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特開2024-38044キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法とキナーゼ阻害剤の併用療法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038044
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法とキナーゼ阻害剤の併用療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240312BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 35/17 20150101ALN20240312BHJP
   C12N 9/99 20060101ALN20240312BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20240312BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20240312BHJP
   C12N 15/867 20060101ALN20240312BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20240312BHJP
【FI】
A61K39/395 T
A61P35/00 ZNA
A61P43/00 121
A61K31/519
A61P35/02
A61K35/17
C12N9/99
C12N5/10
C07K19/00
C12N15/867 Z
C12N15/62 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023216625
(22)【出願日】2023-12-22
(62)【分割の表示】P 2020561770の分割
【原出願日】2019-04-30
(31)【優先権主張番号】62/666,653
(32)【優先日】2018-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516316897
【氏名又は名称】ジュノー セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】フランケル スタンレー アール.
(72)【発明者】
【氏名】ハッスカール イェンス
(72)【発明者】
【氏名】ドゥボフスキー ジェイソン エー.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】特定のB細胞悪性腫瘍などの癌を有する対象を治療する方法、組成物、使用および製品を提供する。
【解決手段】免疫療法、例えばキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法、およびキナーゼ阻害剤、例えばBTK/lTK阻害剤、例えばイブルチニブの使用を含む併用療法、ならびに関連する方法、組成物、使用および製品が提供される。CAR T細胞療法は、抗CD19 CARなどの組換え受容体を発現する細胞を含む。いくつかの態様では、B細胞悪性腫瘍は、非ホジキンリンパ腫(NHL)、例えば再発もしくは難治性NHLまたは特定のNHLサブタイプである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年5月3日に出願された「COMBINATION THERAPY OF A T CELL THERAPY AND A KINASE INHIBITOR」と題する、米国仮特許出願第62/666,653号の優先権を主張するものであり、その内容全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
配列表の参照による組み込み
本出願は、電子形式での配列表と共に提出されている。配列表は、34.4キロバイトのサイズの2019年4月30日に作成された735042017540SeqList.txtと題するファイルとして提供される。配列表の電子形式の情報は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0003】
分野
本開示は、いくつかの局面では、特定のB細胞悪性腫瘍などの疾患および状態を有する対象を治療するための、養子細胞療法、例えばT細胞療法などの免疫療法、およびキナーゼ阻害剤、例えばBTK/ITK阻害剤の使用を含む併用療法の方法、組成物、使用および製品、ならびに関連する方法、組成物、使用および製品に関する。T細胞療法は、キメラ抗原受容体(CAR)などの組換え受容体を発現する細胞を含む。いくつかの態様では、疾患または状態は、非ホジキンリンパ腫(NHL)、例えば再発性もしくは難治性NHLまたは特定のNHLサブタイプなどである。
【背景技術】
【0004】
背景
免疫療法のための様々な戦略、例えば養子療法のために操作されたT細胞を投与することが利用可能である。例えば、CARなどの遺伝子操作された抗原受容体を発現するT細胞を操作し、そのような細胞を含む組成物を対象に投与するための戦略が利用可能である。細胞の有効性を改善する、例えば対象への投与時の細胞の持続性、活性および/または増殖を改善するために、改善された戦略が必要である。そのような必要性を満たす方法、組成物、キット、およびシステムが提供される。
【発明の概要】
【0005】
概要
癌、例えばB細胞悪性腫瘍を有する対象に、T細胞療法などの細胞療法を含む免疫療法の投与、およびイブルチニブなどの本明細書に記載されるキナーゼ阻害剤の対象への投与を含む併用療法を含む方法、組成物、使用、製品が本明細書で提供される。いくつかの局面では、B細胞悪性腫瘍は、非ホジキンリンパ腫(NHL)、例えば再発性もしくは難治性NHLまたは特定のNHLサブタイプである。いくつかの局面では、提供される方法、使用、および製品は、B細胞上に発現される抗原に結合する抗原結合ドメインを含むCAR発現T細胞などのT細胞療法の投与を含む。
【0006】
以下の構造:
であるかまたはこれを含むキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容される塩の有効量を、癌を有する対象に投与する工程、および自己T細胞療法を対象に投与する工程を含む治療方法が本明細書で提供され、前記T細胞療法は、CD19に特異的に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現する遺伝子操作されたT細胞の用量を含み、T細胞療法を投与する前に、対象から生物学的試料を入手し、処理し、この処理は、任意でCARをコードする核酸分子を前記T細胞に導入することによって、試料由来のT細胞を遺伝子改変する工程を含み、キナーゼ阻害剤の投与は、試料の入手の少なくとも3日前または約3日前に開始され、対象から試料を入手した日またはその日以降の投与を少なくとも含む期間にわたって、ある投与間隔で阻害剤を反復投与する工程を含む投薬レジメンで実施される。
【0007】
以下の構造:
であるかまたはこれを含むキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容される塩の有効量を、癌を有する対象に投与する工程、対象から生物学的試料を入手し、前記試料のT細胞を処理し、それによりCD19に特異的に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現する遺伝子操作されたT細胞を含む組成物を生成する工程、および遺伝子操作されたT細胞の用量を含む自己T細胞療法を対象に投与する工程を含む治療方法が本明細書で提供され、キナーゼ阻害剤の投与は、試料の入手の少なくとも3日前または約3日前に開始され、対象から試料を入手した日またはその日以降の阻害剤の投与を少なくとも含む期間にわたって、ある投与間隔で阻害剤を反復投与する工程を含む投薬レジメンで実施される。
【0008】
以下の構造:
を有するキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容される塩の有効量を、癌を有する対象に投与する工程を含む治療方法が本明細書で提供され、対象は、自己T細胞療法による治療の候補であるかまたは治療される予定であり、前記T細胞療法は、CD19に特異的に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現する遺伝子操作されたT細胞の用量を含み、T細胞療法を投与する前に、対象から生物学的試料を入手し、処理し、この処理は、任意でCARをコードする核酸分子を前記T細胞に導入することによって、試料由来のT細胞を遺伝子改変する工程を含み、およびキナーゼ阻害剤の投与は、試料の入手の少なくとも3日前または約3日前に開始され、対象から試料を入手した日またはその日以降の投与を少なくとも含む期間にわたって、ある投与間隔で阻害剤を反復投与する工程を含む投薬レジメンで実施される。いくつかの態様では、この方法は、T細胞療法を対象に投与する工程をさらに含む。
【0009】
いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤の投与の開始後およびT細胞療法の投与の前に、対象はリンパ球除去療法で前処置されている。いくつかの局面では、キナーゼ阻害剤の投与を開始した後およびT細胞療法の投与の前に、リンパ球除去療法を対象に投与する。ある例では、キナーゼ阻害剤の投与は、リンパ球除去療法の間、中止または停止される。
【0010】
いくつかの態様では、投薬レジメンは、少なくともリンパ球除去療法の開始までの投与を含む期間にわたるキナーゼ阻害剤の投与を含む。いくつかの例では、投薬レジメンは、リンパ球除去療法の開始までの投与を含む期間にわたるキナーゼ阻害剤の投与、続いてリンパ球除去療法中のキナーゼ阻害剤の投与の中止または停止、およびT細胞療法の投与の開始後少なくとも15日間にわたる期間のキナーゼ阻害剤のさらなる投与を含む。
【0011】
以下の構造:
を有するキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容される塩の有効量を、癌を有する対象に投与する工程、リンパ球除去療法を対象に投与する工程、および自己T細胞療法を対象に投与する工程を含む治療方法が本明細書で提供され、前記T細胞療法は、CD19に特異的に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現する遺伝子操作されたT細胞の用量を含み、T細胞療法を投与する前に、対象から生物学的試料を入手し、処理し、この処理は、任意でCARをコードする核酸分子を前記T細胞に導入することによって、試料由来のT細胞を遺伝子改変する工程を含み、キナーゼ阻害剤の投与は、試料の入手の少なくとも3日前または約3日前に開始され、リンパ球除去療法の開始までの投与を含む期間にわたって、ある投与間隔でキナーゼ阻害剤を反復投与し、続いてリンパ球除去療法中はキナーゼ阻害剤の投与を中止または停止し、その後前記T細胞療法の投与の開始後少なくとも15日間にわたる期間中、キナーゼ阻害剤をさらに投与する工程を含む投薬レジメンで実施される。いくつかの態様では、この方法は、対象から生物学的試料を入手し、前記試料のT細胞を処理し、それによりCD19に特異的に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現する遺伝子操作されたT細胞を含む組成物を生成する工程をさらに含む。
【0012】
そのような態様のいくつかでは、キナーゼ阻害剤の投与は、対象から試料を入手する少なくとも4日前もしくは少なくとも約4日前、少なくとも5日前もしくは少なくとも約5日前、少なくとも6日前もしくは少なくとも約6日前、少なくとも7日前もしくは少なくとも約7日前、少なくとも14日前もしくは少なくとも約14日前、またはそれ以上前に開始される。いくつかの例では、キナーゼ阻害剤の投与は、対象から試料を入手する少なくとも5日~7日前または5日~7日前または約5日~約7日前に開始される。
【0013】
いくつかの態様では、リンパ球除去療法の投与は、T細胞療法の投与の開始前7日以内に完了する。いくつかの態様では、リンパ球除去療法の投与は、T細胞療法の投与の開始の2日~7日前に完了する。
【0014】
いくつかの態様では、さらなる投与は、T細胞療法の投与の開始後15~29日にわたる期間である。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤のさらなる投与は、T細胞療法の投与の開始後3ヶ月または約3ヶ月または3ヶ月超にわたる期間である。そのような態様のいくつかでは、キナーゼ阻害剤の投与は、投薬レジメン中に投与される各日に1日1回実施される。
【0015】
そのような態様のいくつかでは、有効量は、キナーゼ阻害剤が投与される各日につき140mgもしくは約140mgから840mgもしくは約840mg、または140mgもしくは約140mgから560mgもしくは約560mgを含む。
【0016】
いくつかの例では、有効量は、キナーゼ阻害剤が投与される各日につき140mgまたは約140mgから560mgまたは約560mgを含む。
【0017】
以下の構造:
であるかもしくはこれを含む、またはその薬学的に許容される塩であるキナーゼ阻害剤を、癌を有する対象に投与する工程、および自己T細胞療法を対象に投与する工程を含む治療方法が本明細書で提供され、前記T細胞療法は、CD19に特異的に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現する遺伝子操作されたT細胞の用量を含み、T細胞療法を投与する前に、対象から生物学的試料を入手し、処理し、この処理は、任意でCARをコードする核酸分子を前記T細胞に導入することによって、試料由来のT細胞を遺伝子改変する工程を含み、キナーゼ阻害剤の投与は、試料の入手の少なくとも5日~7日前または約5日~約7日前に開始され、対象から試料を入手した日またはその日以降の投与を少なくとも含む期間にわたって、ある投与間隔でキナーゼ阻害剤を反復投与し、およびT細胞療法の投与の開始後3ヶ月または約3ヶ月または3ヶ月超にわたってさらに投与する工程を含む投薬レジメンで実施され、キナーゼ阻害剤は、投薬レジメン中に投与される各日につき1日1回140mg~560mgまたは約140mg~約560mgの量で投与される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤の投与の開始後およびT細胞療法の投与の前に、対象はリンパ球除去療法で前処置されている。いくつかの場合には、この方法は、キナーゼ阻害剤の投与後およびT細胞療法の投与前に、リンパ球除去療法を対象に投与する工程をさらに含む。
【0018】
いくつかの態様では、リンパ球除去療法の投与は、T細胞療法の投与の開始前7日以内に完了する。いくつかの例では、リンパ球除去療法の投与は、T細胞療法の投与の開始の2日~7日前に完了する。いくつかの場合には、投薬レジメンは、リンパ球除去療法中はキナーゼ阻害剤の投与を中止する工程を含む。
【0019】
以下の構造:
を有するか、またはその薬学的に許容される塩であるキナーゼ阻害剤を、癌を有する対象に投与する工程、およびリンパ球除去療法を対象に投与する工程、およびリンパ球除去療法の完了後2日~7日以内に自己T細胞療法を対象に投与する工程を含む治療方法が本明細書で提供され、前記T細胞療法は、CD19に特異的に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現する遺伝子操作されたT細胞の用量を含み、T細胞療法を投与する前に、対象から生物学的試料を入手し、処理し、この処理は、任意でCARをコードする核酸分子を前記T細胞に導入することによって、試料由来のT細胞を遺伝子改変する工程を含み、キナーゼ阻害剤の投与は、試料の入手の少なくとも5日~7日前または少なくとも約5日~約7日前に開始され、リンパ球除去療法の開始までキナーゼ阻害剤を投与し、リンパ球除去療法中はキナーゼ阻害剤の投与を中止し、T細胞療法の投与の開始後3ヶ月または3ヶ月超にわたる期間、キナーゼ阻害剤をさらに投与する工程を含む投薬レジメンで実施され、キナーゼ阻害剤は、投薬レジメン中、投与される各日につき1日1回140mgまたは約140mgから560mgまたは約560mgの量で投与される。
【0020】
いくつかの態様では、この方法は、対象から生物学的試料を入手し、前記試料のT細胞を処理し、それによりCD19に特異的に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現する遺伝子操作されたT細胞を含む組成物を生成する工程をさらに含む。そのような態様のいくつかでは、投与される各日当たりのキナーゼ阻害剤の投与は、280mgまたは約280mgから560mgまたは約560mgである。いくつかの局面では、キナーゼ阻害剤の投与は、対象から試料を入手する少なくとも7日前または約7日前に開始される。
【0021】
そのような態様のいくつかでは、キナーゼ阻害剤の投与は、T細胞療法の投与を開始する30日もしくは約30日から40日前もしくは約40日前に開始され、試料は、T細胞療法の投与を開始する23日もしくは約23日から38日前もしくは約38日前に対象から入手され、および/またはリンパ球除去療法は、T細胞療法の投与を開始する5日~7日前もしくは約5日~約7日前に完了する。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤の投与は、T細胞療法の投与を開始する35日前もしくは約35日前に開始され、試料は、T細胞療法の投与を開始する28日もしくは約28日から32日前もしくは約32日前に対象から入手され、および/またはリンパ球除去療法は、T細胞療法の投与を開始する5日~7日前もしくは約5日~約7日前に完了する。
【0022】
いくつかの態様では、リンパ球除去療法は、フルダラビンおよび/またはシクロホスファミドの投与を含む。いくつかの態様では、リンパ球除去療法は、両端の値を含む、200~400mg/m2もしくは約200~約400mg/m2、任意で300mg/m2もしくは約300mg/m2のシクロホスファミド、および/または20~40mg/m2もしくは約20~約40mg/m2、任意で30mg/m2のフルダラビンの2日~4日間、任意で3日間の毎日の投与を含むか、またはリンパ球除去療法は、500mg/m2もしくは約500mg/m2のシクロホスファミドの投与を含む。いくつかの例では、リンパ球除去療法は、300mg/m2もしくは約300mg/m2のシクロホスファミドおよび30mg/m2もしくは約30mg/m2のフルダラビンの3日間の毎日の投与を含み、ならびに/またはリンパ球除去療法は、500mg/m2もしくは約500mg/m2のシクロホスファミドおよび30mg/m2もしくは約30mg/m2のフルダラビンの3日間の毎日の投与を含む。
【0023】
いくつかの態様では、投与される各日当たりのキナーゼ阻害剤の投与は、140mgまたは約140mgの量である。いくつかの態様では、投与される各日当たりのキナーゼ阻害剤の投与は、280mgまたは約280mgの量である。いくつかの態様では、投与される各日当たりのキナーゼ阻害剤の投与は、420mgまたは約420mgの量である。いくつかの場合には、投与される各日当たりのキナーゼ阻害剤の投与は、560mgまたは約560mgの量である。
【0024】
いくつかの態様では、期間は、T細胞療法の投与の開始後4ヶ月または約4ヶ月または4ヶ月超にわたる。いくつかの場合には、期間は、T細胞療法の投与の開始後5ヶ月または約5ヶ月または5ヶ月超にわたる。いくつかの態様では、さらなる投与は、6ヶ月または約6ヶ月または6ヶ月超にわたる。
【0025】
そのような態様のいくつかでは、キナーゼ阻害剤のさらなる投与は、期間の終わりに、対象が治療後に完全奏効(CR)を示す場合、期間の終わりに停止される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤のさらなる投与は、期間の終わりに、治療後に癌が進行したかまたは寛解の後に再発した場合、期間の終わりに停止される。いくつかの場合には、期間は、3ヶ月~6ヶ月または約3ヶ月~6ヶ月にわたる。いくつかの例では、期間は、T細胞療法の投与の開始後3ヶ月または約3ヶ月にわたる。
【0026】
いくつかの態様では、対象が、3ヶ月より前または約3ヶ月より前に、治療後に完全奏効(CR)を達成したか、または治療後に癌が進行したかもしくは寛解の後に再発した場合、期間は、T細胞療法の投与の開始後3ヶ月または約3ヶ月にわたる。いくつかの場合には、対象が3ヶ月で完全奏効(CR)を達成した場合、期間は、T細胞療法の投与の開始後3ヶ月間または約3ヶ月間にわたる。いくつかの例では、期間は、T細胞療法の投与の開始後6ヶ月または約6ヶ月にわたる。いくつかの態様では、対象が、6ヶ月より前または約6ヶ月より前に、治療後に完全奏効(CR)を達成したか、または治療後に癌が進行したかもしくは寛解の後に再発した場合、期間は、T細胞療法の投与の開始後6ヶ月または約6ヶ月にわたる。いくつかの場合には、対象が6ヶ月で完全奏効(CR)を達成した場合、期間は、T細胞療法の投与の開始後6ヶ月または約6ヶ月にわたる。
【0027】
いくつかの態様では、対象が期間の終了前の時点で完全奏効(CR)を達成した場合でも、期間の存続中はさらなる投与が継続される。いくつかの態様では、対象は、期間中および期間の終了前の時点で完全奏効(CR)を達成する。いくつかの態様では、方法は、期間の終わりに対象が部分奏効(PR)または安定疾患(SD)を示す場合、期間の終了後にさらなる投与を継続する工程をさらに含む。いくつかの態様では、6ヶ月または約6ヶ月で、対象が治療後に部分奏効(PR)または安定疾患(SD)を示す場合、さらなる投与が6ヶ月を超えて継続される。いくつかの場合には、対象が治療後に完全奏効(CR)を達成するまで、または治療後に癌が進行するかもしくは寛解の後に再発するまで、さらなる投与が継続される。
【0028】
いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤は、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)を阻害し、および/またはIL2誘導性T細胞キナーゼ(ITK)を阻害する。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤はITKを阻害し、および阻害剤は、ITKを阻害するかまたは1000nM未満もしくは約1000nM未満、900nM未満もしくは約900nM未満、800nM未満もしくは約800nM未満、600nM未満もしくは約600nM未満、500nM未満もしくは約500nM未満、400nM未満もしくは約400nM未満、300nM未満もしくは約300nM未満、200nM未満もしくは約200nM未満、100nM未満もしくは約100nM未満、またはそれ未満の半数阻害濃度(IC50)でITKを阻害する。
【0029】
いくつかの態様では、対象は、提供される方法におけるキナーゼ阻害剤の投与に先だって、以前にキナーゼ阻害剤を投与されていた。いくつかの態様では、対象は、提供される方法におけるキナーゼ阻害剤の投与に先だって、以前にキナーゼ阻害剤を投与されたことがない。
【0030】
いくつかの態様では、対象および/または癌は、(a)ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)の阻害に対して抵抗性であり、および/または(b)キナーゼ阻害剤による阻害に抵抗性である細胞の集団を含み、任意で細胞の集団はB細胞の集団であるかもしくはこれを含み、および/またはT細胞を含まない;対象および/または癌は、BTKをコードする核酸中に変異を含み、任意で変異はキナーゼ阻害剤によるBTKの阻害を低減または防止することができ、任意で変異はC481Sである;対象および/または癌は、ホスホリパーゼCガンマ2(PLCγ2)をコードする核酸中に変異を含み、任意で変異は構成的シグナル伝達活性をもたらし、任意で、変異はR665WまたはL845Fである;キナーゼ阻害剤の投与の開始時点で、および任意でT細胞療法の投与の開始時点で、対象は、キナーゼ阻害剤および/またはBTK阻害剤療法による以前の治療後に寛解の後に再発したか、または以前の治療に難治性であると見なされた;キナーゼ阻害剤の投与の開始時点で、および任意でT細胞療法の開始時点で、対象は、阻害剤および/またはBTK阻害剤療法による以前の治療後に進行し、任意で、対象は、以前の治療に対する最良応答として進行性疾患を、または以前の治療に対する以前の応答後に進行を示した;ならびに/またはキナーゼ阻害剤の投与の開始時点で、および任意でT細胞療法の開始時点で、対象は、阻害剤および/またはBTK阻害剤療法による少なくとも6ヶ月間の以前の治療後に完全奏効(CR)未満の応答を示した。
【0031】
そのような態様のいくつかでは、癌はB細胞悪性腫瘍である。いくつかの場合には、B細胞悪性腫瘍はリンパ腫である。いくつかの場合には、リンパ腫は非ホジキンリンパ腫(NHL)である。いくつかの例では、NHLには、侵攻性NHL、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、任意で形質転換した無痛性のDLBCL-NOS;EBV陽性DLBCL-NOS;T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞リンパ腫;原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBCL);濾胞性リンパ腫(FL)、任意で濾胞性リンパ腫グレード3B(FL3B);ならびに/またはDLBCL組織学を伴うMYCおよびBCL2および/もしくはBCL6再構成を有する高悪性度B細胞リンパ腫(ダブル/トリプルヒット)が含まれる。
【0032】
いくつかの態様では、対象は、東部共同腫瘍学グループパフォーマンスステータス(Eastern Cooperative Oncology Group)(ECOG)のステータス1未満または1を有しているかまたは有すると同定されたことがある。
【0033】
そのような態様のいくつかでは、キナーゼ阻害剤は経口投与される。
【0034】
いくつかの態様では、CD19はヒトCD19である。いくつかの局面では、キメラ抗原受容体(CAR)は、CD19に特異的に結合する細胞外抗原認識ドメインおよびITAMを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの場合には、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータ(CD3ζ)鎖、任意でヒトCD3ζ鎖のシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの態様では、キメラ抗原受容体(CAR)は、共刺激シグナル伝達領域をさらに含む。いくつかの場合には、共刺激シグナル伝達領域は、CD28または4-1BB、任意でヒトCD28またはヒト4-1BBのシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの態様では、共刺激ドメインは、ヒト4-1BBのシグナル伝達ドメインであるかまたはこれを含む。
【0035】
いくつかの態様では、CARは、CD19に特異的なscFv、膜貫通ドメイン、任意で4-1BB、任意でヒト4-1BBであるかもしくはこれを含む、共刺激分子に由来する細胞質シグナル伝達ドメイン、および任意でCD3ゼータシグナル伝達ドメイン、任意でヒトCD3ゼータシグナル伝達ドメインであるかもしくはこれを含む、一次シグナル伝達ITAM含有分子に由来する細胞質シグナル伝達ドメインを含み、任意で、CARは膜貫通ドメインとscFVとの間にスペーサーをさらに含む;CARは、順に、CD19に特異的なscFv、膜貫通ドメイン、任意で4-1BBシグナル伝達ドメイン、任意でヒト4-1BBシグナル伝達ドメインであるかもしくはこれを含む、共刺激分子に由来する細胞質シグナル伝達ドメイン、および任意でCD3ゼータシグナル伝達ドメイン、任意でヒトCD3ゼータシグナル伝達ドメインである、一次シグナル伝達ITAM含有分子に由来する細胞質シグナル伝達ドメインを含む;またはCARは、順に、CD19に特異的なscFv、スペーサー、膜貫通ドメイン、任意で4-1BBシグナル伝達ドメインである、共刺激分子に由来する細胞質シグナル伝達ドメイン、および任意でCD3ゼータシグナル伝達ドメインであるかもしくはこれを含む、一次シグナル伝達ITAM含有分子に由来する細胞質シグナル伝達ドメインを含む。
【0036】
いくつかの態様では、CARはスペーサーを含み、スペーサーは、(a)免疫グロブリンヒンジまたはその修飾型の全部もしくは一部を含むかもしくはそれからなるか、または約15アミノ酸もしくはそれ未満を含み、CD28細胞外領域もCD8細胞外領域も含まない、(b)免疫グロブリンヒンジ、任意でIgG4ヒンジ、もしくはその修飾型の全部もしくは一部を含むかもしくはそれからなり、および/または約15アミノ酸もしくはそれ未満を含み、CD28細胞外領域もCD8細胞外領域も含まない、または(c)12アミノ酸長もしくは約12アミノ酸長であり、および/または免疫グロブリンヒンジ、任意でIgG4ヒンジ、もしくはその修飾型の全部もしくは一部を含むかもしくはそれからなる、または(d)SEQ ID NO:1の配列、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:30、SEQ ID NO:31、SEQ ID NO:32、SEQ ID NO:33、SEQ ID NO:34によってコードされる配列、または前記配列に少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を有する前記配列のいずれかの変異体を有するかもしくはそれからなる、または(e)式X1PPX2P(SEQ ID NO:58)を含むかもしくはそれからなり、式中、X1はグリシン、システインもしくはアルギニンであり、X2はシステインもしくはトレオニンである、ポリペプチドスペーサーであり;ならびに/あるいは共刺激ドメインは、SEQ ID NO:12もしくはSEQ ID NO:12に少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を有するSEQ ID NO:12の変異体を含み;および/または一次シグナル伝達ドメインは、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を有するSEQ ID NO:13もしくはSEQ ID NO:14もしくはSEQ ID NO:15を含み;ならびに/またはscFvは、RASQDISKYLN(SEQ ID NO:35)のCDRL1配列、SRLHSGV(SEQ ID NO:36)のCDRL2配列、および/もしくはGNTLPYTFG(SEQ ID NO:37)のCDRL3配列、および/もしくはDYGVS(SEQ ID NO:38)のCDRH1配列、VIWGSETTYYNSALKS(SEQ ID NO:39)のCDRH2配列、および/もしくはYAMDYWG(SEQ ID NO:40)のCDRH3配列を含むか、またはscFvは、FMC63の可変重鎖領域およびFMC63の可変軽鎖領域および/またはFMC63のCDRL1配列、FMC63のCDRL2配列、FMC63のCDRL3配列、FMC63のCDRH1配列、FMC63のCDRH2配列、およびFMC63のCDRH3配列を含むか、または前記配列のいずれかと同じエピトープに結合するかもしくは前記配列のいずれかと結合について競合し、および任意でscFvは、順に、VH、任意でSEQ ID NO:41を含むリンカー、およびVLを含み、ならびに/またはscFvは、柔軟なリンカーを含むおよび/またはSEQ ID NO:42として示されるアミノ酸配列を含む。
【0037】
そのような態様のいくつかでは、遺伝子操作されたT細胞の用量は、それぞれ両端の値を含む、1×105~5×108または約1×105~5×108の総CAR発現T細胞、1×106~2.5×108または約1×106~2.5×108の総CAR発現T細胞、5×106~1×108または約5×106~1×108の総CAR発現T細胞、1×107~2.5×108または約1×107~2.5×108の総CAR発現T細胞、5×107~1×108または約5×107~1×108の総CAR発現T細胞を含む。いくつかの態様では、遺伝子操作されたT細胞の用量は、少なくとも1×105もしくは少なくとも約1×105のCAR発現細胞、少なくとも2.5×105もしくは少なくとも約2.5×105のCAR発現細胞、少なくとも5×105もしくは少なくとも約5×105のCAR発現細胞、少なくとも1×106もしくは少なくとも約1×106のCAR発現細胞、少なくとも2.5×106もしくは少なくとも約2.5×106のCAR発現細胞、少なくとも5×106もしくは少なくとも約5×106のCAR発現細胞、少なくとも1×107もしくは少なくとも約1×107のCAR発現細胞、少なくとも2.5×107もしくは少なくとも約2.5×107のCAR発現細胞、少なくとも5×107もしくは少なくとも約5×107のCAR発現細胞、少なくとも1×108もしくは少なくとも約1×108のCAR発現細胞、少なくとも2.5×108もしくは少なくとも約2.5×108のCAR発現細胞、または少なくとも5×108もしくは少なくとも約5×108のCAR発現細胞を含む。いくつかの場合には、遺伝子操作されたT細胞の用量は、5×107または約5×107の総CAR発現T細胞を含む。いくつかの場合には、遺伝子操作されたT細胞の用量は、1×108または約1×108のCAR発現細胞を含む。いくつかの態様では、遺伝子操作されたT細胞の用量は、CARを発現するCD4+T細胞およびCARを発現するCD8+T細胞を含み、用量の投与は、複数の別個の組成物を投与することを含み、前記複数の別個の組成物は、CD4+T細胞およびCD8+T細胞の一方を含む第1の組成物ならびにCD4+T細胞またはCD8+T細胞のもう一方を含む第2の組成物を含む。
【0038】
いくつかの態様では、第1の組成物と第2の組成物は、0~12時間の間隔で、0~6時間の間隔で、もしくは0~2時間の間隔で投与されるか、または第1の組成物の投与と第2の組成物の投与は同じ日に実施され、約0~約12時間の間隔で、約0~約6時間の間隔で、もしくは約0~2時間の間隔で実施され、および/または第1の組成物の投与の開始と第2の組成物の投与の開始は、約1分~約1時間の間隔でまたは約5分~約30分の間隔で実施される。いくつかの局面では、第1の組成物と第2の組成物は、2時間以下、1時間以下、30分以下、15分以下、10分以下、または5分以下の間隔で投与される。
【0039】
いくつかの態様では、第1の組成物はCD4+T細胞を含む。いくつかの態様では、第1の組成物はCD8+T細胞を含む。いくつかの態様では、第1の組成物は第2の組成物の前に投与される。いくつかの態様では、細胞の用量は、非経口的に、任意で静脈内に投与される。そのような態様のいくつかでは、T細胞は、対象由来の試料から得られた初代T細胞である。いくつかの場合には、T細胞は対象に対して自己由来である。
【0040】
そのような態様のいくつかでは、処理は、対象から得られた試料からT細胞、任意でCD4+および/またはCD8+T細胞を単離し、それにより初代T細胞を含むインプット組成物を生成する工程;ならびにCARをコードする核酸分子をインプット組成物のT細胞に導入する工程を含む。いくつかの場合には、単離は、免疫親和性に基づく選択を実施する工程を含む。
【0041】
いくつかの態様では、生物学的試料は、全血試料、バフィーコート試料、末梢血単核細胞(PBMC)試料、未分画T細胞試料、リンパ球試料、白血球試料、アフェレーシス産物、または白血球アフェレーシス産物であるかまたはこれを含む。
【0042】
いくつかの態様では、導入の前に、処理は、インプット組成物を刺激条件下でインキュベートする工程を含み、前記刺激条件は、TCR複合体の1つもしくは複数の成分の1つもしくは複数の細胞内シグナル伝達ドメインおよび/または1つもしくは複数の共刺激分子の1つもしくは複数の細胞内シグナル伝達ドメインを活性化することができる刺激試薬の存在を含み、それにより刺激された組成物を生成し、CARをコードする核酸分子を刺激された組成物に導入する。いくつかの例では、刺激試薬は、TCR複合体のメンバーに特異的に結合する、任意でCD3に特異的に結合する一次剤を含む。いくつかの場合には、刺激試薬は、T細胞共刺激分子に特異的に結合する二次剤をさらに含み、任意で共刺激分子は、CD28、CD137(4-1-BB)、OX40、またはICOSから選択される。いくつかの例では、一次剤および/または二次剤は抗体を含み、任意で、刺激試薬は、抗CD3抗体および抗CD28抗体、またはその抗原結合断片とのインキュベーションを含む。
【0043】
いくつかの場合には、一次剤および/または二次剤は、固体支持体の表面上に存在する。いくつかの例では、固体支持体は、ビーズであるかまたはビーズを含み、任意で、ビーズは磁性または超常磁性である。いくつかの態様では、ビーズは、3.5μmを超えるかまたは約3.5μmを超えるが、約9μm以下または約8μm以下または約7μm以下または約6μm以下または約5μm以下の直径を含む。いくつかの例では、ビーズは、4.5μmまたは約4.5μmの直径を含む。
【0044】
いくつかの態様では、導入は、刺激された組成物の細胞を、組換え受容体をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターで形質導入することを含む。いくつかの場合には、ウイルスベクターはレトロウイルスベクターである。いくつかの例では、ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターまたはガンマレトロウイルスベクターである。
【0045】
いくつかの態様では、処理は、導入後にT細胞を培養する工程をさらに含み、任意で、培養は、細胞の増殖または拡大をもたらしてT細胞療法を含むアウトプット組成物を生成する条件下で実施される。いくつかの場合には、培養に続いて、方法は、凍結保存のためおよび/または対象へのT細胞療法の投与のためにアウトプット組成物の細胞を製剤化する工程をさらに含み、任意で、製剤化は、薬学的に許容される賦形剤の存在下で行われる。
【0046】
そのような態様のいくつかでは、対象はヒトである。
【0047】
いくつかの態様では、この方法に従って治療される対象の少なくとも35%、少なくとも40%または少なくとも50%は、6ヶ月もしくは6ヶ月超または9ヶ月もしくは9ヶ月超にわたって、持続性であるか、またはCRを達成する対象の少なくとも60%、70%、80%、90%もしくは95%において持続性である完全奏効(CR)を達成する;ならびに/または6ヶ月までにCRを達成する対象の少なくとも60%、70%、80%、90%、もしくは95%は、3ヶ月もしくは3ヶ月超および/または6ヶ月もしくは6ヶ月超および/または9ヶ月もしくは9ヶ月超にわたって、応答性のままであり、CRのままであり、および/または生存するかもしくは進行なしに生存する;ならびに/またはこの方法に従って治療される対象の少なくとも50%、少なくとも60%または少なくとも70%は、客観的奏効(OR)を達成し、任意で、ORは、6ヶ月もしくは6ヶ月超または9ヶ月もしくは9ヶ月超にわたって、持続性であるか、またはORを達成する対象の少なくとも60%、70%、80%、90%、もしくは95%において持続性である;ならびに/または6ヶ月までにORを達成する対象の少なくとも60%、70%、80%、90%、もしくは95%は、3ヶ月もしくは3ヶ月超および/または6ヶ月もしくは6ヶ月超にわたって、応答性のままであるかまたは生存する。
【0048】
いくつかの態様では、細胞の用量の投与時または投与の直前に、対象は、リンパ腫、任意でNHLのための1つまたは複数の以前の療法、任意でCARを発現する細胞の別の用量以外の1つ、2つまたは3つの以前の療法による治療後に寛解の後に再発したか、または療法に難治性になった。いくつかの態様では、細胞の用量を含むT細胞療法の投与時または投与の前に、対象は、ダブル/トリプルヒットリンパ腫を有しているかもしくは有すると同定されたことがある;対象は、化学療法抵抗性リンパ腫、任意で化学療法抵抗性DLBCLを有しているかもしくは有すると同定されたことがある;および/または対象は、以前の療法に応答して完全奏効(CR)を達成しなかった。
【0049】
以下の構造:
であるかもしくはこれを含む、またはその薬学的に許容される塩であるキナーゼ阻害剤の1つまたは複数の単位用量、および本明細書で提供される方法のいずれかを実施するための指示書を含むキットが本明細書で提供される。
【0050】
以下の構造:
であるかもしくはこれを含む、またはその薬学的に許容される塩であるキナーゼ阻害剤の1つまたは複数の単位用量、および自己T細胞療法による治療の候補であるかまたは治療される予定である、癌を有する対象に1つまたは複数の単位用量を投与するための指示書を含むキットが本明細書で提供され、前記T細胞療法は、CD19に特異的に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現する遺伝子操作されたT細胞の用量を含み、T細胞療法を投与する前に、対象から生物学的試料を入手し、処理し、この処理は、任意でCARをコードする核酸をT細胞に導入することによって、試料由来のT細胞を遺伝子改変する工程を含み、指示書は、試料を入手する3日前または少なくとも約3日前に、対象から試料を入手した日またはその日以降の投与を少なくとも含む期間にわたって、ある投与間隔で1つまたは複数の単位用量を反復投与する工程を含む投薬レジメンで、対象にキナーゼ阻害剤の単位用量の投与を開始することを指定する。
【0051】
いくつかの場合には、指示書は、T細胞療法を対象に投与することをさらに指定する。いくつかの場合には、指示書は、キナーゼ阻害剤の投与を開始した後およびT細胞療法の投与の前に、対象にリンパ球除去療法を投与することをさらに指定する。いくつかの態様では、指示書は、リンパ球除去療法の投与中はキナーゼ阻害剤の投与が中止されることを指定する。いくつかの場合には、指示書は、投薬レジメンが、少なくともリンパ球除去療法の開始までにわたる期間のキナーゼ阻害剤の投与を含むことを指定する。
【0052】
いくつかの態様では、指示書は、投薬レジメンが、リンパ球除去療法の開始までの投与を含む期間にわたるキナーゼ阻害剤の投与、続いてリンパ球除去療法中のキナーゼ阻害剤の投与の中止または停止、およびその後T細胞療法の投与の開始後少なくとも15日間にわたる期間のキナーゼ阻害剤のさらなる投与を含むことを指定する。いくつかの態様では、指示書は、キナーゼ阻害剤の投与が、対象から試料を入手する少なくとも4日前もしくは約4日前、少なくとも5日前もしくは少なくとも約5日前、少なくとも6日前もしくは少なくとも約6日前、少なくとも7日前もしくは少なくとも約7日前、少なくとも14日前もしくは少なくとも約14日前、またはそれ以上前に開始されることを指定する。いくつかの局面では、指示書は、キナーゼ阻害剤の投与が、対象から試料を入手する少なくとも5日~7日前または約5日~7日前に開始されることを指定する。いくつかの場合には、指示書は、リンパ球除去療法の投与が、T細胞療法の投与の開始前7日以内に完了されるべきであることを指定する。いくつかの態様では、指示書は、リンパ球除去療法の投与が、T細胞療法の投与の開始の2日~7日前に完了されるべきであることを指定する。
【0053】
いくつかの態様では、指示書は、キナーゼ阻害剤のさらなる投与が、T細胞療法の投与の開始後3ヶ月または約3ヶ月または3ヶ月超にわたる期間であることを指定する。いくつかの態様では、指示書は、キナーゼ阻害剤の各単位用量の投与が、投薬レジメン中に投与される各日に1日1回実施されることを指定する。
【0054】
いくつかの態様では、1つまたは複数の単位用量はそれぞれ、140mgまたは約140mgから840mgまたは約840mgを含む。いくつかの態様では、1つまたは複数の単位用量はそれぞれ、キナーゼ阻害剤が投与される各日につき140mgまたは約140mgから560mgまたは約560mgを含む。いくつかの場合には、1つまたは複数の単位用量はそれぞれ、280mgまたは約280mgから560mgまたは約560mgを含む。
【0055】
いくつかの態様では、指示書は、キナーゼ阻害剤の投与が、対象から試料を入手する少なくとも7日前または約7日前に開始されることを指定する。いくつかの態様では、指示書は、キナーゼ阻害剤の投与が、T細胞療法の投与を開始する30日もしくは約30日から40日前もしくは約40日前に開始されること;試料が、T細胞療法の投与を開始する23日もしくは約23日から38日前もしくは約38日前に対象から入手されること;および/またはリンパ球除去療法が、T細胞療法の投与を開始する5日~7日前もしくは約5日~約7日前に完了することを指定する。いくつかの態様では、指示書は、キナーゼ阻害剤の投与が、T細胞療法の投与を開始する35日前もしくは約35日前に開始されること;試料が、T細胞療法の投与を開始する28日もしくは約28日から32日前もしくは約32日前に対象から入手されること;および/またはリンパ球除去療法が、T細胞療法の投与を開始する5日~7日前もしくは約5日~約7日前に完了することを指定する。
【0056】
いくつかの態様では、リンパ球除去療法は、フルダラビンおよび/またはシクロホスファミドの投与を含む。いくつかの態様では、指示書は、リンパ球除去療法が、両端の値を含む、200~400mg/m2もしくは約200~約400mg/m2、任意で300mg/m2もしくは約300mg/m2のシクロホスファミド、および/または20~40mg/m2もしくは約20~約40mg/m2、任意で30mg/m2のフルダラビンの2日~4日間、任意で3日間の毎日の投与を含むか、またはリンパ球除去療法が、500mg/m2もしくは約500mg/m2のシクロホスファミドの投与を含むことを指定する。いくつかの態様では、指示書は、リンパ球除去療法が、300mg/m2もしくは約300mg/m2のシクロホスファミドおよび30mg/m2もしくは約30mg/m2のフルダラビンの3日間の毎日の投与を含む、および/またはリンパ球除去療法が、500mg/m2もしくは約500mg/m2のシクロホスファミドおよび30mg/m2もしくは約30mg/m2のフルダラビンの3日間の毎日の投与を含むことを指定する。
【0057】
いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤の各単位用量は、140mgであるかもしくは約140mgであり、および/または指示書は、キナーゼ阻害剤を、投与される各日につき140mgもしくは約140mgの量で投与することを指定する。いくつかの例では、キナーゼ阻害剤の各単位用量は、280mgもしくは約280mgであり、および/または指示書は、投与される各日当たりのキナーゼ阻害剤の投与が280mgもしくは約280mgの量であることを指定する。いくつかの場合には、キナーゼ阻害剤の各単位用量は、420mgもしくは約420mgであり、および/または指示書は、投与される各日当たりのキナーゼ阻害剤の投与が420mgもしくは約420mgの量であることを指定する。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤の各単位用量は、560mgもしくは約560mgであり、および/または指示書は、投与される各日当たりのキナーゼ阻害剤の投与が560mgもしくは約560mgの量であることを指定する。
【0058】
いくつかの態様では、指示書は、期間が、T細胞療法の投与の開始後4ヶ月または約4ヶ月または4ヶ月超にわたることを指定する。いくつかの場合には、指示書は、期間が、T細胞療法の投与の開始後5ヶ月または約5ヶ月または5ヶ月超にわたることを指定する。いくつかの態様では、指示書は、さらなる投与が、6ヶ月または約6ヶ月または6ヶ月超にわたる期間であることを指定する。
【0059】
いくつかの態様では、指示書は、期間の終わりに、対象が治療後に完全奏効(CR)を示す場合、キナーゼ阻害剤のさらなる投与が期間の終わりに停止されることを指定する。いくつかの態様では、指示書は、期間の終わりに、治療後に癌が進行したかまたは寛解の後に再発した場合、キナーゼ阻害剤のさらなる投与が期間の終わりに停止されることを指定する。いくつかの態様では、指示書は、期間が3ヶ月~6ヶ月または約3ヶ月~6ヶ月にわたることを指定する。いくつかの場合には、指示書は、期間がT細胞療法の投与の開始後3ヶ月または約3ヶ月にわたることを指定する。
【0060】
いくつかの態様では、指示書は、対象が、3ヶ月より前または約3ヶ月より前に、治療後に完全奏効(CR)を達成したか、または治療後に癌が進行したかもしくは寛解の後に再発した場合、期間がT細胞療法の投与の開始後3ヶ月または約3ヶ月にわたることを指定する。いくつかの態様では、指示書は、対象が3ヶ月で完全奏効(CR)を達成した場合、期間がT細胞療法の投与の開始後3ヶ月または約3ヶ月にわたることを指定する。
【0061】
いくつかの態様では、指示書は、期間がT細胞療法の投与の開始後6ヶ月または約6ヶ月にわたることを指定する。いくつかの態様では、指示書は、対象が、6ヶ月より前または約6ヶ月より前に、治療後に完全奏効(CR)を達成したか、または治療後に癌が進行したかもしくは寛解の後に再発した場合、期間がT細胞療法の投与の開始後6ヶ月または約6ヶ月にわたることを指定する。いくつかの場合には、指示書は、対象が6ヶ月で完全奏効(CR)を達成した場合、期間がT細胞療法の投与の開始後6ヶ月または約6ヶ月にわたることを指定する。
【0062】
いくつかの態様では、指示書は、対象が期間の終了前の時点で完全奏効(CR)を達成した場合でも、期間の存続中はさらなる投与が継続されることを指定する。いくつかの態様では、指示書は、期間の終わりに、対象が部分奏効(PR)または安定疾患(SD)を示す場合、期間の終了後にさらなる投与を継続することをさらに含むことを指定する。いくつかの場合には、指示書は、6ヶ月または約6ヶ月で、対象が治療後に部分奏効(PR)または安定疾患(SD)を示す場合、さらなる投与が6ヶ月を超えて継続されることを指定する。いくつかの場合には、指示書は、対象が治療後に完全奏効(CR)を達成するまで、または治療後に癌が進行するかもしくは寛解の後に再発するまで、さらなる投与が継続されることを指定する。
【0063】
いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤は、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)を阻害し、および/またはIL2誘導性T細胞キナーゼ(ITK)を阻害する。いくつかの例では、キナーゼ阻害剤はITKを阻害し、および阻害剤は、ITKを阻害するかまたは1000nM未満もしくは約1000nM未満、900nM未満もしくは約900nM未満、800nM未満もしくは約800nM未満、600nM未満もしくは約600nM未満、500nM未満もしくは約500nM未満、400nM未満もしくは約400nM未満、300nM未満もしくは約300nM未満、200nM未満もしくは約200nM未満、100nM未満もしくは約100nM未満、またはそれ未満の半数阻害濃度(IC50)でITKを阻害する。
【0064】
いくつかの態様では、指示書は、対象が、キナーゼ阻害剤の1つまたは複数の単位用量の投与に先だって、キナーゼ阻害剤を以前に投与されたことがあるまたは投与された可能性があることを指定する。いくつかの局面では、指示書は、対象が、キナーゼ阻害剤の1つまたは複数の単位用量の投与に先だって、キナーゼ阻害剤を以前に投与されたことがないかまたは投与されたことがない対象であることを指定する。
【0065】
いくつかの態様では、対象および/または癌は、(a)ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)の阻害に対して抵抗性であり、および/または(b)キナーゼ阻害剤による阻害に抵抗性である細胞の集団を含み、任意で、細胞の集団はB細胞の集団であるかもしくはこれを含み、および/またはT細胞を含まない;対象および/または癌は、BTKをコードする核酸中に変異を含み、任意で、変異はキナーゼ阻害剤によるBTKの阻害を低減または防止することができ、任意で、変異はC481Sである;対象および/または癌は、ホスホリパーゼCガンマ2(PLCγ2)をコードする核酸中に変異を含み、任意で、変異は構成的シグナル伝達活性をもたらし、任意で、変異はR665WまたはL845Fである;キナーゼ阻害剤の投与の開始時点で、および任意でT細胞療法の投与の開始時点で、対象は、キナーゼ阻害剤および/またはBTK阻害剤療法による以前の治療後に寛解の後に再発したか、または以前の治療に難治性であると見なされた;キナーゼ阻害剤の投与の開始時点で、および任意でT細胞療法の開始時点で、対象は、阻害剤および/またはBTK阻害剤療法による以前の治療後に進行し、任意で、対象は、以前の治療に対する最良応答として進行性疾患を示したかまたは以前の治療に対する以前の応答後に進行を示した;ならびに/あるいはキナーゼ阻害剤の投与の開始時点で、および任意でT細胞療法の開始時点で、対象は、阻害剤および/またはBTK阻害剤療法による少なくとも6ヶ月間の以前の治療後に完全奏効(CR)未満の応答を示した。
【0066】
いくつかの態様では、癌はB細胞悪性腫瘍である。いくつかの場合には、B細胞悪性腫瘍はリンパ腫である。いくつかの場合には、リンパ腫は非ホジキンリンパ腫(NHL)である。いくつかの例では、NHLには、侵攻性NHL、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、任意で形質転換した無痛性のDLBCL-NOS;EBV陽性DLBCL-NOS;T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞リンパ腫;原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBCL);濾胞性リンパ腫(FL)、任意で濾胞性リンパ腫グレード3B(FL3B);ならびに/またはDLBCL組織学を伴うMYCおよびBCL2および/もしくはBCL6再構成を有する高悪性度B細胞リンパ腫(ダブル/トリプルヒット)が含まれる。
【0067】
いくつかの態様では、対象は、東部共同腫瘍学グループパフォーマンスステータス(Eastern Cooperative Oncology Group)(ECOG)のステータス1未満または1を有しているかまたは有すると同定されたことがある。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤の1つまたは複数の単位用量は、経口投与用に製剤化され、および/または指示書は、キナーゼ阻害剤の1つまたは複数の単位用量が経口投与されることをさらに指定する。
【0068】
いくつかの態様では、CD19はヒトCD19である。いくつかの態様では、キメラ抗原受容体(CAR)は、CD19に特異的に結合する細胞外抗原認識ドメインおよびITAMを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの例では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータ(CD3ζ)鎖、任意でヒトCD3ζ鎖のシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの場合には、キメラ抗原受容体(CAR)は、共刺激シグナル伝達領域をさらに含む。いくつかの例では、共刺激シグナル伝達領域は、CD28または4-1BB、任意でヒトCD28またはヒト4-1BBのシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの場合には、共刺激ドメインは、ヒト4-1BBのシグナル伝達ドメインであるかまたはこれを含む。
【0069】
いくつかの態様では、CARは、CD19に特異的なscFv、膜貫通ドメイン、任意で4-1BB、任意でヒト4-1BBであるかもしくはこれを含む、共刺激分子に由来する細胞質シグナル伝達ドメイン、および任意でCD3ゼータシグナル伝達ドメイン、任意でヒトCD3ゼータシグナル伝達ドメインであるかもしくはこれを含む、一次シグナル伝達ITAM含有分子に由来する細胞質シグナル伝達ドメインを含み、および任意で、CARは膜貫通ドメインとscFVとの間にスペーサーをさらに含む;CARは、順に、CD19に特異的なscFv、膜貫通ドメイン、任意で4-1BBシグナル伝達ドメイン、任意でヒト4-1BBシグナル伝達ドメインであるかもしくはこれを含む、共刺激分子に由来する細胞質シグナル伝達ドメイン、および任意でCD3ゼータシグナル伝達ドメイン、任意でヒトCD3ゼータシグナル伝達ドメインである、一次シグナル伝達ITAM含有分子に由来する細胞質シグナル伝達ドメインを含む;またはCARは、順に、CD19に特異的なscFv、スペーサー、膜貫通ドメイン、任意で4-1BBシグナル伝達ドメインである共刺激分子に由来する細胞質シグナル伝達ドメイン、および任意でCD3ゼータシグナル伝達ドメインであるかもしくはこれを含む、一次シグナル伝達ITAM含有分子に由来する細胞質シグナル伝達ドメインを含む。
【0070】
いくつかの態様では、CARはスペーサーを含み、スペーサーは、(a)免疫グロブリンヒンジまたはその修飾型の全部もしくは一部を含むかもしくはそれからなるか、または約15アミノ酸もしくはそれ未満を含み、かつCD28細胞外領域もCD8細胞外領域も含まない、(b)免疫グロブリンヒンジ、任意でIgG4ヒンジ、もしくはその修飾型の全部もしくは一部を含むかもしくはそれからなり、および/または約15アミノ酸もしくはそれ未満を含み、かつCD28細胞外領域もCD8細胞外領域も含まない、または(c)12アミノ酸長もしくは約12アミノ酸長であり、および/または免疫グロブリンヒンジ、任意でIgG4ヒンジ、もしくはその修飾型の全部もしくは一部を含むかもしくはそれからなる、または(d)SEQ ID NO:1の配列、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:30、SEQ ID NO:31、SEQ ID NO:32、SEQ ID NO:33、SEQ ID NO:34によってコードされる配列、または前記配列に少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を有する前記配列のいずれかの変異体を有するかもしくはそれからなる、または(e)式X1PPX2P(SEQ ID NO:58)を含むかもしくはそれからなり、式中、X1はグリシン、システインもしくはアルギニンであり、X2はシステインもしくはトレオニンである、ポリペプチドスペーサーであり;ならびに/または共刺激ドメインは、SEQ ID NO:12もしくはSEQ ID NO:12に少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を有するSEQ ID NO:12の変異体を含み;および/または一次シグナル伝達ドメインは、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を有するSEQ ID NO:13もしくはSEQ ID NO:14もしくはSEQ ID NO:15を含み;ならびに/またはscFvは、RASQDISKYLN(SEQ ID NO:35)のCDRL1配列、SRLHSGV(SEQ ID NO:36)のCDRL2配列、および/もしくはGNTLPYTFG(SEQ ID NO:37)のCDRL3配列、および/もしくはDYGVS(SEQ ID NO:38)のCDRH1配列、VIWGSETTYYNSALKS(SEQ ID NO:39)のCDRH2配列、および/もしくはYAMDYWG(SEQ ID NO:40)のCDRH3配列を含むか、またはscFvは、FMC63の可変重鎖領域およびFMC63の可変軽鎖領域および/またはFMC63のCDRL1配列、FMC63のCDRL2配列、FMC63のCDRL3配列、FMC63のCDRH1配列、FMC63のCDRH2配列、およびFMC63のCDRH3配列を含むか、または前記配列のいずれかと同じエピトープに結合するかもしくは前記配列のいずれかと結合について競合し、および任意でscFvは、順に、VH、任意でSEQ ID NO:41を含むリンカー、およびVLを含み、ならびに/またはscFvは、柔軟なリンカーを含むおよび/またはSEQ ID NO:42として示されるアミノ酸配列を含む。
【0071】
いくつかの態様では、遺伝子操作されたT細胞の用量は、それぞれ両端の値を含む、1×105~5×108または約1×105~5×108の総CAR発現T細胞、1×106~2.5×108または約1×106~2.5×108の総CAR発現T細胞、5×106~1×108または約5×106~1×108の総CAR発現T細胞、1×107~2.5×108または約1×107~2.5×108の総CAR発現T細胞、5×107~1×108または約5×107~1×108の総CAR発現T細胞を含む。いくつかの態様では、遺伝子操作されたT細胞の用量は、少なくとも1×105もしくは少なくとも約1×105のCAR発現細胞、少なくとも2.5×105もしくは少なくとも約2.5×105のCAR発現細胞、少なくとも5×105もしくは少なくとも約5×105のCAR発現細胞、少なくとも1×106もしくは少なくとも約1×106のCAR発現細胞、少なくとも2.5×106もしくは少なくとも約2.5×106のCAR発現細胞、少なくとも5×106もしくは少なくとも約5×106のCAR発現細胞、少なくとも1×107もしくは少なくとも約1×107のCAR発現細胞、少なくとも2.5×107もしくは少なくとも約2.5×107のCAR発現細胞、少なくとも5×107もしくは少なくとも約5×107のCAR発現細胞、少なくとも1×108もしくは少なくとも約1×108のCAR発現細胞、少なくとも2.5×108もしくは少なくとも約2.5×108のCAR発現細胞、または少なくとも5×108もしくは少なくとも約5×108のCAR発現細胞を含む。いくつかの場合には、遺伝子操作されたT細胞の用量は、5×107または約5×107の総CAR発現T細胞を含む。いくつかの場合には、遺伝子操作されたT細胞の用量は、1×108または約1×108のCAR発現細胞を含む。
【0072】
いくつかの態様では、遺伝子操作されたT細胞の用量は、CARを発現するCD4+T細胞およびCARを発現するCD8+T細胞を含み、指示書は、用量の投与が複数の別個の組成物を投与することを含み、前記複数の別個の組成物が、CD4+T細胞およびCD8+T細胞の一方を含む第1の組成物およびCD4+T細胞またはCD8+T細胞のもう一方を含む第2の組成物を含むことを指定する。
【0073】
いくつかの例では、指示書は、第1の組成物と第2の組成物が、0~12時間の間隔で、0~6時間の間隔で、もしくは0~2時間の間隔で投与されるか、または第1の組成物の投与と第2の組成物の投与が同じ日に実施され、約0~約12時間の間隔で、約0~約6時間の間隔で、もしくは約0~約2時間の間隔で実施されること、および/または第1の組成物の投与の開始と第2の組成物の投与の開始が、約1分~約1時間の間隔でまたは約5分~約30分の間隔で実施されることを指定する。いくつかの場合には、指示書は、第1の組成物と第2の組成物が2時間以下、1時間以下、30分以下、15分以下、10分以下または5分以下の間隔で投与されることを指定する。
【0074】
いくつかの態様では、指示書は、第1の組成物がCD4+T細胞を含むことを指定する。いくつかの態様では、指示書は、第1の組成物がCD8+T細胞を含むことを指定する。いくつかの態様では、指示書は、第1の組成物が第2の組成物の前に投与されることを指定する。いくつかの態様では、指示書は、細胞の用量が非経口的に、任意で静脈内に投与されることを指定する。
【0075】
いくつかの態様では、T細胞は、対象由来の試料から得られた初代T細胞である。いくつかの場合には、T細胞は対象に対して自己由来である。いくつかの態様では、指示書は、T細胞療法を生成するための処理をさらに指定する。いくつかの態様では、T細胞療法を生成するための処理は、対象から得られた試料からT細胞、任意でCD4+および/またはCD8+T細胞を単離し、それにより初代T細胞を含むインプット組成物を生成する工程;ならびにCARをコードする核酸分子をインプット組成物に導入する工程を含む。
【0076】
いくつかの場合には、単離は、免疫親和性に基づく選択を実施する工程を含む。いくつかの例では、いくつかの態様では、生物学的試料は、全血試料、バフィーコート試料、末梢血単核細胞(PBMC)試料、未分画T細胞試料、リンパ球試料、白血球試料、アフェレーシス産物、または白血球アフェレーシス産物であるかまたはこれを含む。
【0077】
いくつかの態様では、導入の前に、処理は、インプット組成物を刺激条件下でインキュベートする工程を含み、前記刺激条件は、TCR複合体の1つもしくは複数の成分の1つもしくは複数の細胞内シグナル伝達ドメインおよび/または1つもしくは複数の共刺激分子の1つもしくは複数の細胞内シグナル伝達ドメインを活性化することができる刺激試薬の存在を含み、それにより刺激された組成物を生成し、CARをコードする核酸分子を刺激された組成物に導入する。いくつかの態様では、刺激試薬は、TCR複合体のメンバーに特異的に結合する、任意でCD3に特異的に結合する一次剤を含む。いくつかの例では、刺激試薬は、T細胞共刺激分子に特異的に結合する二次剤をさらに含み、任意で共刺激分子は、CD28、CD137(4-1-BB)、OX40、またはICOSから選択される。いくつかの場合には、一次剤および/または二次剤は抗体を含み、任意で、刺激試薬は、抗CD3抗体および抗CD28抗体、またはその抗原結合断片とのインキュベーションを含む。
【0078】
いくつかの態様では、一次剤および/または二次剤は、固体支持体の表面上に存在する。いくつかの例では、固体支持体は、ビーズであるかまたはビーズを含み、任意で、ビーズは磁性または超常磁性である。いくつかの場合には、ビーズは、3.5μmを超えるかまたは約3.5μmを超えるが、約9μm以下または約8μm以下または約7μm以下または約6μm以下または約5μm以下の直径を含む。いくつかの例では、ビーズは、4.5μmまたは約4.5μmの直径を含む。
【0079】
いくつかの態様では、導入は、刺激された組成物の細胞を、組換え受容体をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターで形質導入することを含む。いくつかの場合には、ウイルスベクターはレトロウイルスベクターである。いくつかの場合には、ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターまたはガンマレトロウイルスベクターである。
【0080】
いくつかの態様では、処理は、導入後にT細胞を培養する工程をさらに含み、任意で、培養は、細胞の増殖または拡大をもたらしてT細胞療法を含むアウトプット組成物を生成する条件下で実施される。いくつかの例では、培養に続いて、処理は、凍結保存のためおよび/または対象へのT細胞療法の投与のためにアウトプット組成物の細胞を製剤化する工程をさらに含み、任意で、製剤化は、薬学的に許容される賦形剤の存在下で行われる。
【0081】
いくつかの態様では、指示書は、対象がヒトであることを指定する。
【0082】
いくつかの態様では、指示書は、細胞の用量を含むT細胞療法の投与時または投与の前に、対象が、ダブル/トリプルヒットリンパ腫を有すると同定されているかもしくは同定されたことがある;対象が、化学療法抵抗性リンパ腫、任意で化学療法抵抗性DLBCLを有すると同定されているかもしくは同定されたことがある;および/または対象が、以前の療法に応答して完全奏効(CR)を達成しなかったことを指定する。
【0083】
本明細書で提供されるキットのいずれかを含む製品が本明細書で提供される。
【図面の簡単な説明】
【0084】
図1A】標的特異的な細胞溶解活性を、CAR T細胞との共培養がイブルチニブとともに行われる三連のウェルにおいて評価する正規化された標的細胞数(平均±SEM)のグラフを示す。
図1B】CAR T細胞と2.5:1のフェクター対標的比(E:T)で共培養される標的細胞(NucLight Red K562.CD19細胞)の代表的な画像を細胞傷害性アッセイの開始時および終了時において示す。
図1C】抗CD19 CAR T細胞の細胞溶解活性に対するイブルチニブの用量影響を示す。グラフは3名の独立したドナーからのデータを示し、非処理対照(100%)に対して正規化されている。平均±SEMが示され、統計学的に有意に異なることが示されている(P<0.00001(****))。
図2A図2Aは、CD4+細胞およびCD8+細胞を示された濃度のイブルチニブの存在下または非存在下で培養した後における、CD25、CD28、CD39およびCD95のCAR T細胞発現を示す。
図2B図2Bは、最初の刺激をイブルチニブの存在下で行った後の4日間にわたるTCM(CCR7+CD45RA-)およびTEM(CCR7-CD45RA-)の割合について、1名のドナーに由来する細胞からのCAR T細胞の代表的な結果を示す。
図2C図2Cおよび図2Dは、CD4+およびCD8+のT細胞をそれぞれ、示された濃度のイブルチニブの存在下または非存在下で培養した後における、CD69、CD107aおよびPD-1のCAR-T細胞発現を示す。
図2D図2Cおよび図2Dは、CD4+およびCD8+のT細胞をそれぞれ、示された濃度のイブルチニブの存在下または非存在下で培養した後における、CD69、CD107aおよびPD-1のCAR-T細胞発現を示す。
図3A図3Aは、イブルチニブの存在下または非存在下における、1名のドナーから作製されるCAR-T細胞からの4日にわたるサイトカイン産生の動態学の代表的なプロットを示す。
図3B図3Bは、CAR-T細胞をイブルチニブの存在下で2日間刺激した後でのサイトカイン産生における変化百分率を2つの独立した実験においてその非存在と比較して示す。
図4A図4Aは、イブルチニブの非存在下(対照)、または50 nMもしくは500 nMのイブルチニブの存在下での連続刺激アッセイにおける各回の再刺激の後でのCAR-T細胞数における変化倍数を示す。
図4B図4Bは、連続刺激アッセイにおけるイブルチニブの非存在下(対照)、または50 nMもしくは500 nMのイブルチニブの存在下での各回の再刺激の後におけるCAR-T細胞数の倍加数を示す。
図4C図4Cは、連続刺激アッセイにおけるイブルチニブの存在下または非存在下での1回および5回の再刺激の後の4日目および18日目での細胞数をそれぞれ示す。
図5A】T細胞をイブルチニブの存在下で刺激した後でのTH1表面マーカーの発現についての代表的なフローサイトメトリープロットを示す。
図5B】イブルチニブの存在下または非存在下で培養されるT細胞について、フローサイトメトリーアッセイによって測定されるような経時的に認められるTH1細胞の割合を示す。
図5C】様々な濃度のイブルチニブの存在下で刺激されるT細胞培養物におけるTH1細胞の割合を示す。
図5D】イブルチニブの存在下での連続刺激の0日目、11日目、18日目および21日目における、CD25、CD38、CD39およびCD45ROの発現を示す。1名のドナーに由来する細胞からのCAR T細胞から得られる代表的な結果が示される。
図5E】イブルチニブの存在下での連続刺激の0日目、11日目、18日目および21日目における、CD62L、CD69、CD107aおよびPD-1の発現を示す。1名のドナーに由来する細胞からのCAR T細胞から得られる代表的な結果が示される。
図6A図6Aは、BTK阻害に対して抵抗性であることが確認される播種性腫瘍異種移植マウスモデルにおけるビヒクル処置と比較して、腫瘍負荷量に対するイブルチニブ処置の影響を示す。
図6B図6Bは、2名の異なるドナーに由来する細胞からのCAR+T細胞による処置がイブルチニブまたはビヒクル対照の存在下または非存在下で行われたマウスにおける腫瘍注入後のより長い時点での同じ研究の結果を示す。図6Aおよび図6Bにおける結果は、平均放射輝度を生物発光により測定することによって示されるような経時的な腫瘍成長を示す。
図6C図6Cは、イブルチニブの存在下または非存在下でCAR-T細胞が投与される腫瘍保持マウスの生存を表すカプランマイヤー曲線を示す。
図6D図6Dは、2名の異なるドナーに由来する細胞からのCAR+T細胞による処置がイブルチニブまたはビヒクル対照の存在下または非存在下で行われたマウスにおける腫瘍注入後のより長い時点での同じ研究における生存結果を示す。
図7A】2名の異なるドナーから作製されるCAR-T細胞が単独で、または飲料水を介して投与される毎日のイブルチニブの投与との組み合わせで投与される腫瘍保持マウスの観察された生存を表すカプランマイヤー曲線を示す。統計学的に有意に異なることが示される(P<0.001(***))。
図7B】2名の異なるドナーから作製されるCAR-T細胞が投与され、かつ、飲料水を介して投与されるイブルチニブにより処置されるマウスからの生物発光による平均放射輝度を測定することによって示されるような経時的な腫瘍成長を示す。統計学的に有意に異なることが、二元配置ANOVA、P<0.05(*)、P<0.01(**)として示される。
図7C】イブルチニブを用いて、または用いることなく処置されるマウスの血液、骨髄および脾臓におけるCAR-T細胞のレベルを示す。
図7D】イブルチニブを用いる、または用いない処置の後におけるCAR-T細胞移入後19日目での血中のCAR-T細胞のレベルを示す。統計学的に有意に異なることが、*として示されている(p<0.05)。
図7E】イブルチニブを用いてまたは用いることなく処置されるマウスの血液、骨髄および脾臓における腫瘍細胞数を示す。統計学的に有意に異なることが、P<0.001として(***)、P<0.0001として示されている(****)。
図8A】CAR-T細胞がイブルチニブまたは対照との組み合わせで移入された後の12日目に動物の骨髄から採取されるCAR操作T細胞での表面マーカーのT分布型確率的近傍埋込み(t-SNE)高次元分析を示す。
図8B】CAR-T細胞およびイブルチニブまたはビヒクル対照が移入された後の12日目に動物の骨髄から採取されるCAR操作T細胞のT分布型確率的近傍埋込み(t-SNE)高次元分析から導かれる4つの集団を示す。
図8C】総集団の発現(陰影付きヒストグラム)に重ね合わされる、4ゲート(gated)t-SNEからの、CD4、CD8、CD62L、CD45RA、CD44およびCXCR3の個々の発現プロフィールを示すヒストグラムを示す。
図8D】対照マウスまたはイブルチニブ処置マウスからのそれぞれのt-SNE集団の割合および変化倍数を示す。
図9A】びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)を有する対象から得られる細胞から作製されるCAR操作細胞の、イブルチニブの非存在下(対照)、または50 nMもしくは500 nMのイブルチニブの存在下での21日の培養期間にわたる連続刺激アッセイにおける集団倍加数を示す。矢印は、CAR T細胞が計数され、イブルチニブと一緒での新しい標的細胞が加えられたそれぞれの再刺激の時点を示している。
図9B】16日間の連続再刺激をイブルチニブの存在下または非存在下で行った後におけるCD19発現標的細胞についての遺伝子操作CAR-T細胞の細胞溶解活性を示す。殺傷率を非処理対照(100%)に対して正規化した。データは、再現実験ウェルからの平均±SEMとして示される。統計学的に有意に異なることが、P<0.001として(***)、P<0.0001として示されている(****)。
図10A】対照と比較して、500 nMのイブルチニブにより処置される18日目の連続刺激されたCAR T細胞からの示差的発現遺伝子を示すボルケーノ(Volcano)プロットである。有意な示差的アップレギュレーション遺伝子が右側破線の右側であり、有意な示差的ダウンレギュレーション遺伝子が左側破線の左側である(FDR<0.05、abslog2FC>0.5)。
図10B】対照群および500 nMイブルチニブ群における、図10Aからの23個の示差的発現遺伝子の正規化された発現(ドナー+条件あたりの平均トランスクリプト・パー・ミリオン(Transcripts per Million)、遺伝子あたり正規化されたzスコア)を示すヒートマップである。
図10C】対照と比較して、50 nMのイブルチニブにより処置される18日目の連続刺激されたCAR T細胞からの発現遺伝子のボルケーノプロットを示す。
図10D】対照群および50 nMイブルチニブ処置群における18日の連続刺激されたCAR T細胞からの(図10Bに記載されるように正規化される)正規化された遺伝子発現変化のヒートマップを示す。
図11A図11A図11Eは、対照(Ctrl)と比較して、50 nM(Ibr50)または500 nM(Ibr500)のイブルチニブにより処置される連続刺激されたCAR T細胞からドナーおよび条件毎の実験にわたってまとめられる示された遺伝子の発現(TPM、transcrips per million)ボックスプロットプロフィールを示す。
図11B図11A図11Eは、対照(Ctrl)と比較して、50 nM(Ibr50)または500 nM(Ibr500)のイブルチニブにより処置される連続刺激されたCAR T細胞からドナーおよび条件毎の実験にわたってまとめられる示された遺伝子の発現(TPM、transcrips per million)ボックスプロットプロフィールを示す。
図11C図11A図11Eは、対照(Ctrl)と比較して、50 nM(Ibr50)または500 nM(Ibr500)のイブルチニブにより処置される連続刺激されたCAR T細胞からドナーおよび条件毎の実験にわたってまとめられる示された遺伝子の発現(TPM、transcrips per million)ボックスプロットプロフィールを示す。
図11D図11A図11Eは、対照(Ctrl)と比較して、50 nM(Ibr50)または500 nM(Ibr500)のイブルチニブにより処置される連続刺激されたCAR T細胞からドナーおよび条件毎の実験にわたってまとめられる示された遺伝子の発現(TPM、transcrips per million)ボックスプロットプロフィールを示す。
図11E図11A図11Eは、対照(Ctrl)と比較して、50 nM(Ibr50)または500 nM(Ibr500)のイブルチニブにより処置される連続刺激されたCAR T細胞からドナーおよび条件毎の実験にわたってまとめられる示された遺伝子の発現(TPM、transcrips per million)ボックスプロットプロフィールを示す。
図12図12Aは、フローサイトメトリーによって測定されるような、18日間の連続刺激の後での、1名のドナーに由来する細胞からのCAR T細胞におけるCD62L発現の代表的なヒストグラムである。図12Bは、フローサイトメトリーによって測定されるような、対照に対して正規化される、18日間の連続刺激の後での、1名のドナーに由来する細胞からのCD62L+CAR T細胞の割合における変化倍数を示す。データは、2つの独立した実験からのものである(平均±SEM)。
【発明を実施するための形態】
【0085】
詳細な説明
T細胞(例えばCAR発現T細胞)などの操作された細胞およびBTKまたはITK阻害剤などのTECファミリーのキナーゼの阻害剤の方法および使用が提供される。いくつかの局面では、提供される態様は、例えば癌または増殖性疾患を有する対象の治療のための、併用療法、例えば対象へのBTK阻害剤、例えばイブルチニブなどのTECファミリーのキナーゼの阻害剤の投与と、T細胞療法(例えばCAR発現T細胞)などの養子細胞療法の投与とを含む併用療法を含む。
【0086】
いくつかの態様では、癌または増殖性疾患を有する対象の治療のための、T細胞(例えばCAR‐T細胞)などの操作された細胞、および以下の構造:
を有する化合物であるかまたはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、互変異性体もしくはラセミ混合物、およびその組成物である、イブルチニブであるキナーゼ阻害剤の方法および使用が提供される。いくつかの局面では、T細胞療法は、癌または増殖性疾患に関連する抗原、例えばB細胞悪性腫瘍、例えば非ホジキンリンパ腫(NHL)に関連する抗原またはそのサブタイプを特異的に認識するおよび/または標的化するT細胞を含む養子T細胞療法である。いくつかの局面では、T細胞療法は、抗原に結合する、例えば特異的に結合する抗原結合ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)で操作されたT細胞を含む。いくつかの場合には、T細胞療法によって標的とされる抗原はCD19である。T細胞療法を含む組成物および/またはBTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤を含む組成物を含む組合せおよびキットなどの製品、ならびにB細胞悪性腫瘍などの癌を含む疾患、状態、および障害を治療または予防するためのそのような組成物および組合せの使用も提供される。
【0087】
T細胞に基づく治療法、例えば養子T細胞療法(キメラ抗原受容体(CAR)および/または他の組換え抗原受容体などの関心対象の疾患または障害に特異的なキメラ受容体を発現する細胞の投与を含むもの、ならびに他の養子免疫細胞療法および養子T細胞療法を含む)は、B細胞悪性腫瘍などの疾患および障害の治療に有効であり得る。T細胞の表面における組換え受容体(例えば、キメラ抗原受容体(CAR)など)の操作された発現により、T細胞特異性の方向を変更することができる。臨床試験では、CAR-T細胞、例えば抗CD19 CAR-T細胞は、白血病およびリンパ腫の両方の患者において持続性の完全奏効を生じさせた(Porter et al.(2015)Sci Transl Med.,7:303ra139;Kochenderfer(2015)J.Clin.Oncol.,33:540-9;Lee et al.(2015)Lancet,385:517-28;Maude et al.(2014)N Engl J Med,371:1507-17)。
【0088】
特定の状況では、養子細胞療法に対する利用可能なアプローチは必ずしも完全に満足できるものではないことがある。例えば、CAR T細胞の持続性はリンパ腫を有する多くの対象で検出できるが、ALLの対象と比較してNHLの対象では完全奏効(CR)がよりわずかしか観察されていない。より具体的には、CAR T細胞の注入後に最大80%までのより高い全奏効率(CR率47%~60%)が報告されているが、一部では応答は一過性であり、対象は持続性CAR T細胞の存在下で再発することが示されている(Neelapu, 58th Annual Meeting of the American Society of Hematology(ASH): 2016; San Diego, CA, USA. Abstract No. LBA-6. 2016; Abramson, Blood. 2016 Dec 01; 128(22): 4192)。別の試験では、40%の長期CR率が報告された(Schuster, Ann Hematol. 2016 Oct; 95(11):1805-10)。
【0089】
いくつかの局面では、これについての説明は、循環CAR発現T細胞の免疫学的枯渇および/またはTリンパ球集団の変化である。これは、いくつかの状況では、最適な効果が、投与された細胞が、活性になり、拡大し、細胞傷害性死滅およびサイトカインなどの様々な因子の分泌を含む様々なエフェクター機能を発揮し、長期を含めて存続し、特定の表現型状態(長命記憶状態、低分化状態およびエフェクター状態など)に分化し、移行し、または再プログラム化に関与し、疾患の局所的微小環境における免疫抑制状態を回避または低減し、クリアランスおよび標的リガンドまたは抗原への再曝露後に有効で堅固な想起応答を提供し、ならびに消耗、アネルギー、末梢性免疫寛容、最終分化および/または抑制状態への分化を回避または低減することができる能力に依存し得るためである。
【0090】
いくつかの場合には、リンパ球除去療法を投与するかまたは前処置することによって応答を改善することができ、これは、いくつかの局面では、前処置を行わないまたは異なるリンパ球除去療法を用いて前処置を行う方法と比較して、投与後の細胞の持続性および/または効果を高める。リンパ球除去療法は一般に、典型的には別の化学療法またはシクロホスファミドなどの他の剤と組み合わせたフルダラビンの投与を含み、これらはいずれの順序でも連続的にまたは同時に投与され得る。最近の第I/II相臨床試験では、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)および慢性リンパ性白血病(CLL)の患者における完全奏効(CR)はそれぞれ94%、47%および50%であり、無病生存率は、シクロホスファミドを投与されたがフルダラビンを投与されなかった患者と比較して、シクロホスファミドとフルダラビンによるリンパ球除去療法を投与された患者でより大きかった(Cameron et al.(2016)J Clin Oncol, 34(suppl; abstr 102)。しかしながら、いくつかの局面では、リンパ球除去療法を用いた場合でも、CAR-T細胞療法は必ずしもすべての対象において一貫して有効であるとは限らない。
【0091】
いくつかの態様では、操作された細胞の曝露、持続性および機能は、対象への投与後に減少または低下する。それにもかかわらず、いくつかの場合には、組換え受容体を発現する投与された細胞が(例えば細胞数の増加または持続時間の延長)、インビボで再拡大および/または再活性化して、養子細胞療法における効果および治療転帰を改善できることが観察で示されている。
【0092】
提供される方法は、BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤が、T細胞の拡大、増殖および持続性に関連する機能を含む、操作されたT細胞療法のT細胞機能を改善するという観察に基づく いくつかの態様では、方法は、例えば、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブと組み合わせたT細胞療法(例えばCAR発現T細胞)などの養子細胞療法のための細胞を含む組成物などのT細胞療法を投与することにより、有利である。いくつかの局面では、提供される方法および使用は、特定の代替方法と比較して改善されたまたはより持続性の応答または効果を提供または達成する。いくつかの局面では、提供される方法は、T細胞療法(例えばCAR発現T細胞)の投与に関連するT細胞活性の増殖および/または活性を増強または調節する。
【0093】
いくつかの局面では、提供される方法および使用は、例えば治療される対象の特定の群において、特定の代替方法と比較して改善されたまたはより持続性の応答または効果を提供または達成する。いくつかの態様では、方法は、例えばT細胞療法(例えばCAR発現T細胞)などの養子細胞療法のための細胞を含む組成物などの免疫療法または免疫療法剤と、TECファミリーのキナーゼの阻害剤、例えばBTK阻害剤またはITK阻害剤、例えばイブルチニブとを投与することにより、有利である。
【0094】
提供される方法は、TECファミリーキナーゼの阻害剤、例えばイブルチニブが、T細胞の拡大、増殖および持続性に関連する機能を含むT細胞機能を改善するという観察に基づく。イブルチニブは、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)の活性をブロックし、ITKに対する活性も示す、不可逆的低分子阻害剤(SMI)である。イブルチニブは、再発難治性状況でのマントル細胞リンパ腫(MCL)およびワルデンシュトレームマクログロブリン血症における使用について承認されている(Davids et al.(2014)Future Oncol., 10: 957-67)。いくつかの場合には、B細胞受容体(BCR)シグナル伝達経路の異常な活性化がMCLおよびCLLなどのB細胞悪性腫瘍の根底にある主要な機構であり、それにより慢性的なBTKシグナル伝達が、B細胞の生存と異常な活性化を促進する活性化B細胞の核内因子カッパ軽鎖エンハンサ(NFκB)およびマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPキナーゼ)を介してリン酸化カスケードを開始させ得る。したがって、BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのTECファミリーキナーゼ阻害剤を用いる既存の方法が、B細胞悪性腫瘍を治療するために使用される。
【0095】
提供される所見は、T細胞を含む、例えば養子T細胞療法の投与を含む方法における阻害剤の併用療法が、T細胞療法の改善された機能を達成することを示す。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばBTK阻害剤および/またはITK阻害剤(そのようなキナーゼの選択的および/または不可逆的阻害剤など)と細胞療法(例えば操作されたT細胞の投与)との組合せは、持続性、拡大、細胞傷害性および/または治療転帰などのT細胞療法の1つまたは複数の機能および/または作用、例えば腫瘍または他の疾患または標的細胞を死滅させるまたは負荷を減少させる能力を改善または増強する。いくつかの態様では、本明細書における観察は、BTK阻害剤および/またはITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのTECファミリーキナーゼ阻害剤が、より低濃度では活性化を増加させるが、より高濃度ではCAR Tの活性化を減弱させ得ることを示す。
【0096】
いくつかの局面では、腫瘍または疾患または標的細胞自体は、阻害剤に対して、阻害剤が選択的であるキナーゼを標的とする阻害剤に対して非感受性、抵抗性であるおよび/もしくは十分に応答性でない、ならびに/またはTECファミリーキナーゼの阻害剤に対して抵抗性であり、任意で前記阻害剤によるTECファミリーキナーゼの阻害に対して抵抗性であり、ならびに/または別のTECファミリーキナーゼの阻害に対して抵抗性であり、ならびに/またはTECファミリーキナーゼ、任意で前記阻害剤が標的とする(またはその主要な標的である)1つまたは複数のものと比較して異なるTECファミリーキナーゼの別の阻害剤に対して抵抗性であるにもかかわらず、そのような作用が観察される。例えば、いくつかの態様では、癌は、阻害剤に対して、または前記阻害剤によるおよび/もしくは別の阻害剤によるTECファミリーキナーゼの阻害に対して非感受性であるかまたは抵抗性になっている。
【0097】
いくつかの態様では、提供される方法、使用および併用療法は、前記阻害剤または別のキナーゼ阻害剤を既に投与されたことがある対象において、そのような対象が前記阻害剤に不応性または抵抗性と見なされている、および/またはそのような阻害剤の以前の投与による治療に十分に応答性でないと見なされている状況での、CAR+T細胞などのT細胞療法と組み合わせたキナーゼ阻害剤の投与を含む。いくつかの態様では、併用療法、方法および使用は、以前にキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与を受けたことがあるが、T細胞療法の非存在下(もしくは併用せずに)および/または操作されたT細胞療法の非存在下、および/または提供される療法、方法もしくは使用によって標的化されるのと同じ疾患もしくは標的に向けられる操作されたT細胞療法の非存在下で行われた対象において、T細胞療法(例えばCAR+T細胞)と組み合わせたキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブを連続投与する工程を含む。
【0098】
いくつかの態様では、方法および組合せは、T細胞の機能または表現型の改善、例えばT細胞療法のT細胞の内因性T細胞機能性および/または内因性T細胞表現型の改善をもたらす。そのような改善は、いくつかの局面では、機能性、例えばCAR-T細胞機能性の1つまたは複数の他の望ましい特性を損なうことなく、または実質的に損なうことなく生じる。いくつかの態様では、阻害剤との組合せは、T細胞の1つまたは複数の結果または機能的属性を改善する一方で、例えば阻害剤の非存在下であることを除いて他の点では同じ条件下で培養される細胞と比較してインビトロアッセイで測定した場合、細胞が活性になり、1つまたは複数の望ましいサイトカインを分泌し、拡大および/または存続する能力を低下させない。
【0099】
いくつかの態様では、提供される態様は、T細胞療法の投与の前に、BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤の投与を開始し、T細胞療法の開始までまたはT細胞療法の投与の開始後も継続する工程を含む。いくつかの局面では、提供される態様は、BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤による長期治療、例えばキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブによる長期前処置を含む。いくつかの局面では、例えばキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブによる長期治療を含む提供される態様は、T細胞機能を回復する、腫瘍負荷を減少させる、腫瘍微小環境を破壊する、骨髄由来のサプレッサ細胞(MDSC)の生成を減少させるのを助けることができ、それにより腫瘍微小環境(TME)特異的免疫抑制を軽減または克服する。いくつかの局面では、BTKまたはホスホリパーゼCγ2(PLCγ2)の変異が特定の細胞療法の効果に有害な影響を及ぼすことは観察されなかった。
【0100】
いくつかの局面では、提供される態様は、T細胞療法の投与の開始後のBTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤の投与の継続、再開および/またはさらなる投与を含む。いくつかの局面では、例えば細胞療法の投与の開始後の投与の継続、再開および/またはさらなる投与を含む提供される態様は、投与された細胞の枯渇の可能性を低減する、サイトカイン放出症候群(CRS)または神経毒性(NT)などの毒性のリスクを低減する、直交二重標的化による耐性変異のリスクを低減する、および腫瘍微小環境を抑制する(例えば腫瘍微小環境における免疫抑制活性に対抗する)ことができる。いくつかの局面では、提供される態様の利点はまた、対象の忍容性に応じて、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの用量もしくは投与を調節する、またはキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与を取り除くもしくは中止する能力を含む。
【0101】
いくつかの局面では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブは、投与された細胞の内因性機能を増強して、細胞の性能を改善することができる。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤の作用は、オフターゲット共有結合性および非共有結合性阻害によって調節される。いくつかの局面では、ITKの阻害は、Th1に偏った分極をもたらし得る。いくつかの局面では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、CLLを有する対象におけるT細胞機能性を回復することができる。いくつかの態様では、リンパ球増加作用は、TMEを破壊し、投与された細胞による腫瘍へのアクセスの改善に寄与し得る。いくつかの局面では、サイトカイン放出症候群(CRS)などの毒性は、急性骨髄反応性を制限することによって低減することができる。いくつかの局面では、組合せでのキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、投与された操作細胞の増殖、生存および/または拡大の増強をもたらし、抗腫瘍活性の増強をもたらすことができる。いくつかの態様では、そのような改善は、最適な活性を示さない可能性がある対象からの細胞で観察することができる。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブによる治療は、連続刺激後の操作された細胞の記憶様亜集団に関連するマーカーを発現する細胞を増加させることが観察され、遺伝子発現プロフィールが改変されることが観察された。さらに、投与されたCAR+T細胞のインビボ効果の増加が、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブとの併用療法で観察された。ITKを阻害するイブルチニブのオフターゲット活性により、いくつかの場合にはイブルチニブ治療がT細胞活性の結果であると考えられていた。いくつかの局面では、イブルチニブ治療と組み合わせて投与されたT細胞の改善された活性および/またはエフェクター機能の観察は、T細胞療法を改善するための予想外の利点を提供する。いくつかの局面では、BTK/ITK阻害剤(例えばイブルチニブ)などのキナーゼ阻害剤の投与は、T細胞の機能性を回復し、投与されたT細胞療法のエフェクター機能を改善し、腫瘍環境媒介性の免疫機能不全を制限し、併用療法で治療された対象の腫瘍負荷の減少、腫瘍クリアランスの改善および生存期間の延長をもたらすことができる。
【0102】
いくつかの態様では、提供される方法は、CAR‐T細胞療法を強化することができ、これは、いくつかの局面では、他の療法に抵抗性または難治性である、侵攻性もしくは高リスクの癌である、および/または別の種類の癌と比較して阻害剤なしで投与されたCAR-T細胞療法に対して比較的低い奏効率を示すまたは示す可能が高い癌を有する対象の治療の転帰を改善することができる。
【0103】
提供される方法のいくつかの態様では、投与された遺伝子操作細胞の1つまたは複数の特性は、参照組成物の投与細胞と比較して、例えば対象におけるそのような投与細胞の増加したもしくはより長い拡大および/もしくは持続性、または抗原による再刺激時の増加したもしくはより大きい想起応答などのように、改善され得るまたは増加され得るまたはより大きくなり得る。いくつかの態様では、増加は、他の方法を使用した細胞療法、例えばインキュベートしていないまたはキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの存在下で投与していない細胞療法の投与時の同じ特性または特徴と比較して、そのような特性または特徴の少なくとも1.2倍、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、または少なくとも10倍の増加であり得る。いくつかの態様では、そのような特性または特徴の1つまたは複数の増加は、遺伝子操作された細胞の投与後1ヶ月以内、2ヶ月以内、3ヶ月以内、4ヶ月以内、5ヶ月以内、6ヶ月以内、または12ヶ月以内に観察できるかまたは存在する。
【0104】
提供される方法は、T細胞調節効果を示すために、BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤を有効量で投与する工程を含む。キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの特定の投与量および/または投薬レジメンは、T細胞療法、例えばCAR-T細胞療法のT細胞機能を増加または増強することができる。いくつかの局面では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与の開始は、T細胞療法、例えばCAR-T細胞療法の投与の前であり得る。いくつかの局面では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与の開始は、遺伝子操作のために対象から細胞を入手する前であり得る。いくつかの局面では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、特定の期間、特定のレジメンに基づいて継続される。いくつかの局面では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、T細胞療法、例えばCAR-T細胞療法の開始後まで、例えばT細胞療法の開始後の特定の期間継続される。いくつかの局面では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブは、長期間投与される。いくつかの局面では、数サイクルの投与にわたるものを含む、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの長期投与は、投与されたT細胞の増殖、生存、および/または活性化の改善をもたらすことができる。いくつかの局面では、提供される方法に従ってキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブを投与することは、操作されたT細胞のT細胞機能および活性を回復することにより、癌、例えばNHL、例えばDLBCLなどのB細胞悪性腫瘍を治療するためのCAR発現細胞の活性を高めることができ、いくつかの局面では、その細胞自律的な抗腫瘍作用も発揮し得る。いくつかの局面では、DLBCL対象から生成されたCAR+T細胞は、連続刺激後、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの存在下で細胞溶解機能の増加を示した。いくつかの局面では、特定の状況で、マントル細胞リンパ腫(MCL)に対する投与されたCAR+T細胞の抗腫瘍活性が改善されることが観察され、サイトカイン放出症候群(CRS)の減少が観察された。
【0105】
いくつかの態様では、提供される方法は、T細胞療法の活性および/または機能を調節するために、1日当たりの有効量のキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブを対象に投与する工程を含む。いくつかの態様では、有効量は、140mg/日または約140mg/日から560mg/日または約560mg/日である。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの前記量は、毎日投与される。キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、一定の期間、例えば一般に1週間を超えて、例えば1ヶ月もしくは1ヶ月超、2ヶ月もしくは2ヶ月超、3ヶ月もしくは3ヶ月超、4ヶ月もしくは4ヶ月超、5ヶ月もしくは5ヶ月超、6ヶ月もしくは6ヶ月超、7ヶ月もしくは7ヶ月超、または8ヶ月もしくは8ヶ月超にわたって実施される。例示的な投薬レジメンが本明細書に記載されている。
【0106】
いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、操作されたT細胞の投与の開始前の時点で開始される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、操作されるT細胞が対象から得られる前に、例えば対象のアフェレーシスまたは白血球アフェレーシスの前に開始される。いくつかの局面では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与の開始は、アフェレーシスまたは白血球アフェレーシスの少なくとも7日前、少なくとも6日前、少なくとも5日前、少なくとも4日前、少なくとも3日前、少なくとも2日前または少なくとも1日前である。いくつかの局面では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、操作されたT細胞の投与後まで継続される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、対象が細胞療法の投与後に重度の毒性を示さない場合は継続される。
【0107】
いくつかの態様では、提供される方法は、神経毒性(NT)、サイトカイン放出症候群(CRS)、または好中球減少症などの血液学的毒性などの、毒性もしくは毒性転帰の高い割合もしくは可能性をもたらさないか、または他の特定の細胞療法または免疫調節薬レジメンと比較して、毒性もしくは毒性転帰の割合もしくは可能性を低減する。
【0108】
いくつかの態様では、方法は、例えばアウトプット細胞を投与することは、重度のNT(sNT)、重度のCRS(sCRS)、マクロファージ活性化症候群、腫瘍溶解症候群、3日間またはそれ以上の日数にわたる少なくとも38℃または約38℃の発熱、および少なくとも20mg/dLまたは約20mg/dLのCRPの血漿レベルをもたらさないか、またはそのリスクを増加させない。いくつかの態様では、提供される方法に従って治療される対象の30%超もしくは約30%超、35%超もしくは約35%超、40%超もしくは約40%超、50%超もしくは約50%超、55%超もしくは約55%超、60%超もしくは約60%超またはそれ以上が、いかなるグレードのCRSも示さず、またはいかなるグレードの神経毒性も示さない。いくつかの態様では、治療された対象の50%以下(例えば治療された対象の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%またはそれ以上)は、グレード2より高いサイトカイン放出症候群(CRS)および/またはグレード2より高い神経毒性を示す。いくつかの態様では、方法に従って治療される対象の少なくとも50%(例えば治療された対象の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%またはそれ以上)は、重篤な毒性転帰(例えば重度のCRSまたは重度の神経毒性)を示さず、例えばグレード3もしくはそれより高い神経毒性を示さず、および/または重度のCRSを示さず、または治療後の特定の期間内に、例えば細胞の投与の1週間以内、2週間以内もしくは1ヶ月以内にこれらを示さない。
【0109】
いくつかの場合には、BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤は、細胞を効率的/効果的にブーストまたはプライミングできる時点で投与される。いくつかの態様では、提供される方法は、T細胞療法、例えばCAR-T細胞療法を増強することができ、これは、いくつかの局面では、治療の転帰を改善することができる。いくつかの態様では、この方法は、T細胞療法の細胞が対象で弱い拡大を示し、使い果たされ、持続性の低下もしくは減少を示す対象において、ならびに/または他の療法に抵抗性もしくは難治性である、および/もしくは侵攻性もしくは高リスクの癌である癌を有する対象において、特に有利である。
【0110】
いくつかの態様では、T細胞療法、例えばCAR-T細胞の投与を受けた対象は、対象の生物学的試料中、例えば対象の血液中などで、対象における治療のT細胞の存在、非存在またはレベルについてモニターされる。いくつかの態様では、提供される方法は、それが投与される対象において、増加した持続性および/またはより良好な効力を有する遺伝子操作された細胞をもたらす。いくつかの態様では、対象におけるCAR発現T細胞などの遺伝子操作された細胞の持続性は、T細胞療法の投与を含むがBTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤の投与の非存在下での方法などの代替方法によって達成されるものと比較して、より大きい。いくつかの態様では、持続性は、少なくとももしくはおよそ少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、30倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、またはそれ以上増加する。
【0111】
いくつかの態様では、投与された細胞の持続性の程度または範囲を、対象への投与後に検出または定量化することができる。例えば、いくつかの局面では、定量的PCR(qPCR)が、対象の血液または血清または器官または組織(例えば疾患部位)において組換え受容体を発現する細胞(例えばCAR発現細胞)の量を評価するために使用される。いくつかの局面では、持続性は、DNA、例えば試料から得られた全DNAの1マイクログラム当たりの、受容体、例えばCARをコードするDNAもしくはプラスミドのコピー数として、あるいは例えば血液もしくは血清の試料の1マイクロリットル当たりの、または試料の1マイクロリットル当たりの末梢血単核細胞(PBMC)もしくは白血球もしくはT細胞の総数当たりの、受容体発現細胞、例えばCAR発現細胞の数として定量化される。いくつかの態様では、一般に受容体に特異的な抗体を用いて受容体を発現する細胞を検出するフローサイトメトリーアッセイも実施することができる。細胞に基づくアッセイもまた、機能的な細胞、例えば疾患もしくは状態の細胞に結合する、および/または疾患もしくは状態の細胞を中和する、および/または疾患もしくは状態の細胞に対する応答、例えば細胞傷害性応答を誘導する、または受容体によって認識される抗原を発現することができる細胞の数または割合を検出するために使用し得る。そのような態様のいずれにおいても、組換え受容体(例えばCAR発現細胞)に関連する別のマーカーの発現の程度またはレベルを使用して、投与された細胞を対象の内因性細胞から区別することができる。
【0112】
いくつかの態様では、BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤は、応答の持続性を増強する、高めるまたは最適化するために、ある期間投与される。いくつかの局面では、提供される方法は、T細胞療法の投与の開始後3ヶ月で、例えば一般に6ヶ月で完全な寛解または完全奏効(CR)を達成するかまたはその状態にある対象が、より長期間応答を持続する、例えば治療の終了後または併用療法の投与後初めて完全奏効(CR)を達成した後3ヶ月超もしくは約3ヶ月超、4ヶ月超もしくは約4ヶ月超、5ヶ月超もしくは約5ヶ月超、6ヶ月超もしくは約6ヶ月超、7ヶ月超もしくは約7ヶ月超、8ヶ月超もしくは約8ヶ月超、9ヶ月超もしくは約9ヶ月超、10ヶ月超もしくは約10ヶ月超、11ヶ月超もしくは約11ヶ月超、または12ヶ月超もしくは約12ヶ月超にわたって生存するまたは進行せずに生存する可能性がより高いという観察に基づく。いくつかの局面では、方法は、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブを、記載されるような特定のサイクリングレジメンなどで、T細胞療法の投与開始後少なくとも3ヶ月、例えば少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月または少なくとも6ヶ月の期間、投与するために実施される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブは、記載されるような特定のサイクリングレジメンなどで、T細胞療法の投与の開始後少なくとも6ヶ月間または少なくとも180日間投与される。いくつかの態様では、期間の終わりに、対象がCRを示す場合、または治療(併用療法)を受けた後の寛解後に対象において疾患または状態が進行もしくは再発した場合、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は終了または停止される。いくつかの局面では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの継続投与は、期間の終わり(例えば6ヶ月または約6ヶ月)に部分奏効(PR)または安定疾患(SD)を示す対象において実施され得る。他の局面では、期間は固定された期間であり、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブのさらなる投与は実施されない。
【0113】
いくつかの局面では、提供される方法および使用は、特定の代替方法、例えば治療対象の特定の群などにおける、単剤療法としての、または本明細書に記載されるような併用療法としての投与を伴わない、T細胞療法またはキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与を含む方法と比較して、改善されたまたはより持続性の応答または効果を提供または達成する。いくつかの態様では、方法は、例えばT細胞療法(例えばCAR発現T細胞)などの養子細胞療法のための細胞を含む組成物などのT細胞療法、およびキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブを投与することにより、有利である。いくつかの態様では、そのような応答は、高リスク疾患、例えば高リスクNHLを有する患者などの、予後不良の高リスク患者において観察される。いくつかの局面では、この方法は、悪性度が高いおよび/または予後不良のB細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)の形態、例えば再発したかまたは標準的な治療に難治性(R/R)であるかまたは予後不良であるNHLを有する対象を治療する。いくつかの態様では、提供される方法に従って治療される対象は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)または濾胞性リンパ腫(FL)を有する。
【0114】
いくつかの態様では、提供される方法に従って、および/または提供される製品もしくは組成物を用いて治療される対象の少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、または少なくとも75%またはそれ以上が、完全奏効(CR)を達成する。いくつかの態様では、対象はCR状態であり、最小残存病変(MRD)を示す。いくつかの態様では、対象はCR状態であり、MRD-である。いくつかの態様では、提供される方法に従って、および/または提供される製品もしくは組成物を用いて治療される対象の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%が、部分奏効(PR)の客観的奏効を達成する。いくつかの態様では、提供される方法に従って、および/または提供される製品もしくは組成物を用いて治療される対象の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%またはそれ以上が、細胞療法の投与開始後6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月または1年でCRまたはPRを達成する。
【0115】
いくつかの態様では、細胞療法の投与の開始後3ヶ月まで、4ヶ月まで、5ヶ月まで、6ヶ月まで、7ヶ月まで、8ヶ月まで、9ヶ月まで、10ヶ月まで、11ヶ月まで、または12ヶ月またはそれ以上まで、提供される方法に従って、および/または提供される製品もしくは組成物を用いて治療される対象の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%またはそれ以上が、奏効状態のままである、例えばCRまたは客観的奏効(OR)のままである。いくつかの態様では、CRまたはORなどのそのような応答は、例えば提供される方法に従って治療される対象の約60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%もしくはそれ以上において、または3ヶ月まで、4ヶ月まで、5ヶ月までまたは6ヶ月までにCRを達成するそのような対象において、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも7ヶ月、少なくとも8ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも10ヶ月、少なくとも11ヶ月、少なくとも12ヶ月またはそれ以上の間持続する。いくつかの態様では、提供される方法に従って、および/または提供される製品もしくは組成物を用いて治療される対象の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%またはそれ以上が、または3ヶ月まで、4ヶ月まで、5ヶ月までまたは6ヶ月までにCRを達成するそのような対象は、6ヶ月超もしくは約6ヶ月超、7ヶ月超もしくは約7ヶ月超、8ヶ月超もしくは約8ヶ月超、9ヶ月超もしくは約9ヶ月超、10ヶ月超もしくは約10ヶ月超、11ヶ月超もしくは約11ヶ月超、12ヶ月超もしくは約12ヶ月超、またはそれ以上の間、生存するまたは進行することなく生存する。
【0116】
また、例えば提供される併用療法の方法に従って、細胞を操作する、調製する、および作製するための方法、細胞および/または阻害剤を含有する組成物、ならびに細胞および/または阻害剤を使用する、生成する、および投与するためのキットおよび製品が提供される。
【0117】
本出願において言及される特許文書、科学論文およびデータベースを含むすべての刊行物は、それぞれ個々の刊行物が個別に参照により組み入れられているのと同じ程度に、すべての目的のためにその全体が参照により組み入れられる。本明細書で示される定義が、参照により本明細書に組み入れられる特許、特許出願、公開特許出願および他の刊行物で示される定義と相容れないまたは矛盾する場合、本明細書で示される定義が、参照により本明細書に組み入れられる定義に優先する。
【0118】
本明細書で使用される章の見出しは、構成目的のためだけのものであり、記載されている主題を限定すると解釈されるべきではない。
【0119】
I.併用療法
疾患または障害、例えば癌または増殖性疾患を治療するための併用療法の方法であって、1)キナーゼ阻害剤および2)細胞療法、例えばT細胞療法(例えばCAR発現T細胞)の併用療法を対象に投与する工程を含む方法が本明細書で提供される。また、T細胞(例えばCAR発現T細胞)などの操作された細胞およびブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)などのTECファミリーキナーゼの阻害剤の方法および使用も提供される。いくつかの局面では、阻害剤は、イブルチニブなどのブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)および/またはIL-2誘導性T細胞キナーゼ(ITK)の阻害剤である。いくつかの局面では、阻害剤は、癌を有する対象の治療のための、以下の構造:
またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、互変異性体もしくはラセミ混合物を有し、これらはその組成物を含む。
【0120】
例えばキメラ抗原受容体(CAR)などの組換え受容体を発現する操作された細胞およびキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブを含む併用療法、または本明細書に記載される、操作された細胞および/またはキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブを含む組成物は、様々な治療、診断および予防適応において有用である。例えば、組合せは、対象における様々な疾患および障害を治療するのに有用である。そのような方法および使用には、例えば操作された細胞、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブ、および/または一方もしくは両方を含む組成物を、腫瘍または癌などの疾患、状態、または障害を有する対象に投与する工程を含む治療方法および治療的使用が含まれる。いくつかの態様では、操作された細胞、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブ、および/または一方もしくは両方を含む組成物は、疾患または障害の治療をもたらすのに有効な量で投与される。使用には、そのような方法および治療における、ならびにそのような治療方法を実施するための薬剤の調製における、操作された細胞、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブ、および/または一方もしくは両方を含む組成物の使用が含まれる。いくつかの態様では、方法は、操作された細胞、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブ、および/または一方もしくは両方を含む組成物を、疾患または状態を有するまたは有することが疑われる対象に投与することによって実施される。いくつかの態様では、この方法は、それにより、対象における疾患または状態または障害を治療する。
【0121】
いくつかの態様では、方法は、B細胞悪性腫瘍を有する対象を治療するためのものである。いくつかの局面では、方法は、白血病または非ホジキンリンパ腫(NHL)などのリンパ腫を治療するためのものである。いくつかの局面では、方法および使用は、特定の代替方法と比較して、例えば治療される対象の特定の群において、改善されたまたはより持続性の応答または効果を提供または達成する。いくつかの態様では、細胞療法は、疾患または障害、例えば癌または増殖性疾患に関連する抗原を特異的に認識するおよび/または標的とするT細胞を投与する工程含む。また、T細胞療法を含む組成物および/またはBTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤を含む組成物を含む組合せおよびキットなどの製品、ならびに癌を含む疾患、状態、および障害を治療または予防するためのそのような組成物および組合せの使用も提供される。
【0122】
いくつかの態様では、方法および使用は、1)一般にキメラ抗原受容体(CAR)などのキメラ受容体である、遺伝子操作された細胞表面受容体(例えば組換え抗原受容体)を発現し、白血病もしくはリンパ腫(例えばNHL)などのB細胞悪性腫瘍によって発現される、関連するおよび/もしくはそれに特異的な抗原を認識する細胞、ならびに/またはそれが由来する細胞型を含むT細胞療法を対象に投与する工程、ならびに2)BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤を対象に投与する工程を含む。この方法は、一般に、1つまたは複数の用量の細胞および1つより多い用量のキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブを対象に投与する工程を含む。
【0123】
いくつかの態様では、提供される併用療法の方法は、BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤の治療有効量と、T細胞療法(例えばCAR発現T細胞)などの細胞療法とを対象に投与する工程を含む。いくつかの態様では、提供される併用療法の方法は、BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤の投与を、T細胞療法(例えばCAR発現T細胞)などの細胞療法の開始の前に、後に、その間に、その経過中に、同時に、ほぼ同時に、連続的に、同時におよび/または間欠的に開始する工程を含む。
【0124】
いくつかの態様では、提供される態様は、T細胞療法の投与の前に、BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤の投与を開始し、T細胞療法の開始までまたはT細胞療法の投与の開始後も継続する工程を含む。いくつかの局面では、提供される態様は、BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤による長期治療、例えばキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブによる長期前処置を含む。いくつかの態様では、この方法は、BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤の投与を継続する工程を含む。いくつかの態様では、BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤の投与を継続する工程は、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの複数用量の投与を含む。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブは、T細胞療法の開始後は継続されないか、またはさらに投与されない。いくつかの態様では、投薬スケジュールは、T細胞療法の開始前および開始後にキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブを投与する工程を含む。いくつかの態様では、投薬スケジュールは、T細胞療法の投与と同時にキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブを投与する工程を含む。
【0125】
いくつかの局面では、方法は、例えば投与のためのT細胞療法を生成するために、対象からT細胞を含む試料を入手する3日前もしくは少なくとも約3日前または最低でも3日前もしくは最低でも約3日前に開始されるキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与を含む。いくつかの局面では、T細胞療法は、対象からT細胞を含む試料を入手し、CARをコードする核酸分子をT細胞を含む組成物に導入する工程を含む工程によって生成される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブは、少なくとも対象から試料が得られるまでにわたる期間の投与を含む投薬レジメンで投与される。いくつかの局面では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、対象から試料を入手する3日前または少なくとも約3日前に開始され、少なくとも対象から試料が得られるまでにわたる期間の投与を含む投薬レジメンで実施される。
【0126】
いくつかの態様では、方法および使用は、(1)癌を有する対象に、有効量のキナーゼ阻害剤、例えば以下の構造:
有するキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を投与する工程;および(2)疾患または障害に関連する抗原、例えばCD19に特異的に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現する遺伝子操作されたT細胞の用量を含む、自己T細胞療法を対象に投与する工程を含む。いくつかの態様では、T細胞療法を投与する前に、対象から生物学的試料を入手し、処理し、この処理は、例えばCARをコードする核酸分子を前記T細胞に導入することによって、試料由来のT細胞を遺伝子改変する工程を含む。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤の投与は、試料を入手する少なくとも3日前または約3日前に開始され、対象から試料を入手した日またはその日以降の投与を少なくとも含む期間にわたって、ある投与間隔で阻害剤を反復投与する工程を含む投薬レジメンで実施される。
【0127】
いくつかの態様では、方法および使用は、(1)癌を有する対象に、有効量のキナーゼ阻害剤、例えば以下の構造:
有するキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を投与する工程;(2)対象から生物学的試料を入手し、前記試料のT細胞を処理し、それにより疾患または障害に関連する抗原、例えばCD19に特異的に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現する遺伝子操作されたT細胞を含む組成物を生成する工程、および(3)遺伝子操作されたT細胞の用量を含む自己T細胞療法を対象に投与する工程を含む。いくつかの局面では、キナーゼ阻害剤の投与は、試料を入手する少なくとも3日前または約3日前に開始され、対象から試料を入手した日またはその日以降の化合物の投与を少なくとも含む期間にわたって、ある投与間隔で化合物を反復投与する工程を含む投薬レジメンで実施される。
【0128】
いくつかの態様では、方法および使用は、(1)癌を有する対象に、有効量のキナーゼ阻害剤、例えば以下の構造:
有するキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を投与する工程;および(2)疾患または障害に関連する抗原、例えばCD19に特異的に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現する遺伝子操作されたT細胞の用量を含む、自己T細胞療法を対象に投与する工程を含む。いくつかの局面では、T細胞療法は、対象からT細胞を含む試料を入手し、CARをコードする核酸分子をT細胞を含む組成物に導入する工程を含む処理によって生成され、キナーゼ阻害剤の投与は、対象から試料を入手する3日前もしくは少なくとも約3日前または最低でも3日前もしくは最低でも約3日前に開始され、少なくとも対象から試料が得られるまでにわたる期間の投与を含む投薬レジメンで実施される。
【0129】
いくつかの局面では、提供される方法および使用は、癌を有する対象に、有効量のキナーゼ阻害剤、例えば以下の構造:
を有するキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を投与する工程を含み、対象は、対象に対するT細胞療法による治療の候補であるかまたは治療される予定である。いくつかの局面では、疾患または障害に関連する抗原、例えばCD19に特異的に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現する遺伝子操作されたT細胞の用量を含むT細胞療法。いくつかの局面では、T細胞療法は、対象からT細胞を含む試料を入手し、CARをコードする核酸分子をT細胞を含む組成物に導入する工程を含む工程によって生成される。いくつかの局面では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、対象から試料を入手する3日前もしくは少なくとも約3日前または最低でも3日前もしくは最低でも約3日前に開始され、少なくとも対象から試料が得られるまでにわたる期間の投与を含む投薬レジメンで実施される。いくつかの局面では、方法および使用はまた、対象にT細胞療法、例えばCARをコードする核酸分子を導入された対象から得られたT細胞を含む組成物を投与する工程を含む。いくつかの実施形態では、対象から試料を得る工程は、全血試料、バフィーコート試料、末梢血単核細胞(PBMC)試料、未分画T細胞試料、リンパ球試料、白血球試料、アフェレーシス産物、または白血球アフェレーシス産物であるかまたはこれを含む試料を得る工程を含む。いくつかの態様では、対象から試料を得る工程は、アフェレーシスまたは白血球アフェレーシスとも称される。
【0130】
いくつかの局面では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与の開始後、およびT細胞療法の投与の前に、対象は、リンパ球除去療法で前処置されている。いくつかの局面では、リンパ球除去療法は、本明細書、例えばI.C章に記載されている任意のリンパ球除去療法であるかまたはこれを含む。いくつかの局面では、方法および使用は、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与を開始した後、およびT細胞療法の投与の前に、対象にリンパ球除去療法を投与する工程を含む。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブを投与するための投薬レジメンは、少なくともリンパ球除去療法の開始までにわたる期間の投与を含む。
【0131】
方法および使用のいくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、リンパ球除去療法の間、中止または休止される。いくつかの態様では、中止は、一時的な中止、例えば投与の休止または一時的な停止であり得る。方法および使用のいくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、リンパ球除去療法の後に任意で再開され得る。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブは、リンパ球除去療法の後に、さらに投与されるか、または投与が再開される。いくつかの態様では、リンパ球除去療法および/または中止もしくは休止の前の、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの最初の投与の投薬量、頻度、スケジュールまたはレジメンは、リンパ球除去療法および/または中止もしくは休止後の、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブのさらなる投与または投与の再開の投薬量、頻度、スケジュールまたはレジメンと同じである。いくつかの態様では、リンパ球除去療法および/または中止もしくは休止の前の、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの最初の投与の投薬量、頻度、スケジュールまたはレジメンは、リンパ球除去療法および/または中止もしくは休止後の、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブのさらなる投与または投与の再開の投薬量、頻度、スケジュールまたはレジメンと比較して、異なるかまたは変更される。
【0132】
いくつかの局面では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブを投与するための投薬レジメンは、リンパ球除去療法の開始までのキナーゼ阻害剤の投与、リンパ球除去療法中のキナーゼ阻害剤の投与の中止、およびT細胞療法の投与の開始後少なくとも15日、例えば少なくとも15日、少なくとも30日、少なくとも60日、少なくとも90日、少なくとも120日、少なくとも150日または少なくとも180日にわたる期間のキナーゼ阻害剤のさらなる投与を含む。
【0133】
いくつかの態様では、細胞療法は養子細胞療法である。いくつかの態様では、細胞療法は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)療法、トランスジェニックTCR療法、または任意でキメラ抗原受容体(CAR)発現細胞療法である組換え受容体発現細胞療法(任意でT細胞療法)であるか、またはこれを含む。いくつかの態様では、療法は、CD19を標的とするか、またはB細胞を標的とする療法である。いくつかの態様では、細胞および細胞を投与するための投薬レジメンは、本明細書に記載されるいずれかを含み得る。
【0134】
いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばTECファミリーキナーゼ阻害剤は、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)、IL-2誘導性T細胞キナーゼ(ITK)、tecタンパク質チロシンキナーゼ(TEC)、X染色体タンパク質(BMX)非受容体型チロシンキナーゼ(上皮および内皮チロシンキナーゼ;ETKとしても知られる)の骨髄チロシンキナーゼ遺伝子、およびTXKチロシンキナーゼ(TXK)を含む、TECファミリーの1つまたは複数のキナーゼを阻害する。いくつかの態様では、阻害剤は、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤である。いくつかの態様では、阻害剤を投与するための細胞および投薬レジメンは、本明細書に記載されるいずれかを含み得る。
【0135】
いくつかの態様では、T細胞療法(例えばCAR発現T細胞)などの免疫療法および阻害剤は、対象に投与するための薬学的組成物として提供される。いくつかの態様では、薬学的組成物は、併用療法のための作用物質、例えば養子細胞療法のためのT細胞および記載されるような阻害剤の一方または両方の治療有効量を含有する。いくつかの態様では、作用物質は、別個の薬学的組成物での投与のために製剤化される。いくつかの態様では、本明細書で提供される薬学的組成物のいずもが、それぞれの投与経路に適切な剤形で製剤化され得る。
【0136】
いくつかの態様では、免疫療法(例えばCAR-T細胞療法などの操作された細胞を含むT細胞療法)および阻害剤を投与する工程を含む併用療法は、治療されるべき疾患もしくは状態(例えば癌)を有するかまたは疾患もしくは状態(例えば癌)を有するリスクがある対象または患者に投与される。いくつかの局面では、方法は、免疫療法または免疫療法剤によって認識される、例えば操作されたT細胞によって認識される抗原を発現する癌における腫瘍負荷を減らすことなどによって、疾患または状態を治療する、例えば疾患または状態の1つまたは複数の症状を改善する。
【0137】
いくつかの態様では、治療される疾患または状態は、抗原の発現が疾患状態または障害の病因に関連するおよび/または関与する、例えばそのような疾患、状態または障害を引き起こす、悪化させる、またはさもなければ関与する任意のものであり得る。例示的な疾患および状態には、悪性腫瘍もしくは細胞の形質転換に関連する疾患もしくは状態(例えば癌)、自己免疫疾患もしくは炎症性疾患、または例えば細菌、ウイルスもしくは他の病原体によって引き起こされる感染症が含まれ得る。治療することができる様々な疾患および状態に関連する抗原を含む例示的な抗原には、本明細書に記載される抗原のいずれかが含まれる。特定の態様では、キメラ抗原受容体またはトランスジェニックTCRを含む、併用療法の操作された細胞上に発現される組換え受容体は、疾患または状態に関連する抗原に特異的に結合する。
【0138】
いくつかの態様では、疾患または状態は、固形腫瘍などの腫瘍、リンパ腫、白血病、血液腫瘍、転移性腫瘍、または他の癌もしくは腫瘍型である。
【0139】
いくつかの態様では、併用療法は、特定のB細胞悪性腫瘍を有する対象に投与される。治療されるB細胞悪性腫瘍は、抗原の発現がB細胞悪性腫瘍の病因に関連するおよび/または関与する、例えばB細胞悪性腫瘍を引き起こす、悪化させる、またはさもなければ関与する任意のものであり得る。例示的なB細胞悪性腫瘍には、悪性腫瘍または細胞の形質転換に関連する疾患または状態(例えば癌)が含まれ得る。治療することができる様々なB細胞悪性腫瘍に関連する抗原を含む例示的な抗原が、本明細書に記載されている。特定の態様では、キメラ抗原受容体は、疾患または状態に関連する抗原に特異的に結合する。いくつかの態様では、受容体によって標的化される抗原は、いくつかの公知のB細胞マーカーのいずれかなどの、B細胞悪性腫瘍に関連する抗原を含む。いくつかの態様では、抗原は、ヒトB細胞を含むB細胞によって、またはB細胞上で発現される。いくつかの態様では、受容体によって標的化される抗原は、CD20、CD19、CD22、ROR1、CD45、CD21、CD5、CD33、Igκ、Igλ、CD79a、CD79bまたはCD30である。いくつかの態様では、抗原はCD19であり、キメラ抗原受容体はCD19に特異的に結合する。いくつかの態様では、CD19抗原はヒトCD19である。
【0140】
いくつかの態様では、治療されるべきB細胞悪性腫瘍には、白血病およびリンパ腫、例えば急性骨髄性(myeloidまたはmyelogenous)白血病(AML)、慢性骨髄性(myeloidまたはmyelogenous)白血病(CML)、急性リンパ性(またはリンパ芽球性)白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、ヘアリーセル白血病(HCL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、辺縁帯リンパ腫、バーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫(HL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、難治性濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)および多発性骨髄腫(MM)が含まれる。いくつかの態様では、疾患または状態は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、成人ALL、慢性リンパ芽球性白血病(CLL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の中から選択されるB細胞悪性腫瘍である。いくつかの態様では、疾患または状態はNHLであり、NHLは、侵攻性NHL、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、NOS(デノボおよび無痛性から形質変換したもの)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBCL)、T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞リンパ腫(TCHRBCL)、バーキットリンパ腫、マントル細胞リンパ腫(MCL)、および/または濾胞性リンパ腫(FL)、任意で濾胞性リンパ腫グレード3B(FL3B)からなる群より選択される。
【0141】
いくつかの態様では、方法は、抗原受容体発現細胞(例えばCAR発現細胞)およびBTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤を投与することによって、非ホジキンリンパ腫(NHL)などのリンパ腫または白血病を有する対象を治療する工程を含む。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与の開始は、組換え受容体発現細胞(例えばCAR発現細胞)を投与する前、例えば組換え受容体発現細胞(例えばCAR発現細胞)の投与を開始する前である。
【0142】
いくつかの態様では、NHLは、Lugano分類に基づいて病期分類することができる(例えばCheson et al., (2014)JCO 32(27): 3059-3067; Cheson, B. D.(2015) Chin Clin Oncol 4(1): 5参照)。いくつかの場合には、病期はIからIV(1~4)のローマ数字で表され、リンパ系外の器官(リンパ節外器官)に影響を及ぼす限局性病期(IまたはII)のリンパ腫はEで示される。病期Iは、1つのリンパ節もしくは隣接するリンパ節の群への関与、またはリンパ節の関与のない単一のリンパ節外病変(IE)を表す。病期2は、隔膜の同じ側の2つもしくはそれより多いリンパ節群への関与、または限局性の隣接するリンパ節外関与を伴う病期IもしくはIIのリンパ節範囲(IIE)の関与を表す。病期IIIは、脾臓の関与を伴う隔膜の両側のリンパ節または隔膜の上のリンパ節の関与を表す。病期IVは、さらなる非隣接リンパ節外関与を表す。さらに、「巨大病変」は、特に病期IIの胸部の大きな腫瘍を表すために使用され得る。疾患の程度は、avidリンパ腫の場合は陽電子放射断層撮影(PET)-コンピュータ断層撮影(CT)によって、非avid組織学の場合はCTによって決定される。
【0143】
いくつかの態様では、Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)のパフォーマンスステータス指標を使用して、治療のための対象、例えば以前の治療からの転帰が不良であった対象を評価または選択することができる(例えばOken et al.(1982)Am J Clin Oncol.5:649-655参照)。いくつかの態様では、対象は、1未満または1のECOGステータスを有する。ECOGパフォーマンスステータススケールは、自分自身の面倒を見る能力、日常の活動、および身体能力(例えば歩行、作業など)の観点から患者の機能のレベルを表す。いくつかの態様では、ECOGパフォーマンスステータス0は、対象が通常の活動を実行できることを示す。いくつかの局面では、ECOGパフォーマンスステータスが1の対象は、身体活動に多少の制限を示すが、対象は完全に歩行可能である。いくつかの局面では、ECOGパフォーマンスステータスが2の患者は50%を超えて歩行可能である。いくつかの場合には、ECOGパフォーマンスステータスが2の対象も自分自身の面倒を見ることが可能であり得る;例えばSorensen et al.,(1993)Br J Cancer 67(4)773-775参照。ECOGパフォーマンスステータスを反映した基準を以下の表1に示す。
【0144】
(表1)ECOGパフォーマンスステータス基準
【0145】
いくつかの態様では、対象は、ダブル/トリプルヒットリンパ腫またはダブル/トリプルヒット分子サブタイプのリンパ腫を有するかまたは有すると同定されたことがある。いくつかの態様では、リンパ腫は、MYC(骨髄球腫症癌遺伝子)、BCL2(B細胞リンパ腫2)、および/またはBCL6(B細胞リンパ腫6)遺伝子再構成(例えば転座)の存在を特徴とするダブルヒットリンパ腫である。いくつかの態様では、リンパ腫は、MYC、BCL2、およびBCL6遺伝子再構成の存在を特徴とするトリプルヒットリンパ腫である;例えばAukema et al.,(2011)Blood 117:2319-2331参照。そのような態様のいくつかの局面では、対象はECOG 0~1である。複数の局面では、治療法はそのような対象に適応され、および/または指示書はそのような集団内の対象への投与を指示する。いくつかの態様では、2016年のWHO基準(Swerdlow et al.,(2016)Blood 127(20):2375-2390)に基づいて、ダブル/トリプルヒットリンパ腫は、DLBCL組織学を伴うMYCおよびBCL2および/またはBCL6再構成を有する(ダブル/トリプルヒット)、高グレードB細胞リンパ腫と見なすことができる。
【0146】
いくつかの態様では、併用療法は、細胞療法(例えばCAR+T細胞)による治療に対して、応答不良者であるもしくは応答不良者である可能性が高いもしくは応答不良者であると予測される、ならびに/または応答しない、応答しない可能性が高いおよび/もしくは応答しないと予測されるかまたは特定の時間内および/もしくは特定の程度に応答しない対象に投与される。いくつかの態様では、併用療法は、細胞療法の投与開始後1ヶ月以内、2ヶ月以内、または3ヶ月以内などに、完全奏効または全体奏効を示さない、または示さない可能性が高い、または示さないと予測される対象に投与される。いくつかの態様では、併用療法は、細胞療法の投与後1ヶ月以内、2ヶ月以内または3ヶ月以内などに、進行(PD)を示すか、または進行を示す可能性がある、または進行を示すと予測される対象に投与される。いくつかの態様では、対象は、細胞療法でそのような治療された、または以前に治療された複数の同様の状況にある対象に基づいて、応答または特定の応答を示さない可能性が高いかまたは示さないと予測される。
【0147】
いくつかの態様では、提供される方法は、対象の特定の群またはサブセット、例えば高リスク疾患、例えば高リスクNHLを有すると同定された対象を治療する工程を含む。いくつかの局面では、この方法は、悪性度が高いおよび/または予後不良のB細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)の形態、例えば再発したかまたは標準的な治療に難治性(R/R)であるかまたは予後不良であるNHLを有する対象を治療する。いくつかの場合には、治療法が適応となる疾患および/または患者集団についての利用可能な治療法、標準治療、または参照治療法に対する全奏効率(ORR)は40%未満であり、および/または完全奏効(CR)は20%未満である。いくつかの態様では、化学療法抵抗性DLBCLにおいて、参照または利用可能な治療または標準治療の療法に関するORRは約26%であり、CRは約8%である(Crump et al. Outomes in refractory aggressive diffuse large B-cell lymphoma(DLBCL):Results from the international SCHOLAR study. ASCO 2016[Abstract 7516])。いくつかの局面では、提供される方法、組成物、使用および製品は、利用可能な治療法よりも改善された優れた応答を達成する。
【0148】
いくつかの態様では、本明細書に記載される対象の治療のための方法および使用は、例えば特定の種類の疾患、診断基準、以前の治療および/または以前の治療に対する応答に基づいて、対象の特定の群またはサブセットを選択または同定する工程を含む。いくつかの態様では、方法は、1つもしくは複数の以前の療法による治療後に寛解の後に再発したかもしくは難治性になった対象、または1つもしくは複数の以前の療法、例えば本明細書に記載されるものを含む1つもしくは複数の標準治療ラインに対して再発したかもしくは難治性である(R/R)対象を治療する工程を含む。
【0149】
いくつかの態様では、対象は、1より多い、2より多い、3より多い、4より多い、5より多い、または6より多い以前の治療を受けたことがある。いくつかの態様では、対象は、1つの以前の治療を受けたことがある。いくつかの態様では、対象は、約2~4の以前の治療を受けたことがある。いくつかの態様では、対象は、約5~6の以前の治療を受けたことがある。いくつかの態様では、対象は、6を超える以前の治療を受けたことがある。
【0150】
いくつかの態様では、対象は、組換え受容体を発現する細胞の投与の前に、B細胞悪性腫瘍、例えばNHLを標的とする治療法または治療薬で以前に治療されたことがある。いくつかの態様では、対象は、細胞療法(例えばCAR+T細胞)で以前に治療されたことがある。いくつかの態様では、対象は、造血幹細胞移植(HSCT)、例えば同種HSCTまたは自家HSCTで以前に治療されたことがある。いくつかの態様では、対象は、標準的な治療法による治療後に予後不良になったことがあり、および/または1つもしくは複数の以前の治療ラインに失敗している。いくつかの態様では、対象は、リンパ球除去療法以外に、NHLを治療するために少なくとも1もしくは少なくとも約1もしくは約1、少なくとも2もしくは少なくとも約2もしくは約2、少なくとも3もしくは少なくとも約3もしくは約3、少なくとも4もしくは少なくとも約4もしくは約4、少なくとも5もしくは少なくとも約5もしくは約5、少なくとも6もしくは少なくとも約6もしくは約6、または少なくとも7もしくは少なくとも約7もしくは約7の他の治療法で治療されたことがあるか、または以前に治療法を受けたことがある。いくつかの態様では、対象は、化学療法または放射線療法で以前に治療されたことがある。いくつかの局面では、対象は、他の療法または治療薬に対して難治性または不応性である。いくつかの態様では、対象は、例えば化学療法または放射線を含む別の療法または治療的介入による治療の後に、持続性または再発性疾患を有している。
【0151】
いくつかの態様では、併用療法は、以前の治療で進行した対象に投与される。いくつかの態様では、併用療法は、以前の療法への応答を停止した対象に投与される。いくつかの態様では、併用療法は、以前の治療後の寛解の後に再発した対象に投与される。いくつかの態様では、併用療法は、以前の治療に難治性である対象に投与される。いくつかの態様では、併用療法は、以前の療法に対して至適奏効(例えば完全奏効、部分奏効または安定疾患)未満の対象に投与される。
【0152】
いくつかの態様では、対象は、以前の最後の治療に難治性である。いくつかの態様では、対象は、以前の最後の治療に対して再発している。対象が以前の最後の治療に対して部分奏効未満の応答を達成した場合、状態は難治性である。いくつかの態様では、対象は以前に化学療法を受けている。いくつかの態様では、対象は、以前の化学療法に対して化学療法抵抗性である。いくつかの態様では、対象は、以前の療法に対して化学感受性である。対象が最後の化学療法を含むレジメンに対して安定疾患(SD)もしくは進行性疾患(PD)を達成したか、または自家幹細胞移植後12ヶ月未満に再発した場合、状態は化学療法抵抗性である。それ以外の場合、状態は化学感受性である。
【0153】
いくつかの態様では、方法は、B細胞悪性腫瘍または血液学的悪性腫瘍、特にCAR-T細胞などのT細胞療法、またはキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブのいずれかによる単独のまたは本明細書に記載されるような併用療法としてではない治療に対する応答、例えば完全奏効が全面的に満足できるというわけではなかった、または他のB細胞悪性腫瘍または他の対象での類似の治療と比較して比較的低かった悪性腫瘍を治療するために使用することができる。いくつかの態様では、B細胞悪性腫瘍は、免疫療法または免疫療法剤、例えば養子細胞療法のための細胞(例えばCAR発現T細胞)を含む組成物による治療が、単独で、または本明細書で提供される併用療法とは異なるおよび/もしくはキナーゼ阻害剤に基づく療法、例えばイブルチニブに基づく療法との組合せではない別の組合せで投与された場合、そのように治療された対象の60%未満もしくは約60%未満、約50%未満、または約45%未満においてCRをもたらすものである。いくつかの態様では、対象および/またはB細胞悪性腫瘍は、阻害剤および/もしくはキナーゼ阻害剤療法、例えばイブルチニブ療法による治療に対して応答性でないおよび/もしくは難治性もしくは抵抗性であると見なされている、侵攻性もしくは高リスクの癌である、ならびに/または阻害剤および/もしくはキナーゼ阻害剤療法、例えばイブルチニブ療法による治療後の予後不良および/もしくは転帰不良を示す1つもしくは複数の特徴(例えばマーカー)を有するものである。
【0154】
いくつかの態様では、本明細書で提供される併用療法は、T細胞療法(例えばCAR発現T細胞)の投与の時点などの提供される併用療法の時点で、およびBTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤を投与する時点で、対象が応答性でない、ならびに/または阻害剤および/もしくはBTK阻害剤療法による以前の治療に難治性もしくは抵抗性であると見なされている癌を有する対象において使用するためのものである。いくつかの態様では、阻害剤および免疫療法との提供される併用療法は、併用療法の開始の時点で、対象が、T細胞(例えばCAR-T細胞)を含む療法の非存在下でのそのような以前の阻害剤の投与後に進行している疾患を有する、例えば最良応答として進行(PD)を有する、または以前の応答後に進行している疾患を有する、疾患または状態、例えばB細胞悪性腫瘍を有する対象において実施される。
【0155】
いくつかの態様において、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブおよびT細胞療法(例えば、CAR-T細胞)との提供された併用療法が、疾患または状態(例えば、B細胞悪性腫瘍)を有する対象において行われ、この場合、提供された併用療法の開始時において、対象は、阻害剤および/またはキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブを少なくとも6ヶ月にわたって以前に受けた後で、完全奏効(CR)に達していない応答を有していた。
【0156】
いくつかの局面において、提供された併用療法による処置のための対象は、疾患または状態の1つまたは複数の高リスク特徴を示すかまたは示すとして特定され、かつ/あるいは侵攻性の疾患または不良な予後もしくは転帰に関連する疾患を示す。いくつかの局面において、B細胞悪性腫瘍(例えば、リンパ腫または白血病(例えば、CLLまたはSLL)など)の高リスク特徴には、疾患の重症度または予後を示す1つまたは複数の分子マーカー(例えば、1つまたは複数の遺伝子マーカーなど)の存在が含まれる(例えば、Parker and Strout(2011)Discov. Med., 11:115-23を参照のこと)。いくつかの態様において、対象は、例えば、蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)によって検出されるような1つまたは複数の細胞遺伝学的異常(例えば、2つまたは3つまたはそれ以上の染色体異常(例えば、17p欠失、11q欠失、12トリソミーおよび/または13q欠失など)など)を有しているかまたは有するとして特定されるB細胞悪性腫瘍を有する。いくつかの態様において、対象は、例えば、単一ヌクレオチドアレイ(SNP)アレイに基づく方法、変性高速液体クロマトグラフィー(DHPLC)、酵母における分離された対立遺伝子の機能的分析(FASAY)を使用して、または直接的な配列決定法もしくは次世代の配列決定法を含めて配列決定によって評価されるなどする1つまたは複数の遺伝子変異(例えば、TP53変異、NOTCH1変異、SF3B1変異およびBIRC3変異など)を有しているかまたは有するとして特定されるB細胞悪性腫瘍を有する。いくつかの態様において、対象は、変異していない免疫グロブリン重鎖可変領域(IGHV)を有しているかまたは有するとして特定されるB細胞悪性腫瘍を有する。IGHの可変領域の変異状態は、変異していないこと(生殖系列と比較して2%未満)が侵攻性の疾患と関連する予後値を有する(Hamblin, Best Pract. Res. Clin. Haematol. 20:455-468(2007))。CD38およびZAP70の発現は、フローサイトメトリーによって評価される場合、IGH変異状態の代用であるとみなされる。いくつかの態様において、対象は、3つ以上の染色体異常、17p欠失、TP53変異および/または非変異IGHVを含む高リスク特徴を示すB細胞悪性腫瘍を有する。
【0157】
いくつかの態様において、本明細書において提供される併用療法は、癌を有する対象において使用するためのものであり、この場合、対象および/または癌はBTKの阻害に対して抵抗性であり、または阻害剤による阻害に対して抵抗性である細胞の集団を含む。いくつかの態様において、対象は、対象を阻害剤および/またはBTK阻害剤療法による処置に対して抵抗性にする変異を標的キナーゼ(例えば、BTKなど)において、または該標的キナーゼの経路の下流側分子において示す。対象をBTK阻害剤またはTECファミリーキナーゼの別の阻害剤による処置に対して抵抗性または難治性にする様々な変異が公知であり、例えば、Woyach et al.(2014)N Engl J. Med. 370:2286-94、およびLiu et al.(2015)Blood, 126:61-8.を参照のこと。いくつかの態様において、本明細書において提供される併用療法は、癌を有する対象において使用するためのものであり、この場合、対象および/または癌は、BTKをコードする核酸における変異または破壊を含み、例えば、阻害剤(例えば、イブルチニブ)によるBTKの阻害を低減させるかまたは防止することができる変異などを含む。いくつかの態様において、対象はBTKのC481S変異を含有する。いくつかの態様において、本明細書において提供される併用療法は、癌を有する対象において使用するためのものであり、この場合、対象および/または癌は、PLCγ2をコードする核酸における変異または破壊を含み、例えば、自律的なシグナル伝達を引き起こし得る機能変異の獲得などを含む。いくつかの態様において、対象は、PLCγ2におけるR665Wおよび/またはL845Fの変異を含有する。
【0158】
いくつかの場合において、例えば、癌を処置するための1つまたは複数の先行療法(例えば、少なくとも2つまたは3つの先行療法)による処置の後で、対象は完全奏効(CR)を達成しておらず、該1つまたは複数の先行療法に対する応答の後で安定疾患または進行性疾患を有する、かつ/あるいは再発した。いくつかの態様において、先行療法の少なくとも1つが、阻害剤またはBTK阻害剤療法(例えば、イブルチニブなど)による以前の処置であった。いくつかの態様において、対象は、阻害剤またはBTK阻害剤療法を、CRに達しない応答を伴って少なくとも6ヶ月にわたって受けていた、かつ/あるいは高リスク特徴、例えば、複合的な細胞遺伝学的異常(3つ以上の染色体異常)、17p欠失、TP53変異または非変異IGHVなどを示す。
【0159】
いくつかの態様において、ある特定の癌、例えば、NHL(例えば、高リスクNHLまたは侵攻性NHL、例えば、DLBCLなど)、および/または慢性リンパ性白血病(CLL)などは、場合によっては疾患自体によって影響を受ける内在性のT細胞機能性における欠損または低下に関連し得る。例えば、多くの癌(例えば、CLLおよびNHLなど、例えば、DLBCL)の病理発生が、例えば、T細胞の免疫抑制が、例えば、腫瘍の微小環境における1つまたは複数の因子によって推し進められることに起因するなどして腫瘍成長および免疫回避の促進を引き起こす免疫不全に関連し得る。いくつかの場合において、そのような患者の癌から得られる内在的なT細胞欠損を養子細胞療法に関連しての使用のために緩和することにより、養子T細胞療法(例えば、CAR-T細胞療法)に対するより強力な応答が提供され得るであろう。
【0160】
いくつかの態様において、提供された方法は、癌を対象において処置するためのものであり、この場合、そのような対象のT細胞は、T細胞の参照集団または参照レベルもしくは閾値レベルと比較して、例えば、癌を有しないまたは癌を有することが疑われない対象からのT細胞(例えば、健康な対象または正常な対象からのT細胞など)と比較してT細胞の機能、健康状態または活性を示す因子の減少したレベルを示すかまたは示すことが認められている。いくつかの態様において、提供された方法は、高リスクNHLおよび/または侵攻性NHL、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBCL)、T細胞/組織球に富む大細胞型B細胞リンパ腫(TCHRBCL)、バーキットリンパ腫、マントル細胞リンパ腫(MCL)、ならびに/あるいは濾胞性リンパ腫(FL)を有するとして特定される対象を処置するためのものである。例えば、本明細書において示されるように、例示的なBTK阻害剤のイブルチニブの存在下において、DLBCLを有する対象から操作されるT細胞は、より大きいT細胞機能的活性を示しており、このことは、T細胞の機能が阻害剤の存在下では増強されることを示している。提供された方法のいくつかの態様において、投与された操作T細胞は対象に対して自家である。いくつかの態様において、対象はDLBCLを有する。いくつかの態様において、提供された方法は、慢性リンパ性白血病(CLL)を有する対象を処置するためのものである。いくつかの態様において、提供された方法は、小リンパ球性リンパ腫(SLL)を有する対象を処置するためのものである。
【0161】
本明細書における提供された方法には、血液、骨髄およびリンパ組織におけるクローン的に由来するBリンパ球(例えば、CD19+)の進行性蓄積によって特徴づけられる血液学的悪性腫瘍であるCLLを処置するための方法がある。CLLと同じ疾患であるとみなされるが、いくつかの場合には、小リンパ球性リンパ腫(SLL)が、リンパ節症(リンパ節において見出される癌細胞)によって特徴づけられるときには疾患を示すために使用され、だが、CLLでは、癌細胞はほとんどが血液および骨髄において見出される。本明細書における目的のために、CLLに対する言及は、別途明記される場合を除き、SLLを含み得る。いくつかの態様において、CLLは、iwCLL基準(Hallek(2008)Blood, 111:5446-5456)に従う立証されたCLL、すなわち、測定可能な疾患(例えば、5×109/Lを超えるリンパ球増加症、測定可能なリンパ節、肝性および/または脾腫)を有する対象を包含する。いくつかの態様において、SLLは、リンパ節症および/または脾腫と、末梢血における5×109/L未満のCD19+CD5+クローンBリンパ球(5000/μL未満)とを、生検により証明されたSLLである、最大横径が1.5 cmを超える少なくとも1つの病変によって判定されるような測定可能な疾患の診断時に有する対象を包含する。進行性CLLを有する患者は一般に、予後が不良であり、全生存期間(OS)が、いくつかの研究で報告されるように1年未満である(Jain et al.(2016)Expt. Rev. Hematol., 9:793-801)。
【0162】
BTK阻害剤療法によるCLLの処置、特にイブルチニブによるCLLの処置が、CLL患者のための現在の第一選択の承認された治療法である。部分奏効(PR)が長期間にわたって持続し得るにもかかわらず、研究では、以前に処置されたCLL患者の25%前後がイブルチニブを中断することが見出された(Jain et al.(2015)Blood, 125:2062-2067; Maddocks(2015)JAMA Oncol., 1:80-87; Jain et al.(2017)Cancer, 123:2268-2273)。いくつかの場合において、イブルチニブの中断は、CLLの進行またはリヒター形質転換(Richter's transformation)のためである。イブルチニブを進行性疾患(PD)のために中断する患者の大多数が、高リクス特徴(例えば、del(17p)(17p欠失)、複雑な核型または細胞遺伝学的異常、および変異していない免疫グロブリン重鎖可変領域(IGHV)など)を有する患者である。さらに、BTKまたは下流側エフェクターのホスホリパーゼCγ2(PLCγ2)における変異が、イブルチニブ処置の期間中に現れる可能性があり、イブルチニブ抵抗性および最終的には再発に関連する(Woyach et al.(2014)N. Engl. J. Med., 370:2286-2294)。そのような変異が、イブルチニブの服用で再発するCLL患者の87%において認められる。代替となる治療法がそのような対象では必要である。
【0163】
いくつかの態様では、BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤は、T細胞療法、例えばCAR-T細胞の前に最初に投与される。いくつかの局面では、BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤の投与は継続され、および/またはBTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤は、T細胞療法、例えばCAR-T細胞の投与の開始と同時におよび/または投与の開始後にさらに投与される。いくつかの局面では、阻害剤は毎日投与される。いくつかの局面では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与、例えば毎日の投与は、T細胞療法、例えばCAR-T細胞の投与の開始前に開始され、所定の日数までの間継続される。いくつかの局面では、所定の日数は、T細胞療法の投与の開始後の所定の日数である。いくつかの態様では、阻害剤は、CAR-T細胞であるT細胞療法のレベルが、対象の血液中または疾患部位において、T細胞、例えばCAR発現T細胞の投与後にピークまたは最大、例えばCmaxのレベルになる時点まで、またはその後の時点まで投与され、例えば毎日投与される。いくつかの局面では、阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、T細胞療法の投与の開始後少なくとも14日間もしくは少なくとも約14日間、少なくとも30日間もしくは少なくとも約30日間、少なくとも60日間もしくは少なくとも約60日間、少なくとも90日間もしくは少なくとも約90日間、少なくとも120日間もしくは少なくとも約120日間、または少なくとも180日間もしくは少なくとも約180日間、継続される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、T細胞療法、例えばCAR-T細胞の投与の開始後少なくとも90日間または少なくとも約90日間または約90日間または90日間にわたって継続される。いくつかの局面では、阻害剤の投与を終了する時点で、対象におけるT細胞療法の持続性が観察される。いくつかの態様では、阻害剤の投与を終了する時点で、対象がキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与から利益を受けているかどうかを査定するために対象を評価することができる。いくつかの態様では、阻害剤の投与を終了する時点で、対象が、いくつかの態様ではCRなどの、奏効を達成したかどうかまたは奏効を示す特定の程度または転帰を達成したかどうかを査定するために対象を評価する。いくつかのそのような態様では、対象が、CRあるいは奏効を示すまたはCRもしくは他の転帰の可能性を示す他の転帰を達成した場合、提供される方法、組成物、製品または使用は、阻害剤またはその投与の中止を認める、指定する、または含む。いくつかのそのような態様では、対象がCRを達成していない場合、提供される方法は、阻害剤の投与の継続を認める。したがって、いくつかの局面では、提供される方法および他の態様は、阻害剤の長期にわたるまたは過度に長期にわたる投与を回避するかまたは低減する。いくつかの局面では、そのような長期にわたる投与は、さもなければ、患者などの治療が投与されている対象に対して、副作用または生活の質の崩壊もしくは低下などの1つもしくは複数の望ましくない転帰をもたらし得るか、または1つもしくは複数の望ましくない転帰の可能性を増加させ得る。いくつかの局面では、投与の設定された所定の期間、例えば最小期間は、患者のコンプライアンスの可能性、または特に毎日の投与の場合は、阻害剤が指示通りに、または方法に従って投与される可能性を増加させ得る。
【0164】
いくつかの態様では、併用療法は、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)の阻害に抵抗性である、および/または阻害剤による阻害に抵抗性である細胞の集団を含む対象および/または癌に投与される。いくつかの態様では、併用療法は、BTKをコードする核酸の変異を含む対象および/または癌に投与され、任意で変異は阻害剤および/またはイブルチニブによるBTKの阻害を低減または防止することができ、任意で変異はC481Sである。いくつかの態様では、併用療法は、ホスホリパーゼCガンマ2(PLCγ2)をコードする核酸中に変異を含む対象および/または癌に投与され、任意で変異は構成的シグナル伝達活性をもたらし、任意で変異はR665WまたはL845である。いくつかの態様では、併用療法は、BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤の投与の開始時点およびT細胞療法の投与の開始時点で、対象が、阻害剤および/またはBTK阻害剤療法による以前の治療後に寛解の後に再発したか、または以前の治療に難治性であると見なされた対象および/または癌に投与される。いくつかの態様では、併用療法は、BTK/ITKか阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤の投与の開始時点およびT細胞療法の投与の開始時点で、対象が、阻害剤および/またはBTK阻害剤療法による以前の治療後に進行し、任意で、対象が、以前の治療に対する最良応答として進行性疾患を示したまたは以前の治療に対する以前の応答後に進行を示した、対象および/または癌に投与される。いくつかの態様では、併用療法は、BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤の投与の開始時点およびT細胞療法の投与の開始時点で、対象が、阻害剤および/またはBTK阻害剤療法による少なくとも6ヶ月間の以前の治療後に完全奏効(CR)未満の応答を示した、対象および/または癌に投与される。
【0165】
いくつかの態様では、併用療法は、(i)(a)ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)の阻害に対して抵抗性であり、および/または(b)阻害剤による阻害に抵抗性である細胞の集団を含む対象および/または癌;(ii)阻害剤および/またはイブルチニブによるBTKの阻害を低減または防止することができる、BTKをコードする核酸の変異を含み、任意で変異がC481Sである、対象および/または癌;(iii)ホスホリパーゼCガンマ2(PLCγ2)をコードする核酸中に変異を含み、任意で変異が構成的シグナル伝達活性をもたらし、任意で変異がR665WまたはL845Fである、対象および/または癌;(iv)BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤の投与の開始時点およびT細胞を含む組成物の投与の開始時点で、対象が、阻害剤および/またはBTK阻害剤療法による以前の治療後に寛解の後に再発したか、または以前の治療に難治性であると見なされた、対象および/または癌;(v)BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤の投与の開始時点およびT細胞を含む組成物の投与の開始時点で、対象が、阻害剤および/またはBTK阻害剤療法による以前の治療後に進行し、任意で以前の治療に対する最良応答として進行性疾患を示したかまたは以前の治療に対する以前の応答後に進行を示した、対象および/または癌;ならびに/あるいは(vi)BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤の投与の開始時点およびT細胞を含む組成物の投与の開始時点で、対象が、阻害剤および/またはBTK阻害剤療法による少なくとも6ヶ月間の以前の治療後に完全奏効(CR)未満の応答を示した、対象および/または癌に投与される。いくつかの態様では、対象は、BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤の投与を受けたことがあり、その後、キナーゼ阻害剤による治療を中止した対象である。
【0166】
いくつかの態様では、本方法、使用および製品は、例えば特定の種類の疾患、診断基準、以前の治療および/または以前の治療に対する応答に基づいて、記載されている対象の任意の群などの、対象の特定の群またはサブセットを選択または同定する工程を含む、対象の治療を含むかまたは対象の治療のために使用される。いくつかの態様では、方法は、1つもしくは複数の以前の療法による治療後に寛解の後に再発したかもしくは療法に難治性になった対象、または1つもしくは複数の以前の療法、例えば1つもしくは複数の標準治療ライン、例えば細胞療法(例えばCAR+T細胞)に対して再発したかもしくは難治性である(R/R)対象を治療する工程を含む。いくつかの態様では、方法は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、他に特定されないもの(NOS;デノボおよび無痛性から形質転換したもの)、原発性縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫(PMBCL)または濾胞性リンパ腫(FL)、任意で、濾胞性リンパ腫グレード3B(FL3B)、EBV陽性DLBCL、またはEBV陽性NOSを有する対象を治療する工程を含む。いくつかの態様では、方法は、1未満、例えば0~1の東部共同腫瘍学グループパフォーマンスステータス(ECOG)を有する対象を治療する工程を含む。いくつかの態様では、方法は、一般に療法に対してまたは特定の参照療法に対して応答不良であるDLBCL患者またはその対象の予後不良の集団、例えば1つまたは複数、例えば2つまたは3つの染色体転座を有するもの(例えば、DLBCL組織学を伴うMYCおよびBCL2および/またはBCL6再構成を有する高グレードB細胞リンパ腫である、いわゆる「ダブルヒット」または「トリプルヒット」リンパ腫;通常はt(14;18)(q32;q21)bcl-2遺伝子または/およびBCL6/3q27染色体転座と組み合わせて転座MYC/8q24遺伝子座を有するもの;例えばXu et al.(2013)Int J Clin Exp Pathol.6(4):788-794参照)、および/または再発した、任意で12ヶ月以内に再発したもの、および/または化学療法抵抗性と見なされたものを治療する。
【0167】
いくつかの態様では、対象は、胚中心様(GCB)DLBCLであるDLBCLを有する。いくつかの態様では、対象は、非胚中心様(非GCB)DLBCLを有する。いくつかの態様では、対象は、ダブルヒットリンパ腫(DHL)を有する。いくつかの態様では、対象は、トリプルヒットリンパ腫(THL)を有する。いくつかの態様では、対象は、BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤による治療の応答性を示す遺伝子の発現について陽性である。いくつかの態様では、対象は、前記遺伝子の発現について陰性である。Blood 2017 130:4118参照。
【0168】
いくつかの態様では、抗原受容体(例えばCAR)は、疾患または状態に関連する、例えばNHLに関連する標的抗原に特異的に結合する。いくつかの態様では、疾患または障害に関連する抗原は、CD20、CD19、CD22、ROR1、CD45、CD21、CD5、CD33、Igκ、Igλ、CD79a、CD79bまたはCD30から選択される。いくつかの態様では、抗原はCD19である。いくつかの態様では、CD19抗原はヒトCD19である。
【0169】
いくつかの態様では、方法は、B細胞悪性腫瘍を有している、有するリスクがある、または有することが疑われる対象への、細胞療法およびBTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤の投与を含む。
【0170】
いくつかの態様では、方法は、NHLの特定の予後またはリスクを有するとして選択または同定された対象への細胞の投与を含む。非ホジキンリンパ腫(NHL)は多様な疾患であり得る。NHLを有する対象の一部は治療なしで生き延び得るが、また別の対象は即時の介入が必要であり得る。いくつかの場合には、NHLを有する対象は、疾患の予後および/または推奨される治療戦略を通知する可能性のある群に分類され得る。いくつかの場合には、これらの群は「低リスク」、「中リスク」、「高リスク」、および/または「非常に高リスク」であり得、患者は、遺伝的異常および/または形態学的もしくは身体的特徴を含むがこれらに限定されるわけではない多くの因子に依存してそのように分類され得る。いくつかの態様では、方法に従って、および/または製品もしくは組成物に従って治療される対象は、NHLのリスクに基づいて分類または同定される。いくつかの態様では、対象は、高リスクNHLを有する対象である。
【0171】
いくつかの態様では、治療されるべき対象には、侵攻性NHL、特に、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、他に特定されないもの(NOS;デノボおよび無痛性から形質転換したもの)、T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞リンパ腫、原発性縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫(PMBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、任意で濾胞性リンパ腫グレード3B(FL3B)、EBV陽性DLBCL、EBV陽性NOS、またはDLBCL組織学を伴うMYCおよびBCL2および/もしくはBCL6再構成を有する高悪性度B細胞リンパ腫(「ダブルヒット」または「トリプルヒット」リンパ腫)を有する対象の群が含まれる。いくつかの態様では、対象の疾患は、少なくとも2つの以前の治療ラインに対して再発したか、または難治性であった。いくつかの態様では、以前の治療は、CD20を標的とする剤および/またはアントラサイクリンを含む。いくつかの態様では、対象は、東部共同腫瘍学グループパフォーマンスステータス(Eastern Cooperative Oncology Group)(ECOG)のステータス1未満または1を有しているかまたは有すると同定されたことがある。いくつかの態様では、対象は、スクリーニング時に0~1のECOGスコアを有する。いくつかの態様では、対象は、Lugano分類(Cheson,2014)により、陽電子放射断層撮影(PET)陽性の疾患を有する。いくつかの態様では、対象は、任意で同種幹細胞移植(SCT)で以前に治療されていてもよい。
【0172】
いくつかの態様では、対象は成人である。いくつかの態様では、対象は男性である。いくつかの態様では、対象は女性である。いくつかの態様では、対象は、併用療法を投与される時点で(例えば細胞療法を投与される時点で)少なくとも40歳である。いくつかの態様では、対象は、併用療法を投与される時点で(例えば細胞療法を投与される時点で)40歳未満である。いくつかの態様では、対象は、併用療法を投与される時点で(例えば細胞療法を投与される時点で)約40~65歳である。いくつかの態様では、対象は、併用療法を投与される時点で(例えば細胞療法を投与される時点で)少なくとも65歳である。
【0173】
提供される方法のいくつかの態様では、投与された遺伝子操作細胞の1つまたは複数の特性は、参照組成物の投与細胞と比較して、例えば対象におけるそのような投与細胞の増加したもしくはより長い拡大および/もしくは持続性、または抗原による再刺激時の増加したもしくはより大きい想起応答などのように、改善され得るまたは増加され得るまたはより大きくなり得る。いくつかの態様では、増加は、参照細胞組成物を投与したときの同じ特性または特徴と比較して、そのような特性または特徴の少なくとも1.2倍、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、または少なくとも10倍の増加であり得る。いくつかの態様では、そのような特性または特徴の1つまたは複数の増加は、遺伝子操作された細胞の投与後1ヶ月以内、2ヶ月以内、3ヶ月以内、4ヶ月以内、5ヶ月以内、6ヶ月以内、または12ヶ月以内に観察できるかまたは存在する。
【0174】
いくつかの態様では、参照細胞組成物は、癌を有していないもしくは有する疑いのない対象の血液に由来するT細胞の組成物であり得るか、またはキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの存在下でインキュベートされていないもしくは投与されていないことを除いて、同じもしくは実質的に同じ条件下で得られる、単離される、生成される、作製される、インキュベートされるおよび/もしくは投与されるT細胞の集団である。いくつかの態様では、参照細胞組成物は、同じ組換え受容体、例えばCARの発現を含む、実質的に同じである遺伝子操作された細胞を含有する。いくつかの局面では、そのようなT細胞は、同一にまたは実質的に同一に処理され、例えば同様に製造され、同様に製剤化され、同じまたはほぼ同じ投与量および他の同様の因子で投与される。
【0175】
A. キナーゼ阻害剤の投与
提供される併用療法の方法、組成物、組合せ、キットおよび使用は、TECファミリーキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤の投与を含み、これは、T細胞療法の投与、例えばキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞の投与の前、投与後、投与と同時もしくはほぼ同時に、連続的におよび/もしくは断続的に投与することができ、および/またはその投与は、T細胞療法の投与の前に開始し、T細胞療法の投与の開始までもしくはT細胞療法の投与開始後も継続することができる。
【0176】
いくつかの態様では、併用療法におけるキナーゼ阻害剤は、チロシンキナーゼ、例えば、いくつかの場合には、サイトカイン受容体、リンパ球表面抗原、ヘテロ三量体Gタンパク質共役受容体およびインテグリン分子の細胞内シグナル伝達機構に関与するTECファミリーのキナーゼのメンバーの阻害剤である。いくつかの態様では、併用療法におけるキナーゼ阻害剤は、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)、IL-2誘導性T細胞キナーゼ(ITK)、tecタンパク質チロシンキナーゼ(TEC)、X染色体タンパク質(BMX)非受容体型チロシンキナーゼ(上皮および内皮チロシンキナーゼ;ETKとしても知られる)の骨髄チロシンキナーゼ遺伝子、およびTXKチロシンキナーゼ(TXK)を含む、TECファミリーのキナーゼの1つまたは複数のメンバーの阻害剤である。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤は、ブルトン型チロシンキナーゼ(Btk)阻害剤である。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤は、IL-2誘導性T細胞キナーゼ(ITK)阻害剤である。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤は、イブルチニブなどのBTKおよびITKの両方の阻害剤である。
【0177】
いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤は、1つまたは複数のTECファミリーキナーゼの不可逆的阻害剤である。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤は、BTKの不可逆的阻害剤である。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤は、ITKの不可逆的阻害剤である。
【0178】
いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤は、1000nM未満もしくは約1000nM未満、900nM未満もしくは約900nM未満、800nM未満もしくは約800nM未満、700nM未満もしくは約700nM未満、600nM未満もしくは約600nM未満、500nM未満もしくは約500nM未満、400nM未満もしくは約400nM未満、300nM未満もしくは約300nM未満、200nM未満もしくは約200nM未満、100nM未満もしくは約100nM未満、90nM未満もしくは約90nM未満、80nM未満もしくは約80nM未満、70nM未満もしくは約70nM未満、60nM未満もしくは約60nM未満、50nM未満もしくは約50nM未満、40nM未満もしくは約40nM未満、30nM未満もしくは約30nM未満、20nM未満もしくは約20nM未満、10nM未満もしくは約10nM未満、9nM未満もしくは約9nM未満、8nM未満もしくは約8nM未満、7nM未満もしくは約7nM未満、6nM未満もしくは約6nM未満、5nM未満もしくは約5nM未満、4nM未満もしくは約4nM未満、3nM未満もしくは約3nM未満、2nM未満もしくは約2nM未満、1nM未満もしくは約1nM未満、0.9nM未満もしくは約0.9nM未満、0.8nM未満もしくは約0.8nM未満、0.7nM未満もしくは約0.7nM未満、0.6nM未満もしくは約0.6nM未満、0.5nM未満もしくは約0.5nM未満、0.4nM未満もしくは約0.4nM未満、0.3nM未満もしくは約0.3nM未満、0.2nM未満もしくは約0.2nM未満、または0.1nM未満もしくは約0.1nM未満の半数阻害濃度(IC50)でBTKを阻害する。
【0179】
いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤は、1000nM未満もしくは約1000nM未満、900nM未満もしくは約900nM未満、800nM未満もしくは約800nM未満、700nM未満もしくは約700nM未満、600nM未満もしくは約600nM未満、500nM未満もしくは約500nM未満、400nM未満もしくは約400nM未満、300nM未満もしくは約300nM未満、200nM未満もしくは約200nM未満、100nM未満もしくは約100nM未満、90nM未満もしくは約90nM未満、80nM未満もしくは約80nM未満、70nM未満もしくは約70nM未満、60nM未満もしくは約60nM未満、50nM未満もしくは約50nM未満、40nM未満もしくは約40nM未満、30nM未満もしくは約30nM未満、20nM未満もしくは約20nM未満、10nM未満もしくは約10nM未満、9nM未満もしくは約9nM未満、8nM未満もしくは約8nM未満、7nM未満もしくは約7nM未満、6nM未満もしくは約6nM未満、5nM未満もしくは約5nM未満、4nM未満もしくは約4nM未満、3nM未満もしくは約3nM未満、2nM未満もしくは約2nM未満、1nM未満もしくは約1nM未満、0.9nM未満もしくは約0.9nM未満、0.8nM未満もしくは約0.8nM未満、0.7nM未満もしくは約0.7nM未満、0.6nM未満もしくは約0.6nM未満、0.5nM未満もしくは約0.5nM未満、0.4nM未満もしくは約0.4nM未満、0.3nM未満もしくは約0.3nM未満、0.2nM未満もしくは約0.2nM未満、または0.1nM未満もしくは約0.1nM未満の平衡解離定数(Kd)でBTKに結合する。
【0180】
いくつかの態様では、BTKに対するキナーゼ阻害剤の阻害定数(Ki)は、1000nM未満もしくは約1000nM未満、900nM未満もしくは約900nM未満、800nM未満もしくは約800nM未満、700nM未満もしくは約700nM未満、600nM未満もしくは約600nM未満、500nM未満もしくは約500nM未満、400nM未満もしくは約400nM未満、300nM未満もしくは約300nM未満、200nM未満もしくは約200nM未満、100nM未満もしくは約100nM未満、90nM未満もしくは約90nM未満、80nM未満もしくは約80nM未満、70nM未満もしくは約70nM未満、60nM未満もしくは約60nM未満、50nM未満もしくは約50nM未満、40nM未満もしくは約40nM未満、30nM未満もしくは約30nM未満、20nM未満もしくは約20nM未満、10nM未満もしくは約10nM未満、9nM未満もしくは約9nM未満、8nM未満もしくは約8nM未満、7nM未満もしくは約7nM未満、6nM未満もしくは約6nM未満、5nM未満もしくは約5nM未満、4nM未満もしくは約4nM未満、3nM未満もしくは約3nM未満、2nM未満もしくは約2nM未満、1nM未満もしくは約1nM未満、0.9nM未満もしくは約0.9nM未満、0.8nM未満もしくは約0.8nM未満、0.7nM未満もしくは約0.7nM未満、0.6nM未満もしくは約0.6nM未満、0.5nM未満もしくは約0.5nM未満、0.4nM未満もしくは約0.4nM未満、0.3nM未満もしくは約0.3nM未満、0.2nM未満もしくは約0.2nM未満、または0.1nM未満もしくは約0.1nM未満である。
【0181】
いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤は、1000nM未満もしくは約1000nM未満、900nM未満もしくは約900nM未満、800nM未満もしくは約800nM未満、700nM未満もしくは約700nM未満、600nM未満もしくは約600nM未満、500nM未満もしくは約500nM未満、400nM未満もしくは約400nM未満、300nM未満もしくは約300nM未満、200nM未満もしくは約200nM未満、100nM未満もしくは約100nM未満、90nM未満もしくは約90nM未満、80nM未満もしくは約80nM未満、70nM未満もしくは約70nM未満、60nM未満もしくは約60nM未満、50nM未満もしくは約50nM未満、40nM未満もしくは約40nM未満、30nM未満もしくは約30nM未満、20nM未満もしくは約20nM未満、10nM未満もしくは約10nM未満、9nM未満もしくは約9nM未満、8nM未満もしくは約8nM未満、7nM未満もしくは約7nM未満、6nM未満もしくは約6nM未満、5nM未満もしくは約5nM未満、4nM未満もしくは約4nM未満、3nM未満もしくは約3nM未満、2nM未満もしくは約2nM未満、1nM未満もしくは約1nM未満、0.9nM未満もしくは約0.9nM未満、0.8nM未満もしくは約0.8nM未満、0.7nM未満もしくは約0.7nM未満、0.6nM未満もしくは約0.6nM未満、0.5nM未満もしくは約0.5nM未満、0.4nM未満もしくは約0.4nM未満、0.3nM未満もしくは約0.3nM未満、0.2nM未満もしくは約0.2nM未満、または0.1nM未満もしくは約0.1nM未満の半数阻害濃度(IC50)でITKを阻害する。
【0182】
いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤は、1000nM未満もしくは約1000nM未満、900nM未満もしくは約900nM未満、800nM未満もしくは約800nM未満、700nM未満もしくは約700nM未満、600nM未満もしくは約600nM未満、500nM未満もしくは約500nM未満、400nM未満もしくは約400nM未満、300nM未満もしくは約300nM未満、200nM未満もしくは約200nM未満、100nM未満もしくは約100nM未満、90nM未満もしくは約90nM未満、80nM未満もしくは約80nM未満、70nM未満もしくは約70nM未満、60nM未満もしくは約60nM未満、50nM未満もしくは約50nM未満、40nM未満もしくは約40nM未満、30nM未満もしくは約30nM未満、20nM未満もしくは約20nM未満、10nM未満もしくは約10nM未満、9nM未満もしくは約9nM未満、8nM未満もしくは約8nM未満、7nM未満もしくは約7nM未満、6nM未満もしくは約6nM未満、5nM未満もしくは約5nM未満、4nM未満もしくは約4nM未満、3nM未満もしくは約3nM未満、2nM未満もしくは約2nM未満、1nM未満もしくは約1nM未満、0.9nM未満もしくは約0.9nM未満、0.8nM未満もしくは約0.8nM未満、0.7nM未満もしくは約0.7nM未満、0.6nM未満もしくは約0.6nM未満、0.5nM未満もしくは約0.5nM未満、0.4nM未満もしくは約0.4nM未満、0.3nM未満もしくは約0.3nM未満、0.2nM未満もしくは約0.2nM未満、または0.1nM未満もしくは約0.1nM未満の平衡解離定数(Kd)でITKに結合する。
【0183】
いくつかの態様では、ITKに対するキナーゼ阻害剤の阻害定数(Ki)は、1000nM未満もしくは約1000nM未満、900nM未満もしくは約900nM未満、800nM未満もしくは約800nM未満、700nM未満もしくは約700nM未満、600nM未満もしくは約600nM未満、500nM未満もしくは約500nM未満、400nM未満もしくは約400nM未満、300nM未満もしくは約300nM未満、200nM未満もしくは約200nM未満、100nM未満もしくは約100nM未満、90nM未満もしくは約90nM未満、80nM未満もしくは約80nM未満、70nM未満もしくは約70nM未満、60nM未満もしくは約60nM未満、50nM未満もしくは約50nM未満、40nM未満もしくは約40nM未満、30nM未満もしくは約30nM未満、20nM未満もしくは約20nM未満、10nM未満もしくは約10nM未満、9nM未満もしくは約9nM未満、8nM未満もしくは約8nM未満、7nM未満もしくは約7nM未満、6nM未満もしくは約6nM未満、5nM未満もしくは約5nM未満、4nM未満もしくは約4nM未満、3nM未満もしくは約3nM未満、2nM未満もしくは約2nM未満、1nM未満もしくは約1nM未満、0.9nM未満もしくは約0.9nM未満、0.8nM未満もしくは約0.8nM未満、0.7nM未満もしくは約0.7nM未満、0.6nM未満もしくは約0.6nM未満、0.5nM未満もしくは約0.5nM未満、0.4nM未満もしくは約0.4nM未満、0.3nM未満もしくは約0.3nM未満、0.2nM未満もしくは約0.2nM未満、または0.1nM未満もしくは約0.1nM未満である。
【0184】
いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤は、BTKおよびITKの両方を阻害する。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤は、1000nM未満もしくは約1000nM未満、900nM未満もしくは約900nM未満、800nM未満もしくは約800nM未満、700nM未満もしくは約700nM未満、600nM未満もしくは約600nM未満、500nM未満もしくは約500nM未満、400nM未満もしくは約400nM未満、300nM未満もしくは約300nM未満、200nM未満もしくは約200nM未満、100nM未満もしくは約100nM未満、90nM未満もしくは約90nM未満、80nM未満もしくは約80nM未満、70nM未満もしくは約70nM未満、60nM未満もしくは約60nM未満、50nM未満もしくは約50nM未満、40nM未満もしくは約40nM未満、30nM未満もしくは約30nM未満、20nM未満もしくは約20nM未満、10nM未満もしくは約10nM未満、9nM未満もしくは約9nM未満、8nM未満もしくは約8nM未満、7nM未満もしくは約7nM未満、6nM未満もしくは約6nM未満、5nM未満もしくは約5nM未満、4nM未満もしくは約4nM未満、3nM未満もしくは約3nM未満、2nM未満もしくは約2nM未満、1nM未満もしくは約1nM未満、0.9nM未満もしくは約0.9nM未満、0.8nM未満もしくは約0.8nM未満、0.7nM未満もしくは約0.7nM未満、0.6nM未満もしくは約0.6nM未満、0.5nM未満もしくは約0.5nM未満、0.4nM未満もしくは約0.4nM未満、0.3nM未満もしくは約0.3nM未満、0.2nM未満もしくは約0.2nM未満、または0.1nM未満もしくは約0.1nM未満の半数阻害濃度(IC50)でBTKおよびITKの両方を阻害する。
【0185】
いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤は、1000nM未満もしくは約1000nM未満、900nM未満もしくは約900nM未満、800nM未満もしくは約800nM未満、700nM未満もしくは約700nM未満、600nM未満もしくは約600nM未満、500nM未満もしくは約500nM未満、400nM未満もしくは約400nM未満、300nM未満もしくは約300nM未満、200nM未満もしくは約200nM未満、100nM未満もしくは約100nM未満、90nM未満もしくは約90nM未満、80nM未満もしくは約80nM未満、70nM未満もしくは約70nM未満、60nM未満もしくは約60nM未満、50nM未満もしくは約50nM未満、40nM未満もしくは約40nM未満、30nM未満もしくは約30nM未満、20nM未満もしくは約20nM未満、10nM未満もしくは約10nM未満、9nM未満もしくは約9nM未満、8nM未満もしくは約8nM未満、7nM未満もしくは約7nM未満、6nM未満もしくは約6nM未満、5nM未満もしくは約5nM未満、4nM未満もしくは約4nM未満、3nM未満もしくは約3nM未満、2nM未満もしくは約2nM未満、1nM未満もしくは約1nM未満、0.9nM未満もしくは約0.9nM未満、0.8nM未満もしくは約0.8nM未満、0.7nM未満もしくは約0.7nM未満、0.6nM未満もしくは約0.6nM未満、0.5nM未満もしくは約0.5nM未満、0.4nM未満もしくは約0.4nM未満、0.3nM未満もしくは約0.3nM未満、0.2nM未満もしくは約0.2nM未満、または0.1nM未満もしくは約0.1nM未満の平衡解離定数(Kd)でBTKおよびITKの療法に結合する。
【0186】
いくつかの態様では、BTKおよびITKの両方に対するキナーゼ阻害剤の阻害定数(Ki)は、1000nM未満もしくは約1000nM未満、900nM未満もしくは約900nM未満、800nM未満もしくは約800nM未満、700nM未満もしくは約700nM未満、600nM未満もしくは約600nM未満、500nM未満もしくは約500nM未満、400nM未満もしくは約400nM未満、300nM未満もしくは約300nM未満、200nM未満もしくは約200nM未満、100nM未満もしくは約100nM未満、90nM未満もしくは約90nM未満、80nM未満もしくは約80nM未満、70nM未満もしくは約70nM未満、60nM未満もしくは約60nM未満、50nM未満もしくは約50nM未満、40nM未満もしくは約40nM未満、30nM未満もしくは約30nM未満、20nM未満もしくは約20nM未満、10nM未満もしくは約10nM未満、9nM未満もしくは約9nM未満、8nM未満もしくは約8nM未満、7nM未満もしくは約7nM未満、6nM未満もしくは約6nM未満、5nM未満もしくは約5nM未満、4nM未満もしくは約4nM未満、3nM未満もしくは約3nM未満、2nM未満もしくは約2nM未満、1nM未満もしくは約1nM未満、0.9nM未満もしくは約0.9nM未満、0.8nM未満もしくは約0.8nM未満、0.7nM未満もしくは約0.7nM未満、0.6nM未満もしくは約0.6nM未満、0.5nM未満もしくは約0.5nM未満、0.4nM未満もしくは約0.4nM未満、0.3nM未満もしくは約0.3nM未満、0.2nM未満もしくは約0.2nM未満、または0.1nM未満もしくは約0.1nM未満である。
【0187】
いくつかの態様では、IC50、Kdおよび/またはKiは、インビトロアッセイを使用して測定されるかまたは決定される。記載されるようなタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤の活性を評価または定量化または測定するためのアッセイは、当技術分野において公知である。そのようなアッセイは、インビトロで実施することができ、剤が特定の生物学的または生化学的機能を阻害する能力を評価するためのアッセイを含む。いくつかの態様では。いくつかの態様では、キナーゼ活性の試験を行うことができる。タンパク質チロシンキナーゼは、アデノシン三リン酸(ATP)からの末端リン酸基の、キナーゼ自体または別のタンパク質基質のチロシン残基のヒドロキシル基への転移を触媒する。いくつかの態様では、キナーゼ活性は、ATPの存在下でキナーゼを基質(例えば阻害剤)と共にインキュベートすることによって測定することができる。いくつかの態様では、特定のキナーゼによるリン酸化基質の測定は、比色検出、放射能検出および蛍光検出を含むいくつかのレポータシステムによって評価することができる(Johnson, S. A. & T. Hunter(2005)Nat. Methods 2:17)。いくつかの態様では、阻害剤は、競合リガンド結合アッセイを使用することなどによって、特定の1つまたは複数のキナーゼに対するその親和性について評価することができる(Ma et al., Expert Opin Drug Discov.2008 Jun;3(6):607-621)。これらのアッセイから、半数阻害濃度(IC50)を計算することができる。IC50は、生物学的または生化学的な応答または機能をその最大値の50%低下させる濃度である。キナーゼ活性試験などのいくつかの場合には、IC50は、標的キナーゼ活性を50%阻害するために必要とされる化合物の濃度である。いくつかの場合には、平衡解離定数(Kd)および/または阻害定数(Ki値)を付加的または代替的に決定することができる。IC50およびKdは、当技術分野において公知の多くの手段によって計算することができる。阻害定数(Ki値)は、Cheng-Prusoffの式:Ki=IC50/(1+L/Kd)に従ってIC50値およびKd値から計算することができ、式中、Lはキナーゼ阻害剤の濃度であるる:(Biochem Pharmacol 22:3099-3108,1973)。Kiは、リガンドまたは他の競合剤の非存在下で、存在する結合部位の50%の占有を生じさせる非標識阻害剤の濃度である。
【0188】
いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤は低分子である。
【0189】
いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤は、アクセス可能なシステイン残基を活性部位の近くに有するチロシンプロテインキナーゼの阻害剤である。いくつかの態様では、1つまたは複数のTECファミリーキナーゼのキナーゼ阻害剤は、タンパク質チロシンキナーゼ上のシステイン残基と共有結合を形成する。いくつかの態様では、システイン残基はCys 481残基である。いくつかの態様では、システイン残基はCys 442残基である。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤は、Cys 481に結合する不可逆的BTK阻害剤である。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤は、Cys 442に結合するITK阻害剤である。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤は、チロシンキナーゼの適切なシステイン残基と共有結合を形成するマイケルアクセプタ部分を含む。いくつかの態様では、マイケルアクセプタ部分は、アクセス可能な-SH部分も含有する他の生物学的分子と比較して、チロシンキナーゼタンパク質の適切なシステイン側鎖と優先的に結合する。
【0190】
いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤は、それぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる、国際公開公報第2002/0500071号、同第2005/070420号、同第2005/079791号、同第2007/076228号、同第2007/058832号、同第2004/016610号、同第2004/016611号、同第2004/016600号、同第2004/016615号、同第2005/026175号、同第2006/065946号、同第2007/027594号、同第2007/017455号、同第2008/025820号、同第2008/025821号、同第2008/025822号、同第2011/017219号、同第2011/090760号、同第2009/158571号、同第2009/051822号、同第2014/082085号、同第2014/093383号、同第2014/105958号、および同第2014/145403号に記載されているITK阻害剤化合物である。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤は、それぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許出願公開第20110281850号、同第2014/0256704号、同第20140315909号および同第20140303161号に記載されているITK阻害剤化合物である。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第8,759,358号に記載されているITK阻害剤化合物である。
【0191】
いくつかの態様では、BTK/ITK阻害剤などのキナーゼ阻害剤は、
から選択される構造を有する。
【0192】
BTKおよび/またはITKの例示的な阻害剤は当技術分野において公知である。いくつかの態様において、阻害剤は、Byrd et al., N Engl J Med. 2016; 374(4):323-32; Cho et al., J Immunol. 2015, doi:10.4049/jimmunol. 1501828; Zhong et.al., J. Biol. Chem., 2015,290(10): 5960-78; Hendriks et al., Nature, 2014, 14: 219-232; Akinleye et al., Journal of Hematology&Oncology 2013, 6: 59; Wang et al., ACS Med Chem Lett. 2012 Jul 26; 3(9): 705-9; Howard et al., J Med Chem.2009 Jan 22; 52(2): 379-88; Anastassiasdis et al., Nat Biotechnol. 2011 Oct 30; 29(11):1039-45; Davis, et al., Nat Biotechnol, 2011; 29: 1046-51; Bamborough et al., J Med Chem. 2008 Dec 25; 51(24):7898-914; Roth et al., J Med Chem. 2015; 58: 1053-63; Galkin et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 2007; 104: 270-5; Singh et al., J Med Chem.2012; 55:3614-43; Hall et al., J Med Chem. 2009 May 28; 52(10): 3191-204; Zhou et al., Nature. 2009 Dec 24; 462(7276): 1070-4; Zapf et al., J Med Chem. 2012; 55: 10047-63; Shi et al., Bioorg Med Chem Lett, 2014; 24:2206-11; Illig,et al., J Med Chem. 2011; 54:7860-83; および米国特許出願公開第20140371241号に記載されるような阻害剤である。
【0193】
BTK/ITK阻害剤などのキナーゼ阻害剤の非限定的な例には、イブルチニブ(PL-32765);PRN694;スペブルチニブ(CC-292またはAVL-292);PCI-45292;RN-486;化合物2c;AT9283;BML-275;ドビチニブ(TKI258);フォレチニブ(GSK1363089);Go6976;GSK-3阻害剤IX;GSK-3阻害剤XIII;ヘスペリジン;IDR E804;K-252a;レスタウルチニブ(CEP701);ニンテダニブ(BIBF 1120);NVP-TAE684;R406;SB218078;スタウロスポリン(AM-2282);スニチニブ(SU11248);Syk阻害剤;WZ3146;WZ4002;BDBM50399459(CHEMBL2179805);BDBM50399460(CHEMBL2179804);BDBM50399458(CHEMBL2179806);BDBM50399461(CHEMBL2179790);BDBM50012060(CHEMBL3263640);BDBM50355504(CHEMBL1908393);BDBM50355499(CHEMBL1908395::CHEMBL1908842)が含まれる。
【0194】
いくつかの態様では、BTK/ITK阻害剤などのキナーゼ阻害剤は、イブルチニブであるかまたはイブルチニブを含む。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤は、以下の構造:
またはそのエナンチオマーもしくはエナンチオマーの混合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、共結晶、包接化合物、もしくは多形体を有するか、またはこれを含む。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤はイブルチニブであり、以下の構造:
またはそのエナンチオマーもしくはエナンチオマーの混合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、共結晶、包接化合物、もしくは多形体を有するか、またはこれを含む。
【0195】
いくつかの態様では、阻害剤は、米国特許第2014/0371241号、同第2015/0140085号、同第2015/0238490号、同第2015/0352116号、同第2015/0361504号、同第2016/0022683号、同第2016/0022684号、同第2016/0038495号、同第2016/0038496号、同第2016/0287592号、同第2017/0002009号、同第2017/0079981号、同第2017/0128448号、同第2017/0209462号、同第2017/0226108号、同第2017/0226114号、同第2017/0305914号、同第2017/0360796号、同第2017/0368173号、同第2018/0009814号、同第2018/0028537号、同第2018/0051026号、同第2018/0071293号、同第2018/0071295号、同第2018/0072737号、同第7514444号、同第8008309号、同第8476284号、同第8497277号、同第8697711号、同第8703780号、同第8735403号、同第8754090号、同第8754091号、同第8957079号、同第8999999号、同第9125889号、同第9181257号、同第9296753号、同第9545407号、同第9655857号、同第9717731号、同第9725455号、同第9730938号、同第9751889号、および同第9884869号に記載されている阻害剤である。いくつかの態様では、阻害剤は、イブルチニブであるかまたはイブルチニブを含む。いくつかの局面では、阻害剤は、イブルチニブまたは1-[(3R)-3-[4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-イル]プロプ-2-エン-1-オン(1-[(3R)-3-[4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]-1-ピペリジニル]-2-プロペン-1-オン;1-[(3R)-3-[4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-イル]プロプ-2-エン-1-オン;1-((3R)-3-(4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ(3,4-d)ピリミジン-1-イル)-1-ピペリジニル)-2-プロペン-1-オン;936563-96-1;PCI-32765;IMBRUVICA;UNII-1X70OSD4VX;PCI32765;CRA-032765;1X70OSD4VX;もしくはCHEBI:76612としても知られる)であるかまたはこれを含む。いくつかの局面では、阻害剤は、1-[(3R)-3-[4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-イル]プロプ-2-エン-1-オン(1-[(3R)-3-[4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]-1-ピペリジニル]-2-プロペン-1-オン;1-[(3R)-3-[4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-イル]プロプ-2-エン-1-オン;1-((3R)-3-(4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ(3,4-d)ピリミジン-1-イル)-1-ピペリジニル)-2-プロペン-1-オン;936563-96-1;PCI-32765;IMBRUVICA;UNII-1X70OSD4VX;PCI32765;CRA-032765;1X70OSD4VX;またはCHEBI:76612としても知られる)であるかまたはこれを含む。
【0196】
いくつかの態様では、BTK/ITK阻害剤などのキナーゼ阻害剤、BTK/ITK阻害剤などのキナーゼ阻害剤は、1-[(3R)-3-[4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-イル]プロプ-2-エン-1-オンのエナンチオマーもしくはエナンチオマーの混合物、または1-[(3R)-3-[4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-イル]プロプ-2-エン-1-オンの薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、共結晶、包接化合物、または多形体である。いくつかの態様では、BTK/ITK阻害剤などのキナーゼ阻害剤は、1-[(3R)-3-[4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-イル]プロプ-2-エン-1-オンの溶媒和物である。いくつかの態様では、BTK/ITK阻害剤などのキナーゼ阻害剤は、1-[(3R)-3-[4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-イル]プロプ-2-エン-1-オンの水和物である。いくつかの態様では、BTK/ITK阻害剤などのキナーゼ阻害剤は、1-[(3R)-3-[4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-イル]プロプ-2-エン-1-オンの薬学的に許容されるセールである。いくつかの態様では、BTK/ITK阻害剤などのキナーゼ阻害剤は、1-[(3R)-3-[4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-イル]プロプ-2-エン-1-オンである。いくつかの態様では、化合物1は、式Iの構造を有する。特定の態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブは、固体である。特定の態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブは、水和される。特定の態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブは、溶媒和される。特定の態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブは、無水である。特定の態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブは、非吸湿性である。
【0197】
特定の態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブは、非晶質である。特定の態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブは、結晶性である。特定の態様では、固体キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブは、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第9,751,889号に記載されている結晶形態である。
【0198】
キナーゼ阻害剤の固体形態、例えばイブルチニブは、国際公開公報第2016/151438号、米国特許第9884869号、米国特許出願第2017/0226108号、国際公開公報第2016/151438号、同第2017/134684号、同第2015/145415号、同第2017/137446号、同第2016/088074号、同第2017/134684号、同第2015/145415号、同第2017/085628号、および同第2017/134588号の開示に記載されている方法または任意の1つまたは組み合わせた利用可能な方法に従って調製することができる。
【0199】
いくつかの態様では、本明細書で提供されるキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブは、1つのキラル中心を含み、エナンチオマーの混合物、例えばラセミ混合物として存在し得る。この開示は、そのような化合物の立体的に純粋な形態の使用、ならびにそれらの形態の混合物の使用を包含する。例えば、本明細書で提供されるキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの等量または不等量のエナンチオマーを含む混合物は、本明細書に開示される方法および組成物において使用され得る。これらの異性体は、キラルカラムまたはキラル分割剤などの標準的な技術を使用して、不斉的に合成または分割することができる。例えば、Wiley-Interscience, New York,1981); Wilen, S.H., et al, Tetrahedron 33:2725(1977); Eliel, E.L., Stereochemistry of Carbon Compounds(McGraw-Hill, NY, 1962);およびWilen, S.H., Tables of Resolving Agents and Optical Resolutions p.268(E L. Eliel, Ed., Univ. of Notre Dame Press, Notre Dame, IN,1972)参照。
【0200】
描かれている構造とその構造に与えられた名称との間に不一致がある場合、描かれている構造がより重視されることに留意すべきである。さらに、構造または構造の一部の立体化学が、例えば太線または破線で示されていない場合、構造または構造の一部は、構造のすべての立体異性体を包含すると解釈されるべきである。
【0201】
1. 組成物および製剤
本明細書で提供される併用療法の方法、組成物、組合せ、キットおよび使用のいくつかの態様では、併用療法は、1つまたは複数の組成物、例えばBTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤を含む薬学的組成物で投与することができる。
【0202】
いくつかの態様では、組成物、例えばBTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤を含む薬学的組成物は、BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤、および/または細胞と共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルなどの担体を含むことができる。適切な薬学的担体の例は、E. W. Martinによる「Remington's Pharmaceutical Sciences」に記載されている。そのような組成物は、患者への適切な投与のための形態を提供するために、適切な量の担体と共に、一般に精製された形態の、治療有効量のBTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤を含む。そのような薬学的担体は、滅菌液体、例えば水、ならびに石油、動物、植物または合成起源のものを含む油、例えば落花生油、ダイズ油、鉱油、およびゴマ油であり得る。生理食塩水ならびにデキストロースおよびグリセロール水溶液もまた、特に注射用溶液のための液体担体として使用することができる。薬学的組成物は、希釈剤、アジュバント、付着防止剤、結合剤、被覆剤、充填剤、香料、着色剤、潤滑剤、流動促進剤、防腐剤、界面活性剤、吸着剤、乳化剤、薬学的賦形剤、pH緩衝剤、または甘味料、およびそれらの組合せのいずれか1つまたは複数を含むことができる。いくつかの態様では、薬学的組成物は、液体、固体、凍結乾燥粉末、ゲル形態、および/またはそれらの組合せであり得る。いくつかの局面では、担体の選択は、一部には、特定の阻害剤および/または投与方法によって決定される。
【0203】
薬学的に許容される担体は、一般に、用いられる投与量および濃度でレシピエントに非毒性であり、以下のものが含まれるが、これらに限定されるわけではない:リン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチルもしくはベンジルアルコール、メチルもしくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノールおよびm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチンもしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンもしくはリジンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類、およびグルコース、マンノースもしくはデキストリンを含む他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロースもしくはソルビトールなどの糖類;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えばZn-タンパク質錯体);ならびに/またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン界面活性剤、安定剤ならびに/または防腐剤。BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤を含む組成物は、凍結乾燥することもできる。
【0204】
いくつかの態様では、薬学的組成物は、筋肉内、静脈内、皮内、病巣内、腹腔内注射、皮下、腫瘍内、硬膜外、経鼻、経口、膣内、直腸内、外用、局所、耳、吸入、口腔(例えば舌下)、および経皮投与または任意の経路を含む、当業者に公知の任意の経路による投与用に製剤化することができる。いくつかの態様では、他の投与様式もまた企図される。いくつかの態様では、投与は、ボーラス注入、注射、例えば静脈内または皮下注射、眼内注射、眼周囲注射、網膜下注射、硝子体内注射、経中隔注射、強膜下注射、脈絡膜内注射、前房内注射、結膜下注射、結膜下注射、テノン嚢下注射、眼球後注射、眼球周囲注射、または後傍強膜送達によって行われる。いくつかの態様では、投与は、非経口投与、肺内投与、および鼻腔内投与によって、および局所治療のために所望する場合は病巣内投与によって行われる。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下投与が含まれる。いくつかの態様では、所与の用量が単回ボーラス投与によって投与される。いくつかの態様では、所与の用量が、例えば3日以下の期間にわたる複数回のボーラス投与によって、または持続注入投与によって投与される。
【0205】
いくつかの態様では、投与は、治療の場所に応じて局所的、外用的または全身的であり得る。いくつかの態様では、治療を必要とする領域への局所投与は、例えば、限定されることなく、手術中の局所注入、例えば手術後の創傷包帯と組み合わせた局所適用によって、注射によって、カテーテルを用いて、坐剤を用いて、またはインプラントを用いて達成され得る。いくつかの態様では、組成物はまた、他の生物学的に活性な作用物質と共に、連続的に、間欠的に、または同じ組成物中で投与され得る。いくつかの態様では、投与はまた、放出制御製剤およびポンプなどによる装置制御放出を含む放出制御システムを含み得る。いくつかの態様では、投与は経口投与である。
【0206】
いくつかの態様では、BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤は、典型的には単位投与剤形または複数回投与剤形で製剤化および投与される。各単位用量は、必要な薬学的担体、ビヒクルまたは希釈剤と共に、所望の治療効果を生じさせるのに十分な所定量の治療的に活性なキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブを含む。いくつかの態様では、単位投与剤形には、適切な量のキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブを含む錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤、顆粒剤、滅菌非経口液剤または懸濁剤、および経口液剤または懸液濁剤、および油・水乳剤が含まれるが、これらに限定されるわけではない。単位投与剤形は、封入されたアンプルおよび注射器、または個別に包装された錠剤もしくはカプセル剤であり得る。単位投与剤形は、その分数単位または倍数単位で投与することができる。いくつかの態様では、複数回投与剤形は、分離された単位投与剤形で投与されるように単一の容器に包装された複数の同一の単位投与剤形である。複数回投与剤形の例には、バイアル、錠剤もしくはカプセル剤のボトルまたはパイントもしくはガロン入りのボトルが含まれる。
【0207】
2. 投薬
いくつかの態様では、提供される併用療法の方法は、治療有効量のBTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤の1つまたは複数の用量と、T細胞療法(例えばCAR発現T細胞)などの細胞療法とを対象に投与する工程を含む。いくつかの態様では、提供される併用療法の方法は、BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤の投与を、T細胞療法(例えばCAR発現T細胞)などの細胞療法の開始の前に、後に、その間に、その経過中に、同時に、ほぼ同時に、連続的に、同時におよび/または間欠的に開始する工程を含む。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブは、細胞療法(例えばCAR-T細胞療法などのT細胞療法)の投与期間の前、投与期間中、投与期間の経過中および/または投与期間後に規則的な間隔で、複数用量で投与される。いくつかの態様では、提供される態様は、T細胞療法の投与の前に、BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤の投与を開始し、T細胞療法の開始までまたはT細胞療法の投与の開始後も継続する工程を含む。
【0208】
いくつかの態様では、この方法は、T細胞療法の投与の前に、BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤を投与する工程を含む。いくつかの態様では、方法は、T細胞療法の投与後、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブを投与し続ける工程を含む。いくつかの態様では、方法は、T細胞療法の投与を開始する前に、BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤の投与を開始する工程を含む。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブは、リンパ球除去療法の間の中止または休止の後、例えばT細胞療法の開始後まで、さらに投与される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの継続的および/またはさらなる投与は、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの複数用量の投与を含む。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブは、T細胞療法の開始後はさらに投与されない、および/または継続されない。いくつかの態様では、投薬スケジュールは、T細胞療法の開始前および開始後に、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブを投与し続ける工程を含む。いくつかの態様では、投薬スケジュールは、T細胞療法の投与と同時にキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブを投与する工程を含む。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、ある期間にわたって、例えば決定された時点まで、または特定の転帰が達成されるまで、継続されるおよび/またはさらに投与される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、特定の期間または持続期間中、例えばリンパ球除去療法の間、中止または休止される。
【0209】
いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブは、複数の用量で複数回投与される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブは、ある期間にわたって、例えば決定された時点まで、または特定の転帰が達成されるまで、複数回投与される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブは、1回投与される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブは、細胞療法(例えばCAR-T細胞療法などのT細胞療法)の投与の開始前または開始後に、1日6回、1日5回、1日4回、1日3回、1日2回、1日1回、1日おきに、3日毎に、週に2回、週に1回、または月に1回投与される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブは、細胞療法(例えばCAR-T細胞療法などのT細胞療法)の投与期間の前、投与期間中、投与期間の経過中および/または投与期間後に規則的な間隔で、複数用量で投与される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブは、細胞療法(例えばCAR-T細胞療法などのT細胞療法)の投与前に規則的な間隔で、1つまたは複数の用量で投与される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブは、細胞療法(例えばCAR-T細胞療法などのT細胞療法)の投与後に規則的な間隔で、1つまたは複数の用量で投与される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの用量の1つまたは複数は、細胞療法(例えばCAR-T細胞療法などのT細胞療法)の用量の投与と同時に存在し得る。いくつかの態様では、そのような方法は、T細胞療法(例えばCAR発現T細胞)の投与(例えば投与の開始)の前に、投与と同時に、投与中に、投与の経過中に(経過中に1回および/または定期的にであることを含む)、および/または投与後に阻害剤を投与する工程を含み得る。いくつかの態様では、投与は、阻害剤および/または細胞療法、例えばT細胞療法の連続的または間欠的投与を含み得る。
【0210】
いくつかの態様では、BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤の投与の用量、頻度、期間、時期および/または順序は、スクリーニング段階の結果の特定の閾値もしくは基準および/または本明細書に記載される、例えば以下のIII章およびIV章に記載される治療転帰の評価に基づいて決定される。
【0211】
いくつかの態様では、方法は、治療有効量または1つもしくは複数の用量のキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブを以前に投与されたことがある対象に細胞療法を投与する工程を含む。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブは、組換え受容体を発現する細胞の用量を対象に投与する前に対象に投与される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの1つまたは複数の用量は、細胞の用量の投与の開始と同時に投与される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブは、細胞の用量の投与の開始後に投与される。いくつかの態様では、阻害剤は、併用療法の治療効果が増加するように、細胞療法より十分に前の時点で投与される。いくつかの態様では、この方法は、T細胞療法の投与の前に、BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤を投与する工程を含む。いくつかの態様では、方法は、T細胞療法の投与後に、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブを投与する工程を含む。いくつかの態様では、方法は、T細胞療法の投与を開始する前に、BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤の投与を開始する工程を含む。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブは、リンパ球除去療法の間の中止または休止の後、例えばT細胞療法の開始後まで、継続されるおよび/またはさらに投与される。いくつかの態様では、この方法は、BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤の投与を継続する工程を含む。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの継続的および/またはさらなる投与は、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの複数用量の投与を含む。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブは、T細胞療法の開始後は継続されないか、またはさらに投与されない。いくつかの態様では、投薬スケジュールは、T細胞療法の開始前および開始後にキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブを投与する工程を含む。いくつかの態様では、投薬スケジュールは、T細胞療法の投与と同時にキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブを投与する工程を含む。
【0212】
いくつかの局面では、方法は、例えば投与のためのT細胞療法を生成するために、対象からT細胞を含む試料を入手する3日前もしくは少なくとも約3日前または最低でも3日前もしくは最低でも約3日前に開始されるキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与を含む。いくつかの局面では、T細胞療法は、対象からT細胞を含む試料を入手し、本明細書、例えばII.B章に記載される任意の核酸分子などのCARをコードする核酸分子を、T細胞を含む組成物に導入する工程を含む処理によって生成される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブは、少なくとも対象から試料が得られるまでにわたる期間の投与を含む投薬レジメンで投与される。いくつかの局面では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、対象から試料を入手する3日前もしくは少なくとも約3日前または最低でも3日前もしくは最低でも約3日前に、例えば対象から試料を入手する少なくとも3日前、少なくとも4日前、少なくとも5日前、少なくとも6日前または少なくとも7日前に開始され、少なくとも試料が対象から得られるまでにわたる期間の投与を含む投薬レジメンで実施される。
【0213】
いくつかの態様では、方法および使用は、(1)癌を有する対象に、有効量のキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブ、またはその薬学的に許容される塩を投与する工程;および(2)疾患または障害に関連する抗原、例えば本明細書に記載されるいずれかに特異的に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現する遺伝子操作されたT細胞の用量を含む、自己T細胞療法を対象に投与する工程を含む。いくつかの局面では、T細胞療法は、対象からT細胞を含む試料を入手し、本明細書、例えばII.B章に記載される任意の核酸分子などのCARをコードする核酸分子を、T細胞を含む組成物に導入する工程を含む工程によって生成される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤の投与は、対象から試料を入手する3日前もしくは少なくとも約3日前または最低でも3日前もしくは最低でも約3日前に、例えば対象から試料を入手する少なくとも3日前、少なくとも4日前、少なくとも5日前、少なくとも6日前または少なくとも7日前に開始され、少なくとも試料が対象から得られるまでにわたる期間の投与を含む投薬レジメンで実施される。
【0214】
いくつかの局面では、提供される方法および使用は、癌を有する対象に、有効量のキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブ、またはその薬学的に許容される塩を投与する工程を含み、対象は、対象へのT細胞療法による治療の候補であるかまたは治療される予定である。いくつかの局面では、疾患または障害に関連する抗原、例えば本明細書に記載されるいずれかに特異的に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現する遺伝子操作されたT細胞の用量を含むT細胞療法。いくつかの局面では、T細胞療法は、対象からT細胞を含む試料を入手し、本明細書、例えばII.B章に記載される任意の核酸分子などのCARをコードする核酸分子を、T細胞を含む組成物に導入する工程を含む工程によって生成される。いくつかの局面では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、対象から試料を入手する3日前もしくは少なくとも約3日前または最低でも3日前もしくは最低でも約3日前に、例えば対象から試料を入手する少なくとも3日前、少なくとも4日前、少なくとも5日前、少なくとも6日前または少なくとも7日前に開始され、少なくとも試料が対象から得られるまでにわたる期間の投与を含む投薬レジメンで実施される。いくつかの局面では、方法および使用はまた、T細胞療法、例えばCARをコードする核酸分子が導入された対象から得られたT細胞を含む組成物を対象に投与する工程を含む。
【0215】
いくつかの態様では、方法および使用は、(1)癌を有する対象に、有効量のキナーゼ阻害剤、例えばBTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブ、またはその薬学的に許容される塩を投与する工程;(2)対象にリンパ球除去療法を投与する工程;および(3)対象に自己T細胞療法を投与する工程を含む。いくつかの局面では、T細胞療法は、疾患または障害に関連する抗原、例えば本明細書に記載されるいずれかに特異的に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現する遺伝子操作されたT細胞の用量を含む。いくつかの態様では、T細胞療法は、対象からT細胞を含む試料を入手し、本明細書、例えばII.B章に記載される任意の核酸分子などのCARをコードする核酸分子を、T細胞を含む組成物に導入する工程を含む処理によって生成される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、試料を入手する少なくとも3日前、例えば少なくとも3日前、少なくとも4日前、少なくとも5日前、少なくとも6日前または少なくとも7日前に開始され、リンパ球除去療法の開始までキナーゼ阻害剤を投与し、リンパ球除去療法中はキナーゼ阻害剤の投与を中止または休止し、およびT細胞療法の投与開始後少なくとも15日間、例えばT細胞療法の投与の開始後少なくともまたは少なくとも約15日、30日、60日、90日、120日、150日、または180日、またはそれ以上にわたる期間、キナーゼ阻害剤を再開するまたはさらに投与する工程を含む投薬レジメンで実施される。
【0216】
いくつかの局面では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、対象から試料を入手する3日前もしくは少なくとも約3日前、4日前もしくは少なくとも約4日前、5日前もしくは少なくとも約5日前、6日前もしくは少なくとも約6日前、最低でも7日前もしくは約7日前、14日前もしくは少なくとも14日前、またはそれ以上前に開始される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、対象から試料を入手する5日~7日前または少なくとも約5日~7日前に開始される。いくつかの局面では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、対象から試料を入手する最低でも3日前もしくは約3日前、最低でも4日前もしくは約4日前、最低でも5日前もしくは約5日前、最低でも6日前もしくは約6日前、最低でも7日前もしくは約7日前、最低でも14日前もしくは約14日前、またはそれ以上前に開始される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、対象から試料を入手する4日前もしくは少なくとも約4日前、5日前もしくは少なくとも約5日前、6日前もしくは少なくとも約6日前、最低でも7日前もしくは約7日前、14日前もしくは少なくとも14日前、またはそれ以上前に開始される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、対象から試料を入手する5日~7日前または少なくとも約5日~約7日前または最低でも5日~7日前または最低でも約5日~約7日前に開始される。
【0217】
いくつかの局面では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与の開始後、およびT細胞療法の投与の前に、対象は、リンパ球除去療法で前処置されている。いくつかの態様では、リンパ球除去療法は、本明細書、例えばI.C章に記載されるいずれかを含む。いくつかの局面では、方法および使用は、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与を開始した後、およびT細胞療法の投与の前に、対象にリンパ球除去療法を投与する工程を含む。方法および使用のいくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、リンパ球除去療法の間中止される。いくつかの局面では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブを投与するための投薬レジメンは、少なくともリンパ球除去療法の開始までにわたる期間の投与を含む。いくつかの局面では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブを投与するための投薬レジメンは、リンパ球除去療法の開始までキナーゼ阻害剤を投与し、リンパ球除去療法中はキナーゼ阻害剤の投与を中止し、およびT細胞療法の投与の開始後少なくとも15日間、例えばT細胞療法の投与の開始後少なくともまたは少なくとも約15日、30日、60日、90日、120日、150日、または180日、またはそれ以上にわたる期間、キナーゼ阻害剤を再開するおよび/またはさらに投与する工程を含む。
【0218】
いくつかの態様では、リンパ球除去療法の投与は、T細胞療法の投与の開始の2~7日前に、例えば投与の開始前約2日以内、約3日以内、約4日以内、約5日以内、約6日以内、または約7日以内に完了する。いくつかの態様では、リンパ球除去療法の投与は、T細胞療法の投与の開始前7日以内に完了する。
【0219】
いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブは、細胞療法(例えばCAR-T細胞療法などのT細胞療法)の投与の前および/または投与と同時に、および/または細胞療法の投与の開始後に投与される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、細胞療法の投与の開始の21日もしくは約21日から49日もしくは約49日前、例えば25日もしくは約25日から35日もしくは約35日前、28日もしくは約28日から35日もしくは約35日前、28日もしくは約28日から31日もしくは約31日前、またはT細胞療法の投与を開始する21、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、または49日前、もしくは約21、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、もしくは49日前に開始される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、T細胞療法の投与の開始の14または約14日から35日または約35日前に開始される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、T細胞療法の投与の開始の21日または約21日から35日または約35日前に開始される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、T細胞療法の投与の開始の21日または約21日から28日または約28日前に開始される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、T細胞療法の投与の開始の14日前もしくは約14日前、15日前もしくは約15日前、16日前もしくは約16日前、17日前もしくは約17日前、18日前もしくは約18日前、19日前もしくは約19日前、20日前もしくは約20日前、21日前もしくは約21日前、22日前もしくは約22日前、23日前もしくは約23日前、24日前もしくは約24日前、25日前もしくは約25日前、26日前もしくは約26日前、27日前もしくは約27日前、28日前もしくは約28日前、29日前もしくは約29日前、30日前もしくは約30日前、31日前もしくは約31日前、32日前もしくは約32日前、33日前もしくは約33日前、34日前もしくは約34日前、または35日前もしくは約35日前に開始される。
【0220】
いくつかの態様では、BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤は、細胞療法(例えばCAR-T細胞療法などのT細胞療法)の投与の開始前に少なくとも12日間または少なくとも約12日間、少なくとも14日間または少なくとも約14日間、少なくとも15日間または少なくとも約15日間、少なくとも21日間または少なくとも約21日間、少なくとも24日間または少なくとも約24日間、少なくとも28日間または少なくとも約28日間、少なくとも30日間または少なくとも約30日間、少なくとも35日間または少なくとも約35日間、少なくとも42日間または少なくとも約42日間、少なくとも49日間または少なくとも約49日間の持続期間または期間にわたって投与される。
【0221】
いくつかの態様では、提供される併用療法の方法におけるキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与の開始は、T細胞療法の投与の開始前、例えば対象から細胞操作のための試料を入手する前、例えば試料を入手する少なくともまたは少なくとも約3、4、5、6、7日前、またはそれ以上前である。いくつかの局面では、細胞操作のための試料は、T細胞療法のための組成物の生成または作製のために対象から得られる。いくつかの局面では、キメラ抗原受容体(CAR)、例えばCD19に特異的に結合するCARを発現する遺伝子操作されたT細胞の用量を含むT細胞療法は、対象からT細胞を含む試料を得る工程、およびCARをコードする核酸分子を、T細胞を含む組成物に導入する工程を含む処理によって生成される。いくつかの態様では、提供される併用療法の方法におけるキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与の開始は、対象から試料を入手する前に、例えば直前に、または少なくとも3日前もしくは少なくとも約3日前、少なくとも4日前もしくは少なくとも約4日前、少なくとも5日前もしくは少なくとも約5日前、少なくとも6日前もしくは少なくとも約6日前、少なくとも7日前もしくは少なくとも約7日前、またはそれ以上前に実施される。いくつかの態様では、提供される併用療法の方法におけるキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、T細胞療法の投与の開始後または投与の開始に続いて継続される。
【0222】
いくつかの実施形態では、対象から試料を得る工程は、全血試料、バフィーコート試料、末梢血単核細胞(PBMC)試料、未分画T細胞試料、リンパ球試料、白血球試料、アフェレーシス産物、または白血球アフェレーシス産物であるかまたはこれを含む試料を得る工程を含む。いくつかの局面では、CD4+および/またはCD8+T細胞などのT細胞は、対象由来の試料から得ることができる。いくつかの態様では、対象から試料を得る工程は、アフェレーシスまたは白血球アフェレーシスとも称される。いくつかの局面では、例えば本明細書、例えばII.B章に記載される任意の核酸分子などのCARをコードする核酸分子を、対象から得られた試料中のT細胞を含む組成物に導入することによって、対象からの試料の入手および/または細胞のその後の操作は、本明細書、例えばII.C章に記載されている工程に従って実施される。いくつかの態様では、試料は、T細胞療法の投与を開始する23日もしくは約23日から38日もしくは約38日前、例えば28日もしくは約28日から32日もしくは約32日前、または23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、もしくは38日前、または約23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、もしくは38日前に、対象から入手される。いくつかの態様では、T細胞療法の投与を開始する23日もしくは約23日から38日もしくは約38日前、例えば28日もしくは約28日から32日もしくは約32日前、または23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、もしくは38日前、または約23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、もしくは38日前のアフェレーシスまたは白血球アフェレーシス。
【0223】
いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、対象から試料を入手する3日前もしくは少なくとも約3日前および/または最低でも3日前もしくは最低でも約3日前に、例えば対象から試料を入手する(例えばアフェレーシスまたは白血球アフェレーシス)少なくともまたは少なくとも約3、4、5、6、または7日前、またはそれ以上前に開始される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、少なくとも対象から試料が得られるまでにわたる期間の投与を含む投薬レジメンで実施される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、T細胞療法の投与を開始する26日もしくは約26日から約45日前、例えば約28日~約35日前、または26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、もしくは45日前、または約26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、もしくは45日前に開始される。
【0224】
いくつかの態様では、BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤は、投薬レジメン中1日数回、1日2回、毎日、1日おきに、週3回、週2回、または週1回投与される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブは、毎日投与される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブは、1日2回投与される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブは、1日3回投与される。他の態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブは、1日おきに投与される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤の投与は、投薬レジメン中に投与される各日につき1日1回実施される。
【0225】
いくつかの態様では、有効量のキナーゼ阻害剤、例えばBTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブが投与される。いくつかの態様では、有効量のキナーゼ阻害剤、例えばBTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブは、キナーゼ阻害剤の複数の用量が投与される場合、各用量で投与される。いくつかの態様では、有効量のキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブは、単回投与として投与されるか、または2回分、3回分、4回分、5回分もしくは6回分の用量に分割された、本明細書に記載される投与量のいずれかを含む。いくつかの態様では、各用量は、1日数回、1日2回、毎日、1日おきに、週3回、週2回、または週1回投与される。いくつかの態様では、投与量は毎日投与される。
【0226】
いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブは、それぞれ両端の値を含む、25mg~2000mgもしくは約25mg~約2000mg、25mg~1000mgもしくは約25mg~約1000mg、25mg~500mgもしくは約25mg~約500mg、25mg~200mgもしくは約25mg~約200mg、25mg~100mgもしくは約25mg~約100mg、25mg~50mgもしくは約25mg~約50mg、50mg~2000mgもしくは約50mg~約2000mg、50mg~1000mgもしくは約50mg~約1000mg、50mg~500mgもしくは約50mg~約500mg、50mg~200mgもしくは約50mg~約200mg、50mg~100mgもしくは約50mg~約100mg、100mg~2000mgもしくは約100mg~約2000mg、100mg~1000mgもしくは約100mg~約1000mg、100mg~500mgもしくは約100mg~約500mg、100mg~200mgもしくは約100mg~約200mg、200mg~2000mgもしくは約200mg~約2000mg、200mg~1000mgもしくは約200mg~約1000mg、200mg~500mgもしくは約200mg~約500mg、500mg~2000mgもしくは約500mg~約2000mg、500mg~1000mgもしくは約500mg~約1000mg、1000mg~2000mgもしくは約1000mg~約2000mgの投与量で投与される。いくつかの態様では、投与量は、毎日投与される前記の投与量のいずれかを含み得る。
【0227】
いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブは、それぞれ両端の値を含む、50mg~560mgもしくは約50mg~約560mg、50mg~420mgもしくは約50mg~約420mg、50mg~400mgもしくは約50mg~約400mg、50mg~380mgもしくは約50mg~約380mg、50mg~360mgもしくは約50mg~約360mg、50mg~340mgもしくは約50mg~約340mg、50mg~320mgもしくは約50mg~約320mg、50mg~300mgもしくは約50mg~約300mg、50mg~280mgもしくは約50mg~約280mg、100mg~560mgもしくは約100mg~約560mg、100mg~420mgもしくは約100mg~約420mg、100mg~400mgもしくは約100mg~約400mg、100mg~380mgもしくは約100mg~約380mg、100mg~360mgもしくは約100mg~約360mg、100mg~340mgもしくは約100mg~約340mg、100mg~320mgもしくは約100mg~約320mg、100mg~300mgもしくは約100mg~約300mg、100mg~280mgもしくは約100mg~約280mg、100mg~200mgもしくは約100mg~約200mg、140mg~560mgもしくは約140mg~約560mg、140mg~420mgもしくは約140mg~約420mg、140mg~400mgもしくは約140mg~約400mg、140mg~380mgもしくは約140mg~約380mg、140mg~360mgもしくは約140mg~約360mg、140mg~340mgもしくは約140mg~約340mg、140mg~320mgもしくは約140mg~約320mg、140mg~300mgもしくは約140mg~約300mg、140mg~280mgもしくは約140mg~約280mg、140mg~200mgもしくは約140mg~約200mg、180mg~560mgもしくは約180mg~約560mg、180mg~420mgもしくは約180mg~約420mg、180mg~400mgもしくは約180mg~約400mg、180mg~380mgもしくは約180mg~約380mg、180mg~360mgもしくは約180mg~約360mg、180mg~340mgもしくは約180mg~約340mg、180mg~320mgもしくは約180mg~約320mg、180mg~300mgもしくは約180mg~約300mg、180mg~280mgもしくは約180mg~約280mg、200mg~560mgもしくは約200mg~約560mg、200mg~420mgもしくは約200mg~約420mg、200mg~400mgもしくは約200mg~約400mg、200mg~380mgもしくは約200mg~約380mg、200mg~360mgもしくは約200mg~約360mg、200mg~340mgもしくは約200mg~約340mg、200mg~320mgもしくは約200mg~約320mg、200mg~300mgもしくは約200mg~約300mg、200mg~280mgもしくは約200mg~約280mg、220mg~560mgもしくは約220mg~約560mg、220mg~420mgもしくは約220mg~約420mg、220mg~400mgもしくは約220mg~約400mg、220mg~380mgもしくは約220mg~約380mg、220mg~360mgもしくは約220mg~約360mg、220mg~340mgもしくは約220mg~約340mg、220mg~320mgもしくは約220mg~約320mg、220mg~300mgもしくは約220mg~約300mg、220mg~280mgもしくは約220mg~約280mg、240mg~560mgもしくは約240mg~約560mg、240mg~420mgもしくは約240mg~約420mg、240mg~400mgもしくは約240mg~約400mg、240mg~380mgもしくは約240mg~約380mg、240mg~360mgもしくは約240mg~約360mg、240mg~340mgもしくは約240mg~約340mg、240mg~320mgもしくは約240mg~約320mg、240mg~300mgもしくは約240mg~約300mg、240mg~280mgもしくは約240mg~約280mg、280mg~560mgもしくは約280mg~約560mg、280mg~420mgもしくは約280mg~約420mg、300mg~560mgもしくは約300mg~約560mg、300mg~420mgもしくは約300mg~約420mg、300mg~400mgもしくは約300mg~約400mgの投与量で投与される。いくつかの態様では、投与量は、毎日投与される前記の投与量のいずれかを含み得る。
【0228】
いくつかの態様では、BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤は、少なくともまたは少なくとも約50mg/日、100mg/日、140mg/日、150mg/日、175mg/日、200mg/日、250mg/日、280mg/日、300mg/日、350mg/日、400mg/日、420mg/日、440mg/日、460mg/日、480mg/日、500mg/日、520mg/日、540mg/日、560mg/日、580mg/日、600mg/日、700mg/日、750mg/日、800mg/日、850mg/日、または960mg/日の総1日投与量で投与される。いくつかの態様では、阻害剤は、420mg/日または約420mg/日の量で投与される。いくつかの態様では、阻害剤は、560mg/日未満または約560mg/日未満および少なくとも約140mg/日または少なくとも140mg/日の量で投与される。いくつかの態様では、阻害剤は、420mg/日未満または約420mg/日未満および少なくとも約280mg/日または少なくとも280mg/日の量で投与される。いくつかの態様では、阻害剤は、140mg/日もしくは約140mg/日または少なくとも140mg/日もしくは少なくとも約140mg/日、280mg/日もしくは約280mg/日または少なくとも280mg/日もしくは少なくとも約280mg/日、420mg/日もしくは約420mg/日または少なくとも420mg/日もしくは少なくとも約420mg/日、あるいは560mg/日もしくは約560mg/日または少なくとも560mg/日もしくは少なくとも約560mg/日の量で投与される。いくつかの態様では、阻害剤は、420mg/日もしくは約420mg/日または少なくとも420mg/日もしくは少なくとも約420mg/日、あるいは560mg/日もしくは約560mg/日または少なくとも560mg/日もしくは少なくとも約560mg/日の量で投与される。いくつかの態様では、阻害剤は、140mg/日以下、280mg/日以下、420mg/日以下、または560mg/日以下の量で投与される。いくつかの態様では、阻害剤は、420mg/日以下または560mg/日以下の量で投与される。いくつかの態様では、有効量は、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブが投与される各日につき140mgまたは約140mgから840mgまたは約840mgを含む。いくつかの態様では、有効量は、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブが投与される各日につき140mgまたは約140mgから560mgまたは約560mgを含む。
【0229】
いくつかの態様では、方法または使用は、(1)癌を有する対象に、BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を投与する工程、および(2)対象に自己T細胞療法を投与する工程を含む。いくつかの局面では、T細胞療法は、疾患または障害に関連する抗原、例えば本明細書に記載されるいずれかに特異的に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現する遺伝子操作されたT細胞の用量を含む。いくつかの態様では、T細胞療法は、対象からT細胞を含む試料を入手し、本明細書、例えばII.B章に記載される任意の核酸分子などのCARをコードする核酸分子を、T細胞を含む組成物に導入する工程を含む処理によって生成される。
【0230】
いくつかの局面では、キナーゼ阻害剤の投与は、対象から試料を入手する5日もしくは少なくとも約5日から7日前もしくは約7日前、例えば5、6、もしくは7日前または約5、6、もしくは7日前に開始され、少なくとも対象から試料が得られるまでキナーゼ阻害剤を投与し、T細胞療法の投与の開始後3ヶ月もしくは約3ヶ月もしくは3ヶ月超にわたるキナーゼ阻害剤の継続および/またはさらなる投与を含む投薬レジメンで実施される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブは、投薬レジメン中に投与される各日につき140mgまたは約140mgから560mgまたは約560mgの量で投与される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤の投与の開始後およびT細胞療法の投与の前に、対象はリンパ球除去療法で前処置されている。いくつかの態様では、方法は、キナーゼ阻害剤の投与後およびT細胞療法の投与前に、リンパ球除去療法を対象に投与する工程をさらに含む。いくつかの態様では、リンパ球除去療法の投与は、T細胞療法の投与の開始前7日以内に完了する。いくつかの態様では、リンパ球除去療法の投与は、T細胞療法の投与の開始前2日または約2日から7日または約7日、例えば7日または約7日で完了する。いくつかの態様では、投薬レジメンは、リンパ球除去療法中はキナーゼ阻害剤の投与を中止または休止する工程を含む。いくつかの態様では、投薬レジメンは、リンパ球除去療法の完了後にキナーゼ阻害剤を再開するか、またはさらに投与する工程を含む。
【0231】
いくつかの態様では、方法または使用は、(1)癌を有する対象に、BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を投与する工程、および(2)対象にリンパ球除去療法を投与する工程、および(3)リンパ球除去療法を完了した後、2~7日以内に対象に自己T細胞療法を投与する工程を含む。いくつかの局面では、T細胞療法は、疾患または障害に関連する抗原、例えば本明細書に記載されるいずれかに特異的に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現する遺伝子操作されたT細胞の用量を含む。いくつかの態様では、T細胞療法は、対象からT細胞を含む試料を入手し、本明細書、例えばII.B章に記載される任意の核酸分子などのCARをコードする核酸分子を、T細胞を含む組成物に導入する工程を含む処理によって生成される。いくつかの局面では、キナーゼ阻害剤の投与は、対象から試料を入手する5日~7日前または少なくとも約5日~約7日前、例えば7日前に開始され、リンパ球除去療法の開始までキナーゼ阻害剤を投与し、リンパ球除去療法中はキナーゼ阻害剤の投与を中止または休止し、およびT細胞療法の投与の開始後3ヶ月または3ヶ月超にわたる期間、キナーゼ阻害剤を再開するまたはさらに投与する工程を含む投薬レジメンで実施され、キナーゼ阻害剤は、投薬レジメン中に投与される各日につき140mgまたは約140mgから560mgまたは約560mgの量で1日1回投与される。いくつかの態様では、投与される各日当たりのキナーゼ阻害剤の投与は、280mgまたは約280mgから560mgまたは約560mgである。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤の投与は、対象から試料を入手する7日前または少なくとも約7日前に開始される。
【0232】
いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤の投与は、T細胞療法の投与を開始する30日もしくは約30日から約40日前に開始され、試料は、T細胞療法の投与を開始する23日もしくは約23日から約38日前に対象から入手され、および/またはリンパ球除去療法は、T細胞療法の投与を開始する5日~7日前もしくは約5日~約7日前、例えば7日前に完了する。
【0233】
いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤の投与は、T細胞療法の投与を開始する35日前もしくは約35日前に開始され、試料は、T細胞療法の投与を開始する28日もしくは約28日から約32日前に対象から入手され、および/またはリンパ球除去療法は、T細胞療法の投与を開始する約5日~約7日前、例えば7日前に完了する。
【0234】
TECファミリーキナーゼの阻害剤が細胞療法(例えばCAR-T細胞療法などのT細胞療法)の前に与えられるそのような態様のいくつかでは、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、細胞療法の開始までおよび/または細胞療法の開始後しばらくの間、規則的な間隔で継続する。
【0235】
そのような上記態様のいくつかでは、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブは、細胞療法(例えばCAR-T細胞療法などのT細胞療法)の投与の開始前および開始後に投与される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブは、細胞療法の投与後に投与されるか、または継続されるおよび/またはさらに投与される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブは、細胞療法(例えばT細胞療法)の投与の開始と同時に、または投与の開始後1時間、2時間、6時間、12時間、24時間、48時間、96時間、4日、5日、6日、または7日、14日、15日、21日、24日、28日、30日、36日、42日、60日、72日、90日、120日、180、210日、240日、270日、300日、330日、360日、もしくは720日以内に、または約1時間、2時間、6時間、12時間、24時間、48時間、96時間、4日、5日、6日、または7日、14日、15日、21日、24日、28日、30日、36日、42日、60日、72日、90日、120日、180、210日、240日、270日、300日、330日、360日、もしくは720日以内に、投与される。いくつかの態様では、提供される方法は、細胞療法の投与の開始後、例えばT細胞療法の開始後前記期間のいずれかの間、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの、規則的な間隔などでの継続的および/またはさらなる投与を含む。
【0236】
いくつかの態様では、BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤は、細胞療法(例えばCAR-T細胞療法などのT細胞療法)の投与後1日までもしくは約1日まで、2日までもしくは約2日まで、3日までもしくは約3日まで、4日までもしくは約4日まで、5日までもしくは約5日まで、6日までもしくは約6日まで、7日までもしくは約7日まで、12日までもしくは約12日まで、14日までもしくは約14日まで、21日までもしくは約21日まで、24日までもしくは約24日まで、28日までもしくは約28日まで、30日までもしくは約30日まで、35日までもしくは約35日まで、42日までもしくは約42日まで、60日までもしくは約60日まで、または90日までもしくは約90日まで、120日までもしくは約120日まで、180日までもしくは約180日まで、240日までもしくは約240日まで、360日までもしくは約360日まで、または720日までもしくは約720日まで、またはそれ以降までの間、継続されおよび/またはさらに投与され、例えば毎日投与される。いくつかの態様では、BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤は、細胞療法(例えばCAR-T細胞療法などのT細胞療法)の投与後1週間までもしくは約1週間まで、2週間までもしくは約2週間まで、3週間までもしくは約3週間まで、4週間までもしくは約4週間まで、1ヶ月までもしくは約1ヶ月まで、2ヶ月までもしくは約2ヶ月まで、3ヶ月までもしくは約3ヶ月まで、4ヶ月までもしくは約4ヶ月まで、5ヶ月までもしくは約5ヶ月まで、6ヶ月までもしくは約6ヶ月まで、7ヶ月までもしくは約7ヶ月まで、8ヶ月までもしくは約8ヶ月まで、9ヶ月までもしくは約9ヶ月まで、10ヶ月までもしくは約10ヶ月まで、11ヶ月までもしくは約11ヶ月まで、12ヶ月までもしくは約12ヶ月まで、1年までもしくは約1年まで、または2年までもしくは約2年まで、またはそれ以上までの間、継続されおよび/またはさらに投与され、例えば毎日投与される。いくつかの態様では、例えば、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの継続的および/またはさらなる投与のための期間は、T細胞療法の投与の開始後4ヶ月または約4ヶ月または4ヶ月超にわたる。いくつかの態様では、例えば、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの継続的な投与のための期間は、T細胞療法の投与の開始後5ヶ月または約5ヶ月または5ヶ月超にわたる。いくつかの態様では、例えば、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの継続的な投与のための期間は、T細胞療法の投与の開始後6ヶ月または約6ヶ月または6ヶ月超にわたる。
【0237】
いくつかの態様では、BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤を投与するための投薬レジメンは、T細胞療法の投与の開始後の期間実施される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、T細胞療法の投与の開始後1週間を超える期間にわたる。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、T細胞療法の投与の開始後約1ヶ月または少なくとも約1ヶ月の期間にわたる。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、T細胞療法の投与の開始後約2ヶ月または少なくとも約2ヶ月の期間にわたる。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、T細胞療法の投与の開始後約3ヶ月または少なくとも約3ヶ月の期間にわたる。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、T細胞療法の投与の開始後約4ヶ月または少なくとも約4ヶ月の期間にわたる。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、T細胞療法の投与の開始後約5ヶ月または少なくとも約5ヶ月の期間にわたる。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、T細胞療法の投与の開始後約6ヶ月または少なくとも約6ヶ月の期間にわたる。
【0238】
いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、少なくとも3ヶ月の期間にわたる。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、T細胞療法の投与開始後90日もしくは約90日、100日もしくは約100日、105日もしくは約105日、110日もしくは約110日、115日もしくは約115日、120日もしくは約120日、125日もしくは約125日、130日もしくは約130日、135日もしくは約135日、140日もしくは約140日、145日もしくは約145日、150日もしくは約150日、155日もしくは約155日、160日もしくは約160日、165日もしくは約165日、170日もしくは約170日、175日もしくは約175日、180日もしくは約180日、185日もしくは約185日、190日もしくは約190日、195日もしくは約195日、200日もしくは約200日、またはそれ以上の期間にわたる。
【0239】
いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、T細胞療法(例えばCAR T細胞療法)の投与の開始後90日もしくは約90日または3ヶ月もしくは約3ヶ月の期間にわたる。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、T細胞療法(例えばCAR T細胞療法)の投与の開始後120日もしくは約120日または4ヶ月もしくは約4ヶ月の期間にわたる。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、T細胞療法(例えばCAR T細胞療法)の投与の開始後150日もしくは約150日または5ヶ月もしくは約5ヶ月の期間にわたる。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、T細胞療法(例えばCAR T細胞療法)の投与の開始後180日もしくは約180日または6ヶ月もしくは約6ヶ月の期間にわたる。
【0240】
いくつかの局面では、BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤は、細胞療法の投与後180日までまたは約180日までの間投与され、例えば毎日投与される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの継続的および/またはさらなる投与は、T細胞療法の投与の開始後15日~29日にわたる期間である。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの継続的および/またはさらなる投与は、T細胞療法の投与の開始後3ヶ月または約3ヶ月または3ヶ月超にわたる期間である。
【0241】
いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、対象が、6ヶ月より前または約6ヶ月より前に、癌(例えばB細胞悪性腫瘍)の治療後に完全奏効(CR)を達成したか、または治療後に進行したかもしくは寛解の後に再発した場合、T細胞療法(例えばCAR T細胞療法)の投与の開始後の期間の終わり(例えば3ヶ月目もしくは約3ヶ月目、4ヶ月目もしくは約4ヶ月目、5ヶ月目もしくは約5ヶ月目、または6ヶ月目もしくは約6ヶ月目)に終了または停止される。いくつかの態様では、期間は、対象が期間の終了前の時点で完全奏効(CR)を達成した場合でも、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与がその期間継続される、固定された期間である。いくつかの態様では、対象は、最小残存病変(MRD)を伴うCRを有する。いくつかの態様では、対象は、MRD-であるCRを有する。
【0242】
いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、対象が治療後に部分奏効(PR)または安定疾患(SD)を示す場合、期間の終了後も継続され、例えばT細胞療法(例えばCAR T細胞)の投与の開始後3ヶ月もしくは約3ヶ月、4ヶ月もしくは約4ヶ月、5ヶ月もしくは約5ヶ月、または6ヶ月もしくは約6ヶ月より長く継続される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、T細胞療法(例えばCAR T細胞療法)の投与の開始後、6ヶ月を超えて継続される。いくつかの態様では、初期期間の終わりにPRまたはSDを示した対象について、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、対象が治療後に完全奏効(CR)を達成するまで、または癌(例えばNHL、例えばDLBCLなどのB細胞悪性腫瘍)が治療後に進行するかもしくは寛解の後に再発するまで継続される。
【0243】
いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブを投与する時点で、対象は、T細胞療法(例えばCAR T細胞)の投与後に重度の毒性を示さない。いくつかの態様では、B細胞悪性腫瘍は、再発性/難治性の悪性度の高いNHLまたはDLBCLなどのNHLである。いくつかの態様では、CAR発現T細胞などの細胞療法は、B細胞抗原に特異的に結合するキメラ抗原受容体を含む。いくつかの態様では、B細胞抗原はCD19である。
【0244】
いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブを投与する時点で、対象は、細胞療法の投与後に重度の毒性を示さない。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、対象が、期間の終了前またはほぼ終了前に、治療後に完全奏効(CR)を達成したか、または癌、例えばB細胞悪性腫瘍が治療後に進行したかもしくは寛解の後に再発した場合、終了または停止される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、対象が期間の終了前の時点で完全奏効(CR)を達成した場合でも、その期間中継続される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、T細胞療法の投与の開始後、対象が治療後に部分奏効(PR)または安定疾患(SD)を示す場合、初期期間の終了後も継続される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、対象が治療後に完全奏効(CR)を達成するまで、または癌、例えばB細胞悪性腫瘍が治療後に進行するかもしくは寛解の後に再発するまで繰り返される。いくつかの態様では、B細胞悪性腫瘍は、再発性/難治性の悪性度の高いNHLまたはDLBCLなどのNHLである。いくつかの態様では、CAR発現T細胞などのT細胞療法は、B細胞抗原に特異的に結合するキメラ抗原受容体を含む。いくつかの態様では、B細胞抗原はCD19である。
【0245】
いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、終了の特定の時点までの期間または持続期間中、T細胞療法(例えばCAR発現T細胞)などの細胞療法の開始後に(開始に続いて)継続および/もしくは再開されるまたはさらに投与される。終了の時点は、上記の任意の定義された時点、または特定の基準、結果もしくは転帰が観察もしくは達成された時点であり得る。
【0246】
いくつかの局面では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの継続的なおよび/またはさらなる投与は、期間の終わりに、対象が治療後に完全奏効(CR)を示す場合、期間の終わりに停止される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの継続的なおよび/またはさらなる投与は、期間の終わりに、治療後に癌が進行したかまたは寛解の後に再発した場合、期間の終わりに停止される。いくつかの態様では、期間は、3ヶ月~6ヶ月、または約3ヶ月~6ヶ月にわたる。いくつかの態様では、期間は、T細胞療法の投与の開始後3ヶ月または約3ヶ月にわたる。いくつかの態様では、対象が、3ヶ月より前または約3ヶ月より前に、治療後に完全奏効(CR)を達成したか、または治療後に癌が進行したかもしくは寛解の後に再発した場合、期間は、T細胞療法の投与の開始後3ヶ月または約3ヶ月にわたる。いくつかの態様では、対象が3ヶ月で完全奏効(CR)を達成した場合、期間は、T細胞療法の投与の開始後3ヶ月または約3ヶ月にわたる。いくつかの態様では、期間は、T細胞療法の投与の開始後6ヶ月または約6ヶ月にわたる。いくつかの態様では、対象が、6ヶ月より前または約6ヶ月より前に、治療後に完全奏効(CR)を達成したか、または治療後に癌が進行したかもしくは寛解の後に再発した場合、期間は、T細胞療法の投与の開始後6ヶ月または約6ヶ月にわたる。いくつかの態様では、対象が6ヶ月で完全奏効(CR)を達成した場合、期間は、T細胞療法の投与の開始後6ヶ月または約6ヶ月にわたる。いくつかの態様では、継続的なおよび/またはさらなる投与は、対象が期間の終了前の時点で完全奏効(CR)を達成した場合でも、その期間中継続される。いくつかの態様では、対象は、期間中および期間の終了前の時点で完全奏効(CR)を達成する。
【0247】
いくつかの態様では、方法および使用はまた、期間の終わりに対象が部分奏効(PR)または安定疾患(SD)を示す場合、期間の終了後の継続的なおよび/またはさらなる投与を含む。いくつかの態様では、継続的なおよび/またはさらなる投与は、6ヶ月または約6ヶ月で、対象が治療後に部分奏効(PR)または安定疾患(SD)を示す場合、6ヶ月を超えて継続される。いくつかの態様では、継続的なおよび/またはさらなる投与は、対象が治療後に完全奏効(CR)を達成するまで、または治療後に癌が進行するかもしくは寛解の後に再発するまで継続される。
【0248】
いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、T細胞療法の細胞のピークまたは最大レベルが対象の血液中で検出可能になるまで、または検出可能になった後、継続される。いくつかの場合には、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与の開始は、(i)T細胞療法の細胞のピークもしくは最大レベルが対象の血液中で検出可能である;(ii)血液中で検出可能になった後、血液中で検出可能なT細胞療法の細胞数は、検出できないかもしくは減少している、任意でT細胞療法の投与後の先行する時点と比較して減少している;(iii)血液中で検出可能なT細胞療法の細胞数が、T細胞療法の投与開始後の対象の血液中で検出可能なT細胞療法のピークもしくは最大細胞数の1.5倍もしくは1.5倍超、2.0倍もしくは2.0倍超、3.0倍もしくは3.0倍超、4.0倍もしくは4.0倍超、5.0倍もしくは5.0倍超、10倍もしくは10倍超またはそれ以上減少している;(iv)T細胞療法の細胞のピークまたは最大レベルが対象の血液中で検出可能になった後の時点で、対象の血液中で検出可能な細胞の数または検出可能な細胞に由来する細胞の数が、対象の血液中の全末梢血単核細胞(PBMC)の10%未満、5%未満、1%未満もしくは0.1%未満である;(v)対象が、T細胞療法による治療後に疾患の進行を示すおよび/もしくは寛解の後に再発した;ならびに/または(iv)対象が、細胞の投与前もしくは投与後、およびキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与の開始前の時点での腫瘍負荷と比較して、増加した腫瘍負荷を示す、時点後1週間目または1週間以内に、例えば1日以内、2日以内または3日以内に実施される。特定の局面では、提供される方法は、T細胞療法に対するピーク応答が観察されたが、応答、例えばT細胞の存在および/または腫瘍負荷の軽減が減少したかまたはもはや検出可能でない対象において、T細胞療法を増強、増加または強化するために実施される。
【0249】
いくつかの態様では、対象が最初にキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブを投与された時点、および/または投与開始後の任意のその後の時点で、対象は、重度のサイトカイン放出症候群(CRS)などの重度の毒性の徴候もしくは症状または重度の毒性を示さない。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、対象が重度のCRSの徴候もしくは症状を示さない、および/またはグレード3もしくはそれより高いCRS、例えば長期のグレード3のCRSまたはグレード4もしくはグレード5のCRSを示さない時点で行われる。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、対象が重度の神経毒性の徴候もしくは症状を示さない、および/またはグレード3もしくはそれより高い神経毒性、例えば長期のグレード3の神経毒性またはグレード4もしくはグレード5の神経毒性を示さない時点で行われる。いくつかの局面では、T細胞療法の投与の開始時点とキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与時点との間で、対象は、重度のCRSを示さず、および/またはグレード3もしくはそれより高いCRS、例えば長期のグレード3のCRSまたはグレード4もしくはグレード5のCRSを示さなかった。いくつかの場合には、T細胞療法の投与の開始時点とキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与時点との間で、対象は、重度の神経毒性を示さず、および/またはグレード3もしくはそれより高い神経毒性、例えば長期のグレード3の神経毒性またはグレード4もしくはグレード5の神経毒性を示さなかった。
【0250】
いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブは、経口投与後に、例えば経口投与後1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12時間以内に、または約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12時間以内に、10ng/mL~100ng/mLもしくは約10ng/mL~約100ng/mL、20ng/mL~100ng/mLもしくは約20ng/mL~約100ng/mL、30ng/mL~100ng/mLもしくは約30ng/mL~約100ng/mL、40ng/mL~100ng/mLもしくは約40ng/mL~約100ng/mL、50ng/mL~100ng/mLもしくは約50ng/mL~約100ng/mL、60ng/mL~100ng/mLもしくは約60ng/mL~約100ng/mL、70ng/mL~100ng/mLもしくは約70ng/mL~約100ng/mL、80ng/mL~100ng/mLもしくは約80ng/mL~約100ng/mL、90ng/mL~100ng/mLもしくは約90ng/mL~約100ng/mL、10ng/mL~80ng/mLもしくは約10ng/mL~約80ng/mL、20ng/mL~80ng/mLもしくは約20ng/mL~約80ng/mL、30ng/mL~80ng/mLもしくは約30ng/mL~約80ng/mL、40ng/mL~80ng/mLもしくは約40ng/mL~約80ng/mL、50ng/mL~80ng/mLもしくは約50ng/mL~約80ng/mL、60ng/mL~80ng/mLもしくは約60ng/mL~約80ng/mL、70ng/mL~80ng/mLもしくは約70ng/mL~約80ng/mL、10ng/mL~60ng/mLもしくは約10ng/mL~約60ng/mL、20ng/mL~60ng/mLもしくは約20ng/mL~約60ng/mL、30ng/mL~60ng/mLもしくは約30ng/mL~約60ng/mL、40ng/mL~60ng/mLもしくは約40ng/mL~約60ng/mL、50ng/mL~60ng/mLもしくは約50ng/mL~約60ng/mL、10ng/mL~40ng/mLもしくは約10ng/mL~約40ng/mL、20ng/mL~40ng/mLもしくは約20ng/mL~約40ng/mL、30ng/mL~40ng/mLもしくは約30ng/mL~約40ng/mLの範囲、例えば10ng/mLもしくは約10ng/mL、20ng/mLもしくは約20ng/mL、30ng/mLもしくは約30ng/mL、40ng/mLもしくは約40ng/mL、50ng/mLもしくは約50ng/mL、60ng/mLもしくは約60ng/mL、70ng/mLもしくは約70ng/mL、80ng/mLもしくは約80ng/mL、90ng/mLもしくは約90ng/mL、または100ng/mLもしくは約100ng/mLの血液中のキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの最大濃度(Cmax)を達成する量で投与される。いくつかの態様では、BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤は、約10ng/mLもしくは少なくとも約10ng/mL、約20ng/mLもしくは少なくとも約20ng/mL、約30ng/mLもしくは少なくとも約30ng/mL、約40ng/mLもしくは少なくとも約40ng/mL、約50ng/mLもしくは少なくとも約50ng/mL、約60ng/mLもしくは少なくとも約60ng/mL、約70ng/mLもしくは少なくとも約70ng/mL、約80ng/mLもしくは少なくとも約80ng/mL、約90ng/mLもしくは少なくとも約90ng/mL、または約100ng/mLもしくは少なくとも約100ng/mLの、血液中のキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブのCmaxを達成する量で投与される。いくつかの態様では、BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤は、Cmaxを少なくとも約30分間、または少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも7時間、少なくとも8時間、少なくとも9時間、少なくとも10時間、少なくとも11時間、または少なくとも12時間、その範囲に維持する量で投与される。
【0251】
いくつかの態様では、BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤の投与は、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブを、T細胞療法(例えばCAR T細胞療法)の投与の開始後約3ヶ月または3ヶ月超の期間(例えば3ヶ月もしくは約3ヶ月、4ヶ月もしくは約4ヶ月、5ヶ月もしくは約5ヶ月、または6ヶ月もしくは約6ヶ月の期間)、140mg~560mgまたは約140mg~約560mgの量で投与する工程を含む投薬レジメンで実施される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、細胞療法の投与開始後約14日~約35日(例えば約28日~約35日、例えば31日もしくは約31日、32日もしくは約32日、33日もしくは約33日、34日もしくは約34日、または35日もしくは約35日)超で開始される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブを投与する時点で、対象は、細胞療法の投与後に重度の毒性を示さない。いくつかの態様では、B細胞悪性腫瘍は、再発性/難治性の悪性度の高いNHLまたはDLBCLなどのNHLである。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、対象が、6ヶ月より前または約6ヶ月より前に、癌、例えばB細胞悪性腫瘍の治療後に完全奏効(CR)を達成したか、または治療後に進行したかもしくは寛解の後に再発した場合、T細胞療法の投与の開始後6ヶ月または約6ヶ月で終了または停止される。いくつかの態様では、対象が期間の終了前の時点で完全奏効(CR)を達成した場合でも、サイクリングレジメンは全期間にわたって継続される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、6ヶ月または約6ヶ月で、対象が治療後に部分奏効(PR)または安定疾患(SD)を示す場合、期間の終了後もさらに継続され、例えば細胞療法の投与の開始後6ヶ月を超えて継続される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、対象が治療後に完全奏効(CR)を達成するまで、または癌、例えばB細胞悪性腫瘍が治療後に進行するかまたは寛解の後に再発するまで継続される。いくつかの態様では、CAR発現T細胞などの細胞療法は、B細胞抗原に特異的に結合するキメラ抗原受容体を含む。いくつかの態様では、B細胞抗原はCD19である。
【0252】
いくつかの場合には、投薬レジメンは、いずれの時点でも、および/または1回もしくは複数回、中断することができる。いくつかの場合には、対象が、IV章に記載されているものなどの1つもしくは複数の有害事象、用量制限毒性(DLT)、好中球減少症もしくは発熱性好中球減少症、血小板減少症、サイトカイン放出症候群(CRS)および/または神経毒性(NT)を発症した場合、投薬レジメンは中断または変更される。いくつかの態様では、対象が、IV章に記載されているものなどの1つもしくは複数の有害事象、用量制限毒性(DLT)、好中球減少症もしくは発熱性好中球減少症、血小板減少症、サイトカイン放出症候群(CRS)および/または神経毒性(NT)を発症した後、週の特定の曜日に各投与当たりまたは1日当たりのキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの量が変更される。
【0253】
いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブは、7日、14日、21日、28日、35日、または42日のサイクルの間、毎日投与される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブは、7日、14日、21日、28日、35日、または42日のサイクルの間、1日2回投与される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブは、7日、14日、21日、28日、35日、または42日のサイクルの間、1日3回投与される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブは、7日、14日、21日、28日、35日、または42日のサイクルの間、1日おきに投与される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブは、複数のサイクル、例えば2回以上のサイクルで投与される。いくつかの局面では、各サイクルは、約7日、約14日、約21日、約28日、約35日、または約42日であり得るいくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、または24、またはそれ以上のサイクルの間、投与される。
【0254】
本明細書で提供される方法のいくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブ、および細胞療法(例えばCAR-T細胞療法などのT細胞療法)は、同時にまたはほぼ同時に投与される。
【0255】
いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブは、対象の体重kg当たり(mg/kg)、0.2mg/kgもしくは約0.2mg/kg~200mg/kg、0.2mg/kg~100mg/kg、0.2mg/kg~50mg/kg、0.2mg/kg~10mg/kg、0.2mg/kg~1.0mg/kg、1.0mg/kg~200mg/kg、1.0mg/kg~100mg/kg、1.0mg/kg~50mg/kg、1.0mg/kg~10mg/kg、10mg/kg~200mg/kg、10mg/kg~100mg/kg、10mg/kg~50mg/kg、50mg/kg~200mg/kg、50mg/kg~100mg/kg、または100mg/kg~200mg/kgの投与量で投与される。いくつかの態様では、阻害剤は、対象の体重1kg当たり(mg/kg)、約0.2mg/kg~50mg/kg、0.2mg/kg~25mg/kg、0.2mg/kg~10mg/kg、0.2mg/kg~5mg/kg、0.2mg/kg~1.0mg/kg、1.0mg/kg~50mg/kg、1.0mg/kg~25mg/kg、1.0mg/kg~10mg/kg、1.0mg/kg~5mg/kg、5mg/kg~50mg/kg、5mg/kg~25mg/kg、5mg/kg~10mg/kg、または10mg/kg~25mg/kgの用量で投与される。
【0256】
前述の態様のいずれかでは、イブルチニブは経口投与され得る。
【0257】
いくつかの態様では、1日投与量などの投与量は、1つまたは複数の分割用量、例えば2つ、3つ、もしくは4つの用量で、または単一の製剤で投与される。阻害剤は、単独で、薬学的に許容される担体の存在下で、または他の治療薬の存在下で投与され得る。
【0258】
当業者は、阻害剤のより高いまたはより低い投与量が、例えば特定の剤および投与経路に依存して使用され得ることを認識する。いくつかの態様では、阻害剤は、単独で、または化合物が1つもしくは複数の薬学的に許容される担体、賦形剤もしくは希釈剤と混合または混和されている薬学的組成物の形態で投与され得る。いくつかの態様では、阻害剤は、全身的に、または治療される器官もしくは組織に局所的に投与され得る。例示的な投与経路には、局所、注射(皮下、筋肉内、皮内、腹腔内、腫瘍内および静脈内など)、経口、舌下、直腸、経皮、鼻腔内、膣および吸入経路が含まれるが、これらに限定されるわけではない。いくつかの態様では、投与経路は、経口、非経口、直腸、鼻、局所もしくは眼経路であるか、または吸入による経路である。いくつかの態様では、阻害剤は経口投与される。いくつかの態様では、阻害剤は、カプセル剤、錠剤および散剤などの固体剤形、またはエリキシル剤、シロップ剤および懸濁液剤などの液体剤形で経口投与される。
【0259】
患者の疾患の改善が生じると、用量は、予防的治療または維持治療のために調整され得る。例えば、投与量または投与頻度またはその両方が、症状に応じて、所望の治療効果または予防効果が維持されるレベルに低減され得る。症状が適切なレベルまで緩和された場合、治療は中止され得る。しかしながら、症状が再発した場合、患者は、長期的なベースで断続的治療を必要とし得る。患者はまた、長期的なベースでの長期治療を必要とし得る。
【0260】
B. 細胞療法の投与
養子細胞療法のための細胞の投与方法は公知であり、提供される方法、組成物および製品に関連して使用され得る。例えば、養子T細胞療法の方法は、例えばGruenberg et alの米国特許出願公開第2003/0170238号; Rosenbergの米国特許第4,690,915号; Rosenberg(2011)Nat Rev Clin Oncol. 8(10): 577-85)に記載されている。例えば、Themeli et al.(2013)Nat Biotechnol. 31(10):928-933; Tsukahara et al.(2013)Biochem Biophys Res Commun 438(1): 84-9; Davila et al.(2013)PLoS ONE 8(4): e61338参照。
【0261】
いくつかの態様では、提供される方法で使用されるまたは提供される方法に関連して投与される細胞は、操作された受容体、例えばキメラ抗原受容体(CAR)などの操作された抗原受容体またはT細胞受容体(TCR)を含むか、または含むように操作されている。組成物の中には、養子細胞療法のためなどの、投与のための薬学的組成物および製剤がある。提供される方法に従って、および/または提供される製品もしくは組成物に従って、細胞および組成物を対象、例えば患者に投与するための治療方法も提供される。
【0262】
細胞は一般に、組換え受容体、例えば機能的非TCR抗原受容体を含む抗原受容体、例えばキメラ抗原受容体(CAR)、およびトランスジェニックT細胞受容体(TCR)などの他の抗原結合受容体を発現する。受容体の中には他のキメラ受容体もある。提供される方法で細胞療法として投与するための例示的な操作された細胞は、II章に記載されている。
【0263】
いくつかの態様では、細胞療法、例えば養子T細胞療法は、細胞が、細胞療法を受けることになっている対象から、またはそのような対象に由来する試料から単離されるおよび/またはさもなければ調製される、自家移植によって実施される。したがって、いくつかの局面では、細胞は、治療を必要とする対象、例えば患者に由来し、単離および処理後に同じ対象に投与される。
【0264】
いくつかの態様では、細胞療法、例えば養子T細胞療法は、細胞が、細胞療法を受けることになっているまたは最終的に細胞療法を受ける対象、例えば第1の対象以外の対象から単離されるおよび/またはさもなければ調製される、同種移植によって実施される。そのような態様では、細胞は、次いで、同じ種の異なる対象、例えば第2の対象に投与される。いくつかの態様では、第1の対象と第2の対象は遺伝的に同一である。いくつかの態様では、第1の対象と第2の対象は遺伝的に類似する。いくつかの態様では、第2の対象は、第1の対象と同じHLAクラスまたはスーパータイプを発現する。
【0265】
T細胞療法の細胞は、投与用に製剤化された組成物で、あるいは別々の投与用に製剤化された2つ以上の組成物(例えば2つの組成物)で投与することができる。細胞の用量(1つまたは複数)は、特定の数もしくは相対的な数の細胞もしくは操作された細胞、および/またはCD4対CD8 T細胞などの組成物内の2つまたはそれより多いサブタイプの定義された比率もしくは組成物を含み得る。。
【0266】
細胞は、任意の適切な手段、例えばボーラス注入によって、注射、例えば静脈内もしくは皮下注射、眼内注射、眼周囲注射、網膜下注射、硝子体内注射、経中隔注射、強膜下注射、脈絡膜内注射、前房内注射、結膜下注射、結膜下注射、テノン嚢下注射、眼球後注射、眼球周囲注射、または後傍強膜送達によって投与することができる。いくつかの態様では、それらは、非経口投与、肺内投与、および鼻腔内投与によって、ならびに局所治療のために所望する場合は、病巣内投与によって投与される。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下投与が含まれる。いくつかの態様では、細胞の単回ボーラス投与によって所与の用量が投与される。いくつかの態様では、所与の用量は、例えば3日以下の期間にわたる細胞の複数回ボーラス投与によって、または細胞の持続注入投与によって投与される。いくつかの態様では、細胞用量の投与または任意のさらなる療法、例えばリンパ球除去療法、介入療法および/または併用療法の投与は、外来患者送達によって実施される。
【0267】
疾患の治療のために、適切な投与量は、治療される疾患の種類、細胞または組換え受容体の種類、疾患の重症度および経過、過去の療法、対象の病歴および細胞に対する応答、ならびに主治医の裁量に依存し得る。組成物および細胞は、いくつかの態様では、一度にまたは一連の治療にわたって対象に適切に投与される。
【0268】
免疫除去(例えばリンパ球除去)療法で対象を前処置することは、いくつかの局面では、養子細胞療法(ACT)の効果を改善することができる。
【0269】
したがって、いくつかの態様では、方法は、細胞療法の開始前に、リンパ球除去剤または化学療法剤、例えばシクロホスファミド、フルダラビン、またはそれらの組合せなどの前処置剤を対象に投与する工程を含む。例えば、対象は、細胞療法の開始の少なくとも2日前に、例えば少なくとも3日前、少なくとも4日前、少なくとも5日前、少なくとも6日前、または少なくとも7日前に前処置剤を投与され得る。いくつかの態様では、対象は、細胞療法の開始前7日以内、例えば6日以内、5日以内、4日以内、3日以内、または2日以内に前処置剤を投与される。
【0270】
細胞の投与に続いて、いくつかの態様では操作された細胞集団の生物学的活性を、例えば多くの公知の方法のいずれかによって測定する。評価するパラメーターには、インビボでは、例えば画像化による、またはエクスビボでは、例えばELISAもしくはフローサイトメトリーによる、操作されたもしくは天然のT細胞または他の免疫細胞の抗原への特異的結合が含まれる。特定の態様では、操作された細胞が標的細胞を破壊する能力を、任意の適切な公知の方法を使用して、例えばKochenderfer et al., J. Immunotherapy, 32(7): 689-702(2009)、およびHerman et al. J. Immunological Methods, 285(1): 25-40(2004)に記載されている細胞毒性アッセイを使用して測定することができる。特定の態様では、細胞の生物学的活性は、CD107a、IFNγ、IL-2、およびTNFなどの1つまたは複数のサイトカインの発現および/または分泌を検定することによって測定される。いくつかの局面では、生物学的活性は、腫瘍負荷または腫瘍量の減少などの臨床転帰を評価することによって測定される。
【0271】
1. 組成物および製剤
いくつかの態様では、組換え抗原受容体、例えばCARまたはTCRで操作された細胞を含むT細胞療法などの細胞療法の細胞の用量は、薬学的組成物または製剤などの組成物または製剤として提供される。そのような組成物は、B細胞悪性腫瘍の治療などにおいて、提供される方法および/または提供される製品もしくは組成物に従って使用することができる。
【0272】
「薬学的製剤」という用語は、その中に含まれる有効成分の生物学的活性が有効であることを可能にするような形態であり、および製剤が投与される対象に対して許容できないほどに毒性であるさらなる成分を含まない調製物を示す。
【0273】
「薬学的に許容される担体」は、対象に対して非毒性である、有効成分以外の薬学的製剤中の成分を指す。薬学的に許容される担体には、緩衝剤、賦形剤、安定剤または防腐剤が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0274】
いくつかの態様では、操作されたT細胞(例えばCAR T細胞)などの細胞療法は、薬学的に許容される担体と共に製剤化される。いくつかの局面では、担体の選択は、一部には特定の細胞もしくは剤によって、および/または投与方法によって決定される。したがって、種々の適切な製剤が存在する。例えば、薬学的組成物は防腐剤を含み得る。適切な防腐剤としては、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウム、および塩化ベンザルコニウムが挙げられ得る。いくつかの局面では、2つまたはそれ以上の防腐剤の混合物が使用される。防腐剤またはその混合物は、典型的には全組成物の約0.0001重量%から約2重量%の量で存在する。担体は、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed.(1980)に記載されている。薬学的に許容される担体は一般に、用いられる投与量および濃度でレシピエントに非毒性であり、以下のものが含まれるが、これらに限定されるわけではない:リン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチルもしくはベンジルアルコール、メチルもしくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノールおよびm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチンもしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンもしくはリジンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類、およびグルコース、マンノースもしくはデキストリンを含む他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロースもしくはソルビトールなどの糖類;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えばZn-タンパク質錯体);ならびに/またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン界面活性剤。
【0275】
いくつかの局面では緩衝剤が組成物に含まれる。適切な緩衝剤としては、例えばクエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸、リン酸カリウム、ならびに他の様々な酸および塩が挙げられる。いくつかの局面では、2つまたはそれ以上の緩衝剤の混合物が使用される。緩衝剤またはその混合物は、典型的には全組成物の約0.001重量%から約4重量%の量で存在する。投与可能な薬学的組成物を調製するための方法は公知である。例示的な方法は、例えばRemington: The Science and Practice of Pharmacy, Lippincott Williams &Wilkins; 21st ed. (May 1,2005)においてより詳細に記載されている。
【0276】
製剤は水溶液を含み得る。製剤または組成物はまた、それぞれの活性が互いに悪影響を及ぼさない場合、細胞または剤で治療される特定の適応症、疾患、または状態に有用な複数の活性成分を含み得る。そのような活性成分は、意図される目的に有効な量で組み合わせて適切に存在する。したがって、いくつかの態様では、薬学的組成物は、化学療法剤、例えばアスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、シスプラチン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、メトトレキサート、パクリタキセル、リツキシマブ、ビンブラスチン、ビンクリスチンなどのような他の薬学的に活性な剤または薬物をさらに含む。
【0277】
いくつかの態様で薬学的組成物は、治療上有効な量または予防上有効な量などの、疾患または状態を治療するために有効な量の細胞を含有する。いくつかの態様で治療有効性は、治療対象の定期的な評価によってモニタリングされる。数日間またはそれ以上にわたる反復投与については、状態に応じて、疾患の症状の所望の抑制が起こるまで、治療が繰り返される。しかしながら、他の投与レジメンも有用であり得、決定され得る。所望の投与量は、組成物の単回ボーラス投与によって、組成物の複数回ボーラス投与によって、または組成物の持続注入投与によって送達することができる。
【0278】
細胞は、標準的な投与技術、製剤、および/または装置を用いて投与され得る。組成物の保存および投与のための、注射器およびバイアルなどの製剤および装置が提供される。細胞に関して、投与は自己由来または異種であり得る。例えば、免疫応答性細胞または前駆体は、一対象から得ることができ、同じ対象または異なる、適合性の対象に投与され得る。末梢血由来免疫応答性細胞またはそれらの子孫(例えばインビボ、エクスビボまたはインビトロ由来)は、カテーテル投与、全身注入、局所注入、静脈内注射、または非経口投与を含む局所注入によって投与することができる。治療用組成物(例えば遺伝子改変された免疫応答性細胞を含む薬学的組成物)を投与する場合、治療用組成物は一般に単位投与注射形態(溶液、懸濁液、エマルジョン)に製剤化される。
【0279】
製剤には、経口投与、静脈内投与、腹腔内投与、皮下投与、肺投与、経皮投与、筋肉内投与、鼻腔内投与、口腔投与、舌下投与、または坐剤投与用のものが含まれる。いくつかの態様では、剤または細胞集団は非経口投与される。本明細書で使用される「非経口」という用語は、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、直腸内投与、膣内投与、および腹腔内投与を含む。いくつかの態様では、剤または細胞集団は、静脈内、腹腔内、または皮下注射による末梢全身送達を用いて対象に投与される。
【0280】
いくつかの態様で組成物は、いくつかの局面では選択されたpHに緩衝され得る、滅菌液体製剤、例えば等張水溶液、懸濁液、エマルジョン、分散液、または粘性組成物として提供される。液体製剤は通常、ゲル、他の粘性組成物、および固体組成物よりも調製が容易である。さらに、液体組成物は、特に注射によって投与するのにいくぶんより便利である。他方で、粘性組成物は、特定の組織とのより長い接触期間を提供する適切な粘度範囲内に製剤化することができる。液体または粘性組成物は担体を含むことができ、担体は、例えば水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール)およびそれらの適切な混合物を含む溶媒または分散媒体であり得る。
【0281】
滅菌注射溶液は、適切な担体、希釈剤、または賦形剤、例えば滅菌水、生理食塩水、グルコース、デキストロースなどとの混合物などの溶媒中に細胞を組み込むことによって調製することができる。
【0282】
インビボ投与に使用される製剤は一般に無菌である。無菌性は、例えば滅菌濾過膜を通して濾過することによって容易に達成され得る。
【0283】
2. 投薬
いくつかの態様では、細胞の用量は、提供される方法に従って、および/または提供される製品もしくは組成物に従って対象に投与される。いくつかの態様では、用量のサイズまたはタイミングは、対象における特定の疾患または状態(例えば癌、例えばB細胞悪性腫瘍)に応じて決定される。いくつかの場合には、提供される説明を考慮して、特定の疾患の用量のサイズまたはタイミングは経験的に決定され得る。
【0284】
いくつかの態様では、細胞の用量は、2×105細胞/kgもしくは約2×105細胞/kgから2×106細胞/kgもしくは約2×106細胞/kg、例えば4×105細胞/kgもしくは約4×105細胞/kgから1×106細胞/kgもしくは約1×106細胞/kg、または6×105細胞/kgもしくは約6×105細胞/kgから8×105細胞/kgもしくは約8×105細胞/kgを含む。いくつかの態様では、細胞の用量は、対象の体重1キログラム当たり(細胞/kg)2×105以下の細胞(例えばCAR発現細胞などの抗原発現細胞)、例えば3×105細胞/kg以下もしくは約3×105細胞/kg、4×105細胞/kg以下もしくは約4×105細胞/kg以下、5×105細胞/kg以下もしくは約5×105細胞/kg以下、6×105細胞/kg以下もしくは約6×105細胞/kg以下、7×105細胞/kg以下もしくは約7×105細胞/kg以下、8×105細胞/kg以下もしくは約8×105細胞/kg以下、9×105細胞/kg以下もしくは約9×105細胞/kg以下、1×106細胞/kg以下もしくは約1×106細胞/kg以下、または2×106細胞/kg以下もしくは約2×106細胞/kg以下を含む。いくつかの態様では、細胞の用量は、対象の体重1キログラム当たり(細胞/kg)少なくとも2×105細胞/kg(例えばCAR発現細胞などの抗原発現細胞)もしくは少なくとも約2×105細胞/kgもしくは2×105細胞/kgもしくは約2×105細胞/kg、例えば少なくとも3×105細胞/kgもしくは少なくとも約3×105細胞/kgもしくは3×105細胞/kgもしくは約3×105細胞/kg、少なくとも4×105細胞/kgもしくは少なくとも約4×105細胞/kgもしくは4×105細胞/kgもしくは約4×105細胞/kg、少なくとも5×105細胞/kgもしくは少なくとも約5×105細胞/kgもしくは5×105細胞/kgもしくは約5×105細胞/kg、少なくとも6×105細胞/kgもしくは少なくとも約6×105細胞/kgもしくは6×105細胞/kgもしくは約6×105細胞/kg、少なくとも7×105細胞/kgもしくは少なくとも約7×105細胞/kgもしくは7×105細胞/kgもしくは約7×105細胞/kg、少なくとも8×105細胞/kgもしくは少なくとも約8×105細胞/kgもしくは8×105細胞/kgもしくは約8×105細胞/kg、少なくとも9×105細胞/kgもしくは少なくとも約9×105細胞/kgもしくは9×105細胞/kgもしくは約9×105細胞/kg、少なくとも1×106細胞/kgもしくは少なくとも約1×106細胞/kgもしくは1×106細胞/kgもしくは約1×106細胞/kg、または少なくとも2×106細胞/kgもしくは少なくとも約2×106細胞/kgもしくは2×106細胞/kgもしくは約2×106細胞/kgを含む。
【0285】
特定の態様では、細胞、または細胞のサブタイプの個々の集団は、100万個~1000億個もしくは約10万個~約1000億個の細胞の範囲で、および/または対象の体重1キログラム当たりその量の細胞で、例えば100万個~約500億個の細胞(例えば5百万個もしくは約5百万個の細胞、2500万個もしくは約2500万個の細胞、5億個もしくは約5億個の細胞、10億個もしくは約10億個の細胞、10億個もしくは約50億個の細胞、10億個もしくは約200億個の細胞、50億個もしくは約50億個の細胞、200億個もしくは約200億個の細胞、300億個もしくは約300億個の細胞、400億個もしくは約400億個の細胞、または前記値のいずれか2つによって定義される範囲)、100万個~500億個もしくは約100万個~約500億個の細胞(例えば100万個もしくは約500万個の細胞、2500万個もしくは約2500万個の細胞、5億個もしくは約5億個の細胞、10億個もしくは約10億個の細胞、50億個もしくは約50億個の細胞、200億個もしくは約200億個の細胞、300億個もしくは約300億個の細胞、400億個もしくは約400億個の細胞、または前記値のいずれか2つによって定義される範囲)、例えば1000万個~1000億個もしくは約1000万個~約1000億個の細胞(例えば2000万個もしくは約2000万個の細胞、3000万個もしくは約3000万個の細胞、4000万個もしくは約4000万個の細胞、6000万個もしくは約6000万個の細胞、7000万個もしくは約7000万個の細胞、8000万個もしくは約80000万個の細胞、9000万個もしくは約9000万個の細胞、100億個もしくは約100億個の細胞、250億個もしくは約250億個の細胞、500億個もしくは約500億個の細胞、750億個もしくは約750億個の細胞、900億個もしくは約900億個の細胞、または前記値のいずれか2つによって定義される範囲)の量で、およびいくつかの場合には、1億個の細胞~500億個の細胞もしくは約1億個の細胞~約500億個の細胞(例えば1億2000万個もしくは約1億2000万個の細胞、2億5000万個もしくは約2億5000万個の細胞、3億5000万個もしくは約3億5000万個の細胞、4億5000万個もしくは約4億5000万個の細胞、6億5000万個もしくは約6億5000万個の細胞、8億個もしくは約8億個の細胞、9億個もしくは約9億個の細胞、30億個もしくは約30億個の細胞、300億個もしくは約300億個の細胞、450億個もしくは約450億個の細胞)、またはこれらの範囲の間の任意の値および/または体重1キログラム当たりの任意の値の量で対象に投与される。投与量は、疾患もしくは障害および/または患者および/または他の治療に特有の属性に依存して異なり得る。
【0286】
いくつかの態様では、細胞の用量は、1×105~5×108もしくは約1×105~約5×108の総CAR発現T細胞、1×105~2.5×108もしくは約1×105~約2.5×108の総CAR発現T細胞、1×105~1×108もしくは約1×105~約1×108の総CAR発現T細胞、1×105~5×107もしくは約1×105~約5×107の総CAR発現T細胞、1×105~2.5×107もしくは約1×105~約2.5×107の総CAR発現T細胞、1×105~1×107もしくは約1×105~約1×107の総CAR発現T細胞、1×105~5×106もしくは約1×105~約5×106の総CAR発現T細胞、1×105~2.5×106もしくは約1×105~約2.5×106の総CAR発現T細胞、1×105~1×106もしくは約1×105~約1×106の総CAR発現T細胞、1×106~5×108もしくは約1×106~約5×108の総CAR発現T細胞、1×106~2.5×108もしくは約1×106~約2.5×108の総CAR発現T細胞、1×106~1×108もしくは約1×106~約1×108の総CAR発現T細胞、1×106~5×107もしくは約1×106~約5×107の総CAR発現T細胞、1×106~2.5×107もしくは約1×106~約2.5×107の総CAR発現T細胞、1×106~1×107もしくは約1×106~約1×107の総CAR発現T細胞、1×106~5×106もしくは約1×106~約5×106の総CAR発現T細胞、1×106~2.5×106もしくは約1×106~約2.5×106の総CAR発現T細胞、2.5×106~5×108もしくは約2.5×106~約5×108の総CAR発現T細胞、2.5×106~2.5×108もしくは約2.5×106~約2.5×108の総CAR発現T細胞、2.5×106~1×108もしくは約2.5×106~約1×108の総CAR発現T細胞、2.5×106~5×107もしくは約2.5×106~約5×107の総CAR発現T細胞、2.5×106~2.5×107もしくは約2.5×106~約2.5×107の総CAR発現T細胞、2.5×106~1×107もしくは約2.5×106~約1×107の総CAR発現T細胞、2.5×106~5×106もしくは約2.5×106~約5×106の総CAR発現T細胞、5×106~5×108もしくは約5×106~約5×108の総CAR発現T細胞、5×106~2.5×108もしくは約5×106~約2.5×108の総CAR発現T細胞、5×106~1×108もしくは約5×106~約1×108の総CAR発現T細胞、5×106~5×107もしくは約5×106~約5×107の総CAR発現T細胞、5×106~2.5×107もしくは約5×106~約2.5×107の総CAR発現T細胞、5×106~1×107もしくは約5×106~約1×107の総CAR発現T細胞、1×107~5×108もしくは約1×107~約5×108の総CAR発現T細胞、1×107~2.5×108もしくは約1×107~約2.5×108の総CAR発現T細胞、1×107~1×108もしくは約1×107~約1×108の総CAR発現T細胞、1×107~5×107もしくは約1×107~約5×107の総CAR発現T細胞、1×107~2.5×107もしくは約1×107~約2.5×107の総CAR発現T細胞、2.5×107~5×108もしくは約2.5×107~約5×108の総CAR発現T細胞、2.5×107~2.5×108もしくは約2.5×107~約2.5×108の総CAR発現T細胞、2.5×107~1×108もしくは約2.5×107~約1×108の総CAR発現T細胞、2.5×107~5×107もしくは約2.5×107~約5×107の総CAR発現T細胞、5×107~5×108もしくは約5×107~約5×108の総CAR発現T細胞、5×107~2.5×108もしくは約5×107~約2.5×108の総CAR発現T細胞、5×107~1×108もしくは約5×107~約1×108の総CAR発現T細胞、1×108~5×108もしくは約1×108~約5×108の総CAR発現T細胞、1×108~2.5×108もしくは約1×108~約2.5×108の総CAR発現T細胞、2.5×108~5×108もしくは約2.5×108~約5×108の総CAR発現T細胞を含む。
【0287】
いくつかの態様では、細胞の用量は、少なくとも1×105もしくは少なくとも約1×105のCAR発現細胞、少なくとも2.5×105もしくは少なくとも約2.5×105のCAR発現細胞、少なくとも5×105もしくは少なくとも約5×105のCAR発現細胞、少なくとも1×106もしくは少なくとも約1×106のCAR発現細胞、少なくとも2.5×106もしくは少なくとも約2.5×106のCAR発現細胞、少なくとも5×106もしくは少なくとも約5×106のCAR発現細胞、少なくとも1×107もしくは少なくとも約1×107のCAR発現細胞、少なくとも2.5×107もしくは少なくとも約2.5×107のCAR発現細胞、少なくとも5×107もしくは少なくとも約5×107のCAR発現細胞、少なくとも1×108もしくは少なくとも約1×108のCAR発現細胞、少なくとも2.5×108もしくは少なくとも約2.5×108のCAR発現細胞、または少なくとも5×108もしくは少なくとも約5×108のCAR発現細胞を含む。
【0288】
いくつかの態様では、細胞の用量は、細胞の用量が対象の体表面積または体重にしばられないまたは基づかないように、細胞の均一な用量または細胞の固定された用量である。
【0289】
いくつかの態様では、例えば対象がヒトである場合、用量は、5×108未満もしくは約5×108未満の総組換え受容体(例えばCAR)発現細胞、T細胞、または末梢血単核細胞(PBMC)、例えば1×106~5×108もしくは約1×106~約5×108の範囲のそのような細胞、例えば2×106もしくは約2×106、5×106もしくは約5×106、1×107もしくは約1×107、5×107もしくは約5×107、1×108もしくは約1×108、2×108もしくは約2×108、3×108もしくは約3×108、4×108もしくは約4×108、5×108もしくは約5×108のそのような総細胞、または前記値のいずれか2つの間の範囲のそのような細胞を含む。いくつかの態様では、対象がヒトである場合、用量は、1×106~3×108もしくは約1×106~約3×108の総組換え受容体(例えばCAR)発現細胞、例えば1×107~2×108もしくは約1×107~約2×108の範囲のそのような細胞、例えば1×107もしくは約1×107、5×107もしくは約5×107、1×108もしくは約1×108、または1.5×108もしくは約1.5×108のそのような総細胞、または前記値のいずれか2つの間の範囲のそのような総細胞を含む。いくつかの態様では、患者は複数用量を投与され、それぞれの用量または総用量は、前記値のいずれかの範囲内であり得る。いくつかの態様では、細胞の用量は、それぞれ両端の値を含む、1×105~5×108もしくは約1×105~約5×108の総組換え受容体(例えばCAR)発現T細胞もしくは総T細胞、1×105~1×108もしくは約1×105~約1×108の総組換え受容体(例えばCAR)発現T細胞もしくは総T細胞、5×105~1×107もしくは約5×105~約1×107の総組換え受容体(例えばCAR)発現T細胞もしくは総T細胞、または1×106~1×107もしくは約1×106~約1×107の総組換え受容体(例えばCAR)発現T細胞もしくは総T細胞の投与を含む。
【0290】
いくつかの態様では、用量のT細胞は、CD4+T細胞、CD8+T細胞、またはCD4+およびCD8+T細胞を含む。
【0291】
いくつかの態様では、例えば、対象がヒトである場合、CD4+およびCD8+T細胞を含む用量中を含む、用量のCD8+T細胞は、1×106~1×108もしくは約1×106~約1×108の総組換え受容体(例えばCAR)発現CD8+細胞、例えば5×106~1×108もしくは約5×106~約1×108のそのような細胞、例えば1×107もしくは約1×107のそのような細胞、2.5×107もしくは約2.5×107、5×107もしくは約5×107、7.5×107もしくは約7.5×107、1×108もしくは約1×108、または1.5×108もしくは約1.5×108、または5×108もしくは約5×108のそのような総細胞、または前記値のいずれか2つの間の範囲のそのような細胞を含む。いくつかの態様では、患者は複数用量を投与され、それぞれの用量または総用量は、前記値のいずれかの範囲内であり得る。いくつかの態様では、細胞の用量は、それぞれ両端の値を含む、1×107~0.75×108または約1×107~約0.75×108の総組換え受容体発現CD8+T細胞、1×107~2.5×107または約1×107~約2.5×107の総組換え受容体発現CD8+T細胞、1×107~0.75×108または約1×107~約0.75×108の総組換え受容体発現CD8+T細胞の投与を含む。いくつかの態様では、細胞の用量は、1×107もしくは約1×107、2.5×107もしくは約2.5×107、5×107もしくは約5×107、7.5×107もしくは約7.5×107、1×108もしくは約1×108、1.5×108もしくは約1.5×108、または5×108もしくは約5×108の総組換え受容体発現CD8+T細胞の投与を含む。
【0292】
いくつかの態様では、例えば、対象がヒトである場合、CD4+およびCD8+T細胞を含む用量中を含む、用量のCD4+T細胞は、1×106~1×108もしくは約1×106~約1×108の総組換え受容体(例えばCAR)発現CD4+細胞、例えば5×106~1×108もしくは約5×106~約1×108のそのような細胞、例えば1×107もしくは約1×107、2.5×107もしくは約2.5×107、5×107もしくは約5×107、7.5×107もしくは約7.5×107、1×108もしくは約1×108、1.5×108もしくは約1.5×108、または5×108もしくは約5×108のそのような総細胞、または前記値のいずれか2つの間の範囲のそのような細胞を含む。いくつかの態様では、患者は複数用量を投与され、それぞれの用量または総用量は、前記値のいずれかの範囲内であり得る。いくつかの態様では、細胞の用量は、それぞれ両端の値を含む、1×107~0.75×108または約1×107~約0.75×108の総組換え受容体発現CD4+T細胞、1×107~2.5×107または約1×107~約2.5×107の総組換え受容体発現CD4+T細胞、1×107~0.75×108または約1×107~約0.75×108の総組換え受容体発現CD4+T細胞の投与を含む。いくつかの態様では、細胞の用量は、1×107もしくは約1×107、2.5×107もしくは約2.5×107、5×107もしくは約5×107、7.5×107もしくは約7.5×107、1×108もしくは約1×108、1.5×108もしくは約1.5×108、または5×108もしくは約5×108の総組換え受容体発現CD4+T細胞の投与を含む。
【0293】
いくつかの態様では、細胞、例えば組換え受容体発現T細胞)の用量は、単一用量として対象に投与されるか、または2週間、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年もしくはそれ以上の期間内に1回だけ投与される。
【0294】
養子細胞療法の文脈において、所与の「用量」の投与は、単一組成物としての所与の量または数の細胞の投与、および/または単一の中断されない投与、例えば単回注射もしくは持続注入としての所与の量または数の細胞の投与を包含し、また、3日以下などの指定される期間にわたって複数の個別の組成物または注入で提供される、分割用量としてまたは複数の組成物としての所与の量または数の細胞の投与も包含する。したがって、いくつかの状況では、用量は、ある1つの時点で与えられるかまたは開始される、指定される数の細胞の単回投与または連続投与である。しかしながら、いくつかの状況では、用量は、3日間もしくは2日間の1日1回などの3日以下の期間にわたる複数回の注射もしくは注入で、または1日の期間にわたる複数回の注入によって投与される。
【0295】
したがって、いくつかの局面では、用量の細胞は単一の薬学的組成物で投与される。いくつかの態様では、用量の細胞は、用量の細胞を集合的に含む複数の組成物で投与される。
【0296】
「分割用量」という用語は、1日を超えて投与されるように分割されている用量を指す。この種の投与は本発明の方法に包含され、単一用量であると見なされる。
【0297】
したがって、細胞の用量は、分割用量として、例えば経時的に投与される分割用量として投与され得る。例えば、いくつかの態様では、用量は、2日間または3日間にわたって対象に投与され得る。分割投与のための例示的な方法は、1日目に用量の25%を投与し、2日目に用量の残りの75%を投与する工程を含む。他の態様では、1日目に用量の33%を投与し、2日目に残りの67%を投与し得る。いくつかの局面では、1日目に用量の10%を投与し、2日目に用量の30%を投与し、3日目に用量の60%を投与する。いくつかの態様では、分割用量は3日間を超えない。
【0298】
いくつかの態様では、用量の細胞は、それぞれが用量の一部の細胞を含む、第1および第2、任意でそれ以上などの、複数の組成物または溶液の投与によって投与され得る。いくつかの局面では、それぞれが細胞の異なる集団および/またはサブタイプを含む複数の組成物は、別々にまたは独立して、任意で特定の期間内に投与される。例えば、細胞の集団またはサブタイプは、それぞれCD8およびCD4T細胞、ならびに/またはそれぞれCD8+および/またはCD4+に富む集団、例えばそれぞれ個別に組換え受容体を発現するように遺伝子操作された細胞を含むCD4+および/またはCD8+T細胞を含み得る。いくつかの態様では、用量の投与は、用量のCD8+T細胞または用量のCD4+T細胞を含む第1の組成物の投与、ならびに用量のCD4+T細胞およびCD8+T細胞の他方を含む第2の組成物の投与を含む。
【0299】
いくつかの態様では、組成物または用量の投与、例えば複数の細胞組成物の投与は、細胞組成物を別々に投与することを含む。いくつかの局面では、別々の投与は、同時に、または任意の順序で連続的に行われる。いくつかの態様では、用量は、第1の組成物と第2の組成物を含み、第1の組成物と第2の組成物は、0~12時間もしくは約0~約12時間の間隔で、0~6時間もしくは約0~約6時間の間隔で、または0~2時間もしくは約0~約2時間の間隔で投与される。いくつかの態様では、第1の組成物の投与開始と第2の組成物の投与開始は、2時間以内もしくは約2時間以内、1時間以内もしくは約1時間以内、または30分以内もしくは約30分以内、15分以内もしくは約15分以内、10分以内もしくは約10分以内、または5分以内もしくは約5分以内の間隔で行われる。いくつかの態様では、第1の組成物の投与の開始および/または完了ならびに第2の組成物の投与の完了および/または開始は、2時間以内もしくは約2時間以内、1時間以内もしくは約1時間以内、または30分以内もしくは約30分以内、15分以内もしくは約15分以内、10分以内もしくは約10分以内、または5分以内もしくは約5分以内の間隔で行われる。
【0300】
いくつかの態様では、第1の組成物と第2の組成物は、対象への投与の前に混合される。いくつかの態様では、第1の組成物と第2の組成物は、投与の少し前に(例えば6時間以内もしくは約6時間以内、5時間以内もしくは約5時間以内、4時間以内もしくは約4時間以内、3時間以内もしくは約3時間以内、2時間以内もしくは約2時間以内、1.5時間以内もしくは約1.5時間以内、1時間以内もしくは約1時間以内、または0.5時間以内もしくは約0.5時間以内に)混合される。いくつかの態様では、第1の組成物と第2の組成物は、投与の直前に混合される。
【0301】
いくつかの組成物では、第一の組成物、例えば前記用量の第一の組成物はCD4+T細胞を含む。いくつかの組成物では、第一の組成物、例えば前記用量の第一の組成物はCD8+T細胞を含む。いくつかの態様では、第一の組成物は第二の組成物の前に投与される。
【0302】
いくつかの態様では、細胞の用量または組成物は、組換え受容体を発現するCD4+細胞対組換え受容体を発現するCD8+細胞、および/またはCD4+細胞対CD8+細胞の定義された比率または標的比率を含み、この比率は、任意で約1:1であるか、または約1:3~約3:1、例えば約1:1である。いくつかの局面では、異なる細胞集団の標的または所望の比率(例えばCD4+:CD8+比またはCAR+CD4+:CAR+CD8+比、例えば1:1)を有する組成物または用量の投与は、一方の集団を含む細胞組成物の投与、次いで他方の集団を含む別の細胞組成物の投与を含み、投与は標的または所望の比率またはそれに近い比率においてである。いくつかの局面において、定義された比率での細胞の用量または組成物の投与により、T細胞療法の改善された拡大、持続性および/または抗腫瘍活性がもたらされる。
【0303】
いくつかの態様において、対象は、細胞の多数の用量、例えば、2つ以上の用量または多数の連続する用量を受ける。いくつかの態様において、2つの用量が対象に投与される。いくつかの態様において、対象は、連続する用量、例えば、2回目の用量を、最初の用量のおよそ4日後に、5日後に、6日後に、7日後に、8日後に、9日後に、10日後に、11日後に、12日後に、13日後に、14日後に、15日後に、16日後に、17日後に、18日後に、19日後に、20日後に、または21日後に受ける。いくつかの態様において、多数の連続する用量が最初の用量の後で投与され、その結果、さらなる1つまたは複数の用量が、前記連続する用量の投与の後で投与されるようにされる。いくつかの局面において、さらなる用量で対象に投与される細胞の数は、最初の用量および/または連続する用量と同じであり、あるいは類似している。いくつかの態様において、前記さらなる1つまたは複数の用量は以前の用量よりも大きい。
【0304】
いくつかの局面において、最初の用量および/または連続する用量の大きさが、1つまたは複数の基準に基づいて、例えば、先行処置(例えば、化学療法)に対する対象の応答、対象における疾患負荷(例えば、腫瘍の量、嵩、大きさ、または転移の程度、範囲、もしくはタイプなど)、病期、ならびに/あるいは対象が毒性転帰(例えば、CRS、マクロファージ活性化症候群、腫瘍崩壊症候群、神経毒性、ならびに/あるいは細胞および/または組換え受容体が投与されることに対する宿主免疫応答)を発達させる可能性または発生頻度などに基づいて決定される。
【0305】
いくつかの局面において、最初の用量の投与と、連続する用量の投与との間の期間が、約9日~約35日、約14日~約28日、または15日~27日である。いくつかの態様において、連続する用量の投与が、最初の用量を投与した後の約14日超で、約28日未満である時点においてである。いくつかの局面において、最初の用量と、連続する用量との間の期間が、約21日である。いくつかの態様において、さらなる1つまたは複数の用量(例えば、連続する用量)が、連続する用量を投与した後で投与される。いくつかの局面において、さらなる連続する1つまたは複数の用量は、以前の用量を投与した後の少なくとも約14日で、かつ約28日未満で投与される。いくつかの態様において、さらなる用量は、以前の用量の後の約14日未満で投与され、例えば、以前の投与の4日後に、5日後に、6日後に、7日後に、8日後に、9日後に、10日後に、11日後に、12日後に、または13日後に投与される。いくつかの態様において、用量は前回用量の後の約14日未満で投与されず、および/または、用量は前回用量の後の約28日を超えて投与されない。
【0306】
いくつかの態様において、細胞(例えば、組換え受容体発現細胞)の用量は、T細胞の最初の用量と、T細胞の1つの連続する用量とを含む2つの用量(例えば、2回分の用量)を含み、この場合、最初の用量および2回目の用量の一方または両方がT細胞の分割用量の投与を含む。
【0307】
いくつかの態様では、細胞の用量は一般に、疾患負荷を軽減するうえで有効であるのに十分な量である。
【0308】
いくつかの態様では、細胞は所望の投与量で投与され、これは、いくつかの局面では所望の用量もしくは数の細胞もしくは細胞型(複数可)および/または所望の比率の細胞型を含む。したがって、いくつかの態様では細胞の投与量は、細胞の総数(または体重1kg当たりの数)および個々の集団またはサブタイプの所望の比率、例えばCD4+対CD8+比に基づく。いくつかの態様では、細胞の投与量は、個々の集団または個々の細胞型における細胞の所望の総数(または体重1kg当たりの数)に基づく。いくつかの態様では、投与量は、個々の集団における全細胞の所望の数、所望の比率、および細胞の所望の総数などの特徴の組み合わせに基づく。
【0309】
いくつかの態様では、CD8およびCD4T細胞などの細胞の集団またはサブタイプは、T細胞の所望の用量などの全細胞の所望の用量の許容差でまたは許容差内で投与される。いくつかの態様では、所望の用量は、細胞の所望の数または細胞が投与される対象の単位体重当たりの細胞の所望の数、例えば細胞/kgである。いくつかの局面では、所望の用量は、細胞の最小数もしくは最小数より上、または単位体重当たりの細胞の最小数もしくは最小数より上である。いくつかの局面では、所望の用量で投与される全細胞のうち、個々の集団またはサブタイプは、所望の産生比(CD4対CD8比など)またはそれに近い比率で、例えばそのような比のある特定の許容差内または誤差内で存在する。
【0310】
いくつかの態様では、細胞は、所望の用量のCD4+細胞および/または所望の用量のCD8+細胞などの、1つまたは複数の個々の集団またはサブタイプの細胞の所望の用量の許容差でまたは許容範囲内で投与される。いくつかの局面では、所望の用量は、サブタイプまたは集団の細胞の所望の数、または細胞が投与される対象の単位体重当たりのそのような細胞の所望の数、例えば細胞/kgである。いくつかの局面では、所望の用量は、集団もしくはサブタイプの細胞の最小数もしくは最小数より上、または単位体重当たりの集団もしくはサブタイプの細胞の最小数もしくは最小数より上である。
【0311】
したがって、いくつかの態様では、投与量は、全細胞の所望の固定用量および所望の比率に基づき、ならびに/または個々のサブタイプもしくは亜集団の1つもしくは複数、例えば各々の、所望の固定用量に基づく。したがって、いくつかの態様では、投与量は、T細胞の所望の固定用量もしくは最小用量およびCD4対CD8細胞の所望の比率に基づき、ならびに/またはCD4および/またはCD8細胞の所望の固定用量もしくは最小用量に基づく。
【0312】
いくつかの態様では、細胞は、CD4+およびCD8+細胞またはサブタイプなどの複数の細胞集団またはサブタイプの所望の産生比の許容範囲でまたは許容範囲内で投与される。いくつかの局面では、所望の比率は特定の比率であり得るかまたは比率の範囲であり得、例えばいくつかの態様では、所望の比率(例えばCD4対CD8細胞の比率)は、5:1~5:1もしくは約5:1~約5:1(もしくは約1:5より大きく約5:1より小さい)、または1:3~3:1もしくは約1:3~約3:1(もしくは約1:3より大きく約3:1より小さい)、例えば2:1~1:5もしくは約2:1~約1:5(もしくは約1:5より大きく約2:1より小さい、例えば5:1、4.5:1、4:1、3.5:1、3:1、2.5:1、2:1、1.9:1、1.8:1、1.7:1、1.6:1、1.5:1、1.4:1、1.3:1、1.2:1、1.1:1、1:1、1:1.1、1:1.2、1:1.3、1:1.4、1:1.5、1:1.6、1:1.7、1:1.8、1:1.9、1:2、1:2.5、1:3、1:3.5、1:4、1:4.5、もしくは1:5、またはおよそ前記比率である。いくつかの局面では、許容差は、所望の比率の約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%以内であり、これらの範囲の間の任意の値を含む。
【0313】
特定の態様では、細胞の数および/または濃度は、組換え受容体(例えばCAR)発現細胞の数を指す。他の態様では、細胞の数および/または濃度は、投与されるすべての細胞、T細胞、または末梢血単核細胞(PBMC)の数または濃度を指す。
【0314】
いくつかの局面では、投与量のサイズは、以前の治療、例えば化学療法に対する対象の応答、対象における疾患負荷、例えば腫瘍の量、体積、大きさ、または転移の程度、範囲もしくは種類、病期、および/または毒性転帰、例えばCRS、マクロファージ活性化症候群、腫瘍溶解症候群、神経毒性を発症する対象の可能性もしくは発生率、ならびに/または投与される細胞および/もしくは組換え受容体に対する宿主の免疫応答などの、1つまたは複数の基準に基づいて決定される。
【0315】
いくつかの態様では、方法はまた、キメラ抗原受容体(CAR)を発現する細胞の1つもしくは複数の用量および/もしくはリンパ球除去療法を投与する工程を含み、ならびに/または方法の1つもしくは複数の工程が繰り返される。いくつかの態様では、1つまたは複数のさらなる用量は、初期用量と同じである。いくつかの態様では、1つまたは複数のさらなる用量は、初期用量とは異なり、例えば初期用量より高い、例えば2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍もしくは10倍もしくはそれ以上高いか、または初期用量より低い、例えば2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍もしくは10倍もしくはそれ以上低い。いくつかの態様では、1つまたは複数のさらなる用量の投与は、初期治療または任意の以前の治療に対する対象の応答、例えば対象における疾患負荷、例えば腫瘍の量、体積、大サイズ、または転移の程度、範囲もしくは種類、病期、ならびに/または毒性転帰、例えばCRS、マクロファージ活性化症候群、腫瘍溶解症候群、神経毒性、ならびに/または投与される細胞および/もしくは組換え受容体に対する宿主の免疫応答を発症する対象の可能性または発生率に基づいて決定される。
【0316】
C. リンパ球枯渇処置
いくつかの局面において、提供された方法は、1つまたは複数のリンパ球枯渇療法を、例えば、免疫療法、例えばT細胞療法(例えば、CAR発現T細胞)の投与の開始前または開始と同時などにおいて投与することをさらに含むことができる。いくつかの態様において、リンパ球枯渇療法は、ホスファミド(例えば、シクロホスファミドなど)を投与することを含む。いくつかの態様において、リンパ球枯渇療法は、フルダラビンを投与することを含むことができる。
【0317】
いくつかの局面において、対象を免疫枯渇(例えば、リンパ球枯渇)療法によりプレコンディショニングすることは養子細胞療法(ACT)の効果を改善することができる。シクロスポリンおよびフルダラビンの組み合わせを含めて、リンパ球枯渇剤によるプレコンディショニングは、移入された細胞の応答および/または持続性を改善するためにであることを含めて、細胞療法における移入された腫瘍浸潤リンパ球(TIL)細胞の効力を改善することにおいてこれまで効果的であった。例えば、Dudley et al., Science, 298, 850-54(2002); Rosenberg et al., Clin Cancer Res, 17(13):4550-4557(2011)を参照のこと。同様に、CAR+T細胞の状況において、いくつかの研究が、様々なリンパ球枯渇剤を、最も一般的にはシクロホスファミド、フルダラビン、ベンダムスチン、またはそれらの組み合わせを、時には低線量の照射を伴って組み入れている。Han et al. Journal of Hematology & Oncology, 6:47(2013); Kochenderfer et al., Blood, 119: 2709-2720(2012); Kalos et al., Sci Transl Med, 3(95):95ra73(2011); Clinical Trial Study Record Nos.: NCT02315612; NCT01822652を参照のこと。
【0318】
そのようなプレコンディショニングを、治療の効力を弱め得るであろう様々な結果の1つまたは複数の危険性を減らすことを目的にして行うことができる。これらには、T細胞、B細胞、NK細胞が、恒常性、およびサイトカイン(例えば、IL-2、IL-7および/またはIL-15など)を活性化することについてTILと競合する「サイトカインシンク(cytokine sink)」として知られている現象;調節性T細胞、NK細胞、または免疫系の他の細胞によるTILの抑制;腫瘍微小環境における負の調節因子の影響が含まれる。Muranski et al., Nat Clin Pract Oncol. December; 3(12): 668-681(2006)。
【0319】
したがって、いくつかの態様において、提供された方法は、リンパ球枯渇療法を対象に投与することをさらに伴う。いくつかの態様において、方法は、リンパ球枯渇療法を、細胞の用量の投与を開始するのに先立って対象に投与することを伴う。いくつかの態様において、リンパ球枯渇療法は、化学療法剤(例えば、フルダラビンおよび/またはシクロホスファミドなど)を含有する。いくつかの態様において、細胞および/またはリンパ球枯渇療法の投与が、外来での送達により行われる。
【0320】
いくつかの態様において、方法は、プレコンディショニング剤(例えば、リンパ球枯渇剤または化学療法剤など、例えば、シクロホスファミド、フルダラビンまたはそれらの組み合わせなど)を、細胞の用量の投与を開始するのに先立って対象に投与することを含む。例えば、対象が、最初の用量または後続用量の少なくとも2日前に、例えば、最初の用量または後続用量の少なくとも3日前、4日前、5日前、6日前または7日前などに、プレコンディショニング剤を投与される場合がある。いくつかの態様において、対象が、細胞の用量の投与を開始する最大でも7日前に、例えば、細胞の用量の投与を開始する最大でも6日前、5日前、4日前、3日前または2日前などに、プレコンディショニング剤を投与される。いくつかの態様において、対象が、細胞の用量の投与を開始する前の、両端の値を含む2日~7日の間で、例えば、細胞の用量の投与を開始する2日前、3日前、4日前、5日前、6日前または7日前などにおいて、プレコンディショニング剤を投与される。
【0321】
いくつかの態様において、対象は、20 mg/kg~100 mg/kgの間もしくはおよそ20 mg/kg~100 mg/kgの間の用量、例えば、40 mg/kg~80 mg/kgの間もしくはおよそ0 mg/kg~80 mg/kgの間などの用量でのシクロホスファミドによりプレコンディショニングされる。いくつかの局面において、対象は、60 mg/kgまたは約60 mg/kgのシクロホスファミドによりプレコンディショニングされる。いくつかの態様において、シクロホスファミドは単一の用量で投与することができ、あるいは、例えば、毎日、1日おきに、または3日毎に与えられるなどする複数の用量で投与することができる。いくつかの態様において、シクロホスファミドは1日間または2日間にわたって1日に1回投与される。いくつかの態様において、リンパ球枯渇剤がシクロホスファミドを含む場合、対象が、両端の値を含む100 mg/m2から500もしくは約500 mg/m2の間もしくはおよそ100 mg/m2から500もしくは約500 mg/m2の間の用量で、例えば、両端の値を含む200 mg/m2から400もしくは約400 mg/m2の間もしくはおよそ200 mg/m2から400もしくは約400 mg/m2の間、または250 mg/m2から350もしくは約350 mg/m2の間もしくはおよそ250 mg/m2から350もしくは約350 mg/m2の間などの用量でシクロホスファミドを投与される。いくつかの例において、対象が、約300 mg/m2のシクロホスファミドを投与される。いくつかの態様において、シクロホスファミドは単一の用量で投与することができ、あるいは、例えば、毎日、1日おきに、または3日毎に与えられるなどする複数の用量で投与することができる。いくつかの態様において、シクロホスファミドは、例えば、1日間~5日間などにわたって、例えば、3日間~5日間にわたって毎日投与される。いくつかの例において、対象が、約300 mg/m2のシクロホスファミドを、細胞療法の開始に先立つ3日間にわたって毎日、投与される。
【0322】
いくつかの態様において、リンパ球枯渇剤がフルダラビンを含む場合、対象が、1 mg/m2から100もしくは約100 mg/m2の間もしくはおよそ1 mg/m2から100もしくは約100 mg/m2の間の用量で、例えば、10 mg/m2~75 mg/m2の間もしくはおよそ10 mg/m2~75 mg/m2の間、15もしくは約15 mg/m2から50もしくは約50 mg/m2の間、20もしくは約20 mg/m2から40もしくは約40 mg/m2の間、24もしくは約24 mg/m2から35もしくは約35 mg/m2の間、20もしくは約20 mg/m2から30もしくは約30 mg/m2の間、または24もしくは約24 mg/m2から26もしくは約26 mg/m2の間などの用量で、フルダラビンを投与される。いくつかの例において、対象が、25 mg/m2のフルダラビンを投与される。いくつかの例において、対象が、約30 mg/m2のフルダラビンを投与される。いくつかの態様において、フルダラビンドは単一の用量で投与することができ、あるいは、例えば、毎日、1日おきに、または3日毎に与えられるなどする複数の用量で投与することができる。いくつかの態様において、フルダラビンは、例えば、1日間~5日間などにわたって、例えば、3日間~5日間にわたって毎日投与される。いくつかの例において、対象が、約30 mg/m2のフルダラビンを、細胞療法の開始に先立つ3日間にわたって毎日、投与される。
【0323】
いくつかの態様において、リンパ球枯渇剤は、様々な作用物質の組み合わせ(例えば、シクロホスファミドと、フルダラビンとの組み合わせなど)を含む。したがって、作用物質の組み合わせには、任意の用量または投与スケジュール(例えば、上記で記載される用量または投与スケジュールなど)でのシクロホスファミドと、任意の用量または投与スケジュール(例えば、上記で記載される用量または投与スケジュールなど)でのフルダラビンとが含まれる場合がある。例えば、いくつかの局面において、対象が、60 mg/kg(約2 g/m2)のシクロホスファミドと、25 mg/m2のフルダラビンの3つ~5つの用量とを、細胞の用量に先立って投与される。いくつかの態様において、対象が、約300 mg/m2のシクロホスファミドと、約30 mg/m2のフルダラビンとを、それぞれ3日間にわたって毎日、投与される。いくつかの態様において、プレコンディショニングの投与スケジュールは、細胞の用量の投与を開始する前の、両端の値を含む2日~7日の間で、例えば、開始する2日前、3日前、4日前、5日前、6日前、または7日前などにおいて終了する。
【0324】
1つの例示的な投薬計画において、最初の用量を受ける前に、対象は、細胞の投与の1日前でのキナーゼ阻害剤と、CAR発現細胞の最初の用量の少なくとも2日前に、一般には細胞の投与の最大でも7日前に投与されるシクロホスファミドおよびフルダラビンのリンパ球枯渇プレコンディショニング化学療法(CY/FLU)とを受ける。いくつかの場合において、例えば、シクロホスファミドが、Btk阻害剤の投与後の24日から27日まで投与される。プレコンディショニング処置の後、対象が、上記で記載されるようなCAR発現T細胞の用量を投与される。
【0325】
いくつかの態様において、細胞の用量の注入に先立つプレコンディショニング剤の投与により、処置の転帰が改善される。例えば、いくつかの局面において、プレコンディショニングは用量による処置の効力を改善するか、または対象における組換え受容体発現細胞(例えば、CAR発現細胞、例えば、CAR発現T細胞など)の持続性を増大させる。いくつかの態様において、プレコンディショニング処置は、無病生存率(例えば、細胞の用量の後における所与の期間の後で生存しており、かつ最小限の残存疾患または分子的に検出可能な疾患を何ら示さない対象の割合など)を増大させる。いくつかの態様において、メジアン無病生存期間までの時間が増大する。
【0326】
細胞が対象(例えば、ヒト)に投与されると、操作細胞集団の生物学的活性がいくつかの局面においては、多くの公知の方法のいずれかによって測定される。評価するパラメーターには、操作されたT細胞または天然のT細胞または他の免疫細胞の、抗原に対する特異的な結合であって、インビボでは、例えば、画像化による特異的な結合、またはエクスビボでは、例えば、ELISAもしくはフローサイトメトリーによる特異的な結合が含まれる。ある特定の態様において、操作された細胞が標的細胞を破壊し得るかを、当技術分野において公知である任意の好適な方法を使用して、例えば、Kochenderfer et al., J. Immunotherapy, 32(7):689-702(2009)、およびHerman et al. J. Immunological Methods, 285(1):25-40(2004)に記載される細胞傷害性アッセイなどを使用して測定することができる。ある特定の態様において、細胞の生物学的活性はまた、ある特定のサイトカイン(例えば、CD107a、IFNγ、IL-2およびTNFなど)の発現および/または分泌をアッセイすることによって測定することができる。いくつかの局面において、生物学的活性が、臨床転帰(例えば、腫瘍負荷量または腫瘍量における低下など)を評価することによって測定される。いくつかの局面において、毒性転帰、細胞の持続性および/または拡大、ならびに/あるいは宿主免疫応答の有無が評価される。
【0327】
いくつかの態様において、細胞の用量の注入に先立つプレコンディショニング剤の投与は、処置の転帰を、例えば、用量による処置の効力を改善するなどによって改善するか、または対象における組換え受容体発現細胞(例えば、CAR発現細胞、例えば、CAR発現T細胞など)の持続性を増大させる。したがって、いくつかの態様において、Btk阻害剤および細胞療法による併用療法である方法において与えられるプレコンディショニング剤の用量は、Btk阻害剤を伴わない方法で与えられる用量よりも大きい。
【0328】
II. 細胞療法および細胞の操作
いくつかの態様では、提供される併用療法の方法に従って使用するための細胞療法(例えばT細胞療法)は、癌、例えばB細胞悪性腫瘍などの疾患または状態に関連する抗原を認識するおよび/または前記抗原に特異的に結合するように設計された組換え受容体を発現する操作された細胞を投与する工程を含む。いくつかの態様では、抗原への結合は、そのような抗原に対する免疫応答などの応答をもたらす。いくつかの態様では、細胞は、操作された受容体または組換え受容体、例えばキメラ抗原受容体(CAR)などの操作された抗原受容体を含むか、または含むように操作されている。CARなどの組換え受容体は、一般に、いくつかの局面ではリンカーおよび/または膜貫通ドメイン(1つまたは複数)を介して、1つまたは複数の細胞内シグナル伝達成分に連結された細胞外抗原(またはリガンド)結合ドメインを含む。いくつかの局面では、操作された細胞は、養子細胞療法などのために、対象への投与に適した薬学的組成物および製剤として提供される。細胞および組成物を対象、例えば患者に投与するための治療方法も提供される。
【0329】
いくつかの態様では、細胞は、遺伝子操作によって導入された1つまたは複数の核酸を含み、それにより、そのような核酸の組換え産物または遺伝子操作された産物を発現する。いくつかの態様では、遺伝子導入は、例えばサイトカインまたは活性化マーカーの発現によって測定されるように、細胞を増殖、生存、および/または活性化などの応答を誘導する刺激と組み合わせることなどによって、最初に細胞を刺激し、続いて活性化された細胞を形質導入し、培養下で臨床適用に十分な数まで拡大させることによって達成される。
【0330】
A. キメラ抗原受容体
提供される方法および使用のいくつかの態様では、T細胞などの操作された細胞は、所望の抗原(例えば腫瘍抗原)に対する特異性を提供するリガンド結合ドメイン(例えば抗体または抗体断片)を細胞内シグナル伝達ドメインと組み合わせる1つまたは複数のドメインを含む、キメラ抗原受容体(CAR)などのキメラ受容体を発現する。いくつかの態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、T細胞活性化ドメインなどの活性化細胞内ドメイン部分であり、一次活性化シグナルを提供する。いくつかの態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、エフェクター機能を促進するための共刺激シグナル伝達ドメインを含むか、または付加的に含む。分子、例えば抗原に特異的に結合すると、受容体は一般に、ITAM形質導入シグナルなどの免疫刺激シグナルを細胞内に送達し、それにより疾患または状態を標的とする免疫応答を促進する。いくつかの態様では、免疫細胞に遺伝子操作された場合のキメラ受容体は、T細胞活性を調節することができ、いくつかの場合には、T細胞分化またはホメオスタシスを調節することができ、それにより、養子細胞療法の方法における使用などのために、インビボでの寿命、生存および/または持続性が改善された遺伝子操作細胞をもたらす。
【0331】
CARを含む例示的な抗原受容体、およびそのような受容体を操作して細胞に導入するための方法は、例えば国際公開公報第200014257号、同第2013126726号、同第2012/129514号、同第2014031687号、同第2013/166321号、同第2013/071154号、同第2013/123061号、米国特許出願公開第2002131960号、同第2013287748号、同第20130149337号、米国特許第6,451,995号、同第7,446,190号、同第8,252,592号、同第8,339,645号、同第8,398,282号、同第7,446,179号、同第6,410,319号、同第7,070,995号、同第7,265,209号、同第7,354,762号、同第7,446,191号、同第8,324,353号、および同第8,479,118号、および欧州特許出願第2537416号に記載されているもの、ならびに/またはSadelain et al., Cancer Discov. 2013 April; 3(4): 388-398; Davila et al.(2013)PLoS ONE 8(4): e61338;Turtle et al., Curr. Opin. Immunol., 2012 October; 24(5): 633-39; Wu et al., Cancer, 2012 March 18(2):160-75によって記載されているものを含む。いくつかの局面では、抗原受容体は、米国特許第7,446,190号に記載されているCAR、および国際公開公報第2014055668 A1号に記載されているものを含む。CARの例には、国際公開公報第2014031687号、米国特許第8,339,645号、同第7,446,179号、米国特許出願公開第2013/0149337号、米国特許第7,446,190号、同第8,389,282号、Kochenderfer et al., 2013, Nature Reviews Clinical Oncology, 10, 267-276(2013); Wang et al.(2012)J. Immunother. 35(9): 689-701; およびBrentjens et al., Sci Transl Med. 2013 5(177)などの前述の刊行物のいずれかに開示されているCARが含まれる。国際公開公報第2014031687号、米国特許第8,339,645号、同第7,446,179号、米国特許出願公開第2013/0149337号、米国特許第7,446,190号、および米国特許第8,389,282号も参照のこと。
【0332】
いくつかの態様では、T細胞などの操作された細胞は、特定の抗原(またはマーカーまたはリガンド)、例えば特定の細胞型の表面に発現される抗原に対する特異性を有するキメラ抗原受容体(CAR)などの組換え受容体を発現する。いくつかの態様では、受容体によって標的化される抗原はポリペプチドである。いくつかの態様では、抗原は炭水化物または他の分子である。いくつかの態様では、抗原は、正常または非標的化細胞または組織と比較して、疾患または状態の細胞、例えば腫瘍または病原性細胞上に選択的に発現されるかまたは過剰発現される。他の態様では、抗原は、正常細胞上に発現され、および/または操作された細胞上に発現される。
【0333】
いくつかの態様において受容体によって標的化される抗原は、いくつかの公知のB細胞マーカーのいずれかなどの、B細胞悪性腫瘍に関連する抗原を含む。いくつかの態様では、受容体によって標的化される抗原は、CD20、CD19、CD22、ROR1、CD45、CD21、CD5、CD33、Igκ、Igλ、CD79a、CD79bまたはCD30である。特定の局面では、抗原はCD19である。いくつかの態様では、そのような抗原のいずれかは、ヒトB細胞上で発現される抗原である。
【0334】
CARなどのキメラ受容体は、一般に、抗体分子の1つまたは複数の抗原結合部分である細胞外抗原結合ドメインを含む。いくつかの態様では、抗原結合ドメインは抗体分子の一部であり、一般に、抗体の可変重(VH)鎖領域および/または可変軽(VL)鎖領域、例えばscFv抗体断片である。いくつかの態様では、抗原結合ドメインは、sdFv、ナノボディ、VHHおよびVNARなどの単一ドメイン抗体(sdAb)である。いくつかの態様では、抗原結合断片は、柔軟なリンカーによって連結された抗体可変領域を含む。
【0335】
いくつかの態様では、抗体または抗原結合断片(例えばscFvまたはVHドメイン)は、CD19などの抗原を特異的に認識する。いくつかの態様では、抗体または抗原結合断片は、CD19に特異的に結合する抗体または抗原結合断片に由来するか、またはその変異体である。いくつかの態様では、抗原はCD19である。いくつかの態様では、scFvは、CD19に特異的な抗体または抗体断片に由来するVHおよびVLを含む。いくつかの態様では、CD19に結合する抗体または抗体断片は、FMC63およびSJ25C1などのマウス由来の抗体である。いくつかの態様では、抗体または抗体断片は、例えば米国特許出願公開第2016/0152723号に記載されているヒト抗体である。
【0336】
いくつかの態様では、抗原結合ドメインは、FMC63に由来するVHおよび/またはVLを含み、これは、いくつかの局面では、scFvであり得る。FMC63は一般に、ヒト起源のCD19を発現するNalm-1およびNalm-16細胞に対して惹起されるマウスモノクローナルIgG1抗体を指す(Ling, N.R., et al.(1987)Leucocyte typing III.302)。いくつかの態様では、FMC63抗体は、それぞれSEQ ID NO:38および39に示されるCDR‐H1およびCDR‐H2、SEQ ID NO:40または54に示されるCDR‐H3、ならびにSEQ ID NO:35に示されるCDR-L1、SEQ ID NO:36または55に示されるCDR‐L2、およびSEQ ID NO:37または56に示されるCDR‐L3を含む。FMC63抗体は、SEQ ID NO:41のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)およびSEQ ID NO:42のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0337】
いくつかの態様では、scFvは、SEQ ID NO:35のCDR-L1配列、SEQ ID NO:36のCDR-L2配列、およびSEQ ID NO:37のCDR-L3配列を含む可変軽鎖、ならびに/またはSEQ ID NO:38のCDR-H1配列、SEQ ID NO:39のCDR-H2配列、およびSEQ ID NO:40のCDR-H3配列を含む可変重鎖、または前記配列のいずれかに少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を有する前記配列のいずれかの変異体を含む。いくつかの態様では、scFvは、SEQ ID NO:41に示されるFMC63の可変重鎖領域およびSEQ ID NO:42に示されるFMC63の可変軽鎖領域、または前記配列のいずれかに少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を有する前記配列のいずれかの変異体を含む。いくつかの態様では、可変重鎖と可変軽鎖はリンカーによって接続されている。いくつかの態様では、リンカーはSEQ ID NO:59に示されている。いくつかの態様では、scFvは、順に、VH、リンカー、およびVLを含む。いくつかの態様では、scFvは、順に、VL、リンカー、およびVHを含む。いくつかの態様では、scFvは、SEQ ID NO:57に示されるヌクレオチドの配列、またはSEQ ID NO:57と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を示す配列によってコードされる。いくつかの態様では、scFvは、SEQ ID NO:43に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:43と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を示す配列を含む。
【0338】
いくつかの態様では、抗原結合ドメインは、SJ25C1に由来するVHおよび/またはVLを含み、これは、いくつかの局面では、scFvであり得る。SJ25C1は、ヒト起源のCD19を発現するNalm-1およびNalm-16細胞に対して惹起されるマウスモノクローナルIgG1抗体である(Ling, N.R., et al.(1987)Leucocyte typing III.302)。いくつかの態様では、SJ25C1抗体は、それぞれSEQ ID NO:47~49に示されるCDR‐H1、CDR‐H2およびCDR‐H3、ならびにそれぞれSEQ ID NO:44~46に示されるCDR‐L1、CDR‐L2およびCDR‐L3配列を含む。いくつかの態様では、SJ25C1抗体は、SEQ ID NO:50のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)およびSEQ ID NO:51のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの態様では、svFvは、SEQ ID NO:44のCDR-L1配列、SEQ ID NO:45のCDR-L2配列、およびSEQ ID NO:46のCDR-L3配列を含む可変軽鎖、ならびに/またはSEQ ID NO:47のCDR-H1配列、SEQ ID NO:48のCDR-H2配列、およびSEQ ID NO:49のCDR-H3配列を含む可変重鎖、または前記配列のいずれかに少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を有する前記配列のいずれかの変異体を含む。いくつかの態様では、scFvは、SEQ ID NO:50に示されるSJ25C1の可変重鎖領域、およびSEQ ID NO:51に示されるSJ25C1の可変軽鎖領域、または前記配列のいずれかに少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を有する前記配列のいずれかの変異体を含む。いくつかの態様では、可変重鎖と可変軽鎖はリンカーによって接続されている。いくつかの態様では、リンカーはSEQ ID NO:52に示されている。いくつかの態様では、scFvは、順に、VH、リンカー、およびVLを含む。いくつかの態様では、scFvは、順に、VL、リンカー、およびVHを含む。いくつかの態様では、scFvは、SEQ ID NO:53に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:53と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を示す配列を含む。
【0339】
本明細書における「抗体」という用語は最も広い意味で使用され、無傷の抗体、ならびに断片抗原結合(Fab)断片、F(ab')2断片、Fab'断片、Fv断片、組換えIgG(rIgG)断片、抗原に特異的に結合することができる可変重鎖(VH)領域、一本鎖可変断片(scFv)を含む一本鎖抗体断片、および単一ドメイン抗体(例えばsdAb、sdFv、ナノボディ、VHHもしくはVNAR)または断片を含む機能的(抗原結合)抗体断片を含む、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体を含む。この用語は、遺伝子操作されたおよび/またはさもなければ修飾された形態の免疫グロブリン、例えばイントラボディ、ペプチボディ、キメラ抗体、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、およびヘテロコンジュゲート抗体、多重特異性、例えば二重特異性抗体、ダイアボディ、トリアボディ、およびテトラボディ、タンデムジ-scFv、タンデムトリ-scFvを包含する。特に明記されない限り、「抗体」という用語はその機能的抗体断片を包含すると理解されるべきである。この用語はまた、IgGおよびそのサブクラス、IgM、IgE、IgA、およびIgDを含む任意のクラスまたはサブクラスの抗体を含む、無傷または完全長抗体を包含する。いくつかの局面では、CARは、例えば異なる特異性を有する2つの抗原結合ドメインを含む、二重特異性CARである。
【0340】
いくつかの態様では、抗原結合タンパク質、抗体およびその抗原結合断片は、完全長抗体の抗原を特異的に認識する。いくつかの態様では、抗体の重鎖および軽鎖は完全長であり得るか、または抗原結合部分(Fab、F(ab')2、Fvまたは一本鎖Fv断片(scFv))であり得る。他の態様では、抗体重鎖定常領域は、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgD、およびIgEから選択され、特に、例えばIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4から、より具体的にはIgG1(例えばヒトIgG1)から選択される。別の態様では、抗体軽鎖定常領域は、例えばκまたはλ、特にκから選択される。
【0341】
「超可変領域」または「HVR」と同義である「相補性決定領域」および「CDR」という用語は、いくつかの場合には、抗原特異性および/または結合親和性を付与する抗体可変領域内のアミノ酸の非隣接配列を指すことが公知である。一般に、各重鎖可変領域には3つのCDR(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3)があり、各軽鎖可変領域には3つのCDR(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3)がある。「フレームワーク領域」および「FR」は、いくつかの場合には、重鎖および軽鎖の可変領域の非CDR部分を指すことが公知である。一般に、各完全長重鎖可変領域には4つのFR(FR-H1、FR-H2、FR-H3、およびFR-H4)があり、各完全長軽鎖可変領域には4つのFR(FR-L1、FR-L2、FR-L3、およびFR-L4)がある。
【0342】
所与のCDRまたはFRの正確なアミノ酸配列の境界は、Kabat et al.(1991), 「Sequences of Proteins of Immunological Interest」, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD(「Kabat」番号付けスキーム); Al-Lazikani et al.,(1997)JMB 273, 927-948(「Chothia」番号付けスキーム); MacCallum et al., J. Mol. Biol. 262: 732-745(1996),「Antibody-antigen interactions: Contact analysis and binding site topography」, J. Mol. Biol. 262, 732-745”(「Contact」番号付けスキーム); Lefranc MP et al.,「IMGT unique numbering for immunoglobulin and T cell receptor variable domains and Ig superfamily V-like domains」, Dev Comp Immunol, 2003 Jan; 27(1): 55-77(「IMGT」番号付けスキーム); Honegger A and Pluckthun A, 「Yet another numbering scheme for immunoglobulin variable domains: an automatic modeling and analysis tool」, J Mol Biol, 2001 Jun 8; 309(3): 657-70(「Aho」番号付けスキーム); Martin et al.,「Modeling antibody hypervariable loops: a combined algorithm」, PNAS, 1989, 86(23): 9268-9272(「AbM」番号付けスキーム)によって記載されているものを含む、いくつかの周知のスキームのいずれかを用いて容易に決定することができる。
【0343】
所与のCDRまたはFRの境界は、同定のために使用されるスキームによって異なり得る。例えば、Kabatスキームは構造アラインメントに基づいており、一方Chothiaスキームは構造情報に基づく。KabatスキームとChothiaスキームの両方の番号付けは、最も一般的な抗体領域の配列の長さに基づいており、挿入には挿入文字、例えば「30a」によって対応し、一部の抗体では欠失が出現する。2つのスキームは、特定の挿入と欠失(「インデル」)を異なる位置に配置するため、結果として異なる番号付けになる。Contactスキームは、複雑な結晶構造の分析に基づいており、多くの点でChothia番号付けスキームに類似する。AbMスキームは、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアで使用されているものに基づく、KabatとChothiaの定義の折衷案である。
【0344】
以下の表2は、それぞれKabat、Chothia、AbM、およびContactスキームによって同定されたCDR-L1、CDR-L2、CDR-L3およびCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3の例示的な位置境界を列挙する。CDR-H1については、KabatとChothiaの両方の番号付けスキームを使用した残基番号付けが列挙されている。FRはCDRの間に位置し、例えばFR-L1はCDR-L1の前に位置し、FR-L2はCDR-L1とCDR-L2の間に位置し、FR-L3はCDR-L2とCDR-L3の間に位置する、などである。示されているKabat番号付けスキームではH35AとH35Bに挿入を配置しているため、示されているKabat番号付け規則を使用して番号付けした場合のChothia CDR-H1ループの末端は、ループの長さに依存してH32とH34の間で異なることに注意されたい。
【0345】
(表2)様々な番号付けスキームによるCDRの境界
1-Kabat et al. (1991),「Sequences of Proteins of Immunological Interest」, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD
2-Al-Lazikani et al.,(1997)JMB 273,927-948
【0346】
したがって、特に指定されない限り、所与の抗体またはその領域、例えばその可変領域の「CDR」または「相補性決定領域」または個々の指定されるCDR(例えばCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3)は、前述のスキームのいずれかまたは他の公知のスキームによって定義される、(または特定の)相補性決定領域を包含すると理解されるべきである。例えば、特定のCDR(例えばCDR-H3)が、所与のVHまたはVL領域のアミノ酸配列内の対応するCDRのアミノ酸配列を含むと述べられている場合、そのようなCDRは、前述のスキームのいずれかまたは他の公知のスキームによって定義される、可変領域内の対応するCDR(例えばCDR-H3)の配列を有すると理解される。いくつかの態様では、特定のCDR配列が指定される。提供される抗体の例示的なCDR配列は、様々な番号付けスキームを使用して表されるが、提供される抗体は、他の前述の番号付けスキームのいずれかまたは当業者に公知の他の番号付けスキームに従って表されるCDRを含み得ることが理解される。
【0347】
同様に、特に指定されない限り、所与の抗体またはその領域、例えばその可変領域のFRまたは個々の指定されるFR(1つもしくは複数)(例えばFR-H1、FR-H2、FR-H3、FR-H4)は、公知のスキームのいずれかによって定義される、(または特定の)フレームワーク領域を包含すると理解されるべきである。いくつかの場合には、Kabat、Chothia、AbMもしくはContact法、または他の公知のスキームによって定義されるCDRなどの、特定のCDR(1つもしくは複数)またはFR(1つもしくは複数)を同定するためのスキームが指定される。他の場合には、CDRまたはFRの特定のアミノ酸配列が与えられる。
【0348】
「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、抗体の抗原への結合に関与する抗体重鎖または軽鎖のドメインを指す。天然抗体の重鎖および軽鎖の可変領域(それぞれVHおよびVL)は、一般に類似の構造を有し、各ドメインは4つの保存されたフレームワーク領域(FR)および3つのCDRを含む。(例えばKindt et al. Kuby Immunology, 6th ed., W.H. Freeman and Co., page 91(2007)参照。)単一のVHまたはVLドメインが、抗原結合特異性を付与するのに十分であり得る。さらに、特定の抗原に結合する抗体を、抗原に結合する抗体からのVHまたはVLドメインを用いて単離して、それぞれ相補的VLまたはVHドメインのライブラリをスクリーニングし得る。例えば、Portolano et al., J. Immunol. 150:880-887(1993); Clarkson et al., Nature 352: 624-628(1991)参照。
【0349】
提供される抗体の中には抗体断片がある。「抗体断片」とは、無傷の抗体が結合する抗原に結合する無傷の抗体の一部を含む、無傷の抗体以外の分子を指す。抗体断片の例には、Fv、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2;ダイアボディ;直鎖抗体;可変重鎖(VH)領域、scFvおよび単一ドメインVH単一抗体などの一本鎖抗体分子;ならびに抗体断片から形成される多重特異性抗体が含まれるが、これらに限定されるわけではない。特定の態様では、抗体は、scFvなどの可変重鎖領域および/または可変軽鎖領域を含む一本鎖抗体断片である。
【0350】
「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、抗体の抗原への結合に関与する抗体重鎖または軽鎖のドメインを指す。天然抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメイン(それぞれVHおよびVL)は一般に類似の構造を有し、各ドメインは4つの保存されたフレームワーク領域(FR)および3つのCDRを含む。(例えばKindt et al. Kuby Immunology, 6th ed., W.H. Freeman and Co., page 91(2007)参照。)単一のVHまたはVLドメインが、抗原結合特異性を付与するのに十分であり得る。さらに、特定の抗原に結合する抗体を、抗原に結合する抗体からのVHまたはVLドメインを用いて単離して、それぞれ相補的VLまたはVHドメインのライブラリをスクリーニングし得る。例えば、Portolano et al., J. Immunol.150:880-887(1993); Clarkson et al., Nature 352: 624-628(1991)参照。
【0351】
単一ドメイン抗体(sdAb)は、抗体の重鎖可変ドメインの全部もしくは一部、または軽鎖可変ドメインの全部もしくは一部を含む抗体断片である。特定の態様では、単一ドメイン抗体はヒト単一ドメイン抗体である。いくつかの態様では、CARは、癌マーカーまたは標的化される細胞もしくは疾患、例えば腫瘍細胞もしくは癌細胞の細胞表面抗原などの抗原、例えば本明細書に記載されるもしくは公知の標的抗原のいずれかに特異的に結合する、抗体重鎖ドメインを含む。例示的な単一ドメイン抗体には、sdFv、ナノボディ、VHHまたはVNARが含まれる。
【0352】
抗体断片は、無傷の抗体のタンパク質分解消化、ならびに組換え宿主細胞による産生を含むがこれらに限定されるわけではない、様々な技術によって作製することができる。いくつかの態様では、抗体は、合成リンカー、例えばペプチドリンカーによって連結された2つもしくはそれ以上の抗体領域もしくは鎖を有するものなどの、天然には生じない配置を含む断片、および/または天然の無傷の抗体の酵素消化によっては生成され得ない断片などの、組換えによって作製された断片である。いくつかの態様では、抗体断片はscFvである。
【0353】
「ヒト化」抗体は、すべてまたは実質的にすべてのCDRアミノ酸残基が非ヒトCDRに由来し、すべてまたは実質的にすべてのFRアミノ酸残基がヒトFRに由来する抗体である。ヒト化抗体は、任意で、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含み得る。非ヒト抗体の「ヒト化型」は、親の非ヒト抗体の特異性および親和性を保持しながら、典型的にはヒトに対する免疫原性を低下させるために、ヒト化を受けた非ヒト抗体の変異体を指す。いくつかの態様では、ヒト化抗体中のいくつかのFR残基は、例えば抗体特異性または親和性を回復または改善するために、非ヒト抗体(例えばCDR残基が由来する抗体)からの対応する残基で置換される。
【0354】
いくつかの局面では、組換え受容体、例えばキメラ抗原受容体は、抗体またはその断片などの1つまたは複数のリガンド(例えば抗原)結合ドメインを含む細胞外部分、および1つまたは複数の細胞内シグナル伝達領域またはドメイン(互換的に細胞質シグナル伝達ドメインまたは領域とも呼ばれる)を含む。いくつかの局面では、組換え受容体、例えばCARは、スペーサーおよび/または膜貫通ドメインまたは部分をさらに含む。いくつかの局面では、スペーサーおよび/または膜貫通ドメインは、リガンド(例えば抗原)結合ドメインを含む細胞外部分と、細胞内シグナル伝達領域またはドメインとを連結することができる。
【0355】
いくつかの態様では、CARなどの組換え受容体は、スペーサーをさらに含み、スペーサーは、ヒンジ領域、例えばIgG4ヒンジ領域、ならびに/またはCH1/CLおよび/もしくはFc領域などの、免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部またはその変異体もしくは修飾型であり得るかまたはそれを含み得る。いくつかの態様では、組換え受容体は、スペーサーおよび/またはヒンジ領域をさらに含む。いくつかの態様では、定常領域またはその部分は、IgG4またはIgG1などのヒトIgGのものである。いくつかの局面では、定常領域の一部は、抗原認識成分、例えばscFvと膜貫通ドメインとの間のスペーサー領域として機能する。スペーサーは、スペーサーが存在しない場合と比較して、抗原結合後の細胞の応答性の増加をもたらす長さのものであり得る。いくつかの例では、スペーサーは、12アミノ酸もしくは約12アミノ酸の長さであるか、または12アミノ酸以下の長さである。例示的なスペーサーには、少なくとも約10~229個のアミノ酸、少なくとも約10~200個のアミノ酸、少なくとも約10~175個のアミノ酸、少なくとも約10~150個のアミノ酸、少なくとも約10~125個のアミノ酸、少なくとも約10~100個のアミノ酸、少なくとも約10~75個のアミノ酸、少なくとも約10~50個のアミノ酸、少なくとも約10~40個のアミノ酸、少なくとも約10~30個のアミノ酸、少なくとも約10~20個のアミノ酸、または少なくとも約10~15個のアミノ酸を有するもの、および列挙された範囲のいずれかの両端の間の任意の整数個のアミノ酸を含むものが含まれる。いくつかの態様では、スペーサー領域は、約12個もしくはそれ以下のアミノ酸、約119個もしくはそれ以下のアミノ酸、または約229個もしくはそれ以下のアミノ酸を有する。例示的なスペーサーには、IgG4ヒンジ単独、CH2およびCH3ドメインに連結されたIgG4ヒンジ、またはCH3ドメインに連結されたIgG4ヒンジが含まれる。例示的なスペーサーには、Hudecek et al.(2013)Clin.Cancer Res.,19:3153、Hudecek et al.(2015)Cancer Immunol Res.3(2):125-135、または国際公開公報第2014031687号に記載されているものが含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0356】
いくつかの態様では、スペーサーは、SEQ ID NO:1に示され、SEQ ID NO:2に示される配列によってコードされるヒンジのみのスペーサーのような、IgG4またはIgG1のヒンジのみなどのIgGのヒンジ領域のみを含む。いくつかの態様では、スペーサーは、例えば、CH2および/またはCH3ドメインに連結されたIgヒンジ、例えばIgG4ヒンジである。いくつかの態様では、スペーサーは、SEQ ID NO:3に示されるような、CH2およびCH3ドメインに連結されたIgヒンジ、例えばIgG4ヒンジである。いくつかの態様では、スペーサーは、SEQ ID NO:4に示されるような、CH3ドメインのみに連結されたIgヒンジ、例えばIgG4ヒンジである。いくつかの態様では、スペーサーは、グリシン-セリンリッチ配列または公知の柔軟なリンカーなどの他の柔軟なリンカーであるか、またはこれを含む。いくつかの態様では、定常領域またはその部分は、IgDのものである。いくつかの態様では、スペーサーは、SEQ ID NO:5に示される配列を有する。いくつかの態様では、スペーサーは、SEQ ID NO:1、3、4および5のいずれかと少なくともまたは少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を有する。
【0357】
いくつかの局面では、スペーサーは、(a)免疫グロブリンヒンジの全部もしくは一部またはその修飾型を含むかまたはそれからなるか、または約15アミノ酸もしくはそれ以下のアミノ酸を含み、CD28細胞外領域またはCD8細胞外領域を含まず、(b)免疫グロブリンヒンジ、任意でIgG4ヒンジの全部もしくは一部またはその修飾型を含むかまたはそれからなり、および/または約15アミノ酸もしくはそれ以下のアミノ酸を含み、CD28細胞外領域またはCD8細胞外領域を含まず、あるいは(c)12アミノ酸長もしくは約12アミノ酸長であり、および/または免疫グロブリンヒンジ、任意でIgG4の全部もしくは一部またはその修飾型を含むかまたはそれからなり、あるいは(d)SEQ ID NO:1、3~5、27~34または58に示されるアミノ酸の配列、または前記配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を有する前記配列のいずれかの変異体からなるかまたはそれを含み、あるいは(e)式X1PPX2Pを含むかまたはそれからなり、X1はグリシン、システインまたはアルギニンであり、X2はシステインまたはトレオニンである、ポリペプチドスペーサーである。
【0358】
いくつかの態様では、抗原受容体は、細胞外ドメインに直接または間接的に連結された細胞内ドメインを含む。いくつかの態様では、キメラ抗原受容体は、細胞外ドメインと細胞内シグナル伝達ドメインを連結する膜貫通ドメインを含む。いくつかの態様では、細胞内シグナル伝達ドメインはITAMを含む。例えば、いくつかの局面では、抗原認識ドメイン(例えば細胞外ドメイン)は一般に、1つまたは複数の細胞内シグナル伝達成分、例えばCARの場合には、TCR複合体などの抗原受容体複合体を介して活性化を模倣し、および/または別の細胞表面受容体を介してシグナル伝達するシグナル伝達成分に連結されている。いくつかの態様では、キメラ受容体は、細胞外ドメイン(例えばscFv)と細胞内シグナル伝達ドメインとの間に連結または融合された膜貫通ドメインを含む。したがって、いくつかの態様では、抗原結合成分(例えば抗体)は、1つまたは複数の膜貫通ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインに連結されている。
【0359】
一態様では、受容体、例えばCAR中のドメインの1つと天然に関連する膜貫通ドメインが使用される。いくつかの場合には、膜貫通ドメインは、同じまたは異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインへのそのようなドメインの結合を回避して、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小限に抑えるように選択されるかまたはアミノ酸置換によって改変される。
【0360】
いくつかの態様における膜貫通ドメインは、天然供給源または合成供給源のいずれかに由来する。供給源が天然である場合、いくつかの局面におけるドメインは、任意の膜結合タンパク質または膜貫通タンパク質に由来する。膜貫通領域は、T細胞受容体、CD28、CD3ε、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137(4-1BB)、またはCD154のα鎖、β鎖またはζ鎖に由来する(すなわち少なくともその膜貫通領域を含む)ものを含む。あるいは、いくつかの態様における膜貫通ドメインは合成である。いくつかの局面では、合成膜貫通ドメインは、ロイシンおよびバリンなどの疎水性残基を主に含む。いくつかの局面では、フェニルアラニン、トリプトファンおよびバリンのトリプレットが合成膜貫通ドメインの各末端に見出される。いくつかの態様では、結合は、リンカー、スペーサー、および/または膜貫通ドメイン(1つまたは複数)による。いくつかの局面では、膜貫通ドメインは、CD28の膜貫通部分またはその変異体を含む。細胞外ドメインと膜貫通ドメインは、直接または間接的に連結され得る。いくつかの態様では、細胞外ドメインと膜貫通ドメインは、本明細書に記載されるいずれかなどのスペーサーによって連結されている。
【0361】
いくつかの態様では、受容体、例えばCARの膜貫通ドメインは、ヒトCD28の膜貫通ドメインまたはその変異体、例えばヒトCD28の27アミノ酸の膜貫通ドメイン(アクセッション番号:P10747.1)であるか、またはSEQ ID NO:8に示されているアミノ酸の配列、またはSEQ ID NO:8の配列と少なくともまたは少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性を示すアミノ酸の配列を含む膜貫通ドメインである。いくつかの態様では、組換え受容体の膜貫通ドメイン含有部分は、SEQ ID NO:9に示されているアミノ酸の配列、またはSEQ ID NO:9の配列と少なくともまたは少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性を有するアミノ酸の配列を含む。
【0362】
いくつかの態様では、組換え受容体、例えばCARは、細胞内シグナル伝達領域またはドメインなどの少なくとも1つの細胞内シグナル伝達成分を含む。T細胞活性化は、いくつかの局面では、2つのクラスの細胞質シグナル伝達配列:TCRを介して抗原依存性の一次活性化を開始するもの(一次細胞質シグナル伝達配列)、および抗原非依存的に作用して二次または共刺激シグナルを提供するもの(二次細胞質シグナル伝達配列)によって媒介されると説明される。いくつかの局面では、CARは、そのようなシグナル伝達成分の一方または両方を含む。細胞内シグナル伝達領域の中には、天然の抗原受容体を介するシグナル、共刺激受容体と組み合わせてそのような受容体を介するシグナル、および/または共刺激受容体のみを介するシグナルを模倣するまたはそれらに近似するものがある。いくつかの態様では、短いオリゴペプチドリンカーまたはポリペプチドリンカー、例えばグリシンおよびセリンを含むもの、例えばグリシン-セリンダブレットなどの2~10アミノ酸長のリンカーが存在し、CARの膜貫通ドメインと細胞質シグナル伝達ドメインとの間の結合を形成する。
【0363】
いくつかの態様では、CARの連結時に、CARの細胞質ドメインまたは細胞内シグナル伝達領域は、免疫細胞、例えばCARを発現するように操作されたT細胞の正常なエフェクター機能または応答の少なくとも1つを活性化する。例えば、いくつかの状況では、CARは、T細胞の機能、例えば細胞溶解活性またはTヘルパー活性、例えばサイトカインまたは他の因子の分泌を誘導する。いくつかの態様では、抗原受容体成分または共刺激分子の細胞内シグナル伝達領域の短縮部分は、例えばそれがエフェクター機能シグナルを伝達する場合、無傷の免疫刺激鎖の代わりに使用される。いくつかの態様では、例えば1つまたは複数の細胞内ドメインを含む細胞内シグナル伝達領域は、T細胞受容体(TCR)の細胞質配列を含み、ならびにいくつかの局面では、自然の状況において、そのような受容体と協調的に作用して抗原受容体係合後にシグナル伝達を開始する共受容体のもの、および/またはそのような分子の任意の誘導体もしくは変異体、および/または同じ機能的能力を有する任意の合成配列を含む。いくつかの態様では、例えば1つまたは複数の細胞内ドメインを含む細胞内シグナル伝達領域は、共刺激シグナルの提供に関与する領域またはドメインの細胞質配列を含む。
【0364】
いくつかの局面では、CARは、TCR複合体の一次活性化を調節する一次細胞質シグナル伝達配列を含む。刺激性に作用する一次細胞質シグナル伝達配列は、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフまたはITAMとして公知のシグナル伝達モチーフを含み得る。一次細胞質シグナル伝達配列を含むITAMの例には、CD3ζ鎖、FcRγ、CD3γ、CD3δおよびCD3εに由来するものが含まれる。いくつかの態様では、CAR中の細胞質シグナル伝達分子(1つまたは複数)は、細胞質シグナル伝達ドメイン、その一部、またはCD3ζに由来する配列を含む。
【0365】
いくつかの態様では、受容体は、T細胞活性化および細胞毒性を媒介するTCR CD3鎖、例えばCD3ζ鎖などの、TCR複合体の細胞内成分を含む。したがって、いくつかの局面では、抗原結合部分は、1つまたは複数の細胞シグナル伝達モジュールに連結されている。いくつかの態様では、細胞シグナル伝達モジュールは、CD3膜貫通ドメイン、CD3細胞内シグナル伝達ドメイン、および/または他のCD膜貫通ドメインを含む。いくつかの態様では、受容体、例えばCARは、Fc受容体γ、CD8α、CD8β、CD4、CD25、またはCD16などの1つまたは複数のさらなる分子の一部をさらに含む。例えば、いくつかの局面では、CARまたは他のキメラ受容体は、CD3ゼータ(CD3ζ)またはFc受容体γとCD8α、CD8β、CD4、CD25またはCD16との間のキメラ分子を含む。
【0366】
いくつかの態様では、細胞内(または細胞質)シグナル伝達領域は、ヒトCD3鎖、任意でCD3ζ刺激シグナル伝達ドメインまたはその機能的変異体、例えばヒトCD3ζのアイソフォーム3の112アミノ酸細胞質ドメイン(アクセッション番号P20963.2)、または米国特許第7,446,190号もしくは米国特許第8,911,993号に記載されているCD3ζシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの態様では、細胞内シグナル伝達領域は、SEQ ID NO:13、14もしくは15に示されているアミノ酸の配列、またはSEQ ID NO:13、14もしくは15と少なくともまたは少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性を示すアミノ酸の配列を含む。
【0367】
天然のTCRの状況では、完全な活性化は一般に、TCRを介したシグナル伝達だけでなく、共刺激シグナルも必要とする。したがって、いくつかの態様では、完全な活性化を促進するために、二次シグナルまたは共刺激シグナルを生成するための成分もCARに含まれる。他の態様では、CARは、共刺激シグナルを生成するための成分を含まない。いくつかの局面では、さらなるCARが同じ細胞中で発現され、二次シグナルまたは共刺激シグナルを生成するための成分を提供する。
【0368】
いくつかの態様では、キメラ抗原受容体は、T細胞共刺激分子の細胞内ドメインを含む。いくつかの態様では、CARは、CD28、4-1BB、OX40(CD134)、CD27、DAP10、DAP12、ICOSおよび/または他の共刺激受容体などの共刺激受容体のシグナル伝達ドメインおよび/または膜貫通部分を含む。いくつかの態様では、CARは、CD28または4-1BB、例えばヒトCD28またはヒト4-1BBの共刺激領域またはドメインを含む。
【0369】
いくつかの態様では、細胞内シグナル伝達領域またはドメインは、ヒトCD28の細胞内共刺激シグナル伝達ドメインまたはその機能的変異体またはその一部、例えばその41アミノ酸ドメインおよび/または天然CD28タンパク質の186~187位にLLからGGへの置換を有するそのようなドメインを含む。例えば、いくつかの態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、SEQ ID NO:10もしくは11に示されるアミノ酸の配列、またはSEQ ID NO:10もしくは11と少なくともまたは少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性を示すアミノ酸の配列を含み得る。いくつかの態様では、細胞内領域は、4-1BBの細胞内共刺激シグナル伝達ドメインまたはその機能的変異体またはその一部、例えばヒト4-1BBの42アミノ酸の細胞質ドメイン(アクセッション番号Q07011.1)またはその機能的変異体もしくは一部、例えばSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸の配列、またはSEQ ID NO:12と少なくともまたは少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性を示すアミノ酸の配列を含む。
【0370】
いくつかの局面では、同じCARは、一次(または活性化)細胞質シグナル伝達領域および共刺激シグナル伝達成分の両方を含む。
【0371】
いくつかの態様では、活性化ドメインは1つのCAR内に含まれ、一方共刺激成分は、別の抗原を認識する別のCARによって提供される。いくつかの態様では、CARは、両方とも同じ細胞上に発現される、活性化または刺激性CAR、共刺激性CARを含む(国際公開公報第2014/055668号参照)。いくつかの局面では、細胞は、1つまたは複数の刺激性もしくは活性化CARおよび/または共刺激性CARを含む。いくつかの態様では、細胞は、阻害性CAR(iCAR、Fedorov et al.,Sci.Transl.Medicine,5(215)(December,2013)参照)、例えば疾患もしくは状態に関連するおよび/または疾患もしくは状態に特異的な抗原以外の抗原を認識するCARをさらに含み、それにより疾患標的化CARを介して送達される活性化シグナルが、阻害性CARのそのリガンドへの結合によって減少または阻害されて、例えばオフターゲット効果が低減される。
【0372】
いくつかの態様では、2つの受容体はそれぞれ、細胞への活性化シグナルおよび阻害性シグナルを誘導し、その結果、一方の受容体によるその抗原への結合は、細胞を活性化するまたは応答を誘導するが、第2の阻害性受容体によるその抗原への結合は、その応答を抑制または減弱させるシグナルを誘導する。例は、活性化CARと阻害性CAR(iCAR)の組合せである。そのような戦略は、例えば、活性化CARが、疾患または状態において発現されるが正常細胞上でも発現される抗原に結合し、阻害性受容体が、正常細胞上で発現されるが疾患または状態の細胞上では発現されない別の抗原に結合する状況で、オフターゲット効果の可能性を低減するために使用され得る。
【0373】
いくつかの局面では、キメラ受容体は、阻害性CAR(例えばiCAR)であるかまたはそれを含み、ならびに細胞内のITAMおよび/または共刺激促進応答などの免疫応答を減弱または抑制する細胞内成分を含む。そのような細胞内シグナル伝達成分の例は、PD-1、CTLA4、LAG3、BTLA、OX2R、TIM-3、TIGIT、LAIR-1、PGE2受容体、A2ARを含むEP2/4アデノシン受容体を含む、免疫チェックポイント分子上に見出されるものである。いくつかの局面では、操作された細胞は、そのような阻害分子のシグナル伝達ドメインまたはそのような阻害分子に由来するシグナル伝達ドメインを含む阻害性CARを含み、その結果、例えば活性化および/または共刺激性CARによって誘導される細胞の応答を減弱させる働きをする。
【0374】
いくつかの場合には、CARは、第1、第2、および/または第3世代のCARと称される。いくつかの局面では、第1世代のCARは、抗原結合の際にCD3鎖誘導シグナルのみを提供するものである;いくつかの局面では、第2世代のCARは、そのようなシグナルと共刺激シグナルを提供するもの、例えばCD28またはCD137などの共刺激受容体由来の細胞内シグナル伝達ドメインを含むものである;いくつかの局面では、第3世代のCARは、異なる共刺激受容体の複数の共刺激ドメインを含むものである。
【0375】
いくつかの態様では、CARは、細胞質部分に1つまたは複数、例えば2つまたはそれ以上の共刺激ドメインおよび活性化ドメイン、例えば一次活性化ドメインを包含する。例示的なCARは、CD3ζ、CD28、および4-1BBの細胞内成分を含む。
【0376】
いくつかの態様では、抗原受容体はマーカーをさらに含み、および/またはCARもしくは他の抗原受容体を発現する細胞は、受容体を発現するための細胞の形質導入または操作を確認するために使用し得る細胞表面マーカーなどの代理マーカーをさらに含む。いくつかの局面では、マーカーは、CD34、NGFR、または上皮成長因子受容体の全部または一部(例えば切断型)、例えばそのような細胞表面受容体の切断型(例えばtEGFR)を含む。いくつかの態様では、マーカーをコードする核酸は、リンカー配列、例えば切断可能なリンカー配列、例えばT2Aをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されている。例えば、マーカー、および任意でリンカー配列は、国際公開公報第2014031687号に開示されている任意のものであり得る。例えば、マーカーは、任意でリンカー配列、例えばT2A切断可能リンカー配列に連結された切断型EGFR(tEGFR)であり得る。
【0377】
切断型EGFR(例えばtEGFR)の例示的なポリペプチドは、SEQ ID NO:7もしくは16に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:7もしくは16と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含む。例示的なT2Aリンカー配列は、SEQ ID NO:6もしくは17に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:6もしくは17と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含む。
【0378】
いくつかの態様では、マーカーは、天然ではT細胞上に見出されない、もしくは天然ではT細胞の表面上に見出されない分子、例えば細胞表面タンパク質、またはその一部である。いくつかの態様では、分子は非自己分子、例えば非自己タンパク質、すなわち細胞が養子移入される宿主の免疫系によって「自己」として認識されないものである。
【0379】
いくつかの態様では、マーカーは、治療機能を果たさない、および/または例えば遺伝子操作のため、例えば成功裏に操作された細胞を選択するためのマーカーとして使用されること以外には作用をもたらさない。他の態様では、マーカーは、治療用分子または何らかの所望の作用を及ぼす分子、例えば細胞がインビボで遭遇するリガンド、例えば養子移入時およびリガンドとの遭遇時に細胞の応答を増強するおよび/または減弱させる共刺激分子または免疫チェックポイント分子であり得る。
【0380】
いくつかの態様では、キメラ抗原受容体は、本明細書に記載される抗体または断片を含む細胞外部分を含む。いくつかの局面では、キメラ抗原受容体は、本明細書に記載される抗体または断片を含む細胞外部分および細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの態様では、抗体または断片はscFvまたは単一ドメインVH抗体を含み、細胞内ドメインはITAMを含む。いくつかの局面では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータ(CD3ζ)鎖のζ鎖のシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの態様では、CD3ζ鎖は、ヒトCD3ζ鎖である。いくつかの態様では、細胞内シグナル伝達領域は、CD3ζ細胞内ドメインに連結された、CD28およびCD137(4-1BB、TNFRSF9)共刺激ドメインをさらに含む。いくつかの態様では、CD28はヒトCD28である。いくつかの態様では、4-1BBはヒト4-1BBである。いくつかの態様では、キメラ抗原受容体は、細胞外ドメインと細胞内シグナル伝達領域との間に配置された膜貫通ドメインを含む。いくつかの局面では、膜貫通ドメインはCD28の膜貫通部分を含む。細胞外ドメインと膜貫通ドメインは、直接または間接的に連結され得る。いくつかの態様では、細胞外ドメインと膜貫通ドメインは、本明細書に記載されるいずれかなどのスペーサーによって連結されている。
【0381】
いくつかの態様では、CARは、抗体、例えば抗体断片、CD28の膜貫通部分またはその機能的変異体であるかまたはそれを含む膜貫通ドメイン、ならびにCD28のシグナル伝達部分またはその機能的変異体およびCD3ζのシグナル伝達部分またはその機能的変異体を含む細胞内シグナル伝達ドメインを含む。例えば、いくつかの態様では、CARは、例えば上記のようなCD19に特異的な、scFvを含む抗体断片などの抗体、スペーサー、例えば重鎖分子のヒンジ領域および/または1つもしくは複数の定常領域などの免疫グロブリン分子の一部を含むスペーサー、例えばIgヒンジ含有スペーサー、CD28由来の膜貫通ドメインの全部または一部を含む膜貫通ドメイン、CD28由来の細胞内シグナル伝達ドメイン、ならびにCD3ζシグナル伝達ドメインを含む。
【0382】
いくつかの態様では、CARは、抗体、例えば抗体断片、CD28の膜貫通部分またはその機能的変異体であるかまたはそれを含む膜貫通ドメイン、ならびに4-1BBのシグナル伝達部分またはその機能的変異体およびCD3ζのシグナル伝達部分またはその機能的変異体を含む細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかのそのような態様では、受容体は、ヒトIg分子などのIg分子の一部、例えばIgヒンジ、例えばIgG4ヒンジを含むスペーサー、例えばヒンジのみのスペーサーをさらに含む。いくつかの態様では、CARは、例えば上記のようなCD19に特異的な、scFvなどの抗体または断片、任意のIgヒンジ含有スペーサーなどのスペーサー、CD28由来の膜貫通ドメイン、4-1BB由来の細胞内シグナル伝達ドメイン、およびCD3ζ由来のシグナル伝達ドメインを含む。
【0383】
B. 遺伝子操作のための核酸、ベクターおよび方法
いくつかの態様では、細胞、例えばT細胞は、組換え受容体を発現するように遺伝子操作されている。いくつかの態様では、操作は、組換え受容体をコードするポリヌクレオチドを導入することによって実施される。組換え受容体をコードするポリヌクレオチド、ならびにそのような核酸および/またはポリヌクレオチドを含むベクターまたは構築物も提供される。
【0384】
いくつかの場合には、組換え受容体をコードする核酸配列は、シグナルペプチドをコードするシグナル配列を含む。いくつかの局面では、シグナル配列は、天然のポリペプチドに由来するシグナルペプチドをコードし得る。他の局面では、シグナル配列は、異種または非天然のシグナルペプチド、例えばSEQ ID NO:25に示され、SEQ ID NO:24に示されるヌクレオチド配列によってコードされるGMCSFRα鎖の例示的なシグナルペプチドをコードし得る。いくつかの場合には、組換え受容体、例えばキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸配列は、シグナルペプチドをコードするシグナル配列を含む。シグナルペプチドの非限定的な例示的例には、例えばSEQ ID NO:25に示され、SEQ ID NO:24に示されるヌクレオチド配列によってコードされるGMCSFRα鎖、またはSEQ ID NO:26に示されるCD8αシグナルペプチドが含まれる。
【0385】
いくつかの態様では、組換え受容体をコードするポリヌクレオチドは、組換え受容体の発現を制御するために機能的に連結された少なくとも1つのプロモータを含む。いくつかの例では、ポリヌクレオチドは、組換え受容体の発現を制御するために機能的に連結された2つ、3つ、またはそれ以上のプロモータを含む。
【0386】
核酸分子が2つまたはそれ以上の異なるポリペプチド鎖、例えば組換え受容体とマーカーをコードする特定の場合には、ポリペプチド鎖のそれぞれは、別個の核酸分子によってコードされ得る。例えば、2つの別個の核酸が提供され、それぞれが、細胞内での発現のために個別に細胞内に移入または導入され得る。いくつかの態様では、組換え受容体をコードする核酸およびマーカーをコードする核酸は、同じプロモータに機能的に連結され、任意で、内部リボソーム進入部位(IRES)、または自己切断ペプチドもしくは、任意でT2A、P2A、E2AもしくはF2Aである、リボソームスキッピングを引き起こすペプチドをコードする核酸によって分離される。いくつかの態様では、マーカーをコードする核酸および組換え受容体をコードする核酸は、2つの異なるプロモータに機能的に連結されている。いくつかの態様では、マーカーをコードする核酸および組換え受容体をコードする核酸は、細胞のゲノム内の異なる位置に存在するか、または異なる位置に挿入される。いくつかの態様では、組換え受容体をコードするポリヌクレオチドは、レトロウイルス形質導入、トランスフェクション、または形質転換などによって、培養細胞を含む組成物に導入される。
【0387】
ポリヌクレオチドが第1および第2の核酸配列を含むものなどのいくつかの態様では、異なるポリペプチド鎖のそれぞれをコードするコード配列は、同じであっても異なっていてもよいプロモータに機能的に連結され得る。いくつかの態様では、核酸分子は、2つまたはそれ以上の異なるポリペプチド鎖の発現を駆動するプロモータを含むことができる。いくつかの態様では、そのような核酸分子は、マルチシストロン性(バイシストロン性またはトリシストロン性、例えば米国特許第6,060,273号参照)であり得る。いくつかの態様では、転写ユニットは、単一のプロモータからのメッセージによる遺伝子産物(例えばマーカーをコードする、および組換え受容体をコードする)の共発現を可能にするIRES(内部リボソーム進入部位)を含むバイシストロンユニットとして操作することができる。あるいは、いくつかの場合には、単一のプロモータが、単一のオープンリーディングフレーム(ORF)内に、自己切断ペプチド(例えば2A配列)またはプロテアーゼ認識部位(例えばフリン)をコードする配列によって互いに分離された2つまたは3つの遺伝子(例えばマーカーをコードする、および組換え受容体をコードする)を含むRNAの発現を指示し得る。したがってORFは、翻訳中(2Aの場合)または翻訳後のいずれかに、個々のタンパク質にプロセシングされる単一のポリペプチドをコードする。いくつかの場合には、T2Aなどのペプチドは、リボソームに2AエレメントのC末端におけるペプチド結合の合成をスキップさせることができ(リボソームスキップ機構)、2A配列の末端と下流の次のペプチドとの間の分離をもたらす(例えばde Felipe. Genetic Vaccines and Ther.2:13(2004)およびde Felipe et al. Traffic 5: 616-626(2004)参照)。様々な2Aエレメントが公知である。本明細書で開示される方法および核酸において使用できる2A配列の例には、限定されることなく、米国特許出願公開第20070116690号に記載されている口蹄疫ウイルス(F2A、例えばSEQ ID NO:21)、ウマ鼻炎Aウイルス(E2A、例えばSEQ ID NO:20)、トセア・アシグナ(Thosea asigna)ウイルス(T2A、例えばSEQ ID NO:6または17)、およびブタテスコウイルス1(P2A、例えばSEQ ID NO:18または19)からの2A配列。
【0388】
本明細書に記載される組換え受容体のいずれもが、任意の組合せまたは配置で、組換え受容体をコードする1つまたは複数の核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされ得る。例えば、1つ、2つ、3つまたはそれ以上のポリヌクレオチドは、1つ、2つ、3つまたはそれ以上の異なるポリペプチド、例えば組換え受容体をコードすることができる。いくつかの態様では、1つのベクターまたは構築物は、マーカーをコードする核酸配列を含み、別個のベクターまたは構築物は、組換え受容体、例えばCARをコードする核酸配列を含む。いくつかの態様では、マーカーをコードする核酸および組換え受容体をコードする核酸は、2つの異なるプロモータに機能的に連結されている。いくつかの態様では、組換え受容体をコードする核酸は、マーカーをコードする核酸の下流に存在する。
【0389】
いくつかの態様では、ベクター骨格は、1つまたは複数のマーカーをコードする核酸配列を含む。いくつかの態様では、1つまたは複数のマーカーは、形質導入マーカー、代理マーカー、および/または選択マーカーである。
【0390】
いくつかの態様では、マーカーは、形質導入マーカーまたは代理マーカーである。形質導入マーカーまたは代理マーカーを使用して、ポリヌクレオチド、例えば組換え受容体をコードするポリヌクレオチドが導入された細胞を検出することができる。いくつかの態様では、形質導入マーカーは、細胞の改変を示す、または確認することができる。いくつかの態様では、代理マーカーは、組換え受容体、例えばCARと共に細胞表面上に共発現されるように作製されるタンパク質である。特定の態様では、そのような代理マーカーは、ほとんどまたは全く活性を有さないように改変された表面タンパク質である。特定の態様では、代理マーカーは、組換え受容体をコードするのと同じポリヌクレオチド上にコードされる。いくつかの態様では、組換え受容体をコードする核酸配列は、マーカーをコードする核酸配列に機能的に連結され、任意で、内部リボソーム進入部位(IRES)、または自己切断ペプチドもしくはT2A、P2A、E2AもしくはF2Aなどの2A配列などのリボソームスキッピングを引き起こすペプチドをコードする核酸によって分離される。外因性マーカー遺伝子は、いくつかの場合には細胞の検出または選択を可能にするために、およびいくつかの場合には細胞の自殺を促進するためにも、操作された細胞に関連して利用され得る。
【0391】
例示的な代理マーカーは、切断型の細胞表面ポリペプチド、例えば、非機能性であり、シグナルもしくは完全長型の細胞表面ポリペプチドによって通常形質導入されるシグナルを形質導入しないかもしくは形質導入することができない、および/または内在化しないかもしくは内在化することができない切断型を含み得る。切断型の増殖因子または切断型ヒト上皮成長因子受容体2(tHER2)、切断型上皮成長因子受容体(tEGFR、SEQ ID NO:7もしくは16に示される例示的なtEGFR配列)などの他の受容体を含む例示的な切断型細胞表面ポリペプチド、または前立腺特異的膜抗原(PSMA)もしくはその修飾型。tEGFRは、抗体セツキシマブ(Erbitux(登録商標))または他の治療用抗EGFR抗体もしくは結合分子によって認識されるエピトープを含んでもよく、これは、tEGFR構築物およびコードされる外因性タンパク質で操作された細胞を同定または選択するため、ならびに/またはコードされる外因性タンパク質を発現する細胞を排除または分離するために使用できる。米国特許第8,802,374号、およびLiu et al.,Nature Biotech.2016 April;34(4):430-434参照。いくつかの局面では、マーカー、例えば代理マーカーは、CD34、NGFR、CD19または切断型CD19、例えば切断型非ヒトCD19、または上皮成長因子受容体(例えばtEGFR)の全部または一部(例えば切断型)を含む。
【0392】
いくつかの態様では、マーカーは、蛍光タンパク質、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)、高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)、例えばスーパーフォルダGFP(sfGFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、例えばtdTomato、mCherry、mStrawberry、AsRed2、DsRedまたはDsRed2、シアン蛍光タンパク質(CFP)、青緑色蛍光タンパク質(BFP)、高感度青色蛍光タンパク質(EBFP)、および黄色蛍光タンパク質(YFP)、ならびに蛍光タンパク質の種変異体、単量体変異体、およびコドン最適化および/または高感度変異体を含むその変異体であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、マーカーは、酵素、例えばルシフェラーゼ、大腸菌(E.coli)由来のlacZ遺伝子、アルカリホスファターゼ、分泌型胚性アルカリホスファターゼ(SEAP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)であるか、またはそれを含む。例示的な発光レポーター遺伝子には、ルシフェラーゼ(luc)、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、β-グルクロニダーゼ(GUS)またはその変異体が含まれる。
【0393】
いくつかの態様では、マーカーは選択マーカーである。いくつかの態様では、選択マーカーは、外因性作用物質または薬物に対する耐性を付与するポリペプチドであるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、選択マーカーは抗生物質耐性遺伝子である。いくつかの態様では、選択マーカーは、哺乳動物細胞に抗生物質耐性を付与する抗生物質耐性遺伝子である。いくつかの態様では、選択マーカーは、ピューロマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ブラスチシジン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、ジェネティシン耐性遺伝子もしくはゼオシン耐性遺伝子、またはその修飾形態であるか、またはそれを含む。
【0394】
いくつかの態様では、分子は非自己分子、例えば非自己タンパク質、すなわち細胞が養子移入される宿主の免疫系によって「自己」として認識されないものである。
【0395】
いくつかの態様では、マーカーは、治療機能を果たさない、および/または例えば遺伝子操作のため、例えば成功裏に操作された細胞を選択するためのマーカーとして使用されること以外には作用をもたらさない。他の態様では、マーカーは、治療用分子または何らかの所望の作用を及ぼす分子、例えば細胞がインビボで遭遇するリガンド、例えば養子移入時およびリガンドとの遭遇時に細胞の応答を増強するおよび/または減弱させる共刺激分子または免疫チェックポイント分子であり得る。
【0396】
いくつかの態様では、マーカーをコードする核酸は、リンカー配列、例えば切断可能なリンカー配列、例えばT2Aをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されている。例えば、マーカー、および任意でリンカー配列は、国際公開公報第2014031687号に開示されている任意のものであり得る。例えば、マーカーは、任意でリンカー配列、例えばT2A切断可能リンカー配列に連結された切断型EGFR(tEGFR)であり得る。切断型EGFR(例えばtEGFR)の例示的なポリペプチドは、SEQ ID NO:7もしくは16に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:7もしくは16と少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%もしくはそれ以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含む。
【0397】
いくつかの態様では、マーカーは、蛍光タンパク質、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)、高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)、例えばスーパーフォルダGFP(sfGFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、例えばtdTomato、mCherry、mStrawberry、AsRed2、DsRedまたはDsRed2、シアン蛍光タンパク質(CFP)、青緑色蛍光タンパク質(BFP)、高感度青色蛍光タンパク質(EBFP)、および黄色蛍光タンパク質(YFP)、ならびに蛍光タンパク質の種変異体、単量体変異体、およびコドン最適化および/または高感度変異体を含むその変異体であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、マーカーは、酵素、例えばルシフェラーゼ、大腸菌(E.coli)由来のlacZ遺伝子、アルカリホスファターゼ、分泌型胚性アルカリホスファターゼ(SEAP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)であるか、またはそれを含む。例示的な発光レポーター遺伝子には、ルシフェラーゼ(luc)、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、β-グルクロニダーゼ(GUS)またはその変異体が含まれる。
【0398】
いくつかの態様では、マーカーは選択マーカーである。いくつかの態様では、選択マーカーは、外因性作用物質または薬物に対する耐性を付与するポリペプチドであるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、選択マーカーは抗生物質耐性遺伝子である。いくつかの態様では、選択マーカーは、哺乳動物細胞に抗生物質耐性を付与する抗生物質耐性遺伝子である。いくつかの態様では、選択マーカーは、ピューロマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ブラスチシジン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、ジェネティシン耐性遺伝子もしくはゼオシン耐性遺伝子、またはその修飾形態であるか、またはそれを含む。
【0399】
いくつかの態様では、組換え核酸は、例えばシミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)に由来するベクターなどの組換え感染性ウイルス粒子を使用して細胞に移入される。いくつかの態様では、組換え核酸は、組換えレンチウイルスベクターまたはレトロウイルスベクター、例えばガンマレトロウイルスベクターを使用してT細胞に移入される(例えばKoste et al.(2014)Gene Therapy 2014 Apr 3.doi:10.1038/gt.2014.25;Carlens et al.(2000)Exp Hematol 28(10):1137-46;Alonso-Camino et al.(2013)Mol Ther Nucl Acids 2,e93;Park et al., Trends Biotechnol.2011 November 29(11):550-557参照。
【0400】
いくつかの態様では、ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)である。
【0401】
いくつかの態様では、レトロウイルスベクター、例えばモロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)、骨髄増殖性肉腫ウイルス(MPSV)、マウス胚性幹細胞ウイルス(MESV)、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)、または脾臓フォーカス形成ウイルス(SFFV)に由来するレトロウイルスベクターは、長い末端反復配列(LTR)を有する。ほとんどのレトロウイルスベクターはマウスレトロウイルスに由来する。いくつかの態様では、レトロウイルスは、任意の鳥類または哺乳動物細胞供給源に由来するものを含む。レトロウイルスは、典型的には両種指向性であり、ヒトを含むいくつかの種の宿主細胞に感染できることを意味する。一態様では、発現される遺伝子は、レトロウイルスのgag、polおよび/またはenv配列を置き換える。いくつかの例示的なレトロウイルス系が記載されている(例えば米国特許第5,219,740号、同第6,207,453号、同第5,219,740号;Miller and Rosman(1989)BioTechniques 7:980-990;Miller,A.D.(1990)Human Gene Therapy 1:5-14;Scarpa et al.(1991)Virology 180:849-852; Burns et al.(1993)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:8033-8037;およびBoris-Lawrie and Temin(1993)Cur. Opin. Genet. Develop.3:102-109参照。
【0402】
レンチウイルス形質導入の方法は公知である。例示的な方法は、例えばWang et al.(2012)J.Immunother.35(9):689-701;Cooper et al.(2003)Blood.101:1637-1644;Verhoeyen et al.(2009)Methods Mol Biol.506:97-114;およびCavalieri et al.(2003)Blood.102(2):497-505に記載されている。
【0403】
いくつかの態様では、組換え核酸はエレクトロポレーションを介してT細胞に移入される(例えばChicaybam et al,(2013)PLoS ONE 8(3):e60298およびVan Tedeloo et al.(2000)Gene Therapy 7(16):1431-1437参照)。いくつかの態様では、組換え核酸は転位を介してT細胞に移入される(例えばManuri et al.(2010)Hum Gene Ther 21(4):427-437;Sharma et al.(2013)Molec Ther Nucl Acids 2,e74;およびHuang et al.(2009)Methods Mol Biol 506:115-126参照)。免疫細胞において遺伝物質を導入および発現させる他の方法には、リン酸カルシウムトランスフェクション(例えばCurrent Protocols in Molecular Biology, John Wiley&Sons, New York. N.Y.に記載されている)、プロトプラスト融合、カチオン性リポソーム媒介トランスフェクション、タングステン粒子促進微粒子銃(Johnston, Nature, 346: 776-777(1990));およびリン酸ストロンチウムDNA共沈(Brash et al., Mol. Cell Biol., 7:2031-2034(1987))が含まれる。
【0404】
組換え産物をコードする核酸の移入のための他のアプローチおよびベクターは、例えば国際公開公報第2014055668号、および米国特許第7,446,190号に記載されているものである。
【0405】
いくつかの態様では、細胞、例えばT細胞は、増殖中または増殖後のいずれかに、例えばT細胞受容体(TCR)またはキメラ抗原受容体(CAR)でトランスフェクトされ得る。所望の受容体の遺伝子を導入するためのこのトランスフェクションは、例えば任意の適切なレトロウイルスベクターを用いて実施することができる。次に、遺伝子改変された細胞集団を、最初の刺激(例えば抗CD3/抗CD28刺激)から解放し、その後、例えば新たに導入された受容体を介して、第2の種類の刺激で刺激し得る。この第2の種類の刺激には、ペプチド/MHC分子の形態の抗原刺激、遺伝子導入された受容体のコグネイト(架橋)リガンド(例えばCARの天然リガンド)、または新しい受容体のフレームワーク内で直接結合する(例えば受容体内の定常領域を認識することによって)任意のリガンド(抗体など)が含まれ得る。例えばCheadle et al,“Chimeric antigen receptors for T-cell based therapy”Methods Mol Biol.2012;907:645-66またはBarrett et al., Chimeric Antigen Receptor Therapy for Cancer Annual Review of Medicine Vol.65:333-347(2014)参照。
【0406】
いくつかの場合には、細胞、例えばT細胞が活性化されることを必要としないベクターが使用され得る。いくつかのそのような例では、細胞は、活性化の前に選択および/または形質導入され得る。したがって、細胞は、細胞の培養前または培養後に、およびいくつかの場合には、培養の少なくとも一部と同時にまたは培養の少なくとも一部の間に操作され得る。
【0407】
さらなる核酸、例えば導入のための遺伝子の中には、移入された細胞の生存能および/または機能を促進することなどによって、治療法の効果を改善するためのもの;細胞の選択および/または評価のための遺伝的マーカーを提供するための遺伝子、例えばインビボでの生存率または局在を評価するための遺伝子;例えば、Lupton S.D.et al., Mol. and Cell Biol., 11:6(1991);およびRiddell et al., Human Gene Therapy 3:319-338(1992)によって記載されているように細胞をインビボでネガティブ選択に感受性にすることによって、安全性を改善するための遺伝子がある;ドミナントポジティブ選択可能マーカーとネガティブ選択可能マーカーの融合に由来する二機能性選択可能融合遺伝子の使用を記載するLupton et al.によるPCT/US91/08442およびPCT/US94/05601の刊行物も参照のこと。例えばRiddell et al.,米国特許第6,040,177号、14~17段参照。
【0408】
C.遺伝子操作のための細胞および細胞の調製
いくつかの態様では、核酸は異種であり、すなわち通常は細胞または細胞から得られる試料中には存在せず、例えば操作されている細胞中に通常は認められない別の生物もしくは細胞、またはそのような細胞が由来する生物から得られるものである。いくつかの態様では、複数の異なる細胞型からの様々なドメインをコードする核酸のキメラ組み合わせを含有するものを含む、天然には認められない核酸などの核酸は、天然には存在しない。
【0409】
細胞は通常、哺乳動物細胞などの真核細胞であり、典型的にはヒト細胞である。いくつかの態様では、細胞は、血液、骨髄、リンパ、またはリンパ系器官に由来し、先天性または適応免疫の細胞などの免疫系の細胞、例えばリンパ球を含む骨髄またはリンパ系細胞、典型的にはT細胞および/またはNK細胞である。他の例示的な細胞としては、人工多能性幹細胞(iPSC)を含む多能性幹細胞などの幹細胞が挙げられる。細胞は、典型的には、対象から直接単離されたもの、および/または対象から単離されて凍結されたものなどの初代細胞である。いくつかの態様では、細胞は、T細胞または他の細胞型の1つまたは複数のサブセット、例えば全T細胞集団、CD4細胞、CD8細胞、およびそれらの亜集団、例えば機能、活性化状態、成熟度、分化、拡大、再循環、局在化、および/もしくは持続能力についての潜在能、抗原特異性、抗原受容体の種類、特定の器官もしくは区画における存在、マーカーもしくはサイトカイン分泌プロフィール、ならびに/または分化の程度によって定義されるものを含む。治療される対象に関して、細胞は同種異系および/または自己由来であり得る。方法の中には、既製の方法が含まれる。既製の技術などに関するいくつかの局面では、細胞は、人工多能性幹細胞(iPSC)などの幹細胞のような多能性である。いくつかの態様では、方法は、凍結保存の前または後に、対象から細胞を単離すること、それらを調製し、処理し、培養し、および/または操作すること、ならびにそれらを同じ対象に再導入することを含む。
【0410】
T細胞ならびに/またはCD4および/もしくはCD8T細胞のサブタイプおよび亜集団の中には、ナイーブT(TN)細胞、エフェクターT細胞(TEFF)、メモリーT細胞およびそのサブタイプ、例えば幹細胞メモリーT(TSCM)細胞、セントラルメモリーT(TCM)細胞、エフェクターメモリーT(TEM)細胞、または最終分化エフェクターメモリーT細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、未熟T細胞、成熟T細胞、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、粘膜関連インバリアントT(MAIT)細胞、自然発生および適応制御性T(Treg)細胞、ヘルパーT細胞、例えばTH1細胞、TH2細胞、TH3細胞、TH17細胞、TH9細胞、TH22細胞、濾胞性ヘルパーT細胞、α/βT細胞、およびδ/γT細胞がある。
【0411】
いくつかの態様では、細胞はナチュラルキラー(NK)細胞である。いくつかの態様では、細胞は、単球または顆粒球、例えば骨髄細胞、マクロファージ、好中球、樹状細胞、肥満細胞、好酸球、および/または好塩基球である。
【0412】
いくつかの態様では、細胞は、遺伝子操作によって導入された1つまたは複数の核酸を含み、それによってそのような核酸の組換え産物または遺伝子操作された産物を発現する。いくつかの態様では、核酸は異種であり、すなわち通常は細胞または細胞から得られる試料中には存在せず、例えば操作されている細胞中に通常は認められない別の生物もしくは細胞、またはそのような細胞が由来する生物から得られるものである。いくつかの態様では、複数の異なる細胞型からの様々なドメインをコードする核酸のキメラ組み合わせを含有するものを含む、天然には認められない核酸などの核酸は、天然には存在しない。
【0413】
いくつかの態様では、操作された細胞の調製は、1つまたは複数の培養および/または調製工程を含む。CARなどのトランスジェニック受容体をコードする核酸を導入するための細胞は、生物学的試料などの試料、例えば対象から得られたまたは対象に由来するものから単離され得る。いくつかの態様では、細胞が単離される対象は、疾患もしくは状態を有するか、または細胞療法を必要とするか、または細胞療法が投与される対象である。いくつかの態様における対象は、細胞が単離、処理、および/または操作されている養子細胞療法などの特定の治療的介入を必要とするヒトである。
【0414】
したがって、いくつかの態様における細胞は初代細胞、例えば初代ヒト細胞である。試料には、組織、体液、および対象から直接採取した他の試料、ならびに分離、遠心分離、遺伝子操作(例えばウイルスベクターによる形質導入)、洗浄、および/またはインキュベーションなどの1つまたは複数の処理工程から得られる試料が含まれる。生物学的試料は、生物学的供給源から直接得られた試料または処理された試料であり得る。生物学的試料には、血液、血漿、血清、脳脊髄液、滑液、尿および汗などの体液、組織および臓器に由来する処理された試料を含む組織および臓器試料が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0415】
いくつかの局面では、細胞が由来するまたは単離される試料は、血液もしくは血液由来の試料であるか、またはアフェレーシスもしくは白血球アフェレーシスの産物であるかもしくはそれに由来する。例示的な試料としては、全血、末梢血単核細胞(PBMC)、白血球、骨髄、胸腺、組織生検材料、腫瘍、白血病、リンパ腫、リンパ節、腸管関連リンパ組織、粘膜関連リンパ組織、脾臓、他のリンパ組織、肝臓、肺、胃、腸、結腸、腎臓、膵臓、乳房、骨、前立腺、子宮頸、精巣、卵巣、扁桃腺、または他の臓器、および/またはそれに由来する細胞が挙げられる。試料には、細胞療法、例えば養子細胞療法に関連して、自己由来および同種異系供給源由来の試料が含まれる。
【0416】
いくつかの態様では、細胞は細胞株、例えばT細胞株に由来する。いくつかの態様における細胞は、異種供給源、例えばマウス、ラット、非ヒト霊長動物、およびブタから得られる。
【0417】
いくつかの態様では、細胞の単離は、1つまたは複数の調製および/または非親和性ベースの細胞分離工程を含む。いくつかの例では、細胞は、例えば不要な成分を除去する、所望の成分を濃縮する、特定の試薬に感受性の細胞を溶解または除去するために、洗浄、遠心分離、および/または1つもしくは複数の試薬の存在下でインキュベートされる。いくつかの例では、細胞は、密度、付着特性、サイズ、感受性、および/または特定の成分に対する耐性などの1つまたは複数の特性に基づいて分離される。
【0418】
いくつかの例では、対象の循環血液由来の細胞は、例えばアフェレーシスまたは白血球アフェレーシスによって得られる。試料は、いくつかの局面では、T細胞を含むリンパ球、単球、顆粒球、B細胞、他の有核白血球、赤血球、および/または血小板を含み、いくつかの局面では、赤血球および血小板以外の細胞を含む。
【0419】
いくつかの態様では、対象から採集された血球を、例えば血漿画分を除去し、その後の処理工程のために細胞を適切な緩衝液または培地に入れるために洗浄する。いくつかの態様では、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で細胞を洗浄する。いくつかの態様では、洗浄溶液は、カルシウムおよび/またはマグネシウムおよび/または多くのもしくはすべての二価カチオンを含まない。いくつかの局面では、洗浄工程は、製造業者の指示に従って半自動「フロースルー」遠心分離機(例えばCobe 2991細胞プロセッサ、Baxter)によって達成される。いくつかの局面では、洗浄工程は、製造業者の指示に従って接線流ろ過(TFF)によって達成される。いくつかの態様では、細胞は、洗浄後に、例えばCa++/Mg++を含まないPBSなどの様々な生体適合性緩衝液に再懸濁される。特定の態様では、血球試料の成分を除去し、細胞を培地に直接再懸濁する。
【0420】
いくつかの態様では、方法は、密度に基づく細胞分離方法、例えば赤血球を溶解することによる末梢血からの白血球の調製、およびパーコールまたはフィコール勾配による遠心分離を含む。
【0421】
いくつかの態様では、単離方法は、表面マーカー、例えば表面タンパク質、細胞内マーカー、または核酸などの1つまたは複数の特定の分子の細胞における発現または存在に基づく種々の細胞型の分離を含む。いくつかの態様では、そのようなマーカーに基づく分離のための任意の公知の方法を使用し得る。いくつかの態様では、分離は、親和性または免疫親和性に基づく分離である。例えば、いくつかの局面における単離は、1つまたは複数のマーカー、典型的には細胞表面マーカーの細胞での発現または発現レベルに基づく細胞および細胞集団の分離、例えばそのようなマーカーに特異的に結合する抗体または結合パートナーとのインキュベーション、続いて一般に、洗浄工程および抗体または結合パートナーに結合していない細胞からの抗体または結合パートナーに結合した細胞の分離によるものを含む。
【0422】
そのような分離工程は、試薬に結合した細胞をさらなる使用のために保持する陽性選択、および/または抗体もしくは結合パートナーに結合しなかった細胞を保持する陰性選択に基づき得る。いくつかの例では、両方の画分をさらなる使用のために保持する。いくつかの局面では、陰性選択は、分離が、所望の集団以外の細胞によって発現されるマーカーに基づいて最も良好に行われるように、異種集団において細胞型を特異的に同定する抗体が利用可能でない場合に特に有用であり得る。
【0423】
分離は、特定の細胞集団または特定のマーカーを発現する細胞の100%の濃縮または除去をもたらす必要はない。例えば、マーカーを発現する細胞などの特定の種類の細胞の陽性選択または濃縮は、そのような細胞の数または割合を増加させることを指すが、マーカーを発現しない細胞の完全な非存在をもたらす必要はない。同様に、マーカーを発現する細胞などの特定の種類の細胞の陰性選択、除去、または枯渇は、そのような細胞の数または割合を減少させることを指すが、そのような細胞すべての完全な除去をもたらす必要はない。
【0424】
いくつかの例では、1回の工程から陽性または陰性選択された画分が、その後の陽性または陰性選択などの別の分離工程に供される、複数回の分離工程が行われる。いくつかの例では、それぞれが陰性選択の標的となるマーカーに特異的な複数の抗体または結合パートナーと共に細胞をインキュベートすることなどによって、複数のマーカーを同時に発現する細胞を単一の分離工程で枯渇させることができる。同様に、様々な細胞型上に発現された複数の抗体または結合パートナーと共に細胞をインキュベートすることによって、複数の細胞型を同時に陽性選択することができる。
【0425】
例えば、いくつかの局面では、T細胞の特定の亜集団、例えば陽性または高レベルの1つまたは複数の表面マーカー、例えばCD28、CD62L、CCR7、CD27、CD127、CD4、CD8、CD45RA、および/またはCD45ROT細胞を発現する細胞は、陽性または陰性選択技術によって単離される。
【0426】
例えばCD3、CD28T細胞は、抗CD3/抗CD28結合磁気ビーズ(例えばDYNABEADS(登録商標)M-450 CD3/CD28T Cell Expander)を用いて陽性選択することができる。
【0427】
いくつかの態様では、単離は、陽性選択による特定の細胞集団の濃縮、または陰性選択による特定の細胞集団の枯渇によって行われる。いくつかの態様では、陽性または陰性選択は、それぞれ陽性または陰性選択された細胞上に発現される(マーカー)または比較的高いレベルで発現される(マーカー)1つまたは複数の表面マーカーに特異的に結合する1つまたは複数の抗体または他の結合剤と共に細胞をインキュベートすることによって達成される。
【0428】
いくつかの態様では、T細胞は、B細胞、単球、またはCD14などの他の白血球のような非T細胞上に発現されるマーカーの陰性選択によってPBMC試料から分離される。いくつかの局面では、CD4またはCD8選択工程を用いてCD4ヘルパーT細胞とCD8細胞傷害性T細胞を分離する。そのようなCD4およびCD8集団は、1つまたは複数のナイーブT細胞、メモリーT細胞、および/またはエフェクターT細胞亜集団上に発現されるまたは比較的高い程度に発現されるマーカーについての陽性または陰性選択によって、さらに亜集団に分類することができる。
【0429】
いくつかの態様では、CD8細胞は、それぞれの亜集団に関連する表面抗原に基づく陽性選択または陰性選択などによって、ナイーブ、セントラルメモリー、エフェクターメモリー、および/またはセントラルメモリー幹細胞がさらに濃縮または枯渇される。いくつかの態様では、セントラルメモリーT(TCM)細胞の濃縮は、いくつかの局面ではそのような亜集団において特に堅固である、投与後の長期生存、増殖、および/または生着を改善するためなどの有効性を高めるために行われる。Terakura et al., (2012) Blood.1:72-82;Wang et al.,(2012) J Immunother. 35(9):689-701参照。いくつかの態様では、TCMに富むCD8T細胞とCD4T細胞とを組み合わせることは、有効性をさらに増強する。
【0430】
態様では、メモリーT細胞は、CD8末梢血リンパ球のCD62LおよびCD62L-サブセットの両方に存在する。PBMCは、例えば抗CD8抗体および抗CD62L抗体を使用して、CD62L-CD8および/またはCD62LCD8画分を濃縮または枯渇させることができる。
【0431】
いくつかの態様では、セントラルメモリーT(TCM)細胞の濃縮は、CD45RO、CD62L、CCR7、CD28、CD3、および/またはCD127の陽性または高表面発現に基づく;いくつかの局面では、それは、CD45RAおよび/またはグランザイムBを発現するかまたは高発現する細胞についての陰性選択に基づく。いくつかの局面では、TCM細胞が濃縮されたCD8集団の単離は、CD4、CD14、CD45RAを発現する細胞の枯渇、およびCD62Lを発現する細胞の陽性選択または濃縮によって行われる。一局面では、セントラルメモリーT(TCM)細胞の濃縮は、CD4発現に基づいて選択された細胞の陰性画分から出発して、これをCD14およびCD45RAの発現に基づく陰性選択、ならびにCD62Lの発現に基づく陽性選択に供して行われる。いくつかの局面ではそのような選択は同時に行われ、他の局面では連続的にどちらの順序でも行われる。いくつかの局面では、CD8細胞集団または亜集団を調製するのに使用されるのと同じCD4発現に基づく選択工程が、任意で1つまたは複数のさらなる陽性または陰性選択工程後に、CD4に基づく分離からの陽性および陰性画分の両方が保持され、方法のその後の工程で使用されるように、CD4細胞集団または亜集団を生成するためにも用いられる。
【0432】
特定の例では、PBMCの試料または他の白血球試料を、陰性画分と陽性画分の両方が保持されるCD4細胞の選択に供する。次いで、陰性画分を、CD14およびCD45RAまたはCD19の発現に基づく陰性選択、ならびにCD62LまたはCCR7などのセントラルメモリーT細胞に特徴的なマーカーに基づく陽性選択に供し、ここで陽性選択と陰性選択はどちらの順序でも行われる。
【0433】
CD4Tヘルパー細胞は、細胞表面抗原を有する細胞集団を同定することによって、ナイーブ細胞、セントラルメモリー細胞、およびエフェクター細胞に分類される。CD4リンパ球は標準的な方法によって得ることができる。いくつかの態様では、ナイーブCD4Tリンパ球は、CD45RO-、CD45RA、CD62L、CD4T細胞である。いくつかの態様では、セントラルメモリーCD4細胞はCD62LおよびCD45ROである。いくつかの態様では、エフェクターCD4細胞はCD62L-およびCD45RO-である。
【0434】
一例では、陰性選択によってCD4細胞を濃縮するために、モノクローナル抗体カクテルは、典型的にはCD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DR、およびCD8に対する抗体を含む。いくつかの態様では、抗体または結合パートナーは、陽性および/または陰性選択のための細胞の分離を可能にする、磁気ビーズまたは常磁性ビーズなどの固体支持体またはマトリックスに結合される。例えば、いくつかの態様では、細胞および細胞集団は、免疫磁気(または親和性磁気)分離技術(Methods in Molecular Medicine, vol.58: Metastasis Research Protocols, Vol. 2: Cell Behavior In vitro and In vivo, p 17-25 Edited by: S.A. Brooks and U. Schumacher(著作権)Humana Press Inc., Totowa, NJに総説されている)を用いて分離または単離される。
【0435】
いくつかの局面では、分離される細胞の試料または組成物は、小型の磁化可能または磁気応答性材料、例えば磁気応答性粒子または微粒子、例えば常磁性ビーズ(例えばDynalbeadsまたはMACSビーズなど)と共にインキュベートされる。磁気応答性材料、例えば粒子は、一般に、分離することを所望する、例えば陰性または陽性選択することを所望する1つまたは複数の細胞、または細胞集団上に存在する分子、例えば表面マーカーに特異的に結合する結合パートナー、例えば抗体に直接または間接的に結合される。
【0436】
いくつかの態様では、磁性粒子またはビーズは、抗体または他の結合パートナーなどの特異的結合成員に結合した磁気応答性材料を含む。磁気分離方法に使用される多くの周知の磁気応答性材料がある。適切な磁性粒子としては、参照により本明細書に組み入れられる、Moldayの米国特許第4,452,773号、および欧州特許第452342B号に記載されているものが挙げられる。Owenの米国特許第4,795,698号およびLibertiらの米国特許第5,200,084号に記載されているもののようなコロイドサイズの粒子が他の例である。
【0437】
インキュベーションは、一般に、抗体もしくは結合パートナー、または磁性粒子もしくはビーズに付着している、そのような抗体もしくは結合パートナーに特異的に結合する二次抗体もしくは他の試薬などの分子が、試料中の細胞上に存在する場合は細胞表面分子に特異的に結合する条件下で行われる。
【0438】
いくつかの局面では、試料を磁場中に置き、磁気応答性粒子または磁化可能粒子が付着している細胞を磁石に引きつけ、非標識細胞から分離する。陽性選択の場合は、磁石に引き寄せられる細胞が保持される;陰性選択の場合は、引き寄せられない細胞(非標識細胞)が保持される。いくつかの局面では、陽性選択と陰性選択の組み合わせは同じ選択工程の間に行われ、この場合は陽性画分と陰性画分が保持され、さらに処理されるかまたはさらなる分離工程に供される。
【0439】
特定の態様では、磁気応答性粒子は、一次抗体または他の結合パートナー、二次抗体、レクチン、酵素、またはストレプトアビジンで被覆されている。特定の態様では、磁性粒子は、1つまたは複数のマーカーに特異的な一次抗体のコーティングを介して細胞に付着している。特定の態様では、ビーズではなく細胞を一次抗体または結合パートナーで標識し、次いで細胞型特異的二次抗体または他の結合パートナー(例えばストレプトアビジン)で被覆した磁性粒子を添加する。特定の態様では、ストレプトアビジン被覆磁性粒子を、ビオチン化一次抗体または二次抗体と組み合わせて使用する。
【0440】
いくつかの態様では、磁気応答性粒子は、その後インキュベート、培養および/または操作されることになる細胞に付着したままである;いくつかの局面では、粒子は患者への投与のための細胞に付着したままである。いくつかの態様では、磁化可能粒子または磁気応答性粒子は細胞から除去される。細胞から磁化可能粒子を除去する方法は公知であり、例えば競合する非標識抗体、および磁化可能粒子または切断可能なリンカーに結合した抗体の使用を含む。いくつかの態様では、磁化可能粒子は生分解性である。
【0441】
いくつかの態様では、親和性に基づく選択は、磁気活性化細胞選別(MACS)(Miltenyi Biotec, Auburn, CA)による。磁気活性化細胞選別(MACS)システムは、磁化された粒子が付着した細胞の高純度の選択が可能である。特定の態様では、MACSは、外部磁場の印加後に非標的種と標的種が連続的に溶出されるモードで動作する。すなわち、磁化粒子に付着した細胞は、付着していない種が溶出されている間、適所に保持される。次に、この最初の溶出工程が完了した後、磁場に捕捉されて溶出が妨げられていた種は、それらが溶出され、回収され得るように何らかの方法で解放される。特定の態様では、非標的細胞は標識され、細胞の不均一な集団から除去される。
【0442】
特定の態様では、単離または分離は、本発明の方法の単離、細胞調製、分離、処理、インキュベーション、培養、および/または製剤化工程のうちの1つまたは複数を実行するシステム、機器、または装置を用いて実施される。いくつかの局面では、システムは、例えばエラー、使用者の取り扱い、および/または汚染を最小限に抑えるために、これらの工程のそれぞれを閉鎖環境または無菌環境で実行するために使用される。一例では、システムは、国際特許出願公開番号第2009/072003号、またはUS20110003380A1号に記載されているシステムである。
【0443】
いくつかの態様では、システムまたは装置は、統合システムもしくは自己完結型システムで、および/または自動化されたもしくはプログラム可能な方式で、単離、処理、操作、および製剤化工程のうちの1つまたは複数、例えば全部を実行する。いくつかの局面では、システムまたは装置は、システムまたは装置に接続されたコンピュータおよび/またはコンピュータプログラムを含み、これにより、使用者が処理、単離、操作および製剤化工程をプログラムする、制御する、そのアウトカムを評価する、および/またはその様々な局面を調整することが可能になる。
【0444】
いくつかの局面では、分離および/または他の工程は、例えば閉鎖系および無菌系における臨床規模レベルでの細胞の自動分離のために、CliniMACSシステム(Miltenyi Biotec)を用いて行われる。構成要素には、統合マイクロコンピュータ、磁気分離ユニット、蠕動ポンプ、および様々なピンチバルブが含まれ得る。統合コンピュータは、いくつかの局面では、機器のすべての構成要素を制御し、標準化された順序で反復手順を実行するようにシステムに指示する。いくつかの局面における磁気分離ユニットは、可動永久磁石と選択カラム用のホルダとを含む。蠕動ポンプはチューブセット全体の流速を制御し、ピンチバルブと共に、システムを通る緩衝液の制御された流れおよび細胞の継続的な懸濁を確実にする。
【0445】
いくつかの局面におけるCliniMACSシステムは、滅菌非発熱性溶液中で供給される抗体結合磁化可能粒子を使用する。いくつかの態様では、細胞を磁性粒子で標識した後、細胞を洗浄して過剰の粒子を除去する。続いて細胞調製バッグをチューブセットに接続し、次に緩衝剤を含むバッグおよび細胞収集バッグにチューブセットを接続する。チューブセットは、プレカラムと分離カラムを含むあらかじめ組み立てられた滅菌チューブからなり、使い捨て専用である。分離プログラムの開始後、システムは自動的に細胞試料を分離カラムに適用する。標識細胞はカラム内に保持され、非標識細胞は一連の洗浄工程によって除去される。いくつかの態様では、本明細書に記載の方法で使用するための細胞集団は標識されておらず、カラム内に保持されない。いくつかの態様では、本明細書に記載の方法で使用するための細胞集団は標識されており、カラム内に保持される。いくつかの態様では、本明細書に記載の方法で使用するための細胞集団は、磁場の除去後にカラムから溶出され、細胞収集バッグ内に収集される。
【0446】
特定の態様では、分離および/または他の工程は、CliniMACS Prodigyシステム(Miltenyi Biotec)を使用して行われる。いくつかの局面におけるCliniMACS Prodigyシステムは、遠心分離による細胞の自動洗浄および分画を可能にする細胞処理ユニットを備える。CliniMACS Prodigyシステムはまた、ソース細胞産物の巨視的層を識別することによって最適な細胞分画エンドポイントを決定する搭載カメラおよび画像認識ソフトウェアを含み得る。例えば、末梢血は自動的に赤血球、白血球および血漿層に分離される。CliniMACS Prodigyシステムはまた、例えば細胞分化および増殖、抗原負荷、ならびに長期細胞培養などの細胞培養プロトコルを達成する統合細胞培養チャンバを含み得る。入力ポートは培地の無菌除去および補充を可能にし、細胞は統合顕微鏡を使用してモニタリングすることができる。例えばKlebanoff et al., (2012)J Immunother. 35(9): 651-660, Terakura et al., Blood.(2012) 1: 72-82およびWang et al.,(2012)J Immunother. 35(9): 689-701参照。
【0447】
いくつかの態様では、本明細書に記載の細胞集団はフローサイトメトリーによって収集および濃縮(または枯渇)され、フローサイトメトリーでは、複数の細胞表面マーカーについて染色された細胞が流体流中で運ばれる。いくつかの態様では、本明細書に記載の細胞集団は、分取規模(蛍光活性化細胞選別FACS)選別によって収集および濃縮(または枯渇)される。特定の態様では、本明細書に記載の細胞集団は、FACSに基づく検出システムと組み合わせた微小電気機械システム(MEMS)チップの使用によって収集および濃縮(または枯渇)される(例えば国際公開公報第2010/033140号、Cho et al.,(2010)Lab Chip 10, 1567-1573;およびGodin et al.,(2008)J Biophoton. 1(5): 355-376参照)。どちらの場合も、細胞を複数のマーカーで標識して、明確に定義されたT細胞サブセットを高純度で単離することができる。
【0448】
いくつかの態様では、抗体または結合パートナーは、陽性選択および/または陰性選択のための分離を容易にするために、1つまたは複数の検出可能なマーカーで標識される。例えば、分離は蛍光標識抗体への結合に基づき得る。いくつかの例では、1つまたは複数の細胞表面マーカーに特異的な抗体または他の結合パートナーの結合に基づく細胞の分離は、例えばフローサイトメトリー検出システムと組み合わせた、分取規模(FACS)および/または微小電気機械システム(MEMS)チップを含む蛍光活性化細胞選別(FACS)などによって流体流中で行われる。そのような方法は、同時に複数のマーカーに基づく陽性選択および陰性選択を可能にする。
【0449】
いくつかの態様では、調製方法は、単離、インキュベーション、および/または操作の前または後のいずれかに、細胞を凍結する、例えば凍結保存する工程を含む。いくつかの態様では、凍結およびその後の解凍工程は、細胞集団中の顆粒球および、ある程度まで、単球を除去する。いくつかの態様では、細胞は、例えば血漿および血小板を除去するための洗浄工程の後に、凍結溶液中に懸濁される。いくつかの局面では様々な公知の凍結溶液およびパラメーターのいずれを使用してもよい。一例は、20%DMSOおよび8%ヒト血清アルブミン(HSA)を含有するPBS、または他の適切な細胞凍結培地を使用することを含む。次にこれを培地で1:1に希釈して、DMSOおよびHSAの最終濃度がそれぞれ10%および4%になるようにする。次いで細胞を一般に毎分1℃の速度で-80℃に凍結し、液体窒素貯蔵タンクの気相中で保存する。
【0450】
いくつかの態様では、細胞は、遺伝子操作の前またはそれに関連してインキュベートおよび/または培養される。インキュベーション工程は、培養、刺激、活性化、および/または増殖を含み得る。インキュベーションおよび/または操作は、ユニット、チャンバ、ウェル、カラム、チューブ、チューブセット、バルブ、バイアル、培養皿、バッグ、または細胞を培養するための他の容器などの培養容器中で実施され得る。いくつかの態様では、組成物または細胞は、刺激条件または刺激物質の存在下でインキュベートされる。そのような条件には、集団中の細胞の増殖、拡大、活性化、および/もしくは生存を誘導する、抗原曝露を模倣する、ならびに/または組換え抗原受容体の導入などの遺伝子操作のために細胞をプライミングするように設計されたものが含まれる。
【0451】
条件は、特定の培地、温度、酸素含量、二酸化炭素含量、時間、作用物質、例えば栄養素、アミノ酸、抗生物質、イオン、および/または刺激因子、例えばサイトカイン、ケモカイン、抗原、結合パートナー、融合タンパク質、組換え可溶性受容体、および細胞を活性化するように設計された他の任意の剤の1つまたは複数を含み得る。
【0452】
いくつかの態様では、刺激条件または刺激物質は、TCR複合体の細胞内シグナル伝達ドメインを活性化または刺激することができる1つまたは複数の作用物質、例えばリガンドを含む。いくつかの局面では、作用物質は、T細胞におけるTCR/CD3細胞内シグナル伝達カスケードを作動または開始させる。そのような作用物質には、TCRに特異的なものなどの抗体、例えば抗CD3が含まれ得る。いくつかの態様では、刺激条件は、共刺激受容体、例えば抗CD28を刺激することができる1つまたは複数の作用物質、例えばリガンドを含む。いくつかの態様では、そのような作用物質および/またはリガンドは、ビーズなどの固体支持体および/または1つもしくは複数のサイトカインに結合し得る。任意で、増殖方法は、抗CD3抗体および/または抗CD28抗体を培地に(例えば少なくとも約0.5ng/mlの濃度で)添加する工程をさらに含み得る。いくつかの態様では、刺激物質は、IL-2、IL-15、および/またはIL-7を含む。いくつかの局面において、IL-2濃度は、少なくとも約10単位/mLである。
【0453】
いくつかの局面では、インキュベーションは、Riddellらの米国特許第6,040,177号、Klebanoff et al.,(2012)J Immunother. 35(9): 651-660,Terakura et al.,(2012) Blood.1:72-82および/またはWang et al.,(2012)J Immunother. 35(9): 689-701に記載されているような技術に従って行われる。
【0454】
いくつかの態様では、T細胞は、培養開始組成物に、非分裂末梢血単核細胞(PBMC)などのフィーダ細胞を添加すること(例えば、得られる細胞集団が、増殖させるべき初期集団中の各Tリンパ球につき少なくとも約5、10、20、または40またはそれ以上のPBMCフィーダ細胞を含むように)、および培養物をインキュベートすること(例えばT細胞の数を増やすのに十分な時間)によって増殖される。いくつかの局面では、非分裂フィーダ細胞は、γ線照射PBMCフィーダ細胞を含み得る。いくつかの態様では、PBMCは、細胞分裂を防ぐために約3000~3600ラドの範囲のγ線を照射される。いくつかの局面では、フィーダ細胞は、T細胞集団の添加の前に培地に添加される。
【0455】
いくつかの態様では、刺激条件は、ヒトTリンパ球の増殖に適した温度、例えば少なくとも約25℃、一般に少なくとも約30℃、一般に37℃または約37℃を含む。任意で、インキュベーションは、非分裂EBV形質転換リンパ芽球様細胞(LCL)をフィーダ細胞として添加することをさらに含み得る。LCLは、約6000~10,000ラドの範囲のγ線で照射することができる。いくつかの局面におけるLCLフィーダ細胞は、少なくとも約10:1のLCLフィーダ細胞対初期Tリンパ球の比率などの、任意の適切な量で提供される。
【0456】
態様では、抗原特異的CD4および/またはCD8T細胞などの抗原特異的T細胞は、ナイーブまたは抗原特異的Tリンパ球を抗原で刺激することによって得られる。例えば、サイトメガロウイルス抗原に対する抗原特異的T細胞株またはクローンは、感染した対象からT細胞を単離し、同じ抗原で細胞をインビトロで刺激することによって生成することができる。
【0457】
III. 例示的な治療転帰およびそれを評価するための方法
本明細書で提供される方法、組成物、組合せ、使用、キットおよび製品のいくつかの態様では、提供される併用療法は、以下に記載されるような1つまたは複数の治療転帰、例えば療法または治療に関連するパラメーターのいずれか1つまたは複数に関連する特徴をもたらす。いくつかの態様では、この方法は、T細胞、例えばT細胞に基づく療法のために投与されるT細胞の曝露、持続性および増殖の評価を含む。いくつかの態様では、本明細書で提供される方法における細胞、例えば免疫療法、例えばT細胞療法のために投与される細胞の曝露、もしくは長期間の拡大および/もしくは持続性、ならびに/または細胞表現型もしくは細胞の機能的活性の変化は、インビトロまたはエクスビボでT細胞の特徴を評価することによって測定することができる。いくつかの態様では、そのようなアッセイは、本明細書で提供される併用療法を投与する前、投与中または投与した後に、T細胞の機能、例えばT細胞療法を決定または確認するために使用することができる。
【0458】
いくつかの態様では、併用療法は、併用療法による治療のためおよび/もしくは併用療法を継続するための対象を同定するための1つもしくは複数のスクリーニング工程、ならびに/または治療転帰の評価のためおよび/もしくは治療転帰をモニターするための工程をさらに含むことができる。いくつかの態様では、治療転帰の評価のための工程は、治療を評価および/もしくはモニターするための工程、ならびに/または療法のさらなる工程もしくは残りの工程の投与のためおよび/もしくは反復療法のための対象を同定するための工程を含むことができる。いくつかの態様では、スクリーニング工程および/または治療転帰の評価は、本明細書で提供される併用療法の用量、頻度、持続期間、時期および/または順序を決定するために使用することができる。
【0459】
いくつかの態様では、本明細書に記載されるスクリーニング工程および/または転帰についての治療の評価のいずれもが、提供される併用療法の1つまたは複数の工程の投与、例えばT細胞療法(例えばCAR発現T細胞)、および/またはBTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤の投与前、投与中、投与の経過中、または投与後に使用することができる。いくつかの態様では、評価は、本明細書で提供される方法のいずれかを実施する前、実施中、実施の経過中、または実施後に行われる。いくつかの態様では、評価は、本明細書で提供される方法を実施する前に行われる。いくつかの態様では、評価は、本明細書で提供される方法の1つまたは複数の工程を実施した後に行われる。いくつかの態様では、評価は、例えば併用療法を受けるのに適したおよび/または受けやすい患者をスクリーニングおよび同定するために、提供される併用療法の1つまたは複数の工程の投与に先立って実施される。いくつかの態様では、評価は、例えば、中間または最終的な治療転帰を評価するため、例えば治療の効果を決定するおよび/または治療を継続もしくは反復するかどうかを決定するため、および/または併用療法の残りの工程を投与するかどうかを決定するために、提供される併用療法の1つまたは複数の工程の投与期間中、投与の経過期間中、または投与後に実施される。
【0460】
いくつかの態様では、治療の転帰には、免疫機能の改善、例えば細胞に基づく療法のために投与されるT細胞および/または体内の内因性T細胞の免疫機能の改善が含まれる。いくつかの態様では、例示的な治療転帰には、T細胞増殖の増強、T細胞の機能的活性の増強、免疫細胞表現型マーカー発現の変化、例えば対象に投与される操作されたT細胞、例えばCAR-T細胞に関連する特徴を含むが、これらに限定されるわけではない。いくつかの態様では、例示的な治療転帰には、疾患負荷、例えば腫瘍負荷の軽減、臨床転帰の改善および/または治療効果の増強が含まれる。
【0461】
いくつかの態様では、スクリーニング工程および/または転帰についての治療の評価には、細胞に基づく療法のために投与されるT細胞の生存率および/または機能を評価することが含まれる。いくつかの態様では、スクリーニング工程および/または転帰についての治療の評価には、サイトカインまたは成長因子のレベルを評価することが含まれる。いくつかの態様では、スクリーニング工程および/または転帰についての治療の評価には、疾患負荷および/または改善を評価すること、例えば腫瘍負荷および/または臨床転帰を評価することが含まれる。いくつかの態様では、スクリーニング工程および/または転帰についての治療の評価のどちらもが、本明細書に記載されるおよび/または当技術分野において公知の評価方法および/またはアッセイのいずれかを含むことができ、例えば併用療法の1つまたは複数の工程の投与前、投与期間中、投与の経過期間中、または投与後1回または複数回実施することができる。提供される方法のいくつかの態様において評価され得る、治療転帰に関連するパラメーターの例示的なセットには、末梢血免疫細胞集団のプロフィールおよび/または腫瘍負荷が含まれる。
【0462】
いくつかの態様では、方法は、対象における細胞療法の効果に影響を及ぼす。いくつかの態様では、BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤と共に本方法における細胞の用量を投与した後の対象における組換え受容体発現細胞、例えばCAR発現細胞の持続性、拡大および/または存在は、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与を伴わない方法によって達成されるものと比較してより大きい。いくつかの態様では、投与されたT細胞療法、例えばCAR発現T細胞の対象における拡大および/または持続性は、T細胞療法がキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの非存在下で対象に投与される方法と比較して評価される。いくつかの態様では、方法は、T細胞療法がキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの非存在下で対象に投与される方法と比較して、対象における増加したまたは長期の拡大および/または持続性を示す投与されたT細胞をもたらす。
【0463】
いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、組換え受容体を発現する細胞の用量がキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの非存在下で対象に投与される方法と比較して、対象における疾患負荷、例えば腫瘍負荷を減少させる。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、組換え受容体を発現する細胞の用量がキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの非存在下で対象に投与される方法と比較して、対象における芽球髄を減少させる。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、組換え受容体を発現する細胞の用量がキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの非存在下で対象に投与される方法と比較して、改善された臨床転帰、例えば客観的奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)をもたらす。
【0464】
いくつかの態様では、対象は、併用療法の1つまたは複数の工程の投与の前にスクリーニングされ得る。例えば、対象は、併用療法を投与することに対する適合性、応答性および/または感受性を決定するために、併用療法の投与の前に、疾患の特徴および/または疾患負荷、例えば腫瘍負荷についてスクリーニングされ得る。いくつかの態様では、スクリーニング工程および/または治療転帰の評価は、本明細書で提供される併用療法の用量、頻度、持続期間、時期および/または順序を決定するために使用することができる。
【0465】
いくつかの態様では、対象は、併用療法の残りの工程を受けるためおよび/または治療の効果をモニターするための対象を決定および同定するために、併用療法の工程の1つを投与した後にスクリーニングされ得る。いくつかの態様では、投与されたT細胞の数、レベルもしくは量、ならびに/または投与されたT細胞の増殖および/もしくは活性が、BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤の投与前および/または投与後に評価される。
【0466】
いくつかの態様では、パラメーターまたは転帰の変化および/または改変、例えば増加、上昇、減少または低下が、異なる評価時点、異なる条件、参照点および/または異なる対象での同じパラメーターまたは転帰のレベル、値または測定値と比較して決定または評価される。例えば、いくつかの態様では、特定のパラメーター、例えば試料中の操作されたT細胞の数の倍数変化、例えば増加または減少が、異なる条件での、例えばBTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤の投与前の同じパラメーターと比較して決定され得る。いくつかの態様では、2つまたはそれ以上のパラメーターのレベル、値または測定値が決定され、相対的レベルが比較される。いくつかの態様では、パラメーターの決定されたレベル、値または測定値は、対照試料または未処理試料からのレベル、値または測定値と比較される。いくつかの態様では、パラメーターの決定されたレベル、値、または測定値は、同じ対象由来であるが異なる時点での試料からのレベルと比較される。個々のパラメーターの定量化において得られる値は、例えば、マルチパラメトリック分析を使用することによってパラメーターのレベル、値または測定値に対して算術演算または論理演算を組み立てることにより、疾患評価の目的のために組み合わせることができる。いくつかの態様では、2つまたはそれ以上の特定のパラメーターの比率を計算することができる。
【0467】
T細胞の健康、機能、活性、ならびに/または応答、効果および/もしくは毒性転帰などの転帰に関連するパラメーターの評価および決定は、様々な時点で評価することができる。いくつかの局面では、評価は、例えば細胞療法の投与前、細胞の製造前、製造中もしくは製造後、および/またはキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与の開始時、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの継続、再開および/もしくはさらなる投与中、細胞療法の投与の開始時および/または細胞療法の投与の開始前、投与中もしくは投与後に、複数回実施することができる。
【0468】
いくつかの態様では、投与される細胞および/または細胞組成物の機能的属性は、薬物動態(PK)パラメーター、細胞の拡大および持続性のモニタリング、細胞機能アッセイ(例えば細胞毒性アッセイ、サイトカイン分泌アッセイおよびインビボアッセイなどの本明細書に記載されるいずれか)、高次元T細胞シグナル伝達評価、ならびにT細胞の枯渇表現型および/またはシグネチャーの評価を含む。いくつかの局面では、評価またはモニターすることができる他の属性には、微小残存病変(MRD)のモニタリングおよび評価が含まれる。いくつかの局面では、評価またはモニターすることができる他の属性には、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの薬力学パラメーターが含まれる。いくつかの局面では、そのようなパラメーターは、活性部位占有アッセイ、例えばBTK占有アッセイまたはITK占有アッセイを使用して評価することができる。
【0469】
A. T細胞の曝露、持続性および増殖
いくつかの態様では、スクリーニング工程および/または転帰についての治療の評価および/または治療転帰のモニタリングのために評価され得るパラメーターを含む、療法または治療転帰に関連するパラメーターは、T細胞、例えばT細胞に基づく療法のために投与されるT細胞の曝露、持続性および増殖の評価であるかまたはそれを含む。いくつかの態様では、本明細書で提供される方法における細胞、例えば免疫療法、例えばT細胞療法のために投与される細胞の曝露の増加、もしくは長期の拡大および/もしくは持続性、ならびに/または細胞表現型もしくは細胞の機能的活性の変化は、インビトロまたはエクスビボでT細胞の特性を評価することによって測定できる。いくつかの態様では、そのようなアッセイは、本明細書で提供される併用療法の1つまたは複数の工程を投与する前または投与した後に、免疫療法、例えばT細胞療法のために使用されるT細胞の機能を決定または確認するために使用することができる。
【0470】
いくつかの態様では、BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤の投与は、細胞、例えばT細胞に基づく療法のために投与されるT細胞への対象の曝露を、例えばその拡大および/または持続性を経時的に促進することなどによって、促進するように設計される。いくつかの態様では、T細胞療法は、T細胞療法がキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの非存在下で対象に投与される方法と比較して、対象における増加したまたは長期の拡大および/または持続性を示す。
【0471】
いくつかの態様では、提供される方法は、投与された細胞への対象の曝露を増加させ(例えば経時的な細胞数または持続期間の増加)、ならびに/または免疫療法、例えばT細胞療法の効果および治療転帰を改善する。いくつかの局面では、方法は、組換え受容体を発現する細胞、例えばCAR発現細胞へのより大きなおよび/またはより長い程度の曝露が、他の方法と比較して治療転帰を改善するという点で有利である。そのような転帰には、重度の腫瘍負荷を有する個体においてさえも、患者の生存および寛解が含まれ得る。
【0472】
いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの非存在下でのT細胞単独の投与と比較して、対象における細胞、例えばT細胞に基づく療法のために投与されるT細胞への曝露の最大量、総量および/または持続期間を増加させることができる。いくつかの局面では、高い疾患負荷(したがってより多い量の抗原)および/またはより悪性度の高いもしくは抵抗性のB細胞悪性腫瘍の状況におけるキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、細胞の拡大および/または持続性を妨げ得る免疫抑制、アネルギーおよび/または枯渇をもたらし得る、同じ状況におけるキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの非存在下でのT細胞単独の投与と比較して、効果を高める。
【0473】
いくつかの態様では、T細胞の投与後、ならびにキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与前、投与中および/または投与後の対象において、組換え受容体を発現する細胞(例えばT細胞に基づく療法のために投与されるCAR発現細胞)の存在および/または量が検出される。いくつかの局面では、定量的PCR(qPCR)が、対象の血液または血清または器官または組織試料(例えば疾患部位、例えば腫瘍試料)中の組換え受容体を発現する細胞(例えばT細胞に基づく療法のために投与されるCAR発現細胞)の量を評価するために使用される。いくつかの局面では、持続性は、DNA 1マイクログラム当たりの、受容体、例えばCARをコードするDNAもしくはプラスミドのコピー数として、または試料、例えば血液もしくは血清1マイクロリットル当たりの、または試料1マイクロリットル当たりの末梢血単核細胞(PBMC)もしくは白血球もしくはT細胞の総数当たりの、受容体発現細胞、例えばCAR発現細胞の数として定量化される。
【0474】
いくつかの態様では、細胞は、T細胞、例えばCAR発現T細胞の投与の4日後もしくは少なくとも4日後、7日後もしくは少なくとも7日後、10日後もしくは少なくとも10日後、14日後もしくは少なくとも14日後、18日後もしくは少なくとも18日後、21日後もしくは少なくとも21日後、24日後もしくは少なくとも24日後、27日後もしくは少なくとも27日後、または28日後もしくは少なくとも28日後に対象において検出される。いくつかの局面では、細胞は、T細胞の投与の2週間後もしくは少なくとも2週間後、4週間後もしくは少なくとも4週間後、または6週間後もしくは少なくとも6週間後に、または3ケ月後もしくは少なくとも3ケ月後、6ケ月後もしくは少なくとも6ケ月後、12ケ月後もしくは少なくとも12ケ月後、18ケ月後もしくは少なくとも18ケ月後、24ケ月後もしくは少なくとも24ケ月後、30ケ月後もしくは少なくとも30ケ月後、または36ケ月後もしくは少なくとも36ケ月後に、または1年後、2年後、3年後、4年後、5年後もしくはそれ以上の年数後に検出される。
【0475】
いくつかの態様では、T細胞、例えばCAR発現T細胞ならびに/またはBTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤の投与後の、本方法による対象における受容体発現細胞(例えばCAR発現細胞)の持続性は、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの非存在下での免疫療法単独の投与、例えばT細胞、例えばCAR発現T細胞の投与を含む方法などの代替方法によって達成されるものと比較してより大きい。
【0476】
拡大および/または持続性を示す、曝露、例えば細胞の数、例えばT細胞療法のために投与されたT細胞の数は、対象が曝露される細胞の最大数、検出可能な細胞または一定の数もしくは割合を超える細胞の持続期間、経時的な細胞数についての曲線下面積、および/またはそれらの組合せおよびそれらの指標によって表され得る。そのような結果は、腫瘍試料などの特定の試料中、例えば血液、血清、血漿もしくは組織中の核酸もしくはDNAの総量と比較して、組換え受容体をコードする核酸のコピー数を検出するためのqPCR、および/または一般に受容体に特異的な抗体を使用して受容体を発現する細胞を検出するフローサイトメトリーアッセイなどの公知の方法を用いて評価し得る。細胞に基づくアッセイもまた、機能的な細胞、例えば疾患もしくは状態の細胞に結合する、および/または疾患もしくは状態の細胞を中和する、および/または疾患もしくは状態の細胞に対する応答、例えば細胞傷害性応答を誘導する、または受容体によって認識される抗原を発現することができる細胞の数または割合を検出するために使用され得る。
【0477】
いくつかの局面では、細胞への対象の曝露の増加は、細胞の拡大の増加を含む。いくつかの態様では、受容体発現細胞、例えばCAR発現細胞は、T細胞、例えばCAR発現T細胞の投与後、および/またはBTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤の投与後に対象において拡大する。いくつかの局面では、本方法は、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与の非存在下でのT細胞、例えばCAR発現T細胞の投与を含むものなどの他の方法と比較して、細胞のより大きな拡大をもたらす。
【0478】
いくつかの局面では、この方法は、例えばフローサイトメトリーによって測定されるように、投与された細胞の高いインビボ増殖をもたらす。いくつかの局面では、細胞の高いピーク割合が検出される。例えば、いくつかの態様では、対象の血液もしくは疾患部位またはその白血球画分、例えばPBMC画分もしくはT細胞画分において、T細胞、例えばCAR発現T細胞および/またはキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与後のピークまたは最大レベルで、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%の細胞が組換え受容体、例えばCARを発現する。
【0479】
いくつかの態様では、この方法は、対象の血液または血清または他の体液または器官または組織において、DNA 1マイクログラム当たり少なくとも100、500、1000、1500、2000、5000、10,000もしくは15,000コピーの、受容体、例えばCARをコードする核酸、または末梢血単核細胞(PBMC)の総数、単核細胞の総数、T細胞の総数、もしくは総マイクロリットル数当たり少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、もしくは0.9個の受容体発現、例えばCAR発現細胞の最大濃度をもたらす。いくつかの態様では、受容体を発現する細胞は、対象の血液中の全PBMCの少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、もしくは60%として、ならびに/またはT細胞、例えばCAR発現T細胞および/もしくはキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの後、少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、24週間、36週間、48週間、もしくは52週間、またはそのような投与後1年、2年、3年、4年、もしくは5年もしくはそれ以上の年数にわたってそのようなレベルで検出される。
【0480】
いくつかの局面では、方法は、例えば対象の血清、血漿、血液または組織中、例えば腫瘍試料中のDNA 1マイクログラム当たり、組換え受容体、例えばCARをコードする核酸のコピー数の少なくとも2倍、少なくとも4倍、少なくとも10倍、または少なくとも20倍の増加をもたらす。
【0481】
いくつかの態様では、受容体を発現する細胞は、対象の血清、血漿、血液または組織中、例えば腫瘍試料中で、例えばqPCRまたはフローサイトメトリーに基づく検出方法などの特定の方法によって、T細胞、例えばCAR発現T細胞の投与後、またはBTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤の投与後少なくとも20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日、31日、32日、33日、34日、35日、36日、37日、38日、39日、40日、41日、42日、43日、44日、45日、46日、47日、48日、49日、50日、51日、52日、53日、54日、55日、56日、57日、58日、59日、もしくは60日もしくはそれ以上の日数で、T細胞、例えばCAR発現T細胞、および/または例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤の投与後、少なくともまたは少なくとも約2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、16週間、17週間、18週間、19週間、20週間、21週間、22週間、23週間、または24週間、またはそれ以上の間、検出可能である。
【0482】
いくつかの局面では、少なくとも約1×102、少なくとも約1×103、少なくとも約1×104、少なくとも約1×105、少なくとも約1×106、少なくとも約5×106、少なくとも約1×107、少なくとも約5×107、もしくは少なくとも約1×108個の組換え受容体発現細胞、例えばCAR発現細胞、および/または1マイクロリットル当たり少なくとも10個、25個、50個、100個、200個、300個、400個、500個もしくは1000個の受容体発現細胞、例えば1マイクロリットル当たり少なくとも10個の細胞が、対象またはその体液、血漿、血清、組織、もしくは区画において、例えば末梢血などの血液中で、または腫瘍などのその疾患部位において、検出可能であるかまたは存在する。いくつかの態様では、そのような数または濃度の細胞は、T細胞、例えばCAR発現T細胞の投与後、ならびに/またはキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与後、少なくとも約20日間、少なくとも約40日間、もしくは少なくとも約60日間、または少なくとも約3、4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12ヶ月間、または少なくとも2年間もしくは3年間、対象において検出可能である。そのような細胞数は、フローサイトメトリーに基づく方法または定量的PCRに基づく方法および公知の方法を用いた総細胞数への外挿によって検出される通りであり得る。例えば、Brentjens et al., Sci Transl Med. 2013 5(177), Park et al, Molecular Therapy 15(4): 825-833(2007), Savoldo et al., JCI 121(5):1822-1826(2011), Davila et al.,(2013)PLoS ONE 8(4): e61338, Davila et al., Oncoimmunology 1(9):1577-1583(2012), Lamers, Blood 2011 117: 72-82, Jensen et al., Biol Blood Marrow Transplant 2010 September; 16(9):1245-1256, Brentjens et al., Blood 2011 118(18):4817-4828参照。
【0483】
いくつかの局面では、免疫組織化学、PCR、および/またはフローサイトメトリーによって測定される、例えば末梢血または骨髄または他の区画における100細胞当たりの、組換え受容体をコードする核酸のコピー数、例えばベクターコピー数は、細胞、例えばCAR発現T細胞、および/またはBTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤の投与後少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約4週間、少なくとも約5週間、もしくは少なくとも約6週間で、または少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12ヶ月で、または少なくとも2年もしくは少なくとも3年で、少なくとも0.01、少なくとも0.1、少なくとも1、または少なくとも10である。いくつかの態様では、ゲノムDNA 1マイクログラム当たりの、受容体、例えばCARを発現するベクターのコピー数は、T細胞、例えばCAR発現T細胞、またはキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与後約1週間、約2週間、約3週間、もしくは少なくとも約4週間の時点、またはそのような投与後少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12ヶ月、または少なくとも2年もしくは3年の時点で、少なくとも100、少なくとも1000、少なくとも5000、少なくとも10,000、少なくとも15,000または少なくとも20,000である。
【0484】
いくつかの局面では、細胞によって発現される受容体、例えばCARは、細胞の投与後、例えばT細胞、例えばCAR発現T細胞の投与後、および/またはキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与の開始後、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約6ヶ月、少なくとも約12ヶ月、少なくとも約1年、少なくとも約2年、少なくとも約3年、または3年を超える時点で、対象、その血漿、血清、血液、組織および/または疾患部位、例えば腫瘍部位において、定量的PCR(qPCR)またはフローサイトメトリーによって検出可能である。
【0485】
いくつかの態様では、T細胞、例えばCAR発現T細胞および/またはキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与後の経時的な対象の体液、血漿、血清、血液、組織、器官および/または疾患部位、例えば腫瘍部位における受容体(例えばCAR)発現細胞の濃度についての曲線下面積(AUC)は、対象が、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの非存在下でT細胞、例えばCAR発現T細胞を投与される代替投薬レジメンによって達成されるものと比較してより大きい。
【0486】
いくつかの局面では、この方法は、例えばフローサイトメトリーによって測定されるように、投与された細胞の高いインビボ増殖をもたらす。いくつかの局面では、細胞の高いピーク割合が検出される。例えば、いくつかの態様では、対象の血液、血漿、血清、組織もしくは疾患部位またはその白血球画分、例えばPBMC画分もしくはT細胞画分において、T細胞、例えばCAR発現T細胞および/またはキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの後のピークまたは最大レベルで、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%の細胞が組換え受容体、例えばCARを発現する。
【0487】
いくつかの局面では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブを投与された対象における細胞の用量の増加したまたは長期間の拡大および/または持続性は、対象における腫瘍関連転帰における利益に関連する。いくつかの態様では、腫瘍関連転帰は、対象における腫瘍負荷の減少または芽球髄の減少を含む。いくつかの態様では、腫瘍負荷は、この方法の投与後に10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくは100%、または少なくとももしくは少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくは100%減少する。いくつかの態様では、疾患負荷、腫瘍サイズ、腫瘍体積、腫瘍量、および/または腫瘍負荷もしくは嵩は、細胞の投与後に、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与を含まない方法で治療された対象と比較して、少なくともまたは少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上減少する。
【0488】
B. T細胞の機能的活性
いくつかの態様では、スクリーニング工程および/または転帰についての治療の評価および/または治療転帰のモニタリングのために評価することができるパラメーターを含む、療法または治療転帰に関連するパラメーターには、T細胞の活性、表現型、増殖または機能の1つまたは複数が含まれる。いくつかの態様では、T細胞、例えばT細胞療法のために投与されるT細胞の活性、表現型、増殖および/または機能を評価するための当技術分野で公知のアッセイのいずれかを使用することができる。細胞および/またはBTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤の投与前および/または投与後に、いくつかの態様では、操作された細胞集団の生物学的活性が、例えば多くの公知の方法のいずれかによって測定される。評価するパラメーターには、インビボでは、例えば画像化による、またはエクスビボでは、例えばELISAもしくはフローサイトメトリーによる、操作されたもしくは天然のT細胞または他の免疫細胞の抗原への特異的結合が含まれる。特定の態様では、操作された細胞が標的細胞を破壊する能力は、例えばKochenderfer et al., J. Immunotherapy, 32(7):689-702(2009)、およびHerman et al., J. Immunological Methods, 285(1): 25-40(2004)に記載されている細胞毒性アッセイなどの、当技術分野で公知の任意の適切な方法を用いて測定することができる。特定の態様では、細胞の生物学的活性は、CD107a、IFNγ、IL-2、GM-CSFおよびTNFαなどの1つもしくは複数のサイトカインの発現および/もしくは分泌を検定することによって、ならびに/または細胞溶解活性を評価することによって測定される。
【0489】
いくつかの態様では、細胞の健康、活性表現型および/または機能、例えばシグナル伝達機能をモニターするためのアッセイは、誘導結合プラズマ質量分析および飛行時間型質量分析を使用するマスサイトメトリ(CyTOF)、T細胞表現型、例えば抗体のパネルを使用する免疫表現型、および本明細書に記載されるものなどの他の機能的アッセイに基づくT細胞シグナル伝達評価を含み得る。
【0490】
いくつかの態様では、T細胞、例えばT細胞療法のために投与されるT細胞の活性、表現型、増殖および/または機能についてのアッセイには、ELISPOT、ELISA、細胞増殖、細胞傷害性リンパ球(CTL)アッセイ、T細胞エピトープ、抗原もしくはリガンドへの結合、または細胞内サイトカイン染色、増殖アッセイ、リンホカイン分泌アッセイ、直接細胞毒性アッセイ、および限界希釈アッセイが含まれるが、これらに限定されるわけではない。いくつかの態様では、T細胞の増殖応答は、例えば3H-チミジン、BrdU(5-ブロモ-2'-デオキシウリジン)もしくは2'-デオキシ-5-エチニルウリジン(EdU)のそれらのDNAへの組込み、またはカルボキシフルオレセインジアセテートスクシンイミジルエステル(CFSE)、CellTrace Violet、または膜染料PKH26などの染料を用いた染料希釈アッセイによって測定することができる。
【0491】
いくつかの態様では、T細胞、例えばT細胞療法のために投与されるT細胞の活性、表現型、増殖および/または機能を評価することは、T細胞からのサイトカイン産生を測定すること、および/または対象由来の生物学的試料、例えば血漿、血清、血液、および/または組織試料、例えば腫瘍試料におけるサイトカイン産生を測定することを含む。いくつかの場合には、そのような測定されるサイトカインには、限定されることなく、インターロイキン2(IL-2)、インターフェロン-ガンマ(IFNγ)、インターロイキン4(IL-4)、TNF-アルファ(TNFα)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン10(IL-10)、インターロイキン12(IL-12)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、CD107a、および/またはTGF-ベータ(TGFβ)が含まれ得る。サイトカインを測定するためのアッセイは当技術分野において周知であり、ELISA、マルチプレックスサイトカインアッセイ、細胞内サイトカイン染色、サイトメトリビーズアレイ、RT-PCR、ELISPOT、フローサイトメトリー、および関連するサイトカインに応答性の細胞を試験試料の存在下で応答性(例えば増殖)について試験するバイオアッセイが含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0492】
いくつかの態様では、T細胞、例えばT細胞療法のために投与されるT細胞の活性、表現型、増殖および/または機能を評価することは、細胞表現型、例えば特定の細胞表面マーカーの発現を評価することを含む。いくつかの態様では、T細胞、例えばT細胞療法のために投与されるT細胞は、T細胞活性化マーカー、T細胞枯渇マーカー、および/またはT細胞分化マーカーの発現について評価される。いくつかの態様では、細胞表現型は投与前に評価される。いくつかの態様では、細胞表現型は、細胞療法および/またはBTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤の投与中または投与後に評価される。評価のためのT細胞活性化マーカー、T細胞枯渇マーカー、および/またはT細胞分化マーカーには、T細胞の特定のサブセットについての当技術分野で公知の任意のマーカー、例えばCD25、CD38、ヒト白血球抗原-DR(HLA-DR)、CD69、CD44、CD137、KLRG1、CD62Llow、CCR7low、CD71、CD2、CD54、CD58、CD244、CD160、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)、リンパ球活性化遺伝子3タンパク質(LAG-3)、T細胞免疫グロブリンドメインおよびムチンドメインタンパク質3(TIM-3)、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)、バンドTリンパ球アテニュエータ(BTLA)および/またはT細胞免疫グロブリンおよび免疫受容体チロシンベースの阻害モチーフドメイン(TIGIT)が含まれる(例えばLiu et al., Cell Death and Disease(2015)6,e1792参照)。いくつかの態様では、評価される細胞表面マーカーは、CD25、PD-1および/またはTIM-3である。いくつかの態様では、評価される細胞表面マーカーはCD25である。
【0493】
いくつかの局面では、発現レベルを検出することは、インビトロアッセイを実施することを含む。いくつかの態様では、インビトロアッセイは、イムノアッセイ、アプタマーベースのアッセイ、組織学的もしくは細胞学的アッセイ、またはmRNA発現レベルアッセイである。いくつかの態様では、1つまたは複数の因子、エフェクター、酵素および/または表面マーカーのそれぞれの1つまたは複数についての1つまたは複数のパラメーターは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、免疫ブロット法、免疫沈降法、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫染色、フローサイトメトリーアッセイ、表面プラズモン共鳴(SPR)、化学発光アッセイ、ラテラルフローイムノアッセイ、阻害アッセイまたはアビディティアッセイによって検出される。いくつかの態様では、サイトカインおよび/または表面マーカーの検出は、少なくとも1つのバイオマーカーに特異的に結合する結合試薬を用いて決定される。いくつかの場合には、結合試薬は、抗体もしくはその抗原結合断片、アプタマーまたは核酸プローブである。
【0494】
いくつかの態様では、BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤の投与は、循環CAR T細胞のレベルを増加させる。
【0495】
C. 応答、効果および生存
いくつかの態様では、スクリーニング工程ならびに/または転帰についての治療の評価および/もしくは治療転帰のモニタリングのために評価され得るパラメーターを含む、療法または治療転帰に関連するパラメーターには、腫瘍負荷または疾患負荷が含まれる。T細胞療法(例えばCAR発現T細胞)などの免疫療法および/またはBTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤の投与は、対象における疾患または状態の拡大または負荷を軽減または防止することができる。例えば、疾患または状態が腫瘍である場合、方法は一般に、腫瘍の大きさ、嵩、転移、骨髄における芽球の割合、もしくは分子的に検出可能なB細胞悪性腫瘍を減少させ、および/または予後もしくは生存もしくは腫瘍負荷に関連する他の症状を改善する。
【0496】
いくつかの局面では、提供される方法に従う、および/または提供される製品もしくは組成物に従う投与は、一般に対象における疾患または状態の拡大または負荷を軽減または防止する。例えば、疾患または状態が腫瘍である場合、方法は一般に、腫瘍の大きさ、嵩、転移、骨髄における芽球の割合、もしくは分子的に検出可能なB細胞悪性腫瘍を減少させ、および/または予後もしくは生存もしくは腫瘍負荷に関連する他の症状を改善する。
【0497】
いくつかの態様では、提供される方法は、T細胞療法(例えばCAR発現T細胞)などの免疫療法が、BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤の投与を伴わずに与えられる代替方法と比較して、治療される対象において腫瘍負荷の減少をもたらす。併用療法を受けるすべての対象において実際に腫瘍負荷が軽減される必要はないが、例えばそのような併用療法で治療される対象の大多数が腫瘍負荷の減少を示す、例えば併用療法で治療された対象の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上などが腫瘍負荷の減少を示す臨床データに基づき、腫瘍負荷は治療された対象において平均して軽減される。
【0498】
疾患負荷は、対象における、または対象の器官、組織もしくは体液、例えば腫瘍の器官もしくは組織もしくは、例えば転移を示す別の場所における、疾患の全細胞数を包含し得る。例えば、腫瘍細胞は、特定の血液学的悪性腫瘍の状況で血液、リンパまたは骨髄において検出および/または定量化され得る。疾患負荷は、いくつかの態様では、腫瘍の量、転移の数もしくは範囲および/または骨髄に存在する芽細胞の割合を含み得る。
【0499】
いくつかの態様では、対象は、骨髄腫、リンパ腫または白血病を有する。疾患負荷の程度は、血液または骨髄における残存白血病の評価によって決定することができる。いくつかの態様では、対象は、非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)または骨髄腫、例えば多発性骨髄腫(MM)を有する。いくつかの態様では、対象はMMまたはDBCBLを有する。いくつかの態様では、対象は白血病を有する。いくつかの態様では、白血病はCLLまたはSLLである。
【0500】
いくつかの局面では、NHLを有する対象などの対象における奏効率は、Lugano基準に基づく。(Cheson et al.,(2014)JCO., 32(27):3059-3067; Johnson et al.,(2015)Radiology 2: 323-338; Cheson, B.D. (2015)Chin Clin Oncol. 4(1):5)。いくつかの局面では、応答評価は、臨床的方法、血液学的方法、および/または分子的方法のいずれかを利用する。いくつかの局面では、Lugano基準を使用して評価される応答は、必要に応じて陽電子放射断層撮影法(PET)-コンピュータ断層撮影法(CT)および/またはCTの使用を含む。PET-CT評価は、FDG-avidリンパ腫のためのフルオロデオキシグルコース(FDG)の使用をさらに含み得る。いくつかの局面では、FDG-avid組織学において応答を評価するためにPET-CTが使用される場合、5段階尺度が使用され得る。いくつかの点で、5段階尺度は以下の評価基準を含む;1、バックグラウンドを上回る取り込みなし;2、縦隔以下の取り込み;3、縦隔を超えるが肝臓以下の取り込み;4、肝臓を控えめに超える取り込み;5、取り込みは肝臓および/または新しい病変よりも著しく高い;X、リンパ腫に関連する可能性が低い新しい取り込み領域。
【0501】
いくつかの局面では、Lugano基準を使用して表される完全奏効は、様々な測定可能な部位における完全な代謝的応答および完全な放射線学的応答を含む。いくつかの局面では、これらの部位にはリンパ節およびリンパ節外部位が含まれ、PET-CTが使用される場合、CRは、残留塊の有無にかかわらず、5段階尺度で1、2または3のスコアとして表される。いくつかの局面では、高い生理学的取り込みまたは脾臓内もしくは骨髄内での活性化(例えば化学療法または骨髄性コロニー刺激因子による)を有するワルダイエル輪またはリンパ節外部位では、取り込みは、正常な縦隔および/または肝臓を上回り得る。この状況では、組織が高い生理的取り込みを有する場合でも、最初の関与部位での取り込みが周囲の正常組織と同程度であれば、完全な代謝的応答が推測され得る。いくつかの局面では、応答はCTを使用してリンパ節で評価され、CRは疾患のリンパ節外部位がないと表され、標的リンパ節/リンパ節塊は、病変の最長横径(LDi)で1.5cm以下まで退縮しなければならない。さらなる評価部位には骨髄が含まれ、PET-CTに基づく評価は、骨髄におけるFDG-avid疾患の証拠の欠如を示すべきであり、CTに基づく評価は正常な形態を示すべきであり、これは、不確定な場合はIHC陰性であるべきである。さらなる部位には器官拡張の評価が含まれてもよく、これは正常まで退縮すべきである。いくつかの局面では、測定されていない病変と新しい病変が評価され、これらは、CRの場合には非存在でなければならない(Cheson et al.,(2014)JCO., 32(27): 3059-3067; Johnson et al.,(2015)Radiology 2: 323-338; Cheson, B.D.(2015)Chin. Clin. Oncol. 4(1): 5)。
【0502】
いくつかの局面では、Lugano基準を使用して表される部分奏効(PR)は、様々な測定可能な部位における部分的な代謝的応答および/または放射線学的応答を含む。いくつかの局面では、これらの部位にはリンパ節およびリンパ節外部位が含まれ、PET-CTが使用される場合、PRは、ベースラインおよび任意のサイズの残留塊と比較して減少した取り込みを伴う4または5のスコアとして表される。暫定的に、そのような所見は応答性疾患を示す可能性がある。治療の終了時には、そのような所見は残存疾患を示す可能性がある。いくつかの局面では、応答は、CTを使用してリンパ節で評価され、PRは、標的となる6つまでの測定可能なリンパ節およびリンパ節外部位のSPDの50%以上の減少と表される。病変が小さすぎてCTで測定できない場合は、5mm×5mmがデフォルト値として割り当てられる;病変がもはや視認されない場合は、値は0mm×0mmである;5mm×5mmを超えるが、正常よりも小さいリンパ節については、実測値が計算に使用される。さらなる評価部位には骨髄が含まれ、PET-CTに基づく評価は、正常な骨髄での取り込みよりも大きいが、ベースラインと比較して減少した残留取り込み(許容される化学療法からの反応性変化と矛盾しない広範な取り込み)を示すべきである。いくつかの局面では、リンパ節応答の状況で骨髄に持続的な限局性変化がある場合、MRIもしくは生検によるさらなる評価、またはインターバルスキャンが検討されるべきである。いくつかの局面では、さらなる部位には器官拡張の評価が含まれてもよく、脾臓が正常を50%未満上回る長さに退縮していなければならない。いくつかの局面では、測定されていない病変と新しい病変が評価され、これらは、PRの場合には非存在/正常、退縮でなければならず、増加があってはならない。無反応/安定(SD)または進行性疾患(PD)もまた、PET-CTおよび/またはCTに基づく評価を使用して測定することができる。(Cheson et al.,(2014)JCO., 32(27): 3059-3067; Johnson et al.,(2015)Radiology 2: 323-338; Cheson, B.D. 2015)Chin. Clin. Oncol., 4(1):5)。
【0503】
いくつかの点で、無増悪生存期間(PFS)は、B細胞悪性腫瘍などの疾患の治療中および治療後に、対象が疾患を有しながら生存するが、疾患が悪化しない期間の長さとして表される。いくつかの局面では、客観的奏効(OR)は測定可能な応答として表される。いくつかの局面では、客観的奏効率(ORR)は、CRまたはPRを達成した患者の割合として表される。いくつかの局面では、全生存期間(OS)は、B細胞悪性腫瘍などの疾患の診断日または治療開始日のいずれかからの、疾患と診断された対象が依然として生存している期間の長さとして表される。いくつかの局面では、無事象生存期間(EFS)は、B細胞悪性腫瘍の治療が終了した後に、対象が、治療が防止するまたは遅延させることを意図された特定の合併症または事象を有さないままである期間の長さとして表される。これらの事象には、B細胞悪性腫瘍の再発、または骨に転移したB細胞悪性腫瘍による骨の痛み、または死亡などの特定の症状の発症が含まれ得る。
【0504】
いくつかの態様では、奏効期間(DOR)の測定尺度には、腫瘍応答の文書化から疾患進行までの時間が含まれる。いくつかの態様では、応答を評価するためのパラメーターは、持続性応答、例えば療法の開始からある一定期間後に持続する応答を含み得る。いくつかの態様では、持続性応答は、療法の開始後約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、18、または24ヶ月での奏効率によって示される。いくつかの態様では、応答は3ヶ月超または6ヶ月超にわたって持続性である。
【0505】
いくつかの局面では、客観的腫瘍応答を決定するためにRECIST基準が使用される。(Eisenhauer et al., European Journal of Cancer 45(2009)228-247)。いくつかの局面では、RECIST基準は、標的病変についての客観的腫瘍応答を決定するために使用される。いくつかの点で、RECIST基準を使用して決定される完全奏効は、すべての標的病変の消失として表され、病的リンパ節はいずれも(標的または非標的にかかわらず)、短軸が10mm未満に減少しなければならない。他の局面では、RECIST基準を使用して決定される部分奏効は、ベースラインの合計直径を参照として、標的病変の直径の合計の少なくとも30%の減少として表される。他の局面では、進行性疾患(PD)は、試験時の最小合計を参照として(試験時に最小である場合はベースライン合計を含む)、標的病変の直径の合計の少なくとも20%の増加として表される。20%の相対的増加に加えて、合計はまた、少なくとも5mmの絶対的増加を示さなければならない(いくつかの局面では、1つまたは複数の新しい病変の出現も進行と見なされる)。他の局面では、安定(SD)は、試験中の最小合計直径を参照として、PRに適格とするための十分な収縮、またはPDに適格とするための十分な増加のいずれでもないと表される。
【0506】
MMの場合、疾患負荷の程度を評価するための例示的なパラメーターには、クローン性形質細胞の数(例えば骨髄生検で、または他の組織からの生検の任意の量で>10%;形質細胞腫)、血清または尿のいずれかにおけるモノクローナルタンパク質(パラプロテイン)の存在、形質細胞障害に関連すると考えられる末端器官障害の証拠(例えば高カルシウム血症(補正カルシウム>2.75mmol/l);骨髄腫に起因する腎不全;貧血(ヘモグロビン<10g/dl);および/または骨病変(溶解性病変または圧迫骨折を伴う骨粗鬆症)などのパラメーターが含まれる。
【0507】
DLBCLの場合、疾患負荷の程度を評価するための例示的なパラメーターには、細胞形態(例えば、中心芽細胞、免疫芽細胞および未分化細胞)、遺伝子発現、miRNA発現、およびタンパク質発現(例えばBCL2、BCL6、MUM1、LMO2、MYCおよびp21の発現)などのパラメーターが含まれる。
【0508】
いくつかの局面では、対象、例えばCLLを有する対象における奏効率は、慢性リンパ性白血病に関する国際ワークショップ(International Workshop on Chronic Lymphocytic Leukemia)(IWCLL)の応答基準に基づく(Hallek, et al., Blood 2008, Jun 15; 111(12): 5446-5456)。いくつかの局面では、これらの基準は次のように表される:完全寛解(CR)、これは、いくつかの局面では免疫表現型検査による末梢血のクローン性リンパ球の非存在、リンパ節症の非存在、肝腫大または巨脾腫の非存在、全身症状の非存在および十分な血球数を必要とする;不完全な骨髄回復を伴う完全寛解(CRi)、これは、いくつかの局面では上記のCRと表されるが、正常な血球数を伴わない;部分寛解(PR)、これは、いくつかの局面では末梢血球数の改善を伴う、リンパ球数の50%以上の減少、リンパ節症の50%以上の減少、または肝臓もしくは脾臓の50%以上の減少として表される;進行性疾患(PD)、これは、いくつかの局面ではリンパ球数の5×109/Lを超える50%以上の増加、リンパ節症の50%以上の増加、肝臓もしくは脾臓のサイズの50%以上の増加、リヒター形質転換、またはCLLによる新たな血球減少症として表される;および安定疾患、これは、いくつかの局面ではCR、CRi、PRまたはPDの基準に合致しないものと表される。
【0509】
いくつかの態様では、細胞の用量の投与から1ヶ月以内に、対象のリンパ節が20mm未満もしくは約20mm未満のサイズ、または10mm未満もしくは約10mm未満のサイズ、または10mm未満もしくは約10mm未満のサイズである場合、対象はCRまたはORを示す。
【0510】
いくつかの態様では、CLLの指標クローンは、対象の骨髄において(または本方法に従って治療された対象の50%超、60%超、70%超、80%超、90%超、またはそれ以上の骨髄において)検出されない。いくつかの態様では、CLLの指標クローンは、IgHディープシークエンシングによって評価される。いくつかの態様では、指標クローンは、細胞の投与後1ヶ月もしくは約1ヶ月もしくは少なくとも1ヶ月もしくは少なくとも約1ヶ月、2ヶ月もしくは約2ヶ月もしくは少なくとも2ヶ月もしくは少なくとも約2ヶ月、3ヶ月もしくは約3ヶ月もしくは少なくとも3ヶ月もしくは少なくとも約3ヶ月、4ヶ月もしくは約4ヶ月もしくは少なくとも4ヶ月もしくは少なくとも約4ヶ月、5ヶ月もしくは約5ヶ月もしくは少なくとも5ヶ月もしくは少なくとも約5ヶ月、6ヶ月もしくは約6ヶ月もしくは少なくとも6ヶ月もしくは少なくとも約6ヶ月、12ヶ月もしくは約12ヶ月もしくは少なくとも12ヶ月もしくは少なくとも約12ヶ月、18ヶ月もしくは約18ヶ月もしくは少なくとも18ヶ月もしくは少なくとも約18ヶ月、または24ヶ月もしくは約24ヶ月もしくは少なくとも24ヶ月もしくは少なくとも約24ヶ月の時点で検出されない。
【0511】
いくつかの態様では、例えば光学顕微鏡検査によって検出されるように、骨髄中に5%もしくはそれ以上の芽細胞、例えば骨髄中に10%もしくはそれ以上の芽細胞、骨髄中に20%もしくはそれ以上の芽細胞、骨髄中に30%もしくはそれ以上の芽細胞、骨髄中に40%もしくはそれ以上の芽細胞、または骨髄中に50%もしくはそれ以上の芽細胞が存在する場合、対象は形態学的疾患を示す。いくつかの態様では、5%未満の芽細胞が骨髄中に存在する場合、対象は完全寛解または臨床的寛解を示す。
【0512】
いくつかの態様では、対象は完全寛解を示し得るが、小さな割合の形態学的に検出不能な(光学顕微鏡検査技術によって)残存白血病細胞が存在する。対象が骨髄中で5%未満の芽細胞を示し、分子的に検出可能なB細胞悪性腫瘍を示す場合、対象は最小残存病変(MRD)を示すと言われる。いくつかの態様では、分子的に検出可能なB細胞悪性腫瘍は、少数の細胞の高感度検出を可能にする様々な分子技術のいずれかを使用して評価することができる。いくつかの局面では、そのような技術は、染色体転座によって生成される独特のIg/T細胞受容体遺伝子再構成または融合転写物を決定することができるPCRアッセイを含む。いくつかの態様では、フローサイトメトリーは、白血病特異的な免疫表現型に基づいてB細胞悪性腫瘍の細胞を同定するために使用することができる。いくつかの態様では、B細胞悪性腫瘍の分子検出は、100,000個の正常な細胞中にわずか1個の白血病細胞を検出することができる。いくつかの態様では、PCRまたはフローサイトメトリーなどによって、100,000個の細胞中に少なくとも1個または1個より多い白血病細胞が検出される場合、対象は、分子的に検出可能なMRDを示す。いくつかの態様では、対象の疾患負荷は分子的に検出不可能またはMRD-であり、そのため、いくつかの場合には、PCRまたはフローサイトメトリー技術を用いて対象において白血病細胞を検出することができない。
【0513】
白血病の場合、疾患負荷の程度は、血液または骨髄中の残存白血病の評価によって決定することができる。いくつかの態様では、例えば光学顕微鏡検査によって検出されるように、5%またはそれ以上の芽細胞が骨髄中に存在する場合、対象は形態学的疾患を示す。いくつかの態様では、5%未満の芽細胞が骨髄中に存在する場合、対象は完全寛解または臨床的寛解を示す。
【0514】
いくつかの態様では、白血病の場合、対象は完全な寛解を示し得るが、小さな割合の形態学的に検出不可能な(光学顕微鏡検査技術によって)残存白血病細胞が存在する。対象が骨髄中で5%未満の芽細胞を示し、分子的に検出可能なB細胞悪性腫瘍を示す場合、対象は最小残存病変(MRD)を示すと言われる。いくつかの態様では、分子的に検出可能なB細胞悪性腫瘍は、少数の細胞の高感度検出を可能にする様々な分子技術のいずれかを使用して評価することができる。いくつかの局面では、そのような技術は、染色体転座によって生成される独特のIg/T細胞受容体遺伝子再構成または融合転写物を決定することができるPCRアッセイを含む。いくつかの態様では、フローサイトメトリーは、白血病特異的な免疫表現型に基づいてB細胞悪性腫瘍の細胞を同定するために使用することができる。いくつかの態様では、B細胞悪性腫瘍の分子検出は、100,000個の正常な細胞中にわずか1個の白血病細胞を検出することができる。いくつかの態様では、PCRまたはフローサイトメトリーなどによって、100,000個の細胞中に少なくとも1個または1個より多い白血病細胞が検出される場合、対象は、分子的に検出可能なMRDを示す。いくつかの態様では、対象の疾患負荷は分子的に検出不可能またはMRD-であり、そのため、いくつかの場合には、PCRまたはフローサイトメトリー技術を用いて対象において白血病細胞を検出することができない。
【0515】
いくつかの態様では、方法ならびに/またはT細胞療法(例えばCAR発現T細胞)などの細胞療法および/もしくはBTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤の投与は、免疫療法、例えばT細胞療法および/またはキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与の直前の時点での疾患負荷と比較して、疾患負荷を減少させる。
【0516】
いくつかの局面では、免疫療法、例えばT細胞療法および/またはキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、疾患負荷の増加を防止することができ、これは、疾患負荷の変化がないことによって証明され得る。
【0517】
いくつかの態様では、方法は、疾患または状態の負荷、例えば腫瘍細胞の数、腫瘍の大きさ、患者の生存期間または無事象生存期間を、対象がキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与の非存在下で免疫療法、例えばT細胞療法単独を受ける代替療法を使用した同等の方法で観察される低減と比較して、より大きな程度におよび/またはより長い期間にわたって低減する。いくつかの態様では、疾患負荷は、免疫療法、例えばT細胞療法およびキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与の併用療法後に、それぞれの剤を単独で投与することによって、例えば免疫療法、例えばT細胞療法を受けたことがない対象にキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブを投与するか、またはキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブを受けたことがない対象に免疫療法、例えば、T細胞療法を投与することによってもたらされる低減と比較して、より大きな程度にまたはより長い期間にわたって低減される。
【0518】
いくつかの態様では、対象における疾患または状態の負荷を検出し、評価し、または測定する。疾患負荷は、いくつかの局面では、対象中、または対象の器官、組織もしくは体液、例えば血液または血清中の疾患細胞または疾患関連細胞、例えば腫瘍細胞の総数を検出することによって検出され得る。いくつかの態様では、疾患負荷、例えば腫瘍負荷は、転移の数または程度を測定することによって評価される。いくつかの局面では、対象の生存、一定期間内の生存、生存の程度、無事象生存もしくは無症状生存の存在もしくは持続期間、または無再発生存が評価される。いくつかの態様では、疾患または状態の任意の症状が評価される。いくつかの態様では、疾患または状態の負荷の測定尺度が指定される。いくつかの態様では、決定のための例示的なパラメーターには、疾患または状態、例えば腫瘍の軽減または改善を示す特定の臨床転帰が含まれる。そのようなパラメーターには、完全奏効(CR)、部分奏効(PR)または安定疾患(SD)(例えば固形腫瘍効果判定基準(Response Evaluation Criteria In Solid Tumors)(RECIST)ガイドライン参照)を含む疾患制御の持続期間、客観的奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)が含まれる。本明細書で提供される併用療法の方法の効果を決定するために、パラメーターについての特定の閾値を設定することができる。
【0519】
いくつかの局面では、疾患負荷は、免疫療法、例えばT細胞療法の投与前、免疫療法、例えばT細胞療法の投与後であるがキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与前、および/または免疫療法、例えばT細胞療法とキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの両方の投与後に測定または検出される。併用療法の1つまたは複数の工程の複数回投与の状況では、いくつかの態様における疾患負荷は、投与の工程、用量および/もしくはサイクルのいずれかの投与の前もしくは後に、または投与の工程、用量および/もしくはサイクルのいずれかの投与の間の時点で測定され得る。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、少なくとも2サイクル(例えば28日サイクル)で実施され、疾患負荷は、各サイクルの前、各サイクル中、および/または各サイクルの後に測定または検出される。
【0520】
いくつかの態様では、負荷は、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブ、および免疫療法、例えばT細胞療法の投与の直前と比較して、提供される方法によって10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくは100%、または少なくとももしくは少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくは100%減少する。いくつかの態様では、疾患負荷、腫瘍サイズ、腫瘍体積、腫瘍量、および/または腫瘍負荷もしくは嵩は、免疫療法、例えばT細胞療法およびキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与後に、免疫療法、例えばT細胞療法および/またはキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与の直前のものと比較して、少なくともまたは少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上減少する。
【0521】
いくつかの態様では、本方法による疾患負荷の低減は、例えば併用療法の投与後、例えば開始後1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、または6ヶ月超で評価されるように、形態学的完全寛解の誘導を含む。
【0522】
いくつかの局面では、例えばマルチパラメトリックフローサイトメトリーによって測定されるような、微小残存病変についてのアッセイは陰性であるか、または微小残存病変のレベルは約0.3%未満、約0.2%未満、約0.1%未満、または約0.05%未満である。
【0523】
いくつかの態様では、対象の無事象生存率または全生存率は、他の方法と比較して、本発明の方法によって改善される。例えば、いくつかの態様では、本明細書で提供される併用療法の方法後6ヶ月で、本方法によって治療された対象の無事象生存率または確率は、約40%超、約50%超、約60%超、約70%超、約80%超、約90%超、または約95%超である。いくつかの局面では、全生存率は、約40%超、約50%超、約60%超、約70%超、約80%超、約90%超、または約95%超である。いくつかの態様では、この方法で治療された対象は、少なくとも6ヶ月まで、または少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10年までの無事象生存期間、無再発生存期間、または生存期間を示す。いくつかの態様では、進行までの時間が改善され、例えば進行までの時間は、6ヶ月超もしくは約6ヶ月超、または少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10年である。
【0524】
いくつかの態様では、本方法による治療後、他の方法と比較して再発の可能性が低下する。例えば、いくつかの態様では、併用療法の方法後6ヶ月での再発の可能性は、約80%未満、約70%未満、約60%未満、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、または約10%未満である。
【0525】
いくつかの場合には、投与された細胞、例えば養子移入された細胞の薬物動態が、投与された細胞のアベイラビリティ、例えばバイオアベイラビリティを評価するために決定される。養子移入された細胞の薬物動態を決定するための方法は、操作された細胞を投与された対象から末梢血を採取し、末梢血中の操作された細胞の数または比率を決定することを含み得る。細胞を選択および/または単離するためのアプローチは、キメラ抗原受容体(CAR)特異的抗体(例えばBrentjens et al., Sci. Transl. Med. 2013 Mar; 5(177):177ra38)、プロテインL(Zheng et al., J. Transl. Med. 2012 Feb; 10:29)、CARの特定の部位に直接導入され、それによりStrepタグの結合試薬を使用してCARを直接評価する、Strepタグ配列などのエピトープタグ(Liu et al. (2016) Nature Biotechnology, 34: 430; 国際公開公報第2015095895号)、およびCARポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体(国際公開公報第2014190273号参照)の使用を含み得る。外因性のマーカー遺伝子は、いくつかの場合には細胞の検出または選択を可能にするために、およびいくつかの場合には細胞自殺を促進するためにも、操作された細胞療法に関連して利用され得る。いくつかの場合には、切断型上皮増殖因子受容体(EGFRt)は、形質導入された細胞において関心対象の導入遺伝子(例えばCAR)と共発現させることができる(例えば米国特許第8,802,374号参照)。EGFRtは、抗体セツキシマブ(Erbitux(登録商標))または他の治療用抗EGFR抗体または結合分子によって認識されるエピトープを含み得、これは、EGFRt構築物およびキメラ抗原受容体(CAR)などの別の組換え受容体で操作された細胞の同定もしくは選択するために、ならびに/または受容体を発現する細胞を排除または分離するために使用することができる。米国特許第8,802,374号、およびLiu et al., Nature Biotech. 2016 April; 34(4): 430-434参照。
【0526】
いくつかの態様では、患者から得られた生物学的試料中、例えば血液中のCAR+T細胞の数は、例えば細胞の薬物動態を決定するために、細胞療法の投与後の期間に決定され得る。いくつかの態様では、対象の血液中で、またはこの方法によってそのように治療された対象の大多数において検出可能なCAR+T細胞、任意でCAR+CD8+T細胞および/またはCAR+CD4+T細胞の数は、1μL当たり1細胞を超えるか、1μL当たり5細胞を超えるか、または1μL当たり10細胞を超える。
【0527】
IV. 毒性および有害転帰
提供される方法の態様では、対象は、細胞療法(例えばT細胞療法)およびBTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤を含む提供される併用療法を投与された対象における、治療に関連した転帰、例えば好中球減少症、サイトカイン放出症候群(CRS)または神経毒性(NT)の発症を含む毒性または他の有害転帰についてモニターされる。いくつかの態様では、提供される方法は、重度の好中球減少症、重度のサイトカイン放出症候群(CRS)または重度の神経毒性に関連するまたはそれを示す症状または転帰などの、毒性転帰または症状、毒性促進プロフィール、因子、または特性のリスクを低減するために実施される。
【0528】
いくつかの態様では、提供される方法は、例えば他の特定の細胞療法と比較して、毒性もしくは毒性転帰の高い割合もしくは可能性をもたらさないか、または重度の神経毒性(NT)もしくは重度のサイトカイン放出症候群(CRS)などの毒性もしくは毒性転帰の割合もしくは可能性を低下させる。いくつかの態様では、方法は、例えばアウトプット細胞を投与することは、重度のNT(sNT)、重度のCRS(sCRS)、マクロファージ活性化症候群、腫瘍溶解症候群、3日間またはそれ以上の日数にわたる少なくとも38℃または約38℃の発熱、および少なくとも20mg/dLまたは約20mg/dLのCRPの血漿レベルをもたらさないか、またはそのリスクを増加させない。いくつかの態様では、提供される方法に従って治療される対象の30%超もしくは約30%超、35%超もしくは約35%超、40%超もしくは約40%超、50%超もしくは約50%超、55%超もしくは約55%超、60%超もしくは約60%超またはそれ以上が、いかなるグレードのCRSも示さず、またはいかなるグレードの神経毒性も示さない。いくつかの態様では、治療された対象の50%以下(例えば治療された対象の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%またはそれ以上)は、グレード2より高いサイトカイン放出症候群(CRS)および/またはグレード2より高い神経毒性。いくつかの態様では、方法に従って治療された対象の少なくとも50%(例えば治療された対象の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%またはそれ以上)は、重篤な毒性転帰(例えば重度のCRSまたは重度の神経毒性)を示さず、例えばグレード3またはそれより高い神経毒性を示さず、および/または重度のCRSを示さず、または治療後の特定の期間内に、例えば細胞の投与の1週間以内、2週間以内もしくは1ヶ月以内にこれらを示さない。
【0529】
いくつかの態様では、提供される方法は、例えば他の特定の細胞療法と比較して、毒性もしくは毒性転帰の高い割合もしくは可能性をもたらさないか、または重度の神経毒性(NT)もしくは重度のサイトカイン放出症候群(CRS)などの毒性もしくは毒性転帰の割合もしくは可能性を低下させる。いくつかの態様では、方法は、例えばアウトプット細胞を投与することは、重度のNT(sNT)、重度のCRS(sCRS)、マクロファージ活性化症候群、腫瘍溶解症候群、3日間またはそれ以上の日数にわたる少なくとも38℃または約38℃の発熱、および少なくとも20mg/dLまたは約20mg/dLのCRPの血漿レベルをもたらさないか、またはそのリスクを増加させない。いくつかの態様では、提供される方法に従って治療される対象の30%超もしくは約30%超、35%超もしくは約35%超、40%超もしくは約40%超、50%超もしくは約50%超、55%超もしくは約55%超、60%超もしくは約60%超またはそれ以上が、いかなるグレードのCRSも示さず、またはいかなるグレードの神経毒性も示さない。いくつかの態様では、治療された対象の50%以下(例えば治療された対象の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%またはそれ以上)は、グレード2より高いサイトカイン放出症候群(CRS)および/またはグレード2より高い神経毒性。いくつかの態様では、方法に従って治療された対象の少なくとも50%(例えば治療された対象の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%またはそれ以上)は、重篤な毒性転帰(例えば重度のCRSまたは重度の神経毒性)を示さず、例えばグレード3またはそれより高い神経毒性を示さず、および/または重度のCRSを示さず、または治療後の特定の期間内に、例えば細胞の投与の1週間以内、2週間以内もしくは1ヶ月以内にこれらを示さない。
【0530】
A. サイトカイン放出症候群(CRS)および神経毒性
いくつかの局面では、毒性転帰は、サイトカイン放出症候群(CRS)または重度のCRS(sCRS)であるか、またはそれに関連するか、またはそれを示す。CRS、例えばsCRSは、いくつかの場合には、養子T細胞療法後および他の生物学的製剤の対象への投与後に発生し得る。Davila et al., Sci Transl Med 6, 224ra25(2014); Brentjens et al., Sci. Transl. Med. 5, 177ra38(2013); Grupp et al., N. Engl. J. Med.368, 1509-1518(2013);およびKochenderfer et al., Blood 119, 2709-2720(2012); Xu et al., Cancer Letters 343(2014)172-78参照。
【0531】
典型的には、CRSは、例えばT細胞、B細胞、NK細胞、単球、および/またはマクロファージによって媒介される過度の全身性免疫応答によって引き起こされる。そのような細胞は、サイトカインおよびケモカインなどの炎症性メディエータを大量に放出し得る。サイトカインは、急性炎症反応を引き起こすおよび/または内皮器官損傷を誘導する可能性があり、微小血管の漏出、心不全、または死亡をもたらし得る。重度の生命を脅かすCRSは、肺浸潤および肺損傷、腎不全、または播種性血管内凝固症候群を引き起こし得る。他の重篤で生命を脅かす毒性には、心臓毒性、呼吸困難、神経毒性、および/または肝不全が含まれ得る。CRSは、抗IL-6療法、例えば抗IL-6抗体、例えば、トシリズマブ、または抗生物質または記載されている他の剤などの抗炎症療法を使用して治療され得る。
【0532】
CRSの転帰、徴候および症状は公知であり、本明細書に記載されているものが含まれる。いくつかの態様では、特定の投薬レジメンまたは投与が、所与のCRS関連の転帰、徴候、または症状を生じさせるまたは生じさせない場合、特定の転帰、徴候、および症状ならびに/またはその量もしくは程度が特定され得る。
【0533】
CAR発現細胞を投与する状況において、CRSは、典型的にはCARを発現する細胞の注入後6~20日で発生する。Xu et al., Cancer Letters 343(2014)172-78参照。いくつかの場合には、CRSは、CAR T細胞の注入後6日未満または20日超で発生する。CRSの発生率および時期は、注入時のベースラインサイトカインレベルまたは腫瘍負荷に関連し得る。一般に、CRSは、インターフェロン(IFN)γ、腫瘍壊死因子(TNF)α、および/またはインターロイキン(IL)2の血清レベルの上昇を含む。CRSにおいて急速に誘導され得る他のサイトカインは、IL-1β、IL-6、IL-8、およびIL-10である。
【0534】
CRSに関連する例示的な転帰には、発熱、硬直、悪寒、低血圧、呼吸困難、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、脳症、ALT/AST上昇、腎不全、心臓障害、低酸素症、神経障害、および死亡が含まれる。神経学的合併症には、せん妄、発作様活動、錯乱、換語困難、失語症、および/または鈍麻になることが含まれる。他のCRS関連の転帰には、疲労、悪心、頭痛、発作、頻脈、筋肉痛、発疹、急性血管漏出症候群、肝機能障害、および腎不全が含まれる。いくつかの局面では、CRSは、血清フェリチン、d-ダイマー、アミノトランスフェラーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼおよびトリグリセリドなどの1つもしくは複数の因子の増加、または低フィブリノゲン血症または肝脾腫大症に関連する。
【0535】
いくつかの態様では、CRSに関連する転帰には以下の1つまたは複数が含まれる:2日もしくはそれ以上、例えば3日もしくはそれ以上、例えば4日もしくはそれ以上の日数または少なくとも連続3日間の持続的な発熱、例えば特定の温度、例えば38℃を超えるもしくは約38℃を超える発熱;サイトカインの増加、例えば、少なくとも2つのサイトカイン(例えばインターフェロンガンマ(IFNγ)、GM-CSF、IL-6、IL-10、Flt-3L、フラクタルカイン、およびIL-5、および/もしくは腫瘍壊死因子アルファ(TNFα))からなる群のうちの少なくとも2つ)の治療前レベルと比較して、例えば少なくとも75もしくは少なくとも約75の最大倍数変化、またはそのようなサイトカインの少なくとも1つの少なくとも250もしくは少なくとも約250の最大倍数変化;ならびに/または毒性の少なくとも1つの臨床徴候、例えば低血圧(例えば少なくとも1つの静脈内血管作動性昇圧剤によって測定される);低酸素症(例えば90%未満もしくは約90%未満の血漿酸素(PO2)レベル);ならびに/または1つもしくは複数の神経障害(精神状態の変化、鈍麻、および発作を含む)。
【0536】
例示的なCRS関連の転帰には、サイトカインおよびケモカイン、ならびにCRSに関連する他の因子を含む、1つまたは複数の因子の上昇したまたは高い血清レベルが含まれる。例示的な転帰には、そのような因子の1つまたは複数の合成または分泌の増加がさらに含まれる。そのような合成または分泌は、T細胞、または自然免疫細胞もしくはB細胞などのT細胞と相互作用する細胞によるものであり得る。
【0537】
いくつかの態様では、CRS関連の血清因子またはCRS関連の転帰には、インターフェロンガンマ(IFN-γ)、TNF-α、IL-1β、IL-2、IL-6、IL-7、IL-8、IL-10、IL-12、sIL-2Ra、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージ炎症性タンパク質(MIP)-1、腫瘍壊死因子α(TNFα)、IL-6、およびIL-10、IL-1β、IL-8、IL-2、MIP-1、Flt-3L、フラクタルカイン、および/またはIL-5を含む、炎症性サイトカインおよび/またはケモカインが含まれる。いくつかの態様では、因子または転帰にはC反応性タンパク質(CRP)が含まれる。CRSの早期のおよび容易に測定可能な危険因子であることに加えて、CRPは細胞拡大のマーカーでもある。いくつかの態様では、15mg/dL以上などの高レベルのCRPを有すると測定された対象は、CRSを有する。いくつかの態様では、高レベルのCRPを有すると測定された対象は、CRSを有さない。いくつかの態様では、CRSの測定尺度は、CRPの測定尺度およびCRSを示す別の因子を含む。
【0538】
いくつかの態様では、1つまたは複数の炎症性サイトカインまたはケモカインは、CAR治療および/またはBTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤治療の前、治療中、または治療後にモニターされる。いくつかの局面では、1つまたは複数のサイトカインまたはケモカインには、IFN-γ、TNF-α、IL-2、IL-1β、IL-6、IL-7、IL-8、IL-10、IL-12、sIL-2Rα、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、またはマクロファージ炎症性タンパク質(MIP)が含まれる。いくつかの態様では、IFN-γ、TNF-α、およびIL-6がモニターされる。
【0539】
いずれの患者がsCRSを発症するリスクがある可能性がより高いかを予測するために、CRSの発症と相関すると考えられるCRS基準が開発されている(Davilla et al. Science translational medicine. 2014; 6(224): 224ra25参照)。因子には、発熱、低酸素症、低血圧、神経学的変化、その治療誘発性上昇が治療前の腫瘍負荷およびsCRS症状の両方と良好に相関し得る、7つのサイトカインのセット(IFNγ、IL-5、IL-6、IL-10、Flt-3L、フラクタルカイン、およびGM-CSF)などの炎症性サイトカインの血清レベル上昇が含まれる。CRSの診断と管理に関する他のガイドラインは公知である(例えばLee et al.,Blood.2014;124(2):188-95参照)。いくつかの態様では、CRSグレードを反映する基準は、以下の表3に詳述されているものである。
【0540】
(表3)CRSの例示的なグレード分類基準
【0541】
いくつかの態様では、対象が、細胞療法またはその細胞の用量の投与後に以下を示す場合、対象は投与に応答したまたは投与に続発する「重度のCRS」(「sCRS」)を発症すると見なされる:(1)少なくとも3日間の少なくとも38℃の発熱;(2)次のいずれかを含むサイトカインの上昇(a)投与直後のレベルと比較して次の7つのサイトカインの群の少なくとも2つについて少なくとも75の最大倍数変化:インターフェロンガンマ(IFNγ)、GM-CSF、IL-6、IL-10、Flt-3L、フラクタルカイン、およびIL-5、ならびに/または(b)投与直後のレベルと比較して次の7つのサイトカインの群の少なくとも1つについて少なくとも250の最大倍数変化:インターフェロンガンマ(IFNγ)、GM-CSF、IL-6、IL-10、Flt-3L、フラクタルカイン、およびIL-5;ならびに(c)低血圧(少なくとも1つの静脈内血管作動性昇圧剤を必要とする)もしくは低酸素症(PO2<90%)もしくは1つもしくは複数の神経障害(精神状態の変化、鈍麻、および/もしくは発作を含む)などの毒性の少なくとも1つの臨床徴候のいずれかを含むサイトカイン増加。いくつかの態様では、重度のCRSは、表3に示されるような、グレード3またはそれ以上のCRSを含む。
【0542】
いくつかの態様では、重度のCRSまたはグレード3もしくはそれ以上のCRS、例えばグレード4もしくはそれ以上のCRSに関連する転帰には、以下の1つまたは複数が含まれる: 2日以上、例えば3日以上、例えば4日以上、または少なくとも連続3日間の持続的な発熱、例えば特定の温度、例えば38℃を超えるもしくは約38℃を超える発熱;38℃を超えるもしくは約38℃を超える発熱;サイトカインの増加、例えば、少なくとも2つのサイトカイン(例えばインターフェロンガンマ(IFNγ)、GM-CSF、IL-6、IL-10、Flt-3L、フラクタルカイン、およびIL-5、および/もしくは腫瘍壊死因子アルファ(TNFα))からなる群のうちの少なくとも2つ)の治療前レベルと比較して、例えば少なくとも75もしくは少なくとも約75の最大倍数変化、またはそのようなサイトカインの少なくとも1つの少なくとも250もしくは少なくとも約250の最大倍数変化;ならびに/または毒性の少なくとも1つの臨床徴候、例えば低血圧(例えば少なくとも1つの静脈内血管作動性昇圧剤によって測定される);低酸素症(例えば90%未満もしくは約90%未満の血漿酸素(PO2)レベル);ならびに/または1つもしくは複数の神経障害(精神状態の変化、鈍麻、および発作を含む)。いくつかの態様では、重度のCRSは、集中治療室(ICU)での管理またはケアを必要とするCRSを含む。
【0543】
いくつかの態様では、重度のCRSなどのCRSは、(1)持続性の発熱(少なくとも3日間の少なくとも38℃の発熱)および(2)少なくとも20mg/dLもしくは少なくとも約20mg/dLのCRPの血清レベルの組合せを包含する。いくつかの態様では、CRSは、2つまたはそれ以上の昇圧剤の使用を必要とする低血圧または機械的換気を必要とする呼吸不全を包含する。いくつかの態様では、昇圧剤の投与量は、2回目またはそれ以降の投与で増加される。
【0544】
いくつかの態様では、重度のCRSまたはグレード3のCRSは、アラニンアミノトランスフェラーゼの増加、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの増加、悪寒、発熱性好中球減少症、頭痛、左心室機能不全、脳症、水頭症、および/または振せんを包含する。
【0545】
様々な転帰を測定または検出する方法が指定され得る。
【0546】
いくつかの局面では、細胞療法などの療法の毒性転帰は、神経毒性または重度の神経毒性であるか、またはそれに関連するか、またはそれを示す。いくつかの態様では、神経毒性の臨床的リスクに関連する症状には、錯乱、せん妄、表現的失語症、鈍麻、ミオクローヌス、嗜眠、精神状態の変化、けいれん、発作様活動、発作(任意で脳波[EEG]によって確認される)、ベータアミロイド(Aβ)のレベル上昇、グルタミン酸塩のレベル上昇、および酸素ラジカルのレベル上昇が含まれる。いくつかの態様では、神経毒性は、重症度に基づいて等級分けされる(例えばグレード1~5のスケールを使用する(例えばGuido Cavaletti&Paola Marmiroli Nature Reviews Neurology 6,657-666(December 2010);National Cancer Institute-Common Toxicity Criteria version 4.03(NCI-CTCAE v4.03)参照)。
【0547】
いくつかの場合には、神経学的症状は、sCRSの最初期症状であり得る。いくつかの態様では、神経学的症状は、細胞療法注入の5~7日後に始まることが認められる。いくつかの態様では、神経学的変化の持続期間は、3~19日の範囲であり得る。いくつかの場合には、sCRSの他の症状が消散した後に神経学的変化の回復が起こる。いくつかの態様では、神経学的変化の消散の時間または程度は、抗IL-6および/またはステロイドによる治療によって促進されない。
【0548】
いくつかの態様では、投与後に対象が以下の中からセルフケア(例えば入浴、衣服の着脱、摂食、トイレの使用、服薬)を制限する症状を示す場合、対象は、細胞療法またはその細胞の用量の投与に応答して、または続発して「重度の神経毒性」を発症すると見なされる:1)末梢運動神経の炎症もしくは変性を含む末梢性運動ニューロパチーの症状;2)末梢感覚神経の炎症もしくは変性を含む末梢性感覚ニューロパチーの症状、異常感覚、例えば異常で不快な感覚をもたらす感覚知覚の歪み、神経痛、神経もしくは神経の群に沿った激しい痛みの感覚、ならびに/または錯感覚、例えば刺痛、しびれ、圧力、冷感および温感の異常な皮膚感覚をもたらす感覚ニューロンの機能障害。いくつかの態様では、重度の神経毒性は、表4に示されるような、グレード3またはそれ以上の神経毒性を含む。いくつかの態様では、重度の神経毒性は、症状またはグレード3の神経毒性が10日間またはそれ以上続く場合、長期のグレード3であると見なされる。
【0549】
(表4)神経毒性の例示的なグレード分類基準
【0550】
いくつかの態様では、これらの方法は、他の方法と比較して、CRSまたは神経毒性に関連する症状を軽減する。いくつかの局面では、提供される方法は、他の方法と比較して、重度のCRSまたはグレード3もしくはそれ以上のCRSに関連する症状、転帰または因子を含む、CRSに関連する症状、転帰または因子を低減する。例えば、本方法に従って治療された対象は、記載されている、例えば表3に示されているようなCRS、例えば重度のCRSまたはグレード3もしくはそれ以上のCRSの検出可能な症状、転帰または因子を欠如し得る、および/または症状、転帰または因子が軽減され得る。いくつかの態様では、本方法に従って治療された対象は、他の方法によって治療された対象と比較して、四肢脱力またはしびれ、記憶、視力および/または知性の喪失、制御不能な強迫行動および/または取りつかれたような行動、妄想、頭痛、運動制御の喪失、認知機能の低下および自律神経系の機能障害を含む認知および行動上の問題、ならびに性機能障害などの神経毒性の症状が軽減され得る。いくつかの態様では、本方法に従って治療される対象は、末梢運動神経障害、末梢感覚神経障害、異常感覚、神経痛または錯感覚に関連する症状が軽減され得る。
【0551】
いくつかの態様では、方法は、ニューロンの死などの神経系および/または脳への損傷を含む神経毒性に関連する転帰を低減する。いくつかの局面では、方法は、ベータアミロイド(Aβ)、グルタミン酸塩、および酸素ラジカルなどの神経毒性に関連する因子のレベルを低下させる。
【0552】
いくつかの態様では、毒性転帰は、用量制限毒性(DLT)である。いくつかの態様では、毒性転帰は、用量制限毒性がないことである。いくつかの態様では、用量制限毒性(DLT)は、上記のような特定の毒性を評価するための任意の公知のまたは公開されているガイドラインによって表されるかまたは評価され、National Cancer Institute(NCI)の「有害事象の一般的な用語基準」(Common Terminology Criteria for Adverse Events)(CTCAE)バージョン4.0を含む、グレード3またはそれ以上の毒性として定義される。いくつかの態様では、用量制限毒性(DLT)は、細胞療法(例えばT細胞療法)および/またはBTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤の投与後に以下に論じられる事象のいずれかが起こる場合と定義され、事象には:a)発熱性好中球減少症;b)約7日または約7日を超えて持続するグレード4の好中球減少症;c)臨床的に重大な出血を伴うグレード3または4の血小板減少症;およびd)24時間を超えて持続するグレード4の血小板減少症が含まれる。
【0553】
いくつかの態様では、提供される態様は、提供される併用療法、および/または提供される製品もしくは組成物に従ってT細胞の用量を投与することで観察されるような、毒性、例えばCRSもしくは神経毒性または重度のCRSもしくは神経毒性、例えばグレード3またはそれ以上のCRSまたは神経毒性を発症する低い割合またはリスクをもたらす。いくつかの場合には、これは、外来患者ベースでの細胞療法の投与を可能にする。いくつかの態様では、細胞療法、例えば提供される方法、および/または提供される製品もしくは組成物に従ったT細胞(例えばCAR+T細胞)の用量の投与は、外来患者ベースで行われるか、または一晩の滞在を必要とする入院などの対象の入院を必要としない。
【0554】
いくつかの局面では、外来患者ベースで治療される対象を含む、細胞療法、例えば提供される方法、および/または提供される製品もしくは組成物に従ったT細胞(例えばCAR+T細胞)の用量を投与された対象は、対象が神経毒性またはCRSなどの毒性の徴候または症状を示さない限りまたは示すまで、細胞用量の投与の前にまたは投与と共に、毒性を治療するための介入を投与されない。
【0555】
いくつかの態様では、外来患者ベースで治療される対象を含む、細胞療法、例えばT細胞(例えばCAR+T細胞)の用量を投与された対象が発熱を示す場合、対象は、熱を下げるための治療を与えられるか、または治療を受けるかもしくは投与するように指示される。いくつかの態様では、対象の発熱は、特定の閾値温度もしくはレベルである(またはそのように測定される)か、またはそれを上回る対象の体温として特徴付けられる。いくつかの局面では、閾値温度は、少なくとも軽度の発熱、少なくとも中等度の発熱、および/または少なくとも高熱に関連する温度である。いくつかの態様では、閾値温度は特定の温度または範囲である。例えば、閾値温度は、38℃もしくは約38℃もしくは少なくとも38℃もしくは少なくとも約38℃、39℃もしくは約39℃もしくは少なくとも39℃もしくは少なくとも約39℃、40℃もしくは約40℃もしくは少なくとも40℃もしくは少なくとも約40℃、41℃もしくは約41℃もしくは少なくとも41℃もしくは少なくとも約41℃、または42℃もしくは約42℃もしくは少なくとも42℃もしくは少なくとも約42℃であり得るか、または38℃もしくは約38℃から39℃もしくは約39℃の範囲、39℃もしくは約39℃から40℃もしくは約40℃の範囲、40℃もしくは約40℃から41℃もしくは約41℃の範囲、または41℃もしくは約41℃から42℃もしくは約42℃の範囲であり得る。
【0556】
いくつかの態様では、熱を下げるように設計された治療には、解熱剤による治療が含まれる。解熱剤には、解熱作用を有することが公知の多くの剤のうちの1つ、例えばNSAID(イブプロフェン、ナプロキセン、ケトプロフェン、およびニメスリドなど)、アスピリン、サリチル酸コリン、サリチル酸マグネシウムおよびサリチル酸ナトリウムなどのサリチル酸塩、パラセタモール、アセトアミノフェン、メタミゾール、ナブメトン、フェナキソン、アンチピリン、解熱剤などの、熱を下げる任意の剤、組成物、または成分が含まれ得る。いくつかの態様では、解熱剤はアセトアミノフェンである。いくつかの態様では、アセトアミノフェンは、12.5mg/kgの用量で、経口または静脈内に最大4時間ごとに投与され得る。いくつかの態様では、解熱剤は、イブプロフェンまたはアスピリンであるか、またはそれを含む。
【0557】
いくつかの態様では、発熱が持続性の発熱である場合、対象は、毒性を治療するための代替治療を投与される。外来患者ベースで治療される対象については、対象が持続性の発熱を有するおよび/または有すると決定されるもしくは見なされる場合、対象は病院に戻るように指示される。いくつかの態様では、対象が、関連する閾値温度または関連する閾値温度を上回る発熱を示し、特定の治療、例えば熱を下げるように設計された治療、例えば解熱剤、例えばNSAIDまたはサリチル酸塩、例えばイブプロフェン、アセトアミノフェンまたはアスピリンによる治療後に、対象の発熱または体温が低下しない、または特定の量(例えば1℃超、および一般に約0.5℃もしくは約0.5℃超、0.4℃もしくは約0.4℃超、0.3℃もしくは約0.3℃超、または0.2℃もしくは約0.2℃超変動しない)低下しないかもしくは特定の量を超えて低下しない場合、対象は持続性の発熱を有するおよび/または有すると決定されるもしくは有すると見なされる。例えば、対象は、少なくとも38℃もしくは少なくとも約38℃、または少なくとも39℃もしくは少なくとも約39℃の発熱を示すかまたは示すと決定され、それが、アセトアミノフェンなどの解熱剤による治療後でも6時間にわたって、8時間にわたって、または12時間にわたって、または24時間にわたって、0.5℃もしくは0.5℃超もしくは約0.5℃超、0.4℃もしくは0.4℃超もしくは約0.4℃超、0.3℃もしくは0.3℃超もしくは約0.3℃超、0.2℃もしくは0.2℃超もしくは約0.2℃超低下しないか、または1%もしくは約1%、2%もしくは約2%、3%もしくは約3%、4%もしくは約4%、または5%もしくは約5%低下しない場合、対象は持続性の発熱を有すると見なされる。いくつかの態様では、解熱剤の投与量は、発熱、または細菌もしくはウイルス感染、例えば限局性もしくは全身性感染に関連する発熱などの特定の種類の発熱を軽減するために対象などにおいて通常有効な投与量である。
【0558】
いくつかの態様では、対象が、関連する閾値温度または関連する閾値温度を上回る発熱を示し、対象の発熱または体温が約1℃または約1℃超変動せず、および一般に約0.5℃もしくは約0.5℃超、0.4℃もしくは約0.4℃超、0.3℃もしくは約0.3℃超、または0.2℃もしくは約0.2℃超変動しない場合、対象は持続性の発熱を有する、および/または有すると決定されるもしくは有すると見なされる。そのような一定量を超える変動または一定量の変動がないことは、一般に、所与の期間(例えば24時間、12時間、8時間、6時間、3時間、または1時間にわたり、これは、発熱の最初の徴候または示される閾値を超える最初の温度から測定され得る)にわたって測定される。例えば、いくつかの態様では、対象が、6時間にわたって、8時間にわたって、12時間にわたって、または24時間にわたって、0.5℃超もしくは約0.5℃超、0.4℃超もしくは約0.4℃超、0.3℃超もしくは約0.3℃超、0.2℃超もしくは約0.2℃超変動しない、少なくとも38℃もしくは少なくとも約38℃、または少なくとも39℃もしくは少なくとも約39℃の発熱を示す場合、対象は、持続性の発熱を示すと見なされるかまたは決定される。
【0559】
いくつかの態様では、発熱は持続性の発熱である。いくつかの局面では、対象は、持続性の発熱を有すると決定された時点、例えば毒性を誘発する可能性がある最初の療法、例えばT細胞、例えばCAR+T細胞の用量などの細胞療法後のそのような決定または最初のそのような決定から1時間以内、2時間以内、3時間以内、4時間以内、5時間以内、6時間以内、またはより少ない時間以内に治療される。
【0560】
いくつかの態様では、毒性標的療法などの毒性を治療するための1つまたは複数の介入または剤は、対象が、例えば前述の態様のいずれかに従って測定されるように、持続的な発熱を示すと決定または確認された(例えば最初に決定または確認された)時点またはその直後に投与される。いくつかの態様では、1つまたは複数の毒性標的化療法は、そのような確認または決定から特定の期間内に、例えば30分以内、1時間以内、2時間以内、3時間以内、4時間以内、6時間以内、または8時間以内に投与される。
【0561】
B. 他の毒性
いくつかの局面では、毒性転帰は、BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤の投与後の1つまたは複数の非血液毒性であるか、またはそれに関連するか、またはそれを示す。非血液毒性の例には、腫瘍フレア反応、感染症、腫瘍崩壊症候群、心臓検査異常、血栓塞栓事象(深部静脈血栓症および肺塞栓症など)、および/または肺炎が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0562】
いくつかの局面では、非血液毒性は腫瘍フレア反応(TFR)(時には偽進行とも称される)である。TFRは、しばしば軽度の発熱、圧痛と腫脹、びまん性発疹、およびいくつかの場合には末梢血リンパ球数の増加を伴う、リンパ節、脾臓および/または肝臓を含む疾患担持部位のサイズの突然の増加である。いくつかの態様では、TFRは、有害事象の共通用語基準(バージョン3.0; US National Cancer Institute, Bethesda, MD, USA)に従って等級分けされる。いくつかの態様では、TFRは以下のように等級分けされる:グレード1、機能を妨げない軽度の痛み;グレード2、中等度の痛み、機能を妨げるが日常生活動作(ADL)を妨げない痛みまたは鎮痛薬;グレード3、重度の痛み、機能を妨げ、ADLを妨げる痛みまたは鎮痛薬;グレード4、無力化;グレード5、死亡。いくつかの態様では、1つまたは複数の剤は、コルチコステロイド、NSAIDおよび/または麻薬性鎮痛薬などのTFRに関連する1つまたは複数の症状を治療、改善または軽減するために対象に投与され得る。
【0563】
いくつかの局面では、非血液毒性は腫瘍崩壊症候群(TLS)である。いくつかの態様では、TLSは、Cairo-Bishopグレード分類システムによって指定された基準に従って等級分けされ得る(Cairo and Bishop(2004)Br J Haematol, 127: 3-11)。いくつかの態様では、対象は、高尿酸血症を軽減するために静脈内水分補給を与えられ得る。
【0564】
いくつかの態様では、対象は、ECGS、LVEFをモニターすることならびにトロポニン-TおよびBNPのレベルをモニターすることなどによって心臓毒性についてモニターされ得る。いくつかの態様では、1つまたは複数の心臓症状を伴うトロポニン-Tおよび/またはBNPのレベル上昇が観察される場合、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの保留または一時停止を潜在的に必要とし得る心臓毒性が起こり得る。
【0565】
提供される方法のいくつかの態様では、対象が、TFRまたは他の非血液毒性もしくはその特定のグレードなどの非血液毒性を示すと決定される場合、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブによるサイクリング療法は変更され得る。いくつかの局面では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与後に、対象がグレード3またはそれ以上の非血液毒性、例えばグレード3またはそれ以上のTFRを有する場合、サイクリング療法は変更される。いくつかの態様では、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、毒性の徴候または症状が解消されるか、軽減されるか、または減少するまで、永続的に保留されるか、または一時停止される。対象の継続的なモニタリングを実施して、毒性の1つまたは複数の徴候または症状を評価することができる。いくつかの場合には、毒性が消散するかまたは軽減された場合、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブの投与は、サイクリング療法を一時停止する前の同じ用量もしくは投薬レジメンで、より低いもしくはより少ない用量で、および/またはより少ない頻度の投与を含む投薬レジメンで再開することができる。いくつかの態様では、サイクリング療法を再開する場合、用量は、少なくともまたは少なくとも約または約10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、または60%減少または低減される。いくつかの態様では、細胞療法を一時停止する前の用量が2mg(例えば7日のうち5日与えられる)である場合、用量は1mg(7日のうち5日与えられる)に低減される。いくつかの態様では、用量の低減後でもグレード3の毒性が再発する場合、用量をさらに低減することができる。いくつかの態様では、用量の低減後でもグレード4の毒性が再発する場合、サイクリング療法は永続的に中止され得る。いくつかの局面では、血液毒性が、サイクリング療法の一時停止が4週間を超えるほどの重症度である場合、サイクリング療法は永続的に中止され得る。
【0566】
V. 製品およびキット
BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤、および免疫療法のための成分、例えば抗体もしくはその抗原結合断片またはT細胞療法、例えば操作された細胞、および/またはその組成物を含む製品も提供される。製造品は、容器、および容器上のまたは容器に関連するラベルまたは添付文書を含み得る。適切な容器には、例えばボトル、バイアル、シリンジ、IV輸液バッグなどが含まれる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料で形成され得る。いくつかの態様における容器は、単独であるか、または状態を治療、予防および/もしくは診断するのに有効な別の組成物と組み合わせた組成物を保持する。いくつかの態様では、容器は滅菌アクセスポートを有する。例示的な容器には、静脈内輸液バッグ、注射用の針によって貫通できるストッパーを備えたものを含むバイアル、または経口投与される剤用のボトルまたはバイアルが含まれる。ラベルまたは添付文書は、組成物が疾患または状態を治療するために使用されることを示し得る。
【0567】
製品は、(a)免疫療法、例えばT細胞療法に使用される操作された細胞を含有する組成物がその中に含まれる第1の容器;および(b)BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤を含有する組成物がその中に含まれる第2の容器を含み得る。
【0568】
いくつかの態様では、第1の容器は、第1の組成物と第2の組成物を含み、第1の組成物は、免疫療法に使用される操作された細胞の第1の集団、例えばCD4+T細胞療法を含み、第2の組成物は、第1の集団とは別個に操作され得る、操作された細胞の第2の集団、例えばCD8+T細胞療法を含む。いくつかの態様では、第1および第2の細胞組成物は、操作された細胞、例えばCD4+およびCD8+細胞の定義された比率(例えばCD4+:CD8+CAR+T細胞の1:1の比率)を含む。
【0569】
製品は、組成物が特定の状態を治療するために使用できることを示す添付文書をさらに含み得る。あるいは、またはさらに、製品は、薬学的に許容される緩衝液を含む別の容器または同じ容器をさらに含み得る。製品は、他の緩衝液、希釈剤、フィルタ、針、および/またはシリンジなどの他の材料をさらに含み得る。
【0570】
VI.定義
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語、表記法ならびに他の技術用語および科学用語または専門用語は、特許請求される主題が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有することが意図されている。いくつかの場合には、一般的に理解される意味を有する用語は、明瞭さのためおよび/または参照を容易にするために本明細書で定義され、本明細書にそのような定義を含むことは、必ずしも当技術分野で一般的に理解されているものに対する実質的な相違を表すと解釈されるべきではない。
【0571】
本明細書で使用される場合、「対象」は、ヒトまたは他の動物などの哺乳動物であり、典型的にはヒトである。いくつかの態様では、BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤、操作された細胞、または組成物が投与される対象、例えば患者は、哺乳動物、典型的にはヒトなどの霊長動物である。いくつかの態様では、霊長動物はサルまたは類人猿である。対象は、雄性または雌性であり得、幼児、若齢、青年、成体、および高齢の対象を含む任意の適切な年齢であり得る。いくつかの態様では、対象は、げっ歯動物などの非霊長類哺乳動物である。
【0572】
本明細書で使用される場合、「治療」(および「治療する」または「治療すること」などのその文法的変形)は、疾患もしくは状態もしくは障害、または症状、副作用もしくは転帰、またはそれに関連する表現型の完全なまたは部分的な改善または軽減を指す。治療の望ましい効果には、疾患の発生または再発の防止、症状の緩和、疾患の直接的または間接的な病理学的結果の減少、転移の防止、疾患の進行速度の低下、病状の改善または緩和、および寛解または予後の改善が含まれるが、これらに限定されるわけではない。これらの用語は、疾患の完全な治癒、またはあらゆる症状の完全な排除、またはすべての症状または転帰への効果を意味しない。
【0573】
本明細書で使用される場合、「疾患の発症を遅らせる」とは、疾患(B細胞悪性腫瘍など)の発症を延ばす、妨げる、減速する、遅延させる、安定化する、抑制するおよび/または延期することを意味する。この遅延は、疾患の病歴および/または治療される個体に依存して、様々な長さの時間であり得る。明らかなように、十分なまたは有意な遅延は、事実上、個体が疾患を発症しないという点で予防を包含することができる。例えば、転移の発生などの後期B細胞リンパ腫は、遅延され得る。
【0574】
本明細書で使用される「予防」は、疾患の素因を有する可能性があるが、まだ疾患と診断されていない対象における疾患の発生または再発に関して予防を提供することを含む。いくつかの態様では、提供される細胞および組成物は、疾患の発症を遅らせるため、または疾患の進行を減速するために使用される。
【0575】
本明細書で使用される場合、機能または活性を「抑制する」ことは、関心対象の条件またはパラメーターを除いて同じ条件と比較した場合、あるいは別の条件と比較した場合に、機能または活性を低減することである。例えば、腫瘍の成長を抑制する細胞は、細胞の非存在下での腫瘍の成長速度と比較して、腫瘍の成長速度を低下させる。
【0576】
投与の文脈における、剤、例えば操作された細胞もしくは抗PD-L1もしくは抗原結合断片、またはその薬学的製剤もしくは組成物の「有効量」は、治療結果または予防結果などの所望の結果を達成するために、必要な投与量/量および必要な期間で有効な量を指す。
【0577】
剤、例えば操作された細胞もしくは抗PD-L1もしくは抗原結合断片、またはその薬学的製剤もしくは組成物の「治療有効量」は、所望の治療結果を達成するため、例えば疾患、状態もしくは障害の治療のため、および/または治療の薬物動態学的もしくは薬力学的効果を達成するために、必要な投与量および必要な期間で有効な量を指す。治療有効量は、対象の病状、年齢、性別および体重、ならびに投与される免疫調節ポリペプチドまたは操作された細胞などの因子に応じて異なり得る。いくつかの態様では、提供される方法は、BTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤、操作された細胞(例えば細胞療法)、または有効量、例えば治療有効量の組成物を投与する工程を含む。
【0578】
「予防有効量」は、所望の予防的結果を達成するために、そのような達成のために必要な投薬量において、かつ必要な期間にわたって効果的である量を示す。典型的には、しかし、必ずしもそうであるとは限らないが、予防的用量が、疾患に先立って、または疾患のより初期の段階で対象において使用されるので、予防有効量は治療有効量より少ないであろう。
【0579】
用語「薬学的製剤」は、調製物であって、該調製物に含有される有効成分の生物学的活性が効果的であることを可能にするような形態であり、かつ、製剤が投与されるであろう対象に対して許容できないほどに毒性であるさらなる成分を何ら含有しない調製物を示す。
【0580】
「薬学的に許容される担体」は、対象にとって非毒性である、有効成分以外の薬学的製剤における成分を示す。薬学的に許容される担体には、緩衝液、賦形剤、安定剤または保存剤が含まれるが、それらに限定されない。
【0581】
本明細書において使用する場合、単数形である「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈がそうでないことを明確に示す場合を除き、複数形の言及物を包含する。例えば、「1つの(a)」または「1つの(an)」は、「少なくとも1つ」または「1つまたは複数」を意味する。本明細書において記載される様々な局面および変形は、様々な局面および変形「からなる」こと、ならびに/あるいは様々な局面および変形「から本質的になる」ことを包含することが理解される。
【0582】
本開示の全体を通して、請求項に記載される主題の様々な局面が範囲形式で示される。範囲形式での記載は単に便宜および簡潔性のためであり、請求項に記載される主題の範囲に関して柔軟性のない限定として解釈してはならないことを理解しなければならない。したがって、範囲の記載は、可能な部分範囲、同様にまた、その範囲に含まれる個々の数値をすべて具体的に開示していると見なされなければならない。例えば、値の範囲が与えられる場合、その範囲の上限と、下限との間におけるそれぞれの中間の値、およびその指定された範囲における任意の他の指定された値または中間の値が、請求項に記載される主題の範囲内に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限および下限がこれらのより小さい範囲に独立して含まれてもよく、これらもまた、指定された範囲における任意の具体的に除外された限界点に従うことを条件にして、請求項に記載される主題の範囲内に包含される。指定された範囲が限界点の一方または両方を含む場合、そのような含まれた限界点のどちらかまたは両方を除外する範囲もまた、請求項に記載される主題の範囲内に含まれる。このことは、範囲の広さにかかわらず、当てはまる。
【0583】
用語「約」は、本明細書において使用する場合、この技術分野における当業者には容易に理解されるそれぞれの値についての通常の誤差範囲を示す。「約」を伴って値またはパラメーターが本明細書において示される場合、その値またはパラメーターそのものに向けられる態様が含まれる(記載される)。例えば、「約X」が示される記載では、「X」の記載が含まれる。
【0584】
本明細書において使用する場合、ヌクレオチド位置またはアミノ酸位置が、開示された配列(例えば、配列表に示される配列など)におけるヌクレオチド位置またはアミノ酸位置「に対応する」という言及は、標準的なアライメントアルゴリズム(例えば、GAPアルゴリズムなど)を使用して同一性を最大とするように、開示された配列とアラインメントしたときに特定されるヌクレオチド位置またはアミノ酸位置を示す。配列をアライメントすることにより、当業者は、例えば、保存されたアミノ酸残基および同一のアミノ酸残基をガイドとして使用して、対応する残基を特定することができる。通常は、対応する位置を特定するために、アミノ酸の配列は、最も高水準の一致が得られるようにアライメントされる(例えば、Computational Molecular Biology, Lesk, A.M., ed., Oxford University Press, New York, 1988; Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D.W., ed., Academic Press, New York, 1993; Computer Analysis of Sequence Data, Part I, Griffin, A.M. and Griffin, H.G., eds., Humana Press, New. Jersey, 1994; Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press, 1987;およびSequence Analysis Primer, Gribskov, M. and Devereux, J., eds., M Stockton Press, New York, 1991; Carrillo et al.(1988)SIAM J Applied Math 48:1073を参照のこと)。
【0585】
用語「ベクター」は、本明細書において使用する場合、連結される別の核酸を増やすことができる核酸分子を示す。この用語には、自己複製する核酸構造物としてのベクター、同様にまた、導入されている宿主細胞のゲノムに組み込まれるベクターが含まれる。ある種のベクターは、機能的に連結される核酸の発現を導くことができる。そのようなベクターは本明細書において「発現ベクター」として示される。ベクターには、ウイルスベクター、例えば、レトロウイルスベクター(例えば、ガンマレトロウイルスベクターおよびレンチウイルスベクター)などが挙げられる。
【0586】
用語「宿主細胞」、用語「宿主細胞株」および用語「宿主細胞培養物」は交換可能に使用され、外因性核酸が導入されている細胞を、そのような細胞の子孫を含めて示す。宿主細胞には、「形質転換体」および「形質転換(された)細胞」が含まれ、これらには、初代形質転換細胞、および、継代数に関係なく、初代形質転換細胞に由来する子孫が含まれる。子孫は、核酸の内容において親細胞と完全に同一でなくてもよく、変異を含有する場合がある。最初に形質転換された細胞においてスクリーニングされた、または選択されたのと同じ機能または生物学的活性を有する変異子孫が本明細書において含まれる。
【0587】
本明細書において使用する場合、細胞または細胞の集団が特定のマーカーについて「陽性」であると述べられることは、特定のマーカー(典型的には表面マーカー)が細胞表面または細胞において検出可能に存在していることを示す。表面マーカーが言及されるとき、この用語は、フローサイトメトリーによって、例えば、マーカーに特異的に結合する抗体を用いて染色し、前記抗体を検出することによって検出されるような表面発現の存在を示し、この場合、染色が、イソタイプの一致する対照を、それ以外の点では同一の条件のもとで用いる、同じ手順を行って検出される染色を実質的に超えるレベルでフローサイトメトリーによって検出可能であり、かつ/またはマーカーについて陽性であることが知られている細胞についてのレベルと実質的に類似するレベルであり、かつ/またはマーカーについて陰性であることが知られている細胞についてのレベルよりも実質的に高いレベルである。
【0588】
本明細書において使用する場合、細胞または細胞の集団が特定のマーカーについて「陰性」であると述べられることは、特定のマーカー(典型的には表面マーカー)が細胞表面または細胞において実質的に検出可能に存在していることが認められないことを示す。表面マーカーが言及されるとき、この用語は、フローサイトメトリーによって、例えば、マーカーに特異的に結合する抗体を用いて染色し、前記抗体を検出することによって検出されるような表面発現の非存在を示し、この場合、染色が、イソタイプの一致する対照を、それ以外の点では同一の条件のもとで用いる、同じ手順を行って検出される染色を実質的に超えるレベルでフローサイトメトリーによって検出されず、かつ/またはマーカーについて陽性であることが知られている細胞についてのレベルよりも実質的に低いレベルであり、かつ/またはマーカーについて陰性であることが知られている細胞についてのレベルと比較して実質的に類似するレベルである。
【0589】
本明細書において使用する場合、「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」および「同一性パーセント」は、アミノ酸配列(参照ポリペプチド配列)に関して使用するときには、最大の配列同一性パーセントを達成するように配列をアライメントし、必要ならば、ギャップを導入した後、かつ、どのような保存的置換も配列同一性の一部として考慮せずに、参照ポリペプチド配列におけるアミノ酸残基と同一である候補配列(例えば、対象となる抗体またはフラグメント)におけるアミノ酸残基の百分率として定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定するためのアライメントを、当技術分野における技量の範囲内にある様々な方法で、例えば、公開されているコンピュータソフトウェア(例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)のソフトウェアなど)を使用して達成することができる。当業者は、最大のアライメントを比較されている配列の全長にわたって達成するために必要とされる任意のアルゴリズムを含めて、配列をアライメントするための適切なパラメーターを決定することができる。
【0590】
アミノ酸置換は、ポリペプチド中のあるアミノ酸を別のアミノ酸で置き換えることを含み得る。置換は、保存的アミノ酸置換または非保存的アミノ酸置換であり得る。アミノ酸置換は、関心対象の結合分子、例えば抗体、および所望の活性、例えば保持された/改善された抗原結合、減少した免疫原性、または改善されたADCCもしくはCDCについてスクリーニングされる生成物に導入され得る。
【0591】
アミノ酸は一般に、以下の一般的な側鎖特性に従って分類され得る:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖の配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0592】
いくつかの態様では、保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを同じクラスの別のメンバーと交換することを含み得る。いくつかの態様では、非保存的アミノ酸置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のクラスと交換することを含み得る。
【0593】
本明細書で使用される場合、組成物は、細胞を含む、2つまたはそれ以上の生成物、物質、またはBTK/ITK阻害剤、例えばイブルチニブなどのキナーゼ阻害剤の任意の混合物を指す。組成物は、溶液、懸濁液、液体、粉末、ペースト、水性、非水性、またはそれらの任意の組合せであり得る。
【0594】
本明細書で使用される場合、「対象」は、ヒトまたは他の動物などの哺乳動物であり、典型的にはヒトである。
【0595】
VII.例示的な態様
以下の態様が提供される。
1.
(1)以下の構造:
であるかまたはこれを含むキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容される塩の有効量を、癌を有する対象に投与する工程、および
(2)自己T細胞療法を対象に投与する工程であって、該T細胞療法が、CD19に特異的に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現する遺伝子操作されたT細胞の用量を含み、該T細胞療法を投与する前に、対象から生物学的試料を入手し、かつこれを処理し、該処理が、任意でCARをコードする核酸分子を該T細胞に導入することによって、試料由来のT細胞を遺伝子改変することを含む、工程
を含む、治療方法であって、
キナーゼ阻害剤の投与が、試料の入手の少なくとも3日前または約3日前に開始され、かつ対象から試料を入手した日またはその日以降の投与を少なくとも含む期間にわたって、ある投与間隔でキナーゼ阻害剤を反復投与することを含む投薬レジメンで実施される、
方法。
2.
(1)以下の構造:
であるかまたはこれを含むキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容される塩の有効量を、癌を有する対象に投与する工程、
(2)対象から生物学的試料を入手し、該試料のT細胞を処理し、それによりCD19に特異的に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現する遺伝子操作されたT細胞を含む組成物を生成する工程、および
(3)遺伝子操作されたT細胞の用量を含む自己T細胞療法を対象に投与する工程
を含む、治療方法であって、
試料の入手の少なくとも3日前または約3日前に開始され、かつ対象から試料を入手した日またはその日以降の化合物の投与を少なくとも含む期間にわたって、ある投与間隔で阻害剤を反復投与することを含む投薬レジメンで、キナーゼ阻害剤の投与が実施される、
方法。
3.
以下の構造:
を有するキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容される塩の有効量を、癌を有する対象に投与する工程を含む、治療方法であって、
対象が、自己T細胞療法による治療の候補であるかまたは治療される予定であり、該T細胞療法が、CD19に特異的に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現する遺伝子操作されたT細胞の用量を含み、
T細胞療法を投与する前に、対象から生物学的試料を入手し、かつこれを処理し、該処理が、任意でCARをコードする核酸分子を該T細胞に導入することによって、試料由来のT細胞を遺伝子改変することを含み、および
キナーゼ阻害剤の投与が、試料の入手の少なくとも3日前または約3日前に開始され、かつ対象から試料を入手した日またはその日以降の投与を少なくとも含む期間にわたって、ある投与間隔で阻害剤を反復投与することを含む投薬レジメンで実施される、
方法。
4.
T細胞療法を対象に投与する工程をさらに含む、態様3の方法。
5.
キナーゼ阻害剤の投与の開始後およびT細胞療法の投与の前に、対象がリンパ球除去療法で前処置されている、態様1、2および4のいずれかの方法。
6.
キナーゼ阻害剤の投与を開始した後、T細胞療法の投与の前に、対象にリンパ球除去療法を投与する工程をさらに含む、態様1、2および態様4のいずれかの方法。
7.
キナーゼ阻害剤の投与が、リンパ球除去療法の間、中止または停止される、態様5または態様6の方法。
8.
投薬レジメンが、少なくともリンパ球除去療法の開始までの投与を含む期間にわたるキナーゼ阻害剤の投与を含む、態様5~7のいずれかの方法。
9.
投薬レジメンが、リンパ球除去療法の開始までの投与を含む期間にわたるキナーゼ阻害剤の投与、続いてリンパ球除去療法中のキナーゼ阻害剤の投与の中止または停止、および次いでT細胞療法の投与の開始後少なくとも15日間にわたる期間のキナーゼ阻害剤のさらなる投与を含む、態様5~7のいずれかの方法。
10.
(1)以下の構造:
を有するキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容される塩の有効量を、癌を有する対象に投与する工程、
(2)リンパ球除去療法を対象に投与する工程、および
(3)自己T細胞療法を対象に投与する工程であって、該T細胞療法が、CD19に特異的に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現する遺伝子操作されたT細胞の用量を含み、T細胞療法を投与する前に、対象から生物学的試料を入手し、かつこれを処理し、該処理が、任意でCARをコードする核酸分子を該T細胞に導入することによって、試料由来のT細胞を遺伝子改変することを含む、工程
を含む、治療方法であって、
キナーゼ阻害剤の投与が、試料の入手の少なくとも3日前または約3日前に開始され、かつ、リンパ球除去療法の開始までの投与を含む期間にわたって、ある投与間隔でキナーゼ阻害剤を反復投与し、続いてリンパ球除去療法中はキナーゼ阻害剤の投与を中止または停止し、その後該T細胞療法の投与の開始後少なくとも15日間にわたる期間中、キナーゼ阻害剤をさらに投与することを含む投薬レジメンで、実施される、
方法。
11.
対象から生物学的試料を入手し、該試料のT細胞を処理し、それによりCD19に特異的に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現する遺伝子操作されたT細胞を含む組成物を生成する工程をさらに含む、態様10の方法。
12.
キナーゼ阻害剤の投与が、対象から試料を入手する少なくとも4日前もしくは少なくとも約4日前、少なくとも5日前もしくは少なくとも約5日前、少なくとも6日前もしくは少なくとも約6日前、少なくとも7日前もしくは少なくとも約7日前、少なくとも14日前もしくは少なくとも約14日前、またはそれ以上前に開始される、態様1~11のいずれかの方法。
13.
キナーゼ阻害剤の投与が、対象から試料を入手する少なくとも5日~7日前または5日~7日前または約5日~約7日前に開始される、態様1~12のいずれかの方法。
14.
リンパ球除去療法の投与が、T細胞療法の投与の開始前7日以内に完了する、態様5~13のいずれかの方法。
15.
リンパ球除去療法の投与が、T細胞療法の投与の開始の2~7日前に完了する、態様5~14のいずれかの方法。
16.
さらなる投与が、T細胞療法の投与の開始後15日~29日にわたる期間である、態様9~15のいずれかの方法。
17.
キナーゼ阻害剤のさらなる投与が、T細胞療法の投与の開始後3ヶ月または約3ヶ月または3ヶ月超にわたる期間である、態様9~16のいずれかの方法。
18.
キナーゼ阻害剤の投与が、投薬レジメン中に投与される各日に1日1回実施される、態様1~17のいずれかの方法。
19.
有効量が、キナーゼ阻害剤が投与される各日につき140mgもしくは約140mgから約840mg、または140mgから約560mgを含む、態様1~18のいずれかの方法。
20.
(1)以下の構造:
であるかもしくはこれを含むかまたはその薬学的に許容される塩であるキナーゼ阻害剤を、癌を有する対象に投与する工程、および
(2)自己T細胞療法を対象に投与する工程であって、該T細胞療法が、CD19に特異的に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現する遺伝子操作されたT細胞の用量を含み、T細胞療法を投与する前に、対象から生物学的試料を入手し、かつこれを処理し、該処理が、任意でCARをコードする核酸分子を該T細胞に導入することによって、試料由来のT細胞を遺伝子改変することを含む、工程
を含む、治療方法であって、
キナーゼ阻害剤の投与が、試料の入手の少なくとも5日~7日前または少なくとも約5日~約7日前に開始され、かつ対象から試料を入手した日またはその日以降の投与を少なくとも含む期間にわたって、ある投与間隔でキナーゼ阻害剤を反復投与し、およびT細胞療法の投与の開始後3ヶ月または約3ヶ月または3ヶ月超にわたってさらに投与することを含む投薬レジメンで実施され、キナーゼ阻害剤が、投薬レジメン中に投与される各日につき1日1回140mgまたは約140mgから560mgまたは約560mgの量で投与される、方法。
21.
キナーゼ阻害剤の投与の開始後およびT細胞療法の投与の前に、対象がリンパ球除去療法で前処置されている、態様20の方法。
22.
キナーゼ阻害剤の投与後およびT細胞療法の投与前に、対象にリンパ球除去療法を投与する工程をさらに含む、態様20の方法。
23.
リンパ球除去療法の投与が、T細胞療法の投与の開始前7日以内に完了する、態様20~22のいずれかの方法。
24.
リンパ球除去療法の投与が、T細胞療法の投与の開始の2日~7日前に完了する、態様20~23のいずれかの方法。
25.
投薬レジメンが、リンパ球除去療法中はキナーゼ阻害剤の投与を中止または停止することを含む、態様22~24のいずれかの方法。
26.
(1)以下の構造:
を有するかまたはその薬学的に許容される塩であるキナーゼ阻害剤を、癌を有する対象に投与する工程、および
(2)リンパ球除去療法を対象に投与する工程、および
(3)リンパ球除去療法の完了後2日~7日以内に自己T細胞療法を対象に投与する工程であって、該T細胞療法が、CD19に特異的に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現する遺伝子操作されたT細胞の用量を含み、該T細胞療法を投与する前に、対象から生物学的試料を入手し、かつそれを処理し、該処理が、任意でCARをコードする核酸分子を該T細胞に導入することによって、試料由来のT細胞を遺伝子改変することを含む、工程
を含む、治療方法であって、
キナーゼ阻害剤の投与が、試料の入手の少なくとも5日~7日前または少なくとも約5日~約7日前に開始され、かつリンパ球除去療法の開始までの投与を含むある投与間隔でキナーゼ阻害剤を反復投与し、続いてリンパ球除去療法中はキナーゼ阻害剤の投与を中止または停止し、その後T細胞療法の投与の開始後3ヶ月または3ヶ月超にわたる期間、さらに投与することを含む投薬レジメンで実施され、キナーゼ阻害剤が、投薬レジメン中、投与される各日につき1日1回140mgまたは約140mgから約560mgの量で投与される、
方法。
27.
対象から生物学的試料を入手し、該試料のT細胞を処理し、それによりCD19に特異的に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現する遺伝子操作されたT細胞を含む組成物を生成する工程をさらに含む、態様20~26のいずれかの方法。
28.
投与される日当たりのキナーゼ阻害剤の投与が、280mgまたは約280mgから560mgである、態様1~27のいずれかの方法。
29.
キナーゼ阻害剤の投与が、対象から試料を入手する少なくとも7日前または少なくとも約7日前に開始される、態様1~28のいずれかの方法。
30.
キナーゼ阻害剤の投与が、T細胞療法の投与を開始する30日もしくは約30日から40日前に開始され、
試料が、T細胞療法の投与を開始する23日もしくは約23日から38日前に対象から入手され、および/または
リンパ球除去療法が、T細胞療法の投与を開始する5日~7日前に完了する、
態様1~29のいずれかの方法。
31.
キナーゼ阻害剤の投与が、T細胞療法の投与を開始する35日前もしくは約35日前に開始され、
試料が、T細胞療法の投与を開始する28日もしくは約28日から32日前に対象から入手され、および/または
リンパ球除去療法が、T細胞療法の投与を開始する5日~7日前に完了する、
態様1~30のいずれかの方法。
32.
リンパ球除去療法が、フルダラビンおよび/またはシクロホスファミドの投与を含む、態様5~31のいずれかの方法。
33.
リンパ球除去療法が、両端の値を含む、200~400mg/m2もしくは約200~約400mg/m2、任意で300mg/m2もしくは約300mg/m2のシクロホスファミド、および/または20~40mg/m2もしくは約20~約40mg/m2、任意で30mg/m2のフルダラビンの2日~4日間、任意で3日間の毎日の投与を含むか、またはリンパ球除去療法が、500mg/m2もしくは約500mg/m2のシクロホスファミドの投与を含む、態様5~32のいずれかの方法。
34.
リンパ球除去療法が、300mg/m2もしくは約300mg/m2のシクロホスファミドおよび30mg/m2もしくは約30mg/m2のフルダラビンの3日間の毎日の投与を含む、および/または
リンパ球除去療法が、500mg/m2もしくは約500mg/m2のシクロホスファミドおよび30mg/m2もしくは約30mg/m2のフルダラビンの3日間の毎日の投与を含む、
態様5~33のいずれかの方法。
35.
投与される日当たりのキナーゼ阻害剤の投与が140mgまたは約140mgの量である、態様1~34のいずれかの方法。
36.
投与される日当たりのキナーゼ阻害剤の投与が、280mgまたは約280mgの量である、態様1~34のいずれかの方法。
37.
投与される日当たりのキナーゼ阻害剤の投与が420mgまたは約420mgの量である、態様1~34のいずれかの方法。
38.
投与される日当たりのキナーゼ阻害剤の投与が560mgまたは約560mgの量である、態様1~34のいずれかの方法。
39.
期間が、T細胞療法の投与の開始後4ヶ月もしくは約4ヶ月もしくは4ヶ月超にわたるか、またはT細胞療法の投与の開始後5ヶ月もしくは約5ヶ月もしくは5ヶ月超にわたる、態様9~38のいずれかの方法。
40.
さらなる投与が、6ヶ月または約6ヶ月または6ヶ月超にわたる、態様9~39のいずれかの方法。
41.
キナーゼ阻害剤のさらなる投与が、期間の終わりに、対象が治療後に完全奏効(CR)を示す場合、期間の終わりに停止されるか、または
キナーゼ阻害剤のさらなる投与が、期間の終わりに、治療後に癌が進行したかもしくは寛解の後に再発した場合、期間の終わりに停止される、
態様9~40のいずれかの方法。
42.
期間が、3ヶ月~6ヶ月、または約3ヶ月~6ヶ月にわたる、態様9~41のいずれかの方法。
43.
期間が、T細胞療法の投与の開始後または3ヶ月または約3ヶ月にわたる、態様9~42のいずれかの方法。
44.
対象が、3ヶ月より前または約3ヶ月より前に、治療後に完全奏効(CR)を達成したか、または治療後に癌が進行したかもしくは寛解の後に再発した場合、期間が、T細胞療法の投与の開始後3ヶ月または約3ヶ月にわたる、態様9~42のいずれかの方法。
45.
対象が3ヶ月で完全奏効(CR)を達成した場合、期間が、T細胞療法の投与の開始後3ヶ月または約3ヶ月にわたる、態様44の方法。
46.
期間が、T細胞療法の投与の開始後6ヶ月または約6ヶ月にわたる、態様9~42のいずれかの方法。
47.
対象が、6ヶ月より前または約6ヶ月より前に、治療後に完全奏効(CR)を達成したか、または治療後に癌が進行したかもしくは寛解の後に再発した場合、期間が、T細胞療法の投与の開始後6ヶ月または約6ヶ月にわたる、態様9~42のいずれかの方法。
48.
対象が6ヶ月で完全奏効(CR)を達成した場合、期間が、T細胞療法の投与の開始後6ヶ月または約6ヶ月にわたる、態様47の方法。
49.
対象が期間の終了前の時点で完全奏効(CR)を達成した場合でも、期間の存続中はさらなる投与が継続される、態様9~48のいずれかの方法。
50.
対象が、期間中および期間の終了前の時点で完全奏効(CR)を達成する、態様9~49のいずれかの方法。
51.
期間の終わりに対象が部分奏効(PR)または安定疾患(SD)を示す場合、期間の終了後にさらなる投与を継続する工程をさらに含む、態様9~40、42、43、44、46および47のいずれかの方法。
52.
6ヶ月または約6ヶ月で、対象が治療後に部分奏効(PR)または安定疾患(SD)を示す場合、さらなる投与が6ヶ月を超えて継続される、態様9~40、42、43、44、46、47および51のいずれかの方法。
53.
対象が治療後に完全奏効(CR)を達成するまで、または治療後に癌が進行するかもしくは寛解の後に再発するまで、さらなる投与が継続される、態様51または態様52の方法。
54.
キナーゼ阻害剤がブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)を阻害する、および/またはIL2誘導性T細胞キナーゼ(ITK)を阻害する、態様1~53のいずれかの方法。
55.
キナーゼ阻害剤がITKを阻害し、かつ該阻害剤が、ITKを阻害するか、または1000nM未満もしくは約1000nM未満、900nM未満もしくは約900nM未満、800nM未満もしくは約800nM未満、600nM未満もしくは約600nM未満、500nM未満もしくは約500nM未満、400nM未満もしくは約400nM未満、300nM未満もしくは約300nM未満、200nM未満もしくは約200nM未満、100nM未満もしくは約100nM未満、またはそれ未満の半数阻害濃度(IC50)でITKを阻害する、態様1~54のいずれかの方法。
56.
対象が、(1)におけるキナーゼ阻害剤の投与に先だって、以前にキナーゼ阻害剤を投与されていた、態様1~55のいずれかの方法。
57.
対象が、(1)におけるキナーゼ阻害剤の投与に先だって、以前にキナーゼ阻害剤を投与されたことがない、態様1~55のいずれかの方法。
58.
(i)対象および/または癌が、(a)ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)の阻害に対して抵抗性であり、および/または(b)キナーゼ阻害剤による阻害に抵抗性である細胞の集団を含み、任意で、細胞の集団がB細胞の集団であるかもしくはこれを含み、および/またはT細胞を含まない;
(ii)対象および/または癌が、BTKをコードする核酸中に変異を含み、任意で、変異がキナーゼ阻害剤によるBTKの阻害を低減または防止することができ、任意で、変異がC481Sである;
(iii)対象および/または癌が、ホスホリパーゼCガンマ2(PLCγ2)をコードする核酸中に変異を含み、任意で、変異が構成的シグナル伝達活性をもたらし、任意で、変異がR665WまたはL845Fである;
(iv)(1)におけるキナーゼ阻害剤の投与の開始時点で、および任意でT細胞療法の投与の開始時点で、対象が、キナーゼ阻害剤および/またはBTK阻害剤療法による以前の治療後に寛解の後に再発したか、または以前の治療に難治性であると見なされた;
(v)(1)におけるキナーゼ阻害剤の投与の開始時点で、および任意でT細胞療法の開始時点で、対象が、阻害剤および/またはBTK阻害剤療法による以前の治療後に進行し、任意で、対象が、以前の治療に対する最良応答として進行性疾患を示したかまたは以前の治療に対する以前の応答後に進行を示した;ならびに/あるいは
(vi)(1)におけるキナーゼ阻害剤の投与の開始時点で、および任意でT細胞療法の開始時点で、対象が、阻害剤および/またはBTK阻害剤療法による少なくとも6ヶ月間の以前の治療後に完全奏効(CR)未満の応答を示した、
態様1~57のいずれかの方法。
59.
癌がB細胞悪性腫瘍である、態様1~58のいずれかの方法。
60.
B細胞悪性腫瘍がリンパ腫である、態様59の方法。
61.
リンパ腫が非ホジキンリンパ腫(NHL)である、態様60の方法。
62.
NHLが、侵攻性NHL、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、任意で形質転換した無痛性のDLBCL-NOS;EBV陽性DLBCL-NOS;T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞リンパ腫;原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBCL);濾胞性リンパ腫(FL)、任意で濾胞性リンパ腫グレード3B(FL3B);ならびに/またはDLBCL組織学を伴うMYCおよびBCL2および/もしくはBCL6再構成を有する高悪性度B細胞リンパ腫(ダブル/トリプルヒット)を含む、態様61の方法。
63.
対象が、1未満または1の東部共同腫瘍学グループパフォーマンスステータス(ECOG)を有すると同定されているかまたは同定されたことがある、態様1~62のいずれかの方法。
64.
キナーゼ阻害剤が経口投与される、態様1~63のいずれかの方法。
65.
CD19がヒトCD19である、態様1~64のいずれかの方法。
66.
キメラ抗原受容体(CAR)が、CD19に特異的に結合する細胞外抗原認識ドメインおよびITAMを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含む、態様1~65のいずれかの方法。
67.
細胞内シグナル伝達ドメインが、CD3ゼータ(CD3ζ)鎖、任意でヒトCD3ゼータ鎖のシグナル伝達ドメインを含む、態様66の方法。
68.
キメラ抗原受容体(CAR)が共刺激シグナル伝達領域をさらに含む、態様66または態様67の方法。
69.
共刺激シグナル伝達領域が、CD28または4-1BB、任意でヒトCD28またはヒト4-1BBのシグナル伝達ドメインを含む、態様68の方法。
70.
共刺激ドメインが、ヒト4-1BBのシグナル伝達ドメインであるか、またはそれを含む、態様68または態様69の方法。
71.
CARが、CD19に特異的なscFvと;膜貫通ドメインと;任意で4-1BB、任意でヒト4-1BBであるかもしくはこれを含む、共刺激分子に由来する細胞質シグナル伝達ドメインと;任意でCD3ゼータシグナル伝達ドメイン、任意でヒトCD3ゼータシグナル伝達ドメインであるかもしくはこれを含む、一次シグナル伝達ITAM含有分子に由来する細胞質シグナル伝達ドメインとを含み、かつ任意で、CARが膜貫通ドメインとscFVとの間にスペーサーをさらに含む、
CARが、順に、CD19に特異的なscFvと;膜貫通ドメインと;任意で4-1BBシグナル伝達ドメイン、任意でヒト4-1BBシグナル伝達ドメインであるかもしくはこれを含む、共刺激分子に由来する細胞質シグナル伝達ドメインと;任意でCD3ゼータシグナル伝達ドメイン、任意でヒトCD3ゼータシグナル伝達ドメインである、一次シグナル伝達ITAM含有分子に由来する細胞質シグナル伝達ドメインとを含む、または
CARが、順に、CD19に特異的なscFvと;スペーサーと;膜貫通ドメインと;任意で4-1BBシグナル伝達ドメインである共刺激分子に由来する細胞質シグナル伝達ドメインと;任意でCD3ゼータシグナル伝達ドメインであるかもしくはこれを含む、一次シグナル伝達ITAM含有分子に由来する細胞質シグナル伝達ドメインとを含む、
態様1~70のいずれかの方法。
72.
CARがスペーサーを含み、スペーサーが、
(a)免疫グロブリンヒンジまたはその修飾型の全部もしくは一部を含むかもしくはそれからなるか、または約15アミノ酸もしくはそれ未満を含み、かつCD28細胞外領域もCD8細胞外領域も含まない、
(b)免疫グロブリンヒンジ、任意でIgG4ヒンジ、もしくはその修飾型の全部もしくは一部を含むかもしくはそれからなり、および/または約15アミノ酸もしくはそれ未満を含み、かつCD28細胞外領域もCD8細胞外領域も含まない、または
(c)12アミノ酸長もしくは約12アミノ酸長であり、および/または免疫グロブリンヒンジ、任意でIgG4ヒンジ、もしくはその修飾型の全部もしくは一部を含むかもしくはそれからなる、または
(d)SEQ ID NO:1の配列、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:30、SEQ ID NO:31、SEQ ID NO:32、SEQ ID NO:33、SEQ ID NO:34によってコードされる配列、またはそれらと少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を有する該配列のいずれかの変異体を有するかもしくはそれからなる、または
(e)式X1PPX2P(SEQ ID NO:58)を含むかもしくはそれからなり、式中、X1がグリシン、システインもしくはアルギニンであり、X2がシステインもしくはトレオニンである、
ポリペプチドスペーサーであり、ならびに/または
共刺激ドメインが、SEQ ID NO:12、もしくはそれと少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を有するその変異体を含み、ならびに/または
一次シグナル伝達ドメインが、それらと少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を有するSEQ ID NO:13もしくはSEQ ID NO:14もしくはSEQ ID NO:15を含み、ならびに/または
scFvが、RASQDISKYLN(SEQ ID NO:35)のCDRL1配列、SRLHSGV(SEQ ID NO:36)のCDRL2配列、および/もしくはGNTLPYTFG(SEQ ID NO:37)のCDRL3配列、および/もしくはDYGVS(SEQ ID NO:38)のCDRH1配列、VIWGSETTYYNSALKS(SEQ ID NO:39)のCDRH2配列、および/もしくはYAMDYWG(SEQ ID NO:40)のCDRH3配列を含むか、またはscFvが、FMC63の可変重鎖領域およびFMC63の可変軽鎖領域および/またはFMC63のCDRL1配列、FMC63のCDRL2配列、FMC63のCDRL3配列、FMC63のCDRH1配列、FMC63のCDRH2配列、およびFMC63のCDRH3配列を含むか、または該配列のいずれかと同じエピトープに結合するかもしくは結合について競合し、および任意でscFvが、順に、VH、任意でSEQ ID NO:41を含むリンカー、およびVLを含み、ならびに/またはscFvが、柔軟なリンカーを含むおよび/またはSEQ ID NO:42として示されるアミノ酸配列を含む、
態様71の方法。
73.
遺伝子操作されたT細胞の用量が、それぞれ両端の値を含む、1×105~5×108または約1×105~5×108の総CAR発現T細胞、1×106~2.5×108または約1×106~2.5×108の総CAR発現T細胞、5×106~1×108または約5×106~1×108の総CAR発現T細胞、1×107~2.5×108または約1×107~2.5×108の総CAR発現T細胞、5×107~1×108または約5×107~1×108の総CAR発現T細胞を含む、態様1~72のいずれかの方法。
74.
遺伝子操作されたT細胞の用量が、少なくとも1×105もしくは少なくとも約1×105のCAR発現細胞、少なくとも2.5×105もしくは少なくとも約2.5×105のCAR発現細胞、少なくとも5×105もしくは少なくとも約5×105のCAR発現細胞、少なくとも1×106もしくは少なくとも約1×106のCAR発現細胞、少なくとも2.5×106もしくは少なくとも約2.5×106のCAR発現細胞、少なくとも5×106もしくは少なくとも約5×106のCAR発現細胞、少なくとも1×107もしくは少なくとも約1×107のCAR発現細胞、少なくとも2.5×107もしくは少なくとも約2.5×107のCAR発現細胞、少なくとも5×107もしくは少なくとも約5×107のCAR発現細胞、少なくとも1×108もしくは少なくとも約1×108のCAR発現細胞、少なくとも2.5×108もしくは少なくとも約2.5×108のCAR発現細胞、または少なくとも5×108もしくは少なくとも約5×108のCAR発現細胞を含む、態様1~73のいずれかの方法。
75.
遺伝子操作されたT細胞の用量が、5×107または約5×107の総CAR発現T細胞を含む、態様1~74のいずれかの方法。
76.
遺伝子操作されたT細胞の用量が、1×108または約1×108のCAR発現細胞を含む、態様1~75のいずれかの方法。
77.
遺伝子操作されたT細胞の用量が、CARを発現するCD4+T細胞およびCARを発現するCD8+T細胞を含み、用量の投与が複数の別個の組成物を投与することを含み、該複数の別個の組成物が、CD4+T細胞およびCD8+T細胞の一方を含む第1の組成物およびCD4+T細胞またはCD8+T細胞のもう一方を含む第2の組成物を含む、態様1~76のいずれかの方法。
78.
第1の組成物と第2の組成物が、0~12時間の間隔で、0~6時間の間隔で、もしくは0~2時間の間隔で投与されるか、または第1の組成物の投与と第2の組成物の投与が同じ日に実施され、約0~約12時間の間隔で、約0~約6時間の間隔で、もしくは約0~約2時間の間隔で実施され、および/または
第1の組成物の投与の開始と第2の組成物の投与の開始が、約1分~約1時間の間隔でまたは約5分~約30分の間隔で実施される、
態様77の方法。
79.
第1の組成物と第2の組成物が、2時間以下、1時間以下、30分以下、15分以下、10分以下、または5分以下の間隔で投与される、態様77または態様78の方法。
80.
第1の組成物がCD4+T細胞を含む、態様77~79のいずれかの方法。
81.
第1の組成物がCD8+T細胞を含む、態様77~79のいずれかの方法。
82.
第1の組成物が第2の組成物の前に投与される、態様77~81のいずれかの方法。
83.
細胞の用量が非経口的に、任意で静脈内に投与される、態様1~82のいずれかの方法。
84.
T細胞が、対象由来の試料から得られた初代T細胞である、態様1~83のいずれかの方法。
85.
T細胞が対象に対して自己由来である、態様1~82のいずれかの方法。
86.
処理が、
対象から得られた試料からT細胞、任意でCD4+および/またはCD8+T細胞を単離し、それにより初代T細胞を含むインプット組成物を生成すること、ならびに
CARをコードする核酸分子を該インプット組成物のT細胞に導入すること
を含む、態様1~85のいずれかの方法。
87.
単離が、免疫親和性に基づく選択を実施することを含む、態様86の方法。
88.
生物学的試料が、全血試料、バフィーコート試料、末梢血単核細胞(PBMC)試料、未分画T細胞試料、リンパ球試料、白血球試料、アフェレーシス産物、または白血球アフェレーシス産物であるかまたはこれを含む、態様1~87のいずれかの方法。
89.
導入の前に、処理が、インプット組成物を刺激条件下でインキュベートすることを含み、該刺激条件が、TCR複合体の1つもしくは複数の成分の1つもしくは複数の細胞内シグナル伝達ドメインおよび/または1つもしくは複数の共刺激分子の1つもしくは複数の細胞内シグナル伝達ドメインを活性化することができる刺激試薬の存在を含み、それにより刺激された組成物が生成され、CARをコードする核酸分子が、刺激された組成物に導入される、態様86~88のいずれかの方法。
90.
刺激試薬が、TCR複合体のメンバーに特異的に結合する、任意でCD3に特異的に結合する一次剤を含む、態様89の方法。
91.
刺激試薬が、T細胞共刺激分子に特異的に結合する二次剤をさらに含み、任意で、該共刺激分子が、CD28、CD137(4-1-BB)、OX40、またはICOSから選択される、態様90の方法。
92.
一次剤および/または二次剤が抗体を含み、任意で、刺激試薬が、抗CD3抗体および抗CD28抗体またはその抗原結合断片とのインキュベーションを含む、態様90または態様91の方法。
93.
一次剤および/または二次剤が固体支持体の表面上に存在する、態様90~92のいずれかの方法。
94.
固体支持体がビーズであるか、またはビーズを含み、任意で、該ビーズが磁性または超常磁性である、態様93の方法。
95.
ビーズが、3.5μmを超えるかまたは約3.5μmを超えるが、約9μm以下または約8μm以下または約7μm以下または約6μm以下または約5μm以下の直径を含む、態様94の方法。
96.
ビーズが、4.5μmまたは約4.5μmの直径を含む、態様94または態様95の方法。
97.
導入が、刺激された組成物の細胞を、組換え受容体をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターで形質導入することを含む、態様1~96のいずれかの方法。
98.
ウイルスベクターがレトロウイルスベクターである、態様97の方法。
99.
ウイルスベクターがレンチウイルスベクターまたはガンマレトロウイルスベクターである、態様97または態様98の方法。
100.
処理が、導入後にT細胞を培養することをさらに含み、任意で、培養が、細胞の増殖または拡大をもたらしてT細胞療法を含むアウトプット組成物を生成する条件下で実施される、態様86~99のいずれかの方法。
101.
培養に続いて、凍結保存のためおよび/または対象へのT細胞療法の投与のために、アウトプット組成物の細胞を製剤化する工程をさらに含み、
任意で、該製剤化が、薬学的に許容される賦形剤の存在下で行われる、
態様100の方法。
102.
対象がヒトである、態様1~101のいずれかの方法。
103.
前記方法に従って治療される対象の少なくとも35%、少なくとも40%、または少なくとも50%が、6ヶ月もしくは6ヶ月超または9ヶ月もしくは9ヶ月超にわたって、持続性であるか、またはCRを達成する対象の少なくとも60%、70%、80%、90%、もしくは95%において持続性である完全奏効(CR)を達成する、ならびに/または
6ヶ月までにCRを達成する対象の少なくとも60%、70%、80%、90%、もしくは95%が、3ヶ月もしくは3ヶ月超および/または6ヶ月もしくは6ヶ月超および/または9ヶ月もしくは9ヶ月超にわたって、応答性のままであり、CRのままであり、および/または生存するかもしくは進行なしに生存する、ならびに/または
前記方法に従って治療される対象の少なくとも50%、少なくとも60%、または少なくとも70%が、客観的奏効(OR)を達成し、任意で、ORが、6ヶ月もしくは6ヶ月超または9ヶ月もしくは9ヶ月超にわたって、持続性であるか、またはORを達成する対象の少なくとも60%、70%、80%、90%、もしくは95%において持続性である、ならびに/または
6ヶ月までにORを達成する対象の少なくとも60%、70%、80%、90%、もしくは95%が、3ヶ月もしくは3ヶ月超および/または6ヶ月もしくは6ヶ月超にわたって、応答性のままであるかまたは生存する、
態様1~102のいずれかの方法。
104.
細胞の用量の投与時または投与の直前に、対象が、リンパ腫、任意でNHLのための1つまたは複数の以前の療法、任意でCARを発現する細胞の別の用量以外の1つ、2つまたは3つの以前の療法による治療後に寛解の後に再発したか、または該療法に難治性になった、態様60~103のいずれかの方法。
105.
細胞の用量を含むT細胞療法の投与時または投与の前に、
対象が、ダブル/トリプルヒットリンパ腫を有しているかもしくは有すると同定されたことがある、
対象が、化学療法抵抗性リンパ腫、任意で化学療法抵抗性DLBCLを有しているかもしくは有すると同定されたことがある、および/または
対象が、以前の療法に応答して完全奏効(CR)を達成しなかった、
態様60~104のいずれかの方法。
106.
以下の構造:
であるかもしくはこれを含むかまたはその薬学的に許容される塩であるキナーゼ阻害剤の1つまたは複数の単位用量、および
自己T細胞療法による治療の候補であるかまたは治療される予定である癌を有する対象に、1つまたは複数の単位用量を投与するための、指示書
を含むキットであって、
該T細胞療法が、CD19に特異的に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現する遺伝子操作されたT細胞の用量を含み、該T細胞療法を投与する前に、対象から生物学的試料を入手し、かつこれを処理し、該処理が、任意でCARをコードする核酸をT細胞に導入することによって、試料由来のT細胞を遺伝子改変することを含み、
指示書が、試料を入手する3日前または少なくとも約3日前に、対象から試料を入手した日またはその日以降の投与を少なくとも含む期間にわたって、ある投与間隔で1つまたは複数の単位用量を反復投与することを含む投薬レジメンで、対象にキナーゼ阻害剤の単位用量の投与を開始することを指定する、
キット。
107.
指示書が、T細胞療法を対象に投与することをさらに指定する、態様106のキット。
108.
指示書が、キナーゼ阻害剤の投与を開始した後およびT細胞療法の投与の前に、対象にリンパ球除去療法を投与することをさらに指定する、態様106または態様107のキット。
109.
指示書が、リンパ球除去療法の投与中はキナーゼ阻害剤の投与が中止されることを指定する、態様108のキット。
110.
指示書が、
投薬レジメンが、少なくともリンパ球除去療法の開始までにわたる期間のキナーゼ阻害剤の投与を含むこと
を指定する、態様108または態様109のキット。
111.
指示書が、
投薬レジメンが、リンパ球除去療法の開始までの投与を含む期間にわたるキナーゼ阻害剤の投与、続いてリンパ球除去療法中のキナーゼ阻害剤の投与の中止または停止、およびT細胞療法の投与の開始後少なくとも15日間にわたる期間のキナーゼ阻害剤のさらなる投与を含むこと
を指定する、態様108~110のいずれかのキット。
112.
指示書が、キナーゼ阻害剤の投与が、対象から試料を入手する少なくとも4日前もしくは少なくとも約4日前、少なくとも5日前もしくは少なくとも約5日前、少なくとも6日前もしくは少なくとも約6日前、少なくとも7日前もしくは少なくとも約7日前、少なくとも14日前もしくは少なくとも約14日前、またはそれ以上前に開始されることを指定する、態様106~111のいずれかのキット。
113.
指示書が、キナーゼ阻害剤の投与が、対象から試料を入手する少なくとも5日~7日前または少なくとも約5日~約7日前に開始されることを指示が指定する、態様106~112のいずれかのキット。
114.
指示書が、リンパ球除去療法の投与が、T細胞療法の投与の開始前7日以内に完了されるべきであることを指定する、態様108~113のいずれかのキット。
115.
指示書が、リンパ球除去療法の投与が、T細胞療法の投与の開始の2~7日前に完了されるべきであることを指定する、態様108~1114のいずれかのキット。
116.
指示書が、キナーゼ阻害剤のさらなる投与が、T細胞療法の投与の開始後3ヶ月または約3ヶ月または3ヶ月超にわたる期間であることを指定する、態様111~115のいずれかのキット。
117.
指示書が、キナーゼ阻害剤の各単位用量の投与が、投薬レジメン中に投与される各日に1日1回実施されることを指定する、態様106~116のいずれかのキット。
118.
1つまたは複数の単位用量がそれぞれ、140mg~840mgまたは約140mg~約840mgを含む、態様106~117のいずれかのキット。
119.
1つまたは複数の単位用量がそれぞれ、キナーゼ阻害剤が投与される各日につき140mg~560mgまたは約140mg~約560mgを含む、態様106~118のいずれかのキット。
120.
1つまたは複数の単位用量がそれぞれ、280mg~560mgまたは約280mg~約560mgを含む、態様106~119のいずれかのキット。
121.
指示書が、キナーゼ阻害剤の投与が、対象から試料を入手する最低でも7日前または最低でも約7日前に開始されることを指定する、態様106~120のいずれかのキット。
122.
指示書が、
キナーゼ阻害剤の投与が、T細胞療法の投与を開始する30日~40日前もしくは約30日~約40日前に開始されること;
試料が、T細胞療法の投与を開始する23日~38日前もしくは約23日~約38日前に対象から入手されること;および/または
リンパ球除去療法が、T細胞療法の投与を開始する5日~7日前に完了すること
を指定する、態様106~121のいずれかのキット。
123.
指示書が、
キナーゼ阻害剤の投与が、T細胞療法の投与を開始する35日前もしくは約35日前に開始されること;
試料が、T細胞療法の投与を開始する28日~32日前もしくは約28日~約32日前に対象から入手されること;および/または
リンパ球除去療法が、T細胞療法の投与を開始する5日~7日前に完了すること
を指定する、態様106~122のいずれかのキット。
124.
リンパ球除去療法がフルダラビンおよび/またはシクロホスファミドの投与を含む、態様108~123のいずれかのキット。
125.
指示書が、リンパ球除去療法が、両端の値を含む、約200~約400mg/m2、任意で300mg/m2もしくは約300mg/m2のシクロホスファミド、および/または約20~約40mg/m2、任意で30mg/m2のフルダラビンの2日~4日間、任意で3日間の毎日の投与を含むか、またはリンパ球除去療法が、約500mg/m2のシクロホスファミドの投与を含むことを指定する、態様108~124のいずれかのキット。
126.
指示書が、
リンパ球除去療法が、300mg/m2もしくは約300mg/m2のシクロホスファミドおよび約30mg/m2のフルダラビンの3日間の毎日の投与を含む、および/または
リンパ球除去療法が、500mg/m2もしくは約500mg/m2のシクロホスファミドおよび約30mg/m2のフルダラビンの3日間の毎日の投与を含む
ことを指定する、態様108~125のいずれかのキット。
127.
キナーゼ阻害剤の各単位用量が140mgであるかもしくは約140mgであり、および/または指示書が、キナーゼ阻害剤を、投与される各日につき140mgもしくは約140mgの量で投与することを指定する、態様106~126のいずれかのキット。
128.
キナーゼ阻害剤の各単位用量が280mgであるかもしくは約280mgであり、および/または指示書が、投与される各日当たりのキナーゼ阻害剤の投与が280mgもしくは約280mgの量であることを指定する、態様106~127のいずれかのキット。
129.
キナーゼ阻害剤の各単位用量が420mgであるかもしくは約420mgであり、および/または指示書が、投与される各日当たりのキナーゼ阻害剤の投与が420mgもしくは約420mgの量であることを指定する、態様106~128のいずれかのキット。
130.
キナーゼ阻害剤の各単位用量が560mgであるかもしくは約560mgであり、および/または指示書が、投与される各日当たりのキナーゼ阻害剤の投与が560mgもしくは約560mgの量であることを指定する、態様106~129のいずれかの方法。
131.
指示書が、期間がT細胞療法の投与の開始後4ヶ月または約4ヶ月または4ヶ月超にわたることを指定する、態様111~130のいずれかのキット。
132.
指示書が、期間がT細胞療法の投与の開始後5ヶ月または約5ヶ月または5ヶ月超にわたることを指定する、態様111~131のいずれかのキット。
133.
指示書が、さらなる投与が6ヶ月または約6ヶ月または6ヶ月超にわたる期間であることを指定する、態様111~132のいずれかのキット。
134.
指示書が、期間の終わりに、対象が治療後に完全奏効(CR)を示す場合、キナーゼ阻害剤のさらなる投与が期間の終わりに停止されることを指定する、態様111~133のいずれかのキット。
135.
指示書が、期間の終わりに、治療後に癌が進行したかまたは寛解の後に再発した場合、キナーゼ阻害剤のさらなる投与が期間の終わりに停止されることを指定する、態様111~134のいずれかのキット。
136.
指示書が、期間が3ヶ月または約3ヶ月から6ヶ月にわたることを指定する、態様111~135のいずれかのキット。
137.
指示書が、期間がT細胞療法の投与の開始後3ヶ月または約3ヶ月にわたることを指定する、態様111~136のいずれかのキット。
138.
指示書が、対象が3ヶ月より前または約3ヶ月より前に、治療後に完全奏効(CR)を達成したか、または治療後に癌が進行したかもしくは寛解の後に再発した場合、期間がT細胞療法の投与の開始後3ヶ月または約3ヶ月にわたることを指定する、態様111~136のいずれかのキット。
139.
指示書が、対象が3ヶ月で完全奏効(CR)を達成した場合、期間がT細胞療法の投与の開始後3ヶ月または約3ヶ月にわたることを指定する、態様138のキット。
140.
指示書が、期間がT細胞療法の投与の開始後6ヶ月または約6ヶ月にわたることを指定する、態様111~136のいずれかのキット。
141.
指示書が、対象が6ヶ月より前または約6ヶ月より前に、治療後に完全奏効(CR)を達成したか、または治療後に癌が進行したかもしくは寛解の後に再発した場合、期間がT細胞療法の投与の開始後6ヶ月または約6ヶ月にわたることを指定する、態様111~136のいずれかのキット。
142.
指示書が、対象が6ヶ月で完全奏効(CR)を達成した場合、期間がT細胞療法の投与の開始後6ヶ月または約6ヶ月にわたることを指定する、態様141のキット。
143.
指示書が、対象が期間の終了前の時点で完全奏効(CR)を達成した場合でも、期間の存続中はさらなる投与が継続されることを指定する、態様111~142のいずれかのキット。
144.
指示書が、期間の終わりに、対象が部分奏効(PR)または安定疾患(SD)を示す場合、期間の終了後にさらなる投与を継続することをさらに含むことを指定する、態様111~133、136、137、138、140および141のいずれかのキット。
145.
指示書が、6ヶ月または約6ヶ月で、対象が治療後に部分奏効(PR)または安定疾患(SD)を示す場合、さらなる投与が6ヶ月を超えて継続されることを指定する、態様111~133、136、137、138、140、141および144のいずれかのキット。
146.
指示書が、対象が治療後に完全奏効(CR)を達成するまで、または治療後に癌が進行するかもしくは寛解の後に再発するまで、さらなる投与が継続されることを指定する、態様144または態様144のキット。
147.
キナーゼ阻害剤がブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)を阻害する、および/またはIL2誘導性T細胞キナーゼ(ITK)を阻害する、態様106~146のいずれかのキット。
148.
キナーゼ阻害剤がITKを阻害し、および阻害剤が、ITKを阻害するかまたは1000nM未満もしくは約1000nM未満、900nM未満もしくは約900nM未満、800nM未満もしくは約800nM未満、600nM未満もしくは約600nM未満、500nM未満もしくは約500nM未満、400nM未満もしくは約400nM未満、300nM未満もしくは約300nM未満、200nM未満もしくは約200nM未満、100nM未満もしくは約100nM未満、またはそれ未満の半数阻害濃度(IC50)でITKを阻害する、態様106~147のいずれかのキット。
149.
指示書が、対象が、キナーゼ阻害剤の1つまたは複数の単位用量の投与に先だって、キナーゼ阻害剤を以前に投与されたことがあるまたは投与された可能性があることを指定する、態様106~148のいずれかのキット。
150.
指示書が、対象が、キナーゼ阻害剤の1つまたは複数の単位用量の投与に先だって、キナーゼ阻害剤を以前に投与されたことがないかまたは投与されたことがない対象であることを指定する、態様106~148のいずれかのキット。
151.
指示書が、
(i)対象および/または癌が、(a)ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)の阻害に対して抵抗性であり、および/または(b)キナーゼ阻害剤による阻害に抵抗性である細胞の集団を含み、任意で、細胞の集団がB細胞の集団であるかもしくはこれを含み、および/またはT細胞を含まない;
(ii)対象および/または癌が、BTKをコードする核酸中に変異を含み、任意で、変異がキナーゼ阻害剤によるBTKの阻害を低減または防止することができ、任意で、変異がC481Sである;
(iii)対象および/または癌が、ホスホリパーゼCガンマ2(PLCγ2)をコードする核酸中に変異を含み、任意で、変異が構成的シグナル伝達活性をもたらし、任意で、変異がR665WまたはL845Fである;
(iv)(1)におけるキナーゼ阻害剤の投与の開始時点で、および任意でT細胞療法の投与の開始時点で、対象が、キナーゼ阻害剤および/またはBTK阻害剤療法による以前の治療後に寛解の後に再発したか、または以前の治療に難治性であると見なされた;
(v)(1)におけるキナーゼ阻害剤の投与の開始時点で、および任意でT細胞療法の開始時点で、対象が、阻害剤および/またはBTK阻害剤療法による以前の治療後に進行し、任意で、対象が、以前の治療に対する最良応答として進行性疾患を示したかまたは以前の治療に対する以前の応答後に進行を示した;ならびに/あるいは
(vi)(1)におけるキナーゼ阻害剤の投与の開始時点で、および任意でT細胞療法の開始時点で、対象が、阻害剤および/またはBTK阻害剤療法による少なくとも6ヶ月間の以前の治療後に完全奏効(CR)未満の応答を示した、
ことを指定する、態様106~150のいずれかのキット。
152.
癌がB細胞悪性腫瘍である、態様106~151のいずれかのキット。
153.
B細胞悪性腫瘍がリンパ腫である、態様152のキット。
154.
リンパ腫が非ホジキンリンパ腫(NHL)である、態様153のキット。
155.
NHLが、侵攻性NHL、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、任意で形質転換した無痛性のDLBCL-NOS;EBV陽性DLBCL-NOS;T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞リンパ腫;原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBCL);濾胞性リンパ腫(FL)、任意で濾胞性リンパ腫グレード3B(FL3B);ならびに/またはDLBCL組織学を伴うMYCおよびBCL2および/もしくはBCL6再構成を有する高悪性度B細胞リンパ腫(ダブル/トリプルヒット)を含む、態様154のキット。
156.
対象が、1未満または1の東部共同腫瘍学グループパフォーマンスステータス(ECOG)を有すると同定されているかまたは同定されたことがある、態様106~155のいずれかのキット。
157.
キナーゼ阻害剤の1つまたは複数の単位用量が、経口投与用に製剤化され、および/または指示書が、キナーゼ阻害剤の1つまたは複数の単位用量が経口投与されることをさらに指定する、態様106~156のいずれかのキット。
158.
CD19がヒトCD19である、態様106~157のいずれかのキット。
159.
キメラ抗原受容体(CAR)が、CD19に特異的に結合する細胞外抗原認識ドメインおよびITAMを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含む、態様106~158のいずれかのキット。
160.
細胞内シグナル伝達ドメインがCD3ゼータ(CD3ζ)鎖、任意でヒトCD3ゼータ鎖のシグナル伝達ドメインを含む、態様159のキット。
161.
キメラ抗原受容体(CAR)が共刺激シグナル伝達領域をさらに含む、態様159または態様160のキット。
162.
共刺激シグナル伝達領域がCD28または4-1BB、任意でヒトCD28またはヒト4-1BBのシグナル伝達ドメインを含む、態様161のキット。
163.
共刺激ドメインがヒト4-1BBのシグナル伝達ドメインであるか、またはそれを含む、態様161または態様162のキット。
164.
CARが、CD19に特異的なscFv、膜貫通ドメイン、任意で4-1BB、任意でヒト4-1BBであるかもしくはこれを含む、共刺激分子に由来する細胞質シグナル伝達ドメイン、および任意でCD3ゼータシグナル伝達ドメイン、任意でヒトCD3ゼータシグナル伝達ドメインであるかもしくはこれを含む、一次シグナル伝達ITAM含有分子に由来する細胞質シグナル伝達ドメインを含み、および任意で、CARが膜貫通ドメインとscFVとの間にスペーサーをさらに含む;
CARが、順に、CD19に特異的なscFv、膜貫通ドメイン、任意で4-1BBシグナル伝達ドメイン、任意でヒト4-1BBシグナル伝達ドメインであるかもしくはこれを含む、共刺激分子に由来する細胞質シグナル伝達ドメイン、および任意でCD3ゼータシグナル伝達ドメイン、任意でヒトCD3ゼータシグナル伝達ドメインである、一次シグナル伝達ITAM含有分子に由来する細胞質シグナル伝達ドメインを含む;または
CARが、順に、CD19に特異的なscFv、スペーサー、膜貫通ドメイン、任意で4-1BBシグナル伝達ドメインである共刺激分子に由来する細胞質シグナル伝達ドメイン、および任意でCD3ゼータシグナル伝達ドメインであるかもしくはこれを含む、一次シグナル伝達ITAM含有分子に由来する細胞質シグナル伝達ドメインを含む、
態様106~163のいずれかのキット。
165.
CARがスペーサーを含み、スペーサーが、(a)免疫グロブリンヒンジまたはその修飾型の全部もしくは一部を含むかもしくはそれからなるか、または約15アミノ酸もしくはそれ未満を含み、かつCD28細胞外領域もCD8細胞外領域も含まない、(b)免疫グロブリンヒンジ、任意でIgG4ヒンジ、もしくはその修飾型の全部もしくは一部を含むかもしくはそれからなり、および/または約15アミノ酸もしくはそれ未満を含み、かつCD28細胞外領域もCD8細胞外領域も含まない、または(c)12アミノ酸長もしくは約12アミノ酸長であり、および/または免疫グロブリンヒンジ、任意でIgG4ヒンジ、もしくはその修飾型の全部もしくは一部を含むかもしくはそれからなる、または(d)SEQ ID NO:1の配列、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:30、SEQ ID NO:31、SEQ ID NO:32、SEQ ID NO:33、SEQ ID NO:34によってコードされる配列、または前記配列に少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を有する前記配列のいずれかの変異体を有するかもしくはそれからなる、または(e)式X1PPX2P(SEQ ID NO:58)を含むかもしくはそれからなり、式中、X1がグリシン、システインもしくはアルギニンであり、X2がシステインもしくはトレオニンである、ポリペプチドスペーサーであり;ならびに/または
共刺激ドメインが、SEQ ID NO:12もしくはSEQ ID NO:12に少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を有するSEQ ID NO:12の変異体を含み;ならびに/または
一次シグナル伝達ドメインが、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を有するSEQ ID NO:13もしくはSEQ ID NO:14もしくはSEQ ID NO:15を含み;ならびに/または
scFvが、RASQDISKYLN(SEQ ID NO:35)のCDRL1配列、SRLHSGV(SEQ ID NO:36)のCDRL2配列、および/もしくはGNTLPYTFG(SEQ ID NO:37)のCDRL3配列、および/もしくはDYGVS(SEQ ID NO:38)のCDRH1配列、VIWGSETTYYNSALKS(SEQ ID NO:39)のCDRH2配列、および/もしくはYAMDYWG(SEQ ID NO:40)のCDRH3配列を含むか、またはscFvが、FMC63の可変重鎖領域およびFMC63の可変軽鎖領域および/またはFMC63のCDRL1配列、FMC63のCDRL2配列、FMC63のCDRL3配列、FMC63のCDRH1配列、FMC63のCDRH2配列、およびFMC63のCDRH3配列を含むか、または前記配列のいずれかと同じエピトープに結合するかもしくは前記配列のいずれかと結合について競合し、および任意でscFvが、順に、VH、任意でSEQ ID NO:41を含むリンカー、およびVLを含み、ならびに/またはscFvが、柔軟なリンカーを含むおよび/またはSEQ ID NO:42として示されるアミノ酸配列を含む、
態様164のキット。
166.
遺伝子操作されたT細胞の用量が、それぞれ両端の値を含む、1×105~5×108または約1×105~5×108の総CAR発現T細胞、1×106~2.5×108または約1×106~2.5×108の総CAR発現T細胞、5×106~1×108または約5×106~1×108の総CAR発現T細胞、1×107~2.5×108または約1×107~2.5×108の総CAR発現T細胞、5×107~1×108または約5×107~1×108の総CAR発現T細胞を含む、態様106~165のいずれかのキット。
167.
遺伝子操作されたT細胞の用量が、少なくとも1×105もしくは少なくとも約1×105のCAR発現細胞、少なくとも2.5×105もしくは少なくとも約2.5×105のCAR発現細胞、少なくとも5×105もしくは少なくとも約5×105のCAR発現細胞、少なくとも1×106もしくは少なくとも約1×106のCAR発現細胞、少なくとも2.5×106もしくは少なくとも約2.5×106のCAR発現細胞、少なくとも5×106もしくは少なくとも約5×106のCAR発現細胞、少なくとも1×107もしくは少なくとも約1×107のCAR発現細胞、少なくとも2.5×107もしくは少なくとも約2.5×107のCAR発現細胞、少なくとも5×107もしくは少なくとも約5×107のCAR発現細胞、少なくとも1×108もしくは少なくとも約1×108のCAR発現細胞、少なくとも2.5×108もしくは少なくとも約2.5×108のCAR発現細胞、または少なくとも5×108もしくは少なくとも約5×108のCAR発現細胞を含む、態様106~166のいずれかのキット。
168.
遺伝子操作されたT細胞の用量が、5×107または約5×107の総CAR発現T細胞を含む、態様106~167のいずれかのキット。
169.
遺伝子操作されたT細胞の用量が、1×108または約1×108のCAR発現細胞を含む、態様106~168のいずれかのキット。
170.
遺伝子操作されたT細胞の用量が、CARを発現するCD4+T細胞およびCARを発現するCD8+T細胞を含み、指示書が、用量の投与が複数の別個の組成物を投与することを含み、前記複数の別個の組成物が、CD4+T細胞およびCD8+T細胞の一方を含む第1の組成物およびCD4+T細胞またはCD8+T細胞のもう一方を含む第2の組成物を含むことを指定する、態様106~169のいずれかのキット。
171.
指示書が、
第1の組成物と第2の組成物が、0~12時間の間隔で、0~6時間の間隔で、もしくは0~2時間の間隔で投与されるか、または第1の組成物の投与と第2の組成物の投与が同じ日に実施され、約0~約12時間の間隔で、約0~約6時間の間隔で、もしくは約0~約2時間の間隔で実施されること;および/あるいは
第1の組成物の投与の開始と第2の組成物の投与の開始が、約1分~約1時間の間隔でまたは約5分~約30分の間隔で実施されること
を指定する、態様170のキット。
172.
指示書が、第1の組成物と第2の組成物が2時間以下、1時間以下、30分以下、15分以下、10分以下または5分以下の間隔で投与されることを指定する、態様170または態様171のキット。
173.
指示書が、第1の組成物がCD4+T細胞を含むことを指定する、態様170~172のいずれかのキット。
174.
指示書が、第1の組成物がCD8+T細胞を含むことを指定する、態様170~172のいずれかのキット。
175.
指示書が、第1の組成物が第2の組成物の前に投与されることを指定する、態様170~174のいずれかのキット。
176.
指示書が、細胞の用量が非経口的に、任意で静脈内に投与されることを指定する、態様106~175のいずれかのキット。
177.
T細胞が、対象由来の試料から得られた初代T細胞である、態様106~176のいずれかのキット。
178.
T細胞が対象に対して自己由来である、態様106~177のいずれかのキット。
179.
指示書が、T細胞療法を生成するための処理をさらに指定する、態様106~178のいずれかのキット。
180.
T細胞療法を生成するための処理が、
対象から得られた試料からT細胞、任意でCD4+および/またはCD8+T細胞を単離し、それにより初代T細胞を含むインプット組成物を生成する工程;ならびに
CARをコードする核酸分子をインプット組成物に導入する工程
を含む、態様106~179のいずれかのキット。
181.
単離が、免疫親和性に基づく選択を実施することを含む、態様180のキット。
182.
生物学的試料が、全血試料、バフィーコート試料、末梢血単核細胞(PBMC)試料、未分画T細胞試料、リンパ球試料、白血球試料、アフェレーシス産物、または白血球アフェレーシス産物であるかまたはこれを含む、態様106~181のいずれかのキット。
183.
導入の前に、処理が、インプット組成物を刺激条件下でインキュベートする工程を含み、前記刺激条件が、TCR複合体の1つもしくは複数の成分の1つもしくは複数の細胞内シグナル伝達ドメインおよび/または1つもしくは複数の共刺激分子の1つもしくは複数の細胞内シグナル伝達ドメインを活性化することができる刺激試薬の存在を含み、それにより刺激された組成物を生成し、CARをコードする核酸分子を刺激された組成物に導入する、態様180~182のいずれかのキット。
184.
刺激試薬が、TCR複合体のメンバーに特異的に結合する、任意でCD3に特異的に結合する一次剤を含む、態様183のキット。
185.
刺激試薬が、T細胞共刺激分子に特異的に結合する二次剤をさらに含み、任意で、共刺激分子がCD28、CD137(4-1-BB)、OX40、またはICOSから選択される、態様184のキット。
186.
一次剤および/または二次剤が抗体を含み、任意で、刺激試薬が抗CD3抗体および抗CD28抗体、またはその抗原結合断片とのインキュベーションを含む、態様184または態様185のキット。
187.
一次剤および/または二次剤が固体支持体の表面上に存在する、態様184~186のいずれかのキット。
188.
固体支持体がビーズであるかまたはビーズを含み、任意で、ビーズが磁性または超常磁性である、態様187のキット。
189.
ビーズが、3.5μmを超えるかまたは約3.5μmを超えるが、約9μm以下または約8μm以下または約7μm以下または約6μm以下または約5μm以下の直径を含む、態様188のキット。
190.
ビーズが4.5μmまたは約4.5μmの直径を含む、態様188または態様189のキット。
191.
導入が、刺激された組成物の細胞を、組換え受容体をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターで形質導入することを含む、態様106~190のいずれかのキット。
192.
ウイルスベクターがレトロウイルスベクターである、態様191のキット。
193.
ウイルスベクターがレンチウイルスベクターまたはガンマレトロウイルスベクターである、態様191または態様192のキット。
194.
処理が、導入後にT細胞を培養する工程をさらに含み、任意で、培養が、細胞の増殖または拡大をもたらしてT細胞療法を含むアウトプット組成物を生成する条件下で実施される、態様180~193のいずれかのキット。
195.
培養に続いて、処理が、凍結保存のためおよび/または対象へのT細胞療法の投与のためにアウトプット組成物の細胞を製剤化する工程をさらに含み、任意で、製剤化が、薬学的に許容される賦形剤の存在下で行われる、態様194のキット。
196.
指示書が、対象がヒトであることを指定する、態様106~195のいずれかのキット。
197.
指示書が、細胞の用量を含むT細胞療法の投与時または投与の前に、
対象が、ダブル/トリプルヒットリンパ腫を有すると同定されているかもしくは同定されたことがある;
対象が、化学療法抵抗性リンパ腫、任意で化学療法抵抗性DLBCLを有すると同定されているかもしくは同定されたことがある;および/または
対象が、以前の療法に応答して完全奏効(CR)を達成しなかった
ことを指定する、態様106~196のいずれかのキット。
198.
以下の構造:
であるかもしくはこれを含む、またはその薬学的に許容される塩であるキナーゼ阻害剤の1つまたは複数の単位用量、および請求項1~105のいずれか一項の方法を実施するための指示書を含む、キット。
199.
態様106~198のいずれかのキットを含む製品。
【実施例0596】
VIII. 実施例
以下の実施例は例示目的のためだけに含まれ、本発明の範囲を限定するためには意図されない。
【0597】
実施例1: イブルチニブの存在下におけるCAR発現T細胞の表現型および機能の評価
Btk阻害剤であるイブルチニブ(以下の構造:
を有する)の存在下におけるCAR発現T細胞の性質をインビトロ研究において評価した。
【0598】
CAR発現T細胞を作製するために、T細胞を3名の健常者ドナー対象から免疫親和性に基づく富化によって単離し、それぞれのドナーからの細胞を活性化し、抗CD19 CARをコードするウイルスベクターによる形質導入に供した。CARは、抗CD19 scFv、Ig由来のスペーサー、ヒトCD28由来の膜貫通ドメイン、ヒト4-1BB由来の細胞内のシグナル伝達ドメイン、およびヒトCD3ゼータ由来のシグナル伝達ドメインを含有した。CARをコードする核酸構築物にはまた、自己切断性T2A配列によってCAR配列から隔てられる、形質導入マーカーとしての使用のための切断型EGFR(tEGFR)配列が含まれた。
【0599】
CARを発現するCD4+細胞およびCD8+細胞をそれぞれのドナーについて個々に1:1で混合し、それぞれのドナーについてのプールされた細胞を様々な条件のもとでのインビトロで評価した。
【0600】
A. 細胞溶解活性
上記のように作製されるCAR T細胞をポリD-リジンプレートに三連でプレーティングし、その後、イブルチニブ抵抗性のCD19発現標的細胞(CD19を発現するように形質導入されたK562細胞、K562-CD19)と、2.5:1のエフェクター:標的(E:T)比で共培養した。標的細胞を、顕微鏡法による標的細胞の追跡を可能にするために、NucLight Red(NLR)により標識した。イブルチニブを、5000 nM、500 nM、50 nM、5 nMおよび0.5 nMの濃度で培養物に加えた(これらは、超生理学的であることが認められる用量(500 nM)、およびCmaxであることが認められる用量(227 nM)を含む投薬量範囲を反映する)。イブルチニブの非存在下において標的細胞の存在下でインキュベーションされるCAR-T細胞を「非処理」対照として使用した。細胞溶解活性を、(IncuCyte(登録商標)生細胞分析システム(Essen Bioscience)を使用して)赤色蛍光シグナルによって求められるように、生存標的細胞の喪失を4日の期間にわたって測定することによって評価した。標的殺傷の割合(%)を、正規化された標的細胞数についての曲線下面積(AUC)を経時的に測定し、逆数AUC(1/AUC)値を、0%値(標的細胞単独)および100%値(ビヒクル対照において標的細胞と共培養されるCAR+T細胞)を定義することにより正規化することによって評価した。
【0601】
顕微鏡法によって示されるように、標的細胞成長の初期期間の後において、すべてのドナーからの抗CD19 CAR T細胞が、標的細胞数を4日の期間にわたって減少させることが認められ、したがって、このことから、アッセイにおける効果的な殺傷が明らかにされた(図1A)。CAR T細胞と共培養される標的細胞の、細胞傷害性アッセイの開始時および終了時における代表的な画像を図1Bに示す。図1Cに示されるように、イブルチニブにより処理されるCAR-T細胞による標的細胞殺傷を、曲線下面積(AUC)計算を使用して、非処理対照に対して正規化することにより、イブルチニブは、濃度が超生理学的レベル(500 nM)にまで増大させられたときでさえ、2名のドナーについてはこのアッセイにおいて抗CD19 CAR発現T細胞の細胞溶解活性に有意に影響しなかったことが示された。イブルチニブの添加は、共培養期間中に試験されるすべての濃度において、抗CD19 CAR T細胞の細胞溶解機能を阻害しなかった。しかしながら、ほどほどに増大した標的細胞殺傷が、イブルチニブにより処置される1名のドナーについて認められた(P<0.0001)(図1C)。
【0602】
B. CAR-T細胞表面マーカーの発現
イブルチニブの存在下で培養される抗CD19 CAR T細胞の様々な表現型マーカーを評価するために、(3名のドナーからの)CAR+のCD4+細胞およびCD8+細胞での一連の活性化マーカーを、CD19を発現する放射線照射されたK562標的細胞による刺激の後で4日にわたって追跡した。上記のように作製されるCAR-T細胞を96ウェルのポリD-リジン被覆プレートに100,000細胞/ウェルでプレーティングした。放射線照射K562-CD19標的細胞を2.5:1のエフェクター対標的比で加えた。細胞を培養の継続期間にわたって、5000 nM、500 nM、50 nM、5 nMおよび0.5 nMの濃度で、イブルチニブの非存在下または存在下において4日までにわたって培養した。細胞を、1日、2日、3日および4日で採取し、T細胞の活性化および分化の表面マーカー(CD69、CD107a、PD-1、CD25、CD38、CD39、CD95、CD62L、CCR7、CD45RO)について、加えて切断型EGFR(CAR形質導入細胞のための代用マーカー)についてフローサイトメトリーによって分析した。
【0603】
3名の異なる抗CD19 CAR T細胞ドナーにわたって、5000 nM、500 nM、50 nM、5 nMおよび0.5 nMの濃度でのイブルチニブは有意な影響を切断型EGFR代用マーカーの発現に対して、CD25、CD38、CD39、CD95およびCD62Lの活性化マーカーのいずれに対しても、または、本研究において評価されるT細胞表現型マーカー(CCR7、CD62LおよびCD45RO)のいずれに対しても有しておらず、このことは、イブルチニブがこのアッセイにおいてT細胞の活性化状態および/または分化/サブタイプに有意に影響しなかったという結論と一致していた。図2Aは例示的マーカーについての結果を表す。図2Bにおける結果は、イブルチニブによる処理が、CCR7およびCD45RAの発現によって評価されるようなセントラルメモリー(TCM)サブセットまたはエフェクターメモリー(TEM)サブセットとしての細胞の表現型に影響しなかったことを示す。図2Cおよび図2Dに示されるように、CD4+細胞またはCD8+細胞がイブルチニブの存在下でそれぞれ培養されたときには、CD69、CD107aまたはPD-1の発現レベルにおけるかすかな低下があった。そのようなマーカーを発現する抗CD19 CAR T細胞の割合におけるかすかな低下が、試験された阻害剤の最大の(超生理学的)濃度で認められた。
【0604】
C. サイトカイン産生
イブルチニブの存在下または非存在下で培養される抗CD19 CAR T細胞によるサイトカインの産生を、CAR-T細胞および放射線照射K562-CD19標的細胞の共培養物の上清におけるサイトカインレベルを評価することによって評価した。上記のように作製されるCAR-T細胞を、放射線照射された標的細胞(K562-CD19)が2.5:1のエフェクター対標的比で加えられる96ウェルのポリD-リジン被覆プレートに100,000細胞/ウェルでプレーティングした。細胞を、4日までの培養の継続期間にわたってイブルチニブの非存在下、または0.5 nM、5 nM、50 nMもしくは500 nMのイブルチニブの存在下において4日までにわたって培養した。培養上清を、1日目、2日目、3日目および4日目に24時間毎に採取し、IFNγ、IL-2、TNFα、IL-4およびIL-10を、Meso Scale Discovery(MSD)から得られるサイトカインキットを使用して培養上清から測定した。
【0605】
図3Aは、ドナー2から作製されるCAR-T細胞からの4日にわたるサイトカイン産生の動態学の代表的なプロットを示す。図3Bは、2回の独立した実験における2日間の刺激の後におけるサイトカイン産生における絶対的変化を示す。図3Aおよび図3Bに示されるように、イブルチニブの生理学的濃度はサイトカイン濃度を有意に低下させなかった。50 nMのイブルチニブに対する応答において、IFN-γおよびIL-2におけるいくらかの増大が認められた。50nMでのイブルチニブはサイトカイン産生を一部のドナーにおいてはほどほどに増大させ、IL-2における19.6%の平均低下、すなわち、1200 pg/mLが、500 nMのイブルチニブに関して認められた(P<0.05)(図3B)。
【0606】
D. 連続再刺激
いくつかの局面において細胞が反復刺激後にエクスビボで増殖する能力は、CAR-T細胞が(例えば、初期活性化後に)持続することができることを示す可能性があり、かつ/あるいは、インビボでの機能および/または適合性を示す(Zhao et al.(2015)Cancer Cell, 28:415-28)。上記のように作製される抗CD19 CAR+T細胞を、三連で96ウェルのポリD-リジン被覆プレートに100,000細胞/ウェルでプレーティングし、放射線照射された標的細胞(K562-CD19)を、2.5:1のエフェクター対標的比で加えた。細胞を500 nMおよび50 nMのイブルチニブの存在下で刺激し、3日毎~4日毎に採取し、計数し、その後、細胞数を各回について初期播種密度に再設定した後で、同じ培養条件および添加された濃度のイブルチニブを使用して新しい標的細胞による再刺激のために培養した。25日の培養期間の期間中における合計で7回の刺激を行った。
【0607】
各回の刺激について、細胞数(図4A)および倍加数(図4B)における変化倍数を求めた。図4Aおよび図4Bに示されるように、イブルチニブの存在は、細胞数または集団倍加数における変化倍数において認められるように、抗CD19 CAR T細胞の初期成長に影響しなかった(例えば、阻害しなかった)。しかしながら、図4Bに示されるように、刺激の18日目までに、多数回の再刺激の後では、評価された両方の濃度でのイブルチニブは、評価される3名のドナーのうちの2名に由来するT細胞を操作することによって作製される抗CD19 CAR T細胞の高まった細胞数および集団倍加をもたらすことが認められた。これら2名のドナーに由来する細胞は概して、残るドナーに由来する細胞と比較して、イブルチニブの非存在下での連続再刺激アッセイにおいてそれほど良くない成績をもたらした。図4Cには、刺激をイブルチニブの存在下でこれら3名のドナーについて行った後の4日目(1回または再刺激)および18日目(5回の再刺激)での培養における細胞数の結果がまとめられる。示されるように、18日間の連続刺激アッセイの後での細胞数における統計学的に有意な増大が認められた。具体的には、5回の刺激の後(18日目)、最大濃度でのイブルチニブにより処理されるドナー2由来のCAR T細胞は、対照細胞に対して、有意に(P<0.05)増大した細胞数を有した。有意ではないが、増大した細胞数もまた、ドナー3については、試験された最大濃度でのイブルチニブ処理に関して認められた。これに関連して、増大した細胞数は、優れた増殖能または生存を示す可能性があり、区別されなかった。細胞数を対照条件全体にわたって評価したとき、ドナー2およびドナー3に由来する細胞は、このアッセイではドナー1由来の細胞よりも劣った成績を示した。また、これらの違いが認められるこれら2名のドナーに由来する細胞は概して、残るドナーに由来する細胞と比較して、イブルチニブの非存在下での連続再刺激アッセイにおいてそれほど良くない成績をもたらした。注目すべきことに、劣った成績を有するこれらのドナーは、このアッセイにおいてイブルチニブによる処理から利益を得た。結果は、生存および/または増殖能の指標となる、あるいは生存および/または増殖能のために重要である1つまたは複数の因子が損なわれているT細胞については、キナーゼ阻害剤、例えばTECファミリーキナーゼ阻害剤またはBTK/ITK阻害剤(例えば、イブルチニブなど)との組み合わせから利益を受け得ることを示している。例えば、そのようなT細胞のキナーゼ阻害剤(例えば、イブルチニブなど)との組み合わせにより、T細胞の機能および/または持続性が抗原遭遇後に改善され得る。
【0608】
E. TH1表現型
イブルチニブの存在下で培養されるとき、抗CD19 CAR T細胞はTH1表現型に向けられることを実証するアッセイを行った。イブルチニブは、ITKの阻害を介してTh2 CD4 T細胞の活性化および増殖を制限することが認められている(Honda, F., et al.(2012)Nat Immunol, 13(4):369-78)。連続再刺激アッセイを上記のように行い、細胞を様々な時点で採取し、フローサイトメトリーによって分析して、TH1表現型のT細胞(これはCD4+CXCR3+CRTH2-として評価される)またはTH2表現型(これはCD4+CXCR3-CRTH2+として評価される)の割合を評価した。示された濃度のイブルチニブを伴っておよび伴うことなくそれぞれ培養された細胞についての代表的なプロットが図5Aに示され、連続再刺激の経過にわたる培養および様々な濃度のイブルチニブのもとでの培養の後のTH1細胞の割合が、それぞれ図5Bおよび図5Cに示される。
【0609】
このアッセイにおけるイブルチニブの存在は、TH1表現型を示すことが認められるCAR+T細胞の割合を連続刺激後に増大させることが認められ、その影響は、イブルチニブの濃度が増大するにつれて大きくなることが認められた。18日間の連続刺激期間の間、CAR T TH1細胞の割合が、3名の異なるドナーのそれぞれに由来する細胞からは増大した(図5B)。500 nMのイブルチニブはTH1細胞の割合をさらに高めた(P<0.01)(図5C)。
【0610】
さらなるCAR T活性化マーカーまたはメモリーマーカーに対するイブルチニブの有意な影響が、連続刺激アッセイから単離されるCAR T細胞において何ら認められなかった(図5Dおよび図5E)。
【0611】
F. 遺伝子発現分析
様々な遺伝子の発現を、上記のような18日間の連続刺激の期間中に、イブルチニブ(50 nMまたは500 nM)の存在下または非存在下で培養される抗CD19 CAR T細胞において評価した。連続刺激後18日目に、RNAを抗CD19 CAR T細胞から単離し、Nanostring Immune V2パネル試験を594個の遺伝子にわたって実施した。各遺伝子のlog2(変化倍数)を、データを処置対対照について計数するために正規化される非スケール化(unscaled)ハウスキーピング遺伝子のANOVA検定から導かれる-log10(未処理p値)に対してプロットした。結果は、連続再刺激の期間中におけるイブルチニブによる処理が遺伝子発現を有意に変化させないことを示した。
【0612】
実施例2: ブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤の存在下におけるCAR発現T細胞の抗腫瘍活性の増強
播種性腫瘍異種移植マウスモデルを、BTK阻害に対して抵抗性であることが確認されるCD19+Nalm-6播種性腫瘍株の細胞をNOD/Scid/gc-/-(NSG)マウスに注射することによって作製した。
【0613】
0日目に、NSGマウスに、ホタルルシフェラーゼを発現する5×105個のNalm-6細胞を静脈内注射した。4日目から始めて、研究の継続期間にわたって毎日、マウスをビヒクル対照により処置したか、またはイブルチニブにより処置した(それぞれの場合において、25 mg/kg qdでの毎日の経口胃管法(P.O.)によって)。阻害剤との併用療法の影響の評価を可能にするために、2名の異なるドナーからの抗CD19 CAR T細胞(これは、本質的には上記に記載されるように、ヒトドナーの試料に由来する細胞への形質導入によって作製される)の最適以下の用量を5日目に、マウスあたり5×105個のCAR+T細胞の濃度でそれぞれのマウスにi.v.注射した。対照群におけるマウスにはビヒクル対照またはイブルチニブを投与し、しかし、CAR-T細胞は投与しなかった。群あたり8匹(N=8)のマウスをモニターした。
【0614】
上記のような処置の後、経時的な腫瘍成長を生物発光イメージングによって測定し、平均放射輝度(p/s/cm2/sr)を測定した。処置マウスの生存もまた、経時的に評価した。
【0615】
結果が、イブルチニブおよびCAR T細胞により処置されるマウスからの経時的な腫瘍成長について図6Aに示される。2名の異なるドナーからの、腫瘍注入後のより大きい時点での腫瘍成長をモニターする同じ研究からの結果の分析が図6Bに示される。示すように、イブルチニブ処置は単独では、ビヒクル処置と比較して、このイブルチニブ抵抗性モデルにおいて腫瘍負荷量に対する影響を何ら有していなかった。対照的に、CAR-T細胞およびイブルチニブが投与されるマウスは、CAR-T細胞により処置されるマウスおよびビヒクル対照と比較して、有意に低下した腫瘍成長を示した(p<0.001、***;p<0.0001、***)。
【0616】
CAR Tおよびイブルチニブの組み合わせは、イブルチニブおよびCAR T細胞により処置される腫瘍保有マウスの生存を示すカプランマイヤー曲線によって示されるように、腫瘍保有マウスの生存期間を増大させた。図6Cに示されるように、代表的な結果から、CAR-T細胞およびイブルチニブにより処置されるマウスは、最適以下の抗CD19 CAR T細胞用量+ビヒクルを受ける群と比較して、増大したメジアン生存期間を示すことが示された。類似する影響が、他のドナー対象の血液から単離されるT細胞への形質導入によって作製される抗CD19 CAR T細胞を使用する再現研究において見られた。2名の異なるドナーからの、腫瘍注入後のより大きい時点での生存をモニターする同じ研究からの結果の分析が図6Dに示されており、これから、CAR Tおよびイブルチニブの併用投与もまた、CAR Tおよびビヒクルの条件と比較して、有意に増大した生存期間をもたらすことが認められることが示された(p<0.001、***)。
【0617】
実施例3: TECファミリーキナーゼの阻害剤の存在下におけるインビボでのCAR発現T細胞の表現型、機能および抗腫瘍活性の評価
実施例2に記載されるNSGマウスに、ホタルルシフェラーゼを発現する5×105個のNalm-6細胞を0日目に静脈内注射した。4日目から始めて、研究の継続期間にわたって毎日、マウスをビヒクル対照により処置したか、または飲料水(D.W.)において25 mg/kg/日でイブルチニブにより毎日処置した。橋渡し実験により、飲料水によるイブルチニブの投与が経口胃管法による投与と同等であることが確認された(データは示されず)。阻害剤との併用療法の影響の評価を可能にするために、抗CD19 CAR T細胞の最適以下の用量を、5日目に5×105個/マウスにi.v.注射した。対照として、CAR-T細胞または阻害剤の投与を伴わずに、マウスにビヒクル対照を投与した。
【0618】
上記のような処置の後、処置されたマウスの腫瘍成長および生存率を求めた。図7Aに示されるように、抗CD19 CAR-T細胞およびイブルチニブにより処置されるマウスは、最適以下の抗CD19 CAR T細胞用量+ビヒクルを受ける群と比較して、増大したメジアン生存期間を示した(p<0.001)。CAR Tとの組み合わせで投与されるイブルチニブもまた、ビヒクルのみと投与されるCAR Tと比較して、腫瘍成長を有意に(P<0.001)低下させた(図7B)。これらの結果は、2名の異なるドナーに由来するT細胞を操作することによって作製される抗CD19 CAR-T細胞を使用しても同様であった。
【0619】
1名のドナーに由来する細胞からの抗CD19 CAR+T細胞を受けたことがあり、そしてビヒクルまたはイブルチニブにより処置されたマウスから得られる血液、骨髄、および脾臓において、CAR+T細胞の薬物動態学的分析を分析した(群あたり3匹のマウス)。CAR+T細胞移入後7日目、12日目、19日目、および26日目におけるCAR T細胞(抗EGFR抗体を使用して代用マーカーの発現に基づく)および/または腫瘍細胞の存在およびレベルを評価するために、試料を分析した。図7Cに示すように、循環CAR+T細胞における有意な増大が、CAR+T細胞およびビヒクルにより処置されるマウスと比較して、イブルチニブにより処置されるマウスにおいて認められ、このことは、血液におけるCAR-T細胞の拡大がイブルチニブの存在下ではより大きいことと一致していた。CAR-T細胞移入後19日目に、血中の細胞数における有意な増大が、イブルチニブによる処置の後で認められた(図7D:*p<0.05)。図7Eに示されるように、有意に少なくなっている腫瘍細胞が、ビヒクル単独と比較して、CAR+細胞処置がイブルチニブによる処置と組み合わされるマウスにおける血液、骨髄または脾臓において検出された。
【0620】
CAR+T細胞を受けたマウス、およびビヒクルまたはイブルチニブにより処置されたマウスから、CAR T投与後12日目に採取される血液、骨髄および脾臓細胞に対して、エクスビボ免疫表現型決定もまた行った(n=3マウス/群)。細胞をフローサイトメトリーによって、CD44、CD45RA、CD62L、CD154、CXCR3、CXCR4、およびPD-1の表面マーカーについて評価し、T分布型確率的近傍埋込み(t-SNE)高次元分析を、FlowJoソフトウェアを使用して行った。図8Aに示すように、ベクター単独(対照)の場合と比較して、CAR-T細胞をイブルチニブとの組み合わせで受ける動物の骨髄から単離されるCAR+T細胞において、表現型の変化が認められた。群あたり3匹のマウスからのプールされた分析に基づく多変量t-SNEフローサイトメトリー分析を使用して、4つの異なる集団クラスターが特定された(図8B)。総集団の発現(陰影付き)に重ね合わされる、図8Bにおける4ゲートt-SNEからの、CD4、CD8、CD62L、CD45RA、CD44、およびCXCR3の個々の発現プロフィールを示すフローサイトメトリーヒストグラムを図8Cに示す。
【0621】
対照マウスまたはイブルチニブ処置マウスにおけるそれぞれのt-SNE集団の割合および変化倍数が図8Dに示される。統計学的に有意に異なることが、P<0.95(*)、P<0.01(**)、P<0.001(***)、P<0.0001(****)として示されている。
【0622】
CD8+CD44hi CXCR3hi CD45RAlo CD62Lhi(集団2)およびCD4+CD44hi CXCR3int CD45RAhi CD62Lhi(集団4)における増大が、CAR T移入後12日目において、対照マウスと比較して、イブルチニブもまた投与されるCAR T処置マウスの骨髄において認められた(図8A図8C)。集団4のより大きい増強がイブルチニブ処置動物において認められた(4.4%のCAR-T細胞と比較して15.2%)(図8C)。
【0623】
実施例4: ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)患者から製造されるCAR発現T細胞の細胞溶解機能を増強する
抗CD19 CAR-T細胞を、T細胞がびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)を有する2名の異なるヒト対象から単離されたことを除いて、実質的には実施例1に記載されるように作製した。細胞を、CAR-T細胞を500 nMおよび50 nMのイブルチニブの存在下、2.5:1のエフェクター対標的比でK562-CD19標的細胞と共培養し、細胞を3日毎~4日毎に採取し、再刺激を細胞数の再設定後、同じ条件のもとで行うことによって、実施例1.Dに記載するように連続再刺激に供した。細胞を21日の培養期間にわたって連続再刺激に供し、細胞拡大および細胞傷害活性についてモニターした。図9Aに示すように、細胞倍加数によって求められるような細胞拡大を、それぞれの個々の対象に由来する細胞について21日の培養期間の期間中に観察した。イブルチニブは、どちらの患者についても患者由来のCAR T細胞の増殖を阻害しなかった(図9A)。これは、健常者ドナー由来のCAR T細胞から得られた以前のデータと一致する観察結果である。図9Bに示すように、それぞれの個々の対象に由来する細胞から製造されるCAR-T細胞は、16日間の連続刺激の後で、500 nMのイブルチニブの存在下での細胞溶解機能における増大を示した(図9B)。1名の患者に由来する細胞では、16日間の連続刺激の後での細胞溶解活性における増大が、50 nMのイブルチニブに関して認められた(P<0.01)(図9B)。細胞溶解活性におけるこの増大は健常者ドナー細胞からの結果と一致している(図1C図1D)。
【0624】
実施例5: イブルチニブにより処理されるCAR発現T細胞のRNA-Seqによる分子的シグナチャーの評価
イブルチニブ(50 nM、500 nM)または対照(0 nM)の存在下での連続刺激アッセイで18日間処置された、3名の異なるドナーに由来する個々のCAR発現細胞から、RNAを単離した。RNA単離は、RNEasy Micro Kit(Qiagen)を使用して行った。試料を配列決定し、RNASeqリードをヒトゲノム(GRCh38)に対してマッピングし、GENCODE(リリース24)遺伝子モデルにアラインメントした。RNAseq品質マトリックスを、試料間の一貫性を確認するために作製し、評価した。示差的に発現した遺伝子を、0.5のlog2変化倍数カットオフおよび0.05のBenjamini-Hochberg調整偽陽性発見率(FDR)カットオフを課すことによって特定した。
【0625】
図10Aにおいてボルケーノプロットで示されるように、500 nMのイブルチニブは、23個のタンパク質コード遺伝子の発現を有意に変化させた(FDR<0.05、absLog2FC>0.5)。図10Bは、図10Aにおいて特定される23個の遺伝子についての遺伝子発現変化のヒートマップを示す。有意ではないが、類似する傾向が、50 nMに関して見られた(図10Cおよび図10D)。異なる濃度の阻害剤(50 nMまたは500 nM)または対照による処理の後での例示的な遺伝子についての遺伝子発現のボックスプロットを、図11A図11Eに示す。示差的に発現した遺伝子の中で、グランザイムA(図11A)およびCD38(図11C)などの遺伝子における低下、そしてSELL/CD62Lにおける増大(図11A)は、メモリー発達に関連する遺伝子を増強しながら、終末エフェクター様遺伝子(terminal-effector-like gene)を抑制するイブルチニブの影響と一致している。さらに、RNA-Seqにより、TH1分化を促進させることに関連する遺伝子が、TH2プログラミングを抑制することが知られているMSCのアップレギュレーション(Wu, C., et al.(2017)Nat Immunol, 18(3):344-353)、ならびに、TH1発達を阻害することが確認されるATRA/レチノイン酸シグナル伝達経路に関連するHES6、HIC1、LZTFL1、NRIP1、CD38およびRARRES3のダウンレギュレーション(Britschgi, C., et al.(2008)Br J Haematol, 141(2): 179-87; Jiang, H., et al.(2016)J Immunol, 196(3):1081-90; Heim, K.C., et al.(2007)Mol Cancer, 6:57; Nijhof, I.S., et al.(2015)Leukemia, 29(10):2039-49; Zirn, B., et al.(2005)Oncogene, 24(33):5246-51)を含めて、イブルチニブによって変化させられることが明らかにされた(図11E、11B、および11D)。RNA-Seqの結果を支持して、CD62L発現における有意な増大が、ドナー2およびドナー3において18日間の連続刺激の後でフローサイトメトリーによって認められた(図12Aおよび図12B)。まとめると、これらの結果は、長期間のイブルチニブ処置が、CAR Tにおける増大したTH1かつメモリー様の表現型もたらし得ることを裏づけている。
【0626】
実施例6: 再発性および難治性非ホジキンリンパ腫(NHL)を有する対象への、化合物1と組み合わせた抗CD19 CAR発現細胞の投与
抗CD19 CAR発現T細胞組成物は、実質的に実施例1に記載されるように作製され、生成されたCD4+CAR発現T細胞組成物およびCD8+CAR発現T細胞組成物は、イブルチニブ(構造:
を有する)の投与と組み合わせて、再発/難治性(R/R)B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)を有する対象に別々に投与される。治療のために選択される対象の群には、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL); デノボまたは無痛性から形質転換したもの(NOS); DLBCL組織学を伴うMYCおよびBCL2および/もしくはBCL6再構成を有する高悪性度B細胞リンパ腫(ダブル/トリプルヒットリンパ腫); 濾胞性リンパ腫グレード3B(FLG3B); T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞リンパ腫; EBV陽性DLBCL、NOS; および原発性縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫(PMBCL)を有する対象が含まれる。治療される対象には、CD20標的薬およびアントラサイクリンを含む少なくとも2つの前治療ラインの後に再発したかまたは前治療ラインに難治性であり、スクリーニング時に1未満または1の東部共同腫瘍学グループパフォーマンスステータス(ECOG)スコアを有する対象が含まれる。
【0627】
CARを発現するT細胞を生成するために、ヒト対象の循環血液からの細胞を含む試料をアフェレーシスまたは白血球アフェレーシスによって入手し、免疫親和性に基づく濃縮によってT細胞を単離する。細胞は、CAR+T細胞注入の28日前(±7日)に入手される。単離された細胞は活性化され、抗CD19 CARをコードするウイルスベクターで形質導入される。
【0628】
CAR+T細胞注入の前に、対象にフルダラビン(flu、30mg/m2/日)およびシクロホスファミド(Cy、300mg/m2/日)によるリンパ球除去化学療法を3日間実施する。
【0629】
アフェレーシスまたは白血球アフェレーシスの7日前(CAR+T細胞注入の35日前(±7日))から開始して、リンパ球除去化学療法の開始まで、イブルチニブを140mg用量/日、280mg用量/日、420mg用量/日または560mg用量/日で対象に毎日経口投与する。対象がリンパ球除去化学療法を受けている間、イブルチニブは投与されない。イブルチニブの投与は、リンパ球除去化学療法の完了後に再開される。
【0630】
リンパ球除去の2~7日後に、対象にCAR発現T細胞を投与する。対象に、1×108CAR発現T細胞の単回用量を投与する(それぞれCD4+CAR発現T細胞とCD8+CAR発現T細胞の1:1の比率での別々の注入による各単回用量)。イブルチニブの投与は、リンパ球除去化学療法の完了および操作されたCAR発現細胞の注入後も継続される。
【0631】
治療に対する応答は、治療前のベースライン時および治療後の様々な時点で、陽電子放射断層撮影法(PET)および/またはコンピュータ断層撮影法(CT)または磁気共鳴画像法(MRI)スキャンによる放射線腫瘍評価に基づいて評価される(例えばLugano分類に基づく、例えばCheson et al.,(2014)JCO 32(27):3059-3067参照)。治療後の治療緊急有害事象(TEAE)の有無も評価される。対象はまた、米国国立癌研究所(National Cancer Institute)-共通毒性基準(Common Toxicity Criteria)(CTCAE)スケール、バージョン4.03(NCI-CTCAE v4.03)に従って、1~5のスケールに等級分けされた神経毒性(錯乱、失語症、脳症、ミオクローヌス発作、痙攣、嗜眠、および/または精神状態の変化の症状を含む神経学的合併症)についても評価され、モニターされる。共通毒性基準(CTCAE)スケール、バージョン4.03(NCI-CTCAE v4.03)。2009年5月28日に公表された有害事象に関する共通用語集(Common Terminology for Adverse Events)(CTCAE)バージョン4、米国保健福祉省(v4.03:2010年6月14日)およびGuido Cavaletti&Paola Marmiroli Nature Reviews Neurology 6,657-666(December 2010)参照。サイトカイン放出症候群(CRS)も決定され、モニターされ、重症度に基づいて等級分けされる。Lee et al,Blood.2014;124(2):188-95参照。対象はまた、イブルチニブによる治療前および治療後の抗CD19 CAR+T細胞の薬物動態(PK)、ならびにイブルチニブのPKおよび薬力学(PD)パラメーターについて評価される。
【0632】
イブルチニブの投与は、対象が部分奏効(PR)を達成しない限り、180日目(CAR+T細胞注入後6ヶ月目)の後に中止され、部分奏効を達成した場合は、疾患が進行するまでイブルチニブのさらなる投与が継続され得る。
【0633】
本発明は、例えば本発明の様々な局面を例示するために提供される、特定の開示された態様に範囲が限定されることを意図されない。記載される組成物および方法に対する様々な改変が、本明細書における説明および教示から明らかになるであろう。そのような変形は、本開示の真の範囲および精神から逸脱することなく実施され得、本開示の範囲内に含まれることが意図されている。
【0634】
配列
【0635】
配列情報
SEQUENCE LISTING
<110> JUNO THERAPEUTICS, INC.
<120> COMBINATION THERAPY OF A CHIMERIC ANTIGEN RECEPTOR (CAR)
T CELL THERAPY AND A KINASE INHIBITOR
<150> US 62/666,653
<151> 2018-05-03
<160> 59
<170> FastSEQ for Windows Version 4.0

<210> 1
<211> 12
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<220>
<223> Spacer (IgG4hinge)
<400> 1
Glu Ser Lys Tyr Gly Pro Pro Cys Pro Pro Cys Pro
1 5 10

<210> 2
<211> 36
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<220>
<223> Spacer (IgG4hinge)
<400> 2
gaatctaagt acggaccgcc ctgcccccct tgccct 36

<210> 3
<211> 119
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<220>
<223> Hinge-CH3 spacer
<400> 3
Glu Ser Lys Tyr Gly Pro Pro Cys Pro Pro Cys Pro Gly Gln Pro Arg
1 5 10 15
Glu Pro Gln Val Tyr Thr Leu Pro Pro Ser Gln Glu Glu Met Thr Lys
20 25 30
Asn Gln Val Ser Leu Thr Cys Leu Val Lys Gly Phe Tyr Pro Ser Asp
35 40 45
Ile Ala Val Glu Trp Glu Ser Asn Gly Gln Pro Glu Asn Asn Tyr Lys
50 55 60
Thr Thr Pro Pro Val Leu Asp Ser Asp Gly Ser Phe Phe Leu Tyr Ser
65 70 75 80
Arg Leu Thr Val Asp Lys Ser Arg Trp Gln Glu Gly Asn Val Phe Ser
85 90 95
Cys Ser Val Met His Glu Ala Leu His Asn His Tyr Thr Gln Lys Ser
100 105 110
Leu Ser Leu Ser Leu Gly Lys
115

<210> 4
<211> 229
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<220>
<223> Hinge-CH2-CH3 spacer
<400> 4
Glu Ser Lys Tyr Gly Pro Pro Cys Pro Pro Cys Pro Ala Pro Glu Phe
1 5 10 15
Leu Gly Gly Pro Ser Val Phe Leu Phe Pro Pro Lys Pro Lys Asp Thr
20 25 30
Leu Met Ile Ser Arg Thr Pro Glu Val Thr Cys Val Val Val Asp Val
35 40 45
Ser Gln Glu Asp Pro Glu Val Gln Phe Asn Trp Tyr Val Asp Gly Val
50 55 60
Glu Val His Asn Ala Lys Thr Lys Pro Arg Glu Glu Gln Phe Asn Ser
65 70 75 80
Thr Tyr Arg Val Val Ser Val Leu Thr Val Leu His Gln Asp Trp Leu
85 90 95
Asn Gly Lys Glu Tyr Lys Cys Lys Val Ser Asn Lys Gly Leu Pro Ser
100 105 110
Ser Ile Glu Lys Thr Ile Ser Lys Ala Lys Gly Gln Pro Arg Glu Pro
115 120 125
Gln Val Tyr Thr Leu Pro Pro Ser Gln Glu Glu Met Thr Lys Asn Gln
130 135 140
Val Ser Leu Thr Cys Leu Val Lys Gly Phe Tyr Pro Ser Asp Ile Ala
145 150 155 160
Val Glu Trp Glu Ser Asn Gly Gln Pro Glu Asn Asn Tyr Lys Thr Thr
165 170 175
Pro Pro Val Leu Asp Ser Asp Gly Ser Phe Phe Leu Tyr Ser Arg Leu
180 185 190
Thr Val Asp Lys Ser Arg Trp Gln Glu Gly Asn Val Phe Ser Cys Ser
195 200 205
Val Met His Glu Ala Leu His Asn His Tyr Thr Gln Lys Ser Leu Ser
210 215 220
Leu Ser Leu Gly Lys
225

<210> 5
<211> 282
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<220>
<223> IgD-hinge-Fc
<400> 5
Arg Trp Pro Glu Ser Pro Lys Ala Gln Ala Ser Ser Val Pro Thr Ala
1 5 10 15
Gln Pro Gln Ala Glu Gly Ser Leu Ala Lys Ala Thr Thr Ala Pro Ala
20 25 30
Thr Thr Arg Asn Thr Gly Arg Gly Gly Glu Glu Lys Lys Lys Glu Lys
35 40 45
Glu Lys Glu Glu Gln Glu Glu Arg Glu Thr Lys Thr Pro Glu Cys Pro
50 55 60
Ser His Thr Gln Pro Leu Gly Val Tyr Leu Leu Thr Pro Ala Val Gln
65 70 75 80
Asp Leu Trp Leu Arg Asp Lys Ala Thr Phe Thr Cys Phe Val Val Gly
85 90 95
Ser Asp Leu Lys Asp Ala His Leu Thr Trp Glu Val Ala Gly Lys Val
100 105 110
Pro Thr Gly Gly Val Glu Glu Gly Leu Leu Glu Arg His Ser Asn Gly
115 120 125
Ser Gln Ser Gln His Ser Arg Leu Thr Leu Pro Arg Ser Leu Trp Asn
130 135 140
Ala Gly Thr Ser Val Thr Cys Thr Leu Asn His Pro Ser Leu Pro Pro
145 150 155 160
Gln Arg Leu Met Ala Leu Arg Glu Pro Ala Ala Gln Ala Pro Val Lys
165 170 175
Leu Ser Leu Asn Leu Leu Ala Ser Ser Asp Pro Pro Glu Ala Ala Ser
180 185 190
Trp Leu Leu Cys Glu Val Ser Gly Phe Ser Pro Pro Asn Ile Leu Leu
195 200 205
Met Trp Leu Glu Asp Gln Arg Glu Val Asn Thr Ser Gly Phe Ala Pro
210 215 220
Ala Arg Pro Pro Pro Gln Pro Gly Ser Thr Thr Phe Trp Ala Trp Ser
225 230 235 240
Val Leu Arg Val Pro Ala Pro Pro Ser Pro Gln Pro Ala Thr Tyr Thr
245 250 255
Cys Val Val Ser His Glu Asp Ser Arg Thr Leu Leu Asn Ala Ser Arg
260 265 270
Ser Leu Glu Val Ser Tyr Val Thr Asp His
275 280

<210> 6
<211> 24
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> T2A
<400> 6
Leu Glu Gly Gly Gly Glu Gly Arg Gly Ser Leu Leu Thr Cys Gly Asp
1 5 10 15
Val Glu Glu Asn Pro Gly Pro Arg
20

<210> 7
<211> 357
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> tEGFR
<400> 7
Met Leu Leu Leu Val Thr Ser Leu Leu Leu Cys Glu Leu Pro His Pro
1 5 10 15
Ala Phe Leu Leu Ile Pro Arg Lys Val Cys Asn Gly Ile Gly Ile Gly
20 25 30
Glu Phe Lys Asp Ser Leu Ser Ile Asn Ala Thr Asn Ile Lys His Phe
35 40 45
Lys Asn Cys Thr Ser Ile Ser Gly Asp Leu His Ile Leu Pro Val Ala
50 55 60
Phe Arg Gly Asp Ser Phe Thr His Thr Pro Pro Leu Asp Pro Gln Glu
65 70 75 80
Leu Asp Ile Leu Lys Thr Val Lys Glu Ile Thr Gly Phe Leu Leu Ile
85 90 95
Gln Ala Trp Pro Glu Asn Arg Thr Asp Leu His Ala Phe Glu Asn Leu
100 105 110
Glu Ile Ile Arg Gly Arg Thr Lys Gln His Gly Gln Phe Ser Leu Ala
115 120 125
Val Val Ser Leu Asn Ile Thr Ser Leu Gly Leu Arg Ser Leu Lys Glu
130 135 140
Ile Ser Asp Gly Asp Val Ile Ile Ser Gly Asn Lys Asn Leu Cys Tyr
145 150 155 160
Ala Asn Thr Ile Asn Trp Lys Lys Leu Phe Gly Thr Ser Gly Gln Lys
165 170 175
Thr Lys Ile Ile Ser Asn Arg Gly Glu Asn Ser Cys Lys Ala Thr Gly
180 185 190
Gln Val Cys His Ala Leu Cys Ser Pro Glu Gly Cys Trp Gly Pro Glu
195 200 205
Pro Arg Asp Cys Val Ser Cys Arg Asn Val Ser Arg Gly Arg Glu Cys
210 215 220
Val Asp Lys Cys Asn Leu Leu Glu Gly Glu Pro Arg Glu Phe Val Glu
225 230 235 240
Asn Ser Glu Cys Ile Gln Cys His Pro Glu Cys Leu Pro Gln Ala Met
245 250 255
Asn Ile Thr Cys Thr Gly Arg Gly Pro Asp Asn Cys Ile Gln Cys Ala
260 265 270
His Tyr Ile Asp Gly Pro His Cys Val Lys Thr Cys Pro Ala Gly Val
275 280 285
Met Gly Glu Asn Asn Thr Leu Val Trp Lys Tyr Ala Asp Ala Gly His
290 295 300
Val Cys His Leu Cys His Pro Asn Cys Thr Tyr Gly Cys Thr Gly Pro
305 310 315 320
Gly Leu Glu Gly Cys Pro Thr Asn Gly Pro Lys Ile Pro Ser Ile Ala
325 330 335
Thr Gly Met Val Gly Ala Leu Leu Leu Leu Leu Val Val Ala Leu Gly
340 345 350
Ile Gly Leu Phe Met
355

<210> 8
<211> 27
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<220>
<223> CD28
<300>
<308> UniProt P10747
<309> 1989-07-01
<400> 8
Phe Trp Val Leu Val Val Val Gly Gly Val Leu Ala Cys Tyr Ser Leu
1 5 10 15
Leu Val Thr Val Ala Phe Ile Ile Phe Trp Val
20 25

<210> 9
<211> 66
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<220>
<223> CD28
<300>
<308> UniProt P10747
<309> 1989-07-01
<400> 9
Ile Glu Val Met Tyr Pro Pro Pro Tyr Leu Asp Asn Glu Lys Ser Asn
1 5 10 15
Gly Thr Ile Ile His Val Lys Gly Lys His Leu Cys Pro Ser Pro Leu
20 25 30
Phe Pro Gly Pro Ser Lys Pro Phe Trp Val Leu Val Val Val Gly Gly
35 40 45
Val Leu Ala Cys Tyr Ser Leu Leu Val Thr Val Ala Phe Ile Ile Phe
50 55 60
Trp Val
65

<210> 10
<211> 41
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<220>
<223> CD28
<300>
<308> UniProt P10747
<309> 1989-07-01
<400> 10
Arg Ser Lys Arg Ser Arg Leu Leu His Ser Asp Tyr Met Asn Met Thr
1 5 10 15
Pro Arg Arg Pro Gly Pro Thr Arg Lys His Tyr Gln Pro Tyr Ala Pro
20 25 30
Pro Arg Asp Phe Ala Ala Tyr Arg Ser
35 40

<210> 11
<211> 41
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<220>
<223> CD28
<400> 11
Arg Ser Lys Arg Ser Arg Gly Gly His Ser Asp Tyr Met Asn Met Thr
1 5 10 15
Pro Arg Arg Pro Gly Pro Thr Arg Lys His Tyr Gln Pro Tyr Ala Pro
20 25 30
Pro Arg Asp Phe Ala Ala Tyr Arg Ser
35 40

<210> 12
<211> 42
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<220>
<223> 4-1BB
<300>
<308> UniProt Q07011.1
<309> 1995-02-01
<400> 12
Lys Arg Gly Arg Lys Lys Leu Leu Tyr Ile Phe Lys Gln Pro Phe Met
1 5 10 15
Arg Pro Val Gln Thr Thr Gln Glu Glu Asp Gly Cys Ser Cys Arg Phe
20 25 30
Pro Glu Glu Glu Glu Gly Gly Cys Glu Leu
35 40

<210> 13
<211> 112
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<220>
<223> CD3 zeta
<400> 13
Arg Val Lys Phe Ser Arg Ser Ala Asp Ala Pro Ala Tyr Gln Gln Gly
1 5 10 15
Gln Asn Gln Leu Tyr Asn Glu Leu Asn Leu Gly Arg Arg Glu Glu Tyr
20 25 30
Asp Val Leu Asp Lys Arg Arg Gly Arg Asp Pro Glu Met Gly Gly Lys
35 40 45
Pro Arg Arg Lys Asn Pro Gln Glu Gly Leu Tyr Asn Glu Leu Gln Lys
50 55 60
Asp Lys Met Ala Glu Ala Tyr Ser Glu Ile Gly Met Lys Gly Glu Arg
65 70 75 80
Arg Arg Gly Lys Gly His Asp Gly Leu Tyr Gln Gly Leu Ser Thr Ala
85 90 95
Thr Lys Asp Thr Tyr Asp Ala Leu His Met Gln Ala Leu Pro Pro Arg
100 105 110

<210> 14
<211> 112
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<220>
<223> CD3 zeta
<400> 14
Arg Val Lys Phe Ser Arg Ser Ala Glu Pro Pro Ala Tyr Gln Gln Gly
1 5 10 15
Gln Asn Gln Leu Tyr Asn Glu Leu Asn Leu Gly Arg Arg Glu Glu Tyr
20 25 30
Asp Val Leu Asp Lys Arg Arg Gly Arg Asp Pro Glu Met Gly Gly Lys
35 40 45
Pro Arg Arg Lys Asn Pro Gln Glu Gly Leu Tyr Asn Glu Leu Gln Lys
50 55 60
Asp Lys Met Ala Glu Ala Tyr Ser Glu Ile Gly Met Lys Gly Glu Arg
65 70 75 80
Arg Arg Gly Lys Gly His Asp Gly Leu Tyr Gln Gly Leu Ser Thr Ala
85 90 95
Thr Lys Asp Thr Tyr Asp Ala Leu His Met Gln Ala Leu Pro Pro Arg
100 105 110

<210> 15
<211> 112
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<220>
<223> CD3 zeta
<400> 15
Arg Val Lys Phe Ser Arg Ser Ala Asp Ala Pro Ala Tyr Lys Gln Gly
1 5 10 15
Gln Asn Gln Leu Tyr Asn Glu Leu Asn Leu Gly Arg Arg Glu Glu Tyr
20 25 30
Asp Val Leu Asp Lys Arg Arg Gly Arg Asp Pro Glu Met Gly Gly Lys
35 40 45
Pro Arg Arg Lys Asn Pro Gln Glu Gly Leu Tyr Asn Glu Leu Gln Lys
50 55 60
Asp Lys Met Ala Glu Ala Tyr Ser Glu Ile Gly Met Lys Gly Glu Arg
65 70 75 80
Arg Arg Gly Lys Gly His Asp Gly Leu Tyr Gln Gly Leu Ser Thr Ala
85 90 95
Thr Lys Asp Thr Tyr Asp Ala Leu His Met Gln Ala Leu Pro Pro Arg
100 105 110

<210> 16
<211> 335
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> tEGFR
<400> 16
Arg Lys Val Cys Asn Gly Ile Gly Ile Gly Glu Phe Lys Asp Ser Leu
1 5 10 15
Ser Ile Asn Ala Thr Asn Ile Lys His Phe Lys Asn Cys Thr Ser Ile
20 25 30
Ser Gly Asp Leu His Ile Leu Pro Val Ala Phe Arg Gly Asp Ser Phe
35 40 45
Thr His Thr Pro Pro Leu Asp Pro Gln Glu Leu Asp Ile Leu Lys Thr
50 55 60
Val Lys Glu Ile Thr Gly Phe Leu Leu Ile Gln Ala Trp Pro Glu Asn
65 70 75 80
Arg Thr Asp Leu His Ala Phe Glu Asn Leu Glu Ile Ile Arg Gly Arg
85 90 95
Thr Lys Gln His Gly Gln Phe Ser Leu Ala Val Val Ser Leu Asn Ile
100 105 110
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Ile Ile Ser Gly Asn Lys Asn Leu Cys Tyr Ala Asn Thr Ile Asn Trp
130 135 140
Lys Lys Leu Phe Gly Thr Ser Gly Gln Lys Thr Lys Ile Ile Ser Asn
145 150 155 160
Arg Gly Glu Asn Ser Cys Lys Ala Thr Gly Gln Val Cys His Ala Leu
165 170 175
Cys Ser Pro Glu Gly Cys Trp Gly Pro Glu Pro Arg Asp Cys Val Ser
180 185 190
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195 200 205
Leu Glu Gly Glu Pro Arg Glu Phe Val Glu Asn Ser Glu Cys Ile Gln
210 215 220
Cys His Pro Glu Cys Leu Pro Gln Ala Met Asn Ile Thr Cys Thr Gly
225 230 235 240
Arg Gly Pro Asp Asn Cys Ile Gln Cys Ala His Tyr Ile Asp Gly Pro
245 250 255
His Cys Val Lys Thr Cys Pro Ala Gly Val Met Gly Glu Asn Asn Thr
260 265 270
Leu Val Trp Lys Tyr Ala Asp Ala Gly His Val Cys His Leu Cys His
275 280 285
Pro Asn Cys Thr Tyr Gly Cys Thr Gly Pro Gly Leu Glu Gly Cys Pro
290 295 300
Thr Asn Gly Pro Lys Ile Pro Ser Ile Ala Thr Gly Met Val Gly Ala
305 310 315 320
Leu Leu Leu Leu Leu Val Val Ala Leu Gly Ile Gly Leu Phe Met
325 330 335

<210> 17
<211> 18
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> T2A
<400> 17
Glu Gly Arg Gly Ser Leu Leu Thr Cys Gly Asp Val Glu Glu Asn Pro
1 5 10 15
Gly Pro

<210> 18
<211> 22
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> P2A
<400> 18
Gly Ser Gly Ala Thr Asn Phe Ser Leu Leu Lys Gln Ala Gly Asp Val
1 5 10 15
Glu Glu Asn Pro Gly Pro
20

<210> 19
<211> 19
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> P2A
<400> 19
Ala Thr Asn Phe Ser Leu Leu Lys Gln Ala Gly Asp Val Glu Glu Asn
1 5 10 15
Pro Gly Pro

<210> 20
<211> 20
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> E2A
<400> 20
Gln Cys Thr Asn Tyr Ala Leu Leu Lys Leu Ala Gly Asp Val Glu Ser
1 5 10 15
Asn Pro Gly Pro
20

<210> 21
<211> 22
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> F2A
<400> 21
Val Lys Gln Thr Leu Asn Phe Asp Leu Leu Lys Leu Ala Gly Asp Val
1 5 10 15
Glu Ser Asn Pro Gly Pro
20

<210> 22
<211> 9
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Linker
<220>
<221> REPEAT
<222> (5)...(9)
<223> SGGGG is repeated 5 times
<400> 22
Pro Gly Gly Gly Ser Gly Gly Gly Gly
1 5

<210> 23
<211> 17
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Linker
<400> 23
Gly Ser Ala Asp Asp Ala Lys Lys Asp Ala Ala Lys Lys Asp Gly Lys
1 5 10 15
Ser

<210> 24
<211> 66
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> GMCSFR alpha chain signal sequence
<400> 24
atgcttctcc tggtgacaag ccttctgctc tgtgagttac cacacccagc attcctcctg 60
atccca 66

<210> 25
<211> 22
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> GMCSFR alpha chain signal sequence
<400> 25
Met Leu Leu Leu Val Thr Ser Leu Leu Leu Cys Glu Leu Pro His Pro
1 5 10 15
Ala Phe Leu Leu Ile Pro
20

<210> 26
<211> 18
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> CD8 alpha signal peptide
<400> 26
Met Ala Leu Pro Val Thr Ala Leu Leu Leu Pro Leu Ala Leu Leu Leu
1 5 10 15
His Ala

<210> 27
<211> 15
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Hinge
<400> 27
Glu Pro Lys Ser Cys Asp Lys Thr His Thr Cys Pro Pro Cys Pro
1 5 10 15

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<211> 12
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Hinge
<400> 28
Glu Arg Lys Cys Cys Val Glu Cys Pro Pro Cys Pro
1 5 10

<210> 29
<211> 61
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Hinge
<400> 29
Glu Leu Lys Thr Pro Leu Gly Asp Thr His Thr Cys Pro Arg Cys Pro
1 5 10 15
Glu Pro Lys Ser Cys Asp Thr Pro Pro Pro Cys Pro Arg Cys Pro Glu
20 25 30
Pro Lys Ser Cys Asp Thr Pro Pro Pro Cys Pro Arg Cys Pro Glu Pro
35 40 45
Lys Ser Cys Asp Thr Pro Pro Pro Cys Pro Arg Cys Pro
50 55 60

<210> 30
<211> 12
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Hinge
<400> 30
Glu Ser Lys Tyr Gly Pro Pro Cys Pro Ser Cys Pro
1 5 10

<210> 31
<211> 12
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Hinge
<400> 31
Glu Ser Lys Tyr Gly Pro Pro Cys Pro Pro Cys Pro
1 5 10

<210> 32
<211> 9
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Hinge
<400> 32
Tyr Gly Pro Pro Cys Pro Pro Cys Pro
1 5

<210> 33
<211> 10
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Hinge
<400> 33
Lys Tyr Gly Pro Pro Cys Pro Pro Cys Pro
1 5 10

<210> 34
<211> 14
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Hinge
<400> 34
Glu Val Val Val Lys Tyr Gly Pro Pro Cys Pro Pro Cys Pro
1 5 10

<210> 35
<211> 11
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> CDR L1
<400> 35
Arg Ala Ser Gln Asp Ile Ser Lys Tyr Leu Asn
1 5 10

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<211> 7
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> CDR L2
<400> 36
Ser Arg Leu His Ser Gly Val
1 5

<210> 37
<211> 9
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> CDR L3
<400> 37
Gly Asn Thr Leu Pro Tyr Thr Phe Gly
1 5

<210> 38
<211> 5
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> CDR H1
<400> 38
Asp Tyr Gly Val Ser
1 5

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<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> CDR H2
<400> 39
Val Ile Trp Gly Ser Glu Thr Thr Tyr Tyr Asn Ser Ala Leu Lys Ser
1 5 10 15

<210> 40
<211> 7
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> CDR H3
<400> 40
Tyr Ala Met Asp Tyr Trp Gly
1 5

<210> 41
<211> 120
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> VH
<400> 41
Glu Val Lys Leu Gln Glu Ser Gly Pro Gly Leu Val Ala Pro Ser Gln
1 5 10 15
Ser Leu Ser Val Thr Cys Thr Val Ser Gly Val Ser Leu Pro Asp Tyr
20 25 30
Gly Val Ser Trp Ile Arg Gln Pro Pro Arg Lys Gly Leu Glu Trp Leu
35 40 45
Gly Val Ile Trp Gly Ser Glu Thr Thr Tyr Tyr Asn Ser Ala Leu Lys
50 55 60
Ser Arg Leu Thr Ile Ile Lys Asp Asn Ser Lys Ser Gln Val Phe Leu
65 70 75 80
Lys Met Asn Ser Leu Gln Thr Asp Asp Thr Ala Ile Tyr Tyr Cys Ala
85 90 95
Lys His Tyr Tyr Tyr Gly Gly Ser Tyr Ala Met Asp Tyr Trp Gly Gln
100 105 110
Gly Thr Ser Val Thr Val Ser Ser
115 120

<210> 42
<211> 107
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> VL
<400> 42
Asp Ile Gln Met Thr Gln Thr Thr Ser Ser Leu Ser Ala Ser Leu Gly
1 5 10 15
Asp Arg Val Thr Ile Ser Cys Arg Ala Ser Gln Asp Ile Ser Lys Tyr
20 25 30
Leu Asn Trp Tyr Gln Gln Lys Pro Asp Gly Thr Val Lys Leu Leu Ile
35 40 45
Tyr His Thr Ser Arg Leu His Ser Gly Val Pro Ser Arg Phe Ser Gly
50 55 60
Ser Gly Ser Gly Thr Asp Tyr Ser Leu Thr Ile Ser Asn Leu Glu Gln
65 70 75 80
Glu Asp Ile Ala Thr Tyr Phe Cys Gln Gln Gly Asn Thr Leu Pro Tyr
85 90 95
Thr Phe Gly Gly Gly Thr Lys Leu Glu Ile Thr
100 105

<210> 43
<211> 245
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> scFv
<400> 43
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1 5 10 15
Asp Arg Val Thr Ile Ser Cys Arg Ala Ser Gln Asp Ile Ser Lys Tyr
20 25 30
Leu Asn Trp Tyr Gln Gln Lys Pro Asp Gly Thr Val Lys Leu Leu Ile
35 40 45
Tyr His Thr Ser Arg Leu His Ser Gly Val Pro Ser Arg Phe Ser Gly
50 55 60
Ser Gly Ser Gly Thr Asp Tyr Ser Leu Thr Ile Ser Asn Leu Glu Gln
65 70 75 80
Glu Asp Ile Ala Thr Tyr Phe Cys Gln Gln Gly Asn Thr Leu Pro Tyr
85 90 95
Thr Phe Gly Gly Gly Thr Lys Leu Glu Ile Thr Gly Ser Thr Ser Gly
100 105 110
Ser Gly Lys Pro Gly Ser Gly Glu Gly Ser Thr Lys Gly Glu Val Lys
115 120 125
Leu Gln Glu Ser Gly Pro Gly Leu Val Ala Pro Ser Gln Ser Leu Ser
130 135 140
Val Thr Cys Thr Val Ser Gly Val Ser Leu Pro Asp Tyr Gly Val Ser
145 150 155 160
Trp Ile Arg Gln Pro Pro Arg Lys Gly Leu Glu Trp Leu Gly Val Ile
165 170 175
Trp Gly Ser Glu Thr Thr Tyr Tyr Asn Ser Ala Leu Lys Ser Arg Leu
180 185 190
Thr Ile Ile Lys Asp Asn Ser Lys Ser Gln Val Phe Leu Lys Met Asn
195 200 205
Ser Leu Gln Thr Asp Asp Thr Ala Ile Tyr Tyr Cys Ala Lys His Tyr
210 215 220
Tyr Tyr Gly Gly Ser Tyr Ala Met Asp Tyr Trp Gly Gln Gly Thr Ser
225 230 235 240
Val Thr Val Ser Ser
245

<210> 44
<211> 11
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> CDR L1
<400> 44
Lys Ala Ser Gln Asn Val Gly Thr Asn Val Ala
1 5 10

<210> 45
<211> 7
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> CDR L2
<400> 45
Ser Ala Thr Tyr Arg Asn Ser
1 5

<210> 46
<211> 9
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> CDR L3
<400> 46
Gln Gln Tyr Asn Arg Tyr Pro Tyr Thr
1 5

<210> 47
<211> 5
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> CDR H1
<400> 47
Ser Tyr Trp Met Asn
1 5

<210> 48
<211> 17
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> CDR H2
<400> 48
Gln Ile Tyr Pro Gly Asp Gly Asp Thr Asn Tyr Asn Gly Lys Phe Lys
1 5 10 15
Gly

<210> 49
<211> 13
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> CDR H3
<400> 49
Lys Thr Ile Ser Ser Val Val Asp Phe Tyr Phe Asp Tyr
1 5 10

<210> 50
<211> 122
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> VH
<400> 50
Glu Val Lys Leu Gln Gln Ser Gly Ala Glu Leu Val Arg Pro Gly Ser
1 5 10 15
Ser Val Lys Ile Ser Cys Lys Ala Ser Gly Tyr Ala Phe Ser Ser Tyr
20 25 30
Trp Met Asn Trp Val Lys Gln Arg Pro Gly Gln Gly Leu Glu Trp Ile
35 40 45
Gly Gln Ile Tyr Pro Gly Asp Gly Asp Thr Asn Tyr Asn Gly Lys Phe
50 55 60
Lys Gly Gln Ala Thr Leu Thr Ala Asp Lys Ser Ser Ser Thr Ala Tyr
65 70 75 80
Met Gln Leu Ser Gly Leu Thr Ser Glu Asp Ser Ala Val Tyr Phe Cys
85 90 95
Ala Arg Lys Thr Ile Ser Ser Val Val Asp Phe Tyr Phe Asp Tyr Trp
100 105 110
Gly Gln Gly Thr Thr Val Thr Val Ser Ser
115 120

<210> 51
<211> 108
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> VL
<400> 51
Asp Ile Glu Leu Thr Gln Ser Pro Lys Phe Met Ser Thr Ser Val Gly
1 5 10 15
Asp Arg Val Ser Val Thr Cys Lys Ala Ser Gln Asn Val Gly Thr Asn
20 25 30
Val Ala Trp Tyr Gln Gln Lys Pro Gly Gln Ser Pro Lys Pro Leu Ile
35 40 45
Tyr Ser Ala Thr Tyr Arg Asn Ser Gly Val Pro Asp Arg Phe Thr Gly
50 55 60
Ser Gly Ser Gly Thr Asp Phe Thr Leu Thr Ile Thr Asn Val Gln Ser
65 70 75 80
Lys Asp Leu Ala Asp Tyr Phe Cys Gln Gln Tyr Asn Arg Tyr Pro Tyr
85 90 95
Thr Ser Gly Gly Gly Thr Lys Leu Glu Ile Lys Arg
100 105

<210> 52
<211> 15
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Linker
<400> 52
Gly Gly Gly Gly Ser Gly Gly Gly Gly Ser Gly Gly Gly Gly Ser
1 5 10 15

<210> 53
<211> 245
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> scFv
<400> 53
Glu Val Lys Leu Gln Gln Ser Gly Ala Glu Leu Val Arg Pro Gly Ser
1 5 10 15
Ser Val Lys Ile Ser Cys Lys Ala Ser Gly Tyr Ala Phe Ser Ser Tyr
20 25 30
Trp Met Asn Trp Val Lys Gln Arg Pro Gly Gln Gly Leu Glu Trp Ile
35 40 45
Gly Gln Ile Tyr Pro Gly Asp Gly Asp Thr Asn Tyr Asn Gly Lys Phe
50 55 60
Lys Gly Gln Ala Thr Leu Thr Ala Asp Lys Ser Ser Ser Thr Ala Tyr
65 70 75 80
Met Gln Leu Ser Gly Leu Thr Ser Glu Asp Ser Ala Val Tyr Phe Cys
85 90 95
Ala Arg Lys Thr Ile Ser Ser Val Val Asp Phe Tyr Phe Asp Tyr Trp
100 105 110
Gly Gln Gly Thr Thr Val Thr Val Ser Ser Gly Gly Gly Gly Ser Gly
115 120 125
Gly Gly Gly Ser Gly Gly Gly Gly Ser Asp Ile Glu Leu Thr Gln Ser
130 135 140
Pro Lys Phe Met Ser Thr Ser Val Gly Asp Arg Val Ser Val Thr Cys
145 150 155 160
Lys Ala Ser Gln Asn Val Gly Thr Asn Val Ala Trp Tyr Gln Gln Lys
165 170 175
Pro Gly Gln Ser Pro Lys Pro Leu Ile Tyr Ser Ala Thr Tyr Arg Asn
180 185 190
Ser Gly Val Pro Asp Arg Phe Thr Gly Ser Gly Ser Gly Thr Asp Phe
195 200 205
Thr Leu Thr Ile Thr Asn Val Gln Ser Lys Asp Leu Ala Asp Tyr Phe
210 215 220
Cys Gln Gln Tyr Asn Arg Tyr Pro Tyr Thr Ser Gly Gly Gly Thr Lys
225 230 235 240
Leu Glu Ile Lys Arg
245

<210> 54
<211> 12
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> HC-CDR3
<400> 54
His Tyr Tyr Tyr Gly Gly Ser Tyr Ala Met Asp Tyr
1 5 10

<210> 55
<211> 7
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> LC-CDR2
<400> 55
His Thr Ser Arg Leu His Ser
1 5

<210> 56
<211> 9
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> LC-CDR3
<400> 56
Gln Gln Gly Asn Thr Leu Pro Tyr Thr
1 5

<210> 57
<211> 735
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Sequence encoding scFv
<400> 57
gacatccaga tgacccagac cacctccagc ctgagcgcca gcctgggcga ccgggtgacc 60
atcagctgcc gggccagcca ggacatcagc aagtacctga actggtatca gcagaagccc 120
gacggcaccg tcaagctgct gatctaccac accagccggc tgcacagcgg cgtgcccagc 180
cggtttagcg gcagcggctc cggcaccgac tacagcctga ccatctccaa cctggaacag 240
gaagatatcg ccacctactt ttgccagcag ggcaacacac tgccctacac ctttggcggc 300
ggaacaaagc tggaaatcac cggcagcacc tccggcagcg gcaagcctgg cagcggcgag 360
ggcagcacca agggcgaggt gaagctgcag gaaagcggcc ctggcctggt ggcccccagc 420
cagagcctga gcgtgacctg caccgtgagc ggcgtgagcc tgcccgacta cggcgtgagc 480
tggatccggc agccccccag gaagggcctg gaatggctgg gcgtgatctg gggcagcgag 540
accacctact acaacagcgc cctgaagagc cggctgacca tcatcaagga caacagcaag 600
agccaggtgt tcctgaagat gaacagcctg cagaccgacg acaccgccat ctactactgc 660
gccaagcact actactacgg cggcagctac gccatggact actggggcca gggcaccagc 720
gtgaccgtga gcagc 735

<210> 58
<211> 5
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Hinge
<220>
<221> VARIANT
<222> (1)...(1)
<223> Xaa is glycine, cysteine or arginine
<220>
<221> VARIANT
<222> (4)...(4)
<223> Xaa is cysteine or threonine
<400> 58
Xaa Pro Pro Xaa Pro
1 5

<210> 59
<211> 18
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Linker
<400> 59
Gly Ser Thr Ser Gly Ser Gly Lys Pro Gly Ser Gly Glu Gly Ser Thr
1 5 10 15
Lys Gly
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図10D
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図12
【配列表】
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