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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037891
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】黒色腫の治療のための組合せ医薬
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4025 20060101AFI20240312BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 31/437 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
A61K31/4025
A61K45/00
A61P43/00 121
A61P35/00
A61P35/04
A61P17/00
A61K31/437
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023210858
(22)【出願日】2023-12-14
(62)【分割の表示】P 2022026851の分割
【原出願日】2014-07-11
(31)【優先権主張番号】61/845,749
(32)【優先日】2013-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516011659
【氏名又は名称】ピラマル エンタープライズイズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(72)【発明者】
【氏名】アガーワル,ヴィーナ
(72)【発明者】
【氏名】ペリヤサミ,ギリドハラン
(72)【発明者】
【氏名】ラトス,マギー
(72)【発明者】
【氏名】シュリーヴァスタヴァ,アンキタ
(72)【発明者】
【氏名】シュリニヴァーサ,スリーシャ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】黒色腫を治療するための医薬組成物を提供する。
【解決手段】式1

(式中、Arはフェニルであり、これは、塩素およびトリフルオロメチルから選択される2つの異なる置換基で置換されている)
の化合物と、BRAF阻害剤またはMEK阻害剤から選択される少なくとも1種の抗がん剤とを含む組合せ医薬組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒色腫を治療するための医薬組成物であって、式I
【化1】
(式中、Arはフェニルであり、これは、塩素およびトリフルオロメチルから選択される
2つの異なる置換基で置換されている)
の化合物または薬学的に許容されるその塩から選択されるCDK(サイクリン依存性キナ
ーゼ)阻害剤の治療有効量と、ソラフェニブ、GDC-0879、PLX4720、BM
S-908662、LGX818、PLX3603、ARQ-736、DP-4978、
RAF265、セルメチニブ、ビニメチニブ、PD-0325901、コビメチニブ、レ
ファメチニブ、ピマセルチブ、TAK-733およびWX-554から選択される少なく
とも1種の抗がん剤の治療有効量を含む、医薬組成物。
【請求項2】
黒色腫を治療するための医薬組成物であって、式I
【化2】
(式中、Arはフェニルであり、これは、塩素およびトリフルオロメチルから選択される
2つの異なる置換基で置換されている)
の化合物または薬学的に許容されるその塩から選択されるCDK(サイクリン依存性キナ
ーゼ)阻害剤の治療有効量を含み、該組成物が、ソラフェニブ、GDC-0879、PL
X4720、BMS-908662、LGX818、PLX3603、ARQ-736、
DP-4978、RAF265、セルメチニブ、ビニメチニブ、PD-0325901、
コビメチニブ、レファメチニブ、ピマセルチブ、TAK-733およびWX-554から
選択される少なくとも1種の抗がん剤の治療有効量との同時投与または逐次的投与に用い
られる、医薬組成物。
【請求項3】
CDK阻害剤が(+)-trans-2-(2-クロロ-4-トリフルオロメチルフェ
ニル)-5,7-ジヒドロキシ-8-(2-ヒドロキシメチル-1-メチル-ピロリジン
-3-イル)-クロメン-4-オン塩酸塩である、請求項1または2に記載の医薬組成物
【請求項4】
抗がん剤が、V600変異形態のBRAFの阻害剤である、請求項1から3のいずれか
1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
抗がん剤が、V600EまたはV600K変異形態のBRAFの阻害剤である、請求項
1から3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記CDK阻害剤と、少なくとも1種の抗がん剤とが、それを必要とする対象に同時に
投与される、請求項1から5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記CDK阻害剤と、少なくとも1種の抗がん剤とが、それを必要とする対象に逐次的
に投与される、請求項1から5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
黒色腫が非難治性黒色腫である、請求項1から7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
黒色腫が非難治性BRAF変異型黒色腫である、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
黒色腫が非難治性BRAF V600変異型黒色腫である、請求項9に記載の医薬組成
物。
【請求項11】
黒色腫が、非難治性BRAF V600EまたはBRAF V600K変異型黒色腫で
ある、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
黒色腫が再発性または難治性黒色腫である、請求項1から7のいずれか1項に記載の医
薬組成物。
【請求項13】
黒色腫が、再発性または難治性BRAF変異型黒色腫である、請求項12に記載の医薬
組成物。
【請求項14】
黒色腫が、再発性または難治性BRAF V600変異型黒色腫である、請求項13に
記載の医薬組成物。
【請求項15】
黒色腫が、再発性または難治性BRAF V600E黒色腫またはBRAF V600
K変異型黒色腫である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
黒色腫が転移性黒色腫である、請求項1から7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
黒色腫が転移性BRAF変異型黒色腫である、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
黒色腫が転移性BRAF V600変異型黒色腫である、請求項17に記載の医薬組成
物。
【請求項19】
黒色腫が転移性BRAF V600E黒色腫またはBRAF V600K変異型黒色腫
である、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
黒色腫を治療するための医薬の製造における、式I
【化3】
(式中、Arはフェニルであり、これは、塩素およびトリフルオロメチルから選択される
2つの異なる置換基で置換されている)
の化合物または薬学的に許容されるその塩から選択されるCDK(サイクリン依存性キナ
ーゼ)阻害剤の治療有効量と、ソラフェニブ、GDC-0879、PLX4720、BM
S-908662、LGX818、PLX3603、ARQ-736、DP-4978、
RAF265、セルメチニブ、ビニメチニブ、PD-0325901、コビメチニブ、レ
ファメチニブ、ピマセルチブ、TAK-733およびWX-554から選択される少なく
とも1種の抗がん剤の治療有効量との使用。
【請求項21】
黒色腫を治療するための医薬の製造における、式I
【化4】
(式中、Arはフェニルであり、これは、塩素およびトリフルオロメチルから選択される
2つの異なる置換基で置換されている)
の化合物または薬学的に許容されるその塩から選択されるCDK(サイクリン依存性キナ
ーゼ)阻害剤の治療有効量の使用であって、該医薬が、ソラフェニブ、GDC-0879
、PLX4720、BMS-908662、LGX818、PLX3603、ARQ-7
36、DP-4978、RAF265、セルメチニブ、ビニメチニブ、PD-03259
01、コビメチニブ、レファメチニブ、ピマセルチブ、TAK-733およびWX-55
4から選択される少なくとも1種の抗がん剤の治療有効量との同時投与または逐次的投与
に用いられる、使用。
【請求項22】
CDK阻害剤が(+)-trans-2-(2-クロロ-4-トリフルオロメチルフェ
ニル)-5,7-ジヒドロキシ-8-(2-ヒドロキシメチル-1-メチル-ピロリジン
-3-イル)-クロメン-4-オン塩酸塩である、請求項20または21に記載の使用。
【請求項23】
抗がん剤が、V600変異形態のBRAFの阻害剤である、請求項20から22のいず
れか1項に記載の使用。
【請求項24】
抗がん剤が、V600EまたはV600K変異形態のBRAFの阻害剤である、請求項
20から22のいずれか1項に記載の使用。
【請求項25】
前記CDK阻害剤と、少なくとも1種の抗がん剤とが、それを必要とする対象に同時に
投与される、請求項20から24のいずれか1項に記載の使用。
【請求項26】
前記CDK阻害剤と、少なくとも1種の抗がん剤とが、それを必要とする対象に逐次的
に投与される、請求項20から24のいずれか1項に記載の使用。
【請求項27】
黒色腫が非難治性黒色腫である、請求項20から26のいずれか1項に記載の使用。
【請求項28】
黒色腫が非難治性BRAF変異型黒色腫である、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
黒色腫が非難治性BRAF V600変異型黒色腫である、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
黒色腫が、非難治性BRAF V600EまたはBRAF V600K変異型黒色腫で
ある、請求項29に記載の使用。
【請求項31】
黒色腫が再発性または難治性黒色腫である、請求項20から26のいずれか1項に記載
の使用。
【請求項32】
黒色腫が、再発性または難治性BRAF変異型黒色腫である、請求項31に記載の使用
【請求項33】
黒色腫が、再発性または難治性BRAF V600変異型黒色腫である、請求項32に
記載の使用。
【請求項34】
黒色腫が、再発性または難治性BRAF V600E黒色腫またはBRAF V600
K変異型黒色腫である、請求項33に記載の使用。
【請求項35】
黒色腫が転移性黒色腫である、請求項20から26のいずれか1項に記載の使用。
【請求項36】
黒色腫が転移性BRAF変異型黒色腫である、請求項35に記載の使用。
【請求項37】
黒色腫が転移性BRAF V600変異型黒色腫である、請求項36に記載の使用。
【請求項38】
黒色腫が転移性BRAF V600E黒色腫またはBRAF V600K変異型黒色腫
である、請求項37に記載の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黒色腫の治療における使用のための、式I(本明細書中に記載されている通
り)の化合物または薬学的に許容されるその塩によって代表されるCDK(サイクリン依
存性キナーゼ)阻害剤と、BRAF(セリン-トレオニンタンパク質キナーゼB-raf
)阻害剤またはMEK(マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ)阻害剤から選択される
少なくとも1種の抗がん剤とを含む組合せ医薬に関する。本発明はまた、組合せ医薬を使
用して黒色腫を治療する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
黒色腫は、最も重篤なタイプの皮膚がんである。実際に、黒色腫はメラニン形成細胞と
呼ばれる細胞内から始まる悪性腫瘍であり、このメラニン形成細胞は色素生成細胞である
。黒色腫は、皮膚内に最も頻繁に生じるが、眼の中または鼻、口または生殖器の内壁にも
発症する。その後、黒色腫は内臓に拡散することができる。黒色腫が皮膚に生じた場合、
皮膚黒色腫と呼ばれる。黒色腫が眼に生じた場合、眼の黒色腫または眼内黒色腫と呼ばれ
る。黒色腫の発生率は世界中で増加しており、皮膚がんによる死亡の80%は悪性黒色腫
が原因であることが報告されている(N.Engl.J.Med.、2010年、第36
3巻、8号、711~723ページ)。
【0003】
黒色腫が拡散する場合、がん細胞はリンパ節中に発見されることが多い。がんがリンパ
節に到達している場合、これは、がん細胞が身体の他の部分、例えば、肝臓、肺または脳
などに拡散しており、転移性黒色腫を引き起こしている可能性があるという徴候である。
実際に、黒色腫の転移は極めて攻撃的であり、転移性黒色腫を有する患者の生存時間は平
均して3~15カ月しかない。残念なことに、転移性黒色腫に有効な治療はない。早期診
断および早急な外科切除は、患者にとって治癒の可能性への可能なオプションである。転
移性黒色腫に対する治療レジメンは、最初は、インターロイキン-2、ダカルバジン、テ
モゾロミド、フォテムスチンおよびカルボプラチンなどの薬物で構成されるが、それぞれ
乏しい応答速度および乏しい全生存期間を伴う。例えば、ダカルバジンは、7~12%の
応答速度および治療開始後平均5~8カ月の全生存期間を伴うことが判明した(N.En
gl.J.Med.、2011年、第364巻、26号、2507~2516ページ)。
【0004】
一般的ながんの大きなパネルにおける、マイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナ
ーゼ経路の研究では、黒色腫の40~60%が、セリン-トレオニンタンパク質キナーゼ
B-raf(BRAF)をコードしている遺伝子において活性化突然変異を保持すること
が判明した。黒色腫中に観察されたBRAF突然変異体の中で、90%超がコドン600
に位置し、これらの中で、90%超が単一のヌクレオチド突然変異体であり、結果として
、バリンをグルタミン酸に置換する(BRAF V600E)。2番目によく起こる突然
変異は、バリンをリシンに置換するBRAF V600Kであり、これは黒色腫の5~6
%を占め、これに続いてBRAF V600R(バリンをアルギニンに置換)およびBR
AF V600D(バリンをアスパラギン酸に置換)である(Journal of T
ranslational Medicine、2012年、第10巻、85号、1~9
ページ)。
【0005】
BRAF阻害剤は、低いナノモル濃度でBRAF変異体黒色腫を有する患者の大部分に
おいて腫瘍の縮小に有効であることが判明した。効力を制限する因子は、薬物耐性および
5~7カ月に制限されている無増悪生存率である。強力なBRAF V600阻害剤のい
くつかの例として、BAY43-9006(ソラフェニブ、Bayer)、ベムラフェニ
ブ(PLX4032、Plexxikon;RG7204、RO5185426、Hof
mann-LaRoche)、GDC-0879(GlaxoSmithKline)、
ダブラフェニブ(GSK2118436、GlaxoSmithKline)、PLX4
720(Hofmann-LaRoche)、BMS-908662(XL281、Br
istol-Myers Squibb)、LGX818(Novartis)、PLX
3603(RO5212054、Hofmann-LaRoche)、ARQ-736(
ArQule)、DP-4978(Deciphera)およびRAF265(Nova
rtis)が挙げられる。
【0006】
ベムラフェニブは、変異BRAF、特にBRAF V600E突然変異の強力な阻害剤
である。ベムラフェニブは、BRAF V600E突然変異を有する黒色腫に罹った患者
の81%において完全または部分的な腫瘍退縮を誘発させた。応答が、骨、肝臓および小
腸を含むすべての疾患部位において観察された。しかし、ベムラフェニブに対する信頼で
きる早期応答後、応答性腫瘍は治療に対する耐性を生み出すことが判明した。BRAF
V600E突然変異を有する一部の患者において、腫瘍は、初期応答の証拠なしに耐性を
示した(N.Engl.J.Med.、2010年、第363巻、9号、809~819
ページ)。ダブラフェニブは、ヒト野生型タイプBRAFおよびCRAF酵素ならびに変
異形態のBRAF V600E、BRAF V600KおよびBRAF V600Dの強
力および選択的なRAFキナーゼ阻害剤である。
【0007】
MEK1およびMEK2は、標的タンパク質内のチロシンとトレオニンの両方のリン酸
化を触媒する二重特異性キナーゼである。二重特異性キナーゼはタンパク質セリン/トレ
オニンキナーゼファミリー内に含まれる。タンパク質リン酸化はシグナル伝達に使用され
る最も広範囲なクラスの翻訳後修飾である(Biochemical and Biop
hysical Research Communications、2012年、第4
17巻、5~10ページ)。MEK1およびMEK2は、RAS-RAF-MEK-ER
Kシグナル伝達カスケード(時には、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK
)カスケードとして表示されることもある)に参加する、遍在的に発現する親水性の非受
容体タンパク質である。Ras媒介性Raf活性化は、MEK1およびMEK2(MAP
/ERKキナーゼ1および2)の活性化を引き起こし、ひいてはチロシン185およびト
レオニン183上のERK1およびERK2(細胞外シグナル調節キナーゼ1および2)
をリン酸化する。活性化したERK1およびERK2は、転位し、核内に蓄積し、この核
内で、細胞の増殖および生存を制御する転写因子を含む様々な基質をリン酸化することが
できる。これらのカスケードの制御された調節は細胞増殖および分化に関与しているのに
対して、これらキナーゼの調節されていない活性化は発癌をもたらす可能性がある。RA
S/RAF/MEK経路の異常調節はヒト腫瘍の30%超において検出されているが、M
EK1およびMEK2遺伝子における突然変異はほとんど検出されず、よって、MEK1
/2の過剰活性化は通常、RASおよび/またはBRAFにおける機能獲得型変異に起因
する。ヒトがんの発症におけるRas/Raf/MEK/ERK経路の重要性を考慮する
と、シグナル伝達カスケードのキナーゼ構成部分は、がんおよび他の増殖性疾患における
病状悪化のモジュレーションに対して潜在的に重要なターゲットである。
【0008】
強力なMEK阻害剤のいくつかの例として、トラメチニブ(Mekinist(商標)
)、セルメチニブ(AstraZeneca)、ビニメチニブ(Array Bioph
arma)、PD-0325901(Pfizer)、コビメチニブ(Exelixis
)、レファメチニブ(Valeant Pharmaceutical Int.)、ピ
マセルチブ(Santhera Pharmaceuticals)、TAK-733(
Takeda)およびWX-554(UCB Pharma SA)が挙げられる。
【0009】
トラメチニブはMEK1およびMEK2の強力な選択的阻害剤である。BRAF阻害剤
で以前に治療していないBRAF V600EまたはBRAF V600K突然変異を有
する転移性悪性黒色腫に罹った患者において、化学療法と比較した場合の、トラメチニブ
に関する有意な臨床的活性が実証されている(ダカルバジンまたはパクリタキセルのいず
れか)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように、転移性黒色腫および耐性BRAF突然変異黒色腫は、既存の療法で治療す
るのが引き続き困難であることが上記考察から明らかであり、したがって、これらの進行
を予防することと、状態を治療することの両方のために、これらの状態に対する新規の有
効な治療の必要性が引き続き存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一態様では、本発明は、黒色腫の治療における使用のための、式I(本明細書中に記載
されている通り)の化合物または薬学的に許容されるその塩によって代表されるCDK(
サイクリン依存性キナーゼ)阻害剤と、BRAF(セリン-トレオニンタンパク質キナー
ゼB-raf)阻害剤またはMEK(マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ)阻害剤か
ら選択される少なくとも1種の抗がん剤とを含む組合せ医薬に関する。
【0012】
別の態様では、本発明は、式I(本明細書中に記載されている通り)の化合物または薬
学的に許容されるその塩によって代表されるCDK阻害剤の治療有効量を、BRAF阻害
剤またはMEK阻害剤から選択される少なくとも1種の抗がん剤の治療有効量と組み合わ
せて、それを必要とする対象に投与することを含む、黒色腫を治療する方法に関する。
【0013】
別の態様では、本発明は、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩から選択され
るCDK阻害剤と、BRAF阻害剤またはMEK阻害剤から選択される少なくとも1種の
抗がん剤と、1種または複数の薬学的に許容される担体、賦形剤または添加剤とを含む、
本発明の医薬組成物に関する。
【0014】
さらなる態様では、本発明は、黒色腫の治療のための、式Iの化合物または薬学的に許
容されるその塩によって代表されるCDK阻害剤と、BRAF阻害剤またはMEK阻害剤
から選択される少なくとも1種の抗がん剤とを含む、組合せ医薬の使用に関する。
【0015】
さらなる態様では、本発明は、黒色腫の治療のための医薬品の製造のための、式Iの化
合物または薬学的に許容されるその塩によって代表されるCDK阻害剤およびBRAF阻
害剤またはMEK阻害剤から選択される少なくとも1種の抗がん剤の使用に関する。
【0016】
さらなる態様では、本発明は、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩から選択
されるCDK阻害剤と、BRAF阻害剤またはMEK阻害剤から選択される少なくとも1
種の抗がん剤とを含む、医薬キットに関する。
【0017】
本発明の他の態様および適応可能なさらなる範囲が、以下に続く詳述された記載から明
らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】5日後のG361黒色腫細胞における、単独でおよび組み合わせた化合物A(ボルシクリブ)およびベムラフェニブの細胞周期およびアポトーシスに対する影響を、フローサイトメトリーを使用して表す図である。
図2】24h処置したG361黒色腫細胞における、単独でおよび組み合わせた化合物A(ボルシクリブ)およびベムラフェニブの初期アポトーシスに対する影響を、Annexin染色法を使用して表すグラフである。
図3】単独でおよび組み合わせた化合物A(ボルシクリブ)およびベムラフェニブの、5日後のSK-MEL3黒色腫細胞の細胞周期およびアポトーシスに対する影響を、フローサイトメトリーを使用して表す図である。
図4】A375細胞株における、単独でおよび組み合わせた化合物A(ボルシクリブ)およびベムラフェニブ(48h)の影響を表すグラフである。
図5】G361細胞株における、単独でおよび組み合わせた化合物A(ボルシクリブ)およびベムラフェニブ(48h)の影響を表すグラフである。
図6】MDA-MB435S細胞株における、単独でおよび組み合わせた化合物A(ボルシクリブ)およびベムラフェニブ(48h)の影響を表すグラフである。
図7a】A375親細胞株およびA375R耐性細胞株に関する化合物A(ボルシクリブ)およびベムラフェニブ単独での(48h)用量反応曲線を表すグラフである。
図7b】A375親細胞株およびA375R耐性細胞株に関する化合物A(ボルシクリブ)およびベムラフェニブ単独での(48h)用量反応曲線を表すグラフである。
図8a】A375耐性細胞株における、単独でおよび組み合わせた化合物A(ボルシクリブ)およびベムラフェニブ(48h)の影響を表すグラフである。
図8b】A375耐性細胞株における、単独でおよび組み合わせた化合物A(ボルシクリブ)およびベムラフェニブ(48h)の影響を表すグラフである。
図9a】A375R耐性細胞株における、単独でおよび組み合わせた化合物A(ボルシクリブ)およびベムラフェニブ(48h)の影響を表すグラフである。
図9b】A375R耐性細胞株における、単独でおよび組み合わせた化合物A(ボルシクリブ)およびベムラフェニブ(48h)の影響を表すグラフである。
図10a】A375耐性細胞株における、単独でおよび組み合わせた化合物A(ボルシクリブ)およびトラメチニブ(48h)の影響を表すグラフである。
図10b】A375耐性細胞株における、単独でおよび組み合わせた化合物A(ボルシクリブ)およびトラメチニブ(48h)の影響を表すグラフである。
図11a】A375R耐性細胞株における、単独でおよび組み合わせた化合物A(ボルシクリブ)およびトラメチニブ(48h)の影響を表すグラフである。
図11b】A375R耐性細胞株における、単独でおよび組み合わせた化合物A(ボルシクリブ)およびトラメチニブ(48h)の影響を表すグラフである。
図12a】A375耐性細胞株における、単独でおよび組み合わせた化合物A(ボルシクリブ)およびダブラフェニブ(48h)の影響を表すグラフである。
図12b】A375耐性細胞株における、単独でおよび組み合わせた化合物A(ボルシクリブ)およびダブラフェニブ(48h)の影響を表すグラフである。
図13a】A375R耐性細胞株における、単独でおよび組み合わせた化合物A(ボルシクリブ)およびダブラフェニブ(48h)の影響を表すグラフである。
図13b】A375R耐性細胞株における、単独でおよび組み合わせた化合物A(ボルシクリブ)およびダブラフェニブ(48h)の影響を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書のこれより前および本明細書のこれより以下に使用されている一般的用語は、
本開示の脈絡の中で、他に指摘されていない限り、好ましくは以下の意味を有する。した
がって、本発明の状況で使用した場合の一般的用語の定義は、本明細書で以下に提供され
る:
【0020】
単数形「a」、「an」および「the」は、文脈でそうでないことが明確に指示され
ていない限り複数の言及を含む。
【0021】
用語の一部としての「(複数も可)」の使用は、用語の個々についてまたは複数につい
ての言及を含み、例えば薬剤(複数も可)という用語は、単一の薬剤または複数の薬剤を
示している。
【0022】
本明細書で使用する場合、「少なくとも1種の」という用語は、1種または複数を指す
。例えば、「少なくとも1種の抗がん剤」という用語は、この組合せが単一の抗がん剤ま
たは複数の抗がん剤を含むことを意味する。
【0023】
「置換」または「~で置換されている」とは、このような置換は置換された原子および
置換基の許容された原子価に合致するという暗黙の条件を含み、ならびに転位、環化、脱
離などの変換を容易に受けない安定した化合物を意味することを理解されたい。
【0024】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される」という用語は、担体、賦形剤、添加
剤および/または塩は、製剤の他の成分と適合しなければならず、そのレシピエントにと
って有害であってはならないことを意味する。「薬学的に許容される」はまた、組成物ま
たは剤形は、健全な医学的判断の範囲内であり、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、ま
たは他の問題もしくは合併症なしに動物またはヒトに対する使用に対して適切であり、妥
当なベネフィット/リスク比に見合うことを意味する。
【0025】
本明細書で使用する場合、「組合せ」または「組合せ医薬」という用語は、抗がん剤の
併用投与、本発明の状況では、CDK阻害剤(式Iの化合物)と、BRAF阻害剤または
MEK阻害剤から選択される少なくとも1種の抗がん剤との併用投与を意味し、これらの
抗がん剤は、独立して、同時にまたは組合せパートナーが相乗効果を示すことを特に可能
にする時間間隔をおいて別々に投与することができる。
【0026】
サイクリン依存性キナーゼ(CDK)は、細胞周期の特異的な段階において活性化する
酵素のファミリーである。CDKは、触媒サブユニット(実際のサイクリン依存性キナー
ゼまたはCDK)および調節サブユニット(サイクリン)からなる。少なくとも9種のC
DK(CDK1、CDK2、CDK3、CDK4、CDK5、CDK6、CDK7、CD
K8、CDK9など)および少なくとも15種の異なるタイプのサイクリン(サイクリン
A、B1、B2、D1、D2、D3、E、Hなど)が存在する。細胞周期の各ステップは
このようなCDK複合体により調節されている:G1/S移行(CDK2/サイクリンA
、CDK4/サイクリンD1-D3、CDK6/サイクリンD3)、S期(CDK2/サ
イクリンA)、G2段階30(CDK1/サイクリンA)、G2/M移行段階(CDK1
/サイクリンB)。
【0027】
本明細書で使用する場合、「CDK阻害剤」という用語は、1種または複数のサイクリ
ン依存性キナーゼ(複数も可)(CDK)を阻害することが可能な薬剤を指す。これらの
キナーゼの異常な発現および過剰発現は、がんなどの多くの疾患状態において証拠だてら
れている。本発明の状況では、本発明の組合せ医薬中に含有されているCDK阻害剤は、
式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩を指す。本発明の化合物は、特異性をもっ
て、CDK1/サイクリンB、CDK2/サイクリンE、CDK4/サイクリンD、CD
K4/サイクリンD1および/またはCDK9/サイクリンT1を阻害する。
【0028】
本明細書で使用する場合、「BRAF阻害剤」という用語は、BRAFキナーゼまたは
変異したBRAFキナーゼ活性(1種または複数の変異形態のセリン-トレオニンタンパ
ク質キナーゼB-RAF(BRAF))を阻害可能な薬剤を指す。報告されたBRAF突
然変異の90パーセントは、アミノ酸600においてバリンがグルタミン酸で置換される
(V600E突然変異)。したがって、「BRAF阻害剤」という用語は、その範囲内に
、BRAFまたはその変異形態を阻害可能な化合物;またはV600の変異形態のBRA
Fを阻害可能な化合物;または非難治性と難治性の黒色腫の両方におけるV600E変異
形態のBRAFを阻害可能な化合物を包含する。
【0029】
本明細書で使用する場合、「MEK阻害剤」という用語は、マイトジェン活性化タンパ
ク質キナーゼ(MEK)と相互作用し、その酵素活性を阻害することが可能である薬剤を
指す。MEK酵素活性を阻害することは、ひいては基質ペプチドまたはタンパク質をリン
酸化するMEKの能力を低下させる。MEK1およびMEK2は、RAS-RAF-ME
K-ERKシグナル伝達カスケードに関与しているタンパク質キナーゼである。このカス
ケードは、アポトーシス、細胞周期の進行、細胞遊走、分化、代謝および増殖を含む多種
多様のプロセスの調節に関与している。したがって、「MEK阻害剤」という用語は、そ
の範囲内に、MEKを阻害可能な化合物を包含する。
【0030】
本明細書で使用する場合、「相乗的」または「相乗効果」または「相乗作用」という用
語は、本明細書で使用する場合、化合物の組合せの治療効果を指し(BRAF阻害剤およ
びCDK阻害剤、すなわち式Iの化合物)、これは組合せ医薬で使用した化合物の相加効
果より大きい。有利には、活性成分の間のこのような相乗効果(治療活性化合物)は、こ
れらを組み合わせた場合、1種もしくは両方の活性成分のより少用量の使用を可能にし、
同じ用量でより大きな効力が得られ、および/または多剤耐性の蓄積を予防もしくは遅延
させる。ChouおよびTalalayの組合せ指数(CI)法を使用して、組み合わせ
て使用した化合物の相乗効果、相加効果または拮抗効果を判定することができる。CI値
が1未満である場合、この組合せで使用した化合物間で相乗効果が存在し、CI値が1と
等しい場合、この組合せで使用した化合物間に相加効果が存在し、CI値が1を超える場
合、拮抗効果が存在する。相乗効果は、組合せ医薬内に含有されている化合物または本発
明の組成物を共製剤化することによって、および単位剤形を介して前記化合物を同時に投
与するか、または同時にもしくは逐次的に投与される別々の製剤として投与することによ
り達成することができる。
【0031】
本明細書で使用する場合、「黒色腫」とは、皮膚および他の器官のメラニン細胞系に起
因する腫瘍の増殖により特徴付けられる状態を指す。大部分のメラニン形成細胞は皮膚に
生じるが、髄膜、消化管、リンパ節および眼にも発見されている。黒色腫が皮膚内に生じ
た場合、これは、皮膚黒色腫と呼ばれる。黒色腫は眼の中にも生じることができ、これは
、眼のまたは眼内黒色腫と呼ばれる。黒色腫は、髄膜、消化管、リンパ節またはメラニン
形成細胞が発見されている他の領域ではめったに生じない。
【0032】
交換可能なように使用される「変異型黒色腫」または「悪性黒色腫」という用語は、欠
陥(「突然変異」とも呼ばれる)を有する黒色腫細胞を含むメラニン細胞の新生物を指す
。悪性黒色腫は通常、母斑からまたは母斑付近から発生し、転移への顕著な傾向を有する
細胞の塊からなる。黒色腫の40~60%は、セリン-トレオニンタンパク質キナーゼB
-RAF(BRAF)をコードしている遺伝子の中に活性化している突然変異を保持する
。黒色腫中に観察されたBRAF突然変異の中で、90%超がコドン600の位置にあり
、これらの中でも、90%超が、グルタミン酸によるバリンの置換をもたらす単一のヌク
レオチド突然変異である(BRAF V600E)。2番目に一般的な突然変異は、バリ
ンをリシンに置換するBRAF V600Kであり、これは、黒色腫の5~6%を占め、
これにBRAF V600RおよびBRAF V600Dが続く。(Journal o
f Translational Medicine、2012年、第10巻、85号、
1~9ページ)。
【0033】
「転移性黒色腫」という用語は、リンパ系および/または血管を介して、皮膚の表面下
に位置する皮下組織を含む身体の他の部位、リンパ節、および他の器官、例えば、肺、肝
臓、骨または脳などに拡散する黒色腫を指す。III期黒色腫は、リンパ節転移のレベル
により特徴付けられる。遠隔転移の証拠はない。IV期黒色腫は、遠隔転移の位置および
血清乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)のレベルにより特徴付けられる。この段階はまた転
移性黒色腫とも呼ばれる。
【0034】
他に指摘されていない限り、「黒色腫」という用語はまた、再発性または耐性黒色腫を
含み得る。「再発性」または「耐性」という用語は、黒色腫の繰り返す激増、または黒色
腫の進行を指し、これは、前記激増または進行以前に疾患が治癒していたか否かに関わら
ない。
【0035】
したがって、組合せ医薬(本明細書中に記載されている通り)が提供される黒色腫の治
療とは、非難治性、転移性または難治性(耐性)のBRAF変異型黒色腫、特にBRAF
V600変異型黒色腫、より具体的にはBRAF V600E変異型黒色腫の治療を指
す。
【0036】
「非応答性/難治性」という用語は、黒色腫に関連して使用した場合、黒色腫の治療の
ために、現在使用可能ながん療法、例えば、化学療法、放射線療法、手術、ホルモン療法
および/または生物学的療法/免疫療法などで治療されている黒色腫を有する対象または
患者を指すように本明細書で使用されており、この療法は、患者を治療するのに臨床的に
十分ではないので、これらの患者は追加の有効な療法を必要としている、すなわち、療法
の効果を受けないままでいる。この句はまた、療法に応答するが、副作用、再発に悩まさ
れ、耐性が生じるか、または黒色腫の1種もしくは複数の症状のいかなる軽減も経験して
いない対象または患者について説明し得る。様々な実施形態では、「非応答性/難治性」
とは、がん細胞の少なくとも一部の重要な部分が死滅していない、またはこれらの細胞分
裂が停止していないことを意味する。がん細胞が「非応答性/難治性」であるかどうかの
判定は、このような関連で当技術分野で受け入れられている「難治性」の意味を使用して
、がん細胞に対する治療の有効性をアッセイする当技術分野で公知の任意の方法で、in
vivoまたはin vitroのいずれかで行うことができる。
【0037】
本明細書で使用する場合、「治療周期」という用語は、CDK阻害剤、すなわち式Iの
化合物または薬学的に許容されるその塩;およびBRAF阻害剤またはMEK阻害剤から
選択される少なくとも1種の抗がん剤の投与の反復連続がこの間に行われる時間周期を指
す。
【0038】
「アポトーシス」という用語は、プログラミングされた細胞死の自然のプロセスを指す
。アポトーシスは、細胞が特定化された細胞の機構を使用してそれ自体を死滅させる自己
破壊のプロセスである。細胞は分解されて膜結合粒子となり、次いでこれがファゴサイト
ーシスにより排除される。アポトーシスは、後生動物が、細胞数を制御し、動物の生存を
脅かす細胞を排除することを可能にする機序である。
【0039】
「対象」という用語は、本明細書で使用する場合、治療、観察または実験の対象となっ
てきた動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトであり、より具体的には黒色腫に
罹患したヒトを指す。「対象」という用語は、患者という用語と交換可能なように使用す
ることができる。本発明の状況で、「それを必要とする対象」という句は、変異型または
悪性黒色腫に対する治療を必要とする対象を意味する。代わりに、「それを必要とする対
象」という句は、変異型または悪性黒色腫と診断された対象(患者)を意味する。
【0040】
「哺乳動物」という用語は、本明細書で使用する場合、ヒト、ならびに非ヒト哺乳動物
を包含することを意図する。非ヒト哺乳動物として、これらに限定されないが、家畜、例
えば、雌ウシ、ブタ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラットおよびマウスなど、ならびに非
家禽動物が挙げられる。
【0041】
「治療有効量」という用語は、本明細書で使用する場合、このような治療を必要とする
対象に投与された場合、治療利益を提供するのに十分である、CDK阻害剤、すなわち、
式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩、およびBRAF阻害剤またはMEK阻害
剤から選択される少なくとも1種の抗がん剤の量を指し、この治療利益とは以下を含む:
(i)黒色腫の1種もしくは複数の症状を予防もしくは遅延させる;(ii)黒色腫の1
種もしくは複数の症状を回復させるもしくは排除する;または(iii)黒色腫を治療す
る。
【0042】
対象、好ましくは、哺乳動物、より好ましくはヒトにおける黒色腫に関する「治療する
」または「治療」または「治療される」という用語は、以下を含む:(i)黒色腫の阻害
、すなわち、黒色腫の発症を阻止すること;(ii)黒色腫の回帰を減少させること;(
iii)腫瘍細胞の末梢性器官への浸潤を阻害すること;(iv)転移を阻害すること(
すなわち、減少、速度を落とすこと、または完全な休止);(v)黒色腫の回復、すなわ
ち、黒色腫に伴う症状の重症度を減少させること;および(vi)黒色腫に伴う1種また
は複数の症状をある程度軽減すること。
【0043】
本発明の1つの態様によれば、黒色腫の治療における使用のための、式I
【0044】
【化1】
(式中、Arはフェニル基であり、このフェニル基は、塩素およびトリフルオロメチルか
ら選択される1または2つの異なる置換基で置換されている)
の化合物または薬学的に許容されるその塩から選択されるCDK阻害剤と、BRAF阻害
剤またはMEK阻害剤から選択される少なくとも1種の抗がん剤とを含む組合せ医薬が提
供される。
【0045】
別の実施形態によれば、本発明の組合せ医薬中に含有されるCDK阻害剤は、式I(式
中、Arは、塩素およびトリフルオロメチルから選択される2つの異なる基で置換されて
いるフェニル基である)の化合物または薬学的に許容されるその塩から選択される。
【0046】
別のさらなる実施形態によれば、本発明の組合せ医薬中に含有されるCDK阻害剤は、
式I(式中、Arは、塩素で置換されているフェニル基である)の化合物または薬学的に
許容されるその塩から選択される。
【0047】
式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩の製造、およびこの化合物を含有する医
薬組成物の製造は、PCT特許公開WO2004004632(米国特許第7,271,
193に対応する)およびPCT特許公開WO2007148158に開示されている。
これらのPCT特許公開は、式Iで表される化合物は、増殖性障害の治療に使用すること
ができることを開示している。本明細書で上記に示されている通り式Iの化合物は、これ
らの塩の形態で使用することができる。式Iの化合物の好ましい塩として、酢酸塩、アル
ギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、
重硫酸塩、ホウ酸塩、ケイヒ酸塩、クエン酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グル
クロン酸塩、グルタミン酸塩、グリコール酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヒドロフッ化物
、ケトグルタル酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、硝酸塩、シュウ
酸塩、パモ酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、ス
ルファミン酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、トリフルオロ酢酸塩および当業者に公
知の他の酸付加塩が挙げられる。
【0048】
一実施形態では、組合せ医薬に含有されるCDK阻害剤(式Iの化合物)は、(+)-
trans-2-(2-クロロ-4-トリフルオロメチルフェニル)-5,7-ジヒドロ
キシ-8-(2-ヒドロキシメチル-1-メチル-ピロリジン-3-イル)-クロメン-
4-オンまたはその薬学的に許容される塩である。
【0049】
別の実施形態では、組合せ医薬中に含有されるCDK阻害剤(式1の化合物)は(+)
-trans-2-(2-クロロ-4-トリフルオロメチルフェニル)-5,7-ジヒド
ロキシ-8-(2-ヒドロキシメチル-1-メチルピロリジン-3-イル)-クロメン-
4-オン塩酸塩(本明細書では「化合物A」と呼ばれる。化合物Aはまた本明細書で「ボ
ルシクリブ」とも呼ばれる)。
【0050】
一実施形態では、組合せ医薬中に含有されるCDK阻害剤(式1の化合物)は(+)-
trans-2-(2-クロロ-フェニル)-5,7-ジヒドロキシ-8-(2-ヒドロ
キシメチル-1-メチル-ピロリジン-3-イル)-クロメン-4-オンまたはその薬学
的に許容される塩である。
【0051】
別の実施形態では、組合せ医薬中に含有されるCDK阻害剤(式1の化合物)は(+)
-trans-2-(2-クロロ-フェニル)-5,7-ジヒドロキシ-8-(2-ヒド
ロキシメチル-1-メチル-ピロリジン-3-イル)-クロメン-4-オン塩酸塩(本明
細書では「化合物B」と呼ばれる。化合物Bはまた本明細書で「リビシクリブ」とも呼ば
れる)。
【0052】
一実施形態では、組合せ医薬中に含有されるBRAF阻害剤は、V600変異形態のB
RAFの阻害剤である。
【0053】
一実施形態では、組合せ医薬中に含有されるBRAF阻害剤は、V600E変異形態の
BRAFの阻害剤である。
【0054】
一実施形態では、組合せ医薬中に含有されるBRAF阻害剤は、BAY43-9006
(ソラフェニブ、Bayer)、ベムラフェニブ(PLX4032、Plexxikon
;RG7204、RO5185426、Hofmann-LaRoche)、GDC-0
879(GlaxoSmithKline)、ダブラフェニブ(GSK2118436、
GlaxoSmithKline)、PLX4720(Hofmann-LaRoche
)、BMS-908662(XL281、Bristol-Myers Squibb)
、LGX818(Novartis)、PLX3603(RO5212054、Hofm
ann-LaRoche)、ARQ-736(ArQule)、DP-4978(Dec
iphera)またはRAF265(Novartis)から選択される。
【0055】
一実施形態では、組合せ医薬中に含有されるBRAF阻害剤はベムラフェニブである。
【0056】
一実施形態では、組合せ医薬中に含有されるBRAF阻害剤はダブラフェニブである。
【0057】
一実施形態では、組合せ医薬中に含有されるMEK阻害剤は、V600変異形態のBR
AFの阻害剤である。
【0058】
一実施形態では、組合せ医薬中に含有されるMEK阻害剤は、V600EまたはV60
0K変異形態のBRAFの阻害剤である。
【0059】
一実施形態では、組合せ医薬中に含有されるMEK阻害剤は、セルメチニブ(Astr
aZeneca)、ビニメチニブ(Array Biopharma)、PD-0325
901(Pfizer)、トラメチニブ(Mekinist(商標))、コビメチニブ(
Exelixis)、レファメチニブ(Valeant)、ピマセルチブ(Santhe
ra Pharmaceuticals)、TAK-733(Takeda)またはWX
-554(UCB Pharma SA)から選択される。
【0060】
一実施形態では、組合せ医薬中に含有されるMEK阻害剤はトラメチニブである。
【0061】
一実施形態では、本発明は、黒色腫の治療における使用のための組合せ医薬であって、
式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩から選択されるCDK阻害剤の治療有効量
と、BRAF阻害剤およびMEK阻害剤から選択される少なくとも1種の抗がん剤の治療
有効量とを含み、前記CDK阻害剤および少なくとも1種の前記抗がん剤が同時に投与さ
れる、組合せ医薬に関する。
【0062】
一実施形態では、本発明は、黒色腫の治療における使用のための組合せ医薬であって、
式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩から選択されるCDK阻害剤の治療有効量
と、BRAF阻害剤およびMEK阻害剤から選択される少なくとも1種の抗がん剤の治療
有効量とを含み、前記CDK阻害剤および少なくとも1種の前記抗がん剤が逐次的に投与
される、組合せ医薬に関する。
【0063】
一実施形態では、本発明は、黒色腫の治療における使用のための組合せ医薬であって、
式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩から選択されるCDK阻害剤の治療有効量
と、BRAF阻害剤またはMEK阻害剤から選択される少なくとも1種の抗がん剤の治療
有効量とを含み、前記抗がん剤がCDK阻害剤の投与以前に投与される、組合せ医薬に関
する。
【0064】
一実施形態では、本発明は、黒色腫の治療における使用のための組合せ医薬であって、
式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩から選択されるCDK阻害剤の治療有効量
と、BRAF阻害剤またはMEK阻害剤から選択される少なくとも1種の抗がん剤の治療
有効量とを含み、CDK阻害剤が前記抗がん剤の投与以前に投与される、組合せ医薬に関
する。
【0065】
一実施形態では、本発明は、黒色腫の治療における使用のための組合せ医薬であって、
式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩から選択されるCDK阻害剤の治療有効量
と、BRAF阻害剤またはMEK阻害剤から選択される少なくとも1種の抗がん剤の治療
有効量とを含み、CDK阻害剤および前記抗がん剤が両方とも1日1回投与される、組合
せ医薬に関する。
【0066】
別の実施形態では、本発明は、黒色腫の治療における使用のための組合せ医薬であって
、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩から選択されるCDK阻害剤の治療有効
量と、BRAF阻害剤またはMEK阻害剤から選択される少なくとも1種の抗がん剤の治
療有効量とを含み、CDK阻害剤が1日1回投与される一方で、前記抗がん剤が1日2回
投与される、組合せ医薬に関する。
【0067】
さらに別の実施形態では、本発明は、黒色腫の治療における使用のための組合せ医薬で
あって、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩から選択されるCDK阻害剤の治
療有効量と、BRAF阻害剤またはMEK阻害剤から選択される少なくとも1種の抗がん
剤の治療有効量とを含み、CDK阻害剤および前記抗がん剤が両方とも1日2回投与され
る、組合せ医薬に関する。
【0068】
一態様では、本発明は、黒色腫の治療のための方法であって、式I(本明細書中に記載
されている通り)の化合物または薬学的に許容されるその塩から選択されるCDK阻害剤
の治療有効量と、BRAF阻害剤またはMEK阻害剤から選択される少なくとも1種の抗
がん剤の治療有効量とをそれを必要とする対象に投与することを含む、方法に関する。
【0069】
一実施形態では、本発明は、黒色腫を治療する方法であって、式Iの化合物または薬学
的に許容されるその塩から選択されるCDK阻害剤の治療有効量と、BRAF阻害剤また
はMEK阻害剤から選択される少なくとも1種の抗がん剤の治療有効量とを、それを必要
とする対象に投与することを含み、CDK阻害剤および前記抗がん剤が同時に投与される
、方法に関する。
【0070】
一実施形態では、本発明は、黒色腫を治療する方法であって、式Iの化合物または薬学
的に許容されるその塩から選択されるCDK阻害剤の治療有効量と、BRAF阻害剤また
はMEK阻害剤から選択される少なくとも1種の抗がん剤の治療有効量とを、それを必要
とする対象に投与することを含み、CDK阻害剤および前記抗がん剤が逐次的に投与され
る、方法に関する。
【0071】
一実施形態では、本発明は、黒色腫を治療する方法であって、式Iの化合物または薬学
的に許容されるその塩から選択されるCDK阻害剤の治療有効量と、BRAF阻害剤また
はMEK阻害剤から選択される少なくとも1種の抗がん剤の治療有効量とを、それを必要
とする対象に投与することを含み、前記抗がん剤が、前記CDK阻害剤の投与以前に投与
される、方法に関する。
【0072】
一実施形態では、本発明は、黒色腫を治療する方法であって、式Iの化合物または薬学
的に許容されるその塩から選択されるCDK阻害剤の治療有効量と、BRAF阻害剤また
はMEK阻害剤から選択される少なくとも1種の抗がん剤の治療有効量とを、それを必要
とする対象に投与することを含み、前記CDK阻害剤が前記抗がん剤の投与以前に投与さ
れる、方法に関する。
【0073】
一実施形態では、本発明は、黒色腫を治療する方法であって、式Iの化合物または薬学
的に許容されるその塩から選択されるCDK阻害剤の治療有効量と、BRAF阻害剤また
はMEK阻害剤から選択される少なくとも1種の抗がん剤の治療有効量とを、それを必要
とする対象に投与することを含み、前記CDK阻害剤および前記抗がん剤が両方とも1日
1回投与される、方法に関する。
【0074】
別の実施形態では、本発明は、黒色腫を治療する方法であって、式Iの化合物または薬
学的に許容されるその塩から選択されるCDK阻害剤の治療有効量と、BRAF阻害剤ま
たはMEK阻害剤の少なくとも1種の治療有効量とを、それを必要とする対象に投与する
ことを含み、前記CDK阻害剤が1日1回投与され、前記抗がん剤が1日2回投与される
、方法に関する。
【0075】
さらに別の実施形態では、本発明は、黒色腫を治療する方法であって、式Iの化合物ま
たは薬学的に許容されるその塩から選択されるCDK阻害剤の治療有効量と、BRAF阻
害剤またはMEK阻害剤の少なくとも1種の治療有効量とを、それを必要とする対象に投
与することを含み、前記CDK阻害剤および前記抗がん剤が両方とも1日2回投与される
、方法に関する。
【0076】
一実施形態では、黒色腫を治療する方法は、式Iの化合物から選択されるCDK阻害剤
と、BRAF阻害剤またはMEK阻害剤から選択される少なくとも1種の抗がん剤とを、
本明細書に記載されている用量の範囲でそれを必要とする対象に投与することを含む。
【0077】
一実施形態では、本発明は、黒色腫の治療における使用のための組合せ医薬であって、
式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩から選択されるCDK阻害剤の治療有効量
と、BRAF阻害剤の治療有効量とを含み、前記BRAF阻害剤および前記CDK阻害剤
が同時に投与される、組合せ医薬に関する。
【0078】
一実施形態では、本発明は、黒色腫の治療における使用のための組合せ医薬であって、
式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩から選択されるCDK阻害剤の治療有効量
と、BRAF阻害剤の治療有効量とを含み、前記BRAF阻害剤および前記CDK阻害剤
が逐次的に投与される、組合せ医薬に関する。
【0079】
一実施形態では、本発明は、黒色腫の治療における使用のための組合せ医薬であって、
式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩から選択されるCDK阻害剤の治療有効量
と、BRAF阻害剤の治療有効量とを含み、前記BRAF阻害剤が前記CDK阻害剤の投
与以前に投与される、組合せ医薬に関する。
【0080】
一実施形態では、本発明は、黒色腫の治療における使用のための組合せ医薬であって、
式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩から選択されるCDK阻害剤の治療有効量
と、BRAF阻害剤の治療有効量とを含み、前記CDK阻害剤が、前記BRAF阻害剤の
投与以前に投与される、組合せ医薬に関する。
【0081】
一実施形態では、本発明は、黒色腫の治療における使用のための組合せ医薬であって、
式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩から選択されるCDK阻害剤の治療有効量
と、BRAF阻害剤の治療有効量とを含み、前記CDK阻害剤および前記BRAF阻害剤
が両方とも1日1回投与される、組合せ医薬に関する。
【0082】
別の実施形態では、本発明は、黒色腫の治療における使用のための組合せ医薬であって
、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩から選択されるCDK阻害剤の治療有効
量と、BRAF阻害剤の治療有効量とを含み、前記CDK阻害剤が1日1回投与され、前
記BRAF阻害剤が1日2回投与される、組合せ医薬に関する。
【0083】
さらに別の実施形態では、本発明は、黒色腫の治療における使用のための組合せ医薬で
あって、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩から選択されるCDK阻害剤の治
療有効量と、BRAF阻害剤の治療有効量とを含み、前記CDK阻害剤および前記BRA
F阻害剤が両方とも1日2回投与される、組合せ医薬に関する。
【0084】
一態様では、本発明は、黒色腫の治療のための方法であって、式I(本明細書中に記載
されている通り)の化合物または薬学的に許容されるその塩から選択されるCDK阻害剤
およびBRAF阻害剤の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、方
法に関する。
【0085】
一実施形態では、本発明は、黒色腫を治療する方法であって、式Iの化合物または薬学
的に許容されるその塩から選択されるCDK阻害剤の治療有効量と、BRAF阻害剤の治
療有効量とを、それを必要とする対象に投与することを含み、前記BRAF阻害剤および
前記CDK阻害剤が同時に投与される、方法に関する。
【0086】
一実施形態では、本発明は、黒色腫を治療する方法であって、式Iの化合物または薬学
的に許容されるその塩から選択されるCDK阻害剤の治療有効量と、BRAF阻害剤の治
療有効量とを、それを必要とする対象に投与することを含み、前記BRAF阻害剤および
前記CDK阻害剤が逐次的に投与される、方法に関する。
【0087】
一実施形態では、本発明は、黒色腫を治療する方法であって、式Iの化合物または薬学
的に許容されるその塩から選択されるCDK阻害剤の治療有効量と、BRAF阻害剤の治
療有効量とを、それを必要とする対象に投与することを含み、前記BRAF阻害剤が、前
記CDK阻害剤の投与以前に投与される、方法に関する。
【0088】
一実施形態では、本発明は、黒色腫を治療する方法であって、式Iの化合物または薬学
的に許容されるその塩から選択されるCDK阻害剤の治療有効量と、BRAF阻害剤の治
療有効量とを、それを必要とする対象に投与することを含み、前記CDK阻害剤が、前記
BRAF阻害剤の投与以前に投与される、方法に関する。
【0089】
一実施形態では、本発明は、黒色腫を治療する方法であって、式Iの化合物または薬学
的に許容されるその塩から選択されるCDK阻害剤の治療有効量と、BRAF阻害剤の治
療有効量とを、それを必要とする対象に投与することを含み、前記CDK阻害剤および前
記BRAF阻害剤が両方とも1日1回投与される、方法に関する。
【0090】
別の実施形態では、本発明は、黒色腫を治療する方法であって、式Iの化合物または薬
学的に許容されるその塩から選択されるCDK阻害剤の治療有効量と、BRAF阻害剤の
治療有効量とを、それを必要とする対象に投与することを含み、前記CDK阻害剤が1日
1回投与される一方で、前記BRAF阻害剤が1日2回投与される、方法に関する。
【0091】
さらに別の実施形態では、本発明は、黒色腫を治療する方法であって、式Iの化合物ま
たは薬学的に許容されるその塩から選択されるCDK阻害剤の治療有効量と、BRAF阻
害剤の治療有効量とを、それを必要とする対象に投与することを含み、前記CDK阻害剤
および前記BRAF阻害剤が両方とも1日2回投与される、方法に関する。
【0092】
一実施形態では、黒色腫を治療する方法は、BRAF阻害剤と、式Iの化合物または薬
学的に許容されるその塩から選択されるCDK阻害剤とを、本明細書に記載されている用
量の範囲でそれを必要とする対象に投与することを含む。
【0093】
一実施形態では、本発明は、黒色腫の治療における使用のための組合せ医薬であって、
式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩から選択されるCDK阻害剤の治療有効量
と、MEK阻害剤の治療有効量とを含み、前記MEK阻害剤および前記CDK阻害剤が同
時に投与される、組合せ医薬に関する。
【0094】
一実施形態では、本発明は、黒色腫の治療における使用のための組合せ医薬であって、
式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩から選択されるCDK阻害剤の治療有効量
と、MEK阻害剤の治療有効量とを含み、MEK阻害剤およびCDK阻害剤が逐次的に投
与される、組合せ医薬に関する。
【0095】
一実施形態では、本発明は、黒色腫の治療における使用のための組合せ医薬であって、
式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩から選択されるCDK阻害剤の治療有効量
と、MEK阻害剤の治療有効量とを含み、前記MEK阻害剤が前記CDK阻害剤の投与以
前に投与される、組合せ医薬に関する。
【0096】
一実施形態では、本発明は、黒色腫の治療における使用のための組合せ医薬であって、
式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩から選択されるCDK阻害剤の治療有効量
と、MEK阻害剤の治療有効量とを含み、前記CDK阻害剤が前記MEK阻害剤の投与以
前に投与される、組合せ医薬に関する。
【0097】
一実施形態では、本発明は、黒色腫の治療における使用のための組合せ医薬であって、
式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩から選択されるCDK阻害剤の治療有効量
と、MEK阻害剤の治療有効量とを含み、前記CDK阻害剤および前記MEK阻害剤が両
方とも1日1回投与される、組合せ医薬に関する。
【0098】
別の実施形態では、本発明は、黒色腫の治療における使用のための組合せ医薬であって
、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩から選択されるCDK阻害剤の治療有効
量と、MEK阻害剤の治療有効量とを含み、前記CDK阻害剤が1日1回投与される一方
で、前記MEK阻害剤が1日2回投与される、組合せ医薬に関する。
【0099】
さらに別の実施形態では、本発明は、黒色腫の治療における使用のための組合せ医薬で
あって、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩から選択されるCDK阻害剤の治
療有効量と、MEK阻害剤の治療有効量とを含み、前記CDK阻害剤および前記MEK阻
害剤が両方とも1日2回投与される、組合せ医薬に関する。
【0100】
一態様では、本発明は、黒色腫の治療のための方法であって、式I(本明細書中に記載
されている通り)の化合物または薬学的に許容されるその塩から選択されるCDK阻害剤
およびMEK阻害剤の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法
に関する。
【0101】
一実施形態では、本発明は、黒色腫を治療する方法であって、式Iの化合物または薬学
的に許容されるその塩から選択されるCDK阻害剤の治療有効量と、MEK阻害剤の治療
有効量とを、それを必要とする対象に投与することを含み、前記MEK阻害剤および前記
CDK阻害剤が同時に投与される、方法に関する。
【0102】
一実施形態では、本発明は、黒色腫を治療する方法であって、式Iの化合物または薬学
的に許容されるその塩から選択されるCDK阻害剤の治療有効量と、MEK阻害剤の治療
有効量とを、それを必要とする対象に投与することを含み、前記MEK阻害剤および前記
CDK阻害剤が逐次的に投与される、方法に関する。
【0103】
一実施形態では、本発明は、黒色腫を治療する方法であって、式Iの化合物または薬学
的に許容されるその塩から選択されるCDK阻害剤の治療有効量と、MEK阻害剤の治療
有効量とを、それを必要とする対象に投与することを含み、前記MEK阻害剤が前記CD
K阻害剤の投与以前に投与される、方法に関する。
【0104】
一実施形態では、本発明は、黒色腫を治療する方法であって、式Iの化合物または薬学
的に許容されるその塩から選択されるCDK阻害剤の治療有効量と、MEK阻害剤の治療
有効量とを、それを必要とする対象に投与することを含み、前記CDK阻害剤が前記ME
K阻害剤の投与以前に投与される、方法に関する。
【0105】
一実施形態では、本発明は、黒色腫を治療する方法であって、式Iの化合物または薬学
的に許容されるその塩から選択されるCDK阻害剤の治療有効量と、MEK阻害剤の治療
有効量とを、それを必要とする対象に投与することを含み、前記CDK阻害剤および前記
MEK阻害剤が両方とも1日1回投与される、方法に関する。
【0106】
別の実施形態では、本発明は、黒色腫を治療する方法であって、式Iの化合物または薬
学的に許容されるその塩から選択されるCDK阻害剤の治療有効量と、MEK阻害剤の治
療有効量を、それを必要とする対象に投与することを含み、前記CDK阻害剤が1日1回
投与される一方で、前記MEK阻害剤が1日2回投与される、方法に関する。
【0107】
さらに別の実施形態では、本発明は、黒色腫を治療する方法であって、式Iの化合物ま
たは薬学的に許容されるその塩から選択されるCDK阻害剤の治療有効量とMEK阻害剤
の治療有効量とを、それを必要とする対象に投与することを含み、前記CDK阻害剤およ
び前記MEK阻害剤の両方とも1日2回投与される、方法に関する。
【0108】
一実施形態では、黒色腫を治療する方法は、MEK阻害剤と、式Iの化合物または薬学
的に許容されるその塩から選択されるCDK阻害剤とを、本明細書に記載されている用量
範囲で、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0109】
一実施形態では、本発明は、黒色腫の治療における使用のための組合せ医薬であって、
式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩から選択されるCDK阻害剤の治療有効量
と、BRAF阻害剤の治療有効量と、MEK阻害剤の治療有効量とを含む、組合せ医薬に
関する。
【0110】
一実施形態では、本発明は、黒色腫を治療する方法であって、式Iの化合物または薬学
的に許容されるその塩から選択されるCDK阻害剤の治療有効量と、BRAF阻害剤の治
療有効量と、MEK阻害剤の治療有効量とを、それを必要とする対象に投与することを含
む、方法に関する。
【0111】
本発明の一実施形態では、治療している黒色腫は非難治性黒色腫である。
【0112】
本発明の別の実施形態では、治療している黒色腫は非難治性BRAF変異型黒色腫であ
る。
【0113】
本発明のさらに別の実施形態では、治療している黒色腫は非難治性BRAF V600
変異型黒色腫である。
【0114】
本発明のさらなる実施形態では、治療している黒色腫は非難治性BRAF V600E
またはBRAF V600K変異型黒色腫である。
【0115】
本発明の一実施形態では、治療している黒色腫は再発性または難治性黒色腫である。
【0116】
本発明の別の実施形態では、治療している黒色腫は耐性BRAF変異型黒色腫である。
【0117】
本発明のさらに別の実施形態では、治療している黒色腫は耐性BRAF V600変異
型黒色腫である。
【0118】
本発明のさらなる実施形態では、治療している黒色腫は耐性BRAF V600Eまた
はBRAF V600K変異型黒色腫である。
【0119】
本発明の一実施形態では、治療している黒色腫は転移性黒色腫である。
【0120】
本発明の別の実施形態では、治療している黒色腫は転移性BRAF変異型黒色腫である
【0121】
本発明のさらに別の実施形態では、治療している黒色腫は転移性BRAF V600変
異型黒色腫である。
【0122】
本発明のさらなる実施形態では、治療している黒色腫は転移性BRAF V600Eま
たはBRAF V600K変異型黒色腫である。
【0123】
本発明によると、CDK阻害剤(式Iの化合物)、ならびに/またはBRAF阻害剤お
よび/もしくはMEK阻害剤から選択される抗がん剤の投与は、制限なしで、非経口、経
口、舌下、経皮的、局所的、鼻腔内、エアゾール、眼内、気管内または直腸内を含む任意
の適切な経路によることができる。
【0124】
一実施形態では、CDK阻害剤は、その良好な血中濃度を生成および維持するために経
口投与することができる一方で、BRAF阻害剤および/またはMEK阻害剤から選択さ
れる抗がん剤(複数も可)は、非経口的に、静脈内、皮下、筋肉内、血管内または点滴の
経路により投与することができる。
【0125】
別の実施形態では、CDK阻害剤は、非経口的に静脈内、皮下、筋肉内、血管内または
点滴の経路により投与することができる一方で、BRAF阻害剤および/またはMEK阻
害剤から選択される抗がん剤(複数も可)は経口投与することができる。
【0126】
さらなる実施形態では、CDK阻害剤と、BRAF阻害剤および/またはMEK阻害剤
から選択される抗がん剤(複数も可)との両方は、その良好な血中濃度を生成および維持
するために経口投与することができる。
【0127】
またさらなる実施形態では、式IのCDK阻害剤と、BRAF阻害剤および/またはM
EK阻害剤から選択される抗がん剤(複数も可)との両方は、静脈内、皮下、筋肉内、血
管内または点滴の経路により非経口的に投与することによって、その良好な血中濃度を生
成および維持することができる。
【0128】
一態様では、本発明は、黒色腫の治療における使用のための医薬組成物であって、式I
の化合物または薬学的に許容されるその塩から選択されるCDK阻害剤と、BRAF阻害
剤またはMEK阻害剤から選択される少なくとも1種の抗がん剤と、1種または複数の薬
学的に許容される担体、賦形剤または添加剤とを含む、医薬組成物に関する。丸剤、錠剤
、コーティング錠および硬ゼラチンカプセル剤の生成については、使用することができる
医薬活性のある添加剤として、これらに限定されないが、ラクトース、トウモロコシデン
プンまたはその誘導体、アラビアガム、苦土またはグルコースなどが挙げられる。軟ゼラ
チンカプセル剤および坐剤については、使用することができる担体として、これらに限定
されないが、脂肪、ワックス、天然の油または硬化油などが挙げられる。液剤、例えば注
射溶液剤の生成に、または乳剤もしくはシロップ剤に適切な担体は、例えば、水、生理的
塩化ナトリウム溶液もしくはアルコール、例えば、エタノール、プロパノールもしくはグ
リセロール、糖溶液、例えば、グルコース溶液もしくはマンニトール溶液、または記述さ
れた様々な溶媒の混合物である。
【0129】
CDK阻害剤(式Iの化合物)と、BRAF阻害剤および/またはMEK阻害剤から選
択される抗がん剤(複数も可)とは、個々にまたは組み合わせて、当業者に精通している
従来の製薬技術を使用して、例えば、ブレンディング、造粒、溶解または凍結乾燥などに
より、医薬剤形へと製剤化することができる。
【0130】
一般的に、医薬としての使用を意図する組成物は、医薬組成物の製造に対して当技術分
野で公知の任意の方法、例えばRemington-The Science and
Practice of Pharmacy(第21版)(2005年)、Goodma
n&Gilman’s The Pharmacological Basis of
Therapeutics(第11版)(2006年)およびAnsel’s Phar
maceutical Dosage Forms and Drug Deliver
y Systems(第9版)、およびSolid-State Chemistry
of Drugs(第2版)(1999年)などに従い調製することができる。
【0131】
本明細書に記載されている組成物は、経口投与に適切な形態、例えば、固体剤形、例え
ば、錠剤、カプセル剤、ロゼンジ剤または顆粒剤;液体剤形、例えば、乳剤、液剤、懸濁
剤;非経口注射(静脈内、皮下、筋肉内、血管内または点滴を含む)に適切な形態、例え
ば、無菌液剤、懸濁剤または乳剤;局所投与に適切な形態、例えば、軟膏剤、クリーム剤
、ゲル剤またはローション剤であることができる。
【0132】
経口投与用組成物は、錠剤、ロゼンジ剤、水性懸濁剤または油性懸濁剤、顆粒剤、散剤
、カシェ剤、乳剤、カプセル剤、シロップ剤またはエリキシル剤の形態であってよい。経
口投与された組成物は、1種または複数の任意選択の薬剤、例えば、甘味剤、例えば、フ
ルクトース、アスパルテームまたはサッカリンなど;矯味矯臭剤、例えば、ペパーミント
、冬緑油またはサクランボなど;着色剤;および保存剤を含有することによって、薬学的
に口当たりの良い調製物を得ることができる。浸透活性のある推進化合物を取り囲む選択
的に浸透性のある膜もまた、本発明による組合せ医薬中に含有されている化合物(CDK
阻害剤、ならびに/またはBRAF阻害剤および/もしくはMEK阻害剤から選択される
抗がん剤(複数も可))の経口投与に対して適切である。経口投与に対して適切である組
成物として、標準的なビヒクル、例えば、マンニトール、ラクトース、デンプン、トウモ
ロコシデンプン、ステアリン酸マグネシウム、タルク、サッカリンナトリウム、セルロー
ス、炭酸マグネシウムなどを挙げることができる。このようなビヒクルは好ましくは薬学
的等級のものである。
【0133】
軟膏剤、クリーム剤に対して、活性成分(CDK阻害剤、ならびに/またはBRAF阻
害剤および/もしくはMEK阻害剤から選択される抗がん剤(複数も可))は、水中油型
または油中水型基剤の中に製剤化する。
【0134】
筋肉内、腹腔内、皮下および静脈内の使用に対して、活性成分(CDK阻害剤、ならび
に/またはBRAF阻害剤および/もしくはMEK阻害剤から選択される抗がん剤(複数
も可))の無菌液剤が通常利用され、液剤のpHは、適切に調節され、緩衝されるべきで
ある。
【0135】
さらに、化合物、すなわち医薬組成物中に含有されるCDK阻害剤、ならびに/または
BRAF阻害剤および/もしくはMEK阻害剤から選択される抗がん剤(複数も可)の効
果を適切な製剤を介して遅延または延長させることができる。例えば、ゆっくりと溶解す
る化合物のペレットを調製し、錠剤またはカプセル剤中に組み込むことができる。この技
術は、いくつかの異なる溶解速度のペレットを作製し、カプセル剤にペレットの混合物を
充填することによって改善することができる。錠剤またはカプセル剤は、予想可能な期間
の間、溶解を食い止めるフィルムでコーティングすることができる。非経口の調製物さえ
も、血清中でゆっくりとしか分散しないようにする油性または乳化したビヒクル中に化合
物を溶解または懸濁させることによって長時間作用性にすることができる。
【0136】
投与に使用される、式Iの化合物から選択されるCDK阻害剤、ならびにBRAF阻害
剤および/またはMEK阻害剤から選択される抗がん剤(複数も可)の有効用量は、疾患
(黒色腫)の重症度、症状の重症度、患者の年齢、性別、体重および感度の差、投与のモ
ード、時間、間隔および持続時間、製剤の性質およびタイプなどに応じて異なる。ある特
定の実施形態では、本発明による組合せ医薬に含有されている治療剤は、両方の薬剤が依
然として活性のある時間枠内で投与される。当業者であれば、投与される前記治療剤の半
減期を求めることによって、このような時間枠を求めることができる。本明細書で以前に
示した通り、医薬組成物中に含有されている抗がん剤は、同時または逐次的に投与するこ
とができる。当業者であれば、本発明の範囲および精神の中でいくつかの変形形態が可能
であることを認識されよう。
【0137】
投与する治療剤の投薬量は、所望の効果を生むように選択されるべきである。CDK阻
害剤の適切な投薬量は、約5mg~約500mgであってよい。投与されることになるC
DK阻害剤の用量は、治療すべき黒色腫の重症度に応じて幅広い範囲を網羅することがで
きる。毎日投与されることになる用量は、所望の効果を得るように選択することができる
。適切な用量は、約50mg/日~350mg/日のCDK阻害剤の範囲であってよい。
必要とされる場合、より高いまたはより低い1日用量もまた投与することができる。
【0138】
一実施形態では、BRAF阻害剤は、約1mg/日~約2500mg/日を投与するこ
とができ、この量は、1日当たり、または1回の投与当たり、または治療の1サイクル当
たりの単回用量もしくは複数回用量で付与することができる。
【0139】
一実施形態では、MEK阻害剤は、約0.01mg/日~2000mg/日を投与する
ことができ、この量は、1日当たり、または1回の投与当たり、または治療の1サイクル
当たりの単回用量もしくは複数回用量で付与することができる。
【0140】
一実施形態では、CDK阻害剤と、BRAF阻害剤および/またはMEK阻害剤から選
択される抗がん剤(複数も可)との両方が1日1回投与される。別の実施形態では、CD
K阻害剤と、BRAF阻害剤および/またはMEK阻害剤から選択される抗がん剤(複数
も可)との両方が1日2回投与される。さらなる実施形態では、CDK阻害剤は1日1回
投与される一方で、BRAF阻害剤および/またはMEK阻害剤から選択される抗がん剤
(複数も可)は1日2回投与される。しかし、本発明による組合せ医薬中に含有されてい
る各治療剤の量は、組み合わせて使用する場合、単独で投与される場合の治療効果を生む
量より通常少ないことになる。便宜のため、総1日用量は、所望する場合、分割し、その
日の間に少しずつ投与することができる。
【0141】
本発明で提供される組合せは、ある特定のアッセイ系、およびいくつかの異なる投与ス
ケジュールで、in vitroで評価されてきた。実験の詳細は、として本明細書で以
下に提供されている通りである。本明細書で提示されたデータでは、BRAF阻害剤また
はMEK阻害剤は、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩から選択されるCDK
阻害剤と組み合わせた場合、相乗効果を示すことが明確に示されている。治療剤は、黒色
腫の治療に組み合わせて使用した場合、細胞がCDK阻害剤のみで処置された場合(すな
わち、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を単独で)またはBRAF阻害剤の
みもしくはMEK阻害剤のみで処置された場合よりも、増殖性細胞におけるアポトーシス
または細胞毒性を増加させることが明確に示された。
【0142】
一態様では、本発明は、CDK阻害剤(式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩
)と、BRAF阻害剤またはMEK阻害剤から選択される少なくとも1種の抗がん剤とを
含む医薬キットに関する。医薬キットは、式Iの化合物もしくは薬学的に許容されるその
塩と、BRAF阻害剤もしくはMEK阻害剤から選択される少なくとも1種の抗がん剤と
を一定用量製剤として含有する容器を含んでもよいし、またはキットは、式Iの化合物も
しくは薬学的に許容されるその塩、およびBRAF阻害剤もしくはMEK阻害剤から選択
される少なくとも1種の抗がん剤に対して2つ以上の別々の容器を含んでもよい。キット
は、適応、使用法、用量、投与の指示、禁忌、予防策および注意事項についての情報を含
む添付文書をさらに含んでもよい。使用することができる適切な容器として、ビン、バイ
アル、アンプル、シリンジまたはブリスター包装が挙げられる。医薬キットは、薬学的に
許容される緩衝剤、注射用の水、リン酸緩衝食塩水、リンガー液およびデキストロース溶
液を含むさらなる容器を場合によって含んでもよい。
【0143】
CDK阻害剤、すなわち、本発明の組合せ医薬中に含有されている式Iの化合物は、P
CT特許公開WO2004004632およびPCT特許公開WO2007148158
に開示されている方法に従い調製することができる。
【0144】
式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩の調製のための一般的方法は、以下のス
テップ:
(a)ルイス酸触媒の存在下で、式VIA
【0145】
【化2】
の中間体化合物の分割されたエナンチオマーとして純粋な(-)-transエナンチオ
マーを、無水酢酸で処理することによって、分割された式VIIA
【0146】
【化3】
のアセチル化化合物を得るステップと、
(b)塩基および溶媒の存在下で、分割された式VIIAのアセチル化化合物を、式Ar
COOHの酸または式ArCOClの酸塩化物または式(ArCO)2Oの酸無水物また
は式ArCOOCH3のエステル(式中、Arは、式Iの化合物に関連して本明細書で上
記に定義された通りである)と反応させることによって、式VIIIA
【0147】
【化4】
の分割化合物を得るステップと、
(c)適切な溶媒中で式VIIIAの分割化合物を塩基で処理することによって、式IX
【0148】
【化5】
(式中、Arは上で定義された通りである)、
の対応する分割されたβ-ジケトン化合物を得るステップと、
(d)式IXAの分割されたβ-ジケトン化合物を、塩酸などの酸で処理することによっ
て、式XA
【0149】
【化6】
の対応する環化化合物を得るステップと、
(e)120~180℃の範囲の温度で脱アルキル化剤と共にこれを加熱することにより
、式XAの化合物を脱アルキル化の対象とすることによって、式Iの化合物の(+)-t
ransエナンチオマーを得、および場合によって、対象化合物をその薬学的に許容され
る塩に変換するステップと
を含む。
【0150】
上記ステップ(a)で利用されるルイス酸触媒は、BF3、Et2O、塩化亜鉛、塩化ア
ルミニウムおよびチタニウム塩化物から選択することができる。
【0151】
プロセスステップ(b)で利用される塩基は、トリエチルアミン、ピリジンおよびDC
C-DMAPの組合せ(N、N’-ジシクロヘキシルカルボジイミドと4-ジメチルアミ
ノピリジンの組合せ)から選択することができる。
【0152】
式VIIIAの化合物の対応する式IXAのβ-ジケトン化合物への転位は、Bake
r-Venkataraman転位として公知であることは当業者には明らかである(J
.Chem.Soc、1933年、1381ページおよびCurr.Sci.、1933
年、第4巻、214ページ)。
【0153】
プロセスステップ(c)で使用される塩基は、リチウムヘキサメチルジシラジド、ナト
リウムヘキサメチルジシラジド、カリウムヘキサメチルジシラジド、水素化ナトリウムお
よび水素化カリウムから選択することができる。好ましい塩基はリチウムヘキサメチルジ
シラジドである。
【0154】
式IXAの化合物の脱アルキル化のためのプロセスステップ(e)において使用される
脱アルキル化剤は、ピリジン塩酸塩、三臭化ホウ素、三フッ化ホウ素エーテレートおよび
三塩化アルミニウムから選択することができる。好ましい脱アルキル化剤はピリジン塩酸
塩である。
【0155】
式VIAの出発化合物の調製は、1-メチル-4-ピペリドンを1,3,5-トリメト
キシベンゼンの氷酢酸中溶液と反応させることによって、1-メチル-4-(2,4,6
-トリメトキシフェニル)-1,2,3,6-テトラヒドロピリジンを生成し、これを、
三フッ化ホウ素ジエチルエーテル、水素化ホウ素ナトリウムおよびテトラヒドロフランと
反応させることによって、1-メチル-4-(2,4,6-トリメトキシフェニル)ピペ
リジン-3-オールを生成することを含む。1-メチル-4-(2,4,6-トリメトキ
シフェニル)ピペリジン-3-オールを式VIAの化合物へと変換することは、トリエチ
ルアミン、ピリジン、炭酸カリウムまたは炭酸ナトリウムなど酸素求核試薬の存在下で、
p-トルエンスルホニルクロリド、メタンスルホニルクロリド、トリフル無水物または五
塩化リンなどの適当な試薬による処理により、化合物、1-メチル-4-(2,4,6-
トリメトキシフェニル)ピペリジン-3-オールのピペリジン環上に存在するヒドロキシ
ル基を、トシル、メシル、トリフレートまたはハロゲン化物などの脱離基へ変換し、これ
に続いて、酢酸ナトリウムまたは酢酸カリウムなどの酸素求核試薬の存在下、イソプロパ
ノール、エタノールまたはプロパノールなどのアルコール性溶媒中で環縮小を行うことを
含む。
【0156】
薬理学的アッセイで使用した代表的な化合物、化合物A(ボルシクリブとも呼ばれる)
は、(+)-trans-2-(2-クロロ-4-トリフルオロフェニル)-5,7-ジ
ヒドロキシ-8-(2-ヒドロキシメチル-1-メチル-ピロリジン-3-イル)-クロ
メン-4-オン塩酸塩を指し、刊行されたPCT公開WO2007148158で開示さ
れた化合物の1つであった。
【0157】
薬理学的アッセイで使用したもう1つの代表的な化合物、化合物B(リビシクリブとも
呼ばれる)は、(+)-trans-2-(2-クロロフェニル)-5,7-ジヒドロキ
シ-8-(2-ヒドロキシメチル-1-メチル-ピロリジン-3-イル)-クロメン-4
-オン塩酸塩を指し、刊行されたPCT公開WO2004004632で開示された化合
物の1つであった。
【0158】
CDK阻害剤と、BRAF阻害剤またはMEK阻害剤から選択される少なくとも1種の
抗がん剤とを含む本発明による組合せの相乗効果が、好ましいその実施形態を参照してよ
り詳細にここで説明される。これらは、例としてのみ提供され、本発明を制限することを
意図しないことに注意されたい。
【0159】
本発明は、反対であると明示的に特定された場合を除いて、様々な代替の変形形態およ
びステップの順序が想定し得ることを理解されたい。さらに、任意の作業実施例を除いて
、または別の方法が示されていない限り、明細書および特許請求の範囲に使用されている
、例えば成分の量を表現するすべての数は、すべての場合において「約」という用語で修
飾されているものとして理解されたい。したがって、特にそれとは反対の指示がない限り
、以下の明細書および付随する特許請求の範囲に示された数値的パラメーターは、本発明
で得られる所望の特性に応じて異なり得る。
【0160】
当業者であれば、いくつかの変形形態が本発明の範囲および趣旨内で可能であることを
認識している。本発明は、ここで、以下の非限定的例を参照してより詳細に記載される。
以下の実施例は、本発明をさらに例示するが、当然のことながら、その範囲を制限するも
のとして決して解釈されるべきではない。
【実施例0161】
以下の略語または用語が本明細書で使用されている:
BF3:三フッ化ホウ素
BF3.Et2O:三フッ化ホウ素ジエチルエーテル
CaCl2:塩化カルシウム
CHCl3:クロロホルム
CDCl3:重水素化クロロホルム
CO2:二酸化炭素
DCC:N、N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド
DMAP:4-ジメチルアミノピリジン
DMF:N、N-ジメチルホルムアミド
DMSO:ジメチルスルホキシド
Et2O:ジエチルエーテル
EtOAc:酢酸エチル
g:グラム
h:時間
HCl:塩酸
IPA:イソプロピルアルコール
KBr:臭化カリウム
Kg:キログラム
L:リットル
MeOH:メタノール
min:分
mg:ミリグラム
mL:ミリリットル
μL:ミクロリットル
μM:マイクロモル
mmol:ミリモル
mol:モル
NaCl:塩化ナトリウム
Na2CO3:炭酸ナトリウム
NaHCO3:炭酸水素ナトリウム
Na2SO4:硫酸ナトリウム
n-BuLi:n-ブチルリチウム
PEL:Piramal Enterprises Limited
℃:摂氏度
THF:テトラヒドロフラン
【0162】

化合物A(ボルシクリブ)および化合物B(リビシクリブ)の調製、式1の代表的な化合
物を本明細書で参照例として提示する:
【0163】
参照例1:
(a)(+)-trans-2-(2-クロロ-4-トリフルオロメチルフェニル)-8
-(2-ヒドロキシメチル-1-メチルピロリジン-3-イル)-5,7-ジメトキシ-
クロメン-4-オンの調製
窒素雰囲気下、0℃で維持されたn-BuLi(ヘキサン中15%溶液、2.2mL、
5mmol)のTHF(10mL)中溶液、に、ヘキサメチルジシラザン(1.08mL
、5.1mmol)を滴加し、15min撹拌した。温度を0℃で維持しながら、これに
、(+)-trans-2-クロロ-4-トリフルオロメチル安息香酸2-(2-アセト
キシメチル-1-メチル-ピロリジン-3-イル)-6-アセチル-3,5-ジメトキシ
フェニルエステル(1.44g、2.5mmol)のTHF(10mL)中溶液を滴加し
た。添加後、室温まで温めて反応させ、2.5h撹拌した。反応混合物を希釈HClで酸
性化し、10%炭酸水素ナトリウムでpH8~9に塩基性化した。水層をクロロホルム(
3×25mL)で抽出した。有機層を水(25mL)、ブライン(25mL)で洗浄し、
無水Na2SO4で脱水した。有機層を減圧下で濃縮し、真空下で乾燥させることによって
、油として酢酸3-{3-[3-(2-クロロ-4-トリフルオロメチル-フェニル)-
3-オキソ-プロピオニル]-2-ヒドロキシ-4,6-ジメトキシ-フェニル}-1-
メチル-ピロリジン-2-イルメチルエステルを生成した(1.3g、90.2%)。こ
のエステルを濃縮HCl(10mL)に溶解し、3h撹拌して環化を生じさせた。3hの
終わりに、反応混合物を固体NaHCO3でpH8~9に塩基性化した。水層をクロロホ
ルム(25×3mL)で抽出し、水(25mL)およびブライン(25mL)で洗浄した
。有機層を無水Na2SO4で脱水し、減圧下で濃縮し、真空で脱水した。クロロホルム中
3%メタノールおよび0.1%アンモニアを溶離液として有するカラムクロマトグラフィ
ーで残渣を精製することによって、黄色の固体として、化合物、(+)-trans-2
-(2-クロロ-4-トリフルオロメチルフェニル)-8-(2-ヒドロキシメチル-1
-メチルピロリジン-3-イル)-5,7-ジメトキシ-クロメン-4-オンを生成した

収量: 0.56 g (48.2 %); 1H NMR (CDCl3, 300MHz): δ 7.95 (d, 1H), 7.78 (s, 1H), 7.
69 (d, 1H), 6.61 (s, 1H), 6.46 (s, 1H), 4.21 (m, 1H), 4.01 (s, 3H), 3.93 (s, 3H)
, 3.71 (dd, 1H), 3.41 (d, 1H), 3.26 (m, 1H), 2.84 (m, 1H), 2.70 (m, 1H), 2.44 (s
, 3H), 2.10 (m, 2H); MS (ES+): m/z 497 (M+1).
【0164】
(b)(+)-trans-2-(2-クロロ-4-トリフルオロメチル-フェニル)-
5,7-ジヒドロキシ-8-(2-ヒドロキシ-メチル-1-メチルピロリジン-3-イ
ル)-クロメン-4-オンの調製
パート(a)で得た化合物(0.25g、0.5mmol)、ピリジン塩酸塩(0.2
5g、2.16mmol)および触媒量のキノリンの混合物を180℃で2.5hの間加
熱した。反応混合物をメタノール(25mL)で希釈し、固体Na2CO3でpH10に塩
基性化した。反応混合物を濾過し、メタノールで洗浄した。有機層を濃縮し、0.1%ア
ンモニアおよびクロロホルム中4.5%メタノールを溶離液として使用するカラムクロマ
トグラフィーで残渣を精製することによって、黄色の固体として、化合物、(+)-tr
ans-2-(2-クロロ-4-トリフルオロメチルフェニル)-5,7-ジヒドロキシ
-8-(2-ヒドロキシ-メチル-1-メチルピロリジン-3-イル)-クロメン-4-
オンを生成した。
収量: 0.15 g (63.7 %); 1 H NMR (CDCl3, 300MHz): δ 7.99 (m, 2H), 7.83 (d, 1H), 6
.65 (s, 1H), 6.41 (s, 1H), 4.24 (m, 1H), 3.90 (m, 2H), 3.70 (m, 1H), 3.60 (m, 1H
), 3.41 (m, 1H), 2.99 (s, 3H), 2.54 (m, 1H), 2.28 (m, 1H); MS (ES+): m/z 470 (M+
1).
【0165】
(c)(+)-trans-2-(2-クロロ-4-トリフルオロメチルフェニル)-5
,7-ジヒドロキシ-8-(2-ヒドロキシ-メチル-1-メチルピロリジン-3-イル
)-クロメン-4-オン塩酸塩(化合物Aまたはボルシクリブ)の調製
(b)で得た化合物(0.1g、0.2mmol)をメタノール(2mL)中に懸濁さ
せ、エーテルのHClで処理し、有機溶媒を蒸発させることによって、化合物、(+)-
trans-2-(2-クロロ-4-トリフルオロメチル-フェニル)-5,7-ジヒド
ロキシ-8-(2-ヒドロキシメチル-1-メチル-ピロリジン-3-イル)-クロメン
-4-オン塩酸塩を生成した。
収量: 0.1 g (92.8 %); 1H NMR (CDCl3, 300MHz): δ 8.02 (d, 2H), 7.83 (d, 1H), 6.6
4 (s, 1H), 6.41 (s, 1H), 4.23 (m, 1H), 3.73 (m, 2H), 3.68 (m, 1H), 3.51 (m, 1H),
3.39 (m, 1H), 2.99 (s, 3H), 2.54 (m, 1H), 2.31 (m, 1H).
【0166】
参照例2:
(a)(+)-trans-2-(2-クロロフェニル)-8-(2-ヒドロキシメチル
-1-メチルピロリジン-3-イル)-5,7-ジメトキシ-クロメン-4-オンの調製
窒素雰囲気下で撹拌しながら、水素化ナトリウム(50%、0.54g、11.25m
mol)を、(-)-trans-1-[2-ヒドロキシ-3-(2-ヒドロキシメチル
-1-メチルピロリジン-3-イル)-4,6-ジメトキシフェニル)-エタノン(0.
7g、2.2mmol)の乾燥DMF(15mL)中溶液に、0℃で少しずつ加えた。1
0min後、メチル2-クロロベンゾエート(1.15g、6.75mmol)を加えた
。反応混合物を25℃で2h撹拌した。メタノールを20℃未満で慎重に加えた。反応混
合物をクラッシュアイス(300g)上に注入し、1:1HCl(pH2)で酸性化し、
EtOAc(2×100mL)を使用して抽出した。飽和したNa2CO3(pH10)を
使用して水層を塩基性化し、CHCl3(3×200mL)を使用して抽出した。有機層
を脱水し(無水Na2SO4)、濃縮した。残渣に、濃縮HCl(25mL)を加え、室温
で2h撹拌した。反応混合物をクラッシュアイス(300g)上に注入し、Na2CO3
和水溶液を使用して塩基性にした。CHCl3(3×200mL)を使用して混合物を抽
出した。有機抽出物を水で洗浄し、脱水し(無水Na2SO4)、濃縮することによって、
化合物、(+)-trans-2-(2-クロロ-フェニル)-8-(2-ヒドロキシメ
チル-1-メチル-ピロリジン-3-イル)-5,7-ジメトキシ-クロメン-4-オン
を得た。
収量: 0.67 g (64 %); mp: 91 - 93℃; [α]D 25 = + 5.8°(c = 0.7, メタノール); IR (
KBr): 3431 , 1648, 1598, 1571 cm-1; 1H NMR (CDCl3, 300MHz): δ 7.70 (dd, 1H), 7.
52 (m, 1H), 7.45 (m, 2H), 6.50 (s, 1H), 6.44 (s, 1H), 4.17 (m, 1H), 4.00 (s, 3H)
, 3.97 (s, 3H), 3.64 (dd, 1H), 3.40 (d, 1H), 3.15 (m, 1H), 2.74 (d, 1H), 2.52 (m
, 1H), 2.32 (s, 3H), 2.00 (m, 2H); MS (ES+): m/z 430 (M+1).
【0167】
(b)(+)-trans-2-(2-クロロフェニル)-5,7-ジヒドロキシ-8-
(2-ヒドロキシメチル-1-メチル-ピロリジン-3-イル)-クロメン-4-オンの
調製
溶融したピリジン塩酸塩(4.1g、35.6mmol)をパート(a)で得た化合物
(0.4g、0.9mmol)に加え、180℃で1.5h加熱した。反応混合物を25
℃に冷却し,MeOH(10mL)で希釈し、Na2CO3を使用してpH10に塩基性化
した。混合物を濾過し、有機層を濃縮した。残渣を水(5mL)中に懸濁させ、30mi
n撹拌し、濾過し、乾燥させることによって、化合物、(+)-trans-2-(2-
クロロ-フェニル)-5,7-ジヒドロキシ-8-(2-ヒドロキシメチル-1-メチル
-ピロリジン-3-イル)-クロメン-4-オンを得た。
収量: 0.25 g (70 %); IR (KBr): 3422, 3135, 1664, 1623, 1559 cm-1 ; 1H NMR (CDCl3
, 300MHz): δ 7.56 (d, 1H), 7.36 (m, 3H), 6.36 (s, 1H), 6.20 (s, 1H), 4.02 (m, 1
H), 3.70 (m, 2H), 3.15 (m, 2H), 2.88 (m, 1H), 2.58 (s, 3H), 2.35 (m, 1H), 1 .88
(m, 1H); MS (ES+): m/z 402 (M+1); 分析: C21H20ClNO5 C, 62.24 (62.71); H, 5.07 (4
.97); N, 3.60 (3.48); Cl, 9.01 (8.83).
【0168】
(c)(+)-trans-2-(2-クロロフェニル)-5,7-ジヒドロキシ-8-
(2-ヒドロキシメチル-1-メチル-ピロリジン-3-イル)-クロメン-4-オン塩
酸塩(化合物Bまたはリビシクリブ)の調製
パート(b)で得た化合物(0.2g、0.48mmol)をIPA(5mL)中に懸
濁させ、3.5%HCl(25mL)を加えた。懸濁液を加熱して、透明な溶液を得た。
溶液を冷却し、固体を濾過することによって、化合物、(+)-trans-2-(2-
クロロフェニル)-5,7-ジヒドロキシ-8-(2-ヒドロキシメチル-1-メチル-
ピロリジン-3-イル)-クロメン-4-オン塩酸塩を得た。
収量: 0.21 g (97 %); mp: 188 - 192℃; [α]D 25 = +21.3°(c = 0.2, メタノール); 1
H NMR (CD3OD, 300MHz): δ 7.80 (d, 1H), 7.60 (m, 3H), 6.53 (s, 1H), 6.37 (s, 1H)
, 4.23 (m, 1H), 3.89 (m, 2H), 3.63 (m, 1H), 3.59 (dd, 1H), 3.38 (m, 1H), 2.90 (s
, 3H), 2.45 (m, 1H), 2.35 (m, 1H); MS (ES+): m/z 402 (M +1) (遊離塩基).
【0169】
生物学的データ:
薬理学的アッセイ:
【実施例0170】
I.BRAF V600E変異した黒色腫細胞株中での、化合物A(CDK阻害剤、ボル
シクリブとも呼ばれる)およびベムラフェニブ(BRAF V600E阻害剤)の組合せ
の使用を含めたin vitroでの研究
目的:
化合物A(CDK阻害剤、ボルシクリブとも呼ばれる)とベムラフェニブ(BRAF
V600E阻害剤)の組合せの、BRAF V600E変異した黒色腫細胞株における細
胞周期およびアポトーシスに対する効果を研究する。
【0171】
材料および方法:
細胞株
ATCC(アメリカ培養細胞系統保存機関)、USAから得たG361およびSK-M
EL3黒色腫細胞株をこの研究に使用した。G361は、ベムラフェニブ感受性細胞株で
あり、SK-MEL3はベムラフェニブ耐性細胞株である。両方の細胞株はBRAF V
600E変異している。
【0172】
A.フローサイトメトリーを使用した細胞周期分布の分析:
G361/SK-MEL3黒色腫細胞を25mm3組織培養物フラスコ内に播種した。
24h後、G361細胞を以下で5日間処置した:i)化合物A(1μΜ);ii)ベム
ラフェニブ(1μΜ);およびiii)化合物A(1μΜ)とベムラフェニブ(1μΜ)
とを一緒に。
【0173】
SK-MEL3黒色腫細胞の場合、細胞を以下で5日間処置した:i)化合物A(1μ
Μ);ii)ベムラフェニブ(10μΜ);およびiii)化合物A(1μΜ)とベムラ
フェニブ(10μΜ)とを一緒に。
【0174】
対照細胞は未処置のままで5日間置いた。分離細胞と付着細胞の両方を5日目間の終わ
りに収集した。1000rpmで10min遠心分離しながら、細胞をおよそ5mLのリ
ン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄した。細胞を500μlのPBSに再懸濁させ
、500μlの氷冷70%エタノール中に固定した。固定された細胞を室温で30min
インキュベートし、1000rpmで10min回転させた。細胞ペレットに、1mLの
冷やした70%エタノールを加え、さらなる分析まで0℃未満で保存した。細胞をPBS
で2回洗浄して、固定剤を除去し、250μlのPBS中に再懸濁させた。これに、12
.5μlのヨウ化プロピジウム(PBS中1mg/mL)および12.5μlのRnas
e A(1mg/ml)を加えた。37℃での30minのインキュベーション後、フロ
ーサイトメトリーを使用して細胞を分析した。
【0175】
製造業者の推奨に従い、これらの試験にフローサイトメーター(Becton Dic
kinson FACS Calibur、USA)を使用した。488nmに設定した
アルゴンイオンレーザーを励振源として使用した。2n~4nの間のDNA含有量を有す
る細胞を、赤色蛍光のレベルにより定義された通りに細胞周期のG1、SおよびG2/M
段階として指定した。2n未満のDNA含有量を示す細胞をサブG1細胞として指定した
。各細胞周期区画内の細胞数を存在する細胞の総数のパーセンテージとして表現した。
【0176】
B.Annexin V-FITC染色(初期アポトーシス検出のため)
AnnexinV-FITCは、アポトーシス細胞を同定するための感受性プローブで
ある。初期アポトーシスの間、膜リン脂質ホスホチジルセリン(PS)は、原形質膜の内
側から外側のリーフレットに転位し、これによってPSが外部細胞環境に曝露される。A
nnexin Vは、PSに対して高親和性を有し、曝露されたPSを有する細胞に結合
する35~36kDaカルシウム依存性リン脂質結合タンパク質である。
【0177】
ヨウ化プロピジウムは、漏出する膜を介して細胞に入り、したがって、遅いアポトーシ
スの検出に対してフルオレセインイソチオシアネート(FITC)と併用して使用されて
いる極性色素である。
【0178】
黒色腫細胞G361を25mm3組織培養物フラスコ内に播種した。24h後、細胞を
以下で24h処置した:i)化合物A(1μΜ);ii)ベムラフェニブ(1μΜ);お
よびiii)化合物A(1μΜ)とベムラフェニブ(1μΜ)とを一緒に。対照細胞は未
処置のまま24h置いた。流動性の細胞を含有する培地を収集し、異なる時間点において
トリプシンで収集した後、付着細胞と共にプールした。1000rpmで10分間遠心分
離しながら、細胞を冷たいPBSで2回洗浄した。1×106細胞/mlの濃度で、細胞
ペレットを1×結合緩衝剤(10mm HEPES pH7.4、140mM NaCl
、2.5mM CaCI2)中に再懸濁させた。100μlの溶液(1×105細胞)をA
nnexin V-FITCおよびヨウ化プロピジウムで着色した。細胞を、暗所で、室
温で(25~30℃)15minインキュベートし、フローサイトメトリーで試料を分析
した。
【0179】
結果:
これらの試験の結果は図1~3に示されている。
【0180】
結論:
図1は、ベムラフェニブで処置したG361細胞は、対照細胞(72.36%)と対比
して、91.94%の有意なG1の停止を示していることを指摘している。サブG1期か
ら認められるように、化合物Aおよびベムラフェニブ単独で処置した細胞は、それぞれ9
.48%および2.3%アポトーシスしか示さなかったのに対して、化合物Aとベムラフ
ェニブの組合せで処置した細胞は、53.67%の細胞にアポトーシスが起こっているこ
とを示し、これは、組合せが相乗的であることを指摘している。
【0181】
図2では、上側右の四分円は、初期のアポトーシスにあるG361細胞を示している。
その後アポトーシスが起こっているこれらの細胞は細胞死へとつながる。化合物Aとベム
ラフェニブの組合せで処置した細胞は、それぞれ化合物Aおよびベムラフェニブのみで処
置した細胞に関する8%および20%と対比して、27%の細胞が初期アポトーシス(a
nnexin着色した細胞)にあることを示した。このデータは、この組合せが相乗効果
を示していることを指摘している。
【0182】
図3では、ベムラフェニブのみで処置したSK-MEL3細胞は、対照細胞(67.3
8%)と対比して76.78%の有意なG1停止を示した。サブG1期から認められるよ
うに、アポトーシスは、化合物Aとベムラフェニブの組合せで処置した細胞の29.75
%に見られる一方で、化合物Aおよびベムラフェニブ単独で処置した細胞は、それぞれ1
9.63%および15.12%のアポトーシスしか示さず、この組合せが相乗的であるこ
とを指摘している。
【0183】
図1~3に図示されているおよび上で説明されている結果は、化合物Aとベムラフェニ
ブの組合せは、ベムラフェニブ感受性および耐性のBRAF V600E変異した黒色腫
細胞株において相乗的であり、化合物Aおよびベムラフェニブを単独で使用した場合と比
較して、組み合わせて使用した場合により多くのアポトーシスを誘発することを明確に確
立した。
【0184】
II.ヒトBRAF-変異した黒色腫細胞における化合物Aとベムラフェニブ(BRAF
V600E阻害剤)とのin vitroでの二重組合せ試験
目的:この研究目的は、BRAF変異した黒色腫細胞における化合物A(CDK阻害剤)
とベムラフェニブ(BRAF V600E阻害剤)の組合せの効力を評価することであっ
た。
【0185】
A.材料
試験化合物:化合物A(PEL’S Labで調製);ベムラフェニブ(Nanjing
Chemlin Chemical Industry Co.、Ltd、中国)
ビヒクル:DMSO(Sigma-Aldrich-Chemie Gmbh、ドイツ)
投薬の準備:化合物Aおよびベムラフェニブは、秤量し、必要量のDMSO中に溶解して
、必要とされるストック溶液を得た。
試験システム:試験システムは、G361、A375およびMDAMB-435S(BR
AF V600E変異した)細胞株を含んでいた。これらは、ATCC(America
n Type Culture Collection)、USAから得た。
【0186】
B.方法
化合物Aとベムラフェニブの様々な組合せを使用する細胞毒性試験を、CCK8生細胞
デヒドロゲナーゼアッセイを使用して行った。
【0187】
i)細胞カウンティングキット-8(CCK8)生細胞デヒドロゲナーゼアッセイ
ヒトBRAF V600E変異した黒色腫がん細胞株、G361、A375およびMD
AMB-435Sを、96-ウェルプレート中の199μlLのRPMI 1640培地
に、3000個の細胞/ウェルの密度で播種し、一晩インキュベートして細胞を付着させ
た。次いで細胞をそれぞれの試験化合物で処理した。全部で10の群があった;
i)1μΜのベムラフェニブを単独で48h;
ii)0.3μΜ/0.1μΜの化合物Aを単独で48h;
iii)1μΜ/0.3μΜの化合物Aを単独で48h;
iv)3μΜ/1μΜの化合物Aを単独で48h;
v)10μΜ/3μΜの化合物Aを単独で48h;
vi)0.3μΜ/0.1μΜの化合物Aと1μΜのベムラフェニブの組合せを48h;
vii)1μΜ/0.3μΜの化合物Aと1μΜのベムラフェニブの組合せを48h;
viii)3μΜ/1μΜの化合物Aと1μΜのベムラフェニブの組合せを48h;
ix)10μΜ/3μΜの化合物Aと1μΜのベムラフェニブの組合せを48h;
x)対照ウェルをDMSOビヒクルで48h処理した。
【0188】
プレートは、加湿した5%CO2インキュベーター内で、37°±1℃でインキュベー
トした。ベムラフェニブは3種のすべての異なる細胞株に対して1.0μΜの濃度で使用
し、化合物Aは、A375黒色腫細胞の場合、0.3μΜ、1μΜ、3μΜおよび10μ
Μ濃度で使用し、G361およびMDAMB435S黒色腫細胞の場合、0.1μΜ、0
.3μΜ、1.0μΜ、3.0μΜの濃度で使用した。インキュベーション期間の終わり
に、CCK8細胞毒性アッセイプロトコルを使用してプレートをアッセイした。Chou
およびTalalay(4)によるCompusynソフトウエアを使用して組合せ指数
(CI)を計算することによって、相乗作用を求めた。CI<1は相乗的であり、CI=
1は相加的であり、CI>1は拮抗的である。
【0189】
統計分析:
スチューデントt検定を使用して統計分析を実施し、p値<0.05は有意とみなされ
た。データは、平均値±標準誤差(SEM)として表現される。平均値は、それぞれ三重
反復で実施される、少なくとも2つの独立した実験から得られる。
【0190】
ii)細胞毒性アッセイプロトコル
対数的に増大する細胞を、3x103細胞/ウェルの密度でプレーティングし、16~
18hの間回復させた。化合物Aとベムラフェニブの両方の化合物の濃度を48h変化さ
せて、細胞を検証した。48h後、細胞毒性をCCK-8試薬(Dojindo Mol
ecular Technologies、Inc、Maryland、およびJapa
n)により求めた。製造業者の指示に従い、5μL/ウェルのCCK-8試薬を加え、プ
レートを2hインキュベートした。450nmから650nmの波長に補正し、対照に対
して正規化し、Tecan Sapphire マルチ-蛍光 ミクロ-プレートリーダ
ー上の吸光度を測定することによって毒性を求めた。すべての実験は三重反復で実施した
【0191】
化合物Aおよびベムラフェニブに関する処置スケジュール:
表1および2は、A375細胞およびG361およびMDA-MB435S細胞におけ
る化合物Aおよびベムラフェニブのそれぞれの処置スケジュールを示している。
【0192】
【表1】
【0193】
【表2】
【0194】
結果:
異なる細胞株における化合物Aおよびベムラフェニブおよびこれらの組合せに関する細
胞毒性のIC50値が表3に提示されている。図4~6および表4~6は、様々な黒色腫細
胞株における化合物Aとベムラフェニブの組合せの効果を表している。
【0195】
【表3】
【0196】
図4~6において、X軸は、化合物Aおよびベムラフェニブ単独での濃度および組み合
わせた場合の化合物の濃度を示し、左のY軸は細胞毒性(%)を示し、右のY-軸は組合
せ指数値を示している。
【0197】
図4において、1μΜのベムラフェニブで処置した細胞は23%阻害を示したのに対し
て、3μΜの化合物Aで処置した細胞は細胞の46%阻害を示した。しかし、この最適以
下の濃度において、細胞を、化合物Aと組み合わせたベムラフェニブで処置した場合、組
合せ指数(CI)は0.70であり、細胞の83%阻害という相乗効果が観察された。示
された相乗的データは、それぞれ三重反復で実施した、2つの独立した実験に関する平均
値を意味する。
【0198】
【表4】
【0199】
図5において、1μΜのベムラフェニブで処置した細胞は30%阻害を示したのに対し
て、0.3μΜの化合物Aで処置した細胞は細胞の2%阻害しか示さなかった。しかし、
この最適以下の濃度において、細胞を、化合物Aと組み合わせたベムラフェニブで処置し
た場合、組合せ指数値は0.77であり、細胞の52%阻害という注目すべき相乗効果が
観察された。細胞を、ベムラフェニブ(1μΜ)と組み合わせた化合物A(3μΜ)で処
置した場合、組合せ指数0.9で細胞の91%阻害を示した。示された相乗的データは、
それぞれ三重反復で実施した、2つの独立した実験に関する平均値を意味する。
【0200】
【表5】
【0201】
図6において、1μΜのベムラフェニブで処置した細胞は細胞の31%阻害を示したの
に対して、1μΜの化合物Aで処置した細胞は細胞の32%阻害を示した。最適以下の濃
度において、細胞を、化合物Aと組み合わせたベムラフェニブで処置した場合、組合せ指
数0.74で細胞の90%阻害という相乗効果が観察された。示された相乗的データは、
それぞれ三重反復で実施した、2つの独立した実験に関する平均値を意味する。
【0202】
【表6】
【0203】
結論:
ベムラフェニブと化合物Aの組合せは、BRAF変異した黒色腫細胞において顕著な相
乗効果を示した。
【0204】
参考文献:
1.Smalley KS、Lioni M、Palma MD、Xiao M、Des
ai B、Egyhazi S、Hansson J、Wu H、King AJ、Va
n Belle P、Elder DE、Flaherty KT、Herlyn M、
Nathanson KL;「Increased cyclin D1 expres
sion can mediate BRAF inhibitor resistan
ce in BRAF V600E-mutated melanomas」;Mol.
Cancer Ther.、2008年、第7巻、2876~2883ページ。
2.Smalley KSM and Flaherty KT;「Integrati
ng BRAF/MEK inhibitors into combination
therapy for Melanoma」;British Journal of
Cancer、2009年、第100巻、431~435ページ。
3.Dhomen N、Marais R;「BRAF signaling and
targeted therapies in melanoma」Hematol.O
ncol.Clin.North Am.、2009年、第23巻、3号、529~45
ページ。
4.Ting-ChaoChou;「Theoretical basis、exper
imental design、and computerized simulati
on of synergism and antagonismin drug co
mbination studies」Pharmacol.Rev.、2006年、第
58巻、621~81ページ。
【実施例0205】
A.ヒトBRAF-V600E変異した黒色腫細胞株(A375)およびそのベムラフェ
ニブ耐性誘導体(A375R)における、化合物A(CDK阻害剤、ボルシクリブとも呼
ばれる)と、BRAF阻害剤(ベムラフェニブまたはダブラフェニブ)またはMEK阻害
剤(トラメチニブ)から選択される1種の抗がん剤とのin vitroでの組合せ試験
【0206】
目的:
本研究の目的は、BRAF変異した黒色腫細胞における、CDK阻害剤(ボルシクリブ
)と、BRAF阻害剤(ベムラフェニブまたはダブラフェニブ)またはMEK阻害剤(ト
ラメチニブ)の組合せの効力を評価することであった。
【0207】
B.材料:
試験化合物:化合物A(PEL’S Lab.で調製);ベムラフェニブ(Selle
ckchem USA、S1267);ダブラフェニブ(Selleckchem US
A、S2807)およびトラメチニブ(Selleckchem USA、S2673)
ビヒクル:DMSO(Sigma-Aldrich-Chemie Gmbh、ドイツ)
投薬の準備:試験化合物を秤量し、必要量のDMSO中に溶解して、必要とされるストッ
ク溶液を得た。
試験系:試験系はA375(BRAF V600E変異)細胞株を含んだ。これは、AT
CC(American Type Culture Collection(アメリカ
培養細胞系統保存機関))、USAおよびA375R細胞株(ベムラフェニブ耐性-PE
L’S Lab.で開発)から得た。
【0208】
C.方法:
CCK8生細胞デヒドロゲナーゼアッセイを使用して、すべての試験化合物を単剤とし
ておよび組み合わせて使用する細胞毒性試験を行った。
【0209】
細胞カウンティングキット-8(CCK8)生細胞デヒドロゲナーゼアッセイ:
対数的に増大するヒトBRAF V600E変異した黒色腫細胞を、1500細胞/ウ
ェルの密度で、384-ウェルプレート(Corning、USA)中の30μLのダル
ベッコ改変イーグル培地培地(DMEM)に、Tecan自動化プラットフォーム(Fr
eedomEvo Liquid 取扱いシステム)を使用して播種し、約12~16h
インキュベートして、細胞を付着させた。次いで、細胞を異なる用量の化合物Aおよび抗
がん剤(ベムラフェニブまたはダブラフェニブまたはトラメチニブ)で、単剤療法として
(個々に使用)および組み合わせて、48h処置した。異なる投薬量を使用する試験を、
各組合せ(例えば化合物Aとベムラフェニブの組合せ)に対して行った。A375および
A375R細胞において個々におよび組み合わせて使用した場合の試験化合物の処置の比
率を表7A~7Cに示す(すなわち、化合物Aとベムラフェニブの組合せ;化合物Aとダ
ブラフェニブの組合せ;および化合物Aとトラメチニブの組合せ)。化合物A(μΜ)の
以下の用量を使用した:1、0.5、0.25、0.125、0.06、0.03、0.
015;ベムラフェニブ(μΜ)30、15、7.5、3.75、1.875、0.9、
0.4、0.2、0.1、0.05;ダブラフェニブ(μΜ)3、1.5、0.75、0
.37、0.18、0.09、0.04、0.02、0.01、0.005;トラメチニ
ブ(μΜ)1、0.5、0.25、0.125、0.0625、0.031、0.015
、0.007、0.003、0.001。表7A~7Cに示されているように、上記用量
の抗がん剤(ベムラフェニブまたはダブラフェニブまたはトラメチニブ)を化合物Aと複
数の比率で混合した。使用されている対照は、細胞のみまたは細胞とビヒクル(DMSO
)である。
【0210】
プレートは、加湿した5%CO2インキュベーター内で、37°±1℃で48hインキ
ュベートした。ポストインキュベーション後、CCK8試薬(Dojindo Mole
cular Technologies、Inc、メリーランド州、および日本)を使用
してプレートをアッセイした。製造業者の指示に従い、3μlのCCK-8試薬を384
ウェルプレートの各ウェルに加え、プレートを2hインキュベートした。対照に対して正
規化した450nmの波長で、Tecan サファイア マルチ-蛍光 ミクロ-プレー
トリーダー上の吸光度を測定することによって、毒性を求めた。すべての実験は4回実施
した。
【0211】
組合せ指数(CI)(1未満のCI値は相乗効果を示す)を計算するChou Tal
alay法に基づくCalcusynソフトウエア(Biosoft、Ferguson
、MO、USA)を使用して組合せの効力を定量化した。
【0212】
表7A~7C:A375およびA375R細胞における化合物Aおよび抗がん剤(ベム
ラフェニブまたはダブラフェニブまたはトラメチニブ)の単剤療法として(個々に使用)
および組み合わせた場合の処置の比率。
【0213】
単独でのまたは組み合わせた化合物A(Aとして表示)およびベムラフェニブ(Vとし
て表示)の処置の比率が表7Aに表されている。
【0214】
【表7】
【0215】
単独でのまたは組み合わせた化合物A(Aとして表示)およびダブラフェニブ(Dとし
て表示)の処置の比率が表7Bに表されている。
【0216】
【表8】
【0217】
単独でのまたは組み合わせた化合物A(Aとして表示)およびトラメチニブ(Tとして
表示)の処置の比率が表7Cに表されている。
【0218】
【表9】
【0219】
結果:
これらの試験の結果が図7~13に示されている。
【0220】
結論:
1.図7aおよび7bから、A375細胞株はベムラフェニブに対して極めて感受性があ
るのに対して、A375Rは耐性があると結論づけることができる。さらに、A375と
A375Rの両方が化合物A(ボルシクリブ)に対して同等に感受性がある。
2.図8aおよび8bから、化合物A(ボルシクリブ)とベムラフェニブの組合せはA3
75細胞株において強い相乗効果(CI<0.5)を示すと結論づけることができる。
3.図9aおよび9bから、化合物A(ボルシクリブ)とベムラフェニブの組合せは、A
375R細胞株において強い相乗効果(CI<0.5)を示すと結論づけることができる

4.図10aおよび10bから、化合物A(ボルシクリブ)とダブラフェニブの組合せは
A375細胞株において強い相乗効果(CI<0.5)を示すと結論づけることができる

5.図11aおよび11bから、化合物A(ボルシクリブ)とダブラフェニブの組合せは
A375R細胞株において強い相乗効果(CI<0.5)を示すと結論づけることができ
る。
6.図12aおよび12bから、化合物A(ボルシクリブ)とトラメチニブの組合せはA
375細胞株において強い相乗効果(CI<0.5)を示すと結論づけることができる。
7.図13aおよび13bから、化合物A(ボルシクリブ)とトラメチニブの組合せはA
375R細胞株において強い相乗効果(CI<0.5)を示すと結論づけることができる
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図8a
図8b
図9a
図9b
図10a
図10b
図11a
図11b
図12a
図12b
図13a
図13b
【手続補正書】
【提出日】2024-01-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒色腫を治療するための医薬キットであって、式I
【化1】

(式中、Arは2-クロロ-4-トリフルオロメチルフェニルである
のCDK(サイクリン依存性キナーゼ)阻害剤または薬学的に許容されるその塩と、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、及びトラメチニブから選択される少なくとも1種の抗がん剤の治療有効量との併用治療における前記CDK阻害剤の使用に関する指示を含む添付文書とを含む、医薬キット
【請求項2】
前記CDK阻害剤が(+)-trans-2-(2-クロロ-4-トリフルオロメチルフェニル)-5,7-ジヒドロキシ-8-(2-ヒドロキシメチル-1-メチル-ピロリジン-3-イル)-クロメン-4-オン塩酸塩である、請求項1に記載のキット
【請求項3】
前記抗がん剤が、ベムラフェニブである、請求項1に記載のキット
【請求項4】
前記抗がん剤が、ダブラフェニブである、請求項1に記載のキット
【請求項5】
前記抗がん剤が、トラメチニブである、請求項1に記載のキット。
【請求項6】
前記添付文書がさらに、前記CDK阻害剤と、前記少なくとも1種の抗がん剤と、それを必要とする対象に同時に投与することについての指示を含む、請求項1に記載のキット
【請求項7】
前記添付文書がさらに、前記CDK阻害剤と、前記少なくとも1種の抗がん剤と、それを必要とする対象に逐次的に投与することについての指示を含む、請求項1に記載のキット
【請求項8】
前記黒色腫が
(i)非難治性黒色腫
(ii)転移性黒色腫、あるいは
(iii)再発性または難治性黒色腫
である、請求項1に記載のキット
【請求項9】
前記黒色腫が
(i)非難治性BRAF変異型黒色腫
(ii)転移性BRAF変異型黒色腫、あるいは
(iii)再発性または難治性BRAF変異型黒色腫
である、請求項8に記載のキット
【請求項10】
前記黒色腫が
(i)非難治性BRAF V600変異型黒色腫
(ii)転移性BRAF V600変異型黒色腫、あるいは
(iii)再発性または難治性BRAF V600変異型黒色腫
である、請求項9に記載のキット
【請求項11】
前記黒色腫が、
(i)非難治性BRAF V600EまたはBRAF V600K変異型黒色腫
(ii)転移性BRAF V600EまたはBRAF V600K変異型黒色腫、あるいは
(iii)再発性または難治性BRAF V600E黒色腫またはBRAF V600K変異型黒色腫
である、請求項10に記載のキット
【請求項12】
前記式Iの化合物もしくは薬学的に許容されるその塩と、前記少なくとも1種の抗がん剤とを一定用量製剤として含有する容器を含む、請求項1に記載のキット。
【請求項13】
前記式Iの化合物もしくは薬学的に許容されるその塩を含む容器、および前記少なくとも1種の抗がん剤を含む1つ以上の別々の容器を含む、請求項1に記載のキット。
【請求項14】
前記添付文書がさらに、適応、使用法、用量、投与の指示、禁忌、予防策および注意事項についての情報を含む、請求項1に記載のキット。
【請求項15】
薬学的に許容される緩衝剤、注射用の水、リン酸緩衝食塩水、リンガー液またはデキストロース溶液を含む容器をさらに含む、請求項1に記載のキット。