IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ビーエーエスエフ コーポレーションの特許一覧

特開2024-37997CHAゼオライト材料および関連する合成方法
<>
  • 特開-CHAゼオライト材料および関連する合成方法 図1A
  • 特開-CHAゼオライト材料および関連する合成方法 図1B
  • 特開-CHAゼオライト材料および関連する合成方法 図2
  • 特開-CHAゼオライト材料および関連する合成方法 図3
  • 特開-CHAゼオライト材料および関連する合成方法 図4
  • 特開-CHAゼオライト材料および関連する合成方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037997
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】CHAゼオライト材料および関連する合成方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/48 20060101AFI20240312BHJP
   B01J 29/76 20060101ALI20240312BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20240312BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
C01B39/48 ZAB
B01J29/76 A
B01D53/94 222
B01D53/94 228
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/08 B
【審査請求】有
【請求項の数】32
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023215063
(22)【出願日】2023-12-20
(62)【分割の表示】P 2020551272の分割
【原出願日】2019-03-21
(31)【優先権主張番号】62/646,195
(32)【優先日】2018-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】モイニ,アーマド
(72)【発明者】
【氏名】クンケス,エドゥアルド エル.
(72)【発明者】
【氏名】オルテガ,マリッツァ アイ.
(72)【発明者】
【氏名】ジャグロースキ,ウィリアム エム.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ゼオライトの構造欠陥密度を最小限に抑えた強い水熱安定性および触媒性能を示すCHA型ゼオライトの合成方法、ゼオライト材料ならびにCHA型ゼオライトを利用する排出物処理システムおよび排気ガス処理方法を提供する。
【解決手段】CHA結晶フレームワークを有するゼオライトを合成する方法を提供し、本方法は、FAU結晶フレームワークを有するゼオライトを含むアルミナ源と、シリカ源と、有機構造指向剤とを含む反応混合物を形成することであって、反応混合物が、OH/Siモル比よりも高いM/Si+R/Siの合計モル比を有し、式中、Mがアルカリ金属のモル数であり、Rが有機構造指向剤のモル数である、形成することと、反応混合物を結晶化して、CHA結晶フレームワークを有する生成物ゼオライトを形成することであって、生成物ゼオライトが、約25m/g未満のメソ細孔表面積(MSA)を有する、形成することと、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CHA結晶フレームワークを有するゼオライトを合成する方法であって、
i)ゼオライトを含む少なくとも1つのアルミナ源と、少なくとも1つのシリカ源と、少なくとも1つの有機構造指向剤とを含む反応混合物を形成することであって、前記反応混合物が、OH/Siモル比よりも高いM/Si+R/Siの合計モル比を有し、式中、Mがアルカリ金属のモル数であり、Rが有機構造指向剤のモル数である、形成することと、
ii)前記反応混合物を結晶化して、前記CHA結晶フレームワークを有する生成物ゼオライトを形成することであって、前記生成物ゼオライトが、約25m/g未満のメソ細孔表面積(MSA)を有する、形成することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記アルミナ源の前記ゼオライトが、FAU結晶フレームワークを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
FAU結晶フレームワークを有する前記ゼオライトが、ゼオライトYである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ゼオライトYがNa+形態であり、約3~約6の範囲のシリカ対アルミナ比(SAR)を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
Mがナトリウムであり、前記アルカリ金属ケイ酸塩溶液がケイ酸ナトリウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記反応混合物が、以下:
a.少なくとも約0.4のM/Siモル比、
b.約0.12未満のR/Siモル比、
c.約0.7未満のOH/Siモル比、および
d.約0.75超のM/Si+R/Siの合計比のうちの1つ以上を特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記有機構造指向剤が、アルキル、芳香族、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される置換基を有する第四級アンモニウム塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記有機構造指向剤が、アダマンチル、シクロヘキシル、またはベンジル置換基を有する第四級アンモニウム塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記結晶化ステップが、約100℃~約160℃の温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記CHA結晶フレームワークを有する前記生成物ゼオライトが、以下:
a.H形態の27Al NMRによって決定される場合、約20%未満のフレームワーク外アルミニウム(EFAl)、
b.約10~約30の範囲のSAR、
c.拡散反射赤外フーリエ変換(DRIFT)分光法によって決定される場合、約0.04未満の表面シラノール画分(X/Yピーク比)(式中、Xが3742CM-1におけるピークであり、Yが3609CM-1におけるピークである)、
D.約10m/g未満のMSA、および
e.少なくとも約400m/gのゼオライト表面積(ZSA)のうちの1つ以上を特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記CHA結晶フレームワークを有する前記生成物ゼオライトを焼成して、H形態またはNa形態の焼成ゼオライトを形成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記CHA結晶フレームワークを有する前記生成物ゼオライトを促進剤金属でイオン交換して、イオン交換ゼオライト触媒を形成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記促進剤金属が、FeまたはCuである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記シリカ源が、アルカリ金属ケイ酸塩溶液を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記反応混合物を結晶化することが、高温および自生圧力で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記反応混合物の固形物含有量が、約5~約25重量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
CHA結晶フレームワークを有するゼオライト材料であって、前記ゼオライト材料が、約25m/g未満のメソ細孔表面積(MSA)および少なくとも約400m/gのゼオライト表面積(ZSA)を有し、さらに、前記ゼオライト材料が、以下:
a.27Al NMRによって決定される場合、約20%未満のフレームワーク外アルミニウム(EFAl)、
b.拡散反射赤外フーリエ変換(DRIFT)分光法によって決定される場合、約0.04未満の表面シラノール画分(X/Yピーク比)(式中、Xが3742CM-1におけるピークであり、Yが3609CM-1におけるピークである)、および
C.前記ゼオライト材料のH形態を40重量%のNHF溶液を用いて処理した後の約60%未満の正規化されたZSA損失のうちの1つ以上を特徴とする、ゼオライト材料。
【請求項18】
約10~約30の範囲のSARを有する、請求項17に記載のゼオライト材料。
【請求項19】
約16~約22の範囲のSARを有する、請求項17に記載のゼオライト材料。
【請求項20】
約18~約20の範囲のSARを有する、請求項17に記載のゼオライト材料。
【請求項21】
形態の27Al NMRによって決定される場合、15%未満のフレームワーク外アルミニウム(EFAl)を有する、請求項17に記載のゼオライト材料。
【請求項22】
約10m/g未満のMSAを有する、請求項17に記載のゼオライト材料。
【請求項23】
窒素酸化物(NO)の低減に有効な選択的接触還元(SCR)触媒であって、前記SCR触媒が、鉄、銅、およびそれらの組み合わせから選択された金属で促進される請求項17~22のいずれか一項に記載のゼオライト材料を含む、SCR触媒。
【請求項24】
前記促進剤金属が、前記SCR触媒の総重量に基づいて、約1.0重量%~約10重量%の量で存在する、請求項23に記載のSCR触媒。
【請求項25】
前記SCR触媒が、熱エージング処理後に、排気ガスにおいて200℃で約58%以上、および600℃で約76%以上のNO転換を示し、前記熱エージング処理が、10体積%の蒸気と残りは空気の存在下で800℃で16時間行われ、前記排気ガスが、疑似定常状態条件下で80,000h-1の1時間当たりの体積ベースの空間速度を有し、500ppmのNO、500ppmのNH3、10%のO2、5%のHO、残りはNのガス混合物を含む、請求項23に記載のSCR触媒。
【請求項26】
前記SCR触媒が、熱エージング処理後に、200℃および600℃の排気ガス温度の一方またはそれらの両方で、排気ガス中において、同じ金属充填を有する比較金属促進CHAゼオライト材料よりも少なくとも約5%高いNO転換を示し、前記比較金属促進CHAゼオライト材料が、以下の基準:少なくとも約0.4のM/Siモル比、約0.12未満のR/Siモル比、約0.7未満のOH/Siモル比、および約0.75超のM/Si+R/Siの合計比のうちの1つ以上を満たさない反応混合物を使用して調製されたゼオライト材料として定義され、前記熱エージング処理が、10体積%の蒸気と残りは空気の存在下で800℃で16時間行われ、前記排気ガスが、疑似定常状態条件下で80,000h-1の1時間当たりの体積ベースの空間速度を有し、500ppmのNO、500ppmのNH3、10%のO2、5%のHO、残りはNのガス混合物を含む、請求項23に記載のSCR触媒。
【請求項27】
前記SCR触媒が、熱エージング処理後に200℃および600℃の排気ガス温度の一方またはそれらの両方で、排気ガス中において、同じ金属充填を有する比較金属促進CHAゼオライト材料よりも少なくとも約5%高いNO転換を示し、前記比較金属促進CHAゼオライト材料が、以下の基準:H形態の27Al NMRによって決定される場合、約20%未満のフレームワーク外アルミニウム(EFAl)、約10~約30の範囲のSAR、拡散反射赤外フーリエ変換(DRIFT)分光法によって決定される場合、約0.04未満の表面シラノール画分(X/Yピーク比)(式中、Xが3742CM-1におけるピークであり、Yが3609CM-1におけるピークである)、約25m/g未満のMSA、少なくとも約400m/gのゼオライト表面積(ZSA)、または前記ゼオライト材料のH形態を40重量%のNHF溶液を用いて処理した後の約60%未満の正規化されたZSA損失のうちの1つ以上を満たさないゼオライト材料として定義され、前記熱エージング処理が、10体積%の蒸気と残りは空気の存在下で800℃で16時間行われ、前記排気ガスが、疑似定常状態条件下で80,000h-1の1時間当たりの体積ベースの空間速度を有し、500ppmのNO、500ppmのNH3、10%のO2、5%のHO、残りはNのガス混合物を含む、請求項23に記載のSCR触媒。
【請求項28】
希薄燃焼エンジンの排気ガスからの窒素酸化物(NO)を低減するのに有効な触媒物品であって、前記触媒物品が、請求項23に記載の選択的接触還元(SCR)触媒が上に配置された基材担体を含む、触媒物品。
【請求項29】
前記基材担体が、金属またはセラミックから任意に構成されたハニカム基材である、請求項28に記載の触媒物品。
【請求項30】
前記ハニカム基材担体が、フロースルー基材またはウォールフローフィルターである、請求項28に記載の触媒物品。
【請求項31】
排気ガス処理システムであって、
排気ガス流を生成する希薄燃焼エンジンと、
前記希薄燃焼エンジンの下流に配置され、前記排気ガス流と流体連通している請求項28に記載の触媒物品と、を備える、排気ガス処理システム。
【請求項32】
以下:
a.前記触媒物品の上流に配置されたディーゼル酸化触媒(DOC)、
b.前記触媒物品の上流に配置された煤フィルター、および
c.前記触媒物品の下流に配置されたアンモニア酸化触媒(AMOX)のうちの1つ以上をさらに含む、請求項31に記載の排気ガス処理システム。
【請求項33】
希薄燃焼エンジンからの排気ガス流を処理する方法であって、
前記排気ガス流中の窒素酸化物(NOx)が低減されるように、前記排気ガス流を請求項28に記載の触媒物品と接触させることを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、選択的接触還元触媒の分野、ならびにそのような触媒を調製および使用して、窒素酸化物を選択的に還元する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンの排出物には、微粒子状物質(PM)、窒素酸化物(NO)、未燃炭化水素(HC)、および一酸化炭素(CO)が含まれる。NOは、とりわけ一酸化窒素(NO)および二酸化窒素(NO)を含む、様々な化学種の窒素酸化物を説明するために使用される用語である。排気微粒子状物質の2つの主要な構成成分は、可溶性有機画分(SOF)および煤画分である。SOFは、煤の上に層状に凝縮し、一般に未燃ディーゼル燃料および潤滑油に由来する。SOFは、排気ガスの温度に応じて、蒸気またはエアロゾル(すなわち、液体凝縮物の細かい液滴)としてディーゼル排気中に存在し得る。煤は、主に炭素の粒子で構成されている。排気のHC含有量は、エンジンタイプおよび動作パラメーターに応じて異なり得るが、典型的には、メタン、エテン、エチン、プロペンなどの様々な短鎖炭化水素が含まれる。
【0003】
NO含有ガス混合物を処理して、大気汚染を減少させるために、様々な処理方法が使用されてきた。1つの処理タイプは、窒素酸化物の接触還元を伴う。2つのプロセスがある:(1)一酸化炭素、水素、または炭化水素が還元剤として使用される非選択的還元プロセス、および(2)アンモニアまたはアンモニア前駆体が還元剤として使用される選択的還元プロセス。選択的還元プロセスでは、少量の還元剤で高度の窒素酸化物除去が達成され得る。
【0004】
SCRプロセスで用いられる触媒は、理想的には、水熱条件下で、広い温度範囲、例えば、200℃~600℃以上で良好な触媒活性を維持できる必要がある。SCR触媒は、一般的に、粒子の除去に使用される排気ガス処理システムの構成要素である煤フィルターの再生中などに、高温水熱条件に曝露される。
【0005】
ゼオライトなどのモレキュラーシーブが、酸素の存在下でアンモニア、尿素、または炭化水素などの還元剤とともに窒素酸化物のSCRで使用されてきた。ゼオライトは、ゼオライトのタイプ、ならびにゼオライトに含まれるカチオンのタイプおよび量に応じて、直径が約3~約10オングストロームの範囲の、かなり均一な細孔径を有する結晶材料である。8員環の細孔開口部および二重の6環の二次構築単位を有するゼオライト、特にケージのような構造を有するものは、SCR触媒としての使用に特に適している。これらの特性を有する特定のタイプのゼオライトは、チャバザイト(CHA)であり、これは、三次元の多孔度からアクセスできる8員環の細孔開口部(約3.8オングストローム)を有する小さな細孔ゼオライトである。ケージのような構造は、二重の6環の構築単位を4つの環で接続した結果である。CHA構造を有するモレキュラーシーブは、例えば、米国特許第4,544,538号および同第6,709,644号に開示されている方法に従って調製され得、これらは参照によって本明細書に組み込まれる。
【0006】
アンモニアによる窒素酸化物の選択的接触還元のための、しばしばイオン交換ゼオライト触媒(例えば、鉄促進および銅促進ゼオライト触媒)とも称される金属促進ゼオライト触媒が知られている。過酷な水熱条件下(例えば、局所的に700℃を超える温度での煤フィルターの再生中に示されるような)では、多くの金属促進ゼオライトの活性が低下し始めることがわかっている。この低下は、ゼオライトの脱アルミニウムおよびその結果として起こる、ゼオライト内の金属含有活性中心の損失に起因する。SCR触媒がしばしば煤フィルターの再生に伴う温度変動に曝露される軽質ディーゼル(LDD)用途では、ゼオライトの水熱安定性に特別な要求が課される。水熱安定性は、一般に、フレームワークアルミナの含有量が減少すると(すなわち、シリカ対アルミナのモル比またはSARが増加すると)増加するが、後者は、触媒活性Cuサイトの量も制限する。そのために、より低いSARのフレームワークの水熱安定性の向上は、LDD性能向上のための効果的な戦略を提示するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本発明の実施形態の理解を提供するために、必ずしも縮尺通りに描かれてはいない添付図面が参照され、参照番号は本発明の例示的な実施形態の構成要素を指す。図面は、単なる例であり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
図1A】本発明による触媒組成物を含み得るハニカムタイプの基材の斜視図である。
図1B図1Aに対して拡大され、かつ図1Aの担体の端面に平行な平面に沿って切り取られた部分断面図であり、図1Aに示される複数のガス流路の拡大図を示す。
図2】ウォールフローフィルター基材の一部の断面図を示す。
図3】本発明の触媒が利用される排出物処理システムの実施形態の概略図を示す。
図4】実験の試料AおよびD(脱水後)のDRIFTスペクトル(シラノール領域)である。
図5】実験から選択した試料のSCR性能を例示する。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、CHAゼオライトの構造欠陥密度を最小限に抑えるCHA結晶フレームワークを有するゼオライトを合成することで、生成物ゼオライトの水熱安定性を向上させる方法を提供する。したがって、様々な態様では、本発明は、CHAゼオライトの合成方法、強い水熱安定性および触媒性能を示すCHAゼオライト生成物、ならびにCHAゼオライト生成物を利用する排出物処理システムおよび排気ガス処理方法を提供する。
【0009】
一態様では、本方法は、ゼオライトを含む少なくとも1つのアルミナ源(例えば、FAU結晶フレームワークを有するゼオライト)と、アルカリ金属ケイ酸塩溶液を含む少なくとも1つのシリカ源と、少なくとも1つの有機構造指向剤(例えば、アルキル、芳香族、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される置換基を有する第四級アンモニウム塩)とを含む反応混合物を形成することであって、反応混合物は、OH/Siモル比よりも高いM/Si+R/Siの合計モル比を有し、式中、Mはアルカリ金属のモル数であり、Rは有機構造指向剤のモル数である、形成することと、反応混合物を結晶化して(有利には、高温(例えば、約100℃~約160℃)および高圧で)、CHA結晶フレームワークを有する生成物ゼオライトを形成することであって、ここで、生成物ゼオライトは、約25m/g未満のメソ細孔表面積(MSA)を有する、形成することと、を含む、CHAゼオライトを合成する方法を提供する。ある特定の実施形態では、FAU結晶フレームワークを有するゼオライトは、ゼオライトYであり得、例えば、ゼオライトYは、Na形態であり、約3~約6の範囲のシリカ対アルミナのモル比(SAR)を有する。いくつかの実施形態では、アルカリ金属Mはナトリウムであり得、アルカリ金属ケイ酸塩溶液はケイ酸ナトリウムであり得る。有機構造指向剤の例には、アダマンチル、シクロヘキシル、またはベンジル置換基を有する第四級アンモニウム塩が含まれる。
【0010】
反応混合物は、ある特定の実施形態では、少なくとも約0.4のM/Siモル比、約0.12未満のR/Siモル比、約0.7未満のOH/Siモル比、および約0.75超のM/Si+R/Siの合計比などの様々なモル比を特徴とし得る。
【0011】
いくつかの実施形態では、本方法は、CHA結晶フレームワークを有する生成物ゼオライトを焼成して、H形態またはNa形態の焼成ゼオライトを形成することをさらに含み得、促進剤金属(例えば、FeまたはCu)でCHA結晶フレームワークを有する生成物ゼオライトをイオン交換して、イオン交換ゼオライト触媒を形成することをさらに含み得る。
【0012】
別の態様では、本発明は、CHA結晶フレームワークを有するゼオライト材料を提供し、ここで、ゼオライト材料は、約25m/g未満のメソ細孔表面積(MSA)および少なくとも約400m/gのゼオライト表面積(ZSA)を有する。様々な実施形態では、ゼオライト材料は、以下:H形態の27Al NMRによって決定される場合、約20%未満のフレームワーク外アルミニウム(EFAl)(またはH形態の27Al NMRによって決定される場合、約15%未満のフレームワーク外アルミニウム(EFAl))、約10~約30(例えば、約16~約22または約18~約20)の範囲のSAR、拡散反射赤外フーリエ変換(DRIFT)分光法によって決定される場合、約0.04未満の表面シラノール画分(X/Yピーク比)(式中、Xが3742CM-1におけるピークであり、Yが3609CM-1におけるピークである)、約10m/g未満のMSA、少なくとも約450m/gのゼオライト表面積(ZSA)、およびゼオライト材料のH形態を40重量%のNHF溶液を用いて50℃で20分間攪拌/超音波処理した後に、450℃で6時間、乾燥および焼成した後の約60%未満の正規化されたZSA損失のうちの1つ以上をさらに特徴とし得る。
【0013】
さらに別の態様では、本発明は、窒素酸化物(NO)の低減に有効な選択的接触還元(SCR)触媒を提供し、SCR触媒は、鉄、銅、およびそれらの組み合わせから選択された金属で促進される本発明によるゼオライト材料を含む。促進剤金属含有量の例示的な範囲は、SCR触媒の総重量に基づいて、約1.0重量%~約10重量%である。ある特定の実施形態では、SCR触媒は、熱エージング処理後に、排気ガス中において、200℃で約58%以上、および600℃で約76%以上のNO転換を示し、ここで、熱エージング処理は、10体積%の蒸気と残りは空気の存在下で800℃で16時間行われ、排気ガスは、疑似定常状態条件下で80,000h-1の1時間当たりの体積ベースの空間速度を有し、500ppmのNO、500ppmのNH3、10%のO2、5%のHO、残りはNのガス混合物を含む。
【0014】
さらに別の態様では、本発明は、希薄燃焼エンジンの排気ガスからの窒素酸化物(NO)を低減するのに有効な触媒物品を提供し、触媒物品は、本発明による選択的接触還元(SCR)触媒が上に配置された基材担体を含む。基材担体の例には、フロースルー基材またはウォールフローフィルターなど、金属またはセラミックから任意に構成されたハニカム基材が含まれる。
【0015】
さらなる態様では、本発明は、排気ガス流を生成する希薄燃焼エンジンと、希薄燃焼エンジンの下流に配置され、排気ガス流と流体連通している本発明による触媒物品とを備える排気ガス処理システムを提供する。排気ガス処理システムは、任意に、以下:触媒物品の上流に配置されたディーゼル酸化触媒(DOC)、触媒物品の上流に配置された煤フィルター、および触媒物品の下流に配置されたアンモニア酸化触媒(AMOX)のうちの1つ以上をさらに含む。
【0016】
さらに別の態様では、本発明は、排気ガス流を本発明による触媒物品と接触させ、その結果、排気ガス流中の窒素酸化物(NOx)が低減されることを含む、希薄燃焼エンジンからの排気ガス流を処理する方法を提供する。
【0017】
本開示は、以下の実施形態を含むが、これらに限定されない。
【0018】
実施形態1:CHA結晶フレームワークを有するゼオライトを合成する方法であって、
i)ゼオライトを含む少なくとも1つのアルミナ源と、少なくとも1つのシリカ源と、少なくとも1つの有機構造指向剤とを含む反応混合物を形成することであって、反応混合物が、OH/Siモル比よりも高いM/Si+R/Siの合計モル比を有し、式中、Mがアルカリ金属のモル数であり、Rが有機構造指向剤のモル数である、形成することと、
ii)反応混合物を結晶化して、CHA結晶フレームワークを有する生成物ゼオライトを形成することであって、ここで、生成物ゼオライトが、約25m/g未満のメソ細孔表面積(MSA)を有する、形成することと、を含む、方法。
【0019】
実施形態2:アルミナ源のゼオライトが、FAU結晶フレームワークを有する、実施形態1に記載の方法。
【0020】
実施形態3:FAU結晶フレームワークを有するゼオライトが、ゼオライトYである、実施形態1または2に記載の方法。
【0021】
実施形態4:ゼオライトYがNa+形態であり、約3~約6の範囲のシリカ対アルミナ比(SAR)を有する、実施形態1~3のいずれかに記載の方法。
【0022】
実施形態5:Mがナトリウムであり、アルカリ金属ケイ酸塩溶液がケイ酸ナトリウムである、実施形態1~4のいずれかに記載の方法。
【0023】
実施形態6:反応混合物が、以下:
a.少なくとも約0.4のM/Siモル比、
b.約0.12未満のR/Siモル比、
c.約0.7未満のOH/Siモル比、および
d.約0.75超のM/Si+R/Siの合計比のうちの1つ以上を特徴とする、実施形態1~5のいずれかに記載の方法。
【0024】
実施形態7:有機構造指向剤が、アルキル、芳香族、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される置換基を有する第四級アンモニウム塩である、実施形態1~6のいずれかに記載の方法。
【0025】
実施形態8:有機構造指向剤が、アダマンチル、シクロヘキシル、またはベンジル置換基を有する第四級アンモニウム塩である、実施形態1~7のいずれかに記載の方法。
【0026】
実施形態9:結晶化ステップが、約100℃~約160℃の温度で行われる、実施形態1~8のいずれかに記載の方法。
【0027】
実施形態10:CHA結晶フレームワークを有する生成物ゼオライトが、以下:
a.H形態の27Al NMRによって決定される場合、約20%未満のフレームワーク外アルミニウム(EFAl)、
b.約10~約30の範囲のSAR、
c.拡散反射赤外フーリエ変換(DRIFT)分光法によって決定される場合、約0.04未満の表面シラノール画分(X/Yピーク比)(式中、Xが3742CM-1におけるピークであり、Yが3609CM-1におけるピークである)、
D.約10m/g未満のMSA、および
e.少なくとも約400m/gのゼオライト表面積(ZSA)のうちの1つ以上を特徴とする、実施形態1~9のいずれかに記載の方法。
【0028】
実施形態11:CHA結晶フレームワークを有する生成物ゼオライトを焼成して、H形態またはNa形態の焼成ゼオライトを形成することをさらに含む、実施形態1~10のいずれかに記載の方法。
【0029】
実施形態12:CHA結晶フレームワークを有する生成物ゼオライトを促進剤金属でイオン交換して、イオン交換ゼオライト触媒を形成することをさらに含む、実施形態1~11のいずれかに記載の方法。
【0030】
実施形態13:促進剤金属が、FeまたはCuである、実施形態1~12のいずれかに記載の方法。
【0031】
実施形態14:シリカ源が、アルカリ金属ケイ酸塩溶液を含む、実施形態1~13のいずれかに記載の方法。
【0032】
実施形態15:反応混合物を結晶化することが、高温および自生圧力で行われる、実施形態1~14のいずれかに記載の方法。
【0033】
実施形態16:反応混合物の固形物含有量が、約5~約25重量%である、実施形態1~15のいずれかに記載の方法。
【0034】
実施形態17:CHA結晶フレームワークを有するゼオライト材料であって、ゼオライト材料が、約25m/g未満のメソ細孔表面積(MSA)および少なくとも約400m/gのゼオライト表面積(ZSA)を有し、さらに、ゼオライト材料が、以下:
a.27Al NMRによって決定される場合、約20%未満のフレームワーク外アルミニウム(EFAl)、
b.拡散反射赤外フーリエ変換(DRIFT)分光法によって決定される場合、約0.04未満の表面シラノール画分(X/Yピーク比)(式中、Xが3742CM-1におけるピークであり、Yが3609CM-1におけるピークである)、および
C.ゼオライト材料のH形態を40重量%のNHF溶液を用いて処理した後の約60%未満の正規化されたZSA損失のうちの1つ以上を特徴とする、ゼオライト材料。
【0035】
実施形態18:約10~約30の範囲のSARを有する、実施形態1~17のいずれかに記載のゼオライト材料。
【0036】
実施形態19:約16~約22の範囲のSARを有する、実施形態1~18のいずれかに記載のゼオライト材料。
【0037】
実施形態20:約18~約20の範囲のSARを有する、実施形態1~19のいずれかに記載のゼオライト材料。
【0038】
実施形態21:H形態の27Al NMRによって決定される場合、15%未満のフレームワーク外アルミニウム(EFAl)を有する、実施形態1~20のいずれかに記載のゼオライト材料。
【0039】
実施形態22:約10m/g未満のMSAを有する、実施形態1~21のいずれかに記載のゼオライト材料。
【0040】
実施形態23:窒素酸化物(NO)の低減に有効な選択的接触還元(SCR)触媒であって、SCR触媒が、鉄、銅、およびそれらの組み合わせから選択された金属で促進される実施形態1~22のいずれかに記載のゼオライト材料を含む、SCR触媒。
【0041】
実施形態24:促進剤金属が、SCR触媒の総重量に基づいて、約1.0重量%~約10重量%の量で存在する、実施形態1~23のいずれかに記載のSCR触媒。
【0042】
実施例25:SCR触媒が、熱エージング処理後に、排気ガス中において、200℃で約58%以上、および600℃で約76%以上のNO転換を示し、熱エージング処理が、10体積%の蒸気と残りは空気の存在下で800℃で16時間行われ、排気ガスが、疑似定常状態条件下で80,000h-1の1時間当たりの体積ベースの空間速度を有し、500ppmのNO、500ppmのNH3、10%のO2、5%のHO、残りはNのガス混合物を含む、実施形態1~24のいずれかに記載のSCR触媒。
【0043】
実施形態26:SCR触媒が、熱エージング処理後に、排気ガス中において、200℃および600℃の排気ガス温度の一方またはそれらの両方で、同じ金属充填を有する比較金属促進CHAゼオライト材料よりも少なくとも約5%高いNO転換を示し、比較金属促進CHAゼオライト材料が、以下の基準:少なくとも約0.4のM/Siモル比、約0.12未満のR/Siモル比、約0.7未満のOH/Siモル比、および約0.75超のM/Si+R/Siの合計比のうちの1つ以上を満たさない反応混合物を使用して調製されたゼオライト材料として定義され、熱エージング処理が、10体積%の蒸気と残りは空気の存在下で800℃で16時間行われ、排気ガスが、疑似定常状態条件下で80,000h-1の1時間当たりの体積ベースの空間速度を有し、500ppmのNO、500ppmのNH3、10%のO2、5%のHO、残りはNのガス混合物を含む、実施形態1~25のいずれかに記載のSCR触媒。
【0044】
実施形態27:SCR触媒が、熱エージング処理後に、200℃および600℃の排気ガス温度の一方またはそれらの両方で、排気ガス中において、同じ金属充填を有する比較金属促進CHAゼオライト材料よりも少なくとも約5%高いNO転換を示し、比較金属促進CHAゼオライト材料が、以下の基準:H形態の27Al NMRによって決定される場合、約20%未満のフレームワーク外アルミニウム(EFAl)、約10~約30の範囲のSAR、拡散反射赤外フーリエ変換(DRIFT)分光法によって決定される場合、約0.04未満の表面シラノール画分(X/Yピーク比)(式中、Xが3742CM-1におけるピークであり、Yが3609CM-1におけるピークである)、約25m/g未満のMSA、少なくとも約400m/gのゼオライト表面積(ZSA)、またはゼオライト材料のH形態を40重量%のNHF溶液を用いて処理した後の約60%未満の正規化されたZSA損失のうちの1つ以上を満たさないゼオライト材料として定義され、熱エージング処理が、10体積%の蒸気と残りは空気の存在下で800℃で16時間行われ、排気ガスが、疑似定常状態条件下で80,000h-1の1時間当たりの体積ベースの空間速度を有し、500ppmのNO、500ppmのNH3、10%のO2、5%のHO、残りはNのガス混合物を含む、実施形態1~26のいずれかに記載のSCR触媒。
【0045】
実施形態28:希薄燃焼エンジンの排気ガスからの窒素酸化物(NO)を低減するのに有効な触媒物品であって、触媒物品が、実施形態1~27のいずれかに記載の選択的接触還元(SCR)触媒が上に配置された基材担体を含む、触媒物品。
【0046】
実施形態29:基材担体が、金属またはセラミックから任意に構成されたハニカム基材である、実施形態1~28のいずれかに記載の触媒物品。
【0047】
実施形態30:ハニカム基材担体が、フロースルー基材またはウォールフローフィルターである、実施形態1~29のいずれかに記載の触媒物品。
【0048】
実施形態31:排気ガス処理システムであって、
排気ガス流を生成する希薄燃焼エンジンと、
希薄燃焼エンジンの下流に配置され、排気ガス流と流体連通している実施形態1~30のいずれかに記載の触媒物品と、を備える、排気ガス処理システム。
【0049】
実施形態32:以下:
a.触媒物品の上流に配置されたディーゼル酸化触媒(DOC)、
b.触媒物品の上流に配置された煤フィルター、および
c.触媒物品の下流に配置されたアンモニア酸化触媒(AMOX)のうちの1つ以上をさらに含む、実施形態1~31のいずれかに記載の排気ガス処理システム。
【0050】
実施形態33:希薄燃焼エンジンからの排気ガス流を処理する方法であって、排気ガス流を実施形態1~32のいずれかに記載の触媒物品と接触させ、その結果、排気ガス流中の窒素酸化物(NOx)が低減されることを含む、方法。
【0051】
本開示のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、以下に簡単に記載される添付の図面とともに以下の詳細な説明で明らかになるだろう。本発明は、上記の実施形態の2つ、3つ、4つ、またはそれより多くの任意の組み合わせ、ならびに本開示に記載される2つ、3つ、4つ、またはそれより多くの特徴または要素の組み合わせを、そのような特徴または要素が、本明細書の特定の実施形態では明示的に組み合わされているか否かに関わらず含む。本開示では、文脈が明らかに他のことを示さない限り、開示される発明の分けることが可能な特徴または要素が、その様々な態様および実施形態のいずれかにおいて、組み合わせ可能であると考えられるべきであると、全体として読み取られることが意図される。本発明の他の態様および利点は、以下で明らかになるだろう。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明のいくつかの例示的な実施形態を記載する前に、本発明は、以下の説明に記載される構成またはプロセスステップの詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、様々な方法で実施または実行することができる。本明細書の発明は、特定の実施形態を参照して記載されているが、これらの実施形態は、本発明の原理および用途の単なる例示であることを理解されたい。本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、本発明の方法および装置に対して様々な修正および変更がなされ得ることが、当業者には明らかであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内にある修正および変更を含むことが意図される。
【0053】
この開示で使用される用語に関して、以下の定義が提供される。
【0054】
本明細書全体を通して「一実施形態」、「ある特定の実施形態」、「1つ以上の実施形態」、または「実施形態」への言及は、実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造、材料、または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、「1つ以上の実施形態では」、「ある特定の実施形態では」、「一実施形態では」、または「実施形態では」などの語句が本明細書全体の様々な箇所に出現することが、必ずしも本発明の同じ実施形態を指しているわけではない。さらに、特定の特徴、構造、材料、または特性は、1つ以上の実施形態では任意の好適な方法で組み合わせることができる。冠詞「a」および「an」は、冠詞の文法上の目的語の1つまたは2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指すために本明細書で使用される。
【0055】
本明細書に引用されるいずれの範囲も包括的である。本明細全体を通して使用される「約」という用語は、小さな変動を表現し、説明するために使用される。例えば、「約」という用語は、±5%以下、例えば、±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.2%以下、±0.1%以下、または±0.05%以下などを指すことができる。すべての数値は、明示的に示されているかどうかに関係なく、「約」という用語で修飾される。当然ながら、「約」という用語によって修飾された値には、特定の値が含まれる。例えば、「約5.0」には5.0を含める必要がある。
【0056】
「触媒」または「触媒材料」または「触媒的材料」という用語は、反応を促進する材料を指す。
【0057】
本明細書で使用される場合、「触媒物品」という用語は、所望の反応を促進するために使用される要素を指す。例えば、触媒物品は、基材、例えば、ハニカム基材上に、触媒種、例えば、触媒組成物を含有するウォッシュコートを含み得る。
【0058】
「ウォッシュコート」という用語は、処理されるガス流の通過を可能にするのに十分に多孔性のある担体基材材料、例えば、ハニカムタイプの担体部材に適用される触媒材料または他の材料の薄い接着性コーティングの技術分野におけるその通常の意味を有する。当技術分野で理解されるように、ウォッシュコートは、スラリー中の粒子の分散液から取得され、これを基材に適用し、乾燥させ、焼成して、多孔性ウォッシュコートを提供する。
【0059】
本明細書で使用される場合、「流れ」という用語は、広義的には、固形または液体の微粒子状物質を含有し得る流動ガスの任意の組み合わせを指す。「ガス流」または「排気ガス流」という用語は、エンジンの排気などのガス状成分の流れを意味し、これは、液滴、固形微粒子などの同伴した非ガス状構成成分を含有し得る。エンジンの排気ガス流は、典型的には、燃焼生成物、不完全燃焼生成物、窒素酸化物、可燃性および/または炭素質微粒子状物質(煤)、ならびに未反応の酸素および窒素を含む。
【0060】
本明細書で使用される場合、「BET表面積」は、N吸着によって表面積を決定するためのBrunauer、Emmett、Tellerの方法に関連するその通常の意味を有する。細孔径および細孔容積は、BETタイプのN吸着または脱着実験を使用して決定され得る。
【0061】
触媒材料または触媒ウォッシュコートにおける「支持体」は、沈殿、会合、分散、含浸、または他の好適な方法によって触媒(例えば、貴金属、安定剤、促進剤、バインダーなどを含む)を受容する材料を指す。
【0062】
本明細書で使用される場合、「選択的接触還元」(SCR)という用語は、窒素含有還元剤を使用して窒素酸化物を二窒素(N)に還元する触媒プロセスを指す。本明細書で使用される場合、「窒素酸化物」または「NO」という用語は、窒素酸化物を指す。SCRプロセスは、典型的には以下の反応に従って、アンモニアを用いた窒素酸化物の接触還元を使用して、窒素および水を形成する。
4NO+4NH+O→4N2+6HO(標準のSCR反応)
2NO+4NH→3N+6HO(遅いSCR反応)
NO+NO+2NH→2N+3HO(高速SCR反応)
【0063】
本明細書で使用される場合、「ゼオライト」という用語は、ケイ素およびアルミニウム原子を含むモレキュラーシーブの特定の例を指す。ゼオライトは、ゼオライトのタイプ、ならびにゼオライト格子に含まれるカチオンのタイプおよび量に応じて、直径が約3~10オングストロームの範囲の、かなり均一な細孔径を有する結晶材料である。
【0064】
より具体的な実施形態では、「ケイ酸アルミノゼオライト」フレームワークタイプへの言及は、材料が、フレームワーク内へと置換されたリンまたは他の金属を含まないモレキュラーシーブに限定される。しかし、明確にするために、本明細書で使用される場合、「ケイ酸アルミノゼオライト」は、SAPO、ALPO、およびMeAPO材料などのリン酸アルミノ材料を除外し、より広範な「ゼオライト」という用語は、ケイ酸アルミノおよびリン酸アルミノを含むことが意図される。
【0065】
ゼオライトCHA-フレームワークタイプのモレキュラーシーブは、本明細書では「CHAゼオライト」とも称され、近似式:(Ca、Na、K、Mg)AlSi126HO(例えば、水和ケイ酸カルシウムアルミニウム)を有するゼオライト基を含む。ゼオライトCHA-フレームワークタイプのモレキュラーシーブの3つの合成形態は、参照によって組み込まれる、”Zeolite Molecular Sieves,”by D.W.Breck,published in 1973 by John Wiley&Sonsに記載されている。Breckによって報告されている3つの合成形態は、参照によって組み込まれる、J.Chem.Soc.,p.2822(1956),Barrer et alに記載されているZeolite K-G、英国特許第868,846(1961)号に記載されているZeolite D、および米国特許第3,030,181号に記載されているZeolite Rである。ゼオライトCHAフレームワークタイプの別の合成形態であるSSZ-13の合成は、参照によって組み込まれる米国特許第4,544,538号に記載されている。
【0066】
本明細書で使用される場合、「促進される」という用語は、モレキュラーシーブ中の固有の不純物とは対照的に、モレキュラーシーブ材料に意図的に添加される金属構成成分(「促進剤金属」)を指す。したがって、促進剤は、意図的に添加される促進剤を有しない触媒と比較して触媒の活性を向上させるために意図的に添加される。アンモニアの存在下での窒素酸化物の選択的接触還元を促進するために、1つ以上の実施形態では、好適な金属(複数可)が独立してモレキュラーシーブに交換される。
【0067】
いくつかの実施形態では、開示されるゼオライトは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、第IIIB族、第IVB族、第VB族、第VIB族、第VIIB族、第VIIIB族、第IB族、および第IIB族の遷移金属、第IIIA族の元素、第IVA族の元素、ランタニド、アクチニド、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される促進剤金属で促進される。いくつかの実施形態では、さらに、開示される触媒組成物の促進ゼオライトを調製するために使用され得る促進剤金属には、銅(Cu)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ランタン(La)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、バナジウム(V)、銀(Ag)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、プラセオジム(Pr)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、イットリウム(Y)、タングステン(W)、およびそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。1つ以上の実施形態では、酸化物として計算される促進剤金属含有量は、独立して、(促進剤金属を含む)対応する焼成ゼオライトの総重量に基づいて、約0.01重量%~約15重量%、約0.5重量%~約12重量%、または約1.0重量%~約10重量%の範囲であり、揮発性物質を含まない基準で報告される。いくつかの実施形態では、促進剤金属は、銅または鉄である。
【0068】
促進剤金属は、液相交換プロセスによってゼオライトに交換され得、ここで、可溶性金属イオンは、ゼオライトに関連するプロトンまたはアンモニウムまたはナトリウムイオンと交換する。交換はまた、固形状態プロセスによっても実行され得、ここで、促進剤金属酸化物または金属塩の固形粒子が、ゼオライト粉末と混合され、蒸気を含有しても、または含有しなくてもよいある特定の温度およびガス環境下で処理される交換プロセスはまた、スラリー調製中にインサイツプロセスを介しても達成され得、ここで、微細な金属酸化物粒子が、固形液体相互作用に好適な条件下でゼオライトスラリー中に懸濁される。
【0069】
一態様では、本発明は、水熱安定性が向上したCHAゼオライト材料を形成するための方法を提供する。水熱安定性は、一般に、フレームワークアルミナ含有量の減少(SARの増加)に伴って増加するが、後者は触媒活性促進剤金属(例えば、Cu)サイトの量も制限する。驚くべきことに、生成物CHAゼオライトの表面および内部構造欠陥を最小限に抑えることで、水熱安定性を大幅に向上する方法で、比較的低いSARを有するCHAゼオライトがFAUゼオライト出発材料を使用して調製され得ることを発見した。
【0070】
本発明の方法は、ゼオライト(典型的には、FAU結晶フレームワークを有するゼオライト)を含む少なくとも1つのアルミナ源と、少なくとも1つのシリカ源(アルカリ金属ケイ酸塩溶液および/またはコロイダルシリカを含む源など)と、少なくとも1つの有機構造指向剤と、任意に、反応混合物のアルカリ金属含有量を高めるための二次アルカリ金属カチオン源とを含む反応混合物を形成することを含む。反応混合物は、典型的には、アルカリ性水性条件下で提供される。ある特定の実施形態では、アルカリ金属対Siの合計モル比(M/Si、式中、Mはアルカリ金属のモル数である)および有機構造指向剤対Siのモル比(R/Si、式中、Rは有機構造指向剤のモル数である)は、水酸化物イオン対Siのモル比(OH/Si)よりも大きい。換言すれば、M/Si+R/Siの合計モル比は、OH/Siのモル比よりも大きい。バルク反応混合物の場合、SARの範囲は、典型的には、約25~約35である。
【0071】
ある特定の実施形態では、M/Si+R/Siの合計比は、約0.75超、または約0.80超、または約0.82超、または約0.85超であり、例示的な範囲は、約0.75~約0.95、または約0.80~約0.95、または約0.85~約0.95である。
【0072】
いくつかの実施形態では、OH/Siモル比は、約0.7未満、または約0.65未満、または約0.6未満、または約0.55未満であり、例示的な範囲は、約0.3~約0.7または約0.4~約0.65である。
【0073】
ある特定の実施形態では、個々のM/Siモル比は、少なくとも約0.4、または少なくとも約0.5、または少なくとも約0.6、または少なくとも約0.7、または少なくとも約0.8であり、例示的な範囲は、約0.4~約1.2、または約0.6~約1.0、または約0.7~約0.9である。アルカリ金属は、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、またはフランシウムであり得る。ある特定の実施形態では、アルカリ金属は、ナトリウムまたはカリウムである。
【0074】
ある特定の実施形態では、個々のR/Siモル比は、約0.12未満、または約0.11未満、または約0.10未満、または約0.08未満、または約0.06未満であり、例示的な範囲は、約0.04~約0.12、または約0.06~約0.10である。
【0075】
反応混合物はまた、水対Siのモル比(HO/Si)も特徴とし得、これは、典型的には、約12~約40の範囲である。
【0076】
反応混合物で使用されるアルカリ金属ケイ酸塩溶液は、上記の比率を達成するために必要なアルカリ金属含有量のすべてを提供し得る。しかし、反応混合物のアルカリ金属含有量は、アルカリ金属硫酸塩(例えば、NaSO)、アルカリ金属酢酸塩(例えば、酢酸ナトリウム)、およびアルカリ金属臭化物(例えば、臭化ナトリウム)を含む二次アルカリ金属カチオン源で任意に補足される。必要に応じて、ある特定の実施形態では、アルカリ金属ケイ酸塩溶液は、コロイドシリカ、ヒュームドシリカ、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、およびそれらの組み合わせなどの他のシリカ源で補足または置換され得る。
【0077】
アルミナ源として使用されるゼオライトは多様であり得るが、当技術分野で知られている様々なゼオライト材料、特に様々なケイ酸アルミノゼオライトが含まれるであろう。ある特定の実施形態では、FAU結晶構造を有するゼオライトが使用され、これは、12環構造によって形成され、約7.4Åのチャネルを有する。そのようなゼオライトの例には、フォージャサイト、ゼオライトX、ゼオライトY、LZ-210、およびSAPO-37が含まれる。そのようなゼオライトは、2次構築単位4、6、および6-6を有する、x、y、およびz平面で互いに垂直に走る細孔を有する三次元細孔構造を特徴とする。バルクFAUゼオライト材料のSAR範囲の例は、約3~約6であり、典型的には、単位セルサイズの範囲は、XRDによって決定される場合、24.35~24.65である。ゼオライトYは、本発明のある特定の実施形態に特に有用である。FAUゼオライトは、典型的には、Na形態などのアルカリ金属形態で使用される。特定の一実施形態では、FAUゼオライトは、ナトリウム形態であり、約2.5重量%~13重量%のNaOを含む。
【0078】
この合成のための典型的な有機構造指向剤は、水酸化アダマンチルトリメチルアンモニウムであるが、他のアミンおよび/または第四級アンモニウム塩が置換または添加され得る。例には、アルキル、アダマンチル、シクロヘキシル、芳香族、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される置換基を有する第四級アンモニウムカチオンが含まれる。有機構造指向剤のさらなる例には、シクロヘキシルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、および水酸化ジメチルピペリジニウムが含まれる。
【0079】
水酸化物イオンは、反応混合物に必要な唯一の必要な鉱化剤であり、上記の比率を達成するために必要な水酸化物の量は、アルカリ金属ケイ酸塩溶液のみから、かつより少ない程度に、有機構造指向剤源から提供され得る。必要に応じて、水酸化物イオン含有量は、NaOHまたはKOHなどの追加の水酸化物イオン源で補足され得る。
【0080】
反応混合物は、シリカ(SiO)およびアルミナ(Al)の重量パーセンテージとして表される固形物含有量という点を特徴とし得る。固形物含有量は多様であり得、例示的な範囲は、約5~約25%、または約8~約20%である。
【0081】
反応混合物を撹拌しながら圧力容器内で加熱して、所望のCHA結晶生成物を得る。典型的な反応温度は、対応する自生圧力で、約100℃~約160℃、例えば、約120℃~約160℃の範囲である。典型的な反応時間は、約30時間~約3日の間である。任意に、生成物は遠心分離され得る。有機添加剤は、固形生成物の取り扱いおよび単離を助けるために使用され得る。噴霧乾燥は、生成物の処理における任意のステップである。
【0082】
ある特定の実施形態では、MOR結晶フレームワークを有するゼオライトは、中間生成物としてまたは副生成物として形成される。MOR相は、有機テンプレートを含有し得る。
【0083】
固形ゼオライト生成物は、空気または窒素中で熱処理または焼成される。典型的な焼成温度は、1~10時間の間にわたって、約400℃~約850℃(例えば、約500℃~約700℃)である。最初の焼成に続いて、CHAゼオライト生成物は、主にアルカリ金属形態(例えば、Na形態)である。任意に、単一または複数のアンモニアイオン交換は、ゼオライトのNH 形態を得るために使用され得、これは、任意にさらに焼成されて、H形態を形成する。
【0084】
特定の実施形態では、CHAゼオライトは、促進剤金属でさらにイオン交換されて、金属促進ゼオライト触媒を形成する。例えば、銅または鉄は、イオン交換されて、Cu-チャバザイトまたはFe-チャバザイトを形成することができる。酢酸銅が使用される場合、銅イオン交換で使用される液体銅溶液の銅濃度は、特定の実施形態では、約0.01~約0.4モルの範囲、より具体的には約0.05~約0.3モルの範囲である。
【0085】
いくつかの実施形態では、結晶化から得られるCHAゼオライト結晶は、約80%~約99%の結晶または約90%~約97%の結晶であり得る。
【0086】
CHAゼオライト生成物は、良好な触媒性能を提供するゼオライト表面積(ZSA)と組み合わされた比較的低いメソ細孔表面積(MSA)を特徴とする。いくつかの実施形態では、CHAゼオライト生成物のMSAは、約25m/g未満または約10m/g未満(例えば、約5~約25m/g)である。CHAゼオライト生成物のZSAは、典型的には、少なくとも約400m/g、または少なくとも約450m/g、または少なくとも約500m/gであり、例示的なZSA範囲は、約400~約600m/gまたは約450~約600m/gである。細孔容積および表面積の特性は、窒素吸着(BET表面積法)によって決定され得る。メソ細孔およびゼオライト(微細孔)の表面積を、ISO9277法に従って、Micromeritics TriStar 3000シリーズ機器でN吸着ポロシメトリーによって決定した。Micromeritics SmartPrep脱気装置で、試料を合計6時間脱気した(乾燥窒素流の下300℃まで2時間上昇させ、その後、300℃で4時間保持した)。窒素BET表面積は、0.08~0.20の5つの分圧点を使用して決定される。ゼオライトおよびマトリックスの表面積は、同じ5つの分圧点を使用して決定され、HarkinsおよびJuraのtプロットを使用して計算される。20Å超の直径を有する細孔は、マトリックスの表面積に寄与すると見なされる。
【0087】
CHAゼオライト生成物はまた、50℃で40重量%のNHF溶液を用いてゼオライト材料のH形態を処理し、20分間350rpmで攪拌および超音波処理(35kHz、90W)した後、450℃で6時間乾燥および焼成した後の約60%未満(または約50%未満)などの、NHF溶液での処理後の比較的低い正規化されたZSA損失も特徴とし得る。正規化されたZSA損失の計算式は、実施例に提示される。
【0088】
拡散反射赤外フーリエ変換(DRIFT)分光法を使用して、3742cm-1(ピークX)を中心とするピークの積分強度を3609cm-1(ピークY)のピークの積分強度と比較することによって推定すると、CHAゼオライト生成物は、典型的には、架橋シラノール(ブロンステッドサイト)と比較して比較的少ない表面シラノールを示す。DRIFT測定を、MCT検出器を備えたThermo NicoletおよびZnSeウィンドウを備えたHarrick環境チャンバーで行った。乳鉢および乳棒で試料を細かい粉末に粉砕し、試料カップに充填した。試料粉末を、最初に40ml/分の流量でArを流しながら400℃で1時間脱水し、その後30℃に冷却した。試料のスペクトルが取得され、KBrが参照として使用される。ある特定の実施形態では、CHAゼオライト生成物の表面シラノール画分(X/Yピーク比)は、約0.04未満または約0.03未満である。
【0089】
本発明の方法から得られるCHAゼオライト生成物は、典型的には、最大約3μm、または約200nm~約3μm、または約500nm~約2μm、または約800nm~約1.5μmの範囲の平均結晶サイズを有する。平均結晶サイズは、例えば、顕微鏡法、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して測定され得る。
【0090】
CHAゼオライト生成物はまた、27Al NMRによって検出された総アルミニウムのパーセンテージとして決定される、H形態のフレームワーク外アルミニウム(EFAl)の量も特徴とし得る。ゼオライトのH形態は、Na形態をNHNOでアンモニウム交換した後、450℃(6時間)で焼成することによって取得される。ある特定の実施形態では、CHAゼオライト生成物は、約20%未満または約18%未満、例えば、約5%~約18%(または約5%~約15%)のEFAlを有する。すべてのNMR実験を、Agilent DD2 600MHz(14.1)分光計で行った。アルミニウム-27NMRスペクトルを、3.2mmの回転アセンブリを使用して、15~20kHzの回転速度で測定した。一次元NMRスペクトルを、非選択的なpi/12パルスを使用して取得した。典型的には、4-16kスキャンを、1-5sの緩和遅延で取得した。rf場を較正するために1.0M Al(NO溶液を使用し、参照として使用した。強度を出力するためにACD/Labs(登録商標)を使用してNMRスペクトルを処理し、Origin Pro(登録商標)を使用して適合させた。フレームワーク外アルミニウム(EFAl)のパーセンテージは、NMRスペクトルで20~-30ppmの周波数範囲の積分ピーク強度として定義される。測定の前に、NHNO溶液の飽和溶液を含むデシケーター内でゼオライトを測定前の48時間水和した。
【0091】
CHAゼオライト生成物はまた、SAR範囲も特徴とし得る。ある特定の実施形態では、CHAゼオライト生成物は、約10~約30、例えば、約14~約20のSARを有する。
【0092】
ある特定の実施形態では、本発明の金属促進CHAゼオライト材料は、様々な温度でのSCR活性を特徴とし得る。例えば、銅促進CHAゼオライト材料のある特定の実施形態は、熱エージング処理後に200℃で約58%以上、および600℃で約76%以上のNO転換を示し、ここで、熱エージング処理は、10体積%の蒸気と残りは空気の存在下で800℃で16時間行われる。NO転換率は、200℃から600℃への0.5℃/分の温度勾配で、疑似定常状態条件下で80,000h-1の1時間当たりの体積ベースの空間速度を有し、500ppmのNO、500ppmのNH3、10%のO2、5%のHO、残りはNのガス混合物を含む排気ガスのNO転換を指す。
【0093】
ある特定の実施形態では、本発明の金属促進CHAゼオライト材料は、熱エージング処理(前の段落で記載されるのと同じ処理)後のSCR活性を特徴とし得、ここで、本発明の金属促進CHAゼオライト材料のNO転換率は、200℃および600℃の排気ガス温度の一方またはそれらの両方で、同じ金属充填を有する比較金属促進CHAゼオライト材料よりも少なくとも約5%または少なくとも約10%高く、比較ゼオライトは、実施例で記載されるように比較プロセス(例えば、比較ゼオライトA~Cのいずれか)を使用して調製される。例えば、比較金属促進CHAゼオライト材料は、以下の基準:少なくとも約0.4のM/Siモル比、約0.12未満のR/Siモル比、約0.7未満のOH/Siモル比、または約0.75超のM/Si+R/Siの合計比のうちの1つ以上を満たさない反応混合物を使用して作製されたゼオライト材料であり得る。あるいは、比較金属促進CHAゼオライト材料は、以下の特性:フレームワーク外アルミニウム(EFAl)、SAR、表面シラノール画分(X/Yピーク比)、MSA、ZSA、またはゼオライト材料のH形態を40重量%のNHF溶液で処理した後の正規化されたZSA損失のうちの1つ以上において本発明のCHAゼオライト材料について本明細書で提供される基準を満たさないゼオライトとして定義され得る。前の段落と同様に、NO転換率は、200℃から600℃への0.5℃/分の温度勾配で、疑似定常状態条件下で80,000h-1の1時間当たりの体積ベースの空間速度を有し、500ppmのNO、500ppmのNH3、10%のO2、5%のHO、残りはNのガス混合物を含む排気ガスのNO転換を指す。
【0094】
基材
1つ以上の実施形態では、本発明の金属促進CHAゼオライト触媒組成物は、基材上に配置される。本明細書で使用される場合、「基材」という用語は、触媒材料が典型的にはウォッシュコートの形態で置かれるモノリス材料を指す。ウォッシュコートは、液体中に特定の固形物含有量(例えば30重量%~90重量%)の触媒を含有するスラリーを調製し、それから、これを基材にコーティングし、乾燥させてウォッシュコート層を提供することによって形成される。本発明の金属促進モレキュラーシーブを含有するウォッシュコートは、任意に、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、セリア、またはそれらの組み合わせから選択されるバインダーを含み得る。バインダーの充填量は、典型的には、ウォッシュコートの重量に基づいて、約0.1~10重量%である。
【0095】
1つ以上の実施形態では、基材は、フロースルーハニカムモノリスまたは微粒子フィルターのうちの1つ以上から選択され、触媒材料(複数可)は、ウォッシュコートとして基材に適用される。
【0096】
図1Aおよび1Bは、本明細書に記載されるような触媒組成物でコーティングされたフロースルー基材の形態の例示的な基材2を例示する。図1Aを参照すると、例示的な基材2は、円筒形状および円筒外表面4、上流端面6、および端面6と同一である対応する下流端面8を有する。基材2は、内部に形成された複数の微細で平行なガス流路10を有する。図1Bに見られるように、流路10は、壁12によって形成され、上流端面6から下流端面8まで担体2を通って延在し、通路10は、流体、例えば、ガス流が担体2を、そのガス流路10を介して長手方向に流れることを許容するように閉塞されていない。図1Bでより容易に見られるように、壁12は、そのように、ガス流路10が実質的に規則的な多角形形状を有するように寸法決めされ、構成されている。示されるように、触媒組成物は、必要に応じて、複数の別個の層内で適用され得る。例示される実施形態では、触媒組成物は、担体部材の壁12に接着された別個の底部層14、および底部層14の上にコーティングされた第2の別個の最上部層16の両方で構成される。本発明は、1つ以上(例えば、2、3、または4つ)の触媒層を用いて実施され得、図1Bに例示された2層の実施形態に限定されない。
【0097】
1つ以上の実施形態では、基材は、ハニカム構造を有するセラミックまたは金属である。通路が開放されて流体が流れて通過するように、基材の入口または出口面から延在する微細で平行なガス流路を有するタイプのモノリス基材などの任意の好適な基材が用いられ得る。流体の入口から流体の出口への本質的に直線の経路である通路は、通路を通って流れるガスが触媒材料と接触するように、触媒材料がウォッシュコートとしてコーティングされる壁によって画定される。モノリス基材の流路は、壁が薄いチャネルであり、これは、台形、長方形、正方形、正弦波、六角形、楕円形、円形など、任意の好適な断面形状およびサイズであり得る。そのような構造は、断面の平方インチあたり約60~約900以上のガス入口開口部(すなわち、セル)を含み得る。
【0098】
セラミック基材は、任意の好適な耐火性材料、例えば、コージライト、コージライト-α-アルミナ、窒化ケイ素、ジルコンムライト、スポジュメン、アルミナ-シリカ-マグネシア、ケイ酸ジルコン、シリマナイト、ケイ酸マグネシウム、ジルコン、ペタライト、α-アルミナ、ケイ酸アルミノなどから作製され得る。本発明の実施形態の触媒に有用な基材はまた、本質的に金属であり得、1つ以上の金属または金属合金で構成され得る。金属基材は、チャネル壁に開口部または「パンチアウト」を備えたものなど、任意の金属基材を含み得る。金属基材は、ペレット、波形シート、またはモノリス形態などの様々な形状で用いられ得る。金属基材の特定の例には、耐熱性の卑金属合金、特に鉄が実質的または主要な構成成分である合金が含まれる。そのような合金は、ニッケル、クロム、およびアルミニウムのうちの1つ以上を含有し得、これらの金属の合計は、有利には、いずれの場合も、基材の重量に基づいて、少なくとも約15重量%の合金、例えば、約10~25重量%のクロム、約1~8重量%のアルミニウム、および約0~20重量%のニッケルを含む。
【0099】
基材が微粒子フィルターである1つ以上の実施形態では、微粒子フィルターは、ガソリン微粒子フィルターまたは煤フィルターから選択され得る。本明細書で使用される場合、「微粒子フィルター」または「煤フィルター」という用語は、煤などの排気ガス流から微粒子状物質を除去するように設計されたフィルターを指す。微粒子フィルターには、ハニカムウォールフローフィルター、部分濾過フィルター、ワイヤーメッシュフィルター、巻き繊維フィルター、焼結金属フィルター、およびフォームフィルターが含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、微粒子フィルターは、触媒化された煤フィルター(CSF)である。触媒化されたCSFは、例えば、本発明の触媒組成物でコーティングされた基材を含む。
【0100】
1つ以上の実施形態の触媒材料を支持するのに有用なウォールフロー基材は、基材の長手方向軸に沿って延在する複数の微細な実質的に平行なガス流路を有する。典型的には、各通路は、基材本体の一端でブロックされ、代替の通路は、反対の端面でブロックされる。そのようなモノリス基材は、断面の平方インチあたり最大約900以上の流路(または「セル」)を含み得るが、はるかに少ない数が使用され得る。例えば、基材は、平方インチあたり約7~600、より一般的には約100~400のセル(「cpsi」)を有し得る。本発明の実施形態で使用される多孔性ウォールフローフィルターは、該要素の壁が白金族金属を上に有するかまたは中に含有するように触媒化され得る。触媒材料は、基材壁の入口側のみ、出口側のみ、入口側および出口側の両方に存在し得るか、または壁自体がすべてもしくは部分的に触媒材料で構成され得る。別の実施形態では、本発明は、基材の入口および/または出口の壁上の1つ以上の触媒層および1つ以上の触媒層の組み合わせの使用を含み得る。
【0101】
図2に見られるように、例示的な基材は、複数の通路52を有する。通路は、フィルター基材の内壁53によって管状に囲まれている。基材は、入口端部54および出口端部56を有する。通路は、入口端部で入口栓58によって、出口端部で出口栓60によって交互に塞がれて、入口54および出口56で対照の市松模様を形成する。ガス流62は、塞がされていないチャネル入口64を通って入り、出口栓60によって止められ、(多孔質である)チャネル壁53を通って出口側66に拡散する。ガスは、入口プラグ58に因り、壁の入口側に通って戻ることができない。本発明で使用される多孔性ウォールフローフィルターは、基材の壁が上に1つ以上の触媒材料を有するように触媒化され得る。
【0102】
排気ガス処理システム
本発明のさらなる態様は、排気ガス処理システムに関する。1つ以上の実施形態では、排気ガス処理システムは、エンジン、特にディーゼルエンジンまたは希薄燃焼ガソリンエンジンなどの希薄燃焼エンジン、およびエンジンの下流にある本発明の触媒組成物を含む。
【0103】
1つの例示的な排出物処理システムは、排出物処理システム20の概略図を図示する図3に例示される。示されるように、排出物処理システムは、希薄燃焼ガソリンエンジンなどのエンジン22の下流に直列にある複数の触媒構成要素を含み得る。触媒構成成分のうちの少なくとも1つは、本明細書に記載されるような本発明のSCR触媒であろう。本発明の触媒組成物は、多数の追加の触媒材料と組み合わせることができ、追加の触媒材料と比較して様々な位置に置くことができる。図3は、直列の5つの触媒構成要素24、26、28、30、32を例示するが、触媒構成要素の総数は変動する可能性があり、5つの構成要素は単なる一例である。
【0104】
限定することなく、表1は、1つ以上の実施形態の様々な排気ガス処理システム構成を提示する。各触媒は、エンジンが触媒Aの上流にあり、それが触媒Bの上流にあり、それが触媒Cの上流にあり、それが触媒Dの上流にあり、それが触媒Eの上流にある(存在する場合)ように排気導管を介して次の触媒に接続されることに留意されたい。表内の構成要素A~Eに対する参照は、図3の同じ記号で相互参照され得る。
【0105】
表1に記載されるDOC触媒は、エンジンの排気ガス中の一酸化炭素(CO)および炭化水素(HC)汚染物質を低減するために従来から使用されている任意の触媒であり得、典型的には、耐熱金属酸化物支持体(例えば、アルミナ)に担持された白金族金属(PGM)を含むであろう。
【0106】
表1に記載されるLNT触媒は、NOトラップとして従来から使用されている任意の触媒であり得、典型的には、卑金属酸化物(BaO、MgO、CeOなど)および触媒によるNOの酸化および還元のための白金族金属(例えば、PtおよびRh)を含むNO吸着剤組成物を含む。
【0107】
表中のDPFへの言及は、ディーゼル微粒子フィルターを指し、これは、典型的には、排気ガス中の微粒子物質を濾過するように適合されたウォールフローフィルターで構成される。
【0108】
表中のSCRへの言及は、本発明のSCR触媒組成物を含み得るSCR触媒を指す。SCRoF(またはフィルター上のSCR)への言及は、本発明のSCR触媒組成物を含み得る微粒子または煤フィルター(例えば、ウォールフローフィルター)を指す。SCRおよびSCRoFの両方が存在する場合、1つもしくは両方が本発明のSCR触媒を含み得るか、または触媒の1つが従来のSCR触媒を含み得る。排出物処理システムは、SCR触媒の上流に配置され、アンモニアまたはアンモニア前駆体(例えば、尿素)を排気流に注入するように適合された注入器を任意に含み得る。
【0109】
表中のAMOxへの言及は、本発明の1つ以上の実施形態の触媒の下流に提供されて、漏れた一切のアンモニアを排気ガス処理システムから除去することができるアンモニア酸化触媒を指す。特定の実施形態では、AMOx触媒は、PGM構成成分を含み得る。1つ以上の実施形態では、AMOx触媒は、PGMを有するボトムコートおよびSCR機能を有するトップコートを含み得る。
【0110】
当業者によって認識されるように、表1に列挙された構成では、構成要素A、B、C、D、またはEのうちの任意の1つ以上は、ウォールフローフィルターなどの微粒子フィルター上に、またはフロースルーハニカム基材上に配置され得る。1つ以上の実施形態では、エンジン排気システムは、エンジンの近くの位置(直結位置、CC)に取り付けられた1つ以上の触媒組成物を含み、追加の触媒組成物は車体の下の位置(床下位置、UF)にある。
【0111】
【表1】
【0112】
エンジン排気の処理方法
本発明の別の態様は、エンジン、特に希薄燃焼エンジンの排気ガス流を処理する方法に関する。本方法は、本発明の1つ以上の実施形態による触媒をエンジンの下流に置くこと、およびエンジンの排気ガス流を触媒の上に流すことを含み得る。1つ以上の実施形態では、本方法は、上記のように、エンジンの下流に追加の触媒構成要素を置くことをさらに含む。
【0113】
ここで、本発明を以下の実施例を参照して記載する。本発明のいくつかの例示的な実施形態を記載する前に、本発明は、以下の説明に記載される構成またはプロセスステップの詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、様々な方法で実施または実行することができる。
【0114】
実験
一連のCHAゼオライトを本発明のプロセスおよび比較プロセスを使用して合成した。比較(A~C)および本発明(D~F)のゼオライト材料をもたらすゲル組成および結晶化条件を表2に概説し、得られる生成物の特性を表3に提示する。水酸化トリメチルアダマンチルアンモニウム(TMAdaOH)をCHAの有機構造指向剤(OSDA)として使用した。
【0115】
比較A~Cのゼオライトの結晶化のために、NaOHを鉱化剤およびゲル中のNaの唯一の供給源として使用し、アルミニウムイソプロポキシドおよびコロイダルシリカ(40重量%のSiO)は、それぞれSiおよびAl源として機能した。
【0116】
本発明のD~Fのゼオライトの結晶化のために、ケイ酸ナトリウム溶液(SiO/NaO=2.6、37%の固形物含有量)およびNa-FAU(SiO/Al=5.1)を、それぞれSiおよびAl源として使用した。ゲルのNa含有量をNaSOで補足して、所望のNa/Si比を達成した。さらに、HSOを用いて過剰OHを中和し、所望のOH/Si比を取得した。ケイ酸ナトリウム溶液のためにNaとOHとの間の1:1の比を仮定して、OH/SiO比を計算した。
【0117】
本発明の実施例は、比較例よりも著しく高いNa/SiおよびOH/Si比を有することに留意されたい。すべての場合において、2Lの攪拌オートクレーブ内で自生圧力で結晶化を行った。
【0118】
生成物を濾過によって単離し、乾燥させ、焼成(540℃、6時間)することによってNa形態が得られ、これは、XRDおよびN-物理吸着を特徴とした。
【0119】
焼成後、NaO含有量が<500ppmに達するまで、単一または複数のNH 交換が行われた。NH 形態の焼成(450℃、6時間)によってH形態が得られ、それを固形状態の27Al-NMR、FTIR測定、およびNHF処理(詳細は下記)に供した。銅の充填(その場での固形状態での交換による)も、ゼオライトのH形態に対して行われた。
【0120】
【表2】
【0121】
すべての結晶化によって、>90%の一次相の結晶化度およびそれに対応する高い微細孔表面積(>500m/g)を有する生成物が得られた。比較例A~Cの場合、>90%のシリカ収率(完全なアルミニウム転換に基づく)に従って、ゲルシリカ対アルミナ比(SAR)は、生成物SARと類似している。本発明の実施例では、シリカの収率は、35~54%で変動し、ゲルと生成物SARとの間の大きな違いと一致する。さらに、実施例D~Fの生成物SARは、ゲルのOH/Si比が減少すると増加する。
【0122】
組成の違いに加えて、比較例および本発明の実施例のセットも重要な構造上の違いを示す。まず、生成物A~CのMSAは34~50m/gの範囲であるが、生成物D~Fは<18m/gのメソ細孔表面積(MSA)を示す。さらに、生成物D~FのH形態は、類似のSARを有する対応する生成物A~Cよりも30~50%少ないフレームワーク外アルミニウムを含有する。脱アルミ化は、通常、調製したままの状態およびNH 形態の焼成中に行われ、これらの高温処理中にフレームワークAlを保持する傾向は、水熱安定性にも関連している可能性がある。
【0123】
【表3】
【0124】
試料AおよびDのDRIFTスペクトルを図4に示し、スペクトルは3609cm-1のピークにスケーリングされている。スペクトルの絶対強度は充填密度および粒子サイズに依存するが、架橋シラノール(ブロンステッドサイト)と比較した表面シラノールの相対的な存在量は、3742cm-1(ピークX)でのピークの強度を3609cm-1(ピークY)での強度と比較することによって推定することができる。生成物AおよびDは非常に類似したSARを有するため、DのX/Yピーク比が低いほど、表面シラノールの密度は低くなる。同様に、本発明の実施例のX/Yピーク比は、類似のSARを有する比較例から観察されたものより実質的により低い。
【0125】
相互成長した結晶子と他の欠陥の多い領域との間の界面である粒界のゼオライト材料を選択的にエッチングするNHF処理は、もともとメソ多孔性を付与する手段としてQin et al.[Qin et.al,Angew.Chem.Int.Ed.2016 55,19049]によって開発された。本明細書では、この処理は、エッチングの相対速度を測定することによって、欠陥密度の定量化の手段として用いられる。この処理では、10gのゼオライト(H形態)を40重量%のNHF溶液に50℃で20分間攪拌および超音波処理しながら分散させる。得られた生成物を濾過によって単離し、過剰の水で洗浄する。乾燥および焼成(450℃、6時間)後、生成物はN物理吸着およびXRDを特徴とした。ゼオライト材料の相対的消失速度は、以下で定義されるように、微孔性(ゼオライト表面積またはZSA)の質量正規化損失に関連する可能性があり、ここで、ZSAは、ゼオライト表面積であり、Mは質量を表す。この量をNHF処理前後の選択した材料のN物理吸着特性とともに、表4に提示する。
【0126】
【数1】
【0127】
【表4】
【0128】
本発明の材料(F)は、比較材料(BおよびC)と比較して、著しくより低い正規化されたZSA損失を示す。さらに、各材料セットでは、SARの減少に伴ってエッチング速度が増加する。結果は、欠陥密度はSARに依存するが一般に比較材料の方が高いことを示した。したがって、本発明のゼオライト材料は、ゼオライトの表面および内部の構造的欠陥を最小限に抑えることが、水熱安定性の実質的な向上につながることを実証する。
【0129】
前述の材料からSCR触媒を調製するために、H形態ゼオライトにCuイオンを導入して、5.7~6.3重量%のCuO充填を達成した。Cu-CHA、酸化ジルコニウム、および擬ベーマイト(PB-250)バインダーを含有する触媒コーティングを、400cpsiのセル密度および6ミルの壁厚を有する多孔性セラミックモノリスにウォッシュコートプロセスで配置した。コーティングしたモノリスを110℃で乾燥させ、約550℃で1時間焼成する。コーティングプロセスは、2.1g/インチの触媒充填を提供し、その5%は酸化ジルコニウムであり、5%は酸化アルミニウムバインダーである。10%のHO/空気の存在下で、800℃で16時間、コーティングしたモノリスを水熱エージングした。NO転換(図5)を、200℃から600℃への0.5℃/分の温度勾配で、500ppmのNO、500ppmのNH3、10%のO2、5%のHO、残りはNのガス混合物中で、疑似定常状態条件下で80,000h-1のガス1時間当たりの体積ベースの空間速度で実験室用反応器中で測定した。類似のSARの材料の場合、本発明の材料は、低温(200℃)NO転換で進歩した性能を有する。この利点はSAR11で最大であり、(CHAベースの触媒の場合)SARの増加に伴って減少する傾向がある。
【0130】
SAR 11および6.3%のCuOでは、本発明の触媒Dは比較触媒Aより53%(絶対)優位を示す。SAR14~16範囲では、触媒Eは材料Bより8~30%(CuO含有量に基づく)優位を示す。最後に、SAR範囲の上部(18~19)では、触媒Fは触媒Cより12%有意を示す。上の特性研究の結果と合わせて、ゼオライトの欠陥密度と得られる触媒の水熱安定性との間の関係が観察され得る。結論として、合成経路の違いは、欠陥密度を最小限に抑えて、向上した水熱安定性をもたらすことに使用され得る。
【0131】
固形物含有量およびシリカ源を変動させたが、他のすべての実験の詳細を元の本発明の触媒Fの実施例と同じにして、本発明の触媒Fの実験手順を繰り返した。以下の表5は、元の本発明の触媒Fを、異なる固形物含有量および/またはシリカ源を有する同じ一般的な組成の2つの実施例と比較する。表に示すように、シリカ源および固形物含有量を変動させても、ZSAおよびMSAの所望の範囲を有するゼオライトの形成は妨げられなかった。他のゲルの特性および結晶化条件は、表2のエントリFのとおりである。
【0132】
【表5】
【0133】
本明細書に記載される組成物、方法、および用途に対する好適な修正および適合が、任意の実施形態またはそれらの態様の範囲から逸脱することなく行われ得ることは、関連技術の当業者には容易に明らかであろう。提供される組成物および方法は例示的なものであり、特許請求される実施形態の範囲を限定することを意図するものではない。本明細書に開示される様々な実施形態、態様、および選択肢のすべては、すべての変更で組み合わされ得る。本明細書に記載される組成物、配合物、方法、およびプロセスの範囲には、本明細書の実施形態、態様、選択肢、例、および選好のすべての実際のまたは潜在的な組み合わせが含まれる。本明細書で引用されたすべての特許および刊行物は、組み込まれた他の特定の記述が具体的に提供されない限り、記載されるように、それらの特定の教示について参照によって本明細書に組み込まれる。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-01-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CHA結晶フレームワークを有するゼオライトを合成する方法であって、
i)ゼオライトを含む少なくとも1つのアルミナ源と、少なくとも1つのシリカ源と、少なくとも1つの有機構造指向剤とを含む反応混合物を形成することであって、前記反応混合物が、OH/Siモル比よりも高いM/Si+R/Siの合計モル比を有し、式中、Mがアルカリ金属のモル数であり、Rが有機構造指向剤のモル数である、形成することと、
ii)前記反応混合物を結晶化して、前記CHA結晶フレームワークを有する生成物ゼオライトを形成することであって、前記生成物ゼオライトが、約25m/g未満のメソ細孔表面積(MSA)を有する、形成することと、を含み、且つ
前記CHA結晶フレームワークを有する前記生成物ゼオライトを促進剤金属でイオン交換して、イオン交換ゼオライト触媒を形成することを含む、方法。
【請求項2】
前記アルミナ源の前記ゼオライトが、FAU結晶フレームワークを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
FAU結晶フレームワークを有する前記ゼオライトが、ゼオライトYである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ゼオライトYがNa+形態であり、約3~約6の範囲のシリカ対アルミナ比(SAR)を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
Mがナトリウムであり、前記アルカリ金属ケイ酸塩溶液がケイ酸ナトリウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記反応混合物が、以下:
a.少なくとも約0.4のM/Siモル比、
b.約0.12未満のR/Siモル比、
c.約0.7未満のOH/Siモル比、および
d.約0.75超のM/Si+R/Siの合計比のうちの1つ以上を特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記有機構造指向剤が、アルキル、芳香族、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される置換基を有する第四級アンモニウム塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記有機構造指向剤が、アダマンチル、シクロヘキシル、またはベンジル置換基を有する第四級アンモニウム塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記結晶化ステップが、約100℃~約160℃の温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記CHA結晶フレームワークを有する前記生成物ゼオライトが、以下:
a.H形態の27Al NMRによって決定される場合、約20%未満のフレームワーク外アルミニウム(EFAl)、
b.約10~約30の範囲のSAR、
c.拡散反射赤外フーリエ変換(DRIFT)分光法によって決定される場合、約0.04未満の表面シラノール画分(X/Yピーク比)(式中、Xが3742CM-1におけるピークであり、Yが3609CM-1におけるピークである)、
D.約10m/g未満のMSA、および
e.少なくとも約400m/gのゼオライト表面積(ZSA)のうちの1つ以上を特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記CHA結晶フレームワークを有する前記生成物ゼオライトを焼成して、H形態またはNa形態の焼成ゼオライトを形成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記促進剤金属が、FeまたはCuである、請求項に記載の方法。
【請求項13】
前記シリカ源が、アルカリ金属ケイ酸塩溶液を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記反応混合物を結晶化することが、高温および自生圧力で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記反応混合物の固形物含有量が、約5~約25重量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
CHA結晶フレームワークを有するゼオライト材料であって、前記ゼオライト材料が、約25m/g未満のメソ細孔表面積(MSA)および少なくとも約400m/gのゼオライト表面積(ZSA)を有し、さらに、前記ゼオライト材料が、以下:
a.27Al NMRによって決定される場合、約20%未満のフレームワーク外アルミニウム(EFAl)、
b.拡散反射赤外フーリエ変換(DRIFT)分光法によって決定される場合、約0.04未満の表面シラノール画分(X/Yピーク比)(式中、Xが3742CM-1におけるピークであり、Yが3609CM-1におけるピークである)、および
C.前記ゼオライト材料のH形態を40重量%のNHF溶液を用いて処理した後の約60%未満の正規化されたZSA損失のうちの1つ以上を特徴とする、ゼオライト材料。
【請求項17】
約10~約30の範囲のSARを有する、請求項16に記載のゼオライト材料。
【請求項18】
約16~約22の範囲のSARを有する、請求項16に記載のゼオライト材料。
【請求項19】
約18~約20の範囲のSARを有する、請求項16に記載のゼオライト材料。
【請求項20】
形態の27Al NMRによって決定される場合、15%未満のフレームワーク外アルミニウム(EFAl)を有する、請求項16に記載のゼオライト材料。
【請求項21】
約10m/g未満のMSAを有する、請求項16に記載のゼオライト材料。
【請求項22】
窒素酸化物(NO)の低減に有効な選択的接触還元(SCR)触媒であって、前記SCR触媒が、鉄、銅、およびそれらの組み合わせから選択された金属で促進される請求項16に記載のゼオライト材料を含む、SCR触媒。
【請求項23】
前記促進剤金属が、前記SCR触媒の総重量に基づいて、約1.0重量%~約10重量%の量で存在する、請求項22に記載のSCR触媒。
【請求項24】
前記SCR触媒が、熱エージング処理後に、排気ガスにおいて200℃で約58%以上、および600℃で約76%以上のNO転換を示し、前記熱エージング処理が、10体積%の蒸気と残りは空気の存在下で800℃で16時間行われ、前記排気ガスが、疑似定常状態条件下で80,000h-1の1時間当たりの体積ベースの空間速度を有し、500ppmのNO、500ppmのNH3、10%のO2、5%のHO、残りはNのガス混合物を含む、請求項22に記載のSCR触媒。
【請求項25】
前記SCR触媒が、熱エージング処理後に、200℃および600℃の排気ガス温度の一方またはそれらの両方で、排気ガス中において、同じ金属充填を有する比較金属促進CHAゼオライト材料よりも少なくとも約5%高いNO転換を示し、前記比較金属促進CHAゼオライト材料が、以下の基準:少なくとも約0.4のM/Siモル比、約0.12未満のR/Siモル比、約0.7未満のOH/Siモル比、および約0.75超のM/Si+R/Siの合計比のうちの1つ以上を満たさない反応混合物を使用して調製されたゼオライト材料として定義され、前記熱エージング処理が、10体積%の蒸気と残りは空気の存在下で800℃で16時間行われ、前記排気ガスが、疑似定常状態条件下で80,000h-1の1時間当たりの体積ベースの空間速度を有し、500ppmのNO、500ppmのNH3、10%のO2、5%のHO、残りはNのガス混合物を含む、請求項22に記載のSCR触媒。
【請求項26】
前記SCR触媒が、熱エージング処理後に200℃および600℃の排気ガス温度の一方またはそれらの両方で、排気ガス中において、同じ金属充填を有する比較金属促進CHAゼオライト材料よりも少なくとも約5%高いNO転換を示し、前記比較金属促進CHAゼオライト材料が、以下の基準:H形態の27Al NMRによって決定される場合、約20%未満のフレームワーク外アルミニウム(EFAl)、約10~約30の範囲のSAR、拡散反射赤外フーリエ変換(DRIFT)分光法によって決定される場合、約0.04未満の表面シラノール画分(X/Yピーク比)(式中、Xが3742CM-1におけるピークであり、Yが3609CM-1におけるピークである)、約25m/g未満のMSA、少なくとも約400m/gのゼオライト表面積(ZSA)、または前記ゼオライト材料のH形態を40重量%のNHF溶液を用いて処理した後の約60%未満の正規化されたZSA損失のうちの1つ以上を満たさないゼオライト材料として定義され、前記熱エージング処理が、10体積%の蒸気と残りは空気の存在下で800℃で16時間行われ、前記排気ガスが、疑似定常状態条件下で80,000h-1の1時間当たりの体積ベースの空間速度を有し、500ppmのNO、500ppmのNH3、10%のO2、5%のHO、残りはNのガス混合物を含む、請求項22に記載のSCR触媒。
【請求項27】
希薄燃焼エンジンの排気ガスからの窒素酸化物(NO)を低減するのに有効な触媒物品であって、前記触媒物品が、請求項22に記載の選択的接触還元(SCR)触媒が上に配置された基材担体を含む、触媒物品。
【請求項28】
前記基材担体が、金属またはセラミックから任意に構成されたハニカム基材である、請求項27に記載の触媒物品。
【請求項29】
前記ハニカム基材担体が、フロースルー基材またはウォールフローフィルターである、請求項27に記載の触媒物品。
【請求項30】
排気ガス処理システムであって、
排気ガス流を生成する希薄燃焼エンジンと、
前記希薄燃焼エンジンの下流に配置され、前記排気ガス流と流体連通している請求項27に記載の触媒物品と、を備える、排気ガス処理システム。
【請求項31】
以下:
a.前記触媒物品の上流に配置されたディーゼル酸化触媒(DOC)、
b.前記触媒物品の上流に配置された煤フィルター、および
c.前記触媒物品の下流に配置されたアンモニア酸化触媒(AMOX)のうちの1つ以上をさらに含む、請求項30に記載の排気ガス処理システム。
【請求項32】
希薄燃焼エンジンからの排気ガス流を処理する方法であって、
前記排気ガス流中の窒素酸化物(NOx)が低減されるように、前記排気ガス流を請求項27に記載の触媒物品と接触させることを含む、方法。
【外国語明細書】