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特開2024-38039キメラ活性化受容体及びキメラ刺激受容体を発現する細胞並びにその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038039
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】キメラ活性化受容体及びキメラ刺激受容体を発現する細胞並びにその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0783 20100101AFI20240312BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240312BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20240312BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240312BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20240312BHJP
【FI】
C12N5/0783
C12N5/10
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/13
C12N15/12
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023216495
(22)【出願日】2023-12-22
(62)【分割の表示】P 2019558623の分割
【原出願日】2018-04-24
(31)【優先権主張番号】62/490,576
(32)【優先日】2017-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/490,578
(32)【優先日】2017-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/490,580
(32)【優先日】2017-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】321002949
【氏名又は名称】ユーリカ セラピューティックス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】リュー, ホン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン, ペンボー
(72)【発明者】
【氏名】ホラン, ルーカス
(72)【発明者】
【氏名】シュー, イーヤン
(72)【発明者】
【氏名】ステイリー, ビナズ ケー.
(72)【発明者】
【氏名】リュー, リャンシン
(72)【発明者】
【氏名】ユン, ホンルオ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】キメラ抗体-T細胞受容体(TCR)構築物(caTCR)及びキメラシグナル伝達受容体(CSR)構築物を含む免疫細胞(T細胞など)を提供する。
【解決手段】caTCRは、標的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュールと、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することができるT細胞受容体モジュール(TCRM)とを含み、CSRは、標的リガンドに特異的に結合するリガンド結合ドメインと、免疫細胞に刺激シグナルを提供することができる共刺激シグナル伝達ドメインと、を含む。これらの細胞を作製及び使用する方法も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫細胞であって、
a)キメラ抗体-T細胞受容体(TCR)構築物(caTCR)であって、
i)標的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュール、並びに
ii)第1のTCR膜貫通ドメイン(TCR-TM)を含む第1のTCRドメイン(
TCRD)、及び第2のTCR-TMを含む第2のTCRDを含むT細胞受容体モジュー
ル(TCRM)を含み、
前記TCRMが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の動員を促進する、キ
メラ抗体-T細胞受容体(TCR)構築物(caTCR)と、
b)キメラシグナル伝達受容体(CSR)であって、
i)標的リガンドに結合又は相互作用することができるリガンド結合モジュール、
ii)膜貫通モジュール、及び
iii)前記免疫細胞に共刺激シグナルを提供することができる共刺激免疫細胞シグ
ナル伝達モジュールを含み、
前記リガンド結合モジュール及び前記共刺激免疫細胞シグナル伝達モジュールが同一の
分子に由来せず、前記CSRが機能的な一次免疫細胞シグナル伝達ドメインを欠く、キメ
ラシグナル伝達受容体(CSR)と、
を含む、免疫細胞。
【請求項2】
前記CSRが、いずれの一次免疫細胞シグナル伝達配列も欠く、請求項1に記載の免疫
細胞。
【請求項3】
前記標的抗原が細胞表面抗原である、請求項1又は2に記載の免疫細胞。
【請求項4】
前記標的抗原が、ペプチド及び主要組織適合遺伝子複合体(MHC)タンパク質を含む
複合体である、請求項1又は2に記載の免疫細胞。
【請求項5】
前記第1のTCR-TMが、第1のT細胞受容体の膜貫通ドメインのうちの1つに由来
し、前記第2のTCR-TMが、前記第1のT細胞受容体の他の膜貫通ドメインに由来す
る、請求項1~4のいずれか一項に記載の免疫細胞。
【請求項6】
前記TCR-TMのうちの少なくとも1つが天然に存在しないものである、請求項5に
記載の免疫細胞。
【請求項7】
前記第1のT細胞受容体がγ/δ T細胞受容体である、請求項5又は6に記載の免疫
細胞。
【請求項8】
前記抗原結合モジュールが多重特異性である、請求項1~7のいずれか一項に記載の免
疫細胞。
【請求項9】
前記caTCRが、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメインを含む安定化モジ
ュールを更に含み、前記第1及び第2の安定化ドメインが、前記caTCRを安定化させ
る、互いの結合親和性を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の免疫細胞。
【請求項10】
前記安定化モジュールが、C1-Cモジュール、C2-C2モジュール、C
3-C3モジュール、及びC4-C4モジュールからなる群から選択される、請求
項9に記載の免疫細胞。
【請求項11】
前記標的抗原と前記標的リガンドが同一である、請求項1~10のいずれか一項に記載
の免疫細胞。
【請求項12】
前記標的抗原と前記標的リガンドが異なる、請求項1~10のいずれか一項に記載の免
疫細胞。
【請求項13】
前記標的リガンドが、前記標的抗原を提示する細胞の表面に発現するリガンドである、
請求項12に記載の免疫細胞。
【請求項14】
前記標的リガンドが、疾患関連リガンドである、請求項1~13のいずれか一項に記載
の免疫細胞。
【請求項15】
前記標的リガンドが、がん関連リガンドである、請求項14に記載の免疫細胞。
【請求項16】
前記標的リガンドがウイルス関連リガンドである、請求項14に記載の免疫細胞。
【請求項17】
前記標的リガンドが免疫調節分子である、請求項1~13のいずれか一項に記載の免疫
細胞。
【請求項18】
前記免疫調節分子が免疫抑制受容体であり、前記CSRが前記免疫抑制受容体のアンタ
ゴニストである、請求項17に記載の免疫細胞。
【請求項19】
前記免疫調節分子が免疫刺激受容体であり、前記CSRが前記免疫刺激受容体のアゴニ
ストである、請求項17に記載の免疫細胞。
【請求項20】
前記標的リガンドが免疫チェックポイント分子である、請求項17に記載の免疫細胞。
【請求項21】
前記標的リガンドが阻害性サイトカインである、請求項17に記載の免疫細胞。
【請求項22】
前記標的リガンドがアポトーシス分子である、請求項1~13のいずれか一項に記載の
免疫細胞。
【請求項23】
前記リガンド結合モジュールが抗体部分である、請求項1~22のいずれか一項に記載
の免疫細胞。
【請求項24】
前記リガンド結合モジュールが、受容体の細胞外ドメインに由来する、請求項1~22
のいずれか一項に記載の免疫細胞。
【請求項25】
前記CSRの前記膜貫通モジュールが、CD28、CD3ε、CD3ζ、CD45、C
D4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、
CD80、CD86、CD134、CD137、又はCD154に由来する膜貫通ドメイ
ンを含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の免疫細胞。
【請求項26】
前記共刺激免疫細胞シグナル伝達モジュールが、TCRの共刺激受容体の細胞内ドメイ
ンに由来する、請求項1~25のいずれか一項に記載の免疫細胞。
【請求項27】
前記共刺激受容体が、CD28、4-1BB、OX40、ICOS、CD27、及びC
D40からなる群から選択される、請求項26に記載の免疫細胞。
【請求項28】
前記CSRの発現が誘導可能である、請求項1~27のいずれか一項に記載の免疫細胞
【請求項29】
前記CSRの発現が、前記免疫細胞の活性化の際に誘導可能である、請求項28に記載
の免疫細胞。
【請求項30】
前記caTCRの前記抗原結合モジュールが、CD19に結合する抗体部分を含み、前
記CSRの前記リガンド結合モジュールがCD19に結合するscFvを含み、前記膜貫
通モジュール及び共刺激免疫細胞シグナル伝達モジュールは両方ともCD28に由来する
、請求項1~29のいずれか一項に記載の免疫細胞。
【請求項31】
前記caTCRの前記抗原結合モジュールが、AFPに結合する抗体部分を含み、前記
CSRの前記リガンド結合モジュールがGPC3に結合するscFvを含み、前記膜貫通
モジュール及び共刺激免疫細胞シグナル伝達モジュールは両方ともCD28に由来する、
請求項1~29のいずれか一項に記載の免疫細胞。
【請求項32】
前記caTCRの前記抗原結合モジュールが、CD19に結合する抗体部分を含み、前
記CSRの前記リガンド結合モジュールがCD20に結合するscFvを含み、前記膜貫
通モジュール及び共刺激免疫細胞シグナル伝達モジュールは両方ともCD28に由来する
、請求項1~29のいずれか一項に記載の免疫細胞。
【請求項33】
請求項1~32のいずれか一項に記載のcaTCR及びCSRをコードしている1つ以
上の核酸であって、前記caTCR及びCSRがそれぞれ、前記1つ以上の核酸によりコ
ードされる1つ以上のポリペプチド鎖からなる、1つ以上の核酸。
【請求項34】
請求項33に記載の1つ以上の核酸を含む、1つ以上のベクター。
【請求項35】
請求項33に記載の1つ以上の核酸、請求項34に記載の1つ以上のベクターを含む、
免疫細胞。
【請求項36】
前記免疫細胞が、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞、及び
サプレッサーT細胞からなる群から選択される、請求項1~32のいずれか一項に記載の
免疫細胞。
【請求項37】
請求項1~32のいずれか一項に記載の免疫細胞と、医薬的に許容される担体と、を含
む、医薬組成物。
【請求項38】
標的抗原を提示する標的細胞を殺傷する(又は標的抗原関連疾患を治療する)方法であ
って、前記標的細胞を請求項1~32のいずれか一項に記載の免疫細胞と接触させること
を含む、方法。
【請求項39】
標的抗原関連疾患の治療を必要とする個体において標的抗原関連疾患を治療する方法で
あって、有効量の請求項37に記載の医薬組成物を前記個体に投与することを含む、方法
【請求項40】
caTCRを含むか、又はcaTCRをコードする核酸で形質導入された免疫細胞に共
刺激シグナルを提供する方法であって、請求項33に記載の1つ以上の核酸又は請求項3
4に記載の1つ以上のベクターを前記細胞に導入することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2017年4月26日出願の米国特許仮出願第62/490,576号、2
017年4月26日出願の米国特許仮出願第62/490,578号、及び、2017年
4月26日出願の米国特許仮出願第62/490,580号に対する優先権を主張するも
のであり、それらの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
[ASCIIテキストファイルでの配列表の提出]
【0002】
ASCIIテキストファイルでの以下の提出物の内容は、参照によりその全体が本明細
書に組み込まれる:コンピュータ可読形態(CRF)の配列表(ファイル名:75004
2001040SEQLIST.txt、記録日:2018年4月24日、サイズ:10
7KB)。
【0003】
本発明は、キメラ抗体-T細胞受容体(TCR)構築物(caTCR)及びキメラシグ
ナル伝達受容体(CSR)構築物を含む免疫細胞(T細胞など)に関する。CaTCRは
、標的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュールと、少なくとも1つのTCR関連シグ
ナル伝達分子を動員することができるT細胞受容体モジュール(TCRM)とを含み、C
SRは、標的リガンドに特異的に結合するリガンド結合ドメインと、免疫細胞に刺激シグ
ナルを提供することができる共刺激シグナル伝達ドメインと、を含む。
【背景技術】
【0004】
T細胞媒介性免疫は、ウイルス、細菌、寄生虫感染、又は悪性細胞を排除するために抗
原(Ag)特異的Tリンパ球を発現する適応過程である。それはまた、自己抗原の異常認
識を伴い、自己免疫炎症性疾患をもたらす。Tリンパ球のAg特異性は、Ag提示細胞(
APC)上の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子により提示される固有の抗原ペプ
チドのT細胞受容体(TCR)を通じた認識に基づく(Broere,et al.,P
rinciples of Immunopharmacology,2011)。各T
リンパ球は、胸腺における成熟時の発生選択の結果として、細胞表面に固有のTCRを発
現する。TCRは、αβヘテロ二量体又はγδヘテロ二量体のいずれかとして2つの形態
で生じる。T細胞は、細胞表面にαβ形態又はγδ形態のいずれかのTCRを発現する。
4つの鎖、α/β/γ/δは全て、高多型「免疫グロブリン可変領域」様のN末端ドメイ
ン及び「免疫グロブリン定常領域」様の第2のドメインからなる特徴的な細胞外構造を有
する。これらのドメインのそれぞれが、特徴的なドメイン内ジスルフィド架橋を有する。
定常領域は、細胞膜の近位にあり、連結ペプチド、膜貫通領域、及び短い細胞質尾部が続
く。ヘテロ二量体TCRの2つの鎖間の共有結合は、細胞外定常ドメインと膜貫通領域と
を架橋する短い連結ペプチド配列内に位置するシステイン残基によって形成され、それは
対応する位置で対になったTCR鎖システイン残基とジスルフィド結合を形成する(Th
e T cell Receptor Factsbook,2001)。
【0005】
Αβ及びγδのTCRは、非多型膜結合CD3タンパク質に関連して、TCRヘテロ二
量体及び3つの二量体シグナル伝達分子、CD3δ/ε、CD3γ/ε、及びCD3ζ/
ζ又はζ/ηからなる、機能性八量体TCR-CD3複合体を形成する。各サブユニット
の膜貫通ドメイン内のイオン化可能な残基は、複合体を一緒に保持する相互作用の極性ネ
ットワークを形成する。T細胞活性化のために、TCRのN末端可変領域は、標的細胞の
表面に提示されるペプチド/MHC複合体を認識し、一方、CD3タンパク質は、シグナ
ル伝達に関与する(Call et al.,Cell.111(7):967-79,
2002;The T cell Receptor Factsbook,2001)
【0006】
通常型TCRとも呼ばれるαβのTCRは、ほとんどのリンパ球で発現し、グリコシル
化多型α及びβ鎖からなる。異なるαβのTCRsは、寸法及び形状が比較的一定である
、MHC II(主にAPC細胞表面で発現)とMHC I(全ての有核細胞で発現され
る)の分子の表面に埋め込まれた異なるペプチドを区別することができる。αβのTCR
と構造的に類似しているが、γδのTCRは、MHC提示とは独立した様式で、炭水化物
、ヌクレオチド、又はリン含有抗原を認識する(The T cell Recepto
r Factsbook,2001、Girardi et al.,J.Invest
.Dermatol.126(1):25-31,2006、Hayes et al.
,Immunity.16(6):827-38,2002)。
【0007】
過去20年間、免疫学と腫瘍生物学の基礎的な進展は、多数の腫瘍抗原の同定と相まっ
て、細胞ベースの免疫療法の分野で大きな進歩をもたらした。T細胞療法は、細胞ベース
の免疫療法の分野において大きな部分を占め、自家性及びエクスビボで増殖したT細胞を
患者に移植することによってがんを治療することを目的とし、いくつかの顕著な抗腫瘍応
答をもたらした(Blattman et al.,Science.305(5681
):200-5,2004)。例えば、エクスビボで増幅した天然に存在する腫瘍浸潤リ
ンパ球(TIL)の投与は、肝臓、肺、軟組織、及び脳を含む複数の部位における嵩高な
浸潤性腫瘍を含む、黒色腫患者において、50~70%の範囲の客観的応答率を媒介する
(Rosenberg et al.,Nat.Rev.Cancer.8(4):29
9-308,2008;Dudley ME et al.,J.Clin.Oncol
.23(10):2346-57,2005)。
【0008】
TIL療法の広範な適用に対する主な制限は、抗腫瘍可能性を有するヒトT細胞の生成
における困難である。代替的なアプローチとして、外因性高親和性TCRを、T細胞遺伝
子操作を通じて患者の正常な自家性T細胞に導入することができる。リンパ球枯渇患者へ
のこれらの細胞の養子移入は、黒色腫、大腸直腸癌、及び滑膜肉腫などのがんにおけるが
ん退縮を媒介することが示されている(Kunert R et al.,Front.
Immunol.4:363,2013)。滑膜肉腫に対する抗NY-ESO-1 TC
Rを使用する最近の第I相臨床試験は、66%の全体の応答率を報告し、T細胞療法を受
けている患者のうちの1人において完全な応答が達成された(Robbins PF e
t al.,Clin.Cancer Res.21(5):1019-27,2015
)。
【0009】
TCR遺伝子操作T細胞療法の利点の1つは、MHC提示を通して細胞表面に加工及び
送達される潜在的な細胞内腫瘍特異的タンパク質のアレイ全体を標的とすることができる
ことである。更に、TCRは高感度であり、ごく少数の抗原ペプチド/MHC分子によっ
て活性化することができ、ひいては、サイトカイン分泌、T細胞増殖、及び明確に定義さ
れた標的細胞の細胞溶解を含む、細胞溶解性T細胞応答を誘起することができる。したが
って、抗体療法又は小分子療法と比較して、TCR遺伝子操作T細胞は、標的細胞内抗原
の非常に少数のコピーによって標的細胞を殺傷する能力にとって特に有用である(Kun
ert R et al.,Front.Immunol.4:363,2013)。
【0010】
しかしながら、大部分がハイブリドーマ又はディスプレイ技術によって発見される治療
抗体とは異なり、標的特異的TCRの同定は、患者T細胞からの標的ペプチド/MHC特
異的TCRクローンの確立と、最適な標的抗原結合親和性を有する正しいα-β鎖の組み
合わせのスクリーニングとを必要とする。非常に多くの場合、ファージ/酵母ディスプレ
イは、TCRの標的結合親和性を更に向上させるために、患者T細胞からのTCRのクロ
ーニング後に使用される。プロセス全体は、多くの領域において専門知識を必要とし、時
間がかかる(Kobayashi E et al.,Oncoimmunology.
3(1):e27258,2014)。TCR発見プロセスにおける困難は、TCR遺伝
子操作されたT細胞療法の広範な適用を大きく妨げる。これはまた、治療関連毒性、特に
、腫瘍細胞上で過剰発現するが健康な細胞にも発現する抗原に対するTCRによって、又
は、オフ標的ペプチド/MHC複合体を認識するTCRによっても妨害されている(Ro
senberg SA et al.,Science.348(6230):62-8
,2015)。
【0011】
標的化がん免疫療法のためにT細胞を利用するために、近年、異なるアプローチが開発
されてきた。この新規のアプローチは、キメラ抗原受容体T細胞療法(CAR-T)と呼
ばれる。それは、モノクローナル抗体の絶妙な標的特異性を、細胞傷害性T細胞によって
提供される強力な細胞傷害性及び長期持続性と融合させる。CARは、細胞表面抗原を認
識する細胞外ドメイン、膜貫通領域、及び細胞内シグナル伝達ドメインから構成される。
細胞外ドメインは、単鎖可変断片(scFv)に融合されるモノクローナル抗体の重鎖及
び軽鎖からの抗原結合可変領域からなる。細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζ又は
FcRγからのものなどの免疫受容体活性化チロシンモチーフ(ITAM)、及びCD2
8、4-1BB又はOX40からのものなどの1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインを
含む(Barrett DM et al.,Annu.Rev.Med.65:333
-47,2014;Davila ML et al.,Oncoimmunology
.1(9):1577-1583,2012)。T細胞表面上に移植されたCARによる
標的抗原の結合は、T細胞エフェクター機能を、TCR-ペプチド/MHC複合体相互作
用と独立して誘起することができる。したがって、CARを含むT細胞は、T細胞上のT
CRのMHCタイプと一致しないが標的細胞表面抗原を発現するものを含む、多様な細胞
を攻撃するように再指向され得る。このアプローチは、MHC拘束TCR認識の制約を克
服し、抗原提示又はMHC分子発現における機能障害を介する腫瘍回避を避ける。臨床試
験は、神経芽細胞腫(Louis CU et al.,Blood.118(23):
6050-6056,2011)、B-ALL(Maude,SL,et al.,Ne
w England Journal of Medicine 371:16:150
7-1517,2014)、CLL(Brentjens,RJ,et al.Bloo
d 118:18:4817-4828,2011)、及びBリンパ腫(Kochend
erfer,JN,et al.Blood 116:20:4099-4102,20
10)におけるCAR-T療法の臨床的に有意な抗腫瘍活性を示している。1つの研究で
は、CD19-CAR T療法で治療したB-ALLを有する30人の患者における90
%の完全寛解率を報告した(Maude,SL,et al.、前出)。
【0012】
これまでに研究された全てのCARは、高い細胞表面発現を有する腫瘍抗原を対象とし
てきた。全ての既知の腫瘍特異的抗原の95%を表す低コピー数細胞表面腫瘍抗原及び細
胞内腫瘍抗原を標的とするために、より強力かつ有効な遺伝子操作された細胞療法を開発
する必要がある(Cheever,et al.,Clin.Cancer Res.1
5(17):5323-37,2009)。
T細胞受容体エフェクター機能に特異的な抗体を有するキメラ受容体分子を遺伝子操作
するためのいくつかの試みがなされてきた。例えば、Kuwana,Y,et al.,
Biochem.Biophys.Res.Commun.149(3):960-96
8,1987、Gross,G,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci
.USA.86:10024-10028,1989、Gross,G & Eshha
r,Z,FASEB J.6(15):3370-3378,1992、及び米国特許第
7,741,465号を参照されたい。今日まで、これらのキメラ受容体はいずれも臨床
使用のために採用されておらず、ヒトT細胞における発現及び機能性が改善された抗体-
TCRキメラ受容体の新規な設計が必要とされている。
本明細書で参照した全ての出版物、特許、特許出願、及び特許出願公開の開示内容は、
参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。PCT出願番号PCT/US2016/
058305は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第7741465号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Broere,et al.,Principles of Immunopharmacology,2011
【非特許文献2】The T cell Receptor Factsbook,2001
【非特許文献3】Call et al.,Cell.111(7):967-79,2002;The T cell Receptor Factsbook,2001
【非特許文献4】Girardi et al.,J.Invest.Dermatol.126(1):25-31,2006
【非特許文献5】Hayes et al.,Immunity.16(6):827-38,2002
【非特許文献6】Blattman et al.,Science.305(5681):200-5,2004
【非特許文献7】Rosenberg et al.,Nat.Rev.Cancer.8(4):299-308,2008
【非特許文献8】Dudley ME et al.,J.Clin.Oncol.23(10):2346-57,2005
【非特許文献9】Kunert R et al.,Front.Immunol.4:363,2013
【非特許文献10】Robbins PF et al.,Clin.Cancer Res.21(5):1019-27,2015
【非特許文献11】Kobayashi E et al.,Oncoimmunology.3(1):e27258,2014
【非特許文献12】Rosenberg SA et al.,Science.348(6230):62-8,2015
【非特許文献13】Barrett DM et al.,Annu.Rev.Med.65:333-47,2014
【非特許文献14】Davila ML et al.,Oncoimmunology.1(9):1577-1583,2012
【非特許文献15】Louis CU et al.,Blood.118(23):6050-6056,2011
【非特許文献16】Maude,SL,et al.,New England Journal of Medicine 371:16:1507-1517,2014
【非特許文献17】Brentjens,RJ,et al.Blood 118:18:4817-4828,2011
【非特許文献18】Kochenderfer,JN,et al.Blood 116:20:4099-4102,2010
【非特許文献19】Cheever,et al.,Clin.Cancer Res.15(17):5323-37,2009
【非特許文献20】Kuwana,Y,et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.149(3):960-968,1987
【非特許文献21】Gross,G,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.86:10024-10028,1989
【非特許文献22】Gross,G & Eshhar,Z,FASEB J.6(15):3370-3378,1992
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
一態様では本出願は、キメラ抗体-T細胞受容体(TCR)構築物(caTCR)及び
キメラシグナル伝達受容体(CSR)構築物を含む免疫細胞(T細胞など)に関する。C
aTCRは、標的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュールと、少なくとも1つのTC
R関連シグナル伝達分子を動員することができるT細胞受容体モジュール(TCRM)と
を含み、CSRは、標的リガンドに特異的に結合するリガンド結合ドメインと、免疫細胞
に刺激シグナルを提供することができる共刺激シグナル伝達ドメインと、を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、a)キメラ抗体-T細胞受容体(TCR)構築物(caTC
R)であって、i)標的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュール、並びにii)第1
のTCR膜貫通ドメイン(TCR-TM)を含む第1のTCRドメイン(TCRD)及び
第2のTCR-TMを含む第2のTCRDを含み、T細胞受容体モジュール(TCRM)
が、少なくとも1つのTCR-関連シグナル伝達分子の動員を促進するT細胞受容体モジ
ュール(TCRM)を含む、キメラ抗体-T細胞受容体(TCR)構築物(caTCR)
と、b)キメラシグナル伝達受容体(CSR)であって、i)標的リガンドに結合又は相
互作用することができるリガンド結合モジュール、ii)膜貫通モジュール、並びにii
i)免疫細胞に共刺激シグナルを提供することができる共刺激免疫細胞シグナル伝達モジ
ュールを含み、リガンド結合モジュール及び共刺激免疫細胞シグナル伝達モジュールは、
同一の分子から誘導されない、キメラシグナル伝達受容体(CSR)と、を含み、CSR
が機能的な一次免疫細胞シグナル伝達ドメインを欠いている、免疫細胞が提供される。
【0017】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるcaTCR及びCSRをコードする1
つ以上の核酸が提供され、caTCR及びCSRはそれぞれ、1つ以上の核酸によりコー
ドされる1つ以上のポリペプチド鎖からなる。
【0018】
いくつかの実施形態では、a)キメラ抗体-T細胞受容体(TCR)構築物(caTC
R)であって、i)標的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュール、並びにii)第1
のTCR膜貫通ドメイン(TCR-TM)を含む第1のTCRドメイン(TCRD)及び
第2のTCR-TMを含む第2のTCRDを含み、T細胞受容体モジュール(TCRM)
が、少なくとも1つのTCR-関連シグナル伝達分子の動員を促進するT細胞受容体モジ
ュール(TCRM)を含み、caTCRが1つ以上のポリペプチド鎖からなる、キメラ抗
体-T細胞受容体(TCR)構築物(caTCR)と、b)キメラシグナル伝達受容体(
CSR)であって、i)標的リガンドに結合又は相互作用することができるリガンド結合
モジュール、ii)膜貫通モジュール、並びにiii)免疫細胞に共刺激シグナルを提供
することができる共刺激免疫細胞シグナル伝達モジュールを含み、リガンド結合モジュー
ル及び共刺激免疫細胞シグナル伝達モジュールは、同一の分子から誘導されない、キメラ
シグナル伝達受容体(CSR)と、をコードし、CSRが機能的な一次免疫細胞シグナル
伝達ドメインを欠き、CSRが1つ以上のポリペプチド鎖からなる、1つ以上の核酸が提
供される。
【0019】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の1つ以上の核酸を含む1つ以上のベクター
が提供される。
【0020】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の1つ以上の核酸又は1つ以上のベクターを
含む組成物が提供される。
【0021】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の1つ以上の核酸又は1つ以上のベクターを
含む免疫細胞が提供される。
【0022】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される免疫細胞と、薬学的に許容される担体
と、を含む医薬組成物が提供される。
【0023】
いくつかの実施形態では、標的抗原を提示する標的細胞を殺傷する方法であって、標的
細胞を本明細書に記載される免疫細胞と接触させることを含む、方法が提供される。
【0024】
いくつかの実施形態では、標的抗原関連疾患の治療を必要とする個体において標的抗原
関連疾患を治療する方法であって、有効量の本明細書に記載される医薬組成物を個体に投
与することを含む、方法が提供される。
【0025】
いくつかの実施形態では、caTCRを含むか、又はcaTCRをコードする核酸で形
質導入された免疫細胞に共刺激シグナルを提供する方法であって、本明細書に記載される
、1つ以上の核酸又は1つ以上のベクターを上記細胞に導入することを含む、方法が提供
される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】異なる抗原結合モジュールを有するいくつかのcaTCR分子の概略図を示す。
【0027】
図2】抗CD19 caTCR-1-0単独、抗CD19 CSR単独、又は抗CD19 caTCR(1-0及び1-TM5)+抗CD19 CSRで形質導入されたT細胞によって媒介される、がん細胞株NALM6(CD19)の殺傷による特異的溶解パーセントを示す。
【0028】
図3】抗CD19 caTCR-1-0単独、抗CD19 CSR単独、又は抗CD19 caTCR(1-0及び1-TM5)+抗CD19 CSRで形質導入されたT細胞によって媒介される、がん細胞株NALM6のインビトロ殺傷後の上清中に見出されるサイトカイン(IL-2、GM-CSF、IFN-γ、及びTNF-α)の濃度を示す。
【0029】
図4】がん細胞株NALM6による刺激後の、抗CD19 caTCR-1-0単独、抗CD19 CSR単独、又は抗CD19 caTCR(1-0及び1-TM5)+抗CD19 CSRで形質導入されたT細胞における脱顆粒活性(CD107a発現により決定される)を示す。
【0030】
図5】がん細胞株BV173又はNALM6による刺激後の、抗CD19 caTCR-1-0単独又は抗CD19 caTCR(1-0及び1-TM5)+抗CD19 CSRで形質導入されたT細胞の増殖(CFSE色素希釈により決定される)を示す。
【0031】
図6】抗AFP158/HLA-A2:01 caTCR-1-0単独、抗GPC3 CSR単独、又は抗AFP158/HLA-A2:01 caTCR(1-0及び1-TM5)+抗GPC3 CSRで形質導入されたT細胞によって媒介される、がん細胞株HepG2(AFP/GPC3)及びHepG2-GPC3.ko(AFP/GPC3)の殺傷による特異的溶解パーセントを示す。
【0032】
図7】抗AFP158/HLA-A2:01 caTCR-1-0単独、抗GPC3 CSR単独、又は抗AFP158/HLA-A2:01 caTCR(1-0及び1-TM5)+抗GPC3 CSRで形質導入されたT細胞によって媒介される、がん細胞株HepG2及びHepG2-GPC3.koのインビトロ殺傷後の上清中に見出されるサイトカイン(IL-2、GM-CSF、IFN-γ、及びTNF-α)の濃度を示す。
【0033】
図8】がん細胞株HepG2によって刺激された後の、抗AFP158/HLA-A2:01 caTCR-1-0単独、抗GPC3 CSR単独、又は抗AFP158/HLA-A2:01 caTCR(1-0及び1-TM5)+抗GPC3 CSRで形質導入されたT細胞における脱顆粒活性(CD107a発現により決定される)を示す。
【0034】
図9】がん細胞株HepG2によって刺激された後の、抗AFP158/HLA-A2:01 caTCR-1-0単独、抗GPC3 CSR単独、又は抗AFP158/HLA-A2:01 caTCR(1-0及び1-TM5)+抗GPC3 CSRで形質導入されたT細胞の増殖(CFSE色素希釈により決定される)を示す。
【0035】
図10】抗CD19 caTCR(1-0及び1-TM5)+抗CD20 CSRで形質導入されたT細胞によって媒介される、がん細胞株Raji、BV173、NALM6、及びJeko-1(各々、CD19/CD20)の殺傷による特異的溶解率を示す。
【0036】
図11】抗CD19 caTCR-1-0単独、又は抗CD19 caTCR(1-0及び1-TM5)+抗CD20 CSRで形質導入されたT細胞によって媒介される、がん細胞株Rajiのインビトロ殺傷後の上清中に見出されるサイトカイン(IL-2、GM-CSF、IFN-γ、及びTNF-α)の濃度を示す。
【0037】
図12】がん細胞株Rajiによって刺激された後の、抗CD20 caTCR-1-0単独、抗CD20 CSR単独、又は抗CD19 caTCR(1-0及び1-TM5)+抗CD19 CSRで形質導入されたT細胞における脱顆粒活性(CD107a発現により決定される)を示す。
【0038】
図13A】例示的な二重特異性caTCR分子の概略構造を示す。
図13B】例示的な二重特異性caTCR分子の概略構造を示す。
図13C】例示的な二重特異性caTCR分子の概略構造を示す。
図13D】例示的な二重特異性caTCR分子の概略構造を示す。
図13E】例示的な二重特異性caTCR分子の概略構造を示す。
【0039】
図14】がん細胞株NALM6による刺激後の、抗CD19 caTCR-1-0及び抗CD19 CSRを発現するT細胞の増殖(CFSE色素希釈により決定される)を示す。
図15】がん細胞株NALM6による刺激後の、抗CD19 caTCR-1-0及び抗CD19 CSRを発現するT細胞の増殖(CFSE色素希釈により決定される)を示す。
【0040】
図16】モック処理、又は抗CD19 caTCR-1、若しくは抗CD19 CSR-1と組み合わせて抗CD19 caTCR-1を発現するT細胞の単回の腫瘍内注射を伴う、NALM6の皮下マウスモデルにおける腫瘍増殖を示す。
【0041】
図17】抗CD19 CARを発現するT細胞、又は抗CD19 caTCR-1及び抗CD19 CSR-1の両方を発現するT細胞により処理したマウスにおける血清サイトカインレベルを示す。スチューデントt検定を使用して、2つの群における血清サイトカインレベルの統計的有意性を分析する(**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001)。
【0042】
図18】モック処理、又は抗AFP CAR、若しくは抗GPC3 CSRと組み合わせて抗AFP CARを発現するT細胞の単回の腫瘍内注射を伴う、HepG2の皮下マウスモデルにおける腫瘍増殖を示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本出願は、キメラ抗体-T細胞受容体(TCR)構築物(caTCR)及びキメラシグ
ナル伝達受容体(CSR)構築物を含む免疫細胞(T細胞など)に関する。caTCRは
、標的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュールと、少なくとも1つのTCR関連シグ
ナル伝達分子を動員することができるT細胞受容体モジュール(TCRM)と、を含む。
CSRは、標的リガンドに特異的に結合するリガンド結合ドメインと、免疫細胞に刺激シ
グナルを提供することが可能な共刺激免疫細胞シグナル伝達ドメインと、を含み、機能的
な一次免疫細胞シグナル伝達配列を含まない。標的抗原及び標的リガンドは、疾患細胞表
面上のMHC提示疾患関連抗原ペプチドなどの、細胞表面に発現するタンパク質、又はペ
プチド及びMHCタンパク質を含む複合体(本明細書では「pMHC複合体」若しくは「
pMHC」と呼ばれる)であり得る。caTCRは、T細胞受容体活性化を制御する天然
に存在する機構によって調節され、CSRを介したシグナル伝達は、caTCRによって
媒介される免疫応答を増強することができる。
【0044】
本発明者らは、caTCR及びCSR構築物を含む一連の新規T細胞を開発した。これ
らは、標的細胞結合に応答して、CSRの非存在下でcaTCRのみを発現する細胞と比
較して増加したサイトカイン発現を伴って標的を持つ腫瘍細胞に対する強力な細胞傷害性
を示した。これらの細胞内にCSRを含めることにより、caTCRのみを発現する細胞
と比較して、脱顆粒、増殖、及び生存率を更に向上させる。
【0045】
したがって、本出願は、標的抗原に特異的なcaTCRと標的リガンドに特異的なCS
Rとを含む免疫細胞を提供し、このcaTCRは、標的抗原に特異的に結合する抗原結合
モジュールと、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することができるT
細胞受容体モジュール(TCRM)と、を含み、CSRは、a)標的リガンドに特異的に
結合するリガンド結合ドメインと、免疫細胞に刺激シグナルを提供することができる共刺
激免疫細胞シグナル伝達ドメインとを含み、b)機能的な一次免疫細胞シグナル伝達配列
を含まない。caTCRは、抗原結合モジュール及び/又はTCRMの変動を有する多数
のフォーマットのうちのいずれかをとることができる。例えば、caTCRは、Fab、
Fab’、a(Fab’)、Fv、及びscFvからなる群から選択される部分を含む
抗原結合モジュールと、膜貫通ドメイン、連結ペプチド、及び細胞内ドメインのうちの1
つ以上における変異型を含む、α/β又はγ/δのTCRに由来する1つ以上の配列を含
むTCRMとを含むことができる。図1を参照されたい。いくつかの実施形態では、抗原
結合モジュールは、多重特異性(二重特異性など)である。CSRは同様に、Fab、F
ab’、(Fab’)、Fv、及びscFvからなる群から選択される部分を含むリガ
ンド結合モジュールを有することができる。いくつかの実施形態では、標的抗原と標的リ
ガンドは同一である。いくつかの実施形態では、caTCRの抗原結合モジュール及びC
SRのリガンド結合モジュールは同一であるか、又はCDR若しくは可変ドメインなどの
抗原特異性を付与する同一の配列を含む。いくつかの実施形態では、標的抗原と標的リガ
ンドは異なる。
【0046】
更に他の態様では、a)caTCR及びCSRをコードしている1つ以上の核酸、b)
caTCR及びCSRをコードする1つ以上の核酸を含む免疫細胞、並びにc)i)ca
TCR及びCSRを含むか、又はii)caTCR及びCSRをコードする1つ以上の核
酸を含む免疫細胞を含む組成物が提供される。組成物は、医薬組成物であり得る。
【0047】
また、治療目的のためにcaTCR及びCSRを含む免疫細胞を作製及び使用する方法
、並びにそのような方法に有用なキット及び製品も提供される。CaTCR及びCSRを
含む免疫細胞を使用して疾患を治療する方法が更に提供される。
定義
【0048】
「抗体」又は「抗体部分」という用語は、完全長抗体及びその抗原結合断片を含む。完
全長抗体は、2つの重鎖及び2つの軽鎖を含む。軽鎖及び重鎖の可変領域は、抗原結合に
関与する。両方の鎖の可変領域は、一般に、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる3つの
高度に可変のループ(LC-CDR1、LC-CDR2、及びLC-CDR3を含む軽鎖
(LC)CDR、HC-CDR1、HC-CDR2、及びHC-CDR3を含む重鎖(H
C)CDR)を含む。本明細書に開示される抗体及び抗原結合断片のCDRの境界は、K
abat、Chothia、又はAl-Lazikani(Al-Lazikani 1
997、Chothia 1985、Chothia 1987、Chothia 19
89、Kabat 1987、Kabat 1991)の慣例によって定義又は同定する
ことができる。重鎖又は軽鎖の3つのCDRは、フレームワーク領域(FR)として知ら
れる隣接する区間の間に介在し、CDRよりも高度に保存され、超可変ループを支持する
足場を形成する。重鎖及び軽鎖の定常領域は、抗原結合に関与しないが、様々なエフェク
ター機能を示す。抗体は、それらの重鎖の定常領域のアミノ酸配列に基づいてクラスに割
り当てられる。抗体の5つの主要なクラス又はアイソタイプは、それぞれα、δ、ε、γ
、及びμ重鎖の存在によって特徴付けられるIgA、IgD、IgE、IgG、及びIg
Mである。いくつかの主要な抗体のクラスは、lgG1(γ1重鎖)、lgG2(γ2重
鎖)、lgG3(γ3重鎖)、lgG4(γ4重鎖)、lgA1(α1重鎖)、又はlg
A2(α2重鎖)などのサブクラスに分類される。
【0049】
本明細書で使用するとき、「抗原結合断片」という用語は、例えば、ダイアボディ、F
ab、Fab’、F(ab’)2、Fv断片、ジスルフィド安定化Fv断片(dsFv)
、(dsFv)2、二重特異性dsFv(dsFv-dsFv’)、ジスルフィド安定化
ダイアボディ(ds diabody)、一本鎖抗体分子(scFv)、scFv二量体
(二価ダイアボディ)、1つ以上のCDRを含む抗体の一部から形成される多重特異性抗
体、ラクダ化単一ドメイン抗体、ナノボディ、ドメイン抗体、二価ドメイン抗体、又は抗
原に結合するが完全な抗体構造を含まない任意の他の抗体断片を含む、抗体断片を指す。
抗原結合断片は、親抗体又は親抗体断片(例えば、親scFv)が結合するのと同一の抗
原に結合することができる。いくつかの実施形態では、抗原結合断片は、1つ以上の異な
るヒト抗体からフレームワーク領域に移植された特定のヒト抗体からの1つ以上のCDR
を含み得る。
【0050】
本明細書で使用するとき、第1の抗体部分が第2の抗体部分の標的抗原結合を、第1の
抗体部分の等モル濃度の存在下で、又はその逆で、少なくとも約50%(少なくとも約5
5%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、又
は99%のいずれかなど)阻害するとき、第1の抗体部分は、標的抗原との結合について
、第2の抗体部分と「競合する」。それらの交差競合に基づく抗体を「ビニング」するた
めのハイスループットプロセスは、PCT公開WO03/48731に記載されている。
【0051】
本明細書で使用するとき、用語「特異的に結合する」又は「~に特異的である」は、標
的と抗体又は抗体部分との間の結合などの、測定可能かつ再現性のある相互作用を指し、
これは、生物分子を含む分子の異種集団の存在下での、標的の存在を判定する。例えば、
標的(エピトープであり得る)に特異的に結合する抗体部分は、他の標的に対するその結
合よりも、この標的に、より高い親和性で、より強い結合活性で、より容易に、及び/又
はより長時間結合する抗体部分である。いくつかの実施形態では、抗原に特異的に結合す
る抗体部分は、抗原の1つ以上の抗原決定基(例えば、細胞表面抗原又はペプチド/MH
Cタンパク質複合体)と、他の標的に対する結合親和性の少なくとも約10倍である結合
親和性で反応する。
【0052】
「T細胞受容体」又は「TCR」という用語は、T細胞の表面上で対をなすαβ鎖又は
γδ鎖から構成されるヘテロ二量体受容体を指す。各α、β、γ、及びδ鎖は、相補性決
定領域(CDR)を介して抗原認識を付与する可変ドメイン(V)である2つのIg様ド
メインと、後に続く、連結ペプチド及び膜貫通(TM)領域によって細胞膜に固定される
定常ドメイン(C)とで構成される。TM領域は、CD3シグナル伝達器の不変サブユニ
ットと結合する。Vドメインのそれぞれは、3つのCDRを有する。これらのCDRは、
主要組織適合複合体(pMHC)によりコードされるタンパク質に結合する抗原ペプチド
間の複合体と相互作用する(Davis and Bjorkman(1988)Nat
ure,334,395-402、Davis et al.(1998)Annu R
ev Immunol,16,523-544、Murphy(2012),xix,8
68 p.)。
【0053】
「TCR関連シグナル伝達分子」という用語は、TCR-CD3複合体の一部である細
胞質の免疫受容体活性化チロシンモチーフ(ITAM)を有する分子を指す。TCR関連
シグナル伝達分子には、CD3γε、CD3δε、及びζζ(CD3ζ又はCD3ζζと
しても知られる)が含まれる。
【0054】
CD3を発現する細胞に関して本明細書で使用するとき、「活性化」は、細胞増殖及び
サイトカイン産生を含むがこれらに限定されない、CD3シグナル伝達経路の下流のエフ
ェクター機能の検出可能な増加を誘導するのに十分に刺激されている細胞の状態を指す。
【0055】
タンパク質の一部を指すとき、「モジュール」という用語は、タンパク質を構成する1
つ以上のポリペプチドの構造的及び/又は機能的に関連する部分を含むことを意味する。
例えば、二量体受容体の膜貫通モジュールは、膜にまたがる受容体の各ポリペプチド鎖の
部分を指し得る。モジュールはまた、単一のポリペプチド鎖の関連部分を指すことができ
る。例えば、単量体受容体の膜貫通モジュールは、膜にまたがる受容体の単一のポリペプ
チド鎖の部分を指し得る。モジュールはまた、ポリペプチドの単一部分のみを含んでもよ
い。
【0056】
本明細書で使用するとき、「単離された核酸」という用語は、ゲノム、cDNA、若し
くは合成起源の核酸、又はこれらのいくつかの組み合わせを意味することを意図し、「単
離された核酸」は、その起源のために、(1)「単離された核酸」が天然に見出されるポ
リヌクレオチドの全て又は一部とは関連していないか、(2)天然では連結していないポ
リヌクレオチドに作動可能に連結されているか、又は(3)より大きい配列の一部として
天然では発生しない。
【0057】
本明細書で使用されるとき、「CDR」又は「相補性決定領域」という用語は、重鎖ポ
リペプチドと軽鎖ポリペプチドの両方の可変領域内で見られる非連続抗原結合部位を意味
することを意図する。これらの特定の領域は、Kabat et al.,J.Biol
.Chem.252:6609-6616(1977)、Kabat et al.,U
.S.Dept.of Health and Human Services,「Se
quences of proteins of immunological int
erest」(1991)、Chothia et al.,J.Mol.Biol.1
96:901-917(1987)、Al-Lazikani B.et al.,J.
Mol.Biol.,273:927-948(1997)、MacCallum et
al.,J.Mol.Biol.262:732-745(1996)、Abhina
ndan and Martin,Mol.Immunol.,45:3832-383
9(2008)、Lefranc M.P.et al.,Dev.Comp.Immu
nol.,27:55-77(2003)、及びHonegger and Pluck
thun,J.Mol.Biol.,309:657-670(2001)に記載されて
おり、定義は、互いに比較したときにアミノ酸残基の重複又はサブセットを含む。それに
もかかわらず、抗体のCDR又はその移植された抗体若しくは変異型を指すためのいずれ
かの定義の適用は、本明細書で定義され使用される用語の範囲内にあることが意図されて
いる。上に引用した参考文献の各々によって定義されるCDRを包含するアミノ酸残基は
、比較として以下の表1に記述されている。CDR予測アルゴリズム及びインターフェー
スは、当該技術分野で公知であり、例えば、Abhinandan and Marti
n,Mol.Immunol.,45:3832-3839(2008)、Ehrenm
ann F.et al.,Nucleic Acids Res.,38:D301-
D307(2010)、及びAdolf-Bryfogle J.et al.,Nuc
leic Acids Res.,43:D432-D438(2015)を含む。本段
落で引用される参考文献の内容は、本発明で使用するためにその全体が参照により本明細
書に組み込まれ、本特許請求の範囲の請求項の1つ以上に包含可能である。
【表1】
残基の付番は、前出のKabatらの命名法に従う。
残基の付番は、前出のChothiaらの命名法に従う。
残基の付番は、前出のMacCallumらの命名法に従う。
残基の付番は、前出のLefrancらの命名法に従う。
残基の付番は、前出のHonegger及びPluckthunの命名法に従う。
【0058】
「キメラ抗体」という用語は、重鎖及び/又は軽鎖の一部分が、特定の種由来の抗体中
又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一であるか
又は相同であり、鎖の残余の部分が、別の種由来の抗体中又は別の抗体クラス若しくはサ
ブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一であるか又は相同である抗体を指し、また
、本発明の生物活性を示す限り、そのような抗体の断片を指す(米国特許第481656
7号、及びMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.
USA,81:6851-6855(1984)を参照されたい)。
【0059】
抗体又は抗体部分に関する「半合成」という用語は、抗体又は抗体部分が、1つ以上の
天然に存在する配列及び1つ以上の天然に存在しない(すなわち、合成の)配列を有する
ことを意味する。
【0060】
抗体又は抗体部分に関する「完全合成」という用語は、抗体又は抗体部分が、固定され
た天然に存在するV/Vフレームワークの対を有するが、重鎖及び軽鎖の両方の6つ
全てのCDRの天然に存在しない(すなわち、合成の)配列を有することを意味する。
【0061】
非ヒト(例えばげっ歯動物)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト抗体に由来する最小限の
配列を含むキメラ抗体である。ほとんどの部分において、ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブ
リン(レシピエント抗体)であり、レシピエントの超可変領域(HVR)由来の残基が、
所望の抗体の特異性、親和性、及び能力を有する、マウス、ラット、ウサギ、又は非ヒト
霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域由来の残基と置き換えられている。場
合によっては、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)の残基が、対応する非
ヒト残基で置換されている。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体又はドナー抗体内に
ない残基を含み得る。これらの改変は、抗体の性能を更に改良するためになされる。一般
的に、ヒト化抗体は、少なくとも1つの可変領域の実質的に全て、典型的には2つの可変
領域を含み、全て又は実質的に全ての超可変ループは非ヒト免疫グロブリンのものに対応
し、全て又は実質的に全てのFRは、ヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体
はまた、所望により、免疫グロブリンの定常領域(Fc)の少なくとも一部を、典型的に
はヒト免疫グロブリンのそれを含む。更なる詳細については、Jones et al.
,Nature 321:522-525(1986)、Riechmann et a
l.,Nature 332:323-329(1988)、及びPresta,Cur
r.Op.Struct.Biol.2:593-596(1992)を参照されたい。
【0062】
「相同性」は、2つのポリペプチド間又は2つの核酸分子間の配列類似性又は配列同一
性を指す。2つの比較された配列の両方の位置が、同一の塩基又はアミノ酸の単量体のサ
ブユニットによって占められているとき、例えば、2つのDNA分子のそれぞれの位置が
アデニンによって占められている場合、分子は、その位置において「相同」である。2つ
の配列間の「相同性パーセント」又は「配列同一性パーセント」は、配列同一性の一部と
して任意の保存的置換を考慮して、2つの配列によって共有される一致するか又は相同で
ある位置の数を比較された位置の数で割り100を乗じた関数である。例えば、2つの配
列中の位置の10個のうち6個が一致又は相同である場合、2つの配列は60%相同であ
る。例として、DNA配列ATTGCC及びTATGGCは、50%の相同性を共有する
。一般に、2つの配列がアライメントされて最大相同性を与えるときに比較が実施される
。アミノ酸配列同一性パーセントを決定する目的のためのアライメントは、例えばBLA
ST、BLAST-2、ALIGN、Megalign(DNASTAR)、又はMUS
CLEソフトウェアなどの公けに入手可能なコンピューターソフトウェアを使用して、当
該技術分野の範囲内にある様々な方法で達成できる。当業者は、比較されている配列の全
長にわたって最大のアライメントを得るのに必要な任意のアルゴリズムを含む、アライメ
ント測定用の適切なパラメーターを決定することができる。しかしながら、本明細書の目
的のために、配列比較コンピュータプログラムMUSCLEを使用してアミノ酸配列同一
性%の値が生成される(Edgar,R.C.,Nucleic Acids Rese
arch 32(5):1792-1797,2004、Edgar,R.C.,BMC
Bioinformatics 5(1):113,2004)。
【0063】
ヒトIgG Fc領域の「C1ドメイン」(「H1」ドメインの「C1」とも呼ばれ
る)は、通常、アミノ酸約118~アミノ酸約215(EU付番システム)まで延びてい
る。
【0064】
別段の定めがない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」は、互いに縮
重したバージョンである、同一のアミノ酸配列をコードする、全てのヌクレオチド配列を
含む。タンパク質又はRNAをコードするヌクレオチド配列という語句はまた、タンパク
質をコードするヌクレオチド配列がいくつかのバージョンではイントロン(複数可)を含
み得る程度まで、イントロンを含んでもよい。
【0065】
「作動可能に連結された」という用語は、制御配列と異種核酸配列との間の機能的結合
を指し、後者の発現をもたらす。例えば、第1の核酸配列が第2の核酸配列と機能的な関
係を有して配置されるとき、第1の核酸配列は第2の核酸配列と作動可能に連結されてい
る。例えば、プロモーターがコード配列の転写又は発現に影響を及ぼす場合、プロモータ
ーは、コード配列に作動可能に連結されている。一般に、作動可能に連結されたDNA配
列は連続しており、必要に応じて2つのタンパク質コード領域を結合するために、同一の
リーディングフレーム内にある。
【0066】
「誘導可能なプロモーター」という用語は、1つ以上の特定のシグナルを付加又は除去
することによって活性を調節することができるプロモーターを指す。例えば、誘導可能な
プロモーターは、特定の条件のセット、例えば、プロモーターを活性化させる及び/又は
プロモーターの抑制を緩和する誘導剤又は条件の存在下で、作動可能に連結された核酸の
転写を活性化し得る。
【0067】
本明細書で使用するとき、「治療」又は「治療する」は、臨床結果を含めて有益な又は
所望の結果を得るための方法である。本発明の目的のために、有益な又は所望の臨床結果
には、以下のうちの1つ以上が含まれるが、これらに限定されない:疾患がもたらす1つ
以上の症状を軽減すること、疾患の範囲を縮小させること、疾患を安定させること(例え
ば、疾患の悪化を防止する若しくは遅らせること)、疾患の拡散(例えば、転移)を防止
する若しくは遅らせること、疾患の再発を防止する若しくは遅らせること、疾患の進行を
遅らせる若しくは減速させること、疾患状態を寛解させること、疾患の寛解(部分又は完
全)をもたらすこと、疾患を治療するために必要な1つ以上の他の投薬の用量を減らすこ
と、疾患の進行を遅らせること、生活の質を向上若しくは改善させること、体重増加を向
上すること、及び/又は生存期間を延ばすこと。また、「治療」に包含されるのは、疾患
の病理学的結果の低減である(例えば、がんにおける腫瘍体積など)。本発明の方法は、
治療のこれらの態様のうちのいずれか1つ以上を企図する。
【0068】
「再発(recurrence)」、「再発する(relapse)」、又は「再発した(relapsed)」
という用語は、疾患の消失の臨床評価後のがん又は疾患の再発を指す。遠位の転移又は局
所的再発の診断は、再発と見なすことができる。
【0069】
「難治性」又は「耐性」という用語は、治療に応答していないがん又は疾患を指す。
【0070】
本明細書に開示されるとき、caTCR又はcaTCRを含む組成物の「有効量」は、
具体的に記載された目的を実行するのに十分な量である。「有効量」は、経験的に、及び
記載された目的に関連する既知の方法によって決定することができる。
【0071】
「治療有効量」という用語は、本明細書に開示されるcaTCRを含むcaTCR又は
組成物の、個体における疾患又は障害を「治療する」ために有効である量を指す。がんの
場合、本明細書に開示される治療有効量のcaTCR又はcaTCRを含む組成物は、が
ん細胞の数を低減することができ、腫瘍のサイズ又は重量を低減することができ、末梢臓
器へのがん細胞浸潤を阻害する(すなわち、ある程度遅延させ、好ましくは停止させる)
ことができ、腫瘍転移を阻害する(すなわち、ある程度遅延させ、好ましくは停止させる
)ことができ、ある程度、腫瘍増殖を阻害することができ、及び/又はがんに関連する症
状のうちの1つ以上をある程度緩和することができる。本明細書に開示されるcaTCR
又はcaTCRを含む組成物は、存在するがん細胞の増殖を防止、及び/又は存在するが
ん細胞を殺傷し得る程度で、細胞増殖抑制性及び/又は細胞傷害性であり得る。いくつか
の実施形態では、治療有効量は、増殖抑制量である。いくつかの実施形態では、治療有効
量は、患者の無増悪生存率を改善する量である。ウイルス感染などの感染性疾患の場合、
本明細書に開示される治療有効量のcaTCR又はcaTCRを含む組成物は、病原体に
よって感染された細胞の数を低減することができ、病原体由来抗原の産生又は放出を低減
することができ、病原体の未感染細胞への拡散を阻害する(すなわち、ある程度遅らせ、
好ましくは停止する)ことができ、及び/又は感染に関連する1つ以上の症状をある程度
緩和することができる。いくつかの実施形態では、治療有効量は、患者の生存期間を延長
する量である。
【0072】
本明細書で使用されるとき、「医薬的に許容される」又は「薬理的に適合される」は、
生物学的又は非生物学的に望ましくないものではない物質を意味し、例えば、その物質を
、望ましくない生物学的影響をほとんど起こさずに、又は、それが含有される組成物の他
の任意の構成成分と悪い相互作用をせずに、患者に投与される医薬組成物中に組み込むこ
とができる。医薬的に許容される担体又は賦形剤は、好ましくは、必要な毒性学的及び製
造的検査基準を満たしており、並びに/又は、U.S.Food and Drug a
dministrationが作成したInactive Ingredient Gu
ideに含まれている。
【0073】
本明細書に記載の本発明の実施形態は、実施形態「からなる」及び/又は「から本質的
になる」を含むことを理解されたい。
【0074】
本明細書に記載の「約」のついた値又はパラメーターへの言及は、値又はパラメーター
自体を対象とする変化を含む(及び記載する)。例えば、「約X」に言及する記載は、「
X」の記載を含む。
【0075】
本明細書で使用するとき、「~されない」などの否定(not)を伴うある値又はパラメ
ーターへの言及は、その値又はパラメーター「以外」が肯定されることを一般に意味し、
記載する。例えば、「方法は、タイプXの癌を治療するのに使用されない」は、「方法は
、X以外のタイプの癌を治療するのに使用される」を意味する。
【0076】
本明細書及び添付の「特許請求の範囲」で使用するとき、単数形の「a」、「or」、
及び「the」は、文脈から単数であることが明確に読み取れる場合を除き、対象の複数
形も含まれるものとする。
caTCR+CSR免疫細胞
【0077】
本発明は、本明細書に記載されるcaTCR及びCSRのいずれかによるcaTCR及
びCSRを表面に提示する免疫細胞(T細胞など)を提供する(そのような免疫細胞は、
本明細書において「caTCR+CSR免疫細胞」とも呼ばれる)。いくつかの実施形態
では、免疫細胞は、caTCR及びCSRをコードする核酸を含み、caTCR及びCS
Rは、核酸から発現し、免疫細胞表面に局在化する。いくつかの実施形態では、免疫細胞
はT細胞である。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT
細胞、ナチュラルキラーT細胞、及びサプレッサーT細胞からなる群から選択される。い
くつかの実施形態では、免疫細胞は、caTCRのTCR-TMが由来するTCRサブユ
ニットを発現しない。例えば、いくつかの実施形態では、免疫細胞はαβ T細胞であり
、導入されたcaTCRのTCR-TMは、TCR δ及びγ鎖に由来する配列を含み、
又は、T細胞は、γδ T細胞であり、導入されたcaTCRのTCR-TMは、TCR
α及びβ鎖に由来する配列を含む。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、免疫細胞の
内因性のTCRサブユニットのうちの1つ又は両方の発現を遮断又は減少させるように改
変される。例えば、いくつかの実施形態では、免疫細胞は、TCR α及び/又はβ鎖の
発現を遮断又は減少させるように改変されたαβ T細胞であるか、又は免疫細胞は、T
CR γ及び/又はδ鎖の発現を遮断又は減少させるように改変されたγδ T細胞であ
る。遺伝子発現を破壊する細胞の改変としては、例えば、RNA干渉(例えば、siRN
A、shRNA、miRNA)、遺伝子編集(例えば、CRISPR又はTALEN系遺
伝子ノックアウト)などを含む、当該技術分野において既知の任意のそのような技術が挙
げられる。
【0078】
例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるcaTCRのいずれかによる
caTCRをコードする核酸と、本明細書に記載されるCSRのいずれかによるCSRと
を含む免疫細胞(T細胞など)が提供され、caTCR及びCSRは、核酸から発現し、
免疫細胞表面に局在化する。いくつかの実施形態では、核酸は、caTCRの第1のca
TCRポリペプチド鎖をコードする第1のcaTCR核酸配列と、caTCRの第2のc
aTCRポリペプチド鎖をコードする第2のcaTCR核酸配列と、CSRのCSRポリ
ペプチド鎖をコードするCSR核酸配列とを含む。いくつかの実施形態では、第1及び第
2のcaTCR核酸配列並びにCSR核酸配列はそれぞれ、異なるベクターに含まれる。
いくつかの実施形態では、核酸配列の一部又は全ては、同一のベクターに含まれる。ベク
ターは、例えば、哺乳類発現ベクター、並びにウイルスベクター(レトロウイルス、アデ
ノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、及びレンチウイルス由来のものな
ど)からなる群から選択され得る。いくつかの実施形態では、ベクターのうちの1つ以上
は、免疫細胞の宿主ゲノムに組み込まれる。いくつかの実施形態では、第1及び第2のc
aTCR核酸配列並びにCSR核酸配列はそれぞれ、異なるプロモーターの制御下にある
。いくつかの実施形態では、プロモーターの一部又は全ては、同一の配列を有する。いく
つかの実施形態では、プロモーターの一部又は全ては、異なる配列を有する。いくつかの
実施形態では、核酸配列の一部又は全ては、単一のプロモーターの制御下にある。いくつ
かの実施形態では、プロモーターの一部又は全ては誘導可能である。いくつかの実施形態
では、免疫細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞、及び
サプレッサーT細胞からなる群から選択される。
【0079】
したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcaTCRのいずれかによる
caTCRと本明細書に記載のCSRのいずれかによるCSRとを発現する、caTCR
+CSR免疫細胞(T細胞など)が提供され、このcaTCR+CSR免疫細胞は、a)
caTCRの第1のcaTCRポリペプチド鎖をコードする第1のcaTCR核酸配列と
、b)caTCRの第2のcaTCRポリペプチド鎖をコードする第2のcaTCR核酸
配列と、c)CSRのCSRポリペプチド鎖をコードするCSR核酸配列とを含み、第1
及び第2のcaTCRポリペプチド鎖が、第1及び第2のcaTCR核酸配列から発現し
てcaTCRを形成し、CSRポリペプチド鎖が、CSR核酸から発現してCSRを形成
し、caTCR及びCSRは、免疫細胞の表面に局在化する。いくつかの実施形態では、
第1のcaTCR核酸配列は、第1のベクター(レンチウイルスベクターなど)に含まれ
、第2のcaTCR核酸配列は、第2のベクター(レンチウイルスベクターなど)に含ま
れ、CSR核酸配列は、第3のベクター(レンチウイルスベクターなど)に含まれる。い
くつかの実施形態では、第1及び第2のcaTCR核酸配列並びにCSR核酸配列の一部
又は全ては、同一のベクター(レンチウイルスベクターなど)に含まれる。いくつかの実
施形態では、第1及び第2のcaTCR核酸配列並びにCSR核酸配列のそれぞれは、個
別に、プロモーターに作動可能に連結される。いくつかの実施形態では、核酸配列の一部
又は全ては、単一のプロモーターの制御下にある。いくつかの実施形態では、プロモータ
ーの一部又は全ては、同一の配列を有する。いくつかの実施形態では、プロモーターの一
部又は全ては、異なる配列を有する。いくつかの実施形態では、プロモーターの一部又は
全ては誘導可能である。いくつかの実施形態では、ベクターの一部又は全ては、ウイルス
ベクター(レンチウイルスベクターなど)である。いくつかの実施形態では、免疫細胞は
、caTCRのTCR-TMが由来するTCRサブユニットを発現しない。例えば、いく
つかの実施形態では、免疫細胞はαβ T細胞であり、導入されたcaTCRのTCR-
TMは、TCR δ及びγ鎖に由来する配列を含み、又は、免疫細胞は、γδ T細胞で
あり、導入されたcaTCRのTCR-TMは、TCR α及びβ鎖に由来する配列を含
む。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、その内因性のTCRサブユニットのうちの1
つ又は両方の発現を遮断又は減少させるように改変される。例えば、いくつかの実施形態
では、免疫細胞は、TCR α及び/又はβ鎖の発現を遮断又は減少させるように改変さ
れたαβ T細胞であるか、又は免疫細胞は、TCR γ及び/又はδ鎖の発現を遮断又
は減少させるように改変されたγδ T細胞である。いくつかの実施形態では、免疫細胞
は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞、及びサプレッサーT
細胞からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ベクターの一部又は全ては、
免疫細胞の宿主ゲノムに組み込まれたウイルスベクター(レンチウイルスベクターなど)
である。
【0080】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcaTCRのいずれかによるcaTCRと
本明細書に記載のCSRのいずれかによるCSRとを表面に発現する、caTCR+CS
R免疫細胞(T細胞など)が提供され、このcaTCR+CSR免疫細胞は、a)caT
CRの第1のcaTCRポリペプチド鎖をコードする第1のcaTCR核酸配列に作動可
能に連結された第1のプロモーターを含む第1のベクターと、b)caTCRの第2のc
aTCRポリペプチド鎖をコードする第2のcaTCR核酸配列に作動可能に連結された
第2のプロモーターを含む第2のベクターと、c)CSRのCSRポリペプチド鎖をコー
ドするCSR核酸配列に作動可能に連結された第3のプロモーターを含む第3のベクター
とを含み、第1及び第2のcaTCRポリペプチド鎖が、第1及び第2のcaTCR核酸
配列から発現してcaTCRを形成し、CSRポリペプチド鎖が、CSR核酸配列から発
現してCSRを形成し、caTCR及びCSRは、免疫細胞の表面に局在化する。いくつ
かの実施形態では、プロモーターの一部又は全ては、同一の配列を有する。いくつかの実
施形態では、プロモーターの一部又は全ては、異なる配列を有する。いくつかの実施形態
では、プロモーターの一部又は全ては誘導可能である。いくつかの実施形態では、免疫細
胞は、caTCRのTCR-TMが由来するTCRサブユニットを発現しない。例えば、
いくつかの実施形態では、免疫細胞はαβ T細胞であり、導入されたcaTCRのTC
R-TMは、TCR δ及びγ鎖に由来する配列を含み、又は、免疫細胞は、γδ T細
胞であり、導入されたcaTCRのTCR-TMは、TCR α及びβ鎖に由来する配列
を含む。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、その内因性のTCRサブユニットのうち
の1つ又は両方の発現を遮断又は減少させるように改変される。例えば、いくつかの実施
形態では、免疫細胞は、TCR α及び/又はβ鎖の発現を遮断又は減少させるように改
変されたαβ T細胞であるか、又は免疫細胞は、TCR γ及び/又はδ鎖の発現を遮
断又は減少させるように改変されたγδ T細胞である。いくつかの実施形態では、免疫
細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞、及びサプレッサ
ーT細胞からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第1及び第2のベクター
は、免疫細胞の宿主ゲノムに組み込まれたウイルスベクター(レンチウイルスベクターな
ど)である。
【0081】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるcaTCRのいずれかによるcaTC
R及び本明細書に記載されるCSRのいずれかによるCSRを表面に発現する、caTC
R+CSR免疫細胞(T細胞など)であって、a)i)caTCRの第1のcaTCRポ
リペプチド鎖をコードする第1のcaTCR核酸配列に作動可能に連結された第1のプロ
モーター、及びii)caTCRの第2のcaTCRポリペプチド鎖をコードする第2の
caTCR核酸配列に作動可能に連結された第2プロモーターを含む、第1のベクターと
、b)CSRのCSRポリペプチド鎖をコードするCSR核酸配列に作動可能に連結され
た第3のプロモーターを含む第2のベクターと、を含み、第1及び第2のcaTCRポリ
ペプチド鎖が、第1及び第2のcaTCR核酸配列から発現して、caTCRを形成し、
CSRポリペプチド鎖がCSR核酸配列から発現してCSRを形成し、caTCRが免疫
細胞の表面に局在化する、caTCR+CSR免疫細胞(T細胞など)が提供される。い
くつかの実施形態では、プロモーターの一部又は全ては、同じ配列を有する。いくつかの
実施形態では、プロモーターの一部又は全ては、異なる配列を有する。いくつかの実施形
態では、プロモーターの一部又は全ては誘導可能である。いくつかの実施形態では、免疫
細胞は、caTCRのTCR-TMが由来するTCRサブユニットを発現しない。例えば
、いくつかの実施形態では、免疫細胞はαβ T細胞であり、導入されたcaTCRのT
CR-TMは、TCR δ及びγ鎖に由来する配列を含み、又は、免疫細胞は、γδ T
細胞であり、導入されたcaTCRのTCR-TMは、TCR α及びβ鎖に由来する配
列を含む。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、その内因性のTCRサブユニットのう
ちの1つ又は両方の発現を遮断又は減少させるように改変される。例えば、いくつかの実
施形態では、免疫細胞は、TCR α及び/又はβ鎖の発現を遮断又は減少させるように
改変されたαβ T細胞であるか、又は免疫細胞は、TCR γ及び/又はδ鎖の発現を
遮断又は減少させるように改変されたγδ T細胞である。いくつかの実施形態では、免
疫細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞、及びサプレッ
サーT細胞からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第1及び第2のベクタ
ーは、免疫細胞の宿主ゲノムに組み込まれたウイルスベクター(レンチウイルスベクター
など)である。第1又は第2のcaTCR核酸配列がCSR核酸配列と交換される場合な
ど、核酸配列のいずれかが交換される実施形態も想到されることを理解されたい。
【0082】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるcaTCRのいずれかによるcaTC
R及び本明細書に記載されるCSRのいずれかによるCSRを表面に発現する、caTC
R+CSR免疫細胞(T細胞など)であって、a)i)caTCRの第1のcaTCRポ
リペプチド鎖をコードする第1のcaTCR核酸配列及び、ii)caTCRの第2のc
aTCRポリペプチド鎖をコードする第2のcaTCR核酸配列を含む第1のベクターで
あって、第1及び第2のcaTCR核酸配列が第1のプロモーターの制御化にある、第1
のベクターと、b)CSRのCSRポリペプチド鎖をコードするCSR核酸配列に作動可
能に連結された第2プロモーターを含む第2のベクターと、を含み、第1及び第2のca
TCRポリペプチド鎖が第1及び第2のcaTCR核酸配列から発現してcaTCRを形
成し、CSRポリペプチド鎖がCSR核酸配列から発現してCSRを形成し、caTCR
及びCSRが、免疫細胞の表面に局在化する、caTCR+CSR免疫細胞が提供される
。いくつかの実施形態では、第1のプロモーターは、第1のcaTCR核酸配列の5’末
端に作動可能に連結され、第1のcaTCR核酸配列の3’末端を第2のcaTCR核酸
配列の5’末端に連結させる、内部リボソーム侵入部位(IRES)、自己切断2Aペプ
チド(P2A、T2A、E2A、又はF2Aなど)をコードする核酸からなる群から選択
される核酸リンカーが存在し、第1のcaTCR核酸配列及び第2のcaTCR核酸配列
は、プロモーターの制御下で単一RNAとして転写される。いくつかの実施形態では、第
1のプロモーターは、第2のcaTCR核酸配列の5’末端に作動可能に連結され、第2
のcaTCR核酸配列の3’末端を第1のcaTCR核酸配列の5’末端に連結させる、
内部リボソーム侵入部位(IRES)、自己切断2Aペプチド(P2A、T2A、E2A
、又はF2Aなど)をコードする核酸からなる群から選択される核酸リンカーが存在し、
第1のcaTCR核酸配列及び第2のcaTCR核酸配列は、プロモーターの制御下で単
一RNAとして転写される。いくつかの実施形態では、第1及び/又は第2のプロモータ
ーは同じ配列を有する。いくつかの実施形態では、第1及び/又は第2のプロモーターは
、異なる配列を有する。いくつかの実施形態では、第1及び/又は第2のプロモーターは
誘導可能である。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、caTCRのTCR-TMが由
来するTCRサブユニットを発現しない。例えば、いくつかの実施形態では、免疫細胞は
αβ T細胞であり、導入されたcaTCRのTCR-TMは、TCR δ及びγ鎖に由
来する配列を含み、又は、免疫細胞は、γδ T細胞であり、導入されたcaTCRのT
CR-TMは、TCR α及びβ鎖に由来する配列を含む。いくつかの実施形態では、免
疫細胞は、その内因性のTCRサブユニットのうちの1つ又は両方の発現を遮断又は減少
させるように改変される。例えば、いくつかの実施形態では、免疫細胞は、TCR α及
び/又はβ鎖の発現を遮断又は減少させるように改変されたαβ T細胞であるか、又は
免疫細胞は、TCR γ及び/又はδ鎖の発現を遮断又は減少させるように改変されたγ
δ T細胞である。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパー
T細胞、ナチュラルキラーT細胞、及びサプレッサーT細胞からなる群から選択される。
いくつかの実施形態では、ベクターは、免疫細胞の宿主ゲノムに組み込まれたウイルスベ
クター(レンチウイルスベクターなど)である。第1又は第2のcaTCR核酸配列がC
SR核酸配列と交換される場合など、核酸配列のいずれかが交換される実施形態も想到さ
れることを理解されたい。
【0083】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcaTCRのいずれかによるcaTCRと
本明細書に記載のCSRのいずれかによるCSRとを表面に発現するcaTCR+CSR
免疫細胞(T細胞など)が提供され、このcaTCR+CSR免疫細胞は、a)caTC
Rの第1のcaTCRポリペプチド鎖をコードする第1のcaTCR核酸配列と、b)c
aTCRの第2のcaTCRポリペプチド鎖をコードする第2のcaTCR核酸配列と、
c)CSRのCSRポリペプチド鎖をコードするCSR核酸配列と、を含むベクターを含
み、第1及び第2のcaTCR核酸配列並びにCSR核酸配列が、単一のプロモーターの
制御下にあり、第1及び第2のcaTCRポリペプチド鎖が、第1及び第2のcaTCR
核酸配列から発現してcaTCRを形成し、CSRポリペプチド鎖が、CSR核酸配列か
ら発現してCSRを形成し、caTCR及びCSRは、免疫細胞の表面に局在化する。い
くつかの実施形態では、プロモーターは、個々に内部リボソーム侵入部位(IRES)、
自己切断2Aペプチド(P2A、T2A、E2A、又はF2Aなど)をコードする核酸か
らなる群から選択される核酸リンカーによって他の核酸配列に連結される核酸配列のうち
の1つに作動可能に連結され、第1及び第2のcaTCR核酸配列並びにCSR核酸配列
が、プロモーターの制御下で単一RNAとして転写されるようにされる。いくつかの実施
形態では、プロモーターは、誘導可能である。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、c
aTCRのTCR-TMが由来するTCRサブユニットを発現しない。例えば、いくつか
の実施形態では、免疫細胞はαβ T細胞であり、導入されたcaTCRのTCR-TM
は、TCR δ及びγ鎖に由来する配列を含み、又は、免疫細胞は、γδ T細胞であり
、導入されたcaTCRのTCR-TMは、TCR α及びβ鎖に由来する配列を含む。
いくつかの実施形態では、免疫細胞は、その内因性のTCRサブユニットのうちの1つ又
は両方の発現を遮断又は減少させるように改変される。例えば、いくつかの実施形態では
、免疫細胞は、TCR α及び/又はβ鎖の発現を遮断又は減少させるように改変された
αβ T細胞であるか、又は免疫細胞は、TCR γ及び/又はδ鎖の発現を遮断又は減
少させるように改変されたγδ T細胞である。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、
細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞、及びサプレッサーT細胞
からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ベクターは、免疫細胞の宿主ゲノ
ムに組み込まれたウイルスベクター(レンチウイルスベクターなど)である。
キメラ抗体/T細胞受容体(caTCR)構築物
【0084】
一態様では、本明細書に記載される標的抗原特異的キメラ抗体/T細胞受容体(caT
CR)は、標的抗原(細胞表面抗原又はペプチド/MHC複合体など)に特異的に結合し
、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子(CD3δε、CD3γε、及び/又は
ζζなど)を動員することができる。いくつかの実施形態では、caTCRは、天然に存
在するTCRドメインを含む。いくつかの実施形態では、caTCRは、少なくとも1つ
の天然に存在しないTCRドメインを含む。caTCRは、抗原特異性を提供する抗原結
合モジュールと、CD3動員及びシグナル伝達を可能にするT細胞受容体モジュール(T
CRM)と、を含む。抗原結合モジュールは、天然に存在するT細胞受容体抗原結合部分
ではない。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールは、TCRM中のポリペプチド
鎖のアミノ末端に連結される。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールは、抗体部
分である。いくつかの実施形態では、抗体部分は、Fab、Fab’、(Fab’)2、
Fv、又は単鎖Fv(scFv)である。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュール
は、多重特異性(二重特異性など)である。TCRMは、αβ及び/又はγδ TCRな
どの1つ以上のTCR(TCR-TM)の膜貫通ドメインに由来する膜貫通モジュールを
含み、所望により、TCR及び/又は1つ以上のTCR細胞内ドメイン又はその断片の連
結ペプチド若しくはその断片のうちの1つ又は両方を更に含む。いくつかの実施形態では
、TCRMは、2つのポリペプチド鎖を含み、各ポリペプチド鎖は、アミノ末端からカル
ボキシ末端へ向けて、連結ペプチド、膜貫通ドメイン、及び必要に応じてTCR細胞内ド
メインを含む。いくつかの実施形態では、TCRMは、1つ以上の天然に存在しないTC
Rドメインを含む。例えば、いくつかの実施形態では、TCRMは、1つ又は2つの天然
に存在しないTCR膜貫通ドメインを含む。天然に存在しないTCRドメインは、1つ以
上のアミノ酸の置換によって、及び/又は対応するドメインの一部を、別のTCRと類似
のドメインの一部と置換することによって改変された天然に存在するTCRの対応するド
メインであってもよい。caTCRは、第1のポリペプチド鎖及び第2のポリペプチド鎖
を含んでもよく、第1及び第2のポリペプチド鎖は共に、抗原結合モジュール及びTCR
Mを形成する。いくつかの実施形態では、第1及び第2のポリペプチド鎖は、別個のポリ
ペプチド鎖であり、caTCRは二量体などの多量体である。いくつかの実施形態では、
第1及び第2のポリペプチド鎖は、ペプチド結合、又はジスルフィド結合などの別の化学
結合によって共有結合されている。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチド鎖及び
第2のポリペプチド鎖は、少なくとも1つのジスルフィド結合によって連結される。いく
つかの実施形態では、caTCRは、1つ以上のT細胞共刺激シグナル伝達配列を更に含
む。1つ以上の共刺激シグナル伝達配列は、個別に、例えば、CD27、CD28、4-
1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、ICOS、リンパ球機能関連抗
原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD8
3と特異的に結合するリガンドなどを含む共刺激分子の細胞内ドメインの全て又は一部で
あり得る。いくつかの実施形態では、1つ以上の共刺激シグナル伝達配列は、第1のTC
R-TMと第1のTCR細胞内ドメインとの間、及び/又は第2のTCR-TMと第2の
TCR細胞内ドメインとの間にある。いくつかの実施形態では、1つ以上の共刺激シグナ
ル伝達配列は、第1のTCRD及び/又は第2のTCRDに対してカルボキシ末端側にあ
る。いくつかの実施形態では、caTCRはT細胞共刺激シグナル伝達配列を欠いている
。いくつかの実施形態では、caTCRが、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメ
インを含む安定化モジュールを更に含み、第1及び第2の安定化ドメインが、caTCR
を安定化させる、互いの結合親和性を有する。いくつかの実施形態では、安定化モジュー
ルは、抗原結合モジュールとTCRMとの間に位置する。いくつかの実施形態では、ca
TCRは、任意の2つのcaTCRモジュール又はドメイン間のスペーサモジュールを更
に含む。いくつかの実施形態では、スペーサモジュールは、2つのcaTCRモジュール
又はドメインを連結する1つ以上のペプチドリンカーを含む。
【0085】
本明細書に記載されるcaTCRは、このセクションに記載される1つ以上の特徴を有
してもよい。本明細書に記載されるcaTCR(例えば、抗原結合モジュール、TCRD
、TCR-TM、スペーサモジュール、安定化モジュール、T細胞共刺激配列、及び様々
なリンカーなど)の各構成要素のための特徴のいずれかを、各及び全ての組み合わせが個
別に記載されるかのように、CSRの特徴のいずれかと、及びSSEの特徴のいずれかと
互いに組み合わせることができることが意図される。
【0086】
いくつかの実施形態では、抗原結合モジュール(抗体部分など)は、a)他の分子に対
する結合親和性の少なくとも約10倍(例えば、少なくとも約10、20、30、40、
50、75、100、200、300、400、500、750、1000、若しくはそ
れ以上のうちのいずれかを含む)の親和性で、又はb)他の分子に結合するためのK
約1/10倍以下(例えば、約1/10、1/20、1/30、1/40、1/50、1
/75、1/100、1/200、1/300、1/400、1/500、1/750、
1/1000、若しくはそれ以下など)のKで標的抗原に特異的に結合する。結合親和
性は、ELISA、蛍光標識細胞分取(FACS)分析、又は放射線免疫沈降アッセイ(
RIA)などの当該技術分野において既知の方法によって決定することができる。K
、例えば、Biacore機器を利用する表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイ、又は
例えばSapidyne機器を利用する動的排除アッセイ(KinExA)などの当該技
術分野において既知の方法によって決定することができる。
【0087】
安定化ドメインの例としては、Fc領域、ヒンジ領域、C3ドメイン、C4ドメイ
ン、C1又はCドメイン、ロイシンジッパードメイン(例えば、jun/fosロイ
シンジッパードメイン、例えば、Kostelney et al,J.Immunol
,148:1547-1553,1992を参照されたい、若しくは酵母GCN4ロイシ
ンジッパードメイン)、イソロイシンジッパードメイン、二量体化細胞表面受容体の二量
体化領域(例えば、インターロイキン-8受容体(IL-8 R);又はLFA-1若し
くはGPIIIb/IIIaなどのインテグリンヘテロ二量体)、分泌型二量体化リガン
ド(例えば、神経成長因子(NGF)、ニューロトロフィン-3(NT-3)、インター
ロイキン-8(IL-8)、血管内皮増殖因子(VEGF)、若しくは脳由来神経栄養因
子(BDNF)の二量体化領域;例えば、Arakawa et al,J.Biol.
Chem.269:27833-27839,1994,及びRadziejewski
et al,Biochem.32:1350,1993を参照されたい);コイルド
コイル二量化ドメイン(例えば、WO2014152878、Fletcher et
al,ACS Synth.Biol.1:240-250,2012;及びThoma
s et al.,J.Am.Chem.Soc.135(13):5161-5166
、2013を参照されたい)、並びに、少なくとも1つのシステイン残基(例えば、約1
、2、又は3~約10のシステイン残基)を含むポリペプチドであって、ジスルフィド結
合がポリペプチドと少なくとも1つのシステイン残基を含む第2のポリペプチドとの間に
形成するようにできるポリペプチドが挙げられる。
【0088】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のTCRMは、a)第1のTCR膜貫通ドメ
イン(TCR-TM)を含む第1のT細胞受容体ドメイン(TCRD)と、b)第2のT
CR-TMを含む第2のTCRDと、を含み、TCRMは、少なくとも1つのTCR関連
シグナル伝達分子の動員を促進する。いくつかの実施形態では、TCR-TMの両方が天
然に存在する。いくつかの実施形態では、TCR-TMのうちの少なくとも1つは、天然
に存在しない。いくつかの実施形態では、TCR-TMの両方が天然に存在しない。いく
つかの実施形態では、第1のTCR-TMは、T細胞受容体(αβ TCR又はγδ T
CRなど)の膜貫通ドメインのうちの1つに由来し、第2のTCR-TMは、T細胞受容
体の他の膜貫通ドメインに由来する。いくつかの実施形態では、TCRMは、T細胞受容
体の膜貫通ドメインを含むTCRMと比較して、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝
達分子の動員を強化することができる。TCR関連シグナル伝達分子の動員は、TCR-
CD3複合体表面発現のFACS分析、又はCD3サブユニットとcaTCRとの同時免
疫沈降などの、当該技術分野において既知の方法によって決定することができる。
【0089】
例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるTCRMの第1のTCR-T
Mは、TCR α鎖(例えば、GenBank受託番号CCI73895)の膜貫通ドメ
イン又はその変異型を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなり、TCRMの
第2のTCR-TMは、TCR β鎖(例えば、GenBank受託番号CCI7389
3)の膜貫通ドメイン又はその変異体を含むか、それから本質的になるか、又はそれから
なる。いくつかの実施形態では、第1のTCR-TMは、TCR δ鎖(例えば、Gen
Bank受託番号AAQ57272)の膜貫通ドメイン又はその変異型を含むか、それか
ら本質的になるか、又はそれからなり、第2のTCR-TMは、TCR γ鎖(例えば、
GenBank受託番号AGE91788)の膜貫通ドメイン又はその変異体を含むか、
それから本質的になるか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載
のTCRMの第1及び第2のTCR-TMは、それぞれ、TCR α鎖定常ドメイン(例
えば、配列番号1)の膜貫通ドメイン、又はその変異型、及びTCR β鎖定常ドメイン
(例えば、配列番号2)の膜貫通ドメイン、又はその変異型を含むか、それから本質的に
なるか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、第1及び第2のTCR-TMは、
それぞれ、TCR δ鎖定常ドメイン(例えば、配列番号3)の膜貫通ドメイン、又はそ
の変異型、及びTCR γ鎖定常ドメイン(例えば、配列番号4)の膜貫通ドメイン、又
はその変異型を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。いくつかの実施形
態では、第1及び第2のTCR-TMは、それぞれ配列番号5及び6のアミノ酸配列、又
はその変異型を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。いくつかの実施形
態では、第1及び第2のTCR-TMは、それぞれ配列番号7及び8のアミノ酸配列、又
はその変異型を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。膜貫通ドメインの
変異型としては、参照配列と比較して1つ以上のアミノ酸置換を有する膜貫通ドメインが
挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、変異型膜貫通ドメイン
は、参照配列と比較して、5個以下のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、第
1のTCRDは、膜貫通ドメインに対してアミノ末端側の第1の連結ペプチドを更に含み
、及び/又は第2のTCRDは、膜貫通ドメインに対してアミノ末端側の第2の連結ペプ
チドを更に含む。いくつかの実施形態では、第1の連結ペプチドは、第1のTCR-TM
が由来するTCRサブユニットの連結ペプチドの全て若しくは一部、又はその変異型を含
み、及び/又は第2の連結ペプチドは、第2のTCR-TMが由来するTCRサブユニッ
トの連結ペプチドの全て若しくは一部、又はこれらの変異型を含む。いくつかの実施形態
では、第1及び/又は第2の連結ペプチドは、それぞれ、TCR α鎖定常ドメイン(例
えば、配列番号1)の連結ペプチドの全て又は一部、又はその変異型、及びTCR β鎖
定常ドメイン(例えば、配列番号2)の連結ペプチドの全て又は一部、又はその変異型を
含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、第1及
び/又は第2の連結ペプチドは、それぞれ、配列番号27若しくは28の連結ペプチド又
はその変異型の全て又は一部、及び配列番号29若しくは30の連結ペプチド又はその変
異型の全て又は一部を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。いくつかの
実施形態では、第1及び/又は第2の連結ペプチドは、それぞれ、TCR δ鎖定常ドメ
イン(例えば、配列番号3)の連結ペプチドの全て又は一部、又はその変異型、及びTC
R γ鎖定常ドメイン(例えば、配列番号4)の連結ペプチドの全て又は一部、又はその
変異型を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では
、第1及び/又は第2の連結ペプチドは、それぞれ、配列番号31若しくは32の連結ペ
プチド又はその変異型の全て又は一部、及び配列番号33若しくは34の連結ペプチド又
はその変異型の全て又は一部を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。い
くつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR-TMに対してカルボキシ末端
側の第1のTCR細胞内ドメインを更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTC
R-TMに対してカルボキシ末端側の第2のTCR細胞内ドメインを更に含む。いくつか
の実施形態では、第1のTCR細胞内ドメインは、第1のTCR-TMが由来するTCR
サブユニットの細胞内ドメイン若しくはその変異型の全て若しくは一部を含み、及び/又
は第2のTCR細胞内ドメインは、第2のTCR-TMが由来するTCRサブユニットの
細胞内ドメイン若しくはその変異型の全て若しくは一部を含む。いくつかの実施形態では
、第2のTCR細胞内ドメインは、配列番号35-36又はその変異型のアミノ酸配列の
うちのいずれか1つを含む。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、天然に存在す
るTCR又はその変異型の1つの鎖の断片であり、及び/又は第2のTCRDは、天然に
存在するTCR又はその変異型のうちの他の鎖の断片である。いくつかの実施形態では、
TCRDのうちの少なくとも1つは、天然に存在しない。いくつかの実施形態では、第1
及び第2のTCRDは、ジスルフィド結合によって連結されている。いくつかの実施形態
では、第1及び第2のTCRDは、第1の連結ペプチド中の残基と第2の連結ペプチド中
の残基との間のジスルフィド結合によって連結されている。いくつかの実施形態では、T
CRMは、CD3δε、CD3γε、及びζζからなる群から選択される少なくとも1つ
のTCR関連シグナル伝達分子を動員することができる。いくつかの実施形態では、TC
RMは、CD3δε、CD3γε、及びζζのそれぞれを動員して、caTCR-CD3
複合体を形成することができる(すなわち、caTCR-CD3複合体形成を促進する)
【0090】
想到されるcaTCR構築物としては、例えば、細胞表面抗原に特異的に結合するca
TCR、細胞表面提示ペプチド/MHC複合体に特異的に結合するcaTCR、及び細胞
表面抗原及び細胞表面提示ペプチド/MHC複合体の両方に特異的に結合するcaTCR
が挙げられる。
【0091】
いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールは、Fab、Fab’、(Fab’)2
、Fv、又は単鎖Fv(scFv)からなる群から選択される抗体部分である。いくつか
の実施形態では、抗体部分は単特異性である。いくつかの実施形態では、抗体部分は多重
特異性である。いくつかの実施形態では、抗体部分は二重特異性である。いくつかの実施
形態では、抗体部分は、タンデムscFv、ダイアボディ(Db)、単鎖ダイアボディ(
scDb)、二重親和性再標的化(DART)抗体、二重可変ドメイン(DVD)抗体、
化学的に架橋された抗体、ヘテロ多量体抗体、又はヘテロコンジュゲート抗体である。い
くつかの実施形態では、抗体部分は、ペプチドリンカーによって連結された2つのscF
vsを含むタンデムscFvである。いくつかの実施形態では、抗体部分は、直接結合し
ていない2つのscFvである。いくつかの実施形態では、抗体部分は、完全ヒト、ヒト
抗体フレームワーク領域を有する半合成、又はヒト化したものである。
【0092】
いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールは、V抗体ドメインを含む第1の抗原
結合ドメインと、V抗体ドメインを含む第2の抗原結合ドメインとを含む。いくつかの
実施形態では、V抗体ドメイン及びV抗体ドメインCDRは、同じ抗体部分に由来す
る。いくつかの実施形態では、V抗体ドメイン及びV抗体ドメインCDRの一部は、
異なる抗体部分に由来する。いくつかの実施形態では、V抗体ドメイン及び/又はV
抗体ドメインは、ヒト、ヒト化、キメラ、半合成、又は完全合成である。
【0093】
いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールは、完全ヒト配列及び1つ以上の合成領
域を含む半合成である抗体部分である。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールは
、完全ヒトVと、完全ヒトFR1、HC-CDR1、FR2、HC-CDR2、FR3
、及びFR4領域及び合成HC-CDR3を含む半合成Vと、を含む半合成抗体部分で
ある。いくつかの実施形態では、半合成Vは、約5~約25(約5、6、7、8、9、
10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、2
3、24、又は25のいずれかなど)の長さのアミノ酸の配列を有する完全合成HC-C
DR3を含む。いくつかの実施形態では、半合成V又は合成HC-CDR3は、約5~
約25(約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、1
8、19、20、21、22、23、24、又は25のいずれかなど)の長さのアミノ酸
の配列を有する完全合成HC-CDR3領域を含む半合成ライブラリー(半合成ヒトライ
ブラリーなど)から得られ、配列中の各アミノ酸は、互いに独立して、システインを除く
標準的なヒトアミノ酸からランダムに選択される。いくつかの実施形態では、合成HC-
CDR3は、約10~約19(約10、11、12、13、14、15、16、17、1
8又は19のいずれかなど)の長さのアミノ酸である。いくつかの実施形態では、抗原結
合モジュールは、半合成V及び半合成Vを含む半合成抗体部分である。いくつかの実
施形態では、抗原結合モジュールは、固定ヒトV/Vフレームワークペアを含む完全
合成抗体部分であるが、重鎖及び軽鎖の両方の6つのCDR全てについてランダム化及び
合成配列である。
【0094】
いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールは、1つ以上の抗体部分(モノクローナ
ル抗体など)に由来する特異的CDR配列、又は1つ以上のアミノ酸置換を含むそのよう
な配列の特定の変異型を含む抗体部分である。いくつかの実施形態では、変異型配列中の
アミノ酸置換は、抗原結合モジュールが標的抗原に結合する能力を実質的に低下させない
。標的抗原結合親和性を実質的に改善するか、又は標的抗原の関連変異型との特異性及び
/又は交差反応性などのいくつかの他の特性に影響を及ぼす変更も想到される。
【0095】
いくつかの実施形態では、安定化モジュールは、抗体部分から誘導される。例えば、い
くつかの実施形態では、安定化モジュールは、C1抗体ドメイン又はその変異型を含む
第1の安定化ドメインと、C抗体ドメイン又はその変異型を含む第2の安定化ドメイン
と、を含む。別の実施形態では、安定化モジュールは、C3抗体ドメイン又はその変異
型を含む第1の安定化ドメインと、C3抗体ドメイン又はその変異型を含む第2の安定
化ドメインと、を含む。いくつかの実施形態では、安定化モジュールに含まれる抗体重鎖
定常ドメイン(例えば、C1又はC3)は、IgG(例えば、IgG1、IgG2、
IgG3、又はIgG4)、IgA(例えば、IgA1又はIgA2)、IgD、IgM
、又はIgE重鎖、所望によりヒトに由来する。いくつかの実施形態では、安定化モジュ
ールに含まれる抗体重鎖定常ドメイン(例えば、C1又はC3)は、それが由来する
配列と比較して、1つ以上の改変(例えば、アミノ酸置換、挿入、及び/又は欠失)を含
む変異型である。いくつかの実施形態では、安定化モジュールに含まれる抗体軽鎖定常ド
メイン(C)は、カッパ又はラムダ軽鎖、所望によりヒトに由来する。いくつかの実施
形態では、安定化モジュールに含まれる抗体軽鎖定常ドメイン(C)は、それが由来す
る配列と比較して、1つ以上の改変(例えば、アミノ酸置換、挿入、及び/又は欠失)を
含む変異型である。いくつかの実施形態では、第1及び/又は第2の安定化ドメインは、
互いに結合親和性を実質的に変化させない1つ以上の改変を含む。いくつかの実施形態で
は、第1及び/又は第2の安定化ドメインは、互いに結合親和性を増加させ、及び/又は
天然に存在しないジスルフィド結合を導入する1つ以上の改変を含む。いくつかの実施形
態では、安定化モジュールは、knob-into-hole改変(例えば、Carte
r P.J Immunol Methods.248:7-15,2001を参照され
たい)を含む。例えば、いくつかの実施形態では、安定化モジュールは、knob-in
to-hole改変を含む抗体定常ドメイン領域(例えば、C3ドメイン)を含む。い
くつかの実施形態では、安定化モジュールは、それらの結合を増強するための静電的ステ
アリングによって改変された抗体定常ドメイン領域(例えば、C3ドメイン)を含む(
例えば、WO2006106905及びGunasekaran K,et al.J
Biol Chem.285:19637-46,2010を参照されたい)。いくつか
の実施形態では、第1及び第2の安定化ドメインは、ジスルフィド結合によって連結され
る。
【0096】
いくつかの実施形態では、caTCRは、所望により安定化モジュールを含む、本明細
書に記載のTCRMに連結された本明細書に記載の抗原結合モジュールを含む。例えば、
いくつかの実施形態では、caTCRは、TCRDの一方又は両方のN末端に連結された
抗原結合モジュールを含む。いくつかの実施形態では、caTCRは、TCRMと抗原結
合モジュールとの間の安定化モジュールを含む。いくつかの実施形態では、caTCRは
、任意の2つのcaTCRモジュール又はドメイン間のスペーサモジュールを更に含む。
いくつかの実施形態では、スペーサモジュールは、約5~約70(約5、10、15、2
0、25、30、35、40、45、50、55、60、65、又は70のいずれかなど
、これらの値間の任意の範囲を含む)の長さのアミノ酸の1つ以上のペプチドリンカーを
含む。いくつかの実施形態では、caTCRは、1つ以上のアクセサリー細胞内ドメイン
を更に含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のアクセサリー細胞内ドメインは、第1
及び/又は第2のTCRDに対してカルボキシ末端側である。いくつかの実施形態では、
1つ以上のアクセサリー細胞内ドメインは、第1のTCR-TMと第1のTCR細胞内ド
メインとの間、及び/又は第2のTCR-TMと第2のTCR細胞内ドメインとの間にあ
る。いくつかの実施形態では、1つ以上のアクセサリー細胞内ドメインは、個々に、TC
R共刺激ドメインを含む。いくつかの実施形態では、TCR共刺激ドメインは、免疫共刺
激分子(CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD4
0、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT
、NKG2C、B7-H3、CD83と特異的に結合するリガンドなど)の細胞内ドメイ
ンの全て又は一部を含む。いくつかの実施形態では、TCR共刺激ドメインは、配列番号
51~56、又はその変異型のいずれか1つのアミノ酸配列の全て又は一部を含む。
【0097】
いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールは、細胞表面抗原に特異的に結合する。
いくつかの実施形態では、細胞表面抗原は、タンパク質、炭水化物、及び脂質からなる群
から選択される。いくつかの実施形態では、細胞表面抗原は、疾患細胞において発現する
疾患関連抗原である。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールは、ペプチド及びM
HCタンパク質を含む複合体に特異的に結合する。ペプチド/MHC複合体としては、例
えば、疾患細胞で発現する疾患関連抗原に由来するペプチド及びMHCタンパク質を含む
表面提示複合体が挙げられる。いくつかの実施形態では、完全長疾患関連抗原は、疾患細
胞の表面に通常発現しない(例えば、疾患関連抗原は、細胞内又は分泌タンパク質である
)。いくつかの実施形態では、疾患はがんであり、疾患関連抗原は、がん細胞において発
現する腫瘍関連抗原である。いくつかの実施形態では、腫瘍関連抗原は、腫瘍性タンパク
質である。いくつかの実施形態では、腫瘍性タンパク質は、がん原遺伝子における変異の
結果であり、腫瘍性タンパク質は、変異を含むネオエピトープを含む。例えば、いくつか
の実施形態では、抗原結合モジュールは、細胞表面腫瘍関連抗原(例えば、ネオエピトー
プを含む腫瘍性タンパク質)に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗原結合モ
ジュールは、がん細胞表面では通常発現しない(例えば、細胞内又は分泌の腫瘍関連抗原
)腫瘍関連抗原(例えば、ネオエピトープを含む腫瘍性タンパク質)に由来するペプチド
及びMHCタンパク質を含む複合体に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、疾患
はウイルス感染であり、疾患関連抗原は、感染細胞において発現するウイルス関連抗原で
ある。例えば、いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールは、細胞表面のウイルス関
連抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールは、ウイルス
感染細胞の表面に通常発現しないウイルス関連抗原(例えば、細胞内又は分泌のウイルス
関連抗原)に由来するペプチド及びMHCタンパク質を含む複合体に特異的に結合する。
いくつかの実施形態では、caTCR構築物は、約0.1pM~約500nM(約0.1
pM、1.0pM、10pM、50pM、100pM、500pM、1nM、10nM、
50nM、100nM、又は500nMのいずれかなど、これらの値間の任意の範囲を含
む)のKで標的抗原に結合する。
【0098】
いくつかの実施形態では、caTCRは、細胞表面抗原に特異的に結合する抗原結合モ
ジュールを含み、細胞表面抗原は、CD19、CD20、CD22、CD47、GPC-
3、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5D、又はFCRL5、その変異型又は変
異体を含むものである。完全な抗原、例えば、細胞表面抗原への特異的結合は、しばしば
、「非MHC拘束結合」と呼ばれる。
【0099】
いくつかの実施形態では、caTCRは、ペプチド及びMHCタンパク質を含む複合体
に特異的に結合する抗原結合モジュールを含み、ペプチドは、WT-1、AFP、HPV
16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1、KRA
S、ヒストンH3.3、及びPSA、その変異型又は変異体を含むものからなる群から選
択されるタンパク質に由来する。ペプチド及びMHCタンパク質を含む複合体への特異的
結合は、しばしば「MHC拘束結合」と呼ばれる。
【0100】
いくつかの実施形態では、caTCRは、疾患関連抗原(腫瘍関連抗原又はウイルスコ
ード抗原など)及びMHCクラスIタンパク質に由来するペプチドを含む複合体に特異的
に結合する抗原結合モジュールを含み、MHCクラスIタンパク質は、HLA-A、HL
A-B、HLA-C、HLA-E、HLA-F、又はHLA-Gである。いくつかの実施
形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-A、HLA-B、又はHLA-Cであ
る。いくつかの実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-Aである。いくつ
かの実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-Bである。いくつかの実施形
態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-Cである。いくつかの実施形態では、M
HCクラスIタンパク質は、HLA-A01、HLA-A02、HLA-A03、HLA
-A09、HLA-A10、HLA-A11、HLA-A19、HLA-A23、HLA
-A24、HLA-A25、HLA-A26、HLA-A28、HLA-A29、HLA
-A30、HLA-A31、HLA-A32、HLA-A33、HLA-A34、HLA
-A36、HLA-A43、HLA-A66、HLA-A68、HLA-A69、HLA
-A74、又はHLA-A80である。いくつかの実施形態では、MHCクラスIタンパ
ク質は、HLA-A02である。いくつかの実施形態では、MHCクラスIタンパク質は
、HLA-A02:01-555、例えばHLA-A02:01、HLA-A02
:02、HLA-A02:03、HLA-A02:04、HLA-A02:05、
HLA-A02:06、HLA-A02:07、HLA-A02:08、HLA-
02:09、HLA-A02:10、HLA-A02:11、HLA-A02
:12、HLA-A02:13、HLA-A02:14、HLA-A02:15、
HLA-A02:16、HLA-A02:17、HLA-A02:18、HLA-
02:19、HLA-A02:20、HLA-A02:21、HLA-A02
:22、又はHLA-A02:24のうちのいずれか1つである。いくつかの実施形態
では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-A02:01である。
【0101】
いくつかの実施形態では、caTCRは、疾患関連抗原(腫瘍関連抗原又はウイルスコ
ード抗原など)に由来するペプチド及びMHCクラスIIタンパク質を含む複合体に特異
的に結合する抗原結合モジュールを含み、MHCクラスIIタンパク質は、HLA-DP
、HLA-DQ、又はHLA-DRである。いくつかの実施形態では、MHCクラスII
タンパク質は、HLA-DPである。いくつかの実施形態では、MHCクラスIIタンパ
ク質は、HLA-DQである。いくつかの実施形態では、MHCクラスIIタンパク質は
、HLA-DRである。
【0102】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcaTCRは、a)標的抗原に特異的に結
合する抗原結合モジュールと、b)TCR(αβTCR又はγδTCRなど)の膜貫通ド
メインに由来する第1及び第2のTCR-TMを含むTCRMとを含み、TCRMは、少
なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することができる。いくつかの実施形
態では、抗原結合モジュールは、TCRM中の1つ以上のポリペプチド鎖のアミノ末端に
連結する。例えば、いくつかの実施形態では、TCRMは、2つのポリペプチド鎖を含み
、抗原結合モジュールは、TCRMポリペプチド鎖の一方又は両方のアミノ末端に連結さ
れる。いくつかの実施形態では、第1及び第2のTCR-TMは、天然に存在する。いく
つかの実施形態では、TCR-TMのうちの少なくとも1つは、天然に存在しない。いく
つかの実施形態では、第1及び第2のTCR-TMは天然に存在しない。いくつかの実施
形態では、TCRMは、TCR-TMに対してアミノ末端側のTCRの少なくとも1つの
連結ペプチド又はその断片を更に含む。いくつかの実施形態では、TCRMは、TCR-
TMに対してカルボキシ末端側のTCRの細胞内ドメイン由来の配列を含む、少なくとも
1つのTCR細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、TCRMは、TCR
鎖の断片に由来するTCRDを含む。いくつかの実施形態では、TCRDのうちの少なく
とも1つは、天然に存在しない。いくつかの実施形態では、caTCRは、TCR-TM
に対してカルボキシ末端側のT細胞共刺激シグナル伝達配列(CD27、CD28、4-
1BB(CD137)、OX40、CD30、又はCD40由来など)を含む、少なくと
も1つのアクセサリー細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、caTCR
は共刺激シグナル伝達配列を欠いている。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュール
は、抗体部分である。いくつかの実施形態では、抗体部分は、V抗体ドメイン及びV
抗体ドメインを含む。いくつかの実施形態では、抗体部分は、ヒト、ヒト化、キメラ、半
合成、又は完全合成である。いくつかの実施形態では、caTCRが、第1の安定化ドメ
イン及び第2の安定化ドメインを含む安定化モジュールを更に含み、第1及び第2の安定
化ドメインが、caTCRを安定化させる、互いの結合親和性を有する。いくつかの実施
形態では、安定化モジュールは、安定化ドメインを連結する少なくとも1つのジスルフィ
ド結合を含む。いくつかの実施形態では、第1及び第2の安定化ドメインは、C1及び
抗体ドメインなどの抗体ドメイン、又はその変異型を含む。いくつかの実施形態では
、TCRMは、CD3δε、CD3γε、及びζζからなる群から選択される少なくとも
1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することができる。いくつかの実施形態では、
TCRMは、T細胞受容体の膜貫通ドメインを含むTCRMと比較して、少なくとも1つ
のTCR関連シグナル伝達分子の動員を強化することができる。いくつかの実施形態では
、TCRMは、caTCR-CD3複合体形成を促進する。いくつかの実施形態では、任
意の2つのcaTCRモジュール間又はドメイン間にスペーサモジュールが存在する。い
くつかの実施形態では、caTCRはヘテロ二量体などのヘテロ多量体である。例えば、
いくつかの実施形態では、caTCRは、第1のTCRDを含む第1のポリペプチド鎖と
、第2のTCRDを含む第2のポリペプチド鎖とを含むヘテロ二量体であり、抗原結合モ
ジュールは、第1及び/又は第2のポリペプチド鎖に連結される。いくつかの実施形態で
は、抗原結合モジュールは、多重特異性(二重特異性など)である。
【0103】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcaTCRは、標的抗原に特異的に結合し
、a)TCRの膜貫通ドメインのうちの1つに由来する第1のTCR-TMを含む第1の
TCRD、及びTCRの他の膜貫通ドメインに由来する第2のTCR-TMを含む第2の
TCRDと、b)標的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュールと、を含み、第1及び
第2のTCRDは、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することのでき
るTCRMを形成し、抗原結合モジュールは、第1及び/又は第2のTCRDに連結する
。いくつかの実施形態では、TCR-TMの両方が天然に存在する。いくつかの実施形態
では、TCR-TMのうちの少なくとも1つは、天然に存在しない。いくつかの実施形態
では、TCRはαβ TCRであり、第1及び第2のTCR-TMは、TCR α及びβ
サブユニット膜貫通ドメインに由来する。いくつかの実施形態では、TCRはγδ TC
Rであり、第1及び第2のTCR-TMは、TCR γ及びδサブユニット膜貫通ドメイ
ンに由来する。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR連結ペプチド
又はその断片を更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR連結ペプチド又は
その断片を更に含む。いくつかの実施形態では、第1の連結ペプチドは、第1のTCR-
TMが由来するTCRサブユニットの連結ペプチドの全て若しくは一部、又はその変異型
を含み、及び/又は第2の連結ペプチドは、第2のTCR-TMが由来するTCRサブユ
ニットの連結ペプチドの全て若しくは一部、又はこれらの変異型を含む。いくつかの実施
形態では、第1及び第2の連結ペプチドは、ジスルフィド結合によって連結される。いく
つかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR細胞内ドメインを更に含み、及び
/又は第2のTCRDは、第2のTCR細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態
では、第1のTCR細胞内ドメインは、第1のTCR-TMが由来するTCRサブユニッ
トの細胞内ドメイン由来の配列を含み、及び/又は第2のTCR細胞内ドメインは、第2
のTCR-TMが由来するTCRサブユニットの細胞内ドメイン由来の配列を含む。いく
つかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR-TMが由来するTCRサブユニ
ットの断片であり、及び/又は、第2のTCRDは、第2のTCR-TMが由来するTC
Rサブユニットの断片である。いくつかの実施形態では、caTCRは、T細胞共刺激シ
グナル伝達配列(CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30
、又はCD40由来など)を含む、少なくとも1つのアクセサリー細胞内ドメインを更に
含む。いくつかの実施形態では、caTCRが、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化
ドメインを含む安定化モジュールを更に含み、第1及び第2の安定化ドメインが、caT
CRを安定化させる、互いの結合親和性を有する。いくつかの実施形態では、第1及び第
2の安定化ドメインは、ジスルフィド結合によって連結される。いくつかの実施形態では
、第1及び第2の安定化ドメインは、C1及びC抗体ドメインなどの抗体ドメイン、
又はその変異型を含む。いくつかの実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γε
、及びζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動
員することができる。いくつかの実施形態では、TCRMは、T細胞受容体の膜貫通ドメ
インを含むTCRMと比較して、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の動員を
強化することができる。いくつかの実施形態では、TCRMは、caTCR-CD3複合
体形成を促進する。いくつかの実施形態では、任意の2つのcaTCRモジュール間又は
ドメイン間にスペーサモジュールが存在する。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュ
ールは、抗体部分である。いくつかの実施形態では、抗体部分は、Fab、Fab’、(
Fab’)2、Fv、又は単鎖Fv(scFv)である。いくつかの実施形態では、抗原
結合モジュールは、多重特異性(二重特異性など)である。
【0104】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcaTCRは、標的抗原に特異的に結合し
、a)天然に存在するαβ TCRの膜貫通ドメインのうちの1つに由来する第1のTC
R-TMを含む第1のTCRD、及び天然に存在するαβ TCRの他の膜貫通ドメイン
に由来する第2のTCR-TMを含む第2のTCRDと、b)標的抗原に特異的に結合す
る抗原結合モジュールと、を含み、第1及び第2のTCRDは、少なくとも1つのTCR
関連シグナル伝達分子を動員することのできるTCRMを形成し、抗原結合モジュールは
、第1及び/又は第2のTCRDに連結する。いくつかの実施形態では、TCR-TMの
両方が天然に存在する。いくつかの実施形態では、TCR-TMのうちの少なくとも1つ
は、天然に存在しない。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR連結
ペプチド又はその断片を更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR連結ペプ
チド又はその断片を更に含む。いくつかの実施形態では、第1の連結ペプチドは、第1の
TCR-TMが由来するTCRサブユニットの連結ペプチドの全て若しくは一部、又はそ
の変異型を含み、及び/又は第2の連結ペプチドは、第2のTCR-TMが由来するTC
Rサブユニットの連結ペプチドの全て若しくは一部、又はこれらの変異型を含む。いくつ
かの実施形態では、第1及び第2の連結ペプチドは、ジスルフィド結合によって連結され
る。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR細胞内ドメインを更に含
み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR細胞内ドメインを更に含む。いくつかの
実施形態では、第1のTCR細胞内ドメインは、第1のTCR-TMが由来するTCRサ
ブユニットの細胞内ドメイン由来の配列を含み、及び/又は第2のTCR細胞内ドメイン
は、第2のTCR-TMが由来するTCRサブユニットの細胞内ドメイン由来の配列を含
む。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR-TMが由来するTCR
サブユニットの断片であり、及び/又は、第2のTCRDは、第2のTCR-TMが由来
するTCRサブユニットの断片である。いくつかの実施形態では、caTCRは、T細胞
共刺激シグナル伝達配列(CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、
CD30、又はCD40由来など)を含む、少なくとも1つのアクセサリー細胞内ドメイ
ンを更に含む。いくつかの実施形態では、caTCRが、第1の安定化ドメイン及び第2
の安定化ドメインを含む安定化モジュールを更に含み、第1及び第2の安定化ドメインが
、caTCRを安定化させる、互いの結合親和性を有する。いくつかの実施形態では、第
1及び第2の安定化ドメインは、ジスルフィド結合によって連結される。いくつかの実施
形態では、第1及び第2の安定化ドメインは、C1及びC抗体ドメインなどの抗体ド
メイン、又はその変異型を含む。いくつかの実施形態では、TCRMは、CD3δε、C
D3γε、及びζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達
分子を動員することができる。いくつかの実施形態では、TCRMは、天然に存在するα
β T細胞受容体の膜貫通ドメインを含むTCRMと比較して、少なくとも1つのTCR
関連シグナル伝達分子の動員を強化することができる。いくつかの実施形態では、TCR
Mは、caTCR-CD3複合体形成を促進する。いくつかの実施形態では、任意の2つ
のcaTCRモジュール間又はドメイン間にスペーサモジュールが存在する。いくつかの
実施形態では、抗原結合モジュールは、抗体部分である。いくつかの実施形態では、抗体
部分は、Fab、Fab’、(Fab’)2、Fv、又は単鎖Fv(scFv)である。
いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールは、多重特異性(二重特異性など)である
【0105】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcaTCRは、標的抗原に特異的に結合し
、a)天然に存在するγδ TCRの膜貫通ドメインのうちの1つに由来する第1のTC
R-TMを含む第1のTCRD、及び天然に存在するγδ TCRの他の膜貫通ドメイン
に由来する第2のTCR-TMを含む第2のTCRDと、b)標的抗原に特異的に結合す
る抗原結合モジュールと、を含み、第1及び第2のTCRDは、少なくとも1つのTCR
関連シグナル伝達分子を動員することのできるTCRMを形成し、抗原結合モジュールは
、第1及び/又は第2のTCRDに連結する。いくつかの実施形態では、TCR-TMの
両方が天然に存在する。いくつかの実施形態では、TCR-TMのうちの少なくとも1つ
は、天然に存在しない。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR連結
ペプチド又はその断片を更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR連結ペプ
チド又はその断片を更に含む。いくつかの実施形態では、第1の連結ペプチドは、第1の
TCR-TMが由来するTCRサブユニットの連結ペプチドの全て若しくは一部、又はそ
の変異型を含み、及び/又は第2の連結ペプチドは、第2のTCR-TMが由来するTC
Rサブユニットの連結ペプチドの全て若しくは一部、又はこれらの変異型を含む。いくつ
かの実施形態では、第1及び第2の連結ペプチドは、ジスルフィド結合によって連結され
る。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR細胞内ドメインを更に含
み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR細胞内ドメインを更に含む。いくつかの
実施形態では、第1のTCR細胞内ドメインは、第1のTCR-TMが由来するTCRサ
ブユニットの細胞内ドメイン由来の配列を含み、及び/又は第2のTCR細胞内ドメイン
は、第2のTCR-TMが由来するTCRサブユニットの細胞内ドメイン由来の配列を含
む。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR-TMが由来するTCR
サブユニットの断片であり、及び/又は、第2のTCRDは、第2のTCR-TMが由来
するTCRサブユニットの断片である。いくつかの実施形態では、caTCRは、T細胞
共刺激シグナル伝達配列(CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、
CD30、又はCD40由来など)を含む、少なくとも1つのアクセサリー細胞内ドメイ
ンを更に含む。いくつかの実施形態では、caTCRが、第1の安定化ドメイン及び第2
の安定化ドメインを含む安定化モジュールを更に含み、第1及び第2の安定化ドメインが
、caTCRを安定化させる、互いの結合親和性を有する。いくつかの実施形態では、第
1及び第2の安定化ドメインは、ジスルフィド結合によって連結される。いくつかの実施
形態では、第1及び第2の安定化ドメインは、C1及びC抗体ドメインなどの抗体ド
メイン、又はその変異型を含む。いくつかの実施形態では、TCRMは、CD3δε、C
D3γε、及びζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達
分子を動員することができる。いくつかの実施形態では、TCRMは、天然に存在するγ
δ T細胞受容体の膜貫通ドメインを含むTCRMと比較して、少なくとも1つのTCR
関連シグナル伝達分子の動員を強化することができる。いくつかの実施形態では、TCR
Mは、caTCR-CD3複合体形成を促進する。いくつかの実施形態では、任意の2つ
のcaTCRモジュール間又はドメイン間にスペーサモジュールが存在する。いくつかの
実施形態では、抗原結合モジュールは、抗体部分である。いくつかの実施形態では、抗体
部分は、Fab、Fab’、(Fab’)2、Fv、又は単鎖Fv(scFv)である。
いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールは、多重特異性(二重特異性など)である
【0106】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcaTCRは、標的抗原に特異的に結合し
、a)配列番号1及び配列番号2のアミノ酸配列のうちの1つに含まれる膜貫通ドメイン
に由来する第1のTCR-TMを含む第1のTCRD、及び他のアミノ酸配列に含まれる
膜貫通ドメインに由来する第2のTCR-TMを含む第2のTCRDと、b)標的抗原に
特異的に結合する抗原結合モジュールと、を含み、第1及び第2のTCRDは、少なくと
も1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することのできるTCRMを形成し、抗原結
合モジュールは、第1及び/又は第2のTCRDに連結する。いくつかの実施形態では、
TCR-TMの両方が天然に存在する。いくつかの実施形態では、TCR-TMのうちの
少なくとも1つは、天然に存在しない。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第
1のTCR連結ペプチド又はその断片を更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2の
TCR連結ペプチド又はその断片を更に含む。いくつかの実施形態では、第1の連結ペプ
チド及び第2の連結ペプチドはそれぞれ、互いに独立して、配列番号1~4のアミノ酸配
列又はその変異型のいずれか1つに含まれる連結ペプチドのアミノ酸配列を含む。いくつ
かの実施形態では、第1の連結ペプチド及び第2の連結ペプチドはそれぞれ、互いに独立
して、配列番号27~34又はその変異型のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。いくつ
かの実施形態では、第1及び第2の連結ペプチドは、ジスルフィド結合によって連結され
る。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR細胞内ドメインを更に含
み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR細胞内ドメインを更に含む。いくつかの
実施形態では、第1のTCR細胞内ドメイン及び第2のTCR細胞内ドメインはそれぞれ
、互いに独立して、配列番号1~4のアミノ酸配列又はその変異型のいずれか1つに含ま
れる細胞内ドメインのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1のTCR細胞
内ドメイン及び第2のTCR細胞内ドメインはそれぞれ、互いに独立して、配列番号35
若しくは36又はその変異型のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、caTC
Rは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(CD27、CD28、4-1BB(CD137)
、OX40、CD30、又はCD40由来など)を含む、少なくとも1つのアクセサリー
細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、caTCRが、第1の安定化ドメ
イン及び第2の安定化ドメインを含む安定化モジュールを更に含み、第1及び第2の安定
化ドメインが、caTCRを安定化させる、互いの結合親和性を有する。いくつかの実施
形態では、第1及び第2の安定化ドメインは、ジスルフィド結合によって連結される。い
くつかの実施形態では、第1及び第2の安定化ドメインは、C1及びC抗体ドメイン
などの抗体ドメイン、又はその変異型を含む。いくつかの実施形態では、TCRMは、C
D3δε、CD3γε、及びζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連
シグナル伝達分子を動員することができる。いくつかの実施形態では、TCRMは、配列
番号1及び2に含まれる膜貫通ドメインの配列を有するT細胞受容体膜貫通ドメインを含
むTCRMと比較して、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の動員を強化する
ことができる。いくつかの実施形態では、TCRMは、caTCR-CD3複合体形成を
促進する。いくつかの実施形態では、任意の2つのcaTCRモジュール間又はドメイン
間にスペーサモジュールが存在する。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールは、
抗体部分である。いくつかの実施形態では、抗体部分は、Fab、Fab’、(Fab’
)2、Fv、又は単鎖Fv(scFv)である。いくつかの実施形態では、抗原結合モジ
ュールは、多重特異性(二重特異性など)である。
【0107】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcaTCRは、標的抗原に特異的に結合し
、a)配列番号1及び配列番号2のアミノ酸配列のうちの1つに含まれる膜貫通ドメイン
に由来する第1のTCR-TMを含む第1のTCRD、及び他のアミノ酸配列に含まれる
膜貫通ドメインに由来する第2のTCR-TMを含む第2のTCRDと、b)標的抗原に
特異的に結合する抗原結合モジュールと、を含み、TCR-TMの少なくとも1つは、そ
れが由来するアミノ酸配列と比較して、1つ以上(2、3、4、5、又はそれ以上など)
のアミノ酸置換を含み、第1及び第2のTCRDは、少なくとも1つのTCR関連シグナ
ル伝達分子を動員することのできるTCRMを形成し、抗原結合モジュールは、第1及び
/又は第2のTCRDに連結する。いくつかの実施形態では、TCR-TMのそれぞれは
、互いに独立して、それが由来するアミノ酸配列と比較して、1つ以上(2、3、4、5
、又はそれ以上など)のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、第1のTCR-
TM及び/又は第2のTCR-TMはそれぞれ、互いに独立して、それらが由来するアミ
ノ酸配列と比較して、5個以下のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、TCR
-TMのうちの少なくとも1つは、それが由来するアミノ酸配列と比較して、単一のアミ
ノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、TCR-TMのそれぞれは、それが由来する
アミノ酸配列と比較して、単一のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、第1の
TCR-TM中の置換アミノ酸のうちの少なくとも1つは、caTCRにおいて、第2の
TCR-TM中の置換アミノ酸のうちの少なくとも1つと相互作用することができるよう
に配置される。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR連結ペプチド
又はその断片を更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR連結ペプチド又は
その断片を更に含む。いくつかの実施形態では、第1の連結ペプチド及び第2の連結ペプ
チドはそれぞれ、互いに独立して、配列番号1~4のアミノ酸配列又はその変異型のいず
れか1つに含まれる連結ペプチドのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1
の連結ペプチド及び第2の連結ペプチドはそれぞれ、互いに独立して、配列番号27~3
4又はその変異型のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1
及び第2の連結ペプチドは、ジスルフィド結合によって連結される。いくつかの実施形態
では、第1のTCRDは、第1のTCR細胞内ドメインを更に含み、及び/又は第2のT
CRDは、第2のTCR細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、第1のT
CR細胞内ドメイン及び第2のTCR細胞内ドメインはそれぞれ、互いに独立して、配列
番号1~4のアミノ酸配列又はその変異型のいずれか1つに含まれる細胞内ドメインのア
ミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1のTCR細胞内ドメイン及び第2のT
CR細胞内ドメインはそれぞれ、互いに独立して、配列番号35若しくは36又はその変
異型のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、caTCRは、T細胞共刺激シグ
ナル伝達配列(CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、
又はCD40由来など)を含む、少なくとも1つのアクセサリー細胞内ドメインを更に含
む。いくつかの実施形態では、caTCRが、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ド
メインを含む安定化モジュールを更に含み、第1及び第2の安定化ドメインが、caTC
Rを安定化させる、互いの結合親和性を有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2
の安定化ドメインは、ジスルフィド結合によって連結される。いくつかの実施形態では、
第1及び第2の安定化ドメインは、C1及びC抗体ドメインなどの抗体ドメイン、又
はその変異型を含む。いくつかの実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γε、
及びζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員
することができる。いくつかの実施形態では、TCRMは、配列番号1及び2に含まれる
膜貫通ドメインの配列を有するT細胞受容体膜貫通ドメインを含むTCRMと比較して、
少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の動員を強化することができる。いくつか
の実施形態では、TCRMは、caTCR-CD3複合体形成を促進する。いくつかの実
施形態では、任意の2つのcaTCRモジュール間又はドメイン間にスペーサモジュール
が存在する。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールは、抗体部分である。いくつ
かの実施形態では、抗体部分は、Fab、Fab’、(Fab’)2、Fv、又は単鎖F
v(scFv)である。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールは、多重特異性(
二重特異性など)である。
【0108】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcaTCRは、標的抗原に特異的に結合し
、a)配列番号1及び配列番号2のアミノ酸配列のうちの1つに含まれる膜貫通ドメイン
に由来する第1のTCR-TMを含む第1のTCRD、及び他のアミノ酸配列に含まれる
膜貫通ドメインに由来する第2のTCR-TMを含む第2のTCRDと、b)標的抗原に
特異的に結合する抗原結合モジュールと、を含み、TCR-TMの少なくとも1つは、配
列番号3又は4に含まれる膜貫通ドメイン由来の連続したアミノ酸の一部を含むキメラ配
列を含み、第1及び第2のTCRDは、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を
動員することのできるTCRMを形成し、抗原結合モジュールは、第1及び/又は第2の
TCRDに連結する。いくつかの実施形態では、TCR-TMのそれぞれは、互いに独立
して、配列番号3又は4に含まれる膜貫通ドメイン由来の連続するアミノ酸の一部を含む
キメラ配列を含む。いくつかの実施形態では、第1のTCR-TM及び/又は第2のTC
R-TMはそれぞれ、互いに独立して、配列番号3又は4に含まれる膜貫通ドメイン由来
の約10以下(約9、8、7、6、5、又はそれ以下など)の連続するアミノ酸の一部を
含むキメラ配列を含む。いくつかの実施形態では、第1又は第2のTCR-TM中のキメ
ラ配列は、配列番号3に含まれる膜貫通ドメイン由来であり、他のTCR-TM中のキメ
ラ配列は、配列番号4に含まれる膜貫通ドメイン由来である。いくつかの実施形態では、
第1のTCR-TM中のキメラ配列は、それが第2のTCR-TM中のキメラ配列と相互
作用することができるように配置される。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、
第1のTCR連結ペプチド又はその断片を更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2
のTCR連結ペプチド又はその断片を更に含む。いくつかの実施形態では、第1の連結ペ
プチド及び第2の連結ペプチドはそれぞれ、互いに独立して、配列番号1~4のアミノ酸
配列又はその変異型のいずれか1つに含まれる連結ペプチドのアミノ酸配列を含む。いく
つかの実施形態では、第1の連結ペプチド及び第2の連結ペプチドはそれぞれ、互いに独
立して、配列番号27~34又はその変異型のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。いく
つかの実施形態では、第1及び第2の連結ペプチドは、ジスルフィド結合によって連結さ
れる。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR細胞内ドメインを更に
含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR細胞内ドメインを更に含む。いくつか
の実施形態では、第1のTCR細胞内ドメイン及び第2のTCR細胞内ドメインはそれぞ
れ、互いに独立して、配列番号1~4のアミノ酸配列又はその変異型のいずれか1つに含
まれる細胞内ドメインのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1のTCR細
胞内ドメイン及び第2のTCR細胞内ドメインはそれぞれ、互いに独立して、配列番号3
5若しくは36又はその変異型のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、caT
CRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(CD27、CD28、4-1BB(CD137
)、OX40、CD30、又はCD40由来など)を含む、少なくとも1つのアクセサリ
ー細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、caTCRが、第1の安定化ド
メイン及び第2の安定化ドメインを含む安定化モジュールを更に含み、第1及び第2の安
定化ドメインが、caTCRを安定化させる、互いの結合親和性を有する。いくつかの実
施形態では、第1及び第2の安定化ドメインは、ジスルフィド結合によって連結される。
いくつかの実施形態では、第1及び第2の安定化ドメインは、C1及びC抗体ドメイ
ンなどの抗体ドメイン、又はその変異型を含む。いくつかの実施形態では、TCRMは、
CD3δε、CD3γε、及びζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関
連シグナル伝達分子を動員することができる。いくつかの実施形態では、TCRMは、配
列番号1及び2に含まれる膜貫通ドメインの配列を有するT細胞受容体膜貫通ドメインを
含むTCRMと比較して、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の動員を強化す
ることができる。いくつかの実施形態では、TCRMは、caTCR-CD3複合体形成
を促進する。いくつかの実施形態では、任意の2つのcaTCRモジュール間又はドメイ
ン間にスペーサモジュールが存在する。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールは
、抗体部分である。いくつかの実施形態では、抗体部分は、Fab、Fab’、(Fab
’)2、Fv、又は単鎖Fv(scFv)である。いくつかの実施形態では、抗原結合モ
ジュールは、多重特異性(二重特異性など)である。
【0109】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcaTCRは、標的抗原に特異的に結合し
、a)配列番号3及び配列番号4のアミノ酸配列のうちの1つに含まれる膜貫通ドメイン
に由来する第1のTCR-TMを含む第1のTCRD、及び他のアミノ酸配列に含まれる
膜貫通ドメインに由来する第2のTCR-TMを含む第2のTCRDと、b)標的抗原に
特異的に結合する抗原結合モジュールと、を含み、第1及び第2のTCRDは、少なくと
も1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することのできるTCRMを形成し、抗原結
合モジュールは、第1及び/又は第2のTCRDに連結する。いくつかの実施形態では、
TCR-TMの両方が天然に存在する。いくつかの実施形態では、TCR-TMのうちの
少なくとも1つは、天然に存在しない。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第
1のTCR連結ペプチド又はその断片を更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2の
TCR連結ペプチド又はその断片を更に含む。いくつかの実施形態では、第1の連結ペプ
チド及び第2の連結ペプチドはそれぞれ、互いに独立して、配列番号1~4のアミノ酸配
列又はその変異型のいずれか1つに含まれる連結ペプチドのアミノ酸配列を含む。いくつ
かの実施形態では、第1の連結ペプチド及び第2の連結ペプチドはそれぞれ、互いに独立
して、配列番号27~34又はその変異型のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。いくつ
かの実施形態では、第1及び第2の連結ペプチドは、ジスルフィド結合によって連結され
る。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR細胞内ドメインを更に含
み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR細胞内ドメインを更に含む。いくつかの
実施形態では、第1のTCR細胞内ドメイン及び第2のTCR細胞内ドメインはそれぞれ
、互いに独立して、配列番号1~4のアミノ酸配列又はその変異型のいずれか1つに含ま
れる細胞内ドメインのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1のTCR細胞
内ドメイン及び第2のTCR細胞内ドメインはそれぞれ、互いに独立して、配列番号35
若しくは36又はその変異型のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、caTC
Rは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(CD27、CD28、4-1BB(CD137)
、OX40、CD30、又はCD40由来など)を含む、少なくとも1つのアクセサリー
細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、caTCRが、第1の安定化ドメ
イン及び第2の安定化ドメインを含む安定化モジュールを更に含み、第1及び第2の安定
化ドメインが、caTCRを安定化させる、互いの結合親和性を有する。いくつかの実施
形態では、第1及び第2の安定化ドメインは、ジスルフィド結合によって連結される。い
くつかの実施形態では、第1及び第2の安定化ドメインは、C1及びC抗体ドメイン
などの抗体ドメイン、又はその変異型を含む。いくつかの実施形態では、TCRMは、C
D3δε、CD3γε、及びζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連
シグナル伝達分子を動員することができる。いくつかの実施形態では、TCRMは、配列
番号3及び4に含まれる膜貫通ドメインの配列を有するT細胞受容体膜貫通ドメインを含
むTCRMと比較して、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の動員を強化する
ことができる。いくつかの実施形態では、TCRMは、caTCR-CD3複合体形成を
促進する。いくつかの実施形態では、任意の2つのcaTCRモジュール間又はドメイン
間にスペーサモジュールが存在する。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールは、
抗体部分である。いくつかの実施形態では、抗体部分は、Fab、Fab’、(Fab’
)2、Fv、又は単鎖Fv(scFv)である。いくつかの実施形態では、抗原結合モジ
ュールは、多重特異性(二重特異性など)である。
【0110】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcaTCRは、標的抗原に特異的に結合し
、a)配列番号3及び配列番号4のアミノ酸配列のうちの1つに含まれる膜貫通ドメイン
に由来する第1のTCR-TMを含む第1のTCRD、及び他のアミノ酸配列に含まれる
膜貫通ドメインに由来する第2のTCR-TMを含む第2のTCRDと、b)標的抗原に
特異的に結合する抗原結合モジュールと、を含み、TCR-TMの少なくとも1つは、そ
れが由来するアミノ酸配列と比較して、1つ以上(2、3、4、5、又はそれ以上など)
のアミノ酸置換を含み、第1及び第2のTCRDは、少なくとも1つのTCR関連シグナ
ル伝達分子を動員することのできるTCRMを形成し、抗原結合モジュールは、第1及び
/又は第2のTCRDに連結する。いくつかの実施形態では、TCR-TMのそれぞれは
、互いに独立して、それが由来するアミノ酸配列と比較して、1つ以上(2、3、4、5
、又はそれ以上など)のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、第1のTCR-
TM及び/又は第2のTCR-TMはそれぞれ、互いに独立して、それらが由来するアミ
ノ酸配列と比較して、5個以下のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、TCR
-TMのうちの少なくとも1つは、それが由来するアミノ酸配列と比較して、単一のアミ
ノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、TCR-TMのそれぞれは、それが由来する
アミノ酸配列と比較して、単一のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、第1の
TCR-TM中の置換アミノ酸のうちの少なくとも1つは、caTCRにおいて、第2の
TCR-TM中の置換アミノ酸のうちの少なくとも1つと相互作用することができるよう
に配置される。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR連結ペプチド
又はその断片を更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR連結ペプチド又は
その断片を更に含む。いくつかの実施形態では、第1の連結ペプチド及び第2の連結ペプ
チドはそれぞれ、互いに独立して、配列番号1~4のアミノ酸配列又はその変異型のいず
れか1つに含まれる連結ペプチドのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1
の連結ペプチド及び第2の連結ペプチドはそれぞれ、互いに独立して、配列番号27~3
4又はその変異型のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1
及び第2の連結ペプチドは、ジスルフィド結合によって連結される。いくつかの実施形態
では、第1のTCRDは、第1のTCR細胞内ドメインを更に含み、及び/又は第2のT
CRDは、第2のTCR細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、第1のT
CR細胞内ドメイン及び第2のTCR細胞内ドメインはそれぞれ、互いに独立して、配列
番号1~4のアミノ酸配列又はその変異型のいずれか1つに含まれる細胞内ドメインのア
ミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1のTCR細胞内ドメイン及び第2のT
CR細胞内ドメインはそれぞれ、互いに独立して、配列番号35若しくは36又はその変
異型のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、caTCRは、T細胞共刺激シグ
ナル伝達配列(CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、
又はCD40由来など)を含む、少なくとも1つのアクセサリー細胞内ドメインを更に含
む。いくつかの実施形態では、caTCRが、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ド
メインを含む安定化モジュールを更に含み、第1及び第2の安定化ドメインが、caTC
Rを安定化させる、互いの結合親和性を有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2
の安定化ドメインは、ジスルフィド結合によって連結される。いくつかの実施形態では、
第1及び第2の安定化ドメインは、C1及びC抗体ドメインなどの抗体ドメイン、又
はその変異型を含む。いくつかの実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γε、
及びζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員
することができる。いくつかの実施形態では、TCRMは、配列番号3及び4に含まれる
膜貫通ドメインの配列を有するT細胞受容体膜貫通ドメインを含むTCRMと比較して、
少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の動員を強化することができる。いくつか
の実施形態では、TCRMは、caTCR-CD3複合体形成を促進する。いくつかの実
施形態では、任意の2つのcaTCRモジュール間又はドメイン間にスペーサモジュール
が存在する。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールは、抗体部分である。いくつ
かの実施形態では、抗体部分は、Fab、Fab’、(Fab’)2、Fv、又は単鎖F
v(scFv)である。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールは、多重特異性(
二重特異性など)である。
【0111】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcaTCRは、標的抗原に特異的に結合し
、a)配列番号3及び配列番号4のアミノ酸配列のうちの1つに含まれる膜貫通ドメイン
に由来する第1のTCR-TMを含む第1のTCRD、及び他のアミノ酸配列に含まれる
膜貫通ドメインに由来する第2のTCR-TMを含む第2のTCRDと、b)標的抗原に
特異的に結合する抗原結合モジュールと、を含み、TCR-TMの少なくとも1つは、配
列番号1又は2に含まれる膜貫通ドメイン由来の連続したアミノ酸の一部を含むキメラ配
列を含み、第1及び第2のTCRDは、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を
動員することのできるTCRMを形成し、抗原結合モジュールは、第1及び/又は第2の
TCRDに連結する。いくつかの実施形態では、TCR-TMのそれぞれは、互いに独立
して、配列番号1又は2に含まれる膜貫通ドメイン由来の連続するアミノ酸の一部を含む
キメラ配列を含む。いくつかの実施形態では、第1のTCR-TM及び/又は第2のTC
R-TMはそれぞれ、互いに独立して、配列番号1又は2に含まれる膜貫通ドメイン由来
の約10以下(約9、8、7、6、5、又はそれ以下など)の連続するアミノ酸の一部を
含むキメラ配列を含む。いくつかの実施形態では、第1又は第2のTCR-TM中のキメ
ラ配列は、配列番号1に含まれる膜貫通ドメイン由来であり、他のTCR-TM中のキメ
ラ配列は、配列番号2に含まれる膜貫通ドメイン由来である。いくつかの実施形態では、
第1のTCR-TM中のキメラ配列は、それが第2のTCR-TM中のキメラ配列と相互
作用することができるように配置される。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、
第1のTCR連結ペプチド又はその断片を更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2
のTCR連結ペプチド又はその断片を更に含む。いくつかの実施形態では、第1の連結ペ
プチド及び第2の連結ペプチドはそれぞれ、互いに独立して、配列番号1~4のアミノ酸
配列又はその変異型のいずれか1つに含まれる連結ペプチドのアミノ酸配列を含む。いく
つかの実施形態では、第1の連結ペプチド及び第2の連結ペプチドはそれぞれ、互いに独
立して、配列番号27~34又はその変異型のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。いく
つかの実施形態では、第1及び第2の連結ペプチドは、ジスルフィド結合によって連結さ
れる。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR細胞内ドメインを更に
含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR細胞内ドメインを更に含む。いくつか
の実施形態では、第1のTCR細胞内ドメイン及び第2のTCR細胞内ドメインはそれぞ
れ、互いに独立して、配列番号1~4のアミノ酸配列又はその変異型のいずれか1つに含
まれる細胞内ドメインのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1のTCR細
胞内ドメイン及び第2のTCR細胞内ドメインはそれぞれ、互いに独立して、配列番号3
5若しくは36又はその変異型のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、caT
CRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(CD27、CD28、4-1BB(CD137
)、OX40、CD30、又はCD40由来など)を含む、少なくとも1つのアクセサリ
ー細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、caTCRが、第1の安定化ド
メイン及び第2の安定化ドメインを含む安定化モジュールを更に含み、第1及び第2の安
定化ドメインが、caTCRを安定化させる、互いの結合親和性を有する。いくつかの実
施形態では、第1及び第2の安定化ドメインは、ジスルフィド結合によって連結される。
いくつかの実施形態では、第1及び第2の安定化ドメインは、C1及びC抗体ドメイ
ンなどの抗体ドメイン、又はその変異型を含む。いくつかの実施形態では、TCRMは、
CD3δε、CD3γε、及びζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関
連シグナル伝達分子を動員することができる。いくつかの実施形態では、TCRMは、配
列番号3及び4に含まれる膜貫通ドメインの配列を有するT細胞受容体膜貫通ドメインを
含むTCRMと比較して、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の動員を強化す
ることができる。いくつかの実施形態では、TCRMは、caTCR-CD3複合体形成
を促進する。いくつかの実施形態では、任意の2つのcaTCRモジュール間又はドメイ
ン間にスペーサモジュールが存在する。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールは
、抗体部分である。いくつかの実施形態では、抗体部分は、Fab、Fab’、(Fab
’)2、Fv、又は単鎖Fv(scFv)である。いくつかの実施形態では、抗原結合モ
ジュールは、多重特異性(二重特異性など)である。
【0112】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcaTCRは、標的抗原に特異的に結合し
、a)配列番号5及び配列番号6のアミノ酸配列のうちの1つに由来する第1のTCR-
TMを含む第1のTCRD、及び他のアミノ酸配列に由来する第2のTCR-TMを含む
第2のTCRDと、b)標的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュールと、を含み、第
1及び第2のTCRDは、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員すること
のできるTCRMを形成し、抗原結合モジュールは、第1及び/又は第2のTCRDに連
結する。いくつかの実施形態では、TCR-TMの両方が天然に存在する。いくつかの実
施形態では、TCR-TMのうちの少なくとも1つは、天然に存在しない。いくつかの実
施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR連結ペプチド又はその断片を更に含み、及
び/又は第2のTCRDは、第2のTCR連結ペプチド又はその断片を更に含む。いくつ
かの実施形態では、第1の連結ペプチド及び第2の連結ペプチドはそれぞれ、互いに独立
して、配列番号27~34又はその変異型のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。いくつ
かの実施形態では、第1及び第2の連結ペプチドは、ジスルフィド結合によって連結され
る。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR細胞内ドメインを更に含
み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR細胞内ドメインを更に含む。いくつかの
実施形態では、第1のTCR細胞内ドメイン及び第2のTCR細胞内ドメインはそれぞれ
、互いに独立して、配列番号35若しくは36又はその変異型のアミノ酸配列を含む。い
くつかの実施形態では、caTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(CD27、CD
28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、又はCD40由来など)を含む
、少なくとも1つのアクセサリー細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、
caTCRが、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメインを含む安定化モジュール
を更に含み、第1及び第2の安定化ドメインが、caTCRを安定化させる、互いの結合
親和性を有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2の安定化ドメインは、ジスルフ
ィド結合によって連結される。いくつかの実施形態では、第1及び第2の安定化ドメイン
は、C1及びC抗体ドメインなどの抗体ドメイン、又はその変異型を含む。いくつか
の実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γε、及びζζからなる群から選択さ
れる少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することができる。いくつかの
実施形態では、TCRMは、配列番号5及び6の配列を有するT細胞受容体膜貫通ドメイ
ンを含むTCRMと比較して、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の動員を強
化することができる。いくつかの実施形態では、TCRMは、caTCR-CD3複合体
形成を促進する。いくつかの実施形態では、任意の2つのcaTCRモジュール間又はド
メイン間にスペーサモジュールが存在する。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュー
ルは、抗体部分である。いくつかの実施形態では、抗体部分は、Fab、Fab’、(F
ab’)2、Fv、又は単鎖Fv(scFv)である。いくつかの実施形態では、抗原結
合モジュールは、多重特異性(二重特異性など)である。
【0113】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcaTCRは、標的抗原に特異的に結合し
、a)配列番号5及び配列番号6のアミノ酸配列のうちの1つに由来する第1のTCR-
TMを含む第1のTCRD、及び他のアミノ酸配列に由来する第2のTCR-TMを含む
第2のTCRDと、b)標的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュールと、を含み、T
CR-TMの少なくとも1つは、それが由来するアミノ酸配列と比較して、1つ以上(2
、3、4、5、又はそれ以上など)のアミノ酸置換を含み、第1及び第2のTCRDは、
少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することのできるTCRMを形成し
、抗原結合モジュールは、第1及び/又は第2のTCRDに連結する。いくつかの実施形
態では、TCR-TMのそれぞれは、互いに独立して、それが由来するアミノ酸配列と比
較して、1つ以上(2、3、4、5、又はそれ以上など)のアミノ酸置換を含む。いくつ
かの実施形態では、第1のTCR-TM及び/又は第2のTCR-TMはそれぞれ、互い
に独立して、それらが由来するアミノ酸配列と比較して、5個以下のアミノ酸置換を含む
。いくつかの実施形態では、TCR-TMのうちの少なくとも1つは、それが由来するア
ミノ酸配列と比較して、単一のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、TCR-
TMのそれぞれは、それが由来するアミノ酸配列と比較して、単一のアミノ酸置換を含む
。いくつかの実施形態では、第1のTCR-TM中の置換アミノ酸のうちの少なくとも1
つは、caTCRにおいて、第2のTCR-TM中の置換アミノ酸のうちの少なくとも1
つと相互作用することができるように配置される。いくつかの実施形態では、第1のTC
RDは、第1のTCR連結ペプチド又はその断片を更に含み、及び/又は第2のTCRD
は、第2のTCR連結ペプチド又はその断片を更に含む。いくつかの実施形態では、第1
の連結ペプチド及び第2の連結ペプチドはそれぞれ、互いに独立して、配列番号27~3
4又はその変異型のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1
及び第2の連結ペプチドは、ジスルフィド結合によって連結される。いくつかの実施形態
では、第1のTCRDは、第1のTCR細胞内ドメインを更に含み、及び/又は第2のT
CRDは、第2のTCR細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、第1のT
CR細胞内ドメイン及び第2のTCR細胞内ドメインはそれぞれ、互いに独立して、配列
番号35若しくは36又はその変異型のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、
caTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(CD27、CD28、4-1BB(CD
137)、OX40、CD30、又はCD40由来など)を含む、少なくとも1つのアク
セサリー細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、caTCRが、第1の安
定化ドメイン及び第2の安定化ドメインを含む安定化モジュールを更に含み、第1及び第
2の安定化ドメインが、caTCRを安定化させる、互いの結合親和性を有する。いくつ
かの実施形態では、第1及び第2の安定化ドメインは、ジスルフィド結合によって連結さ
れる。いくつかの実施形態では、第1及び第2の安定化ドメインは、C1及びC抗体
ドメインなどの抗体ドメイン、又はその変異型を含む。いくつかの実施形態では、TCR
Mは、CD3δε、CD3γε、及びζζからなる群から選択される少なくとも1つのT
CR関連シグナル伝達分子を動員することができる。いくつかの実施形態では、TCRM
は、配列番号5及び6の配列を有するT細胞受容体膜貫通ドメインを含むTCRMと比較
して、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の動員を強化することができる。い
くつかの実施形態では、TCRMは、caTCR-CD3複合体形成を促進する。いくつ
かの実施形態では、任意の2つのcaTCRモジュール間又はドメイン間にスペーサモジ
ュールが存在する。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールは、抗体部分である。
いくつかの実施形態では、抗体部分は、Fab、Fab’、(Fab’)2、Fv、又は
単鎖Fv(scFv)である。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールは、多重特
異性(二重特異性など)である。
【0114】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcaTCRは、標的抗原に特異的に結合し
、a)配列番号5及び配列番号6のアミノ酸配列のうちの1つに由来する第1のTCR-
TMを含む第1のTCRD、及び他のアミノ酸配列に由来する第2のTCR-TMを含む
第2のTCRDと、b)標的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュールと、を含み、T
CR-TMの少なくとも1つは、配列番号7又は8由来の連続したアミノ酸の一部を含む
キメラ配列を含み、第1及び第2のTCRDは、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝
達分子を動員することのできるTCRMを形成し、抗原結合モジュールは、第1及び/又
は第2のTCRDに連結する。いくつかの実施形態では、TCR-TMのそれぞれは、互
いに独立して、配列番号7又は8由来の連続するアミノ酸の一部を含むキメラ配列を含む
。いくつかの実施形態では、第1のTCR-TM及び/又は第2のTCR-TMはそれぞ
れ、互いに独立して、配列番号7又は8由来の約10以下(約9、8、7、6、5、又は
それ以下など)の連続するアミノ酸の一部を含むキメラ配列を含む。いくつかの実施形態
では、第1又は第2のTCR-TM中のキメラ配列は、配列番号7由来であり、他のTC
R-TM中のキメラ配列は、配列番号8由来である。いくつかの実施形態では、第1のT
CR-TM中のキメラ配列は、それが第2のTCR-TM中のキメラ配列と相互作用する
ことができるように配置される。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のT
CR連結ペプチド又はその断片を更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR
連結ペプチド又はその断片を更に含む。いくつかの実施形態では、第1の連結ペプチド及
び第2の連結ペプチドはそれぞれ、互いに独立して、配列番号27~34又はその変異型
のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1及び第2の連結ペ
プチドは、ジスルフィド結合によって連結される。いくつかの実施形態では、第1のTC
RDは、第1のTCR細胞内ドメインを更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2の
TCR細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、第1のTCR細胞内ドメイ
ン及び第2のTCR細胞内ドメインはそれぞれ、互いに独立して、配列番号35若しくは
36又はその変異型のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、caTCRは、T
細胞共刺激シグナル伝達配列(CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX4
0、CD30、又はCD40由来など)を含む、少なくとも1つのアクセサリー細胞内ド
メインを更に含む。いくつかの実施形態では、caTCRが、第1の安定化ドメイン及び
第2の安定化ドメインを含む安定化モジュールを更に含み、第1及び第2の安定化ドメイ
ンが、caTCRを安定化させる、互いの結合親和性を有する。いくつかの実施形態では
、第1及び第2の安定化ドメインは、ジスルフィド結合によって連結される。いくつかの
実施形態では、第1及び第2の安定化ドメインは、C1及びC抗体ドメインなどの抗
体ドメイン、又はその変異型を含む。いくつかの実施形態では、TCRMは、CD3δε
、CD3γε、及びζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル
伝達分子を動員することができる。いくつかの実施形態では、TCRMは、配列番号5及
び6の配列を有するT細胞受容体膜貫通ドメインを含むTCRMと比較して、少なくとも
1つのTCR関連シグナル伝達分子の動員を強化することができる。いくつかの実施形態
では、TCRMは、caTCR-CD3複合体形成を促進する。いくつかの実施形態では
、任意の2つのcaTCRモジュール間又はドメイン間にスペーサモジュールが存在する
。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールは、抗体部分である。いくつかの実施形
態では、抗体部分は、Fab、Fab’、(Fab’)2、Fv、又は単鎖Fv(scF
v)である。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールは、多重特異性(二重特異性
など)である。
【0115】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcaTCRは、標的抗原に特異的に結合し
、a)配列番号7及び配列番号8のアミノ酸配列のうちの1つに由来する第1のTCR-
TMを含む第1のTCRD、及び他のアミノ酸配列に由来する第2のTCR-TMを含む
第2のTCRDと、b)標的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュールと、を含み、第
1及び第2のTCRDは、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員すること
のできるTCRMを形成し、抗原結合モジュールは、第1及び/又は第2のTCRDに連
結する。いくつかの実施形態では、TCR-TMの両方が天然に存在する。いくつかの実
施形態では、TCR-TMのうちの少なくとも1つは、天然に存在しない。いくつかの実
施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR連結ペプチド又はその断片を更に含み、及
び/又は第2のTCRDは、第2のTCR連結ペプチド又はその断片を更に含む。いくつ
かの実施形態では、第1の連結ペプチド及び第2の連結ペプチドはそれぞれ、互いに独立
して、配列番号27~34又はその変異型のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。いくつ
かの実施形態では、第1及び第2の連結ペプチドは、ジスルフィド結合によって連結され
る。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR細胞内ドメインを更に含
み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR細胞内ドメインを更に含む。いくつかの
実施形態では、第1のTCR細胞内ドメイン及び第2のTCR細胞内ドメインはそれぞれ
、互いに独立して、配列番号35若しくは36又はその変異型のアミノ酸配列を含む。い
くつかの実施形態では、caTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(CD27、CD
28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、又はCD40由来など)を含む
、少なくとも1つのアクセサリー細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、
caTCRが、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメインを含む安定化モジュール
を更に含み、第1及び第2の安定化ドメインが、caTCRを安定化させる、互いの結合
親和性を有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2の安定化ドメインは、ジスルフ
ィド結合によって連結される。いくつかの実施形態では、第1及び第2の安定化ドメイン
は、C1及びC抗体ドメインなどの抗体ドメイン、又はその変異型を含む。いくつか
の実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γε、及びζζからなる群から選択さ
れる少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することができる。いくつかの
実施形態では、TCRMは、配列番号7及び8の配列を有するT細胞受容体膜貫通ドメイ
ンを含むTCRMと比較して、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の動員を強
化することができる。いくつかの実施形態では、TCRMは、caTCR-CD3複合体
形成を促進する。いくつかの実施形態では、任意の2つのcaTCRモジュール間又はド
メイン間にスペーサモジュールが存在する。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュー
ルは、抗体部分である。いくつかの実施形態では、抗体部分は、Fab、Fab’、(F
ab’)2、Fv、又は単鎖Fv(scFv)である。いくつかの実施形態では、抗原結
合モジュールは、多重特異性(二重特異性など)である。
【0116】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcaTCRは、標的抗原に特異的に結合し
、a)配列番号7及び配列番号8のアミノ酸配列のうちの1つに由来する第1のTCR-
TMを含む第1のTCRD、及び他のアミノ酸配列に由来する第2のTCR-TMを含む
第2のTCRDと、b)標的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュールと、を含み、T
CR-TMの少なくとも1つは、それが由来するアミノ酸配列と比較して、1つ以上(2
、3、4、5、又はそれ以上など)のアミノ酸置換を含み、第1及び第2のTCRDは、
少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することのできるTCRMを形成し
、抗原結合モジュールは、第1及び/又は第2のTCRDに連結する。いくつかの実施形
態では、TCR-TMのそれぞれは、互いに独立して、それが由来するアミノ酸配列と比
較して、1つ以上(2、3、4、5、又はそれ以上など)のアミノ酸置換を含む。いくつ
かの実施形態では、第1のTCR-TM及び/又は第2のTCR-TMはそれぞれ、互い
に独立して、それらが由来するアミノ酸配列と比較して、5個以下のアミノ酸置換を含む
。いくつかの実施形態では、TCR-TMのうちの少なくとも1つは、それが由来するア
ミノ酸配列と比較して、単一のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、TCR-
TMのそれぞれは、それが由来するアミノ酸配列と比較して、単一のアミノ酸置換を含む
。いくつかの実施形態では、第1のTCR-TM中の置換アミノ酸のうちの少なくとも1
つは、caTCRにおいて、第2のTCR-TM中の置換アミノ酸のうちの少なくとも1
つと相互作用することができるように配置される。いくつかの実施形態では、第1のTC
RDは、第1のTCR連結ペプチド又はその断片を更に含み、及び/又は第2のTCRD
は、第2のTCR連結ペプチド又はその断片を更に含む。いくつかの実施形態では、第1
の連結ペプチド及び第2の連結ペプチドはそれぞれ、互いに独立して、配列番号27~3
4又はその変異型のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1
及び第2の連結ペプチドは、ジスルフィド結合によって連結される。いくつかの実施形態
では、第1のTCRDは、第1のTCR細胞内ドメインを更に含み、及び/又は第2のT
CRDは、第2のTCR細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、第1のT
CR細胞内ドメイン及び第2のTCR細胞内ドメインはそれぞれ、互いに独立して、配列
番号35若しくは36又はその変異型のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、
caTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(CD27、CD28、4-1BB(CD
137)、OX40、CD30、又はCD40由来など)を含む、少なくとも1つのアク
セサリー細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、caTCRが、第1の安
定化ドメイン及び第2の安定化ドメインを含む安定化モジュールを更に含み、第1及び第
2の安定化ドメインが、caTCRを安定化させる、互いの結合親和性を有する。いくつ
かの実施形態では、第1及び第2の安定化ドメインは、ジスルフィド結合によって連結さ
れる。いくつかの実施形態では、第1及び第2の安定化ドメインは、C1及びC抗体
ドメインなどの抗体ドメイン、又はその変異型を含む。いくつかの実施形態では、TCR
Mは、CD3δε、CD3γε、及びζζからなる群から選択される少なくとも1つのT
CR関連シグナル伝達分子を動員することができる。いくつかの実施形態では、TCRM
は、配列番号7及び8の配列を有するT細胞受容体膜貫通ドメインを含むTCRMと比較
して、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の動員を強化することができる。い
くつかの実施形態では、TCRMは、caTCR-CD3複合体形成を促進する。いくつ
かの実施形態では、任意の2つのcaTCRモジュール間又はドメイン間にスペーサモジ
ュールが存在する。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールは、抗体部分である。
いくつかの実施形態では、抗体部分は、Fab、Fab’、(Fab’)2、Fv、又は
単鎖Fv(scFv)である。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールは、多重特
異性(二重特異性など)である。
【0117】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcaTCRは、標的抗原に特異的に結合し
、a)配列番号7及び配列番号8のアミノ酸配列のうちの1つに由来する第1のTCR-
TMを含む第1のTCRD、及び他のアミノ酸配列に由来する第2のTCR-TMを含む
第2のTCRDと、b)標的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュールと、を含み、T
CR-TMの少なくとも1つは、配列番号5又は6由来の連続したアミノ酸の一部を含む
キメラ配列を含み、第1及び第2のTCRDは、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝
達分子を動員することのできるTCRMを形成し、抗原結合モジュールは、第1及び/又
は第2のTCRDに連結する。いくつかの実施形態では、TCR-TMのそれぞれは、互
いに独立して、配列番号5又は6由来の連続するアミノ酸の一部を含むキメラ配列を含む
。いくつかの実施形態では、第1のTCR-TM及び/又は第2のTCR-TMはそれぞ
れ、互いに独立して、配列番号5又は6由来の約10以下(約9、8、7、6、5、又は
それ以下など)の連続するアミノ酸の一部を含むキメラ配列を含む。いくつかの実施形態
では、第1又は第2のTCR-TM中のキメラ配列は、配列番号5由来であり、他のTC
R-TM中のキメラ配列は、配列番号6由来である。いくつかの実施形態では、第1のT
CR-TM中のキメラ配列は、それが第2のTCR-TM中のキメラ配列と相互作用する
ことができるように配置される。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のT
CR連結ペプチド又はその断片を更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR
連結ペプチド又はその断片を更に含む。いくつかの実施形態では、第1の連結ペプチド及
び第2の連結ペプチドはそれぞれ、互いに独立して、配列番号27~34又はその変異型
のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1及び第2の連結ペ
プチドは、ジスルフィド結合によって連結される。いくつかの実施形態では、第1のTC
RDは、第1のTCR細胞内ドメインを更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2の
TCR細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、第1のTCR細胞内ドメイ
ン及び第2のTCR細胞内ドメインはそれぞれ、互いに独立して、配列番号35若しくは
36又はその変異型のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、caTCRは、T
細胞共刺激シグナル伝達配列(CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX4
0、CD30、又はCD40由来など)を含む、少なくとも1つのアクセサリー細胞内ド
メインを更に含む。いくつかの実施形態では、caTCRが、第1の安定化ドメイン及び
第2の安定化ドメインを含む安定化モジュールを更に含み、第1及び第2の安定化ドメイ
ンが、caTCRを安定化させる、互いの結合親和性を有する。いくつかの実施形態では
、第1及び第2の安定化ドメインは、ジスルフィド結合によって連結される。いくつかの
実施形態では、第1及び第2の安定化ドメインは、C1及びC抗体ドメインなどの抗
体ドメイン、又はその変異型を含む。いくつかの実施形態では、TCRMは、CD3δε
、CD3γε、及びζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル
伝達分子を動員することができる。いくつかの実施形態では、TCRMは、配列番号7及
び8の配列を有するT細胞受容体膜貫通ドメインを含むTCRMと比較して、少なくとも
1つのTCR関連シグナル伝達分子の動員を強化することができる。いくつかの実施形態
では、TCRMは、caTCR-CD3複合体形成を促進する。いくつかの実施形態では
、任意の2つのcaTCRモジュール間又はドメイン間にスペーサモジュールが存在する
。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールは、抗体部分である。いくつかの実施形
態では、抗体部分は、Fab、Fab’、(Fab’)2、Fv、又は単鎖Fv(scF
v)である。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールは、多重特異性(二重特異性
など)である。
【0118】
異なる態様は、以下の様々なセクションで更に詳細に論じられる。
TCR-TM変異型
【0119】
いくつかの実施形態では、caTCRのTCR-TMはT細胞受容体に由来し、TCR
-TMのうちの少なくとも1つは天然に存在しない。T細胞受容体に由来する天然に存在
しないTCR-TMは、1つ以上のアミノ酸の置換によって改変されたT細胞受容体由来
の膜貫通ドメインを含む。いくつかの実施形態では、置換アミノ酸のうちの少なくとも1
つは、対応する非置換残基よりも疎水性の残基で置換される。いくつかの実施形態では、
置換アミノ酸のそれぞれは、対応する非置換残基よりも疎水性の残基で置換される。いく
つかの実施形態では、置換アミノ酸のうちの少なくとも1つは、結合CD3に含まれるT
CRM中のアミノ酸に対して近位(一次配列中又は空間的のいずれか)にある。例えば、
いくつかの実施形態では、置換アミノ酸のうちの少なくとも1つは、結合CD3に含まれ
るTCRM中のアミノ酸から3個以下(0、1、2、又は3など)のアミノ酸で離れてい
る。いくつかの実施形態では、置換アミノ酸のうちの少なくとも1つは、結合CD3に含
まれるTCRM中のアミノ酸から約15Å以下(約14、12、10、8、6、4、2Å
、又は1Åのいずれか以下など)で離れている。いくつかの実施形態では、置換アミノ酸
のそれぞれは、結合CD3に含まれるTCRM中のアミノ酸の近位にある。
【0120】
例えば、いくつかの実施形態では、T細胞受容体に由来する天然に存在しないTCR-
TMは、1つ以上のアミノ酸残基の置換によって改変されたα、β、γ、又はδ TCR
サブユニットの膜貫通ドメインを含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。
いくつかの実施形態では、TCRサブユニットの膜貫通ドメインは、5個以下のアミノ酸
残基の置換によって改変される。いくつかの実施形態では、TCRサブユニットの膜貫通
ドメインは、単一のアミノ酸残基の置換によって改変される。いくつかの実施形態では、
置換アミノ酸のうちの少なくとも1つは、対応する非置換残基よりも疎水性の残基で置換
される。いくつかの実施形態では、置換アミノ酸のそれぞれは、対応する非置換残基より
も疎水性の残基で置換される。いくつかの実施形態では、置換アミノ酸のうちの少なくと
も1つは、結合CD3に含まれるTCRM中のアミノ酸の近位にある。いくつかの実施形
態では、置換アミノ酸のそれぞれは、結合CD3に含まれるTCRM中のアミノ酸の近位
にある。
【0121】
したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載のT細胞受容体に由来する天然
に存在しないTCR-TMは、1つ以上のアミノ酸残基の置換によって改変された、配列
番号1に含まれる膜貫通ドメイン(例えば、配列番号5)のアミノ酸配列を含むα TC
Rサブユニットの膜貫通ドメインを含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる
。いくつかの実施形態では、α TCRサブユニットの膜貫通ドメインは、配列番号1に
含まれる膜貫通ドメインの5個以下のアミノ酸残基の置換によって改変される。いくつか
の実施形態では、α TCRサブユニットの膜貫通ドメインは、配列番号1に含まれる膜
貫通ドメインの単一のアミノ酸残基の置換によって改変される。いくつかの実施形態では
、置換アミノ酸のうちの少なくとも1つは、対応する非置換残基よりも疎水性の残基で置
換される。いくつかの実施形態では、置換アミノ酸のそれぞれは、対応する非置換残基よ
りも疎水性の残基で置換される。いくつかの実施形態では、置換アミノ酸のうちの少なく
とも1つは、結合CD3に含まれるTCRM中のアミノ酸の近位にある。いくつかの実施
形態では、置換アミノ酸のそれぞれは、結合CD3に含まれるTCRM中のアミノ酸の近
位にある。
【0122】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のT細胞受容体に由来する天然に存在しない
TCR-TMは、1つ以上のアミノ酸残基の置換によって改変された、配列番号5のアミ
ノ酸配列を含むα TCRサブユニットの膜貫通ドメインを含むか、それから本質的にな
るか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、α TCRサブユニットの膜貫通ド
メインは、配列番号5中の5個以下のアミノ酸残基の置換によって改変される。いくつか
の実施形態では、α TCRサブユニットの膜貫通ドメインは、配列番号5中の単一のア
ミノ酸残基の置換によって改変される。いくつかの実施形態では、置換アミノ酸のうちの
少なくとも1つは、対応する非置換残基よりも疎水性の残基で置換される。いくつかの実
施形態では、置換アミノ酸のそれぞれは、対応する非置換残基よりも疎水性の残基で置換
される。いくつかの実施形態では、置換アミノ酸のうちの少なくとも1つは、結合CD3
に含まれるTCRM中のアミノ酸の近位にある。いくつかの実施形態では、置換アミノ酸
のそれぞれは、結合CD3に含まれるTCRM中のアミノ酸の近位にある。
【0123】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のT細胞受容体に由来する天然に存在しない
TCR-TMは、1つ以上のアミノ酸残基の置換によって改変された、配列番号2に含ま
れる膜貫通ドメイン(例えば、配列番号6)のアミノ酸配列を含むβ TCRサブユニッ
トの膜貫通ドメインを含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。いくつかの
実施形態では、β TCRサブユニットの膜貫通ドメインは、配列番号2に含まれる膜貫
通ドメインの5個以下のアミノ酸残基の置換によって改変される。いくつかの実施形態で
は、β TCRサブユニットの膜貫通ドメインは、配列番号2に含まれる膜貫通ドメイン
の単一のアミノ酸残基の置換によって改変される。いくつかの実施形態では、置換アミノ
酸のうちの少なくとも1つは、対応する非置換残基よりも疎水性の残基で置換される。い
くつかの実施形態では、置換アミノ酸のそれぞれは、対応する非置換残基よりも疎水性の
残基で置換される。いくつかの実施形態では、置換アミノ酸のうちの少なくとも1つは、
結合CD3に含まれるTCRM中のアミノ酸の近位にある。いくつかの実施形態では、置
換アミノ酸のそれぞれは、結合CD3に含まれるTCRM中のアミノ酸の近位にある。
【0124】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のT細胞受容体に由来する天然に存在しない
TCR-TMは、1つ以上のアミノ酸残基の置換によって改変された、配列番号6のアミ
ノ酸配列を含むβ TCRサブユニットの膜貫通ドメインを含むか、それから本質的にな
るか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、β TCRサブユニットの膜貫通ド
メインは、配列番号6中の5個以下のアミノ酸残基の置換によって改変される。いくつか
の実施形態では、β TCRサブユニットの膜貫通ドメインは、配列番号6中の単一のア
ミノ酸残基の置換によって改変される。いくつかの実施形態では、置換アミノ酸のうちの
少なくとも1つは、対応する非置換残基よりも疎水性の残基で置換される。いくつかの実
施形態では、置換アミノ酸のそれぞれは、対応する非置換残基よりも疎水性の残基で置換
される。いくつかの実施形態では、置換アミノ酸のうちの少なくとも1つは、結合CD3
に含まれるTCRM中のアミノ酸の近位にある。いくつかの実施形態では、置換アミノ酸
のそれぞれは、結合CD3に含まれるTCRM中のアミノ酸の近位にある。
【0125】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のT細胞受容体に由来する天然に存在しない
TCR-TMは、1つ以上のアミノ酸残基の置換によって改変された、配列番号3に含ま
れる膜貫通ドメイン(例えば、配列番号7)のアミノ酸配列を含むδ TCRサブユニッ
トの膜貫通ドメインを含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。いくつかの
実施形態では、δ TCRサブユニットの膜貫通ドメインは、配列番号3に含まれる膜貫
通ドメインの5個以下のアミノ酸残基の置換によって改変される。いくつかの実施形態で
は、δ TCRサブユニットの膜貫通ドメインは、配列番号3に含まれる膜貫通ドメイン
の単一のアミノ酸残基の置換によって改変される。いくつかの実施形態では、置換アミノ
酸のうちの少なくとも1つは、対応する非置換残基よりも疎水性の残基で置換される。い
くつかの実施形態では、置換アミノ酸のそれぞれは、対応する非置換残基よりも疎水性の
残基で置換される。いくつかの実施形態では、置換アミノ酸のうちの少なくとも1つは、
結合CD3に含まれるTCRM中のアミノ酸の近位にある。いくつかの実施形態では、置
換アミノ酸のそれぞれは、結合CD3に含まれるTCRM中のアミノ酸の近位にある。
【0126】
いくつかの実施形態では、天然に存在しないTCR-TMは、配列番号3に含まれる膜
貫通ドメイン(例えば、配列番号7)のアミノ酸配列を含み、配列番号7中の以下のアミ
ノ酸、L4、M6、V12、N15、F245、及びL25に対応するアミノ酸における
1つ以上の置換(より疎水性の残基による置換など)によって改変される。いくつかの実
施形態では、天然に存在しないTCR-TMは、配列番号3に含まれる膜貫通ドメインの
アミノ酸配列を含み、配列番号7中のV12及びN15に対応するアミノ酸における置換
(より疎水性の残基による置換など)によって改変される。いくつかの実施形態では、天
然に存在しないTCR-TMは、配列番号3に含まれる膜貫通ドメインのアミノ酸配列を
含み、配列番号7中の以下の置換、L4C、M6V、V12F、N15S、F245S、
及びL25Sに対応する1つ以上の置換によって改変される。いくつかの実施形態では、
天然に存在しないTCR-TMは、配列番号3に含まれる膜貫通ドメインのアミノ酸配列
を含み、配列番号7中のV12F及びN15Sの置換に対応する置換によって改変される
。いくつかの実施形態では、天然に存在しないTCR-TMは、配列番号9~13のいず
れか1つのアミノ酸配列を含む。
【0127】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のT細胞受容体に由来する天然に存在しない
TCR-TMは、1つ以上のアミノ酸残基の置換によって改変された、配列番号7のアミ
ノ酸配列を含むδ TCRサブユニットの膜貫通ドメインを含むか、それから本質的にな
るか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、δ TCRサブユニットの膜貫通ド
メインは、配列番号7中の5個以下のアミノ酸残基の置換によって改変される。いくつか
の実施形態では、δ TCRサブユニットの膜貫通ドメインは、配列番号7中の単一のア
ミノ酸残基の置換によって改変される。いくつかの実施形態では、置換アミノ酸のうちの
少なくとも1つは、対応する非置換残基よりも疎水性の残基で置換される。いくつかの実
施形態では、置換アミノ酸のそれぞれは、対応する非置換残基よりも疎水性の残基で置換
される。いくつかの実施形態では、置換アミノ酸のうちの少なくとも1つは、結合CD3
に含まれるTCRM中のアミノ酸の近位にある。いくつかの実施形態では、置換アミノ酸
のそれぞれは、結合CD3に含まれるTCRM中のアミノ酸の近位にある。
【0128】
いくつかの実施形態では、天然に存在しないTCR-TMは、配列番号7のアミノ酸配
列を含み、配列番号7中の以下のアミノ酸、L4、M6、V12、N15、F245、及
びL25に対応するアミノ酸における1つ以上の置換(より疎水性の残基による置換など
)によって改変される。いくつかの実施形態では、天然に存在しないTCR-TMは、配
列番号7のアミノ酸配列を含み、配列番号7のアミノ酸、V12及びN15に対応するア
ミノ酸における置換(より疎水性の残基による置換など)によって改変される。いくつか
の実施形態では、天然に存在しないTCR-TMは、配列番号7のアミノ酸配列を含み、
配列番号7中の以下の置換、L4C、M6V、V12F、N15S、F245S、及びL
25Sに対応する1つ以上の置換によって改変される。いくつかの実施形態では、天然に
存在しないTCR-TMは、配列番号7のアミノ酸配列を含み、配列番号7中のV12F
及びN15Sの置換に対応する置換によって改変される。いくつかの実施形態では、天然
に存在しないTCR-TMは、配列番号9~13のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0129】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のT細胞受容体に由来する天然に存在しない
TCR-TMは、1つ以上のアミノ酸残基の置換によって改変された、配列番号4に含ま
れる膜貫通ドメイン(例えば、配列番号8)のアミノ酸配列を含むγ TCRサブユニッ
トの膜貫通ドメインを含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。いくつかの
実施形態では、γ TCRサブユニットの膜貫通ドメインは、配列番号4に含まれる膜貫
通ドメインの5個以下のアミノ酸残基の置換によって改変される。いくつかの実施形態で
は、γ TCRサブユニットの膜貫通ドメインは、配列番号4に含まれる膜貫通ドメイン
の単一のアミノ酸残基の置換によって改変される。いくつかの実施形態では、置換アミノ
酸のうちの少なくとも1つは、対応する非置換残基よりも疎水性の残基で置換される。い
くつかの実施形態では、置換アミノ酸のそれぞれは、対応する非置換残基よりも疎水性の
残基で置換される。いくつかの実施形態では、置換アミノ酸のうちの少なくとも1つは、
結合CD3に含まれるTCRM中のアミノ酸の近位にある。いくつかの実施形態では、置
換アミノ酸のそれぞれは、結合CD3に含まれるTCRM中のアミノ酸の近位にある。
【0130】
いくつかの実施形態では、天然に存在しないTCR-TMは、配列番号4に含まれる膜
貫通ドメイン(例えば、配列番号8)のアミノ酸配列を含み、配列番号8中の以下のアミ
ノ酸、Y1、Y2、M3、L5、L8、V12、V13、F15、A16、I18、C1
9、C20、及びC21に対応するアミノ酸における1つ以上の置換(より疎水性の残基
による置換など)によって改変される。いくつかの実施形態では、天然に存在しないTC
R-TMは、配列番号4に含まれる膜貫通ドメインのアミノ酸配列を含み、配列番号8の
アミノ酸、Y2、M3、A16、及びI18に対応するアミノ酸における置換(より疎水
性の残基による置換など)によって改変される。いくつかの実施形態では、天然に存在し
ないTCR-TMは、配列番号4に含まれる膜貫通ドメインのアミノ酸配列を含み、配列
番号8中の、L8、V12、及びF15に対応するアミノ酸における置換(より疎水性の
残基による置換など)によって改変される。いくつかの実施形態では、天然に存在しない
TCR-TMは、配列番号4に含まれる膜貫通ドメインのアミノ酸配列を含み、配列番号
8中の以下の置換、Y1Q、Y2L、Y2I、M3V、M3I、L5C、L8F、V12
F、V13Y、F15S、A16V、A16I、I18V、I18L、C19M、C20
M、及びC21Gに対応する1つ以上の置換によって改変される。いくつかの実施形態で
は、天然に存在しないTCR-TMは、配列番号4に含まれる膜貫通ドメインのアミノ酸
配列を含み、配列番号8のY2L、M3V、A16V、及びI18Vの置換に対応する置
換によって改変される。いくつかの実施形態では、天然に存在しないTCR-TMは、配
列番号4に含まれる膜貫通ドメインのアミノ酸配列を含み、配列番号8のY2I、M3I
、A16I、及びI18Lの置換に対応する置換によって改変される。いくつかの実施形
態では、天然に存在しないTCR-TMは、配列番号4に含まれる膜貫通ドメインのアミ
ノ酸配列を含み、配列番号8のL8F、V12F、及びF15Sの置換に対応する置換に
よって改変される。いくつかの実施形態では、天然に存在しないTCR-TMは、配列番
号14~26のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0131】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のT細胞受容体に由来する天然に存在しない
TCR-TMは、1つ以上のアミノ酸残基の置換によって改変された、配列番号8のアミ
ノ酸配列を含むγ TCRサブユニットの膜貫通ドメインを含むか、それから本質的にな
るか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、γ TCRサブユニットの膜貫通ド
メインは、配列番号8中の5個以下のアミノ酸残基の置換によって改変される。いくつか
の実施形態では、γ TCRサブユニットの膜貫通ドメインは、配列番号8中の単一のア
ミノ酸残基の置換によって改変される。いくつかの実施形態では、置換アミノ酸のうちの
少なくとも1つは、対応する非置換残基よりも疎水性の残基で置換される。いくつかの実
施形態では、置換アミノ酸のそれぞれは、対応する非置換残基よりも疎水性の残基で置換
される。いくつかの実施形態では、置換アミノ酸のうちの少なくとも1つは、結合CD3
に含まれるTCRM中のアミノ酸の近位にある。いくつかの実施形態では、置換アミノ酸
のそれぞれは、結合CD3に含まれるTCRM中のアミノ酸の近位にある。
【0132】
いくつかの実施形態では、天然に存在しないTCR-TMは、配列番号8のアミノ酸配
列を含み、配列番号8中の以下のアミノ酸、Y1、Y2、M3、L5、L8、V12、V
13、F15、A16、I18、C19、C20、及びC21に対応するアミノ酸におけ
る1つ以上の置換(より疎水性の残基による置換など)によって改変される。いくつかの
実施形態では、天然に存在しないTCR-TMは、配列番号8のアミノ酸配列を含み、配
列番号8中の、Y2、M3、A16、及びI18に対応するアミノ酸における置換(より
疎水性の残基による置換など)によって改変される。いくつかの実施形態では、天然に存
在しないTCR-TMは、配列番号8のアミノ酸配列を含み、配列番号8中の、L8、V
12、及びF15に対応するアミノ酸における置換(より疎水性の残基による置換など)
によって改変される。いくつかの実施形態では、天然に存在しないTCR-TMは、配列
番号8のアミノ酸配列を含み、配列番号8中の以下の置換、Y1Q、Y2L、Y2I、M
3V、M3I、L5C、L8F、V12F、V13Y、F15S、A16V、A16I、
I18V、I18L、C19M、C20M、及びC21Gに対応する1つ以上の置換によ
って改変される。いくつかの実施形態では、天然に存在しないTCR-TMは、配列番号
8のアミノ酸配列を含み、配列番号8中の、Y2L、M3V、A16V、及びI18Vの
置換に対応する置換によって改変される。いくつかの実施形態では、天然に存在しないT
CR-TMは、配列番号8のアミノ酸配列を含み、配列番号8中の、Y2I、M3I、A
16I、及びI18Lの置換に対応する置換によって改変される。いくつかの実施形態で
は、天然に存在しないTCR-TMは、配列番号8のアミノ酸配列を含み、配列番号8中
の、L8F、V12F、及びF15Sの置換に対応する置換によって改変される。いくつ
かの実施形態では、天然に存在しないTCR-TMは、配列番号14~26のいずれか1
つのアミノ酸配列を含む。
【0133】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcaTCRは、標的抗原に特異的に結合し
、a)配列番号7及び9~13のアミノ酸配列のうちのいずれか1つを含むか、それから
本質的になるか、又はそれからなる第1のTCR-TMを含む第1のTCRD、並びに配
列番号8及び14~26のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含むか、それから本質的
になるか、又はそれからなる第2のTCR-TMを含む第2のTCRDと、b)標的抗原
に特異的に結合する抗原結合モジュールと、を含み、第1及び第2のTCRDは、少なく
とも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することができるTCRMを形成し、抗原
結合モジュールは、第1及び/又は第2のTCRDに連結する。いくつかの実施形態では
、TCR-TMのうちの少なくとも1つは、天然に存在しない。いくつかの実施形態では
、第1のTCR-TM及び第2のTCR-TMは、表2に列挙されるcaTCRのいずれ
かに従って選択される。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR連結
ペプチド又はその断片を更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR連結ペプ
チド又はその断片を更に含む。いくつかの実施形態では、第1の連結ペプチドは、配列番
号31若しくは32又はその変異型のアミノ酸配列を含み、及び/又は第2の連結ペプチ
ドは、配列番号33若しくは34又はその変異型のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施
形態では、第1及び第2の連結ペプチドは、ジスルフィド結合によって連結される。いく
つかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR細胞内ドメインを更に含み、及び
/又は第2のTCRDは、第2のTCR細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態
では、第2のTCR細胞内ドメインは、配列番号36又はその変異型のアミノ酸配列を含
む。いくつかの実施形態では、caTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(CD27
、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、又はCD40由来など)
を含む、少なくとも1つのアクセサリー細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態
では、caTCRが、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメインを含む安定化モジ
ュールを更に含み、第1及び第2の安定化ドメインが、caTCRを安定化させる、互い
の結合親和性を有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2の安定化ドメインは、ジ
スルフィド結合によって連結される。いくつかの実施形態では、第1及び第2の安定化ド
メインは、C1及びC抗体ドメインなどの抗体ドメイン、又はその変異型を含む。い
くつかの実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γε、及びζζからなる群から
選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することができる。いく
つかの実施形態では、TCRMは、配列番号7及び8の配列を有するT細胞受容体膜貫通
ドメインを含むTCRMと比較して、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の動
員を強化することができる。いくつかの実施形態では、TCRMは、caTCR-CD3
複合体形成を促進する。いくつかの実施形態では、任意の2つのcaTCRモジュール間
又はドメイン間にスペーサモジュールが存在する。いくつかの実施形態では、抗原結合モ
ジュールは、抗体部分である。いくつかの実施形態では、抗体部分は、Fab、Fab’
、(Fab’)2、Fv、又は単鎖Fv(scFv)である。
【表2】
抗原結合モジュール
【0134】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcaTCRのいずれかによると、抗原結合
モジュールは抗体部分である。いくつかの実施形態では、抗体部分は、Fab、Fab’
、(Fab’)2、Fv、及び単鎖Fv(scFv)からなる群から選択される。いくつ
かの実施形態では、抗体部分が、第1の抗体部分鎖及び第2の抗体部分鎖を含む多量体で
ある場合、caTCRは、第1又は第2の抗体部分鎖に連結された第1のTCRDと、他
方の抗体部分鎖に連結された第2のTCRDとを含む。いくつかの実施形態では、抗体部
分は、非限定的に、CD19、CD20、CD22、CD47、GPC-3、ROR1、
ROR2、BCMA、GPRC5D、及びFCRL5、その変異型又は変異体を含むもの
を含む細胞表面抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗体部分は、ペプチ
ド/MHC複合体に特異的に結合し、ペプチドは、非限定的に、WT-1、AFP、HP
V16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1、KR
AS、ヒストンH3.3、及びPSA、その変異型又は変異体を含むものを含むタンパク
質に由来する。
【0135】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcaTCRのいずれかによると、抗原結合
モジュールは、C1及びCドメインを含む抗体部分である。いくつかの実施形態では
、C1ドメインは、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4)
重鎖、所望によりヒトに由来する。いくつかの実施形態では、C1ドメインは、それが
由来する配列と比較して、1つ以上の改変(例えば、アミノ酸置換、挿入、及び/又は欠
失)を含む変異型である。いくつかの実施形態では、C1ドメインは、配列番号37~
47、又はその変異型のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、
1ドメインは、配列番号37、又はその変異型のアミノ酸配列を含む。いくつかの実
施形態では、Cドメインは、カッパ又はラムダ軽鎖、所望によりヒトに由来する。いく
つかの実施形態では、Cドメインは、それが由来する配列と比較して、1つ以上の改変
(例えば、アミノ酸置換、挿入、及び/又は欠失)を含む変異型である。いくつかの実施
形態では、Cドメインは、配列番号48、又はその変異型のアミノ酸配列を含む。いく
つかの実施形態では、C1及び/又はCドメインは、互いに結合親和性を実質的に変
化させない1つ以上の改変を含む。いくつかの実施形態では、C1及び/又はCドメ
インは、互いに結合親和性を増加させ、及び/又は天然に存在しないジスルフィド結合を
導入する1つ以上の改変を含む。
【0136】
いくつかの実施形態では、標的抗原に特異的に結合する抗体部分を含む本明細書に記載
のcaTCRのいずれかによると、抗体部分は、標的抗原に特異的な抗体部分のCDR又
は可変ドメイン(V及び/又はVドメイン)を含む。いくつかの実施形態では、抗体
部分は、CD19に特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(V及び/又はV
メイン)を含む(例えば、WO2017066136A2を参照されたい)。いくつかの
実施形態では、抗体部分は、CD19に特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(V
及び/又はVドメイン)を含む(例えば、配列番号58のアミノ酸配列を含むか、そ
れから本質的になるか、若しくはそれからなるものを含むVドメイン、及び/又は配列
番号59のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、若しくはそれからなるもの
を含むVドメイン、或いはそれらに含まれるCDR)。いくつかの実施形態では、抗体
部分は、CD20に特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(V及び/又はV
メイン)を含む(例えば、配列番号60のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になる
か、若しくはそれからなるものを含むVドメイン、及び/又は配列番号61のアミノ酸
配列を含むか、それから本質的になるか、若しくはそれからなるものを含むVドメイン
、或いはそれらに含まれるCDR)。いくつかの実施形態では、抗体部分は、CD22に
特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(V及び/又はVドメイン)を含む(例
えば、参照によりその全てが本明細書に組み込まれる、2018年3月30日出願のUS
SN62/650,955を参照されたい)。いくつかの実施形態では、抗体部分は、C
D22に特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(V及び/又はVドメイン)を
含む(例えば、配列番号101のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、若し
くはそれからなるものを含むVドメイン、及び/又は配列番号102のアミノ酸配列を
含むか、それから本質的になるか、若しくはそれからなるものを含むVドメイン、或い
はそれらに含まれるCDR)。いくつかの実施形態では、抗体部分は、GPC3に特異的
な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(V及び/又はVドメイン)を含む(例えば、
参照によりその全てが本明細書に組み込まれる、2017年4月26日出願のUSSN6
2/490,586を参照されたい)。いくつかの実施形態では、抗体部分は、GPC3
に特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(V及び/又はVドメイン)を含む(
例えば、配列番号64のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、若しくはそれ
からなるものを含むVドメイン、及び/又は配列番号65のアミノ酸配列を含むか、そ
れから本質的になるか、若しくはそれからなるものを含むVドメイン、或いはそれらに
含まれるCDR)。いくつかの実施形態では、抗体部分は、ROR1に特異的な抗体部分
のCDR又は可変ドメイン(V及び/又はVドメイン)を含む(例えば、WO201
6/187220及びWO2016/187216を参照されたい)。いくつかの実施形
態では、抗体部分は、ROR2に特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(V及び
/又はVドメイン)を含む(例えば、WO2016/142768を参照されたい)。
いくつかの実施形態では、抗体部分は、BCMAに特異的な抗体部分のCDR又は可変ド
メイン(V及び/又はVドメイン)を含む(例えば、WO2016/090327及
びWO2016/090320を参照されたい)。いくつかの実施形態では、抗体部分は
、GPRC5Dに特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(V及び/又はVドメ
イン)を含む(例えば、WO2016/090329及びWO2016/090312を
参照されたい)。いくつかの実施形態では、抗体部分は、FCRL5に特異的な抗体部分
のCDR又は可変ドメイン(V及び/又はVドメイン)を含む(例えば、WO201
6/090337を参照されたい)。いくつかの実施形態では、抗体部分は、WT-1に
特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(V及び/又はVドメイン)を含む(例
えば、WO2012/135854、WO2015/070078、及びWO2015/
070061を参照されたい)。いくつかの実施形態では、抗体部分は、AFPに特異的
な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(V及び/又はVドメイン)を含む(例えば、
WO2016/161390を参照されたい)。いくつかの実施形態では、抗体部分は、
HPV16-E7に特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(V及び/又はV
メイン)を含む(例えば、WO2016/182957を参照されたい)。いくつかの実
施形態では、抗体部分は、NY-ESO-1に特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイ
ン(V及び/又はVドメイン)を含む(例えば、WO2016/210365を参照
されたい)。いくつかの実施形態では、抗体部分は、PRAMEに特異的な抗体部分のC
DR又は可変ドメイン(V及び/又はVドメイン)を含む(例えば、WO2016/
191246を参照されたい)。いくつかの実施形態では、抗体部分は、EBV-LMP
2Aに特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(V及び/又はVドメイン)を含
む(例えば、WO2016/201124を参照されたい)。いくつかの実施形態では、
抗体部分は、KRASに特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(V及び/又はV
ドメイン)を含む(例えば、WO2016/154047を参照されたい)。いくつか
の実施形態では、抗体部分は、PSAに特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(V
及び/又はVドメイン)を含む(例えば、WO2017/015634を参照された
い)。いくつかの実施形態では、抗体部分は、Vドメイン及びC1ドメインを含む1
つのFab鎖と、Vドメイン及びCドメインを含む別のFab鎖と、を含むFabで
ある。いくつかの実施形態では、C1ドメインは、配列番号37~47のいずれか1つ
のアミノ酸配列を含み、及び/又はCドメインは、配列番号48のアミノ酸配列を含む
。いくつかの実施形態では、C1ドメインは、配列番号37のアミノ酸配列を含むか、
それから本質的になるか、又はそれからなり、Cドメインは、配列番号48のアミノ酸
配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。
caTCR構築物
【0137】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcaTCRは、標的抗原に特異的に結合し
、a)TCRの膜貫通ドメインのうちの1つに由来する第1のTCR-TMを含む第1の
TCRD、及びTCRの他の膜貫通ドメインに由来する第2のTCR-TMを含む第2の
TCRDと、b)標的抗原に特異的に結合する抗体部分と、を含み、第1及び第2のTC
RDは、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することのできるTCRM
を形成し、抗体部分は、第1及び/又は第2のTCRDに連結する。いくつかの実施形態
では、抗体部分は、Fab、Fab’、(Fab’)2、Fv、及び単鎖Fv(scFv
)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、抗体部分は、非限定的に、CD
19、CD20、CD22、CD47、GPC-3、ROR1、ROR2、BCMA、G
PRC5D、及びFCRL5、その変異型又は変異体を含むものを含む細胞表面抗原に特
異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗体部分は、ペプチド/MHC複合体に特異
的に結合し、ペプチドは、非限定的に、WT-1、AFP、HPV16-E7、NY-E
SO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1、KRAS、ヒストンH3.3
、及びPSA、その変異型又は変異体を含むものを含むタンパク質に由来する。いくつか
の実施形態では、caTCRが、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメインを含む
安定化モジュールを更に含み、第1及び第2の安定化ドメインが、caTCRを安定化さ
せる、互いの結合親和性を有する。いくつかの実施形態では、安定化モジュールは、TC
RMと抗体部分との間に位置する。いくつかの実施形態では、TCR-TMの両方が天然
に存在する。いくつかの実施形態では、TCR-TMのうちの少なくとも1つは、天然に
存在しない。
【0138】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcaTCRは、標的抗原に特異的に結合し
、a)配列番号7及び9~13のアミノ酸配列のうちのいずれか1つを含むか、それから
本質的になるか、又はそれからなる第1のTCR-TMを含む第1のTCRD、及び配列
番号8及び14~26のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含むか、それから本質的に
なるか、又はそれからなる第2のTCR-TMを含む第2のTCRDと、b)標的抗原に
特異的に結合する抗体部分と、を含み、第1及び第2のTCRDは、少なくとも1つのT
CR関連シグナル伝達分子を動員することができるTCRMを形成し、抗体部分は、第1
及び/又は第2のTCRDに連結する。いくつかの実施形態では、第1のTCR-TM及
び第2のTCR-TMは、表2に列挙されるcaTCRのいずれかに従って選択される。
いくつかの実施形態では、抗体部分は、Fab、Fab’、(Fab’)2、Fv、及び
単鎖Fv(scFv)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、抗体部分は
、非限定的に、CD19、CD20、CD22、CD47、GPC-3、ROR1、RO
R2、BCMA、GPRC5D、及びFCRL5、その変異型又は変異体を含むものを含
む細胞表面抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗体部分は、ペプチド/
MHC複合体に特異的に結合し、ペプチドは、非限定的に、WT-1、AFP、HPV1
6-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1、KRAS
、ヒストンH3.3、及びPSA、その変異型又は変異体を含むものを含むタンパク質に
由来する。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR連結ペプチド又は
その断片を更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR連結ペプチド又はその
断片を更に含む。いくつかの実施形態では、第1の連結ペプチドは、配列番号31若しく
は32又はその変異型のアミノ酸配列を含み、及び/又は第2の連結ペプチドは、配列番
号33若しくは34又はその変異型のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第
1及び第2の連結ペプチドは、ジスルフィド結合によって連結される。いくつかの実施形
態では、第1のTCRDは、第1のTCR細胞内ドメインを更に含み、及び/又は第2の
TCRDは、第2のTCR細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、第2の
TCR細胞内ドメインは、配列番号36又はその変異型のアミノ酸配列を含む。いくつか
の実施形態では、caTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(CD27、CD28、
4-1BB(CD137)、OX40、CD30、又はCD40由来など)を含む、少な
くとも1つのアクセサリー細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、caT
CRが、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメインを含む安定化モジュールを更に
含み、第1及び第2の安定化ドメインが、caTCRを安定化させる、互いの結合親和性
を有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2の安定化ドメインは、ジスルフィド結
合によって連結される。いくつかの実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γε
、及びζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動
員することができる。いくつかの実施形態では、TCRMは、配列番号7及び8の配列を
有するT細胞受容体膜貫通ドメインを含むTCRMと比較して、少なくとも1つのTCR
関連シグナル伝達分子の動員を強化することができる。いくつかの実施形態では、TCR
Mは、caTCR-CD3複合体形成を促進する。いくつかの実施形態では、任意の2つ
のcaTCRモジュール間又はドメイン間にスペーサモジュールが存在する。いくつかの
実施形態では、TCR-TMの両方が天然に存在する。いくつかの実施形態では、TCR
-TMのうちの少なくとも1つは、天然に存在しない。
【0139】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcaTCRは、標的抗原に特異的に結合し
、a)第1のTCR-TMを含む第1のTCRD、及び第2のTCR-TMを含む第2の
TCRDと、b)標的抗原に特異的に結合する抗体部分と、を含み、第1及び第2のTC
R-TMは、それぞれ、配列番号7及び8、9及び8、7及び14、7及び15、7及び
16、10及び16、7及び17、7及び18、7及び19、7及び20、7及び21、
7及び22、11及び23、12及び24、7及び25、又は13及び26のアミノ酸配
列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなり、第1及び第2のTCRDは、
少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することができるTCRMを形成し
、抗体部分は、第1及び/又は第2のTCRDに連結する。例えば、いくつかの実施形態
では、本明細書に記載のcaTCRは、標的抗原に特異的に結合し、a)配列番号7のア
ミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる第1のTCR-TMを
含む第1のTCRD、及び配列番号8のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか
、又はそれからなる第2のTCR-TMを含む第2のTCRDと、b)標的抗原に特異的
に結合する抗体部分と、を含み、第1及び第2のTCRDは、少なくとも1つのTCR関
連シグナル伝達分子を動員することができるTCRMを形成し、抗体部分は、第1及び/
又は第2のTCRDに連結する。いくつかの実施形態では、抗体部分は、Fab、Fab
’、(Fab’)2、Fv、及び単鎖Fv(scFv)からなる群から選択される。いく
つかの実施形態では、抗体部分は、非限定的に、CD19、CD20、CD22、CD4
7、GPC-3、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5D、及びFCRL5、その
変異型又は変異体を含むものを含む細胞表面抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形
態では、抗体部分は、ペプチド/MHC複合体に特異的に結合し、ペプチドは、非限定的
に、WT-1、AFP、HPV16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-L
MP2A、HIV-1、KRAS、ヒストンH3.3、及びPSA、その変異型又は変異
体を含むものを含むタンパク質に由来する。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは
、第1のTCR連結ペプチド又はその断片を更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第
2のTCR連結ペプチド又はその断片を更に含む。いくつかの実施形態では、第1の連結
ペプチドは、配列番号31若しくは32又はその変異型のアミノ酸配列を含み、及び/又
は第2の連結ペプチドは、配列番号33若しくは34又はその変異型のアミノ酸配列を含
む。いくつかの実施形態では、第1及び第2の連結ペプチドは、ジスルフィド結合によっ
て連結される。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR細胞内ドメイ
ンを更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR細胞内ドメインを更に含む。
いくつかの実施形態では、第2のTCR細胞内ドメインは、配列番号36又はその変異型
のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、caTCRは、T細胞共刺激シグナル
伝達配列(CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、又は
CD40由来など)を含む、少なくとも1つのアクセサリー細胞内ドメインを更に含む。
いくつかの実施形態では、caTCRが、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメイ
ンを含む安定化モジュールを更に含み、第1及び第2の安定化ドメインが、caTCRを
安定化させる、互いの結合親和性を有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2の安
定化ドメインは、ジスルフィド結合によって連結される。いくつかの実施形態では、TC
RMは、CD3δε、CD3γε、及びζζからなる群から選択される少なくとも1つの
TCR関連シグナル伝達分子を動員することができる。いくつかの実施形態では、TCR
Mは、配列番号7及び8の配列を有するT細胞受容体膜貫通ドメインを含むTCRMと比
較して、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の動員を強化することができる。
いくつかの実施形態では、TCRMは、caTCR-CD3複合体形成を促進する。いく
つかの実施形態では、任意の2つのcaTCRモジュール間又はドメイン間にスペーサモ
ジュールが存在する。
【0140】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcaTCRは、標的抗原に特異的に結合し
、a)TCRの膜貫通ドメインのうちの1つに由来する第1のTCR-TMを含む第1の
TCRDに連結する第1のFab鎖を含む第1の抗原結合ドメインを含む第1のポリペプ
チド鎖と、b)TCRの他の膜貫通ドメインに由来する第2のTCR-TMを含む第2の
TCRDに連結する第2のFab鎖を含む第2の抗原結合ドメインを含む第2のポリペプ
チド鎖と、を含み、第1及び第2のTCRDは、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝
達分子を動員することができるTCRMを形成し、第1及び第2のFab鎖は、標的抗原
に特異的に結合するFab様抗原結合モジュールを形成する。いくつかの実施形態では、
a)第1のFab鎖はV及びC1抗体ドメインを含み、第2のFab鎖はV及びC
抗体ドメインを含み、又はb)第1のFab鎖はV及びC抗体ドメインを含み、第
2のFab鎖はV及びC1抗体ドメインを含む。例えば、いくつかの実施形態では、
caTCRは、a)第1のTCRDに連結されたV及びC1抗体ドメインを含む第1
のFab鎖を含む第1のポリペプチド鎖と、b)第2のTCRDに連結されたV及びC
抗体ドメインを含む第2のFab鎖と、を含む。いくつかの実施形態では、caTCR
は、a)第1のTCRDに連結されたV及びC抗体ドメインを含む第1のFab鎖と
、b)第2のTCRDに連結されたV及びC1抗体ドメインを含む第2のFab鎖と
、を含む。いくつかの実施形態では、TCRDの一方又は両方とそれらの連結したFab
鎖との間にペプチドリンカーが存在する。いくつかの実施形態では、C1ドメイン内の
残基とCドメイン内の残基との間にジスルフィド結合が存在する。いくつかの実施形態
では、C1及び/又はCドメインは、互いにFab鎖の結合親和性を増加させる1つ
以上の改変を含む。いくつかの実施形態では、C1及びCドメインは、Fab鎖のう
ちの1つがV及びC抗体ドメインを含み、他方のFab鎖がV及びC1抗体ドメ
インを含むように交換される。いくつかの実施形態では、Fab様抗原結合モジュールは
、非限定的に、CD19、CD20、CD22、CD47、GPC-3、ROR1、RO
R2、BCMA、GPRC5D、及びFCRL5、その変異型又は変異体を含むものを含
む細胞表面抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、Fab様抗原結合モジュ
ールは、ペプチド/MHC複合体に特異的に結合し、ペプチドは、非限定的に、WT-1
、AFP、HPV16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、H
IV-1、KRAS、ヒストンH3.3、及びPSA、その変異型又は変異体を含むもの
を含むタンパク質に由来する。いくつかの実施形態では、caTCRが、第1の安定化ド
メイン及び第2の安定化ドメインを含む安定化モジュールを更に含み、第1及び第2の安
定化ドメインが、caTCRを安定化させる、互いの結合親和性を有する。いくつかの実
施形態では、第1又は第2の安定化ドメインは、第1のTCRDとその連結されたFab
鎖との間に位置し、他の安定化ドメインは、第2のTCRDとその連結されたFab鎖と
の間に位置する。いくつかの実施形態では、TCR-TMの両方が天然に存在する。いく
つかの実施形態では、TCR-TMのうちの少なくとも1つは、天然に存在しない。
【0141】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcaTCRは、標的抗原に特異的に結合し
、a)配列番号7及び9~13のアミノ酸配列のうちのいずれか1つを含むか、それから
本質的になるか、又はそれからなる第1のTCR-TMを含む第1のTCRDに連結する
第1のFab鎖を含む第1の抗原結合ドメインを含む第1のポリペプチド鎖と、b)配列
番号8及び14~26のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含むか、それから本質的に
なるか、又はそれからなる第2のTCR-TMを含む第2のTCRDに連結する第2のF
ab鎖を含む第2の抗原結合ドメインを含む第2のポリペプチド鎖と、を含み、第1及び
第2のTCRDは、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することができ
るTCRMを形成し、第1及び第2のFab鎖は、標的抗原に特異的に結合するFab様
抗原結合モジュールを形成する。いくつかの実施形態では、第1のTCR-TM及び第2
のTCR-TMは、表2に列挙されるcaTCRのいずれかに従って選択される。いくつ
かの実施形態では、a)第1のFab鎖はV及びC1抗体ドメインを含み、第2のF
ab鎖はV及びC抗体ドメインを含み、又はb)第1のFab鎖はV及びC抗体
ドメインを含み、第2のFab鎖はV及びC1抗体ドメインを含む。いくつかの実施
形態では、C1ドメインは、配列番号37~47のいずれか1つのアミノ酸配列を含み
、及び/又はCドメインは、配列番号48のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態
では、C1ドメインは、配列番号37のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になる
か、又はそれからなり、Cドメインは、配列番号48のアミノ酸配列を含むか、それか
ら本質的になるか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、Fab様抗原結合モジ
ュールは、非限定的に、CD19、CD20、CD22、CD47、GPC-3、ROR
1、ROR2、BCMA、GPRC5D、及びFCRL5、その変異型又は変異体を含む
ものを含む細胞表面抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、Fab様抗原結
合モジュールは、ペプチド/MHC複合体に特異的に結合し、ペプチドは、非限定的に、
WT-1、AFP、HPV16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP
2A、HIV-1、KRAS、ヒストンH3.3、及びPSA、その変異型又は変異体を
含むものを含むタンパク質に由来する。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第
1のTCR連結ペプチド又はその断片を更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2の
TCR連結ペプチド又はその断片を更に含む。いくつかの実施形態では、第1の連結ペプ
チドは、配列番号31若しくは32又はその変異型のアミノ酸配列を含み、及び/又は第
2の連結ペプチドは、配列番号33若しくは34又はその変異型のアミノ酸配列を含む。
いくつかの実施形態では、第1及び第2の連結ペプチドは、ジスルフィド結合によって連
結される。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR細胞内ドメインを
更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR細胞内ドメインを更に含む。いく
つかの実施形態では、第2のTCR細胞内ドメインは、配列番号36又はその変異型のア
ミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、caTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達
配列(CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、又はCD
40由来など)を含む、少なくとも1つのアクセサリー細胞内ドメインを更に含む。いく
つかの実施形態では、caTCRが、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメインを
含む安定化モジュールを更に含み、第1及び第2の安定化ドメインが、caTCRを安定
化させる、互いの結合親和性を有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2の安定化
ドメインは、ジスルフィド結合によって連結される。いくつかの実施形態では、TCRM
は、CD3δε、CD3γε、及びζζからなる群から選択される少なくとも1つのTC
R関連シグナル伝達分子を動員することができる。いくつかの実施形態では、TCRMは
、配列番号7及び8の配列を有するT細胞受容体膜貫通ドメインを含むTCRMと比較し
て、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の動員を強化することができる。いく
つかの実施形態では、TCRMは、caTCR-CD3複合体形成を促進する。いくつか
の実施形態では、任意の2つのcaTCRモジュール間又はドメイン間にスペーサモジュ
ールが存在する。いくつかの実施形態では、TCR-TMの両方が天然に存在する。いく
つかの実施形態では、TCR-TMのうちの少なくとも1つは、天然に存在しない。
【0142】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcaTCRは、標的抗原に特異的に結合し
、a)第1のTCR-TMを含む第1のTCRDに連結する第1のFab鎖を含む第1の
抗原結合ドメインを含む第1のポリペプチド鎖と、第2のTCR-TMを含む第2のTC
RDに連結する第2のFab鎖を含む第2の抗原結合ドメインを含む第2のポリペプチド
鎖と、を含み、第1及び第2のTCR-TMは、それぞれ、配列番号7及び8、9及び8
、7及び14、7及び15、7及び16、10及び16、7及び17、7及び18、7及
び19、7及び20、7及び21、7及び22、11及び23、12及び24、7及び2
5、又は13及び26のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれから
なり、第1及び第2のTCRDは、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員
することができるTCRMを形成し、第1及び第2のFab鎖は、標的抗原に特異的に結
合するFab様抗原結合モジュールを形成する。いくつかの実施形態では、a)第1のF
ab鎖はV及びC1抗体ドメインを含み、第2のFab鎖はV及びC抗体ドメイ
ンを含み、又はb)第1のFab鎖はV及びC抗体ドメインを含み、第2のFab鎖
はV及びC1抗体ドメインを含む。いくつかの実施形態では、C1ドメインは、配
列番号37~47のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、及び/又はCドメインは、配
列番号48のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、C1ドメインは、配列番
号37のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなり、Cドメ
インは、配列番号48のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれから
なる。いくつかの実施形態では、Fab様抗原結合モジュールは、非限定的に、CD19
、CD20、CD22、CD47、GPC-3、ROR1、ROR2、BCMA、GPR
C5D、及びFCRL5、その変異型又は変異体を含むものを含む細胞表面抗原に特異的
に結合する。いくつかの実施形態では、Fab様抗原結合モジュールは、ペプチド/MH
C複合体に特異的に結合し、ペプチドは、非限定的に、WT-1、AFP、HPV16-
E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1、KRAS、ヒ
ストンH3.3、及びPSA、その変異型又は変異体を含むものを含むタンパク質に由来
する。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR連結ペプチド又はその
断片を更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR連結ペプチド又はその断片
を更に含む。いくつかの実施形態では、第1の連結ペプチドは、配列番号31若しくは3
2又はその変異型のアミノ酸配列を含み、及び/又は第2の連結ペプチドは、配列番号3
3若しくは34又はその変異型のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1及
び第2の連結ペプチドは、ジスルフィド結合によって連結される。いくつかの実施形態で
は、第1のTCRDは、第1のTCR細胞内ドメインを更に含み、及び/又は第2のTC
RDは、第2のTCR細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、第2のTC
R細胞内ドメインは、配列番号36又はその変異型のアミノ酸配列を含む。いくつかの実
施形態では、caTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(CD27、CD28、4-
1BB(CD137)、OX40、CD30、又はCD40由来など)を含む、少なくと
も1つのアクセサリー細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、caTCR
が、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメインを含む安定化モジュールを更に含み
、第1及び第2の安定化ドメインが、caTCRを安定化させる、互いの結合親和性を有
する。いくつかの実施形態では、第1及び第2の安定化ドメインは、ジスルフィド結合に
よって連結される。いくつかの実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γε、及
びζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員す
ることができる。いくつかの実施形態では、TCRMは、配列番号7及び8の配列を有す
るT細胞受容体膜貫通ドメインを含むTCRMと比較して、少なくとも1つのTCR関連
シグナル伝達分子の動員を強化することができる。いくつかの実施形態では、TCRMは
、caTCR-CD3複合体形成を促進する。いくつかの実施形態では、任意の2つのc
aTCRモジュール間又はドメイン間にスペーサモジュールが存在する。
【0143】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcaTCRは、標的抗原に特異的に結合し
、a)TCRの膜貫通ドメインのうちの1つに由来する第1のTCR-TMを含む第1の
TCRD、及びTCRの他の膜貫通ドメインに由来する第2のTCR-TMを含む第2の
TCRDと、b)標的抗原に特異的に結合するFab’と、を含み、第1及び第2のTC
RDは、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することのできるTCRM
を形成し、Fab’は、V、C1、及び部分ヒンジ抗体ドメインを含む第1のFab
’鎖、並びにV及びC抗体ドメインを含む第2のFab’鎖を含み、第1のFab’
鎖は第1又は第2のTCRDに連結し、第2のFab’鎖は他のTCRDに連結する。い
くつかの実施形態では、TCRDの一方又は両方とそれらの連結したFab’鎖との間に
ペプチドリンカーが存在する。いくつかの実施形態では、C1ドメイン内の残基とC
ドメイン内の残基との間にジスルフィド結合が存在する。いくつかの実施形態では、C
1及び/又はCドメインは、互いにFab’鎖の結合親和性を増加させる1つ以上の改
変を含む。いくつかの実施形態では、C1及びCドメインは、第1のFab’鎖がV
、C、及び部分ヒンジ抗体ドメインを含み、第2のFab’鎖がV及びC1ドメ
インを含むように交換される。いくつかの実施形態では、Fab’は、非限定的に、CD
19、CD20、CD22、CD47、GPC-3、ROR1、ROR2、BCMA、G
PRC5D、及びFCRL5、その変異型又は変異体を含むものを含む細胞表面抗原に特
異的に結合する。いくつかの実施形態では、Fab’は、ペプチド/MHC複合体に特異
的に結合し、ペプチドは、非限定的に、WT-1、AFP、HPV16-E7、NY-E
SO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1、KRAS、ヒストンH3.3
、及びPSA、その変異型又は変異体を含むものを含むタンパク質に由来する。いくつか
の実施形態では、caTCRが、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメインを含む
安定化モジュールを更に含み、第1及び第2の安定化ドメインが、caTCRを安定化さ
せる、互いの結合親和性を有する。いくつかの実施形態では、第1又は第2の安定化ドメ
インは、第1のTCRDとその連結されたFab’鎖との間に位置し、他の安定化ドメイ
ンは、第2のTCRDとその連結されたFab’鎖との間に位置する。いくつかの実施形
態では、TCR-TMの両方が天然に存在する。いくつかの実施形態では、TCR-TM
のうちの少なくとも1つは、天然に存在しない。
【0144】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcaTCRは、標的抗原に特異的に結合し
、a)TCRの膜貫通ドメインのうちの1つに由来する第1のTCR-TMを含む第1の
TCRD、及びTCRの他の膜貫通ドメインに由来する第2のTCR-TMを含む第2の
TCRDと、b)標的抗原に特異的に結合する(Fab’)2と、を含み、第1及び第2
のTCRDは、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することのできるT
CRMを形成し、(Fab’)2は、V、C1、及び部分ヒンジ抗体ドメインを含む
第1及び第2の(Fab’)2鎖、並びにV及びC抗体ドメインを含む第3及び第4
の(Fab’)2鎖を含み、第1の(Fab’)2鎖は第1又は第2のTCRDに連結し
、第2の(Fab’)2鎖は他のTCRDに連結する。いくつかの実施形態では、TCR
Dの一方又は両方とそれらの連結した(Fab’)2鎖との間にペプチドリンカーが存在
する。いくつかの実施形態では、C1ドメイン内の残基とCドメイン内の残基との間
にジスルフィド結合が存在する。いくつかの実施形態では、C1及び/又はCドメイ
ンは、互いに(Fab’)2鎖の結合親和性を増加させる1つ以上の改変を含む。いくつ
かの実施形態では、C1及びCドメインは、第1及び第2の(Fab’)2鎖がV
、C、及び部分ヒンジ抗体ドメインを含み、第3及び第4の(Fab’)2鎖がV
びC1ドメインを含むように交換される。いくつかの実施形態では、(Fab’)2は
、非限定的に、CD19、CD20、CD22、CD47、GPC-3、ROR1、RO
R2、BCMA、GPRC5D、及びFCRL5、その変異型又は変異体を含むものを含
む細胞表面抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、(Fab’)2は、ペプ
チド/MHC複合体に特異的に結合し、ペプチドは、非限定的に、WT-1、AFP、H
PV16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1、K
RAS、ヒストンH3.3、及びPSA、その変異型又は変異体を含むものを含むタンパ
ク質に由来する。いくつかの実施形態では、caTCRが、第1の安定化ドメイン及び第
2の安定化ドメインを含む安定化モジュールを更に含み、第1及び第2の安定化ドメイン
が、caTCRを安定化させる、互いの結合親和性を有する。いくつかの実施形態では、
第1又は第2の安定化ドメインは、第1のTCRDとその連結された(Fab’)2鎖と
の間に位置し、他の安定化ドメインは、第2のTCRDとその連結された(Fab’)2
鎖との間に位置する。いくつかの実施形態では、TCR-TMの両方が天然に存在する。
いくつかの実施形態では、TCR-TMのうちの少なくとも1つは、天然に存在しない。
【0145】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcaTCRは、標的抗原に特異的に結合し
、a)TCRの膜貫通ドメインのうちの1つに由来する第1のTCR-TMを含む第1の
TCRD、及びTCRの他の膜貫通ドメインに由来する第2のTCR-TMを含む第2の
TCRDと、b)標的抗原に特異的に結合するFvと、を含み、第1及び第2のTCRD
は、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することのできるTCRMを形
成し、Fvは、V抗体ドメインを含む第1のFv鎖、及びV抗体ドメインを含む第2
のFv鎖を含み、第1のFv鎖は第1又は第2のTCRDに連結し、第2のFv鎖は他の
TCRDに連結する。いくつかの実施形態では、TCRDの一方又は両方とそれらの連結
したFv鎖との間にペプチドリンカーが存在する。いくつかの実施形態では、Fvは、非
限定的に、CD19、CD20、CD22、CD47、GPC-3、ROR1、ROR2
、BCMA、GPRC5D、及びFCRL5、その変異型又は変異体を含むものを含む細
胞表面抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、Fvは、ペプチド/MHC複
合体に特異的に結合し、ペプチドは、非限定的に、WT-1、AFP、HPV16-E7
、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1、KRAS、ヒスト
ンH3.3、及びPSA、その変異型又は変異体を含むものを含むタンパク質に由来する
。いくつかの実施形態では、caTCRが、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメ
インを含む安定化モジュールを更に含み、第1及び第2の安定化ドメインが、caTCR
を安定化させる、互いの結合親和性を有する。いくつかの実施形態では、第1又は第2の
安定化ドメインは、第1のTCRDとその連結されたFv鎖との間に位置し、他の安定化
ドメインは、第2のTCRDとその連結されたFv鎖との間に位置する。いくつかの実施
形態では、TCR-TMの両方が天然に存在する。いくつかの実施形態では、TCR-T
Mのうちの少なくとも1つは、天然に存在しない。
【0146】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcaTCRは、標的抗原に特異的に結合し
、a)TCRの膜貫通ドメインのうちの1つに由来する第1のTCR-TMを含む第1の
TCRD、及びTCRの他の膜貫通ドメインに由来する第2のTCR-TMを含む第2の
TCRDと、b)標的抗原に特異的に結合する第1のscFvと、を含み、第1及び第2
のTCRDは、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することのできるT
CRMを形成し、第1のscFvは、V及びV抗体ドメインを含み、第1のscFv
は、第1又は第2のTCRDに連結する。いくつかの実施形態では、caTCRは、第1
のscFvに連結するか、又は第1のscFvに連結していないTCRDに連結する第2
の抗原結合モジュールを更に含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合モジュール
は、標的抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合モジュール
は、標的抗原以外の抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合
モジュールは第2のscFvである。いくつかの実施形態では、第1のscFvとその連
結したTCRDとの間、及び/又は第2の抗原結合モジュールとその連結したscFv又
はTCRDとの間にペプチドリンカーが存在する。いくつかの実施形態では、scFvは
、非限定的に、CD19、CD20、CD22、CD47、GPC-3、ROR1、RO
R2、BCMA、GPRC5D、及びFCRL5、その変異型又は変異体を含むものを含
む細胞表面抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、scFvは、ペプチド/
MHC複合体に特異的に結合し、ペプチドは、非限定的に、WT-1、AFP、HPV1
6-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1、KRAS
、ヒストンH3.3、及びPSA、その変異型又は変異体を含むものを含むタンパク質に
由来する。いくつかの実施形態では、caTCRが、第1の安定化ドメイン及び第2の安
定化ドメインを含む安定化モジュールを更に含み、第1及び第2の安定化ドメインが、c
aTCRを安定化させる、互いの結合親和性を有する。いくつかの実施形態では、第1又
は第2の安定化ドメインは、第1のscFvとその連結されたTCRDとの間に位置し、
他の安定化ドメインは、第2のTCRDに連結する。いくつかの実施形態では、TCR-
TMの両方が天然に存在する。いくつかの実施形態では、TCR-TMのうちの少なくと
も1つは、天然に存在しない。
【0147】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcaTCRは、標的抗原に特異的に結合し
、a)TCRの膜貫通ドメインのうちの1つに由来する第1のTCR-TMを含む第1の
TCRD、及びTCRの他の膜貫通ドメインに由来する第2のTCR-TMを含む第2の
TCRDと、b)標的抗原に特異的に結合する第1のscFv、及び第2のscFvと、
を含み、第1及び第2のTCRDは、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動
員することのできるTCRMを形成し、第1及び第2のscFvは、V及びV抗体ド
メインを含み、第1のscFvは、第1又は第2のTCRDに連結し、第2のscFvは
他のTCRDに連結する。いくつかの実施形態では、第2のTCRDは、標的抗原に特異
的に結合する。いくつかの実施形態では、第2のscFvは、第1のscFv.のアミノ
酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では
、第2のscFvは、標的抗原以外の抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態では
、第1及び/又は第2のscFvは、個々に、非限定的に、CD19、CD20、CD2
2、CD47、GPC-3、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5D、及びFCR
L5、その変異型又は変異体を含むものを含む細胞表面抗原に特異的に結合する。いくつ
かの実施形態では、第1及び/又は第2のscFvは、個々に、ペプチド/MHC複合体
に特異的に結合し、ペプチドは、非限定的に、WT-1、AFP、HPV16-E7、N
Y-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1、KRAS、ヒストンH
3.3、及びPSA、その変異型又は変異体を含むものを含むタンパク質に由来する。い
くつかの実施形態では、caTCRが、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメイン
を含む安定化モジュールを更に含み、第1及び第2の安定化ドメインが、caTCRを安
定化させる、互いの結合親和性を有する。いくつかの実施形態では、第1又は第2の安定
化ドメインは、第1のscFvとその連結されたTCRDとの間に位置し、他の安定化ド
メインは、第2のscFvとその連結されたTCRDとの間に位置する。いくつかの実施
形態では、TCR-TMの両方が天然に存在する。いくつかの実施形態では、TCR-T
Mのうちの少なくとも1つは、天然に存在しない。
多重特異性caTCR
【0148】
いくつかの実施形態では、caTCRは、2つ以上(例えば、2、3、4、又はそれ以
上)の異なる標的抗原又はエピトープに特異的に結合する多重特異性caTCRである。
いくつかの実施形態では、多重特異性caTCRは、2つ以上(例えば、2、3、4、又
はそれ以上)の異なる標的抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、多重特異
性caTCRは、同じ標的抗原上の2つ以上(例えば、2、3、4、又はそれ以上)の異
なるエピトープに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、多重特異性caTCRは
、抗原又はエピトープごとの抗原結合モジュールを含む。いくつかの実施形態では、多重
特異性caTCRは、少なくとも1つの抗原又はエピトープのための2つを超える抗原結
合モジュールを含む。いくつかの実施形態では、多重特異性caTCRは、抗原又はエピ
トープに各々特異的に結合する2つ以上(例えば、2、3、4、又はそれ以上)の抗原結
合ドメインを含む多重特異性抗原結合モジュールを含む。いくつかの実施形態では、多重
特異性caTCRは二重特異性である。いくつかの実施形態では、多重特異性caTCR
は三重特異性である。
【0149】
多重特異性分子は、少なくとも2つの異なる抗原又はエピトープに対する結合特異性を
有する分子である(例えば、二重特異性抗体は、2つの抗原又はエピトープに対する結合
特異性を有する)。2を超える価数及び/又は特異性を有する多重特異性caTCRも想
到される。二重特異性抗体は、記載されており、例えば、Brinkmann U.an
d Kontermann R.E.(2017)MABS,9(2),182-212
を参照されたい。三重特異性抗体を調製することができる。Tutt et al.J.
Immunol.147:60(1991)を参照されたい。当業者は、当該技術分野に
おいて既知の個々の多重特異性分子の適切な特徴を選択して、多重特異性caTCRを形
成することができることを理解されたい。
【0150】
いくつかの実施形態では、caTCR(本明細書では「多重特異性caTCR」とも称
される)は、a)第1の標的抗原に特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン、及び第2
の標的抗原に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含む多重特異性(例えば、二重
特異性)抗原結合モジュールと、b)第1のTCR-TMを含む第1のTCRD(TCR
D1)、及び第2のTCR-TMを含む第2のTCRD(TCRD2)を含むTCRMと
、を含み、TCRMは、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の動員を促進する
。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR連結ペプチド又はその断片
を更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR連結ペプチド又はその断片を更
に含む。いくつかの実施形態では、第1の連結ペプチドは、第1のTCR-TMが由来す
るTCRサブユニットの連結ペプチドの全て若しくは一部、又はその変異型を含み、及び
/又は第2の連結ペプチドは、第2のTCR-TMが由来するTCRサブユニットの連結
ペプチドの全て若しくは一部、又はこれらの変異型を含む。いくつかの実施形態では、第
1及び第2の連結ペプチドは、ジスルフィド結合によって連結される。いくつかの実施形
態では、第1のTCRDは、第1のTCR細胞内ドメインを更に含み、及び/又は第2の
TCRDは、第2のTCR細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、第1の
TCR細胞内ドメインは、第1のTCR-TMが由来するTCRサブユニットの細胞内ド
メイン由来の配列を含み、及び/又は第2のTCR細胞内ドメインは、第2のTCR-T
Mが由来するTCRサブユニットの細胞内ドメイン由来の配列を含む。いくつかの実施形
態では、第1のTCRDは、第1のTCR-TMが由来するTCRサブユニットの断片で
あり、及び/又は、第2のTCRDは、第2のTCR-TMが由来するTCRサブユニッ
トの断片である。いくつかの実施形態では、caTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配
列(CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、又はCD4
0由来など)を含む、少なくとも1つのアクセサリー細胞内ドメインを更に含む。いくつ
かの実施形態では、caTCRが、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメインを含
む安定化モジュールを更に含み、第1及び第2の安定化ドメインが、caTCRを安定化
させる、互いの結合親和性を有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2の安定化ド
メインは、ジスルフィド結合によって連結される。いくつかの実施形態では、第1及び第
2の安定化ドメインは、C1及びC抗体ドメインなどの抗体部分、又はその変異型を
含む。いくつかの実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γε、及びζζからな
る群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することができ
る。いくつかの実施形態では、TCRMは、天然に存在するαβ T細胞受容体の膜貫通
ドメインを含むTCRMと比較して、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の動
員を強化することができる。いくつかの実施形態では、TCRMは、caTCR-CD3
複合体形成を促進する。いくつかの実施形態では、任意の2つのcaTCRモジュール間
又はドメイン間にスペーサモジュールが存在する。いくつかの実施形態では、第1のTC
R-TM及び第2のTCR-TMの両方は、天然に存在する。いくつかの実施形態では、
TCR-TMのうちの少なくとも1つは、天然に存在しない。いくつかの実施形態では、
第1のTCR-TMは、それが由来する膜貫通ドメインと比較して、最大5個のアミノ酸
置換(例えば、単一のアミノ酸置換)を含み、及び/又は、第2のTCR-TMは、それ
が由来する膜貫通ドメインと比較して、最大5個のアミノ酸置換(例えば、単一のアミノ
酸置換)を含む。いくつかの実施形態では、第1のTCR-TM中の置換アミノ酸は、第
2のTCR-TM中の置換アミノ酸に近接している。いくつかの実施形態では、1つ以上
の置換アミノ酸は、CD3への結合に関与する第1又は第2のTCR-TM中のアミノ酸
に近接している。いくつかの実施形態では、1つ以上の(例えば、各)置換アミノ酸は、
それらの対応する非置換アミノ酸よりも疎水性である。いくつかの実施形態では、第1の
TCR-TMは、配列番号7及び9~13のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含み、
第2のTCR-TMは、配列番号8及び14~26のうちのいずれか1つのアミノ酸配列
を含む。
【0151】
二重特異性caTCRの例示的な構造は図13A~13Eに示され、標的抗原がCD1
9及びCD22であるが、当業者は、他の標的抗原又はエピトープを標的化する二重特異
性caTCRが、同じ構造フォーマットを使用して調製し得ることを容易に理解する。
【0152】
例えば、DVD IgGsに由来する二重可変ドメイン(DVD)(DiGiamma
rino et al.,mAbs 3(5):487-494を参照されたい)は、c
aTCR内の二重特異性抗原結合モジュールとして使用することができる(図13A)。
外側可変ドメイン及び内側可変ドメインの融合のための様々なリンカーが開発され、DV
Dモジュールを有する二重特異性caTCRを構築するのに有用であり得るDVD-Ig
sのために最適化されている。しかしながら、DVDモジュールにおける可変ドメインス
タッキング手法は、内側可変ドメインの折り畳み及び標的結合親和性に影響を及ぼし得る
。2つの可変ドメインの間のリンカーと2つの可変ドメインの順序とは、caTCRの有
効性に影響を及ぼし得る。
【0153】
いくつかの実施形態では、caTCRは、a)第1の標的抗原に特異的に結合するFv
、及び第2の標的抗原に特異的に結合するFabを含む多重特異性(例えば、二重特異性
)抗原結合モジュールと、b)第1のTCR-TMを含む第1のTCRD(TCRD1)
、及び第2のTCR-TMを含む第2のTCRD(TCRD2)を含むTCRMと、を含
み、TCRMは、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の動員を促進する。
【0154】
いくつかの実施形態では、caTCRは、(i)N末端からC末端に向けて、V1-
L1-V2-C1-TCRD1を含む第1のポリペプチド鎖、及びN末端からC末端
に向けて、V1-L2-V2-C-TCRD2を含む第2のポリペプチド鎖、(i
i)N末端からC末端に向けて、V1-L1-V2-C-TCRD1を含む第1の
ポリペプチド鎖、及びN末端からC末端に向けて、V1-L2-V2-C1-TC
RD2を含む第2のポリペプチド鎖、(iii)N末端からC末端に向けて、V1-L
1-V2-C1-TCRD1を含む第1のポリペプチド鎖、及びN末端からC末端に
向けて、V1-L2-V2-C-TCRD2を含む第2のポリペプチド鎖、又は(
iv)N末端からC末端に向けて、V1-L1-V2-C-TCRD1を含む第1
のポリペプチド鎖、及びN末端からC末端に向けて、V1-L2-V2-C1-T
CRD2を含む第2のポリペプチド鎖、を含み、V1及びV1は、第1の標的抗原に
特異的に結合する第1の抗原結合ドメインを形成し、V2及びV2は、第2の標的抗
原に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを形成し、TCRD1及びTCRD2は、
少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の動員を促進するTCRMを形成し、L1
及びL2は、ペプチドリンカーである。いくつかの実施形態では、L1及び/又はL2は
、約5~約50(例えば、約5~10、約10~15、又は約15~30)のアミノ酸長
である。いくつかの実施形態では、L1及びL2は同じ長さを有する。いくつかの実施形
態では、L1及びL2は、同一のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、L1
及びL2は異なる長さを有する。いくつかの実施形態では、L1及びL2は、異なるアミ
ノ酸配列を有する。例示的な二重特異性caTCRを図13Aに示す。
【0155】
CODV-IgGs由来のクロスオーバー二重可変ドメイン(CODV)(Stein
metz,et al.mAbs(2016),8(5):867-878を参照)を、
caTCR中の二重特異性抗原結合モジュールとして使用することができる(図13B
。CODVは、各Fvに対する比較的障害のない抗原結合部位を可能にする。重鎖及び軽
鎖可変領域の融合のための様々なリンカーが開発され、CODVモジュールを有する二重
特異性caTCRを構築するのに有用であり得るCODV-Igsのために最適化されて
いる。しかしながら、CODVモジュールの適切な折り畳みは困難であり得、CODVモ
ジュールで使用される長いリンカーは、免疫原性の潜在的な供給源であり得、タンパク質
溶解切断を受けやすい可能性がある。
【0156】
いくつかの実施形態では、caTCRは、a)第1の標的抗原に特異的に結合する第1
のFv、及び第2の標的抗原に特異的に結合する第2のFvを含む多重特異性(例えば、
二重特異性)抗原結合モジュールと、b)第1のTCR-TMを含む第1のTCRD(T
CRD1)、及び第2のTCR-TMを含む第2のTCRD(TCRD2)を含むTCR
Mと、を含み、TCRMは、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の動員を促進
する。いくつかの実施形態では、caTCRは、C1及びCを更に含む。
【0157】
いくつかの実施形態では、caTCRは、(i)N末端からC末端に向けて、V1-
L1-V2-C1-TCRD1を含む第1のポリペプチド鎖、及びN末端からC末端
に向けて、V2-L2-V1-C-TCRD2を含む第2のポリペプチド鎖、又は
(ii)N末端からC末端に向けて、V1-L1-V2-C-TCRD1を含む第
1のポリペプチド鎖、及びN末端からC末端に向けて、V2-L2-V1-C1-
TCRD2を含む第2のポリペプチド鎖、を含み、V1及びV1は、第1の標的抗原
に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインを形成し、V2及びV2は、第2の標的
抗原に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを形成し、TCRD1及びTCRD2は
、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の動員を促進するTCRMを形成し、L
1及びL2は、ペプチドリンカーである。いくつかの実施形態では、L1及び/又はL2
は、約5~約50(例えば、約5~20、約15~30、又は約30~50)のアミノ酸
長である。いくつかの実施形態では、L1及びL2は同じ長さを有する。いくつかの実施
形態では、L1及びL2は、同一のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、L
1及びL2は異なる長さを有する。いくつかの実施形態では、L1及びL2は、異なるア
ミノ酸配列を有する。例示的な二重特異性caTCRを図13Bに示す。
【0158】
Chen et al.,mAbs8(4):761-774に記載されているものな
どの、scFv-融合タンパク質由来の二重特異性抗原結合モジュールは、二重特異性c
aTCR(図13C)で使用されてもよい。同様の融合フォーマットを有する二重特異性
抗体の発現は、このフォーマットの適切な折り畳み及び安定性を示している。scFvを
定常ドメインに融合させるための様々なリンカーが開発され、同様のscFv融合ドメイ
ンを有する二重特異性caTCRを構築するのに有用であり得るこれらの二重特異性抗体
について最適化されている。しかしながら、scFv間の立体障害は、scFvのそれら
の標的抗原への結合を損なう可能性がある。
【0159】
いくつかの実施形態では、caTCRは、a)第1の標的抗原に特異的に結合する第1
のscFv、及び第2の標的抗原に特異的に結合する第2のscFvを含む多重特異性(
例えば、二重特異性)抗原結合モジュールと、b)第1のTCR-TMを含む第1のTC
RD(TCRD1)、及び第2のTCR-TMを含む第2のTCRD(TCRD2)を含
むTCRMと、を含み、TCRMは、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の動
員を促進する。いくつかの実施形態では、caTCRは、C1及びCを更に含む。
【0160】
いくつかの実施形態では、caTCRは、(i)N末端からC末端に向けて、scFv
1-L1-C1-TCRD1を含む第1のポリペプチド鎖、及びN末端からC末端に向
けて、scFv2-L2-C-TCRD2を含む第2のポリペプチド鎖、又は、(ii
)N末端からC末端に向けて、scFv2-L1-C1-TCRD1を含む第1のポリ
ペプチド鎖、及びN末端からC末端に向けて、scFv1-L2-C-TCRD2を含
む第2のポリペプチド鎖、を含み、scFv1は、第1の標的抗原に特異的に結合し、s
cFv2は、第2の標的抗原に特異的に結合し、TCRD1及びTCRD2は、少なくと
も1つのTCR関連シグナル伝達分子の動員を促進するTCRMを形成し、L1及びL2
は、ペプチドリンカーである。いくつかの実施形態では、L1及び/又はL2は、約5~
約50(例えば、約5~10、約10~15、又は約15~30)のアミノ酸長である。
いくつかの実施形態では、L1及びL2は同じ長さを有する。いくつかの実施形態では、
L1及びL2は、同一のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、L1及びL2
は異なる長さを有する。いくつかの実施形態では、L1及びL2は、異なるアミノ酸配列
を有する。例示的な二重特異性caTCRを図13Cに示す。
【0161】
IgG-scFv二重特異性抗体又はFab-scFv-Fc二重特異性抗体由来の二
重特異性抗原結合モジュールを、二重特異性caTCRにおいて使用することができる。
1つのフォーマット(図13D)では、scFvは、FabのV又はVのいずれかに
結合し、これにより、scFvのより高い柔軟性、したがってFabのその標的抗原への
より大きなアクセスを可能にする。しかしながら、scFv-Fabモジュールは安定性
の問題を有し得る。第2のフォーマット(図13E)では、Fabは第1のTCRDに融
合され、scFvは、第2のTCRDに融合される。
【0162】
いくつかの実施形態では、caTCRは、a)第1の標的抗原に特異的に結合するsc
Fv、及び第2の標的抗原に特異的に結合するFabを含む多重特異性(例えば、二重特
異性)抗原結合モジュールと、b)第1のTCR-TMを含む第1のTCRD(TCRD
1)、及び第2のTCR-TMを含む第2のTCRD(TCRD2)を含むTCRMと、
を含み、TCRMは、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の動員を促進する。
【0163】
いくつかの実施形態では、caTCRは、(i)N末端からC末端に向けて、scFv
-L1-V-C1-TCRD1を含む第1のポリペプチド鎖、及びN末端からC末端
に向けて、V-C-TCRD2を含む第2のポリペプチド鎖、又は、(ii)N末端
からC末端に向けて、V-C1-TCRD1を含む第1のポリペプチド鎖、及びN末
端からC末端に向けて、scFv-L2-V-C-TCRD2を含む第2のポリペプ
チド鎖、を含み、scFvは、第1の標的抗原に特異的に結合し、V及びVは、第2
の標的抗原に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを形成し、TCRD1及びTCR
D2は、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の動員を促進するTCRMを形成
し、L1及びL2は、ペプチドリンカーである。いくつかの実施形態では、L1及び/又
はL2は、約5~約50(例えば、約5~10、約10~15、又は約15~30)のア
ミノ酸長である。例示的な二重特異性caTCRを図13Dに示す。
【0164】
いくつかの実施形態では、caTCRは、(i)N末端からC末端に向けて、V-C
-L1-TCRD1を含む第1のポリペプチド鎖、N末端からC末端に向けて、V
1を含む第2のポリペプチド鎖、及びN末端からC末端に向けて、scFv-L2-
TCRD2を含む第3のポリペプチド鎖、(ii)N末端からC末端に向けて、V-C
1-L1-TCRD1を含む第1のポリペプチド鎖、及びN末端からC末端に向けて、
-Cを含む第2のポリペプチド鎖、及びN末端からC末端に向けて、scFv-L
2-TCRD2を含む第3のポリペプチド鎖、(iii)N末端からC末端に向けて、s
cFv-L1-TCRD1を含む第1のポリペプチド鎖、N末端からC末端に向けて、V
-C1を含む第2のポリペプチド鎖、及びN末端からC末端に向けて、V-C
L2-TCRD2;を含む第3のポリペプチド鎖、又は、(iv)N末端からC末端に向
けて、scFv-L1-TCRD1を含む第1のポリペプチド鎖、N末端からC末端に向
けて、V-Cを含む第2のポリペプチド鎖、及びN末端からC末端に向けて、V
1-L2-TCRD2を含む第3のポリペプチド鎖、を含み、scFvは、第1の標
的抗原に特異的に結合し、V及びVは、第2の標的抗原に特異的に結合する第2の抗
原結合ドメインを形成し、TCRD1及びTCRD2は、少なくとも1つのTCR関連シ
グナル伝達分子の動員を促進するTCRMを形成し、L1及びL2は、ペプチドリンカー
である。いくつかの実施形態では、L1及び/又はL2は、約5~約50(例えば、約5
~10、約10~15、又は約15~30)のアミノ酸長である。例示的な二重特異性c
aTCRを図13Eに示す。scFvとTCRDとの間のペプチドリンカーの長さ、及び
FabとTCRDとの間のペプチドリンカーの長さは、scFv及びFabのそれらの標
的抗原への接近性に影響を及ぼし得るため最適化することができる。
【0165】
多重特異性caTCRの多重特異性抗原結合モジュールは、標的抗原又はエピトープの
任意の適切な組み合わせに特異的に結合し得る。いくつかの実施形態では、多重特異性抗
原結合モジュールは、少なくとも1つの細胞表面抗原に特異的に結合する。いくつかの実
施形態では、少なくとも1つの細胞表面抗原は、CD19、CD20、CD22、CD4
7、GPC-3、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5D、及びFCRL5、その
変異型又は変異体を含むものからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、多重
特異性抗原結合モジュールは、少なくとも1つのペプチド/MHC複合体に特異的に結合
する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのペプチド/MHC複合体は、WT-1
、AFP、HPV16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、H
IV-1、KRAS、ヒストンH3.3、及びPSA、その変異型又は変異体を含むもの
からなる群から選択されるタンパク質に由来するペプチドを含む。いくつかの実施形態で
は、多重特異性抗原結合モジュールは、第1の細胞表面抗原及び第2の細胞表面抗原に特
異的に結合する。いくつかの実施形態では、多重特異性抗原結合モジュールは、CD19
及びCD22に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、多重特異性抗原結合モジュ
ールは、CD19及びCD20に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、多重特異
性抗原結合モジュールは、第1のペプチド/MHC複合体及び第2のペプチド/MHC複
合体に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、多重特異性抗原結合モジュールは、
細胞表面抗原及びペプチド/MHC複合体に特異的に結合する。
キメラ共刺激受容体(CSR)構築物
【0166】
本明細書に記載されるリガンド特異的キメラ共刺激受容体(CSR)は、標的リガンド
(細胞表面抗原又はペプチド/MHC複合体など)に特異的に結合し、表面に、標的リガ
ンドを、標的リガンド結合により機能的に発現する免疫細胞を刺激することができる。C
SRは、リガンド結合特異性、膜貫通モジュール、及び免疫細胞の刺激を可能にする共刺
激免疫細胞シグナル伝達モジュールを提供するリガンド結合モジュールを含む。CSRは
、機能的な一次免疫細胞シグナル伝達配列を欠いている。いくつかの実施形態では、CS
Rは、あらゆる一次免疫細胞シグナル伝達配列を欠いている。いくつかの実施形態では、
CSRは、リガンド結合モジュール、膜貫通モジュール、及び共刺激シグナル伝達モジュ
ールを含む単一のポリペプチド鎖を含む。いくつかの実施形態では、CSRは、第1のポ
リペプチド鎖及び第2のポリペプチド鎖を含み、第1及び第2のポリペプチド鎖は共に、
リガンド結合モジュール、膜貫通モジュール、及び共刺激シグナル伝達モジュールを形成
する。いくつかの実施形態では、第1及び第2のポリペプチド鎖は、別個のポリペプチド
鎖であり、CSRは二量体などの多量体である。いくつかの実施形態では、第1及び第2
のポリペプチド鎖は、ペプチド結合、又はジスルフィド結合などの別の化学結合によって
共有結合されている。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチド鎖及び第2のポリペ
プチド鎖は、少なくとも1つのジスルフィド結合によって連結される。いくつかの実施形
態では、caTCR+CSR免疫細胞におけるCSRの発現は、誘導可能である。いくつ
かの実施形態では、caTCR+CSR免疫細胞におけるCSRの発現は、caTCRを
介したシグナル伝達時に誘導可能である。
【0167】
本発明のCSRに使用する共刺激免疫細胞シグナル伝達ドメインの例としては、caT
CRと協調して作用してcaTCR結合後のシグナル伝達を開始することができるT細胞
受容体(TCR)の共受容体の細胞質配列、並びにこれらの配列の任意の誘導体又は変異
型、及び同じ機能能力を有する任意の合成配列が挙げられる。
【0168】
いくつかの状況下では、TCRのみを介して生成されたシグナルは、T細胞の完全な活
性化に不十分であり、二次又は共刺激シグナルも必要とされる。したがって、いくつかの
実施形態では、T細胞活性化は、細胞内シグナル伝達配列の2つの異なるクラス:TCR
を介して抗原依存的一次活性化を開始するもの(本明細書では「一次T細胞シグナル伝達
配列」と称される)、及び抗原独立様式で作用して、二次又は共刺激シグナルを提供する
もの(本明細書では「共刺激T細胞シグナル伝達配列」と称される)によって媒介される
【0169】
刺激様式で作用する一次免疫細胞シグナル伝達配列は、免疫受容体活性化チロシンモチ
ーフ又はITAMとして知られるシグナル伝達モチーフを含んでもよい。ITAM含有一
次免疫細胞シグナル伝達配列の例としては、TCRζ、FcRγ、FcRβ、CD3γ、
CD3δ、CD3ε、CD5、CD22、CD79a、CD79b、及びCD66dに由
来するものが挙げられる。「機能的」一次免疫細胞シグナル伝達配列は、適切な受容体に
作動可能に結合するときに免疫細胞活性化シグナルを変換することができる配列である。
一次免疫細胞シグナル伝達配列の断片又は変異型を含み得る「非機能性」一次免疫細胞シ
グナル伝達配列は、免疫細胞活性化シグナルを変換することができない。本明細書に記載
のCSRは、ITAMを含む機能的シグナル伝達配列などの機能的一次免疫細胞シグナル
伝達配列を欠いている。いくつかの実施形態では、CSRは、あらゆる一次免疫細胞シグ
ナル伝達配列を欠いている。
【0170】
共刺激免疫細胞シグナル伝達配列は、例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD
137)、OX40、CD27、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原
-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83
と特異的に結合するリガンドなどを含む共刺激分子の細胞内ドメインの一部であり得る。
【0171】
いくつかの実施形態では、標的リガンドは、細胞表面抗原である。いくつかの実施形態
では、標的リガンドは、ペプチド/MHC複合体である。いくつかの実施形態では、標的
リガンドは、同じ免疫細胞で発現するcaTCRの標的抗原と同じである。いくつかの実
施形態では、標的リガンドは、同じ免疫細胞で発現するcaTCRの標的抗原と異なる。
いくつかの実施形態では、標的リガンドは、標的抗原を提示する細胞の表面に提示される
分子である。例えば、いくつかの実施形態では、caTCRの標的抗原は、がん細胞に提
示されるがん関連抗原であり、標的リガンドは、インテグリンなどのがん細胞の表面に発
現する偏在的分子である。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、疾患関連リガンド
である。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、がん関連リガンドである。いくつか
の実施形態では、がん関連リガンドは、例えば、CD19、CD20、CD22、CD4
7、IL4、GPC-3、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5D、又はFCRL
5である。いくつかの実施形態では、がん関連リガンドは、WT-1、AFP、HPV1
6-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、及びPSAを含むタン
パク質に由来するペプチドを含むペプチド/MHC複合体である。いくつかの実施形態で
は、標的リガンドは、ウイルス関連リガンドである。いくつかの実施形態では、標的リガ
ンドは、免疫チェックポイント分子である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイ
ント分子は、PD-L1、PD-L2、CD80、CD86、ICOSL、B7-H3、
B7-H4、HVEM、4-1BBL、OX40L、CD70、CD40、及びGAL9
を含む。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、アポトーシス分子である。いくつか
の実施形態では、アポトーシス分子は、FasL、FasR、TNFR1、及びTNFR
2を含む。
【0172】
いくつかの実施形態では、リガンド結合モジュールは、抗体部分である。いくつかの実
施形態では、抗体部分は、Fab、Fab’、(Fab’)2、Fv、又は単鎖Fv(s
cFv)である。いくつかの実施形態では、抗体部分は、非限定的に、CD19、CD2
0、CD22、CD47、GPC-3、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5D、
及びFCRL5を含む細胞表面抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗体
部分は、ペプチド/MHC複合体に特異的に結合し、ペプチドは、非限定的に、WT-1
、AFP、HPV16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、及
びPSAを含むタンパク質に由来する。いくつかの実施形態では、抗体部分は、CD19
に特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(V及び/又はVドメイン)を含む(
例えば、WO2017066136A2を参照されたい)。いくつかの実施形態では、抗
体部分は、CD19に特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(V及び/又はV
ドメイン)を含む(例えば、配列番号58を含むか、それから本質的になるか、若しくは
それからなるものを含むVドメイン、及び/又は配列番号59を含むか、それから本質
的になるか、若しくはそれからなるものを含むVドメイン、或いはそれらに含まれるC
DR)。いくつかの実施形態では、抗体部分は、CD20に特異的な抗体部分のCDR又
は可変ドメイン(V及び/又はVドメイン)を含む(例えば、配列番号60を含むか
、それから本質的になるか、若しくはそれからなるものを含むVドメイン、及び/又は
配列番号61を含むか、それから本質的になるか、若しくはそれからなるものを含むV
ドメイン、或いはそれらに含まれるCDR)。いくつかの実施形態では、抗体部分は、C
D22に特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(V及び/又はVドメイン)を
含む(例えば、2018年3月30日出願のUSSN62/650,955を参照された
い)。いくつかの実施形態では、抗体部分は、CD22に特異的な抗体部分のCDR又は
可変ドメイン(V及び/又はVドメイン)を含む(例えば、配列番号101を含むか
、それから本質的になるか、若しくはそれからなるものを含むVドメイン、及び/又は
配列番号102を含むか、それから本質的になるか、若しくはそれからなるものを含むV
ドメイン、或いはそれらに含まれるCDR)。いくつかの実施形態では、抗体部分は、
GPC3に特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(V及び/又はVドメイン)
を含む(例えば、2017年4月26日出願のUSSN62/490,586を参照され
たい)。いくつかの実施形態では、抗体部分は、GPC3に特異的な抗体部分のCDR又
は可変ドメイン(V及び/又はVドメイン)を含む(例えば、配列番号64を含むか
、それから本質的になるか、若しくはそれからなるものを含むVドメイン、及び/又は
配列番号65を含むか、それから本質的になるか、若しくはそれからなるものを含むV
ドメイン、或いはそれらに含まれるCDR)。いくつかの実施形態では、抗体部分は、R
OR1に特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(V及び/又はVドメイン)を
含む(例えば、WO2016/187220及びWO2016/187216を参照され
たい)。いくつかの実施形態では、抗体部分は、ROR2に特異的な抗体部分のCDR又
は可変ドメイン(V及び/又はVドメイン)を含む(例えば、WO2016/142
768を参照されたい)。いくつかの実施形態では、抗体部分は、BCMAに特異的な抗
体部分のCDR又は可変ドメイン(V及び/又はVドメイン)を含む(例えば、WO
2016/090327及びWO2016/090320を参照されたい)。いくつかの
実施形態では、抗体部分は、GPRC5Dに特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン
(V及び/又はVドメイン)を含む(例えば、WO2016/090329及びWO
2016/090312を参照されたい)。いくつかの実施形態では、抗体部分は、FC
RL5に特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(V及び/又はVドメイン)を
含む(例えば、WO2016/090337を参照されたい)。いくつかの実施形態では
、抗体部分は、WT-1に特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(V及び/又は
ドメイン)を含む(例えば、WO2012/135854、WO2015/0700
78、及びWO2015/070061を参照されたい)。いくつかの実施形態では、抗
体部分は、AFPに特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(V及び/又はV
メイン)を含む(例えば、WO2016/161390を参照されたい)。いくつかの実
施形態では、抗体部分は、HPV16-E7に特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイ
ン(V及び/又はVドメイン)を含む(例えば、WO2016/182957を参照
されたい)。いくつかの実施形態では、抗体部分は、NY-ESO-1に特異的な抗体部
分のCDR又は可変ドメイン(V及び/又はVドメイン)を含む(例えば、WO20
16/210365を参照されたい)。いくつかの実施形態では、抗体部分は、PRAM
Eに特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(V及び/又はVドメイン)を含む
(例えば、WO2016/191246を参照されたい)。いくつかの実施形態では、抗
体部分は、EBV-LMP2Aに特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(V及び
/又はVドメイン)を含む(例えば、WO2016/201124を参照されたい)。
いくつかの実施形態では、抗体部分は、KRASに特異的な抗体部分のCDR又は可変ド
メイン(V及び/又はVドメイン)を含む(例えば、WO2016/154047を
参照されたい)。いくつかの実施形態では、抗体部分は、PSAに特異的な抗体部分のC
DR又は可変ドメイン(V及び/又はVドメイン)を含む(例えば、WO2017/
015634を参照されたい)。
【0173】
いくつかの実施形態では、リガンド結合モジュールは、標的リガンドの受容体の細胞外
ドメインの全て又は一部である(又はそれに由来する)。いくつかの実施形態では、受容
体は、例えば、FasR、TNFR1、TNFR2、PD-1、CD28、CTLA-4
、ICOS、BTLA、KIR、LAG-3、4-1BB、OX40、CD27、及びT
IM-3を含む。
【0174】
いくつかの実施形態では、膜貫通モジュールは、例えば、CD28、CD3ε、CD3
ζ、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD
37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、又はCD154に由来
する、1つ以上の膜貫通ドメインを含む。
【0175】
いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達モジュールは、例えば、CD27、CD
28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、ICOS、リンパ球
機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H
3、CD83と特異的に結合するリガンドなどを含む免疫細胞共刺激分子の細胞内ドメイ
ンの全て又は一部を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。いくつかの実
施形態では、共刺激シグナル伝達分子は、配列番号51のアミノ酸配列を含むCD28の
断片を含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達分子は、配列番号52のアミ
ノ酸配列を含むCD28の断片を含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達分
子は、配列番号53のアミノ酸配列を含む4-1BBの断片を含む。いくつかの実施形態
では、共刺激シグナル伝達分子は、配列番号54のアミノ酸配列を含む4-1BBの断片
を含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達分子は、配列番号57のアミノ酸
配列を含むCD8の断片を含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達分子は、
配列番号55のアミノ酸配列を含むOX40の断片を含む。いくつかの実施形態では、共
刺激シグナル伝達分子は、配列番号56のアミノ酸配列を含むOX40の断片を含む。い
くつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達分子は、配列番号86又は87のアミノ酸配
列を含むCD27の断片を含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達分子は、
配列番号88又は89のアミノ酸配列を含むCD30の断片を含む。
【0176】
いくつかの実施形態では、CSRは、リガンド結合モジュール、膜貫通モジュール、及
び共刺激シグナル伝達モジュールのいずれかの間にスペーサモジュールを更に含む。いく
つかの実施形態では、スペーサモジュールは、2つのCSRモジュールを連結する1つ以
上のペプチドリンカーを含む。いくつかの実施形態では、スペーサモジュールは、約5~
約70(約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、
65、又は70のいずれかなど、これらの値間の任意の範囲を含む)の長さのアミノ酸の
1つ以上のペプチドリンカーを含む。
【0177】
いくつかの実施形態では、リガンド結合モジュール(抗体部分など)は、a)他の分子
に対する結合親和性の少なくとも約10倍(例えば、少なくとも約10、20、30、4
0、50、75、100、200、300、400、500、750、1000、若しく
はそれ以上のうちのいずれかを含む)の親和性で、又はb)他の分子に結合するためのK
の約1/10倍以下(例えば、約1/10、1/20、1/30、1/40、1/50
、1/75、1/100、1/200、1/300、1/400、1/500、1/75
0、1/1000、若しくはそれ以下など)のKで標的抗原に特異的に結合する。結合
親和性は、ELISA、蛍光標識細胞分取(FACS)分析、又は放射線免疫沈降アッセ
イ(RIA)などの当該技術分野において既知の方法によって決定することができる。K
は、例えば、Biacore機器を利用する表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイ、
又は例えばSapidyne機器を利用する動的排除アッセイ(KinExA)などの当
該技術分野において既知の方法によって決定することができる。
【0178】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCSRは、標的リガンド(細胞表面抗原又
はペプチド/MHC複合体など)に特異的に結合し、a)標的リガンド結合ドメイン(L
BD)と、b)膜貫通ドメインと、c)共刺激シグナル伝達ドメインと、を含み、CSR
は、標的リガンドが、標的リガンド結合の際に機能的に表面に発現する免疫細胞を刺激す
ることができる。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、細胞表面抗原である。いく
つかの実施形態では、標的リガンドは、ペプチド/MHC複合体である。いくつかの実施
形態では、標的リガンドは、同じ免疫細胞で発現するcaTCRの標的抗原と同じである
。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、同じ免疫細胞で発現するcaTCRの標的
抗原と異なる。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、疾患関連リガンドである。い
くつかの実施形態では、標的リガンドは、がん関連リガンドである。いくつかの実施形態
では、がん関連リガンドは、例えば、CD19、CD20、CD22、CD47、IL4
、GPC-3、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5D、又はFCRL5である。
いくつかの実施形態では、がん関連リガンドは、WT-1、AFP、HPV16-E7、
NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、及びPSAを含むタンパク質に由
来するペプチドを含むペプチド/MHC複合体である。いくつかの実施形態では、標的リ
ガンドは、ウイルス関連リガンドである。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、免
疫チェックポイント分子である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント分子は
、PD-L1、PD-L2、CD80、CD86、ICOSL、B7-H3、B7-H4
、HVEM、4-1BBL、OX40L、CD70、CD40、及びGAL9を含む。い
くつかの実施形態では、標的リガンドは、アポトーシス分子である。いくつかの実施形態
では、アポトーシス分子は、FasL、FasR、TNFR1、及びTNFR2を含む。
いくつかの実施形態では、リガンド結合ドメインは、抗体部分である。いくつかの実施形
態では、抗体部分は、Fab、Fab’、(Fab’)2、Fv、又は単鎖Fv(scF
v)である。いくつかの実施形態では、リガンド結合ドメインは、標的リガンドの受容体
の細胞外ドメインの全て又は一部である(又はそれに由来する)。いくつかの実施形態で
は、受容体は、例えば、FasR、TNFR1、TNFR2、PD-1、CD28、CT
LA-4、ICOS、BTLA、KIR、LAG-3、4-1BB、OX40、CD27
、及びTIM-3を含む。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、例えば、CD2
8、CD3ε、CD3ζ、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD
22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、
又はCD154を含む膜貫通タンパク質に由来する膜貫通ドメインを含む。いくつかの実
施形態では、CSRは、膜貫通タンパク質の断片(fTMP)を含み、fTMPはCSR
膜貫通ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、例え
ば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、
ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、N
KG2C、B7-H3、CD83と特異的に結合するリガンドなどを含む免疫細胞共刺激
分子の細胞内ドメインの全て又は一部を含むか、それから本質的になるか、又はそれから
なる。いくつかの実施形態では、CSRは、免疫細胞共刺激分子の断片(fCSM)を含
み、fCSMは、CSR膜貫通ドメイン及びCSR共刺激シグナル伝達ドメインを含む。
いくつかの実施形態では、CSRは、リガンド結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び共刺
激シグナル伝達ドメインのいずれかの間にスペーサドメインを更に含む。いくつかの実施
形態では、スペーサドメインは、2つのCSRドメインを連結するペプチドリンカーを含
む。
【0179】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCSRは、標的リガンドに特異的に結合し
、a)標的リガンド結合ドメインと、b)膜貫通ドメインと、c)共刺激シグナル伝達ド
メインと、を含み、標的リガンドは細胞表面抗原であり、CSRは、標的リガンドが、標
的リガンド結合の際に機能的に表面に発現する免疫細胞を刺激することができる。いくつ
かの実施形態では、標的リガンドは、同じ免疫細胞で発現するcaTCRの標的抗原と同
じである。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、同じ免疫細胞で発現するcaTC
Rの標的抗原と異なる。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、疾患関連リガンドで
ある。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、がん関連リガンドである。いくつかの
実施形態では、がん関連リガンドは、例えば、CD19、CD20、CD22、CD47
、IL4、GPC-3、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5D、又はFCRL5
である。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、ウイルス関連リガンドである。いく
つかの実施形態では、標的リガンドは、免疫チェックポイント分子である。いくつかの実
施形態では、免疫チェックポイント分子は、PD-L1、PD-L2、CD80、CD8
6、ICOSL、B7-H3、B7-H4、HVEM、4-1BBL、OX40L、CD
70、CD40、及びGAL9を含む。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、アポ
トーシス分子である。いくつかの実施形態では、アポトーシス分子は、FasL、Fas
R、TNFR1、及びTNFR2を含む。いくつかの実施形態では、リガンド結合ドメイ
ンは、抗体部分である。いくつかの実施形態では、抗体部分は、Fab、Fab’、(F
ab’)2、Fv、又は単鎖Fv(scFv)である。いくつかの実施形態では、リガン
ド結合ドメインは、標的リガンドの受容体の細胞外ドメインの全て又は一部である(又は
それに由来する)。いくつかの実施形態では、受容体は、例えば、FasR、TNFR1
、TNFR2、PD-1、CD28、CTLA-4、ICOS、BTLA、KIR、LA
G-3、4-1BB、OX40、CD27、及びTIM-3を含む。いくつかの実施形態
では、膜貫通ドメインは、例えば、CD28、CD3ε、CD3ζ、CD45、CD4、
CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD8
0、CD86、CD134、CD137、又はCD154を含む膜貫通タンパク質に由来
する膜貫通ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CSRは、膜貫通タンパク質の断
片(fTMP)を含み、fTMPはCSR膜貫通ドメインを含む。いくつかの実施形態で
は、共刺激シグナル伝達ドメインは、例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD1
37)、OX40、CD30、CD40、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA
-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83と特異的に結
合するリガンドなどを含む免疫細胞共刺激分子の細胞内ドメインの全て又は一部を含むか
、それから本質的になるか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、CSRは、免
疫細胞共刺激分子の断片(fCSM)を含み、fCSMは、CSR膜貫通ドメイン及びC
SR共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CSRは、リガンド
結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び共刺激シグナル伝達ドメインのいずれかの間にスペ
ーサドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、スペーサドメインは、2つのCSR
ドメインを連結するペプチドリンカーを含む。
【0180】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCSRは、標的リガンドに特異的に結合し
、a)標的リガンド結合ドメインと、b)膜貫通ドメインと、c)共刺激シグナル伝達ド
メインと、を含み、標的リガンドはペプチド/MHC複合体であり、CSRは、標的リガ
ンドが、標的リガンド結合の際に機能的に表面に発現する免疫細胞を刺激することができ
る。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、同じ免疫細胞で発現するcaTCRの標
的抗原と同じである。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、同じ免疫細胞で発現す
るcaTCRの標的抗原と異なる。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、疾患関連
リガンドである。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、がん関連リガンドである。
いくつかの実施形態では、がん関連リガンドは、WT-1、AFP、HPV16-E7、
NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、及びPSAを含むタンパク質に由
来するペプチドを含むペプチド/MHC複合体である。いくつかの実施形態では、標的リ
ガンドは、ウイルス関連リガンドである。いくつかの実施形態では、リガンド結合ドメイ
ンは、抗体部分である。いくつかの実施形態では、抗体部分は、Fab、Fab’、(F
ab’)2、Fv、又は単鎖Fv(scFv)である。いくつかの実施形態では、膜貫通
ドメインは、例えば、CD28、CD3ε、CD3ζ、CD45、CD4、CD5、CD
8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86
、CD134、CD137、又はCD154を含む膜貫通タンパク質に由来する膜貫通ド
メインを含む。いくつかの実施形態では、CSRは、膜貫通タンパク質の断片(fTMP
)を含み、fTMPはCSR膜貫通ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シ
グナル伝達ドメインは、例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX
40、CD30、CD40、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD
2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83と特異的に結合するリガン
ドなどを含む免疫細胞共刺激分子の細胞内ドメインの全て又は一部を含むか、それから本
質的になるか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、CSRは、免疫細胞共刺激
分子の断片(fCSM)を含み、fCSMは、CSR膜貫通ドメイン及びCSR共刺激シ
グナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CSRは、リガンド結合ドメイン
、膜貫通ドメイン、及び共刺激シグナル伝達ドメインのいずれかの間にスペーサドメイン
を更に含む。いくつかの実施形態では、スペーサドメインは、2つのCSRドメインを連
結するペプチドリンカーを含む。
【0181】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCSRは、標的リガンド(細胞表面抗原又
はペプチド/MHC複合体など)に特異的に結合し、a)標的リガンド結合ドメインと、
b)膜貫通ドメインと、c)共刺激シグナル伝達ドメインと、を含み、リガンド結合ドメ
インは抗体部分であり、CSRは、標的リガンドが、標的リガンド結合の際に機能的に表
面に発現する免疫細胞を刺激することができる。いくつかの実施形態では、標的リガンド
は、細胞表面抗原である。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、ペプチド/MHC
複合体である。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、同じ免疫細胞で発現するca
TCRの標的抗原と同じである。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、同じ免疫細
胞で発現するcaTCRの標的抗原と異なる。いくつかの実施形態では、標的リガンドは
、疾患関連リガンドである。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、がん関連リガン
ドである。いくつかの実施形態では、がん関連リガンドは、例えば、CD19、CD20
、CD22、CD47、IL4、GPC-3、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC
5D、又はFCRL5である。いくつかの実施形態では、がん関連リガンドは、WT-1
、AFP、HPV16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、及
びPSAを含むタンパク質に由来するペプチドを含むペプチド/MHC複合体である。い
くつかの実施形態では、標的リガンドは、ウイルス関連リガンドである。いくつかの実施
形態では、標的リガンドは、免疫チェックポイント分子である。いくつかの実施形態では
、免疫チェックポイント分子は、PD-L1、PD-L2、CD80、CD86、ICO
SL、B7-H3、B7-H4、HVEM、4-1BBL、OX40L、CD70、CD
40、及びGAL9を含む。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、アポトーシス分
子である。いくつかの実施形態では、アポトーシス分子は、FasL、FasR、TNF
R1、及びTNFR2を含む。いくつかの実施形態では、抗体部分は、Fab、Fab’
、(Fab’)2、Fv、又は単鎖Fv(scFv)である。いくつかの実施形態では、
膜貫通ドメインは、例えば、CD28、CD3ε、CD3ζ、CD45、CD4、CD5
、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、C
D86、CD134、CD137、又はCD154を含む膜貫通タンパク質に由来する膜
貫通ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CSRは、膜貫通タンパク質の断片(f
TMP)を含み、fTMPはCSR膜貫通ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共
刺激シグナル伝達ドメインは、例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)
、OX40、CD30、CD40、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)
、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83と特異的に結合する
リガンドなどを含む免疫細胞共刺激分子の細胞内ドメインの全て又は一部を含むか、それ
から本質的になるか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、CSRは、免疫細胞
共刺激分子の断片(fCSM)を含み、fCSMは、CSR膜貫通ドメイン及びCSR共
刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CSRは、リガンド結合ド
メイン、膜貫通ドメイン、及び共刺激シグナル伝達ドメインのいずれかの間にスペーサド
メインを更に含む。いくつかの実施形態では、スペーサドメインは、2つのCSRドメイ
ンを連結するペプチドリンカーを含む。いくつかの実施形態では、CSRドメインは、表
3に列挙されるCSRのいずれかに従って選択される。
【表3】
【0182】
いくつかの実施形態では、CSRはCD28のfCSMを含む。いくつかの実施形態で
は、CSRは、a)標的リガンド結合ドメインと、(b)配列番号57のアミノ酸配列を
含むCD8膜貫通ドメインと、c)配列番号52のアミノ酸配列を含むCD28の断片と
、を含む。いくつかの実施形態では、CSRは、a)標的リガンド結合ドメインと、b)
配列番号51のアミノ酸配列を含むCD28の断片と、を含む。いくつかの実施形態では
、CSRは、標的リガンド結合ドメインと、配列番号90のアミノ酸配列を含むCSRド
メインと、を含む。
【0183】
いくつかの実施形態では、CSRは、4-1BBのfCSMを含む。いくつかの実施形
態では、CSRは、a)標的リガンド結合ドメインと、(b)配列番号57のアミノ酸配
列を含むCD8膜貫通ドメインと、c)配列番号54のアミノ酸配列を含む4-1BBの
断片と、を含む。いくつかの実施形態では、CSRは、a)標的リガンド結合ドメインと
、b)配列番号53のアミノ酸配列を含む4-1BBの断片と、を含む。いくつかの実施
形態では、CSRは、標的リガンド結合ドメインと、配列番号91又は92のアミノ酸配
列を含むCSRドメインと、を含む。
【0184】
いくつかの実施形態では、CSRはCD27のfCSMを含む。いくつかの実施形態で
は、CSRは、a)標的リガンド結合ドメインと、(b)配列番号57のアミノ酸配列を
含むCD8膜貫通ドメインと、c)配列番号87のアミノ酸配列を含むCD27の断片と
、を含む。いくつかの実施形態では、CSRは、a)標的リガンド結合ドメインと、b)
配列番号86のアミノ酸配列を含むCD27の断片と、を含む。いくつかの実施形態では
、CSRは、標的リガンド結合ドメインと、配列番号93又は94のアミノ酸配列を含む
CSRドメインと、を含む。
【0185】
いくつかの実施形態では、CSRは、CD30のfCSMを含む。いくつかの実施形態
では、CSRは、a)標的リガンド結合ドメインと、(b)配列番号57のアミノ酸配列
を含むCD8膜貫通ドメインと、c)配列番号89のアミノ酸配列を含むCD30の断片
と、を含む。いくつかの実施形態では、CSRは、a)標的リガンド結合ドメインと、b
)配列番号88のアミノ酸配列を含むCD30の断片と、を含む。いくつかの実施形態で
は、CSRは、標的リガンド結合ドメインと、配列番号95又は96のアミノ酸配列を含
むCSRドメインと、を含む。
【0186】
いくつかの実施形態では、CSRは、OX40のfCSMを含む。いくつかの実施形態
では、CSRは、a)標的リガンド結合ドメインと、(b)配列番号57のアミノ酸配列
を含むCD8膜貫通ドメインと、c)配列番号56のアミノ酸配列を含むOX40の断片
と、を含む。いくつかの実施形態では、CSRは、a)標的リガンド結合ドメインと、b
)配列番号55のアミノ酸配列を含むOX40の断片と、を含む。いくつかの実施形態で
は、CSRは、標的リガンド結合ドメインと、配列番号97又は98のアミノ酸配列を含
むCSRドメインと、を含む。
【0187】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCSRは、標的リガンド(細胞表面抗原又
はペプチド/MHC複合体など)に特異的に結合し、a)標的リガンド結合ドメインと、
b)膜貫通ドメインと、c)共刺激シグナル伝達ドメインと、を含み、リガンド結合ドメ
インは、標的リガンドの受容体の細胞外ドメインの全て又は一部であり(又はそれに由来
し)、CSRは、標的リガンドが、標的リガンド結合の際に機能的に表面に発現する免疫
細胞を刺激することができる。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、細胞表面抗原
である。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、同じ免疫細胞で発現するcaTCR
の標的抗原と同じである。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、同じ免疫細胞で発
現するcaTCRの標的抗原と異なる。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、疾患
関連リガンドである。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、がん関連リガンドであ
る。いくつかの実施形態では、がん関連リガンドは、例えば、CD19、CD20、CD
22、CD47、IL4、GPC-3、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5D、
又はFCRL5である。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、免疫チェックポイン
ト分子である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント分子は、PD-L1、P
D-L2、CD80、CD86、ICOSL、B7-H3、B7-H4、HVEM、4-
1BBL、OX40L、CD70、CD40、及びGAL9を含む。いくつかの実施形態
では、標的リガンドは、アポトーシス分子である。いくつかの実施形態では、アポトーシ
ス分子は、FasL、FasR、TNFR1、及びTNFR2を含む。いくつかの実施形
態では、標的リガンド受容体は、例えば、FasR、TNFR1、TNFR2、PD-1
、CD28、CTLA-4、ICOS、BTLA、KIR、LAG-3、4-1BB、O
X40、CD27、及びTIM-3を含む。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは
、例えば、CD28、CD3ε、CD3ζ、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9
、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD13
4、CD137、又はCD154に由来する膜貫通ドメインを含む。いくつかの実施形態
では、共刺激シグナル伝達ドメインは、例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD
137)、OX40、CD30、CD40、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LF
A-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83と特異的に
結合するリガンドなどを含む免疫細胞共刺激分子の細胞内ドメインの全て又は一部を含む
か、それから本質的になるか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、CSRは、
リガンド結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び共刺激シグナル伝達ドメインのいずれかの
間にスペーサドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、スペーサドメインは、2つ
のCSRドメインを連結するペプチドリンカーを含む。
【0188】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCSRは、CD19に特異的に結合し、a
)配列番号58のアミノ酸配列を有するVドメイン、及び配列番号59のアミノ酸配列
を有するVドメインを含むscFvと、b)配列番号51又は52のアミノ酸配列を含
むか、それから本質的になるか、又はそれからなる、CD28の断片と、を含む。いくつ
かの実施形態では、scFvは、アミノ末端からカルボキシ末端に向けて、Vドメイン
、配列番号76のアミノ酸配列を含むペプチドリンカー、及びVドメインを含む。いく
つかの実施形態では、scFvは、配列番号77のアミノ酸配列を含むか、それから本質
的になるか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、CD28の断片は、配列番号
51のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CSRは、配列番号90のアミノ
酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CSRは、アミノ末端からカルボキシ末端に向
けて、scFv、配列番号103を含むペプチドリンカー、及びCD28の断片を含む。
いくつかの実施形態では、CSRは、配列番号80のアミノ酸配列を含むか、それから本
質的になるか、又はそれからなる。
【0189】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCSRは、CD20に特異的に結合し、a
)配列番号60のアミノ酸配列を有するVドメイン、及び配列番号61のアミノ酸配列
を有するVドメインを含むscFvと、b)配列番号51又は52のアミノ酸配列を含
むか、それから本質的になるか、又はそれからなる、CD28の断片と、を含む。いくつ
かの実施形態では、scFvは、アミノ末端からカルボキシ末端に向けて、Vドメイン
、配列番号76のアミノ酸配列を含むペプチドリンカー、及びVドメインを含む。いく
つかの実施形態では、scFvは、配列番号78のアミノ酸配列を含むか、それから本質
的になるか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、CD28の断片は、配列番号
51のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CSRは、アミノ末端からカルボ
キシ末端に向けて、scFv、配列番号103を含むペプチドリンカー、及びCD28の
断片を含む。いくつかの実施形態では、CSRは、配列番号81のアミノ酸配列を含むか
、それから本質的になるか、又はそれからなる。
【0190】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCSRは、GPC3に特異的に結合し、a
)配列番号64のアミノ酸配列を有するVドメイン、及び配列番号65のアミノ酸配列
を有するVドメインを含むscFvと、b)配列番号51又は52のアミノ酸配列を含
むか、それから本質的になるか、又はそれからなる、CD28の断片と、を含む。いくつ
かの実施形態では、scFvは、アミノ末端からカルボキシ末端に向けて、Vドメイン
、配列番号76のアミノ酸配列を含むペプチドリンカー、及びVドメインを含む。いく
つかの実施形態では、scFvは、配列番号79のアミノ酸配列を含むか、それから本質
的になるか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、CD28の断片は、配列番号
51のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CSRは、アミノ末端からカルボ
キシ末端に向けて、scFv、配列番号103を含むペプチドリンカー、及びCD28の
断片を含む。いくつかの実施形態では、CSRは、配列番号82のアミノ酸配列を含むか
、それから本質的になるか、又はそれからなる。
【0191】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCSRは、CD20に特異的に結合し、a
)配列番号60のアミノ酸配列を有するVドメイン、及び配列番号61のアミノ酸配列
を有するVドメインを含むscFvと、b)配列番号51又は52のアミノ酸配列を含
むか、それから本質的になるか、又はそれからなる、CD28の断片と、を含む。いくつ
かの実施形態では、scFvは、アミノ末端からカルボキシ末端に向けて、Vドメイン
、配列番号76のアミノ酸配列を含むペプチドリンカー、及びVドメインを含む。いく
つかの実施形態では、scFvは、配列番号78のアミノ酸配列を含むか、それから本質
的になるか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、CD28の断片は、配列番号
51のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CSRは、アミノ末端からカルボ
キシ末端に向けて、scFv、配列番号103を含むペプチドリンカー、及びCD28の
断片を含む。いくつかの実施形態では、CSRは、配列番号81のアミノ酸配列を含むか
、それから本質的になるか、又はそれからなる。
【0192】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCSRは、CD19に特異的に結合し、a
)配列番号58のアミノ酸配列を有するVドメイン、及び配列番号59のアミノ酸配列
を有するVドメインを含むscFvと、b)配列番号53又は54のアミノ酸配列を含
むか、それから本質的になるか、又はそれからなる、4-1BBの断片と、を含む。いく
つかの実施形態では、scFvは、アミノ末端からカルボキシ末端に向けて、Vドメイ
ン、配列番号76のアミノ酸配列を含むペプチドリンカー、及びVドメインを含む。い
くつかの実施形態では、4-1BBの断片は、配列番号53のアミノ酸配列を含む。いく
つかの実施形態では、CSRは、アミノ末端からカルボキシ末端に向けて、scFv、配
列番号104を含むペプチドリンカー、及び4-1BBの断片を含む。
【0193】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCSRはCD19に特異的に結合し、a)
配列番号58のアミノ酸配列を有するVドメイン、及び配列番号59のアミノ酸配列を
有するVドメインを含むscFvと、b)配列番号57のアミノ酸配列を含むか、それ
から本質的になるか、又はそれからなる、CD8の断片と、c)配列番号54のアミノ酸
配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる4-1BBの断片と、を含む
。いくつかの実施形態では、scFvは、アミノ末端からカルボキシ末端に向けて、V
ドメイン、配列番号76のアミノ酸配列を含むペプチドリンカー、及びVドメインを含
む。いくつかの実施形態では、CSRは、アミノ末端からカルボキシ末端に向けて、sc
Fv、配列番号104を含むペプチドリンカー、CD8の断片、及び4-1BBの断片を
含む。
【0194】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCSRはCD19に特異的に結合し、a)
配列番号58のアミノ酸配列を有するVドメイン、及び配列番号59のアミノ酸配列を
有するVドメインを含むscFvと、b)配列番号57のアミノ酸配列を含むか、それ
から本質的になるか、又はそれからなる、CD8の断片と、c)配列番号57のアミノ酸
配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなるOX40の断片と、を含む。
いくつかの実施形態では、scFvは、アミノ末端からカルボキシ末端に向けて、V
メイン、配列番号76のアミノ酸配列を含むペプチドリンカー、及びVドメインを含む
。いくつかの実施形態では、CSRは、アミノ末端からカルボキシ末端に向けて、scF
v、配列番号104を含むペプチドリンカー、CD8の断片、及びOX40の断片を含む
【0195】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCSRは、CD19に特異的に結合し、a
)配列番号58のアミノ酸配列を有するVドメイン、及び配列番号59のアミノ酸配列
を有するVドメインを含むscFvと、b)配列番号56又は57のアミノ酸配列を含
むか、それから本質的になるか、又はそれからなる、OX40の断片と、を含む。いくつ
かの実施形態では、scFvは、アミノ末端からカルボキシ末端に向けて、Vドメイン
、配列番号76のアミノ酸配列を含むペプチドリンカー、及びVドメインを含む。いく
つかの実施形態では、OX40の断片は、配列番号56のアミノ酸配列を含む。いくつか
の実施形態では、CSRは、アミノ末端からカルボキシ末端に向けて、scFv、配列番
号104を含むペプチドリンカー、及びOX40の断片を含む。
【0196】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCSRはCD19に特異的に結合し、a)
配列番号58のアミノ酸配列を有するVドメイン、及び配列番号59のアミノ酸配列を
有するVドメインを含むscFvと、b)配列番号57のアミノ酸配列を含むか、それ
から本質的になるか、又はそれからなる、CD8の断片と、c)配列番号87のアミノ酸
配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなるCD27の断片と、を含む。
いくつかの実施形態では、scFvは、アミノ末端からカルボキシ末端に向けて、V
メイン、配列番号76のアミノ酸配列を含むペプチドリンカー、及びVドメインを含む
。いくつかの実施形態では、CSRは、アミノ末端からカルボキシ末端に向けて、scF
v、配列番号104を含むペプチドリンカー、CD8の断片、及びCD27の断片を含む
【0197】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCSRは、CD19に特異的に結合し、a
)配列番号58のアミノ酸配列を有するVドメイン、及び配列番号59のアミノ酸配列
を有するVドメインを含むscFvと、b)配列番号86又は87のアミノ酸配列を含
むか、それから本質的になるか、又はそれからなる、CD27の断片と、を含む。いくつ
かの実施形態では、scFvは、アミノ末端からカルボキシ末端に向けて、Vドメイン
、配列番号76のアミノ酸配列を含むペプチドリンカー、及びVドメインを含む。いく
つかの実施形態では、CD27の断片は、配列番号86のアミノ酸配列を含む。いくつか
の実施形態では、CSRは、アミノ末端からカルボキシ末端に向けて、scFv、配列番
号104を含むペプチドリンカー、及びCD27の断片を含む。
【0198】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCSRはCD19に特異的に結合し、a)
配列番号58のアミノ酸配列を有するVドメイン、及び配列番号59のアミノ酸配列を
有するVドメインを含むscFvと、b)配列番号57のアミノ酸配列を含むか、それ
から本質的になるか、又はそれからなる、CD8の断片と、c)配列番号89のアミノ酸
配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなるCD30の断片と、を含む。
いくつかの実施形態では、scFvは、アミノ末端からカルボキシ末端に向けて、V
メイン、配列番号76のアミノ酸配列を含むペプチドリンカー、及びVドメインを含む
。いくつかの実施形態では、CSRは、アミノ末端からカルボキシ末端に向けて、scF
v、配列番号104を含むペプチドリンカー、CD8の断片、及びCD30の断片を含む
【0199】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCSRは、CD19に特異的に結合し、a
)配列番号58のアミノ酸配列を有するVドメイン、及び配列番号59のアミノ酸配列
を有するVドメインを含むscFvと、b)配列番号88又は89のアミノ酸配列を含
むか、それから本質的になるか、又はそれからなる、CD30の断片と、を含む。いくつ
かの実施形態では、scFvは、アミノ末端からカルボキシ末端に向けて、Vドメイン
、配列番号76のアミノ酸配列を含むペプチドリンカー、及びVドメインを含む。いく
つかの実施形態では、CD30の断片は、配列番号88のアミノ酸配列を含む。いくつか
の実施形態では、CSRは、アミノ末端からカルボキシ末端に向けて、scFv、配列番
号104を含むペプチドリンカー、及びCD30の断片を含む。
【0200】
いくつかの実施形態では、caTCR+CSR免疫細胞におけるCSRの発現は、誘導
可能である。いくつかの実施形態では、caTCR+CSR免疫細胞は、本明細書に記載
の誘導可能なプロモーターのいずれかを含む誘導可能なプロモーターに作動可能に連結さ
れたCSRをコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、caTCR+CSR
免疫細胞におけるCSRの発現は、caTCRを介したシグナル伝達時に誘導可能である
。いくつかのそのような実施形態では、caTCR+CSR免疫細胞は、caTCRを介
したシグナル伝達に応答してプロモーター又は調節要素に作動可能に連結されたCSRを
コードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CSRをコードする核酸配列は、
活性化T細胞由来プロモーターの核因子(NFAT)に作動可能に連結される。いくつか
の実施形態では、NFAT由来プロモーターは、NFAT由来のミニマルプロモーターで
ある(例えば、Durand,D.et.al.,Molec.Cell.Biol.8
,1715-1724(1988)、Clipstone,NA,Crabtree,G
R.Nature.1992 357(6380):695-7、Chmielewsk
i,M.,et al.Cancer research 71.17(2011):5
697-5706、及びZhang,L.,et al.Molecular ther
apy 19.4(2011):751-759を参照されたい)。いくつかの実施形態
では、NFAT由来プロモーターは、配列番号85のヌクレオチド配列を含む。いくつか
の実施形態では、CSRをコードする核酸配列は、IL-2プロモーターに作動可能に連
結される。
分泌二次エフェクター(SSE)構築物
【0201】
いくつかの実施形態では、caTCR+CSR免疫細胞(T細胞など)は、分泌二次エ
フェクター(SSE)を分泌することができる。このような免疫細胞は、本明細書では、
「caTCR+CSR及びSSE免疫細胞」とも称される。SSEは、それが機能的に発
現及び分泌されるcaTCR+CSR及びSSE免疫細胞によって媒介される免疫応答を
強化する。いくつかの実施形態では、SSEは、他の免疫細胞(バイスタンダーT細胞又
はNK細胞など)を標的疾患細胞(標的がん細胞など)に再指向することができる。いく
つかの実施形態では、SSEは、免疫細胞(T細胞又はNK細胞など)及び疾患細胞(が
ん細胞など)を標的化する多重特異性抗体(二重特異性抗体など)である。いくつかの実
施形態では、SSEは、免疫抑制性腫瘍環境などの免疫抑制環境から、caTCR+CS
R及びSSE免疫細胞を保護する。いくつかの実施形態では、SSEは、caTCR+C
SR及びSSE免疫細胞上の刺激受容体の自己活性化をもたらす。いくつかの実施形態で
は、SSEは、外来性増殖因子又は刺激性サイトカインである。いくつかの実施形態では
、caTCR+CSR及びSSE免疫細胞におけるSSEの発現は、誘導可能である。い
くつかの実施形態では、caTCR+CSR及びSSE免疫細胞におけるSSEの発現は
、caTCRを介したシグナル伝達時に誘導可能である。
【0202】
いくつかの実施形態では、SSEは、T細胞及び疾患細胞を標的化する多重特異性抗体
(二重特異性抗体など)である。いくつかの実施形態では、SSEは、T細胞の表面抗原
に特異的に結合する抗体部分を含む。いくつかの実施形態では、T細胞表面抗原はCD3
である。いくつかの実施形態では、SSEは、疾患関連抗原(がん関連抗原など)に特異
的に結合する抗体部分を含む。いくつかの実施形態では、疾患関連抗原は、疾患細胞(が
ん細胞など)の表面抗原である。いくつかの実施形態では、疾患関連抗原は、グリピカン
-3(GPC3)、CD47、ムチン-16(MUC16)、CD19、CD20、CD
22、EpCAM、EGFR、HER2、CEA、PSMA、AFP、PSA、BCMA
、FCRL5、NY-ESO、HPV16、又はFoxP3、その変異型又は変異体を含
むものである。いくつかの実施形態では、SSEは、タンデムscFv、ダイアボディ(
Db)、単鎖ダイアボディ(scDb)、二重親和性再標的化(DART)抗体、及び二
重可変ドメイン(DVD)抗体からなる群から選択される多重特異性抗体である。いくつ
かの実施形態では、SSEは二重特異性抗体である。いくつかの実施形態では、SSEは
、T細胞表面抗原を標的化する第1のscFvと、疾患関連抗原を標的化する第2のsc
Fvと、を含む、タンデムscFvである。
【0203】
いくつかの実施形態では、SSEは、CD3を標的化する第1のscFvと、疾患関連
抗原を標的化する第2のscFvと、を含む、タンデムscFvである。いくつかの実施
形態では、疾患関連抗原は、GPC3、CD47、MUC16、CD19、CD20、C
D22、EpCAM、EGFR、HER2、CEA、PSMA、AFP、PSA、BCM
A、FCRL5、NY-ESO、HPV16、又はFoxP3、その変異型又は変異体を
含むものである。
【0204】
いくつかの実施形態では、SSEは、CD3を標的化する第1のscFvと、GPC3
を標的化する第2のscFvと、を含む、タンデムscFvである。いくつかの実施形態
では、第2のscFvは、配列番号64のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になる
か、又はそれからなるVドメインと、配列番号65のアミノ酸配列を含むか、それから
本質的になるか、又はそれからなるVドメインと、を含む。いくつかの実施形態では、
ドメインは、Vドメインに対してアミノ末端側である。いくつかの実施形態では、
ドメインは、Vドメインに対してアミノ末端側である。いくつかの実施形態では、
第2のscFvは、配列番号79のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又
はそれからなる。いくつかの実施形態では、第1のscFvは、第2のscFvに対して
アミノ末端側である。いくつかの実施形態では、第2のscFvは、第1のscFvに対
してアミノ末端側である。いくつかの実施形態では、SSEは、配列番号105のアミノ
酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。
【0205】
いくつかの実施形態では、SSEは、CD3を標的化する第1のscFvと、CD47
を標的化する第2のscFvと、を含む、タンデムscFvである。いくつかの実施形態
では、SSEは、CD3を標的化する第1のscFvと、MUC16を標的化する第2の
scFvと、を含む、タンデムscFvである。
【0206】
いくつかの実施形態では、SSEは、NK細胞及び疾患関連抗原(がん関連抗原など)
を標的化する多重特異性抗体(二重特異性抗体など)である。いくつかの実施形態では、
SSEは、NK細胞の表面抗原に特異的に結合する抗体部分を含む。いくつかの実施形態
では、NK細胞表面抗原はCD16aである。いくつかの実施形態では、SSEは、疾患
関連抗原(がん関連抗原など)に特異的に結合する抗体部分を含む。いくつかの実施形態
では、疾患関連抗原は、疾患細胞(がん細胞など)の表面抗原である。いくつかの実施形
態では、疾患関連抗原は、GPC3、CD47、MUC16、CD19、CD20、CD
22、EpCAM、EGFR、HER2、CEA、PSMA、AFP、PSA、BCMA
、FCRL5、NY-ESO、HPV16、又はFoxP3、その変異型又は変異体を含
むものである。いくつかの実施形態では、SSEは、タンデムscFv、ダイアボディ(
Db)、単鎖ダイアボディ(scDb)、二重親和性再標的化(DART)抗体、及び二
重可変ドメイン(DVD)抗体からなる群から選択される多重特異性抗体である。いくつ
かの実施形態では、SSEは二重特異性抗体である。いくつかの実施形態では、SSEは
、NK細胞表面抗原を標的化する第1のscFvと、疾患関連抗原を標的化する第2のs
cFvと、を含む、タンデムscFvである。
【0207】
いくつかの実施形態では、SSEは、CD16aを標的化する第1のscFvと、疾患
関連抗原を標的化する第2のscFvと、を含む、タンデムscFvである。いくつかの
実施形態では、疾患関連抗原は、GPC3、CD47、MUC16、CD19、CD20
、CD22、EpCAM、EGFR、HER2、CEA、PSMA、AFP、PSA、B
CMA、FCRL5、NY-ESO、HPV16、又はFoxP3、その変異型又は変異
体を含むものである。
【0208】
いくつかの実施形態では、SSEは、CD16aを標的化する第1のscFvと、GP
C3を標的化する第2のscFvと、を含む、タンデムscFvである。いくつかの実施
形態では、SSEは、CD16aを標的化する第1のscFvと、CD47を標的化する
第2のscFvと、を含む、タンデムscFvである。いくつかの実施形態では、SSE
は、CD16aを標的化する第1のscFvと、MUC16を標的化する第2のscFv
と、を含む、タンデムscFvである。
【0209】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のSSEは、疾患関連抗原に特異的に結合す
る抗体部分を含み、抗体部分は、疾患関連抗原に特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメ
イン(V及び/又はVドメイン)を含む。いくつかの実施形態では、抗体部分は、C
D19に特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(V及び/又はVドメイン)を
含む(例えば、WO2017066136A2を参照されたい)。いくつかの実施形態で
は、抗体部分は、CD19に特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(V及び/又
はVドメイン)を含む(例えば、配列番号58のアミノ酸配列を含むか、それから本質
的になるか、若しくはそれからなるものを含むVドメイン、及び/又は配列番号59の
アミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、若しくはそれからなるものを含むV
ドメイン、或いはそれらに含まれるCDR)。いくつかの実施形態では、抗体部分は、C
D20に特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(V及び/又はVドメイン)を
含む(例えば、配列番号60のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、若しく
はそれからなるものを含むVドメイン、及び/又は配列番号61のアミノ酸配列を含む
か、それから本質的になるか、若しくはそれからなるものを含むVドメイン、或いはそ
れらに含まれるCDR)。いくつかの実施形態では、抗体部分は、CD22に特異的な抗
体部分のCDR又は可変ドメイン(V及び/又はVドメイン)を含む(例えば、参照
によりその全てが本明細書に組み込まれる、2018年3月30日出願のUSSN62/
650,955を参照されたい)。いくつかの実施形態では、抗体部分は、CD22に特
異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(V及び/又はVドメイン)を含む(例え
ば、配列番号101のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、若しくはそれか
らなるものを含むVドメイン、及び/又は配列番号102のアミノ酸配列を含むか、そ
れから本質的になるか、若しくはそれからなるものを含むVドメイン、或いはそれらに
含まれるCDR)。いくつかの実施形態では、抗体部分は、GPC3に特異的な抗体部分
のCDR又は可変ドメイン(V及び/又はVドメイン)を含む(例えば、参照により
その全てが本明細書に組み込まれる、2017年4月26日出願のUSSN62/490
,586を参照されたい)。いくつかの実施形態では、抗体部分は、GPC3に特異的な
抗体部分のCDR又は可変ドメイン(V及び/又はVドメイン)を含む(例えば、配
列番号64のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、若しくはそれからなるも
のを含むVドメイン、及び/又は配列番号65のアミノ酸配列を含むか、それから本質
的になるか、若しくはそれからなるものを含むVドメイン、或いはそれらに含まれるC
DR)。いくつかの実施形態では、抗体部分は、ROR1に特異的な抗体部分のCDR又
は可変ドメイン(V及び/又はVドメイン)を含む(例えば、WO2016/187
220及びWO2016/187216を参照されたい)。いくつかの実施形態では、抗
体部分は、ROR2に特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(V及び/又はV
ドメイン)を含む(例えば、WO2016/142768を参照されたい)。いくつかの
実施形態では、抗体部分は、BCMAに特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(V
及び/又はVドメイン)を含む(例えば、WO2016/090327及びWO20
16/090320を参照されたい)。いくつかの実施形態では、抗体部分は、GPRC
5Dに特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(V及び/又はVドメイン)を含
む(例えば、WO2016/090329及びWO2016/090312を参照された
い)。いくつかの実施形態では、抗体部分は、FCRL5に特異的な抗体部分のCDR又
は可変ドメイン(V及び/又はVドメイン)を含む(例えば、WO2016/090
337を参照されたい)。いくつかの実施形態では、抗体部分は、WT-1に特異的な抗
体部分のCDR又は可変ドメイン(V及び/又はVドメイン)を含む(例えば、WO
2012/135854、WO2015/070078、及びWO2015/07006
1を参照されたい)。いくつかの実施形態では、抗体部分は、AFPに特異的な抗体部分
のCDR又は可変ドメイン(V及び/又はVドメイン)を含む(例えば、WO201
6/161390を参照されたい)。いくつかの実施形態では、抗体部分は、HPV16
-E7に特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(V及び/又はVドメイン)を
含む(例えば、WO2016/182957を参照されたい)。いくつかの実施形態では
、抗体部分は、NY-ESO-1に特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(V
び/又はVドメイン)を含む(例えば、WO2016/210365を参照されたい)
。いくつかの実施形態では、抗体部分は、PRAMEに特異的な抗体部分のCDR又は可
変ドメイン(V及び/又はVドメイン)を含む(例えば、WO2016/19124
6を参照されたい)。いくつかの実施形態では、抗体部分は、EBV-LMP2Aに特異
的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(V及び/又はVドメイン)を含む(例えば
、WO2016/201124を参照されたい)。いくつかの実施形態では、抗体部分は
、KRASに特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(V及び/又はVドメイン
)を含む(例えば、WO2016/154047を参照されたい)。いくつかの実施形態
では、抗体部分は、PSAに特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(V及び/又
はVドメイン)を含む(例えば、WO2017/015634を参照されたい)。いく
つかの実施形態では、抗体部分はscFvである。いくつかの実施形態では、SSEは、
a)T細胞の表面抗原(CD3など)又はNK細胞の表面抗原(CD16aなど)に特異
的に結合する第1のscFvと、b)抗体部分と、を含み、郊外部分が第2のscFvで
ある、タンデムscFvである。いくつかの実施形態では、SSEは、ペプチドリンカー
によって連結された第1及び第2のscFvを含む。いくつかの実施形態では、第1のs
cFvは、第2のscFvに対してアミノ末端側である。いくつかの実施形態では、第2
のscFvは、第1のscFvに対してアミノ末端側である。
【0210】
いくつかの実施形態では、SSEは、1つ以上の可溶性免疫抑制剤を標的化する多重特
異性抗体(二重特異性抗体など)である。そのようなSSEは、可溶性免疫抑制剤をそれ
らの標的から隔離するためのトラップとして作用することができ、それによってそれらの
免疫抑制効果を低減する。いくつかの実施形態では、SSEは、1つ以上の可溶性免疫抑
制剤に特異的に結合する1つ以上の抗体部分を含む。いくつかの実施形態では、免疫抑制
剤は免疫抑制サイトカインである。いくつかの実施形態では、免疫抑制サイトカインとし
ては、TGF-βファミリーメンバー(例えば、TGF-β1~4)、IL-4、及びI
L-10、これらの変異型又は変異体を含むものが挙げられる。いくつかの実施形態では
、SSEは、タンデムscFv、ダイアボディ(Db)、単鎖ダイアボディ(scDb)
、二重親和性再標的化(DART)抗体、及び二重可変ドメイン(DVD)抗体からなる
群から選択される多重特異性抗体である。いくつかの実施形態では、SSEは二重特異性
抗体である。例えば、いくつかの実施形態では、SSEは、第1の免疫抑制サイトカイン
(TGFβなど)を標的化する第1のscFvと、第2の免疫抑制サイトカイン(IL-
4など)を標的化する第2のscFvと、を含むタンデムscFvである。
【0211】
いくつかの実施形態では、SSEは、免疫チェックポイント分子を標的化する抗体部分
である。いくつかの実施形態では、SSEは、阻害性免疫チェックポイント分子のアンタ
ゴニストである。いくつかの実施形態では、阻害性免疫チェックポイント分子は、PD-
1、PD-L1、CTLA-4、HVEM、BTLA、KIR、LAG-3、TIM-3
、及びA2aRからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、SSEは、刺激性
免疫チェックポイント分子のアゴニストである。いくつかの実施形態では、刺激性免疫チ
ェックポイント分子は、CD28、ICOS、4-1BB、OX40、CD27、及びC
D40からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、抗体部分は、全長抗体、F
ab、Fab’、(Fab’)2、Fv、又は単鎖Fv(scFv)である。いくつかの
実施形態では、抗体部分はscFvである。
【0212】
いくつかの実施形態では、SSEは、PD-1を標的化するアンタゴニスト抗体部分で
ある。いくつかの実施形態では、抗体部分は、PD-1に特異的なアンタゴニスト抗体部
分のCDR又は可変ドメイン(V及び/又はVドメイン)を含む(例えば、WO20
16/210129を参照されたい)。いくつかの実施形態では、アンタゴニスト抗体部
分は、全長抗体、Fab、Fab’、(Fab’)2、Fv、又は単鎖Fv(scFv)
である。いくつかの実施形態では、アンタゴニスト抗体部分はscFvである。
【0213】
いくつかの実施形態では、SSEは、CD47を標的化するアンタゴニスト抗体部分で
ある。いくつかの実施形態では、アンタゴニスト抗体部分は、CD47に特異的なアンタ
ゴニスト抗体部分のCDR又は可変ドメイン(V及び/又はVドメイン)を含む(例
えば、配列番号66のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、若しくはそれか
らなるものを含むVドメイン、及び/又は配列番号67のアミノ酸配列を含むか、それ
から本質的になるか、若しくはそれからなるものを含むVドメイン、或いはそれらに含
まれるCDR)。いくつかの実施形態では、アンタゴニスト抗体部分は、全長抗体、Fa
b、Fab’、(Fab’)2、Fv、又は単鎖Fv(scFv)である。いくつかの実
施形態では、アンタゴニスト抗体部分はscFvである。
【0214】
いくつかの実施形態では、SSEは、a)他の分子に対する結合親和性の少なくとも約
10倍(例えば、少なくとも約10、20、30、40、50、75、100、200、
300、400、500、750、1000、若しくはそれ以上のうちのいずれかを含む
)の親和性で、又はb)他の分子に結合するためのKの約1/10倍以下(例えば、約
1/10、1/20、1/30、1/40、1/50、1/75、1/100、1/20
0、1/300、1/400、1/500、1/750、1/1000、若しくはそれ以
下など)のKで標的抗原に結合する抗体部分を含む。結合親和性は、ELISA、蛍光
標識細胞分取(FACS)分析、又は放射線免疫沈降アッセイ(RIA)などの当該技術
分野において既知の方法によって決定することができる。Kは、例えば、Biacor
e機器を利用する表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイ、又は例えばSapidyne
機器を利用する動的排除アッセイ(KinExA)などの当該技術分野において既知の方
法によって決定することができる。
【0215】
いくつかの実施形態では、SSEは、免疫抑制受容体のリガンドに特異的に結合する可
溶性分子である。いくつかの実施形態では、SSEは、免疫抑制受容体の細胞外ドメイン
に由来するリガンド結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、リガンド結合ドメイ
ンは、受容体の細胞外ドメインの一部である。いくつかの実施形態では、免疫抑制受容体
は、FasR、TNFR1、TNFR2、SIRPα、PD-1、CD28、CTLA-
4、ICOS、BTLA、KIR、LAG-3、4-1BB、OX40、CD27、CD
40、及びTIM-3からなる群から選択される。
【0216】
いくつかの実施形態では、SSEは、免疫抑制受容体に特異的に結合して拮抗する可溶
性分子である。いくつかの実施形態では、SSEは、免疫抑制受容体のリガンドの細胞外
ドメインに由来する受容体結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、受容体結合ド
メインは、リガンドの細胞外ドメインの一部である。いくつかの実施形態では、リガンド
は、FasL、PD-L1、PD-L2、CD47、CD80、CD86、ICOSL、
HVEM、4-1BBL、OX40L、CD70、CD40L、及びGAL9からなる群
から選択される。
【0217】
いくつかの実施形態では、SSEは外来性刺激性サイトカインである。本明細書に記載
の外来性サイトカインは、外来性遺伝子から発現するサイトカインである。いくつかの実
施形態では、外因性刺激性サイトカインは、IL-12ファミリーメンバーである。いく
つかの実施形態では、IL-12ファミリーメンバーは、IL-12、IL-23、IL
-27、又はIL-35である。いくつかの実施形態では、外因性刺激性サイトカインは
、IL-2、IL-15、IL-18、又はIL-21である。いくつかの実施形態では
、外因性刺激性サイトカインは、caTCR+CSR及びSSE免疫細胞上のサイトカイ
ンの受容体の自己活性化をもたらすことができる。
【0218】
いくつかの実施形態では、caTCR+CSR及びSSE免疫細胞におけるSSEの発
現は、誘導可能である。いくつかの実施形態では、caTCR+CSR及びSSE免疫細
胞は、本明細書に記載の誘導可能なプロモーターのいずれかを含む誘導可能なプロモータ
ーに作動可能に連結されたSSEをコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態では
、caTCR+CSR及びSSE免疫細胞におけるSSEの発現は、caTCRを介した
シグナル伝達時に誘導可能である。いくつかのそのような実施形態では、caTCR+C
SR及びSSE免疫細胞は、caTCRを介したシグナル伝達に応答してプロモーター又
は調節要素に作動可能に連結されたSSEをコードする核酸配列を含む。いくつかの実施
形態では、SSEをコードする核酸配列は、活性化T細胞由来プロモーターの核因子(N
FAT)に作動可能に連結される。いくつかの実施形態では、NFAT由来プロモーター
は、NFAT由来のミニマルプロモーターである(例えば、Durand,D.et.a
l.,Molec.Cell.Biol.8,1715-1724(1988)、Cli
pstone,NA,Crabtree,GR.Nature.1992 357(63
80):695-7、Chmielewski,M.,et al.Cancer re
search 71.17(2011):5697-5706、及びZhang,L.,
et al.Molecular therapy 19.4(2011):751-7
59を参照されたい)。いくつかの実施形態では、NFAT由来プロモーターは、配列番
号85のヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、SSEをコードする核酸配
列は、IL-2プロモーターに作動可能に連結される。
核酸
【0219】
本明細書に記載されるcaTCR、CSR、及び/又はSSEをコードする核酸分子も
想到される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるcaTCR、CSR、及び
SSEのいずれかによると、caTCR、CSR、及び/又はSSEをコードする核酸(
又は核酸のセット)が提供される。
【0220】
本発明はまた、本発明の核酸が挿入されるベクターも提供する。
【0221】
簡潔に述べると、caTCR及び/又はCSR及び/又はSSEをコードする核酸によ
る本明細書に記載のcaTCR及び/又はCSR及び/又はSSEの発現は、核酸を適切
な発現ベクターに挿入し、核酸を、例えばプロモーター(例えば、リンパ球特異的プロモ
ーター)及び3’非翻訳領域(UTR)を含む、5’及び3’調節要素に作動可能に連結
するようにして達成できる。ベクターは、真核生物宿主細胞における複製及び組み込みに
適し得る。典型的なクローニング及び発現ベクターは、転写及び翻訳ターミネーター、開
始配列、並びに所望の核酸配列の発現の調節に有用なプロモーターを含む。
【0222】
本発明の核酸は、標準的な遺伝子送達プロトコールを使用して、核酸免疫及び遺伝子治
療に使用してもよい。遺伝子送達の方法は、当該技術分野において既知である。例えば、
参照によりその全てが本明細書に組み込まれる米国特許第5,399,346号、同5,
580,859号、同5,589,466号を参照されたい。いくつかの実施形態では、
本発明は、遺伝子治療用ベクターを提供する。
【0223】
核酸は、多数の種類のベクターにクローニングすることができる。例えば、核酸は、プ
ラスミド、ファージミド、ファージ誘導体、動物ウイルス、及びコスミドを含むがこれら
に限定されないベクターにクローニングすることができる。特に重要なベクターとしては
、発現ベクター、複製ベクター、プローブ生成ベクター、及びシークエンシングベクター
が挙げられる。
【0224】
更に、発現ベクターは、ウイルスベクターの形態の細胞に提供され得る。ウイルスベク
ター技術は当該技術分野において公知であり、例えば、Sambrook et al.
(2001,Molecular Cloning:A Laboratory Man
ual,Cold Spring Harbor Laboratory,New Yo
rk)、及び他の生物学的及び分子生物学的マニュアルに記載されている。ベクターとし
て有用なウイルスとしては、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘ
ルペスウイルス、及びレンチウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。一般に、
適切なベクターは、少なくとも1つの生物で機能する複製起点、プロモーター配列、好都
合な制限エンドヌクレアーゼ部位、及び1つ以上の選択可能なマーカーを含む(例えば、
WO01/96584、WO01/29058、及び米国特許第6,326,193号を
参照されたい)。
【0225】
哺乳類細胞への遺伝子導入のために、多数のウイルスベースの系が開発されてきた。例
えば、レトロウイルスは、遺伝子送達システムのための便利なプラットフォームを提供す
る。当該技術分野において既知の技術を使用して、選択された遺伝子をベクターに挿入し
、レトロウイルス粒子にパッケージ化することができる。次いで、組換えウイルスを単離
し、インビボ又はエクスビボのいずれかで対象の細胞に送達することができる。多くのレ
トロウイルス系が当該技術分野において既知である。いくつかの実施形態では、アデノウ
イルスベクターが使用される。多くのアデノウイルスベクターが当該技術分野において既
知である。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターが使用される。レンチウイ
ルスなどのレトロウイルス由来のベクターは、長期的に安定した導入遺伝子の組み込み及
び娘細胞におけるその伝播を可能にするため、長期間の遺伝子導入を達成するのに適した
ツールである。レンチウイルスベクターは、肝細胞などの非増殖細胞を形質導入すること
ができるという点で、マウス白血病ウイルスなどのオンコレトロウイルス由来のベクター
を超える更なる利点を有する。これらはまた、低免疫原性という更なる利点を有する。
【0226】
例えば、エンハンサーなどの追加のプロモーター要素は、転写開始の頻度を調節する。
典型的には、これらは開始部位の上流の30~110bpの領域に位置しているが、多く
のプロモーターが開始部位の下流にも同様に機能的要素を含むことが最近示されている。
プロモーター要素間の間隔は、多くの場合、柔軟性があり、そのため、要素が互いに対し
て反転又は移動されるときにプロモーター機能が保存される。チミジンキナーゼ(tk)
プロモーターでは、プロモーター要素間の間隔は、活性が低下し始める前に50bpまで
増加させることができる。
【0227】
適切なプロモーターの一例は、最初期サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター配
列である。このプロモーター配列は、それに作動可能に連結された任意のポリヌクレオチ
ド配列の高レベルの発現を駆動することができる強力な構成的プロモーター配列である。
適切なプロモーターの別の例は、伸長増殖因子-1α(EF-1α)である。しかしなが
ら、シミアンウイルス40(SV40)初期プロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス(M
MTV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)長末端反復(LTR)プロモーター、MoM
uLVプロモーター、ニワトリ白血病ウイルスプロモーター、エプスタイン・バーウイル
ス最初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、並びにアクチンプロモーター
、ミオシンプロモーター、ヘモグロビンプロモーター、及びクレアチンキナーゼプロモー
ターなどが挙げられるがこれらに限定されないヒト遺伝子プロモーターが挙げられるが、
これらに限定されない他の構成的プロモーター配列を使用してもよい。
【0228】
更に、本発明は、構成的プロモーターの使用に限定されるべきではない。誘導可能なプ
ロモーターもまた、本発明の一部として想到される。誘導型プロモーターの使用は、その
ような発現が望まれるときに作動可能に連結されるポリヌクレオチド配列の発現をオンに
することが可能であるか、又は発現が望まれない場合に発現をオフにすることが可能であ
る分子スイッチを提供する。真核細胞で使用する例示的な誘導可能プロモーター系として
は、ホルモン調節要素(例えば、Mader,S.and White,J.H.(19
93)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5603-5607)、
合成リガンド制御要素(例えば、Spencer,D.M.et al 1993)Sc
ience 262:1019-1024を参照されたい)、及び電離放射線調節要素(
例えば、Manome,Y.et al.(1993)Biochemistry 32
:10607-10613、Datta,R.et al.(1992)Proc.Na
tl.Acad.Sci.USA 89:1014-10153を参照されたい)が挙げ
られるが、これに限定されない。インビトロ又はインビボの哺乳類系で使用するための更
なる例示的な誘導可能なプロモーター系は、Gingrich et al.(1998
)Annual Rev.Neurosci 21:377-405に概説されている。
【0229】
本発明で使用するための例示的な誘導可能なプロモーター系は、Tetシステムである
。このようなシステムは、Gossen et al.(1993)によって記載される
Tetシステムに基づく。例示的な実施形態では、目的のポリヌクレオチドは、1つ以上
のTetオペレーター(TetO)部位を含むプロモーターの制御下にある。非活性状態
では、Tetレプレッサー(TetR)は、TetO部位に結合し、プロモーターからの
転写を抑制する。活性状態では、例えば、テトラサイクリン(Tc)、無水テトラサイク
リン、ドキシサイクリン(Dox)、又はそれらの活性類似体などの誘導剤の存在下で、
誘導剤は、TetOからTetRを放出させ、それによって転写を実施させることができ
る。ドキシサイクリンは、1-ジメチルアミノ-2,4a,5,7,12-ペンタヒドロ
キシ-11-メチル-4,6-ジオキソ-1,4a,11,11a,12,12-ヘキサ
ヒドロテトラセン-3-カルボキサミドの化学名を有する抗生物質のテトラサイクリンフ
ァミリーのメンバーである。
【0230】
一実施形態では、TetRは、哺乳類細胞、例えば、マウス又はヒト細胞における発現
のためにコドン最適化される。多くのアミノ酸は、遺伝子コードの縮重により、1つを超
えるコドンによりコードされており、核酸によりコードされるアミノ酸配列の任意の変更
なしに、所与の核酸のヌクレオチド配列の実質的な変異を可能にする。しかしながら、多
くの生物は、「コドンバイアス」(すなわち、所与のアミノ酸の特定のコドンを使用する
ためのバイアス)としても知られるコドン使用の相違を示す。コドンバイアスは、多くの
場合、転じてmRNA翻訳の効率を増加させる、特定のコドンのためのtRNAの優勢な
種の存在と相関する。したがって、特定の生物(例えば、原核生物)由来のコード配列は
、コドン最適化を介して異なる生物(例えば、真核生物)における発現の改善に合わせて
微調整され得る。
【0231】
Tetシステムの他の特定の変形例としては、以下の「Tet-Off」及び「Tet
-On」システムが挙げられる。Tet-Offシステムでは、転写は、TC又はDox
の存在下で非活性である。このシステムでは、テトラサイクリン制御トランス活性化因子
タンパク質(tTA)は、単純ヘルペスウイルス由来のVP16の強力なトランス活性化
ドメインに融合したTetRで構成され、テトラサイクリン応答性プロモーター要素(T
RE)の転写制御下にある標的核酸の発現を調節する。TREは、プロモーター(一般に
、ヒトサイトメガロウイルス(hCMV)の最初期プロモーターに由来するミニマルプロ
モーター配列)に融合したTetO配列のコンカテマーで形成される。Tc又はDoxの
非存在下では、tTAはTREに結合し、標的遺伝子の転写を活性化する。Tc又はDo
xの存在下では、tTAはTREに結合することができず、標的遺伝子からの発現は非活
性なままである。
【0232】
逆に、Tet-Onシステムでは、転写はTc又はDoxの存在下で活性である。Te
t-Onシステムは、逆テトラサイクリン制御トランス活性化因子、rtTAに基づく。
tTAと同様に、rtTAは、TetRリプレッサー及びVP16トランス活性化ドメイ
ンからなる融合タンパク質である。しかしながら、TetR DNA結合部分における4
つのアミノ酸変化は、Doxの存在下で標的導入遺伝子のTREにおけるtetO配列の
みを認識できるように、rtTAの結合特性を変化させる。したがって、Tet-Onシ
ステムでは、TRE調節された標的遺伝子の転写は、Doxの存在下でのみrtTAによ
って刺激される。
【0233】
別の誘導可能なプロモーター系は、大腸菌(E.coli)由来のlacリプレッサー
系である。(Brown et al.,Cell 49:603-612(1987)
を参照されたい)。lacリプレッサー系は、lacオペレーター(lacO)を含むプ
ロモーターに作動可能に連結された目的のポリヌクレオチドの転写を調節することによっ
て機能する。lacリプレッサー(lacR)は、LacOに結合して目的のポリヌクレ
オチドの転写を防止する。目的のポリヌクレオチドの発現は、適切な誘導剤、例えば、イ
ソプロピル-β-チオガラクトピラノシド(IPTG)により誘導される。
【0234】
本発明で使用するための別の例示的な誘導可能プロモーターシステムは、活性化T細胞
系の核因子(NFAT)である。NFATファミリーの転写因子は、T細胞活性化の重要
な調節因子である。NFAT応答要素は、例えば、IL-2プロモーターにおいて見出さ
れる(例えば、Durand,D.et.al.,Molec.Cell.Biol.8
,1715-1724(1988)、Clipstone,NA,Crabtree,G
R.Nature.1992 357(6380):695-7、Chmielewsk
i,M.,et al.Cancer research 71.17(2011):5
697-5706、及びZhang,L.,et al.Molecular ther
apy 19.4(2011):751-759を参照されたい)。いくつかの実施形態
では、本明細書に記載の誘導可能プロモーターは、1つ以上(例えば、2、3、4、5、
6、又はそれ以上)のNFAT応答要素を含む。いくつかの実施形態では、誘導可能プロ
モーターは、例えば、配列番号83のヌクレオチド配列を含む6個のNFAT応答要素を
含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の誘導可能プロモーターは、ミニマルT
Aプロモーターなどのミニマルプロモーターに連結された1つ以上(例えば、2、3、4
、5、6、又はそれ以上)のNFAT応答要素を含む。いくつかの実施形態では、ミニマ
ルTAプロモーターは、配列番号84のヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態で
は、誘導可能なプロモーターは、配列番号85のヌクレオチド配列を含む。
【0235】
ポリペプチド又はその一部の発現を評価するために、細胞に導入される発現ベクターは
また、形質導入するか又はウイルスベクターを介して感染させることが求められる細胞集
団からの発現細胞の同定及び選択を促進するために、選択マーカー遺伝子若しくはレポー
ター遺伝子のいずれか又はその両方を含み得る。他の態様では、選択マーカーは、DNA
の別個の断片上に担持され、共トランスフェクション手順で使用できる。選択マーカー及
びレポーター遺伝子の両方は、宿主細胞における発現を可能にするために適切な制御配列
を隣接させてもよい。有用な選択マーカーとしては、例えば、neoなどの抗生物質耐性
遺伝子が挙げられる。
【0236】
レポーター遺伝子は、場合によって形質導入された細胞を同定するため、及び制御配列
の機能性を評価するために使用される。一般に、レポーター遺伝子は、レシピエント生物
又は組織内に存在しないか又は発現していない遺伝子であり、一部の容易に検出可能な特
性、例えば、酵素活性によって発現が明らかになるポリペプチドをコードする遺伝子であ
る。DNAがレシピエント細胞に導入された後、レポーター遺伝子の発現を適切な時間で
アッセイする。適切なレポーター遺伝子としては、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダー
ゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、分泌アルカリホスファターゼ、
又は緑色蛍光タンパク質遺伝子(例えば、,Ui-Tel et al.,2000 F
EBS Letters 479:79-82)をコードする遺伝子を挙げ得る。適切な
発現系は公知であり、既知の技術を使用して調製することができ、又は商業的に入手する
ことができる。一般に、レポーター遺伝子の最高レベルの発現を示すミニマル5’隣接領
域を有する構築物は、プロモーターとして同定される。このようなプロモーター領域は、
レポーター遺伝子に連結され、プロモーター駆動転写を調節する能力について薬剤を評価
するために使用されてもよい。
【0237】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるcaTCR、CSR、及びSSEのい
ずれかによるcaTCR及び/又はCSRをコードする核酸が提供される。いくつかの実
施形態では、核酸は、caTCRの全てのポリペプチド鎖をコードする1つ以上の核酸配
列を含む。いくつかの実施形態では、核酸は、CSRの全てのポリペプチド鎖をコードす
る1つ以上の核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、核酸は、caTCR及びCSR
の全てのポリペプチド鎖をコードする1つ以上の核酸配列を含む。いくつかの実施形態で
は、1つ以上の核酸配列のそれぞれは、別個のベクターに含まれる。いくつかの実施形態
では、核酸配列の少なくとも一部は、同じベクターに含まれる。いくつかの実施形態では
、核酸配列の全ては、同じベクターに含まれる。ベクターは、例えば、哺乳類発現ベクタ
ー、並びにウイルスベクター(レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、
ヘルペスウイルス、及びレンチウイルス由来のものなど)からなる群から選択され得る。
【0238】
例えば、いくつかの実施形態では、caTCRは、第1のcaTCRポリペプチド鎖及
び第2のcaTCRポリペプチド鎖を含む二量体であり、CSRは、単一のCSRポリペ
プチド鎖を含む単量体であり、核酸は、第1のcaTCRポリペプチド鎖をコードする第
1の核酸配列、第2のcaTCR鎖をコードする第2の核酸、及びCSRポリペプチド鎖
をコードする第3の核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1の核酸配列は第1の
ベクターに含まれ、第2の核酸配列は第2のベクターに含まれ、第3の核酸配列は第3の
ベクターに含まれる。いくつかの実施形態では、第1及び第2の核酸配列は第1のベクタ
ーに含まれ、第3の核酸配列は第2のベクターに含まれる。いくつかの実施形態では、第
1及び第3の核酸配列は第1のベクターに含まれ、第2の核酸配列は第2のベクターに含
まれる。いくつかの実施形態では、第2及び第3の核酸配列は第1のベクターに含まれ、
第1の核酸配列は第2のベクターに含まれる。いくつかの実施形態では、第1、第2、及
び第3の核酸配列は、同じベクターに含まれる。いくつかの実施形態では、第1の核酸配
列は第1のプロモーターの制御下にあり、第2の核酸配列は第2のプロモーターの制御下
にあり、第3の核酸配列は第3のプロモーターの制御下にある。いくつかの実施形態では
、第1、第2、及び第3のプロモーターの一部又は全ては、同じ配列を有する。いくつか
の実施形態では、第1、第2、及び第3のプロモーターの一部又は全ては、異なる配列を
有する。いくつかの実施形態では、第1、第2、及び第3の核酸配列の一部又は全ては、
マルチシストロン性ベクターにおける単一のプロモーターの制御下で単一の転写物として
発現される。例えば、Kim,JH,et al.,PLoS One 6(4):e1
8556,2011を参照されたい。いくつかの実施形態では、1つ以上のプロモーター
は誘導可能である。いくつかの実施形態では、CSRポリペプチド鎖をコードする第3の
核酸配列は、誘導可能なプロモーターに作動可能に連結される。いくつかの実施形態では
、誘導可能なプロモーターは、NFAT応答要素などの免疫細胞活性化に応答する1つ以
上の要素を含む。
【0239】
いくつかの実施形態では、第1、第2、及び第3の核酸配列の一部又は全ては、宿主細
胞(T細胞など)において同様(実質的に又はほぼ同じなど)の発現レベルを有する。い
くつかの実施形態では、第1、第2、及び第3の核酸配列のうちのいくつかは、宿主細胞
(T細胞など)において、少なくとも約2倍(少なくとも約2、3、4、5倍、又はそれ
以上)異なる発現レベルを有する。発現は、mRNA又はタンパク質レベルで決定するこ
とができる。mRNA発現レベルは、ノーザンブロット、定量的RT-PCR、マイクロ
アレイ解析などを含む様々な公知の方法を使用して、核酸から転写されたmRNAの量を
測定することによって決定することができる。タンパク質発現レベルは、免疫細胞化学染
色、酵素結合免疫吸着検査法(ELISA)、ウェスタンブロット分析、発光アッセイ、
質量分析、高速液体クロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィー-タンデム質量分
析などを含む既知の方法によって測定することができる。
【0240】
本明細書に記載される実施形態の特徴は、任意の数の核酸配列を含む実施形態、例えば
、caTCR及び/又はCSR及び/又はSSEをコードする核酸が5つ以上の核酸配列
(例えば、caTCR及びSSEがそれぞれ2つ以上の異なるポリペプチド鎖を含む場合
)を含む実施形態を包含するように適合され、組み合わされ得ることを理解されたい。
【0241】
したがって、いくつかの実施形態では、核酸であって、a)本明細書に記載のcaTC
Rのいずれかによる第1のcaTCRポリペプチド鎖及び第2のcaTCRポリペプチド
鎖を含む二量体caTCRと、b)本明細書に記載のCSRのいずれかによる単一のCS
Rポリペプチド鎖を含む単量体CSRと、をコードし、核酸が、i)第1のcaTCRポ
リペプチド鎖をコードする第1のcaTCR核酸配列、及びii)第2のcaTCRポリ
ペプチド鎖をコードする第2のcaTCR核酸配列を含み、CSRポリペプチド鎖をコー
ドするCSR核酸配列を更に含む、核酸が提供される。いくつかの実施形態では、第1の
caTCR核酸配列は、第1のベクター(レンチウイルスベクターなど)に含まれ、第2
のcaTCR核酸配列は、第2のベクター(レンチウイルスベクターなど)に含まれ、C
SR核酸配列は、第3のベクター(レンチウイルスベクターなど)に含まれる。いくつか
の実施形態では、第1及び第2のcaTCR核酸配列並びにCSR核酸配列の一部又は全
ては、同一のベクター(レンチウイルスベクターなど)に含まれる。いくつかの実施形態
では、第1及び第2のcaTCR核酸配列並びにCSR核酸配列のそれぞれは、個々に、
プロモーターに作動可能に連結される。いくつかの実施形態では、プロモーターの一部又
は全ては、同じ配列を有する。いくつかの実施形態では、プロモーターの一部又は全ては
、異なる配列を有する。いくつかの実施形態では、プロモーターの一部又は全ては誘導可
能である。いくつかの実施形態では、CSR核酸配列は、誘導可能なプロモーターに作動
可能に連結される。いくつかの実施形態では、誘導可能なプロモーターは、免疫細胞活性
化に応答する1つ以上の要素を含む。いくつかの実施形態では、CSR核酸配列は、NF
AT由来のプロモーターに作動可能に連結される。いくつかの実施形態では、ベクターの
一部又は全ては、ウイルスベクター(レンチウイルスベクターなど)である。
【0242】
いくつかの実施形態では、a)本明細書に記載のcaTCRのいずれかによる第1のc
aTCRポリペプチド鎖及び第2のcaTCRポリペプチド鎖を含む二量体caTCRを
コードする核酸を含む第1のベクター(レンチウイルスベクターなど)であって、i)第
1のcaTCRポリペプチド鎖をコードする第1のcaTCR核酸配列に作動可能に連結
された第1プロモーター、及びii)第2のcaTCRポリペプチド鎖をコードする第2
のcaTCR核酸配列に作動可能に連結された第2プロモーターを含む、第1のベクター
と、b)本明細書に記載のCSRのいずれかによるCSRポリペプチド鎖を含む単量体C
SRをコードする核酸を含む第2のベクター(レンチウイルスベクターなど)であって、
CSRポリペプチド鎖をコードするCSR核酸配列に作動可能に連結された第3のプロモ
ーターを含む、第2のベクターと、が提供される。いくつかの実施形態では、プロモータ
ーの一部又は全ては、同じ配列を有する。いくつかの実施形態では、プロモーターの一部
又は全ては、異なる配列を有する。いくつかの実施形態では、プロモーターの一部又は全
ては誘導可能である。いくつかの実施形態では、第1及び/又は第2のベクターは、ウイ
ルスベクター(レンチウイルスベクターなど)である。
【0243】
いくつかの実施形態では、a)本明細書に記載のcaTCRのいずれかによる第1のc
aTCRポリペプチド鎖及び第2のcaTCRポリペプチド鎖を含む二量体caTCRを
コードする核酸を含む第1のベクター(レンチウイルスベクターなど)であって、i)第
1のcaTCRポリペプチド鎖をコードする第1のcaTCR核酸配列、及びii)第2
のcaTCRポリペプチド鎖をコードする第2のcaTCR核酸配列を含み、第1及び第
2のcaTCR核酸配列が第1のプロモーターの制御下にある、第1のベクターと、b)
本明細書に記載のCSRのいずれかによるCSRポリペプチド鎖を含む単量体CSRをコ
ードする核酸を含む第2のベクター(レンチウイルスベクターなど)であって、CSRポ
リペプチド鎖をコードするCSR核酸配列に作動可能に連結された第2のプロモーターを
含む、第2のベクターと、が提供される。いくつかの実施形態では、第1のプロモーター
は、第1のcaTCR核酸配列の5’末端に作動可能に連結され、第1のcaTCR核酸
配列の3’末端を第2のcaTCR核酸配列の5’末端に連結させる、内部リボソーム侵
入部位(IRES)、自己切断2Aペプチド(P2A、T2A、E2A、又はF2Aなど
)をコードする核酸からなる群から選択される核酸リンカーが存在し、第1のcaTCR
核酸配列及び第2のcaTCR核酸配列は、第1のプロモーターの制御下で単一RNAと
して転写される。いくつかの実施形態では、第1のプロモーターは、第2のcaTCR核
酸配列の5’末端に作動可能に連結され、第2のcaTCR核酸配列の3’末端を第1の
caTCR核酸配列の5’末端に連結させる、内部リボソーム侵入部位(IRES)、自
己切断2Aペプチド(P2A、T2A、E2A、又はF2Aなど)をコードする核酸から
なる群から選択される核酸リンカーが存在し、第1のcaTCR核酸配列及び第2のca
TCR核酸配列は、第1のプロモーターの制御下で単一RNAとして転写される。いくつ
かの実施形態では、第1及び/又は第2のプロモーターは誘導可能である。いくつかの実
施形態では、第1及び/又は第2のベクターは、ウイルスベクター(レンチウイルスベク
ターなど)である。第1又は第2のcaTCR核酸配列がCSR核酸配列と交換される場
合など、核酸配列のいずれかが交換される実施形態も想到されることを理解されたい。
【0244】
いくつかの実施形態では、ベクター(例えば、ウイルスベクター、例えばレンチウイル
スベクターなど)であって、a)本明細書に記載のcaTCRのいずれかによる第1のc
aTCRポリペプチド鎖、及び第2のcaTCRポリペプチド鎖を含む二量体caTCR
をコードする核酸であって、i)第1のcaTCRポリペプチド鎖をコードする第1のc
aTCR核酸配列、及びii)第2のcaTCRポリペプチド鎖をコードする第2のca
TCR核酸配列を含む核酸と、b)CSRポリペプチド鎖をコードするCSR核酸配列を
含む、本明細書に記載のCSRのいずれかによるCSRポリペプチド鎖を含む単量体CS
Rをコードする核酸と、を含み、第1及び第2のcaTCR核酸配列は、第1のプロモー
ターの制御下にあり、CSR核酸配列は、第2のプロモーターの制御下にある、ベクター
が提供される。いくつかの実施形態では、第1のプロモーターは、内部リボソーム侵入部
位(IRES)、自己切断2Aペプチド(P2A、T2A、E2A、又はF2Aなど)を
コードする核酸からなる群から選択された核酸リンカーによって他のcaTCR核酸配列
に連結されるcaTCR核酸配列のうちの1つに作動可能に連結され、第1及び第2のc
aTCR核酸配列が、第1のプロモーターの制御下で単一RNAとして転写されるように
される。いくつかの実施形態では、第1及び/又は第2のプロモーターは誘導可能である
。いくつかの実施形態では、第2のプロモーターは誘導可能なプロモーターである。いく
つかの実施形態では、誘導可能なプロモーターは、免疫細胞活性化に応答する1つ以上の
要素を含む。いくつかの実施形態では、第2のプロモーターは、NFAT由来プロモータ
ーである。いくつかの実施形態では、NFAT由来プロモーターは、配列番号85のヌク
レオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、ベクターは、ウイルスベクター(レンチ
ウイルスベクターなど)である。
【0245】
いくつかの実施形態では、ベクター(レンチウイルスベクターなど)であって、a)本
明細書に記載のcaTCRのいずれかによる第1のcaTCRポリペプチド鎖、及び第2
のcaTCRポリペプチド鎖を含む二量体caTCRをコードする核酸であって、i)第
1のcaTCRポリペプチド鎖をコードする第1のcaTCR核酸配列、及びii)第2
のcaTCRポリペプチド鎖をコードする第2のcaTCR核酸配列を含む核酸と、b)
CSRポリペプチド鎖をコードするCSR核酸配列を含む、本明細書に記載のCSRのい
ずれかによるCSRポリペプチド鎖を含む単量体CSRをコードする核酸と、を含み、第
1及び第2のcaTCR核酸配列、並びにCSR核酸配列は、単一のプロモーターの制御
下にある、ベクターが提供される。いくつかの実施形態では、プロモーターは、個々に内
部リボソーム侵入部位(IRES)、自己切断2Aペプチド(P2A、T2A、E2A、
又はF2Aなど)をコードする核酸からなる群から選択される核酸リンカーによって他の
核酸配列に連結される核酸配列のうちの1つに作動可能に連結され、第1及び第2のca
TCR核酸配列並びにCSR核酸配列が、プロモーターの制御下で単一RNAとして転写
されるようにされる。いくつかの実施形態では、プロモーターは、誘導可能である。いく
つかの実施形態では、ベクターは、ウイルスベクター(レンチウイルスベクターなど)で
ある。
【0246】
遺伝子を細胞に導入及び発現させる方法は、当該技術分野において既知である。発現ベ
クターの文脈において、ベクターは、当該技術分野における任意の方法により、宿主細胞
、例えば、哺乳類、細菌、酵母、又は昆虫細胞に容易に導入することができる。例えば、
発現ベクターは、物理的、化学的、又は生物学的手段によって宿主細胞に導入され得る。
【0247】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための物理的方法としては、リン酸カルシウム
沈殿、リポフェクション、粒子衝突、マイクロインジェクション、エレクトロポレーショ
ンなどが挙げられる。ベクター及び/又は外因性核酸を含む細胞を産生する方法は、当該
技術分野において公知である。例えば、Sambrook et al.(2001,M
olecular Cloning:A Laboratory Manual,Col
d Spring Harbor Laboratory,New York)を参照さ
れたい。いくつかの実施形態では、宿主細胞へのポリヌクレオチドの導入は、リン酸カル
シウムトランスフェクションによって行われる。
【0248】
宿主細胞に目的のポリヌクレオチドを導入するための生物学的方法としては、DNA及
びRNAベクターの使用が挙げられる。ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクター
は、哺乳類、例えば、ヒト細胞に遺伝子を挿入するための最も広く使用されている方法と
なっている。他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペ
スウイルス1、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルスなどに由来し得る。例えば、米
国特許第5,350,674号及び同第5,585,362号を参照されたい。
【0249】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための化学的手段としては、巨大分子複合体、
ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、及び水中油型エマルション、ミセル、混合ミセ
ル、及びリポソームを含む脂質ベース系が挙げられる。インビトロ及びインビボで送達ビ
ヒクルとして使用するための例示的なコロイド系は、リポソーム(例えば人工膜小胞)で
ある。
【0250】
非ウイルス送達系が利用される場合、例示的な送達ビヒクルはリポソームである。脂質
製剤の使用は、宿主細胞(インビトロ、エクスビボ、又はインビボ)に核酸を導入するた
めに想到される。別の態様では、核酸は脂質と結合していてもよい。脂質に結合する核酸
は、リポソームの脂質二重層内に散在するリポソームの水性内部に封入されてもよく、リ
ポソーム及びオリゴヌクレオチドの両方に結合する連結分子を介してリポソームに結合し
ていてもよく、リポソームに封入されてもよく、リポソームと複合体化されてもよく、脂
質を含む溶液に分散されてもよく、脂質と混合されてもよく、脂質と混合されてもよく、
脂質と組み合わされてもよく、脂質中の懸濁液として含まれてもよく、ミセルに含まれる
か若しくは複合体化されてもよく、又はそうでなければ、脂質と結合していてもよい。脂
質、脂質/DNA、又は脂質/発現ベクター結合組成物は、溶液中の任意の特定の構造に
限定されない。例えば、それらは、ミセルとして二重層構造で、又は「潰れた」構造で存
在してもよい。これらはまた、単に溶液中に散在してもよく、場合によっては、サイズ又
は形状が均一ではない凝集体を形成してもよい。脂質は、天然に存在し得る脂肪物質又は
合成脂質である。例えば、脂質としては、天然に細胞質中に生じる脂肪液滴、並びに長鎖
脂肪族炭化水素及び脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコール、及びアルデヒドな
どの誘導体を含む化合物の類が挙げられる。
【0251】
外因性核酸を宿主細胞に導入するために使用される方法、又は本発明の阻害剤に細胞を
曝露するために使用される方法にかかわらず、宿主細胞中の組み換えDNA配列の存在を
確認するために、様々なアッセイが行われてもよい。このようなアッセイとしては、例え
ば、サザン及びノーザンブロッティング、RT-PCR及びPCRなどの、当業者に公知
の「分子生物学的」アッセイが挙げられる。例えば、免疫学的手段(ELISA及びウェ
スタンブロット)による特定のペプチドの有無を検出することなどの「生化学的」アッセ
イ、又は薬剤を同定するための本明細書に記載のアッセイは、本発明の範囲内に含まれる

caTCR、CSR、及びSSEの調製
【0252】
いくつかの実施形態では、抗体部分を含む本明細書に記載のcaTCR、CSR、及び
SSEのいずれかによると、抗体部分(例えば、Fab、Fab’、(Fab’)2、F
v、又はscFv)は、モノクローナル抗体に由来する配列を含む。いくつかの実施形態
では、抗体部分は、モノクローナル抗体由来のV及びVドメイン、又はその変異型を
含む。いくつかの実施形態では、抗体部分は、モノクローナル抗体由来のC1及びC
ドメイン、又はその変異型を更に含む。モノクローナル抗体は、例えば、Kohler
and Milstein,Nature,256:495(1975)及びSerge
eva et al.,Blood,117(16):4262-4272に記載される
もののようなハイブリドーマ法を使用して調製することができる。
【0253】
ハイブリドーマ法では、ハムスター、マウス、又は他の適切な宿主動物は、典型的には
、免疫化剤により免疫されて、免疫化剤に特異的に結合する抗体を産生するか、又は産生
できるリンパ球を誘発する。別の方法としては、リンパ球をインビトロで免疫化できる。
免疫化剤は、目的のタンパク質のポリペプチド若しくは融合タンパク質、又はペプチド及
びMHCタンパク質を含む複合体などの少なくとも2つの分子を含む複合体を含むことが
できる。一般に、ヒト由来細胞が望まれる場合は末梢血リンパ球(「PBL」)を使用す
るか、又は、非ヒト哺乳類源が望まれる場合は脾臓細胞若しくはリンパ節細胞を使用する
。その後、リンパ球を、好適な融合剤、例えばポリエチレングリコールを用いて不死化細
胞株と融合し、ハイブリドーマ細胞を形成する。例えば、Goding,Monoclo
nal Antibodies:Principles and Practice,(
New York:Academic Press(1986),pp.59-103を
参照されたい。不死化細胞株は、通常は、形質転換された哺乳類細胞、特に、げっ歯類、
ウシ及びヒト由来の骨髄腫細胞である。通常は、ラット又はマウス骨髄腫細胞株を用いる
。ハイブリドーマ細胞を、好ましくは、未融合の不死化細胞の増殖又は生存を阻害する1
種以上の物質を含む好適な培養培地中で培養し、増殖することができる。例えば、親細胞
が、酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はH
PRT)を欠く場合、ハイブリドーマ用の培養培地は、典型的には、HGPRT欠損細胞
の増殖を防ぐヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジンを含む(「HAT培地」)
【0254】
いくつかの実施形態では、不死化細胞株は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞
による安定な高レベルの抗体発現を支持し、HAT培地などの培地に感受性である。いく
つかの実施形態では、不死化細胞株は、例えば、Salk Institute Cel
l Distribution Center,San Diego,Californ
ia及びAmerican Type Culture Collection,Man
assas,Virginiaから得ることができるマウス骨髄腫株である。ヒト骨髄腫
及びマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞株もまた、ヒトモノクローナル抗体の産生について記
載されている。Kozbor,J.Immunol.,133:3001(1984)、
Brodeur et al.Monoclonal Antibody Produc
tion Techniques and Applications(Marcel
Dekker,Inc.:New York,1987)pp.51-63。
【0255】
ハイブリドーマ細胞が培養される培養培地を、続いて、ポリペプチドに対するモノクロ
ーナル抗体の存在についてアッセイできる。ハイブリドーマ細胞によって産生されたモノ
クローナル抗体の結合特異性を、免疫沈降法により、又は、ラジオイムノアッセイ(RI
A)若しくは酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)などのin vitro結合アッ
セイによって測定することができる。このような手法及びアッセイ法は、当該技術分野に
おいて既知である。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、Munson and
Pollard,Anal.Biochem.,107:220(1980)の標準的
な分析によって決定することができる。
【0256】
所望のハイブリドーマ細胞を同定した後、限界希釈手順によってクローンをサブクロー
ニングし、標準的な方法により増殖させることができる。Goding、前出。この目的
のために好適な培養培地として、例えば、ダルベッコ改変イーグル培地及びRPMI-1
640培地が挙げられる。代替的に、ハイブリドーマ細胞を哺乳類中の腹水としてインビ
ボで増殖させることもできる。
【0257】
サブクローンによって分泌されるモノクローナル抗体は、例えば、プロテインA-Se
pharose、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、又は
アフィニティクロマトグラフィーなどの従来の免疫グロブリン精製手順によって、培養培
地又は腹水から単離又は精製することができる。
【0258】
いくつかの実施形態では、抗体部分を含む本明細書に記載のcaTCR、CSR、及び
SSEのいずれかによると、抗体部分は、抗体部分ライブラリー(scFv又はFab断
片を提示するファージライブラリーなど)から選択されるクローン由来の配列を含む。ク
ローンは、所望の活性又は複数の活性を有する抗体断片のコンビナトリアルライブラリー
をスクリーニングすることによって同定され得る。例えば、ファージディスプレイライブ
ラリーを生成し、所望の結合特性を有する抗体についてそのようなライブラリーをスクリ
ーニングするための様々な方法が当該技術分野において既知である。このような方法は、
例えば、Hoogenboom et al.,Methods in Molecul
ar Biology 178:1-37(O’Brien et al.,ed.,H
uman Press,Totowa,N.J.,2001)に概説されており、例えば
、McCafferty et al.,Nature 348:552-554、Cl
ackson et al.,Nature 352:624-628(1991)、M
arks et al.,J.Mol.Biol.222:581-597(1992)
、Marks and Bradbury,Methods in Molecular
Biology 248:161-175(Lo,ed.,Human Press,
Totowa,N.J.,2003)、Sidhu et al.,J.Mol.Bio
l.338(2):299-310(2004)、Lee et al.,J.Mol.
Biol.340(5):1073-1093(2004)、Fellouse,Pro
c.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12467-12472(
2004)、及びLee et al.,J.Immunol.Methods 284
(1-2):119-132(2004)に更に記載される。
【0259】
特定のファージディスプレイ方法では、V及びV遺伝子のレパートリーは、ポリメ
ラーゼ連鎖反応(PCR)によって別々にクローニングされ、ファージライブラリーにお
いてランダムに組み替えられ、次いで、Winter et al.,Ann.Rev.
Immunol.,12:433-455(1994)に記載される抗原結合ファージに
ついてスクリーニングすることができる。ファージは、典型的には、単鎖Fv(scFv
)断片又はFab断片のいずれかとして抗体断片を提示する。免疫源からのライブラリー
は、ハイブリドーマを構築する必要なしに、免疫原に対する高親和性抗体を提供する。あ
るいは、ナイーブ型レパートリーを(例えば、ヒトから)クローン化して、Griffi
ths et al.,EMBO J,12:725-734(1993)に記載されて
いるような任意の免疫化なしに、非自己及び更に自己抗原も含む広範囲の抗原に対する単
一の抗体源を提供することができる。最後に、Hoogenboom and Wint
er,J.Mol.Biol.,227:381-388(1992)に記載されている
ように、ナイーブライブラリーはまた、幹細胞から再配列されていないV遺伝子セグメン
トをクローニングし、ランダム配列を含むPCRプライマーを使用して高度に可変のCD
R3領域をコードし、インビトロで再配列を達成することにより、合成的に作製すること
もできる。ヒト抗体ファージライブラリーを記載する特許公報には、例えば、米国特許第
5,750,373号、並びに米国特許公開第2005/0079574号、同第200
5/0119455号、同第2005/0266000号、同第2007/011712
6号、同第2007/0160598号、同第2007/0237764号、同第200
7/0292936号、及び同第2009/0002360号が挙げられる。
【0260】
抗体部分は、標的抗原に特異的な抗体(ペプチド/MHCクラスI/II複合体又は細
胞表面抗原など)のライブラリーをスクリーニングするために、ファージディスプレイを
使用して調製することができる。ライブラリーは、少なくとも1×10(少なくとも約
1×10、2.5×10、5×10、7.5×10、1×1010、2.5×1
10、5×1010、7.5×1010、1×1011のいずれかなど)の固有のヒト
抗体断片の多様性を有するヒトscFvファージディスプレイライブラリーであり得る。
いくつかの実施形態では、ライブラリーは、ヒトのPMBCから抽出されるDNA及び健
康なドナーからの脾臓から構築されたナイーブ型ヒトライブラリーであり、全てのヒト重
鎖及び軽鎖サブファミリーを包含する。いくつかの実施形態では、ライブラリーは、自己
免疫疾患を有する患者、がん患者、及び感染性疾患を有する患者などの様々な疾患を有す
る患者から単離されるPBMCから抽出されるDNAから構築されたナイーブ型ヒトライ
ブラリーである。いくつかの実施形態では、ライブラリーは半合成ヒトライブラリーであ
り、重鎖CDR3は完全にランダム化され、全てのアミノ酸(システイン以外)は、任意
の所与の位置に存在する尤度が等しくなる(例えば、Hoet,R.M.et al.,
Nat.Biotechnol.23(3):344-348,2005を参照されたい
)。いくつかの実施形態では、半合成ヒトライブラリーの重鎖CDR3は、約5~約24
(約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、1
9、20、21、22、23、又は24のいずれかなど)の長さのアミノ酸を有する。い
くつかの実施形態では、ライブラリーは、完全合成ファージディスプレイライブラリーで
ある。いくつかの実施形態では、ライブラリーは、非ヒトファージディスプレイライブラ
リーである。
【0261】
高い親和性で標的抗原に結合するファージクローンは、固体支持体(例えば、溶液パニ
ングのためのビーズ又は細胞パニングのための哺乳類細胞など)に結合した標的抗原への
ファージの反復的な結合によって選択することができ、続いて非結合ファージを除去し、
特異的に結合したファージの溶出によって選択することができる。溶液パニングの例では
、標的抗原は、固体支持体への不動化のためにビオチン化され得る。ビオチン化標的抗原
は、ファージライブラリーと、ストレプトアビジンコンジュゲートDynabeads
M-280などの固体担体と混合され、次いで、標的抗原-ファージ-ビーズ複合体が単
離される。次いで、結合したファージクローンを溶離して使用し、発現及び精製のために
大腸菌XL1-Blueなどの適切な宿主細胞を感染させる。細胞パニングの例では、A
FPペプチドを負荷したT2細胞(TAP欠乏、HLA-A02:01リンパ芽細胞
株)をファージライブラリーと混合した後、細胞を収集し、結合したクローンを溶離して
使用し、発現及び精製のために適切な宿主細胞を感染させる。パニングは、標的抗原に特
異的に結合するファージクローンを濃縮するために、溶液パニング、細胞パニング、又は
それらの両方の組み合わせのいずれかで、複数(約2、3、4、5、6、又はそれ以上の
いずれか)のラウンドで行うことができる。濃縮ファージクローンは、例えば、ELIS
A及びFACSを含む、当該技術分野において既知の任意の方法による標的抗原への特異
的結合について試験することができる。
ヒト及びヒト化抗体部分
【0262】
caTCR、CSR、及びSSE抗体部分は、ヒト又はヒト化であり得る。非ヒト(例
えば、マウス)抗体部分のヒト化型は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小限の配列を典型
的に含む、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖又はその断片(例えば、Fv、Fa
b、Fab’、F(ab’)、scFv、又は抗体の他の抗原結合サブ配列)である。
ヒト化抗体部分として、レシピエントのCDRの残基が、所望の特異性、親和性及び能力
を有するマウス、ラット、又はウサギなどの非ヒト種のCDRの残基(ドナー抗体)で置
換されている、ヒト免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、又はその断片(レシピエント抗
体)が挙げられる。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基が、
対応する非ヒト残基で置換される。ヒト化抗体部分は、レシピエント抗体部分においても
移入されたCDR若しくはフレームワーク配列においても見られない、残基も含み得る。
一般に、ヒト化抗体部分は、少なくとも1つの実質的に全て、典型的には2つの可変ドメ
インを含み得、全て又は実質的に全てのCDR領域は、非ヒト免疫グロブリンのものと一
致し、全て又は実質的に全てのFR領域は、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のもの
である。例えば、Jones et al.,Nature,321:522-525(
1986)、Riechmann et al.,Nature 332:323-32
9(1988)、Presta,Curr.Op.Struct.Biol.,2:59
3-596(1992)を参照されたい。
【0263】
一般的に、ヒト化抗体部分は、非ヒト源から導入された1つ以上のアミノ酸残基を有す
る。これらの非ヒトアミノ酸残基は、典型的には「移入」可変ドメインから取り込まれた
「移入」残基と呼ばれることが多い。いくつかの実施形態によれば、ヒト化は、本質的に
Winter and co-workers(Jones Et al.,Natur
e,321:522-525(1986)、Riechmann et al.,Nat
ure,332:323-327(1988)、Verhoeyen et al.,S
cience,239:1534-1536(1988))の方法に従って、げっ歯類C
DR又はCDR配列をヒト抗体部分の対応する配列に置換することにより、実施できる。
したがって、そのような「ヒト化」抗体部分は、インタクトなヒト可変ドメインより実質
的に少ない部分が、非ヒト種からの対応する配列によって置換されている、抗体部分であ
る(米国特許第4816567号)。実際には、ヒト化抗体部分は、典型的には、いくつ
かのCDR残基及び場合によりいくつかのFR残基が、げっ歯類抗体の類似部位由来の残
基で置換された、ヒト抗体部分である。
【0264】
ヒト化の代替として、ヒト抗体部分を生成してもよい。例えば、今では、免疫化によっ
て、内因性免疫グロブリンを産生せずにヒト抗体の完全なレパートリーを産生可能な、ト
ランスジェニック動物(例えば、マウス)の作製が可能である。例えば、キメラ及び生殖
細胞系変異マウスにおける抗体重鎖連結領域(JH)遺伝子のホモ接合性欠失により、内
在性抗体産生が完全に阻害されることが報告されている。ヒト生殖系免疫グロブリン遺伝
子アレイをこのような生殖系変異マウスに導入すると、抗原誘発によってヒト抗体が産生
する。例えば、Jakobovits et al.,PNAS USA,90:255
1(1993)、Jakobovits et al.,Nature,362:255
-258(1993)、Bruggemann et al.,Year in Imm
unol.,7:33(1993)、米国特許第5,545,806号、同第5,569
,825号、同第5,591,669号、同第5,545,807、及びWO 97/1
7852を参照されたい。代替的に、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を、内因性免疫グロブ
リン遺伝子が部分的に又は完全に不活性化されている、トランスジェニック動物、例えば
、マウスに導入することによって、ヒト抗体を作製できる。誘発時、遺伝子再配列、集合
、及び抗体レパートリーなどの全ての点において、ヒトで見られるものとよく似たヒト抗
体産生が観察される。このアプローチは、例えば、米国特許第5,545,807号、同
第5,545,806号、同第5,569,825号、同第5,625,126号、同第
5,633,425号、及び同第5,661,016号、並びにMarks et al
.,Bio/Technology,10:779-783(1992)、Lonber
g et al.,Nature 368:856-859(1994)、Morris
on,Nature 368:812-813(1994)、Fishwild et
al.,Nature Biotechnol.14:845-851(1996)、N
euberger,Nature Biotechnology.14:826(199
6)、Lonberg and Huszar,Intern.Rev.Immunol
.,13:65-93(1995)、に記載されている。
【0265】
ヒト抗体はまた、インビトロ活性化B細胞(米国特許第5,567,610号及び同第
5,229,275号を参照されたい)によって、又はファージディスプレイライブラリ
ーを含む当該技術分野において既知の様々な技術を使用することによって生成されてもよ
い。Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:
381(1991)、Marks et al.,J.Mol.Biol.,222:5
81(1991)。Cole et al.及びBoerner et al.の技術も
また、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用可能である。Cole et al.,Mo
noclonal Antibodies and Cancer Therapy,A
lan R.Liss,p.77(1985)及びBoerner et al.,J.
Immunol.,147(1):86-95(1991)。
追加の変異型
【0266】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗原結合モジュールのアミノ酸配列変
異型が想到される。例えば、これは、抗原結合モジュールの結合親和性及び/又はその他
生物学的特性を改善するのに望ましい場合がある。抗原結合モジュールのアミノ酸配列変
異型は、抗原結合モジュールをコードするヌクレオチド配列に適切な改変を導入すること
によって、又はペプチド合成によって調製することができる。このような改変として、例
えば、抗原結合モジュールのアミノ酸配列内の残基の、欠失及び/又は挿入及び/又は置
換が挙げられる。最終構築物が所望の特性、例えば抗原結合を有することを条件として、
欠失、挿入、及び置換のいずれかの組み合わせを施して最終構築物に到達させることがで
きる。
【0267】
いくつかの実施形態では、1つ以上のアミノ酸置換を有する抗原結合モジュール変異型
が提供される。置換変異導入の目的の部位としては、抗体部分のHVR及びFRが挙げら
れる。アミノ酸置換は、目的の抗原結合モジュールに導入してもよく、生成物は、所望の
活性、例えば、保持/改善された抗原結合又は減少した免疫原性についてスクリーニング
される。
【0268】
保存的置換を以下の表4に示す。
【表4】
【0269】
アミノ酸は、共通の側鎖特性に従って異なるクラスに分類され得る。
a.疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
b.中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
c.酸性:Asp、Glu;
d.塩基性:His、Lys、Arg;
e.鎖の配向に影響を与える残基:Gly、Pro;
f.芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0270】
非保存的置換は、これらの分類のうち1つを別の分類のものに交換することを伴う。
【0271】
例示的な置換変異型は、親和性成熟抗体部分であり、例えば、ファージディスプレイベ
ースの親和性成熟技術を使用して都合よく生成することができる。簡潔に述べると、1つ
以上のCDR残基が変異しており、ファージに提示される変異型抗体部分は、特定の生物
活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。例えば、抗体部分親和性を
改善するために、改変(例えば、置換)をHVR中でなすことができる。このような改変
は、HVR「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセス中に高頻度で変異を受け
るコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury,Methods M
ol.Biol.207:179-196(2008)を参照されたい)、及び/又は特
異性決定残基(SDR)によってなされ、得られた変異型V又はVが結合親和性につ
いて試験される。二次ライブラリーを構築及び再選択することによる親和性成熟は、例え
ば、Hoogenboom et al.in Methods in Molecul
ar Biology 178:1-37(O’Brien et al.,ed.,H
uman Press,Totowa,NJ,(2001))に記載されている。
【0272】
親和性成熟のいくつかの実施形態では、多様性は、多様な方法(例えば、エラー発生P
CR、鎖シャッフル、又はオリゴヌクレオチド指向変異導入)のいずれかによって成熟す
るために選択された可変遺伝子に導入される。次いで、二次ライブラリーが作製される。
次いで、ライブラリーをスクリーニングして、所望の親和性を有する任意の抗体部分変異
型を同定する。多様性を導入する別の方法は、いくつかのHVR残基(例えば、一度に4
~6残基)がランダム化される、HVR指向性アプローチを伴う。抗原結合に関与するH
VR残基は、例えば、アラニンスキャニング変異導入又はモデリングを用いて特異的に同
定され得る。CDR-H3及びCDR-L3は、特に標的化されることが多い。
【0273】
いくつかの実施形態では、置換、挿入、又は欠失は、そのような改変が抗体部分の抗原
に結合する能力を実質的に低下させない限り、1つ以上のHVR内で生じてもよい。例え
ば、結合親和性を実質的に低下させない保存的改変(例えば、本明細書で提供される保存
的置換)は、HVRにおいて行われてもよい。このような改変は、HVR「ホットスポッ
ト」又はSDRの外側にあってもよい。上記に提供された変異型V及びV配列のいく
つかの実施形態では、各HVRは、変更されていないか、又は1つ以下、2つ又は3つ以
下のアミノ酸置換を含む。
【0274】
変異導入の標的となり得る抗原結合モジュールの残基又は領域の同定のための有用な方
法は、「アラニンスキャニング変異導入」と呼ばれ、Cunningham and W
ells Science,244:1081-1085(1989)に記載されている
。この方法では、標的残基の1つ又は群の残基(例えば、arg、asp、his、ly
s、及びgluなどの荷電残基)が同定され、中性又は負荷電アミノ酸(例えば、アラニ
ン又はポリアラニン)で置換されて、抗原結合モジュールの抗原との相互作用に影響を及
ぼすかどうかを判定する。更なる置換は、初期置換に対する機能的感受性を示すアミノ酸
位置に導入されてもよい。代替的に、又はそれに加えて、抗原抗原結合モジュール複合体
の結晶構造を決定して、抗原結合モジュールと抗原との間の接触点を同定することができ
る。このような接触残基及び隣接する残基は、置換の候補として標的化又は排除され得る
。変異型をスクリーニングして、所望の特性を含むかどうかを判定することができる。
【0275】
アミノ酸配列挿入として、1つの残基から100以上の残基を含むポリペプチドまでの
長さの範囲の、アミノ及び/又はカルボキシル末端融合、並びに、単一若しくは複数のア
ミノ酸残基の配列内挿入が挙げられる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を
有する抗原結合モジュールが挙げられる。抗原結合モジュールのその他の挿入変異体とし
て、酵素に対する抗原結合モジュールのN末端若しくはC末端への融合(例えば、ADE
PTのために)又は、抗原結合モジュールの血清半減期を延長するポリペプチドが挙げら
れる。
誘導体
【0276】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcaTCRのいずれかによるcaTCR及
び/又は本明細書に記載のCSRのいずれかによるCSR及び/又は本明細書に記載のS
SEのいずれかによるSSEは、当該技術分野において既知であり、容易に入手可能な更
なる非タンパク質性部分を含むように更に改変されてもよい。caTCR及び/又はCS
R及び/又はSSEの誘導体化に適切な部分としては、水溶性ポリマーが挙げられるが、
これらに限定されない。水溶性ポリマーの非限定例として、ポリエチレングリコール(P
EG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセ
ルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3
-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマ
ー、ポリアミノ酸(ホモポリマー又はランダムコポリマーのいずれか)、及びデキストラ
ン又はポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレングリコー
ルホモポリマー、プロリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシ
エチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、及びそれらの混
合物が挙げられるが、これらに限定されない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデ
ヒドは、その水中安定性から、製造における利点を有し得る。ポリマーは、任意の分子量
であってよく、分枝型又は非分枝型であってよい。caTCR及び/又はCSR及び/又
はSSEに付加されたポリマー数は可変であり、2種類以上のポリマーが付加されている
場合、それらは同一分子であっても異なる分子であっていてもよい。一般に、誘導体化に
使用されるポリマーの数及び/又は種類は、改善するcaTCR及び/又はCSR及び/
又はSSEの特定の特性又は機能が挙げられるが、これらに限定されない点、caTCR
及び/又はCSR及び/又はSSEの誘導体を特定の条件下での治療に使用するか、など
に基づいて決定できる。
【0277】
いくつかの実施形態では、放射線への曝露によって選択的に加熱され得るcaTCR及
び/又はCSR及び/又はSSE並びに非タンパク質性部分のコンジュゲートが提供され
る。いくつかの実施形態では、非タンパク質性部分は、カーボンナノチューブである(K
am et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102:116
00-11605(2005))。放射線は、任意の波長のものであってもよく、通常の
細胞を害しないが、非タンパク質性部分を、caTCR-及び/又はCSR-及び/又は
SSEの非タンパク質性部分の近位の細胞が殺傷される温度まで非タンパク質性部分を加
熱するものが挙げられるが、これらに限定されない。
caTCR+CSR免疫細胞の調製
【0278】
一態様では、本発明は、本明細書に記載される実施形態のいずれかによるcaTCR及
びCSRを発現する免疫細胞(例えば、リンパ球、例えばT細胞)を提供する。caTC
R及びCSR(caTCR+CSR T細胞などのcaTCR+CSR免疫細胞)を発現
する免疫細胞(T細胞など)を調製する例示的な方法が、本明細書で提供される。
【0279】
いくつかの実施形態では、caTCR+CSR免疫細胞(caTCR+CSR T細胞
など)は、標的抗原(疾患関連抗原など)に特異的に結合するcaTCR(本明細書に記
載されるcaTCRのいずれかなど)、及び標的リガンドに特異的に結合するCSR(本
明細書に記載されるCSRのいずれかなど)をコードする1つ以上の核酸(例えば、レン
チウイルスベクターを含む)を免疫細胞に導入することによって生成することができる。
1つ以上の核酸を免疫細胞に導入することは、核酸について本明細書に記載される技術な
ど、当該技術分野において既知の技術を使用して達成することができる。いくつかの実施
形態では、本発明のcaTCR+CSR免疫細胞(caTCR+CSR T細胞など)は
、インビボで複製することができ、その結果、標的抗原の発現に関連する疾患(がん又は
ウイルス感染など)の持続的な制御をもたらし得る長期持続性をもたらし得る。
【0280】
いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書に記載のcaTCRのいずれかによる標
的抗原に特異的に結合するcaTCR、及び本明細書に記載のCSRのいずれかによる標
的リガンドに特異的に結合するCSRを発現する、遺伝子改変T細胞を、例えば、リンパ
球注入を使用するがん又はウイルス感染を含む、標的抗原の発現と関連する疾患及び/又
は障害(本明細書では、「標的抗原陽性」又は「TA陽性」疾患又は障害とも称される)
を有するか、発症するリスクがある患者の治療のために投与することに関連する。いくつ
かの実施形態では、自己リンパ球注入は、治療に使用される。自己PBMCは、治療を必
要とする患者から収集され、T細胞は、本明細書に記載され、当該技術分野において既知
の方法を使用して活性化及び増殖され、次いで患者に注入される。
【0281】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcaTCRのいずれかによる標的抗原に特
異的に結合するcaTCR、及び本明細書に記載のCSRのいずれかによる標的リガンド
に特異的に結合するCSRを発現する、T細胞(本明細書では「caTCR+CSR T
細胞」とも称される)が提供される。本発明のcaTCR+CSR T細胞は、ロバスト
なインビボT細胞増殖を受けることができ、血液及び骨髄中で長期間にわたって高レベル
で持続する標的抗原特異的メモリー細胞を確立することができる。いくつかの実施形態で
は、患者に注入された本発明のcaTCR+CSR T細胞は、標的抗原関連疾患を有す
る患者において、インビボで、標的抗原提示細胞、例えば、標的抗原提示がん又はウイル
ス感染細胞を排除することができる。いくつかの実施形態では、患者に注入された本発明
のcaTCR+CSR T細胞は、少なくとも1つの従来の治療に難治性である標的抗原
関連疾患を有する患者において、インビボで、標的抗原提示細胞、例えば、標的抗原提示
がん又はウイルス感染細胞を排除することができる。
【0282】
T細胞の増殖及び遺伝子改変の前に、T細胞源は対象から得られる。T細胞は、末梢血
単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位からの組織、腹膜、胸膜滲
出液、脾臓組織、及び腫瘍を含む多数の供給源から得ることができる。本発明のいくつか
の実施形態では、当該技術分野において利用可能な任意の数のT細胞株を使用することが
できる。本発明のいくつかの実施形態では、T細胞は、FICOLL(商標)分離などの
当業者に既知の任意の数の技術を使用して、対象から採取された血液の単位から得ること
ができる。いくつかの実施形態では、個体の循環血液からの細胞は、アフェレーシスによ
って得られる。アフェレーシス生成物は、典型的には、T細胞、単球、顆粒球、B細胞、
他の有核白血球、赤血球、及び血小板を含むリンパ球を含む。いくつかの実施形態では、
アフェレーシスによって収集された細胞を洗浄して血漿画分を除去し、後続の処理工程の
ために適切な緩衝液又は培地に細胞を配置することができる。いくつかの実施形態では、
細胞はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄される。いくつかの実施形態では、洗浄溶
液はカルシウムを含まず、マグネシウムを含まなくてもよく、又は二価カチオンが全く存
在しない場合には多く存在しなくてもよい。当業者であれば容易に理解するように、洗浄
工程は、製造業者の説明書に従って、半自動化「フロースルー」遠心分離器(例えば、C
obe 2991 cell processor,the Baxter CytoM
ate,or the Haemonetics Cell Saver 5)を使用す
ることによるなどの、当該技術分野において既知の方法によって達成され得る。洗浄後、
細胞は、Ca2+フリー、Mg2+フリーPBS、PlasmaLyte A、又は緩衝
剤を有する又は有さない他の生理食塩水溶液などの様々な生体適合性緩衝液中に再懸濁さ
れてもよい。あるいは、アフェレーシス試料の望ましくない成分を除去し、細胞を培養培
地に直接再懸濁させてもよい。
【0283】
いくつかの実施形態では、T細胞は、赤血球を溶解し、単球を枯渇させることにより、
例えばPERCOLL(商標)勾配による遠心分離、又は遠心分離エルトリエーションに
よる遠心分離によって単球を枯渇させることにより、末梢血リンパ球から単離される。C
D3、CD28、CD4、CD8、CD45RA、及びCD45ROT細胞
などのT細胞の特定の亜集団は、陽性又は陰性選択技術によって更に単離され得る。例え
ば、いくつかの実施形態では、T細胞は、所望のT細胞を陽性選択するのに十分な時間に
わたって、DYNABEADS(登録商標)M-450 CD3/CD28 Tなどの抗
CD3/抗CD28(すなわち、3×28)コンジュゲートビーズとのインキュベーショ
ンによって、単離される。いくつかの実施形態では、期間は約30分である。いくつかの
実施形態では、期間は、30分~36時間又はそれ以上(これらの値間の全ての範囲を含
む)の範囲である。いくつかの実施形態では、期間は、少なくとも1、2、3、4、5、
又は6時間である。いくつかの実施形態では、期間は、10~24時間である。いくつか
の実施形態では、インキュベーション時間は24時間である。白血病患者からT細胞を単
離するために、24時間などのより長いインキュベーション時間の使用は、細胞収量を増
加させることができる。腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を腫瘍組織又は免疫不全個体から単
離する際など、他の細胞型と比較してT細胞が少ない状況で、T細胞を単離するために、
より長いインキュベーション時間を使用することができる。更に、より長いインキュベー
ション時間の使用は、CD8T細胞の捕捉効率を高めることができる。したがって、単
に時間を短縮又は延長することによって、T細胞をCD3/CD28ビーズに結合させる
ことができ、及び/又は、T細胞に対するビーズの比を増加若しくは減少させることによ
って、T細胞の亜集団は、培養開始のために、若しくは培養開始時に、又はプロセス中の
他の時点で優先的に選択することができる。加えて、ビーズ又は他の表面上の抗CD3抗
体及び/又は抗CD28抗体の比を増加又は減少させることによって、T細胞の亜集団は
、培養開始のために、若しくは培養開始時に、又は他の所望の時点で、又はそれに対して
優先的に選択することができる。当業者であれば、本発明の文脈において、複数ラウンド
の選択も使用できることを認識するであろう。いくつかの実施形態では、選択手順を実行
し、活性化及び増殖プロセスにおいて「非選択」細胞を使用することが望ましい場合があ
る。「非選択」細胞はまた、選択の更なるラウンドに供され得る。
【0284】
陰性選択によるT細胞集団の濃縮は、陰性選択された細胞に固有の表面マーカーに対す
る抗体の組み合わせで達成することができる。1つの方法は、負に選択された細胞上に存
在する細胞表面マーカーに対するモノクローナル抗体のカクテルを使用する、陰性磁気免
疫接着又はフローサイトメトリーによる細胞選別及び/又は選択である。例えば、陰性選
択によってCD4+細胞を濃縮するために、モノクローナル抗体カクテルは、典型的には
、CD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DR、及びCD8βに対する抗
体を含む。いくつかの実施形態では、典型的には、CD4、CD25、CD62Lh
i、GITR、及びFoxP3を発現する制御性T細胞を濃縮又は陽性選択すること
が望ましい場合がある。代替的に、いくつかの実施形態では、制御性T細胞は、抗CD2
5コンジュゲートビーズ又は他の同様の選択方法によって枯渇される。
【0285】
陽性又は陰性選択による細胞の所望の集団の単離のために、細胞及び表面(例えば、ビ
ーズなどの粒子)の濃度を変化させることができる。いくつかの実施形態では、細胞及び
ビーズの最大接触を確実にするために、ビーズ及び細胞が一緒に混合される体積を著しく
減少させる(すなわち、細胞の濃度を増加させる)ことが望ましい場合がある。例えば、
いくつかの実施形態では、約20億個の細胞/mlの濃度が使用される。いくつかの実施
形態では、約10億個の細胞/mlの濃度が使用される。いくつかの実施形態では、約1
億個の細胞/mlより多いものが使用される。いくつかの実施形態では、約1000万、
1500万、2000万、2500万、3000万、3500万、4000万、4500
万、又は5000万個の細胞/mlの細胞の濃度が使用される。いくつかの実施形態では
、約7500万、8000万、8500万、9000万、9500万、又は1億個の細胞
/mlの細胞の濃度が使用される。いくつかの実施形態では、約1億2500万又は約1
億5000万個の細胞/mlの濃度が使用される。高濃度を使用すると、細胞収量、細胞
活性化、及び細胞増殖の増加をもたらすことができる。更に、高細胞濃度の使用は、CD
28陰性T細胞などの目的の標的抗原を弱く発現し得る細胞、又は多くの腫瘍細胞が存在
する試料(すなわち、白血病血液、腫瘍組織など)から、より効率的な細胞の捕捉を可能
にする。このような細胞集団は、治療値を有してもよく、得られることが望ましい。例え
ば、高濃度の細胞を使用することにより、通常より弱いCD28発現を有するCD8
細胞のより効率的な選択を可能にする。
【0286】
本発明のいくつかの実施形態では、T細胞は、治療直後に患者から得られる。この点に
関し、特定のがん治療後、特に、免疫系を損傷する薬物による特定の治療後、患者が通常
治療から回復する期間中に治療直後に、得られるT細胞の質は、エクスビボで増殖する能
力に関して最適であるか、又は改善され得ることが観察されている。同様に、本明細書に
記載される方法を使用したエクスビボ操作後、これらの細胞は、強化された生着及びイン
ビボ増殖のための好ましい状態であり得る。したがって、この回復期中に、T細胞、樹状
細胞、又は造血系の他の細胞を含む血液細胞を収集することが、本発明の文脈内で想到さ
れる。更に、いくつかの実施形態では、動員(例えば、GM-CSFによる動員)及び前
処置レジメンを使用して、特に治療後の定義された時間範囲中に、特定の細胞型の再集団
化、再循環、再生、及び/又は増殖が好ましい状況を対象においてもたらすことができる
。例示的な細胞型としては、T細胞、B細胞、樹状細胞、及び免疫系の他の細胞が挙げら
れる。
【0287】
T細胞の遺伝子改変の前又は後に、所望のcaTCR、CSR、及び所望によりSSE
を発現するかどうかにかかわらず、T細胞は、例えば、米国特許第6,352,694号
、同第6,534,055号、同第6,905,680号、同第6,692,964号、
同第5,858,358号、同第6,887,466号、同第6,905,681号、同
第7,144,575号、同第7,067,318号、同第7,172,869号、同第
7,232,566号、同第7,175,843号、同第5,883,223号、同第6
,905,874号、同第6,797,514号、同第6,867,041号、及び米国
特許出願公開第20060121005号に記載されている方法を使用して、全般に活性
化及び増殖させることができる。
【0288】
一般的に、本発明のT細胞は、CD3/TCR複合体関連シグナルを刺激する薬剤を結
合して有する表面と、T細胞の表面上の共刺激分子を刺激するリガンドとの接触によって
増殖される。具体的には、T細胞集団は、抗CD3抗体、若しくはその抗原結合断片との
接触、又は表面上に固定化された抗CD2抗体との接触、又はカルシウムイオノフォアと
組み合わされたタンパク質キナーゼC活性化因子(例えば、ブレソスタチン)との接触に
よってなどで、刺激されてもよい。T細胞の表面上のアクセサリー分子の共刺激のために
、アクセサリー分子に結合するリガンドが使用される。例えば、T細胞集団は、T細胞の
増殖を刺激するのに適切な条件下で、抗CD3抗体及び抗CD28抗体と接触させること
ができる。CD4T細胞又はCD8T細胞のいずれかの増殖を刺激するためには、抗
CD3抗体、及び抗CD28抗体である。抗CD28抗体の例としては、9.3、B-T
3、XR-CD28(Diaclone,Besancon,France)が挙げられ
、と当該技術分野において公知の他の方法で使用できるように使用できる(Berg e
t al.,Transplant Proc.30(8):3975-3977,19
98、Haanen et al.,J.Exp.Med.190(9):131913
28,1999、Garland et al.,J.Immunol.Meth.22
7(1-2):53-63,1999)。
遺伝子改変
【0289】
いくつかの実施形態では、本発明のcaTCR+CSR免疫細胞(caTCR+CSR
T細胞など)は、本明細書に記載のcaTCR及び本明細書に記載のCSRをコードす
る1つ以上のウイルスベクターを免疫細胞(本明細書に記載の方法によって調製されるT
細胞など)に形質導入することによって生成される。ウイルスベクター送達系は、DNA
及びRNAウイルスを含み、それらは、免疫細胞への送達後にエピソームであるか、又は
ゲノムに組み込まれる。遺伝子治療手順の概説については、Anderson,Scie
nce 256:808-813(1992)、Nabel & Feigner,TI
BTECH 11:211-217(1993)、Mitani & Caskey,T
IBTECH 11:162-166(1993)、Dillon,TIBTECH 1
1:167-175(1993)、Miller,Nature 357:455-46
0(1992)、Van Brunt,Biotechnology 6(10):11
49-1 154(1988)、Vigne,Restorative Neurolo
gy and Neuroscience 8:35-36(1995)、Kremer
& Perricaudet,British Medical Bulletin
51(l):31-44(1995)、及びYu et al.,Gene Thera
py 1:13-26(1994)を参照されたい。いくつかの実施形態では、caTC
R+CSR免疫細胞は、caTCR+CSR免疫細胞ゲノムに組み込まれた1つ以上のベ
クターを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のウイルスベクターは、レンチウイル
スベクターである。いくつかの実施形態では、caTCR+CSR免疫細胞は、そのゲノ
ムに組み込まれたレンチウイルスベクターを含むcaTCR+CSR T細胞である。
【0290】
いくつかの実施形態では、caTCR+CSR免疫細胞は、その内因性のTCR鎖のう
ちの1つ又は両方の発現を遮断又は減少させるように改変される。例えば、いくつかの実
施形態では、caTCR+CSR免疫細胞は、TCR α及び/又はβ鎖の発現を遮断又
は減少させるように改変されたαβ T細胞であり、又はcaTCR+CSR免疫細胞は
、TCR γ及び/又はδ鎖の発現を遮断又は減少させるように改変されたγδ T細胞
である。遺伝子発現を破壊する細胞の改変としては、例えば、RNA干渉(例えば、si
RNA、shRNA、miRNA)、遺伝子編集(例えば、CRISPR又はTALEN
系遺伝子ノックアウト)などを含む、当該技術分野において既知の任意のそのような技術
が挙げられる。
【0291】
いくつかの実施形態では、T細胞の内因性TCR鎖の一方又は両方の発現が減少したc
aTCR+CSR T細胞は、CRISPR/Casシステムを使用して生成される。遺
伝子編集のCRISPR/Casシステムの概説については、例えば、Jian W &
Marraffini LA,Annu.Rev.Microbiol.69,201
5、Hsu PD et al.,Cell,157(6):1262-1278,20
14、及びO’Connell MR et al.,Nature 516:263-
266,2014を参照されたい。いくつかの実施形態では、T細胞の内因性TCR鎖の
一方又は両方の発現が減少したcaTCR+CSR T細胞は、TALEN系ゲノム編集
を使用して生成される。
濃縮
【0292】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcaTCR+CSR免疫細胞のいずれかに
よるcaTCR+CSR免疫細胞の不均質な細胞集団を濃縮する方法が提供される。
【0293】
標的抗原及び標的リガンドに特異的に結合するcaTCR+CSR免疫細胞(caTC
R+CSR T細胞など)の特定の亜集団は、陽性選択技術によって濃縮され得る。例え
ば、いくつかの実施形態では、caTCR+CSR免疫細胞(caTCR+CSR T細
胞など)は、所望のcaTCR+CSR免疫細胞を陽性選択するのに十分な時間にわたっ
て標的抗原コンジュゲートビーズ及び/又は標的リガンドコンジュゲートビーズとのイン
キュベーションによって濃縮される。いくつかの実施形態では、期間は約30分である。
いくつかの実施形態では、期間は、30分~36時間又はそれ以上(これらの値間の全て
の範囲を含む)の範囲である。いくつかの実施形態では、期間は、少なくとも1、2、3
、4、5、又は6時間である。いくつかの実施形態では、期間は、10~24時間である
。いくつかの実施形態では、インキュベーション時間は24時間である。異種細胞集団に
おいて低レベルで存在するcaTCR+CSR免疫細胞の単離のために、24時間などの
より長いインキュベーション時間の使用は、細胞収量を増加させることができる。他の細
胞型と比較して、少ないcaTCR+CSR免疫細胞が存在する任意の状況において、c
aTCR+CSR免疫細胞を単離するために、より長いインキュベーション時間を使用す
ることができる。当業者であれば、本発明の文脈において、複数ラウンドの選択も使用で
きることを認識する。
【0294】
陽性選択によるcaTCR+CSR免疫細胞の所望の集団の単離のために、細胞及び表
面(例えば、ビーズなどの粒子)の濃度を変更することができる。いくつかの実施形態で
は、細胞及びビーズの最大接触を確実にするために、ビーズ及び細胞が一緒に混合される
体積を著しく減少させる(すなわち、細胞の濃度を増加させる)ことが望ましい場合があ
る。例えば、いくつかの実施形態では、約20億個の細胞/mlの濃度が使用される。い
くつかの実施形態では、約10億個の細胞/mlの濃度が使用される。いくつかの実施形
態では、約1億個の細胞/mlより多いものが使用される。いくつかの実施形態では、約
1000万、1500万、2000万、2500万、3000万、3500万、4000
万、4500万、又は5000万個の細胞/mlの細胞の濃度が使用される。いくつかの
実施形態では、約7500万、8000万、8500万、9000万、9500万、又は
1億個の細胞/mlの細胞の濃度が使用される。いくつかの実施形態では、約1億250
0万又は約1億5000万個の細胞/mlの濃度が使用される。高濃度を使用すると、細
胞収量、細胞活性化、及び細胞増殖の増加をもたらすことができる。更に、高細胞濃度の
使用は、caTCR及び/又はCSRを弱く発現し得るcaTCR+CSR免疫細胞のよ
り効率的な捕捉を可能にする。
【0295】
本明細書に記載される任意のそのような実施形態のうちのいくつかにおいて、濃縮は、
caTCR+CSR免疫細胞の疲弊を最小限に抑えるか、又は実質的に全く疲弊させない
。例えば、いくつかの実施形態では、濃縮は、caTCR+CSR免疫細胞の約50%未
満(約45、40、35、30、25、20、15、10、又は5%のいずれか未満など
)が疲弊したものになる結果をもたらす。免疫細胞の疲弊は、本明細書に記載される任意
の手段を含む、当該技術分野において既知の任意の手段によって判定することができる。
【0296】
本明細書に記載される任意のそのような実施形態のうちのいくつかにおいて、濃縮は、
caTCR+CSR免疫細胞の終末分化を最小限に抑えるか、又は実質的に全く終末分化
させない。例えば、いくつかの実施形態では、濃縮は、caTCR+CSR免疫細胞の約
50%未満(約45、40、35、30、25、20、15、10、又は5%のいずれか
未満など)が終末分化したものになる結果をもたらす。免疫細胞の終末分化は、本明細書
に記載される任意の手段を含む、当該技術分野において既知の任意の手段によって判定す
ることができる。
【0297】
本明細書に記載される任意のそのような実施形態のうちのいくつかにおいて、濃縮は、
caTCR+CSR免疫細胞のcaTCR及び/又はCSRの内部移行を最小限に抑える
か、又は実質的に全くcaTCR及び/又はCSRを内部移行させない。例えば、いくつ
かの実施形態では、濃縮は、caTCR+CSR免疫細胞上の約50%未満(約45、4
0、35、30、25、20、15、10、又は5%のいずれか未満など)のcaTCR
及び/又はCSRが内部移行したものになる結果をもたらす。caTCR+CSR免疫細
胞上のcaTCR及び/又はCSRの内部移行は、本明細書に記載される任意の手段を含
む当該技術分野において既知の任意の手段によって判定することができる。
【0298】
本明細書に記載される任意のそのような実施形態のうちのいくつかにおいて、濃縮は、
caTCR+CSR免疫細胞の増殖の増加をもたらす。例えば、いくつかの実施形態では
、濃縮は、濃縮後のcaTCR+CSR免疫細胞の数の少なくとも約10%(少なくとも
約20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400
、500、1000%、又はそれ以上のいずれかなど)の増加をもたらす。
【0299】
したがって、いくつかの実施形態では、標的抗原に特異的に結合するcaTCR、及び
標的リガンドに特異的に結合するCSRを発現するcaTCR+CSR免疫細胞の異種細
胞集団を濃縮する方法であって、a)異種細胞集団を、標的抗原若しくはその中に含まれ
る1つ以上のエピトープを含む第1の分子、及び/又は標的リガンド若しくはその中に含
まれる1つ以上のエピトープを含む第2の分子と接触させて、第1の分子に結合したca
TCR+CSR免疫細胞及び/又は第2の分子に結合したcaTCR+CSR免疫細胞を
含む複合体を形成することと、b)複合体を異種細胞集団から分離することにより、ca
TCR+CSR免疫細胞について濃縮された細胞集団を生成することと、を含む、方法が
提供される。いくつかの実施形態では、第1及び/又は第2の分子は、個々に固体支持体
に固定化される。いくつかの実施形態では、固体支持体は粒子状(ビーズなど)である。
いくつかの実施形態では、固体支持体は、表面(ウェルの底部など)である。いくつかの
実施形態では、第1及び/又は第2の分子は、タグで個別に標識される。いくつかの実施
形態では、タグは、蛍光分子、親和性タグ、又は磁気タグである。いくつかの実施形態で
は、本方法は、第1及び/又は第2の分子からcaTCR+CSR免疫細胞を溶離させる
ことと、溶離液を回収することと、を更に含む。
ライブラリースクリーニング
【0300】
いくつかの実施形態では、標的抗原に特異的な候補caTCR構築物を単離するために
、caTCRライブラリー、例えば、複数のcaTCRをコードする核酸のライブラリー
を発現する細胞は、標的抗原又はその中に含まれる1つ以上のエピトープを含む捕捉分子
に曝露され、続いて捕捉分子に特異的に結合するライブラリーの親和性メンバーを単離す
ることができる。いくつかの実施形態では、捕捉分子は固体支持体上に固定化される。い
くつかの実施形態では、支持体は、ビーズ、マイクロタイタープレート、免疫チューブ、
又はそのような目的に有用な当該技術分野において既知の任意の材料の表面であってもよ
い。いくつかの実施形態では、相互作用は、タグ付き捕捉分子(例えば、ビオチン化捕捉
分子)と溶液中で行われる。いくつかの実施形態では、この手順は、非特異的及び非反応
性のライブラリーメンバーを除去するための1つ以上の洗浄工程(パニング)を伴う。い
くつかの実施形態では、溶液中の複合体を精製するために、これらを、固定化又は遠心分
離のいずれかによって収集する。いくつかの実施形態では、親和性メンバーは、可溶性ビ
オチン化捕捉分子上に捕捉され、続いてストレプトアビジンビーズ上の親和性複合体(親
和性メンバー及び捕捉分子)の固定化が続く。いくつかの実施形態では、固体支持体はビ
ーズである。いくつかの実施形態では、ビーズとしては、例えば、磁気ビーズ(例えば、
Bangs Laboratories、Polysciences inc.,Dyn
al Biotech,Miltenyi Biotech又はQuantum Mag
neticからの)、非磁性ビーズ(例えば、Pierce and Upstate
technology)、単分散ビーズ(例えば、Dynal Biotech及びMi
croparticle Gmbh)、及び多分散ビーズ(例えば、Chemagen)
が挙げられる。磁気ビーズの使用は、文献(Uhlen,M,et al(1994)i
n Advances in Biomagnetic Separation,Bio
Techniques press,Westborough,MA)に記載されている
。いくつかの実施形態では、親和性メンバーは、陽性選択によって精製される。いくつか
の実施形態では、親和性メンバーは、望ましくないライブラリーメンバーを除去するため
の陰性選択によって精製される。いくつかの実施形態では、親和性メンバーは、陽性及び
陰性選択工程の両方によって精製される。
【0301】
いくつかの実施形態では、標的リガンドに特異的な候補CSR構築物を単離するために
、CSRライブラリー、例えば、複数のCSRをコードする核酸のライブラリーを発現す
る細胞は、標的リガンド又はその中に含まれる1つ以上のエピトープを含む捕捉分子に曝
露され、続いて捕捉分子に特異的に結合するライブラリーの親和性メンバーを単離するこ
とができる。いくつかの実施形態では、捕捉分子は固体支持体上に固定化される。いくつ
かの実施形態では、支持体は、ビーズ、マイクロタイタープレート、免疫チューブ、又は
そのような目的に有用な当該技術分野において既知の任意の材料の表面であってもよい。
いくつかの実施形態では、相互作用は、タグ付き捕捉分子(例えば、ビオチン化捕捉分子
)と溶液中で行われる。いくつかの実施形態では、この手順は、非特異的及び非反応性の
ライブラリーメンバーを除去するための1つ以上の洗浄工程(パニング)を含む。いくつ
かの実施形態では、溶液中の複合体を精製するために、これらを、固定化又は遠心分離の
いずれかによって収集する。いくつかの実施形態では、親和性メンバーは、可溶性ビオチ
ン化捕捉分子上に捕捉され、続いてストレプトアビジンビーズ上の親和性複合体(親和性
メンバー及び捕捉分子)の固定化が続く。いくつかの実施形態では、固体支持体はビーズ
である。いくつかの実施形態では、ビーズとしては、例えば、磁気ビーズ(例えば、Ba
ngs Laboratories、Polysciences inc.,Dynal
Biotech,Miltenyi Biotech又はQuantum Magne
ticからの)、非磁性ビーズ(例えば、Pierce and Upstate te
chnology)、単分散ビーズ(例えば、Dynal Biotech及びMicr
oparticle Gmbh)、及び多分散ビーズ(例えば、Chemagen)が挙
げられる。いくつかの実施形態では、親和性メンバーは、陽性選択によって精製される。
いくつかの実施形態では、親和性メンバーは、望ましくないライブラリーメンバーを除去
するための陰性選択によって精製される。いくつかの実施形態では、親和性メンバーは、
陽性及び陰性選択工程の両方によって精製される。
【0302】
一般に、ライブラリー構築物を調製するために使用される技術は、既知の遺伝子工学技
術に基づく。この点に関し、ライブラリー内で発現するcaTCR又はCSRをコードす
る核酸配列は、使用される発現系の種類に適切な発現ベクターに組み込まれる。CD3+
細胞などの細胞内での提示に使用するための適切な発現ベクターは公知であり、当該技術
分野において記載されている。例えば、いくつかの実施形態では、発現ベクターは、レン
チウイルスベクターなどのウイルスベクターである。
【0303】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される実施形態のいずれか1つによる複数の
caTCRをコードする配列を含む核酸ライブラリーが提供される。いくつかの実施形態
では、核酸ライブラリーは、複数のcaTCRをコードするウイルスベクターを含む。い
くつかの実施形態では、ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。
【0304】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される実施形態のいずれか1つによる複数の
CSRをコードする配列を含む核酸ライブラリーが提供される。いくつかの実施形態では
、核酸ライブラリーは、複数のCSRをコードするウイルスベクターを含む。いくつかの
実施形態では、ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。
【0305】
いくつかの実施形態では、標的抗原に特異的なcaTCRをコードする配列について、
本明細書に記載される実施形態のいずれかに記載の核酸ライブラリーをスクリーニングす
る方法であって、a)核酸ライブラリーを複数の細胞に導入することにより、caTCR
を複数の細胞の表面に発現することと、b)複数の細胞を、標的抗原又はその中に含まれ
る1つ以上のエピトープを含む捕捉分子と共にインキュベートすることと、c)捕捉分子
に結合した細胞を収集することと、d)工程c)で収集された細胞からcaTCRをコー
ドする配列を単離することにより、標的抗原に特異的なcaTCRを同定することと、を
含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本方法は、1つ以上の洗浄工程を更
に含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の洗浄工程は、工程b)と工程c)との間で
実施される。いくつかの実施形態では、複数の細胞は、複数のCD3+細胞である。いく
つかの実施形態では、捕捉分子は固体支持体上に固定化される。いくつかの実施形態では
、固体支持体はビーズである。いくつかの実施形態では、捕捉分子に結合した細胞を収集
することは、固体支持体に結合した捕捉リガンドから細胞を溶離させ、溶離液を回収する
ことを含む。いくつかの実施形態では、捕捉分子はタグで標識される。いくつかの実施形
態では、タグは、蛍光分子、親和性タグ、又は磁気タグである。いくつかの実施形態では
、捕捉分子に結合した細胞を収集することは、細胞及び標識されたリガンドを含む複合体
を単離することを含む。いくつかの実施形態では、細胞は、複合体から解離される。
【0306】
いくつかの実施形態では、標的リガンドに特異的なCSRをコードする配列について、
本明細書に記載される実施形態のいずれかに記載の核酸ライブラリーをスクリーニングす
る方法であって、a)核酸ライブラリーを複数の細胞に導入することにより、CSRを複
数の細胞の表面に発現することと、b)複数の細胞を、標的リガンド又はその中に含まれ
る1つ以上のエピトープを含む捕捉分子と共にインキュベートすることと、c)捕捉分子
に結合した細胞を収集することと、d)工程c)で収集された細胞からCSRをコードす
る配列を単離することにより、標的リガンドに特異的なCSRを同定することと、を含む
、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本方法は、1つ以上の洗浄工程を更に含
む。いくつかの実施形態では、1つ以上の洗浄工程は、工程b)と工程c)との間で実施
される。いくつかの実施形態では、複数の細胞は、複数のCD3+細胞である。いくつか
の実施形態では、捕捉分子は固体支持体上に固定化される。いくつかの実施形態では、固
体支持体はビーズである。いくつかの実施形態では、捕捉分子に結合した細胞を収集する
ことは、固体支持体に結合した捕捉リガンドから細胞を溶離させ、溶離液を回収すること
を含む。いくつかの実施形態では、捕捉分子はタグで標識される。いくつかの実施形態で
は、タグは、蛍光分子、親和性タグ、又は磁気タグである。いくつかの実施形態では、捕
捉分子に結合した細胞を収集することは、細胞及び標識されたリガンドを含む複合体を単
離することを含む。いくつかの実施形態では、細胞は、複合体から解離される。
MHCタンパク質
【0307】
MHCクラスIタンパク質は、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子の2つの一次
クラスのうちの1つ(他方はMHCクラスIIである)であり、生体のほぼ全ての有核細
胞上に見出される。それらの機能は、細胞内からT細胞へのタンパク質の断片を提示する
ことであり、健康な細胞は無視されるが、外来又は変異タンパク質を含む細胞は、免疫系
によって攻撃される。MHCクラスIタンパク質は、細胞質タンパク質由来のペプチドを
提示するため、MHCクラスI提示の経路は、細胞質又は内因性の経路と呼ばれることが
多い。クラスI MHC分子は、プロテアソームによる細胞質タンパク質の分解から主に
生成するペプチドに結合する。次いで、MHC I:ペプチド複合体を細胞の原形質膜に
挿入する。ペプチドは、クラスI MHC分子の細胞外部分に結合する。したがって、ク
ラスI MHCの機能は、細胞内タンパク質を細胞傷害性T細胞(CTL)に提示するこ
とである。しかしながら、クラスI MHCはまた、交差提示として知られるプロセスに
おいて、外因性タンパク質から生成されたペプチドを提示することができる。
【0308】
MHCクラスIタンパク質は、2つのポリペプチド鎖、α及びβ2-ミクログロブリン
(β2M)からなる。2つの鎖は、β2Mとα3ドメインとの相互作用によって非共有結
合的に連結される。α鎖のみが多型であり、HLA遺伝子によりコードされる一方で、β
2Mサブユニットは多型ではなく、β-2ミクログロブリン遺伝子によりコードされる。
α3ドメインは、原形質膜に広がり、T細胞のCD8共受容体と相互作用する。α3-C
D8相互作用は、細胞傷害性T細胞の表面上のT細胞受容体(TCR)がそのα1-α2
ヘテロ二量体リガンドに結合して抗原性のために結合されたペプチドを確認する間、MH
C I分子を定位置に保持する。α1及びα2ドメインは、結合するペプチドのための溝
を形成するように折り畳まれる。MHCクラスIタンパク質は、8~10の長さのアミノ
酸であるペプチドに結合する。
【0309】
MHCクラスII分子は、樹状細胞、単核食細胞、いくつかの内皮細胞、胸腺上皮細胞
、及びB細胞などの抗原提示細胞のみに通常見られる分子のファミリーである。クラスI
Iペプチドによって提示される抗原は、細胞外タンパク質(クラスIのような細胞質では
ない)由来であり、したがって、抗原提示のMHCクラスII-依存経路は、エンドサイ
トーシス又は外因性経路と呼ばれる。MHCクラスII分子のローディングは、食作用に
よって生じ、細胞外タンパク質は、エンドサイトーシスされ、リソソームで消化され、得
られたエピトープペプチド断片は、細胞表面への移動の前に、MHCクラスII分子上に
ローディングされる。
【0310】
MHCクラスI分子と同様に、クラスII分子もヘテロ二量体であるが、この場合、2
つの均質なペプチド、α及びβ鎖からなる。サブ表記α1、α2などは、HLA遺伝子内
の別個のドメインを指し、各ドメインは、通常、遺伝子内の異なるエクソンによってコー
ドされ、いくつかの遺伝子は、リーダー配列、膜貫通配列などをコードする更なるドメイ
ンを有する。MHCクラスII分子の抗原結合溝は両端で開放し、一方、クラスI分子上
の対応する溝は、各末端で閉鎖されているため、MHCクラスII分子によって提示され
る抗原は、より長く、概して15~24個のアミノ酸残基長である。
【0311】
ヒト白血球抗原(HLA)遺伝子は、MHC遺伝子のヒト型である。ヒトにおける3つ
の主要なMHCクラスIタンパク質は、HLA-A、HLA-B、及びHLA-Cである
一方、3つのマイナーなものは、HLA-E、HLA-F、及びHLA-Gである。ヒト
における抗原提示に関与する3つの主要なMHCクラスIIタンパク質は、HLA-DP
、HLDA-DQ、及びHLA-DRである一方、他のMHCクラスIIタンパク質、H
LA-DM及びHLA-DOは、抗原の内部プロセシング及びローディングに関与する。
HLA-Aは、ヒトにおける遺伝子の中で、最速で進化するコード配列に分類されている
。2013年12月で、1740個の活性タンパク質及び117のヌルタンパク質をコー
ドする2432個の既知のHLA-A対立遺伝子が存在した。HLA-A遺伝子は、第6
染色体の短腕上に位置し、HLA-Aのより大きいα鎖構成要素をコードする。HLA-
A α鎖の変異型は、HLA機能に重要である。この変異型は、集団における遺伝的多様
性を促進する。各HLAは特定の構造のペプチドに対して異なる親和性を有するため、よ
り多様なHLAは、細胞表面上に「提示」されるより多様な抗原を意味し、集団のサブセ
ットが任意の所与の外来の侵入体に対して耐性である尤度を高める。これにより、単一の
病原体がヒト集団全体を一掃する能力を有する尤度が減少する。各個体は、それらの親の
それぞれから1つずつ、2種類までのHLA-Aを発現することができる。いくつかの個
体は、両方の親から同じHLA-Aを遺伝し、それらの個々のHLAの多様性を減少させ
る。しかしながら、個体の大部分は、HLA-Aの2つの異なるコピーを受容する。この
同じパターンは、全てのHLAグループに関して続く。換言すれば、ヒトは、2432の
既知のHLA-A対立遺伝子のうちのいずれか1つ又は2つのみを発現することができる
【0312】
全ての対立遺伝子は、少なくとも4桁の分類、例えば、HLA-A02:12を受容
する。Aは、その対立遺伝子がどのHLA遺伝子に属するかを意味する。血清型による分
類が分類を単純化するように、多くのHLA-A対立遺伝子が存在する。次の1対の数字
は、この割り当てを示す。例えば、HLA-A02:02、HLA-A02:04、
及びHLA-A02:324は、全てがA2血清型のメンバー(02プレフィックス
によって指定)である。この群は、HLA適合性に関与する一次因子である。この後の全
ての数は、血清型によって決定することができず、遺伝子シークエンシングによって指定
される。第2の数字のセットは、どのHLAタンパク質が産生されているかを示す。これ
らは発見のために割り当てられ、2013年12月で、既知の456個の異なるHLA-
A02タンパク質が存在する(割り当てられた名称HLA-A02:01~HLA-A
02:456)。可能な限り短いHLA名は、これらの詳細の両方を含む。各延長部は
、タンパク質を変化させても変化しなくてもよいヌクレオチド変化を意味する。
【0313】
いくつかの実施形態では、Fab様抗原結合モジュールは、疾患関連抗原(腫瘍関連抗
原又はウイルスコード抗原など)に由来するペプチド及びMHCクラスIタンパク質を含
む複合体に特異的に結合し、MHCクラスIタンパク質は、HLA-A、HLA-B、H
LA-C、HLA-E、HLA-F、又はHLA-Gである。いくつかの実施形態では、
MHCクラスIタンパク質は、HLA-A、HLA-B、又はHLA-Cである。いくつ
かの実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-Aである。いくつかの実施形
態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-Bである。いくつかの実施形態では、M
HCクラスIタンパク質は、HLA-Cである。いくつかの実施形態では、MHCクラス
Iタンパク質は、HLA-A01、HLA-A02、HLA-A03、HLA-A09、
HLA-A10、HLA-A11、HLA-A19、HLA-A23、HLA-A24、
HLA-A25、HLA-A26、HLA-A28、HLA-A29、HLA-A30、
HLA-A31、HLA-A32、HLA-A33、HLA-A34、HLA-A36、
HLA-A43、HLA-A66、HLA-A68、HLA-A69、HLA-A74、
又はHLA-A80である。いくつかの実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、H
LA-A02である。いくつかの実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-
02:01-555、例えばHLA-A02:01、HLA-A02:02、H
LA-A02:03、HLA-A02:04、HLA-A02:05、HLA-A
02:06、HLA-A02:07、HLA-A02:08、HLA-A02:
09、HLA-A02:10、HLA-A02:11、HLA-A02:12、H
LA-A02:13、HLA-A02:14、HLA-A02:15、HLA-A
02:16、HLA-A02:17、HLA-A02:18、HLA-A02:
19、HLA-A02:20、HLA-A02:21、HLA-A02:22、又
はHLA-A02:24のうちのいずれか1つである。いくつかの実施形態では、MH
CクラスIタンパク質は、HLA-A02:01である。HLA-A02:01は、
全ての白人の39~46%で発現し、したがって、本発明で使用するためのMHCクラス
Iタンパク質の適切な選択を表す。
【0314】
いくつかの実施形態では、Fab様抗原結合モジュールは、疾患関連抗原(腫瘍関連抗
原又はウイルスコード抗原など)に由来するペプチド及びMHCクラスIIタンパク質を
含む複合体に特異的に結合し、MHCクラスIIタンパク質は、HLA-DP、HLA-
DQ、又はHLA-DRである。いくつかの実施形態では、MHCクラスIIタンパク質
は、HLA-DPである。いくつかの実施形態では、MHCクラスIIタンパク質は、H
LA-DQである。いくつかの実施形態では、MHCクラスIIタンパク質は、HLA-
DRである。
【0315】
Fab様抗原結合モジュールの生成に使用するのに適したペプチドは、例えば、当業者
に既知のコンピュータ予測モデルを使用して、HLA(例えば、HLA-A02:01
)結合モチーフ並びにプロテアソーム及び免疫プロテアソームの切断部位の存在に基づい
て決定することができる。MHC結合部位を予測するために、このようなモデルとしては
、ProPred1(Singh and Raghava,ProPred:pred
iction of HLA-DR binding sites.BIOINFORM
ATICS 17(12):1236-1237,2001でより詳細に記載される)、
及びSYFPEITHI(Schuler et al.SYFPEITHI,Data
base for Searching and T-Cell Epitope Pr
ediction.in Immunoinformatics Methods in
Molecular Biology,vol 409(1):75-93,2007
を参照されたい)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0316】
適切なペプチドが同定されると、当業者に公知のプロトコールに従ってペプチド合成を
行うことができる。これらの比較的小さいサイズのため、本発明のペプチドは、従来のペ
プチド合成技術に従って溶液中又は固体担体上で直接合成され得る。様々な自動合成装置
が市販されており、既知のプロトコールに従って使用することができる。溶液相中のペプ
チドの合成は、合成ペプチドの大規模生産のための十分に確立された手順となっており、
したがって、本発明のペプチドを調製するための好適な代替方法である(例えば、Sol
id Phase Peptide Synthesis by John Morro
w Stewart、及びMartin et al.Application of
Almez-mediated Amidation Reactions to So
lution Phase Peptide Synthesis,Tetrahedr
on Letters Vol.39,pages 1517-1520,1998を参
照されたい)。
医薬組成物
【0317】
本明細書では、本明細書に記載されるcaTCRのいずれかによるcaTCR、及び本
明細書に記載のCSRのいずれかによるCSRを表面に提示する免疫細胞(T細胞など)
を含む、caTCR+CSR免疫細胞組成物(医薬組成物など、本明細書では製剤とも呼
ばれる)も提供される。いくつかの実施形態では、caTCR+CSR免疫細胞組成物は
、医薬組成物である。
【0318】
組成物は、同じ細胞型のものであり、同じcaTCR及びCSRを発現するcaTCR
+CSR免疫細胞を含む均質な細胞集団、又は異なる細胞型のcaTCR+CSR免疫細
胞を含み、異なるcaTCRを発現し、及び/又は異なるCSRを発現する、複数のca
TCR+CSR免疫細胞を含む異種細胞集団を含んでもよい。組成物は、caTCR+C
SR免疫細胞ではない細胞を更に含んでもよい。
【0319】
したがって、いくつかの実施形態では、同じ細胞型のものであり、同じcaTCR及び
CSRを発現するcaTCR+CSR免疫細胞(caTCR+CSR T細胞など)の均
質な細胞集団を含む、caTCR+CSR免疫細胞組成物が提供される。いくつかの実施
形態では、caTCR+CSR免疫細胞は、T細胞である。いくつかの実施形態では、c
aTCR+CSR免疫細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT
細胞、及びサプレッサーT細胞からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、c
aTCR+CSR免疫細胞組成物は、医薬組成物である。
【0320】
いくつかの実施形態では、異なる細胞型のcaTCR+CSR免疫細胞を含み、異なる
caTCRを発現し、及び/又は異なるCSRを発現する複数のcaTCR+CSR免疫
細胞集団を含む異種細胞集団を含むcaTCR+CSR免疫細胞組成物が提供される。い
くつかの実施形態では、caTCR+CSR免疫細胞は、T細胞である。いくつかの実施
形態では、caTCR+CSR免疫細胞の各集団は、互いに独立して、細胞傷害性T細胞
、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞、及びサプレッサーT細胞からなる群から選
択される細胞型のものである。いくつかの実施形態では、組成物中のcaTCR+CSR
免疫細胞の全ては、同じ細胞型のものである(例えば、caTCR+CSR免疫細胞の全
ては細胞傷害性T細胞である)。いくつかの実施形態では、caTCR+CSR免疫細胞
の少なくとも1つの集団は、他とは異なる細胞型のものである(例えば、caTCR+C
SR免疫細胞の1つの集団は細胞傷害性T細胞からなり、caTCR+CSR免疫細胞の
他の集団は、ナチュラルキラーT細胞からなる)。いくつかの実施形態では、caTCR
+CSR免疫細胞の各集団は、同じcaTCRを発現する。いくつかの実施形態では、c
aTCR+CSR免疫細胞の少なくとも1つの集団は、他とは異なるcaTCRを発現す
る。いくつかの実施形態では、caTCR+CSR免疫細胞の各集団は、他とは異なるc
aTCRを発現する。いくつかの実施形態では、caTCR+CSR免疫細胞の各集団は
、同じ標的抗原に特異的に結合するcaTCRを発現する。いくつかの実施形態では、c
aTCR+CSR免疫細胞の少なくとも1つの集団は、他とは異なる標的抗原に特異的に
結合するcaTCRを発現する(例えば、caTCR+CSR免疫細胞の1つの集団は、
pMHC複合体に特異的に結合し、caTCR+CSR免疫細胞の他の集団は、細胞表面
受容体に特異的に結合する)。いくつかの実施形態では、caTCR+CSR免疫細胞の
少なくとも1つの集団が、異なる標的抗原に特異的に結合するcaTCRを発現する場合
、caTCR+CSR免疫細胞の各集団は、同じ疾患又は障害に関連する標的抗原に特異
的に結合するcaTCRを発現する(例えば、標的抗原のそれぞれは、乳癌などのがんに
関連する)。いくつかの実施形態では、caTCR+CSR免疫細胞の各集団は、同じC
SRを発現する。いくつかの実施形態では、caTCR+CSR免疫細胞の少なくとも1
つの集団は、他とは異なるCSRを発現する。いくつかの実施形態では、caTCR+C
SR免疫細胞の各集団は、他とは異なるCSRを発現する。いくつかの実施形態では、c
aTCR+CSR免疫細胞の各集団は、同じ標的リガンドに特異的に結合するCSRを発
現する。いくつかの実施形態では、caTCR+CSR免疫細胞の少なくとも1つの集団
は、他とは異なる標的リガンドに特異的に結合するCSRを発現する(例えば、caTC
R+CSR免疫細胞の1つの集団は、pMHC複合体に特異的に結合し、caTCR+C
SR免疫細胞の他の集団は、細胞表面受容体に特異的に結合する)。いくつかの実施形態
では、caTCR+CSR免疫細胞の少なくとも1つの集団が、異なる標的リガンドに特
異的に結合するCSRを発現する場合、caTCR+CSR免疫細胞の各集団は、同じ疾
患又は障害に関連する標的リガンドに特異的に結合するCSRを発現する(例えば、標的
リガンドのそれぞれは、乳癌などのがんに関連する)。いくつかの実施形態では、caT
CR+CSR免疫細胞組成物は、医薬組成物である。
【0321】
したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載される実施形態のいずれかによ
る複数のcaTCR+CSR免疫細胞集団を含むcaTCR+CSR免疫細胞組成物が提
供され、組成物中のcaTCR+CSR免疫細胞の全てが同じ細胞型であり(例えば、c
aTCR+CSR免疫細胞の全てが細胞傷害性T細胞である)、caTCR+CSR免疫
細胞の各集団は、他とは異なるcaTCRを発現する。いくつかの実施形態では、caT
CR+CSR免疫細胞は、T細胞である。いくつかの実施形態では、caTCR+CSR
免疫細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞、及びサプレ
ッサーT細胞からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、caTCR+CSR
免疫細胞の各集団は、同じ標的抗原に特異的に結合するcaTCRを発現する。いくつか
の実施形態では、caTCR+CSR免疫細胞の少なくとも1つの集団は、他のものとは
異なる標的抗原に特異的に結合するcaTCRを発現する(例えば、caTCR+CSR
免疫細胞の1つの集団は、pMHC複合体に特異的に結合し、caTCR+CSR免疫細
胞の他の集団は、細胞表面受容体に特異的に結合する)。いくつかの実施形態では、ca
TCR+CSR免疫細胞の少なくとも1つの集団が、異なる標的抗原に特異的に結合する
caTCRを発現する場合、caTCR+CSR免疫細胞の各集団は、同じ疾患又は障害
に関連する標的抗原に特異的に結合するcaTCRを発現する(例えば、標的抗原のそれ
ぞれは、乳癌などのがんに関連する)。いくつかの実施形態では、caTCR+CSR免
疫細胞組成物は、医薬組成物である。
【0322】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される実施形態のいずれかによる複数のca
TCR+CSR免疫細胞集団を含むcaTCR+CSR免疫細胞組成物が提供され、組成
物中のcaTCR+CSR免疫細胞の全てが同じ細胞型であり(例えば、caTCR+C
SR免疫細胞の全てが細胞傷害性T細胞である)、caTCR+CSR免疫細胞の各集団
は、他とは異なるCSRを発現する。いくつかの実施形態では、caTCR+CSR免疫
細胞は、T細胞である。いくつかの実施形態では、caTCR+CSR免疫細胞は、細胞
傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞、及びサプレッサーT細胞から
なる群から選択される。いくつかの実施形態では、caTCR+CSR免疫細胞の各集団
は、同じ標的リガンドに特異的に結合するCSRを発現する。いくつかの実施形態では、
caTCR+CSR免疫細胞の少なくとも1つの集団は、他のものとは異なる標的リガン
ドに特異的に結合するCSRを発現する(例えば、caTCR+CSR免疫細胞の1つの
集団は、pMHC複合体に特異的に結合し、caTCR+CSR免疫細胞の他の集団は、
細胞表面受容体に特異的に結合する)。いくつかの実施形態では、caTCR+CSR免
疫細胞の少なくとも1つの集団が、異なる標的リガンドに特異的に結合するCSRを発現
する場合、caTCR+CSR免疫細胞の各集団は、同じ疾患又は障害に関連する標的リ
ガンドに特異的に結合するCSRを発現する(例えば、標的リガンドのそれぞれは、乳癌
などのがんに関連する)。いくつかの実施形態では、caTCR+CSR免疫細胞組成物
は、医薬組成物である。
【0323】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される実施形態のいずれかによる複数のca
TCR+CSR免疫細胞集団を含む組成物が提供され、caTCR+CSR免疫細胞の少
なくとも1つの集団は、他とは異なる細胞型のものである。いくつかの実施形態では、c
aTCR及びCSR免疫細胞の集団の全ては、異なる細胞型のものである。いくつかの実
施形態では、caTCR+CSR免疫細胞は、T細胞である。いくつかの実施形態では、
caTCR+CSR免疫細胞の各集団は、互いに独立して、細胞傷害性T細胞、ヘルパー
T細胞、ナチュラルキラーT細胞、及びサプレッサーT細胞からなる群から選択される細
胞型のものである。いくつかの実施形態では、caTCR+CSR免疫細胞の各集団は、
同じcaTCRを発現する。いくつかの実施形態では、caTCR+CSR免疫細胞の少
なくとも1つの集団は、他とは異なるcaTCRを発現する。いくつかの実施形態では、
caTCR+CSR免疫細胞の各集団は、他とは異なるcaTCRを発現する。いくつか
の実施形態では、caTCR+CSR免疫細胞の各集団は、同じ標的抗原に特異的に結合
するcaTCRを発現する。いくつかの実施形態では、caTCR+CSR免疫細胞の少
なくとも1つの集団は、他のものとは異なる標的抗原に特異的に結合するcaTCRを発
現する(例えば、caTCR+CSR免疫細胞の1つの集団は、pMHC複合体に特異的
に結合し、caTCR+CSR免疫細胞の他の集団は、細胞表面受容体に特異的に結合す
る)。いくつかの実施形態では、caTCR+CSR免疫細胞の少なくとも1つの集団が
、異なる標的抗原に特異的に結合するcaTCRを発現する場合、caTCR+CSR免
疫細胞の各集団は、同じ疾患又は障害に関連する標的抗原に特異的に結合するcaTCR
を発現する(例えば、標的抗原のそれぞれは、乳癌などのがんに関連する)。いくつかの
実施形態では、caTCR+CSR免疫細胞の各集団は、同じCSRを発現する。いくつ
かの実施形態では、caTCR+CSR免疫細胞の少なくとも1つの集団は、他とは異な
るCSRを発現する。いくつかの実施形態では、caTCR+CSR免疫細胞の各集団は
、他とは異なるCSRを発現する。いくつかの実施形態では、caTCR+CSR免疫細
胞の各集団は、同じ標的リガンドに特異的に結合するCSRを発現する。いくつかの実施
形態では、caTCR+CSR免疫細胞の少なくとも1つの集団は、他のものとは異なる
標的リガンドに特異的に結合するCSRを発現する(例えば、caTCR+CSR免疫細
胞の1つの集団は、pMHC複合体に特異的に結合し、caTCR+CSR免疫細胞の他
の集団は、細胞表面受容体に特異的に結合する)。いくつかの実施形態では、caTCR
+CSR免疫細胞の少なくとも1つの集団が、異なる標的リガンドに特異的に結合するC
SRを発現する場合、caTCR+CSR免疫細胞の各集団は、同じ疾患又は障害に関連
する標的リガンドに特異的に結合するCSRを発現する(例えば、標的リガンドのそれぞ
れは、乳癌などのがんに関連する)。いくつかの実施形態では、caTCR+CSR免疫
細胞組成物は、医薬組成物である。
【0324】
組成物の調製中の様々な時点において、細胞を凍結保存することが必要であるか、又は
有益であり得る。用語「凍結される/凍結する」及び「凍結保存される/冷凍保存する」
は、互換可能に使用することができる。凍結は凍結乾燥を含む。
【0325】
当業者には理解されるように、細胞の凍結は破壊的であり得る(Mazur,P.,1
977,Cryobiology 14:251-272を参照されたい)が、そのよう
な損傷を防止するために利用可能な多くの手順が存在する。例えば、損傷は、(a)凍結
保護剤の使用、(b)凍結速度の制御、及び/又は(c)分解反応を最小限に抑えるため
に十分な低い温度で保管することによって回避することができる。例示的な凍結保護剤と
しては、ジメチルスルホキシド(DMSO)(Lovelock and Bishop
,1959,Nature 183:1394-1395、Ashwood-Smith
,1961,Nature 190:1204-1205)、グリセロール、ポリビニル
ピロリドン(Rinfret,1960,Ann.N.Y.Acad.Sci.85:5
76)、ポリエチレングリコール(Sloviter and Ravdin,1962
,Nature 196:548)、アルブミン、デキストラン、スクロース、エチレン
グリコール、i-エリスリトール、D-リビトール、D-マンニトール(Rowe et
al.,1962,Fed.Proc.21:157)、D-ソルビトール、i-イノ
シトール、D-ラクトース、塩化コリン(Bender et al.,1960,J.
Appl.Physiol.15:520)、アミノ酸(Phan The Tran
and Bender,1960,Exp.Cell Res.20:651)、メタノ
ール、アセトアミド、グリセロールモノアセテート(Lovelock,1954,Bi
ochem.J.56:265)、及び無機塩(Phan The Tran and
Bender,1960,Proc.Soc.Exp.Biol.Med.104:38
8、Phan The Tran and Bender,1961,Radiobio
logy,Proceedings of the Third Australian
Conference on Radiobiology,Lllery ed.,B
utterworth,London,p.59)が挙げられる。特定の実施形態では、
DMSOを使用することができる。血漿の添加(例えば、20~25%の濃度まで)は、
DMSOの保護効果を増強することができる。DMSOを添加した後、1%のDMSO濃
度は4℃を超える温度で毒性であり得るため、凍結まで細胞を0℃で維持することができ
る。
【0326】
細胞の冷凍保存において、低速制御冷却速度は重要であり得、異なる凍結保護剤(Ra
patz et al.,1968,Cryobiology 5(1):18-25)
及び異なる細胞型は、異なる最適冷却速度を有する(例えば、Rowe and Rin
fret,1962,Blood 20:636、Rowe,1966,Cryobio
logy 3(1):12-18、Lewis,et al.,1967,Transf
usion 7(1):17-32、並びに、幹細胞の生存及びそれらの移植可能性に対
する冷却速度の影響についてのMazur,1970,Science 168:939
-949を参照されたい)。水が氷になる融解相の熱は、最小限であるべきである。冷却
手順は、例えば、プログラム可能な凍結装置又はメタノール浴手順の使用によって実行す
ることができる。プログラム可能な凍結装置は、最適な冷却速度の決定を可能にし、標準
的な再現可能な冷却を促進する。
【0327】
特定の実施形態では、DMSO処理した細胞を、氷上で予め冷却し、冷却メタノールを
収容するトレーに移すことができ、転じて-80℃の機械的冷凍庫(例えば、Harri
s又はRevco)内に定置する。メタノール浴及び試料の熱電対測定値は、1℃~3℃
/分の冷却速度を示すことが好ましくあり得る。少なくとも2時間後、試料は-80℃の
温度に到達することができ、液体窒素(-196℃)に直接配置することができる。
【0328】
完全凍結後、細胞は、長期凍結保存容器に迅速に移され得る。好ましい実施形態では、
試料は、液体窒素(-196℃)又は蒸気(-1℃)に低温保存することができる。この
ような貯蔵は、高効率の液体窒素冷凍庫の利用可能性によって促進される。
【0329】
細胞の操作、冷凍保存、及び長期保存のための更なる検討及び手順は、以下の例示的な
参考文献:米国特許第4,199,022号、同第3,753,357号、及び同第4,
559,298号、Gorin,1986,Clinin Haematology 1
5(1):19-48、Bone-Marrow Conservation,Cult
ure and Transplantation,Proceedings of a
Panel,Moscow,July 22-26,1968,Internatio
nal Atomic Energy Agency,Vienna,pp.107-1
86、Livesey and Linner,1987,Nature 327:25
5、Linner et al.,1986,J.Histochem.Cytoche
m.34(9):1 123-1 135、Simione,1992,J.Paren
ter.Sci.Technol.46(6):226-32に見出すことができる。
【0330】
冷凍保存後、凍結した細胞を、当業者に既知の方法に従って使用するために解凍するこ
とができる。凍結した細胞は、好ましくは迅速に解凍され、解凍直後に冷却される。特定
の実施形態では、凍結した細胞を収容するバイアルを、温水浴中でその頸状部まで浸漬す
ることができ、穏やかな回転により、解凍するときの細胞懸濁液の混合、及び温水から内
部氷塊への熱伝達の増加を確実にする。氷が完全に融解するとすぐに、直ちに氷の上にバ
イアルを載せることができる。
【0331】
特定の実施形態では、解凍中の細胞凝集を防止する、方法を使用することができる。例
示的な方法としては、DNase(Spitzer et al.,1980,Canc
er 45:3075-3085)、低分子量デキストラン及びクエン酸、ヒドロキシエ
チルデンプン(Stiff et al.,1983,Cryobiology 20:
17-24)などの凍結前及び/又は凍結後の添加が挙げられる。[0162]当業者に
は理解されるように、ヒトに毒性がある凍結保護剤が使用される場合、治療的使用の前に
除去されるべきである。DMSOは、深刻な毒性を有さない。
【0332】
細胞の例示的な担体及び投与方法は、米国特許公開第2010/0183564号の1
4~15ページに記載されている。追加の医薬担体は、Remington:The S
cience and Practice of of Macy,21 st Edi
tion,David B.Troy,ed.,Lippicott Williams
& Wilkins(2005)に記載されている。
【0333】
特定の実施形態では、細胞を培養培地から採取し、洗浄し、治療有効量で担体に濃縮す
ることができる。例示的な担体としては、生理食塩水、緩衝生理食塩水、生理食塩水、水
、Hanks溶液、リンガー溶液、Nonnosol-R(Abbott Labs)、
PlasmaLyte A(R)(Baxter Laboratories,Inc.
,Morton Grove,IL)、グリセロール、エタノール、及びこれらの組み合
わせが挙げられる。
【0334】
特定の実施形態では、担体は、ヒト血清アルブミン(HSA)又は他のヒト血清成分又
はウシ胎児血清を補充することができる。特定の実施形態では、注入のための担体は、5
%HAS又はデキストロースを有する緩衝化生理食塩水を含む。さらなる等張剤として、
三価以上の糖アルコール、例えばグリセリン、エリスリトール、アラビトール、キシリト
ール、ソルビトール、又はマンニトールを含む多価糖アルコールが挙げられる。
【0335】
担体としては、クエン酸緩衝剤、コハク酸塩緩衝剤、酒石酸緩衝剤、フマル酸緩衝剤、
グルコン酸緩衝剤、シュウ酸緩衝剤、乳酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、ヒスチジ
ン緩衝剤、及び/又はトリメチルアミン塩などの緩衝剤を挙げることができる。
【0336】
安定剤は、容器壁への細胞の接着を防止するのに役立つ増量剤から添加剤までの範囲で
機能することができる、広範囲の賦形剤を指す。典型的な安定剤としては、多価糖アルコ
ール;アルギニン、リジン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アラニ
ン、オルニチン、L-ロイシン、2-フェニルアラニン、グルタミン酸、及びスレオニン
などのアミノ酸;ラクトース、トレハロース、スタキオース、マンニトール、ソルビトー
ル、キシリトール、リビトール、ミオニシトール、ガラクチトール、グリセロール、など
の有機等又は糖アルコール、及びイノシトールなどのシクリトール;PEG;アミノ酸ポ
リマー;尿素、グルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリセロ
ール、α-モノチオグリセロール、及びチオ硫酸ナトリウムなどのイオウ含有還元剤;低
分子量ポリペプチド(すなわち、<10残基);HSA、ウシ血清アルブミン、ゼラチン
、又は免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;
キシロース、マンノース、フルクトース、及びグルコースなどの単糖類;ラクトース、マ
ルトース、及びスクロースなどの二糖類;ラフィノースなどの三糖類、及びデキストラン
などの多糖類を挙げることができる。
【0337】
必要な又は有益な場合、組成物は、注射部位における疼痛を和らげるためにリドカイン
などの局所麻酔剤を含むことができる。
【0338】
例示的な防腐剤としては、フェノール、ベンジルアルコール、メタ-クレゾール、メチ
ルパラベン、プロピルパラベン、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、
ベンザルコニウムハライド、ヘキサメトニウムクロリド、メチル又はプロピルパラベンな
どのアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、及び3-ペ
ンタノールが挙げられる。
【0339】
組成物内の治療的に有効な量は、10細胞超、10細胞超、10細胞超、10
細胞超、10細胞超、10細胞超、10細胞超、10細胞超、1010細胞超、
又は1011細胞超であり得る。
【0340】
本明細書に開示される組成物及び製剤において、細胞は、概して、1リットル以下、5
00ml以下、250ml以下、又は100ml以下の容積中にある。したがって、投与
される細胞の密度は、典型的には、10細胞/ml、10細胞/ml、又は10
胞/ml超である。
【0341】
本明細書では、本明細書に記載のcaTCR及び/又はCSR及び/又はSSEをコー
ドする核酸のいずれかを含む核酸組成物(医薬組成物など、本明細書では製剤とも呼ばれ
る)も提供される。いくつかの実施形態では、核酸組成物は、医薬組成物である。いくつ
かの実施形態では、核酸組成物は、等張剤、賦形剤、希釈剤、増粘剤、安定剤、緩衝剤、
及び/若しくは防腐剤、並びに/又は精製水、水性糖溶液、緩衝液、生理食塩水、水性ポ
リマー溶液、又はRNase遊離水などの水性媒体のいずれかを更に含む。そのような添
加剤及び添加される水性媒体の量は、核酸組成物の使用形態に従って適切に選択すること
ができる。
【0342】
本明細書に開示される組成物及び製剤は、例えば、注射、注入、灌流、又は洗浄によっ
て投与するために調製することができる。組成物及び製剤は、骨髄、静脈内、皮内、動脈
内、節内、リンパ内、腹腔内、病巣内、前立腺内、膣内、直腸内、局所内、髄腔内、腫瘍
内、筋肉内、膀胱内、及び/又は皮下の注射のために更に製剤化することができる。
【0343】
インビボ投与に使用される製剤は、滅菌される必要がある。これは、例えば、滅菌ろ過
膜を通じたろ過によって容易に達成される。
caTCR+CSR免疫細胞を使用する治療方法
【0344】
本発明のcaTCR+CSR免疫細胞は、例えば、がん及び感染性疾患(ウイルス感染
症など)を含む、標的抗原(TA)発現に関連する疾患及び/又は障害(本明細書では、
「標的抗原陽性」又は「TA陽性」疾患又は障害とも呼ばれる)を治療するために、個体
(例えば、ヒトなどの哺乳動物)に投与することができる。したがって、いくつかの実施
形態では、本出願は、本明細書に記載される実施形態のいずれか1つによるcaTCR+
CSR免疫細胞を含む有効量の組成物(医薬組成物など)を個体に投与することを含む、
個体における標的抗原陽性疾患(がん又はウイルス感染など)を治療するための方法を提
供する。いくつかの実施形態では、がんは、例えば、副腎皮質癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸
癌、胆管細胞癌、大腸直腸癌、食道癌、神経膠芽腫、神経膠腫、肝細胞癌、頭頸部癌、腎
臓癌、白血病、肺癌、リンパ腫、黒色腫、中皮腫、多発性骨髄腫、膵臓癌、褐色細胞腫、
形質細胞腫、神経芽腫、卵巣癌、前立腺癌、肉腫、胃癌、子宮癌、及び甲状腺癌からなる
群から選択される。いくつかの実施形態では、ウイルス感染は、例えば、サイトメガロウ
イルス(CMV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、B型肝炎ウイルス(HBV
)、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)
、伝染性軟属腫ウイルス(MCV)、ヒトT細胞白血病ウイルス1(HTLV-1)、H
IV(ヒト免疫不全ウイルス)、及びC型肝炎ウイルス(HCV)からなる群から選択さ
れるウイルスによって引き起こされる。
【0345】
例えば、いくつかの実施形態では、標的抗原関連疾患(がん又はウイルス感染症など)
を、治療を必要とする個体において治療する方法であって、a)i)TCRの膜貫通ドメ
インのうちの1つに由来する第1のTCR-TMを含む第1のTCRD、及びTCRの他
の膜貫通ドメインに由来する第2のTCR-TMを含む第2のTCRD、並びにii)標
的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュールを含み、第1及び第2のTCRDが少なく
とも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することができるTCRMを形成し、抗原
結合モジュールが第1及び/又は第2のTCRDに連結する、caTCRと、b)i)標
的リガンドに特異的に結合するリガンド結合ドメイン、ii)膜貫通ドメイン、及びii
i)免疫細胞に共刺激シグナルを提供することのできる細胞内シグナル伝達ドメインを含
む、キメラシグナル伝達受容体(CSR)と、を表面に提示する免疫細胞(T細胞又はナ
チュラルキラー細胞など)を含む有効量の組成物を個体に投与することを含む、方法が提
供される。いくつかの実施形態では、TCR-TMの両方が天然に存在する。いくつかの
実施形態では、TCR-TMのうちの少なくとも1つは、天然に存在しない。いくつかの
実施形態では、TCRはαβ TCRであり、第1及び第2のTCR-TMは、TCR
α及びβサブユニット膜貫通ドメインに由来する。いくつかの実施形態では、TCRはγ
δ TCRであり、第1及び第2のTCR-TMは、TCR γ及びδサブユニット膜貫
通ドメインに由来する。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR連結
ペプチド又はその断片を更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR連結ペプ
チド又はその断片を更に含む。いくつかの実施形態では、第1の連結ペプチドは、第1の
TCR-TMが由来するTCRサブユニットの連結ペプチドの全て若しくは一部、又はそ
の変異型を含み、及び/又は第2の連結ペプチドは、第2のTCR-TMが由来するTC
Rサブユニットの連結ペプチドの全て若しくは一部、又はこれらの変異型を含む。いくつ
かの実施形態では、第1及び第2の連結ペプチドは、ジスルフィド結合によって連結され
る。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR細胞内ドメインを更に含
み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR細胞内ドメインを更に含む。いくつかの
実施形態では、第1のTCR細胞内ドメインは、第1のTCR-TMが由来するTCRサ
ブユニットの細胞内ドメイン由来の配列を含み、及び/又は第2のTCR細胞内ドメイン
は、第2のTCR-TMが由来するTCRサブユニットの細胞内ドメイン由来の配列を含
む。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR-TMが由来するTCR
サブユニットの断片であり、及び/又は、第2のTCRDは、第2のTCR-TMが由来
するTCRサブユニットの断片である。いくつかの実施形態では、caTCRは、T細胞
共刺激シグナル伝達配列(CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、
CD30、又はCD40由来など)を含む、少なくとも1つのアクセサリー細胞内ドメイ
ンを更に含む。いくつかの実施形態では、caTCRが、第1の安定化ドメイン及び第2
の安定化ドメインを含む安定化モジュールを更に含み、第1及び第2の安定化ドメインが
、caTCRを安定化させる、互いの結合親和性を有する。いくつかの実施形態では、第
1及び第2の安定化ドメインは、ジスルフィド結合によって連結される。いくつかの実施
形態では、第1及び第2の安定化ドメインは、C1及びC抗体ドメインなどの抗体ド
メイン、又はその変異型を含む。いくつかの実施形態では、TCRMは、CD3δε、C
D3γε、及びζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達
分子を動員することができる。いくつかの実施形態では、TCRMは、T細胞受容体の膜
貫通ドメインを含むTCRMと比較して、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子
の動員を強化することができる。いくつかの実施形態では、TCRMは、caTCR-C
D3複合体形成を促進する。いくつかの実施形態では、任意の2つのcaTCRモジュー
ル間又はドメイン間にスペーサモジュールが存在する。いくつかの実施形態では、抗原結
合モジュールは、抗体部分である。いくつかの実施形態では、抗体部分は、Fab、Fa
b’、(Fab’)2、Fv、又は単鎖Fv(scFv)である。いくつかの実施形態で
は、抗原結合モジュールは、多重特異性(例えば、二重特異性)である。いくつかの実施
形態では、標的抗原は、細胞表面抗原である。いくつかの実施形態では、細胞表面抗原は
、タンパク質、炭水化物、及び脂質からなる群から選択される。いくつかの実施形態では
、細胞表面抗原は、腫瘍関連抗原又はウイルスコード抗原などの疾患関連抗原である。い
くつかの実施形態では、細胞表面抗原は、CD19、ROR1、ROR2、BCMA、G
PRC5D、又はFCRL5である。いくつかの実施形態では、標的抗原は、表面提示ペ
プチド/MHC複合体である。いくつかの実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、疾
患関連抗原(腫瘍関連抗原又はウイルスコード抗原など)に由来するペプチド及びMHC
タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、ペプチド及び
MHCタンパク質を含み、ペプチドは、WT-1、AFP、HPV16-E7、NY-E
SO-1、PRAME、EBV-LMP2A、及びPSAからなる群から選択されるタン
パク質に由来する。いくつかの実施形態では、MHCタンパク質は、MHCクラスIタン
パク質である。いくつかの実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-Aであ
る。いくつかの実施形態では、HLA-Aは、HLA-A02である。いくつかの実施形
態では、HLA A02は、HLA-A02:01である。いくつかの実施形態では、
CSRの標的リガンドは、細胞表面抗原である。いくつかの実施形態では、標的リガンド
は、ペプチド/MHC複合体である。いくつかの実施形態では、CSRの標的リガンド及
びcaTCRの標的抗原は同じである。いくつかの実施形態では、標的リガンドと標的抗
体は異なる。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、疾患関連リガンドである。いく
つかの実施形態では、標的リガンドは、がん関連リガンドである。いくつかの実施形態で
は、がん関連リガンドは、例えば、CD19、CD20、CD22、CD47、IL4、
GPC-3、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5D、又はFCRL5である。い
くつかの実施形態では、がん関連リガンドは、WT-1、AFP、HPV16-E7、N
Y-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、及びPSAを含むタンパク質に由来
するペプチドを含むペプチド/MHC複合体である。いくつかの実施形態では、標的リガ
ンドは、ウイルス関連リガンドである。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、免疫
チェックポイント分子である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント分子は、
PD-L1、PD-L2、CD80、CD86、ICOSL、B7-H3、B7-H4、
HVEM、4-1BBL、OX40L、CD70、CD40、及びGAL9を含む。いく
つかの実施形態では、標的リガンドは、アポトーシス分子である。いくつかの実施形態で
は、アポトーシス分子は、FasL、FasR、TNFR1、及びTNFR2を含む。い
くつかの実施形態では、リガンド結合ドメインは、抗体部分である。いくつかの実施形態
では、リガンド結合ドメインの抗体部分は、Fab、Fab’、(Fab’)2、Fv、
又は単鎖Fv(scFv)である。いくつかの実施形態では、リガンド結合ドメインは、
標的リガンドの受容体の細胞外ドメインの全て又は一部である(又はそれに由来する)。
いくつかの実施形態では、受容体は、例えば、FasR、TNFR1、TNFR2、PD
-1、CD28、CTLA-4、ICOS、BTLA、KIR、LAG-3、4-1BB
、OX40、CD27、及びTIM-3を含む。いくつかの実施形態では、CSRの膜貫
通ドメインは、例えば、CD28、CD3ε、CD3ζ、CD45、CD4、CD5、C
D8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD8
6、CD134、CD137、又はCD154に由来する膜貫通ドメインを含む。いくつ
かの実施形態では、CSRの共刺激シグナル伝達ドメインは、例えば、CD27、CD2
8、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、ICOS、リンパ球機
能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3
、CD83と特異的に結合するリガンドなどを含む免疫細胞共刺激分子の細胞内ドメイン
の全て又は一部を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。いくつかの実施
形態では、CSRは、リガンド結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び共刺激シグナル伝達
ドメインのいずれかの間にスペーサドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、スペ
ーサドメインは、2つのCSRドメインを連結するペプチドリンカーを含む。いくつかの
実施形態では、免疫細胞はγδ T細胞である。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、
TCR α及び/又はβ鎖の発現を遮断又は減少させるように改変されたαβ T細胞で
ある。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチ
ュラルキラーT細胞、及びサプレッサーT細胞からなる群から選択される。
【0346】
いくつかの実施形態では、標的抗原関連疾患(がん又はウイルス感染症など)を、治療
を必要とする個体において治療する方法であって、a)i)天然に存在するαβ TCR
の膜貫通ドメインのうちの1つに由来する第1のTCR-TMを含む第1のTCRD、及
び天然に存在するαβ TCRの他の膜貫通ドメインに由来する第2のTCR-TMを含
む第2のTCRD、並びにii)標的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュールを含み
、第1及び第2のTCRDが少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員するこ
とができるTCRMを形成し、抗原結合モジュールが第1及び/又は第2のTCRDに連
結する、標的抗原に特異的に結合するcaTCRと、b)i)標的リガンドに特異的に結
合するリガンド結合ドメイン、ii)膜貫通ドメイン、及びiii)免疫細胞に共刺激シ
グナルを提供することのできる細胞内シグナル伝達ドメインを含む、キメラシグナル伝達
受容体(CSR)と、を表面に提示する免疫細胞(T細胞又はナチュラルキラー細胞など
)を含む有効量の組成物を個体に投与することを含む、方法が提供される。
【0347】
いくつかの実施形態では、標的抗原関連疾患(がん又はウイルス感染症など)を、治療
を必要とする個体において治療する方法であって、a)i)天然に存在するγδ TCR
の膜貫通ドメインのうちの1つに由来する第1のTCR-TMを含む第1のTCRD、及
び天然に存在するγδ TCRの他の膜貫通ドメインに由来する第2のTCR-TMを含
む第2のTCRD、並びにii)標的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュールを含み
、第1及び第2のTCRDが少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員するこ
とができるTCRMを形成し、抗原結合モジュールが第1及び/又は第2のTCRDに連
結する、標的抗原に特異的に結合するcaTCRと、b)i)標的リガンドに特異的に結
合するリガンド結合ドメイン、ii)膜貫通ドメイン、及びiii)免疫細胞に共刺激シ
グナルを提供することのできる細胞内シグナル伝達ドメインを含む、キメラシグナル伝達
受容体(CSR)と、を表面に提示する免疫細胞(T細胞又はナチュラルキラー細胞など
)を含む有効量の組成物を個体に投与することを含む、方法が提供される。
【0348】
いくつかの実施形態では、標的抗原関連疾患(がん又はウイルス感染症など)を、治療
を必要とする個体において治療する方法であって、a)i)配列番号5のアミノ酸配列に
由来する第1のTCR-TMを含む第1のTCRD、及び配列番号6のアミノ酸配列に由
来する第2のTCR-TMを含む第2のTCRD、並びにb)標的抗原に特異的に結合す
る抗原結合モジュールを含み、第1及び第2のTCRDが少なくとも1つのTCR関連シ
グナル伝達分子を動員することができるTCRMを形成し、抗原結合モジュールが第1及
び/又は第2のTCRDに連結する、標的抗原に特異的に結合するcaTCRと、b)i
)標的リガンドに特異的に結合するリガンド結合ドメイン、ii)膜貫通ドメイン、及び
iii)免疫細胞に共刺激シグナルを提供することのできる細胞内シグナル伝達ドメイン
を含む、キメラシグナル伝達受容体(CSR)と、を表面に提示する免疫細胞(T細胞又
はナチュラルキラー細胞など)を含む有効量の組成物を個体に投与することを含む、方法
が提供される。いくつかの実施形態では、TCR-TMのうちの少なくとも1つは、それ
が由来するアミノ酸配列と比較して、1つ以上(2、3、4、5、又はそれ以上など)の
アミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、TCR-TMのそれぞれは、互いに独立
して、それが由来するアミノ酸配列と比較して、1つ以上(2、3、4、5、又はそれ以
上など)のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、第1のTCR-TM及び/又
は第2のTCR-TMはそれぞれ、互いに独立して、それらが由来するアミノ酸配列と比
較して、5個以下のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、TCR-TMのうち
の少なくとも1つは、それが由来するアミノ酸配列と比較して、単一のアミノ酸置換を含
む。いくつかの実施形態では、TCR-TMのそれぞれは、それが由来するアミノ酸配列
と比較して、単一のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、第1のTCR-TM
中の置換アミノ酸のうちの少なくとも1つは、caTCRにおいて、第2のTCR-TM
中の置換アミノ酸のうちの少なくとも1つと相互作用することができるように配置される
【0349】
いくつかの実施形態では、標的抗原関連疾患(がん又はウイルス感染症など)を、治療
を必要とする個体において治療する方法であって、a)i)配列番号7のアミノ酸配列に
由来する第1のTCR-TMを含む第1のTCRD、及び配列番号8のアミノ酸配列に由
来する第2のTCR-TMを含む第2のTCRD、並びにb)標的抗原に特異的に結合す
る抗原結合モジュールを含み、第1及び第2のTCRDが少なくとも1つのTCR関連シ
グナル伝達分子を動員することができるTCRMを形成し、抗原結合モジュールが第1及
び/又は第2のTCRDに連結する、標的抗原に特異的に結合するcaTCRと、b)i
)標的リガンドに特異的に結合するリガンド結合ドメイン、ii)膜貫通ドメイン、及び
iii)免疫細胞に共刺激シグナルを提供することのできる細胞内シグナル伝達ドメイン
を含む、キメラシグナル伝達受容体(CSR)と、を表面に提示する免疫細胞(T細胞又
はナチュラルキラー細胞など)を含む有効量の組成物を個体に投与することを含む、方法
が提供される。いくつかの実施形態では、TCR-TMのうちの少なくとも1つは、それ
が由来するアミノ酸配列と比較して、1つ以上(2、3、4、5、又はそれ以上など)の
アミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、TCR-TMのそれぞれは、互いに独立
して、それが由来するアミノ酸配列と比較して、1つ以上(2、3、4、5、又はそれ以
上など)のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、第1のTCR-TM及び/又
は第2のTCR-TMはそれぞれ、互いに独立して、それらが由来するアミノ酸配列と比
較して、5個以下のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、TCR-TMのうち
の少なくとも1つは、それが由来するアミノ酸配列と比較して、単一のアミノ酸置換を含
む。いくつかの実施形態では、TCR-TMのそれぞれは、それが由来するアミノ酸配列
と比較して、単一のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、第1のTCR-TM
中の置換アミノ酸のうちの少なくとも1つは、caTCRにおいて、第2のTCR-TM
中の置換アミノ酸のうちの少なくとも1つと相互作用することができるように配置される
。いくつかの実施形態では、第1のTCR-TM及び第2のTCR-TMは、表2に列挙
されるcaTCRのいずれかに従って選択される。いくつかの実施形態では、CSRドメ
インは、表3に列挙されるCSRのいずれかに従って選択される。
【0350】
いくつかの実施形態では、標的抗原関連疾患(がん又はウイルス感染症など)を、治療
を必要とする個体において治療する方法であって、a)i)配列番号10のアミノ酸配列
を有する第1のTCR-TMを含む第1のTCRD、及び配列番号16のアミノ酸配列を
有する第2のTCR-TMを含む第2のTCRD、並びにb)標的抗原に特異的に結合す
る抗原結合モジュールを含み、第1及び第2のTCRDが少なくとも1つのTCR関連シ
グナル伝達分子を動員することができるTCRMを形成し、抗原結合モジュールが第1及
び/又は第2のTCRDに連結する、標的抗原に特異的に結合するcaTCRと、b)i
)標的リガンドに特異的に結合するリガンド結合ドメイン、ii)膜貫通ドメイン、及び
iii)免疫細胞に共刺激シグナルを提供することのできる細胞内シグナル伝達ドメイン
を含む免疫細胞共刺激分子の断片(fCSM)を含み、共刺激分子の断片が、配列番号5
1~56及び86~89のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む、キメラシグナル伝
達受容体(CSR)と、を表面に提示する免疫細胞(T細胞又はナチュラルキラー細胞な
ど)を含む有効量の組成物を個体に投与することを含む、方法が提供される。いくつかの
実施形態では、CSR膜貫通ドメインは、CD8に由来する。いくつかの実施形態では、
CSRは、膜貫通タンパク質の断片(fTMP)を含み、膜貫通タンパク質の断片は、配
列番号57のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CSRは、リガンド結合ド
メインに続くスペーサペプチドを含む。いくつかの実施形態では、スペーサペプチドは、
配列番号103又は104のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CSRドメ
インは、表3に列挙されるCSRのいずれかに従って選択される。いくつかの実施形態で
は、標的抗原はCD19である。いくつかの実施形態では、標的リガンドはCD19であ
る。いくつかの実施形態では、caTCRの抗原結合モジュールは、配列番号58のアミ
ノ酸配列を含むVドメインと、配列番号59のアミノ酸配列を含むVドメインと、を
含むFab様抗原結合部分である。いくつかの実施形態では、標的抗原はCD19であり
、標的リガンドはCD19である。いくつかの実施形態では、CSRのリガンド結合ドメ
インは、配列番号77のアミノ酸配列を含むscFvである。いくつかの実施形態では、
標的抗原はCD19であり、標的リガンドはCD20である。いくつかの実施形態では、
CSRのリガンド結合ドメインは、配列番号78のアミノ酸配列を含むscFvである。
いくつかの実施形態では、標的抗原はAFPペプチド/MHC複合体(例えば、AFP1
58/HLA-A02複合体)であり、標的リガンドはGPC3である。いくつかの実施
形態では、caTCRの抗原結合モジュールは、配列番号62のアミノ酸配列を含むV
ドメインと、配列番号63のアミノ酸配列を含むVドメインと、を含むFab様抗原結
合部分である。いくつかの実施形態では、CSRのリガンド結合ドメインは、配列番号7
9のアミノ酸配列を含むscFvである。
【0351】
いくつかの実施形態では、CD19関連疾患(がんなど)を、治療を必要とする個体に
おいて治療する方法であって、a)i)配列番号10のアミノ酸配列を有する第1のTC
R-TMを含む第1のTCRD、及び配列番号16のアミノ酸配列を有する第2のTCR
-TMを含む第2のTCRD、並びにb)配列番号58のアミノ酸配列を含むVドメイ
ンを含む第1のFab鎖及び配列番号59のアミノ酸配列を含むVドメインを含む第2
のFab鎖を含む、Fab様抗原結合モジュールを含み、第1及び第2のTCRDが少な
くとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することができるTCRMを形成し、第
1のFab鎖が第1及び第2のTCRDのうちの1つに連結し、第2のFab鎖が他のT
CRDに連結する、CD19に特異的に結合するcaTCRと、b)i)配列番号58の
アミノ酸配列を含むVドメイン及び配列番号59のアミノ酸配列を含むVドメインを
含む、CD19に特異的に結合するscFv、ii)膜貫通ドメイン、及びiii)免疫
細胞に共刺激シグナルを提供することのできる細胞内シグナル伝達ドメインを含む免疫細
胞共刺激分子の断片(fCSM)を含み、共刺激分子の断片が、配列番号51~56及び
86~89のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む、キメラシグナル伝達受容体(C
SR)と、を表面に提示する免疫細胞(T細胞又はナチュラルキラー細胞など)を含む有
効量の組成物を個体に投与することを含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では
、CSR膜貫通ドメインは、CD8に由来する。いくつかの実施形態では、CSRは、膜
貫通タンパク質の断片(fTMP)を含み、膜貫通タンパク質の断片は、配列番号57の
アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CSRは、リガンド結合ドメインに続く
スペーサペプチドを含む。いくつかの実施形態では、スペーサペプチドは、配列番号10
3又は104のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CSRドメインは、表3
に列挙されるCSRのいずれかに従って選択される。いくつかの実施形態では、CSRの
リガンド結合ドメインは、配列番号77のアミノ酸配列を含むscFvである。いくつか
の実施形態では、CD19関連疾患は、白血病、例えば、急性リンパ性白血病(ALL)
である。
【0352】
いくつかの実施形態では、CD19/CD20関連疾患(がんなど)を、治療を必要と
する個体において治療する方法であって、a)i)配列番号10のアミノ酸配列を有する
第1のTCR-TMを含む第1のTCRD、及び配列番号16のアミノ酸配列を有する第
2のTCR-TMを含む第2のTCRD、並びにb)配列番号58のアミノ酸配列を含む
ドメインを含む第1のFab鎖及び配列番号59のアミノ酸配列を含むVドメイン
を含む第2のFab鎖を含む、Fab様抗原結合モジュールを含み、第1及び第2のTC
RDが少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することができるTCRMを
形成し、第1のFab鎖が第1及び第2のTCRDのうちの1つに連結し、第2のFab
鎖が他のTCRDに連結する、CD19に特異的に結合するcaTCRと、b)i)配列
番号60のアミノ酸配列を含むVドメイン及び配列番号61のアミノ酸配列を含むV
ドメインを含む、CD20に特異的に結合するscFv、ii)膜貫通ドメイン、及びi
ii)免疫細胞に共刺激シグナルを提供することのできる細胞内シグナル伝達ドメインを
含む免疫細胞共刺激分子の断片(fCSM)を含み、共刺激分子の断片が、配列番号51
~56及び86~89のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む、キメラシグナル伝達
受容体(CSR)と、を表面に提示する免疫細胞(T細胞又はナチュラルキラー細胞など
)を含む有効量の組成物を個体に投与することを含む、方法が提供される。いくつかの実
施形態では、CSR膜貫通ドメインは、CD8に由来する。いくつかの実施形態では、C
SRは、膜貫通タンパク質の断片(fTMP)を含み、膜貫通タンパク質の断片は、配列
番号57のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CSRは、リガンド結合ドメ
インに続くスペーサペプチドを含む。いくつかの実施形態では、スペーサペプチドは、配
列番号103又は104のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CSRドメイ
ンは、表3に列挙されるCSRのいずれかに従って選択される。いくつかの実施形態では
、CSRのリガンド結合ドメインは、配列番号81のアミノ酸配列を含むscFvである
【0353】
いくつかの実施形態では、AFP/GPC3関連疾患(例えば、肝臓癌などのがんなど
)を、治療を必要とする個体において治療する方法であって、a)i)配列番号10のア
ミノ酸配列を有する第1のTCR-TMを含む第1のTCRD、及び配列番号16のアミ
ノ酸配列を有する第2のTCR-TMを含む第2のTCRD、並びにb)配列番号62の
アミノ酸配列を含むVドメインを含む第1のFab鎖及び配列番号63のアミノ酸配列
を含むVドメインを含む第2のFab鎖を含む、Fab様抗原結合モジュールを含み、
第1及び第2のTCRDが少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員すること
ができるTCRMを形成し、第1のFab鎖が第1及び第2のTCRDのうちの1つに連
結し、第2のFab鎖が他のTCRDに連結する、AFPペプチド/MHC複合体(例え
ば、AFP158/HLA-A02複合体)に特異的に結合するcaTCRと、b)i)
配列番号64のアミノ酸配列を含むVドメイン及び配列番号65のアミノ酸配列を含む
ドメインを含む、GPC3に特異的に結合するscFv、ii)膜貫通ドメイン、及
びiii)免疫細胞に共刺激シグナルを提供することのできる細胞内シグナル伝達ドメイ
ンを含む免疫細胞共刺激分子の断片(fCSM)を含み、共刺激分子の断片が、配列番号
51~56及び86~89のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む、キメラシグナル
伝達受容体(CSR)と、を表面に提示する免疫細胞(T細胞又はナチュラルキラー細胞
など)を含む有効量の組成物を個体に投与することを含む、方法が提供される。いくつか
の実施形態では、CSR膜貫通ドメインは、CD8に由来する。いくつかの実施形態では
、CSRは、膜貫通タンパク質の断片(fTMP)を含み、膜貫通タンパク質の断片は、
配列番号57のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CSRは、リガンド結合
ドメインに続くスペーサペプチドを含む。いくつかの実施形態では、スペーサペプチドは
、配列番号103又は104のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CSRド
メインは、表3に列挙されるCSRのいずれかに従って選択される。いくつかの実施形態
では、CSRのリガンド結合ドメインは、配列番号82のアミノ酸配列を含むscFvで
ある。
【0354】
異なるcaTCR及び/又は異なるCSRを発現する複数の免疫細胞を含む組成物を個
体に投与することを含む、治療を必要とする個体における標的抗原関連疾患を治療する方
法も想到される。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載される個体にお
ける標的抗原関連疾患を治療するための方法のいずれかによると、組成物は、本明細書に
記載される異種caTCR+CSR免疫細胞組成物である。
【0355】
いくつかの実施形態では、個体は、哺乳動物(例えば、ヒト、非ヒト霊長類、ラット、
マウス、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコなど)である。いくつかの実施形
態では、個体はヒトである。いくつかの実施形態では、個体は、臨床患者、臨床治験ボラ
ンティア、実験動物などである。いくつかの実施形態では、個体は、約60歳よりも若い
(例えば、約50、40、30、25、20、15、又は10歳のうちのいずれかよりも
若い)。いくつかの実施形態では、個体は、約60歳よりも老いている(例えば、約70
、80、90、又は100歳のうちのいずれかよりも老いている)。いくつかの実施形態
では、個体は、本明細書に記載される疾患若しくは障害(がん又はウイルス感染など)の
うちの1つ以上と診断されるか、又は環境的に若しくは遺伝的に発症する傾向にある。い
くつかの実施形態では、個体は、本明細書に記載される1つ以上の疾患又は障害に関連す
る1つ以上のリスク因子を有する。
【0356】
いくつかの実施形態では、本発明のcaTCR+CSR免疫細胞組成物は、標的抗原発
現を伴う疾患又は障害を治療するために、第2、第3、又は第4の薬剤(例えば、抗腫瘍
剤、増殖抑制剤、細胞傷害性剤、又は化学療法剤を含む)と組み合わせて投与される。い
くつかの実施形態では、caTCR+CSR免疫細胞組成物は、サイトカイン(IL-2
など)と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、caTCR+CSR免疫細
胞組成物は、MHCタンパク質の発現を増加させる、及び/又はMHCタンパク質による
ペプチドの表面提示を強化する薬剤と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では
、薬剤は、例えば、IFN受容体アゴニスト、Hsp90阻害剤、p53発現のエンハン
サー、及び化学療法剤を含む。いくつかの実施形態では、薬剤は、例えば、IFNγ、I
FNβ、及びIFNαを含むIFN受容体アゴニストである。いくつかの実施形態では、
薬剤は、Hsp90阻害剤であり、例えば、タエピマイシン(17-AAG)、アレベピ
マイシン(17-DMAG)、リタピマイシン(IPI-504)、IPI-493、C
NF2024/BIIB021、MPC-3100、Debio 0932(CUDC-
305)、PU-H71、Ganetespib(STA-9090)、NVP-AUY
922(VER-52269)、HSP990、KW-2478、AT13387、SN
X-5422、DS-2248、及びXL888を含む。いくつかの実施形態では、薬剤
は、例えば5-フルオロウラシル及びnutlin-3を含むp53発現のエンハンサー
である。いくつかの実施形態では、薬剤は、例えば、トポテカン、エトポシド、シスプラ
チン、パクリタキセル、及びビンブラスチンを含む化学療法剤である。
【0357】
いくつかの実施形態では、標的抗原陽性疾患を、治療を必要とする個体において治療す
る方法であって、本明細書に記載される実施形態のいずれかによるcaTCR+CSR免
疫細胞組成物を、サイトカイン(IL-2など)と組み合わせて個体に投与することを含
む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、caTCR+CSR免疫細胞組成物及
びサイトカインは同時に投与される。いくつかの実施形態では、caTCR+CSR免疫
細胞組成物及びサイトカインは、順次投与される。
【0358】
いくつかの実施形態では、標的抗原陽性疾患を、治療を必要とする個体において治療す
る方法であって、標的抗原を発現する細胞は、標的抗原及びMHCクラスIタンパク質を
含む複合体を、表面に通常には提示しないか、又は比較的低レベルで提示し、MHCクラ
スIタンパク質の発現を増加させる及び/又はMHCクラスIタンパク質による標的抗原
の表面提示を強化する薬剤と組み合わせて、本明細書に記載される実施形態のいずれかに
記載のcaTCR+CSR免疫細胞組成物を個体に投与することを含む、方法が提供され
る。いくつかの実施形態では、薬剤は、例えば、IFN受容体アゴニスト、Hsp90阻
害剤、p53発現のエンハンサー、及び化学療法剤を含む。いくつかの実施形態では、薬
剤は、例えば、IFNγ、IFNβ、及びIFNαを含むIFN受容体アゴニストである
。いくつかの実施形態では、薬剤は、Hsp90阻害剤であり、例えば、タエピマイシン
(17-AAG)、アレベピマイシン(17-DMAG)、リタピマイシン(IPI-5
04)、IPI-493、CNF2024/BIIB021、MPC-3100、Deb
io 0932(CUDC-305)、PU-H71、Ganetespib(STA-
9090)、NVP-AUY922(VER-52269)、HSP990、KW-24
78、AT13387、SNX-5422、DS-2248、及びXL888を含む。い
くつかの実施形態では、薬剤は、例えば5-フルオロウラシル及びnutlin-3を含
むp53発現のエンハンサーである。いくつかの実施形態では、薬剤は、例えば、トポテ
カン、エトポシド、シスプラチン、パクリタキセル、及びビンブラスチンを含む化学療法
剤である。いくつかの実施形態では、caTCR+CSR免疫細胞組成物及び薬剤は同時
に投与される。いくつかの実施形態では、caTCR+CSR免疫細胞組成物及び薬剤は
、順次投与される。
【0359】
いくつかの実施形態では、標的抗原関連疾患(がん又はウイルス感染症など)を、治療
を必要とする個体において治療する方法であって、本明細書に記載される実施形態のいず
れかによるcaTCR及びCSRをコードする核酸を含む有効量の組成物を個体に投与す
ることを含む、方法が提供される。遺伝子送達の方法は、当該技術分野において既知であ
る。例えば、参照によりその全てが本明細書に組み込まれる米国特許第5,399,34
6号、同5,580,859号、同5,589,466号を参照されたい。
【0360】
がん治療は、例えば、腫瘍退縮、腫瘍重量又はサイズ収縮、進行時間、生存期間、無増
悪生存率、全奏功率、応答期間、生活の質、タンパク質発現及び/又は活性によって評価
することができる。例えば、放射線学的イメージングによる応答の測定を含む、治療の有
効性を判定するためのアプローチを利用することができる。
【0361】
いくつかの実施形態では、治療の有効性は、式100-(T/C×100)を使用して
計算された腫瘍増殖阻害パーセント(TGI%)として測定され、式中、Tは、治療され
た腫瘍の平均相対腫瘍体積であり、Cは、未治療腫瘍の平均相対腫瘍体積である。いくつ
かの実施形態では、TGI%は、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、
約60%、約70%、約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、
約95%、又は95%超である。
【0362】
ウイルス感染治療は、例えば、ウイルス負荷、生存期間、生活の質、タンパク質発現、
及び/又は活性によって評価することができる。
疾患
【0363】
いくつかの実施形態では、caTCR+CSR免疫細胞は、標的抗原に関連するがんを
治療するのに有用であり得る。本明細書に記載される方法のいずれかを使用して治療され
得るがんには、血管新生化されていない、又はまだ実質的に血管新生化されていない腫瘍
、並びに血管新生化腫瘍が含まれる。がんは、非固形腫瘍(白血病及びリンパ腫などの血
液腫瘍など)を含み得るか、又は固形腫瘍を含み得る。本発明のcaTCR+CSR免疫
細胞で治療すべきがんの種類としては、がん腫、芽細胞腫、及び肉腫並びに特定の白血病
又はリンパ性悪性疾患、良性及び悪性の腫瘍、並びに悪性腫瘍、例えば肉腫、がん腫、及
び黒色腫が挙げられるが、これらに限定されない。成人の腫瘍/がん及び小児の腫瘍/が
んもまた含まれる。
【0364】
血液がんは、血液又は骨髄の癌である。血液学的(又は血液系)がんの例としては、急
性白血病(急性リンパ性白血病、急性骨髄球性白血病、急性骨髄性白血病及び骨髄芽球性
、前骨髄球性、骨髄球性、単球性及び赤血球性白血病など)、慢性白血病(慢性骨髄球性
(顆粒球)白血病、慢性骨髄性白血病、及び慢性リンパ性白血病)、多発性血中血症、リ
ンパ腫、ホジキンリンパ疾患、非ホジキンリンパ腫(緩慢性及び高悪性度形態)、多発性
骨髄腫、形質細胞腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、重鎖疾患、骨髄異形
成症候群、有毛細胞白血病、及び骨髄異形成症を含む白血病が挙げられる。
【0365】
固形腫瘍は、通常、嚢胞又は液体領域を含まない異常な組織塊である。固形腫瘍は、良
性又は悪性であり得る。異なる種類の固形腫瘍は、それらを形成する細胞の種類(例えば
、肉腫、癌腫、及びリンパ腫)に関して命名されている。肉腫及び癌腫などの固形腫瘍の
例としては、副腎皮質癌、胆管細胞癌、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉
腫、及び他の肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、心臓横紋筋肉腫、結
腸癌、胃癌、リンパ系悪性疾患、膵臓癌、乳癌、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、肝細胞癌、扁
平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、甲状腺癌(例えば、甲状腺髄様癌及び乳頭甲状腺
癌)、褐色細胞腫皮脂腺癌、乳頭癌癌、乳頭腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝癌、
胆管癌、絨毛癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌(例えば、子宮頸癌及び浸潤前の子宮頸部異
形成)、大腸直腸癌、肛門癌、肛門管、又は肛門癌、膣癌、外陰部の癌(例えば、扁平上
皮癌、上皮内癌、腺癌、及び線維肉腫)、陰茎癌、中咽頭癌、食道癌、頭部癌(例えば、
扁平上皮癌)、頸部癌(例えば、扁平上皮癌)、精巣癌(例えば、セミノーマ、奇形腫、
胎児性癌、奇形癌、絨毛癌、肉腫、ライディッヒ細胞腫瘍、線維腫、線維腺腫、腺腫様腫
瘍、及び脂肪腫)、膀胱癌、腎臓癌、黒色腫、子宮癌(例えば、子宮内膜癌)、尿路上皮
癌(例えば、扁平上皮癌、転移細胞癌、腺癌、尿管癌、及び膀胱癌)、並びにCNS腫瘍
(神経膠腫(脳幹膠腫及び混合神経膠腫など)、神経膠芽腫(多形神経膠芽腫としても知
られる)、星状細胞腫、CNSリンパ腫、胚細胞腫、髄芽芽腫、シュワン細胞腫、頭蓋咽
頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、神経芽腫、網
膜芽細胞腫、及び脳転移など)が挙げられる。
【0366】
がん治療は、例えば、腫瘍退縮、腫瘍重量又はサイズ収縮、進行時間、生存期間、無増
悪生存率、全奏功率、応答期間、生活の質、タンパク質発現及び/又は活性によって評価
することができる。例えば、放射線学的イメージングによる応答の測定を含む、治療の有
効性を判定するためのアプローチを利用することができる。
【0367】
他の実施形態では、caTCR+CSR免疫細胞は、病原体関連(ウイルスコードなど
)抗原を標的化することによって、感染性疾患を治療するのに有用であり得る。感染は、
例えば、ウイルス、細菌、原虫、又は寄生体によって引き起こされ得る。標的抗原は、病
原体によって引き起こされる疾患に関与する病原性タンパク質、ポリペプチド、若しくは
ペプチドであってもよく、又は病原体に感染した宿主において免疫応答を誘導することが
できる。caTCR+CSR免疫細胞によって標的化され得る病原性抗原としては、Ac
inetobacter baumannii、アナプラマ属、Anaplasma p
hagocytophilum、Ancylostoma braziliense、A
ncylostoma duodenale、Arcanobacterium hae
molyticum、Ascaris lumbricoides、Aspergill
us属、Astroviridae、Babesia属、Bacillus anthr
acis、Bacillus cereus、Bartonella henselae
、Bkウイルス、Blastocystis hominis、Blastomyces
dermatitidis、Bordetella pertussis、ボルレア属
、ボルレア属、ボルレア属、ブッジラ属、Brugia malayi、ブニヤウイルス
科、Burkholderia cepacia及び他のバークホルデリア属、Burk
holderia mallei、Burkholderia pseudomalle
i、カリシウイルス科、カンピロバクター属、Candida albicans、カン
ジダ属、Chlamydophila pneumoniae、Chlamydophi
la psittaci、CJDプリオン、Clonorchis sinensis、
Clostridium botulinum、Clostridium diffic
ile、Clostridium perfringens、Clostridium
perfringens、クロストリジウム属、Clostridium tetani
、コクシジオイデス属、コロナウイルス、Corynebacterium dipht
heriae、Coxiella burnetii、クリミアコンゴ出血熱ウイルス、
Cryptococcus neoformans、クリプトスポリジウム属、サイトメ
ガロウイルス(CMV)、デング熱ウイルス(DEN-1、DEN-2、DEN-3、及
びDEN-4)、Dientamoeba fragilis、エボラウイルス(EBO
V)、エシェリコッカス属、Ehrlichia chaffeensis、Ehrli
chia ewingii、Ehrlichia属、Entamoeba histol
ytica、Enterococcus属、Enterovirus属、エンテロウイル
ス、主にコクサッキーAウイルス及びエンテロウイルス71(EV71)、エピデルモフ
ィトン属、エプスタイン-バーウイルス(EBV)、大腸菌O157:H7、O111、
及びO104:H4、Fasciola hepatica及びFasciola gi
gantica、FFIプリオン、フィラノイデスーパーファミリー、フラビウイルス、
Francisella tularensis、フソバクテリウム属、Geotric
hum candidum、Giardia intestinalis、顎口虫属、G
SSプリオン、グアナアリスウイルス、Haemophilus ducreyi、イン
フルエンザ菌、ヘリコバクターピロリ、ヘニパウイルス(ヘンドラウイルスニパウイルス
、)、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、
D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、単純ヘルペスウイルス1及び2(HSV-1及び
HSV-2)、Histoplasma capsulatum、HIV(ヒト免疫不全
ウイルス)、Hortaea werneckii、ヒトボカウイルス(HBoV)、ヒ
トヘルペスウイルス6(HHV-6)、ヒトヘルペスウイルス7(HHV-7)、ヒトメ
タニューモウイルス(hMPV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、ヒトパラインフ
ルエンザウイルス(HPIV)、ヒトT細胞白血病ウイルス1(HTLV-1)、日本脳
炎ウイルス、JCウイルス、フニンウイルス、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSH
V)、Kingella kingae、Klebsiella granulomat
is、Kuruプリオン、ラッサウイルス、Legionella pneumophi
la、リーシュマニア属、レプトスピラ属、Listeria monocytogen
es、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、マチュポウイルス、マラセチア属、
マールブルクウイルス、麻疹ウイルス、Metagonimus yokagawai、
Microsporidia phylum、伝染性軟属腫ウイルス(MCV)、おたふ
く風邪ウイルス、Mycobacterium leprae及びMycobacter
ium lepromatosis、Mycobacterium tuberculo
sis、Mycobacterium ulcerans、Mycoplasma pn
eumoniae、Naegleria fowleri、Necator ameri
canus、Neisseria gonorrhoeae、Neisseria me
ningitidis、Nocardia asteroides、ノカルジア属、On
chocerca volvulus、Orientia tsutsugamushi
、オルソミクソウイルス科(インフルエンザ)、Paracoccidioides b
rasiliensis、パラゴニムス属、Paragonimus westerma
ni、パルボウイルスB19、パスツレラ属、Plasmodium属、Pneumoc
ystis Jirovecii、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、呼吸器合胞体ウイ
ルス(RSV)、ライノウイルス、Rickettsia akari、リケッチア属、
Rickettsia prowazekii、Rickettsia rickett
sii、Rickettsia typhi、リフトバレー熱ウイルス、ロタウイルス、
風疹ウイルス、サビアウイルス、サルモネラ属、Sarcoptes scabiei、
SARSコロナウイルス、住血吸虫属、シゲラ属、シンノンブレウイルス、ハンタウイル
ス属、Sporothrix schenckii、ブドウ球菌属、ブドウ球菌属、St
reptococcus agalactiae、Streptococcus pne
umoniae、Streptococcus pyogenes、Strongylo
ides stercoralis、条虫属、Taenia solium、ダニ媒介脳
炎ウイルス(TBEV)、Toxocara canis又はToxocara cat
i、Toxoplasma gondii、Treponema pallidum、T
richinella spiralis、Trichomonas vaginali
s、トリコフィトン属、Trichuris trichiura、Trypanoso
ma brucei、Trypanosoma cruzi、Ureaplasma u
realyticum、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZ
V)、大痘瘡又は小痘瘡、vCJDプリオン、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、Vibri
o cholerae、西ナイルウイルス、西ウマ脳炎ウイルス、Wuchereria
bancrofti、黄熱病、Yersinia enterocolitica、Y
ersinia pestis、及びYersinia Pseudotubercul
osisが挙げられる。
【0368】
いくつかの実施形態では、caTCR+CSR免疫細胞は、発がん性ウイルスによる感
染などの発がん性感染症を治療するために使用される。発がん性ウイルスとしては、CM
V、EBV、HBV、KSHV、HPV、MCV、HTLV-1、HIV-1、及びHC
Vが挙げられるが、これらに限定されない。caTCRの標的抗原は、Tax、E7、E
6/E7、E6、HBx、EBNAタンパク質(例えば、EBNA3A、EBNA3C、
及びEBNA2)、v-サイクリン、LANA1、LANA2、LMP-1、k-bZI
P、RTA、KSHV K8、及びこれらの断片が挙げられるが、これらに限定されない
ウイルス性がんタンパク質であり得る。Ahuja,Richa,et al.,Cur
r.Sci.,2014を参照されたい。
製品及びキット
【0369】
本発明のいくつかの実施形態では、がん(例えば、副腎皮質癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸
癌、胆管細胞癌、大腸直腸癌、食道癌、神経膠芽腫、神経膠腫、肝細胞癌、頭頸部癌、腎
臓癌、白血病、肺癌、リンパ腫、黒色腫、中皮腫、多発性骨髄腫、膵臓癌、褐色細胞腫、
形質細胞腫、神経芽腫、卵巣癌、前立腺癌、肉腫、胃癌、子宮癌、若しくは甲状腺癌)又
はウイルス感染(例えば、CMV、EBV、HBV、KSHV、HPV、MCV、HTL
V-1、HIV-1、又はHCVによる感染)などの標的抗原陽性疾患の治療に有用な材
料を含む製品が提供される。製品は、容器と、この容器上にある又はこの容器に付随した
ラベル又は添付文書と、を含むことができる。適切な容器としては、例えば、ボトル、バ
イアル、シリンジなどが挙げられる。容器は、ガラス又はプラスチックなどの様々な材料
から形成することができる。一般に、容器は、本明細書に記載の疾患又は障害を治療する
のに有効な組成物を保持するものであり、滅菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器
は、皮下注射針によって貫通可能なストッパーを有する静脈輸液バッグ又はバイアルであ
ってよい)。組成物中の少なくとも1つの活性剤は、表面上に本発明のcaTCR及びC
SRを提示する免疫細胞である。ラベル又は添付文書は、組成物が、特定の状態を治療す
るために使用されることを表示する。ラベル又は添付文書は、caTCR+CSR免疫細
胞組成物を患者に投与するための説明書を更に含む。本明細書に記載の併用療法をなす製
品及びキットもまた想到される。
【0370】
添付文書は、治療用製品の商品パッケージに習慣的に含まれている、このような治療用
製品の使用に関しての指示、使用法、用量、投与、禁忌及び/又は警告に関する情報を記
載している説明書を参照する。いくつかの実施形態では、添付文書は、組成物が、標的抗
原陽性がん(副腎皮質癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、胆管細胞癌、大腸直腸癌、食道癌、
神経膠芽腫、神経膠腫、肝細胞癌、頭頸部癌、腎臓癌、白血病、肺癌、リンパ腫、黒色腫
、中皮腫、多発性骨髄腫、膵臓癌、褐色細胞腫、形質細胞腫、神経芽腫、卵巣癌、前立腺
癌、肉腫、胃癌、子宮癌、又は甲状腺癌など)の治療のために使用されることを示す。他
の実施形態では、添付文書は、組成物が標的抗原陽性ウイルス感染(例えば、CMV、E
BV、HBV、KSHV、HPV、MCV、HTLV-1、HIV-1、又はHCVによ
る感染)の治療のために使用されることを示す。
【0371】
加えて、製品は、静菌注射用水(BWFI)、リン酸緩衝食塩水、リンガー液及びブド
ウ糖液など、医薬上許容される緩衝液を含む第2の容器を更に含んでよい。これは、他の
緩衝液、希釈液、濾過器、針、及び注射器を含めて、商業上及び利用者の立場からの他の
望ましい材料を更に含んでよい。
【0372】
例えば、本明細書に記載される標的抗原陽性疾患又は障害の治療のために、所望により
製品と組み合わせて、様々な目的で有用であるキットも提供される。本発明のキットは、
caTCR+CSR免疫細胞組成物(又は単位剤形及び/又は製品)を収容する1つ以上
の容器を含み、いくつかの実施形態では、別の薬剤(本明細書に記載の薬剤など)及び/
又は本明細書に記載される方法のいずれかに従って使用するための説明書を更に含む。こ
のキットは、治療に適している個体の選択についての説明を更に含んでよい。本発明のキ
ットで提供される説明書は、典型的には、ラベル又は添付文書(例えば、キットに含まれ
る紙シート)に書かれた説明書であるが、機械読み出し可能な命令(例えば、磁気又は光
学記憶ディスクで実行される命令)も許容可能である。
【0373】
例えば、いくつかの実施形態では、キットは、表面上にcaTCR及びCSRを提示す
る免疫細胞を含む組成物を含む。いくつかの実施形態では、キットは、a)表面上にca
TCR及びCSRを提示する免疫細胞を含む組成物と、b)有効量の少なくとも1種の他
の薬剤と、を含み、他の薬剤は、MHCタンパク質の発現を増加させ、及び/又はMHC
タンパク質によるペプチドの表面提示を強化する(例えば、IFNγ、IFNβ、IFN
α、又はHsp90阻害剤)。いくつかの実施形態では、キットは、a)表面上にcaT
CR及びCSRを提示する免疫細胞を含む組成物と、b)標的抗原陽性疾患(がん又はウ
イルス感染など)の治療のために、caTCR+CSR免疫細胞組成物を個体に投与する
ための指示書と、を含む。いくつかの実施形態では、キットは、a)表面上にcaTCR
及びCSRを提示する免疫細胞を含む組成物と、b)有効量の少なくとも1種の他の薬剤
であって、MHCタンパク質の発現を増加させ、及び/又はMHCタンパク質によるペプ
チドの表面提示を強化する他の薬剤(例えば、IFNγ、IFNβ、IFNα、又はHs
p90阻害剤)と、c)標的抗原陽性疾患(がん又はウイルス感染など)の治療のために
、caTCR+CSR免疫細胞組成物及び他の薬剤を個体に投与するための指示書と、を
含む。caTCR+CSR免疫細胞組成物及び他の薬剤は、別個の容器又は単一の容器内
に存在し得る。例えば、キットは、1つの別個の組成物又は2つ以上の組成物を含んでも
よく、1つの組成物はcaTCR+CSR免疫細胞を含み、別の組成物は他の薬剤を含む
【0374】
いくつかの実施形態では、キットは、a)caTCR及びCSRを含む1つ以上の組成
物と、b)caTCR及びCSRを、免疫細胞(例えば、個体に由来する免疫細胞、例え
ばT細胞又はナチュラルキラー細胞など)と組み合わせて、caTCR及びCSRを表面
に提示する免疫細胞を含む組成物を形成し、標的抗原陽性疾患(がん又はウイルス感染な
ど)の治療のためにcaTCR+CSR免疫細胞組成物を個体に投与するための指示書と
、を含む。いくつかの実施形態では、キットは、a)caTCR及びCSRを含む1つ以
上の組成物と、b)免疫細胞(細胞傷害性細胞など)と、を含む。いくつかの実施形態で
は、キットは、a)caTCR及びCSRを含む1つ以上の組成物と、b)免疫細胞(細
胞傷害性細胞など)と、c)caTCR及びCSRを免疫細胞と組み合わせて、caTC
R及びCSRを表面に提示する免疫細胞を含む組成物を形成し、標的抗原陽性疾患(がん
又はウイルス感染など)の治療のためにcaTCR+CSR免疫細胞組成物を個体に投与
するための指示書と、を含む。
【0375】
いくつかの実施形態では、キットは、caTCR及びCSRをコードする核酸(又は核
酸のセット)を含む。いくつかの実施形態では、キットは、a)caTCR及びCSRを
コードする核酸(又は核酸のセット)と、b)核酸(又は核酸のセット)を発現するため
の宿主細胞(免疫細胞など)を含む。いくつかの実施形態では、キットは、a)caTC
R及びCSRをコードする核酸(又は核酸のセット)と、b)i)宿主細胞(例えば、T
細胞などの免疫細胞など)中でcaTCR及びCSRを発現すること、ii)caTCR
及びCSRを発現する宿主細胞を含む組成物を調製すること、並びにiii)caTCR
及びCSRを発現する宿主細胞を含む組成物を、標的抗原陽性疾患(がん又はウイルス感
染など)の治療のために個体に投与することのための指示書と、を含む。いくつかの実施
形態では、宿主細胞は個体に由来する。いくつかの実施形態では、キットは、a)caT
CR及びCSRをコードする核酸(又は核酸のセット)と、b)核酸(又は核酸のセット
)を発現するための宿主細胞(免疫細胞など)と、c)宿主細胞中でcaTCR及びCS
Rを発現すること、ii)caTCR及びCSRを発現する宿主細胞を含む組成物を調製
すること、並びにiii)caTCR及びCSRを発現する宿主細胞を含む組成物を、標
的抗原陽性疾患(がん又はウイルス感染など)の治療のために個体に投与することのため
の指示書と、を含む。
【0376】
本発明のキットは、好適なパッケージに入っている。好適なパッケージには、バイアル
、ボトル、ジャー、可撓性パッケージ(例えば、密閉マイラー又はプラスチック袋)など
が挙げられるが、これらに限定されない。キットは、所望により、緩衝材及び解釈的情報
など追加構成要素を提供してよい。したがって、本出願はまた、バイアル(密閉バイアル
など)、ボトル、ジャー、可撓性パッケージなどを含む製品を提供する。
【0377】
caTCR+CSR免疫細胞組成物の使用に関する説明書は、意図する治療向けの用量
、投与スケジュール、及び投与経路に関する情報を概ね含む。容器は、単位用量、大量容
器(例えば、多用量パッケージ)又は亜単位用量であってよい。例えば、本明細書に開示
するように十分な用量のcaTCR+CSR免疫細胞組成物を含んで、1週間、8日、9
日、10日、11日、12日、13日、2週間、3週間、4週間、6週間、8週間、3か
月、4か月、5か月、7か月、8か月、9か月、又はそれ以上のうちのいずれかなど長期
間にわたって個体の有効な治療を提供するキットを提供し得る。キットはまた、複数のc
aTCR及びCSRの単位用量と、医薬組成物と、使用説明書と、を含んでよく、例えば
、院内薬局及び調剤薬局など薬局での保管及び使用に十分な量でパッケージ化される。
【0378】
当業者は、本発明の範囲及び趣旨内でいくつかの実施形態が可能であることを理解する
であろう。次に、以下の非限定的な実施例を参照して、本発明を更に詳細に説明する。以
下の実施例は、本発明を更に説明するが、当然のことながら、決してその範囲を限定する
ものとして解釈されるべきではない。
例示的な実施形態
【0379】
実施形態1 一実施形態では、免疫細胞であって、
a)キメラ抗体-T細胞受容体(TCR)構築物(caTCR)であって、
i)標的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュール、並びに
ii)第1のTCR膜貫通ドメイン(TCR-TM)を含む第1のTCRドメイン(
TCRD)、及び第2のTCR-TMを含む第2のTCRDを含むT細胞受容体モジュー
ル(TCRM)を含み、
TCRMが、少なくとも1つのTCR-関連シグナル伝達分子の動員を促進する、キメ
ラ抗体-T細胞受容体(TCR)構築物(caTCR)と、
b)キメラシグナル伝達受容体(CSR)であって、
i)標的リガンドに結合又は相互作用することができるリガンド結合モジュール、
ii)膜貫通モジュール、及び
iii)免疫細胞に共刺激シグナルを提供することができる共刺激免疫細胞シグナル
伝達モジュールを含み、
リガンド結合モジュール及び共刺激免疫細胞シグナル伝達モジュールが同一の分子に由
来せず、CSRが機能的な一次免疫細胞シグナル伝達ドメインを欠く、キメラシグナル伝
達受容体(CSR)と、を含む、免疫細胞が提供される。
【0380】
実施形態2 CSRが、いずれの一次免疫細胞シグナル伝達配列も欠く、実施形態1に
記載の免疫細胞。
【0381】
実施形態3 標的抗原が細胞表面抗原である、実施形態1又は2に記載の免疫細胞。
【0382】
実施形態4 細胞表面抗原が、タンパク質、炭水化物、及び脂質からなる群から選択さ
れる、実施形態3に記載の免疫細胞。
【0383】
実施形態5 細胞表面抗原が、CD19、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5
D、及びFCRL5からなる群から選択される、実施形態4に記載の免疫細胞。
【0384】
実施形態6 標的抗原が、ペプチド及び主要組織適合遺伝子複合体(MHC)タンパク
質を含む複合体である、実施形態1又は2に記載の免疫細胞。
【0385】
実施形態7 ペプチドが、WT-1、AFP、HPV16-E7、NY-ESO-1、
PRAME、EBV-LMP2A、及びPSAからなる群から選択されるタンパク質に由
来する、実施形態6に記載の免疫細胞。
【0386】
実施形態8 第1のTCR-TMが、第1のT細胞受容体の膜貫通ドメインのうちの1
つに由来し、第2のTCR-TMが、第1のT細胞受容体の他の膜貫通ドメインに由来す
る、実施形態1~7のいずれか1つに記載の免疫細胞。
【0387】
実施形態9 TCR-TMのうちの少なくとも1つが天然に存在しないものである、実
施形態8に記載の免疫細胞。
【0388】
実施形態10 TCRMが、第1のT細胞受容体膜貫通ドメインを含むTCRMと比較
して、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の動員を強化させる、実施形態9に
記載の免疫細胞。
【0389】
実施形態11 第1のTCR-TMが、それが由来する膜貫通ドメインと比較して、最
大5個のアミノ酸置換を含み、及び/又は、第2のTCR-TMが、それが由来する膜貫
通ドメインと比較して、最大5個のアミノ酸置換を含む、実施形態8~10のいずれか1
つに記載の免疫細胞。
【0390】
実施形態12 第1のTCR-TMが、単一のアミノ酸置換を含み、及び/又は第2の
TCR-TMが、単一のアミノ酸置換を含む、実施形態11に記載の免疫細胞。
【0391】
実施形態13 第1のT細胞受容体がγ/δ T細胞受容体である、実施形態8~12
のいずれか1つに記載の免疫細胞。
【0392】
実施形態14 第1のT細胞受容体がα/β T細胞受容体である、実施形態8~12
のいずれか1つに記載の免疫細胞。
【0393】
実施形態15 抗原結合モジュールが、Fab、Fab’、(Fab’)2、Fv、及
び単鎖Fv(scFv)からなる群から選択される抗体部分である、実施形態1~14の
いずれか1つに記載の免疫細胞。
【0394】
実施形態16 抗原結合モジュールが、Vドメイン及びVドメインを含み、V
メインが、TCRDのうちの1つのアミノ末端に連結され、Vドメインが、他のTCR
Dのアミノ末端に連結されている、実施形態15に記載の免疫細胞。
【0395】
実施形態17 Vドメインが、C1ドメインを介してTCRDのうちの1つに連結
され、Vドメインが、Cドメインを介して他のTCRDに結合されている、実施形態
16に記載の免疫細胞。
【0396】
実施形態18 caTCRが、少なくとも1つの追加の抗原結合モジュールを更に含む
、実施形態15に記載の免疫細胞。
【0397】
実施形態19 少なくとも1つの追加の抗原結合モジュールが抗体部分である、実施形
態18に記載の免疫細胞。
【0398】
実施形態20 caTCRが多重特異性である、実施形態18又は19に記載の免疫細
胞。
【0399】
実施形態21 抗原結合モジュールが、TCRDのうちの1つのアミノ末端に融合した
scFvを含む、実施形態15~20のいずれか1つに記載の免疫細胞。
【0400】
実施形態22 caTCRが、第1のTCRDのアミノ末端に融合した第1のscFv
と、第2のTCRDのアミノ末端に融合した第2のscFvとを含む、実施形態21に記
載の免疫細胞。
【0401】
実施形態23 第1のscFvが、第2のscFvとは異なる標的に結合する、実施形
態22に記載の免疫細胞。
【0402】
実施形態24 caTCRが、第1のTCRDを含む第1のポリペプチド鎖と、第2の
TCRDを含む第2のポリペプチド鎖とを含むヘテロ二量体であり、抗原結合モジュール
が、第1及び第2のTCRDの一方又は両方のアミノ末端に連結されている、実施形態1
~23のいずれか1つに記載の免疫細胞。
【0403】
実施形態25 caTCRが、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメインを含む
安定化モジュールを更に含み、第1及び第2の安定化ドメインが、caTCRを安定化さ
せる、互いの結合親和性を有する、実施形態1~24のいずれか1つに記載の免疫細胞。
【0404】
実施形態26 安定化モジュールが、C1-Cモジュール、C2-C2モジュ
ール、C3-C3モジュール、及びC4-C4モジュールからなる群から選択さ
れる、実施形態25に記載の免疫細胞。
【0405】
実施形態27 第1の安定化ドメインと第2の安定化ドメインとの間に共有結合が存在
する、実施形態25又は26に記載の免疫細胞。
【0406】
実施形態28 共有結合がジスルフィド結合である、実施形態27に記載の免疫細胞。
【0407】
実施形態29 安定化モジュールが、抗原結合モジュールとTCRMとの間に位置する
、実施形態25~28のいずれか1つに記載の免疫細胞。
【0408】
実施形態30 caTCRが、
a)第1のTCRDのアミノ末端に融合した第1の安定化ドメインを含む第1のポリペ
プチド鎖と、第2のTCRDのアミノ末端に融合した第2の安定化ドメインを含む第2の
ポリペプチド鎖と、を含み、抗原結合モジュールが、第1及び第2の安定化ドメインの一
方又は両方のアミノ末端に融合するヘテロ二量体である、実施形態25~29のいずれか
1つに記載の免疫細胞。
【0409】
実施形態31 caTCRが、約0.1pM~約500nMの平衡解離定数(Kd)で
標的抗原に結合する、実施形態1~30のいずれか1つに記載の免疫細胞。
【0410】
実施形態32 TCR関連シグナル伝達分子が、CD3δε、CD3γε、及びζζか
らなる群から選択される、実施形態1~31のいずれか1つに記載の免疫細胞。
【0411】
実施形態33 標的抗原と標的リガンドが同一である、実施形態1~32のいずれか1
つに記載の免疫細胞。
【0412】
実施形態34 標的抗原と標的リガンドが異なる、実施形態1~32のいずれか1つに
記載の免疫細胞。
【0413】
実施形態35 標的リガンドが、標的抗原を提示する細胞の表面に発現するリガンドで
ある、実施形態34に記載の免疫細胞。
【0414】
実施形態36 標的リガンドが疾患関連リガンドである、実施形態1~35のいずれか
1つに記載の免疫細胞。
【0415】
実施形態37 標的リガンドが、がん関連リガンドである、実施形態36に記載の免疫
細胞。
【0416】
実施形態38 がん関連リガンドが、CD19、CD20、CD22、CD47、IL
4、GPC-3、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5D、及びFCRL5からな
る群から選択される、実施形態37に記載の免疫細胞。
【0417】
実施形態39 がん関連リガンドが、WT-1、AFP、HPV16-E7、NY-E
SO-1、PRAME、EBV-LMP2A、及びPSAからなる群から選択されるタン
パク質に由来するペプチドを含むペプチド/MHC複合体である、実施形態37に記載の
免疫細胞。
【0418】
実施形態40 標的リガンドが、ウイルス関連リガンドである、実施形態36に記載の
免疫細胞。
【0419】
実施形態41 標的リガンドが免疫調節分子である、実施形態1~35のいずれか1つ
に記載の免疫細胞。
【0420】
実施形態42 免疫調節分子が免疫抑制受容体であり、CSRが免疫抑制受容体のアン
タゴニストである、実施形態41に記載の免疫細胞。
【0421】
実施形態43 免疫調節分子が免疫刺激受容体であり、CSRが免疫刺激受容体のアゴ
ニストである、実施形態41に記載の免疫細胞。
【0422】
実施形態44 標的リガンドが免疫チェックポイント分子である、実施形態41に記載
の免疫細胞。
【0423】
実施形態45 免疫チェックポイント分子が、PD-L1、PD-L2、CD80、C
D86、ICOSL、B7-H3、B7-H4、HVEM、4-1BBL、OX40L、
CD70、CD40、及びGAL9からなる群から選択される、実施形態44に記載の免
疫細胞。
【0424】
実施形態46 標的リガンドが阻害性サイトカインである、実施形態41に記載の免疫
細胞。
【0425】
実施形態47 標的リガンドがアポトーシス分子である、実施形態1~35のいずれか
1つに記載の免疫細胞。
【0426】
実施形態48 アポトーシス分子が、FasL、FasR、TNFR1、及びTNFR
2からなる群から選択される、実施形態47に記載の免疫細胞。
【0427】
実施形態49 リガンド結合モジュールが抗体部分である、実施形態1~48のいずれ
か1つに記載の免疫細胞。
【0428】
実施形態50 CSRの抗体部分が、Fab、Fab’、(Fab’)2、Fv、及び
単鎖Fv(scFv)からなる群から選択される、実施形態49に記載の免疫細胞。
【0429】
実施形態51 CSRの抗体部分がscFvである、実施形態50に記載の免疫細胞。
【0430】
実施形態52 リガンド結合モジュールが、受容体の細胞外ドメインに由来する、実施
形態1~48のいずれか1つに記載の免疫細胞。
【0431】
実施形態53 受容体が、FasR、TNFR1、TNFR2、PD-1、CD28、
CTLA-4、ICOS、BTLA、KIR、LAG-3、4-1BB、OX40、CD
27、TIM-3、IL-10R、IL-6R、及びIL-4Rからなる群から選択され
る、実施形態52に記載の免疫細胞。
【0432】
実施形態54 CSRの膜貫通モジュールが、CD28、CD3ε、CD3ζ、CD4
5、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD
64、CD80、CD86、CD134、CD137、又はCD154に由来する膜貫通
ドメインを含む、実施形態1~53のいずれか1つに記載の免疫細胞。
【0433】
実施形態55 共刺激免疫細胞シグナル伝達モジュールが、TCRの共刺激受容体の細
胞内ドメインに由来する、実施形態1~54のいずれか1つに記載の免疫細胞。
【0434】
実施形態56 共刺激受容体が、CD28、4-1BB、OX40、ICOS、CD2
7、及びCD40からなる群から選択される、実施形態55に記載の免疫細胞。
【0435】
実施形態57 CSRの発現が誘導可能である、実施形態1~56のいずれか1つに記
載の免疫細胞。
【0436】
実施形態58 CSRの発現が、免疫細胞の活性化の際に誘導可能である、実施形態5
7に記載の免疫細胞。
【0437】
実施形態59 caTCRの抗原結合モジュールが、CD19に結合する抗体部分を含
み、CSRのリガンド結合モジュールがCD19に結合するscFvを含み、膜貫通モジ
ュールと共刺激免疫細胞シグナル伝達モジュールは両方ともCD28に由来する、実施形
態1~32のいずれか1つに記載の免疫細胞。
【0438】
実施形態60 CD19に結合する抗体部分が、配列番号58のアミノ酸配列を含むV
ドメインと、配列番号59のアミノ酸配列を含むVドメインとを含み、CD19に結
合するscFvが、配列番号58のアミノ酸配列を含むVドメインと、配列番号59の
アミノ酸配列を含むVドメインと、を含み、CSRが、配列番号51のアミノ酸配列を
含むCD28の断片を含む、実施形態59に記載の免疫細胞。
【0439】
実施形態61 caTCRが、配列番号72と73又は配列番号74と75のアミノ酸
配列を含む2つのポリペプチド鎖を含み、及び/又はCSRが配列番号80のアミノ酸配
列を含む、実施形態60に記載の免疫細胞。
【0440】
実施形態62 caTCRの抗原結合モジュールが、AFPに結合する抗体部分を含み
、CSRのリガンド結合モジュールがGPC3に結合するscFvを含み、膜貫通モジュ
ールと共刺激免疫細胞シグナル伝達モジュールは両方ともCD28に由来する、実施形態
1~32のいずれか1つに記載の免疫細胞。
【0441】
実施形態63 AFPに結合する抗体部分が、配列番号62のアミノ酸配列を含むV
ドメインと、配列番号63のアミノ酸配列を含むVドメインとを含み、GPC3に結合
するscFvが、配列番号64のアミノ酸配列を含むVドメインと、配列番号65のア
ミノ酸配列を含むVドメインと、を含み、CSRが、配列番号51のアミノ酸配列を含
むCD28の断片を含む、実施形態62に記載の免疫細胞。
【0442】
実施形態64 caTCRが、配列番号68と69又は配列番号70と71のアミノ酸
配列を含む2つのポリペプチド鎖を含み、及び/又はCSRが配列番号82のアミノ酸配
列を含む、実施形態63に記載の免疫細胞。
【0443】
実施形態65 caTCRの抗原結合モジュールが、CD19に結合する抗体部分を含
み、CSRのリガンド結合モジュールがCD20に結合するscFvを含み、膜貫通モジ
ュールと共刺激免疫細胞シグナル伝達モジュールは両方ともCD28に由来する、実施形
態1~32のいずれか1つに記載の免疫細胞。
【0444】
実施形態66 CD19に結合する抗体部分が、配列番号58のアミノ酸配列を含むV
ドメインと、配列番号59のアミノ酸配列を含むVドメインとを含み、CD20に結
合するscFvが、配列番号60のアミノ酸配列を含むVドメインと、配列番号61の
アミノ酸配列を含むVドメインと、を含み、CSRが、配列番号51のアミノ酸配列を
含むCD28の断片を含む、実施形態65に記載の免疫細胞。
【0445】
実施形態67 caTCRが、配列番号72と73又は配列番号74と75のアミノ酸
配列を含む2つのポリペプチド鎖を含み、及び/又はCSRが配列番号81のアミノ酸配
列を含む、実施形態66に記載の免疫細胞。
【0446】
実施形態68 一実施形態では、実施形態1~67のいずれか1つに記載のcaTCR
及びCSRをコードしている1つ以上の核酸であって、caTCR及びCSRがそれぞれ
、1つ以上の核酸によりコードされる1つ以上のポリペプチド鎖からなる、1つ以上の核
酸が提供される。
【0447】
実施形態69 一実施形態では、1つ以上の核酸であって、
a)キメラ抗体-T細胞受容体(TCR)構築物(caTCR)であって、
i)標的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュール、並びに
ii)第1のTCR膜貫通ドメイン(TCR-TM)を含む第1のTCRドメイン(
TCRD)、及び第2のTCR-TMを含む第2のTCRDを含むT細胞受容体モジュー
ル(TCRM)を含み、TCRMが、少なくとも1つのTCR-関連シグナル伝達分子の
動員を促進し、caTCRは、1つ以上のポリペプチド鎖からなる、キメラ抗体-T細胞
受容体(TCR)構築物(caTCR)と、
b)キメラシグナル伝達受容体(CSR)であって、
i)標的リガンドに結合又は相互作用することができるリガンド結合モジュール、
ii)膜貫通モジュール、並びに
iii)免疫細胞に共刺激シグナルを提供することができる共刺激免疫細胞シグナル
伝達モジュールを含み、リガンド結合モジュール及び共刺激免疫細胞シグナル伝達モジュ
ールは、同一の分子から誘導されない、キメラシグナル伝達受容体(CSR)と、をコー
ドし、CSRが機能的な一次免疫細胞シグナル伝達ドメインを欠き、CSRが1つ以上の
ポリペプチド鎖からなる、1つ以上の核酸が提供される。
【0448】
実施形態70 caTCR及びCSRが、同じ核酸分子上にコードされている、実施形
態68又は69に記載の1つ以上の核酸。
【0449】
実施形態71 caTCR及びCSRが異なる核酸分子上にコードされている、実施形
態68又は69に記載の1つ以上の核酸。
【0450】
実施形態72 誘導可能なプロモーターに作動可能に連結されたCSRをコードするヌ
クレオチド配列を含む、実施形態68~71のいずれか1つに記載の1つ以上の核酸。
【0451】
実施形態73 誘導可能なプロモーターが、免疫細胞の活性化の際に誘導可能である、
実施形態72に記載の1つ以上の核酸。
【0452】
実施形態74 誘導可能なプロモーターが、活性化T細胞由来プロモーターの核因子(
NFAT)である、実施形態72に記載の1つ以上の核酸。
【0453】
実施形態75 一実施形態では、実施形態68~74のいずれか1つに記載の1つ以上
の核酸を含む、1つ以上のベクターが提供される。
【0454】
実施形態76 ベクターのうちの少なくとも1つが、caTCRをコードする核酸配列
を含み、少なくとも1つの他のベクターが、CSRをコードする核酸配列を含む、実施形
態75に記載の1つ以上のベクター。
【0455】
実施形態77 1つ以上の核酸を含む単一のベクターを含む、実施形態75に記載の1
つ以上のベクター。
【0456】
実施形態78 一実施形態では、実施形態68~74のいずれか1つに記載の1つ以上
の核酸、又は実施形態75~77のいずれか1つに記載の1つ以上のベクターを含む、組
成物が提供される。
【0457】
実施形態79 一実施形態では、実施形態68~74のいずれか1つに記載の1つ以上
の核酸、又は実施形態75~77のいずれか1つに記載の1つ以上のベクターを含む、免
疫細胞が提供される。
【0458】
実施形態80 免疫細胞が、実施形態68~74のいずれか1つに記載の1つ以上の核
酸又は実施形態75~77のいずれか1つに記載の1つ以上のベクターから発現するca
TCRを更に含む、実施形態79に記載の免疫細胞。
【0459】
実施形態81 免疫細胞が、実施形態68~74のいずれか1つに記載の1つ以上の核
酸、又は実施形態75~77のいずれか1つに記載の1つ以上のベクターから発現するC
SRを更に含む、実施形態79又は80に記載の免疫細胞。
【0460】
実施形態82 免疫細胞が、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT
細胞、及びサプレッサーT細胞からなる群から選択される、実施形態1~67及び79~
81のいずれか1つに記載の免疫細胞。
【0461】
実施形態83 実施形態1~67及び79~82のいずれか1つに記載の免疫細胞であ
って、
a)caTCRが、第1のTCRDを含む第1のポリペプチド鎖と、第2のTCRDを
含む第2のポリペプチド鎖とを含むヘテロ二量体であり、抗原結合モジュールが、TCR
Dの一方又は両方のアミノ末端に連結されている、1つ又は2つのポリペプチド鎖を含み

b)CSRが、単一のポリペプチド鎖を含み、免疫細胞が、
i)caTCRの第1のポリペプチド鎖をコードする第1の核酸配列と、
ii)caTCRの第2のポリペプチド鎖をコードする第2の核酸配列と、
iii)CSRをコードする第3の核酸配列と、を含む、免疫細胞。
【0462】
実施形態84 実施形態83の免疫細胞であって、
a)第1のプロモーターの制御下の第1の核酸配列を含む第1のベクターと、
b)第2のプロモーターの制御下の第2の核酸配列を含む第2のベクターと、
c)第3のプロモーターの制御下の第3の核酸配列を含む第3のベクターと、を含む、
免疫細胞。
【0463】
実施形態85 実施形態83の免疫細胞であって、
a)第1のベクターであって、
i)第1のプロモーターの制御下の第1の核酸配列、及び
ii)第2のプロモーターの制御下の第2の核酸配列を含む、ベクターと、
b)第3のプロモーターの制御下の前記第3の核酸配列を含む第2のベクターと、を含
む、免疫細胞。
【0464】
実施形態86 実施形態83の免疫細胞であって、
a)第1のプロモーターの制御下の第1の核酸配列と、
b)第2のプロモーターの制御下の第2の核酸配列と、
c)第3のプロモーターの制御下の第3の核酸配列と、を含むベクターを含む、免疫細
胞。
【0465】
実施形態87 第1のプロモーター及び/又は第2のプロモーターが、常時活性型のプ
ロモーターである、実施形態84~86のいずれか1つに記載の免疫細胞。
【0466】
実施形態88 第3のプロモーターが誘導可能なプロモーターである、実施形態84~
87のいずれか1つに記載の免疫細胞。
【0467】
実施形態89 実施形態83の免疫細胞であって、
a)単一の第1のプロモーターの制御下の、第1の核酸配列及び第2の核酸配列を含む
、第1のベクターと、
b)第2のプロモーターの制御下の第3の核酸配列を含む第2のベクターと、を含む、
免疫細胞。
【0468】
実施形態90 実施形態83の免疫細胞であって、
a)単一の第1のプロモーターの制御下の、第1の核酸配列及び第2の核酸配列と、
b)第2のプロモーターの制御下の第3の核酸配列と、を含むベクターを含む、免疫細
胞。
【0469】
実施形態91 第1のプロモーターが常時活性型のプロモーターである、実施形態89
又は90に記載の免疫細胞。
【0470】
実施形態92 第2のプロモーターが誘導可能なプロモーターである、実施形態89~
91のいずれか1つに記載の免疫細胞。
【0471】
実施形態93 誘導可能なプロモーターが、免疫細胞の活性化の際に誘導可能である、
実施形態88又は92に記載の免疫細胞。
【0472】
実施形態94 誘導可能なプロモーターが、NFAT由来のプロモーターである、実施
形態88又は92に記載の免疫細胞。
【0473】
実施形態95 すべてが単一のプロモーターの制御下の、第1の核酸配列と、第2の核
酸配列と、第3の核酸配列を含むベクターと、を含む、実施形態83に記載の免疫細胞。
【0474】
実施形態96 ベクターが免疫細胞ゲノムに組み込まれている、実施形態84~95の
いずれか1つに記載の免疫細胞。
【0475】
実施形態97 一実施形態では、実施形態1~67及び79~96のいずれか1つに記
載の免疫細胞と、医薬的に許容される担体と、を含む医薬組成物が提供される。
【0476】
実施形態98 一実施形態では、標的抗原を提示する標的細胞を殺傷する(又は標的抗
原関連疾患を治療する)方法であって、標的細胞を実施形態1~67及び79~96のい
ずれか1つに記載の免疫細胞と接触させることを含む、方法が提供される。
【0477】
実施形態99 接触させることがインビボで実施される、実施形態98に記載の方法。
【0478】
実施形態100 接触させることがインビトロで実施される、実施形態98に記載の方
法。
【0479】
実施形態101 一実施形態では、標的抗原関連疾患を、それを必要とする個体におい
て治療する方法であって、有効量の実施形態97に記載の医薬組成物を個体に投与するこ
とを含む、方法が提供される。
【0480】
実施形態102 標的抗原関連疾患が、がんである、実施形態101に記載の方法。
【0481】
実施形態103 がんが、副腎皮質癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、胆管細胞癌、大腸直
腸癌、食道癌、神経膠芽腫、神経膠腫、肝細胞癌、頭頸部癌、腎臓癌、白血病、肺癌、リ
ンパ腫、黒色腫、中皮腫、多発性骨髄腫、膵臓癌、褐色細胞腫、形質細胞腫、神経芽腫、
卵巣癌、前立腺癌、肉腫、胃癌、子宮癌、及び甲状腺癌である、実施形態102に記載の
方法。
【0482】
実施形態104 標的抗原関連疾患がウイルス感染である、実施形態101に記載の方
法。
【0483】
実施形態105 ウイルス感染が、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン・
バーウイルス(EBV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、カポジ肉腫関連ヘルペスウイル
ス(KSHV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、伝染性軟属腫ウイルス(MCV)
、ヒトT細胞白血病ウイルス1(HTLV-1)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、及
びC型肝炎ウイルス(HCV)からなる群から選択されるウイルスによって引き起こされ
る、実施形態104に記載の方法。
【0484】
実施形態106 免疫細胞が個体にとって自家性である、実施形態101~105のい
ずれか1つに記載の方法。
【0485】
実施形態107 一実施形態では、caTCRを含むか、又はcaTCRをコードする
核酸で形質導入された免疫細胞に共刺激シグナルを提供する方法であって、実施形態68
~74のいずれか1つに記載の1つ以上の核酸又は実施形態75~77のいずれか1つに
記載の1つ以上のベクターを上記細胞に導入することを含む、方法が提供される。
【実施例0486】
材料及び方法
細胞試料、細胞株、及び抗体
細胞株HepG2(ATCC HB-8065、HLA-A2+、AFP)、SK-
HEP-1(ATCC HTB-52、HLA-A2+、AFP)、Raji(ATC
C CCL-86、CD19)、CA46(ATCC CRL-1648、CD19
)、Jurkat(ATCC CRL-2899、CD19)、J.RT3-T3.5
(ATCC TIB-153)、Jeko-1(ATCC CRL-3006、CD19
)、THP-1(ATCC TIB-202、CD19)、Daudi(ATCC
CCL-213、CD19)、HeLa(ATCC CCL-2)、MDA-MB-2
31(ATCC HTB-26)、及びMCF-7(ATCC HTB-22)をAme
rican Type Culture Collectionから入手した。Jurk
atは、T細胞白血病由来のヒトTリンパ球細胞株である。J.RT3-T3.5は、T
細胞受容体β鎖を欠くJurkat細胞由来の変異株である。Rajiは、CD19を発
現するバーキットリンパ腫細胞株である。Raji-CD19ノックアウト(Raji-
CD19KO)株を、CRISPR技術によって生成した。3つの異なるガイド配列を、
Raji細胞内のCD19を標的化するように設計した。CRISPR-Cas9ベクタ
ーをOrigeneから購入し、各ガイドをpCas-Guideベクターに別々にクロ
ーニングした。エレクトロポレーションの3日後、各ガイドによるノックアウト効率をフ
ローサイトメトリーによって評価し、限界希釈法によるクローン選択のために最良のCD
19ノックアウトプールを選択した。選択されたクローンを、シークエンシングによって
完全なCD19ノックアウトとして確認した。全ての細胞株を、37℃/5%COで、
10%FBS及び2mMグルタミンを補充したRPMI1640又はDMEM中で培養し
た。
【0487】
FITC又はAPCにコンジュゲートしたヒトHLA A02(クローンBB7.2)
に対するモノクローナルAb、及びFITC又はAPCにコンジュゲートしたアイソタイ
プ対照マウスIgG2b、ヒト又はマウスCD3に対する抗体、ヒトT細胞受容体の様々
なサブユニット、3×Flagタグ、HAタグ、PE又はFITCにコンジュゲートした
ヤギF(ab)2抗ヒトIgG、並びに蛍光コンジュゲートヤギF(ab’)2抗マウス
Ig(Invitrogen)を購入した。AFP158に対する抗イディオタイプ抗体
/HLA-A02:01特異的抗体を開発し、Eureka Therapeutic
sの工場内で産生した。フローサイトメトリーデータをBD FACSCanto II
を使用して収集し、FlowJoソフトウェアパッケージを使用して分析した。
【0488】
全てのペプチドを購入し、Elim Biopharmaにより合成した。ペプチドは
、>90%の純度であった。ペプチドを10mg/mLでDMSOに溶解させ、又は生理
食塩水で希釈し、-80℃で凍結した。ビオチン化単鎖AFP158/HLA-A02
:01及び対照ペプチド/HLA-A02:01複合体単量体を、組換えHLA-A
02:01及びβ-2ミクログロブリン(β2M)を用いてペプチドを再折り畳みするこ
とにより生成した。単量体は、BirA酵素によるHLA-A02:01細胞外ドメイ
ン(ECD)のC末端に連結されたBSPペプチドを介してビオチン化した。蛍光標識ス
トレプトアビジンをビオチン化ペプチド/HLA-A02:01複合体単量体と混合し
て、蛍光標識されたペプチド/HLA-A02:01四量体を形成した。
【0489】
ヒトCD19特異的若しくはAFP158/HLA-A02:01特異的なCAR又
はcaTCRを含むレンチウイルスを、例えば、キメラ構築物をコードするベクターを用
いた293T細胞のトランスフェクションによって作製した。初代培養ヒトT細胞を、1
00U/mlのインターロイキン-2(IL-2)の存在下で、CD3/CD28ビーズ
(Dynabeads(登録商標)、Invitrogen)による1日間の刺激後に形
質導入に使用した。濃縮レンチウイルスを、レトロネクチン(Takara)コーティン
グされた6ウェルプレート中のT細胞に96時間適用した。抗AFP及び抗CD19キメ
ラ構築物の形質導入効率を、それぞれPEコンジュゲートストレプトアビジン又は抗my
c抗体を有するビオチン化AFP158/HLA-A02:01四量体(「AFP15
8四量体」)を使用して、フローサイトメトリーによって評価した。繰り返しフローサイ
トメトリー分析を5日目及びその後3~4日おきに行った。
【0490】
細胞株は、caTCR構築物の2つのサブユニットをコードする1つ又は2つのベクタ
ーのいずれかで形質導入した。形質導入から5日後に、抗HA(抗HAタグ抗体-ChI
Pグレード、Abcam)又は抗Flag抗体(Anti-Flag Antibody
Produced in Rabbit,Sigma)を使用するウェスタンブロット
のために細胞溶解物を生成した。
【0491】
腫瘍細胞傷害性を、Cytox 96非放射性LDH細胞傷害性アッセイ(Prome
ga)によりアッセイした。CD3T細胞は、CD14、CD16、CD19、CD2
0、CD36、CD56、CD66b、CD123、グリコホルリンA発現細胞を陰性に
枯渇させるEasySepヒトT細胞単離キット(StemCell Technolo
gies)を使用して、PBMC濃縮全血から調製した。ヒトT細胞を活性化し、例えば
、製造元のプロトコールに従ってCD3/CD28 Dynabeads(Invitr
ogen)で増殖させた。活性化T細胞(ATC)を、10%FBS+100U/mlの
IL-2を有するRPMI1640培地で培養して維持し、7~14日目に使用した。活
性化T細胞(免疫細胞)及び標的細胞を、様々なエフェクター対標的比(例えば、2.5
:1又は5:1)で16時間共培養し、細胞傷害性についてアッセイした。
実施例1キメラ抗体-T細胞受容体(caTCR)設計
【0492】
様々なキメラ抗体-T細胞受容体(caTCR)設計が想到され、6つの異なる例が図
1に示される(caTCR-1、caTCR-2、caTCR-3、caTCR-4、c
aTCR-5、及びcaTCR-6)。これらの設計では、様々な抗体部分(Fab、F
ab’、(Fab’)2、Fv、又はscFv)は、可変ドメイン及び定常ドメインを欠
くT細胞受容体α/β鎖又はγ/δ鎖のアミノ末端に融合され、それらの連結ペプチド(
定常ドメイン後の領域)、それらの膜貫通ドメイン又はその変異型、及び任意の細胞内ド
メインの全て又は一部を含み、T細胞の表面に発現され得るcaTCRヘテロ二量体を形
成する。天然のTCRでは、Vα/Vβ又はVδ/Vγドメインは、TCRの抗原結合ド
メインを形成する。本発明者らの設計は、様々な抗体部分を有するVα-Cα/Vβ-C
β又はVδ-Cδ/Vγ-Cγ領域を置換し、少なくとも1つのTCR膜貫通ドメインを
導入し、したがって、抗体の結合特異性を構築物に付与し、天然に存在するTCR膜貫通
ドメインのみを有するTCR又は関連する構築物と比較して、CD3δε、CD3γε、
及びCD3ζζなどのTCR複合体において、TCR複合体中のアクセサリー分子を動員
する構築物の向上した能力をもたらす。caTCR構築物を以下のように命名した:ca
TCR-[設計番号]-[変異位置][番号]。設計番号1は、Fab抗体部分を有する
caTCRに対応し、設計番号2は、Fab’抗体部分を有するcaTCRに対応し、設
計番号3は、(Fab’)2抗体部分を有するcaTCRに対応し、設計番号4は、Fv
抗体部分を有するcaTCRに対応し、設計番号5は、単一のscFv抗体部分を有する
caTCRに対応し、設計番号6は、2つのscFv抗体部分を有するcaTCRに対応
する(図1を参照されたい)。変異位置及び番号0(例えば、caTCR-1-0)は、
天然に存在するTCRドメインを有する構築物に対応し、#≧1は、変異位置における特
定の変異を有するcaTCRに対応する(例えば、caTCR-1-TM1は、1つの膜
貫通ドメイン変異型に対応し、caTCR-1-EC1は、1つの細胞外ドメイン変異型
に対する、表2を参照されたい)。
【0493】
caTCR-1(IgV-IgC1-TCRδ/IgV-IgC-TCRγ)
設計では、抗体重鎖の可変ドメイン及び第1の定常ドメイン(IgV-IgC1)は
、TCRδ鎖のアミノ末端部分を、境界位置まで、又はVδ-Cδ領域に続くTCRδ鎖
の細胞外ドメインの連結ペプチド内で置換し、所望により、TCRδ鎖の膜貫通ドメイン
は、1つ以上のアミノ酸の置換などにより改変されている。対応する抗体軽鎖の可変ドメ
イン及び定常ドメイン(IgV-IgC)は、TCRγ鎖のアミノ末端部分を、境界
位置まで、又はVγ-Cγ領域に続くTCRγ鎖の細胞外ドメインの連結ペプチド内で置
換し、所望により、TCRγ鎖の膜貫通ドメインは、1つ以上のアミノ酸の置換などによ
り改変されている。
【0494】
caTCR-1の一実施形態では、1つの鎖は、TCRδ鎖の膜貫通ドメイン及び連結
ペプチドの全て又は一部を含むTCRδ鎖のカルボキシ末端部分に融合された、IgC
1ドメイン(配列番号37~47のうちのいずれか1つ)に融合された抗AFP158/
HLA-A02:01抗体(配列番号62)のIgVドメインを含み、また、他方の
鎖は、TCRγ鎖の膜貫通ドメイン及び連結ペプチドの全て又は一部を含むTCRγ鎖の
カルボキシ末端部分に融合された、IgCドメイン(配列番号48)に融合された抗A
FP158/HLA-A02:01抗体(配列番号63)のIgVドメインを含む。
いくつかの実施形態では、TCR膜貫通ドメインの両方が天然に存在する。いくつかの実
施形態では、TCR膜貫通ドメインのうちの少なくとも1つは、1つ以上のアミノ酸置換
を含む天然に存在しない変異型である。いくつかの実施形態では、TCRδ鎖のカルボキ
シ末端部分は、配列番号31又は32のアミノ酸配列を有する連結ペプチドを含む。いく
つかの実施形態では、TCRδ鎖のカルボキシ末端部分は、配列番号7及び9~13のう
ちのいずれか1つのアミノ酸配列を有する膜貫通ドメインを含む。いくつかの実施形態で
は、TCRγ鎖のカルボキシ末端部分は、配列番号33又は34のアミノ酸配列を有する
連結ペプチドを含む。いくつかの実施形態では、TCRγ鎖のカルボキシ末端部分は、配
列番号8及び14~26のいずれか1つのアミノ酸配列を有する膜貫通ドメインを含む。
【0495】
caTCR-2(IgV-IgC1-ヒンジ-TCRδ/IgV-IgC-リ
ンカー-TCRγ)設計では、抗体重鎖の可変ドメイン、第1の定常ドメイン、及びヒン
ジ(IgV-IgC1-ヒンジ)は、TCRδ鎖のアミノ末端部分を、境界位置まで
、又はVδ-Cδ領域に続くTCRδ鎖の細胞外ドメインの連結ペプチド内で置換し、所
望により、TCRδ鎖の膜貫通ドメインは、1つ以上のアミノ酸の置換などにより改変さ
れている。リンカー(IgV-IgC-リンカー)に融合された対応する抗体軽鎖の
可変ドメイン及び定常ドメインは、TCRγ鎖のアミノ末端部分を、境界位置まで、又は
Vγ-Cγ領域に続くTCRγ鎖の細胞外ドメインの連結ペプチド内で置換し、所望によ
り、TCRγ鎖の膜貫通ドメインは、1つ以上のアミノ酸の置換などにより改変されてい
る。
【0496】
caTCR-3(IgV-IgC1-ヒンジ-TCRδ/IgV-IgC1-
ヒンジ-TCRγ+IgV-IgC)設計では、抗体重鎖の可変ドメイン、第1の定
常ドメイン、及びヒンジ(IgV-IgC1-ヒンジ)は、TCRδ鎖のアミノ末端
部分を、境界位置まで、又はVδ-Cδ領域に続くTCRδ鎖の細胞外ドメインの連結ペ
プチド内で置換し、所望により、TCRδ鎖の膜貫通ドメインは、1つ以上のアミノ酸の
置換などにより改変されている。抗体重鎖の可変ドメイン、第1の定常ドメイン、及びヒ
ンジ(IgV-IgC1-ヒンジ)は、TCRγ鎖のアミノ末端部分を、境界位置ま
で、又はVγ-Cγ領域に続くTCRγ鎖の細胞外ドメインの連結ペプチド内で置換し、
所望により、TCRγ鎖の膜貫通ドメインは、1つ以上のアミノ酸の置換などにより改変
されている。対応する抗体軽鎖(IgV-IgC)の可変ドメイン及び定常ドメイン
は、IgV-IgC1ドメインと結合する。
【0497】
caTCR-4(IgV-TCRδ/IgV-TCRγ)設計では、抗体重鎖の可
変ドメイン(IgV)は、TCRδ鎖のアミノ末端部分を、境界位置まで、又はVδ-
Cδ領域に続くTCRδ鎖の細胞外ドメインの連結ペプチド内で置換し、所望により、T
CRδ鎖の膜貫通ドメインは、1つ以上のアミノ酸の置換などにより改変されている。対
応する抗体軽鎖の可変ドメイン(IgV)は、TCRγ鎖のアミノ末端部分を、境界位
置まで、又はVγ-Cγ領域に続くTCRγ鎖の細胞外ドメインの連結ペプチド内で置換
し、所望により、TCRγ鎖の膜貫通ドメインは、1つ以上のアミノ酸の置換などにより
改変されている。
【0498】
caTCR-5(IgV-IgV-TCRδ/TCRγ)設計では、対応する抗体
軽鎖の可変ドメインに融合した抗体重鎖の可変ドメイン(IgV-IgV又はIgV
-IgV)は、TCRδ鎖のアミノ末端部分を、境界位置まで、又はVδ-Cδ領域
に続くTCRδ鎖の細胞外ドメインの連結ペプチド内で置換し、所望により、TCRδ鎖
の膜貫通ドメインは、1つ以上のアミノ酸の置換などにより改変されている。TCRγ鎖
のアミノ末端部分は、境界位置まで、又はVγ-Cγ領域に続くTCRγ鎖の細胞外ドメ
インの連結ペプチド内で欠失し、所望により、TCRγ鎖の膜貫通ドメインは、1つ以上
のアミノ酸の置換などにより改変されている。
【0499】
caTCR-6(IgV-IgV-TCRδ/IgV-IgV-TCRγ)設
計では、対応する抗体軽鎖の可変ドメインに融合した抗体重鎖の可変ドメイン(IgV
-IgV又はIgV-IgV)は、TCRδ鎖のアミノ末端部分を、境界位置まで
、又はVδ-Cδ領域に続くTCRδ鎖の細胞外ドメインの連結ペプチド内で置換し、所
望により、TCRδ鎖の膜貫通ドメインは、1つ以上のアミノ酸の置換などにより改変さ
れている。対応する抗体軽鎖の可変ドメインに融合した抗体重鎖の可変ドメイン(IgV
-IgV又はIgV-IgV)は、TCRγ鎖のアミノ末端部分を、境界位置ま
で、又はVγ-Cγ領域に続くTCRγ鎖の細胞外ドメインの連結ペプチド内で置換し、
所望により、TCRγ鎖の膜貫通ドメインは、1つ以上のアミノ酸の置換などにより改変
されている。
実施例2:抗CD19 caTCR-1及び抗CD19キメラ刺激受容体で形質導入さ
れたT細胞の構築及び特性評価
【0500】
抗CD19結合部分をコードする核酸断片(配列番号58及び59)を使用して、CD
28膜貫通及び細胞内シグナル伝達配列(配列番号51)を含むキメラ共刺激受容体(C
SR;本明細書では「CSR1」とも称される)並びにcaTCR-1構築物(caTC
R-1-0又はcaTCR-1-TM5)の両方を生成した。初代培養T細胞を、CSR
単独、caTCR-1-0単独、CSRと組み合わせたcaTCR-1-0、又はCSR
と組み合わせたcaTCR-1-TM5のいずれかで形質導入した。形質導入効率は、細
胞表面染色によって決定され、全てのcaTCR-1 T細胞は、モックT細胞と混合す
ることにより、およそ40%の受容体陽性で一致した。
インビトロでの殺傷
【0501】
CD80/86陰性NALM6細胞(CD19を発現する白血病細胞)を、2.5:1
.のエフェクター対標的比でのT細胞刺激の標的細胞として使用した。Cytox 96
非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega)を使用して、16時間インキュベーショ
ン後に特異的T細胞溶解を測定した。
【0502】
抗CD19-caTCR-1-0又は抗CD19-caTCR-1-TM5のいずれか
での抗CD19-CSRの発現は、インビトロでNALM6腫瘍細胞を溶解することがで
きる完全機能的細胞傷害性T細胞を作製した(図2)。CaTCR-1-0のみを発現し
ているT細胞並びにcaTCR-1(caTCR-1-0又はcaTCR-1-TM5)
及びCSRの両方を発現しているT細胞は全て、NALM6標的細胞のほぼ100%を溶
解することができたため、2種類のT細胞間では、殺傷された標的細胞数の有意な差は観
察されなかった。
サイトカイン分泌
【0503】
インビトロ殺傷反応の上清に放出されたサイトカインの濃度を、Bio-plex P
ro Human Cytokine 8 plexキット(BioRad)を使用して
Bioplex200(Luminex)により測定した。CSRを発現するT細胞は、
caTCR(CSR陽性及びcaTCR陽性T細胞)と組み合わせて、CA-TCR-1
-0単独を発現するT細胞よりも、より多くの細胞傷害性のサイトカインを放出した(図
3)。
細胞内サイトカイン発現
【0504】
T細胞を、分泌阻害剤ブレフェルジンA(BFA)の存在下で4時間、1:2のE:T
比で、標的細胞で刺激した。T細胞を透過処理し、サイトカイン特異的抗体を使用して、
腫瘍刺激に応答して発現したサイトカインを検出した。サイトカイン陽性細胞のパーセン
テージを、フローサイトメトリーを用いて決定した。CSR陽性及びcaTCR陽性T細
胞は、ca-TCR-1-0単独を発現するT細胞よりも、より多くの細胞内サイトカイ
ンを発現した(表5)。
【表5】
【0505】
まとめると、結果は、CSRの添加が、caTCR T細胞の感度及び応答性を増加さ
せることを示す。CSR-caTCRの二重陽性T細胞で発現し放出されるサイトカイン
の量が増加すると、caTCR-1及びCSRの両方の共刺激がT細胞の細胞傷害性の可
能性を上昇させることを示す。
脱顆粒
【0506】
T細胞が腫瘍細胞を溶解する一次機構は、標的細胞中に放出される細胞傷害性分子の分
泌顆粒を産生することによる。CD107aは、脱顆粒活性のマーカーとして使用するこ
とができ、CD107aの発現の増加は、細胞傷害性T細胞機能の増加と相関する。
【0507】
T細胞を蛍光コンジュゲート抗CD107aと混合し、エンドサイトーシス阻害剤モネ
ンシンの存在下で4時間、1:2のE:T比で、標的細胞で刺激した。T細胞表面上で検
出されたCD107aの量は、抗原認識により誘導される細胞傷害性脱顆粒の程度の直接
的な尺度である。caTCR T細胞上のCSRの結合はT細胞脱顆粒を増加させ、CS
Rが治療用T細胞を意図された腫瘍細胞に向かってより反応性にすることを更に実証する
図4)。
増殖
【0508】
遺伝的に改変されたT細胞の増殖及び持続は、がんを治療する際の養子T細胞移植療法
の成功に重要である。T細胞増殖及び持続性に対するCSRの効果をアッセイするために
、本発明者らは、細胞内色素CFSEでT細胞を標識し、腫瘍細胞で刺激したときにT細
胞が分裂するときの色素の希釈を観察した。また、示された日に残ったCFSE陽性細胞
の数を計数することにより、T細胞の持続性を測定することも可能であった。
【0509】
それぞれのT細胞を一晩血清飢餓処理し、CellTrace CFSE(Therm
o Fisher C34554)を用いてCFSEで標識した。100,000個のT
細胞を、2:1のE:T比でインキュベートし、示された日に、フローサイトメトリーを
使用してT細胞が分裂するときのCFSE色素の連続希釈を観察した。T細胞の総数をF
ACsで計数した。
【0510】
CFSE希釈はCSR刺激により増加し、これらのT細胞はより高い増殖可能性を有し
たことを示した(図5)。重要なことに、細胞数の増加はまた、細胞がより良好に増殖す
るだけでなく、それらの持続性も維持されることを意味する(表6)。
【表6】
【0511】
結果は、本発明者らにより、標的リガンド及び標的抗原の両方を発現する腫瘍細胞でC
SR及びcaTCRの両方を同時に刺激することができ、CSR及びcaTCRの共刺激
は、caTCR T細胞の細胞傷害性、増殖可能性、及び持続性を強化したことを示す。
これらは、養子移植を用いてcaTCRに基づく治療の治療可能性を増加させる全ての特
性である。
実施例3.抗AFP caTCR-1及び抗GPC3 CSRで形質導入されたT細胞
の構築及び特性評価
【0512】
抗AFP結合部分をコードする核酸断片(配列番号62及び63)を使用して、caT
CR-1構築物(caTCR-1-0又はcaTCR-1-TM5)を生成した。抗GP
C3結合部分をコードする核酸断片(配列番号64及び65)を使用して、CD28膜貫
通及び細胞内シグナル伝達配列(配列番号51)を含むCSR(すなわち、CSR1)を
生成した。
インビトロでの殺傷
【0513】
HEPG2細胞(AFP及びGPC3を発現しているヒト肝癌細胞)並びにHEPG2
-GPC3.KO細胞(GPC3遺伝子の標的化ノックアウトを有するHEPG2細胞)
を、2.5:1のエフェクター対標的比でのT細胞刺激の標的細胞として使用した。Cy
tox 96非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega)を使用して、16時間イン
キュベーション後に特異的T細胞溶解を測定した。
【0514】
抗AFP-caTCR-1-0又は抗AFP-caTCR-1-TM5のいずれかでの
抗GPC3-CSRの発現は、インビトロでHEPG2細胞を溶解することができる完全
機能的細胞傷害性T細胞をもたらした(図6)。caTCR-1-0のみを発現している
T細胞は、caTCR-1(caTCR-1-0又はcaTCR-1-TM5)及びCS
R(約55%~約65%)の両方を発現しているものよりもはるかに少ない(約15%)
特異的殺傷を有した。対照的に、特異的殺傷は、HEPG2-GPC3.KO標的細胞を
使用するとき、caTCR及びCSRの両方を発現するT細胞については、約10%に減
少し(図6)、これは、CSRとその標的リガンドとの結合が、増加した細胞傷害性に関
与することを示している。
サイトカイン分泌
【0515】
インビトロ殺傷実験の上清に放出されたサイトカインの濃度を、Bio-plex P
ro Human Cytokine 8 plexキット(BioRad)を使用して
Bioplex200(Luminex)により測定した。CSR陽性及びcaTCR陽
性T細胞は、caTCR標的抗原及びCSR標的リガンドの両方を発現するHEPG2標
的細胞に対して、CA-TCR-1-0単独を発現するT細胞よりも、より多くの細胞傷
害性のサイトカインを放出した(図7)。対照的に、CA-TCR-1-0単独又はca
TCR及びCSRの両方を発現しているT細胞の間では、CSR標的リガンドを欠くHE
PG2-GPC3.KO標的細胞に対する差はほとんど又は全く差がなかった(図7)。
細胞内サイトカイン発現
【0516】
T細胞を、分泌阻害剤ブレフェルジンA(BFA)の存在下で4時間、1:2のE:T
比で、標的細胞(HEPG2)で刺激した。T細胞を透過処理し、サイトカイン特異的抗
体を使用して、腫瘍刺激に応答して発現したサイトカインを検出した。サイトカイン陽性
細胞のパーセントを、フローサイトメトリーを用いて決定した。CSR陽性及びcaTC
R陽性T細胞は、ca-TCR-1-0単独を発現するT細胞よりも、より多くの細胞内
サイトカインを発現した(表7)。
【表7】
【0517】
まとめると、結果は、CSRの添加が、異なるcaTCR標的抗原及びCSR標的リガ
ンドを有するcaTCR+CSR T細胞の感度及び応答性を増加させることを示す。こ
れらのCSR-caTCR個二重陽性T細胞で発現し放出されるサイトカインの量が増加
すると、caTCR-1及びCSRの両方の共刺激がT細胞の細胞傷害性の可能性を上昇
させる証拠を更に示す。
脱顆粒
【0518】
T細胞を蛍光コンジュゲート抗CD107aと混合し、エンドサイトーシス阻害剤モネ
ンシンの存在下で4時間、1:2のE:T比で、HEPG2標的細胞で刺激した。caT
CR T細胞上のCSRの結合はT細胞脱顆粒を増加させ、CSRが治療用T細胞を意図
された腫瘍細胞に向かってより反応性にすることを更に実証する(図8)。
増殖
【0519】
T細胞を細胞内色素CFSEで標識し、指示された日で、染料希釈及び残っているCF
SE陽性細胞の数を測定した。
【0520】
それぞれのT細胞を一晩血清飢餓処理し、CellTrace CFSE(Therm
o Fisher C34554)を用いてCFSEで標識した。100,000個のT
細胞を、2:1のE:T比でインキュベートし、示された日に、フローサイトメトリーを
使用してT細胞が分裂するときのCFSE色素の連続希釈を観察した。T細胞の総数をF
ACsで計数した。
【0521】
CFSE希釈はCSR刺激により増加し、これらのT細胞はより高い増殖可能性を有し
たことを示した(図9)。重要なことに、細胞数の増加はまた、細胞がより良好に増殖す
るだけでなく、それらの持続性も維持されることを意味する(表8)。
【表8】
【0522】
結果は、本発明者らにより、CSR及びcaTCRの両方をリガンド陽性腫瘍細胞で同
時に刺激することができ、CSR及びcaTCRの共刺激は、caTCR T細胞の細胞
傷害性、増殖可能性、及び持続性を強化したことを示す。これらは全て、養子移植を用い
てcaTCRに基づく治療の治療可能性を増加させる特性である。
実施例4抗CD19 caTCR-1及び抗CD20 CSRで形質導入されたT細胞
の構築及び特性評価
【0523】
抗CD20結合部分(配列番号60及び61)をコードする核酸断片を使用して、抗C
D19結合部分(配列番号58及び59)を使用して生成される抗CD19caTCR-
1-0又はcaTCR-1-TM5を発現する同じベクター上に発現させた、CD28膜
貫通及び細胞内シグナル伝達配列(配列番号51)を含む抗CD20 CSR(すなわち
、「CSR1」)を生成した。
インビトロでの殺傷
【0524】
Raji、BV173、NALM6、及びJeko-1細胞(CD19及びCD20を
発現する細胞株)を、2.5:1.のエフェクター対標的比でT細胞殺傷のための標的細
胞として使用した。Cytox 96非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega)を
使用して、16時間インキュベーション後に特異的T細胞溶解を測定した。
【0525】
抗CD19-caTCR-1-0又は抗CD19-caTCR-1-TM5のいずれか
での抗CD20-CSRの発現は、インビトロで様々なCD19陽性細胞、CD20陽性
腫瘍細胞を溶解することができる完全機能的細胞傷害性T細胞を作製した(図10)。
サイトカイン分泌
【0526】
Rajiインビトロ殺傷実験の上清に放出されたサイトカインの濃度を、Bio-pl
ex Pro Human Cytokine 8 plexキット(BioRad)を
使用してBioplex200(Luminex)により測定した。CSR陽性及びca
TCR陽性T細胞は、CA-TCR-1-0単独を発現するT細胞よりも、より多くのG
M-CSF、IFNγ、及びTNFαを放出した(図11)。
脱顆粒
【0527】
T細胞を蛍光コンジュゲート抗CD107aと混合し、エンドサイトーシス阻害剤モネ
ンシンの存在下で4時間、1:2のE:T比で、Raji標的細胞で刺激した。caTC
R T細胞上のCSRの結合はT細胞脱顆粒を増加させ、CSRが治療用T細胞を意図さ
れた腫瘍細胞に向かってより反応性にすることを更に実証する(図12)。
【0528】
実施例2~4は、CSRが、様々な抗原標的部分と組み合わせて使用されて、広範囲の
疾患細胞に対してcaTCR発現T細胞の治療可能性を増加させることができるモジュー
ル式分子であることを示す。
実施例5:抗CD19 caTCR-1及び抗CD19キメラ刺激受容体変異型で形質
導入されたT細胞の構築及び特性評価
【0529】
抗CD19結合部分をコードする核酸断片(配列番号58及び59)を使用して、キメ
ラ共刺激受容体(CSR)及びcaTCR-1-0構築物(この実施例では、「caTC
R-1」と称される)の両方を生成した。抗CD19結合部分をCSR配列に融合させる
ことによって、異なるCSRを調製した。CSR1は、CD28膜貫通及び細胞内シグナ
ル伝達配列(配列番号90)を含む。CSR2は、CD8膜貫通配列及び4-1BB細胞
内(instracellular)シグナル伝達配列(配列番号91)を含む。CSR3は、4-1B
B膜貫通及び細胞内シグナル伝達配列(配列番号92)を含む。CSR4は、CD8α膜
貫通配列及びCD27細胞内シグナル伝達配列(配列番号93)を含む。CSR5は、C
D27膜貫通及び細胞内シグナル伝達配列(配列番号94)を含む。CSR6は、CD8
膜貫通配列及びCD30細胞内シグナル伝達配列(配列番号95)を含む。CSR7は、
CD30膜貫通及び細胞内シグナル伝達配列(配列番号96)を含む。CSR8は、CD
8膜貫通配列及びOX40細胞内シグナル伝達配列(配列番号97)を含む。CSR9は
、OX40膜貫通及び細胞内シグナル伝達配列(配列番号98)を含む。
【0530】
抗CD19 CSR単独で、又は抗CD19 CSRと組み合わせた抗CD19 ca
TCR-1で、初代培養T細胞を形質導入した。形質導入効率は、細胞表面染色によって
決定され、全てのcaTCR形質導入T細胞は、モックT細胞と混合することにより、お
よそ40%の受容体陽性で一致した。
抗CD19 CSR単独を発現するT細胞
インビトロでの殺傷
【0531】
Raji又はNALM6細胞を、2.5:1.のエフェクター対標的比でのT細胞刺激
の標的細胞として使用した。Cytox 96非放射性細胞傷害性アッセイ(Prome
ga)を使用して、16時間インキュベーション後に特異的T細胞溶解を測定した。抗C
D19 CSR-6、CSR-7、CSR-8、又はCSR-9単独を発現しているT細
胞は、形質導入されていないモックT細胞と比較して、多くの数の殺傷された標的細胞を
もたらさなかった(データ示さず)。
サイトカイン分泌
【0532】
インビトロ殺傷反応の上清に放出されたサイトカインの濃度を、Bio-plex P
ro Human Cytokine 8 plexキット(BioRad)を使用して
Bioplex200(Luminex)により測定した。抗CD19 CSR-6、C
SR-7、CSR-8、又はCSR-9単独を発現するT細胞は、Raji又はNALM
6と共にインキュベートされるときに有意な量のIFNγを放出しなかった(データ示さ
ず)。
抗CD19 caTCR-1及び抗CD19 CSRを発現するT細胞
【0533】
2つの異なる実験バッチでは、抗CD19 caTCR-1及び抗CD19 CSRの
両方を発現するそれぞれのT細胞を一晩血清飢餓処理し、CellTrace CFSE
(Thermo Fisher C34554)を用いてCFSEで標識した。T細胞を
、2:1のE:T比でNALM6とインキュベートし、示された日に、フローサイトメト
リーを使用してT細胞が分裂するときのCFSE色素の連続希釈を観察した。T細胞の総
数をFACsで計数した。これらの実験を、第2のドナーから得られた初代培養T細胞を
使用して繰り返した。同様の結果が観察された(データ示さず)。
【0534】
抗CD19 caTCR-1及び抗CD19 CSRの両方を発現している全てのT細
胞において、CFSE希釈を観察し、これらのT細胞の高い増殖可能性を示した(図14
-15)。加えて、抗CD19 caTCR-1及び抗CD19 CSRの両方を発現し
ているT細胞は、10日間にわたって有意な持続性を示した(表9)。対照実験では、抗
CD19 CSR-1から抗CD19 CSR-5mまでのいずれか1つを単独で発現し
ているT細胞は、経時的に、増殖可能性又は持続性の増加を示さなかった(データ示さず
)。
【表9】
実施例6:抗CD19 caTCR-1及び抗CD19 CSRで形質導入されたT細
胞のインビボ有効性試験
【0535】
抗CD19 caTCR-1及び抗CD19 CSR-1の両方を発現しているT細胞
のインビボ抗腫瘍活性を、ヒトCD19+NALM-6プレB急性リンパ芽球性白血病(
ALL)モデルで試験した。Luciferase発現NALM-6細胞を、NOD S
CIDガンマ(NSG)免疫不全マウスに静脈内(i.v.)移植し、腫瘍由来生物発光
を測定することにより、腫瘍量を評価した。腫瘍移植から6日後、マウスを、治療群への
全生物発光流量に基づいて無作為化した:(1)5×10個の形質導入されていないド
ナーに適合した(Mock)T細胞のi.v.注射、(2)抗CD19 caTCR-1
のみを発現する2×10個のT細胞(「caTCR-1 T細胞」)のi.v.注射、
及び(3)抗CD19 caTCR-1及び抗CD19 CSR-1の両方を発現する2
×10個のT細胞(「caTCR-1 CSR-1 T細胞」)のi.v.注射、(n
=6マウス/群)。マウスにおけるT細胞注入から得られる健康効果を、それらの全身外
観、体重、及び他の有害応答の臨床的徴候(低体温、努力性呼吸、及び後肢麻痺/衰弱を
含む)をモニタリングすることによって評価した。
【0536】
図16に示すように、caTCR-1 T細胞及びcaTCR-1 CSR-1 T細
胞処理の両方が腫瘍増殖阻害をもたらす一方、caTCR-1 CSR-1 T細胞は、
caTCR-1 T細胞と比較して抗腫瘍活性の増強を示した。全てのcaTCR-1
T細胞処理及びcaTCR-1 CSR-1 T細胞処理マウスは、試験期間にわたる正
常な歩行、姿勢、及び活動/応答性を示した。加えて、caTCR-1 T細胞処理及び
caTCR-1 CSR-1 T細胞処理マウスは、試験中に体重を減少させなかった。
全体として、処理されたマウスにおける観察可能な異常パラメーターの欠如は、caTC
R-1 CSR-1 T細胞療法の安全性を示す。
【0537】
インビボでのサイトカイン放出レベルを決定するために、臨床のサイトカイン放出症候
群に関連するものを含む主要なサイトカインを、NALM-6腫瘍担持マウスに抗CD1
9 CAR-T細胞又はcaTCR-1 CSR-1 T細胞と共に投与した24時間後
に分析した。BioRad Bio-Plexキットを使用して、Luminex Ma
gpix技術によりサイトカインレベルを定量した。図17のcaTCR-1に示すよう
に、CSR-1 T細胞処理マウスは、CAR-T処理マウスよりも顕著に低いサイトカ
イン放出レベルを有した。
実施例7:抗AFP caTCR-1及び抗GPC3 CSRで形質導入されたT細胞
のインビボ有効性試験
【0538】
抗AFP caTCR-1及び抗GPC3 CSR-1(構築物の情報について、実施
例3を参照されたい)の両方を発現するT細胞のインビボ抗腫瘍活性を、確立されたヒト
AFP/HLA-A2 Hep G2肝癌異種移植モデルにおいて試験した。Hep
G2細胞を、SCID-Beigeマウスの右脇腹に皮下(s.c.)移植した。腫瘍
が約100mmに達したとき、マウスは、(1)5×10個の形質導入していないド
ナー一致(モック)T細胞、(2)同じ抗AFP結合部分を含む抗AFP CARを発現
する2×10個のT細胞(配列番号62及び63)、又は(3)抗AFP caTCR
-1及び抗GPC3 CSR-1(n=6マウス/群)の両方を発現する2×10個の
T細胞のいずれかを腫瘍内注射した(n=6マウス/群)。マウスにおけるT細胞注入か
ら得られる健康効果を、それらの全身外観、体重、及び他の有害応答の臨床的徴候(低体
温、努力性呼吸、及び後肢麻痺/衰弱を含む)をモニタリングすることによって評価した
【0539】
図18に示すように、抗AFP CAR T細胞処理及び抗AFP caTCR-1/
抗GPC3 CSR-1 T細胞処理の両方は、顕著かつ有意な(***p<0.000
1;Dunnettの多重比較試験)腫瘍増殖阻害をもたらした。全ての抗AFP CA
R-T処理及び抗AFP caTCR-1/抗GPC3 CSR-1 T細胞処理マウス
は、試験期間にわたる正常な歩行、姿勢、及び活動/応答性を示した。加えて、抗AFP
CAR-T処理及び抗AFP caTCR-1/抗GPC3 CSR-1 T細胞処理
マウスは、試験中に体重を減少させなかった。全体として、処理されたマウスにおける観
察可能な異常パラメーターの欠如は、抗AFP caTCR-1/抗GPC3 CSR-
1 T細胞療法の安全性を示す。
【表10-1】
【表10-2】
【表10-3】
【表10-4】
【表10-5】
【表10-6】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図13D
図13E
図14
図15
図16
図17
図18
【配列表】
2024038039000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-01-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫細胞であって、
a)キメラ抗体-T細胞受容体(TCR)構築物(caTCR)であって、
i)標的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュール、並びに
ii)第1のTCR膜貫通ドメイン(TCR-TM)を含む第1のTCRドメイン(TCRD)、及び第2のTCR-TMを含む第2のTCRDを含むT細胞受容体モジュール(TCRM)を含み、
前記TCRMが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の動員を促進する、キメラ抗体-T細胞受容体(TCR)構築物(caTCR)と、
b)キメラシグナル伝達受容体(CSR)であって、
i)標的リガンドに結合又は相互作用することができるリガンド結合モジュール、
ii)膜貫通モジュール、及び
iii)前記免疫細胞に共刺激シグナルを提供することができる共刺激免疫細胞シグナル伝達モジュールを含み、
前記リガンド結合モジュール及び前記共刺激免疫細胞シグナル伝達モジュールが同一の分子に由来せず、前記CSRが機能的な一次免疫細胞シグナル伝達ドメインを欠く、キメラシグナル伝達受容体(CSR)と、
を含む、免疫細胞。
【外国語明細書】