
本混合装置は、更にはチャンバの側壁に注入点を有していない。
【0123】
他の態様(示されてはいない)では、少なくとも1つの注入点が、循環の方向に沿って、チャンバの1端の外側で、混合用流体中に直接に開口している。
より具体的には、前記の注入点は、供給ラインに連結されており、供給ラインは循環区画中に延在する部分を有しており、それによって供給ラインは、混合用流体中に直接に開口する。
【0124】
特定の態様では、本装置は、例えばそのような注入点だけを有している。
あるいは、本装置は、少なくとも1つのそのような注入点および、端部118に少なくとも1つの注入点を有している。
あるいは、もしくは、更には、本装置は、基液中に少なくとも1つの注入点を更に有している。必要に応じて、基液中に注入された流体は、循環区画の中心に向けて基液によって置き換えられ、そのことで、混合用流体中に直接に、または端部において、注入された流体を含む、異なる流体の間の混合が促進される。
【0125】
このプロセスの間に、流体が、端部のそれぞれの注入点で注入される。全ての流体が混合用流体と直接に合流し、それによって例えば反応が起こる。
そのような混合装置は、基液中に注入される場合よりも、より劣る混合品質を有するが、しかしながら、もしもある場合には、混合用流体の周りの基液の存在によって、混合装置の運転を中断することなく、固体の起こり得る出現を管理することをも可能にさせ、そのことが、特には固体の起こり得る出現を管理することを可能にさせる。