(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037765
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】CD70組合せ療法
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20240312BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240312BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240312BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240312BHJP
A61K 31/706 20060101ALI20240312BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240312BHJP
A61K 31/7068 20060101ALI20240312BHJP
A61K 31/5395 20060101ALI20240312BHJP
A61K 31/53 20060101ALI20240312BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20240312BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240312BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20240312BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240312BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
A61K39/395 T
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K31/706
A61P35/00
A61K31/7068
A61K31/5395
A61K31/53
A61K31/496
A61P35/02
A61K47/64
A61K39/395 Y
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023202413
(22)【出願日】2023-11-30
(62)【分割の表示】P 2020559030の分割
【原出願日】2019-01-16
(31)【優先権主張番号】1800649.4
(32)【優先日】2018-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】517303085
【氏名又は名称】アルジェニクス ビーブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ルク ヴァン ロムパエイ
(72)【発明者】
【氏名】マハン モシル
(72)【発明者】
【氏名】ピオトル ザブロクキ
(72)【発明者】
【氏名】ティム デラハイエ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】悪性腫瘍、特に急性骨髄性白血病(AML)などの骨髄性悪性腫瘍の治療のための、組合せ療法を提供する。
【解決手段】組合せ療法は、CD70に結合する抗体分子及び白血病幹細胞標的に結合する少なくとも1つの抗体分子を含むことができる。好ましい白血病幹細胞標的は、TIM-3、IL1R3/IL1RAP及びCD47である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD70に結合する抗体分子及び白血病幹細胞標的に結合する少なくとも1種の抗体分子を
含む、組合せ。
【請求項2】
前記白血病幹細胞標的が、TIM-3;ガレクチン-9;CD47;IL1RAP;LILRB2;CLL-1;CD12
3;CD33;SAIL;GPR56;CD44;E-セレクチン;CXCR4;CD25;CD32;PR1;WT1;ADGRE2;C
CR1;TNFRSF1B及びCD96からなる群から選択される、請求項1記載の組合せ。
【請求項3】
前記CD70へ結合する抗体分子が、可変重鎖ドメイン(VH)及び可変軽鎖ドメイン(VL)を含
み、ここでVH及びVLドメインが、以下のCDR配列:
配列番号:3を含むか又はこれからなるHCDR3;
配列番号:2を含むか又はこれからなるHCDR2;
配列番号:1を含むか又はこれからなるHCDR1;
配列番号:7を含むか又はこれからなるLCDR3;
配列番号:6を含むか又はこれからなるLCDR2;並びに
配列番号:5を含むか又はこれからなるLCDR1:
を含む、請求項1又は2記載の組合せ。
【請求項4】
前記CD70へ結合する抗体分子が、配列番号:4と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列
を含むVHドメイン及び配列番号:8と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含むVLドメ
インを含む、請求項3記載の組合せ。
【請求項5】
前記CD70に結合する抗体分子が、ARGX-110である、請求項4記載の組合せ。
【請求項6】
前記白血病幹細胞標的が、TIM-3及びガレクチン-9からなる群から選択される、請求項1
~5のいずれか一項記載の組合せ。
【請求項7】
前記白血病幹細胞標的が、TIM-3である、請求項6記載の組合せ。
【請求項8】
前記白血病幹細胞標的が、CD47である、請求項1~5のいずれか一項記載の組合せ。
【請求項9】
前記白血病幹細胞標的が、IL1RAPである、請求項1~5のいずれか一項記載の組合せ。
【請求項10】
前記白血病幹細胞標的が、LILRB2である、請求項1~5のいずれか一項記載の組合せ。
【請求項11】
前記組合せが、第一の白血病幹細胞標的に結合する抗体分子及び第二の白血病幹細胞標
的に結合する抗体分子を含み、ここで第一及び第二の白血病幹細胞標的が異なる、請求項
1~5のいずれか一項記載の組合せ。
【請求項12】
前記第一及び/又は第二の白血病幹細胞標的が、TIM-3;ガレクチン-9;CD47;IL1RAP
;LILRB2;CLL-1;CD123;CD33;SAIL;GPR56;CD44;E-セレクチン;CXCR4;CD25;CD32
;PR1;WT1;ADGRE2;CCR1;TNFRSF1B及びCD96からなる群から選択される、請求項11記載
の組合せ。
【請求項13】
前記第一の白血病幹細胞標的が、TIM-3;ガレクチン-9;CD47;IL1RAP及びLILRB2から
なる群から選択される、請求項11記載の組合せ。
【請求項14】
前記第二の白血病幹細胞標的が、TIM-3;ガレクチン-9;CD47;IL1RAP及びLILRB2から
なる群から選択される、請求項11又は13記載の組合せ。
【請求項15】
前記第一の白血病幹細胞標的が、TIM-3であり、並びに第二の白血病幹細胞標的が、CD4
7である、請求項11記載の組合せ。
【請求項16】
前記第一の白血病幹細胞標的が、TIM-3であり、並びに第二の白血病幹細胞標的が、IL1
RAPである、請求項11記載の組合せ。
【請求項17】
IL1RAPに結合する抗体分子を含む、請求項1~16のいずれか一項記載の組合せであり、
該抗体分子が、減少したNF-κBシグナル伝達;減少したWntシグナル伝達/β-カテニンシ
グナル伝達;AML細胞の減少した幹細胞性;又はそれらの組合せを生じる、前記組合せ。
【請求項18】
TIM-3に結合する抗体分子を含む、請求項1~17のいずれか一項記載の組合せであり、該
抗体分子が、減少したNF-κBシグナル伝達;減少したWntシグナル伝達/β-カテニンシグ
ナル伝達;AML細胞の減少した幹細胞性;又は、それらの組合せを生じる、前記組合せ。
【請求項19】
TIM-3に結合する抗体分子を含む、請求項1~18のいずれか一項記載の組合せであり、該
抗体分子が、TIM-3の、1種以上のTIM-3相互作用タンパク質との相互作用を阻害する、前
記組合せ。
【請求項20】
前記TIM-3相互作用タンパク質が、CEACAM-1;HMGB-1;ホスファチジルセリン;ガレク
チン-9;LILRB2;又は、それらの組合せから選択される、請求項19記載の組合せ。
【請求項21】
前記TIM-3に結合する抗体分子が、TIM-3のガレクチン-9との相互作用を阻害する、請求
項20記載の組合せ。
【請求項22】
前記TIM-3に結合する抗体分子が、TIM-3のLILRB2との相互作用を阻害する、請求項20記
載の組合せ。
【請求項23】
前記白血病幹細胞標的に結合する1又は複数の抗体分子が、白血病幹細胞標的(複数可)
によりラクダ科動物を免疫化する工程を含む方法により得られた1以上の免疫ライブラリ
ーから選択される、請求項1~22のいずれか一項記載の組合せ。
【請求項24】
前記ラクダ科動物が、ラマである、請求項23記載の組合せ。
【請求項25】
前記ラクダ科動物が、LSC標的タンパク質もしくはそのポリペプチド断片によるか、又
はLSC標的タンパク質もしくはそのポリペプチド断片を発現するmRNA分子もしくはcDNA分
子により免疫化される、請求項23又は24記載の組合せ。
【請求項26】
TIM-3に結合する抗体分子を含む、請求項1~25のいずれか一項記載の組合せであり、該
抗体分子が、可変重鎖CDR3(HCDR3)、可変重鎖CDR2(HCDR2)及び可変重鎖CDR1(HCDR1)、可
変軽鎖CDR3(LCDR3)、可変軽鎖CDR2(LCDR2)及び可変軽鎖CDR1(LCDR1)の組合せを含む抗体
分子からなる群から選択され、ここでこれらは:
(i)配列番号:41を含むHCDR3;配列番号:40を含むHCDR2;配列番号:39を含むHCDR1;配
列番号:80を含むLCDR3;配列番号:79を含むLCDR2;及び、配列番号:78を含むLCDR1;
(ii)配列番号:43を含むHCDR3;配列番号:42を含むHCDR2;配列番号:39を含むHCDR1;配
列番号:83を含むLCDR3;配列番号:82を含むLCDR2;及び、配列番号:81を含むLCDR1;
(iii)配列番号:46を含むHCDR3;配列番号:45を含むHCDR2;配列番号:44を含むHCDR1;
配列番号:86を含むLCDR3;配列番号:85を含むLCDR2;及び、配列番号:84を含むLCDR1;
(iv)配列番号:49を含むHCDR3;配列番号:48を含むHCDR2;配列番号:47を含むHCDR1;配
列番号:88を含むLCDR3;配列番号:82を含むLCDR2;及び、配列番号:87を含むLCDR1;
(v)配列番号:52を含むHCDR3;配列番号:51を含むHCDR2;配列番号:50を含むHCDR1;配
列番号:91を含むLCDR3;配列番号:90を含むLCDR2;及び、配列番号:89を含むLCDR1;
(vi)配列番号:55を含むHCDR3;配列番号:54を含むHCDR2;配列番号:53を含むHCDR1;配
列番号:94を含むLCDR3;配列番号:93を含むLCDR2;及び、配列番号:92を含むLCDR1;
(vii)配列番号:58を含むHCDR3;配列番号:57を含むHCDR2;配列番号:56を含むHCDR1;
配列番号:97を含むLCDR3;配列番号:96を含むLCDR2;及び、配列番号:95を含むLCDR1;
(viii)配列番号:60を含むHCDR3;配列番号:59を含むHCDR2;配列番号:50を含むHCDR1;
配列番号:100を含むLCDR3;配列番号:99を含むLCDR2;及び、配列番号:98を含むLCDR1;
(ix)配列番号:63を含むHCDR3;配列番号:62を含むHCDR2;配列番号:61を含むHCDR1;配
列番号:103を含むLCDR3;配列番号:102を含むLCDR2;及び、配列番号:101を含むLCDR1;
(x)配列番号:65を含むHCDR3;配列番号:64を含むHCDR2;配列番号:39を含むHCDR1;配
列番号:106を含むLCDR3;配列番号:105を含むLCDR2;及び、配列番号:104を含むLCDR1;
(xi)配列番号:67を含むHCDR3;配列番号:66を含むHCDR2;配列番号:50を含むHCDR1;配
列番号:109を含むLCDR3;配列番号:108を含むLCDR2;及び、配列番号:107を含むLCDR1;
(xii)配列番号:69を含むHCDR3;配列番号:68を含むHCDR2;配列番号:50を含むHCDR1;
配列番号:112を含むLCDR3;配列番号:111を含むLCDR2;及び、配列番号:110を含むLCDR1
;
(xiii)配列番号:72を含むHCDR3;配列番号:71を含むHCDR2;配列番号:70を含むHCDR1;
配列番号:115を含むLCDR3;配列番号:114を含むLCDR2;及び、配列番号:113を含むLCDR1
;
(xiv)配列番号:74を含むHCDR3;配列番号:73を含むHCDR2;配列番号:50を含むHCDR1;
配列番号:117を含むLCDR3;配列番号:111を含むLCDR2;及び、配列番号:116を含むLCDR1
;並びに
(xv)配列番号:77を含むHCDR3;配列番号:76を含むHCDR2;配列番号:75を含むHCDR1;配
列番号:120を含むLCDR3;配列番号:119を含むLCDR2;及び、配列番号:118を含むLCDR1:
から選択される、前記組合せ。
【請求項27】
TIM-3に結合する抗体分子を含む、請求項1~26のいずれか一項記載の組合せであり、該
抗体分子が:
(i)配列番号:9のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%の
同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はこれからなるVHドメイン、及び配列番号:10の
アミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%の同一性を有するアミ
ノ酸配列を含むか又はこれからなるVLドメイン;
(ii)配列番号:11のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%
の同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はこれからなるVHドメイン、及び配列番号:12
のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%の同一性を有するア
ミノ酸配列を含むか又はこれからなるVLドメイン;
(iii)配列番号:13 のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99
%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はこれからなるVHドメイン、及び配列番号:1
4のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%の同一性を有する
アミノ酸配列を含むか又はこれからなるVLドメイン;
(iv)配列番号:15のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%
の同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はこれからなるVHドメイン、及び配列番号:16
のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%の同一性を有するア
ミノ酸配列を含むか又はこれからなるVLドメイン;
(v)配列番号:17のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%の
同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はこれからなるVHドメイン、及び配列番号:18の
アミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%の同一性を有するアミ
ノ酸配列を含むか又はこれからなるVLドメイン;
(vi)配列番号:19のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%
の同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はこれからなるVHドメイン、及び配列番号:20
のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%の同一性を有するア
ミノ酸配列を含むか又はこれからなるVLドメイン;
(vii)配列番号:21のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%
の同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はこれからなるVHドメイン、及び配列番号:22
のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%の同一性を有するア
ミノ酸配列を含むか又はこれからなるVLドメイン;
(viii)配列番号:23のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99
%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はこれからなるVHドメイン、及び配列番号:2
4のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%の同一性を有する
アミノ酸配列を含むか又はこれからなるVLドメイン;
(ix)配列番号:25のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%
の同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はこれからなるVHドメイン、及び配列番号:26
のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%の同一性を有するア
ミノ酸配列を含むか又はこれからなるVLドメイン;
(x)配列番号:27のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%の
同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はこれからなるVHドメイン、及び配列番号:28の
アミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%の同一性を有するアミ
ノ酸配列を含むか又はこれからなるVLドメイン;
(xi)配列番号:29のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%
の同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はこれからなるVHドメイン、及び配列番号:30
のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%の同一性を有するア
ミノ酸配列を含むか又はこれからなるVLドメイン;
(xii)配列番号:31のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%
の同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はこれからなるVHドメイン、及び配列番号:32
のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%の同一性を有するア
ミノ酸配列を含むか又はこれからなるVLドメイン;
(xiii)配列番号:33のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99
%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はこれからなるVHドメイン、及び配列番号:3
4のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%の同一性を有する
アミノ酸配列を含むか又はこれからなるVLドメイン;
(xiv)配列番号:35のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%
の同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はこれからなるVHドメイン、及び配列番号:36
のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%の同一性を有するア
ミノ酸配列を含むか又はこれからなるVLドメイン;
(xv)配列番号:37のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%
の同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はこれからなるVHドメイン、及び配列番号:38
のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%の同一性を有するア
ミノ酸配列を含むか又はこれからなるVLドメイン:
から選択される、可変重鎖ドメイン(VH)及び可変軽鎖ドメイン(VL)を含むか又はこれから
なる抗体分子から選択される、前記組合せ。
【請求項28】
IL1RAPに結合する抗体分子を含む、請求項1~27のいずれか一項記載の組合せであり、
該抗体分子が:
(i)配列番号:127を含むHCDR3;配列番号:126を含むHCDR2;配列番号:125を含むHCDR1;
配列番号:133を含むLCDR3;配列番号:132を含むLCDR2;及び、配列番号:131を含むLCDR1
;並びに
(ii)配列番号:130を含むHCDR3;配列番号:129を含むHCDR2;配列番号:128を含むHCDR1
;配列番号:136を含むLCDR3;配列番号:135を含むLCDR2;及び、配列番号:134を含むLCDR
1:
から選択される、可変重鎖CDR3(HCDR3)、可変重鎖CDR2(HCDR2)及び可変重鎖CDR1(HCDR1)
、可変軽鎖CDR3(LCDR3)、可変軽鎖CDR2(LCDR2)及び可変軽鎖CDR1(LCDR1)の組合せを含む
抗体分子からなる群から選択される、前記組合せ。
【請求項29】
IL1RAPに結合する抗体分子を含む、請求項1~28のいずれか一項記載の組合せであり、
該抗体分子が:
(i)配列番号:121のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%
の同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はこれからなるVHドメイン、及び配列番号:122
のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%の同一性を有するア
ミノ酸配列を含むか又はこれからなるVLドメイン;並びに
(ii)配列番号:123のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%
の同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はこれからなるVHドメイン、及び配列番号:124
のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%の同一性を有するア
ミノ酸配列を含むか又はこれからなるVLドメイン:
から選択される、可変重鎖ドメイン(VH)及び可変軽鎖ドメイン(VL)を含むか又はこれから
なる抗体分子から選択される、前記組合せ。
【請求項30】
CD47に結合する抗体分子を含む、請求項1~29のいずれか一項記載の組合せであり、該
抗体分子が、CD47とSIRPαの間の相互作用を阻害する、前記組合せ。
【請求項31】
CD47に結合する抗体分子を含む、請求項1~30のいずれか一項記載の組合せであり、該
抗体分子が、腫瘍細胞の貪食を増大する、前記組合せ。
【請求項32】
CD47に結合する抗体分子を含む、請求項1~31のいずれか一項記載の組合せであり、該
抗体分子が、Hu5F9-G4;CC-90002;及び、ALX148から選択される、前記組合せ。
【請求項33】
前記組合せの抗体分子が、IgG抗体;抗体軽鎖可変ドメイン(VL);抗体重鎖可変ドメイ
ン(VH);単鎖抗体(scFv);F(ab’)2断片;Fab断片;Fd断片;Fv断片;1本アームの(一価
の)抗体;ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、又はそのような抗原結合断片の
組合せ、集成もしくはコンジュゲーションにより形成された任意の抗原-結合分子:から
なる群から独立して選択される、請求項1~32のいずれか一項記載の組合せ。
【請求項34】
前記組合せの抗体分子が、多重特異性抗体において組合せられる、請求項1~33のいず
れか一項記載の組合せ。
【請求項35】
前記組合せが、二重特異性抗体において組合せられたCD70に結合する第一の抗体分子及
び白血病幹細胞標的に結合する第二の抗体分子を含む、請求項34記載の組合せ。
【請求項36】
前記組合せの抗体分子が、共-製剤化される、請求項1~33のいずれか一項記載の組合せ
。
【請求項37】
前記組合せが、CD70に結合する第一の抗体分子及び白血病幹細胞標的に結合する第二の
抗体分子を含み、ここで第一及び第二の抗体分子は、1:1又は1:2又は2:1の比で製剤化さ
れる、請求項36記載の組合せ。
【請求項38】
前記抗体分子が、個別に提供される、請求項1~33のいずれか一項記載の組合せ。
【請求項39】
前記抗体分子の少なくとも1つが、その標的の機能を完全に又は部分的にブロックする
、請求項1~38のいずれか一項記載の組合せ。
【請求項40】
前記抗体分子の少なくとも1つが、ADCC活性を有する、請求項1~39のいずれか一項記載
の組合せ。
【請求項41】
前記抗体分子の少なくとも1つが、脱フコシル化抗体ドメインを含む、請求項40記載の
組合せ。
【請求項42】
前記抗体分子の少なくとも1つが、CDC活性を有する、請求項1~41のいずれか一項記載
の組合せ。
【請求項43】
前記抗体分子の少なくとも1つが、ADCP活性を有する、請求項1~42のいずれか一項記載
の組合せ。
【請求項44】
前記組合せが、SIRPαシグナル伝達を阻害する物質を追加的に含む、請求項1~43のい
ずれか一項記載の組合せ。
【請求項45】
前記SIRPαシグナル伝達を阻害する物質が、SIRPαに結合し、且つCD47とSIRPαの間の
相互作用を阻害する抗体分子である、請求項44記載の組合せ。
【請求項46】
前記SIRPαシグナル伝達を阻害する物質が、SIRPα-抗体分子融合タンパク質である、
請求項45記載の組合せ。
【請求項47】
前記SIRPα-抗体分子が、SIRPα-Fc融合体である、請求項46記載の組合せ。
【請求項48】
前記SIRPα-抗体分子融合タンパク質が、前記組合せの抗体分子の少なくとも1つを含む
、請求項46又は47記載の組合せ。
【請求項49】
前記SIRPα-抗体分子融合タンパク質が、CD70に結合する組合せの抗体分子を含む、請
求項48記載の組合せ。
【請求項50】
前記CD70に結合する抗体分子及びSIRPαシグナル伝達を阻害する物質を含有する、組合
せ。
【請求項51】
前記SIRPαシグナル伝達を阻害する物質が、CD47に結合し、且つCD47とSIRPαの間の相
互作用を阻害する抗体分子である、請求項50記載の組合せ。
【請求項52】
前記SIRPαシグナル伝達を阻害する物質が、SIRPαに結合し、且つCD47とSIRPαの間の
相互作用を阻害する抗体分子である、請求項50記載の組合せ。
【請求項53】
前記SIRPαシグナル伝達を阻害する物質が、SIRPα-抗体分子融合タンパク質である、
請求項50記載の組合せ。
【請求項54】
前記SIRPα-抗体分子融合タンパク質が、SIRPα-Fc融合体である、請求項53記載の組合
せ。
【請求項55】
前記SIRPα-抗体分子融合タンパク質が、CD70に結合する抗体分子へ共有結合的に連結
された少なくとも1つのSIRPαV-様ドメインを含む、請求項53記載の組合せ。
【請求項56】
前記少なくとも1つのSIRPαV-様ドメインが、リンカーを介して抗体分子へ共有結合的
に連結されている、請求項55記載の組合せ。
【請求項57】
前記組合せが、少なくとも1種の追加の抗癌剤、好ましくは骨髄性悪性腫瘍の治療のた
めの物質を含む、請求項1~56のいずれか一項記載の組合せ。
【請求項58】
前記抗癌剤が、AMLの治療のための物質である、請求項57記載の組合せ。
【請求項59】
前記組合せが、低メチル化剤を追加的に含む、請求項1~58のいずれか一項記載の組合
せ。
【請求項60】
前記低メチル化剤が、アザシチジンである、請求項59記載の組合せ。
【請求項61】
前記組合せが、PD-1阻害剤及び/又はPD-L1阻害剤を追加的に含有し、ここで任意に該
阻害剤が、抗体である、請求項1~60のいずれか一項記載の組合せ。
【請求項62】
前記PD-1及び/又はPD-L1阻害剤が、ニボルマブ;ペムブロリズマブ;ピジリズマブ、R
EGN2810;AMP-224;MEDI0680;PDR001;アテゾリズマブ;又は、アベルマブから選択され
る、請求項61記載の組合せ。
【請求項63】
ヒト対象における悪性腫瘍の治療における使用のための、請求項1~62のいずれか一項
記載の組合せ。
【請求項64】
ヒト対象における悪性腫瘍の治療における使用のためのCD70に結合する抗体分子であり
、該抗体分子が、白血病幹細胞標的に結合する抗体分子との組合せで投与される、前記抗
体分子。
【請求項65】
ヒト対象における悪性腫瘍の治療における使用のための白血病幹細胞標的に結合する抗
体分子であり、該抗体分子が、CD70に結合する抗体分子と組合せて投与される、前記抗体
分子。
【請求項66】
前記白血病幹細胞標的が、TIM-3である、請求項64又は65記載の使用のための抗体分子
。
【請求項67】
前記白血病幹細胞標的が、CD47である、請求項64又は65記載の使用のための抗体分子。
【請求項68】
前記白血病幹細胞標的が、IL1RAPである、請求項64又は65記載の使用のための抗体分子
。
【請求項69】
前記白血病幹細胞標的が、LILRB2である、請求項64又は65記載の使用のための抗体分子
。
【請求項70】
ヒト対象における悪性腫瘍の治療における使用のためのCD70に結合する抗体分子であり
、該抗体分子が、SIRPαシグナル伝達を阻害する物質との組合せで投与される、前記抗体
分子。
【請求項71】
ヒト対象における悪性腫瘍の治療における使用のためのSIRPαシグナル伝達を阻害する
物質であり、該物質が、CD70に結合する抗体分子との組合せで投与される、前記抗体分子
。
【請求項72】
ヒト対象における悪性腫瘍の治療方法であり、該方法が、請求項1~62のいずれか一項
記載の組合せの有効量を該対象へ投与することを含む、前記方法。
【請求項73】
前記悪性腫瘍が、CD70、CD27、又は両方を発現する癌前駆細胞又は幹細胞の生成を含む
悪性腫瘍である、請求項72記載の方法。
【請求項74】
前記悪性腫瘍が、それに前記組合せの少なくとも1つの抗体分子が結合するLSC標的を発
現する癌前駆細胞又は幹細胞の生成を含む悪性腫瘍である、請求項72又は73記載の方法。
【請求項75】
前記悪性腫瘍が、骨髄性悪性腫瘍である、請求項72~74のいずれか一項記載の方法。
【請求項76】
前記骨髄性悪性腫瘍が、新たに診断された又は再発性/不応性骨髄性悪性腫瘍から選択
される、請求項75記載の方法。
【請求項77】
前記骨髄性悪性腫瘍が、急性骨髄性白血病(AML);骨髄異形成症候群(MDS);骨髄増殖性
腫瘍(MPN);慢性骨髄性白血病(CML);及び、骨髄単球性白血病(CMML)から選択される、請
求項75又は76記載の方法。
【請求項78】
前記骨髄性悪性腫瘍が、急性骨髄性白血病(AML)である、請求項77記載の方法。
【請求項79】
患者の芽球カウントをモニタリングすることを更に含む、請求項77又は78記載の方法。
【請求項80】
前記患者の骨髄芽球カウントが、5%未満減少される、請求項79記載の方法。
【請求項81】
前記患者の骨髄芽球カウントが、治療前と比べ、5%~25%減少され、且つ骨髄芽球割
合が、50%を超えて減少される、請求項79記載の方法。
【請求項82】
部分奏効又は完全奏効を誘導する、請求項72~79のいずれか一項記載の方法。
【請求項83】
血小板回復を伴う完全奏効を誘導する、請求項82記載の方法。
【請求項84】
好中球回復を伴う完全奏効を誘導する、請求項82又は83記載の方法。
【請求項85】
8週間又はそれよりも長い、赤血球又は血小板、又は両方の輸血依存離脱を誘導する、
請求項72~84のいずれか一項記載の方法。
【請求項86】
生存を延長する、請求項72~85のいずれか一項記載の方法。
【請求項87】
骨髄性悪性腫瘍の治療に使用する標準治療物質に対する生存を延長する、請求項72~86
のいずれか一項記載の方法。
【請求項88】
陰性である微小残存病変の状態を誘導する、請求項72~87のいずれか一項記載の方法。
【請求項89】
前記対象へ骨髄移植を供することを更に含む、請求項72~88のいずれか一項記載の方法
。
【請求項90】
1種以上の追加の抗癌剤を投与することを更に含む、請求項72~89のいずれか一項記載
の方法。
【請求項91】
前記1種以上の追加の抗癌剤が、骨髄性悪性腫瘍の治療に適している物質から選択され
る、請求項90記載の方法。
【請求項92】
前記1種以上の追加の抗癌剤が、AMLの治療に適している物質から選択される、請求項90
記載の方法。
【請求項93】
前記1種以上の追加の抗癌剤が、ベネトクラックス;Vyxeos;Idhifa(エナシデニブ);
及び、Rydapt(ミドスタウリン)から選択される、請求項92記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、悪性腫瘍、特に急性骨髄性白血病(AML)などの骨髄性悪性腫瘍の治療のため
の組合せ療法に関する。これらの組合せ療法は、CD70に結合する抗体分子及び白血病幹細
胞標的に結合する少なくとも1つの抗体分子を含むことができる。好ましい白血病幹細胞
標的は、TIM-3、IL1R3/IL1RAP及びCD47である。代わりに又は加えて、これらの組合せ療
法は、CD70に結合する抗体分子、及びSIRPαシグナル伝達を阻害する物質を含むことがで
きる。これらの組合せ療法は更に、追加の抗癌剤、例えばアザシチジン又はデシタビンな
どのAMLの治療に使用される物質を含むことができる。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
近年、新規癌治療の開発は、癌進行に関与した、分子標的、特にタンパク質に焦点を当
てている。腫瘍の成長、侵襲及び転移に関与した分子標的のリストは、拡大し続けており
、且つ腫瘍細胞により過剰発現されたタンパク質、並びに血管系及び免疫系などの腫瘍成
長を支援するシステムに関連した標的を含んでいる。これらの分子標的と相互作用するよ
うに設計された治療薬又は抗癌剤の数も増加し続けており、数多くの標的化された癌医薬
品が、臨床使用のために現在承認され、更に多くが開発の過程にある。
【0003】
免疫療法は、癌治療への特に興味深いアプローチである。この形の療法は、腫瘍成長を
制御するために、身体独自の免疫系の力を利用しようとする。この免疫系は、多数の異な
る細胞型を含み、高度に複雑であり、且つ健常者において、これらの異なる細胞集団は、
厳格な制御に供されている。癌の発生時に、腫瘍は典型的には、例えばナチュラルキラー
(NK)細胞アクチベーターのダウンレギュレーション、腫瘍細胞によるMHCクラスIタンパク
質の低下した発現、T細胞アネルギー及び/又は免疫抑制的な制御性T細胞(又はTreg)のア
ップレギュレーションなどによる、宿主免疫系による検出及び排除を回避する様式を展開
する。免疫療法は、免疫抑制的な腫瘍環境を逆行させ、これにより体が効果的抗-腫瘍反
応を搭載するのを補助することを目的としている。
【0004】
CD70は、多くの型の血液学的悪性腫瘍及び固形癌におけるその構成的発現のために、特
に興味深い分子標的として確定されている(Junkerらの文献、J Urol. 173:2150-3 (2005)
;Sloanらの文献、Am J Pathol. 164:315-23 (2004);Held-Feindt及びMentleinの文献、
Int J Cancer, 98:352-6 (2002);Hishimaらの文献、Am J Surg Pathol. 24:742-6 (2000
);Lensらの文献、Br J Haematol. 106:491-503 (1999);Boursalianらの文献、Adv Exp
Med Biol. 647:108-119 (2009);Wajant H.の文献、Expert Opin Ther Targets, 20(8):9
59-973 (2016))。CD70は、腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリーに属する、II型膜貫通
型糖タンパク質であり、これはそのコグネート細胞表面受容体CD27への結合を通じて、そ
の作用を媒介する。CD70及びCD27の両方は、免疫系の複数の細胞型により発現され、並び
にCD70-CD27シグナル伝達経路は、免疫応答のいくつかの異なる態様の制御に関連してい
る。このことは、CD70の過剰発現は、関節リウマチ及び乾癬性関節炎及び狼瘡を含む様々
な自己免疫疾患において起こるという事実を反映している(Boursalianらの文献、Adv Exp
Med Biol. 647:108-119 (2009);Hanらの文献、Lupus, 14(8):598-606 (2005);Leeらの
文献、J Immunol. 179(4):2609-2615 (2007);Oelkeらの文献、Arthritis Rheum. 50(6):
1850-1860 (2004))。
【0005】
CD70発現は、B細胞リンパ腫、腎細胞癌及び乳癌を含む、いくつかの癌の予後不良に結
びつけられている(Bertrandらの文献、Genes Chromosomes Cancer, 52(8):764-774 (2013
);Jilaveanuらの文献、Hum Pathol. 43(9):1394-1399 (2012);Petrauらの文献、J Canc
er, 5(9):761-764 (2014))。CD70発現はまた、症例の高い割合で転移性組織上において認
められており、このことはこの分子の癌進行における重要な役割を示唆している(Jacobs
らの文献、Oncotarget, 6(15):13462-13475 (2015))。造血系列の腫瘍細胞上のCD70及び
その受容体CD27の構成的発現は、腫瘍細胞の増殖及び生存を直接的に制御する、CD70-CD2
7シグナル伝達系の役割に結びつけられている(Gotoらの文献、Leuk Lymphoma, 53(8):149
4-1500 (2012);Lensらの文献、Br J Haematol. 106(2):491-503 (1999);Nilssonらの文
献、Exp Hematol. 33(12):1500-1507 (2005);van Doornらの文献、Cancer Res. 64(16):
5578-5586 (2004))。
【0006】
腫瘍、特にCD27を共発現しない固形腫瘍上でアップレギュレートされたCD70発現もまた
、様々な様式で、腫瘍微小環境における免疫抑制に寄与する。例えば、制御性T細胞上のC
D27へ結合するCD70は、マウスにおいて、Tregの頻度を増大し、腫瘍-特異性T細胞反応を
減少し、且つ腫瘍成長を促進することが示されている(Clausらの文献、Cancer Res. 72(1
4):3664-3676(2012))。腎細胞癌、神経膠腫及び膠芽細胞腫の細胞において明らかにされ
たように、CD70-CD27シグナル伝達はまた、Tリンパ球の腫瘍-誘導したアポトーシスによ
り、免疫応答を弱めることもできる(Chahlaviらの文献、Cancer Res. 65(12):5428-5438
(2005);Diegmannらの文献、Neoplasia, 8(11):933-938 (2006);Wischusenらの文献、Ca
ncer Res, 62(9):2592-2599 (2002))。最後に、CD70発現はまた、T細胞消耗にも結びつけ
られており、これによりリンパ球は、より分化した表現型を採用し、且つ腫瘍細胞を死滅
することに失敗する(Wangらの文献、Cancer Res, 72(23):6119-6129 (2012);Yangらの文
献、Leukemia, 28(9):1872-1884 (2014))。
【0007】
癌発生におけるCD70の重要性を考慮すると、CD70は、抗-癌療法の魅力的な標的であり
、且つこの細胞表面タンパク質を標的化する抗体が、臨床開発中である(Jacobらの文献、
Pharmacol Ther. 155:1-10 (2015);Silenceらの文献、mAbs, 6(2):523-532 (2014))。
【発明の概要】
【0008】
(発明の概要)
本発明は、CD70に結合する抗体分子を含む、組合せ療法に関する。本発明の組合せ療法
において、CD70に結合する抗体分子は、より効果的な癌治療を達成するために、異なる標
的に向けられた少なくとも1種の追加物質と組合せられる。それとCD70抗体分子が組合せ
られ得る物質は、白血病幹細胞標的に結合する抗体分子及び/又はSIRPαシグナル伝達を
阻害する物質を含む。
【0009】
抗-CD70抗体は、骨髄性悪性腫瘍、特に急性骨髄性白血病(AML)及び骨髄異形成症候群(M
DS)の治療に効果があることは分かっている。本発明は、悪性骨髄性細胞、特に白血病幹
細胞を標的化する追加の物質と組合せた、CD70に結合する抗体分子の使用を基にしている
。
【0010】
第一の態様において、本発明は、CD70に結合する抗体分子及び白血病幹細胞標的に結合
する少なくとも1種の抗体分子を含む、組合せを提供する。
【0011】
いくつかの実施態様において、白血病幹細胞標的は、TIM-3;ガレクチン-9;CD47;IL1
RAP;LILRB2;CLL-1;CD123;CD33;SAIL;GPR56;CD44;E-セレクチン;CXCR4;CD25;C
D32;PR1;WT1;ADGRE2;CCR1;TNFRSF1B及びCD96からなる群から選択される。好ましい
実施態様において、白血病幹細胞標的は、TIM-3、ガレクチン-9、CD47、IL1RAP及びLILRB
2から選択される。
【0012】
いくつかの実施態様において、CD70に結合する抗体分子は、(i)配列番号:3を含むか又
はこれからなるHCDR3;配列番号:2を含むか又はこれからなるHCDR2;配列番号:1を含むか
又はこれからなるHCDR1;配列番号:7を含むか又はこれからなるLCDR3;配列番号:6を含む
か又はこれからなるLCDR2;並びに、配列番号:5を含むか又はこれからなるLCDR1:の重鎖
CDR(HCDR3、HCDR2及びHCDR1)並びに軽鎖CDR(LCDR3、LCDR2及びLCDR1)を含む可変重鎖ドメ
イン(VH)及び可変軽鎖ドメイン(VL)を含む抗体分子;(ii)配列番号:4と少なくとも70%、
少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含むVHドメ
イン、並びに配列番号:8と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくと
も95%同一であるアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、抗体分子;又は、(iii)ARGX-11
0:から選択される。
【0013】
いくつかの実施態様において、本組合せは、CD70に結合する抗体分子に加え、第一の白
血病幹細胞標的に結合する抗体分子及び第二の白血病幹細胞標的に結合する抗体分子を含
み、ここで第一及び第二の白血病幹細胞標的は異なる。第一及び/又は第二白血病幹細胞
標的は、TIM-3;ガレクチン-9;CD47;IL1RAP;LILRB2;CLL-1;CD123;CD33;SAIL;GPR
56;CD44;E-セレクチン;CXCR4;CD25;CD32;PR1;WT1;ADGRE2;CCR1;TNFRSF1B及びC
D96からなる群から、好ましくはTIM-3;ガレクチン-9;CD47;IL1RAP及びLILRB2からなる
群から選択されてよい。好ましい実施態様において、第一の白血病幹細胞標的は、TIM-3
であり、並びに第二の白血病幹細胞標的は、CD47である。更なる好ましい実施態様におい
て、第一の白血病幹細胞標的は、TIM-3であり、並びに第二の白血病幹細胞標的は、IL1RA
Pである。
【0014】
TIM-3に結合する抗体分子又はIL1RAPに結合する抗体分子を含む本発明の組合せに関し
て、いくつかの実施態様において、この抗体分子は、減少したNF-κBシグナル伝達;減少
したWnt/β-カテニンシグナル伝達;AML細胞の減少した幹細胞性;又はそれらの組合せを
生じる。代わりに又は加えて、TIM-3に結合する抗体分子は、TIM-3の、1種以上のTIM-3相
互作用タンパク質との、任意にCEACAM-1;HMGB-1;ホスファチジルセリン;ガレクチン-9
;LILRB2;又は、それらの組合せから選択されるTIM-3相互作用タンパク質との相互作用
を阻害する。
【0015】
いくつかの実施態様において、LSC標的(複数可)に結合する1又は複数の抗体分子は、ラ
クダ科動物-由来である。例えば、この抗体分子は、白血病幹細胞標的(複数可)によりラ
クダ科動物、好ましくはラマを免疫化する工程を含む方法により得られた1以上の免疫ラ
イブラリーから選択されてよい。これらの抗体分子は、LSC標的タンパク質もしくはその
ポリペプチド断片によるラクダ科動物種の動物の免疫化によるか、又はLSC標的タンパク
質もしくはそのポリペプチド断片を発現するmRNA分子もしくはcDNA分子によるラクダ科動
物種の免疫化により、ラクダ科動物に由来してよい。
【0016】
CD47に結合する抗体分子を含む本発明の組合せについて、いくつかの実施態様において
、これらの抗体分子は、白血病幹細胞上のCD47と、食細胞上のSIRPαの間の相互作用を阻
害する。CD47に結合する抗体分子は、代わりに又は加えて、腫瘍細胞の貪食を増大し得る
。
【0017】
いくつかの実施態様において、本組合せの抗体分子は、IgG抗体;抗体軽鎖可変ドメイ
ン(VL);抗体重鎖可変ドメイン(VH);単鎖抗体(scFv);F(ab’)2断片;Fab断片;Fd断片
;Fv断片;1本アームの(一価の)抗体;ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、又
はそのような抗原結合断片の組合せ、集成もしくはコンジュゲーションにより形成された
任意の抗原-結合分子からなる群から独立して選択される。
【0018】
本組合せの製剤に関して、いくつかの実施態様において、本組合せの抗体分子は、単独
の抗体フォーマットで、例えば多重特異性抗体、好ましくは二重特異性抗体として組合せ
られる。代わりに、この抗体分子は、単独の組成物において、個別に、しかし共-製剤化
されてよい。単独の組成物として共-製剤化された抗体分子に関して、異なる抗体分子の
比は、1:1であってよい。代わりに、この抗体分子は、異なる相対量で存在してよい。例
えば、組合せがCD70に結合する第一の抗体分子及びLSC標的に結合する第二の抗体分子を
含む本発明の実施態様に関して、第一の抗体分子の第二の抗体分子に対する比は、1:2、1
:3、1:4、1:5、2:1、3:1、4:1、5:1などであってよい。代わりの実施態様において、抗体
分子は個別に提供される。
【0019】
本組合せの抗体分子は、1以上のエフェクター機能を有することができる。いくつかの
実施態様において、これらの抗体分子の少なくとも1つは:その標的の機能を完全にもし
くは部分的にブロックし;及び/又は、ADCC活性を有し;及び/又は、脱フコシル化抗体
ドメインを含み;及び/又は、CDC活性を有し;及び/又は、ADCP活性を有する。
【0020】
本発明の組合せは、1種以上の追加の治療薬、例えば、1種以上の追加の抗癌剤を含んで
よい。いくつかの実施態様において、本組合せは、SIRPαシグナル伝達を阻害する物質を
含む。SIRPαシグナル伝達を阻害する物質は、SIRPαに結合し、且つCD47とSIRPαの間の
相互作用を阻害する抗体分子であるか、又は代わりにSIRPα-抗体分子融合タンパク質、
例えばSIRPα-Fc融合体であってよい。いくつかの実施態様において、このSIRPα-抗体分
子融合タンパク質は、本組合せの抗体分子の少なくとも1つを含む。特定の実施態様にお
いて、SIRPα-抗体分子融合タンパク質は、CD70に結合する本組合せの抗体分子を含む。
【0021】
更なる態様において、本発明は、CD70に結合する抗体分子及びSIRPαシグナル伝達を阻
害する物質を含有する、組合せを提供する。
【0022】
SIRPαシグナル伝達を阻害する物質は:(i)CD47に結合し、且つCD47とSIRPαの間の相
互作用を阻害する抗体分子;(ii)SIRPαに結合し、且つCD47とSIRPαの間の相互作用を阻
害する抗体分子;(iii)SIRPα-抗体分子融合タンパク質、任意にSIRPα-Fc融合タンパク
質:から選択されてよい。特定の実施態様において、CD70に結合する抗体分子及びSIRPα
シグナル伝達を阻害する物質は、単独の分子へ、例えば、その抗体分子がCD70に結合する
抗体分子を含むか又はこれからなるSIRPα-抗体分子融合タンパク質へ組合せられる。特
定の実施態様において、本発明の第二の態様の組合せは、CD70に結合する抗体分子へ共有
結合的に連結された少なくとも1つのSIRPαV-様ドメインを含む。SIRPαV-様ドメインとC
D70へ結合する抗体分子の間の連結は、リンカーを介して媒介されてよい。
【0023】
本発明の全ての態様における、いくつかの実施態様において、本組合せは、少なくとも
1種の追加の抗癌剤、例えば、少なくとも1種の骨髄性悪性腫瘍の治療のための物質を含む
。いくつかの実施態様において、本明細書の組合せは、AMLの治療のための追加の物質を
含む。好ましい実施態様において、本組合せは、低メチル化剤、好ましくはアザシチジン
を含む。代わりに又は加えて、本組合せは、PD-1阻害剤及び/又はPD-L1阻害剤を含んで
よい。
【0024】
更なる態様において、本発明は、ヒト対象における悪性腫瘍の治療において使用するた
めの、本発明の第一及び第二の態様に従う組合せを提供する。本発明はまた、ヒト対象に
おける悪性腫瘍の治療方法も提供し、該方法は、本発明の第一又は第二の態様に従う任意
の組合せを、対象へ投与することを含む。
【0025】
本発明はまた、ヒト対象における悪性腫瘍の治療において使用するためのCD70に結合す
る抗体分子を提供し、ここでこの抗体分子は、白血病幹細胞標的に結合する抗体分子と組
合せて投与される。本発明はまた、ヒト対象における悪性腫瘍の治療において使用するた
めの白血病幹細胞標的に結合する抗体分子を提供し、ここでこの抗体分子は、CD70に結合
する抗体分子と組合せて投与される。
【0026】
本発明はまた、ヒト対象における悪性腫瘍の治療において使用するためのCD70に結合す
る抗体分子を提供し、ここでこの抗体分子は、SIRPαシグナル伝達を阻害する物質と組合
せて投与される。本発明はまた、ヒト対象における悪性腫瘍の治療において使用するため
のSIRPαシグナル伝達を阻害する物質を提供し、ここでこの物質は、CD70に結合する抗体
分子と組合せて投与される。
【0027】
本発明の組合せを使用し治療される悪性腫瘍に関して、該悪性腫瘍は、(i)CD70、CD27
、又は両方を発現する癌前駆細胞又は幹細胞の生成を含む悪性腫瘍;(ii)それに本組合せ
の抗体分子の少なくとも1つが結合するLSC標的を発現する癌前駆細胞又は幹細胞の生成を
含む悪性腫瘍;(iii)骨髄性悪性腫瘍;(iv)新たに診断された骨髄性悪性腫瘍;(v)再発性
又は不応性骨髄性悪性腫瘍;(vi)急性骨髄性白血病(AML);骨髄異形成症候群(MDS);骨髄
増殖性腫瘍(MPN);慢性骨髄性白血病(CML);及び、骨髄単球性白血病(CMML)から選択され
る骨髄性悪性腫瘍:であることができる。特に好ましい実施態様において、本発明の組合
せは、急性骨髄性白血病(AML)の治療のためである。
【0028】
いくつかの実施態様において、本方法は、患者の芽球カウントをモニタリングすること
を更に含む。更に、患者の末梢血及び/又は骨髄のカウントは、減少され、例えば25%未
満に減少され、例えば5%に減少され、例えば5%未満に減少され、例えば検出不能レベル
に減少され得る。いくつかの実施態様において、骨髄芽球カウントは、治療前と比べ、5
%~25%減少され、且つ骨髄芽球割合は、50%を超えて減少される。
【0029】
いくつかの実施態様において、この方法は、部分奏効を誘導する。いくつかの実施態様
において、この方法は、任意に血小板回復及び/又は好中球回復を伴う、完全奏効を誘導
する。これらの方法は、8週間又はそれよりも長い、10週間又はそれよりも長い、12週間
又はそれよりも長い、赤血球又は血小板又は両方の輸血依存離脱を誘導し得る。いくつか
の実施態様において、これらの方法は、30日間後又は60日間後の死亡率を減少させる。
【0030】
いくつかの実施態様において、これらの方法は、生存を延長する。例えば、これらの方
法は、本組合せにより治療される特定の骨髄性悪性腫瘍の治療に使用する1又は複数のケ
ア物質の標準に対する生存を延長することができる。これらの方法は、陰性である微小残
存病変の状態を誘導することができる。
【0031】
いくつかの実施態様において、これらの方法は、対象へ骨髄移植を供する工程を更に含
む。代わりに又は加えて、これらの方法は、1種以上の追加の抗癌剤を投与する工程を更
に含んでよい。1種以上の追加の抗癌剤(cancer agent)は、骨髄性悪性腫瘍、好ましくはA
MLの治療に適している物質から選択されてよい。好ましい物質は、ベネトクラックス;Vy
xeos;Idhifa(エナシデニブ);及び、Rydapt(ミドスタウリン)から選択されてよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
(図面の簡単な説明)
【
図1】
図1は、AML細胞株(BDCM)に対する抗体依存性細胞貪食(ADCP)の媒介における、抗-CD70抗体(ARGX-110)及び抗-TIM-3抗体(1A11及び2B10)の組合せ有効性を示す。
【
図2】
図2は、AML細胞株(MV4-11、THP1及びU937)に対する抗体依存性細胞貪食(ADCP)の媒介における、抗-CD70抗体(ARGX-110)及び抗-IL1RAP抗体(1F10、1C1、7E4G1E8及び89412)の組合せ有効性を示す。
【
図3】
図3は、AML細胞株(MV4-11、THP1、GDM1及びU937)に対する抗体依存性細胞貪食(ADCP)の媒介における、抗-CD70抗体(ARGX-110)及び抗-CD47抗体(B6H12、CC2C6及びBRIC126)の組合せ有効性を示す。
【
図4】
図4は、補体依存性細胞傷害(CDC)の媒介における、抗-CD70抗体(ARGX-110)及び抗-TIM-3抗体(1A11及び2B10)の組合せ有効性を示す。
【
図5】
図5は、補体依存性細胞傷害(CDC)の媒介における、抗-CD70抗体(ARGX-110)及び抗-IL1RAP抗体(1F10及び1C1)の組合せ有効性を示す。AにおいてCDCは、MV4-11 AML細胞を用いて測定し;BにおいてCDCは、NOMO-1 AML細胞を用いて測定した。
【
図6】
図6は、補体依存性細胞傷害(CDC)の媒介における、抗-CD70抗体(ARGX-110)及び抗-CD47抗体(BRIC126)の組合せ有効性を示す。AにおいてCDCは、MV4-11 AML細胞を用いて測定し;BにおいてCDCは、NOMO-1 AML細胞を用いて測定した。
【
図7】
図7は、AML細胞株(BDCM)に対する抗体依存性細胞傷害(ADCC)の媒介における、抗-CD70抗体(ARGX-110)及び抗-TIM-3抗体(2B10)の組合せ有効性を示す。
【
図8】
図8は、AML細胞株(NOMO-1)に対する抗体依存性細胞傷害(ADCC)の媒介における、抗-CD70抗体(ARGX-110)及び抗-IL1RAP抗体(1F10)の組合せ有効性を示す。
【
図9】
図9は、AML細胞株(NOMO-1)に対する抗体依存性細胞傷害(ADCC)の媒介における、抗-CD70抗体(ARGX-110)及び抗-CD47抗体(CC2C6)の組合せ有効性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
(詳細な説明)
(A. 定義)
別に定義しない限りは、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、
本発明の技術分野の業者により通常理解されるものと同じ意味を有する。
【0034】
「組合せ療法」-本明細書において使用する用語「組合せ療法」とは、対象、例えばヒ
ト対象に、2種以上の治療的物質が与えられる治療を指す。本明細書記載の「組合せ」は
、組合せ療法における使用に関する。2種以上の治療的物質は典型的には、単独の疾患、
本明細書においては悪性腫瘍を治療するために、投与される。いくつかの実施態様におい
て、本発明の組合せ療法は、異なる標的に、具体的にはCD70及び白血病幹細胞標的、例え
ばTIM-3、CD47又はIL1RAPに結合する抗体分子を利用する。本明細書の別所記載のように
、組合せ療法に含まれる抗体分子は、それを必要とする対象又は患者への投与に関して、
単独の抗体内に含まれてよいか(例えば、多重特異性抗体)、共-製剤化されてよいか、又
は例えば個別の組成物として、個別に提供されてよい。いくつかの実施態様において、本
発明の組合せ療法は、SIRPαシグナル伝達を阻害する物質の少なくとも1つと組合せて、C
D70に結合する抗体分子を利用する。CD70に結合する抗体分子は、SIRPαシグナル伝達を
阻害する物質と組合せられ、単独のSIRPα-抗体分子融合タンパク質とされてよい。代わ
りに、CD70に結合する抗体分子及びSIRPαシグナル伝達を阻害する物質は、それを必要と
する対象又は患者への投与に関して、個別に、例えば個別の組成物として提供されてよい
。
【0035】
「抗体分子」-本明細書において使用する用語「抗体分子」は、改変された抗体、ヒト
化抗体、生殖細胞系列化抗体及びそれらの抗原結合断片などのバリアントを含む、完全長
抗体及びその抗原結合断片を包含することを意図している。用語「抗体」とは典型的には
、ポリペプチドが、関心対象の抗原(本明細書においてCD70又は白血病幹細胞標的、例え
ばTIM-3、CD47、IL1RAP)に対し有意な特異的免疫反応活性を有するような、2本の重鎖及
び2本の軽鎖の組合せを有する免疫グロブリンポリペプチドを指す。IgGクラスの抗体に関
して、抗体は、分子量およそ23,000ダルトンの2本の同一のポリペプチド軽鎖、及び分子
量53,000~70,000の2本の同一の重鎖を含む。これら4本の鎖は、「Y字」配置でジスルフ
ィド結合により連結され、ここで軽鎖は、「Y字」の口で始まり且つ可変領域を通じて続
く重鎖を支えている(bracket)。抗体の軽鎖は、カッパ又はラムダ(κ、λ)のいずれかと
して分類される。各重鎖クラスは、κ軽鎖又はλ軽鎖のいずれかと結合され得る。一般に
軽鎖及び重鎖は、互いに共有結合され、これら2本の重鎖の「尾」部は、ジスルフィド共
有結合により、又は免疫グロブリンがハイブリドーマ、B細胞もしくは遺伝子操作された
宿主細胞のいずれかにより作製される場合は非共有結合により、互いに結合されている。
重鎖において、アミノ酸配列は、Y字配置の分岐端のN-末端から、各鎖の底のC-末端へと
並んでいる。
【0036】
当業者は、重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ又はイプシロン(γ、μ、α、
δ、ε)として分類され、その一部はサブクラス(例えばγ1-γ4)に分類されることを理解
するであろう。これは、抗体の「クラス」を、各々、IgG、IgM、IgA、IgD、又はIgEと決
定するこの鎖の本質である。免疫グロブリンサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、Ig
G2、IgG3、IgG4、IgA1などは、良く特徴付けられ、機能性特化をもたらすことがわかって
いる。本明細書において使用する用語「抗体分子」は、抗体の任意のクラス又はサブクラ
ス由来の、完全長抗体又はその抗原結合断片を包含している。
【0037】
一般的用語「抗体分子」内に包含される抗原結合断片に関して、これらの断片は、完全
長抗体の部分もしくは一部、又は無傷のもしくは完全な抗体よりもより少ないアミノ酸残
基を含む抗体鎖であるが、抗原結合活性は維持している。本明細書において使用する用語
「抗体分子」は、抗体軽鎖可変ドメイン(VL);抗体重鎖可変ドメイン(VH);単鎖抗体(scF
v);F(ab’)2断片;Fab断片;Fd断片;Fv断片;一本アームの(一価の)抗体;ダイアボデ
ィ、トリアボディ、テトラボディ、又はそのような抗原結合断片の組合せ、集成もしくは
コンジュゲーションから形成された任意の抗原-結合分子:から選択された抗原結合断片
を包含することが意図されている。本明細書において使用する用語「抗体分子」は更に、
ユニボディ;ドメイン抗体:及び、ナノボディ:からなる群から選択される抗体断片を包
含することが意図される。断片は、例えば、無傷の又は完全な抗体又は抗体鎖の化学的又
は酵素的処理によるか、或いは組換え手段により得ることができる。
【0038】
「特異性」及び「多重特異性抗体」-本明細書記載の組合せ療法において使用するため
の抗体分子は、特定の標的抗原に結合する。抗体分子は、それらの標的抗原へ「特異的に
結合する」ことが、好ましく、ここで用語「特異的に結合する」とは、所定の標的、例え
ばCD70、TIM-3、CD47、IL1RAP、LILRB2などと優先的に免疫反応する任意の抗体分子の能
力を指す。本組合せ及び方法の抗体分子は、単一特異性であり、且つ特定の標的に特異的
に結合する結合部位を1以上含むことができる。本組合せ及び方法の抗体分子は、「多重
特異性抗体」のフォーマット、例えば二重特異性抗体に組み込まれてよく、ここでこの多
重特異性抗体は、2以上の標的抗原に結合する。例えば一実施態様において、本発明の組
合せは、CD70に特異的に結合する第一の抗体分子及びTIM-3に特異的に結合する第二の抗
体分子を含む、二重特異性抗体を含む。別の実施態様において、本発明の組合せは、CD70
に特異的に結合する第一の抗体分子及びCD47に特異的に結合する第二の抗体分子を含む、
二重特異性抗体を含む。更に別の実施態様において、本発明の組合せは、CD70に特異的に
結合する第一の抗体分子及びIL1RAPに特異的に結合する第二の抗体分子を含む、二重特異
性抗体を含む。多重特異性を達成するために、「多重特異性抗体」は、典型的には、異な
るVH-VL対を伴う、重鎖及び軽鎖ポリペプチドの異なる組合せ又は対形成を含むように操
作される。多重特異性、とりわけ二重特異性の抗体は、未変性の抗体、例えばFc領域に複
合された異なる特異性のFabアームを有するY字型抗体の全体の高次構造を採用するように
操作されてよい。代わりに多重特異性抗体、例えば二重特異性抗体は、例えば、そこで異
なる特異性を有する可変ドメイン又は可変ドメイン対が、Fc領域の反対末端に配置される
ような、非天然の高次構造を採用するように操作されてよい。
【0039】
二重特異性抗体又は多重特異性抗体は、第一の標的への結合特異的を有する2本のY字型
Fabアームを有する未変性のIgG構造が、第二の標的への結合特異性を有するFcドメインの
C末端に配置された1以上の追加の抗原-結合ドメインを伴うものであることができる。代
わりに、二重特異性抗体又は多重特異性抗体は、第一の標的への結合特異性を有する2本
のY字型Fabアームを有する未変性のIgG構造が、FcドメインのC-末端に配置された第二の
標的への結合特異性を有する1以上のscFv断片を伴うものであることができる。この二重
特異性抗体又は多重特異性抗体は、非対称IgG抗体であってよく、その結果1つのFab領域
は、異なる抗原-結合ドメイン、例えばVHHドメインにより置き換えられる。これらの非対
称抗体において、Fab領域又は断片は、CD70に結合し、並びにVHHドメインは、LSC標的に
結合することができ、或いはその逆も同様である。
【0040】
「改変された抗体」-本明細書で使用する用語「改変された抗体」は、天然に生じない
ように変更された抗体の合成の形態を含み、例えば、少なくとも2つの重鎖部分を含むが2
つの完全重鎖は含まない抗体(例えば、ドメイン欠失された抗体又はミニボディ);2つ以
上の異なる抗原又は単独の抗原上の異なるエピトープに結合するように変更された抗体の
多重特異性形態(例えば、二重特異性、三重特異性など);scFv分子に結合された重鎖分子
などがある。scFv分子は、当該技術分野において公知であり、且つ例えば米国特許第5,89
2,019号に説明されている。加えて、用語「改変された抗体」は、抗体の多価の形態(例え
ば、同じ抗原の3以上のコピーに結合する三価、四価などの抗体)を含む。別の実施態様に
おいて、本発明の改変された抗体は、CH2ドメインを欠く少なくとも1つの重鎖部分を含み
、且つ受容体リガンド対の一員の結合部分を含むポリペプチドの結合ドメインを含む融合
タンパク質である。
【0041】
「ヒト化置換」-本明細書で使用する用語「ヒト化置換」とは、抗体のVH又はVLドメイ
ン中の特定の位置に存在するアミノ酸残基が、参照ヒトVH又はVLドメイン中の同等の位置
に生じるアミノ酸残基により置き換えられるアミノ酸置換をいう。参照ヒトVH又はVLドメ
インは、ヒト生殖細胞系列によりコードされたVH又はVLドメインであってよい。ヒト化置
換は、本明細書に定義されたように、抗体のフレームワーク領域及び/又はCDRで行うこ
とができる。
【0042】
「ヒト化バリアント」-本明細書において使用する用語「ヒト化バリアント」又は「ヒ
ト化抗体」とは、参照抗体と比べ1以上の「ヒト化置換」を含むバリアント抗体を指し、
ここで該参照抗体の部分(例えば、VHドメイン及び/又はVLドメイン又は少なくとも1つの
CDRを含むそれらの一部)は、非-ヒト種由来のアミノ酸を有し、且つ「ヒト化置換」は、
非-ヒト種由来のアミノ酸配列内に起こる。
【0043】
「生殖細胞系列化バリアント」-用語「生殖細胞系列化バリアント」又は「生殖細胞系
列化抗体」は、そこで「ヒト化置換」が、抗体のVH又はVLドメイン中の特定の位置(複数
可)に存在する1以上のアミノ酸残基の、ヒト生殖細胞系列によりコードされた参照ヒトVH
又はVLドメイン中の同等の位置に生じるアミノ酸残基による置き換えを生じる「ヒト化バ
リアント」を具体的に指すように、本明細書において使用する。いずれか所定の「生殖細
胞系列化バリアント」に関して、生殖細胞系列化バリアントへと置換された置き換えアミ
ノ酸残基は、専らもしくは優先的に単独のヒト生殖細胞系列-コードされたVH又はVLドメ
インから得られることは、一般的である。用語「ヒト化バリアント」と「生殖細胞系列化
バリアント」は、互換的に使用することが多い。1以上の「ヒト化置換」のラクダ科動物
由来の(例えば、ラマ由来の)VH又はVLドメインへの導入は、結果的にラクダ科動物(ラマ)
由来のVH又はVLドメインの「ヒト化バリアント」を生成する。この置換されたアミノ酸残
基が優先的又は専ら単独のヒト生殖細胞系列-コードされたVH又はVLドメイン配列に由来
する場合、結果的にラクダ科動物(ラマ)-由来のVH又はVLドメインの「ヒト生殖細胞系列
化バリアント」が生じる。
【0044】
「CD70」-本明細書において使用する用語「CD70」又は「CD70タンパク質」又は「CD70
抗原」は、互換的に使用され、且つTNFRSF7/CD27のリガンドである、TNFリガンドファミ
リーの一員を指す。CD70はまた、CD27L又はTNFSF7としても公知である。用語「ヒトCD70
タンパク質」又は「ヒトCD70抗原」又は「ヒトCD70」は、互換的に使用され、ヒト体内及
び/又は培養ヒト細胞株の表面上に天然に発現される未変性のヒトCD70タンパク質、並び
に組み換え型及びその断片を含む、ヒトホモログを具体的に指す。ヒトCD70の具体例は、
NCBI参照配列寄託番号NP_001243で示されたアミノ酸配列、又はその細胞外ドメインを有
するポリペプチドを含む。
【0045】
「白血病幹細胞標的」-本明細書において使用する用語「白血病幹細胞標的」は、白血
病幹細胞により発現された抗原を指す。白血病幹細胞又は「LSC」は、自己再生能を含む
、大部分の白血病細胞とは異なる幹細胞特性を有する白血病細胞の低頻度集団であり、引
用により本明細書中に組み込まれている、Wangらの文献、Molecular Cancer, 16:2 (2017
)を参照されたい。LSCは典型的には、急性骨髄性白血病-AMLにおける初代芽細胞の割合
として、頻度10,000個中1個から100万個中1個までの範囲で生じる(Pollyea及びJordanの
文献、Blood, 129:1627-1635 (2017)、これは引用により本明細書中に組み込まれている)
。LSCは、免疫欠損レシピエントへ移植される場合、白血病性疾患を開始することが可能
であり、且つこれらの白血病幹細胞から癌成長を駆動するように見えるので、これらは新
規治療薬の魅力的な標的を表している。LSCは、LSCのマーカーとして働く、細胞表面抗原
を含む幅のある分子を生成する。これらのマーカーは、場合によっては、LSCが、大部分
の白血病細胞から識別されることを可能にすることができ、例えば引用により組み込まれ
ている、Hanekampらの文献、Int. J Hematol. 105:549-557 (2017)を参照されたい。本明
細書において使用する用語「白血病幹細胞標的」は、LSCマーカー、特にそれらの細胞-表
面集団を指す。
【0046】
「TIM-3」-本明細書において使用する用語「TIM-3」又は「TIMD-3」は、「T細胞免疫
グロブリン及びムチン-ドメイン含有-3」タンパク質を指す。TIM-3はまた、A型肝炎ウイ
ルス細胞受容体2(HAVCR2)とも称される。TIM-3は、膜遠位N-末端免疫グロブリンドメイン
及びO-結合型グリコシル化の可能性のある部位を含む膜近位ムチンドメインからなる細胞
外ドメインを含む、膜貫通構造を有する、免疫グロブリンスーパーファミリーの一員であ
る。TIM-3タンパク質の様々な多型バリアントが公知であり、例えば、301及び272アミノ
酸ヒトTIM-3バリアントについて、http://www.uniprot.org/uniprot/Q8TDQ0;及び、http
://www.uniprot.org/uniprot/E5RHN3を参照されたい。本明細書において使用する用語「T
IM-3」は、細胞表面-発現されたTIM-3を生じる、TIM-3/HAVCR2ゲノム遺伝子座からの転
写物によりコードされた、全てのTIM-3多型バリアントを対象とすることが意図される。
【0047】
「ガレクチン-9」-本明細書において使用する用語「ガレクチン-9」は、TIM-3リガン
ド又は結合パートナーとして働く、細胞外膜結合型タンパク質を指す。ガレクチン9は、T
IM-3免疫グロブリンドメイン中のN-結合型糖鎖の構造を特異的に認識する、2つの縦列に
連結された糖鎖認識ドメインを含む、可溶性タンパク質である。ガレクチン-9のヒトホモ
ログは、GenBank寄託BAB83625として表されるような、355個のアミノ酸残基からなる。
【0048】
「CD47」-本明細書において使用する用語「CD47」は、多種多様な正常細胞及び腫瘍細
胞上で普遍的に発現される膜貫通型タンパク質である、細胞表面抗原CD47を指す。CD47は
、免疫グロブリンスーパーファミリー受容体SIRPαのリガンドである。CD47はまた、「抗
原性表面決定タンパク質OA3」、「インテグリン-関連タンパク質(IAP)」及び「タンパク
質MER6」とも称される。CD47ゲノム遺伝子座によりコードされたCD47のヒトホモログは、
長さ323個のアミノ酸である(http://www.uniprot.org/uniprot/Q08722)。本明細書におい
て使用する用語CD47は、CD47タンパク質の全ての多型バリアントを包含することが意図さ
れる。
【0049】
「SIRPα」-本明細書において使用する用語「SIRPα」は、「シグナル調節タンパク質
アルファ」を指し、これはSHP基質1(SHPS-1)、チロシン-ベースの活性化モチーフを伴う
脳Ig-様分子(Bit)、CD172抗原-様ファミリーメンバーA、抑制性受容体SHPS-1、マクロフ
ァージ融合受容体、MyD-1抗原、SIRPα1、SIRPα2、SIRPα3、p84、及びCD172aとしても
公知である。SIRPαは、免疫グロブリンスーパーファミリーの一員であり、且つマクロフ
ァージ及び樹状細胞を含む、食細胞上に発現された膜貫通型タンパク質である。これは、
CD47の受容体である。SIRPAゲノム遺伝子座によりコードされたSIRPαのヒトホモログは
、長さ504個のアミノ酸である(http://www.uniprot.org/uniprot/P78324)。本明細書にお
いて使用する用語SIRPαは、SIRPαタンパク質の全ての多型バリアントを包含することが
意図される。
【0050】
「SIRPα抗体分子融合タンパク質」-本明細書において使用する用語「SIRPα抗体分子
融合タンパク質」は、SIRPαタンパク質又はそれらの断片及び抗体分子を含む融合タンパ
ク質を意味することが意図される。この抗体分子は、本明細書別所に定義された完全長抗
体分子、例えば完全長IgG抗体であってよい。代わりに、この抗体分子は、本明細書別所
に定義された抗体の抗原結合断片であってよい。SIRPαタンパク質又はその断片は、抗体
分子上の任意の好適な位置で、抗体分子に融合されてよい。例えば、SIRPαタンパク質又
はその断片は、抗体分子の重鎖又は軽鎖のN-末端又はC-末端に融合されてよい。いくつか
の実施態様において、SIRPα抗体分子融合タンパク質は、完全長SIRPαタンパク質は含ま
ないが、その断片、特にCD47への結合が可能な断片は含むであろう。例えば、SIRPα抗体
分子融合タンパク質は、SIRPα免疫グロブリンV-様ドメインの1以上のコピーを含み得、
ここで免疫グロブリンV-様ドメインは、504個のアミノ酸の完全長ヒトSIRPαタンパク質
のアミノ酸位置32-137により規定される。
【0051】
「IL1RAP」-本明細書において使用する用語「IL1RAP」又は「IL-1RAP」又は「IL1RAcP
」又は「IL-1RAcP」は、「インターロイキン1受容体アクセサリータンパク質」を指す。I
L1RAPはまた、「インターロイキン1受容体3」又は「IL-1R3」又は「IL1R3」としても公知
である。IL1RAPは、I型インターロイキン1受容体(IL1R1)の共-受容体であり、且つサイト
カインIL-1により媒介されたシグナル伝達に必要とされる。これはまた、各々、IL-33及
びIL-36を介したシグナル伝達を媒介する、IL1R4及びIL1R3の共-受容体としても働く。IL
-1は、例えば、NF-κB経路を含む、様々な細胞内シグナル伝達経路の活性化を介した、細
胞-表面IL-1受容体複合体(IL-1+IL1R1+IL1RAP)の下流のその作用を媒介する。IL1RAPゲ
ノム遺伝子座によりコードされたIL1RAPのヒトホモログは、長さ570個のアミノ酸である(
http://www.uniprot.org/uniprot/Q9NPH3)。
【0052】
「LILRB2」-本明細書において使用する用語「LILRB2」は、「白血球免疫グロブリン-様
受容体スーパーファミリーBメンバー2」を指す。LILRB2はまた、「白血球免疫グロブリン
-様受容体2」又は「LIR-2」、「CD85抗原-様ファミリーメンバーD」又は「CD85d」、「免
疫グロブリン-様転写物4」又は「ILT-4」、並びに「単球/マクロファージ免疫グロブリ
ン-様受容体10」又は「MIR-10」としても公知である。LILRB2は、免疫応答のダウンレギ
ュレーション及び寛容の発達に関与している。LILRB2ゲノム遺伝子座によりコードされた
LILRB2のヒトホモログは、長さ598個のアミノ酸である(http://www.uniprot.org/uniprot
/Q8N423)。
【0053】
「骨髄性悪性腫瘍」-本明細書において使用する用語「骨髄性悪性腫瘍」は、造血幹細
胞又は前駆細胞の何らかのクローン性疾患を指す。骨髄性悪性腫瘍又は骨髄性悪性疾患は
、慢性及び急性の状態を含む。慢性状態は、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性腫瘍(MP
N)及び慢性骨髄単球性白血病(CMML)を含み、並びに急性状態は、急性骨髄性白血病(AML)
を含む。
【0054】
「急性骨髄性白血病」-本明細書において使用される「急性骨髄性白血病」又は「AML
」は、骨髄細胞が関与する造血性新生物を指す。AMLは、低下した分化能を有する骨髄前
駆体のクローン増殖により、特徴付けられる。AML患者は、骨髄における芽細胞の蓄積を
示す。本明細書において使用される「芽細胞」又は単純に「芽球」は、破壊された分化能
を示すクローン性骨髄前駆細胞を指す。芽細胞は典型的にはまた、AML患者の末梢血中に
も蓄積する。典型的にはAMLは、患者が、骨髄又は末梢血中に、20%以上の芽細胞を示す
場合に、診断される。
【0055】
「抗癌剤」-本明細書において使用される抗癌剤は、癌成長を直接又は間接に、予防、
阻害又は治療をすることが可能である、任意の薬剤を指す。そのような薬剤は、化学療法
薬、免疫療法薬、血管新生阻害剤、放射性核種などを含み、その多くの例が、当業者には
公知である。
【0056】
(B. 抗-CD70及び抗-LSC標的抗体の組合せ療法)
本発明は、組合せ療法、並びに悪性腫瘍、特に骨髄性悪性腫瘍、好ましくは急性骨髄性
白血病(AML)の治療におけるそれらの使用に関する。本明細書記載の組合せ又は組合せ療
法は、CD70に結合する抗体分子の、他の薬剤と組合せた使用を基にしている。
【0057】
第一の態様において、本発明の組合せ又は組合せ療法は、異なる標的に結合する抗体分
子を含むか又はこれからなる。本組合せは、CD70に結合する抗体分子及び白血病幹細胞標
的に結合する少なくとも1つの抗体分子を含む。
【0058】
本発明に従う組合せの全ては、CD70に結合する抗体分子を含む。本明細書別所記載のよ
うに、CD70は、タンパク質の腫瘍壊死因子(family)(TNF)スーパーファミリーの一員であ
り、且つII型膜貫通型糖タンパク質である。これは、TNF受容体CD27のリガンドである。C
D70は、抗原-活性化T細胞及びB細胞並びに成熟樹状細胞上で一過性に発現され、並びにCD
70-CD27シグナル伝達経路は、免疫応答の調節において重要な役割を果たす。
【0059】
CD70の構成的発現は、多くの型の血液学的悪性腫瘍及び固形癌上で認められ、このタン
パク質を、抗-癌療法の開発の魅力的な標的としている。CD70は、骨髄性悪性腫瘍、具体
的には急性骨髄性白血病(AML)の治療の開発にとって、特に興味深い標的として確定され
ており、例えば、Pernaらの文献、Cancer Cell, 32:506-519 (2017)、及びRietherらの文
献、J Exp Med. 214(2):359-380 (2017)を参照し、これらは両方共引用により本明細書中
に組み込まれている。
【0060】
CD70は、腫瘍細胞の増殖及び生存の促進における直接作用を含む数多くの様式で、癌進
行を促進すると考えられる。アップレギュレートされたCD70発現はまた、制御性T細胞の
活性化及び腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)の活性を弱めることにより、腫瘍微小環境における
免疫抑制において役割を果たすと考えられている。この腫瘍免疫抑制活性を基に、CD70は
、免疫チェックポイント標的として分類することができる。AMLにおいて、CD70及びその
受容体CD27の発現は、AML芽球上で検出され、且つCD70-CD27経路を介したシグナル伝達は
、AML芽球集団の幹細胞挙動に結びつけられている(Rietherらの文献、(2017)前掲)。
【0061】
本発明の第一の態様において、CD70に結合する抗体分子は、白血病幹細胞標的に結合す
る少なくとも1種の抗体分子と組合せられる。本組合せは、CD70に結合する抗体分子を、
少なくとも2種の異なる白血病幹細胞標的、少なくとも3種の異なる白血病幹細胞標的、少
なくとも4種の異なる白血病幹細胞標的、又は少なくとも5種の異なる白血病幹細胞標的に
結合する抗体分子と一緒に含むか又はこれらからなる。
【0062】
白血病幹細胞又は「LSC」は、幹細胞-様特性、例えば自己再生能を持つ、白血病細胞の
識別できる集団である。特定の実施態様において、それにこの組合せの抗体分子が結合す
るLSC標的は、TIM-3;ガレクチン-9;CD47;IL1RAP;LILRB2;CLL-1;CD123;CD33;SAIL
;GPR56;CD44;E-セレクチン;CXCR4;CD25;CD32;PR1;WT1;ADGRE2;CCR1;TNFRSF1B
及びCD96からなる群から、独立して選択される(Al-Mawaliの文献、J Stem Cell Res Ther
. 3(4):1-8 (2013);Dariaらの文献、Leukemia, 30:1734-1741 (2016);Rashildi及びWal
terの文献、Expert Review of Hematology, 9(4):335-350 (2016);Choらの文献、Korean
J Intern Med. 32(2):248-257 (2017))。
【0063】
いくつかの実施態様において、本組合せは、CD70に結合する抗体分子、及びTIM-3又は
ガレクチン-9から選択されるLSC標的に結合する抗体分子を含むか又はこれからなる。好
ましい実施態様において、LSC標的は、TIM-3である。
【0064】
TIM-3は、IFN-γ産生T細胞、FoxP3+ Treg細胞及び自然免疫細胞(マクロファージ及び樹
状細胞)上に発現される受容体である。CD70同様に、TIM-3もまた、癌における免疫チェッ
クポイント標的として分類され、その理由は、TIM-3のそのリガンドとの相互作用は、Th1
反応の阻害において重要な役割を果たすからである(Dasらの文献、Immunol Rev. 276(1):
97-111 (2017))。癌の発達において、高レベルのTIM-3発現は、T細胞反応の抑制及びT細
胞機能障害に相関することがわかっており、このことは体の抗-腫瘍免疫応答を弱める際
のTIM-3の重要な役割を指摘している(Jappらの文献、Cancer Immunol Immunother. 64:14
87-1494 (2015))。これを裏付けて、前臨床腫瘍モデルにおけるTIM-3シグナル伝達の阻害
は、抗-腫瘍免疫を回復することがわかった(Sakuishiらの文献、J Exp Med. 207:2187-21
94 (2010))。TIM-3はまた、白血病幹細胞、特にAML幹細胞の表面上に直接発現される有望
な治療的標的としても確定されている(Janらの文献、Proc Natl Acad Sci. 108:5009-501
4 (2011);Kikushigeらの文献、Cell Stem Cell. 7:708-717 (2010);Kikushige及びMiya
motoの文献、Int J Hematol. 98:627-633 (2013);Goncalves Silvaらの文献、Oncotarge
t, 6:33823-33833 (2015);Kikushigeらの文献、Cell Stem Cell, 17:341-352 (2015))。
【0065】
理論に結びつけられることを欲するものではないが、CD70に結合する抗体分子及びTIM-
3に結合する抗体分子を含む本発明の組合せ療法は、白血病幹細胞レベルにおける組合せ
効果により、悪性腫瘍、特に骨髄性悪性腫瘍の治療に、特に有効であると考えられる。大
規模な証拠は、LSCは、白血病の開始及び維持に重要であることを示唆している。従って
、CD70抗体及びTIM-3などの第二のLSC標的に特異的に結合する抗体を介した、この細胞集
団の標的化は、腫瘍細胞の重要な集団を標的化する効果的な方式であると考えられる。本
明細書記載のCD70及びLSC標的、特にTIM-3はまた、抗-腫瘍反応の重要なレギュレーター
として働き、すなわちこれらは、体の抗-腫瘍反応を刺激するために標的化され得る免疫
チェックポイントタンパク質を表す。これには、本明細書記載の組合せ療法は、腫瘍細胞
、特に骨髄性白血病細胞レベルにおける直接的治療効果、及びまた抗-腫瘍免疫応答の刺
激を介した間接的効果を媒介することが可能であることが続く。
【0066】
いくつかの実施態様において、本組合せは、CD70に結合する抗体分子及びLSC標的CD47
に結合する抗体分子を含むか又はこれからなる。
【0067】
CD47は、比較的普遍的な発現パターンを示す膜貫通型タンパク質である。CD47は、食細
胞上に発現されたその受容体SIRPαに結合し、且つこの結合相互作用は、CD47-発現細胞
の貪食を阻害する「私を食べないで(don’t eat me)」シグナルを伝達する。CD70及びTIM
-3の両方と同様に、CD47は、癌における重要な免疫チェックポイント標的として分類され
、その理由は、腫瘍細胞上のCD47と食細胞上のその受容体SIRPαの間の相互作用は、それ
により腫瘍細胞が、腫瘍環境中に存在するマクロファージ、好中球及び樹状細胞により媒
介される貪食を回避する手段として確定されているからである。CD47は、AML細胞を含む
、様々な異なる腫瘍細胞型上に高度に発現されることがわかっており(Ponceらの文献、On
cotarget, 8(7):11284-11301 (2017))、並びにSIRPα-Fc融合を使用するCD47-SIRPαシグ
ナル伝達の破壊は、異種移植モデルにおいてAML幹細胞を排除することもわかっている(Th
eocharidesらの文献、J. Exp. Med. 209(10):1883-1899 (2012))。
【0068】
理論により結びつけられることを欲するものではないが、CD70に結合する抗体分子及び
CD47に結合する抗体分子を含む本発明の組合せ療法は、白血病幹細胞レベルにおける組合
せ効果と自然免疫系により、悪性腫瘍、特に骨髄性悪性腫瘍の治療に、特に有効であると
考えられる。CD70に結合する抗体分子は、オプソニン化する抗体として働くことができ、
且つCD47に結合する抗体分子は、CD47とSIRPαの間の相互作用をブロックすることにより
、CD70-発現する腫瘍細胞の貪食を増強することができる。
【0069】
いくつかの実施態様において、本組合せは、CD70に結合する抗体分子及びLSC標的IL1RA
Pに結合する抗体分子を含むか又はこれからなる。
【0070】
IL1RAPは、肝臓、皮膚、胎盤、胸腺及び肺において発現された免疫グロブリンスーパー
ファミリー受容体である。これは、サイトカインIL-1を介したシグナル伝達を媒介するIL
1R1の共-受容体として、並びに各々、IL-33及びIL-36を介したシグナル伝達を媒介するIL
1R4及びIL1R3の共-受容体として、働く。IL1RAPの過剰発現は、候補慢性骨髄性白血病幹
細胞、及び急性骨髄性白血病患者の単核細胞上で検出される。更に、IL1RAPを標的化する
抗体は、CML及びAMLの異種移植モデルにおいて有益な治療効果を有することが報告されて
いる(Agerstamらの文献、Proc Natl Acad Sci USA, 112(34):10786-91 (2015);Agerstam
らの文献、Blood, 128(23):2683-2693 (2016))。
【0071】
理論により結びつけられることを欲するものではないが、CD70に結合する抗体分子及び
IL1RAPに結合する抗体分子を含む本発明の組合せ療法は、白血病幹細胞レベルにおける組
合せ効果により、悪性腫瘍、特に骨髄性悪性腫瘍の治療に、特に効果があると考えられる
。IL1RAPを標的化する抗体は、CML及びAML幹細胞を死滅することにおいて、特に効果があ
ることがわかっている(Jarasらの文献、Proc Natl Acad Sci USA, 107(37):16280-16285
(2010);Askmyrらの文献、Blood, 121(18):3709-3713 (2013))。更に、IL-1受容体複合体
は、NF-κBシグナル伝達経路を介してシグナリングすることがわかっており、且つこの経
路は、AMLの治療における魅力的な標的として既に確定されている(Bosmanらの文献、Crit
Rev Oncol Hematol. 98: 35-44 (2016)参照)。これには、CD70に結合する抗体分子及びI
L1RAPに結合する抗体分子の組合せは、LSCにおけるNF-κBシグナル伝達経路の二重標的化
/阻害を基に、特に有効であることが続く。
【0072】
いくつかの実施態様において、本組合せは、CD70に結合する抗体分子及びLSC標的LILRB
2に結合する抗体分子を含むか又はこれからなる。
【0073】
LILRB2は、造血幹細胞、単球、マクロファージ、及び樹状細胞を含む、様々な免疫細胞
型上に発現される免疫グロブリンスーパーファミリー受容体である。LILRB2は、癌発達に
関係づけられており、且つ発現は、AML細胞及びCML細胞を含む、様々な癌細胞上で報告さ
れている(Kangらの文献、Nat Cell Biol. 17:665-677 (2015);Colovaiらの文献、Cytome
try B Clin Cytom. 72:354-62 (2007))。
【0074】
理論により結びつけられることを欲するものではないが、CD70に結合する抗体分子及び
LILRB2に結合する抗体分子を含む本発明の組合せ療法は、白血病幹細胞レベルにおける組
合せ効果により、悪性腫瘍、特に骨髄性悪性腫瘍の治療について、特に効果があると考え
られる。LILRB2は、TIM-3と相互作用するタンパク質としても同定されているので、LILRB
2抗体の作用もまた、TIM-3シグナル伝達経路を介して媒介され得る。
【0075】
いくつかの実施態様において、本組合せは、CD70に結合する抗体分子、第一の白血病幹
細胞標的に結合する抗体分子、及び第二の白血病幹細胞標的に結合する抗体分子を含むか
又はこれからなり、ここで第一及び第二の白血病幹細胞標的は異なる。第一及び第二の白
血病幹細胞標的は、TIM-3;ガレクチン-9;CD47;IL1RAP;LILRB2;CLL-1;CD123;CD33
;SAIL;GPR56;CD44;E-セレクチン;CXCR4;CD25;CD32;PR1;WT1;ADGRE2;CCR1;TN
FRSF1B及びCD96からなる群から独立して選択される。好ましい実施態様において、第一及
び第二の白血病幹細胞標的は、TIM-3;ガレクチン-9;CD47;IL1RAP及びLILRB2からなる
群から独立して選択される。
【0076】
好ましい実施態様において、本組合せは、CD70に結合する抗体分子、TIM-3に結合する
抗体分子、及びCD47に結合する抗体分子を含むか又はこれからなる。更に好ましい実施態
様において、本組合せは、CD70に結合する抗体分子、TIM-3に結合する抗体分子、及びIL1
RAPに結合する抗体分子を含むか又はこれからなる。更に好ましい実施態様において、本
組合せは、CD70に結合する抗体分子、TIM-3に結合する抗体分子、CD47に結合する抗体分
子、及びIL1RAPに結合する抗体分子を含むか又はこれからなる。
【0077】
本組合せの抗体分子、すなわちCD70に結合する抗体分子及び1種以上のLSC標的に結合す
る抗体分子は、それらの各標的について免疫反応性を発揮するいずれか好適な抗体分子か
ら選択されてよい。先に注記したように、用語「抗体分子」は、完全長抗体に加え、その
抗原結合断片を意味するように、本明細書において使用される。
【0078】
本明細書記載の組合せの抗体は、ヒト治療上の使用について意図され、従って典型的に
は、IgA、IgD、IgE、IgG、IgM型、多くはIgG型であり、この場合、これらは4つのサブク
ラスIgG1、IgG2a及びb、IgG3又はIgG4のいずれかに属することができる。好ましい実施態
様において、本明細書記載の組合せの抗体は、IgG抗体、好ましくはIgG1抗体である。
【0079】
本抗体は、それらの標的についてそれらが好適な免疫特異性を示すことを条件として、
モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)であ
ることができる。モノクローナル抗体は、高度に特異性があり、単独の抗原部位に対し向
けられているので、これらが好ましい。
【0080】
本明細書記載の組合せの抗原結合断片は、典型的には、完全長抗体の一部、一般にそれ
らの抗原結合ドメイン又は可変ドメインを含む。抗体断片の例は、Fab、Fab'、F(ab')2、
二重特異性Fab'、及びFv断片、線状抗体、単鎖抗体分子、単鎖可変部断片(scFv)、及び抗
体断片から形成された多重特異性抗体を含む(Holliger及びHudsonの文献、Nature Biotec
hnol. 23:1126-36 (2005)を参照することとし、これは引用により本明細書中に組み込ま
れている。)。
【0081】
本明細書記載の組合せの抗体分子は、高いヒト相同性を示すことができる。そのような
高ヒト相同性を有する抗体分子は、ヒト生殖細胞系列配列と十分に高い%配列同一性を示
す、未変性の非-ヒト抗体のVH及びVLドメインを含む抗体を含んでよい。いくつかの実施
態様において、この抗体分子は、非-ヒト抗体のヒト化バリアント、又は生殖細胞系列化
バリアントであり、例えば、当初の抗体のヒト化バリアント、又は生殖細胞系列化バリア
ントであるように操作された、ラクダ科動物の通常抗体のVH及びVLドメインを含む抗体で
ある。
【0082】
非限定的実施態様において、本組合せの抗体分子は、CH1ドメイン及び/又はCLドメイ
ン(各々、重鎖及び軽鎖由来)を含むことができ、それらのアミノ酸配列は、完全に又は実
質的にヒトである。ヒト治療上の使用が意図された抗体分子に関して、これは、その抗体
の定常領域全体、又は少なくともそれらの一部について典型的には、完全に又は実質的に
ヒトアミノ酸配列を有する。従って、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、CH3ドメ
イン及びCLドメイン(並びに存在するならばCH4ドメイン)の1つ以上もしくは任意の組合せ
は、そのアミノ酸配列に関して完全に又は実質的にヒトであることができる。
【0083】
有利なことに、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCLドメイン(
並びに存在するならばCH4ドメイン)は全て、完全に又は実質的にヒトアミノ酸配列を有す
ることができる。ヒト化又はキメラ抗体、又は抗体断片の定常領域の状況において、用語
「実質的にヒト」とは、ヒト定常領域との少なくとも90%、又は少なくとも92%、又は少
なくとも95%、又は少なくとも97%、又は少なくとも99%のアミノ酸配列同一性をいう。
この状況において用語「ヒトアミノ酸配列」は、生殖細胞系列、再編成された及び体細胞
変異された遺伝子を含む、ヒト免疫グロブリン遺伝子によりコードされたアミノ酸配列を
いう。本発明はまた、「完全にヒト」ヒンジ領域の存在が明確に必要とされるそれらの実
施態様を除き、ヒト配列に関して1つ以上のアミノ酸の付加、欠失又は置換により変更さ
れている「ヒト」配列の定常ドメインを含むポリペプチドも意図している。
【0084】
本組合せの抗体分子は、重鎖及び/又は軽鎖の定常領域内、特にFc領域内に、1つ以上
のアミノ酸の置換、挿入、又は欠失を有することができる。アミノ酸置換は、置換された
アミノ酸の、異なる天然のアミノ酸との、又は非天然もしくは改変されたアミノ酸との置
き換えを生じることができる。例えばグリコシル化パターンの変化(例えば、N-又はO-結
合型グリコシル化部位の付加又は欠失による)などの、他の構造上の改変も許される。
【0085】
本組合せの抗体分子は、例えばエフェクター機能を調節するように、Fc受容体へのその
結合特性に関して改変されることができる。例えば、システイン残基(複数可)をFc領域に
導入することができ、これによりこの領域内での鎖内ジスルフィド結合形成が可能になる
。こうして作出されたホモ二量体型抗体は、改善されたインターナリゼーション能並びに
/又は増強された補体依存性細胞傷害及び抗体依存性細胞傷害(ADCC)を有し得る。Caron
らの文献、J. Exp. Med. 176:1191-1195 (1992)、及びShopes B.の文献、J. Immunol. 14
8:2918-2922 (1992)を参照し、これらは引用により本明細書中に組み込まれている。
【0086】
これらの抗体分子はまた、化学療法薬、毒素(例えば、細菌、真菌、植物もしくは動物
起源の酵素的に活性がある毒素、又はそれらの断片)、又は放射性同位元素(すなわち、放
射性複合体)などの、細胞毒性物質に複合された、抗体を含む免疫複合体を形成するよう
にも改変され得る。またChan及びCarterの文献により説明されているように(引用により
本明細書中に組み込まれている、Nature Reviews: Immunology, 10:301-316 (2010))、Fc
領域を、半減期を延長するように操作することもできる。
【0087】
更に別の実施態様において、Fc領域は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を媒介する抗体分子
の能力を増大し、及び/又は1以上のアミノ酸の改変によりFcγ受容体に対する抗体の親
和性を増加するように改変される。
【0088】
特定の実施態様において、Fc領域は、エフェクター機能が存在しないように操作されて
よい。いくつかの実施態様において、本発明の抗体分子は、低下したエフェクター機能を
有する天然のIgGアイソタイプ、例えばIgG4由来のFc領域を有することができる。IgG4由
来のFc領域は更に、例えば、インビボにおいてIgG4分子間のアームの交換を最小化する改
変の導入により、治療的有用性を増大するように改変されることができる。IgG4由来のFc
領域は、S228P置換を含むように改変されることができる。
【0089】
いくつかの実施態様において、本組合せの抗体分子は、グリコシル化に関して改変され
る。例えば、無グリコシル化抗体を作製することができる(すなわち、抗体はグリコシル
化を欠いている)。グリコシル化は、例えば、標的抗原に対する抗体の親和性を増大する
ように、変更することができる。そのような糖改変は、例えば抗体配列内の1以上のグリ
コシル化部位の変更により達成することができる。例えば、1以上の可変領域フレームワ
ークグリコシル化部位の排除を生じ、これによりその部位でのグリコシル化を排除する1
以上のアミノ酸置換を行うことができる。そのような無グリコシル化は、抗原に対する抗
体の親和性を増大してよい。
【0090】
いくつかの実施態様において、本組合せの抗体分子は、低フコシル化、すなわちフコシ
ル基の量が減少されるように、又は完全にもしくは部分的に脱フコシル化されるように(N
atsumeらの文献、Drug Design Development and Therapy, 3:7-16 (2009)に説明されてい
る)、又は増加した二分岐GlcNac構造を有するように、改変される。そのような変更され
たグリコシル化パターンは、抗体のADCC活性を増大し、典型的には「未変性の」ヒトFcド
メインを含む等価抗体と比べADCCの10倍の増強を生じることが明らかにされている。その
ような糖改変は、例えば変更されたグリコシル化酵素機構を持つ宿主細胞において抗体を
発現することにより達成することができる(Yamane-Ohnuki及びSatohの文献、mAbs, 1(3):
230-236 (2009)に説明されている)。増強されたADCC機能を伴う非フコシル化抗体の例と
しては、BioWa社のPotelligent(商標)技術を用い作製されたものがある。
【0091】
本明細書記載の組合せの抗体分子は、抗体エフェクター機能、例えば、1以上の抗体依
存性細胞傷害(ADCC)、補体依存性細胞傷害(CDC)及び抗体依存性細胞貪食(ADCP)を有する
ことができる。
【0092】
本組合せの抗体分子は、新生児受容体FcRnへの結合親和性を増大するために、Fc領域内
で改変され得る。増加した結合親和性は、酸性pH(例えば、ほぼ約pH5.5~約pH6.0)で測定
可能である。増加した結合親和性はまた、中性pH(例えば、約pH6.9~約pH7.4)で測定可能
である。「増加する結合親和性」により、未改変のFc領域と比べ、FcRnに対する増加した
結合親和性を意味する。典型的には、未改変のFc領域は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4
の野生型アミノ酸配列を有するであろう。そのような実施態様において、改変されたFc領
域を有する抗体分子の増加したFcRn結合親和性は、FcRnに関する野生型IgG1、IgG2、IgG3
又はIgG4の結合親和性に対して測定されるであろう。
【0093】
好ましい実施態様において、Fc領域内の1以上のアミノ酸残基は、FcRnへの結合を増加
するように、異なるアミノ酸により置換され得る。いくつかのFc置換は、FcRn結合を増大
し、且つそれにより抗体薬物動態を改善することが報告されている。そのような置換は、
例えば、Zalevskyらの文献、Nat. Biotechnol. 28(2):157-9(2010);Hintonらの文献、J
Immunol. 176:346-356 (2006);Yeungらの文献、J Immunol. 182:7663-7671 (2009);Pre
sta LGの文献、Curr. Op. Immunol. 20:460-470 (2008);及び、Vaccaroらの文献、Nat.
Biotechnol. 23(10):1283-88 (2005)に報告されており、これらの内容はそれらの全体が
引用により本明細書中に組み込まれている。
【0094】
好ましい実施態様において、本明細書記載の組合せの抗体分子の1つ以上は、アミノ酸
置換H433K及びN434Fを含むか又はこれからなる改変されたヒトIgG Fcドメインを含み、こ
こでFcドメイン番号付けは、EU番号付けに従う。更に好ましい実施態様において、本明細
書記載の組合せの抗体分子の1つ以上は、アミノ酸置換M252Y、S254T、T256E、H433K及びN
434Fを含むか又はこれからなる改変されたヒトIgG Fcドメインを含み、ここでFcドメイン
番号付けは、EU番号付けに従う。
【0095】
(CD70抗体)
本明細書記載の組合せのいずれかに組み込まれ得るCD70に結合する抗体分子は、以下を
含むが、これらに限定されるものではない:CD70のCD27との相互作用を阻害するCD70抗体
;CD70結合に関して、CD27と競合するCD70抗体;CD70-誘導したCD27シグナル伝達を阻害
するCD70抗体;Treg活性化及び/又は増殖を阻害するCD70抗体;CD70-発現する細胞を枯
渇するCD70抗体;CD70-発現する細胞の溶解を誘導するCD70抗体;ADCC、CDC機能性を有し
、及び/又はADCPを誘導するCD70抗体。
【0096】
例証的CD70抗体は、WO2012/123586(引用により本明細書中に組み込まれている)に説明
されたARGX-110、SGN-70(WO2006/113909、及びMcEarChernらの文献、Clin Cancer Res. 1
4(23):7763 (2008)、両方共引用により本明細書中に組み込まれている)、並びにWO2006/0
44643及びWO2007/038637(各々引用により本明細書中に組み込まれている)に説明されたそ
れらのCD70抗体である。
【0097】
WO2006/044643は、ADCC、ADCP、CDC又はADCの1以上を媒介することができ、且つCD70-
発現している癌に対する細胞増殖抑制効果もしくは細胞毒性効果を発揮するか、又は細胞
増殖抑制物質又は細胞毒性物質へ複合せずにCD70-発現している免疫学的障害へ免疫抑制
作用を発揮するかのいずれかである、抗体エフェクタードメインを含むCD70抗体を説明し
ている。ここで例証される抗体は、1F6及び2F2と記される、2種のモノクローナル抗体の
抗原-結合領域を基にしている。
【0098】
WO2007/038637は、CD70に結合する完全ヒトモノクローナル抗体を説明している。これ
らの抗体は、ヒトCD70への、1×10-7M以下のKDでの結合により特徴付けられる。これらの
抗体はまた、786-Oなど、CD70を発現する腎細胞癌腫瘍細胞株に結合し、且つこれにより
インターナリゼーションされる。
【0099】
ARGX-110は、CD70のその受容体CD27との相互作用を阻害することが示されているIgG1抗
-CD70抗体である(Silenceらの文献、MAbs. Mar-Apr;6(2):523-32 (2014)、引用により本
明細書中に組み込まれている)。特にARGX-110は、CD70-誘導したCD27シグナル伝達を阻害
することが示されている。CD27シグナル伝達のレベルは、例えば、Rietherらの文献(前掲
)に説明されたような、血清可溶性CD27の測定によるか、又はSilenceらの文献(前掲)に説
明されたようなIL-8発現の測定により、決定することができる。理論により結びつけられ
るものではないが、CD27シグナル伝達の阻害は、Treg細胞の活性化及び/又は増殖を低下
し、これにより抗-腫瘍エフェクターT細胞の阻害を減少すると考えられる。AGRX-110はま
た、CD70-発現している腫瘍細胞を枯渇することも明らかにされている。特に、ARGX-110
は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)及び補体依存性細胞傷害(CDC)を介して、CD70-発現する腫
瘍細胞を溶解すること、並びにまたCD70-発現している細胞の抗体依存性細胞貪食(ADCP)
を増加することが、示されている(Silenceらの文献、前掲)。
【0100】
ARGX-110のCDR、VH及びVLアミノ酸配列を、下記表に示している。
表1
【表1】
【0101】
いくつかの実施態様において、CD70に結合する抗体分子は、可変重鎖ドメイン(VH)及び
可変軽鎖ドメイン(VL)を含み、ここでVH及びVLドメインは、以下のCDR配列を含むか又は
これからなる:
配列番号:3を含むか又はこれからなるHCDR3;
配列番号:2を含むか又はこれからなるHCDR2;
配列番号:1を含むか又はこれからなるHCDR1;
配列番号:7を含むか又はこれからなるLCDR3;
配列番号:6を含むか又はこれからなるLCDR2;並びに
配列番号:5を含むか又はこれからなるLCDR1。
【0102】
いくつかの実施態様において、CD70に結合する抗体分子は、配列番号:4と少なくとも70
%、少なくとも80%、少なくとも90%又は少なくとも95%同一である配列を含むか又はこ
れからなる可変重鎖ドメイン(VHドメイン)、並びに配列番号:8と少なくとも70%、少なく
とも80%、少なくとも90%又は少なくとも95%同一である配列を含むか又はこれからなる
可変軽鎖ドメイン(VLドメイン)を含む。いくつかの実施態様において、CD70に結合する抗
体分子は、配列番号:4を含むか又はこれからなる可変重鎖ドメイン(VHドメイン)、及び配
列番号:8を含むか又はこれからなる可変軽鎖ドメイン((VLドメイン)を含む。
【0103】
本明細書記載の組合せに組み込まれ得るCD70抗体分子は、抗体薬物複合体(ADC)を含む
。ADCは、例えば、アウリスタチン及びマイタンシン又は他の細胞毒性物質などの、活性
物質に結合された抗体である。いくつかのADCは、抗体ブロッキング及び/又はエフェク
ター機能 (例えば、ADCC、CDC、ADCP)を維持する一方で、また複合された活性物質を、標
的(例えば、CD70)を発現している細胞へ送達する。抗-CD70 ADCの例は、ボルセツズマブ
マホドチン(SGN-75としても公知、Seattle Genetics)、SGN-70A(Seattle Genetics)、及
びMDX-1203/BMS936561(Bristol-Myers Squibb)を含み、その各々は本発明に従い使用する
ことができる。好適な抗-CD70 ADCはまた、WO2008074004及びWO2004073656に説明されて
おり、これらも各々引用により本明細書中に組み込まれている。
【0104】
本明細書記載の組合せに組み込まれ得るCD70抗体分子はまた、SIRPα-抗体分子融合タ
ンパク質、又は例えば、前掲のPonceらの文献(2017)に説明された「licMAB」(局所阻害性
チェックポイントモノクローナル抗体)も含む。これらのSIRPα-抗体分子融合タンパク質
又はlicMABは、SIRPαタンパク質のドメイン、特に細胞外免疫グロブリンV-様ドメインに
融合された抗体又は抗体分子(この場合CD70抗体又は抗体分子)を含む。
【0105】
(LSC標的抗体)
(TIM-3及びガレクチン-9抗体)
本明細書記載の組合せに組み込まれ得るLSC標的に結合する抗体分子は、TIM-3を介して
それらの作用を媒介する抗体分子を含む。これらの作用は、TIM-3への直接結合を介して
、又はTIM-3シグナル伝達に関連されたLSC標的を介して、媒介され得る。いくつかの実施
態様において、本明細書記載の組合せのLSC標的抗体分子は、TIM-3の、1種以上のTIM-3相
互作用性タンパク質との相互作用を阻害する。TIM-3相互作用性タンパク質は、CEACAM-1
;HMGB-1;ホスファチジルセリン;ガレクチン-9;LILRB2;及び、それらの組合せから選
択されることができる。一実施態様において、本組合せのLSC標的抗体分子は、TIM-3の、
そのリガンドであるガレクチン-9との相互作用を阻害する。一実施態様において、本組合
せのLSC標的抗体分子は、TIM-3の、そのリガンドであるLILRB2との相互作用を阻害する。
【0106】
いくつかの実施態様において、本組合せのLSC標的抗体分子は、ガレクチン-9に結合す
る。いくつかの実施態様において、本組合せのLSC標的抗体分子は、TIM-3に結合する。LS
C標的がTIM-3である実施態様に関して、この抗体分子は、以下の作用の1以上を達成する
ことができる:減少したNF-κBシグナル伝達;減少したWnt/β-カテニンシグナル伝達;
減少したAML細胞の幹細胞性;又は、それらの組合せ。TIM3に結合する抗体分子に関して
、これらの抗体分子は、TIM-3の1以上のTIM-3相互作用性タンパク質との相互作用を阻害
することができる。TIM-3相互作用性タンパク質は、以下から選択され得る:CEACAM-1;H
MGB-1;ホスファチジルセリン;ガレクチン-9;及び、それらの組合せ。一実施態様にお
いて、TIM-3に結合する抗体分子は、TIM-3のそのリガンドであるガレクチン-9との相互作
用を阻害する。
【0107】
いくつかの実施態様において、本組合せのLSC標的抗体分子は、TIM-3とLILRB2の相互作
用を阻害する。そのような実施態様において、本抗体分子は好ましくは、TIM-3に結合し
、且つTIM-3のLILRB2への結合を阻害する。
【0108】
TIM-3に結合し且つ本明細書記載の組合せに組み込まれ得る抗体分子は、以下のいずれ
かに説明されたTIM-3抗体を含むが、これらに限定されるものではなく:US8,647,623;US
8,552,156;US9,605,070;US8,841,418;US9,631,026;US9,556,270;WO2016/111947、そ
の各々は、引用により本明細書中に組み込まれている。TIM-3に結合し且つ本明細書記載
の組合せへ組み込まれ得る抗体分子はまた、以下も含むが、これらに限定されるものでは
ない:クローンF38-2E2;MBG453(Novartis);ATIK2a(Kyowa Kirin)。
【0109】
ガレクチン-9に結合し且つ本明細書記載の組合せに組み込まれ得る抗体分子は、クロー
ン9M1-3を含むが、これらに限定されるものではない。
【0110】
(CD47抗体)
いくつかの実施態様において、本発明の組合せは、CD47に結合する抗体分子を含む。本
明細書記載の組合せにおいて使用するためのCD47抗体分子は、CD47とSIRPαの間の相互作
用を阻害する抗体分子である。本明細書別所に注記したように、LSCにより発現されたリ
ガンドCD47と食細胞により発現された受容体SIRPαの間の相互作用は、SIRPα受容体の「
私を食べないで」シグナルを下流へ伝達する。本明細書記載の組合せのCD47抗体分子は従
って、腫瘍細胞、特にLSCの貪食を増大することができる。
【0111】
臨床開発の異なる段階にあるCD47抗体を含む、様々なCD47抗体が、利用可能である。当
業者は、ヒト治療上の使用に適している任意のCD47抗体は、本明細書記載の組合せへ組み
込まれ得ることを理解するであろう。例証的CD47抗体は、Hu5F9-G4;CC-90002;ALX148及
びクローン B6H12.2を含むが、これらに限定されるものではない。
【0112】
(IL1RAP抗体)
いくつかの実施態様において、本発明の組合せは、IL1RAPに結合する抗体分子を含む。
本明細書記載の組合せにおいて使用するためのIL1RAP抗体分子は、IL1RAPに結合し、且つ
細胞表面でのIL-1受容体複合体を介したシグナル伝達を阻害する抗体分子が好ましい。
【0113】
IL1RAP抗体は、説明されており、前掲のAgerstamらの文献(2015)、並びにまたWO2012/0
98407及びWO2014/100772も参照されたい。当業者は、ヒト治療上の使用に適した任意のIL
1RAP抗体は、本明細書記載の組合せへ組み込まれ得ることを理解するであろう。
【0114】
(ラクダ科動物-由来のLSC標的抗体)
LSC標的に特異的に結合する抗体分子、特にTIM-3、ガレクチン-9、CD47、IL1RAP及び/
又はLILRB2に特異的に結合する抗体分子は、ラクダ科動物-由来であることができる。
【0115】
例えば、これらの抗体分子は、ラクダ科動物の、関心対象のLSC標的による免疫化工程
を含む方法により得られた、免疫ライブラリーから選択することができる。ラクダ科動物
は、LSC標的タンパク質もしくはそれらのポリペプチド断片によるか、又はそのタンパク
質もしくはそのポリペプチド断片を発現するmRNA分子もしくはcDNA分子により、免疫化す
ることができる。ラクダ科動物種において抗体を産生し、及びラクダ科動物免疫ライブラ
リーから好ましい標的に対する抗体を選択する方法は、例えば、国際特許出願WO2010/001
251に説明されており、これは引用により本明細書中に組み込まれている。
【0116】
いくつかの実施態様において、これらの抗体分子は、ラクダ科ファミリーの種のVHドメ
イン又はVLドメインから得られる、少なくとも1つの超可変ループ又は相補性決定領域を
含む点で、ラクダ科動物-由来であることができる。特に、この抗体分子は、例えば、TIM
-3、ガレクチン-9、CD47又はIL1RAPによる、非近交系ラクダ科動物、例えばラマの能動免
疫により得られた、VH及び/又はVLドメイン、又はそれらのCDRを含み得る。
【0117】
この状況において用語「から得られた」とは、この抗体分子のHV又はCDRは、ラクダ科
免疫グロブリン遺伝子により当初コードされたアミノ酸配列(又はそれらの重要でないバ
リアント)を具現化するという意味での構造的関係を暗示している。しかしこれは、この
抗体分子の調製に使用される製造方法の観点から特定の関係を必ずしも暗示していない。
【0118】
ラクダ科動物-由来の抗体分子は、とりわけ、ラマ、ヒトコブラクダ、アルパカ、ヴィ
クーニャ、グアナコ又はラクダを含む、任意のラクダ科動物の種に由来することができる
。
【0119】
ラクダ科動物-由来のVH及びVLドメイン、又はそれらのCDRを含む抗体分子は、典型的に
は組換えにより発現されたポリペプチドであり、且つキメラポリペプチドであることがで
きる。用語「キメラポリペプチド」とは、そうでなければ近接して生じることのない2つ
以上のペプチド断片の並立により作製される人工の(非天然の)ポリペプチドをいう。この
定義に含まれるのは、例えばラクダ科動物とヒトのような、2つ以上の種によりコードさ
れたペプチド断片の並立により作製された「種」キメラポリペプチドである。
【0120】
いくつかの実施態様において、全VHドメイン及び/又は全VLドメインは、ラクダ科ファ
ミリーの種から得ることができる。具体的実施態様において、ラクダ科動物-由来のVHド
メインは、配列番号:9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、12
1及び123から選択されたアミノ酸配列を含むのに対し、ラクダ科動物-由来のVLドメイン
は、配列番号:10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、122及び
124から選択されたアミノ酸配列を含むことができる。次にラクダ科動物由来のVHドメイ
ン及び/又はラクダ科動物由来のVLドメインは、1つ以上のアミノ酸の置換、挿入又は欠
失がラクダ科動物アミノ酸配列に導入されるタンパク質操作に供され得る。これらの操作
された変化は、ラクダ科動物配列に対するアミノ酸置換を含むことが好ましい。このよう
な変化は、ラクダ科動物-コードされたVH又はVLドメイン中の1個以上のアミノ酸残基が、
相同のヒト-コードされたVH又はVLドメイン由来の同等の残基と置き換えられる「ヒト化
」又は「生殖細胞系列化」を含む。いくつかの実施態様において、ラクダ科動物-由来のV
Hドメインは、配列番号:9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37
、121及び123として示されたアミノ酸配列と少なくとも90%、95%、97%、98%又は99%
の同一性を示すことができる。代わりに又は加えて、ラクダ科動物-由来のVLドメインは
、配列番号:10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、122及び1
24として示されたアミノ酸配列と少なくとも90%、95%、97%、98%又は99%の同一性を
示すことができる。
【0121】
LSC標的抗原(例えば)によるラクダ科動物(例えばラマ)の能動免疫により得られた単離
されたラクダ科動物VH及びVLドメインは、本明細書記載の組合せにおいて使用するために
抗体分子を操作するための基礎として使用することができる。無傷のラクダ科動物VH及び
VLドメインから出発し、この出発ラクダ科動物配列から逸脱する1つ以上のアミノ酸の置
換、挿入又は欠失を操作することが可能である。いくつかの実施態様において、そのよう
な置換、挿入又は欠失は、VHドメイン及び/又はVLドメインのフレームワーク領域中に存
在することができる。
【0122】
他の実施態様において、ラクダ科動物-由来のVH及びVLドメイン(又はそれらの操作され
たバリアント)並びに非ラクダ科動物の抗体由来の1つ以上の定常ドメイン、例えばヒト-
コードされた定常ドメイン(又はそれらの操作されたバリアント)を含む、「キメラ」抗体
分子を提供する。そのような実施態様において、VHドメイン及びVLドメインは両方とも、
ラクダ科動物の同じ種から得ることが好ましく、例えば、VH及びVLの両方がラマ・グラマ
由来であるか、又はVH及びVLの両方がラマ・パコス由来である(操作されたアミノ酸配列
の変動の導入前)ことは好ましい。そのような実施態様において、VHドメイン及びVLドメ
インの両方は、単独の動物、特に関心対象の抗原により能動免疫化された単独の動物に由
来することができる。
【0123】
ラクダ科VH及び/又はVLドメインの一次アミノ酸配列において変化を操作する代わりに
、個別のラクダ科動物-由来の超可変ループもしくはCDR、又はそれらの組合せを、ラクダ
科動物VH/VLドメインから単離し、且つCDRグラフティングすることにより、代替(すなわ
ち非ラクダ科)のフレームワーク、例えばヒトVH/VLフレームワークへ移すことができる
。
【0124】
いくつかの実施態様において、TIM-3に結合する抗体分子は、以下から選択される、可
変重鎖CDR3(HCDR3)、可変重鎖CDR2(HCDR2)及び可変重鎖CDR1(HCDR1)、可変軽鎖CDR3(LCDR
3)、可変軽鎖CDR2(LCDR2)及び可変軽鎖CDR1(LCDR1)の組合せを含む抗体分子から選択され
る:
(i)配列番号:41を含むHCDR3;配列番号:40を含むHCDR2;配列番号:39を含むHCDR1;配
列番号:80を含むLCDR3;配列番号:79を含むLCDR2;及び、配列番号:78を含むLCDR1;
(ii)配列番号:43を含むHCDR3;配列番号:42を含むHCDR2;配列番号:39を含むHCDR1;配
列番号:83を含むLCDR3;配列番号:82を含むLCDR2;及び、配列番号:81を含むLCDR1;
(iii)配列番号:46を含むHCDR3;配列番号:45を含むHCDR2;配列番号:44を含むHCDR1;
配列番号:86を含むLCDR3;配列番号:85を含むLCDR2;及び、配列番号:84を含むLCDR1;
(iv)配列番号:49を含むHCDR3;配列番号:48を含むHCDR2;配列番号:47を含むHCDR1;配
列番号:88を含むLCDR3;配列番号:82を含むLCDR2;及び、配列番号:87を含むLCDR1;
(v)配列番号:52を含むHCDR3;配列番号:51を含むHCDR2;配列番号:50を含むHCDR1;配
列番号:91を含むLCDR3;配列番号:90を含むLCDR2;及び、配列番号:89を含むLCDR1;
(vi)配列番号:55を含むHCDR3;配列番号:54を含むHCDR2;配列番号:53を含むHCDR1;配
列番号:94を含むLCDR3;配列番号:93を含むLCDR2;及び、配列番号:92を含むLCDR1;
(vii)配列番号:58を含むHCDR3;配列番号:57を含むHCDR2;配列番号:56を含むHCDR1;
配列番号:97を含むLCDR3;配列番号:96を含むLCDR2;及び、配列番号:95を含むLCDR1;
(viii)配列番号:60を含むHCDR3;配列番号:59を含むHCDR2;配列番号:50を含むHCDR1;
配列番号:100を含むLCDR3;配列番号:99を含むLCDR2;及び、配列番号:98を含むLCDR1;
(ix)配列番号:63を含むHCDR3;配列番号:62を含むHCDR2;配列番号:61を含むHCDR1;配
列番号:103を含むLCDR3;配列番号:102を含むLCDR2;及び、配列番号:101を含むLCDR1;
(x)配列番号:65を含むHCDR3;配列番号:64を含むHCDR2;配列番号:39を含むHCDR1;配
列番号:106を含むLCDR3;配列番号:105を含むLCDR2;及び、配列番号:104を含むLCDR1;
(xi)配列番号:67を含むHCDR3;配列番号:66を含むHCDR2;配列番号:50を含むHCDR1;配
列番号:109を含むLCDR3;配列番号:108を含むLCDR2;及び、配列番号:107を含むLCDR1;
(xii)配列番号:69を含むHCDR3;配列番号:68を含むHCDR2;配列番号:50を含むHCDR1;
配列番号:112を含むLCDR3;配列番号:111を含むLCDR2;及び、配列番号:110を含むLCDR1
;
(xiii)配列番号:72を含むHCDR3;配列番号:71を含むHCDR2;配列番号:70を含むHCDR1;
配列番号:115を含むLCDR3;配列番号:114を含むLCDR2;及び、配列番号:113を含むLCDR1
;
(xiv)配列番号:74を含むHCDR3;配列番号:73を含むHCDR2;配列番号:50を含むHCDR1;
配列番号:117を含むLCDR3;配列番号:111を含むLCDR2;及び、配列番号:116を含むLCDR1
;並びに
(xv)配列番号:77を含むHCDR3;配列番号:76を含むHCDR2;配列番号:75を含むHCDR1;配
列番号:120を含むLCDR3;配列番号:119を含むLCDR2;及び、配列番号:118を含むLCDR1。
【0125】
いくつかの実施態様において、TIM-3に結合する抗体分子は、以下から選択される可変
重鎖ドメイン(VH)及び可変軽鎖ドメイン(VL)を含むか又はこれからなる抗体分子から選択
される:
(i)配列番号:9のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%の
同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はこれからなるVHドメイン、及び配列番号:10の
アミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%の同一性を有するアミ
ノ酸配列を含むか又はこれからなるVLドメイン;
(ii)配列番号:11のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%
の同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はこれからなるVHドメイン、及び配列番号:12
のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%の同一性を有するア
ミノ酸配列を含むか又はこれからなるVLドメイン;
(iii)配列番号:13のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%
の同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はこれからなるVHドメイン、及び配列番号:14
のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%の同一性を有するア
ミノ酸配列を含むか又はこれからなるVLドメイン;
(iv)配列番号:15のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%
の同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はこれからなるVHドメイン、及び配列番号:16
のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%の同一性を有するア
ミノ酸配列を含むか又はこれからなるVLドメイン;
(v)配列番号:17のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%の
同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はこれからなるVHドメイン、及び配列番号:18の
アミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%の同一性を有するアミ
ノ酸配列を含むか又はこれからなるVLドメイン;
(vi)配列番号:19のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%
の同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はこれからなるVHドメイン、及び配列番号:20
のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%の同一性を有するア
ミノ酸配列を含むか又はこれからなるVLドメイン;
(vii)配列番号:21のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%
の同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はこれからなるVHドメイン、及び配列番号:22
のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%の同一性を有するア
ミノ酸配列を含むか又はこれからなるVLドメイン;
(viii)配列番号:23のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99
%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はこれからなるVHドメイン、及び配列番号:2
4のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%の同一性を有する
アミノ酸配列を含むか又はこれからなるVLドメイン;
(ix)配列番号:25のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%
の同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はこれからなるVHドメイン、及び配列番号:26
のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%の同一性を有するア
ミノ酸配列を含むか又はこれからなるVLドメイン;
(x)配列番号:27のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%の
同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はこれからなるVHドメイン、及び配列番号:28の
アミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%の同一性を有するアミ
ノ酸配列を含むか又はこれからなるVLドメイン;
(xi)配列番号:29のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%
の同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はこれからなるVHドメイン、及び配列番号:30
のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%の同一性を有するア
ミノ酸配列を含むか又はこれからなるVLドメイン;
(xii)配列番号:31のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%
の同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はこれからなるVHドメイン、及び配列番号:32
のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%の同一性を有するア
ミノ酸配列を含むか又はこれからなるVLドメイン;
(xiii)配列番号:33のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99
%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はこれからなるVHドメイン、及び配列番号:3
4のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%の同一性を有する
アミノ酸配列を含むか又はこれからなるVLドメイン;
(xiv)配列番号:35のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%
の同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はこれからなるVHドメイン、及び配列番号:36
のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%の同一性を有するア
ミノ酸配列を含むか又はこれからなるVLドメイン;
(xv)配列番号:37のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%
の同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はこれからなるVHドメイン、及び配列番号:38
のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%の同一性を有するア
ミノ酸配列を含むか又はこれからなるVLドメイン。
【0126】
いくつかの実施態様において、IL1RAPへ結合する抗体分子は、以下から選択される、可
変重鎖CDR3(HCDR3)、可変重鎖CDR2(HCDR2)及び可変重鎖CDR1(HCDR1)、可変軽鎖CDR3(LCDR
3)、可変軽鎖CDR2(LCDR2)及び可変軽鎖CDR1(LCDR1)の組合せを含む抗体分子から選択され
る:
(i)配列番号:127を含むHCDR3;配列番号:126を含むHCDR2;配列番号:125を含むHCDR1;
配列番号:133を含むLCDR3;配列番号:132を含むLCDR2;及び、配列番号:131を含むLCDR1
;並びに
(ii)配列番号:130を含むHCDR3;配列番号:129を含むHCDR2;配列番号:128を含むHCDR1
;配列番号:136を含むLCDR3;配列番号:135を含むLCDR2;及び、配列番号:134を含むLCDR
1。
【0127】
いくつかの実施態様において、IL1RAPに結合する抗体分子は、以下から選択される可変
重鎖ドメイン(VH)及び可変軽鎖ドメイン(VL)を含むか又はこれからなる抗体分子から選択
される:
(i)配列番号:121のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%
の同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はこれからなるVHドメイン、及び配列番号:122
のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%の同一性を有するア
ミノ酸配列を含むか又はこれからなるVLドメイン;並びに
(ii)配列番号:123のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%
の同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はこれからなるVHドメイン、及び配列番号:124
のアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、90%、95%、98%、99%の同一性を有するア
ミノ酸配列を含むか又はこれからなるVLドメイン。
【0128】
抗体又は抗原結合断片のドメインが、参照配列への特定の割合の配列同一性により定義
される実施態様に関して、VH及び/又はVLドメインは、参照配列に存在するものと同一の
CDR配列を維持することができ、その結果この変動は、フレームワーク領域内にのみ存在
する。
【0129】
ラクダ科動物-由来のVH及びVLドメイン、又はそれらのCDRを含む抗体分子は、VHドメイ
ン及びVLドメインの両方が存在する、様々な異なる抗体の形状をとることができる。請求
された組合せの状況において使用される「抗体分子」の定義内の抗体及び抗原結合断片は
、本明細書別所に記載されている。
【0130】
(組合せの製剤)
本組合せの異なる抗体分子は、それを必要とする対象又は患者、好ましくはヒト対象又
は患者へ投与されるべき組合せ療法を可能にする任意の様式で組合せられるか又は製剤化
されることができる。本組合せは、単回用量投与又は多回用量投与のために製剤化される
ことができる。
【0131】
抗体分子が抗原結合断片である実施態様に関して、抗体分子は、多重特異性抗体、例え
ば二重特異性抗体として組合せることができる。例えば、本組合せが、CD70に結合するFa
b断片及びLSC標的に結合するFab断片を含む場合、これら2つのFab断片は、IgG Fc部分に
複合された2つのFab領域を有する、単独の二重特異性抗体分子に組み込まれ得る。いくつ
かの実施態様において、本組合せは、CD70に結合する抗体分子及びTIM-3に結合する抗体
分子を含む、多重特異性抗体、好ましくは二重特異性抗体を含むか又はこれからなる。い
くつかの実施態様において、本組合せは、CD70に結合する抗体分子及びCD47に結合する抗
体分子を含む、多重特異性抗体、好ましくは二重特異性抗体を含むか又はこれからなる。
いくつかの実施態様において、本組合せは、CD70に結合する抗体分子及びIL1RAPに結合す
る抗体分子を含む、多重特異性抗体、好ましくは二重特異性抗体を含むか又はこれからな
る。
【0132】
本発明に従う二重特異性又は多重特異性抗体は、本明細書別所記載の任意の好適な二重
特異性/多重特異性抗体フォーマットに従い、構成されることができる。例えば、本組合
せの抗体分子は、抗体が異なる標的に「トランス」で例えば、Y字型抗体の各Fabアームが
異なる結合特異性を持つ状況で結合するように、二重特異性又は多重特異性抗体フォーマ
ットに組み込まれることができる。代わりの実施態様において、この抗体分子は、標的が
「シス」位置で結合されるように、二重特異性又は多重特異性抗体フォーマットに組み込
まれることができ、例えば、Fab領域又はそれらの可変ドメインは、IgG Fc部分の反対末
端に配置されてよい。いくつかの実施態様において、この抗体分子は、第一の抗体分子が
、「Y字」型抗体の1本のアームを形成するFab断片であり、及び第二の抗体分子が、VHHド
メインである、非対称の二重特異性IgG抗体フォーマットに、組み込まれることができる
。
【0133】
いくつかの実施態様において、本組合せの抗体分子は、共-製剤化される、すなわち単
独の医薬組成物として製剤化される、個別の分子である。抗体分子が共-製剤化される実
施態様に関して、この組合せ又は組成物は、これら2種の成分の同時投与に適している。
本組成物は、単回用量投与又は多回用量投与のために製剤化されることができる。これら
の抗体分子が共-製剤化される実施態様に関して、抗体分子は、異なる標的に結合する第
一及び第二の抗体分子を含む組合せに関して、等量で、例えば1:1の比に従い、製剤化さ
れることができる。代わりに、これらの抗体分子は、異なる抗体分子の比が、1:1ではな
いように、製剤化されることができる。例えば、組合せが、異なる標的に結合する第一及
び第二の抗体分子を含むか又はこれからなる実施態様に関して、第一及び第二の抗体分子
の比は、2:1、任意に3:1、任意に4:1であることができる。代わりに、これらの抗体分子
は、1:2、任意に1:3、任意に1:4の比に従い製剤化されることができる。
【0134】
いくつかの実施態様において、本組合せの抗体分子は、個別に、例えば個々の組成物と
して製剤化される。抗体分子が個別に製剤化される実施態様に関して、異なる成分又は組
成物を、同時又は個別に投与する可能性が存在する。抗体分子又はそれらを含有する個別
の組成物は、個別に投与される場合、抗体分子又は組成物のいずれかの順番での連続投与
が存在してよい。例えば、CD70に結合する抗体分子が最初に、続けて白血病幹細胞標的に
結合する抗体分子が投与されるか、又はその逆も同様である。抗体分子又は組成物の投与
の間の間隔は、任意の好適な時間間隔であってよい。異なる組成物の投与は、一度に(単
回用量投与に関して)又は反復して(多回用量投与に関して)であることができる。
【0135】
抗体分子が共-製剤化される実施態様に関して及び/又は抗体分子が個別の組成物とし
て提供される実施態様に関して、抗体分子は、任意の好適な医薬担体又は賦形剤を用いて
製剤化されることができる。ヒト治療上の使用のための抗体の製剤技術は、当該技術分野
において周知であり、且つ例えば、Wangらの文献、Journal of Pharmaceutical Sciences
, 96:1-26 (2007)において検証されており、その文献の内容は全体が引用により本明細書
中に組み込まれている。抗体分子が個別に製剤化される実施態様に関して、医薬担体又は
賦形剤は、異なる組成物に関して異なっても同一でもよい。
【0136】
本組成物の製剤化に使用することができる医薬として許容し得る賦形剤は、イオン交換
体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えばヒト血清
アルブミンなど、緩衝物質、例えばリン酸塩、グリシンなど、ソルビン酸、ソルビン酸カ
リウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩又は電解質、例えば硫酸プロ
タミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩など、
コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース-ベース
の物質(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、ポリエチレングリコール、ポ
リアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポ
リエチレングリコール及び羊毛脂を含むが、これらに限定されるものではない。
【0137】
いくつかの実施態様において、本組成物は、筋肉内、静脈内、皮内、腹腔内の注射、皮
下、硬膜外、経鼻、経口、経直腸、局所、吸入、口腔内(例えば、舌下)、及び経真皮の投
与を含むが、これらに限定されるものではない、いずれか好適な投与経路による、対象へ
の投与のために、製剤化される。抗体分子が個別に製剤化される実施態様に関して、各組
成物は、異なる経路を介して投与されるよう製剤化されてよい。
【0138】
CD70抗体分子及びLSC標的抗体分子に加え物質を含むか又はこれからなる本発明の組合
せに関して、1以上の追加の物質は、第一及び第二の抗体分子と比べて、同じ経路による
か又は異なる経路による投与のために、製剤化されることができる。例えば、組合せが、
CD70に結合する抗体分子、LSC標的に結合する抗体分子及びアザシチジンを含む実施態様
において、これらの抗体分子は、静脈内に投与されるのに対し、アザシチジンは、注射に
より皮下に投与されてよい。
【0139】
(C. 抗-CD70抗体及びSIRPα阻害剤による組合せ療法)
第二の態様において、本発明の組合せ又は組合せ療法は、CD70に結合する抗体分子及び
SIRPαシグナル伝達を阻害する物質を含むか又はこれらからなる。CD70に結合し且つ本発
明の組合せにおける使用に適している抗体分子は、先に説明されており、且つ本発明の第
一の態様の状況において提示された全ての実施態様は、この第二の態様に等しく適用され
得る。
【0140】
本発明の第二の態様の組合せ又は組合せ療法において、CD70に結合する抗体分子は、SI
RPαシグナル伝達を阻害する物質と組合せられる。本明細書別所において説明したように
、SIRPαは、特にマクロファージ、好中球及び樹状細胞を含む、食細胞の表面に発現され
た受容体である。SIRPαは、リガンドCD47の受容体であり、このリガンドは、様々な異な
る細胞型の表面に発現される。CD47のSIRPαへの結合は、食細胞内のSIRPαの下流の細胞
内シグナル伝達経路の引き金を引き、これは貪食活性をダウンレギュレーションするよう
に働く。この結果、CD47-SIRPαシグナル伝達系は、免疫系の食細胞によるCD47-発現して
いる細胞のクリアランスを防止することにより、これらの細胞の生存を促進する。
【0141】
本明細書において使用する用語「SIRPαシグナル伝達を阻害する物質」は、CD47-SIRP
αシグナル伝達系と干渉し、その結果この経路により生じた「私を食べないで」シグナル
が抑制される、任意の物質を意味することが意図される。いくつかの実施態様において、
SIRPαシグナル伝達を阻害する物質は、CD47に結合し、且つCD47とSIRPαの間の相互作用
を阻害する抗体分子である。他の実施態様において、SIRPαシグナル伝達を阻害する物質
は、SIRPαに結合し、且つCD47とSIRPαの間の相互作用を阻害する抗体分子である。CD47
及びSIRPαに結合する抗体は、各々、当該技術分野において公知であり、且つ本明細書記
載の組合せに含まれ得る。本明細書記載の組合せにおける使用に適している例証的SIRPα
抗体は、クローンKWAR23;クローンB4B6;及び、クローンOX-119を含むが、これらに限定
されるものではない。
【0142】
いくつかの実施態様において、SIRPαシグナル伝達を阻害する物質は、SIRPα抗体-分
子融合タンパク質である。本明細書別所において定義したように、SIRPα抗体-分子融合
タンパク質は、SIRPα又はそれらの断片を、抗体又はそれらの断片と一緒に含む。いくつ
かの実施態様において、SIRPα抗体-分子融合タンパク質は、SIRPαの免疫グロブリンV-
様ドメインの少なくとも1つのコピー、任意にSIRPαのこの免疫グロブリンV-様ドメイン
の複数のコピーを含む。
【0143】
いくつかの実施態様において、SIRPαシグナル伝達を阻害する物質は、抗体、例えばIg
G1抗体のFc領域に共有結合的に連結された、SIRPα又はそれ由来の免疫グロブリンV-様ド
メインを含む。一実施態様において、SIRPαシグナル伝達を阻害する物質は、TTI-621(Tr
illium Therapeutics社)である。
【0144】
いくつかの実施態様において、SIRPαシグナル伝達を阻害する物質は、完全長IgG抗体
、例えば完全長IgG1抗体に共有結合的に連結された、SIRPα又はそれら由来の免疫グロブ
リンV-様ドメインを含む。
【0145】
本発明の第二の態様に従う組合せの好ましい実施態様において、この組合せは、CD70に
結合する抗体分子を含むか又はこれからなり、ここでこの抗体分子は、SIRPαに連結され
るか、又はSIRPαの免疫グロブリンV-様ドメインの少なくとも1つのコピーに連結される
。この連結は、好ましくは共有結合的である。CD70抗体分子は、SIRPαの免疫グロブリン
V-様ドメインの複数のコピー、例えば、2、3、4又はそれよりも多いコピーに連結されて
よい。CD70抗体分子は、リンカー、例えばポリグリシン-セリンリンカーを介して、SIRP
αドメインに、直接又は間接に連結されてよい。
【0146】
CD70抗体分子がSIRPαの免疫グロブリンV-様ドメインの少なくとも1つのコピーへ連結
された、好ましくは共有結合的に連結された実施態様に関して、CD70抗体分子は好ましく
は、可変重鎖ドメイン(VH)及び可変軽鎖ドメイン(VL)を含み、ここでVH及びVLドメインは
、以下のCDR配列を含む:
配列番号:3を含むか又はこれからなるHCDR3;
配列番号:2を含むか又はこれからなるHCDR2;
配列番号:1を含むか又はこれからなるHCDR1;
配列番号:7を含むか又はこれからなるLCDR3;
配列番号:6を含むか又はこれからなるLCDR2;並びに
配列番号:5を含むか又はこれからなるLCDR1。
【0147】
いくつかの実施態様において、CD70に結合し且つSIRPαの免疫グロブリンV-様ドメイン
の少なくとも1つのコピーに連結される抗体分子は、配列番号:4と少なくとも70%、少な
くとも80%、少なくとも90%又は少なくとも95%同一である配列を含むか又はこれからな
る可変重鎖ドメイン(VHドメイン)、並びに配列番号:8と少なくとも70%、少なくとも80%
、少なくとも90%又は少なくとも95%同一である配列を含むか又はこれからなる可変軽鎖
ドメイン(VLドメイン)を含む。いくつかの実施態様において、CD70に結合し且つSIRPαの
免疫グロブリンV-様ドメインの少なくとも1つのコピーに連結される抗体分子は、配列番
号:4を含むか又はこれからなる可変重鎖ドメイン(VHドメイン)及び配列番号:8を含むか又
はこれからなる可変軽鎖ドメイン(VLドメイン)を含む。
【0148】
(D. 追加物質)
本発明の第一及び第二の態様に従う組合せは、先に説明された抗体分子及び物質に加え
て、1以上の追加の抗癌剤を含むことができる。例えば、本組合せは、骨髄性悪性腫瘍の
治療、特にAMLの治療のための、少なくとも1つの追加物質を含むことができる。
【0149】
いくつかの実施態様において、本明細書記載の組合せは、ヌクレオシド代謝阻害剤(又
はNMI)を含む。例えば、本組合せは、低メチル化剤、例えばアザシチジン(アザサイチジ
ン、AZA又はアザとも称される)又はデシタビンを含むことができる。アザシチジンは、シ
チジンのアナログであり、及びデシタビンは、そのデオキシ誘導体である。AZA及びデシ
タビンは、プロモーター低メチル化により遺伝子発現をアップレギュレートすることがわ
かっているDNAメチル基転移酵素(DNMT)の阻害剤である。そのような低メチル化は、細胞
機能を破壊し、これにより細胞毒性効果を生じる。
【0150】
特定の実施態様において、本明細書記載の組合せは、CD70に結合する抗体分子、TIM-3
に結合する抗体分子及びアザシチジンを含むか又はこれからなる。特定の実施態様におい
て、本明細書記載の組合せは、CD70に結合する抗体分子、TIM-3に結合する抗体分子及び
デシタビンを含むか又はこれからなる。特定の実施態様において、本明細書記載の組合せ
は、CD70に結合する抗体分子、CD47に結合する抗体分子及びアザシチジンを含むか又はこ
れからなる。特定の実施態様において、本明細書記載の組合せは、CD70に結合する抗体分
子、CD47に結合する抗体分子及びデシタビンを含むか又はこれからなる。特定の実施態様
において、本明細書記載の組合せは、CD70に結合する抗体分子、IL1RAPに結合する抗体分
子及びアザシチジンを含むか又はこれからなる。特定の実施態様において、本明細書記載
の組合せは、CD70に結合する抗体分子、IL1RAPに結合する抗体分子及びデシタビンを含む
か又はこれからなる。
【0151】
理論により結びつけられることを欲するものではないが、CD70抗体分子、LSC標的に結
合する抗体分子及び低メチル化剤、例えばアザシチジン又はデシタビンを組み込んでいる
組合せは、これらの活性物質の組合せ効果により、悪性腫瘍、特に骨髄性悪性腫瘍の治療
に、特に効果があると考えられる。本明細書別所に記載したように、CD70、TIM-3、CD47
及びIL1RAPは全て、白血病幹細胞上でアップレギュレートされる標的として確定されてい
る。CD70発現は、ヌクレオシド代謝阻害剤アザシチジンにより治療された患者由来のAML
芽球及びリンパ球の表面上でアップレギュレートされることもわかっている(Richardson
及びPatelの文献、Nat Rev Rheumatol. 10:72-74 (2014);Rietherらの文献、Science Tr
ansl Med. 7:1-12 (2015);Zhouらの文献、Lupus, 20:1365-1371 (2011)を参照し、これ
らは引用により本明細書中に組み込まれている)。これは、例えば三重組合せ戦略のよう
な、本明細書記載の組合せに加えたアザシチジンは、標的LSC上のCD70発現をアップレギ
ュレートするように働き、これによりCD70-LSC標的二重組合せ療法の有効性を増強するこ
とも続く。
【0152】
いくつかの実施態様において、本明細書記載の組合せは、PD-1(「プログラムされた細
胞死タンパク質1」又は「CD279」としても公知)の阻害剤を含む。代わりに又は加えて、
本明細書記載の組合せは、PD-L1又はPD-L2(PD-1のリガンド)の阻害剤を含んでよい。
【0153】
PD-1及びそのリガンド、特にPD-L1は、免疫チェックポイントレギュレーターとして、
かなり良く特徴付けられており、並びに癌微小環境におけるPD-1-PD-L1シグナル伝達経路
の異常調節は、それにより腫瘍が免疫応答を抑制する重要な手段として確定されている。
受容体PD-1は、典型的には、単球、T細胞、B細胞、樹状細胞、及び腫瘍-浸潤性リンパ球
を含む、様々な免疫細胞上で発現され、且つリガンドPD-L1は、数多くの様々な型の腫瘍
細胞上でアップレギュレートされることがわかっている(Ohaegbulamらの文献、Trends Mo
l Med. 21(1):24-33 (2015)を参照し、これは引用により本明細書中に組み込まれている)
。腫瘍細胞上のPD-L1と免疫細胞、特にT細胞上のPD-1の間の相互作用は、CD8+細胞傷害性
T細胞レベルにおける効果を介して、同じくTreg細胞の生成を介して、免疫抑制性腫瘍微
小環境を作り出す(Alsaabらの文献、Front Pharmacol. Aug 23(8):561 (2017)を参照し、
これは引用により本明細書中に組み込まれている)。
【0154】
理論により結びつけられることを欲するものではないが、CD70抗体分子、TIM-3抗体分
子及びPD-1阻害剤又はPD-L1阻害剤を含むか又はこれからなる組合せは、活性物質の組合
せ効果のために、悪性腫瘍、特に骨髄性悪性腫瘍の治療に関して、特に有効であると考え
られる。先に注記したように、CD70及びTIM-3は、免疫チェックポイント標的であり、従
ってこれらの標的に特異的に結合する抗体分子の、第三の免疫チェックポイント標的を阻
害する1又は複数の物質との組合せは、悪性腫瘍の治療について特に効果的であることが
できる。固形腫瘍モデルにおいて、TIM-3及びPD-1の組合せられた標的化は、特に効果が
ある治療的アプローチであることも示されている(Sakushiらの文献、J Exp Med. 207(10)
:2187-2194 (2010))。これには、例えば三重組合せ戦略のような、本明細書記載の組合せ
に添加されたPD-1及び/又はPD-L1阻害剤は、CD70-TIM3二重組合せ療法の有効性を更に増
強し得ることが続く。
【0155】
PD-1又はPD-L1を阻害することが可能な物質は、任意の好適な抗癌剤、又はPD-1、PD-L1
もしくはPD1-PD-L1シグナル伝達系に特異性を有する阻害剤であることができる。PD-1、P
D-L1又はPD1-PD-L1シグナル伝達系の活性を阻害することが可能である多くの物質は、例
えば、前掲のAlsaabらの文献(引用により本明細書中に組み込まれている)に報告されたよ
うに開発され、且つこれらの物質のいずれかは、本発明の組合せに組み込まれることがで
きる。いくつかの実施態様において、PD-1及び/又はPD-L1阻害剤は、抗体分子、例えば
モノクローナル抗体であることができる。
【0156】
本明細書記載の組合せに包含するためのPD-1阻害剤は、非限定的に、ニボルマブ;ペム
ブロリズマブ;ピジリズマブ、REGN2810;AMP-224;MEDI0680;及び、PDR001を含む群か
ら選択されることができる。本明細書記載の組合せに包含するためのPD-L1阻害剤は、非
限定的に、アテゾリズマブ;及び、アベルマブを含む群から選択されることができる。
【0157】
いくつかの実施態様において、本発明の組合せは、4種の活性物質:(i)CD70に特異的に
結合する第一の抗体分子;(ii)TIM-3に特異的に結合する第二の抗体分子;(iii)低メチル
化剤;及び、(iv)PD-1又はPD-L1のいずれかを阻害することが可能な物質:を含むか又は
これからなる。低メチル化剤は、好ましくはアザシチジンである。4種の活性物質の各々
は、各活性物質について本明細書に記載された具体的実施態様のいずれかから選択され得
ることは理解されるであろう。
【0158】
本明細書記載の組合せは、1種以上の追加の抗癌剤を更に含むことができる。いくつか
の実施態様において、1種以上の追加の抗癌剤は、追加の免疫チェックポイント標的の阻
害剤である。
【0159】
本発明の第一の態様に従う実施態様に関して、この組合せは、SIRPαシグナル伝達を阻
害する物質を追加的に含むことができる。SIRPαシグナル伝達を阻害することが可能な物
質は、本発明の第二の態様の組合せの状況において先に説明されている。任意のこれらの
物質は、本発明の第一の態様に従い説明された組合せの追加の成分に含まれてよい。SIRP
αシグナル伝達を阻害する物質が、SIRPα抗体分子融合タンパク質である実施態様に関し
て、それにSIRPαタンパク質又はそのドメインが連結される抗体分子は、好ましくは、こ
の組合せの抗体分子、すなわちCD70に結合する抗体分子又はLSC標的に結合する抗体分子
である。いくつかの実施態様において、SIRPαシグナル伝達を阻害する物質は、SIRPαタ
ンパク質の免疫グロブリンV-様ドメインであり、及びこのドメインの少なくとも1つのコ
ピーは、この組合せのCD70抗体分子に融合される。
【0160】
いくつかの実施態様において、本発明の第一及び第二の態様の両方の組合せは、骨髄性
悪性腫瘍の治療において使用するための、1種以上の抗癌剤、例えばAMLの治療において使
用するのに適した1種以上の薬剤を含む。本明細書記載の組合せに組み込まれ得る薬剤は
、ベネトクラックス;Vyxeos;Idhifa(又はエナシデニブ-IDH阻害剤);及び、Rydapt(ミ
ドスタウリン-FLT3阻害剤):を含むが、これらに限定されるものではない。いくつかの
実施態様において、本組合せは、追加的にベネトクラックスを含む。いくつかの実施態様
において、本組合せは、追加的にVyxeosを含む。
【0161】
本明細書記載の組合せのいずれかは、キットとして包装されることができ、且つ任意に
使用説明書を含む。
【0162】
(E. 治療方法)
本明細書記載の組合せ療法は、ヒト対象において悪性腫瘍を治療する方法において使用
するためである。
【0163】
本発明は、ヒト対象における悪性腫瘍の治療において使用するためのCD70に結合する抗
体分子を提供し、ここでこの抗体分子は、白血病幹細胞標的に結合する第二の抗体分子と
組合せて投与される。本発明はまた、ヒト対象における悪性腫瘍の治療において使用する
ための白血病幹細胞標的に結合する抗体分子も提供し、ここでこの抗体分子は、CD70に結
合する第二の抗体分子と組合せて投与される。本発明はまた、ヒト対象における悪性腫瘍
の治療において使用するためのCD70に結合する抗体分子も提供し、ここでこの抗体分子は
、SIRPαシグナル伝達を阻害する物質と組合せて投与される。本発明は更に、ヒト対象に
おける悪性腫瘍の治療において使用するためのSIRPαシグナル伝達を阻害する物質も提供
し、ここでこの物質は、CD70に結合する抗体分子と組合せて投与される。
【0164】
本発明は更に、ヒト対象における悪性腫瘍の治療において使用するための、本発明の第
一及び第二の態様に従う組合せを提供する。また更なる態様において、本発明は、ヒト対
象における悪性腫瘍を治療する方法を提供し、該方法は、本発明の第一及び第二の態様に
従う組合せを、対象へ投与することを含む。本発明の第一及び第二の態様の組合せに関連
して先に説明された全ての実施態様は、本明細書記載の方法に同等に適用可能である。
【0165】
用語「悪性腫瘍」は、異常な細胞が制御できない様式で増殖し、且つ周囲組織を浸潤す
る疾患を包含している。体の血液系及びリンパ系に浸入した悪性細胞は、体内の遠位部位
へ移動し、且つ二次的位置で播種することが可能である。
【0166】
いくつかの実施態様において、本明細書記載の方法は、CD70、CD27、又は両方を発現し
ている癌前駆細胞又は幹細胞の生成を含む悪性腫瘍を治療することに関する。本明細書の
別所に注記したように、アップレギュレートされたCD70発現は、腎細胞癌、転移性乳癌、
脳腫瘍、白血病、リンパ腫及び鼻咽頭癌を含む、様々な型の癌において検出される。CD70
及びCD27の共発現もまた、急性リンパ芽球性リンパ腫及びT細胞リンパ腫を含む、造血系
の悪性腫瘍において検出される。いくつかの実施態様において、本明細書記載の方法は、
CD70発現、CD27発現又は両方に関連している、前述の悪性腫瘍のいずれかの治療に関する
。
【0167】
いくつかの実施態様において、本明細書記載の方法は、それに本組合せの抗体分子が結
合する1種以上のLSC標的を発現している癌前駆細胞又は幹細胞の生成を含む悪性腫瘍の治
療に関する。例えば、TIM-3に結合する抗体分子を含む組合せは、TIM-3-発現している悪
性腫瘍を治療するために使用することができる。CD47に結合する抗体分子を含む組合せは
、CD47-発現している悪性腫瘍を治療するために使用することができる。IL1RAPに結合す
る抗体分子を含む組合せは、IL1RAP-発現している悪性腫瘍を治療するために使用するこ
とができる。
【0168】
特定の実施態様において、本明細書記載の方法は、骨髄性悪性腫瘍を治療するためであ
り、ここで骨髄性悪性腫瘍とは、造血幹細胞又は前駆細胞のクローン性疾患のいずれかを
指す。本発明の方法に従い治療される骨髄性悪性腫瘍は、新たに診断された骨髄性悪性腫
瘍又は再発性/不応性骨髄性悪性腫瘍であることができる。
【0169】
本明細書別所記載のように、CD70、TIM-3、CD47-SIRPα系及びIL1RAPは全て、骨髄性悪
性腫瘍、特に急性骨髄性白血病の重要な治療標的として確定されているという理由で、本
発明の組合せは、骨髄性悪性腫瘍の治療に、特に有効であると考えられ、これはKikushig
eらの文献(2015)前掲、Rietherらの文献(2017)前掲、Theocharidesらの文献(2012)前掲、
Ponceらの文献(2017)前掲、Agerstamらの文献(2015)前掲を参照されたい。
【0170】
いくつかの実施態様において、骨髄性悪性腫瘍は、急性骨髄性白血病(AML);骨髄異形
成症候群(MDS);骨髄増殖性腫瘍(MPN);慢性骨髄性白血病(CML);及び、慢性骨髄単球性
白血病(CMML)から選択される。好ましい実施態様において、骨髄性悪性腫瘍は、急性骨髄
性白血病(AML)である。
【0171】
骨髄性悪性腫瘍は、WHO 2008分類に従い、類別され且つ診断されることができ、この分
類に2016年に改訂されたものと組合せて採用され、特に引用により本明細書中に組み込ま
れているArberらの文献、Blood, 127(20):2391-2405 (2016)を参照されたい。
【0172】
急性骨髄性白血病(AML)は、骨髄細胞に関与している造血器新生物を指す。AMLは、低下
した分化能を持つ骨髄前駆体のクローン増殖により特徴付けられる。AML患者は、骨髄中
の芽球細胞の蓄積を示す。芽球細胞はまた、AML患者の末梢血中にも蓄積する。典型的に
は、患者が、骨髄又は末梢血中に20%以上の芽球細胞を示す場合に、AMLと診断される。
【0173】
WHO分類に従い、AMLは概して、以下の亜型を含む:再発性の遺伝子異常を伴うAML;骨
髄異形成症-関連の変化を伴うAML;治療に関連した骨髄性腫瘍;骨髄肉腫;ダウン症候群
に関連した骨髄増殖;芽球形質細胞様樹状細胞腫瘍;及び、他に分類されないAML(例えば
、急性巨核芽球性白血病、急性好塩基球性白血病)。
【0174】
AMLはまた、フレンチ-アメリカン-ブリティッシュ(FAB)分類に従い分類されることもで
き、これは亜型として以下を含む:M0(急性骨髄芽球性白血病、最未分化型);M1(急性骨
髄芽球性白血病、成熟を伴わない);M2(急性骨髄芽球性白血病、顆粒球成熟を伴う);M3(
前骨髄球性、又は急性前骨髄球性白血病(APL));M4(急性骨髄単球性白血病);M4eo(骨髄
好酸球増加症を伴う骨髄単球性);M5(急性単芽球性白血病(M5a)又は急性単球性白血病(M5
b));M6(赤白血病(M6a)及び希少純赤白血病(M6b)を含む急性赤白血病);又は、M7(急性巨
核芽球白血病)。
【0175】
本明細書において使用される「AML」は、別に特定しない限りは、WHO及び/又はFAB分
類により包含される状態のいずれかを指す。いくつかのAML亜型は、比較的予後良好と、
一部は中間程度の予後と、及び一部は予後不良と考えられる。当業者は、どの亜型がリス
クのある範疇に入るかを知っている。
【0176】
骨髄異形成症候群(MDS)は、異形成症、血球減少症並びに/又は骨髄細胞型及び/もし
くは骨髄分化の異常な変化、例えば、増大した芽球細胞浸潤により特徴付けられる。WHO
分類に従い、MDSは概して、以下の亜型に包含される:一系統の異形成症を伴うMDS(以前
は「一系統異形成症を伴う不応性血球減少症」と称され、不応性貧血、不応性好中球減少
症、及び不応性血小板減少症を含む);環状鉄芽球を伴うMDSで、これは一系統異形成症及
び多系統異形成症の亜群を含む(以前は「環状鉄芽球を伴う不応性貧血」と称される);多
系統異形成症を伴うMDS(以前は「多系統異形成症を伴う不応性血球減少症」と称される)
;芽球過剰のMDS(MDS-EB、以前は「芽球過剰の不応性貧血」と称される)であり、これは
芽球の割合を基に、更にMDS-EB-1及びMDS-EB-2へ下位分類することができる;単独del(5q
)関連MDS;並びに、分類不能MDS。
【0177】
MDSはまた、フレンチ-アメリカン-ブリティッシュ(FAB)分類に従い分類されることもで
き、これは以下の亜型を包含している:M9980/3(不応性貧血(RA));M9982/3(環状鉄芽球
を伴う不応性貧血(RARS));M9983/3(芽球過剰の不応性貧血(RAEB));M9984/3(移行期芽球
過剰の不応性貧血(RAEB-T));並びに、M9945/3(慢性骨髄単球性白血病(CMML))。
【0178】
本明細書において使用される「MDS」は、別に特定しない限りは、WHO及び/又はFAB分
類に包含された状態のいずれかを指す。全てのAML及びMDSに関して、WHOカテゴリー化が
、本明細書においては好ましい。
【0179】
骨髄増殖性腫瘍(MPN)は、MDSに類似しているが、WHO分類に従い、MPNは概して、以下の
亜型を包含している:慢性骨髄性白血病(CML);慢性好中球性白血病(CNL);真性赤血球増
加症(PV);原発性骨髄線維症(PMF);本態性血小板血症(ET);別に特定されない、慢性好
酸球性白血病;並びに、分類不能なMPN。
【0180】
慢性骨髄単球性白血病(CMML)及び非定型慢性骨髄性白血病(aCML)は、WHO分類に従いMDS
/MPN障害の範疇に収まり、その理由は、これらはMDSとMPNの間で重複する、臨床特徴、
臨床検査特徴及び形態学的特徴により、骨髄腫瘍を代表するからである。
【0181】
いくつかの実施態様において、本明細書記載の方法は、患者の芽球カウント、すなわち
芽球細胞の数のモニタリングに関与している。本明細書において使用される「芽球細胞」
又は「芽球」は、骨髄内の骨髄前駆細胞である骨髄芽球又は骨髄の芽球を指す。健常個体
において、芽球は、末梢血循環中には認められず、骨髄中には5%未満の芽球細胞が存在
する。骨髄性悪性腫瘍の、特にAML及びMDSの対象において、破壊された分化能を持つ異常
な芽球の増大した生成が存在し、並びにこれらの異常な芽球の過剰生成は、末梢血循環又
は骨髄又は両方中の、患者の芽球カウントのモニタリングにより、検出することができる
。
【0182】
骨髄又は末梢血中の芽球細胞の割合は、当該技術分野において公知の方法、例えば、対
象の骨髄生検、又は末梢血スメアから得られた細胞のフローサイトメトリー又は細胞形態
評価により評価することができる。芽球の割合は、試料中の総細胞に対して決定される。
例えば、フローサイトメトリーを使用し、総細胞数に対するCD45dim、SSClow細胞の数を
用い、芽球細胞の割合を決定することができる。更なる例として、細胞形態評価は、試験
される視野中の細胞の総数に対し、形態学的に同定された芽球の数を決定するために、使
用することができる。
【0183】
いくつかの実施態様において、骨髄中の芽球細胞の割合を、25%未満、20%未満、例え
ば10%未満にまで、減少する方法が提供される。いくつかの実施態様において、骨髄中の
芽球細胞の割合を、5%未満にまで、減少する方法が提供される。いくつかの実施態様に
おいて、骨髄中の芽球細胞の割合を、約5%~約25%に減少する方法が提供され、ここで
骨髄芽球細胞の割合はまた、本方法を実行する前(又は治療前)の骨髄芽球細胞の割合と比
べ、50%を超えて減少される。
【0184】
いくつかの実施態様において、末梢血中の芽球細胞の割合を、25%未満、20%未満、例
えば10%未満にまで、減少する方法が提供される。いくつかの実施態様において、末梢血
中の芽球細胞の割合を、5%未満にまで、減少する方法が提供される。いくつかの実施態
様において、末梢血中の芽球細胞の割合を、約5%~約25%に減少する方法が提供され、
ここで末梢血芽球細胞の割合はまた、本方法を実施する前(又は治療前)の末梢芽球細胞の
割合と比べ、50%を超えて減少される。
【0185】
芽球細胞割合の臨床決定に関して、典型的には細胞の形態(細胞形態学としても公知)評
価が好ましい。
【0186】
特定の実施態様において、本明細書記載の方法は、完全奏効を誘導する。AML治療の状
況において、完全奏効又は「完全寛解」は:骨髄芽球<5%;循環芽球及びアウエル小体
を伴う芽球の非存在;髄外疾患の非存在;ANC≧1.0×109/L(1000μL);血小板カウント≧
100×109/L(100,000μL);として定義され、これについてはDohnerらの文献、Blood, 129
(4):424-447 (2017)を参照されたい。
【0187】
本方法は、血小板回復による完全奏効、すなわち血小板カウントが>100×109/L (100,
000/μL)である反応を達成することができる。これらの方法は、好中球回復を伴う完全奏
効、すなわち好中球カウントが>1.0×109/L(1000/μL)である反応を達成することができ
る。代わりに又は加えて、これらの方法は、8週間又はそれよりも長い、10週間又はそれ
よりも長い、12週間又はそれよりも長い、赤血球細胞又は血小板又は両方の輸血依存離脱を誘導することができる。
【0188】
特定の実施態様において、本明細書記載の方法は、陰性である微小残存病変(又はMRD)
状態を誘導する。
【0189】
いくつかの実施態様において、本明細書記載の方法は、最少残存病変を伴わない完全奏
効(CRMRD-)を誘導し、これについては前掲のDohnerらの文献を参照されたい。
【0190】
本方法は、部分奏効により達成されるか、又は部分寛解を誘導することができる。AML
治療の状況において、部分奏効又は部分寛解は、骨髄芽球割合の5%~25%の減少、及び
治療前骨髄芽球の割合の少なくとも50%の減少を含み、これについては前掲のDohnerらの
文献を参照されたい。
【0191】
本明細書記載の方法は、生存を延長することができる。本明細書において使用する用語
「生存」は、全生存期間、1年生存、2年生存、5年生存、無事象生存期間、無増悪生存期
間を指す。本明細書記載の方法は、治療されるべき特定の疾患又は状態のための究極の(g
old-standard)治療と比べて、生存を延長することができる。究極の治療はまた、最良の
実践、標準ケア、標準医療ケア又は標準療法として定義されてよい。いずれか所定の疾患
に関して、例えば様々な国における、異なる臨床実践に応じた、1以上の究極の治療が存
在し得る。骨髄性悪性腫瘍に関して既に利用可能なこれらの治療は、様々であり、且つ化
学療法、放射線治療、幹細胞移植及びいくつかの標的化療法を含む。更に、米国及び欧州
の両方の臨床指針は、骨髄性悪性腫瘍、例えばAMLの標準治療を管理し、これについてはO
’Donnellらの文献、Journal of the National Comprehensive Cancer Network, 15(7):9
26-957 (2017)、及びDohnerらの文献、Blood, 129(4):424-447 (2017)を参照し、これら
は両方共引用により組み込まれている。
【0192】
本発明の方法は、骨髄性悪性腫瘍の何らかの標準治療を受けている患者に比べ、生存を
延長又は改善することができる。
【0193】
本明細書記載の方法に従い治療される患者又は対象、特にAMLを有する患者又は対象は
、新たに診断された疾患、再発した疾患又は原発性不応性疾患を有することがある。新た
に診断されたAML患者を治療するための標準アプローチは、高投与量シタラビン7日間、そ
れに続くアントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン又はイダルビシン)3日間の投与に
より特徴づけられる、「標準7+3強化化学療法」のアプローチである。強化化学療法は、
典型的には患者に化学療法が成功した後に幹細胞移植を受けさせる意図を持って、AMLの
完全寛解の誘導を目的として与えられる。
【0194】
標準強化化学療法は、著しい毒性及び副作用に関連し、このことはこの療法は、これら
の作用を忍容することができない患者には適していないことを意味する。これらの患者は
、「標準強化化学療法不適格」と称される。例えば、患者がその毒性を忍容することがで
きない1以上の併存疾患を呈するか、又はそれらの疾患を特徴付ける予後因子が、標準強
化化学療法の好ましくない転帰を示すので、患者は、標準強化化学療法に不適格であるこ
とがある。標準強化化学療法に関する個々の患者の適格基準の決定は、個々の患者の病歴
及び臨床指針(例えば、全米総合癌センターネットワーク(NCCN)ガイドライン、これは引
用により本明細書中に組み込まれている)を考慮し、臨床医により実行されるであろう。6
0歳を超えるAML患者は、治療されるAMLの細胞遺伝学的異常及び/又は分子異常を含む、
考慮されるべき他の要因により、標準強化化学療法に不適格と評価されることが多い。
【0195】
標準強化化学療法に不適格の患者は、低投与量シタラビン(LDAC)などの、強度が低下し
た化学療法を受けることができる。標準強化化学療法に不適格な患者及びそのLDACが適切
でない患者は、ヒドロキシ尿素(HU)及び輸血支援を含む、最良の支持療法(BSC)を受ける
ことができる。
【0196】
本明細書記載の方法に従い治療される患者又は対象は、「標準強化化学療法に不適格」
として分類されたものであることができる。本発明の組合せは、より少ない副作用を有す
ることが予想され得る標的化療法を含む。従って標準強化化学療法に、先に確定されたい
ずれかの理由について不適格とみなされる患者は、本発明に従う組合せにより治療するこ
とができる。
【0197】
本明細書記載の方法は、患者又は対象を骨髄移植に供するという更なる工程を含むこと
ができる。本明細書記載の方法はまた、骨髄性悪性腫瘍を有する患者又は対象に骨髄移植
を準備するために、使用することもできる。先に説明したように、本発明の方法は、骨髄
又は末梢血中の芽球細胞の絶対数又は相対数を減少するために、実行することができる。
いくつかの実施態様において、本方法は、移植前の骨髄及び/又は末梢血中の芽球細胞カ
ウントを減少するために、実行される。本方法は、患者又は対象に骨髄移植を準備するた
めに、芽球細胞カウントを5%未満まで減少するために、使用することができる。
【0198】
本明細書記載の方法は、更なる治療薬、例えば更なる抗癌剤の投与を含んでよい。いく
つかの実施態様において、本方法は、骨髄性悪性腫瘍の治療において使用するための1以
上の薬剤、例えばAML治療における使用に適した薬剤の投与を含む。そのような薬剤は、
ベネトクラックス;Vyxeos;Idhifa(又はエナシデニブ-IDH阻害剤);及び、Rydapt(ミド
スタウリン-FLT3阻害剤):を含むが、これらに限定されるものではない。
【0199】
(参考文献の組込み)
様々な刊行物が、前述の説明において及び以下の実施例を通じて引用されており、その
各々は、その全体が引用により本明細書中に組み込まれている。
【実施例0200】
(実施例)
本発明は、以下の非限定的実施例により、更に理解されるであろう。
【0201】
(実施例1)
例えば、引用により本明細書中に組み込まれているWO2010/001251に記載されたように
、TIM-3に特異的に結合する抗体を、ラマの、組換えヒトTIM-3 Fcキメラ(R&D Systems;
ヒトTIM-3 Ser22‐Arg200;2365-TM;ロットHKG081212A)の投与量80μg(1回目及び2回目
注射)並びに40μg(3~6回目注射)による免疫化により産生し、並びにスクリーニングのた
めのFabライブラリーを作製した。
【0202】
このライブラリーから選択されたFabクローンのCDR、VH及びVL配列を、以下の表2、3及
び4に示す。
【0203】
表2 TIM-3に結合するFabのVH及びVL配列
【表2】
【0204】
表3 TIM-3に結合するFabの重鎖CDR配列
【表3】
【0205】
表4 TIM-3に結合するFabの軽鎖CDR配列
【表4】
【0206】
先の表に示したFabは、Biacore分析及びELISAにより、それらのTIM-3結合に関して特徴
付けた。結果を下記表5に示す。
【0207】
表5 Biacore又はELISAにより測定したFabクローンのTIM-3への結合
【表5】
【0208】
(実施例2)
例えば引用により本明細書中に組み込まれているWO2010/001251に記載されたように、I
L1RAPに特異的に結合する抗体を、ラマの、組換えヒトIL-1RAP/IL-1 R3 Fcキメラタンパ
ク質(R&D Systems;Ser21 Glu359/C-末端HIS-タグ;カタログ番号676-CP)による免疫化に
より産生し、並びにスクリーニングのためのFabライブラリーを作製した。
【0209】
このライブラリーから選択されたFabクローンのCDR、VH及びVL配列を、以下の表6、7及
び8に示す。
【0210】
表6 IL1RAPに結合するFabのVH及びVL配列
【表6】
【0211】
表7 IL1RAPに結合するFabの重鎖CDR配列
【表7】
【0212】
表8 IL1RAPに結合するFabの重鎖CDR配列
【表8】
【0213】
(実施例3 ADCP活性により測定した抗-TIM-3抗体及び抗-CD70抗体の組合せ有効性)
抗-TIM-3抗体及び抗-CD70抗体の組合せ有効性を、AML-由来細胞株BDCMの抗体依存性細
胞貪食(ADCP)-媒介した死滅を測定することにより、評価した。PKH26-標識した細胞膜を
有するBDCM細胞を、異なる濃度のCD70-標的化抗体ARGX-110の単独、又は10μg/mlの抗-TI
M-3抗体クローン1A11及び2B10(ヒトIgG1)(実施例1参照)との組合せで処理した。貪食可
能なマクロファージを、PMA処理により、単球性THP-1細胞株から分化させた。活性化され
たマクロファージを、抗体で前処理したBDCM細胞へ添加し、癌細胞と、37℃で1時間共-イ
ンキュベーションした。洗浄後、マクロファージを、抗-CD11b-FITC抗体で染色し、取り
込まれた癌細胞を伴うマクロファージ(PKH26+/CD11b+ダブル陽性マクロファージ)の数を
推定するために、フローサイトメトリー分析を行った。
【0214】
図1に示したように、CD70及びTIM-3-発現しているBDCM細胞のARGX-110及び抗-TIM3抗体
による前処理は、マクロファージによる癌細胞の貪食の著しい増加を引き起こした。この
増加は、ARGX-110単独による細胞の処理と比較して認められた。AML細胞のADCP-媒介性死
滅における抗-TIM3抗体及び抗-CD70抗体の組合せの有効性は、投与量-依存的様式で示さ
れた。
【0215】
(実施例4 ADCP活性により測定した抗-IL1RAP抗体及び抗-CD70抗体の組合せ有効性)
抗-IL1RAP抗体及び抗-CD70抗体の組合せ有効性を、AML細胞株(MV4-11、U937及びTHP-1)
の抗体依存性細胞貪食(ADCP)-媒介した死滅を測定することにより、評価した。PKH126-標
識したAML細胞株(MV4-11、U937、THP-1)を、異なる濃度のARGX-110の単独、又は10μg/ml
もしくは1μg/mlの抗-IL1RAP抗体(マウスIgG1クローン89412;IgG2aクローン7E4G1E8 mAb
;及びヒトモノクローナルIgG1抗体-クローン1C1及び1F10、実施例2参照)との組合せで
処理した。アッセイは、先に実施例3において説明したように行った。結果を
図2に示して
いる。いかなる処置も存在しない状態で測定した貪食バックグラウンド値を、減算した。
【0216】
図2に示したように、CD70-及びIL1RAP-発現しているAML細胞株の、ARGX-110及び抗-IL1
RAP抗体による前処理は、マクロファージによる癌細胞の貪食の著しい増加を引き起こし
た。これらの増加は、癌細胞をARGX-110単独で処理した場合の状態と比較して認められた
。共-処理の組合せ作用は、投与量-依存的様式で示された。更に相乗的有効性が、MV4-11
細胞を、1又は10μg/ml ARGX-110+1C1又は1F10抗体の組合せで処理された場合に、認め
られた。
【0217】
(実施例5 ADCP活性により測定した抗-CD47抗体及び抗-CD70抗体の組合せ有効性)
抗-CD47抗体及び抗-CD70抗体の組合せ有効性を、先の実施例3及び4に説明したものと同
様の様式で、評価した。PKH126-染色したAML細胞株(MV4-11、THP-1、GDM-1、U937及びMC-
1010)を、異なる濃度のARGX-110の単独、又は10μg/mlもしくは1μg/mlの抗-CD47抗体(マ
ウスIgG1クローンB6H12及びクローンCC2C6、並びにマウスIgG2bクローンBRIC126)との組
合せで処理した。ADCPアッセイは、先に説明したように行った。
【0218】
図3Aに示したように、CD70-及びCD47-発現しているAML細胞の、ARGX-110及び抗-CD47抗
体による前処理は、いくつかのAML細胞株の場合において、マクロファージによる癌細胞
の貪食の増加を引き起こした。MC-1010細胞を用いる、ARGX-110及びブロック性B6H12抗体
(これはCD47とSIRPαの間の相互作用をブロックし、これにより貪食を促進する)による共
-処理の効果もまた、投与量-依存的様式で示された(
図3B)。
【0219】
(実施例6 CDC活性により測定した抗-TIM-3抗体及び抗-CD70抗体の組合せ有効性)
抗-TIM-3抗体及び抗-CD70抗体の組合せ有効性を、補体依存性細胞傷害(CDC)を測定する
ことにより、評価した。BDCM細胞を、異なる濃度のARGX-110の単独、又は10μg/mlの抗-T
IM-3抗体(1A11及び2B10クローン-実施例1参照)との組合せで処理した。前処理した細胞
を、10%新生児期ウサギ補体(COM)と共に、室温で1時間インキュベーションした。ヨウ化
プロピジウム(PI)を含むPBSの1容積を添加し、試料を、暗所で15分間インキュベーション
し、死滅細胞を染色した。細胞数及びヨウ化プロピジウム陽性細胞の測定を、フローサイ
トメトリー(FACS Canto II)により行った。結果を、
図4に示している。
【0220】
BDCM細胞のARGX-110及び抗-TIM3抗体による共-処理は、補体依存型の細胞死の増加を引
き起こした。ARGX-110及び抗-TIM-3抗体の組合せの相乗的作用は、ARGX-110濃度が0.37~
0.125μg/mlで認められたのに対し、ARGX-110単独では、濃度1.11μg/mlから細胞死を誘
導することができた。これらの共-処理の相乗効果は、投与量-依存的様式で示された。抗
-TIM-3抗体を、このアッセイにおいて単独で使用した場合に、これは補体依存型の溶解を
引き起こすことができなかった。
【0221】
(実施例7 CDC活性により測定した抗-IL1RAP抗体及び抗-CD70抗体の組合せ有効性)
抗-IL1RAP抗体及び抗-CD70抗体の組合せ有効性を、補体依存性細胞傷害(CDC)を測定す
ることにより、評価した。AML細胞株(MV4-11及びNOMO-1)を、異なる濃度のARGX-110の単
独、又は10μg/mlの抗-IL1RAP抗体(1C1及び1F10クローン)との組合せで処理し、CDCアッ
セイを、実施例6に説明したように行った。結果を、
図5に示している。
【0222】
ARGX-110及び抗-IL1RAP抗体による共-処理は、両方の細胞株の補体依存型の細胞死(
図5
、暗色バー)を増加した。MV4-11細胞株は、ARGX-110及び抗-IL1RAPの単独による処理に対
し、抵抗性であった。しかし、相乗的効果が、共-処理により認められ、MV4-11細胞の溶
解を投与量-依存的様式で引き起こした。ARGX-110-感受性細胞株NOMO-1は、ARGX-110及び
抗-IL1RAP抗体との共-処理後、ARGX-110単独による処理と比べ、投与量-依存的作用を示
した。NOMO-1細胞の場合、抗-IL1RAP抗体による単剤療法は、この抗体が濃度10μg/mlで
使用された場合に、限定された補体依存性細胞傷害を誘導した。
【0223】
(実施例8 CDC活性により測定した抗-CD47抗体及び抗-CD70抗体の組合せ有効性)
抗-CD47抗体及び抗-CD70抗体の組合せ有効性を、補体依存性細胞傷害(CDC)を測定する
ことにより、評価した。MV4-11及びNOMO-1細胞株を、異なる濃度のARGX-110及びCDC-可能
な抗-CD47抗体BRIC126(マウスIgG2b)の単独又はその組合せで処理した。CDCアッセイを、
先に説明したように行った。結果を、
図6に示している。
【0224】
AML細胞株のARGX-110及びBRIC126による共-処理は、両方の細胞株の補体-依存型の細胞
死を増加したのに対し、抗-CD47ブロック性マウスIgG1抗体は、補体反応を誘導すること
ができなかった(B6H12クローン)(データは示さず)。ARGX-110及びBRIC126による共-処理
の作用は、BRIC126の最適濃度0.041~0.123μg/mlで、投与量-依存的様式で認められた。
MV4-11細胞株は、ARGX-110に対し弱い反応のみであり、従って10μg/mlと高い濃度が、組
合せ作用を得るためには必要であった。ARGX-110-感受性細胞株NOMO-1において、細胞は
、ARGX-110単独の1/10の低い濃度で、補体により溶解した。更に、BRIC126の約0.1μg/ml
の添加は、補体による細胞溶解を更に強化した。比較的高い濃度でのBRIC126による単剤
療法も、補体-依存性細胞傷害性を誘導することができた。
【0225】
(実施例9 ADCC活性により測定した抗-TIM-3、抗-IL1RAP又は抗-CD47抗体と抗-CD70抗体
の組合せ有効性)
抗-TIM-3抗体、抗-IL1RAP抗体又は抗-CD47抗体のいずれかとの組合せにおける抗-CD70
抗体ARGX-110の有効性を、抗体依存性細胞傷害(ADCC)により測定した。以下の抗体組合せ
のADCC活性を調べた:
1.ARGX-110(抗-CD70)及び2B10(抗-TIM-3)
2.ARGX-110(抗-CD70)及び1F10(抗-IL1RAP)
3.ARGX-110(抗-CD70)及びCC2C6(抗-CD47)。
【0226】
試験した全ての組合せに関して、ADCCは、以下のプロトコールに従い、測定した。健常
末梢血単核細胞(PBMC)を、組換えIL-2(200IU/mL)により15時間処理した。細胞株BDCM及び
NOMO-1を、各々、CD47及びTIM-3又はIL1RAP1も発現している、CD70-陽性標的細胞として
用いた。標的細胞(3E4細胞)を、10% FCSを含有するRPMI 1640培地(96-ウェルプレート)
中、抗体の存在下で、PBMC(3E5細胞)と共-培養した。標的/エフェクター(E/T)比は、1
/1であった。ARGX-110(0~10μg/mL)の連続希釈の単独で、又は10及び1μg/mLの濃度の
抗体2B10(抗-TIM-3)、1F10(抗-IL1RAP)又はCC2C6(抗-CD47)との組合せで適用した。CC2C6
(マウスIgG1)以外の全ての抗体は、ヒトIgG1アイソタイプであった。48時間のインキュベ
ーション後、細胞を、フローサイトメトリーにより分析し、溶解率(%)を、残存する標的
細胞(CD33
+ CD3
- CD16
-)の数を基に測定した。結果を、
図7(抗-CD70+抗-TIM-3)、
図8(抗
-CD70+抗-IL1RAP)及び
図9(抗-CD70+抗-CD47)に示している。
【0227】
図7に示したように、抗-CD70及び抗-TIM-3の両抗体は、強力なADCC活性を単独で示し、
濃度1μg/mL以上で、50~70%の最大細胞溶解に達した。組合せ活性は、ARGX-110の低い
濃度(<0.1μg/ml)で認められた。
【0228】
図8に示したように、組合せたADCC活性が、抗-IL1RAP抗体1F10の1μg/mlと組合せた場
合に、ARGX-110 投与量範囲を通じて達成された。この組合せは、試験した最高ARGX-110
濃度(10μg/ml)で、最大細胞溶解70%に達した。抗-IL1RAP抗体1F10は、強力なADCC活性
を10μg/mlで単独でも示し、これは60~70%細胞溶解を生じた。
【0229】
図9に示したように、組合せたADCC活性が、抗-CD47抗体CC2C6の1又は10μg/mlと組合せ
た場合に、ARGX-110 投与量範囲を通じて達成された。この組合せは、0.1μg/mL以上のAR
GX-110濃度で、最大細胞溶解80%に達した。