(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037921
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】身体的病変部を処置するための結合粉末
(51)【国際特許分類】
A61K 47/58 20170101AFI20240312BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20240312BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240312BHJP
A61K 33/00 20060101ALI20240312BHJP
A61K 31/715 20060101ALI20240312BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240312BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
A61K47/58
A61P7/04
A61K9/14
A61K33/00
A61K31/715
A61K47/02
A61K47/32
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023212170
(22)【出願日】2023-12-15
(62)【分割の表示】P 2022521497の分割
【原出願日】2020-10-02
(31)【優先権主張番号】16/598,189
(32)【優先日】2019-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511193846
【氏名又は名称】クック・メディカル・テクノロジーズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】COOK MEDICAL TECHNOLOGIES LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジタード,ショーン・ディ
(72)【発明者】
【氏名】シグモン,ジョン・シィ,ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】カルザース,クリストファー・エイ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】治療用粉末を標的部位に送達するのに適したシステム及び医療用配合物を提供する。
【解決手段】送達器具と、第1材料の粒子から形成された第1粉末と、第2材料の粒子から形成された第2粉末と、を備え、第2材料は第1材料とは異なり、第1粉末及び第2粉末の粒子の少なくとも一部は互いに結合して結合した粒子を形成し、さらに、結合した粒子は、送達器具によって標的部位に同時に送達され、前記第1粉末は粘膜接着剤を含み、前記第2粉末は止血剤を含み、前記第1粉末の前記粒子の密度及び前記第2粉末の前記粒子の密度の差は少なくとも2倍であり、前記粘膜接着剤は、カルボマーを含み、前記止血剤は、ベントナイトまたは植物性多糖を含む、システムとする。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療用粉末を標的部位に送達するために適したシステムであって、
送達器具と;
第1材料の粒子から形成された第1粉末と;
第2材料の粒子から形成された第2粉末と;
を含み、前記第2材料は、前記第1材料とは異なり、
前記第1粉末及び前記第2粉末の前記粒子の少なくとも一部は、前記送達器具内に配置される前に、互いに結合して結合した粒子を形成し、
第1及び第2粉末の前記結合した粒子は、前記送達器具によって前記標的部位に同時に送達される、システム。
【請求項2】
前記第1粉末は、粘膜接着剤を含み、前記第2粉末は、止血剤を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記粘膜接着剤は、カルボマーを含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記止血剤は、ベントナイトを含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1粉末及び前記第2粉末の前記粒子は、水素結合、ファンデルワールス結合、金属結合、イオン結合、共有結合、分子鎖の絡み合い、被覆、嵌入、又は埋込みのうちの1種により互いに結合している、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1粉末及び前記第2粉末の粒子の少なくとも10%が互いに結合している、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1及び第2粉末の前記結合した粒子の最小幅は少なくとも40ミクロンである、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記第1及び第2粉末の前記結合した粒子の最大幅は200ミクロン未満である、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記第1粉末の前記粒子の密度及び前記第2粉末の前記粒子の密度の差は少なくとも2倍である、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記結合した粒子の水分含有量は、1%~50%の間にある、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記結合した粒子の質量は、粒子1個当たり約0.0015mg~約0.15mgの範囲にある、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
請求項1に記載のシステムであって、前記送達器具は、
結合した粒子を保持するための容器と;
加圧された流体を有する圧力源であって、前記容器の少なくとも一部と選択的に流体連通している、圧力源と;
前記容器と流体連通しており、前記結合した粒子を標的部位に送達するためのサイズの管腔を有するカテーテルと
を備える、システム。
【請求項13】
前記カテーテルの内径対結合した粒子の直径の比は、少なくとも4:1である、請求項
12に記載のシステム。
【請求項14】
病変部を保護又は処置するための医療用配合物であって、
第1材料の粒子から形成された第1粉末であって、前記第1粉末は、粘膜接着剤を含む、第1粉末と;
第2材料の粒子から形成された第2粉末であって、前記第2粉末は、止血剤を含む、第2粉末と
を含み、前記第1粉末及び前記第2粉末の前記粒子は互いに結合して結合した粒子を形成しており、前記粘膜接着剤は、前記止血剤の量を超える量で前記配合物中に存在する、医療用配合物。
【請求項15】
前記粘膜接着剤は、前記配合物中に少なくとも50重量%の量で存在する、請求項14に記載の医療用配合物。
【請求項16】
前記粘膜接着剤は、カルボマー含み、前記止血剤は、ベントナイトを含む、請求項14に記載の医療用配合物。
【請求項17】
更に炭酸カルシウムを含む、請求項16に記載の医療用配合物。
【請求項18】
前記カルボマーは、前記配合物の約60~80重量%の範囲で存在し、前記ベントナイトは、前記配合物の約5~15重量%の範囲で存在し、前記炭酸カルシウムは、前記配合物の約10~30重量%の範囲で存在する、請求項17に記載の医療用配合物。
【請求項19】
治療用粉末を標的部位に送達するための方法であって、
第1材料の粒子から形成された第1粉末と、第2材料の粒子から形成された第2粉末と、を提供することであって、前記第2材料は、前記第1材料とは異なる、ことと;
前記第1粉末及び前記第2粉末の前記粒子を、送達器具内に配置される前に、互いに結合させることにより結合した粒子を形成することと;
前記第1及び第2粉末の前記結合した粒子を前記送達器具により前記標的部位に同時に送達することと
を含む、方法。
【請求項20】
前記第1粉末は、粘膜接着剤を含み、前記第2粉末は、止血剤を含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本発明は、2019年10月10日に出願された「Bonded Powders for the Treatment of Bodily Lesions」と題する米国仮特許出願第16/598,189号の優先権の利益を主張するものであり、その全体が援用により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本実施形態は、全体として、医療用製品に関し、より詳細には、身体的病変部を処置するための配合物、システム、及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
人体又は動物体内に治療剤を導入することが望ましくなる可能性がある幾つかの例が存在する。例えば、生物学的効果を達成することを目的として、治療薬又は生体活性材料を導入する場合がある。生物学的効果としては、数々の目標とされる成果、例えば、止血の誘導、穿孔の閉鎖、再狭窄の可能性の低減、又はがん性腫瘍若しくは他の疾患の治療を挙げることができる。
【0004】
治療剤の局所的な送達は、カテーテル及び類似の導入器具を用いて行われている。一例として、カテーテルを患者の標的部位に向かって進ませることができ、その後、カテーテルの管腔を通じて治療剤を標的部位に注入することができる。通常、カテーテルの管腔内への治療剤の注入は、シリンジ又は類似の器具を用いて行うことができる。しかしながら、この種の送達技法を用いた場合、注入された治療剤の流れが比較的弱くなることがある。
【0005】
更に、粉末形態等の特定の形態にある治療剤は、標的とする様式で所望の部位に送達することが困難であるか又は不可能な場合もある。例えば、治療用粉末がシリンジ又は他の容器内に保持されている場合、有害となり得る副作用も低減することができる局所的方式によってカテーテルを通じて標的部位に送達することが容易ではないこともある。
【0006】
特に消化管に関しては、局所的処置を必要とする病変を引き起こす可能性のある状況が幾つか存在する。例えば、胃腸炎、消化器がん、胃腸感染症、消化管運動機能不全、又は消化管の病変を引き起こす可能性のある消化管の一部組織の病変、創傷、若しくは挫傷がある。また、消化管壁の粘膜又は粘膜下層の除去を必要とし、それと共に消化管の損傷又は病変も形成し得る様々な医療行為も存在する。こうした行為としては、内視鏡的粘膜切除術(EMR)、内視鏡的粘膜下層剥離術、ポリープ切除術、経口内視鏡的筋層切開術、組織診、及び焼灼術(熱焼灼術、化学的焼灼術、ラジオ波焼灼術、及び冷凍焼灼術)が挙げられる。粘膜又は粘膜下層を除去した後は、消化管に障害がある場合と同様に、出血等の有害事象が発生する可能性がある。
【0007】
粘膜接着剤及び生体接着剤を使用すると、上皮タイトジャンクションが開放され、腸管潰瘍が予防され、開放創内で薬物が保持され、眼表面での滞在が向上し、及びワクチンアジュバント活性が発現することが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
粘膜接着剤及び止血剤の使用は、独立した状況ではある程度知られているが、複数の薬剤を一緒に、特に粉末形態で消化管に送達することは、新規且つ難易度の高い領域である
。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施形態は、治療用粉末を標的部位に送達するのに適したシステム及び医療用配合物を提供する。一実施形態において、本システムは、送達器具と、第1材料の粒子から形成された第1粉末と、第2材料の粒子から形成された第2粉末と、を備え、第2材料は第1材料とは異なる。第1粉末の粒子及び第2粉末の粒子の少なくとも一部は、送達器具内に配置される前に、互いに結合して結合粒子を形成する。第1及び第2粉末が結合した粒子は、送達器具によって標的部位に同時に送達される。
【0010】
一実施形態において、第1粉末は粘膜接着剤を含み、第2粉末は止血剤を含む。一例において、粘膜接着剤は、カルボマーを含むことができ、止血剤はベントナイトを含むことができる。第1粉末の粒子及び第2粉末の粒子は、水素結合、ファンデルワールス結合、金属結合、イオン結合、共有結合、分子鎖の絡み合い、被覆、嵌入(impaction)、又は埋込み(embedding)のうちの1種により互いに結合させることができる。一実施形態において、第1粉末の粒子及び第2粉末の粒子の少なくとも10%が互いに結合している。
【0011】
一例において、第1及び第2粉末の結合粒子の最小幅は少なくとも40ミクロンであり、最大幅は200ミクロン未満である。第1粉末の粒子の密度及び第2粉末の粒子の密度の差は少なくとも2倍とすることができる。結合粒子の水分含有量は、1%~50%の間とすることができる。一実施形態において、結合粒子の質量は、粒子1個当たり約0.0015mg~約0.15mgの間とすることができる。
【0012】
一例において、送達器具は、結合粒子を保持するための容器と、加圧された流体を有する圧力源と、容器と流体連通しており、結合粒子を標的部位に送達するためのサイズの管腔を有するカテーテルと、を備え、圧力源は、容器の少なくとも一部と選択的に流体連通している。カテーテルの内径対結合粒子の直径の比は少なくとも4:1とすることができる。
【0013】
一実施形態において、医療用配合物は、第1材料の粒子から形成された第1粉末と、第2材料の粒子から形成された第2粉末とを含み、第1粉末は粘膜接着剤を含み、第2粉末は止血剤を含む。第1粉末の粒子及び第2粉末の粒子は、互いに結合して結合粒子を形成している。粘膜接着剤は、結合粒子中に、止血剤の量を超える量で存在することができる。幾つかの実施形態において、粘膜接着剤は、配合物の少なくとも50重量%の量で存在することができる。一例において、粘膜接着剤はカルボマーを含み、止血剤はベントナイトを含む。
【0014】
この医療用配合物は、更に炭酸カルシウムを含むことができる。そのような例において、カルボマーは、配合物の約60~80重量%の範囲で存在することができ、ベントナイトは、配合物の約5~15重量%の範囲で存在することができ、炭酸カルシウムは、配合物の約10~30重量%の範囲で存在することができる。
【0015】
治療用粉末を標的部位に送達するための例示的な方法は、第1材料の粒子から形成された第1粉末と、第2材料の粒子から形成された第2粉末と、を提供することを含み、第2材料は第1材料とは異なる。この方法は、第1粉末及び第2粉末の粒子を、送達器具内に配置する前に、互いに結合させることにより結合粒子を形成することと、次いで、第1及び第2粉末の結合した粒子を送達器具により標的部位に同時に送達することと、を含む。
【0016】
本発明の他のシステム、方法、特徴、及び利点は、当業者に明らかであるか又は以下に
示す図面及び詳細な説明を検討することにより明らかとなるであろう。そのような更なるシステム、方法、特徴、及び利点は全て本発明の範囲内にあり、後述する特許請求の範囲に包含されることが意図されている。
【0017】
以下に示す図面及び説明を参照することにより、本発明をより充分に理解することができる。図面の構成要素は必ずしも縮尺通りではなく、本発明の原理を説明するために誇張されている。更に、図面中の同様の参照符号は、異なる図においても同様の部分を表す。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】
図1Aは、未結合の2種の粉末の粒子の走査型電子顕微鏡観察図を例示したものである。
【
図1B】
図1Bは、結合している2種の粉末の粒子の走査型電子顕微鏡観察図を例示したものである。
【
図2】カテーテルを通じて噴霧するのに適した結合粉末の例を示す斜視図である。
【
図3】試験的な操作の最中にエアロゾル化している結合粉末の例を示す斜視図である。
【
図4】試験的な操作の最中にカテーテルに詰まった結合粉末の例を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、結合して複合材になっていない、析出物を形成している混合粉末の例を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、結合してゲルを形成している、同じ混合粉末の例を示す斜視図である。
【
図7】本実施形態の結合粉末と一緒に使用するのに適した例示的な送達システムの側方断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本出願における「近位」という用語は、医療行為中、概して医師側に向いている方向を指し、「遠位」という用語は、医療行為中、概して患者の解剖学的構造の標的部位側に向いている方向を指す。
【0020】
図1A~1Bを参照すると、第1の実施形態において、第1粉末10は第1材料の粒子10aから形成されており、第2粉末12は第2材料の粒子12aから形成されている。
図1Aにおいて、第1粉末10の粒子10aは、第2粉末12の粒子12aに結合していない状態で示されている。一方、
図1Bにおいて、第1粉末10の粒子10aは、以下に更に説明する技法に従い、第2粉末12の粒子12aに結合し、それにより結合粒子14を形成している状態で示されている。
【0021】
第1粉末10の粒子10a及び第2粉末12の粒子12aは、後に
図7に示す例示的な送達器具20等の送達器具内に配置される前に、互いに結合して、結合粒子14を形成する。次いで、第1及び第2粉末10及び12を含む結合粒子14は、後に更に説明するように、送達器具20によって標的部位に同時に送達される。
【0022】
一態様によれば、第2粉末12の粒子12aは、第1粉末10の粒子10aとは異なる組成を有する。この粉末材料は、次に示すもの:粘膜接着剤、止血剤、接着剤、医薬品、生物学的製剤(biologic)、ポリマー、鉱物、セラミック、金属、複合材、着色剤、酸、塩基、緩衝剤、架橋剤、触媒、色素、放射線不透過性薬剤、ナノ粒子、又は不活性フィラーのいずれか1種とすることができる。例示的な生物学的製剤としては、タンパク質、遺伝子、アミノ酸、リガンド、ホルモン、脂質等が挙げられる。一実施形態において、例えば、消化器病変部を治療する場合、第1粉末10は粘膜接着剤を含むことができ、第2粉末12は止血剤を含むことができる。
【0023】
本明細書において使用される「粘膜接着剤」という用語は、体内管腔(body vessel)又は体腔の壁、例えば、消化管上皮又は粘膜(粘膜下層を含む)のいずれか一方又は両方等の消化管表面を内張りすることができる粘膜、好ましくは、病変部位又はその周辺に接着する剤を指す。粘膜は、粘膜接着剤が接着することができる湿った粘膜層を含み得る。粘膜接着剤は、例えば、イオン結合、共有結合、水素結合、ファンデルワールス結合、疎水結合(即ち、疎水性相互作用)等の物理的及び/又は化学的な力によって粘膜に接着することができる。
【0024】
本明細書における使用に適した粘膜接着剤の一例として、繰り返しモノマー単位を含む高分子(例えば、ポリマー)が挙げられる。本実施形態に使用するための粘膜接着剤の他の例として、例えば、親水性ポリマー、ヒドロゲル、コポリマー、又はチオール化されたポリマーが挙げられる。水素結合を形成する官能基としては、カルボキシル基、ヒドロキシル基、カルボニル基、硫酸基、アミド基、又は水素結合を形成できる他の任意の官能基を挙げることができる。粘膜接着剤又はその成分の例として、例えば、カルボマー(例えば、ポリアクリル酸)、多環式芳香族炭化水素(例えば、レテン)、カルボン酸、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリカルボフィル、キトサン材料(即ち、ポリグルサム、脱アセチル化キチン、又はポリ-(D)グルコサミン)、アルギン酸ナトリウム、セルロース誘導体(例えば、メチルセルロース、メチルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、又はヒドロキシエチルセルロース)、エーテル(例えば、ポリエチレングリコール)、レクチン(例えば、エリスリナ・c(Erythrina c.)レクチン、コンカナバリンA(Concanavalin a.)レクチン、ハリエニシダ(ユレックス・ユーロパエウス(Ulex europaeus))由来レクチン、及びC型レクチン)、チアミン(例えば、チアミンで末端封止した(thiamine end capped)高分子鎖);病原性細菌(例えば、細菌フィンブリン)、チオール(例えば、キトサン-システイン、キトサン-チオールブチルアミジン、キトサン-チオグリコール酸、ポリアクリル酸-システイン、ポリアクリル酸-システアミン、カルボキシメチルセルロース-システイン(cystein)、又はアルギン酸-システイン(alginate-cysteine))、アミノ酸配列、イオン交換樹脂(例えば、コレスチラミン)、又はアミノ酸配列を含む任意の生体分子(例えば、ペプチド)を挙げることができる。粘膜接着剤又はその成分の更なる例として、ムチン、グアーガム、カラヤガム(karya gum)、キサンタンガム、ローカストビーンガム、アカシアガム、ジェランガム、トラガカント、水溶性デンプン、ゼラチン、又はペクチンを挙げることができる。幾つかの例において、粘膜接着剤は、粘膜組織に対し親和性を有する任意の生体分子、例えば、タンパク質(例えば、線毛タンパク質又は親和性リガンド)等を含むことができる。他の種類の組織接着剤としては、シアノアクリレート系接着剤及びシーラント、グルタルアルデヒド、L-DOPA、又は他の任意の公知のポリマー若しくは生体接着剤が挙げられる。
【0025】
本明細書において使用される「止血剤」という用語は、組織の止血の促進に適した性質を有する剤を指す。非限定的な例としては、止血剤は、アルギン酸塩(alginate)、スメクタイト粘土、キチン、キトサン、コラーゲン、フィブリン、凝固因子、カオリナイト粘土、酸化セルロース、植物性多糖、血小板、スメクタイト粘土、及びゼオライトを含むことができる。
【0026】
本実施形態の一態様によれば、粘膜接着剤及び止血剤は、互いに結合し、粘膜接着剤及び止血剤の両方の利点が達成される様式で、例えば、粘膜に接着し、組織の止血が促進されるように、標的部位に同時に送達される。この種の剤は、全く独立した状況で個々に知られているが、この種の粒子を送達前に互いに結合することにより、この結合した組成物
を介して病変部の処置を改善することができる。
【0027】
一実施形態において、第1粉末10の配合物が粘膜接着剤を含み、第2粉末12が止血剤を含む場合、配合物は、標的部位に、近距離から、例えば、組織に近接して配置されたノズルを介して、又は露出した組織に直接接触する塗布具(applicator)を介して、例えば、開放外科処置中に、又は腕、脚、若しくは他の末端部の外側(external extremity)の出血部に送達することができる。
【0028】
しかしながら、粘膜接着剤の粒子10a及び止血剤の粒子12aを含む配合物の用途を拡大するには、この配合物が、従来の内視鏡を介して挿入される送達カテーテルの長さのような比較的長い距離を送達できることが望ましい。例示的な送達カテーテル90を
図7の送達器具の一部として示し、以下に更に説明する。配合物がこのような比較的長い距離を横断することが可能であれば、例えば、カテーテル90の管腔92(これは更に内視鏡の管腔を通じて延びている)を通じて送達することにより消化管病変部を処置するのに適したものとなり得る。
【0029】
後に更に説明するが、広範な実験的試験を行った後、本発明者らは、結合粉末14のように粘膜接着剤及び止血剤の粒子を互いに結合させることにより、結合させずに別々に送達した場合とは対照的に、特定の利点が得られるとの結論に達した。例えば、一方の粒子がより軽量である場合、別々に(結合させずに)送達した場合、より重い構成成分が標的部位に優先的に送達され、その一方で、他の構成成分はエアロゾル化したままとなる可能性がより高くなる。異なる材料の粒子の少なくとも一部を結合させることにより、後に更に説明するように、一方の粒子がエアロゾル化するなどの有害事象のリスクを低減することができ、以下に示す他の特性が適切であれば、両方の粒子が標的部位に到達する可能性が高くなる。
【0030】
結合粉末14は、カテーテル90が内視鏡の管腔を通じて送管されるサイズである場合は特に、カテーテル90を通じた送達に適したものになるように、特定の範囲の特性を有することが好ましい。一例として、結合粉末14の個々の粒子の質量は、特定の範囲内にあることが必要である。結合粉末14の粒子が重過ぎる場合は、カテーテル90の全長を移動させるために過度に高い圧力が必要になり、カテーテル90の詰まりを引き起こす可能性がある。他方、結合粉末14の粒子が軽過ぎる場合は、標的部位に向かって推進されずに、患者の体内で、例えば、消化管の空間内でエアロゾル化することになる。
【0031】
カテーテル90を通じて確実に適切に送達するためには、結合粉末14の個々の粒子の質量に加えて、粒子が結合した集合体のサイズも重要である。結合した粒子のサイズが大き過ぎる場合、送達カテーテル90内に詰まりやすくなるであろう。結合した粒子が小さ過ぎる場合、標的部位に向かって推進されずにエアロゾル化する可能性が高くなることがある。
【0032】
一実施形態において、結合粉末14の結合した粒子の直径が約1ミクロン~約925ミクロンの範囲、好ましくは約40ミクロン~約200ミクロンの範囲にあると有利であることが見出された。更に、結合粉末14の結合した粒子の質量が、結合した粒子1個当たり約0.0001mg~約0.5mgの範囲、好ましくは、結合した粒子1個当たり約0.0015mg~約0.15mgの範囲にあると非常に有利であることも見出された。複数の試験的な操作を行うことにより、このような範囲が、送達中にカテーテル90が詰まる可能性を大幅に低下させると共に、結合した粒子が送達中にエアロゾル化する可能性も大幅に低下させ、したがって、標的部位に正確な用量を適切に送達するという観点で重要であることが確認された。
【0033】
結合粉末14の粒子は、所望の大きさ及び質量の粒子を生成するために、粉砕、圧縮、及び/又は篩別することができる。本明細書において使用される粒子の質量は、粒子の材料の密度及び体積に依存する。更に、大きさに関しては、粒子が球体であると仮定することができ、その場合、本明細書において言及した直径の範囲が適用される。しかしながら、特に結晶性材料の場合は、他の粒子形状が存在することが理解されるであろう。粒子が実質的に非球状である場合、本明細書において球状粒子に関し列挙したものと同様のミクロン範囲を適用することができるが、この値を、直径を指すのではなく、粒子幅の平均値又は最大値を指すものとしてもよい。
【0034】
カテーテル90の直径に関しては、内視鏡用途に使用する場合、カテーテル90のサイズは、内視鏡の作業管腔内を丁度よく通過させるのに十分に小さいが、結合粉末14がカテーテル内を前進する際に詰まりを実質的に回避するのに十分に大きいことが臨床的に重要である。一実施形態において、カテーテルの内径対結合した粒子の直径の比が少なくとも4:1、より好ましくは少なくとも7.5:1であれば有利であることが見出された。本発明者らは、様々な実施形態について試験を行い、内視鏡の管腔を通して前進させることが可能なカテーテルの任意の好適な大きさに関し、比を4超:1とすることが重要であることを確認した。
【0035】
一般に内視鏡は4.2mmまでの鉗子チャンネルが利用できることに注目すべきである。このチャンネルを通じて挿入されるカテーテルの壁厚は、一般に0.25mmを超えるので、内視鏡に送り込まれるカテーテルの投影内径の最大値は3.7mmとなる。カテーテル内径対粒子直径の比が4:1であることに基づけば、許容される最大粒子直径は約925ミクロンとなる。更に、球状粒子は、立方形又は平坦な粒子よりも詰まりにくい可能性があることが知られている。したがって、球状粒子の場合は4:1に近い比が許容され得るが、他の形状の粒子の場合はより高い(例えば、7.5:1又はそれを超える)比が好ましい場合もある。
【0036】
圧力に関しては、後に
図7に示すように、送達器具20の圧力源68は、選択された気体又は液体、例えば、二酸化炭素、窒素、又は人体に適合し得る他の任意の適切な気体若しくは液体の加圧流体カートリッジを備えることができる。加圧流体カートリッジは、気体又は液体を、予め定められた比較的高い第1圧力、例えば、約1,800psiでカートリッジ内に収容することができる。圧力源は、固体(ドライアイス)、液体、又は気体状態とすることができる。上で更に説明したように、流体は、圧力源68から、出口配管75に繋がる圧力出口72を有する調整弁70等の圧力調整器を通じて流れることができ、これは、例えば、圧力を、予め定められた、より低い第2の圧力(本明細書において「送出システム圧(delivery system pressure)」と称する)に低下させることができる。一実施形態において、送出システム圧が約0.01psi~約100psiの範囲、好ましくは約0.5psi~約75psiにあると有利であることが見出された。複数の試験的な操作を行うことにより、このような範囲が、結合粉末14をカテーテル90内を前進させるのに適切な力を提供する一方で、送出中にカテーテル90が詰まる可能性を大幅に低下させ、したがって標的部位に正確な用量の結合粉末14を適切に送達するという観点で重要であることが確認された。
【0037】
図7に、結合粉末14の送達に適した送達器具20の一実施形態の更なる詳細を示す。この実施形態において、器具20は、結合粉末14を保持するように構成されている貯留器33を有する容器30を備え、更に、容器30の少なくとも一部と選択的に流体連通するように配置されるように構成された圧力源68を備え、それにより、結合粉末14をカテーテル90を通じて患者の標的部位に送達する。容器30は、測定用目盛り39、吸入管40、吐出管50、及び蓋60を備えることができる。吸入管40は、第1及び第2端41及び42を有し、それらの間に延びる管腔を有し、一方、吐出管50は、第1及び第
2端51及び52を有し、それらの間に延びる管腔を有する。
図7に示すように、吸入管40の第1端41は、蓋60に形成された吸入口61と流体連通するように配置され、一方、吐出管50の第1端51は、蓋60に形成された吐出口62と流体連通するように配置されている。蓋60の吸入口61を通過した流体は、吸入管40を通過し、台35の開口部36を通過する方向に流れ、この流体及び貯留器33内の結合粉末14は、吐出管50を通過し、吐出口62を通過し、カテーテル90を通過して、標的部位に向かうように流れることができる。アクチュエータ26及び28は、使用者と連動して、カートリッジ68からの加圧流体の放出に関連する機能を実行するように選択的に操作することができる。作動弁80は、吸入口81及び吐出口82を備え、流体が吸入口81から吐出口82へと通過し、次いで配管85に流入し、次いで蓋60の吸入口61に流入するのを選択的に許可する。
図7に示す設計及び結合粉末14の送達に同様に適した複数の代替的な実施形態を含む、送達器具20に関する更なる情報は、米国特許第8,118,777号明細書に記載されており、当該明細書を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。
【0038】
ニュートンの第二法則(力は質量と加速度との積に等しい)を考慮すると、治療剤の粒子の加速度は、粒子の質量及び粒子に印加される力に依存する。したがって、粒子にかかる重力に打ち勝ち、カテーテル90の遠位端から吐出される時点で所望の速度になるようにそれらを加速するためには、ある最低限の力が必要である。圧力源68の圧力を高くすれば、結合粉末14はより速く送出されることになるが、圧力が高過ぎると粒子の速度が過度に高くなり、後にエアロゾル化する可能性があることが知られている。
【0039】
粒子の大きさ、粒子の質量、及び送出速度の間に関係があり、これらを抗力の式:FD=(1/2)(ρ)(ν2)(CD)(A);及び重力の式:FG=(m)(g)で表すことができる。これらの式中、ρは、空気の密度(1.184kg/m3)であり、νは、結合粉末14の粒子の速度であり、CDは、抗力係数(結合粉末14の粒子が球体であると仮定した場合は0.47)であり、Aは、結合粉末14の粒子の断面積であり、mは、結合粉末14の粒子の質量であり、gは、重力による加速度(9.81m/s2)である。
【0040】
エアロゾル化は、結合粉末14の粒子が受ける抗力が重力を上回ったときに発生する。したがって、粉末の送出速度が粒子の質量に対し高過ぎる場合にエアロゾル化が起こる可能性がある。粒子の形状及び粒子のサイズも考慮に入れる必要があり、より立方形状に近い粒子及びより大きい粒子をエアロゾル化させないためには、送出速度をより低くすることが必要である。要するに、所与の送出システムには、エアロゾル化が起こるであろう粒子質量の最小値が存在する。
【0041】
好ましい実施形態において、本実施形態のシステムの重力FG対抗力FDの比は、好ましくは1超:1である。一方、結合粉末14の粒子の速度は抗力に従い急激に低下するため、重力FG対抗力FDの比が0.001:1と小さいシステムは、1分未満でこれを乗り越える(clear)であろう。
【0042】
図2を参照すると、カテーテル90を通じて噴霧するのに適した結合粉末14の例が示されている。結合粉末は、本明細書に開示する配合物を含み、個々の結合した粒子の質量、個々の結合した粒子の直径、圧力源68からの圧力、及びカテーテル90の内径に対する結合した粒子の大きさの比に関し、上に説明した所望の特性の範囲を有する。
【0043】
図3を参照すると、試験的操作の最中にエアロゾル化している結合粉末14の例が示されている。この例において、結合粉末14は送達カテーテル90の全長の一部を移動するが、例えば、結合粉末14の粒子が軽過ぎる及び/又は小さ過ぎることが原因で、標的部
位に意図した形で送達される前にエアロゾル化してしまっている。
【0044】
他方、
図4を参照すると、試験的操作を行う最中にカテーテル90を詰まらせた結合粉末14が示されている。この例において、結合粉末14は、例えば、結合粉末14の粒子の直径が大き過ぎる及び/又は重過ぎることが原因で、カテーテル90の全長を、その管腔92を詰まらせないようにうまく移動することができなかった。
【0045】
上に説明したように、本実施形態の一態様によれば、粘膜接着剤及び止血剤は、互いに結合し、粘膜接着剤及び止血剤の両方の利点が達成される様式で、例えば、粘膜に接着し、組織の止血を促すように、標的部位に同時に送達される。しかしながら、粘膜接着剤又は止血剤のいずれかに関し選択可能であった剤に多くの選択肢があることを考えると(例えば、上に例示した剤の一覧参照)、上に説明したようにエアロゾル化することもなくカテーテルを詰まらせることもなく、標的部位に同時に送達するのに適した形で互いに結合させることができる粘膜接着剤及び止血剤の特定の組合せの選択は困難を極めた。
【0046】
本発明者らは、粘膜接着剤及び止血剤の多くの組合せについて試験を行い、粘膜接着剤がカルボマーを含み、止血剤がベントナイトを含む結合粉末14の一例が非常に有利であるとの結論を得た。
図1A~1Bに戻ると、この例において、第1粉末10の粒子10aはカルボマーであり、第2粉末12の粒子12aはベントナイトである。
【0047】
この実施形態において、粒子10aがカルボマーであり、且つ粒子12aがベントナイトである場合、カルボマー及びベントナイト粒子は、水素結合、ファンデルワールス結合、金属結合、イオン結合、共有結合、分子鎖の絡み合い、被覆、嵌入、又は埋込みのうちの1種により互いに結合することができる。一実施形態においては、第1粉末の粒子12及び第2粉末の粒子14の少なくとも10%が互いに結合している。
【0048】
初期の反復試験(testing iteration)では、カルボマーを含む第1粉末10及びベントナイトを含む第2粉末12を、二酸化炭素によって推進される噴霧とすると、エアロゾル化が起こってしまい、標的部位に送達することができなかった。本実験に使用されるベントナイトはカルボマーよりも密度が高いため、より重い構成成分が標的部位に優先的に送達される一方で、他の構成成分はエアロゾル化されたままになるという懸案事項があることが知られている。
【0049】
これに続く反復試験においては、カルボマーを含む第1粉末10及びベントナイトを含む第2粉末12を互いに結合させ、濾過して特定の範囲のサイズの粒子とした。このサイズの粒子を用いることにより、エアロゾル化、カテーテルの詰まり、又は効果的に噴霧するには大き過ぎる及び重過ぎることに起因する有意な損失を認めることなく、複合材(compound)を標的部位に効果的に送達することができた。
【0050】
ブタ動物モデルによる前臨床生存試験において、カルボマー及びベントナイトを含む複合材は、塩の存在に起因して、長持ちしない可能性があることが判明した。その後、更なる一連の実験的試験において、酸性環境を局所的に中和することによってゲル化する量を増加させるための追加の塩基として、配合物に炭酸カルシウムを含有させた結果、膨潤した、より粘性の高いゲルが得られ、塩の存在に起因する分解をより受けにくくなった。しかしながら、炭酸カルシウム等の2価の無機塩基はカルボマーをイオン的に架橋させ、析出物を生じさせる。
【0051】
本発明者らは、粒子を互いに結合させることによって、緩衝剤の2価のイオンを、結果として得られる複合材の内部に固定化すると、溶液中における析出物の形成が防止されることを見出した。
図5に、複合材になっていない未結合の混合粉末が析出物18を形成し
ている例を示す。
図6に、結合させることによりゲル19を形成している同じ混合粉末を示す。
【0052】
複数種の異なる塩基を卓上滴下試験(benchtop drip test)にて比較することにより、望ましい塩基として炭酸カルシウムを選択した。異なる塩基を順に入れ替えて添加した複合材を小腸粘膜下層に配置し、次いで、生理食塩水をインライン蠕動ポンプを介して長時間に亘り滴下することにより曝露した。これに続く生存試験から、改質された複合材が耐久性を示すことが判明した。
【0053】
現時点において好ましい一実施形態において、医療用配合物は、配合物の約60~80重量%の範囲で存在するカルボマーと、配合物の約5~15重量%の範囲で存在するベントナイトと、配合物の約10~30重量%の範囲で存在する炭酸カルシウムと、を含む。
【0054】
上の範囲は厳密に限定するものではないが、結合した粒子中に粘膜接着剤が止血剤の量を超える量で存在することが好ましい。したがって、粘膜接着剤は、結合した粒子中少なくとも50%の量で存在することが望ましい。この種の実施形態において、結合した粒子中に粘膜接着剤を少なくとも50%の量で存在するように選択することは、臨床試験に基づくものであり、特に接着性能の観点に基づく。
【0055】
粉末が吸湿性を有し得る実施形態において、水分含有量は、対象の部位に適用する前に調整することが必要である。この種の実施形態において、結合している複合材の水分含有量は、1%~50%の間とすることができる。水分が多過ぎると接着性能が低下する可能性があり、特に消化管の病変部を処置する場合は、強力な接着力を有することが望ましい場合があることが知られている。
【0056】
有利には、本配合物は、消化管のあらゆる領域で優れた性能を示す。特に、配合物の約10~30重量%の範囲で存在する炭酸カルシウムがゲル化することにより、胃腸の性質に起因する配合物の分解が低減される。要するに、異なる用途ごとに特定の粉末10及び12を交換することを必要とせず、同一配合の結合粉末14を消化管の異なる領域に使用することが可能である。
【0057】
本実施形態の更なる利点として、密度の異なる2種の材料を、噴霧技法を用いて、例えば、送達器具20を用いて標的部位に同時に送達する能力が提供される。第1粉末10の粒子10aの密度及び第2粉末10の粒子12bの差は少なくとも2倍とすることができる。このような密度の区別は、第1粉末10がカルボマーを含み、第2粉末12がベントナイトを含む場合に適用される。密度が様々に異なることを考えると、エアロゾル化もカテーテルの詰まりも起こすることなく結合粉末14を噴霧により送達することは困難であった。しかしながら、本明細書に開示した広範な試験を行い、好適な配合物(特に、カルボマー、ベントナイト、及び炭酸カルシウムを、望ましくは上に説明した比率で含むもの)を、この配合物を結合するための技法と併用し、上に説明した適切な質量、直径、送出圧力、及びカテーテル対結合した粒子の比に関する広範な試験を組み合わせることにより、2種の異なる密度を有する材料を噴霧技法を用いて標的部位に同時に送達することに付随するエアロゾル化及び詰まりという難点を克服した。更に、粘膜接着剤が配合物の少なくとも50重量%の量で存在する好適な配合物は、特に消化管組織に対し優れた接着特性を示す。
【0058】
上に述べた特性を、
図7のシステムに関し、即ち、内視鏡による送達に適したカテーテル90と一緒に使用するために概要を説明してきたが、これらの粒子特性、カテーテル対粒子の比、送出システム圧、及び他の特性の組合せは、
図7に示した器具とは別の、異なる剤の送達システムと併用可能であることが理解されるであろうことに留意されたい。例
えば、上で言及した特性は、カテーテルを内視鏡を通じて送り込まない場合であってさえも、結合粉末のカテーテルを通じたあらゆる送達に有利となり得る。
【0059】
本発明の様々な実施形態について説明してきたが、本発明は、添付の特許請求の範囲及びその均等物を考慮する場合を除いて制限されない。更に、本明細書に記載した利点は必ずしも本発明の唯一の利点ではなく、また、本発明の全ての実施例において、記載した全ての利点が達成されることが必ずしも期待される訳ではない。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療用粉末を標的部位に送達するために適したシステムであって、
送達器具と;
第1材料の粒子から形成された第1粉末と;
第2材料の粒子から形成された第2粉末と;
を含み、前記第2材料は、前記第1材料とは異なり、
前記第1粉末及び前記第2粉末の前記粒子の少なくとも一部は、前記送達器具内に配置される前に、互いに結合して結合した粒子を形成し、
第1及び第2粉末の前記結合した粒子は、前記送達器具によって前記標的部位に同時に送達され、
前記第1粉末は粘膜接着剤を含み、前記第2粉末は止血剤を含み、前記第1粉末の前記粒子の密度及び前記第2粉末の前記粒子の密度の差は少なくとも2倍であり、
前記粘膜接着剤は、カルボマーを含み、
前記止血剤は、ベントナイトまたは植物性多糖を含む、システム。
【請求項2】
前記第1粉末及び前記第2粉末の前記粒子は、水素結合、ファンデルワールス結合、金属結合、イオン結合、共有結合、分子鎖の絡み合い、被覆、嵌入、又は埋込みのうちの1種により互いに結合している、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1粉末及び前記第2粉末の粒子の少なくとも10%が互いに結合している、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1及び第2粉末の前記結合した粒子の最小幅は少なくとも40ミクロンである、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1及び第2粉末の前記結合した粒子の最大幅は200ミクロン未満である、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記結合した粒子の水分含有量は、1%~50%の間にある、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記結合した粒子の質量は、粒子1個当たり0.0015mg~0.15mgの範囲にある、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
請求項1に記載のシステムであって、前記送達器具は、
結合した粒子を保持するための容器と;
加圧された流体を有する圧力源であって、前記容器の少なくとも一部と流体連通している、圧力源と;
前記容器と流体連通しており、前記結合した粒子を標的部位に送達するためのサイズの管腔を有するカテーテルと
を備える、システム。
【請求項9】
前記カテーテルの内径対結合した粒子の直径の比は、少なくとも4:1である、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
病変部を保護又は処置するための医療用配合物であって、
第1材料の粒子から形成された第1粉末であって、前記第1粉末は、粘膜接着剤を含む、第1粉末と;
第2材料の粒子から形成された第2粉末であって、前記第2粉末は、止血剤を含む、第2粉末と
を含み、前記第1粉末及び前記第2粉末の前記粒子は互いに結合して結合した粒子を形成しており、前記結合した粒子は、送達器具内に配置される前に、濾過され、
前記粘膜接着剤は、前記止血剤の量を超える量で前記配合物中に存在し、
前記粘膜接着剤は、前記配合物中に少なくとも50重量%の量で存在し、
前記医療用配合物は、更に炭酸カルシウムを含み、
前記粘膜接着剤は、カルボマーを含み、前記止血剤は、ベントナイトまたは植物性多糖を含む、医療用配合物。
【請求項11】
前記カルボマーは、前記配合物の60~80重量%の範囲で存在し、前記ベントナイトは、前記配合物の5~15重量%の範囲で存在し、前記炭酸カルシウムは、前記配合物の10~30重量%の範囲で存在する、請求項10に記載の医療用配合物。
【請求項12】
病変部を保護又は処置するための医療用配合物であって、前記医療用配合物は、
第1材料の粒子から形成された第1粉末と、第2材料の粒子から形成された第2粉末と、を含み、前記第1粉末は粘膜接着剤を含み、前記第2粉末は止血剤を含み、
前記第1粉末及び前記第2粉末の前記粒子は互いに結合して結合した粒子を形成しており、
前記粘膜接着剤は、前記止血剤の量を超える量で前記配合物中に存在し、
前記第1粉末及び前記第2粉末の前記結合した粒子の最小幅は少なくとも40ミクロンであり、
前記第1粉末及び前記第2粉末の前記結合した粒子の最大幅は200ミクロン未満であって、
前記粘膜接着剤は、カルボマーを含み、前記止血剤は、ベントナイトまたは植物性多糖を含む、医療用配合物。
【外国語明細書】