IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋インキSCホールディングス株式会社の特許一覧 ▶ 東洋モートン株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037964
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】接着剤組成物、及び積層体
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/04 20060101AFI20240312BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20240312BHJP
【FI】
C09J175/04
C09J7/30
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023213911
(22)【出願日】2023-12-19
(62)【分割の表示】P 2019234641の分割
【原出願日】2019-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】396009595
【氏名又は名称】東洋モートン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】内山 裕清
(72)【発明者】
【氏名】金子 千智
(72)【発明者】
【氏名】野田 寛樹
(57)【要約】      (修正有)
【課題】主剤と硬化剤とを配合した後の粘度上昇が抑制されるため作業性に優れ、且つヒートシール部の折り曲げ浮き耐性に優れる接着剤組成物の提供。また、該接着剤組成物を用いたヒートシール部の折り曲げ浮き耐性に優れる積層体の提供。
【解決手段】前記課題は、ポリオール成分、ポリイソシアネート成分、及び脂肪族ヒドロキシ酸を含み、前記脂肪族ヒドロキシ酸の含有量が、ポリオール成分とポリイソシアネート成分との合計質量に対して0.1質量%以上5.0質量%以下である接着剤組成物により解決される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール成分、ポリイソシアネート成分、及び脂肪族ヒドロキシ酸を含み、
前記脂肪族ヒドロキシ酸の含有量が、ポリオール成分とポリイソシアネート成分との合計質量に対して0.1質量%以上5.0質量%以下である、接着剤組成物。
【請求項2】
前記脂肪族ヒドロキシ酸が、グリコール酸、乳酸、グリセリン酸、ヒドロキシ酪酸、タルトロン酸、リンゴ酸、酒石酸及びクエン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の着剤組成物。
【請求項3】
前記脂肪族ヒドロキシ酸の炭素数が10以下である、請求項1又は2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
前記ポリイソシアネート成分が、芳香族ポリイソシアネート又はその誘導体を含む、請求項1~3いずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
請求項1~4いずれか1項に記載の接着剤組成物からなる接着剤層が、少なくとも2つのシート状基材の間に積層された積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種プラスチックフィルム、及び金属蒸着フィルムを複数積層して、食品、医薬品、化粧品、洗剤、雑貨等の包装用積層体を製造する際に好適に用いられる、優れた接着機能を有する無溶剤型接着剤組成物に関する。さらに、本発明は、食品、医薬品、化粧品、洗剤、雑貨等の包装に用いられる積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食品、医薬品、化粧品、洗剤、雑貨等の包装材料として、アルミニウム箔等の金属箔あるいは金属蒸着フィルムとポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリエステル、ナイロン等のプラスチックフィルムを多層ラミネートして複合化したものが用いられている。これらのプラスチックフィルムと金属箔あるいは金属蒸着フィルムを貼り合わせる接着剤としては、芳香族多価カルボン酸無水物を反応させたポリオール及び有機イソシアネート化合物からなるものが知られている。
【0003】
また、従来、このような金属箔あるいは金属蒸着フィルムを含むラミネート複合フィルムに使用される溶剤型ラミネート接着剤としては、主剤としてポリオール化合物、硬化剤としてポリイソシアネート化合物を含有する2液硬化型接着剤が好適に用いられており、金属箔あるいは金属蒸着フィルムとの密着性を付与する目的で、ポリオール化合物と酸無水物を反応させた分子末端への酸基の導入や、添加剤としてリン酸、シランカップリング剤を併用する方法が広く知られている。
また、ポリオール化合物と酸無水物を反応させるためには100℃以上の高温反応が必要であり、ポリオール化合物としてポリエーテルポリオール化合物を用いると、主鎖の分解や未反応物残留のリスクを伴うことから、ポリエステルポリオール化合物末端に酸無水物を用いて酸基が導入する方法が主に選択される。酸無水物としては、無水フタル酸や無水トリメリット酸など、化合物中に芳香環を有する物質が好ましく選択される。
【0004】
しかしながら、ポリオール主剤末端に芳香環を有する酸基を導入すると、酸基のウレタン化触媒効果により硬化が促進され、主剤と硬化剤とを配合した後の粘度上昇が激しく、作業性が悪化する問題が発生する。この問題は、特に無溶剤型接着剤組成物において顕著に見られる。
【0005】
上記課題に対して、特許文献1では、酸無水物によって酸変性されたポリオールが有する末端水酸基を2級及び3級に限定し、立体障害の影響によって反応性を抑制することで作業性を改善させた2液硬化型無溶剤型接着剤組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-089734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の接着剤組成物を用いた積層体は、金属密着性や耐熱性が低いためヒートシール部を折り曲げると浮きが発生するという課題がある。加えて、主剤のポリオール化合物としてはポリエステルポリオール化合物に特定されており、ポリエーテルポリオール化合物を用いた場合の解決法は記載されていない。
したがって、本発明の目的は、主剤がポリエステルポリオールに制限されず、主剤と硬化剤とを配合した後の粘度上昇が抑制されるため作業性に優れ、且つヒートシール部の折
り曲げ浮き耐性に優れる接着剤組成物を提供することにある。また、本発明の目的は、該接着剤組成物を用いたヒートシール部の折り曲げ浮き耐性に優れる積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す実施形態により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の実施形態は、ポリオール成分、ポリイソシアネート成分、及び脂肪族ヒドロキシ酸を含み、前記脂肪族ヒドロキシ酸の含有量が、ポリオール成分とポリイソシアネート成分との合計質量に対して0.1質量%以上5.0質量%以下である、接着剤組成物に関する。
【0010】
本発明の他の実施形態は、前記脂肪族ヒドロキシ酸が、グリコール酸、乳酸、グリセリン酸、ヒドロキシ酪酸、タルトロン酸、リンゴ酸、酒石酸及びクエン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種である、上記着剤組成物に関する。
【0011】
本発明の他の実施形態は、前記脂肪族ヒドロキシ酸の炭素数が10以下である、上記接着剤組成物に関する。
【0012】
本発明の他の実施形態は、前記ポリイソシアネート成分が、芳香族ポリイソシアネート又はその誘導体を含む、上記接着剤組成物に関する。
【0013】
本発明の他の実施形態は、上記接着剤組成物からなる接着剤層が、少なくとも2つのシート状基材の間に積層された積層体に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、主剤と硬化剤とを配合した後の粘度上昇が抑制されるため作業性に優れ、且つヒートシール部の折り曲げ浮き耐性に優れる接着剤組成物を提供することができる。また、本発明により、該接着剤組成物を用いたヒートシール部の折り曲げ浮き耐性に優れる積層体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<接着剤組成物>
本発明の接着剤組成物は、ポリオール成分、ポリイソシアネート成分、及び脂肪族ヒドロキシ酸を含み、前記脂肪族ヒドロキシ酸の含有量が、ポリオール成分とポリイソシアネート成分との合計質量に対して0.1質量%以上5.0質量%以下であることを特徴とする。ヒドロキシ酸とは、水酸基を有するカルボン酸の総称であり、本発明における脂肪族ヒドロキシ酸とは、脂肪族カルボン酸に少なくとも1つの水酸基が置換したものである。
本発明の無溶剤型接着剤組成物は、該脂肪族ヒドロキシ酸を所定範囲量含むことで、ポリオール成分とポリイソシアネート成分が3次元的に架橋して塗膜を形成する際に、一部のイソシアネートが該脂肪族ヒドロキシ酸のヒドロキシ基と反応し、金属基材表面との親和性の高いカルボン酸がグラフトされた架橋塗膜が形成される。これにより、本発明の接着剤組成物は、該脂肪族ヒドロキシ酸のカルボン酸によって金属基材表面との接着力が向上し、一方のヒドロキシ基は架橋塗膜に取り込まれているため、積層体を折り曲げた際に生じる基材間のひずみに対して、優れた金属追随性を発揮して、浮き発生を抑制することができる。よって、本発明の接着剤組成物を用いた積層体は、食品、医薬品、化粧品、洗剤、雑貨等の様々な用途における包装材として利用することができる。
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0016】
<脂肪族ヒドロキシ酸>
脂肪族ヒドロキシ酸としては、例えば、グリコール酸、乳酸、グリセリン酸、ヒドロキシ酪酸、タルトロン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、イソクエン酸が挙げられる。中でも、ヒドロキシ基が架橋塗膜に取り込まれやすくなる点から、脂肪族ヒドロキシ酸中のヒドロキシ基は1級又は2級であることが好ましい。また、ポットライフ悪化抑制の観点から、脂肪族ヒドロキシ酸中のカルボン酸基数は3個以内であることが好ましい。
脂肪族ヒドロキシ酸は、少量の添加量でも効果を発揮できる点から、脂肪族ヒドロキシ酸のカルボン酸中の炭素原子数が18以下であることが好ましく、より好ましくは10以下、特に好ましくは7以下である。
脂肪族ヒドロキシ酸の含有量は、後述するポリオール成分とポリイソシアネート成分との合計質量に対して、0.1質量%以上5.0質量%以下である。0.1質量%未満であると、金属密着性が足りずに折り曲げ時の浮きを抑制できず、5.0質量%を超えると、イソシアネートとの反応点が多くなり、塗膜自体の架橋を阻害してしまい、接着強度の低下を引き起こす。
脂肪族ヒドロキシ酸の含有量は、より好ましくは、0.3~3.0質量%であり、特に好ましくは0.5~2.0質量%である。
【0017】
<ポリオール成分>
本発明に用いられるポリオール成分は特に制限されず、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリエステルアミドポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリヒドロキシアルカン、ひまし油又はそれらの混合物のほか、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリエチレングリコール等のグリコール;数平均分子量200~3,000のポリアルキレングリコール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3官能又は4官能の脂肪族アルコール;上記3官能又は4官能の脂肪族アルコールに、上記グリコール若しくはポリオールが付加したポリオールを用いることができる。これらは単独で使用、又は2種類以上を併用してもよい。
【0018】
ポリオール成分として好ましくはポリエステルポリオール又はポリエーテルポリオールを含むものである。
ポリエステルポリオールとしては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、無水フタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の二塩基酸若しくはそれらのジアルキルエステル又はそれらの混合物(以下、カルボキシル基成分ともいう)と、
エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3’-ジメチロールヘプタン、1,9-ノナンジオール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、ポリウレタンポリオール等のジオール類若しくはそれらの混合物(以下、水酸基成分ともいう)と、
をエステル化反応させて得られるポリエステルポリオール;或いは、ポリカプロラクト
ン、ポリバレロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオール;が挙げられる。
上記カルボキシル基成分及び水酸基成分は、2種以上を併用してもよい。
【0019】
ポリエーテルポリオールとしては、ポリエーテルジオール、ポリエーテルトリオール等が挙げられ、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のオキシラン化合物を、水、エチレングリコール、プロピレングリコール等の2官能低分量ポリオールを開始剤として重合して得られるポリエーテルジオール;エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のオキシラン化合物を、トリメチロールプロパン、グリセリン等の低分量トリオールを開始剤として重合して得られるポリエーテルトリオール;が挙げられる。
【0020】
上記ポリエステルポリオール又はポリエーテルポリオールは、さらにジイソシアネートを反応させたポリエステルポリウレタンポリオール又はポリエーテルポリウレタンポリオールであってもよいし、さらに酸無水物を反応させたものであってもよい。
上記ジイソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネートが挙げられる。
酸無水物としては、例えば、無水ピロメリット酸、無水メリト酸、無水トリメリット酸、トリメリット酸エステル無水物が挙げられる。トリメリット酸エステル無水物としては、例えば、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、プロピレングリコールビスアンヒドロトリメリテートが挙げられる。
【0021】
ポリオール成分の数平均分子量は、好ましくは1,000~100,000であり、より好ましくは1,000~10,000であり、特に好ましくは1,000~6,000である。数平均分子量が1,000以上であると、凝集力が十分であり、100,000以下であると、合成上、末端に多塩基酸若しくはその無水物を容易に反応させることができ、増粘やゲル化を抑制することができる。
なお本発明において数平均分子量(Mn)は、例えば、昭和電工社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「ShodexGPCSystem-21」、溶媒としてテトロヒドロフランを用いて測定したポリスチレン換算値として求めることができる。
【0022】
ポリオール成分の酸価は、好ましくは0~40mgKOH/g、より好ましくは0~10mgKOH/g、さらに好ましくは0~5mgKOH/g、特に好ましくは0~1.0mgKOH/g以下である。ポリオール成分の水酸基価は、好ましくは好ましくは1~200mgKOH/g、より好ましくは10~150mgKOH/gである。
【0023】
<ポリイソシアネート成分>
本発明の接着剤組成物はポリイソシアネート成分を含む。ポリイソシアネート成分としては、芳香族ポリイソシアネート又は脂肪族ポリイソシアネートが挙げられ、芳香族ポリイソシアネート又はその誘導体が好適に用いられる。これらポリイソシアネート成分は、単独又は2種以上を併用して用いることができる。
【0024】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート又は2,6-トリレンジイソシアネート若しくはその混合物、4,4'-トルエンジイソシアネート、ジアニシジンジ
イソシアネート、4,4'-ジフェニルエーテルジイソシアネート、2,2’-ジフェニ
ルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート若しくはその混合物、ω,ω’-ジイソシアネート-
1,4-ジエチルベンゼン、1,3-ビス(1-イソシアネート-1-メチルエチル)ベンゼン又は1,4-ビス(1-イソシアネート-1-メチルエチル)ベンゼン若しくはその混合物のような芳香族ジイソシアネート;トリフェニルメタン-4,4’,4’-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、2,4,6-トリイソシアネートトルエンのような芳香族トリイソシアネート;4,4’-ジフェニルジメチルメタン-2,2’-5,5’-テトライソシアネートのような芳香族ポリイソシアネート;が挙げられる。
【0025】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4’-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエート、1,3-キシリレンジイソシアネート又は1,4-キシリレンジイソシアネートが挙げられる。
【0026】
ポリイソシアネート成分は、前述の芳香族又は脂肪族のポリイソシアネートから誘導される誘導体であってもよい。当該誘導体としては、例えば、芳香族又は脂肪族のポリイソシアネートと公知のポリオールとの反応生成物が挙げられる。
公知のポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3'-ジメチロールプロパン、
シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールのような分子量200未満の低分子ポリオール;ポリプロピレングリコール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリヒドロキシアルカン、ひまし油、ポリウレタンポリオールのようなポリオール;が挙げられ、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
芳香族又は脂肪族のポリイソシアネートと公知のポリオールとの反応時におけるイソシアネート基と水酸基とのモル比(NCOモル数/OHモル数)は、好ましくは2以上である。
【0027】
ポリイソシアネート成分として好ましくは、ポリイソシアネートとポリプロピレングリコールとの反応生成物であり、より好ましくは、芳香族ポリイソシアネートとポリプロピレングリコールとの反応生成物である。ポリイソシアネート成分が芳香族骨格を含むことにより熱耐性が向上し、ヒートシール部折り曲げによる浮き発生を抑制することができるため好ましい。ポリプロピレングリコールの数平均分子量は、好ましくは200~5,000である。
【0028】
ポリイソシアネート成分におけるイソシアネート基含有率は、接着剤組成物が溶剤型である場合、好ましくは2~5質量%、より好ましくは4~10質量%である。接着剤組成物が無溶剤型である場合、好ましくは10~30質量%であり、より好ましくは15~25質量%である。上記範囲内にあることで、ガスバリア性の高いフィルム基材を用いた場合に、より外観の良好な積層体を形成することができる。イソシアネート基の含有率(質量%)は塩酸による滴定で求めることができる。
【0029】
<接着剤組成物の製造>
本発明の接着剤組成物は、ポリオール成分とポリイソシアネート成分と脂肪族ヒドロキシ酸とを必須とするものであり、上記成分を秤量しヘラ等を用いてよく撹拌することで製造することができる。接着剤組成物の全成分中のイソシアネート基と水酸基とのモル比(NCOモル数/OHモル数)は、好ましくは1.0~3.0であり、より好ましくは1.1~2.5である。また、ポリイソシアネート成分の含有量は、接着性能の観点から、全ポリオール成分100質量部に対し、好ましくは40~300質量部、より好ましくは70~200質量部である。
【0030】
接着剤組成物が溶剤型である場合、その好ましい粘度は、常温(25℃)において#3のザーンカップで30秒以下、より好ましくは20秒以下である。20秒以下であるとレベリング性が良好となり、塗工外観が優れるため好ましい。
【0031】
接着剤組成物が無溶剤型である場合、その好ましい粘度は、常温(25℃)~120℃、好ましくは常温~80℃において、100~10,000mPa・sであることが好ましく、より好ましくは1,000~5,000mPa・sである。100mPa・s以上であると接着剤の初期凝集力が優れる。10,000mPa・s以下であると塗工外観が優れる。
【0032】
(シランカップリング剤)
本発明の接着剤組成物は、金属箔等の金属系素材に対する接着強度を向上させる観点から、シランカップリング剤を含有することができる。シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基を有するトリアルコキシシラン;3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するトリアルコキシシラン;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のグリシジル基を有するトリアルコキシシラン;が挙げられる。これらは、各々単独で、又は2種以上を任意に組み合わせて使用できる。
シランカップリング剤の含有量は、全ポリオール成分100質量部に対し、好ましくは0.1~5質量部であり、より好ましくは0.2~3質量部である。上記範囲とすることで、金属箔に対する接着強度を向上することができる。
【0033】
(リン酸又はリン酸誘導体)
本発明の接着剤組成物は、金属箔等の金属系素材に対する接着強度を向上させる観点から、リン酸又はリン酸誘導体を含有することができ、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記リン酸としては、遊離の酸素酸を少なくとも1個有しているものであればよく、例えば、次亜リン酸、亜リン酸、オルトリン酸、次リン酸のようなリン酸類;メタリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、ポリリン酸、ウルトラリン酸のような縮合リン酸類;が挙げられる。また、リン酸の誘導体としては、例えば、上述のリン酸を遊離の酸素酸を少なくとも1個残した状態でアルコール類と部分的にエステル化したものが挙げられる。該アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリンのような脂肪族アルコール;フェノール、キシレノール、ハイドロキノン、カテコール、フロログリシノールのような芳香族アルコール;が挙げられる。
リン酸又はその誘導体の含有量は、接着剤組成物の固形分全量に対して、好ましくは0.01~10質量%、より好ましくは0.05~5質量%、特に好ましくは0.05~1質量%である。
【0034】
(その他の添加剤)
本発明の接着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、各種の添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、マイカ、タルク、アルミニウムフレーク、ガラスフレーク等の無機充填剤、層状無機化合物、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤等)、防錆剤、増粘剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、着色剤、フィラー、結晶核剤、硬化反応を調整するための触媒が挙げられる。
【0035】
〔積層体〕
本発明の積層体は、上述の接着剤組成物からなる接着剤層が、少なくとも2つのシート状基材の間に積層されたものであり、具体的には、接着剤組成物を第1のシート状基材に塗布して接着剤層を形成し、前記接着剤層に第2のシート状基材を重ね合わせ、両シート状基材の間に位置する前記接着剤層を硬化したものである。
シート状基材は特に制限されず、例えば、従来公知のプラスチックフィルム、紙、金属箔等が挙げられ、2つのシート状基材は同種のものでも異種のものでもよい。
プラスチックフィルムとしては、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂のフィルムを用いることができ、好ましくは熱可塑性樹脂のフィルムである。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、アセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、繊維素系プラスチックが挙げられる。シート状基材は、蒸着層等のバリア膜を備えていてもよく、該蒸着層としては、アルミニウム、シリカ、アルミナ等の蒸着層が挙げられる。
【0036】
第1のシート状基材は、好ましくはプラスチックフィルムである。プラスチックフィルムとしては、包装材に一般的に使用されるものが挙げられ、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ乳酸(PLA)のようなポリエステル樹脂フィルム;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)のようなポリオレフィン樹脂フィルム;ポリスチレン樹脂フィルム;ナイロン6、ポリ-p-キシリレンアジパミド(MXD6ナイロン)のようなポリアミド樹脂フィルム;ポリカーボネート樹脂フィルム;ポリアクリルニトリル樹脂フィルム;ポリイミド樹脂フィルム;これらの複層体(例えば、ナイロン6/MXD6/ナイロン6、ナイロン6/エチレン-ビニルアルコール共重合体/ナイロン6)や混合体等が挙げられる。中でも、機械的強度や寸法安定性を有するものが好ましい。
プラスチックフィルムは、好ましくは5μm以上50μm以下、より好ましくは10μm以上30μm以下の厚さを有するものである。
【0037】
第2のシート状基材が積層体の最外層となる場合、第2のシート状基材はシーラント基材であることが好ましい。
シーラント基材としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)や高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン、酸変性ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、酸変性ポリプロピレン、共重合ポリプロピレン、エチレン-ビニルアセテート共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、アイオノマーが挙げられる。
シーラント基材の厚みは特に制限されず、包装材への加工性やヒートシール性等を考慮すると、好ましくは10~150μmであり、より好ましくは20~70μmである。また、シーラント基材に数μm程度の高低差を有する凸凹を設けることで、滑り性や包装材の引き裂き性を付与することができる。
第2のシート状基材が、積層体の中間層となる場合、第2のシート状基材としては、前述のプラスチックフィルム、紙、金属箔等を好適に用いることができる。
【0038】
シート状基材は、基材上に印刷層を有していてもよい。
印刷層は、装飾、内容物の表示、賞味期間の表示、製造者、販売者等の表示、その他等
の表示や美感の付与のために、文字、数字、絵柄、図形、記号、模様等の所望の任意の印刷模様を形成する層であり、ベタ印刷層も含む。印刷層は、従来公知の顔料や染料を用いて形成することができ、印刷層の形成方法は特に限定されない。
一般的には、印刷層は、顔料や染料等の着色剤を含む印刷インキを用いて形成される。印刷インキの塗工方法は特に限定されず、グラビアコート法、フレキソコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、カーテンコート法、スピンコート法、インクジェット法等の方法により塗布することができる。これを放置するか、必要により送風、加熱、減圧乾燥、紫外線照射等を行うことにより印刷層を形成することができる。
印刷層は、好ましくは0.1μm以上10μm以下、より好ましくは1μm以上5μm以下、さらに好ましくは1μm以上3μm以下の厚さを有するものである。
【0039】
積層体を製造する方法としては、従来公知の方法が挙げられ、例えば、ラミネーターを用いて接着剤を一方のシート状基材の片面に塗布して未硬化の接着剤層を形成した後、塗布面と他方のシート状基材と貼り合わせ、次いで、常温若しくは加温下で接着剤層を硬化する方法が挙げられる。接着剤組成物の乾燥後塗布量は、好ましくは1~4g/m程度であり、積層体の厚みは、好ましくは10μm以上である。
【0040】
本発明の積層体の構成の一例を以下に挙げるが、これらに限定されるものではない。
2軸延伸ポリプロピレン(OPP)/印刷層/接着剤層/無延伸ポリプロピレン(CPP)、
OPP/印刷層/接着剤層/アルミニウム(AL)蒸着CPP、
OPP/印刷層/接着剤層/PE、
印刷層/OPP/接着剤層/CPP、
NY/印刷層/接着剤層/PE、
印刷層/NY/接着剤層/CPP
NY/印刷層/接着剤層/CPP、
PET/印刷層/接着剤層/CPP、
印刷層/PET/接着剤層/CPP
PET/印刷層/接着剤層/NY/接着剤層/CPP、
透明蒸着PET/印刷層/接着剤層/NY/接着剤層/CPP、
PET/印刷層/接着剤層/AL蒸着PET/接着剤層/PE、
PET/印刷層/接着剤層/AL/接着剤層/CPP、
PET/印刷層/接着剤層/AL/接着剤層/PE、
PET/印刷層/接着剤層/NY/接着剤層/AL/接着剤層/CPP、
PET/印刷層/接着剤層/AL/接着剤層/NY/接着剤層/CPP
【実施例0041】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。実施例及び比較例中の「部」及び「%」は、特に指定がない場合は「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0042】
〔数平均分子量(Mn)の測定方法〕
数平均分子量(Mn)は、昭和電工社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「ShodexGPCSystem-21」を用いて測定した。GPCは溶媒に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーであり、溶媒としてはテトロヒドロフラン、分子量の決定はポリスチレン換算で行った。
【0043】
〔酸価(AV)の測定方法〕
共栓三角フラスコ中に試料約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mLを加えて溶解した。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間持続した。その後、溶液が淡紅色を呈す
るまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定した。酸価は次の(式1)により求めた。(単位:mgKOH/g)。
(式1)酸価(mgKOH/g)=[{(b-a)×F×28.25}/S]
S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(mL)
b:空実験の0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(mL)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
【0044】
〔水酸基価(OHV)の測定方法〕
共栓三角フラスコ中に試料約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mLを加えて溶解した。更にアセチル化剤(無水酢酸25gをピリジンで溶解し、容量100mLとした溶液)を正確に5mL加え、約1時間攪拌した。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間持続する。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定した。水酸基価は次の(式2)により求めた。水酸基価は樹脂の乾燥状態の数値とした(単位:mgKOH/g)。
(式2)水酸基価(mgKOH/g)=[{(b-a)×F×28.25}/S]/(不揮発分濃度/100)+D
S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(mL)
b:空実験の0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(mL)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
D:酸価(mgKOH/g)
【0045】
〔NCO含有率(質量%)の測定方法〕
200mLの三角フラスコに試料約1gを量り採り、これに0.5Nジ-n-ブチルアミンのトルエン溶液10mL、及びトルエン10mLを加えて溶解した。次に、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間保持した後、溶液が淡紅色を呈するまで0.25N塩酸溶液で滴定した。NCO含有率(質量%)は以下の(式3)により求めた。
(式3):NCO(質量%)={(b-a)×4.202×F×0.25}/S
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.25N塩酸溶液の消費量(ml)
b:空実験の0.25N塩酸溶液の消費量(ml)
F:0.25N塩酸溶液の力価
【0046】
<ポリエーテルポリオールの製造>
(製造例1)
数平均分子量約400のポリプロピレングリコール(以下、PPG-400)を363.9部、数平均分子量約2,000のポリプロピレングリコール(以下、PPG-2000)を78.1部、グリセリンにポリプロピレングリコールを付加した数平均分子量約400のトリオール(以下、PPG-400-3官能)を78.1部、トリレンジイソシアネート(以下、TDI)を179.9部及び酢酸エチル300部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら80℃~90℃で5時間加熱してウレタン化反応を行い、IRにてイソシアネート基の消失を確認して、数平均分子量5,000のポリエーテルポリウレタンポリオールの溶液を得た。
次いで、得られたポリエーテルポリウレタンポリオール溶液に、脂肪族ヒドロキシ酸としてリンゴ酸20部を添加し、70~80℃で溶解するまで攪拌して、固形分濃度70%のポリエーテルポリオールと脂肪族ヒドロキシ酸との混合物(A-1)を得た。
【0047】
(製造例2)
PPG-400を363.7部、PPG-2000を198.8部、PPG-400-3官能を344.8部、TDIを92.7部、反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら80℃~90℃で5時間加熱してウレタン化反応を行い、IRにてイソシアネート基の消失を確認して、数平均分子量1,500のポリエーテルポリウレタンポリオールを得た。
次いで、得られたポリエーテルポリウレタンポリオールに、脂肪族ヒドロキシ酸としてD/L-乳酸15部を添加し、70℃以下で溶液が均一になるまで攪拌して、固形分濃度100%のポリエーテルポリオールと脂肪族ヒドロキシ酸との混合物(A-2)を得た。
【0048】
(製造例3)
PPG-400を343.2部、PPG-2000を191.9部、PPG-400-3官能を336.3部、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、4,4’-MDI)を128.6部、反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら80℃~90℃で3時間加熱してウレタン化反応を行い、IRにてイソシアネート基の消失を確認して、数平均分子量1,500のポリエーテルポリウレタンポリオールを得た。
次いで、得られたポリエーテルポリウレタンポリオールに、脂肪族ヒドロキシ酸としてD/L-乳酸3.1部を添加し、70℃以下で溶液が均一になるまで攪拌して、固形分濃度100%のポリエーテルポリオールと脂肪族ヒドロキシ酸との混合物(A-3)を得た。
【0049】
(製造例4~6)
D/L-乳酸の添加量を表1に記載の量に変更した以外は、製造例3と同様にして、固形分濃度100%のポリエーテルポリオールと脂肪族ヒドロキシ酸との混合物(A-4~A-6)を得た。
【0050】
(製造例7)
D/L-乳酸を12-ヒドロキシステアリン酸に変更した以外は、製造例4と同様にして、固形分濃度100%のポリエーテルポリオールと脂肪族ヒドロキシ酸との混合物(A-7)を得た。
【0051】
(製造例8)
製造例3で得られた固形分濃度100%のポリエーテルポリウレタンポリオールを、ポリエーテルポリオール(A-8)とした。
【0052】
【表1】
【0053】
表1中の略称を以下に示す。
PPG-400:数平均分子量約400のポリプロピレングリコール
PPG-2000:数平均分子量約2,000のポリプロピレングリコール
PPG-400-3官能:グリセリンにポリプロピレングリコールを付加した数平均分子量約400のトリオール
4,4’-MDI:4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート
TDI:トリレンジイソシアネート
【0054】
<ポリエステルポリオールの製造>
(製造例9)
撹拌機、温度系、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、エチレングリコール(以下、EGという)を55.6部、1,6-ヘキサンジオール(以下、1,6-HDI)を34.1部、2-メチル-1,3-プロパンジオール(以下、MPO)を143.8部、イソフタル酸(以下、IPA)を159.5部、テレフタル酸(以下、TPA)を106.6部、アジピン酸(以下、ADA)を140.4部仕込み、窒素気流下で攪拌しながら260℃まで昇温した。酸価が5mgKOH/g以下になるまで反応を続けた後に、反応容器内部を徐々に減圧し、1.3kPa以下で反応させ、酸価0.5mgKOH/g、水酸基価18mgKOH/g、数平均分子量約6,000のポリエステルポリオールを得た。
次いで、得られたポリエステルポリオールを80℃まで冷却した後、酢酸エチル360部とリンゴ酸10部とを添加し、70~80℃で溶解するまで攪拌して、固形分濃度64%のポリエステルポリオールと脂肪族ヒドロキシ酸との混合物(B-1)を得た。
【0055】
(製造例10)
撹拌機、温度系、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、ジエチレングリコール(以下、DEG)を465.6部、ADAを534.4部仕込み、窒素気流下で攪拌しながら230℃まで昇温した。酸価が10mgKOH/g以下になるまで反応を続けた後に、反応容器内部を徐々に減圧し、1.3kPa以下で反応させ、酸価0.5mgKOH/g、水酸基価56mgKOH/g、数平均分子量約2,000のポリエステルポリオールを得た。
次いで、得られたポリエステルポリオールを70℃まで冷却した後、D/L-乳酸を10部添加し、70℃以下で溶液が均一になるまで攪拌して、固形分濃度100%のポリエステルポリオールと脂肪族ヒドロキシ酸との混合物(B-2)を得た。
【0056】
(製造例11)
製造例9で得られた固形分濃度100%のポリエステルポリオールを、ポリエステルポリオール(B-3)とした。
【0057】
【表2】
【0058】
表2中の略称を以下に示す。
IPA:イソフタル酸
TPA:テレフタル酸
ADA:アジピン酸
EG:エチレングリコール
DEG:ジエチレングリコール
1,6-HD:1,6-ヘキサンジオール
MPO:2-メチル-1,3-プロパンジオール
【0059】
<ポリイソシアネート成分の製造>
(製造例12)
PPG-400を180.1部、PPG-2000を230.3部、PPG-400-3官能を18.3部、4,4’-MDIを300部、酢酸エチルを200部、反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら80℃~90℃で3時間加熱してウレタン化反応を行い、ポリイソシアネート溶液を得た。次いで、トリレンジイソシアネートのアダクト体(以下、TDI3量体)を71.3部追加し、70℃以下で溶液が均一になるまで攪拌して、固形分濃度80%、イソシアネート基含有率が4.8%のポリイソシアネート成分(C-1)を得た。
【0060】
(製造例13)
PPG-400を53.6部、PPG-2000を329.7部、PPG-400-3官能を36.8部、ADAと1,2-プロパンジオールからなる数平均分子量約2,000のポリエステルポリオール-1を106.2部、4,4’-MDIを398.7部、反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら80℃~90℃で3時間加熱してウレタン化反応を行い、ポリイソシアネート樹脂を得た。
次いで、ヘキサメチレンジイソシアネートのビゥレット体(以下、HDI3量体)を7
5部追加し、70℃以下で溶液が均一になるまで攪拌して、固形分濃度100%、イソシアネート基含有率が10.7%のポリイソシアネート成分(C-2)を得た。
【0061】
(製造例14)
PPG-400を187.7部、ADAと1,4-ブタンジオールからなる数平均分子量約2,000のポリエステルポリオール-2を155.9部、2,4’-MDIと4,4’-MDIの混合物(以下、液状MDI)を656.4部、反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら80℃~90℃で3時間加熱してウレタン化反応を行い、固形分濃度100%、イソシアネート基含有率が17.3%のポリイソシアネート成分(C-3)を得た。
【0062】
(製造例15)
PPG-400を202.1部、液状MDIを547.9部、反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら80℃~90℃で3時間加熱してウレタン化反応を行い、ついでポリメリックMDIと4,4’-MDIとの混合物(以下、クルードMDI)を250部追加し、70℃以下で溶液が均一になるまで攪拌して、固形分濃度100%、イソシアネート基含有率が21.5%のポリイソシアネート成分(C-4)を得た。
【0063】
【表3】
【0064】
表3中の略称を以下に示す。
PPG-400:数平均分子量約400のポリプロピレングリコール
PPG-2000:数平均分子量約2,000のポリプロピレングリコール
ポリエステルポリオール-1:アジピン酸と1,2-プロパンジオールからなる数平均分子量約2,000のポリエステルポリオール
ポリエステルポリオール-2:アジピン酸と1,4-ブタンジオールからなる数平均分子量約2,000のポリエステルポリオール
4,4’-MDI:4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート
液状MDI:2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、2,4’-MDI)が52質量%及び4,4’-MDIが48質量%の混合物
TDI3量体:トリレンジイソシアネートのアダクト体
HDI3量体:ヘキサメチレンジイソシアネートのビゥレット体
クルードMDI:ポリメリックMDIが60質量%及び4,4’-MDIが40質量%の混合物
CAT-10:トモフレックスCAT-10(芳香族系ポリイソシアネート、固形分濃度75%、東洋モートン社製)
【0065】
<接着剤組成物の製造>
[実施例1~9、比較例1、2]接着剤組成物1~11
ポリオール成分、ポリイソシアネート成分及び必要に応じて酢酸エチルを表4に記載の配合量で混合し、接着剤組成物1~11を得た。
【0066】
<接着剤組成物の評価>
得られた接着剤組成物について以下の評価を実施した。結果を表5に示す。
【0067】
〔溶剤型接着剤組成物のポットライフ〕
溶剤型の接着剤組成物1、8及び11について、接着剤組成物に0.6%の蒸留水を添加して攪拌した後、25℃でザーンカップ#3にて秒数を測定した。その後、25℃で1日間保管した後、同様にザーンカップ#3にて秒数の測定と、溶液外観の確認を行った。保管前後の粘度変化から下記基準で評価を行った。
A:保管後の秒数が20秒以内で、溶液外観が無色透明である(良好)
B:保管後の秒数が20秒を超え25秒以内で、溶液外観が無色透明である(使用可能)
C:保管後の秒数が25秒以内で、溶液外観が白濁である(使用不可)
D:A~C以外(不良)
【0068】
〔無溶剤型接着剤組成物のポットライフ〕
接着剤組成物2~7、9及び10について、配合直後及び配合後40℃30分間保管後の粘度をそれぞれ、東亜工業株式会社製のコーンプレート粘度計CV-1Sを用いて測定した。測定時の温度は40℃とした。保管前後の粘度変化から下記基準で評価を行った。
A:保管後の粘度が、配合直後の粘度の2倍未満である(良好)
B:保管後の粘度が、配合直後の粘度の2倍以上3倍未満である(使用可能)
C:保管後の粘度が、配合直後の粘度の3倍以上4倍未満である(使用不可)
D:保管後の粘度が、配合直後の粘度の4倍以上である(不良)
【0069】
〔積層体の作製〕
印刷インキ(東洋インキ(株)製、リオアルファR631白)を、酢酸エチル/IPA混合溶剤(質量比70/30)を用いて、25℃、ザーンカップ#3の粘度が16秒になるように希釈した。厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製「エステルフィルムE5102」、以下、PET)上に、希釈した印刷インキを、版深35μmのベタ版を備えたグラビア校正機を用いて、印刷速度50m/minで印刷した後、50℃で乾燥した。印刷層の厚みは0.5~1μmの範囲内とした。
次いで、得られた積層体の印刷層上に、溶剤型の接着剤物についてはドライラミネーターを用いて、固形分塗布量2.0~3.5g/mとなるように調整して塗布、乾燥を行った。一方、無溶剤型の接着剤組成物については無溶剤ラミネーターを用いて、固形分塗布量2.0~3.5g/mとなるように調整して塗布した。
次いで、厚み12μmアルミ蒸着PETフィルム(麗光社製「ダイアラスターH27」、以下、VM-PET)のアルミ蒸着面と、上記得られた積層体の接着剤塗布面とを貼り合わせた。
次いで、得られた積層体のVM-PET側のPET上に、先程と同様にして接着剤組成物を塗布し、塗布面を、厚み100μmの表面コロナ放電処理をした直鎖状低密度ポリエ
チレンフィルム(三井東セロ社製「TUX-FCD」、以下、LLDPE)と貼り合せた後、40℃で2日間保温して接着剤を硬化させて、PET/印刷層/接着剤層/VM-PET/接着剤層/LLDPEの構成である積層体を得た。
【0070】
〔ヒートシール(HS)部の折り曲げによる浮き耐性〕
得られた積層体を、幅6cm長さ10cmのサイズに切り取り、LLDPE面を重ねるように折り曲げて、幅6cm長さ5cmのサイズとした。次いで、折り目から3cmの範囲(幅6cm長さ3cm)について、ヒートシール処理(180℃、2.0kg/m、1.0秒)を行った後、10秒程度室温下で放冷した。次いで、ヒートシールされた部分を半分に折り曲げ、折り曲げた箇所を机の角で5往復強く扱き、折り目を軽く広げたときに谷部に白線が生じていないかを目視で確認した。その外観から、以下の基準で判断した。
A:白線無し、又は、折り目の1/30未満の白線が発生(良好)
B:折り目の1/30以上、1/3未満に白線が発生(使用可能)
C:折り目の1/3以上に白線が発生(使用不可)
D:折り目周辺に広く白線が発生(不良)
【0071】
〔接着強度〕
得られた積層体を長さ300mm幅15mmに切り取り試験片とした。インストロン型引張試験機を使用し、25℃の環境下にて、剥離速度300mm/分の剥離速度で引張り、15mm幅でのPET/VMPET間のT型剥離強度(N/15mm)を測定した。この試験を5回行い、その平均値を求め以下の基準にて評価した。
A:接着力が1.5N/15mm以上(良好)
B:接着力が1.0N/15mm以上、1.5N/15mm未満(使用可能)
C:接着力が0.5N/15mm以上、1.0N/15mm未満(使用不可)
D:接着力が0.5N/15mm未満(不良)
【0072】
【表4】
【0073】
表4中の略称を以下に示す。
C-5:トモフレックスCAT-10(芳香族系ポリイソシアネート、固形分濃度75%、東洋モートン社製)
【0074】
評価結果によれば、本発明の接着剤組成物は、ポットライフと接着強度を維持しつつ、ヒートシール部分折り曲げ時の浮き抑制効果を示した。
特に、ヒドロキシ酸をポリエーテルポリオール主剤へと添加した際に、優れたHS部折り曲げ耐性を示した。これは、ヒドロキシ酸のポリエーテル樹脂への相溶性が高いことに起因すると推察される。
上記により、本発明の接着剤組成物は、脂肪鎖を有するヒドロキシ酸を含有させることでヒートシール部を折り曲げた時に生じやすい浮きへの耐性を示し、且つ、脂肪鎖カルボン酸であることから、芳香族カルボン酸に比べてイソシアネートの活性化が抑制され、ポットライフへの影響を最小限に抑えることができている。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール成分、ポリイソシアネート成分、及び脂肪族ヒドロキシ酸を含み、
前記脂肪族ヒドロキシ酸の含有量が、ポリオール成分とポリイソシアネート成分との合計質量に対して0.1質量%以上5.0質量%以下であり、
前記脂肪族ヒドロキシ酸が、グリコール酸、乳酸、グリセリン酸、ヒドロキシ酪酸、タルトロン酸、リンゴ酸、酒石酸及びクエン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
溶剤型又は無溶剤型である、接着剤組成物。
【請求項2】
前記脂肪族ヒドロキシ酸の炭素数が10以下である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記ポリイソシアネート成分が、芳香族ポリイソシアネート又はその誘導体を含む、請求項1又は2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
前記ポリオール成分の数平均分子量が、1,000~100,000である、請求項1~3いずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
接着剤組成物の全成分中のイソシアネート基と水酸基とのモル比(NCOモル数/OHモル数)が、1.0~3.0である、請求項1~4いずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
請求項1~いずれか1項に記載の接着剤組成物からなる接着剤層が、少なくとも2つのシート状基材の間に積層された積層体。