(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037877
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】ポリエチレングリコール修飾尿酸オキシダーゼ
(51)【国際特許分類】
C12N 9/06 20060101AFI20240312BHJP
C12N 15/53 20060101ALI20240312BHJP
C12N 9/96 20060101ALI20240312BHJP
A61K 38/44 20060101ALI20240312BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240312BHJP
A61P 19/06 20060101ALI20240312BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240312BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240312BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20240312BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240312BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20240312BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240312BHJP
A61K 47/60 20170101ALI20240312BHJP
【FI】
C12N9/06 Z ZNA
C12N15/53
C12N9/96
A61K38/44
A61K45/00
A61P19/06
A61P13/12
A61P19/02
A61P9/12
A61P3/10
A61P3/06
A61P9/10
A61P9/10 101
A61K47/60
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023210531
(22)【出願日】2023-12-13
(62)【分割の表示】P 2022514031の分割
【原出願日】2020-05-08
(31)【優先権主張番号】201910388717.0
(32)【優先日】2019-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】521493019
【氏名又は名称】重慶派金生物科技有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】521493020
【氏名又は名称】杭州遠大生物制薬有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】範開
(72)【発明者】
【氏名】王志明
(72)【発明者】
【氏名】劉日勇
(72)【発明者】
【氏名】王▲ゆ▼
(72)【発明者】
【氏名】何雲鳳
(72)【発明者】
【氏名】▲やん▼天文
(72)【発明者】
【氏名】付志成
(72)【発明者】
【氏名】蘇国威
(72)【発明者】
【氏名】胡春蘭
(72)【発明者】
【氏名】丁旭朋
(72)【発明者】
【氏名】譚長城
(72)【発明者】
【氏名】王宏英
(72)【発明者】
【氏名】楊輝
(72)【発明者】
【氏名】丁瓊
(72)【発明者】
【氏名】文海燕
(57)【要約】 (修正有)
【課題】尿酸オキシダーゼに基づく高尿酸血症の治療を提供する。
【解決手段】ポリエチレングリコール修飾尿酸オキシダーゼを提供する。該尿酸オキシダーゼにおけるアミノ酸サイトである、T1、K3、K4、K30、K35、K76、K79、K97、K112、K116、K120、K152、K179、K222、K231、K266、K272、K285、K291、K293のうちの少なくとも11個はPEG修飾を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレングリコール修飾尿酸オキシダーゼであって、前記尿酸オキシダーゼにおけるアミノ酸サイトである、T1、K3、K4、K30、K35、K76、K79、K97、K112、K116、K120、K152、K179、K222、K231、K266、K272、K285、K291、K293のうちの少なくとも11個はPEG修飾を有する、ことを特徴とするポリエチレングリコール修飾尿酸オキシダーゼ。
【請求項2】
K30、K35、K222及びK231の4つのアミノ酸サイトのうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つまたは4つはPEG修飾を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の尿酸オキシダーゼ。
【請求項3】
前記PEG修飾用ポリエチレングリコールの分子量は6KDを超えない、ことを特徴とする請求項1に記載の尿酸オキシダーゼ。
【請求項4】
前記ポリエチレングリコールはモノメトキシ基またはヒドロキシル基を有し、
任意選択に、前記ポリエチレングリコールは直鎖または分岐構造であり、
任意選択に、前記ポリエチレングリコールは尿酸オキシダーゼにアミド結合を介して結合され、
好ましくは、前記ポリエチレングリコールは修飾ポリエチレングリコールであり、前記修飾ポリエチレングリコールの修飾基には、
Nヒドロキシスクシンイミド、Nヒドロキシスクシンイミドカーボネート、Nヒドロキシスクシンイミドアセテート、Nヒドロキシスクシンイミドプロピオネート、Nヒドロキシスクシンイミドブチレート、コハク酸N-ヒドロキシスクシンイミド及びp-ニトロベンゼンカーボネートから選択される少なくとも1つが含まれ、
好ましくは、前記修飾ポリエチレングリコールの修飾基はNヒドロキシスクシンイミドプロピオネートである、ことを特徴とする請求項1に記載の尿酸オキシダーゼ。
【請求項5】
前記アミノ酸サイトの位置付けはSEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列で位置付けされ、
任意選択に、前記尿酸オキシダーゼはSEQ ID NO:1~7に示されるアミノ酸配列を有し、または
SEQ ID NO:1~7と比較して、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%の同一性を有するポリペプチドを有し、または
SEQ ID NO:1~7と比較して、1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠失および/または付加を有するポリペプチドを有し、
好ましくは、前記尿酸オキシダーゼはSEQ ID NO:1~4に示されるアミノ酸配列を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の尿酸オキシダーゼ。
【請求項6】
ポリエチレングリコール修飾尿酸オキシダーゼであって、前記ポリエチレングリコール修飾尿酸オキシダーゼのペプチドマップはポリエチレングリコールによって修飾されない前記尿酸オキシダーゼのペプチドマップと比べて、少なくとも11個の所定のペプチドセグメントを有するピーク面積減少の相対的な割合は75%以上であり、好ましくは80%以上であり、より好ましくは90%以上である、ことを特徴とするポリエチレングリコール修飾尿酸オキシダーゼ。
【請求項7】
前記ポリエチレングリコール修飾尿酸オキシダーゼのペプチドマップは表5に示されるピーク面積減少のペプチドセグメントを有する、ことを特徴とする請求項6に記載のポリエチレングリコール修飾尿酸オキシダーゼ。
【請求項8】
前記ポリエチレングリコール修飾尿酸オキシダーゼのペプチドマップを
図6または
図7に示す、ことを特徴とする請求項6に記載のポリエチレングリコール修飾尿酸オキシダーゼ。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の尿酸オキシダーゼを含む、ことを特徴とする医薬の組成物。
【請求項10】
組み合わせ薬物を使用して高尿酸関連疾患を治療または予防するその他の薬物を含む、ことを特徴とする請求項9に記載の医薬の組成物。
【請求項11】
薬物の調製における請求項1~8のいずれか1項に記載の尿酸オキシダーゼまたは請求項9~10のいずれか1項に記載の医薬の組成物の使用であって、前記薬物は高尿酸関連疾患を治療し、必要とする被験者の生体液中の尿酸のレベルを下げるために使用され、
任意選択に、前記高尿酸関連疾患には、慢性高尿酸血症、痛風、腎臓病気、高尿酸性関節炎、腎臓結石、痛風結節、高血圧、糖尿病、高トリグリセリド血症、メタボリックシンドローム、冠状動脈性心臓病、アテローム性動脈硬化症、癌化学療法による高尿酸血症から選択される疾患が含まれ、
任意選択に、前記生体液は尿液または血液である、薬物の調製における請求項1~8のいずれかに記載の尿酸オキシダーゼまたは請求項9~10のいずれかに記載の医薬の組成物の使用。
【請求項12】
尿酸オキシダーゼの免疫原性を低下させる方法であって、前記尿酸オキシダーゼにおけるアミノ酸サイトである、T1、K3、K4、K30、K35、K76、K79、K97、K112、K116、K120、K152、K179、K222、K231、K266、K272、K285、K291、K293のうちの少なくとも11個にPEG修飾を発生させる、ことを特徴とする尿酸オキシダーゼの免疫原性を低下させる方法。
【請求項13】
前記尿酸オキシダーゼにおける、K30、K35、K222及びK231の4つのアミノ酸サイトの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つまたは4つにPEG修飾を発生させる、ことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記PEG修飾用ポリエチレングリコールの分子量は6KDを超えなく、
好ましくは、前記ポリエチレングリコールは修飾ポリエチレングリコールであり、
好ましくは、前記修飾ポリエチレングリコールの修飾基はNヒドロキシスクシンイミドである、ことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記アミノ酸サイトの位置付けはSEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列で位置付けされ、
好ましくは、前記尿酸オキシダーゼは、SEQ ID NO:1~7に示されるアミノ酸配列を有し、または
SEQ ID NO:1~7と比較して、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%の同一性を有するポリペプチドを有し、または
SEQ ID NO:1~7と比較して、1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠失および/または付加を有するポリペプチドを有し、
好ましくは、前記尿酸オキシダーゼはSEQ ID NO:1~4に示されるアミノ酸配列を有する、ことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項16】
患者に治療有効量の請求項1~8のいずれか1項に記載の尿酸オキシダーゼまたは請求項9~10のいずれか1項に記載の医薬の組成物を投与する、ことを特徴とする高尿酸関連疾患を治療または予防し、必要とする被験者の生体液中の尿酸のレベルを下げる方法。
【請求項17】
前記高尿酸関連疾患には、慢性高尿酸血症、痛風、腎臓病気、高尿酸性関節炎、腎臓結石、痛風結節、高血圧、糖尿病、高トリグリセリド血症、メタボリックシンドローム、冠状動脈性心臓病、アテローム性動脈硬化症、癌化学療法による高尿酸血症から選択される疾患が含まれ、
任意選択に、前記生体液は尿液または血液である、ことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生物医学の分野に関し、具体的に、本発明はポリエチレングリコール修飾尿酸オキシダーゼに関し、より具体的に、本発明はポリエチレングリコール修飾尿酸オキシダーゼ、医薬の組み合わせ、ポリエチレングリコール修飾尿酸オキシダーゼの製薬での使用及び尿酸オキシダーゼの免疫原性を低下させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
痛風は、プリン代謝の障害による病気であり、その臨床的特徴は高尿酸血症であり、尿酸塩が皮膚の下、関節、腎臓に沈着することによって痛風結節を形成する。人体内のプリンは一連の変化を経て、最終的に形成される生成物は尿酸であり、血中尿酸濃度が70mg/Lを超えると、高尿酸血症を引き起こす。高尿酸患者の5%~12%が痛風を発症する可能性がある。血液や滑液では、尿酸ナトリウムの濃度は飽和状態に達すると、尿酸ナトリウム塩の微結晶を形成し、痛風性関節炎を引き起こす可能性がある。時間の経過とともに、慢性高尿酸血症も、関節の周囲、軟部組織、及びある臓器に沈着して破壊的な結晶性尿酸沈着物を産生し、痛風性急性関節炎、痛風結節性慢性関節炎及び関節変形等の病気を引き起こす可能性がある。腎臓の損傷は、痛風の2番目に一般的な臨床症状であると考えられる。慢性高尿酸血症の漸進的な性質は、髄質、腎尿細管及び腎間質内の尿酸塩の沈着をもたらし、局所を刺激し、炎症反応を引き起こし、慢性尿酸塩腎症と呼ばれ、重度の高尿酸血症の患者( 例えばある悪性腫瘍、特に白血病やリンパ腫などの患者)は、短時間で大量の尿酸が腎臓集合管、腎骨盤、腎萼及び尿管に沈着することがあり、内腔閉塞と尿閉鎖が発生して急性腎不全(尿酸腎症)を引き起こす。
【0003】
ここ数十年、人々の生活の品質の向上や食生活や生活習慣の変化に伴い、高タンパク、高プリンの食物の摂取の増加に伴って、痛風患者の数は年々に増加している傾向がある。ヨーロッパでは、痛風患者の数は過去20年間で約2倍になる。現在、我が国の高尿酸血症及び痛風の発生率は約2~3%に増加している。高尿酸血症に臨床症状が現れない場合に、食事を制御すればよく、それによって引き起こされる臨床症状が現れた場合に、薬物治療を行う必要がある。現在臨床で使用されている通常の治療法は、コルヒチン(colchicine)、ブプロフェン(buprofen)、ナプロキセン(naproxen)などの、主に痛風性関節炎の急性発作症状を制御し、関節の局所的な関節痛、腫れ及び炎症を解消するために使用される鎮痛薬および抗炎症薬、プロベネシド(probenicid)、スルフィンピラゾン(sulfinpyrazone)、ベンズブロマロン(benzbromarone)などの尿酸の排泄を促進する尿酸排泄促進薬(腎機能が低下すると、効果がない)、及びアロプリノール(allopurinol)などの尿酸合成の阻害薬物を含む。アロプリノールは、痛風結節性痛風、腎不全、白血病、及びある遺伝病に苦しむ患者の主な治療薬であり、キサンチンオキシダーゼを抑制し、ヒポキサンチン及びキサンチンが尿酸に変換されることができず、そのものが人体で徐々に酸化して、水に溶けやすいオキシプリノール(oxipurinol)を産生して、尿中に排泄される。しかしながら、すべての従来の治療法で痛風結節を形成した慢性痛風の患者を治療することは困難である。なお、上記の薬を長時間服用した後、患者は必然的に、白血球減少、心臓機能障害、肝臓機能障害、胃腸系の刺激、再生不良性貧血による糖尿病や、痛風等の合併症を引き起こす。
【0004】
ヒト高尿酸血症は、人間が進化過程におけるウリカーゼ遺伝子の変異と不活性化に関連し、変異には、ヒトウリカーゼ遺伝子コード配列に早期停止コドン(Wu X、Lee C C、Muzny D M、Caskey C T.Proc Natl Acad SciUSA.1989.86:9412-9416.)が導入されるため、人間は自分で活性ウリカーゼを合成することができず、その結果、人間のプリン分解代謝は尿酸まで終結する(Wu X、Muzny D M、Lee C C、Caskey C T.J Mol Evol.1992.34:78-84.)。非ヒト霊長類動物及び他の哺乳動物の肝臓ペルオキシソーム中の活性ウリカーゼは、溶解性の低い尿酸塩(~11mg/100ml水)をより溶けやすいアラントイン(~147mg/100ml水)に変換でき、且つ腎臓によってより効果的に排泄される(Wortmann R L、Kelley W N.Kelley’s textbook of rheumatology(6th).2001:1339-1376)。ヨーロッパとアメリカでは、アスペルギルスフラバス(Aspergillus flavus)によって調製されたウリカーゼ(Uricozyme)は、腫瘍化学療法に関連する重度の高尿酸血症の治療に10年以上使用されている(Zittoun R、Dauchy F、Teilaud C、Barthelemy M、Bouchard P.Ann Med Interne.1978.127:479-482.)。フランスのサノフィ社が開発し、醸造用酵母の発酵によって製造された組換えアスペルギルスフラバスウリカーゼ薬ELITEKは、2002年にFDAによって承認され、腫瘍化学療法によって引き起こされる重度の高尿酸血症の短期治療に使用され(Pui C H、Relling M V、Lascombes F、HarrisonP L、Struxiano A et al.Leukemia.1997.11 :1813-1816.)、同時に、ELITEKの注入が痛風結節の体積を減らすこともできる(Potaux L、Aparicio M、Maurel C、Ruedas M E、Mart in C L.Nouv PresseMed.1975.4 :1109-1112.)と証明する。2010年9月、FDAによって承認された米国のSavient会社が製造したPEG修飾組換えブタ由来ウリカーゼ(Pegloticase)は、難治性痛風に使用されるが、免疫原性の問題を解決しないため、臨床応用では患者の約50%は効果がない。
【0005】
ウリカーゼ(EC 1.7.3.3)は、微生物(バチルス・ファスチジオスス(Bacillus fastidiosus)、カンジダモノサイトゲネス、アスペルギルスフラバス)、植物(大豆、ひよこ豆)、動物(豚、ウシ、イヌ、ヒヒ) に広く存在し(Suzuki K、Sakasegawa S、Misaki H、SugiyamaM.J Biosci Bioeng.2004.98 :153-158)、酸素の存在下で、それは尿酸を触媒してアラントインを酸化し、二酸化炭素を放出することができる(Retailleau P、Colloc’h、Denis V、Francoise B.Acta Cryst D.2004.60 :453-462.)。
【0006】
活性型ウリカーゼは、同じサブユニットで構成される四量体タンパク質であり、各サブユニットの分子量は約34kDであり、301-304個のアミノ酸で構成される。各溶液中のウリカーゼの最高酵素活性のpH値は8.0である(Bayol A etal.Biophys Chem.1995.54 :229-235.)。現在知られているすべての由来のウリカーゼの中で、最も高い活性はアスペルギルスフラバスから由来し、27IU/mgに達し、次に、バチルス・ファスチジオススから由来し、その活性は13IU/mgのままである(HuangSH、Wu T K.Eur J Biochem.2004.271:517-523.)。また、マメ科植物由来のウリカーゼは、その活性がわずか2~6IU/mgであり、哺乳動物由来のウリカーゼは、組換え発現後、ブタのウリカーゼ活性が5IU/mgに達し、ヒヒのウリカーゼ活性はわずか1IU/mg(Michael H、Susan J.K.2006.US7056713B1)に達し、ヒト由来のウリカーゼは活性がない。
【0007】
人間の応用として、微生物のウリカーゼの高い活性と哺乳動物のウリカーゼの低い免疫原性は、これらの2つのウリカーゼ源を現在組換えウリカーゼの開発と応用における研究のホットスポットにする。しかし、アスペルギルスフラバス由来のウリカーゼと推定されるヒト由来のウリカーゼのホモロジーは40%未満であり(Lee C C、Wu X、Gibbs R A、Cook R G、Muzny D M、CaskeyC T.Science.1988.239:1288-1291.)、人体は抗ウリカーゼ抗体を産生しやすく、アスペルギルスフラバスウリカーゼの効力は急速に弱くなり、同時に、重度のアレルギー反応を引き起し、長期治療には使用できない。
【0008】
従って、尿酸オキシダーゼに基づく高尿酸血症の治療は更なる開発と改善を必要とする。
【発明の概要】
【0009】
本願は、発明者が以下の事実と問題を発見して認識することに基づいて作られる。
【0010】
活性尿酸オキシダーゼはホモ四量体タンパク質であり、アミノ酸の3分の1は疎水性の強いアミノ酸であり、四量体タンパク質間は容易に凝集して八量体やより大きいポリマーを形成する。分子量が100kDaを超える分子は、体に免疫応答を生じさせるように効果的に誘導することができ、未修飾の量体尿酸オキシダーゼタンパク質の分子量は140kDaに達し、より大きい分子量の多量体ウリカーゼはより高い免疫原性を有する。人体は抗ウリカーゼ抗体を産生しやすく、その効力を急速に弱め、同時に、重度のアレルギー反応を引き起こし、長期治療には使用できない。PEGによるタンパク質の共有結合修飾は、タンパク質の免疫原性を低下させ、タンパク質の溶解度を高め、タンパク質の半減期を延長することが証明されている。
【0011】
デューク大学(Duke University)とサビエント(Savient)は、ブタとヒヒ源のキメラウリカーゼ研究(Michael H、Susan J.K.2006.US7056713B1)を行うことがある。この研究の方法は、酵素活性が大幅に低下しない条件下で、分子量が10KDaのメトキシ含有ポリエチレングリコール(10KDa-mPEG-NPC)によって、類ブタ由来のウリカーゼのリジン残基のε-アミノ基を修飾し(得られる修飾製品はPegloticaseである)、これは人体で難治性痛風を治療する目標を最初に達成する。本発明者らは、上記の研究結果では、薬物による免疫原性の問題を完全に解決することができず、臨床被験者は、多回注射後にウリカーゼの治療効果が消失した現象を発見し、発明者は、Pegloticaseタンパク質の過剰な分子量に関連している可能性があると推測し(10kdのPEGを使用すると、Pegloticaseの分子量が540kDaになる)、同時に、pegloticaseは注射に適さず、静脈内注射に適するため、長期間の使用に対する被験者の依頼性を低下させ、さらに、その臨床応用を厳しく制限する。これまで、免疫原性がより低く、皮下注射できる長時間作用型尿酸オキシダーゼ薬はない。
【0012】
本発明は、関連技術における技術的問題の1つを少なくともある程度解決することを目的とする。
【0013】
本発明の第1態様では、本発明は、ポリエチレングリコール修飾尿酸オキシダーゼを提供する。本発明の実施例によれば、前記尿酸オキシダーゼにおけるアミノ酸サイトである、T1、K3、K4、K30、K35、K76、K79、K97、K112、K116、K120、K152、K179、K222、K231、K266、K272、K285、K291、K293のうちの少なくとも11個がPEG修飾を有する。説明する必要なものとして、本願に記載の「尿酸オキシダーゼ」は、広い意味で理解されるべきであり、それは、実際の製造実践において、同じバッチで製造される尿酸オキシダーゼの混合物の総称を指す。発明者は、すでに市販されている類似の薬剤と比較して、本願の実施例によるポリエチレングリコール修飾尿酸オキシダーゼの上記アミノ酸サイトの少なくとも11個のサイトはPEG修飾を有し、酵素の活性を最大限に確保する前提で、尿酸オキシダーゼの体内安定性を大幅に改善し、免疫原性を低下させることができ、筋肉内注射後の体内有効性はすでに市販されている類似の薬剤の注射後の同等の体内有効性に達することができることを発見していた。
【0014】
本発明の実施例によれば、上記尿酸オキシダーゼは以下の追加の技術的特徴のうちの少なくとも1つをさらに含んでもよい。
本発明の実施例によれば、K30、K35、K222及びK231の4つのリジンサイトのうちの少なくとも1つ、2つ、3つまたは全部はPEG修飾を有する。
【0015】
本発明の実施例によれば、前記PEG修飾用ポリエチレングリコールの分子量は6KDを超えない。発明者は、分子量が6KD以下のポリエチレングリコールで修飾することで、得られた尿酸オキシダーゼの体内での長期的な効果をより高め、且つ分子量の過剰により深刻な抗PEG抗体を産生せず、つまり免疫原性がさらに低下することを発見していた。
【0016】
本発明の実施例によれば、前記ポリエチレングリコールはモノメトキシ基またはヒドロキシル基を有する。
【0017】
本発明の実施例によれば、前記ポリエチレングリコールは直鎖または分岐構造である。
【0018】
本発明の実施例によれば、前記ポリエチレングリコールと尿酸オキシダーゼとは、アミド結合を介して結合する。
【0019】
本発明の実施例によれば、前記ポリエチレングリコールは修飾ポリエチレングリコールであり、前記修飾ポリエチレングリコールの修飾基には、Nヒドロキシスクシンイミド、Nヒドロキシスクシンイミドカーボネート、Nヒドロキシスクシンイミドアセテート、Nヒドロキシスクシンイミドプロピオネート、Nヒドロキシスクシンイミドブチレート、コハク酸N-ヒドロキシスクシンイミド及びp-ニトロベンゼンカーボネートから選択される少なくとも1つが含まれる。
【0020】
本発明の実施例によれば、前記修飾ポリエチレングリコールの修飾基はNヒドロキシスクシンイミドプロピオネートである。
【0021】
本発明の実施例によれば、前記アミノ酸サイトの位置付けはSEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列に基づいて位置付けされる。
TYKKNDEVEFVRTGYGKDMIKVLHIQRDGKYHSIKEVATTVQLTLSSKKDYLHGDNSDVIPTDTIKNTVNVLAKFKGIKSIETFAVTICEHFLSSFKHVIRAQVYVEEVPWKRFEKNGVKHVHAFIYTPTGTHFCEVEQIRNGPPVIHSGIKDLKVLKTTQSGFEGFIKDQFTTLPEVKDRCFATQVYCKWRYHQGRDVDFEATWDTVRSIVLQKFAGPYDKGEYSPSVQKTLYDIQVLTLGQVPEIEDMEISLPNIHYLNIDMSKMGLINKEEVLLPLDNPYGKITGTVKRKLSSRL(SEQ ID NO:1)。
【0022】
本発明の実施例によれば、前記尿酸オキシダーゼは、SEQ ID NO:1~7に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:1~7と比較して、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%の同一性を有するポリペプチド、またはSEQ ID NO:1~7と比較して、1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠失および/または付加を有するポリペプチドである。
MAHYRNDYKKNDEVEFVRTGYGKDMIKVLHIQRDGKYHSIKEVATSVQLTLSSKKDYLHGDNSDVIPTDTIKNTVNVLAKFKGIKSIETFAVTICEHFLSSFKHVIRAQVYVEEVPWKRFEKNGVKHVHAFIYTPTGTHFCEVEQIRNGPPVIHSGIKDLKVLKTTQSGFEGFIKDQFTTLPEVKDRCFATQVYCKWRYHQGRDVDFEATWDTVRSIVLQKFAGPYDKGEYSPSVQKTLYDIQVLTLGQVPEIEDMEISLPNIHYLNIDMSKMGLINKEEVLLPLDNPYGRITGTVKRKLTSRL(SEQ ID NO:2)。
MYKNDEVEFVRTGYGKDMVKVLHIQRDGKYHSIKEVATSVQLTLSSKKDYVYGDNSDIIPTDTIKNTVHVLAKFKGIKSIETFAMNICEHFLSSFNHVIRAQVYVEEVPWKRFEKNGVKHVHAFIHNPTGTHFCEVEQMRSGPPVIHSGIKDLKVLKTTQSGFEGFIKDQFTTLPEVKDRCFATKVYCKWRYHQGRDVDFEATWDTVRDIVLEKFAGPYDKGEYSPSVQKTLYDIQVHSLSRVPEMEDMEISLPNIHYFNIDMSKMGLINKEEVLLPLDNPYGKITGTVKRKLSSRL(SEQ ID NO:3)。
MAHYHNDYKKNDEVEFVRTGYGKDMVKVLHIQRDGKYHSIKEVATSVQLTLSSKKDYVYGDNSDIIPTDTIKNTVHVLAKFKGIKSIETFAMNICEHFLSSFNHVIRAQVYVEEVPWKRFEKNGVKHVHAFIHNPTGTHFCEVEQMRSGPPVIHSGIKDLKVLKTTQSGFEGFIKDQFTTLPEVKDRCFATKVYCKWRYHQGRDVDFEATWDTVRDIVLEKFAGPYDKGEYSPSVQKTLYDIQVHSLSRVPEMEDMEISLPNIHYFNIDMSKMGLINKEEVLLPLDNPYGRITGTAKRKLASKL(SEQ ID NO:4)。
MAHYHNDYQKNDEVEFVRTGYGKDMVKVLHIQRDGKYHSIKEVATSVQLTLNSRREYLHGDNSDIIPTDTIKNTVQVLAKFKGIKSIETFAMNICEHFLSSFNHVIRVQVYVEEVPWKRFEKNGVKHVHAFIHTPTGTHFCEVEQLRSGPPVIHSGIKDLKVLKTTQSGFEGFLKDQFTTLPEVKDRCFATQVYCKWRYHQGRDVDFEATWEAVRGIVLKKFAGPYDKGEYSPSVQKTLYDIQVLSLSQLPEIEDMEISLPNIHYFNIDMSKMGLINKEEVLLPLDNPYGRITGTVKRKLTSRL(SEQ ID NO:5)。
MAHYHNDYKKNDEVEFVRTGYGKDMVKVLHIQRDGKYHSIKEVATSVQLTLSSKKDYLHGDNSDIIPTDTIKNTVHALAKFKGIKSIEAFAVNICQHFLSSFNHVIRTQVYVEEIPWKRLEKNGVKHVHAFIHTPTGTHFCEVEQLRSGPPVIHSGIKDLKVLKTTQSGFEGFIKDQFTTLPEVKDRCFAAQVYCKWRYHQCRDVDFEATWDTIRDVVLEKFAGPYDKGEYSPSVQKTLYDIQVVSLSQVPEIDDMEISLPNIHYFNIDMSKMGLINKEEVLLPLDNPYGKITGTVKRKLSSRL(SEQ ID NO:6)。
MADYHNNYKKNDELEFVRTGYGKDMVKVLHIQRDGKYHSIKEVATSVQLTLSSKKDYLHGDNSDIIPTDTIKNTVHVLAKFKGIKSIEAFGVNICEYFLSSFNHVIRAQVYVEEIPWKRLEKNGVKHVHAFIHTPTGTHFCEVEQLRSGPPVIHSGIKDLKVLKTTQSGFEGFIKDQFTTLPEVKDRCFATQVYCKWRYHQCRDVDFEATWGTIRDLVLEKFAGPYDKGEYSPSVQKTLYDIQVLSLSRVPEIEDMEISLPNIHYFNIDMSKMGLINKEEVLLPLDNPYGKITGTVKRKLSSRL(SEQ ID NO:7)。
【0023】
SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列はブタ由来及びヒヒ由来のキメラウリカーゼ(ブタ-ヒヒ)のアミノ酸配列であり、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列はブタ由来の尿酸オキシダーゼのアミノ酸配列であり、SEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列はイヌ由来とヒヒ由来(イヌヒヒ)のキメラ尿酸オキシダーゼのアミノ酸配列であり、SEQ ID NO:4に示されるアミノ酸配列はイヌ由来の尿酸オキシダーゼのアミノ酸配列であり、SEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列はウシ由来の尿酸オキシダーゼのアミノ酸配列であり、SEQ ID NO:6に示されるアミノ酸配列はサルの尿酸オキシダーゼアミノ酸配列であり、SEQ ID NO:7に示されるアミノ酸配列はヒヒの尿酸オキシダーゼアミノ酸配列である。
【0024】
説明する必要なものとして、本願のリジンの位置付けは、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列に基づいて行い、例えばK4とはSEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列に基づく位置4のリジンを指す。SEQ ID NO:1~7に示されるアミノ酸配列を有するウリカーゼまたはSEQ ID NO:1~7と比較して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%の同一性を有するポリペプチド、またはSEQ ID NO:1~7と比較して、1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠失および/または付加を有するポリペプチドは、構造上でホモロジーを有し、当業者は、配列の比較により、SEQ ID NO:2~7またはSEQ ID NO:1~7と比較して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%の同一性を有するポリペプチドまたはSEQ ID NO:1~7と比較して1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠失および/または付加を有するポリペプチド上でT1、K3、K4、K30、K35、K76、K79、K97、K112、K116、K120、K152、K179、K222、K231、K266、K272、K285、K291、K293サイトに対応する対応なサイトを決定し、さらに、上記ポリペプチドの比較された対応なサイトでPEG修飾が起こし、本願のポリエチレングリコール修飾尿酸オキシダーゼの免疫原性が低く、体内安定性が高く、筋肉内注射に適するという利点を実現する。配列比較方法は当業者が使用する一般的な方法であり、配列由来が異なるアイソザイムに対して配列同一性を比較し、異なる配列間に変異、欠失等により配列長が異なる場合があるが、当業者は配列比較によって異なる配列の間の同一性を決定することができる。
【0025】
例えば、本発明の実施例によれば、SEQ ID NO:2に示される配列がSEQ ID NO:1に示される配列のT1、K3、K4、K30、K35、K76、K79、K97、K112、K116、K120、K152、K179、K222、K231、K266、K272、K285、K291、K293サイトに対応するサイトはM1、K9、K10、K36、K41、K82、K85、K103、K118、K122、K126、K158、K185、K228、K237、K272、K278、K297、K299を含み、SEQ ID NO:3に示される配列がSEQ ID NO:1に示される配列に対応するサイトの対応なサイトはM1、K3、K29、K34、K75、K78、K111、K115、K119、K151、K178、K221、K230、K265、K271、K284、K290、K292を含み、SEQ ID NO:4に示される配列がSEQ ID NO:1に示される配列に対応するサイトの対応なサイトはM1、K9、K10、K36、K41、K82、K85、K118、K122、K126、K158、K185、K228、K237、K272、K278、K297、K299を含み、SEQ ID NO:5に示される配列がSEQ ID NO:1に示される配列に対応するサイトの対応なサイトは、M1、K10、K36、K41、K82、K85、K118、K122、K126、K158、K185、K228、K237、K272、K278、K297、K299を含み、SEQ ID NO:6に示される配列がSEQ ID NO:1に示される配列に対応するサイトの対応なサイトは、M1、K9、K10、K36、K41、K82、K85、K118、K122、K126、K158、K185、K228、K237、K272、K278、K291、K297、K299を含み、SEQ ID NO:7に示される配列がSEQ ID NO:1に示される配列に対応するサイトの対応なサイトは、M1、K9、K10、K36、K41、K82、K85、K118、K122、K126、K158、K185、K228、K237、K272、K278、K291、K297、K299を含む。発明者は、実験を通じて、上記SEQ ID NO:2~7に示されるアミノ酸配列の対応するサイトの少なくとも11個のサイトにPEG修飾が発生した後、得られたPEG修飾尿酸オキシダーゼは、免疫原性が低く、体内安定性が高く、筋肉内注射に適する利点を有すると発見した。
【0026】
本発明の第2態様では、本発明はポリエチレングリコール修飾尿酸オキシダーゼを提供する。本発明の実施例によれば、前記ポリエチレングリコール修飾尿酸オキシダーゼのペプチドマップはポリエチレングリコールで修飾されていない前記尿酸オキシダーゼのペプチドマップと比較して、少なくとも11個の所定のペプチドセグメントのピーク面積減少の相対的割合は75%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である。本発明の実施例によるポリエチレングリコール修飾尿酸オキシダーゼは、免疫原性が低く、体内安定性が高く、筋肉内注射に適する利点を有する。
【0027】
本発明の実施例によれば、上記ポリエチレングリコール修飾尿酸オキシダーゼは以下の追加の技術的特徴のうちの少なくとも1つをさらに含むことができ、
本発明の実施例によれば、前記ポリエチレングリコール修飾尿酸オキシダーゼのペプチドマップは表5に示されるピーク面積減少ペプチドセグメントを有する。
【0028】
本発明の実施例によれば、前記ポリエチレングリコール修飾尿酸オキシダーゼのペプチドマップを
図6または
図7に示す。
【0029】
本発明の第3態様では、本発明は医薬の組み合わせを提供する。本発明の実施例によれば、前記医薬の組成物は前述の尿酸オキシダーゼを含む。本発明の実施例による医薬の組成物は、免疫原性が低く、体内安定性が高く、筋肉内注射に適する利点を有し、高尿酸関連疾患の治療または予防に使用できる。
【0030】
本発明の実施例によれば、前記医薬の組成物は以下の追加の技術的特徴のうちの少なくとも1つをさらに含み、
本発明の実施例によれば、前記医薬の組成物は高尿酸関連疾患を治療または予防するための他の薬物をさらに含む。
【0031】
本発明の第4態様では、本発明は薬物の調製における前述の尿酸オキシダーゼまたは前述の医薬の組成物の用途を提供し、前記薬物は、高尿酸関連疾患を治療し、必要とする被験者の生体液中の尿酸のレベルを下げるために使用される。本発明の実施例による尿酸オキシダーゼは免疫原性が低く、体内安定性が高く、筋肉内注射に適する利点を有し、高尿酸関連疾患の治療上で顕著な優位を有する。
【0032】
本発明の実施例によれば、上記用途は以下の追加の技術的特徴のうちの少なくとも1つをさらに含むことができ、
本発明の実施例によれば、前記高尿酸関連疾患は慢性高尿酸血症、痛風、腎臓病、高尿酸性関節炎、腎臓結石、痛風結節、高血圧、糖尿病、高トリグリセリド血症、メタボリックシンドローム、冠状動脈性心臓病、アテローム性動脈硬化症、癌化学療法による高尿酸血症から選択される疾患を含む。
【0033】
本発明の実施例によれば、前記生体液は尿液または血液である。
【0034】
本発明の第5態様では、本発明は尿酸オキシダーゼの免疫原性を低下させるための方法を提供する。本発明の実施例によれば、前記方法は、前記尿酸オキシダーゼにおけるアミノ酸サイトである、T1、K3、K4、K30、K35、K76、K79、K97、K112、K116、K120、K152、K179、K222、K231、K266、K272、K285、K291、K293のうちの少なくとも11個にPEG修飾を発生させることを含む。本発明の実施例の方法によれば、尿酸オキシダーゼの免疫原性を効果的に低下させることができ、さらに得られた尿酸オキシダーゼの体内安全性がより高く、より持続的な効果を有する。
【0035】
本発明の実施例によれば、上記方法は以下の追加の技術的特徴のうちの少なくとも1つをさらに含むことができ、
本発明の実施例によれば、前記尿酸オキシダーゼにおけるK30、K35、K222、K231の4つのリジンサイトのうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つまたは4つにPEG修飾を発生させる。
【0036】
本発明の実施例によれば、前記PEG修飾用ポリエチレングリコールの分子量は6KDを超えない。
【0037】
本発明の実施例によれば、前記ポリエチレングリコールは修飾ポリエチレングリコールである。
【0038】
本発明の実施例によれば、前記修飾ポリエチレングリコールの修飾基はNヒドロキシスクシンイミドである。
【0039】
本発明の実施例によれば、前記アミノ酸サイトの位置付けはSEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列で位置付けされる。
【0040】
本発明の実施例によれば、前記尿酸オキシダーゼは、SEQ ID NO:1~7に示されるアミノ酸配列またはSEQ ID NO:1~7と比較して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%の同一性を有するポリペプチド、またはSEQ ID NO:1~7と比較して1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠失および/または付加を有するポリペプチドを有する。
【0041】
理解できるものとして、前述のポリエチレングリコール修飾尿酸オキシダーゼの追加の技術的特徴が備える技術的効果は本発明の実施例による上記の尿酸オキシダーゼの免疫原性を低下させる方法の追加の技術的特徴に適用し、ここで、本発明の実施例による上記の尿酸オキシダーゼの免疫原性を低下させる方法の追加の技術的特徴を繰り返して説明しない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本発明の実施例によるPHC物理的および化学的参照物質-SEC-HPLC-UV検出図である。
【
図2】本発明の実施例によるPHC物理的および化学的参照物質-SEC-HPLC-RI検出図である。
【
図3】本発明の実施例によるPEG参照物質-SEC-HPLC-RI検出図である。
【
図4】本発明の実施例によるPU5修飾生成物-SEC-HPLC-UV検出図である。
【
図5】本発明の実施例によるPU5修飾生成物-SEC-HPLC-RI検出図である。
【
図6】本発明の実施例によるそれぞれLys-cとトリプシンの二重消化を使用したPHCとPU5の比較図である。
【
図7】本発明の実施例によるPU5 Lys-C消化の図である。
【
図8】本発明の実施例によるモデルラットへの異なる投与用量の筋肉内投与後の血清尿酸レベルである。
【
図9】本発明の実施例による腎臓損傷、壊死及び炎症のスコア図である。
【
図10】本発明の実施例によるSDラットへの同じ用量(1.0mg/kg)Pegloticase及びポリエチレングリコール化ウリカーゼの注射液の単回静脈内注射後の各グループの平均血中濃度-時間曲線図である。
【
図11】本発明の実施例によるSDラットへのPegloticase及び異なる用量のポリエチレングリコール化ウリカーゼの注射液の単回筋肉内注射後の各グループの平均血中濃度-時間曲線図である。
【
図12】本発明の実施例によるSDラットへの異なる用量のポリエチレングリコール化ウリカーゼ注射液の単回筋肉内注射後の各グループの平均血中濃度-時間曲線図である。
【
図13】本発明の実施例によるSDラットへの異なる用量Pegloticase及びポリエチレングリコール化ウリカーゼ注射液の単回肌肉/静脈注射後の各グループの異なる時間血中尿酸平均値-時間曲線図である。
【
図14】本発明の実施例によるSDラットに同じ用量(1.0mg/kg)Pegloticase及びポリエチレングリコール化ウリカーゼ注射液を初回(Day1)静脈注射した後の雄ラットと雌ラットの平均血中濃度-時間曲線図である。
【
図15】本発明の実施例によるSDラットに同じ用量(1.0mg/kg)Pegloticase及びポリエチレングリコール化ウリカーゼ注射液を終回(Day22)静脈注射した後の雄ラットと雌ラットの平均血中濃度-時間曲線図である。
【
図16】本発明の実施例によるSDラットに同じ用量(1.0mg/kg)Pegloticase及びポリエチレングリコール化ウリカーゼ注射液を初回(Day1)筋肉内注射した後の雄ラットと雌ラットの平均血中濃度-時間曲線図である。
【
図17】本発明の実施例によるSDラットに同じ用量(1.0mg/kg)Pegloticase及びポリエチレングリコール化ウリカーゼ注射液を終回(Day22)筋肉内注射した後の雄ラットと雌ラットの平均血中濃度-時間曲線図である。
【
図18】本発明の実施例によるSDラットにPegloticase及びポリエチレングリコール化ウリカーゼ注射液を複数回静脈注射した後の異なる時間における血中尿酸平均値-時間曲線図である。
【
図19】本発明の実施例によるSDラットにPegloticase及びポリエチレングリコール化ウリカーゼ注射液を複数回筋肉内注射した後の異なる時間における血中尿酸平均値-時間曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の実施例を詳細に説明し、前記実施例の例を図に示す。以下、図を参照して説明した実施例は例示的なものであり、本発明を解釈するために使用され、本発明を制限するものとして理解されるべきではない。
【0044】
本発明は、新しいポリエチレングリコール修飾尿酸オキシダーゼを提供することを目的とする。
【0045】
本発明は、尿酸オキシダーゼの免疫原性を効果的に低下させる方法を提供することを他の目的とし、該技術は尿酸オキシダーゼの免疫原性を効果的に低下させ、尿酸オキシダーゼの体内安全性及び安定性を向上させることができる。
【0046】
本発明は、上記で得られたポリエチレングリコールオキシウリカーゼコンジュゲートの応用を提供することを他の目的とし、該コンジュゲートは、体内で血中尿酸レベルを持続的で大幅に低下させる効力を達成することができ、高尿酸血症及び痛風の治療に使用することができる。
【0047】
本発明の一態様では、ポリエチレングリコール修飾尿酸オキシダーゼを提供する。
【0048】
本文で使用されるように、「尿酸オキシダーゼ」、「ウリカーゼ」という用語は交換可能に使用され、尿酸を触媒して酸化し、アラントインと過酸化水素を生成する本発明に記載の酵素のクラスを指す。「尿酸オキシダーゼ類似体」、「ウリカーゼ類似体」、「ウリカーゼ派生物」という用語は交換可能であり、尿酸オキシダーゼが尿酸を特異的に触媒してアラントインと過酸化水素に変換する活性を保持することに基づいて、尿酸オキシダーゼのタンパク質構造配列に対して一部のアミノ酸での置換、欠失または付加などの構造改善を行うことができ、本例の免疫原性の低下、タンパク質の安定性の向上、さらなるポリエチレングリコール修飾の促進などを実現するが、これらに限定されない。
【0049】
尿酸オキシダーゼは、特に制限されず、任意の由来の尿酸オキシダーゼ及びその尿酸オキシダーゼ類似体であってもよく、代表的な例は、哺乳動物由来、微生物、植物等を含むが、これらに限定されない。
【0050】
他の好ましい例では、前記尿酸オキシダーゼ及びその尿酸オキシダーゼ類似体は哺乳動物由来である。好ましくはSEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4に示されるアミノ酸配列であり、より好ましくはSEQ ID NO:1である。
【0051】
本発明に記載の異なる種由来の尿酸オキシダーゼは、自然抽出、化学合成、遺伝子工程組換え発現等を含むがこれらに限定されない様々な方法によって得られることができる。
【0052】
他の好ましい例では、尿酸オキシダーゼは、組換え技術を使用して、尿酸オキシダーゼタンパク質配列(SEQ ID NO:1)のコード配列を宿主細胞において組換え発現する。
【0053】
他の好ましい例では、大腸菌または酵母を宿主として、組換え発現菌株を構築する方法によって調製され、より好ましくは、大腸菌を宿主細菌として組換え発現を行う。
【0054】
本文で使用されるように、本発明に記載のポリエチレングリコール尿酸オキシダーゼとは、尿酸オキシダーゼをポリエチレングリコールで共有結合的に修飾することによって得られる。前記ポリエチレングリコール(PEG)とは、エチレンオキシド縮合ポリマーと水の混合物を指し、一般式H(OCH2CH2)nOHで表され、これは、中性pH、非毒性、高い水溶性の親水性ポリマーであり、線形または分岐構造を呈する。PEGの非毒性と良好な生体適合性により、現在、FDAは複数種のPEG修飾組換えタンパク質薬物の市場投入を承認しており、PEGはタンパク質の免疫原性を低下させ、タンパク質の溶解性を高め、タンパク質の半減期を延長させるために使用できることを証明する。PEGをタンパク質に結合するには、PEGの1つまたは複数の末端を活性化する必要があり、アミノ基、スルフヒドリル基、カルボキシル基またはヒドロキシル基などの修飾された標的タンパク質に応じて対応する修飾基を選択して活性化することができる。
【0055】
他の好ましい例では、本発明では、尿酸オキシダー及びウリカーゼ類似体に対してPEG修飾を行うためのサイトはリジン残基のεアミノ基であるが、少量のN末端リジン残基のαアミノ基で修飾される。尿酸オキシダーゼはアミノ脂質結合、二級アミノ結合またはアミド結合を介してPEGの修飾基に共有結合して接続され、好ましくは、ポリエチレングリコール分子が尿酸オキシダーゼと結合してアミド結合を形成し、そのポリエチレングリコールの修飾基は、Nヒドロキシスクシンイミドなどを含むが、これらに限定されず、Nヒドロキシスクシンイミド(NHS)、Nヒドロキシスクシンイミドカーボネート(SC)、Nヒドロキシスクシンイミドアセテート(SCM)、Nヒドロキシスクシンイミドプロピオネート(SPA)、Nヒドロキシスクシンイミドブチレート(SBA)、コハク酸N-ヒドロキシスクシンイミド(SS)などを含むが、これらに限定されず、ポリエチレングリコールのブロッキング基は、モノメトキシ基、エトキシ基、グルコースまたはガラクトース糖を含むが、これらに限定されず、好ましくはモノメトキシ基である。
【0056】
他の好ましい例では、ポリエチレングリコールは直鎖または分岐鎖であってもよい。
【0057】
他の好ましい例では、ポリエチレングリコール尿酸オキシダーゼに用いられるポリエチレングリコールの相対分子量は6KD以下であり、好ましくは1KD~5KDであり、より好ましくは2KD、5KDであり、最も好ましくは5KDである。説明する必要なものとして、本願に記載の「ポリエチレングリコールの相対分子量」とは、修飾基を含まないポリエチレングリコールの相対分子量を指し、当該分野で一般的な意味を有し、PEGが活性化基によって活性化された後、総相対分子量は5KD+10%の範囲内など、5KDよりわずかに大きくなる。
【0058】
他の好ましい例では、前記ポリエチレングリコール修飾尿酸オキシダーゼは、以下の特徴を有し、
(1)尿酸オキシダーゼにおけるアミノ酸サイトである、T1、K3、K4、K30、K35、K76、K79、K97、K112、K116、K120、K152、K179、K222、K231、K266、K272、K285、K291、K293のうちの少なくとも11個はPEG修飾を有する。
(2)1つの尿酸オキシダーゼモノマー分子は平均して11~13個のポリエチレングリコール分子と結合する。
(3)Seq ID NO:1 尿酸オキシダーゼ配列に位置するK30および/またはK35、及びK222および/またはK231はポリエチレングリコール結合によって修飾される。
(4)ポリエチレングリコール尿酸オキシダーゼはより低い体内免疫原性を有する。
【0059】
本発明の他の態様では、尿酸オキシダーゼ免疫原性を効果的に低下させる方法を提供し、該技術は、尿酸オキシダーゼの免疫原性を効果的に低下させ、尿酸オキシダーゼの体内安定性を向上させることができる。
【0060】
本文で使用されるように、ポリエチレングリコール修飾尿酸オキシダーゼは、尿酸オキシダーゼが、特に制限されず、任意の由来の尿酸オキシダーゼ及びその尿酸オキシダーゼ類似体であってもよく、代表的な例は、哺乳動物由来、微生物、植物等を含むが、これらに限定されないことを特徴とする。
【0061】
他の好ましい例では、前記尿酸オキシダーゼ及びその尿酸オキシダーゼ類似体は哺乳動物由来である。好ましくはSEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4に示されるアミノ酸配列であり、より好ましくはSEQ ID NO:1である。
【0062】
本発明に記載の異なる種由来の尿酸オキシダーゼは、自然抽出、化学合成、遺伝子工程組換え発現等を含むがこれらに限定されない様々な方法によって得られることができる。
【0063】
他の好ましい例では、大腸菌または酵母を宿主として、組換え発現菌株を構築する方法によって調製され、より好ましくは、大腸菌を宿主細菌として組換え発現を行う。
【0064】
本発明に記載の尿酸オキシダーゼは、大腸菌で組換え発現させて大量の尿酸オキシダーゼを得ることができ、発現された尿酸オキシダーゼは、細胞内、または細胞膜上で発現し、または細胞外に分泌することができる。必要に応じて、当業者が知られている方法によって高純度の尿酸オキシダーゼを得ることができる。これらの方法の例は、遠心分離、静菌、塩析、限外ろ過、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、分子ふるいクロマトグラフィー及びその他の様々な技術の組合わせを含むが、これらに限定されない。
【0065】
上記で得られる尿酸オキシダーゼは、当該分野で知られている方法を使用して連結基を介してポリエチレングリコールに共有結合させることができる。
【0066】
他の好ましい例では、ポリエチレングリコールは、尿酸オキシダーゼの空間構造の表面にあるリジン残基を方向性を持って修飾する。尿酸オキシダーゼはアミド結合を介してPEGの修飾基(活性基とも呼ばれる)に共有結合され、そのポリエチレングリコールの修飾基(活性基とも呼ばれる)は、Nヒドロキシスクシンイミド(NHS)、Nヒドロキシスクシンイミドカーボネート(SC)、Nヒドロキシスクシンイミドアセテート(SCM)、Nヒドロキシスクシンイミドプロピオネート(SPA)、Nヒドロキシスクシンイミドブチレート(SBA)、コハク酸N-ヒドロキシスクシンイミド(SS)を含むが、これらに限定されず、ポリエチレングリコールのブロッキング基は、モノメトキシ基、エトキシ基、グルコースまたはガラクトース糖を含むが、これらに限定されず、好ましくはモノメトキシ基である。
【0067】
他の好ましい例では、ポリエチレングリコールは直鎖または直鎖である。
【0068】
他の好ましい例では、ポリエチレングリコールの相対分子量は6KD以下であり、好ましくは1KD ~5KDであり、最も好ましくは5KDである。
【0069】
他の好ましい例では、本発明はポリエチレングリコール修飾尿酸オキシダーゼの調製方法を提供し、1つまたは複数の特徴を有し、
(1)尿酸オキシダーゼとポリエチレングリコールの修飾供給モル比は1:50~1:150(尿酸オキシダーゼ:ポリエチレングリコール)であり、好ましくは、1:55~1:95の供給モル比修飾である。
(2)結合反応系は炭酸塩緩衝液であり、その修飾されたpH範囲は9~11である。
【0070】
上記ポリエチレングリコール修飾尿酸オキシダーゼの調製方法は、様々な精製手段を使用して高純度のポリエチレングリコール修飾尿酸オキシダーゼを取得する。
【0071】
他の好ましい例では、修飾サンプルの精製には、分子ふるいクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、タンジェンシャルフロー限外ろ過、または組み合わせを含むが、これらに限定されない方法が使用される。より好ましくは分子ふるいクロマトグラフィー、タンジェンシャルフロー限外ろ過である。
【0072】
本発明の他の態様では、上記ポリエチレングリコール修飾尿酸オキシダーゼ及びその応用を提供する。該コンジュゲートは、体内で持続的且つ大幅に血中尿酸レベルを低下させる効力を達成することができ、高尿酸血症及び痛風の治療に使用されることができる。
【0073】
前記のポリエチレングリコール尿酸オキシダーゼは、慢性高尿酸血症または痛風を治療する薬物及びその組成物により適用される。前記高尿酸血症及び痛風の主要症状は、尿酸性腎症と痛風性関節炎を含むが、これらに限定されない。
【0074】
前記ポリエチレングリコール尿酸オキシダーゼの投与経路は、静脈注射、皮下注射、筋肉内注射及び腹腔内注射などを含むが、これらに限定されず、好ましくは静脈注射、筋肉内注射であり、より好ましくは筋肉内注射である。
【0075】
前記ポリエチレングリコール尿酸オキシダーゼはより低い体内免疫原性を有する。
【0076】
前記ポリエチレングリコール尿酸オキシダーゼが低い免疫原性を有するということは、人または動物の体内にポリエチレングリコール尿酸オキシダーゼを筋肉内注射した後、体がポリエチレングリコール分子に抵抗する抗体を生成しないか、または低力価のポリエチレングリコール分子に抵抗する抗体を生成する。尿酸オキシダーゼに対する抗体を生成しない。
【0077】
前記ポリエチレングリコール尿酸オキシダーゼは、筋肉内注射された後の体内でのより長い半減期、体内尿酸レベルを低下させる効力を有する。
【0078】
本発明の実施例によれば、本発明のポリエチレングリコール修飾尿酸オキシダーゼは、酵素の活性を最大限に確保する前提で、尿酸オキシダーゼの体内安定性を大幅に改善し、免疫原性を低下させることができ、筋肉内注射後の体内有効性はすでに市販されている類似の薬剤の注射後の同等の体内有効性に達することができる。このため、本発明のポリエチレングリコール修飾尿酸オキシダーゼ及び該ポリエチレングリコール修飾尿酸オキシダーゼを含む医薬の組成物は高尿酸関連疾患を治療または予防する時に投与されることができる。
【0079】
本文で使用される「投与」という用語は、所定量の物質をある適切な方法で患者に導入することを指す。本発明のポリエチレングリコール修飾尿酸オキシダーゼは、所望の組織に到達することができる限り、任意の一般的な経路によって投与されることができる。投与の様々方法は、所望の、腹膜、静脈内、筋肉内、皮下、皮膚、経口、局所、鼻、肺及び直腸を含むが、本発明はこれらの挙げられた投与方法に制限されない。なお、本発明の医薬の組成物は、活性成分を標的細胞に送達する特定の器械を使用して投与することができる。
【0080】
本発明の医薬の組成物の投与頻度及び用量は、複数の関連要素によって決定されることができ、該要素は、治療される病気タイプ、投与経路、患者の年齢、性別、体重、重症度、及び活性成分としての薬物タイプを含む。
【0081】
「治療有効量」という用語は、病気または障害に関連するある症状を有意に改善するのに十分な化合物の量を指し、即ち、所与の障害と投与計画に対して治療効果を提供する量を指す。例えば、慢性高尿酸血症または痛風治療では、病気または障害の任意の症状を軽減、予防、遅延、阻害または遮断する薬物または化合物は治療に有効である。治療有効量の薬物または化合物は、病気または障害を治癒する必要がないが、病気または障害に治療を提供し、個人の病気または障害の発作が延緩、阻止または予防されたり、病気または障害の症状が緩和されたり、病気または障害の期間が変化されたり、例えば病気または障害がそれほど深刻ではなくなったり、または回復が加速されたりする。
【0082】
「治療」という用語は、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを指す。前記効果は、病気またはその症状を完全または部分的に予防するという点で予防的である可能性があり、および/または病気および/または病気による副作用を部分的にまたは完全に治癒するという点で治療的である可能性がある。本文で使用される「治療」は、哺乳動物、特に人の病気(主に高尿酸関連疾患を指す)の治療をカバーし、(a)病気にかかりやすいが、まだ病気と診断されていない個人の病気を予防する、(b)病気の進行を遅らせるなど、病気を抑制する、または(c)病気に関連する症状を軽減するなど、病気を緩和する。本文で使用される「治療」は、薬物または化合物を個体に投与し、個体の病気を治療、治癒、緩和、改善、軽減または抑制する任意の薬物を含み、本文に記載のポリエチレングリコール修飾尿酸オキシダーゼを必要な個体に投与することを含むが、これらに限定されない。
【0083】
本発明の実施例によれば、本発明のポリエチレングリコール修飾尿酸オキシダーゼまたは医薬の組成物は、従来の治療方法および/または治療法と組み合わせて使用することができ、または従来の治療方法および/または治療法とは別に使用することができる。本発明のポリエチレングリコール修飾尿酸オキシダーゼまたは医薬の組成物は、他の薬物との併用治療法によって投与される場合、順次または同時に個体に投与することができる。または、本発明の医薬の組成物は、本発明のポリエチレングリコール修飾尿酸オキシダーゼ、薬学的に許容される担体または薬学的に許容される賦形剤、及び当技術分野で知られている他の治療薬または予防薬の組み合わせを含むことができる。
【0084】
「平均修飾度」という用語は、各ウリカーゼモノマーに結合したPEGの数を指す。
【0085】
本文では、特に明記しない限り、「アミノ酸サイトはPEG修飾を有する」という表現は、対応するポリペプチドの立体構造において、PEG分子が該アミノ酸サイトをカバーし、それにより該アミノ酸サイトの基の少なくとも一部は曝露されない。当業者は、従来の技術的手段によって特定のアミノ酸サイトがPEG分子によって修飾されるかどうかを決定することができ、例えば本願の実施例3の「ポリエチレングリコール修飾サイト検出」という部分にリストされた方法を参照して同定することができることを理解できる。要するに、該方法は、1)非ポリエチレングリコール化とポリエチレングリコール化尿酸オキシダーゼを1つまたは複数の酵素で消化し、例えばLys-CまたはTrypsinで単一消化してもよいし、Lys-CとTrypsinで二重消化してもよいステップ、2)高速液体クロマトグラフィーで消化された断片を分離し、非ポリエチレングリコール化とポリエチレングリコール化尿酸オキシダーゼのクロマトグラム、即ちペプチドマップを作成するステップと、3)非ポリエチレングリコール化とポリエチレングリコール化尿酸オキシダーゼのペプチドマップの違いを比較し、所定の内部標準ペプチドセグメントと組み合わせて、ポリエチレングリコール化尿酸オキシダーゼの特定のアミノ酸サイトが位置するペプチドセグメントピークの減少または消失の相対的な割合を決定し、さらにペプチドセグメントでの該特定のアミノ酸サイトがPEGによって修飾されるかどうかを判断するステップと、を含む。具体的に、本願の実施例3において、特定のアミノ酸サイトが位置するペプチドセグメントのピーク面積の減少または消失の相対的な割合は以下の式によって計算されることができ、
P(%)=(A2- A1)/A2×100%、
A1=A0×t
ただし、A0はテスト対象修飾タンパク質の特定のアミノ酸サイトが位置するペプチドセグメントの実際測定ピーク面積であり、tはPHCペプチドマップとテスト対象修飾タンパク質ペプチドマップの内部参照ペプチドセグメントのピーク面積比の平均値であり、
P(%)は特定のアミノ酸サイトが位置するペプチドセグメントのピーク面積の減少または消失の相対的な割合を示し、A2はPHCペプチドマップでの特定のアミノ酸サイトが位置するペプチドセグメントのペプチドセグメントピーク面積であり、A1は内部参照によって換算された後の特定のアミノ酸サイトが位置するペプチドセグメントはテスト対象修飾タンパク質ペプチドマップでのピーク面積である。
【0086】
理解すべきものとして、本発明の範囲内で、本発明の上記各技術的特徴は以下(例えば実施例)での具体的に説明する様々な技術的特徴と互いに組み合わせられることができ、それにより、新しいまたは好ましい技術案を構成し、以下の例を参照することによりより明らかに理解することができる。本明細書の長さに限定されるため、前記例は説明のみを目的として、本発明を限定することを意図するものではない。
【0087】
以下、本発明の実施例を詳細に説明し、前記実施例の例を図面に示す。以下、図面を参照して説明した実施例は例示的なものであり、本発明を解釈するために使用され、本発明を制限するものとして理解されるべきではない。
【0088】
実施例1 組換え尿酸オキシダーゼの調製
【0089】
1.1 ウリカーゼ発現用遺伝子と発現プラスミドの構築
E.coliコドン使用バイアスデータに基づいて、コドン優先度及びGC含有量などの要因と組み合わせて、ウリカーゼタンパク質(コードネーム:PHC)(SEQ ID NO:1)のcDNA配列を設計し、遺伝子全体を合成し、pUC-57-PHCプラスミドと名付けられる。Nde IとBamH Iを標的遺伝子挿入サイトとして使用し、pET-30aプラスミドを発現ベクター(pET-30a-PHC)として使用する。
【0090】
1.2 発現プラスミドの細菌宿主細胞への形質転換
CaCl2法によって発現ベクターpET-30a-PHCを大腸菌BL21(DE3)に導入し、Kanamycinの耐性をスクリーニングし、高発現クローンをスクリーニングし、元のシードバンク株(E3B)を保存し、これらのステップは分子生物学の分野で一般的な方法に従って実施される。
【0091】
1.3 組換え尿酸オキシダーゼの調製
形質転換されたエンジニアリング株を発酵槽で発酵発現させ、制御条件は、最初に30℃であり、pHが約7.2であり、OD600=30以上まで培養し、IPTGを0.5mmol/Lまで添加し、3h以上誘導し続けて、尿酸オキシダーゼを蓄積させる。遠心分離により細胞を収集し、次に、-15℃以下で保存する。
【0092】
凍結した細菌を取り、25mmol/LのTris、5mmol/LのEDTA緩衝液に懸濁し、懸濁比が1:10(W/V)である。細菌細胞を高圧で破砕した後、遠心分離により尿酸オキシダーゼ沈殿物を収集し、沈殿物を50mmol/LのNaHCO3で1回洗浄した後、濃縮したウリカーゼ沈殿物を100mmol/LのNa2HCO3(pH9.7~10.3)の緩衝液に懸濁し、懸濁比が1:50(W/V)であり、室温で一晩撹拌して溶解し、その後、遠心分離により上清を収集する。
【0093】
尿酸オキシダーゼは、いくつかのクロマトグラフィーステップによってさらに精製され、SDS-PAGE検出純度は95%以上であり、Superdex 200カラムによる純度は95%以上であり、凝集体形態がなく、Lowry法を使用してタンパク質濃度を測定し、分光光度計を使用して尿酸オキシダーゼの活性を測定し、1単位(U)の酵素活性は、最適反応温度の37℃で、最適pHの9.0の緩衝液条件下で、1分間に1μmolの尿酸を形質転換するのに必要な量として定義される。
【0094】
実施例2 ポリエチレングリコール化尿酸オキシダーゼの調製
5KD分子量のN-プロピオン酸スクシンイミドPEG(5K-PEG-SPA)を2mmol/LのHClで200mmol/LのPEG溶液に溶解し、溶解後で1:55~1:95のモル比(尿酸オキシダーゼ:5K-PEG-SPA)で、尿酸オキシダーゼと5K-PEG-SPAとのモル比はモノマー形態に従って計算され、即ち、1:55~1:95のモル比とは、モノマー形態の尿酸オキシダーゼと5K-PEG-SPAとのモル比を指し、尿酸オキシダーゼを溶解した炭酸塩濃度が0.1~0.3mol/L、pHが10.0の炭酸緩衝液に加え、PEGと尿酸オキシダーゼとは結合反応を起こし、結合反応は、PEG結合の程度が時間とともに変化しなくなるまで、5~30℃の条件下で60分間以上撹拌して反応する必要がある。反応が終了した後、限外濾過および/またはクロマトグラフィーによって修飾されないPEG及び副生成物を反応から除去する。適切な分子ふるいクロマトグラフィー媒体を使用して、修飾された副生成物の分離除去を行う。最終に、滅菌ろ過で5Kの修飾されたポリエチレングリコール化尿酸オキシダーゼ(コードネームPU5)を得る。
【0095】
実施例3 ポリエチレングリコール化尿酸オキシダーゼの特性分析
【0096】
3.1 平均修飾度及び酵素活性検出
Lowry法によりタンパク質濃度を測定し、ポリエチレングリコール尿酸オキシダーゼの活性は、分光光度計で測定される。ウリカーゼ基質尿酸の最大紫外吸収波長は293nmであり、生成物アラントインの最大紫外吸収波長は224nmであり、一定の濃度範囲内で、尿酸の293nmでの吸収値はその濃度に比例し、分光光度計法で尿酸の定量的な測定を行うことができる。具体的な過程は、以下の通りであり、紫外可視分光光度計を使用して、波長を293nmに調整し、機器のウォーターバス循環システムをオンにして温度を37°Cに保つ。四ホウ酸ナトリウム緩衝液をブランク対照として、ゼロ点を補正し、2.95mlの基質反応液(0.1mol/Lの四ホウ酸ナトリウム、100μmol/Lの尿酸、pH9.5、37℃に予熱)を取り、石英キュベットに入れ、次に、50μlの試験物質を加えて迅速に混合した後293nmで吸収値を測定する。293nmでの吸光度の変化を連続的に測定し、C=A/εL(Aは特定の濃度の尿酸の293nmでの吸光値、εは尿酸モル吸光係数であり、Lはキュベットの光路であり、Cは尿酸のモル濃度である)に従って尿酸の分解濃度を計算し、酵素活性を計算し、酵素活性は、最適反応温度の37℃、最適反応のpH9.5である場合、1分間に1μmolの尿酸をアラントインに形質転換するのに必要な酵素の量を1つの活性単位(U)として定義する。
【0097】
SEC-HPLCタンデムUV/RI(紫外と屈折率検出器の組合わせ)を使用してポリエチレングリコール尿酸オキシダーゼの平均修飾度を検出する。タンパク質によると、紫外280nmに最大吸収ピークを有し、PEGは該波長で吸収がなく、同時に、示差屈折率検出器によるタンパク質とPEGは一定の範囲内での吸収値とその様々な濃度とは比例する。このため、PEG参照物質とPHC物理的および化学的参照物質の外部標準によってポリエチレングリコール化尿酸オキシダーゼ中のPEGとタンパク質部分のそれぞれの含有量を取得することができ、さらに、以下の計算方法によって各尿酸オキシダーゼモノマー上のPEG分子数、即ち平均修飾度を取得することができる。
【0098】
PEG尿酸オキシダーゼの平均修飾度=(尿酸オキシダーゼサブユニットの相対分子量×サンプル中のPEGの量)/(PEG相対分子量×サンプル中のタンパク質の量)。
【0099】
PHC物理的および化学的参照物質、PEG参照物質、PU5修飾生成物SEC-HPLC-UV/RI検出図を
図1~
図5に示す。
【0100】
実施例2の異なる供給比下で得られたポリエチレングリコール尿酸オキシダーゼの酵素活性と平均修飾度を表1に示す。
【表1】
【0101】
表1から分かるように、本願のポリエチレングリコール尿酸オキシダーゼの平均修飾度は11個以上で安定し、且つ酵素活性は修飾されない尿酸オキシダーゼと比べて、酵素活性保持率が高くし、酵素活性は低下することがなくて、逆に向上し、且つ酵素活性は比較的安定している。これは、市販されている薬物Krystexx(pegloticase)とは完全に異なり、MountainView特許に開示されている内容(CN1264575C、
図2A-
図3B)と当業者の一般的な知識によると、5kD PEG修飾度の増加に伴って、酵素活性は大幅に低下する。しかしながら、意外にも、本願で得られるポリエチレングリコールウリカーゼは11を超える平均修飾度で、酵素活性は修飾されない場合と比較して有意に変化しない。このため、本願のポリエチレングリコール尿酸オキシダーゼは、市販されている薬剤と比較して、ポリエチレングリコールの平均修飾度がより高くし、酵素活性の保持に関して予想外の技術的効果も達成する。発明者は、それが、ポリエチレングリコール尿酸オキシダーゼのPEG修飾度または修飾サイトの異なりによって引き起こされる可能性があると推定する。
【0102】
発明者は、SEQ ID NO:2-7のタンパク質を修飾し、同様な技術的効果を取得し、即ち5kd修飾度が11より大きい場合、酵素活性の実質的な低下を伴わないPEG化尿酸オキシダーゼを取得する。
【0103】
3.2 ポリエチレングリコール修飾サイト検出
以下のステップでは、発明者は実施例2で得られた尿酸オキシダーゼの修飾サイトを検出する。
【0104】
ポリエチレングリコール修飾尿酸オキシダーゼのPEG修飾サイトは、非ポリエチレングリコール化とポリエチレングリコール化尿酸オキシダーゼを1つまたは複数の酵素で消化し、そして、クロマトグラフィー検出を行い、クロマトグラムを取得し、即ちペプチドマップの確認である。非ポリエチレングリコール化とポリエチレングリコール化尿酸オキシダーゼは、単一消化(Lys-CまたはTrypsin)及び/または二重消化(Lys-CとTrypsinの併用)で消化することができる。逆相カラムによって消化された断片を分離し、ポリエチレングリコール尿酸オキシダーゼの修飾サイトは、内部参照ペプチドセグメント補正によりペプチドセグメントの消失または低下比を比較することによって判断される。
【0105】
トリプシンとLys-C二重消化品質ペプチドマップ中の修飾サイト分析原理は以下の通りであり、Lys-Cはリジン(K)C末端を特異的に消化することができ、トリプシンは塩基性アミノ酸-アルギニン(R)とリジン(K)を消化サイトとして、そのC末端ペプチド結合を特異的に消化する。PHCとPU5での消化前後の対応する各ペプチドセグメントの変化状況を比較し、内部標準ペプチドセグメントを組み合わせることでPEG修飾ペプチドセグメントの減少または消失の相対的な割合を分析及び確認することができる。ペプチドセグメントの減少または消失の相対的な割合を通じて、ペプチドセグメント上で該リジンサイトがPEGによって修飾されるかどうか、修飾される割合を判断することができる。指摘する必要があるものとして、PEG修飾は不均一な修飾であり、あるサイト修飾割合が高いと、該サイトが修飾されると見なすことができる。
【0106】
具体的に以下の通りであり、
(1)サンプル処理:尿酸オキシダーゼとポリエチレングリコール化尿酸オキシダーゼをそれぞれ消化緩衝液(25mmol/LのTris-HCl、20%アセトニトリル、pH9.0)で1mg/mlに溶解して希釈し、それぞれ100μlを取り、2μlのLys-Cを加え、37℃で4時間消化する。即ち該溶液をパンクレリパーゼ反応チューブ(1:100の割合)に移し、37度で2時間消化し、4μlのTCEP還元溶液で30分間反応を続けて、10μlの1mol/L塩酸溶液を加えて反応を停止する。
(2)分析条件
機器:Thermo Ultimate 3000 HPLC及びMSQ Plus、
クロマトグラフィーカラム:月旭 Welch Materials μltimate
(R)XB-C
18(4.6mm×250mm、5μm)、
分析条件:A液(0.1%TFAを含む水溶液)、B液(0.1%TFAを含むアセトニトリル溶液)、
勾配:0-70min、B 3-70%、
LC検出波長:214nm。
イオン源:ESI、
イオンタイプ:陽イオン、
コーン電圧:50V、
走査範囲:300-2000Da、
走査時間:1S、
カラム後のスプリットフロー約0.3ml/min。
100μlのサンプル量を注入し、クロマトグラムを記録する。
(3)結果処理:
尿酸オキシダーゼとポリエチレングリコール化尿酸オキシダーゼのクロマトグラム(ペプチドマップ)を比較して、異なるペプチドセグメントの面積減少の相対的な割合を計算する。
(4)実験結果を表2~表5、及び
図6~
図7に示す。
【表2】
【表3】
【0107】
PU5ペプチドセグメントピーク面積の減少率の計算方法は以下の通りであり、
以下の式によってPU5とPHCの同じ濃度で対応するPU5ペプチドセグメントピーク面積を計算し、
A
1=A
0×t
A
1は2つの内部参照ペプチドセグメントの換算後のPU5ペプチドセグメントのピーク面積であり、A
0はPU5ペプチドマップペプチドセグメントの実際測定ピーク面積であり、tは番号T30、T31の内部参照ペプチドセグメント中のPHCペプチドマップとPU5ペプチドマップのピーク面積比の平均値、即ち0.588である。
【表4】
【0108】
内部参照による換算後のペプチドセグメントピーク面積とPHCペプチドマップピーク面積を以下の式によって、PU5ペプチドマップ中のあるペプチドセグメントピーク面積減少の相対的なパーセンテージを算出することができ、
P(%)=(A2- A1)/A2×100%
式中、A2はPHCペプチドマップにおけるあるペプチドセグメントのペプチドセグメントピーク面積であり、A1は内部参照による換算後の該ペプチドセグメントのPU5ペプチドセグメントのピーク面積である。
【0109】
【0110】
本実施例によるタンパク質配列(SEQ ID NO:1)分析から分かるように、尿酸オキシダーゼが修飾される潜在的なサイトはT1、K3、K4、K17、K21、K30、K35、K48、K49、K66、K74、K76、K79、K97、K112、K116、K120、K152、K155、K158、K169、K179、K190、K215、K222、K231、K266、K272、K285、K291、K293などの31個のサイトを有する。
【0111】
実施例2で得られたポリエチレングリコール修飾尿酸オキシダーゼの修飾サイトの分析から分かるように、表2、表3、表4、表5及び
図6の分析に示すように、PU5消化後、ペプチドセグメントの90%以上で消失するサイトはK
3、K
4、K
35、K
97、K
112、K
116、K
120、K
152、K
222、K
266、K
285であり、PU5消化後、ペプチドセグメントの80%~90%範囲内で消失するサイトはK
76、K
231であり、PU5では、これらのサイトはずべて修飾される。
【0112】
同時に、発明者は、本願のポリエチレングリコール修飾尿酸オキシダーゼの修飾サイトは、市販されている薬物と比較して、修飾サイトがより多く、有意に異なることを発見しており、例えば、単一消化を通じて、本願のポリエチレングリコール修飾尿酸オキシダーゼは、K30、K35、K222及びK231の4個のサイトが位置するペプチドセグメントの消失割合が80%以上であり、方法によって市販されている類似の薬剤であるKrystexx(pegloticase)を分析することにより、この4個のサイトが位置するペプチドセグメントはほとんど消失しなく、即ち市販されている類似の薬剤のK30、K35、K222及びK231の4個のサイトでの修飾率は本願のポリエチレングリコール修飾尿酸オキシダーゼよりはるかに低いことを発見した。また、本願のポリエチレングリコール修飾尿酸オキシダーゼは、市販されている薬物と比較して、免疫原性が大幅に低下し、発明者は、修飾サイトの数と修飾サイトの異なりに関係があることを推定する。修飾サイトと修飾程度が異なるため、酵素の体内免疫原性サイトの保護と酵素の活性中心の曝露が異なり、上記異なりにより異なる修飾酵素の体内生物学的特性を引き起こす可能性がある。
【0113】
以下、本願のポリエチレングリコール修飾尿酸オキシダーゼ(PU5)の薬物動物の体内評価を詳細に説明し、実験に用いられるpegloticaseとは、市販されている類似の薬剤を指し、ロット番号は5085Bである。
【0114】
実施例4 ポリエチレングリコール尿酸オキシダーゼの体内薬力学に関する研究
【0115】
4.1、モデルラットの体内のポリエチレングリコール尿酸オキシダーゼの有効性評価
オキソン酸カリウム飲料水を高尿酸飼料と組み合わせて使用し、ラットの慢性高尿酸血症モデルを誘導し、ポリエチレングリコール尿酸オキシダーゼ(PU5)がラットの慢性高尿酸血症に対する治療作用を評価する。
【0116】
40匹のモデルラットを選択し、ランダムに4グループ、即ちモデルグループ、ポリエチレングリコール化ウリカーゼ低用量投与グループ(0.3mg/kg)、ポリエチレングリコール化ウリカーゼ中用量投与グループ(1.0mg/kg)、ポリエチレングリコール化ウリカーゼ高用量投与グループ(3.0mg/kg)に分けられ、各グループに10匹であり、別の10匹の正常なSDラットをブランク対照グループとして選択する。試験は、5週間連続でモデリングし、1週間モデリングした後、筋肉内投与を開始し、週1回投与し、連続で4週間投与し、投与前と各投与7日後のラットの血清尿酸、血清尿素窒素、血清クレアチニンのレベルをそれぞれ検出し、試験後にラット腎臓の組織学的変化を観察する。
【0117】
図8の結果に示すように、モデリング後7、14、21、28及び35日目に、ブランク対照グループと比較して、モデル対照グループの血中尿酸レベルはすべて大幅に上昇し、モデリングの7日後のモデルグループのラット血清尿素窒素、クレアチニン及び尿酸はそれぞれブランクグループのラットの2.73倍、2.40倍及び7.83倍である。腎病理学の観点から(
図9に示すように)、モデル対照グループの腎尿細管拡張、壊死、炎症及び線維症のスコアはすべて大幅に増加し、同時に、尿酸塩結晶の数量も大幅に増加する。試験対象物質であるポリエチレングリコール化ウリカーゼの中、高用量はいずれも血清尿酸レベルを大幅に低下させ、用量に関連する関係を示し、14日~35日間、中用量グループの血中尿酸レベルの平均値は303.80-660.60μmol/L、高用量グループの血中尿酸レベルの平均値は153.70-403.40μmol/Lに維持され、モデルグループと比較して、中用量グループの血中尿酸減少の範囲は34.46-67.94%であり、高用量グループの血中尿酸減少の範囲は65.67-83.78%である。モデル対照グループと比較して、ポリエチレングリコール化ウリカーゼの各投与グループは腎尿細管拡張、腎臓壊死及び炎症に対していずれも有意な改善効果を有する。
【0118】
4.2、ポリエチレングリコール尿酸オキシダーゼラットの体内単回投与評価
36匹のSDラットを取り、雌と雄にそれぞれ半分であり、ランダムに6グループ(表6に示す)に分けられ、即ち市販薬のPegloticase静脈注射グループ、筋肉内注射グループ、ポリエチレングリコール尿酸オキシダーゼ静脈注射グループ及びポリエチレングリコール尿酸オキシダーゼの低、中、高(0.5、1.0、2.0mg/kg)用量筋肉内注射グループであり、具体的な投与計画及び用量を表6に示す。頸静脈採血によってPKとPDを検出する。
【0119】
【0120】
4.2.1、薬物動態の比較
SDラットに投与する前にすべての個体の血清薬物濃度レベルはいずれも定量下限(LLOQ:312.500ng/mL)より低くし、0~168h(0~7日)範囲内で、0.5、1.0、2.0mg/kgのポリエチレングリコール化ウリカーゼ注射液(PU5)を単回筋肉内注射した後血清薬物濃度は用量依存性を有し、全体的なレベルは投与用量の増加とともに増加し、168h超えた後、pegloticase筋肉内投与グループの血中濃度は定量下限より低くし、PU5の筋肉内投与グループは240h以上維持し続けることができる。
【0121】
投与後、1.0mg/kgのPegloticaseの静脈注射及び筋肉内注射グループ、1.0mg/kgポリエチレングリコール化ウリカーゼ注射液静脈注射及び0.5、1.0、2.0mg/kgポリエチレングリコール化ウリカーゼ注射液筋肉内注射グループの各グループの雌と雄SDラットの体内Cmax(C5min)比は0.75~0.99範囲内にあり、AUClast比は0.54~0.94範囲内にあり、AUC0-∞比は0.58~0.97範囲内にある。これから見ると、Pegloticaseとポリエチレングリコール化ウリカーゼ(PU5)注射液はSDラットの体内での曝露レベルに有意な性差がない。
【0122】
しかしながら、SDラットに同じ用量(1.0mg/kg)の市販薬であるPegloticaseを投与すしたところ、静脈投与グループのAUClastは426.48±65.34であり、筋肉内注射グループのAUClastは264.19±78.22であり、PU5注射液静脈投与グループのAUClastは565.61±161.60であり、筋肉内注射グループのAUClastは337.86±227.34である。同じ用量で、同様な投与方法の条件下で、PU5のAUClastは市販薬Pegloticaseより高い。
【0123】
SDラットに同じ用量(1.0mg/kg)の市販薬であるPegloticaseを投与すしたところ、静脈投与グループのt1/2(h)は49.51±8.12であり、筋肉内投与グループのt1/2(h)は55.21±13.50である。PU5注射液静脈投与グループのt1/2(h)は86.12±33.82であり、筋肉内投与グループのt1/2(h)は60.45±21.37である。同じ用量、同様な投与方法の条件下で、PU5注射液のt1/2(h)は市販薬であるPegloticaseより長い。
【0124】
上記薬物動態結果を表7~表12、
図10~
図12に示す。
【表7】
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
4.2.2、体内有効性の比較(尿酸)
0.5、1.0、2.0mg/kgのポリエチレングリコール化ウリカーゼ注射液を単回筋肉内注射した後、投与後1日、3日の尿酸濃度は低いレベルに維持し、投与後7日の各用量グループ尿酸レベルは回復し始め、投与用量が高いほど、尿酸が体内で低いレベルに維持する時間が長くなる。同じ用量の静脈注射グループと比較して、PU5静脈注射グループの血清尿酸が低い濃度レベルに維持する時間はすべてpegloticase静脈注射グループより長い。同じ用量の筋肉内注射グループと比較して、PU5筋肉内注射グループの血清尿酸が低い濃度レベルに維持する時間はすべてpegloticase筋肉内注射グループより長い。同じ用量グループと比較して、PU5静脈注射または筋肉内注射グループの血清尿酸が低い濃度レベルに維持する時間はすべてpegloticase静脈注射グループまたは筋肉内注射グループより長くし、即ちPU5が体内で低い濃度レベルに維持する時間はすべてpegloticaseより長い。結果を
図13に示す。
【0131】
4.3、ポリエチレングリコール尿酸オキシダーゼをラットの体内に複数回投与する評価
本試験では、4グループに分けられ、それぞれ市販薬であるPegloticase静脈注射グループ、筋肉内注射グループ、ポリエチレングリコール化ウリカーゼ注射液(PU5)静脈注射グループ、筋肉内注射グループであり、各グループに8匹であり、雌と雄がそれぞれ半分であり、合計32匹のSDラットである。Pegloticase及びポリエチレングリコール化ウリカーゼ注射液の静脈注射グループは静脈注射を使用し、Pegloticase及びポリエチレングリコール化ウリカーゼ注射液の筋肉内注射グループは筋肉内注射を使用する。投与用量はいずれも1.0mg/kgである。週1回投与し、連続で4回投与する。
【0132】
結果分析から分かるように、
SDラットに1.0mg/kgのPegloticase及びポリエチレングリコール化ウリカーゼ注射液を複数回静脈/筋肉内注射する。ラットの一般的な状態に薬物関連の異常な変化はない。
【0133】
4.3.1 抗PEG抗体の検出
SDラットに連続で4回投与した後、初回の投与前、すべての個体動物で抗PEG抗体と抗PHC抗体が検出されなく、投与の終了後、すべての動物で抗PHC抗体が検出されなく、Pegloticase静脈、筋肉内注射グループ、ポリエチレングリコール化ウリカーゼ注射液静脈、筋肉内注射グループの各グループで抗PEG抗体が検出され、陽性結果の割合はそれぞれ3/8、1/8、1/8、1/8である。PEG免疫組織化学的検査により、pegloticase静脈注射グループと筋肉内注射グループの脾臓、肝臓及び腎臓はPEGの弱い陽性発現を示したことを発見する。ポリエチレングリコール化ウリカーゼ注射液静脈注射グループと筋肉内注射グループでPEG陽性発現を発見しなく、結果を表13に示す。
【0134】
以上の分析から分かるように、PU5とpegloticaseが生成した抗体は尿酸オキシダーゼ部分に対する抗体ではなく、主にPEG部分に対する抗体であり、両方とも尿酸オキシダーゼの免疫原性サイトを効果的に遮蔽することができることを示す。PEG抗体の生成は、体内で一部の副作用を引き起こす可能性があり、表13の結果によると、本願のPU5免疫原性は市販の製品であるpgeloticaseより低くなる。
【0135】
PEG抗体及びPEG免疫組織化学の結果から分かるように、PU5とpegloticaseの両方が筋肉内投与グループでは静脈投与グループよりも優れ、静脈投与グループで生成した抗PEG抗体、PU5はpegloticaseよりも優れ、筋肉内投与グループで生成した抗PEG抗体、PU5はpegloticaseよりも優れる。
【0136】
【0137】
4.3.2 薬物動態検出
SDラットにPegloticase及びポリエチレングリコール化ウリカーゼ注射液を複数回静脈、筋肉内注射した後、各グループの動物の主な薬物動態パラメータには有意な性差がない。連続で4回投与した後、2種の薬物はラットの体内にわずかに蓄積する。
【0138】
SDラットに同じ用量(1.0mg/kg)の市販薬であるPegloticaseを複数回静脈/筋肉内注射し、初回の投与後、ラット体内の絶対バイオアベイラビリティはそれぞれ51.35%であり、終回の投与後、ラット体内の絶対バイオアベイラビリティはそれぞれ45.98%である。SDラットに同じ用量(1.0mg/kg)のポリエチレングリコール化ウリカーゼ注射液を複数回静脈/筋肉内注射し、初回の投与後、ラット体内の絶対バイオアベイラビリティはそれぞれ58.29%であり、終回の投与後、ラット体内の絶対バイオアベイラビリティはそれぞれ52.60%である。
【0139】
4.3.3 体内の有効性の比較(尿酸)
SDラットに1.0mg/kgのPegloticaseとポリエチレングリコール化ウリカーゼ注射液を連続で4回(1回/週)静脈、筋肉内注射し、毎回の投与後、血清尿酸濃度はいずれも低いレベルに維持し、終回の投与後から14日に、Pegloticase筋肉内注射グループは回復があり、残りの各グループは終回の投与後から18日に回復がある。同じ用量の市販薬であるPegloticaseと比較して、2種の薬物静脈注射グループの維持時間は比較的一致し、ポリエチレングリコール化ウリカーゼ注射液筋肉内注射グループの維持時間は市販薬より長くし、即ちPU5は筋肉内投与の治療効果がPegloticaseより優れる。
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
本明細書の説明において、「一実施例」、「いくつかの実施例」、「例」、「具体例」、又は「いくつかの例」という参照用語などの説明は、該実施例又は例を組み合わせて説明した具体的な特徴、構造、材料又は特点が本発明の少なくとも1つの実施例又は例に含まれる。本明細書において、上記の用語の例示的な叙述は必ずしも同じ実施例又は例を指す必要がない。さらに、説明される具体的な特徴、構造、材料又は特点は任意の1つ又は複数の実施例又は例において適切な方式で結合することができる。なお、矛盾がない場合、当業者は、本明細書に記載されている異なる実施例又は例及び異なる実施例又は例の特徴を結合及び組み合わせることができる。
【0145】
本発明の実施例を以上で示し、説明したが、理解できるものとして、上記実施例は例示的なものであり、本発明を限定するものとして理解されるべきではなく、当業者は、本発明の範囲内で上記実施例に対して変化、修正、置換及び変形を行うことができる。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【外国語明細書】