(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037915
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】低減された投与容量を必要とする患者におけるベンダムスチン応答性症状の治療方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4184 20060101AFI20240312BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240312BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240312BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240312BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20240312BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240312BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20240312BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
A61K31/4184
A61K9/08
A61K47/10
A61K47/02
A61P9/04
A61P13/12
A61K47/20
A61P35/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023212014
(22)【出願日】2023-12-15
(62)【分割の表示】P 2021186829の分割
【原出願日】2013-03-15
(31)【優先権主張番号】61/613,173
(32)【優先日】2012-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/669,889
(32)【優先日】2012-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/678,715
(32)【優先日】2012-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】509085984
【氏名又は名称】イーグル・ファーマシューティカルズ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スンダラム,スリカンス
(72)【発明者】
【氏名】タリフ,スコット,エル.
(57)【要約】 (修正有)
【課題】流体及び/又はナトリウム摂取制限を有する患者におけるベンダムスチン応答性症状の治療方法を提供する。
【解決手段】本方法は、このような制限を有し、ベンダムスチンを必要とする患者を識別する工程、その後ベンダムスチン含有組成物を約120ml以下の容量で、約15分以下の時間にわたってその患者に静脈内投与する工程を含む。現在公知である治療と比較してより少ない容量及び低減されたナトリウム負荷はうっ血性心不全又は腎疾患などの疾患を有する患者において心臓及び/又は腎臓のストレスを最小限にする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ベンダムスチン治療を必要とし、制限された流体及び/又はナトリウム摂取を必要とする生理学的症状を有する被験体を識別する工程、
b)i)約0.05~約12.5mg/mlのベンダムスチン又はその薬学的に許容される塩、
ii)ポリエチレングリコール及びプロピレングリコールを含む可溶化剤であって、ポリエチレングリコールが約0.3~約45容量%の量存在し、プロピレングリコールが約0.03~約5容量%の量存在する上記可溶化剤、並びに、任意に
iii)非経口的に許容される希釈剤、
を含む約120ml以下の容量の液体組成物を、約30分以下の実質上連続的な時間にわたって上記被験体に非経口的に投与する工程
を含む、制限された流体及び/又はナトリウム摂取を必要とする被験体におけるベンダムスチン応答性症状を治療する方法。
【請求項2】
希釈剤が0.9%NaCl又は0.45%NaClを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
被験体がうっ血性心不全を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
被験体が腎機能障害を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
腎機能障害が腎不全又は腎臓抑制である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ベンダムスチン又はその薬学的に許容される塩の濃度が約0.1~約3.2mg/mlである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ベンダムスチン又はその薬学的に許容される塩の濃度が約0.5~約5.6mg/mlである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
可溶化剤の量が約0.5~約26.5容量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
可溶化剤の量が約2.0~約22.4容量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ポリエチレングリコールがPEG400である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ポリエチレングリコールのプロピレングリコールに対する重量比が約90:10である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
ポリエチレングリコールのプロピレングリコールに対する重量比が約85:15である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
投与容量が約100、50、30又は15mlである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
組成物がモノチオグリセロール及びNaOHを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
投与容量が約50ml+/-15%以下であり、組成物が約10分以下の時間にわたって投与される、請求項7に記載の方法。
【請求項16】
投与容量が約100ml+/-15%以下であり、組成物が約15分以下の時間にわたって投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項17】
非経口的に許容される希釈剤が0.9%NaCl(正常生理食塩水)である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
ベンダムスチン応答性症状が慢性リンパ性白血病である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
組成物が28日周期の1日目及び2日目に、約10分以下の時間にわたって、約50mlの容量で静脈内に投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
組成物が28日周期の1日目及び2日目に、約15分以下の時間にわたって、約100mlの容量で静脈内に投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
組成物が6回の周期まで投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
被験体に投与される組成物の容量が被験体への約25mg/m2~約100mg/m2の範囲の薬用量である、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
ベンダムスチン応答性症状が低悪性度B細胞非ホジキンリンパ腫である、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
組成物が21日周期の1日目及び2日目に、約10分以下の時間にわたって、約50mlの容量で静脈内に投与される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
組成物が21日周期の1日目及び2日目に、約15分以下の時間にわたって、約100mlの容量で静脈内に投与される、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
組成物が8回の周期まで投与される、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
被験体に投与される組成物の容量が被験体への約60mg/m2~約120mg/m2の範囲の薬用量である、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
a)ベンダムスチン治療を必要とし、制限された流体及び/又はナトリウム摂取を必要とする生理学的症状を有する被験体を識別する工程、
b)下記表の成分
【表1】
及び任意に非経口的に許容される希釈剤を含む、約120ml以下の容量の液体組成物を、約30分以下の実質上連続的な時間にわたって上記被験体に非経口的に投与する工程
を含む、制限された流体及び/又はナトリウム摂取を必要とする被験体におけるベンダムスチン応答性症状を治療する方法。
【請求項29】
a)ベンダムスチン治療を必要とし、制限された流体及び/又はナトリウム摂取を必要とする生理学的症状を有する被験体を識別する工程、
b)下記表の成分
【表2】
及び任意に非経口的に許容される希釈剤を含む、約120ml以下の容量の液体組成物を、約30分以下の実質上連続的な時間にわたって上記被験体に非経口的に投与する工程
を含む、制限された流体及び/又はナトリウム摂取を必要とする被験体におけるベンダムスチン応答性症状を治療する方法。
【請求項30】
ベンダムスチンが塩酸塩として存在する、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ベンダムスチンは、白血病、ホジキン病及び多発性骨髄腫を含む多くの癌の治療に用いられる。(HCl塩として存在する)ベンダムスチンは、再構成用凍結乾燥粉末である市販の製品トレアンダ(Treanda)(商標)の活性成分である。現在のラベル条件(labeling requirements)によると、再構成された製品は、即座に(30分以内に)500mLの0.9%生理食塩水(正常生理食塩水)又は2.5%デキストロース/0.45%生理食塩水などの非経口的に許容される希釈剤に希釈され、30分にわたって100mg/m2又は60分にわたって120mg/m2を送達する静脈内注入の一部として投与することが必要とされる。希釈された混合物は2~8℃で24時間まで、又は室温(15~30℃)で3時間まで貯蔵可能であり、投与は水溶液中での限られた化学的安定性のためにこの期間内に完了する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
しかしながら、多めの注入容量及び長めの注入時間は多くの欠点を伴う。例えば、大きめのベンダムスチン静脈内投与容量及びナトリウム負荷を伴う現在利用可能なベンダムスチン療法は、重大な、例えばうっ血性心不全のような心臓病及び/又は腎不全を有する患者において禁忌となり得る。したがって、ベンダムスチン療法の恩恵を受け得る患者の中には、当該薬物を摂取することができないか、又は代替療法がない場合に、大容量のナトリウムを含む流体をベンダムスチンと共に受けることにより重大な身体的危害にさらされる者がいる。多めの注入容量は、これらの患者において心腎を含む罹患した臓器に対して健康に有害となるストレスをもたらす。薬物を必要とするだけでなく、流体及びナトリウム摂取制限を必要とする患者に対して、薬物をより少ない容量でより短い時間にわたって投与することができれば、大きな利点となる。本発明ではこの必要性に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の第1の側面では、制限された流体及び/又はナトリウム摂取を必要とする患者におけるベンダムスチン応答性症状を治療する方法を提供する。本方法は、
a)ベンダムスチン治療を必要とし、制限された流体及び/又はナトリウム摂取を必要とする生理学的症状を有する被験体を識別する工程、
b)i)約0.05~約12.5mg/mlのベンダムスチン又はその薬学的に許容される塩;
ii)ポリエチレングリコール及びプロピレングリコールを含む可溶化剤であって、ポリエチレングリコールが約0.3~約45容量%の量存在し、プロピレングリコールが約0.03~約5容量%の量存在する上記可溶化剤;並びに、任意に
iii)非経口的に許容される希釈剤、
を含む約120ml以下の容量の液体組成物を、約30分以下の実質上連続的な時間にわたって被験体患者に非経口的に投与する工程
を含む。
【0004】
本発明の別の側面では、本方法は上記の方法と同様であるが、投与される液体組成物が
【表1】
【0005】
【0006】
を含む。
【0007】
第1の側面の場合のように、投与される組成物は、0.9%NaCl、すなわち正常生理食塩水、又は0.45%NaClなどの非経口的に許容される希釈剤を任意に含むことができる。製剤を投与する時間は、約30分以下が好ましいが、例えば、少ない容量の急速(ボーラス)投与量を投与する場合など、約5分以下程度に短くすることができる。
【0008】
本発明の方法は、ベンダムスチンHClの濃度がそれが存在しているビヒクルの室温溶解限度未満であるという事実を利用する。結果として、ベンダムスチンは患者への投与中に沈殿しない。これは、薬物の増大した溶解度が標準的な500ml投与容量よりもずっと少ない容量を投与することを可能にするので有利である。低減されたナトリウム及び/又は流体摂取から利益を得る症状を有する患者は、典型的な500mlの正常生理食塩水希釈剤に伴うNaClの負荷なしでベンダムスチン治療を受けることができる。実際に、本発明の方法では、約15ml以下程度の小さい容量に鑑みて希釈剤容量を少なくとも80%以上低減すること(500mlに対して100ml)が可能になる。より少ない投与容量によって、ナトリウム量の比例した低減が必然的に生じる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
他に定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書中の用語に複数の定義が存在する場合には、他に言明されない限り、この節に記載されるものが優先される。
【0010】
本発明の第1の側面にしたがって、ベンダムスチン治療を必要とし、さらには制限された流体及び/又はナトリウム摂取を必要とし、又はその恩恵を受ける患者、好適にはヒトにおけるこのような治療に応答する症状を治療する方法を提供する。本発明の範囲を限定することはないが、ベンダムスチン療法に応答することが知られている治療には、広くは癌又は悪性疾患、より具体的には、慢性リンパ性白血病(CLL)、低悪性度B細胞非ホジキンリンパ腫、ホジキン病、多発性骨髄腫並びにベンダムスチン療法に応答するものとして当業者に知られている他の症状の治療が含まれる。本発明の目的について、本発明の方法に含まれるのに好適な患者又は被験体の選択工程は、うっ血性心不全、腎機能障害又は当業者にとって容易に理解できる他の臨床的徴候のために過剰な流体容積及び/又はナトリウムを受けることが身体的に不適切であると決定することを含む、医学又は臨床評価の一つであると理解されるべきである。
【0011】
本方法は、
a)ベンダムスチン療法を必要とし、かつ、流体及び/又はナトリウム摂取の1もしくは複数の制限の恩恵を受けているか又は恩恵を受けることになる被験体、例えばヒト患者を識別(同定)及び/又は選択する工程、
b)i)約0.05~約12.5mg/mlのベンダムスチン又はその薬学的に許容される塩;
ii)ポリエチレングリコール及びプロピレングリコールを含む可溶化剤であって、ポリエチレングリコールが約0.3~約45容量%の量存在し、プロピレングリコールが約0.03~約5容量%の量存在する上記可溶化剤;並びに、任意に
iii)非経口的に許容される希釈剤
を含む約120ml以下の容量の液体ベンダムスチン含有組成物を、約30分以下の実質上連続的な時間にわたって、好適には静脈内経路によって、単一用量(一回投与量)として被験体に非経口的に投与する工程
を含む。
【0012】
製剤の可溶化剤部分は、総投与容量又は最終投与容量に基づいて計算して、約0.3~約45容量%のポリエチレングリコール(PEG)及び約0.03~約5容量%のプロピレングリコール(PG)を含むことが好ましい。別の言い方をすれば、一般にPEGの最終濃度は約3~約500mg/mlの範囲であり、一方で、一般にPGの最終濃度は約0.5~約51mg/mlの範囲である。これらの一般の範囲内において、本発明の特定の側面は、約45~約500mg/ml又は約3.3~約63.3mg/mlのPEGの濃度範囲を含む。PGは約4.7~約50.6mg/ml、又は約0.02~約6.5mg/mlの範囲である。
【0013】
可溶化剤は、ポリエチレングリコール(以後、PEG)及びプロピレングリコール(以後、PG)の混合物が好ましい。可溶化剤はまた、モノチオグリセロールなどの抗酸化剤を任意に含むことができる。含まれる抗酸化剤の量は製剤安定化量であり、モノチオグリセロールの場合は、約2~約10mg/mlの範囲である。PEGは約400の分子量を有することが好ましく、すなわちPEG400である。別の実施形態において、望まれるのであれば、当業者に知られている他の分子量のPEGを含むことができる。
【0014】
本発明の特定の側面は、可溶化剤において見出されるPEGのPGに対する比が約90:10となることを要求する。別の側面では、PEGのPGに対する比は約85:15である。
【0015】
本発明のいくつかの側面では、約100~115mlの注入容量に含まれる可溶化剤、すなわちPEGとPGの混合物の総量は、約0.5~約26.5容量%であり、一方で、約50~65mlの注入容量に含まれる可溶化剤の量は、約2.0~約22.4容量%である。
【0016】
可溶化剤は混合物であるので、様々な容量におけるPEG及びPGの量(容量%として計算)は以下のように表すことができる。
【表3】
【0017】
本発明のいくつかの側面では、ベンダムスチンは静脈内注入の一部として静脈内に投与される。考えられる注入容量は、120ml未満、例えば約100ml、50ml、30ml、15ml以下の容量であることが好ましく、約+/-10%又は+/-15%異なる各容量がいくつかの実施形態において好ましい。本発明の別の側面では、静脈内投与容量はIVボーラス投与に好適であり、また、ビヒクルの溶解性がベンダムスチンの濃度未満とならない量の、正常生理食塩水などの薬学的に許容される希釈剤又は本明細書に記載されている他の希釈剤の1つを含み得る。別の言い方をすれば、ベンダムスチンの最終濃度は、プロピレングリコール及びPEGの混合物並びに希釈剤を含む組み合わせビヒクルの溶解性未満である。このように、より少ない容量が患者に治療用量を送達するために必要とされ、患者は治療中における過剰な流体及びナトリウムへの暴露を避けられる。
【0018】
本発明の大抵の側面では、全てのビヒクル成分、賦形剤などを含む約120ml未満を投与することが記載されているが、ビヒクルが患者への投与中にベンダムスチンのビヒクルへの溶解を維持するために十分な可溶化剤を含む限り、数ミリリットル、例えば約2ミリリットルもの少ない容量を使用することができると認識すべきである。
【0019】
本発明の目的において、注入容量又は濃度を記載するために使用する場合の「約」は、約+/-10%又は15%の量によって異なり得る値を含むと理解すべきである。
【0020】
注入容量が約50mlである特定の実施形態では、ベンダムスチンHCl又は他のその薬学的に許容される塩の濃度は約0.5~約5.6mg/mlであることが好ましい。注入容量が約100mlである実施形態では、ベンダムスチンHCl又は他のその薬学的に許容される塩の濃度は好適には約0.1~約3.2mg/mlであり得る。
【0021】
ベンダムスチン組成物は、容量が約50mlの場合は約10分以下の時間にわたって、静脈内注入容量が約100mlの場合は約15分以下の時間にわたって、静脈内に注入されるのが好ましい。IVボーラス又はIVプッシュ投与を使用する場合には、50ml未満、すなわち、2、5、10又は15~30mlの容量において、より短い時間が考えられる。
【0022】
本発明の多くの側面における注入可能な組成物はまた、0.9%生理食塩水(好適には正常生理食塩水)、0.45%生理食塩水(好適には、半分の濃度の正常生理食塩水)又は2.5%デキストロース/0.45%生理食塩水などの非経口的に許容される希釈剤も含むことが好ましい。注射用水(WFI)などの別の希釈剤も考えられる。
【0023】
本明細書に記載されている方法を実施するために好適な製剤はまた、本発明の譲受人に譲渡されたUS特許出願シリアルNos.13/016,473(2011年1月28日提出)及び13/767,672(2013年2月14日提出)に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。‘672特許出願によれば、いくつかの好適なベンダムスチン製剤はまた、少量の、ギ酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸又は、好適には水酸化ナトリウムなどのpH調整剤も含むことができる。好適には、一日一回の投与の一部として含まれるナトリウムの量は、100mlの投与につき約8~16meqのナトリウム以下、50mlの投与につき約4~8meqのナトリウム以下である。したがって、本発明の治療は、同量のベンダムスチンを送達するために必要である大容量注入毎の一部として40~80meqのナトリウムを送達する現在の利用可能な治療と比較してナトリウム摂取の重大な低減を提供する。
【0024】
本発明の別の実施形態では、本明細書に記載される方法に使用されるベンダムスチン製剤は、US特許Nos.8,344,006及び8,076,366、US特許出願Nos.2013/0041004、2012/0071532、2010/0216858、2006/0159713及び2013/0041003に記載された1又は複数のものであることができ、そのそれぞれの内容は参照により本明細書に組み込まれる。ベンダムスチンHClを入れるビヒクルは、そこに含まれる薬物の濃度を超える十分なベンダムスチン溶解性を有していると理解される。
【0025】
望まれるのであれば、すでに十分な可溶化剤と混合した25mg/mlのベンダムスチンHClを含むような、十分量の濃縮された、すぐに使用できる液体製剤を、50又は100mlの正常生理食塩水などを含むバッグなどの好適な固定容量希釈剤容器に移送することができる。あるいは、凍結乾燥されたベンダムスチンHClを再構成し、本明細書に記載されるように十分な可溶化剤混合物と組み合わせ、本発明の方法に従って投与することができる。このような実施形態では、患者に送達される実際量は、薬物/可溶化剤ビヒクルの添加を可能にするために希釈剤の量よりもわずかに多い。
【0026】
制限されることはないが、ベンダムスチン療法並びに制限された流体及び/又はナトリウム摂取の両方を必要とする患者は、a)うっ血性心不全(CHF)疾患に罹患している患者であって、疾患が、軽度、中等度から重度のCHFである上記患者、b)一時的(急性)もしくは慢性の腎臓抑制又は腎機能障害、急性又は慢性の腎不全などを含む流体制限が不可欠又は望ましい腎疾患に罹患している患者を含む。
【0027】
腎疾患又は腎臓抑制の傾向を有する患者の、少量の注入容量による治療に関連する本発明の側面は、多量の注入容量を必要とする現在の承認された治療と比較して、重大な治療的利点を有する。例えば、高齢のリンパ腫患者は、彼らの歳や疾患により腎臓障害になりやすい。治療の開始前に症状が存在しなくても、彼らはしばしば治療開始に続いて腎臓障害になる可能性が高い。急性腎不全は、現在の治療に伴って、しばしば第1又は第2周期(サイクル)中に起こるものとしてすでに認識されている副作用である。急性腎不全ではないにもかかわらず、多くの患者がいくつかの形態の腎臓抑制に罹患する。したがって、本発明の方法によりベンダムスチンを送達することは、ベンダムスチンによる治療可能な症状で治療を必要とする患者において腎損傷の発生を著しく減少する。すなわち、本明細書に記載される方法は、標準容量、すなわち500mlでのベンダムスチン注入が禁忌である場合の代わりとなる方法を提供する。
【0028】
本発明のいくつかの好適な側面では、流体及び/又はナトリウム摂取を制限されている患者において、慢性リンパ性白血病(CLL)を治療又は予防する方法を提供する。このような治療を必要とする患者を同定し、約30分以下の時間内で、120ml以下の容量において、治療量のベンダムスチン並びに本明細書に記載されているような十分量の可溶化剤混合物、例えばポリエチレングリコール及びプロピレングリコールを含む約0.2~27容量%の可溶化剤、さらに望ましいのであれば非経口的に許容される希釈剤を投与する。
【0029】
治療的に有効な量のベンダムスチンHClを含む、例えば50、又は100mlの溶液の本明細書に記載されている少ない容量注入は、ベンダムスチンが含まれるあらゆるCLL治療プロトコルの一部として与えることができる。すなわち、本明細書に記載されている組成物は、本明細書に記載されている濃縮ベンダムスチン組成物が現在使用されているものよりもずっと短い投与時間にわたってより少ない注入容量で投与されることを除いて、公知のプロトコルに従って多剤薬治療方式(polypharmaceutical treatment regimen)の一部として投与することができる。例えば、いくつかのCLL治療方式では、28日周期の1日目及び2日目に、約15分以下で約100ml注入の一部として本明細書に記載されている組成物を静脈内に投与し、その周期を6回まで、臨床的に適切であればさらに長く繰り返すことを含むことができる。50mlの容量がベンダムスチンを送達するために使用される場合は、投与時間は約10分以下であることが好ましい。より少ない容量であるにもかかわらず、いくつかの好適な実施形態での1用量(注入)あたりのそれを必要とする患者に投与されるベンダムスチンHClの量は約100mg/m2である。本発明のいくつかの別の側面では、50又は100ml注入の一部としてそれを必要とする患者に投与されるベンダムスチンHCl量は、50又は25mg/m2の薬用量を提供するのに十分な量である。追加の投与薬用量は過度の実験をすることなく、臨床経験、患者の必要性に基づいて当業者に明らかである。
【0030】
本発明の別の側面では、流体及び/又はナトリウム摂取制限を有する患者における低悪性度B細胞非ホジキンリンパ腫の悪性疾患を治療又は予防する方法を提供する。上記治療と同様に、このような治療を必要とする患者を同定し、少ない容量のベンダムスチン含有組成物を15分以下の時間にわたってその患者に投与する。
【0031】
より具体的には、ベンダムスチン含有組成物を、21日周期の1日目及び2日目に、約15分以下で100ml注入として静脈内に投与し、その周期を8回まで、臨床的に適切であればさらに長く行うことができる。50mlの容量がベンダムスチンを送達するために使用される場合は、投与時間は約10分以下であることが好ましい。被験体に投与されるベンダムスチンの量は約120mg/m2が好ましいが、別の実施形態では、投与される量は約90又は60mg/m2であり得る。
【0032】
体表面積(BSA)のためにmg/m2に換算された上記薬用量は、本明細書に記載された、例えば0.5~5.6mg/mlのベンダムスチンHCl濃度と矛盾しないことは当業者であれば理解できる。
【0033】
本発明の別の側面では、制限された流体及び/又はナトリウム摂取を必要とする被験体におけるベンダムスチン応答性症状を治療する方法は、
a)ベンダムスチン治療を必要とし、制限された流体及び/又はナトリウム摂取を必要とする生理学的症状を有する被験体を識別する工程
b)下記表の成分
【表4】
【0034】
及び任意に非経口的に許容される希釈剤を含む約120ml以下の容量の液体組成物を約30分以下の実質上連続的な時間にわたって上記被験体に非経口的に投与する工程
を含む。より好適には、投与時間は30分よりずっと短く、投与時間は投与容量を低減することにより短くなる。
【0035】
上記成分を含むベンダムスチン製剤は、約120ml~約15mlまでの範囲の容量の薬学的に許容される希釈剤中のHCl塩として約25mgの薬物を送達することができる。
【0036】
【0037】
を含むイーグルファーマスーティカルズ(Eagle Pharmaceuticals)により市販されている、すぐに使用できる液体のベンダムスチンHClを100mlの正常生理食塩水希釈剤と組み合わせて、101mlの、0.25mg/mlのベンダムスチン最終濃度を有する最終IV注入液を提供する。
【0038】
1mlの25mg/mlのイーグルベンダムスチンHClを追加の希釈剤容量中に以下の表に示すように希釈する。
【表6】
【0039】
室温での希釈剤/可溶化剤の組み合わせ(50mlの希釈剤+1mlの25mg/mlベンダムスチンHCl及び可溶化剤、など)におけるベンダムスチンHClの測定溶解度は、正常生理食塩水を使用して10.5mg/ml、半分の濃度の正常生理食塩水/デキストロースを使用して14.2mg/mlであった。希釈剤/可溶化剤の組み合わせの溶解性はベンダムスチン濃度よりずっと大きく、したがって、投与前又は投与中の薬物の沈殿は確実に回避された。当業者によって理解されるように、少ない投与用量の総容量に関して可溶化剤の濃度が大きくなると、ベンダムスチンの溶解度は維持される。
【0040】
本発明のこの側面に関連する実施形態では、本方法は
a)ベンダムスチン治療を必要とし、制限された流体及び/又はナトリウム摂取を必要とする生理学的症状を有する被験体を識別する工程、
b)下記表
【表7】
【0041】
及び任意に非経口的に許容される希釈剤を含む約120ml以下の容量の液体組成物を約30分以下の実質上連続的な時間にわたって上記被験体に非経口的に投与する工程
によって、制限された流体及び/又はナトリウム摂取を必要とする被験体においてベンダムスチン応答性症状を治療することを含む。前記場合と同様、投与時間は投与用量の低減と共に短くなる。
【0042】
上記成分を含むベンダムスチン製剤は、約120ml~約15mlまでの範囲の容量の薬学的に許容される希釈剤で約360mgの薬物をHCl塩として送達することができる。前記場合と同様、室温での希釈剤/可溶化剤の組み合わせ(1mlの薬物+可溶化剤など及び50mlの希釈剤)におけるベンダムスチンHClの測定溶解度は、正常生理食塩水を使用して10.5mg/ml、半分の濃度の正常生理食塩水/デキストロースを使用して14.2mg/mlであった。
【0043】
1mlのみの上記イーグルのすぐに使用できる液体である25mg/mlベンダムスチンHClを使用する代わりに、14.4mlを様々な量の希釈剤と組み合わせた。
【表8】
【0044】
それぞれの場合では、希釈剤/可溶化剤の組み合わせの溶解性はベンダムスチン濃度より大きく、したがって、投与前又は投与中の薬物の沈殿の回避を保証する。
【実施例0045】
以下の実施例は、本発明のさらなる理解を提供するためのものであって、いかなる形でも発明の有効な範囲を限定するものではない。
【0046】
実施例1
本実施例では、慢性リンパ性白血病(CLL)と診断され、慢性腎疾患(GFR<30ml/分/1.73m2)を有する患者に対してベンダムスチンによる治療プロトコルを行う。特に、患者は28日周期の1日目及び2日目に約114.4mlの注入の一部分として360mgのベンダムスチンを投与される。静脈内用製剤は、14.4mlの、25mg/mlのベンダムスチンHCl、103.2mg/mlのPG、1013.4mg/mlのPEG、5mg/mlのモノチオグリセロール及び0.08mg/mlのNaOHを含むRTU(すぐに使用できる)液体を調製し、それを100mlの0.9%NaClを含むバッグ中に混合することによって調製される。IV流体用の最終ベンダムスチン濃度は3.15mg/mlである。注入液は15分未満で患者に投与される。投与中、沈殿ベンダムスチンはIV流体において観測されない。
【0047】
実施例2
実施例1の工程を、IV注入容量が約64.4mlであることを除いて繰り返す。同じ14.4mlの、25mg/mlのベンダムスチンHCl、103.2mg/mlのPG、1013.4mg/mlのPEG、5mg/mlのモノチオグリセロール及び0.08mg/mlのNaOHを含むRTU(すぐに使用できる)液体を使用し、それを50mlの0.9%NaClを含むバッグ中に混合する。IV流体用の最終ベンダムスチン濃度は5.59mg/mlである。注入液は10分未満で患者に投与される。投与中、沈殿ベンダムスチンはIV流体において観測されない。
【0048】
実施例3
本実施例では、凍結乾燥されたベンダムスチンHClが100mlの正常生理食塩水を含むバッグ中への希釈前にPEG:PG(90:10)を含む可溶化剤混合物により再構成されることを除いて、実施例1の工程を繰り返す。
【0049】
[実施形態1]
a)ベンダムスチン治療を必要とし、制限された流体及び/又はナトリウム摂取を必要とする生理学的症状を有する被験体を識別する工程、
b)i)約0.05~約12.5mg/mlのベンダムスチン又はその薬学的に許容される塩、
ii)ポリエチレングリコール及びプロピレングリコールを含む可溶化剤であって、ポリエチレングリコールが約0.3~約45容量%の量存在し、プロピレングリコールが約0.03~約5容量%の量存在する上記可溶化剤、並びに、任意に
iii)非経口的に許容される希釈剤、
を含む約120ml以下の容量の液体組成物を、約30分以下の実質上連続的な時間にわたって上記被験体に非経口的に投与する工程
を含む、制限された流体及び/又はナトリウム摂取を必要とする被験体におけるベンダムスチン応答性症状を治療する方法。
[実施形態2]
希釈剤が0.9%NaCl又は0.45%NaClを含む、実施形態1に記載の方法。[実施形態3]
被験体がうっ血性心不全を有する、実施形態1に記載の方法。
[実施形態4]
被験体が腎機能障害を有する、実施形態1に記載の方法。
[実施形態5]
腎機能障害が腎不全又は腎臓抑制である、実施形態4に記載の方法。
[実施形態6]
ベンダムスチン又はその薬学的に許容される塩の濃度が約0.1~約3.2mg/mlである、実施形態1に記載の方法。
[実施形態7]
ベンダムスチン又はその薬学的に許容される塩の濃度が約0.5~約5.6mg/mlである、実施形態1に記載の方法。
[実施形態8]
可溶化剤の量が約0.5~約26.5容量%である、実施形態1に記載の方法。
[実施形態9]
可溶化剤の量が約2.0~約22.4容量%である、実施形態1に記載の方法。
[実施形態10]
ポリエチレングリコールがPEG400である、実施形態1に記載の方法。
[実施形態11]
ポリエチレングリコールのプロピレングリコールに対する重量比が約90:10である、実施形態1に記載の方法。
[実施形態12]
ポリエチレングリコールのプロピレングリコールに対する重量比が約85:15である、実施形態1に記載の方法。
[実施形態13]
投与容量が約100、50、30又は15mlである、実施形態1に記載の方法。
[実施形態14]
組成物がモノチオグリセロール及びNaOHを更に含む、実施形態1に記載の方法。
[実施形態15]
投与容量が約50ml+/-15%以下であり、組成物が約10分以下の時間にわたって投与される、実施形態7に記載の方法。
[実施形態16]
投与容量が約100ml+/-15%以下であり、組成物が約15分以下の時間にわたって投与される、実施形態6に記載の方法。
[実施形態17]
非経口的に許容される希釈剤が0.9%NaCl(正常生理食塩水)である、実施形態1に記載の方法。
[実施形態18]
ベンダムスチン応答性症状が慢性リンパ性白血病である、実施形態1に記載の方法。
[実施形態19]
組成物が28日周期の1日目及び2日目に、約10分以下の時間にわたって、約50mlの容量で静脈内に投与される、実施形態18に記載の方法。
[実施形態20]
組成物が28日周期の1日目及び2日目に、約15分以下の時間にわたって、約100mlの容量で静脈内に投与される、実施形態18に記載の方法。
[実施形態21]
組成物が6回の周期まで投与される、実施形態18に記載の方法。
[実施形態22]
被験体に投与される組成物の容量が被験体への約25mg/m
2~約100mg/m
2の範囲の薬用量である、実施形態18に記載の方法。
[実施形態23]
ベンダムスチン応答性症状が低悪性度B細胞非ホジキンリンパ腫である、実施形態1に記載の方法。
[実施形態24]
組成物が21日周期の1日目及び2日目に、約10分以下の時間にわたって、約50mlの容量で静脈内に投与される、実施形態23に記載の方法。
[実施形態25]
組成物が21日周期の1日目及び2日目に、約15分以下の時間にわたって、約100mlの容量で静脈内に投与される、実施形態23に記載の方法。
[実施形態26]
組成物が8回の周期まで投与される、実施形態23に記載の方法。
[実施形態27]
被験体に投与される組成物の容量が被験体への約60mg/m
2~約120mg/m
2の範囲の薬用量である、実施形態23に記載の方法。
[実施形態28]
a)ベンダムスチン治療を必要とし、制限された流体及び/又はナトリウム摂取を必要とする生理学的症状を有する被験体を識別する工程、
b)下記表の成分
【表9】
及び任意に非経口的に許容される希釈剤を含む、約120ml以下の容量の液体組成物を、約30分以下の実質上連続的な時間にわたって上記被験体に非経口的に投与する工程
を含む、制限された流体及び/又はナトリウム摂取を必要とする被験体におけるベンダムスチン応答性症状を治療する方法。
[実施形態29]
a)ベンダムスチン治療を必要とし、制限された流体及び/又はナトリウム摂取を必要とする生理学的症状を有する被験体を識別する工程、
b)下記表の成分
【表10】
及び任意に非経口的に許容される希釈剤を含む、約120ml以下の容量の液体組成物を、約30分以下の実質上連続的な時間にわたって上記被験体に非経口的に投与する工程
を含む、制限された流体及び/又はナトリウム摂取を必要とする被験体におけるベンダムスチン応答性症状を治療する方法。
[実施形態30]
ベンダムスチンが塩酸塩として存在する、実施形態1~29のいずれかに記載の方法。