(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037996
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】細胞リプログラミング
(51)【国際特許分類】
C12N 5/10 20060101AFI20240312BHJP
C12Q 1/04 20060101ALI20240312BHJP
C12N 5/071 20100101ALI20240312BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240312BHJP
【FI】
C12N5/10
C12Q1/04 ZNA
C12N5/071
C12N15/12
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023215034
(22)【出願日】2023-12-20
(62)【分割の表示】P 2021209469の分割
【原出願日】2016-12-23
(31)【優先権主張番号】2015905349
(32)【優先日】2015-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(71)【出願人】
【識別番号】518224495
【氏名又は名称】モグリファイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125081
【弁理士】
【氏名又は名称】小合 宗一
(72)【発明者】
【氏名】フィラス、ジェイバー
(72)【発明者】
【氏名】ポロ、ジョゼ
(72)【発明者】
【氏名】ゴフ、ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】林崎 良英
(72)【発明者】
【氏名】ラッカム、オーウェン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】1つの細胞タイプから他の細胞タイプに転換する方法及び組成物を提供する。
【解決手段】ソース細胞を標的細胞タイプの少なくとも1つの特徴を有する細胞に転換するのに必要な転写因子を決定する方法であって:-前記ソース細胞タイプ及び標的細胞タイプ中の遺伝子の差次的発現を決定するステップと;-前記差次的遺伝子発現に基づいて、少なくとも1つのネットワークに亘って、前記ソース細胞タイプ及び標的細胞タイプの各々における各転写因子(TF)に関するネットワークスコアを決定するステップであって、前記ネットワークは、遺伝子発現に影響する相互作用の情報を含む、ステップと;-ネットワークスコアと差次的遺伝子発現との情報の組み合わせに基づいて前記TFをランク付けし、それによりソース細胞から標的細胞タイプの少なくとも1つの特徴を有する細胞への転換のための転写因子のセットを特定するステップと、を含む、方法とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソース細胞を標的細胞タイプの少なくとも1つの特徴を有する細胞に転換するのに必要な転写因子を決定する方法であって:
-前記ソース細胞タイプ及び標的細胞タイプ中の遺伝子の差次的発現を決定するステップと;
-前記差次的遺伝子発現に基づいて、少なくとも1つのネットワークに亘って、前記ソース細胞タイプ及び標的細胞タイプの各々における各転写因子(TF)に関するネットワークスコアを決定するステップであって、前記ネットワークは、遺伝子発現に影響する相互作用の情報を含む、ステップと;
-ネットワークスコアと差次的遺伝子発現との情報の組み合わせに基づいて前記TFをランク付けし、それによりソース細胞から標的細胞タイプの少なくとも1つの特徴を有する細胞への転換のための転写因子のセットを特定するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記ソース細胞タイプ及び標的細胞タイプ中の各差次的発現遺伝子に関する遺伝子スコアを決定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記遺伝子スコアが、前記差次的発現のlog倍数変化と調整P値との組み合わせである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記遺伝子スコアが、好ましくは背景に対する、ツリーベースの方法を使用して計算される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ネットワークが、タンパク質-DNA相互作用、タンパク質-DNA及び/又はタンパク質-RNA相互作用の情報を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ネットワークが、遺伝子の転写因子及び調節領域の間の相互作用の情報を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記調節領域が、遺伝子のプロモーター領域である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
更に、遺伝子スコアを決定する前に、各遺伝子に関する発現データを収集するステップを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
更に、各細胞タイプからの前記ランク付けリストから、転写的に重複性のTFを除去するステップを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ソース細胞を標的細胞タイプの少なくとも1つの特徴を有する細胞に転換するのに必要な転写因子を決定する方法であって:
-前記ソース細胞タイプ及び標的細胞タイプ中の各遺伝子に関する発現データを収集するステップと;
-各サンプル中の各遺伝子に関するツリーベースの背景に対する差次的発現を計算した後、前記log倍数変化及び調整P値を遺伝子スコアと組み合わせるステップと;
-各TF上に中心を置く少なくとも1つのサブネットワークに亘って、遺伝子スコアの加重和を実行することにより、各TFに関するネットワークスコアを計算するステップと;-遺伝子スコアとネットワークスコアとの組み合わせに基づいて前記TFをランク付けするステップと;
-各細胞タイプからのランク付けリストの比較に基づいて、任意の2つの細胞タイプ間の転換のための転写因子のセットを計算するステップと;場合により
-前記リストから転写的に重複性のTFを除去するステップと、を含み、
それにより、標的細胞タイプへのソース細胞タイプの転換に必要な前記転写因子を決定する、方法。
【請求項11】
ソース細胞をリプログラミングする方法であって、前記ソース細胞における1つ又は転写因子、又はその変異体のタンパク質発現を増大させることを含み、前記ソース細胞は、標的細胞の少なくとも1つの特徴を有するようにリプログラミングされ:
-前記ソース細胞は、皮膚線維芽細胞、上皮角化細胞、胚性幹細胞、単球又は心臓線維芽細胞からなる群から選択され;
-前記標的細胞は、軟骨細胞、毛包、CD4+T細胞、CD8+T細胞、NK-細胞、造血性(haemopoeitic)幹細胞(HSC)、脂肪の間葉系幹細胞(MSC)、骨髄の間葉系幹細胞(MSC)、オリゴデンドロサイト、オリゴデンドロサイト前駆体、骨格筋細胞、平滑筋細胞及び胎児心筋細胞からなる群から選択され;
-前記転写因子は、表4に列挙したものの1つ以上である、方法。
【請求項12】
標的細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞をソース細胞から生成する方法であって:
-ソース細胞において1つ以上の転写因子、又はその変異体の量を増大させることと;
-標的細胞を分化させるのに十分な時間及び条件下で、前記ソース細胞を培養し;それにより標的細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞をソース細胞から生成することと、を含み:
-前記ソース細胞は、皮膚線維芽細胞、上皮角化細胞、胚性幹細胞、単球又は心臓線維芽細胞からなる群から選択され;
-前記標的細胞は、軟骨細胞、毛包、CD4+T細胞、CD8+T細胞、NK(ナチュラルキラー)-細胞、造血性(haemopoeitic)幹細胞(HSC)、脂肪の間葉系幹細胞(MSC)、骨髄の間葉系幹細胞(MSC)、オリゴデンドロサイト、オリゴデンドロサイト前駆体、骨格筋細胞、平滑筋細胞及び胎児心筋細胞からなる群から選択され;
-前記転写因子は、表4に列挙したものの1つ以上である、方法。
【請求項13】
1つ以上の転写因子、又はその変異体の量が、ソース細胞において、前記ソース細胞を前記転写因子の発現を増大させる剤と接触させることにより増大される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記剤が:ヌクレオチド配列、タンパク質、アプタマー及び小分子、リボソーム、RNAi剤及びペプチド-核酸(PNA)並びにその類似体又は変異体からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
1つ以上の転写因子の量が、表4に列挙される転写因子タンパク質をコードする少なくとも1つの核酸配列を導入することにより増大される、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記ソース細胞が皮膚線維芽細胞であり、
(a)前記標的細胞が軟骨細胞であり、前記転写因子がBARX1、PITX1、SMAD6、FOXC1、SIX2及びAHRの任意の1つ以上であり;
(b)前記標的細胞が毛包であり、前記転写因子がZIC1、PRRX2、RARB、VDR、FOXD1及びCREB3の任意の1つ以上であり;
(c)前記標的細胞がCD4+T細胞であり、前記転写因子がRORA、LEF1、JUN、FOS及びBACH2の任意の1つ以上であり;
(d)前記標的細胞がCD8+T細胞であり、前記転写因子がRORA、FOS、SMAD7、JUN及びRUNX3の任意の1つ以上であり;
(e)前記標的細胞がNK細胞であり、前記転写因子がRORA、SMAD7、FOS、JUN及びNFATC2の任意の1つ以上であり;
(f)前記標的細胞がHSCであり、前記転写因子がMYB、GATA1、GFI1及びGFI1Bの任意の1つ以上であり;
(g)前記標的細胞が脂肪のMSCであり、前記転写因子がNOTCH3、HIC1、ID1、ESRRA、IR1、SIX5、SREBF1及びSNAI2の任意の1つ以上であり;
(h)前記標的細胞が骨髄のMSCであり、前記転写因子がSIX1、ID1、HOXA7、FOXC2、HOXA9、MAFB及びIRX5の任意の1つ以上であり;
(i)前記標的細胞がオリゴデンドロサイト前駆体であり、前記転写因子がNKX2-1、ANKRD1、FOXA2、CDH1、ZFP42、IGF1、ICAM1及びFOSの任意の1つ以上であり;
(j)前記標的細胞が骨格筋細胞であり、前記転写因子がMYOG、HIC1、MYOD1、FOXD1、PITX3、SIX2、HOXA7及びJUNBの任意の1つ以上であり;
(k)前記標的細胞が平滑筋細胞であり、前記転写因子がGATA6、LIF、JUNB、CREB3、MEIS1及びPBX1の任意の1つ以上であり;
(l)前記標的細胞が胎児心筋細胞であり、前記転写因子がBMP10、GATA6、TBX5、FHL2、NKX2-5、HAND2、GATA4及びPPARGC1Aの任意の1つ以上であり、
(m)前記標的細胞が星状細胞であり、前記転写因子がSOX2、SOX9、ARNT2、E2F5、PBX1、SMAD1及びRUNX2の任意の1つ以上であり;
(n)前記標的細胞が上皮細胞であり、前記転写因子がFOS、DBP、HES1、FOXA2、ESRRA、CDH1、FOXQ1及びPAX6の任意の1つ以上であり;
(o)前記標的細胞が内皮細胞であり、前記転写因子がSOX17、SMAD1、TAL1、IRF1、TCF7L1、MXD4及びJUNBの任意の1つ以上であり;又は
(p)前記標的細胞が角化細胞であり、前記転写因子がFOXQ1、SOX9、MAFB、CDH1、FOS及びRELの任意の1つ以上である、請求項12~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記ソース細胞が上皮角化細胞であり、
(a)前記標的細胞が軟骨細胞であり、前記転写因子がBARX1、PITX1、SMAD6、TGFB3、FOXC1及びSIX2の任意の1つ以上であり;
(b)前記標的細胞が毛包であり、前記転写因子がRUNX1T1、ZIC1、PRRX1、MSX1、EBF1、FOXD1及びRUNX2の任意の1つ以上であり;
(c)前記標的細胞がCD4+T細胞であり、前記転写因子がRORA、LEF1、JUN、FOS及びNR3C1の任意の1つ以上であり;
(d)前記標的細胞がCD8+T細胞であり、前記転写因子がRORA、FOS、SMAD7、JUN及びRUNX3の任意の1つ以上であり;
(e)前記標的細胞がNK細胞であり、前記転写因子がRORA、SMAD7、FOS、JUN、NFATC2及びRUNX3の任意の1つ以上であり;
(f)前記標的細胞がHSCであり、前記転写因子がMYB、GATA1、GFI1及びGFI1Bの任意の1つ以上であり;
(g)前記標的細胞が脂肪のMSCであり、前記転写因子がTWIST1、HIC1、ID1、MSX1、IRF1、HOXB7、SNAI2及びE2F1の任意の1つ以上であり;
(h)前記標的細胞が骨髄のMSCであり、前記転写因子がSIX1、TWSIT1、ID1、HMOX1、FOXC2及びHOXA7の任意の1つ以上であり;
(i)前記標的細胞がオリゴデンドロサイト前駆体細胞であり、前記転写因子がNKX2-1、ANKRD1、ZFP42、FOS、IGF1、ICAM1、FOXA2及びCD
H1の任意の1つ以上であり;
(j)前記標的細胞が骨格筋細胞であり、前記転写因子がMYOG、MYOD1、RF1、PITX3、HOXA7、FOXD1及びSOX8の任意の1つ以上であり;
(k)前記標的細胞が平滑筋細胞であり、前記転写因子がIRF1、GATA6、LIF及びMEIS1の任意の1つ以上であり;
(l)前記標的細胞が内皮細胞であり、前記転写因子がSOX17、TAL1、SMAD1、IRF1、TCF7L1及びHOXB7の任意の1つ以上であり;又は
(m)前記標的細胞が上皮細胞であり、前記転写因子がNOTCH1、HR、DBP、OTX1、ESRRA、FOXQ1、PAX6及びIRX5の任意の1つ以上である、請求項12~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記ソース細胞が胚性幹細胞であり、
(a)前記標的細胞が軟骨細胞であり、前記転写因子がBARX1、PITX1、SMAD6及びNFKB1の任意の1つ以上であり;
(b)前記標的細胞が毛包であり、前記転写因子がTWIST1、ZIC1、NR2F2、PRRX1、NFKB1及びAHRの任意の1つ以上であり;
(c)前記標的細胞がCD4+T細胞であり、前記転写因子がRORA、LEF1、JUN、FOS及びBACH2の任意の1つ以上であり;
(d)前記標的細胞がCD8+T細胞であり、前記転写因子がRORA、FOS、SMAD7及びJUNの任意の1つ以上であり;
(e)前記標的細胞がNK細胞であり、前記転写因子がRORA、SMAD7、FOS、JUN及びNFATC2の任意の1つ以上であり;
(f)前記標的細胞がHSCであり、前記転写因子がMYB、IL1B、KLF1、GATA1、GFI1、GFI1B及びNFE2の任意の1つ以上であり;
(g)前記標的細胞が脂肪のMSCであり、前記転写因子がTWIST1、SNAI2、IRF1、MXD4、NFKB1、MSX1、HOXB7及びESRRAの任意の1つ以上であり;
(h)前記標的細胞が骨髄のMSCであり、前記転写因子がIRF1、RUNX1、CEBPB、AHR、FOXC2及びHOXA9の任意の1つ以上であり;
(i)前記標的細胞がオリゴデンドロサイト前駆体細胞であり、前記転写因子がNKX2-1、ANKRD1、FOXA2、LMO3、FOS、IGF1、ICAM1及びCDH1の任意の1つ以上であり;
(j)前記標的細胞が骨格筋細胞であり、前記転写因子がMYOG、IRF1、MYOD1、FOXD1、NFKB1、JUNB及びHOXA7の任意の1つ以上であり;
(k)前記標的細胞が平滑筋細胞であり、前記転写因子がIRF1、NFKB1、JUNB、FOSL2、GATA6及びMEIS1の任意の1つ以上であり;
(l)前記標的細胞が星状細胞であり、前記転写因子がIRF1、SOX9、ARNT2、PAX6、SNAI2、RUNX2及びSOX5の任意の1つ以上であり;
(m)前記標的細胞が内皮細胞であり、前記転写因子がSOX17、SMAD1、TAL1、HOXB7、JUNB、NFKB1及びIRF1の任意の1つ以上であり;
(n)前記標的細胞が上皮細胞であり、前記転写因子がMYC、IL1B、FOS、NFKB1、ESRRA、FOXQ1、IRF1及びPAX6の任意の1つ以上であり;又は(o)前記標的細胞が角化細胞であり、前記転写因子がSOX9、NFKB1、MYC、NR2F2、FOSL2、FOSL1及びAHRである、請求項12~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記ソース細胞が単球細胞であり、
(a)前記標的細胞がHSCであり、前記転写因子がMYB、IL1B、GATA1、GFI1及びGFI1Bの任意の1つ以上である、請求項12~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記ソース細胞が心臓線維芽細胞であり、前記標的細胞が胎児心筋細胞であり、前記転写因子がBMP10、GATA6、TBX5、ANKRD1、HAND1、PPARGC1A、NKX2-5及びGATA4の任意の1つ以上である、請求項12~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記ソース細胞が間葉系幹細胞であり、前記標的細胞が星状細胞であり、前記転写因子がSOX2、SOX9、ARNT2、MYBL2、POU3F2、E2F1及びHMGB2の任意の1つ以上である、請求項12~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記ソース細胞が多能性幹細胞であり、
(a)前記標的細胞が星状細胞であり、前記転写因子がPAX6、POU3F2、SNAI2、RUNX2、SOX5、E2F5及びHMGB2の任意の1つ以上であり;
(b)前記標的細胞が角化細胞であり、前記転写因子がTP63、TFAP2A、MYC、NFKBIA、SOX9及びNFKB1の任意の1つ以上であり;又は
(c)前記標的細胞が内皮細胞であり、前記転写因子がSOX17、TAL1、HOXB7、NFKB1、IRF1、SMAD1及びJUNBの任意の1つ以上である、請求項12~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記標的細胞の前記少なくとも1つの特徴が、任意の1つ以上の標的細胞マーカーの上方調節、及び/又は細胞形態における変化である、請求項12~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
以下の標的細胞に関する前記マーカーが:
-軟骨細胞:CD49、CD10、CD9、CD95、インテグリンα10β1,105、及び硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)の産生;
-毛包:CD200、PHLDA1及びフォリスタチン;
-CD4+T-細胞:CD3、CD4;
-CD8+T-細胞:CD3、CD8;
-NK-細胞:CD56、CD2;
-HSC:CD45、CD19/20、CD14/15、CD34、CD90;
-脂肪のMSC:CD13、CD29、CD90、CD105、CD10、CD45、及びインビトロでの骨芽細胞、脂肪細胞及び軟骨細胞に向かった分化;
-骨髄のMSC:CD13、CD29、CD90、CD105、CD10、及びインビトロでの骨芽細胞、脂肪細胞及び軟骨細胞に向かった分化;
-オリゴデンドロサイト及びオリゴデンドロサイト前駆体;NG2及びPDGFRα Olig2及びNkx2.2に関するQPCR;
-骨格筋細胞:MyoD、ミオゲニン及びデスミン;
-平滑筋細胞:ミオカルディン、平滑筋αアクチン及び平滑筋ミオシン重鎖;
-胎児心筋細胞:MEF2C、MYH6、ACTN1、CDH2及びGJA1;
-内皮細胞:PeCAM(CD31)、VE-カドヘリン及びVEGFR2;
-角化細胞:ケラチン1、ケラチン14、パンケラチン及びインボルクリン;
-星状細胞:GFAP、S100B及びALDH1L1;並びに
-上皮細胞:サイトケラチン15(CK15)、サイトケラチン3(CK3)、インボルクリン及びコネキシン4を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
標的細胞に分化させるのに十分な時間及び条件下で前記ソース細胞を培養させることが、表9に示される関連する培地中で前記細胞を少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30日間培養することを含む、請
求項12~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
更に、前記標的細胞タイプの少なくとも1つの特徴を有する細胞を個人に投与するステップを含む、請求項12~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
請求項12~26のいずれか一項に記載の方法により生成された、標的細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞。
【請求項28】
細胞の少なくとも5%が前記標的細胞の少なくとも1つの特徴を有し、請求項12~26のいずれか一項に記載の方法により生成される、細胞集団。
【請求項29】
前記集団中の前記細胞の少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%が、前記標的細胞の少なくとも1つの特徴を有する、請求項28に記載の細胞集団。
【請求項30】
標的細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を製造するための、請求項12~26のいずれか一項に記載の方法における使用のためのキットであって、本明細書に記載した転写因子又はその変異体をコードする1つ以上の核酸配列を有する1つ以上の核酸を含み、場合により更に、ソース細胞を標的細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞にリプログラミングするための指示書を含む、キット。
【請求項31】
前記標的細胞タイプへのソース細胞タイプの転換を促進するのに有用な剤を特定する方法であって:
-本明細書に記載した任意の方法により、標的細胞タイプへのソース細胞タイプの転換に必要な1つ以上の転写因子を決定するステップと;
-標的細胞タイプへのソース細胞タイプの転換に必要な前記1つ以上の転写因子の量を増大させる能力に関して1つ以上の候補剤をスクリーニングするステップと;
を含み、
前記1つ以上の転写因子の前記量を増大させる剤は、前記標的細胞タイプへのソース細胞タイプの前記転換を促進するのに有用な剤である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その開示全体が本明細書に完全に組み込まれるオーストラリア仮特許出願第2015905349号明細書による優先権を主張する。
【0002】
本発明は、1つの細胞タイプから他の細胞タイプに転換する方法及び組成物に関する。詳細には、本発明は、異なる細胞タイプへの細胞の分化転換に関する。
【背景技術】
【0003】
細胞ベースの再生療法は、傷害、疾病又は年齢により損傷した組織を補充するために特定の細胞タイプの生成を必要とする。胚性幹細胞(ESC)は(ヒト)身体から全細胞タイプに分化する可能性を有し、従って補充療法のソースとして広範に研究されている。しかしながら、ESCは培養した胚盤胞から樹立されるため、患者特異的に誘導することができない。従って、免疫拒絶及び倫理的な問題が、ESC技術、特にヒトESC技術の臨床適用への移行を阻止する主な障壁となっている。
【0004】
細胞補充療法は、自身の容易にアクセス可能な組織、例えば皮膚又は血液から直接、治療的に重要な様々な細胞タイプを迅速に生成する可能性を有する。そのような免疫学的に一致した細胞は、移植後の拒絶の危険性も低いであろう。更に、これらの細胞は高分化しているため、より低い腫瘍形成能が現れるであろう。
【0005】
多能性状態を経ない、1つの細胞タイプから他の細胞タイプへの転換プロセスである分化転換は、再生医療において非常に有望であり得るが、未だに高い信頼性のもとで適用されていない。1つの体細胞タイプの表現型を他の表現型に変えることは可能であり得るが、転換に必要な要素は、特定が困難であり、殆どの場合未知である。細胞タイプの独自性を直接リプログラミングする因子の特定は、現在、中でも特に、不十分かつ極めることのできない手法である、妥当な因子のセットの包括的な実験的試験の費用により制限されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
1つの細胞タイプから他の細胞タイプに転換するのに必要な因子を特定する新しい及び/又は改善された方法が必要とされている。治療的用途に使用される細胞及び細胞集団も必要とされている。
【0007】
明細書における任意の先行技術に対する参照は、この先行技術が任意の管轄権内の通常の一般的知識の一部を形成し、又は、この先行技術が当業者によって他の先行技術の一部として理解され、関連するものとして見なされ、及び/又は組み合わされ得ることを合理的に予測し得ることの承認又は示唆ではない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、遺伝子発現データを調節ネットワーク情報と組み合わせて、細胞転換(即ち、ソース細胞を、標的細胞タイプの特徴を示す細胞に転換する)を誘導するのに必要なリプログラミング因子を予測する予測的フレームワークに関する。このフレームワークは、既知の分化転換に使用される転写因子、及び実験的に検証された以前未知であった分化転換に関する転写因子を正確に予測する。本発明はまた、標的細胞タイプの特徴を有する細胞へのソース細胞の直接リプログラミング(即ち、分化転換又は細胞リプログラミング)のための方法及び組成物に関する。
【0009】
本発明は、ソース細胞を標的細胞タイプの少なくとも1つの特徴を有する細胞に転換するのに必要な転写因子を決定する方法を提供し、該方法は:
-ソース細胞タイプ及び標的細胞タイプ中の遺伝子の差次的発現を決定するステップと;-差次的遺伝子発現に基づいて、少なくとも1つのネットワークに亘って、ソース細胞タイプ及び標的細胞タイプの各々における各転写因子(TF)に関するネットワークスコアを決定するステップであって、ネットワークは、遺伝子発現に影響する相互作用の情報を含む、ステップと;
-ネットワークスコアと差次的遺伝子発現との情報の組み合わせに基づいてTFをランク付けし、それによりソース細胞から標的細胞タイプの少なくとも1つの特徴を有する細胞への転換のための転写因子のセットを特定するステップと、を含む。
【0010】
本発明は、ソース細胞を標的細胞タイプの少なくとも1つの特徴を有する細胞に転換させるのに必要な転写因子を決定する方法を提供し、該方法は:
-ソース細胞タイプ及び標的細胞タイプ中の各差次的発現遺伝子に関する遺伝子スコアを決定するステップと;
-少なくとも1つのネットワークに亘って、各遺伝子スコアの加重和を実行することにより、ソース細胞タイプ及び標的細胞タイプの各々における各転写因子(TF)に関するネットワークスコアを決定するステップであって、ネットワークは、遺伝子発現に影響する相互作用の情報を含む、ステップと;
-遺伝子スコアとネットワークスコアとの組み合わせに基づいてTFをランク付けするステップと;
-各細胞タイプに関するランク付けリストの比較に基づいて、ソース細胞から標的細胞タイプの少なくとも1つの特徴を有する細胞への転換のための転写因子のセットを特定するステップと、を含む。
【0011】
好ましくは、遺伝子スコアは、差次的発現のlog倍数変化と調整P値との組み合わせである。遺伝子スコアは、ツリーベースの方法又はBayesianクラスタリングに基づいて計算することができる。
【0012】
好ましくは、ネットワークは、タンパク質-DNA相互作用、タンパク質-DNA、タンパク質-RNA相互作用の情報を含む。典型的には、ネットワークは、遺伝子の転写因子及び調節領域の間の相互作用の情報を含む。典型的には、調節領域は、遺伝子のプロモーター領域である。
【0013】
好ましくは、本方法は更に、遺伝子スコアを決定する前に、各遺伝子に関する発現データを収集するステップを含む。
【0014】
好ましくは、本方法は更に、各細胞タイプからのランク付けリストから、転写的に重複性のTFを除去するステップを含む。
【0015】
本発明は、ソース細胞を標的細胞タイプの少なくとも1つの特徴を有する細胞に転換するのに必要な転写因子を決定する方法を提供し、該方法は:
-ソース細胞タイプ及び標的細胞タイプ中の各遺伝子に関する発現データを収集するステップと;
-各サンプル中の各遺伝子に関するツリーベースの背景に対する差次的発現を計算した後、log倍数変化及び調整P値を遺伝子スコアと組み合わせるステップと;
-各TF上に中心を置く少なくとも1つのサブネットワークに亘って、遺伝子スコアの加重和を実行することにより、各TFに関するネットワークスコアを計算するステップと;-遺伝子スコアとネットワークスコアとの組み合わせに基づいてTFをランク付けするス
テップと;
-各細胞タイプからのランク付けリストの比較に基づいて、任意の2つの細胞タイプ間の転換のための転写因子のセットを計算するステップと;場合により
-リストから転写的に重複性のTFを除去するステップと、を含み、
それにより、標的細胞タイプへのソース細胞タイプの転換に必要な転写因子を決定する。
【0016】
本発明は、ソース細胞を標的細胞タイプの少なくとも1つの特徴を有する細胞に転換するのに必要な転写因子を決定する方法を提供し、該方法は:
-各サンプル(s)における各遺伝子(x)に関する発現データを収集するステップと;-各サンプルにおける各遺伝子に関するツリーベースの背景に対する差次的発現を計算した後、log倍数変化
【数1】
及び調整P値
【数2】
を遺伝子スコア
【数3】
と組み合わせるステップと、
-各TF上に中心を置く2つの異なるサブネットワークに亘って、遺伝子スコアの加重和を実行することにより、各TF(x)に関するネットワークスコア
【数4】
を計算するステップと;
-
【数5】
スコアの組み合わせに基づいてTFをランク付けするステップと;
-各細胞タイプからのランク付けリストの比較に基づいて、任意の2つの細胞タイプ間の転換のための転写因子のセットを計算するステップと、
-リストから転写的に重複性のTFを除去するステップと、を含み、
それにより、標的細胞タイプへのソース細胞タイプの転換に必要な転写因子を決定する。
【0017】
好ましくは、特定された転写因子のセットは、標的細胞タイプにおいて発現された遺伝子の少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の発現に影響を与えるものである。
【0018】
ソース細胞タイプ及び標的細胞タイプは、FANTOM5データセットに記載されている任意の細胞タイプ、又は表4を含む本明細書に記載されている任意の細胞タイプであり
得る。
【0019】
典型的には、サブネットワークは、MARAが適用された遺伝子発現データ、又はSTRINGデータベース(本明細書で
【数6】
と称される)であるが、遺伝子発現に影響する転写因子の相互作用に関する情報を含む、本明細書に言及する任意のサブネットワークを使用することができる。
【0020】
好ましくは、本方法は更に、それらの必要なTFに基づいて2D面上に細胞タイプを配置し、選択されたTFにより直接調節される必要な遺伝子の平均適用範囲に基づいて高さを加えることにより、細胞転換景観を形成するステップを含む。
【0021】
好ましくは、本明細書に記載した任意の方法は、更に、それらの必要なTFに基づいて2D面上に細胞タイプを配置し、選択されたTFにより直接調節される必要な遺伝子の平均適用範囲に基づいて高さを加えることにより、細胞転換景観を形成するステップを含む。
【0022】
上述した本発明の任意の方法において、方法は更に、ソース細胞タイプにおいて、標的細胞タイプへのソース細胞タイプの転換に必要であると決定された転写因子の量を増大させるステップを含む。
【0023】
本発明は、標的細胞タイプへのソース細胞タイプの転換を促進するのに有用な剤を特定する方法を提供し、該方法は:
-本明細書に記載した任意の方法により、標的細胞タイプへのソース細胞タイプの転換に必要な1つ以上の転写因子を決定するステップと;
-標的細胞タイプへのソース細胞タイプの転換に必要な1つ以上の転写因子の量を増大させる能力に関して1つ以上の候補剤をスクリーニングするステップと;
を含み、
1つ以上の転写因子の量を増大させる剤は、標的細胞タイプへのソース細胞タイプの転換を促進するのに有用な剤である。
【0024】
好ましくは、候補剤は、非限定に、タンパク質(抗体又はその断片又は抗体模倣物等)、ペプチド、核酸(RNA、DNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、ペプチド核酸を含む)、炭水化物、有機化合物、小分子、天然物、ライブラリー抽出物、体液を含む、試験を望まれる任意の化合物であり得る。候補化合物は、ライブラリー、例えば変更物又は修飾物を含む化合物の収集物の一部であってもよい。
【0025】
本発明は、ソース細胞をリプログラミングする方法を提供し、該方法は、ソース細胞における1つ又は転写因子、又はその変異体のタンパク質発現を増大させることを含み、ソース細胞は、標的細胞の少なくとも1つの特徴を有するようにリプログラミングされ:
-ソース細胞は、皮膚線維芽細胞、上皮角化細胞、胚性幹細胞、多能性幹細胞、間葉系幹細胞、単球又は心臓線維芽細胞からなる群から選択され;
-標的細胞は、軟骨細胞、毛包、CD4+T細胞、CD8+T細胞、NK-細胞、造血性(haemopoeitic)幹細胞(HSC)、間葉系幹細胞(MSC)、脂肪のMSC、骨髄のMSC、オリゴデンドロサイト、オリゴデンドロサイト前駆体、骨格筋細胞、平滑筋細胞、胎児心筋細胞、上皮細胞、内皮細胞、角化細胞及び星状細胞からなる群から選択され;
-転写因子は、表4に列挙したものの1つ以上である。
【0026】
本発明は、標的細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞をソース細胞から生成する方法を提供し、該方法は:
-ソース細胞において1つ以上の転写因子、又はその変異体の量を増大させることと;
-標的細胞に分化させるのに十分な時間及び条件下で、ソース細胞を培養し;それにより標的細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞をソース細胞から生成することと、を含み:
-ソース細胞は、皮膚線維芽細胞、上皮角化細胞、胚性幹細胞、多能性幹細胞、間葉系幹細胞、単球又は心臓線維芽細胞からなる群から選択され;
-標的細胞は、軟骨細胞、毛包、CD4+T細胞、CD8+T細胞、NK(ナチュラルキラー)-細胞、造血性(haemopoeitic)幹細胞(HSC)、間葉系幹細胞(MSC)、脂肪のMSC、骨髄のMSC、オリゴデンドロサイト、オリゴデンドロサイト前駆体、骨格筋細胞、平滑筋細胞、胎児心筋細胞、上皮細胞、内皮細胞、角化細胞及び星状細胞からなる群から選択され;
-転写因子は、表4に列挙したものの1つ以上である。
【0027】
本発明はまた、表4に列挙したソース細胞をリプログラミングする方法を提供し、該方法は、ソース細胞において表4の転写因子又はその変異体のタンパク質発現を増大させることを含み、ソースは、標的細胞の少なくとも1つの特徴を有するようにリプログラミングされる。
【0028】
本発明は、ソース細胞を、標的細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞にリプログラミングする方法を提供し、該方法は:i)ソース細胞、又はソース細胞を含む細胞集団を提供することと;ii)前記ソース細胞に、1つ以上の転写因子をコードするヌクレオチド配列を含む1つ以上の核酸をトランスフェクトすることと;iii)前記細胞又は細胞集団を培養し、場合により細胞又は細胞集団を標的細胞の少なくとも1つの特徴に関して監視することと、を含み:
-ソース細胞は、皮膚線維芽細胞、上皮角化細胞、胚性幹細胞、多能性幹細胞、間葉系幹細胞、単球又は心臓線維芽細胞からなる群から選択され;
-標的細胞は、軟骨細胞、毛包、CD4+T細胞、CD8+T細胞、NK-細胞、造血性(haemopoeitic)幹細胞(HSC)、間葉系幹細胞(MSC)、脂肪のMSC、骨髄のMSC、オリゴデンドロサイト、オリゴデンドロサイト前駆体、骨格筋細胞、平滑筋細胞 胎児心筋細胞、上皮細胞、内皮細胞、角化細胞及び星状細胞からなる群から選択され;
-転写因子は、表4に列挙したものの1つ以上である。
【0029】
本明細書に記載した本発明の任意の方法において、ソース細胞は線維芽細胞であり、
(a)標的細胞は軟骨細胞であり、転写因子はBARX1、PITX1、SMAD6、FOXC1、SIX2及びAHRの任意の1つ以上であり;
(b)標的細胞は毛包であり、転写因子はZIC1、PRRX2、RARB、VDR、FOXD1及びCREB3の任意の1つ以上であり;
(c)標的細胞はCD4+T細胞であり、転写因子はRORA、LEF1、JUN、FOS及びBACH2の任意の1つ以上であり;
(d)標的細胞はCD8+T細胞であり、転写因子はRORA、FOS、SMAD7、JUN及びRUNX3の任意の1つ以上であり;
(e)標的細胞はNK細胞であり、転写因子はRORA、SMAD7、FOS、JUN及びNFATC2の任意の1つ以上であり;
(f)標的細胞はHSCであり、転写因子はMYB、GATA1、GFI1及びGFI1Bの任意の1つ以上であり;
(g)標的細胞は脂肪のMSCであり、転写因子はNOTCH3、HIC1、ID1、ESRRA、IR1、SIX5、SREBF1及びSNAI2の任意の1つ以上であり;
(h)標的細胞は骨髄のMSCであり、転写因子はSIX1、ID1、HOXA7、FOXC2、HOXA9、MAFB及びIRX5の任意の1つ以上であり;
(i)標的細胞はオリゴデンドロサイト前駆体であり、転写因子はNKX2-1、ANKRD1、FOXA2、CDH1、ZFP42、IGF1、ICAM1及びFOSの任意の1つ以上であり;
(j)標的細胞は骨格筋細胞であり、転写因子はMYOG、HIC1 MYOD1、FOXD1、PITX3、SIX2、HOXA7及びJUNBであり;
(k)標的細胞は平滑筋細胞であり、転写因子はGATA6、LIF、JUNB、CREB3、MEIS1及びPBX1の任意の1つ以上であり;
(l)標的細胞は胎児心筋細胞であり、転写因子はBMP10、GATA6、TBX5、FHL2、NKX2-5、HAND2、GATA4及びPPARGC1Aの任意の1つ以上であり;
(m)標的細胞は星状細胞であり、転写因子はSOX2、SOX9、ARNT2、E2F5、PBX1、SMAD1、及びRUNX2の任意の1つ以上であり、
(n)標的細胞は上皮細胞であり、転写因子はFOS、DBP、HES1、FOXA2、ESRRA、CDH1、FOXQ1及びPAX6の任意の1つ以上であり;
(o)標的細胞は内皮細胞であり、転写因子はSOX17、SMAD1、TAL1、IRF1、TCF7L1、MXD4及びJUNBの任意の1つ以上であり;又は
(p)標的細胞は角化細胞であり、転写因子はFOXQ1、SOX9、MAFB、CDH1、FOS、及びRELの任意の1つ以上である。
【0030】
すぐ上の(a)~(p)において、転写因子の全部を使用することができる。好ましくは、線維芽細胞は皮膚線維芽細胞である。
【0031】
本明細書に記載した本発明の任意の方法において、ソース細胞は角化細胞であり、
(a)標的細胞は軟骨細胞であり、転写因子はBARX1、PITX1、SMAD6、TGFB3、FOXC1及びSIX2の任意の1つ以上であり;
(b)標的細胞は毛包であり、転写因子はRUNX1T1、ZIC1、PRRX1、MSX1、EBF1、FOXD1及びRUNX2の任意の1つ以上であり;
(c)標的細胞はCD4+T細胞であり、転写因子はRORA、LEF1、JUN、FOS及びNR3C1の任意の1つ以上であり;
(d)標的細胞はCD8+T細胞であり、転写因子はRORA、FOS、SMAD7、JUN及びRUNX3の任意の1つ以上であり;
(e)標的細胞はNK細胞であり、転写因子はRORA、SMAD7、FOS、JUN、NFATC2及びRUNX3の任意の1つ以上であり;
(f)標的細胞はHSCであり、転写因子はMYB、GATA1、GFI1及びGFI1Bの任意の1つ以上であり;
(g)標的細胞は脂肪のMSCであり、転写因子はTWIST1、HIC1、ID1、MSX1、IRF1、HOXB7、SNAI2及びE2F1の任意の1つ以上であり;
(h)標的細胞は骨髄のMSCであり、転写因子はSIX1、TWSIT1、ID1、HMOX1、FOXC2及びHOXA7の任意の1つ以上であり;
(i)標的細胞はオリゴデンドロサイト前駆体細胞であり、転写因子はNKX2-1、ANKRD1、ZFP42、FOS、IGF1、ICAM1、FOXA2及びCDH1の任意の1つ以上であり;
(j)標的細胞は骨格筋細胞であり、転写因子はMYOG、MYOD1、RF1、PITX3、HOXA7、FOXD1及びSOX8の任意の1つ以上であり;
(k)標的細胞は平滑筋細胞であり、転写因子はIRF1、GATA6、LIF及びMEIS1の任意の1つ以上であり;
(l)標的細胞は内皮細胞であり、転写因子はSOX17、TAL1、SMAD1、IRF1及びTCF7L1の任意の1つ以上であり、又は
(m)標的細胞は上皮細胞であり、転写因子はNOTCH1、HR、DBP、OTX1、ESRRA、FOXQ1、PAX6、及びIRX5の任意の1つ以上である。
【0032】
すぐ上の(a)~(m)において、転写因子の全部を使用することができる。好ましくは、角化細胞は上皮角化細胞である。より好ましくは、角化細胞は口腔粘膜角化細胞である。より好ましくは、ソース細胞が粘膜角化細胞の場合、標的細胞は角膜上皮細胞である。
【0033】
本明細書に記載した本発明の任意の方法において、ソース細胞は胚性幹細胞であり、
(a)標的細胞は軟骨細胞であり、転写因子はBARX1、PITX1、SMAD6及びNFKB1の任意の1つ以上であり;
(b)標的細胞は毛包であり、転写因子はTWIST1、ZIC1、NR2F2、PRRX1、NFKB1及びAHRの任意の1つ以上であり;
(c)標的細胞はCD4+T細胞であり、転写因子はRORA、LEF1、JUN、FOS及びBACH2の任意の1つ以上であり;
(d)標的細胞はCD8+T細胞であり、転写因子はRORA、FOS、SMAD7及びJUNの任意の1つ以上であり;
(e)標的細胞はNK細胞であり、転写因子はRORA、SMAD7、FOS、JUN及びNFATC2の任意の1つ以上であり;
(f)標的細胞はHSCであり、転写因子はMYB、IL1B、KLF1、GATA1、GFI1、GFI1B及びNFE2の任意の1つ以上であり;
(g)標的細胞は脂肪のMSCであり、転写因子はTWIST1、SNAI2、IRF1、MXD4、NFKB1、MSX1、HOXB7及びESRRAの任意の1つ以上であり;
(h)標的細胞は骨髄のMSCであり、転写因子はIRF1、RUNX1、CEBPB、AHR、FOXC2及びHOXA9の任意の1つ以上であり;
(i)標的細胞はオリゴデンドロサイト前駆体細胞であり、転写因子はNKX2-1、ANKRD1、FOXA2、LMO3、FOS、IGF1、ICAM1及びCDH1の任意の1つ以上であり;
(j)標的細胞は骨格筋細胞であり、転写因子はMYOG、IRF1、MYOD1、FOXD1、NFKB1、JUNB及びHOXA7の任意の1つ以上であり;
(k)標的細胞は平滑筋細胞であり、転写因子はIRF1、NFKB1、JUNB、FOSL2、GATA6及びMEIS1の任意の1つ以上であり;
(l)標的細胞は内皮細胞であり、転写因子はSOX17、TAL1、SMAD1、HOXB7、JUNB.IRF1及びNFKB1の任意の1つ以上であり;
(m)標的細胞は星状細胞であり、転写因子はIRF1、SOX9、ARNT2、PAX6、SNAI2、SOX5、及びRUNX2の任意の1つ以上であり;
(n)標的細胞は角化細胞であり、転写因子はSOX9、NFKB1、MYC、NR2F2、AHR、FOSL1及びFOSL2の任意の1つ以上であり、又は
(o)標的細胞は上皮細胞であり、転写因子はMYC、IL1B、FOS、NFKB1、ESRRA、FOXQ1、IRF1及びPAX6の任意の1つ以上である。
【0034】
すぐ上の(a)~(o)において、列挙された転写因子の全部を使用することができる。好ましくは、胚性幹細胞はヒト胚性幹細胞である。
【0035】
本明細書に記載した本発明の任意の方法において、ソース細胞は単球細胞であり、標的細胞はHSCであり、転写因子はMYB、IL1B、GATA1、GFI1及びGFI1Bの任意の1つ以上である。好ましくは、列挙された転写因子の全部を使用することがで
きる。
【0036】
本明細書に記載した本発明の任意の方法において、ソース細胞は心臓線維芽細胞であり、標的細胞は胎児心筋細胞であり、転写因子はBMP10、GATA6、TBX5、ANKRD1、HAND1、PPARGC1A、NKX2-5及びGATA4の任意の1つ以上である。好ましくは、列挙された転写因子の全部を使用することができる。
【0037】
本明細書に記載した本発明の任意の方法において、ソース細胞は多能性細胞であり、標的細胞は内皮細胞であり、転写因子はSOX17、TAL1、HOXB7、NFKB1、IRF1、JUNB、及びSMAD1の任意の1つ以上である。好ましくは、列挙された転写因子の全部を使用することができる。好ましくは、多能性細胞は、人工多能性幹細胞(iPSC)である。
【0038】
本明細書に記載した本発明の任意の方法において、ソース細胞は多能性細胞であり、標的細胞は星状細胞であり、転写因子はPAX6、POU3F2、SNAI2、RUNX2、SOX5、E2F5、及びHMGB2の任意の1つ以上である。好ましくは、列挙された転写因子の全部を使用することができる。好ましくは、多能性細胞は、人工多能性幹細胞(iPSC)である。
【0039】
本明細書に記載した本発明の任意の方法において、ソース細胞は多能性細胞であり、標的細胞は角化細胞であり、転写因子はTP63、TFAP2A、MYC、NFKBIA、SOX9、及びNFKB1の任意の1つ以上である。好ましくは、列挙された転写因子の全部を使用することができる。好ましくは、多能性細胞は、人工多能性幹細胞(iPSC)である。
【0040】
本明細書に記載した本発明の任意の方法において、ソース細胞は骨髄幹細胞であり、標的細胞は星状細胞であり、転写因子はSOX2、SOX9、ARNT2、MYBL2、POU3F2、E2F1及びHMGB2の任意の1つ以上である。好ましくは、列挙された転写因子の全部を使用することができる。
【0041】
好ましくは、標的細胞の少なくとも1つの特徴は、任意の1つ以上の標的細胞マーカーの上方調節、及び/又は細胞形態における変化である。関連するマーカーは、本明細書に記載され及び当技術分野で既知である。以下の標的細胞の例示的なマーカーは:
-軟骨細胞:CD49、CD10、CD9、CD95、インテグリンα10β1,105、及び硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)の産生;
-毛包:CD200、PHLDA1及びフォリスタチン;
-CD4+T-細胞:CD3、CD4;
-CD8+T-細胞:CD3、CD8;
-NK-細胞:CD56、CD2;
-HSC:CD45、CD19/20、CD14/15、CD34、CD90;
-脂肪のMSC:CD13、CD29、CD90、CD105、CD10、CD45、及びインビトロでの骨芽細胞、脂肪細胞及び軟骨細胞に向かった分化;
-骨髄のMSC:CD13、CD29、CD90、CD105、CD10、及びインビトロでの骨芽細胞、脂肪細胞及び軟骨細胞に向かった分化;
-オリゴデンドロサイト及びオリゴデンドロサイト前駆体;NG2及びPDGFRα、Olig2及びNkx2.2に関するQPCR;
-骨格筋細胞:MyoD、ミオゲニン及びデスミン;
-平滑筋細胞:ミオカルディン、平滑筋αアクチン及び平滑筋ミオシン重鎖;-胎児心筋細胞:MEF2C、MYH6、ACTN1、CDH2及びGJA1;
-内皮細胞:PeCAM(CD31)、VE-カドヘリン及びVEGFR2;
-角化細胞:ケラチン1、ケラチン14、パンケラチン及びインボルクリン;
-星状細胞:GFAP、S100B及びALDH1L1;並びに
-上皮細胞:サイトケラチン15(CK15)、サイトケラチン3(CK3)、インボルクリン及びコネキシン4
を含む。
【0042】
典型的には、標的細胞分化に好適な条件は、細胞を十分な時間、好適な培地中で培養することを含む。培養の十分な時間は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30日間であり得る。好適な培地は、表9に示したものであり得る。
【0043】
本発明はまた、本明細書に記載される方法により生成された、標的細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を提供する。
【0044】
本明細書に記載した任意の方法において、方法は更に、標的細胞タイプの少なくとも1つの特徴を有する細胞を増やして、標的細胞タイプの少なくとも1つの特徴を有する細胞の集団中での割合を増加させるステップを含むことができる。細胞を増やすステップは、下に記載する細胞の集団を生成するのに十分な時間及び条件下で培地中で行われてもよい。
【0045】
本明細書に記載した任意の方法において、方法は更に、標的細胞タイプの少なくとも1つの特徴を有する細胞、又は細胞を含む細胞集団を個人に投与するステップを含み得る。
【0046】
本発明はまた、細胞の少なくとも5%が標的細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞集団を提供し、それらの細胞は、本明細書に記載した方法により生成される。好ましくは、集団中の細胞の少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%が、標的細胞の少なくとも1つの特徴を有する。
【0047】
本発明はまた、本明細書に開示した標的細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を製造するためのキットに関する。いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に記載した転写因子又はその変異体をコードする1つ以上の核酸配列を有する1つ以上の核酸を含む。好ましくは、キットは、表4に引用した、標的細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞の製造に使用することができる。好ましくは、キットは、表4に引用したソース細胞と共に使用することができる。いくつかの実施形態では、キットは更に、本明細書に開示した方法による、ソース細胞を標的細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞にリプログラミングするための指示書を含む。好ましくは、本発明は、本明細書に記載した本発明の方法において使用される際のキットを提供する。
【0048】
本発明は、少なくとも1つの標的細胞と、標的細胞内の1つ以上の転写因子のタンパク質発現を増大させる少なくとも1つの剤とを含む組成物に関する。好ましくは、標的細胞は、本明細書に記載したものの1つである。更に、転写因子は、本明細書に記載した任意の1つである。好ましくは、標的細胞及び転写因子は、表4に記載されているものである。
【0049】
本発明は、線維芽細胞のリプログラミング方法を提供し、該方法は、線維芽細胞におけるFOXQ1、SOX9、MAFB、CDH1、FOS及びREL、又はその変異体の任意の1つ以上のタンパク質発現を増大させることを含み、線維芽細胞は、角化細胞の少な
くとも1つの特徴を有するようにリプログラミングされている。
【0050】
本発明は、線維芽細胞から角化細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を生成する方法を提供し、該方法は:
-線維芽細胞におけるFOXQ1、SOX9、MAFB、CDH1、FOS及びREL、又はその変異体の任意の1つ以上の量を増大させることと;
-線維芽細胞を角化細胞分化に十分な時間及び条件下で培養し;それにより線維芽細胞から角化細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を生成することと、を含む。
【0051】
本発明は、線維芽細胞を角化細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞にリプログラミングする方法を提供し、該方法は:i)線維芽細胞、又は線維芽細胞を含む細胞集団を提供することと;ii)ポリペプチドFOXQ1、SOX9、MAFB、CDH1、FOS及びRELをコードするヌクレオチド配列を含む1つ以上の核酸を前記線維芽細胞にトランスフェクトすることと;iii)前記細胞又は細胞集団を培養し、場合により細胞又は細胞集団を、角化細胞の少なくとも1つの特徴に関して監視することと、を含む。
【0052】
好ましくは、角化細胞の少なくとも1つの特徴は、任意の1つ以上の角化細胞マーカーの上方調節、及び/又は細胞形態における変化である。角化細胞マーカーは、ケラチン1、ケラチン14及びインボルクリンを含み、細胞形態は、玉石の外観である。
【0053】
典型的には、角化細胞分化に好適な条件は、細胞を十分な時間、好適な培地中で培養することを含む。培養の十分な時間は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30日間であってもよい。好適な培地は、表9に示すものであってもよい。
【0054】
本発明はまた、本明細書に記載される方法により生成された、角化細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を提供する。
【0055】
本明細書に記載した任意の方法において、方法は更に、標的細胞タイプの少なくとも1つの特徴を有する細胞を増やして、標的細胞タイプの少なくとも1つの特徴を有する細胞の集団中での割合を増加させるステップを含むことができる。細胞を増やすステップは、下に記載する細胞の集団を生成するのに十分な時間及び条件下で培地中で行われてもよい。
【0056】
本明細書に記載した任意の方法において、方法は更に、角化細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞、又は細胞を含む細胞集団を個人に投与するステップを含み得る。
【0057】
本発明はまた、細胞の少なくとも5%が角化細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞集団を提供し、それらの細胞は、本明細書に記載した方法により生成される。好ましくは、集団中の細胞の少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%が、角化細胞の少なくとも1つの特徴を有する。
【0058】
本発明はまた、本明細書に開示した、角化細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を製造するためのキットに関する。いくつかの実施形態では、キットは、(i)FOXQ1ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列;及び(ii)SOX9ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列;及び(iii)MAFBポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列、及び(iv)CDH1ポリペプチド又はその変異体をコード
する核酸配列、及び(v)FOSポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列、及び(vi)RELポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列の任意の1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、キットは更に、本明細書に開示した方法による、線維芽細胞を角化細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞にリプログラミングするための指示書を含む。好ましくは、本発明は、本明細書に記載した本発明の方法において使用される際のキットを提供する。
【0059】
本発明は、少なくとも1つの線維芽細胞と、線維芽細胞におけるFOXQ1、SOX9、MAFB、CDH1、FOS及びRELの任意の1つ以上のタンパク質発現を増大させる少なくとも1つの剤とを含む組成物に関する。
【0060】
本発明は、線維芽細胞のリプログラミングのための方法を提供し、該方法は、線維芽細胞におけるSOX17、SMAD1、TAL1、IRF1、TCF7L1、MXD4及びJUNB、又はその変異体の任意の1つ以上のタンパク質発現を増大させることを含み、線維芽細胞は、内皮細胞の少なくとも1つの特徴を有するようにリプログラミングされる。
【0061】
本発明は、線維芽細胞から内皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を生成する方法を提供し、該方法は:
-線維芽細胞におけるSOX17、SMAD1、TAL1、IRF1、TCF7L1、MXD4及びJUNB、又はその変異体の任意の1つ以上の量を増大させることと;
-線維芽細胞を内皮分化に十分な時間及び条件下で培養し;それにより線維芽細胞から内皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を生成することと、を含む。
【0062】
本発明は、線維芽細胞を内皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞にリプログラミングするための方法を提供し、該方法は:i)線維芽細胞、又は線維芽細胞を含む細胞集団を提供することと;ii)ポリペプチドSOX17、SMAD1、TAL1、IRF1、TCF7L1、MXD4及びJUNBをコードするヌクレオチド配列を含む1つ以上の核酸を前記線維芽細胞にトランスフェクトすることと;iii)前記細胞又は細胞集団を培養し、場合により細胞又は細胞集団を、内皮細胞の少なくとも1つの特徴に関して監視することと、を含む。
【0063】
好ましくは、内皮細胞の少なくとも1つの特徴は、任意の1つ以上の内皮マーカーの上方調節、及び/又は細胞形態における変化である。内皮マーカーは、CD31(Pe-CAM)、VE-カドヘリン及びVEGFR2を含み、細胞形態は、毛細管様構造であってもよい。
【0064】
典型的には、内皮分化に好適な条件は、細胞を十分な時間、好適な培地中で培養することを含む。培養の十分な時間は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30日間であってもよい。好適な培地は、表9に示すものであってもよい。
【0065】
本発明はまた、本明細書に記載される方法により生成された、内皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を提供する。
【0066】
本明細書に記載した任意の方法において、方法は更に、内皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞、又は細胞を含む細胞集団を個人に投与するステップを含み得る。
【0067】
本発明はまた、細胞の少なくとも5%が内皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞
集団を提供し、それらの細胞は、本明細書に記載した方法により生成される。好ましくは、集団中の細胞の少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%が、内皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する。
【0068】
本発明はまた、本明細書に開示した、内皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を製造するためのキットに関する。いくつかの実施形態では、キットは、(i)SOX17ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列;及び(ii)SMAD1ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列;及び(iii)IRF1ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列、(iv)TCF7L1ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列、(v)MXD4ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列、(vi)TAL1ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列;及び(vii)JUNBポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列の任意の1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、キットは更に、本明細書に開示した方法による、線維芽細胞を内皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞にリプログラミングするための指示書を含む。好ましくは、本発明は、本明細書に記載した本発明の方法において使用される際のキットを提供する。
【0069】
本発明は、少なくとも1つの線維芽細胞と、線維芽細胞におけるSOX17、SMAD1、TAL1、IRF1、TCF7L1、MXD4及びJUNBの任意の1つ以上のタンパク質発現を増大させる少なくとも1つの剤とを含む組成物に関する。
【0070】
本発明は、線維芽細胞のリプログラミングのための方法を提供し、該方法は、線維芽細胞におけるSOX2、SOX9、ARNT2、E2F5、PXB1、SMAD1、及びRUNX2、又はその変異体の任意の1つ以上のタンパク質発現を増大させることを含み、線維芽細胞は、星状細胞の少なくとも1つの特徴を有するようにリプログラミングされる。
【0071】
本発明は、線維芽細胞から星状細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を生成する方法を提供し、該方法は:
-線維芽細胞におけるSOX2、SOX9、ARNT2、E2F5、PXB1、SMAD1、及びRUNX2又はその変異体の任意の1つ以上の量を増大させることと;
-線維芽細胞を星状細胞分化に十分な時間及び条件下で培養し;それにより線維芽細胞から星状細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を生成することと、を含む。
【0072】
本発明は、線維芽細胞を星状細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞にリプログラミングするための方法を提供し、該方法は:i)線維芽細胞、又は線維芽細胞を含む細胞集団を提供することと;ii)ポリペプチドSOX2、SOX9、ARNT2、E2F5、PXB1、SMAD1、及びRUNX2をコードするヌクレオチド配列を含む1つ以上の核酸を前記線維芽細胞にトランスフェクトすることと;iii)前記細胞又は細胞集団を培養し、場合により細胞又は細胞集団を、星状細胞の少なくとも1つの特徴に関して監視することと、を含む。
【0073】
好ましくは、星状細胞の少なくとも1つの特徴は、任意の1つ以上の星状細胞マーカーの上方調節、及び/又は細胞形態における変化である。星状細胞マーカーは、GFAP、S100B、及びALDH1L1を含む。好ましくは、使用されるマーカーは、GFAPである。好ましくは観察される形態は、星状突出物の存在である。典型的には、星状細胞分化に好適な条件は、細胞を十分な時間、好適な培地中で培養することを含む。培養の十分な時間は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13
、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30日間であってもよい。好適な培地は、表9に示すものであってもよい。
【0074】
本発明はまた、本明細書に記載される方法により生成された、星状細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を提供する。
【0075】
本明細書に記載した任意の方法において、方法は更に、星状細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞、又は細胞を含む細胞集団を、個人に投与するステップを含み得る。
【0076】
本発明はまた、細胞の少なくとも5%が星状細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞集団を提供し、それらの細胞は、本明細書に記載した方法により生成される。好ましくは、集団中の細胞の少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%が星状細胞の少なくとも1つの特徴を有する。
【0077】
本発明はまた、本明細書に開示した、星状細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を製造するためのキットに関する。いくつかの実施形態では、キットは、(i)SOX2ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列;及び(ii)SOX9ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列;(iii)ARNT2ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列、(iv)E2F5ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列、(v)PXB1ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列;(vi)SMAD1ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列、及び(vii)RUNX2ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列の任意の1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、キットは更に、本明細書に開示した方法による、線維芽細胞を星状細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞にリプログラミングするための指示書を含む。好ましくは、本発明は、本明細書に記載した本発明の方法において使用される際のキットを提供する。
【0078】
本発明は、少なくとも1つの線維芽細胞と、線維芽細胞におけるSOX2、SOX9、ARNT2、E2F5、PXB1、SMAD1、及びRUNX2の任意の1つ以上のタンパク質発現を増大させる少なくとも1つの剤とを含む組成物に関する。
【0079】
本発明は、線維芽細胞のリプログラミングのための方法を提供し、該方法は、線維芽細胞におけるFOS、DBP、HES1、FOXA2、ESRRA、CDH1、FOXQ1及びPAX6又はその変異体の任意の1つ以上のタンパク質発現を増大させることを含み、線維芽細胞は、上皮細胞の少なくとも1つの特徴を有するようにリプログラミングされる。
【0080】
本発明は、線維芽細胞から上皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を生成する方法を提供し、該方法は:
-線維芽細胞におけるFOS、DBP、HES1、FOXA2、ESRRA、CDH1、FOXQ1及びPAX6又はその変異体の任意の1つ以上の量を増大させることと;
-線維芽細胞を上皮分化に十分な時間及び条件下で培養し;それにより線維芽細胞から上皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を生成することと、を含む。
【0081】
本発明は、線維芽細胞を上皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞にリプログラミングするための方法を提供し、該方法は:i)線維芽細胞、又は線維芽細胞を含む細胞集団を提供することと;ii)ポリペプチドFOS、DBP、HES1、FOXA2、ES
RRA、CDH1、FOXQ1及びPAX6をコードするヌクレオチド配列を含む1つ以上の核酸を前記線維芽細胞にトランスフェクトすることと;iii)前記細胞又は細胞集団を培養し、場合により細胞又は細胞集団を、上皮細胞の少なくとも1つの特徴に関して監視することと、を含む。
【0082】
好ましくは、上皮細胞の少なくとも1つの特徴は、任意の1つ以上の上皮マーカーの上方調節、及び/又は細胞形態における変化である。上皮マーカーは、サイトケラチン15(CK15)、サイトケラチン3(CK3)、インボルクリン及びコネキシン4を含む。好ましくは観察される形態は、玉石の外観である。
【0083】
典型的には、上皮分化に好適な条件は、細胞を十分な時間、好適な培地中で培養することを含む。培養の十分な時間は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30日間であってもよい。好適な培地は、表9に示すものであってもよい。
【0084】
本発明はまた、本明細書に記載される方法により生成された、上皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を提供する。
【0085】
本明細書に記載した任意の方法において、方法は更に、上皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞、又は細胞を含む細胞集団を個人に投与するステップを含み得る。
【0086】
本発明はまた、細胞の少なくとも5%が上皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞集団を提供し、それらの細胞は、本明細書に記載した方法により生成される。好ましくは、集団中の細胞の少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%が、上皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する。
【0087】
本発明はまた、本明細書に開示した、上皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を製造するためのキットに関する。いくつかの実施形態では、キットは、(i)FOSポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列;及び(ii)DBPポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列;(iii)核FOXA2ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列、(iv)ESRRAポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列、(v)CDH1ポリペプチド又はその変異をコードする核酸配列体;(vi)FOXQ1ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列、及び(vii)PAX6ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列の任意の1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、キットは更に、本明細書に開示した方法による、線維芽細胞を上皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞にリプログラミングするための指示書を含む。好ましくは、本発明は、本明細書に記載した本発明の方法において使用される際のキットを提供する。
【0088】
本発明は、少なくとも1つの線維芽細胞と、線維芽細胞におけるFOS、DBP、HES1、FOXA2、ESRRA、CDH1、FOXQ1及びPAX6の任意の1つ以上のタンパク質発現を増大させる少なくとも1つの剤とを含む組成物に関する。
【0089】
本発明は、角化細胞のリプログラミングのための方法を提供し、該方法は、角化細胞におけるSOX17、TAL1、SMAD1、IRF1、HOXB7及びTCF7L1の任意の1つ以上のタンパク質発現を増大させることを含み、角化細胞は、内皮細胞の少なくとも1つの特徴を有するようにリプログラミングされる。
【0090】
本発明は、角化細胞から内皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を生成する方法を提供し、該方法は:
角化細胞におけるSOX17、TAL1、SMAD1、IRF1、HOXB7及びTCF7L1、又はその変異体の任意の1つ以上の量を増大させることと;
角化細胞を内皮分化に十分な時間及び条件下で培養し;それにより内皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を角化細胞から生成することと、を含む。
【0091】
本発明は、角化細胞を内皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞にリプログラミングするための方法を提供し、該方法は:i)角化細胞、又は角化細胞を含む細胞集団を提供することと;ii)ポリペプチドSOX17、TAL1、SMAD1、IRF1、HOXB7及びTCF7L1をコードするヌクレオチド配列を含む1つ以上の核酸を前記角化細胞にトランスフェクトすることと;iii)前記細胞又は細胞集団を培養し、場合により細胞又は細胞集団を、内皮細胞の少なくとも1つの特徴に関して監視することと、を含む。
【0092】
好ましくは、本発明の任意の態様において、内皮細胞は、微小血管内皮細胞である。
【0093】
好ましくは、内皮細胞の少なくとも1つの特徴は、任意の1つ以上の内皮マーカーの上方調節、及び/又は細胞形態における変化である。内皮マーカーは、CD31、VE-カドヘリン及びVEGFR2を含む。
【0094】
典型的には、内皮分化に好適な条件は、細胞を十分な時間、好適な培地中で培養することを含む。培養の十分な時間は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30日間であってもよい。好適な培地は、表9に示すものであってもよい。
【0095】
本発明はまた、本明細書に記載される方法により生成された、微小血管内皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を提供する。
【0096】
本発明はまた、細胞の少なくとも5%が内皮細胞、好ましくは微小血管内皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞集団を提供し、それらの細胞は、本明細書に記載した方法により生成される。好ましくは、集団中の細胞の少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%が、内皮細胞、好ましくは微小血管内皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する。
【0097】
本発明はまた、本明細書に開示した、内皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を製造するためのキットに関する。いくつかの実施形態では、キットは、(i)SOX17ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列;及び(ii)核TAL1ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列;及び(iii)SMAD1ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列、及び(iv)IRF1ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列、(v)TCF7L1ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列;及び(vi)HOXB7ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列の任意の1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、キットは更に、本明細書に開示した方法による、角化細胞を内皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞にリプログラミングするための指示書を含む。好ましくは、本発明は、本明細書に記載した本発明の方法において使用される際のキットを提供する。
【0098】
本発明は、少なくとも1つの角化細胞と、角化細胞におけるSOX17、TAL1、SMAD1、IRF1、HOXB7及びTCF7L1の任意の1つ以上のタンパク質発現を増大させる少なくとも1つの剤とを含む組成物に関する。
【0099】
本発明は、角化細胞のリプログラミングのための方法を提供し、該方法は、角化細胞におけるNOTCH1、HR、DBP、OTX1、ESRRA、FOXQ1、PAX6及びIRX5の任意の1つ以上のタンパク質発現を増大させることを含み、角化細胞は、上皮細胞の少なくとも1つの特徴を有するようにリプログラミングされる。
【0100】
本発明は、角化細胞から上皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を生成する方法を提供し、該方法は:
角化細胞におけるNOTCH1、HR、DBP、OTX1、ESRRA、FOXQ1、PAX6及びIRX5又はその変異体の任意の1つ以上の量を増大させることと;
角化細胞を上皮分化に十分な時間及び条件下で培養し;それにより上皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を角化細胞から生成することと、を含む。
【0101】
本発明は、角化細胞を上皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞にリプログラミングするための方法を提供し、該方法は:i)角化細胞、又は角化細胞を含む細胞集団を提供することと;ii)ポリペプチドNOTCH1、HR、DBP、OTX1、ESRRA、FOXQ1、PAX6及びIRX5をコードするヌクレオチド配列を含む1つ以上の核酸を前記角化細胞にトランスフェクトすることと;iii)前記細胞又は細胞集団を培養し、場合により細胞又は細胞集団を、上皮細胞の少なくとも1つの特徴に関して監視することと、を含む。
【0102】
好ましくは、本発明の任意の態様において、上皮細胞は、角膜上皮細胞である。
【0103】
好ましくは、上皮細胞の少なくとも1つの特徴は、任意の1つ以上の上皮マーカーの上方調節、及び/又は細胞形態における変化である。上皮マーカーは、サイトケラチン15(CK15)、サイトケラチン3(CK3)、インボルクリン及びコネキシン4を含む。
【0104】
典型的には、内皮分化に好適な条件は、細胞を十分な時間、好適な培地中で培養することを含む。培養の十分な時間は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30日間であってもよい。好適な培地は、表9に示すものであってもよい。
【0105】
本発明はまた、本明細書に記載される方法により生成された、上皮細胞、好ましくは角膜上皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を提供する。
【0106】
本発明はまた、細胞の少なくとも5%が上皮細胞、好ましくは角膜上皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞集団を提供し、それらの細胞は、本明細書に記載した方法により生成される。好ましくは、集団中の細胞の少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%が、上皮細胞、好ましくは角膜上皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する。
【0107】
本発明はまた、本明細書に開示した、上皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を製造するためのキットに関する。いくつかの実施形態では、キットは、(i)NOTCH
1ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列をコードする核酸配列;及び(ii)HRポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列;及び(iii)DBPポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列、及び(iv)OTX1ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列、(v)ESRRAポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列;(vi)FOXQ1ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列;(vii)PAX6ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列;及び(viii)IRX5ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列の任意の1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、キットは更に、本明細書に開示した方法による、上皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞への角化細胞のリプログラミングのための指示書を含む。好ましくは、本発明は、本明細書に記載した本発明の方法において使用される際のキットを提供する。
【0108】
本発明は、少なくとも1つの角化細胞と、角化細胞におけるNOTCH1、HR、DBP、OTX1、ESRRA、FOXQ1、PAX6及びIRX5の任意の1つ以上のタンパク質発現を増大させる少なくとも1つの剤とを含む組成物に関する。
【0109】
本発明は、胚性幹細胞を分化させるための方法を提供し、該方法は、胚性幹細胞におけるSOX17、TAL1、SMAD1、HOXB7、JUNB、IRF1及びNFKB1の任意の1つ以上のタンパク質発現を増大させることを含み、胚性幹細胞は、内皮細胞の少なくとも1つの特徴を有するように分化する。
【0110】
本発明は、胚性幹細胞から内皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を生成する方法を提供し、該方法は:
胚性幹細胞におけるSOX17、TAL1、SMAD1、HOXB7、JUNB、IRF1及びNFKB1又はその変異体の任意の1つ以上の量を増大させることと;
胚性幹細胞を内皮分化に十分な時間及び条件下で培養し;それにより内皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を胚性幹細胞から生成することと、を含む。
【0111】
本発明は、胚性幹細胞を内皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞に分化させるための方法を提供し、該方法は:i)胚性幹細胞、又は胚性幹細胞を含む細胞集団を提供することと;ii)ポリペプチドSOX17、TAL1、SMAD1、HOXB7、JUNB、IRF1及びNFKB1の任意の1つ以上をコードするヌクレオチド配列を含む1つ以上の核酸を前記胚性幹細胞にトランスフェクトすることと;iii)前記細胞又は細胞集団を培養し、場合により細胞又は細胞集団を、内皮細胞の少なくとも1つの特徴に関して監視することと、を含む。
【0112】
好ましくは、本発明の任意の態様において、内皮細胞は、微小血管内皮細胞である。
【0113】
好ましくは、内皮細胞の少なくとも1つの特徴は、任意の1つ以上の内皮マーカーの上方調節、及び/又は細胞形態における変化である。内皮マーカーは、CD31、VE-カドヘリン及びVEGFR2を含む。
【0114】
典型的には、内皮分化に好適な条件は、細胞を十分な時間、好適な培地中で培養することを含む。培養の十分な時間は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30日間であってもよい。好適な培地は、表9に示すものであってもよい。
【0115】
本発明はまた、本明細書に記載される方法により生成された、微小血管内皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を提供する。
【0116】
本発明はまた、細胞の少なくとも5%が内皮細胞、好ましくは微小血管内皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞集団を提供し、それらの細胞は、本明細書に記載した方法により生成される。好ましくは、集団中の細胞の少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%が、内皮細胞、好ましくは微小血管内皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する。
【0117】
本発明はまた、本明細書に開示した、内皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を製造するためのキットに関する。いくつかの実施形態では、キットは、(i)SOX17ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列;(ii)TAL1ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列;(iii)SMAD1ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列、(iv)IRF1ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列、(v)NFKB1ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列;(vi)HOXB7ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列;及び(vii)JUNBポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列の任意の1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、キットは更に、本明細書に開示した方法による、内皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞への胚性幹細胞の分化のための指示書を含む。好ましくは、本発明は、本明細書に記載した本発明の方法において使用される際のキットを提供する。
【0118】
本発明は、少なくとも1つの胚性幹細胞と、胚性幹細胞におけるSOX17、TAL1、SMAD1、HOXB7、JUNB、IRF1及びNFKB1の任意の1つ以上のタンパク質発現を増大させる少なくとも1つの剤とを含む組成物に関する。
【0119】
本発明は、胚性幹細胞を分化させるための方法を提供し、該方法は、胚性幹細胞におけるIRF1、SOX9、ARNT2、PAX6、SNAI2、SOX5及びRUNX2のタンパク質発現を増大させることを含み、胚性幹細胞は、星状細胞の少なくとも1つの特徴を有するように分化する。
【0120】
本発明は、胚性幹細胞から星状細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を製造又は生成する方法を提供し、該方法は:
胚性幹細胞におけるIRF1、SOX9、ARNT2、PAX6、SNAI2、SOX5及びRUNX2、又はその変異体の任意の1つ以上の量を増大させることと;
胚性幹細胞を星状細胞分化に十分な時間及び条件下で培養し;それにより星状細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を胚性幹細胞から生成することと、を含む。
【0121】
本発明は、胚性幹細胞を星状細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞に分化させるための方法を提供し、該方法は:i)胚性幹細胞、又は胚性幹細胞を含む細胞集団を提供することと;ii)前記胚性幹細胞に、IRF1、SOX9、ARNT2、PAX6、SNAI2、SOX5及びRUNX2のポリペプチドの任意の1つ以上をコードするヌクレオチド配列を含む1つ以上の核酸をトランスフェクトすることと;iii)前記細胞又は細胞集団を培養し、場合により細胞又は細胞集団を、星状細胞の少なくとも1つの特徴に関して監視することと、を含む。
【0122】
好ましくは、星状細胞の少なくとも1つの特徴は、任意の1つ以上の星状細胞マーカーの上方調節、及び/又は細胞形態における変化である。星状細胞マーカーは、GFAP、S100B、及びALDH1L1を含む。好ましくは、使用されるマーカーは、GFAPである。好ましくは、観察される形態は、星状突出物の存在である。
【0123】
典型的には、星状細胞分化に好適な条件は、細胞を十分な時間、好適な培地中で培養することを含む。培養の十分な時間は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30日間であってもよい。好適な培地は、表9に示すものであってもよい。
【0124】
本発明はまた、本明細書に記載される方法により生成された、星状細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を提供する。
【0125】
本発明はまた、細胞の少なくとも5%が星状細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞集団を提供し、それらの細胞は、本明細書に記載した方法により生成される。好ましくは、集団中の細胞の少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%が、星状細胞の少なくとも1つの特徴を有する。
【0126】
本発明はまた、本明細書に開示した、星状細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を製造するためのキットに関する。いくつかの実施形態では、キットは、(i)IRF1ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列;(ii)SOX9ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列;(iii)ARNT2ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列、(iv)PAX6ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列、(v)SNAI2ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列、(vi)RUNX2ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列;及び(vii)SOX5ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列の任意の1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、キットは更に、本明細書に開示した方法による、星状細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞への胚性幹細胞の分化のための指示書を含む。好ましくは、本発明は、本明細書に記載した本発明の方法において使用される際のキットを提供する。
【0127】
本発明は、少なくとも1つの胚性幹細胞と、胚性幹細胞におけるIRF1、SOX9、ARNT2、PAX6、SNAI2、SOX5及びRUNX2のタンパク質発現を増大させる少なくとも1つの剤とを含む組成物に関する。
【0128】
本発明は、胚性幹細胞の分化のための方法を提供し、方法は、胚性幹細胞におけるSOX9、NFKB1、MYC、NR2F2、FOSL1、AHR及びFOSL2の任意の1つ以上のタンパク質発現を増大させることを含み、胚性幹細胞は、角化細胞の少なくとも1つの特徴を有するように分化する。
【0129】
本発明は、胚性幹細胞から角化細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を生成する方法を提供し、該方法は:
胚性幹細胞におけるSOX9、NFKB1、MYC、NR2F2、FOSL1、AHR及びFOSL2、又はその変異体の任意の1つ以上の量を増大させることと、
胚性幹細胞を角化細胞分化に十分な時間及び条件下で培養し;それにより胚性幹細胞から角化細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を生成することと、を含む。
【0130】
本発明は、胚性幹細胞を角化細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞に分化させる方法を提供し、該方法は:i)胚性幹細胞、又は胚性幹細胞を含む細胞集団を提供することと;ii)前記胚性幹細胞に、SOX9、NFKB1、MYC、NR2F2、FOSL1、AHR及びFOSL2のポリペプチドの任意の1つ以上をコードするヌクレオチド配列を含む1つ以上の核酸をトランスフェクトすることと;iii)前記細胞又は細胞集団を培養し、場合により細胞又は細胞集団を、角化細胞の少なくとも1つの特徴に関して監視
することと、を含む。
【0131】
好ましくは、角化細胞の少なくとも1つの特徴は、任意の1つ以上の角化細胞マーカーの上方調節、及び/又は、細胞形態における変化である。角化細胞マーカーは、パンケラチン、ケラチン1、ケラチン14及びインボルクリンを含み、細胞形態は、玉石の外観である。
【0132】
典型的には、角化細胞分化に好適な条件は、細胞を十分な時間、好適な培地中で培養することを含む。培養の十分な時間は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30日間であってもよい。好適な培地は、表9に示したものであってもよい。
【0133】
本発明はまた、本明細書に記載される方法により生成された、角化細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を提供する。
【0134】
本発明はまた、細胞の少なくとも5%が角化細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞集団を提供し、それらの細胞は、本明細書に記載した方法により生成される。好ましくは、集団中の細胞の少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%が、角化細胞の少なくとも1つの特徴を有する。
【0135】
本発明はまた、本明細書に開示した、角化細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を製造するためのキットに関する。いくつかの実施形態では、キットは、(i)SOX9ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列;(ii)NFKB1ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列;(iii)MYCポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列、(iv)FOSL2ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列;(v)NR2F2ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列;(vi)FOSL1ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列;及び(vii)核AHRポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列の任意の1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、キットは更に、本明細書に開示した方法による、角化細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞への胚性幹細胞の分化のための指示書を含む。好ましくは、本発明は、本明細書に記載した本発明の方法において使用される際のキットを提供する。
【0136】
本発明は、少なくとも1つの胚性幹細胞と、胚性幹細胞におけるSOX9、NFKB1、MYC、NR2F2、FOSL1、AHR及びFOSL2のタンパク質発現を増大させる少なくとも1つの剤とを含む組成物に関する。
【0137】
本発明は、胚性幹細胞を分化させるための方法を提供し、該方法は、胚性幹細胞におけるMYC、IL1B、FOS、NFKB1、ESRRA、FOXQ1、IRF1及びPAX6の任意の1つ以上のタンパク質発現を増大させることを含み、胚性幹細胞は、上皮細胞、好ましくは角膜上皮細胞の少なくとも1つの特徴を有するように分化する。
【0138】
本発明は、胚性幹細胞から上皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を生成する方法を提供し、該方法は:
胚性幹細胞におけるMYC、IL1B、FOS、NFKB1、ESRRA、FOXQ1、IRF1及びPAX6、又はその変異体の任意の1つ以上の量を増大させることと;
胚性幹細胞を上皮分化に十分な時間及び条件下で培養し;それにより上皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を胚性幹細胞から生成することと、を含む。
【0139】
本発明は、胚性幹細胞を上皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞に分化させる方法を提供し、該方法は:i)胚性幹細胞、又は胚性幹細胞を含む細胞集団を提供することと;ii)MYC、IL1B、FOS、NFKB1、ESRRA、FOXQ1、IRF1及びPAX6のポリペプチドの任意の1つ以上をコードするヌクレオチド配列を含む1つ以上の核酸を前記胚性幹細胞にトランスフェクトすることと;iii)前記細胞又は細胞集団を培養し、場合により細胞又は細胞集団を上皮細胞の少なくとも1つの特徴に関して監視することと、を含む。
【0140】
好ましくは、上皮細胞の少なくとも1つの特徴は、任意の1つ以上の上皮マーカーの上方調節、及び/又は、細胞形態における変化である。上皮マーカーは、サイトケラチン15(CK15)、サイトケラチン3(CK3)、インボルクリン及びコネキシン4を含み、細胞形態は、玉石の外観であってもよい。
【0141】
典型的には、上皮分化に好適な条件は、細胞を十分な時間、好適な培地中で培養することを含む。培養の十分な時間は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30日間であってもよい。好適な培地は、表9に示すものであってもよい。
【0142】
本発明はまた、本明細書に記載される方法により生成された、上皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を提供する。
【0143】
本発明はまた、細胞の少なくとも5%が上皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞集団を提供し、それらの細胞は、本明細書に記載した方法により生成される。好ましくは、集団中の細胞の少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%が、上皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する。
【0144】
本発明はまた、本明細書に開示した、上皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を製造するためのキットに関する。いくつかの実施形態では、キットは、(i)MYCポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列;(ii)IL1Bポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列;(iii)FOSポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列、(iv)NFKB1ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列;(v)ESRRAポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列;(vi)FOXQ1ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列;(vii)IRF1ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列;及び(viii)PAX6ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列の任意の1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、キットは更に、本明細書に開示した方法による、上皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞への胚性幹細胞の分化のための指示書を含む。好ましくは、本発明は、本明細書に記載した本発明の方法において使用される際のキットを提供する。
【0145】
本発明は、少なくとも1つの胚性幹細胞と、胚性幹細胞におけるMYC、IL1B、FOS、NFKB1、ESRRA、FOXQ1、IRF1及びPAX6の任意の1つ以上のタンパク質発現を増大させる少なくとも1つの剤とを含む組成物に関する。
【0146】
本発明は、多能性幹細胞を分化させることを含む、多能性幹細胞から内皮細胞を生成する方法を提供し、該方法は、多能性幹細胞におけるSOX17、TAL1、NFKB1、IRF1、HOXB7、JUNB及びSMAD1の任意の1つ以上のタンパク質発現を増
大させることを含み、多能性幹細胞は、内皮細胞の少なくとも1つの特徴を有するように分化する。
【0147】
本発明の任意の態様において(任意の方法又は組成物を含む)、多能性幹細胞は、人工多能性幹細胞(iPSC)であってもよい。
【0148】
本発明は、多能性幹細胞から内皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を生成する方法を提供し、該方法は:
多能性幹細胞におけるSOX17、TAL1、NFKB1、HOXB7、JUNB、IRF1及びSMAD1、又はその変異体の任意の1つ以上の量を増大させることと;
多能性幹細胞を内皮分化に十分な時間及び条件下で培養し;それにより多能性幹細胞から内皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を生成することと、を含む。
【0149】
本発明は、多能性幹細胞を内皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞に分化させるための方法を提供し、該方法は:i)多能性幹細胞、又は多能性幹細胞を含む細胞集団を提供することと;ii)前記多能性幹細胞に、ポリペプチドSOX17、TAL1、NFKB1、HOXB7、JUNB、IRF1及びSMAD1の任意の1つ以上をコードするヌクレオチド配列を含む1つ以上の核酸をトランスフェクトすることと、iii)前記細胞又は細胞集団を培養し、場合により細胞又は細胞集団を、内皮細胞の少なくとも1つの特徴に関して監視することと、を含む。
【0150】
好ましくは、内皮細胞の少なくとも1つの特徴は、任意の1つ以上の内皮マーカーの上方調節、及び/又は細胞形態における変化である。内皮マーカーは、パンCD31、VE-カドヘリン及びVEGFR2を含む。
【0151】
典型的には、内皮分化に好適な条件は、細胞を十分な時間、好適な培地中で培養することを含む。培養の十分な時間は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30日間であってもよい。好適な培地は、表9に示すものであってもよい。
【0152】
本発明はまた、本明細書に記載される方法により生成された、内皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を提供する。
【0153】
本発明はまた、細胞の少なくとも5%が内皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞集団を提供し、それらの細胞は、本明細書に記載した方法により生成される。好ましくは、集団中の細胞の少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%が、内皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する。
【0154】
本発明はまた、本明細書に開示した、内皮細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を製造するためのキットに関する。いくつかの実施形態では、キットは、(i)SOX17ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列;(ii)TAL1ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列;(iii)NFKB1ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列、(iv)IRF1ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列、(v)SMAD1ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列;(vi)HOXB7ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列;及び(vii)JUNBポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列の任意の1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、キットは更に、本明細書に開示した方法による、内皮細胞の少なくとも1つの
特徴を有する細胞への多能性幹細胞の分化のための指示書を含む。好ましくは、本発明は、本明細書に記載した本発明の方法において使用される際のキットを提供する。
【0155】
本発明は、少なくとも1つの多能性幹細胞と、多能性幹細胞におけるSOX17、TAL1、NFKB1、IRF1、HOXB7、JUNB及びSMAD1の任意の1つ以上のタンパク質発現を増大させる少なくとも1つの剤とを含む組成物に関する。
【0156】
本発明は、多能性幹細胞を分化させることを含む、多能性幹細胞から星状細胞を生成する方法を提供し、該方法は、多能性幹細胞におけるPAX6、SNAI2、POU3F2、SOX5、E2F5、RUNX2、及びHMGB2の任意の1つ以上のタンパク質発現を増大させることを含み、多能性幹細胞は、星状細胞の少なくとも1つの特徴を有するように分化する。
【0157】
本発明は、多能性幹細胞から星状細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を生成する方法を提供し、該方法は:
多能性幹細胞におけるPAX6、SNAI2、POU3F2、SOX5、E2F5、RUNX2、及びHMGB2、又はその変異体の任意の1つ以上の量を増大させることと;
多能性幹細胞を星状細胞分化に十分な時間及び条件下で培養し;それにより星状細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を多能性幹細胞から生成することと、を含む。
【0158】
本発明は、多能性幹細胞を星状細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞に分化させるための方法を提供し、該方法は:i)多能性幹細胞、又は多能性幹細胞を含む細胞集団を提供することと;ii)ポリペプチドPAX6、SNAI2、POU3F2、SOX5、E2F5、RUNX2、及びHMGB2の任意の1つ以上をコードするヌクレオチド配列を含む1つ以上の核酸を前記多能性幹細胞にトランスフェクトすることと、iii)前記細胞又は細胞集団を培養し、場合により細胞又は細胞集団を、星状細胞の少なくとも1つの特徴に関して監視することと、を含む。
【0159】
好ましくは、星状細胞の少なくとも1つの特徴は、任意の1つ以上の星状細胞マーカーの上方調節、及び/又は細胞形態における変化である。星状細胞マーカーは、GFAP、S100B、及びALDH1L1を含む。好ましくは、使用されるマーカーは、GFAPである。好ましくは、観察される形態は、星状突出物の存在である。
【0160】
典型的には、星状細胞分化に好適な条件は、細胞を十分な時間、好適な培地中で培養することを含む。培養の十分な時間は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30日間であってもよい。好適な培地は、表9に示すものであってもよい。
【0161】
本発明はまた、本明細書に記載される方法により生成された、星状細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を提供する。
【0162】
本発明はまた、細胞の少なくとも5%が星状細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞集団を提供し、それらの細胞は、本明細書に記載した方法により生成される。好ましくは、集団中の細胞の少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%が星状細胞の少なくとも1つの特徴を有する。
【0163】
本発明はまた、本明細書に開示した、星状細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を
製造するためのキットに関する。いくつかの実施形態では、キットは、(i)PAX6ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列;(ii)SNAI2ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列;(iii)RUNX2ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列、(iv)HMGB2ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列;(v)POU3F2ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列;(vi)SOX5ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列;及び(vii)E2F5ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列の任意の1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、キットは更に、本明細書に開示した方法による、星状細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞への多能性幹細胞の分化のための指示書を含む。好ましくは、本発明は、本明細書に記載した本発明の方法において使用される際のキットを提供する。
【0164】
本発明は、少なくとも1つの多能性幹細胞と、多能性幹細胞におけるPAX6、SNAI2、POU3F2、SOX5、E2F5、RUNX2、及びHMGB2の任意の1つ以上のタンパク質発現を増大させる少なくとも1つの剤とを含む組成物に関する。
【0165】
本発明は、多能性幹細胞を分化させることを含む、多能性幹細胞から角化細胞を生成する方法を提供し、該方法は、多能性幹細胞におけるTFAP2A、MYC、SOX9、TP63、NFKBIA及びNFKB1の任意の1つ以上のタンパク質発現を増大させることを含み、多能性幹細胞は、角化細胞の少なくとも1つの特徴を有するように分化する。
【0166】
本発明は、多能性幹細胞から角化細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を生成する方法を提供し、該方法は:
多能性幹細胞におけるTFAP2A、MYC、SOX9、TP63、NFKBIA及びNFKB1又はその変異体の任意の1つ以上の量を増大させることと;
多能性幹細胞を角化細胞分化に十分な時間及び条件下で培養し;それにより多能性幹細胞から角化細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を生成すること、を含む。
【0167】
本発明は、多能性幹細胞を角化細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞に分化させるための方法を提供し、該方法は:i)多能性幹細胞、又は多能性幹細胞を含む細胞集団を提供することと;ii)ポリペプチドTFAP2A、MYC、SOX9、TP63、NFKBIA及びNFKB1の任意の1つ以上をコードするヌクレオチド配列を含む1つ以上の核酸を前記多能性幹細胞にトランスフェクトすることと、iii)前記細胞又は細胞集団を培養し、場合により細胞又は細胞集団を、角化細胞の少なくとも1つの特徴に関して監視することと、を含む。
【0168】
好ましくは、角化細胞の少なくとも1つの特徴は、任意の1つ以上の角化細胞マーカーの上方調節、及び/又は細胞形態における変化である。角化細胞マーカーは、ケラチン1、ケラチン14及びインボルクリンを含み、細胞形態は、玉石の外観である。
【0169】
典型的には、角化細胞分化に好適な条件は、細胞を十分な時間、好適な培地中で培養することを含む。培養の十分な時間は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30日間であってもよい。好適な培地は、表9に示すものであってもよい。
【0170】
本発明はまた、本明細書に記載される方法により生成された、角化細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を提供する。
【0171】
本発明はまた、細胞の少なくとも5%が角化細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞集団を提供し、それらの細胞は、本明細書に記載した方法により生成される。好ましくは
、集団中の細胞の少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%が、角化細胞の少なくとも1つの特徴を有する。
【0172】
本発明はまた、本明細書に開示した、角化細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を製造するためのキットに関する。いくつかの実施形態では、キットは、(i)TFAP2Aポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列;(ii)MYCポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列;(iii)SOX9ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列、(iv)NFKB1ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列;(v)TP63ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列;(vi)NFKBIAポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列の任意の1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、キットは更に、本明細書に開示した方法による、角化細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞への多能性幹細胞の分化のための指示書を含む。好ましくは、本発明は、本明細書に記載した本発明の方法において使用される際のキットを提供する。
【0173】
本発明は、少なくとも1つの多能性幹細胞と、多能性幹細胞におけるTFAP2A、MYC、SOX9、TP63、NFKBIA及びNFKB1の任意の1つ以上のタンパク質発現を増大させる少なくとも1つの剤とを含む組成物に関する。
【0174】
本発明は、骨髄幹細胞を分化させることを含む、骨髄幹細胞から星状細胞を生成する方法を提供し、該方法は、骨髄幹細胞におけるSOX2、SOX9、ARNT2、MYBL2、POU3F2、E2F1及びHMGB2の任意の1つ以上のタンパク質発現を増大させることを含み、骨髄幹細胞は、星状細胞の少なくとも1つの特徴を有するように分化する。
【0175】
本発明は、骨髄幹細胞から星状細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を生成する方法を提供し、該方法は:
骨髄幹細胞におけるSOX2、SOX9、ARNT2、MYBL2、POU3F2、E2F1及びHMGB2又はその変異体の任意の1つ以上の量を増大させることと;
骨髄幹細胞を星状細胞分化に十分な時間及び条件下で培養し;それにより骨髄幹細胞から星状細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を生成することと、を含む。
【0176】
本発明は、骨髄幹細胞を星状細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞に分化させるための方法を提供し、該方法は:i)骨髄幹細胞、又は骨髄幹細胞を含む細胞集団を提供することと;ii)ポリペプチドSOX2、SOX9、ARNT2、MYBL2、POU3F2、E2F1及びHMGB2の任意の1つ以上をコードするヌクレオチド配列を含む1つ以上の核酸を前記骨髄幹細胞にトランスフェクトすることと;iii)前記細胞又は細胞集団を培養し、場合により細胞又は細胞集団を、星状細胞の少なくとも1つの特徴に関して監視することと、を含む。
【0177】
好ましくは、星状細胞の少なくとも1つの特徴は、任意の1つ以上の星状細胞マーカーの上方調節、及び/又は細胞形態における変化である。星状細胞マーカーは、GFAP、S100B、及びALDH1L1を含む。好ましくは、使用されるマーカーは、GFAPである。好ましくは、観察される形態は、星状突出物の存在である。
【0178】
典型的には、星状細胞分化に好適な条件は、細胞を十分な時間、好適な培地中で培養することを含む。培養の十分な時間は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、2
3、24、25、26、27、28、29又は30日間であってもよい。好適な培地は、表9に示すものであってもよい。
【0179】
本発明はまた、本明細書に記載される方法により生成された、星状細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を提供する。
【0180】
本発明はまた、細胞の少なくとも5%が星状細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞集団を提供し、それらの細胞は、本明細書に記載した方法により生成される。好ましくは、集団中の細胞の少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%が、星状細胞の少なくとも1つの特徴を有する。
【0181】
本発明はまた、本明細書に開示した、星状細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞を製造するためのキットに関する。いくつかの実施形態では、キットは、(i)SOX2ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列;(ii)SOX9ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列;(iii)ARNT2ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列、(iv)E2F1ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列;(v)HMGB2ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列;(vi)POU3F2ポリペプチド又はその変異体をコードする核酸配列の任意の1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、キットは更に、本明細書に開示した方法による、骨髄幹細胞を星状細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞に分化させるための指示書を含む。好ましくは、本発明は、本明細書に記載した本発明の方法において使用される際のキットを提供する。
【0182】
本発明は、少なくとも1つの骨髄幹細胞と、骨髄幹細胞におけるSOX2、SOX9、ARNT2、MYBL2、E2F1、POU3F2及びHMGB2の任意の1つ以上のタンパク質発現を増大させる少なくとも1つの剤とを含む組成物に関する。
【0183】
典型的には、本明細書に記載した転写因子のタンパク質発現又は量は、細胞を転写因子の発現を増大させる剤と接触させることにより増大される。好ましくは、剤は:ヌクレオチド配列、タンパク質、アプタマー及び小分子、リボソーム、RNAi剤及びペプチド-核酸(PNA)並びにその類似体又は変異体からなる群から選択される。好ましくは、剤は外来性である。
【0184】
典型的には、本明細書に記載した転写因子のタンパク質発現又は量は、転写因子をコードする、又は転写因子の機能的断片をコードするヌクレオチド配列を含む少なくとも1つの核酸を細胞内に導入することにより増大される。好ましくは、転写因子をコードするヌクレオチド配列は、表3に列挙した受入番号を有する配列と、少なくとも70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である。
【0185】
好ましくは、核酸は更に、異種プロモーターを含む。好ましくは、核酸は、例えばウイルスベクター又は非ウイルスベクター等のベクター内にある。好ましくは、ベクターは、宿主細胞ゲノムに一体化されないゲノムを含むウイルスベクターである。ウイルスベクターは、レトロウイルスベクター又はレンチウイルスベクターであってもよい。
【0186】
本明細書に記載した任意の方法は、インビトロ、エクスビボ又はインビボで行われる1つ以上の、又は全部の、ステップを有し得る。
【0187】
本明細書で使用するとき、文脈が別様に必要とする場合を除いて、用語「含む(comprise)」及び該用語の変更物、例えば「含んでいる」、「含む(comprises)」及び「から構成される」は、更なる付加物、成分、整数又はステップを排除することを意図しない。
【0188】
本発明の更なる態様及び前述の段落に記載された態様の更なる実施形態は、例として提供される以下の記載から、また添付の図面を参照して明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0189】
【
図1-1】細胞転換のためのTFを予測するMogrifyアルゴリズム。これは以下のように行われる:(A)Mogrifyは、差次的に発現したのみでなく、所定の細胞タイプ中の多数の差次的発現遺伝子の調節に関与するように思われるTFを見出すことを目指している。(B)本発明者らは、DESeqに適切な背景を選択するために(Anders,S.& Huber,W.(2010))Genome Biol.2010;11(10):R106)、FANTOM5コンソーシアム(Forrest,A.R.R.et al.Nature 507,462-470(2014))の一部として作製された細胞タイプオントロジーツリーを使用して、サンプル中の遺伝子に関する調整p値及びlog倍数変化を計算する。
【
図1-2】(C)各TFに関して、本発明者らは、遺伝子の接続距離及び親のout-degreeによって、遺伝子に対する下流効果に重みを加えて、影響の局所ネットワーク近隣を構築する。(D)本発明者らは、他の因子と比較してその影響が重複しているTFを除去することにより、調節適用範囲を最大化する。
【
図2】いくつかの既知の分化転換に関するMogrify予測は、文献に公表されている。Mogrifyが公表リストから正確に特定するTFが強調されている。サンプルは、FANTOM細胞オントロジーを使用して分類される(Forrest,A.R.R.et al、上記の通り)。各公表に関して、初期最大適用範囲セットにある転写因子が緑色で示され、予測されるMogrifyセットの全体が橙色で示される。例えば線維芽細胞と筋芽細胞との間の分化転換は(Lattanzi,L.et al.J.Clin.Invest.101,2119-28(1998))MYODのみ必要とし、これはMogrifyにより特定された。
【
図3-1】Mogrifyにより予測される新規な転換の実験検証:皮膚線維芽細胞からの角化細胞の誘導。(A)皮膚線維芽細胞からの角化細胞分化転換に関与するとしてMogrifyにより予測される転写因子ネットワーク。
【
図3-2】(B)分化転換アッセイに使用された方法の概略。(C)分化転換の間の12~16日目に回収された細胞内の示されるマーカーのqPCR分析。全ての値は、実験的反復であり、皮膚線維芽細胞における遺伝子発現に関するものである(n=3、エラーバーは、s.e.mを示す)。(D)24日目の明視野及びGFP画像は、分化転換細胞の玉石形態(上部パネル)及びGFP+対照細胞(下部パネル)を示す。
【
図4-1】Mogrifyにより予測される新規な転換の実験検証:角化細胞からの微小血管内皮細胞の誘導。(A)角化細胞からの微小血管内皮細胞分化転換に関与するとしてMogrifyにより予測される転写因子ネットワークの概略図。(B)分化転換アッセイに使用された方法の概略。(C)分化転換の0、14及び18日目のCD31発現のフローサイトメトリー分析。
【
図4-2】(D)分化転換の18日目に回収されたCD31+細胞内の示される発現マーカーのqPCR分析。全ての値は、実験的反復であり、角化細胞における遺伝子発現に関するものである(n=3、エラーバーは、s.e.mを示す)。(E)ベクターフリーの対照細胞(a)及び分化転換細胞(b~f)に関する18日目の内皮マーカーCD31及びVE-カドヘリンの免疫蛍光分析。スケールバー=50μm。
【
図5】公表された転換に対する比較。更なる転写因子がリストに追加されたときの、各転換に関する追加の適用範囲値は、適用範囲が8つ以内の転写因子で常に100%付近に達することを示す。
【
図6】既存の細胞転換TF技術に対するベンチマーキング。細胞転換のためのTFのセットを引き出すことに関して、Mogrifyの性能がどれほど他の公表された方法に匹敵するかを示すために、2つの統計を報告する。第1に(上部パネル)、各技術の回収率;100%の回収率は、その技術も、公表された転換に使用されるTFのセットの全てを見出したことを意味する。その結果、その技術が実験の構成に使用されていた場合、既知の転換セットは最初の繰り返し(iteration)にて発見されていた筈である。Mogrifyの場合、これは公表された転換の6/10にあたり、CellNet及びD’Allessio et alの場合、これは公表された転換の1/10のみで当てはまる。第2に(下部パネル)、回収されたTFの平均ランクがプロットされている。各技術により取りそこなったTFを無視して、この試験は各技術が必要なTFの優先順位を何とか決める点でいかに優れているかを示す。線維芽細胞及び心臓(心筋細胞)の間の転換を除いて、Mogrifyは全ての場合で最高に機能した。正確なTFのいずれも予測されなかった場合、平均ランクは示されない。これは、CellNetでの4つの転換、及びD’Alessio et al.での1つの転換に該当する。
【
図7】ヒト細胞タイプのリプログラミング景観。サンプルを:上記のForrest et al.により提供された細胞オントロジータームを用いて分類する。反復を含むオントロジータームの発現プロファイルは、多次元スケーリングを用いてX-Y面内に配置され、細胞タイプを提供し、類似した発現プロファイルを有する細胞タイプが互いにすぐ近くに存在する。次いで、上位の8TFの正規化累積適用範囲に従って、Mogrifyにより景観上の高さを計算し、従って上位にランク付けされたTFが必要な遺伝子の全部を調節する転換では、高さは1であり、その反対では、高さは0となる。
【
図8】Mogrifyにより予測される新規な転換の実験検証:皮膚線維芽細胞からの内皮細胞の誘導。A:分化転換の18日目の内皮マーカーPeCAM及びVE-カドヘリン(cadehrin)の免疫蛍光分析。スケールバー、25μm。B:分化転換の18日目の内皮関連の遺伝子VEGFR2及びVE-カドヘリンの発現レベルを示すqPCR分析。
【
図9】Mogrifyにより予測される新規な転換の実験検証:hESCからの内皮細胞の誘導。A:分化転換の18日目の内皮マーカーPeCAM及びVE-カドヘリン(cadehrin)の免疫蛍光分析。スケールバー、25μm。B:分化転換の18日目の内皮関連の遺伝子VEGFR2及びVE-カドヘリンの発現レベルを示すqPCR分析。
【
図10】hESCからの内皮細胞の誘導。A:分化転換の12及び18日目のPeCAM発現のフローサイトメトリー分析。FSC、フォワードスキャッター。B:分化転換の18日目のPeCAM陽性細胞の定量化。N=3。
【
図11】Mogrifyにより予測される新規な転換の実験検証:hiPSCからの内皮細胞の誘導。A:分化転換の18日目の内皮マーカーPeCAM及びVE-カドヘリン(cadehrin)の免疫蛍光分析。スケールバー、25μm。B:分化転換の18日目の内皮関連の遺伝子VEGFR2及びVE-カドヘリンの発現レベルを示すqPCR分析。
【
図12】hiPSCからの内皮細胞の誘導。A:分化転換の12及び18日目のPeCAM発現のフローサイトメトリー分析。FSC、フォワードスキャッター。B:分化転換の18日目のPeCAM陽性細胞の定量化。N=3。
【
図13】Mogrifyにより予測される新規な転換の実験検証:線維芽細胞からの星状細胞の誘導。分化転換の21日目の星状細胞マーカーGFAPの免疫蛍光分析。スケールバー、25μm。
【
図14】Mogrifyにより予測される新規な転換の実験検証:hESCからの星状細胞の誘導。分化転換の21日目の星状細胞マーカーGFAPの免疫蛍光分析。スケールバー、25μm。
【
図15】Mogrifyにより予測される新規な転換の実験検証:hiPSCからの星状細胞の誘導。分化転換の21日目の星状細胞マーカーGFAPの免疫蛍光分析。25μm。
【
図16】Mogrifyにより予測される新規な転換の実験検証:BM-MSCからの星状細胞の誘導。分化転換の21日目の星状細胞マーカーGFAPの免疫蛍光分析。スケールバー、25μm。
【
図17】Mogrifyにより予測される新規な転換の実験検証:hESCからの角化細胞の誘導。分化転換の21日目の角化細胞マーカーパンケラチンの免疫蛍光分析。スケールバー、25μm。
【
図18】Mogrifyにより予測される新規な転換の実験検証:hiPSCからの角化細胞の誘導。A:分化転換の21日目の角化細胞マーカーケラチン14(KRT14)の免疫蛍光分析。スケールバー、25μm。B及びC:分化転換の21日目の角化細胞関連の遺伝子ケラチン14(B)及びケラチン1(C)の発現レベルを示すqPCR分析。
【発明を実施するための形態】
【0190】
本明細書に開示及び定義した本発明は、文章若しくは図面に言及され又は文章若しくは図面から明らかな個々の特徴の2つ以上の全ての代替的な組み合わせに及ぶことが理解されるであろう。これらの異なる組み合わせの全ては、本発明の様々な代替的態様を構成する。
【0191】
以下、本発明の所定の実施形態を詳細に参照する。本発明は実施形態との関連で記載されるが、その意図は本発明をこれらの実施形態に限定することではないことが理解されるであろう。対照的に、本発明は、特許請求の範囲により定義される本発明の範囲内に含まれ得る、全ての代替物、修飾物、及び等価物を包含することが意図される。
【0192】
当業者は、本明細書に記載したものと同様の又は等価な、本発明の実践に使用できる多数の方法及び材料を認識するであろう。本発明は、記載された方法及び材料に如何様にも限定されない。本明細書に開示及び定義された本発明は、文章若しくは図面に言及され又は文章若しくは図面から明らかな個々の特徴の2つ以上の代替的な組み合わせの全てに拡大されることが理解されるであろう。これらの異なる組み合わせの全ては、本発明の様々な代替的態様を構成する。
【0193】
本明細書の解釈を目的として、単数で使用される用語は複数も含み、その逆も同様である。
【0194】
本発明は、細胞転換を体系的に実行するための実際的かつ効率的な機構を提供し、ヒト細胞のリプログラミングの一般化を促進する。本発明は、遺伝子発現データを調節ネットワーク情報と組み合わせて、それらのいずれも単独で行うには十分ではない、即ち、ソース細胞タイプを標的細胞タイプの少なくとも1つの特徴を有する細胞に転換するのに必要な転写因子を確実かつ正確に特定するには十分ではないものを達成する。更に、いくつかの実施形態では、本発明は、全転写因子のランク付けリストではなく、転換のための転写因子のセットを提供する。
【0195】
サンプルにおける各遺伝子に関する発現データは、本明細書に記載したものを含む、任意の既知の方法により決定することができる。データは、新規に生成され又は既存のデータベースに由来することができる。
【0196】
差次的発現は、DESeq、edgeR、baySeq23、BBSeq24、NOISeq25又はQuasiSeqプロトコル又は1つ以上のサンプルにおける背景に対する差次的発現を決定する、当業者に既知の任意の他のプロセス、又はペアワイズ比較を用
いて計算することができる。
【0197】
本発明の様々な方法にて引用されるツリーベースの背景アプローチは、そのオントロジーが非常に近い細胞タイプを除外すると共に、ツリーにおいて背景に近い他の細胞タイプを含めるという原理に基づいている。これは、限界点として機能するツリーの頂点に近いポイントを選び出すことにより達成され得る。分析された細胞タイプとして同じクレードにあるサンプルを除去してもよく、同じクレードにはないが、尚このポイントの下方にあるサンプルを含めてもよい。この結果は、確かな結果を与えるのに十分広いが、統計的検出力が管理できるレベルを保つのに十分狭い、サンプルのセットである。
【0198】
ツリーベースのアプローチの代替物は、Bayesianクラスタリング、詳細にはVavoulis et al.Genome Biology.2015、16:39に記載されているDGEclustアプローチである。
【0199】
転写因子のネットワークベースの影響範囲を計算するために、遺伝子発現に影響する転写因子の相互作用に関するネットワーク情報のソースを含む任意のネットワーク又はサブネットワークを使用することができる。典型的には、これは、DNA、RNA又はタンパク質等の他の生物学的分子との転写因子の相互作用に関する情報である。例えば、転写因子と遺伝子のプロモーター又は調節領域における既知の結合部位との間のタンパク質-DNA相互作用に関する任意のネットワーク情報である。そのようなネットワーク情報のソースの例は、Motif Activity Response Analysis(MARA)(FANTOM Consortium,Suzuki et al.2009.Nat Genet 41:553-5620)である。ネットワーク情報のソースの更なる例は、タンパク質-タンパク質、タンパク質-DNA、タンパク質-RNA及び/又は生物学的経路相互作用のデータベースである。そのようなネットワーク情報のソースの例は、STRING(Search Tool for Retrieval of Interacting Genes/Protein)データベースである。データベースの例と、転写因子のネットワークベースの影響範囲の計算方法は、実施例に記載されている。好ましくは、MARA由来ネットワークがネットワークスコアの生成に使用された場合、キャップ分析遺伝子発現(CAGE:cap analysis gene expression)等の転写出発部位を特定する任意の技術を使用して、遺伝子スコアを生成する。
【0200】
遺伝子影響の加重和を1つ以上のネットワークに亘って計算して、1つ以上の影響リストを生成することができる。好ましくは、本明細書に記載したもの等の少なくとも2つの影響リストが生成される。適用され得る重み付けは、直接調節からますます遠い遺伝子が、ネットワークスコアに比較的影響を与えないようにする重みづけ(本明細書で距離重み付けと称される)、及び大きく偏在する転写因子を補償し、多数のかろうじて差次的に発現した遺伝子の調節により人為的に高いスコアを受けることを防ぐ重み付け(本明細書でエッジ重み付けと称される)を含む。
【0201】
本明細書で使用するとき「Mogrify」は、標的細胞の少なくとも1つの特徴を有する細胞へのソース細胞の転換に必要な転写因子を決定するための、本明細書に記載した方法を指す。本発明の任意の実施形態において、Mogrify方法は、様々なコンピューター処理システム、例えば、ラップトップコンピューター、ネットブックコンピューター、タブレットコンピューター、スマートフォン、デスクトップコンピューター、サーバーコンピューターにて実施することができる。一実施形態では、コンピューターシステムはプロセッサー及びデータ格納デバイスを含み、前記データ格納デバイスは、一連のコンピューター読み取り可能な媒体を格納している。一態様では、コンピューターシステムは、更に、ソース及び/又は標的細胞の間の発現プロファイルを比較するためのアルゴリズ
ムを含み得る。一実施形態では、コンピューター読み取り可能な媒体は、異なる細胞タイプからの発現プロファイル又は一連の発現プロファイルを格納している。更なる実施形態では、コンピューター読み取り可能な媒体は、遺伝子のネットワークの調節に関与する転写因子の詳細を格納している。特定のタイプのコンピューター処理システムは、使用される適切なハードウェア及びアーキテクチャーを決定することが認識されるであろう。
【0202】
遺伝子及びネットワークスコアの決定は、実施例を含む、本明細書に記載した任意の方法によるものであってもよい。
【0203】
転写因子のランク付けは、本明細書に記載した遺伝子のスコア及びネットワークスコア、又は本明細書に記載した影響リスト等を考慮に入れて、本明細書に記載した任意の方法によるものであってもよい。好ましくは、差次的発現分析及び/若しくはスコアに基づくスコア若しくは影響リスト、又は、遺伝子発現に直接及び/若しくは間接的に影響する転写因子の相互作用に基づく影響リストが、転写因子のランク付けに使用される。
【0204】
所定の転換のためのTFのセットを特定するために、ソース細胞タイプ及び標的細胞タイプのランク付けリストを比較する。標的細胞タイプのTFリストがソース標的内で既に発現されている場合、これをリストから除去してもよい。
【0205】
各細胞タイプのランク付けリストからの転写的に重複性のTFの除去は、本明細書に記載した任意の方法によるものであってもよく、TFの各々が直接調節する遺伝子のリストの比較によるものを含む。所定のTFの場合において、TFが調節する遺伝子の98%を超えて調節する、より高くランク付けされたTFが存在する場合、これは除去されてもよい。従って、得られた予測は、調節影響範囲において多様なTFを含む。
【0206】
細胞のリプログラミングのプロセスは、細胞が生じ得る後代のタイプを変更し、フォワードプログラミング及び分化転換の異なるプロセスを含む。いくつかの実施形態では、多能性(multipotent)細胞又は多能性(pluripotent)細胞のフォワードプログラミングは、多能性(multipotent)細胞又は多能性(pluripotent)細胞よりも分化した表現型を有する細胞タイプの少なくとも1つの特徴を有する細胞を提供する。別の実施形態では、1つの体細胞の分化転換は、別の体細胞タイプの少なくとも1つの特徴を有する細胞を提供する。
【0207】
本発明は、ソース細胞が標的細胞になる前に、中間において人工多能性幹細胞(iPS)になることなく、ソース細胞から標的細胞に直接リプログラミング又は分化転換する組成物及び方法を提供する。iPS細胞技術と比較して、分化転換は非常に効率的であり、下流用途におけるテラトーマ形成の危険性が非常に低い。更に、分化転換はインビボで1つの細胞タイプから別の細胞タイプへの直接転換に用いることができるが、iPS細胞技術はできない。
【0208】
ソース細胞は、体細胞又は疾病細胞を含む、本明細書に記載した任意の細胞タイプであり得る。体細胞は、成人細胞、又は成人の1つ以上の検出可能な特徴を示す成人に由来する細胞、又は非胚細胞であり得る。疾病細胞は、疾病又は病状の1つ以上の検出可能な特徴を示す細胞であってもよく、例えば疾病細胞は、癌の1つ以上の臨床的又は生化学的マーカーを示す癌細胞であってもよい。ソース細胞の例には、造血性細胞、例えばリンパ球、骨髄性細胞;頬粘膜細胞、上皮細胞、間葉系細胞、角化細胞、肝細胞が挙げられる。ソース細胞の例は、表4に示される。
【0209】
本明細書で使用するとき、用語「体細胞」は、生殖細胞とは対照的に、生命体の身体を形成する任意の細胞を指す。哺乳動物では、生殖細胞(「配偶子」としても既知)は精子
(spermatozoa)及び卵子であり、これらは受精中に融合して接合体と呼ばれる細胞を生じ、該細胞から哺乳動物胚全体が発達する。哺乳動物の身体内の他の細胞タイプはどれも、-そこからそれらが作製された細胞(生殖母細胞)である精子(sperm)及び卵子、並びに未分化幹細胞を除いて、-体細胞である:内臓、皮膚、骨、血液及び結合組織は、全て体細胞から構成されている。いくつかの実施形態では、体細胞は「非胚性体細胞」であり、これは、胚に存在せず、又は胚から得られるものではなく、インビトロでのそのような細胞の増殖から生じるものではない体細胞を意味する。いくつかの実施形態では、体細胞は「成人体細胞」であり、これは、胚若しくは胎児以外の生命体に存在し、又は胚若しくは胎児以外の生命体から得られ、又はインビトロでのそのような細胞の増殖から生じるものである細胞を意味する。体細胞は、例えばテロメラーゼ逆転写酵素(TERT)のレベルを増大させることにより、不死化して細胞の無限の供給を提供することができる。例えば、TERTのレベルは、内在性遺伝子からのTERT転写を増大させることにより、又は、任意の遺伝子送達方法若しくは系を介して導入遺伝子を導入することにより、増大させることができる。
【0210】
特に示さない限り、体細胞のリプログラミングのための方法は、インビボ及びインビトロの両方で行うことができる(ここで、インビボは体細胞が対象内に存在する場合に実施され、インビトロは、培養液中に維持された単離された体細胞を使用して実施される)。
【0211】
胚性幹細胞等の胚細胞は、胚細胞株に由来する細胞であってもよく、胚又は胎児に直接由来するものではない。代替的に、胚細胞は、胚又は胎児に由来する細胞であり得るが、細胞は、胚若しくは胎児の発達の破壊、又は胚若しくは胎児の発達に任意の負の影響を有することなく得られ又は単離される。
【0212】
ヒト、個人を含む胎児、新生児、若年性又は成人霊長類からの細胞を含む、分化した体細胞は、本発明の方法において好適なソース細胞である。好適な体細胞は、非限定的に、骨髄細胞、上皮細胞、内皮細胞、線維芽細胞、造血性細胞、角化細胞、肝臓細胞、腸細胞、間葉系細胞、骨髄性前駆体細胞及び脾臓細胞を含む。代替的に、体細胞は、それ自体で増殖し、他のタイプの細胞に分化することができる細胞であり得、血液幹細胞、筋肉/骨幹細胞、脳幹細胞及び肝臓幹細胞を含む。好適な体細胞は、転写因子をコードする遺伝子材料を含む転写因子を取り込むように受容性であり、又は科学文献にて一般に既知の方法を用いて受容性とされ得る。取り込みの向上方法は、細胞タイプ及び発現システムに応じて様々であり得る。好適な形質導入効率を有する受容性体細胞の調製に使用される例示的な条件は、当業者に周知である。出発体細胞は、約24時間の倍加時間を有し得る。
【0213】
本明細書で使用するとき、用語「単離された細胞」は、そこで細胞が元々見出された生命体から除去された細胞、又はそのような細胞の子孫を指す。場合により、細胞は、例えば他の細胞の存在下、インビトロで培養されている。場合により、細胞は後に第2の生命体に導入され、又はそこから細胞が単離された(又は細胞がその子孫である)生命体に再導入される。
【0214】
本明細書で使用するとき、単離された細胞集団に関連した用語「単離された集団」は、細胞の混合された又は異種集団から除去及び分離された細胞の集団を指す。いくつかの実施形態では、単離された集団は、そこから細胞が単離され又は豊富化された異種集団と比較して、実質的に純粋な細胞の集団である。
【0215】
特定の細胞集団に関連した用語「実質的に純粋」は、全細胞集団を構成する細胞に関連して、少なくとも約75%、好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも約95%純粋な細胞の集団を指す。言い換えれば、標的細胞の集団に関する用語「実質的に純粋」又は「本質的に精製された」は、細胞の約
20%未満、より好ましくは約15%、10%、8%、7%未満、最も好ましくは約5%、4%、3%、2%、1%未満、又は1%未満が、本明細書で用語により定義される標的細胞又はそれらの子孫ではない細胞集団を指す。
【0216】
本明細書で使用するとき、用語「癌」は、自律的成長の能力を有する、即ち急速に増殖する細胞成長により特徴付けられる異常な状態又は病状を有する細胞を指す。この用語は、病理組織タイプ又は侵襲性の段階に関わらず、全タイプの癌性成長又は発癌性プロセス、転移性組織又は悪性に癌化した細胞、組織、又は器官を含むことが意図される。用語「癌」は、様々な器官系の悪性腫瘍、例えば、例えば肺、乳房、甲状腺、リンパ系、胃腸及び尿生殖器に発症するもの、並びに殆どの結腸癌、腎細胞癌、前立腺癌及び/又は精巣腫瘍、肺の非小細胞癌、小腸癌及び食道の癌等の悪性腫瘍を含む腺癌を含む。用語「癌腫」は、当技術分野では、上皮又は内分泌組織の悪性腫瘍と認識され及びそれらを指し、呼吸器系癌腫、胃腸系癌腫、尿生殖器系癌腫、精巣癌腫、乳房癌腫、前立腺癌腫、内分泌系癌腫及び黒色腫を含む。例示的な癌腫には、子宮頸部、肺、前立腺、乳房、頭部及び頸部、結腸及び卵巣の組織から形成されるものが挙げられる。用語「癌腫」は、例えば、癌性及び肉腫組織から構成される悪性腫瘍を含む癌肉腫も含む。「腺癌」は、腺組織に由来し又は腫瘍細胞が認識可能な腺構造を形成する癌腫を指す。用語「肉腫」は、当技術分野では、間葉系誘導の悪性腫瘍と認識され及びそれを指す。
【0217】
本明細書で使用するとき、「標的細胞」に対する参照は、表4の一番上の行のもの等、本明細書に標的細胞又は標的細胞タイプとして引用される細胞の任意の1つ以上に対する参照であり得る。
【0218】
ソース細胞は、該ソース細胞が標的細胞タイプの少なくとも1つの特徴を示す場合、本発明の方法により標的細胞に転換され、又は標的様細胞となったことが決定される。例えばヒト線維芽細胞は、該細胞が標的細胞タイプの少なくとも1つの特徴を示す場合、角化細胞様細胞に転換されたことを確認されるであろう。典型的には、細胞は、標的細胞タイプの1、2、3、4、5、6、7、8又はそれを超える特徴を示すであろう。例えば、標的細胞が角化細胞である場合、細胞は、任意の1つ以上の角化細胞マーカーの上方調節、及び/又は細胞形態における変化が検出可能な場合、角化細胞様細胞であることが確認又は決定され、好ましくは、角化細胞マーカーは、ケラチン1、ケラチン14及びインボルクリンを含み、細胞形態は、玉石の外観である。本発明の任意の態様において、標的細胞の特徴は、細胞形態、遺伝子発現プロファイル、活性アッセイ、タンパク質発現プロファイル、表面マーカープロファイル、又は分化能の分析により決定され得る。特徴又はマーカーの例には、本明細書に記載したもの及び当業者に既知のものが挙げられる。関連するマーカーの他の例には、例えば造血性幹細胞(HSC)への角化細胞の転換の場合:CD45(パン造血性(pan haematopoietic)マーカー)、CD19/20(B細胞マーカー)、CD14/15(骨髄性)、CD34(前駆体/SCマーカー)、CD90(SC)及びα-インテグリン(HSCにより発現されない角化細胞マーカー)が挙げられ;造血性幹細胞へのヒト胚性幹細胞の転換の場合:Runx1(GFP)、CD45(パン造血性マーカー)、CD19/20(B細胞マーカー)、CD14/15(骨髄性)、CD34(前駆体/SCマーカー)、CD90(SC)、Tra-1-160(HSC内で発現されないESCマーカー)が挙げられ;高齢又は成人HSCの幼若化の場合:若年及び高齢ヒトHSCの転写シグネチャー間の比較(例えば、RNA-seqを用いて)、及び幼若化細胞を動物に移植した後、1、3及び6カ月後に評価して、骨髄バイアスを決定することによる「幼若化HSC」の機能的特徴付け(ここで骨髄バイアスの消失は、「幼若化」HSCを示す)が挙げられる。本明細書に記載した転換の多数に関するマーカーの例を、下の表1に示す。
【0219】
【0220】
本明細書に引用した転写因子は、HUGO Gene Nomenclature Committee(HGNC)Symbolにより引用される。各転写因子に関する例示的なヌクレオチド配列を下の表2及び3に示す。ヌクレオチド配列は、Ensemblデータベース(Flicek et al.(2014).Nucleic Acid Research Volume 42,Issue D1.Pp.D749-D755)バージョン83に由来する。本明細書に引用した転写因子の任意のホモログ、オルソログ又はパラログも本発明での使用に想定される。
【0221】
下の表2a及びb:本明細書に記載した方法に従って使用し得るEnsembl遺伝子受入番号(ヌクレオチド配列;NT seq)及び例示的な転写因子(TF)。ソース細胞タイプは一番左の列に示し、標的細胞タイプは一番上の行に示す。ソース細胞タイプを標的細胞タイプの少なくとも1つの特徴を有する細胞に転換するのに使用され得る転写因子を示す。
【0222】
【0223】
【0224】
【0225】
【0226】
【0227】
用語「変異体」は、完全長ポリペプチドと少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、98%、又は99%同一であるポリペプチドを指す。本発明は、表2a及びbに列挙した配列を含む、本明細書に記載した転写因子の変異体の使用を想定している。変異体は、完全長ポリペプチドの断片、又は天然に存在するスプライス変異体であり得る。
変異体は、ポリペプチドの断片と少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、98%、又は99%同一のポリペプチドであってもよく、ここで断片は、野生型ポリペプチドの完全長の少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、98%、又は99%の長さを有し、又はそのドメインは、標的細胞タイプへのソース細胞タイプの転換を促進する能力等の、関心対象の機能的活性を有する。いくつかの実施形態では、ドメインは、配列の任意のアミノ酸位置から開始して、C-末端に向かって延びる少なくとも100、200、300、又は400アミノ酸長である。タンパク質の活性を排除又は実質的に低減する、当技術分野で既知の変更物は避けることが好ましい。いくつかの実施形態では、変異体は完全長ポリペプチドのN-及び/又はC-末端部分が欠如し、例えば、いずれかの末端からの10、20、又は50までのアミノ酸が欠如している。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、成熟(完全長)ポリペプチドの配列を有し、これは正常な細胞内タンパク質分解プロセシング中(例えば、共翻訳又は翻訳後プロセシング中)に除去されたシグナルペプチド等の1つ以上の部分を有していたポリペプチドを意味する。タンパク質が、該タンパク質を自然に発現する細胞から該タンパク質を精製することによる以外の方法で生成された、いくつかの実施形態では、タンパク質はキメラポリペプチドであり、これはタンパク質が2つ以上の異なる種に由来する部分を含むことを意味する。タンパク質が該タンパク質を自然に発現する細胞から該タンパク質を精製することによる以外の方法で生成された、いくつかの実施形態では、タンパク質は誘導体であり、これは、タンパク質が、配列が実質的にタンパク質の生物学的活性を実質的に低減しない配列である限り、タンパク質に関連しない更なる配列を含むことを意味する。当業者は、当技術分野で既知のアッセイを使用して、特定のポリペプチド変異体、断片、又は誘導体が機能的であるか否かを分かり、又は容易に確かめることができるであろう。例えば、転写因子の変異体がソース細胞を標的細胞タイプに転換する能力は、本明細書の実施例に開示されるアッセイを使用して評価することができる。他の便利なアッセイは、ルシフェラーゼ等の検出可能なマーカーをコードする核酸配列に作動可能に結合した転写因子結合部位を含むレポーター構築物の転写を活性化する能力を測定することを含む。本発明の所定の実施形態では、機能的変異体又は断片は、完全長野生型ポリペプチドの活性の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%又はそれを超える活性を有する。
【0228】
転写因子の量の増大に関連した用語「の量を増大させる」は、関心対象の細胞(例えば、線維芽細胞又は角化細胞等のソース細胞)における転写因子の量を増大させることを指す。いくつかの実施形態では、転写因子の量は、転写因子の量が対象(例えば、後記の発現カセットのいずれも導入されていない線維芽細胞又は角化細胞内)よりも少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又はそれを超えて多い場合、関心対象の細胞(例えば、1つ以上の転写因子をコードするポリヌクレオチドの発現を案内する発現カセットが導入されている細胞)内で「増大されている」。しかしながら、転写、翻訳の量、速度又は効率、転写因子(又は、それをコードするプレ-mRNA又はmRNA)の安定性又は活性を増大させる任意の方法を含む、転写因子の量を増大させる任意の方法が想定される。加えて、転写発現の負のレギュレーターを下方調節又は妨害して、既存の転写の効率を増大させる(例えば、SINEUP)ことも考えられる。
【0229】
用語「剤」は、本明細書で使用するとき、非限定に、小分子、核酸、ポリペプチド、ペプチド、薬物、イオン等の任意の化合物又は物質を意味する。「剤」は、非限定的に、合成及び天然に存在するタンパク質性及び非タンパク質性の実体を含む任意の化学物質、実体又は部分であり得る。いくつかの実施形態では、剤は、核酸、核酸類似体、タンパク質、抗体、ペプチド、アプタマー、核酸のオリゴマー、アミノ酸、又は炭水化物であり、非限定的にタンパク質、オリゴヌクレオチド、リボザイム、DNAザイム、糖タンパク質、siRNA、リポタンパク質、アプタマー、及びそれらの修飾物及び組み合わせ等を含む
。所定の実施形態では、剤は化学部分を有する小分子である。例えば、化学部分は、非置換又は置換アルキル、芳香族、又はヘテロシクリル部分を含み、マクロライド、レプトマイシン及びその関連する天然物又は類似体を含む。化合物は、所望の活性及び/若しくは特性を有することが既知であってもよく、又は多様な化合物のライブラリーから選択されてもよい。
【0230】
用語「外来性」は、細胞又は生命体内のタンパク質、遺伝子、核酸、又はポリヌクレオチドに関連して使用される場合、人工又は天然手段により細胞又は生命体内に導入されたタンパク質、遺伝子、核酸、又はポリヌクレオチドを指し;又は細胞に関連して使用される場合、単離された後、人工又は天然手段により他の細胞又は生命体内に導入された細胞を指す。外来性核酸は、異なる生命体又は細胞に由来してもよく、又は、生命体又は細胞内で自然に生じる核酸の1つ以上の更なる複製であってもよい。外来性細胞は異なる生命体に由来してもよく、又は同じ生命体に由来してもよい。非限定的な例として、外来性核酸は、天然の細胞のものとは異なる染色体上の位置内にあるもの、又は自然に見出されるものとは異なる核酸配列が隣接しているものである。外来性核酸はまた、エピソーマルベクター等の染色体外のものであってもよい。
【0231】
標的細胞タイプへのソース細胞タイプの転換に必要な1つ以上の転写因子の量を増大させる能力に関する、1つ以上の候補剤のスクリーニングは、転写因子の産生又は発現を可能にするシステムを候補剤と接触させ、転写因子の量が増大しているか否かを決定するステップを含み得る。システムは、インビボ、例えば生命体内の組織若しくは細胞、又はインビトロ、生命体から単離された細胞、又はインビトロ転写アッセイ、又は細胞若しくは組織内のエクスビボであってもよい。転写因子の量は、直接又は間接的に、タンパク質又はRNA(例えば、mRNA又はプレ-mRNA)の量を決定することにより測定することができる。候補剤は、転写因子をコードする遺伝子の転写における任意のステップを増大させることにより、又は対応するmRNAの翻訳を増大させることにより転写因子の量を増大させるように機能する。代替的に、候補剤は、転写因子をコードする遺伝子の転写のリプレッサーの阻害活性、又は転写因子をコードするmRNA、若しくは転写因子のタンパク質自体の分解をもたらす分子の活性を低減し得る。
【0232】
好適な検出手段は、放射性ヌクレオチド、酵素、補酵素、蛍光体、化学発光体(chemiluminescer)、色素原、酵素基質又は補因子、酵素阻害剤、補欠分子族複合体、遊離基、粒子、染料等の標識の使用を含む。そのような標識試薬は、多様な周知のアッセイ、例えば放射免疫測定法、酵素免疫測定法、例えばELISA、蛍光免疫測定法等に使用され得る。例えば、米国特許第3,766,162号明細書;同第3,791,932号明細書;同第3,817,837号明細書;及び同第4,233,402号明細書を参照されたい。
【0233】
本発明の方法は、ハイスループットスクリーニング適用を含む。例えば、本発明によるアッセイの任意のものを含むハイスループットスクリーニングアッセイを使用することができ、ここで、転写因子の産生又は発現を可能にするシステムのアリコートを、多ウェルプレートの異なるウェル内の複数の候補剤に暴露する。更に、本開示によるハイスループットスクリーニングアッセイは、任意の種類の小型化アッセイシステムにおいて、多ウェルプレートの異なるウェル内の複数の候補剤に暴露される、転写因子の産生又は発現を可能にするシステムのアリコートを含む。
【0234】
開示の方法は、小型化の任意の容認可能な方法によって、アッセイシステムにおいて「小型化」されてもよく、これは非限定に24、48、96又は384-ウェル/プレート等の多ウェルプレート、マイクロチップ又はスライドを含む。アッセイは、有利には、より少量の試薬及び他の材料を含むマイクロチップ支持体上で行われるように、サイズが縮
小されてもよい。ハイスループットスクリーニングの助けとなる、プロセスの任意の小型化は、本発明の範囲内である。
【0235】
本発明の任意の方法において、標的細胞は、ソース細胞が得られた哺乳動物と同じ哺乳動物に移動され得る。換言すれば本発明の方法で使用されるソース細胞は、自己細胞であってもよく、即ち標的細胞が投与されるのと同じ個人から得られてもよい。代替的に、標的細胞は、別の個人に同種間移動されてもよい。好ましくは、細胞は、個人の医学的状態の処置又は予防の方法における対象に対して自家性である。
【0236】
本明細書で引用される用語「細胞培養培地」(本明細書で「培養培地」又は「培地」とも称される)は、細胞生存能を維持し、増殖を支持する栄養素を含む、細胞を培養するための培地である。細胞培養培地は、以下の任意のものを適切な組み合わせで含み得る:塩、緩衝液、アミノ酸、ブドウ糖又は他の糖、抗生物質、血清又は血清交換物、及びペプチド成長因子等の他の構成成分等。特定の細胞タイプに通常使用される細胞培養培地は、当業者に既知である。本発明の方法で使用するための例示的な細胞培養培地は、表9に示される。
【0237】
【0238】
【0239】
【0240】
本明細書に記載した核酸、又は核酸を含むベクターは、上の表3にて引用した1つ以上の配列、又は表3にて列挙したアミノ酸配列の任意の1つ以上をコードする配列を含み得る。
【0241】
用語「発現」は、RNA及びタンパク質の生成、並びに適宜、タンパク質の分泌に関与する細胞プロセスを指し、適用可能な場合、非限定に、例えば転写、翻訳、折りたたみ、修飾及びプロセシングを含む。
【0242】
用語「単離された」又は「部分的に精製された」は、本明細書で使用するとき、核酸又はポリペプチドの場合、その天然源に見出された状態で、核酸又はポリペプチドと共に存在する、及び/又は、細胞により発現された際に、若しくは分泌されたポリペプチドの場合、分泌された際に、核酸若しくはポリペプチドと共に存在するであろう少なくとも1つの他の構成成分(例えば、核酸又はポリペプチド)から分離された核酸又はポリペプチドを指す。化学合成された核酸若しくはポリペプチド、又はインビトロ転写/翻訳を用いて合成されたものは、「単離された」と見なされる。
【0243】
用語「ベクター」は、宿主又はソース細胞内への導入のためにDNA配列が挿入され得る担体DNA分子を指す。好ましいベクターは、自律増殖が可能であり、及び/又はそれらが結合する核酸の発現が可能なものである。作動可能に結合した遺伝子の発現を案内することが可能なベクターは、本明細書で「発現ベクター」と称される。従って、「発現ベクター」は、宿主細胞内での関心対象の遺伝子の発現に必要な、必要な調節領域を含む特化したベクターである。いくつかの実施形態では、関心対象の遺伝子は、ベクター内の他の配列に作動可能に結合している。ベクターは、ウイルスベクター又は非ウイルスベクターであり得る。ウイルスベクターが使用されるときは、ウイルスベクターは複製欠損であることが好ましく、複製欠損は、複製のためにコードされた全ウイルス核酸を除去することにより達成され得る。複製欠損ウイルスベクターは、感染性の状態に留まり、複製アデノウイルスベクターと同様の方法で細胞に進入するが、細胞に入った後、複製又は増殖しない。ベクターは、リポソーム及びナノ粒子、及びDNA分子を細胞に送達する他の手段も包含する。
【0244】
用語「作動可能に結合した」は、コード配列に対して適切な位置にてDNA分子内に配置されてコード配列の発現をもたらす、コード配列の発現に必要な調節配列を意味する。この同じ定義が、時折、発現ベクター内のコード配列及び転写制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、及び終止エレメント)の配置に適用される。用語「作動可能に結合した」は、発現されるべきポリヌクレオチド配列の前方に適切な開始シグナル(例えば、ATG)を有し、発現制御配列の制御下でポリヌクレオチド配列の発現、及びポリヌクレオチド配列によりコードされた所望のポリペプチドの産生を可能にするように正確な読み枠を維持することを含む。
【0245】
用語「ウイルスベクター」は、細胞内への核酸構築物の担体としてのウイルス、又はウイルス関連ベクターの使用を指す。構築物は、細胞内への感染又は形質導入のために、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス(AAV)、又はヘルペスシンプレックスウイルス(HSV)、又はレトロウイルス及びレンチウイルスベクターを含むその他のような非複製、欠損ウイルスゲノムに一体化及びパッケージされてもよい。ベクターは、細胞のゲノムに組み込まれても、又は組み込まれなくてもよい。構築物は、所望であれば、トランスフェクションのためのウイルス配列を含んでもよい。代替的に、構築物は、エピソーマル複製が可能なベクター、例えばEPV及びEBVベクターに組み込まれてもよい。
【0246】
本明細書で使用するとき、用語「アデノウイルス」は、アデノウイルス科のウイルスを指す。アデノウイルスは、ヌクレオカプシド及び二本鎖線状DNAゲノムから構成される中型(90~100nm)の、無エンベロープ(裸)の正二十面体ウイルスである。
【0247】
本明細書で使用するとき、用語「非一体化ウイルスベクター」は、宿主ゲノムに一体化されないウイルスベクターを指す;ウイルスベクターにより送達される遺伝子の発現は、一時的である。宿主ゲノムへの一体化が殆ど~全く存在しないため、非一体化ウイルスベクターは、ゲノムの無作為の場所における挿入によるDNA変異を生じない利点を有する。例えば、非一体化ウイルスベクターは、染色体外に留まり、その遺伝子を宿主ゲノムに挿入せず、該挿入は、内在性遺伝子の発現を攪乱する可能性がある。非一体化ウイルスベクターは、非限定的に以下を含み得る:アデノウイルス、アルファウイルス、ピコルナウイルス及びワクシニアウイルス。これらのウイルスベクターは、それらの任意のものが、ある稀な状況で、ウイルス核酸を宿主細胞のゲノムに一体化し得る可能性があるにも関わらず、本明細書で使用される用語として「非一体化」ウイルスベクターである。重要なことは、本明細書に記載した方法に使用されるウイルスベクターが、概して、又は使用される条件下におけるライフサイクルの主な部分として、それらの核酸を宿主細胞のゲノムに一体化しないことである。
【0248】
本明細書に記載したベクターは、科学文献で一般に既知の方法を用いて、治療法での使用のためにそれらの安全性を高め、所望であれば選択及びエンリッチメントマーカーを含み、及び、含まれるヌクレオチド配列の発現を最適化するように構築及び操作することができる。ベクターは、該ベクターがソース細胞タイプ内で自己複製することを可能にする構造的な構成要素を含む必要がある。例えば、既知のEpstein Barr oriP/Nuclear Antigen-1(EBNA-I)組み合わせ(例えば、その全体が本明細書に示されるが如く参照により組み込まれるLindner,S.E.and
B.Sugden,The plasmid replicon of Epstein-Barr virus:mechanistic insights into efficient,licensed,extrachromosomal replication in human cells,Plasmid 58:1(2007)参照)は、ベクターの自己複製を支持するのに十分であり、また哺乳動物、特に霊長類の細胞内で機能することが既知の他の組み合わせも使用することができる。本発明での使用
に好適な発現ベクターの構築のための標準的な技術は、当業者に周知であり、その全体が本明細書に示されるが如く参照により組み込まれるSambrook J,et al.,“Molecular cloning:a laboratory manual,”(3rd ed.Cold Spring harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.2001)等の出版物に見出すことができる。
【0249】
本発明の方法では、転換に必要な関連転写因子をコードする遺伝子材料は、1つ以上のリプログラミングベクターによりソース細胞内に送達される。各転写因子は、ソース細胞内でポリヌクレオチドの発現を駆動することができる異種プロモーターに作動可能に結合した転写因子をコードするポリヌクレオチド導入遺伝子として、ソース細胞内に導入され得る。
【0250】
好適なリプログラミングベクターは、本明細書に記載した任意のものであり、感染性又は複製コンピテントウイルスを生じさせるのに十分なウイルスゲノムの全部又は一部をコードしない、プラスミド等のエピソーマルベクターを含むが、ベクターは、1つ以上のウイルスから得られる構造的エレメントを含んでもよい。1つ又は複数のリプログラミングベクターが単一のソース細胞内に導入され得る。1つ以上の導入遺伝子が単一のリプログラミングベクター上に提供され得る。1つの強い構成的転写プロモーターは、複数の導入遺伝子の転写制御を提供することができ、これは発現カセットとして提供され得る。ベクター上の別個の発現カセットが、別個の強い構成的プロモーターの転写制御下にあってもよく、該構成的プロモーターは、同じプロモーターの複製であってもよく又は異なるプロモーターであってもよい。様々な異種プロモーターが当技術分野で既知であり、転写因子の所望の発現レベル等の因子に応じて使用され得る。下に例示するように、ソース細胞内で異なる強度を有する異なるプロモーターを使用して、別個の発現カセットの転写を制御することが有利であり得る。転写プロモーターの選択における別の考慮事項は、プロモーターが発現停止される率である。当業者は、遺伝子の産物がリプログラミング方法におけるその役割を完了し又は実質的に完了した後、1つ以上の導入遺伝子又は導入遺伝子発現カセットの発現を低減することが有利であり得ることを認識するであろう。例示的なプロモーターは、ヒトEF1α伸長因子プロモーター、CMVサイトメガロウイルス即時型(immediate early)プロモーター及びCAGニワトリアルブミンプロモーター、並びに他の種からの対応する相同プロモーターである。ヒト体細胞内では、EF1α及びCMVの両方が強いプロモーターであるが、CMVプロモーターはEF1αプロモーターよりも効率的に発現停止され、従って前者の制御下にある導入遺伝子の発現が後者の制御下にある導入遺伝子よりも早く停止される。転写因子は、ソース細胞内で、リプログラミング効率を調節するように変化し得る相対的な比率で発現され得る。好ましくは、複数の導入遺伝子が単一の転写産物上にコードされる場合、内部リボソーム進入部位が、転写プロモーターの先端方向において導入遺伝子の上流に提供される。因子の相対的な比率は、送達される因子に応じて変動し得るが、本開示を所有する当業者は、因子の最適な比率を決定することができる。
【0251】
当業者は、複数のベクターよりも単一のベクターを介して全因子を導入する有利な効率性は、全ベクターサイズが増大するにつれて、ベクターの導入が困難になることを認識するであろう。当業者はまた、ベクター上の転写因子の位置が、その一時的発現、及び結果としてのリプログラミング効率に影響し得ることも認識するであろう。従って、本出願者らは、ベクターと組み合わせた、因子の様々な組み合わせを用いた。数個のそのような組み合わせは、本明細書で、リプログラミングを支持することが示される。
【0252】
リプログラミングベクターの導入後、及びソース細胞がリプログラミングされている間、ベクターは、導入された導入遺伝子が転写及び翻訳されている間、標的細胞内に存続し得る。導入遺伝子発現は、有利には、標的細胞タイプにリプログラミングされた細胞内で
下方調節又は停止され得る。リプログラミングベクターは染色体外に留まり得る。効率性が極めて低い場合、ベクターは細胞のゲノムに一体化され得る。以下の実施例は、説明を意図し、本発明を決して限定しない。
【0253】
本発明で使用される、細胞、組織又は生命体の形質転換のための核酸送達に好適な方法は、本明細書に記載した又は当業者に既知の、核酸(例えば、DNA)を細胞、組織又は生命体に導入し得る事実上任意の方法を含むと考えられる(例えば、Stadtfeld
and Hochedlinger,Nature Methods 6(5):329-330(2009);Yusa et al.,Nat.Methods 6:363-369(2009);Woltjen,et al.,Nature 458,766-770(9 Apr.2009))。そのような方法には、非限定的に、場合によりFugene6(Roche)又はLipofectamine(Invitrogen)等の脂質ベースのトランスフェクション試薬を用いた、エクスビボトランスフェクションによる等のDNAの直接送達(Wilson et al.,Science,244:1344-1346,1989、Nabel and Baltimore,Nature 326:711-713,1987)、微量注入法(参照により本明細書に組み込まれるHarland and Weintraub,J.Cell Biol.,101:1094-1099,1985;米国特許第5,789,215号明細書)を含む注射によって(米国特許第5,994,624号明細書、同第5,981,274号明細書、同第5,945,100号明細書、同第5,780,448号明細書、同第5,736,524号明細書、同第5,702,932号明細書、同第5,656,610号明細書、同第5,589,466号明細書及び同第5,580,859号明細書、各々参照により本明細書に組み込まれる);電気穿孔法によって(参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,384,253号明細書;Tur-Kaspa et al.,Mol.Cell Biol.,6:716-718,1986;Potter et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA,81:7161-7165,1984);リン酸カルシウム沈降法によって(Graham and Van Der Eb,Virology,52:456-467,1973;Chen and Okayama,Mol.Cell Biol.,7(8):2745-2752,1987;Rippe et al.,Mol.Cell Biol.,10:689-695,1990);DEAE-デキストランと、その後のポリエチレングリコールの使用によって(Gopal,Mol.Cell Biol.,5:1188-1190,1985);直接音波負荷(direct sonic loading)によって(Fechheimer et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA,84:8463-8467,1987);リポソーム媒介トランスフェクション(Nicolau and Sene,Biochim.Biophys.Acta,721:185-190,1982;Fraley et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA,76:3348-3352,1979;Nicolau et al.,Methods Enzymol.,149:157-176,1987;Wong et al.,Gene,10:87-94,1980;Kaneda et al.,Science,243:375-378,1989;Kato et al.,J Biol.Chem.,266:3361-3364,1991)及び受容体媒介トランスフェクション(Wu and Wu,Biochemistry,27:887-892,1988;Wu and Wu,J.Biol.Chem.,262:4429-4432,1987)によって;並びにそれらの方法の任意の組み合わせが挙げられ、これらの各々は参照により本明細書に組み込まれる。
【0254】
関連分子を細胞内に導入することを仲介できる多数のポリペプチドが以前記載されており、本発明に適用することができる。例えば、Langel(2002)Cell Penetrating Peptides:Processes and Applica
tions,CRC Press,Pharmacology and Toxicology Seriesを参照されたい。膜を横切る輸送を向上させるポリペプチド配列の例には、非限定的に、ショウジョウバエホメオタンパク質アンテナペディア転写タンパク質(AntHD)(Joliot et al.,New Biol.3:1121-34,1991;Joliot et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:1864-8,1991;Le Roux et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:9120-4,1993)、ヘルペスシンプレックスウイルス構造タンパク質VP22(Elliott and O’Hare,Cell 88:223-33,1997);HIV-1転写活性化因子TATタンパク質(Green and Loewenstein,Cell 55:1179-1188,1988;Frankel and Pabo,Cell 55:1 289-1193,1988);Kaposi FGFシグナル配列(kFGF);タンパク質形質導入ドメイン-4(PTD4);ペネトラチン、M918、トランスポータン-10;核局在化配列、PEP-Iペプチド;両親媒性ペプチド(例えば、MPGペプチド);米国特許第6,730,293号明細書に記載されているような送達増強輸送体(非限定に、少なくとも5~25若しくはそれを超える連続アルギニン又は30、40若しくは50アミノ酸の連続セットにおける5~25若しくはそれを超えるアルギニンを含むペプチド配列を含む;非限定に、十分な、例えば少なくとも5つのグアニジノ又はアミジノ部分を有するペプチドを含む);及び市販のペネトラチン(Penetratin)(商標)1ペプチド、及びフランス、パリのDaitos S.A.から入手可能なVectocell(登録商標)プラットフォームのDiatos Peptide Vector(「DPVs」)が挙げられる。国際公開第2005/084158号パンフレット及び同第2007/123667号パンフレット並びにそこに記載される更なる輸送体も参照されたい。これらのタンパク質は形質膜を通過できるのみでなく、本明細書に記載した転写因子等の他のタンパク質の結合は、これらの複合体の細胞取り込みを刺激するのに十分である。
【0255】
表4a.本発明の例示的な転換。ソース細胞タイプは一番左の列に示し、標的細胞タイプは一番上の行に示す。ソース細胞タイプから標的細胞タイプの少なくとも1つの特徴を有する細胞への転換に必要な転写因子を示す。
【0256】
【0257】
【0258】
表4b.本発明の更なる例示的な転換。ソース細胞タイプは一番左の列に示し、標的細胞タイプは一番上の行に示す。ソース細胞タイプから標的細胞タイプの少なくとも1つの特徴を有する細胞への転換に必要な転写因子を示す。
【0259】
【0260】
本発明は、以下の非限定的な実施例を含む。
【実施例0261】
実施例1
各細胞転換に必要なTFのセットを予測するために、本発明者らは、細胞タイプ間で差次的に発現されるのみでなく、局所ネットワークにおいて他の差次的発現遺伝子に対する調節影響も及ぼすTFを特定する(
図1a参照)。全細胞における全遺伝子に関する差次的発現を捕捉する単一のスコアは、log倍数変化及び調整p値を組み合わせることにより規定される。各細胞における各TFの調節影響を、既知のインタラクトーム(STRING及びMARAにより規定される、
図1c参照)に亘る差次的発現スコアの加重和を行うことにより計算する。この和は、2つの因子:(1)調節の直接さ、即ち、TFと下流遺伝子との間の中間がいくつあるか、及び(2)特異性、即ち、同様に上流TFが調節する他の遺伝子の数、により重みづけされる。この加重和により、TFはそれらの影響に従って、各細胞タイプ内でランク付けされる。最終ステップは、ソースと比較して、標的細胞タイプ内で差次的発現遺伝子に亘って、組み合わされた最大の影響を有するTFの最適セットを選択することである。これは、組み合わされた影響が、セットの影響を増大させないものを省いて、発現された標的細胞遺伝子の98%に到達するまで、差次的影響によるランク付けの順序でTFをセットに加えることにより行われる(
図1d及び下記の方法体系を参照)。生物学的に言えば、Mogrifyは、標的細胞タイプの独自性の最大の原因となる調節ネットワークの部分を制御するTFを特定する。
【0262】
Mogrifyは、1つ以上のステップを含んでもよく、これは下に概略され、以下のセクションでより詳しく記載される。
【0263】
1.各サンプル(s)内の各遺伝子(x)に関する発現データを収集する。
2.各サンプル内の各遺伝子のツリーベースの背景に対する差次的発現を計算した後、log倍数変化
【数7】
及び調整P値
【数8】
を遺伝子スコア
【数9】
と組み合わせる。
3.各サンプル内の各TF(x)に関して、各TF上に中心を置く2つの異なるサブネットワーク
【数10】
に亘って、遺伝子スコアの加重和を実行することにより、ネットワークスコア(N
S)を計算する。
4.
【数11】
スコアの組み合わせに基づいてTFをランク付けする。
5.各細胞タイプからのランク付けリストの比較に基づいて、任意の2つの細胞タイプ間の転換のための転写因子のセットを計算する。
6.リストから転写的に重複性のTFを除去する。
7.細胞タイプをそれらの必要なTFに基づいて2D面上に配置し、選択されたTFにより直接調節される必要な遺伝子の平均適用範囲に基づいた高さを加えることにより、細胞転換景観を形成する。
【0264】
ステップ1:FANTOM5データセットから得た発現データ
Mogrifyは、クラスター化CAGEタグの700ライブラリーを使用し、これはTSS位置を提供する。これらは、それらの対応する遺伝子(FANTOM5コンソーシアムにより提供(Forrest,A.R.R.et al.Nature 507,462-470(2014))にマッピングされる。このデータを使用して、各ライブラリーにおける各遺伝子に関するタグ数を作製する。合計で、少なくとも1つのサンプル中、少なくとも20 TPM(タグパーミリオン(per million))で発現する1
5,878の異なる遺伝子(そのうち1408はTF)が存在する。
【0265】
ステップ2:ツリーベースの差次的発現
差次的発現の計算は、生物学的データを分析する際の一般的な問題であり、これを行うためにいくつかの技術が存在する。本発明者らは、ベンチマーク評価において良好に機能することから、この作業にDESeqの使用を選択し、DESeqは、いくつかの非反復データセットの分析を可能にし、また短い実行時間を有する。差次的発現を計算するために、2つのグループ:差次的発現を特定したいサンプルのセット及び比較する背景を特定する必要がある。正確な背景を選択する問題は重要である。多すぎる非関連サンプルは、試験の統計的検出力を低減し得る。背景中の狭すぎる又は少なすぎるサンプルは、どの遺伝子が実際に差次的発現しているか区別することを不可能にする。1つの解決法は、細胞タイプの各々の間のペアワイズ検定の網羅的計算を行うことである。このアプローチは2つの問題を有する:第1に、これは非常に計算的に高価であり、第2に、サンプルと平均背景との間で差次的発現遺伝子を明らかにせず、どちらかと言えば2つのサンプル間で詳細に明らかにする。Mogrifyの場合、本発明者らは全ての状況での所定の細胞タイプに重要な遺伝子に興味があり、従ってサンプルの収集には反対である。これを行うために、本発明者らは、FANTOM5細胞オントロジーに基づくツリーベースの背景選択方法を実行した(
図1B)。このアプローチの原理は、そのオントロジーが非常に近い細胞タイプを除外すると共に、ツリーにおいて背景に近い他の細胞タイプを含めることである。これは、限界点として機能するツリーの頂点に近いポイントを選び出すことにより達成された。分析された細胞タイプとして同じクレードにあるサンプルを除去し、同じクレードにはないが、尚このポイントの下方にあるサンプルを含めた。この結果は、確かな結果を与えるのに十分広いが、統計的検出力が管理できるレベルを保つのに十分狭い、サンプルのセットである。
【0266】
DEseqのためのこのツリーベースの背景選択は、各サンプル内の各遺伝子に関するlog倍数変化及びFDR調整p値を形成する全FANTOM5ライブラリー(反復により分類)上で行われる。非均一背景が存在するため、各差次的発現計算の結果は、直接比較することができず、従って残りのステップでは、これらの数字は各サンプル内の遺伝子のランク付けに使用され、比較されるのはランク付けである。
【0267】
本発明者らは高いレベルの影響を有するTFの特定のみに興味があるため、以下の等式を使用して、log倍数変化及びFDR調整p値を単一の正のスコア
【数12】
に変換する:
【数13】
式中、
【数14】
は、サンプルs内の遺伝子xのlog倍数変化である。
【数15】
は、サンプルs内の遺伝子xの調整p値である。
【0268】
この式は、高いlog倍数変化及び低い調整p値スコアを有する遺伝子を非常に高く保証し、逆も同様である。これは各サンプル内の全遺伝子に適用され、差次的発現の15878遺伝子マトリクスにより700サンプルを形成する。
【0269】
ステップ3:TFのネットワークベースの影響範囲の計算
各TFの重要性を評価するために、TFの局所近隣に対するその効果を、ネットワーク情報の2つのソースを使用して計算する:STRINGデータベース及びモチーフ活性の応答解析(MARA:Motif Activity Response Analysis)。下に記載するこれら2つの技術は、異なるタイプの相互作用を含む。MARAは、遺伝子のプロモーター領域内の既知の結合部位とのタンパク質-DNA相互作用を提供する。これは、相互作用の低レベルの指向された調節ネットワークを表す。STRINGは、タンパク質-タンパク質、タンパク質-DNA、タンパク質-RNAを含む様々なタイプの相互作用、及び生物学的経路を含む相互作用のメタデータベースである。これは、遺伝子発現に直接又は間接的の両方で影響するように行われる相互作用の概要を提供する。
【0270】
影響を計算するために、遺伝子影響の加重和(ステップ2より)を転写因子の局所ネットワーク近隣に亘って行う。この局所ネットワークは、最大3エッジに制約され、各ノードの効果は、それが位置するシードTFから離れるにつれ減少し、その親からのout degreeに依存する(
図1C)。直接調節からますます遠い遺伝子が、スコアに比較的影響を与えないようにする距離重み付けを使用する。エッジ重み付けは、大きく偏在する転写因子を補償し、多数のかろうじて差次的に発現した遺伝子の調節により人為的に高いスコアを受けることを防ぐのに使用される。本発明者らは、
【数16】
を有する10遺伝子を調節するTFは、
【数17】
を有する1000遺伝子を調節するTFよりも重要であると考える。
【0271】
この加重和を行う等式は:
【数18】
式中:
X∈V
xは、TFxの局所サブネットワークを構成するノード(V
x)のセットにおける各遺伝子(r)である。
L
r,nは、ネットワークnにおけるxから離れるレベル(又はステップの数)rである
。
O
r,nは、ネットワークnにおけるrの親の程度である。
【0272】
これをMARA及びSTRINGネットワークの両方に亘り行い、2つのTF-影響リスト
【数19】
を得る。
【0273】
ステップ4:ステップ2及び3の結果に基づきTFをランク付けする
ステップ3及び4の結果は、
【数20】
に基づく各サンプルに関する3つのランク付けTFリストである。各サンプル内の各TFの最終的なランク付けを得るために、3つのリストの各々におけるそのランク付けを足し合わせる。本発明者らは上位の100TFの後、残りの調節影響は非常に小さいことを見出したため、ランクは最大100に制限する。TFが特定のリストに現れない場合、スコア100を与えられる。この結果は各細胞タイプに関するTFの単一のランク付けリストであり;最小スコア/ランクを有するものは、細胞転換を促進すると予測されるものである。
【0274】
ステップ5:全ペアワイズ実験比較を算出して、予測を形成する
所定の転換に関するTFのセットを予測するために、ソース細胞タイプ及び標的細胞タイプからのランク付けリストを比較する。標的細胞タイプリストからのTFがソース標的内に既に発現されている場合(20TPM超)、これをリストから除去する。
【0275】
ステップ6:転写的に重複性のTFの除去
最終的なランク付けが完了した後、調節重複性を除去する。これは、TFの各々が直接調節する遺伝子のリストを比較することにより達成される。所定のTFの場合、TFが調節する遺伝子の98%を超えて調節する、より高くランク付けされたTFが存在する場合、これを除去する。これは、得られた予測が、調節の影響範囲において多様なTFを含むことを意味する。このカットオフは経験的に選択されて、予測される因子の数を最小限にすると共に、ネットワーク適用範囲を最大限にした(
図5)。
【0276】
ステップ7:ステップ1~6に基づいて細胞リプログラミング景観を形成する
リプログラミング景観を形成するために、本発明者らはZ座標とは独立してX及びY座標を計算した。景観の複雑さを低減するために、本発明者らは、FANTOM5により提供される細胞オントロジーにより分類された個人サンプルの遺伝子発現プロファイルを平均する。この結果は、少なくとも3つのサンプルを含む314のオントロジーのセットであり、そこから本発明者らは平均遺伝子発現を有する。X及びY座標は、これらのプロファイルの多次元尺度構成法(MDS)を行うことにより計算する。MDSの結果は、地点間の距離が多次元現実からの2次元削減にて維持されるデータの投影である。結果として、景観のX-Y面で互いに接近した2点は、類似した発現プロファイルを有し、従って類似した細胞タイプを表す。景観のZ-軸は、上位8のMogrify予測TFの調節適用範囲を考慮することにより計算する。全転換に関して、本発明者らはオントロジーにて発現される遺伝子のセットに注目し、これらのいくつかは、各TFにより直接調節される。
本発明者らは、可能な最大AUCにより正規化した、上位の8TFに関する累積適用範囲の曲線下面積を計算して、各オントロジーに関する0~1の間の値を高さとして回収する。従って、高さ1は、必要な遺伝子の全部が上位にランク付けされたTFにより直接調節されるオントロジーを表し、高さ0は、上位8TFのいずれも、必要な遺伝子のいずれも直接調節しないことを表す。次いでX、Y及びZ値をR package plot3Dに使用して、image2D及びpersp3Dパッケージを使用して景観を生成する。最も高い位置の異なる幹細胞は、遺伝子セットエンリッチメントスコア0.41、p-値0.011で見出された。
【0277】
実施例2
Mogrifyの予測力を評価するために、本発明者らは、最初に、ヒト細胞に関与するものに焦点を当て、周知の、以前に公表された直接細胞転換に対してMogrifyがどのように実行されるかを決定した。これらは絶対的な、完全な組み合わせとしてではないが、比較に有用な正の例の基準点と見なすべきである。
図2に示すように、殆ど全ての場合、Mogrifyは、以前に機能することが示されたTFの完全セットを予測するが、公表された因子の代わりに上流TFを含む場合がある。例えば、ヒト線維芽細胞は、OCT4(POU5F1としても既知)、SOX2、KLF4及びMYC又はOCT4、SOX2、NANOG及びLIN28を導入することによりiPS細胞に転換され得ることが既知である。Mogrifyは、この転換に関してNANOG、OCT4及びSOX2を上位の3TFとして予測し、これらは実験的に確認されている組み合わせである。以前の作業では、マクロファージ様細胞へのB細胞及び線維芽細胞の転換は、CEBPa及びPU.1(SPI1としても既知)の発現により可能であったことが示されており(Xie,H.,Ye,M.,Feng,R.&Graf,T.Cell 117,663-676(2004).;Rapino,F.et al.Cell Rep.3,1153-63(2013)、これはMogrifyが完全に予測している。ヒト皮膚線維芽細胞を心筋細胞に転換するために、本発明者らは、FANTOM5セットのデータを使用しないことを選択し、これは、該データが多くの重要な心筋細胞遺伝子を欠くためである(サンプルの起源における不足を示している)。細胞が異種の組織であり、理想的ではない心臓サンプルを使用しているにも関わらず、Mogrifyの予測リストは、ヒト転換に使用される5つのTFのうちの4つ(又は密接に関係する因子)を含む(Fu,J.-D.et al.Stem cell reports 1,235-47(2013))。
マウス及びヒトの両方における様々な細胞タイプからニューロンへの分化転換の多数の報告が文献に存在する(表5)。
【0278】
【0279】
使用されるTFのセットは、おそらくニューロンの異種性及び複雑性に起因して様々であるが、全実験に共通する因子は、Mogrifyにより予測される(表6)。
【0280】
【0281】
最終的に、ヒト線維芽細胞と肝細胞との間で、Mogrifyは転換及び成熟に必要なものと非常に類似したTFの組み合わせを予測する(
図2)。
図2に示す転換を用いて、本発明者らはMogrify、CellNet及びD’Alessio et alからのエントロピーベースのアプローチ(Stem Cell Reports,Volume 5,Issue 5,10 November 2015,Pages 763-775)の、これらの既知の因子を回収する能力を評価した。Mogrifyに関する公表された転写因子の平均回収率は84%、CellNetでは31%及びD’Alessio et alでは51%であった(
図6)。
図2の10個の転換のうち6つにおいて、Mogrifyは必要なTFの100%を回収し、これは、Mogrifyがこれらの転換のためのTFセットを提供するのに使用されていた場合、実験は最初から成功していた
可能性があることを意味する。一方、CellNet及びD’Allesio et alは、10個の転換のうち1つのみに関して全因子を回収した。
【0282】
Mogrifyの主な目標は、細胞転換のためのTFを予測することであるけれども、天然に存在する状態及びそれらの間の遷移の観点からヒト細胞タイプの景観をマッピングして、個々の細胞タイプを記述するTFのコアコントロールセットを捕捉する。これ自体が、研究者達の得意な細胞タイプ中の異なるTFの役割を明らかにする、該研究者達の助けとなり得ると考えられる。実際に、Mogrifyは現在研究室で適用されている細胞リプログラミングのための戦略を超える有意な利点を提供し、その過剰発現が、指向された細胞転換を誘導するであろうTFの予測を助ける。Mogrifyは307 FANTOM5組織/細胞タイプの全ての可能な組み合わせ間の転換に関して予め計算され、93,942の指向された転換をもたらしている。Mogrifyは、発現シグネチャー(例えば、RNAseq又はCAGE)が既知であれば、FANTOM5に含まれていない多数の他の細胞タイプに適用することができる。Mogrifyは出発点及び体系的手段を提供して、ヒトにおける新たな転換を探索する。MogrifyはTF重複性ステップを組み込んでいるため、細胞転換のための予測としてのTFの有限のセットを与えることが可能であり、これは全TFの単なるランク付けよりも有用である。
【0283】
Mogrifyの性能を他の方法と比較するために、ベンチマーキング実験を行った。最初に、MARA、STRING及び差次的発現構成要素のみの使用との比較における、完全Mogrifyアルゴリズムの使用の性能に関する効果を評価する。次に、CellNet及びD’Allesio et al.との比較を行った。これらは、現在、非常に様々な細胞タイプに関する転写因子セットを計算する手段を提供する唯一の他の技術である。比較を行うために、
図2に示す公表された転換からの転写因子のセットを真陽性として使用した。ベンチマークは、以下のステップを使用する、これらのTFの回収における各技術の性能の評価からなっていた。
【0284】
1)各転換に関して、考慮される転写因子の数を特定する:Mogrifyは全TFのランク付けリストではなく、TFのセットを提供する唯一の方法であり、目的は他の方法をMogrifyと比較することであるため、使用される因子の数に関してMogrifyにより生成された情報は、他の方法と共有された。即ち、他の方法よりも多くの因子を使用できる方法は存在しない。例えばB細胞とマクロファージとの間の転換の場合、Mogrifyは8TFが十分である筈と予測し、従って全方法で上位の8TFが比較に使用される。
【0285】
2)各方法に関して、正確な転写因子が予測されるか否か確認する:転写因子の公表された各セットに関して、各方法による予測を比較し、2つの統計を抽出する。最初に、公表された転写因子の回収率(即ち、全因子が予測セットに含まれていた場合、100%)、次に、公表された因子の平均ランク(即ち、正確に特定された各TFについて、ランクを合計し、正確に特定されたTFの総数で割る)。
【0286】
これらの2つのステップによる結果は、表7及び8に見出すことができ、MogrifyのCellNet及びD’Allesio et al.に対する比較の概要は、
図6に見出すことができる。
【0287】
CellNetに関する結果を抽出するために、本発明者らは、出発点としての線維芽細胞(GSE14897)及びB細胞(GSE65136)に関する公的に入手可能なデータセットを使用し、CellNet(cellnet.hms.harvard.edu)へのウェブインターフェースを使用して、
図2の各転換に関する予測を提供した。D’Allessio et al.は、多数の細胞タイプに関するTFのランク付けセッ
トを提供し、これらのランク付けリストを比較に使用した。
【0288】
表7:Mogrify、CellNet及びD’Alessio et al.の性能を比較するベンチマーキング結果。
図2の各転換に関して、各技術の予測を示す。CellNet及びD’Alessio et alのランク付けリストは、Mogrifyのセットのサイズでカットオフされている。これらのセットを比較するために、平均ランク及び公表されたセットからの総回収効率を抽出する。これらの統計は、各技術がこれらの転換に関して達成したであろう性能を示す案内となる。公表された転写因子の特定の失敗は、各技術からの予測された転写因子が、必ずしも細胞を転換できないことを意味するものではなく、このベンチマークは、入手可能なデータのみに基づく性能を評価するよう設計されている。CellNetに関するMyoblastの予測には、骨格筋GRNを使用した。
【0289】
【0290】
【0291】
表8:Mogrify及びその個々の構成要素(MARA、STRING及び差次的発現)の性能を比較するベンチマーキング結果。
図2の各転換に関して、Mogrify及びMogrifyの個々の構成要素の各々に関する予測を示す。MARA、STRING及び差次的発現構成要素のランク付けリストは、Mogrifyにより予測されるセットのサイズでカットオフされている。これらのセットを比較するために、平均ランク及び公表セットからの総回収効率を抽出する。これらの統計は、各技術がこれらの転換に関して達成したであろう性能を示す案内となる。公表された転写因子の特定の失敗は、各技術からの予測された転写因子が、必ずしも細胞を転換できないことを意味するものではなく、
このベンチマークは、入手可能なデータのみに基づく性能を評価するよう設計されている。
【0292】
【0293】
【0294】
実施例3
Mogrifyの予測能力を実験で証明するために、本発明者らはヒト細胞を使用して11の新規な細胞転換を行った:
・線維芽細胞から角化細胞(結果は実施例4);
・角化細胞から内皮細胞(結果は実施例5);
・線維芽細胞から内皮細胞(結果は実施例6);
・胚性幹細胞から内皮細胞(結果は実施例7);
・人工多能性幹細胞から内皮細胞(結果は実施例8);
・線維芽細胞から星状細胞(結果は実施例9);
・胚性幹細胞から星状細胞(結果は実施例10);
・人工多能性幹細胞から星状細胞(結果は実施例11);
・骨間葉系幹細胞から星状細胞(結果は実施例12);
・胚性幹細胞から角化細胞(結果は実施例13);及び
・人工多能性幹細胞から角化細胞(結果は実施例14)。
【0295】
この実施例に、材料及び方法を記載する。
【0296】
レンチウイルス生成
レンチウイルス生成のために、293Tヒト胚腎臓(HEK;Sigma)細胞をT-75フラスコ内で培養した。細胞が90~95%コンフルエンスに達した後、LTXリポフェクタミン(Invitrogen)遺伝子導入剤を使用して、EF1αプロモーター及びIRES2-eGFP(GeneCopoeia)から関連転写因子(例えばCDH1、FOS、FOXQ1、HOXB6、IRF1、MAFB、REL、SMAD1、SOX9、SOX17、TAL1、TCF7L1、MXD4、NFKB1、SOX2、ARNT2、RUNX2、PAX6、SNAI2、HMGB2、E2F1、MYC、FOSL2、又はTFAP2A)を発現している-lv165ベクターを、第2世代Trono labパッケージングプラスミドpsPAX2及びpMD2.G(Addgene)と共に、細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションから24時間及び36時間後にウイルス上清を収集し、超遠心フィルター(Millipore)を用いて濃縮した。次いで、ウイルス濃縮物を-80℃で保存した。滴定は、フローサイトメトリーにより測定されるeGFP発現に基づくものであった。これらの実験に使用した細胞株は、マイコプラズマ汚染に関して陰性であった。
【0297】
細胞培養
実験で使用する前に、ヒト成人上皮角化細胞(HEKa;GIBCO)及びヒト皮膚線維芽細胞(HDFs;GIBCO)を2.5×103細胞/cm2に増やし、少なくとも3回継代した。10% HKGS(GIBCO)及び1% Pen/Strep(GIBCO)を含む角化細胞血清フリー培地(KSFM;GIBCO)中でHEKa細胞を培養した。一方、HDFsは、10% LSGS(GIBCO)及び1% Pen/Strepを含む培地106(GIBCO)中で培養した。次いで、細胞を後の使用のために液体窒素中で凍結させた。角化細胞からの内皮細胞分化転換のために、細胞を解凍し、90%コンフルエンスに達するまで、2.5×103細胞/cm2で播種した。次いで、それらをKSFM培地中に5.0×103細胞/cm2で2日間再び播種し、その後、ポリブレン(Millipore)の存在下、KSFM培地中でHOXB6、IRF1、SMAD1、SOX17、TAL1、及びTCF7L1の濃縮レンチウイルス粒子で感染させた。ウイルスの添加後(12~24時間)、培地を新鮮なKSFM培地と交換した。4日目、培地を、ヒトVEGF(50ng/μl;PeproTech)、ヒトBMP4(20ng/μl;PeproTech)及びヒトFGF2(20ng/μl;PeproTech)を含む1% Pen/Strepを有するヒト内皮血清フリー培地(GIBCO)と交換した。線維芽細胞からの角化細胞分化転換のために、細胞を90%コンフルエンスに達するまで、2.5×103細胞/cm2で播種した。次いで、それらをマウス線維芽細胞培地(MEFM)中に2.5×103細胞/cm2で24時間再び播種し、その後、ポリブレンの存在下、MEFM中でCDH1、FOS、FOXQ1、MAFB、REL、及びSOX9のレンチウイルス粒子を24時間形質導入した。4日目、培地を、1% Pe
n/Strep、レチノイン酸及びヒトBMP4(R&D)を含むKSFM培地と交換した。全実験を通して、新鮮な培地を少なくとも2日に1回加えた。これらの実験の各々を3~4回繰り返した。
【0298】
【0299】
フローサイトメトリー
様々な時点で、分化転換細胞を、0.25%トリプシン-EDTA(GIBCO)を用いて37℃で3分間分離した。次いで、細胞をフローサイトメトリー分析又は選別のために調製した。細胞を抗-ヒトCD31-APC(17-0319-41、eBioscience)と共に4℃で15分間インキュベートし、DPBS(GIBCO)で洗浄し、1000rpmで7分間遠心分離した後、ヨウ化プロピジウム(Sigma-Aldrich)含有培地中に再懸濁した。LSR-II分析器(BD Bioscience)及びInflux細胞選別機(BD Biosciences)を、各々、データ分析及び選別に使用した。
【0300】
qPCR
RNeasy Microキット(Qiagen)を使用して、製造業者の指示書に従って全RNAを抽出した。抽出したRNAを、Superscript IIIキット(Invitrogen)を使用してcDNAに逆転写した。リアルタイム定量PCR反応を、Brilliant II SYBR Green QPCR Master Mix(Stratagene)を使用して3重で設定した後、7500リアルタイムPCRシステム上で行った。qPCRのプライマー配列は:
F-CD31:CCTTCTGCTCTGTTCAAGCC
R-CD31:GGGTCAGGTTCTTCCCATTT
F-VE:ATGAGAATGACAATGCCCCG
R-VE:TGTCTATTGCGGAGATCTGCAG
F-VEGFR2:GGCCCAATAATCAGAGTGGCA
R-VEGFR2:CCAGTGTCATTTCCGATCACTTT
F-ケラチン1:AGAGTGGACCAACTGAAGAGT
R-ケラチン1:ATTCTCTGCATTTGTCCGCTT
F-ケラチン14:AGACCAAAGGTCGCTACTGC
R-ケラチン14:AGGAGAACTGGGAGGAGGAG
F-インボルクリン:CTGCCTCAGCCTTACTGTGA
R-インボルクリン:GGAGGAGGAACAGTCTTGAGG
F-β-ACTIN:CATGTACGTTGCTATCCAGGC
R-β-ACTIN:CTCCTTAATGTCACGCACGAT
である。
【0301】
免疫蛍光法
細胞をDPBS中の4%パラホルムアルデヒドを用いて室温で10分間固定した。関心対象のマーカーが細胞表面上に発現していたため、細胞を透過処理する必要はなかった。細胞をDPBS中の5%ロバ血清で30分間ブロックした後、一次抗体(ヤギポリクローナル抗CD31、sc-1506;Santa Cruz;及びウサギポリクローナル抗VE-カドヘリン、ab33168;abcam)と共に4℃で一晩インキュベートした。翌日、細胞を二次抗体(ロバ抗ヤギAlexa Flour-555;Invitrogen、及びロバ抗ウサギAlexa Flour-647;Invitrogen)と共に室温で2時間インキュベートした。最終的に、細胞を4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI;Life Technologies)で1分間覆った。Nikon Digital sight DS-U2カメラを有する倒立Nikon Eclipse Ti落射蛍光顕微鏡を使用して全画像を撮影し、FIJIソフトウエアを使用して処理及び分析した。
【0302】
実施例4-ヒト線維芽細胞から角化細胞(iKer)への転換
この転換のために、Mogrifyにより予測されたFOXQ1、SOX9、MAFB、CDH1、FOS及びRELを細胞に形質導入した(
図3A及び表10)。
【0303】
【0304】
形質導入後の16日目までに、角化細胞関連のマーカー、ケラチン1、ケラチン14及びインボルクリンは、分化転換細胞内で顕著に上方調節された(
図3C)。更に、3週目までに、形質導入された細胞の大部分は、角化細胞により示される典型的な特徴である玉石形態を示した。隣接する非形質導入GFPネガティブ細胞、又は、GFPのみのウイルスを形質導入された対照細胞は、それらの線維芽細胞形態を維持した(
図3Dの矢印)。このリプログラミングされた細胞の形態及び分子特性は、Mogrifyがヒト線維芽細胞から角化細胞様細胞への転換を誘導するのに必要なTFを首尾よく予測することを示す。
【0305】
実施例5-成人ヒト角化細胞(HEKa)から微小血管内皮細胞(iECs)へ
この転換のために、本発明者らはMogrifyにより提案された6つのTFからSOX17、TAL1、SMAD1、IRF1及びTCF7L1を使用することを選択した(
図4及び表11)。
【0306】
【0307】
これらの5つのTFは、iECsに必要な遺伝子の92%までを調節することが予測される。これらのTFがHEKa細胞内で過剰発現された後、本発明者らは、細胞をそれらの培地中に4日目まで保つ必要があることを見出した(
図4B)。本発明者らはFACSを使用して、安定している内皮マーカーCD31を使用して細胞リプログラミングの動態を調べ(
図4C)、形質導入後の14日目までに、本発明者らは感染細胞の2%超が上方調節されたCD31を有し、18日目までにほぼ10%が上方調節されたCD31を有することを認めた。この時点で、本発明者らは、これらのCD31細胞を単離し、qPCRにより内皮関連遺伝子(CD31、VE-カドヘリン及びVEGFR2)の発現を評価し、評価された全遺伝子の明らかな再活性化が示された(
図4D)。最終的に、本発明者らは、免疫蛍光法(IF)を行って分化転換細胞の形態及び発現を検証した。
図4Eに示すように、予測されたTFを形質導入された細胞のみ-対象細胞ではない-が、正しい形態を提示し、表面上にCD31及びVE-カドヘリンを発現した。このリプログラミングされた細胞の形態及び分子特性は、ヒト内皮様細胞へのヒト角化細胞の遷移の成功を示す。
【0308】
実施例6-線維芽細胞から内皮細胞へ
使用した転写因子:SOX17、SMAD1、TAL1、IRF1、TCF7L1及びMXD4。(Mogrifyは因子JUNBも特定したが、これは使用しなかった)。
【0309】
分化転換戦略:転写因子のウイルス形質導入の24時間前に、LSGS(Life Technologies)を有する培地106中で、ヒト皮膚線維芽細胞をウェルプレート上に5k細胞/cm2で播種した。翌日、転写因子をコードするレンチウイルス粒子を、ポリブレン(Merck Millipore)を有する培地106中で細胞に形質導入した。次いで、形質導入の直後、ウェルプレートを1900rpmで60分間遠心分離した。5日目に、培地をVEGF(50ng/ml、Miltenyi Biotec)、FGF2(20ng/ml、Miltenyi Biotec)、及びBMP4(20ng/ml、Miltenyi Biotec)で補充した内皮培地(培地131、Life Technologies)と交換した。培地は実験全体を通して2日毎に交換した。
【0310】
免疫蛍光分析は、分化転換の18日目に内皮マーカーPeCAM及びVE-カドヘリン(cadehrin)の発現の証拠を示した(
図8A)。
【0311】
qPCR分析も、分化転換の18日目に、内皮関連の遺伝子VEGFR2及びVE-カドヘリンの発現レベルを示した(
図8B)。
【0312】
実施例7-胚性幹細胞から内皮細胞へ
使用した転写因子:SOX17、SMAD1、TAL1、NFKB1及びIRF1。(Mogrifyは因子HOXB7及びJUNBも特定したが、これらは使用しなかった)。
【0313】
分化転換戦略:転写因子のウイルス形質導入の24時間前に、ヒト胚性幹細胞(H9)をEssential 8培地(Life Technologies)中で、マトリゲル被覆(BD Falcon)ウェルプレート上に5k細胞/cm2で播種した。翌日、転写因子をコードするレンチウイルス粒子を、ポリブレン(Merck Millipore)を有するEssential 8培地中で細胞に形質導入した。次いで、形質導入の直後、ウェルプレートを1900rpmで60分間遠心分離した。5日目に、培地をVEGF(50ng/ml、Miltenyi Biotec)、FGF2(20ng/ml、Miltenyi Biotec)、及びBMP4(20ng/ml、Miltenyi Biotec)で補充した内皮培地(培地131、Life Technologies)と交換した。培地は実験全体を通して2日毎に交換した。
【0314】
免疫蛍光分析は、分化転換の18日目に内皮マーカーPeCAM及びVE-カドヘリン(cadehrin)の発現の証拠を示した(
図9A)。
【0315】
qPCR分析は、分化転換の18日目に、内皮関連の遺伝子VEGFR2及びVE-カドヘリンの発現レベルを示した(
図9B)。
【0316】
図10は、分化転換の12及び18日目のPeCAM発現のフローサイトメトリー分析と、分化転換の18日目のPeCAM陽性細胞の定量化の結果を示す。
【0317】
実施例8-多能性幹細胞から内皮細胞へ
使用した転写因子:SOX17、TAL1、NFKB1、IRF1、及びSMAD1。(Mogrifyは因子HOXB7及びJUNBも特定したが、これらは使用しなかった)。
【0318】
分化転換戦略:転写因子のウイルス形質導入の24時間前に、ヒト誘導多能性幹細胞(32Fドナー)をEssential 8培地(Life Technologies)
中で、マトリゲル被覆(BD Falcon)ウェルプレート上に5k細胞/cm2で播種した。翌日、転写因子をコードするレンチウイルス粒子を、ポリブレン(Merck Millipore)を有するEssential 8培地中で細胞に形質導入した。次いで、形質導入の直後、ウェルプレートを1900rpmで60分間遠心分離した。5日目に、培地をVEGF(50ng/ml、Miltenyi Biotec)、FGF2(20ng/ml、Miltenyi Biotec)、及びBMP4(20ng/ml、Miltenyi Biotec)で補充した内皮培地(培地131、Life Technologies)と交換した。培地は実験全体を通して2日毎に交換した。
【0319】
免疫蛍光分析は、分化転換の18日目に内皮マーカーPeCAM及びVE-カドヘリン(cadehrin)の発現を示す(
図11A)。
【0320】
qPCR分析は、分化転換の18日目に、内皮関連の遺伝子VEGFR2及びVE-カドヘリンの発現レベルを示す(
図11B)。
【0321】
図12は、分化転換の12及び18日目のPeCAM発現のフローサイトメトリー分析を示す。分化転換の18日目のPeCAM陽性細胞のFSC、フォワードスキャッター及び定量化。
【0322】
実施例9-線維芽細胞から星状細胞へ
使用した転写因子:SOX2、SOX9 ARNT2、SMAD1及びRUNX2。(Mogrifyは因子E2F5及びPBX1も特定したが、これらは使用しなかった)。
【0323】
分化転換戦略:転写因子のウイルス形質導入の24時間前に、LSGS(Life Technologies)を有する培地106中で、ヒト皮膚線維芽細胞をウェルプレート上に5k細胞/cm2で播種した。翌日、転写因子をコードするレンチウイルス粒子を、ポリブレン(Merck Millipore)を有する培地中で細胞に形質導入した。次いで、形質導入の直後、ウェルプレートを1900rpmで60分間遠心分離した。5日目に、培地をIL1β(10ng/ml、Sigma-Aldrich)で補充した星状細胞培地(Life Technologies)と交換した。7日目に、培地を星状細胞培地と交換した。培地は実験全体を通して2日毎に交換した。
【0324】
免疫蛍光分析は、分化転換の21日目に星状細胞マーカーGFAPの発現を示す(
図13)。
【0325】
実施例10-胚性(Embyronic)幹細胞(H9)から星状細胞へ
使用した転写因子:IRF1、SOX9、ARNT2、PAX6、SNAI2、RUNX2。(Mogrifyは因子SOX5も予測したが、これは使用しなかった)。
【0326】
分化転換戦略:転写因子のウイルス形質導入の24時間前に、Essential 8培地(Life Technologies)中で、ヒト胚性幹細胞(H9)をマトリゲル被覆(BD Falcon)ウェルプレート上に5k細胞/cm2で播種した。翌日、転写因子をコードするレンチウイルス粒子を、ポリブレン(Merck Millipore)を有するEssential 8培地中で細胞に形質導入した。次いで、形質導入の直後、ウェルプレートを1900rpmで60分間遠心分離した。2日目に、培地をB27サプリメント(Life Technologies)及び0.6μM CHIR99021(Miltenyi Biotec)を有するN2培地と交換した。6日目に、培地をIL1β(10ng/ml、Sigma-Aldrich)で補充した星状細胞培地(Life Technologies)と交換した。8日目に、培地を星状細胞培地と交換した。培地は実験全体を通して2日毎に交換した。
【0327】
免疫蛍光分析は、分化転換の21日目に星状細胞マーカーGFAPの発現を示す(
図14)。
【0328】
実施例11-多能性幹細胞から星状細胞へ
使用した転写因子:PAX6、SNAI2、RUNX2、HMGB2。(Mogrifyは因子POU3F2.E2F5及びSOX5も予測したが、これらは使用しなかった)。
【0329】
分化転換戦略:転写因子のウイルス形質導入の24時間前に、Essential 8培地(Life Technologies)中で、ヒト誘導多能性幹細胞(32Fドナー)をマトリゲル被覆(BD Falcon)ウェルプレート上に5k細胞/cm2で播種した。翌日、転写因子をコードするレンチウイルス粒子を、ポリブレン(Merck Millipore)を有するEssential 8培地中で細胞に形質導入した。次いで、形質導入の直後、ウェルプレートを1900rpmで60分間遠心分離した。2日目に、培地をB27サプリメント(Life Technologies)及び0.6μM CHIR99021(Miltenyi Biotec)を有するN2培地と交換した。6日目に、培地をIL1β(10ng/ml、Sigma-Aldrich)で補充した星状細胞培地(Life Technologies)と交換した。8日目に、培地を星状細胞培地と交換した。培地は実験全体を通して2日毎に交換した。
【0330】
免疫蛍光分析は、分化転換の21日目に星状細胞マーカーGFAPの発現を示した(
図15)。
【0331】
実施例12-間葉系幹細胞から星状細胞へ
転写因子:SOX2、SOX9、ARNT2、MYBL2、E2F1、HMGB2。(Mogrifyは因子HOXB7及びJUNBも特定したが、これらは使用しなかった)。
【0332】
分化転換戦略:転写因子のウイルス形質導入の24時間前に、MSC培地(15% FBS、グルタミン、ペニシリン及びストレプトマイシンを有するα-MEM;Life Technologies)中で、骨髄間葉系幹細胞(7081ドナー)をウェルプレート上に5k細胞/cm2で播種した。翌日、転写因子をコードするレンチウイルス粒子を、ポリブレン(Merck Millipore)を有するMSC培地中で細胞に形質導入した。次いで、形質導入の直後、ウェルプレートを1900rpmで60分間遠心分離した。5日目に、培地をIL1β(10ng/ml、Sigma-Aldrich)で補充した星状細胞培地(Life Technologies)と交換した。7日目に、培地を星状細胞培地と交換した。培地は実験全体を通して2日毎に交換した。
【0333】
免疫蛍光分析は、分化転換の21日目に星状細胞マーカーGFAPの発現を示した(
図16)。
【0334】
実施例13-胚性幹細胞から角化細胞へ
使用した転写因子:SOX9、NFKB1、MYC、FOSL2。(Mogrifyは因子NR2F2、FOSL1及びAHRも予測したが、これらは使用しなかった)。
【0335】
分化転換戦略:転写因子のウイルス形質導入の24時間前に、Essential 8培地(Life Technologies)中で、ヒト胚性幹細胞(H9)をマトリゲル被覆(BD Falcon)ウェルプレート上に5k細胞/cm2で播種した。翌日、転写因子をコードするレンチウイルス粒子を、ポリブレン(Merck Millipo
re)を有するEssential 8培地中で細胞に形質導入した。次いで、形質導入の直後、ウェルプレートを1900rpmで60分間遠心分離した。2日目に、培地を3μMのレチノイン酸を有するEssential 8培地と交換した。6日目に、培地をBMP4(50ng/ml、Miltenyi Biotec)及びEGF(5ng/ml、Miltenyi Biotec)で補充したEpiLife培地(Life Technologies)と交換した。培地は実験全体を通して2日毎に交換した。
【0336】
免疫蛍光分析は、分化転換の21日目に角化細胞マーカーパンケラチンの発現を示した(
図17)。
【0337】
実施例14-多能性幹細胞から角化細胞へ
転写因子:TFAP2A、MYC、SOX9、NFKB1。(Mogrifyは因子TP63及びNFKBIAも予測したが、これらは使用しなかった)。
【0338】
分化転換戦略:転写因子のウイルス形質導入の24時間前に、Essential 8培地(Life Technologies)中で、ヒト誘導多能性幹細胞(32Fドナー)をマトリゲル被覆(BD Falcon)ウェルプレート上に5k細胞/cm2で播種した。翌日、転写因子をコードするレンチウイルス粒子を、ポリブレン(Merck Millipore)を有するEssential 8培地中で細胞に形質導入した。次いで、形質導入の直後、ウェルプレートを1900rpmで60分間遠心分離した。2日目に、培地を3μMのレチノイン酸を有するEssential 8培地と交換した。6日目に、培地をBMP4(50ng/ml、Miltenyi Biotec)及びEGF(5ng/ml、Miltenyi Biotec)で補充したEpiLife培地(Life Technologies)と交換した。培地は実験全体を通して2日毎に交換した。
【0339】
免疫蛍光分析は、分化転換の21日目に角化細胞マーカーケラチン14(KRT14)の発現を示す(
図18A)。
【0340】
qPCR分析は、分化転換の21日目に角化細胞関連の遺伝子ケラチン14及びケラチン1の発現レベルを示す(
図18B及び18C)。
【0341】
実施例15
代表的な細胞景観を生成するためにいくつかの試みを行ったが、1つ又は2つの細胞タイプに焦点を当て、経路積分準ポテンシャル、機構的モデリング又は確率景観に基づくものである。本発明者らは、Mogrifyにより決定された、全部-対-全部のTFネットワーク差異の組み合わせの転写プロファイルとの比較により、ヒト細胞タイプを表す3D景観の形成が可能になるとの仮説を立てた(
図7)。景観は、分子的に類似した細胞タイプを、x-y面にて互いに接近して配置し、細胞タイプがどのくらい、良好な出発細胞ソースの可能性があるかに従って高さ(z方向)を調整する(オンラインの材料及び方法にて詳細を参照)。興味深いことに、本発明者らは、異なる幹細胞が最高位置に配置されることを認める。このことは、景観において最高地点にある細胞の転写ネットワークは、より少数のTFによって制御され、細胞が分化するにつれて(谷部内)、細胞はより多くのTFが転写ネットワークを微調整するのに必要となることを示唆し得る。