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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037893
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】アルツハイマー病治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240312BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240312BHJP
   C07K 14/47 20060101ALN20240312BHJP
【FI】
A61K39/395 N ZNA
A61P25/28
A61P43/00 121
A61K45/00
C07K14/47
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023210860
(22)【出願日】2023-12-14
(62)【分割の表示】P 2021204857の分割
【原出願日】2015-02-06
(31)【優先権主張番号】61/937,472
(32)【優先日】2014-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/971,479
(32)【優先日】2014-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/010,259
(32)【優先日】2014-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/081,992
(32)【優先日】2014-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.UNIX
(71)【出願人】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チョウ, ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】フリーゼンハーン, マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ポール, ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ウォード, マイケル
(57)【要約】      (修正有)
【課題】軽度から中程度のアルツハイマー病に罹患している患者の治療方法を提供する。
【解決手段】初期または軽度から中程度のアルツハイマー病(AD)と診断された患者において、機能能力または認知能力の低下を減少する方法であって、初期または軽度から中程度AD罹患者へ、前記患者において機能能力または認知能力の前記低下を緩徐にするのに有効な量で、アミロイドβ(1~42)(特定の配列)の残基13及び24内で結合するヒト化モノクローナル抗アミロイドベータ(Aβ)抗体を投与することを含む、前記方法である。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
初期または軽度から中程度のアルツハイマー病(AD)と診断された患者において、機能能力または認知能力の低下を減少する方法であって、初期または軽度から中程度AD罹患者へ、前記患者において機能能力または認知能力の前記低下を緩徐にするのに有効な量で、アミロイドβ(1~42)(配列番号1)の残基13及び24内で結合するヒト化モノクローナル抗アミロイドベータ(Aβ)抗体を投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記抗体は、アミロイドβのオリゴマー形態及び単量体形態を結合することができる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗体は、IgG4抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記抗体は、6つの超可変領域(HVR)を含み、
(i)HVR-H1は配列番号2であり;
(ii)HVR-H2は配列番号3であり;
(iii)HVR-H3は配列番号4であり;
(iv)HVR-L1は配列番号6であり;
(v)HVR-L2は配列番号7であり;及び
(vi)HVR-L3は配列番号8である、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記抗体は、配列番号5のアミノ酸配列を有する重鎖、及び配列番号9のアミノ酸配列を有する軽鎖を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記抗体は、クレネズマブ(crenezumab)である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
認知能力の低下は、12項目アルツハイマー病評価スケール-認知(ADAS-Cog12)試験、13項目アルツハイマー病評価スケール-認知(ADAS-Cog13)試験、または14項目アルツハイマー病評価スケール-認知(ADAS-Cog14)試験を用いて、前記抗体の投与前及び投与後の前記患者のスコアを判定することによって評価され、任意により、ADAS-Cogによって測定されるとき、認知低下の前記減少は、プラセボに対して、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、または少なくとも45%である、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記患者はApoE4陽性である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記患者は軽度ADに罹患している、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記患者は初期ADに罹患している、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記患者は、治療開始前、少なくとも20、20~30、20~26、24~30、21~26、22~26、22~28、23~26、24~26または25~26のMMSEスコアを有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記患者は、22~26のMMSEを有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記抗体は、患者体重あたり10mg/kg~100mg/kgの投与量で投与される、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記抗体は、少なくとも15mg/kgの投与量で投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記抗体は、15mg/kg、30mg/kg、45mg/kg、50mg/kg、または60mg/kgの投与量で投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記抗体は、静脈注射により投与される、請求項13または14に記載の方法。
【請求項17】
前記抗体は、2週間ごと、4週間ごと、1ヶ月ごと、2ヶ月ごと、または6ヶ月ごとに投与される、請求項13~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
有害事象のリスクを増大することなく、初期または軽度から中程度ADを治療する方法であって、初期または軽度から中程度ADと診断された患者に、治療中に発生した有害事象の前記リスクを増大することなく前記ADの治療に有効であるアミロイドβ(1~42)(配列番号1)の残基13及び24内で結合するヒト化モノクローナル抗Aβ抗体の量を投与することを含み、前記有害事象は、(i)アミロイド関連画像異常-浮腫(ARIA-E)及び(ii)アミロイド関連画像異常-出血(ARIA-H)から選択される、前記方法。
【請求項19】
前記抗体は、アミロイドβのオリゴマー形態及び単量体形態を結合することができる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記抗体は、IgG4抗体である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記抗体は、6つの超可変領域(HVR)を含み、
(i)HVR-H1は配列番号2であり;
(ii)HVR-H2は配列番号3であり;
(iii)HVR-H3は配列番号4であり;
(iv)HVR-L1は配列番号6であり;
(v)HVR-L2は配列番号7であり;及び
(vi)HVR-L3は配列番号8である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記抗体は、配列番号5の前記アミノ酸配列を有する重鎖、及び配列番号9の前記アミノ酸配列を有する軽鎖を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記抗体は、クレネズマブ(crenezumab)である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記患者は、ApoE4陽性である、請求項18~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記有害事象は、ARIA-Eである、請求項18~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
治療中に発生したARIA-Eが検出された場合、前記抗体の投与は中止され、任意によりARIA-Eの治療剤が投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ARIA-Eが解消後に、前記抗体の投与を再開することを更に含み、前記抗体は、投与が中止される前よりも少ない投与量で投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記抗体による治療中に、1つ以上の新規ARIA-Eが前記患者で検出されると、これ以上抗体は投与されず、任意によりコルチコステロイドが前記患者に投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項29】
前記患者は、ApoE4陽性である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
初期または軽度から中程度のアルツハイマー病(AD)と診断された患者において、機能能力または認知能力の前記低下を減少する方法であって、初期または軽度から中程度ADに罹患しているApoE4陽性患者へ、前記患者において機能能力または認知能力の前記低下を緩徐にするのに有効な量で、アミロイドβ(1~42)(配列番号1)の残基13及び24内で結合するヒト化モノクローナル抗アミロイドベータ(Aβ)抗体を投与することを含む、前記方法。
【請求項31】
前記抗体は、アミロイドβのオリゴマー形態及び単量体形態を結合することができる、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記抗体は、IgG4抗体である、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記抗体は、6つの超可変領域(HVR)を含み:
(i)HVR-H1は配列番号2であり;
(ii)HVR-H2は配列番号3であり;
(iii)HVR-H3は配列番号4であり;
(iv)HVR-L1は配列番号6であり;
(v)HVR-L2は配列番号7であり;及び
(vi)HVR-L3は配列番号8である、請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
前記抗体は、配列番号5の前記アミノ酸配列を有する重鎖、及び配列番号9の前記アミノ酸配列を有する軽鎖を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記抗体は、クレネズマブ(crenezumab)である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
認知能力の低下は、ADAS-Cog12試験、ADAS-Cog13試験、またはADAS-Cog14試験を用いて、前記抗体の投与前及び投与後の前記患者のスコアを判定することによって評価され、任意により、ADAS-Cogによって測定されるとき、認知低下の前記減少は、プラセボに対して、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、または少なくとも45%である、請求項30~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記患者は、軽度ADを有する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記患者は、初期ADを有する、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記患者は、治療開始前、少なくとも20、20~30、20~26、24~30、21~26、22~26、22~28、23~26、24~26または25~26のMMSEスコアを有する、請求項30~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記患者は、22~26のMMSEスコアを有する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記抗体は、患者体重あたり10mg/kg~100mg/kgの投与量で投与される、請求項30~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記抗体は、少なくとも15mg/kgの投与量で投与される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記抗体は、15mg/kg、30mg/kg、45mg/kg、50mg/kg、または60mg/kgの投与量で投与される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記抗体は、静脈注射を介して投与される、請求項41または42に記載の方法。
【請求項45】
前記抗体は、2週間ごと、4週間ごと、1ヶ月ごと、2ヶ月ごと、または6ヶ月ごとに投与される、請求項41~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
有害事象の前記リスクが増大することなく、初期または軽度から中程度ADの治療する方法であって、初期または軽度から中程度ADと診断されたApoE4陽性患者に、治療中に発生した有害事象の前記リスクが増大することなく前記ADの治療に有効であるアミロイドβ(1~42)(配列番号1)の残基13及び24内で結合するヒト化モノクローナル抗Aβ抗体の量を投与することを含み、前記有害事象は、(i)アミロイド関連画像異常-浮腫(ARIA-E)及び(ii)アミロイド関連画像異常-出血(ARIA-H)から選択される、前記方法。
【請求項47】
前記抗体は、アミロイドβのオリゴマー形態及び単量体形態を結合することができる、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記抗体は、IgG4抗体である、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記抗体は、6つの超可変領域(HVR)を含み、
(i)HVR-H1は配列番号2であり;
(ii)HVR-H2は配列番号3であり;
(iii)HVR-H3は配列番号4であり;
(iv)HVR-L1は配列番号6であり;
(v)HVR-L2は配列番号7であり;及び
(vi)HVR-L3は配列番号8である、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記抗体は、配列番号5の前記アミノ酸配列を有する重鎖、及び配列番号9の前記アミノ酸配列を有する軽鎖を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記抗体はクレネズマブ(crenezumab)である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記有害事象は、ARIA-Eである、請求項46~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
治療中に発生したARIA-Eが検出された場合、前記抗体の投与は中止され、任意によりARIA-Eの治療剤が投与される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記ARIA-Eが解消後に、前記抗体の投与を再開することを更に含み、前記抗体は、任意により、投与が中止される前よりも少ない投与量での投与が再開されることを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記抗体による治療中に、1つ以上の新規ARIA-Eが前記患者で検出されると、これ以上抗体は投与されず、任意によりコルチコステロイドが前記患者に投与される、請求項46に記載の方法。
【請求項56】
前記患者は、ターゲットに特異的に結合する治療薬;コリンエステラーゼ阻害剤;NMDAレセプターアンタゴニスト;モノアミン枯渇薬;メシル酸エルゴロイド;抗コリン性抗パーキンソン病剤;ドーパミン作動性抗パーキンソン剤;テトラベナンジン;抗炎症剤;ホルモン;ビタミン;ディメボリン(dimebolin);ホモタウリン;セロトニンレセプター活性調節剤;インターフェロン及びグルココルチコイド;クレネズマブ(crenezumab)以外の抗Aβ抗体;抗菌剤;抗ウイルス剤からなる群から選択される1つ以上の薬剤により同時に治療される、請求項1から55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記薬剤は、コリンエステラーゼ阻害剤である、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記コリンエステラーゼ阻害剤は、ガランタミン、ドネペジル、リバスティグミン及びタクリンからなる群から選択される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記薬剤は、NMDAレセプターアンタゴニストである、請求項56に記載の方法。
【請求項60】
前記NMDAレセプターアンタゴニストは、メマンチンまたはその塩である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記薬剤は、ターゲットに特異的に結合する治療薬であり、前記ターゲットは、ベータセクレターゼ、タウ、プレセニリン、アミロイド前駆体タンパク質またはその部分、アミロイドベータペプチドまたはオリゴマー、またはそのフィブリル、死レセプター6(DR6)、糖化最終産物(RAGE)レセプター、パーキン及びハンチンチンからなる群から選択される、請求項56に記載の方法。
【請求項62】
前記薬剤は、モノアミン枯渇剤であり、好ましくはテトラベナンジンである、請求項56に記載の方法。
【請求項63】
前記薬剤は、プロシクリジン、ジフェンヒドラミン、トリヘキシルフェニジル、ベンズトロピン、ビペリデン及びトリヘキシルフェニジルからなる群から選択される抗コリン性抗パーキンソン剤である、請求項56に記載の方法。
【請求項64】
前記薬剤は、エンタカポン、セレギリン、プラミペキソール、ブロモクリプチン、ロチゴチン、セレギリン、ロピニロール、ラサギリン、アポモルヒネ、カルビドパ、レボドパ、ペルゴリド、トルカポン及びアマンタジンからなる群から選択される、ドーパミン作動性抗パーキンソン剤である、請求項56に記載の方法。
【請求項65】
前記薬剤は、非ステロイド性抗炎症薬及びインドメタシンからなる群から選択される抗炎症剤である、請求項56に記載の方法。
【請求項66】
前記薬剤は、エストロゲン、プロゲステロン及びロイプロリドからなる群から選択されるホルモンである、請求項56に記載の方法。
【請求項67】
前記薬剤は、葉酸塩及びニコチンアミドからなる群から選択されるビタミンである、請求項56に記載の方法。
【請求項68】
前記薬剤は、ホモタウリンであり、これらは、3-アミノプロパンスルホン酸または3APSである、請求項56に記載の方法。
【請求項69】
前記薬剤は、キサリプロデンである、請求項56に記載の方法。
【請求項70】
初期または軽度から中程度のアルツハイマー病(AD)と診断された患者において臨床的低下を緩徐にする方法であって、初期または軽度から中程度AD罹患者へ、前記患者において前記低下を緩徐にするのに有効な量で、アミロイドβ(1~42)(配列番号1)の残基13及び24内で結合するヒト化モノクローナル抗アミロイドベータ(Aβ)抗体を投与することを含む、前記方法。
【請求項71】
前記抗体は、アミロイドβのオリゴマー形態及び単量体形態を結合することができる、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記抗体は、IgG4抗体である、請求項70に記載の方法。
【請求項73】
前記抗体は、6つの超可変領域(HVR)を含み:
(i)HVR-H1は配列番号2であり;
(ii)HVR-H2は配列番号3であり;
(iii)HVR-H3は配列番号4であり;
(iv)HVR-L1は配列番号6であり;
(v)HVR-L2は配列番号7であり;及び
(vi)HVR-L3は配列番号8である、請求項71または72に記載の方法。
【請求項74】
前記抗体は、配列番号5の前記アミノ酸配列を有する重鎖、及び配列番号9の前記アミノ酸配列を有する軽鎖を含む、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記抗体は、クレネズマブ(crenezumab)である、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
認知能力の前記低下は、12項目アルツハイマー病評価スケール-認知(ADAS-Cog12)試験、13項目アルツハイマー病評価スケール-認知(ADAS-Cog13)試験、または14項目アルツハイマー病評価スケール-認知(ADAS-Cog14)試験を用いて、前記抗体の投与前及び投与後の患者のスコアを判定することによって評価される認知能力の低下を緩徐にすることを更に含み、任意により、ADAS-Cogによって測定されるとき、認知低下の前記減少は、プラセボに対して、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、または少なくとも45%である、請求項70~75のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
前記患者は、ApoE4陽性である、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記患者は、軽度ADに罹患している、請求項76に記載の方法。
【請求項79】
前記患者は、初期ADに罹患している、請求項76に記載の方法。
【請求項80】
前記患者は、治療開始前、少なくとも20、20~30、20~26、24~30、21~26、22~26、22~28、23~26、24~26または25~26のMMSEスコアを有する、請求項70~78のいずれか1項に記載の方法。
【請求項81】
前記患者は、22~26のMMSEを有する、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記抗体は、患者体重あたり10mg/kg~100mg/kgの投与量で投与される、請求項70~80のいずれか1項に記載の方法。
【請求項83】
前記抗体は、少なくとも15mg/kgの投与量で投与される、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記抗体は、15mg/kg、30mg/kg、45mg/kg、50mg/kg、または60mg/kgの投与量で投与される、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記抗体は、静脈注射を介して投与される、請求項82または83に記載の方法。
【請求項86】
前記抗体は、2週間ごと、4週間ごと、1ヶ月ごと、2ヶ月ごと、または6ヶ月ごとに投与される、請求項82~85のいずれか1項に記載の方法。
【請求項87】
対象において初期または軽度ADの治療方法であって、初期または軽度AD罹患者へ、前記ADの治療に有効な量で、アミロイドβ(1~42)(配列番号1)の残基13及び24内で結合するヒト化モノクローナル抗アミロイドベータ(Aβ)抗体を投与することを含む、前記方法。
【請求項88】
前記抗体は、アミロイドβのオリゴマー形態及び単量体形態を結合することができる、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記抗体は、IgG4抗体である、請求項87に記載の方法。
【請求項90】
前記抗体は、6つの超可変領域(HVR)を含み:
(i)HVR-H1は配列番号2であり;
(ii)HVR-H2は配列番号3であり;
(iii)HVR-H3は配列番号4であり;
(iv)HVR-L1は配列番号6であり;
(v)HVR-L2は配列番号7であり;及び
(vi)HVR-L3は配列番号8である、請求項88または89に記載の方法。
【請求項91】
前記抗体は、配列番号5の前記アミノ酸配列を有する重鎖、及び配列番号9の前記アミノ酸配列を有する軽鎖を含む、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記抗体は、クレネズマブ(crenezumab)である、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記量は、12項目アルツハイマー病評価スケール-認知(ADAS-Cog12)試験、13項目アルツハイマー病評価スケール-認知(ADAS-Cog13)試験、または14項目アルツハイマー病評価スケール-認知(ADAS-Cog14)試験を用いて、前記抗体の投与前及び投与後の前記患者のスコアを判定することによって評価される、認知能力の低下の減少に有効であって、任意により、ADAS-Cogによって測定されるとき、認知低下の前記減少は、プラセボに対して、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、または少なくとも45%である、請求項87~92のいずれか1項に記載の方法。
【請求項94】
前記患者は、ApoE4陽性である、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
前記患者は、治療開始前、少なくとも20、20~30、20~26、24~30、21~26、22~26、22~28、23~26、24~26または25~26のMMSEスコアを有する、請求項87~94のいずれか1項に記載の方法。
【請求項96】
前記患者は、22~26のMMSEスコアを有する、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
前記抗体は、患者体重あたり10mg/kg~100mg/kgの投与量で投与される、請求項87~95のいずれか1項に記載の方法。
【請求項98】
前記抗体は、少なくとも15mg/kgの投与量で投与される、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
前記抗体は、15mg/kg、30mg/kg、45mg/kg、50mg/kg、または60mg/kgの投与量で投与される、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
前記抗体は、静脈注射を介して投与される、請求項97または98に記載の方法。
【請求項101】
前記抗体は、2週間ごと、4週間ごと、1ヶ月ごと、2ヶ月ごと、または6ヶ月ごとに投与される、請求項97~100のいずれか1項に記載の方法。
【請求項102】
前記患者は、ターゲットに特異的に結合する治療薬;コリンエステラーゼ阻害剤;NMDAレセプターアンタゴニスト;モノアミン枯渇薬;メシル酸エルゴロイド;抗コリン性抗パーキンソン病剤;ドーパミン作動性抗パーキンソン剤;テトラベナンジン;抗炎症剤;ホルモン;ビタミン;ディメボリン(dimebolin);ホモタウリン;セロトニンレセプター活性調節剤;インターフェロン及びグルココルチコイド;抗Aβ抗体;抗菌剤;抗ウイルス剤からなる群から選択される1つ以上の薬剤により同時に治療される、請求項70~101のいずれか1項に記載の方法。
【請求項103】
前記薬剤は、コリンエステラーゼ阻害剤である、請求項102に記載の方法。
【請求項104】
前記コリンエステラーゼ阻害剤は、ガランタミン、ドネペジル、リバスティグミン及びタクリンからなる群から選択される、請求項103に記載の方法。
【請求項105】
前記薬剤は、NMDAレセプターアンタゴニストである、請求項102に記載方法。
【請求項106】
前記NMDAレセプターアンタゴニストは、メマンチンまたはその塩である、請求項105に記載の方法。
【請求項107】
前記薬剤は、ターゲットに特異的に結合する治療薬であり、前記ターゲットは、ベータセクレターゼ、タウ、プレセニリン、アミロイド前駆体タンパク質またはその部分、アミロイドベータペプチドまたはオリゴマー、またはそのフィブリル、死レセプター6(DR6)、糖化最終産物(RAGE)レセプター、パーキン及びハンチンチンからなる群から選択される、請求項102に記載の方法。
【請求項108】
前記薬剤は、モノアミン枯渇剤であり、好ましくはテトラベナンジンである、請求項102に記載の方法。
【請求項109】
前記薬剤は、プロシクリジン、ジフェンヒドラミン、トリヘキシルフェニジル、ベンズトロピン、ビペリデン及びトリヘキシルフェニジルからなる群から選択される抗コリン性抗パーキンソン剤である、請求項102に記載の方法。
【請求項110】
前記薬剤は、エンタカポン、セレギリン、プラミペキソール、ブロモクリプチン、ロチゴチン、セレギリン、ロピニロール、ラサギリン、アポモルヒネ、カルビドパ、レボドパ、ペルゴリド、トルカポン及びアマンタジンからなる群から選択される、ドーパミン作動性抗パーキンソン剤である、請求項102に記載の方法。
【請求項111】
前記薬剤は、非ステロイド性抗炎症薬及びインドメタシンからなる群から選択される抗炎症剤である、請求項102に記載の方法。
【請求項112】
前記薬剤は、エストロゲン、プロゲステロン及びロイプロリドからなる群から選択されるホルモンである、請求項102に記載の方法。
【請求項113】
前記薬剤は、葉酸塩及びニコチンアミドからなる群から選択されるビタミンである、請求項102に記載の方法。
【請求項114】
前記薬剤は、ホモタウリンであり、これらは、3-アミノプロパンスルホン酸または3APSである、請求項102に記載の方法。
【請求項115】
前記薬剤は、キサリプロデンである、請求項102に記載の方法。
【請求項116】
前記薬剤は、クレネズマブ(crenezumab)以外の抗Aβ抗体である、請求項102に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2014年2月8日出願の米国特許仮出願第61/937,472号、2014年3月27日出願の米国特許仮出願第61/971,479号、2014年6月10日出願の米国特許仮出願第62/010,259号、及び2014年11月19日出願の米国特許仮出願第62/081,992号の利益を主張し、前記出願の内容は、それら全体が、本明細書に参考として組み込まれる。
【0002】
アミロイドβを標的にする抗体を使用する、軽度から中程度のアルツハイマー病に罹患している患者の治療方法が提供される。
【背景技術】
【0003】
アルツハイマー病(AD)は、最も一般的な痴呆の原因であり、米国では推定450万人、世界では2660万人が罹患している(Hebertら、Arch.Neurol.2003;60:1119~22;Brookmeyerら、Alzheimers Dement.2007;3:186~91)。本疾患は、脳内での細胞外β-アミロイド(「Aβ」)プラークの蓄積及び細胞内神経原線維変化により、病理学的に特性が決定される。診断は、ADの神経学的また神経精神病学的徴候及び症状の臨床的評価、及び他の痴呆の原因の排除を介して行われる。ADは、一般的に、簡潔な認知スクリーニング検査、ミニメンタルステート検査(「MMSE」)により軽度、中程度及び重症ステージに分類される。脳内でのアセチルコリンエステラーゼ(「AChE」)活性を阻害するか、またはN-メチル-D-アスパルテートレセプターに拮抗する認可された医学的療法により、若干の患者ではADの症状が一時的に改善される可能性があるが、その疾患の進行を変化させることはない(Cummings,N.Engl.J.Med.2004;351:56~67)。
【0004】
現在、早期及び後期発症型家族性ADにおける遺伝的要因は、確実に文書化されている。ApoE4対立遺伝子は、後期発症型家族性及び孤発性ADと強く関連し、AD患者において報告されている対立遺伝子の頻度は50%~65%であり、これは、一般集団及び他の神経系疾患の約3倍である(Saundersら、Neurology 1993;43:1467~72,;Prekumarら、Am.J.Pathol.1996;148:2083~95)。ADのほかに、ApoE4対立遺伝子は、脳アミロイド血管症(「CAA」)など他のアミロイド形成疾患と関与している(Prekumarら、Am.J.Pathol.1996;148:2083~95)。したがって、ApoE4対立遺伝子を担持する患者は、病因学的に異なるAD患者の母集団を表す場合もある。
【0005】
脳内での細胞外アミロイドプラークの付着は、ADにおける病理学的所見の特徴であり、1906年にAlois Alzheimerにより初めて報告された。これらのアミロイドプラークは、主に、β及びγ-セクレターゼ活性を介してアミロイド前駆体タンパク質(「APP」)の連続的切断によって発生するAβペプチド(Haass and Selkoe, Nature 2007;8:656~67)で構成される。特にそのオリゴマー形態において、Aβは、ニューロンに対して有害であり、ADにおける原因であると考えられている。脳内のAβ量を減少させる治療法は、認知機能障害を軽減し、更なるシナプスの損失、軸索変性及びニューロンの細胞死を阻止し得る。Aβは、血液脳関門に能動的に輸送され得る(Deaneら、Stroke 2004;35(Suppl I):2628~31)。マウスADモデルでは、脳Aβプラークの溶解、オプソニン化Aβの食細胞による除去など、いくつかの提唱されたメカニズムを介して、最終的には、循環抗体によってもたらされるAβの平衡移動の結果として、脳からのAβの外向き流速を介して、抗体がAβに全身送達されることにより、血漿中でのAβレベルが増大し、中枢神経系(CNS)内ではそのレベルが減少する(Morgan,Neurodegener.Dis.2005;2:261~6)。
【0006】
多くの失敗により、AD治療用の治療用抗体の開発が示唆された。AβのN末端部分に特異的に結合する抗体であるbapineuzumabの大規模第III相臨床試験は、薬物投与により、治療した患者の認識低下を停止できなかったときに、中止した(Milesら、Scientific Reports 2013;3:1~4 Johnston&Johnson press release 2012年8月6日付、表題「Johnson&Johnson Announces Discontinuation of Phase 3 Development of Bapineuzumab Intravenous (IV)in Mild-To-Moderate Alzheimer’s Disease」)。特に、bapineuzumabはプラークレベルを安定させると考えられ、脳脊髄液中のリン酸化タウレベルが減少したことから、これらのバイオマーカーの単独での修飾は、臨床的有効度を必ずしも予知するものではないことが示唆される(Milesら、Scientific Reports 2013;3:1~4)。同様に、ペプチドの中央部分で結合する単量体のAβに特異的な抗体であるsolanezumabの第III相臨床試験では、主要認知及び機能エンドポイントは適合しなかった(Eli Lilly and Company press release 2012年8月24日付、「Eli Lilly and Company Aanounces Top-Line Results on Solanezumab Phase 3 Clinical Trials in Patients with Alzheimer’s Disease」)。また、ADに対する、ある特定の免疫療法を調査している間に、安全に関する懸念事項が生じた。例えば、アミロイド関連画像異常(ARIA-E及びARIA-H)の発生率は、bapineuzumabの第II相臨床試験において、薬物治療患者では20%を超えた(Sperlingら、The Lancet 2012;11:241~249)。65歳を超える9名中1名がADを有し、ADに悩む個人及びその個人の代理にかかる保健医療、長期ケア及びホスピスケアについての総年間費用は、2013年には2000億ドルを超え、2050年までには1.2兆ドルまで上昇すると推定されている(罹患者及び罹患者の代理)(Alzheimer’s Association 2013 Alzheimer’s Disease Facts and Figures, Alzheimer’s and Dementia 9:2)。ADは、2013年(同書)現在で、米国では、6番目の死因である。現在認可されている療法は、いくつかのAD症状を治療できるが、根底にある変性を治療するものではない。ADの疾患修飾性療法に関して、満たされていない大きなニーズがある。
【発明の概要】
【0007】
クレネズマブ(crenezumab)(MABT5102Aとしても公知)は、インビトロでのAβ単量体形態及びオリゴマー形態の両者を結合するその能力に関して選択されたAβに対する完全ヒト化IgG4モノクローナル抗体である。クレネズマブは、Aβ1-40及びAβ1-42の両者と結合し、Aβの凝集を阻害し、かつAβの脱凝集を促進する。クレネズマブはヒトIgG4主鎖抗体であるため、ヒトIgG1またはIgG2と比較して、Fcγレセプター(「FcλR」)結合アフィニティが減少し、これは、免疫エフェクタ-応答の減少が予知される。これらの性質は、マウスADモデルにおけるAβ CNSレベルを減少させるクレネズマブの全身送達能力と組み合わせて、、この抗Aβ治療アプローチにより、毒性のリスクを減少させる一方で、臨床的有効性をもたらし得ることが示唆され、潜在的に、例えば大脳血管原性浮腫または出血など、より低い潜在的な有害性副作用リスクを有するADの疾患進行を変化させることができ、これは、これまでに他のAβ抗体療法の臨床試験でみられてきた。
【0008】
本明細書に記載のAD患者における第II相試験の結果は、クレネズマブは、実際に軽度から中程度ADの疾患の進行を緩徐にし、かつApoE4陽性患者及び軽度AD罹患患者においては、さらに強い影響を有することを示し、かつ最も軽度のAD患者において、最も大きい治療上の利点を示す。更に、その影響は、ADと診断された患者において典型的にみられる脳アミロイド負荷を有する患者にみられる。更に、その結果は、ARIA-E及びARIA-Hなどの有害事象の有意な発症なく、これらの影響が発生することを示す。このように本出願では、軽度から中程度AD(特に軽度AD)を有すると診断された患者、ApoE4陽性患者、ならびにADと診断された患者において典型的にみられる脳アミロイド累積を有する患者の治療方法及びモニタリング方法を提供する。本明細書において例示されるように、アミロイドβ(Aβ)ペプチドの中央領域(すなわち、クレネズマブなどのアミノ酸13~24)に特異的なコンフォメーションエピトープを有するヒト化単クローン性抗アミロイドβ抗体は、ARIA-EまたはARIA-Hの発症が増加することなく、軽度から中程度AD、特にApoE4陽性患者及び例えば軽度ADに限定されないより軽度のAD形態を有する患者の治療に有効であることが現在明らかになっている。したがって、本出願は、ADの重症度を調節するための治療薬及び同治療薬を用いて改善された方法を提供する。
【0009】
その結果として、本出願は、AD罹患者及び他のアミロイドーシス罹患者の治療方法を提供し、この方法は、ヒト化単クローン性抗アミロイドβ(AβまたはAβ)抗体またはアミロイドβ(1~42)(配列番号1)の残基13及び24内で結合するその抗原-結合断片、を投与することを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはこれらの抗原-結合断片は、Aβの筋原線維形態、オリゴマー形態及び単量体形態を結合することができる。いくつかの実施形態では、抗体はIgG4抗体である。特定の実施形態では、抗体またはこれらの抗原-結合断片は、6つの超可変領域(HVR)を含み、HVR-H1は配列番号2であり、HVR-H2は配列番号3であり、HVR-H3は配列番号4であり、HVR-L1は配列番号6であり、HVR-L2は配列番号7であり、HVR-L3は配列番号8である。いくつかの実施形態では、抗体またはそれらの抗原-結合断片は、重鎖可変領域を含む配列番号5のアミノ酸配列を有する重鎖及び軽鎖可変領域を含む配列番号9のアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。特定の例では、抗体はクレネズマブ(crenezumab)である。
【0010】
本明細書に記載される治療方法は、本明細書に更に記載されているように、AD罹患者及び他のアミロイドーシス罹患者に適用することができる。好適な患者は、軽度から中程度AD罹患者、MMSEスコア18~26の患者、軽度AD罹患者、MMSEスコア20以上(例えば、20~30、20~26、24~30、21~26、22~26、22~28、23~26、24~26、または25~26)の患者、早期AD罹患者(ADによる軽度認知障害患者及び前臨床ADを有する患者)、アミロイド陽性患者(またはADと診断された患者にみられる負荷と一致する脳アミロイド負荷を有する患者)、軽度から中程度ADまたは軽度ADのApoE4陽性患者が挙げられる。
【0011】
いくつの態様では、本明細書に記載される本方法は、早期AD、軽度ADまたは軽度から中程度AD罹患者において、ADによる低下を減少させる方法である。いくつかの実施形態では、低下は、臨床上の低下、認知低下及び機能的低下の1つ以上である。いくつかの実施形態では、低下は臨床上の低下である。いくつかの実施形態では、低下は認知能力の低下または認識低下である。いくつかの実施形態では、低下は機能能力の低下または機能的低下である。認知能力(記憶を含む)及び/または機能を測定するために、さまざまな試験及び基準が開発されてきた。様々な実施形態において、1つ以上の試験を使用して、臨床上の低下、機能的低下または認知低下を測定する。認知能力の標準測定は、例えば、12項目ADAS-CogまたはADAS-Cog12などのアルツハイマー病評価スケール認知(ADAS-Cog)試験である。したがって、いくつかの実施形態では、本発明の抗体で治療された患者における認知能力の低下(若しくは認識低下)または低下の緩徐は、ADAS-Cog12試験を用いて測定する。ADAS-Cog12スコアの上昇は、患者の状態の悪化を示す。いくつかの実施形態では、本発明の抗体で治療された患者における認知低下の減少若しくは緩徐(または認知能力の低下)は、臨床認知症評価法/Sum of Boxes(CDR-SOB)scoreを用いて測定する。いくつかの実施形態では、本発明の抗体で治療された患者における機能低下の減少若しくは緩徐(または機能能力の低下)は、手段的日常生活動作(Instrumental Activities of Daily Living:iADL)スケールを用いて測定する。いくつかの実施形態では、1つ以上の種類の低下を評価し、前述の試験またはスケールの1つ以上を使用して、低下の減少または緩徐を測定する。
【0012】
本発明の抗体、またはその抗原-結合断片は、本明細書に記載されるように、ADまたは他のアミロイド症の治療に有効な投与量で投与する。好適な投与量は、本明細書に記載され、約0.3mg/kgから100mg/kgの範囲であり得る。代表的実施形態において、投与量は15mg/kgである。更なる代表的実施形態において、投与量は30mg/kgである。更なる代表的実施形態において、投与量は45mg/kgである。いくつかの実施形態では、投与量は、500mg~1000mg、例えば、500mg、700mg、720mg、750mg、800mg、820mg、900mgまたは1000mg~2500mg、例えば、1050mg、1500mg、または2100mgである。本明細書に記載の方法では、例えば、毎週または毎月のスケジュールで、長期間にわたり(例えば、数ヶ月から数年)、抗体が繰返し投与される投与量レジメンなど、さまざまな投与量レジメンが考えられる。
【0013】
本開示のヒト化単クローン性抗Aβ抗体は、ARIA-E及びARIA-Hなどの有害事象の発症が増加しないという更なる利点をもたらす。本明細書に示すとおり、プラセボ群に対して、治療群において、これらの有害事象が増加することはなかった。したがって、本開示は、更に、ARIA-E及び/またはARIA-Hなどの有害事象の発症が増加することなく、軽度から中程度ADまたは軽度AD罹患者の治療方法を提供する。
【0014】
本開示は、更に、本明細書にて開示された治療方法での使用に好適な製剤処方を提供する。製剤処方は、あらゆる簡便な投与経路(例えば、注射剤または静注など)で処方することができ、典型的には、本開示の抗Aβに加えて、所望の投与モードに適した1つ以上の許容可能な担体、賦形剤及び/または希釈剤が挙げられる。いくつかの実施形態では、本発明の抗体は、静脈内投与用に処方されてもよい。いくつかの実施形態では、本発明の抗体は、アルギニン緩衝液、例えば、アルギニンサクシネート緩衝液中で処方されてもよい。緩衝液は、1種以上の界面活性剤、例えばポリソルベートを含有することができる。ある実施形態では、緩衝液濃度は50mM以上である。いくつかの実施形態では、pHは4.5~7.0、例えば、pH5.5である。更なる実施形態は、本明細書に記載される。製剤処方は、使用容易性を目的として、単位剤形で包装されてもよい。
【0015】
ADまたは他のアミロイドーシス症の治療目的での抗Aβ抗体を用いる治療は、本明細書に記載されるように、クレネズマブ以外の1つ以上の抗Aβ抗体など、他の療法と組み合わせることができる。他の療法の非限定的例としては、神経薬、コルチコステロイド、抗生物質及び抗ウイルス薬が挙げられる。クレネズマブ以外の抗Aβ抗体の非限定的例としては、solanezumab、bapineuzumab、aducanumab及びgantenerumabが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】Aβ(1~42)(配列番号1)のアミノ酸配列(アミノ酸13~24に下線)を示す。
図2】3つの重鎖超可変領域(それぞれ、HVR-H1、HVR-H2及びHVR-H3)のアミノ酸配列及び3つの軽鎖領域(それぞれHVR-L1、HVR-L2、HVR-L3)のアミノ酸配列を提供する。
図3】クレネズマブの配列番号5のアミノ酸1~112の範囲の重鎖可変領域を含む重鎖(配列番号5)のアミノ酸配列及び配列番号9のアミノ酸1~112の範囲の軽鎖可変領域を含む軽鎖(配列番号9)のアミノ酸配列を提供する。配列番号5及び9の下線は、それぞれ、配列番号2~4に相当する3つの重鎖HVR及び配列番号6~8に相当する3つの軽鎖HVRのアミノ酸配列を示す。
図4A】実施例1に記載の臨床試験に登録された患者の概要を示す。各群(治療群対プラセボ群)に登録された患者数、ApoE4状態(ApoE4陰性/ApoE4陽性)、ADステージ(軽度または中程度)、及びスクリーニング時のMMSEスコア、AD症状に対する併用療法(conmed使用)の存在及び種類を表で示す。
図4B】実施例1に記載の臨床試験に登録された患者の概要を示す。各群(治療群対プラセボ群)に登録された患者数、ApoE4状態(ApoE4陰性/ApoE4陽性)、ADステージ(軽度または中程度)、及びスクリーニング時のMMSEスコア、AD症状に対する併用療法(conmed使用)の存在及び種類を表で示す。
図5】実施例1に記載の臨床試験の概略を示し、投与計画、投与量及び投与経路を示す。
図6A】治療群及びプラセボ群において、73週間でのADAS-Cog12スコアの変化を示すデータ表を、ベースラインと比較して提供する。図6Aは、軽度から中程度AD患者、軽度AD患者、中程度AD患者、及びApoE4陽性患者及び陰性患者のデータを提供する。
図6B】治療群及びプラセボ群において、73週間でのADAS-Cog12スコアの変化を示すデータ表を、ベースラインと比較して提供する。図6Bは、MMSEスコアに従って患者のデータを提供する。
図7】クレネズマブ(黒い実線)またはプラセボ(薄い実線)により治療されたMMSEスコア20~26を有する軽度ADを有する患者のADAS-Cog12スコアの変化をチャートで示す。
図8】クレネズマブ(黒い実線)またはプラセボ(薄い実線)により治療されたMMSEスコア18~26を有する軽度から中程度ADを有する患者のADAS-Cog12スコアの変化をチャートで示す。
図9】クレネズマブ(黒い実線)またはプラセボ(薄い実線)により治療された軽度から中程度ADを有するApoE4陽性患者のADAS-Cog12スコアの変化をチャートで示す。
図10】クレネズマブ(黒い実線)またはプラセボ(薄い実線)により治療されたすべてのApoE4陽性患者及び軽度ADのADAS-Cog12スコアの変化をチャートで示す。
図11】クレネズマブまたはプラセボにより治療されたMMSEスコア22~26を有する軽度ADを有する患者のADAS-Cog12スコアの変化をチャートで示す。
図12A】治療群及びプラセボ群において、ベースラインと比較して、73週間でのCDR-SOBスコアの変化を示すデータ表を提供する。図12Aは、MMSEスコアに従って患者のCDR-SOBスコアの変化に関するデータを提供する。
図12B】治療群及びプラセボ群において、ベースラインと比較して、73週間でのCDR-SOBスコアの変化を示すデータ表を提供する。図12Bは、MMSEスコア18~26、20~26及び22~26の患者について、CDR-SOBスコア並びにCDR判定及び問題解決スコア及びCDR記憶スコアのデータを提供する。
図13】示されたとおり、クレネズマブまたはプラセボにより治療されたMMSEスコア25または26を有する軽度ADを有する患者のCDR-SOBスコアの変化をチャートで示す。
図14A】有害事象データ(A)及び臨床治験でPET検査、MRI走査及びCSFサンプリングを実施したときのタイムライン(B)など、実施例2に記載の臨床試験に登録された患者のベースライン及び治療後の概要を示す。
図14B】有害事象データ(A)及び臨床治験でPET検査、MRI走査及びCSFサンプリングを実施したときのタイムライン(B)など、実施例2に記載の臨床試験に登録された患者のベースライン及び治療後の概要を示す。
図15A】PET解析によるflorbetapirの画像(A)、及びプラセボまたはクレネズマブを受ける患者におけるCSF Aβレベル(B)により測定するとき、プラセボを受ける患者(点線)またはクレネズマブを受ける患者(実線)におけるアミロイドレベルを示すチャートを提供する。
図15B】PET解析によるflorbetapirの画像(A)、及びプラセボまたはクレネズマブを受ける患者におけるCSF Aβレベル(B)により測定するとき、プラセボを受ける患者(点線)またはクレネズマブを受ける患者(実線)におけるアミロイドレベルを示すチャートを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
別様に定義されていない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語は、本開示が属する当業者により一般的に理解されるのと同じ意味を有する。Singletonら、 Dictionary of Microbiology and Molecular Biology第2版、J.Wiley&Sons(New York,N.Y.1994)及びMarch,Advanced Organic Chemistry Reactions,Mechanisms and Structure第4版、John Wiley&Sons(New York,N.Y.1992)は当業者に、本願において使用される多くの用語についての一般的なガイドを提供する。
【0018】
特定の定義及び略称
本明細書を解釈するために、次の定義を適用し、単数で使用されている用語には、適宜、複数を含み、逆もまた同様である。以下に定める任意の定義が援用として本明細書に組み込まれている任意の文書と矛盾する場合、以下の定義を優先するものとする。
【0019】
本明細書及び添付の請求項で使用するとき、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が別途明らかに規定しない限り、複数の指示対象を包含する。したがって、例えば、「タンパク質」または「抗体」への言及には、それぞれ、複数のタンパク質または抗体を含むが、「細胞」に言及する場合、細胞の混合物などを含む。
【0020】
本明細書及び添付の請求項で提供した範囲は、両方のエンドポイント及びエンドポイント間のすべてのポイントを含む。したがって、例えば、2.0~3.0の範囲としては、2.0,3.0及び2.0~3.0の間のすべてのポイントを含む。
【0021】
本明細書で使用するとき、語句「実質的に同様の(substantially similar)」または「実質的に同一の(substantially the same)」は、当業者が、前述の値(例えば、Kd値)によって測定された生物学的特性の文脈内で、生物学的及び/または統計的有意性がほとんどないまたはまったくない2つの値の差を考慮するように、2つの数値間(一般に、一方は発明の抗体に関連するもの及びもう一方は標準/比較抗体と関連するもの)での十分に高い程度での類似性を意味する。前述の2つの値の差は、標準抗体/比較抗体の値の関数としては、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、約10%未満である。
【0022】
本明細書で使用するとき、用語「サンプル」または「試験用サンプル」は、例えば物理的特性、生化学的特性、化学的特性及び/または生理学的特性に基づいて特性が決定される及び/または識別される細胞単位及び/または他の分子単位を含む目的の対象から得られるまたは誘導される組成物を意味する。一実施形態では、この定義には、例えば、血液や生物由来の他の液体サンプル、並びに生検標本、組織培養またそこから誘導された細胞を包含する。組織サンプルの起源は、新鮮、凍結及び/若しくは保存された器官または組織サンプルまたは生検若しくは吸引液、血液または任意の血液成分;体液;及び対象のあらゆる妊娠時または発現時の細胞、または血漿由来の固体サンプルであってもよい。本明細書で使用するとき、用語「生体サンプル」は、これらに限定されないが、血液、血清、血漿、痰、組織生検(例えば、肺サンプル)、及び鼻スワブまたは鼻ポリープなどの鼻サンプルが挙げられる。
【0023】
用語「サンプル」、「生体サンプル」または「試験用サンプル」としては、試薬での治療、可溶化または特定の成分(例えば、タンパク質またはポリヌクレオチド)の富化、または切断を目的とした半固体または固体マトリクスへの包埋によるなど、調達後にあらゆる方法で操作された生体サンプルが挙げられる。本明細書の目的として、組織サンプルの「切片」は、組織サンプルの単一部分または片(例えば、組織サンプルから切り取った組織または細胞の薄いスライス)を意味する。サンプルとしては、これらに限定されないが、全血、血液-誘導細胞、血清、血漿、リンパ液、滑液、細胞抽出物及びこれらの組み合わせが挙げられる。一実施形態では、サンプルは、臨床サンプルである。別の実施形態では、サンプルは、診断アッセイで使用される。
【0024】
一実施形態では、サンプルは、抗Aβ抗体で治療を行う前に対象または患者から得る。別の実施形態では、サンプルは、抗Aβ抗体で少なくとも1つの治療を行った後に対象または患者から得る。
【0025】
本明細書で使用するとき、「標準サンプル」は、比較目的で使用される任意のサンプル、標準またはレベルを意味する。一実施形態では、標準サンプルは、同一対象または患者の身体の健常部分及び/または非疾患部分(例えば、組織または細胞)から得る。別の実施形態では、標準サンプルは、同一対象または患者の身体の非治療組織及び/または細胞から得る。更に別の実施形態では、標準サンプルは、対象者または患者ではない個体の身体の健常部分及び/または非疾患部分(例えば、組織若しくは細胞)から得る。更に別の実施形態では、標準サンプルは、対象または患者ではない個体の身体の非治療組織部分及び/または細胞部分から得る。
【0026】
ある実施形態では、標準サンプルは、試験用サンプルが得られた時と1つ以上の異なる時点で得られる同一対象または患者からの単一サンプルまたは混合複数サンプルである。例えば、標準サンプルは、試験用サンプルが得られた時よりも早い時点で同一の対象または患者から得られる。ある実施形態では、標準サンプルは、対象または患者ではない1以上の個体から入手した上記の用語「サンプル」で定義されたような生体サンプルの全てのタイプが挙げられる。ある実施形態では、標準サンプルは、対象または患者ではないアミロイドーシス症(例えば、アルツハイマー病など)を有する1以上の個体から得る。
【0027】
ある実施形態では、標準サンプルは、対象または患者ではない1以上の健常な個体由来の混合複数サンプルである。ある実施形態では、標準サンプルは、対象または患者ではない疾患又は障害(例えば、アルツハイマー病などのアミロイドーシス症)を有する1以上の個体由来の混合複数サンプルである。ある実施形態では、標準サンプルは、正常組織由来の貯留されたRNAサンプル、対象または患者ではない1以上の個体由来の貯留血漿または血清サンプルである。
【0028】
用語「小分子」とは、分子量50ダルトン~2500ダルトンを有する有機分子を意味する。
【0029】
用語「抗体」及び「免疫グロブリン(「Ig」)」は、最も広い意味で同義的に使用され、これらに限定されないが、モノクローナル抗体(例えば、全長または無傷モノクローナル抗体)、多クローン性抗体、多価抗体、多エピトープ特異性を有する抗体、単鎖抗体、多特異的抗体(例えば、二重特異性抗体、三重特異性抗体、四重特異性抗体)、及び抗体断片が挙げられ、所望の生物活性を示すものとする。このような抗体は、キメラ、ヒト化、ヒト、合成及び/またはアフィニティ成熟されていてもよい。このような抗体及びこれらの抗体を発生させる方法は、本明細書で更に詳細に記載される。
【0030】
「抗体断片」は、無傷の抗体の一部のみを含み、その部分は、無傷の抗体内に存在するとき、通常その部分と関連する機能の少なくとも1つ、典型的には、大部分またはすべてを保持することが好ましい。一実施形態では、抗体断片は、無傷抗体の抗原結合部位を含み、抗原結合能力を保持する。別の実施形態では、抗体断片、例えば、Fc領域を含む断片は、無傷抗体内に存在するとき、例えばFcRn結合、抗体半減期変調、ADCC機能及び補体結合など、通常Fc領域と関連する少なくとも1つの生物学的機能を保持する。一実施形態では、抗体断片は、実質的に無傷抗体と類似しているインビボ半減期を有する一価抗体である。例えば、このような抗体断片は、断片に対してインビボ安定性をもたらすことが可能なFc配列に連結される抗原結合群を含んでもよい。抗体断片の例としては、これらに限定されないが、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2;diabody、直鎖抗体;単鎖抗体分子(例えば、scFv);及び抗体断片から形成される多特異性抗体が挙げられる。
【0031】
本明細書で使用するとき、用語「ターゲット」とは、別段の指定がない限り、哺乳類、例えば霊長類(例えば、ヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)など任意の脊椎動物源由来の任意の未変性分子を意味する。この用語は、「全長」、未処理ターゲット並びに細胞内の処理から生じる任意のターゲット形態を包含する。この用語には、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントなど、ターゲットの自然発生バリアントも包含する。
【0032】
本明細書で同義的に使用される用語「アミロイドベータ」、「β-アミロイド」、「Aβ」、「アミロイドβ」及び「Aβ」は、APPのβ-セクレターゼ1(「BACE1」)切断時に生成されたアミロイド前駆体タンパク質(「APP」)の断片、並びに改変、断片及びこれらに限定されないが、Aβ1-40及びAβ1-42などのこれらの任意の機能的等価物を意味する。Aβは、単量体形態で存在し、オリゴマー及びフィブリル構造の形成に関連することが公知であり、アミロイドプラークの成分要素として検出されていてもよい。このようなAβペプチドの構造及び配列が当業者に公知であり、該ペプチドの製造方法または脳及び他の組織からの抽出方法が、例えばGlenner and Wong,Biochem Biophys Res.Comm.129:885~890(1984)に記載されている。さらに、Aβペプチドは、様々な形態で入手可能である。ヒトAβ1-42の例示的アミノ酸配列は、DAEFRHDSGYEVHHQKLVFFAEDVGSNKGAIIGLMVGGVVIA(配列番号1)である。
【0033】
用語「抗ターゲット抗体」及び「ターゲットに結合する抗体」とは、ターゲットを標的にするにあたって、抗体が診断薬及び/または治療薬として有用となるように、十分なアフィニティを有するターゲットを結合可能な抗体を意味する。一実施形態では、非関連、非ターゲットタンパク質への抗ターゲット抗体の結合範囲は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)またはビアコアアッセイで測定されたとき、抗体のターゲットへの結合の約10%未満である。ある実施形態では、ターゲットに結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、または≦0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば、10-8M~10-13M、例えば10-9M~10-13M)の解離定数(Kd)を有する。ある実施形態では、抗ターゲット抗体は、異なる種間で保存されるターゲットのエピトープに結合する。
【0034】
「抗Aβ免疫グロブリン」、「抗Aβ抗体」及び「Aβを結合する抗体」は、本明細書では同義的に用いられ、ヒトAβに特異的に結合する抗体を意味する。抗Aβ抗体の非限定的例は、クレネズマブである。抗Aβ抗体の他の非限定的例は、solanezumab、bapineuzumab、aducanumab及びgantenerumabである。
【0035】
用語「クレネズマブ(crenezumab)」及び「MABT5102A」は、本明細書では同義的に用いられ、Aβの単量体形態、オリゴマー形態、及びフィブリル形態に結合する特定の抗Aβ抗体を意味し、CAS登録番号1095207に関連付けられる。一実施形態では、このような抗体は、図2に記述されているHVR領域配列を含む。別のこうした実施形態では、このような抗体は、以下を含む:(1)アミノ酸配列番号2を含むHVR-H1;(2)アミノ酸配列番号3を含むHVR-H2配列;(3)アミノ酸配列番号4を含むHVR-H3配列;(4)アミノ酸配列番号6を含むHVR-L1配列;(5)アミノ酸配列7を含むHVR-L2配列;(6)アミノ酸配列8を含むHVR-L3配列。別の実施形態では、特定の抗Aβ抗体は、図3に記述されているアミノ酸配列を有するVH及びVLドメインを含む。別のこうした実施形態では、このような特異的抗Aβ抗体は、アミノ酸配列番号5を含むVHドメイン及びアミノ酸配列番号9を含むVLドメインを含む。別の実施形態では、抗体はIgG4抗体である。別のこうした実施形態では、IgG4抗体は、セリン228の代わりにプロリンであるように、その定常ドメイン中に突然変異を含む。
【0036】
本明細書で使用するとき、用語「アミロイドーシス症」とは、アミロイドまたはアミロイド様タンパク質によって生じるまたは関連する疾患及び障害の群、ならびにこれらに限定されないが、アミロイドプラークなど、単一、フィブリル、もしくは重合状態またはその3つの任意の組み合わせにおいて、、アミロイド様タンパク質の存在または活性によって生じる疾患及び障害を意味する。こうした疾患としては、これらに限定されないが、アルツハイマー病(「AD」)などの神経疾患などの続発性アミロイドーシス症及び年齢関連性アミロイドーシス症、例えば、軽度認知障害(MCI)、レビー小体認知症、ダウン症、アミロイドーシス症を伴うオランダ型遺伝性脳出血、グアム島パーキンソニスム痴呆複合など、認知記憶能力の損失によって特徴付けられる疾病または状態、及び進行性核上性麻痺、多発性硬化症、クロイツフェルト・ヤコブ病、パーキンソン病、HIV関連認知症、筋萎縮性側索硬化症、封入体筋炎(IBM)、成人発症型糖尿病、内分泌腫瘍及び老人性心アミロイドーシスなどのアミロイド様タンパク質に基づくか、または関与する他の疾患、及び黄斑変性、ドルーゼン関連眼疾患、緑内障及びβアミロイド付着による白内障などのさまざまな眼疾患が上げられる。
【0037】
緑内障は、視神経変性症の特徴的パターンにおける網膜神経節細胞(RGC)の損失など、視神経疾患の一群である。RGCは、眼部から脳へ視覚信号を伝達する神経細胞である。アポトーシス工程における2つの主要酵素カスパーゼ3及びカスパーゼ8は、RGCのアポトーシスを導く工程内で活性化される。カスパーゼ3は、アミロイド前駆体タンパク質(APP)を切断し、Aβなどの神経毒性断片を生成する。APPの防護効果がなく、網膜神経節細胞層中にAβが蓄積することにより、RGCが死滅し、視覚の不可逆的損失となる。
【0038】
緑内障は、必ずしもとは限らないが多くの場合、眼圧の増大を伴い、これは房水循環または排水の閉塞からなり得る。眼圧の上昇は、緑内障発症の有意なリスク因子であるが、緑内障を引き起こすのに決定的である眼圧の閾値は定義できない。損傷は、生体視神経線維への血液供給不足、神経構造の衰弱及び/または神経線維自体の健康状態における問題によっても生じ得る。未治療緑内障により、視神経の永久的損傷及びその結果視野の損失となり、失明へと進行し得る。
【0039】
異なるタイプの緑内障は、その状態が慢性である場合、開放隅角緑内障、急性緑内障が突然生じた場合、閉塞隅角緑内障として分類される。緑内障は、通常、両眼に罹患するが、疾患は、片方の眼がより急速に進行する。
【0040】
慢性開放隅角緑内障(COAG)は、原発開放隅角緑内障(POAG)としても公知であり、最も一般的な型の緑内障である。COAGは、小柱網内での顕微鏡的閉塞により発症し、シュレム管への房水流出排水が減少し、眼圧(IOP)が上昇する。POAGは、通常、両眼に罹患し、かつ、年齢及び陽性家族歴と強く関連する。その頻度は、眼部の排水機構が加齢により徐々に閉塞する可能性があるために、高齢者において上昇する。慢性開放隅角緑内障罹患対象における眼圧の上昇は、その損失が中枢性視覚野で感じられるまで、いかなる症状も伴わない。
【0041】
急性閉塞隅角緑内障(AACG)または閉塞隅角緑内障は、眼圧35~80mmHgの突然の上昇によって特徴づけられる比較的稀な型の緑内障であり、重篤な疼痛及び視力の不可逆的損失となる。突然の眼圧上昇は、フィルタリング角度の閉鎖及び排水チャネルの閉塞によって生じる。狭角を有する個体は、角度が突然閉塞するリスクの増加を有する。AACGは、通常、単眼で生じるが、そのリスクは、両眼内に存在する。年齢、白内障及び偽性剥脱は、レンズの拡大並びに角度の密集または狭小化と関連するため、リスク因子でもある。突然の緑内障発作は、重症な眼部疼痛及び頭痛、炎症性眼部、悪心、嘔吐及び視界不良を伴う場合もある。
【0042】
混合型(Mixed or Combined Mechanism)緑内障は、開放及び閉塞隅角緑内障を混合したものまたは組み合わせたものである。これはレーザー虹彩切除手術後、その角度が開放し、眼圧(IOP)制御のため薬物治療を必要とし続ける急性ACG患者、並びに徐々に角度の狭小化が発現するPOAGまたは偽剥脱性緑内障患者に影響を及ぼす。
【0043】
正常眼圧緑内障(NTG)は、低圧緑内障(LTG)として公知であり、進行性神経損傷及び他の緑内障の型に見られる特徴に類似した周辺視の損失によって特徴付けられるが、眼圧は正常範囲または正常未満でもある。
【0044】
先天性(乳児)緑内障は比較的まれであり、開放隅角緑内障の遺伝型である。排水領域の不十分な発生により、眼内の圧力は上昇し、視神経損傷からの視覚の損失及び眼の拡大につながり得る。早期診断及び治療は、この疾患に罹患している乳児及び幼児において視覚を保存するにあたって重要である。
【0045】
続発性緑内障は、眼球損傷、眼の虹彩内の炎症(虹彩炎)、糖尿病、白内障、またはステロイド易感染性個体におけるステロイドの使用に起因し得る。続発性緑内障は、網膜剥離、網膜静脈閉鎖、または網膜静脈閉塞と関連付けられていてもよい。
【0046】
色素性緑内障は、虹彩からの色素粒の剥離によって特徴付けられる。色素粒により、眼の排水系の閉塞が生じ、眼圧の上昇及び視神経の損傷につながる。剥脱性緑内障(偽性剥脱)は、前嚢での及び眼部の角度内でのフレーク状物質の堆積を特徴とする。フレーク状物質の蓄積により、排水系が閉塞され、かつ眼圧が上昇する。
【0047】
緑内障の診断は、さまざまな試験を用いて行なわれてもよい。眼圧測定法により、眼の表面の緊張または硬度を測定することによって、眼内の圧力を判定する。この試験には、いくつかの種類のトノメータが利用可能であり、最も一般的であるのは、圧平眼圧計である。Pachymetryにより、角膜厚を測定することで眼圧を測定する。隅角検査により、フィルタリング角度及び眼部の排水領域を検査することができる。また、隅角検査により、異常血管が眼部から房水の排水を阻害しているか測定可能である。検眼鏡により、視神経の検査が可能であり、眼圧の上昇または軸索欠損によって引き起こされ得る視神経円板内の神経線維層欠損若しくは変化、またはこの構造体のへこみ(陥凹)を検出することができる。また、隅角検査は、不十分な血流または眼圧の上昇による神経への損傷の評価においても有用である。視野試験では、視野をマッピングし、視神経への緑内障による損傷の徴候を検出することができる。これは、視野損失の特定パターンにより表される。神経線維層損失の客観的尺度である光干渉断層撮影(Ocular coherence tomography)は、損傷を受けた軸索組織からの光透過率の差を介して、神経線維層の厚さ(緑内障の変化)を調べることによって実施される。
【0048】
標準抗体として、「同一エピトープに結合する抗体」とは、競合アッセイにおいて、標準抗体のその抗原への結合を50%以上阻害する抗体を意味し、逆に、標準抗体は、競合アッセイにおいて、抗体のその抗原への結合を50%以上阻害する。代表的な競合アッセイが本明細書に提供される。
【0049】
用語「治療薬」とは、これらに限定されないが、疾患の症状を治療する剤など、疾患の治療に使用される剤を意味する。
【0050】
本明細書で使用するとき、「治療」(「治療する(treat)」「治療している(treating)」などその文法的変化形態)は、治療対象の個体の自然経過を変化させるための臨床的介入を指し、臨床病理学の経過中に実施することができる。治療の望ましい効果としては、これらに限定されないが、1つ以上の症状の緩和または改善、疾患の外観の縮小または遅延、あらゆる直接的または間接的病理学的帰結の悪化、疾患進行速度の低減、及び病状の改善または寛解が挙げられる。いくつかの実施形態では、抗体を使用して、疾患の発症を遅延させるか、または疾患の進行を緩徐にする。
【0051】
本明細書で使用するとき、用語「治療中に発生した」とは、治療薬の初回用量を投与後に発生した事象を意味する。例えば、「治療中に発生した有害事象」は、臨床試験中、治療薬の初回投与時または投与後に明かになった事象である。
【0052】
「治療レジメン」とは、第二の薬物治療の追加の有無にかかわらず併用投与量、投与回数、治療持続時間を組み合わせたものを意味する。
【0053】
「有効治療レジメン」とは、治療を受ける患者に対して有益な応答を提供する治療レジメンを意味する。
【0054】
「治療を修正する」とは、投与量の変更、投与回数、治療持続時間、及び/または第二の薬物治療の追加など、治療レジメンを変更することを意味する。
【0055】
剤の「有効量」または「有効投与量」とは、必要とする期間において、所望の結果を得るために効果的な量または投与量を意味する。例えば、「治療的有効量」は、必要とされる期間、提示された疾患、状態、臨床病理、または症状を治療する、すなわちADの進行経過を修正する及び/または1つ以上のAD症状を軽減するかつ/若しくは予防するために効果的な量である。
【0056】
「アフィニティ」または「結合アフィニティ」とは、分子の単一の結合部位(例えば、抗体)とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の総合的な非共有相互作用の強さを意味する。本明細書で使用するとき、特に指示がない限り、「結合アフィニティ」とは、結合対のメンバー間での1:1の相互作用を示す固有の結合アフィニティ(例えば、抗体及び抗原結合群)を意味する。そのパートナーYに対する分子Xのアフィニティは、概して、解離定数(Kd)によって表される。アフィニティは、本明細書に記載の方法など、当該技術分野において公知の一般的な方法で測定することができ、これらのうちのいずれも、本発明の目的において使用することができる。結合アフィニティを測定するための特定の図及び代表的な実施形態は、本明細書に記載されている。
【0057】
「アフィニティ成熟した」抗体は、変更を有さない親抗体と比較すると、1つ以上の超可変領域(HVR)において1つ以上の変更を有する抗体を意味し、その変更が抗原に関する抗体のアフィニティの改善をもたらす。
【0058】
本明細書で使用するとき、用語「患者」とは、治療が所望される任意の1人の対象を意味する。ある実施形態では、本明細書での患者はヒトである。
【0059】
本明細書では「対象」は、通常ヒトである。ある実施形態では、対象は非ヒト哺乳類である。代表的な非ヒト哺乳類としては、実験室用、家畜、ペット、変種及び飼育動物(例えば、マウス、ネコ、イヌ、ウマ及びウシ)が挙げられる。典型的には、対象は、例えば、1つ以上の疾患の徴候を示すなど、治療に適している。一般的に、当該対象または患者は、例えば、ADなど、アミロイドーシス症の治療に適している。一実施形態では、このように適した対象または患者は、ADの1つ以上の徴候、症状若しくは他の指標を経験しているか、若しくは経験したことがあるか、またはADと診断されたもの、例えば、新たに診断された、以前診断された、若しくはAD発症のリスクにあるものである。ADの診断は、病歴、診察及び確定された画像モダリティに基づいて行うこともできる。本明細書では、「患者」または「対象」としては、1つ以上の徴候、症状または他のADを示すものを経験しているか、または経験したことのある、治療に適している1人のヒト対象が挙げられる。対象として含むことを目的とするのは、臨床試験トライアルに参加している任意の対象、疫学研究に参加している対象、または対照としてかつて使用された対象である。対象は、これまでに治療を抗Aβ抗体若しくはそれらの抗原結合断片若しくは別の薬物により受けていてもよく、またはこうした治療を受けていなくてもよい。対象は、本明細書の治療が開始されたときに使用される追加の薬剤(複数可)に対して未処置であってもよい。すなわち、対象は、例えば、「ベースライン」で、これまでに抗Aβ以外の治療を受けていなくてもよい(すなわち、本明細書の治療方法において、抗Aβの初回用量投与前の適度な設定値で、例えば、治療を開始する前に対象をスクリーニングする日など)。当該「未処置」の対象は、一般に、このような追加の薬物(複数可)での治療の候補であると考えられる。
【0060】
本明細書で使用するとき、対象の「寿命」とは、治療開始後の対象の人生の残りを意味する。
【0061】
本明細書で使用するとき、用語「モノクローナル抗体」とは、実質的に均質の抗体集団から入手した抗体を意味する(すなわち、集団を含む個々の抗体は、少量存在し得る考えられる自然発生突然変異を除き同一である)。モノクローナル抗体は、非常に特異性が高く、単一の抗原に対して指向される。更に、典型的には、異なる決定基(エピトープ)に対して指向される異なる抗体を含むポリクローナル抗体製剤に対して、各モノクローナル抗体は、抗原上で単一抗原決定基に対して指向される。
【0062】
本明細書において、モノクローナル抗体は、特に「キメラ」抗体を含み、重鎖及び/または軽鎖の一部が、特定の種から誘導されたまたは特定の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体において対応する配列に一致するか、若しくは相同し、、鎖(複数可)の残部は、所望の生物活性を示す限り、別の種から誘導されたまたは別の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体並びにこのような抗体の断片において対応する配列に一致するか、または相同である(米国特許第4,816,567号;及びMorrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851~6855(1984))。
【0063】
抗体の「クラス」とは、その重鎖が有する定常ドメインまたは定常領域を有する型を意味する。抗体には5つの主要クラスIgA、IgD、IgE、IgG及びIgMがあり、かつこれらのうちのいくつかは、更にサブクラス(または「アイソタイプ」)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4,lgA1及びlgA2に分けられる。異なる免疫グロブリンクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γ及びμと称される。
【0064】
「非ヒト」(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリンから誘導される最少の配列を含有するキメラ抗体である。ほとんどの部分では、ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であり、レシピエント個体の超可変領域の残基は、所望の特異性、アフィニティ及び能力を有するマウス、ラット、ウサギまたは非ヒト霊長類など、非-ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域の残基に置き換えられる。いくつかの例では、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置き換えられている。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体において検出されない残基を含んでもよい。これらの改変を行って更に抗体性能を洗練させる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つの、典型的には2つの実質的に全ての可変ドメインを含み、全てまたは実質的に全ての高頻度可変性ループは、非ヒト免疫グロブリンのこれらのループに対応し、全てまたは実質的に全てのFRは、非ヒト免疫グロブリン配列のループである。また、ヒト化抗体は、任意により少なくとも一部の免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域も含む。更なる詳細については、Jonesら、Nature 321:522~525(1986);Riechmannら、Nature 332:323~329(1988);及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593~596(1992)。また、以下の総説及びその中に引用されている参考文献も参照されたい:Vaswani and Hamilton,Ann.Allergy,Asthma&Immunol.1:105~115(1998);Harris,Biochem.Soc.Transactions 23:1035~1038(1995);Hurle and Gross,Curr.Op.Biotech.5:428~433(1994)。
【0065】
「ヒト抗体」は、ヒトまたはヒト細胞によって作製される抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を含むものであり、かつ/または、例えば、本明細書にて開示したように、ヒト抗体を作製する任意の技術を用いて作製されたものなど、ヒト抗体レパートリーまたは配列をコードする他のヒト抗体を活用する非ヒト源から誘導されている。このような技術としては、これらに限定されないが、ヒトモノクローナル抗体の作製のために、ヒト骨髄腫及びマウス-ヒト骨髄腫細胞株を用いる、ファージ提示ライブラリーなどのヒト誘導組合せライブラリーのスクリーニング(例えば、Marksら、Mol.Biol.,222:581~597(1991)及びHoogenboomら、Nucl.Acids Res.,19:4133~4137(1991)を参照されたい)(例えば、Kozbor J.Immunol.,133:3001(1984);Brodeurら、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.55~93(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987);及びBoernerら、J.Immunol.,147:86(1991));内因性免疫グロブリンを作製することのない、ヒト抗体の完全レパートリーを作製することができるトランスジェニック動物(例えば、マウス)内のモノクローナル抗体の産生(例えば、Jakobovitsら、Proc.Natl.Acad.Sci USA, 90:2551(1993);Jakobovitsら、Nature,362:255(1993);Bruggermannら、Year in Immunol.,7:33(1993)を参照されたい)が挙げられる。ヒト抗体の定義は、特に、非ヒト動物由来の抗原結合残基を含むヒト化抗体を除外する。
【0066】
「単離」抗体は、その自然環境の成分から同定され、かつ分離され、かつ/または回収した抗体である。その自然環境の汚染成分は、抗体に対して診断用の使用または治療用の使用を妨げる物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク様溶質または非タンパク様溶質を挙げることができる。いくつかの実施形態では、例えば、電気泳動的(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)またはクロマトグラフ(例えば、イオン交換若しくは逆相HPLC)によって測定するとき、抗体を純度95%または99%以上まで精製する。抗体の純度を評価する方法を再調査するために、例えば、Flatmanら、J.Chromatogr.B 848:79~87(2007)を参照されたい。
【0067】
用語「可変領域」または「可変ドメイン」とは、抗体の抗原への結合に関与する抗体重鎖または軽鎖のドメインを意味する。未変性抗体の重鎖及び軽鎖(それぞれ、VH及びVL)の可変ドメインは、概して、類似の構造体を有し、各ドメインは、4つの保存フレームワーク領域(FR)及び3つの超可変領域(HVR)を含む(例えば、Kindtら、Kuby Immunology,第6版、W.H.Freeman and Co.,page 91(2007)を参照されたい)。単一のVHまたはVLドメインは、抗原結合特異性を付与するのに十分であり得る。更に、特定の抗原に結合する抗体は、それぞれ、補体VLまたは補体VHドメインライブラリーをスクリーニングするために抗原に結合する抗体からVHまたはVLドメインを使用して単離されてもよい。例えば、Portolanoら、J.Immunol.150:880~887(1993);Clarksonら、Nature 352:624~628(1991)を参照されたい。
【0068】
本明細書で使用するとき、用語「高頻度可変性領域」「HVR」または「HV」とは、配列中において高頻度可変性である、かつ/または構造上画定されたループを形成する抗体可変ドメイン領域を意味する。一般に、抗体は、6つの高頻度可変性領域;VH(H1,H2、H3)内に3つ、VL(L1、L2,L3)内に3つを含む。いくつかの高頻度可変性領域の図は、本明細書中で使用し、本明細書中に含まれる。Kabat相補的決定領域(CDR)は、配列可変性に基づき、これらはもっとも頻回に使用される(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest,第5版、Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md.(1991))。一方、Chothiaは、構造的ループの位置を指す(Chothia and Lesk J. Mol.Biol.196:901~917(1987))。AbM高頻度可変性領域は、Kabat CDRとChothia構造的ループとの妥協を示し、かつOxford Molecular’s AbM antibody modeling softwareによって使用される。「接触」高頻度可変性領域は、利用可能な錯体結晶構造の分析に基づく。これらのHVRのそれぞれ由来の残基は、以下に示す。
【0069】
【0070】
超可変領域は、以下の通り「拡大超可変領域」を含んでもよい:VLでは、24~36または24~34(L1)、46~56または49~56または50~56または52~56(L2)及び89~97(L3)、及びVHでは、26~35(H1)、50~65または49~65(H2)及び93~102、94~102または95~102(H3)。可変ドメイン残基は、これらの定義の各々について、上述したKabatらに従って、付番される。
【0071】
「フレームワーク」残基または「FR」残基は、本明細書で定義されたとおり、超可変性領域の残基以外の可変ドメイン残基である。可変ドメインのFRは、概して、4つのFRドメインFR1、FR2、FR3及びFR4から構成される。したがって、HVR及びFR配列は、概して、VH(またはVL)内で次の配列内に発現する:FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4。
【0072】
本明細書の目的において、「レセプターヒトフレームワーク」は、以下に定義するとおり、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークから誘導される軽鎖可変ドメイン(VL)フレームワークまたは重鎖可変ドメイン(VH)フレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークから「誘導された」レセプターヒトフレームワークは、それらの同一のアミノ酸配列を含んでもよいか、またはアミノ酸配列変化を含有してよい。いくつかの実施形態では、アミノ酸変化数は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、または2以下である。いくつかの実施形態では、VLレセプターヒトフレームワークは、配列中、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列またはヒトコンセンサスフレームワーク配列と同一である。
【0073】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列を選択するにあたって、最もよく発生するアミノ酸残基を示すフレームワークである。一般に、ヒト免疫グロブリンVL配列またはVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループ由来である。概して、配列サブグループは、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest,第5版、NIH Publication 91-3242,Bethesda MD(1991),vols.1~3ら、ら、に記載されているようなサブグループである。
【0074】
用語「アミロイド関連画像異常-浮腫」または「ARIA-E」は、大脳の血管原性浮腫及び脳溝の浸出を含む。
【0075】
用語「アミロイド関連画像異常-出血」または「ARIA-H」)は、中枢神経系の微小出血及び表在性シデローシスを含む。
【0076】
本明細書では、「アポリポタンパク質E4陽性」または「ApoE4陽性」と同義で用いられる「アポリポタンパク質E4保因者」または「ApoE4保因者」は、少なくとも1つのアポリポタンパク質E4(または「ApoE4」)対立遺伝子を有する個体を意味する。ゼロApoE4対立遺伝子を有する個体は、本明細書において、「ApoE4陰性」または「ApoE4非保因者」と称される。Prekumarら、1996,Am.J Pathol.148:2083~95も参照されたい。
【0077】
用語「大脳の血管原性浮腫」とは、脳の細胞内空間または細胞外空間中での血管内液またはタンパク質の過剰な蓄積を意味する。大脳の血管原性浮腫は、例えば、これに限定されないが、FLAIR MRIなどの脳MRIによって検出可能であり、無症候性(「無症候性血管原性浮腫」)であってもよく、または錯乱、眩最、嘔吐及び昏睡(「症候性血管原性浮腫」)などの神経学的症状と関連してもよい(Sperlingら、Alzheimer’s&Dementia,7:367,2011を参照されたい)。
【0078】
用語「大脳多量出血」は、直径約1cm超の領域の頭蓋内出血、または脳内出血を意味する。大脳多量出血は、例えば、これに限定されないが、T2-強調GRE MRIなどの脳MRIによって検出可能であり、また、無症候性(「無症候性多量出血」)であってもよいか、または例えば、一過性若しくは持続性局所運動若しくは感覚障害、失調性歩行、失語症及び延髄言語(「症候性多量出血」)などの症状と関連していてもよい(例えば、Chalela JA、Gomes J. Expert Rev.Neurother. 2004 4:267, 2004 and Sperlingら、Alzheimer’s&Dementia,7:367,2011を参照されたい)。
【0079】
用語「大脳微量出血」は、直径約1cm未満の領域の頭蓋内出血、または脳内出血を意味する。大脳微小出血は、例えば、これに限定されないが、T2-強調GRE MRIなどの脳MRIによって検出可能であり、無症候性(「無症候性微小出血」)であってもよく、もしくはまたは場合により、例えば、一過性若しくは持続性局所運動若しくは感覚障害、失調性歩行、失語症及び延髄言語(「症候性微量出血」)などの症状と関連していてもよい。例えば、Greenbergら、2009, Lancet Neurol. 8:165~74を参照されたい。
【0080】
用語「脳溝の浸出」とは、脳の溝(furrow)または溝(sulci)内での液体の滲出を意味する。脳溝の浸出は、例えば、これに限定されないが、FLAIR MRIなどの脳MRIによって検出可能である。Sperlingら、Alzheimer’s&Dementia,7:367,2011を参照されたい。
【0081】
用語「中枢神経系の表在性シデローシス」とは、脳のくも膜下腔への出血(bleeding)または出血(hemorrhage)を意味し、例えば、これに限定されないが、T2-強調GRE MRIなどの脳MRIによって検出可能である。中枢神経系の表在性シデローシスを示す症状としては、感音難聴、小脳失調症及び錐体路徴候が挙げられる。Kumara-N,Am J Neuroradiol.31:5,2010を参照されたい。
【0082】
本明細書で用いられる用語「進行」は、時間の経過に伴う疾患の悪化を意味する。疾患の「進行速度」または「進行率」は、その疾患であると診断された患者において、時間の経過とともにどのくらい疾患の発現が早いか、または遅いかを意味する。疾患の進行速度は、時間の経過とともに測定可能な疾患の特性の変化によって表すことができる。特定の遺伝子体質を保持する患者は、疾患状態の進行が、当該遺伝子体質を有さない患者よりも早い場合、「進行速度の上昇」を有するか、または「進行速度の上昇」を有する傾向にあるといわれている。他方では、治療に応答する患者は、治療前の疾患状態または未治療の他の患者と比較して、治療後、疾患の進行速度が低下した場合、進行速度の低下を有するか、または有する傾向にあると言われている。
【0083】
本明細書で使用するとき、「応答する傾向にある」とは、例えばADなどのアミロイドーシス症の進行を緩徐にするか、または阻止することを示す傾向にある患者を意味する。ADに関して、「応答する傾向にある」とは、治療により機能または認知の損失の減少を示す傾向にある患者を意味する。本発明の文脈において、語句「応答性がある」は、本明細書に記載されるように、疾患に罹患している、罹患している疑いがある、罹患する傾向にある、または疾患を有すると診断されている患者が、抗Aβ治療に対する応答を示すことを意味する。
【0084】
本発明で使用する場合、語句「患者を選択すること」または「患者を識別すること」とは、抗Aβ抗体を含む治療から利益を得る可能があるため、患者のサンプル中での対立遺伝子の存在に関して発生する情報またはデータを用いて、患者を識別するか、または選択することを意味する。使用されるまたは作成される情報またはデータは、書面、口頭または電子的形態など任意の形態であってもよい。いくつかの実施形態では、作成された情報またはデータを用いることとしては、コミュニケーション、提示、報告、記憶、送信、譲渡、供給、送達、分配またはこれらを組み合わせたものが挙げられる。いくつかの実施形態では、コミュニケーション、提示、報告、記憶、送信、譲渡、供給、送達、分配またはこれらを組み合わせたものは、コンピューターデバイス、分析ユニットまたはこれらを組み合わせたものによって行われる。いくつかの更なる実施形態では、コミュニケーション、提示、報告、記憶、送信、譲渡、供給、送達、分配またはこれらを組み合わせたものは、検査専門家または医療専門家によって行われる。いくつかの実施形態では、情報またはデータとしては、特定の対立遺伝子がサンプル中に存在するか否かの指標が挙げられる。いくつかの実施形態では、情報またはデータとしては、患者が抗Aβを含む治療により応答を示す傾向にあることの指標が挙げられる。
【0085】
「エフェクタ-機能」とは、抗体のFc領域に起因するこれらの生物学的活性を意味し、これは、抗体のアイソタイプと共に変化する。抗体エフェクタ-機能の例としては、C1q結合及び補体依存性細胞障害(CDC);Fcレセプター結合;抗体依存性細胞傷害(ADCC);食作用;細胞表面レセプターのダウンレギュレーション(例えば、B細胞レセプター)及びB細胞活性化などが挙げられる。野生型IgG4抗体は、野生型IgG1抗体より少ないエフェクタ-機能を有することは、当該技術分野において公知である。
【0086】
本明細書での用語「Fc領域」は、少なくとも定常領域の一部を含有する免疫グロブリン重鎖のC端末領域を定義するために使用される。この用語には、天然配列Fc領域及び変異型Fc領域が挙げられる。一実施形態では、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226またはPro230から重鎖のカルボキシル末端まで延在している。しかし、Fc領域のC末端リジン(Lys447)が、存在しても、存在していなくてもよい。本明細書で特に指示がない限り、Fc領域または定常領域でのアミノ酸残基は、Kabatら、 Sequences of Proteins of Immunological Interest,第5版、Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda,MD, 1991にて記載されているように、EUナンバリングシステム(EUインデックスとも称される)により付番される。
【0087】
用語「全長抗体」、「無傷抗体」及び「全抗体」は、本明細書では同義的に使用され、未変性抗体構造に実質的に類似した構造を有するか、または本明細書で定義するとおり、Fc領域を含有する重鎖を有する抗体を意味する。
【0088】
用語「宿主細胞」、「宿主細胞株」及び「宿主細胞培養物」は、同義的に使用され、外来性核酸が取り込まれる細胞及びその細胞の後代を意味する。宿主細胞としては、「形質転換体」及び「形質転換細胞」が挙げられ、これらは継代数に関係なく、一次形質転換細胞及びそれらから誘導された後代が挙げられる。後代は、核酸含有量において、親細胞と完全に同一でない場合があるが、突然変異を含有していてもよい。元の形質転換細胞中でスクリーニングまたは選択されたとき、同一機能または生物活性を有する突然変異体後代は、本明細書に含まれる。
【0089】
「免疫コンジュゲート」は、1つ以上のヘテロ分子(複数可)にコンジュゲートされた抗体であるが、更なる治療薬に限定するものではない。
【0090】
「単離」核酸とは、その自然環境の構成成分から分離された核酸分子を意味する。単離核酸としては、従来、核酸分子を含む細胞内に収容された核酸分子が挙げられるが、核酸分子は、染色体外またはその自然染色体部位とは異なる染色体部位に存在する。
【0091】
「抗Aβ抗体をコードする単離核酸」とは、単一のベクターまたは別個のベクター中の核酸分子(複数可)及び宿主細胞中の1以上の場所に存在する核酸分子(複数可)など、抗体重鎖及び軽鎖(またはそれらの断片)をコードする1つ以上の核酸分子を意味する。
【0092】
本明細書で使用するとき、用語「初期アルツハイマー病」または「初期AD」(例えば、「初期ADと診断された患者」または「初期AD罹患者」)としては、ADによる記憶障害など軽度の認知損失を伴う患者及び例えば、アミロイド陽性患者など、ADバイオマーカーを有する患者が挙げられる。
【0093】
本明細書で使用するとき、用語「軽度アルツハイマー病」または「軽度AD」(例えば、「軽度ADと診断された患者」)とは、MMSEスコア20~26であることを特徴とするADステージを意味する。
【0094】
本明細書で使用するとき、用語「軽度から中程度アルツハイマー病」または「軽度から中程度AD」とは、軽度AD及び中程度ADの両方を含み、MMSEスコア18~26であることを特徴とする。
【0095】
本明細書で使用するとき、用語「中程度アルツハイマー病」または「中程度AD」(例えば、「中程度ADと診断された患者」)とは、MMSEスコア18~19であることを特徴とするADステージを意味する。
【0096】
「naked抗体」とは、ヘテロ部分(例えば、更なる治療薬)または放射線標識にコンジュゲートされていない抗体を意味する。naked抗体は、製剤処方中に存在していてもよい。
【0097】
「未変性抗体」とは、構造の異なる自然発生免疫グロブリン分子を意味する。例えば、未変性IgG抗体は約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質であり、ジスルフィド結合された抗体は、2つの同一の軽鎖及び2つの同一の重鎖から構成される。N末端からC末端まで、各重鎖は、可変領域(VH)を有し、可変重ドメインまたは重鎖可変ドメインと称され、その後、3つの定常ドメイン(CH1、CH2、及びCH3)が続く。同様に、N末端からC末端まで、各軽鎖は、可変領域(VL)を有し、可変軽ドメインまたは軽鎖可変ドメインとも称され、その後、定常軽(CL)ドメインが続く。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、kappa(κ)及びlambda(λ)と称される2つのタイプのうちの1つに分けられてもよい。
【0098】
用語「添付文書」は、治療用製剤の商業パッケージに含まれる慣例上の指示書を意味するために使用され、その治療用製剤の使用に関する指標、使用方法、投与量、投与法、併用療法、禁忌及び/または警告ついての情報を含む。また、用語「添付文書」は、診断用製剤の商業パッケージに含まれる慣例上の指示書を意味するために使用され、用途、試験原理、試薬の調製及び取扱い、試料採集及び調製、アッセイの校正及びアッセイ手順、例えば、アッセイの感度及び特異性などの性能及び精度データについての情報を含む。
【0099】
標準ポリペプチド配列に対する「アミノ酸配列同一率(%)」は、配列のアライメントを行い、ギャップを導入した後、必要に応じて、最大の配列同一性(%)を得るために、標準ポリペプチド配列中、アミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基の割合として定義され、配列同一性の一部として、いかなる同類置換も考慮していない。例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)softwareなど、公的に入手可能なコンピュータソフトウエアを用いる、当該技術分野の範囲内でのさまざまな方法で、アミノ酸配列同一率を決定するためのアライメントを行うことができる。当業者は、配列のアライメントを行うために、比較する配列の全長の最大アライメントを得るために必要な任意のアルゴリズムなど、適切なパラメーターを決定することができる。しかし、本明細書の目的として、アミノ酸配列同一率(%)は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用して求める。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech, Inc社が有し、ソースコードは、使用者の文書と共に米国合衆国著作権局(U.S.Copyright Office,Washington D.C., 20559)に記録され、米国著作権登録番号TXU510087で登録されている。ALIGN-2プログラムは、Genentech, Inc.,(South San Francisco, California)から公的に入手可能であるか、または、ソースコードからコンパイルされてもよい。ALIGN-2プログラムは、UNIXオペレーティングシステム(デジタルUNIX V4.0Dなど)で使用するためにコンパイルする必要がある。すべての配列比較パラメーターは、ALIGN-2プログラムによって設定され、変化することはない。
【0100】
アミノ酸配列を比較するためにALIGN-2を使用する場合、所与のアミノ酸配列Aと、所与のアミノ酸配列Bに対して、所与のアミノ酸配列Bと共に、または所与のアミノ酸配列Bに対するアミノ酸配列同一率(%)(代替的には、所与のアミノ酸配列Bに対して、所与のアミノ酸配列Bと共に、または所与のアミノ酸配列Bに対して特定のアミノ酸配列同一率(%)を有するまたは含む所与のアミノ酸配列Aとして表すことができる)は以下のとおり計算する:
100x分画(X/Y)
(式中、Xは、A及びBのそのプログラムのアラインメント内において、配列アライメントプログラムALIGN-2によって一致するときに評点がつけられたアミノ酸残基数であり、Yは、B中のアミノ酸残基の合計数である)。アミノ酸配列Aの長さが、アミノ酸配列Bの長さと同一でない場合、アミノ酸配列AとBとの同一率(%)は、アミノ酸配列BとAとの同一率(%)と同一ではないことは理解すべきである。特別に記載がなければ、直前のパラグラフに記載されているように、ALIGN-2コンピュータプログラムを用いて、本明細書で使用されるすべてのアミノ酸配列同一率(%)が得られる。
【0101】
用語「製剤処方」及び「医薬組成物」は、本明細書では同義的に使用され、その中に含まれる活性成分の生物活性が有効となるような形態であり、かつ、製剤が投与される対象者にとって容認できない有害な追加の成分を含まない製剤を意味する。
【0102】
「薬学的に許容可能な担体」は、対象にとって非毒性である、活性成分以外の薬学的配合物中の成分を示す。薬学的に許容可能な担体としては、これに限定されないが、緩衝液、賦形剤、安定剤または防腐剤が挙げられる。
【0103】
本明細書で使用するとき、用語「ベクター」とは、リンクされる別の核酸を伝搬することができる核酸分子を意味する。この用語としては、自己複製核酸構造としてのベクター、並びに、取り込まれた宿主細胞のゲノム中に組み込まれるベクターが挙げられる。特定のベクターは、操作可能にリンクさせる核酸の発現を配向させることができる。当該ベクターは、本明細書においては、「発現ベクター」と称する。
【0104】
「造影剤」は、その存在及び/または場所を直接的にまたは間接的に検出することができる1つ以上の性質を有する化合物である。このような造影剤の例としては、タンパク質及び検出可能となる標識部分を取り込む小分子化合物が挙げられる。
【0105】
「標識」は、検出または画像処理に使用される分子に結合されたマーカーである。当該標識の実施例としては、放射線標識、蛍光、発色タグ、またはアフィニティタグが挙げられる。一実施形態では、標識は、例えば、再びヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガン、鉄など、核磁気共鳴(NMR)イメージング(磁気共鳴イメージング法(mri)としても公知である)用の例えばtc99m若しくはI123、またはスピン標識など、医学画像のために使用される放射線標識である。
【0106】
方法及び組成物
本開示は、アミロイドーシス症のリスクがあるか、またはアミロイドーシス症を有する患者の治療、予後、選択及び/または同定する組成物及び方法を提供する。一態様では、本発明は、一部、改善された治療方法に基づく。
【0107】
ある実施形態では、Aβに結合する抗体が提供される。本発明の抗体は、アルツハイマー病(「AD」)及び他の疾患の診断または治療に有用である。
【0108】
代表的抗体
一態様では、本発明は、Aβに結合する単離抗体を提供する。ある実施形態では、本発明は、良好なアフィニティを有するヒトAβの単量体形態、オリゴマー形態及びフィブリル形態に結合可能な抗Aβ抗体を提供する。一実施形態では、抗Aβ抗体は、Aβの残基13~24内で、Aβのエピトープに結合する抗体である。その一実施形態では、抗体はクレネズマブ(crenezumab)である。
【0109】
一実施形態では、抗体は、配列番号5の重鎖アミノ酸配列、及び配列番号9の軽鎖アミノ酸配列を含む。別の実施形態では、抗体は、配列番号5のアミノ酸配列のアミノ酸1~112の重鎖可変領域、及び配列番号9のアミノ酸配列のアミノ酸1~112の軽鎖可変領域を含む。別の実施形態では、抗体は、配列番号5及び配列番号9のHVR配列を含む。別の実施形態では、抗体は、配列番号5及び配列番号9のHVR配列に95%、96%、97%、98%若しくは99%またはそれ以上一致しているHVR配列を含む。
【0110】
上記実施形態のいずれにおいても、抗Aβ抗体はヒト化されている。一実施形態では、抗Aβ抗体は、上記実施形態のいずれかのようなHVRを含み、及び、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークなどのアクセプターヒトフレームワークを更に含む。
【0111】
別の態様では、抗Aβ抗体は、配列番号5のアミノ酸配列のアミノ酸1~112に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列一致性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む。ある実施形態では、標準配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の一致性を有するVH配列は、置換(例えば、同類置換)、挿入または欠失を含むが、この配列を含む抗Aβ抗体は、Aβに結合する能力を保持する。ある実施形態では、配列番号5において、1~10の全アミノ酸が、置換、挿入及び/または欠失した。ある実施形態では、置換、挿入または欠失は、HVR外領域(すなわち、FR内)で発生する。任意により、抗Aβ抗体は、配列番号5にVH配列(その配列の翻訳後修飾など)を含む。
【0112】
別の態様では、抗Aβ抗体が提供され、抗体は、配列番号9のアミノ酸配列のアミノ酸1~112に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列一致性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。ある実施形態では、標準配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の一致性を有するVL配列は、置換(例えば、同類置換)、挿入または欠失を含むが、この配列を含む抗Aβ抗体は、Aβに結合する能力を保持する。ある実施形態では、配列番号9において、1~10の全アミノ酸が、置換、挿入及び/または欠失した。ある実施形態では、置換、挿入または欠失は、HVR外領域(すなわち、FR内)で発生する。任意により、抗Aβ抗体は、配列番号9にVL配列(その配列の翻訳後修飾など)を含む。
【0113】
別の態様では、抗Aβ抗体が提供され、抗体は、上記に提供した実施形態のいずれかのようなVH及び上記に提供した実施形態のいずれかのようなVLを含む。
【0114】
更なる態様では、本発明は、本明細書に記載の抗Aβ抗体と同一のエピトープに結合する抗体を提供する。例えば、ある実施形態において、配列番号5内にVH配列を含み、配列番号9内にVL配列を含む、抗Aβ抗体と同一のエピトープに結合する抗体が提供される。
【0115】
本発明の更なる態様では、上記実施形態のいずれかによる抗Aβ抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体などのモノクローナル抗体である。一実施形態では、抗Aβ抗体は、抗体断片(例えば、Fv、Fab、Fab’、scFv、diabodyまたはF(ab’)2断片)である。別の実施形態では、抗体は、本明細書で定義するとおり、全長抗体(例えば、無傷IgG4抗体)または他の抗体クラス若しくはアイソタイプである。別の実施形態では、抗体は二重特異性抗体である。
【0116】
本発明の更なる態様では、上記実施形態のいずれかによる抗Aβ抗体は、以下のセクション1~7に記載のとおり、特徴のいずれかが単一でまたは組み合わせて取り込まれていてもよい。
【0117】
一実施形態では、抗Aβ抗体は、アミノ酸配列番号6を含むHVR-L1;アミノ酸配列番号7を含むHVR-L2;アミノ酸配列番号8を含むHVR-L3;アミノ酸配列番号2を含むHVR-H1;アミノ酸配列番号3を含むHVR-H2;アミノ酸配列番号4を含むHVR-H3を含む。
【0118】
別の実施形態では、抗体は、重配列及び軽配列番号5及び配列番号9を含む。
【0119】
別の実施形態では、抗体は、配列番号5及び配列番号9内に可変領域配列を含む。
【0120】
上記実施形態のいずれにおいても、抗Aβ抗体はヒト化されていてもよい。一実施形態では、上記実施形態のいずれかにあるように、HVRを含み、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークなどのアクセプターヒトフレームワークを更に含む。
【0121】
1.抗体アフィニティ
ある実施形態では、本明細書に記載の抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、または≦0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば、10-8M~10-13M、例えば10-9M~10-13M)の解離定数(Kd)を有する。
【0122】
一実施形態では、Kdは、対象の抗体のFab型及び以下のアッセイによって記述されるとおりその抗原を用いて実施される放射線標識抗原結合アッセイ(RIA)によって測定される。Fabの抗原に対する溶液結合アフィニティは、非標識抗原の滴定系列の存在下における、最小濃度(125I)標識抗原を有するFabを平衡化し、次に、抗Fab抗体コーティングプレートで結合抗原を捕捉することによって測定される(例えば、Chenら、J.Mol.Biol.293:865~881(1999)を参照されたい)。アッセイ条件を制定するには、MICROTITER(登録商標)マルチウェルプレート(Thermo Scientific)は、一晩かけて5μg/ml捕捉抗Fab抗体(Cappel Labs)/50mm炭酸ナトリウム(pH9.6)でコーティングを行い、その後に、2~5時間、室温にて(約23℃)、2%(w/v)ウシ血清アルブミン/PBSにより抑制した。非吸着プレート(Nunc#269620)では、100pMまたは26pM[125I]抗原を、目的とする連続希釈Fab(例えば、抗VEGF抗体Fab-12の評価と一致する)と一緒に混合する(Prestaら、Cancer Res.57:4593~4599(1997))。次に、目的とするFabを一晩インキュベートしたが、インキュベーションは、さらに長い時間(例えば、約65時間)継続させて、確実に平衡に到達させてもよい。その後、混合物は、室温にてインキュベーション(例えば、1時間)するために、捕捉プレートへと転写させる。その後、この溶液を除去し、プレートは0.1%ポリソルベート20(TWEEN-20(登録商標))/PBSで8回洗浄した。プレートを乾燥させた後、150μl/ウェルの発光体(scintillant)(MICROSCINT-20(商標)Packard)を添加し、プレートをTOPCOUNT(商標)ガンマカウンター(Packard)で10分計測する。競合結合アッセイで使用するために、最大結合20%以下となる各Fabの濃度を選択する。
【0123】
別の実施形態によれば、Kdは、BIACORE(登録商標)-2000またはBIACORE(登録商標)-3000(BIAcore,Inc.,Piscataway,NJ)を25℃で約10応答単位(RU)の固定化抗原CM5切片と共に、表面プラズモン共鳴アッセイを使用して、測定される。要約すると、カルボキシメチル化デキストラン生体内感知装置切片(CM5,BIACORE,Inc.)は、供給元の指示書に従って、N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を用いて活性化させる。抗原は、流量5μl/分で注入する前に10mM酢酸ナトリウム、pH4.8で5μg/m(約0.2μm)に希釈し、約10応答単位の連結タンパク質を得る。抗原注入後、1Mエタノールアミンを注入して、未反応基を抑制する。反応速度測定では、Fab(0.78nM~500nM)の2倍連続希釈液をPBS/0.05%ポリソルベート20(TWEEN-20TM)界面活性剤(PBST)に25℃で、流量約25μl/分で注入する。会合速度(kon)及び解離速度(koff)は、一対一ラングミュア結合モデル(one-to-one Langmuir binding model(BIACORE(登録商標)Evaluation Software version 3.2)を用いて、会合及び解離センサーグラムの同時フィッティングにより算出する。平衡解離定数(Kd)は、koff/kon比として計算される。例えば、Chenら、J.Mol.Biol.293:865~881(1999)を参照されたい。上記表面プラズモン共鳴アッセイにより「on」速度が10-1-1を越え、20nm抗原抗体(Fab型)の蛍光発光強度(励起=295nm;発光=340nm;16nm帯域)の増減を25℃にて、PBS中、pH7.2で計測する蛍光クエンチング法を用いて、抗原濃度の増大が認められるなかで、ストップフロー付きスペクトロフォトメーター(Aviv Instruments)または攪拌キュベット付き8000-シリーズSLM-AMINCO TMスペクトロフォトメーター(ThermoSpectronic)などのスペクトロメータで計測すると、「on」速度を測定することができる。
【0124】
2.抗体断片
ある実施形態では、本明細書に記載の抗体は、抗体断片である。抗体断片としては、これらに限定されないが、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、Fv及びscFv断片並びに以下に記載の他の断片が挙げられる。ある抗体断片を調べるためには、Hudsonら、Nat.Med.9:129~134(2003)を参照されたい。scFv断片を調べる場合には、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore編(Springer-Verlag,New York),pp.269~315(1994)を参照されたい。また、WO93/16185及び米国特許明細書第5,571,894号及び同第5,587,458号を参照されたい。サルベージレセプター結合エピトープ残基を含み、インビボ半減期の増大を有するFabとF(ab’)2断片について考察するためには、米国特許第5,869,046号を参照されたい。
【0125】
Diabodyは、二価または二重特異性であってもよい2つの抗原結合部位を有する抗体断片である。例えば、EP404,097;WO1993/01161;Hudsonら、Nat.Med.9:129~134(2003);及びHollingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444~6448(1993)を参照されたい。Triabodies及びtetrabodiesも、Hudsonら、Nat. Med.9:129~134(2003)に記述されている。
【0126】
シングルドメイン抗体は、重鎖可変ドメインのすべて若しくは一部または抗体の軽鎖可変ドメインのすべて若しくは一部を含む抗体断片である。ある実施形態では、シングルドメイン抗体は、ヒトシングルドメイン抗体(Domantis,Inc.,Waltham,MA;例えば米国特許明細書第6,248,516号(B1)を参照されたい)である。ある実施形態では、2つ以上のシングルドメイン抗体は、一緒に連結して、多価のアフィニティを有する免疫グロブリン構造体を形成してもよい(すなわち、第1のシングルドメイン抗体のN末端またはC末端は、第2のシングルドメイン抗体のN末端またはC末端と融合させるか、または別の方法で連結させてもよい)。
【0127】
抗体断片は、本明細書に記載されるように、これらに限定されないが、無傷抗体のタンパク質分解、並びに組換え型宿主細胞(例えば、大腸菌またはファージ)による作製など、各種技術により作製することができる。
【0128】
3.キメラ抗体及びヒト化抗体
ある実施形態では、本明細書に記載の抗体は、キメラ抗体である。特定のキメラ抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号;及びMorrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 81:6851~6855(1984)に記述されている。一例としては、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギまたは非ヒト霊長類(例えば、サルなど))由来の可変領域及びヒト定常領域を含む。更なる例では、キメラ抗体は、クラスまたはサブクラスが親抗体のクラスまたはサブクラスから変化した「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体としては、それらの抗原結合断片が挙げられる。
【0129】
ある実施形態では、キメラ抗体はヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体をヒト化させて、親非ヒト抗体の特異性及びアフィニティを保持しつつ、ヒトに対する免疫原性を低下させる。概して、ヒト化抗体は、HVR、例えば、CDR(またはそれらの部分)が、非ヒト抗体から誘導され、FR(またはそれらの部分)が、ヒト抗体配列から誘導される1つ以上の可変ドメインを含む。また、ヒト化抗体は、任意によりヒト定常領域の少なくとも一部も含む。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体内のいくつかのFR残基は、非ヒト抗体(例えば、HVR残基が誘導される抗体)由来の対応する残基で置換され、例えば、抗体の特異性またはアフィニティを回復するか、または改善する。
【0130】
ヒト化抗体及びそれらの製造方法は、例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619~1633(2008)に述べられている。また、例えば、Riechmannら、Nature 332:323~329(1988);Queenら、Proc. Nat’l Acad.Sci.USA 86:10029~10033(1989);米国特許番号第5,821,337号、同第7,527,791号、同第6,982,321号及び同第7,087,409号;Kashmiriら、Methods 36:25~34(2005)(SDR(a-CDR)グラフト化について記述);Padlan,Mol.Immunol.28:489~498(1991)(表面再構成「resurfacing」について記述);Dall’Acquaら、Methods 36:43~60(2005)(「FRシャフリング」について記述);及びOsbournら、Methods 36:61~68(2005)及びKlimkaら、Br.J.Cancer,83:252~260(2000)(「guided selection」approach to FR shufflingについて記述)に述べられている。
【0131】
ヒト化に使用し得るヒトフレームワーク領域としては、これらに限定されないが、「ベストフィット」法を用いて選択されたフレームワーク領域(例えば、Simsら.J.Immunol.151:2296(1993)を参照されたい);軽鎖または重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列から誘導されるフレームワーク領域(例えば、Carterら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285(1992);及びPrestaら、J.Immunol.,151:2623(1993)を参照されたい);ヒト成熟(体細胞として成熟している)フレームワーク領域またはヒト生殖系フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619~1633(2008)を参照されたい)及びFRライブラリーのスクリーニングから誘導されたフレームワーク領域(例えば、Bacaら、J.Biol.Chem.272:10678~10684(1997)及びRosokら、J.Biol.Chem.271:22611~22618(1996)を参照されたい)が挙げられる。
【0132】
4.ヒト抗体
ある実施形態では、本明細書に記載の抗体はヒト抗体である。ヒト抗体は、当該技術分野において公知の様々な技術を使用して作製することができる。ヒト抗体は、概して、van Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.5:368~74(2001)及びLonberg,Curr.Opin.Immunol.20:450~459(2008)に記載されている。
【0133】
ヒト抗体は、抗原性の問題に対して、変性させたトランスジェニック動物に免疫原を投与することにより調製し、無傷ヒト抗体またはヒト可変領域を有する無傷抗体を作製してもよい。このような動物は、典型的には、ヒト免疫グロブリン遺伝子座のすべてまたは一部を含み、内因性免疫グロブリン遺伝子座を置換するか、または染色体外に存在するか、またはランダムに動物の染色体内に集約させる。このようなトランスジェニックマウスでは、内因性免疫グロブリン遺伝子座は、概して、不活性化させてきた。トランスジェニック動物からヒト抗体を得るための方法を調べるにあたって、Longberg, Nat.Biotech.23:1117~1125(2005)を参照されたい。例えば、米国特許明細書第6,075,181号及び同第6,150,584号(XENOMOUSE(商標)法について記述);米国特許明細書第5,770,429号(HUMAB(登録商標)法について記述);米国特許明細書第7,041,870号(K-M MOUSE(登録商標)法について記述)及び米国特許公開公報US2007/0061900号(VELOCIMOUSE(登録商標)法について記述))を参照されたい。このような動物から作製した無傷抗体由来のヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることにより更に修飾してもよい。
【0134】
ヒト抗体は、ハイブリドーマを利用した方法で作製することもできる。ヒトモノクローナル抗体の作製のためのヒト骨髄腫及びマウス-ヒト骨髄腫細胞株について記述されている(例えば、KozborJ.Immunol.,133:3001(1984);Brodeurら、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51~63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987);及びBoernerら、J.Immunol.,147:86(1991)を参照されたい)。ヒトB細胞ハイブリドーマ法を介して作製したヒト抗体も、Liら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:3557~3562(2006)に記述されている。追加の方法としては、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株由来のモノクローナルヒトIgM抗体の生成について記述)及びNi,Xiandai Mianyixue,26(4):265~268(2006)(ヒト-ヒトハイブリドーマについて記述)に記載されたものなどが挙げられる。ヒトハイブリドーマ法(Trioma technology)もVollmers and Brandlein,Histology and Histopathology,20(3):927~937(2005)及びVollmers and Brandlein,Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology,27(3):185~91(2005)に記述されている。
【0135】
また、ヒト抗体は、更に、ヒト誘導ファージ提示ライブラリーから選択されるFvクローン可変ドメイン配列の単離により作製されてもよい。次にこのような可変ドメイン配列を、所望のヒト定常ドメインと混ぜ合わせてもよい。抗体ライブラリー由来のヒト抗体を選択する技術については、以下に説明する。
【0136】
5.ライブラリー誘導抗体
所望の活性(複数可)を有する抗体については、本発明の抗体は、コンビナトリアルライブラリーのスクリーニングにより単離されてもよい。例えば、所望の結合特性を有する抗体について、当技術分野においては、種々のファージ提示ライブラリーの作製方法及びこのようなライブラリーのスクリーニング方法が公知である。このような方法は、例えば、Hoogenboomら、Methods in Molecular Biology 178:1~37(O’Brienら、Human Press編、Totowa,NJ,2001)に述べられ、更には、例えば、McCaffertyら、Nature 348:552~554;Clacksonら、Nature352:624~628(1991);Marksら、J.Mol.Biol.222:581~597(1992);Marks and Bradbury,in Methods in Molecular Biology 248:161~175(Lo,Human Press版,Totowa,NJ,2003);Sidhuら、J.Mol.Biol.338(2):299~310(2004);Leeら、J.Mol.Biol.340(5):1073~1093(2004);Fellouse,Proc.Natl.Acad. Sci. USA 101(34):12467~12472(2004);及びLeeら、J.Immunol. Methods 284(1~2):119~132(2004)に記述されている。
【0137】
特定のファージ提示方法では、VH遺伝子及びVL遺伝子のレパートリーは、Winterら、Ann.Rev.Immunol.,12:433~455(1994)に記載されているように、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって別個にクローン化され、ファージライブラリー内でランダムに組換えられ、その後、抗原結合ファージについてスクリーニングされることができる。典型的には、ファージは、短鎖Fv(scFv)断片またはFab断片のいずれかとして、抗体断片を提示する。免疫化源由来のライブラリーは、ハイブリドーマの構築を必要とせずに高アフィニティ抗体を免疫原に提供する。あるいは、ナイーブレパートリーは、Griffithsら(EMBO J,12)725~734(1993)によって記載されているように、クローン化(例えば、ヒトから)して、いかなる免疫化もなく、抗体の単一の供給源を幅広い範囲の非自己及び自己抗原に提供することができる。最終的には、Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381~388(1992)によって記述されているように、幹細胞からの非再編成V遺伝子セグメントのクローン化により、合成により及びランダム配列を含むPCRプライマーを使用してナイーブライブラリーも作製し、高可変CDR3領域をコードし、かつインビトロでの再配置を達成することができる。ヒト抗体ファージライブラリーについて記述している特許公報としては、例えば、米国特許第5,750,373号、及び米国特許公報第2005/0079574号、同2005/0119455号、同2005/0266000号、同2007/0117126号、同2007/0160598号、同2007/0237764号、同2007/0292936号及び同2009/0002360号が挙げられる。
【0138】
ヒト抗体ライブラリーから単離された抗体または抗体断片は、本明細書で、ヒト抗体ライブラリーから単離されたと考える。
【0139】
6.多特異的抗体
ある実施形態では、本明細書に記載の抗体は、多特異的抗体、例えば、二重特異性抗体である。多特異的抗体は、少なくとも2個の異なる部位の結合特異性を有するモノクローナル抗体である。ある実施形態では、結合特異性のうちの1つは、Aβに関し、他の結合特異性は、任意の他の抗原に関する。ある実施形態では、二重特異性抗体は、Aβの2つの異なるエピトープに結合してもよい。また、二重特異性抗体を使用して、細胞毒性剤を細胞に局在化させてもよい。二重特異性抗体は、全長抗体または抗体断片として調製することができる。
【0140】
多特異的抗体作製法としては、これらに限定されないが、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の組換え型共発現(Milstein and Cuello,Nature 305:537(1983)、WO93/08829及びTrauneckerら、EMBO J.10:3655(1991)を参照されたい)及び「ノブインホール(knob-in-hole)」工学(例えば、米国特許明細書第5,731,168号を参照されたい)が挙げられる。多特異性抗体は、抗体Fc-ヘテロ二量体分子(WO2009/089004A1)を作製するため、静電工学静電的ステアリング効果(electrostatic steering effects)を遺伝子操作すること、2つ以上の抗体または断片を架橋すること(例えば、米国特許明細書第4,676,980号及びBrennanら、Science,229:81(1985)を参照されたい);ロイシンジッパーを用いて、二重特異性抗体を産生すること(例えば、Kostelnyら、J.Immunol.,148(5):1547~1553(1992)を参照されたい);二重特異性抗体断片を作製するための「diabody」法を用いること(例えば、Hollingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444~6448(1993)を参照されたい);及び短鎖Fv(sFv)二量体を用いること(例えば、Gruberら、J.Immunol.,152:5368(1994)を参照されたい);例えば、Tuttら.J.Immunol.147:60(1991)に記述されたとおり、三重特異性抗体を調製することにより作製されてもよい。
【0141】
本明細書では、3つ以上の機能的抗原結合部位を有する遺伝子操作された抗体(「オクトパス抗体」も含む(例えば、US2006/0025576A1を参照されたい)。
【0142】
また、本明細書の抗体または断片としては、Aβに結合する抗原結合部位並びに別の異なる抗原を含む「二重作用FAb」または「DAF」が挙げられる(例えば、US2008/0069820を参照されたい)。
【0143】
7.抗体バリアント
ある実施形態では、本明細書に記載の抗体のアミノ酸配列バリアントが意図される。例えば、抗体の結合アフィニティ及び/または他の生物学的性質を向上させることが望ましい場合もある。抗体のアミノ酸配列バリアントは、抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な改変を導入することによって、またはペプチド合成によって作製され得る。このような改変としては、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失及び残基への挿入、残基の置換が挙げられる。例えば、最終作成物が、抗原結合などの所望の特徴を有する場合は、欠失、挿入及び置換の任意の組み合わせが行われ、最終作成物に到達する。
【0144】
バリアントの置換、挿入及び欠失
ある実施形態では、1つ以上のアミノ酸置換を有する抗体バリアントが提供される。置換による突然変異誘発を目的とする部位としては、HVR及びFRが挙げられる。表1に、表題「同類置換」として同類置換を示す。表1の表題「代表的置換」として、及び以下に更に詳細に記載するとおり、アミノ酸側鎖クラスに関して、更なる置換による改変を提供する。アミノ酸置換は、所望の活性(例えば、抗原結合の維持/改善、免疫原性の低下、またはADCC若しくはCDCの改善)のために、目的の抗体及びスクリーニングされたその生成物内に導入されてもよい。
【0145】
アミノ酸は、共通側鎖の性質によって分類されてもよい:
【0146】
(1)疎水性:Norleucine、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
【0147】
(2)中性親和性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
【0148】
(3)酸性:Asp、Glu;
【0149】
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
【0150】
(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;
【0151】
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe
【0152】
非同類置換は、これらのクラスの1つのメンバーと別のクラスとの交換を伴うことになる。
【0153】
1つの型の置換バリアントには、1つ以上の親抗体の超可変性領域残基(例えば、ヒト化抗体またはヒト抗体)を伴う。概して、更に調べるために選択された得られたバリアント(複数可)は、親抗体に対して特定の生物学的性質(例えば、アフィニティの増大、免疫原性の低下など)において、改変(例えば、改善)を有することもあるか、かつ/または、実質的に親抗体の特定の生物学的性質を保持していることになる。代表的置換バリアントは、アフィニティ成熟抗体である。ある実施形態では、アフィニティ成熟抗体は、ターゲット抗原に対してナノモルでのアフィニティまたは更にはピコモルでのアフィニティを有することになる。アフィニティ成熟抗体は、例えば、本明細書に記載のものなどのファージ提示ベースアフィニティ成熟法を使用することなど、当該技術分野において公知の手順により作製される。要約すると、1つ以上のHVR残基が変異し、バリアント抗体がファージ上に提示され、特定の生物活性に関してスクリーニングを行う(例えば、結合アフィニティ)。他の手順もまた公知である。Marksら(Bio/Technology 10:779~783(1992))は、VH及びVLドメインのシャフリングによるアフィニティ成熟について記述している。HVR及び/またはフレームワーク残基のランダム突然変異誘発については、以下によって記載されている:Barbasら、Proc Nat. Acad. Sci, USA 91:3809~3813(1994);Schierら、Gene 169:147~155(1996);Yeltonら、J.Immunol.155:1994~2004(1995); Jacksonら、J.Immunol.154(7):3310~9(1995);及びHawkinsら、J.Mol.Biol.226:889~896(1992)。
【0154】
改変(例えば、置換)は、HVR内で、例えば、抗体アフィニティの改善のために行われてもよい。このような改変は、HVR「ホットスポット」(すなわち、細胞体成熟工程(例えば、Chowdhury,Methods Mol. Biol.207:179~196(2008)を参照されたい)中、高頻度で突然変異が行われているコドンによってコードされた残基)及び/またはSDR(a-CDR)内で、結合アフィニティに関する試験対象の得られたバリアントVHまたはVLを用いて行われてもよい。二次ライブラリーから構築すること及び二次ライブラリーから再度選択することによるアフィニティ成熟については、例えば、Hoogenboomら、Methods in Molecular Biology 178:1~37(O’Brienら、Human Press,Totowa版、NJ,(2001)。)に記述されている。アフィニティ成熟のいくつかの実施形態では、種々の方法(例えば、error-prone PCR、鎖シャフリング、またはオリゴヌクレオチド指向性突然変異誘発)のいずれかにより、成熟のために選択された可変遺伝子に多様性が導入される。次に、二次ライブラリーが作製される。その後、ライブラリーのスクリーニングを行い、所望のアフィニティを有する抗体バリアントを同定する。多様性を導入するための別の方法には、HVR指向性アプローチを伴い、いくつかのHVR残基(例えば、同時に4~6残基)がランダム化される。抗原結合に伴うHVR残基は、例えば、アラニンスキャニング突然変異誘発またはモデリングを使用して、特異的に同定されてもよい。多くの場合、特にCDR-H3及びCDR-L3が標的にされる。
【0155】
ある実施形態では、その改変により実質的に、抗体が抗原に結合する能力を低下させることがない限り、1つ以上のHVR内で置換、挿入または欠失が発生し得る。例えば、実質的に、結合アフィニティを低下させることのない同類改変(例えば、本明細書に記載の同類置換)は、HVR内で行われてもよい。このような改変は、HVR「ホットスポット」またはSDR外で行われてもよい。上記に提供したバリアントVH及びVL配列のある実施形態では、各HVRは、改変されていないか、または1つ、2つ若しくは3つ以下のアミノ酸置換を含まないかのいずれかである。
【0156】
突然変異誘発の標的とされてもよい残基または抗体領域の有用な同定方法は、Cunningham and Wells(1989)Science,244:1081~1085により記述されているとおり、「アラニンスキャニング突然変異誘発」と称されている。本方法では、残基またはターゲット残基群(例えば、arg、asp、his、lys及びgluなどの荷電残基)は、中性または負の電荷を帯びたアミノ酸((例えば、アラニンまたはポリアラニン)によって同定され、置換され、抗体の抗原との相互作用が影響を受けるか否かを判断する。更なる置換は、初期の置換に対して機能的な感度を示すアミノ酸の場所に導入され得る。代替的にまたは追加的に、抗体と抗原との間の接触点を同定するための抗原一抗体複合体の結晶構造。置換候補として、このような接触残基及び隣接残基を標的にするか除去してもよい。バリアントをスクリーニングして、所望の性質を含有しているかを判定してもよい。
【0157】
アミノ酸配列の挿入としては、長さ1の残基から100以上の残基を含むポリペプチドまでの範囲のアミノ基-及び/またはカルボキシ基-末端融合並びに単一また複数のアミノ酸残基の配列内挿入が挙げられる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入バリアントとしては、抗体のN末端またはC末端と酵素(例えば、ADEPT向け)または抗体の血清半減期を長くするポリペプチドとの融合が挙げられる。
【0158】
グリコシル化バリアント
ある実施形態では、本明細書に記載の抗体が改変されて、その抗体がグリコシル化される範囲が増大または減少する。抗体へのグリコシル化部位の付加または消失は、1つ以上のグリコシル化部位が作製されるかまたは除去されるようなアミノ酸配列の改変によって都合よく達成され得る。
【0159】
抗体がFc領域を含む場合、その領域に結合する炭水化物を改変してもよい。哺乳類細胞により作製された未変性抗体は、典型的には、概して、N連鎖によりFc領域のCH2ドメインのAsn297に結合させる分枝、二分岐オリゴ糖を含む。例えば、WrightらTIBTECH 15:26~32(1997)を参照のこと。オリゴ糖としては、さまざまな炭化水素(例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース及びシアル酸)並びに二分岐オリゴ糖構造体の「幹」内で、GlcNAcに結合させるフコースなどを挙げることもできる。いくつかの実施形態では、本発明の抗体内でのオリゴ糖の改変は、特定の改善された性質を有する抗体バリアントを作製するために行われてもよい。
【0160】
一実施形態では、Fc領域に結合させる(直接的にまたは間接的に)フコースを欠いている炭水化物構造体を有する抗体バリアントが提供される。例えば、その抗体中のフコースの量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%または20%~40%であってもよい。フコース量は、例えば、WO2008/077546にて記載されているように、MALDI-TOF質量分析により測定した際、Asn297(例えば、複合体、ハイブリッド構造体及び高マンノース型構造体)に結合されるすべての糖構造体の総計に対するAsn297での糖鎖中での平均量を算出することによって求められる。Asn297とは、Fc領域内のほぼ位置297(Fc領域残基のEu付番)に配置されているアスパラギン残基を意味するが、Asn297は、抗体中において、微量の配列多様体であるため、位置297(すなわち位置294~300間)の約±3アミノ酸上流または下流に配置されていてもよい。このようなフコシル化バリアントは、ADCC機能が改善されていてもよい。例えば、米国特許公報US2003/0157108(Presta,L.);US2004/0093621(Kyowa Hakko Kogyo Co.,Ltd)を参照されたい。「脱フコシル化」または「フコース欠失」抗体バリアントに関する公報の例としては、次のものが挙げられる:US2003/0157108;WO2000/61739;WO2001/29246;US2003/0115614;US2002/0164328;US2004/0093621;US2004/0132140;US2004/0110704;US2004/0110282;US2004/0109865;WO2003/085119;WO2003/084570;WO2005/035586;WO2005/035778;WO2005/053742;WO2002/031140;Okazakiら、J.Mol.Biol.336:1239~1249(2004);Yamane-Ohnukiら、Biotech.Bioeng.87:614(2004)。脱フコシル化抗体を作製可能な細胞株の例としては、タンパク質フコシル化中のLec13CHO細胞欠失が挙げられる(Ripkaら、Arch.Biochem.Biophys.249:533~545(1986);米国特許出願US 2003/0157108 A1,Presta,L;及びWO2004/056312 A1、Adamsら、特に実施例11)及びノックアウト細胞株(例えば、アルファ-1,6-フコシルトランフフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞(例えば、Yamane-Ohnukiら、Biotech.Bioeng.87:614(2004)を参照されたい);Kanda,Y.ら、Biotechnol.Bioeng.,94(4):680~688(2006);及びWO2003/085107)。
【0161】
二分化オリゴ糖により、抗体バリアントが更に提供される(例えば、抗体のFc領域に結合させる二分岐オリゴ糖は、GlcNAcによって二分される)。このような抗体バリアントは、フコシル化が減少し、かつ/またはADCC機能が改善されていてもよい。このような抗体バリアントの例としては、例えば、WO2003/011878(Jean-Mairetら);米国特許第6,602,684号(Umanaら);及びUS2005/0123546(Umanaら)に記載されている。Fc領域に結合させるオリゴ糖内で少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体バリアントも提供される。このような抗体バリアントは、CDC機能が改善されていてもよい。このような抗体バリアントは、例えば、WO1997/30087(Patelら);WO1998/58964(Raju,S.);及びWO1999/22764(Raju,S.)に記載されている。
【0162】
Fc領域バリアント
ある実施形態では、1つ以上のアミノ酸改変は、本明細書に記載の抗体のFc領域内に導入されてもよく、それによってFc領域バリアントが生成される。Fc領域バリアントは、1つ以上のアミノ酸位置にアミノ酸改変(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2,IgG3またはIgG4Fc領域)を含んでもよい。
【0163】
ある実施形態では、本発明は、すべてではないがいくつかのエフェクター機能を所有する抗体バリアントを意図し、これにより、インビボでの抗体の半減期は重要であるが、特定のエフェクター機能(例えば、補体及びADCCなど)は不必要であるかまたは有害である応用のための所望の候補となる。インビトロ及び/またはインビボ細胞障害アッセイを実施して、CDC及び/またはADCC活性の減少/枯渇を評価することができる。例えば、確実に抗体がFcγR結合を欠く(このため、おそらくADCC活性を欠く)が、FcRn結合能力を保持することができるようにするために、Fcレセプター(FcR)結合アッセイを実施することができる。ADCC、NK細胞を媒介するための初代細胞は、FcλRIIIのみを発現し、単核細胞は、FcλRI、FcλRII及びFcλRIIIを発現する。造血細胞でのFcRの発現は、Ravetch and Kinet,Annu. Rev. Immunol 9:457~492(1991)の464頁表3にまとめる。目的の分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの非限定例は、米国特許第5,500,362号に記述されている(例えば、Hellstrom,I.らProc.Nat’l Acad.Sci.USA83:7059~7063(1986))及びHellstrom,Iら、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 82:1499~1502(1985);5,821,337(Bruggemann,Mら、J.Exp.Med.166:1351~1361(1987)を参照されたい)。あるいは、非放射性アッセイ法を用いてもよい(例えば、フローサイトメトリー(CellTechnology,Inc.Mountain View,CA;及びCytoTox96(登録商標)非放射性細胞傷害アッセイ(Promega,Madison,WI)用のACTI(登録商標)非放射性細胞障害アッセイなど)。このようなアッセイ向けの有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核球(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。代替的に、または追加的に、目的の分子のADCC活性は、インビボ、例えば、Clynesら、Proc.Nat’l Acad.Sci. USA 95:652~656(1998)に開示されているような動物モデルで評価してもよい。また、C1q結合アッセイを行って、抗体は、C1qを結合することができず、このため、CDC活性に欠いていることを確認してもよい。例えば、WO2006/029879及びWO2005/100402のC1q及びC3c結合ELISA法を参照されたい。補体の活性化を評価するために、CDCアッセイを実施してもよい(例えば、Gazzano-Santoroら、J.Immunol.Methods 202:163(1996);Cragg,M.S.ら、Blood 101:1045~1052(2003);及びCragg,M.S.and M.J. Glennie,Blood 103:2738~2743(2004))。当該技術分野において既知の方法を使用して、FcRn結合及びインビボクリアランス/半減期の判定を行うこともできる(例えば、Petkova,S.B.ら、Int’l.Immunol.18(12):1759~1769(2006)を参照されたい)。
【0164】
エフェクター機能が低下した抗体としては、1つ以上のFc領域残基238、265、269、270、297、327及び329(米国特許明細書第6,737,056号)の置換を有するものが挙げられる。このようなFc変異体としては、置換残基265及び297のアラニンへの置換を有するいわゆる「DANA」Fc変異体など、265,269,270,297及び327のアミノ酸位置の2つ以上に置換を有するFc変異体が挙げられる(米国特許第7,332,581号)。
【0165】
改善されたまたは減少されたFcRへの結合を有する特定の抗体バリアントについて記載されている(例えば、米国特許明細書第6,737,056号;WO2004/056312、及びShieldsら、J.Biol.Chem.9(2):6591~6604(2001)を参照されたい)。
【0166】
ある実施形態では、抗体バリアントは、ADCCを改善する1つ以上のアミノ酸置換(例えば、Fc領域の位置298、333及び/または334での置換(残基のEU付番))を有するFc領域を含む。
【0167】
いくつかの実施形態では、改変は、C1q結合及び/または補体依存性細胞障害(CDC)の改変(すなわち、改善されるか、または減少するかのいずれか)となるFc領域において行われる(例えば、米国特許明細書第6,194,551号、WO99/51642及びIdusogieら J.Immunol.164:4178~4184(2000)に記述されているとおり)。
【0168】
半減期の増大及び新生児のFcレセプター(FcRn)への改善された結合を有する抗体は、母性IgGから胎児への転写に関与し、Guyerら、J. Immunol.117:587(1976)及びKimら、J.Immunol.24:249(1994)),US2005/0014934A1(Hintonら)に記載されている。これらの抗体は、Fc領域のFcRnへの結合を改善する1つ以上の置換を有するFc領域を含む。このようなFcバリアントとしては、次の1つ以上のFc領域残基で置換したものが挙げられる:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424または434、例えば、Fc領域残基434の置換(米国特許明細書第7,371,826号)。また、Fc領域バリアントの他の例に関しては、Duncan&Winter,Nature 322:738~40(1988);米国特許明細書第5,648,260号;米国特許明細書第5,624,821号;及びWO94/29351を参照されたい。
【0169】
システイン遺伝子操作抗体バリアント
ある実施形態では、システイン遺伝子操作抗体(例えば、「チオMAb」など)の作製が望ましい場合があり、抗体の1つ以上の残基は、システイン残基により置換されている。特定の実施形態では、置換残基は、抗体の接近部位で発生する。これらの残基をシステインで置換することにより、これによって、反応性チオール基は、抗体の接触可能部位に配置され、抗体を他の部分(薬物部分またはリンカー薬物部分)にコンジュゲートするために使用して、更に本明細書に記述されるように、免疫コンジュゲートを作製してもよい。ある実施形態では、次の残基のいずれか1つ以上は、システインと置換してもよい:軽鎖のV205(Kabat付番);重鎖のA118(EU付番);及び重鎖Fc領域のS400(EU付番)。システイン遺伝子操作抗体は、例えば、米国特許明細書第7,521,541号に記載されているように作製することができる。
【0170】
抗体誘導体
ある実施形態では、本明細書に記載の抗体は、更に修飾して、当技術分野において公知であり、容易に入手可能な追加のタンパク質由来でない部分を含有してもよい。抗体の誘導体化に好適な部分は、これらに限定されないが、水溶性ポリマーが挙げられる。水溶性ポリマーの非限定的例としては、これらに限定されないが、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれか)、及びデキストランまたはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレン(propropylene)グリコールホモポリマー、プロリプロピレン(prolypropylene)オキシド/エチレンオキサイドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール及びこれらの混合物が挙げられる。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性により、製造における利点を有し得る。ポリマーは、任意の分子量のものであってもよく、分岐していても非分岐であってもよい。抗体に結合したポリマーの数は、様々であってもよく、1つを超えるポリマーが結合される場合、それらは、同じ分子または異なる分子であり得る。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/または種類は、改善対象の抗体の特定の特性または機能、抗体誘導体が規定の条件下で療法において使用されるかどうかなどを含むが、これらに限定されない考慮に基づいて、決定することができる。
【0171】
別の実施形態において、放射線への曝露によって選択的に加熱され得る、抗体及び非タンパク質性部分のコンジュゲートが提供される。一実施形態において、非タンパク質性部分は、カーボンナノチューブである(Kamら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102:11600~11605(2005))。放射線は、任意の波長のものであってもよく、一般の細胞を害することはないが、非タンパク質性部分を、抗体-非タンパク質性部分に近位の細胞が死滅させられる温度まで加熱する波長が含まれるが、これらに限定されない。
【0172】
組換え法及び組成物
抗体は、例えば、米国特許明細書第4,816,567号に記載されるように、組換え法及び組成物を使用して作製されてもよい。一実施形態において、本明細書に記載される抗Aβ抗体をコードする単離核酸が提供される。このような核酸は、抗体のVLを含むアミノ酸配列及び/またはVHを含むアミノ酸配列(例えば、抗体の軽鎖及び/または重鎖)をコードし得る。更なる実施形態において、このような核酸を含む1つ以上のベクター(例えば、発現ベクター)が提供される。更なる実施形態において、このような核酸を含む宿主細胞が提供される。1つのこのような実施形態において、宿主細胞は、(1)抗体のVLを含むアミノ酸配列及び抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクター、または(2)抗体のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第1のベクター、及び抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第2のベクターを含む(例えば、それらで形質転換されている)。一実施形態において、宿主細胞は、真核性、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはリンパ系細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)である。一実施形態において、抗Aβ抗体を作製する方法が提供され、本方法は、上述の抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を、抗体の発現に好適な条件下で培養することと、任意に、抗体を宿主細胞(または宿主細胞培養培地)から回収することとを含む。
【0173】
抗Aβ抗体の組換え作製のために、例えば、上述のとおり、抗体をコードする核酸が単離され、宿主細胞内での更なるクローニング及び/または発現のために、1つ以上のベクター中に挿入される。このような核酸は、従来の手順を使用して(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能である、オリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)、容易に単離され、配列決定され得る。
【0174】
抗体コードベクターのクローニングまたは発現に好適な宿主細胞には、本明細書に記載される原核細胞または真核細胞が含まれる。例えば、抗体は、特にグリコシル化及びFcエフェクター機能が必要とされない場合に、細菌において作製されてもよい。細菌における抗体断片及びポリペプチドの発現については、例えば、米国特許第5,648,237号、同第5,789,199号、及び同第5,840,523号を参照されたい(また、大腸菌における抗体断片の発現を記載する、Charlton,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,Humana Press編、Totowa,NJ,2003),pp.245~254も参照されたい)。発現後、抗体は、可溶性画分において細菌細胞ペーストから単離されてもよく、またさらに精製することができる。
【0175】
原核生物に加えて、糸状菌または酵母などの真核微生物は、グリコシル化経路が「ヒト化」された真菌及び酵母株などの抗体コードベクターに好適なクローニングまたは発現宿主であり、これにより部分的または完全ヒトグリコシル化パターンを有する抗体が作製される。Gerngross,Nat.Biotech.22:1409~1414(2004)、及びLiら、Nat.Biotech.24:210~215(2006)を参照されたい。
【0176】
グリコシル化抗体の発現に好適な宿主細胞はまた、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)にも由来する。無脊椎動物細胞の例としては、植物細胞及び昆虫細胞が挙げられる。特にヨトウガ(Spodoptera frugiperda)細胞のトランスフェクションのために昆虫細胞と併せて使用され得る、多数のバキュロウイルス株が同定されている。
【0177】
植物細胞培養物もまた、宿主として利用することができる。例えば、米国特許明細書第5,959,177号、同第6,040,498号、同第6,420,548号、同第7,125,978号、及び同第6,417,429号(トランスジェニック植物において抗体を作製するためのPLANTIBODIES(商標)技術を記載している)を参照されたい。
【0178】
脊椎動物細胞もまた、宿主として使用され得る。例えば、懸濁液中で成長するように適合される哺乳類細胞株が、有用であり得る。有用な哺乳類宿主細胞株の他の例としては、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7);ヒト胚性腎臓株(例えば、Grahamら、J.Gen Virol.36:59(1977)に記載される、293または293細胞);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK);マウスセルトリ細胞(例えば、Mather,Biol.Reprod.23:243~251(1980)に記載される、TM4細胞);サル腎臓細胞(CV1);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76);ヒト子宮頚がん細胞(HELA);イヌ腎臓細胞(MDCK;バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A);ヒト肺細胞(W138);ヒト肝がん細胞(Hep G2);マウス乳腺腫瘍(MMT 060562);例えば、Matherら、Annals N.Y.Acad.Sci.383:44~68(1982)に記載される、TRI細胞;MRC 5細胞;及びFS4細胞がある。他の有用な哺乳類宿主細胞株としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などのDHFR-CHO細胞(Urlaubら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216(1980);並びにY0、NS0、及びSp2/0などの骨髄腫細胞株が挙げられる。抗体作製に好適なある特定の哺乳類宿主細胞株の概説については、例えば、Yazaki and Wu,Methods in Molecular Biology,第248版(B.K.C.Lo,Humana Press版、Totowa,NJ),pp.255~268(2003)を参照されたい。
【0179】
アッセイ
本明細書に提供される抗Aβ抗体は、それらの物理/化学特性及び/または生物活性について、当該技術分野で既知の種々のアッセイによって、同定され、スクリーニングされ、または特徴付けられてもよい。
【0180】
結合アッセイ及び他のアッセイ
一態様において、本発明の抗体は、その抗原結合活性について、例えば、ELISA、ウェスタンブロットなどの既知の方法によって、試験される。
【0181】
別の態様において、競合アッセイを使用して、Aβへの結合に関して、本発明の抗Aβ抗体と競合する抗体を同定してもよい。ある実施形態において、このような競合抗体は、本明細書に記載されるクレネズマブまたは別の抗Aβ抗体によって結合される、同じエピトープ(例えば、直線状または立体配座エピトープ)に結合する。抗体が結合するエピトープをマッピングするための詳細な代表的方法は、Morris(1996)「Epitope Mapping Protocols」in Methods in Molecular Biology第66版(Humana Press,Totowa,NJ)に提供される。
【0182】
代表的競合アッセイにおいて、所望の形態(例えば、単量体、オリゴマー体またはフィブリル)中の固定化Aβは、Aβに結合する第1の標識抗体(例えば、クレネズマブ)、及びAβへの結合に関して、第1の抗体と競合するその能力について試験されている第2の未標識抗体を含む、溶液中でインキュベートされる。第2の抗体は、ハイブリドーマ上清中に存在してもよい。対照として、固定化Aβが、第1の標識抗体を含むが、第2の未標識抗体を含まない、溶液中でインキュベートされる。Aβへの第1の抗体の結合が可能な条件下でのインキュベーション後、過剰分の非結合抗体が除去され、固定化Aβに関連する標識の量が測定される。固定化Aβに関連する標識の量が、対照試料と比べて試験試料中で実質的に低減される場合、それは、第2の抗体がAβへの結合に対して第1の抗体と競合していることを示す。Harlow and Lane (1988) Antibodies:A Laboratory Manual ch.14 (Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY)を参照されたい。
【0183】
活性アッセイ
一態様では、例えば、クレネズマブの生物活性などの生物活性を有するその抗Aβ抗体を同定するためのアッセイが提供される。生物活性としては、これに限定されないが、例えば、単量体AβのオリゴマーAβへ凝集の防止、またはオリゴマーAβの単量体Aβへの脱凝集などが挙げられる。インビボ及び/またはインビトロにおいて、このような生物活性を有する抗体も提供される。
【0184】
ある実施形態では、本発明の抗体は、このような生物活性に関して試験を行う。
診断及び検出するための方法及び組成物
【0185】
ある実施形態において、本明細書に提供される抗Aβ抗体のいずれも、生体試料中のAβの存在を検出するために有用である。本明細書で使用される用語「検出すること」は、定量または定性検出を包含する。ある実施形態では、生体試料は、血清、血漿、鼻用スワブ、痰、脳脊髄液、房水などの細胞若しくは組織、または神経組織または脳組織を含む試料など、生命体から入手した組織若しくは細胞試料を含む。
【0186】
一実施形態では、診断または検出方法で使用するための抗Aβ抗体が提供される。更なる態様では、生体試料においてAβの存在の検出方法が提供される。ある実施形態では、方法は、抗Aβ抗体をAβに結合可能な条件下にて、本明細書に記載されるように、生体試料を抗Aβ抗体と接触させることと、抗Aβ抗体とAβとの間に複合体が形成されるかを検出することを含む。このような方法は、インビトロ法またはインビボ法であってもよい。
【0187】
本発明の抗体を用いて診断され得る代表的障害は、アミロイドまたはアミロイド様タンパク質によって生じるまたは関連する疾患及び障害である。これらは、これらに限定されないが、単一、フィブリル、若しくは重合状態またはその3つの任意の組み合わせにおいて、アミロイドプラークによるなど、アミロイド様タンパク質の存在または活性によって生じる疾患及び障害を意味する。代表的疾患としては、アルツハイマー病(「AD」)などの神経疾患などの続発性アミロイドーシス及び年齢関連性アミロイドーシス、例えば、軽度認知障害(MCI)、レビー小体認知症、ダウン症、アミロイド症を伴うオランダ型遺伝性脳出血、グアム島パーキンソニスム痴呆複合など、認知記憶能力の損失によって特徴付けられる疾病または状態、及び進行性核上性麻痺、多発性硬化症、クロイツフェルト・ヤコブ病、パーキンソン病、HIV関連認知症、筋萎縮性側索硬化症、封入体筋炎(IBM)、成人発症型糖尿病、内分泌腫瘍及び老人性心アミロイドーシスなどのアミロイド様タンパク質に基づくか、または関与する他の疾患、及び黄斑変性、ドルーゼン関連眼疾患、緑内障及びβアミロイド付着による白内障などのさまざまな眼疾患が挙げられる。
【0188】
ある実施形態では、標識された抗Aβ抗体が提供される。標識としては、これらに限定されないが、直接検出される標識または部分(蛍光標識、発色団標識、高電子密度標識、化学発光標識、及び放射性標識等)、ならびに例えば、酵素反応または分子相互作用を通じて、間接的に検出される酵素またはリガンドなどの部分が挙げられる。代表的標識としては、これらに限定されないが、放射性同位体32P、14C、125I、H、及び131I、希土類キレートまたはフルオレセイン及びその誘導体等のフルオロフォア、ローダミン及びその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン、ルセリフェラーゼ(luceriferases)、例えば、ホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ(米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖質オキシダーゼ、例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びグルコース-6-リン酸塩デヒドロゲナーゼ、過酸化水素を用いて色素前駆体を酸化させる酵素、例えばHRP、ラクトペルオキシダーゼ、またはマイクロペルオキシダーゼとカップリングされた、ウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼなどの複素環式オキシダーゼ、ビオチン/アビジン、スピン標識、バクテリオファージ標識、安定した遊離ラジカルなどが挙げられる。
【0189】
医薬製剤
本明細書に記載される抗Aβ抗体の医薬製剤は、所望の程度の純度を有する抗体または分子を、1つ以上の任意の薬学的に許容される担体(Remington’s Pharmaceutical Sciences 第16版、Osol,A.Ed.(1980))と混合することによって、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で、調製される。薬学的に許容される担体は、一般に、用いられる投薬量及び濃度で、受容者に対して非毒性であり、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムなど;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル、若しくはベンジルアルコール;メチル若しくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、若しくは免役グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、若しくはリジンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース、若しくはデキストリンを含む他の炭水化物;EDTAなどのキレート薬剤;ショ糖、マンニトール、トレハロース、若しくはソルビトールなどの糖類;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属複合体(例えば、Zn-タンパク質複合体);ならびに/またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤が含まれるが、これらに限定されない。本明細書における代表的な薬学的に許容される担体には、可溶性の中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えば、rHuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International,Inc.)などのヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質などの、介在性(insterstitial)薬物分散剤が更に含まれる。rHuPH20などの、特定の代表的なsHASEGP及び使用方法は、米国特許公開第2005/0260186号及び同第2006/0104968号に記載される。一態様において、sHASEGPは、コンドロイチナーゼなどの1つ以上の追加のグリコサミノグリカナーゼと組み合わせる。
【0190】
一実施形態では、本発明の抗体は、アルギニン緩衝液中で処方されてもよい。一態様では、アルギニン緩衝液は、アルギニンサクシネート緩衝液でもあってよい。一態様では、アルギニンサクシネート緩衝液の濃度は、50mM以上であってもよい。別のこのような態様では、アルギニンサクシネート緩衝液の濃度は、100mM以上であってもよい。別のこのような態様では、アルギニンサクシネート緩衝液の濃度は、150mM以上であってもよい。別のこのような態様では、アルギニンサクシネート緩衝液の濃度は、200mM以上であってもよい。別の態様では、アルギニン緩衝液製剤は、更に界面活性剤を含有してもよい。別のこのような態様では、界面活性剤はポリソルベートである。別のこのような態様では、ポリソルベートは、ポリソルベート20である。別のこのような態様では、製剤中のポリソルベート20の濃度は、0.1%以下である。別のこのような態様では、製剤中のポリソルベート20の濃度は、0.05%以下である。別の態様では、アルギニン緩衝液製剤のpHは、4.5~7.0である。別の態様では、アルギニン緩衝液製剤のpHは、5.0~6.5である。別の態様では、アルギニン緩衝液製剤のpHは、5.0~6.0である。別の態様では、アルギニン緩衝液製剤のpHは、5.5である。前述の実施形態及び態様のいずれかでは、本発明の抗体は、クレネズマブであってもよい。
【0191】
代表的な凍結乾燥抗体製剤は、米国特許明細書第6,267,958号に記載されている。水性抗体製剤としては、米国特許明細書第6,171,586号及びWO2006/044908に記載されるようなものが挙げられ、後者製剤としては、ヒスチジン-酢酸緩衝液が挙げられる。
【0192】
また、本明細書における製剤は、治療されている特定の適応症に対して、必要に応じて、1つを超える活性成分、好ましくは相互に悪影響を及ぼさない相補的活性を有する成分を含有してもよい。例えば、アルツハイマー病の症状の予防または治療のために1つ以上の化合物を更に提供することが望ましい場合がある。このような活性成分は、用途に有効な量で、組み合わせて適切に存在する。
【0193】
活性成分は、コロイド状薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)またはマクロエマルション中で、例えば、コアセルベーション法または界面重合(例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン-マイクロカプセル及びポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセル)により調製したマイクロカプセルに取り込まれてもよい。このような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 第16版、Oslo,A.編(1980)に開示される。
【0194】
徐放性製剤が調製されてもよい。徐放性製剤の好適な例としては、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスが挙げられ、そのマトリクスは、造形品、例えば、フィルム、またはマイクロカプセルの形態である。
【0195】
In vivo投与のために使用されるべき製剤は、一般的に無菌である。滅菌状態は、例えば、滅菌濾過膜を介した濾過によって、容易に遂行され得る。
【0196】
治療方法及び組成物
本明細書に示すとおり、AD罹患者へのクレネズマブの静脈内投与により、疾患の進行が低下した。具体的には、軽度から中程度ADを有する患者(軽度ADを有する患者及びApoE4陽性患者など)並びにADを有すると診断された患者に典型的に認められる脳アミロイド負荷を有する患者は、プラセボと比較して、クレネズマブにより治療した場合、認知衰弱速度の低下を示した。MMSEスコアの上昇に基づいて、疾患が軽度であるほど、プラセボ群と比較して、治療群の低下はより大きい。これらの結果は、脳脊髄液内で検出されるAβレベルの増加、及び脳内でのアミロイド蓄積の減少など、クレネズマブによるターゲットエンゲージメントを示す他の指標により更に実証された。更に、比較的高用量の抗体15mg/kgでは、他の抗Aβ抗体の臨床試験で観察されたARIA型有害事象の発症の増加はなかった。
【0197】
このため、一実施形態では、本発明の抗体を使用して、軽度から中程度AD、軽度AD及び初期ADなど、ADの治療を行う。別の実施形態では、本発明の抗体を使用して、アミロイドーシス症の治療を行う。このような一実施形態では、アミロイドーシス症は軽度の認知障害である。別のこのような実施形態では、アミロイドーシス症はダウン症候群である。別のこのような実施形態では、アミロイドーシス症はアミロイドーシス症を伴う遺伝性脳出血(オランダ型)である。別のこのような実施形態では、アミロイドーシス症はグアムパーキンソン痴呆複合症である。別のこのような実施形態では、アミロイドーシス症はドルーゼンまたは他の眼内でのアミロイド蓄積に関連する眼疾患である。一態様では、眼疾患は、黄斑変性症である。別の態様では、眼疾患は、ドルーゼン関連視神経変性症である。別の態様では、眼疾患は緑内障である。別の態様では、眼疾患は白内障である。前述の実施形態及び態様のいずれかでは、本発明の抗体は、クレネズマブであってもよい。
【0198】
患者は、通常、このような患者の治療への本発明の抗体の適合性を判定する前に、始めに1つ以上のアミロイドーシス症の存在に関して評価される。一非限定的例としては、患者においてADは、「NINCDS-ADRDA」(Neurological and Communicative Disorders and Stroke-Alzheimer’s Disease Related Disorders Assessment:神経疾患・脳卒中-アルツハイマー病関連疾患評価)基準を用いて、診断されていてもよい。McKhannら、1984、Neurology 34:939~44を参照されたい。1つ以上の本発明の抗体を投与される可能性のある患者に対しては、このような患者が次のいずれかの素因となる可能性のある1つ以上の遺伝マーカーが存在するか否かに関する試験を行ってもよい;(i)1つ以上のアミロイドーシス症を経験しているこのような患者は、可能性が高いか、若しくは低い、または、(ii)本発明の抗体の投与過程中、1つ以上の有害事象または副作用を経験しているこのような患者は、可能性が高いか、若しくは低い。一非限定的例として、対立遺伝子のない患者と比較して、ApoE4対立遺伝子担持患者は、実質的により高いAD発症リスクを有することは公知であり(Saundersら、Neurology 1993;43:1467~72;Prekumarら、Am.J.Pathol.1996;148:2083~95)、このような患者は、別の抗Aβ抗体であるbapineuzumabの臨床試験で観察されるARIA型有害事象内に不均衡に提示される(Sperlingら、Alzheimer’s & Dementia 2011,7:367~385;Sallowayら、N.Engl.J.Med.2014,370:322~333)。
【0199】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体を使用して、患者において軽度から中程度ADの治療を行う。本患者は、ApoE4陽性またはApoE4陰性であってもよい。いくつかの実施形態では、本発明の抗体を使用して、軽度ADの治療を行う。いくつかの実施形態では、本発明の抗体を使用して、軽度から中程度ADまたは軽度ADに罹患しているApoE4陽性患者の治療を行う。いくつかの実施形態では、本発明の抗体を使用して、軽度AD罹患患者の治療を行う。
【0200】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体を使用して、20~30、20~26、24~30、21~26、22~26、22~28、23~26、24~26または25~26のMMSEスコアを有する患者の治療を行う。いくつかの実施形態では、患者は、22~26のMMSEスコアを有する。本明細書で使用するとき、2つの数値間のMMSEスコアとしては、その範囲の各終点での数を含む。例えば、22~26のMMSEスコアは、22及び26のMMSEスコアを含む。
【0201】
いくつかの実施形態では、例えば、ADと診断された患者に典型的である脳アミロイド堆積を有する患者、またはPET検査陽性florbetapirを有する患者などの「アミロイド陽性」患者を治療するために使用する。いくつかの実施形態では、本発明の抗体を使用して、脳アミロイド蓄積物または老人斑の堆積を減少させる(すなわち、脳ブラアミロイド負荷または荷重の増大を低下させる)。
【0202】
更に、本発明の抗体は、ARIA-EまたはARIA-Hの発症の増加なく、軽度から中程度ADの治療に有用である。いくつかの実施形態では、患者は、軽度ADに罹患している。いくつかの実施形態では、患者はApoE4陽性である。いくつかの実施形態では、患者はApoE4陽性であり、かつ軽度ADに罹患している。
【0203】
本明細書の実施例に示すように、治療的効果は、より軽度のAD形態を有する患者において増大する。したがって、いくつかの実施形態では、本発明の抗体を使用して、初期ADを有する患者の治療を行う。ある実施形態では、治療されるべき患者は、次の1つ以上の特徴を有する:(a)ADによる軽度の認知障害(MCI);(b)1つ以上のバイオマーカーによる臨床上検出可能な欠損のないアルツハイマー病の指標;(c)FCSRT(Free and Cued Selective Reminding Test)スコア27以上、24~30のMMSEスコアを用いて認定された客観的記憶喪失;(d)国際的CDR(Clinical Dementia Rating)が0.5である;及び(e)陽性アミロイドPET走査(有資格者が判断するとき)。
【0204】
本発明の抗体は、良好な医療行為と一致する様式で、処方され、投薬され、投与される。このような状況において考察するための要因としては、治療される特定の疾患、治療される特定の哺乳類、個々の対象の臨床状態、疾患の原因、該剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール、及び医学的施術者が既知の他の因子。
【0205】
投与経路
本発明の抗体(及び任意の追加の治療薬)は、局所療法、病巣内投与が好ましい場合、非経口投与、肺内投与及び経鼻投与など、任意の好適な手段によって、投与され得る。非経口注入としては、筋肉内投与、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与または皮下投与が挙げられる。投薬は、一部、投与が短期であるか、または慢性であるかに応じて、例えば、注射(静脈内注射または皮下注射)など、任意の好適な経路によってもよい。一実施形態では、抗体は皮下注入される。別の実施形態では、抗体は静脈内注入される。別の実施形態では、抗体は(例えば、事前に充填されているか、または充填されていない)注射器または自動注入装置を用いて投与される。別の実施形態では、抗体は吸入される。
【0206】
投薬
アミロイドーシス症の治療については、本発明の抗体の適切な投与量(単独または1つ以上の他の追加の治療薬と併用で使用する場合)は、治療される特定の種類の疾患、抗体の種類、疾患の重症度及び経過、これまでの治療法、患者の病歴及び抗体応答性、並びに治療担当医師の裁量に依存する。抗体は、同時にまたは一連の治療で、適切に患者に投与される。本明細書では、これらに限定されないが、さまざまな時点での単回または繰返し投与、ボーラス投与、及びパルスインフュージョン投与など、さまざまな投薬スケジュールが考えられる。
【0207】
疾患の種類及び重症度に応じて、0.3mg/kg~100mg/kg(例えば、15mg/kg~100mg/kgまたはその範囲内の任意の投与量)の抗体を例えば、1つ以上の別々での投与、または連続インフュージョンにより、患者に投与するための最初の候補投与量とすることができる。1つの典型的な毎日の投薬量は、上述の要因に応じて、約15mg/kg~100mg/kg以上の範囲であり得る。投与量は、単回投与量または分割投与量(例えば、15mg/kgを2回投与して全量30mg/kg)で投与され得る。状態に応じて、数週間以上にわたる繰返し投与の場合、その治療は、一般に、疾患症状の望ましい抑制が生じるまで持続されることになる。抗体の1つの代表的投与量は、約10mg/kg~約50mg/kgの範囲内であり得る。したがって、約0.5mg/kg、1mg/kg、1.5mg/kg、2.0mg/kg、3mg/kg、4.0mg/kg、5mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、35mg/kg、40mg/kg、50mg/kg、60mg/kg、70mg/kg、80mg/kg、90mg/kg、または100mg/kgの1つ以上の投与量(またはこれらの任意の組み合わせ)を該患者に投与することができる。いくつかの実施形態では、50mg~2500mgの範囲内で、合計量が投与される。代表的な投与量である約50mg、約100mg、200mg、300mg、400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約720mg、約1000mg、約1050mg、約1100mg、約1200mg、約1300mg、約1400mg、約1500mg、約1600mg、約1700mg、約1800mg、約1900mg、約2000mg、約2050mg、約2100mg、約2200mg、約2300mg、約2400mまたは約2500mg(またはこれらの任意の組み合わせ)を該患者に投与してもよい。このような投与量は、断続的に(例えば、隔週、2週ごと、3週ごと、4週ごと、1ヶ月ごと、2ヶ月ごと、3ヶ月ごと、または6ヶ月ごと)に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、患者は、1~35回の投薬を受ける(例えば、約18回の抗体の投薬)。しかし、他の投与レジメンも有用であり得る。この療法の進行は、従来の方法及びアッセイによりモニターすることができる。
【0208】
ある実施形態では、本発明の抗体は、15mg/kg、30mg/kg、40mg/kg、45mg/kg、50mg/kg、60mg/kgまたは一定の投薬、例えば、300mg、500mg、700mg、800mgまたはそれ以上、の投与量で投与される。いくつかの実施形態では、投薬は、ある期間で2週ごとまたは4週ごとの静脈内注入により行われる。いくつかの実施形態では、投薬は、ある期間で2週ごとまたは4週ごとの皮下注入により行われる。ある実施形態では、期間は6ヶ月、1年、18ヶ月、2年、5年、10年、15年、20年または患者の生涯である。
【0209】
治療的処置のモニタリング/評価応答
本開示の方法で使用されるとき、抗体またはこれらの抗原結合断片は、治療的効果または利益を患者に提供する。ある実施形態では、治療的利益は、AD進行の遅延若しくは阻害、または臨床的低下、機能的低下、認知低下の減少である。いくつかの実施形態では、「患者応答」または「応答」(及びそれらの文法的変形)において、治療的効果または利益が反映される。患者応答は、これらに限定されないが、次に示すとおり患者への利益を示す任意のエンドポイントを用いて評価することができる;(1)緩徐にする及び完全に阻止するなど、ある程度まで、疾患の進行を阻害、(2)プラーク量の減少または脳アミロイド蓄積の低減;(3)1つ以上の評価基準(これらに限定されないが、ADAS-Cog、iADL及びCDR-SOBスケールなど)の改善;(4)患者の日常機能の改善;(5)1つ以上のバイオマーカー濃度の増大(例えば、脳脊髄液中のAβ;及び(6)ADの存在を示す1つ以上のバイオマーカーの減少。患者応答の評価としては、更に、治療に関連して発生し得るあらゆる有害事象の評価も挙げられる。
【0210】
一実施形態では、患者の認知能力及び日常機能は、本発明の抗体による治療過程の前、間、及び/または後に評価する。精神機能欠損、認知欠損及び神経学的欠損の評価、診断及び採点に使用するために、いくつかの認知評価ツール及び機能的評価ツールが開発されている。これらのツールは、これらに限定されないが、12項目ADAS-Cog(ADAS-Cog12)、13項目ADAS-Cog(ADAS-Cog13)、14項目ADAS-Cog(ADAS-Cog14)などのADAS-Cog;CDR-SOB(CDR判定及び問題解決スコア及びCDR記憶スコアなど);手段的日常生活動作(iADL);及びMMSEが挙げられる。
【0211】
「ADAS-Cog」は、アルツハイマー病評価スケール認知サブスケール、認知評価、複数部分認知評価(Alzheimer’s Disease Assessment Scale Cognitive Subscale,a multi-part cognitive assessment)を意味し、Rosenら、1984,Amer.J. Psych.141:1356~1364;Mohsら、1997,Alzheimer’s Disease Assoc. Disorders 11(2):S13-S21を参照されたい。ADAS-Cogでは、スコアの低い別の個体と比較して、数値的スコアが高いほど、試験対象患者の欠失または障害が大きくなる。ADAS-Cogは、AD治療が治療的に有効であるかを評価するために1つの基準として使用してもよい。ADAS-Cogスコアの上昇は、患者の状態の悪化を示唆するものであり、ADAS-Cogスコアの減少は、患者の状態の改善を表す。本明細書で使用するとき、「ADAS-Cog性能の低下」または「ADAS-Cogスコアの上昇」は、患者の状態の悪化を示唆し、ADの進行を反映する場合もある。ADAS-Cogは、複数の認知ドメイン(記憶、理解、実行、配向 姿勢及び自発語など)を評価する検査員管理用セットである(Rosenら、1984,Am J Psychiatr 141:1356~64;Mohsら、1997,Alzheimer Dis Assoc Disord 11(S2):S13~S21)。ADAS-Cogは、AD治療臨床試験において、標準第一次エンドポイントである(Mani2004,Stat Med23:305~14)。ADAS-Cog12は、70項目のADAS-Cogに習得した単語リストの想起を評価する10項目のDelayed Word Recall item(遅延語想起)を加えたものである。他のADAS-Cogスケールとしては、ADAS-Cog13及びADAS-Cog14が挙げられる。
【0212】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の治療方法は、ADAS-Cogスコアによって測定したとき、プラセボに対して、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、または少なくとも約45%の認知の低下の減少をもたらす。
【0213】
「MMSE」は、ミニメンタルステート試験を意味し、スコアは1~30であるFolsteinら、1975,J.Psychiatr.Res.12:189~98を参照されたい。スコア26以下は、概して、欠失を示唆していると考えられる。MMSEでは、スコアの低い別の個体と比較して、数値的スコアが低いほど、試験対象患者の欠失または障害が大きくなる。MMSEスコアの上昇は、患者の状態の改善を示唆するものであってよく、MMSEスコアの減少は、患者の状態の悪化を表すこともある。
【0214】
「CDR-SOB」とは、臨床認知症評価スケール/Sum of Boxesを意味する。Hughesら、1982を参照されたい。CDRでは、次の6つの要素:記憶、配向、判定/問題解決、コミュニティ、家庭及び趣味及び個人医療について評価する。患者及び介護人の両者に対して、試験が管理され、スケール0~3で各要素(または各「ボックス」)のスコアとする。完全なCDR-SOBスコアは、6つのすべてのボックスのスコアの総計に基づく。例えば、CDR/メモリ若しくはCDR/判定及び問題解決に関して、各ボックスまたは要素にサブスコアを得ることができる。本明細書で使用するとき、「CDR-SOB性能の低下」または「CDR-SOBスコアの上昇」は、患者の状態の悪化を示唆し、ADの進行を反映する場合もある。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の治療方法は、プラセボに対して、少なくとも約30%、少なくとも約35%、または少なくとも約40%のCDR-SOB性能の低下の減少をもたらす。
【0215】
「iADL」とは、手段的日常生活動作スケールを意味する。Lawton,M.P.,and Brody,E.M.,1969,Gerontologist 9:179~186を参照されたい。このスケールにより、家事、洗濯、電話操作、買い物、食事の支度などの典型的な日常動作を行う能力を測定する。スコアが低いほど、日常生活行為動作を行うにあたって個体の障害がより多く生じる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の治療方法は、iADLスケールで、プラセボに対して、少なくとも約10%、少なくとも約15%、または少なくとも約20%の低下の減少をもたらす。
【0216】
脳アミロイド荷重または負荷は、神経画像法及びツール、例えば、PET(ポジトロン断層撮影)走査を使用して測定することができる。例えば治療剤の投与前及び投与後(または治療レジメン過程全体を通じて1つ以上の間隔で)など時間の経過と共に患者の連続PET走査を行うことで、脳内のアミロイド負荷の増大、減少または変化なしなどの検出が可能になる。更にこの方法を用いて、アミロイド蓄積が増加しているか、または減少しているかを判断することができる。いくつかの実施形態では、florbetapir18Fを使用して脳内でのアミロイド堆積を検出する。いくつかの実施形態では、検査の集中目視読み取りを基準にした場合、florbetapir PET検査では、陽性と考えられ、中程度から高頻度での老人斑の存在が示される。
【0217】
併用投与
抗体は、必須ではないが、任意により、問題の疾患またはその症状の1つ以上を予防または治療するために現在使用されている1つ以上の剤とともに処方される。このような他の剤の有効量は、製剤中に存在する抗体の量、疾患または治療の種類及び前述の他の因子に依存する。これらは、概して、本明細書に記載の同一用量で投与経路にて、または、本明細書に記載の約1~99%の投与量、または実験的に/臨床的に適切であると判断されている任意の投与量及び任意の経路で使用される。当業者により、本発明の抗体は、前述の化合物のいずれかと同時に併用投与されてもよいか、または前述の化合物のいずれかの投与前若しくは投与後に投与されてもよいと理解されるであろう。
【0218】
本発明の抗体によるアミロイドーシス症の治療では、神経系薬剤が同時投与されてもよい。このような神経薬は、これに限定されないが、次のものから選択されるターゲットに特異的に結合する抗体または他の結合分子(これらに限定されないが、小分子、ペプチド、アプタマーまたは他のタンパク質バインダーなど)からなる群から選択されてもよい:ベータセクレターゼ、タウ、プレセニリン、アミロイド前駆体タンパク質またはその部分、アミロイドベータペプチドまたはオリゴマー、またはそのフィブリル、死レセプター6(DR6)、糖化最終産物(RAGE)レセプター、パーキン及びハンチンチン、コリンエステラーゼ阻害剤(すなわち、ガランタミン、ドネペジル、リバスティグミン及びタクリン)NMDAレセプターアンタゴニスト(すなわち、メマンチン);モノアミン枯渇薬(すなわち、テトラベナンジン);メシル酸エルゴロイド;抗コリン性抗パーキンソン病剤(すなわち、プロシクリジン、ジフェンヒドラミン、トリヘキシルフェニジル、ベンズトロピン、ビペリデン及びトリヘキシルフェニジル);ドーパミン作動性抗パーキンソン剤(すなわち、エンタカポン、セレギリン、プラミペキソール、ブロモクリプチン、ロチゴチン、セレギリン、ロピニロール、ラサギリン、アポモルヒネ、カルビドパ、レボドパ、ペルゴリド、トルカポン及びアマンタジン)、テトラベナンジン;抗炎症剤;(これらに限定されないが、非ステロイド性抗炎症薬(すなわち、インドメタシン及び上記の他の化合物など);ホルモン(すなわち、エストロジエン、プロゲステロン及びロイプロリド);ビタミン(すなわち、葉酸塩及びニコチンアミド);ジメボリン;ホモタウリン(すなわち、3-アミノプロパンスルホン酸;3APS);セロトニンレセプター活性調節剤(すなわち、キサリプロデン);インターフェロン及びグルココルチコイドまたはコルチコステロイド。いくつかの実施形態では、クレネズマブ以外の1つ以上の抗Aβ抗体が同時投与される。このような抗Aβ抗体の非限定的例としては、solanezumab、bapineuzumab、aducanumab及びgantenerumabが挙げられる。用語「コルチコステロイド」としては、これに限定されないが、フルチカゾン(フルチカゾンプロピオネート(FP)など)、ベクロメタゾン、ブデソニド、ciclesonide、モメタゾン、フルニソリド、ベータメタソン及びトリアムシノロンが挙げられる。「吸入性コルチコステロイド」とは、吸入による送達に好適なコルチコステロイドを意味する。代表的な吸入性コルチコステロイドは、フルチカゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ブデソニド、モメタゾンフランカルボン酸エステル、ciclesonide、フルニソリド及びトリアムシノロンアセトニドである。
【0219】
本発明の抗体を用いた眼疾患または眼障害であるアミロイドーシス症の治療時に、神経薬は以下から選択してもよい:抗血管新生剤(すなわち、ベバシズマブ、ラニビズマブ、及びペガプタニブ)、眼用緑内障剤(すなわち、カルバコール、エピネフリン、臭化デメカリウム、アプラクロニジン、ブリモニジン、ブリンゾラミド、レボブノロール、チモロール、ベタキソロール、ドルゾラミド、ビマトプロスト、カルテオロール、メチプラノロール、ジピベフリン、トラボプロスト、及び、ラタノプロスト)、炭酸脱水酵素阻害薬(すなわち、メタゾラミド、及びアセタゾラミド)、眼科用抗ヒスタミン剤(すなわち、ナファゾリン、フェニレフリン、及びテトラヒドロゾリン)、点眼潤滑剤、眼科用ステロイド(すなわち、フルオロメトロン、プレドニゾロン、ロテプレドノール、デキサメタゾン、ジフルプレドナート、リメキソロン、フルオシノロン、メドリゾン、及びトリアムシノロン)、点眼麻酔薬(すなわち、リドカイン、プロパラカイン、及びテトラカイン)、眼科用抗感染剤(すなわち、レボフロキサシン、ガチフロキサシン、シプロフロキサシン、モキシフロキサシン、クロラムフェニコール、バシトラシン/ポリミキシンb、スルファセタミド、トブラマイシン、アジスロマイシン、ベシフロキサシン、ノルフロキサシン、スルフィソクサゾール、ゲンタマイシン、イドクスウリジン、エリスロマイシン、ナタマイシン、グラミシジン、ネオマイシン、オフロキサシン、トリフルリジン、ガンシクロビル、ビダラビン)、眼科用抗炎症剤(すなわち、ネパフェナク、ケトロラク、フルルビプロフェン、スプロフェン、シクロスポリン、トリアムシノロン、ジクロフェナク、及びブロムフェナク)、及び眼科用抗ヒスタミン剤、またはうっ血除去薬(すなわち、ケトチフェン、オロパタジン、エピナスチン、ナファゾリン、クロモリン、テトラヒドロゾリン、ペミロラスト、ベポタスチン、ナファゾリン、フェニレフリン、ネドクロミル、ロドキサミド、フェニレフリン、エメダスチン、及びアゼラスチン)。上記製剤または治療方法のいずれかは、抗Aβ抗体の代りに若しくは抗Aβ抗体に加えて、本発明の免疫コンジュゲートを用いて、行ってもよいことが理解される。
【0220】
製造物品
本発明の別の態様では、上記の治療、予防及び/または診断に有用な材料を含有する製造物品が提供される。製造物品は、容器、その容器上または容器に関連したラベルまたは添付文書を含む。好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル瓶、注射器、IV溶液バッグなどが挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどさまざまな材料で形成されていてもよい。容器は、それ自体によって、若しくは状態の治療、防止及び/または診断に有効な別の組成物と組み合わせて組成物を保持し、また、無菌アクセスポートを有してもよい(例えば、容器は、皮下注射針によって突き刺すことが可能なストッパーを有する静脈内溶液袋またはバイアルであってもよい)。該組成物中の少なくとも1つの活性剤は、本発明の抗体である。ラベルまたは添付文書には、該組成物が最適な状態の治療に使用されていることを示す。さらに、製造物品は、(a)その中に組成物が含有されている第1の容器であって、該組成物が本発明の抗体を含む容器と、(b)その中に組成物を含有する第2の容器であって、該組成物が更なる細胞障害性または別の治療薬を含む容器を備えてもよい。本発明の本実施形態での製造物品は、組成物を使用して、特定の状態を治療することができることを示す添付文書を更に備えてもよい。代替的に、または追加の方法としては、製造物品は、製薬上許容できる緩衝液(注射用静菌性水(BWFI)、リン酸塩緩衝生理食塩水、リンガー溶液及びデキストロース溶液など)の入った第2の(または第3の)容器を更に備えてもよい。商業的観点または使用者の観点から望ましい他の材料(他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針及び注射器)を更に備えてもよい。
【0221】
上記製造物品はいずれも、抗Aβ抗体の代わりにまたは抗Aβ抗体に加えて、本発明の免疫コンジュゲートを含むこともできると理解されている。
【0222】
代表的実施形態
本明細書には、図示するために代表的実施形態を提供する。
1.初期または軽度から中程度のアルツハイマー病(AD)と診断された患者において機能能力または認知能力の低下を減少させる方法であり、初期または軽度から中程度AD罹患者へ、患者において機能能力または認知能力の低下を緩徐にするのに有効な量で、アミロイドβ(1~42)(配列番号1)の残基13及び24内で結合するヒト化モノクローナル抗-アミロイドベータ(Aβ)抗体を投与することを含む。
2.実施形態1の方法であり、抗体は、アミロイドβのオリゴマー形態及び単量体形態を結合することができる。
3.請求項1の方法であり、抗体はIgG4抗体である。
4.実施形態2または3の方法であり、抗体は、6つの超可変領域(HVR)を含み、
(i)HVR-H1は配列番号2であり;
(ii)HVR-H2は配列番号3であり;
(iii)HVR-H3は配列番号4であり;
(iv)HVR-L1は配列番号6であり;
(v)HVR-L2は配列番号7であり;
(vi)HVR-L3は配列番号8である。
5.実施形態4の方法であり、抗体は、配列番号5のアミノ酸配列を有する重鎖、及び配列番号9のアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。
6.実施形態5の方法であり、抗体はクレネズマブ(crenezumab)である。
7.実施形態のいずれか1つの方法であり、認知能力の低下は、12項目アルツハイマー病評価スケール-認知(ADAS-Cog12)試験、13項目アルツハイマー病評価スケール-認知(ADAS-Cog13)試験、または14項目アルツハイマー病評価スケール-認知(ADAS-Cog12)試験を用いて、抗体の投与前及び投与後の患者のスコアを判定することによって評価され、任意により、認知低下の減少は、プラセボに対して、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、または少なくとも45%である。
8.実施形態7の方法であり、患者はApoE4陽性である。
9.実施形態7の方法であり、患者は軽度ADに罹患している。
10.実施形態7の方法であり、患者は初期ADに罹患している。
11.実施形態1~8のいずれか1つの方法であり、患者は、治療開始前、少なくとも20、20~30、20~26、24~30、21~26、22~26、22~28、23~26、24~26または25~26のMMSEスコアを有する。
12.実施形態11の方法であり、患者は、22~26のMMSEを有する。
13.実施形態のいずれか1つの方法であり、抗体は、10mg/kg/患者体重~100mg/kg/患者体重の投与量で投与される。
14.実施形態13の方法であり、抗体は、少なくとも15mg/kgの投与量で投与される。
15.実施形態14の方法であり、抗体は、15mg/kg、30mg/kg、45mg/kg、50mg/kg、または60mg/kgの投与量で投与される。
16.実施形態13または14の方法であり、抗体は、静脈注射を介して投与される。
17.実施形態13~16のいずれか1つの方法であり、抗体は、2週間ごと、4週間ごと、1ヶ月ごと、2ヶ月ごと、または6ヶ月ごとに投与される。
18.有害事象のリスクが増大することなく、初期または軽度から中程度ADの治療方法であり、初期または軽度から中程度ADと診断された患者に、治療中に発生した有害事象のリスクが増大することなくADの治療に有効であるアミロイドβ(1~42)(配列番号1)の残基13及び24内で結合するヒト化モノクローナル抗-Aβ抗体の量を投与することを含み、有害事象は、(i)アミロイド-関連画像異常-浮腫(ARIA-E)及び(ii)アミロイド-関連画像異常-出血(ARIA-H)から選択される。
19.実施形態18の方法であり、抗体は、アミロイドβのオリゴマー形態及び単量体形態を結合することができる。
20.実施形態18の方法であり、抗体はIgG4抗体である。
21.実施形態19の方法であり、抗体は、6つの超可変領域(HVR)を含み、
(i)HVR-H1は配列番号2であり;
(ii)HVR-H2は配列番号3であり;
(iii)HVR-H3は配列番号4であり;
(iv)HVR-L1は配列番号6であり;
(v)HVR-L2は配列番号7であり;
(vi)HVR-L3は配列番号8である。
22.実施形態21の方法であり、抗体は、配列番号5のアミノ酸配列を有する重鎖、及び配列番号9のアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。
23.実施形態22の方法であり、抗体はクレネズマブ(crenezumab)である。
24.実施形態18~23のいずれか1つの方法であり、患者はApoE4陽性である。
25.実施形態18~23のいずれか1つの方法であり、有害事象は、ARIA-Eである。
26.実施形態25の方法であり、治療中に発生したARIA-Eが検出された場合、抗体の投与は中止され、任意によりARIA-Eの治療剤が投与される。
27.実施形態26の方法であり、ARIA-Eから回復後、抗体の投与の再開を更に含むことが決定し、抗体は、投与が中止される前よりも少ない投与量で投与される。
28.実施形態18の方法であり、抗体による治療中、1つ以上の新規ARIA-Eが患者中に検出されると、これ以上抗体を投与することなく、任意によりコルチコステロイドが患者に投与される。
29.実施形態28の方法であり、患者はApoE4陽性である。
30.初期または軽度から中程度のアルツハイマー病(AD)と診断された患者において、機能能力または認知能力の低下を減少させる方法であり、初期または軽度から中程度ADに罹患しているApoE4陽性患者へ、患者において機能能力または認知能力の低下を緩徐にするのに有効な量で、アミロイドβ(1~42)(配列番号1)の残基13及び24内で結合するヒト化モノクローナル抗-アミロイドベータ(Aβ)抗体を投与することを含む。
31.実施形態30の方法であり、抗体は、アミロイドβのオリゴマー形態及び単量体形態を結合することができる。
32.実施形態30の方法であり、抗体はIgG4抗体である。
33.実施形態31または32の方法であり、抗体は、6つの超可変領域(HVR)を含み、
(i)HVR-H1は配列番号2であり;
(ii)HVR-H2は配列番号3であり;
(iii)HVR-H3は配列番号4であり;
(iv)HVR-L1は配列番号6であり;
(v)HVR-L2は配列番号7であり;
(vi)HVR-L3は配列番号8である。
34.実施形態33の方法であり、抗体は、配列番号5のアミノ酸配列を有する重鎖、及び配列番号9のアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。
35.実施形態34の方法であり、抗体はクレネズマブ(crenezumab)である。
36.実施形態30~35のいずれか1つの方法であり、認知能力の低下は、ADAS-Cog12試験、ADAS-Cog13試験、またはADAS-Cog14試験を用いて、抗体の投与前及び投与後の患者のスコアを判定することによって評価され、任意により、ADAS-Cogによって測定されるとき、認知低下の減少は、プラセボに対して、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、または少なくとも45%である。
37.実施形態36の方法であり、患者は軽度ADを有する。
38.実施形態36の方法であり、患者は初期ADを有する。
39.実施形態30~37のいずれか1つの方法であり、患者は、治療開始前、少なくとも20、20~30、20~26、24~30、21~26、22~26、22~28、23~26、24~26または25~26のMMSEスコアを有する。
40.実施形態39の方法であり、患者は、22~26のMMSEスコアを有する。
41.実施形態30~39のいずれか1つの方法であり、抗体は、10mg/kg/患者体重~100mg/kg/患者体重の投与量で投与される。
42.実施形態41の方法であり、抗体は、少なくとも15mg/kgの投与量で投与される。
43.実施形態42の方法であり、抗体は、15mg/kg、30mg/kg、45mg/kg、50mg/kg、または60mg/kgの投与量で投与される。
44.実施形態41または42の方法であり、抗体は、静脈注射を介して投与される。
45.実施形態41~44のいずれか1つの方法であり、抗体は、2週間ごと、4週間ごと、1ヶ月ごと、2ヶ月ごと、または6ヶ月ごとに投与される。
46.有害事象のリスクの増大なく、初期または軽度から中程度ADの治療方法であり、初期または軽度から中程度ADと診断されたApoE4陽性患者に、治療中に発生した有害事象のリスクが増大することなくADの治療に有効であるアミロイドβ(1~42)(配列番号1)の残基13及び24内で結合するヒト化モノクローナル抗-Aβ抗体の量を投与することを含み、有害事象は、(i)アミロイド-関連画像異常-浮腫(ARIA-E)及び(ii)アミロイド-関連画像異常-出血(ARIA-H)から選択される。
47.実施形態46の方法であり、抗体は、アミロイドβのオリゴマー形態及び単量体形態を結合することができる。
48.実施形態46の方法であり、抗体はIgG4抗体である。
49.実施形態47の方法であり、抗体は、6つの超可変領域(HVR)を含み、
(i)HVR-H1は配列番号2であり;
(ii)HVR-H2は配列番号3であり;
(iii)HVR-H3は配列番号4であり;
(iv)HVR-L1は配列番号6であり;
(v)HVR-L2は配列番号7であり;
(vi)HVR-L3は配列番号8である。
50.実施形態49の方法であり、抗体は、配列番号5のアミノ酸配列を有する重鎖、及び配列番号9のアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。
51.実施形態50の方法であり、抗体はクレネズマブ(crenezumab)である。
52.実施形態46~51のいずれか1つの方法であり、有害事象はARIA-Eである。
53.実施形態52の方法であり、治療中に発生したARIA-Eが検出された場合、抗体の投与は中止され、任意によりARIA-Eの治療剤が投与される。
54.実施形態53の方法であり、ARIA-Eから回復後、抗体の投与の再開を更に含むことが決定し、抗体は、任意により、投与が中止される前よりも少ない投与量での投与が再開されることを含む。
55.実施形態46の方法であり、抗体による治療中、1つ以上の新規ARIA-Eが患者中に検出されると、これ以上抗体を投与することなく、任意によりコルチコステロイドが患者に投与される。
56.前述の実施形態のいずれか1つの方法であり、患者は、ターゲットに特異的に結合する治療薬;コリンエステラーゼ阻害剤;NMDAレセプターアンタゴニスト;モノアミン枯渇薬;メシル酸エルゴロイド;抗コリン性抗パーキンソン病剤;ドーパミン作動性抗パーキンソン剤;テトラベナンジン;抗炎症剤;ホルモン;ビタミン;ディメボリン(dimebolin);ホモタウリン;セロトニンレセプター活性調節剤;インターフェロン及びグルココルチコイド;クレネズマブ(crenezumab)以外の抗-Aβ抗体;抗菌剤;抗ウイルス剤からなる群から選択される1つ以上の剤により同時に治療される。
57.実施形態56の方法であり、剤はコリンエステラーゼ阻害剤である。
58.実施形態57の方法であり、コリンエステラーゼ阻害剤は、ガランタミン、ドネペジル、リバスティグミン及びタクリンからなる群から選択される。
59.実施形態56の方法であり、剤はNMDAレセプターアンタゴニストである。
60.実施形態59の方法であり、NMDAレセプターアンタゴニストは、メマンチンまたはその塩である。
61.実施形態56の方法であり、剤は、ターゲットに特異的に結合する治療薬であり、ターゲットは、ベータセクレターゼ、タウ、プレセニリン、アミロイド前駆体タンパク質またはその部分、アミロイドベータペプチドまたはオリゴマー、またはそのフィブリル、死レセプター6(DR6)、糖化最終産物(RAGE)レセプター、パーキン及びハンチンチンからなる群から選択される。
62.実施形態56の方法であり、剤はモノアミン枯渇剤であり、好ましくはテトラベナンジンである。
63.実施形態56の方法であり、剤は、プロシクリジン、ジフェンヒドラミン、トリヘキシルフェニジル、ベンズトロピン、ビペリデン及びトリヘキシルフェニジルからなる群から選択される抗コリン性抗パーキンソン剤である。
64.実施形態56の方法であり、剤は、ドーパミン作動性抗パーキンソン剤である:エンタカポン、セレギリン、プラミペキソール、ブロモクリプチン、ロチゴチン、セレギリン、ロピニロール、ラサギリン、アポモルヒネ、カルビドパ、レボドパ、ペルゴリド、トルカポン及びアマンタジンなる群から選択される。
65.実施形態56の方法であり、剤は、非ステロイド性抗炎症薬及びインドメタシンからなる群から選択される抗炎症剤である。
66.実施形態56の方法であり、剤は、エストロゲン、プロゲステロン及びロイプロリドからなる群から選択されるホルモンである。
67.実施形態56の方法であり、剤は、葉酸塩及びニコチンアミドからなる群から選択されるビタミンである。
68.実施形態56の方法であり、剤は、ホモタウリンであり、これらは、3-アミノプロパンスルホン酸または3APSである。
69.実施形態56の方法であり、剤はキサリプロデンである。
70.初期または軽度から中程度のアルツハイマー病(AD)と診断された患者において臨床的低下を緩徐にする方法であり、初期または軽度から中程度AD罹患者へ、患者において低下を緩徐にするのに有効な量で、アミロイドβ(1~42)(配列番号1)の残基13及び24内で結合するヒト化モノクローナル抗-アミロイドベータ(Aβ)抗体を投与することを含む。
71.実施形態70の方法であり、抗体は、アミロイドβのオリゴマー形態及び単量体形態を結合することができる。
72.実施形態70の方法であり、抗体はIgG4抗体である。
73.実施形態71または72の方法であり、抗体は、6つの超可変領域(HVR)を含み、
(i)HVR-H1は配列番号2であり;
(ii)HVR-H2は配列番号3であり;
(iii)HVR-H3は配列番号4であり;
(iv)HVR-L1は配列番号6であり;
(v)HVR-L2は配列番号7であり;
(vi)HVR-L3は配列番号8である。
74.実施形態73の方法であり、抗体は、配列番号5のアミノ酸配列を有する重鎖、及び配列番号9のアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。
75.実施形態74の方法であり、抗体はクレネズマブ(crenezumab)である。
76.実施形態70~75のいずれか1つの方法であり、12項目アルツハイマー病評価スケール-認知(ADAS-Cog12)試験、13項目アルツハイマー病評価スケール-認知(ADAS-Cog13)試験、または14項目アルツハイマー病評価スケール-認知(ADAS-Cog12)試験を用いて、抗体の投与前及び投与後の患者のスコアを判定することによって評価される認知能力の低下を更に含み、任意により、ADAS-Cogによって測定されるとき、認知低下の減少は、プラセボに対して、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、または少なくとも45%である。
77.実施形態76の方法であり、患者はApoE4陽性である。
78.実施形態76の方法であり、患者は軽度ADに罹患している。
79.実施形態76の方法であり、患者は初期ADに罹患している。
80.実施形態70~78のいずれか1つの方法であり、患者は、治療開始前、少なくとも20、20~30、20~26、24~30、21~26、22~26、22~28、23~26、24~26または25~26のMMSEスコアを有する。
81.実施形態80の方法であり、患者は、22~26のMMSEスコアを有する。
82.実施形態70~80のいずれか1つの方法であり、抗体は、10mg/kg/患者体重~100mg/kg/患者体重の投与量で投与される。
83.実施形態82の方法であり、抗体は、少なくとも15mg/kgの投与量で投与される。
84.実施形態83の方法であり、抗体は、15mg/kg、30mg/kg、45mg/kg、50mg/kg、または60mg/kgの投与量で投与される。
85.前実施形態82または83の方法であり、記抗体は、静脈注射を介して投与される。
86.実施形態82~85のいずれか1つの方法であり、抗体は、2週間ごと、4週間ごと、1ヶ月ごと、2ヶ月ごと、または6ヶ月ごとに投与される。
87.対象において初期または軽度ADの治療方法であり、初期または軽度AD罹患者へ、患者においてADの治療に有効な量で、アミロイドβ(1~42)(配列番号1)の残基13及び24内で結合するヒト化モノクローナル抗-アミロイドベータ(Aβ)抗体を投与することを含む。
88.実施形態87の方法であり、抗体は、アミロイドβのオリゴマー形態及び単量体形態を結合することができる。
89.実施形態87の方法であり、抗体はIgG4抗体である。
90.実施形態88または89の方法であり、抗体は、6つの超可変領域(HVR)を含み、
(i)HVR-H1は配列番号2であり;
(ii)HVR-H2は配列番号3であり;
(iii)HVR-H3は配列番号4であり;
(iv)HVR-L1は配列番号6であり;
(v)HVR-L2は配列番号7であり;
(vi)HVR-L3は配列番号8である。
91.実施形態90の方法であり、抗体は、配列番号5のアミノ酸配列を有する重鎖、及び配列番号9のアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。
92.実施形態91の方法であり、抗体はクレネズマブ(crenezumab)である。
93.実施形態87~92のいずれか1つの方法であり、量は12項目アルツハイマー病評価スケール-認知(ADAS-Cog12)試験、13項目アルツハイマー病評価スケール-認知(ADAS-Cog13)試験、または14項目アルツハイマー病評価スケール-認知(ADAS-Cog12)試験を用いて、抗体の投与前及び投与後の患者のスコアを判定することによって評価される、認知能力の低下の減少に有効であって、任意により、ADAS-Cogによって測定されるとき、認知低下の減少は、プラセボに対して、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、または少なくとも45%である。
94.実施形態93の方法であり、患者はApoE4陽性である。
95.実施形態87~94のいずれか1つの方法であり、患者は、治療開始前、少なくとも20、20~30、20~26、24~30、21~26、22~26、22~28、23~26、24~26または25~26のMMSEスコアを有する。
96.実施形態95の方法であり、患者は、22~26のMMSEスコアを有する。
97.実施形態87~95のいずれか1つの方法であり、抗体は、10mg/kg/患者体重~100mg/kg/患者体重の投与量で投与される。
98.実施形態97の方法であり、抗体は、少なくとも15mg/kgの投与量で投与される。
99.実施形態98の方法であり、抗体は、15mg/kg、30mg/kg、45mg/kg、50mg/kg、または60mg/kgの投与量で投与される。
100.実施形態97または98の方法であり、抗体は、静脈注射を介して投与される。
101.実施形態97~100のいずれか1つの方法であり、抗体は、2週間ごと、4週間ごと、1ヶ月ごと、2ヶ月ごと、または6ヶ月ごとに投与される。
102.実施形態70~101のいずれか1つの方法であり、患者は、ターゲットに特異的に結合する治療薬;コリンエステラーゼ阻害剤;NMDAレセプターアンタゴニスト;モノアミン枯渇薬;メシル酸エルゴロイド;抗コリン性抗パーキンソン病剤;ドーパミン作動性抗パーキンソン剤;テトラベナンジン;抗炎症剤;ホルモン;ビタミン;ジメボリン;ホモタウリン;セロトニンレセプター活性調節剤;インターフェロン及びグルココルチコイド;抗体Aβ抗体;抗生物質;抗炎症剤からなる群から選択される1つ以上の剤により同時に治療される。
103.実施形態102の方法であり、剤はコリンエステラーゼ阻害剤である。
104.実施形態103の方法であり、コリンエステラーゼ阻害剤は、ガランタミン、ドネペジル、リバスティグミン及びタクリンからなる群から選択される。
105.実施形態102の方法であり、剤はNMDAレセプターアンタゴニストである。
106.実施形態105の方法であり、NMDAレセプターアンタゴニストは、メマンチンまたはその塩である。
107.実施形態102の方法であり、剤は、ターゲットに特異的に結合する治療薬であり、ターゲットは、ベータセクレターゼ、タウ、プレセニリン、アミロイド前駆体タンパク質またはその部分、アミロイドベータペプチドまたはオリゴマー、またはそのフィブリル、死レセプター6(DR6)、糖化最終産物(RAGE)レセプター、パーキン及びハンチンチンからなる群から選択される。
108.実施形態102の方法であり、剤はモノアミン枯渇剤であり、好ましくはテトラベナンジンである。
109.実施形態102の方法であり、剤は、プロシクリジン、ジフェンヒドラミン、トリヘキシルフェニジル、ベンズトロピン、ビペリデン及びトリヘキシルフェニジルからなる群から選択される抗コリン性抗パーキンソン剤である。
110.実施形態102の方法であり、剤はエンタカポン、セレギリン、プラミペキソール、ブロモクリプチン、ロチゴチン、セレギリン、ロピニロール、ラサギリン、アポモルヒネ、カルビドパ、レボドパ、ペルゴリド、トルカポン及びアマンタジンからなる群から選択される、ドーパミン作動性抗パーキンソン剤である。
111.実施形態102の方法であり、剤は、非ステロイド性抗炎症薬及びインドメタシンからなる群から選択される抗炎症剤である。
112.実施形態102の方法であり、剤は、エストロゲン、プロゲステロン及びロイプロリドからなる群から選択されるホルモンである。
113.実施形態102の方法であり、剤は、葉酸塩及びニコチンアミドからなる群から選択されるビタミンである。
114.実施形態102の方法であり、剤は、ホモタウリンであり、これらは、3-アミノプロパンスルホン酸または3APSである。
115.実施形態102の方法であり、剤はキサリプロデンである。
116.実施形態102の方法であり、剤は、クレネズマブ(crenezumab)以外の抗-Aβ抗体である。
【実施例0223】
実施例1-軽度から中程度のアルツハイマー病の治療におけるヒト化抗-Aβモノクローナル抗体クレネズマブ(crenezumab)の臨床試験
【0224】
試験設計及び目的
プラセボ対照を用いて無作為化二重盲検第II相試験を実施し、軽度から中程度のアルツハイマー病(AD)と診断された患者におけるヒト化モノクローン性抗-アミロイドβ(「Aβ」)抗体クレネズマブの影響を評価した。本試験の対象の患者は、スクリーニング時に、年齢50歳~80歳であり、NINCDS-ADRDA基準によってADの可能性があると診断され、ミニメンタルステート検査(MMSE)スコア18~26ポイントであり、Geriatric Depression Scale(GDS-15)スコア6未満であり、6年の教育期間(精神遅滞または他の広播性発達障害に一致する良好な経歴)が完了しているものとした。更に、同時にAD治療(アセチルコリンエステラーゼ阻害剤またはメマンチンなど)、を受けた患者については、患者は、無作為化前に少なくとも3ヶ月間の薬物治療を受け、少なくとも2ヶ月間の安定投与がなされていることを確認した。登録患者の少なくとも50%はApoE4陽性であった(少なくとも1つのApoE4対立遺伝子を担持する)。例えば、非-抗コリン薬抗うつ薬(複数可)、非定型抗精神病薬(複数可)、非-ベンソジアゼピン抗不安薬(複数可)、催眠薬(複数可)、中枢作用性アクチン抗コリン薬抗ヒスタミン薬(複数可)及び中枢作用性抗コリン性抗けいれん薬(複数可)など、1つ以上の排除外処方またOTCを同時に受けた患者は、無作為化前の少なくとも1ヶ月間、投与量が一定であり、かつ、試験期間中、同量を維持していた場合、登録可能とした。
【0225】
次の場合、臨床試験から除外した:研究者または治験依頼者の意見において、患者が試験評価を完全に行うことのできる能力と干渉するか、または施設または病院でのケアに相当するものを必要とする重症または不安定な医学的状態を患っている場合、脳に影響を及ぼす可能性もある臨床的に明らかな血管疾患の病歴を有するかまたは存在している場合;重症、臨床上有意な中枢神経系外傷(持続性神経学的欠損または構造的脳損傷など)の病歴がある場合;スクリーニング前に4週間入院していた場合;これまでに、クレネズマブまたはAβを標的にする他の剤で治療されたことがある場合、または生物学的療法期間において、治療薬の5半減期より長い期間、またはスクリーニング前の3ヶ月間、任意の生物学的治療(常用ワクチン接種以外)による治療を受けた場合。
【0226】
本試験は、次の3つの期間を有した:68週間持続する治療期間(本明細書においては、週1、週2(週69以下とする)などと称される)である、35日間持続するスクリーニング期間、及び更に16週持続する安全性フォローアップ期間(本明細書においては、週70などと称され、85週以下とする)。治療薬(またはプラセボ)は、静脈内注射を介して投与される。
【0227】
患者は、臨床試験に登録され、2つ(治療群(すなわちクレネズマブ)またはプラセボ群)のうちの1つ群に、2:1(治療群:プラセボ群)無作為化で無作為化されている。MMSEスコア18~26の249名の患者(軽度から中程度ADとして分類)は臨床試験に登録し、そのうちの165名が治療を受け、84名はプラセボを受けた。治療群の121名の患者及びプラセボ群の61名の患者のMMSEスコアは、20~26(軽度ADに分類)であった。治療群のうち117名(または70.9%)はApoE4陽性であった。プラセボ群では、60名(または71.4%)はApoE4陽性であった。表4A~表4Bを参照されたい(患者の割付けに関する表)。
【0228】
43日間の安全導入評価を実施して、静脈内投与量15mg/kg対静脈内投与量10mg/kgの安全性及び忍容性を測定し、投与量15mg/kgを選択した。両群の臨床試験患者は、15mg/kgを受けた治療群の患者の安全導入結果に基づいて、盲検を受け、4週間ごとに68週間、静脈内注射を受け、プラセボ群患者は、プラセボの静脈内注射を受けた。図5(プロトコルスケジュール)を参照されたい。
【0229】
72週間後、疾患の進行阻害を調べるために、次に関して患者を評価した:(a)25週、49週及び73週での臨床試験開始時のベースラインスコアからのADAS-Cog12スコア及びCDR-SOスコアの変化、(b)プラセボと比較したときのクレネズマブの安全性及び忍容性。任意の測定された変化の統計的有意性を推定するために、共分散分析、信頼区間及びベースラインからの変化中央値の差の最小二乗推定値を計算した。
【0230】
クレネズマブの安全性及び忍容性は、全臨床試験を通じて、特に、例えば、症候性または無症候性ARIA-E(大脳の血管原性浮腫など)、症候性または無症候性ARIA-H(大脳微小出血など)及び大脳の多量出血など、治療中に発生した有害事象の頻度及び重症性を測定することによって評価した。スクリーニング期間中(投与の開始前)または治療期間中(プラセボまたはクレネズマブの投与開始後)、大脳の血管原性浮腫の存在及び/または数は、FLAIR MRI(fluid attenuated inversion recovery magnetic resonance imaging)によって評価した。Sperlingら、2011,Alzheimer’s&Dementia 7:367-385を参照されたい。スクリーニング期間中(投与の開始前)または治療期間中(プラセボまたはクレネズマブの投与開始後)、大脳の微小出血(複数可)の存在及び/または数は、追加のT2*-強調GRE MRI(inhomogeneous dephasing gradient recalled echo magnetic resonance imaging)により、横磁化緩和時間によって評価した。
【0231】
結果
73週でのADAS-Cog12測定から、クレネズマブを受けた患者は、プラセボを受けた患者よりもより少ない疾患の進行を示すことが実証されている。図6A図6Bの表及び図7図8に示すチャートにまとめているとおり、ADAS-Cog12スコアの変化は、軽度AD患者については、プラセボ群に比べて、治療群ではより少なく、約24%(p=0.12)であり、軽度から中程度AD患者については、プラセボ群に比べて、治療群ではより少ない約16%(p=0.19)であった。この影響は、治療群対プラセボ群のApoE4陽性患者においても認められた:ADAS-Cog12スコアでは、クレネズマブを受けた患者において、プラセボを受けた患者と比較して上昇が少なく、24.4%(p=0.08,多数のため調整なし)(ADAS-Cog12スコアが上がると、状態の悪化を示す)であった。図6A及び図9を参照されたい。ApoE4陽性患者としては、軽度AD及び中程度ADの両者を有する患者が挙げられる。軽度患者及びApoE4陽性患者の両者の結果を貯留したとき、この影響は、プラセボ群と比較して治療群において、さらに顕著であり、32.4%の低減(p=0.05、多数のため調整せず)が認められた。図6A及び図10を参照されたい。この治療効果は、登録時のMMSEスコアが高いほど、増大した。図6Bに示すとおり、MMSEスコアが高いほど、治療群対プラセボ群におけるADAS-Cog12の低下率が大きくなり、MMSEが18~26である患者の約16%からMMSE25~26である患者の49%以下の減少であった。図11も参照されたい。MMSEスコア22から26を有する患者では、プラセボ群に比較して治療群でのADAS-Cog12の減少率は約35%であった。
【0232】
CDR-SOBの変化から、治療効果において類似の傾向が明らかになった。図12Aに示すとおり、MMSE22~26の患者については、治療群対プラセボ群では、CDR-SOBスコアの変化において、19%の減少が認められ、この効果は、MMSEスコア25~26の患者において更に顕著であった。減少率は約63%であった(図13も参照されたい)。図12Bは、MMSE22~26を有する患者に関して、Memory or the Judgment and Problem solving component scoresを調べたときに、低下率は、それぞれ、約42%及び約30%であったことを示している。
【0233】
本試験では、更に、15mg/kgで投与するとき、クレネズマブにより、ARIA型事象の発生が増加することはないことが実証された。本試験において、クレネズマブを受けた患者では、1つの無症候性ARIA-E事象が観察された。ARIA-H発生数は、治療群とプラセボ群との間でバランスが取れていた。
【0234】
これらのデータは、軽度から中程度AD患者、特に、軽度AD患者であり、かつ/またはApoE4陽性である患者において、投与量15mg/kgで投与したとき、治療による発生する事象(ARIA-EまたはARIA-H)の発症数を増大することなく、クレネズマブが疾患の進行を阻害することを示す。
実施例2-軽度から中程度のアルツハイマー病の治療におけるヒト化抗-Aβモノクローナル抗体クレネズマブの臨床試験及びアミロイド負荷への影響の評価
【0235】
試験設計及び目的
プラセボ対照を用いて無作為化二重盲検第II相試験を実施し、軽度から中程度のアルツハイマー病(AD)と診断された患者におけるヒト化モノクローン性抗-アミロイドβ(「Aβ」)抗体クレネズマブの影響を評価した。本試験対象の患者は、スクリーニング時、年齢50歳~80歳であり、NINCDS-ADRDA基準によってADの可能性があると診断され、ミニメンタルステート検査(MMSE)スコア18~26ポイントであり、Geriatric Depression Scale(GDS-15)スコア6未満であり、6年の教育期間(精神遅滞または他の広播性発達障害に一致する良好な経歴)が完了しているものとした。スクリーニング時、florbetapir-PET走査によって評価されたときに、florbetapirPET(「アミロイド陽性」)走査が陽性の患者は、ADと診断された患者に考えられる範囲において、脳アミロイド負荷の増大が示されており、これらの患者のみ登録した。更に、登録患者の少なくとも50%はApoE4陽性であった。
【0236】
患者は、臨床試験に登録され、2つ(治療群(すなわちクレネズマブ)またはプラセボ群)のうちの1つ群に、2:1(治療群:プラセボ群)無作為化で無作為化された。両群の臨床試験患者52名は、4週間ごとに73週間、静脈内注射の盲検を受けた。治療群では、患者は、15mg/kgの投与量でクレネズマブを受けた。患者は、次に従って階層化した:ApoE4状態(保因者対非保菌者)及びMMSEスコア。
【0237】
次の変化に関するデータを収集した:florbetapir-PETを用いて測定した時のADAS-Cog12アミロイド負荷及び脳脊髄液(CSF)中でのAβレベル。スクリーニング時、12ヶ月及び18ヶ月に来診時にflorbetapir10mCiを使用して、50分間の取り込み期間、及び30分の放出走査と共に、FlorbetapirPET走査を行った。6X5分フレーム(または、動的能力のないスキャナー上での1X15分フレーム)の画像は、鋳型を使用して、いくつかの対象領域(ROI)から平均シグナルを抽出した標準空間に正規化した。ベースラインT1-強調MRIスキャンを使用して、鋳型ROIの容積を改善した。分析は、標準領域として、小脳皮質または皮質下白質を使用して行った。18ヶ月目に投与する前に、スクリーニング時にCSFを収集した。CSF Aβ、タウ及びp-タウ(181)を測定した。試験エンドポイントでの治療差の統計解析としては、繰返し手段のANCOVAまたは混合モデルを使用した。
【0238】
患者特性、有害事象及びPET走査の時期、MRIスキャン、及びCSFサンプリングは、図14A図14Bに示す。
【0239】
結果。治療期間終了時のADAS-Cog12測定から、クレネズマブを受けた患者は、プラセボを受けた患者よりもより少ない疾患の進行を示すことが実証されている。初期MMSEが20~26である患者において、認知低下の54.3%の減少が観察された(p=0.2)。ここで観察された疾病進行の緩徐と一致して、クレネズマブ治療患者対プラセボ患者において、アミロイド堆積物の蓄積の減少(皮質下白質標準物質領域を有する)も、PET分析により観察された。図15Aも参照されたい。更に、治療群において、クレネズマブによるターゲットと結合と一致して、脳脊髄液でのAβ濃度の増大が検出された。図15Bも参照されたい。脳脊髄液のAβ濃度では、2週間ごとの300mgのクレネズマブの皮下投与による治療患者対プラセボ患者において、同様の増大が検出された。
【0240】
これらのデータは、クレネズマブがそのターゲットであるアミロイドβに関与し、軽度から中程度AD患者、特に、軽度AD患者(典型的にはADと診断された患者にみられる脳アミロイド負荷を有する患者など)において、投与量15mg/kgで投与したとき、疾患の進行を阻害することを示す。
【0241】
前述の発明では、明瞭に理解されることを目的として、例証及び実施例によって少し詳細に記述したが、説明及び実施例は、本明細書に記載の任意の発明の範囲を制限しているものと解釈すべきではない。本明細書に引用するすべての特許出願及び公開公報、並びに科学文献は、あらゆる目的のために援用によってその全体が明示的に組み込まれる。
【0242】
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14A
図14B
図15A
図15B
【配列表】
2024037893000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-01-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載された一発明。
【外国語明細書】