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特開2024-38030腫瘍崩壊性腫瘍ウイルスおよび使用の方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038030
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】腫瘍崩壊性腫瘍ウイルスおよび使用の方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 7/01 20060101AFI20240312BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20240312BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20240312BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20240312BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 31/436 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
C12N7/01 ZNA
C12N15/09 Z
C12N15/113 Z
A61K35/761
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K31/436
A61K45/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023216375
(22)【出願日】2023-12-22
(62)【分割の表示】P 2020153724の分割
【原出願日】2015-09-23
(31)【優先権主張番号】62/054,724
(32)【優先日】2014-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】513037649
【氏名又は名称】ソーク インスティテュート フォー バイオロジカル スタディーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】クロダーグ オーシア
(72)【発明者】
【氏名】シゲキ ミヤケ-ストナー
(57)【要約】
【課題】腫瘍崩壊性腫瘍ウイルスおよび使用の方法の提供。
【解決手段】E2F脱調節腫瘍細胞で選択的に複製する組換えアデノウイルスが、記載される。組換えアデノウイルスは、改変されたE1Aタンパク質、改変されたか欠失させたE4orf1タンパク質、改変されたか欠失させたE4orf6/7タンパク質またはその任意の組合せをコードするゲノムを有し、そのため組換えアデノウイルスは、腫瘍細胞と比較して正常細胞で複製欠陥を示す。いくつかの例では、組換えアデノウイルスゲノムは、特異的細胞型を組換えアデノウイルスの標的にし、肝臓をウイルスの脱標的化し、肝臓でのウイルス複製を阻害し、および/または既存の中和抗体を回避する、追加の改変をコードする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
図面に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2014年9月24日に出願された米国仮特許出願第62/054,724号の利益を主張し、当該出願は、その全体が本明細書において参考として援用される。
【0002】
この開示は、腫瘍細胞における溶解複製を選択的に起こす、E1A、E4orf1および/またはE4orf6/7の1つまたは複数の改変を含む組換えアデノウイルスに関する。組換えアデノウイルスは、全身送達および腫瘍細胞での取込みを可能にするために、繊維、ヘキソンまたはカプシドタンパク質の1つまたは複数の改変を任意選択で有する。
政府援助の謝辞
【0003】
本発明は、米国国立衛生研究所から授与された助成金番号5T32GM007240-35の下の政府援助によって作られた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0004】
がんは、毎年50万人超の死亡の原因である、複合的な衰弱性の疾患である。がんのためのより効果的かつ選択的で安全な治療への重大な必要性がある。この拡散的な生命をおびやかす疾患のための既存の治療、例えば化学療法および手術は、全ての悪性細胞を排除することが稀であり、治療の有益性を上回ることがある有害な副作用をしばしば示す。
【0005】
現行のがん治療の欠点の多くに対処する可能性を有する1つのアプローチは、腫瘍崩壊性のアデノウイルス療法である(Pesonenら、Molecular Pharmaceutics8巻(1号):
12~28頁、2010年)。アデノウイルス(Ad)は、自己複製する生物機械である。アデノウイルスは、タンパク質外皮に包まれた線状の二本鎖36kb DNAゲノムからなる。アデノウイルスは細胞複製機構を侵略し、乗っ取って、増殖し、アセンブリー後、溶解細胞死を誘導して、周辺細胞に拡散する。これらの全く同じ細胞制御装置が、がんの突然変異の標的である。この知識を活用することにより、腫瘍細胞に特異的に感染して複製し、細胞を溶解させて、可能な抵抗に打ち勝ちつつ遠隔転移を探し出して破壊することができる何千ものウイルス子孫を放出する、誘導ミサイルのように働く合成ウイルスを作製することができる。したがって、腫瘍崩壊性ウイルスの設計の目標は、がん細胞で特異的に複製するが正常細胞には無害であるウイルスを生産することである。しかし、がん細胞において選択的に複製することができるウイルスを設計することにおいては、かなりの難題があった。したがって、がん細胞において選択的に複製するさらなるウイルスの必要性がまだある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Pesonenら、Molecular Pharmaceutics8巻(1号):12~28頁、2010年
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
E2F脱調節腫瘍細胞において選択的に複製する組換えアデノウイルスが開示される。組換えアデノウイルスは、改変E1Aタンパク質、改変または欠失E4orf1タンパク質、改変または欠失E4orf6/7タンパク質またはその任意の組合せをコードするゲノムを有し、そのため組換えアデノウイルスは、腫瘍細胞と比較して正常細胞において複製欠陥を示す。組換えアデノウイルスのゲノムは、特異的細胞型を組換えアデノウイルスの標的にし、肝臓からウイルスを脱標的化し、肝臓でのウイルス複製を阻害し、および/または既存の中和抗体を回避する、追加の改変を任意選択でさらにコードする。
【0008】
組換えアデノウイルスのゲノムが、改変E1Aタンパク質、改変または欠失E4orf1タンパク質、改変または欠失E4orf6/7タンパク質またはその任意の組合せをコードし、組換えアデノウイルスは、腫瘍細胞と比較して正常細胞において複製欠陥を示す、組換えアデノウイルスが本明細書で提供される。
【0009】
一部の実施形態では、組換えアデノウイルスゲノムは、誘導可能な再標的化のための改変をさらにコードする。例えば、ゲノムは、FK506結合性タンパク質(FKBP)に融合した標的化リガンド、および野生型FKBP-ラパマイシン結合性(FRB)タンパク質またはT2098L置換を含む突然変異体FRBタンパク質に融合したアデノウイルス繊維タンパク質を任意選択でコードする。
【0010】
一部の実施形態では、組換えアデノウイルスゲノムは、肝臓からアデノウイルスを脱標的化する改変をさらにコードする。一部の例では、ゲノムは、ヘキソンタンパク質の改変をコードし、および/または肝臓特異的マイクロRNAのための1つまたは複数の結合部位を含む。
【0011】
一部の実施形態では、ウイルスを代替の細胞受容体にリダイレクトするために、組換えアデノウイルスゲノムは、キメラ繊維タンパク質をコードする。
【0012】
一部の実施形態では、組換えアデノウイルスゲノムは、既存の中和抗体を回避するために、カプシド交換アデノウイルスをコードする。一部の例では、ゲノムのE1、E3およびE4領域は第1のアデノウイルス血清型に由来し、ゲノムのE2B、L1、L2、L3、E2AおよびL4領域は第2のアデノウイルス血清型に由来する。
【0013】
さらに、組換えアデノウイルスのゲノムが、E1の欠失を含み、EF1αプロモーターによって駆動するGFP-ルシフェラーゼ融合タンパク質をコードする、組換えリポーターアデノウイルス遺伝子発現ベクターが提供される。一部の実施形態では、アデノウイルス発現ベクターは、3’-UTRに肝臓特異的マイクロRNA結合部位をさらに含む。
【0014】
開示される組換えアデノウイルスを含む組成物も、本明細書で提供される。さらに、組換えアデノウイルスゲノムの配列を含む組換え核酸分子およびベクターが提供される。
【0015】
本明細書に開示される組換えアデノウイルス(またはその組成物)を投与することによって、腫瘍細胞生存性を阻害し、腫瘍進行を阻害し、腫瘍体積を低減し、がんの対象を治療する方法が、本開示によってさらに提供される。
【0016】
本開示の上のおよび他の目的および特徴は、添付の図面を参照して進行する以下の詳細な説明からより明白になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1A~1Bは、組換えアデノウイルス感染細胞からのアデノウイルスE1Aの発現を示す細胞溶解物のイムノブロットである。細胞は、模擬感染させたか、またはAdSyn-CO102(野生型)、AdSyn-CO181(E1AΔLXCXE/ΔE4orf6/7)、AdSyn-CO189(E1AΔLXCXE)またはONYX-838(E1AΔCR2)に感染させた。図1Aについては、静止期のヒト一次小気道上皮細胞(SAEC)をMOI 10で感染させ、溶解物をE1A発現について分析した。AdSyn-CO102感染細胞では、感染の後期にE1Aレベルの低下があった。同様に、AdSyn-CO189またはONYX-838感染細胞では、感染の後期にE1Aレベルの低下があった。しかし、初期の時点では、E1Aの発現は、AdSyn-CO102感染細胞でのE1Aの発現より大きい。対照的に、AdSyn-CO181感染細胞は感染全期間でE1Aのより強く連続した発現を示し、そのことはアデノウイルス生活環を通した進行の失敗を指し示す。図1Bについては、コンフルエント肺腺癌細胞(A549)をMOI 30で感染させ、溶解物をE1A発現について分析した。全ての感染は、感染の後期にE1Aレベルの低下につながり、典型的なアデノウイルス生活環進行を指し示す。
【0018】
図2図2A~2Bは、感染した一次および腫瘍細胞での細胞サイクリンおよびアデノウイルス後期タンパク質の発現を示す細胞溶解物のイムノブロットである。細胞は、模擬感染させたか、またはAdSyn-CO102(野生型)、AdSyn-CO181(E1AΔLXCXE/ΔE4orf6/7)、AdSyn-CO189(E1AΔLXCXE)、AdSyn-CO210(ΔE4orf6/7)またはONYX-838(E1AΔCR2)に感染させた。図2Aについては、SAECをMOI 10で感染させた。野生型ウイルスおよびE1A突然変異だけを有するウイルスと対照的に、AdSyn-CO181は、E2F依存性細胞周期標的、S相サイクリン、サイクリンAおよびサイクリンBを活性化することができなかった。さらに、E4orf6/7突然変異を有するAdSyn-CO181およびAdSyn-CO210は、後期タンパク質の発現および複製に欠陥があった。これらの欠陥の両方とも、AdSyn-CO210においてはより低い程度で明らかだった。図2Bについては、A549細胞を、MOI 30で感染させた。感染一次細胞と対照的に、後期構造タンパク質の発現で明らかな欠陥はなく、サイクリンAおよびサイクリンBは全ての感染A549試料にまだ存在していた。
【0019】
図3図3A~3Bは、それぞれ感染SAECおよびA549細胞での細胞性DNAを数量化するFACSヒストグラムである。細胞は、模擬感染させたか、またはAdSyn-CO102(野生型)、AdSyn-CO181(E1AΔLXCXE/ΔE4orf6/7)、AdSyn-CO189(E1AΔLXCXE)またはAdSyn-CO210(ΔE4orf6/7)に感染させて、感染から48時間後に収集した。非感染細胞のDNA含有量を、バックグラウンドプロファイルに示す。Y軸は細胞の相対的な存在度であり、X軸は細胞中のヨウ化プロピジウム(PI)からの蛍光であり、それはDNAの量に比例する。図3Aについては、静止期のSAECを、MOI 10で感染させた。AdSyn-CO181感染はAdSyn-CO102と比較してSAECで大きなDNA複製欠陥を示し、それはウイルス複製の減少と関連している。この時点で、AdSyn-CO210感染SAECでも軽度の欠陥が明らかだった。図3Bについては、A549細胞を、MOI 30で感染させた。これらの細胞では、いかなる突然変異体ウイルス感染でもDNA複製欠陥は明らかでなかった。
【0020】
図4図4A~4Bは、それぞれ感染SAECおよびA549細胞からのアデノウイルスバーストを示すグラフである。細胞は、模擬感染させたか、またはAdSyn-CO102(野生型)、AdSyn-CO181(E1AΔLXCXE/ΔE4orf6/7)、AdSyn-CO189(E1AΔLXCXE)、AdSyn-CO210(ΔE4orf6/7)またはONYX-838(E1AΔCR2)に感染させ、感染から48および72時間後に培地を収集した。培地中の感染性ウイルス粒子を、ELISAによって数量化した。図4Aについては、静止期のSAECを、MOI 10で感染させた。AdSyn-CO181およびAdSyn-CO210感染は両方とも、AdSyn-CO102と比較してSAECで大きな複製欠陥を明らかにした。図4Bについては、A549細胞を、MOI 30で感染させた。AdSyn-CO210を除いては、これらの細胞でウイルス複製の欠陥は観察されなかった。
【0021】
図5図5A~5Bは、感染から7日後の感染SAECおよびA549細胞の細胞生存性をそれぞれ示すグラフである。細胞は、模擬感染させたか、またはAdSyn-CO102(野生型)、AdSyn-CO181(E1AΔLXCXE/ΔE4orf6/7)、AdSyn-CO189(E1AΔLXCXE)、AdSyn-CO210(ΔE4orf6/7)またはONYX-838(E1AΔCR2)の系列希釈に感染させ、細胞代謝活性をWST-1アッセイによって数量化した。図5Aに示すように、AdSyn-CO102と比較して、AdSyn-CO181はSAECで細胞殺滅能力の低下を示した。図5Bに示すように、試験した突然変異体ウイルスの中では、野生型ウイルスと比較して細胞殺滅の欠陥はなかった。
【0022】
図6AB図6Aは、細胞溶解物のイムノブロットである。アデノウイルス後期構造タンパク質発現および細胞性サイクリン誘導を検出するために、MOI 10で感染させた正常ヒト星状神経膠細胞(NHA)をイムノブロットにかけた。AdSyn-CO181はサイクリンAを誘導せず、AdSyn-CO102と比較して遅く、減少した後期ウイルスタンパク質発現を実証し、そのことは複製欠陥を指し示す。図6B~6Cは、AdSyn-CO181がNHAで減弱された感染を示すことを示すグラフである。図6Bについては、NHAをウイルス群に感染させ、感染から48および72時間後に培地中の感染性粒子の数を数量化した。AdSyn-CO181およびAdSyn-CO189は、AdSyn-CO102と比較してNHAで複製欠陥を実証した。図6Cについては、MOI 10で感染させたNHAで、感染から48時間後に、PI FACSによりDNA複製を数量化した。非感染細胞のDNA含有量を、ヒストグラムのバックグラウンドプロファイルに示す。Y軸は細胞の相対的な存在度であり、X軸は細胞中のPIからの蛍光であり、それは核酸の量に比例する。AdSyn-CO181はAdSyn-CO102と比較して低下したDNA複製誘導を示し、それはウイルス複製の減少とリンクしている。
【0023】
図6C図6B~6Cは、AdSyn-CO181がNHAで減弱された感染を示すことを示すグラフである。図6Bについては、NHAをウイルス群に感染させ、感染から48および72時間後に培地中の感染性粒子の数を数量化した。AdSyn-CO181およびAdSyn-CO189は、AdSyn-CO102と比較してNHAで複製欠陥を実証した。図6Cについては、MOI 10で感染させたNHAで、感染から48時間後に、PI FACSによりDNA複製を数量化した。非感染細胞のDNA含有量を、ヒストグラムのバックグラウンドプロファイルに示す。Y軸は細胞の相対的な存在度であり、X軸は細胞中のPIからの蛍光であり、それは核酸の量に比例する。AdSyn-CO181はAdSyn-CO102と比較して低下したDNA複製誘導を示し、それはウイルス複製の減少とリンクしている。
【0024】
図7AB図7Aは、感染神経膠芽腫U87細胞からの細胞溶解物のイムノブロットである。アデノウイルス後期構造タンパク質発現および細胞性サイクリン誘導を検出するために、MOI 20で感染させたU87細胞をイムノブロットにかけた。図7B~7Cは、組換えアデノウイルスが神経膠芽腫U87細胞で複製欠陥を有しないことを示すグラフである。図7Bについては、U87細胞をウイルス群に感染させ、感染から48および72時間後に培地中の感染性粒子の数を数量化した。図7Cについては、MOI 20で感染させたU87細胞で、感染から48時間後に、PI FACSによりDNA複製を数量化した。非感染細胞のDNA含有量を、ヒストグラムのバックグラウンドプロファイルに示す。Y軸は細胞の相対的な存在度であり、X軸は細胞中のPIからの蛍光であり、それは核酸の量に比例する。
【0025】
図7C図7B~7Cは、組換えアデノウイルスが神経膠芽腫U87細胞で複製欠陥を有しないことを示すグラフである。図7Bについては、U87細胞をウイルス群に感染させ、感染から48および72時間後に培地中の感染性粒子の数を数量化した。図7Cについては、MOI 20で感染させたU87細胞で、感染から48時間後に、PI FACSによりDNA複製を数量化した。非感染細胞のDNA含有量を、ヒストグラムのバックグラウンドプロファイルに示す。Y軸は細胞の相対的な存在度であり、X軸は細胞中のPIからの蛍光であり、それは核酸の量に比例する。
【0026】
図8AB図8Aは、感染神経膠芽腫U118細胞からの細胞溶解物のイムノブロットである。アデノウイルス後期構造タンパク質発現および細胞性サイクリン誘導を検出するために、MOI 20で感染させたU118細胞をイムノブロットにかけた。図8B~8Cは、組換えアデノウイルスが神経膠芽腫U118細胞で複製欠陥を有しないことを示すグラフである。図8Bについては、U118細胞をウイルス群に感染させ、感染から48および72時間後に培地中の感染性粒子の数を数量化した。図8Cについては、MOI 20で感染させたU118細胞で、感染から48時間後に、PI FACSによりDNA複製を数量化した。非感染細胞のDNA含有量を、ヒストグラムのバックグラウンドプロファイルに示す。Y軸は細胞の相対的な存在度であり、X軸は細胞中のPIからの蛍光であり、それは核酸の量に比例する。
【0027】
図8C図8B~8Cは、組換えアデノウイルスが神経膠芽腫U118細胞で複製欠陥を有しないことを示すグラフである。図8Bについては、U118細胞をウイルス群に感染させ、感染から48および72時間後に培地中の感染性粒子の数を数量化した。図8Cについては、MOI 20で感染させたU118細胞で、感染から48時間後に、PI FACSによりDNA複製を数量化した。非感染細胞のDNA含有量を、ヒストグラムのバックグラウンドプロファイルに示す。Y軸は細胞の相対的な存在度であり、X軸は細胞中のPIからの蛍光であり、それは核酸の量に比例する。
【0028】
図9AB図9Aは、感染ヒト線維芽細胞(IMR90細胞)からの細胞溶解物のイムノブロットである。後期構造タンパク質発現を検出するために、MOI 10で感染させた線維芽細胞をイムノブロットにかけた。AdSyn-CO181はAdSyn-CO102と比較して遅く、減少した後期ウイルスタンパク質発現を示し、そのことは複製欠陥を指し示す。図9B~9Cは、AdSyn-CO181がIMR90細胞で軽度の複製欠陥を有することを示すグラフである。図9Bについては、線維芽細胞をウイルス群に感染させ、感染から48および72時間後に培地中の感染性粒子の数を数量化した。これらの時点におけるこのアッセイで、改変アデノウイルスの複製能力に明白な差がなかった。図9Cについては、MOI 20で感染させた線維芽細胞で、感染から48時間後に、PI FACSによりDNA複製を数量化した。非感染細胞のDNA含有量を、ヒストグラムのバックグラウンドプロファイルに示す。Y軸は細胞の相対的な存在度であり、X軸は細胞中のPIからの蛍光であり、それは核酸の量に比例する。AdSyn-CO181はAdSyn-CO102と比較して低下したDNA複製誘導を示し、それはウイルス複製の減少とリンクしている。
【0029】
図9C図9B~9Cは、AdSyn-CO181がIMR90細胞で軽度の複製欠陥を有することを示すグラフである。図9Bについては、線維芽細胞をウイルス群に感染させ、感染から48および72時間後に培地中の感染性粒子の数を数量化した。これらの時点におけるこのアッセイで、改変アデノウイルスの複製能力に明白な差がなかった。図9Cについては、MOI 20で感染させた線維芽細胞で、感染から48時間後に、PI FACSによりDNA複製を数量化した。非感染細胞のDNA含有量を、ヒストグラムのバックグラウンドプロファイルに示す。Y軸は細胞の相対的な存在度であり、X軸は細胞中のPIからの蛍光であり、それは核酸の量に比例する。AdSyn-CO181はAdSyn-CO102と比較して低下したDNA複製誘導を示し、それはウイルス複製の減少とリンクしている。
【0030】
図10図10は、感染から10日後の感染一次NHA細胞の細胞生存性を示すグラフである。細胞を、野生型または突然変異体ウイルスの系列希釈に感染させた。代謝活性は、WST-1アッセイによって数量化した。1細胞につき3つおよび10個の感染性粒子では2つの群のウイルスが明らかであり、グラフでは「より少ない殺滅」および「より多い殺滅」と表示した。より少ない細胞殺滅を誘導したウイルスは、Rb結合性突然変異を有するE1AおよびE4orf6/7の欠失の両方を有する。より多い殺滅を誘導したウイルスは、野生型E1または野生型E4のいずれかを有する。
【0031】
図11図11は、感染から9日後の感染した静止期のSAEC-hTERT細胞の細胞生存性を示すグラフである。細胞を、野生型または突然変異体ウイルスの系列希釈に感染させた。代謝活性は、WST-1アッセイによって数量化した。1細胞につき3つおよび10個の感染性粒子では2つの群のウイルスが明らかであり、グラフでは「より少ない殺滅」および「より多い殺滅」と表示した。より少ない細胞殺滅を誘導したウイルスは、Rb結合性突然変異を有するE1AおよびE4orf6/7の欠失の両方を有する。より多い細胞殺滅を誘導したウイルスは、野生型E1または野生型E4のいずれかを有する。
【0032】
図12図12は、感染から9日後の感染した増殖期のSAEC-hTERT細胞の細胞生存性を示すグラフである。細胞を、野生型または突然変異体ウイルスの系列希釈に感染させた。代謝活性は、WST-1アッセイによって数量化した。1細胞につき3つおよび10個の感染性粒子では2つの群のウイルスが明らかであり、グラフでは「より少ない殺滅」および「より多い殺滅」と表示した。より少ない細胞殺滅を誘導したウイルスは、Rb結合性突然変異を有するE1AおよびE4orf6/7の欠失の両方を有する。より多い細胞殺滅を誘導したウイルスは、野生型E1または野生型E4のいずれかを有する。
【0033】
図13図13は、感染から7日後の感染A549細胞の細胞生存性を示すグラフである。細胞を、野生型または改変ウイルスの系列希釈に感染させた。代謝活性は、WST-1アッセイによって数量化した。
【0034】
図14図14は、感染から7日後の感染ヒト乳がん細胞(MDA MB231)の細胞生存性を示すグラフである。細胞を、野生型または改変ウイルスの系列希釈に感染させた。代謝活性は、WST-1アッセイによって数量化した。
【0035】
図15図15は、感染から7日後の感染神経膠芽腫細胞(U87)の細胞生存性を示すグラフである。細胞を、野生型または改変ウイルスの系列希釈に感染させた。代謝活性は、WST-1アッセイによって数量化した。
【0036】
図16図16は、図10~15に示す、感染一次NHA、SAEC-hTERT(静止期)、SAEC-hTERT(増殖期)、A549、MDA MB231およびU87細胞のための細胞生存性アッセイの定量化を示す表である。
【0037】
図17図17は、感染U2OS細胞(機能的p53およびRbを有する)およびSaOS2細胞(非機能的p53およびRbを有する)のための細胞生存性アッセイの定量化を示す表である。細胞を、野生型または改変ウイルスの系列希釈に感染させた。代謝活性は、WST-1アッセイによって数量化した。
【0038】
図18AB図18Aは、FRBドメインとラパマイシンおよびFKBP12との結合界面を示す図である。突然変異体FRBドメイン(FRB;mTOR残基T2098L)は、ラパマイシンまたはラパマイシン相同体AP21967のいずれかとFRB/FKBP12ヘテロダイマーを形成するように誘導される。図18Bは、AP21967でなくラパマイシンの存在下で、FRB-繊維を有するEGFR標的化ウイルス(AdSyn-CO205;配列番号88)が、MDA MB453乳がん細胞の改善された形質導入を有することを示すグラフである。ラパマイシンまたはAP21967のいずれかの存在下で、FRB-繊維を有するEGFR標的化ウイルス(AdSyn-CO220;配列番号98)は、MDA MB453細胞の改善された形質導入を有する。図18Cは、その標的p70 S6Kのリン酸化をブロックするmTOR阻害剤ラパマイシンの活性を示すイムノブロットである。ラパマイシン相同体AP21967は、標的化濃度でmTORを阻害しない。図18Dは、感染から9日後の感染HS578T転移性乳がん細胞の細胞生存性を示すグラフである。細胞を、AdSyn-CO312の系列希釈に感染させた。感染から24、48、72および96時間後に、新鮮なラパマイシンまたはAP21967を50nMまで追加した。代謝活性をWST-1アッセイによって数量化し、マッチさせた薬物治療の非感染細胞に正規化させた。AdSyn-CO312はE1AΔLXCXE、ΔE4orf6/7、ΔE3-RIDα/β、ΔE3-14.7kの腫瘍崩壊性突然変異を有し、ラパマイシン依存性またはAP21967依存性のEGFR標的化遺伝子EGFRVHH-FKBPおよびFRB-繊維を発現する。標的化なしに対してラパマイシンまたはAP21967を受けるEGFR標的化腫瘍崩壊性ウイルスに感染した細胞で、殺滅の増大がある。図18Eは、感染から9日後の感染HS578T転移性乳がん細胞の細胞生存性を示すグラフである。細胞を、AdSyn-CO313の系列希釈に感染させた。感染から24、48、72および96時間後に、新鮮なラパマイシンを50nMまで追加した。代謝活性をWST-1アッセイによって数量化し、マッチさせた薬物治療の非感染細胞に正規化させた。AdSyn-CO313はE1AΔLXCXE、ΔE4orf6/7、ΔE3-RIDα/β、ΔE3-14.7kの腫瘍崩壊性突然変異を有し、ラパマイシン依存性のEGFR標的化遺伝子EGFRVHH-FKBPおよびFRB-繊維を発現する。標的化なしでラパマイシンを受けるEGFR標的化腫瘍崩壊性ウイルスに感染した細胞で、殺滅の増大がある。
図18CD図18Aは、FRBドメインとラパマイシンおよびFKBP12との結合界面を示す図である。突然変異体FRBドメイン(FRB;mTOR残基T2098L)は、ラパマイシンまたはラパマイシン相同体AP21967のいずれかとFRB/FKBP12ヘテロダイマーを形成するように誘導される。図18Bは、AP21967でなくラパマイシンの存在下で、FRB-繊維を有するEGFR標的化ウイルス(AdSyn-CO205;配列番号88)が、MDA MB453乳がん細胞の改善された形質導入を有することを示すグラフである。ラパマイシンまたはAP21967のいずれかの存在下で、FRB-繊維を有するEGFR標的化ウイルス(AdSyn-CO220;配列番号98)は、MDA MB453細胞の改善された形質導入を有する。図18Cは、その標的p70 S6Kのリン酸化をブロックするmTOR阻害剤ラパマイシンの活性を示すイムノブロットである。ラパマイシン相同体AP21967は、標的化濃度でmTORを阻害しない。図18Dは、感染から9日後の感染HS578T転移性乳がん細胞の細胞生存性を示すグラフである。細胞を、AdSyn-CO312の系列希釈に感染させた。感染から24、48、72および96時間後に、新鮮なラパマイシンまたはAP21967を50nMまで追加した。代謝活性をWST-1アッセイによって数量化し、マッチさせた薬物治療の非感染細胞に正規化させた。AdSyn-CO312はE1AΔLXCXE、ΔE4orf6/7、ΔE3-RIDα/β、ΔE3-14.7kの腫瘍崩壊性突然変異を有し、ラパマイシン依存性またはAP21967依存性のEGFR標的化遺伝子EGFRVHH-FKBPおよびFRB-繊維を発現する。標的化なしに対してラパマイシンまたはAP21967を受けるEGFR標的化腫瘍崩壊性ウイルスに感染した細胞で、殺滅の増大がある。図18Eは、感染から9日後の感染HS578T転移性乳がん細胞の細胞生存性を示すグラフである。細胞を、AdSyn-CO313の系列希釈に感染させた。感染から24、48、72および96時間後に、新鮮なラパマイシンを50nMまで追加した。代謝活性をWST-1アッセイによって数量化し、マッチさせた薬物治療の非感染細胞に正規化させた。AdSyn-CO313はE1AΔLXCXE、ΔE4orf6/7、ΔE3-RIDα/β、ΔE3-14.7kの腫瘍崩壊性突然変異を有し、ラパマイシン依存性のEGFR標的化遺伝子EGFRVHH-FKBPおよびFRB-繊維を発現する。標的化なしでラパマイシンを受けるEGFR標的化腫瘍崩壊性ウイルスに感染した細胞で、殺滅の増大がある。
図18E図18Aは、FRBドメインとラパマイシンおよびFKBP12との結合界面を示す図である。突然変異体FRBドメイン(FRB;mTOR残基T2098L)は、ラパマイシンまたはラパマイシン相同体AP21967のいずれかとFRB/FKBP12ヘテロダイマーを形成するように誘導される。図18Bは、AP21967でなくラパマイシンの存在下で、FRB-繊維を有するEGFR標的化ウイルス(AdSyn-CO205;配列番号88)が、MDA MB453乳がん細胞の改善された形質導入を有することを示すグラフである。ラパマイシンまたはAP21967のいずれかの存在下で、FRB-繊維を有するEGFR標的化ウイルス(AdSyn-CO220;配列番号98)は、MDA MB453細胞の改善された形質導入を有する。図18Cは、その標的p70 S6Kのリン酸化をブロックするmTOR阻害剤ラパマイシンの活性を示すイムノブロットである。ラパマイシン相同体AP21967は、標的化濃度でmTORを阻害しない。図18Dは、感染から9日後の感染HS578T転移性乳がん細胞の細胞生存性を示すグラフである。細胞を、AdSyn-CO312の系列希釈に感染させた。感染から24、48、72および96時間後に、新鮮なラパマイシンまたはAP21967を50nMまで追加した。代謝活性をWST-1アッセイによって数量化し、マッチさせた薬物治療の非感染細胞に正規化させた。AdSyn-CO312はE1AΔLXCXE、ΔE4orf6/7、ΔE3-RIDα/β、ΔE3-14.7kの腫瘍崩壊性突然変異を有し、ラパマイシン依存性またはAP21967依存性のEGFR標的化遺伝子EGFRVHH-FKBPおよびFRB-繊維を発現する。標的化なしに対してラパマイシンまたはAP21967を受けるEGFR標的化腫瘍崩壊性ウイルスに感染した細胞で、殺滅の増大がある。図18Eは、感染から9日後の感染HS578T転移性乳がん細胞の細胞生存性を示すグラフである。細胞を、AdSyn-CO313の系列希釈に感染させた。感染から24、48、72および96時間後に、新鮮なラパマイシンを50nMまで追加した。代謝活性をWST-1アッセイによって数量化し、マッチさせた薬物治療の非感染細胞に正規化させた。AdSyn-CO313はE1AΔLXCXE、ΔE4orf6/7、ΔE3-RIDα/β、ΔE3-14.7kの腫瘍崩壊性突然変異を有し、ラパマイシン依存性のEGFR標的化遺伝子EGFRVHH-FKBPおよびFRB-繊維を発現する。標的化なしでラパマイシンを受けるEGFR標的化腫瘍崩壊性ウイルスに感染した細胞で、殺滅の増大がある。
【0039】
図19図19は、治療されたマウスにおけるHS578T皮下異種移植の平均腫瘍体積を示すグラフである。確立された腫瘍を有するマウスはAdSyn-CO313の腫瘍内注射を受け、その後、定期的な腹腔内8mg/kgラパマイシン注射(n=5)もしくはビヒクル対照(n=4)を受けたか、または、それらは腫瘍内ビヒクル対照を受け、その後、定期的な腹腔内8mg/kgラパマイシン注射(n=5)もしくはビヒクル対照(n=4)を受けた。最初の感染の19日後に開始して、4日ごとにさらに3回、同じ群で感染を繰り返した。AdSyn-CO313はE1AΔLXCXE、ΔE4orf6/7、ΔE3-RIDα/β、ΔE3-14.7kの腫瘍崩壊性突然変異を有し、ラパマイシン依存性のEGFR標的化遺伝子EGFRVHH-FKBPおよびFRB-繊維を発現する。ラパマイシンとEGFR標的化腫瘍崩壊性ウイルスを受けたマウスでの腫瘍は、最良の応答を示した。
【0040】
図20図20は、感染から9日後の感染HS578T転移性乳がん細胞の細胞生存性を示すグラフである。細胞を、AdSyn-CO335の系列希釈に感染させた。感染から24、48、72および96時間後に、新鮮なラパマイシンまたはAP21967を50nMまで追加した。代謝活性をWST-1アッセイによって数量化し、マッチさせた薬物治療の非感染細胞に正規化させた。AdSyn-CO335は、E1AΔLXCXE、ΔE4orf6/7、ΔE3-RIDα/β、ΔE3-14.7kの腫瘍崩壊性突然変異;肝臓脱標的化ヘキソン突然変異E451Qを有し;ラパマイシン依存性またはAP21967依存性のEGFR標的化遺伝子EGFRVHH-FKBPおよびFRB-繊維を発現する。標的化なしに対してラパマイシンまたはAP21967を受けるEGFR標的化腫瘍崩壊性ウイルスに感染した細胞で、殺滅の増大がある。
【0041】
図21AB図21A~21Bは、治療されたマウスにおけるHS578T皮下異種移植の平均体積を示すグラフである。図21C~21Dは、治療されたマウスにおけるHS578T皮下異種移植の体積の変化倍率を示すグラフである。確立された腫瘍を有するマウスは、AdSyn-CO335の3回の腫瘍内注射を4日ごとに受け、その後、腹腔内2もしくは8mg/kgラパマイシン注射(それぞれn=8およびn=8)を隔日に、またはビヒクル対照を(n=6)隔日に受け;または、それらはAdSyn-CO442の3回の腫瘍内注射を4日ごとに受け、その後腹腔内2もしくは8mg/kgラパマイシン注射(それぞれn=6およびn=6)を隔日に受け;または、それらはビヒクル対照の3回の腫瘍内注射を4日ごとに受け、その後腹腔内2もしくは8mg/kgラパマイシン注射(それぞれn=6およびn=6)を隔日に受けた。8mg/kgラパマイシンとEGFR標的化腫瘍崩壊性ウイルスを受けたマウスでの腫瘍は、最良の応答を示す。
図21C図21A~21Bは、治療されたマウスにおけるHS578T皮下異種移植の平均体積を示すグラフである。図21C~21Dは、治療されたマウスにおけるHS578T皮下異種移植の体積の変化倍率を示すグラフである。確立された腫瘍を有するマウスは、AdSyn-CO335の3回の腫瘍内注射を4日ごとに受け、その後、腹腔内2もしくは8mg/kgラパマイシン注射(それぞれn=8およびn=8)を隔日に、またはビヒクル対照を(n=6)隔日に受け;または、それらはAdSyn-CO442の3回の腫瘍内注射を4日ごとに受け、その後腹腔内2もしくは8mg/kgラパマイシン注射(それぞれn=6およびn=6)を隔日に受け;または、それらはビヒクル対照の3回の腫瘍内注射を4日ごとに受け、その後腹腔内2もしくは8mg/kgラパマイシン注射(それぞれn=6およびn=6)を隔日に受けた。8mg/kgラパマイシンとEGFR標的化腫瘍崩壊性ウイルスを受けたマウスでの腫瘍は、最良の応答を示す。
図21D図21A~21Bは、治療されたマウスにおけるHS578T皮下異種移植の平均体積を示すグラフである。図21C~21Dは、治療されたマウスにおけるHS578T皮下異種移植の体積の変化倍率を示すグラフである。確立された腫瘍を有するマウスは、AdSyn-CO335の3回の腫瘍内注射を4日ごとに受け、その後、腹腔内2もしくは8mg/kgラパマイシン注射(それぞれn=8およびn=8)を隔日に、またはビヒクル対照を(n=6)隔日に受け;または、それらはAdSyn-CO442の3回の腫瘍内注射を4日ごとに受け、その後腹腔内2もしくは8mg/kgラパマイシン注射(それぞれn=6およびn=6)を隔日に受け;または、それらはビヒクル対照の3回の腫瘍内注射を4日ごとに受け、その後腹腔内2もしくは8mg/kgラパマイシン注射(それぞれn=6およびn=6)を隔日に受けた。8mg/kgラパマイシンとEGFR標的化腫瘍崩壊性ウイルスを受けたマウスでの腫瘍は、最良の応答を示す。
【0042】
図22図22A~22Cは、肝臓でのアデノウイルス媒介遺伝子発現の排除および肝臓へのアデノウイルス感染の脱標的化を示す。図22Aに示すように、AdSyn-CO199、E1領域を欠くアデノウイルスベクターは、全身感染の後、肝臓でルシフェラーゼを排他的に高レベルで発現する。図22Bに示すように、肝臓特異的マイクロRNA miR122がルシフェラーゼ発現を排除することを除いて、AdSyn-CO199に対応するウイルス、AdSyn-CO200にマウスが全身感染するときに、ルシフェラーゼシグナルは失われる。図22Cに示すように、アデノウイルスヘキソンタンパク質が、それを肝臓から脱標的化する突然変異E451Qを有することを除いて、AdSyn-CO200に対応するウイルス、AdSyn-CO171にマウスが全身感染するとき、ルシフェラーゼの発現は脾臓で検出することができる。
【0043】
図23ABC図23A~23Eは、繊維タンパク質構造の例示、ならびに様々な細胞型をより良好に形質導入するキメラ繊維タンパク質を有するウイルスを作製するために、2つのアデノウイルス血清型からのモジュールを組み合わせることによって生産された組換えアデノウイルスを特徴付ける一連のグラフおよび画像を含む。
図23D図23A~23Eは、繊維タンパク質構造の例示、ならびに様々な細胞型をより良好に形質導入するキメラ繊維タンパク質を有するウイルスを作製するために、2つのアデノウイルス血清型からのモジュールを組み合わせることによって生産された組換えアデノウイルスを特徴付ける一連のグラフおよび画像を含む。
図23E図23A~23Eは、繊維タンパク質構造の例示、ならびに様々な細胞型をより良好に形質導入するキメラ繊維タンパク質を有するウイルスを作製するために、2つのアデノウイルス血清型からのモジュールを組み合わせることによって生産された組換えアデノウイルスを特徴付ける一連のグラフおよび画像を含む。
【0044】
図24A図24Aは、カプシド交換キメラウイルスを作製するためのモジュール改変を表す例示である。図24Bは、特異的突然変異体ウイルスならびにそれらのE1、コア、E3およびE4モジュール改変を掲載する表である。
図24B図24Aは、カプシド交換キメラウイルスを作製するためのモジュール改変を表す例示である。図24Bは、特異的突然変異体ウイルスならびにそれらのE1、コア、E3およびE4モジュール改変を掲載する表である。
【0045】
図25A図25A~25Eは、タンパク質含有量およびカプシド交換ウイルスからの発現を示す一連のイムノブロットである。
図25BC図25A~25Eは、タンパク質含有量およびカプシド交換ウイルスからの発現を示す一連のイムノブロットである。
図25DE図25A~25Eは、タンパク質含有量およびカプシド交換ウイルスからの発現を示す一連のイムノブロットである。
【0046】
図26図26A~26Cは、カプシド交換ウイルスが抗Ad5抗体を含有するヒト血清によって中和されないことを示す一連のグラフである。
【0047】
図27図27は、種A(Ad12;配列番号47)、種B(Ad7;配列番号48)、種C(Ad2およびAd5;それぞれ配列番号49および配列番号50)、種D(Ad9;配列番号51)、種E(Ad4;配列番号52)、種F(Ad40;配列番号53)および種G(Ad52;配列番号54)を含むヒトアデノウイルス種からのE1A配列のアラインメントを示す。本明細書に開示される腫瘍崩壊性アデノウイルス組成物で見出される突然変異部位であるY47の概要を示す。強力なE1A-Rb相互作用のために必要であるC124を含有するLXCXEモチーフが、灰色のボックスで強調されている。
【0048】
図28図28は、種A(Ad12;配列番号55)、種B(Ad7;配列番号56)、種C(Ad2およびAd5;それぞれ配列番号57および配列番号58)、種D(Ad9;配列番号59)、種E(Ad4;配列番号60)および種G(Ad52;配列番号61)を含むヒトアデノウイルス種からのE4orf1配列のアラインメントを示す。それを通してE4orf1がPI3Kを上方調節し、細胞増殖の負の調節を阻止する、PDZ結合性モチーフが灰色のボックスで強調されている。
【0049】
図29図29は、ラパマイシン依存性のEGFR標的化構成成分を有する合成アデノウイルスに感染した293-E4細胞からのタンパク質発現のイムノブロットを示す。293-E4細胞は、Adsembly野生型Ad(AdSyn-CO170)、標的化改変AdSyn-CO205または対照ウイルスAdSyn-CO206もしくはAdSyn-CO207のいずれかに、10の感染多重度(MOI)で感染させた。ラパマイシン制御EGFR標的化ウイルスAdSyn-CO205については、感染のマーカーとしてGFPリポーターをE1Aに融合させた。E3B転写物は、RIDα、RIDβおよび14.7kを欠失させることによって改変し、EGFRVHH-FKBPを発現させるために使用した。AdSyn-CO206はAdSyn-CO205の全ての改変を含有するが野生型繊維を保持し、したがって、FRBドメインを有しない。AdSyn-CO207はAdSyn-CO206の全ての改変を含有するが野生型E3領域を保持し、したがって、FKBP融合遺伝子を有しない。繊維の移動の変化は、AdSyn-CO207およびAdSyn-CO205での90アミノ酸FRBドメイン挿入を示す。EGFRVHH-FKBP融合タンパク質の発現は、FKBP12のプローブすることによって検出された。後期タンパク質発現の時間経過は、Adsembly野生型Adと比較して、カプシド突然変異体またはGFP-E1Aリポーターを有するEGFRVHH-FKBP発現ウイルスの複製で顕著な欠陥がないことを示す。
【0050】
図30図30は、ビヒクル(非感染)、対照ウイルス(AdSyn-CO442)または腫瘍崩壊性アデノウイルス(AdSyn-CO335)の3回の腫瘍内注射、およびラパマイシン(0、2または8mg/kg)の3週間の1日おきの腹腔内同時投与の28日後のHS578T異種移植腫瘍応答を示すウォーターフォールプロットである。左から右に、(a)非感染、ラパマイシンなし;(b)非感染、2mg/kgラパマイシン;(c)非感染、8mg/kgラパマイシン;(d)AdSyn-CO335、ラパマイシンなし;(e)AdSyn-CO335、2mg/kgラパマイシン;(f)AdSyn-CO335、8mg/kgラパマイシン;(g)AdSyn-CO442、2mg/kgラパマイシン;および(h)AdSyn-CO442、8mg/kgラパマイシンを示す。N=各群での腫瘍数。各カラムは個々の腫瘍を表し、データはその治療前の腫瘍体積と比較して表される。
【0051】
図31図31は、HS578T異種移植組織の免疫組織化学(IHC)染色を示す。皮下HS578T異種移植腫瘍を有するマウスを、100μLのビヒクル、2mg/kgのラパマイシンまたは8mg/kgのラパマイシンの腹腔内注射によって治療した。注射から1時間後、異種移植組織を収集し、10%ホルマリンで固定し、P70S6KのホスホT378の形態を認識する抗体によるIHC染色のために切断した。トレオニン389でリン酸化したP70S6K(P70S6K p-T389)のために染色したHS578T異種移植組織切片のマイクロピクトグラフを示す。T389でのP70S6Kのリン酸化は、mTOR活性の特質である。無治療かまたは低いアデノウイルスEGFR標的化有効用量(2mg/kg)の組織では、P70S6K p-T389の染色によって明白なように、mTOR活性は阻害されない。より高いアデノウイルスEGFR標的化有効用量(8mg/kg)では、P70S6K p-T389染色の喪失によって明らかなように、mTOR活性は阻害される。
【発明を実施するための形態】
【0052】
配列表
米国特許法施行規則1.822に規定されるように、添付の配列表に掲載される核酸およびアミノ酸配列は、ヌクレオチド塩基のための標準の略字およびアミノ酸のための3文字コードを使用して示される。各核酸配列の1本の鎖だけが示されるが、提示される鎖へのいかなる参照にも相補鎖が含まれると理解される。配列表は、2015年9月23日に作られた2.91MBのASCIIテキストファイルとして提出され、それは本明細書に参照により組み込まれる。添付の配列表では:
【0053】
配列番号1~31および68~98は、組換えアデノウイルスのヌクレオチド配列である(表1~5;実施例6;および実施例7を参照)。
【0054】
配列番号32は、Ad5 E1Aのアミノ酸配列である。
【0055】
配列番号33は、Ad5 E1AΔLXCXEのアミノ酸配列である。
【0056】
配列番号34は、Ad5 E1A C124Gのアミノ酸配列である。
【0057】
配列番号35は、Ad5 E1A Δ2-11のアミノ酸配列である。
【0058】
配列番号36は、Ad5 E1A Y47H C124Gのアミノ酸配列である。
【0059】
配列番号37は、Ad5 E1A Δ2-11 Y47H C124Gのアミノ酸配列である。
【0060】
配列番号38は、Ad5 E4orf1のアミノ酸配列である。
【0061】
配列番号39は、Ad5 E4orf1 ΔPDZbのアミノ酸配列である。
【0062】
配列番号40は、Ad5 E4orf6/7のアミノ酸配列である。
【0063】
配列番号41は、Ad5繊維のアミノ酸配列である。
【0064】
配列番号42は、Ad5 FRB繊維のアミノ酸配列である。
【0065】
配列番号43は、Ad5 FRB繊維のアミノ酸配列である。
【0066】
配列番号44は、EGFRVHH-GS-FKBPのアミノ酸配列である。
【0067】
配列番号45は、Ad5ヘキソンのアミノ酸配列である。
【0068】
配列番号46は、Ad5ヘキソンE451Qのアミノ酸配列である。
【0069】
配列番号47は、種A(Ad12)E1Aのアミノ酸配列である。
【0070】
配列番号48は、種B(Ad7)E1Aのアミノ酸配列である。
【0071】
配列番号49は、種C(Ad2)E1Aのアミノ酸配列である。
【0072】
配列番号50は、種C(Ad5)E1Aのアミノ酸配列である。
【0073】
配列番号51は、種D(Ad9)E1Aのアミノ酸配列である。
【0074】
配列番号52は、種E(Ad4)E1Aのアミノ酸配列である。
【0075】
配列番号53は、種F(Ad40)E1Aのアミノ酸配列である。
【0076】
配列番号54は、種G(Ad52)E1Aのアミノ酸配列である。
【0077】
配列番号55は、種A(Ad12)E4orf1のアミノ酸配列である。
【0078】
配列番号56は、種B(Ad7)E4orf1のアミノ酸配列である。
【0079】
配列番号57は、種C(Ad2)E4orf1のアミノ酸配列である。
【0080】
配列番号58は、種C(Ad5)E4orf1のアミノ酸配列である。
【0081】
配列番号59は、種D(Ad9)E4orf1のアミノ酸配列である。
【0082】
配列番号60は、種E(Ad4)E4orf1のアミノ酸配列である。
【0083】
配列番号61は、種G(Ad52)E4orf1のアミノ酸配列である。
【0084】
配列番号62は、Ad2のヌクレオチド配列である。
【0085】
配列番号63は、Ad5のヌクレオチド配列である。
【0086】
配列番号64は、Ad2 E4orf6/7のアミノ酸配列である。
【0087】
配列番号65は、Ad5 E3-RIDαのアミノ酸配列である。
【0088】
配列番号66は、Ad5 E3-RIDβのアミノ酸配列である。
【0089】
配列番号67は、Ad5 E3-14.7Kのアミノ酸配列である。
【0090】
詳細な説明
I.略記号
Ad アデノウイルス
CAR コクサッキーアデノウイルス受容体
CPE 細胞変性効果
EGFR 上皮増殖因子受容体
ELISA 酵素結合免疫吸着アッセイ
FACS 蛍光活性化細胞分取
FKBP FK506結合性タンパク質
FRB FKBP-ラパマイシン結合性
hTERT ヒトテロメラーゼ逆転写酵素
HuVEC ヒト血管内皮細胞
MAV-1 マウスアデノウイルス1
miR マイクロRNA
MOI 感染多重度
mTOR ラパマイシンの哺乳動物標的
NHA 正常ヒト星状神経膠細胞
PET 陽電子放射断層撮影(positron emission topography)
PI ヨウ化プロピジウム
PRP PETリポータープローブ
Rb 網膜芽細胞腫
SAEC 小気道上皮細胞
WT 野生型
II.用語および方法
【0091】
特に明記しない限り、技術用語は従来の用法に従って用いられる。分子生物学での一般用語の定義は、Oxford University Pressによって出版されたBenjamin Lewin、Genes
V、1994年(ISBN 0-19-854287-9);Blackwell Science Ltd.によって出版されたKendrewら(編)、The Encyclopedia of Molecular Biology、
1994年(ISBN 0-632-02182-9);およびVCH Publishers, Inc.によって出版されたRobert A. Meyers(編)、Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference、1995年(ISBN 1-56081-569-8)に見出すことができる。
【0092】
本開示の様々な実施形態のレビューを容易にするために、具体的な用語の以下の説明が提供される:
【0093】
アデノウイルス:線状の二本鎖DNAゲノムおよび二十面体カプシドを有する非外膜ウイルス。ヒトアデノウイルスの68個の公知の血清型が現在あり、それらは7つの種類(種A、B、C、D、E、FおよびG)に分けられる。アデノウイルスの異なる血清型は、疾患の異なるタイプと関連し、一部の血清型は呼吸器疾患(主に種BおよびC)、結膜炎(種BおよびD)および/または胃腸炎(種FおよびG)を引き起こす。
【0094】
投与:任意の有効な経路によって対象に薬剤、例えば治療剤(例えば組換えウイルス)を提供するか、与えること。例示的な投与経路には、注射(例えば皮下、筋肉内、皮内、腹腔内および静脈内)、経口、管内、舌下、直腸、経皮、鼻腔内、膣および吸入経路が限定されずに含まれる。
【0095】
抗体:抗原のエピトープを認識して結合する(例えば特異的に認識し、特異的に結合する)軽鎖および/または重鎖免疫グロブリン可変領域を少なくとも含むポリペプチドリガンド。免疫グロブリン分子は重鎖および軽鎖で構成され、それぞれは、可変重鎖(V)領域および可変軽鎖(V)領域と呼ばれる可変領域を有する。一緒に、V領域およびV領域は、抗体によって認識される抗原に結合する役割を担う。
【0096】
抗体は、当技術分野で周知である抗体、例えば単一ドメイン抗体(例えばVHドメイン抗体、またはVHH抗体)、Fab断片、Fab’断片、F(ab)’断片、単一鎖Fvタンパク質(「scFv」)およびジスルフィド安定化Fvタンパク質(「dsFv」)のインタクトな免疫グロブリンならびに変異体および一部(断片)を含む。scFvタンパク質は免疫グロブリンの軽鎖可変領域および免疫グロブリンの重鎖可変領域がリンカーによって結合している融合タンパク質であり、dsFvでは、鎖の結合を安定させるためにジスルフィド結合を導入するように鎖が突然変異されている。用語「抗体」は、遺伝子操作された形態、例えばキメラ抗体(例えば、ヒト化マウス抗体)およびヘテロコンジュゲート抗体(二重特異性抗体など)も含む。Pierce Catalog and Handbook、1994~1995年(Pierce Chemical Co.、Rockford、IL);Kuby, J.、Immunology、3版、W. H. Freeman & Co.、New York、1997年も参照。
【0097】
化学療法剤:異常な細胞成長を特徴とする疾患の治療で治療的有用性を有するあらゆる化学薬剤。そのような疾患には、腫瘍、新生物およびがん、ならびに過形成成長を特徴とする乾癬などの疾患が含まれる。一実施形態では、化学療法剤は放射性化合物である。当業者は、有用な化学療法剤を容易に特定することができる(例えば、Harrison's Principles of Internal Medicine、14版中のSlapakおよびKufe、Principles of Cancer
Therapy、86章;Abeloff、Clinical Oncology2版、(著作権)2000年、Churchill Livingstone, Incの中のPerryら、Chemotherapy、17章;Baltzer, L.、Berkery, R.(編):Oncology Pocket Guide to Chemotherapy、2版、St. Louis、Mosby-Year Book、1995年;Fischer, D.S.、Knobf, M.F.、Durivage, H.J.(編):The
Cancer Chemotherapy Handbook、4版、St. Louis、Mosby-Year Book、1993年を参照)。併用化学療法は、がんを治療するための1つを超える薬剤の投与である。
【0098】
キメラ:異なる起源を有する少なくとも2つの部分で構成される。本開示との関連で、「キメラアデノウイルス」は、少なくとも2つの異なる血清型に由来する(例えばAd5およびアデノウイルスの第2の血清型に由来する)遺伝物質および/またはタンパク質を有するアデノウイルスである。この文脈において、「カプシド交換」アデノウイルスは、カプシドタンパク質がアデノウイルスの1つの血清型に由来し、残りのタンパク質が別のアデノウイルス血清型に由来する、キメラアデノウイルスを指す。同様に、「キメラ繊維」は、アデノウイルスの少なくとも2つの異なる血清型に由来するアミノ酸配列を有する繊維タンパク質である。例えば、キメラ繊維は、Ad5からの繊維シャフトおよびアデノウイルスの第2の血清型からの繊維ノブで構成されてもよい(図23Aを参照)。
【0099】
接触させる:直接的な物理的関係に置くこと;固体および液体の両形態を含む。
【0100】
変性変異体:本開示との関連で、「変性変異体」は、遺伝子コードの結果として変性した配列を含むペプチドをコードするポリヌクレオチドを指す。20個の天然アミノ酸があり、そのほとんどは1つを超えるコドンによって指定される。したがって、ヌクレオチド配列によってコードされるペプチドのアミノ酸配列が変更されない限り、ペプチドをコードする全ての変性ヌクレオチド配列が含まれる。
【0101】
欠失:「欠失」E4orf1またはE4orf6/7のタンパク質をコードするアデノウイルスゲノムは、E4orf1またはE4orf6/7タンパク質発現の不在をもたらすE4orf1またはE4orf6/7コード配列の完全な欠失または部分的欠失を有するアデノウイルスを指す。
【0102】
E2Fの脱調節:E2F転写因子および下流標的遺伝子の活性の増加を指し、ほとんど全てのタイプのヒトがんで起こる。E2F経路活性および転写の脱調節は、Rb、p107およびp130腫瘍抑制遺伝子における機能突然変異および欠失の喪失などの、経路の任意の上流構成要素での様々な異なる突然変異から生じることができる。Rbは同定された最初の腫瘍抑制遺伝子であり、ヒト腫瘍の少なくとも3分の1で不在であるかまたは突然変異している。さらに、p16突然変異および/または後成的サイレンシングが、腫瘍細胞でE2Fを活性化することができる。サイクリンDおよびCDK4突然変異、遺伝子増幅または過剰発現も、ヒト腫瘍で脱調節されたE2F活性をもたらすことができる。さらに、E2Fは、EGFR、RTK、RAS、RAF、PI-3K、PTEN、RAF、MYCを含む増殖因子受容体経路の突然変異によって活性化される。p16INK4a-サイクリンD:cdk4/6-RB-E2F経路での突然変異は一般的に排他的に起こり、したがって、1つの「ヒット」(例えば、p16)は、他のもの(例えば、Rb突然変異またはサイクリンD:cdk過剰発現)を伴わない。しかし、ほとんどの現行の化学療法は、E2F転写標的を阻害するが正常細胞にも毒性であり、しばしば深刻な医原性合併症を有する増殖性毒である。本明細書に開示されるように、代替の治療的アプローチは、p16-サイクリンD:cdk4-RB-E2F経路を脱調節したがん細胞病巣において選択的溶解複製を起こすウイルスを使用することである。
【0103】
E1A:アデノウイルス初期領域1A(E1A)遺伝子およびその遺伝子から発現されるポリペプチド。E1Aタンパク質は、細胞を細胞周期に駆動することによって、ウイルスのゲノム複製で役割を果たす。本明細書で用いるように、用語「E1Aタンパク質」はE1A遺伝子から発現されるタンパク質を指し、この用語は任意のアデノウイルス血清型によって生成されるE1Aタンパク質を含む。例として、野生型Ad5 E1Aタンパク質のアミノ酸配列は配列番号32として本明細書で示し、改変Ad5 E1A配列は配列番号33~37として本明細書で提供する。さらに、様々な異なるアデノウイルス血清型からの野生型E1Aタンパク質配列は、配列番号47~54として本明細書で示す。一部の実施形態では、改変E1Aタンパク質は、配列番号32~37または配列番号47~54のいずれか1つと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するタンパク質を含む。本明細書で企図される改変E1Aタンパク質は、腫瘍細胞と比較して正常細胞において組換えアデノウイルスの複製欠陥に寄与するものである。本明細書に開示される改変E1Aタンパク質は、Ad5 E1Aタンパク質である。しかし、任意の所望の血清型で対応する改変を加えることができ、したがって本開示に包含される。例えば、ヒトアデノウイルスの全ての種はLXCXEモチーフを含有し、それは、Ad5ではLTCHE(配列番号32の残基122~126)に対応する。同様に、残基2~11の欠失およびY47HおよびC124G置換は、Ad5に関して番号付けされるが、任意の他の血清型に導入することができる(全てのヒトアデノウイルス種からのE1Aのアラインメントを提供する、図27を参照)。
【0104】
E3-RIDα/RIDβおよびE3-14.7k:E3遺伝子から生成した初期発現タンパク質。E3-RIDα、E3-RIDβおよびE3-14.7kタンパク質は受容体内在化および分解複合体(RID)を構成し、それは核膜に局在化し、感染した細胞を宿主の抗ウイルス応答から保護するために、CD95(FasL受容体)ならびにTNFR1および2(TNF/TRAIL受容体)を含む様々な受容体のエンドサイトーシスおよび分解を引き起こす。E3-RIDα、E3-RIDβおよびE3-14.7kコード配列は、この順序で互いの隣にある。本開示の一部の実施形態では、E3-RIDαの開始コドンからE3-14.7kの終止コドンまでが削除され、FKBP融合タンパク質のコード配列で置き換えられた(例えば、AdSyn-CO312、AdSyn-CO313、AdSyn-CO335およびAdSyn-CO440を参照)。Ad5 E3-RIDα、E3-RIDβおよびE3-14.7kのアミノ酸配列は、本明細書では配列番号65~67で示す。
【0105】
E4orf1:E4遺伝子から生成したアデノウイルスタンパク質。用語「E4orf1タンパク質」は、任意のアデノウイルス血清型からのE4遺伝子によって生成されるE4orf1タンパク質を含む。例として、野生型Ad5 E4orf1タンパク質のアミノ酸配列は配列番号38として本明細書で示し、PDZ結合性モチーフの欠失を有する改変Ad5 E4orf1タンパク質は、配列番号39として本明細書で提供する。さらに、様々な異なるアデノウイルス血清型からの野生型E4orf1タンパク質配列は、配列番号55~61として本明細書で示す。一部の実施形態では、改変E4orf1タンパク質は、配列番号38、39および55~61のいずれか1つと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するタンパク質を含む。本明細書で企図される改変E4orf1タンパク質は、腫瘍細胞と比較して正常細胞において組換えアデノウイルスの複製欠陥に寄与するものである。本明細書に開示される改変E4orf1タンパク質は、Ad5 E4orf1タンパク質である。しかし、任意の所望の血清型で対応する改変を加えることができ、したがって本開示に包含される。図28に示すE4orf1アラインメントで示すように、アデノウイルス種A、B、C、D、EおよびGではE4orf1のC末端の3つの残基がPDZ結合性モチーフを構成する。本明細書の一部の実施形態では、組換えアデノウイルスは、完全な欠失E4orf1をコードする。
【0106】
E4orf6/7:アデノウイルスE4遺伝子によってコードされたタンパク質。用語「E4orf6/7タンパク質」は、任意のアデノウイルス血清型からのE4遺伝子によって生成されるE4orf6/7タンパク質を含む。例として、野生型Ad5 E4orf6/7タンパク質のアミノ酸配列は配列番号40として本明細書で示し、野生型Ad2
E4orf6/7タンパク質のアミノ酸配列は配列番号64として本明細書で示す。一部の実施形態では、E4orf6/7タンパク質は、配列番号40または配列番号64のいずれか1つと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するタンパク質を含む。本明細書で企図される改変E4orf6/7タンパク質は、腫瘍細胞と比較して正常細胞において組換えアデノウイルスの複製欠陥に寄与するものである。一部の実施形態では、改変E4orf6/7タンパク質は、そのE2F結合部位を消滅させるかもしくは害し、および/またはE2F相互作用を害する突然変異(欠失など)を含む。他の実施形態では、改変E4orf6/7タンパク質は、E2F4の効率的な転位のために必要とされる核局在化シグナルを削除するかまたは害する改変を含む。E4orf6/7の例示的な改変は、下のセクションでさらに議論される。
【0107】
上皮増殖因子受容体(EGFR):細胞外タンパク質リガンドのEGFファミリーのメンバーのための細胞表面受容体。EGFRは、ErbB-1およびHER1としても知られる。多くの種類のがんが、EGFRの過剰発現につながる突然変異を含有する。
【0108】
繊維:アデノウイルス繊維タンパク質は、細胞表面受容体への結合を媒介する三量体タンパク質である。繊維タンパク質は、長いN末端シャフトおよび球状のC末端ノブで構成される(図23Aを参照)。
【0109】
FK506結合性タンパク質(FKBP):タンパク質フォールディングシャペロンとして機能する、真核細胞で発現されるタンパク質のファミリー。FKBPは、ラパマイシンに結合するその能力で知られている。例示的なFKBP配列を、配列番号44の残基132~238として本明細書で示す。
【0110】
FKBP-ラパマイシン結合性(FRB):ラパマイシンに結合するラパマイシンの哺乳動物標的(mTOR)のドメイン。FRBの例示的な配列を、配列番号42の残基547~636として本明細書で示す。ラパマイシンおよびラパログ(AP21967としても知られる)の両方に結合することが可能であるFRBの突然変異形態(「FRB」と本明細書で呼ぶ)は、配列番号43の残基547~636として本明細書で示す。FRBはヒトmTORの2098位にトレオニンからロイシンへの置換(T2098L)を含有し、それは配列番号43の残基620に対応する。
【0111】
融合タンパク質:少なくとも2つの異なる(異種)タンパク質またはペプチドからのアミノ酸配列を含有するタンパク質。融合タンパク質は、例えば、2つの異なる(異種)タンパク質の少なくとも一部をコードする核酸配列から工学的に操作された核酸配列の発現によって生産することができる。融合タンパク質を作製するために、核酸配列は同じリーディングフレームの中にいなければならず、内部終止コドンを含有してはならない。融合タンパク質、特に短い融合タンパク質は、化学合成によって生産することもできる。
【0112】
異種:異種タンパク質またはポリペプチドは、異なる供与源または種に由来するタンパク質またはポリペプチドを指す。
【0113】
ヘキソン:主要なアデノウイルスカプシドタンパク質。Ad5からの例示的なヘキソン配列を、配列番号45として本明細書で示す。E451Q置換を含む突然変異体ヘキソン配列を、配列番号46として本明細書で示す。
【0114】
単離された:「単離された」生体構成成分(核酸分子、タンパク質、ウイルスまたは細胞など)は、他の染色体および染色体外のDNAおよびRNA、タンパク質および細胞などの、その構成成分が天然に存在する生物体の細胞もしくは組織中の他の生体構成成分、または生物体自体から実質的に分離または精製されている。「単離された」核酸分子およびタンパク質には、標準の精製方法によって精製されたものが含まれる。本用語は、宿主細胞での組換え発現によって調製される核酸分子およびタンパク質、ならびに化学的に合成される核酸分子およびタンパク質も包含する。
【0115】
マイクロRNA(miRNAまたはmiR):植物、動物およびウイルスで遺伝子発現を調節する一本鎖RNA分子。マイクロRNAをコードする遺伝子は、転写されて一次転写物マイクロRNA(pri-miRNA)を形成し、それはプロセシングされて、前駆体マイクロRNA(pre-miRNA)と呼ばれる短いステムループ分子を形成し、次にエンドヌクレアーゼ的開裂が続いて成熟マイクロRNAが形成される。成熟マイクロRNAは長さが概ね21~23ヌクレオチドであり、1つまたは複数の標的メッセンジャーRNA(mRNA)の3’UTRに部分的に相補的である。標的mRNAの開裂を促進することによって、または細胞転写物の翻訳をブロックすることによって、マイクロRNAは遺伝子発現をモジュレートする。本開示との関連で、「肝臓特異的マイクロRNA」は、肝臓で優先的に発現されるマイクロRNA、例えば、肝臓だけで発現されるマイクロRNA、または他の器官または組織のタイプと比較して肝臓で有意により多く発現されるマイクロRNAである。
【0116】
改変:核酸配列またはタンパク質配列の変化。例えば、アミノ酸配列改変には、例えば、置換、挿入および欠失またはその組合せが含まれる。挿入には、単一のまたは複数のアミノ酸残基のアミノおよび/またはカルボキシル末端融合ならびに配列内挿入が含まれる。欠失は、タンパク質配列からの1つまたは複数のアミノ酸残基の除去によって特徴付けられる。本明細書の一部の実施形態では、改変(置換、挿入または欠失など)は、機能の変化、例えばタンパク質の特定の活性の低減または増強をもたらす。本明細書で用いるように、「Δ」または「デルタ」は、欠失を指す。例えば、E1AΔLXCXEは、LXCXEモチーフの欠失を有するE1Aポリペプチドを指す。置換型改変は、少なくとも1つの残基が除去されて、異なる残基がその代わりに挿入されたものである。アミノ酸置換は一般的に単一の残基のものであるが、いくつかの異なる位置で同時に存在することができる。置換、欠失、挿入またはその任意の組合せを組み合わせて、最終突然変異体配列に到達することができる。これらの改変は、タンパク質をコードするDNA中のヌクレオチドの改変によって調製することができ、それによって改変をコードするDNAが生成される。既知の配列を有するDNAの所定部位で挿入、欠失および置換突然変異を起こさせる技術は、当技術分野で周知である。「改変」タンパク質、核酸またはウイルスは、上で概説した1つまたは複数の改変を有するものである。
【0117】
新生物、悪性腫瘍、がんおよび腫瘍:新生物は、過剰な細胞分裂からもたらされる、組織または細胞の異常成長である。新生物成長は、腫瘍を生成することができる。個体における腫瘍の量は、腫瘍の数、体積または重量で測定することができる「腫瘍負荷」である。転移しない腫瘍は、「良性」と呼ばれる。周囲の組織に侵入し、および/または転移することができる腫瘍は、「悪性」と呼ばれる。悪性腫瘍は、「がん」とも呼ばれる。
【0118】
血液がんは、血液または骨髄のがんである。血液学的(または血液原性)がんの例には、白血病、例えば急性白血病(例えば、急性リンパ球性白血病、急性骨髄球白血病、急性骨髄性白血病ならびに骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単核球性および赤白血病)、慢性白血病(例えば、慢性骨髄球(顆粒球)白血病、慢性骨髄性白血病および慢性リンパ球性白血病)、真性赤血球増加症、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(緩慢性および高悪性度型)、多発性骨髄腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、重鎖病、骨髄異形成症候群、毛様細胞性白血病および脊髄形成異常が含まれる。一部の場合には、リンパ腫は固形腫瘍と考えられている。
【0119】
固形腫瘍は、嚢胞、液体領域を通常含有しない、組織の異常な塊である。固形腫瘍は良性であるか、または悪性であることがある。異なるタイプの固形腫瘍は、それらを形成する細胞のタイプについて命名される(肉腫、癌腫およびリンパ腫など)。肉腫および癌種などの固形腫瘍の例には、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、および他の肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、リンパ系悪性腫瘍、膵がん、乳がん、肺がん、卵巣がん、前立腺がん、肝細胞癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、髄様甲状腺癌、乳頭状甲状腺癌、褐色細胞腫脂腺癌、乳頭状癌、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)感染新生物、乳頭状腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、精巣腫瘍、セミノーマ、膀胱癌、黒色腫およびCNS腫瘍(例えば、神経膠腫(例えば、脳幹神経膠腫および混合性神経膠腫)、神経膠芽腫(多形性神経膠芽腫としても知られる)、星状細胞腫、CNSリンパ腫、未分化胚細胞腫、髄芽細胞腫、神経線維腫、頭蓋咽頭腫、上衣細胞腫、松果体腫、血管芽腫、聴覚神経腫、希突起膠細胞腫、髄膜腫(menangioma)、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫および脳転移)が含まれる。
【0120】
腫瘍崩壊性ウイルス:増殖性障害の細胞、例えば、がん/腫瘍細胞を選択的に殺滅するウイルス。がん細胞の殺滅は、当技術分野で確立された任意の方法によって、例えば、生細胞数を判定すること、または細胞変性効果、アポトーシスもしくはがん細胞でのウイルスタンパク質の合成(例えば、複製のために必要なウイルス遺伝子の代謝標識、イムノブロットまたはRT-PCRによる)もしくは腫瘍サイズの低減を検出することによって検出することができる。
【0121】
作動可能に連結した:第1の核酸配列が第2の核酸配列と機能的関係に置かれるとき、第1の核酸配列は第2の核酸配列と作動可能に連結している。例えば、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響を及ぼす場合、そのプロモーターはそのコード配列に作動可能に連結している。一般的に、作動可能に連結したDNA配列は連続しており、2つのタンパク質コード領域を連結するために必要な場合には、同じリーディングフレームの中にある。
【0122】
薬学的に許容される担体:この開示で有益な薬学的に許容される担体(ビヒクル)は、従来通りである。E. W. MartinによるRemington's Pharmaceutical Sciences、Mack
Publishing Co.、Easton、PA、15版(1975年)は、1つまたは複数の治療的化
合物、分子または薬剤(例えば本明細書に開示される組換えウイルス)の医薬送達に適する組成物および製剤を記載する。
【0123】
一般に、担体の性質は、採用される特定の投与様式に依存する。例えば、非経口製剤は、ビヒクルとして薬学的および生理的に許容される流体、例えば水、生理食塩水、平衡塩溶液、水性デキストロース、グリセロールなどを含む、注射可能な流体を通常含む。固体組成物(例えば、散剤、ピル剤、錠剤またはカプセル剤の形態)については、従来の無毒の固体担体には、例えば医薬用グレードのマンニトール、ラクトース、デンプンまたはステアリン酸マグネシウムを含めることができる。生物学的に中性の担体に加えて、投与される医薬組成物は、少量の無毒の補助物質、例えば湿潤または乳化剤、保存剤およびpH緩衝剤など、例えば酢酸ナトリウムまたはソルビタンモノラウレートを含有することができる。
【0124】
ポリペプチド、ペプチドまたはタンパク質:モノマーがアミド結合を通して連結されるアミノ酸残基であるポリマー。アミノ酸がアルファ-アミノ酸であるとき、L光学異性体またはD光学異性体を使用することができる。用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、本明細書で互換的に使用される。これらの用語は、1つまたは複数のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸の人工の化学的模倣体であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然に存在するアミノ酸ポリマーおよび天然に存在しないアミノ酸ポリマーに適用される。用語「残基」または「アミノ酸残基」は、タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドに組み込まれるアミノ酸への言及を含む。
【0125】
ポリペプチドでの保存的置換は、タンパク質配列中の1つのアミノ酸残基の、類似の生化学的特質を有する異なるアミノ酸残基への置換である。一般的に、保存的置換は、結果として生じるポリペプチドの活性にほとんど影響しない。例えば、1つまたは複数の保存的置換(例えば、1つ、2つ、3つ、4つまたは5つ以下の置換)を含むタンパク質またはペプチドは、野生型タンパク質またはペプチドの構造および機能を保持する。ポリペプチドは、例えば部位特異的突然変異誘発またはPCRなどの標準の手法を使用して、そのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を操作することによって、1つまたは複数の保存的置換を含有するように生成することができる。一例では、そのような変異体は、抗体の交差反応性または免疫応答を誘導するその能力を試験することによって、容易に選択することができる。保存的置換の例を、下に示す。
【化1】
【0126】
保存的置換は、(a)例えばシートもしくはヘリカル立体構造としての、置換領域におけるポリペプチド骨格の構造、(b)標的部位での分子の電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖のバルクを一般的に維持する。
【0127】
タンパク質の特質に最大の変化を起こすことが一般的に予想される置換は、非保存的、例えば、(a)親水性残基、例えばセリルもしくはスレオニルが、疎水性残基、例えば、ロイシル、イソロイシル、フェニルアラニル、バリルもしくはアラニルに(もしくは、によって)置換される;(b)システインもしくはプロリンが任意の他の残基に(もしくは、によって)置換される;(c)電気陽性の側鎖を有する残基、例えば、リシル、アルギニルもしくはヒスチジル(histadyl)が、電気陰性の残基、例えば、グルタミルもしくはアスパルチルに(もしくは、によって)置換される;または(d)かさ高い側鎖を有する残基、例えば、フェニルアラニンが、側鎖を有していないもの、例えばグリシンに(もしくは、によって)置換される変化である。
【0128】
疾患を防止、治療または改善する:疾患を「防止する」は、疾患の完全な発達を阻害することを指す。「治療する」は、それが発達し始めた後の、疾患または病態の徴候または症状を改善する治療的介入を指す。「改善する」は、疾患の徴候または症状の数または重症度の低減を指す。
【0129】
プロモーター:核酸(例えば遺伝子)の転写を指示/開始するDNAの領域。プロモーターは、必要な核酸配列を転写の開始部位の近くに含む。一般的に、プロモーターは、それらが転写する遺伝子の近くに位置する。プロモーターは、転写の開始部位から数千塩基対に位置することができる、遠位のエンハンサーまたはリプレッサーエレメントも任意選択で含む。「構成的プロモーター」は、連続的に活性であり、外部のシグナルまたは分子による調節を受けないプロモーターである。対照的に、「誘導可能なプロモーター」の活性は、外部のシグナルまたは分子(例えば、転写因子またはテトラサイクリン)によって調節される。
【0130】
タンパク質IX(pIX):ヘキソンタンパク質と関連しているアデノウイルスカプシドのマイナー構成成分。
【0131】
精製された:用語「精製された」は、絶対純度を必要としない。むしろ、それは相対的な用語を意図する。したがって、例えば、精製されたペプチド、タンパク質、ウイルスまたは他の活性化合物は、天然に関連しているタンパク質および他の混在物質から完全にまたは一部単離されるものである。ある特定の実施形態では、用語「実質的に精製された」は、細胞、細胞培養培地または他の粗製の調製物から単離され、最初の調製物の様々な構成成分、例えばタンパク質、細胞性デブリおよび他の構成成分を除去するために分別にかけられたペプチド、タンパク質、ウイルスまたは他の活性化合物を指す。
【0132】
ラパマイシン:公知の免疫抑制および増殖抑制の特質を有する小分子。シロリムスとしても知られるラパマイシンは、細菌Streptomyces hygroscopicusの生成物として最初に発見されたマクロライドである。ラパマイシンは、mTORに結合して、その活性を阻害する。
【0133】
Rb欠損細胞:腫瘍抑制遺伝子Rbのレベルが正常または対照細胞でのRbのレベルと比較して低減される細胞(腫瘍細胞など)、またはRb経路が破壊されるか不活性である細胞。用語「Rb経路」または「Rbシグナル伝達経路」は、pRb/p107、E2F-1/-2/-3およびG1サイクリン/cdk複合体を含むpRb活性に影響する分子を少なくとも一部指す。現在知られていない分子がこの定義の中に入ることもできることが理解される。
【0134】
Rb/p16/サイクリンD:cdk4/E2F複製に障害または欠損があるアデノウイルス:Rb/p107/p130/p16/E2F/CDK-サイクリンチェックポイントを含む機能的細胞性Rb/p107/p130/p16/サイクリン:CDK/E2F経路タンパク質の正常レベルの存在下で、細胞の感染後に部分的または完全に減衰した複製を示すアデノウイルス(改変/組換えアデノウイルスなど)。例えば、感染した細胞がRb/p16経路に障害または欠損がある(すなわち、感染した細胞が完全に機能的なRbまたはRb/p16経路の他のタンパク質の正常なレベルを発現しない)場合は、Rb/p16/E2F経路複製に障害のあるアデノウイルスの複製は正常に進行する。反対に、細胞が機能的Rb(例えば、本明細書において「Rb発現細胞」とも呼ぶ正常な活性を有するRb)の正常なレベルを発現する場合は、Rb複製に障害または欠損を起こしているアデノウイルスの複製は減衰または阻止される。Rbの正常なレベルを発現することができない(例えばRb遺伝子の調節領域への突然変異)ことによって、または正常未満のRb活性を有する突然変異したRbを発現することによって、細胞はRbに障害または欠損を起こすことができる。Rbの正常なレベルおよび正常なRb活性レベルは、同じ種類の健康で非疾患細胞で見出される。したがって、Rbに障害のある細胞は、突然変異したRb遺伝子を含む。任意選択で、Rbに障害のある細胞は、Rb遺伝子が完全にまたは部分的に欠失しているゲノムを含む。Rbに障害のある細胞は、がん/腫瘍細胞であってよい。正常なRb機能の喪失をもたらすことができる他のゲノム病変には、CDK突然変異、サイクリン突然変異および増幅、p16突然変異および/または後成的遺伝子発現抑制、p107突然変異、p130突然変異および増殖因子受容体経路突然変異が限定されずに含まれる。
【0135】
Rb/p16腫瘍抑制遺伝子経路またはRb/p16経路:網膜芽細胞腫(Rb)タンパク質ならびにCdk、E2F、非定型的プロテインキナーゼCおよびSkp2を非限定的に含む経路中の他のタンパク質/タンパク質ファミリーを含む、シグナル伝達経路全体を指す。用語「Rb/p16腫瘍抑制遺伝子経路に障害または欠損がある」は、例えば、タンパク質の正常なレベルを発現することができないかまたは正常未満の活性を有する突然変異したタンパク質を発現し、したがってその経路が異常に機能することによって、シグナル伝達経路の1つまたは複数の分子に障害または欠損があることを意味する。そのような欠陥は、遊離のE2Fの高い発現レベルおよびE2Fプロモーターの高い活性をもたらす。したがって、細胞は、Rb/p16腫瘍抑制遺伝子経路でタンパク質の正常なレベルを発現することができないかまたは正常未満の活性を有する突然変異したタンパク質を発現することによって、Rb/p16経路に障害または欠損があることができる。
【0136】
組換え:組換え核酸分子、タンパク質またはウイルスは、天然に存在しない配列を有するか、または配列の2つのそうでなければ分離したセグメントの人工的組合せによって作製される配列を有するものである。この人工的組合せは、化学的合成によって、または、核酸分子の単離されたセグメントの人工操作、例えば遺伝子操作技術によって達成することができる。用語「組換え」は、天然の核酸分子、タンパク質またはウイルスの一部の付加、置換または欠失だけによって変更された核酸、タンパク質およびウイルスも含む。
【0137】
複製欠陥:非腫瘍細胞(腫瘍細胞と比較して)で「複製欠陥」を示すアデノウイルスは、腫瘍細胞と比較して正常細胞においてウイルス複製の低減を示すアデノウイルスを指す。複製欠陥は、例えば、腫瘍細胞と比較した正常細胞における、ウイルス後期タンパク質発現の欠如、ウイルスDNA合成の低減、E2F標的遺伝子(例えばサイクリンAおよびB)を誘導する能力の低下、S相侵入を導き出す能力の低下および/または細胞殺滅を誘導する能力の低下によって明白に示される。
【0138】
複製欠損ウイルス:所与の表現型を有する所定の細胞集団(例えば、脱調節されたE2F経路を有する腫瘍細胞)において、細胞増殖を優先的に阻害するか、細胞溶解を引き起こすか、またはアポトーシスを誘導する(総合的に殺滅と考えられる)ウイルス。そのようなウイルスは、細胞増殖を低減または阻害すること、細胞溶解を引き起こすこと、アポトーシスを誘導すること、そうでなければ所定の細胞表現型を有しない細胞(例えば正常非腫瘍細胞)で複製することができないか、その能力が限定的である。
【0139】
配列同一性:2つまたはそれ超の核酸配列または2つまたはそれ超のアミノ酸配列間の同一性または類似性は、配列の間の同一性または類似性で表される。配列同一性は、同一性百分率で測定することができる;百分率が高いほど、配列はより同一である。配列類似性は、類似性百分率(保存的アミノ酸置換を考慮する)で測定することができる;百分率が高いほど、配列はより類似している。標準の方法を使用して整列させたとき、核酸またはアミノ酸配列の相同体またはオルソログは比較的高い程度の配列同一性/類似性を有する。オルソログのタンパク質またはcDNAが、関係のより遠い種(ヒトおよびC.elegansの配列など)と比較してより緊密に関係した種(ヒトおよびマウスの配列など)に由来するとき、この相同性はより有意である。
【0140】
比較のための配列のアラインメントの方法は、当技術分野で周知である。様々なプログラムおよびアラインメントアルゴリズムが、以下に記載される:Smith & Waterman、Adv. Appl. Math.2巻:482頁、1981年;Needleman & Wunsch、J. Mol. Biol.48巻:443頁、1970年;Pearson & Lipman、Proc. Natl. Acad. Sci. USA85巻:2444頁、1988年;Higgins & Sharp、Gene、73巻:237~44頁、1988年;Higgins & Sharp、CABIOS5巻:151~3頁、1989年;Corpetら
、Nuc. Acids Res.16巻:10881~90頁、1988年;Huangら、Computer Appls.、Biosciences8巻、155~65頁、1992年;およびPearsonら、Meth. Mol.
Bio.24巻:307~31頁、1994年。Altschulら、J. Mol. Biol.215巻:
403~10頁、1990年は、配列アラインメント方法および相同性計算の詳細な考察を提供する。
【0141】
配列分析プログラムblastp、blastn、blastx、tblastnおよびtblastxと共に使用するために、全米バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biological Information、NCBI)およびインターネット上を含むいくつかの情報源から、NCBI Basic
Local Alignment Search Tool(BLAST)(Altschulら、J. Mol. Biol.215巻:403~10頁、1990年)が利用できる。追加の情
報は、NCBIウェブサイトで見出すことができる。
【0142】
血清型:抗原の特徴的なセットによって区別される緊密に関係した微生物(ウイルスなど)の群。
【0143】
対象:生きている多細胞性脊椎動物の生物体、ヒトおよび非ヒト哺乳動物を含むカテゴリー。
【0144】
合成の:研究室で人工手段によって生成される、例えば、合成核酸またはタンパク質は研究室で化学的に合成することができる。
【0145】
標的化リガンド:本開示との関連で、「標的化リガンド」は、標的化リガンドに特異的である受容体または結合性タンパク質を発現する特異的細胞型に組換えアデノウイルスを導くタンパク質である。一部の実施形態では、標的化リガンドは、腫瘍で過剰発現される細胞表面タンパク質(例えばEGFR)に特異的である抗体である。
【0146】
治療剤:化学化合物、小分子、組換えウイルスまたは他の組成物、例えば、対象に適切に投与されるときに所望の治療的または予防的効果を誘導することが可能である、アンチセンス化合物、抗体、ペプチドまたは核酸分子。例えば、がんのための治療剤には、がんの発達または転移を阻止または阻害する薬剤が含まれる。
【0147】
治療有効量:その薬剤で治療される対象または細胞で所望の効果を達成するのに十分な特定の医薬または治療剤(例えば、組換えウイルス)の量。薬剤の有効量は、治療する対象または細胞、および治療組成物の投与方法を非限定的に含む、いくつかの因子に依存することができる。
【0148】
Uexon:初期E3領域と繊維遺伝子の間のl鎖(左方向への転写)に位置するオープンリーディングフレーム(Tollefsonら、J Virol 81巻(23号):12918~
12926頁)。
【0149】
ベクター:ベクターは、宿主細胞で複製および/または一体化するベクターの能力を破壊することなく、外来核酸の挿入を可能にする核酸分子である。ベクターは、複製起点などの、宿主細胞でのその複製を可能にする核酸配列を含むことができる。ベクターは、1つまたは複数の選択マーカー遺伝子および他の遺伝子エレメントを含むこともできる。発現ベクターは、挿入された遺伝子または複数の遺伝子の転写および翻訳を可能にするために必要な調節配列を含有するベクターである。
【0150】
特に説明されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、この開示が属する分野の当業技術者が通常理解するのと同じ意味を有する。単数形の用語「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかに別途指示しない限り、複数の指示語を含む。「AまたはBを含む」は、AもしくはB、またはAおよびBを含むことを意味する。核酸またはポリペプチドのために与えられる全ての塩基サイズまたはアミノ酸サイズ、および全ての分子量または分子質量値は概算であり、記載のために提供されることをさらに理解するべきである。本明細書に記載されるそれらに類似するか、または同等である方法および材料は、本開示の実施または試験で使用することができるが、適する方法および材料が以下に記載される。本明細書で指摘される全ての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。相反する場合には、用語の説明を含めた本明細書が優先される。さらに、材料、方法および実施例は例示されるだけであり、限定することが目的ではない。
III.組換えアデノウイルス
【0151】
E2F脱調節腫瘍細胞で選択的に複製することが可能である組換えアデノウイルスが、本開示によって提供される。本明細書に開示される組換えアデノウイルスは、改変E1Aタンパク質、改変または欠失E4orf1タンパク質、改変または欠失E4orf6/7タンパク質またはその任意の組合せをコードするゲノムを有する。E1A、E4orf1および/またはE4orf6/7突然変異の結果、組換えアデノウイルスは正常(すなわち、非腫瘍)細胞で複製欠陥を示す一方で、腫瘍細胞中で複製してそれらを溶解させる能力を保持する。一例では、例えば、感染した正常細胞および感染腫瘍細胞で感染性粒子の数を比較することによって判定したとき、組換えアデノウイルスは、同じ細胞型の腫瘍細胞と比較して正常(すなわち、非腫瘍)細胞(例えば、乳がん細胞対正常乳房細胞)において複製の低下、例えば、少なくとも20%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の低下を有する。
【0152】
本明細書で提供される組換えアデノウイルスは、例えば特異的細胞型への標的化のために、肝臓への標的化および肝臓での複製を阻害するために、および一般的なアデノウイルス血清型に対する既存の中和抗体を回避するために、追加の改変を任意選択で含む。腫瘍崩壊性アデノウイルスをコードする組換え核酸分子も提供される。
【0153】
EF1αプロモーターの制御下でGFP-ルシフェラーゼを発現する組換えリポーターアデノウイルス遺伝子発現ベクターが、本明細書でさらに提供される。一部の場合には、開示されるリポーターアデノウイルスは、肝臓への標的化および肝臓での複製を阻害するために、1つまたは複数の改変を含む。組換えリポーターアデノウイルスをコードする組換え核酸分子も提供される。
A.腫瘍崩壊性改変
【0154】
本明細書に開示される特異的腫瘍崩壊性改変は、アデノウイルス5(Ad5)ゲノム配列に関して記載される。しかし、任意のヒトアデノウイルス血清型で同じ改変および欠失を生じることができよう。例示的な一実施形態では、組換えアデノウイルスは、Ad34である。他の具体的な実施形態では、組換えアデノウイルスは、Ad11またはAd37である。図27および28は、ヒトアデノウイルス種の間におけるE1AおよびE4orf1領域の配列類似性を例示する。
【0155】
E1AのCR1領域は細胞性E2Fに配列および構造的な相同性を有し、E2F-Rb相互作用と競合する。保存されたE1A疎水性残基L43、L46およびY47は、Rbとの相互作用のための疎水性アンカーとして働く。D、E、H、KまたはRなどの極性アミノ酸へのL43、L46および/またはY47の突然変異は、このE1A-Rb相互作用を排除するだろう。本開示の一部の実施形態では、組換えアデノウイルスは、E1A-Rb相互作用を破壊するために、E1AにY74H突然変異を含む。
【0156】
E1Aは、そのLXCXEモチーフを通してRbと強く相互作用する。第1のロイシンおよび中央のシステインの側鎖はRbのBボックスモチーフの小さい疎水性ポケットの中で結合するので、この残基の欠失または小さい(Gなど)もしくは極性アミノ酸(D、E、H、KまたはRなど)への突然変異はこのE1A-Rb相互作用を排除するだろう。したがって、本明細書の一部の実施形態では、組換えアデノウイルスはLXCXEモチーフの欠失(ΔLXCXE)またはC124G置換をE1Aに含む。
【0157】
E1A残基C124およびY47の両方とも、Rbに結合して不活性化するために重要である。したがって、一部の実施形態では、組換えアデノウイルスは二重突然変異体Y/F47HおよびC124Gをコードするが、これらの残基または領域に起こさせたいかなる突然変異(上記のような)も、E1A-Rb相互作用の減弱をもたらすと考えられている。したがって、Rb-E1A相互作用を破壊するいかなる残基の突然変異または欠失も、本明細書で企図される。
【0158】
E1Aの残基2~11の欠失はp300/CBP相互作用を排除し、DP-1相互作用を破壊し、E2F標的を上方調節するE1Aの能力をさらに低減する。E1A残基2~11の点突然変異、例えば、保存されたR2もしくはH3残基のグリシンもしくはアラニン突然変異、またはこの相互作用を排除する、異なるアデノウイルス血清型からの疎水性I/L/V4の極性残基突然変異(例えば、D、E、H、KまたはR)(図27に示すE1Aアラインメントを参照)も、本明細書で企図される。
【0159】
E4orf1は、そのC末端のPDZ結合性モチーフを通して、PDZモチーフを含有する細胞性タンパク質と相互作用する。本明細書に開示される一部の実施形態では、E4orf1の最後の3アミノ酸は、そのPDZ結合性モチーフを排除するために削除される。大きな疎水性残基、例えばV、LもしくはIへのAd5 E4orf1の高度に保存されたS126の点突然変異;または極性残基、例えばD、E、H、KもしくはRへのAd5 E4orf1のV128の点突然変異も、本明細書で企図される。これらの置換は、E4orf1のPDZ結合性活性を排除し、E4orf1のこの形質転換機能を排除すると考えられている。E4orf1における同じ欠失および/または突然変異は、Ad34などの他のアデノウイルス血清型で起こさせることができる。E4orf1の完全な欠失を、導入することもできる。
【0160】
組換えアデノウイルスのゲノムが、改変E1Aタンパク質、改変または欠失E4orf1タンパク質、改変または欠失E4orf6/7タンパク質またはその任意の組合せをコードし、組換えアデノウイルスは、腫瘍細胞と比較して正常細胞において複製欠陥を示す、組換えアデノウイルスが本明細書で提供される。
【0161】
一部の実施形態では、ゲノムは、改変E1Aタンパク質および改変または欠失E4orf1タンパク質をコードする。他の実施形態では、ゲノムは、改変E1Aタンパク質および欠失E4orf6/7タンパク質をコードする。さらに他の実施形態では、ゲノムは、改変E1Aタンパク質、改変または欠失E4orf1タンパク質および欠失E4orf6/7タンパク質をコードする。
【0162】
一部の例では、組換えアデノウイルスの改変E1Aタンパク質は、LXCXEモチーフの欠失;残基2~11の欠失;C124G置換;Y47H置換;Y47H置換およびC124G置換;またはY47H置換、C124G置換および残基2~11の欠失を含む。これらの突然変異は配列番号32のアミノ酸配列を有するAd5 E1Aに関して記載される;しかし、E1A配列は高度に保存されているので、対応する突然変異を任意の他のヒトアデノウイルスで起こさせることができる(図27を参照)。
【0163】
一部の例では、改変E4orf1タンパク質は、PDZ結合性モチーフの欠失を含む。他の例では、E4orf1タンパク質は、C末端の10アミノ酸もしくは20アミノ酸の欠失、またはA、K、R、P、F、GもしくはLへのD68の突然変異を含む。
【0164】
一部の例では、改変E4orf6/7タンパク質は、そのE2F結合部位を消滅させるか、もしくは害し、および/またはE2F相互作用を害する突然変異(欠失など)を含む。他の実施形態では、改変E4orf6/7タンパク質は、E2F4の効率的な転位のために必要とされる核局在化シグナルを削除するか、または害する改変を含む。
【0165】
特定の非限定例では、組換えアデノウイルスのゲノムは、LXCXEモチーフの欠失を含む改変E1Aタンパク質および欠失E4orf6/7タンパク質(例えば、AdSyn-CO181、AdSyn-CO312、AdSyn-CO313、AdSyn-CO335、AdSyn-CO442を参照);
LXCXEモチーフの欠失を含む改変E1Aタンパク質、PDZ結合性モチーフの欠失を含む改変E4orf1タンパク質、および欠失E4orf6/7タンパク質(例えば、AdSyn-CO285を参照);
LXCXEモチーフの欠失を含む改変E1Aタンパク質、欠失E4orf1タンパク質、および欠失E4orf6/7タンパク質(例えば、AdSyn-CO286を参照);
C124G置換を含む改変E1Aタンパク質および欠失E4orf6/7タンパク質(例えば、AdSyn-CO287を参照);
C124G置換を含む改変E1Aタンパク質、PDZ結合性モチーフの欠失を含む改変E4orf1タンパク質、および欠失E4orf6/7タンパク質(例えば、AdSyn-CO288を参照);
C124G置換を含む改変E1Aタンパク質、欠失E4orf1タンパク質、および欠失E4orf6/7タンパク質(例えば、AdSyn-CO289を参照);
残基2~11の欠失を含む改変E1Aタンパク質および欠失E4orf6/7タンパク質(例えば、AdSyn-CO290を参照);
残基2~11の欠失を含む改変E1Aタンパク質、PDZ結合性モチーフの欠失を含む改変E4orf1タンパク質、および欠失E4orf6/7タンパク質(例えば、AdSyn-CO291を参照);
残基2~11の欠失を含む改変E1Aタンパク質、欠失E4orf1タンパク質、および欠失E4orf6/7タンパク質(例えば、AdSyn-CO292を参照);
Y47H置換およびC124G置換を含む改変E1Aタンパク質、ならびに欠失E4orf6/7タンパク質(例えば、AdSyn-CO293を参照);
Y47H置換およびC124G置換を含む改変E1Aタンパク質、PDZ結合性モチーフの欠失を含む改変E4orf1タンパク質、ならびに欠失E4orf6/7タンパク質(例えば、AdSyn-CO294を参照);
Y47H置換およびC124G置換を含む改変E1Aタンパク質、欠失E4orf1タンパク質、ならびに欠失E4orf6/7タンパク質(例えば、AdSyn-CO295を参照);
Y47H置換、C124G置換および残基2~11の欠失を含む改変E1Aタンパク質、ならびに欠失E4orf6/7タンパク質(例えば、AdSyn-CO296を参照);
Y47H置換、C124G置換および残基2~11の欠失を含む改変E1Aタンパク質、PDZ結合性モチーフの欠失を含む改変E4orf1タンパク質、ならびに欠失E4orf6/7タンパク質(例えば、AdSyn-CO297を参照);または
Y47H置換、C124G置換および残基2~11の欠失を含む改変E1Aタンパク質、欠失E4orf1タンパク質、ならびに欠失E4orf6/7タンパク質(例えば、AdSyn-CO298を参照)をコードする。
【0166】
具体例では、組換えアデノウイルスのゲノムは、配列番号6~8、10~12、14、15、18~20、22~26、30、31および82~87のいずれか1つと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%同一であるか、または組換えアデノウイルスのゲノムは、配列番号6~8、10~12、14、15、18~20、22~26、30、31、82~87および92~97のいずれか1つを含むか、またはそれからなり、例えば、正常細胞および腫瘍細胞で感染性粒子の数を比較することによって判定したときに、同じ細胞型の腫瘍細胞と比較して正常(すなわち、非腫瘍)細胞(例えば、乳がん細胞対正常乳房細胞)で、複製の低下、例えば、少なくとも20%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の低下を有する。
【0167】
一部の実施形態では、組換えアデノウイルスのゲノムは、E3-RIDα/RIDβおよびE3-14.7kコード配列の欠失を含む。
B.肝臓脱標的化改変
【0168】
本明細書に開示される組換えアデノウイルスは、肝臓からウイルスを脱標的化する改変をさらに含むことができる。Ad5ヘキソンは血液中の第X因子に結合することができ、それは、全身性汎発を阻止して炎症を制限する、肝臓のクッパー細胞によるその吸収に導くことができる。これを克服するために、肝臓での取込みおよび発現を阻止する追加のゲノム改変をE1およびコアモジュールに含むように、組換えアデノウイルスを工学的に操作した。
【0169】
これらの追加の改変を含むゲノムモジュールを試験するために、ならびにin vivo使用および遺伝子送達のためのAd5発現ベクターを作製するために、E1A/E1遺伝子を欠失させ、EF1α駆動ルシフェラーゼ-GFP融合で置き換えた。静脈内注射したとき、ルシフェラーゼ生物発光によって明白に示されるように、AdSyn-CO199は主に肝臓に蓄積した(図22を参照)。
【0170】
肝臓での標的外発現を阻止するために、肝臓で特異的に発現されるマイクロRNAのために、E1Aの3’UTRに結合部位を含むようにウイルスを工学的に操作した。特定の実施形態では、その発現および結合部位がヒトおよびマウスの肝細胞の両方で保存されているので、miR122が肝臓特異的マイクロRNAとして選択された。一部の例では、ウイルスの遺伝子発現および細胞性炎症性応答を誘導する肝臓でのいかなる残留ウイルスの取込みを阻止するために、肝臓特異的miR122のための2つのマイクロRNA結合部位をE1Aの3’UTRに挿入した。Adsyn-CO199と対照的に、AdSyn-CO200は(図22および下の実施例2を参照)、肝臓でルシフェラーゼ発現を駆動しない。
【0171】
第X因子へのAd5ヘキソンの結合を通して肝臓でウイルスの取込みおよび隔離を阻止するために、肝臓取込みを阻止する、ヘキソンでの追加の突然変異(E451Q)でウイルスを工学的に操作した。AdSyn199およびAdsyn200と対照的に、AdSyn-CO171は肝臓中に蓄積せず、代わりに、他の器官、この場合脾臓およびリンパ節を標的にすることができるが、それはこれらが非担癌動物であったからである(図22)。
【0172】
E1A、E4orf1および/またはE4orf6/7に1つまたは複数の突然変異を有するE2F選択的ウイルスの全身送達を可能にするために、ヘキソンに肝臓脱標的化E451Q改変をさらに含むように、組換えアデノウイルスを工学的に操作した(例えば、AdSyn-CO335およびAdSyn-CO442を参照;図20および21と実施例2を参照)。
【0173】
肝臓でアデノウイルス蓄積を阻止するために、アデノウイルスヘキソン遺伝子への他の突然変異が本明細書で企図される。例えば、ヘキソンの9つの超可変領域を異なる血清型からのもので置き換えることによって、組換えアデノウイルスを肝臓から脱標的化することができるだろう。
【0174】
組換えアデノウイルスのゲノムは、改変E1Aタンパク質、改変または欠失E4orf1タンパク質、改変または欠失E4orf6/7タンパク質またはその任意の組合せをコードし、改変ヘキソンタンパク質をさらにコードし、組換えアデノウイルスは、腫瘍細胞と比較して正常細胞において複製欠陥を示す、組換えアデノウイルスが本明細書で提供される(例えば、AdSyn-CO335を参照)。
【0175】
一部の実施形態では、改変ヘキソンタンパク質は、E451Q置換を含む。具体例では、組換えアデノウイルスのゲノムは、配列番号30、配列番号92もしくは配列番号97と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%同一であるか、またはゲノムは、配列番号30、配列番号92もしくは配列番号97のヌクレオチド配列を含む、またはそれからなる。
【0176】
組換えアデノウイルスのゲノムが、改変E1Aタンパク質、改変または欠失E4orf1タンパク質、改変または欠失E4orf6/7タンパク質またはその任意の組合せをコードし、肝臓特異的マイクロRNAのための1つまたは複数の結合部位をさらに含み、組換えアデノウイルスは、腫瘍細胞と比較して正常細胞において複製欠陥を示す組換えアデノウイルスがさらに本明細書で提供される。
【0177】
一部の実施形態では、肝臓特異的マイクロRNAのための1つまたは複数の結合部位は、E1Aの3’-UTRに位置する。一部の例では、肝臓特異的マイクロRNAは、miR-122、miR-30またはmiR-192である。
C.誘導可能な再標的化のための改変
【0178】
本明細書に開示される組換えアデノウイルスは、腫瘍細胞受容体への誘導可能なin vivo再標的化のためにさらに改変することができる。遍在的に使用されるAd2/5ベクターは、感染のために、上皮細胞の上に存在するがほとんどの転移性がんに存在しない、コクサッキーアデノウイルス受容体(CAR)に依存する。「RapAD」は、融合タンパク質を通して任意の腫瘍細胞受容体(または任意の細胞型)へのアデノウイルス感染のラパマイシン/ラパログ誘導性標的化を可能にする(参照により本明細書にその全体が組み込まれる、PCT公開番号WO2013/138505を参照)。柔軟なアダプター系の使用は、ウイルスカプシドのアセンブリーを妨害しない。理想的な再標的化融合タンパク質は、特異的がん細胞表面分子に強力な親和性を有する抗体である。ラクダ科の動物およびサメは、単一の10kDaの可変VHHドメインを通してそれらのエピトープを認識する、単一ドメイン抗体(sdAb)をコードする。合成生物学を使用して、肺がんで高度に上方調節される特異的分子、例えばEGFRおよびCEACAM5を認識するVHHを作製することができる。ラパマイシンは、CARが下方調節される転移腫瘍細胞上のEGFRに合成アデノウイルス感染を再標的化させることが実証された。
【0179】
工学的に操作したアデノウイルスは、生物学的に直交性のラパログAP21967で標的化させることもできる。ラパマイシンは腫瘍崩壊性のアデノウイルス療法との合理的な組合せであるが、ラパマイシンの細胞性および生物性の影響を回避することが望ましいであろう場合がある。したがって、アデノウイルス再標的化のための別のオプションとして、ラパマイシン構造相同体AP21967を使用することができる。AP21967は、FKBPおよび突然変異体FRBドメイン(mTOR突然変異T2098L)と安定したヘテロダイマーを形成することができるが、野生型FRBドメインではできない。ラパマイシンと対照的に、AP21967は、p70S6キナーゼリン酸化、正規の下流基質によって明白なように、mTORシグナル伝達を不活性化しない。しかし、AP21967は、FKBP-VHH融合を通して腫瘍細胞へのFRB-繊維(FRB-繊維でなく)発現ウイルスの再標的化を誘導することがなおできる(図18)。
【0180】
EGFR標的化アデノウイルスが突然変異体FRBドメイン(FRB)で改変されるとき、それは、ラパマイシンおよびAP21967によりEGFRを通して細胞に感染するように誘導することができる(図18~21および下の実施例2を参照)。
【0181】
組換えアデノウイルスのゲノムが、改変E1Aタンパク質、改変または欠失E4orf1タンパク質、改変または欠失E4orf6/7タンパク質またはその任意の組合せをコードし、FKBPタンパク質に融合した標的化リガンド、および野生型FRBタンパク質またはT2098L置換を含む突然変異体FRBタンパク質に融合したアデノウイルス繊維タンパク質をさらにコードする、組換えアデノウイルスが本明細書で提供される。
【0182】
一部の実施形態では、標的化リガンドは、ラクダ科の動物のVHH抗体などの、単一ドメイン抗体である。特定の例では、単一ドメイン抗体は、EGFRまたは腫瘍細胞で上方調節される別の分子に特異的である。非限定例では、組換えアデノウイルスのゲノムは、配列番号25、配列番号26もしくは配列番号88と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%同一であるか、または配列番号25、配列番号26もしくは配列番号88のヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる(例えば、AdSyn-CO312、AdSyn-CO313およびAdSyn-CO205を参照)。
【0183】
一部の実施形態では、E3-RIDα/RIDβおよびE3-14.7kコード配列を欠失させることによって、FKBP-標的化リガンド融合タンパク質がアデノウイルスゲノムに収容される。しかし、アデノウイルスゲノムの代替位置が企図される。例えば、標的化リガンド-FKBP融合タンパク質は、自己開裂P2Aリンカー配列でE3-ADPにN末端融合として(例えば、AdSyn-CO440;配列番号68を参照)、または自己開裂P2A配列でE1B-55kにC末端融合として挿入することもできる。
【0184】
組換えアデノウイルスのゲノムが、改変E1Aタンパク質、改変または欠失E4orf1タンパク質、改変または欠失E4orf6/7タンパク質またはその任意の組合せをコードし、T2098L置換を含む突然変異体FRBタンパク質に融合したアデノウイルス繊維タンパク質をさらにコードする、組換えアデノウイルスがさらに提供される。一部の例では、ゲノムは、E451Q置換を含む改変ヘキソンタンパク質をさらにコードする。具体例では、組換えアデノウイルスのゲノムは、配列番号31と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%同一であるか、または配列番号31のヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる(例えば、AdSyn-CO336を参照)。
【0185】
上記の誘導可能に再標的化された組換えアデノウイルスは、肝臓再標的化改変、例えば突然変異体ヘキソンタンパク質(例えばE451Q置換)をさらに含むことができる。あるいは、または、さらに、組換えアデノウイルスのゲノムは、肝臓特異的マイクロRNAのための1つまたは複数の結合部位を含むことができる(上記の通り)。
D.再標的化のためのキメラ繊維タンパク質
【0186】
Ad5および多くの他の血清型の繊維タンパク質が細胞付着のためにコクサッキーアデノウイルス受容体(CAR)に結合することが示されたが、他の血清型はCD46、デスモグレイン2、シアリン酸または他を使用することが示された。したがって、キメラ繊維タンパク質をコードするゲノムを有し、それによって異なる細胞受容体を組換えウイルスの標的にさせる組換えアデノウイルスが本明細書で提供される(図23A~23Eおよび下の実施例3を参照)。
【0187】
組換えアデノウイルスのゲノムが、改変E1Aタンパク質、改変または欠失E4orf1タンパク質、改変または欠失E4orf6/7タンパク質またはその任意の組合せをコードし、さらに、キメラ繊維タンパク質をコードする組換えアデノウイルスが本明細書で提供される。
【0188】
一部の実施形態では、キメラ繊維タンパク質は、第1のアデノウイルス血清型からの繊維シャフトおよび第2のアデノウイルス血清型からの繊維ノブを含む。一部の例では、第1のアデノウイルス血清型はAd5であり、第2のアデノウイルス血清型はAd3、Ad9、Ad11、Ad12、Ad34またはAd37である。1つの非限定例では、第1のアデノウイルス血清型はAd5であり、第2のアデノウイルス血清型はAd34である。
【0189】
特定の例では、組換えアデノウイルスのゲノムは、配列番号82、配列番号83または配列番号84のヌクレオチド配列を含む。
【0190】
キメラ繊維を発現する組換え腫瘍崩壊性アデノウイルスは、上記のように誘導可能な標的化および/または肝臓再標的化改変をさらに含むことができる。
E.中和抗体を回避するためのカプシド交換
【0191】
本開示は、既存の中和抗体を回避することが可能なキメラウイルスを作製するために、天然のアデノウイルスモジュラリティーを活用することをさらに企図する。特に、それらを既存の抗体に「見えなく」させて反復接種を可能にする、完全な「カプシド」モジュール交換(ゲノムのほぼ60%)を有するAd5をベースとしたウイルスが本明細書で開示される。カプシド交換された組換えアデノウイルスが、実施例4でさらに記載される(図24~26も参照)。
【0192】
組換えアデノウイルスのゲノムが、改変E1Aタンパク質、改変または欠失E4orf1タンパク質、改変または欠失E4orf6/7タンパク質またはその任意の組合せをコードし、組換えアデノウイルスのゲノムが、カプシド交換キメラアデノウイルスをコードする組換えアデノウイルスが本明細書で提供される。一部の実施形態では、ゲノムのE1、E3およびE4領域は第1のアデノウイルス血清型に由来し、ゲノムのE2B、L1、L2、L3、E2AおよびL4領域は第2のアデノウイルス血清型に由来する。一部の例では、第1のアデノウイルス血清型のE1領域は、第2のアデノウイルス血清型からのpIXタンパク質をコードするように改変され;および/または、第1のアデノウイルス血清型のE3領域は、第2のアデノウイルス血清型からのUexonおよび繊維タンパク質をコードするように改変される。特定の例では、第1のアデノウイルス血清型はAd5であり、第2のアデノウイルス血清型はAd3、Ad9、Ad11、Ad34またはAd37である。
【0193】
特定の例では、組換えアデノウイルスのゲノムは、配列番号85、または配列番号92~97のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む。
【0194】
組換え腫瘍崩壊性カプシド交換アデノウイルスは、上記のようにキメラ繊維、誘導可能な標的化および/または肝臓再標的化改変をさらに含むことができる。
F.他の改変
【0195】
本明細書に開示される組換えアデノウイルスは、例えば腫瘍を選択的に増強するために、特異的細胞型に感染を導くために、および既存の中和抗体を回避するために、追加の改変を含むこともできる。
【0196】
一実施形態では、組換えアデノウイルスは、RGEへのインテグリン結合性RGDモチーフの突然変異を有するカプシドタンパク質ペントンと一緒にE1、E3およびE4突然変異を有するEGFR標的化腫瘍崩壊性アデノウイルスである(例えば、AdSyn-CO511;配列番号86)。このペントン突然変異は脾臓でのウイルスの取込みを低減し、抗ウイルス性炎症性応答を弱めることが示されている。
【0197】
別の実施形態では、組換え腫瘍崩壊性アデノウイルスは、繊維タンパク質へのRGDペプチドの挿入と一緒にE1およびE4突然変異を含む(例えば、AdSyn-CO512;配列番号87)。繊維タンパク質でのRGD挿入は、血管内皮細胞を含むより広い種類の細胞型に感染を劇的に増加させることが示された。
G.組換えリポーターアデノウイルス
【0198】
組換えリポーターアデノウイルスが、本明細書でさらに提供される。一部の実施形態では、組換えアデノウイルスのゲノムは、E1Aの欠失を含み、EF1α-ルシフェラーゼをコードする(例えば、AdSyn-CO199、AdSyn-CO200およびAdSyn-CO171を参照)。
【0199】
一部の実施形態では、組換えアデノウイルスのゲノムは、肝臓特異的マイクロRNAのための1つまたは複数の結合部位をさらに含み、および/または改変ヘキソンタンパク質をコードする。一部の例では、肝臓特異的マイクロRNAのための1つまたは複数の結合部位は、E1Aの3’-UTRに位置する。具体的な非限定例では、肝臓特異的マイクロRNAは、miR-122である。一部の例では、改変ヘキソンタンパク質は、E451Q置換を含む。
【0200】
具体的な非限定例では、組換えアデノウイルスのゲノムは、配列番号27(AdSyn-CO199)、配列番号28(AdSyn-CO200)または配列番号29(AdSyn-CO171)のヌクレオチド配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一であるか、またはそれを含むか、もしくはそれからなる。
IV.野生型および突然変異体ウイルス配列
【0201】
本明細書で開示される組換えアデノウイルスの組換えアデノウイルスゲノムが、本開示によってさらに提供される。特に、配列番号1~31および68~98のいずれか1つと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一であるヌクレオチド配列を含む組換え核酸分子が提供される。具体例では、組換え核酸は、配列番号1~31および68~98のいずれか1つのヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。
【0202】
組換えアデノウイルスゲノムを含むベクターも提供される。一部の実施形態では、配列番号1~31および68~98のいずれか1つと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一である核酸分子を含むベクターが提供される。一部の例では、配列番号1~31および68~98のいずれか1つのヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる核酸分子を含むベクターが提供される。
【0203】
本明細書で開示される組換えアデノウイルスによって発現される、野生型および突然変異体のアデノウイルスタンパク質配列が下で提供される。
E1A突然変異体
【0204】
下のE1A配列では、LXCXEモチーフは下線によって示される。このモチーフは、Ad5 E1A(配列番号32)のアミノ酸122~126に存在する。Y47HおよびC124G置換は、太字で示す。
【化2-1】
【化2-2】
【化2-3】
Ad5 E4orf1およびE4orf6/7
Ad5 E4orf1のC末端のPDZ結合性モチーフ(配列番号38の残基126~128)には、下線が引かれている。
【化3】
【0205】
E2Fへの結合を排除するか、もしくは害する、または核局在化シグナルを欠失させるか、もしくは害する、改変E4orf6/7タンパク質をコードするゲノムを有する組換えアデノウイルスが、本明細書で企図される。一部の例では、E2F結合部位を欠失させる/害するために、改変E4orf6/7タンパク質は、約60、約50、約40、約30、約20または約10アミノ酸の欠失をC末端に含む。他の例では、E4orf6/7タンパク質は、C末端の10アミノ酸に欠失、フレームシフトもしくは挿入を、またはE2F結合を消滅させるか、または害する、タンパク質のC末端の第3からの33アミノ酸の欠失を含む。一部の実施形態では、突然変異は、E2F相互作用を害するアミノ酸81~91を含む。
【0206】
他の例では、改変E4orf6/7タンパク質は、E2F4の効率的な転位のために必要とされる核局在化配列を消滅させるために、N末端の58アミノ酸の欠失を含む。Ad2およびAd5 E4orf6/7のアミノ酸13と38の間に位置する8つのアルギニン残基があり、それはこの領域での25%を超えるアルギニン含有量に等しい。E4orf6のN末端でのアルギニン残基の全体的クラスタリングは、他のアデノウイルス血清型で維持されている。アルギニン残基16、18、21、22、27および/または29をアラニン(または、この領域を通して核局在化を消滅させる他の適当な残基)に置換する突然変異が、企図される。
【0207】
他の例では、改変E4orf6/7タンパク質は、E2F二重部位占有を誘導するE4orf6/7の能力を排除または阻害するために、1つまたは複数の改変を含む。具体的な非限定例には、プロリン、アラニン、リシン、アスパラギン酸またはグルタミン酸へのF125の突然変異;またはP、A、K、R、G、FへのD121の突然変異が含まれる。
【0208】
他のE4orf6/7突然変異には、以下のものが含まれる:E2F単一部位占有を阻止する、T133A、R101A、Q105Pまたは任意の突然変異;アルファヘリックスを破壊してE2F結合を阻止する、M84NもしくはP、G、K、L、Hおよび/またはE93A、もしくはK、P、G、R、L、M。他の企図される突然変異には、T133QもしくはA、K、G、P、L、H;G141L、P、K H、F、A;またはV149N、K、P、H、G、E、Dが含まれる。
繊維配列
【0209】
下の組換え繊維配列では、FRB配列には下線が引かれている。FRBに存在する突然変異は、太字で示す。
【化4-1】
【化4-2】
標的化リガンド配列
【化5】
ヘキソン配列
【化6-1】
【化6-2】
E3配列
【化7】
V.医薬組成物
【0210】
組換えアデノウイルス(または組換えアデノウイルスをコードする1つまたは複数の核酸もしくはベクター)を含む組成物が、本明細書で提供される。組成物は、任意選択で、製剤化およびin vitroまたはin vivo投与に適する。任意選択で、組成物は、提供される薬剤の1つまたは複数および薬学的に許容される担体を含む。適する担体およびそれらの製剤は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy、2
2版、Loyd V. Allenら編、Pharmaceutical Press(2012年)に記載される。薬学的に許容される担体には、生物学的にまたは他の形で望ましくなくはない材料が含まれ、すなわち、その材料は、望ましくない生物学的作用も引き起こさずに、またはそれが含有される医薬組成物の他の構成成分と有害な方法で相互作用することなく対象に投与される。対象に投与される場合、担体は、任意選択で、有効成分の分解を最小にし、対象において有害な副作用を最小にするように選択される。
【0211】
組換えウイルス(または、組換えアデノウイルスをコードする1つまたは複数の核酸もしくはベクター)は、公知の方法に従って、例えば静脈内投与、例えばボーラスとして、もしくはある期間の連続的注入によって、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、関節滑液嚢内、クモ膜下腔内、経口、局所、腫瘍内または吸入の経路によって投与される。投与は局所であってもまたは全身性であってもよい。組成物は、局所、経口、非経口、静脈内、関節内、腹腔内、筋肉内、皮下、腔内、経皮、肝臓内、頭蓋内、噴霧/吸入、または気管支鏡検査法による導入を含むいくつかの投与経路のいずれかを通して投与することができる。したがって、組成物は、局所または全身の治療が所望であるかどうかによって、および治療される領域によっていくつかの方法で投与される。
【0212】
一部の実施形態では、投与のための組成物は、薬学的に許容される担体、好ましくは水性担体に溶解させた本明細書に記載の組換えアデノウイルス(または組換えゲノム)を含む。様々な水性担体、例えば、緩衝食塩水などを使用することができる。これらの溶液は無菌であり、望ましくない物質を一般に含まない。これらの組成物は、従来の、周知の滅菌技術によって滅菌することができる。組成物は、生理条件に近づけるのに必要とされる薬学的に許容される補助物質、例えばpH調整および緩衝剤、毒性調整剤など、例えば酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなどを含むことができる。これらの製剤中の活性薬剤の濃度は、大きく異なることができ、選択される投与の特定の様式および対象の必要性に従って、液量、粘度、体重などに主に基づいて選択される。
【0213】
特に組換えウイルスの医薬製剤は、所望の程度の純度を有する組換えアデノウイルス(または、組換えアデノウイルスをコードする1つまたは複数の核酸)を、任意選択の薬学的に許容される担体、賦形剤または安定剤と混合することによって調製することができる。そのような製剤は、凍結乾燥製剤または水溶液であってよい。
【0214】
許容される担体、賦形剤または安定剤は、用いられる投与量および濃度においてレシピエントに無毒である。許容される担体、賦形剤または安定剤は、酢酸、リン酸、クエン酸および他の有機酸;抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸)保存剤、低分子量ポリペプチド;血清アルブミンもしくはゼラチンなどのタンパク質、またはポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;ならびにアミノ酸、単糖、二糖およびグルコース、マンノースもしくはデキストリンを含む他の炭水化物;キレート化剤;ならびにイオン性および非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート);ナトリウムなどの塩形成性対イオン;金属錯体(例えばZn-タンパク質複合体);ならびに/または非イオン性界面活性剤であってもよい。組換えアデノウイルス(または組換えアデノウイルスをコードする1つまたは複数の核酸)は、感染単位の任意の適当な濃度で製剤化することができる。
【0215】
経口投与に適する製剤は、(a)液体溶液、例えば、水、食塩水またはPEG400などの希釈剤に懸濁させた組換えアデノウイルスの有効量;(b)有効成分の所定量を液体、固体、顆粒またはゼラチンとして各々含有するカプセル剤、サシェ剤または錠剤;(c)適当な液体での懸濁液;および(d)適する乳剤からなる。錠剤の形態は、ラクトース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、リン酸カルシウム、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、微結晶性セルロース、ゼラチン、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸および他の賦形剤、着色剤、充填剤、結合剤、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、保存剤、着香剤、色素、崩壊剤および薬学的に適合する担体の1つまたは複数を含むことができる。ロゼンジの形態は、有効成分をフレーバー、例えばスクロースに、ならびに、有効成分に加えて当技術分野で公知の担体を含有する、有効成分を不活性の基剤、例えばゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアラビアゴム乳濁液、ゲルなどに含むパステル剤に含むことができる。
【0216】
組換えアデノウイルス(または組換えアデノウイルスをコードする1つまたは複数の核酸)は、単独で、または他の適する構成成分と組み合わせて、吸入により投与されるエアゾール製剤(すなわち、それらは「霧状にする」ことができる)にすることができる。エアゾール製剤は、加圧した許容される噴射剤、例えばジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などに入れることができる。
【0217】
例えば関節内(関節の中)、静脈内、筋肉内、腫瘍内、皮内、腹腔内および皮下経路による非経口投与に適する製剤には、抗酸化剤、緩衝液、静菌薬、および予定レシピエントの血液と製剤を等張性にする溶質を含有することができる、水性および非水性の等張性の無菌注射溶液、ならびに、懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤および保存剤を含むことができる、水性および非水性の無菌懸濁液が含まれる。提供される方法では、組成物は、例えば、静脈内注入、経口的、局所的、腹腔内、膀胱内、腫瘍内またはクモ膜下腔内に投与することができる。非経口投与、腫瘍内投与および静脈内投与が、好ましい投与方法である。化合物の製剤は、単位用量または多回用量密封容器、例えばアンプルおよびバイアルで提供することができる。
【0218】
注射溶液および懸濁液は、前に記載の種類の無菌の粉末、顆粒および錠剤から調製することができる。ex vivo療法のためにアデノウイルスによって形質導入もしくは感染させたか、または核酸でトランスフェクトさせた細胞を、上記のように静脈内または非経口的に投与することもできる。
【0219】
医薬調製物は、好ましくは単位剤形である。そのような形態では、調製物は、活性成分の適当な量を含有する単位用量に細分化される。したがって、医薬組成物は、投与方法によって様々な単位剤形で投与することができる。例えば、経口投与に適する単位剤形には、散剤、錠剤、ピル剤、カプセル剤およびロゼンジ剤が限定されずに含まれる。
【0220】
一部の実施形態では、組成物は、異なる細胞受容体に結合する組換えアデノウイルスなどの、少なくとも2つの異なる組換えアデノウイルスを含む。例えば、組成物中の組換えアデノウイルスの少なくとも1つは、キメラ繊維タンパク質を発現することができる。あるいは、組換えアデノウイルスは、標的化リガンドが組成物中のウイルスを区別する標的化リガンド-FKBP融合タンパク質をコードすることによって異なる細胞受容体を標的にすることができる。一部の例では、組成物は、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つの異なる組換えアデノウイルスを含む。
VI.治療方法
【0221】
本明細書で開示される組換えアデノウイルス組成物は、治療的または予防的処置のために投与することができる。特に、対象において腫瘍細胞生存性を阻害し、対象において腫瘍進行を阻害し、対象において腫瘍体積を低減し、および/または対象においてがんを治療する方法が提供される。本方法は、対象に組換えアデノウイルス(またはその組成物)の治療有効量を投与することを含む。全体で記載されるように、アデノウイルスまたは医薬組成物は、静脈内、血管内、クモ膜下腔内、筋肉内、皮下、腹腔内または経口的を限定されずに含む任意の数の方法で投与される。任意選択で、本方法は、対象に1つまたは複数の追加の治療剤を投与することをさらに含む。一部の実施形態では、治療剤は化学療法剤である。他の実施形態では、治療剤は、免疫モジュレータである。さらに他の実施形態では、治療剤は、CDK4阻害剤などのCDK阻害剤である。
【0222】
一部の実施形態では、がんまたは腫瘍は、肺、前立腺、結腸直腸、乳房、甲状腺、腎臓または肝臓のがんまたは腫瘍であるか、または白血病型である。一部の場合には、がんは転移性である。一部の例では、腫瘍は、乳房、下垂体、甲状腺または前立腺の腫瘍;脳、肝臓、髄膜、骨、卵巣、子宮または子宮頸の腫瘍;単核球性もしくは骨髄性白血病;腺癌、アデノーマ、星状細胞腫、膀胱腫瘍、脳腫瘍、バーキットリンパ腫、乳癌、子宮頸癌、結腸癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、直腸癌、皮膚癌、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、軟骨肉腫、絨毛癌、線維腫、線維肉腫、神経膠芽腫、神経膠腫、肝癌、組織球腫、上皮様平滑筋腫、平滑筋肉腫、リンパ腫、脂肪肉腫細胞、乳房腫瘍、髄芽細胞腫、骨髄腫、プラズマ細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、骨原性肉腫、膵臓腫瘍、下垂体腫瘍、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫、精巣腫瘍、胸腺腫またはウィルムス腫瘍である。腫瘍には、乳房、結腸、直腸、肺、口部、下咽頭、食道、胃、膵臓、肝臓、胆嚢および胆管、小腸、尿路(腎臓、膀胱および尿路上皮を含む)、女性の生殖器官(子宮頸、子宮および卵巣ならびに絨毛癌および妊娠期絨毛性疾患を含む)、男性の生殖器官(前立腺、精嚢、精巣および胚細胞腫瘍を含む)、内分泌腺(甲状腺、副腎および下垂体を含む)および皮膚の癌腫、ならびに血管腫、黒色腫、肉腫(骨および軟部組織から生じるものならびにカポジ肉腫を含む)、および脳、神経、目および髄膜の腫瘍(星状細胞腫、神経膠腫、神経膠芽腫、網膜芽細胞腫、神経腫、神経芽細胞腫、神経線維腫および髄膜腫を含む)を含む、原発性および転移性の固形腫瘍が含まれる。一部の態様では、リンパ腫(ホジキンおよび非ホジキンリンパ腫)の治療でだけでなく、造血悪性腫瘍、例えば白血病(すなわち、緑色腫、プラズマ細胞腫ならびに菌状息肉腫および皮膚T細胞リンパ腫/白血病のプラークおよび腫瘍)から生じる固形腫瘍を、治療することができる。さらに、本明細書に記載される腫瘍からの転移の防止で、処置が役立ち得る。
【0223】
治療的適用では、組換えアデノウイルスまたはその組成物は、対象に治療的に有効な量または用量で投与される。この使用のために有効な量は、疾患の重症度および患者の健康の全身状態による。患者によって必要とされ、耐容される投与量および頻度に従い、組成物の単回または多回投与を投与することができる。「患者」または「対象」には、ヒトおよび他の動物の両方、特に哺乳動物が含まれる。したがって、本方法は、ヒトの療法および獣医学の両方への応用に適用可能である。
【0224】
改変配列を有するアデノウイルスの有効量は個体ベースで決定され、また、少なくとも一部、使用される特定の組換えアデノウイルス;個体のサイズ、年齢、性;ならびに増殖細胞のサイズおよび他の特徴に基づく。例えば、ヒトの治療のために、組換えウイルスの少なくとも10プラーク形成単位(PFU)が使用され、例えば、存在する増殖細胞または新生物のタイプ、サイズおよび数によって、組換えウイルスの少なくとも10、少なくとも10、少なくとも10、少なくとも10、少なくとも10、少なくとも10、少なくとも1010、少なくとも1011または少なくとも1012PFU、例えば概ね10~1012PFUが使用される。有効量は、体重1kg当たり約1.0pfuから体重1kg当たり約1015pfuであってよい(例えば、体重1kg当たり約10pfuから体重1kg当たり約1013pfu)。組換えアデノウイルスは、単回用量または多回用量(例えば、2、3、4、6またはそれ超の用量)で投与される。多回用量は、同時並行的に、または連続して(例えば、数日または数週間にわたって)投与することができる。
【0225】
一部の実施形態では、提供される方法は、対象に、1つまたは複数の追加の治療剤、例えば抗がん剤または他の治療処置(腫瘍の外科切除など)を投与することを含む。例示的な抗がん剤には、化学療法剤、例えば、有糸分裂阻害剤、アルキル化剤、代謝拮抗物質、挿入抗生物質、増殖因子阻害剤、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼ阻害剤、抗生存剤、生体応答調節剤、抗ホルモン剤(例えば抗アンドロゲン)、抗血管形成剤およびCDK阻害剤が限定されずに含まれる。他の抗がん治療には、放射線療法およびがん細胞を特異的に標的にする他の抗体が含まれる。
【0226】
アルキル化剤の非限定例には、ナイトロジェンマスタード(メクロルエタミン、シクロホスファミド、メルファラン、ウラシルマスタードまたはクロラムブシルなど)、スルホン酸アルキル(ブスルファンなど)、ニトロソ尿素(カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾシンまたはダカルバジンなど)が含まれる。
【0227】
代謝拮抗物質の非限定例には、葉酸類似体(メトトレキセートなど)、ピリミジン類似体(5-FUまたはシタラビンなど)およびプリン類似体、例えばメルカプトプリンまたはチオグアニンが含まれる。
【0228】
天然生成物の非限定例には、ビンカアルカロイド(ビンブラスチン、ビンクリスチンまたはビンデシンなど)、エピポドフィロトキシン(エトポシドまたはテニポシドなど)、抗生物質(ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシンまたはマイトマイシンCなど)および酵素(L-アスパラギナーゼなど)が含まれる。
【0229】
その他の薬剤の非限定例には、白金配位錯体(シスプラチンとしても知られるシス-ジアミン-ジクロロ白金IIなど)、置換型尿素(ヒドロキシ尿素など)、メチルヒドラジン誘導体(プロカルバジンなど)および副腎皮質(adrenocrotical)抑制剤(ミトタンおよびアミノグルテチミドなど)が含まれる。
【0230】
ホルモンおよびアンタゴニストの非限定例には、副腎皮質ステロイド(プレドニゾンなど)、プロゲスチン(カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロンおよび酢酸メゲストロール(magestrol)など)、エストロゲン(ジエチルスチルベ
ストロールおよびエチニルエストラジオールなど)、抗エストロゲン(タモキシフェンなど)およびアンドロゲン(プロピオン酸テストステロン(testerone)およびフルオキシ
メステロンなど)が含まれる。
【0231】
最も一般的に使用される化学療法薬の例には、アドリアマイシン、アルケラン、Ara-C、BiCNU、ブスルファン、CCNU、カルボプラチナム、シスプラチン、シトキサン、ダウノルビシン、DTIC、5-FU、フルダラビン、Hydrea、イダルビシン、イホスファミド、メトトレキセート、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、ナイトロジェンマスタード、タキソール(または、ドセタキセルなどの他のタキサン)、Velban、ビンクリスチン、VP-16が含まれ、一部のより新しい薬物には、ゲムシタビン(Gemzar)、Herceptin、イリノテカン(Camptosar、CPT-11)、Leustatin、Navelbine、Rituxan STI-571、タキソテール、トポテカン(Hycamtin)、Xeloda(カペシタビン)、Zevelinおよびカルシトリオールが含まれる。
【0232】
使用することができる免疫調節物質の非限定例には、AS-101(Wyeth-Ayerst Labs.)、ブロピリミン(Upjohn)、ガンマインターフェロン(Genentech)、GM-CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子;Genetics Institute)、IL-2(CetusまたはHoffman-LaRoche)、ヒト免疫グロブリン(Cutter Biological)、IMREG(New Orleans、La.のImregから)、SK&F 106528およびTNF(腫瘍壊死因子;Genentech)が含まれる。
【0233】
一部のタイプのがんのための別の一般的な治療は、外科処置、例えばがんまたはその一部の外科切除である。治療の別の例は、腫瘍を根絶するか、または外科切除の前にそれを縮小するのを助けるための、腫瘍部位への放射線療法、例えば放射性物質またはエネルギーの投与(外部ビーム療法など)である。
【0234】
CDK(サイクリン依存性キナーゼ)阻害剤は、CDKの機能を阻害する薬剤である。提供される方法で使用するためのCDK阻害剤の非限定例には、AG-024322、AT7519、AZD5438、フラボピリドール、インジスラム、P1446A-05、PD-0332991およびP276-00が含まれる(例えば、Lapennaら、Nature Reviews、8巻:547~566頁、2009年を参照)。他のCDK阻害剤には、LY2835219、パルボシクリブ、LEE011(Novartis)、pan-CDK阻害剤AT7519、セリシクリブ、CYC065、ブチロラクトンI、ヒメニアルジシン、SU9516、CINK4、PD0183812またはファスカプリシンが含まれる。
【0235】
一部の例では、CDK阻害剤は、広範囲阻害剤(フラボピリドール、オロモウシン、ロスコビチン、ケンパウロン、SNS-032、AT7519、AG-024322、(S)-ロスコビチンまたはR547など)である。他の例では、CDK阻害剤は、特異的阻害剤(ファスカプリシン、リュービジン、プルバラノールA、NU2058、BML-259、SU 9516、PD0332991またはP-276-00など)である。
【0236】
薬剤および投与量の選択は、治療される所与の疾患に基づいて当業者が容易に決定することができる。薬剤または組成物の組合せは、併存して(例えば、混合物として)、別々であるが同時に(例えば、別個の静脈内系統によって)または逐次的に(例えば、1つの薬剤が先ず投与され、その後第2の薬剤の投与が続く)投与することができる。したがって、用語、組合せは、2つまたはそれ超の薬剤または組成物の、併存、同時または逐次的な投与を指すために使用される。
【0237】
本明細書に開示される方法により、対象は本明細書で提供される薬剤の1つまたは複数の有効量を投与される。有効量は、所望の生理的応答(例えば、がん細胞の殺滅)をもたらすのに必要な任意の量と規定される。治療剤は、1日に約0.001mg/kgから約1000mg/kgの初期投与量で一般的に投与される。約0.01mg/kgから約500mg/kg、または約0.1mg/kgから約200mg/kg、または約1mg/kgから約100mg/kg、または約10mg/kgから約50mg/kgの用量範囲を使用することができる。しかし、対象の必要量、治療される状態の重症度および採用される化合物によって、投与量は変更されてもよい。例えば、投与量は、特定の対象において診断されるがんのタイプおよびステージを考慮して経験的に決定することができる。対象に投与される用量は、提供される方法との関連で、患者で有益な治療応答に経時的に影響するのに十分であるべきである。特定の状況のための適切な投与量の決定は、開業医の技術の範囲内である。したがって、薬剤を投与するための有効量およびスケジュールは、当業者が経験的に決定することができる。投与量は、望ましくない交差反応、アナフィラキシー反応などのかなりの有害な副作用を引き起こすほど大きくあるべきでない。何らかの禁忌症が生じた場合、投与量は個々の医師が調整することができる。所与のクラスの医薬品のための適当な投与量について、指針を文献で見出すことができる。
【0238】
腫瘍細胞を、本明細書に開示される組換えアデノウイルスまたはその組成物と接触させることによって、腫瘍細胞生存性を阻害する方法が、本明細書で提供される。一部の実施態様では、本方法はin vitroの方法である。他の実施形態では、本方法はin vivoの方法であり、腫瘍細胞を接触させることは腫瘍を有する対象に組換えアデノウイルスまたは組成物を投与することを含む。
【0239】
対象に本明細書で開示される組換えアデノウイルス(またはその組成物)の治療有効量を投与することによって、対象において腫瘍進行を阻害するか、または腫瘍体積を低減する方法がさらに提供される。
【0240】
対象に本明細書で開示される組換えアデノウイルス(またはその組成物)の治療有効量を投与することによって、対象においてがんを治療する方法も提供される。
【0241】
対象に(i)ラパマイシン/ラパログ誘導性の再標的化組換えアデノウイルスの治療有効量;および(ii)ラパマイシンまたはその類似体を投与することによって、対象において腫瘍体積を低減する方法がさらに提供される。対象に(i)ラパマイシン/ラパログ誘導性の再標的化組換えアデノウイルスの治療有効量;および(ii)ラパマイシンまたはその類似体を投与することによって、対象においてがんを治療する方法も提供される。
【0242】
一部の実施形態では、ラパマイシンまたはラパマイシン類似体は、約0.1mg/kgから約2.0mg/kgの用量で投与される。他の実施形態では、ラパマイシンは、約0.1mg/kgから約0.5mg/kgの用量で投与される。一部の例では、ラパマイシンは、約0.1mg/kg、0.5mg/kg、1.0mg/kg、1.5mg/kgまたは2.0mg/kgの用量で投与される。
【0243】
一部の実施形態では、ラパマイシンまたはラパマイシン類似体は、約1から15mg/m、例えば約3から12mg/mまたは約5から10mg/mの用量で投与される。一部の例では、ラパマイシンまたはラパマイシン類似体は、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14または約15mg/mの用量で投与される。
【0244】
一部の実施形態では、ラパマイシンまたはラパマイシン類似体は、対象において実質的な免疫抑制を引き起こさない用量で投与される。「実質的な免疫抑制を引き起こさない用量で」のラパマイシンまたはその類似体の投与は、特定の対象のための有効濃度25(EC25)またはそれ未満である用量を指す。当業者は、対象において実質的な免疫抑制を引き起こさないラパマイシンまたはその類似体の用量を決定することが可能である(例えば、Schubertら、Am J Transplant4巻:767~773頁、2004年を参照)。一
部の例では、EC25は、約1ng/mLから約15ng/mL、例えば約3ng/mLから約10ng/mLである。非限定例では、EC25は、約1ng/mL、約2ng/mL、約3ng/mL、約4ng/mL、約5ng/mL、約6ng/mL、約7ng/mL、約8ng/mL、約9ng/mL、約10ng/mL、約11ng/mL、約12ng/mL、約13ng/mL、約14ng/mLまたは約15ng/mLである。
【0245】
一部の実施形態では、再標的化アデノウイルスのゲノムは、FKBPに融合した標的化リガンド、および野生型FKBP-ラパマイシン結合性(FRB)タンパク質またはT2098L置換を含む突然変異体FRBタンパク質に融合したアデノウイルス繊維タンパク質をコードする。一部の例では、標的化リガンドは、EGFRに特異的な単一ドメイン抗体などの、単一ドメイン抗体である。特定の非限定例では、組換えアデノウイルスのゲノムは、AdSyn-CO335(配列番号30)、AdSyn-CO335B-K(配列番号92)またはAdSyn-CO335B-TK(配列番号97)のヌクレオチド配列を含む。
【0246】
本方法の一部の実施形態では、腫瘍またはがんは、E2F経路の脱調節によって特徴付けられる。一部の実施形態では、腫瘍またはがんは、肺、前立腺、結腸直腸、乳房、甲状腺、腎臓または肝臓の腫瘍またはがんであるか、または白血病である。
【0247】
一部の実施形態では、本方法は、対象を追加の治療剤、例えば、化学療法剤、免疫モジュレータまたはCDK阻害剤、例えばCDK4阻害剤で治療することをさらに含む。
【0248】
以下の実施例は、ある特定の特徴および/または実施形態を例示するために提供される。これらの実施例は、本開示を記載される特定の特徴または実施形態に限定するものと解釈するべきでない。
【実施例0249】
(実施例1)
脱調節されたE2F活性を有する腫瘍細胞で選択的に複製する腫瘍崩壊性アデノウイルス
【0250】
参照により本明細書に組み込まれるPCT公開番号WO2012/024351に記載される方法に従って、改変アデノウイルスを下で参照する構成成分で作製した。ゲートウェイpDONRベクターを採用した。ヒトAd5 DNAから、PCRによってE1モジュールを得、SLICを使用してベクターpDONR P1P4に挿入した。attL1およびattL4組換え部位を含むpDONR P1P4ベクター骨格を、PCRを使用して増幅させ、SLICによってAd5 E1モジュールと組み合わせた。attB5およびattB3r組換え部位に隣接する生成物を生産するために、E3モジュールをPCRによって得た。ゲートウェイBP反応によって、生成物をpDONR P5P3rベクターに挿入した。attB3およびattB2組換え部位に隣接する生成物を生産するために、E4モジュールをPCRによって得た。ゲートウェイBP反応によって、生成物をpDONR P3P2ベクターに挿入した。pDONR P5P2ベクターからのattR5-ccdB-Cm(r)-attR2断片をPCRによって増幅させ、Adsembly DESTベクターに挿入した(「MultiSite Gateway(登録商標)Pro Plus」、Cat#12537-100;およびSoneら、J Biotechnol1
36巻(3~4号):113~121頁、2008年を参照)。Adsembly方法は、参照により本明細書にその全体が組み込まれる、PCT公開番号WO2012/024351に記載される。
【0251】
Adsembly DESTベクターのためのベクター骨格は、3つの異なる供与源からのパーツで構成される。Amp(r)カセットおよびlacZ遺伝子を、プラスミドpUC19から増幅させた。これを、プラスミドpSB3K5-I52002、BioBricksiGEM 2007パーツ配布の一部から得た、p15A複製起点と組み合わせた。プラスミドをより低い(10~12)コピー数に維持するp15A複製起点は、E1毒性を低減するのに必要である。最後に、自己切除ウイルスを作製するために、酵素ISceIのための哺乳動物の発現カセットをプラスミドpAdZ5-CV5-E3+からPCR増幅させた。p15A-SceIと呼ばれるベクターを作製するために、このカセットをベクター骨格にクローニングした。これは、ゲノムアセンブリーを開始するために使用されるベクターである。遺伝子モジュールは、野生型Ad5ウイルスから精製されたDNAまたはプラスミドpAd/CMV/V5/DEST(Invitrogen)から全て得た。
【0252】
ヒトAd5のためのDESTベクターに関しては、E2およびL3モジュールを3断片SLICによってプラスミドp15A-SceIに挿入した。attR5およびattR2部位に隣接するccdBおよびChlor(r)を発現する対抗選択マーカーを、PCRによってプラスミドpDONR P5P2から得た。第2の対抗選択マーカーを、PCRによってベクターpDONR P1P4から得た。DESTベクターを作製するためにE2およびL4モジュールの末端に工学的に操作した特異な制限酵素で切断の後に、2つの対抗選択マーカーをSLICによってp15A-SceIE2-L4の右側と左側に挿入した。
【0253】
Amp(r)カセットに関して:プラスミドpUC19に関しては、p15A複製起点:プラスミドpSB3K5-I52002は、BioBricksiGEM 2007パーツ配布の一部であった。アデノウイルス遺伝子モジュールに関しては、DNAはAd5粒子またはプラスミドpAd/CMV/V5/DEST(Invitrogen)から精製した。DONRベクターpDONR P1P4、P5P2、P5P3R、P3P2は、Invitrogenから得た。
【0254】
全てのPCRアッセイは、Phusion酵素(NEB)を使用して実行した。Ad5からアデノウイルス遺伝子モジュールを得るためのPCRアッセイは、1×HF緩衝液、各々200μMのdNTP、各々0.5μMのプライマーおよび10ngの鋳型で実行した。E2-L2モジュールについては、3%DMSOも追加した。鋳型は、プラスミドpAd/PL-DEST(Invitrogen;E2-L2、L3-L4およびE4モジュールの場合)またはAd5ゲノムDNA(E1およびE3モジュールの場合)であった。PCR条件は以下の通りだった:
【0255】
E2-L2およびL3-L4:98℃で30秒間-98℃で10秒間、65℃で30秒間を10サイクル(温度を2サイクルおきに1℃下げる)、72℃で7分間-98℃で10秒間、60℃で30秒間、72℃で8分間を29サイクル-72℃で10分間-4℃を保持。
【0256】
E3:98℃で30秒間-98℃で10秒間、70℃で30秒間を10サイクル(温度を1サイクルおきに0.5℃下げる)、72℃で2分30秒間-98℃で10秒間、68℃で30秒間、72℃で2分30秒間を25サイクル-72℃で10分間-4℃を保持。
【0257】
E4:98℃で30秒間-98℃で10秒間、63℃で30秒間を6サイクル(温度を1サイクルおきに0.5℃下げる)、72℃で2分間-98℃で10秒間、60℃で30秒間、72℃で2分間を29サイクル-72℃で5分間-4℃を保持。
【0258】
精製されたウイルスからウイルスのゲノムDNAを得るために、10mMのトリスpH8、5mMのEDTA、200mMのNaClおよび0.2%のSDSを含有する300μlの溶解緩衝液に、精製されたウイルスの100μlまでを追加した。混合物を60℃で5分間インキュベートし、その後、5μlのプロテイナーゼKストック(約20mg/mL)を添加し、60℃で1時間さらにインキュベートした。次に試料を5分間、氷上に置き、続いて15K×gで15分間遠心回転させた。上清を取り出し、等量のイソプロパノールに加え、よく混合し、4℃および15K×gで15分間遠心回転させた。ペレットを70%エタノールで洗浄し、4℃で15分間再度遠心回転させた。ペレットを乾燥させ、使用のために再懸濁した。
【0259】
SLICに関しては、以下の20μlの反応において、線状の断片を室温で20分間、エキソヌクレアーゼで処理した:50mMのトリスpH8、10mMのMgCl2、50μg/mLのBSA、200mMの尿素、5mMのDTTおよび0.5μlのT4 DNAポリメラーゼ。反応を1μlの0.5MのEDTAの添加によって停止させ、続いて75℃で20分間インキュベートした。次に、新しいチューブで、等量のT4処理DNAをおよそ20μlの量まで混合した。2つの断片を合わせたSLICについては、各反応物10μlを使用した。3つの断片を合わせたSLICについては、各反応物7μlを使用した。65℃に10分間加熱することによって断片をアニールし、続いて、5秒おきに0.5℃ずつ徐々に冷却して温度を25℃まで下げた。アニーリングの後、反応物5μlを形質転換させ、クローンをスクリーニングした。
【0260】
AdSlicRに関しては、100ngのT4処理p15A-SceI(PCRによって線状化)ならびにE2およびL3モジュール(それらのそれぞれの侵入ベクターからPCRによって得た)の各々の300ngを使用して、3断片SLIC反応を実行した。これで、ベクターp15A-SceI E2-L4を作製した。p15A-SceI E2-L4の5μgをSwaIで切断し、Qiagen QiaexIIを使用してゲル精製した。E3およびE4モジュールは、それらのそれぞれの侵入ベクターからPCRによって得た。線状化ベクター(450ng)およびPCR生成物(200ng)の各々をT4
DNAポリメラーゼで処理し、150~200ngのベクターおよび約100ngの各モジュールPCRを使用してSLICを通常通り実行した。陽性クローンの単離の後、新しいベクターの5μgをPacIで切断してゲル精製し、次に、新しいSLIC反応でE1 PCR生成物(T4処理したものの100ng)と合わせた。これでゲノムアセンブリーが完成され、プラスミドはウイルスを再構成するトランスフェクションの準備ができた。
【0261】
E1およびE4突然変異体領域を構築するために、個々のモジュール侵入ベクターで操作を実行した。LTCHE配列(配列番号32の残基122~126)が欠如している生成物を生産するために、ベクター骨格を有するE1モジュールをプライマーでPCR増幅し、次に、pENTR-E1-E1A-ΔLXCXEを生産するためにSLICを使用して環化した。
【0262】
あるいは、Y47をHに、C124をGに突然変異させるE1Aコドン変化を有する生成物を生産するために、またはpENTR-E1-E1A-Y47H、pENTR-E1-E1A-C124GまたはpENTR-E1-E1A-Δ2-11をそれぞれ生産するために残基2~11を欠失させるために、ベクター骨格を有するE1モジュールをプライマーでPCR増幅した。これらの生成物は、これらの突然変異の組合せ:pENTR-E1-E1A-Y47H-C124GおよびpENTR-E1-E1A-Y47H-C124G-Δ2-11を生産するさらなるPCR突然変異のための鋳型として使用された。pENTR-E4-ΔE4orf6/7を生産するために、E4orf6終止コドンの下流のE4orf6/7特異的エクソン配列(297bp)が欠如している生成物を生産するために、ベクター骨格を有するE4モジュールをプライマーでPCR増幅した。この生成物は、E4orf1のPDZ結合性モチーフまたはE4orf1配列全体が欠如している生成物(それぞれ、pENTR-E4-ΔE4orf6/7-E4orf1ΔPDZbおよびpENTR-E4-ΔE4orf6/7-ΔE4orf1)を生産するために、プライマーと一緒にPCRのための鋳型としても使用された。
【0263】
突然変異を有する完全なウイルスゲノムを生産するために、野生型E3モジュールおよび野生型E4または突然変異体E4モジュールと組み合わせて、次に野生型E1または突然変異体E1と組み合わせて、p15A-SceIE2-L4を使用してAdSlicRを実行した。野生型AdSlicRアデノウイルスは、下に示す表1で指定される。
【表1-1】
【表1-2】
【0264】
ウイルスの生成、濃度および精製に関しては、293 E4細胞を感染性粒子に感染させ、CPEが明白であった感染から概ね48時間後に、細胞を収集し、500×gで5分間の遠心分離によって単離した。3回の凍結融解を通してTMN緩衝液(10mMのトリスCl、pH7.5、1mMのMgCl、150mMのNaCl)で細胞を溶解させ、3,000×gおよび3,500×gで15分間の2回の遠心分離によって細胞デブリを除去した。塩化セシウム勾配(0.5g/mL)を使用して、37,000×gで18~24時間の超遠心を通してウイルス粒子をバンド形成させた。バンドを収集し、10%グリセロールを含むTMN中の10,000 MWCO Slide-A-Lyzer(登録商標)透析カセット(Thermo Scientific)で、4℃で一晩(12~18時間)透析し、次に、-80℃で保存した。精製したウイルスの力価は、抗アデノウイルス5型一次抗体(ab6982、Abcam)およびImmunoPure抗ウサギアルカリ性ホスファターゼ二次抗体(Thermo Scientific)による細胞ベースの系列希釈感染ELISAによって、滴定された野生型標準に対して判定した。
【0265】
一次ヒト小気道上皮細胞(SAEC)の感染の間のアデノウイルスタンパク質の発現を評価するために、12ウェルプレート中の静止期SAECをMOI 30のアデノウイルスに感染させ、感染の4時間後に細胞の上の培地を交換した。感染の24、36および48時間後に、細胞を冷PBSで洗浄し、500μLの冷PBSに回収し、5分間の4℃での5,000rpmでペレット化し、急速冷凍し、-80℃で保存した。RIPA緩衝液(100mMのトリスpH7.4、300mMのNaCl、2mMのEDTA、2%のTriton X、2%のデオキシコール酸、2mMのNaF、0.2mMのNaVO、2mMのDTT)で、細胞ペレットを4℃で1時間溶解し、カップ超音波処理器での超音波処理(2×60sパルス、4℃で60振幅)が含まれた。4℃で20分間の13,000rpmでの遠心分離によって、細胞デブリをペレット化した。Bio-RadのDC(商標)タンパク質アッセイを使用してタンパク質濃度を判定し、試料のタンパク質濃度を正規化した。製造業者のプロトコールに従って、Life Technologies Novex(登録商標)NuPAGE(登録商標)SDS-PAGEゲルを使用して、ゲル電気泳動を実行した。タンパク質は、ウェスタンブロットによって検出した。タンパク質を検出するために使用された一次抗体は、以下の通りだった:E1A(ab28305、Abcam)、β-アクチン(A5441、Sigma)、Ad5後期タンパク質(ab6982、Abcam)、サイクリンA(Ab-6 6E6、NeoMarkers)、サイクリンB(Ab-3 GNS1、NeoMarkers)。Alexa Fluor(登録商標)抗体(Life Technologies)を二次抗体として使用し、シグナルはLI-COR ODYSSEY(登録商標)装置を使用して検出した。肺腺癌A549細胞および正常ヒト星状神経膠細胞(NHA)の感染の間のアデノウイルスタンパク質発現を評価するために、12ウェルプレートのコンフルエント細胞をMOI 10のアデノウイルスに感染させ、SAECについて記載したのと同様に処理した。神経膠芽腫U87細胞、神経膠芽腫U118細胞、ヒト血管内皮細胞(HuVEC)またはヒト線維芽細胞の感染の間のアデノウイルスタンパク質発現を評価するために、12ウェルプレートのコンフルエント細胞をMOI 20のアデノウイルスに感染させ、SAECについて記載したのと同様に処理した。
【0266】
細胞周期分析を実行するために、細胞をタンパク質発現についてのと同じMOIに感染させた。感染の48時間後に、細胞をトリプシン処理によってプレートからはがし、冷PBSで洗浄した。細胞を500μLの冷PBSに再懸濁させ、3mLの冷70%EtOH/15mMグリシン、pH2.8で固定した。試料を4℃に保ち、FACSの前に、細胞をペレット化し、冷PBSで洗浄し、ヨウ化プロピジウム(PI)/RNアーゼA溶液に再懸濁させ、次に37℃で1時間インキュベートした。各試料のために、少なくとも10,000件の事象をFACSによって収集した。
【0267】
感染からのアデノウイルスバーストを評価するために、12ウェルプレートの静止期細胞をMOI 1またはMOI 10のアデノウイルスに感染させ、感染から4時間後に細胞の上の培地を交換した。ウェルからの培地を感染の48および72時間後に収集し、瞬間冷凍して一度解凍し、4℃で5分間7,000rpmで遠心分離して、細胞性デブリをペレット化した。培地の量を測定し、瞬間冷凍して-80℃で保存した。培地中のウイルスの力価は、抗アデノウイルス5型一次抗体(ab6982、Abcam)およびImmunoPure抗ウサギアルカリ性ホスファターゼ二次抗体(Thermo Scientific)による細胞ベースの系列希釈感染ELISAによって、滴定された野生型標準に対して判定した。
【0268】
細胞生存アッセイに関しては、細胞を96ウェルプレートに播種し、MOI 30の系列希釈で、3連で感染させた。MOI 10感染ウェルで完全なCPEがあった、感染から7~10日目に、製造業者の仕様書に従って細胞増殖試薬WST-1(Roche)を使用して代謝活性を測定した。
【0269】
上記のように、がんは、さらなる治療処置を必要とする問題の疾患であり続ける。そのような治療の1つは、腫瘍崩壊性ウイルスを含む。アデノウイルスは、腫瘍崩壊性ウイルス用として探求されているウイルスの1つである。網膜芽細胞腫(Rb)腫瘍抑制遺伝子経路機能は、Rbの直接突然変異によって、CDK阻害剤p16機能の喪失(例えば、突然変異/メチル化による)によって、またはCDK/サイクリンの増幅によって、ほとんど全てのヒトがんで失われる。正常な非分裂細胞では、Rbは低リン酸化されたままであり、その標的プロモーターの位置で転写因子E2Fに結合し、E2Fトランス活性化ドメインをマスキングすることによって、ならびにクロマチン-リモデリング複合体およびヒストン改変活性を動員することによって転写を抑制する。細胞周期のG1~S移行の間、CDKは、E2F抑制を軽減するRbをリン酸化する。アデノウイルスは、Rb腫瘍抑制遺伝子経路を不活性化して、細胞を強制的に複製させ、ウイルスのゲノムを併存して再生させる、初期ウイルス腫瘍性タンパク質を発現する。アデノウイルスE1Aは、一部LXCXEモチーフを通してRbに結合し、その腫瘍抑制遺伝子活性を脱調節する。したがって、E1AでLXCXEモチーフを欠失させることはRb不活性化を排除し、選択的に複製するウイルス(ONYX-838)を作製するだろうと提案された。しかし、Johnson
ら(Cancer Cell、1巻(4号):325~337頁、2002年)は、Ad E1A LXCXE突然変異が、S期侵入、ウイルスDNA複製および後期タンパク質発現を阻止するのに十分でなかったという証拠を提供し、本明細書に記載される実験からの結果と一貫した。E1A突然変異体のRb選択性が論争の的であるとしても、この突然変異は、悪性の脳腫瘍のための第II相臨床治験に進んでいる腫瘍崩壊性ウイルス(DNX-2401)のための根拠として提案されている。より高いRb選択性を達成しようとして、アデノウイルスE1およびE4領域のためのプロモーターをE2Fプロモーターと置き換え、ONYX-411を生産するためにそれをE1AΔLXCXEモチーフと組み合わせたアデノウイルスを生産した(Johnsonら、Cancer Cell、1巻(4号):325~337頁
、2002年;およびDubenskyら、Cancer Cell、1巻(4号):307~309頁、2002年)。これらのウイルスを試験するために、腫瘍および一次ヒト細胞を野生型ウイルス、ONYX-838(E1AΔLXCXE)またはONYX-411に感染させ、感染後の様々な時点で回収した。ONYX-838は、腫瘍および一次肺上皮細胞で無差別に複製した。E1AΔLXCXEをアデノウイルスE1A、E1BおよびE4領域の細胞性E2Fコントロールと組み合わせたONYX-411は、正常細胞に対して腫瘍細胞で選択的複製を実証した(Johnsonら、Cancer Cell1巻(4号):325~337頁、2
002年)。しかし、E2Fプロモーターは組換えをもたらし、さらに腫瘍細胞において複製を野生型ウイルスレベルに制限した。
【0270】
本明細書に記載されるように、E1AによるRb抑制からのE2F放出と独立して、細胞性およびAdプロモーターでE2Fタンパク質をさらに安定させる、別のAdタンパク質、E4orf6/7がある。一緒に、E1AおよびE4orf6/7はE2F媒介転写を駆動し、S期開始を引き起こし、ウイルスDNAゲノムを併存して増殖させる。したがって、機能的Rbが欠如している腫瘍細胞のための選択的腫瘍崩壊性ウイルス療法である、E1A改変、E4orf1改変および/またはE4orf6/7改変を有する組換えアデノウイルスが、本明細書で提供される。具体的には、それらが一次細胞でなく腫瘍細胞で選択的に複製するかどうか判定するために、E1A/E4orf1/E4orf6/7での化合物突然変異を工学的に操作した。これらの突然変異の組合せは、がんのための有効で自己増幅性の療法をもたらすと提案されている。
【0271】
正常の(非腫瘍)細胞および腫瘍細胞でこれらのウイルスを試験するために、細胞を、模擬感染させたか、またはAdSyn-CO102(野生型)、AdSyn-CO181(E1AΔLXCXE/ΔE4orf6/7)、AdSyn-CO189(E1AΔLXCXE)またはONYX-838(E1AΔCR2)に感染させた。ONYX-838は、E1AのCR2ドメインにあるΔLXCXEも欠如している。静止期のヒト一次小気道上皮細胞(SAEC)(非腫瘍細胞)を、MOI 10で感染させた。AdSyn-CO102は、感染の後期にE1Aレベルの予想された低下を示した(図1A)。同様に、AdSyn-CO189またはONYX-838感染細胞では、感染の後期にE1Aレベルの低下がある。しかし、初期の時点では、E1Aの発現は、AdSyn-CO102感染細胞でのE1Aの発現より大きい。対照的に、AdSyn-CO181は感染全期間でE1Aのより強く連続した発現を示し、そのことはアデノウイルス生活環を通した進行の失敗を指し示す。コンフルエント肺腺癌(A549)細胞(腫瘍細胞)を、MOI 30で感染させた。全ての感染は、感染の後期にE1Aレベルの予想された低下をもたらし、典型的なアデノウイルス生活環進行を指し示す(図1B)。
【0272】
突然変異体アデノウイルスによるSAECまたはA549細胞の感染後の後期アデノウイルスタンパク質および細胞サイクリンタンパク質発現を、図2A(SAEC)および図2B(A549細胞)に示す。野生型ウイルスおよびE1A突然変異だけを有するウイルスと対照的に、AdSyn-CO181は、SAECでE2F依存性細胞周期標的、S相のサイクリンAおよびサイクリンBを活性化することができなかった。さらに、E4orf6/7突然変異を有するAdSyn-CO181およびAdSyn-CO210は、SAECでの後期タンパク質の発現および複製に欠陥があった。これらの欠陥の両方とも、AdSyn-CO210においてはより低い程度で明らかだった。感染一次細胞と対照的に、A549細胞で後期構造タンパク質の発現に明らかな欠陥はなく、サイクリンAおよびサイクリンBは全ての感染A549試料にまだ存在していた。
【0273】
感染したSAECおよびA549細胞のDNA複製を、図3Aおよび3Bに示す。AdSyn-CO181感染はAdSyn-CO102と比較してSAECで大きなDNA複製欠陥を示し、それはウイルス複製の減少とリンクしている。この時点で、AdSyn-CO210感染SAECでも軽度の欠陥が明らかだった。A549細胞では、いかなる突然変異体ウイルス感染でもDNA複製欠陥は明らかでなかった。
【0274】
図4A~4Bは、感染したSAECおよびA549細胞からのアデノウイルスバーストを示す。AdSyn-CO181およびAdSyn-CO210感染は両方とも、AdSyn-CO102と比較してSAECで大きな複製欠陥を明らかにした(図4A)。AdSyn-CO210を除いては、A549細胞でウイルス複製の欠陥はなかった(図4B)。
【0275】
図5A~5Bは、感染から7日後の感染したSAECおよびA549の細胞生存性を示す。AdSyn-CO102と比較して、AdSyn-CO181はSAECで細胞殺滅能力の低下を示した。図5Bに示すように、試験した突然変異体ウイルスの中では、A549細胞において野生型ウイルスと比較して細胞殺滅の欠陥はなかった。
【0276】
正常ヒト星状神経膠細胞(NHA)(図6A~6C)、神経膠芽腫U87細胞(図7A~7C)、神経膠芽腫U87細胞(図8A~8C)およびIMR90細胞(図9A~9C)でも、組換えウイルスを試験した。NHAでは、AdSyn-CO181はサイクリンAを誘導せず、AdSyn-CO102と比較して遅く、減少した後期ウイルスタンパク質発現を実証し、そのことは複製欠損を指し示す(図6A)。さらに、感染性粒子の数(図6B)およびDNA含有量(図6C)によって測定されるように、野生型AdSyn-CO102と比較して、AdSyn-CO181はNHAで減弱した感染を示した。NHA細胞と対照的に、突然変異体アデノウイルスは、神経膠芽腫U87細胞(図7A~7C)でも神経膠芽腫U118細胞(図8A~8C)でも複製欠陥を実証しなかった。AdSyn-CO181は、IMR90細胞で軽度の複製欠陥を示した(図9A~9C)。
【0277】
したがって、上記のデータは、カプシドタンパク質発現の欠如、E2F標的遺伝子(サイクリンAおよびB)の誘導失敗、S相侵入およびウイルス複製誘発の失敗によって証明されるように、野生型およびE1AΔCR2ウイルスと対照的に、E1AΔCR2/ΔE4orf6/7ならびにΔE4orf6/7ウイルスも、一次細胞で不十分に複製することを示す。対照的に、これらのウイルスは、A549細胞および一群の腫瘍細胞系で野生型ウイルスレベルまで複製する。したがって、本明細書に開示される組換えアデノウイルスは、選択的がん治療剤である。
【0278】
E4orf1に突然変異を含む突然変異体アデノウイルスのより大きなセットの複製特異性の結果(表1を参照)を図10~15に示し、図16で要約する。図10は、感染から10日後の感染した一次正常ヒト星状神経膠細胞(NHA)の細胞生存性を示すグラフである。図11は、感染から9日後の感染した静止期の正常小気道上皮細胞(SAEC-hTERT)の細胞生存性を示すグラフである。図12は、感染から10日後の感染した増殖期のSAEC-hTERT細胞の細胞生存性を示すグラフである。図13は、感染から7日後の感染したヒト肺腺癌細胞(A549)の細胞生存性を示すグラフである。図14は、感染から7日後の感染したヒト乳がん細胞(MDA MB231)の細胞生存性を示すグラフである。図15は、感染から7日後の感染神経膠芽腫(U87)の細胞生存性を示すグラフである。図16は、感染から7日後の、感染した一次NHA、SAEC-hTERT(静止期)、SAEC-hTERT(増殖期)、A549、MDA MB231およびU87細胞の細胞生存性アッセイの定量化を示すヒートマップ表である。さらに、図17は、感染したU2OSおよびSaOS2細胞の細胞生存性アッセイの定量化を示す表を提供する。U2OSおよびSaOS2細胞は両方とも、骨癌細胞である。しかし、p53およびRbはU2OS細胞で機能的であり、SaOS2細胞では突然変異している。突然変異体ウイルスがRbに欠陥のある腫瘍細胞で選択的に複製することを、この結果は実証する。
【0279】
これらのデータは、E1A、E4orf1および/またはE4orf6/7の様々な改変の組合せが、欠陥のあるRb腫瘍抑制遺伝子経路を有するがん細胞で特異的に複製する選択的腫瘍崩壊性アデノウイルスをもたらすことを示す。
(実施例2)
E1、L3、E3および/またはE4に改変を有する腫瘍崩壊性アデノウイルス
【0280】
この実施例は、腫瘍選択性を有する追加の組換えアデノウイルスを記載する。例示的な組換えウイルスは表2に掲載され、これらのウイルスのゲノム配列は配列番号25~31に示す。
【表2】
【0281】
AdSyn-CO312、AdSyn-CO313およびAdSyn-CO335は、ラパマイシンおよび/またはラパログ(AP21967)依存性のEFGR標的化ウイルスである(この標的化方法の記載については、参照により本明細書にその全体が組み込まれる、PCT公開番号WO2013/138505を参照)。これらの組換えウイルスの各々は、E3-RIDα/βおよびE3-14.7kコード配列の欠失、ならびにEGFRVHH-FKBP融合タンパク質およびFRB-繊維(ラパマイシンまたはラパログに結合することができる突然変異体FRBに融合したAd5繊維)またはFRB-繊維(ラパマイシンだけに結合することができる野生型FRBに融合したAd5繊維)のいずれかの挿入を含む。FKBP融合タンパク質でなく、ラパマイシン/ラパログ依存性再標的化のために必要とされるだろうFRB-繊維をそれが発現するので、AdSyn-CO442は実験的コントロールウイルスとして使用することができる。AdSyn-CO335およびAdSyn-CO442は、ヘキソンタンパク質にE451Q突然変異も含む。この突然変異は、肝臓から組換えウイルスを脱標的化する。
【0282】
図18Aは、FRBドメインとラパマイシンおよびFKBP12との結合界面を示す。図18Bは、AP21967でなくラパマイシンの存在下で、FRB-繊維を有するEGFR標的化ウイルス(AdSyn-CO205;配列番号88)が、MDA MB453乳がん細胞の改善された形質導入を有し、一方、ラパマイシンまたはAP21967のいずれかの存在下で、FRB-繊維を有するEGFR標的化ウイルス(AdSyn-CO220;配列番号98)が、MDA MB453細胞の改善された形質導入を有することを示すグラフである。図18Cは、その標的p70 S6Kのリン酸化をブロックするmTOR阻害剤ラパマイシンの活性を示すイムノブロットである。ラパマイシン相同体AP21967は、標的化濃度でmTORを阻害しない。
【0283】
AdSyn-CO312は、HS578T転移性乳がん細胞で試験した。感染から24、48、72および96時間後に、新鮮なラパマイシンまたはAP21967を50nMまで追加した。代謝活性をWST-1アッセイによって数量化し、マッチする薬物治療の非感染細胞に正規化させた。図18Dに示すように、AdSyn-CO312による感染は、標的化のない場合と比較して、ラパマイシンかAP21967を受けるEGFR標的化腫瘍崩壊性ウイルスに感染した細胞の細胞殺滅の増大をもたらした。感染から9日後のAdSyn-CO313感染HS578T転移性乳がん細胞の細胞生存性を、図18Eに示す。細胞を、AdSyn-CO313の系列希釈に感染させた。感染から24、48、72および96時間後に、新鮮なラパマイシンを50nMまで追加した。代謝活性をWST-1アッセイによって数量化し、マッチさせた薬物治療の非感染細胞に正規化させた。AdSyn-CO313はE1AΔLXCXE、ΔE4orf6/7、ΔE3-RIDα/β、ΔE3-14.7kの腫瘍崩壊性突然変異を有し、ラパマイシン依存性のEGFR標的化遺伝子EGFRVHH-FKBPおよびFRB-繊維を発現する。標的化なしにラパマイシンを受けるEGFR標的化腫瘍崩壊性ウイルスに感染した細胞で、殺滅の増大がある。
【0284】
AdSyn-CO313は、HS578T皮下異種移植を有するマウスで評価した。確立された腫瘍を有するマウスはAdSyn-CO313の腫瘍内注射を受け、その後、定期的な腹腔内8mg/kgラパマイシン注射(n=5)もしくはビヒクル対照(n=4)を受けたか、または、それらは腫瘍内ビヒクル対照を受け、その後、定期的な腹腔内8mg/kgラパマイシン注射(n=5)もしくはビヒクル対照(n=4)を受けた。最初の感染の19日後に開始して、4日ごとにさらに3回、同じ群で感染を繰り返した。図19に示すように、ラパマイシンとEGFR標的化腫瘍崩壊性ウイルスを受けたマウスでの腫瘍は、最良の応答を示した。
【0285】
AdSyn-CO335は、ヘキソンE451Q突然変異によって肝臓取込みを回避するカプシドを特徴として有する腫瘍崩壊性ウイルスであり、ラパマイシンまたはラパログAP21967の存在下でEGFRを通して細胞に感染するように標的化することができる。AdSyn-CO335の腫瘍崩壊活性を、in vitroおよびin vivoで試験した。HS578T細胞を、AdSyn-CO335の系列希釈に感染させた。感染から24、48、72および96時間後に、新鮮なラパマイシンまたはAP21967を50nMまで追加した。代謝活性をWST-1アッセイによって数量化し、マッチさせた薬物治療の非感染細胞に正規化させた。図20に示すように、標的化なしの感染細胞と比較して、ラパマイシンまたはAP21967を受けるEGFR標的化腫瘍崩壊性ウイルスに感染した細胞で、殺滅の増大がある。AdSyn-CO335をin vivoで評価するために、HS578T皮下異種移植をマウスで確立した。確立された腫瘍を有するマウスは、AdSyn-CO335の3回の腫瘍内注射を4日ごとに受け、その後、腹腔内の2もしくは8mg/kgラパマイシン注射(それぞれn=8およびn=8)を隔日に、またはビヒクル対照を(n=6)隔日に受け;または、それらはAdSyn-CO442の3回の腫瘍内注射を4日ごとに受け、その後腹腔内の2もしくは8mg/kgラパマイシン注射(それぞれn=6およびn=6)を隔日に受け;または、それらはビヒクル対照の3回の腫瘍内注射を4日ごとに受け、その後腹腔内の2もしくは8mg/kgラパマイシン注射(それぞれn=6およびn=6)を隔日に受けた。図21A~21Dに示すように、8mg/kgラパマイシンとEGFR標的化腫瘍崩壊性ウイルスを受けたマウスでの腫瘍は、最も有意な応答を示す。
【0286】
AdSyn-CO199、AdSyn-CO200およびAdSyn-CO171は、E1Aの欠失を有し、またEF1αプロモーター(EF1α-ルシフェラーゼ)によって駆動されるルシフェラーゼをコードする、組換えリポーターウイルスである。AdSyn-CO200およびAdSyn-CO171は、肝臓でウイルス遺伝子の発現を阻害するために、E1Aの3’-UTRにmiR-122(肝臓特異的マイクロRNA)のための2つの結合部位も含む。AdSyn-CO171は、ヘキソンタンパク質に肝臓脱標的化E451Q突然変異をさらにコードする。
【0287】
図22A~22Cは、肝臓でのアデノウイルス媒介遺伝子発現の排除および肝臓へのアデノウイルス感染の脱標的化を示す。AdSyn-CO199は、全身感染の後、肝臓で排他的に高レベルのルシフェラーゼを発現した(図22A)。図22Bに示すように、肝臓特異的マイクロRNA miR122がルシフェラーゼ発現を排除することを除いて、AdSyn-CO199に対応するウイルス、AdSyn-CO200にマウスが全身感染するときに、ルシフェラーゼシグナルは失われる。図22Cに示すように、アデノウイルスヘキソンタンパク質が、それを肝臓から脱標的化する突然変異E451Qを有することを除いて、AdSyn-CO200に対応するウイルス、AdSyn-CO171にマウスが全身感染するとき、ルシフェラーゼの発現を脾臓で検出することができる。これらのデータは、AdE1遺伝子の肝臓発現、および必然的に肝細胞での複製を阻止するための、このゲノムモジュール改変の使用を立証する。
(実施例3)
キメラ繊維タンパク質を発現する組換えアデノウイルス
【0288】
この実施例は、特異的細胞型に感染を導くキメラ繊維タンパク質を発現する組換えアデノウイルスを記載する。
【0289】
Ad5および多くの他の血清型の繊維タンパク質が細胞付着のためにコクサッキーアデノウイルス受容体(CAR)に結合することが示されたが、他の血清型はCD46、デスモグレイン2、シアリン酸または他を使用することが示された。Adsembly/AdSLIC(参照により本明細書に組み込まれるPCT公開番号WO2012/024351を参照)はキメラウイルスの迅速な作製を可能にするので、様々な血清型の代わりの細胞標的化能力を検討するために、6つの繊維キメラウイルスの最初の群を生産した。繊維タンパク質のC末端の球状ノブは一般的に受容体結合の役割を担うので、Ad3、Ad9、Ad11、Ad12またはAd34からの繊維ノブでAd5繊維ノブを置き換えることによって、キメラを作製した(図23A~23C;表3)。E1A/E1B欠失およびEF1αプロモーターによって駆動されるルシフェラーゼ-GFP融合を含有する同じE1モジュールで、各ウイルスを作製した。17個の異なる腫瘍細胞系、一次気道細胞およびH9幹細胞系を形質導入するためにこの群を使用し、ルシフェラーゼ発現を各細胞型で測定した(図23D)。Ad3、Ad11またはAd34を有するキメラを使用したとき、Ad5繊維と比較して、有意により高いルシフェラーゼ-GFP発現がほとんど全ての細胞で観察された(図23Dおよび23E)。反対に、Ad9またはAd12繊維キメラで形質導入された細胞では、ルシフェラーゼ-GFP発現はほとんど普遍的により低かった。これらのデータは、Ad5をベースとしたベクターを改善し、特異的細胞型への侵入のために組換えウイルスを最適化するために、他の血清型からの改変されたパーツを組み合わせることのできる能力の強力な使用を実証する。
【表3】
【0290】
(実施例4)
カプシド交換組換えアデノウイルス
この実施例は、カプシド交換キメラアデノウイルスを作製するためのモジュール改変を記載する。この実施例で記載される組換えアデノウイルスは、既存の中和抗体を回避するように設計されている。
【0291】
ヒト集団でそれらを既存の抗体に「見えなく」させて反復接種Adsembly/AdSLICを可能にする、完全な「カプシド」モジュール交換(ゲノムのほぼ60%)を有するAd5をベースとしたウイルスを、アデノウイルスゲノムに存在するモジュラリティーを利用するように設計した。このモジュラリティーの最も確固とした試験は、1つの血清型の完全なモジュールを別の血清型の完全なモジュールと組み合わせることにあるだろう。この可能性は、Ad5のE1、E3およびE4モジュールを他の血清型のコアモジュール(すなわち、E2B、L1、L2、L3、E2AおよびL4;図24Aを参照)と組み合わせることによって検査した。これは、中和Ad5抗体を回避することができるが、さらに腫瘍崩壊性ウイルスの作製で頻繁に突然変異するAd5のよく特徴付けられた非構造的遺伝子を維持することができるウイルスを生産する。AdSLICは、Ad3、Ad9、Ad11、Ad12、Ad34またはマウスアデノウイルス1(MAV-1)のコアモジュールをAd5のE1、E3およびE4モジュールと含有したウイルスを生産するために使用された(図24Bおよび表4)。さらに、Ad5のpIXコード領域を対応するコア血清型からのそれで置き換えるために、Ad5 E1モジュールを変更し、Uexonおよび繊維コード領域を対応するコア血清型からのそれで置き換えるために、Ad5 E3モジュールを変更した。したがって、カプシド構成成分の全ては1つの血清型からのものであり、ゲノムのE1、E3およびE4領域はAd5からのものであった。作製された6つのキメラのうちの4つは、293-E4細胞で生存能力のあるウイルスを生成することができた。Ad5とAd3、Ad9、Ad11またはAd34の間のキメラは全て複製したが、Ad5/Ad12またはAd5/MAV-1キメラは、コア血清型のITRおよびパッケージング配列(Ψ)を含むようにさらに改変した後でさえ複製しなかった(図24B)。したがって、これらの「カプシド交換」アデノウイルスキメラを生産する能力は、血清型によって異なる。
【表4-1】
【表4-2】
【0292】
生存能力のあるカプシド交換キメラウイルスの複製および遺伝子発現を、その後分析した。精製したカプシド交換粒子は、対応するコアモジュールを有する野生型アデノウイルス血清型と同じ総タンパク含有量を示した(図25A)。大多数の中和抗体の標的であるヘキソンタンパク質は、他の血清型でもカプシド交換ウイルスでも、Ad5粒子に向けて生産されたポリクローナルウサギ抗血清によって認識されなかった(図25A)。VおよびVIなどのカプシドの内部に見出される他の構造タンパク質は、多少の交差反応性を実際、示した(図25A)。感染した細胞のウェスタンブロット分析は、Ad5/Ad3、Ad5/Ad11およびAd5/Ad34キメラについて、交差反応後期タンパク質および100Kの発現が、A549細胞では野生型Ad3、Ad11およびAd34に等しく、一方U2OS細胞ではわずかにより高いことを示した(図25B、25Dおよび25E)。全てのウイルスでAd5に由来するE1Aの発現は、これらの3つのキメラで野生型Ad5より有意に高かったが、その理由は、おそらくAd5より改善された細胞侵入のためである(図25B、25Dおよび25Eおよび図23D)。反対に、Ad5/Ad9カプシド交換キメラは、このMOIで不良な遺伝子発現を示し、野生型Ad9(後期タンパク質の場合)よりわずかに悪く、野生型Ad5(E1Aの場合)より悪かった(図25C)。
【0293】
カプシド交換キメラウイルスが、Ad5中和抗体を含有するヒト血清試料で抗体中和を回避することができるかどうかについて、次に調べた。WST-1細胞生存性アッセイを使用して測定したときに、A549細胞のAd5殺滅を中和することができたヒト血清試料を特定した。Ad5またはカプシド交換キメラとのこれらの血清試料のインキュベーションの結果、Ad5による細胞殺滅は阻害されたがカプシド交換ウイルスによる殺滅は影響されなかった(図26A~26C)。これらのデータは、カプシド交換キメラウイルスがヒト試料で一般的に見出される既存のAd5抗体を回避することが可能であること、およびAd5非構造的構成成分および非Ad5構造的構成成分の発現で複製が可能なことを実証する。したがって、有益な特質を有する新規ウイルスを作製するために、Adsembly/AdSLICを使用して、アデノウイルスゲノムの中で観察される天然のモジュラリティーを活用することができる。
【0294】
上記のように、ヒト集団のかなりの百分率がAd5および一部の他の一般的なアデノウイルス血清型に対して既存の抗体を有する。16個のヒト血清試料の分析は、16個の試料のうちの9つがAd5に対する中和抗体を含有することを実証した。したがって、既存の中和抗体の回避を可能にするカプシド交換を有する腫瘍崩壊性ウイルスを開発した。E1A(ΔLXCXE)およびE4(ΔE4orf6/7)に腫瘍崩壊性突然変異を含む、4つの組換えカプシド交換アデノウイルスを生産した。これらの突然変異は、AdSyn-CO181に存在するのと同じ腫瘍崩壊性突然変異である。AdSyn-CO159X(配列番号93)、AdSyn-CO-167X(配列番号94)、AdSyn-CO201X(配列番号95)およびAdSyn-CO202X(配列番号96)は、それぞれAd11、Ad9、Ad3およびAd34からの構造タンパク質を含有する。
(実施例5)
改変されたまたはキメラの繊維タンパク質、またはカプシド突然変異または血清型交換を組み合わせた組換え腫瘍崩壊性アデノウイルス
【0295】
この実施例は、腫瘍選択性を有する、および/または特異的細胞型に感染を導く突然変異もしくはキメラの繊維タンパク質を発現する、追加の組換えアデノウイルス、および/または既存の中和抗体を回避するように設計されたカプシドが改変もしくは交換されたキメラアデノウイルスを記載する。例示的な組換えウイルスは表5に掲載され、これらのウイルスのゲノム配列は配列番号82~87に示す。
【表5】
【0296】
本明細書に開示される組換えアデノウイルス(表1~4を参照)は、特異的細胞型に感染を導くのに、および既存の中和抗体を回避するのに有利になることができる改変を各々有する。腫瘍崩壊性ウイルス療法の効能を増強するために、実施例1に記載されるE1およびE4突然変異を他のモジュールと組み合わせることができる。
【0297】
キメラ繊維と一緒にE1、コアおよびE4突然変異を有する組換え腫瘍崩壊性アデノウイルスの例は、AdSyn-CO507、AdSyn-CO508およびAdSyn-CO509であり、それらは、それぞれAd34、Ad11およびAd37繊維タンパク質のノブドメインを使用する。
【0298】
Ad34カプシド交換と一緒にE1およびE4突然変異を有する組換え腫瘍崩壊性アデノウイルスの1つの例は、AdSyn-CO510である。
【0299】
RGEへのインテグリン結合性RGDモチーフの突然変異を有するカプシドタンパク質ペントンと一緒にE1、E3およびE4突然変異を有する、ラパマイシン/ラパログ誘導EGFR標的化腫瘍崩壊性アデノウイルスの一例は、AdSyn-CO511である。このペントン突然変異は脾臓でのウイルスの取込みを低減し、抗ウイルス性炎症性応答を弱めることが示されている。
【0300】
繊維タンパク質へのRGDペプチドの挿入と一緒にE1およびE4突然変異を有する組換え腫瘍崩壊性アデノウイルスの一例は、AdSyn-CO512である。繊維タンパク質でのRGD挿入は、血管内皮細胞を含むより広い種類の細胞型への感染を劇的に増加させることが示された。
(実施例6)
Ad5および他のアデノウイルス血清型に由来する腫瘍崩壊性アデノウイルス
【0301】
本明細書に開示される腫瘍崩壊性アデノウイルス(表1~5を参照)は、Ad5ベクターを使用して開発された。しかし、アデノウイルス複製にとって重要であるいくつかのゲノム領域(およびこれらの領域によってコードされるタンパク質)は、アデノウイルス血清型の間で高度に保存されている。したがって、本明細書に開示される組換えアデノウイルスは、任意の所望のアデノウイルス血清型からのゲノム配列を使用して生産することができる。特に、E1AおよびE4orf6/7タンパク質は、全てのヒトアデノウイルス種の間で保存されている。図27は、種A(Ad12)、種B(Ad7)、種C(Ad2およびAd5)、種D(Ad9)、種E(Ad4)、種F(Ad40)および種G(Ad52)のアデノウイルスからのE1Aタンパク質のアラインメントを示す。同様に、図28は、種A(Ad12)、種B(Ad7)、種C(Ad2およびAd5)、種D(Ad9)、種E(Ad4)および種G(Ad52)のアデノウイルスからのE4orf6/7タンパク質のアラインメントを示す。図27および28に示す配列、または公開データベースで利用できる任意の他のアデノウイルス配列を使用することによって、腫瘍崩壊性アデノウイルスの生産において任意のアデノウイルス血清型からのE1Aおよび/またはE4orf6/7配列を容易に使用することができる。
(実施例7)
EGFR標的化構成成分を有する組換えアデノウイルスの特徴付け
【0302】
この実施例は、EGFRを発現する細胞を標的にする合成アデノウイルスを記載し、組換えウイルスが改変の結果として293-E4細胞で複製が害されないことを確認する。以下の合成アデノウイルスを生産し、この研究で使用した:
AdSyn-CO170(配列番号91)
【0303】
「Adsembly」、アデノウイルスゲノムモジュールからの多部位Gateway(登録商標)LR組換え反応を使用して構築された野生型アデノウイルス。ゲノムのアデノウイルスモジュールの間に3つの組換え部位が依然としてある-E1B-55KとpIX遺伝子の間のattB4組換え部位;L4-33KとpVIII遺伝子の間のattB5部位;および繊維とE4遺伝子の間のattB3部位。この組換えアデノウイルスは、対照ウイルスとして働いた。
AdSyn-CO205(配列番号88)
【0304】
AdSyn-CO170に対応するAdsemblyにそれによって作製されたが、EGFRを発現する細胞を感染させるラパマイシン依存性標的化を可能にする追加機能を有する組換えアデノウイルス。mTORからのFRBドメインをコードする配列が、アデノウイルス繊維のノブドメイン中のHIループに挿入される。E3-RIDα、E3-RIDβおよびE3-14.7Kの遺伝子が削除され、FKBP12に融合したEGFR結合性単一ドメイン抗体(EGFRVHH)をコードする遺伝子で置き換えられた。ラパマイシンの存在下で、可溶性EGFRVHH-FKBP融合タンパク質は、繊維中のFRBドメインとヘテロダイマーを形成し、成熟アデノウイルス粒子が新しい細胞の上のEGFRに結合して、この新しい受容体を通して感染させることを可能にする。
AdSyn-CO206(配列番号89)
【0305】
この組換えアデノウイルスは、それが野生型繊維を有し、したがってFRBドメインが欠如していること以外はAdSyn-CO205と同一である。このウイルスは、AdSyn-CO205について記載したように、E3-RIDα、E3-RIDβおよびE3-14.7Kの遺伝子の欠失、ならびにFKBP12に融合したEGFR結合性単一ドメイン抗体(EGFRVHH)をコードする遺伝子による置き換えを特徴とする。
AdSyn-CO207(配列番号90)
【0306】
この組換えアデノウイルスは、それが野生型E3領域を有し、したがってEGFRVHH-FKBP融合が欠如していること以外はAdSyn-CO205と同一である。それは、AdSyn-CO205について記載したように、繊維へのFRB挿入を特徴とする。
AdSyn-CO220(配列番号98)
【0307】
この組換えアデノウイルスは、それがFRBドメインにT2098L突然変異を有する(FRB)こと以外はAdSyn-CO205と同一であり、それは、ラパマイシンまたはAP21967によるEGFR標的化を可能にする。
【0308】
ラパマイシン制御EGFR標的化ウイルスAdSyn-CO205は、感染のマーカーとしてE1Aに融合したGFPリポーターを含有する。E3B転写物は、RIDα、RIDβおよび14.7kを削除することによって改変し、EGFRVHH-FKBPを発現させるために使用した。AdSyn-CO206はAdSyn-CO205の全ての改変を有するが野生型繊維を保持し、したがって、FRBドメインを有しない。AdSyn-CO207はAdSyn-CO206の全ての改変を含有するが野生型E3領域を保持し、したがって、FKBP融合遺伝子を有しない。
【0309】
組換えウイルスによるAd5後期タンパク質発現を評価するために、293-E4細胞を、「野生型」対照ウイルスAdSyn-CO170、ラパマイシン依存性のEGFR標的化改変ウイルスAdSyn-CO205または対照ウイルスAdSyn-CO206またはAdSyn-CO207に、10のMOIで感染させた。図29は、感染した293-E4細胞の溶解物からのタンパク質発現のイムノブロットを示す。繊維の移動の変化は、AdSyn-CO207およびAdSyn-CO205での90アミノ酸FRBドメインの挿入を示す。EGFRVHH-FKBP融合タンパク質の発現は、FKBP12のプローブすることによって検出された。後期タンパク質発現の時間経過は、Adsembly野生型AdSyn-CO170と比較して、カプシド突然変異体またはGFP-E1Aリポーターを有するEGFRVHH-FKBP発現ウイルスの複製で顕著な欠陥がないことを示す。
(実施例8)
AdSyn-CO335のラパマイシン誘導EGFR標的化は、マウスでHS578T異種移植の腫瘍崩壊性療法の効能を増加させる
【0310】
この実施例は、組換えアデノウイルスのラパマイシン依存性のEGFR再標的化がEGFR発現腫瘍異種移植の腫瘍体積を有意に低減するとの知見を記載する。
マウスおよび腫瘍
【0311】
HS578T(ATCC-HTB-126;American Type Culture Collection、Manassas、CA)乳がん細胞を、供給業者によって推奨される通りに培養した。雌の5週齢胸腺欠損マウス(J:NU #007850;The Jackson Laboratory、Bar Harbor、ME)を、認可されたプロトコールの下で収容した。異種移植は、麻酔(イソフルラン)下で左右の側腹部へのHS578T細胞(0.2mlのBDマトリゲルマトリックスに懸濁させた5E6細胞;BD Biosciences、Bedford、MA)の皮下注射によって開始した。
【0312】
腫瘍進行を追跡するために、2つの直角の腫瘍直径(lおよびw)を毎週測定した。腫瘍体積は、体積=1/2(l)である改変された楕円式を使用して計算した(Euhusら、J Surg Oncol31巻(4号):229~234頁、1986年;Tomaykoら、Cancer Chemother Pharmacol24巻(3号):148~154頁、1989年)。
【0313】
移植の2カ月後に、体積が270±17mm(平均±SEM)の86個の腫瘍を有する48匹のマウスが試験に含まれ、類似の平均サイズの腫瘍の処置群に無作為化した(n=6~8)。HS578Tの全ての注射が、腫瘍の確立に成功したわけではなかった。0、3および6日目に、マウスは、50μlのPBSに希釈した2×10PFUのアデノウイルスを腫瘍内に注射した。AdSyn-CO335は、挿入されたFRB配列で繊維タンパク質を発現し、EGFRを認識するナノボディ(EGFRVHH)に融合したFKBPを発現する、腫瘍崩壊性アデノウイルスである。AdSyn-CO442はAdSyn-CO335の全ての特徴を有するが、EGFRVHHを発現しない。100μLの5%Tween80/5%PEG400に希釈したラパマイシン(ロットASC-127;LC Laboratories、Woburn、MA)を、1、4、7日目およびその後1日おきに2または8mg/kgの投与量で腹腔内注射により投与した。毒性のために体重を監視し、処置群に対して盲検化して腫瘍サイズを測定した。いかなる寸法で腫瘍が20mmを超えたか、または有意な腫瘍負荷の他の徴候を示したならば、マウスを屠殺した。
統計分析
【0314】
統計分析は、NIST/SEMATECH e-Handbook of Statistical Methodsの指針によりR
Statisticalソフトウェア3.2.0(R Foundation、Vienna、Austria)を使用して実行した。外れ値は、Q-Qプロットによって視覚的に検証された正規分布を仮定して、95%信頼区間による極端スチューデント化偏差手法を使用して識別した。データを収集した各時点で処置群の平均腫瘍体積の間の有意差について試験するために、分散分析(ANOVA)を使用した。
結果
【0315】
in vivoで腫瘍を治療するために、EGFRを通したアデノウイルス子孫の標的化送達の効能を試験するために、皮下HS578T異種移植をnu/nuマウスの両脇腹に確立した。腫瘍が264±16mm(平均±SEM)に到達したとき、類似の平均サイズの腫瘍の処置群にマウスを無作為化した。模擬腫瘍内注射(ビヒクルのみ)を受けたマウス、AdSyn-CO335またはAdSyn-CO442。AdSyn-CO442は、AdSyn-CO335の特徴を有するがEGFRVHH-FKBPを発現しない対照ウイルスである。ウイルス子孫のEGFR標的化を可能にするために、療法中にラパマイシン(rap)を1日おきに同時投与した。結果を図30に示す。
【0316】
模擬治療(n=8腫瘍)およびラパマイシンなしでは、腫瘍は妨げられずに成長し、模擬治療の開始から28日後の平均腫瘍体積は1300±448mmであり、その後、大きな腫瘍寸法のためにマウスは屠殺された。比較のために、下に記載されるデータは、療法のこの時点からである。
【0317】
アデノウイルス投与と組み合わせた1日おきの8mg/kgラパマイシンの用量を先ず試験したが、高いラパマイシン濃度はウイルス感染の影響をマスキングした。8mg/kgラパマイシンの単独投与(ウイルス感染なし)は、治療なしと比較して腫瘍成長を遅くするのに十分で(P=4.50×10-2)、229±49mmの平均腫瘍体積をもたらした。2mg/kgラパマイシンの単独投与(n=8)は、腫瘍の成長をブロックするのに十分でなかった(P=0.144)。
【0318】
単独の腫瘍崩壊性AdSyn-CO335(n=11)は、治療なしと比較して腫瘍成長速度に有意に影響せず、948±207mmの平均腫瘍体積をもたらした。これは、おそらく標的化されていないAdSyn-CO335子孫によるHS578T感染の限界による。AdSyn-CO335および2mg/kgラパマイシンを同時投与したとき(n=11)、ウイルス単独(P=8.54×10-4)または2mg/kgラパマイシン単独(P=1.49×10-2)治療と比較したとき、腫瘍体積の劇的で有意な低減があり、133±22mmの減少した平均腫瘍体積をもたらした。これらのデータは、腫瘍体積のこの低減がウイルス子孫のラパマイシン誘導EGFR標的化に依存することを示唆するが、その理由は、2mg/kgラパマイシンおよび対照ウイルスAdSyn-CO442(n=9)による治療は、401±89mmの平均腫瘍体積をもたらし、それは、2mg/kgラパマイシン単独治療と比較して平均腫瘍体積の有意な(P=0.449)差を有さず、また、2mg/kgラパマイシンとAdSyn-CO335の同時投与より有意に(P=4.92×10-3)大きな腫瘍をもたらしたからである。
【0319】
2mg/kgラパマイシン治療と2mg/kgラパマイシンおよびAdSyn-CO335の同時投与の間の有意差は、治療の開始から14日後という早い時期に測定された(P=2.25×10-2)。この時点で、AdSyn-CO442に感染したラパマイシン治療腫瘍は、AdSyn-CO335感染腫瘍よりはっきりと大きくなっていた(P=1.54×10-2)。
【0320】
アデノウイルス再標的化に十分であるラパマイシンの用量が免疫抑制性でもあるかどうか評価するために、試験を実行した。皮下HS578T異種移植腫瘍を有するマウスを、100μLのビヒクル、2mg/kgのラパマイシンまたは8mg/kgのラパマイシンの腹腔内注射によって治療した。注射から1時間後、異種移植組織を収集し、10%ホルマリンで固定し、P70S6KのホスホT378の形態を認識する抗体によるIHC染色のために切断した。トレオニン389でリン酸化したP70S6K(P70S6K p-T389)のために染色したHS578T異種移植組織切片のマイクロピクトグラフを、図31に示す。T389でのP70S6Kのリン酸化は、mTOR活性の特質である。治療なしかまたは低いアデノウイルスEGFR標的化有効用量(2mg/kg)の組織では、P70S6K p-T389の染色によって明白なように、mTOR活性は阻害されない。より高いアデノウイルスEGFR標的化有効用量(8mg/kg)では、P70S6K p-T389染色のロスによって明らかなように、mTOR活性は阻害される。これらの結果は、in vivoで組換えアデノウイルスのEGFR標的化に十分であるラパマイシンの用量が、mTORを阻害しない(したがって、実質的に免疫抑制性でない)ことを実証する。
(実施例9)
Ad34カプシドを有する組換え腫瘍崩壊性アデノウイルス
【0321】
AdSLICによって構築されたアデノウイルスAdSyn-CO335B-K(配列番号92)は、Ad5の全ての構造タンパク質がAd34構造タンパク質で置き換えられていること以外は、AdSyn-CO335(配列番号30)と同一である。このウイルスは、AdSyn-CO202と同じカプシド交換を有する。これは、ウイルスがAdSyn-CO335の腫瘍崩壊選択性を保持するが、Ad5中和抗体を回避することを可能にする。Ad34繊維ノブドメインはAd5繊維ノブで置き換えられ、ノブドメインのHIループに挿入されたmTORからのFRBドメインをコードする配列を有する。E3-RIDα、E3-RIDβおよびE3-14.7Kの遺伝子が削除され、FKBP12に融合したEGFR結合性単一ドメイン抗体(EGFRVHH)をコードする遺伝子で置き換えられた。ラパマイシンの存在下で、可溶性EGFRVHH-FKBP融合タンパク質は、繊維中のFRBドメインとヘテロダイマーを形成し、成熟アデノウイルス粒子が新しい細胞の上のEGFRに結合して、この新しい受容体を通して感染させることを可能にする。AdSyn-CO335B-TK(配列番号97)は、Ad34繊維のシャフトドメインがAd5シャフトで置き換えられていること以外は、AdSyn-CO335B-Kと同一の組換えアデノウイルスである。
【0322】
本開示の原理を適用することができる多くの可能な実施形態を考慮すると、例示される実施形態は本開示の単なる例であり、本開示の範囲を限定するものととるべきでないことを認識するべきである。むしろ、本開示の範囲は、以下の請求項によって規定される。したがって、我々は、これらの請求項の範囲および趣旨内の全てを請求する。
例えば、本発明の実施形態において、以下の項目が提供される。
(項目1)
組換えアデノウイルスであって、前記組換えアデノウイルスのゲノムが、改変E1Aタンパク質、改変または欠失E4orf1タンパク質、改変または欠失E4orf6/7タンパク質またはその任意の組合せをコードし、前記組換えアデノウイルスが、腫瘍細胞と比較して正常細胞において複製欠陥を示す、組換えアデノウイルス。
(項目2)
前記ゲノムが、改変E1Aタンパク質および改変または欠失E4orf1タンパク質をコードする、項目1に記載の組換えアデノウイルス。
(項目3)
前記ゲノムが、改変E1Aタンパク質および欠失E4orf6/7タンパク質をコードする、項目1に記載の組換えアデノウイルス。
(項目4)
前記ゲノムが、改変E1Aタンパク質、改変または欠失E4orf1タンパク質および欠失E4orf6/7タンパク質をコードする、項目1に記載の組換えアデノウイルス。(項目5)
前記改変E1Aタンパク質が、
LXCXEモチーフの欠失;
残基2~11の欠失;
C124G置換;
Y47H置換;
Y47H置換およびC124G置換;または
Y47H置換、C124G置換および残基2~11の欠失
を含む、項目1~4のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目6)
前記改変E4orf1タンパク質が、PDZ結合性モチーフの欠失を含む、項目1、2、4および5のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目7)
前記ゲノムが、
LXCXEモチーフの欠失を含む改変E1Aタンパク質および欠失E4orf6/7タンパク質;
LXCXEモチーフの欠失を含む改変E1Aタンパク質、PDZ結合性モチーフの欠失を含む改変E4orf1タンパク質、および欠失E4orf6/7タンパク質;
LXCXEモチーフの欠失を含む改変E1Aタンパク質、欠失E4orf1タンパク質、および欠失E4orf6/7タンパク質;
C124G置換を含む改変E1Aタンパク質および欠失E4orf6/7タンパク質;
C124G置換を含む改変E1Aタンパク質、PDZ結合性モチーフの欠失を含む改変E4orf1タンパク質、および欠失E4orf6/7タンパク質;
C124G置換を含む改変E1Aタンパク質、欠失E4orf1タンパク質、および欠失E4orf6/7タンパク質;
残基2~11の欠失を含む改変E1Aタンパク質および欠失E4orf6/7タンパク質;
残基2~11の欠失を含む改変E1Aタンパク質、PDZ結合性モチーフの欠失を含む改変E4orf1タンパク質、および欠失E4orf6/7タンパク質;
残基2~11の欠失を含む改変E1Aタンパク質、欠失E4orf1タンパク質、および欠失E4orf6/7タンパク質;
Y47H置換およびC124G置換を含む改変E1Aタンパク質、ならびに欠失E4orf6/7タンパク質;
Y47H置換およびC124G置換を含む改変E1Aタンパク質、PDZ結合性モチーフの欠失を含む改変E4orf1タンパク質、ならびに欠失E4orf6/7タンパク質;
Y47H置換およびC124G置換を含む改変E1Aタンパク質、欠失E4orf1タンパク質、ならびに欠失E4orf6/7タンパク質;
Y47H置換、C124G置換および残基2~11の欠失を含む改変E1Aタンパク質、ならびに欠失E4orf6/7タンパク質;
Y47H置換、C124G置換および残基2~11の欠失を含む改変E1Aタンパク質、PDZ結合性モチーフの欠失を含む改変E4orf1タンパク質、ならびに欠失E4orf6/7タンパク質;または
Y47H置換、C124G置換および残基2~11の欠失を含む改変E1Aタンパク質、欠失E4orf1タンパク質、ならびに欠失E4orf6/7タンパク質
をコードする、項目1に記載の組換えアデノウイルス。
(項目8)
前記ゲノムが、配列番号6~8、10~12、14、15、18~20および22~24のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む、項目7に記載の組換えアデノウイルス。
(項目9)
前記ゲノムが、FK506結合性タンパク質(FKBP)に融合した標的化リガンド、および野生型FKBP-ラパマイシン結合性(FRB)タンパク質またはT2098L置換を含む突然変異体FRBタンパク質に融合したアデノウイルス繊維タンパク質をさらにコードする、項目1~7のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目10)
前記標的化リガンドが、単一ドメイン抗体である、項目9に記載の組換えアデノウイルス。
(項目11)
前記単一ドメイン抗体がEGFRに特異的である、項目10に記載の組換えアデノウイルス。
(項目12)
前記ゲノムが、E3-RIDα/RIDβおよびE3-14.7kコード配列の欠失を含む、項目1~7および9~11のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目13)
前記ゲノムが、配列番号25または配列番号26のヌクレオチド配列を含む、項目9~12のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目14)
前記ゲノムが、改変ヘキソンタンパク質をさらにコードする、項目1~7および9~12のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目15)
前記改変ヘキソンタンパク質が、E451Q置換を含む、項目14に記載の組換えアデノウイルス。
(項目16)
前記ゲノムが、配列番号30、配列番号92または配列番号97のヌクレオチド配列を含む、項目14または項目15に記載の組換えアデノウイルス。
(項目17)
前記ゲノムが、T2098L置換を含む突然変異体FRBタンパク質に融合したアデノウイルス繊維タンパク質をさらにコードする、項目1~7のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目18)
前記ゲノムが、E451Q置換を含む改変ヘキソンタンパク質をさらにコードする、項目17に記載の組換えアデノウイルス。
(項目19)
前記ゲノムが、配列番号31のヌクレオチド配列を含む、項目17または項目18に記載の組換えアデノウイルス。
(項目20)
前記ゲノムが、肝臓特異的マイクロRNAのための1つまたは複数の結合部位をさらに含む、項目1~19のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目21)
前記肝臓特異的マイクロRNAのための前記1つまたは複数の結合部位が、E1Aの3’-UTRに位置する、項目20に記載の組換えアデノウイルス。
(項目22)
前記肝臓特異的マイクロRNAが、miR-122である、項目20または項目21に記載の組換えアデノウイルス。
(項目23)
前記ゲノムが、キメラ繊維タンパク質をコードする、項目1~22のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目24)
前記キメラ繊維タンパク質が、第1のアデノウイルス血清型からの繊維シャフトおよび第2のアデノウイルス血清型からの繊維ノブを含む、項目23に記載の組換えアデノウイルス。
(項目25)
前記第1のアデノウイルス血清型がAd5であり、前記第2のアデノウイルス血清型がAd3、Ad9、Ad11、Ad12、Ad34またはAd37である、項目24に記載の組換えアデノウイルス。
(項目26)
前記第1のアデノウイルス血清型がAd5であり、前記第2のアデノウイルス血清型がAd11、Ad34またはAd37である、項目25に記載の組換えアデノウイルス。
(項目27)
前記ゲノムが、配列番号82、配列番号83または配列番号84のヌクレオチド配列を含む、項目26に記載の組換えアデノウイルス。
(項目28)
前記ゲノムが、カプシド交換キメラアデノウイルスをコードする、項目1~27のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目29)
前記ゲノムのE1、E3およびE4領域が第1のアデノウイルス血清型に由来し、前記ゲノムのE2B、L1、L2、L3、E2AおよびL4領域が第2のアデノウイルス血清型に由来する、項目28に記載の組換えアデノウイルス。
(項目30)
前記第1のアデノウイルス血清型の前記E1領域が、前記第2のアデノウイルス血清型からのpIXタンパク質をコードするように改変され;および/または
前記第1のアデノウイルス血清型の前記E3領域が、前記第2のアデノウイルス血清型からのUexonおよび繊維タンパク質をコードするように改変される、項目29に記載の組換えアデノウイルス。
(項目31)
前記第1のアデノウイルス血清型がAd5であり、前記第2のアデノウイルス血清型がAd3、Ad9、Ad11またはAd34である、項目29または項目30に記載の組換えアデノウイルス。
(項目32)
前記ゲノムが、配列番号85、配列番号92、配列番号97、配列番号93、配列番号94、配列番号95または配列番号96のヌクレオチド配列を含む、項目31に記載の組換えアデノウイルス。
(項目33)
前記ゲノムが、改変ペントンタンパク質をさらにコードする、項目1~32のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目34)
前記改変ペントンタンパク質が、インテグリン結合性RGDモチーフの突然変異を含む、項目33に記載の組換えアデノウイルス。
(項目35)
前記ゲノムが、配列番号86または配列番号87のヌクレオチド配列を含む、項目34に記載の組換えアデノウイルス。
(項目36)
前記ゲノムが、RGDペプチドを含むように改変された繊維タンパク質をさらにコードする、項目1~35のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目37)
前記ゲノムが、配列番号87のヌクレオチド配列を含む、項目36に記載の組換えアデノウイルス。
(項目38)
項目1~37のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスおよび薬学的に許容される担体を含む組成物。
(項目39)
腫瘍細胞生存性を阻害する方法であって、前記腫瘍細胞を、項目1~37のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスまたは項目38に記載の組成物と接触させることを含む、方法。
(項目40)
in vitroの方法である、項目39に記載の方法。
(項目41)
前記方法がin vivoの方法であり、前記腫瘍細胞を接触させることが、前記組換えアデノウイルスまたは前記組成物を、腫瘍を有する対象に投与することを含む、項目39に記載の方法。
(項目42)
対象において腫瘍進行を阻害するか、または腫瘍体積を低減する方法であって、前記対象に項目1~37のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスまたは項目38に記載の組成物の治療有効量を投与し、それによって前記対象において腫瘍進行を阻害するか、または腫瘍体積を低減することを含む、方法。
(項目43)
対象においてがんを治療する方法であって、前記対象に項目1~37のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスまたは項目38に記載の組成物の治療有効量を投与し、それによって前記対象においてがんを治療することを含む、方法。
(項目44)
対象において腫瘍体積を低減する方法であって、前記対象に
(i)項目9~16のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスの治療有効量;および
(ii)ラパマイシンまたはその類似体
を投与することを含む方法。
(項目45)
対象においてがんを治療する方法であって、前記対象に
(i)項目9~16のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスの治療有効量;および
(ii)ラパマイシンまたはその類似体
を投与することを含む方法。
(項目46)
前記ラパマイシンまたはラパマイシン類似体が、約0.1mg/kgから約2.0mg/kgの用量で投与される、項目44または項目45に記載の方法。
(項目47)
前記ラパマイシンまたはラパマイシン類似体が、約0.1mg/kgから約0.5mg/kgの用量で投与される、項目44または項目45に記載の方法。
(項目48)
前記ラパマイシンまたはラパマイシン類似体が、約1から約15mg/mの用量で投与される、項目44または項目45に記載の方法。
(項目49)
前記ラパマイシンまたはラパマイシン類似体が、約3から約10ng/mLの用量で投与される、項目44または項目45に記載の方法。
(項目50)
前記ラパマイシンまたはラパマイシン類似体が、前記対象において実質的な免疫抑制を引き起こさない用量で投与される、項目44~49のいずれか一項に記載の方法。
(項目51)
前記腫瘍またはがんが、E2F経路の脱調節によって特徴付けられる、項目39~50のいずれか一項に記載の方法。
(項目52)
前記腫瘍またはがんが、肺、前立腺、結腸直腸、乳房、甲状腺、腎臓または肝臓の腫瘍またはがんであるか、または白血病である、項目39~51のいずれか一項に記載の方法。
(項目53)
前記対象を追加の治療剤で治療することをさらに含む、項目41~52のいずれか一項に記載の方法。
(項目54)
前記追加の治療剤が、免疫モジュレータを含む、項目53に記載の方法。
(項目55)
前記追加の治療剤が、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)阻害剤を含む、項目53に記載の方法。
(項目56)
組換えアデノウイルスのゲノムが、E1Aの欠失を含み、EF1α-ルシフェラーゼをコードする、組換えアデノウイルス。
(項目57)
前記ゲノムが、配列番号27のヌクレオチド配列を含む、項目56に記載の組換えアデノウイルス。
(項目58)
前記ゲノムが、肝臓特異的マイクロRNAのための1つまたは複数の結合部位をさらに含む、項目56に記載の組換えアデノウイルス。
(項目59)
前記肝臓特異的マイクロRNAのための前記1つまたは複数の結合部位が、E1Aの3’-UTRに位置する、項目58に記載の組換えアデノウイルス。
(項目60)
前記肝臓特異的マイクロRNAが、miR-122である、項目58または項目59に記載の組換えアデノウイルス。
(項目61)
前記ゲノムが、配列番号28のヌクレオチド配列を含む、項目58~60のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目62)
前記ゲノムが、改変ヘキソンタンパク質をコードする、項目56および58~61のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目63)
前記改変ヘキソンタンパク質が、E451Q置換を含む、項目62に記載の組換えアデノウイルス。
(項目64)
前記ゲノムが、配列番号29のヌクレオチド配列を含む、項目62または項目63に記載の組換えアデノウイルス。
(項目65)
配列番号1~31および68~98のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む、組換え核酸分子。
(項目66)
前記ヌクレオチド配列が、配列番号1~31および68~98のいずれか1つからなる、項目65に記載の組換え核酸分子。
(項目67)
項目65または項目66に記載の核酸分子を含むベクター。
(項目68)
項目67に記載のベクターを含むトランスジェニック細胞。
(項目69)
項目9~16のいずれかに記載の組換えアデノウイルスおよびラパマイシンまたはその類似体を含むキット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6AB
図6C
図7AB
図7C
図8AB
図8C
図9AB
図9C
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18AB
図18CD
図18E
図19
図20
図21AB
図21C
図21D
図22
図23ABC
図23D
図23E
図24A
図24B
図25A
図25BC
図25DE
図26
図27
図28
図29
図30
図31
【配列表】
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