(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003779
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】ΔΣ変調器
(51)【国際特許分類】
H03M 3/02 20060101AFI20240105BHJP
【FI】
H03M3/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102524
(22)【出願日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】P 2022102697
(32)【優先日】2022-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】和田 祥太郎
(72)【発明者】
【氏名】根塚 智裕
(72)【発明者】
【氏名】古田 善一
【テーマコード(参考)】
5J064
【Fターム(参考)】
5J064BA03
5J064BB14
5J064BC06
5J064BC07
5J064BC08
5J064BC09
5J064BC10
5J064BC11
5J064BC15
5J064BC16
(57)【要約】
【課題】回路全体としてオフセットの影響を極力低減できるようにしたΔΣ変調器を提供する。
【解決手段】制御回路14は、スイッチS1a、S1b、S2a、S2bにより容量結合アンプ11の入力にてチョッピングすることで変調すると共に、スイッチS3a、S3b、S4a、S4bにより容量結合アンプ11の出力にてチョッピングすることで復調し、スイッチS5a、S5b、S6a、S6bにより容量結合アンプ11の復調後の出力信号を第一積分器12に取り込ませる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプリング容量(C1a、C1b)、フィードバック容量(C3a、C3b)、オペアンプ(OP1)を備えて構成されアナログ入力信号を増幅する容量結合アンプ(11)と、
前記容量結合アンプの後段に一段目の積分器として相関二重サンプリング型の第一積分器(12)と、
前記第一積分器の後段に第二積分器(13)と、
前記第二積分器の後段に前記第二積分器の出力値を量子化する量子化器(16)と、
前記量子化器の出力をD/A変換し、前記第一積分器及び前記第二積分器にフィードバックするD/A変換器(20a、20b、220a、220b)と、
前記容量結合アンプの入力と前記容量結合アンプのサンプリング容量との間に接続されたチョッピング用の第1スイッチ(SW1、S1a、S1b、S2a、S2b)と、
前記容量結合アンプの出力と前記第一積分器の入力との間に接続されたチョッピング用の第2スイッチ(SW2、S3a、S3b、S4a、S4b)と、
前記第2スイッチと前記第一積分器の入力との間に接続された第3スイッチ(SW3、S5a、S5b、S6a、S6b)と、
制御回路(14)と、を備え、
前記制御回路は、
前記第1スイッチにより前記容量結合アンプの入力にてチョッピングすることで変調すると共に、前記第2スイッチにより前記容量結合アンプの出力にてチョッピングすることで復調し、前記第3スイッチにより前記容量結合アンプの復調後の出力信号を前記第一積分器に取り込ませるΔΣ変調器。
【請求項2】
前記制御回路は、
基準周波数(Fs)の所定位相タイミングの第1制御信号(Φ1)により前記第一積分器を駆動するとき、前記第一積分器の入力の前記第3スイッチを駆動するタイミングと同一の前記基準周波数(Fs)の所定タイミングでチョッピング動作させ、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチを、前記基準周波数の第1制御信号(Φ1)の1/2の周波数(Fs/2)にてチョッピング動作させる請求項1記載のΔΣ変調器。
【請求項3】
サンプリング容量(C1a、C1b)、フィードバック容量(C3a、C3b)、オペアンプ(OP1)を備えて構成されアナログ入力信号を増幅する容量結合アンプ(11)と、
前記容量結合アンプの後段に一段目の積分器として相関二重サンプリング型の第一積分器(12)と、
前記第一積分器の後段に第二積分器(13)と、
前記第二積分器の後段に前記第二積分器の出力を量子化する量子化器(16)と、
前記量子化器の出力をD/A変換し、前記第一積分器及び前記第二積分器にフィードバックするD/A変換器(20a、20b、220a、220b)と、
前記容量結合アンプの入力と前記容量結合アンプのサンプリング容量との間に接続されたチョッピング用の第1スイッチ(SW1、S1a、S1b、S2a、S2b)と、
前記容量結合アンプの出力と前記第一積分器の入力との間に接続されたチョッピング用の第2スイッチ(SW2a、S5a、S5b、S6a、S6b)と、
制御回路(14)と、を備え、
前記制御回路は、
前記第1スイッチにより前記容量結合アンプの入力にてチョッピングすることで変調すると共に、
前記第2スイッチにより前記容量結合アンプの出力にてチョッピングすることで復調し、かつ前記容量結合アンプの復調後の出力信号を前記第一積分器に取り込ませるΔΣ変調器。
【請求項4】
基準周波数(Fs)の所定位相タイミングの第1制御信号(Φ1)により前記第一積分器を駆動するとき、
前記第1スイッチを前記基準周波数(Fs)の1/2倍の周波数(Fs/2)にてチョッピング動作させ、前記第2スイッチを前記基準周波数の1/2倍の周波数(Fs/2)で且つ前記第1スイッチの駆動タイミングに対して位相が90°異なるタイミングにてチョッピング動作させる請求項3記載のΔΣ変調器。
【請求項5】
前記容量結合アンプに備えられる前記オペアンプ(OP1)の入力をDCバイアスするために前記オペアンプ(OP1)の入出力をショートする第4スイッチ(S20a、S20b)と、
前記第一積分器(12)に備えられる第2オペアンプ(OP2)の入出力をショートする第5スイッチ(S9a、S9b)と、を備え、
前記制御回路は、
基準周波数(Fs)の所定位相タイミングの第1制御信号(Φ1)にて前記第5スイッチ(S9a、S9b)を駆動し、
前記第1制御信号(Φ1)がオンとなるオン期間、又は、前記オン期間よりも短い所定時間内で前記第4スイッチをオンする第2制御信号(Φ0)を生成し、前記第2制御信号により前記第4スイッチを駆動する請求項1から4の何れか一項に記載のΔΣ変調器。
【請求項6】
前記制御回路は、
マスタクロック(Φ12)により同期させながら、且つ、1/2周波数に分周した第3制御信号(Φ13_1)と、
前記マスタクロック(Φ12)により同期させながら、且つ、1/2周波数に分周した前記第3制御信号との間で位相が90度異なる第4制御信号(Φ13_2)と、を生成し、
前記第3制御信号を第1所定時間だけ遅延させることで前記第1制御信号(Φ1)を生成し、
さらに前記第3制御信号を第2所定時間だけ遅延させるか、又は、前記第1制御信号を第3所定時間だけ遅延させた第5制御信号(T2)と、を生成し、
前記第2制御信号(Φ0)の立上りエッジを前記第5制御信号(T2)の立上りエッジにより規定し、前記第2制御信号(Φ0)の立下りエッジを前記第4制御信号(Φ13_2)の立下りエッジにより規定することで、前記第2制御信号(Φ0)のオン期間を生成する請求項5記載のΔΣ変調器。
【請求項7】
前記アナログ入力信号を入力する入力部、及び、前記量子化器の出力部後段、をチョッピング動作するように構成している請求項1から4の何れか一項に記載のΔΣ変調器。
【請求項8】
前記第一積分器及び前記第二積分器のフィードバック容量の前後、をチョッピング動作するように構成している請求項7記載のΔΣ変調器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ΔΣ変調器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1記載の装置によれば、容量差動回路の第1及び第2の静電容量の比に比例してアナログ信号を増幅してアナログ信号を提供する増幅器を備えており、増幅器により増幅されたアナログ信号を積分器で積分する技術を提供している。また、特許文献2には容量差動増幅回路により増幅されたアナログ差動信号に基づいてデジタル出力信号を生成する装置が例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第10158335号明細書
【特許文献2】米国特許第10135459号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
想定される従来構成の場合、容量差動増幅回路の出力にオフセット電圧が発生する。この場合の後段の第一積分器は、入力電圧の誤差に対しても感度が良い構成となるため、容量結合アンプ自身のオフセットの影響により、最終出力として所望の出力が得られない虞がある。
【0005】
具体的には、容量の電気特性により容量結合アンプの出力容量が、差動動作間で異なることから、後段の第一積分器から見ると容量結合アンプの出力インピーダンスが差動間で異なるようにみえてしまう。すると、第一積分器内のスイッチのインジェクション量が差動間で変化し、誤差として見えてしまう。
【0006】
本開示の目的は、回路全体としてオフセットの影響を極力低減できるようにしたΔΣ変調器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、アナログ入力信号をデジタル変換するA/D変換装置である。容量結合アンプは、サンプリング容量、フィードバック容量、アンプを備えて構成され前記アナログ入力信号を増幅する。相関二重サンプリング型の第一積分器は、容量結合アンプの後段に一段目の積分器として構成される。また第一積分器の後段に第二積分器を備える。第二積分器の後段に第二積分器の出力値を量子化する量子化器を備える。
【0008】
さらに量子化器の出力をD/A変換し、第一積分器及び第二積分器にフィードバックするD/A変換器を備える。チョッピング用の第1スイッチは、容量結合アンプの入力と容量結合アンプのサンプリング容量との間に接続される。チョッピング用の第2スイッチは、容量結合アンプの出力と第一積分器の入力との間に接続される。制御回路は、第1スイッチにより容量結合アンプの入力にてチョッピングすることで変調すると共に、第2スイッチにより前記容量結合アンプの出力にてチョッピングすることで復調する。
【0009】
請求項1記載の発明によれば、容量結合アンプの出力にオフセットが発生するものの、第1スイッチのチョッピングにより変調し第2スイッチのチョッピングにより復調するようにしているため、その出力信号が正負の変化を繰り返すことになるためDC値は平均値に収束することで、オフセットの影響を最終出力に現れないようにできる。これにより、第一積分器が入力電圧依存の誤差に対して強い感度を持ってしまう場合でもその影響を受けなくなるので、回路全体としてオフセットの影響を低減できる。
【0010】
また、特許文献1記載の技術によれば、入力スイッチ部の動作周波数を、容量差増幅回路の動作周波数と同一にしないと正常に動作しない。また、入力の前段にアンチエイリアスフィルタ等の抵抗を置いたとき、スイッチドキャパシタ動作による電荷吸い込みにより前段の抵抗にて電圧降下が起こり検出誤差になる。
【0011】
これに対し、請求項2記載の発明によれば、制御回路が、チョッピング用の第1スイッチ、第2スイッチを使用して、所定周波数の1/2の周波数にてチョッピング動作させることでスイッチの駆動周波数を低下させることができる。前段の抵抗に流れる電流量は低下するので、電圧降下による検出誤差を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態におけるΔΣ変調器の電気的構成図
【
図2B】第1実施形態における制御信号の形成方法例
【
図2C】第1実施形態における各部信号の変化を概略的に示すタイムチャート
【
図3】第1実施形態のΔΣ変調器を従来例と比較して示す構成ブロック図
【
図4】第1実施形態について各スイッチに与える制御信号の対応図
【
図5】第1実施形態における一動作状態を示す電気的構成図その1
【
図6】第1実施形態における一動作状態を示す電気的構成図その2
【
図7】第1実施形態における一動作状態を示す電気的構成図その3
【
図8】第1実施形態における一動作状態を示す電気的構成図その4
【
図9】第2実施形態におけるΔΣ変調器の電気的構成図
【
図10】第2実施形態における各部信号の変化を概略的に示すタイムチャート
【
図11】第2実施形態について各スイッチに与える制御信号の対応図
【
図12】第2実施形態のΔΣ変調器を従来例と比較して示す構成ブロック図
【
図13】第2実施形態における一動作状態を示す電気的構成図その1
【
図14】第2実施形態における一動作状態を示す電気的構成図その2
【
図15】第2実施形態における一動作状態を示す電気的構成図その3
【
図16】第2実施形態における一動作状態を示す電気的構成図その4
【
図17】第3実施形態におけるΔΣ変調器の電気的構成図
【
図18】第3実施形態について各スイッチに与える制御信号の対応図
【
図19】第3実施形態における各部信号の変化を概略的に示すタイムチャート
【
図20】第3実施形態において容量結合アンプの入出力スイッチのオンオフ変化に対する入出力電圧変化例
【
図21】第4実施形態におけるΔΣ変調器の電気的構成図
【
図22】第4実施形態について制御信号の変化を概略的に示すタイムチャート
【
図23】第4実施形態について示す極性変換用スイッチの等価回路図その1
【
図24】第4実施形態について示す極性変換用スイッチの等価回路図その2
【
図25】第4実施形態について示す極性変換用スイッチの等価回路図その3
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、ΔΣ変調器の幾つかの実施形態について図面を参照しながら説明する。各実施形態において実質的に同一又は類似部分には同一符号又は類似符号(例えば一及び十の位に同一数字を付すと共に百の位に他の数字)を付して必要に応じて説明を省略し、各実施形態では特徴部分を中心に説明する。また、下記の実施形態においては差動回路を用いて説明するが、対称性のある差動構成の回路構成要素に添え字a、bを付して図示しており、必要に応じて添え字a、bを省略して説明することがある。
【0014】
(第1実施形態)
第1実施形態について
図1から
図8を参照しながら説明する。
図1にΔΣ変調器15の概略構成を示す。ΔΣ変調器15は、容量結合アンプ11、第一積分器12、第二積分器13、及び制御回路14を備える。また、第二積分器13の出力段には量子化器16が構成されており、ΔΣ変調器15は、量子化器16の出力を、D/A変換器20a及び20bにより第一積分器12にフィードバックすると共に、D/A変換器220a及び220bにより第二積分器13にフィードバックする構成とされている。
【0015】
制御回路14は、マイクロコンピュータ又はロジック回路などにより構成されるもので、容量結合アンプ11、第一積分器12、第二積分器13、量子化器16、D/A変換器20a及び20b、220a及び220bの各構成に制御信号を出力する。
【0016】
差動のアナログ入力信号Vinp、Vinmは、入力端子Ina、Inbを通じて容量結合アンプ11に入力される。このときVinp-Vinm=±100mV程度の電圧が印加される。コモンモード電圧Vcmもまた各入力端子Ina、Inbに入力されることから、Vinp=+Vdiff/2+Vcm、Vinm=-Vdiff/2+Vcmの電圧が各入力端子Ina、Inbに入力される。
【0017】
容量結合アンプ11は、全差動型のオペアンプOP1を主体として構成され、抵抗R1a、R1b、及び、フィードバック容量となるキャパシタC3a、C3bの並列接続回路をオペアンプOP1の入出力間に接続して構成されている。抵抗R1a、R1bは、入力電圧を定めるために設けられる。また、入力端子Ina、InbとオペアンプOP1の反転入力端子及び非反転入力端子との間にはサンプリング容量となるキャパシタC1a、C1bがそれぞれ接続されている。
【0018】
また、入力端子InaとオペアンプOP1の反転入力端子及び非反転入力端子との間には、スイッチS1a、S2bがそれぞれ介在して接続されている。入力端子InbとオペアンプOP1の反転入力端子及び非反転入力端子との間には、スイッチS2a、S1bがそれぞれ介在して接続されている。制御回路14がスイッチS1a、S1b、S2a、S2bをオンオフ制御することでアナログ入力信号Vinp、Vinmを極性反転してオペアンプOP1に入力させることができる。スイッチS1a、S1b、S2a、S2bは、容量結合アンプ11の入力とキャパシタC3a、C3bとの間に接続されたチョッピング用の第1スイッチSW1に相当している。なおオペアンプOP1の入出力間にはスイッチを介在して構成していない。
【0019】
容量結合アンプ11の出力は第一積分器12に入力されている。言い換えると、第一積分器12の前段にアナログ入力信号Vinp、Vinmを増幅する容量結合アンプ11が接続されていることになる。またオペアンプOP1の出力と第一積分器12のキャパシタC4a、C4bの入力との間にはスイッチS3a、S3b、S4a、S4b、S5a、S5b、S6a、S6bが図示形態に接続されている。スイッチS3、S4は、容量結合アンプ11の出力と第一積分器12の入力との間に接続される第2スイッチ相当の構成を示す。スイッチS5、S6は、前述したスイッチS3、S4と第一積分器12の入力との間に接続された第3スイッチ相当の構成を示す。これらのスイッチS3、S4、S5、S6は、例えば容量結合アンプ11の出力極性について正転/反転を切り替えるスイッチを示す。
【0020】
第一積分器12は、一段目の積分器を構成しており、いわゆる相関二重サンプリング(CDS)型の積分器による。第一積分器12もまた全差動型のオペアンプOP2を主体として構成される。オペアンプOP1の出力は、前述したスイッチS3~S6と共にキャパシタC4に入力されている。
【0021】
オペアンプOP2の入出力間には、短絡切替経路及びキャパシタC5の通電経路が並列接続して構成されている。短絡切替経路にはスイッチS9がオペアンプOP2の入出力間に構成されている。キャパシタC5の通電経路には当該キャパシタC5とスイッチS10とが直列接続されており、キャパシタC5の充放電の切り替えについてスイッチS10を用いて行うことができる。
【0022】
第一積分器12の出力は第二積分器13に入力されている。第二積分器13もまた全差動型のオペアンプOP3を主体として構成される。オペアンプOP2の出力は、オペアンプOP3の入力にキャパシタC6を介在して接続されている。また、オペアンプOP2の出力とオペアンプOP3の入力との間には、スイッチS11a、S11b、S12a、S12b、S13a、S13b、S14a、S14bが図示形態に接続して構成されている。
【0023】
これらのスイッチS11~S14は、第一積分器12のキャパシタC5から第二積分器13のキャパシタC6への電荷充電時、又は、キャパシタC6の電荷放電時に切り替えられるスイッチを示す。
【0024】
オペアンプOP3の入出力の間にはキャパシタC7a、C7bがフィードバック容量として接続されている。スイッチS14a、S14bは、キャパシタC6からキャパシタC7へ充電時に切り替えられるスイッチを示す。オペアンプOP3の出力は量子化器16の入力に接続されている。また、オペアンプOP3の出力と量子化器16の入力との間にスイッチは介在されていない。
【0025】
量子化器16は、第二積分器13の出力をレベル変換しデジタル信号Doutとする。また、量子化器16のデジタル信号Doutは、D/A変換器20a、20b及び220a、220bに入力される。本実施形態のD/A変換器20a、20bは、量子化器16により出力されるデジタル信号Doutに基づいて第一積分器12にフィードバックする。D/A変換器20a、20bは、デジタル信号Doutに基づいて電位を出力する回路である。
【0026】
D/A変換器20a、20bと第一積分器12を構成するオペアンプOP2の入力との間には、スイッチS7a、S7b、及びキャパシタC2a、C2bが直列接続されており、制御回路14がスイッチS7a、S7bをオンしたときに、D/A変換器20a、20bが第一積分器12にフィードバックする。オペアンプOP2は第2オペアンプに相当する。
【0027】
またD/A変換器220a、220bは、量子化器16により出力されるデジタル信号Doutに基づいて第二積分器13にフィードバックする。D/A変換器220a、220bは、デジタル信号Doutに基づいて電位を出力する回路である。
【0028】
D/A変換器220a、220bと第二積分器13を構成するキャパシタC6a、C6bの入力との間には、スイッチS8a、S8b、及びキャパシタC22a、C22bが直列接続されており、制御回路14がスイッチS8a、S8bをオンしたときに、D/A変換器220a、220bが第二積分器13にフィードバックする。
【0029】
次に、制御回路14の電気的構成を説明すると共に制御信号の生成方法について説明する。
図2Aに示すように、制御回路14は、マスタクロック生成器21、分周器22、同期回路23、オンオフエッジ生成器24、クロック生成器25及び26を備える。マスタクロック生成器21は、例えば水晶発振器などを用いて構成されており、高精度にマスタクロックΦ12を生成し分周器22及び同期回路23に出力する。
【0030】
図2BにはマスタクロックΦ12と、各種制御信号Φ13_1、Φ13_2、Φ1、Φ1d、Φ2、Φ2d、Φ0、元信号T1~T4の関係性をタイムチャートによって示している。分周器22は、マスタクロックΦ12を入力すると2分周し、同期回路23に出力する。同期回路23は、マスタクロックΦ12と分周器22の出力とから制御信号Φ13_1、Φ13_2を生成する。同期回路23は、分周器22の出力を互いに90°移相して得られる制御信号Φ13_1、Φ13_2をADC動作周波数信号として生成し、それぞれオンオフエッジ生成器24、クロック生成器26に出力する。ここで、同期回路23は、マスタクロックΦ12により同期させながら、且つ、マスタクロックΦ12を1/2周波数に分周した制御信号Φ13_1を生成している。制御信号Φ13_1は第3制御信号に相当する。制御信号Φ13_2は第4制御信号に相当するもので、その立下りエッジは制御信号Φ0の立下りエッジを規定する信号を示す。
【0031】
オンオフエッジ生成器24は、前述した制御信号Φ1、Φ1d、Φ2、Φ2dの元信号T1、T2、T3、T4を生成するもので、制御信号Φ13_1を0°から所定時間だけ遅延させた制御信号を生成する。元信号T1、T2、T3、T4は、制御信号Φ13_1の立上りエッジを基準として徐々に所定の時間だけ遅延させることで生成される。オンオフエッジ生成器24は、制御信号Φ13_1を第2所定時間だけ遅延させて元信号T2を生成している。これに代えて、オンオフエッジ生成器24は、制御信号Φ1を第3所定時間だけ遅延させて元信号T2を生成するようにしても良い。元信号T2は第5制御信号に相当するもので、その立上りエッジは制御信号Φ0の立上りエッジを規定する信号を示す。
【0032】
クロック生成器25は、スイッチドキャパシタ用に用いられるクロック生成器であり、キャパシタC1~C7の充放電を制御するための制御信号Φ1、Φ1d、Φ2、Φ2dを生成する。制御信号Φ1は第1制御信号に相当する。オンオフエッジ生成器24が制御信号Φ13_1を遅延させることで元信号T1、T3を生成し、クロック生成器25が元信号T1、T3のエッジを用いて制御信号Φ13_1と同位相にて制御信号Φ1を生成している。このようにすることで制御信号Φ13_1を第1所定時間だけ遅延させて制御信号Φ1を生成している。
【0033】
図2Cには、前述の各スイッチに印加する制御信号Φ1、Φ2、Φ1d、Φ2dを図示しており、
図4には何れのスイッチに制御信号Φ1、Φ2、Φ1d、Φ2dを印加するかを対応して示している。またクロック生成器26は、後述実施形態で説明する容量結合アンプリセット用のクロック生成器であり制御信号Φ0を生成する。制御信号Φ0は、制御信号Φ1dの立上りエッジにて規定されており、その後のΦ13_2の立下りエッジにて立下がる信号であるが、この制御信号Φ0の使用方法は後述実施形態にて説明する。
【0034】
なお、制御信号Φ1、Φ2は相補的にオンオフする制御信号であり、制御信号Φ1d、Φ2dもまた相補的にオンオフする制御信号である。すなわち、これらの制御信号Φ1と制御信号Φ2との間はノンオーバーラップとされており、制御信号Φ1dと制御信号Φ2dとの間もノンオーバーラップとされている。また、制御信号Φ1d、Φ2dは、制御信号Φ1、Φ2に比較して僅かに遅れるように出力される制御信号である。また、制御信号Φ1din、Φ1doutは、制御信号Φ1dを二分周して生成される制御信号であり、制御信号Φ1dの立下りエッジにてオンオフが切り替わる制御信号を示している。また、制御信号Φ2din、Φ2doutは、制御信号Φ2dを二分周して生成される制御信号であり、制御信号Φ2dの立上りエッジにてオンオフが切り替わる制御信号を示している。
【0035】
図2C、
図4に示すように、制御回路14は制御信号Φ1、Φ2、Φ1d、Φ1din、Φ1dout、Φ2d、Φ2din、Φ2doutを、対象のスイッチS1a、S1b~S15a、S15bに出力することで当該スイッチS1a、S1b~S15a、S15bをオンオフ制御する。なお、スイッチS1a、S1b~S15a、S15bの詳細なオンオフ制御内容は
図5~
図8を参照。
【0036】
図3に、本実施形態の
図1に示す回路をブロック図として示している。この
図3にはスイッチドキャパシタ構成を一部省略して図示している。
【0037】
図3には、容量結合アンプ11の入力にスイッチS1、S2からなる第1スイッチSW1が接続されており、出力にはスイッチS3、S4からなる第2スイッチSW2が接続されていることを示している。この
図3においては、制御信号Φ1、Φ2、Φ1d、Φ2dの周波数を所定の基準周波数Fsとして示している。第一積分器12、第二積分器13は制御信号Φ1、Φ2、Φ1d、Φ2dにより駆動されるため、基準周波数Fsは、第一積分器12、第二積分器13の駆動周波数となる。
【0038】
スイッチS1、S2からなる第1スイッチSW1は、制御信号Φ1din、Φ2dinにより駆動されるため、オンオフを繰り返すことで、基準周波数Fsの1/2の周波数Fs/2にて容量結合アンプ11の入力容量となるキャパシタC1に対して充放電を繰り返し、容量結合アンプ11の入力にてチョッピング動作する。これにより、容量結合アンプ11の入力にてチョッピングすることでアナログ入力信号Vinp、Vinmを変調している。なお、本願で説明する「チョッピング動作」とは、入力接続又は出力接続の極性を切り替えることを広義に示すもので、例えば、後述する
図23~
図25に例示したように極性反転回路X1~X3などにより入力接続又は出力接続を切り替えることを示している。
【0039】
スイッチS3、S4からなる第2スイッチSW2は、制御信号Φ1dout、Φ2doutにより駆動される。このため、第2スイッチSW2は所定の基準周波数Fsの1/2の周波数Fs/2にてオンオフを繰り返し、容量結合アンプ11の出力にてチョッピング動作し、容量結合アンプ11の出力とスイッチS5、S6からなる第3スイッチSW3との切り分けを行っている。これにより、第2スイッチSW2により容量結合アンプ11の出力にてチョッピングすることで復調している。このように、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2が、容量結合アンプ11の前後にそれぞれ周波数Fs/2にて駆動されるように設けられており、チョッピング周波数を基準周波数Fsの1/2に抑えている。
【0040】
また、第2スイッチSW2の後段にはスイッチS5、S6からなる第3スイッチSW3、スイッチS9、S10からなる第4スイッチSW4が設けられている。第3スイッチSW3は、制御信号Φ1d、Φ2dによりオンオフ駆動されるため、基準周波数Fsにより第一積分器12の入力にてチョッピング動作し、第2スイッチSW2とキャパシタC4との切り分けを行っている。本実施形態では、第3スイッチSW3が切り替えられることで、第一積分器12は容量結合アンプ11の復調後の出力信号を入力できる。第4スイッチSW4は、制御信号Φ1、Φ2によりオンオフ駆動され基準周波数Fsにて駆動される。
【0041】
制御回路14が、基準周波数Fsの所定位相タイミングの制御信号Φ1により第一積分器12を駆動するときには、第一積分器12の入力の第3スイッチSW3、及び第一積分器12を構成する第4スイッチSW4を駆動するタイミングと同一の基準周波数Fsの所定タイミングでチョッピング動作させ、第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2を、基準周波数Fsの制御信号Φ1の1/2の周波数Fs/2にてチョッピング動作させていることになる。
【0042】
<各スイッチのオンオフ動作と信号処理の流れ説明>
以下、
図5から
図8を参照しながら信号処理の流れや動作を簡単に説明する。
図5には制御信号Φ1=ON、Φ1d=ON、Φ2=OFF、Φ2d=OFF、Φ1din=ON、Φ1dout=ON、Φ2din=OFF、Φ2dout=OFF時の結線状態を示している。
図2Cのタイミングt1、t1dにおいて、制御信号Φ1、Φ2、Φ1d、Φ2dが、Φ1=ON、Φ1d=ON、Φ2=OFF、Φ2d=OFF、Φ1din=ON、Φ1dout=ON、Φ2din=OFF、Φ2dout=OFFになると、
図5に示すように結線接続される。
【0043】
このとき容量結合アンプ11の出力と第一積分器12の入力との間はストレート接続される。アナログ入力信号Vinp、Vinmが容量結合アンプ11のキャパシタC1に入力される。すると、容量結合アンプ11が、入力信号を増幅した上で、続いて第一積分器12のサンプリング容量となるキャパシタC4にサンプルされる。また、スイッチS10がオフすることからキャパシタC5の電荷は保持されたままとなる。
【0044】
その後、
図6に示すように、タイミングt2、t2dにおいて、制御信号Φ1、Φ2、Φ1d、Φ2dが、Φ1=OFF、Φ1d=OFF、Φ2=ON、Φ2d=ON、Φ1din=OFF、Φ1dout=OFF、Φ2din=ON、Φ2dout=ONになると、
図6に示すように結線接続される。容量結合アンプ11の出力と第一積分器12の入力との間はストレート接続された状態を維持する。
【0045】
このとき、容量結合アンプ11の入力キャパシタC1の入力電圧が変化することから電圧変化分の電荷がキャパシタC3に転送されると共に容量結合アンプ11の出力端子の電圧も変化し、第一積分器12の入力電圧も変化する。第一積分器12の入力電圧が変化することでキャパシタC5の出力値が変化し、結果として前回までの出力値に今回の変化分を加算して積分出力することになる。
【0046】
他方、制御信号Φ2d=ONによりスイッチS11がオンすることから、キャパシタC5の蓄積電荷がキャパシタC6に電荷分配される。さらに、スイッチS14がオンすることから、第二積分器13は、第一積分器12の積分出力を入力してさらに積分出力し、オペアンプOP3の出力からキャパシタC7に電荷を蓄積させる。第二積分器13による積分電圧は量子化器16に入力される。量子化器16は、このオペアンプOP3による積分電圧に基づいてデジタル信号Doutを生成する。
【0047】
D/A変換器20a、20bは、デジタル信号Doutに基づいて高電位又は低電位を第一積分器12にフィードバック出力すると共に、D/A変換器220a、220bは、デジタル信号Doutに基づいて高電位又は低電位を第二積分器13にフィードバック出力する。このとき、第一積分器12は、D/A変換器20a、20bの出力を加算して積分出力すると共に、第二積分器13は、D/A変換器220a、220bの出力を加算して積分出力する。
【0048】
その後、
図2Cのタイミングt3、t3dにおいて、制御信号Φ1、Φ2、Φ1d、Φ2dが、Φ1=ON、Φ1d=ON、Φ2=OFF、Φ2d=OFF、Φ1din=OFF、Φ1dout=OFF、Φ2din=ON、Φ2dout=ONになると、
図7に示すように結線接続される。
【0049】
このとき、アナログ入力信号Vinm、Vinpが容量結合アンプ11のキャパシタC1b、C1aに入力される。すると、容量結合アンプ11が、入力信号を増幅した上で、続いて第一積分器12のサンプリング容量となるキャパシタC4にサンプルされる。また、スイッチS10がオフすることからキャパシタC5の電荷は保持されたままとなる。
【0050】
その後、
図2Cのタイミングt4、t4dにおいて、制御信号Φ1、Φ2、Φ1d、Φ2dが、Φ1=OFF、Φ1d=OFF、Φ2=ON、Φ2d=ON、Φ1din=ON、Φ1dout=ON、Φ2din=OFF、Φ2dout=OFFになると、
図8に示すように結線接続される。容量結合アンプ11の出力と第一積分器12の入力との間はクロス接続が維持される。
【0051】
このとき、容量結合アンプ11の入力キャパシタC1の入力電圧が変化することから電圧変化分の電荷がキャパシタC3に転送されると共に容量結合アンプ11の出力端子の電圧も変化し第一積分器12の入力電圧も変化する。
【0052】
第一積分器12は、前回までの出力値に今回の変化分を加算して積分出力することになる。他方、制御信号Φ2d=ONによりスイッチS11がオンすることから、オペアンプOP2の出力電圧がキャパシタC6に入力される。さらに、スイッチS14がオンすることから、第二積分器13は、第一積分器12の積分出力を入力してさらに積分出力し、オペアンプOP3の出力からキャパシタC7に電荷を蓄積させる。第二積分器13による積分電圧は量子化器16に入力される。
【0053】
前述同様に、量子化器16はデジタル信号Doutを定期的に出力することから、D/A変換器20a、20b、220a、220bはそれぞれ第一積分器12、第二積分器13にフィードバック出力できる。以降、
図5から
図8に示すステータスが順に繰り返される。
【0054】
<本実施形態の技術的意義>
このような第1実施形態に係る構成によれば、容量結合アンプ11の出力にオフセットが発生するものの、第1スイッチSW1のチョッピングにより変調し、第2スイッチSW2のチョッピングにより復調するようにしている。また第3スイッチSW3により容量結合アンプ11の復調後の出力信号を第一積分器12に取り込むようにしている。
【0055】
このため、その出力信号が正負の変化を繰り返すことになるためDC値は平均値に収束し、オフセットの影響を最終出力に現れないようにできる。これにより、第一積分器12が入力電圧依存の誤差に対して誤差を持ってしまう場合でも、その影響を受けなくなるので、回路全体としてオフセットの影響を低減できる。
【0056】
また、容量結合アンプ11の前後のスイッチSW1、SW2のチョッピング動作の周波数Fs/2を、第一積分器12、第二積分器13のチョッピング動作の基準周波数Fsよりも低下させることで、スイッチSW1、SW2の駆動周波数を低下させることができる。入力端子Ina、Inbの前段に、
図3に示したアンチエイリアシングフィルタFAを設けることがある。アンチエイリアシングフィルタFAは、抵抗RAとキャパシタCAとを含むRCローパスフィルタにより構成されている。
【0057】
このような
図3に示す構成の場合、スイッチSW1、SW2の駆動周波数を低下させることができれば、アンチエイリアシングフィルタFAを構成する抵抗RAに流れる電流量は低下するので、当該抵抗RAによる電圧降下による検出誤差を低減できる。また本実施形態によれば、制御信号φ1din、φ1doutの位相を同一とすると共に制御信号φ2din、φ2doutの位相を同一にしているため、制御信号φ1din、φ1dout、φ2din、φ2doutを作成しやすくなる。
【0058】
(第2実施形態)
第2実施形態について
図9から
図16を参照しながら説明する。第1実施形態と異なる部分について説明する。
図9に第2実施形態の回路構成例を示しているが、スイッチS3a、S3b、S4a、S4bを省きつつ結線を変更しているところが第1実施形態の回路構成、すなわち
図1と異なる部分である。
【0059】
図9の回路構成では、
図1に記載のスイッチS3aとスイッチS5aの機能をスイッチS5aにまとめると共に、スイッチS3bとスイッチS5bの機能をスイッチS5bにまとめている。また、
図1に記載のスイッチS4bとスイッチS6aの機能をスイッチS6aにまとめると共に、スイッチS4aとスイッチS6bの機能をスイッチS6bにまとめている。
【0060】
また本実施形態においては、各構成要素の結線を
図9に示すように変更すると共に、
図9に示す各スイッチの制御信号を
図10に示すように変更し、
図11に示すように各スイッチに印加することで、
図13~
図16に示すように順次結線を切替えることができる。なお、
図12には第1実施形態の
図3に対応してブロック図を示している。
【0061】
本実施形態の
図13のように回路の結線が切り替えられると、第1実施形態の
図5と同様の回路になる。本実施形態の
図14のように結線が切り替えられると、第1実施形態の
図6と同様の回路になる。本実施形態の
図15のように結線が切り替えられると、第1実施形態の
図7と同様の回路になる。本実施形態の
図16のように結線が切り替えらえると、第1実施形態の
図8と同様の回路になる。第1実施形態に示した回路と同様の配線に切り替えられるため詳細な動作説明は省略する。
【0062】
本実施形態では、
図12に示すように、スイッチS1、S2からなる第1スイッチSW1を基準周波数Fsの1/2倍の周波数Fs/2にてチョッピング動作させ、スイッチS5、S6からなる第2スイッチSW2aを基準周波数Fsの1/2倍の周波数Fs/2で且つ第1スイッチSW1の駆動タイミングに対して位相が90°異なるタイミングにてチョッピング動作させるようにしている。本実施形態においても第1実施形態と同様の作用効果を得られる。
【0063】
本実施形態の
図9記載の構成によれば、
図1記載のスイッチS3a、S5aの機能を一つのスイッチS5aにまとめることができると共に、
図1記載のスイッチS3b、S5bの機能を一つのスイッチS5bにまとめることができる。また、
図1記載のスイッチS4bとスイッチS6aの機能をスイッチS6aにまとめると共に、
図1記載のスイッチS4aとスイッチS6bの機能をスイッチS6bにまとめることができる。このため、本実施形態では、
図12に示すように、スイッチS5及びS6からなる第2スイッチSW2aが切り替えられることで、第一積分器12は容量結合アンプ11の復調後の出力信号を取り込むことができる。
【0064】
このため本実施形態は、第1実施形態に比較してスイッチS3a、S3b、S4a、S4bを削減できる。第1実施形態に示したスイッチS3a、S3b、S4a、S4bは、MOSトランジスタを使用して構成されるため当該MOSトランジスタのオン時においてオン抵抗に起因した誤差要因が発生することがある。本実施形態では、スイッチS3a、S3b、S4a、S4bを削減できるため、このMOSトランジスタのオン抵抗のばらつきの影響を極力抑制できる。
【0065】
(第3実施形態)
第3実施形態について
図17から
図21を参照しながら説明する。前述実施形態では、容量結合アンプ11を構成するオペアンプOP1の入出力にフィードバック抵抗R1a、R1bを接続してオペアンプOP1の入力DC電位を決定するように構成した。本実施形態においては、ΔΣ変調器315の容量結合アンプ311が、抵抗R1a、R1bに代えてスイッチS20a、S20bをオペアンプOP1の入出力に接続して構成している。スイッチS20a、S20bは、容量結合アンプ11に備えられるオペアンプOP1の入力をDCバイアスするためにオペアンプOP1の入出力をショートするための第5スイッチとして設けられる。
【0066】
制御回路14は、
図18に示すように、制御信号Φ0によりスイッチS20をオンオフ制御する。制御信号Φ0は、第1実施形態で説明した
図2Aに示したように、容量結合アンプリセット用のクロック生成器26により生成される。クロック生成器26は、オンオフエッジ生成器24が生成した元信号T1、T2、T3、T4及び制御信号Φ13_2を入力する。制御信号Φ0の立上りエッジは、制御信号Φ1dの立上りのエッジで規定され、オン時間が制御信号Φ1dのオン時間の50%以下に設定されている。
【0067】
クロック生成器26は、
図2Bに示したように、制御信号Φ2dの立下りエッジから立上がり、制御信号Φ13_2の立下りエッジにて立下がる制御信号Φ0を生成する。このとき、クロック生成器26は、制御信号Φ1の二倍周波数のマスタクロックΦ12の立上りエッジから制御信号Φ13_2の立下りエッジを作成した後に制御信号Φ0のオフ時のエッジを生成している。これにより、クロック生成器26は、制御信号Φ13_2の立下りエッジから制御信号Φ0の立下りエッジを作成できるため、制御信号Φ0のオン期間を短く実現することができる。
【0068】
このとき、クロック生成器26は、元信号T2のエッジにてクロック信号を立上げ、その後、制御信号Φ13_2のエッジにおいてクロック信号を立下げても良い。このようにしても制御信号Φ0のオン期間を極力短く生成できる。なお、制御信号Φ0のオフ時のエッジを、マスタクロックΦ12のオン時のエッジから作成しても良い。
【0069】
これにより、制御回路14は、制御信号Φ1がオンとなるオン期間、又は、オン期間よりも短い所定時間内でスイッチS20をオンする制御信号Φ0を生成し、制御信号Φ0によりスイッチS20を駆動する。
【0070】
図19には制御信号Φ1、Φ1d、Φ2、Φ2dから生成される制御信号Φ1din、Φ1dout、Φ2din、Φ2doutの波形例を示している。クロック生成器26は、制御信号Φ1din、Φ1doutによりスイッチS2a、S2b、S5a、S5b等がオンしている期間中に立下がる制御信号Φ0を生成でき、当該期間中にオペアンプOP1の出力を入力にフィードバックできる。
【0071】
図20に容量結合アンプ11、311の入力ノード、出力ノードの電圧変化を概略的に示している。
図20の破線が前述実施形態のように抵抗R1を用いて構成した場合の電圧変化、
図20の実線が本実施形態のようにスイッチS20を用いて構成した場合の電圧変化を示している。
【0072】
スイッチS20を用いて構成した場合には、抵抗R1を用いて構成した場合に比較して高抵抗の抵抗素子が不要になる。また、DC電流を通電する必要がなくなるため、DC電流を流していることに起因したゲイン誤差の発生を防止できる。さらに、DCバイアスの通電時間、すなわち制御信号Φ0のオン時間を短縮できるようになる。
【0073】
なお、本実施形態においては、第2実施形態のΔΣ変調器215にスイッチS20を設けたΔΣ変調器315の形態を示したが、第1実施形態のΔΣ変調器15の抵抗R1a、R1bに代えてスイッチS20a、S20bを設けて構成しても良い。
【0074】
(第4実施形態)
第4実施形態について
図21から
図25を参照しながら説明する。
図21に示すΔΣ変調器415は、入出力の前後でチョッピングするための極性反転回路X1(X1a、X1b)、X2(X2a、X2b)、X3(X3a、X3b)を備えると共に、制御端子付きの反転回路X4を備える。
【0075】
制御回路14は、極性反転信号flfを
図22に示すように変化させることにより、極性反転回路X1~X3のストレート/クロス接続を切り替えると共に反転回路X4の正転/反転出力を切り替えることで極性反転制御する。
【0076】
図21に示す極性反転回路X1(X1a、X1b)、X2(X2a、X2b)、X3(X3a、X3b)は、それぞれ
図23から
図25に示す極性反転回路X1~X3と等価な回路である。
図23に示す極性反転回路X1は、結線のストレート/クロス接続を切り替えるスイッチX1a、X1bを用いて入力端子Ina、Inbの直後に構成され、極性反転信号
flfを入力することでアナログ入力信号Vinp、Vinmの極性を切り替えることができる。これにより、アナログ入力信号Vinp、Vinmを入力する入力部をチョッピング動作するように構成している。
【0077】
図24に示す極性反転回路X2は、結線のストレート/クロス接続を切り替えるスイッチ(符号なし)を用いてキャパシタC5a、C5bをスイッチS8a、S8bとの間で直列結線接続を切り替える回路であり、極性反転信号flfを入力することで接続を切り替えることができる。これにより、第一積分器12のフィードバック容量の前後をチョッピング動作するように構成している。
【0078】
図25に示す極性反転回路X3は、結線のストレート/クロス接続を切り替えるスイッチ(符号なし)を用いてキャパシタC7a、C7bの結線接続を切り替える回路であり、極性反転信号flfを入力することで接続を切り替えることができる。これにより、第二積分器13のフィードバック容量の前後をチョッピング動作するように構成している。
【0079】
また、
図21に示す反転回路X4は、極性反転信号flfを入力することで正転/反転出力を切り替えることができる回路であり、第二積分器13の出力部をチョッピング動作するように構成している。
【0080】
制御回路14は、極性反転信号flfを用いてスイッチX1a、X1b、X2a、X2b、X3a、X3bのストレート/クロス接続を順次切り替えることで接続を切り替えることができる。また制御回路14は、極性反転信号flfを用いて反転回路X4の有効/無効を切り替えることで正転出力/反転出力を切り替えるように構成されている。
【0081】
制御回路14は、極性反転信号flfをストレート接続する指令としたときに、2^n回、例えば、4回、8回、…、128回、256回繰り返し、その後、クロス接続する指令として極性を反転してさらに2^n回繰り返す。これらが順次繰り返されることになる。
【0082】
前述したように、キャパシタC1a、C1bの充放電を繰り返すことにより容量結合アンプ11がアナログ入力信号Vinp、Vinmを増幅すると共に第一積分器12が出力電荷を
積算して出力する。この後、極性反転回路X1~X3を用いて接続を反転することで、キャパシタC1a、C1b、C5a、C5b、C7a、C7bに順方向で入力されたオフセットに基づく電荷を逆方向に吐き出すことができる。
【0083】
すると、2^n回繰り返して順次蓄積されたオフセットを、逆に2^n回繰り返すことで相殺できるようになり、前述実施形態の構成に比較してもさらにオフセットの影響を低減できる。また本実施形態によれば、量子化器16(コンパレータ)による取り込みタイミングの自由度を増すことができる。このときのセトリング時間を確保できる。
【0084】
(他の実施形態)
前述実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に示す変形又は拡張が可能である。前述した複数の実施形態の構成、機能を組み合わせても良い。前述実施形態の一部を、課題を解決できる限りにおいて省略した態様も実施形態と見做すことが可能である。また、特許請求の範囲に記載した文言によって特定される発明の本質を逸脱しない限度において考え得るあらゆる態様も実施形態と見做すことが可能である。
【0085】
<付記>
例えば、下記のような態様も本願に含まれるものである。
<態様1>
サンプリング容量(C1a、C1b)、フィードバック容量(C3a、C3b)、オペアンプ(OP1)を備えて構成されアナログ入力信号を増幅する容量結合アンプ(11)と、
前記容量結合アンプの後段に一段目の積分器として相関二重サンプリング型の第一積分器(12)と、
前記第一積分器の後段に第二積分器(13)と、
前記第二積分器の後段に前記第二積分器の出力値を量子化する量子化器(T1)と、
前記量子化器の出力をD/A変換し、前記第一積分器及び前記第二積分器にフィードバックするD/A変換器(20a、20b、220a、220b)と、
前記容量結合アンプの入力と前記容量結合アンプのサンプリング容量との間に接続されたチョッピング用の第1スイッチ(SW1、S1a、S1b、S2a、S2b)と、
前記容量結合アンプの出力と前記第一積分器の入力との間に接続されたチョッピング用の第2スイッチ(SW2、S3a、S3b、S4a、S4b)と、
前記第2スイッチと前記第一積分器の入力との間に接続された第3スイッチ(SW3、S5a、S5b、S6a、S6b)と、
制御回路(14)と、を備え、
前記制御回路は、
前記第1スイッチにより前記容量結合アンプの入力にてチョッピングすることで変調すると共に、前記第2スイッチにより前記容量結合アンプの出力にてチョッピングすることで復調し、前記第3スイッチにより前記容量結合アンプの復調後の出力信号を前記第一積分器に取り込ませるΔΣ変調器。
【0086】
<態様2>
前記制御回路は、
基準周波数(Fs)の所定位相タイミングの第1制御信号(Φ1)により前記第一積分器を駆動するとき、前記第一積分器の入力の前記第3スイッチを駆動するタイミングと同一の前記基準周波数(Fs)の所定タイミングでチョッピング動作させ、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチを、前記基準周波数の第1制御信号(Φ1)の1/2の周波数(Fs/2)にてチョッピング動作させる態様1記載のΔΣ変調器。
【0087】
<態様3>
サンプリング容量(C1a、C1b)、フィードバック容量(C3a、C3b)、オペアンプ(OP1)を備えて構成されアナログ入力信号を増幅する容量結合アンプ(11)と、
前記容量結合アンプの後段に一段目の積分器として相関二重サンプリング型の第一積分器(12)と、
前記第一積分器の後段に第二積分器(13)と、
前記第二積分器の後段に前記第二積分器の出力を量子化する量子化器(T1)と、
前記量子化器の出力をD/A変換し、前記第一積分器及び前記第二積分器にフィードバックするD/A変換器(20a、20b、220a、220b)と、
前記容量結合アンプの入力と前記容量結合アンプのサンプリング容量との間に接続されたチョッピング用の第1スイッチ(SW1、S1a、S1b、S2a、S2b)と、
前記容量結合アンプの出力と前記第一積分器の入力との間に接続されたチョッピング用の第2スイッチ(SW2a、S5a、S5b、S6a、S6b)と、
制御回路(14)と、を備え、
前記制御回路は、
前記第1スイッチにより前記容量結合アンプの入力にてチョッピングすることで変調すると共に、
前記第2スイッチにより前記容量結合アンプの出力にてチョッピングすることで復調し、かつ前記容量結合アンプの復調後の出力信号を前記第一積分器に取り込ませるΔΣ変調器。
【0088】
<態様4>
基準周波数(Fs)の所定位相タイミングの第1制御信号(Φ1)により前記第一積分器を駆動するとき、
前記第1スイッチを前記基準周波数(Fs)の1/2倍の周波数(Fs/2)にてチョッピング動作させ、前記第2スイッチを前記基準周波数の1/2倍の周波数(Fs/2)で且つ前記第1スイッチの駆動タイミングに対して位相が90°異なるタイミングにてチョッピング動作させる態様3記載のΔΣ変調器。
【0089】
<態様5>
前記容量結合アンプに備えられる前記オペアンプ(OP1)の入力をDCバイアスするために前記オペアンプ(OP1)の入出力をショートする第4スイッチ(S20)を備え、
前記制御回路は、基準周波数(Fs)の所定位相タイミングの第1制御信号(Φ1)がオンとなるオン期間、又は、前記オン期間よりも短い所定時間内で前記第4スイッチをオンする第2制御信号(Φ0)を生成し、前記第2制御信号により前記第4スイッチを駆動する態様1から4の何れか一項に記載のΔΣ変調器。
【0090】
<態様6>
前記制御回路は、
マスタクロック(Φ12)により同期させ、且つ、前記マスタクロックを1/2周波数に分周した第3制御信号(Φ13_1)と、
前記第3制御信号を一定時間遅延させた第4制御信号(Φ1d)と、を生成し、
前記第2制御信号(Φ0)の立上りエッジは、前記第4制御信号(Φ1d)の立上りのエッジで規定され、オン時間が前記第4制御信号(Φ1d)のオン時間の50%以下である、態様5記載のΔΣ変調器。
【0091】
<態様7>
前記制御回路は、前記第2制御信号のオフ時のエッジを、前記第1制御信号の二倍周波数のマスタクロック(Φ12)のオン時又はオフ時のエッジから作成することで前記第2制御信号(Φ0)のオン期間を短く実現する態様5又は6記載のΔΣ変調器。
【0092】
<態様8>
前記アナログ入力信号を入力する入力部、及び、前記量子化器の出力部後段、をチョッピング動作するように構成している態様1から7の何れか一項に記載のΔΣ変調器。
【0093】
<態様9>
前記第一積分器及び前記第二積分器のフィードバック容量の前後、をチョッピング動作するように構成している態様8記載のΔΣ変調器。
【0094】
本開示は、前述した実施形態に準拠して記述したが、本開示は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範畴や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0095】
図面中、11は容量結合アンプ、12は第一積分器、13は第二積分器、20a、20b、220a、220bはD/A変換器、T1は量子化器、を示す。