(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038034
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】膀胱癌の抗PD-L1抗体治療
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20240312BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240312BHJP
A61P 13/10 20060101ALI20240312BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240312BHJP
A61P 13/02 20060101ALI20240312BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20240312BHJP
C07K 16/30 20060101ALN20240312BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240312BHJP
【FI】
A61K39/395 T
A61K39/395 E ZNA
A61K39/395 U
A61P35/00
A61P13/10
A61P43/00 121
A61K39/395 G
A61P13/02
A61P35/04
C07K16/30
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023216425
(22)【出願日】2023-12-22
(62)【分割の表示】P 2019543851の分割
【原出願日】2018-02-16
(31)【優先権主張番号】62/459,700
(32)【優先日】2017-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】504333972
【氏名又は名称】メディミューン,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クールラント,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ブレイク-ハスキンス,ジョン,アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ザジャック,マグダレーナ
(72)【発明者】
【氏名】レベラット,マーロン
(72)【発明者】
【氏名】グプタ,アショク
(72)【発明者】
【氏名】ホー,トニー
(72)【発明者】
【氏名】ウォーカー,ジル
(72)【発明者】
【氏名】ジン,シャオピン
(72)【発明者】
【氏名】モリス,シャノン
(72)【発明者】
【氏名】イアンノーネ,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】シ,リー
(72)【発明者】
【氏名】ダル,モハメド
(72)【発明者】
【氏名】ベン,ヨン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】局所進行性又は転移性膀胱癌の、新規の有効な治療方法を提供する。
【解決手段】有効用量レジメンの抗PD-L1抗体、例えば、デュルバルマブ、又はその抗原結合断片で、膀胱癌、例えば、UCを有する対象の膀胱癌(例えば尿路上皮癌、UC)を治療する方法が提供される。また、膀胱癌を有する対象の膀胱癌、例えば、UCを治療するために、別の免疫療法薬、例えば、トレメリムマブと組み合わせて、抗PD-L1抗体を使用する方法も提供される。一部の症例では、治療を受けている対象が、PD-L1-低/neg、又はPD-L1-高である膀胱癌若しくは腫瘍を有するとして同定される。さらに、標準治療若しくは第1選択療法の後に進行したか、又は以前の治療レジメンの後に再発した対象において、標準治療若しくは第1選択療法の後に膀胱癌の抗PD-L1抗体治療を使用する方法も提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書及び/又は図面に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、有効用量レジメンの抗PD-L1抗体単独で、又は1若しくは複数種の別の抗癌剤又は治療法と組み合わせて、膀胱癌を有する対象の膀胱癌を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
膀胱癌は、世界で第9位の最も一般的な癌診断であり、毎年429,800人の新たな症例が推定され、2012年には世界で165,100件の癌関連死が報告されている。米国では、医療統計によれば、2016年に、76,690人の新たな症例が診断され、16,390件の死亡が起こる可能性がある。膀胱、尿管、尿道、及び尿膜管の癌の最も一般的なタイプは、移行上皮癌(TCC)としても知られる尿路上皮癌(UC)であり、これは、尿路の原発性悪性腫瘍の約90%を占める。尿路上皮腫瘍の90%超は、膀胱内を起源とするが、8%は、腎盂内を起源とし、2%は、尿路及び尿道内を起源とする。
【0003】
膀胱癌は、一般に、筋固有層の浸潤に基づいて、筋層浸潤性及び筋層非浸潤性疾患に区分される。膀胱癌の初期診断では、症例の70%が、筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)と診断され、約30%が、筋層浸潤性膀胱癌(MIBC)と診断される。NMIBC患者の最大40%が、診断から5年以内にMIBCに進行する。診断時にMIBCを呈示する患者のうち、約15%が局所進行性疾患を有することになり、約8%は転移性疾患を有するであろう。局所進行性又は転移性UCを有する患者の予後は不良であり、相対5年生存率は、約15%である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
局所進行性又は転移性膀胱癌、特にUCは、生命を脅かす疾患であり、特に、標準治療レジメンなどの癌の第1選択治療中又は治療後に進行した癌を有する患者において、新規の、有効な治療オプションに対するアンメットニーズが大きい。
【0005】
本出願のあらゆるセクションにおけるあらゆる参照文献の引用又は確認は、そのような参照文献が、本発明に対する先行技術として利用可能であることの承認として解釈されるべきではない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に述べるように、本発明は、癌を有する対象に、抗PD-L1抗体を有効用量レジメンで投与することにより、膀胱、及び/又は尿管、尿道、及び尿膜管をはじめとする膀胱の関連構造、副器官及び組織の癌を治療する免疫治療法を特徴とする。一実施形態では、膀胱癌は、尿路上皮細胞癌(UCC)、又は移行上皮癌(TCC)としても知られる尿路上皮癌(UC)である。一部の実施形態では、対象は、局所進行性UC又は転移性UCに罹患している。特定の実施形態では、抗PD-L1抗体は、デュルバルマブ(本明細書では、MEDI4736とも呼ばれる)であり、これは、PD-L1に結合して、PD-1及び分化抗原類(CD)80(CD80)とのその相互作用を遮断するヒトモノクローナル抗体(mAb)である(B7.1)。別の実施形態では、抗PD-L1抗体は、抗CTLA4抗体(例えば、トレメリムマブ)若しくはその抗原結合断片、プラチナなどの別の治療薬又は化学療法薬と一緒に、あるいは放射線、手術、化学療法などの別の抗癌療法と一緒に投与してもよい。本明細書で、抗PD-L1抗体、(例えば、デュルバルマブ)、又は抗CTLA4抗体、(例えば、トレメリムマブ)と言及するとき、そうした抗体は、その標的抗原に対する特異的結合を保持及び呈示する抗体の抗原結合断片も包含することは理解されよう。本方法における抗PD-L1抗体の有効量での使用は、UCなどの膀胱癌を有する患者の第1選択(1L)治療と、例えば、プラチナ薬といった標準治療(SoC)の癌治療を用いた第1選択療法後に進行した、又は別の治療レジメンの後に再発した膀胱癌を有する患者の有効な第2選択(2L)治療の両方を提供する。
【0007】
一態様では、本明細書に記載する方法は、UCなどの膀胱癌又は腫瘍を有する対象を治療するのに好適であり、ここで、膀胱癌に由来する癌又は腫瘍細胞若しくは組織は、低、低から陰性(低/neg)、若しくは高レベルのPD-L1、例えば、PD-L1-低/neg、若しくはPD-L1-高癌又は腫瘍を発現するものとしてそれぞれ同定される。従って、PD-L1発現のレベルについて対象の膀胱癌を特性決定する方法は、低、陰性から低(低/neg)、若しくは高レベルのPD-L1を発現する腫瘍を有するものとして対象を効率的に同定し、それによって、デュルバルマブなどの抗PD-L1抗体、又は別の治療薬、例えば、トレメリムマブなどの抗CTLA4抗体、及び/又は別の抗癌剤若しくは治療薬と組み合わせたデュルバルマブによる適切且つ有効な治療を受けるよう対象を指示することができる。例として、より低い、低、並びに低/neg、PD-L1発現は、対象の膀胱癌又は腫瘍由来の癌又は腫瘍細胞若しくは組織の約5%以上~約50%、又は約5%以上~約25%、又は約25%、若しくは25%がPD-L1を発現するものとして検出されたことを指す。他の例では、より低い、又は低/negレベルのPD-L1発現は、対象の膀胱癌又は腫瘍由来の細胞若しくは組織の約5%未満~50%、又は約5%未満~25%、又は約25%未満、若しくは25%未満がPD-L1を発現するか、又は抗PD-L1抗体などのPD-L1を検出する試薬による染色を示すものとして検出されたことを指す。特定の実施形態では、PD-L1発現のより低い、又は低/negレベルのPD-L1発現は、対象の膀胱癌、腫瘍、又は組織由来の細胞若しくは組織の25%未満がPD-L1を発現するものとして検出されたことを指す。特定の実施形態では、PD-L1発現の高レベルのPD-L1発現は、対象の膀胱癌、腫瘍、又は組織由来の細胞若しくは組織の25%超がPD-L1を発現するものとして検出されたことを指す。
【0008】
別の態様では、治療方法は、抗PD-L1抗体を、膀胱癌を治療する有効量で、膀胱癌を有する対象に投与する治療方法が提供される。この態様によれば、抗PD-L1抗体は、膀胱癌を治療するための第1選択癌療法、例えば、単剤療法として役立つ。一実施形態では、抗PD-L1抗体は、デュルバルマブである。一実施形態では、対象の膀胱癌は、尿管、尿道、尿膜管及び/又は腎盂を含む膀胱の関連構造及び組織を包含する。一実施形態では、対象の膀胱癌は、尿路上皮癌(UC)、進行性UC、又は転移性UCである。一実施形態では、対象は、低/neg PD-L1発現の膀胱癌、例えば、UCを有するとして同定される。別の実施形態では、対象は、高PD-L1発現の膀胱癌、例えば、UCを有するとして同定される。一実施形態では、抗PD-L1抗体は、抗CTLA4抗体(例えば、トレメリムマブ)、プラチナ、プラチナ含有抗癌剤などの別の治療薬若しくは化学療法薬と一緒に投与される。一実施形態では、デュルバルマブは、毎週(Q1W)、2週間毎(Q2W)、3週間毎(Q3W)、4週間毎(Q4W)、5週間毎(Q5W)、6週間毎(Q6W)、7週間毎(Q7W)、8週間毎(Q8W)、最大3ヵ月毎まで、10mg/kg~30mg/kg、又は10mg/kg~20mg/kg、又は10mg/kg、若しくは20mg/kgの有効量で投与される。一実施形態では、デュルバルマブは、UCなどの膀胱癌の対象に、膀胱癌治療薬として10mg/kg Q2Wの有効量で投与される。別の実施形態では、デュルバルマブは、UCなどの膀胱癌の対象に、膀胱癌治療薬として10mg/kg Q4Wの有効量で投与される。別の実施形態では、デュルバルマブは、UCなどの膀胱癌の対象に、膀胱癌治療薬として20mg/kg Q2Wの有効量で投与される。別の実施形態では、デュルバルマブは、UCなどの膀胱癌の対象に、膀胱癌治療薬として20mg/kg Q4Wの有効量で投与される。
【0009】
別の態様では、膀胱癌、例えば、UCを有する対象に、抗PD-L1抗体を投与する治療方法が提供され、ここで、対象は、第1選択(1L)療法レジメン、例えば、プラチナ若しくはシスプラチン療法、又はプラチナ薬を含む併用療法の後に進行しているか、あるいは、対象は、ネオアジュバント又はアジュバント療法の実施から所与の期間、例えば、1年以内に再発しており、本方法において、抗PD-L1抗体は、膀胱癌を治療するのに有効な量で投与される。当業者には理解されるように、アジュバント療法は、例えば、癌又は腫瘍の再発のリスク低下を補助するための、癌又は腫瘍の手術後の化学療法若しくは放射線療法などの抗癌又は腫瘍療法を指す。ネオアジュバント療法は、主要又は第1癌治療に先立つ1若しくは複数種の治療薬の投与を指す。例えば、ネオアジュバントホルモン療法は、所与の癌又は腫瘍の治療のための放射線療法の前に投与してよい。この態様によれば、抗PD-L1抗体は、第1選択治療、例えば、プラチナ薬治療の後に、膀胱癌を治療するための第2選択癌療法として役立てることができる。一実施形態では、抗PD-L1抗体は、デュルバルマブである。一実施形態では、対象の膀胱癌は、進行性UC又は転移性UCを含むUCである。一実施形態では、対象は、無視できる程度から低/neg PD-L1発現を伴う膀胱癌、例えば、UCを有するとして同定される。別の実施形態では、対象は、高PD-L1発現を伴う膀胱癌、例えば、UCを有するとして同定される。一実施形態では、抗PD-L1抗体は、抗CTLA4抗体(例えば、トレメリムマブ)、プラチナなどの別の治療薬又は化学療法薬と組み合わせて投与される。一実施形態では、デュルバルマブは、毎週、2週間毎(Q2W)、3週間毎(Q3W)、4週間毎(Q4W)、5週間毎(Q5W)、6週間毎(Q6W)、7週間毎(Q7W)、8週間毎(Q8W)から6ヵ月毎まで、若しくはそれ以上の間隔で、10mg/kg~50mg/kg、又は10mg/kg~30mg/kg、又は10mg/kg~20mg/kg、又は10mg/kg、若しくは20mg/kgの有効量で投与される。一実施形態では、デュルバルマブは、UCなどの膀胱癌の患者に、膀胱癌治療薬として10mg/kg Q2Wの有効量で投与される。別の実施形態では、デュルバルマブは、UCなどの膀胱癌の患者に、膀胱癌治療薬として10mg/kg Q4Wの有効量で投与される。別の実施形態では、デュルバルマブは、UCなどの膀胱癌の患者に、膀胱癌治療薬として20mg/kg Q2Wの有効量で投与される。別の実施形態では、デュルバルマブは、UCなどの膀胱癌の患者に、膀胱癌治療薬として20mg/kg Q4Wの有効量で投与される。
【0010】
別の態様では、膀胱癌、例えば、UCを有し、治療を必要とする対象の膀胱癌、例えば、UCを治療する方法が提供され、これは、PD-L1発現について、対象が、低から陰性(PD-L1-低/neg)、又は高(PD-L1-高)である膀胱癌を有するとして同定された後に、膀胱癌を治療するのに有効な量でデュルバルマブを対象に投与するステップを含む。一実施形態では、デュルバルマブは、別の治療薬、例えば、抗CTLA4抗体、例えば、トレメリムマブ又はその抗原結合断片などの免疫療法薬と組み合わせて投与される。一実施形態では、デュルバルマブは、第1選択(1L)療法レジメン、例えば、プラチナ若しくはシスプラチン療法、又はプラチナ薬を含む併用療法の後に進行しているか、あるいは、ネオアジュバント又はアジュバント療法の治療から所与の期間、例えば、1年以内に再発している対象に、第2選択療法として投与される。一実施形態では、デュルバルマブは、10mg/kg Q2W、10mg/kg Q4W、20mg/kg Q2W、又は20mg/kg Q4Wの量で投与される。一実施形態では、デュルバルマブは、静脈内投与により投与される。
【0011】
特定の実施形態では、膀胱癌、例えば、UCを有する対象に、2週間毎(Q2W)に10mg/kgの量でデュルバルマブを投与するステップを含む治療方法が提供される。一実施形態では、デュルバルマブは、静脈内(IV)注入として投与される。一実施形態では、IV注入は、30~90分にわたって行う。特定の実施形態では、IV注入は、60分にわたって行う。一実施形態では、対象は、UC、局所進行性UC、又は転移性UCに罹患している。一実施形態では、対象は、標準治療(SoC)の治療中又は後、例えば、1つの標準的プラチナベースの治療レジメン後に進行した、局所進行性又は転移性UCを有する。一実施形態では、10mg/kgのデュルバルマブが、対象において奏功、例えば、ORR、OS、PFR、若しくはCRが得られるまで、疾患の進行まで、又は許容不可能な毒性に達するまで、UCなどの膀胱癌が局所進行しているか、又は転移性である対象に、Q2Wで、IV注入により60分にわたり投与される。
【0012】
別の態様では、膀胱癌、例えば、UCを有する対象に、約1mg/kg~10mg/kgの量のトレメリムマブ又はその抗原結合断片と組み合わせて、約10mg/kg~50mg/kgの量のデュルバルマブ又はその抗原結合断片を投与するステップを含む治療方法が提供される。一実施形態では、対象は、PD-L1の発現について低/negである膀胱癌、例えば、UCを有するとして同定されている。一実施形態では、デュルバルマブは、10mg/kgの用量で対象に投与される。一実施形態では、デュルバルマブは、2週間毎(Q2W)に対象に投与される。一実施形態では、デュルバルマブは、10mg/kg Q2Wの用量で対象に投与される。一実施形態では、デュルバルマブは、1.5gの用量で対象に投与される。一実施形態では、デュルバルマブは、4週間毎(Q4W)に対象に投与される。一実施形態では、デュルバルマブは、1.5g Q4Wの用量で対象に投与される。一実施形態では、デュルバルマブは、静脈内注入により対象に投与される。一実施形態では、デュルバルマブは、静脈内注入により60分の時間にわたって対象に投与される。
【0013】
いくつかの態様では、トレメリムマブ又はその抗原結合断片は、約1mg/kgの用量、又は約3mg/kgの用量、又は約10mg/kgの用量で対象に投与される。一部の実施形態では、対象は、少なくとも2用量のトレメリムマブ又はその抗原結合断片を投与され、ここで、用量は、約1mg/kg、又は約3mg/kg、又は約10mg/kgである。一部の実施形態では、少なくとも2用量は、約4週間の間隔、又は約12週間の間隔をあけて投与される。他の実施形態では、対象は、少なくとも3用量のトレメリムマブ又はその抗原結合断片を投与され、ここで、用量は、約1mg/kg、又は約3mg/kg、又は約10mg/kgである。一部の実施形態では、少なくとも3用量は、約4週間の間隔、又は約12週間の間隔をあけて投与される。
【0014】
さらに、膀胱癌を有する対象の膀胱癌を治療する方法が提供され、ここで、膀胱癌を治療するために、2~4週間毎に50~150mgの量でトレメリムマブ又はその抗原結合断片を対象に投与するステップと組み合わせて、デュルバルマブ又はその抗原結合断片を、2~4週間毎(Q2W~Q4W)に50~2000mgの量で対象に投与する。一実施形態では、デュルバルマブ又はその抗原結合断片が、4週間毎(Q4W)に1500mgの量で投与され、トレメリムマブ又はその抗原結合断片が、4週間毎(Q4W)に75mgの量で投与される。一実施形態では、デュルバルマブ及びトレメリムマブ又はそれらの抗原結合断片は、1サイクルにつき4用量まで投与される。いくつかの実施形態では、デュルバルマブ及びトレメリムマブ又はそれらの抗原結合断片は、同時又は異なる時間に投与される。一実施形態では、対象は、無視できる程度から低いPD-L1の発現(PD-L1-低/neg)を伴う膀胱癌を有するとして同定される。一実施形態では、対象は、高レベルのPD-L1の発現(PD-L1-高)を伴う膀胱癌を有するとして同定される。実施形態では、膀胱癌は、尿路上皮癌(UC)並びに/又は尿管、尿道、尿膜管及び/若しくは腎盂を含む膀胱関連構造及び組織の癌である。特定の実施形態では、膀胱癌は、尿路上皮癌、進行性UC、又は転移性UCである。
【0015】
前述の態様のいずれか又は本明細書に記載する方法のいずれかの態様の様々な実施形態において、膀胱癌は、膀胱のあらゆる部分、例えば、筋層若しくは上皮、並びに尿管、若しくは尿道、若しくは尿膜管などの管状構造の癌を包含する。膀胱癌は、尿路上皮(膀胱、尿管、尿道、及び腎盂を含む)の組織学的又は細胞学的に確定された手術不能若しくは転移性移行上皮細胞(移行上皮細胞及び混合型移行上皮/非移行上皮細胞組織学を含む)癌も含む。前述の態様のいずれか又は本明細書に記載する方法のいずれかの態様の様々な実施形態では、抗PD-L1抗体は、デュルバルマブ(MEDI4736)である。他の実施形態では、デュルバルマブと一緒に共投与され得る抗CTLA4抗体は、トレメリムマブである。前述の態様のいずれかの様々な実施形態では、膀胱癌は、筋層の癌細胞による浸潤に基づいて、筋層浸潤性又は筋層非浸潤性である。前述の態様のいずれかの特定の実施形態では、膀胱癌は、尿路上皮癌(UC)である。前述の態様のいずれかの様々な実施形態では、治療は、2週間毎、3週間毎、4週間毎、5週間毎、6週間毎、7週間毎、又は8週間毎に投与される。前述の態様のいずれかの様々な実施形態において、デュルバルマブは、2週間毎若しくは4週間毎に10mg/kgの量で、又は2週間毎若しくは4週間毎に20mg/kgの量で、又は2週間毎、3週間毎、若しくは4週間毎に1500mgの量で投与される。前述の態様のいずれかの実施形態において、デュルバルマブは、10mg/kg Q2Wの用量で、又は1500mg Q4Wの用量で投与される。前述の態様のいずれかの一実施形態において、デュルバルマブは、静脈内注入により投与される。
【0016】
前述の態様のいずれかの様々な実施形態において、対象は、抗PD-L1抗体、又は抗CTLA4抗体、若しくはその抗原結合断片と組み合わせた抗PD-L1抗体による治療に応答性であるとして同定され、本明細書に記載のように、疾患制御(DC)を達成する。前述の態様のいずれかの様々な実施形態において、膀胱癌細胞及び組織上のPD-L1発現は、免疫組織化学を用いて検出される(例えば、ホルマリン固定され、パラフィン包埋された癌細胞上で)。前述の態様のいずれかの様々な実施形態では、本方法によって、標準療法、例えば、プラチナベースの療法の投与と比較して、全生存率(OS)の増加(例えば、週、月、若しくは年の増加)がもたらされる。特に、生存率の増加は、約4~6週超、1~2ヵ月、3~4ヵ月、5~7ヵ月、6~8ヵ月、又は9~12ヵ月又はそれ以上である。前述の態様のいずれかの様々な実施形態では、デュルバルマブの投与は、2週間毎若しくは約2週間毎又は4週間毎又は約4週間毎に反復される。
【0017】
前述の態様のいずれかの様々な実施形態では、トレメリムマブ又はその抗原結合断片の投与は、デュルバルマブと組み合わせて使用されるとき、約4週間毎に反復される。前述の態様のいずれかの様々な実施形態では、トレメリムマブ又はその抗原結合断片の投与は、約12週間毎に反復される。前述の態様のいずれかの様々な実施形態では、トレメリムマブ又はその抗原結合断片の投与は、7回の投与について約4週間毎に、続いて12週間毎に投与される。前述の態様のいずれかの様々な実施形態では、それを必要とする対象へのデュルバルマブ及び/又はトレメリムマブ若しくはそれらの抗原結合断片の投与は、静脈内注入により行われる。前述の態様のいずれかの様々な実施形態では、デュルバルマブと、別の抗癌又は免疫療法薬、例えば、トレメリムマブとは、同時又は異なる時間に投与される。前述の態様のいずれかの様々な実施形態では、デュルバルマブとトレメリムマブは、12、24、26、48、若しくは72時間;1、2、若しくは3週間、又は1、2、及び3ヵ月の間隔をあけて投与される。前述の態様のいずれかの様々な実施形態では、膀胱癌腫瘍は、低い(より低い)か、又は検出不可能な(無視できる程度若しくは陰性)レベルのPD-L1を発現する。前述の態様のいずれかの様々な実施形態では、膀胱癌、例えば、UCは、癌若しくは腫瘍細胞の集団中の25%未満の癌若しくは腫瘍細胞が、PD-L1を発現するか、又はPD-L1検出剤(例えば、検出可能に標識された抗PD-L1抗体)が使用される場合には、PD-L1に対する陽性染色を示すとき、PD-L1発現について低いか、又は低/negである。前述の態様の様々な実施形態では、記載の治療方法によって、対象の全生存率、客観的奏効率、無増悪生存率、又は完全奏功の増加をもたらす。前述の態様の様々な実施形態では、対象による治療奏功までの期間の中央値は、約1ヵ月~8ヵ月の範囲である。前述の態様の様々な実施形態では、患者による奏功持続期間は、少なくとも6ヵ月、9ヵ月、12ヵ月、又はそれ以上である。前述の方法の実施形態では、治療奏功(例えば、全生存率(OS))は、約6ヵ月で、膀胱癌又は腫瘍細胞/組織に高PD-L1発現を有する対象の60%超(例えば、68%)に検出され;治療奏功(例えば、OS)は、約6ヵ月で、膀胱癌又は腫瘍細胞/組織に低/neg PD-L1発現を有する対象の40%超(例えば、45%)に検出される。前述の方法の実施形態では、治療奏功(例えば、全生存率(OS))は、約9ヵ月で、膀胱癌又は腫瘍細胞/組織に高PD-L1発現を有する対象の60%超(例えば、65%)に検出され;治療奏功(例えば、OS)は、約9ヵ月で、膀胱癌又は腫瘍細胞/組織に低/neg PD-L1発現を有する対象の35%超(例えば、36%)に検出される。前述の方法の実施形態では、治療奏功(例えば、全生存率(OS))は、約12ヵ月で、膀胱癌又は腫瘍細胞/組織に高PD-L1発現を有する対象の約60%に検出され;治療奏功(例えば、OS)は、約12ヵ月で、膀胱癌又は腫瘍細胞/組織に低/neg PD-L1発現を有する対象の約35%に検出される。前述の方法の他の実施形態では、UCを有する対象の約60%が、約6ヵ月で全生存率(OS)奏功を有し;UCを有する対象の約55%超(例えば、56%)が、約9ヵ月でOS奏功を有し;UCを有する対象の約50%超(例えば、52%)が、約12ヵ月でOS奏功を有する。
【0018】
本発明の他の特徴及び利点は、詳細な説明、及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
本発明は以下の実施形態に関する。
[1] 治療が必要な対象の膀胱癌を治療する方法であって、以下:前記膀胱癌を治療するために、前記対象に、抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片を10mg/kg~20mg/kgの量で2~4週間毎(Q2W~Q4W)に投与するステップを含む方法。
[2] 前記抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片が、デュルバルマブ又はその抗原結合断片である、上記[1]に記載の方法。
[3] 前記膀胱癌が、尿路上皮癌(UC)並びに/又は尿管、尿道、尿膜管及び/若しくは腎盂を含む膀胱の関連構造及び組織の癌である、上記[1]又は[2]に記載の方法。
[4] 前記膀胱癌が、尿路上皮癌、進行性UC、又は転移性UCである、上記[3]に記載の方法。
[5] 前記抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片が、前記対象に、10mg/kgの量で2週間毎(Q2W)に投与される、上記[1]、[2]、又は[4]のいずれかに記載の方法。
[6] 前記抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片が、前記対象に、20mg/kgの量で2週間毎(Q2W)に投与される、上記[1]、[2]、又は[4]のいずれかに記載の方法。
[7] 前記抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片が、前記対象に、10mg/kgの量で3週間毎(Q3W)に投与される、上記[1]、[2]、又は[4]のいずれかに記載の方法。
[8] 前記抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片が、前記対象に、20mg/kgの量で3週間毎(Q3W)に投与される、上記[1]、[2]、又は[4]のいずれかに記載の方法。
[9] 前記抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片が、前記対象に、10mg/kgの量で4週間毎(Q4W)に投与される、上記[1]、[2]、又は[4]のいずれかに記載の方法。
[10] 前記抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片が、前記対象に、20mg/kgの量で4週間毎(Q4W)に投与される、上記[1]、[2]、又は[4]のいずれかに記載の方法。
[11] 前記抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片が、前記対象に、静脈内注入により投与される、上記[5]に記載の方法。
[12] 前記抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片が、前記対象に、30~90分にわたって投与される、上記[11]に記載の方法。
[13] 前記抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片が、前記対象に、60分にわたって投与される、上記[12]に記載の方法。
[14] 前記抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片が、前記対象において全生存奏功、完全奏功、進行、又は許容不可能な毒性の到達まで、前記対象に投与される、上記[5]に記載の方法。
[15] 抗CTLA4抗体又はその抗原結合断片が、前記対象に共投与される、上記[1]、[2]、又は[4]のいずれかに記載の方法。
[16] 前記CTLA4抗体が、トレメリムマブである、上記[15]に記載の方法。[17] 前記抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片が、1500mg Q4Wの量で投与され;トレメリムマブが、約75mg Q4Wの量で投与される、上記[16]に記載の方法。
[18] 前記対象が、より低い、若しくは低いレベルのPD-L1発現(PD-L1-低)、又は無視できる程度から低いPD-L1発現(PD-L1-低/neg)を伴う膀胱癌を有するとして同定される、上記[1]、[2]、又は[4]のいずれかに記載の方法。
[19] 前記対象が、高レベルのPD-L1発現(PD-L1-高)を伴う膀胱癌を有するとして同定される、上記[1]、[2]、又は[4]のいずれかに記載の方法。
[20] 膀胱癌細胞の25%未満が、PD-L1染色を呈示するとき、前記膀胱癌は、PD-L1低又はPD-L1-低/negである、上記[18]に記載の方法。
[21] 治療が必要な対象の膀胱癌を治療する方法であって、前記膀胱癌を治療するために、膀胱癌を有する前記対象に、デュルバルマブ又はその抗原結合断片を10mg/kg Q2Wの量で投与するステップを含む方法。
[22] 前記対象の前記膀胱癌が、尿路上皮癌(UC)、進行性UC、又は転移性UCである、上記[21]に記載の方法。
[23] 前記デュルバルマブが、静脈内(IV)注入により投与される、上記[22]に記載の方法。
[24] 前記IV注入が、60分にわたって行われる、上記[23]に記載の方法。
[25] UCを有する対象の少なくとも20%が、全奏効率を達成する、上記[22]に記載の方法。
[26] 前記対象が、初期治療後から1~12ヵ月後に治療応答を達成する、上記[22]に記載の方法。
[27] 前記対象のUCが、PD-L1発現について、PD-L1-低又はPD-L1低/negとして同定される、上記[22]に記載の方法。
[28] 前記対象のUCが、PD-L1発現について、PD-L1-高として同定される、上記[22]に記載の方法。
[29] PD-L1-低/neg又はPD-L1-高として同定されるUCを有する対象の約5%が、完全奏功(CR)を達成する、上記[27]又は上記[28]に記載の方法。
[30] 前記対象のデュルバルマブ又はその抗原結合断片による治療に対する応答までの時間が、少なくとも6ヵ月である、上記[21]又は上記[22]に記載の方法。
[31] 前記対象が、プラチナ薬又は別の抗癌剤と組み合わせたプラチナ薬を含む第1選択癌療法を以前受けたことがある、上記[1]、[2]、又は[4]のいずれかに記載の方法。
[32] 前記対象が、プラチナ薬又は別の抗癌剤と組み合わせたプラチナ薬を含む第1選択癌療法を以前受けたことがある、上記[21]又は[22]に記載の方法。
[33] 尿路上皮癌(UC)を有する対象を治療する方法であって、10mg/kgのデュルバルマブを前記対象に2週間毎(Q2W)に投与し、これにより、前記対象のUCを治療することを含む方法。
[34] 前記対象のUCが、PD-L1-低又はPD-L1-低/negとして同定される、上記[33]に記載の方法。
[35] 前記対象のUCが、PD-L1-高として同定される、上記[33]に記載の方法。
[36] 前記投与が、静脈内注入によって行われる、上記[33]~[35]のいずれかに記載の方法。
[37] 前記対象が、プラチナ薬又は別の抗癌剤と組み合わせたプラチナ薬を含む第1選択癌療法を以前受けたことがある、上記[33]~[35]のいずれかに記載の方法。[38] デュルバルマブ又はその抗原結合断片の投与と同時に、又は異なる時間に、有効量の抗CTLA4抗体又はその抗原結合断片を前記対象に投与するステップをさらに含む、上記[33]に記載の方法。
[39] プラチナ薬又は別の抗癌剤と組み合わせたプラチナ薬を含む第1選択癌療法による治療後に癌が進行した膀胱癌を有する対象を治療する方法であって、前記第1選択癌療法による治療を以前受けたことがある前記対象に、抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片を10mg/kg~20mg/kgの量で2~4週間毎(Q2W~Q4W)に投与するステップを含む方法。
[40] 前記第1選択癌療法が、シスプラチン、シスプラチンとゲムシタビン、シスプラチンとメトトレキサート、ビンブラスチン、ADRIAMYCIN(商標)(ドキソルビシン)、又はカルボプラチン及びゲムシタビンダブレット併用から選択される治療法を含む、上記[39]に記載の方法。
[41] 前記抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片が、デュルバルマブ又はその抗原結合断片である、上記[39]又は[40]に記載の方法。
[42] 前記抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片が、前記対象に、10mg/kgの量で2週間毎(Q2W)に投与される、上記[41]に記載の方法。
[43] 前記抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片が、前記対象に、10mg/kgの量で4週間毎(Q2W)に投与される、上記[41]に記載の方法。
[44] 前記抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片が、前記対象に、20mg/kgの量で2週間毎(Q2W)に投与される、上記[41]に記載の方法。
[45] 前記抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片が、前記対象に、20mg/kgの量で4週間毎(Q2W)に投与される、上記[41]に記載の方法。
[46] 前記抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片が、前記対象に、静脈内注入により投与される、上記[42]~[45]のいずれかに記載の方法。
[47] 前記膀胱癌が、尿路上皮癌(UC)、進行性UC、又は転移性UCである、上記[39]~[45]のいずれかに記載の方法。
[48] 前記対象のUCが、PD-L1-低又はPD-L1-低/negとして同定される、上記[47]に記載の方法。
[49] 前記対象のUCが、PD-L1-高として同定される、上記[47]に記載の方法。
[50] 癌細胞の25%未満が、PD-L1染色を呈示するとき、前記膀胱癌は、PD-L1-低又はPD-L1-低/negである、上記[48]に記載の方法。
[51] 前記抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片の投与と同時若しくは異なる時間に、抗CTLA4抗体又はその抗原結合断片の有効量が、膀胱癌を有する前記対象に共投与される、上記[39]~[45]のいずれかに記載の方法。
[52] 前記抗CTLA4抗体又はその抗原結合断片が、トレメリムマブ又はその抗原結合断片である、上記[51]に記載の方法。
[53] 前記PD-L1が、免疫組織化学を用いて検出される、上記[18]~[20]、[27]、[28]、[34]、[35]、[48]、又は[49]のいずれかに記載の方法。
[54] 前記免疫組織化学が、ホルマリン固定及びパラフィン包埋された癌細胞に対して実施される、上記[53]に記載の方法。
[55] 前記処置によって、前記対象における全生存率、無増悪生存、又は完全奏功の増加がもたらされる、上記[1]、[21]、[33]、又は[39]のいずれかに記載の方法。
[56] 前記治療応答までの時間中央値が、約1ヵ月~8ヵ月である、上記[1]、[21]、[33]、又は[39]のいずれかに記載の方法。
[57] 前記対象が、少なくとも6ヵ月~12ヵ月以上にわたって奏功を維持する、上記[1]、[21]、[33]、又は[39]のいずれかに記載の方法。
[58] 治療応答が、膀胱癌又は腫瘍に高いPD-L1発現を有する対象の約30%に検出される、上記[1、21、33、又は39]のいずれかに記載の方法。
[59] 治療応答が、膀胱癌又は腫瘍に低/neg PD-L1発現を有する対象の約8%に検出される、上記[1]、[21]、[33]、又は[39]のいずれかに記載の方法。
[60] 治療が必要な対象の膀胱癌を治療する方法であって、膀胱癌を治療するために、2~4週間毎に50~150mgの量でトレメリムマブ又はその抗原結合断片を対象に投与するステップと組み合わせて、デュルバルマブ又はその抗原結合断片を、2~4週間毎(Q2W~Q4W)に50~2000mgの量で膀胱癌を有する前記対象に投与するステップを含む方法。
[61] 前記デュルバルマブ又はその抗原結合断片が、4週間毎(Q4W)に1500mgの量で投与され、前記トレメリムマブ又はその抗原結合断片が、4週間毎(Q4W)に75mgの量で投与される、上記[60]に記載の方法。
[62] 前記デュルバルマブ及びトレメリムマブ又はそれらの抗原結合断片が、1サイクルにつき最大4用量まで投与される、上記[60]又は[61]に記載の方法。
[63] 前記デュルバルマブ及びトレメリムマブ又はそれらの抗原結合断片が、同時又は異なる時間に投与される、上記[60]又は[62]に記載の方法。
[64] 前記対象が、より低い若しくは低レベルのPD-L1発現(PD-L1-低)、又は無視できる程度から低いPD-L1発現(PD-L1-低/neg)を伴う膀胱癌を有するとして同定される、上記[60]に記載の方法。
[65] 前記対象が、高レベルのPD-L1発現(PD-L1-高)を伴う膀胱癌を有するとして同定される、上記[60]に記載の方法。
[66] 前記膀胱癌が、尿路上皮癌(UC)並びに/又は尿管、尿道、尿膜管及び/若しくは腎盂を含む膀胱関連構造及び組織の癌である、上記[60]~[65]のいずれかに記載の方法。
[67] 前記膀胱癌が、尿路上皮癌、進行性UC、又は転移性UCである、上記[60]~[65]のいずれかに記載の方法。
[68] PD-L1-高として同定される膀胱癌を有し、治療を受けた対象の65%超が、6ヵ月時点で全生存奏功を有する、上記[19]、[28]、[35]、[49]、又は[65]のいずれかに記載の方法。
[69] PD-L1-高として同定される膀胱癌を有し、治療を受けた対象の約65%が、9ヵ月時点で全生存奏功を有する、上記[19]、[28]、[35]、[49]、又は[65]のいずれかに記載の方法。
[70] PD-L1-高として同定される膀胱癌を有し、治療を受けた対象の約60%が、12ヵ月時点で全生存奏功を有する、上記[19]、[28]、[35]、[49]、又は[65]のいずれかに記載の方法。
[71] PD-L1-低/negとして同定される膀胱癌を有し、治療を受けた対象の40%超が、6ヵ月時点で全生存奏功を有する、上記[18]、[27]、[34]、[48]、又は[64]のいずれかに記載の方法。
[72] PD-L1-低/negとして同定される膀胱癌を有し、治療を受けた対象の35%超が、9ヵ月時点及び12ヵ月時点で全生存奏功を有する、上記[18]、[27]、[34]、[48]、又は[64]のいずれかに記載の方法。
[73] 治療を受けた対象の約60%が、6ヵ月時点で全生存奏功を有する、上記[1]、[21]、[33]、又は[39]のいずれかに記載の方法。
[74] 治療を受けた対象の55%超が、9ヵ月時点で全生存奏功を有する、上記[1]、[21]、[33]、又は[39]のいずれかに記載の方法。
[75] 治療を受けた対象の50%超が、12ヵ月時点で全生存奏功を有する、上記[1]、[21]、[33]、又は[39]のいずれかに記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本明細書に記載される臨床試験(試験1108)における患者集団の概要である。
図1中、1L=第1選択治療;2L+=第2又はそれ以上の選択治療;DCO=データカットオフ日;UC=尿路上皮癌。非UC患者のDCO日=2016年4月29日;UCコホート中の患者のDCO日=2016年7月24日。2L+プラチナ療法後の患者は、プラチナベースの療法中若しくは後に進行し、これには、ネオアジュバント/アジュバントセッティングで治療法を受けて12ヵ月以内に進行した患者も含まれる。
【
図2】本明細書の実施例2に記載されるように、試験1108におけるUCコホート(主要有効性集団:≧13週間にわたるフォローアップの機会を有する、処置された患者)の盲検下独立中央評価(BICR)により決定される、奏功期間のカプラン-マイヤー(Kaplan-Meier)解析を描く。図中、CI=信頼区間;NR=未到達;NE=推定不可能;Prob.=確率;Resp=奏功;UC=尿路上皮癌。
【
図3】本明細書の実施例2に記載されるように、試験1108のUCコホート(主要有効性集団:≧13週間にわたるフォローアップの機会を有する、処置された患者)の患者の腫瘍のPD-L1ステータスに基づき、盲検下独立中央評価(BICR)により決定される、奏功までの時間と、奏功期間を示す棒グラフを描く。図中、Neg=陰性;PD-L1=プログラム細胞死リガンド-1;UC=尿路上皮癌。
【
図4】本明細書の実施例2に記載されるように、試験1108のUCコホート(主要有効性集団:≧13週間にわたるフォローアップの機会を有する、処置された患者)における全生存(OS)の推定値を示すカプラン-マイヤー(Kaplan-Meier)プロットを表す。「合計」という列(c)は、PD-L1ステータスが不明であり、且つ(a)PD-L1高又は(b)PD-L1-低/neg亜群のいずれにも含まれない3人の対象を含む。図中、CI=信頼区間;NE=推定不可能;Neg=陰性;NR=未到達;OS=全生存;UC=尿路上皮癌。
【発明を実施するための形態】
【0020】
定義
別に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味を有する。次の参照文献が、本発明で使用される用語の多くの一般的な定義を当業者に提供する:Singleton et al.,Dictionary of Microbiology and Molecular Biology(2nd ed.1994);The Cambridge Dictionary of Science and Technology (Walker ed.,1988);The Glossary of Genetics,5th Ed.,R.Rieger et al.(eds.),Springer Verlag(1991);並びにHale & Marham,The Harper Collins Dictionary of Biology(1991)。本明細書で使用される場合、下記の用語は、別に指定されない限り、以下のようにそれらに属すると考えられる意味を有する。
【0021】
「抗PD-L1抗体」とは、PD-L1ポリペプチドに選択的に結合する抗体を意味する。例示的な抗PD-L1抗体は、例えば、本明細書に参照により組み込まれる国際公開第2011/066389号パンフレットに記載されている。デュルバルマブ(MEDI4736)は、本明細書に記載される方法に好適な例示的抗PD-L1抗体である。これらの配列は、本明細書の配列表に記載される(例えば、配列番号3~10)。
【0022】
「PD-L1について低/neg」とは、細胞又は細胞集団が、PD-L1陽性細胞又は細胞集団と比較して、有意により低い、低い、若しくは検出不可能な(例えば、陰性若しくは無視できる程度の)レベルのPD-L1を発現することを意味する。一実施形態では、PD-L1発現は、腫瘍、癌、又は免疫細胞の表面上で起こる。一実施形態では、発現は、PD-L1高細胞又は細胞集団と比較して、PL-L1のレベルが、少なくとも約5%、10%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%若しくはそれ以上低いとき、低/無視できる程度である。別の実施形態では、発現は、集団中の細胞(例えば、UC細胞などの膀胱癌/腫瘍細胞)の約5%、10%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%若しくはそれ以上より少数の細胞が、検出可能なレベルのPD-L1タンパク質又はポリヌクレオチドを発現するとき、低い又は無視できる程度(例えば、PD-L1低/neg)である。特定の実施形態では、例えば、免疫組織化学に関して、「低PD-L1」(若しくはPD-L1低)又は「低/neg PD-L1」(若しくはPD-L1-低/neg)は、癌サンプル中の約25%未満の細胞が、PD-L1について染色を示すことを意味する。特定の実施形態では、例えば、免疫組織化学に関して、「低PD-L1」(若しくはPD-L1-低)又は「低/neg PD-L1」(若しくはPD-L1低/neg)は、癌サンプル中の細胞の25%以下が、PD-L1について染色を示すことを意味する。別の特定の実施形態では、より低い、低い、又は低/negレベルのPD-L1発現は、UC腫瘍などの対象の膀胱癌、腫瘍、又は組織に由来する細胞又は組織の25%より少数が、PD-L1を発現するものとして検出されることを指す。特定の実施形態では、高レベルのPD-L1発現は、UC腫瘍などの対象の膀胱癌、腫瘍、又は組織に由来する細胞又は組織の25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%若しくはそれ以上が、PD-L1を発現するものとして検出されることを指す。当業者には、膀胱癌又は腫瘍細胞及び/若しくは組織上の高及び低、又は低/negレベルのPD-L1発現のカットオフ値は、当技術分野で知られ、且つ実施されている様々な検出及びアッセイ方法により決定することができ、使用した検出システムに応じて変動し得る。一実施形態では、蛍光活性化セルソーティング(FACS)などの細胞選別分析と一緒に、免疫組織化学又は染色を使用する。
【0023】
「PD-L1ポリペプチド」とは、NCBIアクセッション番号NP_001254635(下記の配列番号1)と少なくとも約85%、又はそれ以上のアミノ酸同一性を有し、且つPD-1及びCD80結合活性を有するポリペプチド又はその断片を意味する。PD-L1は、用語「B7-H1」と置き換え可能に使用され得る)。
【0024】
PD-L1ポリペプチド配列
NCBIアクセッション番号NP_001254635
【化1】
【0025】
「PD-L1核酸分子」とは、PD-L1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを意味する。例示的なPD-L1核酸分子配列は、NCBIアクセッション番号NM_001267706で、下記の配列番号2に記載される)
【0026】
PD-L1核酸分子
NCBIアクセッション番号NM_001267706 mRNA
【化2】
【化3】
【0027】
「抗CTLA4抗体」とは、CTLA4ポリペプチドに選択的に結合する抗体を意味する。例示的な抗CTLA4抗体は、例えば、米国特許第6,682,736号明細書;同第7,109,003号明細書;同第7,123,281号明細書;同第7,411,057号明細書;同第7,824,679号明細書;同第8,143,379号明細書;同第7,807,797号明細書;同第8,491,895号明細書(そこでは、トレメリムマブは、11.2.1である)に記載されており、これらは、参照により本明細書に組み込まれる。トレメリムマブは、例示的な抗CTLA4抗体である。トレメリムマブ配列は、以下の配列表に記載される。
【0028】
本明細書で使用される用語「抗体」は、免疫グロブリン又はその断片若しくは誘導体を指し、それがインビトロ又はインビボのいずれで産生されるかにかかわらず、抗原結合部位を含むあらゆるポリペプチドを包含する。この用語は、限定するわけではないが、ポリクローナル、モノクローナル、単一特異性、多重特異性、非特異性、ヒト化、一本鎖、キメラ、合成、組換え、ハイブリッド、突然変異、及び移植抗体を含む。本開示の目的のために、「インタクトな抗体」のように、用語「インタクトな」で修飾されていない限り、用語「抗体」は、抗体断片、例えば、抗原結合断片(Fab)、F(ab’)2、F(ab’)、可変ドメインフラグメント(Fv)、一本鎖抗体;一本鎖可変フラグメント(scFv)、Fd、dAb、一本鎖抗体、ジスルフィド結合Fvs(sdFv)、イントラボディ、及び抗原結合機能、すなわちPD-L1に特異的に結合する能力を保持するその他の抗体断片も含む。典型的に、こうした断片は、抗原結合ドメイン、例えば、PD-L1結合ドメインを含むか、又は抗原、例えば、PD-L1ポリペプチド抗原に特異的に結合する軽鎖及び重鎖可変領域からの1若しくは複数の相補性決定領域(CDR)、例えば、CDR1、CDR2、CDR3を含む。
【0029】
用語「抗原結合ドメイン」、「抗原結合断片」及び「結合断片」は、抗体と抗原同士の特異的な結合を担うアミノ酸を含む抗体分子の一部を指す。例えば、抗原が大きい場合には、抗原結合ドメインは、抗原の一部にしか結合することができない。抗原結合ドメインとの特異的な相互作用を担う抗原分子の一部分は、「エピトープ」又は「抗原決定基」と呼ばれる。抗原結合ドメインは、典型的に、抗体軽鎖可変領域(VL)及び抗体重鎖可変領域(VH)を含むが;必ずしも両方を有するとは限らない。例えば、いわゆるFd抗体断片は、VHドメインのみから構成されるが、インタクトな抗体のある程度の抗原結合機能を依然として保持している。
【0030】
抗体の結合断片は、組換えDNA技術により、又はインタクトな抗体の酵素若しくは化学的切断によって生成される。結合断片は、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、及び一本鎖抗体を含む。「二重特異性」又は「二価」以外の抗体は、同一のその結合部位の各々を有すると理解される。酵素、パパインによる抗体の消化によって、「Fab」断片及び「Fc」断片としても知られる2つの同一の抗原結合断片が生成され、これらは、抗原結合活性はないが、結晶化する能力を有する。酵素、ペプシンによる抗体の消化によって、F(ab’)2断片が生成され、この断片では、抗体分子の2つのアームが結合したままであり、これらは、2抗原結合部位を含む。F(ab’)2断片は、抗原を架橋する能力を有する。「Fv」は、本明細書で使用される場合、抗原認識部位と抗原結合部位の両方を保持する抗体の最小断片を指す。「Fab」は、本明細書で使用される場合、軽鎖の定常ドメインと重鎖のCHIドメインを含む抗体の断片を指す。
【0031】
用語「mAb」は、モノクローナル抗体を指す。本発明の抗体は、限定しないが、全ネイティブ抗体、二重特異性抗体;キメラ抗体;Fab、Fab’、一本鎖V領域断片(scFv)、融合ポリペプチド、及び非通常性抗体を含む。
【0032】
「生体サンプル」とは、生物から得られた任意の組織、細胞、体液、又はその他の材料を意味する。一実施形態では、生体サンプルは、膀胱癌又はUC腫瘍生検サンプルである。
【0033】
「バイオマーカ」又は「マーカ」は、本明細書で使用される場合、一般に、タンパク質、核酸、分子、臨床指標、又は疾患に関連するその他の分析質を指す。一実施形態では、マーカは、対照サンプル又は標準対照に存在するレベルと異なるレベルで、疾患(例えば、膀胱癌)を有する対象由来の生体サンプル中に存在する。
【0034】
本開示において、「含む」、「含む(こと)」、「含有する(こと)」及び「有する(こと)」などは、米国特許法でそれらに属する意味を有してよく、「含む」、「含む(こと)」などを意味し得る;「から主に構成される(こと)」又は「主に構成する」などは、米国特許法でそれらに属する意味を有し、この用語は、制限がなく、列挙されるものの基本的又は新規の特徴が、列挙されるもの以上の存在によって変えられない限り、列挙されるもの以上の存在を可能にするが、先行技術の実施形態は除外する。
【0035】
本明細書で使用される場合、用語「決定する(こと)」、「評価する(こと)」、「アッセイする(こと)」、「測定する(こと)」及び「検出する(こと)」、並びに「同定する(こと)」は、定量的及び定性的決定の両方を指し、従って、用語「決定する(こと)」は、「アッセイする(こと)」、「測定する(こと)」などと置き換え可能に使用される。定量的決定が意図される場合、分析質、物質、タンパク質などの「量を決定する(こと)」という語句が使用される。定性的及び/又は定量的決定が意図される場合、分析質の「レベルを決定する(こと)」又は分析質を「検出する(こと)」という語句が使用される。
【0036】
「疾患」とは、細胞、組織、若しくは臓器の正常な機能を損傷させる、妨害する、又は調節不全にするあらゆる状態又は障害を意味する。癌(例えば、膀胱癌)などの疾患では、細胞組織又は臓器の正常な機能が破壊されて、免疫回避及び/又は逃避を可能にする。上述したように、膀胱癌は、膀胱のあらゆる部分、例えば、筋層若しくは上皮、並びに尿管、若しくは尿道、若しくは尿膜管などの管状構造の癌を包含する。膀胱癌は、筋層の癌細胞による浸潤に基づいて、筋層浸潤又は筋層非浸潤であり得る。
【0037】
用語「単離された」、「精製」又は「生物学的に純粋な」は、その天然の状態で見出される場合に通常付随する成分を、様々な程度で、含有しない材料を指す。「単離する」は、本来の供給源又は周囲からの所定の程度の分離を意味する。「精製する」は、単離より高度の分離の度合いを意味する。「精製された」又は「生物学的に純粋な」タンパク質は、他の物質を十分な程度で含有しないため、いずれの不純物も、そのタンパク質の生物学的特性に実質的に影響しないか、又はその他の有害な結果を引き起こさない。すなわち、核酸又はペプチドは、それが、組換えDNA技術により生成される場合には、細胞材料、ウイルス材料、若しくは培地を、又は化学的に合成される場合には、化学前駆物質、若しくは他の化学物質を実質的に含まない。純度及び均質性は、典型的に、分析化学技術、例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、質量分析などを用いて決定する。用語「精製された」は、核酸又はタンパク質が、電気泳動ゲル中にほぼ1つのバンドをもたらすことを意味し得る。修飾、例えば、リン酸化又はグリコシル化に付すことができるタンパク質の場合、様々な修飾によって、様々な単離されたタンパク質を得ることができ、これを個別に精製することができる。
【0038】
「対照標準」とは、比較標準である。
【0039】
治療法に関して、「応答性」とは、治療に対して感受性であることを意味する。
【0040】
「特異的に結合する」とは、分子(例えば、ポリペプチド)を認識して結合するが、サンプル、例えば、生体サンプル中の他の分子は実質的に認識して結合しない化合物(例えば、抗体)を意味する。例えば、特異的に結合する2つの分子は、生理条件下で比較的安定している複合体を形成する。特異的結合は、通常、中~高い能力と共に低親和性を有する非特異的結合とは識別されて、高い親和性と低~中程度の能力を特徴とする。典型的に、結合は、親和定数KAが、106M-1より高いか、又はより好ましくは108M-1より高いとき、特異的であると考えられる。必要であれば、結合条件を変えることにより、特異的結合に実質的に影響を与えることなく、非特異的結合を低減することができる。抗体の濃度、溶液のイオン強度、温度、結合を可能する時間、遮断薬(例えば、血清アルブミン、ミルクカゼインなど)の濃度などのような適切な結合条件は、常用の技術を用いて当業者により最適化され得る。
【0041】
「対象」は、哺乳動物を意味し、これは、限定されないが、ヒト対象などのヒト、ヒト以外の霊長類、又はヒト以外の哺乳動物、例えば、ウシ、ウマ、イヌ、ヒツジ、又はネコなどのヒト以外の動物を含む。
【0042】
本明細書に提供される範囲は、最初と最後の値を含め、その範囲内の値の全てを簡潔に示すものと理解すべきである。例えば、1~50の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50からなる群からの任意の数、数の組合せ、又は部分範囲を含むと理解すべきである。
【0043】
本明細書で使用される場合、用語「治療する」、「治療する(こと)」、「治療」などは、疾患及び/又はそれに関連する症状を軽減、縮小、低減、緩和、抑制、又は改善することを指す。排除はしないが、疾患又は状態を治療することは、疾患、状態又はそれに関連する症状が完全に排除されることを要求しないことは理解されよう。
【0044】
具体的に記載されるか、又は文脈から明らかである場合を除き、本明細書で使用される用語「又は」は、包括的であると理解される。具体的に記載されるか、又は文脈から明らかである場合を除き、本明細書で使用される用語「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その」は、単数又は複数であると理解すべきである。
【0045】
具体的に記載されるか、又は文脈から明らかである場合を除き、本明細書で使用される場合、用語「約」は、当技術分野における一般交差の範囲内、例えば、平均値の2つの標準偏差の範囲内として理解される。用語「約」は、表示される値の5%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、0.01%内を指すと理解される。文脈から他の解釈が明らかである場合を除き、本明細書に記載される全ての数値は、約という用語によって修正される。
【0046】
本明細書に記載される変数のいずれの定義における化学基の列挙の記述も、列挙された基のうちの任意の単一の基又は組合せとしての当該変数の定義を含む。本明細書に記載の変数又は態様についての一実施形態の記述は、任意の単一の実施形態として又はいずれか他の実施形態若しくはその部分と組み合わせた実施形態を含む。
【0047】
本明細書に記載されるいずれの組成物又は方法も、本明細書に記載の他の組成物及び方法のいずれかの1つ又は複数と組み合わせることができる。
【0048】
以下に説明するように、本発明は、膀胱癌を有する対象、及び/又は様々なレベルのPD-L1を発現する癌又は腫瘍、例えば、PD-L1低/neg腫瘍、又はPD-L1高腫瘍を有するとして同定された対象の膀胱癌、例えば、尿路上皮癌(UC)を抗PD-L1抗体、特に、デュルバルマブで治療する方法を特徴とする。本明細書に記載の膀胱癌治療方法は、対象の膀胱癌を治療する有効量で、第1選択癌療法として抗PD-L1抗体を投与するステップを含む。本明細書に記載の治療方法は、さらに、対象が、例えばプラチナ含有薬を用いた標準治療(SoC)療法などの第1選択癌療法による治療を受けていたが、第1選択SoC療法の後に進行又は再発した後、膀胱癌を有する対象に有効量の抗PD-L1抗体を投与するステップも含み得る。特定の実施形態では、抗PD-L1抗体は、デュルバルマブ(MEDI4736)である。実施形態では、抗PD-L1抗体は、有効量の別の癌療法又は免疫療法薬、例えば、トレメリムマブ、若しくはその抗原結合断片などの抗CTLA4抗体と、同時に若しくは順次、共投与する。
【0049】
PD-L1
腫瘍制御における免疫系、特に、T細胞媒介性細胞傷害の役割はよく認識されている。T細胞が、疾患の早期及び末期の両方で、腫瘍増殖及び癌患者の生存率を制御するというエビデンスが益々増えている。しかし、腫瘍特異的T細胞応答は、癌患者において増大させ、維持することは困難である。
【0050】
免疫細胞機能で重要な2つのT細胞調節経路は、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1、B7H-1又はCD274としても知られる)タンパク質及び細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4、CD152)タンパク質を介してシグナル伝達する。
【0051】
PD-L1は、T細胞活性の制御に関与する免疫調節受容体及びリガンドの複合系の一部である。PD-L1タンパク質は、PD-1受容体及びCD80との結合を介してT細胞活性を阻害するリガンドのB7ファミリーのメンバーである)。正常な組織では、PD-L1は、T細胞、B細胞、樹状細胞、マクロファージ、間葉系幹細胞、骨髄由来の肥満細胞、並びに多様な非造血細胞に発現される。その正常な機能は、その2つの受容体タンパク質:「プログラム細胞死1」(PD-1又はCD279とも呼ばれる)とCD80(B7-1又はB7.1とも呼ばれる)の相互作用によるT細胞活性化と耐性との間の均衡を調節することである。
【0052】
PD-L1はまた、腫瘍によって発現され、複数の部位で作用して、宿主免疫系による検出及び排除を腫瘍が回避するのを助ける。PD-L1は、高頻度で非常に多種の癌に発現される。腫瘍細胞(TC)及び腫瘍浸潤免疫細胞(IC)上のPD-L1の発現はいずれも、典型的に適応免疫応答(例えば、IFNγ産生)を伴う炎症性シグナルにより誘導される。活性化T細胞上のPD-L1とPD-1の結合は、阻害シグナルをT細胞に送達し、これによって腫瘍を免疫排除から保護する。PD-L1はまた、CD80との結合を介してT細胞活性を阻害することもできるが、厳密な機構は研究中である。いくつかの癌では、PD-L1の発現は、生存率の低下及び好ましくない予後に関連している。PD-L1とその受容体との相互作用を遮断する抗体は、PD-L1依存性免疫抑制作用を軽減し、抗腫瘍T細胞の細胞傷害活性をインビトロで増大させることができる。加えて、インビボ試験によって、デュルバルマブは、T細胞依存性機構を介して異種移植モデルにおける腫瘍増殖を阻害することが証明された。理論に拘束されるものではないが、本方法のデュルバルマブは、PD-L1と結合して、均衡を抗腫瘍応答に向けてシフトさせることにより、膀胱癌患者の抗腫瘍免疫応答を刺激する。
【0053】
CTLA4
PD-L1とは対照的に、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)は、調節T細胞により構成的に発現され、活性化T細胞上で上方制御される。CTLA4は、共阻害剤としての役割を果たし、CD28媒介性T細胞活性化の後にT細胞応答を阻止する。T細胞受容体(TCR)結合の後、CTLA4は、ナイーブ及びメモリーT細胞の早期活性化の大きさを調節すると共に、抗腫瘍免疫及び自己免疫の両方に作用する中央阻害経路の一部であると考えられる。CTLA4は、主としてT細胞上に発現され、そのリガンドCD80(B7.1)及びCD86(B7.2)の発現は、抗原提示細胞、T細胞、及びその他の免疫媒介細胞に大部分が限定される。腫瘍浸潤免疫細胞(IC)上のCD80又はCD86に対するCTLA-4の結合は、T細胞活性化の阻害を引き起こす。CTLA4シグナル伝達経路を遮断する拮抗性抗CTLA4抗体は、T細胞活性化を増強することが報告されている。こうした抗体の1つであるイピリムマブは、転移性黒色腫の治療のために、2011年にFDAにより承認された。別の抗CTLA4抗体であるトレメリムマブは、進行性黒色腫の治療のために、第III相試験で試験されたが、当時の標準治療(テモゾロミド又はダカルバジン)と比較して、患者の全生存率を有意に増加しなかった。
【0054】
抗PD-L1抗体
PD-L1活性に結合して、PD-L1活性(例えば、PD-1及び/又はCD80との結合)を阻害する抗体は、膀胱癌(例えば、UC)の治療に有用である。
【0055】
例示的な抗PD-L1抗体であるデュルバルマブ(MEDI4736)は、ヒトモノクローナル抗体(mAb)、(免疫グロブリンG1(IgG1)カッパ)であり、これは、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCD)を低減するように遺伝子操作されている。デュルバルマブは、PD-L1に結合して、T細胞上のPD-1受容体及び腫瘍浸潤免疫細胞(IC)上の分化抗原群(CD80、B7.1)受容体とその相互作用を遮断する。デュルバルマブは、一次ヒトT細胞上のPD-L1の阻害作用を弱めることにより、インビトロでヒトT細胞活性化のPD-L1媒介性抑制を軽減することにより、T細胞増殖の回復、インターフェロンγ(IFNγ)の放出をもたらすことができ、また、T細胞依存性機構を介して異種移植モデルにおける腫瘍増殖を阻害することができる。
【0056】
本明細書に記載の方法で使用するためのデュルバルマブ(又はその断片)に関する情報は、米国特許第8,779,108号明細書に見出すことができ、その開示内容は、参照により本明細書に全体として組み込まれる。デュルバルマブの断片結晶性(Fc)ドメインは、IgG1重鎖の定常ドメイン中に三重変異を含み、これが、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)の媒介を担う補体成分C1q及びFcγ受容体との結合を低減する。
【0057】
本明細書に提供される方法で使用するデュルバルマブ(MEDI4736)、その抗原結合断片は、重鎖及び軽鎖又は重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む。具体的な態様では、本明細書に提供される方法で使用するデュルバルマブ又はその抗原結合断片は、配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを含む。具体的な態様では、本明細書に提供される方法で使用するデュルバルマブ又はその抗原結合断片は、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含み、ここで、重鎖可変領域は、Kabatにより定義される配列番号5~7のCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含み、軽鎖可変領域は、Kabatにより定義される配列番号8~10のCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む。当業者は、Chothia定義、Abm定義、Kabat定義、又は当業者に周知の他のCDR定義を容易に識別することができよう。具体的な態様では、本明細書に提供される方法で使用するデュルバルマブ又はその抗原結合断片は、国際公開第2011/066389A1号パンフレット(その開示内容は、全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示される通り、2.14H9OPT抗体の可変重鎖及び可変軽鎖CDR配列を含む。
【0058】
本明細書に記載の膀胱癌治療方法は、膀胱癌、すなわちUCを有する対象に特に有効である。本方法はまた、UC細胞若しくは組織を含め、その膀胱癌又は腫瘍細胞若しくは組織が、低レベルのPD-L1(PD-L1-低)又は陰性/低レベルのPD-L1(PD-L1-低/neg)を発現するとして同定された対象を治療する上でも有効である。さらに、本明細書に記載の方法は、高レベルのPD-L1(例えば、PD-L1高腫瘍)を発現する膀胱癌(例えば、UC)腫瘍を有する対象の膀胱癌、例えば、UCを治療する上でも有効である。
【0059】
進行性又は転移性尿路上皮癌(UC)のために現在利用可能な治療法、並びにそれらに関連する問題点
局所進行性疾患の初期治療法
局所進行性UCは、通常、根治的膀胱切除術とネオアジュバント及びアジュバント化学療法により治療されている。プラチナ薬を用いた全身併用化学療法は、ネオアジュバント及びアジュバントセッティングの双方における選択レジメンである。ネオアジュバント又はアジュバント療法後12ヵ月超の時点で疾患の再発を有する患者は、後述する通り、第1選択(1L)レジメンとしてプラチナベースの療法による再治療を受ける可能性がある。しかし、約25%の患者が、療法の1年以内に疾患の再発を有する。これらの患者は、標準的プラチナベースの療法に対して適格ではないため、限定的な治療オプションしかない。
【0060】
局所進行性又は転移性疾患の第1選択プラチナベースの療法
局所進行性又は転移性UCを有する患者の場合、30年近く前に導入された全身シスプラチン含有併用化学療法が、現在のところ標準治療(SoC)である。第1選択(1L)化学療法は、シスプラチン/ゲムシタビン又はメトトレキサート、ビンブラスチン、ADRIAMYCIN(商標)(ドキソルビシン)、及びシスプラチン(MVAC)を含む。これらの治療レジメンは、1L治療レジメンにおいて、46%~60%の客観的奏効率(ORR)、7~8ヵ月の無増悪生存(PFS)中央値、及び13~15ヵ月の全生存率(OS)中央値をもたらした。しかし、患者の約半数が、低いパフォーマンスステータス、腎臓機能障害、又は共存症のためにシスプラチン含有化学療法には不適格であり;こうした患者には、概して、カルボプラチンベースのレジメン又は単剤のタキサン若しくはゲムシタビンを用いた緩和療法が投与される。これらの治療は、シスプラチンベースの化学療法ほど有効ではなく、約30%~40%の客観的奏効率(ORR);約3~6ヵ月のPFS中央値;及びほぼ10ヵ月以下のOS中央値をもたらした。
【0061】
プラチナ後療法
ILセッティングの臨床利益にもかかわらず、化学療法を中断した後の患者の場合、化学療法に初め応答した患者でも、疾患の進行が常に起こる。米国では、年間約6,500人の患者が、局所進行性又は転移性UCのために第2選択(2L)療法に進む。
【0062】
現在、米国では、1L療法後に進行した患者、又はネオアジュバント若しくはアジュバント療法後1年以内に再発した患者のために利用可能な療法又は標準療法はない。欧州では、1Lプラチナ含有化学療法後に進行したUCを有する患者においてビンフルニン+ベストサポーティブケア(BSC)とBSC単独を比較するランダム化第3相試験に基づき、2L療法のためにビンフルニンが承認された。しかし、この試験は、主要OS評価項目を満たさなかった。予後因子について調節する事後多変量Cox解析は、BSCを単独で受けた患者と比較して、ビンフルニン+BSCを受けた患者の死亡リスクの23%の減少を示した(ハザード比[HR]=0.77[95%CI:0.61,0.98];p=0.036)。適格集団において、OS中央値は、ビンフルニン+BSC治療を受けた患者の方がBSC治療を受けた患者よりも長かった(それぞれ6.9及び4.3ヵ月;HR=0.78[95%CI:0.61,0.99];p=0.040)。改善されたORR(0%に対して8.6%;95%CI:5.0%,=13.7%;p=0.006)並びにPFS中央値(1.5ヵ月に対して3.0ヵ月;p=0.001)が、評価可能患者集団において観測された。この試験で、ビンフルニン療法の奏功期間(DoR)中央値は、7.4ヵ月であった。
【0063】
米国では、プラチナ後療法は、タキサン(ドセタキセル、パクリタキセル、nab-パクリタキセル)又はパクリタキセルとゲムシタビンの併用の適応外使用を含む。これらの薬剤の使用を支持するエビデンスは、主として、患者選択に依存する非常にまちまちの結果をもたらした小規模の非対照第2相試験からのものである。頻繁に使用される、単剤細胞傷害性化学療法による第2選択(2L)治療の解析は、約10%のORRを示し、OSに改善はみられなかった。シスプラチン又はカルボプラチンを含む2L単剤及びダブレット化学療法のメタ解析は、ダブレット化学療法でORRに改善(それぞれ14.2%及び31.9%)を示し、PFS中央値(それぞれ2.7及び4.1ヵ月)又はOS中央値(それぞれ7.0及び8.5ヵ月)にはわずかな差しか示さなかった。2L化学療法、生物製剤、及び化学療法と生物製剤を用いた併用療法を評価する10の第2相試験からプールされたデータは、12ヵ月で20%のOS率を示した(95%CI:17,24)。
【0064】
これらの化学療法は、緩和的であり、治療に対する不耐性を招き得るかなり有害な反応を有する。報告されたグレード3又は4の毒性には、限定されないが、好中球減少、貧血、疲労、便秘、及び血小板減少症が含まれた。以前にプラチナベースの療法を受けたことがある患者の局所進行性又は転移性UCは重篤で、生命を脅かす状態であり、そのための新規の治療及び治療レジメンが懸命に求められている。本方法は、UC、進行性UC又は転移性UCを有する患者に対して、こうした必要な治療及び治療レジメンを提供する。
【0065】
膀胱癌(例えば、UC)治療のための抗PD-L1(デュルバルマブ)単剤療法又は併用療法
本明細書に記載の方法は、膀胱癌、例えば、UCを有し、治療を必要とする対象に、対象の膀胱癌、例えば、UCを治療するのに有効な量で、デュルバルマブなどの抗PD-L1抗体の投与に伴う医学的及び臨床的利益を提供する。UCなどの膀胱癌の単剤療法又は第1選択(1L)治療としての抗PD-L1抗体、とりわけ、デュルバルマブの治療利益は、本明細書に記載し、実施例で実証する。
【0066】
米国では、現時点で、第1選択(1L)療法後に進行した、又は例えば、プラチナ含有化学療法薬若しくは薬物レジメンによる治療を含むネオアジュバント若しくはアジュバント療法後1年以内に再発した、局所進行性又は転移性尿路上皮癌(UC)の患者のために利用可能な治療法又は標準療法のいずれもない。プラチナ後化学療法は、一般に、緩和的であり、限定的な臨床有効性しかなく、かなり有害な反応を伴う。局所進行性又は転移性UCは、生命に関わる疾患であり、プラチナ含有化学療法薬レジメンを含む治療を受けている間又は治療後に進行した患者の場合、新規の治療オプションに対するアンメットニーズは大きい。
【0067】
従って、このニーズに取り組むために、本方法は、UCなどの膀胱癌を有する対象の治療、及び膀胱癌、例えばUCを有する対象で、プラチナ含有化学療法薬若しくは薬物レジメンを用いるなどの第1選択(1L)抗癌治療後1年以内に、その癌が進行した、又は再発した対象の治療を目的とする、抗PD-L1抗体、とりわけ、デュルバルマブの使用に関する有効な治療利益を提供する。
【0068】
記載される本発明の方法の全ての実施形態において、治療進行中の対象、又は本方法に従って治療しようとする対象は、様々なレベルのPD-L1発現を有する膀胱癌、特にUCを有するとして同定される。一部の実施形態では、膀胱癌、特にUCを有する対象の癌又は腫瘍細胞若しくは組織は、陰性から低レベルのPD-L1(PD-L1-低/neg)、又は高レベルのPD-L1(PD-L1-高)を発現する。本発明によれば、膀胱癌、特にUCの治療を目的とする、抗PD-L1抗体、とりわけ、デュルバルマブを含む治療方法は、癌又は腫瘍が、PD-L1発現についてPD-L1-低/neg、又はPD-L1-高として同定された場合、必要とする対象に、有効量の抗PD-L1抗体、とりわけ、デュルバルマブを投与して、対象の膀胱癌、例えば、UCを治療することを含む。一実施形態では、癌又は腫瘍細胞若しくは組織は、例えば、免疫組織化学又は染色アッセイにより測定して、PD-L1発現が、好適な対照に対し25%未満であるとき、PD-L1低/negであるとみなされる。一実施形態では、癌又は腫瘍細胞若しくは組織は、例えば、免疫組織化学又は染色アッセイにより測定して、PD-L1発現が、好適な対照に対し25%超であるとき、PD-L1-高であるとみなされる。当業者には理解されるように、対照レベルに対してPD-L1-低/neg又はPD-L1-高レベルにてPD-L1を発現すると決定される癌又は腫瘍細胞若しくは組織上でのPD-L1発現のカットオフ値は、PD-L1発現を決定するために使用されるアッセイのタイプに応じて変動し;こうしたアッセイは、当業者によって容易に実施することができる。
【0069】
上記方法の全ての実施形態において、抗PD-L1抗体は、毎週、2週間毎(Q2W)、3週間毎(Q3W)、4週間毎(Q4W)、5週間毎(Q5W)、6週間毎(Q6W)、7週間毎(Q7W)、8週間毎(Q8W)から6ヵ月毎まで、又はそれ以上の間隔で、1mg/kg~50mg/kg、又は約4mg/kg~5mg/kg、又は5mg/kg~10mg/kg、又は10mg/kg~50mg/kg、又は10mg/kg~30mg/kg、又は10mg/kg~20mg/kg、又は10mg/kg、又は20mg/kg、又は1500mgの有効量(若しくは用量)で投与されるデュルバルマブである。特定の実施形態では、デュルバルマブは、UCなどの膀胱癌を有する対象に、膀胱癌(又はUC)治療薬として10mg/kg Q2Wの有効用量で投与される。特定の実施形態では、デュルバルマブは、UCなどの膀胱癌を有する対象に、膀胱癌(又はUC)治療薬として10mg/kg Q4Wの有効用量で投与される。特定の実施形態では、デュルバルマブは、UCなどの膀胱癌を有する対象に、膀胱癌(又はUC)治療薬として20mg/kg Q2Wの有効用量で投与される。特定の実施形態では、デュルバルマブは、UCなどの膀胱癌を有する対象に、膀胱癌(又はUC)治療薬として20mg/kg Q4Wの有効用量で投与される。特定の実施形態では、デュルバルマブは、UCなどの膀胱癌を有する対象に、膀胱癌(又はUC)治療薬として1.5g Q2Wの有効用量で投与される。特定の実施形態では、デュルバルマブは、UCなどの膀胱癌を有する対象に、膀胱癌(又はUC)治療薬として1.5g Q4Wの有効用量で投与される。別の実施形態では、抗PD-L1抗体、例えば、デュルバルマブは、静脈内(IV)注入を介してなど、静脈内に投与される。一実施形態では、IV注入は、予定期間にわたって、例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、又は90分にわたって、抗PD-L1抗体、例えば、デュルバルマブの用量を送達する。特定の実施形態では、IV注入は、60分にわたって、抗PD-L1抗体、例えば、デュルバルマブを送達する。関連する実施形態では、抗PD-L1抗体、例えば、デュルバルマブは、評価項目、例えば、対象別の総合若しくは完全奏効、又は全生存率、疾患の進行、又は許容不可能な毒性に達するまで、投与される。こうした評価項目は、経験を積んだ開業医又は臨床医によって決定することができる。
【0070】
別の実施形態では、抗PD-L1抗体(例えば、デュルバルマブ)は、別の治療薬、免疫療法若しくは化学療法薬、例えば、抗CTLA4抗体(例えば、トレメリムマブ)と一緒に投与される。一部の実施形態では、抗PD-L1抗体及び/又は抗CTLA抗体若しくはそれらの抗原結合断片と共に、プラチナ化学療法薬、プラチナ含有化学療法薬などの標準治療薬を投与してもよい。こうした併用療法において、抗体は、同時に、又は異なる時点で、個別若しくは一緒に投与してもよい。加えて、標準治療薬は、抗PD-L1抗体及び/又は抗CTLA抗体の投与と同時に、又は異なる時点で投与してもよい。
【0071】
抗PD-L1及び抗CTLA4(トレメリムマブ)治療
治療方法の選択過程で、膀胱癌(例えば、UC)に罹患している対象をPD-L1ポリヌクレオチド又はポリペプチド発現について試験してもよい。無視できる程度若しくは低PD-L1を発現する(例えば、Ct若しくはIHC-Mスコアにより定義される通り)腫瘍を有する、又は標準対照レベルよりも低い(低)若しくは検出不可能なレベルのPD-L1を有するとして同定された対象は、デュルバルマブなどの抗PD-L1抗体、又は抗PD-L1抗体とトレメリムマブなどの抗CTLA4抗体の併用による治療に対して応答性であると同定される。こうした対象は、トレメリムマブと組み合わせて、デュルバルマブなどの抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片を投与される。
【0072】
本明細書に記載の方法で使用するトレメリムマブ(又はその抗原結合断片)に関する情報は、米国特許第6,682,736号明細書(そこでは、トレメリムマブは、11.2.1である)に記載されており、これは、参照により全体が本明細書に組み込まれる。トレメリムマブ(CP-675,206、CP-675、CP-675206、及びチシリムマブとしても知られる)は、CTLA4に対して高度に選択性であり、CTLA4とCD80(B7.1)及びCD86(B7.2)との結合を遮断するヒトIgG2モノクローナル抗体である。これは、インビトロで免疫活性化をもたらすことがわかっており、トレメリムマブで治療した一部の患者は、腫瘍退縮を示している。
【0073】
本明細書に提供される方法で使用するトレメリムマブは、重鎖と軽鎖、又は重鎖可変領域と軽鎖可変領域を含む。具体的な態様では、本明細書に提供される方法で使用するトレメリムマブ又はその抗原結合断片は、配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号12のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを含む。具体的な態様では、本明細書に提供される方法で使用するトレメリムマブ又はその抗原結合断片は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、ここで、重鎖可変領域は、配列番号13~15のKabat定義CDR1、CDR2、及びCDR3配列を含み、軽鎖可変領域は、配列番号16~18のKabat定義CDR1、CDR2及びCDR3配列を含む。当業者は、Chothia定義、Abm定義、Kabat定義、又は当業者に周知の他のCDR定義を容易に識別することができよう。具体的な態様では、本明細書に提供される方法で使用するトレメリムマブ又はその抗原結合断片は、米国特許第6,682,736号明細書(参照により全体が本明細書に組み込まれる)に開示される11.2.1抗体の可変重鎖及び可変軽鎖CDR配列を含む。
【0074】
いくつかの態様では、膀胱癌、すなわち、UCを呈する対象は、デュルバルマブ又はその抗原結合断片とトレメリムマブ又はその抗原結合断片を投与される。デュルバルマブ又はその抗原結合断片とトレメリムマブ又はその抗原結合断片は、1回のみ、又は稀に投与するだけでよいが、それでも患者に利益を提供する。別の態様では、後続用量を対象に投与する。後続用量は、対象の年齢、体重、臨床評価、腫瘍負荷、及び/又は主治医、臨床医、若しくは開業医の判断を含む他の要因に応じて、様々な間隔で投与することができる。
【0075】
デュルバルマブ又はその抗原結合断片の用量間の間隔は、2週間毎(Q2W)、3週間毎(Q3W)、又は4週間毎(Q4W)であってよい。トレメリムマブ又はその抗原結合断片の用量間の間隔は、4週間毎であってよい。トレメリムマブ又はその抗原結合断片の用量間の間隔は、サイクル当たり最大4用量について、2週間毎、3週間毎、4週間毎などから12週間毎までであってよい。いくつかの実施形態において、デュルバルマブ又はその抗原結合断片は、膀胱癌、例えば、UCを有する対象に、4週間毎に75mgの用量(75mg Q4W、IV)で投与されるトレメリムマブと組み合わせて、4週間毎に1500mg(1.5g)の用量(1500mg Q4W、IV)で、各々最大4用量/サイクルまで投与される。一実施形態では、この併用治療の後に、4週間毎に1500mg(1.5g)の用量(1500mg Q4W、IV)でデュルバルマブの投与を行う。一実施形態では、膀胱癌、例えば、UCを有する対象は、PD-L1発現についてPD-L1低/neg;PD-L1低;又はPD-L1高である癌又は腫瘍細胞若しくは組織を有するとして同定される。
【0076】
一部の実施形態では、少なくとも2用量のデュルバルマブ又はその抗原結合断片とトレメリムマブ又はその抗原結合断片が対象に投与される。一部の実施形態では、少なくとも3用量、少なくとも4用量、少なくとも5用量、少なくとも6用量、少なくとも7用量、少なくとも8用量、少なくとも9用量、少なくとも10用量、若しくは少なくとも15用量、又はそれ以上の用量の抗PD-L1抗体及び/又は抗CTLA4抗体の一つ又は両方を対象に投与することができる。一部の実施形態では、デュルバルマブ又はその抗原結合断片は、2週間の治療期間、4週間の治療期間、6週間の治療期間、8週間の治療期間、12週間の治療期間、24週間の治療期間、又は1年以上の治療期間にわたって投与される。一部の実施形態では、トレメリムマブ又はその抗原結合断片は、4週間の治療期間、8週間の治療期間、12週間の治療期間、16週間の治療期間、20週間の治療期間、24週間の治療期間、36週間の治療期間、48週間の治療期間、又は1年以上の治療期間にわたって投与される。特定の実施形態では、デュルバルマブは、対象が応答するまで、進行まで、又は許容不可能な毒性が認められるまで、Q2W又はQ4Wで投与される。別の特定の実施形態では、デュルバルマブは、トレメリムマブと一緒に、対象が応答するまで、進行まで、又は許容不可能な毒性が認められるまで、Q2W又はQ4Wで共投与される。
【0077】
膀胱癌、特にUCを有する対象に投与される、デュルバルマブ又はその抗原結合断片の量及びトレメリムマブ又はその抗原結合断片の量は、対象の年齢、体重、臨床評価、腫瘍負荷及び/又は主治医の判断を含む他の要因などの様々なパラメータに応じて変動し得る。
【0078】
いくつかの態様では、膀胱癌、特にUCを有する対象は、1mg/kg~20mg/kgの用量、特に1.5g用量、2週間毎(Q2W)のデュルバルマブ又はその抗原結合断片を、1mg/kg~5mg/kgの用量、特に75mg用量、Q4Wのトレメリムマブ又はその抗原結合断片と組み合わせて、最大4用量/サイクルで投与される。いくつかの態様では、膀胱癌、特にUCを有する対象は、1mg/kg~20mg/kgの用量、特に1.5g用量、4週間毎(Q4W)のデュルバルマブ又はその抗原結合断片を、1mg/kg~5mg/kgの用量、特に75mg用量、Q4Wのトレメリムマブ又はその抗原結合断片と組み合わせて、最大4用量/サイクルで投与される。これらの態様の各々において、患者は、トレメリムマブの投与後に1.5g用量のデュルバルマブ又はその抗原結合断片Q4Wを投与される。一実施形態では、抗体は、静脈内注入により対象に投与される。
【0079】
デュルバルマブなどの抗PD-L1抗体若しくはその抗原結合断片、及び/又はトレメリムマブなどの抗CTLA4抗体若しくはその抗原結合断片は、当技術分野で知られ、使用されている任意の許容可能な投与経路により、記載の方法で投与することができる。限定はしないが、1若しくは複数種の抗体の投与は、静脈内(例えば、静脈内注入)、非経口、又は皮下投与経路を介して行ってよい。特定の実施形態では、投与は、静脈内(IV)注入により行う。
【0080】
いくつかの態様では、UCなどの膀胱癌を有する対象に、10mg/kgのデュルバルマブ又はその抗原結合断片が2週間毎(Q2W)に、例えば、静脈内注入によって、対象が、抗PD-L1抗体治療に対して応答する(例えば、ORR、OS、PFS、若しくはCRを達成する)まで、進行まで、又は許容不可能な毒性まで、投与される。一実施形態では、静脈内注入は、60分にわたって行う。一実施形態では、デュルバルマブは、トレメリムマブなどの抗CTLA1抗体と組み合わせて、同時に、又は異なる予定時点若しくは投与サイクルのいずれかで投与される。
【0081】
いくつかの態様では、UCなどの膀胱癌を有する対象に、1.5gのデュルバルマブ又はその抗原結合断片が4週間毎(Q4W)に、例えば、静脈内注入によって、対象が、抗PD-L1抗体治療に対して応答する(例えば、ORR、OS、PFS、若しくはCRを達成する)まで、進行まで、又は許容不可能な毒性まで、投与される。一実施形態では、デュルバルマブは、トレメリムマブなどの抗CTLA1抗体と組み合わせて、同時に、又は異なる予定時点若しくは投与サイクルのいずれかで投与される。
【0082】
いくつかの態様では、UCなどの膀胱癌を有する対象に、1.5gのデュルバルマブ又はその抗原結合断片が4週間毎(Q4W)に、75mgのトレメリムマブ又はその抗原結合断片、4週間毎(Q4W)と組み合わせて、投与サイクル当たり最大4用量まで投与される。1.5gのデュルバルマブQ4Wの投与の後に、75mgのトレメリムマブQ4Wを投与する。一実施形態では、投与は静脈内注入により行う。いくつかの態様では、デュルバルマブ又はその抗原結合断片とトレメリムマブ又はその抗原結合断片の組合せは、対象が、治療に対して応答する(例えば、ORR、OS、PFS、若しくはCRを達成する)まで、進行まで、又は許容不可能な毒性まで投与される。
【0083】
本明細書に提供される方法は、膀胱癌腫瘍増殖、特に、尿路上皮癌腫瘍増殖を低減、又は遅らせることがわかっている。一部の態様では、腫瘍増殖低下又は遅延は、統計的有意であり得る。膀胱癌(例えば、UC)腫瘍増殖低下は、ベースライン時点での対象の腫瘍の増殖と、予想される腫瘍増殖、大きな患者集団に基づいて、又は対照集団の腫瘍増殖に基づいて予想される腫瘍増殖と比較することによって測定することができる。さらに、膀胱癌(例えば、UC)腫瘍増殖(若しくはサイズ)の低下は、抗PD-L1抗体(例えば、デュルバルマブ)又はその抗原結合断片を単独で、又は抗CTLA4抗体(例えば、トレメリムマブ)若しくはその抗原結合断片と組み合わせて用いた対象の治療後の所与の時点での対象の腫瘍の増殖若しくはサイズを、ベースライン時点での腫瘍の増殖若しくはサイズと比較することにより、測定することができる。
【0084】
いくつかの態様では、腫瘍効果は、免疫関連奏功判定基準(irRc)を用いて測定する。いくつかの態様では、腫瘍効果は、固形腫瘍効果判定基準(RECIST)を用いて測定する。これらの効果測定技術は、当業者には周知であり、実施されている。
【0085】
いくつかの態様では、膀胱癌治療に対する対象の応答は、約1.5~7.5ヵ月時点で検出可能である。いくつかの態様では、膀胱癌治療に対する対象の応答は、約4週間目、5週間目、6週間目、7週間目、8週間目、9週間目、10週間目、11週間目、12週間目、13週間目、14週間目、15週間目、16週間目、17週間目、18週間目、19週間目、若しくは20週間目又はこれらの間で検出可能である。いくつかの態様では、膀胱癌治療に対する対象の応答は、25週間目、28週間目、30週間目、33週間目、35週間目、40週間目、45週間目、若しくは50週間目、又はこれらの間で検出可能である。いくつかの態様では、膀胱癌治療に対する対象の応答は、60週間目、65週間目、70週間目、又はそれ以上で検出可能である。いくつかの態様では、膀胱癌治療に対する対象の応答は、本方法に従う治療中に、6ヵ月、7ヵ月、8ヵ月、9ヵ月、10ヵ月、12ヵ月及びそれ以上にわたって応答を持続するほど持続性である。
【0086】
いくつかの態様では、記載の方法に従って治療を受ける対象は、疾患制御(DC)を達成するが、これは、対象の応答を示す上でも役立つ。疾患制御は、完全奏功(CR)、部分奏功(PR)、又は安定(SD)であってよい。「完全奏功」(CR)は、測定可能であるか否かにかかわらず、全ての病変の消失、及び新たな病変がないことを指す。確定は、最初の記録日から4週間未満の時点で、反復、連続的評価を用いて取得することができる。新たな測定不可能な病変はCRから除外する。「部分奏功」(PR)は、ベースラインと比較して、≧30%の腫瘍負荷の減少を指す。確定は、最初の記録日から少なくとも4週間の時点で、連続的反復評価を用いて取得することができる。「安定」(SD)は、ベースラインと比較して約30%未満の腫瘍負荷の減少を立証することができず、且つ最下点と比較して20%以上の増加を立証することができないことを示す。
【0087】
いくつかの態様では、単剤療法として単独で、又はトレメリムマブ若しくはその抗原結合断片と組み合わせた、又は標準療法レジメンと組み合わせた、デュルバルマブ若しくはその抗原結合断片の投与によって、治療を受けている対象の無増悪生存(PFS)を増加することができる。いくつかの態様では、単剤療法として単独で、又はトレメリムマブ若しくはその抗原結合断片と組み合わせた、又は標準療法レジメンと組み合わせた、デュルバルマブ若しくはその抗原結合断片の投与によって、治療を受けている対象の全生存率(OS)を増加することができる。
【0088】
一部の実施形態では、対象は、以前、少なくとも1種の化学療法薬による治療を受けたことがある。一部の実施形態では、対象は、以前、少なくとも2種の化学療法薬による治療を受けたことがある。化学療法薬は、例えば、限定しないが、ベムラフェニブ、エルロチニブ、アファチニブ、セツキシマブ、カルボプラチン、ベバシズマブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、及び/又はペメトレキセドであってよい。いくつかの実施形態では、対象は、例えば、限定しないが、シスプラチン、カルボプラチン、シスプラチン+ゲムシタビン、又はカルボプラチン+ゲムシタビンダブレット併用を含む標準治療(SoC)の治療を受けたことがある。(例えば、R.Nagourney et al.,2008,Clin.Breast Cancer,Vol.8,No.5:432-435を参照されたい)。
【0089】
一部の実施形態では、対象は、デュルバルマブ若しくはその抗原結合断片、又はデュルバルマブ若しくはその抗原結合断片とトレメリムマブ若しくはその抗原結合断片の併用の投与の前に、米国東海岸癌臨床試験グループ(Eastern Cooperative Oncology Group)(ECOG)(Oken MM,et al.Am.J.Clin.Oncol.5:649-55(1982))の0、1、若しくは2のパフォーマンスステータスを有する。
【0090】
本明細書に記載されるように、デュルバルマブ又はその抗原結合断片はまた、遊離(可溶性)PD-L1レベルを低下させることもできる。遊離(可溶性)PD-L1は、結合していない(例えば、デュルバルマブにより)PD-L1を指す。一部の実施形態では、sPD-L1レベルは、デュルバルマブ若しくはその抗原結合断片の投与後、又はデュルバルマブ若しくはその抗原結合断片とトレメリムマブ若しくはその抗原結合断片の併用の投与後に低下し、且つ/又は検出不可能となる。一部の実施形態では、デュルバルマブ若しくはその抗原結合断片の投与、又はデュルバルマブ若しくはその抗原結合断片とトレメリムマブ若しくはその抗原結合断片の併用の投与により、例えば、記載される投与前の遊離(可溶性)PD-L1レベルの増加速度と比較して、遊離(可溶性)PD-L1レベルの増加速度が低下する。
【0091】
本明細書に記載されるように、デュルバルマブ若しくはその抗原結合断片、又はデュルバルマブ若しくはその抗原結合断片とトレメリムマブ若しくはその抗原結合断片の併用(すなわち、併用療法)を用いた、UCなどの膀胱癌又は腫瘍を有する対象の治療により、いくつかの症例で、相加及び/又は相乗効果が生じ得る。本明細書で使用される場合、用語「相乗」は、単一療法単独での相加効果よりも有効である、治療法の組合せ(例えば、デュルバルマブ若しくはその抗原結合断片とトレメリムマブ若しくはその抗原結合断片の併用;又はデュルバルマブ若しくはその抗原結合断片と別の抗癌療法、若しくはSoC療法との併用)を指す。
【0092】
治療法の組合せ(例えば、デュルバルマブ若しくはその抗原結合断片とトレメリムマブ若しくはその抗原結合断片の併用)の相乗効果は、UCなどの膀胱癌又は腫瘍を有する対象の治療に対して、より低用量の1若しくは複数種の治療薬の使用及び/又はより低頻度の治療薬の投与を可能にする。より低用量の治療薬を使用し、及び/又はより低頻度で治療薬を投与することができれば、UCなどの膀胱癌又は腫瘍の治療における治療薬の有効性を低下することなく、対象への治療薬の投与に伴う毒性が低減する。さらに、相乗効果は、固形膀胱癌腫瘍の管理、処置、又は改善において、治療薬の効果の向上をもたらし得る。治療薬の併用の相乗効果によって、各々を単独で(単剤療法として)、例えば、より高い用量で使用した場合に伴う有害な、又は不要な副作用を回避又は軽減することができる。
【0093】
併用療法では、デュルバルマブ若しくはその抗原結合断片は、任意選択で、トレメリムマブ若しくはその抗原結合断片と同じ医薬組成物中に含有させてもよいし、又はデュルバルマブ若しくはその抗原結合断片を個別の医薬組成物に含有させてもよい。後者の場合、デュルバルマブ若しくはその抗原結合断片を含む医薬組成物は、トレメリムマブ若しくはその抗原結合断片含む医薬組成物の投与の前、それと同時、又はその後に投与するのに好適である。いくつかの事例では、1つの組成物中のデュルバルマブ若しくはその抗原結合断片の対象への投与は、個別の組成物中のトレメリムマブ若しくはその抗原結合断片の投与の時間と重なる。
【0094】
本発明の実施は、別に指示のない限り、十分に当業者の理解の範囲内にある分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、免疫組織化学及び免疫学の従来技術を使用する。こうした技術は、例えば、“Molecular Cloning:A Laboratory Manual”,second edition(Sambrook,1989);“Oligonucleotide Synthesis”(Gait,1984);“Animal Cell Culture”(Freshney,1987);“Methods in Enzymology”“Handbook of Experimental Immunology”(Weir,1996);“Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells”(Miller and Calos,1987);“Current Protocols in Molecular Biology”(Ausubel,1987);“PCR:The Polymerase Chain Reaction”,(Mullis,1994);“Current Protocols in Immunology”(Coligan,1991)などの文献に十分に説明されている。これらの技術は、本発明のポリヌクレオチド及びポリペプチドの生成に適用可能であり、従って、本発明を作製及び実施する上で考慮することができる。いくつかの実施形態に特に有用な技術については、以下のセクションで述べる。
【0095】
本発明のアッセイ、スクリーニング、及び治療方法を作製及び使用する方法についての完全な開示及び説明を当業者に提供するために、以下の実施例を記載するが、これらは、本発明者らが、その発明として考える範囲を限定することを意図しない。
【実施例0096】
実施例1-臨床分析に基づくデュルバルマブの特性
この実施例は、デュルバルマブの臨床薬理学の概要を提供すると共に、抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片が、UCなどの膀胱癌を有する対象の尿路上皮癌(UC)などの膀胱癌を治療する記載の方法での使用に対するその好適性を支持する特性及び特徴を呈示することを実証する。
【0097】
A.デュルバルマブの薬物動態(PK)
デュルバルマブの薬物動態(PK)は、固形腫瘍を有する1,337人の患者で試験し、患者は、Q2Wに投与される0.1~10mg/kgの範囲、又は3週間毎(Q3W)に投与される15mg/kg、又は4週間毎(Q4W)に投与される20mg/kgの用量でデュルバルマブを受けた。10mg/kg Q2Wでのデュルバルマブ処置の後、PKは、線形範囲内で、典型的なモノクローナル抗体(mAb)と合致すると予想された。PK解析の主要な結果から、下記のことが明らかにされた:
・デュルバルマブは、恐らく可飽和標的介在性クリアランスのために、用量<3mg/kgで非線形PKを示し、用量≧3mg/kgで線形PKを示した。濃度-時間曲線(AUC;0~14日)下の面積は、0.1~3mg/kgの用量範囲の場合、用量比例性を超えて増加し、用量≧3mg/kgでは、用量に比例して増加した。最大濃度(Cmax)は、試験した用量範囲内で用量比例的に増加した。
・反復投与の約16週目後に定常状態が達成された。試験した用量範囲にわたって、Cmaxの全身貯留及びトラフ濃度(Ctrough)は、それぞれ、0.64~1.87倍及び3.39~4.93倍であった。
・平均全身線形クリアランス及び中心の分布容積は、226mL/日及び3.51Lであり、それぞれ29.3%及び21.2%という控え目な対象間変動を伴った。予想半減期は、10mg/kg Q2Wの用量で投与されるデュルバルマブ後約21日であった。
・非線形クリアランスの場合の半値最大容量を表すデュルバルマブ濃度(Km)は、約0.5μg/mLであった。この推定値に基づき、デュルバルマブの約50μg/mL濃度で、>99%標的飽和が予想された。10mg/kgの用量は、>95%の患者において標的曝露を達成すると予想された。
・患者のベースラインデモグラフィックス又は疾患の特徴に基づいて提案されたデュルバルマブの用量10mg/kg Q2W IVに、用量調節は推奨されなかった。集団PK分析によれば、デュルバルマブのPKに対して、年齢、体重、性別、陽性抗薬物抗体(ADA)、ステータス、アルブミンレベル、LDHレベル、クレアチニンレベル、可溶性PD-L1(sPD-L1)レベル、腫瘍タイプ、人種、軽度から中度の腎障害、軽度の肝障害、又はECOGステータスの臨床的に有意な作用はなかった。
・集団PKモデル化は、750mg Q2W IVの有望な固定投与レジメン又は同等であるが、頻度が低い1500mg Q4W IVの固定投与レジメンの使用を支持した。
【0098】
B.デュルバルマブの免疫原性
全体として、デュルバルマブは、低い発生率(2.6%;37/1,412)の治療下発現ADAを示し、10mg/kg Q2W IV用量後にPKに対して臨床的に有意な作用はなかった。
【0099】
以下の実施例2に記載する試験1108(ClinicalTrials.gov Identifier:NCT01693562)において、0.1~20mg/kgの範囲の用量のデュルバルマブで処置した1,012人の患者のうち25人(2.5%)が、治療下発現ADAについて陽性であることが判明し、3人(0.3%)の患者が、中和抗体を有した。UCコホートの191人の患者を含め、10mg/kg Q2Wのデュルバルマブで処置した970人の患者のうち、21人(2.2%)の患者が、治療下発現ADAについて陽性であることが判明し、中和抗体は、1人(0.1%)の患者にしか検出されなかった。ADA力価は、ほとんどの陽性ADAサンプルについて、1~32(75%範囲、1~4[n=43]、21%範囲、8~32[n=12])の範囲であった。ADAの存在は、PKに対して臨床的に有意な作用を及ぼさないと思われた。
【0100】
比較して、非小細胞肺癌(NSCLC)を有する患者の処置を含む試験では、10mg/kg Q2Wのデュルバルマブで処置した442人の患者のうち16人(3.5%)が、治療下発現ADAについて陽性であることが判明し、2人(0.45%)の患者が、中和抗体を有した。この試験では、ADA力価は低く、サンプルの95%(18/19)について1~16の範囲であった(1つのサンプルは、1,024の力価を有した)。この試験において、ADAの存在は、PK、安全性、又は有効性に対して臨床的に有意な作用を及ぼさないと思われた。
【0101】
C.薬力学的及びPK-PD関係
標的結合:遊離可溶性PD-L1(sPD-L1)の用量依存性抑制が、デュルバルマブのIV投与後に観察された。デュルバルマブの投与後、用量レベル≧0.3mg/kg前後で完全なsPD-L1抑制が観察された。10mg/kg Q2Wでデュルバルマブを投与後、>93%の患者が、投与間隔全体を通して完全なsPD-L1抑制を示した。
【0102】
薬力学的バイオマーカ:平均増殖CD8+T細胞量は、10mg/kgのデュルバルマブを投与後、10日目(平均値±平均値の標準[SEM]:110%±27%)及び15日目(平均値±SEM:67%±15%)に、変動範囲の平均値を超えて有意に増加した。増殖CD4+T細胞について、10日目(平均値±SEM:64%±18%)に同様の傾向が認められたが、増加の程度は、変動の範囲(RV)を超えて有意に上昇しなかった。他のリンパ球集団は、ベースラインからの平均的な変化を示さず、これは、試験の最初の100日の間にRVを超えた。これらのデータは、提案されるデュルバルマブの作用機構と一致する薬力学的効果を実証するものである。
【0103】
効果に対する曝露の影響:本明細書に記載される試験(試験1108、実施例2)のUCコホートにおいて10mg/kg Q2W IVのデュルバルマブで処置した患者の場合、個別の観察PK曝露(用量1の注入終了時の濃度[Cmax,1]、用量1又は2の注入前の濃度[Cmin,2]、定常状態で注入前の濃度[Cmin,ss])と、臨床効果評価項目(BICRにより評価されるORR及びDoR)との間に関連は確認されなかった。これらの知見は、曝露-応答分析と一致する。
【0104】
安全性に対する曝露の影響:試験1108において10mg/kg Q2W IVのデュルバルマブで処置した患者の場合、個別の観察PK曝露(Cmax,1、Cmin,2、Cmin,ss)と、有害事象の発生((AE)、治療関連AE、AESI、治療関連AESI(任意のグレード、≧グレード2、≧グレード3によるさらなる分析を含む)、並びにデュルバルマブの永久的停止を招くAE)との間に関連は確認されなかった。少数の逆の傾向(曝露が高いほど低いAE)及び増加傾向(曝露が高いほど高いAE)が観察された。これらの傾向は、ランダムな変動であると思われ、傾向が往々にして矛盾し、試験、AEのタイプ、又はPK測定基準を通して一貫していなかったため、臨床的に関連しないとみなした。
【0105】
用量設定根拠:10mg/kg Q2Wのデュルバルマブの提案された用量設定レジメンは、臨床及び非臨床試験から得られた頑健なデータセットにより支持された。重要な特徴のいくつかは下記を含んだ:(i)デュルバルマブ処置は良好な耐容性を示した。10mg/kg Q2W又は20mg/kg Q4W用量のデュルバルマブで用量制限毒性は観察されなかった;(ii)臨床試験(試験1108)のUCコホートに関連して、実施例2に述べる通り、臨床的に有意義な効果;(iii)臨床PK/PD:デュルバルマブPKに基づく標的曝露の達成は、≧3mg/kg Q2W用量(トラフ濃度約50μg/mL)で線形に近かったが、これは、完全な標的飽和を示す。集団PKシミュレーションは、10mg/kg Q2Wのデュルバルマブの用量レジメン後に、>95%の患者が、完全な標的飽和を達成する≧50μg/mLの標的トラフ濃度を達成するであろうことを示した;(iv)非臨床有効性モデルに基づく標的曝露の達成:10mg/kg Q2Wのデュルバルマブは、トラフ濃度中央値>100μg/mL(マウスモデルにおいて最大腫瘍増殖阻害をもたらしたデュルバルマブの標的濃度として認められた)を達成した;(v)PK曝露と有効性又は安全性との明らかな関連はない:10mg/kgのデュルバルマブの投与後に、試験1108のUCコホートに曝露-有効性関係は認められず、また、試験1108(又はNSCLCの抗PD-L1抗体処置を含む試験)においてはっきりとした曝露-安全性関係は認められなかった;並びに(vi)10mg/kg Q2Wのデュルバルマブの投与後に、2.6%(37/1,412人の患者)のADA発生率が観察され、PKに対して臨床的に有意な影響はなかった。従って、UC患者に観察された臨床活性を管理可能な安全性プロフィール及び補助的トランスレーショナルな相関物と結び付けると、UCを有する対象の治療のための10mg/kg Q2W IVの用量でのデュルバルマブの投与が支持された。
【0106】
D.処置期間
抗PD-1/PD-L1療法の最適な期間はまだ不明だが、臨床試験における抗PD-1/PD-L1処置の期間は、12ヵ月、24ヵ月以下、又は疾患の進行までと、変動する。理論に拘束されることは意図しないが、抗PD-1/PD-L1抗体は、腫瘍細胞(TC)又は腫瘍関連免疫細胞(IC)上でのPD-L1の発現を改変することなく、主としてPD-1とPD-L1の相互作用を生物学的に阻止するため、連続的な遮断によって、T細胞の疲弊を最適に防ぐことができる。デュルバルマブを含む以前のプロトコルは、再処置のオプションを含む限定的な処置期間を使用した。許容可能な安全性プロフィールが長期の投与について実証され、新たなAEの発生は、12ヵ月の処置の前に水平状態になることから、全てのデュルバルマブプロトコルが、疾患の進行まで継続的な処置を包含する。全てを考慮すると、デュルバルマブから利益を受けている患者が、12ヵ月を超えて処置を継続することを可能にする潜在的な利益は、進行中のリスクに基づいて正当化される。この理由で、実施例2に記載する試験は、疾患の進行までの対象の膀胱癌(例えば、UC)の処置を含む。
【0107】
実施例2-膀胱癌(UC)を有する対象のデュルバルマブによる処置を含む臨床試験
A.全体的試験設計
本明細書に記載の方法に関連するデータは、進行中の試験1108、第1/2相、単一アーム、オープンラベル、多施設臨床試験(ClinicalTrials.gov Identifier:NCT01693562)により提供される。試験の用量漸増段階は、尿路上皮膀胱癌(UC)コホートをはじめとする17の異なる腫瘍別コホートが含まれた。用量漸増段階で患者は、10mg/kg Q2Wのデュルバルマブで処置され、その処置を継続する。
【0108】
以前の選択療法に関して一切制限のないUC漸増コホートを開始し、ここには、組織学的又は細胞学的に確定されたUCを有する約60人の患者が登録されることが意図された;最初の20人の患者は、PD-L1発現とは関係なく登録され、続く40人の患者は、その腫瘍細胞の≧5%がPD-L1発現について陽性であることが要求された。その後、組織学的又は細胞学的に確定された尿路上皮(膀胱、尿管、尿道、及び腎盂を含む)の手術不能又は転移性移行細胞(移行細胞及び混合型移行細胞/非移行細胞組織学を含む)癌を有する132人の追加患者が、PD-L1発現とは関係なく登録されることが意図され;これらの患者は、プラチナベースのレジメンをはじめとする全身療法を以前に1~2回受けていた。特に、これらの患者は、標準的プラチナベースのレジメンをはじめとする、手術不能又は転移性疾患のために少なくとも1回、しかし2回以下の以前の選択全身療法を受けたことがあり、進行したか、又はそれに対して不応性であった。局所進行性疾患に対する以前の根治的化学放射線療法、アジュバント若しくはネオアジュバント治療は、治療法(化学放射線及びアジュバント治療の場合)から<12ヵ月、又は手術(ネオアジュバント治療のための)から<12ヵ月で、進行が発生したことを条件として、以前の選択療法であるとみなした。2つの選択療法の間に起こる進行が、個別の選択療法を明確にする。
【0109】
UCコホートの主要評価項目は、盲検下独立中央評価(BICR)により決定される通り、RECIST v1.1に従い確定された客観的奏功(OR)であった。重要な副次的評価項目は、DoR、疾患制御率(DCR)、PFC、及びOSが含まれた。
【0110】
B.患者集団
適格な患者は、組織学的又は細胞学的に確認された局所進行性又は転移性UCを有する年齢≧18歳であった。以前の選択療法に基づく適格性基準は、上の(A)に記載の通りである。患者は、0又は1のECOGパフォーマンスステータススコア、適切な臓器及び血液機能、並びにPD-L1試験に使用できる新鮮な腫瘍生検及び/又は腫瘍組織記録を有した。この試験では、免疫不全の病歴;全身免疫抑制を必要とする病状;重度の免疫媒介性有害反応の病歴;未処置の中枢神経系転移;並びにヒト免疫不全ウイルス、活動性結核症、又は肝炎B若しくはC感染症を有する患者を除外した。
【0111】
C.有効性評価項目及び解析
中間有効性解析
103人のUC患者が、デュルバルマブ10mg/kg Q2Wで処置され、少なくとも13週間経過観察される機会を有した(すなわち、RECIST v1.1に従って6週目及び12週目に少なくとも2回のフォローアップスキャンを受け、さらに1週間の来院許容期間を受ける機会を有した)後、有効性の中間解析を実施した。
【0112】
中間有効性解析のために使用した解析対象集団は、主要有効性集団であったが、この集団は、処置を受けて、DCO日までに≧13週間にわたって経過観察される機会を有した(すなわち、DCO日の≧13週間前に1回目用量のデュルバルマブを受けた)UC患者として定義される。これは、全ての有効性データの中間+解析の主要解析集団であり;また、補助的有効性集団は、処置を受けて、DCO日までに≧24週間にわたって経過観察される機会を有した(すなわち、DCO日の≧24週間前に1回目用量のデュルバルマブを受けた)全てのUC患者として定義される。これは、中間有効性解析のための補助的解析対象集団であった。
【0113】
主要有効性解析
主要有効性評価項目は、BICRにより決定される通り、RECIST v1.1に従い確定されたCRの最良総合効果として定義される客観的奏功(OR)又は部分奏功(PR)であった。ORを有する患者の割合として定義されるORRを計算し、Clopper-Pearson法を用いて、ORRの両側95%正確CIを推定した。ベースライン;デュルバルマブ療法の開始後6、12、及び16週目;続いて、処置中、8週間毎に、疾患評価のために患者をスキャンした。治療の中止後、1年にわたり2ヵ月毎、続いて、客観的な疾患の進行が確認されるまで3ヵ月毎に患者をスキャンした。
【0114】
処置を受けて、少なくとも13週間にわたって経過観察される機会を有した全てのUC患者(前述の主要有効性集団)について、ORR(正確95%CI)の主要中間解析を実施した。処置を受けて、少なくとも24週間にわたって経過観察される機会を有した全てのUC患者(前述の補助的有効性集団)について、ORRの補助的解析を実施した。加えて、ネオアジュバント/アジュバントセッティング(2L+プラチナ後)で治療法を受けて12ヵ月以内に進行した患者を含め、プラチナベースの療法中若しくは後に進行した全ての処置済UC患者の部分集団について、同様のORRの解析を実施した。
【0115】
副次的有効性解析
副次的有効性評価項目は、BICR及び主治医判定、及びOSにより決定される通り、RECIST v1.1に従うDoR、DCR、奏功までの時間、PFS、標的病変サイズの変化を含んだ。UC患者におけるデュルバルマブの抗腫瘍活性に関するPD-L1発現を評価するために、検証済のVENTANA PD-L1(SP263)アッセイの評価で熟練した病理学者により決定された腫瘍細胞(TC)中の膜PD-L1染色及び腫瘍関連免疫細胞(IC)の全PD-L1染色の評価としての、PD-L1発現に基づいて識別された亜群別でも有効性データを分析した。合計103人のUC患者について、ORRが20%~30%の範囲にあると予想されたとき、両側正確95%CIの観察ORRとその下限の間の幅は、7%~9%の範囲であった。
【0116】
D.検証済PD-L1検出アッセイを用いたPD-L1発現の評価
PD-L1発現カットオフに基づいて応答及び非応答患者を識別するためのスコアリングアルゴリズムが、本発明者らによって開発された。腫瘍細胞(TC)及び免疫細胞(IC)双方でのPD-L1発現レベルと、デュルバルマブ療法に対する応答との関係を、試験1108のUCコホートの処置済患者からの腫瘍サンプルで評価した。この解析によって、TC及びICのPD-L1染色の組合せ評価となる最適アルゴリズムを確立した。
【0117】
解析対象である主要PD-L1亜群を決定するために、デュルバルマブに対する応答患者についてカットオフを設定した。このカットオフは、最小12週間の間経過観察された、登録対象の初期群から構成されるトレーニングデータセットを用いて決定した。これらの対象から主治医により評価された、RECIST v1.1に基づくPD-L1発現データ及びORRデータを用いて、応答及び非応答対象を最良に識別したPD-L1発現閾値を決定した。主治医による他のRECIST v1.1データ(例えば、標的病変のベースラインからの変化率(%)など)及び臨床データ(例えば、PD又は早期死亡による中止など)も考慮に入れた。最適アルゴリズムは、ベースラインPD-L1発現が、TC若しくはICのいずれかで≧25%のとき、PD-L1高腫瘍を有するとして;又はTC及びICでベースラインPD-L1発現が<25%のとき、PD-L1低/neg腫瘍として患者を分類した。このカットオフに基づき、アルゴリズムの最初のバージョンを決定した(Development Algorithm)。
【0118】
TCについての25%カットオフの根拠は、以下に基づいた:
1.PD-L1及び応答の生物学:高い膜性腫瘍細胞PD-L1発現は、PD-1/PD-L1経路をターゲティングする薬物による優れた臨床応答と相関することが証明されており;
2.UCにおける優勢:市販の膀胱癌サンプル中のPD-L1発現の評価、ここで、PD-L1はいくつかの症例のTCに高度に発現されることが判明し、これは、PD-L1の先天的又は適応性過剰を示唆しており;
3.UCの臨床転帰データ:部分奏功(PR)を有する対象の1人及び最良変化が-38.5である別の対象は、PD-L1≧25%をTCに有した。
【0119】
同様に、ICについての25%カットオフの根拠は、以下に基づいた:
1.UCにおけるPD-L1及び応答の生物学:ICにおける高いPD-L1発現は、抗PD-L1薬であるアテゾリズマブによる優れた臨床応答と相関することがわかっており;
2.UCにおける優勢:市販の膀胱癌サンプルにおいて、多くの症例のICでPD-L1が高度に発現されることが判明したが、これは、PD-L1の適応過剰発現を示唆しており;
3.UCにおける臨床転帰データ:PRを有する4人の対象全員が、ICにPD-L1≧25%を有することがわかる。
【0120】
TC及びICの双方で25%カットオフの選択について考えられる別の重要な要因は、MedImmune及びVentana Medical Systemsからの病理学者の経験に基づく、予想される読取り者間精度(病理学者間の再現性)であった。PD-L1高対象(TC又はIC中≧25%)の場合、トレーニング(Training)の対象においてRECIST v1.1に従い主治医により評価されたORRは、36.4%(4/11、95%CI:10.9,69.2)であったが、PD-L1低/neg対象(TC及びIC中<25%)のORRは、0%であった。組合せアルゴリズムは、TC又はICを単独で用いたスコアリングよりも高い陰性適中度(NPV)及び高い真陽性適中率(TRR)を提供する。
【0121】
PD-L1染色のためのアッセイプロトコルは、患者の試験前にロックし、アルゴリズムは、20人の患者トレーニングセットの読出し後にロックした。試験の後期に、また、試験への患者(132)の追加開始時にインプリメントして、Final Algorithm(表1)を展開したが、これは、以下のように、ICでPD-L1発現が≦1%であった場合のスコアリングの精度を増強するためのDevelopment Algorithmに対する修正から構成された:
【0122】
【0123】
アルゴリズムに対するこの修正は、Development及びFinal Algorithm間で100%の一致を維持しながら、低度のIC浸潤を有する症例におけるスコアリングの精度を高めた。
【0124】
PD-L1ステータス(高対低/neg)を決定するためのスコアリングアルゴリズムの適用は、PD-L1 TC及びIC染色細胞のパーセンテージの病理学者による評価中に捕捉された生データに基づき、プログラムに従って実施した。Final Algorithmは、主要有効性集団中の43人の患者からのサンプルにおいて前向きに適用し、主要有効性集団中の63人の患者に対しては後ろ向きに適用した。限定を意図するものではないが、PD-L1検出アッセイ(VENTANA PD-L1(SP263)アッセイ)は、PD-L1発現の評価及びUC集団全体のデュルバルマブに対する応答の可能性に関する有用な情報を提供することができるため、補足的診断アッセイとして役立ち得る。
【0125】
PD-L1発現カットオフ及び初期スコアリングアルゴリズムは、20人のUC対象(試験1108に登録された最初の20人のUC対象)からなるトレーニングセットに基づいて決定し、PD-L1高は、TC≧25%又はIC≧25%を有するベースラインPD-L1発現として初めに定義し、PD-L1低/negは、TC<25%及びIC<25%を有するベースラインPD-L1発現として定義した(Development Algorithm)。試験の後期に、Final Algorithmを展開したが、これは、Development Algorithmに対する修正から構成され、IC面積が、総腫瘍面積の≦1%を占めるとき、PD-L1発現ステータスは、次のように定義された:ベースラインPD-L1発現がTC≧25%及び/又はIC=100%であったとき、PD-L1高であり、また、ベースラインPD-L1発現がTC<25%及びIC<100%であったとき、PD-L1低/negである。この法則の追加によって、低IC含有率を有する症例におけるスコアリングの精度が高められた。
【0126】
E.試験対象の患者集団
主要有効性集団中の103人のUC患者のうち、94人は、ネオアジュバント/アジュバントセッティングで治療法を受けて12ヵ月以内に進行した患者を含むプラチナベースの療法中、または療法後に進行した2L+プラチナ後患者であった。他の9人は、治療に対してナイーブであるか、又はネオアジュバント/アジュバントセッティングでプラチナベースの療法を受け、療法の最後の投与から12ヵ月超で進行した患者で、1L患者と称された。9人の治療ナイーブ/1L患者のうち、7人は、試験で使用したシスプラチン適格性基準に基づき、シスプラチン不適格とみなされた
【0127】
試験1108で処置したUC患者集団は、高いアンメットクリニカルニーズを有する明確な集団を表し、臨床試験の実施において処置が意図される集団を提供した。意図される対象集団における現行の臨床試験実施に関する試験集団を正確に定義すると共に、また、安全性の理由から参加が不適切である患者を除外する目的で、参加基準を設計した。患者の年齢中央値は、60代半ばであり;大部分の患者は男性であり、大部分が、試験エントリー時に1のECOGステータスを有した(表2)。大半の患者が、試験エントリー時に1又は2回の選択治療歴を有した。3人の患者を除く全員が、以前、シスプラチンベース(69.9%)又はカルボプラチンベース(27.2%)いずれかのプラチナベース療法を受けたことがあった。ベースライン疾患特徴は、予後不良の集団を示した(表2)。主要有効性集団の約95%が、肝臓転移を有する50%近くを含め、内蔵疾患を有し;36.9%が、以前に少なくとも2回全身療法を受けたことがあり、14.6%が、以前に3回以上の選択療法を受けたことがあった。
【0128】
【0129】
【0130】
E.有効性
客観的奏効率(ORR)、奏功期間(DoR)、及びBICRによる疾患制御率
デュルバルマブ単剤療法は、臨床利益を予測する可能性が高い評価項目(ORR、DoR)に基づき、局所進行性又は転移性UCを有する患者において有意義な利益を実証した。主要有効性集団では、デュルバルマブ単剤療法は、全UC患者においてRECIST v1.1に従いBICRにより20.4%(95%CI:13.1%,29.5%)のORR、並びに2L+プラチナ後亜群において20.2%(95%CI:12.6%,29.8%)のORRをもたらした(表3)。3人の追加患者は、下記のように、DCO時点でBICRにより未確定の奏功を有し、これは確定される可能性がある:依然として処置中の3人の患者のうち1人は、DCO後に続くスキャンに基づき、BICRにより確定されたPRを有し;まだ処置中の3人のうち2番目の患者は、2回の連続したスキャンでPRと評価されたが、2回のスキャンの間の間隔は、26日(<4週間)であり;まだ処置中の3人のうち3番目の患者は、2回目のスキャン(12週目)で初期PRを有し、これは確定される可能性がある。
【0131】
患者の奏功は、治療中早期に起こり、持続性であった。21人の奏功者のうち、奏功までの時間の中央値は、1.41ヵ月(範囲、1.2~7.2)であった。DoR中央値は到達されなかった(範囲、1.4+~19.9ヵ月)。合計16人の患者は、少なくとも6ヵ月にわたって奏功が持続し;7人の患者は、少なくとも9ヵ月にわたって奏功が持続した。21人の奏功者のうち、18人(85.7%)は、DCOの時点で継続中の奏功を有した。BICRにより評価して、初期奏功後に進行した3人の患者のうち、3人全員が、10mg/kg Q2Wで投与したデュルバルマブによる12ヵ月の処置を完了し、ここで、286日目(疾患評価6)に標的病変の増加により進行した患者1人が含まれる。この患者は、その後、392日目(疾患評価8)に開始したBICRに従ってその後のCRを有し、650日目(疾患評価12)のDCO時点の最後のフォローアップまで継続的なCRを維持した。2L+プラチナ後UC亜群は、同様の有効性を示した(表3)。
【0132】
G.PD-L1亜群解析
デュルバルマブは、PD-L1高及びPD-L1低/neg亜群の両方において臨床活性及び奏功の持続性を明らかにしたが、VENTANA PD-L1(SP263)AssayでTC/ICを用いる組合せアルゴリズムは、高TPR(85.7%)及び高NPV(92.3%)を確かに示した。対照的に、TCのみ又はICのみのアルゴリズムは、より低いTPR及びNPVにより示されるように、それほど識別力はなかった。これらのデータは、デュルバルマブに応答する可能性が高い対象を同定するために組み合わせたTC又はICに基づくアルゴリズムの有用性を支持する。加えて、アッセイの高NPVを考慮すれば、これは、デュルバルマブに対する応答の可能性を患者に知らせる上で特に役立つ。すなわち、VENTANA PD-L1(SP263)AssayによりPD-L1高と分類される対象は、PD-L1低/negであった対象よりも高いORRを有する傾向があった。組合せアルゴリズムは、デュルバルマブに応答する可能性が最も高い対象を同定するためにこのアッセイの有用性を支持するが、応答する可能性がある対象を完全に除外するわけではない。スポンサーは、アッセイの高いNPVは、デュルバルマブに対する応答の可能性を患者に知らせる上で特に役立つが、デュルバルマブで処置した3人のPD-L1低/neg対象は、臨床応答(1人がPR及び2人が完全奏功)を有し、奏功はDCOの時点でも継続していることから、治療法から対象を除外するために使用するべきではないことを考慮した。
【0133】
PD-L1高及びPD-L1低/neg亜群において臨床活性を観察した。ORRは、PD-L1高亜群で29.5%(18/61;95%CI:18.5%,42.6%)であり、PD-L1低/neg亜群では7.7%(3/39;95%CI:1.6%,20.9%)であった。双方の亜群においてCRが観察された:PD-L1高、3人(4.9%)、PD-L1低/neg、2人(5.1%)の患者。両亜群の応答は、持続性であった。
【0134】
H.補助的有効性解析
補助的有効性集団では、ORRは、全UC患者について28.6%(95%CI:17.9%,41.3%)であり、2L+プラチナ後患者の場合は29.6%(95%CI:18.0%、43.6%)であった(表4)。応答期間の中央値は到達されなかった。主要有効性集団と同様に、PD-L1高及びPD-L1低/neg亜群において臨床活性を観察した。ORRは、PD-L1高亜群で40.0%(16/40;95%CI:24.9%,56.7%)であり、PD-L1低/neg亜群では8.7%(2/23;95%CI:1.1%,28.0%)であった。双方の亜群においてCRが観察された:PD-L1高、2人(5.0%)の患者;PD-L1低/neg、2人(8.7%)の患者。両亜群で観察された奏功は、持続性であった。
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
I.BICRによる無増悪生存
主要有効性集団における無増悪生存(PFS)中央値は、2.2ヵ月(95%CI:1.4,2.7)であった。6ヵ月時点のPFS率は、28.3%(95%CI:19.3%,37.9%)であった。PFS中央値は、PD-L1高亜群で2.5ヵ月、PD-L1低/neg亜群では1.5ヵ月であった。6ヵ月時点のPFS率は、PD-L1高亜群で39.2%(95%CI:26.4%,51.8%)であり、PD-L1低/neg亜群では13.4%(95%CI:4.2%,28.1%)であった。
【0140】
J.全生存率
主要有効性集団における全生存率(OS)中央値は、14.1ヵ月(95%CI:4.5、推定不能)であった。6ヵ月、9ヵ月、及び12ヵ月時点のOS率は、それぞれ60.3%(95%CI:48.7%、70.1%)、55.7%(95%CI:43.2%,66.4%)、及び52.4%(95%CI:39.1%,64.1%)であった(表5)。OS中央値は、PD-L1高群で到達されず、PD-L1低/neg亜群では3.3ヵ月であった。
図4は、OSのカプラン-マイヤー推定値を示す。
【0141】
【0142】
K.亜群別の有効性
客観的奏効(OR)は、例えば、内蔵転移若しくは肝臓転移を有する対象のような予後が不良の対象を含む、全ての対象について、ベースラインデモグラフィックス又は疾患の特徴に基づいて観察した。主要有効性集団では、内蔵転移、肝臓転移、及びリンパ節のみの亜群におけるORRは、それぞれ19.4%(19/98;95%CI:12.1%,28.6%)、10%(5/50;95%CI:3.3%,21.8%)及び40%(2/5;95%CI:5.3%,85.3%)であった。いくつかの亜群における点推定の数値に差が認められたが、サンプルサイズは小さく、95%CIは、中央値を下回る腫瘍負荷を有する患者が、より高いORRを有した腫瘍負荷を除き、ほとんどの亜群比較について重なった。地域、以前の選択療法、ベースラインクレアチニンクリアランス、原発性腫瘍の部位、及び以前のプラチナ療法をはじめとする主要亜群について比較可能なORRが観察された。
【0143】
NSCLC患者の治療にデュルバルマブを使用した別の臨床試験からのデータは、少なくとも2回の全身療法レジメンを以前受けた局所進行性若しくは転移性NSCLC患者における他の抗PD-1/PD-L1療法と一致する奏功及び持続性も支持した。NSCLC患者の試験は、デュルバルマブの臨床活性に補助的価値を追加する。例えば、NSCLC試験のコホート2は、デュルバルマブ10mg/kg Q2Wで処置した、上皮成長因子受容体/未分化リンパ腫キナーゼ野生型NSCLCを有する265人の患者を含み、>12ヵ月のフォローアップを含むマチュア(mature)データを有した。持続性奏功を有するPD-L1高及びPD-L1低/neg亜群においてORRを観察した。すなわち、ORRは、PD-L1高亜群では、16.4%(95%CI:10.8%,23.5)であり、PD-L1低/neg亜群では、7.5%(95%CI:3.1,14.9)であった。DCOの時点で、DoR中央値は、PD-L1高亜群の患者で12.3ヵ月であり、PD-L1低/neg亜群では、中央値に達しなかった。NSCLC試験において、OS中央値は、PD-L1高亜群及びPD-L1低/neg亜群でそれぞれ10.9ヵ月及び9.3ヵ月であった。
【0144】
L.臨床試験の結果
客観的奏効
デュルバルマブ単剤療法は、一般に使用される治療法に対する臨床利益を予測し得る評価項目である客観的奏効率(ORR)及び奏功期間(DoR)に基づき、局所進行性若しくは転移性UCを有する患者における有意義な利益を実証した。より具体的には、主要有効性集団(≧13週間のフォローアップの機会を有した全てのUC患者)において、ORRは、RECIST v1.1に従うBICRにより、20.4%(21/103;95%CI:13.1%,29.5%)であり、CRの最良の奏功を有する5人の患者(4.9%)を含んだ。2L+プラチナ後UC患者のORRは、20.2%(19/94;95%CI:12.6%、29.8%)であった。さらに、3人(全員が、DCOの時点でまだ処置中であった)が、DCOの時点で未確定の奏功を有した。補助的有効性集団(≧24週間のフォローアップの機会を有したUC患者)において、ORRは、28.6%(18/63;95%CI:17.9%,41.3%)であった。2L+プラチナ後UC患者のORRは、29.6%(16/54;95%CI:18.0%,43.6%)であった。
【0145】
応答期間
膀胱癌を治療するための試験1108では、奏功が処置の早期に起こり、持続性であった。奏功までの時間中央値は、1.41ヵ月(範囲、1.2~7.2ヵ月)であった。DoR中央値にはまだ到達されなかった(範囲、1.4+~19.9+ヵ月)。DCOの時点で、21人の奏功者のうち18人(85.7%)が、継続奏功を有し:16人の患者は、DoR>6ヵ月を有し;また、9人の患者が、DoR>9ヵ月を有した。RECIST v1.1に従うBICRにより進行した3人の患者の全員が、デュルバルマブによる12ヵ月の処置を完了した。これらの患者のうち1人は標的病変の増大のために進行したが、BICRにより後にCRを有し、これは、650日目のDCOの時点で最後のフォローアップまで維持された。
【0146】
無増悪生存(PFS)
主要有効性集団におけるPFS中央値は、2.2ヵ月(95%CI:1.4%、2.7%)であった。6ヵ月時点のPFSは、28.3%(95%CI:19.3%、37.9%)であった。
【0147】
全生存率(OS)
OS結果は、多種類の治療歴を有するUC集団において励みとなるものだった。OS中央値は、14.1ヵ月(95%CI:4.5、推定不可能)であり;6ヵ月、9ヵ月、及び12ヵ月時点のOS率は、それぞれ、60.3%(95%CI:48.7%,70.1%)、55.7%(95%CI:43.2%,66.4%)、及び52.4%(95%CI:39.1%,64.1%)であった。
【0148】
亜群における臨床活性
主要有効性集団における臨床活性は、予後不良の者を含め、PD-L1高及びPD-L1低/neg亜群(検証済VENTANA PD-L1[SP263]アッセイを用い、TC又はIC25%PD-L1発現により定義される)並びに予後不良の亜群を含む、様々なベースライン疾患亜群において認められた。PD-L1高亜群では、ORRは、29%(18/61;95%CI:18.5%、42.6%)であった。PD-L1低/neg亜群では、ORRは、7.7%(3/39;95%CI:1.6%、20.9%)であった。双方の亜群においてCRが観察された:PD-L1高、3(4.9%)及びPD-L1低/neg、2(5.1%)。ORRは、内蔵転移、肝臓転移、及びリンパ節のみの亜群において、それぞれ、19.4%(19/98;95%CI:12.1%、28.6%)、10%(5/50;95%CI:3.3%、21.8%)及び40%(2/5;95%CI:5.3%、85.3%)であった。
【0149】
試験1108のUCコホート(UC標的集団)からの説得力のある有効性及び安全性データは、主な標準プラチナベースのレジメン中又は後に疾患が進行した、局所進行性若しくは転移性膀胱癌、例えばUCを有する患者の処置におけるデュルバルマブの使用について本明細書に開示したデータを支持する。UCコホートでは、10mg/kg Q2Wで投与されるデュルバルマブの治療レジメンは、20.4%(21/103;95%CI:13.1%,29.5%)のORR、すなわち、一般に使用される療法に対して有意義な改善をもたらした。奏功は、処置の早期に起こり、持続性であった。21人の奏功者の間で、奏功までの時間中央値は、1.41ヵ月(範囲、1.2~7.2)であった。DoR中央値には達しなかった(範囲、1.4+~19.9+)が;16人の患者は、少なくとも6ヵ月間奏功を維持し、7人の患者は、少なくとも9ヵ月間奏功を維持した。21人の奏功者のうち18人(85.7%)は、DCO時点で継続中の奏功を有した。RECIST v1.1基準に従い、後に進行した3人の奏功者は、全12ヵ月にわたるデュルバルマブ療法を完了し、依然として生存している。
【0150】
PD-L1高(29.5%;18/61[95%CI:18.5%,42.6%])及びPD-L1低/neg亜群(7.7%;3/39[95%CI:1.6%,20.9%])の双方で奏功が観察され、持続性データは、全UCコホートと同等であった。UCコホートのOS中央値は、14.1ヵ月であり、6及び9ヵ月でのOS率は、それぞれ60.3%及び55.5%であった。これらの比率は、概して、プラチナ化学療法後からの生存利益を上回った。UCコホートの間で、一般的AE(≧10%)は、基礎疾患と一致し、疲労、便秘、食欲不振、吐気、貧血、背中の痛み、発熱、尿路感染症、下痢、末梢性浮腫、呼吸困難、及び嘔吐を含んだ。処置関連グレード3又は4AE(5.2%)、並びに死亡(1.0%)又はデュルバルマブの永久的中止(3.7%)を招いた処理関連AEの発生率は低く、患者集団全体で一致しており、UCなどの膀胱癌を処置するこのレジメンの耐容性に優れた安全性プロフィールを支持するものである。処置に関連する2件の死亡が起こったが、いずれも、自己免疫性肝炎及び肺炎によるもの(imAE)であった。
【0151】
デュルバルマブの使用に関連する重要なリスク(すなわち、免疫媒介性肺炎、肝炎、下痢若しくは大腸炎、内分泌障害(例えば、甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症、副腎不全、及び下垂体機能低下症、1型糖尿病)、腎炎、皮膚炎若しくは発疹、並びに注入に伴う反応)は、低い割合で起こり、概して重症度は低く、確立された処置ガイドラインにより管理可能であった。UCコホートでは、89人(46.6%)の患者が、特に注目すべき有害事象(AESI)を有し、15(7.9%)の患者が、imAEとして同定される事象を有した。1人の患者は、imAEによりデュルバルマブを永久的に中止した。最も一般的なimAE(>1%の患者)は、甲状腺機能低下症(3.7%)及び選択肝臓事象(1.6%)のカテゴリーに入った。3人の患者は、ALT上昇、AST上昇、トランスアミナーゼ上昇、斑点状丘疹、及び急性腎障害(尿細管間質性腎炎)を含むグレード3又は4imAEを有した。
【0152】
UCなどの膀胱癌の処置における本明細書に記載の方法及び結果によれば、抗PD-L1抗体デュルバルマブは、PD-L1高及びPD-L1低/neg亜群の双方において臨床活性(完全奏功を含む)及び奏功の持続性を実証し、安全性プロフィールに大きな差はなかった。従って、PD-L1発現の知識は、デュルバルマブの安全且つ有効な使用にとって必須ではない。しかし、患者の腫瘍のPD-L1ステータスは、患者の治療オプションの利益及びリスクの決定を補助し得ると共に、医師と患者の対話中に治療予想を設定する上でも役立ち得る。
【0153】
現在、プラチナベースの療法後に疾患が進行した局所進行性若しくは転移性UCを有する患者のための有効又は標準的な第2選択(2L)療法はない。現在の治療法の頼みの綱は、ORRが低く(約10%)、しかもOS範囲約6~9ヵ月の化学療法であり、これは、好中球減少症(7%~83%)、貧血(11%~27%)、血小板減少症(6%~23%)、疼痛(39%)、及び感染症(6%)のような重大な毒性を伴う。デュルバルマブで処置した患者における臨床的に重要なAEの割合は、一般に使用される療法と比較して好ましく、imAEの性質及び頻度は、アテゾリズマブで処置した患者の割合と概ね一致した。
【0154】
10mg/kg Q2WのデュルバルマブによるUCなどの膀胱癌を有する対象の処置は、適用において好ましい利益:リスクプロフィールを有することが判明した。説得力のあるORR及び奏功の持続性はいずれも、試験から決定される2つの代替評価項目であり、これらは、利用可能な治療法がない地域における臨床利益及び好ましい耐容性プロフィールを支持するものとなる。標準的プラチナベースレジメン中又は後に疾患が進行した局所進行性若しくは転移性UCを有する患者に関する高いアンメット医療ニーズを考慮すれば、当技術分野において、健全且つ有益な治療オプションがない生命に関わる重篤な疾患である膀胱癌及びUCを治療する目的でのデュルバルマブの使用が必要とされる。従って、10~20mg/kg Q2W又はQ4Wの用量、特に10mg/kg Q2Wの用量で、膀胱癌を有する対象に投与されるデュルバルマブを含む本方法は、治療を必要とする膀胱癌患者が治療可能な、臨床的に有益な結果をもたらす治療レジメンを提供する。
【0155】
実施例3
膀胱癌、例えばUCを治療するためのデュルバルマブとトレメリムマブの併用
検証的臨床試験(DANUBE)は、UCの治療にデュルバルマブを使用する実施例2に記載の臨床試験を支持する。補助的臨床試験は、第3相のランダム化、オープンラベル、比較、多施設、国際試験であり、ここでは、デュルバルマブ単剤療法(4週間毎に1.5gIV(Q4W));又はデュルバルマブ(1.5g IV Q4W)とトレメリムマブ(75mg IV Q4W)の併用を各々最大4用量/サイクル、続いてデュルバルマブ(1.5g IV Q4W)の有効及び安全性を、標準治療(SoC):(シスプラチン適格性に応じて、シスプラチン+ゲムシタビン又はカルボプラチン+ゲムシタビンダブレット)1L化学療法と比較して決定する。この試験では患者は、尿路上皮(腎盂、尿管、膀胱、及び尿道を含む)の組織学的若しくは細胞学的に立証された、切除不能なステージIV移行細胞癌(移行細胞及び混合型移行/非移行細胞組織学)を有し、治療に対してナイーブである。患者は、デュルバルマブ+トレメリムマブ併用療法、デュルバルマブ単剤療法、又はSoC治療による処置にランダムに分けた(1:1:1)。主要な目的は、全UC患者におけるPFS及びOSに関してSoC治療に対するデュルバルマブ+トレメリムマブ併用療法の有効性を評価すること、並びにPD-L1高(PD-L1高UC患者)として同定されたUC癌又は腫瘍細胞若しくは組織を有するUC患者におけるOSに関して、SoC治療に対するデュルバルマブ単剤療法の有効性を評価することである。重要な副次的目的は、PD-L1高UC患者のPFSに関して、及び全UC患者におけるPFS及びOSに関して、SoC治療に対するデュルバルマブ単剤療法の有効性の評価である。この試験では、ランダム化した625人の患者のデータを更新する必要があり、その登録は継続中である。試験の進行と共に、中間OSを含むPFSを分析し、最終OS評価は試験の終わりに実施する。
【0156】
その他の実施形態
以上の説明から、本明細書に記載する本発明に変更及び修正を加えて、それを様々な用途及び条件に採用することができることが明らかになるであろう。こうした実施形態も、以下に示す特許請求の範囲に含まれる。
【0157】
本明細書においてある変数の任意の定義に要素を列挙する記載は、いずれか単一の要素又は列挙された要素の組合せ(若しくは部分組合せ)の定義を含む。本明細書の実施形態の記載は、いずれか単一の実施形態として、又はいずれか他の実施形態若しくはその部分と組み合わせて、その実施形態を含む。
【0158】
本明細書で述べる特許及び刊行物は全て、あたかも各々の特許及び刊行物が、明示的且つ個別に参照により組み込まれると記載されているのと同じ程度まで、参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0159】
配列番号のリスト
配列番号1-PD-L1ポリペプチド配列
【化4】
【0160】
配列番号2-PD-L1核酸配列
【化5】
【化6】
【0161】
【0162】
配列番号4-MEDI4736VH
【化8】
配列番号5-MEDI4736VH CDR1
GFTFSRYWMS
配列番号6-MEDI4736VH CDR2
NIKQDGSEKYYVDSVKG
配列番号7-MEDI4736VH CDR3
EGGWFGELAFDY
配列番号8-MEDI4736VL CDR1
RASQRVSSSYLA
配列番号9-MEDI4736VL CDR2
DASSRAT
配列番号10-MEDI4736VL CDR3
QQYGSLPWT
【0163】
【0164】
配列番号12-トレメリムマブVH
【化10】
配列番号13-トレメリムマブVH CDR1
GFTFSSYGMH
配列番号14-トレメリムマブVH CDR2
VIWYDGSNKYYADSV
配列番号15-トレメリムマブVH CDR3
DPRGATLYYYYYGMDV
配列番号16-トレメリムマブVL CDR1
RASQSINSYLD
配列番号17-トレメリムマブVL CDR2
AASSLQS
配列番号18-トレメリムマブVL CDR3
QQYYSTPFT
【0165】
SEQUENCE LISTING
<110> MEDIMMUNE, LLC
<120> ANTI-PD-L1 ANTIBODY TREATMENT OF BLADDER CANCER
<130> PA23-661
<150> US 62/459,700
<151> 2017-02-16
<160> 18
<170> PatentIn version 3.5
<210> 1
<211> 176
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<400> 1
Met Arg Ile Phe Ala Val Phe Ile Phe Met Thr Tyr Trp His Leu Leu
1 5 10 15
Asn Ala Pro Tyr Asn Lys Ile Asn Gln Arg Ile Leu Val Val Asp Pro
20 25 30
Val Thr Ser Glu His Glu Leu Thr Cys Gln Ala Glu Gly Tyr Pro Lys
35 40 45
Ala Glu Val Ile Trp Thr Ser Ser Asp His Gln Val Leu Ser Gly Lys
50 55 60
Thr Thr Thr Thr Asn Ser Lys Arg Glu Glu Lys Leu Phe Asn Val Thr
65 70 75 80
Ser Thr Leu Arg Ile Asn Thr Thr Thr Asn Glu Ile Phe Tyr Cys Thr
85 90 95
Phe Arg Arg Leu Asp Pro Glu Glu Asn His Thr Ala Glu Leu Val Ile
100 105 110
Pro Glu Leu Pro Leu Ala His Pro Pro Asn Glu Arg Thr His Leu Val
115 120 125
Ile Leu Gly Ala Ile Leu Leu Cys Leu Gly Val Ala Leu Thr Phe Ile
130 135 140
Phe Arg Leu Arg Lys Gly Arg Met Met Asp Val Lys Lys Cys Gly Ile
145 150 155 160
Gln Asp Thr Asn Ser Lys Lys Gln Ser Asp Thr His Leu Glu Glu Thr
165 170 175
<210> 2
<211> 3349
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<400> 2
ggcgcaacgc tgagcagctg gcgcgtcccg cgcggcccca gttctgcgca gcttcccgag 60
gctccgcacc agccgcgctt ctgtccgcct gcagggcatt ccagaaagat gaggatattt 120
gctgtcttta tattcatgac ctactggcat ttgctgaacg ccccatacaa caaaatcaac 180
caaagaattt tggttgtgga tccagtcacc tctgaacatg aactgacatg tcaggctgag 240
ggctacccca aggccgaagt catctggaca agcagtgacc atcaagtcct gagtggtaag 300
accaccacca ccaattccaa gagagaggag aagcttttca atgtgaccag cacactgaga 360
atcaacacaa caactaatga gattttctac tgcactttta ggagattaga tcctgaggaa 420
aaccatacag ctgaattggt catcccagaa ctacctctgg cacatcctcc aaatgaaagg 480
actcacttgg taattctggg agccatctta ttatgccttg gtgtagcact gacattcatc 540
ttccgtttaa gaaaagggag aatgatggat gtgaaaaaat gtggcatcca agatacaaac 600
tcaaagaagc aaagtgatac acatttggag gagacgtaat ccagcattgg aacttctgat 660
cttcaagcag ggattctcaa cctgtggttt aggggttcat cggggctgag cgtgacaaga 720
ggaaggaatg ggcccgtggg atgcaggcaa tgtgggactt aaaaggccca agcactgaaa 780
atggaacctg gcgaaagcag aggaggagaa tgaagaaaga tggagtcaaa cagggagcct 840
ggagggagac cttgatactt tcaaatgcct gaggggctca tcgacgcctg tgacagggag 900
aaaggatact tctgaacaag gagcctccaa gcaaatcatc cattgctcat cctaggaaga 960
cgggttgaga atccctaatt tgagggtcag ttcctgcaga agtgcccttt gcctccactc 1020
aatgcctcaa tttgttttct gcatgactga gagtctcagt gttggaacgg gacagtattt 1080
atgtatgagt ttttcctatt tattttgagt ctgtgaggtc ttcttgtcat gtgagtgtgg 1140
ttgtgaatga tttcttttga agatatattg tagtagatgt tacaattttg tcgccaaact 1200
aaacttgctg cttaatgatt tgctcacatc tagtaaaaca tggagtattt gtaaggtgct 1260
tggtctcctc tataactaca agtatacatt ggaagcataa agatcaaacc gttggttgca 1320
taggatgtca cctttattta acccattaat actctggttg acctaatctt attctcagac 1380
ctcaagtgtc tgtgcagtat ctgttccatt taaatatcag ctttacaatt atgtggtagc 1440
ctacacacat aatctcattt catcgctgta accaccctgt tgtgataacc actattattt 1500
tacccatcgt acagctgagg aagcaaacag attaagtaac ttgcccaaac cagtaaatag 1560
cagacctcag actgccaccc actgtccttt tataatacaa tttacagcta tattttactt 1620
taagcaattc ttttattcaa aaaccattta ttaagtgccc ttgcaatatc aatcgctgtg 1680
ccaggcattg aatctacaga tgtgagcaag acaaagtacc tgtcctcaag gagctcatag 1740
tataatgagg agattaacaa gaaaatgtat tattacaatt tagtccagtg tcatagcata 1800
aggatgatgc gaggggaaaa cccgagcagt gttgccaaga ggaggaaata ggccaatgtg 1860
gtctgggacg gttggatata cttaaacatc ttaataatca gagtaatttt catttacaaa 1920
gagaggtcgg tacttaaaat aaccctgaaa aataacactg gaattccttt tctagcatta 1980
tatttattcc tgatttgcct ttgccatata atctaatgct tgtttatata gtgtctggta 2040
ttgtttaaca gttctgtctt ttctatttaa atgccactaa attttaaatt catacctttc 2100
catgattcaa aattcaaaag atcccatggg agatggttgg aaaatctcca cttcatcctc 2160
caagccattc aagtttcctt tccagaagca actgctactg cctttcattc atatgttctt 2220
ctaaagatag tctacatttg gaaatgtatg ttaaaagcac gtatttttaa aatttttttc 2280
ctaaatagta acacattgta tgtctgctgt gtactttgct atttttattt attttagtgt 2340
ttcttatata gcagatggaa tgaatttgaa gttcccaggg ctgaggatcc atgccttctt 2400
tgtttctaag ttatctttcc catagctttt cattatcttt catatgatcc agtatatgtt 2460
aaatatgtcc tacatataca tttagacaac caccatttgt taagtatttg ctctaggaca 2520
gagtttggat ttgtttatgt ttgctcaaaa ggagacccat gggctctcca gggtgcactg 2580
agtcaatcta gtcctaaaaa gcaatcttat tattaactct gtatgacaga atcatgtctg 2640
gaacttttgt tttctgcttt ctgtcaagta taaacttcac tttgatgctg tacttgcaaa 2700
atcacatttt ctttctggaa attccggcag tgtaccttga ctgctagcta ccctgtgcca 2760
gaaaagcctc attcgttgtg cttgaaccct tgaatgccac cagctgtcat cactacacag 2820
ccctcctaag aggcttcctg gaggtttcga gattcagatg ccctgggaga tcccagagtt 2880
tcctttccct cttggccata ttctggtgtc aatgacaagg agtaccttgg ctttgccaca 2940
tgtcaaggct gaagaaacag tgtctccaac agagctcctt gtgttatctg tttgtacatg 3000
tgcatttgta cagtaattgg tgtgacagtg ttctttgtgt gaattacagg caagaattgt 3060
ggctgagcaa ggcacatagt ctactcagtc tattcctaag tcctaactcc tccttgtggt 3120
gttggatttg taaggcactt tatccctttt gtctcatgtt tcatcgtaaa tggcataggc 3180
agagatgata cctaattctg catttgattg tcactttttg tacctgcatt aatttaataa 3240
aatattctta tttattttgt tacttggtac accagcatgt ccattttctt gtttattttg 3300
tgtttaataa aatgttcagt ttaacatccc agtggagaaa gttaaaaaa 3349
<210> 3
<211> 108
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
polypeptide
<400> 3
Glu Ile Val Leu Thr Gln Ser Pro Gly Thr Leu Ser Leu Ser Pro Gly
1 5 10 15
Glu Arg Ala Thr Leu Ser Cys Arg Ala Ser Gln Arg Val Ser Ser Ser
20 25 30
Tyr Leu Ala Trp Tyr Gln Gln Lys Pro Gly Gln Ala Pro Arg Leu Leu
35 40 45
Ile Tyr Asp Ala Ser Ser Arg Ala Thr Gly Ile Pro Asp Arg Phe Ser
50 55 60
Gly Ser Gly Ser Gly Thr Asp Phe Thr Leu Thr Ile Ser Arg Leu Glu
65 70 75 80
Pro Glu Asp Phe Ala Val Tyr Tyr Cys Gln Gln Tyr Gly Ser Leu Pro
85 90 95
Trp Thr Phe Gly Gln Gly Thr Lys Val Glu Ile Lys
100 105
<210> 4
<211> 121
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
polypeptide
<400> 4
Glu Val Gln Leu Val Glu Ser Gly Gly Gly Leu Val Gln Pro Gly Gly
1 5 10 15
Ser Leu Arg Leu Ser Cys Ala Ala Ser Gly Phe Thr Phe Ser Arg Tyr
20 25 30
Trp Met Ser Trp Val Arg Gln Ala Pro Gly Lys Gly Leu Glu Trp Val
35 40 45
Ala Asn Ile Lys Gln Asp Gly Ser Glu Lys Tyr Tyr Val Asp Ser Val
50 55 60
Lys Gly Arg Phe Thr Ile Ser Arg Asp Asn Ala Lys Asn Ser Leu Tyr
65 70 75 80
Leu Gln Met Asn Ser Leu Arg Ala Glu Asp Thr Ala Val Tyr Tyr Cys
85 90 95
Ala Arg Glu Gly Gly Trp Phe Gly Glu Leu Ala Phe Asp Tyr Trp Gly
100 105 110
Gln Gly Thr Leu Val Thr Val Ser Ser
115 120
<210> 5
<211> 10
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
peptide
<400> 5
Gly Phe Thr Phe Ser Arg Tyr Trp Met Ser
1 5 10
<210> 6
<211> 17
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
peptide
<400> 6
Asn Ile Lys Gln Asp Gly Ser Glu Lys Tyr Tyr Val Asp Ser Val Lys
1 5 10 15
Gly
<210> 7
<211> 12
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
peptide
<400> 7
Glu Gly Gly Trp Phe Gly Glu Leu Ala Phe Asp Tyr
1 5 10
<210> 8
<211> 12
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
peptide
<400> 8
Arg Ala Ser Gln Arg Val Ser Ser Ser Tyr Leu Ala
1 5 10
<210> 9
<211> 7
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
peptide
<400> 9
Asp Ala Ser Ser Arg Ala Thr
1 5
<210> 10
<211> 9
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
peptide
<400> 10
Gln Gln Tyr Gly Ser Leu Pro Trp Thr
1 5
<210> 11
<211> 139
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
polypeptide
<400> 11
Pro Ser Ser Leu Ser Ala Ser Val Gly Asp Arg Val Thr Ile Thr Cys
1 5 10 15
Arg Ala Ser Gln Ser Ile Asn Ser Tyr Leu Asp Trp Tyr Gln Gln Lys
20 25 30
Pro Gly Lys Ala Pro Lys Leu Leu Ile Tyr Ala Ala Ser Ser Leu Gln
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Ser Gly Val Pro Ser Arg Phe Ser Gly Ser Gly Ser Gly Thr Asp Phe
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Cys Gln Gln Tyr Tyr Ser Thr Pro Phe Thr Phe Gly Pro Gly Thr Lys
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<211> 167
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
polypeptide
<400> 12
Gly Val Val Gln Pro Gly Arg Ser Leu Arg Leu Ser Cys Ala Ala Ser
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Gly Phe Thr Phe Ser Ser Tyr Gly Met His Trp Val Arg Gln Ala Pro
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Gly Lys Gly Leu Glu Trp Val Ala Val Ile Trp Tyr Asp Gly Ser Asn
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Lys Tyr Tyr Ala Asp Ser Val Lys Gly Arg Phe Thr Ile Ser Arg Asp
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Asn Ser Lys Asn Thr Leu Tyr Leu Gln Met Asn Ser Leu Arg Ala Glu
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Asp Thr Ala Val Tyr Tyr Cys Ala Arg Asp Pro Arg Gly Ala Thr Leu
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Tyr Tyr Tyr Tyr Tyr Gly Met Asp Val Trp Gly Gln Gly Thr Thr Val
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Thr Val Ser Ser Ala Ser Thr Lys Gly Pro Ser Val Phe Pro Leu Ala
115 120 125
Pro Cys Ser Arg Ser Thr Ser Glu Ser Thr Ala Ala Leu Gly Cys Leu
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Val Lys Asp Tyr Phe Pro Glu Pro Val Thr Val Ser Trp Asn Ser Gly
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Ala Leu Thr Ser Gly Val His
165
<210> 13
<211> 10
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
peptide
<400> 13
Gly Phe Thr Phe Ser Ser Tyr Gly Met His
1 5 10
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<211> 15
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
peptide
<400> 14
Val Ile Trp Tyr Asp Gly Ser Asn Lys Tyr Tyr Ala Asp Ser Val
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<210> 15
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<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
peptide
<400> 15
Asp Pro Arg Gly Ala Thr Leu Tyr Tyr Tyr Tyr Tyr Gly Met Asp Val
1 5 10 15
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<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
peptide
<400> 16
Arg Ala Ser Gln Ser Ile Asn Ser Tyr Leu Asp
1 5 10
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<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
peptide
<400> 17
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1 5
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<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
peptide
<400> 18
Gln Gln Tyr Tyr Ser Thr Pro Phe Thr
1 5