(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038021
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】機能的ミエリン産生を増進させるための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 5/10 20060101AFI20240312BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240312BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20240312BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240312BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240312BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240312BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20240312BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240312BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240312BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20240312BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240312BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20240312BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20240312BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240312BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240312BHJP
A61K 35/761 20150101ALI20240312BHJP
A61K 35/30 20150101ALI20240312BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20240312BHJP
C12N 15/864 20060101ALN20240312BHJP
C12N 5/079 20100101ALN20240312BHJP
C12N 5/0797 20100101ALN20240312BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20240312BHJP
A61K 31/7088 20060101ALN20240312BHJP
A61K 31/7105 20060101ALN20240312BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
A61P25/00
A61P25/02
A61P13/12
A61P27/02
A61P21/00
A61P25/14
A61P25/28
A61P25/16
A61P19/00
A61P9/10
A61P3/02 109
A61P3/00
A61K48/00
A61K35/76
A61K35/761
A61K35/30
C12N15/09 110
C12N15/864 100Z
C12N5/079
C12N5/0797
C12N15/113 Z
A61K31/7088
A61K31/7105
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023215997
(22)【出願日】2023-12-21
(62)【分割の表示】P 2019530406の分割
【原出願日】2017-12-06
(31)【優先権主張番号】62/542,660
(32)【優先日】2017-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/431,787
(32)【優先日】2016-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500429332
【氏名又は名称】ケース ウェスタン リザーブ ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】CASE WESTERN RESERVE UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(72)【発明者】
【氏名】テサー,ポール
(72)【発明者】
【氏名】エリット,マシュー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】機能的ミエリン産生を増進させる細胞を生成する方法を提供する。
【解決手段】方法は、(i)ミエリン産生を阻害する能力が減少するように、内因性PLP1遺伝子が修飾されている;(ii)PLP1発現を促進する能力が減少するように、内因性PLP1遺伝子制御要素が修飾されている;(iii)PLP1発現を阻害する能力が増加するように、内因性PLP1遺伝子制御要素が修飾されている;または(iv)PLP1発現レベルが減少するように、内因性PLP1遺伝子産物、またはPLP1発現を促進するPLP1制御要素遺伝子産物が修飾されている;ように細胞を遺伝子修飾する工程を含み、ここで、該細胞が機能的ミエリンを産生する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能的ミエリン産生を増進させる細胞を生成する方法であって:
(i)ミエリン産生を阻害する能力が減少するように、内因性PLP1遺伝子が修飾されている;
(ii)PLP1発現を促進する能力が減少するように、内因性PLP1遺伝子制御要素が修飾されている;
(iii)PLP1発現を阻害する能力が増加するように、内因性PLP1遺伝子制御要素が修飾されている、および/または
(iv)PLP1発現レベルが減少するように、内因性PLP1遺伝子産物、またはPLP1発現を促進するPLP1制御要素遺伝子産物が修飾されている;
ように細胞を遺伝子修飾する工程を含み、
ここで、該細胞が機能的ミエリンを産生するか、あるいは機能的ミエリンを産生する細胞を産生するかまたはこうした細胞に分化する前駆細胞である、
前記方法。
【請求項2】
内因性PLP1遺伝子の前記修飾が、内因性PLP1遺伝子の発現を減少させるかまたはPLP1転写物のナンセンス仲介性崩壊を引き起こす突然変異の導入を含む、請求項1の方法。
【請求項3】
内因性PLP1遺伝子または内因性PLP1遺伝子制御要素が点突然変異を含み、そして内因性PLP1遺伝子または内因性PLP1遺伝子制御要素の前記修飾が、点突然変異の野生型配列への修正を含む、請求項1の方法。
【請求項4】
内因性PLP1遺伝子制御要素が、PLP1遺伝子制御要素の活性を改変するインデルの導入を含む、請求項1~3のいずれか一項の方法。
【請求項5】
内因性PLP1遺伝子制御要素がPLP1エンハンサーまたはプロモーターである、請求項4の方法。
【請求項6】
内因性PLP1遺伝子または内因性PLP1遺伝子制御要素の修飾が、PLP1におけるヌクレオチド挿入または欠失(インデル)を含む遺伝子修飾の導入を含む、請求項1~5のいずれか一項の方法。
【請求項7】
内因性PLP1遺伝子の修飾が、PLP1の大きなエクソン性欠失を含む遺伝子修飾の導入を含む、請求項1~6のいずれか一項の方法。
【請求項8】
内因性PLP1遺伝子が、有害な疾患誘発性突然変異体PLP1遺伝子である、請求項1~7のいずれか一項の方法。
【請求項9】
ヌクレアーゼを用いて細胞を遺伝子修飾する、請求項1~8のいずれか一項の方法。
【請求項10】
ヌクレアーゼがジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALEエフェクター(TALEN)、CRISPR/Cas系またはNgAgo系を含む、請求項9の方法。
【請求項11】
内因性PLP1遺伝子が、エクソン1またはエクソン3で、CRISPR/Cas系ヌクレアーゼで修飾されている、請求項9の方法。
【請求項12】
内因性PLP1遺伝子が、エクソン3の5’端で、CRISPR/Cas系ヌクレアーゼで修飾されている、請求項11の方法。
【請求項13】
PLP1遺伝子産物の修飾が、細胞に遺伝子サイレンシング剤を送達する工程を含む、請求項1~12のいずれか一項の方法。
【請求項14】
遺伝子サイレンシング剤が、RNAi構築物(例えばsiRNA、shRNA、またはmiRNA)を含む、請求項13の方法。
【請求項15】
遺伝子サイレンシング剤が、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)を含む、請求項13の方法。
【請求項16】
遺伝子修飾された細胞が、(例えば細胞におけるPLP1関連毒性の減少によって)増進されたミエリン産生を示す、請求項1~15のいずれか一項の方法。
【請求項17】
内因性PLP1遺伝子またはPLP1遺伝子制御要素の修飾が、細胞におけるPLP1関連細胞ストレスを軽減する、請求項1~16のいずれか一項の方法。
【請求項18】
ヌクレアーゼまたは遺伝子サイレンシング剤を含む送達ビヒクルと細胞を接触させる工程を含む、請求項9~15のいずれか一項の方法。
【請求項19】
送達ビヒクルがAAVベクター、アデノウイルスベクター、またはレンチウイルスベクターである、請求項18の方法。
【請求項20】
(a)機能的II型CRISPR-Cas9(例えばCas9またはCas9オルソログcDNA)をコードする核酸を含む第一のAAVベクター、および内因性PLP1遺伝子または内因性PLP1遺伝子制御要素におけるターゲット部位に特異的なガイドRNA(sgRNA)配列を含む第二のAAVベクター、および場合によって、内因性PLP1遺伝子または内因性PLP1遺伝子制御要素の欠陥または突然変異部分の修正または置換のためのドナー核酸配列を含む第三のAAVベクターと、細胞を接触させるか;あるいは
(b)機能的II型CRISPR-Cas9(例えばCas9またはCas9オルソログcDNA)、およびシスにコードされ、そして内因性PLP1遺伝子または内因性PLP1遺伝子制御要素におけるターゲット部位に特異的なガイドRNA(sgRNA)をコードする核酸を含む第一のAAVベクター、ならびに場合によって、内因性PLP1遺伝子または内因性PLP1遺伝子制御要素の欠陥または突然変異部分の修正または置換のためのドナー核酸配列を含む第三のAAVベクターと、細胞を接触させる
工程を含む、請求項19の方法。
【請求項21】
第一のAAVベクターが、以下の要素:
i)5’AAV末端逆位配列(ITR);
ii)プロモーターおよび場合によるエンハンサー;
iii)機能的II型CRISPR-Cas9をコードするCas9 cDNA;
iv)ポリアデニル化シグナル;および、
v)3’AAV末端逆位配列(ITR);
の1つまたはそれより多くを、場合によって5’→3’方向にさらに含む、請求項20の方法。
【請求項22】
第二または第三のAAVベクター(存在する場合)が、以下の要素:
i)5’AAV ITR;
ii)プロモーターおよび場合によるエンハンサー;
iii)ガイドRNA配列;
iv)スタッファーまたはフィラー核酸配列;および、
v)3’AAV ITR;
の1つまたはそれより多くを、場合によって5’→3’方向にさらに含む、請求項20および21の方法。
【請求項23】
第三のAAVベクター(存在する場合)が、以下の要素:
i)5’AAV ITR;
ii)5’スライス(slice)アクセプター部位;
iii)ドナー核酸配列;
iv)ポリアデニル化シグナル;および、
v)AAV 3’ ITR;
の1つまたはそれより多くを、場合によって5’→3’方向にさらに含む、請求項20~22のいずれかの方法。
【請求項24】
第一、第二、および/または第三のAAVベクターが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、あるいはその混合物、変異体または誘導体の任意の血清型より選択される、VP1、VP2、またはVP3カプシドを含む、請求項19~23のいずれかの方法。
【請求項25】
5’ AAV ITRが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、またはそのキメラもしくは融合体のいずれか1つより選択されるか、あるいは3’ AAV ITRが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、またはそのキメラもしくは融合体のいずれか1つより選択される、請求項21~24のいずれかの方法。
【請求項26】
細胞をin vitro、in vivo、またはex vivoで接触させる、請求項18~25のいずれか一項の方法。
【請求項27】
請求項20~26のいずれか一項の第一および第二のAAVベクター(および場合によって第三のAAVベクター)を含む、組成物。
【請求項28】
請求項27の組成物を含む、医薬組成物。
【請求項29】
請求項1~26のいずれか一項の方法によって生成される遺伝子修飾細胞。
【請求項30】
細胞が、神経幹細胞(NSC)、オリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)、またはオリゴデンドロサイト細胞より選択される、請求項29の細胞。
【請求項31】
細胞がNSCまたはOPCである、請求項30の細胞。
【請求項32】
請求項29~31のいずれか一項の細胞に由来する、遺伝子修飾細胞。
【請求項33】
請求項29~32のいずれか一項の遺伝子修飾細胞を含む、組成物。
【請求項34】
被験体において、ミエリン関連障害を治療する方法であって、請求項1~26のいずれか一項の方法によって生成された細胞を被験体に投与し、それによって被験体において機能的ミエリンを産生する工程を含み、ここで、ミエリン関連障害が、好ましくは異常なPLP1遺伝子活性および/または発現によって特徴付けられる、前記方法。
【請求項35】
被験体において、ミエリン関連障害を治療する方法であって、請求項1~26のいずれ
か一項の方法にしたがって被験体の細胞を遺伝子修飾し、それによって被験体において機能的ミエリンを産生する工程を含み、ここで、ミエリン関連障害が、好ましくは異常なPLP1遺伝子活性および/または発現によって特徴付けられる、前記方法。
【請求項36】
ミエリン関連障害が、多発性硬化症(MS)、視神経脊髄炎(NMO)、横断性脊髄炎、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、ギラン・バレー症候群、進行性多巣性白質脳症(PML)、脳脊髄炎(EPL)、橋中央ミエリン溶解(CPM)、副腎白質ジストロフィー、アレクサンダー病、ペリツェウス・メルツバッハ病(PMD)、ウォラー変性、視神経炎、筋委縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病、アルツハイマー病、パーキンソン病、脊髄傷害、外傷性脳傷害、放射線照射後の傷害、化学療法の神経学的合併症、脳卒中、急性虚血性視神経症、ビタミンE欠乏、孤立性ビタミンE欠乏症候群、AR、バッセン・コーンツヴァイク症候群、マルキアファーヴァ・ビニャミ症候群、異染性白質ジストロフィー、三叉神経痛、急性散在性脳炎、マリー・シャルコー・ツース病およびベル麻痺より選択される、請求項34または35の方法。
【請求項37】
ミエリン関連障害が白質ジストロフィーを含む、請求項34または35の方法。
【請求項38】
ミエリン関連障害がペリツェウス・メルツバッハ病(PMD)を含む、請求項34または35の方法。
【請求項39】
被験体の寿命を、ミエリン関連障害を持たない対照被験体の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または約100%まで回復させる、請求項38の方法。
【請求項40】
前記ミエリン関連障害を伴う被験体の少なくとも1つの症状(単数または複数)を回復させる、請求項38または39の方法。
【請求項41】
被験体の機能を、ミエリン関連障害を持たない対照被験体の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または約100%まで回復し、好ましくは機能が運動協調、自発運動、および軸索伝達速度である、請求項38~40のいずれか一項の方法。
【請求項42】
細胞が、遺伝子修飾NSC、OPC、およびオリゴデンドロサイトからなる群より選択される、請求項34~41のいずれか一項の方法。
【請求項43】
内因性PLP1遺伝子またはその遺伝子制御要素、またはその部分(例えば4.8、4.5、4.0、3.5、3.0、2.5、2.0、1.5または1.0kbより長くない部分)が不活性化されるか、破壊されるか、修正されるかまたは置換される、請求項34~42のいずれか一項の方法。
【請求項44】
被験体が哺乳動物、例えばヒト(例えば20歳、15歳、10歳、5歳、3歳、2歳、1歳、6ヶ月齢、3ヶ月齢、1ヶ月齢、2週齢、1週齢、3日齢、または1日齢より若いヒト)である、請求項34~43のいずれか一項の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する参照
[0001]本出願は、2016年12月8日出願の米国仮特許出願第62/431,787号、および2017年8月8日出願の米国仮特許出願第62/542,660号の出願日の優先権を請求し、該出願各々の全内容は、本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
[0002]ミエリン関連障害は、数百万の人々に影響を及ぼし、罹患した個人およびその家族に対して、疾病率および死亡率の重い負担を課す。白質ジストロフィーは遺伝性ミエリン関連障害であり、米国において、合計で、7,500人の新生児のうち1人に影響を及ぼす。これらの障害は、疾患修飾療法を欠き、そして必然的に小児期および青年期に、深刻な疾病率および死亡率を生じる。いくつかの一般的な白質ジストロフィーは、中枢神経系(CNS)におけるオリゴデンドロサイトによる神経軸索の不適切なミエリン形成(ミエリン・ラッピング)を生じる、既知の遺伝子突然変異を有する。
【0003】
[0003]ペリツェウス・メルツバッハ病(PMD)は特に重度の白質ジストロフィーであり、4ヶ月齢までに重大な認知および運動欠陥を、そして小児期または青年期初期に死亡を引き起こす。より極端な症例では、患者は誕生2週間以内に症状を経験し、歩くこともまたは話すことも学ばず、そして10歳になる前に疾患に屈する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
[0004]不運なことに、これらの障害の多くの根底にある病理学的プロセスは、ほとんど理解されないままであり、そして疾患修飾療法はほとんど存在しない。したがって、中枢神経系ミエリンに影響を及ぼす障害に対する療法に関して、差し迫った必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[0005]本明細書記載の態様は、遺伝子治療またはゲノム操作を用いて、ミエリン関連障害を治療するための組成物および方法に関する。
[0006]したがって、1つの側面において、本発明は、機能的ミエリン産生を増進させる細胞を生成する方法であって:(i)ミエリン産生を阻害する能力が減少するように、内因性PLP1遺伝子が修飾されている;(ii)PLP1発現を促進する能力が減少するように、内因性PLP1遺伝子制御要素が修飾されている;(iii)PLP1発現を阻害する能力が増加するように、内因性PLP1遺伝子制御要素が修飾されている;あるいは(iv)PLP1発現レベルが減少するように、内因性PLP1遺伝子産物、またはPLP1発現を促進するPLP1制御要素遺伝子産物が修飾されているように、細胞を遺伝子修飾する工程を含み、ここで、該細胞が機能的ミエリンを産生するか、あるいは機能的ミエリンを産生する細胞を産生するかまたはこうした細胞に分化する前駆細胞である、前記方法を提供する。
【0006】
[0007]いくつかの態様において、生成される細胞は、細胞におけるPLP1関連毒性を減少させることによって、ミエリン産生を増進させる。特定の態様において、内因性PLP1遺伝子またはPLP1遺伝子制御要素の修飾は、細胞におけるPLP1関連細胞ストレスを軽減する。
【0007】
[0008]いくつかの態様において、内因性PLP1遺伝子の修飾には、内因性PLP1遺伝子の発現を減少させるかまたはPLP1転写物の(例えばナンセンス仲介性崩壊を通じ
た)分解を生じる突然変異の導入が含まれることも可能である。
【0008】
[0009]特定の態様において、内因性PLP1遺伝子または内因性PLP1遺伝子制御要素は点突然変異を含み、そして内因性PLP1遺伝子または内因性PLP1遺伝子制御要素の前記修飾は、点突然変異の野生型配列への修正を含む。
【0009】
[0010]特定の態様において、内因性PLP1遺伝子制御要素は、PLP1エンハンサーまたはプロモーターである。
[0011]いくつかの態様において、内因性PLP1遺伝子制御要素の遺伝子修飾には、PLP1遺伝子制御要素の活性を改変する小さい挿入または欠失(インデル)、あるいはPLP1のより大きなエクソン性欠失の導入が含まれることも可能である。
【0010】
[0012]特定の態様において、遺伝子修飾には、エクソン1における開始コドン近傍またはPLP1の最初の3つのエクソンのいずれかの位置における大きな欠失が含まれることも可能である。例示的な態様において、遺伝子修飾には、PLP1のエクソン3の5’端での大きな欠失が含まれることも可能である。
【0011】
[0013]他の態様において、内因性PLP1遺伝子制御要素の修飾には、PLP1遺伝子制御要素、例えばPLP1エンハンサーまたはプロモーターの活性を改変する、インデルまたはより大きな欠失の導入が含まれることも可能である。いくつかの側面において、内因性PLP1遺伝子制御要素は、PLP1転写を促進する能力が減少するように修飾される。例えば、修飾には、PLP1エンハンサーまたはプロモーターの破壊が含まれることも可能である。
【0012】
[0014]特定の態様において、内因性PLP1遺伝子は、有害な疾患誘発性突然変異体PLP1遺伝子である。
[0015]いくつかの態様において、内因性PLP1遺伝子またはPLP1遺伝子制御要素の修飾は、ヌクレアーゼを用いて作製可能である。ヌクレアーゼには、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALEエフェクター(TALEN)、CRISPR/Cas系またはNgAgo系が含まれうる。
【0013】
[0016]特定の態様において、ヌクレアーゼには、クラス2 CRISPR/Cas系が含まれうる。例えば、クラス2 CRISPR/Cas系には、II型Cas9に基づくCRISPR系またはV型Cpf1に基づくCRISPR系が含まれうる。
【0014】
[0017]特定の態様において、PLP1遺伝子は、エクソン1またはエクソン3で、CRISPR/Cas系ヌクレアーゼで修飾される。特定の態様において、PLP1遺伝子は、エクソン3の5’端で、CRISPR/Cas系ヌクレアーゼで修飾される。特定の態様において、PLP1遺伝子は、エクソン1における開始コドンの破壊によって、CRISPR/Cas系ヌクレアーゼで修飾される。
【0015】
[0018]いくつかの態様において、PLP1遺伝子産物またはPLP1制御要素遺伝子産物の修飾には、細胞に遺伝子サイレンシング剤を送達する工程が含まれる。いくつかの態様において、遺伝子サイレンシング剤には、RNAi構築物(例えばsiRNA、shRNA、またはmiRNA、あるいは転写されてこれらを産生可能である構築物)が含まれることも可能である。
【0016】
[0019]いくつかの態様において、遺伝子サイレンシング剤には、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)が含まれることも可能である。
[0020]特定の態様において、遺伝子修飾された細胞は、(例えば細胞におけるPLP1
関連毒性の減少によって)増進されたミエリン産生を示す。
【0017】
[0021]特定の態様において、方法は、ヌクレアーゼまたは遺伝子サイレンシング剤を含む送達ビヒクルと細胞を接触させる工程を含む。
[0022]特定の態様において、送達ビヒクルは、AAVベクター、アデノウイルスベクター、またはレンチウイルスベクターである。
【0018】
[0023]特定の態様において、方法は:(a)機能的II型CRISPR-Cas9(例えばCas9またはCas9オルソログcDNA)をコードする核酸を含む第一のAAVベクター、および内因性PLP1遺伝子または内因性PLP1遺伝子制御要素におけるターゲット部位に特異的なガイドRNA(sgRNA)配列を含む第二のAAVベクター、および場合によって、内因性PLP1遺伝子または内因性PLP1遺伝子制御要素の欠陥または突然変異部分の修正または置換のためのドナー核酸配列を含む第三のAAVベクターと、細胞を接触させるか;あるいは(b)機能的II型CRISPR-Cas9(例えばCas9またはCas9オルソログcDNA)、およびシスにコードされ、そして内因性PLP1遺伝子または内因性PLP1遺伝子制御要素におけるターゲット部位に特異的なガイドRNA(sgRNA)をコードする核酸を含む第一のAAVベクター、ならびに場合によって、内因性PLP1遺伝子または内因性PLP1遺伝子制御要素の欠陥または突然変異部分の修正または置換のためのドナー核酸配列を含む第三のAAVベクターと、細胞を接触させる工程を含む。
【0019】
[0024]特定の態様において、第一のAAVベクターは、以下の要素:i)5’AAV末端逆位配列(ITR);ii)プロモーターおよび場合によるエンハンサー;iii)機能的II型CRISPR-Cas9をコードするCas9 cDNA;iv)ポリアデニル化シグナル;および、v)3’AAV末端逆位配列(ITR);の1つまたはそれより多くを、場合によって5’→3’方向にさらに含む。
【0020】
[0025]特定の態様において、プロモーターおよび場合によるエンハンサーは、遍在性または恒常性プロモーターおよび場合による遍在性または恒常性エンハンサー;制御可能、誘導性または脱抑制可能プロモーターおよび場合による制御可能、誘導性または脱抑制可能エンハンサー;組織特異的プロモーターおよび場合による組織特異的エンハンサー;ウイルスプロモーターおよび場合によるウイルスエンハンサー;接合体、OPC、NSC、またはオリゴデンドロサイトにおいて活性であるプロモーター;ウイルスプロモーター、場合によってCMVプロモーター、またはウイルスエンハンサー;哺乳動物ベータアクチンプロモーター;ニワトリベータアクチンプロモーター;哺乳動物U6プロモーター;またはヒトU6プロモーターであることも可能である。
【0021】
[0026]特定の態様において、第二または第三のAAVベクター(存在する場合)は、以下の要素:i)5’AAV ITR;ii)プロモーターおよび場合によるエンハンサー;iii)ガイドRNA配列;iv)スタッファーまたはフィラー核酸配列;および、v)3’AAV ITR;の1つまたはそれより多くを、場合によって5’→3’方向にさらに含む。
【0022】
[0027]特定の態様において、第三のAAVベクター(存在する場合)は、以下の要素:i)5’AAV ITR;ii)5’スライス(slice)アクセプター部位;iii)ドナー核酸配列;iv)ポリアデニル化シグナル;および、v)AAV 3’ ITR;の1つまたはそれより多くを、場合によって5’→3’方向にさらに含む。
【0023】
[0028]特定の態様において、第一、第二、および/または第三のAAVベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、A
AV9、AAV10、AAV11、あるいはその混合物、変異体または誘導体の任意の血清型より選択される、VP1、VP2、またはVP3カプシドを含む。
【0024】
[0029]特定の態様において、5’ AAV ITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、またはそのキメラもしくは融合体のいずれか1つより選択されるか、あるいは3’
AAV ITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6
、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、またはそのキメラもしくは融合体のいずれか1つより選択される。
【0025】
[0030]特定の態様において、細胞をin vitro、in vivo、またはex vivoで接触させる。
[0031]本発明の別の側面は、本明細書記載の態様いずれかの第一および第二のAAVベクター(および場合によって第三のAAVベクター)を含む、組成物を提供する。
【0026】
[0032]本発明の別の側面は、本明細書記載の組成物を含む、医薬組成物を提供する。
[0033]本発明の別の側面は、遺伝子修飾細胞を提供する。細胞は:(i)ミエリン産生を阻害する能力が減少するように、内因性PLP1遺伝子が修飾されている;(ii)PLP1発現を促進する能力が減少するように、内因性PLP1遺伝子制御要素が修飾されている;(iii)PLP1発現を阻害する能力が増加するように、内因性PLP1遺伝子制御要素が修飾されている;あるいは(iv)PLP1発現レベルが減少するように、内因性PLP1遺伝子産物、またはPLP1発現を促進するPLP1制御要素遺伝子産物が修飾されているように遺伝子修飾されている;ことも可能であり、ここで、該細胞は機能的ミエリンを産生するか、あるいは機能的ミエリンを産生する細胞を産生するかまたはこうした細胞に分化する前駆細胞である。
【0027】
[0034]特定の態様において、細胞は、神経幹細胞(NSC)、オリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)、ニューロン細胞、および、オリゴデンドロサイト、アストロサイト、上衣細胞、またはミクログリア細胞などのグリア細胞、好ましくはNSC、OPC、およびオリゴデンドロサイト、より好ましくはNSCまたはOPCより選択される。
【0028】
[0035]本発明のさらに他の側面は:(i)ミエリン産生を阻害する能力が減少するように、内因性PLP1遺伝子が修飾されている;(ii)PLP1発現を促進する能力が減少するように、内因性PLP1遺伝子制御要素が修飾されている;(iii)PLP1発現を阻害する能力が増加するように、内因性PLP1遺伝子制御要素が修飾されている:あるいは(iv)PLP1発現レベルが減少するよう、内因性PLP1遺伝子産物またはPLP1発現を促進するPLP1制御要素遺伝子産物が修飾されているように遺伝子修飾されている細胞に由来するかまたはこうした細胞から分化した、遺伝子修飾細胞に関し、ここで、該細胞は機能的ミエリンを産生するか、あるいは機能的ミエリンを産生する細胞を産生するかまたはこうした細胞に分化する前駆細胞である。
【0029】
[0036]本発明のさらに他の側面は、上記の遺伝子修飾細胞を含む組成物、および被験体においてミエリン関連障害を治療する方法に関する。該方法には:(i)ミエリン産生を阻害する能力が減少するように、内因性PLP1遺伝子が修飾されている;(ii)PLP1発現を促進する能力が減少するように、内因性PLP1遺伝子制御要素が修飾されている;(iii)PLP1発現を阻害する能力が増加するように、内因性PLP1遺伝子制御要素が修飾されている;あるいは(iv)PLP1発現レベルが減少するよう、内因性PLP1遺伝子産物またはPLP1発現を促進するPLP1制御要素遺伝子産物が修飾されているように遺伝子修飾されている細胞であって、被験体において、機能的ミエリンを産生するか、あるいは機能的ミエリンを産生する細胞を産生するかまたはこうした細胞
に分化する前駆細胞である、前記細胞を、被験体に投与する工程が含まれることも可能である。
【0030】
[0037]関連する側面において、本発明は、被験体において、ミエリン関連障害を治療する方法であって、本明細書記載の本発明の方法にしたがって被験体の細胞を遺伝子修飾し、それによって被験体において機能的ミエリンを産生する工程を含み、ここで、ミエリン関連障害が、好ましくは異常なPLP1遺伝子活性および/または発現によって特徴付けられる、前記方法を提供する。
【0031】
[0038]特定の態様において、ミエリン関連障害は、多発性硬化症(MS)、視神経脊髄炎(NMO)、横断性脊髄炎、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、ギラン・バレー症候群、進行性多巣性白質脳症(PML)、脳脊髄炎(EPL)、橋中央ミエリン溶解(CPM)、副腎白質ジストロフィー、アレクサンダー病、ペリツェウス・メルツバッハ病(PMD)、ウォラー変性、視神経炎、筋委縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病、アルツハイマー病、パーキンソン病、脊髄傷害、外傷性脳傷害、放射線照射後の傷害、化学療法の神経学的合併症、脳卒中、急性虚血性視神経症、ビタミンE欠乏、孤立性ビタミンE欠乏症候群、バッセン・コーンツヴァイク症候群、マルキアファーヴァ・ビニャミ症候群、三叉神経痛、マリー・シャルコー・ツース病、ベル麻痺、および白質ジストロフィーより選択される。
【0032】
[0039]他の態様において、ミエリン関連障害は、白質ジストロフィー、例えばミエリン塩基性タンパク質欠損を伴う18q症候群、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、急性散在性白質脳炎、急性出血性白質脳症、副腎白質ジストロフィー(ALD)、副腎脊髄ニューロパチー(AMN)、成人発症型常染色体優性白質ジストロフィー(ADLD)、成人ポリグルコサン小体病、アイカルディ・グティエール症候群、アレクサンダー病、神経軸索球体を伴う常染色体優性びまん性白質脳症(HDLS)、常染色体優性後期発症型白質脳症、カナバン病、びまん性CNSミエリン形成不全を伴う小児期運動失調(CACHまたは白質消失病)、皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症(CADASIL)、カルシウム沈着および嚢胞を伴う脳網膜微細血管造影、脳腱黄色腫症(CTX)、中枢神経系ミエリン形成不全を伴う小児期運動失調(CACH)、白質脳症を伴う頭蓋骨骨幹端異形成症、嚢胞性白質脳症(RNASET2関連)、超長鎖脂肪酸伸長4(ELOVL4;偽シェーグレン・ラルソン)、臨床症状を伴わない広範囲脳白質異常、小脳失調および認知症として現れる家族性成人発症型白質ジストロフィー、成人発症型認知症および異常糖脂質貯蔵を伴う家族性白質ジストロフィー、脂肪酸2-ヒドロキシラーゼ不全、フコシドーシス、福山型先天性筋ジストロフィー、ガラクトシアリドーシス、グロボイド細胞白質ジストロフィー(クラッベ病)、GM1ガングリオシドーシス、GM2ガングリオシドーシス(テイ・サックス病)、慢性進行性多発性硬化症模倣性の遺伝性成人発症型白質ジストロフィー、軸索球体を伴う遺伝性びまん性白質脳症(HDLS)、基底核および小脳の萎縮を伴うミエリン形成不全(H-ABC)、ミエリン形成不全、低ゴナドトロピン性、性腺機能低下および歯数不足(4H症候群)、白質ジストロフィーを伴う脂肪膜性骨形成異常(那須病)、異染性白質ジストロフィー(MLD)、皮質下嚢胞を伴う大頭型白質脳症(MLC)、軸索球体を伴う神経軸索白質脳症(球体を伴う遺伝性びまん性白質脳症-HDLS)、新生児副腎白質ジストロフィー(NALD)、大脳白質異常を伴う眼歯牙指(Oculodetatoldigital)異形成、色素沈着グリアを伴う正染性白質ジストロフィー、卵巣白質ジストロフィー症候群、ペリツェウス・メルツバッハ病(X染色体連鎖痙性対麻痺)、レフサム病、シェーグレン・ラルソン症候群、スダン好性白質ジストロフィー、ファン・デル・ナープ症候群(皮質下嚢胞を伴う空胞化白質ジストロフィーまたはMLC)、白質消失病(VWM)またはびまん性中枢神経系ミエリン形成不全を伴う小児期運動失調(CACH)、X染色体連鎖副腎白質ジストロフィー(X-ALD)、ツェルウェーガー症候群スペクトラム:ツェルウェーガー症候群、新生児副腎白質
ジストロフィー、ならびに乳児レフサム病であることも可能である。
【0033】
[0040]特定の態様において、ミエリン関連障害には、ペリツェウス・メルツバッハ病(PMD)が含まれる。
[0041]特定の態様において、方法は、被験体の寿命を、ミエリン関連障害を持たない対照被験体の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または約100%まで回復する。
【0034】
[0042]特定の態様において、方法は、前記ミエリン関連障害に関連する被験体の少なくとも1つの症状を軽減する。
[0043]特定の態様において、方法は、被験体の機能を、ミエリン関連障害を持たない対照被験体の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または約100%まで回復させ、好ましくは機能は運動協調、自発運動、および軸索伝達速度である。
【0035】
[0044]特定の態様において、細胞は、遺伝子修飾NSC、OPC、ニューロン細胞、オリゴデンドロサイト、アストロサイト、上衣細胞、およびミクログリア細胞からなる群より選択され、好ましくはNSC、OPC、またはオリゴデンドロサイトである。
【0036】
[0045]特定の態様において、内因性PLP1遺伝子またはその遺伝子制御要素、あるいはその部分(例えば4.8、4.5、4.0、3.5、3.0、2.5、2.0、1.5または1.0kbより長くない部分)が不活性化されるか、破壊されるか、修正されるかまたは置換される。
【0037】
[0046]特定の態様において、被験体は、哺乳動物、例えばヒト(例えば20歳、15歳、10歳、5歳、3歳、2歳、1歳、6ヶ月齢、3ヶ月齢、1ヶ月齢、2週齢、1週齢、3日齢、または1日齢より若いヒト)である。
【0038】
[0047]本明細書に開示する特徴のすべては、任意の組み合わせで組み合わせ可能である。本明細書に開示する各特徴は、別に明記されない限り、同じ、同等の、または類似の目的を果たす別の特徴によって置換可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】[0048]
図1は、野生型のMBP(ミエリン塩基性タンパク質)染色と区別不能である、PLP1インデル修正jimpy(またはcrimpy)PMDモデルマウスにおける中枢神経系の完全ミエリン形成を示す、組織学的分析の画像である。
【
図2】[0049]
図2は、マウスPLP1遺伝子におけるjimpy遺伝子突然変異の位置、および最終的にオリゴデンドロサイトの死を引き起こす、生じる遺伝子産物を示す模式図(正確な縮尺ではない)である。図の下部は、約23日間の生存中央値を持つjimpyマウスの非常に減少した寿命を示す。
【
図3】[0050]
図3は、jimpyマウス脳における重度のミエリン形成不全を示す。野生型対照のものに比較して、生後19日(P19)jimpyマウス脳切片における成熟オリゴデンドロサイトを示す、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)染色が有意により少ないことに注目されたい。jimpyマウスはまた、同じ日齢で、企図振戦および運動失調の神経学的症状も示す(データ未提示)。
【
図4】[0051]
図4および5は、エクソン3のCRISPR SpCas9/二重ガイドRNA(sgRNA)ターゲティングを通じて、jimpyマウスの接合体においてPLP1遺伝子をノックアウトして、CRISPR-ノックアウトjimpy(CR-impy[またはcrimpy])子孫マウスを生成する、例示的なアプローチを示す模式図である。
図4は、エクソン3におけるsgRNAターゲティング部位の相対的位置を示す。
【
図5】
図4および5は、エクソン3のCRISPR SpCas9/二重ガイドRNA(sgRNA)ターゲティングを通じて、jimpyマウスの接合体においてPLP1遺伝子をノックアウトして、CRISPR-ノックアウトjimpy(CR-impy[またはcrimpy])子孫マウスを生成する、例示的なアプローチを示す模式図である。
図5は、sgRNAおよびSpCas9 mRNAを受け入れるためのjimpy雄接合体を生成する一般的な実験アプローチを示す。jimpy PLP1遺伝子のCRISPR/Cas9仲介性ノックアウトが成功すると、代理ホスト雌からPLP1ヌル雄CR-impy創始者が生まれる。さらなる特徴付けのため、2世代を親系統に交配して、子孫マウスを生じる。生後21日(P21)、大部分のjimpyマウスは重度の神経学的症状を示すかまたは死亡したが、CR-impyマウスは、明白な表現型を欠いた(データ未提示)。
【
図6】[0052]
図6は、CR-impyマウスがjimpyおよび野生型対照に比較して、回復した寿命を有することを示す。
【
図7】[0053]
図7は、CR-impyマウスが、MBPを検出する全脳IHCによって、成熟オリゴデンドロサイトの回復を示すことを示す。生後19日および6ヶ月を比較されたい。
【
図8】[0054]
図8は、CR-impyマウスの運動協調性を評価するためのロータロッド試験に関する模式図を示し、ここで、回転バーを加速した際に、回転バーから落ちるまでの時間を測定することによって、運動協調性を定量化する。生後19日(P19)、生後2ヶ月、および生後6ヶ月に、野生型、jimpy、およびCR-impyマウスにおいて、各時点で、測定を行った。異なる値間の統計的相違を、p値によって示す。結果は、野生型およびjimpyマウスに比較して、CR-impyマウスにおける運動協調性が回復したことを示す。
【
図9】[0055]
図9は、CR-impyマウスの自発運動活性を評価するためのオープンフィールド試験に関する模式図を示し、ここで、5分間の自動化ビデオ追跡によって追跡されるような、ボックス中の移動総距離を測定することによって、自発運動活性を定量化する。生後19日(P19)、生後2ヶ月、および生後6ヶ月に、野生型、jimpy、およびCR-impyマウスにおいて、各時点で、測定を行った。異なる値間の統計的有意性を、p値によって示す。結果は、野生型およびjimpyマウスに比較して、CR-impyマウスにおける自発運動活性が回復したことを示す。
【
図10】[0056]
図10は、視神経伝導速度試験、ならびに、より迅速なおよびより緩慢な伝導ピークである、それぞれ第一のピークおよび第二のピークの代表的な結果に関する模式図を示す。ミエリン形成され、そしてより大きな直径を持つ軸索は、一般的に、ミエリン形成されず、そしてより小さな直径を持つ軸索に比較して、より迅速な伝導度を有する。生後19日(P19)、それぞれ、第一および第二のピークによって測定されるような迅速なおよび緩慢な伝導速度は、どちらも、野生型、jimpyマウス、およびCR-impyマウスの任意の2つの間で、統計的に有意に異なる。しかし、生後6ヶ月では、すべてのjimpyマウスは死亡していたが、野生型およびCR-impyマウスの間には相違は観察されない。
【
図11】[0057]
図11は、生後6ヶ月での野生型およびCR-impyマウスの間の視神経EM画像において、識別可能な相違がないことを示す。
【
図12】[0058]
図12は、例えばSaCas9および単一sgRNAをコードするAAVウイルスベクターを通じて、患者の脳において、突然変異体OPCを少なくとも部分的に修正可能である、CRISPR-Cas9仲介性遺伝子サイレンシングを出生後の脳に送達する、本発明の1つの態様を示す模式図である。こうして修正されたOPCは、適切な時期に、いかなる突然変異体オリゴデンドロサイトも打ち負かし、こうして患者ニューロンの十分に回復されたミエリン形成および機能を提供する、オリゴデンドロサイトを提供するであろう。
【発明を実施するための形態】
【0040】
定義
[0059]便宜上、明細書、実施例、および付随する請求項で使用する特定の用語をここに集める。別に定義しない限り、本明細書で用いるすべての技術的および科学的用語は、本出願が属する一般の当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0041】
[0060]冠詞「a」および「an」は、本明細書において、冠詞の文法的対象の1つまたは1つより多く(すなわち少なくとも1つ)を指す。例えば、「要素(an element)」は、1つの要素または1つより多い要素を意味する。
【0042】
[0061]用語「含む(comprise)」、「含んでいる(comprising)」、「含まれる(include)」、「含まれている(including)」、「有する(have)」および「有している(having)」は、包括的なオープンな意味で用いられ、すなわち、さらなる要素が含まれてもよいことを意味する。用語「例えば(such as、e.g.)」は、本明細書において、限定されず、そして例示目的のみのためのものである。「含まれる(including)」および「限定されるわけではないが含まれる(including but not limited to)」は、交換可能に用いられる。
【0043】
[0062]用語「または(or)」は、本明細書において、背景が別に明らかに示さない限り、「および/または(and/or)」を意味すると理解されるものとする。
[0063]本明細書において、用語「約」または「およそ」は、参照数量、レベル、値、数、頻度、割合、寸法、サイズ、量、重量または長さに対して、最大15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%異なる数量、レベル、値、数、頻度、割合、寸法、サイズ、量、重量または長さを指す。1つの態様において、用語「約」または「およそ」は、参照数量、レベル、値、数、頻度、割合、寸法、サイズ、量、重量または長さに関して±15%、±10%、±9%、±8%、±7%、±6%、±5%、±4%、±3%、±2%、または±1%の数量、レベル、値、数、頻度、割合、寸法、サイズ、量、重量または長さの範囲を指す。
【0044】
[0064]句「非経口投与」および「非経口的に投与する」は、当該技術分野に認識される用語であり、そしてこれらには、腸内および外用投与以外の投与の様式、例えば注射が含まれ、そして限定なしに、静脈内、筋内、胸膜内、血管内、心膜内、動脈内、クモ膜下腔内、嚢内、眼窩内、心内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、クモ膜下、脊髄内および胸骨内(intrastemal)注射および注入が含まれる。
【0045】
[0065]用語「治療する」は、当該技術分野に認識され、そしてこれには、被験体において疾患、障害または状態を阻害し、例えばその進行を妨害し;そして疾患、障害または状態を軽減し、例えば疾患、障害および/または状態の後退を引き起こすことが含まれる。疾患または状態の治療には、根底にある病理生理が影響を受けないとしても、特定の疾患または状態の少なくとも1つの症状を回復させることが含まれる。
【0046】
[0066]用語「防止する」は、当該技術分野に認識され、そしてこれには、疾患、障害および/または状態に素因がある可能性もあるが、まだそれらを有するとは診断されていない被験体において、疾患、障害または状態が起こることを停止することが含まれる。疾患に関連する状態の防止には、疾患が診断されて後であるが、状態が診断される前に、状態が起こることを停止することが含まれる。
【0047】
[0067]用語「医薬組成物」は、被験体に投与するために適した型で、開示する化合物を含有する配合物を指す。好ましい態様において、医薬組成物は、バルクであるか、または
単位剤形である。単位剤形は、多様な型のいずれかであり、これには例えば、カプセル、IVバッグ、錠剤、エアロゾル吸入器上の単一ポンプ、またはバイアルが含まれる。組成物の単位用量中の活性成分(例えば開示する化合物またはその塩の配合物)の量は、有効な量であり、そして関与する特定の治療にしたがって多様である。当業者は、ときに、患者の年齢および状態に応じて、投薬量にルーチンの変動を行うことが必要であることを認識するであろう。投薬量はまた、投与経路に応じるであろう。多様な経路が意図され、これには経口、肺、直腸、非経口、経皮、皮下、静脈内、筋内、腹腔内、鼻内、吸入等が含まれる。本明細書記載の化合物の外用または経皮投与のための投薬型には、粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ジェル、溶液、パッチ、噴霧化化合物、および吸入剤が含まれる。好ましい態様において、活性化合物を、無菌条件下で、薬学的に許容されうるキャリアーと、そして必要とされる任意の保存剤、緩衝剤、または噴霧剤と混合する。
【0048】
[0068]句「薬学的に許容される」は、当該技術分野に認識される。特定の態様において、該用語には、正当な医学的判断の範囲内で、妥当な利益/リスク比と釣り合って、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、あるいは他の問題または合併症を伴わずにヒトおよび動物の組織と接触させるための使用に適している組成物、ポリマーおよび他の物質および/または投薬型が含まれる。
【0049】
[0069]句「薬学的に許容されるキャリアー」は、当該技術分野に認識され、そしてこれには、例えば、1つの臓器または体の部分から、別の臓器または体の部分に、任意の対象組成物を運ぶかまたは輸送する際に関与する、薬学的に許容される物質、組成物またはビヒクル、例えば液体または固体充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒または被包物質が含まれる。各キャリアーは、対象組成物の他の成分と適合する意味で、「許容性」でなければならず、そして患者に有害でない。特定の態様において、薬学的に許容されうるキャリアーは、非発熱性である。薬学的に許容されうるキャリアーとして働きうる物質のいくつかの例には:(1)糖、例えばラクトース、グルコースおよびスクロース;(2)デンプン、例えばコーンスターチおよびジャガイモデンプン;(3)セルロース、およびその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース;(4)粉末化トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)賦形剤、例えばココアバターおよび座薬ワックス;(9)油、例えばピーナツ油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブオイル、コーン油およびダイズ油;(10)グリコール、例えばプロピレングリコール、(11)ポリオール、例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール;(12)エステル、例えばオレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;(13)寒天;(14)緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;(15)アルギン酸;(16)発熱物質不含水;(17)等張性生理食塩水;(18)リンゲル溶液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝溶液;および(21)薬学的配合物に使用される他の非毒性適合物質が含まれる。
【0050】
[0070]用語「予防的」または「療法的」治療は、当該技術分野に認識され、そしてこれには、1つまたはそれより多くの対象組成物の宿主への投与が含まれる。望ましくない状態(例えば、宿主動物の疾患または他の望ましくない状態、例えば限定されるわけではないがミエリン形成障害、ミエリン欠陥、ミエリン喪失および無効なミエリン修復)の臨床的徴候前に投与される場合、治療は予防的であり、すなわち治療は、望ましくない状態を発展させることから宿主を保護する一方、望ましくない状態の徴候後に投与される場合、治療は療法的である(すなわち、治療は、存在する望ましくない状態またはその副作用を減少させるか、回復させるか、または安定化させるよう意図される)。
【0051】
[0071]用語「療法剤」、「薬剤」、「医薬品」および「生物活性物質」は、当該技術分野に認識され、そしてこれらには、疾患または状態を治療するため、患者または被験体に
おいて局所的または全身性に作用する、生物学的、生理学的、または薬理学的に活性である物質である、分子および他の剤が含まれる。該用語には、限定なしに、その薬学的に許容されうる塩およびプロドラッグが含まれる。こうした剤は、酸性、塩基性、または塩であってもよく;これらは中性分子、極性分子、または水素結合が可能な分子複合体であってもよく;これらは、患者または被験体に投与された際に生物学的に活性化される、エーテル、エステル、アミド等の形のプロドラッグであってもよい。
【0052】
[0072]句「療法的に有効な量」または「薬学的に有効な量」は、当該技術分野に認識される用語である。特定の態様において、該用語は、任意の医学的治療に適用可能な、妥当な利益/リスク比で、何らかの望ましい効果を生じる療法剤の量を指す。特定の態様において、該用語は、特定の療法措置のターゲットを排除するか、減少させるかまたは維持するために必要なまたは十分な量を指す。有効量は、治療する疾患または状態、投与する特定のターゲティング化構築物、被験体のサイズ、あるいは疾患または状態の重症度に応じて多様でありうる。一般の当業者は、過度の実験を必要とすることなく、特定の化合物の有効量を経験的に決定することも可能である。特定の態様において、in vivo使用のための剤(例えば本明細書記載の組成物または遺伝子修飾細胞)の療法的有効量は:ポリマーの化学的および物理的特性に部分的に依存するであろう、ポリマーマトリックスからの剤の放出速度;剤の同一性;投与の様式および方法;ならびに剤に加えて、ポリマーマトリックス中に取り込まれる任意の他の物質を含む、多くの要因に応じる可能性があるであろう。
【0053】
[0073]用語「核酸」、「ヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド」、および「オリゴヌクレオチド」は、交換可能に用いられ、そして直鎖または環状コンホメーションで、そして一本鎖または二本鎖型のいずれかの、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドポリマーを指す。本開示の目的のため、これらの用語は、ポリマーの長さに関して限定するとは見なされないものとする。該用語は、天然ヌクレオチドの既知の類似体、ならびに塩基、糖および/またはリン酸部分が修飾されたヌクレオチド(例えばホスホロチオエート主鎖)を含むことも可能である。一般的に、特定のヌクレオチドの類似体は、同じ塩基対形成特異性を有し;すなわちAの類似体はTと塩基対形成するであろう。
【0054】
[0074]用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーを指すよう、交換可能に用いられる。該用語はまた、1つまたはそれより多いアミノ酸が、対応する天然存在アミノ酸の化学的類似体または修飾誘導体である、アミノ酸ポリマーにも当てはまる。
【0055】
[0075]「機能ドメイン」は、特定の活性を含むポリペプチドのドメインである。機能ドメインが所持しうる活性の限定されない例は、ヌクレアーゼ活性、転写制御活性、ウイルスカプシド認識活性等である。
【0056】
[0076]「結合」は、巨大分子間(例えばタンパク質および核酸間)の配列特異的非共有結合性相互作用を指す。相互作用全体が配列特異的である限り、結合相互作用のすべての構成要素が配列特異的である必要はない(例えばDNA主鎖中のリン酸残基と接触する)。こうした相互作用は、一般的に、10-6M-1またはそれより低い解離定数(Kd)によって特徴付けられる。「アフィニティ」は結合強度を指し;結合アフィニティ増加は、より低いKdと相関する。
【0057】
[0077]「結合タンパク質」は、別の分子に結合可能であるタンパク質である。結合タンパク質は、例えば、DNA分子(DNA結合タンパク質)、RNA分子(RNA結合タンパク質)および/またはタンパク質分子(タンパク質結合タンパク質)に結合可能である。タンパク質結合性タンパク質の場合、自身に結合してもよい(ホモ二量体、ホモ三量体
等を形成する)し、そして/または単数または複数の異なるタンパク質の1つまたはそれより多い分子に結合してもよい。結合タンパク質は、1より多いタイプの結合活性を有することも可能である。例えば、ジンクフィンガータンパク質は、DNA結合、RNA結合およびタンパク質結合活性を有する。
【0058】
[0078]「ジンクフィンガーDNA結合タンパク質」(または結合ドメイン)は、亜鉛イオンの配位を通じて構造が安定化される結合ドメイン内のアミノ酸配列の領域である、1つまたはそれより多いジンクフィンガーを通じて、配列特異的方式でDNAに結合する、タンパク質、またはより大きなタンパク質内のドメインである。用語、ジンクフィンガーDNA結合性タンパク質は、しばしば、ジンクフィンガータンパク質またはZFPと略される。
【0059】
[0079]「TALE DNA結合ドメイン」または「TALE」は、1つまたはそれより多いTALEリピートドメイン/単位を含むポリペプチドである。リピートドメインは、TALEのその同族(cognate)ターゲットDNA配列への結合に関与する。単一「リピート単位」(「リピート」とも称される)は、典型的には長さ33~35アミノ酸であり、そして天然存在TALEタンパク質内の他のTALEリピート配列と少なくともある程度の配列相同性を示す。
【0060】
[0080]ジンクフィンガーおよびTALE結合ドメインは、例えば天然存在ジンクフィンガーまたはTALEタンパク質の認識らせん領域の操作(1つまたはそれより多いアミノ酸の改変)を通じて、あらかじめ決定したヌクレオチド配列に結合するように「操作」されることも可能である。したがって、操作されたDNA結合タンパク質(ジンクフィンガーまたはTALE)は、非天然存在のタンパク質である。DNA結合タンパク質を操作するための限定されない例は、設計および選択である。設計されたDNA結合タンパク質は、その設計/組成が、主に合理的基準から生じる、天然には存在しないタンパク質である。設計のための合理的基準には、置換ルール、ならびに存在するZFPおよび/またはTALE設計および結合データの情報を保存するデータベース中の情報をプロセシングするためのコンピュータ化アルゴリズムの適用が含まれる。例えば、米国特許第6,140,081号;第6,453,242号;第6,534,261号および第8,585,526を参照されたい;また、WO 98/53058;WO 98/53059;WO 98/53060;WO 02/016536およびWO 03/016496を参照されたい。
【0061】
[0081]「選択された」ジンクフィンガータンパク質またはTALEは、その産生が、主にファージディスプレイ、相互作用トラップまたはハイブリッド選択などの実験的なプロセスから生じる、天然には見られないタンパク質である。例えば、米国特許第5,789,538号;第5,925,523号;第6,007,988号;第6,013,453号;第6,200,759号;第8,586,526号;WO 95/19431;WO
96/06166;WO 98/53057;WO 98/54311;WO 00/27878;WO 01/60970、WO 01/88197、WO 02/099084を参照されたい。
【0062】
[0082]一般的に、「CRISPR」(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート)はまたSPI
DR(SPacer Interspersed Direct Repeats、スペーサー散在型ダイレクトリピート)としても知られており、通常、特定の細菌種に特異的であるDNA遺伝子座のファミリーを指す。CRISPR遺伝子座は、大腸菌(E. coli)に認識される散在型短配列リピート(SSR)の別個のクラス(Ishinoら(1987) J. Bacteriol., 169:5429-5433;およびNakataら, J. Bacter
iol.(1989) 171:3553-3556)および関連遺伝子を含む。類似の散在型SSRは、ハロフェラックス・メディテラネイ(Haloferax mediterranei)、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)、アナベナ属(Anabaena)、および結核菌(Mycobacterium tuberculosis)において同定されてきている(Groenenら(1993) Mol. Microbiol., 10:1057-1065; Hoeら(1999) Emerg. Infect. Dis., 5:254-263; Masepohlら(1996) Biochim. Biophys. Acta
1307:26-30;およびMojicaら(1995) Mol. Microbiol., 17:85-93を参照されたい)。CRISPR遺伝子座は、典型的には、リピートの構造によって他のSSRとは異なり、これは短い規則的に間隔をあけたリピート(short regularly spaced repeats、SRSR)と名付けられている(Janssenら(2002) OMICS J. Integ. Biol., 6:23-33;およびMojicaら(2000) Mol. Microbiol., 36:244-246)。一般的に、リピートは、実質的に一定の長さを持つユニークな介在性配列によって規則的に間隔を開けられたクラスターとして存在する短い要素である。(Mojicaら(2000)、上記)。リピート配列は、系統間で非常に保存されているが、間隔を開けられたリピートの数およびスペーサー領域の配列は、典型的には系統間で異なる(van Embdenら, J. Bacteriol. (2002) 182:2393-2401)。CRISPR遺伝子座は、40を超える原核生物で同定されてきており、こうした原核生物には、限定されるわけではないが、エロピルム属(Aeropyrum)、ピロバキュルム属(Pyrobaculum)、スルホロブス属(Sulfolobus)、アルケオグロブス属(Archaeoglobus)、ハロカルキュラ属(Halocarcula)、メタノバクテリウム属(Methanobacteriumn)、メタノコッカス属(Methanococcus)、メタノサルシナ属(Methanosarcina)、メタノピルス属(Methanopyrus)、ピロコッカス属(Pyrococcus)、ピクロフィルス属(Picrophilus)、テルニオプラスニア属(Thernioplasnia)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、マイコバクテリウム属(Mycobacterium)、ストレプトマイセス属(Streptomyces)、アキフルクス属(Aquifrx)、ポルフブロモナス属(Porphvromonas)、クロロビウム属(Chlorobium)、テルムス属(Thermus)、バチルス属(Bacillus)、リステリア属(Listeria)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、クロストリジウム属(Clostridium)、テルモナエロバクター属(Thermoanaerobacter)、マイコプラズマ属(Mycoplasma)、フゾバクテリウム属(Fusobacterium)、アザルクス属(Azarcus)、クロモバクテリウム属(Chromobacterium)、ナイセリア属(Neisseria)、ニトロソモナス属(Nitrosomonas)、デスルフォビブリオ属(Desulfovibrio)、ゲオバクター属(Geobacter)、ミロコッカス属(Myrococcus)、カンピロバクター属(Campylobacter)、ウォリネラ属(Wolinella)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、エルウィニア属(Erwinia)、エシェリキア属(Escherichia)、レジオネラ属(Legionella)、メチロコッカス属(Methylococcus)、パスツレラ属(Pasteurella)、フォトバクテリウム属(Photobacterium)、サルモネラ属(Salmonella)、キサントモナス属(Xanthomonas)、エルシニア属(Yersinia)、トレポネーマ属(Treponema)、およびテルモトガ属(Thermotoga)が含まれる。
【0063】
[0083]「CRISPR系」は、集合的に、CRISPR関連(「Cas」)遺伝子の発現に関与するかまたはその活性を方向付ける転写物および他の要素を指し、これには、C
as遺伝子をコードする配列、tracr(トランス活性化CRISPR)配列(例えばtracrRNAまたは活性部分的tracrRNA)、tracrメイト配列(「ダイレクトリピート」および内因性CRISPR系の背景において、tracrRNAにプロセシングされる部分的ダイレクトリピートを含む)、ガイド配列(内因性CRISPR系の背景において、「スペーサー」とも称される)、またはCRISPR遺伝子座からの他の配列および転写物が含まれる。いくつかの態様において、CRISPR系の1つまたはそれより多い要素は、クラス1、I型またはIII型CRISPR系に由来する。いくつかの態様において、CRISPR系の1つまたはそれより多い要素は、クラス2、II型またはV型CRISPR系に由来する。いくつかの態様において、CRISPR系の1つまたはそれより多い要素は、内因性CRISPR系を含む特定の生物、例えばストレプトコッカス・ピオゲネスに由来する。一般的に、CRISPR系は、ターゲット配列部位で、CRISPR複合体の形成を促進する要素(内因性CRISPR系の背景において、プロトスペーサーとも称される)によって特徴付けられる。CRISPR複合体形成の背景において、「ターゲット配列」は、ガイド配列が相補性を有するように設計されている配列を指し、ここでターゲット配列およびガイド配列の間のハイブリダイゼーションが、CRISPR複合体の形成を促進する。ハイブリダイゼーションを引き起こし、そしてCRISPR複合体の形成を促進するために十分な相補性があれば、完全な相補性は必ずしも必要とされない。ターゲット配列は、任意のポリヌクレオチド、例えばDNAまたはRNAポリヌクレオチドを含むことも可能である。いくつかの態様において、ターゲット配列は、細胞の核または細胞質に位置する。ターゲット配列を含むターゲティングされる遺伝子座への組換えのために使用可能な配列またはテンプレートは、「編集テンプレート」または「編集ポリヌクレオチド」または「編集配列」と称される。本発明の側面において、外因性テンプレートポリヌクレオチドは、編集テンプレートと称されうる。本発明の側面において、組換えは相同組換えである。
【0064】
[0084]「NgAgo」は遺伝子サイレンシングに関与すると考えられる原核生物アルゴノートタンパク質である。NgAgoは、古細菌、ナトロノバクテリウム・グレゴリー(Natronobacterium gregoryi)に由来する(例えばGaoら(2016) Nature Biotechnology 34, 768-773を参照されたい)。「NgAgo系」は、NgAgo酵素による切断のための、例えば一本鎖ガイドDNAを含む、必要な構成要素すべてである。
【0065】
[0085]「組換え」は、2つのポリヌクレオチド間の遺伝情報の交換プロセスを指し、限定されるわけではないが、非相同末端結合(NHEJ)によるドナー捕捉および相同組換えが含まれる。本開示の目的のため、「相同組換え(HR)」は、例えば、相同組換え修復機構を通じた、細胞における二本鎖切断の修復中に起こる、こうした交換の特殊な型を指す。このプロセスは、ヌクレオチド配列相同性を必要とし、「ターゲット」分子(すなわち二本鎖切断を経たもの)のテンプレート修復に対して「ドナー」分子を用い、そして「非交叉遺伝子変換」または「ショートトラクト遺伝子変換」として多様に知られ、これは該プロセスが、ドナーからターゲットへの遺伝情報のトランスファーを導くためである。いかなる特定の理論によって束縛されることも望ましくないが、こうしたトランスファーは、切断されたターゲットおよびドナーの間に形成されるヘテロ二重鎖DNAのミスマッチ修正、および/またはドナーを用いて遺伝情報を再合成して、これがターゲットの一部となる「合成依存性鎖アニーリング」、および/または関連プロセスを伴うことも可能である。こうした特殊化HRは、しばしば、ドナーポリヌクレオチドの配列の一部またはすべてがターゲットポリヌクレオチド内に取り込まれるように、ターゲット分子の配列の改変を生じる。
【0066】
[0086]開示の方法において、本明細書に記載するような1つまたはそれより多いターゲティング化ヌクレアーゼは、あらかじめ決定した部位で、ターゲット配列(例えば細胞ク
ロマチン)において切断する(例えば1つまたはそれより多い一本鎖ニックおよび/または1つまたはそれより多い二本鎖切断[DSB]を生成する)。DSBは、相同組換え修復(HDR)による、または非相同組換え修復機構(例えばNHEJ)による、欠失および/または挿入を生じることも可能である。欠失には、任意の数の塩基対が含まれてもよい。同様に、挿入には、例えば、場合によって切断領域中のヌクレオチド配列に相同性を有する、「ドナー」ポリヌクレオチドの組込みを含めて、任意の数の塩基対が含まれてもよい。
【0067】
[0087]特定の態様において、本発明の方法は、任意の適切なヌクレアーゼ、例えばCRISPR/Cas系ヌクレアーゼを用いて、ターゲット遺伝子(例えばPLP1遺伝子またはその制御要素)中にDSBを生じ、そして生じた修復(例えばNHEJ)は、PLP1遺伝子またはその制御要素の機能を破壊して、減少したまたは排除されたPLP1機能を生じる、小さい挿入または欠失(例えばインデル)を生成する。この態様において、本発明の方法には、ドナー配列は必要ではない。
【0068】
[0088]他の態様において、ドナー配列は、欠陥PLP1遺伝子またはその制御要素を修復するかまたは置換する方法に含まれてもよい。ドナー配列は、物理的に組み込まれてもよいし、あるいはドナーポリヌクレオチドは、相同組換えを通じた切断の修復のためのテンプレートとして用いられ、細胞クロマチン内にドナーにおけるようなヌクレオチド配列のすべてまたは部分の導入を生じる。したがって、細胞クロマチンにおける第一の配列は、改変されてもよく、そして特定の態様において、ドナーポリヌクレオチドに存在する配列に変換されてもよい。したがって、用語「置換する」または「置換」の使用は、1つのヌクレオチド配列の別のものによる置換(すなわち情報という意味で配列の置換)を示すよう理解され、そして必ずしも1つのポリヌクレオチドの別のものによる物理的または化学的置換を必要としない。
【0069】
[0089]本明細書記載の任意の方法において、さらなる対のジンクフィンガータンパク質、TALEN、CRISPR/CasまたはNgAgo系を、細胞内のさらなるターゲット部位のさらなる(例えば2またはそれより多い)二本鎖切断に使用可能である(例えばPLP1のような同じターゲット遺伝子内であるが、異なるターゲティング部位で)。
【0070】
[0090]本明細書に記載する任意の方法を、任意のサイズのドナーの挿入、および/または関心対象の遺伝子(単数または複数)の発現を破壊するドナー配列のターゲティング化組込みによる細胞における1つまたはそれより多いターゲット配列の部分的または完全な不活性化に用いてもよい。部分的または完全に不活性化された遺伝子を持つ細胞株もまた、提供される。
【0071】
[0091]本明細書記載の任意の方法において、外因性ヌクレオチド配列(「ドナー配列」または「導入遺伝子」)は、関心対象の領域中のゲノム配列に、相同であるが同一でない配列を含有し、それによって関心対象の領域中に非同一配列を挿入する相同組換えを刺激することも可能である。したがって、特定の態様において、関心対象の領域中の配列に相同であるドナー配列部分は、置換されるゲノム配列に対して、約80~99%(またはその間の任意の整数)の間の配列同一性を示す。他の態様において、ドナーおよびゲノム配列の間の相同性は、99%より高く、例えば100の連続塩基対に渡ってドナーおよびゲノム配列の間で1ヌクレオチドのみが異なる場合である。特定の例において、ドナー配列の非相同部分は、新規配列が関心の領域内に導入されるように、関心対象の領域に存在しない配列を含有することも可能である。これらの例において、非相同配列には、一般的に、関心対象の領域中の配列に相同であるかまたは同一である、50~1,000塩基対(またはその間の任意の整数)、または1,000を超える任意の数の塩基対の配列が隣接する。他の態様において、ドナー配列は、第一の配列に非相同性であり、そして非相同組
換え機構によってゲノム内に挿入される。
【0072】
[0092]「遺伝子修飾された」は、核酸の配列が、修飾される前の核酸に比較した際に改変されるように、核酸に行われる修飾を指す。細胞を遺伝子修飾することは、細胞内の細胞性核酸を修飾することを指し、細胞内の内因性および/または外因性核酸、例えばゲノムDNAおよび転写されたmRNAに対する遺伝子修飾が含まれる。遺伝子修飾は、細胞内の内因性および/または外因性核酸における切断、欠失、および挿入、外因性DNAの組込み、遺伝子修正ならびに/あるいは遺伝子突然変異を含むことも可能である。
【0073】
[0093]「切断」は、核酸(例えばDNAまたはRNA、例えばmRNA)分子の共有結合性主鎖の破壊を指す。切断は、限定されるわけではないが、ホスホジエステル結合の酵素的または化学的加水分解を含む、多様な方法によって開始されることも可能である。一本鎖切断および二本鎖切断はどちらも可能であり、そして二本鎖切断は、2つの別個の一本鎖切断事象の結果として起こることも可能である。DNA切断は、平滑端または付着端のいずれかの産生を生じることも可能である。特定の態様において、ターゲティング化二本鎖DNA切断には融合ポリペプチドを用いる。
【0074】
[0094]「切断ハーフドメイン」は、第二のポリペプチド(同一であるかまたは異なるかいずれか)と組み合わされて、切断活性(好ましくは二重鎖切断活性)を有する複合体を形成するポリペプチド配列である。用語「第一および第二の切断ハーフドメイン」、「+および-切断ハーフドメイン」ならびに「右および左切断ハーフドメイン」は、交換可能に用いられ、二量体化する切断ハーフドメインの対を指す。
【0075】
[0095]「操作された切断ハーフドメイン」は、別の切断ハーフドメイン(例えば別の操作された切断ハーフドメイン)と偏性の(obligate)ヘテロ二量体を形成するように修飾されている切断ハーフドメインである。本明細書にその全体が援用される、米国特許公報第2005/0064474号、第20070218528号、第20080131962号および第20110201055号もまた参照されたい。
【0076】
[0096]用語「配列」は、DNAまたはRNAであってもよく;直鎖、環状または分枝鎖であってもよく、そして一本鎖または二本鎖のいずれであってもよい、任意の長さのヌクレオチド配列を指す。
【0077】
[0097]用語「ドナー配列」は、ゲノム内に挿入されるヌクレオチド配列を指す。ドナー配列は、任意の長さであってもよく、例えば長さ2~100,000,000ヌクレオチド(またはその間のもしくはそれより多い任意の整数値)の間、好ましくは長さ約100~100,000ヌクレオチド(またはその間の任意の整数値)の間、より好ましくは長さ約2000~20,000ヌクレオチド(またはその間の任意の整数値)の間、そしてさらにより好ましくは約5~15kb(またはその間の任意の値)の間であってもよい。
【0078】
[0098]「クロマチン」は、細胞ゲノムを含む核タンパク質構造である。細胞クロマチンは、核酸、主にDNA、ならびにヒストンおよび非ヒストン染色体タンパク質を含むタンパク質を含む。真核細胞クロマチンの大部分は、ヌクレオソームの形で存在し、ここで、ヌクレオソームコアは、ヒストンH2A、H2B、H3およびH4の各2つを含む八量体と会合するおよそ150塩基対のDNAを含み;そして(生物に応じて多様な長さの)リンカーDNAがヌクレオソームコアの間に伸長する。ヒストンH1の分子は、一般的にリンカーDNAと会合する。本開示の目的のため、用語「クロマチン」は、原核生物および真核生物両方のすべてのタイプの細胞核タンパク質を含むよう意図される。細胞クロマチンには、染色体およびエピソームクロマチン(例えばミトコンドリアDNA)の両方が含まれる。
【0079】
[0099]「染色体」は、細胞ゲノムのすべてまたは部分を含むクロマチン複合体である。細胞ゲノムはしばしば、核型によって特徴付けられ、核型は、細胞ゲノムを含む染色体すべてのコレクションである。細胞のゲノムは、1つまたはそれより多い染色体を含むことも可能である。
【0080】
[00100]「エピソーム」は、複製する核酸、核タンパク質複合体または細胞の染色体核
型の一部ではない核酸を含む他の構造である。エピソームの例には、プラスミドおよび特定のウイルスゲノム/ベクター(例えばAAVベクターおよびコードされる配列)が含まれる。
【0081】
[00101]「アクセス可能領域」は、核酸中に存在するターゲット部位が、ターゲット部
位を認識する外因性分子によって結合可能である細胞クロマチン中の部位である。いかなる特定の理論によって束縛されることも望ましくないが、アクセス可能な領域は、ヌクレオソーム構造内にパッケージングされないものであると考えられる。アクセス可能な領域の特徴的な構造は、しばしば、化学的および酵素的プローブ、例えばヌクレアーゼに対する感受性によって検出されうる。
【0082】
[00102]「ターゲット部位」または「ターゲット配列」は、結合のための十分な条件が
存在する場合、結合分子が結合するであろう核酸の部分を定義する核酸配列である。
[00103]「外因性」分子は、通常は細胞中に存在しないが、1つまたはそれより多い、
遺伝子的、生化学的または他の方法によって、細胞内に導入可能な分子である。「細胞中の正常な存在」は、細胞の特定の発生段階および環境条件に関して決定される。したがって、例えば、筋肉の胚発生中にのみ存在する分子は、成体筋細胞に関しては外因性分子である。同様に、熱ショックによって誘導される分子は、非熱ショック細胞に関しては外因性分子である。外因性分子は、例えば、機能不全内因性分子の機能型または正常に機能する内因性分子の機能不全型を含むことも可能である。
【0083】
[00104]外因性分子は、とりわけ、コンビナトリアルケミストリープロセスによって生
成されるような小分子、または巨大分子、例えばタンパク質、核酸、炭水化物、脂質、糖タンパク質、リポタンパク質、多糖、上記分子の任意の修飾された誘導体、あるいは上記分子の1つまたはそれより多くを含む任意の複合体であることも可能である。核酸には、DNAおよびRNAが含まれ、一本鎖または二本鎖であってもよく;直鎖、分枝鎖または環状であってもよく;そして任意の長さであってもよい。核酸には、二重鎖形成可能なもの、ならびに三重鎖形成核酸が含まれる。例えば、米国特許第5,176,996号および第5,422,251号を参照されたい。タンパク質には、限定されるわけではないが、DNA結合タンパク質、転写因子、クロマチンリモデリング因子、メチル化DNA結合タンパク質、ポリメラーゼ、メチラーゼ、デメチラーゼ、アセチラーゼ、デアセチラーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、インテグラーゼ、リコンビナーゼ、リガーゼ、トポイソメラーゼ、ジャイレースおよびヘリカーゼが含まれる。
【0084】
[00105]外因性分子は、内因性分子と同じタイプの分子、例えば外因性タンパク質また
は核酸であってもよい。例えば、外因性核酸は、感染性ウイルスゲノム、細胞内に導入されるプラスミドまたはエピソーム、あるいは細胞中に通常は存在しない染色体を含むことも可能である。外因性分子の細胞内への導入のための方法は、当業者に知られ、そしてこれには、限定されるわけではないが、脂質仲介性トランスファー(すなわち中性および陽イオン性脂質を含むリポソーム)、エレクトロポレーション、直接注入、細胞融合、微粒子銃、リン酸カルシウム共沈殿、DEAE-デキストラン仲介性トランスファーおよびウイルスベクター仲介性トランスファーが含まれる。外因性分子はまた、内因性分子と同じタイプの分子であるが、細胞が由来するものとは異なる種に由来するものであってもよい
。例えば、ヒト核酸配列を、マウスまたはハムスターに元来由来する細胞株内に導入することも可能である。外因性分子を植物細胞内に導入するための方法が当業者に知られ、そしてこれには、限定されるわけではないが、プロトプラスト形質転換、シリコンカーバイド(例えばWHISKERSTM)、アグロバクテリウム仲介性形質転換、脂質仲介性トランスファー(すなわち中性および陽イオン性脂質を含むリポソーム)、エレクトロポレーション、直接注入、細胞融合、微粒子銃(例えば「遺伝子銃」を用いる)、リン酸カルシウム共沈殿、DEAE-デキストラン仲介性トランスファーおよびウイルスベクター仲介性トランスファーが含まれる。
【0085】
[00106]対照的に「内因性」分子は、特定の発生段階、特定の環境条件下で、特定の細
胞中に通常存在するものである。例えば、内因性核酸は、染色体や、ミトコンドリア、葉緑体または他の細胞内小器官のゲノム、あるいは天然存在エピソーム核酸を含むことも可能である。さらなる内因性分子には、タンパク質、例えば転写因子および酵素が含まれることも可能である。
【0086】
[00107]本明細書において、用語「外因性核酸の産物」には、ポリヌクレオチドおよび
ポリペプチド産物の両方、例えば転写産物(ポリヌクレオチド、例えばRNA)および翻訳産物(ポリペプチド)が含まれる。
【0087】
[00108]「融合」分子は、2またはそれより多いサブユニット分子が、好ましくは共有
結合性、連結されている分子である。サブユニット分子は、同じ化学的タイプの分子であってもよいし、または異なる化学的タイプの分子であってもよい。第一のタイプの融合分子の例には、限定されるわけではないが、融合タンパク質(例えば、ZFPまたはTALE DNA結合ドメインおよび1つまたはそれより多い活性化ドメインの間の融合)および融合核酸(例えば、上記の融合タンパク質をコードする核酸)が含まれる。第二のタイプの融合分子の例には、限定されるわけではないが、三重鎖形成核酸およびポリペプチドの間の融合、ならびに副溝結合剤および核酸の間の融合が含まれる。
【0088】
[00109]細胞における融合タンパク質の発現は、細胞への融合タンパク質の送達から、
または細胞への融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドの送達から生じることも可能であり、ここでポリヌクレオチドは転写され、そして転写物は翻訳されて、融合タンパク質を生成する。トランススプライシング、ポリペプチド切断およびポリペプチド連結はまた、細胞におけるタンパク質の発現に関与することも可能である。細胞へのポリヌクレオチドおよびポリペプチド送達のための方法は、本開示の別の箇所に提示される。
【0089】
[00110]「遺伝子」には、本開示の目的のため、遺伝子産物(以下を参照されたい)を
コードするDNA領域、ならびにこうした遺伝子制御要素配列が、コードおよび/または転写される配列に隣接していてもまたはいなくても、遺伝子産物の産生を制御するDNA領域(遺伝子制御要素)が含まれる。したがって、遺伝子には、必ずしも限定されるわけではないが、プロモーター配列、ターミネーター、翻訳制御配列、例えばリボソーム結合部位および内部リボソーム進入部位、エンハンサー、サイレンサー、インスレーター、境界要素、複製起点、マトリックス付着部位および遺伝子座制御領域が含まれる。
【0090】
[00111]「遺伝子発現」は、遺伝子中に含有される情報の遺伝子産物への変換を指す。
遺伝子産物は、遺伝子の直接転写産物(例えばmRNA、tRNA、rRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、構造RNAまたはRNAの任意の他のタイプ)またはmRNAの翻訳によって産生されるタンパク質であってもよい。遺伝子産物にはまた、例えば、キャップ付加、ポリアデニル化、メチル化、および編集などのプロセスによって修飾されるRNA、ならびに例えばメチル化、アセチル化、リン酸化、ユビキチン化、ADP-リボシル化、ミリスチン化、およびグリコシル化によって修飾されるタンパク質も含まれる。
【0091】
[00112]遺伝子発現の「調節」は、遺伝子活性の変化を指す。発現の調節には、限定さ
れるわけではないが、遺伝子活性化および遺伝子抑制、ならびにタンパク質およびmRNAなどの遺伝子発現産物の活性および/または安定性(例えば転写、翻訳、および/または翻訳後レベルでの発現調節)が含まれることも可能である。ゲノム編集(例えば切断、改変、不活性化、ランダム突然変異)を用いて、発現を調節することも可能であり、また、RNAiまたはアンチセンスオリゴ(ASO)仲介性mRNA切断および/または翻訳遮断も使用可能である。遺伝子不活性化は、本明細書に記載するようなZFP、TALE、NgAgoまたはCRISPR/Cas系を含まない細胞に比較した際、遺伝子発現のいかなる減少も指す。したがって、遺伝子不活性化は、部分的または完全であってもよい。
【0092】
[00113]「関心対象の領域」は、外因性分子が結合することが望ましい細胞クロマチン
の任意の領域、例えば、遺伝子、あるいは遺伝子内または遺伝子に隣接した非コード配列である。結合は、ターゲティング化DNA切断および/またはターゲティング化組換えの目的のためであってもよい。関心対象の領域は、例えば、染色体、エピソーム、細胞内小器官ゲノム(例えばミトコンドリア、葉緑体)、または感染性ウイルスゲノム中に存在していてもよい。関心対象の領域は、遺伝子のコード領域内、転写された非コード領域内、例えばリーダー配列、トレーラー配列またはイントロン内、あるいはコード領域の上流または下流の非転写領域内であってもよい。関心対象の領域は、単一ヌクレオチド対と同程度に小さいか、または長さ最大2,000ヌクレオチド対、またはヌクレオチド対の任意の整数値であってもよい。
【0093】
[00114]「真核」細胞には、限定されるわけではないが、幹細胞(多能性および多分化
能)を含む、真菌細胞(例えば酵母)、植物細胞、動物細胞、哺乳動物細胞およびヒト細胞(例えばオリゴデンドロサイト)が含まれる。
【0094】
[00115]用語「機能可能であるような連結」および「機能可能であるように連結された
」(または「機能的連結」)は、2またはそれより多い構成要素(例えば配列要素)の並置に関して、交換可能に用いられ、ここで、構成要素は、両方の構成要素が正常に機能し、そして少なくとも1つの構成要素が少なくとも1つの他の構成要素に対して発揮する機能を仲介可能である可能性を許容するように配置される。例示のため、転写制御要素配列が、1つまたはそれより多い転写制御要素の存在または非存在に反応して、コード配列の転写レベルを調節するならば、転写制御要素配列、例えばプロモーターは、コード配列に機能可能であるように連結されている。転写制御要素配列は、一般的に、コード配列とシスで、機能可能であるように連結されるが、コード配列に直接隣接している必要はない。例えば、エンハンサーは、隣接していないとしても、コード配列に機能可能であるように連結された転写制御要素配列である。
【0095】
[00116]融合ポリペプチドに関して、用語「機能可能であるように連結された」は、構
成要素の各々が、このように連結されていなかった場合にそうであるように、他の構成要素に連結した際も同じ機能を実行するという事実を指すことも可能である。例えば、ZFP、TALE、NgAgoまたはCas DNA結合ドメインが活性化ドメインに融合している融合ポリペプチドに関して、融合ポリペプチドにおいて、ZFP、TALE、NgAgoまたはCas DNA結合ドメイン部分がそのターゲット部位および/または結合部位に結合可能である一方、活性化ドメインが遺伝子発現を上方制御可能であるならば、ZFP、TALE、NgAgoまたはCas DNA結合ドメイン、および活性化ドメインは、機能可能であるように連結されている。ZFP、TALE、NgAgoまたはCas DNA結合ドメインが切断ドメインに融合している融合ポリペプチドの場合、融合ポリペプチドにおいて、ZFP、TALE、NgAgoまたはCas DNA結合ドメイン
がそのターゲット部位および/または結合部位に結合可能である一方、切断ドメイン部分がターゲット部位の近傍でDNAを切断可能であるならば、ZFP、TALE、NgAgoまたはCas DNA結合ドメイン、および切断ドメインは、機能可能であるように連結されている。
【0096】
[00117]タンパク質、ポリペプチドまたは核酸の「機能的断片」は、その配列が、全長
タンパク質、ポリペプチドまたは核酸と同一ではないが、全長タンパク質、ポリペプチドまたは核酸と同じ機能を保持する、タンパク質、ポリペプチドまたは核酸である。機能的断片は、対応する天然分子より多い、少ないまたはそれと同じ数の残基を所持してもよく、そして/または1つまたはそれより多いアミノ酸またはヌクレオチド置換を含有してもよい。核酸の機能(例えばコード機能、別の核酸にハイブリダイズする能力)を決定するための方法は、当該技術分野に周知である。同様に、タンパク質機能を決定するための方法が周知である。例えば、ポリペプチドのDNA結合機能は、例えば、フィルター結合、電気泳動移動度シフト、または免疫沈降アッセイによって決定可能である。DNA切断は、ゲル電気泳動によってアッセイ可能である。Ausubelら、上記を参照されたい。タンパク質が別のタンパク質と相互作用する能力は、例えば共免疫沈澱、2ハイブリッドアッセイあるいは遺伝的および生化学的両方の補完によって決定可能である。例えば、Fieldsら(1989)Nature 340:245-246;米国特許第5,585,245号およびPCT WO 98/44350を参照されたい。
【0097】
[00118]「ベクター」は、ターゲット細胞に遺伝子配列をトランスファー可能である。
典型的には、「ベクター構築物」、「発現ベクター」、および「遺伝子トランスファーベクター」は、関心対象の遺伝子の発現を指示可能であり、そしてターゲット細胞に遺伝子配列をトランスファー可能である任意の核酸構築物を意味する。したがって、該用語には、クローニング、および発現ビヒクル、ならびに組込みベクターが含まれる。
【0098】
[00119]用語「被験体」および「患者」は、交換可能に用いられ、そして哺乳動物、例
えばヒト患者および非ヒト霊長類、ならびに実験動物、例えばウサギ、イヌ、ネコ、ラット、マウス、および他の動物を指す。したがって、用語「被験体」または「患者」は、本明細書において、本発明のヌクレアーゼ、ドナーおよび/または遺伝子修飾細胞を投与可能な任意の哺乳動物患者または被験体を意味する。本発明の被験体には、ミエリン関連障害を持つものが含まれる。
【0099】
[00120]「幹細胞性」は、任意の細胞が幹細胞様の様式で作用する相対的能力、すなわ
ち任意の特定の幹細胞が有しうる、全能性、多能性、または少能性(oligopotency)、および拡張されたかまたは不確定の自己再生の度合いを指す。
【0100】
[00121]「機能的ミエリン産生を増進させる細胞」によって、(修飾を伴わない細胞に
比較した際に)ミエリン産生量の増加を示す細胞、および/または細胞によって産生されたミエリンの機能的能力の改善を示す細胞を意味する。
【0101】
[00122]用語「インデル」は、生物または細胞のヌクレオチド配列における塩基の挿入
、欠失、その組み合わせを指す。挿入(挿入突然変異とも称される)は、ヌクレオチド配列への1つまたはそれより多いヌクレオチド塩基対の付加であり、一方、欠失は、ヌクレオチド配列の部分が取り除かれる突然変異を指す。単一塩基から染色体の全ピースまで、任意の数のヌクレオチドが挿入されるかまたは欠失されることも可能である。
【0102】
[00123]「ナンセンス仲介性崩壊」は、未成熟な翻訳終結コドン(PTC)を含有する
mRNA転写物を排除する、真核細胞における翻訳カップリング機構を指す。哺乳動物細胞において、多くの例で、PTCがイントロン上流に位置する場合にのみ、強いmRNA
減少が起こるため、NMDはまた、プレmRNAスプライシングにも結び付けられる。
【0103】
概要
[00124]本明細書記載の態様は、プロテオリピドタンパク質1(PLP1)遺伝子を破
壊するかまたは不活性化するように遺伝子修飾された細胞を生成する方法、およびヒトミエリン関連障害の治療におけるその使用のための方法に関する。本出願は、部分的に、グリア細胞および接合体におけるPLP1不活性化インデルの効率的な部位特異的導入の立証に基づく。PLP1遺伝子のヌクレアーゼ仲介性編集は、ミエリン関連障害ペリツェウス・メルツバッハ病(PMD)のjimpyマウスモデルにおいて正常な機能および完全な寿命を回復するとともに、in vitroでPMDモデル・グリア細胞における機能を回復することが示されてきている。理論によって束縛されることなしに、PLP1関連毒性は、PLP1遺伝子の不活性化によってバイパスされ、それによって修飾されたグリア細胞またはオリゴデンドロサイトが機能的ミエリンを作製する能力を増進させると考えられる。
【0104】
[00125]本明細書に記載するのは、PLP1遺伝子またはその制御要素における部位特
異的挿入または欠失(インデル)である。PLP1遺伝子をターゲティングする際、これは、PLP1発現の有効でそして永続的な不活性化または減少を提供するであろう。部位特異的ヌクレアーゼまたは遺伝子編集PLP1遺伝子破壊組成物は、例えば、1つまたはそれより多いAAVベクター、インテグラーゼ欠損レンチウイルスベクター(IDLV)、および/または核酸、例えばプラスミド、ミニサークルプラスミドおよびオリゴヌクレオチドを用いて送達することも可能である。
【0105】
[00126]やはり本明細書において、神経幹細胞(NSC)および/またはオリゴデンド
ロサイト前駆細胞(OPC)およびその子孫において、増進された機能的ミエリン産生能を生成するため、PLP1遺伝子またはその遺伝子制御要素の正確なin situ編集を記載する。NSCおよび/またはOPCにおける内因性PLP1遺伝子内へのin situの破壊性突然変異のヌクレアーゼまたは遺伝子編集仲介性導入は、編集された細胞の子孫に、これらの増進された能力を与える。さらに、NSCまたはOPCにおける内因性遺伝子へのin situのPLP1制御遺伝子の特異的ノックアウトまたは突然変異は、細胞の子孫における、増進された/改善された機能的ミエリン産生を与える。
【0106】
[00127]細胞機能および生存度に有意に影響を及ぼすことなく、記載するような細胞お
よび方法を、動物モデルおよび/またはヒト患者に移植することも可能である。さらに、細胞は、in vivoで持続する能力を維持し、そして移植後、被験体における機能的ミエリン産生を増進させることも可能である。
【0107】
[00128]方法の実施、ならびに本明細書に開示する組成物の調製および使用は、別に示
されない限り、当該技術分野の技術内であるような、分子生物学、生化学、クロマチン構造および分析、計算機化学、細胞培養、組換えDNAおよび関連分野における慣用的な技術を使用する。これらの技術は、文献中に完全に説明されている。例えば、Sambrookら MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989および第3版, 2001; Ausubelら, CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, John Wiley & Sons, New York, 1987および定期的改訂版; METHODS IN ENZYMOLOGYシリーズ, Academic Press,
San Diego; Wolffe, CHROMATIN STRUCTURE AND FUNCTION, 第3版, Academic Press, San Diego, 1998; METHODS IN ENZYMOLOGY, Vol.
304, “Chromatin” (P. M. WassarmanおよびA. P. Wolffe監修), Academic Press, San Diego, 1999;ならびにMETHODS IN MOLECULAR BIOLOGY, Vol. 119, “Chromatin Protocols” (P. B. Becker監修) Humana Press, Totowa, 1999を参照されたい。
【0108】
[00129]本発明のさらなる側面を以下のセクションに記載する。
融合分子
[00130]本明細書に記載するのは、細胞における、選択されるターゲット遺伝子(例え
ばPLP1またはその遺伝子制御要素)の切断に有用な組成物、例えばヌクレアーゼである。特定の態様において、融合分子(例えばヌクレアーゼ)の1つまたはそれより多い構成要素は、天然存在である。他の態様において、融合分子(例えばヌクレアーゼ)の1つまたはそれより多い構成要素は、非天然存在であり、すなわちDNA結合ドメイン(単数または複数)および/または切断ドメイン(単数または複数)において操作されている。例えば、天然存在ヌクレアーゼのDNA結合ドメインは、選択されるターゲット部位に結合するように改変されていることも可能である(例えば、同族結合部位とは異なる部位に結合するように操作されているメガヌクレアーゼ)。他の態様において、ヌクレアーゼは、異種DNA結合および切断ドメインを含む(例えばジンクフィンガーヌクレアーゼ;TALエフェクタードメインDNA結合タンパク質;異種切断ドメインを含むメガヌクレアーゼDNA結合ドメイン)。
【0109】
DNA結合ドメイン
[00131]特定の態様において、本明細書記載の組成物および方法は、ドナー分子への結
合および/または細胞ゲノム中の関心対象の領域への結合のため、メガヌクレアーゼ(ホーミング・エンドヌクレアーゼ)DNA結合ドメインを使用する。天然存在メガヌクレアーゼは、15~40塩基対切断部位を認識し、そして一般的に4つのファミリー:LAGLIDADGファミリー、GIY-YIGファミリー、His-CystボックスファミリーおよびHNHファミリーにグループ分けされる。例示的なホーミング・エンドヌクレアーゼには、I-SceI、I-CeuI、PI-PspI、PI-SceI-SceIV、I-CsmI、I-PanI、I-SceII、I-PpoI、I-SceIII、I-CreI、I-TevI、I-TevIIおよびI-TevIIIが含まれる。その認識配列が知られる。米国特許第5,420,032号;米国特許第6,833,252号; Belfortら(1997) Nucleic Acids Res.25:3379-3388; Dujonら(1989) Gene 82:115-118; Perlerら(1994) Nucleic Acids Res. 22, 1125-1127; Jasin (1996) Trends Genet.12:224-228; Gimbleら(1996) J. Mol. Biol.263:163-180; Argastら(1998) J. Mol. Biol.280: 345-353、およびNew England Biolabsカタログを参照されたい。さらに、ホーミング・エンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼのDNA結合特異性を操作して、非天然ターゲット部位に結合させることも可能である。例えば、Chevalierら(2002) Molec. Cell 10:895-905; Epinatら(2003) Nucleic Acids Res.31:2952-2962;
Ashworthら(2006) Nature 441:656-659; Paquesら(2007) Current Gene Therapy 7:49-66;米国特許公報第20070117128号もまた参照されたい。ホーミング・エンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼのDNA結合ドメインは、全体として、ヌクレアーゼの背景で改変されることも可能であるし(すなわちヌクレアーゼが同族切断ドメインを含むように)、または異種切断ドメインに融合させることも可能である。
【0110】
[00132]他の態様において、本明細書記載の方法および組成物で用いるヌクレアーゼの
1つまたはそれより多くのDNA結合ドメインは、天然存在または操作された(非天然存在)TALエフェクターDNA結合ドメインを含む。例えば、その全体が本明細書に援用される米国特許第8,586,526号を参照されたい。キサントモナス属の植物病原性細菌は、重要な作物植物において多くの疾患を引き起こすことが知られる。キサントモナス属の病原性は、植物細胞内に25を超える異なるエフェクタータンパク質を注入する、保存されたIII型分泌(T3S)系に依存する。これらの注入されるタンパク質の中には、植物転写活性化因子を模倣し、そして植物トランスクリプトームを操作する転写活性化因子様(TAL)エフェクターがある(Kayら(2007)Science 318:648-651を参照されたい)。これらのタンパク質は、DNA結合ドメインおよび転写活性化ドメインを含有する。最もよく特徴付けられたTALエフェクターの1つは、キサントモナス・キャンペストグリスpv.ベシカトリア(Xanthomonas campestgris pv. Vesicatoria)由来のAvrBs3である(Bonasら(1989) Mol Gen Genet 218: 127-136およびWO2010079430を参照されたい)。TALエフェクターは、タンデムリピートの中心化ドメインを含有し、各リピートはおよそ34アミノ酸を含有し、これはこれらのタンパク質のDNA結合特異性に重要である。さらに、これらは、核局在化配列および酸性転写活性化ドメインを含有する(概説に関しては、Schornack Sら(2006) J Plant Physiol 163(3): 256-272を参照されたい)。さらに、植物病原性細菌、ラルストニア・ソラナセアルム(Ralstonia solanacearum)において、brg11およびhpx17と称される2つの遺伝子は、R.ソラナセアルム次亜種1株GM1000および次亜種4株RS 1000中にあり、キサントモナス属のAvrBs3ファミリーと相同であることが見出されてきている(Heuerら(2007) Appl and Envir Micro 73(13): 4379-4384を参照されたい)。これらの遺伝子は、ヌクレオチド配列で互いに98.9%同一であるが、hpx17のリピートドメインにおいて、1,575bpの欠失がある点で異なる。しかし、どちらの遺伝子産物も、キサントモナス属のAvrBs3ファミリータンパク質と、40%未満の配列同一性しか持たない。例えば、本明細書にその全体が援用される米国特許第8,586,526号を参照されたい。
【0111】
[00133]これらのTALエフェクターの特異性は、タンデムリピート中に見られる配列
に依存する。リピートされる配列は、およそ102bpであり、そしてリピートは、典型的には互いに91~100%相同である(Bonasら、同書)。リピートの多型性は、通常、12および13位に位置し、そしてTALエフェクターのターゲット配列中の隣接ヌクレオチドの同一性と、12および13位での高頻度可変性二残基(RVD)の同一性の間には、1対1対応があるようである(MoscouおよびBogdanove, (2009) Science 326:1501ならびにBochら(2009) Science 326:1509-1512を参照されたい)。実験的に、これらのTALエフェクターのDNA認識のための天然コードは、12および13位のHD配列がシトシン(C)への結合を導き、NGがTに結合し、NIがA、C、GまたはTに結合し、NNがAまたはGに結合し、そしてINGがTに結合するように決定されてきている。これらのDNA結合リピートは、リピートの新規の組み合わせおよび数を含むタンパク質に組み立てられて、新規配列と相互作用可能であり、そして植物細胞において、非内因性レポーター遺伝子の発現を活性化可能である人工的転写因子が作製されてきている(Bochら、同書)。操作されたTALタンパク質は、Fоk1切断ハーフドメインに連結されて、TALエフェクタードメインヌクレアーゼ融合体(TALEN)を生じている。例えば、米国特許第8,586,526号; Christianら((2010) <Genetics epub 10.1534/genetics. 110.120717)を参照されたい。特定の態様において、TALEドメインは、米国特許第8,586,52
6号に記載されるようなNキャップおよび/またはCキャップを含む。
【0112】
[00134]特定の態様において、in vivo切断および/または細胞ゲノムのターゲ
ティング化切断に用いられる1つまたはそれより多くのヌクレアーゼのDNA結合ドメインは、ジンクフィンガータンパク質を含む。好ましくは、ジンクフィンガータンパク質は、選択されるターゲット部位に結合するように操作されている点で非天然存在である。例えば、すべてその全体が本明細書に援用される、Beerliら(2002) Nature Biotechnol. 20:135-141; Paboら(2001) Ann. Rev. Biochem.70:313-340; Isalanら(2001) Nature Biotechnol.19:656-660; Segalら(2001) Curr. Opin. Biotechnol.12:632-637;
Chooら(2000) Curr. Opin. Struct. Biol.10:411-416;米国特許第6,453,242号;第6,534,261号;第6,599,692号;第6,503,717号;第6,689,558号;第7,030,215号;第6,794,136号;第7,067,317号;第7,262,054号;第7,070,934号;第7,361,635号;第7,253,273号;および米国特許公報第2005/0064474号;第2007/0218528号;第2005/0267061号を参照されたい。
【0113】
[00135]操作されたジンクフィンガー結合ドメインは、天然存在ジンクフィンガータン
パク質に比較して、新規結合特異性を有することも可能である。操作法には、限定されるわけではないが、合理的設計および多様なタイプの選択が含まれる。合理的設計には、例えば、3つ組(または4つ組)ヌクレオチド配列および個々のジンクフィンガーアミノ酸配列を含むデータベースの使用が含まれ、ここで各3つ組または4つ組ヌクレオチド配列は、特定の3つ組または4つ組配列に結合するジンクフィンガーの1つまたはそれより多いアミノ酸配列と会合する。例えば、本明細書にその全体が援用される、共有米国特許第6,453,242号および第6,534,261号を参照されたい。
【0114】
[00136]ファージディスプレイおよび2ハイブリッド系を含む例示的な選択法が、米国
特許第5,789,538号;第5,925,523号;第6,007,988号;第6,013,453号;第6,410,248号;第6,140,466号;第6,200,759号;および第6,242,568号;ならびにWO 98/37186; WO
98/53057; WO 00/27878; WO 01/88197およびGB
2,338,237に開示される。さらに、ジンクフィンガー結合ドメインに関する結合特異性の増進が、例えば、共有WO 02/077227に記載されてきている。
【0115】
[00137]さらに、これらのおよび他の参考文献に開示されるように、ジンクフィンガー
ドメインおよび/またはマルチフィンガーのジンクフィンガータンパク質は、例えば長さ5またはそれより多いアミノ酸のリンカーを含む、任意の適切なリンカー配列を用いて、ともに連結されることも可能である。長さ6またはそれより多いアミノ酸の例示的なリンカー配列に関しては、米国特許第6,479,626号;第6,903,185号;および第7,153,949号もまた参照されたい。本明細書記載のタンパク質には、タンパク質の個々のジンクフィンガーの間の適切なリンカーの任意の組み合わせが含まれることも可能である。
【0116】
[00138]いくつかの側面において、DNA結合ドメインは、PLP1遺伝子またはPL
P1遺伝子制御要素をターゲティングする。
[00139]ターゲット部位の選択;ZFPならびに融合タンパク質(および該タンパク質
をコードするポリヌクレオチド)の設計および構築のための方法は、当業者に知られ、そして米国特許第6,140,081号;第5,789,538号;第6,453,242
号;第6,534,261号;第5,925,523号;第6,007,988号;第6,013,453号;第6,200,759号; WO 95/19431; WO 96/06166; WO 98/53057; WO 98/54311; WO 00/27878; WO 01/60970 WO 01/88197; WO 02/099084; WO 98/53058; WO 98/53059; WO 98/53060; WO 02/016536およびWO 03/016496に詳細に記載される。
【0117】
[00140]さらに、これらおよび他の参考文献に開示されるように、ジンクフィンガード
メインおよび/またはマルチフィンガーのジンクフィンガータンパク質は、例えば長さ5またはそれより多いアミノ酸のリンカーを含む、任意の適切なリンカー配列を用いて、ともに連結されることも可能である。長さ6またはそれより多いアミノ酸の例示的なリンカー配列に関しては、米国特許第6,479,626号;第6,903,185号;および第7,153,949号もまた参照されたい。本明細書記載のタンパク質には、タンパク質の個々のジンクフィンガーの間の適切なリンカーの任意の組み合わせが含まれることも可能である。
【0118】
[00141]特定の態様において、DNA結合ドメインは、CRISPR/Casヌクレア
ーゼ系の一部である。例えば米国特許第8,697,359号および米国特許出願第14/278,903号を参照されたい。系のRNA構成要素をコードするCRISPR(クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート)遺伝子座、およびタンパク質をコードするcas(CRISPR関連)遺伝子座(Jansenら, 2002. Mol. Microbiol. 43: 1565-1575; Makarovaら, 2002. Nucleic Acids Res. 30: 482-496; Makarovaら, 2006. Biol. Direct 1: 7; Haftら, 2005. PLoS Comput. Biol. 1: e60)は、CRISPR/Casヌクレアーゼ系の遺伝子配列を構成する。微生物宿主におけるCRISPR遺伝子座は、CRISPR関連(Cas)遺伝子ならびにCRISPR仲介性核酸切断の特異性をプログラミング可能な非コードRNA要素の組み合わせを含有する。CRISPR-Cas系は、2つのクラスに分離される。クラス1は、いくつかのCasタンパク質をCRISPR RNA(crRNA)とともに用いて、機能的エンドヌクレアーゼを構築する。クラス2 CRISPR系は、crRNAと単一のCasタンパク質を用いる。
【0119】
[00142]クラス2 II型CRISPRは、最もよく特徴付けされている系の1つであ
り、そして4つの連続工程で、ターゲティング化DNA二重鎖切断を実行する。第一に、2つの非コーディングRNA、プレcrRNAアレイおよびtracrRNAがCRISPR遺伝子座から転写される。第二に、tracrRNAがプレcrRNAのリピート領域にハイブリダイズし、そしてプレcrRNAの、個々のスペーサー配列を含有する成熟crRNAへのプロセシングを仲介する。第三に、成熟crRNA:tracrRNA複合体が、crRNA上のスペーサー、およびターゲット認識のさらなる必要条件であるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)に隣接するターゲットDNA上のプロトスペーサーの間のワトソン・クリック塩基対形成を通じて、ターゲットDNAに機能的ドメイン(例えばヌクレアーゼ、例えばCas)を導く。最後に、Cas9が、ターゲットDNAの切断を仲介して、プロトスペーサー内の二重鎖切断を生成する。CRISPR/Cas系の活性は、3つの工程:(i)「適応」と称されるプロセスにおける、将来の攻撃を防止するための、異質な(alien)DNA配列のCRISPRアレイへの挿入;(ii)適切なタンパク質の発現、ならびにアレイの発現およびプロセシング、その後(iii)異質な核酸でのRNA仲介性干渉を含む。したがって、細菌細胞において、いわゆる「Cas」タンパク質のいくつかは、CRISPR/Cas系の天然機能に関与し、そして異質なDNAの挿入などの機能において役割を果たす。
【0120】
[00143]特定の態様において、Casタンパク質は、天然存在Casタンパク質の「機
能的誘導体」であることも可能である。天然配列ポリペプチドの「機能的誘導体」は、天然配列ポリペプチドと共通の定性的生物学的特性を有する化合物である。「機能的誘導体」には、対応する天然配列ポリペプチドと共通の生物学的活性を有する限り、限定されるわけではないが、天然配列の断片および天然配列ポリペプチドの誘導体、ならびにその断片が含まれる。本明細書で意図する生物学的活性は、機能的誘導体が、DNA基質を断片に加水分解する能力である。用語「誘導体」は、ポリペプチドのアミノ酸配列変異体、共有結合性の修飾の両方、およびその融合体、例えば誘導体Casタンパク質を含む。Casポリペプチドまたはその断片の適切な誘導体には、限定されるわけではないが、Casタンパク質またはその断片の突然変異体、融合体、共有結合性の修飾が含まれる。Casタンパク質またはその断片、ならびにCasタンパク質またはその断片の誘導体を含むCasタンパク質は、細胞から得られうるか、または化学的に合成されるか、あるいはこれらの2つの方法の組み合わせによることも可能である。細胞は、Casタンパク質を天然に産生する細胞、あるいはCasタンパク質を天然に産生し、そして遺伝子操作されて内因性Casタンパク質をより高い発現レベルで産生する細胞、または内因性Casと同じもしくは異なるCasをコードする、外因性に導入された核酸から、Casタンパク質を産生する細胞であることも可能である。いくつかの場合、細胞は天然にはCasタンパク質を産生せず、そしてCasタンパク質を産生するように遺伝子操作される。いくつかの態様において、Casタンパク質は、AAVベクターを通じた送達のための小さいCas9オルソログである(Ranら(2015)Nature 510, p.186)。特定の態様において、Casタンパク質はSaCas9またはSpCas9Casタンパク質である。
【0121】
[00144]特定の態様において、Cas9タンパク質は、哺乳動物Cas9、あるいはス
トレプトコッカス・ピオゲネス、髄膜炎菌(Neisseria Meningitidis)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、肺炎球菌(Streptococcus pneumnoniae)、カンピロバクター・コリ(Campylobacter coli)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、ストレプトコッカス・ムタンス(Streptococcus mutans)、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、ビフィドバクテリウム・ロングム(Bifidobacterium longum)、バチルス・スミシー(Bacillus smithii)、トレポネーマ・デンティコラ(Treponema denticola)、マイコプラズマ・カニス(mycoplasma canis)またはエンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、スッテレラ・ワドスウォーセンシス(Sutterella wadsworthensis)、フィリファクター・アロシス(Filifactor alocis)、ラクトバチルス・ジョンソニ(Lactobacillus johnsonii)、カンピロバクター・ラリ(Campylobacter lari)、コリネバクター・ジフテリエ(Corynebacter diptheriae)、パルビバキュルム・ラバメンチボランス(Parvibaculum lavamentivorans)、マイコプラズマ・ガリセプティクム(Mycoplasma gallisepticum)、黄色ブドウ球菌亜種アウレウス(Staphylococcus aureus subsubspecies Aureus)、レジオネラ・ニューモフィラ・パリ(Legionella pneumophila Paris)、トレポネーマ・デンティコラ(Treponema denticola)、スタフィロコッカス・シュードインターメディウス(Staphylococcus pseudintermedius)、またはナイセリア・シネレ(Neisseria cinerea)由来のCas9である。
【0122】
[00145]特定の態様において、Cas9タンパク質は、1つまたはそれより多い核局在
配列を有する。
[00146]いくつかの態様において、DNA結合ドメインは、クラス2 V型CRISP
R/Cas Cpf1系の一部である。Cas9同様、Cpf1ヌクレアーゼは、RuvC様エンドヌクレアーゼドメインを含有するが、これらはCas9の第二のHNHエンドヌクレアーゼドメインおよびN末端アルファらせん認識ローブを欠く。Cpf1は、付着パターンでDNAを切断し、そして切断のため、Cas9によって必要とされる2つ(tracrRNAおよびcrRNA)ではなく、1つのRNAしか必要としない。Cpf1の付着端切断パターンは、伝統的な制限酵素クローニングと似た、方向性遺伝子トランスファーの可能性を開く。付着端仲介性遺伝子トランスファーは、相同組換え修復(HDR)を通じて修飾することが困難な非分裂細胞をターゲティングするために特に有用である可能性もある。Cpf1はまた、CRISPRによってターゲティング可能な部位の数を、SpCas9によって好まれる3’-NGG PAM部位を欠くATリッチ領域またはATリッチゲノムに拡大する(例えば、Zetscheら(2015) Cell 163(3):759-771およびMakarovaら, (2015) Nature Reviews Microbiology 13(11):722-736を参照されたい)。
【0123】
[00147]いくつかの態様において、DNA結合ドメインは、ヒト細胞におけるゲノム編
集に適したアルゴノートエンドヌクレアーゼ系の一部である。ヒト細胞におけるゲノム編集に適した例示的なアルゴノートエンドヌクレアーゼ系には、ナトロノバクテリウム・グレゴリー由来のアルゴノートDNAガイドエンドヌクレアーゼ(NgAgо)が含まれることも可能である(Gaoら(2016) Nature Biotechnology. 34: 768-773)。NgAgoは、~24ヌクレオチドの5’リン酸化一本鎖ガイドDNA(gDNA)に結合し、そしてgDNAを装填した際、部位特異的DNA二本鎖切断を効率的に生成する。5’リン酸化ssDNAをガイド分子として用いると、細胞オリゴヌクレオチドがNgAgoをミスリードする可能性が減少する。ガイド分子は、タンパク質発現中のNgAgoにしか付着できない。ガイドが装填されたなら、NgAgoはそのgDNAに対して、自由に遊離するssDNAを交換不能となる。NgAgo-gDNA系は、Cas9がそうであるようにはプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)を必要とせず、そしてガイド-ターゲットミスマッチに対する寛容性が低く、そして(G+C)リッチゲノムターゲットを編集する際に高い効率を所持するようである。
【0124】
[00148]恣意的なDNA配列の外因性ガイドDNAを、NgAgoタンパク質上に装填
することも可能である。NgAgo切断の特異性は、ガイドDNAによって導かれるため、研究者が特定する外因性のガイドDNAで形成されるNgAgo-DNA複合体は、したがって、NgAgoターゲットDNA切断を、研究者が特定する相補的なターゲットDNAに導くであろう。この方式で、DNA中にターゲティング化二本鎖切断を生成することも可能である。NgAgoガイドDNA系(または他の生物由来のオルソログAgo-ガイドDNA系)は、細胞内のゲノムDNAのターゲティング化切断を可能にする。こうした切断は、一本鎖または二本鎖のいずれかであることも可能である。哺乳動物ゲノムDNAの切断のため、哺乳動物細胞における発現のために最適化されたNgAgoコドンの型の使用が好ましいであろう。さらに、NgAgoタンパク質が細胞透過性ペプチドに融合される、in vitroで形成されるNgAgo-DNA複合体で細胞を処理することが好ましい可能性もある。さらに、突然変異誘発を通じて、37℃で改善された活性を有するNgAgoタンパク質の型を用いることが好ましい可能性もある。Ago-RNA仲介性DNA切断を用い、DNA切断の開発のために当該技術分野において標準的である技術を用いて、遺伝子ノックアウト、ターゲティング化遺伝子付加、遺伝子修正、ターゲティング化遺伝子欠失を含む、多数の結果に影響を及ぼすことも可能である。
【0125】
[00149]したがって、ヌクレアーゼには、塩基を挿入または欠失して(インデルを生成
して)遺伝子発現を不活性化するかまたは減少させることが望ましい、任意の遺伝子(例えばPLP1)におけるターゲット部位に特異的に結合するDNA結合ドメインが含まれる。
【0126】
切断ドメイン
[00150]任意の適切な切断ドメインを、機能可能であるようにDNA結合ドメインに連
結して、ヌクレアーゼを形成することも可能である。例えば、ZFP DNA結合ドメインがヌクレアーゼドメインに融合されて、ZFNが生成されてきており、ZFNは、操作された(ZFP)DNA結合ドメインを通じて、意図される核酸ターゲットを認識し、そして多様な生物におけるゲノム修飾での使用のためを含めて、ヌクレアーゼ活性を通じて、DNAをZFP結合部位の近くで切断することも可能である、機能的実体である。例えば、米国特許公報20030232410; 20050208489; 20050026157; 20050064474; 20060188987; 20060063231;および国際公報WO 07/014275を参照されたい。同様に、TALE
DNA結合ドメインは、TALENを生成するヌクレアーゼドメインに融合されてきている。例えば、米国特許第8,586,526号を参照されたい。
【0127】
[00151]上述のように、切断ドメインは、DNA結合ドメインに対して異種であること
も可能であり、例えばジンクフィンガーDNA結合ドメインおよびヌクレアーゼ由来の切断ドメイン、またはTALEN DNA結合ドメインおよび切断ドメイン、またはメガヌクレアーゼDNA結合ドメインおよび異なるヌクレアーゼ由来の切断ドメインであってもよい。異種切断ドメインは、任意のエンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼから得られることも可能である。切断ドメインが由来しうる例示的なエンドヌクレアーゼには、限定されるわけではないが、制限エンドヌクレアーゼおよびホーミング・エンドヌクレアーゼが含まれる。DNAを切断するさらなる酵素が知られる(例えばS1ヌクレアーゼ;マング・ビーン(mung bean)ヌクレアーゼ;膵臓DNase I;ミクロコッカス・ヌクレアーゼ;酵母HOエンドヌクレアーゼ)。これらの酵素(またはその機能的断片)の1つまたはそれより多くを切断ドメインおよび切断ハーフドメインの供給源として用いることも可能である。
【0128】
[00152]同様に、切断ハーフドメインは、切断活性のために二量体化が必要な、上に示
すような任意のヌクレアーゼまたはその断片に由来することも可能である。一般的に、融合タンパク質が切断ハーフドメインを含むならば、切断のために2つの融合タンパク質が必要である。あるいは、2つの切断ハーフドメインを含む単一のタンパク質を用いてもよい。2つの切断ハーフドメインが同じエンドヌクレアーゼ(またはその機能的断片)に由来してもよいし、または各切断ハーフドメインが異なるエンドヌクレアーゼ(またはその機能的断片)に由来していてもよい。さらに、2つの融合タンパク質のターゲット部位は、好ましくは、互いに対して、それぞれのターゲット部位への2つの融合タンパク質の結合が、例えば二量体化により、切断ハーフドメインが機能的切断ドメインを形成することを可能にする空間的配向で、切断ハーフドメインを互いに対して配置するように、配置される。したがって、特定の態様において、ターゲット部位の近位端は、5~8ヌクレオチドまたは15~18ヌクレオチド離れている。しかし、任意の整数のヌクレオチドまたはヌクレオチド対が、2つのターゲット部位の間に介在していることも可能である(例えば2~50ヌクレオチド対またはそれより多く)。一般的に、切断部位はターゲット部位間にある。
【0129】
[00153]制限エンドヌクレアーゼ(制限酵素)は、多くの種に存在し、そしてDNAへ
の(認識部位での)配列特異的結合、および結合部位でのまたはその近傍でのDNAの切断が可能である。特定の制限酵素(例えばIIS型)は、認識部位から離れた部位でDN
Aを切断し、そして分離可能な結合および切断ドメインを有する。例えば、IIS型酵素Fok Iは、一方の鎖上の認識部位から9ヌクレオチドおよびもう一方の鎖上の認識部位から13ヌクレオチドで、DNAの二本鎖切断を触媒する。例えば、米国特許第5,356,802号;第5,436,150号および第5,487,994号;ならびにLiら(1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA89:4275-4279; Liら(1993) Proc. Natl. Acad. Sci.
USA 90:2764-2768; Kimら(1994a) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:883-887; Kimら(1994b) J. Biol. Chem. 269:31,978-31,982を参照されたい。したがって、1つの態様において、融合タンパク質は、操作されていてもまたはされていなくてもよい、少なくとも1つのIIS型制限酵素由来の切断ドメイン(または切断ハーフドメイン)および1つまたはそれより多いジンクフィンガー結合ドメインを含む。
【0130】
[00154]切断ドメインが結合ドメインとは分離可能である例示的なIIS型制限酵素は
Fok Iである。この特定の酵素は、二量体として活性である。Bitinaiteら(1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95: 10,570-10,575。したがって、本開示の目的のため、開示した融合タンパク質に用いるFok I酵素の部分は、切断ハーフドメインと見なされる。したがって、ジンクフィンガー-Fok I融合体を用いたターゲティング化二本鎖切断および/または細胞性配列のターゲティング化置換のため、各々、Fok I切断ハーフドメインを含む2つの融合タンパク質を用いて、触媒活性切断ドメインを再構成することも可能である。あるいは、ジンクフィンガー結合ドメインおよび2つのFok I切断ハーフドメインを含有する単一ポリペプチド分子もまた使用可能である。ジンクフィンガー-Fok I融合体を用いたターゲティング化切断およびターゲティング化配列改変のためのパラメータは、本開示の別の箇所に提供される。
【0131】
[00155]切断ドメインまたは切断ハーフドメインは、切断活性を保持するか、または機
能的切断ドメインを形成するために多量体化(例えば二量体化)する能力を保持する、タンパク質の任意の部分であることも可能である。
【0132】
[00156]例示的なIIS型制限酵素が、本明細書にその全体が援用される国際公報WO
07/014275に記載される。さらなる制限酵素はまた、分離可能な結合および切断ドメインも含有し、そしてこれらは本開示によって意図される。例えば、Robertsら(2003) Nucleic Acids Res. 31:418-420を参照されたい。
【0133】
[00157]特定の態様において、切断ドメインは、例えば、本明細書にすべての開示の全
体が援用される、米国特許公報第20050064474号;第20060188987号;第20070305346号および第20080131962号に記載されるように、ホモ二量体化を最小限にするかまたは防止する、1つまたはそれより多い操作された切断ハーフドメイン(二量体化ドメイン突然変異体とも称される)を含む。Fok 1の446、447、479、483、484、486、487、490、491、496、498、499、500、531、534、537、および538位のアミノ酸残基はすべて、Fok1切断ハーフドメインの二量体化に影響を及ぼすためのターゲットである。
【0134】
[00158]1より多い突然変異を含む切断ドメインを用いてもよく、例えば、「E490
K:1538K」と称される操作された切断ハーフドメインを産生するための、1つの切断ハーフドメインにおける490位(E→K)および538位(I→K)の突然変異、そして「Q486E:I499」と称される操作された切断ハーフドメインを産生するための、別の切断ハーフドメインにおける486位(Q→E)および499位(I→L)の突
然変異によるもの;486位の野生型Gln(Q)残基をGlu(E)残基に、499位の野生型Iso(I)残基をLeu(L)残基に、そして496位の野生型Asn(N)残基をAsp(D)またはGlu(E)残基に置換する突然変異(それぞれ「ELD」および「ELE」ドメインとも称される);490、538および537位(野生型FokIに比較した番号付け)での突然変異を含む操作された切断ハーフドメイン、例えば490位の野生型Glu(E)残基をLys(K)残基に、538位の野生型Iso(I)残基をLys(K)残基に、そして537位の野生型His(H)残基をLys(K)残基またはArg(R)残基に置換する突然変異(それぞれ「KKK」および「KKR」ドメインとも称される);ならびに/あるいは490位および537位(野生型FokIに比較した番号付け)の突然変異を含む操作された切断ハーフドメイン、例えば490位の野生型Glu(E)残基をLys(K)残基に、そして537位の野生型His(H)残基をLys(K)残基またはArg(R)残基に置換する突然変異(それぞれ「KIK」および「KIR」ドメインと称される)がある。例えば、その開示の全体がすべての目的のために本明細書に援用される、米国特許第7,914,796号;第8,034,598号および第8,623,618号を参照されたい。他の態様において、操作された切断ハーフドメインは、「シャーキー」および/または「シャーキーの」突然変異を含む(Guoら, (2010) J. Mol. Biol. 400(1):96-107を参照されたい)。
【0135】
[00159]あるいは、ヌクレアーゼは、いわゆる「スプリット酵素」技術を用いて、核酸
ターゲット部位でin vivoで組み立て可能である(例えば米国特許公報第20090068164号を参照されたい)。こうしたスプリット酵素の構成要素は、別個の発現構築物上で発現されることも可能であるし、あるいは個々の構成要素が、例えば自己切断2AペプチドまたはIRES配列によって分離される1つのオープンリーディングフレーム中で連結されることも可能である。構成要素は、個々のジンクフィンガー結合ドメインまたはメガヌクレアーゼ核酸結合ドメインのドメインであることも可能である。
【0136】
[00160]例えば米国特許第8,563,314号に記載されるような酵母に基づく染色
体系において、使用前に、ヌクレアーゼを活性に関してスクリーニングすることも可能である。
【0137】
[00161]Cas9関連CRISPR/Cas系は、2つのRNA非コード構成要素:t
racrRNA、および同一のダイレクトリピート(DR)が間に配置されるヌクレアーゼガイド配列(スペーサー)を含有するプレcrRNAアレイを含む。CRISPR/Cas系を用いてゲノム操作を達成するため、これらのRNAの両方の機能が存在しなければならない(Congら, (2013) Sciencexpress1/10.1126/science 1231143を参照されたい)。いくつかの態様において、tracrRNAおよびプレcrRNAは別個の発現構築物を通じて、または別個のRNAとして供給される。
【0138】
[00162]他の態様において、操作された成熟crRNA(ターゲット特異性を与える)
をtracrRNA(Cas9との相互作用を供給する)に融合させてキメラcr-RNA-tracrRNAハイブリッド(単一ガイドRNAまたはsgRNAとも称される)を生成するように、キメラRNAを構築する。したがって、Cas9ヌクレアーゼとともに、本発明の方法におけるPLP1遺伝子の修飾は、非可変足場配列の5’のターゲットDNAに特異的なおよそ20塩基の配列を含有するsgRNAの導入を必要とする。sgRNAは、RNAとして、またはプロモーター下のsgRNAコード配列を含むプラスミドで形質転換することによって、送達可能である。特定の態様において、PLP1遺伝子の修飾において使用するためのsgRNA配列には、限定されるわけではないが、PLP1遺伝子のエクソン3をターゲティングするAAGACCACCATCTGCGGCAA
NGG(配列番号1)およびCCAGCAGGAGGGCCCCATAANGG(配列番号2)、PLP1遺伝子のエクソン1をターゲティングするGTCAGAGTGCCAAAGACATGGNNGRRT(配列番号3)が含まれる。
【0139】
ターゲット部位
[00163]上に詳細に記載するように、DNA結合ドメインは、選択する任意の配列に結
合するように操作されうる。操作されたDNA結合ドメインは、天然存在DNA結合ドメインに比較して、新規結合特異性を有しうる。
【0140】
[00164]特定の態様において、ターゲット部位(単数または複数)は、内因性PLP1
遺伝子のエクソンにある。ターゲティングのための適切なゲノムエクソン領域の限定されない例には、PLP1のエクソン1または3または7が含まれる。いくつかの態様において、ターゲット部位には、PLP1のエクソン3の5’の約80のヌクレオチドセグメントが含まれる。
【0141】
[00165]特定の態様において、ヌクレアーゼはPLP1遺伝子をターゲティングする。
特定の態様において、ヌクレアーゼは、プロモーターまたはエンハンサーなどのPLP1遺伝子制御要素をターゲティングする。
【0142】
ドナー
[00166]特定の態様において、本開示は、細胞ゲノム内への外因性配列のヌクレアーゼ
仲介性ターゲティング化組込みに関する。上述のように、外因性配列(「ドナー配列」または「ドナー」または「導入遺伝子」とも称される)の挿入は、例えば特定する領域の欠失(例えばPMD患者の約70%に現れるPLP1遺伝子複製の1つのコピーの欠失)および/または突然変異体遺伝子(例えばPMD患者の約30%に現れるPLP1点突然変異)の修正または野生型遺伝子の発現増加のためである。ドナー配列が、典型的には、配置されるゲノム配列と同一ではないことが容易に明らかであろう。ドナー配列は、関心対象の位置での効率的なHDRを可能にするため、相同性の2つの領域が隣接した非相同配列を含有することも可能であるし、または非相同組換え修復機構を通じて組み込まれることも可能である。さらに、ドナー配列は、細胞性クロマチンの関心対象の領域に相同でない配列を含有するベクター分子を含むことも可能である。ドナー分子は、細胞DNAに相同な、いくつかの不連続領域を含有することも可能である。さらに、関心対象の領域に通常存在しない配列のターゲティング化挿入のため、前記配列は、ドナー核酸分子中に存在し、そして関心対象の領域中の配列に相同な領域が隣接していることも可能である。
【0143】
[00167]ヌクレアーゼと同様に、ドナーをいかなる型で導入することも可能である。特
定の態様において、当該技術分野に知られる方法によって、DNAおよび/またはウイルスベクターを用いて、ドナーを導入することも可能である。例えば、米国特許公報第20100047805号および第20110207221号を参照されたい。ドナーは、二本鎖または一本鎖型で細胞に導入可能である。ドナーは環状または直鎖型で細胞に導入可能である。直鎖型で導入する場合、当業者に知られる方法によって、ドナー配列の末端を(例えばエキソヌクレアーゼ分解から)保護することも可能である。例えば、1つまたはそれより多いジデオキシヌクレオチド残基を直鎖分子の3’末端に付加し、そして/または自己相補オリゴヌクレオチドを一方または両方の末端に連結する。例えば、Changら(1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA84:4959-4963; Nehlsら(1996) Science 272:886-889を参照されたい。分解から外因性ポリヌクレオチドを保護するためのさらなる方法には、限定されるわけではないが、末端アミノ基(単数または複数)の付加、および修飾ヌクレオチド間連結の使用、例えばホスホロチオエート、ホスホロアミデート、およびO-メチルリボースまたはデオキシリボース残基の使用が含まれる。
【0144】
[00168]特定の態様において、ドナーには、長さ1kbより長い、例えば2~200k
bの間、2~10kb(またはその間の任意の値)の間の配列(例えばコード配列、導入遺伝子とも称される)が含まれる。ドナーにはまた、少なくとも1つのヌクレアーゼターゲット部位も含まれることも可能である。特定の態様において、ドナーには、少なくとも2つのターゲット部位、例えばZFN、TALEN、NgAgoまたはCRISPR/Casヌクレアーゼの対に関するものが含まれる。典型的には、ヌクレアーゼターゲット部位は、導入遺伝子を切断するため、導入遺伝子配列の外側、例えば導入遺伝子配列の5’および/または3’である。ヌクレアーゼ切断部位(単数または複数)は、任意のヌクレアーゼ(単数または複数)に関するものであることも可能である。特定の態様において、二本鎖ドナーに含有されるヌクレアーゼターゲット部位(単数または複数)は、切断されるドナーが相同性に非依存性の方法を通じて組み込まれている、内因性ターゲットを切断するために用いられる同じヌクレアーゼ(単数または複数)に関するものである。
【0145】
[00169]ドナーは、その発現が、組込み部位で、内因性プロモーター、すなわちドナー
が挿入される内因性遺伝子の発現を駆動するプロモーターによって駆動されるように挿入されることも可能である。しかし、ドナーが、プロモーターおよび/またはエンハンサー、例えば恒常性プロモーターあるいは誘導性または組織特異的プロモーターを含むことも可能であることが明らかであろう。
【0146】
[00170]内因性遺伝子のすべてかいくつかが発現されるかまたはまったく発現されない
ように、内因性遺伝子内にドナー分子を挿入することも可能である。いくつかの態様において、導入遺伝子は、PLP1が不活性化されるかまたはその発現が減少するように、PLP1またはPLP1遺伝子制御要素内に組み込まれる。
【0147】
[00171]さらに、発現のために必要とはされないが、外因性配列にはまた、転写または
翻訳制御または他の配列、例えばプロモーター、エンハンサー、インスレーター、内部リボソーム進入部位、2Aペプチドをコードする配列および/またはポリアデニル化シグナルが含まれることも可能である。さらに、スプライスアクセプター配列が含まれることも可能である。例示的なスプライスアクセプター部位配列が当業者に知られ、そしてこれには、例としてのみであるが、CTGACCTCTTCTCTTCCTCCCACAG(配列番号4)(ヒトHBB遺伝子由来)およびTTTCTCTCCACAG(配列番号5)(ヒト免疫グロブリンガンマ遺伝子由来)が含まれる。
【0148】
[00172]本明細書記載のドナー配列(導入遺伝子および/または修復テンプレート)は
、当該技術分野に知られる標準的技術、例えばPCRを用いて、プラスミド、細胞または他の供給源から単離されることも可能である。使用のためのドナーには、環状スーパーコイル、環状弛緩、直鎖等を含む多様な形態タイプが含まれることも可能である。あるいは、これらは、標準的なオリゴヌクレオチド合成技術を用いて、化学的に合成されてもよい。さらに、ドナーは、メチル化されていてもまたはメチル化を欠いていてもよい。ドナーは、細菌または酵母人工染色体(BACまたはYAC)の形であることも可能である。
【0149】
[00173]本明細書記載のドナーポリヌクレオチドには、1つまたはそれより多い非天然
塩基および/または主鎖が含まれることも可能である。特に、本明細書記載の方法を用いて、メチル化シトシンを含むドナー分子の挿入を実行して、関心対象の領域において、転写静止状態を達成することも可能である。
【0150】
[00174]外因性(ドナー)ポリヌクレオチドは、関心対象の任意の配列(外因性配列)
を含むことも可能である。例示的な外因性配列には、限定されるわけではないが、任意のポリペプチドコード配列(例えばcDNA)、プロモーター配列、エンハンサー配列、エ
ピトープタグ、マーカー遺伝子、切断酵素認識部位および多様なタイプの発現構築物が含まれる。マーカー遺伝子には、限定されるわけではないが、抗生物質耐性(例えばアンピシリン耐性、ネオマイシン耐性、G418耐性、ピューロマイシン耐性)を仲介するタンパク質をコードする配列、着色または蛍光または発光タンパク質(例えば緑色蛍光タンパク質、増進緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ)をコードする配列、ならびに増進された細胞増殖および/または遺伝子増幅を仲介するタンパク質(例えばジヒドロ葉酸レダクターゼ)をコードする配列が含まれる。エピトープタグには、例えば、FLAG、His、myc、Tap、HAまたは任意の検出可能アミノ酸配列の1つまたはそれより多いコピーが含まれる。
【0151】
[00175]いくつかの態様において、ドナーは、限定されるわけではないが、抗体、抗原
、酵素、受容体(細胞表面または核)、ホルモン、リンホカイン、サイトカイン、レポーターポリペプチド、増殖因子、および上記いずれかの機能的断片を含む、細胞における発現が望ましい、任意のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをさらに含む。コード配列は、例えばcDNAであることも可能である。
【0152】
[00176]特定の態様において、外因性配列は、ターゲティング化組込みを経ている細胞
の選択を可能にする、マーカー遺伝子(上記)、およびさらなる機能性をコードする連結された配列を含むことも可能である。マーカー遺伝子の限定されない例には、GFP、薬剤選択マーカー(単数または複数)等が含まれる。
【0153】
[00177]特定の態様において、ドナーには、例えば、突然変異有害内因性配列を置換す
る野生型遺伝子が含まれることも可能である。例えば、野生型(または他の機能的)遺伝子配列を、遺伝子の内因性コピーが突然変異されている幹細胞のゲノム内に挿入することも可能である。他の態様において、ドナーには、例えば、野生型内因性遺伝子を置換する突然変異体遺伝子が含まれることも可能である。例えば、野生型PLP1配列を幹細胞のゲノム内に挿入して、ミエリン関連障害に関与する内因性有害突然変異体PLP1遺伝子を突然変異させることも可能である。
【0154】
[00178]本明細書の解説にしたがった、こうした発現カセットの構築は、分子生物学の
技術分野に周知の方法論を利用する(例えばAusubelまたはManiatisを参照されたい)。トランスジェニック動物を生成するための発現カセットの使用の前に、適切な細胞株(例えば初代細胞、形質転換細胞、または不死化細胞株)に発現カセットを導入することによって、選択した制御要素と関連するストレス誘導因子に対する発現カセットの反応性を試験することも可能である。
【0155】
[00179]さらに、発現には必要ではないが、外因性配列にはまた、転写または翻訳制御
配列、例えばプロモーター、エンハンサー、インスレーター、内部リボソーム進入部位、2Aペプチドをコードする配列および/またはポリアデニル化シグナルもまた含まれることも可能である。さらに、関心対象の遺伝子の制御要素を、レポーター遺伝子に機能可能であるように連結して、キメラ遺伝子を生成することも可能である(例えばレポーター発現カセット)。
【0156】
[00180]非コード核酸配列のターゲティング化挿入もまた達成可能である。アンチセン
スRNA、RNAi、siRNA、shRNA、およびマイクロRNA(miRNA)をコードする配列もまた、ターゲティング化挿入に使用可能である。
【0157】
[00181]さらなる態様において、ドナー核酸は、さらなるヌクレアーゼ設計のための特
異的ターゲット部位である非コード配列を含むことも可能である。続いて、元来のドナー分子が切断され、そして関心対象の別のドナー分子の挿入によって修飾されるように、さ
らなるヌクレアーゼを細胞で発現させることも可能である。この方式で、ドナー分子の反復組込みが生成され、関心対象の特定の遺伝子座または安全なハーバー遺伝子座で特質スタッキング(trait stacking)を可能にすることも可能である。
【0158】
[00182]いくつかの態様において、ペリツェウス・メルツバッハ病(PMD)のjim
pyマウスモデルにおける再ミエリン形成および臨床的重症度の減少を評価するin vivoアッセイを用いて、本明細書記載の療法的遺伝子修飾組成物をさらにスクリーニングすることも可能である。
【0159】
遺伝子サイレンシング
[00183]特定の態様において、ヌクレアーゼはPLP1遺伝子をターゲティングする。
特定の態様において、ヌクレアーゼは、PLP1遺伝子制御要素、例えばプロモーターまたはエンハンサーをターゲティングする。
【0160】
[00184]いくつかの態様において、内因性PLP1遺伝子産物またはPLP1発現を促
進するPLP1制御要素遺伝子産物を修飾して、PLP1発現レベルを減少させる。特定の態様において、遺伝子サイレンシングを用いて、内因性PLP1遺伝子産物またはPLP1制御要素遺伝子産物を修飾して、細胞におけるPLP1発現レベルを減少させる。
【0161】
[00185]他の態様において、その必要がある被験体の組織または細胞において、PLP
1発現を促進するPLP1またはPLP1制御要素の発現を減少させるかまたは阻害する、遺伝子サイレンシング剤の使用を通じて、内因性PLP1遺伝子産物またはPLP1制御要素遺伝子産物を修飾する。「発現」は、遺伝子産物(典型的にはタンパク質、場合によって翻訳後修飾されたまたは機能的/構造性RNA)を産生する、遺伝子からの情報の全体の流れを意味する。
【0162】
[00186]いくつかの態様において、剤には、細胞におけるPLP1発現を阻害するかま
たは減少させるRNAi構築物が含まれることも可能である。RNAi構築物は、ターゲット遺伝子の発現を特異的に遮断しうる二本鎖RNAを含む。「RNA干渉」または「RNAi」は、元来、二本鎖RNA(dsRNA)が特異的に、そして転写後の方式で、遺伝子発現をブロッキングする、植物および虫において観察される現象に適用された用語である。
【0163】
[00187]本明細書において、用語「dsRNA」は、siRNA分子、または二本鎖特
徴を含み、そして細胞においてsiRNAにプロセシングされることが可能な他のRNA分子、例えばヘアピンRNA部分(shRNA)およびマイクロRNA(miRNA)を指す。
【0164】
[00188]用語「機能喪失」は、対象のRNAi法によって阻害される遺伝子を指す場合
、RNAi構築物の非存在下でのレベルに比較した際の遺伝子の発現レベルの減少を指す。
【0165】
[00189]本明細書において、句「RNAiを仲介する」は、RNAiプロセスにより分
解されようとするRNAを区別する能力を指し(示し)、例えば分解は配列非依存性dsRNA反応、例えばPKR反応ではなく、配列特異的方式で起こる。
【0166】
[00190]本明細書において、用語「RNAi構築物」は、in vivoで切断されて
、siRNAおよび/またはmiRNAを形成可能である、小分子干渉RNA(siRNA)、ヘアピンRNA、および他のRNA種(例えばmiRNA)を含めて、本明細書全体で用いられる一般的な用語である。本明細書のRNAi構築物にはまた、細胞において
dsRNAまたはヘアピンRNAを形成する転写物、および/またはin vivoでsiRNAを産生可能な転写物を生じさせることが可能な発現ベクター(RNAi発現ベクターとも称される)が含まれる。
【0167】
[00191]「RNAi発現ベクター」(本明細書において、「dsRNAコードプラスミ
ド」とも称される)は、構築物が発現される細胞において、siRNA/shRNA/miRNA部分を産生するRNAを発現する(転写する)ために用いられる複製可能核酸構築物を指す。こうしたベクターには、(1)遺伝子発現において制御性の役割を有する遺伝子要素(単数または複数)、例えばプロモーター、オペレーターまたはエンハンサーであって、(2)転写されて二本鎖RNAを生じる「コード」配列(細胞においてアニーリングしてsiRNAを形成する2つのRNA部分、またはsiRNAにプロセシング可能な単一のヘアピンRNA、またはmiRNA)に機能可能であるように連結されている(1)の遺伝子要素、ならびに(3)適切な転写開始および終結配列の組み立てを含む転写ユニットが含まれる。
【0168】
[00192]プロモーターおよび他の制御要素の選択は、一般的に、意図される宿主細胞、
例えばOPCにしたがって多様である。一般的に、組換えDNA技術における有用性の発現ベクターは、しばしば、環状二本鎖DNAループを指す「プラスミド」の形であり、プラスミドは、そのベクター型において、染色体には結合しない。本明細書において、「プラスミド」および「ベクター」は、プラスミドがベクターの最も一般的に用いられる型であるため、交換可能に用いられる。しかし、本出願は、同等の機能を提供するもの、そして続いて当該技術分野に知られるようになる他の型の発現ベクターを記載する。
【0169】
[00193]RNAi構築物は、細胞の生理学的条件下で、阻害しようとする遺伝子(すな
わち「ターゲット」遺伝子)のmRNA転写物の少なくとも部分のヌクレオチド配列にハイブリダイズするヌクレオチド配列を含有する。二本鎖RNAは、RNAiを仲介する能力を有する天然RNAに十分に類似であればよい。したがって、態様は、遺伝子突然変異、系統多型または進化分岐により期待されうる配列変動を許容する。ターゲット配列およびRNAi構築物配列の間の許容されるヌクレオチドミスマッチの数は、5塩基対中1、または10塩基対中1、または20塩基対中1、または50塩基対中1より多くない。siRNA二重鎖の中心のミスマッチは、最も重要であり、そして本質的にターゲットRNAの切断を無効にしうる。対照的に、ターゲットRNAに相補的であるsiRNA鎖の3’端のヌクレオチドは、ターゲット認識の特異性に有意には寄与しない。
【0170】
[00194]当該技術分野に知られる配列比較および整列アルゴリズムによって、そして例
えば、デフォルトパラメータを用いてBESTFITソフトウェアプログラムに実装されるようなスミス・ウォーターマンアルゴリズム(例えばウィスコンシン大学遺伝子計算グループ)によって、ヌクレオチド配列間の相違パーセントを計算することによって、配列同一性を最適化することも可能である。阻害性RNAおよびターゲット遺伝子の部分の間の90%より高い配列同一性、またはさらに100%の配列同一性が好ましい。あるいは、RNAの二重鎖領域を、ターゲット遺伝子転写物の部分とハイブリダイズ可能なヌクレオチド配列として、機能的に定義することも可能である。
【0171】
[00195]化学合成法によって、または組換え核酸技術によって、RNAi構築物の産生
を実行することも可能である。処理される細胞の内因性RNAポリメラーゼは、in vivoで転写を仲介することも可能であるし、またはin vitroの転写のために、クローニングされたRNAポリメラーゼを用いることも可能である。例えば、細胞ヌクレアーゼに対する感受性を減少させ、生物学的利用能を改善し、配合物特性を改善し、そして/または他の薬力学的特性を変化させるために、RNAi構築物には、リン酸-糖主鎖またはヌクレオシドのいずれかに対する修飾が含まれることも可能である。例えば、天然
RNAのホスホジエステル連結を修飾して、窒素またはイオウヘテロ原子の少なくとも1つを含めることも可能である。特異的遺伝子阻害を可能にする一方、dsRNAに対する一般的な反応を回避するように、RNA構造において修飾をあつらえることも可能である。同様に、塩基を修飾して、アデノシンデアミナーゼの活性をブロックすることも可能である。RNAi構築物を酵素的に産生するかまたは部分的/完全有機合成によって産生することも可能であり、修飾されたリボヌクレオチドを、in vitro酵素的または有機的合成によって、導入することも可能である。
【0172】
[00196]RNAi構築物を修飾するために、RNA分子を化学的に修飾する方法を適応
させることも可能である(例えば、Nucleic Acids Res, 25:776-780; J Mol Recog 7:89-98; Nucleic Acids Res 23:2661-2668; Antisense Nucleic Acid Drug Dev 7:55-61を参照されたい)。単に例示するために、RNAi構築物の主鎖は、ホスホロチオエート、ホスホロアミダイト、ホスホジチオエート、キメラメチルホスホネートーホスホジエステル、ペプチド核酸、5-プロピニル-ピリミジン含有オリゴマーまたは糖修飾で修飾されていることも可能である(例えば2’置換リボヌクレオシド、a-立体配置)。
【0173】
[00197]単一の自己相補的RNA鎖または2つの相補的RNA鎖によって、二本鎖構造
を形成することも可能である。RNA二重鎖形成は、細胞の内側または外側のいずれで開始することも可能である。細胞あたり少なくとも1コピーの送達を可能にする量で、RNAを導入することも可能である。二本鎖物質のより多い用量(例えば細胞あたり少なくとも5、10、100、500または1000コピー)がより効果的な阻害を生じる可能性もある一方、より少ない用量もまた、特定の適用には有用でありうる。RNAの二重鎖領域に対応するヌクレオチド配列が、遺伝子阻害のためにターゲティングされる点で、阻害は配列特異的である。
【0174】
[00198]特定の態様において、対象のRNAi構築物は、「小分子干渉RNA」または
「siRNA」である。これらの核酸は、長さおよそ19~30ヌクレオチドであり、さらにより好ましくは長さ21~23ヌクレオチドであり、例えばその長さは、より長い二本鎖RNAを「ダイシング」するヌクレアーゼによって生成される断片に対応する。siRNAは、ヌクレアーゼ複合体を補充し、そして特定の配列に対する対形成によって、該複合体をターゲットmRNAに導くと理解される。その結果、ターゲットmRNAは、タンパク質複合体中のヌクレアーゼによって分解される。特定の態様において、21~23ヌクレオチドのsiRNA分子は、3’ヒドロキシル基を含む。
【0175】
[00199]本明細書記載のsiRNA分子は、当業者に知られるいくつかの技術を用いて
得られうる。例えば、当該技術分野に知られる方法を用いて、siRNAを化学的に合成するかまたは組換え的に産生することも可能である。例えば、短いセンスおよびアンチセンスRNAオリゴマーを合成し、そしてアニーリングして、各端に2ヌクレオチドのオーバーハングを含む二本鎖RNA構造を形成することも可能である(Proc Natl Acad Sci USA, 98:9742-9747; EMBO J, 20:6877-88)。次いで、これらの二本鎖siRNA構造を、受動的取り込みまたは選択する送達系、例えば以下に記載するもののいずれかによって、細胞に直接導入することも可能である。
【0176】
[00200]特定の態様において、例えば酵素ダイサーの存在下で、より長い二本鎖RNA
のプロセシングによって、siRNA構築物を生成することも可能である。1つの態様において、ショウジョウバエ属(Drosophila)in vitro系を用いる。この態様において、dsRNAを、ショウジョウバエ属胚由来の可溶性抽出物と組み合わせ
て、それによって組み合わせを生じる。該組み合わせを、dsRNAが約21~約23ヌクレオチドのRNA分子にプロセシングされる条件下で維持する。
【0177】
[00201]当業者に知られる多くの技術を用いて、siRNAを精製することも可能であ
る。例えば、ゲル電気泳動を用いて、siRNAを精製することも可能である。あるいは、非変性法、例えば非変性カラムクロマトグラフィを用いて、siRNAを精製することも可能である。さらに、クロマトグラフィ(例えばサイズ排除クロマトグラフィ)、グリセロール勾配遠心分離、抗体を伴うアフィニティ精製を用いて、siRNAを精製することも可能である。
【0178】
[00202]特定の態様において、RNAi構築物は、ヘアピン構築物の形である(ヘアピ
ンRNAと称される)。ヘアピンRNAは、外因性に合成されてもよいし、またはin vivoでRNAポリメラーゼIIIプロモーターから転写することによって形成されてもよい。哺乳動物細胞においてこうしたヘアピンRNAを作製し、そして遺伝子サイレンシングに用いる例は、例えば、Genes Dev, 2002, 16:948-58; Nature, 2002, 418:38-9; RNA, 2002, 8:842-50;およびProc Natl Acad Sci, 2002, 99:6047-52に記載される。好ましくは、こうしたヘアピンRNAは、望ましい遺伝子の連続してそして安定した抑制を確実にするために、細胞または動物において操作される。siRNAが細胞におけるヘアピンRNAをプロセシングすることによって産生可能であることが当該技術分野に知られる。
【0179】
[00203]特定の態様において、RNAi構築物は、マイクロRNAまたはmiRNAの
形である。miRNAは、RNAポリメラーゼIIによって、それ自体の遺伝子またはイントロンのいずれかから転写される非コード一本鎖RNAである。転写後、一次miRNAはまず、ステム-ループ構造を持つプレmiRNA(約70ヌクレオチド)にプロセシングされ、そして次いで、機能的miRNA(21~23ヌクレオチド)にプロセシングされる。siRNAおよびshRNAと同様、miRNAはまた、mRNA分解および転写後遺伝子サイレンシングのため、RISCを用い、そして関心対象の任意のmRNAをターゲティングする潜在能力を有する。ターゲットmRNAと完全な相補性を有するsiRNAとは対照的に、miRNAは、ターゲットmRNAに不完全にしか結合しない。この部分的相補性結合は、各miRNAがターゲットmRNAの多くの類似のセットと潜在的に相互作用することを可能にする。mRNA分解に加えて、miRNAは、エンドヌクレアーゼ切断を伴わない翻訳的抑制を引き起こしうる。したがって、miRNAにターゲティングされる遺伝子は、ターゲットのmRNAレベルに影響を及ぼすことなく、翻訳的に制御されうる。siRNAに勝るmiRNAの潜在的な利点は、1つの単一のmiRNA転写物が多数のsiRNAにプロセシングされうることである。
【0180】
[00204]さらに他の態様において、例えば転写産物として、二本鎖RNAを送達するた
めにプラスミドを用いる。こうした態様において、RNAi構築物のセンスおよびアンチセンス鎖の各々に関して、「コード配列」を含むようにプラスミドを設計する。コード配列は、例えば逆位プロモーターによって隣接される、同じ配列であってもよいし、または各々別個のプロモーターの転写調節下にある、2つの別個の配列であってもよい。コード配列が転写された後、相補的RNA転写物は塩基対形成して、二本鎖RNAを形成する。
【0181】
[00205]PCT出願WO01/77350は、真核細胞において、同じ導入遺伝子のセ
ンスおよびアンチセンスRNA転写物の両方を生じる、導入遺伝子の二方向性転写のためのベクターの例を記載する。したがって、特定の態様は、以下のユニークな特性を有する組換えベクターを提供し;該ベクターは、反対方向に配置され、そして関心対象のRNAi構築物の導入遺伝子に隣接する、2つの重複転写単位を有するウイルスレプリコンを含
み、ここで2つの重複転写単位は、宿主細胞において、同じ導入遺伝子断片から、センスおよびアンチセンスRNA転写物の両方を生じる。
【0182】
[00206]いくつかの態様において、レンチウイルスベクターをsiRNA、例えば小分
子ヘアピンRNA(shRNA)の長期発現に用いて、PLP1遺伝子の発現をノックダウンすることも可能である。遺伝子治療のためのレンチウイルスベクターの使用に関するいくつかの安全上の懸念があり続けているが、自己不活性化レンチウイルスベクターは、これらが哺乳動物細胞に容易にトランスフェクションするため、遺伝子治療の優れた候補と見なされる。
【0183】
[00207]例えば、OligoEngeneソフトウェア(OligoEngene、ワ
シントン州シアトル)を用いてsiRNAのターゲットとしての配列を同定し、PLP1発現の小分子ヘアピンRNA(shRNA)下方制御を生成することも可能である。オリゴ配列をアニーリングし、そして直線化pSUPER RNAiベクター(OligoEngene、ワシントン州シアトル)に連結し、そして大腸菌株DH5α細胞に形質転換することも可能である。陽性クローンを選択した後、カルシウム沈殿によって、プラスミドを293T細胞にトランスフェクションすることも可能である。次いで、shRNAを含有する収集したウイルス上清を用いて、PLP1遺伝子産物を下方制御して、それによって細胞におけるPLP1発現レベルを減少させるために、哺乳動物細胞を感染させることも可能である。
【0184】
[00208]DNA用に開発されたキャリアーを、部分的に、その類似の物理化学的特性の
ために、RNAiに用いることもまた可能である。これらのキャリアーは、広く、2つのカテゴリー、すなわちウイルス性および非ウイルス性に分けることができる。RNAiのためのウイルス送達系に関する最近の総説を参照されたい(本明細書に援用される、CastanottoおよびRossi, The promises and pitfalls of RNA-interference-based therapeutics. Nature 457(7228):426-33, 2009)。非ウイルス性RNAiベクターは、典型的には、陽性荷電ベクター(例えば、陽イオン性細胞透過性ペプチド、陽イオン性ポリマーおよびデンドリマー、ならびに陽イオン性脂質)とRNAi構築物を複合体化し;小分子(例えばコレステロール、胆汁酸、および脂質)、ポリマー、抗体、およびRNAとRNAi構築物をコンジュゲート化し;そしてRNAi構築物をナノ微粒子配合物中に被包することを伴う。RNA主鎖の修飾は、そのRNAi効率に影響を及ぼすことなく、siRNAの安定性を改善する。RNAi送達系の選択は、siRNAの特性、ターゲット細胞のタイプ、およびin vivo適用のための送達経路に応じうる。
【0185】
[00209]特定の態様において、RNAi構築物を、陽イオン性細胞透過性ペプチド(C
PP)を通じて送達する。CPPは、タンパク質(例えば抗体)、ペプチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、およびプラスミドDNAを含む、巨大分子の細胞内送達に用いられてきている。伝統的なエンドサイトーシス経路を利用することに加えて、CPP仲介性RNAi送達系は、静電相互作用を通じて非共有結合性複合体を形成する(非共有結合性CPP-siRNA)か、またはジスルフィド結合を通じて共有結合性架橋を形成する(共有結合性CPP-siRNA)かいずれかであり、そして細胞膜を横断することによって、直接、細胞に進入可能である。
【0186】
[00210]特定の態様において、RNAi構築物を、ポリマー性およびデンドリマー性キ
ャリアーを通じて送達する。直鎖または分枝鎖陽イオン性ポリマーは、DNAおよびRNAのためのよく確立された効率的なトランスフェクション剤である。これらの陽性荷電ポリマーは、静電相互作用を通じて、核酸の陰性荷電リン酸とポリプレックスを形成するこ
とによって働く。siRNAの他の適切なポリマー性キャリアーには、ミセル、ナノプレックス、ナノカプセル、およびナノジェルが含まれる。ポリプレックスの特性(例えばサイズ、表面荷電、および構造)は、siRNAのリン酸基の数に対する、陽イオン性ポリマーの陽性電荷の比に依存する。多様なポリマー、例えばポリ-l-リジン、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリ-d,l-ラクチド-コ-グリコリド(PLGA)、ポリ(アルキルシアノアクリレート)、キトサン、およびゼラチンが適切である。他のものには、陽性荷電表面基を含むデンドリマーが含まれ、その正確なコア-シェルナノ構造が、内部被包、表面吸着、または化学的コンジュゲート化による薬剤装填を可能にする。例示的なデンドリマーには、デンドリマーの表面の特徴を改善するため、場合によるPEG化を伴う、陽イオン性ポリアミドアミン(PAMAM、アミノ末端表面);ポリ(プロピレンイミン)(PPI)、およびシクロデキストリン含有陽イオン性ポリマーおよびデンドリマーが含まれる。
【0187】
[00211]特定の態様において、RNAi構築物をバイオコンジュゲートとして送達する
。安定性、細胞内在化、または細胞特異的活性ターゲティング化送達を改善するため、小分子(例えばコレステロール、胆汁酸、および脂質)、ペプチド(例えば陽イオン性細胞透過性ペプチド)、ポリマー(例えばエンドソーム溶解剤、両親媒性ポリ(ビニルエーテル)PBAVE)、タンパク質(例えば抗体)、およびアプタマー(例えばRNAアプタマー)を含む多様な分子と、RNAi構築物をコンジュゲート化することも可能である。
【0188】
[00212]特定の態様において、RNAi構築物を、リポソーム、ミセル、マイクロエマ
ルジョン、および固形脂質ナノ粒子を含む、脂質に基づくキャリアーと共に送達する。リポソームは、相対的に単純であり、そして薬学的特性が周知であるため、一般的なsiRNAキャリアーである。癌薬剤のいくつかのリポソームキャリアーは、ヒトにおいて優れた安全性記録を示しており、そして1つ(Doxil)は、ヒト使用のため、FDA認可を受けている。脂質に基づくキャリアーもまた、内皮、RES臓器(例えば肝臓)、および固形腫瘍のターゲット部位に、siRNAを送達するために成功裡に用いられてきている(例えば、陽イオン性および融合性脂質のリポソームに装填されたsiRNAの静脈内または腹腔内注射)。
【0189】
[00213]特定の態様において、RNAi構築物を、分子トロイの木馬(例えばトロイの
木馬リポソーム(THL)配合物)およびアビジン-ビオチン技術の使用とともに送達する。分子トロイの木馬はまた、in vivoでshRNA発現プラスミドDNAを脳に送達する、トロイの木馬リポソームとしても配合可能である。非ウイルス性遺伝子治療の送達と同様、小分子ヘアピンRNA(shRNA)をコードするプラスミドDNAはまた、PEG化イムノリポソーム(PIL)と共に、静脈内投与後に、脳に送達されうる。例えば、プラスミドDNAをリポソーム(例えば100nmリポソーム)中に被包してもよく、これがPEG化され、そして受容体特異的ターゲティングモノクローナル抗体(MAb)とコンジュゲート化される。この送達手段を用いると、PILを伴う毎週の静脈内RNAiは、ヒト上皮増殖因子受容体(EGFR)の90%のノックダウンを可能にし、これは頭蓋内脳癌を有するマウスにおいて、生存時間の90%の増加を生じる。同じ技術を用いて、siRNAおよびmiRNAを含む他のRNAi構築物を、脳に送達することも可能である。例えば、siRNAは、ターゲティングMAbおよびストレプトアビジンのコンジュゲートの産生と平行して、モノビオチン化されてもよい。
【0190】
[00214]分子トロイの木馬(MTH)は、血液脳関門(BBB)を渡る受容体仲介性輸
送(RMT)を経る、内因性ペプチドまたはペプチド模倣性モノクローナル抗体(MAb)である。ペプチド模倣性MAbは、BBB受容体上の細胞外表面エピトープに結合し、これによって、内因性リガンドのBBB輸送の干渉を伴わずに、MAbがBBBを渡ってRMTを経ることが可能になる。ペプチド模倣性MAbは、BBB RMT系を通じて、
BBBを渡って、任意の付着した薬剤を、またはさらにプラスミドDNAを運びうる。
【0191】
[00215]脳薬剤送達のため、種特異的MAb分子トロイの木馬のパネルが開発されてき
ている。例えば、マウスにおける薬剤送達のため、マウスTfRに対するラット8D3 Mabが用いられる。このMTHは、ラットでは活性でない。ラットにおける脳薬剤送達のため、ラットTfRに対するネズミOX26 MAbが用いられ、そしてこのMTHはマウスまたは他の種において活性ではない。旧世界霊長類、例えばアカゲザル(Rhesus monkey)に対する脳薬剤送達のため、ヒトインスリン受容体(HIR)に対するネズミ83-14 MAbが用いられる。HIRMAbは、新世界霊長類、例えばリスザル(squirrel monkey)において活性ではない。HIRMAbの遺伝子操作された型、キメラHIRMAbおよびヒト化HIRMAbがどちらも産生されており、ヒトにおける脳薬剤送達が可能であった。
【0192】
[00216]分子トロイの木馬の静脈内投与後の脳へのタンパク質療法剤送達は、いくつか
の実験系に関してin vivoでの薬理学的実施に変形されてきている。Pardridge(Adv Drug Deliv Rev. 59(2-3):141-152,
2007)を参照されたい。静脈内投与を伴う、in vivoでの脳への組換えタンパク質送達のこれらの研究は、BBB MTHが、in vivoで、脳内に巨大分子療法剤を送達可能であることを立証する。
【0193】
[00217]in vivoでの非ウイルス性プラスミドDNA送達のため、トロイの木馬
リポソーム(THL)配合物を開発し、それによって、MTHはin vivoで安定であるような方式で非ウイルスプラスミドDNAと会合する。特に、単一プラスミドDNA分子は、~100nmリポソーム内部に被包され、その表面は数千のポリマー鎖、例えば2000Daポリエチレングリコール(PEG)とコンジュゲート化される。PEG鎖の1~2%の先端は、MTHとして作用する受容体(R)特異的MAbとコンジュゲート化される。これは、プラスミドDNAを被包するPEG化イムノリポソーム(PIL)の配合を生じる。ターゲティングMAbは、BBB受容体に結合して、血液から脳間質液へのRMTを誘発する。続いて、ターゲティングMAbは、脳細胞上の同じ受容体に結合して、脳細胞内空間内への受容体仲介性エンドサイトーシスを誘発する。通常、内因性リガンド、インスリンを核区画に送達するインスリン受容体の場合、インスリン受容体は、プラスミドDNAを脳細胞の核に送達し、その後、内因性導入遺伝子の発現が続く。典型的な配合物において、個々のリポソームにコンジュゲート化された30~80のMAb分子がある。リポソーム内部に完全には被包されない任意のDNAは、ヌクレアーゼ処理によって、徹底的に除去可能である。
【0194】
[00218]この技術を用いて、ルシフェラーゼおよびβ-ガラクトシダーゼレポーター遺
伝子(および類似の方式の多くの他の遺伝子)は、0.2mLの体積中、マウスあたり5μgプラスミドDNAの用量で、成体マウスへの静脈内注射によって、トロイの木馬リポソームでマウス脳に送達されてきている。この非ウイルス配合物の静脈内投与にしたがって、脳全体で導入遺伝子の全体の発現があった。発現パターンは、神経トランスフェリン受容体の発現と平行し、該受容体は、脳において遍在性である。導入遺伝子は、皮質および皮質下構造の両方、脈絡叢中、海馬中、中脳中、脊髄中で発現され、そして小脳のプルキニエ細胞層で高発現される。トロイの木馬リポソーム技術は、非ウイルス性配合物の静脈内投与後24時間以内に、「成体トランスジェニック」を可能にする。遺伝子は、脳の実質的にすべての細胞に送達される。10μgプラスミドDNA/kg体重の用量で、およそ3つ~4つのプラスミドDNA分子を成体霊長類脳の各脳細胞に送達することも可能である。
【0195】
[00219]同様の研究において、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)cDNAが、SV4
0プロモーターによって駆動される発現プラスミド中に配合された。ラットTfRに対するネズミOX26 MAbを用いて、ラット脳にターゲティング化されたトロイの木馬リポソーム中に、TH発現プラスミドが被包された。トロイの木馬リポソームを伴うTH遺伝子治療は、病変と同側の線条体TH酵素活性の完全な正常化を生じ、そしてアポモルヒネによって誘導される異常な回転行動の82%の減少を生じた。Pardridge(Adv Drug Deliv Rev. 59(2-3):141-152, 2007)を参照されたい。
【0196】
[00220]特定の態様において、組織特異的プロモーターを用いて、脳において導入遺伝
子(例えばRNAi構築物またはASO)の発現を駆動し、そして制限する。本発明で使用可能な1つの脳特異的プロモーターは、末梢(非CNS)組織における導入遺伝子の発現を除去するため、ヒトグリア線維性酸性タンパク質(GFAP)遺伝子の5’隣接配列(FS)を有することも可能である。したがって、組織特異的プロモーターおよびトロイの木馬リポソーム送達技術の組み合わせた使用によって、療法遺伝子のin vivo発現の特定の臓器または組織タイプ、例えば脳への局在化が可能になる。
【0197】
[00221]RNAi構築物(TfR MAbでターゲティングされるトロイの木馬リポソ
ームに被包される)のIV注射は、脳におけるRNAi構築物(shRNAコードプラスミドDNA)の発現を送達し、そして脳腫瘍において、ターゲット遺伝子発現の90%ノックダウンを達成するために用いられてきている。対側性の脳において、ターゲット遺伝子の測定可能な活性はなく、そしてRNAi遺伝子治療は、非ターゲット遺伝子の発現に影響を持たなかった。Pardridge(Adv Drug Deliv Rev. 59(2-3):141-152, 2007)を参照されたい。したがって、RNAiのin vivo療法的効果は、RNAi技術とトロイの木馬リポソームターゲティング化技術を組み合わせることによって可能となった。
【0198】
[00222]アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(ASO)、アンチセンスペプチド
核酸(PNA)、またはsiRNAいずれかの送達は、分子トロイの木馬へのこれらの剤の高アフィニティ付着を必要とする。MTHおよび核酸療法剤の間の結合は、in vivoの循環中で安定でなければならない。いくつかの態様において、こうした核酸を、ポリ陽イオン性ブリッジ、例えばポリリジンまたはプロタミンを通じてターゲティングリガンドに付着させることも可能である。あるいは、他の態様において、アビジン-ビオチン技術を用いて、こうした核酸療法剤をターゲティングリガンドに付着させてもよい。
【0199】
[00223]アビジンまたはストレプトアビジンおよびビオチンの間の結合は、非常に緊密
であり、そして血清タンパク質によって破壊されない。ターゲティングMAbおよびアビジンまたはストレプトアビジン(SA)のいずれかのコンジュゲートを1つのバイアル中で配合することも可能である。第二のバイアルにおいて、モノビオチン化アンチセンス剤(ASO)またはRNAi/siRNAを産生する。2つのバイアルを静脈内投与直前に混合する。ビオチンのアビジンまたはSA結合のアフィニティが非常に高いため、アンチセンス剤またはsiRNA、およびターゲティングMAbの間のコンジュゲートが即時形成される。アビジンまたはSAへのビオチン結合の解離半減期は89日であり、そして解離定数は10-15Mである。したがって、アンチセンス剤およびターゲティングMAbの間の循環中のin vivoでの会合は、静脈内投与後、数時間損なわれない(intact)ままである。アビジン-ビオチン連結を通じたターゲティングMAbへのアンチセンス剤の付着は、ターゲットRNAとアンチセンス剤のハイブリダイゼーションに阻害性の影響を持たない。これは、RNase保護アッセイおよびノーザンブロッティングの両方による以前の研究において立証された。
【0200】
[00224]この技術を用いて、ASO剤(ホスホロチオエート(PS)およびペプチド核
酸(PNA)、例えばモノビオチン化PNA)ならびにRNAi構築物(例えばモノビオチン化siRNA)は、MTHを用いて、脳に送達されてきている。
【0201】
[00225]特定の態様において、モノビオチン化siRNAを用いる代わりに、SAおよ
び分子トロイの木馬の化学的コンジュゲートが用いられる。さらに別の態様において、MAb-アビジン融合タンパク質を用いる。モノビオチン化siRNA、およびMTH-SAまたはMTH-アビジンコンジュゲートを、静脈内投与の前に混合することも可能である。MTHは、PNAアンチセンス剤に関して以前示されたものと同様に、BBBおよびBCMを渡ってsiRNA分子を運ぶことも可能である。
【0202】
[00226]別の態様において、PLP1またはPLP1発現を促進するPLP1制御要素
の発現を減少させるかまたは阻害する遺伝子サイレンシング剤には、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)が含まれることも可能である。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、特定のタンパク質をコードするmRNAのコード鎖(センス鎖)に相補的な(またはアンチセンスである)比較的短い核酸である。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、典型的にはRNAに基づくが、これらはまた、DNAに基づくことも可能である。さらに、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、しばしば、その安定性を増加させるように修飾されている。
【0203】
[00227]これらの比較的短いオリゴヌクレオチドのmRNAへの結合は、内因性RNa
seによるメッセージの分解を誘発する二本鎖RNAの伸展を誘導すると考えられる。さらに、オリゴヌクレオチドはときに、メッセージのプロモーター近傍に結合するように特に設計され、そしてこれらの状況下では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、さらに、メッセージの翻訳と干渉する可能性もある。アンチセンスオリゴヌクレオチドが機能する特定の機構に関わらず、細胞または組織へのその投与は、特定のタンパク質をコードするmRNAの分解を可能にする。したがって、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、特定のタンパク質(例えばPLP1)の発現および/または活性を減少させる。
【0204】
[00228]オリゴヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖の、DNAまたはRNAあるいは
そのキメラ混合物または誘導体または修飾型であることも可能である。オリゴヌクレオチドを塩基部分、糖部分、またはリン酸主鎖で修飾して、例えば、分子の安定性、ハイブリダイゼーション等を改善することも可能である。オリゴヌクレオチドには、他の付随する基、例えばペプチド(例えば宿主細胞受容体にターゲティングするため)、または細胞膜(例えばProc Natl Acad Sci 86:6553-6556; Proc Natl Acad Sci 84:648-652;1988年12月15日公開のPCT公報第WO88/09810号を参照されたい)もしくは血液脳関門(例えば1988年4月25日公開のPCT公報第WO89/10134号を参照されたい)を渡る輸送を促進する剤、ハイブリダイゼーション誘発性切断剤(例えばBioTechniques 6:958-976を参照されたい)あるいは挿入剤(例えばPharm Res 5:539-549を参照されたい)が含まれることも可能である。この目的に向けて、オリゴヌクレオチドを別の分子とコンジュゲート化するかまたはカップリングすることも可能である。
【0205】
[00229]本明細書記載のオリゴヌクレオチドを当該技術分野に知られる標準法によって
、例えば自動化DNA合成装置(Biosearch、Applied Biosystems等より商業的に入手可能なものなど)の使用によって合成することも可能である。例えば、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドを、Steinら(Nucl. Acids Res. 16:3209)の方法によって合成することも可能であるし、メチルホスホネートオリゴヌクレオチドを制御孔ガラスポリマー支持体の使用によって調製することも可能である(Proc Natl Acad Sci 85:7448-7451
)。
【0206】
[00230]適切なオリゴヌクレオチドの選択は当業者によって実行可能である。特定のタ
ンパク質をコードする核酸配列が与えられたならば、当業者は、タンパク質に結合するアンチセンスオリゴヌクレオチドを設計し、そしてin vitroまたはin vivo系でこれらのオリゴヌクレオチドを試験して、これらが、特定のタンパク質をコードするmRNAに結合し、そしてその分解を仲介することを確認することも可能である。特定のタンパク質に特異的に結合し、そしてその分解を仲介するアンチセンスオリゴヌクレオチドを設計するため、オリゴヌクレオチドによって認識される配列が、その特定のタンパク質にユニークであるかまたは実質的にユニークであることが重要である。例えば、タンパク質に渡ってしばしばリピートされる配列は、特定のメッセージを特異的に認識しそして分解するオリゴヌクレオチドの設計には理想的な選択ではない可能性がある。当業者は、オリゴヌクレオチドを設計し、そしてそのオリゴヌクレオチドの配列を、公的に利用可能なデータベースに寄託されている核酸配列に比較して、その配列が特定のタンパク質に特異的であるかまたは実質的に特異的であることを確認することも可能である。
【0207】
[00231]アンチセンスDNAまたはRNAを細胞に送達するためのいくつかの方法が開
発されてきており:例えばアンチセンス分子を組織部位に直接注射してもよいし、または望ましい細胞をターゲティングするように設計された修飾アンチセンス分子(例えばターゲット細胞表面上に発現される受容体または抗原に特異的に結合するペプチドまたは抗体に連結されたアンチセンス)を全身に投与してもよい。
【0208】
[00232]しかし、特定の例において、内因性mRNAの翻訳を抑制するために十分なア
ンチセンスオリゴヌクレオチドの細胞内濃度を達成することは困難でありうる。したがって、別のアプローチは、アンチセンスオリゴヌクレオチドが、強力なpol IIIまたはpol IIプロモーターの制御下に配置されている組換えDNA構築物を利用する。例えば、ベクターが細胞に取り込まれ、そしてアンチセンスRNAの転写を導くように、in vivoでベクターを導入することも可能である。こうしたベクターは、転写されて望ましいアンチセンスRNAを産生可能であるならば、エピソームに留まることも可能であるし、または染色体に組み込まれることも可能である。こうしたベクターは、当該技術分野で標準的な組換えDNA技術法によって構築されうる。ベクターは、哺乳動物細胞における複製および発現に用いられる、プラスミド、ウイルス性、または当該技術分野に知られる他のベクターであることも可能である。
【0209】
[00233]アンチセンスRNAをコードする配列の発現は、哺乳動物、好ましくはヒト細
胞において作用することが当該技術分野に知られるプロモーターによるものであることも可能である。こうしたプロモーターは、誘導性または恒常性であってもよい。こうしたプロモーターには、限定されるわけではないが:SV40初期プロモーター領域(Nature 290:304-310)、ラウス肉腫ウイルスの3’末端反復配列中に含有されるプロモーター(Cell 22:787-797)、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Proc Natl Acad Sci 78:1441-1445)、メタロチオネイン遺伝子の制御配列(Nature 296:39-42)等が含まれる。プラスミドのタイプである、コスミド、YACまたはウイルスベクターを用いて、組織部位に直接導入可能である組換えDNA構築物を調製することも可能である。あるいは、望ましい組織に選択的に感染するウイルスベクターを用いてもよく、この場合、別の経路(例えば全身性)によって投与を達成することも可能である。
【0210】
細胞
[00234]したがって、本明細書に提供するのは、、例えばPLP1のエクソン1または
3のヌクレオチド配列のターゲティング化欠失、あるいはPLP1発現を不活性化するか
または減少させる他の修飾(単数または複数)といった、PLP1遺伝子中に挿入または欠失(インデル)を含む、遺伝子修飾細胞である。細胞は、好ましくは、機能的ミエリンを産生するか、またはミエリン産生細胞の前駆細胞である。特定の態様において、細胞は、接合体、卵、神経幹細胞(NSC)、OPC、またはオリゴデンドロサイトである。特定の態様において、遺伝子修飾細胞は、PLP1のエクソン3の5’端に、PLP1発現を不活性化する約80ヌクレオチドのターゲティング化欠失を含む。やはり提供するのは、PLP1転写または翻訳に関与するPLP1制御要素が修飾されている、遺伝子修飾細胞である。
【0211】
[00235]インデル(挿入または欠失)は、典型的には、1つまたはそれより多いヌクレ
アーゼを用いて、細胞ゲノム内にターゲティング化方式で組み込まれる。特定の態様において、インデルは、例えばPLP1遺伝子の不活性化のため、PLP1に組み込まれる。特定の態様において、インデルは、ヌクレアーゼによる二本鎖切断(DSB)の導入(例えばPLP1遺伝子またはその制御要素中)後、NHEJまたは他の修復機構の結果として生成される。他の態様において、インデルは、PLP1と関連する内因性ゲノム遺伝子座、例えばPLP1遺伝子制御要素、例えばエンハンサーまたはプロモーター内、に組み込まれる。本明細書記載の細胞のいずれかにおいて、組込みは、エクソンおよび/またはイントロン内であることも可能である(例えばPLP1のエクソン1または3)。
【0212】
[00236]ランダムな組込みおよび欠失とは異なり、ターゲティング化組込みまたは欠失
は、インデルが特定の遺伝子内に組み込まれることを確実にする。インデルは、ターゲット遺伝子のどこに組み込まれることも可能である。特定の態様において、インデルまたはドナー配列は、ヌクレアーゼ切断部位、またはその近傍に組み込まれ、例えば切断部位の上流または下流1~3000(またはその間の任意の値)塩基対内、より好ましくは切断部位のいずれかの側の1~1000(またはその間の任意の値)塩基対内、あるいは1~500(またはその間の任意の値)塩基対内、あるいは切断部位のいずれかの側の1~100(またはその間の任意の値)塩基対内である。特定の態様において、ドナー導入遺伝子を含む、組み込まれる配列には、いかなるベクター配列(例えばウイルスベクター配列)も含まれない。
【0213】
[00237]限定されるわけではないが、細胞および細胞株を含む、任意の細胞タイプを、
本明細書に記載するように、PLP1発現を不活性化するかまたは減少させる配列を含むように遺伝子修飾することも可能である。本明細書に記載するような細胞の他の限定されない例には、接合体、神経幹細胞(NSC)、オリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)、ニューロン細胞、およびグリア細胞、例えばオリゴデンドロサイト、アストロサイト、上衣細胞、またはミクログリア細胞が含まれる。本明細書に記載するような細胞の他の限定されない例には、自己(例えば患者由来)または非相同(同種)多能、全能または多分化能幹細胞(例えば胚性幹細胞等)が含まれる。特定の態様において、本明細書に記載するような細胞はOPCである。
【0214】
[00238]本明細書に記載するような細胞は、障害を持つ被験体におけるミエリン関連障
害を、例えばex vivo療法によって治療し、そして/または防止する際に有用である。ヌクレアーゼ修飾細胞を拡大して、そして次いで、標準技術を用いて、患者内に再導入することも可能である。例えば、Tebasら(2014) New Eng J Med 370(10):901を参照されたい。幹細胞の場合、被験体内への注入後、これらの前駆体の、不活性化PLP1を発現する細胞へのin vivo分化もまた起こる。本明細書に記載するような細胞を含む医薬組成物もまた提供する。さらに、患者への投与前に、細胞を凍結保存することも可能である。
【0215】
[00239]本明細書に記載するような細胞およびex vivo法は、被験体におけるミ
エリン関連障害の治療および/または防止を提供し、そして連続した予防的薬剤投与または危険な療法の必要性を排除する。こうしたものとして、本明細書に記載する発明は、ミエリン関連障害を治療し、そして/または防止する、より安全で、費用効率的であり、そして時間効率のよい方法を提供する。
【0216】
送達
[00240]本明細書に記載するヌクレアーゼ、これらのヌクレアーゼをコードするポリヌ
クレオチド、ドナーポリヌクレオチド、ならびにタンパク質、オリゴヌクレオチドおよび/またはポリヌクレオチドを含む組成物を、任意の適切な手段によって送達してもよい。特定の態様において、ヌクレアーゼおよび/またはドナーをin vivoで送達する。他の態様において、ミエリン関連障害患者にex vivo送達する際に有用である修飾細胞の提供のため、ヌクレアーゼおよび/またはドナーを、単離細胞(例えば自己または非相同幹細胞)に送達する。
【0217】
[00241]本明細書に記載するようなヌクレアーゼを送達する方法は、例えば、そのすべ
ての開示が全体で本明細書に援用される、米国特許第6,453,242号;第6,503,717号;第6,534,261号;第6,599,692号;第6,607,882号;第6,689,558号;第6,824,978号;第6,933,113号;第6,979,539号;第7,013,219号;および第7,163,824号に記載される。
【0218】
[00242]本明細書に記載するようなヌクレアーゼおよび/またはドナー構築物はまた、
裸のDNAおよび/またはRNA(例えばmRNA)ならびに構成要素の1つまたはそれより多くをコードする配列を含有するベクターを含む、任意の核酸送達機構を用いても送達可能である。限定されるわけではないが、プラスミドベクター、DNAミニサークル、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター;ヘルペスウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルスベクター等、およびその組み合わせを含む、任意のベクター系が使用可能である。本明細書にその全体が援用される、米国特許第6,534,261号;第6,607,882号;第6,824,978号;第6,933,113号;第6,979,539号;第7,013,219号;および第7,163,824号、ならびに米国特許出願第14/271,008号もまた参照されたい。さらに、これらの系のいずれも、治療に必要な配列の1つまたはそれより多くを含むことも可能であることが明らかであろう。したがって、1つまたはそれより多いヌクレアーゼおよびドナー構築物が細胞内に導入される際、ヌクレアーゼおよび/またはドナーポリヌクレオチドは、同じ送達系または異なる送達機構で運ばれることも可能である。多数の系を用いる場合、各送達機構は、1つまたは多数のヌクレアーゼおよび/またはドナー構築物(例えば1つまたはそれより多いヌクレアーゼをコードするmRNAならびに/あるいは1つまたはそれより多いドナー構築物を所持するmRNAまたはAAV)をコードする配列を含むことも可能である。
【0219】
[00243]適切なベクターには、非組込み性、非免疫原性で、そして分裂中細胞および静
止細胞の両方を感染させることが可能な送達ベクターが含まれることも可能である。いくつかの態様において、Cas9ヌクレアーゼおよびsgRNAのin vivo送達は、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターによって仲介可能である。in vivo送達のためのAAVベクターには、中枢神経系に浸透し、そして被験体の中枢神経系のグリアミエリン産生細胞タイプ(オリゴデンドロサイト、OPC、NPC等)を感染させる能力を有するAAV血清型が含まれる。例示的な態様において、AAVベクターをCas9ヌクレアーゼ(例えばSaCas9またはSpCas9ヌクレアーゼ)のin vivo送達に使用する。特定の態様において、ヌクレアーゼSaCas9およびsgRNAを、細胞におけるPLP1のヌクレアーゼ仲介性遺伝子破壊のために、1つのAAVベクター内に
パッケージングする。以下のさらなる詳細を参照されたい。
【0220】
[00244]慣用的なウイルスおよび非ウイルスに基づく遺伝子トランスファー法を用いて
、細胞(例えば哺乳動物細胞)およびターゲット組織において、ヌクレアーゼおよびドナー構築物をコードする核酸を導入することも可能である。非ウイルスベクター送達系には、DNAプラスミド、DNAミニサークル、裸の核酸、および送達ビヒクル、例えばリポソーム、脂質ナノ粒子(LNP)、ポリ乳酸・グリコール酸ナノ粒子、ポリアミン錯体化剤、またはポロキサマーなどの送達ビヒクルと複合体化した核酸が含まれる。ウイルスベクター送達系には、細胞への送達後、エピソームまたは組み込まれたゲノムのいずれかを有する、DNAおよびRNAウイルスが含まれる。遺伝子治療法の概説に関しては、Anderson, Science256:808-813(1992); Nabel & Felgner, TIBTECH 11:211-217(1993); Mitani & Caskey, TIBTECH 11:162-166(1993); Dillon, TIBTECH 11:167-175(1993); Miller, Nature 357:455-460(1992); Van Brunt, Biotechnology 6(10):1149-1154(1988); Vigne, Restorative Neurology and Neuroscience 8:35-36(1995); Kremer & Perricaudet, British Medical Bulletin 51(1):31-44(1995); Haddadaら, Current Topics in Microbiology and Immunology中 DoerflerおよびBоehm(監修)(1995);およびYuら, Gene Therapy 1:13-26(1994)を参照されたい。
【0221】
[00245]核酸の非ウイルス送達法には、エレクトロポレーション、リポフェクション、
マイクロインジェクション、微粒子銃、ビロソーム、リポソーム、イムノリポソーム、ポリカチオンまたは脂質:核酸コンジュゲート、裸のDNA、裸のRNA、キャップ化RNA、人工的ビリオン、および剤により増進されたDNA取り込みが含まれる。例えばSonitron 2000系(Rich-Mar)を用いたソノポレーションもまた、核酸送達に使用可能である。
【0222】
[00246]さらなる例示的な核酸送達系には、Amaxa Biosystems(ドイ
ツ・ケルン)、Maxcyte, Inc.(メリーランド州ロックビル)、BTX分子送達系(マサチューセッツ州ホリストン)およびCopernicus Therapeutics Inc,(例えば米国特許第6,008,336号を参照されたい)に提供されるものが含まれる。リポフェクションは、例えば米国特許第5,049,386号;第4,946,787号;および第4,897,355号に記載され、そしてリポフェクション試薬は商業的に販売されている(例えばトランスフェクタムTMおよびリポフェクチンTM)。ポリヌクレオチドの効率的な受容体認識リポフェクションに適した陽イオン性および中性脂質には、Felgner、WO 91/17424、WO 91/16024のものが含まれる。いくつかの側面において、ヌクレアーゼをmRNAとして(例えばエレクトロポレーションを用いて)送達し、そしてウイルスベクター、ミニサークルDNA、プラスミドDNA、一本鎖DNA、直鎖DNA、リポソーム、ナノ粒子等の他の様式を通じて、導入遺伝子を送達する。
【0223】
[00247]イムノ脂質複合体などのターゲティング化されるリポソームを含む、脂質:核
酸複合体の調製は、当業者に周知である(例えば、Crystal, Science 270:404-410(1995); Blaeseら, Cancer Gene Ther.2:291-297(1995); Behrら, Bioconjugate Chem. 5:382-389(1994); Remyら, Bioconju
gate Chem. 5:647-654(1994); Gaoら, Gene Therapy 2:710-722(1995); Ahmadら, Cancer Res. 52:4817-4820(1992);米国特許第4,186,183号、第4,217,344号、第4,235,871号、第4,261,975号、第4,485,054号、第4,501,728号、第4,774,085号、第4,837,028号、および4,946,787を参照されたい)。
【0224】
[00248]さらなる送達法には、送達しようとする核酸のEnGeneIC送達ビヒクル
(EDV)へのパッケージングの使用が含まれる。これらのEDVは、二重特異性抗体を用いて、ターゲット組織に特異的に送達され、ここで、抗体の1つのアームはターゲット組織に対する特異性を有し、そしてもう一方はEDVに特異性を有する。抗体は、EDVをターゲット細胞表面に運び、そして次いで、EDVはエンドサイトーシスによって細胞内に取り込まれる。ひとたび細胞内に入ると、内容物が放出される(MacDiarmidら(2009) Nature Biotechnology 27(7):643を参照されたい)。
【0225】
[00249]操作されたCRISPR/Cas系をコードするか、あるいはターゲット細胞
内部でsiRNA、shRNA、またはmiRNAを産生可能なRNAi構築物をコードする核酸の送達のためのRNAまたはDNAウイルスに基づく系の使用は、体内で、特定の細胞にウイルスをターゲティングし、そしてウイルスペイロードを核に輸送するための非常に発展したプロセスを利用する。ウイルスベクターを被験体に直接投与してもよい(in vivo)し、またはこれらを用いてin vitroで細胞を処理し、そして修飾された細胞を被験体に投与してもよい(ex vivo)。CRISPR/Cas系の送達のための慣用的なウイルスに基づく系には、限定されるわけではないが、遺伝子トランスファーのためのレトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ワクシニアウイルスおよび単純ヘルペスウイルスベクターが含まれる。宿主ゲノムにおける組込みは、レトロウイルス、レンチウイルス、およびアデノ随伴ウイルス遺伝子トランスファー法で可能であり、しばしば、挿入された導入遺伝子の長期発現を生じる。さらに、多くの異なる細胞タイプおよびターゲット組織において、高い形質導入効率が観察されてきている。
【0226】
[00250]レトロウイルスの向性は外来エンベロープタンパク質を取り込むことによって
改変可能であり、ターゲット細胞の潜在的なターゲット集団を拡大可能である。レンチウイルスベクターは、非分裂細胞に形質導入または感染可能であり、そして典型的には高ウイルス力価を生じるレトロウイルスベクターである。レトロウイルス遺伝子トランスファー系の選択は、ターゲット組織に応じる。レトロウイルスベクターは、最大6~10kbの外来配列のためのパッケージング能を持つシス作用性末端反復配列で構成される。ベクターの複製およびパッケージングには、最小限のシス作用性LTRで十分であり、これは次いで、ターゲット細胞内への療法的遺伝子の組込みに用いられて、永続的な導入遺伝子発現を提供する。広く用いられるレトロウイルスベクターには、ネズミ白血病ウイルス(MuLV)、テナガザル(gibbon ape)白血病ウイルス(GaLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、およびその組み合わせに基づくものが含まれる(例えばBuchscherら, J. Virol. 66:2731-2739(1992); Johannら, J. Virol. 66:1635-1640(1992); Sommerfeltら, Virol.176:58-59(1990); Wilsonら, J. Virol.63:2374-2378(1989); Millerら, J. Virol. 65:2220-2224(1991); PCT/US94/05700を参照されたい)。
【0227】
[00251]アデノウイルスに基づくベクターは、多くの細胞タイプにおいて、非常に高い
形質導入効率であることが可能であり、そして細胞分裂を必要としない。こうしたベクターを用いて、高力価および高レベルの発現が得られてきている。このベクターは、比較的単純な系で、多量に産生可能である。アデノ随伴ウイルス(「AAV」)ベクターもまた、例えば核酸およびペプチドのin vitro産生において、そしてin vivoおよびex vivo遺伝子治療法のために、ターゲット核酸を細胞に形質導入するために用いられる(例えば、Westら, Virology 160:38-47(1987);米国特許第4,797,368号; WO 93/24641; Kotin, Human Gene Therapy 5:793-801(1994); Muzyczka, J. Clin. Invest. 94:1351(1994)を参照されたい)。組換えAAVベクターの構築は、米国特許第5,173,414号; Tratschinら, Mol. Cell. Biol. 5:3251-3260(1985); Tratschin,ら, Mol. Cell. Biol. 4:2072-2081(1984); Hermonat & Muzyczka, PNAS81:6466-6470(1984);およびSamulskiら, J. Virol.
63:03822-3828(1989)を含む、いくつかの刊行物に記載されている。AAV1、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6およびAAV8、AAV 8.2、AAV9、およびAAV rh10、ならびに偽型AAV、例えばAAV2/8、AAV2/5およびAAV2/6を含む、任意のAAV血清型が使用可能である。さらなるアデノウイルスに基づくベクターには、Devermanら(2016) Nature Biotechnology 204-209に記載されるAAV-PHP.Bベクターなどの、静脈内注射後に哺乳動物中枢神経系(CNS)に効率的にそして広く形質導入するAAV変異体が含まれる。
【0228】
[00252]形質導入剤を生成するための、ヘルパー細胞株に挿入された遺伝子による欠陥
ベクターの補完を伴うアプローチを利用する、少なくとも6つのウイルスベクターアプローチが、現在、臨床試験において遺伝子トランスファーに利用可能である。
【0229】
[00253]pLASNおよびMFG-Sは、臨床試験に用いられているレトロウイルスの
例である(Dunbarら, Blood 85:3048-305(1995); Kohnら, Nat. Med.1:1017-102(1995); Malechら, PNAS 94:22 12133-12138(1997))。PA317/pLASNは、遺伝子治療試験において用いられた第一の療法ベクターであった(Blaeseら, Science 270:475-480(1995))。MFG-Sパッケージングベクターに関しては、50%またはそれより大きい形質導入効率が観察されてきている(Ellemら, Immunol Immunother. 44(1):10-20(1997); Dranoffら, Hum. Gene Ther.1:111-2(1997)。
【0230】
[00254]組換えアデノ随伴ウイルスベクター(rAAV)は、欠損性および非病原性パ
ルボウイルス・アデノ随伴2型ウイルスに基づく有望な代替遺伝子送達系である。すべてのベクターは、導入遺伝子発現カセットに隣接するAAVの145塩基対(bp)末端逆位配列のみを保持するプラスミドに由来する。形質導入細胞ゲノム内への組込みによる、効率的な遺伝子トランスファーおよび安定導入遺伝子送達は、このベクター系の重要な特徴である(Wagnerら, Lancet351:9117 1702-3(1998), Kearnsら, Gene Ther. 9:748-55(1996))。AAV1、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV8、AAV9およびAAVrh10、ならびにライブラリーから選択された操作された突然変異体を含むそのすべての変異体を含む他のAAV血清型もまた、本発明にしたがって使用可能である。
【0231】
[00255]複製不全組換えアデノウイルスベクター(Ad)を高力価で産生可能であり、
そして該ベクターは、いくつかの異なる細胞タイプを容易に感染させることも可能である。大部分のアデノウイルスベクターは、導入遺伝子がAd E1a、E1b、および/またはE3遺伝子を置換するように操作され;続いて、複製不全ベクターはヒト293細胞中で増幅されて、トランスで、欠失した遺伝子機能を供給する。Adベクターは、in vivoで、分裂していない分化した細胞、例えば肝臓、腎臓および筋肉で見られるものを含む、多数のタイプの組織に形質導入可能である。慣用的なAdベクターは、大きな運搬能を有する。臨床試験において、Adベクターの使用例は、筋内注射を用いて、抗腫瘍免疫のためのポリヌクレオチド療法を伴った(Stermanら, Hum. Gene
Ther. 7:1083-9(1998))。臨床試験における遺伝子トランスファーのためのアデノウイルスベクターの使用のさらなる例には、Roseneckerら,
Infection 24:1 5-10(1996); Stermanら, Hum. Gene Ther. 9:7 1083-1089(1998); Welshら, Hum. Gene Ther. 2:205-18(1995); Alvarezら, Hum. Gene Ther. 5:597-613(1997); Topfら, Gene Ther. 5:507-513(1998); Stermanら, Hum. Gene Ther. 7:1083-1089(1998)が含まれる。
【0232】
[00256]パッケージング細胞を用いて、宿主細胞に感染可能なウイルス粒子を形成する
。こうした細胞株には、アデノウイルスをパッケージングする293細胞、およびレトロウイルスをパッケージングするΨ2細胞またはPA317細胞が含まれる。遺伝子治療に用いるウイルスベクターは、通常、ウイルス粒子に核酸ベクターをパッケージングする、産生細胞株によって生成される。該ベクターは、典型的には、パッケージングおよび宿主内への続く組込み(適用可能な場合)に必要な最小限のウイルス配列を含有し、他のウイルス配列は、発現されるべきタンパク質をコードする発現カセットによって置換されている。失われたウイルス機能は、パッケージング細胞株によって、トランスで供給される。例えば遺伝子治療で用いるAAVベクターは、典型的には、パッケージングおよび宿主ゲノム内への組込みに必要な、AAVゲノム由来の末端逆位(ITR)配列しか所持しない。ウイルスDNAは、細胞株であって他のAAV遺伝子、すなわちrepおよびcap、をコードするがITR配列を欠く、ヘルパープラスミドを含有する、前記細胞株においてパッケージングされる。該細胞株はまた、ヘルパーとしてのアデノウイルスにも感染する。ヘルパーウイルスは、AAVベクターの複製、およびヘルパープラスミドからのAAV遺伝子の発現を促進する。ヘルパープラスミドは、ITR配列を欠くため、有意な量ではパッケージングされない。アデノウイルスの混入は、例えば、アデノウイルスがAAVよりもより感受性である熱処理によって、減少させることも可能である。
【0233】
[00257]多くの遺伝子治療適用において、遺伝子治療ベクターは、特定の組織タイプに
対する高い度合いの特異性で送達されることが望ましい。したがって、ウイルスの外表面上のウイルスコートタンパク質を含む融合タンパク質として、リガンドを発現させることによって、所定の細胞タイプに特異性を有するように、ウイルスベクターを修飾することも可能である。関心対象の細胞タイプ上に存在することが知られる受容体に対するアフィニティを有するように、リガンドを選択する。例えば、Hanら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:9747-9751(1995)は、モロニーネズミ白血病ウイルスを修飾して、gp70に融合したヒト・ヘレグリンを発現させることが可能であり、そして該組換えウイルスが、ヒト上皮増殖因子受容体を発現する特定のヒト乳癌細胞を感染させることを報告した。この原理を他のウイルス-ターゲット細胞対に拡大することも可能であり、ここで、ターゲット細胞は受容体を発現し、そしてウイルスは、細胞表面受容体に対するリガンドを含む融合タンパク質を発現する。例えば、実質的に任意の選択される細胞受容体に対する特異性結合アフィニティを有する抗体断片(例えばFABまたはFv)をディスプレイするように、糸状ファージを操作することも
可能である。上記の説明は、主に、ウイルスベクターに当てはまるが、同じ原理が非ウイルスベクターにも当てはまりうる。特定のターゲット細胞による取り込みを支持する特異的取り込み配列を含有するように、こうしたベクターを操作することも可能である。
【0234】
[00258]個々の被験体への投与によって、典型的には全身投与(例えば静脈内、腹腔内
、筋内、皮下、舌下または頭蓋内注入)、以下に記載するような局所適用、または肺吸入を通じて、in vivoで遺伝子治療ベクターを送達することも可能である。あるいは、ベクターを、ex vivoで、細胞に、例えば個々の患者から外植された細胞(例えばOPC)または普遍的ドナー神経幹細胞に送達してもよく、その後、通常、ベクターを取り込んだ細胞を選択した後、患者に該細胞を再移植することも可能である。
【0235】
[00259]ヌクレアーゼおよび/またはドナー構築物を含有するベクター(例えばレトロ
ウイルス、アデノウイルス、AAV、リポソーム等)を、in vivoでの細胞の形質導入のため、生物に直接投与することも可能である。あるいは、裸のDNAを投与することも可能である。投与は、限定されるわけではないが、注射、注入、局所適用、吸入およびエレクトロポレーションを含む、グリア細胞と最終的に接触する分子を導入するために通常用いられる経路いずれかによる。こうした核酸を投与する適切な方法が利用可能であり、そして当業者に周知であり、そして1より多い経路を用いて、特定の組成物を投与することも可能であるが、特定の経路はしばしば、別の経路よりもより即時性があり、そしてより有効な反応を提供可能である。
【0236】
[00260]本明細書記載のポリヌクレオチドの導入に適したベクターには、非組込みレン
チウイルスベクター(IDLV)が含まれる。例えば、Oryら(1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:11382-11388; Dullら(1998) J. Virol. 72:8463-8471; Zufferyら(1998) J. Viro. 72:9873-9880; Follenziら(2000) Nature Genetics 25:217-222; 米国特許公報第2009/054985号を参照されたい。
【0237】
[00261]薬学的に許容されうるキャリアーは、部分的に、投与される特定の組成物によ
って、ならびに組成物の投与に用いる特定の方法によって決定される。したがって、以下に記載するように、利用可能な医薬組成物の非常に多様な適切な配合物がある(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第17版、1989を参照されたい)。
【0238】
[00262]ヌクレアーゼコード配列およびドナー構築物を、同じまたは異なる系を用いて
送達することも可能であることが明らかであろう。例えば、ドナーポリヌクレオチドをAAVによって運んでもよい一方、1つまたはそれより多いヌクレアーゼをmRNAによって運んでもよい。さらに、同じまたは異なる経路(筋内注射、尾静脈注射、他の静脈内注射、腹腔内投与および/または筋内注射)によって異なる系を投与してもよい。多数のベクターを同時にまたは任意の連続した順序で送達してもよい。
【0239】
[00263]ex vivoおよびin vivo投与の両方のための配合物には、液体中
の懸濁物または乳化液体が含まれる。活性成分はしばしば、薬学的に許容可能であり、そして活性成分と適合する賦形剤と混合される。適切な賦形剤には、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール等、およびその組み合わせが含まれる。さらに、組成物は、少量の補助剤、例えば湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、安定化剤、または医薬組成物の有効性を増進させる他の試薬を含有することも可能である。
【0240】
AAVによって送達される、CRISPR/Cas仲介性遺伝子サイレンシング
[00264]特定の態様において、PLP1遺伝子またはその制御要素、あるいはその一部
を特異的にターゲティングするガイドRNA(sgRNA)を含む、CRISPR/Cas系を送達することによって、本発明の方法を実行することも可能である。
【0241】
[00265]1つの態様において、この系は、場合による第三のAAVベクターとともに、
2つのAAVベクターを使用することも可能であり:1つはCas9またはその機能的オルソログをコードし、1つはPLP1遺伝子または制御要素のターゲティング化切断のためのガイドRNA配列を含有し、そして場合によって、別の1つは、欠陥PLP1遺伝子の修復または置換のため、切断部位で挿入されるべき、突然変異PLP1遺伝子(例えばPLP1点突然変異)のドナーcDNA配列を含有する。ドナー対Cas9構築物投与比は、1:1~5:1の間のいずれかの範囲でありうる。
【0242】
[00266]別の態様において、この系は、2つのAAVベクターを使用することも可能で
あり:1つは長さ3.5kb未満のCas9オルソログをコードし、そしてシスでコードされるガイドRNAを有し、そして1つのベクターは、切断部位で挿入されるべき、突然変異PLP1遺伝子のドナーcDNA配列を含有する。4.8kbより大きいターゲットに関しては、このドナーは、突然変異遺伝子の大部分の上流の修正を可能にする、該遺伝子の最大4.8kbの3’cDNA部分、または次いで正しい下流配列にスプライシングされるであろう、該遺伝子の5’プロモーターおよび上流cDNA部分のいずれかを含有することも可能である。
【0243】
[00267]さらなる態様において、この系は、2つのAAVベクターを使用し:1つはC
as9または機能的オルソログをコードし、そして1つはターゲット遺伝子の切断のための特異的なガイドRNA配列を含有する。
【0244】
[00268]さらに別の態様において、この系は、1つのAAVベクターを使用し、該ベク
ターは、機能的II型CRISPR-Cas9をコードする核酸、およびターゲット遺伝子(例えばPLP1)の切断のための特異的なガイドRNAを含む。
【0245】
[00269]1つの態様において、方法は、ターゲット遺伝子に結合し、前記ターゲット遺
伝子/ポリヌクレオチドの切断を達成して、それによってターゲット遺伝子を修飾する、例えばターゲット遺伝子を破壊するか、あるいはドナー核酸でターゲット遺伝子のすべてまたは部分を修正するかまたは置換する、CRISPR系の要素を含む、1つまたはそれより多いAAVベクター(典型的には1つ、2つまたは3つのAAVベクター)を提供する工程を含む。前記CRISPR系の要素には、ガイドRNA配列と複合体化可能であるCRISPR酵素、前記ターゲット遺伝子内でターゲット配列にハイブリダイズ可能な前記ガイドRNAが含まれる。
【0246】
[00270]ターゲット遺伝子での切断は、CRISPR酵素による1つまたは2つの鎖を
切断する工程を含む。いくつかの態様において、方法には、ドナー核酸の導入による、切断されたターゲット遺伝子の修正または置換が含まれ、ドナー核酸は、突然変異または欠陥ターゲット遺伝子を修正するタンパク質をコードする。
【0247】
[00271]本明細書に記載するようなCas遺伝子には、限定されるわけではないが、C
as3またはCas9が含まれる。酵素は、Cas9相同体またはオルソログであってもよい。Cas9オルソログには、ストレプトコッカス・ピオゲネス、髄膜炎菌、ストレプトコッカス・サーモフィルス、肺炎球菌、カンピロバクター・コリ、カンピロバクター・ジェジュニ、ストレプトコッカス・ムタンス、パスツレラ・マルトシダ、ビフィドバクテリウム・ロングム、バチルス・スミシー、トレポネーマ・デンティコラ、マイコプラズマ・カニスおよびエンテロコッカス・フェカリス由来のCas9が含まれることも可能であ
る。Cas9には、これらの生物に由来する突然変異Cas9が含まれることも可能である。
【0248】
[00272]例示的なAAVベクターには、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、A
AV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、RhlO、Rh74またはAAV-2i8のいずれかのカプシド配列、あるいはAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、RhlO、Rh74またはAAV-2i8のカプシド変異体が含まれる。本発明の組換えAAVベクターにはまた、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、RhlO、Rh74またはAAV-2i8、およびその変異体も含まれる。
【0249】
[00273]特定のカプシド変異体には、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AA
V5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、RhlO、Rh74またはAAV-2i8のカプシド変異体、例えばアミノ酸置換、欠失または挿入/付加を含むカプシド配列が含まれる。
【0250】
[00274]AAVベクターには、シスまたはトランスで機能するさらなる要素が含まれる
ことも可能である。特定の態様において、ベクターゲノムを含むAAVベクターはまた:ドナー配列の5’または3’末端に隣接する1つまたはそれより多い末端逆位(ITR)配列;ドナー配列の転写を駆動する発現制御要素(例えばプロモーターまたはエンハンサー)、例えば恒常的または調節可能制御要素、または組織特異的発現制御要素;イントロン配列、スタッファーまたはフィラーポリヌクレオチド配列;および/またはドナー配列の3’に位置するポリ-アデニン配列も有する。
【0251】
[00275]典型的には、発現制御要素は、機能可能であるように連結されたポリヌクレオ
チドの発現に影響を及ぼす核酸配列(単数または複数)である。本明細書に示すような発現制御要素を含む制御要素、例えばベクター内に存在するプロモーターおよびエンハンサーが、適切な核酸転写および翻訳(例えば、プロモーター、エンハンサー、イントロンに関するスプライシングシグナル、mRNAのインフレーム翻訳を可能にする遺伝子の正しいリーディングフレームの維持、および停止コドン等)、およびAAVパッケージングを促進するために含まれる。こうした要素は、典型的にはシスで作用し、「シス作用性」要素と称されるが、また、トランスで作用することも可能である。
【0252】
[00276]転写、翻訳、スプライシング、メッセージ安定性等のレベルで、発現制御を達
成することも可能である。典型的には、転写を調節する発現制御要素は、転写される核酸の5’端(すなわち「上流」)の近傍に並置される。発現制御要素はまた、転写される配列の3’端(すなわち「下流」)または転写物内(例えばイントロン中)に位置することも可能である。発現制御要素は、転写される配列に隣接して、または該配列から離れて位置することも可能である。典型的には、特定のベクター、例えばAAVベクターのポリヌクレオチド長限界のため、こうした発現制御要素は、転写される核酸の1~1000ヌクレオチド以内にあるであろう。
【0253】
[00277]「プロモーター」は、本明細書において、隣接配列に機能可能であるように連
結され、そしてプロモーターが存在しなかった際に発現される量と比較した際、核酸から発現される量を増加させる。
【0254】
[00278]「エンハンサー」は、本明細書において、核酸に隣接して位置し、典型的には
プロモーター要素の上流に位置するが、また、DNA配列(例えばドナー核酸)の下流またはその内部で機能し、そしてこうした位置に位置することも可能である。エンハンサー
要素は、核酸の上流または下流の100塩基対、200塩基対、あるいは300またはそれより多い塩基対以内に位置することも可能である。エンハンサー要素はまた、典型的には核酸の発現を増加させる。
【0255】
[00279]発現制御要素には、多くの異なる細胞タイプにおいて、ポリヌクレオチドの発
現を駆動可能な、遍在性または雑多なプロモーター/エンハンサーが含まれる。こうした要素には、限定されるわけではないが、サイトメガロウイルス(CMV)極初期プロモーター/エンハンサー配列、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター/エンハンサー配列および多様な哺乳動物細胞タイプで活性である他のウイルスプロモーター/エンハンサー、または天然に存在しない合成要素(例えば、Boshartら, Cell, 41
:521-530(1985)を参照されたい)、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)プロモーター、細胞質βアクチンプロモーターおよびホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーターが含まれる。
【0256】
[00280]発現制御要素にはまた、本明細書において、「組織特異的発現制御要素/プロ
モーター」と称される、特定の組織または細胞タイプにおいて活性であるものが含まれることも可能である。組織特異的発現制御要素は、典型的には、特定の細胞または組織(例えば眼、網膜、中枢神経系、脊髄、眼、網膜等)で活性である。特定の態様において、組織特異的発現制御要素は、CNS、例えば神経幹細胞、OPC、オリゴデンドロサイト等で活性である。特定の態様において、組織特異的発現制御要素は、接合体または卵において活性である。
【0257】
[00281]発現制御要素は、典型的にはこれらの細胞、組織または臓器において活性であ
り、これは、これらが特定の細胞、組織または臓器タイプにユニークである転写活性化タンパク質、または他の転写制御因子によって認識されるためである。
【0258】
[00282]発現制御要素はまた、制御可能な、すなわち、シグナルまたは刺激が、機能可
能であるように連結された核酸の発現を増加させるかまたは減少させる方式で、発現を与えることも可能である。シグナルまたは刺激に対して反応して、機能可能であるように連結された核酸の発現を増加させる制御可能要素はまた、「誘導性要素」(すなわちシグナルによって誘導される)とも称される。特定の例には、限定されるわけではないが、ホルモン(例えばステロイド)誘導性プロモーターが含まれる。シグナルまたは刺激に対して反応して、機能可能であるように連結された核酸の発現を減少させる制御可能要素は、「抑制性要素」(すなわちシグナルが除去されるかまたは存在しない際に、発現が増加するように、シグナルが発現を減少させる)と称される。典型的には、こうした要素によって与えられる増加または減少の量は、存在するシグナルまたは刺激の量に比例し;シグナルまたは刺激の量が多ければ、発現の増加または減少はより多くなる。
【0259】
[00283]発現制御要素にはまた、天然要素(単数または複数)も含まれる。核酸の発現
が天然発現を模倣可能であることが望ましい場合、天然制御要素(例えばプロモーター)を用いることも可能である。核酸の発現が時間的にまたは発生的に、あるいは組織特異的方式で、あるいは特定の転写刺激に反応して制御されるべきである場合、天然要素を用いることも可能である。他の天然発現制御要素、例えばイントロン、ポリアデニル化部位またはKozakコンセンサス配列もまた、用いてもよい。
【0260】
[00284]AAVベクターにはまた、フィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列
も含まれてもよい。例えば、ドナー核酸が、約4.7kb未満の長さを有する場合、フィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列は、ドナー核酸と組み合わされた際、組み合わせた全長が約3.0~5.5kbの間、または約4.0~5.0kbの間、または約4.3~4.8kbの間であるような長さを有する。
【0261】
[00285]フィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列は、ベクターの機能または
活性を妨げないように、任意の望ましい位で、ベクター配列中に位置することも可能である。1つの側面において、フィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列は、ドナー核酸配列のそれぞれの5’および/または3’末端に隣接する、5’および/または3’
ITR(例えば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、RhlO、Rh74またはAAV-2i8、およびその変異体のITR)の間に位置する。
【0262】
[00286]典型的には、フィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列は、不活性ま
たは非侵害性であり、そして機能または活性を持たない。多様な特定の側面において、フィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列は、細菌ポリヌクレオチド配列ではなく、フィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列は、タンパク質またはペプチドをコードする配列ではなく、フィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列は:ドナー配列、AAV末端逆位(ITR)配列、発現制御要素、またはポリアデニル化(ポリA)シグナルのいずれとも異なる配列である。多様な特定の側面において、フィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列は、ドナー配列と関連するまたは関連しない、イントロン配列である。
【0263】
[00287]イントロンは、ウイルス粒子へのAAVベクターパッケージングのための長さ
を達成するため、フィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列としても機能可能である。フィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列として機能するイントロンおよびイントロン断片(例えばFIXのイントロンIの部分)はまた、発現を増進させることも可能である。イントロン要素の包含は、イントロン要素の非存在下での発現に比較して、発現を増進させることも可能である(Kurachiら、1995、上記)。
【0264】
[00288]イントロンの使用は、天然存在ゲノム配列に限定されず、そして完全に異なる
遺伝子または他のDNA配列と関連するイントロンが含まれることも可能である。したがって、核酸の他の非翻訳(非タンパク質コード)領域、例えば同族(関連)遺伝子および非同族(非関連)遺伝子由来のゲノム配列中に見られるイントロンもまた、本発明にしたがって、フィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列として機能することも可能である。
【0265】
[00289]ドナー核酸、発現制御要素、ITR、ポリA配列、フィラーまたはスタッファ
ーポリヌクレオチド配列は長さが多様でありうる。特定の側面において、長さ約1~10、10~20、20~30、30~40、40~50、50~60、60~75、75~100、100~150、150~200、200~250、250~300、300~400、400~500、500~750、750~1,000、1,000~1,500、1,500~2,000、2,000~2,500、2,500~3,000、3,000~3,500、3,500~4,000、4,000~4,500、4,500~5,000またはそれより多いヌクレオチドで、最大AAVパッケージングサイズ限界までの配列であってもよい。
【0266】
[00290]AAVベクターによって、Cas9コード配列およびsgRNAを含むCRI
SPR/Cas系をターゲット細胞内に導入し/トランスファーし/形質転換し/トランスフェクションすることも可能である。用語「形質導入する」および「トランスフェクションする」は、核酸などの分子の、細胞または宿主生物内への導入を指す。したがって、形質導入細胞(例えば哺乳動物における、例えば細胞または組織または臓器細胞)は、外因性分子、例えばポリヌクレオチドまたはタンパク質(例えば導入遺伝子)の細胞内への取り込み後の細胞における遺伝子変化を意味する。したがって、「形質導入」細胞は、外
因性分子が導入されている細胞またはその子孫である。本発明の方法および使用において、形質導入細胞は、被験体中、例えばin vivoまたはex vivoであってもよい。
【0267】
[00291]本発明の方法および使用は、CRISPR/Cas/sgRNAおよび場合に
よってドナー核酸(導入遺伝子)を、分裂細胞および/または非分裂細胞を含む、宿主細胞内に送達する(形質導入する)ための手段を提供する。本発明のAAVベクター、方法、使用、および薬学的配合物は、さらに、治療法として、これらを必要とする被験体に、核酸またはタンパク質を送達するか、投与するかまたは提供する方法において、有用である。この方式で、核酸が転写され、そして被験体においてin vivoでタンパク質が産生されることも可能である。被験体は、核酸またはタンパク質の欠陥を有するため、あるいは被験体における核酸またはタンパク質の産生が、治療法または別のものとして、何らかの療法効果を与えるために、被験体が、核酸またはタンパク質から利益を得るかまたはこれらを必要としていることも可能である。
【0268】
[00292]多様な態様において、AAVベクターは、被験体における真核細胞に送達され
る。被験体は、典型的には動物であり、そしてこれには、ヒトおよび獣医学的適用が含まれる。したがって、適切な被験体には、哺乳動物、例えばヒト、ならびに非ヒト哺乳動物(例えば霊長類)が含まれる。他の被験体には、霊長類(類人猿、テナガザル、ゴリラ、チンパンジー、オランウータン、マカク)、家畜動物(イヌおよびネコ)、農場動物(ニワトリおよびアヒルなどの家禽類、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ)、および実験動物(マウス、ラット、ウサギ、モルモット)が含まれる。ヒト被験体には、胎児、新生児、幼児、若年層および成体被験体が含まれる。例えば、被験体は、20歳、15歳、10歳、5歳、3歳、2歳、1歳、6ヶ月、3ヶ月、または1ヶ月より若いヒトであることも可能である。被験体にはまた、動物疾患モデル、例えば血液凝固疾患および当業者に知られる他のもののマウスおよび他の動物モデルが含まれることも可能である。
【0269】
[00293]治療に適した被験体には、機能的遺伝子産物(タンパク質)の不十分な量を産
生するか、または該産物に欠陥を有するか、あるいは異常な、部分的に機能的なまたは非機能的な遺伝子産物(タンパク質)を産生しているか、またはそれらのリスクを有し、これらが疾患につながりうる、被験体が含まれる。特定の態様において、被験体は、欠陥遺伝子(例えばPLP1)を破壊するか、修正するかまたは置換することから利益を得るかまたはその必要があるか、あるいは欠陥または部分的機能または活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を破壊するか、修正するかまたは置換する必要がある。
【0270】
[00294]治療の療法的または有益な効果は、したがって、特定の被験体に提供される任
意の客観的または主観的に測定可能または検出可能な改善または利益である。療法的または有益な効果は、疾患の特定の不都合な症状、障害、疾病または合併症のすべてまたはいずれかの完全な除去であってもよいが、必ずしもその必要はない。したがって、疾患によって引き起こされるかまたは疾患と関連する不都合な症状、障害、疾病、または合併症の増加性の改善または部分的減少があるか、あるいは短いまたは長い期間(時間、日、週、月等)に渡って、疾患によって引き起こされるかまたは疾患と関連する、1つまたはそれより多い不都合な症状、障害、疾病、または合併症の悪化または進行の阻害、減少、縮小、抑制、防止、限定または制御がある場合、満足できる臨床的終点が達成される。
【0271】
[00295]療法効果を達成するための用量、例えば、ベクターゲノム中/体重キログラム
あたり(vg/kg)の用量は、限定されるわけではないが:投与経路、療法効果を達成するために必要な核酸発現、治療する特定の疾患、ベクターに対する任意の宿主免疫反応、および発現されるタンパク質安定性を含む、いくつかの要因に基づいて、多様であろう。当業者は、前述の要因ならびに他の要因に基づいて、特定の疾患または障害を有する患
者を治療するためのrAAV/ベクターゲノム用量範囲を決定することも可能である。
【0272】
[00296]疾患によって引き起こされるかまたは疾患に関連する不都合な症状、状態、合
併症等が発展する前に、被験体への投与またはin vivo送達を行うことも可能である。例えば、(例えば遺伝子)スクリーニングを用いて、本発明の組成物、方法および使用のための候補として被験体を同定することも可能である。したがって、こうした被験体には、機能的遺伝子産物(タンパク質)の不十分な量または欠陥に関して陽性とスクリーニングされたもの、あるいは異常な、部分的に機能的なまたは非機能的な遺伝子産物(タンパク質)を産生するものが含まれる。
【0273】
[00297]投与または送達の方法には、被験体と適合する任意の様式が含まれる。本発明
の方法および使用には、全身、領域性、または局所性の、あるいは任意の経路による、例えば注射または注入による、送達および投与が含まれる。こうした送達および投与には、非経口、例えば眼内、血管内、静脈内、筋内、腹腔内、皮内、皮下、または経粘膜が含まれる。例示的な投与および送達経路には、静脈内(i.v.)、腹腔内(i.p.)、動脈内、皮下、胸膜内、挿管、肺内、腔内、イオン注入、臓器内、リンパ内が含まれる。特定の態様において、AAVベクターを非経口的に、例えば静脈内、動脈内、眼内、筋内、皮下で、あるいはカテーテルまたは挿管を通じて、投与するかまたは送達する。
【0274】
[00298]用量は、治療が向けられる疾患のタイプ、発症、進行、重症度、頻度、期間、
または可能性、望ましい臨床終点、以前のまたは同時の治療、被験体の全身の健康状態、年齢、性別、人種または免疫学的適格性、および当業者に認識されるであろう他の要因で多様である可能性もあり、そしてこれらに応じる可能性もある。用量、数、頻度、または期間を、治療または療法の不都合な副作用、合併症または他のリスク要因、および被験体の状態のいずれかによって示されるように、比例して増加させるかまたは減少させることも可能である。当業者は、療法または予防的利益を提供するために十分な量を提供するために必要な投薬量およびタイミングに影響を及ぼしうる要因を認識するであろう。
【0275】
[00299]対象のAAVベクター、および他の組成物を、医薬組成物、例えば薬学的に許
容されうるキャリアーまたは賦形剤内に取り込むことも可能である。こうした医薬組成物は、とりわけ、in vivoまたはex vivoで被験体への投与および送達に有用である。
【0276】
[00300]本明細書において、用語「薬学的に許容される」および「生理学的に許容され
うる」は、投与、in vivo送達または接触の1つまたはそれより多い経路に適切な、生物学的に許容される気体、液体または固体の配合物、あるいはその混合物を意味する。「薬学的に許容される」または「生理学的に許容される」組成物は、生物学的にまたは別の意味で望ましくないものではない物質であり、例えば物質は、実質的に望ましくない生物学的影響を引き起こすことなく、被験体に投与可能である。したがって、こうした医薬組成物は、例えば、被験体へのウイルスベクターまたはウイルス粒子の投与において使用可能である。
【0277】
[00301]こうした組成物には、薬学的投与、あるいはin vivo接触または送達に
適合した、溶媒(水性または非水性)、溶液(水性または非水性)、エマルジョン(例えば水中油または油中水)、懸濁物、シロップ、エリキシル剤、分散および懸濁媒体、コーティング、等張性剤および吸収促進剤または遅延剤が含まれる。水性および非水性溶媒、溶液および懸濁物には、懸濁剤および増粘剤が含まれることも可能である。こうした薬学的に許容されうるキャリアーには、錠剤(コーティングまたは非コーティング)、カプセル(硬または軟)、マイクロビーズ、粉末、顆粒および結晶が含まれる。補助的活性化合物(例えば保存剤、抗菌剤、抗ウイルス剤および抗真菌剤)もまた、組成物内に取り込ま
れることも可能である。
【0278】
[00302]本明細書に示すかまたは当業者に知られるように、投与または送達の特定の経
路に適合するよう、医薬組成物を配合することも可能である。したがって、医薬組成物には、多様な経路による投与に適したキャリアー、希釈剤、または賦形剤が含まれる。
【0279】
[00303]非経口投与に適した組成物は、活性化合物の水性および非水性溶液、懸濁物ま
たはエマルジョンを含み、その調製は典型的には無菌であり、そして意図されるレシピエントの血液と等張であることも可能である。限定されない例示的な例には、水、生理食塩水、デキストロース、フルクトース、エタノール、動物性、植物性、または合成油が含まれる。
【0280】
[00304]共溶媒およびアジュバントを配合物に添加することも可能である。共溶媒の限
定されない例は、ヒドロキシル基または他の極性基を含有し、例えばアルコール、例えばイソプロピルアルコール;グリコール、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリコールエーテル;グリセロール;ポリオキシエチレンアルコールおよびポリオキシエチレン脂肪酸エステルが含まれる。アジュバントには、例えば界面活性剤、例えばダイズレシチンおよびオレイン酸;ソルビタンエステル、例えば三オレイン酸ソルビタン;ならびにポリビニルピロリドンが含まれる。
【0281】
[00305]本発明の組成物、方法および使用に適した医薬組成物および送達系が、当該技
術分野に知られる(例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy(2003) 第20版, Mack Publishing Co., Easton, PA; Remington’s Pharmaceutical Sciences(1990) 第18版, Mack Publishing Co., Easton, PA; The Merck Index(1996) 第12版, Merck Publishing Group, Whitehouse, NJ; Pharmaceutical Principles
of Solid Dosage Forms(1993), Technonic Publishing Co., Inc., Lancaster, Pa.; AnselおよびStoklosa, Pharmaceutical Calculations(2001) 第11版, Lippincott Williams & Wilkins, Baltimore, MD;およびPoznanskyら, Drug
Delivery Systems(1980), R. L. Juliano, ed., Oxford, N.Y., pp. 253-315を参照されたい)。
【0282】
[00306]「単位剤形」は、本明細書において、治療しようとする被験体に対して、単一
投薬型として適した、物理的に別個の単位を指し:各単位は、あらかじめ決定された量を含有し、場合によって薬学的キャリアー(賦形剤、希釈剤、ビヒクルまたは充填剤)と関連して、1つまたはそれより多い用量で投与された際に、望ましい効果(例えば予防的または療法的効果)を生じるように計算されている。単位剤形は、例えばアンプルおよびバイアル内にあることも可能であり、これらには、液体組成物、あるいはフリーズドライまたは凍結乾燥状態の組成物が含まれていてもよく;in vivoでの投与または送達前に、例えば、無菌液体キャリアーを添加することも可能である。個々の単位剤形は、多用量のキットまたは容器中に含まれていることも可能である。投与を容易にし、そして投薬型を均質にするために、AAVベクター、およびその医薬組成物を、単一または多数の単位剤形でパッケージングすることも可能である。
【0283】
[00307]関連態様において、本明細書に記載するAAV送達系を、ターゲット細胞(例
えばin vitro、in vivoまたはex vivoいずれかのOPCまたはN
SC)への送達、他のヌクレアーゼ(例えばTALENまたはZFN)またはRNAi構築物(機能的siRNAをコードし、そしてターゲット細胞内部に入ったら、該siRNAを産生する)またはASO構築物(機能的アンチセンスオリゴをコードし、そして産生する)に容易に適応させることも可能である。
【0284】
適用
[00308]本明細書に開示する方法および組成物は、ミエリン関連障害のための細胞に基
づく療法を提供するためのものである。細胞をin vivoで修飾することも可能であるし、またはex vivoで修飾し、そして続いて被験体に投与することも可能である。いくつかの態様において、患者の中枢神経系におけるNSC、OPC、ニューロン細胞、およびグリア細胞、例えばオリゴデンドロサイト、アストロサイト、上衣細胞、およびミクログリア細胞がin situで編集されるであろう。いくつかの態様において、細胞をex vivoで修飾し、そして患者に移植する。
【0285】
[00309]被験体自身の細胞を使用すると、移植のためにドナーおよびレシピエントの間
のHLAマッチングの必要性が排除される。さらに、本明細書記載の遺伝子修飾細胞は、幹細胞を被験体から単離することが可能であり、そしてこれらの細胞が遺伝子修飾を保持し、そしてこれらを1つまたはそれより多いさらなる被験体に投与することも可能である点で、連続(二次)移植に適していることも示されてきている。したがって、方法および組成物は、ミエリン関連障害の治療および/または防止を提供する。
【0286】
[00310]PLP1、PLP1の一部、またはPLP制御要素のターゲティング化欠失を
用いて、異常な遺伝子を修正するか、内因性遺伝子内で機能喪失突然変異を生成するか、または内因性遺伝子の発現を変化させることも可能である。他の側面において、PLP1またはPLP1遺伝子制御要素ヌクレオチド配列の抗PLP1ドナーのターゲティング化組込みを用いて、異常な遺伝子を修正するか、野生型遺伝子を挿入するか、内因性遺伝子内に機能獲得突然変異を生成するか、または内因性遺伝子の発現を変化させることも可能である。例えば、PLP1をコードする導入遺伝子またはPLP1遺伝子制御要素導入遺伝子を細胞内に組み込んで、機能的ミエリン産生を増進させることが可能な非有害タンパク質を産生する細胞(例えばオリゴデンドロサイトまたは前駆体)を提供することも可能である。PLP1またはPLP1遺伝子制御要素のターゲティング化ノックアウトまたは遺伝子サイレンシング、あるいは本明細書記載の方法による修飾は、PLP1遺伝子の不活性化を通じてPLP1毒性を減少させることによって、機能的ミエリン産生を増進させる細胞を提供することも可能である。ゲノム編集にはまた、例えば内因性PLP1遺伝子発現を修飾するため、内因性遺伝子における突然変異(例えば点突然変異)の修正または導入が含まれることも可能である。
【0287】
[00311]本明細書記載の組成物(例えば細胞および/またはヌクレオチド)を被験体に
投与して、ミエリン関連疾患および障害を治療することも可能である。本発明のいくつかの側面によって治療が意図される、ミエリン関連疾患および障害には、被験体における脱髄、不十分なミエリン形成および再ミエリン形成、または髄鞘形成異常に関連する、任意の疾患、状態(例えば外傷性脊髄傷害および脳梗塞から生じるもの)、または障害が含まれることも可能である。本明細書に用いるようなミエリン関連障害は、多様な神経毒性侵襲から生じるミエリン形成関連障害または脱髄から生じることも可能である。「脱髄」は、本明細書において、脱髄の作用、または神経を損傷するミエリン鞘の喪失を指し、そして多発性硬化症、横断性脊髄炎、慢性炎症性脱髄ニューロパチー、およびギラン・バレー症候群を含む、いくつかの神経変性自己免疫疾患の特徴である。白質ジストロフィーは、遺伝性酵素欠損によって引き起こされ、CNS白質内でのミエリン鞘の異常な形成、破壊、および/または異常な代謝回転を引き起こす。後天性および遺伝性ミエリン障害はどちらも、劣った予後を共有し、大きな身体障害につながる。したがって、本発明のいくつか
の態様には、被験体における神経変性自己免疫疾患の治療のための方法が含まれることも可能である。ニューロンの再ミエリン形成は、オリゴデンドロサイトを必要とする。用語「再ミエリン形成」は、本明細書において、ミエリン産生細胞を置換するかまたはその機能を回復させることによる、神経のミエリン鞘の再生成を指す。
【0288】
[00312]本発明の方法によって治療されるかまたは回復することも可能なミエリン関連
疾患または障害には、被験体の脳細胞、例えばCNSニューロンにおける髄鞘形成異常または脱髄に関連する疾患、障害または傷害が含まれる。こうした疾患には、限定されるわけではないが、ニューロン周囲のミエリンが存在しないか、不完全であるか、適切に形成されないか、または変質している、疾患および障害が含まれる。こうした疾患には、限定されるわけではないが、多発性硬化症(MS)、視神経脊髄炎(NMO)、進行性多巣性白質脳症(PML)、脳脊髄炎(EPL)、橋中央ミエリン溶解(CPM)、副腎白質ジストロフィー、アレクサンダー病、ペリツェウス・メルツバッハ病(PMD)、ウォラー変性、視神経炎、横断性脊髄炎、筋委縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病、アルツハイマー病、パーキンソン病、脊髄傷害、外傷性脳傷害、放射線照射後の傷害、化学療法の神経学的合併症、脳卒中、急性虚血性視神経症、ビタミンE欠乏、孤立性ビタミンE欠乏症候群、AR、バッセン・コーンツヴァイク症候群、マルキアファーヴァ・ビニャミ症候群、異染性白質ジストロフィー、三叉神経痛、急性散在性脳炎、ギラン・バレー症候群、マリー・シャルコー・ツース病およびベル麻痺が含まれる。
【0289】
[00313]本発明の方法によって治療されるかまたは回復することも可能なミエリン関連
疾患または障害には、ミエリン欠陥によって特徴付けられる疾患または障害が含まれる。中枢神経系における不十分なミエリン形成は、非常に多様な神経学的障害に関連付けられてきている。これらの中で、脳室周囲白質軟化症の小児における前脳ミエリン形成における先天的欠損が、神経学的病的状態に寄与する、脳性麻痺の型がある(Goldmanら, 2008) Goldman, S.A., Schanz, S.,およびWindrem, M.S.(2008). Stem cell-based strategies for treating pediatric disorders of
myelin. Hum Mol Genet. 17, R76-83。年齢スペクトルのもう一方の端で、ミエリン喪失および無効な修復は、老化と関連する認知機能の低下に寄与する可能性もある(Kohamaら, 2011) Kohama, S. G., Rosene, D. L.,およびSherman, L. S. (2011) Age (Dordr).Age-related changes in human and non-human primate white matter: from myelination disturbances to cognitive decline。したがって、ミエリン形成および/または再ミエリン形成を増進させる有効な化合物および方法が、疾患進行を停止し、そしてPMDにおいて、そして非常に多様なミエリン関連障害において、機能を回復させる際に、実質的な療法的な利益を有しうることが意図される。
【0290】
[00314]いくつかの態様において、ミエリン依存性プロセスを増進させるかまたは促進
するため、ミエリン関連障害を持たない、そして/または持つと予期されない被験体に、本発明の組成物を投与することも可能である。いくつかの態様において、認知的に健康な被験体において、ミエリン依存性プロセスであることが知られる認知を増進させるため、本明細書記載の化合物を被験体に投与してCNSニューロンのミエリン形成を促進することも可能である。特定の態様において、本明細書記載の化合物を、認知増進性(向知性)剤と組み合わせて投与することも可能である。例示的な剤には、健康な個体において、認知機能、特に実行機能、記憶、創造性、または意欲を改善させる任意の薬剤、サプリメント、または他の物質が含まれる。限定されない例には、ラセタム(例えばピラセタム、オキシラセタム、およびアニラセタム)、栄養補助食品(例えばオトメアゼナ(Bacop
a monnieri)、オタネニンジン(Panax ginseng)、イチョウ(Ginko biloba)、およびGABA)、刺激剤(例えばアンフェタミン薬剤、メチルフェニデート、覚醒促進剤(eugeroics)、キサンチン、およびニコチン)、L-テアニン、トルカポーネ、レボドパ、アトモキセチン、およびデシプラミンが含まれる。
【0291】
[00315]本発明の1つの特定の側面は、被験体におけるPMDの治療を意図する。該方
法には、被験体に、療法的有効量の上述の遺伝子修飾細胞またはヌクレオチド組成物を投与する工程を含む。
【0292】
[00316]全体の投薬量は、被験体の全身の健康状態、被験体の疾患状態、状態の重症度
、改善の観察、ならびに選択した剤(単数または複数)の配合および投与経路を含む、いくつかの要因に応じた、療法的有効量であろう。療法的有効量の決定は、当業者の能力内である。正確な配合、投与経路および投薬量は、被験体の状態を考慮して、個々の医師によって選択されうる。
【0293】
[00317]特定の態様において、未処理CNSニューロンまたは被験体のミエリンタンパ
ク質のレベルに比較した際、少なくとも5%、10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、160%、170%、180%、190%、200%、250%、300%、350%、400%、450%、500%、550%、600%、650%、700%、750%、800%、850%、900%、950%、または1000%のミエリンタンパク質(例えばMBP)の量の増加によって、被験体におけるCNSニューロンのミエリン産生を増進させるために有効な量で、本明細書記載の遺伝子修飾細胞またはヌクレオチド組成物を投与することも可能である。
【0294】
[00318]他の態様において、未処理CNSニューロンまたは被験体における生存ニュー
ロンの数に比較した際、少なくとも5%、10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、160%、170%、180%、190%、200%、250%、300%、350%、400%、450%、500%、550%、600%、650%、700%、750%、800%、850%、900%、950%、または1000%の生存ニューロンの数の増加によって、被験体におけるCNSニューロンの生存を促進するために有効な量で、遺伝子修飾細胞またはヌクレオチド組成物を投与することも可能である。
【0295】
[00319]ミエリン関連障害を患う被験体を治療するための別の戦略は、オリゴデンドロ
サイト分化および/または増殖誘導剤(単数または複数)ならびに/あるいは抗神経変性疾患剤の療法的有効量とともに、本明細書記載の遺伝子修飾細胞またはヌクレオチド組成物の療法的有効量を投与することである。抗神経変性疾患剤の例には、L-ドパ、コリンエステラーゼ阻害剤、抗コリン剤、ドーパミンアゴニスト、ステロイド、ならびにインターフェロン、モノクローナル抗体、およびグラチラマー酢酸剤を含む免疫調節剤が含まれる。
【0296】
[00320]したがって、本発明のさらなる側面において、本明細書記載の遺伝子修飾細胞
またはヌクレオチド組成物を、神経変性およびミエリン関連障害を治療するための補助療法との組み合わせ療法の一部として、投与することも可能である。
【0297】
[00321]句「組み合わせ療法」は、本明細書記載のオリゴデンドロサイト前駆体分化誘
導性化合物および療法剤を、これらの療法剤の共作用から有益な効果を提供するよう意図
される特定の治療措置の一部として投与することを含む。組み合わせとして投与する際、オリゴデンドロサイト前駆体分化誘導化合物および療法剤は、別個の組成物として配合することも可能である。組み合わせにおけるこれらの療法剤の投与は、典型的には、定義される期間(選択する組み合わせに応じて、通常、分、時間、日、または週)に渡って実行される。
【0298】
[00322]「組み合わせ療法」は、これらの療法剤を連続方式で、すなわち各療法剤を異
なる時点で投与するもの、ならびに実質的に同時の方式でのこれらの療法剤または療法剤の少なくとも2つの投与を含むよう意図される。実質的に同時の投与は、例えば、被験体に、固定された比の各療法剤を有する単一のカプセルを、または各療法剤の単一のカプセルを複数、投与することによって、達成可能である。各療法剤の連続したまたは実質的に同時の投与は、限定されるわけではないが、経口経路、静脈内経路、筋内経路、および粘膜組織を通じた直接吸収を含む、任意の適切な経路によって達成可能である。療法剤を同じ経路によって、または異なる経路によって、投与することも可能である。例えば、選択される組み合わせの第一の療法剤を静脈内注射によって投与する一方、組み合わせの他の療法剤を経口投与することも可能である。あるいは、例えば、すべての療法剤を経口投与することも可能であるし、あるいはすべての療法剤を静脈内注射によって投与することも可能である。療法剤を投与する順序は厳密に重大ではない。「組み合わせ療法」はまた、他の生物学的活性成分(例えば限定されるわけではないが、第二のおよび異なる療法剤)および非薬剤療法(例えば手術)とさらに組み合わせた、上述の療法剤の投与を含むことも可能である。
【0299】
[00323]本発明の別の側面において、本明細書記載の遺伝子修飾細胞またはヌクレオチ
ド組成物を含む組み合わせ療法で投与される療法剤には、少なくとも1つの抗神経変性剤、例えば限定されるわけではないが免疫療法剤が含まれることも可能である。
【0300】
[00324]本発明の方法において使用するための免疫療法剤には、疾患の免疫構成要素、
および/または多発性硬化症などの寛解再発ミエリン関連障害における急性攻撃中に明示される急性炎症性反応をターゲティングする療法が含まれることも可能である。例には、限定されるわけではないが、免疫調節剤、例えばインターフェロン・ベータ1aおよびベータ1b(それぞれAvonexおよびBetaseron)、ネタリズマズ(Copaxone)、ネタリズマブ(Tysabri)、グラチラマー酢酸(Copaxone)またはミトキサントロンが含まれる。
【0301】
[00325]本発明はさらに、以下の実施例によって例示され、該実施例は、請求項の範囲
を限定することを意図されない。
【実施例0302】
実施例1 遺伝性ミエリン障害を治療するためのヌクレアーゼ仲介性PLP1不活性化
序論
[00326]異常なミエリン形成は、異常なニューロンシグナル伝達および神経学的機能不
全を生じる。内因性のミエリン形成細胞内での遺伝子異常の修正による、これらの患者におけるミエリン形成能の回復は、有望な治癒の手段を代表するが、この療法アプローチの実現可能性はいまだに立証されていない。したがって、本発明者らは、ペリツェウス・メルツバッハ病(PMD)と称される重度の原型白質ジストロフィーに焦点を当てることによって、このパラダイムを検証することを選択した。
【0303】
[00327]PMDは、プロテオリピドタンパク質1(PLP1)における突然変異によっ
て引き起こされる、ミエリンの重度X染色体連鎖遺伝子障害である。PMD患者は、典型的には、顕著な認知および運動不能を含む、重度の神経学的疾患を経験し、該疾患は小児
期または青年期中に回避不能に早期死亡に達する。したがって、本発明者らは、PLP1発現を有効にそして永続的に不活性化するかまたは減少させるPLP1遺伝子またはその制御要素におけるヌクレアーゼ仲介性挿入または欠失(インデル)の導入(PLP1-インデル)を通じて重度PMD患者を治療可能であるかどうかを決定することを試みた。ヌクレアーゼ仲介性インデルは、神経幹細胞またはオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)を含む、オリゴデンドロサイトまたはその前駆体をターゲティングすることも可能である。前駆細胞のターゲティングは、PLPインデル前駆細胞が、患者の一生に渡って、機能的PLP1インデル・オリゴデンドロサイトを生成し続けるため、永続的でそして自己増幅性の療法を提供するであろう。多くの別個のおよび多様なPMD原因突然変異が患者において既に同定されていることを考慮すると、本発明者らのPLP1インデルアプローチは、すべてのPMD患者に適用可能な普遍的アプローチを提供するために、ユニークである。
【0304】
jimpyマウス
[00328]PLP1-インデル療法剤を開発するため、本発明者らは、jimpyと称さ
れるPMDマウスモデルを利用した。このマウスは、PLP1遺伝子のイントロン4のスプライスアクセプター部位に点突然変異を宿して、ミスフォールディングPLP1を導き、最終的に、オリゴデンドロサイト喪失、顕著なミエリン形成低下、重度の振戦、運動失調、癲癇、および生後3週までの早期死亡を引き起こす。したがって、該モデルは、ヒト患者で見られる重度PMDの多くの側面を有効に再現する。
【0305】
[00329]jimpyマウスは、PMDの最も重症のモデルを代表する。
図2は、マウス
PLP1遺伝子におけるjimpy遺伝子突然変異の位置、およびその結果生じる遺伝子産物であって最終的にオリゴデンドロサイトの死を引き起こす遺伝子産物を示す模式図(正確な縮尺ではない)である。図の下部は、わずか約23日の生存中央値を示すjimpyマウスの非常に減少した寿命を示す。
【0306】
[00330]
図3は、jimpyマウス脳における重度の低ミエリン形成を示す。野生型対
照のものに比較して、P19(出生後19日目)jimpyマウス脳切片における有意により少ないMBP染色に注目されたい。jimpyマウスはまた、同じ年齢で、企図振戦および運動失調も示す(データ未提示)。
【0307】
ガイドRNA選択および検証
[00331]CRISPR-Cas9は、ヌクレアーゼCas9および22bpの単一ガイ
ドRNA(sgRNA)の導入によって、哺乳動物細胞においてインデルを誘導する、効率的なヌクレアーゼ仲介性の系の一例である。適切なsgRNAは、Hsuら(2013) Nature Biotechnology 31, 827-832に記載されるように設計された。特に、sgRNAは、オンターゲットを最大にし、そしてオフターゲットインデル形成を最小限にするとともに、ナンセンス仲介性崩壊の効率を増加させるため、初期エクソンターゲティングを行うよう選択された。sgRNAは、ClontechのGuide-it sgRNAスクリーニングキットによって、ヌクレアーゼ活性に関して検証され、そしてThermofisher Neonトランスフェクション系を用いて、マウスおよびヒト細胞内で、SaCas9またはSpCas9およびsgRNAを発現するプラスミドをエレクトロポレーションすることによる、機能的インデル誘導に関して検証された。illumina MiSeq系を用いたディープシーケンシングを通じたインデル形成の定量化によって、切断効率およびsgRNAランキングを決定した。トップのsgRNAを表1に詳述する。
【0308】
表1:検証されたsgRNA配列のトップ
【0309】
【表1】
[00332]
図4および5は、CR-impy KO子孫マウスを生成するため、エクソン
3のCRISPR SpCas9/二重ガイドRNA(sgRNA)ターゲティングを通じて、jimpyマウスの接合体においてPLP1遺伝子をノックアウトする例示的アプローチを示す模式図である。
図4は、エクソン3におけるsgRNA AおよびBターゲティング部位の相対的位置を示す。
図5は、sgRNAおよびSpCas9 mRNAを受け取るためのjimpy雄接合体を生成する、一般的な実験アプローチを示す。jimpy PLP1遺伝子のCRISPR/Cas9仲介性ノックアウトが成功すると、PLP1ヌル雄CR-impy創始者(founder)が、代理ホスト雌によって生まれる。親系
統に2世代交配すると、さらなる特徴付けのための子孫マウスが生じる。
【0310】
動物におけるSPCas9仲介性PLP1欠失
[00333]本発明者らの療法的PLP1インデル戦略の最初の概念実証として、jimp
yブリーダー由来の接合体に200ng/μl SpCas9 mRNAおよび各10ng/μlのsgRNA AおよびBをエレクトロポレーションし、そして次いで、代理雌に移植した(
図5を参照されたい)。これは、PLP1のエクソン3の5’端に~80ヌクレオチド欠失を持つ、CRISPR-ノックアウトjimpy(CR-impy[またはcrimpy])雄マウスの生成を生じた。jimpy雄は、重症の表現型を示し、そして生後3週目までに死亡する一方、crimpy雄は、振戦、癲癇、運動失調、または早期死亡をまったく示さないように、jimpy雄とは非常に異なった(データ未提示)。驚くべきことに、このcrimpy雄は、成功裡に交配し、そして組織学的分析のために屠殺するまで6ヶ月以上生存し、該分析によって、野生型と区別不能な、中枢神経系の完全ミエリン形成を示した(
図1を参照されたい)。crimpyアレルの健康な孫への伝達によって、本発明者らのPLP1インデル治療の劇的な療法効果が確認される。
【0311】
[00334]実際、
図6は、CR-impyマウスが、jimpyおよび野生型対照と比較
して、回復された寿命を有することを示す(各群に関してn>15、p<0.0001)。
【0312】
[00335]
図7は、CR-impyマウスが、MBPを検出する全脳IHCによって成熟
オリゴデンドロサイトの回復を示すことを示す。生後D19で、野生型およびCR-impyマウスは、どちらも、jimpyマウスのものよりも有意により多いMBP染色を有する。生後6ヶ月では、すべてのjimpyマウスが死亡していたが、野生型およびCR-impyマウスにおけるMBP染色レベルは区別不能である。
【0313】
[00336]2つのさらなる機能試験を用いて、CR-impyマウスにおける運動協調お
よび自発運動の回復を評価した。
[00337]
図8は、CR-impyマウスの運動協調を評価するためのロータロッド試験
の模式図を示し、ここで、回転バーを加速させた際に、回転バーから落ちる時間を測定することによって、運動協調を定量化する。測定を生後P19、2ヶ月、および6ヶ月に、各時点の野生型、jimpy、およびCR-impyマウスで行った。異なる値間の統計的有意性をp値によって示す。P19では、野生型およびCR-impyマウスはどちらも、jimpyマウスのものと比較して、落ちるまでに統計的に有意により長い時間を有した。生後2ヶ月および6ヶ月では、すべてのjimpyマウスは死亡したが、野生型およびCR-impyマウスにおける落ちるまでの測定時間のレベルは区別不能である。この結果は、野生型およびjimpyマウスに比較した、CR-impyマウスの運動協調の回復を示す。
【0314】
[00338]
図9は、CR-impyマウスの自発運動活性を評価するためのオープンフィ
ールド試験の模式図を示し、ここで、5分間の自動化ビデオ追跡によって追跡されるようなボックス中の総移動距離を測定することによって、自発運動活性を定量化する。測定を生後P19、2ヶ月、および6ヶ月に、各時点の野生型、jimpy、およびCR-impyマウスで行った。異なる値間の統計的有意性をp値によって示す。P19では、野生型およびCR-impyマウスはどちらも、jimpyマウスのものと比較して、統計的に有意により長い総距離を移動した。生後2および6ヶ月では、すべてのjimpyマウスは死亡していたが、野生型およびCR-impyマウスにおいて測定された総移動距離のレベルは区別不能である。結果は、野生型およびjimpyマウスに比較した、CR-impyマウスにおける自発運動活性の回復を示す。
【0315】
[00339]軸索刺激後、伝導速度の測定に基づいて、さらなる機能試験を行った。
図10
は、視神経伝導速度試験の模式図、ならびにより迅速なおよびより緩慢な伝導ピーク、それぞれ第一ピークおよび第二ピークの代表的な結果を示す。ミエリン形成され、そして大きな直径の軸索は、一般的に、ミエリン形成されず、そしてより小さい直径の軸索に比較して、より迅速な伝導度を有する。生後D19での、それぞれ、第一および第二ピークによって測定されるような、迅速および緩慢伝導速度は、どちらも、野生型、jimpyマウス、およびCR-impyマウスのいずれか2つの間で、統計的に有意に異なる。しかし、生後6ヶ月では、すべてのjimpyマウスは死亡していたが、野生型およびCR-impyマウスの間の相違は、あるとしても、統計的に有意ではなくなる。これは、軸索伝導速度はCR-impyマウスにおいて加速し、最初は野生型マウスのものに後れを取っているが、最終的に長期に渡って追いつくことを示唆する。
【0316】
[00340]実際、約6ヶ月齢での野生型およびCR-impyマウス視神経の電子顕微鏡
(EM)画像化は、区別可能な相違を示さない。
図11を参照されたい。
[00341]CR-impyマウスが6ヶ月で野生型のものと類似の機能的成績を示し続け
る事実によって、遺伝子治療仲介性修正の長期の機能的安定性が示唆される。
【0317】
[00342]これらの結果は、PLP1における不活性化インデルの導入が、PMDのマウ
スモデルを完全にレスキュー可能であることを示す。
要約
[00343]本開示は、遺伝子修飾細胞を生成する方法、およびヒトミエリン障害の治療に
おけるその使用法を含む。特に、本発明者らは、ペリツェウス・メルツバッハ病(PMD)と称される白質ジストロフィーの背景において有効性が立証された、ミエリン関連障害のための新規療法アプローチとしてプロテオリピドタンパク質1(PLP1)遺伝子のヌクレアーゼ仲介性遺伝子破壊を用いた。
【0318】
[00344]
図12は、患者の脳において、少なくとも部分的に突然変異体OPCを修正可
能である、例えばSaCas9およびsgRNAをコードするAAVウイルスベクターを通じて、CRISPR-Cas9仲介性遺伝子サイレンシングを新生児脳に送達する、本発明の1つの態様を示す模式図である。こうして修正されたOPCは、適切な時期に、いかなる突然変異OPCも打ち負かし、こうして患者ニューロンの十分に回復されたミエリン形成および機能を提供するであろう。
【0319】
[00345]本発明者らの戦略は、機能的ミエリンを作製する能力を増進させるPLP1遺
伝子の不活性化を通じて、PLP1関連毒性をバイパスする。いくつかの例において、患者の中枢神経系において、神経幹細胞、オリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)、または他のグリア細胞をin situで編集することも可能である。別の例において、細胞をex vivoで修飾して、そして患者に移植することも可能である。
【0320】
[00346]より具体的には、本発明者らは、PLP1遺伝子またはPLP1遺伝子制御要
素におけるインデルのヌクレアーゼ仲介性生成を用いて、それぞれPLP1翻訳または転写を不活性化する、新規療法戦略を示した。本発明者らは、齧歯類におけるin vivoでのPLP1遺伝子のヌクレアーゼ仲介性編集が、PMDの重症型を有するマウスに対して、正常な機能および完全な寿命を回復させることを示した。本発明者らは、PLP1のこの混乱が、in vitroでPMDモデル細胞に対して機能を回復させることを示した。これらの概念実証研究の一部として、部位特異的ガイドRNAを伴うCRISPR-Cas9ヌクレアーゼを例示するが、この療法戦略は、任意の部位特異的ヌクレアーゼまたは遺伝子編集技術を含むことも可能である。
【0321】
[00347]PMDおよび他の白質ジストロフィー患者に対する療法剤の開発は、患者に見
られる広範囲の多様なDNA突然変異によって、困難である。本明細書において、本発明者らは、すべてのPMD患者に対する普遍的な療法剤を提供する。この単一の方法/産物をすべてのPMD患者において用いて、有害な突然変異体PLP1遺伝子を有効に不活性化することも可能である。さらに、PLP1遺伝子の不活性化は、オリゴデンドロサイトにおいて、細胞ストレスを軽減するために、他のミエリン障害においても有益でありうる。したがって、この療法アプローチにはかなりの価値があり、そしてPLP1不活性化臨床療法を追及する際に、強い薬学的および経済的関心がある。
【0322】
[00348]本明細書記載の方法が、いくつかの方式で、そして当該技術分野に周知の多様
な修飾および並べ替えを伴って実行可能であることが理解されるべきである。作用様式に関して示されるいかなる理論も、いかなる意味でも本発明を限定すると見なされるべきではなく、本発明の方法がより完全に理解されるように提示されていることもまた認識されうる。
【0323】
[00349]上記明細書に言及するすべての刊行物および特許は、本明細書に援用される。
実施例2 CRISPR/Cas9のAAV送達を用いた、PLP1の出生後不活性化
[00350]本実施例は、PLP1の出生後不活性化を用いて、PMDを有効に治療するか
、またはPMDの重症度を減少させることも可能であることを立証する。
【0324】
[00351]患者におけるPLP1遺伝子座をターゲティングするsgRNAを含むCRI
SPR/Cas9系の送達を容易にするため、PHP.Bを含むいくつかのCNSターゲティング化AAV血清型を生成し、そしてOPCに対するAAV向性を検証した。AAV構築物(AAV9またはAAV-PHP.B)は、SaCRISPR-Cas9ヌクレアーゼ(CMV-SaCas9、CMVプロモーターの制御下のSaCas9コード配列)と、PLP1に対する部位特異的ガイドRNA(sgRNA)(U6-sgRNA、sgRNAはU6プロモーターの制御下にある)を含有し、これはPLP1遺伝子中にインデ
ルを生成し、そしてこうして欠陥PLP1タンパク質の発現を防止するよう設計されている。
【0325】
[00352]Case Western Reserve Universityの施設動
物飼育使用委員会によって再検討された、認可されたプロトコルにしたがって、マウスを維持した。マウスを、12時間昼光周期下で、温度および湿度管理飼育装置内で飼育し、そして自由に食物へのアクセスを可能にした。
【0326】
[00353]次いで、jimpy(ペリツェウス・メルツバッハ病の重症マウスモデル)マ
ウスを、CRISPR含有AAVまたはGFPコード対照の定位的脳室内注射を通じて治療した。特に、雄出生後第0日の仔をjimpy交配ペアから得て、そして寒冷麻酔を用いて迅速に麻酔した。
【0327】
[00354]32ゲージ針を伴う10μLハミルトン・シリンジに、CMV-SaCas9
およびPLP1をターゲティングするU6-sgRNAをパッケージングしているAAV(AAV9またはAAV-PHP.B)を装填した。矢状縫合およびラムダ縫合の交点から目まで、位置2/5で、約2mmの深さまで、頭蓋を通じて針を下げた。2μLのウイルス溶液を側脳室内に注入した。次いで、脳室系に対して、約1x1010~1x1011ベクターゲノムの総送達のため、同じ座標および注射体積を用いて、対側性側脳室において、注射を反復した。同じ処置を対照マウスに関しても反復した。
【0328】
[00355]仔を加熱パッド上で回復させ、そして次いで母に戻した。2週齢までに重度の
運動表現型(例えば企図振戦および癲癇)を示し、そして3週齢までに死亡する、未治療またはビヒクル治療jimpy動物と比較した際の表現型改善に関して、仔を毎日監視した。
【0329】
[00356]3週を超えて生存した、治療した動物を、行動(例えば運動成績に関するロー
タロッドおよびオープンフィールド試験、実施例1ならびに
図8および9を参照されたい)、組織学(ミエリンタンパク質に関するCNSの免疫染色およびミエリン微細構造に関する電子顕微鏡、実施例1ならびに
図7および11を参照されたい)、または寿命延長統計分析に関する毎日の監視(実施例1および
図6を参照されたい)を用いて分析する。
【0330】
[00357]さらに、CNSにおいて編集される必要がある細胞の数に関する空間的要件(
遺伝子編集細胞の「用量反応」)を決定して、免疫組織化学での機能的反応を生成する。
[00358]最後に、出生後P1、P7、およびP14で、最適化構築物を導入することに
よって、時間的関連を調べる。
【0331】
[00359]定義される療法ウィンドウ内での最適化CRISPR/Cas9アプローチは
、突然変異体PLP1タンパク質の発現を減少させ、治療される個体の寿命を増加させ、そして軸索のミエリン形成を回復させる。
【0332】
実施例3 アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)を用いた、PLP1の出生後ノックダウン
[00360]本実施例は、ASOを用いてPLP1遺伝子活性の出生後下方制御またはノッ
クダウンを用いて、PMDを有効に治療するか、またはPMDの重症度を減少させることも可能であることを立証する。
【0333】
[00361]Case Western Reserve Universityの施設動
物飼育使用委員会によって審査された、認可されたプロトコルにしたがって、マウスを維持する。マウスを、12時間昼光周期下で、温度および湿度管理飼育装置内で飼育し、そ
して自由に食物へのアクセスを可能にする。
【0334】
[00362]出生後第0日の雄の仔を、jimpy(ペリツェウス・メルツバッハ病の重症
マウスモデル)交配ペアから得て、そして寒冷麻酔を用いて迅速に麻酔する。32ゲージ針を伴う10μLハミルトン・シリンジに、PLP1をターゲティングするアンチセンスオリゴヌクレオチドを装填する。矢状縫合およびラムダ縫合の交点から目まで、位置2/5で、約2mmの深さまで、頭蓋を通じて針を下げる。2μLのASO溶液を側脳室内に注入した。次いで、脳室系に対して、約10~75μgのASOの総送達のため、同じ座標および注射体積を用いて、対側性側脳室において、注射を反復する。
【0335】
[00363]仔を加熱パッド上で回復させ、そして次いで母に戻す。2週齢までに重度の運
動表現型(例えば企図振戦および癲癇)を示し、そして3週齢までに死亡する、未治療またはビヒクル治療jimpy動物と比較した際の表現型改善に関して、仔を毎日監視する。
【0336】
[00364]3週を超えて生存した、治療した動物を、行動(例えば運動成績に関するロー
タロッドおよびオープンフィールド試験、実施例1ならびに
図8および9を参照されたい)、組織学(ミエリンタンパク質に関するCNSの免疫染色およびミエリン微細構造に関する電子顕微鏡、実施例1ならびに
図7および11を参照されたい)、または寿命延長統計分析に関する毎日の監視(実施例1および
図6を参照されたい)を用いて分析する。
【0337】
実施例4 RNAiを用いたPLP1の出生後ノックダウン
[00365]本実施例は、RNAiを用いたPLP1遺伝子活性の出生後下方制御またはノ
ックダウンを用いて、PMDを有効に治療するか、またはPMDの重症度を減少させることも可能であることを立証する。
【0338】
[00366]Case Western Reserve Universityの施設動
物飼育使用委員会によって再検討された、認可されたプロトコルにしたがって、マウスを維持する。マウスを、12時間昼光周期下で、温度および湿度管理飼育装置内で飼育し、そして自由に食物へのアクセスを可能にする。
【0339】
[00367]出生後第0日の雄の仔を、jimpy(ペリツェウス・メルツバッハ病の重症
マウスモデル)交配ペアから得て、そして寒冷麻酔を用いて迅速に麻酔する。32ゲージ針を伴う10μLハミルトン・シリンジに、PLP1をターゲティングするCMV-RNAi(CMVプロモーターの制御下で細胞内で転写されて、機能的RNAi分子を生成可能であり、これが次いでPLP1をターゲティングするsiRNA/shRNA/miRNAにプロセシングされうる、RNAi構築物)をパッケージングしているAAV(AAV9またはAAV-PHP.B)を装填する。あるいは、針に、非ウイルスsiRNAキャリアー、例えば細胞透過性ペプチド、ポリマー、デンドリマー、siRNAバイオコンジュゲート、および脂質に基づくsiRNAキャリアー等を用いて、PLP1をターゲティングするRNAi構築物の非ウイルス性配合物を装填する。矢状縫合およびラムダ縫合の交点から目まで、位置2/5で、約2mmの深さまで、頭蓋を通じて針を下げる。2μLのRNAi溶液を側脳室内に注入する。次いで、同じ座標および注射体積を用いて、対側性側脳室において、注射を反復する。
【0340】
[00368]仔を加熱パッド上で回復させ、そして次いで母に戻す。2週齢までに重度の運
動表現型(例えば企図振戦および癲癇)を示し、そして3週齢までに死亡する、未治療またはビヒクル治療jimpy動物と比較した際の表現型改善に関して、仔を毎日監視する。
【0341】
[00369]3週を超えて生存した、治療した動物を、行動(例えば運動成績に関するロー
タロッドおよびオープンフィールド試験、実施例1ならびに
図8および9を参照されたい)、組織学(ミエリンタンパク質に関するCNSの免疫染色およびミエリン微細構造に関する電子顕微鏡、実施例1ならびに
図7および11を参照されたい)、または寿命延長統計分析に関する毎日の監視(実施例1および
図6を参照されたい)を用いて分析する。