(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037822
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】小胞体ターゲッティングシグナル
(51)【国際特許分類】
C12N 15/11 20060101AFI20240312BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240312BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240312BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240312BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C12N5/10
C12N1/15
C12N1/19
C12P21/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023207322
(22)【出願日】2023-12-07
(62)【分割の表示】P 2020540815の分割
【原出願日】2019-01-31
(31)【優先権主張番号】257269
(32)【優先日】2018-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(71)【出願人】
【識別番号】516040109
【氏名又は名称】イェダ リサーチ アンド ディベロップメント カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】YEDA RESEARCH AND DEVELOPMENT CO.LTD.
【住所又は居所原語表記】at the Weizmann Institute of Science, P.O.Box 95, 7610002 Rehovot, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】100133503
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 一哉
(72)【発明者】
【氏名】ゲルスト,ジェフリー イー
(72)【発明者】
【氏名】リム,リシャ チウ ジン
(72)【発明者】
【氏名】ピルペル,イツハク
(72)【発明者】
【氏名】オレンダー,ツヴィヤ
(72)【発明者】
【氏名】ダハリー,ドゥヴィール
(72)【発明者】
【氏名】コーエン‐ゾンタグ,オスナット
(57)【要約】 (修正有)
【課題】単離されたポリヌクレオチドを提供する。
【解決手段】転写単位を含む単離されたポリヌクレオチドが開示され、転写単位は、(i)興味の対象である分泌タンパク質をコードする核酸配列、(ii)配列番号2に記載の小胞体(ER)ターゲッティング配列であって、前記興味の対象である分泌タンパク質にとって異種であるERターゲッティング配列、(iii)プロモータ、及び(iv)転写終結部位を含む。
【選択図】
図6B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
興味の対象である天然の分泌ヒトタンパク質をコードする核酸配列を含む単離されたポリヌクレオチドであって、前記核酸配列が、配列番号2に示される配列を含む小胞体(ER)ターゲッティング配列を含むようにコドン最適化されており、前記ERターゲッティング配列が、興味の対象である天然の分泌成熟タンパク質のコーディング配列にある、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項2】
興味の対象の前記タンパク質が、ワクチンのタンパク質である、請求項1に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項3】
前記ERターゲッティング配列が、配列番号5に示される配列をコードするヌクレオチドを含まない、請求項1に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項4】
前記ERターゲッティング配列が、配列番号6に示される配列を含まない、請求項1に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項5】
前記ERターゲッティング配列が、配列TGの5を超える連続したリピートを含まない、請求項1に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項6】
前記ERターゲッティング配列が、配列NNYの少なくとも15の連続したリピートを含み、Nが任意の塩基であり、Yがピリミジンである、請求項1に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項7】
前記ERターゲッティング配列が10を超える連続したチミンを含まない、請求項1に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項8】
デオキシリボヌクレオチドを含む、請求項1に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項9】
mRNA転写物である、請求項1に記載の単離されたポリヌクレオチド
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の単離されたポリヌクレオチドを含み、真菌種及び哺乳類種からなる群から選択される種のものである、細胞。
【請求項11】
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、請求項10に記載の細胞。
【請求項12】
S.cerevisiae(サッカロマイセス・セレビシエ)細胞である、請求項10に記載の細胞。
【請求項13】
請求項1~8のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含む発現構築物。
【請求項14】
細胞培養物の細胞において興味の対象である天然の分泌タンパク質を発現させる方法であって、
(a)細胞を含む細胞培養物を得ることと、
(b)前記細胞培養物の前記細胞に、請求項1~9のいずれか1項に記載の単離されたポリヌクレオチドを導入し、それにより興味の対象である天然の分泌タンパク質を発現させることであって、前記細胞が、真菌種又は哺乳類種のものである、興味の対象である天然の分泌タンパク質を発現させることと、を含む、
細胞培養物の細胞において興味の対象である天然の分泌タンパク質を発現する方法。
【請求項15】
哺乳類種の前記細胞が、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
真菌種の前記細胞が、S.cerevisiae(サッカロマイセス・セレビシエ)細胞を含む、請求項14記載の方法。
【請求項17】
興味の対象である前記天然の分泌タンパク質を単離し、それにより興味の対象である天然の分泌タンパク質を生成することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
この出願は、2018年1月31日に提出されたイスラエル特許出願第257269号からの優先権の利益を主張するもので、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、組換えタンパク質、より特定すれば、ただし排他的ではないものとして、分泌された組換えタンパク質の発現を増強する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
mRNAターゲティングと局在化された翻訳は、タンパク質合成の空間的及び時間的な制御を実現させる重要な機構である。特定の細胞内区画へのmRNAの送達は、様々な生物や細胞型における極性の確立に大きな役割を果たしており、細胞の適切な機能に重要であることが示された。興味深いことに、mRNAの局在性は、多くの場合、mRNA配列内に埋め込まれたシス作用性エレメント(ジップコード)によって管理される(Martin及びEphrussi、2009;Buxbaumら、2014)。RNA結合タンパク質(RBP)は、かかる配列を認識し、分子モータと一緒に作用して、mRNAを目標に指向させる。
【0004】
小胞体(ER)は、分泌及び膜(SMP;セクレトーム)タンパク質の合成部位である。ドグマによれば、SMPをコードするmRNA(mSMP)は、シグナル認識粒子(SRP)経路によって実行される、異なる翻訳依存的機構によってERに送達される。このモデルによれば、タンパク質翻訳は細胞質で始まり、SMP転写物に対し翻訳が行われると、そのポリペプチドのアミノ末端に存在するシグナルペプチドが翻訳リボソームの出口トンネルから出現し、SRPによって認識される。次いで、SRPがER膜上のその受容体に動員され、細胞質からERへのリボソーム-mRNA新生タンパク質鎖複合体の移行が起こる。そこで、翻訳リボソームがトランスロコンと相互作用して、共翻訳タンパク質の転座とmRNAの固定を可能にする。したがって、SRPモデルは、mSMPを、ER転座プロセスにおける能動的な役割を伴わない区画として説明している。
【0005】
しかしながら、複数の証拠情報は、ERへのmRNAの送達のためのさらなる経路があることを示唆している。第一に、SRP経路が失われても、酵母や哺乳類細胞が死に至ることはなく、また、膜タンパク質合成や、細胞質とERとの間における全体的mRNA分布に大きな影響を与ることもなかった。第二に、細胞質ゾルポリソームとER結合ポリソームとの間における可溶性タンパク質及び膜タンパク質をコードするmRNAの分布のゲノム全域にわたる分析により、2つの画分のmRNAの組成に有意な重複があることが立証され、細胞質タンパク質をコードするmRNAがERで広範に表示されていることが示された。これは、コードされたシグナル配列を欠くmRNAがERに局在する可能性があることを意味する。これらの所見と一致して、シグナル配列の除去及び翻訳の阻害により、ERへのmSMPの局在は妨害されなかった(Pyhtilaら、2008;Chenら、2011;Kraut-Cohenら、2013)。第三に、セクレトームタンパク質のサブセットは、SRPに依存しない経路でERに局在することが知られている。これらのタンパク質は、細胞質ゾルで翻訳された後、ERに移行すると考えられている。ER結合リボソームの特定のプルダウンのための技術を利用した研究(Janら、2014)では、ER膜上のSRP非依存性タンパク質をコードするmRNAとの比較において、SRP依存性タンパク質をコードするmRNAの濃縮には有意差がないことが判明した。さらに、リボソームのサブセットは、シグナル配列の出現前にERに到達できた。これらの観察についての考えられる説明は、mRNAが、SRPに依存しない機構でリボソームの前にERに到達することであり得る。ERへのmRNAターゲティングがシグナルペプチドの出現まで開始されない場合、膜結合リボソームはシグナルペプチドの上流の転写物の部分を翻訳していないはずである。しかしながら、翻訳している膜結合リボソームは転写物全体に均一に分布していることが判明したため、これは当てはまらない(Chartronら、2016)。これは、mRNAが翻訳開始前にERに局在していることを示唆している。
【0006】
mRNA内の明確なシス-エレメントであってそれをERに指向させるものを識別することは困難であったが、mSMPの特定の配列特性が識別されている。例えば、シグナル配列をコードする領域の配列分析により、この配列内にA以外の伸長部を作成するためのアデニンの使用率が低いことが明らかになった(Palazzoら、2007)。さらに、膜タンパク質をコードするmRNAは、細胞質タンパク質をコードするmRNAと比較して、ウラシルの濃縮度が高く、ピリミジンの使用率も高い(Wolfendenら、1979;Prilusky及びBibi、2009;Kraut-Cohen及びGerst、2010;Polyanskyら、2013)。これらの所見は、ER局在モチーフが、mRNA分子の配列組成において、より拡散した全般的な形状で存在する可能性を高める。
【発明の概要】
【0007】
本発明の一実施態様によれば、転写単位を含む単離されたポリヌクレオチドであって、前記転写単位が、
(i)興味の対象である分泌タンパク質をコードする核酸配列;
(ii)配列番号2に記載の小胞体(ER)ターゲッティング配列であって、前記興味の対象である分泌タンパク質にとって異種であるERターゲッティング配列;
(iii)プロモータ;及び
(iv)転写終結部位であって、興味の対象であるタンパク質をコードする前記核酸配列及び前記ERターゲッティング列が前記プロモータと前記転写終結部位との間に配置されているものとする、転写終結部位
を含み、
前記ERターゲッティング配列が前記興味の対象であるタンパク質をコードする核酸配列に含まれるとき、前記核酸配列は、前記ERターゲッティング配列を含むようにコドン最適化されているものとする、単離されたポリヌクレオチドが提供される。
【0008】
本発明の一実施態様によれば、本明細書に記載の方法に従ってタンパク質を発現させ、タンパク質を単離し、それによりタンパク質を生成することを含む、タンパク質を生成する方法が提供される。
【0009】
本発明の一実施態様によれば、本明細書に記載のポリヌクレオチドから転写されたRNAが提供される。
【0010】
本発明の一実施態様によれば、本明細書に記載の単離されたポリヌクレオチドを含む細胞が提供される。
【0011】
本発明の一実施態様によれば、本明細書に記載のポリヌクレオチドを含む発現構築物が提供される。
【0012】
本発明の一実施態様によれば、配列番号2に示される核酸配列及びクローニング部位を含む発現構築物であって、前記クローニング部位へ興味の対象であるタンパク質をコードする配列を挿入した時、細胞での発現に続いて、興味の対象であるタンパク質をコードし、前記核酸配列の転写物をさらに含むmRNAが転写されるように、前記クローニング部位の位置が選択されるものとし、前記配列番号2が、タンパク質をコードする配列に含まれないものとする、発現構築物が提供される。
【0013】
本発明の一実施態様によれば、細胞でタンパク質を発現させる方法であって、本明細書に記載の単離されたポリヌクレオチドを細胞に導入し、それによりタンパク質を発現させることを含む方法が提供される。
【0014】
一実施形態によれば、ERターゲッティング配列は、興味の対象である分泌タンパク質をコードするヌクレオチドを含まない。
【0015】
本発明の実施形態によれば、ERターゲッティング配列は、配列番号5に示される配列をコードするヌクレオチドを含まない。
【0016】
本発明の実施形態によれば、ERターゲッティング配列は、配列番号6に示される配列を含まない。
【0017】
本発明の実施形態によれば、ERターゲッティング配列は、配列TGの5つを超える連続したリピートを含まない。
【0018】
本発明の実施形態によれば、ERターゲッティング配列は、配列NNYの少なくとも15の連続したリピートを含み、Nは任意の塩基であって、Yはピリミジンであるものとする。
【0019】
本発明の実施形態によれば、ERターゲッティング配列は、10を超える連続したチミンを含まない。
【0020】
本発明の実施形態によれば、ERターゲッティング配列は、興味の対象であるタンパク質をコードする核酸配列に対し3’に配置される。
【0021】
本発明の実施形態によれば、ERターゲッティング配列核酸配列は、興味の対象であるタンパク質をコードする核酸配列に対し5’に配置される。
【0022】
本発明の実施形態によれば、転写単位はさらにシグナルペプチド配列をコードする。
【0023】
本発明の実施形態によれば、シグナルペプチド配列は、興味の対象であるタンパク質にとって異種である。
【0024】
本発明の実施形態によれば、興味の対象であるタンパク質はヒトタンパク質である。
【0025】
本発明の実施形態によれば、興味の対象であるタンパク質は、抗体、インスリン、インターフェロン、成長ホルモン、エリスロポエチン、成長ホルモン、卵胞刺激ホルモン、第VIII因子、低密度リポタンパク質受容体(LDLR)アルファ・ガラクトシダーゼA及びグルコセレブロシダーゼからなる群から選択される。
【0026】
本発明の実施形態によれば、細胞は、細菌種、真菌種、植物種、昆虫種及び哺乳類種からなる群から選択される種のものである。
【0027】
本発明の実施形態によれば、細菌種の細胞は、大腸菌(E.coli)細胞を含む。
【0028】
本発明の実施形態によれば、哺乳類種の細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を含む。
【0029】
本発明の実施形態によれば、真菌種の細胞はS.cerevisiae(サッカロマイセス・セレビシエ)細胞を含む。
【0030】
本発明の実施形態によれば、発現構築物は、細胞内で興味の対象であるタンパク質を発現するのに適したプロモータをさらに含む。
【0031】
本発明の実施形態によれば、細胞は、細菌種、真菌種、植物種、昆虫種及び哺乳類種からなる群から選択される種のものである。
【0032】
本発明の実施形態によれば、細菌種の細胞は、大腸菌(E.coli)細胞を含む。
【0033】
本発明の実施形態によれば、哺乳類種の細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を含む。
【0034】
本発明の実施形態によれば、真菌種の細胞はS.cerevisiae(サッカロマイセス・セレビシエ)細胞を含む。
【0035】
特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び/又は科学用語は、本発明が関係する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと類似又は同等の方法及び材料を本発明の実施形態の実施又は試験に使用することができるが、具体例としての方法及び/又は材料を以下に説明する。矛盾する場合は、定義を含む特許明細書が優先されることになる。さらに、材料、方法、及び例は、単なる例示であり、必ずしも限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
本発明のいくつかの実施形態について、添付の図面を参照しながら、単なる一例として、本明細書で説明する。ここで細部にわたって図面を具体的に参照すると、示されている詳細は、例としてのものであり、本発明の実施形態の具体的な検討のためのものであることが強調されている。この点で、図面と共に行われる説明により、本発明の実施形態がどのように実施され得るかが当業者に明らかになる。
図中:
【0037】
【
図1A】SECReTEのしきい値として使用するためのNNYリピートの数の決定。
図1Aは、SECReTE数と転写物の長さの相関関係を示す。SECReTEスコアの合計は、各酵母遺伝子(5904スコア)について、示されたしきい値に従って、3つのフレームすべてで転写物配列に存在する連続したNNYリピートの数を数えることによって計算された。散布図は、SECReTEスコアと遺伝子長の相関関係を表す。SECReTEスコアは、10NNYリピートのしきい値(SECReTE10)を超える遺伝子長とは相関しない。Rスコアはピアソン相関係数を表す。
【
図1B】SECReTEのしきい値として使用するためのNNYリピートの数の決定。
図1Bにおいて、SECReTEモチーフは、非セクレトームタンパク質よりもセクレトームタンパク質をコードするmRNAの方が豊富である。SECReTEの存在は、示されたしきい値に従って、セクレトーム(青)及び非分泌(灰色)タンパク質をコードするmRNAでスコア化された。バーは、示されたしきい値でのSECReTE陽性転写物の割合を表す。SECReTEの存在量は、セクレトームのmRNAで有意に高くなっている。*p≦2.28E-13。
【
図1C】SECReTEのしきい値として使用するためのNNYリピートの数の決定。
図1Cにおいて、SECReTE10は、セクレトーム転写物を区別する能力を最大にする。示されたしきい値ごとにROC曲線をプロットした。セクレトーム転写物は「真陽性」セットとして使用され、非セクレトーム転写物は「真陰性」セットとして使用された。SECReTE10のAUC(曲線下面積)が最高であった。
【
図2A】mSMPにおけるSECReTEの存在量は、膜貫通ドメイン(TMD)による影響を受けない。
図2Aについて、SECReTEは、コドンの2番目の位置に豊富に存在する。SECReTEの存在量を、各コドン位置について個別に計算した。mSMPにおけるSECReTEの存在量は2番目のコドン位置で最も顕著であるが、3番目の位置でも有意差が検出された、*p≦9.9E-10。
【
図2B】mSMPにおけるSECReTEの存在量は、膜貫通ドメイン(TMD)による影響を受けない。
図2Bにおいて、SECReTEはまた、可溶性セクレトームタンパク質をコードするmRNAに豊富に存在する。SECReTE10の存在を、TMD含有タンパク質と可溶性分泌タンパク質について別々に調べた。可溶性分泌タンパク質(TMD不含有セクレトーム;シアン色)をコードするmRNAがSECReTEを含む割合は、TMDの有無にかかわらず(TMD含有非セクレトーム;濃灰色、TMD不含有非セクレトーム;薄灰色)、非セクレトーム転写物と比較して高くなっている。3番目のコドン位置(NNY)では、可溶性分泌タンパク質の割合はTMD含有セクレトームタンパク質よりも大きく、有意である(*p≦3.03E-3)。
【
図2C】mSMPにおけるSECReTEの存在量は、膜貫通ドメイン(TMD)による影響を受けない。
図2Cについては、TMD配列の除去後、3番目の位置にはSECReTEが豊富に存在する。SECReTE10の存在を、コード化TMDが除去された後、膜タンパク質をコードするmRNAでスコア化した。SECReTE10は、TMD配列を除去した後でも、セクレトームタンパク質(青色)をコードするmRNAの3番目の位置(NNY)で、非セクレトームタンパク質(灰色)の場合よりも有意に多く存在する。*p=0.01。
【
図3A】細胞壁タンパク質ではSECReTEが高度に濃縮されている。
図3Aは、SECReTE10を含む遺伝子についてのGOアノテーション分析を示す。細胞壁タンパク質及び膜タンパク質をコードする遺伝子は、最高かつ最も顕著な濃縮スコアを示す。
【
図3B】細胞壁タンパク質ではSECReTEが高度に濃縮されている。
図3Bは、SECReTE15を含む遺伝子についてのGOアノテーション分析を示す。細胞壁タンパク質をコードする遺伝子では、SECReTEが最も濃縮されている。
【
図3C】細胞壁タンパク質ではSECReTEが高度に濃縮されている。
図3Cは、遺伝子の異なる群におけるSECReTE10の存在量を示す。細胞壁に局在するように注釈が付けられたタンパク質をコードするmRNAの90%超がSECReTEを含んでいる。高いSECReTE存在量はまた、尾部アンカー型(TA)タンパク質を除く他のセクレトーム群でも認められた。ミトコンドリアmRNA(Mito)はSECReTEの存在量が少ない。バーの上の数字は、各群の遺伝子の数を表す。
【
図3D】細胞壁タンパク質ではSECReTEが高度に濃縮されている。
図3Dは、細胞壁転写物のMEME分析を示す。SECReTEに似たモチーフが、MEMEを使用して細胞壁転写物で明らかにされた。x軸上の数字は、基数を示す。
【
図4A】SECReTEは、ヒトゲノムに含まれている。
図4Aについては、SECReTE10は、ヒトにおけるセクレトーム遺伝子を分類する能力を最大にする。示されたしきい値ごとにROC曲線をプロットした。セクレトーム遺伝子を真陽性セットとして、非セクレトーム遺伝子を真陰性セットとして使用した。SECReTE10のAUC(曲線下面積)が最高であった。
【
図4B】SECReTEは、ヒトゲノムに含まれている。
図4Bについて、SECReTEは、ヒトセクレトームタンパク質のmRNAに非常に豊富に存在する。SECReTE10存在量を、各コドン位置について個別に計算した。ヒトmSMPにおけるSECReTE存在量は、コドンの2番目の位置で最も顕著であるが、3番目の位置でも非常に有意な差が検出された。*p≦3.73E-68C。SECReTEは、ヒトの可溶性セクレトームタンパク質をコードするmRNAに非常に豊富に存在する。
【
図4C】SECReTEは、ヒトゲノムに含まれている。SECReTE10の存在を、TMD含有タンパク質と可溶性分泌タンパク質について別々に調べた。可溶性分泌タンパク質(TMD不含有セクレトーム;シアン色)をコードするmRNAがSECReTEを含む割合は、TMDの有無にかかわらず(TMD含有非セクレトーム;濃灰色、TMD不含有非セクレトーム;薄灰色)、非セクレトーム転写物と比較して高くなっている。SECReTEが3番目の位置にある可溶性分泌タンパク質の割合は、TMD含有非セクレトームタンパク質(NNY)の割合よりも大きく、顕著である。バーの上の数字は、各群の遺伝子の数を表す。*p≦3.49E-12。
【
図4D】SECReTEは、ヒトゲノムに含まれている。
図4Dは、遺伝子の異なる群におけるSECReTE10の存在量を示す。尾部アンカー型(TA)タンパク質を除く他のセクレトームタンパク質群では、高いSECReTE存在量が観察された。ミトコンドリアmRNA(Mito)はSECReTEの存在量が少ない。バーの上の数字は、各群の遺伝子の数を表す。
【
図4E】SECReTEは、ヒトゲノムに含まれている。
図4Eは、バチルス・サブティリス(枯草菌、B.subtilis)におけるSECReTE10の存在量を示す。SECReTE10の存在量をスコア化したところ、非セクレトーム(Non-Sec)タンパク質をコードする遺伝子との比較において、セクレトームタンパク質(すなわち、SS&TMD、TMD、及びSS)をコードする遺伝子をコードするmRNAで高いことが観察された。バーの下の数字は、各群の遺伝子の数を表す。
【
図5A】内因性タンパク質及び外因性タンパク質の分泌レベルは、SECReTE強度による影響を受ける。
図5Aにおいて、SECReTEは、スクロース上で成長する能力を高めている。WT、suc2Δ、SUC2(+)SECReTE及びSUC2(-)SECReTEの酵母がスクロース上で成長する能力を、落下試験によって調べた。細胞をグルコース含有YPD培地で対数中期まで増殖させた後、系列希釈してスクロース含有合成培地又はYPDに平板培養した。フォトドキュメンテーションの前に、細胞を2日間増殖させた。SUC2(+)SECReTE細胞はより良い成長を示したがSUC2(-)SECReTE変異体は、WT細胞よりも成長の低下を示した。suc2Δ細胞は、スクロース含有培地では成長できなかった。
【
図5B】内因性タンパク質及び外生タンパク質の分泌レベルは、SECReTE強度による影響を受ける。
図5Bにおいて、SECReTEはインベルターゼの分泌を増強している。Aからの示された株をインベルターゼ分泌アッセイにかけた。内部インベルターゼ活性及び分泌インベルターゼ活性の両方を、グルコース抑制解除後に単位で測定した。両活性ともSUC2(-)SECReTE細胞で減少し、SUC2(+)SECReTE細胞で上昇していた。エラーバーは、3回の実験の反復からの標準偏差を表す。*p<0.05。
【
図5C】内因性タンパク質及び外生タンパク質の分泌レベルは、SECReTE強度による影響を受ける。
図5Cにおいて、SECReTEは、カルコフロールホワイトで成長する能力を高めている。WT、hsp150Δ、HSP150(+)SECReTE、及びHSP150(-)SECReTEの細胞がCFW上で成長する能力を、落下試験で調べた。細胞をYPD上で対数中期まで増殖させた後、系列希釈し、YPD単独又はCFWを含むYPDプレート上に平板培養し、30℃でインキュベートした。フォトドキュメンテーションの前に、細胞を2日間増殖させた。HSP150(-)SECReTE変異体はWT細胞と比較して過感受性を呈したが、HSP150(+)SECReTE細胞は感受性が低かった。CFWを含む培地ではhsp150Δ細胞の成長が不十分であった。
【
図5D】内因性タンパク質及び外生タンパク質の分泌レベルは、SECReTE強度による影響を受ける。
図5Dにおいて、SECReTEはHsp150分泌を高めている。Cからの示された株をHsp150分泌アッセイにかけた。細胞を対数中期まで37℃で4時間増殖させ、抗Hsp150抗体を使用したウエスタン分析によりライゼート(内部)又は培地(外部)で検査した。外部Hsp150は、HSP150(+)SECReTE株では増加したが、WTと比較してHSP150(-)SECReTE細胞では減少していた。内部Hsp150は、WT細胞との比較において、HSP150(-)SECReTE細胞で減少し、HSP150(+)ERTM細胞でもわずかに減少していた。内部Hsp150も外部Hsp150も、hsp150Δ細胞由来のライゼート又は培地でそれぞれ検出されなかった。バンドの強度を、ImageJを使用して定量化し、下記ヒストグラムに示した。グラフは、WTの強度に対する全試料の強度の比率を表す。
【
図5E】内因性タンパク質及び外生タンパク質の分泌レベルは、SECReTE強度による影響を受ける。
図5Eにおいて、SECReTEは、ハイグロマイシンBで成長する能力を高めている。WT、ccw12Δ、及びCCW12(-)SECReTEの細胞がHBで成長する能力を、落下試験で調べた。細胞をグルコース含有YPD培地で対数中期まで増殖させた後、系列希釈し、HB含有YPD又はYPDのみに平板培養した。フォトドキュメンテーションの前に、細胞を2日間増殖させた。CCW12(-)SECReTE株は、WT細胞と比較してHBストレスに対する感受性が高かった。ccw12Δ細胞は、HBを含む培地では増殖できなかった。
【
図5F】内因性タンパク質及び外因性タンパク質の分泌レベルは、SECReTE強度による影響を受ける。
図5Fにおいて、SECReTEは、外因性タンパク質SSGAS1-GFPの分泌を高めている。プラスミドからSSGAS1-GFP3’UTRGAS1(+)SECReTE、SSGAS1-GFP、SSGAR2-GFP、GFP、及びSSGAS1-LacZを発現する酵母を、2%ラフィノースを含む合成培地で対数中期まで増殖させ、4時間3%ガラクトース含有培地にシフトした。異なる株から発現されたタンパク質を培地からTCA沈殿させ、沈殿物をSDS-PAGEで分離した。GFPは抗GFP抗体で検出され、Hsp150は抗Hsp150抗体で検出され、ローディングコントロールとして使用された。バンド強度を、ImageJを使用して定量化し、強度をSSGAS1-GFP分泌と比較してスコア化した。SECReTEを含むように変異導入されたGAS1 3’UTRを不可すると、SS-Gas1の分泌が改善され、SSKAR2-GFPの分泌と同等となった。SSを欠くGFPは分泌されず、SSGAS1-LacZが陰性対照として使用された。
【
図6A】SECReTEは、ERへのSUC2 mRNAの局在化を高める。
図6Aは、smFISHを使用した、内因的に発現したSUC2(+)SECReTE mRNA及びSUC2(-)SECReTE mRNAの可視化を示す。プラスミドからWT SUC2、SUC2(+)SECReTE、又はSUC2(-)SECReTE及びSec63-GFPを内因的に発現する酵母を、2%グルコースを含むSC培地で対数中期まで増殖させた後、細胞を低グルコース含有培地(0.05%グルコース)にシフトし、SUC2発現を誘導した。細胞を、SUC2に相補的な非重複TAMRA標識FISHプローブを使用して、smFISH標識用に処理した。
【
図6B】SECReTEは、ERへのSUC2 mRNAの局在化を高める。
図6Bは、ERへのSUC2(+)SECReTE mRNA及びSUC2(-)SECReTE mRNAの局在化の定量化を示す。共局在化されている、共局在化されていない、又はSec63-GFP標識ERに隣接している顆粒のパーセンテージを各細胞でスコア化した。ヒストグラムは、各株に関する少なくとも約60の細胞と約250のSUC2顆粒についての平均スコアを示す、*p=0.019。
【
図7A】潜在的SECReTE結合タンパク質の同定。
図7Aは、RNA結合タンパク質プルダウン試験におけるSECReTE10含有転写物の同定を示す。示されたRBPに結合した総mRNAからのSECReTE10含有mRNAの数と割合を示す。ヒストグラムの作成に使用されたマイクロアレイ分析データは、(Colominaら、2008;Hasegawaら、2008;Hoganら、2008)に公開された。
【
図7B】潜在的SECReTE結合タンパク質の同定。
図Bは、潜在的SECReTE結合パートナーの同定を示す。WT細胞並びに示されたRBP(例、Whi3、及びKhd1)をコードする遺伝子について欠失させたWT細胞又はHSP150(+)SECReTE細胞を、30℃でYPDにおいて対数中期まで増殖させた後、系列希釈し、固体YPD培地又はCFW含有YPDのいずれかに平板培養した。酵母をフォトドキュメンテーションの2日前から成長させた。
【
図8】SECReTEはタンパク質の分泌において積極的な役割を演じる。SECReTE含有転写物(1)はSBPに結合し(2)、ERへのmRNAターゲッティングを誘導し(3)、及び/又はmRNAの安定化をもたらす(4)。ERへのターゲッティングにより、空間的調節とmRNAの安定化がもたらされ得(5)、それに続いてタンパク質産生(6)と分泌(7)の増加を招く可能性がある。
【
図9A】SECReTEの存在量は、コドン組成に依存的ではない。SECReTEのコドン使用に対する依存性を評価するために並べ替え分析を行った。そのために、コドン組成を維持し、配列をランダムに1000回シャッフルし直した。SECReTE10がランダムに現れる確率を評価するために、Zスコアを各遺伝子について計算した(Zスコアの計算については、材料と方法を参照)。Zスコアが高いほど、SECReTEがランダムに現れる可能性が低くなる。
図9Aにおいて、セクレトームをコードするmRNAにおけるSECReTEの濃縮は、コドン組成に依存していない。Zスコアの分布プロットは、非セクレトームタンパク質の場合よりもセクレトームタンパク質をコードするmRNAについての値の方が高いことを示している。
【
図9B】SECReTEの存在量は、コドン組成に依存的ではない。SECReTEのコドン使用に対する依存性を評価するために並べ替え分析を行った。そのために、コドン組成を維持し、配列をランダムに1000回シャッフルし直した。SECReTE10がランダムに現れる確率を評価するために、Zスコアを各遺伝子について計算した(Zスコアの計算については、材料と方法を参照)。Zスコアが高いほど、SECReTEがランダムに現れる可能性が低くなる。
図9Bにおいて、可溶性及び膜のセクレトーム転写物の両方をコードするmRNAにおけるSECReTE濃縮は、コドン組成とは無関係である。Zスコアの分布プロットは、非セクレトームタンパク質(すなわち、TMD含有又は不含有)の場合よりも、セクレトームタンパク質(mSMP、TMD含有又はTMD不含有のいずれか)をコードするmRNAについての方が高い値を示す。
【
図9C】SECReTEの存在量は、コドン組成に依存的ではない。SECReTEのコドン使用に対する依存性を評価するために並べ替え分析を行った。そのために、コドン組成を維持し、配列をランダムに1000回シャッフルし直した。SECReTE10がランダムに現れる確率を評価するために、Zスコアを各遺伝子について計算した(Zスコアの計算については、材料と方法を参照)。Zスコアが高いほど、SECReTEがランダムに現れる可能性が低くなる。
図9Cにおいて、コドンの2番目と3番目の位置でのSECReTEの濃縮は、コドン使用とは無関係である。有意なZスコアの割合(すなわち、1.96以上)は、非セクレトームタンパク質の場合よりもセクレトームタンパク質をコードするmRNAについての方が大きくなっている。
【
図9D】SECReTEの存在量は、コドン組成に依存的ではない。SECReTEのコドン使用に対する依存性を評価するために並べ替え分析を行った。そのために、コドン組成を維持し、配列をランダムに1000回シャッフルし直した。SECReTE10がランダムに現れる確率を評価するために、Zスコアを各遺伝子について計算した(Zスコアの計算については、材料と方法を参照)。Zスコアが高いほど、SECReTEがランダムに現れる可能性が低くなる。
図9Dにおいて、コドンの2番目と3番目の位置でのSECReTEの濃縮は、コドン使用とTMDの存在の両方と無関係である。有意なZスコアの割合(すなわち、1.96以上)は、TMDの有無にかかわらず、非セクレトームタンパク質の場合よりもセクレトームタンパク質をコードするmRNAについての方が大きくなっている。
【
図10A】SUC2、HSP150、及びCCW12におけるSECReTE及びSECReTEの変異の説明。グラフは、天然及び変異型のSECReTE遺伝子における連続する10のNNYリピートのしきい値を使用するか(下方の図)又は使用せずに(上方の図)遺伝子の長さに沿って見出されたNNYリピートの数を比較している。
図10Aは、SUC2に関するものである。
【
図10B】SUC2、HSP150、及びCCW12におけるSECReTE及びSECReTEの変異の説明。グラフは、天然及び変異型のSECReTE遺伝子における連続する10のNNYリピートのしきい値を使用するか(下方の図)又は使用せずに(上方の図)遺伝子の長さに沿って見出されたNNYリピートの数を比較している。
図10Bは、HSP150に関するものである。
【
図10C】SUC2、HSP150、及びCCW12におけるSECReTE及びSECReTEの変異の説明。グラフは、天然及び変異型のSECReTE遺伝子における連続する10のNNYリピートのしきい値を使用するか(下方の図)又は使用せずに(上方の図)遺伝子の長さに沿って見出されたNNYリピートの数を比較している。
図10Cは、CCW12に関するものである。
【
図11A】SECReTEにおける変異は、必ずしもmRNAレベルに影響を与えるわけではない。示された株における天然又は変異型SUC2、CCW12、及びHSP150のmRNAレベルをqRT-PCRによって定量化した。倍率変化を、WTレベルと比較して計算した。
図11Aにおいて、SUC2 mRNAレベルは、SECReTE変異によって改変されている。細胞を2%グルコース含有SC培地において30℃で対数中期まで増殖させた後、細胞を低グルコース培地に1.5時間シフトした。採取及びRNA抽出の後、分泌タンパク質をコードするSUC2の長い転写物を増幅するために使用されるプライマー。アクチンのプライマーを正規化に使用した。SUC2(-)SECReTE細胞はWTよりも低いSUC2 mRNAレベルを示し、SUC2(+)SECReTE細胞はより高いレベルを示した。エラーバーは、3つの生物学的反復の標準偏差を表す。
【
図11B】SECReTEにおける変異は、必ずしもmRNAレベルに影響を与えるわけではない。示された株における天然又は変異型SUC2、CCW12、及びHSP150のmRNAレベルをqRT-PCRによって定量化した。倍率変化を、WTレベルと比較して計算した。
図11Bにおいて、CCW12 mRNAレベルは、SECReTE変異によって改変されていない。細胞をYPD培地において対数中期まで30℃で増殖させた後、採取し、RNA抽出を行った。UBC6の増幅に使用したプライマーを正規化に使用した。SECReTE改変の結果として、CCW12 mRNAレベルが大幅に変更されることはなかった。
【
図11C】SECReTEにおける変異は、必ずしもmRNAレベルに影響を与えるわけではない。示された株における天然又は変異型SUC2、CCW12、及びHSP150のmRNAレベルをqRT-PCRによって定量化した。倍率変化を、WTレベルと比較して計算した。
図11Cにおいて、HSP150 mRNAレベルは、SECReTE変異によって改変されていない。酵母株を、YPD培地において26℃又は37℃のいずれかで対数中期まで増殖させた後、採取とRNA抽出を行った。UBC6を正規化に使用した。HSP150 mRNAレベルが、SECReTE改変の結果として大幅に変更されることはなかった。
【
図12A】潜在的SECReTE結合タンパク質の同定。WT細胞と、示されたRBP[例Puf2、She2]をコードする遺伝子を欠失させたWT細胞又はHSP150(+)SECReTE細胞のいずれかを、30℃でYPDにおいて対数中期まで増殖させた後、系列希釈し、固体YPD培地又はCFW含有YPDへの平板培養を行った。酵母をフォトドキュメンテーションの2日前から成長させた。
【
図12B】潜在的SECReTE結合タンパク質の同定。WT細胞と、示されたRBP[例Puf1]をコードする遺伝子を欠失させたWT細胞又はHSP150(+)SECReTE細胞のいずれかを、30℃でYPDにおいて対数中期まで増殖させた後、系列希釈し、固体YPD培地又はCFW含有YPDへの平板培養を行った。酵母をフォトドキュメンテーションの2日前から成長させた。
【
図13】
図13は、GFPの発現に使用され得る具体例としての配列である(配列番号4)。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、組換えタンパク質、より特定すれば、ただし排他的ではないものとして、分泌された組換えタンパク質の発現を増強する方法に関する。
【0039】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、以下の説明に記載されるか、又は実施例によって例示される詳細に必ずしも限定されるものではないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、又は様々な方法で実施又は実行することができる。
【0040】
タンパク質を適切な目標に向けて選別することは、細胞組織と正常な機能にとって重要である。タンパク質の局在に関する情報は、タンパク質配列(タンパク質ターゲティング配列など)内に存在する可能性があるが、mRNAの空間的局在も、正しいタンパク質の細胞内ターゲティングにとって重要な場合があり得る。
【0041】
本発明者らは、すべての分泌タンパク質及び膜タンパク質(SMP)の特性を明らかにする特徴を特定し、10を超える連続したNNYリピートからなる反復モチーフを発見した。本明細書で「SECReTE」と呼ばれるこのモチーフは、膜貫通ドメイン(TMD)含有タンパク質をコードする転写物に限定されないが、原核生物(例、バチルス・スブティリス(枯草菌、B.subtilis))から酵母(サッカロマイセス・セレビシエ(S.cerevisiae)及びシゾサッカロマイセス・ポンベ(S.pombe))、さらにはヒトに至る、すべてのセクレトーム転写物により高い存在量で見出され得る(
図1A~
図1C及び
図4A~
図4E)。
【0042】
SECReTEの生理学的関連性について、SMPをコードする3つのmRNA:SUC2、HSP150、及びCCW12の濃縮度を変更することによって調査した(
図5)。アミノ酸配列は突然変異によって変更されなかったが、これらの遺伝子の機能性は変更された。SUC2 SECReTE変異体は、WT細胞との比較においてスクロース含有培地で成長率の変化を呈し、すなわち、モチーフ強度が低下すると成長が低下し、モチーフ強度が上昇すると成長が向上した(
図5A)。この結果は、インベルターゼの合成と分泌の両方の減少又は増加とそれぞれ対応していた(
図5A、
図5B)。HSP150 SECReTE変異体の挙動も異なっており、すなわちHSP150(-)SECReTE細胞は、WT細胞と比較してCFWに対してより高い感受性を示したが、HSP150(+)SECReTE細胞はさらなる抵抗を示した(
図5C)。同様に、CCW12(-)SECReTE細胞はHBに対して過度の感受性を示した(
図5E)。
【0043】
これらの所見は、SECReTEが細胞から分泌されるタンパク質の量を調節する上で重要な生物学的役割を果たすという概念を裏付けている。これは、SECReTEモチーフを含むGas1 3’UTRを付加すると分泌が大幅に強化される外因性基質SS(GAS1)-GFPを使用して検証された(
図5F)。さらに、SECReTEを強化すると、タンパク質の産生と分泌が増加するだけでなく、ERへのSUC2転写物の局在性も高められた(
図6)。
【0044】
結果として、本教示は、このモチーフが組換えタンパク質産生を改善するために使用され得ることを示唆する。
【0045】
したがって、本発明の第1の実施態様によれば、転写単位を含む単離されたポリヌクレオチドであって、前記転写単位が:
(i)興味の対象である分泌タンパク質をコードする核酸配列;
(ii)配列番号2に記載の小胞体(ER)ターゲッティング配列であって、前記興味の対象である分泌タンパク質にとって異種であるERターゲッティング配列;
(iii)プロモータ;及び
(iv)転写終結部位であって、興味の対象であるタンパク質をコードする前記核酸配列及び前記ERターゲッティング列が前記プロモータと前記転写終結部位との間に配置されているものとする、転写終結部位
を含み、
前記ERターゲッティング配列が前記興味の対象であるタンパク質をコードする前記核酸配列に含まれるとき、前記核酸配列が、前記ERターゲッティング配列を含むようにコドン最適化されているものとする、単離されたポリヌクレオチドが提供される。
【0046】
「単離されたポリヌクレオチド」という語句は、単離されたDNA分子(すなわち、デオキシリボヌクレオチドを含む)の形態で提供される一本鎖又は二本鎖の核酸配列を指す。
【0047】
「転写単位」という用語は、転写に必要な配列と一緒になった、単一のRNA分子をコードするDNAの配列を指す。典型的には、転写単位は、プロモータ、興味の対象であるタンパク質をコードする配列、及びターミネータを含む。
【0048】
これらのエレメントのそれぞれについては、本明細書において以下で個別に説明する。
興味の対象であるタンパク質をコードする核酸配列:
【0049】
興味の対象であるタンパク質は、通常、分泌されたタンパク質である。一実施形態において、タンパク質はヒトタンパク質であるが、本発明では他の種からのタンパク質についても検討する。
【0050】
主題の組成物及び方法を使用することによって生産され得る興味の対象である例示的なタンパク質には、ある特定の天然及び組換えヒトホルモン(例、インスリン、成長ホルモン、インスリン様成長因子1、卵胞刺激ホルモン、及び絨毛性ゴナドトロピン)、造血タンパク質(例、エリスロポエチン、C-CSF、GM-CSF、及びIL-11)、血栓性及び止血性タンパク質(例、組織プラスミノーゲン活性化因子及び活性化タンパク質C)、免疫学的タンパク質(例、インターロイキン)、抗体及び他酵素(例、デオキシリボヌクレアーゼI)が含まれるが、これらに限定される訳ではない。主題の組成物及び方法によって生産され得る例示的なワクチンには、様々なインフルエンザウイルス(例、A型、B型及びC型、並びにA型インフルエンザに関するH5N2、H1N1、H3N2などの各型についての様々な血清型)、HIV、肝炎ウイルス(例、A型、B型、C型又はD型肝炎)、ライム病、及びヒトパピローマウイルス(HPV)に対するワクチンが含まれるが、これらに限定される訳ではない。異種生産タンパク質診断の例には、セクレチン、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、HIV抗原、及びC型肝炎抗原が含まれるが、これらに限定される訳ではない。
【0051】
興味の対象である他の例示的なタンパク質には、サイトカイン、ケモカイン、リンホカイン、リガンド、受容体、ホルモン、酵素、抗体及び抗体フラグメント、並びに成長因子が含まれ得るが、これらに限定される訳ではない。受容体の非限定的な例には、TNFI型受容体、IL-1受容体II型、IL-1受容体拮抗物質、IL-4受容体及び任意の化学的又は遺伝的に改変された可溶性受容体が含まれる。酵素の例には、アセチルコリンエステラーゼ、ラクターゼ、活性化プロテインC、第VII因子、コラゲナーゼ(例:Santylの名称でAdvance Biofactures Corporationにより市販されている)、アガルシダーゼ-ベータ(例、GenzymeによりFabrazymeの名称で市販されている)、ドルナーゼアルファ(例、GenentechによりPulmozymeの名称で市販されている)、アルテプラーゼ(例、GenentechによりActivaseの名称で市販されている)、ペグ化アスパラギナーゼ(例:Oncasparという名称でEnzonにより市販されている)、アスパラギナーゼ(例、MerckからElsparの名称で市販されている)、及びイミグルセラーゼ(例、Ceredaseという名称でGenzymeにより市販されている)が含まれる。特定のポリペプチド又はタンパク質の例としては、コラーゲン、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、コロニー刺激因子(CSF)、インターフェロン・ベータ(IFN-ベータ)、インターフェロン・ガンマ(IFNガンマ)、インターフェロン・ガンマ誘導因子I(IGIF)、トランスフォーミング増殖因子ベータ(IGF-ベータ)、RANTES(活性化時に調節され、正常なT細胞が発現し、おそらく分泌される)、マクロファージ炎症性タンパク質(例:MIP-1-アルファ及びMIP-1-ベータ)、リーシュマニア伸長開始因子(LEIF)、血小板由来成長因子(PDGF)、腫瘍壊死因子(TNF)、成長因子、例、表皮成長因子(EGF)、血管内皮成長因子(VEGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン2(NT 2)、ニューロトロフィン3(NT-3)、ニューロトロフィン-4(NT-4)、ニューロトロフィン-5(NT-5)、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、TNFアルファII型受容体、エリスロポエチン(EPO)、インスリン及び可溶性糖タンパク質(例、gp120及びgp160糖タンパク質)があるが、これらに限定される訳ではない。gp120糖タンパク質は、ヒト免疫不全ウイルス(WIV)エンベロープタンパク質であり、gp160糖タンパク質は、gp120糖タンパク質の既知の前駆体である。他の例には、セクレチン、ネシリチド(ヒトB型ナトリウム利尿ペプチド(hBNP))及びGYP-Iが含まれる。
【0052】
興味の対象である他の例示的なタンパク質には、限定される訳ではないが、クラスAのロドプシン様受容体、例えばムスカリン性(Muscatinic)(Muse.)アセチルコリン脊椎動物1型、ムスカリン性アセチルコリン脊椎動物2型、ムスカリン性アセチルコリン脊椎動物3型、ムスカリン性アセチルコリン脊椎動物4型;アドレナリン受容体(アルファ・アドレナリン受容体1型、アルファ・アドレナリン受容体2型、ベータ・アドレナリン受容体1型、ベータ・アドレナリン受容体2型、ベータ・アドレナリン受容体3型、ドーパミン脊椎動物1型、ドーパミン脊椎動物2型、ドーパミン脊椎動物3型、ドーパミン脊椎動物4型、ヒスタミン1型、ヒスタミン2型、ヒスタミン3型、ヒスタミン4型、セロトニン1型、セロトニン2型、セロトニン3型、セロトニン4型、セロトニン5型、セロトニン6型、セロトニン7型、セロトニン8型、他のセロトニン型、微量アミン、アンジオテンシン1型、アンジオテンシン2型、ボンベシン、ブラジキニン(Bradykffin)、C5aアナフィラトキシン、Finet-leu-phe、APJ様、インターロイキン8型A、インターロイキン8型B、インターロイキン8型その他、C-Cケモカイン1型~11型及び他の型、C--X--Cケモカイン(2型~6型など)、C-X3-Cケモカイン、コレシストキニンCCK、CCKタイプA、CCKタイプB、CCKその他、エンドセリン、メラノコルチン(メラノサイト刺激ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、メラノコルチンホルモン)、ダフィー抗原、プロラクチン放出ペプチド(GPR10)、ニューロペプチドY(1型~7型)、ニューロペプチドY、ニューロペプチドYその他、ニューロテンシン、オピオイド(タイプD、K、M、X)、ソマトスタチン(1型~5型)、タキキニン(物質P(NK1)、物質K(NK2)、ニューロメジンK(NK3)、タキキニン様1、タキキニン様2、バソプレシン/バソトシン(1型~2型)、バソトシン、オキシトシン/メソトシン、コノプレシン、ガラニン様、プロテイナーゼ活性化様、オレキシン&ニューロペプチドFF、QRFP、ケモカイン受容体様、ニューロメジンU様(ニューロメジンU、PRXアミド)、ホルモンタンパク質(卵胞刺激ホルモン、ルトロピン絨毛性腺刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、ゴナドトロピンI型、ゴナドトロピンII型)、(ロド)オプシン((Rhod)opsin)、ロドプシン脊椎動物(1型~5型)、ロドプシン脊椎動物5型、ロドプシン節足動物、ロドプシン節足動物1型、ロドプシン節足動物2型、ロドプシン節足動物3型、ロドプシン軟体動物、ロドプシン、嗅覚器(嗅覚器11 fam 1~13)、プロスタグランジン(プロスタグランジンE2サブタイプEP 1、プロスタグランジンE2/D2サブタイプEP2、プロスタグランジンE2サブタイプEP3、プロスタグランジンE2サブタイプEP4、プロスタグランジンF2-アルファ、プロスタサイクリン、トロンボキサン、アデノシン1型~3型、プリン受容体、プリン受容体P2RY1-4,6,11 GPR91、プリン受容体P2RY5,8,9,10 GPR35,92,174、プリン受容体P2RY12-14 GPR87(JDP-グルコース)、カンナビノイド、血小板活性化因子、ゴナドトロピン放出ホルモン、ゴナドトロピン放出ホルモンI型、ゴナドトロピン放出ホルモンII型、脂質動員ホルモン様、コラゾニン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン及び分泌促進物質、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン分泌促進物質、成長ホルモン分泌促進物質様、脱皮誘発ホルモン(ETHR)、メラトニン、リゾスフィンゴ脂質及びLPA(EDG)、スフィンゴシン1-リン酸Edg-1、リゾホスファチジン酸Edg-2、スフィンゴシン1-リン酸Edg-3、リゾホスファチジン酸Edg4、スフィンゴシン1-リン酸Edg-5、スフィンゴシン1-リン酸Edg-6、リゾホスファチジン酸Edg-7、スフィンゴシン1-リン酸Edg-8、Edg他のロイコトリエンB4受容体、ロイコトリエンB4受容体BLT1、ロイコトリエンB4受容体BLT2、クラスAオーファン/その他、推定的神経伝達物質、SREB、Mas癌原遺伝子及びMas関連(MRG)、GPR45様、システイニルロイコトリエン、Gタンパク質共役胆汁酸受容体、遊離脂肪酸受容体(GP40、GP41、GP43)、クラスBのセクレチン様、カルシトニン、コルチコトロピン放出因子、胃抑制ペプチド、グルカゴン、成長ホルモン放出ホルモン、副甲状腺ホルモン、PACAP、セクレチン、血管作動性腸管ポリペプチド、ラトロフィリン、ラトロフィリン1型、ラトロフィリン2型、ラトロフィリン3型、ETL受容体、脳特異的血管新生阻害剤(BAI)、メトセラ様タンパク質(MTH)、カドヘリンEGF LAG(CELSR)、巨大Gタンパク質共役型受容体、クラスCの代謝型グルタミン酸/フェロモン、代謝型グルタミン酸I群~III群、カルシウム感知型様、細胞外カルシウム感知型、フェロモン、カルシウム感知型その他、推定的フェロモン受容体、GABA-B、GABA-Bサブタイプ1、GABA-Bサブタイプ2、GABA-B様、オーファンGPRC5、オーファンGPCR6、セブンレスタンパク質の花嫁(Bride of sevenless proteins、BOSS)、味覚受容体(TiR)、クラスDの真菌フェロモン、真菌フェロモンA因子様(STE2、STE3)、真菌フェロモンB様(BAR、BBR、RCB、PRA)、クラスEのcAMP受容体、眼の白化タンパク質、frizzled(フリズルド)/平滑化ファミリー、frizzled A群(Fz 1及び2及び4及び5及び7-9)、frizzled B群(Fz 3及び6)、frizzled C群(その他)、鋤鼻受容体、線虫の化学受容体、昆虫の嗅覚受容体、並びにクラスZの古細菌/細菌/真菌のオプシンを含むGPCRが含まれ得る。
【0053】
興味の対象であるポリペプチドは、生物活性ペプチドであり得る。例としては:BOTOX、Myobloc、Neurobloc、Dysport(又はボツリヌス菌神経毒の他の血清型)、アルグルコシダーゼ・アルファ、ダプトマイシン、YH-16、絨毛性ゴナドトロピン・アルファ、フィルグラスチム、セトロレリクス、インターロイキン-2、アルデスロイキン、テセロイキン(teceleulin)、デニロイキンジフチトクス、インターフェロン・アルファ-n3(注射用)、インターフェロン・アルファ-nl、DL-8234、インターフェロン、Suntory(ガンマ-1a)、インターフェロン・ガンマ、サイモシン・アルファ1、タソネルミン、DigiFab、ViperaTAb、EchiTAb、CroFab、ネシリチド、アバタセプト、アレファセプト、Rebif、エプトテルミンアルファ、テリパラチド(骨粗鬆症)、注射用カルシトニン(骨疾患)、カルシトニン(経鼻、骨粗鬆症)、エタネルセプト、ヘモグロビングルタマー250(ウシ)、ドロトレコギン・アルファ、コラゲナーゼ、カルペリチド、組換えヒト表皮増殖因子(局所用ゲル、創傷治癒)、DWP401、ダルベポエチン・アルファ、エポエチン・オメガ、エポエチン・ベータ、エポエチン・アルファ、デシルジン、レピルジン、ビバリルジン、ノナコグ・アルファ、Mononine、エプタコグ・アルファ(活性化)、組換え第VIII因子+VWF、レコンビナート、組換え第VIII因子、第VIII因子(組換え体)、Alphnmate、オクトコグ・アルファ、第VIII因子、パリフェルミン、Indikinase、テネクテプラーゼ、アルテプラーゼ、パミテプラーゼ、レテプラーゼ、ナテプラーゼ、モンテプラーゼ、フォリトロピン・アルファ、rFSH、hpFSH、ミカファンギン、ペグフィルグラスチム、レノグラスチム、ナルトグラスチム、セルモレリン、グルカゴン、エキセナチド、プラムリンチド、イミグルセラーゼ(iniglucerase)、ガルスルファーゼ、Leucotropin、モルグラモスチム(molgramostirn)、酢酸トリプトレリン、ヒストレリン(皮下埋込み体、Hydron)、デスロレリン、ヒストレリン、ナファレリン、ロイプロリド徐放型デポー剤(ATRIGEL)、ロイプロリド埋込み型(DUROS)、ゴセレリン、ソマトロピン、Eutropin、KP-102プログラム、ソマトロピン、ソマトロピン、メセカルミン(成長不全)、エンフビルチド(enlfavirtide)、Org-33408、インスリングラルギン、インスリングルリジン、インスリン(吸入薬)、インスリンリスプロ、インスリンデテミル(deternir)、インスリン(口腔、RapidMist)、メカセルミンリンファバート、アナキンラ、セルモロイキン、99mTc-アプシタイド注射剤、myelopid、Betaseron、酢酸グラチラマー、Gepon、サルグラモスチム、オプレルベキン、ヒト白血球由来アルファインターフェロン、Bilive、インスリン(組換え体)、組換えヒトインスリン、インスリンアスパルト、メカセルミン(mecasenin)、Roferon-A、インターフェロン-アルファ2、Alfaferone、インターフェロン・アルファコン-1、インターフェロン・アルファ、Avonexの組換えヒト黄体形成ホルモン、ドルナーゼ・アルファ、トラフェルミン、ジコノチド、タルチレリン、ジボテルミンアルファ、アトシバン、ベカプレルミン、エプチフィバチド、Zemaira、CTC-111、Shanvac-B、HPVワクチン(四価)、オクトレオチド、ランレオチド、アンセスチム(ancestirn)、アガルシダーゼ・ベータ、アガルシダーゼ・アルファ、ラロニダーゼ、酢酸プレザチド銅(局所用ゲル)、ラスブリカーゼ、ラニビズマブ、Actimmune、PEG-イントロン、Tricomin、組換えハウスダストダニアレルギー脱感作注射、組換えヒト副甲状腺ホルモン(PTH)1~84(sc、骨粗鬆症)、エポエチン・デルタ、トランスジェニック抗トロンビンIII、Granditropin、Vitrase、組換えインスリン、インターフェロン-アルファ(経口トローチ)、GEM-21S、バプレオチド、イズルスルファーゼ、オマパトリラト(omnapatrilat)、組換え血清(serurn)アルブミン、セルトリズマブペゴール、グルカルピダーゼ、ヒト組換えC1エステラーゼ阻害剤(血管浮腫)、ラノテプラーゼ、組換えヒト成長ホルモン、エンフビルチド(無針注射、Biojector 2000)、VGV-1、インターフェロン(アルファ)、ルシナクタント、アビプタジル(吸入、肺疾患)、イカチバント、エカランチド、オミガナン、Aurograb、酢酸ペキシガナン、ADI-PEG-20、LDI-200、デガレリクス、シントレデキンベスドトクス(cintredelinbesudotox)、Favld、MDX-1379、ISAtx-247、リラグルチド、テリパラチド(骨粗鬆症)、チファコギン、AA4500、T4N5リポソームローション、カツマキソマブ、DWP413、ART-123、Chrysalin、デスモテプラーゼ、アメジプラーゼ、コリフォリトロピンアルファ、TH-9507、テズグルチド、Diamyd、DWP-412、成長ホルモン(徐放型注射)、組換えG-CSF、インスリン(吸入用、AIR)、インスリン(吸入用、Technosphere)、インスリン(吸入用、AERx)、RGN-303、DiaPep277、インターフェロン・ベータ(C型肝炎ウイルス感染(HCV))、インターフェロン・アルファ-n3(経口)、ベラタセプト、経皮インスリンパッチ、AMG-531、MBP-8298、Xerecept、オペバカン、AIDSVAX、GV-1001、LymphoScan、ランピルナーゼ、Lipoxysan、ルスプルチド、MP52(ベータ型リン酸三カルシウム担体、骨再生)、メラノーマワクチン、シプロイセル-T、CTP-37、Insegia、ビテスペン、ヒトトロンビン(凍結、外科的出血)、トロンビン、TransMID、アルフィメプラーゼ、Puricase、テルリプレシン(静脈内、肝腎症候群)、EUR-1008M、組換えFGF-I(注入用、血管疾患)、BDM-E、ロチガプチド、ETC-216、P-113、MBI-594AN、デュラマイシン(吸入用、嚢胞性線維症)、SCV-07、OPI-45、エンドスタチン、アンギオスタチン、ABT-510、ボーマン-バーク型阻害物質濃縮物、XMP-629、99mTc-Hynic-アネキシンV、カハラリドF、CTCE-9908、テベレリクス(徐放型)、オザレリクス、ロミデプシン(rornidepsin)、BAY-504798、インターロイキン4、PRX-321、Pepscan、イボクタデキン、rhラクトフェリン、TRU-015、IL-21、ATN-161、シレンジタイド、アルブフェロン、Biphasix、IRX-2、オメガ・インターフェロン、PCK-3145、CAP-232、パシレオチド、huN901-DMI、卵巣がん免疫療法ワクチン、SB-249553、Oncovax-CL、OncoVax-P、BLP-25、CerVax-16、マルチエピトープペプチドメラノーマワクチン(MART-1、gp100、チロシナーゼ)、ネミフィチド、rAAT(吸入用)、rAAT(皮膚科用)、CGRP(吸入用、喘息)、ペグスネルセプト、サイモシンベータ4、プリチデプシン、GTP-200、ラモプラニン、GRASPA、OBI-1、AC-100、サケカルシトニン(経口、エリゲン)、カルシトニン(経口、骨粗鬆症)、エキサモレリン、カプロモレリン、Cardeva、ベラフェルミン、131I-TM-601、KK-220、T-10、ウラリチド、デペレスタット、ヘマタイド、Chrysalin(局所用)、rNAPc2、組換え第VIII因子(PEG化リポソーム)、bFGF、PEG化組換えスタフィロキナーゼバリアント、V-10153、SonoLysis Prolyse、NeuroVax、CZEN-002、膵島細胞新生治療、rGLP-1、BIM-51077、LY-548806、エキセナチド(制御放出型、Medisorb)、AVE-0010、GA-GCB、アボレリン、AOD-9604、酢酸リナクロチド(linaclotide eacetate)、CETi-1、Hemospan、VAL(注射用)、速効型インスリン(注射用、Viadel)、鼻内用インスリン、インスリン(吸入用)、インスリン(経口、エリゲン)、組換えメチオニルヒトレプチン、ピトラキンラ(皮下注射、湿疹)、ピトラキンラ(吸入型乾燥粉末、喘息)、Multikine、RG-1068、MM-093、NBI-6024、AT-001、PI-0824、Org-39141、Cpn10(自己免疫疾患/炎症)、タラクトフェリン(局所用)、rEV-131(眼科用)、rEV-131(呼吸器疾患)、経口用組換えヒトインスリン(糖尿病)、RPI-78M、オプレルベキン(経口)、CYT-99007 CTLA4-Ig、DTY-001、バラテグラスト、インターフェロン・アルファ-n3(局所用)、IRX-3、RDP-58、Tauferon、胆汁酸塩刺激リパーゼ、Merispase、アルカリホスファターゼ(alaline phosphatase)、EP-2104R、Melanotan-II、ブレメラノチド、ATL-104、組換えヒトマイクロプラスミン、AX-200、SEMAX、ACV-1、Xen-2174、CJC-1008、ダイノルフィンA、SI-6603、LAB GHRH、AER-002、BGC-728、マラリアワクチン(ビロソーム、PeviPRO)、ALTU-135、パルボウイルスB19ワクチン、インフルエンザワクチン(組換えノイラミインダーゼ)、マラリア/HBVワクチン、炭疽病ワクチン、Vacc-5q、Vacc-4x、HIVワクチン(経口)、HPVワクチン、Tat類毒素、YSPSL、CHS-13340、PTH(1-34)リポソームクリーム(Novasome)、Ostabolin-C、PTHアナログ(局所用、乾癬)、MBRI-93.02、MTB72Fワクチン(結核)、MVA-Ag85Aワクチン(結核)、FARA04、BA-210、組換え疫病FIVワクチン、AG-702、OxSODrol、rBetV1、Der-p1/Der-p2/Der-p7アレルゲンターゲッティングワクチン(チリダニアレルギー)、PR1ペプチド抗原(白血病)、突然変異rasワクチン、HPV-16 E7リポペプチドワクチン、ラビリンチンワクチン(腺癌)、CMLワクチン、WT1ペプチドワクチン(がん)、IDD-5、CDX-110、Pentrys、Norelin、CytoFab、P-9808、VT-111、イクロカプチド、テルベルミン(皮膚科用、糖尿病性足部潰瘍)、ルピントリビル、レティキュロース、rGRF、P1A、アルファ-ガラクトシダーゼA、ACE-011、ALTU-140、CGX-1160、アンジオテンシン治療用ワクチン、D-4F、ETC-642、APP-018、rhMBL、SCV-07(経口、結核)、DRF-7295、ABT-828、ErbB2特異的免疫毒素(抗がん剤)、DT3SSIL-3、TST-10088、PRO-1762、Combotox、コレシストキニン-B/ガストリン受容体結合ペプチド、111In-hEGF、AE-37、トラスニズマブ(trasnizumab)-DM1、アンタゴニストG、IL-12(組換え)、PM-02734、IMP-321、rhIGF-BP3、BLX-883、CUV-1647(局所用)、L-19ベースの放射線免疫治療薬(がん)、Re-188-P-2045、AMG-386、DC/1540/KLHワクチン(がん)、VX-001、AVE-9633、AC-9301、NY-ESO-1ワクチン(ペプチド)、NA17.A2ペプチド、メ
ラノーマワクチン(パルス抗原治療薬)、前立腺がんワクチン、CBP-501、組換えヒトラクトフェリン(ドライアイ)、FX-06、AP-214、WAP-8294A(注射用)、ACP-HIP、SUN-11031、ペプチドYY[3-36](肥満、鼻内)、FGLL、アタシセプト、BR3-Fc、BN-003、BA-058、ヒト副甲状腺ホルモン1-34(経鼻、骨粗鬆症)、F-18-CCR1、AT-1100(セリアック病/糖尿病)、JPD-003、PTH(7-34)リポソームクリーム(Novasome)、デュラマイシン(眼科用、ドライアイ)、CAB-2、CTCE-0214、糖ペグ化(GlycoPEGylated)エリスロポエチン、EPO-Fc、CNTO-528、AMG-114、JR-013、第XIII因子、アミノカンディン、PN-951、716155、SUN-E7001、TH-0318、BAY-73-7977、テベレリクス(即放型)、EP-51216、hGH(制御放出型、Biosphere)、OGP-I、シフビルチド、TV-4710、ALG-889、Org-41259、rhCC10、F-991、チモペンチン(肺疾患)、r(m)CRP、肝臓選択性インスリン、スバリン、L19-IL-2融合タンパク質、エラフィン(elafin)、NMK-150、ALTU-139、EN-122004、rhTPO、トロンボポエチン受容体アゴニスト(血小板減少症)、AL-108、AL-208、神経成長因子アンタゴニスト(疼痛)、SLV-317、CGX-1007、INNO-105、経口型テリパラチド(エリゲン)、GEM-OS1、AC-162352、PRX-302、LFn-p24融合ワクチン(Therapore)、EP-1043、肺炎連鎖球菌(S pneumoniae)小児ワクチン、マラリアワクチン、B群髄膜炎菌ワクチン、新生児B群連鎖球菌ワクチン、炭疽病ワクチン、HCVワクチン(gpE1+gpE2+MF-59)、中耳炎治療薬、HCVワクチン(コア抗原+ISCOMATRIX)、hPTH(1-34)(経皮用、ViaDerm)、768974、SYN-101、PGN-0052、アビスクミン、BIM-23190、結核ワクチン、マルチエピトープチロシナーゼペプチド、がんワクチン、エンカスチム、APC-8024、GI-5005、ACC-001、TTS-CD3、血管標的化TNF(固形腫瘍)、デスモプレシン(口腔制御放出型)、オネルセプト、及びTP-9201が挙げられる。
【0054】
ある特定の実施形態において、興味の対象であるタンパク質は、酵素又はその生物学的活性フラグメントである。好適な酵素には、酸化還元酵素、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ、およびリガーゼが含まれるが、これらに限定される訳ではない。ある特定の実施形態において、異種産生タンパク質は、酵素委員会(EC)クラス1の酵素、例えば、EC 1.1~1.21、又は1.97のいずれかからの酵素である。酵素はまた、ECクラス2、3、4、5、又は6からの酵素であり得る。例えば、酵素は、EC 2.1~2.9、EC 3.1~3.13、EC 4.1~4.6、EC 4.99、EC 5.1~5.11、EC 5.99、又はEC 6.1~6.6のいずれかから選択され得る。
【0055】
別の実施形態において、興味の対象であるタンパク質は抗体である。
【0056】
本明細書で使用する場合、「抗体」という用語は、実質的に無傷の抗体分子を指す。
【0057】
本明細書で使用される場合、「抗体フラグメント」という語句は、抗原のエピトープに結合することができる抗体(Fab、F(ab’)2、Fv又はVH及びVLなどの単一ドメイン分子など)の機能的フラグメントを指す。
プロモータ:
【0058】
本明細書で使用する場合、「プロモータ」という用語は、転写の開始時にDNA依存性RNAポリメラーゼにより認識され、(直接的又は間接的に)結合された結果、転写されたDNAに相補的なRNA分子を生成させるDNA配列などの任意の核酸配列を指す。プロモータは通常、転写されるタンパク質コーディング配列の前にある5’非翻訳領域(UTR)の上流にあり、RNAポリメラーゼII及び転写因子などの他のタンパク質の結合部位として機能する領域を有することで、機能し得るように結合された配列の転写を開始させる。プロモータは、それ自体が、機能し得るように結合された遺伝子の転写を調節するシスエレメント又はエンハンサードメインなどのサブエレメント(すなわち、プロモータモチーフ)を含み得る。プロモータ及び連結された5’UTRは、「プロモータ領域」とも呼ばれる。
【0059】
本発明のこの実施態様のプロモータは、構成的又は誘導性であり得る。
【0060】
本発明のこの実施形態での使用に適した構成的プロモータには、ほとんどの環境条件下及びほとんどの細胞型で機能的である(すなわち、転写を指令することができる)配列、例えばサイトメガロウイルス(CMV)、SV-40初期プロモータ、SV-40後期プロモータ、メタロチオネインプロモータ、マウス乳腺腫瘍ウイルスプロモータ、ラウス肉腫ウイルスプロモータ及びポリヘドリンプロモータなどが含まれる。
【0061】
本発明のこの実施形態での使用に適した誘導性プロモータには、例えば、テトラサイクリン誘導性プロモータ(Srour,M.A.ら、2003.Thromb.Haemost.90:398-405)又はIPTGが含まれる。
【0062】
酵母においては、米国特許出願第5,932,447号に開示されているように、若干の構成的又は誘導性プロモータを使用することができる。別法として、外来DNA配列の酵母染色体への組み込みを促進するベクターを使用することができる。
【0063】
植物での発現が必要な場合、コーディング配列の発現は、若干のプロモータによって駆動され得る。例えば、CaMVの35S RNAプロモータ及び19S RNAプロモータなどのウイルスプロモータ[Brissonら(1984)Nature 310:511-514]、又はTMVに対するコートタンパク質プロモータ[Takamatsuら(1987)EMBO J.6:307-311]を使用することができる。別法として、植物プロモータ、例えばRUBISCOの小さなサブユニット[Coruzziら(1984)EMBO J.3:1671-1680及びBrogliら、(1984)Science 224:838-843]又は熱ショックプロモータ、例えば大豆hsp17.5-E又はhsp17.3-B[Gurleyら(1986)Mol.Cell.Biol.6:559-565]などを使用することができる。
転写終結部位:
【0064】
本明細書で使用する場合、「転写終結部位」という用語は、RNAポリメラーゼによる転写終結を指令するDNA配列を指す。前記配列はまた、転写されたRNAの転写後切断及びポリアデニル化を指令することができる。特定の実施形態において、転写終結配列は、ポリアデニル化/終結配列と呼ばれるポリアデニル化シグナルを含む。好ましい実施形態では、終結配列は、SV40ウイルスに由来する。
配列番号2に記載の小胞体(ER)ターゲティング配列:
【0065】
本発明のこの実施態様のERターゲッティング配列は、ERへの結合した配列の局在化を助ける。一実施形態では、ERターゲッティング配列は、結合した配列のERへの取り込みを促進する。
【0066】
この配列のNNYリピートは、少なくとも7回(配列番号1の場合)、8回、9回、10回、11回、12回、13回、14回、15回、16回、17回、18回、19回、20回又はそれ以上繰り返される。
【0067】
特定の実施形態によれば、NNYリピートは少なくとも10回繰り返される(配列番号2の場合)。
【0068】
特定の実施形態では、NNYリピートのNはピリミジンである。別の実施形態では、NNYリピートのNはプリンである。すべての実施形態において、NNY反復のYは、ピリミジンである。
【0069】
特定の実施形態によれば、ERターゲッティング配列は、興味の対象であるタンパク質をコードするヌクレオチドを含まない。
【0070】
さらに別の実施形態によれば、ERターゲッティング配列は、配列番号5に示される配列をコードするヌクレオチドを含まない。(KDEL)。
【0071】
好ましくは、ERターゲッティング配列は、配列番号6に示される配列(agc tacacccacc acctcatcta cctctac)を含まない。
【0072】
さらに、一実施形態では、ERターゲッティング配列は、配列TGの5つを超える連続したリピートを含まない。
【0073】
好ましくは、ERターゲッティング配列は、10、15、20、25、30又はそれ以上の連続するチミンを含まない。
【0074】
好ましくは、ERターゲッティング配列は、10、15、20、25、30又はそれ以上の連続するシトシンを含まない。
【0075】
ERターゲッティング配列は、興味の対象である分泌タンパク質に対して異種(すなわち、内因性ではない)であり、すなわち、興味の対象であるタンパク質をコードする(又はその発現を調節する)天然配列の一部ではない。
【0076】
これらのエレメントはそれぞれ、興味の対象であるタンパク質をコードする核酸配列及びERターゲッティング配列がプロモータと転写終結部位との間に配置されるように配置される。このようにして、興味の対象であるタンパク質をコードし、さらにERターゲティング配列を含むmRNA転写物が生成される。
【0077】
一実施形態において、本発明のこの実施態様のERターゲッティング配列は、興味の対象であるタンパク質をコードする配列に対し3’に配置される。別の実施形態において、本発明のこの実施態様のERターゲッティング配列は、興味の対象であるタンパク質をコードする配列に対し5’に配置される。さらなる実施形態において、ERターゲッティング配列は、興味の対象であるタンパク質をコードする配列においてコードされる。
【0078】
好ましくは、ERターゲッティング配列が興味の対象であるタンパク質をコードする核酸配列に含まれるとき、タンパク質の核酸配列は、ERターゲッティング配列を含むようにコドン最適化される。したがって、興味の対象であるタンパク質のアミノ酸配列は、天然のアミノ酸配列と同一である。
【0079】
「コドン最適化」という語句は、ERターゲッティング配列がタンパク質のアミノ酸配列に影響を与えることなくDNA配列内でコードされるように、構造遺伝子又はそのフラグメント内で使用するための適切なDNAヌクレオチドの選択を指す。したがって、最適化された遺伝子又は核酸配列は、ERターゲッティング配列を含むコドンを利用するために、天然又は天然に存する遺伝子のヌクレオチド配列が改変されている遺伝子を指す。
【0080】
本発明のこの実施態様の転写単位は、シグナルペプチド配列をコードする配列をさらに含み得る。
【0081】
本明細書で使用する場合、「シグナルペプチド」という語句は、ポリペプチドのアミノ末端に枠内で結合されたペプチドを指し、コードされたポリペプチドを細胞の分泌経路に導く。
【0082】
シグナル配列は通常、タンパク質配列に対しN末端に位置する。シグナル配列は通常、成熟タンパク質には存在しない。シグナル配列は通常、タンパク質が輸送された後、シグナルペプチダーゼによってタンパク質から切断される。
【0083】
1つの実施形態によれば、ポリペプチドは、配列番号3(ATGTTGTTTAAATCTCCTTCAAAAGTTAGCAACCGCTGCTGCTTTTTTTGCTGGCGTCGCAACTGCGGAC)に示される配列を有するシグナルペプチドをコードする。
【0084】
一実施形態において、シグナルペプチド配列は、興味の対象であるタンパク質にとって内因性である。別の実施形態において、シグナルペプチド配列は、興味の対象であるタンパク質にとって異種である(すなわち、天然ではない、又は外因性、非内因性である)。
【0085】
様々な原核細胞又は真核細胞を、本発明のポリペプチドを発現させるための宿主発現系として使用することができる。これらには、細菌細胞(例えば、大腸菌(E.coli))、真菌細胞(例、サッカロマイセス・セレビシエ(S.cerevisiae)細胞)、植物細胞(例、タバコ)、昆虫細胞(鱗翅目細胞)及び他の哺乳類細胞(チャイニーズハムスター卵巣細胞)が含まれるが、これらに限定される訳ではない。
【0086】
細胞は、細胞培養物の一部、生物全体、又は生物の一部であり得る。
【0087】
本明細書で使用される「植物」という用語は、種子、苗条、茎、根(塊茎を含む)、及び植物細胞、組織及び器官を含む、植物全体、植物の祖先及び子孫及び植物の一部分を含む。植物は、懸濁培養、胚、分裂組織領域、カルス組織、葉、配偶体、胞子体、花粉、及び小胞子を含むあらゆる形態であり得る。本発明の方法において特に有用な植物には、緑色植物亜界(Viridiplantae)のスーパーファミリーに属するすべての植物、特に、飼料若しくは飼料マメ科植物、観賞用植物、食用作物、樹木、又は低木を含む単子葉植物及び双子葉植物が含まれる。藻類及び他の非緑色植物亜界もまた、本発明の方法に使用することができる。
【0088】
ヒトインターフェロン・ベータ1aの発現のために検討される細胞には、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞が含まれる。
【0089】
ヒトインターフェロン・ベータ1bの発現のために検討される細胞には、例えば、大腸菌(E.coli)細胞が含まれる。
【0090】
ヒトインターフェロン・ガンマの発現のために検討される細胞には、例えば、大腸菌(E.coli)細胞が含まれる。
【0091】
ヒト成長ホルモンの発現のために検討される細胞には、例えば、大腸菌(E.coli)細胞が含まれる。
【0092】
ヒトインスリンの発現のために検討される細胞には、例えば、大腸菌(E.coli)細胞が含まれる。
【0093】
インターロイキンIIの発現のために検討される細胞には、例えば、大腸菌(E.coli)細胞が含まれる。
【0094】
卵胞刺激ホルモンの発現のために検討される細胞には、例えば、CHO細胞が含まれる。
【0095】
細胞系で本発明のポリヌクレオチドからポリペプチドを発現させるために、ポリヌクレオチドを核酸発現ベクターに連結する。
【0096】
本発明のこの実施形態による発現ベクターは、このベクターを原核生物、真核生物、又は好ましくは両方における複製及び組込みに適したもの(例、シャトルベクター)にする追加の配列を含み得る。典型的なクローニングベクターは、転写及び翻訳開始配列(例えば、プロモータ、エンハンサー)並びに転写及び翻訳ターミネータ(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含む。
【0097】
真核生物のプロモータには、通常、TATAボックスと上流のプロモータエレメントという2タイプの認識配列が含まれている。転写開始部位の25~30塩基対上流に位置するTATAボックスは、RNAポリメラーゼがRNA合成を開始するように指令することに関与していると考えられている。他の上流プロモータエレメントは、転写が開始される速度を決定する。
【0098】
エンハンサーエレメントは、結合された同種又は異種プロモータから最大1,000倍まで転写を刺激することができる。エンハンサーは、転写開始部位の下流又は上流に配置されると活性を呈する。ウイルスに由来する多くのエンハンサーエレメントは、幅広い宿主範囲を有し、様々な組織で活性を呈する。例えば、SV40初期遺伝子エンハンサーは多くの細胞型に適している。本発明に適した他のエンハンサー/プロモータの組合せには、ポリオーマウイルス、ヒト若しくはマウスサイトメガロウイルス(CMV)、マウス白血病ウイルス、マウス若しくはラウス肉腫ウイルス及びHIVなどの様々なレトロウイルスからの長期リピートに由来するものが含まれる。Enhancers and Eukaryotic Expression(エンハンサー及び真核生物発現)、Cold Spring Harbour Press、Cold Spring Harbour、N.Y.1983を参照、これについては参照により本明細書に組み込まれる。
【0099】
本発明の発現ベクターから発現されたポリペプチドの翻訳効率を高めるために、ポリアデニル化配列を発現ベクターに加えることもできる。正確かつ効率的なポリアデニル化には、2つの異なる配列エレメントが必要とされる:ポリアデニル化部位の下流に位置するGU又はUの豊富な配列と、11~30ヌクレオチド上流に位置する、高度に保存された6ヌクレオチドの配列、AAUAAA。本発明に適した終結及びポリアデニル化シグナルには、SV40に由来するものが含まれる。
【0100】
既に記載されたエレメントに加えて、本発明の発現ベクターは、典型的には、クローン化された核酸の発現レベルを増加させるか、または組換えDNAを保持する細胞の同定を容易にすることを目的とする他の特殊化エレメントを含み得る。例えば、若干の動物ウイルスは、許容細胞型におけるウイルスゲノムの染色体外複製を促進するDNA配列を含んでいる。これらのウイルスレプリコンを保持するプラスミドは、適切な因子がプラスミド上で、または宿主細胞のゲノムとともに運ばれる遺伝子によって提供される限り、エピソームで複製される。
【0101】
ベクターは真核生物のレプリコンを含んでいても含んでいなくてもよい。真核生物のレプリコンが存在する場合、ベクターは、適切な選択マーカーを使用して真核生物の細胞で増幅可能である。ベクターが真核生物レプリコンを含まない場合、エピソーム増幅は不可能である。代わりに、組換えDNAは操作が加えられた細胞のゲノムに組み込まれ、プロモータが目的の核酸の発現を指令する。
【0102】
レトロウイルスなどの真核生物ウイルスからの調節エレメントを含む発現ベクターも、本発明によって使用することができる。SV40ベクターには、pSVT7及びpMT2が含まれる。ウシパピローマウイルスに由来するベクターにはpBV-1MTHAが含まれ、エプスタインバーウイルスに由来するベクターにはpHEBO及びp2O5が含まれる。他の例示的なベクターには、pMSG、pAV009/A+、pMTO10/A+、pMAMneo-5、バキュロウイルスpDSVE、及びSV-40初期プロモータ、SV-40後期プロモータ、メタロチオネインプロモータ、マウス乳腺腫瘍ウイルスプロモータ、ラウス肉腫ウイルスプロモータ、ポリヘドリンプロモータ、又は真核細胞での発現に有効であることが示されている他のプロモータの指令下でタンパク質の発現を可能にする他の任意のベクターが含まれる。
【0103】
酵母では、米国特許出願第5,932,447号で開示されているように、構成的又は誘導性プロモータを含む若干のベクターを使用することができる。別法として、外来DNA配列の酵母染色体への組み込みを促進するベクターを使用することができる。
【0104】
植物発現ベクターが使用される場合、コーディング配列の発現は、若干のプロモータによって駆動され得る。例えば、CaMVの35S RNAプロモータ及び19S RNAプロモータなどのウイルスプロモータ[Brissonら(1984)Nature 310:511-514]、又はTMVに対するコートタンパク質プロモータ[Takamatsuら(1987)EMBO J.6:307-311]を使用することができる。別法として、植物プロモータ、例えばRUBISCOの小さなサブユニット[Coruzziら(1984)EMBO J.3:1671-1680及びBrogliら、(1984)Science 224:838-843]又は熱ショックプロモータ、例えば大豆hsp17.5-E又はhsp17.3-B [Gurleyら(1986)Mol.Cell.Biol.6:559-565]などを使用することができる。これらの構築物は、Tiプラスミド、Riプラスミド、植物ウイルスベクター、直接DNA形質転換、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション及び当業者に周知の他の技術を使用して植物細胞に導入され得る。例えば、Weissbach及びWeissbach、1988、Methods for Plant Molecular Biology、Academic Press、NY、Section VIII、pp 421-463を参照。
【0105】
哺乳類発現ベクターの例には、pcDNA3、pcDNA3.1(+/-)、pGL3、pZeoSV2(+/-)、pSecTag2、pDisplay、pEF/myc/cyto、pCMV/myc/cyto、pCR3.1、pSinRep5、DH26S、DHBB、pNMT1、pNMT41、pNMT81(Invitrogenから入手可能)、pCI(Promegaから入手可能)、pMbac、pPbac、pBK-RSV及びpBK-CMV(Strategeneから入手可能)、pTRES(Clontechから入手可能)、及びそれらの誘導体が含まれるが、これらに限定される訳ではない。
【0106】
一実施形態において、発現ベクターは、本発明のERターゲッティング配列(例、配列番号1又は配列番号2に示されるもの)及びクローニング部位を含む核酸配列を含み、前記クローニング部位へ興味の対象であるタンパク質をコードする配列を挿入したとき、細胞での発現に続いて、興味の対象であるタンパク質をコードするmRNAが転写されるように、前記クローニング部位の位置が選択されるものとし、前記ERターゲティング配列は、興味の対象である既知タンパク質をコードする配列の一部ではない、例えば、Kraut CohenらMol.Biol.Cell 24、3069-3084において開示されているように、MRL1-3をコードすることはないものとする。合成されたmRNAは、ERターゲティング配列の転写産物を含む。
【0107】
「クローニング部位」という用語は、DNAを挿入することができるベクター上の位置を指す。「マルチクローニング部位」又は「mcs」という用語は、ベクター上の規定された遺伝子座(制限部位)での挿入を可能にする任意の1つ又は若干の異なる制限酵素部位を含む合成DNA配列を指す。「固有のクローニング部位」という用語は、所与のDNA配列で一度出現するクローニング部位を指す。
【0108】
本発明の発現ベクターを細胞に導入するために様々な方法を使用することができる。そのような方法は、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Springs Harbour Laboratory、ニューヨーク(1989、1992)、Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley and Sons、バルチモア、メリーランド(1989)、Changら、Somatic Gene Therapy、CRC Press、アナーバー、ミシガン(1995)、Vegaら、Gene Targeting、CRC Press、アナーバー、ミシガン(1995)、Vectors:A Survey of Molecular Cloning Vectors and Their Uses、バターワース、ボストン、マサチューセッツ(1988)及びGilboaら[Biotechniques 4(6):504-512、1986]に全般的に記載されており、例えば、安定した又は一過性のトランスフェクション、リポフェクション、エレクトロポレーション及び組換えウイルスベクターによる感染が含まれる。加えて、正負選択法については、米国特許第5,464,764号および第5,487,992号を参照。
【0109】
形質転換された細胞は、大量の組換えポリペプチドの発現を可能にする有効な条件下で培養される。有効な培養条件には、タンパク質生産を可能にする有効な培地、バイオリアクター、温度、pH、及び酸素条件が含まれるが、これらに限定される訳ではない。有効な培地は、本発明の組換えポリペプチドを生産するために細胞が培養される任意の培地を指す。かかる培地は、典型的には、同化可能な炭素、窒素及びリン酸供給源、並びに適切な塩、無機質、金属及びビタミンなどの他の栄養素を有する水溶液を含む。本発明の細胞は、慣用的発酵バイオリアクター、振とうフラスコ、試験管、マイクロタイター皿及びペトリ皿で培養され得る。培養は、組換え細胞に適した温度、pH、及び酸素含有量で実施され得る。かかる培養条件は、当業者の専門知識の範囲内である。
【0110】
培養における所定の時間の後、組換えポリペプチドの回収が行われる。
【0111】
本明細書で使用される「組換えポリペプチドを回収する」という語句は、ポリペプチドを含む発酵培地全体を集めることを指し、分離又は精製の追加的段階を含める必要はない。
【0112】
したがって、本発明のポリペプチドを、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、濾過、電気泳動、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、コンカナバリンAクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、及び分別可溶化などであるがこれらに限定されない様々な標準タンパク質精製技術を使用して精製することができる。
【0113】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、±10%を指す。
【0114】
「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「有する(having)」という用語及びそれらの同根語は、「含むが、それに限定される訳ではない」ことを意味する。
【0115】
「~からなる」という用語は、「~を含み、かつ~に限定される」を意味する。
【0116】
「~から本質的になる」という用語は、組成物、方法又は構造が追加の成分、段階及び/又は部分を含み得るが、ただし追加の成分、段階及び/又は部分が、特許請求の範囲での組成物、方法又は構造の基本的かつ新規な特性を実質的に変更しない場合に限ることを意味する。
【0117】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明らかに他のことを指示しない限り、複数の言及事項を含む。例えば、用語「化合物」又は「少なくとも1つの化合物」は、それらの混合物を含む複数の化合物を含み得る。
【0118】
本出願全体を通して、本発明の様々な実施形態は、範囲形式で提示され得る。範囲形式での説明は、単に便宜及び簡潔さのためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない制限として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の説明は、すべての可能な部分範囲とその範囲内の個々の数値を具体的に開示していると見なされるべきである。例えば、1~6などの範囲の記載には、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの具体的に開示された部分範囲、及びその範囲内の個々の数、例えば1、2、3、4、5及び6が含まれると見なすべきである。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0119】
本明細書で数値範囲が示される場合は常に、示された範囲内の任意の引用された数字(分数又は整数)をすべて含むことを意味する。第1の表示数と第2の表示数との間の「範囲に及ぶ/範囲」及び第1の表示数「から」第2の表示数「までの範囲に及ぶ/範囲」という語句は、本明細書では互換的に使用されており、第1の表示数及び第2の表示数並びにそれらの間のすべての分数と整数の数字を含むことを意味する。
【0120】
本明細書で使用する場合、「方法」という用語は、化学、薬理学、生物学、生化学及び医療の技術の実践者に既知であるか、又は彼らにより既知の方法、手段、技法及び手順から容易に開発された方法、手段、技法及び手順を含むがこれらに限定されない、所与の課題を達成するための方法、手段、技法及び手順を指す。
【0121】
特定の配列リストを参照するとき、かかる参照は、例えば配列決定エラー、クローニングエラー、又は塩基置換、塩基欠失又は塩基付加をもたらす他の変更に起因する、軽微な配列変動を含むものとしてその相補配列に実質的に対応する配列も包含すると理解されるべきであるが、ただしかかる変動の頻度は、50ヌクレオチド中1未満、あるいは100ヌクレオチド中1未満、あるいは200ヌクレオチド中1未満、あるいは500ヌクレオチド中1未満、あるいは、1000ヌクレオチド中1未満、あるいは5,000ヌクレオチド中1未満、あるいは10,000ヌクレオチド中1未満であるものとする。
【0122】
本出願に開示されている任意の配列識別番号(配列番号)は、その配列番号がDNA配列形式又はRNA配列形式でのみ表現されている場合であっても、その配列番号が言及されている文脈に応じて、DNA配列又はRNA配列のいずれかを指し得ることが理解されよう。
【0123】
明確にするため別個の実施形態の文脈で記載されている本発明のある特定の特徴はまた、単一の実施形態において組み合わせて提供され得ることは理解されよう。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈で記載されている本発明の様々な特徴は、別々に、又は任意の適切な部分的組合せで、又は本発明の記載された任意の他の実施形態で適切なものとして提供され得る。様々な実施形態の文脈で記載されるある特定の特徴は、実施形態がそれらのエレメントなしでは機能しない場合を除いて、それらの実施形態の不可欠な特徴と見なされるべきではない。
【0124】
上記で説明され、以下の特許請求の範囲の項で請求される本発明の様々な実施形態及び実施態様は、以下の実施例において実験的裏付けが得られる。
【実施例0125】
次に、以下の実施例を参照して、上記の説明と共に本発明のいくつかの実施形態を非限定的な方法で説明する。
【0126】
概して、本明細書で使用される命名法及び本発明で利用される実験室手順には、分子、生化学、微生物学及び組換えDNA技術が含まれる。かかる技術は文献で全面的に説明されている。例えば、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」Sambrookら、(1989);「Current Protocols in Molecular Biology」I~III巻Ausubel、R.M.編(1994);Ausubelら、「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley and Sons、バルチモア、メリーランド(1989);Perbal、「A Practical Guide to Molecular Cloning」、John Wiley&Sons、ニューヨーク(1988);Watsonら、「Recombinant DNA」、Scientific American Books、ニューヨーク;Birrenら(編)「Genome Analysis:A Laboratory Manual Series」、1~4巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press、ニューヨーク(1998);米国特許第4,666,828号、第4,683,202号、第4,801,531号、第5,192,659号及び第5,272,057号に記載されている方法論;「Cell Biology:A Laboratory Handbook」、I~III巻Cellis、J.E.編(1994);「Culture of Animal Cells-A Manual of Basic Technique」、Freshney、Wiley-Liss、ニューヨーク(1994)、第3版;「Current Protocols in Immunology」I~III巻 Coligan J.E.編(1994);Stitesら(編)、「Basic and Clinical Immunology」(第8版)、Appleton及びLange、ノーウォーク、コネチカット(1994);Mishell及びShiigi(編)、「Selected Methods in Cellular Immunology」、W.H.Freeman and Co.、ニューヨーク(1980)参照;利用可能なイムノアッセイは、特許及び科学文献に広範囲に記載されている。例えば米国特許第3,791,932;3,839,153;3,850,752;3,850,578;3,853,987;3,867,517;3,879,262;3,901,654;3,935,074;3,984,533;3,996,345;4,034,074;4,098,876;4,879,219;5,011,771及び5,281,521号;「Oligonucleotide Synthesis」、Gait、M.J.編(1984);「Nucleic Acid Hybridization」、Hames、B.D.、及びHiggins S.J.編(1985);「Transcription and Translation」、Hames、B.D.、及びHiggins S.J.編(1984);「Animal Cell Culture」、Freshney、R.I.編(1986);「Immobilized Cells and Enzymes」、IRL Press、(1986);「A Practical Guide to Molecular Cloning」、Perbal、B.、(1984)及び「Methods in Enzymology」、1~317巻、Academic Press、「PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications」、Academic Press、サンディエゴ、カリフォルニア(1990);Marshakら、「Strategies for Protein Purification and Characterization-A Laboratory Course Manual」、CSHL Press(1996)を参照;それらのすべては、参照により本明細書に完全に記載されているかのように組み込まれる。他の一般的な参考文献は、この文書全体を通して記載されている。その中の手順は、当技術分野で周知であると考えられており、読者の便宜のために提供されている。そこに含まれるすべての情報は、参照により本明細書に組み込まれる。
材料及び方法
酵母株、ゲノム操作、及び成長条件
【0127】
酵母を、標準的な増殖培地(1%酵母エキス、2%ペプトン、2%デキストロース)又は2%グルコースを含む合成培地[例:合成完全(SC)及びアミノ酸又はヌクレオチド塩基を欠く選択的SCドロップアウト培地](Haim及びGerst、2009)のいずれかにおいて指示温度で増殖させた。WT(BY4741)細胞でNAT抗生物質耐性遺伝子を使用する欠失株は、標準的なLiOAc形質転換手順を使用して作成され、合成固体培地での選択用にノルセオトリシン(100μg/ml)が使用された。SECReTE変異株を作成するために、SECReTE遺伝子フラグメントを、最初の変異導入塩基から最後の変異導入塩基まで適切な修飾を加えて設計し、gBlock(商標)(Integrated DNA Technologies、Inc.、コーラビル、アイオワ、米国)として合成するか又はpUC57-AMPベクター(Bio Basic Inc.)にクローン化した。(-)SECReTE株及び(+)SECReTE株の両方を生成した。SUC2(-)SECReTE株、SUC2(+)SECReTE株及びCCW12(-)SECReTE株を、ゲノムオリゴヌクレオチド組換えのdelitto perfetto法(Storici及びResnick、2006)を使用して、BY4741バックグラウンドゲノムで構築し、pGKSUからのCOREカセット(Storici及びResnick、2006)を、SECReTE遺伝子フラグメントの部位に対応するゲノム領域に最初に組み込んだ。COREカセットには、I-SceIホーミングエンドヌクレアーゼ部位と別個の誘導性I-SceI遺伝子を有するURA3選択マーカーが含まれている。CCW12(-)SECReTEのSECReTE遺伝子フラグメントを、目的のゲノム遺伝子座の外側の領域とCOREカセットの両方に対し20塩基の相同性を含むプライマー配列を使用して、合成gBlockから増幅した。増幅されたSECReTE遺伝子フラグメントを、その後、追加の組込み段階を介して、目的のゲノム部位においてCOREカセットと置き換えた。代わりに、CRISPR/Cas9を使用してHSP150変異株を生成した。HSP150(-)SECReTE及びHSP150(+)SECReTEを、BY4741ゲノムで作成した。CRISPR/Cas9手順では、pFA6-NatMX6からのNATカセットを使用して、SECReTE遺伝子フラグメントに対応する天然ゲノム領域を欠失させた。CRISPR/Cas9プラスミドベクターを、Cas9遺伝子、NATカセットをターゲッティングするガイドRNA、及びLEU2選択マーカーを発現するように設計した。CRISPR/Cas9プラスミドを、増幅されたSECReTE遺伝子フラグメントと同時形質転換して、NATカセットを置き換えた。標準的なLiOAcベースのプロトコルを、プラスミド及びPCR産物の酵母への形質転換用に使用した。次いで、形質転換細胞を選択培地で2~4日間増殖させた。PCRを使用して各段階で正しい組込みを検証し、最終段階で、(-)SECReTE配列又は(+)SECReTE配列の正確な組込みをDNA配列決定によって確認した。
定量的RT-PCR(qRT-PCR)
【0128】
MasterPure酵母RNA精製キット(Epicentre Biotechnologies)を使用して、RNAを一晩培養物から抽出及び精製した。各試料について、2μgの精製RNAを、DNase(Promega、マディソン、ウィスコンシン、米国)で37℃で2時間処理し、推奨メーカー条件のもとモロニーマウス白血病ウイルスRT RNase H(-)(Promega)を使用して逆転写(RT)を行った。NCBI Primer-Blast(Yeら、2012)を使用して、1つのアンプリコン(60~70bp)のみを生成するようにプライマー対を設計した。プライマーの各対について標準曲線を作成し、プライマー効率を測定した。すべての反応セットを3回繰り返し、それぞれに陰性対照(H2O)を含めた。LightCycler(登録商標)480デバイスとSYBR(登録商標)Green PCR Master Mix(AppliedBiosystems(登録商標)、Waltham、マサチューセッツ、米国)を使用してqRT-PCRを行った。メーカーの指定どおりに、2段階のqRT-PCRサーモサイクリングパラメータを使用した。融解曲線の分析により、個々のリアルタイムPCR産物の特異性を評価したところ、各リアルタイムPCR産物の単一のピークが明らかになった。ACT1又はUBC6 RNAを正規化に使用し、倍率変化をWT細胞に対して計算した。
落下試験増殖アッセイ
【0129】
YPD培地で酵母菌株を対数増殖中期まで増殖させ、その後、新鮮な培地で系列希釈を5回(各10倍)行うことにより、落下試験アッセイを行った。細胞を異なる条件のプレートにスポットし、フォトドキュメンテーションの前に48時間インキュベートした。カルコフロールオホワイト(CFW)又はハイグロマイシンB(HB)の感受性について、25μg/ml HB又は50μg/ml CFW(DMSOに溶解、Ram及びKlis(2006)の要領で調製)を含むYPDプレートに細胞をスポットし、上記で述べたプロトコルに従って試験した。
Hsp150及びGFP分泌アッセイ
【0130】
Hsp150分泌の誘導のために、株を26℃で一晩YPDにおいて増殖させ、YPD培地で0.2 O.D.600単位に希釈し、次に37℃でインキュベートして対数期まで増殖させた。GFP分泌のために、炭素供給源としてラフィノースを含む合成選択培地で酵母を30℃で0.2 OD600までO/N増殖させ、YP-Galで0.2 OD OD600単位に希釈し、30℃で対数中期(0.6~0.8OD600)まで増殖させた。次に、1.8mlの培養液を各株から採取し、室温にて1900×gで3分間遠心分離した。トリクロロ酢酸(100%w/v)タンパク質沈殿を上清で行い、0.1 M NaOHを使用したタンパク質抽出をペレットで行った(Zhangら、2011)。試料をSDS-PAGEゲルで分離し、電気泳動によりニトロセルロース膜にブロットし、ウサギ抗Hsp150(1:10,000希釈;Jussi Jantti(VTT Research、ヘルシンキ)から寄贈]抗体又はモノクローナルマウス抗GFP(Roche Applied Science、ペンツベルク、ドイツ)抗体とのインキュベーション、続いて、抗ウサギペルオキシダーゼ結合抗体(1:10,000、Amersham Biosciences)による強化化学発光(ECL)検出システムを使用した視覚化によって検出した。タンパク質分子質量を評価するために、タンパク質マーカー(ExcelBand 3色の広範囲タンパク質マーカーPM2700、SMOBiO Technology、Inc.、台湾、新竹)を使用した。
インベルターゼアッセイ
【0131】
インベルターゼ分泌を、以前に記載された要領で測定した(Goldstein及びLampen、1975)。インベルターゼアッセイのための細胞調製を、(Novick 及びSchekman、1979)記載の要領で行った。プロトコルを(Troy AA、2014)に基づいて最適化した。内部及び外部の活性を、540nmでの吸収に基づいて単位で表した(1U=1μmolグルコース放出/分/OD単位)。
単一分子FISH
【0132】
Sec63-GFPを発現する酵母細胞を対数増殖中期まで増殖させ、低グルコース含有培地[0.1%グルコース]に1.5時間シフトして、SUC2発現を誘導した。ホルムアルデヒド(最終濃度3.7%)を45分間加えて、細胞を同じ培地に固定した。細胞を、1.2Mソルビトールを含む0.1Mリン酸カリウム緩衝液、pH7.4で2回穏やかに洗浄した後、細胞を1mlの新しく調製したスフェロプラスト緩衝液[0.1Mリン酸カリウム緩衝液、pH7.4、1.2Mソルビトール、20mMリボヌクレオシドバナジル錯体(Sigma-Aldrich、セントルイス、ミズーリ)、1×完全プロテアーゼ阻害剤カクテル、28mMβ-メルカプトエタノール、120U/ml RNasinリボヌクレアーゼ阻害剤、及びザイモラーゼ(10kU/ml)]中、30℃で30分間スフェロプラスト化した。スフェロプラストを4℃、1300×gで4分間遠心分離し、1.2Mソルビトールを含む0.1Mリン酸カリウム緩衝液、pH7.4で2回洗浄した。次にスフェロプラストを70%エタノールに再懸濁し、4℃で1時間インキュベートした。その後、細胞を1300×g、4℃で4分間遠心分離し、WASH緩衝液(0.3M塩化ナトリウム、30mMクエン酸ナトリウム、及び10%ホルムアミド)で洗浄し、0.3M塩化ナトリウム、30mMクエン酸ナトリウム、10%デキストラン硫酸、10%ホルムアミド、2mMリボヌクレオシドバナジル錯体、及びSUC2用のTAMRA標識Stellarisプローブミックス(Biosearch Technologies、Novato、カリフォルニア)を含むハイブリダイゼーション混合物と、暗所において30℃で一晩インキュベートした。。プローブのハイブリダイゼーション後、標識されたスフェロプラストを1300×gで遠心分離し、ハイブリダイゼーション溶液を吸引し、スフェロプラストをWASH緩衝液中30℃で30分間インキュベートした。次に細胞を遠心分離し、0.3M塩化ナトリウムと30mMクエン酸ナトリウムを含む溶液に再懸濁した。ERとのSUC2 mRNA共局在を、DeltaVisionイメージングシステム(Applied Precision、イサクア、ワシントン、米国)を使用して視覚化した。画像をデコンボリューションによって処理した。
コンピュータ分析:
SECReTEスコアの計算
【0133】
SECReTEスコアの計算を、Perlプログラミング言語を使用して実行した。モチーフ数を計算するために、ある特定のしきい値を超えるNNYリピートの数を、3つの異なる位置(すなわち、YNN、NYN、NNY、ここでNは任意のヌクレオチドであり、Yはピリミジンである)についてカウントした。
遺伝子オントロジー
【0134】
セクレトームの定義は(Astら、2013)によるもので、この群には、TMD及び/又はシグナル配列を含み、ミトコンドリアではないすべての遺伝子が含まれる。TMHMMツールを使用して、TMD含有タンパク質を定義した。細胞壁と尾部アンカー型遺伝子を、UniProtに従って定義した。(Janら、2014)からのデータを使用して、他の遺伝子群を定義し、ヒトGO用語を定義した。GO Slim Mapperツール(SGD)(worldwidewebdotyeastgenomedotorg/cgi-bin/GO/goSlimMapperdotpl)を使用して、ERTM10-及びERTM15-陽性遺伝子を分類した
並べ替え検定分析
【0135】
並べ替え分析では、各遺伝子配列をランダムに1000回シャッフルし、シャッフルされた配列ごとにSECReTEをスコア化した。SECReTEがランダムに出現する確率を評価するために、次の式に従って各遺伝子についてZスコアを計算した:Z=(観測値-平均値)/STD。観測値は、遺伝子配列から測定された値である。(遺伝子のSECReTEスコアなど)。平均値は、遺伝子のすべてのシャッフルされた配列についての平均SECReTEスコアである。STDは、遺伝子のすべてのシャッフルされた配列からのSECReTEスコアの標準偏差である。
細胞壁モチーフの同定
【0136】
モチーフ検索を、meme-suitedotorg/tools/memeにあるMEMEスーツ(Baileyら、2009)によって実行した。
結果
酵母セクレトームタンパク質をコードするmRNAにおけるピリミジンリピートモチーフの同定
【0137】
疎水性残基をコードするコドンは2番目の位置でピリミジンが豊富であるため(Prilusky及びBibi、2009年)、本発明者らは、コーディング領域とUTR領域において3つのヌクレオチド(すなわち、YNN、NYN、又はNNY)ごとに連続したピリミジンリピートの存在について酵母でのセクレトームタンパク質をコードするmRNAを調べた。まず、本発明者らは、どれだけのピリミジンリピートが、非セクレトームタンパク質をコードするmRNAからセクレトームタンパク質をコードするmRNAを最もよく区別できるかを決定した。そのために、mRNA転写物に沿ったリピートの数を、定義されたしきい値(例、5、7、10、12、及び15リピート)に従ってスコア化した。遺伝子長とリピートの存在との間に相関関係があるかどうかを決定するために、本発明者らはこれらの2つのパラメータを比較した(
図1A)。定義されたしきい値を使用した配列分析に基づいて、本発明者らは、これらのリピートを「分泌促進シス調節ターゲッティングエレメント」(SECReTE)、いわゆるSECReTE5、7、10、12、及び15として暫定的に定義した。示されているように(
図1A)、SECReTE5とSECReTE7についてのSECReTE数と遺伝子長との間には直接的な相関関係が存在する。しかしながら、遺伝子長に対する依存性は、SECReTE10よりも大幅に低下している(
図1A)。これは、10回以上の連続したリピートの存在がランダムな現象ではなく、重要であり得ることを意味する。
【0138】
10を超えるSECReTEリピート(SECReTE10など)がタンパク質分泌においてある役割を果たすならば、Astらにしたがって定義されている(Astら、2013)ところによると、セクレトームタンパク質をコードするmRNAがより多く存在すると予測され得る。この可能性を試験するために、本発明者らは完全な酵母ゲノムをセクレトーム及び非セクレトームの2つの群に分け、各群でSECReTEを含む転写物の割合を計算した。本発明者は、非セクレトームタンパク質をコードする転写物とは対照的に、セクレトームタンパク質をコードする転写物が7より大のSECReTEモチーフ(
図1B)で濃縮されていることを発見した。セクレトームと非セクレトームの転写物の間における最も有意な分離をもたらすリピート数を試験するために、本発明者らは、受信者操作特性(ROC)分析を使用してmSMPを分類する能力についての様々なしきい値を評価した(Hanley及びMcNeil、1982)。正真正銘のセクレトームタンパク質をコードする転写物を真陽性セットとして使用し、非セクレトームタンパク質をコードする転写物を真陰性として定義した。明らかに(
図1C)、SECReTE10しきい値により、非セクレトーム転写物からセクレトーム転写物が最大限で区別された。SECReTE10は遺伝子長への依存性を示さず、セクレトームと非セクレトームの転写物間の最も有意な分離を示したため、本発明者らは、後続の分析でモチーフの存在を定義するためのしきい値としてそれを使用した。
mSMPにおけるSECReTEの存在量はTMDの存在に左右されない
【0139】
mRNA配列をコードするTMDは、主にコドン(NYN)の2番目の位置にあるウラシル(U)で濃縮されている(Wolfendenら、1979;Prilusky及びBibi、2009)。ほとんどのセクレトームタンパク質にはTMDが含まれているため、それらの存在のみが、セクレトーム転写物におけるモチーフの濃縮の理由である可能性がある。mSMPにおけるSECReTE濃縮が単にコード化されたTMDの存在によるものではないかどうかを確認するために、本発明者らは、ピリミジン(Y)がSECReTE10エレメントにおいてトリプレットのどの位置:1番目(YNN)、2番目(NYN)又は3番目(NNY)にあるかを決定した。本発明者らは、コーディング配列(すなわち、開始コドンから停止コドンまで)のみを使用して、UTRを使用せずに、SECReTE10の存在量を各位置について個別に計算した。シグナルは2番目の位置(
図2A;NYN)に存在するが、予想どおり、コドンの3番目の位置(
図2A;NNY)にも豊富である。後者の発見は、TMDがmSMPにおけるSECReTE濃縮に影響を与える唯一の要因ではない可能性があることを意味する。対照的に、SECReTE10エレメントは、1番目の位置ではあまり表示されていない(
図2A、YNN)。
【0140】
次に、本発明者らは、TMD含有タンパク質と可溶性分泌タンパク質を別々にコードするmRNAにSECReTE10が存在するかどうかを確認した。予想通り、可溶性分泌タンパク質をコードする転写物より、TMD含有セクレトームタンパク質をコードする多くの転写物が、2番目の位置(NYN)にSECReTE10を含んでいる(
図2B)。しかしながら、3番目の位置(NNY)における可溶性分泌タンパク質をコードするSECReTE10含有転写物の割合はさらに高くなる。これは、コード化されたTMD領域とは無関係に、転写物におけるSECReTE10濃縮についての説得力のある証拠を提供している。同様に、TMDが膜タンパク質をコードするmRNAの配列から人為的に削除された場合、セクレトーム遺伝子は2番目の位置SECReTE10(
図2C;NYN)で濃縮されなくなったが、3番目の位置でのSECReTE10の濃縮は非常に高いままであった(
図2C;NNY)。
SECReTEの存在量はコドン組成に依存しない
【0141】
SECReTEの濃縮は、転写物のコドン構成に起因する可能性がある。この可能性を確認するために、本発明者らは並べ替え検定分析を行った。この場合、各遺伝子配列はランダムに1000回シャッフルされ、コドン組成は一定のままであった。次に、本発明者らは、各遺伝子についてのSECReTE10のZスコア(すなわち、平均値からの標準偏差の数)を計算して、シグナルがランダムに現れる確率を評価した。セクレトーム遺伝子及び非セクレトーム遺伝子におけるZスコア分布を見ると、mSMPでのSECReTEの濃縮はランダムな現象ではなく、コドン組成に依存していないと結論付けることができる(
図9A)。この結論は、膜タンパク質と可溶性タンパク質の両方をコードするmSMPに当てはまる(
図9B)。本発明者らはまた、各コドン位置について別々に分析を行った。そのために、本発明者らは、有意なZスコア(≧1.96)を有する遺伝子の割合を各位置について個別に計算した。有意なZスコアを有する遺伝子の割合は、コドンの2番目と3番目の位置の両方で非セクレトーム遺伝子よりもセクレトーム遺伝子の方が大きい(
図9C)ことから、SECReTEがそれらの位置で顕著に濃縮されているという概念が強化される。この調査結果はTMDの存在に左右されない。これは、有意なZスコアを有する遺伝子の割合が、可溶性及びTMD含有非セクレトーム転写物よりも、可溶性及びTMD含有の両セクレトーム転写物の方が大きかったためである(
図9D)。
遺伝子オントロジー(GO)分析
【0142】
SECReTE含有遺伝子の集団で過剰に表現されているこれらの遺伝子カテゴリーを決定するために、遺伝子オントロジー(GO)エンリッチメント分析を行った。SECReTE10陽性遺伝子をGOエンリッチメントについて検索したとき(すべての酵母遺伝子をバックグラウンドとして使用)、当然のことながら、膜タンパク質の濃縮スコアが高いことが判明した(濃縮倍率=1.67)(
図3A)。最もSECReTEに富む遺伝子カテゴリーは、細胞壁タンパク質を含むものであった(濃縮倍率=1.8)(
図3A)。15 NNYリピートがしきい値としての役割を果たしたとき、細胞壁タンパク質カテゴリーの濃縮倍率変化は4.8倍に増加した(
図3B)。SECReTEで濃縮されたmRNAについてさらに特性確認するために、本発明者らは、セクレトーム及び非セクレトームを部分群に分け、各カテゴリーでSECReTE10を含む転写物の割合を計算した。GO分析と一致することに、細胞壁タンパク質をコードするmRNAの90%超がSECReTE10エレメントを保有しており、細胞壁タンパク質にはSECReTEが最も豊富に存在していた(
図3C)。本発明者らは、TMD及びシグナル配列(SS)領域の両方をコードするタンパク質のmRNAの86%、並びにTMDをコードするセクレトームmRNAの84%にSECReTE10が含まれていることを発見した(
図3C)。これらのうち、尾部アンカー型(TA)タンパク質をコードするmRNAにおいては、セクレトームにSECReTE10を含む転写物の数が最も少ない(
図3C)。TAタンパク質は、細胞質ゾルで翻訳された後、代替経路(GET)を介してERに移行することが知られており(Sharp及びLi、1987;Stefanovic及びHegde、2007;Denic、2012)、それらの転写物はER膜では濃縮されていない(Janら、2014;Chartronら、2016)。これは、SECReTEがERで翻訳を受けているmRNAにより多く含まれていることを意味し得る。対照的に、非セクレトームタンパク質(すなわち、ミトコンドリア及び細胞核)の転写産物は、SECReTEエレメントの存在量が最も少ない(
図3C)。
【0143】
SECReTEは細胞壁タンパク質をコードするmRNAに非常に豊富に存在するため、本発明者らは、それが不偏モチーフ検索ツールを使用して発見され得るかどうかを知りたいと考えた。そのために、MEMEを使用して細胞壁タンパク質のmRNA配列を分析し、mRNAモチーフを同定した。得られた最も重要な結果は、U又はCを使用したSECReTE10リピートと非常によく似ていた(
図3D)。重要なことに、本発明者らは、このmRNAモチーフ内においてタンパク質モチーフを検出しなかったことから、SECReTEエレメントがタンパク質配列に依存している可能性が排除された。
mSMPにおけるSECReTE濃縮は、原核生物と高等真核生物の両方で見られる
【0144】
保存又は収斂進化は、重要性を強く示すものである。mSMPにおけるSECReTE濃縮が高等生物及び下等生物(例えば、ヒト及び枯草菌(B.subtilis))で見られるかどうかを確認するために、本発明者らはこれらのゲノムを分析した。ヒトでは、S.cerevisiaeと同様に、SECReTE10は、ROC分析に基づくと、セクレトームタンパク質と非セクレトームタンパク質をコードするRNAの間で最も顕著な分離を示した(
図4A)。SECReTE10が遺伝子長と相関しないことを確認した後、10 NNYリピートがSECReTEモチーフの存在を定義するためのしきい値としての役割を果たした。酵母と同様に、SECReTEは、非セクレトーム転写物と比較して、セクレトーム転写物の2番目と3番目のコドンの位置に豊富に存在する(
図4B)。また、TMDを有するか又は欠いている非セクレトーム転写物と比較して、TMDを欠いている高い割合のセクレトーム転写物がSECReTEを含んでいる(
図4C)。興味深いことに、細胞壁タンパク質に相当するGPIアンカー型タンパク質をコードする転写物では、SECReTEが高度に濃縮されていることが判明した。対照的に、尾部アンカー型遺伝子、並びにミトコンドリア及び細胞核の遺伝子は、酵母で見られるように、SECReTEの存在量が低くなっている(
図4D)。多量のSECReTE10が、非セクレトームタンパク質をコードする遺伝子と比較して、枯草菌(B.subtilis)からのセクレトームタンパク質をコードする遺伝子で検出された(
図4E)。
SECReTEにおける変異は内因性セクレトームタンパク質の分泌に影響を与える
【0145】
SECReTEの重要性をさらに理解し、酵母細胞の生理機能に対するその重要性を検証するために、本発明者らは、選択された遺伝子におけるシグナルを上昇又は減少させることによってその関連性を調べた。3つの代表的な遺伝子を、それらの比較的短い遺伝子長、それらの欠失時に検出可能な表現型、及び様々な生理学的経路におけるそれらの機能に基づいて選択した。これらの遺伝子には、可溶性の分泌型ペリプラズム酵素をコードするSUC2、可溶性培地タンパク質をコードするHSP150、及びGPIアンカー型細胞壁タンパク質をコードするCCW12が含まれる。遺伝子の全体的なSECReTEシグナルを、3番目のコドン位置にあるA又はGをそれぞれT又はCで置き換えることにより増加させ、それにより、遺伝子全体に沿ったSECReTEの存在が濃縮された[(+)SECReTE]。TをAに、又はCをGに変換する逆の置換により、全体的なSECReTEシグナルを減少させた[(-)SECReTE]。重要なことに、これらの変更は、コード化されたアミノ酸配列に変更が加えられることなく、確実にmRNA配列のSECReTE属性のみが変更されるように設計された。さらに、mRNA二次構造の安定性の変化は許容範囲内に保たれ、コドン適応指数(CAI)は0.8~1.0の最適範囲内にとどまっていた(Sharp及びLi、1987)。SUC2、HSP150、及びCCW12におけるSECReTE変異について、
図10に示すように(A~C、それぞれ上部と下部)、1 NNYリピート又は10 NNYリピートのいずれかの最小しきい値を使用して、遺伝子長に沿って示す。
SUC2におけるSECReTE変異により、インベルターゼ分泌が変化する
【0146】
SUC2は、5’末端のみが異なる、短いものと長いものの2つの異なるmRNAから翻訳された異なる形態のインベルターゼをコードする。長い方のmRNAはシグナル配列を含む分泌タンパク質をコードするが、シグナル配列は細胞質タンパク質をコードする短いアイソフォームから省かれている。分泌されたSuc2発現はグルコース抑制を受ける。しかしながら、誘導条件下(すなわち、グルコース枯渇)では、Suc2は、分泌経路を通って細胞のペリプラズム空間に輸送される。そこで、Suc2はスクロースからグルコース及びフルクトースへの加水分解を触媒するが、この酵素活性は、酵母がスクロースを炭素源として利用する能力に関与しており、細胞の内側及び外側の両方で、生化学的アッセイ(すなわち、インベルターゼ活性)によって測定され得る。Suc2機能に対するSECReTE変異の影響について、落下試験によって変異体がスクロース含有培地で成長する能力を調べることにより試験した。興味深いことに、スクロースプレート上でのSUC2(-)SECReTEの成長率は低下しており、YPDプレートでは成長の変化は検出されなかったにもかかわらず、SUC2(+)SECReTE変異体はWT細胞と比較してより良い成長を示した(
図5A)。これらの調査結果は、SECReTE強度がSuc2の分泌に影響を与えることを示唆している。Suc2分泌のこれらの変化は、SUC2転写、Suc2産生、及び/又は改変された分泌速度の変化に起因する可能性がある。可能性を区別するために、WT細胞、suc2Δ、及びSUC2 SECReTE変異体をインベルターゼアッセイにかけた。インベルターゼアッセイは、スクロースから生成されるグルコースの量を計算することにより、分泌されたSuc2及び内部Suc2の定量を可能にする。予想通り、グルコース抑制条件下(例えば2%グルコース)では、分泌されたSuc2と内部Suc2の両方のレベルが非常に低かった。分泌された酵素の発現を促進するために、細胞を低グルコース(例えば、0.05%グルコース)含有培地で培養すると、SECReTEの変化により、分泌されたSuc2レベルが変化した。落下試験の結果に対応することに、WT細胞と比較して、SUC2(-)SECReTE細胞では分泌型インベルターゼの有意な減少が検出されたが、Suc2(+)SECReTE細胞では有意な増加が検出された。Suc2Δ細胞からのSuc2分泌は検出されなかった(
図5B、分泌)。SECReTE変異がSuc2分泌の効率に影響を与えるが、合成には影響しない場合、Suc2の蓄積がSUC2(-)SECReTE細胞で発生すると予想されることになる。同様に、内部インベルターゼの減少がSUC2(+)SECReTE細胞で生じると予想されることになる。しかしながら、Suc2(-)SECReTE細胞ではSuc2の内部量が減少し、Suc2(+)SECReTE細胞ではわずかに増加したため、これは当てはまらなかった(
図5B、内部)。これらの所見は、SUC2におけるSECReTEの変更がタンパク質の産生に影響を与える可能性があることを示唆している。
SECReTE変異はHsp150分泌と細胞壁安定性を変化させる
【0147】
次に、本発明者らは、HSP150におけるSECReTEの重要性を研究することを望んだ。Hsp150は外側細胞壁の構成成分であり、Hsp150の正確な機能は不明であるが、細胞壁の安定性とカルコフロールホワイト(CFW)やコンゴレッド(CR)などの細胞壁摂動剤に対する抵抗性が必要とされる。hsp150Δ細胞は細胞壁ストレスに対する感受性が高いが、Hsp150の過剰産生により細胞壁の完全性が高められる(Hsuら、2015)。Hsp150は増殖培地に効率的に分泌され、その発現は熱ショックを与えられると増加する(Russoら、1992、1993))。HSP150におけるSECReTEの変更の影響について、WT細胞及びhsp150Δ細胞との比較において、追加されたCFWに対するHSP150(-)SECReTE細胞及びHSP150(+)SECReTE細胞の感受性を試験することによる落下試験で調べた。
図5Cからわかるように、HSP150(-)SECReTE株はWT細胞と比較してCFWに対し高い感受性を示したが、HSP150(+)SECReTE株はCFWに対し高い抵抗性を示した。予想通り、hsp150Δ細胞はCFWに最も影響を受けやすい(
図5C)。HSP150株はまた、変異タンパク質のレベルを測定するためにウエスタンブロット分析に供された。HSP150の分泌は熱ショックで上昇するため(Russoら、1992、1993)、タンパク質抽出前に細胞を37℃で培養した。成長培地と細胞の両方からタンパク質を抽出し、それぞれ外部と内部のタンパク質レベルを検出した。培地に分泌されたHsp150の量は、WT細胞と比較して、HSP150(-)SECReTE細胞では減少し、HSP150(+)SECReTE細胞では上昇していた(
図5D)。Suc2と同様に、Hsp150の内部量は、WT細胞と比較して、HSP150(-)SECReTE細胞でも減少していた(
図5D)。これは、SECReTE強度の低下によって分泌自体が大幅に弱められたわけではないことを意味し得る。HSP150(+)SECReTE細胞におけるHsp150の内部量はWT細胞のそれに類似していたため、HSP150におけるSECReTEの改変もタンパク質産生に影響を与える可能性が高いと結論付けることができる。
CCW12におけるSECReTE変異は細胞壁の安定性を変える
【0148】
CCW12は、新たに合成された細胞壁の領域に局在し、出芽やシュムー形成中に壁の安定性を維持するグリコホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー型細胞壁タンパク質をコード化する。CCW12の欠失は、ハイグロマイシンB(HB)などの細胞壁不安定化剤に対する過剰な感受性を引き起こすことが示された(Ragniら、2007、2011)。CCW12ではSECReTEスコアが非常に高いため、信号をさらに増やすことは不可能であった。したがって、本発明者らは、CCW12(-)SECReTE細胞のみを生成し、HB含有プレートで増殖するそれらの能力について試験した。HSP150(-)SECReTEで見られるように(
図5C)、CCW12(-)SECReTE変異は、WT細胞と比較して(
図5E)、細胞の細胞壁摂動に対する感受性を高めることがわかった。
SECReTE添加は外因性ナイーブタンパク質の分泌に影響を与える
【0149】
SECReTEの添加により外因性タンパク質の分泌を改善させ得ることは、その重要性の実質的な証拠となるだけでなく、タンパク質配列を変更せずに組換えタンパク質の分泌を改善するための有用な低コストの産業用ツールをもたらす可能性がある。それを試験するために、本発明者らは、5’末端にコードされたGas1のSS(SSGas1)を有するGFP転写物構築物を使用した。SSGasIは、培地へのGFPタンパク質の分泌を可能にするが、その分泌はSSKar2などの他のSS融合GFPタンパク質と比較して効率的ではなかった(
図5F)。SSGas1の分泌を潜在的に改善するために、本発明者らは、SECReTEを含むGas1の改変された3’UTR配列を付加した[すなわち、ここで、すべてのAとGがそれぞれTとCに置き換えられた;SSGasI-3’UTRGASI(+)SECReTE]。次に、本発明者らは、GFPの培地への分泌に対するSECReTE添加の影響を試験した。本発明者らは、GasI-GFPの3’UTRにSECReTEを付加すると、SSGasI-GFPと比較して、培地へのGFP分泌が改善され、SSKar2-GFPの場合と同様であることを見出した(
図5F)。
mRNAレベルに対するSECReTE変異の影響
【0150】
タンパク質レベルは(-)SECReTE及び(+)SECReTEの変異によって改変され得るため(
図5B、D、及びF)、本発明者らは、遺伝子転写又はmRNA安定性の変化が関与するかどうかを調べた。SUC2、HSP150、及びCCW12のmRNAレベルがSECReTE強度による影響を受けるかどうかを確認するために、定量的リアルタイム(qRT)PCRが採用された。SUC2(-)SECReTE mRNAレベルはSUC2 WT細胞よりもほぼ30%低く、SUC2(+)ERTMレベルはWTよりも約50%高いことがわかった(
図S3A)。mRNAレベルのこの変化は、SUC2(+)SECReTE変異体がタンパク質産生を増加させ、したがって、スクロース含有培地でよりよく成長することができる原因であり得る(
図5A、B)。
【0151】
SECReTE変異がHSP150 mRNAレベルに及ぼす影響も調べた。興味深いことに、HSP150(-)SECReTEのmRNAレベルはWTに類似しているが、HSP150(+)SECReTEのmRNAレベルはわずかに低下していることがわかった(
図11B)。したがって、SECReTEの改変によるHsp150タンパク質レベルとCFWに対する感受性の変化は(
図5C及びD)、mRNAレベルの変化によって説明されない。同様に、CCW12(-)SECReTEにおけるSECReTEの変異は、そのmRNAレベルに有意な変化を引き起こさなかった(
図11C)。したがって、CCW12(-)SECReTEのHBに対する感受性の増加(
図5E)は、CCW12 mRNAの減少によるものではない。
SECReTE変異がSUC2 mRNAの局在に及ぼす影響
【0152】
SECReTEがmRNAの局在性を決定する役割を有するかどうかを試験するために、本発明者らは、特定の蛍光プローブを使用して単一分子FISH(smFISH)によってSUC2 mRNAを視覚化し、ERとのSUC2 mRNA共局在のレベルに対するSECReTE改変の影響を試験した。本発明者らは、Sec63-GFPをERマーカーとして使用し、ERと共局在又は非共局在するか、ERに隣接していた1細胞あたりの顆粒のパーセンテージを計算した。SUC2(-)SECReTE mRNA顆粒とSec63-GFPとの間における共局在のレベルは、WT SUC2 mRNA顆粒と比較してわずかに減少していることがわかった(
図6A及びB)。対照的に、WT SUC2 mRNAと比較して、SUC2(+)SECReTE mRNA顆粒とERの共局在のレベルで、約50%の有意な増加が観察された(
図6A及びB)。これらの調査結果は、SECReTEがSUC2 mRNAのERへのターゲティングにおいて役割を演じることを示唆している。
潜在的なSECReTE結合タンパク質の同定
【0153】
SECReTEの役割をさらに解明するには、その結合パートナー、おそらくRBPを特定することが不可欠である。以前は、酵母において40を超える既知RBPに結合しているmRNAを同定するために大規模なアプローチが使用されていた(Colominaら、2008;Hasegawaら、2008;Hoganら、2008)。潜在的なSECReTE結合タンパク質(SBP)のリストを取得するために、本発明者らは、SECReTEで高度に濃縮されたmRNAに結合するRBPのデータセットを検索した。各RBPについて、本発明者らは、SECReTE10を含む結合された転写物の割合を計算した。SECReTE10含有mRNAの大部分に結合することがわかっているRBPには、Bfr1、Whi3、Puf1、Puf2、Scp160、及びKhd1(
図7A)が含まれ、すべてmSMPに結合することが以前に示されていた。どの候補がSECReTEに結合するかを試験するために、WT又はHSP150(+)SECReTE細胞のいずれかで、これらのRBPにおける各遺伝子を欠失させた。本発明者らは、真正SBPの欠失によりCFWに対する感受性が付与され得、CFW含有プレートで観察されたWTとHSP150(+)SECReTE細胞との間における成長率の違いが排除され得ると仮定した(
図5C)。PUF1、PUF2、又はSHE2が欠失された場合、HSP150(+)SECReTE株は、WT細胞よりもCFWに対してさらに高い抵抗性を示すことがわかった(
図12)。この効果の欠如の1つの考えられる説明は、これらのRBPがHSP150を結合しないか、他のSBPで冗長化していることである。しかしながら、WHI3又はKHD1のいずれかの欠失により、CFW含有プレート上のWTとHSP150(+)SECReTE株の差異が排除されることがわかった(
図7B)。これは、Whi3とKhd1が、HSP150 mRNAとおそらく他のセクレトームmRNAに結合し、WT細胞単独でさえ、それらの非存在下ではCFWに対してより高い感受性を示したことを示唆している(
図7B)。
References
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Ast, T., Cohen, G., and Schuldiner, M. (2013). A network of cytosolic factors targets SRP-independent proteins to the endoplasmic reticulum. Cell 152, 1134-1145.
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【0154】
本発明をその特定の実施形態に関連させて説明してきたが、多くの代替、修正及び変形が当業者に明らかであることは明白である。したがって、添付の特許請求の範囲の精神及び広い範囲内にあるそのようなすべての代替、修正、及び変形を包含するものとする。
【0155】
この明細書で言及されているすべての出版物、特許、及び特許出願は、個々の出版物、特許、又は特許出願が参照により本明細書に組み込まれることが具体的かつ個別に示されている場合と同程度に、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。さらに、本出願における参考文献の引用又は特定は、そのような参考文献が本発明に対する先行技術として利用可能であることの承認として解釈されるべきではない。節の見出しが使用されている限りにおいて、それらは必ずしも限定的であると解釈されるべきではない。
【0156】
さらに、この出願の優先権書類は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。