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特開2024-37846FcRnアンタゴニストを用いてFc含有剤の血清レベルを低下させる方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037846
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】FcRnアンタゴニストを用いてFc含有剤の血清レベルを低下させる方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/16 20060101AFI20240312BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 13/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240312BHJP
   C07K 16/00 20060101ALN20240312BHJP
【FI】
A61K38/16
A61P37/02 ZNA
A61P37/06
A61P17/14
A61P25/28
A61P7/06
A61P1/16
A61P9/00
A61P13/00
A61P29/00
A61P7/04
A61P17/00
A61P1/04
A61P3/10
A61P13/12
A61P19/08
A61P35/00
A61P25/08
A61P27/02
A61P25/00
A61P31/04
A61P43/00 121
A61P43/00 111
A61K39/395 D
A61K39/395 N
C07K16/00
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023209102
(22)【出願日】2023-12-12
(62)【分割の表示】P 2022072043の分割
【原出願日】2016-03-08
(31)【優先権主張番号】62/130,076
(32)【優先日】2015-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517303085
【氏名又は名称】アルジェニクス ビーブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス ジー.エイチ.オンゲナエ
(72)【発明者】
【氏名】トルステン ドレイエル
(72)【発明者】
【氏名】ペテル ウルリクフトス
(72)【発明者】
【氏名】ジョハンネス デ ハアルド
(72)【発明者】
【氏名】クリストプヘ ブランチェトト
(57)【要約】      (修正有)
【課題】対象におけるFc含有剤(例えば、抗体及びイムノアドヘシン)の血清レベルを低下させる方法において使用するための医薬組成物を提供する。
【解決手段】対象において自己抗体の血清レベルを低下させる方法において使用するための医薬組成物であって、バリアントFc領域からなるFcRnアンタゴニストを含み、該バリアントFc領域の少なくとも1つのFcドメインのアミノ酸配列が、特定のアミノ酸配列からなり、該FcRnアンタゴニストが対象に2~200 mg/kgの用量で投与され、かつ該FcRnアンタゴニストが、対象に20日に2回の頻度で投与される、前記医薬組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象において自己抗体の血清レベルを低下させる方法において使用するための医薬組成
物であって、バリアントFc領域からなるFcRnアンタゴニストを含み、
該バリアントFc領域の少なくとも1つのFcドメインのアミノ酸配列が、配列番号:1、2
又は3に記載のアミノ酸配列からなり、
該FcRnアンタゴニストが該対象に2~200 mg/kgの用量で投与され、かつ
該FcRnアンタゴニストが、該対象に20日に2回の頻度で投与される、前記医薬組成物。
【請求項2】
前記FcRnアンタゴニストが、前記対象に静脈内投与される、請求項1記載の医薬組成物
【請求項3】
前記FcRnアンタゴニストが皮下投与される、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記バリアントFc領域の少なくとも1つのFcドメインのアミノ酸配列が、配列番号:1に
記載のアミノ酸配列からなる、請求項1~3のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記バリアントFc領域の少なくとも1つのFcドメインのアミノ酸配列が、配列番号:2に
記載のアミノ酸配列からなる、請求項1~3のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記バリアントFc領域の少なくとも1つのFcドメインのアミノ酸配列が、配列番号:3に
記載のアミノ酸配列からなる、請求項1~3のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記バリアントFc領域のFcドメインのアミノ酸配列が、配列番号:1、2又は3に記載の
アミノ酸配列からなる、請求項1~3のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記バリアントFc領域のFcドメインのアミノ酸配列が、配列番号:1に記載のアミノ酸
配列からなる、請求項1~3のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記バリアントFc領域のFcドメインのアミノ酸配列が、配列番号:2に記載のアミノ酸
配列からなる、請求項1~3のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記バリアントFc領域のFcドメインのアミノ酸配列が、配列番号:3に記載のアミノ酸
配列からなる、請求項1~3のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記FcRnアンタゴニストが、7、8、9、又は10日に1回投与される、請求項1~10のいず
れか1項記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記FcRnアンタゴニストが、7日に1回投与される、請求項1~11のいずれか1項記載の医
薬組成物。
【請求項13】
前記FcRnアンタゴニストが、10日に1回投与される、請求項1~11のいずれか1項記載の
医薬組成物。
【請求項14】
前記バリアントFc領域が、半減期エクステンダーと連結されており、該半減期エクステ
ンダーが、ポリエチレングリコール又はヒト血清アルブミンである、請求項1~13のいず
れか1項記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記対象が、抗体媒介性の疾患又は障害を有する、請求項1~14のいずれか1項記載の医
薬組成物。
【請求項16】
前記対象が、自己免疫性疾患を有する、請求項1~10のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記自己免疫性疾患が、同種異系膵島移植片拒絶反応、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗
リン脂質抗体症候群、自己免疫性アジソン病、アルツハイマー病、抗好中球細胞質自己抗
体(ANCA)、副腎の自己免疫性疾患、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫
性心筋炎、自己免疫性好中球減少症、自己免疫性の卵巣炎及び精巣炎、自己免疫性血小板
減少症、自己免疫性蕁麻疹、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、キャッスルマン
病、セリアック病-皮膚炎、慢性疲労免疫不全症候群、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CID
P)、チャーグ-ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、クレスト症候群、寒冷凝集素症、ク
ローン病、皮膚筋炎、拡張型心筋症、円板状エリテマトーデス、後天性表皮水疱症、本態
性混合型クリオグロブリン血症、第VIII因子欠損症、線維筋痛症-線維筋炎、糸球体腎炎
、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、グッドパスチャー症候群、移植片対宿主病(GV
HD)、橋本甲状腺炎、血友病A、特発性膜性ニューロパチー、特発性肺線維症、特発性血
小板減少性紫斑病(ITP)、IgAニューロパチー、IgM多発性ニューロパチー、免疫媒介性
血小板減少症、若年性関節炎、川崎病、扁平苔蘚、硬化性苔蘚、エリテマトーデス、メニ
エール病、混合性結合組織病、粘膜類天疱瘡、多発性硬化症、1型糖尿病、多巣性運動ニ
ューロパチー(MMN)、重症筋無力症、傍腫瘍性水疱性類天疱瘡、妊娠性類天疱瘡、尋常
性天疱瘡、落葉状天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、
リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎及び皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発
性胆汁性肝硬変、乾癬、乾癬性関節炎、再発性多発性軟骨炎、レイノー現象、ライター症
候群、リウマチ性関節炎、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、固形臓器移
植拒絶反応、スティフ・マン症候群、全身性エリテマトーデス、高安動脈炎、中毒性表皮
壊死症(TEN)、 スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)、側頭動脈炎/巨細胞性動脈
炎、血栓性血小板減少性紫斑病、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、ヘルペス状皮膚炎脈管炎、
抗好中球細胞質抗体関連脈管炎、白斑、及びウェゲナー肉芽腫症からなる群から選択され
る、請求項16記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記自己免疫性疾患が、自己免疫性チャネル病である、請求項16記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記チャネル病が、自己免疫性辺縁系脳炎、てんかん、視神経脊髄炎、ランバート・イ
ートン筋無力症症候群、重症筋無力症、抗N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体脳炎
、抗α-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソキサゾールプロピオン酸(AMPA)受容体脳
炎、モルバン症候群、神経性筋強直症、レンサ球菌感染症に関連する小児自己免疫性精神
神経障害(PANDAS)、及び抗グリシン受容体抗体関連障害からなる群から選択される、請
求項18記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記FcRnアンタゴニストが、追加の治療薬と同時に、又は逐次的に前記対象に投与され
る、請求項1~19のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記追加の治療薬が、抗炎症薬又は白血球除去薬である、請求項20記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記白血球除去薬がB細胞除去薬である、請求項21記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記B細胞除去薬が抗体である、請求項22記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記B細胞除去薬が、CD10、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD37、CD53、CD70
、CD72、CD74、CD75、CD77、CD79a、CD79b、CD80、CD81、CD82、CD83、CD84、CD85、又は
CD86に特異的に結合する抗体である、請求項23記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記追加の治療薬が、リツキシマブ、ダクリズマブ、バシリキシマブ、ムロモナブ-CD3
、インフリキシマブ、アダリムマブ、オマリズマブ、エファリズマブ、ナタリズマブ、ト
シリズマブ、エクリズマブ、ゴリムマブ、カナキヌマブ、ウステキヌマブ、ベリムマブ、
又はそれらの組み合わせである、請求項20記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記対象が、ヒト又はカニクイザルである、請求項1~25のいずれか1項記載の医薬組成
物。
【請求項27】
前記対象がヒトである、請求項1~26のいずれか1項記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、その全体が引用により本明細書に組み込まれる、2015年3月9日出願の米国仮
出願第62/130,076号の恩典を主張する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
免疫グロブリンγ(IgG)抗体は、自己免疫性疾患、炎症性疾患、及びその病理がIgG抗
体の過剰発現を特徴とする障害(例えば、高ガンマグロブリン血症)のような、多くの障
害の病理において重要な役割を果たす(例えば、Junghansの文献、Immunologic Research
16 (1):29 (1997)を参照されたい)。
【0003】
血清中のIgGの半減期は他の血漿タンパク質の血清半減期と比較して長期に及ぶ(Roope
nianらの文献、J. Immunology 170:3528 (2003);Junghans及びAndersonの文献、Proc. N
atl. Acad. Sci. USA 93:5512 (1996))。この長い半減期は、部分的には、IgGのFc領域
がFc受容体であるFcRnと結合することに起因する。FcRnは最初は母から受け継いだIgGの
ための胎児性の輸送受容体として特徴づけられたが、FcRnは成体において該IgGを分解か
ら保護するようにも機能する。FcRnは飲作用により取り込まれたIgGと結合し、該IgGを細
胞外区画へと戻すように再循環させることにより、分解を担うリソソームへの輸送から該
IgGを保護する。この再循環は、IgGのFcRnへのpH依存的な結合により促進される。ここで
、IgG/FcRn相互作用は、酸性のエンドソーム内のpHにおいて、細胞外の生理学的pHにおけ
るよりも強くなる。
【0004】
IgGの血清濃度が利用可能なFcRn分子を上回るレベルに達すると、結合していないIgGは
分解機構から保護されなくなり、その結果低下した血清半減期を有することとなる。その
ため、FcRnへのIgGの結合を阻害すると、IgGのエンドソームによるIgG再循環が妨げられ
ることにより、IgGの血清半減期が低下する。従って、FcRnへのIgGの結合と拮抗する薬剤
は、自己免疫性疾患、炎症性疾患などのような抗体媒介性の障害を調節し、治療し、又は
予防するのに有用となり得る。IgG FcのFcRnへの結合と拮抗させる方法の一例は、FcRnに
対する遮断抗体の作製を伴う(例えば、WO2002/43658を参照されたい)。また、FcRnの機
能と結合し、該FcRnの機能と拮抗するペプチドも同定されている(例えば、US6,212,022
及びUS8,101,186を参照されたい)。さらにまた、FcRnとの結合が強化され、pH依存性が
低下したバリアントFc受容体を含む全長IgG抗体もIgGに対するFcRnの結合と拮抗すること
が特定されている(例えば、8,163,881を参照されたい)。しかしながら、抗体媒介性の
障害の改善された治療方法が、当技術分野において求められている。
【発明の概要】
【0005】
(概要)
本件開示は、対象におけるFc含有剤(例えば、抗体及びイムノアドヘシン)の血清レベ
ルを低下させる新規の方法を提供する。これらの方法は一般に、該対象にネイティブのFc
領域と比較して、増加した親和性と低下したpH依存性をもってFcRnと特異的に結合する、
有効量の単離されたFcRnアンタゴニストを投与することを含む。開示された方法は、抗体
媒介性の障害(例えば、自己免疫性疾患)の治療に特に有用である。
【0006】
従って、一態様において、本件開示は、対象におけるFc含有剤の血清レベルを低下させ
る方法であって、該対象に有効量の、バリアントFc領域又はそのFcRn結合断片を含む単離
されたFcRnアンタゴニストを投与することを含み、該バリアントFc領域のFcドメインがEU
位置252、254、256、433、434、及び436にそれぞれアミノ酸Y、T、E、K、F、及びYを含み
、かつ該FcRnアンタゴニストが該対象に約0.2~約200 mg/kgの用量で投与される、前記方
法を提供する。
【0007】
別の態様において、本件開示は、対象におけるFc含有剤の血清レベルを低下させる方法
であって、該対象に有効量の、バリアントFc領域又はそのFcRn結合断片を含む単離された
FcRnアンタゴニストを投与することを含み、該バリアントFc領域のFcドメインがEU位置25
2、254、256、433、434、及び436にそれぞれアミノ酸Y、T、E、K、F、及びYを含み、かつ
該FcRnアンタゴニストが該対象に少なくとも20日に2回投与される、前記方法を提供する
【0008】
以下の実施態様は本件開示の全ての態様に適用される。
【0009】
特定の実施態様において、該FcRnアンタゴニストは該対象に1、2、3、4、5、6、7、8、
9、又は10日に1回の頻度で投与される。特定の実施態様において、該FcRnアンタゴニスト
は該対象に4日に1回の頻度で投与される。特定の実施態様において、該FcRnアンタゴニス
トは該対象に7日に1回の頻度で投与される。特定の実施態様において、該FcRnアンタゴニ
ストは該対象に、20日に2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18
、19、又は20回投与される。
【0010】
別の態様において、本件開示は、対象におけるFc含有剤の血清レベルを低下させる方法
であって、該対象に有効量の、バリアントFc領域又はそのFcRn結合断片を含む単離された
FcRnアンタゴニストを投与することを含み、該バリアントFc領域のFcドメインがEU位置25
2、254、256、433、434、及び436にそれぞれアミノ酸Y、T、E、K、F、及びYを含み、かつ
該FcRnアンタゴニストが該対象に4週間にわたり、48時間に1回の頻度で投与される、前記
方法を提供する。
【0011】
特定の実施態様において、該FcRnアンタゴニストは該対象に、約0.2~約200 mg/kgの用
量で投与される。特定の実施態様において、該FcRnアンタゴニストは該対象に、約0.2、1
、2、3、5、10、20、25、30、50、70、100、又は200 mg/kgの用量で投与される。特定の
実施態様において、該FcRnアンタゴニストは該対象に、約10 mg/kgの用量で投与される。
特定の実施態様において、該FcRnアンタゴニストは該対象に、約20 mg/kgの用量で投与さ
れる。特定の実施態様において、該FcRnアンタゴニストは該対象に、約25 mg/kgの用量で
投与される。
【0012】
別の態様において、本件開示は、対象におけるFc含有剤の血清レベルを低下させる方法
であって、該対象に有効量の、バリアントFc領域又はそのFcRn結合断片を含む単離された
FcRnアンタゴニストを投与することを含み、該バリアントFc領域のFcドメインがEU位置25
2、254、256、433、434、及び436にそれぞれアミノ酸Y、T、E、K、F、及びYを含み、かつ
該FcRnアンタゴニストが該対象に約25 mg/kgの用量で4日に1回の頻度で投与される、前記
方法を提供する。
【0013】
別の態様において、本件開示は、対象におけるFc含有剤の血清レベルを低下させる方法
であって、該対象に有効量の、バリアントFc領域又はそのFcRn結合断片を含む単離された
FcRnアンタゴニストを投与することを含み、該バリアントFc領域のFcドメインがEU位置25
2、254、256、433、434、及び436にそれぞれアミノ酸Y、T、E、K、F、及びYを含み、かつ
該FcRnアンタゴニストが該対象に約25 mg/kgの用量で7日に1回の頻度で投与される、前記
方法を提供する。
【0014】
特定の実施態様において、該FcRnアンタゴニストは静脈内投与される。特定の実施態様
において、該FcRnアンタゴニストは皮下投与される。特定の実施態様において、該FcRnア
ンタゴニストは該対象に2以上の用量で投与され、ここで該対象に投与される第一の用量
は静脈内投与され、第二の、又はそれに続く用量の1以上は皮下投与される。
【0015】
特定の実施態様において、該FcRnアンタゴニストは抗体可変領域を含まない。特定の実
施態様において、該FcRnアンタゴニストはCH1ドメインを含まない。特定の実施態様にお
いて、該FcRnアンタゴニストは遊離システイン残基を含まない。特定の実施態様において
、該バリアントFc領域はIgG Fc領域である。特定の実施態様において、該バリアントFc領
域はIgG1 Fc領域である。特定の実施態様において、該バリアントFc領域のFcドメインの
アミノ酸配列は、配列番号:1、2、又は3に記載のアミノ酸配列を含む。特定の実施態様
において、該バリアントFc領域のFcドメインのアミノ酸配列は、配列番号:1に記載のア
ミノ酸配列からなる。特定の実施態様において、該FcRnアンタゴニストはバリアントFc領
域からなり、該バリアントFc領域のFcドメインのアミノ酸配列は、配列番号:1、2、又は
3に記載のアミノ酸配列からなる。
【0016】
特定の実施態様において、該バリアントFc領域は野生型IgG1 Fc領域のFcγ受容体に対
する親和性と比較して、Fcγ受容体に対する増加した親和性を有する。特定の実施態様に
おいて、該バリアントFc領域はCD16aに対する増加した親和性を有する。特定の実施態様
において、該バリアントFc領域のFcドメインはEU位置297にN-結合型グリカンを含まない
。特定の実施態様において、該FcRnアンタゴニストは複数のFcRnアンタゴニスト分子を含
み、該複数のFcRnアンタゴニスト分子の少なくとも50%(任意に、少なくとも60、70、80
、90、95、又は99%)が、EU位置297にアフコシル化N-結合型グリカンを含むバリアントF
c領域又はそのFcRn結合断片を含む。特定の実施態様において、該FcRnアンタゴニストは
複数のFcRnアンタゴニスト分子を含み、該複数のFcRnアンタゴニスト分子の少なくとも50
%(任意に、少なくとも60、70、80、90、95、又は99%)が、EU位置297にバイセクティ
ングGlcNacを有するN-結合型グリカンを含む、バリアントFc領域又はそのFcRn結合断片を
含む。
【0017】
特定の実施態様において、該バリアントFc領域は半減期エクステンダーと連結されてい
る。特定の実施態様において、該半減期エクステンダーは、ポリエチレングリコール又は
ヒト血清アルブミンである。
【0018】
特定の実施態様において、該Fc含有剤は、抗体又はイムノアドヘシンである。特定の実
施態様において、該Fc含有剤は、治療薬又は診断薬である。特定の実施態様において、該
Fc含有剤は、造影剤である。特定の実施態様において、該Fc含有剤は、抗体薬物コンジュ
ゲートである。特定の実施態様において、該Fc含有剤は、病原性の抗体である。特定の実
施態様において、該Fc含有剤は、自己抗体である。
【0019】
特定の実施態様において、該対象は抗体媒介性の疾患又は障害を有し、ここで該対象へ
の該FcRnアンタゴニストの投与により該疾患又は障害が改善される。特定の実施態様にお
いて、該疾患又は障害は、静脈内免疫グロブリン(IVIG)、血漿交換療法及び/又は免疫
吸着法を用いて治療可能である。特定の実施態様において、該抗体媒介性の疾患又は障害
は、自己免疫性疾患である。特定の実施態様において、該自己免疫性疾患は、同種異系膵
島移植片拒絶反応、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、自己免疫性アジ
ソン病、アルツハイマー病、抗好中球細胞質自己抗体(ANCA)、副腎の自己免疫性疾患、
自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性心筋炎、自己免疫性好中球減少症、
自己免疫性の卵巣炎及び精巣炎、自己免疫性血小板減少症、自己免疫性蕁麻疹、ベーチェ
ット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、キャッスルマン症候群、セリアック病-皮膚炎(celia
c spruce-dermatitis)、慢性疲労免疫不全症候群、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP
)、チャーグ-ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡(cicatrical pemphigoid)、クレスト
症候群、寒冷凝集素症、クローン病、皮膚筋炎、拡張型心筋症、円板状エリテマトーデス
、後天性表皮水疱症、本態性混合型クリオグロブリン血症、第VIII因子欠損症、線維筋痛
症-線維筋炎、糸球体腎炎、グレーブス病、ギラン・バレー、グッドパスチャー症候群、
移植片対宿主病(GVHD)、橋本甲状腺炎、血友病A、特発性膜性ニューロパチー、特発性
肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgAニューロパチー、IgM多発性ニューロ
パチー、免疫媒介性血小板減少症、若年性関節炎、川崎病、扁平苔蘚(lichen plantus)
、硬化性苔蘚、エリテマトーデス(lupus erthematosis)、メニエール病、混合性結合組
織病、粘膜類天疱瘡、多発性硬化症、1型糖尿病、多巣性運動ニューロパチー(MMN)、重
症筋無力症、傍腫瘍性水疱性類天疱瘡、妊娠性類天疱瘡、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、
悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎(polychrondritis)、多腺性症候群、リウ
マチ性多発筋痛症、多発性筋炎及び皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症(primary
agammaglobinulinemia)、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、乾癬性関節炎、再発性多発性軟骨
炎、レイノー現象(Reynauld’s phenomenon)、ライター症候群、リウマチ性関節炎、サ
ルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群(Sjorgen’s syndrome)、固形臓器移植
拒絶反応、スティフ・マン症候群、全身性エリテマトーデス、高安動脈炎、中毒性表皮壊
死症(TEN)、 スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎
(temporal arteristis/giant cell arteritis)、血栓性血小板減少性紫斑病、潰瘍性大
腸炎、ブドウ膜炎、ヘルペス状皮膚炎脈管炎(dermatitis herpetiformis vasculitis)
、抗好中球細胞質抗体関連脈管炎、白斑、及びウェゲナー肉芽腫症からなる群から選択さ
れる。
【0020】
特定の実施態様において、該自己免疫性疾患は、自己免疫性チャネル病である。特定の
実施態様において、該チャネル病は、自己免疫性辺縁系脳炎、てんかん、視神経脊髄炎、
ランバート・イートン筋無力症症候群、重症筋無力症、抗N-メチル-D-アスパラギン酸(N
MDA)受容体脳炎、抗α-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソキサゾールプロピオン酸
(AMPA)受容体脳炎、モルバン症候群(Morvan syndrome)、神経性筋強直症、レンサ球
菌感染症に関連する小児自己免疫性精神神経障害(PANDAS)、及びグリシン受容体抗体関
連障害からなる群から選択される。特定の実施態様において、該抗体媒介性の障害は、高
グロブリン血症である。
【0021】
特定の実施態様において、該FcRnアンタゴニストは、追加の治療薬と同時に、又は逐次
的に該対象に投与される。特定の実施態様において、該追加の治療薬は、抗炎症薬である
。特定の実施態様において、該追加の治療薬は、白血球除去薬である。特定の実施態様に
おいて、該白血球除去薬は、B細胞除去薬である。特定の実施態様において、該B細胞除去
薬は、抗体である。特定の実施態様において、該B細胞除去薬は、CD10、CD19、CD20、CD2
1、CD22、CD23、CD24、CD37、CD53、CD70、CD72、CD74、CD75、CD77、CD79a、CD79b、CD8
0、CD81、CD82、CD83、CD84、CD85、又はCD86に特異的に結合する抗体である。特定の実
施態様において、該追加の治療薬は、リツキシマブ、ダクリズマブ、バシリキシマブ、ム
ロノマブ(muronomab)-CD3、インフリキシマブ、アダリムマブ、オマリズマブ、エファ
リズマブ、ナタリズマブ、トシリズマブ、エクリズマブ、ゴリムマブ、カナキヌマブ、ウ
ステキヌマブ、ベリムマブ、又はこれらの組合わせである。
【0022】
特定の実施態様において、該対象は、ヒト又はカニクイザルである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
(図面の簡単な説明)
図1図1は、カニクイザル(cynomolgous monkey)におけるトレーサ抗体(FR70-hIgG1)の血清レベルに対するFc-Abdeg及びHEL-Abdegの効果を決定するための実験結果を示している。
図2図2は、カニクイザルにおける全IgGの血清レベルに対するFc-Abdeg及びHEL-Abdegの効果を決定するための実験結果を示している。
図3図3は、カニクイザルにおけるアルブミンレベルに対するFc-Abdeg及びHEL-Abdegの効果を決定するための実験結果を示している。
図4図4は、カニクイザルにおけるトレーサ抗体(FR70-hIgG1)の血清レベルに対するFc-Abdeg及びIVIGの効果を決定するための実験結果を示している。
図5図5は、ヒトCD16aに対するFc-Abdeg、Fc-Abdeg-POT及びFc-Abdeg-S239D/I332Eの親和性を比較するELISA検定の結果を示している。
図6図6は、マウスCD16-2に対するFc-Abdeg、Fc-Abdeg-POT及びFc-Abdeg-S239D/I332Eの親和性を比較するELISA検定の結果を示している。
図7図7は、Promega社のRajiベースのADCCレポーター生物検定を用いた抗CD20誘発性のADCCシグナルに対するFc-Abdeg、Abdeg-POT及びFc-AbdegS239D/I332Eの効果を決定するための実験結果を示している。
図8図8は、インビトロでの抗CD70誘発性のCD70+ U266細胞の溶解に対するFc-Abdeg及びAbdeg-POTの効果を決定するための実験結果を示している。
図9図9は、免疫性血小板減少症の急性マウスモデルにおける血小板レベルに対するFc-Abdeg、Fc-Abdeg-POT、Fc-Abdeg-S239D/I332E及びIVIGの効果を決定するための実験結果を示している。
図10図10は、例示的なFc-Abdegのゲルろ過精製の結果を示している。
図11図11は、カニクイザルにおけるトレーサ抗体(FR70-hIgG1)の血清レベルに対する、様々な単一用量のFc-Abdegの効果を測定する用量漸増試験の結果を示している。
図12図12は、カニクイザルにおけるトレーサ抗体(FR70-hIgG1)の血清レベルに対する、様々な単一用量のFc-Abdegの効果を測定する用量漸増試験の結果を示している。
図13図13は、カニクイザルにおけるcIgAのレベルに対する200 mg/kg Fc-Abdegの効果を決定するための実験結果を示している。
図14図14は、カニクイザルにおけるcIgMのレベルに対する200 mg/kg Fc-Abdegの効果を決定するための実験結果を示している。
図15図15は、カニクイザルにおける様々な単一用量のFc-Abdegの薬物動態プロファイルを示している。
図16図16は、カニクイザルにおけるcIgGのレベルに対する反復複数回用量の20 mg/kg Fc-Abdegの効果を決定するための実験結果を示している。
図17図17は、反復複数回用量の20 mg/kg Fc-Abdegを与えられたカニクイザルにおけるFc-Abdegの薬物動態プロファイルを示している。
図18図18は、カニクイザルにおける内在のIgGレベルの血清レベルに対する様々な単一用量のFc-Abdegの効果を測定する用量漸増試験結果を示している。
図19図19は、カニクイザルにおける様々な単一用量のFc-Abdegの薬物動態プロファイルを示している。
図20図20は、カニクイザルにおける内在のIgGレベルの血清レベルに対する様々な反復用量のFc-Abdegの効果を測定する、反復投与試験の結果を示している。
図21図21は、カニクイザルにおける様々な反復用量のFc-Abdegの薬物動態プロファイルを示している。
図22図22は、カニクイザルにおける内在のIgGレベルの血清レベルに対する様々な用量のFc-Abdegの効果を測定する、連続投与試験の結果を示している。
図23図23は、カニクイザル対象における用量20 mg/kgのFc-Abdegの静脈内負荷から24時間後、28日間3 mg/kgのFc-Abdegを毎日皮下投与し、その後32日間を無処置期間とすることの効果を測定する、連続投与試験の結果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(詳細な説明)
本件開示は、対象においてFc含有剤(例えば、抗体及びイムノアドヘシン)の血清レベ
ルを低下させる新規方法を提供する。これらの方法は一般に、該対象にネイティブのFc領
域と比較して、増加した親和性と低下したpH依存性をもってFcRnと特異的に結合する、有
効量の単離されたFcRnアンタゴニストを投与することを含む。開示される方法は、抗体媒
介性の障害(例えば、自己免疫性疾患)を治療するのに特に有用である。
【0025】
(I. 定義)
本明細書に別途定義されない限り、本発明に関して使用される科学用語及び技術用語は
当業者によって通常理解されている意味を有するものとする。用語の意味及び範囲は明確
であるべきであるが、万一隠れた曖昧さがある場合、本明細書に提供される定義がいかな
る辞書又は外部の定義に先行して解釈される。さらに、文脈からそうでないことが要求さ
れない限り、単数形の用語は複数物を含み、複数形の用語は単数物を含むものとする。一
般に、本明細書に記載される細胞培養及び組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺
伝学並びにタンパク質化学及び核酸化学並びにハイブリダイゼーションに関して使用され
る専門用語、及びこれらの技術は、当技術分野で周知かつ通常に使用される専門用語及び
技術である。
【0026】
本発明をより容易に理解できるようにするため、特定の用語をまず定義する。
【0027】
本明細書に使用される用語「FcRnアンタゴニスト」は、Fc領域を介してFcRnと特異的に
結合し、FcRnと免疫グロブリンの結合を阻害するFc領域(例えば、本明細書に開示される
バリアントFc領域)を含む任意の薬剤を指す(ただし、該薬剤は全長IgG抗体ではない)
【0028】
本明細書で使用される用語「Fc領域」は、その2つの重鎖のFcドメインによって形成さ
れるネイティブの免疫グロブリンの部分を指す。ネイティブのFc領域はホモ二量体である
【0029】
本明細書で使用される用語「バリアントFc領域」は、ネイティブFc領域と比較して1以
上の変化を有するFc領域を指す。変化には、アミノ酸の置換、付加及び/若しくは欠失、
追加成分の連結、並びに/又はネイティブのグリカンの変化を挙げることができる。この
用語は構成要素であるFcドメインのそれぞれが異なっているヘテロ二量体Fc領域を包含す
る。そのようなヘテロ二量体Fc領域の例には、限定されることなく、例えば、その全体が
本明細書に引用により組み込まれているUS 8216805において記載されている「ノブと穴」
技術を用いて作製されるFc領域がある。また、この用語は例えば、その全体が本明細書に
引用によりそれぞれ組み込まれているUS20090252729A1及びUS20110081345A1に記載されて
いるように、構成要素であるFcドメインがリンカー成分によって共に連結されている単鎖
Fc領域も包含する。
【0030】
本明細書で使用される用語「Fcドメイン」は、パパイン切断部位のすぐ上流のヒンジ領
域において開始し、抗体のC末端で終止する単一の免疫グロブリン重鎖の部分を指す。従
って、完全なFcドメインはヒンジドメインの少なくとも一部(例えば、上部、中央、及び
/又は下部ヒンジ領域)、CH2ドメイン、及びCH3ドメインを含む。
【0031】
本明細書で使用される用語「FcRn結合断片」は、FcRn結合を与えるに十分なFc領域の一
部を指す。
【0032】
本明細書で使用される用語「EU位置」は、Edelman, G.M.らの文献、Proc. Natl. Acad.
USA, 63, 78-85 (1969)及び「免疫学の対象となるタンパク質の配列(Sequences of Pro
teins of Immunological Interest)」U.S. Dept. Health and Human Services, 第5版,
1991中のKabatらの文献に記載されたFc領域についてのEU番号付けの慣例におけるアミノ
酸位置を指す。
【0033】
本明細書で使用される用語「CH1ドメイン」は、約EU位置118~215から延在する免疫グ
ロブリン重鎖の第一の(最もアミノ末端寄りの)定常領域ドメインを指す。CH1ドメイン
はVHドメイン及び免疫グロブリン重鎖分子のヒンジ領域に対するアミノ末端と隣接し、免
疫グロブリン重鎖Fc領域の一部を形成しない。
【0034】
本明細書で使用される用語「ヒンジ領域」は、CH1ドメインをCH2ドメインとつなぐ重鎖
分子の部分を指す。このヒンジ領域はおよそ25残基を含み、可撓性であり、そのため2つ
のN末端抗原結合領域が独立に動くことを可能にする。ヒンジ領域は3つの別個のドメイン
:上部、中央、及び下部ヒンジドメイン(Rouxらの文献、J. Immunol. 161: 4083 (1998)
)へと細分することができる。本件開示のFcRnアンタゴニストは全ての又は一部のヒンジ
領域を含むことができる。
【0035】
本明細書で使用される用語「CH2ドメイン」は、約EU位置231~340から延在する重鎖免
疫グロブリン分子の部分を指す。
【0036】
本明細書で使用される用語「CH3ドメイン」は、CH2ドメインのN末端からおよそ110残基
に、例えば約位置341~446(EU番号体系)から延在する重鎖免疫グロブリン分子の部分を
含む。
【0037】
本明細書で使用される用語「FcRn」は、新生児のFc受容体を指す。例示的なFcRn分子は
RefSeq NM_004107に記載されたFCGRT遺伝子によりコードされるヒトFcRnを含む。
【0038】
本明細書で使用される用語「CD16」は、抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)に要求
されるFcγRIII Fc受容体を指す。例示的なCD16分子はRefSeq NM_000569に記載されたヒ
トCD16aを含む。
【0039】
本明細書で使用される用語「遊離システイン」は、成熟FcRnアンタゴニストにおいて実
質的に還元された形態で存在するネイティブの、又は操作されたシステインアミノ酸残基
を指す。
【0040】
本明細書で使用される用語「抗体」は、4つのポリペプチド鎖、すなわちジスルフィド
結合により相互接続された2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含む免疫グロブリン分子
、並びにそれらの多量体(例えば、IgM)を指す。それぞれの重鎖は重鎖可変領域(VHと
略記される)及び重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は3つのドメイン、CH1、CH2及びCH3
を含む。それぞれの軽鎖は軽鎖可変領域(VLと略記される)及び軽鎖定常領域を含む。軽
鎖定常領域は1つのドメイン(CL)を含む。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)
と命名されたより保存された領域をところどころに挟む相補性決定領域(CDR)と命名さ
れた超過変性領域へとさらに細分することができる。
【0041】
本明細書で使用される用語「N-結合型グリカン」は、Fc領域のCH2ドメイン中に存在す
るシークオン(すなわち、Asn-X-Ser又はAsn-X-Thr配列。Xはプロリンを除く任意のアミ
ノ酸である)中のアスパラギンの側鎖中の窒素(N)に結合したN-結合型グリカンを指す
。そのようなN-グリカンは、例えば、その全体が引用により本明細書に組み込まれている
Drickamer K及びTaylor MEの文献 (2006)「糖鎖生物学への入門(Introduction to Glyco
biology)」第2版に十分に記載されている。
【0042】
本明細書で使用される用語「アフコシル化された」は、その内容の全体が本明細書に引
用により組み込まれているUS8067232に記載されたような、コアのフコース分子を欠いて
いるN-結合型グリカンを指す。
【0043】
本明細書で使用される用語「バイセクティングGlcNac」は、その内容の全体が本明細書
に引用により組み込まれているUS8021856に記載されているような、コアマンノース分子
に連結されたN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)分子を有するN-結合型グリカンを指す。
【0044】
本明細書で使用される用語「抗体媒介性の障害」は、対象における抗体の存在により引
き起こされるか、又は悪化するあらゆる疾患又は障害を指す。
【0045】
本明細書で使用される用語「Fc含有剤」は、Fc領域を含む任意の分子である。
【0046】
本明細書で使用される用語「白血球除去薬」は、投与に際し対象における白血球の数が
低下する薬剤を指す。
【0047】
本明細書で使用される用語「B細胞除去薬」は、投与に際し対象におけるB細胞の数が低
下する薬剤を指す。
【0048】
本明細書で使用される用語「T細胞除去薬」は、投与に際し対象におけるT細胞の数が低
下する薬剤を指す。
【0049】
本明細書で使用される用語「自己免疫性チャネル病」は、イオンチャネルのサブユニッ
ト又は該チャネルを調節する分子に対する自己抗体によって引き起こされる疾患を指す。
【0050】
本明細書で使用される用語「治療する」、「治療すること」、及び「治療」は、本明細
書に記載される治療的又は予防的手段を指す。「治療」の方法は、対象、例えばIL-6関連
疾患又は障害(例えば、炎症及び癌)を有する対象、又はそのような疾患若しくは障害を
有する素因のある対象に、該疾患若しくは障害、又は再発した疾患若しくは障害の1以上
の症状を予防し、治癒し、遅延させ、重症度を低下させ、又は改善するために、或いはそ
のような治療なしで予期される生存を上回って対象の生存を延長させるために、本発明の
抗体又はその抗原結合断片を投与することを利用する。本明細書で使用される用語「対象
」は、あらゆるヒトまたは非ヒト動物を含む。
【0051】
本明細書で使用される用語「イムノアドヘシン」は、Fc領域とともに結合タンパク質(
例えば、受容体、リガンド、又は細胞接着分子)の機能ドメインを含む抗体様分子を指す
【0052】
(II. Fc含有剤の血清レベルを低下させる方法)
一態様において、本件開示は、対象におけるFc含有剤(例えば、抗体及びイムノアドヘ
シン)の血清レベルを低下させる方法であって、該対象にネイティブのFc領域と比較して
、増加した親和性と低下したpH依存性をもってFcRnと特異的に結合する、有効量の単離さ
れたFcRnアンタゴニスト(例えば、本明細書に開示されるFcRnアンタゴニスト)を投与す
ることを含む、前記方法を提供する。
【0053】
本明細書で示されるように、該対象への約0.2~約200 mg/kgの用量でのFcRnアンタゴニ
ストの投与は、思いがけなく有効である。従って、特定の実施態様において、該FcRnアン
タゴニストは約0.2~約200 mg/kg(例えば、0.2~200 mg/kg)の用量で該対象に投与され
る。特定の実施態様において、該FcRnアンタゴニストは、約0.2、2、20、70、又は200 mg
/kg(例えば、0.2、2、20、70、又は200 mg/kg)の用量で該対象に投与される。特定の実
施態様において、該FcRnアンタゴニストは、約20 mg/kg(例えば、20 mg/kg)の用量で該
対象に投与される。
【0054】
本明細書で示されるように、複数回の反復投与レジームは、思いがけず単一投与よりも
優れている。従って、特定の実施態様において、該FcRnアンタゴニストは少なくとも20日
に2回、該対象に投与される。特定の実施態様において、該FcRnアンタゴニストは1、2、3
、4、5、6、7、8、9、又は10日に1回の頻度で該対象に投与される。特定の実施態様にお
いて、該FcRnアンタゴニストは20日に2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15
、16、17、18、19、又は20回、該対象に投与される。特定の実施態様において、該FcRnア
ンタゴニストは4日に1回の頻度で該対象に投与される。特定の実施態様において、該FcRn
アンタゴニストは13日にわたって4日ごとに(すなわち、第1日、5日、9日、及び13日に)
該対象に投与される。特定の実施態様において、20 mg/kgのFcRnアンタゴニストが、13日
にわたって4日ごとに(すなわち、第1日、5日、9日、及び13日に)該対象に投与される。
【0055】
該FcRnアンタゴニストは該対象に、あらゆる手段で投与することができる。投与方法に
は、これらに限定はされないが、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外
、及び経口経路がある。組成物は、例えば輸液又はボーラス注射により投与することがで
きる。特定の実施態様において、該FcRnアンタゴニストは静脈内輸液により投与される。
【0056】
本明細書で開示される方法は、あらゆるFc含有剤の血清レベルを低下させることができ
る。特定の実施態様において、該Fc含有剤は、抗体又はイムノアドヘシンである。特定の
実施態様において、該Fc含有剤は、治療薬又は診断薬である。特定の実施態様において、
該Fc含有剤は、造影剤である。特定の実施態様において、該Fc含有剤は、抗体薬物コンジ
ュゲートである。特定の実施態様において、該Fc含有剤は、病原性の抗体、例えば自己抗
体である。特定の実施態様において、該対象は抗体媒介性の疾患又は障害を有する。特定
の実施態様において、抗体媒介性の疾患又は障害は、自己抗体と関連する。
【0057】
Fc含有剤(例えば、抗体及びイムノアドヘシン)の血清レベルの低下は、抗体媒介性の
障害(例えば、自己免疫性疾患)の治療に特に応用可能である。従って、一態様において
、本件開示は抗体媒介性の障害(例えば、自己免疫性疾患)を有する対象を治療する方法
であって、該対象に有効量の本明細書で開示されるFcRnアンタゴニスト組成物を投与する
ことを含む、前記方法を提供する。
【0058】
任意の抗体媒介性の障害が、本明細書で開示される方法を用いて治療可能である。特定
の実施態様において、該抗体媒介性の障害は、IVIGによる治療の容易な障害である。特定
の実施態様において、該抗体媒介性の障害は、自己免疫性疾患である。非限定的な自己免
疫性疾患には、同種異系膵島移植片拒絶反応、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗
体症候群、自己免疫性アジソン病、アルツハイマー病、抗好中球細胞質自己抗体(ANCA)
、副腎の自己免疫性疾患、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性心筋炎、
自己免疫性好中球減少症、自己免疫性の卵巣炎及び精巣炎、自己免疫性血小板減少症、自
己免疫性蕁麻疹、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、キャッスルマン症候群、セ
リアック病-皮膚炎、慢性疲労免疫不全症候群、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)、
チャーグ-ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、クレスト症候群、寒冷凝集素症、クロー
ン病、皮膚筋炎、円板状エリテマトーデス、本態性混合型クリオグロブリン血症、第VIII
因子欠損症、線維筋痛症-線維筋炎、糸球体腎炎、グレーブス病、ギラン・バレー、グッ
ドパスチャー症候群、移植片対宿主病(GVHD)、橋本甲状腺炎、血友病A、特発性肺線維
症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgAニューロパチー、IgM多発性ニューロパチー
、免疫媒介性血小板減少症、若年性関節炎、川崎病、扁平苔蘚、エリテマトーデス、メニ
エール病、混合性結合組織病、多発性硬化症、1型糖尿病、多巣性運動ニューロパチー(M
MN)、重症筋無力症、傍腫瘍性水疱性類天疱瘡、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、悪性貧血
、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎
及び皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、乾癬性関節
炎、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ性関節炎、サルコイドーシス、強皮症、シ
ェーグレン症候群、固形臓器移植拒絶反応、スティフ・マン症候群、全身性エリテマトー
デス、高安動脈炎、中毒性表皮壊死症(TEN)、 スティーブンス・ジョンソン症候群(SJ
S)、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、血栓性血小板減少性紫斑病、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜
炎、ヘルペス状皮膚炎脈管炎、抗好中球細胞質抗体関連脈管炎、白斑、及びウェゲナー肉
芽腫症がある。
【0059】
特定の実施態様において、該自己免疫性疾患は自己免疫性チャネル病である。非限定的
なチャネル病には、視神経脊髄炎、ランバート・イートン筋無力症症候群、重症筋無力症
、抗N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体脳炎、抗α-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチ
ル-4-イソキサゾールプロピオン酸(AMPA)受容体脳炎、モルバン症候群、及びグリシン
受容体抗体関連障害がある。
【0060】
本件開示の方法は、血清免疫グロブリンの過剰生産を特徴とする、抗体媒介性の障害を
治療するのに特に適している。従って、特定の実施態様において、該FcRnアンタゴニスト
組成物は、高ガンマグロブリン血症を治療するのに使用される。
【0061】
また、本件開示の方法は、1以上の追加の治療薬と組合わせて使用することができる。
特定の実施態様において、該追加の治療薬は、抗炎症薬である。任意の炎症薬を、本明細
書で開示される組成物と組合わせて使用することができる。特定の実施態様において、該
治療薬は、リツキシマブ、ダクリズマブ、バシリキシマブ、ムロノマブ-cd3、インフリキ
シマブ、アダリムマブ、オマリズマブ、エファリズマブ、ナタリズマブ、トシリズマブ、
エクリズマブ、ゴリムマブ、カナキヌマブ、ウステキヌマブ、又はベリムマブである。特
定の実施態様において、該追加の治療薬は、白血球除去薬(例えば、B細胞又はT細胞除去
薬)である。任意の白血球除去薬を、本明細書で開示されるFcRnアンタゴニスト組成物と
組合わせて使用することができる。特定の実施態様において、該白血球除去薬は、B細胞
除去薬である。特定の実施態様において、該白血球除去薬は、細胞表面マーカーに対する
抗体である。適当な細胞表面マーカーには、限定はされないが、CD10、CD19、CD20、CD21
、CD22、CD23、CD24、CD37、CD53、CD70、CD72、CD74、CD75、CD77、CD79a、CD79b、CD80
、CD81、CD82、CD83、CD84、CD85、又はCD86がある。該FcRnアンタゴニスト及び該追加の
治療薬(複数可)は、同じ又は異なる投与経路(複数可)を介して、同時に又は逐次的に
、該対象に投与することができる。
【0062】
また、本件開示の方法は、対象におけるFc含有剤の血清レベルを急速に低下させるのに
よく適している。そのような急速なクリアランスは、該対象の薬物への曝露を低下させる
ため、該Fc含有剤(例えば、抗体薬物コンジュゲート又は免疫原性である薬剤)が毒性を
有する場合に有利である。また、急速なクリアランスは、Fc含有剤が画像法を容易にする
ために薬剤が低い血清レベルにあることを要求する造影剤である場合に有利となる。従っ
て、特定の実施態様において、該FcRnアンタゴニスト組成物は、該Fc含有剤を投与された
対象においてFc含有剤(例えば、造影剤)の血清レベルを低下させるのに使用される。任
意のFc含有剤(例えば、治療薬又は診断薬)の血清レベルを、本明細書で開示されるFcRn
アンタゴニスト組成物を用いて低下させることができる。Fc含有剤の非限定的な例には、
造影剤(例えば、標識抗体)、抗体薬物コンジュゲート、又は免疫原性薬剤(例えば、非
ヒト抗体若しくはイムノアドヘシン)がある。該FcRnアンタゴニストは、該Fc含有剤と同
時に、又は逐次的に(例えば、該Fc含有剤の前又は後に)投与することができる。
【0063】
さらに、治療薬の投与を要求する疾患又は状態において、該対象はしばしば該治療薬に
対する抗体(例えば、抗薬物抗体)を産生し、該抗体はひいては該治療剤が意図された治
療目的に利用可能となることを妨げ、又は該対象において有害反応を引き起こすこととな
る。従って、本明細書で開示される方法は、対象体内で産生される治療薬に対する抗体(
例えば、抗薬物抗体)を除去するために使用することもできる。
【0064】
また、本明細書で開示される方法は、IgGのレベルを低下させることにより治療用タン
パク質の利点を増強させるため、治療用タンパク質と組み合わせて使用することができる
;ここで、IgG抗体は治療用タンパク質の生物学的利用能を減少させる一因となる。特定
の実施態様において、本件開示は血液凝固因子に対する免疫反応に起因する障害を有する
対象を治療する方法であって、対象に、治療有効量の本明細書で開示されるFcRnアンタゴ
ニスト組成物を投与することを含む、前記方法を提供する。適当な血液凝固因子には、限
定はされないが、フィブリノーゲン、プロトロンビン、第V因子、第VII因子、第VIII因子
、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子、又はフォン・ヴィルブランド
因子がある。この方法は例えば血友病A又は血友病Bに罹患する患者において、血液凝固因
子に対する免疫反応を調節又は治療し、又は予防するために使用することができる。特定
の実施態様において、該方法は例えば、赤芽球癆(PRCA)に罹患する患者における治療用
エリスロポエチンに対する免疫反応を調節又は治療するために使用することができる。
【0065】
FcRnは妊娠女性において、胎盤を介した胎児への母体抗体の輸送に寄与する。従って、
妊娠女性がFc含有剤(例えば、治療用抗体)を投与される場合、該薬剤は胎盤を介したFc
Rn仲介性の輸送の結果として、胎児と接触するおそれがある。該Fc含有剤の胎児の発達に
対する何らかの潜在的な有害効果を回避するために、FcRnの機能を遮断することは有益で
あろう。従って、本件開示は妊娠女性におけるFc含有剤(例えば、治療用抗体)の胎児へ
の胎盤輸送を防止する方法であって、該女性に本明細書で開示されるFcRnアンタゴニスト
組成物を、該Fc含有剤と同時に、又は逐次的に(前又は後に)投与することを含む、前記
方法を提供する。
【0066】
また、本明細書で開示される方法は、これらに限定はされないが、喘息、潰瘍性大腸炎
及び炎症性腸症候群を含む炎症性障害、アレルギー性鼻炎/副鼻腔炎、皮膚アレルギー(
蕁麻疹(urticaria)/蕁麻疹(hives)、血管浮腫、アトピー性皮膚炎)、食品アレルギ
ー、薬物アレルギー、昆虫アレルギー、肥満細胞症を含むアレルギー、変形性関節炎、リ
ウマチ性関節炎、及び脊椎関節症を含む関節炎を治療するために使用することができる。
【0067】
疾患又は状態の治療のための遺伝子療法の実施の成功は、導入遺伝子によってコードさ
れる治療用タンパク質並びにおそらくは導入遺伝子を送達するために使用されるベクター
に対し特異的な抗体の産生により妨げられ得る。従って、本明細書で開示されるFcRnアン
タゴニスト組成物を遺伝子療法と組合わせて投与すると、IgGのレベルを低下させること
により、コードされた治療用タンパク質の利益を増強することができる。これらの方法は
、IgG抗体が遺伝子療法ベクター又はコードされた治療用タンパク質の減少した生物学的
利用能の一因となる状況において、特に有用である。該遺伝子療法ベクターは、例えば、
アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルスのようなウイルスベクターとすることができる。
遺伝子療法を用いて治療することのできる疾患には、これらに限定はされないが、嚢胞性
線維症、血友病、PRCA、筋ジストロフィー、又はリソソーム蓄積症、例えばゴーシェ病及
びファブリー病などがある。
【0068】
任意の対象を、本明細書で開示される方法を用いて治療することができる。特定の実施
態様において、該対象は、ヒト又はカニクイザルである。
【0069】
(III. FcRnアンタゴニスト)
本明細書で開示される方法は一般に、対象に有効量の単離されたFcRnアンタゴニストを
投与することを含み、ここで該FcRnアンタゴニストはネイティブのFc領域と比較して、増
加した親和性及び低下したpH依存性をもってFcRnと特異的に結合する。一般に、これらの
FcRnアンタゴニストはネイティブのFc領域と比較して、増加した親和性及び低下したpH依
存性をもって、FcRnと特異的に結合するバリアントFc領域又はそのFcRn結合断片を含む。
該FcRnアンタゴニストはインビボでFc含有剤(例えば、抗体及びイムノアドヘシン)とFc
Rnの結合を阻害し、それによりFc含有剤の分解速度が増加し、かつ同時に、これらの薬剤
の血清レベルが低下する。
【0070】
本明細書で示されるように、ある単離バリアントFc領域(例えば、それぞれEU位置252
、254、256、433、434、及び436にアミノ酸Y、T、E、K、F、及びYを含むバリアントFc領
域)がインビボにおいて同じバリアントFc領域を含む全長抗体よりも効果的なFcRnアンタ
ゴニストである。従って、特定の実施態様において、該FcRnアンタゴニスト組成物は全長
抗体ではない。特定の実施態様において、該FcRnアンタゴニスト組成物は抗体可変ドメイ
ンを含まない。特定の実施態様において、該FcRnアンタゴニスト組成物は抗体可変ドメイ
ンもCH1ドメインも含まない。しかしながら、特定の実施態様において、該FcRnアンタゴ
ニスト組成物は、抗体可変ドメインを含む1以上の追加の結合ドメイン又は結合成分と連
結されたバリアントFc領域を含むことができる。
【0071】
任意のFc領域を変化させて、本明細書に開示されるFcRnアンタゴニスト組成物において
使用するためのバリアントFc領域を生産することができる。一般に、Fc領域又はそのFcRn
結合断片は、ヒト免疫グロブリンに由来する。しかしながら、該Fc領域は、例えばラクダ
科動物種、齧歯類(例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット)又は非ヒト霊長類(
例えば、チンパンジー、マカク)種を含む任意の他の哺乳動物種の免疫グロブリンに由来
してもよいことは理解されよう。さらに、該Fc領域又はその部分は、IgM、IgG、IgD、IgA
及びIgEを含む任意の免疫グロブリンクラス、並びにIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含む任
意の免疫グロブリンアイソタイプに由来してもよい。特定の実施態様において、該Fc領域
はIgG Fc領域(例えば、ヒトIgG領域)である。特定の実施態様において、該Fc領域はIgG
1 Fc領域(例えば、ヒトIgG1領域)である。特定の実施態様において、該Fc領域はいくつ
かの異なるFc領域の部分を含むキメラFc領域である。キメラFc領域の適当な例は、その全
体が引用により本明細書に組み込まれているUS20110243966A1に記載されている。種々のF
c領域遺伝子配列(例えば、ヒト定常領域遺伝子配列)が公開寄託形式で利用可能である
。本発明の範囲にはFc領域の対立遺伝子、バリアント及び変異が包含されることが理解さ
れよう。
【0072】
Fc領域はさらに切断され、又は内部が欠失されて、その最小FcRn結合断片を生産するこ
とができる。Fc領域断片のFcRnに結合する能力は、当技術分野で認識された任意の結合検
定、例えばELISAを用いて決定することができる。
【0073】
本明細書に開示されるFcRnアンタゴニストの製造性を高めるためには、構成要素である
Fc領域が、ジスルフィド結合を形成していないシステイン残基を一切含まないことが好ま
しい。従って、特定の実施態様において、該Fc領域は遊離システイン残基を含まない。
【0074】
ネイティブのFc領域と比較して、増加した親和性及び低下したpH依存性をもって、FcRn
と特異的に結合する任意のFcバリアント又はそのFcRn結合断片は、本明細書に開示される
FcRnアンタゴニスト組成物に使用することができる。特定の実施態様において、バリアン
トFc領域は所望の特性を与えるアミノ酸変化、置換、挿入及び/又は欠失を含む。特定の
実施態様において、該バリアントFc領域又は断片は、それぞれEU位置252、254、256、433
、434、及び436にアミノ酸Y、T、E、K、F、及びYを含む。バリアントFc領域中に使用可能
なアミノ酸配列の非限定的な例は、本明細書の表1に記載されている。特定の実施態様に
おいて、該バリアントFc領域のFcドメインのアミノ酸配列は、配列番号:1に記載された
アミノ酸配列を含む。特定の実施態様において、該バリアントFc領域のFcドメインのアミ
ノ酸配列は配列番号:1、2、又は3に記載されたアミノ酸配列からなる。特定の実施態様
において、FcRnアンタゴニストはバリアントFc領域からなり、ここで該バリアントFc領域
のFcドメインのアミノ酸配列は配列番号:1、2、又は3に記載されたアミノ酸配列からな
る。
【0075】
表1.バリアントFc領域の非限定的な例であるアミノ酸配列
【表1】
【0076】
特定の実施態様において、該バリアントFc領域は、追加のFc受容体に対する変化した(
例えば、増加した又は低下した)結合親和性を有する。該バリアントFc領域は1以上のFc
γ受容体、例えば、FcγRI (CD64)、FcγRIIA (CD32)、FcγRIIB (CD32)、FcγRIIIA (CD
16a)、及びFcγRIIIB (CD16b)に対する変化した(例えば、増加した又は低下した)結合
親和性を有することができる。追加のFc受容体に対する親和性を変化させる任意の当技術
分野で認識された方法を利用することができる。特定の実施態様において、バリアントFc
領域のアミノ酸配列が変化させられる。
【0077】
特定の実施態様において、該バリアントFc領域は、Kabatの文献に記載されたEU指標に
より番号付けされた234、235、236、239、240、241、243、244、245、247、252、254、25
6、262、263、264、265、266、267、269、296、297、298、299、313、325、326、327、32
8、329、330、332、333、及び334からなる群から選択される1以上の位置に、天然に存在
しないアミノ酸残基を含む。任意に、該Fc領域は当業者に公知の追加の及び/又は代替の
位置に天然に存在しないアミノ酸残基を含むことができる(例えば、その内容の全体が本
明細書に引用により組み込まれた米国特許第5,624,821号; 第6,277,375号; 第6,737,056
号; PCT特許公開第WO 01/58957号; 第WO 02/06919号; 第WO 04/016750号; 第WO 04/02920
7号; 第WO 04/035752号及び第WO 05/040217号を参照されたい)。
【0078】
特定の実施態様において、該バリアントFc領域は、Kabatの文献に記載されたEU指標に
より番号付けされた234D、234E、234N、234Q、234T、234H、234Y、234I、234V、234F、23
5A、235D、235R、235W、235P、235S、235N、235Q、235T、235H、235Y、235I、235V、235F
、236E、239D、239E、239N、239Q、239F、239T、239H、239Y、2401、240A、240T、240M、
241W、241 L、241Y、241E、241R、243W、243L 243Y、243R、243Q、244H、245A、247V、24
7G、252Y、254T、256E、262I、262A、262T、262E、263I、263A、263T、263M、264L、264I
、264W、264T、264R、264F、264M、264Y、264E、265G、265N、265Q、265Y、265F、265V、
265I、265L、265H、265T、266I、266A、266T、266M、267Q、267L、269H、269Y、269F、26
9R、296E、296Q、296D、296N、296S、296T、296L、296I、296H、269G、297S、297D、297E
、298H、298I、298T、298F、299I、299L、299A、299S、299V、299H、299F、299E、313F、
325Q、325L、325I、325D、325E、325A、325T、325V、325H、327G、327W、327N、327L、32
8S、328M、328D、328E、328N、328Q、328F、328I、328V、328T、328H、328A、329F、329H
、329Q、330K、330G、330T、330C、330L、330Y、330V、330I、330F、330R、330H、332D、
332S、332W、332F、332E、332N、332Q、332T、332H、332Y、及び332Aからなる群から選択
される少なくとも1つの天然に存在しないアミノ酸残基を含む。任意に、該Fc領域は当業
者に公知の追加の及び/又は代替の天然に存在しないアミノ酸残基を含むことができる(
例えば、その内容の全体が本明細書に引用により組み込まれた米国特許第5,624,821号;
第6,277,375号; 第6,737,056号; PCT特許公開第WO 01/58957号; 第WO 02/06919号; 第WO
04/016750号; 第WO 04/029207号; 第WO 04/035752号及び第WO 05/040217号を参照された
い)。
【0079】
本明細書に開示されるFcRnアンタゴニストにおいて使用できる他の公知のFcバリアント
は、限定されることなく、その内容の全体が本明細書に引用により組み込まれているGhet
ieらの文献、1997, Nat. Biotech. 15:637-40; Duncanらの文献、1988, Nature 332:563-
564; Lundらの文献、1991, J. Immunol., 147:2657-2662; Lundらの文献、1992, Mol. Im
munol., 29:53-59; Alegreらの文献、1994, Transplantation 57:1537-1543; Hutchinsら
の文献、1995, Proc Natl. Acad Sci USA, 92:11980-11984; Jefferisらの文献、1995, I
mmunol Lett., 44:111-117; Lundらの文献、1995, Faseb J., 9:115-119; Jefferisらの
文献、1996, Immunol Lett., 54:101-104; Lundらの文献、1996, J. Immunol., 157:4963
-4969; Armourらの文献、1999, Eur J Immunol 29:2613-2624; Idusogieらの文献、2000,
J. Immunol., 164:4178-4184; Reddyらの文献、2000, J. Immunol., 164:1925-1933; Xu
らの文献、2000, Cell Immunol., 200:16-26; Idusogie らの文献、2001, J. Immunol.,
166:2571-2575; Shieldsらの文献、2001, J Biol. Chem., 276:6591-6604; Jefferisらの
文献、2002, Immunol Lett., 82:57-65; Prestaらの文献、2002, Biochem Soc Trans., 3
0:487-490); 米国特許第5,624,821号; 第5,885,573号; 第5,677,425号; 第6,165,745号;
第6,277,375号; 第5,869,046号; 第6,121,022号; 第5,624,821号; 第5,648,260号; 第6,5
28,624号; 第6,194,551号; 第6,737,056号; 第6,821,505号; 第6,277,375号; 米国特許公
開第2004/0002587号及びPCT公開第WO 94/29351号; 第WO 99/58572号; 第WO 00/42072号;
第WO 02/060919号; 第WO 04/029207号; 第WO 04/099249号; 第WO 04/063351号に開示され
たFcバリアントを含む。
【0080】
特定の実施態様において、該バリアントFc領域はヘテロ二量体であり、ここでは構成要
素であるFcドメインは互いに異なっている。Fcヘテロ二量体を生産する方法は、当技術分
野で公知である(例えば、その全体が本明細書に引用により組み込まれているUS 8216805
を参照されたい)。特定の実施態様において、バリアントFc領域は単鎖Fc領域であり、こ
こで構成要素であるFcドメインはリンカー成分により一緒に連結されている。単鎖Fc領域
を生産する方法は、当技術分野で公知である(例えば、それぞれその全体が本明細書に引
用により組み込まれているUS20090252729A1及びUS20110081345A1を参照されたい)。
【0081】
自己免疫性疾患において観察される病原性IgG抗体は、これらの疾患の病原性の誘因と
なるか、又は疾患の進行に寄与し、かつ細胞のFc受容体の不適切な活性化を介して疾患の
媒体となると考えられている。凝集した自己抗体及び/又は自己抗原と複合体を形成した
自己抗体(免疫複合体)は、活性化したFc受容体と結合し、非常に多くの自己免疫性疾患
を引き起こす(これらは部分的に自己組織に対する免疫学的に仲介される炎症が原因で発
生する)(例えば、それぞれその全体が本明細書に引用により組み込まれるClarksonらの
文献、NEJM 314(9), 1236-1239 (2013); US20040010124A1; US20040047862A1;及びUS2004
/0265321A1を参照されたい)。従って、抗体媒介性の障害(例えば、自己免疫性疾患)を
治療するためには、有害な自己抗体を除去すること、及びこれらの抗体の活性化したFc受
容体(例えば、CD16a のようなFcγ受容体)との免疫複合体相互作用を遮断することの両
方が有益であろう。
【0082】
従って、特定の実施態様において、該FcRnアンタゴニストのバリアントFc領域はCD16a
(例えば、ヒトCD16a)への増加した結合性を示す。このことは、該FcRnアンタゴニスト
が、FcRnの阻害による除去の標的となる自己抗体の、免疫複合体誘発性の炎症性反応とさ
らに拮抗することを可能とすることにおいて特に有利である。CD16a(例えば、ヒトCD16a
)に対する親和性を高める任意の当技術分野で認識された方法を利用することができる。
特定の実施態様において、該FcRnアンタゴニストは(例えば、EU位置297に)N-結合型グ
リカンを含むバリアントFc領域を含む。このケースにおいて、グリカン構造を変化させる
ことによりCD16aに対する該FcRnアンタゴニストの結合親和性が増加する可能性がある。F
c領域のN-結合型グリカンの変化は、当技術分野で周知である。例えば、アフコシル化N-
結合型グリカン又はバイセクティングGlcNac構造を有するN-グリカンは、CD16aに対する
増加した親和性を呈することが示されている。従って、特定の実施態様において、該N-結
合型グリカンは、アフコシル化されている。アフコシル化は、当技術分野で認識されてい
る任意の方法を用いて達成することができる。例えば、FcRnアンタゴニストはフコシルト
ランスフェラーゼを欠損した細胞中で発現させることができ、その結果フコースは、該バ
リアントFc領域のEU位置297のN-結合型グリカンに付加されない(例えば、その内容の全
体が本明細書に引用により組み込まれるUS 8,067,232を参照されたい)。特定の実施態様
において、N-結合型グリカンはバイセクティングGlcNac構造を有する。該バイセクティン
グGlcNac構造は、当技術分野で認識された任意の方法を用いて達成することができる。例
えば、FcRnアンタゴニストはβ1-4-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(G
nTIII)を発現する細胞中で発現させることができ、その結果バイセクティングGlcNacは
、該バリアントFc領域のEU位置297のN-結合型グリカンに付加される(例えば、その内容
の全体が本明細書に引用により組み込まれているUS 8021856を参照されたい)。さらに、
又はそれに代わり、該N-結合型グリカン構造の変化も、インビトロの酵素的方法により達
成できる。
【0083】
特定の実施態様において、該FcRnアンタゴニストは複数のFcRnアンタゴニスト分子を含
み、ここで該複数のFcRnアンタゴニスト分子の少なくとも50%(任意に、少なくとも60、
70、80、90、95、又は99%)はEU位置297にアフコシル化されたN-結合型グリカンを含む
バリアントFc領域、又はそのFcRn結合断片を含む。
【0084】
特定の実施態様において、該FcRnアンタゴニストは複数のFcRnアンタゴニスト分子を含
み、ここで該複数のFcRnアンタゴニスト分子の少なくとも50%(任意に、少なくとも60、
70、80、90、95、又は99%)はEU位置297にバイセクティングGlcNacを有するN-結合型グ
リカンを含むバリアントFc領域、又はそのFcRn結合断片を含む。
【0085】
特定の実施態様において、該バリアントFc領域はN-結合型グリカンを含まない。このこ
とは、当技術分野で認識された任意の方法を用いて達成できる。例えば、該Fcバリアント
はN-結合型糖鎖付加をすることのできない細胞中で発現させることができる。さらに、又
はそれに代わって、該Fcバリアントのアミノ酸配列を(例えば、NXTシークオンの変異に
より)変化させて、N-結合型糖鎖付加を妨げ、又は阻害することができる。あるいは、該
Fcバリアントは無細胞系において合成することができる(例えば、化学合成)。
【0086】
特定の実施態様において、共有結合によって該FcRnアンタゴニストがFcRnに特異的に結
合することが妨げられないように、例えば、FcRnアンタゴニストに分子(例えば、結合又
は造影成分)を共有結合させることにより、FcRnアンタゴニスト分子を改変することがで
きる。例えば、限定する意図はないが、該FcRnアンタゴニストは糖鎖付加、アセチル化、
ペグ化、リン酸化、アミド化、公知の保護遮断基による誘導体化、タンパク質分解性切断
、細胞リガンド又は他のタンパク質との連結などによって改変することができる。
【0087】
特定の実施態様において、該FcRnアンタゴニストは半減期エクステンダーと連結され
たバリアントFc領域を含む。本明細書で使用される用語「半減期エクステンダー」は、本
明細書に開示されるFcRnアンタゴニストと連結した場合、FcRnアンタゴニストの半減期を
増加させる任意の分子を指す。任意の半減期エクステンダーを(共有結合的にも非共有結
合的にも)該FcRnアンタゴニストに連結することができる。特定の実施態様において、該
半減期エクステンダーはポリエチレングリコール又はヒト血清アルブミンである。特定の
実施態様において、該FcRnアンタゴニストは、対象において存在する半減期エクステンダ
ーに特異的に結合する結合分子、例えば血清アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン)
、IgG、赤血球などのような、血液により運搬される分子又は細胞に連結される。
【0088】
(IV.医薬組成物)
特定の実施態様において、該方法は、本明細書に開示されるFcRnアンタゴニスト又はFc
Rnアンタゴニスト組成物及び医薬として許容し得る担体又は賦形剤を含む医薬組成物を利
用する。適当な医薬担体の例は「レミントン薬科学(Remington's Pharmaceutical Scien
ces)」(E. W. Martin編)に記載されている。賦形剤の例には、デンプン、グルコース
、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステ
アリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥ス
キムミルク、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなどを挙げることが
できる。また、該組成物はpH緩衝試薬、及び湿潤剤又は乳化剤も含むことができる。
【0089】
該医薬組成物はボーラス注射による非経口投与(例えば、静脈内又は筋肉内)のために
製剤化することができる。注射用製剤は、単位剤形、例えば防腐剤の追加されたアンプル
中、又は複数回投薬容器中に提示することができる。該組成物は、懸濁液、溶液、又は油
性ビヒクル若しくは水性ビヒクル中の乳剤のような形態をとることができ、かつ懸濁剤、
安定剤、及び/又は分散剤のような配合剤(formulatory agent)を含むことができる。あ
るいは、活性成分は適当なビヒクル、例えばパイロジェンフリー水で構成するための粉末
形態とすることができる。
【0090】
開示された方法において、FcRnアンタゴニストは、米国特許第5,326,856号に記載され
たキレート剤のようなキレート剤と連結することができる。ペプチド-キレート剤複合体
を続いて放射性標識し、IgGレベルの調節を伴う疾患又は状態の診断又は治療のための造
影剤を提供することができる。
【実施例0091】
(V.実施例)
本発明は以下の実施例によりさらに例証され、これらはさらに限定するものとして解釈
されるべきではない。配列表、図面並びに本願の全体を通じて引用される全ての引用文献
、特許、及び公開された特許出願の内容は、明白に引用により本明細書に組み込まれる。
【0092】
(実施例1:カニクイザルにおける血清IgGレベルに対するFc-Abdegの効果)
トレーサ抗体の血清IgGレベルに対するヒト抗リゾチームIgG(HEL-Abdeg)及びそれぞ
れEU位置252、254、256、433、434、及び436にアミノ酸Y、T、E、K、F、及びYを含むヒト
IgG Fc領域(Fc-Abdeg)(Fc-Abdeg;配列番号:2)の効果をカニクイザルにおいて決定
した。具体的には、カニクイザルに1 mg/kgの抗マウスCD70 hIgG1トレーサ抗体(FR70-hI
gG1; Oshimaらの文献、Int Immunol 10(4): 517-26 (1998))を静脈内ボーラス注射によ
り投与した。5分後、動物に7 mg/kg Fc-Abdeg、20 mg/kg HEL-Abdeg、又はPBSのいずれか
を輸液した(群当たり2個体のサル)。輸液を1時間以内で実施し、動物に10 ml/kgの分量
を投与した。血液試料(3×150 μl)を投薬の5分前に採取し(「投薬前」)、輸液の終
了から5分、2時間、6時間、24時間、48時間、72時間、96時間及び120時間後に採取した。
トレーサレベルをmCD70結合ELISAを実施することにより決定し、データを投薬終了時のト
レーサレベルに対してプロットした(図1)。また、全カニクイザルIgGレベルも決定した
図2)。これらの実験結果はFc-Abdegが、等量のHEL-Abdegよりも効率的にトレーサ抗体
を減少させたことを示している。
【0093】
IgGの再利用経路におけるその重要な役割に加え、FcRnはアルブミンの恒常性にも関係
する(Chaudhuryらの文献、J Exp Med. 197(3):315-22 (2003))。FcRnはIgG-Fc及びアル
ブミンと異なる部位で相互作用し、結合は同時に起こり得る(Andersenらの文献、Nat Co
mmun. 3:610 (2012))。概念上、Abdegを改変した分子を用いてIgG再循環を遮断すること
により、アルブミン-FcRn相互作用が干渉されるべきでない。この仮説はマウスのインビ
ボ試験において確かめられた。ここでは、著者らはAbdegを備えたhIgG1分子がアルブミン
レベルに何ら影響しないことを示した(Patelらの文献、J Immunol 187(2): 1015-22 (20
11))。また、先に記載の実験において、輸液の終了から-3日、3日及び17日後にアルブミ
ンレベルも決定された。マウスでの試験と同様、Fc-Abdeg又はHEL-Abdeg処置後にアルブ
ミンレベルの有意な変化は観察されなかった(図3を参照されたい)。
【0094】
続く実験において、Fc-Abdegの抗体除去効力をIVIGと比較した。具体的には、70 mg/kg
Fc-Abdeg又は2 g/kg IVIGによる投薬の2日前に1 mg/kgトレーサ抗体 (FR70-hIgG1)をカ
ニクイザルに投与した(群当たり2個体のサル)。Fc-Abdeg及びIVIGの輸液は4時間以内で
実施し、動物に20 ml/kgの分量を投与した。血液試料(3×150 μl)を投薬の5分前に採
取し(「投薬前」)、輸液の終了から5分、2時間、6時間、24時間、48時間、72時間、96
時間、120時間、及び168時間後に採取した。トレーサレベルをmCD70結合ELISAにより決定
し、投薬前のレベルに対してプロットした(図4)。臨床投与量(2 g/kg)のIVIG処置と
比較し、70 mg/kg Fc-Abdegは有意に高められたトレーサクリアランスの動態を示し、ま
たより効率的に排除することができた(Abdegについて、4日で>95%のトレーサクリアラ
ンス、対しIVIGについて、7日で~75%のクリアランス)。
【0095】
(実施例2:Fc-AbdegのヒトCD16a及びマウスCD16-2への親和性に対するアフコシル化の
効果)
Fc-AbdegのhCD16aへの結合親和性を決定し、アフコシル化形態(Fc-Abdeg-POT)と比較
した。同実験には、全てのFcγRに対する親和性の向上を示すFc-Abdegバリアント(「Fc-
Abdeg-S239D/I332E」)を含めた。具体的には、Maxisorpプレートを100 ng/ウェルのNeut
ravidinビオチン結合タンパク質(ThermoScientific, 31000)でコーティングし、4℃で
一晩インキュベートした。翌日、該プレートをPBS+1%カゼインにより室温で2時間ブロ
ッキングした。続いて、ビオチン標識hCD16a(Sino Biological社, 10389-H27H1-B)の25
0 ng/ml溶液(PBS+0.1%カゼイン中に希釈)100 μl/ウェルを該プレートに加え、Fc-Ab
deg又はFc-Abdeg-POT分子の濃度勾配(1 μM~0.005 nM)を適用する前に室温で1時間イ
ンキュベートし、適用してからさらに1時間インキュベートした。hCD16aへの結合はHRP結
合ポリクローナルヤギ抗ヒトFc抗体(Jackson ImmunoResearch社, 109-035-008)(室温
で1時間インキュベート、PBS+0.1%カゼイン中に1/50,000希釈)を用いて、続いて100
μlの室温に平衡化させたTMB(SDT社試薬 #s TMB)を追加することにより検出した。プレ
ートを10分間インキュベートし、その後100 μl 0.5 N H2SO4を加え、OD450nm測定を行っ
た。EC50値をGraphPad Prismソフトウェアを用いて決定した。図5に記載されたこれらの
実験の結果は、Fc-Abdeg分子が脱フコシル化されるとhCD16aへの親和性が>30倍増加する
ことを示している(Fc-Abdeg-POTについてEC50=13 nM、対しフコシル化Fc-Abdegについ
てEC50>0.4 μM)。予想された通り、Fc-Abdeg-S239D/I332EバリアントのhCD16aに対す
る結合親和性は野生型Fc-Abdeg (EC50=6 nM)と比較して高かった。
【0096】
先に記載の手順と類似した実験手順を用い、マウスCD16-2(Sino Biological社, 50036-
M27H-B)に対する結合親和性を決定した。図6に記載されたこれらの実験の結果は、またし
ても野生型Fc-Abdegと比較してアフコシル化バリアントの親和性が高いことを示している
(EC50=11 nM対EC50>100 nM)。野生型Fc-Abdegに対するFc-Abdeg-POTバリアントのmCD16
-2に対する親和性の倍数増加は、ヒトCD16aへの結合について観察された倍数増加と比較
して低い。この効果はFc-Abdeg-S239D/I332Eバリアント(EC50=2 nM)については観察され
ず、該バリアントはヒト及びマウスCD16の両方に対し野生型Fc-Abdegと比較して同程度の
親和性の倍数増加を有する(EC50=2 nM)。
【0097】
自己抗原と複合体を形成した自己抗体は活性化したFcγRと結合し、それにより自己免
疫性疾患の誘因となる。自己免疫性疾患は部分的に自己組織に対する免疫学的媒介性炎症
が原因で発生する。Fc-AbdegがNK細胞上で自己免疫性抗体及びFcγRIII受容体の相互作用
と拮抗する能力を、2つのADCCベースの検定において評価した。
【0098】
最初に、ADCCレポーター生物検定(Promega社, G7016)を使用して、Fc-Abdeg、Fc-Abd
eg-POT及びFc-Abdeg-S239D/I332Eの競合的なhCD16a結合効力を分析した。具体的には、10
0 ng/mlの抗CD20抗体及び漸増濃度の競合因子の存在下、10,000個のCD20発現Raji細胞(
標的細胞)を、60,000個のhCD16aを発現するJurkat細胞(エフェクター細胞)とともにイ
ンキュベートした。細胞を37℃で6時間インキュベートし、その後ADCC活性の規準である
生物発光シグナルを測定した。ルシフェラーゼシグナルを競合因子の非存在下で100 ng/m
l抗CD20により得られたシグナルに対してプロットした(図7を参照されたい)。これらの
実験はFc-Abdeg-POT及びFc-Abdeg-S239D/I332Eの両方が抗CD20誘発性のADCCシグナルを効
率的に遮断し、対して野生型Fc-AbdegによるインキュベーションがJurkat細胞上に発現す
るhCD16aに対する競合的結合をもたらさないことを示している。
【0099】
次のADCC検定において、Fc-Abdeg及びFc-Abdeg-POTによる抗hCD70抗体(27B3-hIgG1)
の溶解活性の阻害を、競合的hCD16結合の規準として試験した。具体的には、約50,000個
のhCD70発現U266細胞を、50 ng/mlの抗hCD70抗体並びにFc-Abdeg、Fc-Abdeg-POT及びIVIG
の濃度勾配の存在下で健康なドナーから直前に精製した約300,000個のPBMC中に添加した
。U266細胞を2日間インキュベートし、続く細胞溶解をU266細胞に特異的なマーカー(CD2
8)を用いたFACSにより分析した。図8に記載されたこれらの実験の結果は、抗CD70抗体が
効率的にU266細胞を溶解し、Fc-Abdeg-POTの追加により、この除去を用量依存的な様式で
弱めることができるが、野生型Fc-Abdeg及びIVIGのいずれによってもこの除去を弱めるこ
とができないことを示している。これらのデータはFc-Abdeg POTが野生型Fc-Abdeg及びIV
IGと比較して高められた競合的CD16a結合特性を有することを示している。
【0100】
(実施例3:マウス急性ITPモデル)
Fc-Abdeg、Fc-Abdeg-POT、Fc-Abdeg-S239D/I332E分子の治療効力を急性免疫性血小板減
少症のマウスモデルにおいて試験した。具体的には、C57BL/6マウスを腹腔内輸液によりI
VIG (20 mg/動物)、Fc-Abdeg (1 mg/動物)、Fc-Abdeg-POT (1 mg/動物)、Fc-Abdeg-S239D
/I332E (1 mg/動物)又は生理食塩水で処置した(5個体の動物/群)。処置前に、ベースラ
インの血小板数の測定のため血液試料を採取した。1時間後、マウスを5 μg/動物の抗マ
ウス血小板抗体MWReg30 (Nieswandtらの文献、Blood 94:684-93 (1999))で処置した。血
小板数を24時間にわたりモニタリングした。各マウスについて血小板数を最初の数に対し
て正規化し、血小板数を抗CD61染色を介したフローサイトメトリーを用いて決定した。図
9に記載されたこれらの実験の結果は、Fc-Abdegによる前処理によりMWReg30誘発性の血小
板減少症が、7倍高いモル用量のIVIGと比較して同程度の効力で低下すること、並びにさ
らに、180分及び1440分時点における血小板数の向上から見て取れるように、Fc-Abdeg PO
T及びFc-Abdeg-S239D/I332EによるFcγRの遮断はこのモデルにおいて相乗的な利益的効果
を有することを示している。
【0101】
(実施例4:Fc-Abdegの製造性)
Fc-Abdeg(配列番号:2を有するFcドメインを含む)を一過性形質移入によりCHO細胞(
Evitria社, Switzerland)で生産した。形質移入に続き、高力価のFc-Abdegを上清中で検
出した(200~400 mg/ml)。Fc-AbdegをCHO GS-XCEED細胞株 (Lonza社, Great-Britain)
に安定的に組み込んだ発現構築物から発現させた場合も、同様の良好な生産プロファイル
が見られた。安定形質移入体は10 L撹拌タンク生物反応器中で、平均して3 g/L産生し、
最大で6 g/LのFc-Abdegを生産するクローンがいくつか同定された。
【0102】
先述のFc-Abdeg生産ラン(production runs)のプロテインA精製後の凝集体及び分解産
物の分析により、Fc-Abdegの製造性をさらに調査した。具体的には、137 μgのFc-Abdeg
をAktaPurifierクロマトグラフィーシステムに接続したSuperdex 200 10/300 GLゲルろ過
カラム(GE Healthcare社)上に加えた。図10に記載されたこの実験の結果は、非常に小
さなパーセンテージのFc-Abdeg凝集体(~0.5%)のみが観察され、一方Fc-Abdeg分解産
物は検出されなかったことを示していた。さらに、プロテインA精製したFc-Abdegに様々
なストレス条件(凍結融解、回転又は温度ストレス)を適用しても、物理化学的及び機能
的特性における容易に認められる変化をもたらさなかった。まとめると、これらのデータ
はFc-Abdegの優れた製造性を示している。
【0103】
(実施例5:カニクイザルにおけるFc-Abdegの用量漸増試験)
薬物動態学的効果の開始並びに飽和用量を決定するために、カニクイザルにおいてFc-A
bdegの用量漸増試験を実施した。この目的で、カニクイザルに1 mg/kgの抗マウスCD70 hI
gG1トレーサ抗体(FR70-hIgG1)を静脈内ボーラス注射により投与した。48時間後、動物
に様々な用量のFC-Abdeg(0.2 mg/kg、2 mg/kg、20mg/kg若しくは200mg/kg)又はビヒク
ル(PBS)を輸液した。輸液は3時間以内で実施し、動物に36.36 ml/kgの分量を投与した
。各試験群は2個体の動物からなるものとした。投与の5分前(「投与前」)、並びに輸液
の終了から5分、2時間、6時間、24時間、48時間、72時間、5日、7日、10日、及び14日後
に、血液試料(3×150μl)を採取した。トレーサIgG(図11を参照されたい)及び内在の
IgG(図12を参照されたい)の両方のレベルをELISAにより決定し、投与前のレベルに対し
てプロットした。70mg/kgの用量からのデータは、本明細書の図4に記載の実験から付け足
した。動物に0.2 mg/kgのFC-Abdegを投与しても、トレーサのクリアランス速度に顕著な
影響は見られず、かつ内在のIgGのレベルにも影響はない。2 mg/kgで明らかな薬物動態学
的効果が見られ、この効果は20 mg/kg以上の用量で横ばいとなる。Fc-Abdegの単独投与に
より、カニクイザルのIgGは3~4日以内に最大で55%低下する。
【0104】
FcRnの結合性は免疫グロブリンのγサブタイプに限定されており、他の免疫グロブリン
サブタイプと比較した場合のγサブタイプのずっと長い半減期を説明可能である。従って
、Fc-AbdegによるFcRnのIgG再循環機能の遮断は、内在の非IgG免疫グロブリンのレベルに
干渉しないはずであり、この特徴は200mg/kgのFc-Abdegで処置された動物の血清試料中の
内在のIgA及びIgMのレベルを測定することにより実証された(図13及び14を参照されたい
)。Fc-Abdegによる処置がアルブミンのレベルに影響しないことを示す実施例1に記載の
観察結果と合わせると、これらのデータは、Fc-Abdegの具体的な薬物動態学的効果を実証
する。
【0105】
次に、Fc-Abdegの薬物動態学的プロファイルをELISAにより決定した。そのPKプロファ
イル(図5を参照されたい)から算出されたように、Fc-Abdegは短い半減期(半減期の推
定値は~1.5日)を有する。飽和レベルでは、FcRnと結合していないFc-Abdegは、それ自
身の作用機構が原因となって効率的に排除される。さらに、Fc-Abdegの分子の大きさは、
腎臓クリアランスのカットオフ値に近い(~60 kDa)。
【0106】
(実施例6:カニクイザルにおけるFc-Abdegの反復投与試験)
20mg/kgの用量でのFc-Abdegの1回の輸液により、およそ3~4日以内にカニクイザルにお
ける内在のIgGのレベルは55%低下する。続く実験では、Fc-Abdegの反復投与によりこれら
のレベルがさらに下降するかどうかを検定した。2つの戦略をとった:一方のサルの群で
は、初めの4日間(第1、2、3、4日)24時間ごとに試験成分の輸液を施し、対して他方の
群では、4日ごとに(第1、5、9、13日)薬物を施した。各個別の投与について、Fc-Abdeg
を20 mg/kgの用量で投与した。各試験群は、2個体の動物からなるものとした。輸液手順
は、実施例1に記載の手順と同一のものとした。2つの異なる群間の明らかな薬力学的な差
は、第7日の時点で観察される(図16を参照されたい)。初めの4日間での毎日のFc-Abdeg
の投与は、同じ用量を1回輸液した場合(破線、参照として実施例1からのデータを重ねて
ある)と同様のIgGレベルの低下を示した。4日に1回のFc-Abdegの投与は、これらのレベ
ルのより大きく、より長い低下に帰結する。初めのレベルからの最大25%の低下が、この
処置群において観察される。
【0107】
Fc-Abdegの薬物動態学的プロファイルを決定した(図7を参照されたい)。該プロファ
イルは、実施例5に記載の用量漸増試験からの知見と一致する。
【0108】
(実施例7:カニクイザルにおけるFc-Abdegのさらなる用量漸増試験)
薬力学的効果の開始及び飽和をさらに探索するため、カニクイザルにおいてFc-Abdegの
追跡用量漸増試験を実施した。この目的で、動物に様々な用量のFC-Abdeg(10 mg/kg、30
mg/kg、50 mg/kg及び100mg/kg)又はビヒクル(PBS)を輸液した。輸液は2時間以内で実
施し、各コホートは4個体の動物(2個体の雄及び2個体の雌)からなるものとした。内在
のIgGレベルをELISAにより決定し、投与前のレベルに対してプロットした(図18を参照さ
れたい)。10 mg/kgの用量では中程度の薬力学的効果が観察され、この効果は30 mg/kg以
上の用量で横ばいになった。IgG除去の速度、作用の開始、及び薬物動態学的プロファイ
ル(図19を参照されたい。表2を参照されたい。)は、実施例5に記載の知見と同程度であ
った。
【0109】
表2:カニクイザルにおけるFc-Abdegの薬物動態学的特性
【表2】
#:Fc-Abdegの血清分析から得られた値、他の全ての値は毒性動態学的分析により算出さ
れた。
-:計算不能又は利用可能なデータから合理的な解釈ができない
DPF:用量比例計数=[AUC0-t ラスト (x mg/kg)/ AUC0-t ラスト (10 mg/kg)]/ [(x mg/k
g)/ (10 mg/kg)]
【0110】
(実施例8:カニクイザルにおけるFc-Abdegのさらなる反復投与試験)
長期的Fc-Abdeg投与の薬力学的効果をさらに調べるため、カニクイザルにおいてFc-Abd
egの追跡反復投与試験を実施した。この目的で、動物に様々な濃度のFC-Abdeg(3 mg/kg
、30 mg/kg及び100 mg/kg)又はビヒクル(PBS)を48時間ごとに輸液し、合計15回の輸液
を行った。処置期間の後、30日間の回復期間を含めた。各コホートは4個体の動物からな
るものとしたが、100 mg/kgのコホートは例外とした(3個体の動物からなるものとした)
。内在のIgGのレベルをELISAにより決定し、投与前のレベルに対してプロットした(図20
を参照されたい。平均±SEM)。IgGレベルの明らかな下落が全ての試験用量で観察され、
この薬力学的効果は治療期間の終了時まで持続した。治療期間の後、IgGのレベルは10日
以内にベースラインまで復帰した。薬物動態学的プロファイルは図21に示されている。
【0111】
(実施例9:カニクイザルにおけるFc-Abdegの長期的投与試験)
カニクイザルに20mg/kgのFC-Abdegの静脈内負荷用量を輸液し、初回投与の24時間後か
ら開始して12日間継続する毎日の1、3、又は5 mg/kgのFc-Abdegの皮下投与をさらに施し
た。各試験群は、2個体の動物からなるものとした。IgGレベルをELISAにより決定し、投
与前のレベルに対してプロットした(図22を参照されたい)。また、データは12日より長
く処置を持続させた3 mg/kgコホートからの1個体のカニクイザルについて提示されている
。このサルには20mg/kgのFC-Abdegの静脈内負荷用量を輸液し、初回投与の24時間後から
開始して28日間継続する毎日の3 mg/kgのFc-Abdegの皮下投与を施し、続いてさらに32日
間の無処置期間をとった(図23を参照されたい)。IgGレベルは最大で元のレベルの60%ま
で低下し、処置期間を通じて一貫して低いままであった。処置期間の後、2週間以内にIgG
レベルはベースラインレベルまで復帰した。
本件出願は、以下の構成の発明を提供する。
(構成1)
対象におけるFc含有剤の血清レベルを低下させる方法であって、該対象に有効量の、バ
リアントFc領域又はそのFcRn結合断片を含む単離されたFcRnアンタゴニストを投与するこ
とを含み、該バリアントFc領域のFcドメインがEU位置252、254、256、433、434、及び436
にそれぞれアミノ酸Y、T、E、K、F、及びYを含み、かつ該FcRnアンタゴニストが該対象に
約0.2~約200 mg/kgの用量で投与される、前記方法。
(構成2)
対象におけるFc含有剤の血清レベルを低下させる方法であって、該対象に有効量の、バ
リアントFc領域又はそのFcRn結合断片を含む単離されたFcRnアンタゴニストを投与するこ
とを含み、該バリアントFc領域のFcドメインがEU位置252、254、256、433、434、及び436
にそれぞれアミノ酸Y、T、E、K、F、及びYを含み、かつ該FcRnアンタゴニストが該対象に
20日に少なくとも2回投与される、前記方法。
(構成3)
前記FcRnアンタゴニストが前記対象に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10日に1回の
頻度で投与される、構成2記載の方法。
(構成4)
前記FcRnアンタゴニストが前記対象に、4日に1回の頻度で投与される、構成2記載の方
法。
(構成5)
前記FcRnアンタゴニストが前記対象に、7日に1回の頻度で投与される、構成2記載の方
法。
(構成6)
前記FcRnアンタゴニストが前記対象に、20日に2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、
13、14、15、16、17、18、19、又は20回投与される、構成2又は3記載の方法。
(構成7)
対象におけるFc含有剤の血清レベルを低下させる方法であって、該対象に有効量の、バ
リアントFc領域又はそのFcRn結合断片を含む単離されたFcRnアンタゴニストを投与するこ
とを含み、該バリアントFc領域のFcドメインがEU位置252、254、256、433、434、及び436
にそれぞれアミノ酸Y、T、E、K、F、及びYを含み、かつ該FcRnアンタゴニストが該対象に
4週間にわたり、48時間に1回の頻度で投与される、前記方法。
(構成8)
前記FcRnアンタゴニストが前記対象に、約0.2~約200 mg/kgの用量で投与される、構成
2~6のいずれか1項記載の方法。
(構成9)
前記FcRnアンタゴニストが前記対象に、約0.2、1、2、3、5、10、20、25、30、50、70
、100、又は200 mg/kgの用量で投与される、構成1~8のいずれか1項記載の方法。
(構成10)
前記FcRnアンタゴニストが前記対象に、約10 mg/kgの用量で投与される、構成1~9のい
ずれか1項記載の方法。
(構成11)
前記FcRnアンタゴニストが前記対象に、約20 mg/kgの用量で投与される、構成1~10の
いずれか1項記載の方法。
(構成12)
前記FcRnアンタゴニストが前記対象に、約25 mg/kgの用量で投与される、構成1~11の
いずれか1項記載の方法。
(構成13)
前記FcRnアンタゴニストが静脈内投与される、構成1~12のいずれか1項記載の方法。
(構成14)
前記FcRnアンタゴニストが皮下投与される、構成1~13のいずれか1項記載の方法。
(構成15)
前記FcRnアンタゴニストが前記対象に2以上の用量で投与され、ここで該対象に投与さ
れる第一の用量が静脈内投与され、それに続く1以上の用量が皮下投与される、構成1~14
のいずれか1項記載の方法。
(構成16)
前記FcRnアンタゴニストが抗体可変領域を含まない、構成1~15のいずれか1項記載の方
法。
(構成17)
前記FcRnアンタゴニストがCH1ドメインを含まない、構成1~16のいずれか1項記載の方
法。
(構成18)
前記FcRnアンタゴニストが遊離システイン残基を含まない、構成1~17のいずれか1項記
載の方法。
(構成19)
前記バリアントFc領域がIgG Fc領域である、構成1~18のいずれか1項記載の方法。
(構成20)
前記バリアントFc領域がIgG1 Fc領域である、構成1~19のいずれか1項記載の方法。
(構成21)
前記バリアントFc領域のFcドメインのアミノ酸配列が、配列番号:1、2、又は3に記載
のアミノ酸配列を含む、構成1~20のいずれか1項記載の方法。
(構成22)
前記バリアントFc領域のFcドメインのアミノ酸配列が、配列番号:1に記載のアミノ酸
配列からなる、構成1~21のいずれか1項記載の方法。
(構成23)
前記FcRnアンタゴニストがバリアントFc領域からなり、該バリアントFc領域のFcドメイ
ンのアミノ酸配列が、配列番号:1、2、又は3に記載のアミノ酸配列からなる、構成1~22
のいずれか1項記載の方法。
(構成24)
前記バリアントFc領域が、野生型IgG1 Fc領域のFcγ受容体に対する親和性と比較して
、Fcγ受容体に対する増加した親和性を有する、構成1~23のいずれか1項記載の方法。
(構成25)
前記バリアントFc領域が、CD16aに対する増加した親和性を有する、構成1~24のいずれ
か1項記載の方法。
(構成26)
前記バリアントFc領域のFcドメインが、EU位置297にN-結合型グリカンを含まない、構
成1~25のいずれか1項記載の方法。
(構成27)
前記FcRnアンタゴニストが複数のFcRnアンタゴニスト分子を含み、該複数のFcRnアンタ
ゴニスト分子の少なくとも50%(任意に、少なくとも60、70、80、90、95、又は99%)が
、EU位置297にアフコシル化N-結合型グリカンを含むバリアントFc領域又はそのFcRn結合
断片を含む、構成1~25のいずれか1項記載の方法。
(構成28)
前記FcRnアンタゴニストが複数のFcRnアンタゴニスト分子を含み、該複数のFcRnアンタ
ゴニスト分子の少なくとも50%(任意に、少なくとも60、70、80、90、95、又は99%)が
、EU位置297にバイセクティングGlcNacを有するN-結合型グリカンを含む、バリアントFc
領域又はそのFcRn結合断片を含む、構成1~25のいずれか1項記載の方法。
(構成29)
前記バリアントFc領域が半減期エクステンダーと連結されている、構成1~28のいずれ
か1項記載の方法。
(構成30)
前記半減期エクステンダーがポリエチレングリコール又はヒト血清アルブミンである、
構成1~29のいずれか1項記載の方法。
(構成31)
前記Fc含有剤が、抗体又はイムノアドヘシンである、構成1~30のいずれか1項記載の方
法。
(構成32)
前記Fc含有剤が、治療薬又は診断薬である、構成1~31のいずれか1項記載の方法。
(構成33)
前記Fc含有剤が造影剤である、構成1~32のいずれか1項記載の方法。
(構成34)
前記Fc含有剤が、抗体薬物コンジュゲートである、構成1~33のいずれか1項記載の方法

(構成35)
前記Fc含有剤が病原性の抗体である、構成1~34のいずれか1項記載の方法。
(構成36)
前記Fc含有剤が自己抗体である、構成1~35のいずれか1項記載の方法。
(構成37)
前記対象が抗体媒介性の疾患又は障害を有し、かつ前記FcRnアンタゴニストの該対象へ
の投与により該疾患又は障害が改善される、構成1~36のいずれか1項記載の方法。
(構成38)
前記抗体媒介性の疾患又は障害が、自己免疫性疾患である、構成37記載の方法。
(構成39)
前記自己免疫性疾患が、同種異系膵島移植片拒絶反応、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リ
ン脂質抗体症候群、自己免疫性アジソン病、アルツハイマー病、抗好中球細胞質自己抗体
(ANCA)、副腎の自己免疫性疾患、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性
心筋炎、自己免疫性好中球減少症、自己免疫性の卵巣炎及び精巣炎、自己免疫性血小板減
少症、自己免疫性蕁麻疹、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、キャッスルマン症
候群、セリアック病-皮膚炎、慢性疲労免疫不全症候群、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(C
IDP)、チャーグ-ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、クレスト症候群、寒冷凝集素症、
クローン病、皮膚筋炎、拡張型心筋症、円板状エリテマトーデス、後天性表皮水疱症、本
態性混合型クリオグロブリン血症、第VIII因子欠損症、線維筋痛症-線維筋炎、糸球体腎
炎、グレーブス病、ギラン・バレー、グッドパスチャー症候群、移植片対宿主病(GVHD)
、橋本甲状腺炎、血友病A、特発性膜性ニューロパチー、特発性肺線維症、特発性血小板
減少性紫斑病(ITP)、IgAニューロパチー、IgM多発性ニューロパチー、免疫媒介性血小
板減少症、若年性関節炎、川崎病、扁平苔蘚、硬化性苔蘚、エリテマトーデス、メニエー
ル病、混合性結合組織病、粘膜類天疱瘡、多発性硬化症、1型糖尿病、多巣性運動ニュー
ロパチー(MMN)、重症筋無力症、傍腫瘍性水疱性類天疱瘡、妊娠性類天疱瘡、尋常性天
疱瘡、落葉状天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウ
マチ性多発筋痛症、多発性筋炎及び皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆
汁性肝硬変、乾癬、乾癬性関節炎、再発性多発性軟骨炎、レイノー現象、ライター症候群
、リウマチ性関節炎、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、固形臓器移植拒
絶反応、スティフ・マン症候群、全身性エリテマトーデス、高安動脈炎、中毒性表皮壊死
症(TEN)、 スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、
血栓性血小板減少性紫斑病、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、ヘルペス状皮膚炎脈管炎、抗好
中球細胞質抗体関連脈管炎、白斑、及びウェゲナー肉芽腫症からなる群から選択される、
構成38記載の方法。
(構成40)
前記疾患又は障害が、静脈内免疫グロブリン(IVIG)、血漿交換療法、及び/又は免疫
吸着法を用いて治療可能である、構成37記載の方法。
(構成41)
前記自己免疫性疾患が、自己免疫性チャネル病である、構成38記載の方法。
(構成42)
前記チャネル病が、自己免疫性辺縁系脳炎、てんかん、視神経脊髄炎、ランバート・イ
ートン筋無力症症候群、重症筋無力症、抗N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体脳炎
、抗α-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソキサゾールプロピオン酸(AMPA)受容体脳
炎、モルバン症候群、神経性筋強直症、レンサ球菌感染症に関連する小児自己免疫性精神
神経障害(PANDAS)、及びグリシン受容体抗体関連障害からなる群から選択される、構成
41記載の方法。
(構成43)
前記抗体媒介性疾患又は障害が、高グロブリン血症である、構成37記載の方法。
(構成44)
前記FcRnアンタゴニストが、追加の治療薬と同時に、又は逐次的に前記対象に投与され
る、構成1~43のいずれか1項記載の方法。
(構成45)
前記追加の治療薬が抗炎症薬である、構成44記載の方法。
(構成46)
前記追加の治療薬が白血球除去薬である、構成44記載の方法。
(構成47)
前記白血球除去薬がB細胞除去薬である、構成45記載の方法。
(構成48)
前記B細胞除去薬が抗体である、構成47記載の方法。
(構成49)
前記B細胞除去薬が、CD10、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD37、CD53、CD70
、CD72、CD74、CD75、CD77、CD79a、CD79b、CD80、CD81、CD82、CD83、CD84、CD85、又は
CD86に特異的に結合する抗体である、構成48記載の方法。
(構成50)
前記追加の治療薬が、リツキシマブ、ダクリズマブ、バシリキシマブ、ムロノマブ-CD3
、インフリキシマブ、アダリムマブ、オマリズマブ、エファリズマブ、ナタリズマブ、ト
シリズマブ、エクリズマブ、ゴリムマブ、カナキヌマブ、ウステキヌマブ、ベリムマブ、
又はこれらの組合わせである、構成49記載の方法。
(構成51)
前記対象が、ヒト又はカニクイザルである、構成1~50のいずれか1項記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
【配列表】
2024037846000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-01-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に実質的に記載された、新規な物、方法及び製造方法。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象において自己抗体の血清レベルを低下させる方法において使用するための医薬組成物であって、バリアントIgG1 Fc領域又はそのFcRn結合断片を含むFcRnアンタゴニストを含み、
該バリアントIgG1 Fc領域のFcドメインが、EU位置252、254、256、433、434、及び436にそれぞれアミノ酸Y、T、E、K、F、及びYを含み、
該FcRnアンタゴニストが該対象に2~200 mg/kgの用量で投与され、かつ
該FcRnアンタゴニストが、該対象に20日に2回の頻度で投与される、前記医薬組成物。
【請求項2】
前記FcRnアンタゴニストが、バリアントIgG1 Fc領域からなる、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記FcRnアンタゴニストが静脈内投与される、請求項1又は2記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記FcRnアンタゴニストが皮下投与される、請求項1又は2記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記FcRnアンタゴニストが、7、8、9、又は10日に1回投与される、請求項1~4のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記FcRnアンタゴニストが、7日に1回投与される、請求項1~5のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記FcRnアンタゴニストが、10日に1回投与される、請求項1~5のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記バリアントFc領域が、半減期エクステンダーと連結されており、該半減期エクステンダーが、ポリエチレングリコール又はヒト血清アルブミンである、請求項1~7のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記対象が、抗体媒介性の疾患又は障害を有する、請求項1~8のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記対象が自己免疫性疾患を有する、請求項1~9のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記自己免疫性疾患が、同種異系膵島移植片拒絶反応、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、自己免疫性アジソン病、アルツハイマー病、抗好中球細胞質自己抗体(ANCA)、副腎の自己免疫性疾患、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性心筋炎、自己免疫性好中球減少症、自己免疫性の卵巣炎及び精巣炎、自己免疫性血小板減少症、自己免疫性蕁麻疹、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、キャッスルマン病、セリアック病-皮膚炎、慢性疲労免疫不全症候群、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)、チャーグ-ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、クレスト症候群、寒冷凝集素症、クローン病、皮膚筋炎、拡張型心筋症、円板状エリテマトーデス、後天性表皮水疱症、本態性混合型クリオグロブリン血症、第VIII因子欠損症、線維筋痛症-線維筋炎、糸球体腎炎、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、グッドパスチャー症候群、移植片対宿主病(GVHD)、橋本甲状腺炎、血友病A、特発性膜性ニューロパチー、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgAニューロパチー、IgM多発性ニューロパチー、免疫媒介性血小板減少症、若年性関節炎、川崎病、扁平苔蘚、硬化性苔蘚、エリテマトーデス、メニエール病、混合性結合組織病、粘膜類天疱瘡、多発性硬化症、1型糖尿病、多巣性運動ニューロパチー(MMN)、重症筋無力症、傍腫瘍性水疱性類天疱瘡、妊娠性類天疱瘡、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎及び皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、乾癬性関節炎、再発性多発性軟骨炎、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ性関節炎、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、固形臓器移植拒絶反応、スティフ・マン症候群、全身性エリテマトーデス、高安動脈炎、中毒性表皮壊死症(TEN)、 スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、血栓性血小板減少性紫斑病、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、ヘルペス状皮膚炎脈管炎、抗好中球細胞質抗体関連脈管炎、白斑、及びウェゲナー肉芽腫症からなる群から選択される、請求項10記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記自己免疫性疾患が、自己免疫性チャネル病である、請求項10記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記チャネル病が、自己免疫性辺縁系脳炎、てんかん、視神経脊髄炎、ランバート・イートン筋無力症症候群、重症筋無力症、抗N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体脳炎、抗α-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソキサゾールプロピオン酸(AMPA)受容体脳炎、モルバン症候群、神経性筋強直症、レンサ球菌感染症に関連する小児自己免疫性精神神経障害(PANDAS)、及びグリシン受容体抗体関連障害からなる群から選択される、請求項12記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記FcRnアンタゴニストが、追加の治療薬と同時に、又は逐次的に前記対象に投与される、請求項1~13のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記追加の治療薬が、抗炎症薬又は白血球除去薬である、請求項14記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記追加の治療薬が白血球除去薬であり、かつ、該白血球除去薬がB細胞除去薬である、請求項15記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記B細胞除去薬が抗体である、請求項16記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記B細胞除去薬が、CD10、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD37、CD53、CD70、CD72、CD74、CD75、CD77、CD79a、CD79b、CD80、CD81、CD82、CD83、CD84、CD85、又はCD86に特異的に結合する抗体である、請求項17記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記追加の治療薬が、リツキシマブ、ダクリズマブ、バシリキシマブ、ムロモナブ-CD3、インフリキシマブ、アダリムマブ、オマリズマブ、エファリズマブ、ナタリズマブ、トシリズマブ、エクリズマブ、ゴリムマブ、カナキヌマブ、ウステキヌマブ、ベリムマブ、又はそれらの組み合わせである、請求項14記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記対象が、ヒト又はカニクイザルである、請求項1~19のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記対象がヒトである、請求項1~20のいずれか1項記載の医薬組成物。