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  • 特開-免疫原性複合体の改良 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037805
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】免疫原性複合体の改良
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/385 20060101AFI20240312BHJP
   A61K 39/09 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240312BHJP
   C07K 14/34 20060101ALN20240312BHJP
【FI】
A61K39/385 ZNA
A61K39/09
A61P37/04
A61P31/04
C07K14/34
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023206041
(22)【出願日】2023-12-06
(62)【分割の表示】P 2021500060の分割
【原出願日】2019-07-01
(31)【優先権主張番号】62/693,981
(32)【優先日】2018-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519234567
【氏名又は名称】バックスサイト・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】VAXCYTE, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ジェファリー・フェアマン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ハインリクス
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ・チャン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】キャリアポリペプチドと糖抗原とを含む免疫原性複合体に関する種々の改良を提供する。
【解決手段】一実施形態において、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含む免疫原性複合体を含む医薬組成物を含有する滅菌容器(例えば、バイアル)であって、糖抗原が、キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介してキャリアポリペプチドと共有結合するものである、当該滅菌容器を提供する。この容器は、単位用量の医薬組成物を含有し得る。好ましくは、滅菌ガラス容器である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアポリペプチドと糖抗原(saccharide antigen)とを含む免疫原性複合体を含む医薬組成物を含有する滅菌容器であって、前記糖抗原が、前記キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介して前記キャリアポリペプチドと共有結合するものである、滅菌容器。
【請求項2】
キャリアポリペプチドと糖抗原とを含む免疫原性複合体を含む医薬組成物を含有する気密密閉容器であって、前記糖抗原が、前記キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介して前記キャリアポリペプチドと共有結合するものであり、気密密閉に好適な容器には、例えばバイアルが含まれ、内容物は、気密密閉の際に滅菌してあることが好ましい、気密密閉容器。
【請求項3】
例えばバイアル等の滅菌ガラス容器である、請求項1又は2に記載の容器。
【請求項4】
キャリアポリペプチドと糖抗原とを含む免疫原性複合体を含む医薬組成物を含有する送達デバイスであって、前記糖抗原が、前記キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介して前記キャリアポリペプチドと共有結合するものである、送達デバイス。
【請求項5】
シリンジである、請求項1もしくは請求項2に記載の容器、又は請求項4記載の送達デバイス。
【請求項6】
2種以上の異なる免疫原性複合体と、アルミニウム塩アジュバントとを含む医薬組成物であって、(i)各免疫原性複合体は、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含み、前記糖抗原が、前記キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介して前記キャリアポリペプチドと共有結合し;また(ii)前記アルミニウム塩アジュバントは水酸化アルミニウムアジュバント又はリン酸アルミニウムアジュバントである、医薬組成物。
【請求項7】
2種以上の異なる免疫原性複合体と、リン酸アルミニウムアジュバントとを含む医薬組成物であって、(i)各免疫原性複合体は、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含み、前記糖抗原が、前記キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介して前記キャリアポリペプチドと共有結合し、また(ii)当該組成物におけるアルミニウムイオンの濃度は、≦2.5mg/mLである、医薬組成物。
【請求項8】
2種以上の異なる免疫原性複合体を含む医薬組成物であって、(i)各免疫原性複合体は、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含み、前記糖抗原が、前記キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介して前記キャリアポリペプチドと共有結合し、また(ii)前記医薬組成物の量は、0.25から1.25mLである、医薬組成物。
【請求項9】
2種以上の異なる免疫原性複合体と防腐剤とを含む医薬組成物であって、各免疫原性複合体は、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含み、前記糖抗原が、前記キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介して前記キャリアポリペプチドと共有結合するものである、医薬組成物。
【請求項10】
2種以上の異なる免疫原性複合体を含む、防腐剤を含まない医薬組成物であって、各免疫原性複合体は、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含み、前記糖抗原が、前記キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介して前記キャリアポリペプチドと共有結合するものである、防腐剤を含まない医薬組成物。
【請求項11】
2種以上の異なる免疫原性複合体を含む医薬組成物であって、(i)各免疫原性複合体は、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含み、前記糖抗原が、前記キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介して前記キャリアポリペプチドと共有結合し、(ii)当該組成物は、重量オスモル濃度が200から400mOsm/kgである、医薬組成物。
【請求項12】
2種以上の異なる免疫原性複合体と、少なくとも1つの賦形剤とを含む医薬組成物であって、(i)各免疫原性複合体は、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含み、前記糖抗原が、前記キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介して前記キャリアポリペプチドと共有結合し、また(ii)少なくとも1つの賦形剤は、塩化ナトリウム、コハク酸、及びポリソルベート80からなる群から選択される、医薬組成物。
【請求項13】
n種の異なる免疫原性複合体を含む医薬組成物であって
(i)n種の免疫原性複合体のそれぞれは、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含み、前記糖抗原が、前記キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介して前記キャリアポリペプチドと共有結合し;
(ii)nは、3から50の整数であり、また
(iii)前記n種の免疫原性複合体におけるキャリアポリペプチドの総量は、1用量当たり3nμg以下であり;
(iv)前記n種の免疫原性複合体におけるキャリアポリペプチドの総濃度は、6nμg/ml以下であり;
(v)前記n種の免疫原性複合体における糖抗原の総量は、1用量当たり3nμg以下であり;
(vi)前記n種の免疫原性複合体における糖抗原の総濃度は、6nμg/mL以下であり;
(vii)1複合体当たりのキャリアポリペプチドの平均量は、1用量当たり1から4μgであり;
(viii)1複合体当たりのキャリアポリペプチドの平均濃度は、2から8μg/mLであり;
(ix)1複合体当たりの糖抗原の平均量は、1用量当たり1から4μgであり;
(x)1複合体当たりの糖抗原の平均濃度は、2から8μg/mLであり;
(xi)当該組成物は、非結合形態でのキャリアポリペプチドを含まず;
(xii)当該組成物は、非結合形態でのキャリアポリペプチドを含有し、前記組成物における非結合形態での当該キャリアポリペプチドの質量は、前記n種の免疫原性複合体におけるそのキャリアポリペプチドの質量のうちの<10%であり;
(xiii)前記組成物は、非結合形態での糖抗原を含まず;及び/又は
(xiv)前記組成物は、非結合形態での糖抗原のうちの少なくとも1つを含有し、前記組成物における非結合形態での当該糖抗原の総質量は、前記n種の免疫原性複合体における前記糖抗原の総質量のうちの<10%である、医薬組成物。
【請求項14】
単位用量の医薬組成物を複数調製する方法であって、(i)前記医薬組成物が、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含む免疫原性複合体を含み、前記糖抗原が、前記キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介して前記キャリアポリペプチドと共有結合し;また(ii)当該方法は、前記免疫原性複合体を含むバルク組成物を調製するステップと、複数の別個の容器に前記バルク組成物から個々の単位用量を包装するステップとを含むものである、方法。
【請求項15】
医薬組成物を調製する方法であって、前記医薬組成物が、2種以上の異なる免疫原性複合体とアルミニウム塩アジュバントとを含み、(i)当該免疫原性複合体のそれぞれは、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含み、また(ii)前記糖抗原が、前記キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介して前記キャリアポリペプチドと共有結合するものであり、そして当該方法は、(A)前記免疫原性複合体のそれぞれをあるアルミニウム塩アジュバントに別個に吸着させて、次いで個々の吸着した複合体を一緒に混合するステップ、又は(B)前記免疫原性複合体のそれぞれを、前記アルミニウム塩アジュバントに順次吸着させるステップを含むものである、方法。
【請求項16】
(i)配列番号1に対して少なくとも80%の配列同一性を有し;(ii)Arg-Argジペプチド配列を含まず、かつ、(iii)少なくとも1つのnnAA残基を含んだ、アミノ酸配列を含む、キャリアポリペプチド。
【請求項17】
(i)配列番号1に対して少なくとも80%の配列同一性を有し;かつ、(ii)以下のアミノ酸残基(配列番号1に従って番号付けした)のうちの1又は複数においてnnAAの置換を含んだアミノ酸配列を含む、キャリアポリペプチド:Asp-211;Asp-295;Asp-352;Asp-392;Asp-465;Asp-467;Asp 507;Asp 519;Asn 296;Asn 359;Asn 399;Asn 481;Asn 486;Asn 502;Asn 524;Glu 240;Glu 248;Glu 249;Glu 256;Glu 259;Glu 292;Glu 362;Gln 252;Gln 287;Lys 212;Lys 218;Lys 221;Lys 229;Lys 236;Lys 264;Lys 299;Lys 385;Lys 456;Lys 474;Lys 498;Lys 516;Lys 522;Lys 534;Arg 377;Arg 407;Arg 455;Arg 460;Arg 462;Arg 472;Arg 493;Ser 198;Ser 200;Ser 231;Ser 233;Ser 239;Ser 261;Ser 374;Ser 381;Ser 297;Ser 397;Ser 451;Ser 475;Ser 494;Ser 495;Ser 496;Ser 501;Ser 505;Thr 253;Thr 265;Thr 267;Thr 269;Thr 293;Thr 386;Thr 400;Thr 408;Thr-469;及び/又はThr 517。
【請求項18】
配列番号1のうちのArg-193が、例えばAsn等である異なるアミノ酸で置換されている、請求項16又は17に記載のキャリアポリペプチド。
【請求項19】
抗原に対して、前記キャリアポリペプチド内のnnAA残基を介して結合した、請求項16又は請求項17又は請求項18に記載の前記キャリアポリペプチドを含む、免疫原性複合体。
【請求項20】
キャリアポリペプチドと糖抗原とを含む免疫原性複合体であって、(i)前記キャリアポリペプチドは配列番号4のアミノ酸配列を含み、また(ii)前記糖抗原は、配列番号4における少なくとも1つのnnAA残基を介して前記キャリアポリペプチドと共有結合する、免疫原性複合体。
【請求項21】
請求項20記載の2種以上の異なる免疫原性複合体を含む、医薬組成物。
【請求項22】
前記キャリアポリペプチドが、4から9個のnnAA残基を含む、請求項1から21のいずれか一項に記載の、容器、デバイス、組成物、方法、ポリペプチド、又は複合体。
【請求項23】
前記キャリアポリペプチドの天然の配列におけるリシンが、少なくとも1個のnnAAで置換されている、請求項1から22のいずれか一項に記載の、容器、デバイス、組成物、方法、ポリペプチド、又は複合体。
【請求項24】
前記キャリアポリペプチドが配列番号1に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項1から23のいずれか一項に記載の、容器、デバイス、組成物、方法、ポリペプチド、又は複合体。
【請求項25】
配列番号1又は2におけるK24、K33、K37、K39、K212、K214、K227、K244、K264、K385、K522及び/もしくはK526が、少なくとも1個のnnAAで置換されている、請求項24記載の、容器、デバイス、組成物、方法、ポリペプチド、又は複合体。
【請求項26】
前記キャリアポリペプチドが配列番号4のアミノ酸配列を含む、請求項1から25のいずれか一項に記載の、容器、デバイス、組成物、方法、ポリペプチド、又は複合体。
【請求項27】
前記nnAAが、2-アミノ-3-(4-(アジドメチル)フェニル)プロパン酸である、請求項1から26のいずれか一項に記載の、容器、デバイス、組成物、方法、ポリペプチド、又は複合体。
【請求項28】
抗原が、アジド基を介してnnAAに結合するアルキン基を有する、請求項1から27のいずれか一項に記載の、容器、デバイス、組成物、方法、ポリペプチド、又は複合体。
【請求項29】
抗原が、細菌性の莢膜糖類であり、例えば、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、A群溶血性レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)、B群溶血性レンサ球菌(Streptococcus agalactiae)及びジンジバリス菌(Porphyromonas gingivalis)からなる群から選択される細菌よりの莢膜糖類である、請求項1から28のいずれか一項に記載の、容器、デバイス、組成物、方法、ポリペプチド、又は複合体。
【請求項30】
抗原が、1、2、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、9N、10A、11A、12F、13、14、15B、16、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F、24F、31及び33Fからなる群から選択される肺炎球菌(S.pneumoniae)の血清型の莢膜糖類である、請求項1から29のいずれか一項に記載の、容器、デバイス、組成物、方法、ポリペプチド、又は複合体。
【請求項31】
前記複合体における糖類のキャリアポリペプチドに対する比(w/w)は、1より大きい、請求項1から30のいずれか一項に記載の、容器、デバイス、組成物、方法、ポリペプチド、又は複合体。
【請求項32】
前記キャリアポリペプチドは、3個以上のnnAA残基を含み、また前記複合体は分子量が少なくとも500kDaである、請求項1から31のいずれか一項に記載の、容器、デバイス、組成物、方法、ポリペプチド、又は複合体。
【請求項33】
前記複合体は、分子量が900kDaから5MDaである、請求項1から32のいずれか一項に記載の、容器、デバイス、組成物、方法、ポリペプチド、又は複合体。
【請求項34】
医薬組成物が、
血清型1、2、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、9N、10A、11A、12F、13、14、15B、16、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F、24F、31及び33Fからなる群から選択される2種以上の異なる肺炎球菌の血清型よりの莢膜糖類の複合体;
血清型1、2、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、9N、10A、11A、12F、13、14、15B、16、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F、24F、31及び33Fからなる群から選択される14種以上の異なる肺炎球菌の血清型よりの莢膜糖類の複合体;
血清型1、2、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、9N、10A、11A、12F、13、14、15B、16、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F、24F、31及び33Fからなる群から選択される15種以上の異なる肺炎球菌の血清型よりの莢膜糖類の複合体;
血清型1、2、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、9N、10A、11A、12F、13、14、15B、16、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F、24F、31及び33Fからなる群から選択される20種以上の異なる肺炎球菌の血清型よりの莢膜糖類の複合体;
血清型1、2、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、9N、10A、11A、12F、13、14、15B、16、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F、24F、31及び33Fからなる群から選択される21種以上の異なる肺炎球菌の血清型よりの莢膜糖類の複合体;
血清型1、2、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、9N、10A、11A、12F、13、14、15B、16、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F、24F、31及び33Fからなる群から選択される24種以上の異なる肺炎球菌の血清型よりの莢膜糖類の複合体;
血清型1、2、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、9N、10A、11A、12F、13、14、15B、16、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F、24F、31及び33Fからなる群から選択される25種以上の異なる肺炎球菌の血清型よりの莢膜糖類の複合体;
血清群A、C、W135、X、及びYからなる群から選択される4種以上の異なる髄膜炎菌の血清群よりの莢膜糖類の複合体;又は
血清型K1、K2、K3、K4、K5及びK6からなる群から選択される2種以上の異なるジンジバリス菌(P.gingivals)の血清型よりの莢膜糖類の複合体、を含む、請求項1から15又は21から33のいずれか一項に記載の、容器、デバイス、組成物、又は方法。
【請求項35】
血清型20は、血清型20Bである、請求項30から34のいずれか一項に記載の、容器、デバイス、組成物、方法、ポリペプチド、又は複合体。
【請求項36】
血清型20は、血清型20Aである、請求項30から34のいずれか一項に記載の、容器、デバイス、組成物、方法、ポリペプチド、又は複合体。
【請求項37】
対象において、ある抗原に対する免疫防御抗体応答を引き出す方法であって、非経口投与に好適である賦形剤中の、請求項6から13もしくは請求項21から34のうちのいずれか一項に記載の医薬組成物又は請求項19から33のうちのいずれか一項に記載の免疫原性複合体を、前記対象に投与することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願の優先権は、2018年7月4日出願の米国仮特許出願シリアル番号第62/693,981号の利益であり、その内容を全体として参照により本明細書で援用する。
【0002】
共に提出される電子テキストファイルの援用
共に電子的に提出する以下のテキストファイルの内容は、その全体として参照により本明細書で援用する:配列表のコンピュータ読み取り可能なフォーマットのコピー(ファイル名:STRO_005_01WO_SeqList_ST25.txt、記録日:2019年7月1日、ファイルサイズ 約23キロバイト)
【背景技術】
【0003】
「弱い」糖抗原に対する免疫応答を、例えばジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、インフルエンザ菌(H.influenzae)タンパク質D、又はCRM197等である既知の「強い」キャリアポリペプチド抗原への結合によって増幅させることが可能である。国際公開第2018/126229号(ストロバックス社(SutroVax,Inc)、カリフォルニア州フォスターシティ)では、非天然アミノ酸(nnAA)を含むキャリアポリペプチドを用いた結合型ワクチン抗原の産生に関する、方法、組成物及び技術が開示されている。nnAAを介した直交性結合の化学により、抗原のキャリアポリペプチドへの結合が許容され、免疫化に有用である免疫原性複合体が産生される。
【0004】
こうした方法、組成物及び技術の変形ならびに改良を提供することが、本発明の目的である。以下に記載の変形及び改良は、国際公開第2018/126229号に、もしくはいずれも2018年7月4日に出願した米国仮特許出願シリアル番号第62/693,978号及び第62/693,981号に開示した方法、組成物もしくは技術のいずれかに適用する又は組み合わせることが可能である。上述の特許出願は、その全体として参照により本明細書で援用する。
【発明の概要】
【0005】
一実施形態においては、キャリアポリペプチドと糖抗原(saccharide antigen)とを含む免疫原性複合体を含む医薬組成物を含有する滅菌容器(例えば、バイアル)であって、糖抗原が、キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介してキャリアポリペプチドと共有結合するものである、当該滅菌容器を提供する。この容器は、単位用量の医薬組成物を含有し得る。好ましくは、滅菌ガラス容器である。
【0006】
別の実施形態においては、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含む免疫原性複合体を含む医薬組成物を含有する送達デバイス(例えば、シリンジ、ネブライザー、噴霧器、吸入器、皮膚パッチ等)であって、糖抗原が、キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介してキャリアポリペプチドと共有結合するものである、当該送達デバイスを提供する。この送達デバイスは、単位用量の医薬組成物を含有し得る。この送達デバイスを用いて、哺乳動物である対象に医薬組成物を投与することが可能である。
【0007】
別の実施形態においては、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含む免疫原性複合体を含む医薬組成物を含有する気密密閉容器であって、糖抗原が、キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介してキャリアポリペプチドと共有結合するものである、当該気密密閉容器を提供する。気密密閉に好適な容器には、例えばバイアルが含まれる。この内容物は、気密密閉の際に滅菌してあることが好ましい。
【0008】
別の実施形態においては、キャリアポリペプチドと糖抗原とをそれぞれが含む、2種以上の異なる免疫原性複合体を含む医薬組成物を0.25から0.75mL(例えば、0.3から0.75mL、好ましくは0.5mL)で含有するシリンジであって、糖抗原が、キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介してキャリアポリペプチドと共有結合するものである、当該シリンジを提供する。
【0009】
別の実施形態においては、2種以上の異なる免疫原性複合体と、アルミニウム塩アジュバントとを含む医薬組成物であって、(i)各免疫原性複合体は、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含み、糖抗原が、キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介してキャリアポリペプチドと共有結合し、(ii)アルミニウム塩アジュバントは、水酸化アルミニウムアジュバント又はリン酸アルミニウムアジュバントであり、<(iii)医薬組成物の量は、0.25から0.75mL(例えば、0.3から0.75mL、好ましくは0.5mL)である、当該医薬組成物を提供する。
【0010】
別の実施形態においては、2種以上の異なる免疫原性複合体と、リン酸アルミニウムアジュバントとを含む医薬組成物であって、(i)各免疫原性複合体は、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含み、糖抗原が、キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介してキャリアポリペプチドと共有結合し、また(ii)当該組成物におけるアルミニウムイオンの濃度は、<300μg/mL(例えば、100から300μg/mLの間)である、当該医薬組成物を提供する。アルミニウムイオンの濃度は、≦1.7mg/mLであることが理想的である。当該組成物内の複合体は、リン酸アルミニウムアジュバントに吸着することもできる。
【0011】
別の実施形態においては、2種以上の異なる免疫原性複合体と、リン酸アルミニウムアジュバントとを含む医薬組成物であって、(i)各免疫原性複合体は、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含み、糖抗原が、キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介してキャリアポリペプチドと共有結合し、(ii)キャリアポリペプチドは、配列番号3を含まず、また(iii)当該組成物におけるアルミニウムイオンの濃度は、<2.5mg/mLである、当該医薬組成物を提供する。アルミニウムイオンの濃度は、≦1.7mg/mLであることが理想的である。当該組成物内の複合体は、リン酸アルミニウムアジュバントに吸着することができる。
【0012】
別の実施形態においては、2種以上の異なる免疫原性複合体を含む医薬組成物であって、(i)各免疫原性複合体は、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含み、糖抗原が、キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介してキャリアポリペプチドと共有結合し、また(ii)当該医薬組成物の量は、0.25から1.25mL(例えば、0.3から0.7mL、好ましくは0.5mL)である、当該医薬組成物を提供する。この組成物は、リン酸アルミニウムアジュバントを含んでもよく、また当該組成物内の複合体は、リン酸アルミニウムアジュバントに吸着することができる。
【0013】
別の実施形態においては、2種以上の異なる免疫原性複合体と防腐剤とを含む医薬組成物であって、各免疫原性複合体は、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含み、糖抗原が、キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介してキャリアポリペプチドと共有結合するものである、当該医薬組成物を提供する。
【0014】
別の実施形態においては、2種以上の異なる免疫原性複合体を含む、防腐剤を含まない医薬組成物であって、各免疫原性複合体は、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含み、糖抗原が、キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介してキャリアポリペプチドと共有結合するものである、当該防腐剤を含まない医薬組成物を提供する。
【0015】
別の実施形態においては、2種以上の異なる免疫原性複合体を含む医薬組成物であって、(i)各免疫原性複合体は、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含み、糖抗原が、キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介してキャリアポリペプチドと共有結合し、(ii)当該組成物は、重量オスモル濃度が200から400mOsm/kgである、当該医薬組成物を提供する。
【0016】
別の実施形態においては、2種以上の異なる免疫原性複合体と、少なくとも1つの賦形剤とを含む医薬組成物であって、(i)各免疫原性複合体は、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含み、糖抗原が、キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介してキャリアポリペプチドと共有結合し、また(ii)少なくとも1つの賦形剤は、塩化ナトリウム、コハク酸、及びポリソルベート80からなる群から選択される、当該医薬組成物を提供する。当該医薬組成物はまた、アルミニウム塩アジュバントを含んでいてもよい。この組成物は、賦形剤として塩化ナトリウムとポリソルベート80との両方を含むことが可能である。
【0017】
別の実施形態においては、n種の異なる免疫原性複合体を含む医薬組成物であって、(i)n種の免疫原性複合体のそれぞれは、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含み、糖抗原が、キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介してキャリアポリペプチドと共有結合し;(ii)nは3から50の整数であり;また(iii)n種の免疫原性複合体におけるキャリアポリペプチドの総量は、医薬組成物の1用量当たり3nμg以下である、当該医薬組成物を提供する。
【0018】
別の実施形態においては、n種の異なる免疫原性複合体を含む医薬組成物であって、(i)n種の免疫原性複合体のそれぞれは、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含み、糖抗原が、キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介してキャリアポリペプチドと共有結合し;(ii)nは3から50の整数であり;また(iii)n種の免疫原性複合体におけるキャリアポリペプチドの総濃度は、医薬組成物中、6nμg/mL以下である、当該医薬組成物を提供する。
【0019】
別の実施形態においては、n種の異なる免疫原性複合体を含む医薬組成物であって、(i)n種の免疫原性複合体のそれぞれは、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含み、糖抗原が、キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介してキャリアポリペプチドと共有結合し;(ii)nは3から50の整数であり;また(iii)n種の免疫原性複合体における糖抗原の総量は、医薬組成物の1用量当たり3nμg以下である、当該医薬組成物を提供する。
【0020】
別の実施形態においては、n種の異なる免疫原性複合体を含む医薬組成物であって、(i)n種の免疫原性複合体のそれぞれは、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含み、糖抗原が、キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介してキャリアポリペプチドと共有結合し;(ii)nは3から50の整数であり;また(iii)n種の免疫原性複合体における糖抗原の総濃度は、医薬組成物中、6nμg/mL以下である、当該医薬組成物を提供する。
【0021】
別の実施形態においては、2種以上の異なる免疫原性複合体を含む医薬組成物であって、(i)各免疫原性複合体は、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含み、糖抗原が、キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介してキャリアポリペプチドと共有結合し;また(ii)1複合体当たりのキャリアポリペプチドの平均量は、医薬組成物の1用量当たり1から4μgである、当該医薬組成物を提供する。
【0022】
別の実施形態においては、2種以上の異なる免疫原性複合体を含む医薬組成物であって、(i)各免疫原性複合体は、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含み、糖抗原が、キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介してキャリアポリペプチドと共有結合し;また(ii)1複合体当たりのキャリアポリペプチドの平均濃度は、医薬組成物中、2から8μg/mLである、当該医薬組成物を提供する。
【0023】
別の実施形態においては、2種以上の異なる免疫原性複合体を含む医薬組成物であって、(i)各免疫原性複合体は、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含み、糖抗原が、キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介してキャリアポリペプチドと共有結合し;また(ii)1複合体当たりの糖抗原の平均量は、医薬組成物の1用量当たり1から4μgである、当該医薬組成物を提供する。
【0024】
別の実施形態においては、2種以上の異なる免疫原性複合体を含む医薬組成物であって、(i)各免疫原性複合体は、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含み、糖抗原が、キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介してキャリアポリペプチドと共有結合し;また(ii)1複合体当たりの糖抗原の平均濃度は、医薬組成物中、2から8μg/mLである、当該医薬組成物を提供する。
【0025】
別の実施形態においては、n種の異なる免疫原性複合体を含む医薬組成物であって、(i)n種の免疫原性複合体のそれぞれは、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含み、糖抗原が、キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介してキャリアポリペプチドと共有結合し;(ii)nは3から50の整数であり;また(iii)当該組成物は、非結合形態でのキャリアポリペプチドを含まないか、又は(iv)当該組成物は、非結合形態でのキャリアポリペプチドを含有し、当該組成物における非結合形態でのキャリアポリペプチドの質量は、n種の免疫原性複合体におけるそのキャリアポリペプチドの質量のうちの<10%であるかのいずれかである、当該医薬組成物を提供する。
【0026】
別の実施形態においては、n種の異なる免疫原性複合体を含む医薬組成物であって、(i)n種の免疫原性複合体のそれぞれは、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含み、糖抗原が、キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介してキャリアポリペプチドと共有結合し;(ii)nは3から50の整数であり;また(iii)当該組成物は、非結合形態での糖抗原を含まないか、又は(iv)当該組成物は、非結合形態での糖抗原の少なくとも1つを含有し、当該組成物における非結合形態での糖抗原の総質量は、n種の免疫原性複合体における糖抗原の総質量のうちの<40%(例えば、≦30%、≦20%、又は≦10%)であるかのいずれかである、当該医薬組成物を提供する。
【0027】
別の実施形態においては、14種以上の異なる免疫原性複合体を含む医薬組成物であって、(i)各免疫原性複合体は、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含み、糖抗原が、キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介してキャリアポリペプチドと共有結合し;また(ii)1用量当たりのキャリアポリペプチドの総量は、<40μgである、当該医薬組成物を提供する。
【0028】
別の実施形態においては、14種以上の異なる免疫原性複合体を含む医薬組成物であって、(i)各免疫原性複合体は、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含み、糖抗原が、キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介してキャリアポリペプチドと共有結合し;また(ii)当たりのキャリアポリペプチドの濃度は、≦80μg/mLである、当該医薬組成物を提供する。
【0029】
別の実施形態においては、単位用量の医薬組成物を複数調製する方法であって、(i)当該医薬組成物は、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含む免疫原性複合体を含み、糖抗原が、キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介してキャリアポリペプチドと共有結合し;また(ii)当該方法は、免疫原性複合体を含むバルク組成物を調製するステップと、複数の別個の容器に当該バルク組成物から個々の単位用量を包装するステップとを含む、当該方法を提供する。この方法は、無菌で行うことが理想的である。個々の容器は、各単位用量を個々の容器の中に包装した後で、封止することが可能である。個々の容器は、シリンジであることが理想的である。
【0030】
別の実施形態においては、2種以上の異なる免疫原性複合体を含む医薬組成物であって、(i)各免疫原性複合体は、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含み、糖抗原が、キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介してキャリアポリペプチドと共有結合し;(ii)当該組成物は凍結乾燥される、当該医薬組成物を提供する。
【0031】
別の実施形態においては、医薬組成物を調製する方法であって、当該医薬組成物は、2種以上の異なる免疫原性複合体とアルミニウム塩アジュバントとを含み、(i)免疫原性複合体のそれぞれは、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含み、また(ii)糖抗原が、キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介してキャリアポリペプチドと共有結合するものである、当該方法を提供し、そして当該方法は、(A)免疫原性複合体のそれぞれをあるアルミニウム塩アジュバントに別個に吸着させて、次いで個々の吸着した複合体を一緒に混合するステップ、(B)免疫原性複合体のそれぞれを、アルミニウム塩アジュバントに順次吸着させるステップ、又は(C)免疫原性複合体のうちの2種以上(例えば、それらのうちの全て)の混合物を調製して、この混合物をアルミニウム塩アジュバントと組み合わせるステップ、のうちの1つを含む。このアジュバントは、リン酸アルミニウムアジュバントであり得る。
【0032】
別の実施形態においては、改変されたCRM197のキャリアポリペプチドを提供するものであって、当該キャリアポリペプチドは、(i)配列番号1に対して少なくとも80%の配列同一性を有し;(ii)Arg-Argジペプチド配列を含まず、かつ、(iii)少なくとも1つのnnAA残基を含んだ、アミノ酸配列を含む。すなわち、例えば配列番号1のうちのArg-192及び/又はArg-193が、欠失し得るか又は異なるアミノ酸で置換され得る。nnAA残基は、配列番号1におけるアミノ酸残基の置換により、及び/又は挿入により、導入され得る。改変されたCRM197のキャリアポリぺプチドを用いて、その中のnnAA残基を介して免疫原性複合体(例えば、糖抗原の)を調製することができる。
【0033】
別の実施形態においては、改変されたCRM197のキャリアポリペプチドを提供するものであって、当該キャリアポリペプチドは、(i)配列番号1に対して少なくとも80%の配列同一性を有し;かつ、(ii)以下のアミノ酸残基(配列番号1に従って番号付けした)のうちの1又は複数においてnnAAの置換を含んだアミノ酸配列を含む:Asp-211;Asp-295;Asp-352;Asp-392;Asp-465;Asp-467;Asp-507;Asp-519;Asn-296;Asn-359;Asn-399;Asn-481;Asn-486;Asn-502;Asn-524;Glu-240;Glu-248;Glu-249;Glu-256;Glu-259;Glu-292;Glu-362;Gln-252;Gln-287;Lys-212;Lys-218;Lys-221;Lys-229;Lys-236;Lys-264;Lys-299;Lys-385;Lys-456;Lys-474;Lys-498;Lys-516;Lys-522;Lys-534;Arg-377;Arg-407;Arg-455;Arg-460;Arg-462;Arg-472;Arg-493;Ser-198;Ser-200;Ser-231;Ser-233;Ser-239;Ser-261;Ser-374;Ser-381;Ser-297;Ser-397;Ser-451;Ser-475;Ser-494;Ser-495;Ser-496;Ser-501;Ser-505;Thr-253;Thr-265;Thr-267;Thr-269;Thr-293;Thr-386;Thr-400;Thr-408;Thr-469;及び/又はThr-517。改変されたCRM197のキャリアポリぺプチドを用いて、その中のnnAA残基を介して免疫原性複合体(例えば、糖抗原の)を調製することができる。
【0034】
別の実施形態においては、改変されたCRM197のキャリアポリペプチドを提供するものであって、当該キャリアポリペプチドは、(i)配列番号1に対して少なくとも80%の配列同一性を有し;(ii)Arg-Argジペプチド配列を含まず、かつ、(iii)以下のアミノ酸残基(配列番号1に従って番号付けした)のうちの1又は複数においてnnAAの置換を含んだアミノ酸配列を含む:Asp-211;Asp-295;Asp-352;Asp-392;Asp-465;Asp-467;Asp-507;Asp-519;Asn-296;Asn-359;Asn-399;Asn-481;Asn-486;Asn-502;Asn-524;Glu-240;Glu-248;Glu-249;Glu-256;Glu-259;Glu-292;Glu-362;Gln-252;Gln-287;Lys-212;Lys-218;Lys-221;Lys-229;Lys-236;Lys-264;Lys-299;Lys-385;Lys-456;Lys-474;Lys-498;Lys-516;Lys-522;Lys-534;Arg-377;Arg-407;Arg-455;Arg-460;Arg-462;Arg-472;Arg-493;Ser-198;Ser-200;Ser-231;Ser-233;Ser-239;Ser-261;Ser-374;Ser-381;Ser-297;Ser-397;Ser-451;Ser-475;Ser-494;Ser-495;Ser-496;Ser-501;Ser-505;Thr-253;Thr-265;Thr-267;Thr-269;Thr-293;Thr-386;Thr-400;Thr-408;Thr-469;及び/又はThr-517。改変されたCRM197のキャリアポリぺプチドを用いて、その中のnnAA残基を介して免疫原性複合体(例えば、糖抗原の)を調製することができる。
【0035】
別の実施形態においては、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含む免疫原性複合体であって、(i)キャリアポリペプチドは配列番号4のアミノ酸配列を含み;また(ii)糖抗原は、配列番号4における少なくとも1つのnnAA残基を介してキャリアポリペプチドと共有結合する、当該免疫原性複合体を提供する。キャリアポリペプチドと糖抗原とをそれぞれが含む、2種以上の異なる免疫原性複合体を含む医薬組成物であって、(i)各複合体におけるキャリアポリペプチドは配列番号4のアミノ酸配列を含み、また(ii)各複合体における糖抗原は配列番号4における少なくとも1つのnnAA残基を介してキャリアポリペプチドと共有結合する、当該医薬組成物もまた提供する。
【0036】
別の実施形態においては、キャリアポリペプチドと肺炎球菌の糖抗原とをそれぞれが含む2種以上の異なる免疫原性複合体を含む医薬組成物を含有するシリンジであって、非シリコン処理のシリンジである、当該シリンジを提供する。非シリコン処理のシリンジ中の医薬組成物は、13種以上の異なる肺炎球菌複合体を有することが理想的であり、またキャリアポリペプチドは、nnAAを含んでもよいが、代わりに例えばCRM197であってもよい。非シリコン処理のシリンジのさらなる詳細は、以下でもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、実施例に記載するような、多糖体/ミョウバン(alum)製剤及びプレベナー13(Prevnar-13(商標))に対する、本発明の32価ワクチンにおける、図示する32種の血清型のそれぞれに関する幾何平均抗体価(geometric mean titer)である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
結合抗原の産生に関する方法、組成物及び技術の種々の詳細については、国際特許出願の国際公開第2018/126229号に開示されており、その完全な内容を、参照により本明細書で援用する。
【0039】
免疫原性複合体
この発明は、概して、免疫原性複合体に関することである。これら複合体は、抗原と共有結合するキャリアポリペプチドを含む。この結合は、T細胞非依存性の免疫原(例えば、糖類)をT細胞依存性免疫原に変換して、それによって、引き出される免疫応答を増強させる(特に、小児において)ことが可能である。本明細書で用いる複合体は、抗原とキャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸(「nnAA」)残基との間で形成される共有結合を含む。これらnnAA残基は、関心の抗原との反応を促す官能基を提供することが可能である。
【0040】
典型的には、1つのキャリアポリペプチドは、多様な抗原分子と結合することとなる。この抗原は、あるキャリアポリペプチドと結合する、1分子につき1つの結合基(例えば、糖類の還元末端)を有することが可能であるか、又は、複数の結合基(例えば、複数のアルデヒド基又はシアン酸エステル基)を有することが可能である。抗原分子が複数の結合基を有する場合、このことが、概して、抗原を介した複数のキャリアポリペプチド間での結合を含む、高分子量の架橋複合体又は格子複合体の形成につながる。本明細書においては架橋複合体が好ましく(特に、肺炎球菌に関して)、それゆえに、複数の結合基を伴う抗原もまた好ましい。
【0041】
共有結合は、抗原とキャリアポリペプチド内のnnAA残基との間で形成される。抗原は、キャリアポリペプチド内のリシン残基と結合しないことが好ましく、抗原は、キャリアポリペプチド内の天然アミノ酸残基と結合しないことがより好ましい。
【0042】
有用なキャリアポリペプチドはT細胞エピトープを含有する。種々のこうしたキャリアポリペプチドが当技術分野において公知であり、また承認されたワクチンのうち、ジフテリアトキソイド(ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)からの化学的に処理された毒素;「Dt」)、破傷風トキソイド(破傷風菌(Clostridium tetani)からの化学的に処理されたテタノスパスミン毒素;「Tt」)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)からのタンパク質D(「PD」又は「HiD」)、血清型B株髄膜炎菌の外膜蛋白複合体(「OMPC」)、及びCRM197変異体ジフテリア菌(C.diphtheriae)毒素を用いることが知られている。
【0043】
本発明のキャリアの基礎となる好ましいキャリアポリペプチドは、CRM197である。CRM197は、当技術分野で周知であり(例えば、Broker et al.2011 Biologicals 39:195-204を参照)、以下のアミノ酸配列(配列番号1)を有するものであり、ここで下線の残基(Glu-52)が天然のジフテリア毒素とは異なり、それによってGly→Gluの置換が、当該タンパク質における毒性の酵素活性の喪失につながる:
GADDVVDSSKSFVMENFSSYHGTKPGYVDSIQKGIQKPKSGTQGNYDDDWKFYSTDNKYDAAGYSVDNENPLSGKAGGVVKVTYPGLTKVLALKVDNAETIKKELGLSLTEPLMEQVGTEEFIKRFGDGASRVVLSLPFAEGSSSVEYINNWEQAKALSVELEINFETRGKRGQDAMYEYMAQACAGNRVRRSVGSSLSCINLDWDVIRDKTKTKIESLKEHGPIKNKMSESPNKTVSEEKAKQYLEEFHQTALEHPELSELKTVTGTNPVFAGANYAAWAVNVAQVIDSETADNLEKTTAALSILPGIGSVMGIADGAVHHNTEEIVAQSIALSSLMVAQAIPLVGELVDIGFAAYNFVESIINLFQVVHNSYNRPAYSPGHKTQPFLHDGYAVSWNTVEDSIIRTGFQGESGHDIKITAENTPLPIAGVLLPTIPGKLDVNKSKTHISVNGRKIRMRCRAIDGDVTFCRPKSPVYVGNGVHANLHVAFHRSSSEKIHSNEISSDSIGVLGYQKTVDHTKVNSKLSLFFEIKS。
【0044】
本発明は、天然の(native)CRM197を使用しない。配列番号1を含むCRM197を使用する代わりに、改変されたアミノ酸配列を使用するものであり、これは少なくとも1つのnnAAを含有する。これら改変されたCRM197のキャリアポリペプチドは、以下により詳細に記載する。
【0045】
CRM197の他に、ジフテリア毒素の他の解毒された変異体形態を使用することが可能である。例えば、無毒性のK51E/E148K二重変異体をまた、複合体におけるキャリアポリペプチドとして用いて(Pecetta et al.2016 Vaccine 34:1405-11)、そしてnnAA残基を、CRM197における場合と同様の方法で、この二重変異体の配列に組み込むことが可能である。
【0046】
関心の別のキャリアポリペプチドは、インフルエンザ菌(H.influenzae)よりのPDであり、これは天然に、以下のアミノ酸配列(配列番号5)を有する:
CSSHSSNMANTQMKSDKIIIAHRGASGYLPEHTLESKALAFAQQADYLEQDLAMTKDGRLVVIHDHFLDGLTDVAKKFPHRHRKDGRYYVIDFTLKEIQSLEMTENFETKDGKQAQVYPNRFPLWKSHFRIHTFEDEIEFIQGLEKSTGKKVGIYPEIKAPWFHHQNGKDIAAETLKVLKKYGYDKKTDMVYLQTFDFNELKRIKTELLPQMGMDLKLVQLIAYTDWKETQEKDPKGYWVNYNYDWMFKPGAMAEVVKYADGVGPGWYMLVNKEESKPDNIVYTPLVKELAQYNVEVHPYTVRKDALPEFFTDVNQMYDALLNKSGATGVFTDFPDTGVEFLKGIK。
【0047】
天然のPDを使用するのではなく、改変されたアミノ酸配列を使用するが、これは少なくとも1つのnnAAを含有する。例えば、配列番号5内の1又は複数のLys残基を、nnAAで置換することが可能である。配列番号5内には、36個のLys残基があるので、いくつかをnnAAで置換して、次いで結合のために使用することが可能である。PDに関するT細胞エピトープの予測及び認識は、Hua et al.(2016)Clin Vaccine Immunol 23:155-61により報告されている。
【0048】
より概略的には、T細胞エピトープを含むあらゆるポリペプチドを、キャリアポリペプチドとして使用することが可能である。T細胞エピトープは、MHCクラスIIに結合して、CD4+ T細胞の表面上のT細胞受容体と相互作用して、それによって、それに結合した抗原又はハプテンに対する抗体応答を増強することが可能である(例えば、Costantino et al.2011,Expert Opin Drug Discov 6:1045-66を参照)。Micoli et al.(2018)Molecules 23,1451では、種々のキャリアポリペプチドとそれらの選択基準とについて概説している。Tontini et al.(2016)Vaccine 34:4235-42では、28種のキャリアポリペプチドの前臨床試験について議論されており、これには糖抗原に対する抗体を誘導するそれらの能力に関する試験が含まれる。種々のパソゲン由来抗原からの多様な、広い反応性(すなわち、大部分のヒトMHCクラスII分子の文脈における免疫原性)をもつヒトCD4+ T細胞エピトープを含有するポリエピトープキャリアポリペプチドが設計されてきたが、例えば、Falugi et al.(2001)Eur J Immunol 31:3816-24、Baraldo et al.(2004)Infect Immun 72:4884-7、ならびに米国特許第6,855,321号及び第7,867,498号に開示される、N19及び他のポリペプチドである。これらポリペピトープ(polypepitope)キャリアを設計する能力により、当業者の、多様な源から好適なT細胞エピトープを特定して、またそれらを用いて有効なキャリアポリペプチドを設計する能力が示される。米国特許出願第2016-0101187号もまた参照されたい。公知のキャリア(例えば、Tt、PD、CRM197)内に存在するT細胞エピトープを使用可能である。例えば、Tt、Dt、緑膿菌(P.aeruginosa)外毒素、C.ディフィシル(C.difficile)A及びBの毒素等、種々の解毒された細菌性毒素が、キャリアとして良好に使用されてきた。多くの様々なキャリアポリペプチドが、肺炎球菌糖類(pneumococcal saccharide)に関して使用されてきたが、例えばプレベナー(Prevnar(商標))におけるCRM197、シンフロリックス(Synflorix(商標))におけるPD、Tt及びDt、ならびにVelasco et al.(1995)Infect Immun 63:961-8における種々のペプチドがある。この発明は、少なくとも1つのnnAAを含むように改変された、これら多数のキャリアポリペプチドのいずれかを使用して、関心の抗原の免疫原性を増強することが可能である。
【0049】
本発明で用いようとする、nnAAを含有するキャリアポリペプチドは、概して、国際公開第2018/126229号のセクション6(“Carrier Protein Production Methods(キャリアタンパク質の産生方法)”)に開示の技術を用いて調製可能である。好ましいキャリアは、当該キャリアの少なくとも1つのT細胞エピトープの他に、nnAAを含有する。あるキャリアに関してT細胞エピトープ領域がわかっていなければ、当業者は標準技術を用いて当該エピトープを特定することが可能であるが、例えばReece et al.(1993)IJ Immunol 151:6175-84、Beissbarth et al.(2005)Bioinformatics 21 Suppl 1:i29-37、Maciel Jr et al.(2008)Virol 378:105-17、Fridman et al.(2012)Oncoimmunol 1:1258-70等を参照されたい(経験的アプローチ及び/又は予測的アプローチを含む)。キャリアポリペプチドの配列の任意の特定の改変は、例えば本明細書における糖類等である、結合抗原に対する所望のT細胞応答を除去しないことも確認することが可能である。好ましい群のキャリアは、T細胞エピトープ内に、nnAAの挿入又は置換を含めていずれの改変も含有しない。特に好ましいキャリアは、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5又は少なくとも6個のnnAAを含有する。特に好ましいキャリアはまた、最大で10、9、8、7又は6個のnnAAを有し得る。キャリアポリペプチド内のnnAAの特に好ましい範囲は、2~10個、2~9個、2~8個、2~7個、2~6個、3~10個、3~9個、3~8個、3~7個、3~6個、4~10個、4~9個、4~8個、4~7個、及び4~6個のnnAAである。
【0050】
本明細書で使用される免疫原性複合体内に、種々の抗原が含まれ得る。典型的には、抗原は、糖類である。「糖類(saccharide)」の語には、50以上の繰り返し単位を有する多糖体と、50より少ない繰り返し単位を有するオリゴ糖とが含まれる。典型的には、多糖体は、約50、55、60、65、70、75、80、85、90又は95の繰り返し単位から約2,000(これより多いこともある)の繰り返し単位であり、また任意に約100、150、200、250、300、350、400、500、600、700、800、900又は1000の繰り返し単位から約1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800又は1900の繰り返し単位である。オリゴ糖は、典型的には、約6、7、8、9又は10の繰り返し単位から約15、20、25、30又は35から約40又は45の繰り返し単位である。
【0051】
免疫原性複合体に組み込まれる有用な糖類には、細菌中に存在するものが含まれる。これらは、非莢膜の糖類(エキソポリサッカライド等であり、例えば黄色ブドウ状球菌(S.aureus)エキソポリサッカライド)であり得るが、好ましくは細菌性の莢膜糖類である。
【0052】
細菌性莢膜糖類は、グラム陽性菌又はグラム陰性菌の莢膜に存在する高分子量の糖類であり、またそれらは、ワクチン抗原として使用することが可能である。こうした莢膜糖類は、概して、透析濾過(diafiltration)、タンパク質除去、エタノール沈殿、核酸除去、及び凍結乾燥を伴う処理を経て、対応する細菌の全細胞可溶化物又は培養上清から調製される。本発明で用いる細菌性糖類は、細菌中に存在するようにインタクトであり得るか、又は、例えば細菌から精製した糖類の加水分解によって得られるものである、インタクトな糖類から得た断片であり得る。
【0053】
特に関心の糖抗原は、以下を含むが、これに限定されない:
肺炎球菌(S.pneumoniae)の莢膜糖類:本発明を実施するための抗原として有用である肺炎球菌の莢膜糖類のさらなる詳細は、以下で与える。
A群溶血性レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)の糖類:この抗原は、A群溶血性レンサ球菌(S.pyogenes)よりの糖類であり得る。一実施形態においては、当該抗原はA群溶血性レンサ球菌(S.pyogenes)の莢膜糖類であり、これは高分子量のポリマーであるヒアルロン酸からなるものであり、その繰り返し単位は以下の構造を有し:
[→4)-β-D-GlcUAp-(1→3)-β-D-GlcpNAc-(→]
これはA群溶血性レンサ球菌(S.pyogenes)の血清型間で不変であるように見える。別の実施形態においては、抗原は、例えばA群レンサ球菌細胞壁糖類(group-A-strep cell wall saccharide)等であるA群溶血性レンサ球菌(S.pyogenes)よりの非莢膜糖類であり、これはα-L-(1→3)結合及びα-L-(1→2)結合を交互にさせることによって結合したポリ-L-ラムノピラノシル単位の骨格を含み、これには、N-アセチル-β-D-グルコサミン残基が、ラムノース骨格の3位に結合している。
B群溶血性レンサ球菌(Streptococcus agalactiae)の莢膜糖類:抗原は、S.アガラクティエ(S.agalactiae)(B群レンサ球菌又はGBS)よりの莢膜糖類であり得る。異なる莢膜糖類の繰り返し単位(Ia、Ib、II-IX)を伴う少なくとも10種のGBS血清型があるが、通常、数種の血清型のみが、疾患の原因となる。これらには、血清型Ia、Ib、II、III及びVが含まれ、これらの血清型よりの莢膜糖類の複合体を調製可能である。
インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)の莢膜糖類:抗原は、インフルエンザ菌(H.influenzae)よりの莢膜糖類であり得る。異なる莢膜糖類の化学構造を伴う、インフルエンザ菌(H.influenzae)の少なくとも6種の血清型がある(a型~f型)。しかしながら、a型およびb型のみが、「高毒性」の株であると考えられているため、本発明で用いるインフルエンザ菌(H.influenzae)の莢膜糖類の好ましい型は、b型(Hib)である。
髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)の莢膜糖類:抗原は、髄膜炎菌(N.meningitidis)よりの莢膜糖類であり得る。異なる莢膜糖類の化学構造を伴う、髄膜炎菌(N.meningitidis)の少なくとも13種の血清群がある(血清群A、B、C、E-29、H、I、K、L、W-135、X、Y、Z及びZ’)が、6種(A、B、C、W-135、X、Y)のみが致死的であると考えられている。糖抗原は、血清群A、C、W135、X、又はYのうちのいずれかに由来することが有益である。
ジンジバリス菌(Porphyromonas gingivalis)の莢膜糖類:抗原は、ジンジバリス菌(P.gingivalis)の6種の血清型K1、K2、K3、K4、K5及びK6のうちの1つに由来する莢膜糖類であり得る。
チフス菌(Salmonella typhi)の莢膜糖類:抗原は、Vi糖類であり得る。Viは、チフス菌(Salmonella typhi)(サルモネラ菌(S.enterica)のチフス(typhi)血清型)の莢膜糖類である。Vi糖類は、C-3位が60~90%アセチル化されている、ヘキソサミンウロン酸(hexosaminuronic acid)、α1,4-N-アセチルガラクトサミノウロン酸(α1,4-N-acetylgalactosaminouronic acid)の直鎖ホモポリマーである。
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の糖類:抗原は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)よりの糖類であり得る。糖類は、ポリ-N-アセチルグルコサミン(poly-N-acetylglucosamine)(PNAG)である、黄色ブドウ球菌(S.aureus)のエキソポリサッカライドであり得るか、又は例えば血清型5、血清型8、もしくは血清型336であり得る黄色ブドウ球菌(S.aureus)の莢膜糖類であり得る。
クロストリジウム・ディフィシレ(Clostridium difficile)の表面糖類:抗原は、例えばPS-I又はPS-II等であるC.ディフィシレ(C.difficile)からの表面グリカンであり得る。
グルカン:抗原は、β-1,3-結合及び/又はβ-1,6-結合を含有するグルカンであり得る。これら結合したグルカンは、例えばカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)に対して、抗真菌免疫応答を生じるのに有用であり得る。
【0054】
これら糖抗原のさらなる詳細については、国際公開第2018/126229号に見ることが可能である。
【0055】
抗原は、結合に好適又は理想的である官能基を本来含有していないことがよくある。そのため、抗原は、nnAAに対するその結合の前に、官能化させる必要があることがある。こうした官能化のさらなる詳細については、以下に与える。
【0056】
肺炎球菌の莢膜糖類
本発明で用いる好ましい抗原は、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)よりの莢膜糖類である。肺炎球菌(S.pneumoniae)は、肺炎、菌血症及び髄膜炎の原因となり得る、莢膜性のグラム陽性菌である。血清型特異的な繰り返し単位構造を伴う莢膜糖類を担持する肺炎球菌(S.pneumoniae)の異なる記録された血清型が少なくとも90種ある(例えば、Kalin,M.Thorax 1998;53:159-162を参照)。当業者により理解されることとなるように、肺炎球菌(S.pneumoniae)の血清型20は、実際に、2種の密接に関連する血清型から作られることが提唱されており、その莢膜多糖体同士は大きく交差防御している(Calix et al.2012 J Biol Chem 287:27885-94)。すなわち、当業者によりさらに認識されることとなるように、血清型20は、血清型20として当技術分野でこれまでに分類されてきたであろう糖類を指すものであるため、Calixらが開示するように、構造的には20A又は20B(血清型20として当技術分野でこれまで分類されてきたであろう菌株であるが、遺伝子型的では20A又は20Bのいずれかであり得る菌株よりの)のいずれかであり得る。例えば、ニューモバックス(Pneumovax(商標))(メルク社)における血清型20の多糖体を産生するために用いる菌株は、ここでは血清型20Aであると考えられる。一部の例においては、20Aが好ましいものであり得る。他の例においては、20Bが好ましいものであり得る。標的集団における有病率は、これら血清型間での選別の基礎となり得る。それにもかかわらず、20、20A及び20Bとして分類されている菌株が血清学的に同様であることを理由として、それら菌株は、ワクチンにおいて大きく交差防御的であるため、菌株間での選択が重大な意味をもつことにはならないであろう。
【0057】
本発明で用いる抗原は、肺炎球菌(S.pneumoniae)血清型1、2、3、4、5、6A、6B、7F、7A、7B、7C、8、9A、9L、9N、9V、10F、10A、10B、10C、11F、11A、11B、11C、11D、12F、12A、12B、13、14、15F、15A、15B、15C、16F、16A、17F、17A、18F、18A、18B、18C、19F、19A、19B、19C、20、21、22F、22A、23F、23A、23B、24F、24A、24B、25F、25A、27、28F、28A、29、31、32F、32A、33F、33A、33B、33C、33D、34、35F、35A、35B、35C、36、37、38、39、40、41F、41A、42、43、44、45、46、47F、47A、又は48のいずれかよりの莢膜糖類とすることが可能である(Henrichsen J Clin Microbiol 1995;33:2759-2762)。しかしながら、これら血清型のサブセットだけが、通常、臨床的に有意の細菌性感染の原因となるため、抗原は、肺炎球菌(S.pneumoniae)血清型1、2、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、9N、10A、11A、12F、13、14、15B、16、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F、24F、31、及び33Fのいずれかよりの莢膜糖類とすることが可能である。血清型6C、7C、15A、15C、16F、20A、20B、23A、23B、24B、31、34、35B、35F、37、及び38もまた臨床的懸念となってきたため、抗原は、これら肺炎球菌(S.pneumoniae)血清型のうちの1つよりの莢膜糖類とすることが可能である。
【0058】
本発明が、異なる肺炎球菌血清型よりの複合体を用いる場合、少なくとも14種の異なる肺炎球菌(S.pneumoniae)血清型(例えば、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25種又はそれ以上の)よりの糖類を含むことが好ましい。組成物が14種以上の血清型を含む場合、これらは、13種の血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、及び23Fを含むことが好ましい。これら13種の肺炎球菌(S.pneumoniae)血清型に加えて、組成物は、血清型2、8、9N、10A、11A、12F、15B、17F、20(代替として、20A又は20B)、22F、及び/もしくは33Fのうちの1種又は複数種を含むことが好ましい。あるいは、上記の13種の血清型に加えて、組成物は、1種又は複数種の肺炎球菌(S.pneumoniae)血清型2、6C、8、9N、10A、12F、15A、15B、15C、16F、17F、20、20A、20B、22F、23A、23B、24F、24B、31、33F、34、35B、35F及び38を含むことが好ましい。15種以上(例えば16種以上)の血清型の有用な組み合わせとしては、肺炎球菌(S.pneumoniae)血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、22F、23F及び33Fのそれぞれを含み、また血清型8も含み得る。20種以上(例えば21種以上)の肺炎球菌(S.pneumoniae)血清型の有用な組み合わせとしては、血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23F及び33Fのそれぞれを含む。24種以上の血清型の有用な組み合わせとしては、肺炎球菌(S.pneumoniae)血清型1、2、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、9N、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F及び33Fのそれぞれを含む。
【0059】
よくある肺炎球菌血清型の莢膜糖類の繰り返し単位の構造は、Jonesらが記載している(Jones C et al.An Acad Bras Cienc.2005 Jun;77(2):293-324):
1型
[→3)-D-AAT-α-Galp-(1→4)-α-D-GalpA(2/3OAc)-(1→3)-α-D-GalpA-(1→]
2型
[→4)-β-D-Glcp-(1→3)-[α-D-GlcpA-(1→6)-α-D-Glcp-(1→2)]-α-L-Rhap-(1→3)-α-L-Rhap-(1→3)β-L-Rhap-(1→]
3型
[→3)-β-D-GlcA-(1→4)-β-D-Glcp-(1→]
4型
[→3)-β-D-ManpNAc-(1→3)-α-L-FucpNAc-(1→3)-α-D-GalpNAc-(1→4)-α-D-Galp2,3(S)Py-(1→]
5型
[→4)-β-D-Glcp-(1→4)-[α-L-PnepNAc-(1→2)-β-D-GlcpA-(1→3)]-α-L-FucpNAc-(1→3)-β-D-Sugp-(1→]
6B型
[→2)-α-D-Galp-(1→3)-α-D-Glcp-(1→3)-α-L-Rhap-(1→4)-D-Rib-ol-(5→P→]
9N型
[→4)-α-D-GlcpA-(1→3)-α-D-Glcp-(1→3)-β-D-ManpNAc-(1→4)-β-D-Glcp-(1→4)-α-D-GlcpNAc-(1→]
9V型
[→4)-α-D-GlcpA(2/3OAc)-(1→3)-α-D-Galp-(1→3)-β-D-ManpNAc(4/6OAc)-(1→4)-β-D-Glcp-(1→4)-α-D-Glcp-(1→]
12F型
[→4)-[α-D-Galp-(1→3)]α-L-FucpNAc-(1→3)-β-D-GlcNAc-(1→4)-[α-D-Glc-(1→2)-α-D-Glc-(1→3)]-β-D-ManNAcA-(→]
14型
[→4)-β-D-Glcp-(1→6)-[β-D-Galp-(1→4)]-β-D-GlcpNAc-(1→3)-β-D-Galp-(1→]
18C型
[→4)-β-D-Glcp-(1→4)-[α-D-Glcp(6OAc)(1→2)][Gro-(1→P→3)]-β-D-Galp-(1→4)-α-D-Glcp-(1→3)-β-L-Rhap-(1→]
19F型
[→4)-β-D-ManpNAc-(1→4)-α-D-Glcp-(1→2)-α-L-Rhap-(1→P→]
23F型
[→4)-β-D-Glcp-(1→4)-[α-L-Rhap-(1→2)]-[Gro-(2→P→3)]-β-D-Galp-(1→4)-β-L-Rhap-(1→]
【0060】
当該糖類のより広範囲にわたる議論は、Geno et al.(2015)Clin.Microbiol.Rev.28:871-99に見られ、その表1で、公知の97種の血清型の構造を示している。この表はまた、アセチル化が完全でない場合にはアセチル化されている糖類の残基の割合を開示する。
【0061】
莢膜糖類は、O-アセチル化することが可能である。一部の実施形態においては、血清型1、2、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、9N、10A、11A、12F、13、14、15B、16、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F、24F、31、及び33Fよりの莢膜糖類は、O-アセチル化の程度が、10から100%、20から100%、30から100%、40から100%、50から100%、60から100%、70から100%、75から100%、80から100%、90から100%、50から90%、60から90%、70から90%、又は80から90%、である糖類を含む。他の実施形態においては、O-アセチル化の程度が、10%を超える、20%を超える、30%を超える、40%を超える、50%を超える、60%を超える、70%を超える、80%を超える、90%を超える、又は約100%である。糖類のO-アセチル化の程度は、プロトンNMRで判断することが可能である(例えば、Lemercinier&Jones(1996)Carbohydrate Research 296:83-96;Jones et al.(2002)J.Pharmaceutical and Biomedical Analysis 30:1233-1247を参照)。通常、複合体を調製するために用いる糖類は、細菌から精製した出発莢膜糖類で見られるO-アセチル化レベルのうち少なくとも50%(例えば、75%、又は100%)を保持することとなる。
【0062】
肺炎球菌(S.pneumoniae)の莢膜糖類は、当業者にとって公知である単離方法を用いて、細菌から直接得ることが可能である(例えば、米国特許出願公開第2006/0228380号、第2006/0228381号、第2007/0184071号、第2007/0184072号、第2007/0231340号、及び第2008/0102498、及び国際公開第2008/118752号に開示の方法を参照)。代替としては、それらは、市販の供給元(例えば、ATCC社)から得てもよい。
【0063】
本発明で用いる肺炎球菌の莢膜糖抗原は、10kDaから4,000kDaであって、例えば50kDaから3,000kDa、又は100kDaから2,000kDa、の分子量を有し得ることが有益である。例えば、当該分子量は、100kDaから2,000kDa;100kDaから1,750kDa;100kDaから1,500kDa;100kDaから1,250kDa;100kDaから1,000kDa;100kDaから750kDa;100kDaから500kDa;200kDaから4,000kDa;200kDaから3,500kDa;200kDaから3,000kDa;200kDaから2,500kDa;200kDaから2,000kDa;200kDaから2,000kDa;200kDaから1,750kDa;200kDaから1,500kDa;200kDaから1,250kDa;200kDaから1,000kDa;200kDaから750kDa;又は200kDaから500kDaであり得る。分子量に関するさらなる詳細及び案内は、先に本明細書において参照により援用した、米国シリアル番号第62/693,978号において利用可能である。
【0064】
莢膜糖類は、天然に存在する莢膜糖類に対して化学的に改変をしていてもよい。例えば、糖類は、脱O-アセチル化(部分的又は完全に)、脱N-アセチル化(部分的又は完全に)、N-プロピオン化(部分的又は完全に)等されていてもよい。脱-アセチル化は、活性化前、活性化中もしくは活性化後に、誘導体化前、誘導体化中もしくは誘導体化後に、又は結合前、結合中もしくは結合後に生じてもよいが、典型的には結合前に生じる。
【0065】
本発明の一部の実施形態は、2以上の異なる複合体の使用を伴う。肺炎球菌の莢膜糖類複合体に関して、このことは、各「異なる」複合体が、異なる肺炎球菌血清型よりの糖類を有している(複合体ごとに単一の種類のキャリアポリペプチドを用いる場合)ということを意味する。
【0066】
多価複合体
本発明の好ましい組成物は、例えば単一の医薬組成物内で、2以上の異なる複合体の使用を伴う。これら実施形態はまた、多価とも呼ぶ。任意の2つの複合体を「異なる」として記載する場合、すなわちある「多価」組成物において異なる価数をもたらす場合、これは、それら2つの複合体におけるキャリアポリペプチドと抗原との組み合わせにおける相違を指している。例えば、単一の種類の改変CRM197(例えば、配列番号4)が、肺炎球菌の単一の血清型よりの莢膜糖類と結合する場合、反応生成物は、多数の異なる種類の分子を含有する(分子量が異なる、各分子内の結合のパターンが異なる等)こととなるが、本明細書においては単一の複合体としてみなす。当業者は、分子レベルでのこの不均一性に精通し、また同様に、複合体組成物内の平均となる他の性質(例えば分子量)と共に特定の複合体の抗原-キャリアの組み合わせで、あるワクチンの個々の複合体を規定する。2つの「異なる」複合体は、ある異なるキャリアポリペプチド(すなわち、ある異なるアミノ酸配列を有する)、及び/又はある異なる抗原(すなわち、ある異なる抗原性構造を有する)を有する。
【0067】
例えば、莢膜糖抗原は、肺炎球菌の2種の異なる血清型より精製してもよい。これら2種の異なる莢膜糖類は、別個に、あるキャリアポリペプチド(これは同じであっても異なっていてもよい)と結合して、2種の異なる複合体をもたらすことが可能である。すなわち、細菌性の莢膜糖類複合体に関して、2種の「異なる」複合体間の相違は、典型的には、一方がある細菌種の第1の血清型又は血清群よりの莢膜糖類を含有している一方で、他方がその細菌種の第2の血清型又は血清群よりの莢膜糖類を含有しているということであり、例えば、肺炎球菌(S.pneumoniae)の異なる血清型よりの莢膜糖類、又は髄膜炎菌(N.meningitidis)の異なる血清群よりの莢膜糖類である。2種の複合体はまた、それらが複数の細菌種よりの抗原的に異なる莢膜糖類を含んでいれば「異なる」こととなり、例えばHibの糖類複合体及び髄膜炎菌の糖類複合体である。
【0068】
本発明の好ましい多価組成物は、n種の異なる免疫原性糖類複合体を含むものであって、n種の免疫原性複合体のそれぞれにおける糖抗原は、その他のn-1種の免疫原性複合体の糖抗原とは違うものである。例えば、組成物が単一の細菌種よりの抗原を含む場合、その種のn種の異なる血清型又はn種の血清群よりの莢膜糖類が存在し得る。
【0069】
「異なる」複合体に関連するこの命名は、結合型ワクチンの分野で用いられる。例えば、Glesby et al.(2015)J Infect Dis 212:18-27では、プレベナー(Prevnar(商標))PCV13ワクチンが、別個にCRM197と結合した13種の異なる肺炎球菌血清型よりの糖抗原を含むということから、「13種の異なる複合体」を含有するということに言及している。同様に、欧州特許出願公開第2932979号(EP-A-2932979)は、「13種の異なる多糖体-タンパク質複合体を含む免疫原性組成物」に言及している。
【0070】
すなわち、PCV7プレベナー(Prevnar(商標))ワクチンは、7種の異なる複合体を有し、PCV13プレベナー(Prevnar(商標))ワクチンは、13種の異なる複合体を有し、メンベオ(Menveo(商標))ワクチンは、4種の異なる複合体を有し、メナクトラ(Menactra(商標))ワクチンは、4種の異なる複合体を有し、ニメンリックス(Nimenrix(商標))ワクチンは、4種の異なる複合体を有し、Menitorix(商標)ワクチンは、2種の異なる複合体を有し、Menhibrix(商標)ワクチンは、3種の異なる複合体を有し、シンフロリックス(Synflorix(商標))ワクチンは、10種の異なる複合体を有する等である。
【0071】
肺炎球菌複合体の多価組成物は、13種以上の、例えば14、15、20、21、24、25種又はそれ以上の、異なる複合体を含むことが好ましい。これら13価を超える組成物に関する血清型の好適な選択は、上記で述べている。
【0072】
高価数のワクチン(例えば、13種を超える異なる複合体を含む)に関して、複数のキャリアポリペプチドを用いてキャリア抑制の可能性を低減することが好ましい場合があり得る(例えば、国際公開第98/51339及び国際公開第2011/110241号)。例えば、n種の異なる複合体を含む多価ワクチンでは、第1のキャリアポリペプチドは、n-y種の異なる抗原と結合して(例えば、異なる細菌の血清型又は血清群よりの莢膜糖類)、そして第2のキャリアポリペプチドが、残りのy種の抗原と結合する。同様の手法で、3、4種又はそれ以上のキャリアを、それらの間で分けられたn種の抗原と共に用いることができる。複数のキャリアを用いる場合、少なくとも第1のキャリアが、本発明によるnnAA含有キャリアポリペプチドである。好ましい実施形態においては、少なくとも第1のキャリア及び第2のキャリアが、本発明によるnnAA含有キャリアポリペプチドである。
【0073】
非天然アミノ酸
上記に記載したように、本明細書で用いる複合体は、抗原と、キャリアポリペプチドにおけるnnAA残基内の官能基との間に共有結合を含む。nnAA残基の側鎖が、キャリアポリペプチドにおける別々の部位に対して抗原を結合させるのに有用である反応性の官能基を提供することが可能である。
【0074】
概略的にいえば、nnAAは、翻訳中にポリペプチド内に組み込むことが可能であるが通常の20種のアミノ酸のうちの1つではない、任意のアミノ酸とすることが可能である。好都合にも、nnAAは、tRNA分子をそのコドンが天然の同族のアミノ酸ではなくnnAAを組み込むように変換することによって、ポリペプチドに組み込むことが可能である。これを達成するための技術のひとつは、「サプレッション(抑制)コドン」を用いること、すなわち、ヌクレオチドトリプレットであって、所望の位置においてコード配列に導入して、天然の終止コドン(例えば、アンバー、オーカー、又はオパール終止コドン)を認識することが可能である特異的なtRNAによって認識されるが、翻訳の継続は可能である、nnAAの組み込みを伴う(それによって天然の終止コドンが抑制される)、当該ヌクレオチドトリプレットを用いることを伴う。
【0075】
nnAA残基は、本明細書で記載のnnAA残基のいずれかであるか、又は細胞ベースのもしくは無細胞のタンパク質合成と両立可能であるとして特定されているその他のものであり得る(例えば、Schultz et al.Annu Rev Biochem.2010;79:413-44、特にpp.418-420;及び、Chin et al.Annu Rev Biochem.2014;83:5.1-5.30であって、参照により本明細書で援用するこれらを参照)。理想的には、nnAAは、通常の20種のアミノ酸(例えば、ピロリシン、セレノシステイン、ホスホチロシン、ホルミルメチオニン等)のうちの1つの改変によって、細胞内において天然に生じるものではない。
【0076】
特に、本明細書で用いる好ましいnnAAは、天然の20種のアミノ酸のうちのいずれかの側鎖に存在しない官能基を提供する側鎖をもつ、翻訳中に組み込むこと(細胞系又は無細胞の系で)が可能であるものである。ポリペプチド内にこうしたアミノ酸を組み込むための種々の技術は公知であり、例えば、Young&Schultz(2010)J Biol Chem 285:11039-44、Maza et al.(2015)Bioconjugate Chem.26:1884-9、及びZimmerman et al.(2014)Bioconjugate Chem.25:351-61を参照されたい。国際公開第2018/126229号は、nnAA残基を、例えば無細胞発現混合物、nnAAに特異的な直交性tRNA/アミノアシル-tRNAシンテターゼ対、サプレッションコドン等を用いて、キャリアポリペプチドに組み込むことができる方法について詳細に開示している。米国特許出願第2017/0267637号もまた参照されたい。
【0077】
nnAAは、関心の抗原における対応する基での「クリック」ケミストリー反応に好適である化学基を含み得る。「クリック」ケミストリーに好適な化学基には、アジド基(-N)、アルキン基(-C≡C-)、アルケン基(-C=C-)及び1,2,4,5-テトラジン基
【化1】
及びホスフィン基(例えば、-P(Ph))が含まれるが、これに限定されない。
【0078】
nnAAは、2-アミノ-3-(4-アジドフェニル)プロパン酸(パラ-アジド-L-フェニルアラニン、又はpAF)、2-アミノ-3-(4-(アジドメチル)フェニル)プロパン酸(パラ-アジドメチル-L-フェニルアラニン、又はpAMF)、2-アミノ-3-(5-(アジドメチル)ピリジン-2-イル)プロパン酸、2-アミノ-3-(4-(アジドメチル)ピリジン-2-イル)プロパン酸、2-アミノ-3-(6-(アジドメチル)ピリジン-3-イル)プロパン酸、又は2-アミノ-5-アジドペンタン酸のいずれかであり得る。
【0079】
本明細書で用いる最も好ましいnnAAは、以下のpAMFであり:
【化2】
pAMFは、複合体を生成するために非常に有利な反応速度をもたらす(例えば、SPAAC法でアルキン含有糖抗原と反応する際に、pAFを用いるよりもずっと速い)。
【0080】
nnAAは、以下を保持する2,3-二置換プロパン酸であり得る:2位におけるアミノ置換基;及び、3位における、アジド含有置換基、1,2,4,5-テトラジニル含有置換基、又はエチニル含有置換基。好ましくは、3位における置換基は、アジド含有置換基、特に、結合基を介して3位の炭素原子に結合する末端アジド基を含むアジド含有置換基である。例えば、結合基は、任意に置換されて任意にヘテロ原子を含有しているアリーレン(arylene)部分を含み得る。例えば、結合基は、0から4個のヘテロ原子及び0から4個の非水素の環の置換基を含有する5又は6員のアリーレン部分を含み得る。
【0081】
nnAAは、以下の一般式XIIの構造を有することが可能である:
【化3】
(XII)
式中、Arは、少なくとも1つのヘテロ原子を含有してもよい5員又は6員の芳香族環を含み;WはC-C10アルキレン、-NH-、-O-、及び-S-から選択され;Q1はゼロ又は1であり;ならびにWは、アジドと、低級アルキル基でC置換されていてもよい1,2,4,5-テトラジニルと、エチニルとから選択される。一部の実施形態においては、Arは、いずれのヘテロ原子も含有せず、この場合においては好ましいリンカーは、非置換のフェニレン基(すなわち、Arは、-C-)である。他の実施形態においては、Arは、窒素ヘテロ原子と、N、O及びSから選択される少なくとも1つのさらなるヘテロ原子とを含有する。例示的な窒素複素環は、以下に記載しており、またArは、例えばピリジン又はピリダジンであり得る。特に好ましい実施形態においては、Q1は1であり、Wは低級アルキレンであり、またWはアジドである。
【0082】
nnAAは、例えば以下の一般式IのnnAAである、アジド含有nnAAであり得る:
【化4】
式中、Dは-Ar-W3-又は-W1-Y1-C(O)-Y2-W2-であり;W1、W2及びW3のそれぞれは、独立に、単結合又は低級アルキレンであり;各Xは、独立に、-NH-、-O-、又は-S-であり;各Y1は、独立に、単結合、-NH-、又は-O-であり;各Y2は、独立に、単結合、-NH-、-O-、又はN結合もしくはC結合のピロリジニレン(pyrrolidinylene)であり;Arは
【化5】
であり;
ならびにZ、Z及びZのうちの1つは-N-であり、及びZ、Z及びZのうちのその他は、独立に、-CH-である。
【0083】
他の実施形態においては、nnAAは以下の一般式IIを有する:
【化6】
式中、WはC-C10アルキレンである。
【0084】
一般式I及びIIに係るアジド含有アミノ酸の調製は、例えば、Staffordらの米国特許出願公開第2014-0066598A1号の特に段落[0331]から[0333]に見られ、これらは参照により援用する。この方法は、塩化チオニルを用いた対応するアリールアミノ酸の誘導体における塩化物に対するヒドロキシル基の置換と、その後に続くアジドでの当該塩化物の求核置換を伴う。アミノ酸を含有する好適なアリール側鎖はまた、市販品でも得られる。
【0085】
nnAAは、1,2,4,5-テトラジン含有nnAAであり得る。例えば、以下の一般式IIIである:
【化7】
式中、Arは、
【化8】
であり;Vは単結合、低級アルキレン又は-W1-W2-であり;W1及びW2のうちの1つは存在しないか又は低級アルキレンであり、またその他は-NH-、-O-又は-S-であり;Z、Z及びZのうちの各1つは、独立に、-CH-又は-N-であり;ならびにXは、独立に、-NH-、-O-又は-S-であり;ならびにRは低級アルキルである。
【0086】
一般式IIIに係る1,2,4,5-テトラジン含有アミノ酸の調製は、例えば、Yangらの米国特許出願公開第2016/0251336号の特に段落[0341]から[0377]に見られ、これらは参照により援用する。この方法は、(R)-2-アミノ-3-ヨードプロパン酸のアミノ/カルボキシル保護された誘導体のアミノピリジルブロミド(aminopyridyl bromide)との根岸カップリングによりArを導入することと、その後に続く、アミノ酸内にテトラジン部分を導入するメチルチオ-1,2,4,5-テトラジン誘導体との反応を伴う。
【0087】
nnAAは、アルキン含有nnAAであり得る。一実施形態においては、これはプロパルギル基である。種々のプロパルギル含有アミノ酸は、その合成を含めて、Beatty et al.Angew.Chem.Int.Ed.2006,45,7364-7;Beatty et al.J.Am.Chem.Soc.2005(127):14150-1;Nguyen et al.JACS 2009(131):8720-1に見られる。こうしたプロパルギル含有アミノ酸は、細胞ベースの系を用いたタンパク質への組み込みに好適である。一部の実施形態においては、プロパルギル含有nnAAは、ホモプロパルギルグリシン、エチニルフェニルアラニン、及びN6-[(2-プロピニルオキシ)カルボニル]-L-リシンからなる群から選択される。
【0088】
本明細書で用いるnnAAは、概して、α-炭素に不斉中心をもつα-アミノ酸であり、またそれらは、L-立体異性体であることが好ましい。
【0089】
本発明で用いられるポリペプチドキャリアは、少なくとも1つのnnAA残基を含む。好ましくは、キャリアポリペプチドは、複数のnnAA、例えば2、3、4、5、6、7、8又は9個のnnAA残基(又はそれ以上のこともある)、を含む必要がある。10個より少ないnnAA残基をもつキャリアポリペプチドが好ましい。すなわち、ポリペプチドは、2から9個のnnAA残基を含み得、好ましくは4から6個のnnAA残基を含む。
【0090】
キャリアポリペプチドが複数のnnAA残基を含む場合、単一の種のnnAAのみを含むことが好ましい(例えば、キャリア内の唯一のnnAAはpAMFである)。これにより、同じ共役化学が、各nnAAにおいて同時に用いられることが可能になる。2つの異なる抗原を1つのキャリア分子と結合させることを所望する場合には、これは、単一キャリア内に異なるnnAA種を用いることと、各抗原をある異なるnnAAと結合させることとによって達成され得るが、あるキャリア内で単一の種のnnAAと結合することが好ましい。さらに、複数の異なる複合体を用いる場合(例えば、異なる肺炎球菌血清型)、各複合体が同じ単一の種のnnAAを含むことが好ましい場合がある。また、組成物が、複数の異なる複合体を含む場合(例えば、異なる肺炎球菌血清型)、各複合体が同じキャリアポリペプチドを含むことが好ましい場合がある。
【0091】
nnAAは、置換によって又は挿入によって(又は、C末端もしくはN末端の伸長によって)、キャリアポリペプチドに組み込むことが可能である。一実施形態においては、nnAA残基は、置換によって組み込まれる。好都合には、天然のポリペプチド内のリシン残基は、nnAAで置換可能である。例えば、CRM197において、配列番号1又は2におけるK24位、K33位、K37位、K39位、K212位、K214位、K227位、K244位、K264位、K385位、K522位、及びK526位のうちの1又は複数で、置換を行うことが可能である。nnAA(例えば、pAMF)の、K33、K212、K244、K264、K385、及びK526(及び、一実施形態においてはこの他の位置ではない)のそれぞれにおける置換が好ましい。
【0092】
しかしながら、nnAAを組み込む置換は、リシン位置に限定されないものであり、例えばPhe、Asp、Asn、Glu、Gln、Arg、Ser、及び/又はThrである、他のアミノ酸をnnAAで置換することも可能である。
【0093】
キャリアポリペプチド内のnnAAは、理想的には、表面アクセス可能な残基である。これは、ポリペプチドの3D構造を用いて、又はnnAAに関して天然アミノ酸の広範囲にわたる置換を行うことと、その後に続く結合試験によって評価して、各部位の有用性を評価することが可能である。
【0094】
キャリアポリペプチドの機能を保存するために、キャリアポリペプチドのT細胞活性化エピトープ内にnnAAを組み込まないことが好ましい。nnAAの使用により、結合のための部位の選択的配置が可能になり、そのためキャリアポリペプチドのT細胞活性化エピトープを、抗原結合のための部位となることから回避させることが可能である。上記に記載したとおり、これらエピトープは、容易に特定可能である。例えば、Rajuら、Bixlerら、Leonardら、及びPillaiらによるCRM197の研究(例えば、Eur J Immunol.1995 Dec;25(12):3207-14、国際公開第89/06974号)で、例えば残基P271-D290、V321-G383、及びQ411-I457内において、種々のT-細胞エピトープが特定されてきた。すなわち、配列番号1のこれら領域の範囲内にnnAAを導入することは回避するのが好ましい。
【0095】
結合
結合は、nnAA残基と抗原との間の共有結合の形成を伴う。これは、nnAA及び抗原の両方において反応性の官能基を必要とする。概して、キャリアポリペプチドに対して、あるnnAAを選択することとなるが、これは、nnAAは既に好適な官能基を有している(例えば、pAMFのアジド基)が、抗原は、結合に好適又は理想的である官能基を本来含有していないことが多いからである。すなわち、抗原は、nnAAへのその結合の前に官能化する必要があり得る。
【0096】
結合についての詳細な技術情報は、Bioconjugate Techniques(Greg T Hermanson,3rd edition,2013)で見ることが可能である。国際公開第2018/126229号は、どのように抗原を官能化して次いでnnAAに結合させることが可能であるかを詳細に開示している。上記に記載したように、有用なnnAAは、抗原における官能基での「クリック」ケミストリー反応に好適である官能基(例えば、アジド基)を含む。すなわち、官能化された抗原は、こうした「クリック」反応に好適な基を含むことが理想的である。
【0097】
そのため、概略的にいえば、結合は、以下の3ステップ:(a)抗原を活性化すること;(b)任意に、活性化した抗原を誘導体化して(例えば、リンカー又は求核基により)、抗原に通常存在しない反応性官能基を導入すること;及び(c)ステップ(a)か、又は存在すればステップ(b)において導入された基を介して、抗原をキャリアポリペプチドと結合させること、を含む方法により行われる。一部の実施形態においては、ステップ(a)は、特定の官能基(例えば、ヒドロキシル、アミン、チオール)がより活性化しやすいように、抗原上の遮断性基を除去するはじめのステップを含む。このステップ(a)~(c)は、本質的に、同時に起こることがある(例えば、N-ヒドロキシスクシンイミド等の反応性部分を抗原に付加する場合)が、他の実施形態においては、ステップ(a)から(c)のうちの2以上は、ステップ間に任意の精製を含めて分散させる。
【0098】
上記に記載したように、架橋結合した複合体が好ましいため、1抗原分子当たり複数の反応性官能基を導入することもまた好ましい。例えば、糖類分子を活性化する際に、複数のアルデヒド基又はシアン酸エステル基を導入することが可能である。次いでこれら基は、例えば、その後にnnAA内のアジド基と反応することが可能である反応性のシクロオクチンを導入するように、誘導体化することが可能である。
【0099】
抗原は、以下を含めるがこれに限定されない様々な化学を用いて活性化することが可能である:例えば国際公開第2011/110531号に開示されるような過ヨウ素酸酸化(例えば、隣接炭素原子におけるヒドロキシル基を酸化して、反応性のアルデヒド基を与える);例えば1-シアノ-4-ジメチルアミノピリジニウムテトラフルオロボレート(CDAP)を用いた、シアニル化;1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI)によるヒドロキシル活性化とその後に続く求核付加;又は、内在性アルデヒド(例えば、糖類の還元末端)のアンマスキング。
【0100】
過ヨウ素酸酸化とCDAPでのシアニル化とが、2つの好ましい活性化技術である。過ヨウ素酸酸化は、とりわけ肺炎球菌血清型1、2、3、7F、8、9N、及び11Aを活性化するのに有用であることが示されている。CDAPでのシアニル化は、とりわけ肺炎球菌血清型3、7F及び10Aを活性化するのに有用であることが示されている。
【0101】
活性化した抗原は、nnAAに直接結合することが可能であるが、通常、活性化した基は、nnAAの官能基に対して良好な反応性を示す官能基を導入するように誘導体化される。例えば、アルキニル基を導入することが可能である。アミノ基及びアルキン基をもつ二官能性の試薬は、抗原に導入(例えば、還元的アミノ化を経て)されているアルデヒド基と反応することが可能であり、それによってnnAAと反応することが可能であるペンダントアルキンが残る。例えば、アミノ基及びDBCO官能性基を含む二官能性の試薬を用いることが可能である。
【0102】
一実施形態においては、nnAAは、抗原におけるアルキニル基(例えば、プロパルギル基)と反応する。抗原内のアルキン基が、例えば銅触媒によるアジド-アルキン環化付加(CuAAC)、ルテニウム触媒によるアジド-アルキン環化付加(RuAAC)、又はヒュスゲンのアジド-アルキン1,3-双極子環化付加のような当技術分野で公知である反応を用いたnnAA内アジド基との反応に理想的である。アルキニル基は、その反応性を増大させる分子環境を有し得、たとえば、それは環内であり得る。例えば、アルキレンは、例えばジアリールにより歪んだシクロオクチン環(例えば、DBCO)等であるシクロオクチン環(ヘテロ原子を含んでもよい)内にあり得る。この反応は、当技術分野において歪み促進型アジド-アルキン環化付加(SPAAC)と呼ばれる[3+2]環化付加であり得る。DIFO系及びDBCO系の試薬は、これら反応に容易に利用可能である。
【0103】
SPAAC反応で有用なアルキン含有環は、二フッ素化シクロオクチン(DIFO)及びジベンゾシクロオクチンを含む。これらは、例えば以下の試薬の何れかを用いて、活性化された抗原に結合するためのペンダント官能基と共に利用可能である(例えば、アルデヒド又はシアン化エステルに結合するためのペンダントアミノと共に):
【化9】
【0104】
「PEGn」の「n」の値は、オキシエチレン繰り返し単位の数を表す。nの値は、1~20の範囲にあり、例えば2~18、3~16、又は4~14の範囲内にある。すなわち、nは、例えば4、5、11、12又は13のいずれかとすることが可能である。
【0105】
抗原及びnnAAの結合に用いることが可能である他のクリックケミストリー反応には、テトラジン-アルケンの連結反応、ならびにホスフィン及びアジド間のシュタウディンガー連結反応(Staudinger ligation)が含まれるが、これに限定されない。
【0106】
本発明の複合体は、分子量が少なくとも約750kDa、少なくとも約1,000kDa、又は少なくとも約1,500kDa又はそれ以上であることが可能である。一部の実施形態においては、複合体は、分子量が、約750kDaから約5,000kDaである。一部の実施形態においては、複合体は、分子量が、約800kDaから約2,800kDaである。一部の実施形態においては、複合体は、分子量が、約850kDaから約2,800kDAである。一部の実施形態においては、複合体は、分子量が、約900kDaから約2,800kDaである。一部の実施形態においては、複合体は、分子量が、約950kDaから約2,800kDaである。一部の実施形態においては、複合体は、分子量が、約1,000kDaから約2,800kDaである。複合体の分子量は、マルチアングルレーザー光散乱(MALS)と組み合わせた分子ふるいクロマトグラフィー(SEC)で計算する。
【0107】
本発明の複合体は、抗原(例えば、糖類)とキャリアポリペプチドとを含み、またこれら2つの成分の重量比は、複合体を規定するパラメータとして用いることが可能である。糖類-キャリア複合体に関する抗原:キャリアの重量比がより大きいと、より少ない量のキャリアポリペプチドでより多くの糖抗原が供給可能となる。肺炎球菌結合型ワクチンに関して、この比は、典型的に0.3から3.0の範囲にあるが、これは、血清型と共役化学の態様とにより変動し得る(Annex 2:Recommendations for the production and control of pneumococcal conjugate vaccines;WHO Technical Report Series,No.927,2005)。市販のワクチンであるプレベナー13(Prevnar-13(商標))の比は、0.9である。複数の肺炎球菌血清型(例えば、13種以上の血清型)の複合体を含む組成物に関して、完全な組成物に関する比は、1.0を超える(すなわち、過剰重量の肺炎球菌糖抗原)ものであることが理想的であり、好ましくは、1.5又はそれ以上(例えば、1.5から3.0、又は好ましくは1.5から2.0の範囲内)である。
【0108】
改変されたCRM197のキャリアポリペプチド
上記に記載したように、本明細書において主要な関心であるキャリアポリペプチドは、改変された形態のCRM197である。そのため、本発明で用いる好ましいキャリアポリペプチドは、配列番号1に対して少なくとも80%の配列同一性(例えば、≧85%、≧90%、≧95%、≧96%、≧97%、又は好ましくは≧98%)であるアミノ酸配列を含む。例えば、キャリアポリペプチドは、上記で述べたように、最大10個のnnAAが存在することを除いて、配列番号1のアミノ酸配列を含み得る。
【0109】
配列番号1は、192~193位にArg-Argジペプチド配列を含む。この配列は、一部の状況において、タンパク分解性の切断を受け得る。所望であれば、この部位を改変して、切断を防止して収量を向上させることが可能である。すなわち、一部の実施形態においては、本明細書で用いる改変されたCRM197のキャリアポリペプチドは、Arg-Argジペプチド配列を含まない。例えば配列番号1のうちのArg-192及び/又はArg-193が、欠失し得るか又は異なるアミノ酸で置換され得る。そのため、好ましいキャリアポリペプチドは、(i)配列番号1に対して少なくとも80%(例えば、≧85%、≧90%、≧95%、≧96%、≧97%、又は好ましくは≧98%)の配列同一性を有し、(ii)Arg-Argジペプチド配列を含まず、かつ、(iii)少なくとも1個(例えば、上記で述べたように、少なくとも2個、また好ましくはそれ以上)のnnAA残基を含んだ、アミノ酸配列を含む。
【0110】
こうしたアミノ酸配列の1つは、以下の配列番号2であり、これは配列番号1と、193位にArg→Asn置換を有する点で相違する:
GADDVVDSSKSFVMENFSSYHGTKPGYVDSIQKGIQKPKSGTQGNYDDDWKEFYSTDNKYDAAGYSVDNENPLSGKAGGVVKVTYPGLTKVLALKVDNAETIKKELGLSLTEPLMEQVGTEEFIKRFGDGASRVVLSLPFAEGSSSVEYINNWEQAKALSVELEINFETRGKRGQDAMYEYMAQACAGNRVRSVGSSLSCINLDWDVIRDKTKTKIESLKEHGPIKNKMSESPNKTVSEEKAKQYLEEFHQTALEHPELSELKTVTGTNPVFAGANYAAWAVNVAQVIDSETADNLEKTTAALSILPGIGSVMGIADGAVHHNTEEIVAQSIALSSLMVAQAIPLVGELVDIGFAAYNFVESIINLFQVVHNSYNRPAYSPGHKTQPFLHDGYAVSWNTVEDSIIRTGFQGESGHDIKITAENTPLPIAGVLLPTIPGKLDVNKSKTHISVNGRKIRMRCRAIDGDVTFCRPKSPVYVGNGVHANLHVAFHRSSSEKIHSNEISSDSIGVLGYQKTVDHTKVNSKLSLFFEIKS。
【0111】
配列番号1を参照する、本明細書又は国際公開第2018/126229号に記載の任意の実施形態は、代わりに配列番号2を用いて実施可能である。
【0112】
すなわち、配列番号2のアミノ酸配列を含むキャリアポリペプチドを提供するものであって、配列番号2は、改変されて、1から10個(例えば、3から9個もしくは2から8個、又は2から6個、又は3から6個、又は4から6個)のnnAA残基を含む。これらnnAA残基の改変は、配列番号2内に、挿入及び/又は置換として組み込むことが可能である(例えば、配列番号4であり、これは6個のLys→nnAAへの置換を含む)。配列番号2の残基Asn-193は、nnAAで置換されないことが好ましい。このキャリアポリぺプチドを用いて、その中のnnAA残基を介して免疫原性複合体(例えば、糖抗原の)を調製することができる。
【0113】
一部の実施形態においては、これらキャリアポリペプチドは、配列番号1もしくは2の上流及び/又は下流でアミノ酸配列を含む。すなわち、例えば、それらは配列番号1又は2のN末端アミノ酸残基の上流でメチオニン残基を含むことが可能である。このメチオニン残基は、ホルミル化され得る。野生型CRM197ではこの位置にメチオニン残基は存在しないが、本明細書においては、天然のリーダー配列全体を必要とすることなく翻訳を開始する(例えば、無細胞ポリペプチド合成系において)ために含むことが可能である。一部の実施形態においては、キャリアポリペプチドは、(i)随意のメチオニンを除いて、配列番号1又は2のN末端の上流でアミノ酸配列を含まず、かつ、(ii)配列番号1又は2のC末端の下流でアミノ酸を含まない。
【0114】
好ましくは、配列番号1又は2内の少なくとも1つのLys残基が、nnAA残基で置換される。配列番号1又は2内の1以上の残基が、nnAAで置換されることが好ましく、また理想的には、配列番号1内の1個のみの残基がnnAAで置換されるものであり、例えばLys残基のみが置換される。配列番号1内の1以上の残基がnnAAで置換される場合、同一のnnAAを各位置で用いることが好ましく、例えば、各置換位置がpAMFである。上記に記載したように、一部の実施形態においては、Lys以外の残基が置換される。
【0115】
配列番号1又は2のアミノ酸配列を含むキャリアポリペプチドであって、nnAA残基による2から9の置換を伴う(例えば、Lys→nnAAの置換、好ましくはLys→pAMF)、当該キャリアポリペプチドが好ましく、また理想的には、2から8、2から6、3から8、3から6、4から9、4から8、又は4から6個のnnAAの置換、例えば4、5又は6個のnnAA残基を伴う。これにより、単一のnnAAを用いるよりも、抗原のキャリアに対するより広範囲な結合が許容され、それによって、天然の配列及び構造の、結果として不溶性をもたらす可能がある過度な崩壊を避けつつ、抗原:キャリアの比が増す。
【0116】
CRM197の構造的な研究により、配列番号1又は2内の以下の2つの全般的な3次元領域が明らかにされる:第一の領域はN末端からAsn-373にわたってあり、また第二の領域はSer-374からC末端にわたってある。これらのうち第一の領域は、「C」及び「T」(触媒の及び膜貫通の)として知られるドメインに概ね対応し、また第二の領域は、ドメイン「R」(受容体結合の)に概ね対応する。理想的には、キャリアポリペプチドは、第一の領域における少なくとも1個のnnAA及び第二の領域における少なくとも1個のnnAAを含み、例えば、各領域に少なくとも2個のnnAA、又は各領域に少なくとも3個のnnAAである。これにより、結合した抗原が、キャリアに結合したときに空間的に離間することが可能になる。第一の領域に3個のnnAAと第二の領域に3個のnnAAとを含むキャリアが、有用である。
【0117】
第一の領域は、27個のLys残基を含有し、また第二の領域は、12個のLys残基を含有する。すなわち、配列番号1又は2の、N末端の374個のアミノ酸内の1個もしくは複数(例えば3個)のLys残基と、C末端の162個のアミノ酸内の1個もしくは複数(例えば3個)のLys残基とが、例えばpAMF内で、nnAAで置換可能である。
【0118】
CRM197をベースとしたnnAA含有キャリアの好ましい実施形態は、配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列を有し、当該配列では、残基K24、K33、K37、K39、K212、K214、K227、K264、K385、K522、及びK526のうちの1又は複数が、nnAA(例えばpAMF等)で置換されている。こうした配列の1つは以下の配列番号3であり、当該配列では、各XはnnAAを表す(好ましくは、pAMF等の同一のnnAA):
MGADDVVDSSKSFVMENFSSYHGTKPGYVDSIQGIQKPKSGTQGNYDDDWKEFYSTDNKYDAAGYSVDNENPLSGKAGGVVKVTYPGLTKVLALKVDNAETIKKELGLSLTEPLMEQVGTEEFIKRFGDGASRVVLSLPFAEGSSSVEYINNWEQAKALSVELEINFETRGKRGQDAMYEYMAQACAGNRVRRSVGSSLSCINLDWDVIRDTKTKIESLKEHGPIKNKMSESPNKTVSEEKAQYLEEFHQTALEHPELSELTVTGTNPVFAGANYAAWAVNVAQVIDSETADNLEKTTAALSILPGIGSVMGIADGAVHHNTEEIVAQSIALSSLMVAQAIPLVGELVDIGFAAYNFVESIINLFQVVHNSYNRPAYSPGHTQPFLHDGYAVSWNTVEDSIIRTGFQGESGHDIKITAENTPLPIAGVLLPTIPGKLDVNKSKTHISVNGRKIRMRCRAIDGDVTFCRPKSPVYVGNGVHANLHVAFHRSSSEKIHSNEISSDSIGVLGYQKTVDHTKVNSLSLFFEIKS(配列番号3)。
【0119】
こうした配列の別の配列は、以下の配列番号4であり、当該配列では、各XはnnAAを表す(好ましくは、pAMF等の同一のnnAA):
MGADDVVDSSKSFVMENFSSYHGTKPGYVDSIQGIQKPKSGTQGNYDDDWKEFYSTDNKYDAAGYSVDNENPLSGKAGGVVKVTYPGLTKVLALKVDNAETIKKELGLSLTEPLMEQVGTEEFIKRFGDGASRVVLSLPFAEGSSSVEYINNWEQAKALSVELEINFETRGKRGQDAMYEYMAQACAGNRVRNSVGSSLSCINLDWDVIRDTKTKIESLKEHGPIKNKMSESPNKTVSEEKAQYLEEFHQTALEHPELSELTVTGTNPVFAGANYAAWAVNVAQVIDSETADNLEKTTAALSILPGIGSVMGIADGAVHHNTEEIVAQSIALSSLMVAQAIPLVGELVDIGFAAYNFVESIINLFQVVHNSYNRPAYSPGHTQPFLHDGYAVSWNTVEDSIIRTGFQGESGHDIKITAENTPLPIAGVLLPTIPGKLDVNKSKTHISVNGRKIRMRCRAIDGDVTFCRPKSPVYVGNGVHANLHVAFHRSSSEKIHSNEISSDSIGVLGYQKTVDHTKVNSLSLFFEIKS(配列番号4)。
【0120】
配列番号3及び4は、肺炎球菌の莢膜糖類と結合したときに良好な溶解性を保持して良好な免疫原性応答を提供しつつ、無細胞タンパク質合成系において非常に良好に発現可能である。配列番号4は、天然のArg-Argジペプチドを欠いている。
【0121】
配列番号4からなるポリペプチドであって、各XがpAMFである、当該ポリペプチドは、本発明で使用する別の好ましいキャリアポリペプチドである。
【0122】
国際公開第2018/126229号は、nnAAの置換に好適である複数のアミノ酸残基について記載している(例えば、Lys-24、Lys-33、Lys-37、Lys-39、Lys-212、Lys-214、Lys-227、Lys-244、Lys-264、Lys-385、Lys-522、Lys-526、Phe-12、Phe-53、Phe-123、Phe-127、Phe-140、Phe-167、Phe-250、Phe-389、Phe-530、又はPhe-531であり、本明細書における配列番号1に従って番号付けした)。置換可能である他の残基は、以下のものである:Asp-211;Asp-295;Asp-352;Asp-392;Asp-465;Asp-467;Asp-507;Asp-519;Asn-296;Asn-359;Asn-399;Asn-481;Asn-486;Asn-502;Asn-524;Glu-240;Glu-248;Glu-249;Glu-256;Glu-259;Glu-292;Glu-362;Gln-252;Gln-287;Lys-212;Lys-218;Lys-221;Lys-229;Lys-236;Lys-264;Lys-299;Lys-385;Lys-456;Lys-474;Lys-498;Lys-516;Lys-522;Lys-534;Arg-377;Arg-407;Arg-455;Arg-460;Arg-462;Arg-472;Arg-493;Ser-198;Ser-200;Ser-231;Ser-233;Ser-239;Ser-261;Ser-374;Ser-381;Ser-297;Ser-397;Ser-451;Ser-475;Ser-494;Ser-495;Ser-496;Ser-501;Ser-505;Thr-253;Thr-265;Thr-267;Thr-269;Thr-293;Thr-386;Thr-400;Thr-408;Thr-469;及び/又はThr-517。
【0123】
また、(i)配列番号1に対して少なくとも80%(例えば、≧85%、≧90%、≧95%、≧96%、≧97%、又は好ましくは≧98%)の配列同一性を有し、(ii)Arg-Argジペプチド配列を含まず、かつ、(iii)少なくとも1つのnnAA残基を含んだアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、N末端メチオニンを有する及び/又は単量体型である、当該ポリペプチドを提供する。
【0124】
これらCRM197由来のキャリアポリペプチドは、先行技術(例えば上記Broker et al.2011、国際公開第2015/117093号等を参照)でCRM197が用いられてきたのと同様の結合方法で用いることが可能であるが、nnAA残基を介して部位特異的な結合が可能となる改善を伴う。それらは、概して、他のCRM197を又はCRM197由来のサブユニットを伴ってポリペプチド多量体を形成するのではなく、単量体型で用いられることとなる。同様に、それらは、概して、例えばCys-186及びCys-201(配列番号1に従って番号付けした)の間、ならびに随意にCys-461及びCys-471の間に、少なくとも1つのジスルフィド架橋を含むこととなる。
【0125】
またこれら種々のキャリアポリペプチドであってそのnnAAのうちの少なくとも1つを介して糖抗原に結合したこれら種々のキャリアポリペプチドのいずれかを含む免疫原性複合体を提供する。このキャリアポリペプチドは、その中のnnAA残基を介して肺炎球菌の莢膜糖類に結合するのに特に有用である。この方法で調製された免疫原性複合体を組み合わせて、本明細書の別の箇所で論じた多価の組成物を形成することが可能である。
【0126】
すなわち、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含む免疫原性複合体であって、(i)キャリアポリペプチドは配列番号4のアミノ酸配列であって、例えば各XがpAMFである配列番号4のアミノ酸配列を有し、また(ii)糖抗原は、配列番号4における少なくとも1つのnnAA残基を介してキャリアポリペプチドと共有結合する、当該免疫原性複合体を提供する。また2以上のこうした免疫原性複合体を含む多価の医薬組成物を提供する。
【0127】
すなわち、複数の異なる複合体(例えば、異なる肺炎球菌血清型)を含む医薬組成物であって、当該複合体のそれぞれが、配列番号4のアミノ酸配列を有するキャリアポリペプチドを含む、当該医薬組成物を提供する。
【0128】
またキャリアポリペプチドと糖抗原とを含む免疫原性複合体であって、(i)キャリアポリペプチドは配列番号4のアミノ酸配列を有し、(ii)糖抗原は、配列番号4における少なくとも1つのnnAA残基を介してキャリアポリペプチドと共有結合し、また(iii)糖抗原は、肺炎球菌血清型1、2、3、4、5、6A、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F及び33Fのいずれかよりの莢膜糖類である、当該免疫原性複合体を提供する。これら個々の複合体を組み合わせて、本発明の多価の医薬組成物を作製することが可能である。
【0129】
また、本明細書に記載のキャリアポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。別の実施形態においては、本開示は、当該ポリヌクレオチドを含む発現ベクターを提供する。別の実施形態においては、本開示は、当該発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0130】
アジュバント
本発明の医薬組成物は、アルミニウム塩アジュバントを含むことが可能である。このアジュバントは、医薬組成物内において複合体の免疫原性を増強することが可能である。当該組成物内の複合体は、アルミニウム塩アジュバントに吸着することができる。
【0131】
有用なアルミニウム塩アジュバントには、水酸化アルミニウムアジュバント及びリン酸アルミニウムアジュバントが含まれるが、これに限定されない。これらアジュバントは、例えばVaccine Design・・・(1995)eds.Powell&Newman.ISBN:030644867X.Plenumの8章及び9章に記載されている。
【0132】
「水酸化アルミニウム」として通常知られるアジュバントは、典型的にはオキシ水酸化アルミニウム塩であり、これは通常、少なくとも部分的に結晶体である。一般式AlO(OH)で表すことが可能であるオキシ水酸化アルミニウムは、赤外(IR)分光法での、特に1070cm-1の吸収帯と、3090~3100cm-1における強い強度の肩とが存在することにより、例えばAl(OH)等である他のアルミニウム化合物と区別することが可能である(Powell&Newmanの9章)。水酸化アルミニウムアジュバントの結晶化度は、半値幅(WHH)における回折帯の幅で反映され、結晶化度が低い粒子は、その結晶サイズがより小さいことに起因して、より大きなスペクトル線幅の拡大を見せる。WHHが増加するほど表面積は増加し、WHH値が高いアジュバントは、より大きい抗原吸着性能を有することがわかっている。繊維の形態学(例えば、透過型電子顕微鏡写真で見られるような)は、典型的には、水酸化アルミニウムアジュバントでは、例えば約2nmの直径の針状粒子である。水酸化アルミニウムアジュバントのpIは、典型的には約11であり、すなわち生理的pHにおいては、アジュバント自体はプラスの表面電荷を有する。水酸化アルミニウムアジュバントでは、pH7.4で、Al+++1mg当たり1.8から2.6mgのタンパク質という吸着性能が報告されている。
【0133】
「リン酸アルミニウム」として通常知られるアジュバントは、典型的には、ヒドロキシリン酸アルミニウム(aluminum hydroxyphosphate)であり、これはまた少量の硫酸塩(すなわち、ヒドロキシリン酸アルミニウム硫酸塩(aluminum hydroxyphosphate sulfate))を含有することが多い。それらは、沈殿により得ることができ、また沈殿の際の反応条件及び濃度が、塩における水酸基に対するリン酸塩の置換度に影響を及ぼす。ヒドロキシリン酸塩は、概して、PO/Alのモル比が0.3から1.2である。ヒドロキシリン酸塩は、水酸基が存在することで、厳密なAlPOと区別することが可能である。例えば、3164cm-1(例えば、200℃に加熱したとき)であるIRスペクトル帯は、構造上の水酸基の存在を示唆する(Powell&Newmanの9章)。
【0134】
リン酸アルミニウムアジュバントのPO/Al3+のモル比は、概して、0.3から1.2とすることとなり、好ましくは0.8から1.2、またより好ましくは0.95±0.1とすることとなる。リン酸アルミニウムは、概して非結晶であることとなり、特にヒドロキシリン酸塩で非結晶であることとなる。典型的なアジュバントは、0.6mg Al3+/mlを含んだ、0.84から0.92であるPO/Alのモル比をもつ非結晶ヒドロキシリン酸アルミニウムである。リン酸アルミニウムは、概して、粒状であることとなる(例えば、透過型電子顕微鏡写真で見られる場合、板状形態であり、50nmの範囲内に一次粒子を伴う)。粒子の典型的な直径は、任意の抗原吸着後で0.5から20μmの範囲(例えば、約5から10μm)である。リン酸アルミニウムアジュバントでは、pH7.4で、Al+++1mg当たり0.7から1.5mgのタンパク質という吸着性能が報告されている。
【0135】
リン酸アルミニウムのゼロ電荷点(PZC)は、水酸基に対するリン酸塩の置換度に逆相関しており、またこの置換度は、沈殿による塩の調製に用いる反応物の反応条件及び濃度に依存して変動し得る。PZCはまた、溶液中の遊離リン酸塩イオンの濃度を変化させることによって(リン酸塩が多い=PZCがより酸性)、又はヒスチジン緩衝液等である緩衝液を加えることによって(PZCをより塩基性にさせる)、変動する。本発明により用いられるリン酸アルミニウムは、概して、4.0から7.0の、より好ましくは5.0から6.5、例えば約5.7である、PZCを有することとなる。
【0136】
患者に投与する組成物中のアルミニウムイオンの濃度は、好ましくは、2.5mg/ml未満、例えば≦2mg/ml、≦1mg/ml等である。好ましい最大濃度は、≦1.7mg/mLである。本発明の組成物中のAl+++の範囲は、0.3から1mg/ml又は0.3から0.5mg/mlであり得る。最大が0.85mg/用量であることが好ましい。
【0137】
溶液中で、リン酸アルミニウム及び水酸化アルミニウムの両アジュバントは、直径1から10μmの安定な多孔性凝集体を形成する傾向がある。組成物には、水酸化アルミニウムアジュバントとリン酸アルミニウムアジュバントとの両方の混合物を含めることが可能である。
【0138】
ある組成物が複数の複合体を含み、これらのそれぞれが、あるアルミニウム塩アジュバントに吸着する場合、各複合体は、個々にアルミニウム塩に吸着させてその後混合することが可能であり、又はそれらは、順々にアルミニウム塩に加えられて、それによって混合の複合体組成物を形成することが可能である。いずれのアプローチの混合物も用いることが可能である。
【0139】
医薬組成物用賦形剤
本発明の医薬組成物は、概して、1又は複数の薬理学的に許容される賦形剤を含むこととなる。こうした賦形剤の包括的な議論は、Handbook of Pharmaceutical Excipients(ed.Rowe et al.),6th edition 2009に見ることができる。
【0140】
医薬組成物は、特に投与の際に、水性形態であることが好ましいが、それらは、投与のために水性形態に変えることが可能である乾燥形態(例えば、凍結乾燥物として等)で存在することも可能である。
【0141】
医薬組成物は、緩衝剤又はpH調整剤を含むことが可能である。緩衝剤は、リン酸塩緩衝液、酢酸塩緩衝液、ヒスチジン緩衝液、クエン酸塩緩衝液、琥珀酸塩緩衝液、トリス緩衝液、HEPES緩衝液等からなる群から選択することが可能である。緩衝塩を、典型的には、5から20mMの範囲で含めることとなる。
【0142】
医薬組成物は、例えば張度を制御するために、ナトリウム塩等の生理食塩水を含むことが可能である。塩化ナトリウム(NaCl)が典型的であり、これは、例えば10±2mg/ml又は9mg/mlである、1から20mg/mlで存在し得る。存在し得る他の塩には、塩化カリウム、リン酸二水素カリウム、二ナトリウムリン酸塩デハイドレート(disodium phosphate dehydrate)、塩化マグネシウム、塩化カルシウム等が挙げられる。他の有用な塩は、ナトリウム、カリウム又はアンモニウムの陽イオン、及び塩化物、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、重炭酸塩、硫酸塩、チオ硫酸塩、又は亜硫酸水素塩の陰イオンを有し得る。
【0143】
医薬組成物には、酢酸又はコハク酸等の有機酸を含むことが可能である。これは、緩衝剤系の一部であり得る。
【0144】
医薬組成物は、マンニトール又はソルビトール等である糖アルコールを含み得る。医薬組成物は、ショ糖又はブドウ糖等である糖を含み得る。
【0145】
医薬組成物は、界面活性剤を含み得る。好適な界面活性剤には、ポリソルベート20、ポリソルベート80、及びドデシル硫酸ナトリウム(SDS)が含まれるが、これに限定されない。一部の実施形態においては、界面活性剤は、0.0003%から0.3%(w/w)であって、例えば0.01から0.03%の濃度で存在する。ポリソルベート80が、好ましい界面活性剤である。
【0146】
医薬組成物は、チオメルサール又は2-フェノキシエタノール等である防腐剤を含み得る。好ましくは、組成物は、実質的に水銀材料を含まない(例えば、<10μg/ml)、例えばチオメルサールを含まない、ことが必要である。水銀を含有しない組成物がより好ましい。防腐剤を含めることは、特に、組成物がアルミニウム塩アジュバントを含むときに有用であり得るが、これは、それらの不溶性が、組成物が概して細菌増殖に悪影響を与えることを遮断することが可能である濁った外観の懸濁液である、ということを意味しているからである。防腐剤はまた、組成物が、例えば複数回使用バイアル中であるような複数回用いられる場合に、特に有用である。しかしながら、医薬組成物は、防腐剤を含まないものであり得ることが多い。
【0147】
医薬組成物は、200mOsm/kgから400mOsm/kgであって、例えば240から360mOsm/kg、又は290から310mOsm/kgである、重量オスモル濃度を有し得る。
【0148】
医薬組成物は、典型的には、pHが5.0から9.5であり、例えば5.0から8.0又は6.0から8.0である。
【0149】
医薬組成物は、例えば1用量当たり<1EU(エンドトキシンユニット、標準尺度)、また好ましくは1用量当たり<0.1EUを含有する、非発熱性のものが好ましい。
【0150】
医薬組成物は、200から400mOsm/kgであって、例えば240から360mOsm/kg、又は280から320mOsm/kgである、重量オスモル濃度を有してもよい。
【0151】
医薬組成物は、グルテンを含まないことが好ましい。
【0152】
医薬組成物は、動物(及び、特にヒト)である患者への投与に好適であり、すなわちヒト及び獣医での使用の両方を含める。
【0153】
医薬組成物は、単位用量の形態で調製され得る。一部の実施形態においては、単位用量は、0.1から1.0ml、例えば約0.25mL又は好ましくは約0.5mlの量であり得る。こうした量は、ヒトにおける注射用であることが理想的である。
【0154】
複合体濃度
医薬組成物は、複数の免疫原性複合体を含み得る。現在認可されている髄膜炎菌結合型ワクチンには、4種の異なる血清群よりの莢膜糖類が含まれ、また認可されている肺炎球菌結合型ワクチンには、7、10又は13種の異なる血清型よりの莢膜糖類が含まれる。すなわち、本発明の組成物は、例えば3から50種の異なる複合体(例えば、14、15、20、21、24、25、又はそれ以上)を含むことが可能である。例えば、これら複合体のそれぞれには、同一の菌種の異なる血清型又は血清群(例えば、複数の髄膜炎菌性血清群又は複数の肺炎球菌血清型)よりの莢膜糖類が含まれ得る。
【0155】
医薬組成物にn種の異なる免疫原性複合体が含まれる場合、それらn種の複合体中のキャリアポリペプチドの総量は、1用量当たり3nμg以下であり得る。言い換えれば、1複合体当たりのキャリアポリペプチドの平均量は、3μg未満である。総量は、例えば、1用量当たりnから2.5nμgであり得る。
【0156】
医薬組成物にn種の異なる免疫原性複合体が含まれる場合、それらn種の複合体中の糖抗原の総量は、1用量当たり4.4nμg以下であり得る。言い換えれば、1複合体当たりの糖類の平均量は、4.4μg未満である。総量は、例えば、1用量当たり0.4nから4.4nμgであり、例えば1.1nから2.2nであり得る。
【0157】
医薬組成物にn種の異なる免疫原性複合体が含まれる場合、それらn種の複合体に関するキャリアポリペプチドの総濃度は、6nμg/mL以下であり得る。言い換えれば、1複合体当たりのキャリアポリペプチドの平均濃度は、6μg/mL未満である。総濃度は、例えば、nから4nμg/mLであり得る。
【0158】
医薬組成物にn種の異なる免疫原性複合体が含まれる場合、それらn種の複合体に関する糖抗原の総濃度は、8.8nμg/mL以下であり得る。言い換えれば、1複合体当たりの糖類の平均濃度は、8.8μg/mL未満である。総濃度は、例えば、0.8nから8.8nμg/mLであり、例えば2.2nから4.4nμg/mLであり得る。
【0159】
一部の実施形態においては、本発明の多価の医薬組成物の単位用量中の結合したキャリアポリペプチドの総量は、4から128μg、例えば8から64μg又は16から48μgであり得る。本発明の多価の医薬組成物における結合したキャリアポリペプチドの濃度は、8から256μg/mL、例えば16から128μg/mL又は32から96μg/mLであり得る。
【0160】
一部の実施形態においては、本発明の多価の医薬組成物の単位用量中の結合した糖抗原の総量は、10から120μg、例えば20から90μg又は30から60μgであり得る。本発明の多価の医薬組成物における結合した糖抗原の濃度は、20から240μg/mL、例えば40から180μg/mL又は60から120μg/mLであり得る。
【0161】
非結合成分
上記に記載したとおり、医薬組成物は、例えば3から50種の異なる複合体(例えば、14、15、20、21、24、25、又はそれ以上)である複数の免疫原性複合体を含むことが可能である。例えば、これら複合体のそれぞれには、同一の菌種の異なる血清型又は血清群よりの莢膜糖類が含まれ得る。
【0162】
一部の実施形態においては、この組成物は、非結合形態での、複合体のキャリアポリペプチドを含まない。他の実施形態においては、非結合であるキャリアポリペプチドが低レベルで存在するが、ただし、組成物中の非結合であるキャリアポリペプチドの質量は、全体としての組成物のn種の免疫原性複合体中のキャリアポリペプチドの質量のうちの<10%(例えば、<5%又は<2%)である。
【0163】
一部の実施形態においては、この組成物は、非結合形態での、複合体の糖類を含まない。他の実施形態においては、非結合である糖類が低レベルで存在するが、ただし、組成物中の非結合である糖類の質量は、組成物のn種の免疫原性複合体中の糖類の総質量のうちの<10%(例えば、<5%又は<2%)である。
【0164】
容器、送達デバイス等
免疫原性複合体を含む医薬組成物は、滅菌容器、送達デバイス等内に包装され得る。滅菌は、容器を気密にさせるようにして容器を気密密閉することによって維持され得る。好適な容器には、バイアル、シリンジ、ネブライザー、スプレー、吸入器、皮膚パッチ等が含まれるがこれに限定されない。バイアル及びシリンジが好ましい。
【0165】
免疫原性組成物は、バイアル内に含有させることが多い。バイアルは、好ましくは、プラスチック材料で、又は好ましくはガラスでできている。バイアルは、充填後に封止されるが、当該封止は、使用の間際に破ることが可能である。バイアルは、好ましくは、滅菌した後で、組成物をそこに加えてその後封止する。ラテックス感受性患者での問題を回避するため、バイアルは、ラテックスを含まない栓で封止し得、また全ての包装材料中でラテックスを含まないことが好ましい。バイアルは、組成物の1回分の単位用量を含めることが理想的であるが、それは例えば10回の投与量である、1回以上の投与量(複数回使用バイアル)を含むこともあり得る。好ましいバイアルは、無色のガラス製である。
【0166】
バイアルは、シリンジを蓋に挿入して、バイアルとシリンジとの間で材料の移動(両方向に)を促すことが可能であるように適合された蓋(例えば、ルアーロック)を有し得る。バイアルからシリンジを除いた後、次いで針を取り付けることが可能であり、そして組成物を、対象に投与することが可能である。蓋は、蓋に到達可能にする前に封止又はカバーを取り除かなければならないように、封止又はカバーの内側に配置することが好ましい。バイアルは、特に複数回分用量のバイアル用で、その内容物を無菌で取り出すことを可能にする蓋を有し得る。
【0167】
組成物は、いつでも対象に投与される状態で、送達デバイス内に含有させることができる。当該組成物は、使用の間際に送達デバイスに(例えばバイアルから)移すことが可能であり、又は当該組成物は、製造段階で送達デバイスに入れることが可能である(例えば、事前充填シリンジの形態で)。
【0168】
本発明で使用するシリンジは、ガラス又はプラスチック製(例えば、シクロオレフィン重合体製又はシクロオレフィン共重合体製)であり得る。シリンジ(特に、ガラス製シリンジ)は、シリコン処理をしたシリンジであってもよい。非シリコン処理のシリンジもまた、例えば、テルモ社のPLAJEX(商標)シリンジで利用可能であるテルモ社のi-Coating(商標)システムを用いて、又は、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)共重合体を有する大協精工社(Daikyo)製CZ(商標)シリンジを用いて、又はパーフルオロポリエーテル(PFPE)を有するTriboGlide(商標)シリンジを用いて、使用することが可能である。シリコン処理の代わりに、炭素膜が用いられていてもよい(例えば、特開2001190665を参照)。シリコンを含まないシリンジは、特開2011212183にも開示されている。欧州特許出願公開第0375778号公報に開示されるようなプランジャーストッパーを含む非シリコン処理のシリンジもまた用いてもよく、すなわち、この場合ストッパーは、動摩擦係数が小さい熱可塑性樹脂層で少なくとも一部が覆われている熱可塑性エラストマーを有する。
【0169】
組成物を、シリンジ内に含有させる場合、シリンジは、シリンジの内容物を対象に注射又はある容器内に注入するための、シリンジに取り付けられる針を有し得る。シリンジは、既に取り付けられている針と共に供給されてもよい。針が取り付けられていない場合、別個の針を、組立もしくは使用のためにシリンジと共に供給し得るか、又は針は、別個の起源であることが可能である。こうした針は、使用の時点で滅菌されている必要があり、また包まれていてもよい。安全針を使用することができる。1インチ、23ゲージの針、1インチ、25ゲージの針、及び5/8インチ、25ゲージの針が典型的である。1/2インチ~1と1/2インチ、22~25ゲージの針を用いることが可能である。シリンジ及び針が別個に包装されている場合には、針はブチルゴムのシールドと共に装着することが好ましい。
【0170】
シリンジは、ロット番号と内容物の使用期限とを印刷することができる剥離ラベルと共に提供され、記録管理を促すことが可能である。シリンジ内のプランジャーに、ストッパーを設け、吸引中に偶発的にプランジャーが外れることを防止することが可能である。シリンジは、ラテックスゴムの蓋及び/又はプランジャーを有し得るが、例えばラテックスを含まないシクロブチルゴム又はラテックスを含まないイソプレンブロモブチルゴムであるラテックスを含まないゴムを用いることが可能である。シリンジは、概して、先端の蓋を有して、針装着前の先端を封止することとなり、また先端の蓋は、例えばラテックスを含まないイソプレンブロモブチルゴムであるブチルゴム製であることが好ましい。有用なシリンジは、例えば、商品名「Tip-Lok」(商標)のもとに市販されているシリンジである。
【0171】
容器は、例えば小児への送達を容易にする、半用量の量を示す印がついていてもよい。例えば、0.5ml用量を含有するシリンジが、0.25ml量を示す印を有し得る。シリンジ自体は、用量を超える容積を有してもよく、例えば1mlシリンジを用いて、0.5mlの用量の医薬組成物を含有させることが可能である。使い捨ての又は事前充填のシリンジは、通常、単回用量のワクチンを含有する。
【0172】
ガラス容器(例えば、シリンジ又はバイアル)を用いる場合、ソーダ石灰ガラスではなくホウケイ酸ガラス製であることが好ましい。
【0173】
容器は、例えば投与指示、ワクチン内の抗原の詳細等であるワクチンの詳細を含めたリーフレットと共に包装してもよい(例えば、同一の箱に)。この指示はまた、例えばワクチン接種後のアナフィラキシー反応の場合に容易に利用可能であるアドレナリン溶液を所有しておくこと等の警告を含有してもよい。複数の容器を、例えば同一の箱に、一緒に包装してもよい。
【0174】
医薬組成物は、1容器当たり(例えばシリンジ当たり、又はバイアル当たり)単回用量で、単位用量の形態で存在することが可能である。各単位用量を個々に製造するのではなく、バルク組成物を調製して、単位用量を取り出して、それらの容器内に個々に包装する。すなわち、例えば、複数の単位用量を、当該バルクから取り出して、そして各単位用量を別個の容器に、例えばシリンジ又はバイアルに、移す。
【0175】
免疫応答の増加
免疫原性複合体を哺乳動物である対象に投与して、その複合体中の抗原に対する防御免疫応答を引き出すことが可能である。それらは、医薬組成物の形態で投与することとなる。組成物は、本明細書の別の箇所に記載したような複数の免疫原性複合体を含み得るので、多数の抗原に対する防御免疫応答を、同時に引き出すことが可能である。
【0176】
すなわち、哺乳動物である対象に、抗原の複合体を投与することによって、当該対象において1又は複数の抗原に対する防御抗体応答を引き出す方法を提供する。
【0177】
また、防御抗体応答を引き出す際に使用するための、本明細書に開示するような複合体を提供する。
【0178】
また防御抗体応答を引き出すための医薬の製造における、本明細書に開示するような複合体の使用を提供する。
【0179】
また、(i)哺乳動物である対象に、本発明の多価の組成物を投与することによって、当該対象において複数の抗原に対する防御抗体応答を引き出す方法と、(ii)防御抗体応答を引き出す際に用いるための、本発明の多価組成物と、(iii)多数の抗原に対する防御抗体応答を引き出すための多価の医薬組成物の製造における、本明細書に開示するような多数の複合体の使用とを提供する。
【0180】
防御免疫応答を引き出す能力とは、例えば、肺炎球菌(S.pneumoniae)が引き起こす侵襲性疾患の予防、肺炎球菌(S.pneumoniae)が引き起こす中耳炎の予防、肺炎球菌(S.pneumoniae)が引き起こす肺炎の予防のための能動免疫、髄膜炎菌(N.meningitidis)に曝露する危険性がある対象の能動免疫を提供して、侵襲性疾患を予防すること等に複合体を用いることが可能であることを意味する。
【0181】
医薬組成物は、種々の形態に調製可能である。例えば、組成物は、注射剤として、例えば溶液又は懸濁液として、調製できる。筋肉内投与用の注射剤が典型的である。ヒトに対しては、約0.5mlの注射量が好ましい。すなわち、好ましい単位用量の量は、約0.5mlである。筋肉内注射による投与は、典型的には、例えば乳幼児の大腿の前外側面に、又は幼児、小児及び成人の上腕三角筋になされる。
【0182】
複合体は、典型的に、多回投与スケジュールに従って投与することとなる。多回投与は、一次免疫スケジュール及び/又は追加免疫スケジュールで用いてもよい。多回投与(典型的には2回投与)の施与は、特に、免疫未感作の患者で有用である。多回投与は、典型的に、少なくとも1週間空けて(例えば、約2週間、約3週間、約4週間、約6週間、約8週間、約10週間、約12週間等)施与することとなる。
【0183】
全般
「含む(comprising)」の語は、「含む(including)」のみならず「~からなる(consisting)」を包含し、例えば、Xを「含む(comprising)」組成物は、排他的にXからなり得るか、又は、例えばX+Yで追加的に何かを含み得る。
【0184】
数値xに関連した「約」の語は任意選択であり、例えば、x±10%を意味する。
【0185】
「実質的に」の語は、「完全に」を除外せずに、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まなくてもよい。必要であれば、「実質的に」の文言は、本発明の定義から省いてもよい。
【0186】
2つのアミノ酸配列の文脈における「配列同一性」の語は、配列比較アルゴリズム(例えばBLASTP)を用いて測定した場合、比較窓に対して最大の一致で比較してアラインしたときに、同一であるか又は特定の割合で同一のアミノ酸残基を有する2つの配列を指す。同一性の割合は、例えば配列番号1又は2で示した参照配列等、本明細書で開示する完全長の参照配列に対して決定する。本明細書で提供するような配列同一性の算出方法は、語長(W)が3、期待値(E)が10で設定されたそのデフォルト値と、BLOSUM62スコア行列とを有するBLASTPプログラムである(例えば、Henikoff&Henikoff,1989,Proc Natl Acad Sci USA 89:10915を参照)。例えば、blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgiのワールドワイドウェブ又は他の場所で利用可能であるBLASTアラインメントツールを参照されたい。
【0187】
本明細書で用いる場合、また別段に特定していない限り、「低級アルキル」の語は、1から6個の炭素原子を有する飽和の直鎖炭化水素又は分枝鎖炭化水素を指し、すなわちCからCのアルキルである。ある実施形態においては、低級アルキル基は、1級、2級、又は3級の炭化水素である。この語には、飽和部分及び不飽和部分の両方が含まれる。米国特許公開公報第2014/0066598号もまた参照されたい。「低級アルキレン」の語は、低級アルキルのアルキレンラジカルを指す。
【0188】
別段に規定していない限り、本明細書で用いる全ての技術用語及び科学用語は、通常理解される意味を有する。特に実施者は、Green&Sambrook(eds.)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,4th ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(2012)、及びAusubel,F.M.,et al.,Current Protocols in Molecular Biology(Supplement 99),John Wiley&Sons,New York(2012)、及びPlotkin,S.A.,Orenstein,W.A.,&Offit,P.A.,Vaccines,6th ed,Elsevier,London(2013)に誘導される。
【0189】
無細胞合成の方法は、Spirin&Swartz(2008)Cell-free Protein Synthesis,Wiley-VCH,Weinheim,Germanyに記載されている。無細胞合成を用いた、非天然アミノ酸をタンパク質に組み込む方法は、Shimizu et al.(2006)FEBS Journal,273,4133-4140に、またChong(2014)Curr Protoc Mol Biol.108:16.30.1-11にも記載されている。
【0190】
一部の実施形態においては、この発明は、配列番号3が、24種の肺炎球菌血清型1、2、3、4、5、6A、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F、及び33F(国際公開第2018/126229号で例示される)のそれぞれよりの複合体のためのキャリアポリペプチドとして用いられているような組成物を包含しない。より概略的には、一部の実施形態においては、この発明は、配列番号3が、多価の組成物における各複合体のためのキャリアポリペプチドとして用いられているような組成物を包含しない。
【0191】
実施形態の列挙
実施形態I-1 キャリアポリペプチドと糖抗原とを含む免疫原性複合体を含む医薬組成物を含有する滅菌容器であって、糖抗原が、キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介してキャリアポリペプチドと共有結合するものである、当該滅菌容器。
【0192】
実施形態I-2 キャリアポリペプチドと糖抗原とを含む免疫原性複合体を含む医薬組成物を含有する気密密閉容器であって、糖抗原が、キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介してキャリアポリペプチドと共有結合するものである、当該気密密閉容器。気密密閉に好適な容器には、例えばバイアルが含まれる。この内容物は、気密密閉の際に滅菌してあることが好ましい。
【0193】
実施形態I-3 例えばバイアル等の滅菌ガラス容器である、実施形態I-1又はI-2の容器。
【0194】
実施形態I-4 キャリアポリペプチドと糖抗原とを含む免疫原性複合体を含む医薬組成物を含有する送達デバイスであって、糖抗原が、キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介してキャリアポリペプチドと共有結合するものである、当該送達デバイス。
【0195】
実施形態I-5 シリンジである、実施形態I-1もしくはI-2の容器又は実施形態I-4の送達デバイス。
【0196】
実施形態I-6 2種以上の異なる免疫原性複合体と、アルミニウム塩アジュバントとを含む医薬組成物であって、(i)各免疫原性複合体は、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含み、糖抗原が、キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介してキャリアポリペプチドと共有結合し;また(ii)アルミニウム塩アジュバントは水酸化アルミニウムアジュバント又はリン酸アルミニウムアジュバントである、当該医薬組成物。
【0197】
実施形態I-7 2種以上の異なる免疫原性複合体と、リン酸アルミニウムアジュバントとを含む医薬組成物であって、(i)各免疫原性複合体は、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含み、糖抗原が、キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介してキャリアポリペプチドと共有結合し、また(ii)当該組成物におけるアルミニウムイオンの濃度は、≦2.5mg/mLである、当該医薬組成物。
【0198】
実施形態I-8 2種以上の異なる免疫原性複合体を含む医薬組成物であって、(i)各免疫原性複合体は、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含み、糖抗原が、キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介してキャリアポリペプチドと共有結合し、また(ii)当該医薬組成物の量は、0.25から1.25mLである、当該医薬組成物。
【0199】
実施形態I-9 2種以上の異なる免疫原性複合体と防腐剤とを含む医薬組成物であって、各免疫原性複合体は、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含み、糖抗原が、キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介してキャリアポリペプチドと共有結合するものである、当該医薬組成物。
【0200】
実施形態I-10 2種以上の異なる免疫原性複合体を含む、防腐剤を含まない医薬組成物であって、各免疫原性複合体は、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含み、糖抗原が、キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介してキャリアポリペプチドと共有結合するものである、当該防腐剤を含まない医薬組成物。
【0201】
実施形態I-11 2種以上の異なる免疫原性複合体を含む医薬組成物であって、(i)各免疫原性複合体は、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含み、糖抗原が、キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介してキャリアポリペプチドと共有結合し、(ii)当該組成物は、重量オスモル濃度が200から400mOsm/kgである、当該医薬組成物。
【0202】
実施形態I-12 2種以上の異なる免疫原性複合体と、少なくとも1つの賦形剤とを含む医薬組成物であって、(i)各免疫原性複合体は、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含み、糖抗原が、キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介してキャリアポリペプチドと共有結合し、また(ii)少なくとも1つの賦形剤は、塩化ナトリウム、コハク酸、及びポリソルベート80からなる群から選択される、当該医薬組成物。
【0203】
実施形態I-13 n種の異なる免疫原性複合体を含む医薬組成物であって
(i)n種の免疫原性複合体のそれぞれは、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含み、糖抗原が、キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介してキャリアポリペプチドと共有結合し;
(ii)nは、3から50の整数であり、また
(iii)n種の免疫原性複合体におけるキャリアポリペプチドの総量は、1用量当たり3nμg以下であり;
(iv)n種の免疫原性複合体におけるキャリアポリペプチドの総濃度は、6nμg/ml以下であり;
(v)n種の免疫原性複合体における糖抗原の総量は、1用量当たり3nμg以下であり;
(vi)n種の免疫原性複合体における糖抗原の総濃度は、6nμg/mL以下であり;
(vii)1複合体当たりのキャリアポリペプチドの平均量は、1用量当たり1から4μgであり;
(viii)1複合体当たりのキャリアポリペプチドの平均濃度は、2から8μg/mLであり;
(ix)1複合体当たりの糖抗原の平均量は、1用量当たり1から4μgであり;
(x)1複合体当たりの糖抗原の平均濃度は、2から8μg/mLであり;
(xi)当該組成物は、非結合形態でのキャリアポリペプチドを含まず;
(xii)当該組成物は、非結合形態でのキャリアポリペプチドを含有し、組成物における非結合形態での当該キャリアポリペプチドの質量は、n種の免疫原性複合体におけるそのキャリアポリペプチドの質量のうちの<10%であり;
(xiii)当該組成物は、非結合形態での糖抗原を含まず;及び/又は
(xiv)当該組成物は、非結合形態での糖抗原の少なくとも1つを含有し、組成物における非結合形態での当該糖抗原の総質量は、n種の免疫原性複合体における糖抗原の総質量のうちの<10%である、当該医薬組成物。
【0204】
実施形態I-14 単位用量の医薬組成物を複数調製する方法であって、(i)当該医薬組成物は、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含む免疫原性複合体を含み、糖抗原が、キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介してキャリアポリペプチドと共有結合し;また(ii)当該方法は、免疫原性複合体を含むバルク組成物を調製するステップと、複数の別個の容器に当該バルク組成物から個々の単位用量を包装するステップとを含むものである、当該方法。
【0205】
実施形態I-15 医薬組成物を調製する方法であって、当該医薬組成物は、2種以上の異なる免疫原性複合体とアルミニウム塩アジュバントとを含み、(i)免疫原性複合体のそれぞれは、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含み、また(ii)糖抗原が、キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介してキャリアポリペプチドと共有結合するものであり、そして当該方法は、(A)免疫原性複合体のそれぞれをあるアルミニウム塩アジュバントに別個に吸着させて、次いで個々の吸着した複合体を一緒に混合するステップ、又は(B)免疫原性複合体のそれぞれを、アルミニウム塩アジュバントに順次吸着させるステップを含むものである、当該方法。
【0206】
実施形態I-16 (i)配列番号1に対して少なくとも80%の配列同一性を有し;(ii)Arg-Argジペプチド配列を含まず、かつ、(iii)少なくとも1つのnnAA残基を含んだ、アミノ酸配列を含む、キャリアポリペプチド。
【0207】
実施形態I-17 (i)配列番号1に対して少なくとも80%の配列同一性を有し;かつ、(ii)以下のアミノ酸残基(配列番号1に従って番号付けした)のうちの1又は複数においてnnAAの置換を含んだアミノ酸配列を含む、キャリアポリペプチド:Asp-211;Asp-295;Asp-352;Asp-392;Asp-465;Asp-467;Asp 507;Asp 519;Asn 296;Asn 359;Asn 399;Asn 481;Asn 486;Asn 502;Asn 524;Glu 240;Glu 248;Glu 249;Glu 256;Glu 259;Glu 292;Glu 362;Gln 252;Gln 287;Lys 212;Lys 218;Lys 221;Lys 229;Lys 236;Lys 264;Lys 299;Lys 385;Lys 456;Lys 474;Lys 498;Lys 516;Lys 522;Lys 534;Arg 377;Arg 407;Arg 455;Arg 460;Arg 462;Arg 472;Arg 493;Ser 198;Ser 200;Ser 231;Ser 233;Ser 239;Ser 261;Ser 374;Ser 381;Ser 297;Ser 397;Ser 451;Ser 475;Ser 494;Ser 495;Ser 496;Ser 501;Ser 505;Thr 253;Thr 265;Thr 267;Thr 269;Thr 293;Thr 386;Thr 400;Thr 408;Thr-469;及び/又はThr 517。
【0208】
実施形態I-18 配列番号1のうちのArg-193が、例えばAsn等である異なるアミノ酸で置換されている、実施形態I-16又はI-17に記載のキャリアポリペプチド。
【0209】
実施形態I-19 抗原に対して、キャリアポリペプチド内のnnAA残基を介して結合した、実施形態I-16又はI-17又はI-18に記載のキャリアポリペプチドを含む免疫原性複合体。
【0210】
実施形態I-20 キャリアポリペプチドと糖抗原とを含む免疫原性複合体であって、(i)キャリアポリペプチドは配列番号4のアミノ酸配列を含み、また(ii)糖抗原は、配列番号における少なくとも1つのnnAA残基を介してキャリアポリペプチドと共有結合する、当該免疫原性複合体。
【0211】
実施形態I-21 実施形態I-20記載の2種以上の異なる免疫原性複合体を含む、医薬組成物。
【0212】
実施形態I-22 キャリアポリペプチドが、4から9個のnnAA残基を含む、上述した実施形態のいずれかに記載の、容器、デバイス、組成物、方法、ポリペプチド、又は複合体。
【0213】
実施形態I-23 キャリアポリペプチドの天然の配列におけるリシンが、少なくとも1個のnnAAで置換されている、上述した実施形態のいずれかに記載の、容器、デバイス、組成物、方法、ポリペプチド、又は複合体。
【0214】
実施形態I-24 キャリアポリペプチドが配列番号1に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、上述した実施形態のいずれかに記載の、容器、デバイス、組成物、方法、ポリペプチド、又は複合体。
【0215】
実施形態I-25 配列番号1又は2におけるK24、K33、K37、K39、K212、K214、K227、K244、K264、K385、K522及び/もしくはK526が、少なくとも1個のnnAAで置換されている、実施形態I-24記載の、容器、デバイス、組成物、方法、ポリペプチド、又は複合体。
【0216】
実施形態I-26 キャリアポリペプチドが配列番号14のアミノ酸配列を含む、上述した実施形態のいずれかに記載の、容器、デバイス、組成物、方法、ポリペプチド、又は複合体。
【0217】
実施形態I-27 nnAAが、2-アミノ-3-(4-(アジドメチル)フェニル)プロパン酸である、上述した実施形態のいずれかに記載の、容器、デバイス、組成物、方法、ポリペプチド、又は複合体。
【0218】
実施形態I-28 抗原が、アジド基を介してnnAAに結合するアルキン基を有する、上述した実施形態のいずれかに記載の、容器、デバイス、組成物、方法、ポリペプチド、又は複合体。
【0219】
実施形態I-29 抗原が、細菌性の莢膜糖類であり、例えば、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、A群溶血性レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)、B群溶血性レンサ球菌(Streptococcus agalactiae)及びジンジバリス菌(Porphyromonas gingivalis)からなる群から選択される細菌よりの莢膜糖類である、上述した実施形態のいずれかに記載の、容器、デバイス、組成物、方法、ポリペプチド、又は複合体。
【0220】
実施形態I-30 抗原が、1、2、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、9N、10A、11A、12F、13、14、15B、16、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F、24F、31及び33Fからなる群から選択される肺炎球菌(S.pneumoniae)の血清型の莢膜糖類である、上述した実施形態のいずれかに記載の、容器、デバイス、組成物、方法、ポリペプチド、又は複合体。
【0221】
実施形態I-31 複合体における糖類のキャリアポリペプチドに対する比(w/w)は、1より大きい、上述した実施形態のいずれかに記載の、容器、デバイス、組成物、方法、ポリペプチド、又は複合体。
【0222】
実施形態I-32 キャリアポリペプチドは、3個以上のnnAA残基を含み、また複合体は分子量が少なくとも500kDaである、上述した実施形態のいずれかに記載の、容器、デバイス、組成物、方法、ポリペプチド、又は複合体。
【0223】
実施形態I-33 複合体は、分子量が900kDaから5MDaである、上述した実施形態のいずれかに記載の、容器、デバイス、組成物、方法、ポリペプチド、又は複合体。
【0224】
実施形態I-34 医薬組成物が、
血清型1、2、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、9N、10A、11A、12F、13、14、15B、16、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F、24F、31及び33Fからなる群から選択される2種以上の異なる肺炎球菌の血清型よりの莢膜糖類の複合体;
血清型1、2、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、9N、10A、11A、12F、13、14、15B、16、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F、24F、31及び33Fからなる群から選択される14種以上の異なる肺炎球菌の血清型よりの莢膜糖類の複合体;
血清型1、2、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、9N、10A、11A、12F、13、14、15B、16、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F、24F、31及び33Fからなる群から選択される15種以上の異なる肺炎球菌の血清型よりの莢膜糖類の複合体;
血清型1、2、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、9N、10A、11A、12F、13、14、15B、16、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F、24F、31及び33Fからなる群から選択される20種以上の異なる肺炎球菌の血清型よりの莢膜糖類の複合体;
血清型1、2、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、9N、10A、11A、12F、13、14、15B、16、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F、24F、31及び33Fからなる群から選択される21種以上の異なる肺炎球菌の血清型よりの莢膜糖類の複合体;
血清型1、2、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、9N、10A、11A、12F、13、14、15B、16、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F、24F、31及び33Fからなる群から選択される24種以上の異なる肺炎球菌の血清型よりの莢膜糖類の複合体;
血清型1、2、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、9N、10A、11A、12F、13、14、15B、16、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F、24F、31及び33Fからなる群から選択される25種以上の異なる肺炎球菌の血清型よりの莢膜糖類の複合体;
血清群A、C、W135、X、及びYからなる群から選択される4種以上の異なる髄膜炎菌の血清群よりの莢膜糖類の複合体;又は
血清型K1、K2、K3、K4、K5及びK6からなる群から選択される2種以上の異なるジンジバリス菌(P.gingivals)の血清型よりの莢膜糖類の複合体、を含む、実施形態I-1からI-15又は実施形態I-21からI-33のうちのいずれか1つに記載の、容器、デバイス、組成物、又は方法。
【0225】
実施形態I-35 対象において、ある抗原に対する免疫防御抗体応答を引き出す方法であって、非経口投与に好適である賦形剤中の、実施形態I-6からI-13もしくは実施形態I-21からI-34のうちのいずれか1つに記載の医薬組成物又は実施形態I-19からI-33のうちのいずれかに記載の免疫原性複合体を、対象に投与することを含む、方法。
【実施例0226】
以下の実施例で、本発明について説明する。材料、方法及び実施例は、例示のみであり、限定することを意図していない。多数の変形、変更及び置き換えが、本発明から逸脱することなく、当業者に想起することとなるであろう。実施例は、別段に詳細に記載している場合を除き、当業者にとって周知及び通例の技術を用いて実行される。
【0227】
国際公開第2018/126229号からの実施例
国際公開第2018/126229号の実施例では、一部位eCRM部分(例えばK11TAG)の合成について完全に詳細に記載している。これらは、無細胞タンパク質合成(CFPS)抽出物中で発現し、また天然のLysの代わりに、pAMFが組み込まれた。
【0228】
1ポリペプチド当たり複数のnnAAを含有するCRMのバリアントはまた、1タンパク質当たり種々の異なる数のLys→pAMF置換を伴って発現した。概して、置換の数が多いほど、より高分子量の複合体を導くキャリアを与えるが、当該キャリアの溶解度はより低いものであることがわかった。6つのpAMF残基をもつキャリアは、概して、良好な溶解度(>>50mg/mL)と免疫原性との両方をもたらした。天然の配列中の電荷をもつLys残基を、疎水性のpAMF残基で置換するということは、それがもつ疎水性がその溶解度に影響を及ぼすことが既に報告されているタンパク質であるCRM197の疎水性を増大させることであるから、高溶解度であったことは驚くべきことであった。すなわち、電荷をもつ残基を失っても不溶性を引き起こすことなく、既知のCRM197複合体で用いていた(すなわちLys残基)のと同一の付加部位を維持することが可能であるということを示した。
【0229】
K34、K213、K245、K265、K386及びK527(配列番号3に従って番号付けした)を用いた、6つのLys→pAMFの置換が特に有用なセットであることがわかった。驚くべきことにpAMF置換の部位のこの組み合わせは有効であるが、これは特に、K245位及びK527位における個々の置換が、相対的に低いレベル発現を導くからであった。
【0230】
この6つの置換のセットは、配列番号1の残基192から193(RR→RN)におけるArg-Argジペプチドの崩壊と組み合わせて、配列番号4であって各XがpAMFである配列番号4をもたらすことが可能である。
【0231】
国際公開第2018/126229号の実施例では、メタ過ヨウ素酸ナトリウム(sodium meta-periodate)を用いたサッカリド活性に関する、DBCOを用いた過ヨウ素酸塩により酸化された多糖体の誘導体化に関する、CDAPを用いたサッカリド活性に関する、及び糖類-DBCOのeCRMとの結合に関する、全般的プロトコールについてさらに記載している。先に参照により援用した、米国シリアル番号第62/693,978号もまた参照されたい。
【0232】
多価免疫原性組成物
24種の肺炎球菌の血清型1、2、3、4、5、6A、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F及び33Fのそれぞれに関する複合体の組み合わせを、各複合体におけるキャリアポリペプチドとしてCRM197誘導体の配列番号4(X=pAMFである)を用いて調製した。この多価組成物の免疫原性は、7羽のウサギの群における、ワクチン0.25mLの筋肉内注射による3回投与計画を用いて確認した。各投与量には、24μgの糖類(1血清型当たり1μg)を含み、96μg/mLの濃度であった。
【0233】
次いで32種の肺炎球菌の血清型1、2、3、4、5、6A、6B、6C、7C、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15A、15B、16F,17F、18C、19A、19F、20、22F、23A、23B、23F、31、33F及び35Bのそれぞれに関する複合体の組み合わせを調製して、同様の手法で免疫原性を確認した。
【0234】
比較の目的のため、非結合型の血清型6Aの多糖体を補った23価ニューモバックス(Pneumovax(商標))ワクチンでできた24価非結合型ワクチンと一緒に、13価プレベナー(Prevnar(商標))結合型ワクチンもまた試験した。これら3つの組成物は、1血清型当たり同等の多糖体用量を有したが(プレベナー(Prevnar(商標))が2倍の用量を含む6Bは除く)、これはプレベナー(Prevnar(商標))及びニューモバックス(Pneumovax(商標))の希釈を伴った。3つの組成物の全てが、リン酸アルミニウムアジュバント(1用量当たり60μgのAl+++)を含んだが、これはこのアジュバントをニューモバックス(Pneumovax(商標))に加えることを伴った。当該組成物は、防腐剤を含まなかった。
【0235】
24価の複合体組成物は、それがまた11個のさらなる血清型よりの莢膜糖類を含んでいたとしても、承認されたプレベナー13(Prevnar-13(商標))ワクチンにおけるよりも少量のキャリアポリペプチドを含んでいた。24価の複合体組成物における莢膜糖類のキャリアポリペプチドに対する全重量比は、プレベナー(Prevnar(商標))で見られたものの約2倍であった。
【0236】
IgG及びOPA応答を、ウサギで測定した。3回目の投与の後では、非結合型ワクチンを受けたウサギにおけるよりも、2つの結合型ワクチンを受けたウサギにおいて、これら両方の応答がはるかに大きかった。さらに、24価組成物を用いたIgG及びOPA応答は、承認されたワクチンでカバーされる13種の血清型のプレベナー(Prevnar(商標))を用いて達成されたものに匹敵したが、加えてプレベナー(Prevnar(商標))に含まれていなかった11種の血清型に対しては上回っていた。驚くべきことに、24価組成物を用いた、キャリアにより誘導されるエピトープの抑制の証拠はなかった。
【0237】
図1は、多糖体/ミョウバン(alum)製剤及びプレベナー13(Prevnar-13(商標))に対する、32価複合体組成物における、32種の血清型のそれぞれに関する幾何平均力価である。
【0238】
多価複合体組成物は、有益に、事前充填滅菌シリンジに包装することが可能であるため、単位用量の形態で容易に配送可能であり、またその後、使用の間際に、バイアルの内容物を注射用シリンジ等に移す必要なく、投与することが可能である。
【0239】
CRM197における置換可能位置
国際公開第2018/126229号に開示の作業に基づいて、天然のCRM197配列(配列番号1)における種々のAsp、Asn、Glu、Gln、Lys、Arg、Ser及びThrの残基を、それらのコドンをTAGに変異することと、nnAAを組み込むtRNAによってこのコドンが認識されるものである無細胞系における25℃でのタンパク質発現とによって、個々に、pAMFで置換した。変異ポリペプチドは、N-末端メチオニンと、Gly-Ser-Glyトリペプチドリンカーを介して結合した下流のヘキサヒスチジンタグとにより発現した。Asn270-Ile289、Ala320-Glu349及びPhe410-His-449内の残基は、これら領域において認識されるT細胞エピトープ(上記を参照)を理由に、回避した。
【0240】
変異タンパク質への14C-Leu組み込みを確認し、タンパク質全体及び可溶性タンパク質の両方を見ることによって、発現効率を評価した。概して、CRM197の触媒ドメインにおける変異が、改変されていないCRM197配列と比べて発現レベルの減少を導き、また最良の発現レベルを伴う変異は、概して、触媒ドメインの末端を描写するために用いることが可能である、Arg-193の下流での置換を含んだ。
【0241】
最良の72の変異は、タンパク質全体及び可溶性タンパク質の両方の発現レベルを増加させ、また、配列番号1に従って番号付けした、以下の残基における置換を有した:Ser-198、Ser-200、Asp-211、Lys-212、Lys-218、Lys-221、Lys-229、Ser-231、Ser-233、Lys-236、Ser-239、Glu-240、Glu-248、Glu-249、Gln-252、Thr-253、Glu-256、Glu-259、Ser-261、Lys-264、Thr-265、Thr-267、Thr-269、Gln-287、Glu-292、Thr-293、Asp-295、Asn-296、Ser-297、Lys-299、Asp-352、Asn-359、Glu-362、Ser-374、Arg-377、Ser-381、Lys-385、Thr-386、Asp-392、Ser-397、Asn-399、Thr-400、Arg-407、Thr-408、Ser-451、Arg-455、Lys-456、Arg-460、Arg-462、Asp-465、Asp-467、Thr-469、Arg-472、Lys-474、Ser-475、Asn-481、Asn-486、Arg-493、Ser-494、Ser-495、Ser-496、Lys-498、Ser-501、Asn-502、Ser-505、Asp-507、Lys-516、Thr-517、Asp-519、Lys-522、Asn-524及びLys-534。
【0242】
本明細書に記載の実施形態は、例のみとして提供したものであり、本明細書に記載の実施形態を実施する際に、実施形態に対する様々な代替を除外するものではない。
【0243】
配列表
配列番号1(天然のCRM197)
GADDVVDSSKSFVMENFSSYHGTKPGYVDSIQKGIQKPKSGTQGNYDDDWKEFYSTDNKYDAAGYSVDNENPLSGKAGGVVKVTYPGLTKVLALKVDNAETIKKELGLSLTEPLMEQVGTEEFIKRFGDGASRVVLSLPFAEGSSSVEYINNWEQAKALSVELEINFETRGKRGQDAMYEYMAQACAGNRVRRSVGSSLSCINLDWDVIRDKTKTKIESLKEHGPIKNKMSESPNKTVSEEKAKQYLEEFHQTALEHPELSELKTVTGTNPVFAGANYAAWAVNVAQVIDSETADNLEKTTAALSILPGIGSVMGIADGAVHHNTEEIVAQSIALSSLMVAQAIPLVGELVDIGFAAYNFVESIINLFQVVHNSYNRPAYSPGHKTQPFLHDGYAVSWNTVEDSIIRTGFQGESGHDIKITAENTPLPIAGVLLPTIPGKLDVNKSKTHISVNGRKIRMRCRAIDGDVTFCRPKSPVYVGNGVHANLHVAFHRSSSEKIHSNEISSDSIGVLGYQKTVDHTKVNSKLSLFFEIKS
【0244】
配列番号2(Arg-Asn置換を含むCRM197)
GADDVVDSSKSFVMENFSSYHGTKPGYVDSIQKGIQKPKSGTQGNYDDDWKEFYSTDNKYDAAGYSVDNENPLSGKAGGVVKVTYPGLTKVLALKVDNAETIKKELGLSLTEPLMEQVGTEEFIKRFGDGASRVVLSLPFAEGSSSVEYINNWEQAKALSVELEINFETRGKRGQDAMYEYMAQACAGNRVRNSVGSSLSCINLDWDVIRDKTKTKIESLKEHGPIKNKMSESPNKTVSEEKAKQYLEEFHQTALEHPELSELKTVTGTNPVFAGANYAAWAVNVAQVIDSETADNLEKTTAALSILPGIGSVMGIADGAVHHNTEEIVAQSIALSSLMVAQAIPLVGELVDIGFAAYNFVESIINLFQVVHNSYNRPAYSPGHKTQPFLHDGYAVSWNTVEDSIIRTGFQGESGHDIKITAENTPLPIAGVLLPTIPGKLDVNKSKTHISVNGRKIRMRCRAIDGDVTFCRPKSPVYVGNGVHANLHVAFHRSSSEKIHSNEISSDSIGVLGYQKTVDHTKVNSKLSLFFEIKS
【0245】
配列番号3(6個の好ましいnnAA部位及びN末端Met(メチオニン)を含むCRM197)
MGADDVVDSSKSFVMENFSSYHGTKPGYVDSIQGIQKPKSGTQGNYDDDWKEFYSTDNKYDAAGYSVDNENPLSGKAGGVVKVTYPGLTKVLALKVDNAETIKKELGLSLTEPLMEQVGTEEFIKRFGDGASRVVLSLPFAEGSSSVEYINNWEQAKALSVELEINFETRGKRGQDAMYEYMAQACAGNRVRRSVGSSLSCINLDWDVIRDTKTKIESLKEHGPIKNKMSESPNKTVSEEKAQYLEEFHQTALEHPELSELTVTGTNPVFAGANYAAWAVNVAQVIDSETADNLEKTTAALSILPGIGSVMGIADGAVHHNTEEIVAQSIALSSLMVAQAIPLVGELVDIGFAAYNFVESIINLFQVVHNSYNRPAYSPGHTQPFLHDGYAVSWNTVEDSIIRTGFQGESGHDIKITAENTPLPIAGVLLPTIPGKLDVNKSKTHISVNGRKIRMRCRAIDGDVTFCRPKSPVYVGNGVHANLHVAFHRSSSEKIHSNEISSDSIGVLGYQKTVDHTKVNSLSLFFEIKS
【0246】
配列番号4(Arg-Asnサブセット、6個の好ましいnnAA部位、及びN末端Met(メチオニン)を含むCRM197)
MGADDVVDSSKSFVMENFSSYHGTKPGYVDSIQGIQKPKSGTQGNYDDDWKEFYSTDNKYDAAGYSVDNENPLSGKAGGVVKVTYPGLTKVLALKVDNAETIKKELGLSLTEPLMEQVGTEEFIKRFGDGASRVVLSLPFAEGSSSVEYINNWEQAKALSVELEINFETRGKRGQDAMYEYMAQACAGNRVRNSVGSSLSCINLDWDVIRDTKTKIESLKEHGPIKNKMSESPNKTVSEEKAQYLEEFHQTALEHPELSELTVTGTNPVFAGANYAAWAVNVAQVIDSETADNLEKTTAALSILPGIGSVMGIADGAVHHNTEEIVAQSIALSSLMVAQAIPLVGELVDIGFAAYNFVESIINLFQVVHNSYNRPAYSPGHTQPFLHDGYAVSWNTVEDSIIRTGFQGESGHDIKITAENTPLPIAGVLLPTIPGKLDVNKSKTHISVNGRKIRMRCRAIDGDVTFCRPKSPVYVGNGVHANLHVAFHRSSSEKIHSNEISSDSIGVLGYQKTVDHTKVNSLSLFFEIKS
【0247】
配列番号5(インフルエンザ菌(H.influenzae)タンパク質D)
CSSHSSNMANTQMKSDKIIIAHRGASGYLPEHTLESKALAFAQQADYLEQDLAMTKDGRLVVIHDHFLDGLTDVAKKFPHRHRKDGRYYVIDFTLKEIQSLEMTENFETKDGKQAQVYPNRFPLWKSHFRIHTFEDEIEFIQGLEKSTGKKVGIYPEIKAPWFHHQNGKDIAAETLKVLKKYGYDKKTDMVYLQTFDFNELKRIKTELLPQMGMDLKLVQLIAYTDWKETQEKDPKGYWVNYNYDWMFKPGAMAEVVKYADGVGPGWYMLVNKEESKPDNIVYTPLVKELAQYNVEVHPYTVRKDALPEFFTDVNQMYDALLNKSGATGVFTDFPDTGVEFLKGIK
図1
【配列表】
2024037805000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-01-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書および図面に開示する発明。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0247
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0247】
配列番号5(インフルエンザ菌(H.influenzae)タンパク質D)
CSSHSSNMANTQMKSDKIIIAHRGASGYLPEHTLESKALAFAQQADYLEQDLAMTKDGRLVVIHDHFLDGLTDVAKKFPHRHRKDGRYYVIDFTLKEIQSLEMTENFETKDGKQAQVYPNRFPLWKSHFRIHTFEDEIEFIQGLEKSTGKKVGIYPEIKAPWFHHQNGKDIAAETLKVLKKYGYDKKTDMVYLQTFDFNELKRIKTELLPQMGMDLKLVQLIAYTDWKETQEKDPKGYWVNYNYDWMFKPGAMAEVVKYADGVGPGWYMLVNKEESKPDNIVYTPLVKELAQYNVEVHPYTVRKDALPEFFTDVNQMYDALLNKSGATGVFTDFPDTGVEFLKGIK
さらに、本発明は次の態様を包含する。
1. キャリアポリペプチドと糖抗原(saccharide antigen)とを含む免疫原性複合体を含む医薬組成物を含有する滅菌容器であって、前記糖抗原が、前記キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介して前記キャリアポリペプチドと共有結合するものである、滅菌容器。
2. キャリアポリペプチドと糖抗原とを含む免疫原性複合体を含む医薬組成物を含有する気密密閉容器であって、前記糖抗原が、前記キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介して前記キャリアポリペプチドと共有結合するものであり、気密密閉に好適な容器には、例えばバイアルが含まれ、内容物は、気密密閉の際に滅菌してあることが好ましい、気密密閉容器。
3. 例えばバイアル等の滅菌ガラス容器である、項1又は2に記載の容器。
4. キャリアポリペプチドと糖抗原とを含む免疫原性複合体を含む医薬組成物を含有する送達デバイスであって、前記糖抗原が、前記キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介して前記キャリアポリペプチドと共有結合するものである、送達デバイス。
5. シリンジである、項1もしくは項2に記載の容器、又は項4記載の送達デバイス。
6. 2種以上の異なる免疫原性複合体と、アルミニウム塩アジュバントとを含む医薬組成物であって、(i)各免疫原性複合体は、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含み、前記糖抗原が、前記キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介して前記キャリアポリペプチドと共有結合し;また(ii)前記アルミニウム塩アジュバントは水酸化アルミニウムアジュバント又はリン酸アルミニウムアジュバントである、医薬組成物。
7. 2種以上の異なる免疫原性複合体と、リン酸アルミニウムアジュバントとを含む医薬組成物であって、(i)各免疫原性複合体は、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含み、前記糖抗原が、前記キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介して前記キャリアポリペプチドと共有結合し、また(ii)当該組成物におけるアルミニウムイオンの濃度は、≦2.5mg/mLである、医薬組成物。
8. 2種以上の異なる免疫原性複合体を含む医薬組成物であって、(i)各免疫原性複合体は、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含み、前記糖抗原が、前記キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介して前記キャリアポリペプチドと共有結合し、また(ii)前記医薬組成物の量は、0.25から1.25mLである、医薬組成物。
9. 2種以上の異なる免疫原性複合体と防腐剤とを含む医薬組成物であって、各免疫原性複合体は、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含み、前記糖抗原が、前記キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介して前記キャリアポリペプチドと共有結合するものである、医薬組成物。
10. 2種以上の異なる免疫原性複合体を含む、防腐剤を含まない医薬組成物であって、各免疫原性複合体は、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含み、前記糖抗原が、前記キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介して前記キャリアポリペプチドと共有結合するものである、防腐剤を含まない医薬組成物。
11. 2種以上の異なる免疫原性複合体を含む医薬組成物であって、(i)各免疫原性複合体は、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含み、前記糖抗原が、前記キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介して前記キャリアポリペプチドと共有結合し、(ii)当該組成物は、重量オスモル濃度が200から400mOsm/kgである、医薬組成物。
12. 2種以上の異なる免疫原性複合体と、少なくとも1つの賦形剤とを含む医薬組成物であって、(i)各免疫原性複合体は、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含み、前記糖抗原が、前記キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介して前記キャリアポリペプチドと共有結合し、また(ii)少なくとも1つの賦形剤は、塩化ナトリウム、コハク酸、及びポリソルベート80からなる群から選択される、医薬組成物。
13. n種の異なる免疫原性複合体を含む医薬組成物であって
(i)n種の免疫原性複合体のそれぞれは、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含み、前記糖抗原が、前記キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介して前記キャリアポリペプチドと共有結合し;
(ii)nは、3から50の整数であり、また
(iii)前記n種の免疫原性複合体におけるキャリアポリペプチドの総量は、1用量当たり3nμg以下であり;
(iv)前記n種の免疫原性複合体におけるキャリアポリペプチドの総濃度は、6nμg/ml以下であり;
(v)前記n種の免疫原性複合体における糖抗原の総量は、1用量当たり3nμg以下であり;
(vi)前記n種の免疫原性複合体における糖抗原の総濃度は、6nμg/mL以下であり;
(vii)1複合体当たりのキャリアポリペプチドの平均量は、1用量当たり1から4μgであり;
(viii)1複合体当たりのキャリアポリペプチドの平均濃度は、2から8μg/mLであり;
(ix)1複合体当たりの糖抗原の平均量は、1用量当たり1から4μgであり;
(x)1複合体当たりの糖抗原の平均濃度は、2から8μg/mLであり;
(xi)当該組成物は、非結合形態でのキャリアポリペプチドを含まず;
(xii)当該組成物は、非結合形態でのキャリアポリペプチドを含有し、前記組成物における非結合形態での当該キャリアポリペプチドの質量は、前記n種の免疫原性複合体におけるそのキャリアポリペプチドの質量のうちの<10%であり;
(xiii)前記組成物は、非結合形態での糖抗原を含まず;及び/又は
(xiv)前記組成物は、非結合形態での糖抗原のうちの少なくとも1つを含有し、前記組成物における非結合形態での当該糖抗原の総質量は、前記n種の免疫原性複合体における前記糖抗原の総質量のうちの<10%である、医薬組成物。
14. 単位用量の医薬組成物を複数調製する方法であって、(i)前記医薬組成物が、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含む免疫原性複合体を含み、前記糖抗原が、前記キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介して前記キャリアポリペプチドと共有結合し;また(ii)当該方法は、前記免疫原性複合体を含むバルク組成物を調製するステップと、複数の別個の容器に前記バルク組成物から個々の単位用量を包装するステップとを含むものである、方法。
15. 医薬組成物を調製する方法であって、前記医薬組成物が、2種以上の異なる免疫原性複合体とアルミニウム塩アジュバントとを含み、(i)当該免疫原性複合体のそれぞれは、キャリアポリペプチドと糖抗原とを含み、また(ii)前記糖抗原が、前記キャリアポリペプチド内の非天然アミノ酸残基を介して前記キャリアポリペプチドと共有結合するものであり、そして当該方法は、(A)前記免疫原性複合体のそれぞれをあるアルミニウム塩アジュバントに別個に吸着させて、次いで個々の吸着した複合体を一緒に混合するステップ、又は(B)前記免疫原性複合体のそれぞれを、前記アルミニウム塩アジュバントに順次吸着させるステップを含むものである、方法。
16. (i)配列番号1に対して少なくとも80%の配列同一性を有し;(ii)Arg-Argジペプチド配列を含まず、かつ、(iii)少なくとも1つのnnAA残基を含んだ、アミノ酸配列を含む、キャリアポリペプチド。
17. (i)配列番号1に対して少なくとも80%の配列同一性を有し;かつ、(ii)以下のアミノ酸残基(配列番号1に従って番号付けした)のうちの1又は複数においてnnAAの置換を含んだアミノ酸配列を含む、キャリアポリペプチド:Asp-211;Asp-295;Asp-352;Asp-392;Asp-465;Asp-467;Asp 507;Asp 519;Asn 296;Asn 359;Asn 399;Asn 481;Asn 486;Asn 502;Asn 524;Glu 240;Glu 248;Glu 249;Glu 256;Glu 259;Glu 292;Glu 362;Gln 252;Gln 287;Lys 212;Lys 218;Lys 221;Lys 229;Lys 236;Lys 264;Lys 299;Lys 385;Lys 456;Lys 474;Lys 498;Lys 516;Lys 522;Lys 534;Arg 377;Arg 407;Arg 455;Arg 460;Arg 462;Arg 472;Arg 493;Ser 198;Ser 200;Ser 231;Ser 233;Ser 239;Ser 261;Ser 374;Ser 381;Ser 297;Ser 397;Ser 451;Ser 475;Ser 494;Ser 495;Ser 496;Ser 501;Ser 505;Thr 253;Thr 265;Thr 267;Thr 269;Thr 293;Thr 386;Thr 400;Thr 408;Thr-469;及び/又はThr 517。
18. 配列番号1のうちのArg-193が、例えばAsn等である異なるアミノ酸で置換されている、項16又は17に記載のキャリアポリペプチド。
19. 抗原に対して、前記キャリアポリペプチド内のnnAA残基を介して結合した、項16又は項17又は項18に記載の前記キャリアポリペプチドを含む、免疫原性複合体。
20. キャリアポリペプチドと糖抗原とを含む免疫原性複合体であって、(i)前記キャリアポリペプチドは配列番号4のアミノ酸配列を含み、また(ii)前記糖抗原は、配列番号4における少なくとも1つのnnAA残基を介して前記キャリアポリペプチドと共有結合する、免疫原性複合体。
21. 項20記載の2種以上の異なる免疫原性複合体を含む、医薬組成物。
22. 前記キャリアポリペプチドが、4から9個のnnAA残基を含む、項1から21のいずれか一項に記載の、容器、デバイス、組成物、方法、ポリペプチド、又は複合体。
23. 前記キャリアポリペプチドの天然の配列におけるリシンが、少なくとも1個のnnAAで置換されている、項1から22のいずれか一項に記載の、容器、デバイス、組成物、方法、ポリペプチド、又は複合体。
24. 前記キャリアポリペプチドが配列番号1に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、項1から23のいずれか一項に記載の、容器、デバイス、組成物、方法、ポリペプチド、又は複合体。
25. 配列番号1又は2におけるK24、K33、K37、K39、K212、K214、K227、K244、K264、K385、K522及び/もしくはK526が、少なくとも1個のnnAAで置換されている、項24記載の、容器、デバイス、組成物、方法、ポリペプチド、又は複合体。
26. 前記キャリアポリペプチドが配列番号4のアミノ酸配列を含む、項1から25のいずれか一項に記載の、容器、デバイス、組成物、方法、ポリペプチド、又は複合体。
27. 前記nnAAが、2-アミノ-3-(4-(アジドメチル)フェニル)プロパン酸である、項1から26のいずれか一項に記載の、容器、デバイス、組成物、方法、ポリペプチド、又は複合体。
28. 抗原が、アジド基を介してnnAAに結合するアルキン基を有する、項1から27のいずれか一項に記載の、容器、デバイス、組成物、方法、ポリペプチド、又は複合体。
29. 抗原が、細菌性の莢膜糖類であり、例えば、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、A群溶血性レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)、B群溶血性レンサ球菌(Streptococcus agalactiae)及びジンジバリス菌(Porphyromonas gingivalis)からなる群から選択される細菌よりの莢膜糖類である、項1から28のいずれか一項に記載の、容器、デバイス、組成物、方法、ポリペプチド、又は複合体。
30. 抗原が、1、2、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、9N、10A、11A、12F、13、14、15B、16、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F、24F、31及び33Fからなる群から選択される肺炎球菌(S.pneumoniae)の血清型の莢膜糖類である、項1から29のいずれか一項に記載の、容器、デバイス、組成物、方法、ポリペプチド、又は複合体。
31. 前記複合体における糖類のキャリアポリペプチドに対する比(w/w)は、1より大きい、項1から30のいずれか一項に記載の、容器、デバイス、組成物、方法、ポリペプチド、又は複合体。
32. 前記キャリアポリペプチドは、3個以上のnnAA残基を含み、また前記複合体は分子量が少なくとも500kDaである、項1から31のいずれか一項に記載の、容器、デバイス、組成物、方法、ポリペプチド、又は複合体。
33. 前記複合体は、分子量が900kDaから5MDaである、項1から32のいずれか一項に記載の、容器、デバイス、組成物、方法、ポリペプチド、又は複合体。
34. 医薬組成物が、
血清型1、2、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、9N、10A、11A、12F、13、14、15B、16、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F、24F、31及び33Fからなる群から選択される2種以上の異なる肺炎球菌の血清型よりの莢膜糖類の複合体;
血清型1、2、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、9N、10A、11A、12F、13、14、15B、16、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F、24F、31及び33Fからなる群から選択される14種以上の異なる肺炎球菌の血清型よりの莢膜糖類の複合体;
血清型1、2、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、9N、10A、11A、12F、13、14、15B、16、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F、24F、31及び33Fからなる群から選択される15種以上の異なる肺炎球菌の血清型よりの莢膜糖類の複合体;
血清型1、2、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、9N、10A、11A、12F、13、14、15B、16、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F、24F、31及び33Fからなる群から選択される20種以上の異なる肺炎球菌の血清型よりの莢膜糖類の複合体;
血清型1、2、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、9N、10A、11A、12F、13、14、15B、16、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F、24F、31及び33Fからなる群から選択される21種以上の異なる肺炎球菌の血清型よりの莢膜糖類の複合体;
血清型1、2、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、9N、10A、11A、12F、13、14、15B、16、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F、24F、31及び33Fからなる群から選択される24種以上の異なる肺炎球菌の血清型よりの莢膜糖類の複合体;
血清型1、2、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、9N、10A、11A、12F、13、14、15B、16、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F、24F、31及び33Fからなる群から選択される25種以上の異なる肺炎球菌の血清型よりの莢膜糖類の複合体;
血清群A、C、W135、X、及びYからなる群から選択される4種以上の異なる髄膜炎菌の血清群よりの莢膜糖類の複合体;又は
血清型K1、K2、K3、K4、K5及びK6からなる群から選択される2種以上の異なるジンジバリス菌(P.gingivals)の血清型よりの莢膜糖類の複合体、を含む、項1から15又は21から33のいずれか一項に記載の、容器、デバイス、組成物、又は方法。
35. 血清型20は、血清型20Bである、項30から34のいずれか一項に記載の、容器、デバイス、組成物、方法、ポリペプチド、又は複合体。
36. 血清型20は、血清型20Aである、項30から34のいずれか一項に記載の、容器、デバイス、組成物、方法、ポリペプチド、又は複合体。
37. 対象において、ある抗原に対する免疫防御抗体応答を引き出す方法であって、非経口投与に好適である賦形剤中の、項6から13もしくは項21から34のうちのいずれか一項に記載の医薬組成物又は項19から33のうちのいずれか一項に記載の免疫原性複合体を、前記対象に投与することを含む、方法。
【外国語明細書】