(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037741
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】単分子タンパク質およびペプチド配列決定
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20240312BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20240312BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
G01N33/68 ZNA
G01N33/543 501A
G01N21/64 F
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023200372
(22)【出願日】2023-11-28
(62)【分割の表示】P 2021539096の分割
【原出願日】2020-01-07
(31)【優先権主張番号】62/789,850
(32)【優先日】2019-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】596060697
【氏名又は名称】マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エスタンディアン、ダニエル、マサオ
(72)【発明者】
【氏名】シューエイリ、アレクシ、ジョージズ
(72)【発明者】
【氏名】ボイデン、エドワード、スチュアート
(72)【発明者】
【氏名】ワッシー、アスマモウ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】タンパク質を配列決定するのに有用な方法、アッセイおよび試薬の提供。プロテオームの高分解能調査に有用であり得、疾患の早期検出に重要な超高感度診断を可能にし得る方法および試薬の提供。
【解決手段】ペプチドの末端アミノ酸を同定する方法であって、
(a)前記ペプチドをClickP化合物と接触させる工程であって、前記ClickP化合物が前記ペプチドの末端アミノ酸または末端アミノ酸誘導体に結合して、ClickPペプチド複合体を形成する、接触させる工程と、
(b)前記ClickPペプチド複合体を基材に繋ぐ工程と、
(c)前記複合体を前記ペプチドから切断し、それによりClickPアミノ酸複合体を提供する工程と、(d)前記ClickPアミノ酸複合体を検出する工程と、を含む、方法。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチドの末端アミノ酸を同定する方法であって、
(a)前記ペプチドをClickP化合物と接触させる工程であって、前記ClickP化合物が前記ペプチドの末端アミノ酸または末端アミノ酸誘導体に結合して、ClickPペプチド複合体を形成する、接触させる工程と、
(b)前記ClickPペプチド複合体を基材に繋ぐ工程と、
(c)前記複合体を前記ペプチドから切断し、それによりClickPアミノ酸複合体を提供する工程と、
(d)前記ClickPアミノ酸複合体を検出する工程と、を含む、方法。
【請求項2】
前記ClickPアミノ酸複合体を検出する工程が、前記ClickPアミノ酸複合体を1つまたは複数のClickPアミノ酸複合体結合剤と接触させる工程であって、前記ClickPアミノ酸複合体結合剤が、ClickPアミノ酸複合体またはClickPアミノ酸複合体のサブグループに結合する、接触させる工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ClickPアミノ酸複合体を検出する工程が、光の波長による直接検出を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ClickPアミノ酸複合体の前記アミノ酸を同定する工程をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ClickP化合物が、前記ペプチドのN末端アミノ酸またはN末端アミノ酸誘導体に結合し、ClickPアミノ酸複合体を形成する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ClickP化合物が、前記ペプチドのC末端アミノ酸またはC末端アミノ酸誘導体に結合し、ClickPアミノ酸複合体を形成する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ClickPアミノ酸複合体を前記基材から放出させる工程(e)をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程(a)~工程(e)が繰り返される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程(b)または工程(c)の前に、過剰なおよび/または結合されていないClickP化合物が洗い流される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ペプチドが前記基材に付着される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ペプチドが、前記ペプチドのC’末端カルボキシル基または側鎖官能基を介して前記基材に付着される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ペプチドが、ポリペプチドのN’末端アミノ基または側鎖官能基を介して基材に付着される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記ペプチドが前記基材に共有結合的に付着される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記基材が光学的に透明である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記基材が官能化表面を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記官能化表面が、アジド官能化表面、チオール官能化表面、アルキン、DBCO、マレイミド、サクシンイミド、テトラジン、TCO、ビニル、メチルシクロプロペン、1級アミン表面、カルボキシル表面、DBCO表面、アルキン表面およびアルデヒド表面からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記基材が複数の結合点を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記ペプチドが結合点に付着される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記1つまたは複数のClickPアミノ酸複合体結合剤が、
(a)ClickPと複合体を形成した20種類の天然タンパク質原性アミノ酸のサブグループに結合する1つまたは複数の結合剤と、
(b)ClickPと複合体を形成した翻訳後修飾アミノ酸のサブグループに結合する1つまたは複数の結合剤と、
(c)(a)または(b)の誘導体に結合する1つまたは複数の結合剤と、
(d)(a)、(b)または(c)の結合剤の組合せと、を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項20】
前記1つまたは複数のClickPアミノ酸複合体結合剤が、
(a)ClickPと複合体を形成した20種類の天然タンパク質原性アミノ酸のうち1つに結合する1つまたは複数の結合剤と、
(b)ClickPと複合体を形成した翻訳後修飾アミノ酸に結合する1つまたは複数の結合剤と、
(c)(a)または(b)の誘導体に結合する1つまたは複数の結合剤と、
(d)(a)、(b)または(c)の結合剤の組合せと、を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも1つの結合剤が検出可能な標識を含む、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記ClickPアミノ酸複合体に結合される前記結合剤を検出する工程が、前記検出可能な標識を検出することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ClickP化合物が検出可能な標識をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
試料中の2つ以上のペプチドの末端アミノ酸を同定する方法であって、
(a)前記2つ以上のペプチドを、基材上の結合点に独立して付着させる工程と、
(b)前記ペプチドをClickP化合物と接触させる工程であって、前記ClickP化合物が末端アミノ酸または末端アミノ酸誘導体に結合してClickPペプチド複合体を形成する、接触させる工程と、
(c)前記ClickPペプチド複合体を前記基材に繋ぐ工程と、
(d)前記ペプチドから前記ClickPペプチド複合体を切断して、それによりClickPアミノ酸複合体を提供する工程と、
(e)前記ClickPアミノ酸複合体を検出する工程と、を含む、方法。
【請求項25】
前記ClickPアミノ酸複合体を検出する工程が、前記ClickPアミノ酸複合体を1つまたは複数のClickPアミノ酸複合体結合剤と接触させる工程であって、前記ClickPアミノ酸複合体結合剤が、ClickPアミノ酸複合体またはClickPアミノ酸複合体のサブグループに結合する、接触させる工程を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記ClickPアミノ酸複合体を検出する工程が、光の波長による直接検出を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記ClickPアミノ酸複合体の前記アミノ酸を同定する工程をさらに含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記ClickP化合物が、前記ペプチドのN末端アミノ酸またはN末端アミノ酸誘導体に結合し、ClickPアミノ酸複合体を形成する、請求項24~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記ClickP化合物が、前記ペプチドのC末端アミノ酸またはC末端アミノ酸誘導体に結合し、ClickPアミノ酸複合体を形成する、請求項24~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記ClickPアミノ酸複合体を前記基材から放出させる工程(f)をさらに含む、請求項24~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
工程(b)~工程(f)が繰り返される、請求項24~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
工程(c)または工程(d)の前に、過剰なおよび/または結合されていないClickP化合物が洗い流される、請求項24~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記1つまたは複数のペプチドが、ポリペプチドまたはタンパク質のC’末端カルボキシル基または側鎖官能基を介して前記基材に付着される、請求項24に記載の方法。
【請求項34】
前記1つまたは複数のペプチドが、前記ペプチドのN’末端カルボキシル基または側鎖官能基を介して基材に付着される、請求項24に記載の方法。
【請求項35】
前記1つまたは複数のペプチドが前記基材に共有結合的に付着される、請求項24~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記基材が光学的に透明である、請求項24~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記基材が官能化表面を含む、請求項24~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記官能化表面が、アジド官能化表面、チオール官能化表面、アルキン、DBCO、マレイミド、サクシンイミド、テトラジン、TCO、ビニル、メチルシクロプロペン、1級アミン表面、カルボキシル表面、DBCO表面、アルキン表面およびアルデヒド表面からなる群から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記1つまたは複数のClickPアミノ酸複合体結合剤が、
(a)ClickPと複合体を形成した20種類の天然タンパク質原性アミノ酸のサブグループに結合する1つまたは複数の結合剤と、
(b)ClickPと複合体を形成した翻訳後修飾アミノ酸のサブグループに結合する1つまたは複数の結合剤と、
(c)(a)または(b)の誘導体に結合する1つまたは複数の結合剤と、
(d)(a)、(b)または(c)の結合剤の組合せと、を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項40】
前記1つまたは複数のClickPアミノ酸複合体結合剤が、
(a)ClickPと複合体を形成した20種類の天然タンパク質原性アミノ酸のうち1つに結合する1つまたは複数の結合剤と、
(b)ClickPと複合体を形成した翻訳後修飾アミノ酸に結合する1つまたは複数の結合剤と、
(c)(a)または(b)の誘導体に結合する1つまたは複数の結合剤と、
(d)(a)、(b)または(c)の結合剤の組合せと、を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項41】
少なくとも1つの結合剤が検出可能な標識を含む、請求項39または40に記載の方法。
【請求項42】
前記ClickPアミノ酸複合体に結合される前記結合剤を検出する工程が、前記検出可能な標識を検出することを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記ClickP化合物が検出可能な標識をさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項44】
前記試料が、生体液、細胞抽出物、または組織抽出物を含む、請求項24~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
ペプチドの少なくとも一部を配列決定する方法であって、
(a)前記ペプチドをClickP化合物と接触させる工程であって、前記ClickP化合物が前記ペプチドの末端アミノ酸または末端アミノ酸誘導体に結合してClickPペプチド複合体を形成する、接触させる工程と、
(b)前記ClickPペプチド複合体を基材に繋ぐ工程と、
(c)前記ペプチドから前記ClickPペプチド複合体を切断して、ClickPアミノ酸複合体を形成する工程と、
(d)前記ClickPアミノ酸複合体を検出する工程と、
(e)前記ClickPアミノ酸複合体の前記アミノ酸を同定する工程と、
(f)前記基材から前記ClickPアミノ酸複合体を放出させる工程と、
(g)工程(a)~工程(f)を繰り返す工程と、を含む、方法。
【請求項46】
前記ClickPアミノ酸複合体を検出する工程が、前記ClickPアミノ酸複合体を1つまたは複数のClickPアミノ酸複合体結合剤と接触させる工程であって、前記ClickPアミノ酸複合体結合剤が、ClickPアミノ酸複合体またはClickPアミノ酸複合体のサブグループに結合する、接触させる工程を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記ClickPアミノ酸複合体を検出する工程が、光の波長による直接検出を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記ClickP化合物が、前記ペプチドのN末端アミノ酸またはN末端アミノ酸誘導体に結合し、ClickPアミノ酸複合体を形成する、請求項45~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記ClickP化合物が、前記ペプチドのC末端アミノ酸またはC末端アミノ酸誘導体に結合し、ClickPアミノ酸複合体を形成する、請求項45~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
工程(b)または工程(c)の前に、過剰なおよび/または結合されていないClickP化合物が洗い流される、請求項45~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記ペプチドが前記基材に付着される、請求項45~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記ペプチドが、前記ペプチドのC’末端カルボキシル基または側鎖官能基を介して基材に付着される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記ペプチドが、前記ペプチドのN’末端カルボキシル基または側鎖官能基を介して基材に付着される、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記ペプチドが前記基材に共有結合的に付着される、請求項45~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記基材が光学的に透明である、請求項45~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記基材が官能化表面を含む、請求項45~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記官能化表面が、アジド官能化表面、チオール官能化表面、アルキン、DBCO、マレイミド、サクシンイミド、テトラジン、TCO、ビニル、メチルシクロプロペン、1級アミン表面、カルボキシル表面、DBCO表面、アルキン表面およびアルデヒド表面からなる群から選択される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記基材が1つまたは複数の結合点を含む、請求項45~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記ペプチドが結合点に付着される、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記1つまたは複数のClickPアミノ酸複合体結合剤が、
(a)ClickPと複合体を形成した20種類の天然タンパク質原性アミノ酸のサブグループに結合する1つまたは複数の結合剤と、
(b)ClickPと複合体を形成した翻訳後修飾アミノ酸のサブグループに結合する1つまたは複数の結合剤と、
(c)(a)または(b)の誘導体に結合する1つまたは複数の結合剤と、
(d)(a)、(b)または(c)の結合剤の組合せと、を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項61】
前記1つまたは複数のClickPアミノ酸複合体結合剤が、
(a)ClickPと複合体を形成した20種類の天然タンパク質原性アミノ酸のうち1つに結合する1つまたは複数の結合剤と、
(b)ClickPと複合体を形成した翻訳後修飾アミノ酸に結合する1つまたは複数の結合剤と、
(c)(a)または(b)の誘導体に結合する1つまたは複数の結合剤と、
(d)(a)、(b)または(c)の結合剤の組合せと、を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項62】
少なくとも1つの結合剤が検出可能な標識を含む、請求項60または61に記載の方法。
【請求項63】
前記ClickPアミノ酸複合体に結合される前記結合剤を検出する工程が、前記検出可能な標識を検出することを含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記ClickP化合物が検出可能な標識をさらに含む、請求項45に記載の方法。
【請求項65】
工程(g)で決定された前記ペプチドの配列を、参照タンパク質配列データベースと比較することをさらに含む、請求項45に記載の方法。
【請求項66】
試料中の2つ以上のペプチドの少なくとも一部を配列決定する方法であって、
(a)前記2つ以上のペプチドを、基材上の結合点に独立して付着させる工程と、
(b)前記2つ以上のペプチドをClickP化合物と接触させる工程であって、前記ClickP化合物が末端アミノ酸または末端アミノ酸誘導体に結合してClickPペプチド複合体を形成する、接触させる工程と、
(c)前記ClickPペプチド複合体を前記基材に繋ぐ工程と、
(d)前記ペプチドから前記ClickPペプチド複合体を切断して、ClickPアミノ酸複合体を形成する工程と、
(e)前記ClickPアミノ酸複合体を検出する工程と、
(f)前記ClickPアミノ酸複合体の前記アミノ酸を同定する工程と、
(g)前記基材から前記ClickPアミノ酸複合体を放出させる工程と、
(h)工程(b)~工程(g)を繰り返す工程と、を含む、方法。
【請求項67】
前記ClickPアミノ酸複合体を検出する工程が、前記ClickPアミノ酸複合体を1つまたは複数のClickPアミノ酸複合体結合剤と接触させる工程であって、前記ClickPアミノ酸複合体結合剤が、ClickPアミノ酸複合体またはClickPアミノ酸複合体のサブグループに結合する、接触させる工程を含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記ClickPアミノ酸複合体を検出する工程が、光の波長による直接検出を含む、請求項66に記載の方法。
【請求項69】
前記ClickP化合物が、前記ペプチドのN末端アミノ酸またはN末端アミノ酸誘導体に結合し、ClickPアミノ酸複合体を形成する、請求項66~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記ClickP化合物が、前記ペプチドのC末端アミノ酸またはC末端アミノ酸誘導体に結合し、ClickPアミノ酸複合体を形成する、請求項66~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
工程(c)または工程(d)の前に、過剰なおよび/または結合されていないClickP化合物が洗い流される、請求項66~70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記複数のペプチドが、前記ペプチドのC’末端カルボキシル基または側鎖官能基を介して前記基材に付着される、請求項66に記載の方法。
【請求項73】
前記複数のペプチドが、ポリペプチドのN’末端カルボキシル基または側鎖官能基を介して前記基材に付着される、請求項66に記載の方法。
【請求項74】
前記2つ以上のペプチドが前記基材に共有結合的に付着される、請求項66~73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
前記基材が光学的に透明である、請求項66~74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記基材が官能化表面を含む、請求項66~74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
前記官能化表面が、アジド官能化表面、チオール官能化表面、アルキン、DBCO、マレイミド、サクシンイミド、テトラジン、TCO、ビニル、メチルシクロプロペン、1級アミン表面、カルボキシル表面、DBCO表面、アルキン表面およびアルデヒド表面からなる群から選択される、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記ClickPアミノ酸複合体結合剤が、
(a)ClickPと複合体を形成した20種類の天然タンパク質原性アミノ酸のサブグループに結合する1つまたは複数の結合剤と、
(b)ClickPと複合体を形成した翻訳後修飾アミノ酸のサブグループに結合する1つまたは複数の結合剤と、
(c)(a)または(b)の誘導体に結合する1つまたは複数の結合剤と、
(d)(a)、(b)または(c)の結合剤の組合せと、を含む、請求項67に記載の方法。
【請求項79】
前記ClickPアミノ酸複合体結合剤が、
(a)ClickPと複合体を形成した20種類の天然タンパク質原性アミノ酸のうち1つに結合する1つまたは複数の結合剤と、
(b)ClickPと複合体を形成した翻訳後修飾アミノ酸に結合する1つまたは複数の結合剤と、
(c)(a)または(b)の誘導体に結合する1つまたは複数の結合剤と、
(d)(a)、(b)または(c)の結合剤の組合せと、を含む、請求項67に記載の方法。
【請求項80】
少なくとも1つの結合剤が検出可能な標識を含む、請求項78または79に記載の方法。
【請求項81】
前記ClickPアミノ酸複合体に結合される前記結合剤を検出する工程が、前記検出可能な標識を検出することを含む、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記ClickP化合物が検出可能な標識をさらに含む、請求項66に記載の方法。
【請求項83】
前記試料が、生体液、細胞抽出物、組織抽出物または合成的に合成されたペプチドの混合物を含む、請求項66~82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
工程(h)で決定された少なくとも1つのペプチドの配列を、参照タンパク質配列データベースと比較することをさらに含む、請求項66~83のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
工程(h)で決定された各ペプチドの配列を比較し、類似のペプチド配列を分類し、各類似のペプチド配列の多数の例を数えることをさらに含む、請求項66~83のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
ClickPアミノ酸複合体であって、
(a)20種類の天然タンパク質原性アミノ酸のうち1つに結合されるClickP化合物、
(b)翻訳後修飾アミノ酸に結合されるClickP化合物、または
(c)(a)もしくは(b)の誘導体に結合されるClickP化合物を含む、ClickPアミノ酸複合体。
【請求項87】
ClickPアミノ酸複合体結合剤であって、
(a)ClickPと複合体を形成した20種類の天然タンパク質原性アミノ酸のサブグループに結合する結合剤、
(b)ClickPと複合体を形成した翻訳後修飾アミノ酸のサブグループに結合する結合剤、または
(c)(a)もしくは(b)の誘導体に結合する結合剤を含む、ClickPアミノ酸複合体結合剤。
【請求項88】
ClickPアミノ酸複合体結合剤であって、
(a)ClickPと複合体を形成した20種類の天然タンパク質原性アミノ酸のうち1つに結合する結合剤、
(b)ClickPと複合体を形成した翻訳後修飾アミノ酸に結合する結合剤、または
(c)(a)もしくは(b)の誘導体に結合する結合剤を含む、ClickPアミノ酸複合体結合剤。
【請求項89】
検出可能な標識をさらに含む、請求項87または88に記載の結合剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年1月8日に出願された米国仮特許出願第62/789,850号の利益を主張するものである。上記出願の全教示は、参照として本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
タンパク質は、すべての生物の細胞レベルで重要な構造的および動的な機能的役割を果たす。生物学的機能へのタンパク質の寄与を理解することは重要であり、これは定量化および同定のための適切な技術を有することに依拠する。これらの分子は細胞の機能および多様性にとって重要であるため、分子生物学のセントラルドグマ、すなわちタンパク質に対するDNAからRNAへの情報の流れは数十年にわたって研究されてきた。核酸のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅の出現は、全ゲノムおよびトランスクリプトームレベルでのDNAおよびRNAのハイスループット分子調査および分析の進歩において極めて重要であった。対照的に、タンパク質の研究は、低コピー数のタンパク質を増幅および検出するためのPCRに相当するものがないことから、技術的に遅れている。代わりに、タンパク質配列決定方法および同定方法は、細胞間変異をマスクする多くの細胞からのアンサンブル測定に依存してきた。一部の研究者は、細胞内のタンパク質組成の代用としてトランスクリプトミクスに注目しているが、トランスクリプトームレベルでの遺伝子発現は、異なるmRNAの翻訳効率における変動性、およびmRNAとタンパク質の寿命の差という点に起因して、プロテオミクスプロファイルと弱く相関することに留意することが重要である。さらに、翻訳後修飾はまた、トランスクリプトームに関するタンパク質存在量およびそれらの一次配列の有意な変動性をもたらす。例えばシナプス可塑性、代謝シグナル伝達経路および幹細胞分化などの重要な生物学的プロセスはすべて、タンパク質発現に依存する。多くの疾患はまた、単一のまたは一組の異常なタンパク質へと翻訳される遺伝子突然変異に由来する。例えば癌および神経変性などの疾患は、原因不明の突然変異および多遺伝子相互作用を引き起こす傾向がある。それらの病理は細胞レベルでの破壊されたタンパク質恒常性に直接関連するので、それらはプロテオミクスレベルで最もよく理解され、対処され得る。
【0003】
プロテオミクスの進歩は遅れているが、DNA配列決定は、ハイスループット配列決定を可能にする技術に主に起因してゲノミクスの研究を急速に進歩させた。タンパク質を研究するための現在の方法論には、質量分析、エドマン配列決定および免疫組織化学(IHC)が含まれる。
【0004】
質量分析により、ペプチド断片の質量/電荷比に基づいてタンパク質の同定および定量化が可能となる。これを生物情報学的に対応づけてゲノムデータベースに戻すことができる。この技術は著しい進歩をもたらしたが、生物系からの完全な一組のタンパク質を定量化するには未だ至っていない。この技術は、全タンパク質に対するアトモル検出感度および分画後のサブアトモル感度を示す。質量分析の感度には、哺乳動物のタンパク質発現の約10%を構成する低コピー数タンパク質が未検出のままであり、存在量が低いにも関わらず機能的に重要であることから、限界がある。
【0005】
タンパク質配列決定に使用される他の方法は、エドマン分解反応である。エドマン分解により、単一のN末端アミノ酸の連続的かつ選択的な除去が可能となり、引き続いてHPLC、高速液体クロマトグラフィーによってこれが同定される。エドマンタンパク質配列決定は、フェニルイソチオシアネート(PITC)を使用してN末端アミノ酸とコンジュゲートさせる同定のために最初のN末端アミノ酸を選択的に除去する、実績のある方法であり、次いで、酸および熱処理により、PITC標識N末端アミノ酸が除去される。エドマン配列決定は98%の効率を有することができるが、主要な欠点としては、本質的にスループットが低く、高度に精製された単一のタンパク質を必要とし、システム全体の生物学に適用できない点である。エドマン分解および質量分析の両方は、タンパク質を配列決定することができるが、単分子感度を欠き、細胞と関連するタンパク質の空間情報を提供しない。
【0006】
空間的情報に関して、免疫組織化学は、タンパク質の細胞局在を視覚化することが可能にするが、配列情報は提供しないタンパク質同定方法である。免疫組織化学は、フルオロフォア-コンジュゲート化抗体による認識を介したタンパク質の同定に関係する。このアプローチは、タンパク質配列情報を除外するが、タンパク質およびそれらのそれぞれの局在を同定することができる。プロテオーム中のすべてのタンパク質に対する特異的抗体の完全な構築であっても、約25,000個の抗体および約6250ラウンドの四色画像化を必要とすることから、主な制限はスケーラビリティである。任意の1対1タンパク質タグ付けスキームは、プロテオーム全体に対してスケーリングできない可能性が高い。
【0007】
タンパク質配列決定における主な障害は、ペプチド上のアミノ酸をプローブする天然酵素および生体分子の欠如である。例えば、核酸に関して、PCRに類似したタンパク質増幅プロセスは存在しないため、単分子戦略による配列決定へのアプローチが適切であり、個々のアミノ酸の検出が必要である。
【0008】
単分子タンパク質配列決定に対する現在提案されているアプローチは、ペプチドまたはタンパク質残基の共有結合化学修飾を介した蛍光読み出し、N末端特異的アミノ酸結合剤(NAAB)を用いたプローブ、または膜全体に印加された電圧を用いた、ナノポアを通るペプチドの転位に依存する。内部ペプチド鎖上のアミノ酸の化学修飾は、隣接する化学標識によって引き起こされる立体障害に起因して低効率に弱い可能性があり、20種類すべてのアミノ酸を標識するための利用可能な反応性アミノ酸および化学の数も限られている。タンパク質配列決定のためにナノポアを使用する主な問題は、アミノ酸残基の不均一な電荷分布、およびアミノ酸間で区別するために電気記録を逆畳み込みする分析上の課題に起因し得る。
【0009】
N末端アミノ酸結合剤の場合、ペプチドはC末端によって基材に固定化されるので、N末端は結合剤および逐次エドマン分解にアクセス可能である。様々なペプチドにわたって見出される可変隣接アミノ酸の存在によって影響されない高度に特異的で強力なN末端結合剤を設計することは困難である。隣接アミノ酸は、電荷、立体構造および二次構造の変化を導入することによってN末端結合に影響を及ぼし得る。これは、「局所環境」問題と呼ぶことができる。例えば、ペプチドのN末端アミノ酸を認識しようとする場合、ペプチドの残りの部分において様々なアミノ酸が組み合わせられることにより、N末端結合剤に一貫性のない相互作用を課す、可能性のある多くの配列がもたらされる。
【0010】
高分解能タンパク質レベル分析に関する技術の欠如は、重要な生物学的研究の進歩における大きなギャップを表す。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ペプチドの末端アミノ酸を同定する方法を提供する。複数の実施形態において、本方法は、ペプチドをClickP化合物と接触させる工程であって、ClickP化合物がペプチドの末端アミノ酸または末端アミノ酸誘導体に結合するClickPペプチド複合体を形成する、接触させる工程と、ClickPペプチド複合体を基材に繋ぐ工程と、複合体をペプチドから切断し、それにより、基材に結合されるClickPアミノ酸複合体を提供する工程と、ClickPアミノ酸複合体を検出する工程と、を含む。
【0012】
本発明はまた、試料中の2つ以上のペプチドの末端アミノ酸を同定する方法を提供する。複数の実施形態において、本方法は、2つ以上のペプチドを基材上の結合点に独立して付着させる工程と、ペプチドをClickP化合物と接触させる工程であって、ClickP化合物が末端アミノ酸または末端アミノ酸誘導体に結合してClickPペプチド複合体を形成する、接触させる工程と、ClickPペプチド複合体を基材に繋ぐ工程と、ペプチドからClickPペプチド複合体を切断し、それにより、基材に結合されるClickPアミノ酸複合体を提供する工程と、ClickPアミノ酸複合体を検出する工程と、を含む。
【0013】
本発明はまた、ペプチドの少なくとも一部を配列決定する方法を提供する。複数の実施形態において、本方法は、ペプチドをClickP化合物と接触させる工程であって、ClickP化合物がペプチドの末端アミノ酸または末端アミノ酸誘導体に結合してClickPペプチド複合体を形成する、接触させる工程と、ClickPペプチド複合体を基材に繋ぐ工程と、ペプチドからClickPペプチド複合体を切断して、ClickPアミノ酸複合体を形成する工程と、ClickPアミノ酸複合体を検出する工程と、ClickPアミノ酸複合体のアミノ酸を同定する工程と、基材からClickPアミノ酸複合体を放出させる工程と、これらの工程を繰り返す工程と、を含む。
【0014】
本発明はまた、基材上に結合点を独立して付着される試料中の2つ以上のペプチドの少なくとも一部を配列決定する方法を提供する。複数の実施形態において、本方法は、2つ以上のペプチドをClickP化合物と接触させる工程であって、ClickP化合物が末端アミノ酸または末端アミノ酸誘導体に結合してClickPペプチド複合体を形成する、接触させる工程と、ClickPペプチド複合体を基材に繋ぐ工程と、ペプチドからClickPペプチド複合体を切断して、ClickPアミノ酸複合体を形成する工程と、ClickPアミノ酸複合体を検出する工程と、ClickPアミノ酸複合体のアミノ酸を同定する工程と、基材からClickPアミノ酸複合体を放出させる工程と、これらの工程を繰り返す工程と、を含む。
【0015】
本発明はまた、ClickPアミノ酸複合体を提供する。複数の実施形態において、ClickPアミノ酸複合体は、20種類の天然タンパク質原性アミノ酸のうちの1つに結合されるClickP化合物、翻訳後修飾アミノ酸に結合されるClickP化合物、または(a)もしくは(b)の誘導体に結合したClickP化合物を含む。
【0016】
本発明はまた、ClickPアミノ酸複合体結合剤を提供する。複数の実施形態において、ClickPアミノ酸複合体結合剤は、ClickPと複合体を形成した20種類の天然タンパク質原性アミノ酸のサブグループに結合する結合剤、ClickPと複合体を形成した翻訳後修飾アミノ酸のサブグループに結合する結合剤、または(a)もしくは(b)の誘導体に結合する結合剤を含む。
【0017】
複数の実施形態において、ClickPアミノ酸複合体結合剤は、ClickPと複合体を形成した20種類の天然タンパク質原性アミノ酸のうちの1つに結合する結合剤、ClickPと複合体を形成した翻訳後修飾アミノ酸に結合する結合剤、または(a)もしくは(b)の誘導体に結合する結合剤を含む。
【0018】
本発明の前述および他の目的、特徴および利点は、添付の図面に示されているように、本発明の好ましい実施形態の以下のより詳細な説明から明らかになるであろう。この添付の図面では、同様の参照符号は異なる図を通して同じ部分を指す。図面は必ずしも縮尺通りではなく、代わりに本発明の原理を説明することに重点が置かれている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】1級アミン反応性基および切断基としてPITCならびに係留基(tethering group)としてのアルキン、アジド-チオールリンカー、チオール-官能化表面を含む、式IのClickP化合物の一例を示す。
【
図2】ClickPを使用した単分子ペプチド配列決定およびN末端アミノ酸同定のためのワークフローを示す図である。
【
図3A】PITCと比較した場合、N末端の1級アミンをコンジュゲートおよび切断するClickP候補の効率を示す。
図3AはN末端コンジュゲーション効率を示す。
【
図3B】PITCと比較した場合、N末端の1級アミンをコンジュゲートおよび切断するClickP候補の効率を示す。
図3BはN末端コンジュゲーション効率の時間経過を示す。
【
図3C】PITCと比較した場合、N末端の1級アミンを共役および切断するClickP候補の効率を示す。
図3CはN末端切断効率を示す。
【
図5A】20個すべての天然アミノ酸に結合されるClickP化合物の例を示す。
【
図5B】20個すべての天然アミノ酸に結合されるClickP化合物の例を示す。
【
図6A】トリプトファン標的抗体の局所環境問題および他のClickPアミノ酸複合体よりもClickPトリプトファンを選択的に標的とするその能力を示す。
【
図6B】トリプトファン標的抗体の局所環境問題および他のClickPアミノ酸複合体よりもClickPトリプトファンを選択的に標的とするその能力を示す。
【
図7】N末端アミノ酸のClickPコンジュゲーションおよび切断の質量分析結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書は、タンパク質を配列決定するのに有用な方法、アッセイおよび試薬を提供する。広義でのタンパク質の配列決定は、妥当なアミノ酸の同一性および順序の観察に関係する。
【0021】
一態様では、本方法は、単一のポリペプチド分子または単一のポリペプチドの複数の分子を配列決定するのに有用である。一態様では、本方法は、複数のポリペプチドを配列決定するのに有用である。
【0022】
一態様では、方法および試薬は、ポリペプチドのN末端アミノ酸を決定するのに有用である。一態様では、本方法は、複数の単一ポリペプチド分子の同時配列決定、例えば大規模の並列シーケンシング技術の基礎に有用である。したがって、異なるタンパク質の混合物を含む試料を、本明細書に記載の方法に従いアッセイして、試料中の個々のタンパク質分子に関する配列情報を作成することができる。さらなる態様では、本方法は、複合体試料におけるタンパク質発現プロファイリングに有用である。例えば、本方法は、試料中に含有されるタンパク質の定量的(頻度)および定性的(配列)データの両方を作成するのに有用である。
【0023】
一実施形態において、本発明により、タンパク質の単分子同定および配列決定が可能となる。本明細書に記載の方法および試薬は、プロテオームの高分解能調査に有用であり得、疾患の早期検出に重要な超高感度診断を可能にし得る。
【0024】
一態様では、本発明は、ペプチドの末端アミノ酸を同定するための化合物、組成物、および方法を提供する。一実施形態において、本発明は、例えばN末端アミノ酸単離用試薬およびN末端アミノ酸単離用試薬-アミノ酸複合体結合剤などの、N末端アミノ酸の単離および同定のための試薬を提供する。一実施形態において、本発明は、例えばC末端アミノ酸単離用試薬およびC末端アミノ酸単離用試薬-アミノ酸複合体結合剤などの、C末端アミノ酸の単離および同定のための試薬を提供する。一実施形態において、N末端アミノ酸が同定される。一実施形態において、C末端アミノ酸が同定される。
【0025】
N末端またはC末端アミノ酸単離用試薬は、本明細書では「ClickP」とも呼ばれる。一実施形態において、ClickP化合物は、式I:
【化1】
の構造を有し、
式中、
Aは、末端アミノ酸反応性切断基であり、
Bは、放出可能基であり、
Cは、係留可能基であり、
L1およびL2は、独立したスペーサである。
【0026】
末端アミノ酸反応性基は、ペプチドの末端アミノ酸と反応してこれと結合する。N末端アミノ酸単離に使用される場合、ClickP化合物の末端アミノ酸反応性基は、ペプチドのN末端で遊離アミンとコンジュゲートしてClickPペプチド複合体を形成する1級アミン反応性基を含む。
【0027】
C末端アミノ酸単離に使用される場合、ClickP化合物の末端アミノ酸反応性基は、ペプチドのC末端で、修飾または非修飾カルボキシル基とコンジュゲートしてClickPペプチド複合体を形成するC末端反応性基を含む。
【0028】
複数の実施形態において、末端アミノ酸反応性基は、1級アミン反応性基である。一実施形態において、1級アミン反応性基には、イソチオシアネート、フェニルイソチオシアネート(PITC)、イソシアネート、アシルアジド、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHSエステル)、塩化スルホニル、アルデヒド、グリオキサール、エポキシド、オキシラン、カーボネート、ハロゲン化アリール、イミドエステル、カルボジイミド、無水物、およびフルオロフェニルエステルが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、試薬は、フェニルイソチオシアネート(PITC)である。
【0029】
特定の実施形態において、N末端アミノ酸またはその誘導体と、ClickP化合物とは、N末端アミノ酸にClickPの1級アミン反応性基とコンジュゲートして複合体を形成させる条件下で接触することができる。
【0030】
一実施形態において、末端アミノ酸反応性基は、C末端反応性基である。一実施形態において、C末端反応性基には、イソチオシアネート、テトラブチルアンモニウムイソチオシアネート、ジフェニルホスホリルイソチオシアネート、塩化アセチル、臭化シアン、イソチオシアネート、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸アンモニウムおよびカルボキシペプチダーゼが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
特定の実施形態において、C末端アミノ酸またはその誘導体と、ClickP化合物とは、修飾または非修飾C末端アミノ酸にClickPのC末端反応性基とコンジュゲートさせる条件下で接触し、複合体を形成させることができる。
【0032】
いくつかの実施形態において、切断基は、末端アミノ酸反応性基と同じである。一実施形態において、N末端切断基は、ペプチドからの末端アミノ酸の化学的除去に関係する。一実施形態において、N末端切断基は、ペプチドからの末端アミノ酸の化学的除去に関係して、ClickPアミノ酸複合体を形成する。一実施形態において、切断基はPITCまたはイソチオシアネートである。一実施形態において、切断基は、ペプチダーゼまたはプロテアーゼなどの操作された酵素または野生型酵素によって補助される。
【0033】
一実施形態において、ClickPアミノ酸複合体は、ペプチドからの切断後にアミノ酸とコンジュゲートされたClickP化合物である。一実施形態において、ClickPアミノ酸複合体は、抗原性であるように化学的に誘導体化され得る。一実施形態において、ClickPアミノ酸複合体は、以下の誘導体化形態:チアゾロン、チオヒダントインまたはチオカルバミルであり得るが、これらに限定されない。
【0034】
いくつかの実施形態において、アミンと反応し、ペプチドから末端アミノ酸を切断する機能は、1級アミン反応性基によって行うことができる。いくつかの実施形態において、これらの機能の両方を有する1級アミン反応性基には、イソチオシアネート、フェニルイソチオシアネート(PITC)が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、1級アミン反応性基は、フェニルイソチオシアネート(PITC)である。一実施形態において、1級アミン反応性基はイソチオシアネートである。
【0035】
いくつかの実施形態において、C末端に反応し、アミノ酸を切断する機能は、同じ化学基によって行われ得る。一実施形態において、C末端切断基は、ペプチドからの末端アミノ酸の化学的除去に関係して、ClickPアミノ酸複合体を形成する。一実施形態において、切断基は、イソチオシアネート、テトラブチルアンモニウムイソチオシアネート、またはジフェニルホスホリルイソチオシアネートである。
【0036】
一実施形態において、係留基には、イソチオシアネート、テトラブチルアンモニウムイソチオシアネート、ジフェニルホスホリルイソチオシアネート、アジド、アルキン、ジベンゾシクロオクチン(DBCO)、マレイミド、スクシンイミド、チオール-チオールジスルフィド結合、テトラジン、TCO、ビニル、メチルシクロプロペン、1級アミン、カルボン酸、アルキン、アクリロイル、アリル、およびアルデヒドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
係留基は、官能化ガラス表面などの官能化基材とコンジュゲートすることができるか、またはコンジュゲーションを可能にする条件下でポリマーネットワークに組み込まれ、それによってClickPペプチド複合体を基材上に固定化することができる。
【0038】
複数の実施形態において、放出可能基は、ClickPアミノ酸複合体の一部または全部の除去に関係する。いくつかの実施形態において、ClickPアミノ酸複合体は、結合条件またはアミノ酸遊離条件ではない特定の基材放出条件下で基材から放出され得る。いくつかの実施形態において、放出可能基は、ジスルフィド、ペプチド、オリゴヌクレオチド、または炭水化物であり得るが、これらに限定されない。
【0039】
「基材放出条件」という用語は、ClickPアミノ酸複合体が基材から遊離される遊離条件を指す。基材放出条件には、酸性条件、塩基性条件、求核剤の存在、ルイス塩基の存在、非求核性塩基の存在、求核性塩基の存在、チオールの存在、酸化条件、還元条件、触媒の存在、操作された酵素または野生型酵素の存在、可視光への曝露、紫外線への曝露、またはそれらの組合せが挙げられ得るが、これらに限定されない。放出条件には、水性溶媒(水など)、有機溶媒(ジオアキサン、DMSO、THF、DMF、トルエン、アセトニトリルなど)、またはそれらの組合せが挙げられ得るが、これらに限定されない。特定の実施形態において、酸性条件は、フッ化水素酸(HF)または塩酸(HCl)の使用を含み得る。ある特定の実施形態において、塩基性条件には、ピリジン、アンモニア、ピペリジン、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、N,Nジイソプロピルエチルアミン(DIEA)、ピペリジン、モルホリン、ジシクロヘキシルアミン、トリエチルアミンまたはジエチルアミンの使用が挙げられ得る。
【0040】
説明として、本発明を限定することを意図するものではないが、ClickP化合物の「切断」基は、ペプチドから末端アミノ酸を除去するように作用する一方、「放出可能」基は、基材からClickPアミノ酸複合体を放出する機構を提供する。基材からClickPアミノ酸複合体を除去することにより、連続したアミノ酸の同定が可能となる。
【0041】
いくつかの実施形態において、スペーサは、反応速度論との干渉を回避するために、ClickP化合物の官能基間に十分な立体分離を提供するために使用される。いくつかの実施形態において、スペーサには、ポリエチレングリコール(PEG)鎖、アミノヘキサン酸(Ahx)、12-アミノドデカン酸、O2Oc、O1Pen-O1Pen、Ttds、ベータアラニン、炭化水素鎖、アミノ酸、ペプチド、ペプチド結合、および核酸などのポリマーおよびバイオポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
一実施形態において、ClickP化合物は、係留基の前に放出可能基を含むことができる。
【0043】
一実施形態において、ClickP化合物は、係留基の後に放出可能基を含むことができる。
【0044】
一実施形態において、ClickP化合物は、条件に応じて係留および切断の両方を可能とする可逆的な放出可能基を含むことができる。
【0045】
係留基を有する放出可能基の例には、
-スペーサ-アルキン-アジド-スペーサ-チオール-チオール-基材;
-スペーサ-チオール-チオール-スペーサ-アルキン-アジド-基材;および
-スペーサ-チオール-チオール-基材;が挙げられるがこれらに限定されず、
下線部分はClickP係留基を繋ぐ官能化基材である。チオール-チオール基は、特定条件下にて全体的なClickP複合体の一部を基材から放出させる放出可能基である。放出可能基は、係留基の前後であり得る。チオールの場合、これは係留基および放出可能基の両方として作用可能である。
【0046】
ClickP化合物は、ペプチドの末端アミノ酸とコンジュゲートする反応性基、ClickPペプチド複合体を物理的な基材に固定化する係留基、およびClickP化合物および結合された末端アミノ酸をペプチドから除去させ、結果ClickPアミノ酸複合体を生じる切断基、および複合体を物理的基材から放出させる放出可能基を含む。
【0047】
一実施形態において、ClickP化合物は、ペプチドの末端アミノ酸とコンジュゲートして、ClickPペプチド複合体を形成する。次いで、ClickPペプチド複合体は、物理的基材に局所的に繋がれる。続いて、ClickPペプチド複合体がペプチドから切断され、ClickPアミノ酸複合体が生じる。ClickPアミノ酸複合体のアミノ酸の検出および/または同定後、ClickPアミノ酸複合体は、その後の連続した配列決定を可能にするために、任意で基材から放出され得る。いくつかの実施形態において、係留基は、放出可能基と同じものである。
【0048】
いくつかの実施形態において、ClickPアミノ酸複合体は抗原性である。いくつかの実施形態において、ClickPアミノ酸複合体の一部は抗原性である。抗原性部分は、結合されたアミノ酸および式Iに由来する以下の部分、すなわちAのみ、AおよびB、AおよびC、またはA、BおよびCを含む。複数の実施形態において、抗原性部分は、結合されたアミノ酸および式Iに由来するAを含む。複数の実施形態において、抗原性部分は、結合されたアミノ酸ならびに式Iに由来するAおよびBを含む。複数の実施形態において、抗原性部分は、結合されたアミノ酸ならびに式Iに由来するAおよびCを含む。複数の実施形態において、抗原性部分は、結合されたアミノ酸ならびに式Iに由来するA、BおよびCを含む。
【0049】
一実施形態において、式IIは、様々な放出可能なリンカーを試験する柔軟性を提供するため、放出可能な官能基が後で結合される可能性があるClickPの一部を示す。
【0050】
【化2】
式中、nは、0~500の任意の数である。一実施形態において、nは0~250の任意の数である。一実施形態において、nは0~100の任意の数である。一実施形態において、nは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50である。一実施形態において、nは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25である。一実施形態において、nは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10である。一実施形態において、nは、1、2、3、4または5である。一実施形態において、nは1である。
【0051】
一実施形態において、ClickP化合物は、基材の官能化表面に直接繋ぐことができる。例えば、官能化表面がアジド含有表面である場合、次に、例えばアルキンなど、アジドとコンジュゲートする基を含むClickP化合物は表面に直接繋ぐことができる。アルキン-アジド結合の条件付き銅触媒化された(Cu+)クリックケミストリーは、高い収率および複雑な生物学的環境中の標的を単離するのに好適な高い反応特異性に関して生体直交型(bioorthgonal)である。
【0052】
ClickP複合体またはClickP複合体-基材複合体中の成分の接触および結合は、水性溶媒(水など)または有機溶媒(ジオアキサン、DMSO、THF、DMF、トルエン、アセトニトリルなど)を含むがこれらに限定されない溶媒中で行うことができる。
【0053】
図1は、末端アミン反応性基および切断基としてのPITCと、係留基としてのアルキンと、アジド-チオールリンカーと、チオール-官能化表面とを含む、式IのClickP化合物の一例を示す。
図1に示されるように、PITCは、ペプチドの末端アミノ酸に結合して、ClickPペプチド複合体を形成することができる。アルキン基は、チオール-官能化表面とジスルフィド結合を形成するアジド-チオールリンカーのアジド係留可能基とコンジュゲートする。ClickP上のアルキン基により、限定されないが、アジド-チオールなどの任意のモジュール式アジドリンカーの付加が可能となり、種々のタイプの官能化表面への結合を形成する。ジスルフィド結合により、ジスルフィド結合を切断させるトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)などの還元剤を用いてClickPを表面から放出させる。表面からClickP結合アミノ酸を除去する放出可能基により、ペプチド上の次の末端アミノ酸の単離および同定が可能とする。
【0054】
一実施形態において、本発明は、ペプチドの末端アミノ酸を物理的基材に繋ぎ、この末端アミノ酸を切断し、次にこれがペプチドから遊離していると同定されるように、化合物を用いてアミノ酸を単離するための方法を提供する。ペプチドから末端アミノ酸を単離することで、残りのペプチドにより影響されない、より選択的かつ/またはより高い親和性結合が可能となる。
【0055】
一実施形態において、ペプチドの末端アミノ酸を同定することは、ペプチドをClickP化合物と接触させることを含み、このClickP化合物はペプチドの末端アミノ酸または末端アミノ酸誘導体に結合し、ClickPペプチド複合体を形成する。このClickPペプチド複合体は、基材に繋がれる。繋いだ後、ClickPペプチド複合体はペプチドから切断され、ClickPアミノ酸複合体を形成する。次にClickPアミノ酸複合体は、ClickPアミノ酸複合体のアミノ酸の検出および/または同定のために使用され得る。
【0056】
一実施形態において、本発明は、ポリペプチドまたはタンパク質のN末端アミノ酸、またはその誘導体を単離および同定するための方法を提供する。ClickPによるN末端アミノ酸の単離は、ポリペプチドのN末端アミノ酸またはその誘導体へのClickP化合物のコンジュゲーション、ClickPペプチド複合体を基材に条件付きで繋ぐこと、ペプチドからClickPペプチド複合体を切断し、ClickPアミノ酸複合体を形成すること、およびClickPアミノ酸複合体の検出および/または同定に関係する。
【0057】
一実施形態において、本発明は、ペプチドのC末端アミノ酸、またはその誘導体を単離および同定するための方法を提供する。ClickPによるC末端アミノ酸の単離は、ペプチドのC末端アミノ酸またはその誘導体へのClickP化合物のコンジュゲーション、ClickPペプチド複合体を基材に条件付きで繋ぐこと、ペプチドからClickPペプチド複合体を切断し、ClickPアミノ酸複合体を形成すること、およびClickPアミノ酸複合体の検出および/または同定に関係する。
【0058】
一実施形態において、試料中の複数のペプチドの末端アミノ酸を同定する方法が提供される。
【0059】
一実施形態において、本方法は、試料中の複数のペプチドを官能化基材上の複数の結合点に付着させる工程と、ペプチドを複数のClickP化合物と接触させる工程であって、ClickP化合物は末端アミノ酸またはN末端アミノ酸誘導体に結合し、ClickPペプチド複合体を形成する、接触させる工程と、ClickPペプチド複合体を基材に繋ぐ工程と、ペプチドからClickPペプチド複合体を切断し、ClickPアミノ酸複合体を形成する工程と、ClickPアミノ酸複合体のアミノ酸を検出および/または同定する工程と、を含む。
【0060】
本明細書において開示される方法の複数の実施形態において、本方法は、ポリペプチドまたはタンパク質からClickPペプチド複合体を切断する工程の前に、過剰なおよび/または結合されていないClickP化合物を任意で洗い流すことを含む。
【0061】
ClickPによるペプチドの配列決定は、ペプチドの末端アミノ酸またはペプチドの末端アミノ酸の誘導体へのClickP化合物のコンジュゲーション、ClickPペプチド複合体を基材に条件付きで繋ぐこと、ペプチドからClickPペプチドを切断し、ClickPアミノ酸複合体を形成すること、ClickPアミノ酸複合体を検出および/または同定すること、および固定化されたClickPペプチド複合体を次のサイクル用の基材から放出させることに関係する。
【0062】
一実施形態において、ClickPアミノ酸複合体のアミノ酸を検出および/または同定することが、ClickPアミノ酸複合体をClickPアミノ酸複合体結合剤と接触させることであって、ClickPアミノ酸複合体結合剤が、ClickPアミノ酸複合体またはClickPアミノ酸複合体のサブグループに結合する、接触させることと、ClickPアミノ酸複合体に結合されるClickPアミノ酸複合体結合剤を検出することと、を含む。ClickPアミノ酸複合体に結合剤が結合していることを検出することにより、ペプチドの末端アミノ酸の同定が可能になる。
【0063】
一実施形態において、ClickPアミノ酸複合体のアミノ酸を検出および/または同定することが、ClickPアミノ酸複合体を複数のClickPアミノ酸複合体結合剤と接触させることであって、各ClickPアミノ酸複合体結合剤が、特定のClickPアミノ酸複合体またはClickPアミノ酸複合体のサブグループに優先的に結合する、接触させることと、ClickPアミノ酸複合体に結合されるClickPアミノ酸複合体結合剤を検出することと、を含む。ClickPアミノ酸複合体に結合されるClickPアミノ酸複合体結合剤を検出することで、ペプチドの末端アミノ酸またはアミノ酸のサブグループの同定が可能になる。
【0064】
ClickPおよびClickPアミノ酸複合体結合剤は、ペプチドの末端アミノ酸を同定することで配列情報を作成するために使用され得ると確定された。本発明者らはまた、最初に基材にペプチド分子を付着させることにより、基材上の同じ位置でClickPアミノ酸複合体を繰り返し検出することでその固定化されたペプチドの配列を決定することが可能であるとも確定した。
【0065】
一実施形態において、ClickPアミノ酸複合体のアミノ酸を検出および/または同定することは、光の波長による直接検出を含み得る。一実施形態において、単一のClickPアミノ酸複合体からのラマンスペクトルを検出し、複合体を同定する。一実施形態において、表面増強ラマン分光法を使用し、ClickPアミノ酸複合体を検出および/または同定する。一実施形態において、各ClickPアミノ酸複合体に対するラマンスペクトルは、互いに識別可能である。一実施形態において、各ClickPアミノ酸複合体に対するラマンスペクトルは、互いに部分的に識別可能である。いくつかの実施形態において、金または銀は、ラマン分光法のための表面増強といった形態として、基材上へと堆積され得る。一実施形態において、ラマン分光法のための表面増強は、ClickPアミノ酸複合体と相互作用するナノ粒子である。一実施形態において、ClickPアミノ酸複合体へのナノ粒子の相互作用は、共有結合性、親水性または疎水性の相互作用であるが、これらに限定されない。
【0066】
本明細書で使用される場合、「ペプチド」、「ポリペプチド」または「タンパク質」という用語は、本明細書で互換的に使用され、ペプチド結合によって共に連結される2つ以上のアミノ酸を指す。「ペプチド」、「ポリペプチド」または「タンパク質」という用語は、起源が合成であるかまたは天然のペプチドを含む。本明細書で使用される場合、「ペプチドの少なくとも一部」は、ペプチドの2つまたは複数のアミノ酸を指す。任意で、ペプチドの一部は、ペプチドのすべてのアミノ酸配列、またはペプチドの完全なアミノ酸配列のうち、連続するまたはギャップありのいずれかで、少なくとも5個のアミノ酸、10個のアミノ酸、20個のアミノ酸、30個のアミノ酸または50個のアミノ酸を含む。
【0067】
「N末端アミノ酸」という語句は、遊離アミン基を有し、ペプチド中、ペプチド結合により他の1つのアミノ酸にのみ連結されるアミノ酸を指す。「N末端アミノ酸誘導体」という語句は、例えば、天然の翻訳後修飾(例えば、リン酸化)機構によるエドマン試薬もしくはインビトロもしくは細胞内の他の化学物質、または合成アミノ酸で化学的に修飾されたN末端アミノ酸残基を指す。
【0068】
「C末端アミノ酸」という語句は、遊離カルボキシル基を有し、ペプチド中、ペプチド結合により他の1つのアミノ酸にのみ連結されるアミノ酸を指す。「C末端アミノ酸誘導体」という語句は、例えば、天然の翻訳後修飾(例えば、リン酸化)機構によるインビトロもしくは細胞内の他の化学試薬、または合成アミノ酸で化学的に修飾されたC末端アミノ酸残基を指す。
【0069】
「ClickPアミノ酸複合体のサブグループ」という語句は、同じClickPアミノ酸複合体結合剤によって結合される一組のアミノ酸を指す。最も広義では、アミノ酸またはサブグループの同一性は結合剤にコードされている。結合剤が1つのアミノに特異的でない場合、結合剤は、例えば、何らかの統計的規則性を伴って2個または3個のアミノ酸に結合することがある。アミノ酸の可能性を絞り込むことは依然としてデータベース検索に関連するので、この種の情報は依然としてタンパク質同定に関連する。アミノ酸の同一性および結合のばらつきは、結合剤の特異性に影響を及ぼし得る極性、構造、官能基および電荷などの特徴に基づく。全体として、基は、結合剤の特異性および基が表すものに基づく。結合剤は、2個または複数のアミノ酸に等しく、または異なる程度の信頼性で結合することができ、依然として配列情報を提供する。
【0070】
本明細書で使用される場合、ClickPアミノ酸複合体またはClickPアミノ酸複合体のサブグループへの結合剤の結合は、結合剤とClickPアミノ酸複合体との間の任意の共有結合または非共有結合相互作用を指す。一実施形態において、結合は共有結合である。一実施形態において、結合は非共有結合性である。
【0071】
本明細書で使用される場合、「ペプチドの配列決定」は、ペプチドのアミノ酸配列を決定することを指す。この用語はまた、ペプチドのセグメントの配列を決定すること、またはペプチドの部分配列情報を決定することを指す。ペプチドの部分的な配列決定は、利用可能なデータベースと対応づけられた場合にタンパク質の同一性を区別するのに依然として強力かつ十分である。例えば、タンパク質の6個の連続する末端アミノ酸を配列決定することによって、ヒトプロテオームの90%をユニークに同定することが可能である。ClickPアミノ酸複合体のサブグループに結合するClickPアミノ酸複合体結合剤の場合では、結合剤は、末端アミノ酸の正確な同一性を提供しないが、代わりに妥当なサブグループ同一性を提供し得る。妥当な配列同一性情報は、利用可能なデータベースと対応づけられた場合にタンパク質の同一性を区別するのに依然として強力かつ十分である。
【0072】
本明細書で使用される場合、「付着される」とは、ペプチドと基材の少なくとも一部が物理的に近接して保持されるような、ペプチドと基材との間の接続を指す。「付着される」または「繋がれた」という用語は、間接的または直接的な接続の両方を包含し、また可逆的または不可逆的であってもよい。例えば、接続は任意では共有結合または非共有結合である。
【0073】
一実施形態において、基材は平坦な平面である。別の実施形態において、基材は3次元であり、表面特徴を示す。一実施形態において、表面は官能化表面である。いくつかの実施形態において、基材は、化学的に誘導体化されたガラススライドまたはシリカウェハである。
【0074】
本明細書で使用される場合、「ペプチドのN末端アミノ酸またはN末端アミノ酸誘導体を切断する」とは、N末端アミノ酸またはN末端アミノ酸誘導体がペプチドから除去されるが、一方でペプチドの残りは基材に付着されたままである化学反応を指す。
【0075】
本明細書で使用される場合、「ペプチドのC末端アミノ酸またはC末端アミノ酸誘導体を切断する」とは、C末端アミノ酸またはC末端アミノ酸誘導体がペプチドから除去されるが、一方でペプチドの残りは基材に付着されたままである化学反応を指す。
【0076】
本明細書で使用される場合、「試料」という用語は、1つまたは複数のポリペプチドを含有する任意の材料を含む。試料は、生検、血液、血漿、器官、細胞小器官、細胞抽出物、分泌物、尿または粘膜、組織抽出物および天然または合成起源の体液の他の生物学的試料など、生物学的試料であり得る。試料という用語は、単一細胞も含む。試料は、分析物(薬物など)に曝露された、または環境条件、遺伝的摂動、またはそれらの組合せに供された細胞、組織、生物または個体に由来し得る。生物または個体には、ヒトまたは小動物(例えば、ラットおよびマウス)などの哺乳動物が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0077】
一実施形態において、官能化表面上の結合点は空間的に分解される。本明細書で使用される場合、「空間的に分解される」という用語は、1つのポリペプチドで生じる化学的または物理的事象を第2のポリペプチドで生じるものと区別することができる、基材上の2つ以上のポリペプチドの配置を指す。例えば、基材上に付着される2つのポリペプチドは、ポリペプチドのうち1つに結合される検出可能な標識からのシグナルを、基材上の特定の位置でポリペプチドの1つに明確に割り当てることができる場合、空間的に分解される。
【0078】
一実施形態において、配列決定されるペプチドは、基材に付着される。いくつかの実施形態において、基材は、ガラス、石英、シリカ、プラスチック、金属、ヒドロゲル、複合材料、またはそれらの組合せなどの材料から作製される。一実施形態において、基材は平坦な平面である。別の実施形態では、基材は3次元である。いくつかの実施形態において、基材は、化学的に誘導体化されたガラススライドまたはシリカウェハである。
【0079】
一実施形態において、基材は、本明細書に記載の配列決定試薬およびアッセイに実質的に影響を及ぼさない材料から作製される。一実施形態において、基材は、エドマン分解に使用される塩基性および酸性の、pH、化学物質および緩衝剤に抵抗性を有する。基材はまた、コーティングで覆われてもよい。いくつかの実施形態において、コーティングは、エドマン分解で使用される化学反応および条件に抵抗性を有する。いくつかの実施形態において、コーティングは、ポリペプチドを基材に付着させるための、および/または非特異的プローブ吸着を忌避するための結合点を提供する。いくつかの実施形態において、コーティングは、ClickPペプチド複合体を繋ぐための結合点を提供する。
【0080】
いくつかの実施形態において、基材の表面は、プローブを検出する場合のバックグラウンドシグナルを最小限に抑えるために、ポリペプチドまたはデブリの非特異的な接着に抵抗性を有する。
【0081】
一実施形態において、基材は、光学的に透明な材料で作製される。本明細書で使用される場合、「光学的に透明」は、光が材料を通過可能とする材料を指す。一実施形態において、基材は、自己蛍光性または非自己蛍光性である。
【0082】
一実施形態において、ペプチドは基材に付着される。一実施形態において、ペプチドは、ClickP化合物の結合を可能にするためにペプチドのN末端またはC末端が自由であるように基材に付着される。したがって、いくつかの実施形態において、ペプチドは、ペプチドのN末端またはC末端、ペプチドのN末端アミン基またはC末端カルボン酸基により基材に付着される。いくつかの実施形態において、基材は、ペプチドを基材に固定可能とする、1つまたは複数の結合点を含む。
【0083】
一実施形態において、ペプチドは、ClickP化合物の結合を可能にするためにペプチドのC末端が自由であるように基材に付着される。したがって、いくつかの実施形態において、ペプチドは、ペプチドのN末端、ペプチドのN末端アミン基またはペプチドの側鎖官能基により基材に付着される。いくつかの実施形態において、基材は、ポリペプチドを基材に固定可能とする、1つまたは複数の結合点を含む。
【0084】
いくつかの実施形態において、ペプチドは、共有結合により表面に付着される。例えば、基材の表面は、ポリエチレングリコール(PEG)または炭水化物ベースのコーティングを含み得、ペプチドは、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルPEGリンカーを介して表面に付着される。
【0085】
リンカーおよびペプチドを基材に結合させるための多数の異なる化学は、例えば、アルデヒドシラン、エポキシシランまたは他の制御された反応性部分を含む特殊なコーティングの使用によって、当該技術分野で公知である。一実施形態において、基材は、シランまたは関連試薬でガラスコーティングされ、ポリペプチドは、露出したリジン残基を介してシッフ塩基結合を介して基板に付着される。
【0086】
いくつかの実施形態において、ペプチドは、基材に非共有結合的に付着される。例えば、一実施形態において、ペプチドのC末端はビオチンとコンジュゲートされ、基材はアビジンまたは関連分子を含む。別の実施形態において、ペプチドのC末端は、基材の表面上の抗体に結合する抗原とコンジュゲートされる。別の例において、ペプチドのN末端はビオチンとコンジュゲートされ、基材はアビジンまたは関連分子を含む。別の実施形態において、ペプチドのN末端は、基材の表面上の抗体に結合する抗原とコンジュゲートされる。
【0087】
ポリペプチドを基材に付着させるのに好適なさらなるカップリング剤は、当該技術分野にて記載される(例えば、Athena L.Guo and X.Y.Zhu.Functional Protein Microarrays in Drug Discovery中のThe Critical Role of Surface Chemistry In Protein Microarraysを参照されたい)。
【0088】
一実施形態において、特定のClickPアミノ酸複合体またはClickPアミノ酸複合体のサブグループに優先的に結合するClickPアミノ酸複合体結合剤が提供される。本明細書で使用される場合、「特定のClickPアミノ酸複合体またはClickPアミノ酸複合体のサブグループに優先的に結合する」という語句は、他の特定のClickPアミノ酸複合体またはClickPアミノ酸複合体のサブグループと比較して、特定のClickPアミノ酸複合体またはClickPアミノ酸複合体のサブグループに対してより大きな親和性を有する結合剤を指す。ClickPアミノ酸複合体結合剤は、特定のClickPアミノ酸複合体またはClickPアミノ酸複合体のサブグループに対する結合剤の結合について、検出可能な相対的増加がある場合、標的ClickPアミノ酸複合体またはClickPアミノ酸複合体のサブグループに優先的に結合する。
【0089】
一実施形態において、特定のClickPアミノ酸複合体またはClickPアミノ酸複合体のサブグループに優先的に結合する結合剤を使用して、ペプチドのN末端アミノ酸を同定する。一実施形態において、特定のClickPアミノ酸複合体またはClickPアミノ酸複合体のサブグループに優先的に結合する結合剤を使用して、ペプチドを配列決定する。いくつかの実施形態において、結合剤は、単分子感度で検出可能である。
【0090】
一実施形態において、特定のClickPアミノ酸複合体またはClickPアミノ酸複合体のサブグループに優先的に結合する結合剤を使用して、ペプチドのC末端アミノ酸を同定する。一実施形態において、特定のClickPアミノ酸複合体またはClickPアミノ酸複合体のサブグループに優先的に結合する結合剤を使用して、ペプチドを配列決定する。いくつかの実施形態において、結合剤は、単分子感度で検出可能である。
【0091】
一実施形態において、ClickPアミノ酸複合体またはClickPアミノ酸誘導体複合体に選択的に結合する結合剤が提供される。本明細書で使用される場合、「特定のClickPアミノ酸複合体に選択的に結合する」という語句は、他のClickPアミノ酸複合体と比較して、特定のClickPアミノ酸複合体に対してより大きな親和性を有する結合剤を指す。特定のClickPアミノ酸複合体への結合剤の結合について、検出可能な相対的増加がある場合、ClickPアミノ酸複合体結合剤は、標的ClickPアミノ酸複合体に選択的に結合する。
【0092】
一実施形態において、ClickPアミノ酸複合体またはClickPアミノ酸誘導体複合体に選択的に結合する結合剤を使用して、ペプチドのN末端アミノ酸を同定する。一実施形態において、ClickPアミノ酸複合体またはClickPアミノ酸誘導体複合体に選択的に結合する結合剤を使用して、ポリペプチドを配列決定する。いくつかの実施形態において、結合剤は、単分子感度で検出可能である。
【0093】
一実施形態において、ClickPアミノ酸複合体またはClickPアミノ酸誘導体複合体に選択的に結合する結合剤を使用して、ペプチドのC末端アミノ酸を同定する。一実施形態において、ClickPアミノ酸複合体またはClickPアミノ酸誘導体複合体に選択的に結合する結合剤を使用して、ペプチドを配列決定する。いくつかの実施形態において、結合剤は、単分子感度で検出可能である。
【0094】
特定のClickPアミノ酸複合体またはClickPアミノ酸複合体のサブグループを標的とし、認識するClickPアミノ酸結合剤は、タンパク質またはペプチド、核酸、化学物質または組合せであり得る。結合剤は、非標準アミノ酸および合成ヌクレオチドを含有する成分をも含み得る。一実施形態において、タンパク質結合剤は、抗体、または例えばペプチダーゼ、プロテアーゼ、アミノアシルtRNAシンテターゼ、ペプチドなどの酵素、またはリポカリンなどの輸送タンパク質であり得るが、これらに限定されない。一実施形態において、抗体はポリクローナル抗体である。一実施形態において、抗体はモノクローナル抗体である。一実施形態において、核酸結合剤は、アプタマーDNA、RNAまたは合成ヌクレオチドの混合物であり得るが、これらに限定されない。アプタマーは、結合特性を有するDNA/RNAである。一実施形態において、化学結合剤は、マレイミドおよびNHSエステルなどのアミノ酸反応性化学、2つ以上の異なる官能基を有するヘテロ官能性化学物質、または非共有結合超分子化学であり得るが、これらに限定されない。
【0095】
一実施形態において、複数の結合剤は、それぞれが20種類の天然タンパク質原性アミノ酸のうちの1つに選択的に結合する20個の結合剤を含み得る。別の実施形態において、結合剤は、それぞれが、ClickPと複合体を形成した20種類の天然タンパク質原性アミノ酸のうちの1つの誘導体に選択的に結合する20個の結合剤を含む。一実施形態において、誘導体はフェニルチオカルバミル誘導体である。さらなる実施形態において、結合剤は、翻訳後修飾アミノ酸またはClickPと複合体を形成したそれらの誘導体に選択的に結合する結合剤を含む。一実施形態において、結合剤は、合成アミノ酸またはClickPと複合体を形成したそれらの誘導体に選択的に結合する結合剤を含む。
【0096】
ClickPアミノ酸複合体に結合される結合剤を検出することは、当業者に公知の任意の検出方法によって達成され得る。
【0097】
一実施形態において、結合剤は検出可能な標識を含む。本発明での使用に好適な検出可能な標識には、単分子として検出することができる標識が含まれるが、これらに限定されない。
【0098】
一実施形態において、結合剤を、結合剤特異的抗体と接触させることによって結合剤を検出し、次に結合剤特異的抗体を検出する。
【0099】
いくつかの実施形態において、結合剤または標識は、磁気もしくは電気インパルスまたは信号を使用して検出される。
【0100】
いくつかの実施形態において、結合剤上の標識はオリゴヌクレオチドである。オリゴヌクレオチド標識は、当業者に公知の任意の方法により読み出される。
【0101】
一実施形態において、結合剤は、電気インパルスまたは信号により、生物学的ナノ細孔または合成ナノ細孔によって検出される。
【0102】
一実施形態において、標識、例えば蛍光部分を含む標識は、光学的に検出可能である。光学的に検出可能な標識の例には、例えばFluoSpheres(商標)などのコア色素を包含しているポリスチレンシェルを含む蛍光色素、ナイルレッド、フルオレセイン、ローダミン、例えばTAMRAなどの誘導体化ローダミン色素、リン光体、ポリメタジン色素、蛍光ホスホラミダイト、TEXAS RED、緑色蛍光タンパク質、アクリジン、シアニン、シアニン5色素、シアニン3色素、5-(2’-アミノエチル)-アミノナフタレン-1-スルホン酸(EDANS)、BODIPY、120ALEXAまたは前述のいずれかのものの誘導体もしくは修飾が挙げられるがこれらに限定されない。さらなる検出可能な標識は、色分けされたナノ粒子、または量子ドットまたはFluoSpheres(商標)を含む。一実施形態において、検出可能な標識は、光退色に抵抗性を有する一方、高い信号とノイズとの比で、固有かつ容易に検出可能な波長で多くの信号(光子など)を生成する。
【0103】
1つまたは複数の検出可能な標識は、当業者に公知の技術を使用して、本明細書に記載の結合剤試薬とコンジュゲートさせることができる。一実施形態において、特異的な検出可能な標識(または標識の組合せ)は、対応する結合試薬とコンジュゲートされ、それにより、標識(複数可)を検出することによる結合試薬の同定が可能となる。例えば、1つまたは複数の検出可能な標識は、本明細書に記載の結合試薬に直接的または間接的のいずれかでコンジュゲートさせることができる。
【0104】
基材に付着されるClickPアミノ酸複合体に結合される結合剤を検出することにより、ポリペプチドまたはタンパク質の末端アミノ酸を同定する。一実施形態において、結合剤は、結合剤とコンジュゲートされた検出可能な標識(または標識の組合せ)を検出することにより同定される。したがって、本明細書に記載の結合剤を検出するのに好適な方法は、この方法で使用される検出可能な標識(複数可)の性質に依存する。
【0105】
一実施形態において、結合剤または標識は、基材上の規定のグリッド、固有の位置または経路にわたって高解像度ラスタレーザ/スキャナを使用してその位置で繰り返し検出される。これらの方法は、本明細書に記載の方法の各配列決定サイクル中に同じ座標でシグナルを正確かつ反復的に検出するのに有用である。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、基材にランダムに付着され、プローブの検出は、基材を繰り返し走査して、基材に付着されたポリペプチドに結合されるプローブの座標および同一性を同定することにより進行する。
【0106】
一実施形態において、結合剤を検出することは、基材上の正確で同じ座標からのシグナルを繰り返し検出することができ、それによって検出された配列情報をその座標に付着される固有のポリペプチド分子に割り当てることができる超高感度検出システムを含む。
【0107】
一実施形態において、結合剤は、光学検出システムを使用して検出される。光学検出システムは、電荷結合装置(CCD)、走査型近接場顕微鏡法、遠方場共焦点顕微鏡法、広視野落射照明、光散乱、暗視野検鏡、光変換、単光子または多光子励起、スペクトル波長弁別、フルオロフォア同定、エバネッセント波照明、全反射照明蛍光(TIRF)顕微鏡、超解像顕微鏡法および単分子局在性顕微鏡法を含む。一般に、方法は、高効率光子検出システムと呼ばれることもある、カメラを備えた顕微鏡を使用したレーザ活性化蛍光の検出に関係する。適切な光子検出システムには、フォトダイオードおよび増感CCDカメラが含まれるが、これらに限定されない。
【0108】
一実施形態において、蛍光プローブの単分子検出に適した技術の例には、共焦点レーザ(走査)顕微鏡法、広視野顕微鏡法、近接場顕微鏡法、蛍光寿命イメージング顕微鏡法、蛍光相関分光法、蛍光強度分布分析、蛍光のクエンチング/デクエンチング、または蛍光エネルギー移動によって誘発される輝度変化の測定が挙げられる。
【0109】
一実施形態において、ClickP複合体はペプチドから切断される。一実施形態において、切断により、ペプチド上の隣接アミノ酸の末端が露出され、それにより、隣接アミノ酸はClickP化合物との反応に利用可能である。任意で、ペプチドは、ペプチド中の最後のアミノ酸まで連続的に切断される。
【0110】
いくつかの実施形態において、C末端アミノ酸は、基材に共有結合的に付着されており、基材から切断されない。一実施形態において、切断により、ペプチド上の隣接アミノ酸のN末端が露出され、それにより、隣接アミノ酸はClickP化合物との反応に利用可能である。任意で、ペプチドは、ペプチド中の最後のアミノ酸(C末端アミノ酸)まで連続的に切断される。
【0111】
いくつかの実施形態において、N末端アミノ酸は、基材に共有結合的に付着されており、基材から切断されない。一実施形態において、切断により、ペプチド上の隣接アミノ酸のC末端が露出され、それにより、隣接アミノ酸はClickP化合物との反応に利用可能である。任意で、ペプチドは、ペプチド中の最後のアミノ酸(N末端アミノ酸)まで連続的に切断される。
【0112】
一実施形態において、逐次最終分解を使用し、ペプチドのN末端アミノ酸を切断する。一実施形態において、逐次最終分解を使用し、ペプチドのC末端アミノ酸を切断する。分解は、一般にはカップリング工程および切断工程の2つの工程を含む。これらの工程は、ペプチドの露出された末端アミノ酸残基を除去するたびに反復的に繰り返され得る。
【0113】
一実施形態において、ペプチドをPITCまたはPITC類似体などの好適な試薬と高いpHにて接触させ、N末端フェニルチオカルバミル誘導体を形成することにより、最終分解が進行する。トリフルオロ酢酸の添加などによってpHを低下させることで、N末端アミノ酸フェニルチオカルバミル誘導体がポリペプチドから切断され、遊離アニリノチオゾリノン(ATZ)誘導体が形成される。このATZ誘導体を検出してもよい。一実施形態において、ATZ誘導体を、酸への曝露によってフェニルチオヒダントイン(PTH)誘導体に変換することができる。このPTH誘導体を検出してもよい。一実施形態において、ATZ誘導体およびPTH誘導体を、還元剤への曝露によってフェニルチオカルバミル(PTC)誘導体に変換することができる。このPTC誘導体を検出してもよい。一実施形態において、カップリングおよび切断工程を支配する反応を制御するために、基材の環境のpHを制御する。
【0114】
複数の実施形態において、最終分解は、無水酢酸で活性化した後、ペプチドをチオシアン酸アンモニウムなどの好適な試薬と接触させ、C末端ペプチジルチオヒダントイン(thiohydantion)誘導体を形成する。ルイス酸を用いてpHを低下させることで、ポリペプチドからアルキル化チオヒダントイン(ATH)脱離基が生じることにより、C末端アミノ酸ペプチジルチオヒダントイン(thiohydantion)誘導体が切断され、遊離チオヒダントイン(thiohydantion)誘導体が形成される。このATH誘導体を検出してもよい。一実施形態において、ATH誘導体を、酸への曝露によってチオヒダントイン誘導体に変換することができる。このチオヒダントイン誘導体を検出してもよい。一実施形態において、カップリングおよび切断工程を支配する反応を制御するために、基材の環境のpHが制御される。
【0115】
一実施形態において、ペプチドをClickP化合物と接触させる工程であって、ClickP化合物がN末端アミノ酸またはN末端アミノ酸誘導体に結合してClickPペプチド複合体を形成する、接触させる工程、ClickPペプチド複合体を基材に繋ぐ工程、ペプチドからClickPペプチド複合体を切断して、ClickPアミノ酸複合体を生じる工程、ClickPアミノ酸複合体を検出および/またはClickPアミノ酸複合体のアミノ酸を同定する工程、ならびに基材からClickPアミノ酸複合体を放出させる工程は、ペプチドを配列決定するために繰り返される。任意では、この工程は、一部のペプチドまたは完全なペプチドを配列決定するために、少なくとも2回、5回、10回、20回、30回、50回、または50回より多く繰り返される。任意で、少なくとも2個、5個、10個、20個、30個または50個のペプチドのアミノ酸配列またはペプチドの完全アミノ酸配列の連続アミノ酸残基または不連続アミノ酸残基が決定される。
【0116】
一実施形態において、ペプチドをClickP化合物と接触させる工程であって、ClickP化合物がC末端アミノ酸またはC末端アミノ酸誘導体に結合してClickPペプチド複合体を形成する、接触させる工程、ClickPペプチド複合体を基材に繋ぐ工程、ペプチドからClickPペプチド複合体を切断して、ClickPアミノ酸複合体を生じる工程、ClickPアミノ酸複合体を検出および/またはClickPアミノ酸複合体のアミノ酸を同定する工程、ならびに基材からClickPアミノ酸複合体を放出させる工程は、ペプチドを配列決定するために繰り返される。任意では、この工程は、一部のペプチドまたは完全なペプチドを配列決定するために、少なくとも2回、5回、10回、20回、30回、50回、または50回より多く繰り返される。任意で、少なくとも2個、5個、10個、20個、30個または50個のペプチドのアミノ酸配列またはペプチドの完全アミノ酸配列の連続アミノ酸残基または不連続アミノ酸残基が決定される。
【0117】
一実施形態において、本方法は、基材に付着させる工程、ペプチドをClickP化合物と接触させる工程、ClickPペプチド複合体を基材に繋ぐ工程、ClickPペプチド複合体をペプチドから切断する工程、ClickPアミノ酸複合体のアミノ酸を検出および/または同定する工程、およびClickPアミノ酸複合体を基材から放出させる工程のうちいずれか1つの前後で、この基材を洗浄またはすすぐことをさらに含む。基材の洗浄またはすすぎにより、基材から、切断されたN末端アミノ酸またはC末端アミノ酸、配列決定アッセイ中の次の工程に干渉する可能性があるデブリまたは先立って未使用である試薬などの廃棄物を除去する。
【0118】
本明細書に記載の方法により、単一の基材または一連の基材上の非常に多数のペプチド分子の配列決定が可能となる。したがって、本発明の一態様は、試料中に最初に存在する複数の付着されるペプチドの同時配列決定を提供する。一実施形態において、試料は、細胞抽出物、または組織抽出物を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法を使用して、単一の細胞に含有されるペプチドを分析することができる。さらなる実施形態において、試料は、血液、尿または粘膜などの生体液を含み得る。混合生物群集を有する土壌、水または他の環境試料も分析に好適である。
【0119】
一実施形態において、試料は、合成的に合成されたペプチドの混合物を含む。
【0120】
本明細書の一実施形態において、本方法は、各ペプチドの配列と参照タンパク質配列データベースとを比較することを含む。いくつかの実施形態において、10~20個またはそれより少ない配列決定されたアミノ酸残基を含む小さな断片は、試料中のペプチドの同一性を検出するのに有用であり得る。
【0121】
一実施形態において、本方法は、ペプチドに関する配列情報を作成するため、ペプチドのde novoシーケンシングを含む。別の実施形態において、本方法は、部分配列またはアミノ酸パターンを決定し、次に、部分配列またはアミノ酸パターンを配列データベースに含有される参照配列またはパターンと一致させることを含む。
【0122】
一実施形態において、本方法は、例えば細胞型、組織型または生物同一性など、試料の特徴を識別するために、分子フィンガープリントとして、またはバイオインフォマティックス手順にて作成された配列データを用いることを含む。
【0123】
さらに、基材に付着される各ペプチドを、個別に任意でモニタリングする場合、本方法はタンパク質発現の定量的分析に有用である。例えば、いくつかの実施形態において、本方法は各ペプチドの配列を比較し、類似のペプチド配列を分類し、各類似のペプチド配列の多数の例を数えることを含む。したがって、本明細書に記載の方法は、分子カウントに、または試料中のペプチドの数もしくは試料中の特定の種類のペプチドを定量するのに有用である。
【0124】
さらなる実施形態において、架橋ペプチドは、本明細書に記載の方法を使用して配列決定される。例えば、架橋タンパク質を基材に固定し、次に2つ以上のN末端アミノ酸を結合させ、配列決定することができる。検出される重複シグナルは、その位置で2つ以上の末端アミノ酸にそれぞれ結合する結合剤に対応する。一実施形態において、計算アルゴリズムおよびDB検索により、2つの多重/混合配列を推定または逆畳み込みすることが可能である。
【0125】
さらなる実施形態において、本明細書に記載の方法は、ホスホペプチドの分析および配列決定に有用である。例えば、ホスホペプチドを含む試料中のポリペプチドは、金属キレート化学により基材に付着される。次に、ホスホポリペプチドを本明細書に記載の方法に従って配列決定し、それによりホスホプロテオームに関する配列および定量的情報を提供する。
【0126】
さらなる多重化単分子読み出しおよび蛍光増幅スキームは、結合剤をDNAバーコードとコンジュゲートすること、およびハイブリダイズ鎖反応(HCR)による増幅に関係する。HCRは、フルオロフォアを含有するDNAナノ構造体のトリガー自己集合に関係し、高いシグナル対バックグラウンドを有する、多重化され、等温の酵素を含まない分子シグナル増幅を提供する。HCRおよび分岐DNA増幅により、多数のフルオロフォアを単一バーコード精度で標的化することが可能となる。
【実施例0127】
例1 ClickP機能の特性評価および検証
図1に示すように、ClickP化合物を使用して、N末端アミノ酸をコンジュゲートおよび切断する能力を決定した。ClickPがアジド複合体と確実に結合できるように、ClickP上のクリック可能なアルキン基も試験した。
【0128】
ClickP切断は、PITC基を既知の分子量のペプチドとコンジュゲートし、質量分析を使用して切断前後の分子量を測定することに関係した。1つのアミノ酸を損失することで予想される分子量の減少は、切断の成功を意味する。ClickPを含まないペプチド、N末端アミノ酸とコンジュゲートされたClickPを有するペプチド、およびClickPがN末端アミノ酸を除去した後に切断されたペプチドにのみ質量分析を行った。質量分析結果に基づき、PITCと比較した場合の2つの候補であるClickP化合物のN末端アミノ酸のコンジュゲーション効率および切断効率を
図3に示す。
【0129】
図3Aは、PITC、ClickP1、ClickP2およびペプチドのみのN末端コンジュゲーション効率を比較している。
図3Bは、ClickP1が、より長期の反応時間にて、PITC N末端コンジュゲーション効率を達成し得ることを示す。
図3Cは、PITC、ClickP1、ClickP2およびペプチドのみのN末端切断効率を比較している。LCMSを用いてデータを収集し、反応物の量および生成物の量を決定した。これらの結果に基づき、ClickP候補は、PITCと比較可能な効率に対し、ペプチドのN末端コンジュゲートすることおよびN末端アミノ酸を切断することが可能である。
【0130】
アルキン基の官能性およびアジド-基材とコンジュゲートするその能力を決定した。この能力を実証するため、官能化ビーズをペプチドなし(対照)または固定化ペプチドのいずれかでコーティングした。コーティング後、ビーズを、ClickPを用いてインキュベートし、ペプチドのN末端アミノ酸のコンジュゲーションを促進させた。次に、ClickPのクリック可能基をフルオロフォアテトラメチルローダミン(TMR)に連結させたアジドと反応させ、その後洗浄工程を行った。反応性アジド-フルオロフォアは、ClickPのアルキン基に反応のみしなければならないことから、ビーズを含有する、ペプチドとコンジュゲートされるClickPは、アジド-フルオロフォアが導入された場合に、蛍光強度がより高くなければならない。対照と比較した場合の蛍光の増加は、ClickP試薬上の官能性アジド-アルキンクリックケミストリーを示すことになる。結果を
図4に示す。
【0131】
高熱および低pHといったエドマン条件下で安定するかどうかに関わらず、そして仮に還元剤が結合を切断する場合に、ClickPの係留官能基がClickPを固定化する官能化表面との結合を確実に形成するように、これもまた試験する。例えば、モジュール式チオール-アジドリンカーが条件付きでClickPを固定化するチオール-官能化表面とのジスルフィド結合を確実に形成するように、これを試験する。この検証は、リンカーを使用してチオール-官能化ビーズ上にジスルフィド結合を形成すること、およびリンカー上のアジド基を使用してアルキン-フルオロフォア複合体とコンジュゲートすることに関係する。還元剤であるTCEPを加えることで、ジスルフィド結合を切断し、フルオロフォアとコンジュゲートされたリンカーを放出させ、この結果、蛍光強度を低下させることが予想される。エドマン条件下にあるジスルフィド結合がフルオロフォアを切断および放出させるかどうかに関わらず、ならびにまた、フルオロフォア自体がTCEPに曝露され、エドマン条件下にある場合に安定するかどうかに関わらず、対照を試験する。フルオロフォアはビーズに直接コンジュゲートされており、高熱、低pH下にあり、還元剤であるTCEPに曝露される場合に同じ蛍光強度を維持すると予想される。
【0132】
例2:アミノ酸認識用試薬(ClickPアミノ酸複合体の「結合剤」)
単分子ペプチドまたはタンパク質配列は、アミノ酸組成および順序の解明に本質的には関係する。すべてのアミノ酸は、アミン(-NH2)およびカルボキシル(-COOH)官能基を含有する有機小分子化合物であり、それらのそれぞれの側鎖(R基)で区別される。20種類すべてのアミノ酸を同定する能力には、それらの分子構造を高い特異性で識別可能である一組の試薬または方法が必要である。
【0133】
ClickPベースのアミノ酸単離は、隣接アミノ酸の変動性に起因する、特定の末端アミノ酸に結合する結合剤の能力の干渉として定義される「局所環境」の問題を解決する。
図6Aは、N末端アミノ酸でトリプトファンを標的にする抗体の結合効率は、隣接アミノ酸により乱されることを実証している。バイオレイヤー干渉法により結合量を定量化した。ClickPに伴う局所環境の問題を除去することにより、結合剤は、末端アミノ酸の代わりにClickPアミノ酸を標的とすることが意図される。
図5は、20種類すべてのアミノ酸に結合される可能なClickP化合物の一部を示す。
図6Bにおいて、トリプトファン抗体は、ClickPトリプトファンを他のアミノ酸と区別することができる。これは、結合剤が特定のClickPアミノ酸を標的とすることが可能であると示す。
【0134】
より選択的な結合剤を得るため、高い親和性および特異性を有する抗体の開発のため、ClickPアミノ酸複合体の一部を小分子として使用することができる。
【0135】
1つの方法では、ウサギにClickPアミノ酸複合体を注入することで化合物に対する免疫応答を誘発させることができ、これにより、ClickPアミノ酸複合体に結合する抗体の産生を誘発させる。
【0136】
下流では、ウサギハイブリドーマ技術により生成されたモノクローナル抗体を、親和性、特異性および交差反応性について試験する。別個のクローンにより分泌される抗体を、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)29を使用して交差反応性をアッセイし、親和性をタンパク質-リガンド相互作用の動態を測定する標識遊離法であるバイオレイヤー干渉法(BLI)30を使用して測定する。
【0137】
抗体がClickP結合アミノ酸に対して強い親和性または特異性を示さない場合、抗体の親和性および特異性を改善するために指向性を高めるアプローチを使用することができる。酵母の細胞壁に組み込まれた組換えタンパク質の発現を使用して高親和性リガンドをスクリーニングおよび進化させるタンパク質工学技術である酵母ディスプレイを使用して、ClickPで単離された各アミノ酸を標的とするように抗体結合剤を操作することができる。酵母ディスプレイは、高親和性を有する小分子を標的とする抗体をうまく操作するために使用されてきた。ウサギハイブリドーマから生成されたクローンは、酵母において抗体ライブラリを構築するために使用され得る。ライブラリはClickP標的に対するバイアスを既に有しており、そのため突然変異誘発により指向性を高めることで、改善された特性を有する新規抗体バリアントを導入することができる。酵母ディスプレイはまた、他の標的と交差反応する抗体の除去を助けるネガティブ選択も可能である。ネガティブ選択は、非標的抗原とコンジュゲートされる磁気ビーズを用いて、抗体ライブラリを発現する酵母をインキュベートし、それらを溶液から引き出すことに関係する。例えば、ある特定のアミノ酸に結合されるClickPを標的にする場合、他の19種類のアミノ酸は、高度に特異的な結合剤の可能性を改善することに対してネガティブ選択され得る。
【0138】
並行して、ハイブリドーマ技術が、ClickP結合アミノ酸を標的とする任意の抗体を生成しない場合には、酵素または核酸アプタマーなどの他の結合剤を探索することができる。それぞれのアミノ酸を認識する、20種類のアミノアシル-tRNAシンテターゼ酵素が存在する。アミノアシルtRNAシンテターゼまたは自然界の任意の他のアミノ酸結合タンパク質を酵母ディスプレイ上の足場タンパク質として使用し、指向性を強めさせ、それぞれのClickP結合アミノ酸に対する特異性および親和性を選択することができる。DNA/RNAアプタマーは、高い特異性および親和性で様々な分子に結合可能である一本鎖オリゴヌクレオチドである。RNAは、遊離アミノ酸のための特異的結合部位を形成することができ、RNAアプタマーは、ランダムRNAプールの反復的なインビトロ選択増幅技術によってその結合特異性を変化させるように発達されることが確証されている。
【0139】
抗体結合剤は、一次抗体に結合して蛍光強度を増幅する、コンジュゲートされたフルオロフォアまたはフルオロフォアとコンジュゲートされた二次抗体を単純に有することができる。
【0140】
ClickP結合アミノ酸を標的とするための結合剤が生成された後、配列決定スキームおよびイメージングプラットフォームを、ペプチド、タンパク質および細胞溶解物に対して実施する。
【0141】
例3:イメージングおよびプロテオームへのスケーリング
N末端アミノ酸のClickP単離のすべての成分である、ClickPアミノ酸特異的結合剤による標識、イメージング、およびその後のアミノ酸同定サイクルのためのClickPの放出といった成分を統合することによって、アミノ酸を同定することができる。十分なサイクルのアミノ酸同定は、タンパク質配列決定情報を提供する。
【0142】
ペプチドは、最初にカルボキシ架橋化学を用いてC末端によって固定化される。次に、ClickPはペプチドのN末端アミノ酸に結合し、除去可能な基を付加して官能化基材に繋ぐ。N末端切断後、単離されたClickP結合アミノ酸を結合剤で標識し、画像化し、除去する。
【0143】
優先権出願の79個の請求項は、条項としてすぐ下に再現される。これらの条項は、本発明の実施形態を規定する。本出願人は、本出願または本出願から分割されたさらなる出願のいずれかにおいて、これらの条項に記載された特徴の組合せ、および/または出願された優先権出願に含まれる他の主題の保護を追求する権利を留保する。
【0144】
1.ペプチドの末端アミノ酸を同定する方法であって、
(a)ペプチドとClickP化合物を接触させる工程であって、ClickP化合物がペプチドの末端アミノ酸または末端アミノ酸誘導体に結合し、ClickPアミノ酸複合体を形成する、接触させる工程と、
(b)ClickPアミノ酸複合体を基材に繋ぐ工程と、
(c)ペプチドからClickPアミノ酸複合体を切断する工程と、
(d)ClickPアミノ酸複合体と複数のClickPアミノ酸複合体結合剤とを接触させる工程であって、ClickPアミノ酸複合体結合剤が、ClickPアミノ酸複合体またはClickPアミノ酸複合体のサブグループに結合する、接触させる工程と、
(e)ClickPアミノ酸複合体に結合されるClickPアミノ酸複合体結合剤を検出する工程と、を含む、方法。
【0145】
2.ClickP化合物が、ペプチドのN末端アミノ酸またはN末端アミノ酸誘導体に結合し、ClickPアミノ酸複合体を形成する、請求項1に記載の方法。
【0146】
3.ClickP化合物が、ペプチドのC末端アミノ酸またはC末端アミノ酸誘導体に結合し、ClickPアミノ酸複合体を形成する、請求項1に記載の方法。
【0147】
4.ClickPアミノ酸複合体を基材から放出させる工程(f)をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【0148】
5.工程(a)~工程(f)が繰り返される、請求項4に記載の方法。
【0149】
6.工程(b)または工程(c)の前に、過剰なおよび/または結合されていないClickP化合物が洗い流される、請求項1に記載の方法。
【0150】
7.ペプチドが基材に付着される、請求項1に記載の方法。
【0151】
8.ペプチドが、ペプチドのC’末端カルボキシル基または側鎖官能基を介して基材に付着される、請求項7に記載の方法。
【0152】
9.ペプチドが、ポリペプチドのN’末端アミノ基または側鎖官能基を介して基材に付着される、請求項7に記載の方法。
【0153】
10.ペプチドが基材に共有結合的に付着される、請求項7に記載の方法。
【0154】
11.基材が光学的に透明である、請求項1に記載の方法。
【0155】
12.基材が官能化表面を含む、請求項1に記載の方法。
【0156】
13.官能化表面が、アジド官能化表面、チオール官能化表面、アルキン、DBCO、マレイミド、サクシンイミド、テトラジン、TCO、ビニル、メチルシクロプロペン、1級アミン表面、カルボキシル表面、DBCO表面、アルキン表面およびアルデヒド表面からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【0157】
14.基材が複数の結合点を有する、請求項1に記載の方法。
【0158】
15.ペプチドが結合点に付着される、請求項14に記載の方法。
【0159】
16.複数のClickPアミノ酸複合体結合剤が、
(a)ClickPと複合体を形成した20種類の天然タンパク質原性アミノ酸のサブグループに結合する1つまたは複数の結合剤と、
(b)ClickPと複合体を形成した翻訳後修飾アミノ酸のサブグループに結合する1つまたは複数の結合剤と、
(c)(a)または(b)の誘導体に結合する1つまたは複数の結合剤と、
(d)(a)、(b)または(c)の結合剤の組合せと、を含む、請求項1に記載の方法。
【0160】
17.複数のClickPアミノ酸複合体結合剤が、
(a)ClickPと複合体を形成した20種類の天然タンパク質原性アミノ酸のうち1つに結合する1つまたは複数の結合剤と、
(b)ClickPと複合体を形成した翻訳後修飾アミノ酸に結合する1つまたは複数の結合剤と、
(c)(a)または(b)の誘導体に結合する1つまたは複数の結合剤と、
(d)(a)、(b)または(c)の結合剤の組合せと、を含む、請求項1に記載の方法。
【0161】
18.少なくとも1つの結合剤は検出可能な標識を含む、請求項16または17に記載の方法。
【0162】
19.ClickPアミノ酸複合体に結合される結合剤を検出する工程が、検出可能な標識を検出することを含む、請求項18に記載の方法。
【0163】
20.ClickP化合物が検出可能な標識をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【0164】
21.試料中の複数のペプチドの末端アミノ酸を同定する方法であって、
(a)試料中の複数のペプチドを、基材上の複数の結合点に付着させる工程と、
(b)ペプチドと複数のClickP化合物を接触させる工程であって、ClickP化合物が末端アミノ酸または末端アミノ酸誘導体に結合し、ClickPアミノ酸複合体を形成する、接触させる工程と、
(c)ClickPアミノ酸複合体を基材に繋ぐ工程と、
(d)ペプチドからClickPアミノ酸複合体を切断する工程と、
(e)ClickPアミノ酸複合体と複数のClickPアミノ酸複合体結合剤とを接触させる工程であって、各ClickPアミノ酸複合体結合剤が、特定のClickPアミノ酸複合体またはClickPアミノ酸複合体のサブグループに結合する、接触させる工程と、
(f)ClickPアミノ酸複合体に結合されるClickPアミノ酸複合体結合剤を検出する工程と、を含む、方法。
【0165】
22.ClickP化合物が、ペプチドのN末端アミノ酸またはN末端アミノ酸誘導体に結合し、ClickPアミノ酸複合体を形成する、請求項21に記載の方法。
【0166】
23.ClickP化合物が、ペプチドのC末端アミノ酸またはC末端アミノ酸誘導体に結合し、ClickPアミノ酸複合体を形成する、請求項21に記載の方法。
【0167】
24.ClickPアミノ酸複合体を基材から放出させる工程(g)をさらに含む、請求項21に記載の方法。
【0168】
25.工程(b)~工程(g)が繰り返される、請求項24に記載の方法。
【0169】
26.工程(c)または工程(d)の前に、過剰なおよび/または結合されていないClickP化合物が洗い流される、請求項21に記載の方法。
【0170】
27.複数のペプチドが、ポリペプチドまたはタンパク質のC’末端カルボキシル基または側鎖官能基を介して基材に付着される、請求項21に記載の方法。
【0171】
28.複数のペプチドが、ペプチドのN’末端カルボキシル基または側鎖官能基を介して基材に付着される、請求項21に記載の方法。
【0172】
29.複数のポリペプチドまたはタンパク質が基材に共有結合的に付着される、請求項21に記載の方法。
【0173】
30.基材が光学的に透明である、請求項21に記載の方法。
【0174】
31.基材が官能化表面を含む、請求項21に記載の方法。
【0175】
32.官能化表面が、アジド官能化表面、チオール官能化表面、アルキン、DBCO、マレイミド、サクシンイミド、テトラジン、TCO、ビニル、メチルシクロプロペン、1級アミン表面、カルボキシル表面、DBCO表面、アルキン表面およびアルデヒド表面からなる群から選択される、請求項31に記載の方法。
【0176】
33.複数のClickPアミノ酸複合体結合剤が、
(a)ClickPと複合体を形成した20種類の天然タンパク質原性アミノ酸のサブグループに結合する1つまたは複数の結合剤と、
(b)ClickPと複合体を形成した翻訳後修飾アミノ酸のサブグループに結合する1つまたは複数の結合剤と、
(c)(a)または(b)の誘導体に結合する1つまたは複数の結合剤と、
(d)(a)、(b)または(c)の結合剤の組合せと、を含む、請求項21に記載の方法。
【0177】
34.複数のClickPアミノ酸複合体結合剤が、
(a)ClickPと複合体を形成した20種類の天然タンパク質原性アミノ酸のうち1つに結合する1つまたは複数の結合剤と、
(b)ClickPと複合体を形成した翻訳後修飾アミノ酸に結合する1つまたは複数の結合剤と、
(c)(a)または(b)の誘導体に結合する1つまたは複数の結合剤と、
(d)(a)、(b)または(c)の結合剤の組合せと、を含む、請求項21に記載の方法。
【0178】
35.少なくとも1つの結合剤は検出可能な標識を含む、請求項33または34に記載の方法。
【0179】
36.ClickPアミノ酸複合体に結合される結合剤を検出する工程が、検出可能な標識を検出することを含む、請求項35に記載の方法。
【0180】
37.ClickP化合物が検出可能な標識をさらに含む、請求項21に記載の方法。
【0181】
38.試料が、生体液、細胞抽出物、または組織抽出物を含む、請求項21に記載の方法。
【0182】
39.ペプチドの少なくとも一部を配列決定する方法であって、
(a)ポリペプチドまたはタンパク質とClickP化合物を接触させる工程であって、ClickP化合物が末端アミノ酸またはペプチドの末端アミノ酸誘導体に結合し、ClickPアミノ酸複合体を形成する、接触させる工程と、
(b)ClickPアミノ酸複合体を基材に繋ぐ工程と、
(c)ペプチドからClickPアミノ酸複合体を切断する工程と、
(d)ClickPアミノ酸複合体と複数のClickPアミノ酸複合体結合剤とを接触させる工程であって、各ClickPアミノ酸複合体結合剤が、特定のClickPアミノ酸複合体またはClickPアミノ酸複合体のサブグループに結合する、接触させる工程と、
(e)ClickPアミノ酸複合体に結合されるClickPアミノ酸複合体結合剤を検出する工程と、
(f)ClickPアミノ酸複合体を基材から放出させる工程と、
(g)工程(a)~工程(f)を繰り返す工程と、を含む、方法。
【0183】
40.ClickP化合物が、ペプチドのN末端アミノ酸またはN末端アミノ酸誘導体に結合し、ClickPアミノ酸複合体を形成する、請求項39に記載の方法。
【0184】
41.ClickP化合物が、ペプチドのC末端アミノ酸またはC末端アミノ酸誘導体に結合し、ClickPアミノ酸複合体を形成する、請求項39に記載の方法。
【0185】
42.工程(b)または工程(c)の前に、過剰なおよび/または結合されていないClickP化合物が洗い流される、請求項39に記載の方法。
【0186】
43.ペプチドが基材に付着される、請求項39に記載の方法。
【0187】
44.ペプチドが、ポリペプチドまたはタンパク質のC’末端カルボキシル基もしくは側鎖官能基を介して基材に付着される、請求項43に記載の方法。
【0188】
45.ペプチドが、ポリペプチドまたはC’末端カルボキシル基もしくはタンパク質の側鎖官能基を介して基材に付着される、請求項43に記載の方法。
【0189】
46.ペプチドが基材に共有結合的に付着される、請求項39に記載の方法。
【0190】
47.基材が光学的に透明である、請求項39に記載の方法。
【0191】
48.基材が官能化表面を含む、請求項39に記載の方法。
【0192】
49.官能化表面が、アジド官能化表面、チオール官能化表面、アルキン、DBCO、マレイミド、サクシンイミド、テトラジン、TCO、ビニル、メチルシクロプロペン、1級アミン表面、カルボキシル表面、DBCO表面、アルキン表面およびアルデヒド表面からなる群から選択される、請求項48に記載の方法。
【0193】
50.基材が複数の結合点を有する、請求項39に記載の方法。
【0194】
51.ペプチドが結合点に付着される、請求項50に記載の方法。
【0195】
52.複数のClickPアミノ酸複合体結合剤が、
(a)ClickPと複合体を形成した20種類の天然タンパク質原性アミノ酸のサブグループに結合する1つまたは複数の結合剤と、
(b)ClickPと複合体を形成した翻訳後修飾アミノ酸のサブグループに結合する1つまたは複数の結合剤と、
(c)(a)または(b)の誘導体に結合する1つまたは複数の結合剤と、
(d)(a)、(b)または(c)の結合剤の組合せと、を含む、請求項39に記載の方法。
【0196】
53.複数のClickPアミノ酸複合体結合剤が、
(a)ClickPと複合体を形成した20種類の天然タンパク質原性アミノ酸のうち1つに結合する1つまたは複数の結合剤と、
(b)ClickPと複合体を形成した翻訳後修飾アミノ酸に結合する1つまたは複数の結合剤と、
(c)(a)または(b)の誘導体に結合する1つまたは複数の結合剤と、
(d)(a)、(b)または(c)の結合剤の組合せと、を含む、請求項39に記載の方法。
【0197】
54.少なくとも1つの結合剤は検出可能な標識を含む、請求項52または53に記載の方法。
【0198】
55.ClickPアミノ酸複合体に結合される結合剤を検出する工程が、検出可能な標識を検出することを含む、請求項54に記載の方法。
【0199】
56.ClickP化合物が検出可能な標識をさらに含む、請求項39に記載の方法。
【0200】
57.工程(g)で決定されたペプチドの配列を、参照タンパク質配列データベースと比較することをさらに含む、請求項39に記載の方法。
【0201】
58.試料中の複数のペプチドの少なくとも一部を配列決定する方法であって、
(a)試料中の複数のペプチドを、基材上の複数の結合点に付着させる工程と、
(b)ペプチドと複数のClickP化合物を接触させる工程であって、ClickP化合物が末端アミノ酸または末端アミノ酸誘導体に結合し、ClickPアミノ酸複合体を形成する、接触させる工程と、
(c)ClickPアミノ酸複合体を基材に繋ぐ工程と、
(d)ペプチドからClickPアミノ酸複合体を切断する工程と、
(e)ClickPアミノ酸複合体と複数のClickPアミノ酸複合体結合剤とを接触させる工程であって、各ClickPアミノ酸複合体結合剤が、特定のClickPアミノ酸複合体またはClickPアミノ酸複合体のサブグループに結合する、接触させる工程と、
(f)ClickPアミノ酸複合体に結合されるClickPアミノ酸複合体結合剤を検出する工程と
(g)ClickPアミノ酸複合体を基材から放出させる工程と、
(h)工程(b)~工程(g)を繰り返す工程と、を含む、方法。
【0202】
59.ClickP化合物が、ペプチドのN末端アミノ酸またはN末端アミノ酸誘導体に結合し、ClickPアミノ酸複合体を形成する、請求項58に記載の方法。
【0203】
60.ClickP化合物が、ペプチドのC末端アミノ酸またはC末端アミノ酸誘導体に結合し、ClickPアミノ酸複合体を形成する、請求項58に記載の方法。
【0204】
61.工程(c)または工程(d)の前に、過剰なおよび/または結合されていないClickP化合物が洗い流される、請求項58に記載の方法。
【0205】
62.複数のペプチドが、ペプチドのC’末端カルボキシル基または側鎖官能基を介して基材に付着される、請求項58に記載の方法。
【0206】
63.複数のペプチドが、ポリペプチドのN’末端カルボキシル基または側鎖官能基を介して基材に付着される、請求項58に記載の方法。
【0207】
64.複数のペプチドが基材に共有結合的に付着される、請求項58に記載の方法。
【0208】
65.基材が光学的に透明である、請求項58に記載の方法。
【0209】
66.基材が官能化表面を含む、請求項58に記載の方法。
【0210】
67.官能化表面が、アジド官能化表面、チオール官能化表面、アルキン、DBCO、マレイミド、サクシンイミド、テトラジン、TCO、ビニル、メチルシクロプロペン、1級アミン表面、カルボキシル表面、DBCO表面、アルキン表面およびアルデヒド表面からなる群から選択される、請求項66に記載の方法。
【0211】
68.複数のClickPアミノ酸複合体結合剤が、
(a)ClickPと複合体を形成した20種類の天然タンパク質原性アミノ酸のサブグループに結合する1つまたは複数の結合剤と、
(b)ClickPと複合体を形成した翻訳後修飾アミノ酸のサブグループに結合する1つまたは複数の結合剤と、
(c)(a)または(b)の誘導体に結合する1つまたは複数の結合剤と、
(d)(a)、(b)または(c)の結合剤の組合せと、を含む、請求項58に記載の方法。
【0212】
69.複数のClickPアミノ酸複合体結合剤が、
(a)ClickPと複合体を形成した20種類の天然タンパク質原性アミノ酸のうち1つに結合する1つまたは複数の結合剤と、
(b)ClickPと複合体を形成した翻訳後修飾アミノ酸に結合する1つまたは複数の結合剤と、
(c)(a)または(b)の誘導体に結合する1つまたは複数の結合剤と、
(d)(a)、(b)または(c)の結合剤の組合せと、を含む、請求項58に記載の方法。
【0213】
70.少なくとも1つの結合剤は検出可能な標識を含む、請求項68または69に記載の方法。
【0214】
71.ClickPアミノ酸複合体に結合される結合剤を検出する工程が、検出可能な標識を検出することを含む、請求項70に記載の方法。
【0215】
72.ClickP化合物が検出可能な標識をさらに含む、請求項58に記載の方法。
【0216】
73.試料が、生体液、細胞抽出物、組織抽出物または合成的に合成されたペプチドの混合物を含む、請求項58に記載の方法。
【0217】
74.工程(h)で決定された少なくとも1つのペプチドの配列を、参照タンパク質配列データベースと比較することをさらに含む、請求項58に記載の方法。
【0218】
75.工程(h)で決定された各ペプチドの配列を比較し、類似のペプチド配列を分類し、各類似のペプチド配列の多数の例を数えることをさらに含む、請求項58に記載の方法。
【0219】
76.ClickPアミノ酸複合体であって、
(a)20種類の天然タンパク質原性アミノ酸のうち1つに結合されるClickP化合物、
(b)翻訳後修飾アミノ酸に結合されるClickP化合物、または
(c)(a)もしくは(b)の誘導体に結合されるClickP化合物を含む、ClickPアミノ酸複合体。
【0220】
77.ClickPアミノ酸複合体結合剤であって、
(a)ClickPと複合体を形成した20種類の天然タンパク質原性アミノ酸のサブグループに結合する結合剤、
(b)ClickPと複合体を形成した翻訳後修飾アミノ酸のサブグループに結合する結合剤、または
(c)(a)もしくは(b)の誘導体に結合する結合剤を含む、ClickPアミノ酸複合体結合剤。
【0221】
78.ClickPアミノ酸複合体結合剤であって、
(a)ClickPと複合体を形成した20種類の天然タンパク質原性アミノ酸のうち1つに結合する結合剤、
(b)ClickPと複合体を形成した翻訳後修飾アミノ酸に結合する結合剤、または
(c)(a)もしくは(b)の誘導体に結合する結合剤を含む、ClickPアミノ酸複合体結合剤。
【0222】
79.検出可能な標識をさらに含む、請求項77または78に記載の結合剤。
【0223】
本発明は、これらの好ましい実施形態を参照しながら特に示され、記載されてきたが、形態および詳細部分における種々の変更は、添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲から逸脱することなく本発明中で行われ得ると当業者によって理解されるだろう。