(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037985
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】人工骨膜
(51)【国際特許分類】
A61L 27/24 20060101AFI20240312BHJP
A61L 27/46 20060101ALI20240312BHJP
A61L 27/54 20060101ALI20240312BHJP
A61L 27/22 20060101ALI20240312BHJP
A61L 27/40 20060101ALI20240312BHJP
A61L 24/00 20060101ALI20240312BHJP
A61L 24/02 20060101ALI20240312BHJP
A61L 24/10 20060101ALI20240312BHJP
A61L 27/12 20060101ALI20240312BHJP
A61L 27/02 20060101ALI20240312BHJP
A61L 15/32 20060101ALN20240312BHJP
【FI】
A61L27/24
A61L27/46
A61L27/54
A61L27/22
A61L27/40
A61L24/00 310
A61L24/02
A61L24/00 210
A61L24/10
A61L27/12
A61L27/02
A61L15/32 100
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023214650
(22)【出願日】2023-12-20
(62)【分割の表示】P 2021514090の分割
【原出願日】2019-09-13
(31)【優先権主張番号】2018903480
(32)【優先日】2018-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(71)【出願人】
【識別番号】514316178
【氏名又は名称】オーソセル・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミン-ハオ・ジョン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】より良好な一体化の特性を有し、骨軟骨移植片を採取する必要性がない、自家骨軟骨移植片の生化学的及び機械的特性を有する人工骨膜、また、改善された骨修復方法、特に、骨成長を促進し、骨欠損を修復するために長期間にわたってBMP-2のような骨活性剤を局所的に送達するために使用することができる人工骨膜を提供する。
【解決手段】機能化コラーゲン含有膜及び薬物-担体混合物を含む人工骨膜であって、前記薬物-担体混合物が、少なくとも1つの治療剤及びカルシウム含有担体混合物を含む、人工骨膜を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能化コラーゲン含有膜及び薬物-担体混合物を含む人工骨膜であって、前記薬物-担体混合物が、少なくとも1つの治療剤及びカルシウム含有担体混合物を含む、人工骨膜。
【請求項2】
前記機能化コラーゲン含有膜がヒドロキシアパタイト機能化コラーゲン含有膜である、請求項1に記載の人工骨膜。
【請求項3】
前記治療剤が骨活性剤である、請求項1又は2に記載の人工骨膜。
【請求項4】
前記骨活性剤が骨芽細胞を活性化する、請求項3に記載の人工骨膜。
【請求項5】
前記骨活性剤が破骨細胞を阻害する、請求項3に記載の人工骨膜。
【請求項6】
前記骨活性剤が、PGE1;PGE2;EP2受容体アゴニスト;EP4受容体アゴニスト;EP2受容体/EP4受容体二重アゴニスト;有機ビスホスホネート;カテプシンK阻害剤;エストロゲン又はエストロゲン受容体モジュレーター;カルシトニン;破骨細胞プロトンATPアーゼの阻害剤;HMG-CoA還元酵素の阻害剤;インテグリン受容体アンタゴニスト;RANKL阻害剤;骨同化作用剤;骨形成剤;ビタミンD又は合成ビタミンDアナログ;アンドロゲン又はアンドロゲン受容体モジュレーター;SOST阻害剤;血小板由来成長因子;これらの薬学的に許容される塩;及びこれらの混合物のうちの1つ以上を含む、請求項3~5のいずれか一項に記載の人工骨膜。
【請求項7】
前記有機ビスホスホネートが、アレンドロン酸、アレンドロン酸ナトリウム、イバンドロネート、リセドロネート、ゾレドロネート、ゾレドロン酸、エチドロネート、パミドロネート、チルドロネート、ネリドロネート及びオルパドロネートからなる群から選択される、請求項6に記載の人工骨膜。
【請求項8】
骨形成タンパク質が、BMP-2、BMP-4及びBMP-7からなる群から選択される、請求項6に記載の人工骨膜。
【請求項9】
前記薬物-担体混合物が、ナトリウムチャネル遮断剤、TRPV1アンタゴニスト、エンドセリンアンタゴニスト、ブラジキニンアンタゴニスト、ASIC阻害剤、TrkA阻害剤又は放射性核種を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の人工骨膜。
【請求項10】
前記薬物-担体混合物が、NSAID、コルチコステロイド及びサイトカイン阻害剤からなる群から選択される抗炎症剤を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の人工骨膜。
【請求項11】
前記薬物-担体混合物が抗細菌剤及び/又は抗真菌剤を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の人工骨膜。
【請求項12】
前記抗細菌剤が、セフェム、セファロスポリン、キノロン抗生物質及び/又はマクロライドである、請求項11に記載の人工骨膜。
【請求項13】
前記抗真菌剤が、フルコナゾール、クロトリマゾール及び/又はイトラコナゾールである、請求項11に記載の人工骨膜。
【請求項14】
前記薬物-担体混合物が抗がん剤を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の人工骨膜。
【請求項15】
前記抗がん剤が、ビンクリスチン、ドキソルビシン、エトポシド、ゲムシタビン及び/又はメトトレキサートである、請求項14に記載の人工骨膜。
【請求項16】
ヒドロキシアパタイト機能化コラーゲン含有膜及び薬物-担体混合物を含む人工骨膜であって、前記薬物-担体混合物が、BMP-2及びゾレドロン酸を含む、人工骨膜。
【請求項17】
骨を修復する方法であって、機能化コラーゲン含有膜及び薬物-担体混合物を含む人工骨膜を埋め込む工程を含み、前記薬物-担体混合物が、少なくとも1つの治療剤及びカルシウム含有担体混合物を含む、方法。
【請求項18】
前記機能化コラーゲン含有膜がヒドロキシアパタイト機能化コラーゲン含有膜である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記薬物-担体混合物が骨活性剤を含む、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記骨活性剤が骨芽細胞を活性化する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記骨活性剤が破骨細胞を阻害する、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記骨活性剤が、PGE1;PGE2;EP2受容体アゴニスト;EP4受容体アゴニスト;EP2受容体/EP4受容体二重アゴニスト;有機ビスホスホネート;カテプシンK阻害剤;エストロゲン又はエストロゲン受容体モジュレーター;カルシトニン;破骨細胞プロトンATPアーゼの阻害剤;HMG-CoA還元酵素の阻害剤;インテグリン受容体アンタゴニスト;RANKL阻害剤;骨同化作用剤;骨形成剤;ビタミンD又は合成ビタミンDアナログ;アンドロゲン又はアンドロゲン受容体モジュレーター;SOST阻害剤;血小板由来成長因子;これらの薬学的に許容される塩;及びこれらの混合物のうちの1つ以上を含む、請求項19~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記有機ビスホスホネートが、アレンドロン酸、アレンドロン酸ナトリウム、イバンドロネート、リセドロネート、ゾレドロネート、ゾレドロン酸、エチドロネート、パミドロネート、チルドロネート、ネリドロネート及びオルパドロネートからなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
骨形成タンパク質がBMP-2、BMP-4及びBMP-7からなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記少なくとも1つの治療剤が、ナトリウムチャネル遮断剤、TRPV1アンタゴニスト、エンドセリンアンタゴニスト、ブラジキニンアンタゴニスト、ASIC阻害剤、TrkA阻害剤又は放射性核種を含む、請求項17~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記少なくとも1つの治療剤が、NSAID、コルチコステロイド及びサイトカイン阻害剤からなる群から選択される抗炎症剤を含む、請求項17~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記少なくとも1つの治療剤が抗細菌剤及び/又は抗真菌剤を含む、請求項17~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記抗細菌剤が、セフェム、セファロスポリン、キノロン抗生物質及び/又はマクロライドである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記抗真菌剤が、フルコナゾール、クロトリマゾール及び/又はイトラコナゾールである、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記少なくとも1つの治療剤が抗がん剤を含む、請求項17~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記抗がん剤が、ビンクリスチン、ドキソルビシン、エトポシド、ゲムシタビン及び/又はメトトレキサートである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
骨を修復する方法であって、機能化コラーゲン含有膜及び薬物-担体混合物を含む人工骨膜を埋め込む工程を含み、前記薬物-担体混合物が、BMP-2及びゾレドロン酸を含む、方法。
【請求項33】
前記機能化コラーゲン含有膜がヒドロキシアパタイト機能化コラーゲン含有膜である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
骨欠損を修復する方法であって:
(i) 前記骨欠損に、移植片材料を埋め込む工程;及び
(ii) 前記移植片を、機能化コラーゲン含有膜で被覆する工程
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨の修復のための人工骨膜、システム及び方法、並びに骨活性剤のような治療剤を局所に送達するための人工骨膜の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、多くの医療的処置は、疾患や加齢のため劣化しているか、損傷(例.骨折)した骨が再生することを当てにしている。さまざまな外科的処置が利用可能であるが、現代医学の進歩により、特定の技術が強化され、ときにはこれらの外科的処置に代わることさえも可能となった。
【0003】
骨膜は骨の周囲にある結合組織で、軟骨と骨の両者を再生させる能力を有する。この組織は、骨折の修復を担う未分化間葉幹細胞を含むと考えられている内側の形成層と、外側の線維層という2つの異なる層を含む。損傷した関節軟骨の修復のための生物学的表面再建において骨膜を使用することに成功している。深部の骨軟骨欠損については、骨移植片を使用して、損傷した軟骨下骨を置き換えることができる。しかしながら、骨移植片の使用に伴う問題として、適切なサイズ及び形状の移植片の取得、移植部位の病状、並びに周囲組織との一体化が挙げられる。
【0004】
より良好な一体化の特性を有し、骨軟骨移植片を採取する必要性がない、自家骨軟骨移植片の生化学的及び機械的特性を有する人工骨膜の開発は非常に魅力的であろう。
【0005】
人工骨膜のさらなる利点は、BMP-2のような骨活性薬といった治療剤を皮質骨再生のための送達に使用できることである。
【0006】
組換えヒトBMP-2(rhBMP-2)を送達に使用される既存の材料は、FDAによって承認された多孔質コラーゲンスポンジである。他のrhBMP-2の担体は文献にも記載されている(Morales et al., (2017), J Drug Delivery Sciences and Technology, Vol 42)。承認されている生体材料に伴う現在の問題は、タンパク質の急激な放出をもたらすその急速な分解及び全体的な正味の骨形成を低減させる二次的な破骨細胞促進作用である。多孔質生体材料は、rhBMP-2を送達することによる全般的な骨再生に使用されるが、Horstmann及び協力者らは、これらの材料が、皮質骨に突出し、皮質骨治癒を遅らせる傾向にあることを報告している(Horstmann et al. (2018), Tissue Eng. Part A, Vol. 23)。したがって、臨床的な観点から、細胞の鋳型及び成長因子の局所放出を提供することによって、海綿骨間隙充填剤が皮質骨に突出することを防止し、同時に、皮質骨治癒の自然過程を促進することができる、薄い生体材料の形態をした膜の必要性が存在する。海綿骨治癒の過程は、皮質骨治癒とは異なっており、本発明は、主として皮質骨再生を意図している。海綿骨は任意の骨代用材を用いて治療することができるが、皮質骨は特定の生体材料特性を必要とする。
【0007】
したがって、改善された骨修復方法、特に、骨成長を促進し、骨欠損を修復するために長期間にわたってBMP-2のような骨活性剤を局所的に送達するためにも使用することができる人工骨膜の開発に対する必要性が残っている。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、人工骨膜、並びに骨の修復及び治療剤の骨への送達に関する方法を提供する。治療剤は、骨欠損を修復するか骨成長を促進する骨活性剤、骨に関連する疼痛を治療する骨活性剤、炎症関連状態(例.関節炎)を治療するための抗炎症剤、骨のがんを治療するための抗がん薬、治療部位における感染症を治療若しくは予防するための抗微生物剤、又はこれらの組合せであってもよい。
【0009】
本発明の一側面は、機能化コラーゲン含有膜及び薬物-担体混合物を含む人工骨膜であって、薬物-担体混合物が、少なくとも1つの治療剤及びカルシウム含有担体混合物を含む人工骨膜を提供する。
【0010】
本発明の別の側面は、骨を修復する方法であって、機能化コラーゲン含有膜及び薬物-担体混合物を含む人工骨膜を埋め込む工程を含み、薬物-担体混合物が、少なくとも1つの治療剤及びカルシウム含有担体混合物を含む方法を提供する。
【0011】
骨を修復する方法における使用のための、機能化コラーゲン含有膜及び薬物-担体混合物を含む人工骨膜であって、薬物-担体混合物が、少なくとも1つの治療剤及びカルシウム含有担体混合物を含む人工滑膜もまた開示される。
【0012】
本発明のある特定の態様において、機能化コラーゲン含有膜はヒドロキシアパタイト機能化コラーゲン含有膜であり、一方でカルシウム含有担体混合物はコラーゲン系である。
【0013】
したがって、一側面において、本発明は、ヒドロキシアパタイト機能化コラーゲン含有膜及び薬物-担体混合物を含む人工骨膜であって、薬物-担体混合物がBMP-2及びゾレドロン酸(ZA)を含む人工骨膜を提供する。
【0014】
本発明のある特定の態様において、治療剤は骨芽細胞を活性化する化合物を含む骨活性剤である。他の態様において、治療剤は破骨細胞を阻害する骨活性剤である。なおも他の態様において、治療剤は、PGE1;PGE2;EP2受容体アゴニスト;EP4受容体アゴニスト;EP2受容体/EP4受容体二重アゴニスト;有機ビスホスホネート;カテプシンK阻害剤;エストロゲン又はエストロゲン受容体モジュレーター;カルシトニン;破骨細胞プロトンATPアーゼの阻害剤;HMG-CoA還元酵素の阻害剤;インテグリン受容体アンタゴニスト;RANKL阻害剤;骨同化作用剤;骨形成剤;ビタミンD又は合成ビタミンDアナログ;アンドロゲン又はアンドロゲン受容体モジュレーター;SOST阻害剤;血小板由来成長因子;これらの薬学的に許容される塩;及びこれらの混合物のうちの1つ以上を含む骨活性剤である。
【0015】
本発明の一側面は、骨を修復する方法であって、機能化コラーゲン含有膜及び薬物-担体混合物を含む人工骨膜を埋め込む工程を含み、薬物-担体混合物がBMP-2及びゾレドロン酸を含む方法を提供する。
【0016】
一態様において、機能化コラーゲン含有膜はヒドロキシアパタイト機能化コラーゲン含有膜である。
【0017】
患者における骨を修復する方法における使用のための、機能化コラーゲン含有膜及び薬物-担体混合物を含む人工骨膜であって、薬物-担体混合物がBMP-2及びゾレドロン酸を含む人工滑膜もまた開示される。
【0018】
本発明の一側面において、患者における骨欠損を修復する方法であって:
(i) 前記骨欠損に、骨移植片材料を埋め込む工程;と
(ii) 前記移植片を、ヒドロキシアパタイト機能化コラーゲン含有膜で被覆する工程;と
を含む方法を提供する。
【0019】
患者における骨欠損を修復する方法における使用のための、ヒドロキシアパタイト機能化コラーゲン含有膜で被覆された骨移植片材料も開示される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、材料の構造及びコラーゲン線維の整列の概要を示す。
【
図2】
図2は、脛骨欠損モデルの外科的処置を示す。
【
図3】
図3は、外科的処置の8週間後の脛骨欠損実験のマイクロCTによる定量を示す。
【
図4】
図4は、マイクロCTを使用した皮質骨治癒の評価を示す。
【
図5】
図5は、脛骨欠損治癒の組織学的分析を示す。
【
図6】
図6は、外科的処置の4週間後の腹筋パウチから採取した試料のX線撮影を示す。
【
図7】
図7は、骨間隙内に設置されるセラミック又はポリマー生体材料の格納デバイスとしてのコラーゲン膜の役割を示す。
【
図8】
図8は、rhBMP-2含有溶液と一緒に用いたMedtronic社が製造しINFUSE(登録商標)骨移植片として販売されている吸収性コラーゲンスポンジ(ACS)と、rhBMP-2及びZAを含む本発明のコラーゲン含有膜との比較実験を示す。データはCTのデータで、ACSについてはn=8/群、コラーゲン膜についてはn=5/群の平均±標準偏差を(上部に示す)表す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
外傷、感染症又は腫瘍によって生じた骨欠損の修復では、失われた/取り除かれた材料を、同種、自家又は合成の移植片材料で置き換えることが通常である。骨の欠損が皮質骨の喪失を伴う場合、海綿骨で治癒が生じていたとしても、新たな皮質骨が構築されるには相当な時間がかかる。皮質骨欠損のサイズによっては、特にセグメントである場合には、治癒しない可能性がある。同じことが、全ての強い衝撃による骨折の最大で5%を占める、癒合が不良な骨折の場合にも当てはまる。
【0022】
骨膜細胞は皮質骨の治癒で強力な役割を有するため、骨膜は、骨欠損の治癒の成功に関与していると考えられる。皮質骨欠損を治療する特別な方法は、スペーサーを一時的に挿入して、スペーサーの周囲に骨膜に似た軟部組織のシェルを作成し(代謝活性が高くなる)、次いで、数カ月後にスペーサーを除去し、骨を移植するという方法である。そのようにして形成される一時的な骨膜は、再縫合され、移植片が、正常な骨となることを可能にする。
【0023】
本発明の人工骨膜は、コラーゲン含有膜が骨欠損部の被覆物として作用し、一部の側面では代替材料も提供するため、骨欠損を修復するための理想的な材料である。本発明の人工骨膜は、膨隆、漏出を低減させ、生体分子で機能化されると新たな皮質骨の架橋を形成する。これは、骨に又はその周囲に、接着、縫合又は周縁ループによって結びつけられてもよい。それは、オンレー又はインレー技法を用いて皮質骨の下に挿入されて適用されてもよい。骨活性剤で機能化されると、それは皮質骨の再生を加速させるであろう。
【0024】
広範な側面において、本発明は機能化されているコラーゲン含有膜に関する。
【0025】
「コラーゲン」という用語は、本明細書では処理されたもの又は他の方法で修飾されたものを含む全てのコラーゲンを指す。好ましいコラーゲンは、免疫原性のテロペプチド領域を除去するために処理され(「アテロペプチドコラーゲン」)、可溶性で、線維状に再構成される。
【0026】
「コラーゲン含有膜」という用語は、当該技術分野において公知の方法で製造され、例えば、米国特許第7,096,688号に開示されたコラーゲン含有組織の破片(piece)又はセグメントを指す。コラーゲン含有膜は幾何学的形状であってもよいが、通常、実質的に平面で、所定の位置で下の組織又は上の組織の形状に一致していてもよい。
【0027】
コラーゲン含有膜は、好ましくは以下の性質を有する:
a) 組織との一体化及び血管新生を促進するような方法で相互に接続する細孔;
b) 最終的にコラーゲン含有膜が正常組織に置き換わるような生分解性及び/又は生体吸収性;
c) 細胞の付着、増殖及び分化を促進する表面の化学的性質;
d) 強度と柔軟性、並びに
e) 低い免疫原性。
【0028】
コラーゲン含有膜は、通常、哺乳動物に見られる高密度の結合組織を含む「コラーゲン含有組織」から調製又は製造される。「コラーゲン含有組織」という用語は、コラーゲンを含む哺乳類から単離することができる皮膚、筋肉等を意味する。「コラーゲン含有組織」という用語は、コラーゲン又はコラーゲン含有材料が体外で組み立て又は製造された、「合成的に」生成された組織も含む。
【0029】
一部の態様において、コラーゲン含有組織は、ヒツジ、ウシ、ブタ又はヒトを含むがこれらには限定されない哺乳動物から単離される。他の態様において、コラーゲン含有組織はヒトから単離される。
【0030】
一部の態様において、コラーゲン含有組織は「自己」、すなわち、治療を必要とする患者の体から単離される。
【0031】
一部の態様において、コラーゲン含有膜は80%を超えるI型コラーゲンを含む。他の態様において、コラーゲン含有膜は少なくとも85%のI型コラーゲンを含む。なおも他の態様において、コラーゲン含有膜は90%を超えるI型コラーゲンを含む。
【0032】
コラーゲン含有膜は、当該技術分野において公知の方法、ただし、1つの好ましい方法は、以下の(i)~(iv) の工程を含む:
(i) コラーゲン含有組織を分離し、エタノール溶液中で組織をインキュベートする;
(ii) 含まれている非コラーゲン性タンパク質を変性させるために、無機塩及び陰イオン性界面活性剤を含む第1の溶液中で、工程(i)のコラーゲン含有組織をインキュベートする;
(iii) 無機酸を含む第2の溶液中で、工程(ii)で得たコラーゲン含有組織を前記材料中のコラーゲンが変性するまでインキュベートする;並びに
(iv) 無機酸を含む第3の溶液中で、工程(iii)で得たコラーゲン含有組織を、前記組織内のコラーゲン束が整列することを可能にするのに十分な時間、同時機械的刺激とともにインキュベートする、ここで、前記機械的刺激は、コラーゲン含有組織に周期的に張力を加えることを含む
によって製造してもよい。
【0033】
第1の溶液として、ルイス酸と錯体を形成することができる無機塩を使用できることが理解される。一部の態様において、無機塩は、塩化トリメチルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、過塩素酸塩及びトリフルオロメタンスルホナートからなる群から選択される。他の態様において、無機塩は塩化リチウム(LiCl)である。
【0034】
第1の溶液として、任意の陰イオン性界面活性剤を使用することができるが、一部の態様において、前記陰イオン性界面活性剤は、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩及びアルキルアリールスルホン酸塩からなる群から選択される。特に有用な陰イオン性界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)などのアルキル硫酸塩を含む。
【0035】
一部の態様において、第1の溶液は、約1%(v/v)のSDSと約0.2%(v/v)のLiClを含む。
【0036】
一部の態様において、第2の溶液中の無機酸は約0.5%(v/v)のHClを含み、第3の溶液中の無機酸は約1%(v/v)のHClを含む。
【0037】
各工程におけるインキュベーションの時間は、(i) コラーゲン含有組織の種類;(ii) 無機塩/酸、及び/又は陰イオン性界面活性剤の種類;(iii) 使用する各無機塩/酸、及び/又は陰イオン性界面活性剤の強度(濃度)、並びに (iv) インキュベーションの温度、に応じて変化することが当業者に理解される。一部の態様において、工程(i)のインキュベーション時間は少なくとも8時間である。他の態様において、工程(ii)のインキュベーション時間は60分未満であり、一方で他の態様において、工程(iii)のインキュベーション時間は少なくとも20時間である。
【0038】
一部の態様において、工程(ii)のインキュベーションは約4℃で行う。他の態様において、工程(ii)のインキュベーションは少なくとも12時間行う。
【0039】
一部の態様において、第2の溶液は約0.5%(v/v)のHClを含む。
【0040】
一部の態様において、工程(iii)のインキュベーションは約30分間行う。他の態様において、工程(iii)のインキュベーションは振とうしながら行う。
【0041】
一部の態様において、第3の溶液は約1%(v/v)のHCl溶液を含む。
【0042】
一部の態様において、工程(iv)のインキュベーションは、約12~36時間、好ましくは約24時間行う。他の態様において、工程(iv)のインキュベーションは振とうしながら行う。
【0043】
一部の態様において、この方法は、工程(iii)と工程(iv)の間に中和工程をさらに含み、ここでは、前記コラーゲン含有組織と約0.5%(v/v)NaOHのインキュベーションを含む。
【0044】
一部の態様において、この方法は、工程(iv)のコラーゲン含有組織をアセトンと共にインキュベートし、次いでコラーゲン含有組織を乾燥させることを含む工程(v)をさらに含む。
【0045】
一部の態様において、この方法は、脂肪及び/又は血管の除去を可視化及び促進するために、工程(ii)と(iii)の間、及び/又は工程(iii)と工程(iv)の間に、コラーゲン含有組織とグリセロールを接触させる工程をさらに含む。
【0046】
グリセロールは、脂肪及び/又は血管の除去を容易にする時間、コラーゲン含有組織と接触させてもよい。一部の態様において、接触時間は少なくとも10分である。
【0047】
一部の態様において、この方法は、工程(ii)と(iii)の間、及び/又は工程(iii)と(iv)の間で、コラーゲン含有組織の洗浄工程をさらに含む。工程(ii)と(iii)の間に行う洗浄工程の目的は、変性タンパク質の除去である。したがって、変性タンパク質を除去することができる洗浄溶液を使用することができる。一部の態様において、工程(ii)と(iii)の間に使用する洗浄溶液はアセトンである。
【0048】
アセトンによる洗浄後、コラーゲン含有組織を滅菌水でさらに洗浄する。
【0049】
一部の態様において、コラーゲン含有組織は、NaOH:NaCl溶液でさらに洗浄する。コラーゲン含有組織をNaOH:NaClで洗浄する場合、さらに滅菌水で洗浄することが好ましい。
【0050】
一部の態様において、工程(iv)の後、コラーゲン含有組織を第1の溶液でさらに洗浄する。
【0051】
本明細書に記載の方法で用いる「同時機械的刺激」という用語は、コラーゲン含有組織の化学処理中にコラーゲン含有組織を引き延ばす工程を指す。前記コラーゲン含有組織は、静的及び/又は周期的な引き延ばしを受けてもよい。したがって、一部の態様において、同時機械的刺激は
(i) コラーゲン含有組織の所定の期間の引き延ばし;
(ii) コラーゲン含有組織の所定の期間の弛緩;並びに
(iii) 工程(i)及び(ii)のn回の繰り返し(nは1以上の整数)
を含んでいてもよい。
【0052】
機械的刺激でコラーゲン含有組織を引き延ばす場合、コラーゲン含有組織は、好ましくはその長軸に沿って引き延ばす。
【0053】
一部の態様において、同時機械的刺激は、コラーゲン含有組織に張力を周期的に加えることを含み、前記張力の周期性は、約10秒~約20秒の引き延ばし時間及び約10秒の弛緩時間を含み、それから生じるひずみは約10%で、コラーゲン含有組織内のコラーゲン束が本明細書に記載されるように整列するまで機械的刺激を続ける。
【0054】
得られたコラーゲン含有組織は編目構造のコラーゲンの繊維又は束を含む。本明細書において、「編目構造」という用語は、第1のグループの繊維又は束が主に第1の方向に伸び、第2のグループの繊維又は束が主に第2の方向に伸びる繊維又は束の第1及び第2のグループを含む構造を指し、第1及び第2の方向は互いに異なり、第1のグループの繊維又は束は、第2のグループの繊維又は束と交互に配置されるか、さもなければ織り込まれる。前記方向の相違は約90°であってもよい。
【0055】
好ましい方法によって作製されたコラーゲン含有組織は、20Nを超える「最大引張荷重強度」を有する。一部の態様において、本発明のコラーゲン含有組織は、25N、40N、60N、80N、100N、120N又は140Nを超える最大引張荷重強度を有する。
【0056】
さらに、コラーゲン含有組織の実施形態における編目構造は、コラーゲン含有パッチの弾性率を増加させながら、最大負荷時の伸びの減少を示すと考えられている。
【0057】
本明細書において、「弾性率」という用語はヤング率を意味し、応力とひずみの比として求められる。これは、コラーゲン含有組織及び/又はパッチの剛性の尺度である。
【0058】
一部の態様において、コラーゲン含有組織の弾性率は100MPaを超える。他の態様において、コラーゲン含有組織の弾性率は200MPa、300MPa、400MPa又は500MPaを超える。
【0059】
本明細書において、「最大負荷時の伸び」という用語は、無負荷状態でのコラーゲン含有組織の元の長さを基準とした最大引張荷重強度でのコラーゲン含有組織の伸長を意味する。これは、より大きくなる最大拡張とは対照的である。
【0060】
一部の態様において、コラーゲン含有組織の最大負荷時の伸びは元の長さの85%未満である。
【0061】
コラーゲン含有組織を生成した後に、使用するコラーゲン含有膜を成形してもよい。一部の態様において、前記コラーゲン含有膜は膜の形状とされ、in situでの操作性がよくなる。
【0062】
好ましくは、本発明のコラーゲン含有膜は薬物-担体混合物を支持するのに十分な厚さであるが、コラーゲン含有膜のin situでの操作性が損なわれるほど厚くない。したがって、一部の態様において、コラーゲン含有膜の厚さは25μm~200μmである。一部の態様において、コラーゲン含有膜の厚さは30μm~180μmである。他の態様において、コラーゲン含有膜の厚さは35μm~170μmである。なおも他の態様において、コラーゲン含有膜の厚さは40μm~160μmである。なおも他の態様において、コラーゲン含有膜の厚さは45μm~150μmである。なおも他の態様において、コラーゲン含有膜の厚さは50μm~140μmである。なおも他の態様において、コラーゲン含有膜の厚さは50μm~100μmである。また、一部の態様において、コラーゲン含有膜の厚さは約50μmである。
【0063】
コラーゲン含有膜の1つの形態では、膜は穿孔されており、天然の骨活性分子又は移植片材料中の治療活性剤が膜を通過できるように輸送し、上に重なった筋肉から循環幹細胞及び周皮細胞を動員することが可能となっている。
【0064】
コラーゲン含有膜は、好ましくは、緻密なコラーゲン束を特徴とする平滑面及び緩いコラーゲン線維の粗い多孔質面という2つの表面を(両面に1つずつ)有する。粗い面は、特に、細胞の結合を促進するのに適しており、実際に、膜の上に筋肉が重なる場合、粗い面を筋肉に向けることが重要である。しかしながら、上に重なる筋肉がない、例えば、遠位脛骨の修復の場合には、粗い面をいずれかの特定の表面とすることはそれほど重要ではない。
【0065】
コラーゲン含有膜は、膜のそれぞれの面において、骨形成タンパク質-2(BMP-2)及びゾレドロン酸(ZA)のような生体活性分子、並びに/又はヒドロキシアパタイトのナノ粒子(nHAP)で機能化される。
【0066】
一態様において、nHAPは、Teotia et al. (2017), ACS Appl. Mater. Interfaces, 9(8), pp 6816-6828に記載される湿式法を使用して合成される。簡単に述べると、硝酸カルシウム四水和物(Ca(NO3)2・4H2O、0.96M)のアルカリ溶液(pH10.0)を、一定の撹拌下において90~100℃で維持した後、オルトリン酸水素二アンモニウム((NH4)2HPO4、0.6M)の水溶液と混合する。この系のpHは絶えずモニタリングし、NH4OH溶液を添加することによって、pHを10.0に維持する。nHAPは、白色の結晶として溶液から析出する。反応の完了後に、成熟化のために、結晶をアルカリ条件下において室温で48時間、母液中に維持する。成熟化した後、溶液から結晶を濾過し、Milli-Q Type I水(DI-H2O)で十分に洗浄する。次いで、120℃で乾燥させる。
【0067】
一部の態様において、合成されたnHAPを熱処理し、その結晶度、密度及び相純度を増強させる。温度条件は、500℃から最大で1000℃で、保持時間は1時間~4時間である。
【0068】
合成されたnHAPは、次いで、nHAPを含有する滅菌生理食塩水中に膜を単純に浸すことによって、コラーゲン含有膜に適用される。
【0069】
生体活性分子はまた、同時にnHAP溶液に組み込んでもよく、又は独立してコラーゲン含有膜に適用してもよい。生体活性分子(ZA、BMP-2)は、滅菌水又は生理食塩水中に混合した後、乾燥nHAP 1g当たり600μLの水を使用してnHAPと混合するか、又は浸漬によってコラーゲン含有膜に適用するかのいずれかである。
【0070】
上記の方法の最終結果が本発明の人工骨膜である。
【0071】
人工骨膜の1つの形態において、薬物-担体混合物は機能化コラーゲン含有膜に適用される。
【0072】
したがって、本発明の人工骨膜の1つの形態には薬物-担体混合物が含まれる。薬物-担体混合物の担体成分は、リン酸カルシウムセメント(CPC)を含む当該技術分野において公知のカルシウム含有担体混合物であってもよい。担体成分はまた、他の追加の担体を含んでもよい。
【0073】
本発明の人工骨膜の薬物-担体混合物中の治療剤には、骨形成を刺激、促進、増強若しくは誘導することができるか、又は骨吸収を阻害することができる、骨活性剤が含まれる。治療剤は、治療部位における疼痛及び/若しくは炎症を緩和するか、がんを治療するか、又は微生物感染症を治療若しくは予防する、骨修復薬又は他の骨活性剤であってもよい。薬物-担体混合物は、治療部位における治療剤の放出を提供する。好ましくは、薬物-担体混合物は、長期間、治療剤を放出する。
【0074】
以下で詳しく述べるが、薬物-担体混合物は、治療剤をリン酸カルシウムセメント粉末のような好適な担体材料と混合することによって、調製される。具体的な態様に応じて、薬物-担体混合物は、粉砕して細粉末にしてもよい。薬物-担体混合物は、さらに以下で述べるが、好適な骨基質材料と組み合わせて本発明の人工骨膜を形成してもよい。あるいは、薬物-担体混合物を機能化コラーゲン含有膜に適用して、同様に本発明の人工骨膜を形成してもよい。人工骨膜は、次いで、例えば埋込みによって治療部位に適用してもよい。
【0075】
薬物-担体混合物の担体成分において使用することができるリン酸カルシウムセメント(CPC)としては、α-リン酸三カルシウム(α-TCP)とβ-リン酸三カルシウム(β-TCP)のようなリン酸三カルシウム混合物が挙げられる。使用してもよい他のCPCとしては、リン酸二カルシウム及びリン酸四カルシウムの組合せが挙げられる。実施例において使用したHydroset(Stryker Corp社が販売)のような市販のリン酸カルシウムセメントを使用してもよい。Hydrosetはα-TCPとβ-TCPとの混合物(1:3)の特徴を有する柔らかいリン酸三カルシウムセメントである。一部の態様において、リン酸カルシウムセメント及びその混合物には、ヒドロキシアパタイトを添加してもよい(例.2.5%重量/重量のヒドロキシアパタイト結晶)。α-TCP及びβ-TCPはさまざまな比で使用してもよい。例えば、一部の態様において、CPCはα-TCP及びβ-TCPの混合物(1:3)を含み、任意にヒドロキシアパタイトを含む。他の態様において、α-TCP及びβ-TCPは1:1又は1:0の比で使用してもよい。他の態様において、CPCは2.5%ヒドロキシアパタイトが添加されたα-TCPセメントで、これにより、設置したときにより硬いセメントとなる。
【0076】
薬物-担体混合物は、少なくとも部分的に脱灰された骨基質を含んでもよい。骨基質は、脱灰された骨基質パテであってもよく、又は部分的若しくは全体的に脱灰されたインタクトな骨基質であってもよい。インタクトな骨基質は、骨移植において使用し、骨修復薬を送達するための足場として機能する可能性がある。
【0077】
ヒト脱灰骨基質パテは、薬物-担体混合物の担体成分として使用してもよい。これは、市販されており、例えば、RTI Biologics(Alachua, Fla.)が製造したPuros Demineralized Bone Matrix Puttyがある。脱灰骨基質パテはまた、Urist & Dowell (Inductive Substratum for Osteogenesis in Pellets of Particulate Bone Matrix, Clin. Orthop. Relat. Res., 1968, 61, 61-78.)に記載の方法によって作製することもできる。この方法は、骨の脱灰と、固形脱灰骨を脱脂し、切断して小片にし、これを液体窒素下で粉砕して粗い粉末にすること含む。粉砕された脱灰骨基質は解凍後にパテの稠度を有する。
【0078】
必要とされる場合には、リン酸三カルシウムセメント粉末の硬化溶液は当該技術分野において周知で、これには2.5%重量/体積のNa2HPO4溶液又は市販の溶液が挙げられる。Dorozhkin, Materials 2009, 2, 221-291を参照されたい。
【0079】
担体成分の別の例は、Kumar et al. (Mater. Today, 13, (2010), 42-44)のクリオゲル形成技術を使用して、ゼラチンを、場合によってヒドロキシアパタイト(HA)の存在下で、硫酸カルシウム(CaS)と組み合わせることによって作製されるものである。ゼラチン-CaS-HAの複合材料を使用する例が、Raina et al. (2018), J Control Release, Vol. 272, 83-96に記載されており、シルク、キトサン、生体活性ガラス及びHAの同様の複合材料が、Rainaら(J Control Release, Vol. 235, 365-378. (2016))に記載されている。Murphyらもまた、rhBMP-2及びZAを送達するための多孔質コラーゲンヒドロキシアパタイト系担体について記載しているが、いずれも海綿骨再生をもたらす(Murphy et al. (2014), Acta Biomaterialia, Vol 10, Issue 5)。
【0080】
薬物-担体混合物は、治療剤をエタノールのような適切な溶媒に溶解させ、この溶液を担体混合物に添加することによって調製することができる。溶媒を除去した後、治療剤-担体混合物を混合して、治療剤を担体混合物全体に均一に(すなわち、均質に)分散させ、必要に応じて、治療剤-担体混合物を適切な硬化溶液で湿らせて、薬物-担体混合物を製造する。
【0081】
治療方法
本発明の人工骨膜は、骨折、及び歯周病、外科的処置、がん又は外傷に起因する骨喪失の治療に有用である。本発明の人工骨膜のさらなる用途としては、歯科用又は整形外科用インプラントを受けるための骨の調製時に骨密度を増加させることにおける使用、増強された骨結合のためのインプラントのコーティング、及び脊椎固定術のあらゆる形態における使用が挙げられる。
【0082】
本発明は、治療方法であって、それを必要とする患者に本発明の人工骨膜を用いることを含み、人工骨膜は、明細書に記載したように治療有効量の骨修復薬を含有していてもよい。治療方法は、一般に、骨形成を刺激、促進、増強若しくは誘導すること、又は骨吸収を阻害することを含む。治療方法はまた、例えば、骨リモデリングを促進すること、骨芽細胞を活性化すること、骨芽細胞の分化を促進すること、破骨細胞を阻害すること、骨芽細胞の数及び活性を増加させること、平均壁厚を増強すること、海綿骨体積を増強すること、骨構造を改善すること、骨梁連結性を改善すること、皮質骨厚を増加させること、骨喪失を阻害すること、骨強度を維持/改善すること、総骨体積又は類骨の体積を増加させることを含む。治療方法はまた、骨粗鬆症、骨折、低骨密度又は歯周病のうちの1つ以上を治療することを含む。
【0083】
治療方法の一態様において、1つ以上の骨修復薬は明細書に記載の薬物-担体混合物から放出される。別の態様において、骨修復薬は、全身的に(例.経口で)投与される別の治療剤と組み合わせて薬物-担体混合物から放出される。例えば、骨修復薬は、全身的に投与される骨喪失又は骨粗鬆症を治療するための1つ以上の追加の治療剤と組み合わせて、人工骨膜から徐放されてもよい。
【0084】
治療方法は、ヒト、他の哺乳動物及び鳥類の局所の所望の部位、例えば、歯槽欠損部のような骨の間隙、歯槽骨の隣接部位又は手術、外傷若しくは疾患によって引き起こされた骨欠損部への人工骨膜の使用をさらに含む。
【0085】
本発明はまた、骨関連疼痛、炎症、感染症及び/又は骨のがんを治療する方法であって、治療有効量の鎮痛性剤、抗炎症剤、抗がん剤及び/又は抗微生物剤を含有する人工骨膜を適用することを含む方法も提供する。疼痛、炎症、がん及び/又は感染症を治療する方法は、骨障害を治療する前述の方法のうちのいずれかと組み合わせてもよい。
【0086】
組合せ治療は、明細書に記載の化合物のうちの1つ以上及び1つ以上の追加の医薬品を含有する単一の製剤の投与、並びに化合物及びそれぞれの追加の医薬品の、それ自体の別個の製剤での投与を含む。例えば、明細書に記載の化合物及び1つ以上の追加の医薬品は、固定比のそれぞれの活性成分を有する人工骨膜において一緒に患者に投与することができるか、又はそれぞれの薬剤は、別個の製剤として投与することができる。例えば、患者は、全身投与される別の薬物と組み合わせて、人工骨膜によって活性薬を骨欠損の部位に局所的に送達し、治療されてもよい。別個の製剤を使用する場合、本化合物及び1つ以上の追加の医薬品は、本質的に同時に(例.並行して)、又は時間をずらして(例.逐次的に)投与することができる。
【0087】
本発明の一側面において、骨間隙は、例えば、骨移植片、又は天然若しくは合成源に由来する骨移植片の独立型若しくは複合代替物で充填され、次いで、本発明の機能化コラーゲン含有膜及び薬物-担体混合物を含む人工骨膜で被覆されるか、又は本発明のヒドロキシアパタイト及び/若しくは生体活性剤機能化コラーゲン含有膜で被覆される。コラーゲン含有膜は架橋剤として機能し、組織再生誘導により骨を再生する。
【0088】
本発明の人工骨膜の1つの使用は、骨移植片材料で充填されている骨の欠損部及び/又は間隙に対する外部の被覆物としてである。人工骨膜は、縫合、クランピング又は医療用接着剤での固定を含む当該技術分野において公知の方法を使用して、適切な場所に保ってもよい。人工骨膜は、単純に骨の内膜側に入れることもできる。
【0089】
一部の態様において、本発明の人工骨膜は、医療用接着剤を使用してin situで固定する。医療用接着剤は体液との接触に好適であるという利点を有する。人工骨膜に関して、医療用接着剤は人工骨膜の固定を促進するために使用することができるか、又は人工骨膜の一部分を構造的な意味で一緒に保持するために使用することができる。本明細書では、便宜上、接着剤は一般に、塗布形態の接着剤及び設定された形態で硬化させた後の接着剤組成物を指す。適切な医療用接着剤は、それらが、非毒性、非発がん性であり、溶血も免疫学的応答も誘導しないという点で生体適合性でなければならない。好適な生体適合性接着剤としては、シアノアクリレート(例.2-オクチルシアノアクリレート、Ethicon Products社のDERMABOND(商標))、フィブリン糊(例.Baxter社のTISSUCOL(登録商標))のような市販の外科用接着剤及びこれらの混合物が挙げられるが、広範な好適な接着剤が利用可能である。
【0090】
骨の長いセグメント欠損の修復については、骨腔に、任意の骨移植片代替物(合成、生来、天然)を充填してもよく、これには、内部又は外部の固定が含まれても、含まれなくてもよい。次いで、本発明の人工骨膜は、骨移植片代替物を適切な位置に保持することで二段階マスケレ法を回避することができるように、皮質骨の周囲に巻き付けることができる。マスケレ法は、長骨の一部分が失われている場合のような大きな中間欠損がある場合の長骨外傷用途において使用される。マスケレ法は、通常、スペーサーを設置し、スペーサー周囲に軟部組織が形成される第1の段階、及び形成された軟部組織を使用して骨移植片を被覆する第2の段階という2つの段階を含む。したがって、一部の態様において、本発明の人工骨膜は、長骨セグメント欠損における外傷の修復に使用されてもよい。例えば、外傷修復に好適な物質が中に提供された状態で、比較的大きな被覆が提供されてもよく、ここで、人工骨膜は、長骨の空間(軟部組織を含まない)を保ち、軟部組織をその周囲に形成させるために使用される。マスケレ法の第2の工程は、人工骨膜がもともと設置されるときに移植片材料が提供されるため、回避してもよい。
【0091】
さらに望ましい態様には、本発明の人工骨膜上にシード又は配置される細胞が含まれる。任意の細胞を使用してもよいが、通常は骨及び骨関連組織の成長を促進することに関連する細胞が明らかに好ましい。一部の好ましい例としては、幹細胞、単分化幹細胞及び骨髄幹細胞を含む分化細胞が挙げられるが、これらに限定されるものではない。さまざまな態様において使用される細胞の他の例としては、骨芽細胞、線維芽細胞、軟骨細胞及び結合組織細胞が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0092】
そのような治療方法における使用のための本発明の人工骨膜も提供されることが、理解されるであろう。
【0093】
そのような治療方法における使用のための人工骨膜の製造における、機能化コラーゲン含有膜及び薬物-担体混合物の使用も提供されることが理解されるであろう。
【0094】
用語の定義
「治療有効量」という語句は、医学的治療に適用される妥当な利益/危険性比で障害を治療するのに十分な化合物の量を意味する。しかし、人工骨膜中の化合物の総投与量は、健全な医学的判断の範囲内で、担当医師によって決定することができる。特定の患者に対する具体的な治療有効用量は:治療されている障害及び障害の重症度;用いられる化合物の活性;用いられる人工骨膜;人工骨膜からの薬物放出の速度、患者の年齢、体重、全身状態、病歴、性別、及び食生活;送達方法;化合物と組み合わせて又は同時に使用される薬物;並びに医学の分野において周知の同様の因子を含む、様々な因子に依存してもよい。人工骨膜中の活性成分の実際の投与量は、特定の患者及び特定の投与形態に所望される治療応答を達成するのに有効な量の活性な化合物が得られるように変動してもよい。
【0095】
「骨修復薬」又は「骨活性剤」という用語は、本明細書では、骨形成を刺激、促進、増強若しくは誘導することができるか、又は骨吸収を阻害することができる薬剤を指す。したがって、骨活性剤は、骨同化作用薬又は抗異化作用薬であってもよい。骨活性剤は、以下のうちの1つ以上の作用を有していてもよい:骨リモデリングの促進、骨芽細胞の活性化、骨芽細胞分化の促進、破骨細胞の阻害、骨芽細胞の数及び活性の増加、平均壁厚の増強、海綿骨体積の増強、骨構造の改善、骨梁連結性の改善、皮質骨厚の増加、骨喪失の阻害、骨強度の維持/改善、総骨体積又は類骨の体積の増加。骨活性剤としては:プロスタグランジンE1(PGE1);プロスタグランジンE2(PGE2);EP2受容体アゴニスト;EP4受容体アゴニスト;EP2受容体/EP4受容体二重アゴニスト;有機ビスホスホネート(例.アレンドロン酸又はアレンドロン酸ナトリウム);カテプシンK阻害剤;エストロゲン又はエストロゲン受容体モジュレーター;カルシトニン;破骨細胞プロトンATPアーゼの阻害剤;HMG-CoA還元酵素の阻害剤(すなわち、スタチン);αvβ-インテグリン受容体アンタゴニスト;デノスマブのようなRANKL阻害剤、;副甲状腺ホルモンのような骨同化作用剤、;骨形成タンパク質(例.BMP-2、BMP-4、BMP-7);ビタミンD又はED-70のような合成ビタミンDアナログ;アンドロゲン又はアンドロゲン受容体モジュレーター;Wnt/β-カテニンシグナル伝達の活性化剤(例.GSK-3阻害剤、スクレロスチンアンタゴニスト、SOST阻害剤);ボルテゾミブ;ラネリック酸ストロンチウム;血小板由来成長因子;これらの薬学的に許容される塩;及びこれらの混合物が例示されるが、これらに限定されるものではない。骨活性剤は、好ましくは約4~5のpHに曝露された場合に、不活性の形態に分解されない。
【0096】
「リン酸カルシウムセメント」という用語は、本明細書では、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム(例.α-リン酸三カルシウム及びβ-リン酸三カルシウム)若しくはリン酸四カルシウムを含む骨修復組成物を指すか、又は前述のもののうちのいずれかから作製される骨修復組成物若しくは硬化によるそれらの混合物を指す。リン酸カルシウムセメントは、リン酸カルシウム化合物とともに中に組み込まれたヒドロキシアパタイトも含んでもよい。
【0097】
「薬物-担体混合物」という用語は、本明細書ではカルシウム含有担体成分に組み込まれた治療剤の混合物を指す。
【0098】
「アゴニスト」という用語は、本明細書では化合物の生物学的作用が天然のアゴニストの作用を模倣する化合物を指す。アゴニストは、完全な効能(すなわち、天然のアゴニストと同等)、部分的な効能(天然のアゴニストと比較して低い最大効能)、又は超最大効能(天然のアゴニストと比較して高い最大効能)を有してもよい。部分的な効能を有するアゴニストは、「部分的アゴニスト」と称され、超最大効能を有するアゴニストは、「スーパーアゴニスト」と称される。一態様において、天然のアゴニストはPGE2であってもよい。
【0099】
人工骨膜から放出されてもよい疼痛緩和剤としては、ナトリウムチャネル遮断剤(例.Nav1.8阻害剤、Nav1.9阻害剤、ロピバカイン、ブピバカインなど)、TRPV1アンタゴニスト、エンドセリンアンタゴニスト(例.アトラセンタン、ジボテンタン)、ブラジキニンアンタゴニスト、ASIC阻害剤、TrkA阻害剤及び放射性核種(89Sr、153Sm-レキシドロナム、186Re-エチドロネート)が挙げられる。
【0100】
人工骨膜から放出されてもよい抗炎症剤としては、NSAIDS、コルチコステロイド及びサイトカイン阻害剤(例.TNFα、IL-1βなどの阻害剤)が挙げられる。
【0101】
人工骨膜から放出されてもよい抗微生物剤としては、抗細菌薬及び抗真菌薬が挙げられる。抗細菌薬としては、セフェム、セファロスポリン、キノロン抗生物質(例.シプロフロキサシン、レボフロキサシンなど)、マクロライド(例.アジスロマイシン、クラリスロマイシン、エリスロマイシンなど)のような周知の薬剤が挙げられる。抗真菌薬としては、フルコナゾール、クロトリマゾール、イトラコナゾールなどが挙げられる。
【0102】
人工骨膜から放出されてもよい抗がん剤としては、ビンクリスチン、ドキソルビシン、エトポシド、ゲムシタビン、メトトレキサート、Saad in Cancer Treat Rev. 2010, 36(2) 177-84に記載のSRCキナーゼ阻害剤(例.ダサチニブ、サラカチニブ、ボスチニブ)が挙げられる。
【0103】
骨活性剤は、プロスタグランジンE1、プロスタグランジンE2、ラネリック酸ストロンチウム、カルシトニン、副甲状腺ホルモン、ビタミンD若しくは合成ビタミンDアナログ(例.ED-70)、BMP-2、BMP-4、BMP-7又は血小板由来成長因子であってもよい。
【0104】
骨活性剤はまた、有機ビスホスホネートであってもよい。有機ビスホスホネートとしては、例えば、アレンドロン酸、アレンドロン酸ナトリウム、イバンドロネート、リセドロネート、ゾレドロネート、ゾレドロン酸、エチドロネート、パミドロネート、チルドロネート、ネリドロネート及びオルパドロネートが挙げられる。
【0105】
骨活性剤はまた、カテプシンK阻害剤、例えばBromme in Expert Opin. Investig. Drugs 2009, 18(5) 585-600に開示及び引用される化合物(例.オダナカチブ)であってもよい。
【0106】
骨活性剤は、例えば、http://en.wikipedia.org/wiki/Selective_estrogen-receptor_modulatorに記載の化合物を含む、ラロキシフェン、バゼドキシフェン及びラソフォキシフェンを含む、エストロゲン又はエストロゲン受容体モジュレーターであってもよい。
【0107】
骨活性剤は、例えば、テストステロンを含む、アンドロゲン又はアンドロゲン受容体モジュレーターであってもよい。
【0108】
骨活性剤は、例えば、Nyman in Potential of the Osteoclast's Proton Pump as a Drug Target in Osteoporosis, Annales Universitatis Turkuensis 2011に記載の化合物であって、SB242784、バフィロマイシン(例.バフィロマイシンA1)、コンカナマイシンA、アピクラレン、アルカゾリド(archazolide)、ベンゾラクトンエナミド(サリシリハラミドA、ロバタミドA)、FR167356、FR177995及びジフィリン等を含む、破骨細胞プロトンATPアーゼの阻害剤であってもよい。
【0109】
骨活性剤は、例えば、http://en.wikipedia.org/wiki/Statinに記載のものであって、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン及びシンバスタチン等を含む、HMG-CoA還元酵素の阻害剤(すなわち、スタチン)であってもよい。
【0110】
骨活性剤は、例えば、Millard et al. in Integrin Targeted Therapeutics, Theranostics 2011, 154-188に記載の化合物であって、シレンジタイド(EMD 121974)、L000845704、SB2730005等を含む、αvβ-インテグリン受容体アンタゴニストであってもよい。
【0111】
骨活性剤は、デノスマブのようなRANKL阻害剤であってもよい。
【0112】
骨活性剤は、ONO-AE1-259-01及びCP-533536のようなEP2受容体アゴニストであってもよい。
【0113】
骨活性剤は、例えばBioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 2012, 22(1), 396-401、米国特許第7,402,605号、及び米国特許第7,608,637号に記載のEP2受容体/EP4受容体二重アゴニストであってもよい。代表的なEP2受容体/EP4受容体二重アゴニストは、2-((2-((R)-2-((S,E)-3-ヒドロキシ-4-(m-トリル)ブト-1-エン-1-イル)-5-オキソピロリジン-1-イル)エチル)チオ)チアゾール-4-カルボン酸(CAS#494223-86-8)である。
【0114】
骨活性剤は、米国特許第6,043,275号、同第6,462,081号、同第6,737,437号、同第7,169,807号、同第7,276,531号、同第7,402,605号、同第7,419,999号、同第7,608,637号;国際公開第2002/024647号;Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 2001, 11(15), 2029-2031;Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 2002, 10(4), 989-1008;Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 2002, 10(6), 1743-759;Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 2002, 10(7), 213-2110;Journal of Medicinal Chemistry, 2004, 47(25), 6124-6127;Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 2005, 15(10), 2523-2526;Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 2003, 13(6), 1129-1132;Medicinal Chemistry Letters, 2006, 16(7), 1799-1802;Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 2004, 14(7), 1655-1659;Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 2003, 13(6), 1129-1132;Journal of Medicinal Chemistry, 1977, 20(10), 1292-1299;Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 2008, 18(2), 821-824;Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 2007, 17(15), 4323-4327;Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 2006, 16(7), 1799-1802;Tetrahedron Letters, 2010, 51(11), 1451-1454;Osteoporosis International, 2007, 18(3), 351-362;Journal of Bone and Mineral Research, 2007, 22(6), 877-888;Heterocycles, 2004, 64, 437-445に開示される化合物を含むがこれらに限定されるものではない、EP4受容体アゴニストであってもよい。
【0115】
具体的なEP4受容体アゴニストとしては、CP-734432、ONO-4819(すなわち、リベンプロスト)、AE1-329、L-902,688が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0116】
一部の態様において、人工骨膜に含まれる骨活性剤は、アレンドロン酸、アレンドロン酸ナトリウム、イバンドロネート、リセドロネート、ゾレドロネート、ゾレドロン酸、エチドロネート、パミドロネート、チルドロネート、ネリドロネート、オルパドロネート、オダナカチブ、ラロキシフェン、バゼドキシフェン、ラソフォキシフェン、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、シンバスタチン、ラネリック酸ストロンチウム、カルシトニン、副甲状腺ホルモン又は骨形成タンパク質-2のうちの1つ以上である。
【0117】
他の態様において、人工骨膜に含まれる骨活性剤は、EP2受容体アゴニスト、EP2受容体/EP4受容体二重アゴニスト、EP4受容体アゴニスト、有機ビスホスホネート、エストロゲン受容体モジュレーター、HMG-CoA還元酵素の阻害剤及びラネリック酸ストロンチウムのうちの1つ以上である。
【0118】
本発明は、明細書に記載した薬剤、薬物又は薬物の組合せを含む人工骨膜も提供する。例えば、骨芽細胞を活性化させる1つ以上の薬剤/薬物を、破骨細胞を阻害する1つ以上の薬剤/薬物と組み合わせてもよい。
【0119】
あるいは、骨芽細胞を活性化させ、破骨細胞を阻害させる複数の薬剤/薬物を組み合わせてもよい。
【0120】
一部の態様において、人工骨膜は、ビスホスホネート;カテプシンK阻害剤;エストロゲン又はエストロゲン受容体モジュレーター;カルシトニン;破骨細胞プロトンATPアーゼの阻害剤;HMG-CoA還元酵素の阻害剤(すなわち、スタチン);αvβ3-インテグリン受容体アンタゴニスト;デノスマブのようなRANKL阻害剤;副甲状腺ホルモンのような骨同化作用剤;骨形成タンパク質(例.BMP-2、BMP-4、BMP-7);ビタミンD又はED-70のような合成ビタミンDアナログ;アンドロゲン又はアンドロゲン受容体モジュレーター;Wnt/β-カテニンシグナル伝達の活性化因子(例.GSK-3阻害剤、スクレロスチンアンタゴニスト、SOST阻害剤);ボルテゾミブ;ラネリック酸ストロンチウム;血小板由来成長因子のうちのいずれか1つ以上とともに、EP4受容体アゴニストを含んでもよい。
【0121】
一部の態様において、例えば、EP4受容体アゴニストは、アレンドロン酸、アレンドロン酸ナトリウム、イバンドロネート、リセドロネート、ゾレドロネート、ゾレドロン酸、エチドロネート、パミドロネート、チルドロネート、ネリドロネート及びオルパドロネートから選択される1つ以上のビスホスホネートと組み合わされる。
【0122】
他の態様において、EP4受容体アゴニストは、ラロキシフェン、バゼドキシフェン及びラソフォキシフェンのうちの1つ以上と組み合わされる。
【0123】
他の態様において、EP4受容体アゴニストは、BMP-2、BMP-4又はBMP-7のような骨形成タンパク質と組み合わされる。例えば、1つの組合せは、CP-734432を、BMP-2又はBMP-7のいずれかとともに含む。別の組合せは、ONO-4819(リベンプロスト)を、BMP-2又はBMP-7とともに含む。さらに別の組合せは、AE1-329を、BMP-2又はBMP-7とともに含む。なおも別の組合せは、L-902,688を、BMP-2又はBMP-7とともに含む。さらなる組合せは、7-((R)-3,3-ジフルオロ-5-((3S,4S,E)-3-ヒドロキシ-4-メチルノン-1-エン-6-イン-1-イル)-2-オキソピリジン-1-イル)ヘプタン酸を、BMP-2又はBMP-7とともに含む。別の組合せは、7-((R)-2-((3S,4S,E)-3-ヒドロキシ-4-メチルノン-1-エン-6-イン-1-イル)-5-オキソピリジン-1-イル)ヘプタン酸を、BMP-2又はBMP-7とともに含む。
【0124】
なおも他の態様において、EP4受容体アゴニストは、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン及びシンバスタチンのようなスタチン類と組み合わされる。
【0125】
明細書において言及又は引用される全ての特許、特許出願、仮出願及び刊行物は、本明細書の明白な教示と一致しないことのない程度に、図面及び表を含め、それらの全てが参照によって組み込まれる。
【0126】
先行技術の刊行物を明細書で参照する場合、そのような参考文献は、オーストラリア又は他の国において当該技術分野における共通した一般的な知識の一部を形成するという認識を構成するものではないことが理解される。
【0127】
以下は、本発明の実施のための手順を例示する実施例である。これらの実施例は、制限と解釈されるものではない。
【実施例0128】
実施例1 IN VIVO実験
第1の実験では、以前にHorstmannらが説明した脛骨欠損モデルを使用した。簡単に述べると、雄スプラーグドーリーラットの近位脛骨の骨幹端の皮質骨とその下に穴をあけることにより、4.5mmの欠損を作製した。
図2は、脛骨欠損モデルの外科的処置の一例を示す。骨間隙充填剤として、ゼラチン-硫酸カルシウム-ヒドロキシアパタイト足場に、ZAを添加し、rhBMP-2を添加し又は添加しないで、欠損の海綿骨腔に充填した。Raina et al. (2018), J Control Release, Vol. 272に記載のとおりである。これは、上に重ねるコラーゲン含有膜に対する支持を提供するために行ったが、これがなければ重ねることは困難となったであろう。いくつかの群は、足場を6mm片のコラーゲン膜でも被覆し、残りの膜を骨内膜に挿入した。こうすることで、足場が円形欠損部の外側に漏出することを膜が防止した。群と生体活性分子の用量の詳細な説明を表1に示す。
【0129】
【0130】
外科的処置の8週間後に動物を殺処分し、欠損治癒を検討するために、マイクロCTによる定量及び組織学検査を行った。
【0131】
第2の実験では、コラーゲン膜(4mmの円形)単独、又は膜の両面を1mgのヒドロキシアパタイトナノ粒子で機能化したものを、Rainaらが説明した腹筋パウチモデルで分析した。以下の群を使用した:
1. コラーゲン膜(CM)単独、
2. CM+ヒドロキシアパタイトナノ粒子(nHA)、
3. CM+rhBMP-2(10μg)、
4. CM+nHA+rhBMP-2(10μg)、
5. CM+rhBMP-2(10μg)+ZA(10μg)、
6. CM+nHA+rhBMP-2(10μg)+ZA(10μg)。
【0132】
一群当たり5匹の動物を外科的処置の4週間後に殺処分した後、X線撮影及びマイクロCTによる定量を行った。
【0133】
結果
第1の実験:マイクロCT
目的の領域1(ROI 1): マイクロCTによる分析のために、本発明者らは、3つのROIを定義した。ROI 1では、皮質骨を除いた欠損孔内の石灰化体積(MV)/組織体積(TV)%を測定した。ROI 1の径は一定ではなく、上部は4.5mmで底部は1.5mmであった。ROI 1の深さは2mmであった。マイクロCT測定により、生体活性分子の種類及び有無に関係なく、全ての足場及び膜処置群は、空の群と比較して有意に高い体積の石灰化組織又はMV/TV%を再生した(
図3、上部)。
【0134】
目的の領域2(ROI 2): 本発明者らは、皮質骨治癒の評価にROI 2から得られた値を使用した。ROI 2は、古い皮質骨の底部から上方に伸長した4.5mmの円形のROIであった。本発明者らは、以前は手術中に取り除かれていた再生皮質骨の領域で、再生した骨を測定した。S+ZA+rhBMP-2+(CM)(群6)及びS+ZA+(CM+rhBMP-2)群(群7)は、空の群(群1)又は足場のみの群(群2)と比較した場合に、有意に高い皮質骨石灰化体積(MV)を有した(
図3、中央)。
【0135】
図3は、外科的処置の8週間後の脛骨欠損実験のマイクロCTによる定量を示す。上部の図の
*は空の群との比較を示す。中央の図の
*は、S+ZA+(CM+rhBMP-2)群と比較したp値を示す。δは、S+ZA+rhBMP-2+(CM+rhBMP-2)との比較を示す。下部の図の
*は空の群との比較を示し、δは足場のみの群との比較を示す。
*又はδは、p<0.05を示し、
**又はδδは、p<0.01を示し、
***又はδδδは、p<0.001を示す。
【0136】
目的の領域3(ROI 3):ROI 3を使用して、完全な欠損、並びに欠損に対して近位及び遠位の骨を測定した。これは、欠損範囲において再生された骨の測定を提供するだけでなく、埋め込まれた足場及び膜の周囲に再生された石灰化組織の体積への見識も提供する。ROI 3は、高さが6.5mmで、4.5mmの欠損部、並びに欠損から近位側1mm及び遠位側1mmの範囲を含んだ。群3~8が群1と比較して有意に高いMVを有したことを示した。さらに、群4、5、6及び8は、群2と比較しても有意に高いMVを有した。群1と2との間にも、群3~8のいずれかの間にも、有意差は見られなかった(
図3、下部)。
【0137】
第1の実験:マイクロCTによる皮質骨治癒
図4は、マイクロCTを使用した皮質骨治癒の評価を示す。白色の矢印は、皮質骨の欠損位置及び皮質骨再生の程度を示す(画像は表示のためだけのものである)。
【0138】
空の群ではほとんど全ての動物が、皮質骨側で治癒しており、欠損位置の皮質骨は非常に薄かった。欠損部内の骨形成はほとんど又はまったく確認できなかった。足場のみで処置した群(2~4)は、欠損部にさまざまな程度の骨形成を有したが、皮質骨再生には至らなかった。群5及び6では、膜の表面に沿って白色の放射線を透過しない縁を確認することができ、これによっても、膜の内膜側への設置が確認された。全ての膜処置群(5~8)で、足場が欠損部内に閉じ込められた。群7(5/10)及び群8(7/10)は皮質骨の架橋形成を有意に改善し、足場又は膜で処置した群の中でこれらの群だけが、最大の皮質骨の架橋を形成した。詳細は
図4を参照。
【0139】
図5において、左側の画像は欠損治癒の低拡大率での全体像であり、また、右側の画像は皮質骨治癒の高拡大率の図である。枠囲みは皮質骨欠損の範囲を示し、皮質骨欠損のおよそ中央部を黒色の矢印で示す。
【0140】
組織学的分析の結果はマイクロCT撮像を十分に裏付けた。空の群は、薄いが治癒した皮質骨を示し、骨幹端域において骨髄組織が浸潤している。群2の足場は、足場の周縁部におけるいくらかの骨形成を示したが、皮質骨は治癒しなかった。群3~6は、欠損部周囲における有意な量の新しい海綿骨、及び同様に足場細孔内におけるいくらかの骨の形成を示した。しかしながら、皮質骨の再生は一部でしか見られなかった。代表的な組織学検査の画像は、群7及び8における皮質骨の架橋形成を示す。欠損の内部は、群3~6と同様に足場の周縁部が海綿骨で満たされていたが、足場内に形成された骨は限られていた。
【0141】
第2の実験:X線撮影
図6に示すX線画像は、ヒドロキシアパタイトを有する又は有さないコラーゲン含有膜にrhBMP-2を添加することにより、コラーゲン含有膜単独と比較して、試料中の放射線を透過しない領域の増加が生じたことを示す。ZA及びrhBMP-2の両者を、nHAを有する又は有さないコラーゲン含有膜へ添加することにより、試料中の放射線を透過しない領域が有意に増加した。
【0142】
結論
実験2では、腹筋パウチモデルで骨を誘導することにより、コラーゲン含有膜の真の担体特性を示した。nHAの存在に関係なく、rhBMP-2及びrhBMP-2+ZAの両者を送達することにより、さまざまな程度に骨形成が誘導され、rhBMP-2とZAを同時に送達することは、rhBMP-2群よりも高く骨を誘導した。nHAをコラーゲン膜に添加することにより、rhBMP-2とZAが膜を使用して送達された場合、コラーゲン膜の骨形成能がさらに増加した。そのような効果はrhBMP-2のみを添加した場合には見られなかった。
【0143】
実験1では、組織再生誘導の現象を介して皮質骨治癒における膜の真の能力を解明した。空の群は別として、群2~4は、完全な皮質骨再生を示すことができなかった。群5~8では足場の上に膜を追加することにより、足場が欠損部から強制排出されること及び皮質骨再生を妨害することが防止された。この実験はまた、コラーゲン含有膜を介した超低用量のrhBMP-2を送達することが群7と8の両者において見られたように、皮質骨再生を有意に増加させたことも示した。したがって、低用量のrhBMP-2で機能化された膜は、要求の多い整形外科環境において、骨を再生させるために使用することができる。
【0144】
実施例2 機能化コラーゲン含有膜
上述したように、本発明の人工骨膜、すなわち、本明細書に記載のヒドロキシアパタイト機能化コラーゲン含有膜は、骨間隙に充填された生体材料を皮質骨内に漏出することを防ぐための格納デバイスとして使用することができる。本発明者らは、生体材料(セラミック又はポリマー)を骨欠損部に設置した場合、骨内で生じる静水圧に起因して、骨の外へと押し出される傾向にあると考えている。この現象は、皮質骨治癒の損傷を引き起こす可能性が非常に高い。しかし、本発明の人工骨膜を骨間隙に設置される生体材料を被覆するように、特に、内膜側、すなわち、皮質骨の内端下(骨内膜)に使用すると、人工骨膜により生体材料が皮質骨に押し出されることが防止される。このことは必須ではないものの、人工骨膜を内膜側に設置することにより、実験の期間中、それが埋め込まれた材料を被覆する強い把持力をもたらすので、人工骨膜を内膜側に設置することは重要であると考えている。
【0145】
図7は、骨間隙内に設置されたセラミック又はポリマー生体材料の格納デバイスとしての本発明の人工骨膜の役割を示す。破線は、皮質骨の内側及び外側の縁部を示す。左上及び右上における矢印は、それぞれ、下側の破線によって示されるように、皮質骨の端部から突出している、及びそれらの間に収まっている、セラミック及びポリマー生体材料を示す。左下のパネルにおける下の矢印は、セラミック材料が皮質骨の位置に漏出していることを示し、上の矢印は、外膜側に設置されたコラーゲン膜の石灰化を示す。右下における矢印は、骨欠損部に設置されたポリマー足場を被覆している人工骨膜を指している。膜はある程度石灰化されており、また、材料が常時、皮質骨端部の間ではなく皮質骨の下に留まることを確実にしていることに留意されたい。全ての画像は、in vivoでの処置の8週間後に撮影された代表的なマイクロCTのスライスである。
【0146】
当然ながら、人工骨膜の他の役割は架橋剤として機能し、組織再生誘導によって皮質骨を再生させることである(
図4を参照されたい)。行われた実験は、膜を外膜側に設置した場合、膜は、欠損孔をしっかりと被覆していないため、皮質から押し出され、上に重なる筋肉で石灰化する傾向にあることを示した。しかし、rhBMP-2を有する又は有さない膜を内膜側に設置すると、骨間隙における生体材料の閉じ込め及び皮質骨再生の両者が示された(少用量のrhBMP-2を膜に用いるとより顕著である)。
【0147】
実施例3 比較実験
本発明者らは、公開されている腹筋パウチモデル(Raina et al. (2018), J. Control Release, Volume 272 Pages 83-96)を使用して、市販のACSコラーゲンスポンジ(Medtronic)を、BMP-2及びZAの存在下で、本発明の機能化コラーゲン含有膜と比較した。
【0148】
ACS群のマイクロCTデータを取得し、それを、本願の人工骨膜の筋肉パウチでのデータと比較した。
【0149】
いずれの実験も、腹筋パウチモデルにおいて、同じ用量のrhBMP-2(10μg/足場)及びZA(10μg/足場)で行った。これらのデータの直接的な比較は、実験が2つの異なる時点で行われており、マイクロCTのファントムによる較正を利用することができなかったので、完全には可能とは限らないが、本発明者らは、同じマイクロCT設定が使用されており、ボクセルサイズが同じであった(10μm)ことに気がづいた。さらに、X線画像が同じ設定で取得されており、それらも差を示す。
【0150】
本発明者らは、骨形成において、本願の人工骨膜がACS群よりも優れていたことを見いだした(
図8)。
【0151】
まとめ
上記実施例を踏まえて、本発明は、先行技術を上回るいくつかの利点、例えば、以下を有する:
・適切なサイズ及び形状の骨移植片の取得、移植部位の病状、並びに周囲組織との一体化に関係しない使用の容易さ;並びに
・代替的な骨修復方法の提供、特に、骨成長を促進し、骨欠損を修復するために長時間にわたってBMP-2のような骨活性剤を局所的に送達するために使用することもできる人工骨膜の開発。
【0152】
本明細書及び特許請求の範囲(該当する場合)において、「comprising(含む)」という言葉、並びに「comprises」及び「comprise」等のその派生語は、記載されている整数のそれぞれを含むが、1つ以上のさらなる整数の包含を除外するものではない。
【0153】
本明細書全体を通じて、「一態様」又は「ある態様」への参照は、態様とともに記載される特定の特性、構造又は特徴が、本発明の少なくとも1つの態様に含まれることを意味する。したがって、本明細書のさまざまな箇所における「一態様において」又は「ある態様において」という語句は、必ずしも全てが同じ態様に言及しているとは限らない。さらに、特定の特性、構造又は特徴は、好適な様式で1つ以上の組合せで組み合わされてもよい。
【0154】
明細書に記載される手段は本発明を実施する際の好ましい形態を含むため、本発明は、示される又は記載される具体的な特性に限定されないことを理解されたい。したがって、本発明はその形態又は改変形態のいずれにおいても特許請求することができる。
機能化コラーゲン含有膜及び薬物-担体混合物を含む人工骨膜であって、前記薬物-担体混合物が、少なくとも1つの治療剤及びカルシウム含有担体混合物を含む、人工骨膜。
明細書に記載される手段は本発明を実施する際の好ましい形態を含むため、本発明は、示される又は記載される具体的な特性に限定されないことを理解されたい。したがって、本発明はその形態又は改変形態のいずれにおいても特許請求することができる。
以下に、本願の出願当初の請求項を実施の態様として付記する。
[1] 機能化コラーゲン含有膜及び薬物-担体混合物を含む人工骨膜であって、前記薬物-担体混合物が、少なくとも1つの治療剤及びカルシウム含有担体混合物を含む、人工骨膜。
[2] 前記機能化コラーゲン含有膜がヒドロキシアパタイト機能化コラーゲン含有膜である、[1]に記載の人工骨膜。
[3] 前記治療剤が骨活性剤である、[1]又は[2]に記載の人工骨膜。
[4] 前記骨活性剤が骨芽細胞を活性化する、[3]に記載の人工骨膜。
[5] 前記骨活性剤が破骨細胞を阻害する、[3]に記載の人工骨膜。
[6] 前記骨活性剤が、PGE1;PGE2;EP2受容体アゴニスト;EP4受容体アゴニスト;EP2受容体/EP4受容体二重アゴニスト;有機ビスホスホネート;カテプシンK阻害剤;エストロゲン又はエストロゲン受容体モジュレーター;カルシトニン;破骨細胞プロトンATPアーゼの阻害剤;HMG-CoA還元酵素の阻害剤;インテグリン受容体アンタゴニスト;RANKL阻害剤;骨同化作用剤;骨形成剤;ビタミンD又は合成ビタミンDアナログ;アンドロゲン又はアンドロゲン受容体モジュレーター;SOST阻害剤;血小板由来成長因子;これらの薬学的に許容される塩;及びこれらの混合物のうちの1つ以上を含む、[3]~[5]のいずれかに記載の人工骨膜。
[7] 前記有機ビスホスホネートが、アレンドロン酸、アレンドロン酸ナトリウム、イバンドロネート、リセドロネート、ゾレドロネート、ゾレドロン酸、エチドロネート、パミドロネート、チルドロネート、ネリドロネート及びオルパドロネートからなる群から選択される、[6]に記載の人工骨膜。
[8] 骨形成タンパク質が、BMP-2、BMP-4及びBMP-7からなる群から選択される、[6]に記載の人工骨膜。
[9] 前記薬物-担体混合物が、ナトリウムチャネル遮断剤、TRPV1アンタゴニスト、エンドセリンアンタゴニスト、ブラジキニンアンタゴニスト、ASIC阻害剤、TrkA阻害剤又は放射性核種を含む、[1]~[8]のいずれかに記載の人工骨膜。
[10] 前記薬物-担体混合物が、NSAID、コルチコステロイド及びサイトカイン阻害剤からなる群から選択される抗炎症剤を含む、[1]~[9]のいずれかに記載の人工骨膜。
[11] 前記薬物-担体混合物が抗細菌剤及び/又は抗真菌剤を含む、[1]~[10]のいずれかに記載の人工骨膜。
[12] 前記抗細菌剤が、セフェム、セファロスポリン、キノロン抗生物質及び/又はマクロライドである、[11]に記載の人工骨膜。
[13] 前記抗真菌剤が、フルコナゾール、クロトリマゾール及び/又はイトラコナゾールである、[11]に記載の人工骨膜。
[14] 前記薬物-担体混合物が抗がん剤を含む、[1]~[13]のいずれかに記載の人工骨膜。
[15] 前記抗がん剤が、ビンクリスチン、ドキソルビシン、エトポシド、ゲムシタビン及び/又はメトトレキサートである、[14]に記載の人工骨膜。
[16] ヒドロキシアパタイト機能化コラーゲン含有膜及び薬物-担体混合物を含む人工骨膜であって、前記薬物-担体混合物が、BMP-2及びゾレドロン酸を含む、人工骨膜。
[17] 骨を修復する方法であって、機能化コラーゲン含有膜及び薬物-担体混合物を含む人工骨膜を埋め込む工程を含み、前記薬物-担体混合物が、少なくとも1つの治療剤及びカルシウム含有担体混合物を含む、方法。
[18] 前記機能化コラーゲン含有膜がヒドロキシアパタイト機能化コラーゲン含有膜である、[17]に記載の方法。
[19] 前記薬物-担体混合物が骨活性剤を含む、[17]又は[18]に記載の方法。
[20] 前記骨活性剤が骨芽細胞を活性化する、[19]に記載の方法。
[21] 前記骨活性剤が破骨細胞を阻害する、[19]に記載の方法。
[22] 前記骨活性剤が、PGE1;PGE2;EP2受容体アゴニスト;EP4受容体アゴニスト;EP2受容体/EP4受容体二重アゴニスト;有機ビスホスホネート;カテプシンK阻害剤;エストロゲン又はエストロゲン受容体モジュレーター;カルシトニン;破骨細胞プロトンATPアーゼの阻害剤;HMG-CoA還元酵素の阻害剤;インテグリン受容体アンタゴニスト;RANKL阻害剤;骨同化作用剤;骨形成剤;ビタミンD又は合成ビタミンDアナログ;アンドロゲン又はアンドロゲン受容体モジュレーター;SOST阻害剤;血小板由来成長因子;これらの薬学的に許容される塩;及びこれらの混合物のうちの1つ以上を含む、[19]~[21]のいずれかに記載の方法。
[23] 前記有機ビスホスホネートが、アレンドロン酸、アレンドロン酸ナトリウム、イバンドロネート、リセドロネート、ゾレドロネート、ゾレドロン酸、エチドロネート、パミドロネート、チルドロネート、ネリドロネート及びオルパドロネートからなる群から選択される、[22]に記載の方法。
[24] 骨形成タンパク質がBMP-2、BMP-4及びBMP-7からなる群から選択される、[22]に記載の方法。
[25] 前記少なくとも1つの治療剤が、ナトリウムチャネル遮断剤、TRPV1アンタゴニスト、エンドセリンアンタゴニスト、ブラジキニンアンタゴニスト、ASIC阻害剤、TrkA阻害剤又は放射性核種を含む、[17]~[24]のいずれかに記載の方法。
[26] 前記少なくとも1つの治療剤が、NSAID、コルチコステロイド及びサイトカイン阻害剤からなる群から選択される抗炎症剤を含む、[17]~[25]のいずれかに記載の方法。
[27] 前記少なくとも1つの治療剤が抗細菌剤及び/又は抗真菌剤を含む、[17]~[26]のいずれかに記載の方法。
[28] 前記抗細菌剤が、セフェム、セファロスポリン、キノロン抗生物質及び/又はマクロライドである、[27]に記載の方法。
[29] 前記抗真菌剤が、フルコナゾール、クロトリマゾール及び/又はイトラコナゾールである、[27]に記載の方法。
[30] 前記少なくとも1つの治療剤が抗がん剤を含む、[17]~[29]のいずれかに記載の方法。
[31] 前記抗がん剤が、ビンクリスチン、ドキソルビシン、エトポシド、ゲムシタビン及び/又はメトトレキサートである、[30]に記載の方法。
[32] 骨を修復する方法であって、機能化コラーゲン含有膜及び薬物-担体混合物を含む人工骨膜を埋め込む工程を含み、前記薬物-担体混合物が、BMP-2及びゾレドロン酸を含む、方法。
[33] 前記機能化コラーゲン含有膜がヒドロキシアパタイト機能化コラーゲン含有膜である、[32]に記載の方法。
[34] 骨欠損を修復する方法であって:
(i) 前記骨欠損に、移植片材料を埋め込む工程;及び
(ii) 前記移植片を、機能化コラーゲン含有膜で被覆する工程
を含む方法。