(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038050
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】SMC成形した熱可塑性複合材の用途のための液体組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 33/04 20060101AFI20240312BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20240312BHJP
C08K 5/09 20060101ALI20240312BHJP
C08K 5/101 20060101ALI20240312BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
C08L33/04
C08K3/22
C08K5/09
C08K5/101
C08F2/44 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023216961
(22)【出願日】2023-12-22
(62)【分割の表示】P 2020527922の分割
【原出願日】2018-11-21
(31)【優先権主張番号】1761024
(32)【優先日】2017-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ジェラール, ピエール
(72)【発明者】
【氏名】クレダ, ギヨーム
(57)【要約】 (修正有)
【課題】複合材成形品の生産速度を上げることが可能な液体組成物、これを調製するための方法、予備含浸繊維材料を製造するための方法、前記方法により得られる予備含浸繊維材料、複合材料部品を製造するための方法、および前記方法により得られる複合材料部品を提供する。
【解決手段】a)(メタ)アクリル系ポリマー、b)(メタ)アクリル系モノマー、およびc)金属酸化物または金属水酸化物から選択される熟成剤を含む液体組成物であって、前記(メタ)アクリル系ポリマーがカルボン酸官能基を有するモノマーを含み、および/または前記(メタ)アクリル系モノマーがカルボン酸官能基を有し、前記液体組成物の動粘度が25℃で10mPa.s~10000mPa.sである、液体組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)(メタ)アクリル系ポリマー、
b)(メタ)アクリル系モノマー、および
c)金属酸化物または金属水酸化物から選択される熟成剤
を含む液体組成物であって、
前記(メタ)アクリル系ポリマーがカルボン酸官能基を有するモノマーを含み、および/または前記(メタ)アクリル系モノマーがカルボン酸官能基を有し、
前記液体組成物の動粘度が、25℃で10mPa.s~10000mPa.sである、
液体組成物。
【請求項2】
(メタ)アクリル系モノマーがカルボン酸官能基を有し、(メタ)アクリル系ポリマーがカルボン酸官能基を有するモノマーを含むことを特徴とする、請求項1に記載の液体組成物。
【請求項3】
少なくとも0.1重量%の、カルボン酸官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の液体組成物。
【請求項4】
(メタ)アクリル系ポリマーが、少なくとも1重量%の、カルボン酸官能基を有するモノマーを含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項5】
カルボン酸官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーまたはカルボン酸官能基を有するモノマーが、アクリル酸およびメタクリル酸から選択されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項6】
(メタ)アクリル系ポリマーが、ブロックコポリマーであることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項7】
(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量が、70000g/mol以上、好ましくは80000g/mol以上であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項8】
(メタ)アクリル系ポリマーが、(メタ)アクリル系モノマーおよび(メタ)アクリル系ポリマーからなる組成物の10重量%から60重量%の間の割合で存在することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
熟成剤が、MgO、Mg(OH)2、CaO、Ca(OH)2、またはZnOから選択されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
少なくとも1重量%の熟成剤を含むことを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記熟成剤が、酸化マグネシウムであることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
a)10重量%~60重量%の(メタ)アクリル系ポリマー、
b)少なくとも0.1重量%の、カルボン酸官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーを含む、40重量%~90重量%の(メタ)アクリル系モノマー、および
c)0.5phr~10phrの熟成剤
を含むことを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
a)10重量%~60重量%の(メタ)アクリル系ポリマーであって、前記(メタ)アクリル系ポリマーが、少なくとも1重量%の、カルボン酸官能基を有するモノマーを含む、(メタ)アクリル系ポリマー、
b)40重量%~90重量%の(メタ)アクリル系モノマー、および
c)0.5重量phr~10重量phrの熟成剤
を含むことを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
添加剤をおよび/または充填剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
炭酸カルシウム(CaCO3)、二酸化チタン(TiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、およびシリカ(SiO2)から選択される無機充填剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
少なくとも1種の開始剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
少なくとも2種の開始剤を含み、2種の開始剤が所定温度で異なる半減期を有することを特徴とする、請求項1から16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
所定の半減期での温度差が、2種の開始剤の間で少なくとも5Kであることを特徴とする、請求項17に記載の液体組成物。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか一項に記載の液体組成物を調製するための方法であって、
i)(メタ)アクリル系ポリマーおよび(メタ)アクリル系モノマーの混合物を調製する工程であり、前記(メタ)アクリル系ポリマーが、カルボン酸官能基を有するモノマーを含み、および/または前記(メタ)アクリル系モノマーが、カルボン酸官能基を有する、工程と、
ii)金属酸化物または金属水酸化物から選択される熟成剤を、前工程で調製した混合物に添加する工程と
を含む調製方法。
【請求項20】
少なくとも1種のラジカル開始剤を添加する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項19に記載の調製方法。
【請求項21】
10℃~50℃の混合温度で、3時間以下の時間にわたって混合する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項20に記載の調製方法。
【請求項22】
予備含浸繊維材料を製造するための方法であって、請求項1から18のいずれか一項に記載の液体組成物を繊維強化材に含浸させる工程を含む方法。
【請求項23】
繊維強化材が、3mmから100mmの間の長さを有する短繊維から構成されることを特徴とする、請求項22に記載の予備含浸繊維材料を製造するための方法。
【請求項24】
繊維強化材が長繊維から構成され、前記長繊維のアスペクト比が少なくとも1000であることを特徴とする、請求項22に記載の予備含浸繊維材料を製造するための方法。
【請求項25】
繊維強化材が、短繊維および長繊維の混合物から構成されることを特徴とする、請求項22に記載の予備含浸繊維材料を製造するための方法。
【請求項26】
含浸が継続的に行われることを特徴とする、請求項22から25のいずれか一項に記載の予備含浸繊維材料を製造するための方法。
【請求項27】
カレンダリング工程を含むことを特徴とする、請求項22から26のいずれか一項に記載の予備含浸繊維材料を製造するための方法。
【請求項28】
熟成工程を含むことを特徴とする、請求項22から27のいずれか一項に記載の予備含浸繊維材料を製造するための方法。
【請求項29】
10℃から100℃の間の温度で、120時間以下の時間にわたって熟成する工程を含むことを特徴とする、請求項22から27のいずれか一項に記載の予備含浸繊維材料を製造するための方法。
【請求項30】
組成物の粘度が、熟成工程の間に増加してプラトーまたは疑似プラトーに達することを特徴とする、請求項28または29に記載の予備含浸繊維材料を製造するための方法。
【請求項31】
組成物の粘度が、熟成工程の間に増加してプラトーまたは疑似プラトーに達し、粘度の相対的増加が、この時点または時間間隔におけるPa*sでの粘度に対して+0.5%/分未満の粘度であることを特徴とする、請求項28または29に記載の予備含浸繊維材料を製造するための方法。
【請求項32】
繊維強化材に予備含浸させる請求項1から18のいずれか一項に記載の液体組成物を含む、予備含浸繊維材料。
【請求項33】
請求項32に記載の予備含浸繊維材料からまたは請求項22から31のいずれか一項に記載の方法により調製される予備含浸繊維材料から複合材料部品を製造するための方法であって、
- 予備含浸繊維材料を付形する工程と、
- 前記繊維強化材に含浸させる液体組成物を重合させる工程と
を含む、複合材料部品を製造するための方法。
【請求項34】
付形する工程が成形する工程であることを特徴とする、請求項33に記載の複合材料部品を製造するための方法。
【請求項35】
成形する工程が、加圧下で50℃から200℃の間の温度で実行されることを特徴とする、請求項34に記載の複合材料部品を製造するための方法。
【請求項36】
追加の二次成形する工程を含むことを特徴とする、請求項33から35のいずれか一項に記載の複合材料部品を製造するための方法。
【請求項37】
追加の溶接する工程または接着する工程または積層する工程を含むことを特徴とする、請求項33から35のいずれか一項に記載の複合材料部品を製造するための方法。
【請求項38】
請求項33から37のいずれか一項に記載の製造方法により得られる複合材料部品。
【請求項39】
自動車の部品、ボートの部品、列車の部品、スポーツ用品、飛行機もしくはヘリコプターの部品、宇宙船もしくはロケットの部品、光発電モジュール部品、構築物もしくは建築物の材料、例えば複合電機子、土木工学および高架構築物用のダボおよびノギス、風力タービン部品、例えば風力タービンブレードの桁材のスパーキャップ、家具の部品、構築物もしくは建築物の部品、電話もしくは携帯電話の部品、コンピュータもしくはテレビの部品、またはプリンターもしくはコピー機の部品である、請求項38に記載の複合材料部品。
【請求項40】
車両の構造的または半構造的部品であることを特徴とする、請求項38または39に記載の複合材料部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材料の分野に関連し、より詳細には、自動車工学、交通、建築、電気および電子機器、ならびにスポーツおよびレジャー用品の分野での使用に特に好適である、SMC材料から得られる複合材成形品の分野に関連する。本発明は、液体組成物およびこれを調製するための方法、予備含浸繊維材料を製造するための方法および得られる予備含浸繊維材料、複合材料部品を製造するための方法、ならびにこのような方法により得られる複合材料部品に関する。
【背景技術】
【0002】
ここ数十年、繊維強化材およびポリマーマトリックスを伴う複合材料の使用は、多くの分野、とりわけ自動車工業において、かなりのブームを経験している。この分野において使用される複合材として、SMC(シート成形用コンパウンド)およびBMC(バルク成形用コンパウンド)の複合材が挙げられる。これらの材料は、熱硬化性ポリマーマトリックス、粒状無機充填剤、および長繊維または短繊維の形態での繊維強化材からなる。熱硬化性ポリマーマトリックスは、一般的に、不飽和ポリエステル、およびこのマトリックスに添加された様々な化学成分から構成される。
【0003】
これらの複合材は、例えば、剛性、軽量性、耐食性、熱機械的安定性、および電気絶縁性を呈するという多くの利点のために広く使用される。これらの良好な物理的および機械的な性質に加えて、これらの製造および配置の適度なコストにより、鉄鋼およびアルミニウム合金のような金属合金に対して高い競争力をもたらしている。
【0004】
SMCをベースとする成形品は、圧縮により成形され、一般的に大型パネルの形態を取る。BMC成形品は、圧縮により、または好ましくは、従来の熱硬化性射出もしくは半密閉式金型への射出と、それに続く圧縮段階により、成形する。これらは、SMCをベースとする成形品よりも小さいサイズであるが、成形する過程により、より複雑な形状を取ることができる。SMCおよびBMC複合材は、一般的に、特に自動車分野で必要とされるサイクルの調整が可能な短い重合時間を特徴とする、この種類の方法に対して特別に開発されたマトリックスを有する。例えば、表面レンダリングの面で傷のない外観を有するならば、これらの複合材は、車体用部品の製造に使用することができる。これらはまた、半構造的部品、または良好な機械的性能を必要とする隠れた部品の製造のために使用することができる。
【0005】
これらの複合材料を使用する部品の製造は、一連の複雑な方法を含む。まずは、無機充填剤、ポリマーマトリックス、および様々な化学的添加剤を組み合わせる化合物またはペーストを開発する。充填剤および添加剤をポリマーマトリックスで混合する方法は、目的の複合材のクラス、BMCまたはSMCに関わらず類似しており、最終的に得られるペーストは、繊維強化材に含浸させるために使用される。一方、含浸方法は、複合材のクラスによって大きく異なり得る。BMCの場合、ミキサーにより、袋、段ボール箱またはドラムに保管される固体化合物を得ることが可能になる。
【0006】
SMCの場合、繊維強化材は、一般的にコアに巻かれるか、または紙箱もしくは段ボール箱に包装されるシートを出口で排出する機械のラインで含浸させる。含浸の間、ポリマー複合材の調製では、含浸シロップの粘度を、過度に流動性でないようにまたは過度に粘着性でないように、繊維強化材の各繊維に適正に含浸させるために調節し、調整する必要がある。その理由は、シロップが過度に流動性であるかまたは過度に粘着性であるかのいずれかであるので、部分的な湿潤により、含浸されない領域である「裸」領域、または気泡を含む領域が出現するからである。これらの「裸」領域、およびこれらの気泡により、最終複合材料での欠陥の出現が高まり、なかでも最終複合材料の機械的強度の損失の原因となる。
【0007】
得られるSMCのロールを、その後、熟成段階と呼ばれる数日間、保管するが、これにより取扱いが容易な材料を得ることが可能になる。その理由は、方法の開始時のSMC化合物は、常温で低い粘度を呈し、流れにより運搬し、この温度で効果的に繊維強化材に含浸させることができるが、SMCペースト複合材は、成形する場合に変化を受けずに、容易に運搬、切断、剥離し、プレスに配置するために、常温で非常に高い粘度を有する必要があるからである。したがって、これらの製造と成形との間では、予備含浸繊維強化材またはSMC化合物は、熟成工程と呼ばれる、粘度での修正の工程を必要とし、その間、粘度は、常温で取扱いしやすい点まで増加する。しかし、全てのポリマーまたはポリマーマトリックスは、物理的性質を悪化させることなく、粘度をこのように修正することに耐えることができない。今日では、したがって、SMCペーストは、一般的に、不飽和ポリエステル樹脂をベースとする熱硬化性マトリックスからなり、これは、この種の熟成工程に耐える。
【0008】
熟成工程は、一般的に、不飽和ポリエステル樹脂を、通常マグネシアと呼ばれる酸化マグネシウム(MgO)のような金属酸化物または金属水酸化物で反応させることにより開始する。一般的に言うと、これは、常温で数日以内、含浸ペーストの粘度の急激な増加させることができ、次いで、熟成のおよそ数日後、粘度の増加がゆっくりとなり、疑似プラトーに達する。この熟成時間は、短縮することはできないが、工業サイクルの遅延の原因となり得る。
【0009】
次に、SMC複合材は、その後、熱金型内で圧縮により付形される。ある種の適用に対して、生産性を向上するために、良好な変換率で迅速に重合する液体組成物を有することがさらに望ましい。さらに、熱金型との接触は、有害な収縮現象伴う可能性があり、適切な添加剤の添加により補うことができる。SMCペーストは、一般的に、熱可塑性添加剤をブレンドした不飽和ポリエステル樹脂をベースとする熱硬化性マトリックスからなる。その理由は、熱可塑性添加剤の存在が、一般的に観察される収縮を補うことができるからである。それでもなお、熱可塑性添加剤のレベルの増加により一般的に転相するので、熱可塑剤の濃度を過度に増加させることは不可能である。したがって、従来の抗収縮添加剤は、マトリックス中に25%超で混和することは稀であるが、これは、転相が望ましくないからであり、連続熱可塑性相中の離散UPR相により、複合材の弾性率は急激に減少する。高レベルの熱可塑性添加剤はまた、化合物の使用での問題(過度に粘着性の含浸ペースト)を引き起こす。
【0010】
文献EP2336241は、人工大理石を製造するための樹脂シロップ、およびこのようなシロップを製造するための方法を記載する。
【0011】
文献FR3002943は、難燃剤を含む、繊維基材に対する含浸シロップを記載する。難燃剤は、繊維の適正な含浸を可能とするためにシロップの粘度に干渉してはならない。
【0012】
したがって、現在行われている方法は、熱可塑系のポリマーマトリックスがSMC法で使用できないが、後者は、これらの複合材の熱成形およびリサイクルが可能であろう。
【0013】
そのため、SMC複合材を製造するための方法で使用することができ、既存の方法により提起される問題に対処することができる繊維強化材に含浸させるための新規の液体組成物に対する必要性がある。
【発明の概要】
【0014】
したがって、本発明は、先行技術の欠点を克服することを目的とする。本発明の目的は、より具体的には、例えばSMC複合材の調製に関連して、繊維強化材に含浸させるために使用することができる液体組成物であって、特に、熟成工程を短縮する(例えば、粘度プラトーをより迅速に達成して、重合成形品の品質の問題を防止するために)ことにより、本適用において一般的に観察される収縮を制限することにより、およびより高速な重合を可能にすることにより、複合材成形品の生産速度を上げることが可能である、液体組成物を提供することである。
【0015】
本発明の別の目的は、熱成形可能でありかつ容易にリサイクル可能である、予備含浸ストリップとして付形することができるポリマー複合材料を提供することである。さらに、本発明にしたがって製造される複合材成形品は、軽量であり、特に自動車分野における用途に有利な機械的および審美的な性質を有する。
【0016】
したがって、本発明は、
a)(メタ)アクリル系ポリマー、
b)(メタ)アクリル系モノマー、および
c)金属酸化物または金属水酸化物から選択される熟成剤
を含む液体組成物であって、
前記(メタ)アクリル系ポリマーがカルボン酸官能基を有するモノマーを含み、および/または前記(メタ)アクリル系モノマーがカルボン酸官能基を有し、
前記液体組成物の動粘度が、25℃で10mPa.s~10000mPa.sである、
液体組成物を提供する。
【0017】
本発明による液体組成物により、実施例に示される通り、熟成時間を短縮し、さらにより迅速に粘度の疑似プラトーを達成することが可能である。したがって、本組成物は、複合材成形品の生産速度を上げる試みにおいて、先行技術において起こる問題に対処する。さらに、本液体組成物は、繊維強化材に含浸させる複合材の、金型内での重合の間に通常観察される収縮を低減することを可能にする。さらに、この種の組成物は、熱可塑性複合材の製造を可能とし、これは、熱硬化性複合材より熱成形およびリサイクルが可能である。
【0018】
液体組成物の他の有利な特性によると、
- (メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、70000g/mol以上、好ましくは80000g/mol以上、より好ましくは85000g/mol以上である。これは、この種の分子量およびこれらの高分子鎖の存在で、本液体組成物から成形される複合材成形品の機械的な性質が向上し、熱硬化性複合材の機械的な性質に近くなるためである。
- 少なくとも2種の開始剤を含み、所定温度で2種の開始剤は、異なる半減期を有する。この特性は、重合時間の短縮を可能にするので特に有利であり、したがって、このような重合を、割合が特に高い工業的方法に統合する可能性を提供する。
【0019】
別の態様によると、本発明は、本発明による液体組成物を調製するための方法であって、
i)(メタ)アクリル系ポリマーおよび(メタ)アクリル系モノマーの混合物を調製する工程であり、前記(メタ)アクリル系ポリマーが、カルボン酸官能基を有するモノマーを含み、および/または前記(メタ)アクリル系モノマーが、カルボン酸官能基を有する、工程と、
ii)金属酸化物または金属水酸化物から選択される熟成剤を、前工程で調製した混合物に添加する工程と
を含む、方法にさらに関する。
【0020】
別の態様によると、本発明は、繊維強化材に含浸させるための、本発明による液体組成物または本発明による調製方法により調製される液体組成物の使用にさらに関する。
【0021】
別の態様によると、本発明は、予備含浸繊維材料を製造するための方法であって、本発明による液体組成物を繊維強化材に含浸させる工程を含む、方法にさらに関する。
【0022】
別の態様によると、本発明は、本発明による液体組成物および繊維強化材を含む、予備含浸繊維材料にさらに関する。
【0023】
別の態様によると、本発明は、予備含浸繊維材料を製造するための方法であって、本発明による液体組成物を繊維強化材に含浸させる工程と、組成物の粘度が増加してプラトーに達する間の熟成工程とを含む、方法にさらに関する。
【0024】
予備含浸繊維材料は、好ましくは、シートの形態での予備含浸繊維材料である。
【0025】
有利には、繊維強化材は、連続繊維から構成され、前記連続繊維のアスペクト比は、少なくとも1000である。その理由は、この種のアスペクト比により、より良好な機械的性質を有する複合材成形品を得ることが可能になるからである。例えば、有利には、SMC法において、短繊維および無機充填剤が連続繊維(すなわち高いアスペクト比を有する繊維)に置き換わる場合、機械的性質を向上させるので、構造的部品を実現することが可能である。
【0026】
別の態様によると、本発明は、本発明による予備含浸繊維材料から複合材料部品を製造するための方法であって、予備含浸繊維材料を付形する工程および重合工程を含む、方法にさらに関する。
【0027】
別の態様によると、本発明は、本発明による製造する方法により得られる複合材料部品にさらに関する。複合材料部品は、有利には、三次元成形品である。
【0028】
本発明の他の利点および特徴は、添付の図を参照して、例示的で非限定的な例として示される以下の記載を読むことで明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明による予備含浸繊維強化材を製造するための工業的方法を示す図である。
【
図2】7日後の、本発明による2種の液体組成物の粘度に対する熟成剤のレベルの効果を示すグラフである。熟成剤の濃度は、それぞれ1phr(四角)、5phr(三角)、および10phr(丸)である。
【
図3】(メタ)アクリル系ポリマー中の異なる量、具体的には1.5%(三角)および4.5%(四角)のカルボキシル官能基を含む、本発明による2種の液体組成物、ならびに(メタ)アクリル系ポリマー中のそれぞれ1.5%および4.5%のカルボキシル官能基を有する2種の(メタ)アクリル系ポリマーの混合物(菱形)の経時的な粘度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本文脈では、用語「モノマー」とは、重合されることができる分子を意味する。表現「モノマー単位」とは、ポリマーの中の、ポリマーの合成に使用されるモノマーの1つに相当するポリマーの一部分を意味する。
【0031】
本文脈では、用語「(メタ)アクリル系」とは、任意の種類のアクリル系またはメタクリル系モノマーを意味する。
【0032】
用語「(メタ)アクリル系モノマー」とは、任意の種類のアクリル系またはメタクリル系モノマーを意味する。
【0033】
本文脈では、用語「重合」とは、モノマーまたはモノマーの混合物をポリマーに変換する過程を意味する。
【0034】
用語「ポリマー」とは、コポリマーまたはホモポリマーのいずれかを意味する。用語「コポリマー」とは、いくつかの異なるモノマー単位を一緒に組み合わせるポリマーを意味し、用語「ホモポリマー」とは、同一のモノマー単位を一緒に組み合わせるポリマーを意味する。用語「ブロックコポリマー」とは、別個のポリマー種のそれぞれの1つまたは複数の連続する配列を含むポリマーであって、ポリマー配列が、互いに化学的に異なり、共有結合を介して互いに結合している、ポリマーを意味する。これらのポリマー配列はまた、ポリマーブロックとしても知られている。
【0035】
本発明の目的のために、用語「熱可塑性ポリマー」とは、一般的に常温で固体であるポリマーを意味するが、これは、結晶性、半結晶性、または無晶性であり得、(半結晶性または結晶性である場合)温度が上昇する間、特にガラス転移温度(Tg)を過ぎた後に軟化し、高温で流れ出し、いわゆる融点(Tm)を過ぎると明らかな溶融を呈し得、温度が融点未満に下がり、ガラス転移温度未満に下がると、再び固体になる。これはまた、好ましくは10%未満、好ましくは5%未満、好ましくは2%未満の質量百分率で、本発明による液体組成物の配合において、多官能オリゴマーまたはモノマーの存在により微架橋する熱可塑性ポリマーに適用するが、これは、軟化温度を超えて加熱する場合に熱成形することができる。
【0036】
用語「(メタ)アクリル系ポリマー」とは、少なくとも50重量%の(メタ)アクリル系ポリマーを表す、(メタ)アクリル系モノマーを本質的に含むポリマーを意味する。
【0037】
本発明の目的のために、用語「PMMA」とは、メチルメタクリレート(MMA)のホモポリマーおよびコポリマーを意味し、PMMA中のMMAの重量比は、好ましくは、MMAコポリマーに対して少なくとも70重量%である。
【0038】
本発明の目的のために、用語「熱硬化性ポリマー」とは、重合により不溶型ポリマーネットワークに非可逆的に形質転換されるプラスチック材料を意味する。
【0039】
本発明の目的のために、表現「ポリマー複合材」とは、少なくとも2つの非相溶性成分を含む多成分材料を意味し、ここで、少なくとも1つの成分はポリマーであり、他の1つの成分は、例えば繊維強化材であってもよい。
【0040】
本発明の目的のために、用語「繊維強化材」とは、ストリップ、織布、組紐、撚糸、または成形品の形態であり得る複数の繊維、一方向粗糸、または連続フィラメントのマット、織物、フェルト、または不織布を意味する。
【0041】
用語「マトリックス」とは、力を繊維強化材に伝達することができる結合剤となる物質を意味する。「ポリマーマトリックス」はポリマーを含むが、他の化合物または物質も含むことができる。ゆえに、「(メタ)アクリル系ポリマーマトリックス」は、任意の種類の化合物、ポリマー、オリゴマー、コポリマー、またはブロックコポリマー、アクリル系およびメタクリル系の両方に関する。しかし、(メタ)アクリル系ポリマーマトリックスは、例えば以下の群:ブタジエン、イソプレン、スチレン、置換スチレン、例えばα-メチルスチレンまたはtert-ブチルスチレン、シクロシロキサン類、ビニルナフタレン類、およびビニルピリジン類から選ばれる、最大10重量%の、好ましくは5重量%未満の他の非アクリル系モノマーを含む場合、本発明の範囲から逸脱するものではない。
【0042】
本発明の目的のために、用語「ラジカル開始剤」とは、1種または複数のモノマーの重合を開始/始動することができる化合物を意味する。
【0043】
本文脈では、用語「半減期」、t1/2とは、開始剤の初期量が、濃度が半分に低下するのにかかる時間を意味する。この時間は、一般的に温度に依存する。
【0044】
略語「phr」とは、組成物100部当たりの重量部を意味する。例えば、組成物中の1phrの開始剤とは、1kgの開始剤を、100kgの組成物に添加することを意味する。
【0045】
略語「ppm」とは、組成物100万部当たりの重量部を意味する。例えば、組成物中の1000ppmの化合物とは、0.1kgの化合物を、100kgの組成物中に存在することを意味する。
【0046】
本記載の残りにおいて、同じ参照は、同じ要素を示すために使用される。
【0047】
第1の態様によると、本発明は、(メタ)アクリル系ポリマーまたは前駆体(メタ)アクリル系ポリマー、および(メタ)アクリル系モノマーを含む、液体組成物に関する。特に、WO2013056845およびWO2014013028に記載される(メタ)アクリル系モノマー、前駆体(メタ)アクリル系ポリマー、およびラジカル開始剤を含むことができる。
【0048】
本液体組成物はまた、金属酸化物または金属水酸化物から選択される熟成剤も含み、特に、カルボン酸官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーを含み、これらのモノマーが溶液中に遊離しているか、または(メタ)アクリル系ポリマーに統合されることを特徴とする。ゆえに、より具体的には、前記(メタ)アクリル系ポリマーおよび/または前記(メタ)アクリル系モノマーは、少なくとも1つのカルボン酸官能基を含む。本発明による液体組成物の一実施形態によると、(メタ)アクリル系モノマーは、カルボン酸官能基を有し、(メタ)アクリル系ポリマーは、カルボン酸官能基を有するモノマーを含む。
【0049】
含浸の間、ポリマー複合材を調製する場合、液体(メタ)アクリル系組成物または含浸シロップの粘度を、過度に流動性でないようにまたは過度に粘着性でないように、最終的な複合材料において機械的強度の損失を防止するために調節し、調整する必要がある。さらに、生産性を向上するために、良好な変換率で迅速に重合する液体組成物を有することが望ましい。
【0050】
したがって、前記液体組成物の動粘度が、25℃で10mPa.s~10000mPa.sである。液体組成物または(メタ)アクリル系シロップの動粘度は、10mPa.s~10000mPa.s、好ましくは20mPa.s~7000mPa.s、有利には20mPa.s~5000mPa.sの範囲である。液体(メタ)アクリル系組成物または液体(メタ)アクリル系シロップの粘度は、レオメータまたは粘度計で容易に測定することができる。動粘度は、25℃で測定する。液体(メタ)アクリル系シロップが剪断減粘性を有さないことを意味するニュートン挙動を呈する場合、動粘度は、レオメータでの剪断または粘度計での主軸の速度から独立している。液体組成物が非ニュートン挙動を示す、すなわち剪断減粘性を有する場合、動粘度は、25℃で、1s-1の剪断速度で測定する。
【0051】
(メタ)アクリル系モノマーは、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アルキルアクリル系モノマー、アルキルメタクリル系モノマー、ヒドロキシアルキルアクリル系モノマー、およびヒドロキシアルキルメタクリル系モノマー、ならびにこれらの混合物から選択される。
【0052】
好ましくは、(メタ)アクリル系モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシアルキルアクリル系モノマー、ヒドロキシアルキルメタクリル系モノマー、アルキルアクリル系モノマー、アルキルメタクリル系モノマー、およびこれらの混合物から選択され、アルキル基は、1~22個の直鎖状、分岐状、または環状炭素を含有し、アルキル基は、好ましくは1~12個の直鎖状、分岐状、または環状炭素を含有する。
【0053】
(メタ)アクリル系モノマーは、より好ましくは、カルボン酸官能基、およびメチルメタクリレートで共重合することができるエチレン性不飽和を含む。
【0054】
カルボン酸官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーは、例えば、アクリル酸、シトラコン酸、イタコン酸、メサコン酸、メタクリル酸、およびこれらの混合物から選択され得る。カルボン酸官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーは、好ましくは、メタクリル酸、アクリル酸、およびこれらの混合物から選択される。
【0055】
したがって、有利には、(メタ)アクリル系モノマーは、以下を含む混合物から選択される:
- メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、およびヒドロキシエチルメタクリレートから選択される、第1の(メタ)アクリル系モノマー、ならびに
- メタクリル酸、アクリル酸、およびこれらの混合物から選択される、第2の(メタ)アクリル系モノマー。
【0056】
好ましい実施形態によると、(メタ)アクリル系モノマーの少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%は、メチルメタクリレートである。モノマーのより好ましくは少なくとも70重量%、有利には少なくとも80重量%、さらにより有利には90重量%は、メチルメタクリレートである。
【0057】
本発明による液体組成物は、好ましくは少なくとも0.1重量%の、より好ましくは少なくとも1重量%の、カルボン酸官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーを含み得る。
【0058】
例えば、少なくとも0.1重量%のアクリル酸またはメタクリル酸を含んでもよい。
【0059】
例えば、0.1重量%~10重量%の、カルボン酸官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーを含んでもよい。好ましくは、0.1重量%~10重量%のアクリル酸またはメタクリル酸を含んでもよい。より好ましくは、1重量%~6重量%のアクリル酸またはメタクリル酸を含んでもよい。
【0060】
(メタ)アクリル系ポリマーまたは前駆体(メタ)アクリル系ポリマーについて、ポリアルキルメタクリレートまたはポリアルキルアクリレートを挙げることができる。好ましい実施形態によると、前駆体(メタ)アクリル系ポリマーは、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)である。
【0061】
一実施形態によると、メチルメタクリレート(MMA)のホモポリマーおよびコポリマーは、少なくとも70重量%の、好ましくは少なくとも80重量%の、有利には少なくとも90重量%の、より有利には少なくとも95重量%のメチルメタクリレートを含む。
【0062】
別の実施形態によると、PMMAは、MMAの少なくとも1種のホモポリマーおよび少なくとも1種のコポリマーの混合物、または異なる平均分子量でのMMAの少なくとも2種のホモポリマーもしくは2種のコポリマーの混合物、またはモノマーの異なる組成を有するMMAの少なくとも2種のコポリマーの混合物である。
【0063】
(メタ)アクリル系ポリマーは、ランダムコポリマーまたはブロックコポリマーであり得る。当業者は、特に文献WO2014135815において、ブロックコポリマーを調製するための方法を見出すことができるであろう。
【0064】
メチルメタクリレートコポリマーは、70重量%~99.9重量%のメチルメタクリレート、およびメチルメタクリレートで共重合することができる少なくとも1つのエチレン性不飽和を含有する0.1重量%~30重量%の少なくとも1種のモノマーを含む。
【0065】
第1の好ましい実施形態によると、メチルメタクリレートコポリマーは、80重量%~99.9重量%の、有利には90重量%~99.9重量%の、より有利には90重量%~99.8重量%のメチルメタクリレート、およびメチルメタクリレートで共重合することができる少なくとも1つのエチレン性不飽和を含有する0.1重量%~20重量%の、有利には0.1重量%~10重量%の、より有利には0.2重量%~10重量%の少なくとも1種のモノマーを含む。
【0066】
(メタ)アクリル系ポリマーは、好ましくは、カルボン酸官能基を有するモノマーまたはコモノマーを含む。カルボン酸官能基を有するコモノマーは、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、およびこれらの混合物から選択される。
【0067】
(メタ)アクリル系ポリマーは、好ましくは、少なくとも0.1重量%の、カルボン酸官能基を有するモノマーを含む。(メタ)アクリル系ポリマーは、より好ましくは少なくとも1重量%の、さらにより好ましくは少なくとも1.5重量%の、カルボン酸官能基を有するモノマーを含む。例えば、(メタ)アクリル系ポリマーは、1%~10%の、カルボン酸官能基を有するモノマーを含む。(メタ)アクリル系ポリマーは、好ましくは、0.5%~6%の、カルボン酸官能基を有するモノマーを含む。
【0068】
一変形によると、少なくとも0.1重量%の、カルボン酸官能基を有するモノマーをそれぞれ含む2種の(メタ)アクリル系ポリマー、および0.5%~6%の、カルボン酸官能基を有するモノマーを好ましくは含む(メタ)アクリル系ポリマーの混合物を使用することも可能になる。少なくとも0.1重量%の、カルボン酸官能基を有するモノマーをそれぞれ含む2種の(メタ)アクリル系ポリマーの差は、組成または分子質量である。カルボン酸官能基を有するモノマーの量が異なり、(メタ)アクリル系ポリマーにおいて、少なくとも0.25重量%、好ましくは少なくとも0.5重量%、より好ましくは少なくとも1重量%であるか、重量平均分子質量Mwの差が、少なくとも10000g/mol、好ましくは20000g/mol、より好ましくは25000g/molであるかのいずれかである。
【0069】
したがって、好ましくは、カルボン酸官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーまたはカルボン酸官能基を有するモノマーが、アクリル酸およびメタクリル酸から選択される。
【0070】
有利には、(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は高く、すなわち、70000g/mol超であり、好ましくは85000g/mol超、より好ましくは100000g/mol以上である。重量平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィーにより測定することができる。高重量を有する(メタ)アクリル系ポリマーの使用により、熱硬化性複合材のものと近い機械的性質を有する最終的な複合材成形品に対してより良好な機械的性質を得ることが可能になる。
【0071】
前駆体(メタ)アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル系モノマーまたは(メタ)アクリル系モノマーの混合物に、完全に可溶型である。(メタ)アクリル系モノマーまたは(メタ)アクリル系モノマーの混合物の粘度を上昇させることが可能になる。得られる液体組成物または溶液は、一般的に、「シロップ」または「プレポリマー」と呼ばれる。液体(メタ)アクリル系シロップの動粘度値は、10mPa.s~10000mPa.sである。シロップの粘度は、レオメータまたは粘度計で容易に測定することができる。動粘度は、25℃で測定する。有利には、液体(メタ)アクリル系シロップは、意図的に添加される追加の溶媒を含有しない。
【0072】
成形品用の熟成剤は、金属酸化物または金属水酸化物から選択される。例えば、MgO、Mg(OH)2、CaO、Ca(OH)2、またはZnOから選択することができる。熟成剤は、好ましくは、酸化マグネシウムである。
【0073】
好ましい実施形態によると、本発明による液体組成物は、少なくとも0.5phrの熟成剤を含む。より好ましくは、1phr~10phrの熟成剤を含む。さらにより好ましくは、1phr~5phrの熟成剤を含む。
【0074】
液体組成物または(メタ)アクリル系シロップの動粘度を維持するために、必要に応じて繊維強化材の良好な含浸を可能にすることに加え、シロップを予備含浸させた繊維強化材の重合の後に得られるマトリックスの熱可塑性性質を維持するために、シロップの化合物は、以下の質量百分率で混和される:
・液体組成物または(メタ)アクリル系シロップ中の(メタ)アクリル系モノマーは、(メタ)アクリル系モノマーおよび(メタ)アクリル系ポリマーからなる組成物の40重量%~90重量%の、好ましくは45重量%~85重量%の割合で存在する。
・液体組成物または(メタ)アクリル系シロップ中の(メタ)アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル系モノマーおよび(メタ)アクリル系ポリマーからなる組成物の10重量%~60重量%の、有利には15重量%~55重量%の割合で存在し、好ましくは、液体組成物中の(メタ)アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル系モノマーおよび(メタ)アクリル系ポリマーからなる組成物の18重量%~30重量%の、より好ましくは20重量%~25重量%の割合で存在する。
【0075】
したがって、第1の好ましい実施形態では、本発明による液体組成物は、以下を含み得る:
a)10重量%~60重量%の(メタ)アクリル系ポリマー、
b)少なくとも0.1重量%の、カルボン酸官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーを含む、40重量%~90重量%の(メタ)アクリル系モノマー、および
0.5phr~10phrの熟成剤。
【0076】
(メタ)アクリル系ポリマーおよび(メタ)アクリル系モノマーの量は、(メタ)アクリル系モノマーおよび(メタ)アクリル系ポリマーからなる組成物の重量で表される。
【0077】
したがって、第2の好ましい実施形態では、本発明による液体組成物は、以下を含み得る:
a)10重量%~60重量%の(メタ)アクリル系ポリマーであって、前記(メタ)アクリル系ポリマーが、少なくとも1重量%の、カルボン酸官能基を有するモノマーを含む、(メタ)アクリル系ポリマー、
b)40重量%~90重量%の(メタ)アクリル系モノマー、および
0.5phr~10phrの熟成剤。
【0078】
(メタ)アクリル系ポリマーおよび(メタ)アクリル系モノマーの量は、(メタ)アクリル系モノマーおよび(メタ)アクリル系ポリマーからなる組成物の重量で表される。
【0079】
液体組成物は、ラジカル開始剤をさらに含み得る。ラジカル開始剤は、伝播によりポリマー鎖を形成するために、モノマーを開始してモノマーのラジカル重合をするラジカルを生成する。
【0080】
好ましくは水溶性であるラジカル重合開始剤、または脂溶性もしくは部分的に脂溶性であるラジカル重合開始剤を挙げることができる。水溶性のラジカル重合開始剤は、とりわけ、単独で使用されるか、またはメタ重亜硫酸ナトリウムもしくはヒドロ亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、2-ヒドロキシ-2-スルフィノ酢酸の二ナトリウム塩、亜硫酸ナトリウム、および2-ヒドロキシ-2-スルホ酢酸の二ナトリウム塩の混合物、もしくはヒドロキシスルフィノ酢酸の二ナトリウム塩およびヒドロキシスルホ酢酸の二ナトリウム塩の混合物のような還元剤の存在下での、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、もしくは過硫酸アンモニウムである。脂溶性または部分的に脂溶性であるラジカル重合開始剤は、とりわけ、過酸化物もしくはヒドロペルオキシド、1,1,2,2-テトラフェニルエタン-1,2-ジオール、または別のC-C開始剤、およびアゾビスイソブチロニトリルの誘導体である。
【0081】
過酸化物またはヒドロペルオキシドは、活性化温度を下げるために還元剤を組み合わせて使用することができる。
【0082】
ラジカル開始剤は、好ましくは、熱により活性化される。ゆえに、開始剤は、好ましくは、常温で安定であり、阻害剤を消費することなく、必要に応じて化合物を数週間保管することが可能である。逆に、開始剤の分解は、高い生産速度(すなわち、2~3分の生産サイクル)を可能にするために、成形温度で非常に迅速であってもよい。したがって、40℃~150℃の温度で、1時間未満の半減期を有する過酸化物が好ましい。ラジカル開始剤は、有利には、ペルオキシ基またはアゾ基を含む化合物を含む化合物から選択され、好ましくは、ペルオキシ基を含む化合物から選択され得る。ペルオキシ基を含む化合物は、好ましくは、ジアシルペルオキシド、ペルオキシエステル類、ペルオキシジカーボネート類、ペルオキシカーボネート類、ジアルキルペルオキシド、ペルオキシアセタール類、ヒドロペルオキシド、またはペルオキシケタールから選択される。
【0083】
特定の一実施形態では、本発明による液体組成物は、少なくとも2種の開始剤を含み得る。この場合、これらのラジカル開始剤は、所定温度T1で、2種の開始剤の半減期が異なるように選択される。
【0084】
より好ましくは、第2のラジカル開始剤は、所定温度T1で、第1のラジカル開始剤の半減期t1/2の少なくとも2倍である半減期t1/2を呈する。さらにより好ましくは、第2のラジカル開始剤は、所定温度T1で、第1のラジカル開始剤の半減期t1/2の少なくとも3倍、有利には4倍、より有利には5倍、さらにより有利には6倍である半減期t1/2を呈する。
【0085】
温度T1は、好ましくは20℃~160℃、より好ましくは40℃~140℃、有利には50℃~130℃である。
【0086】
より好ましくは、第1のラジカル開始剤は、40℃~90℃の温度で、さらにより好ましくは45℃~80℃の温度で、さらにより好ましくは50℃~75℃の温度で、1時間の半減期t1/2を呈する。
【0087】
より好ましくは、第2のラジカル開始剤は、少なくとも70℃の温度で、さらにより好ましくは少なくとも75℃の温度で、1時間の半減期t1/2を呈する。
【0088】
より好ましくは、第2のラジカル開始剤は、70℃~150℃の温度で、さらにより好ましくは75℃~140℃の温度で、さらにより好ましくは75℃~130℃の温度で、1時間の半減期t1/2を呈する。
【0089】
これらのラジカル開始剤はまた、所定の半減期での温度差が、2種の開始剤の間で少なくとも5Kであるように選択され得る。これは、1時間の半減期t1/2に対して、第1のラジカル開始剤の温度が75℃である場合、1時間の半減期t1/2に対する第2のラジカル開始剤の温度は、少なくとも80℃であることを意味する。
【0090】
第1のラジカル開始剤および第2のラジカル開始剤の間の所定の半減期での温度差は、好ましくは、50K以下である。これは、1時間の半減期t1/2に対して、第1のラジカル開始剤の温度が50℃である場合、1時間の半減期t1/2に対する第2のラジカル開始剤の温度は、100℃以下であることを意味する。
【0091】
より好ましくは、ラジカル開始剤間の所定の半減期での温度差は、5K~50K、より好ましくは6K~40K、さらにより好ましくは7K~30Kである。
【0092】
液体組成物中の(メタ)アクリル系モノマーの混合物の総重量に対する開始剤の質量百分率は、好ましくは0.05重量%~3重量%、好ましくは0.1重量%~2重量%である。
【0093】
ラジカル開始剤は、ジイソブチリルペルオキシド、クミルペルオキシネオデカノエート、ジ(3-メトキシブチル)ペルオキシジカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシネオデカノエート、クミルペルオキシネオヘプタノエート、ジ-n-プロピルペルオキシジカーボネート、tert-アミルペルオキシネオデカノエート、ジ-sec-ブチルペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジ(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ-(2-エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート、tert-ブチルペルオキシネオデカノエート、ジ-n-ブチルペルオキシジカーボネート、ジセチルペルオキシジカーボネート、ジミリスチルペルオキシジカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシピバレート、tert-ブチルペルオキシネオヘプタノエート、tert-アミルペルオキシピバレート、tert-ブチルペルオキシピバレート、ジ-(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)ペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルペルオキシジエチルアセテート、tert-ブチルペルオキシイソブチレート、1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(tert-アミルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、tert-アミルペルオキシ-2-エチルヘキシル炭酸塩、tert-アミルペルオキシアセテート、tert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、2,2-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ブタン、tert-ブチルペルオキシイソプロピル炭酸塩、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキシル炭酸塩、tert-アミルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルオキシアセテート、ブチル4,4-ジ(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、ジ-tert-アミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ(2-tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert-ブチルクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシ-3-イン、ジ-tert-ブチルペルオキシド、3,6,9-トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリペルオキソノナン、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾジ(2-メチルブチロニトリル)、アゾビスイソブチルアミド、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾジ(ヘキサヒドロベンゾニトリル)、または4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)から選択され得る。
【0094】
第1のラジカル開始剤は、好ましくは、クミルペルオキシネオデカノエート、ジ(3-メトキシブチル)ペルオキシジカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシネオデカノエート、クミルペルオキシネオヘプタノエート、ジ-n-プロピルペルオキシジカーボネート、tert-アミルペルオキシネオデカノエート、ジ-sec-ブチルペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジ(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ-(2-エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート、tert-ブチルペルオキシネオデカノエート、ジ-n-ブチルペルオキシジカーボネート、ジセチルペルオキシジカーボネート、ジミリスチルペルオキシジカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシピバレート、tert-ブチルペルオキシネオヘプタノエート、tert-アミルペルオキシピバレート、tert-ブチルペルオキシピバレート、ジ-(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)ペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン、または1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエートから選択される。
【0095】
第2のラジカル開始剤は、好ましくは、tert-アミルペルオキシピバレート、tert-ブチルペルオキシピバレート、ジ-(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)ペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルペルオキシジエチルアセテート、tert-ブチルペルオキシイソブチレート、1,1-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(tert-アミルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、tert-アミルペルオキシ-2-エチルヘキシル炭酸塩、tert-アミルペルオキシアセテート、tert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、2,2-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ブタン、tert-ブチルペルオキシイソプロピル炭酸塩、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキシル炭酸塩、tert-アミルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルオキシアセテート、ブチル4,4-ジ(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、ジ-tert-アミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ(2-tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert-ブチルクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシ-3-イン、ジ-tert-ブチルペルオキシド、または3,6,9-トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリペルオキソノナンから選択される。
【0096】
2種のラジカル開始剤の比は、1/10~10/1、好ましくは1/5~5/1、より好ましくは1/4~4/1である。
【0097】
第1の好ましい実施形態では、第1のラジカル開始剤は、ジ(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネートから選択される。
【0098】
この第1の好ましい実施形態の第2のラジカル開始剤は、ベンゾイルペルオキシド、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジラウロイルペルオキシド、およびジジデカノイルペルオキシドから選択される。
【0099】
第2の好ましい実施形態では、第1のラジカル開始剤は、ジセチルペルオキシジカーボネートから選択される。
【0100】
この第2の好ましい実施形態の第2のラジカル開始剤は、ベンゾイルペルオキシド、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジラウロイルペルオキシド、およびジデカノイルペルオキシドから選択される。
【0101】
第3の好ましい実施形態では、第1のラジカル開始剤は、ジミリスチルペルオキシジカーボネートから選択される。
【0102】
この第3の好ましい実施形態の第2のラジカル開始剤は、ベンゾイルペルオキシド、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジラウロイルペルオキシド、およびジラウロイルペルオキシドから選択される。
【0103】
充填剤および添加剤
本発明による液体組成物は、1種または複数の添加剤および/または1種または複数の充填剤をさらに含むことができる。全ての任意の添加剤および充填剤は、含浸および/または重合の前に、液体組成物、または液体(メタ)アクリル系シロップに添加する。充填剤は、本発明の文脈では、添加剤であるとは考えられない。
【0104】
炭素系充填剤は、特に、活性炭、天然無煙炭、合成無煙炭、カーボンブラック、天然黒鉛、合成黒鉛、炭素系ナノ充填剤、またはこれらの混合物であり得る。これらは、好ましくは、炭素系ナノ充填剤から、特にグラフェンおよび/もしくはカーボンナノチューブおよび/もしくはカーボンナノフィブリル、またはこれらの混合物から選択される。これらの充填剤は、電気および熱を伝導させることが可能になり、その後、加熱する場合、ポリマーマトリックスの潤滑性を改善させることが可能になる。次いで、これらは、サイクル時間の向上した短縮、または複合材成形品の組立て、調整もしくは修理の容易化を可能とし得る。
【0105】
無機充填剤は、とりわけ、金属水酸化物を含み、これは、より具体的には、アルミナ三水和物(Al(OH)3)、炭酸カルシウム、シリケート類、硫化亜鉛、酸化鉄、二酸化チタン、シリカ、または無機ナノ充填剤、例えばナノ二酸化チタンもしくはナノシリカの形態を取る。本発明による組成物は、好ましくは、炭酸カルシウム(CaCO3)、二酸化チタン(TiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、およびシリカ(SiO2)から選択される無機充填剤をさらに含む。炭酸カルシウムは、例えば、およそ5μmの直径の、好ましくは5μm以下の直径の粒子の形態を取ることができる。
【0106】
本発明による液体組成物は、任意の充填剤を含まなくてもよい。充填剤を添加する場合、充填剤の量は、例えば、50phr~400phr、好ましくは75phr~300phr、より好ましくは100phr~250phrであり得る。
【0107】
挙げることができる添加剤には、耐衝撃性改良剤またはブロックコポリマーのような有機添加剤、熱安定剤、UV安定剤、潤滑剤、粘度調整剤、pH調整剤(水酸化ナトリウム溶液)、粒径調整剤(硫酸ナトリウム)、殺生物剤、重合阻害剤、離型剤、湿潤化および分散化添加剤、脱気添加剤、収縮調整剤、難燃充填剤、色素、カップリング剤、ならびにこれらの混合物が含まれる。これらの添加剤は、とりわけ、(メタ)アクリル系熱可塑性ポリマーマトリックスの流動学的性質、化学的性質、および付着性を改善することが可能になる。
【0108】
耐衝撃性改良剤は、エラストマーコアおよび少なくとも1つの熱可塑性シェルを有する微粒子の形態であり、粒子のサイズは、一般的に、1μm未満、有利には50~300nmである。耐衝撃性改良剤は、乳化重合により調製される。熱可塑性ポリマーマトリックス中の耐衝撃性改良剤の割合は、0~50重量%、好ましくは0~25重量%、有利には0~20重量%である。充填剤として、無機ナノ充填剤(TiO2、シリカ)を含むカーボンナノチューブまたは無機充填剤を挙げることができる。
【0109】
本発明による液体組成物はまた、任意に、重合活性剤を含んでもよい。重合活性剤または促進剤は、N,N-ジメチル-p-トルイジン(DMPT)、N,N-ジヒドロキシエチル-p-トルイジン(DHEPT)のような3級アミン類、有機可溶型遷移金属触媒、またはこれらの混合物から選択される。
【0110】
有利には、液体(メタ)アクリル系組成物は、任意の金属系触媒を含有しない。重合反応を触媒的に促進させる活性剤として金属を含む添加剤は、本発明による液体(メタ)アクリル系組成物に添加されない。これは、特に、塩化スズのようなスズ系化合物に関する。
【0111】
液体(メタ)アクリル系組成物の(メタ)アクリル系モノマーに対する活性剤の含有量は、100重量ppm~10000重量ppm、好ましくは200重量ppm~7000重量ppm、有利には300重量ppm~4000重量ppmである。
【0112】
重合阻害剤もまた、配合物に混和され得る。阻害剤の量を最適化して、ゲル化点に達する前の金型の完全な充填、および迅速な生産サイクルを可能にする。
【0113】
離型剤は、金型と複合材との間の付着を低減し、損傷することなくプレスから成形品を抜き取ることを可能にするために使用され得る。離型剤は、外添型(金型の表面に塗布されるワックスまたは潤滑剤)、または内添型であってもよい。例えば、本発明による液体組成物は、好ましくは粉末の形態の、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、またはステアリン酸マグネシウムから選択される内添型離型剤を含み得る。
【0114】
組成物はまた、樹脂に可溶型のオリゴマーまたはポリマー界面活性剤のような、湿潤剤および分散剤を含むことができる。この薬剤は、例えば、CaCO3充填剤に対して高い親和性を有する極性頭部、および熱可塑性樹脂に対する高い親和性を有する極性の低い鎖からなり得る。この添加剤は、充填剤と樹脂との間の界面張力を低減し、それにより、ペーストの配合の間に充填剤の湿潤を向上させる。
【0115】
本発明による液体組成物は、好ましくは、少なくとも1種の添加剤を含む。それでもなお、液体組成物に添加される添加剤の量は、好ましくは100phr未満、より好ましくは50phr未満、さらにより好ましくは25phr未満である。
【0116】
(メタ)アクリル系熱可塑性ポリマーマトリックスの総重量に対して添加剤の全ての質量百分率は、好ましくは、30%未満、好ましくは10%未満である。
【0117】
全ての任意の添加剤および充填剤は、含浸および/または重合の前に、液体(メタ)アクリル系シロップに添加される。
【0118】
本発明は、別の態様によると、本発明による液体組成物、または(メタ)アクリル系シロップを調製するための方法であって、第1の工程が、(メタ)アクリル系ポリマーおよび(メタ)アクリル系モノマーの混合物を調製することを含み、前記(メタ)アクリル系ポリマーおよび/または前記(メタ)アクリル系モノマーが、少なくとも1つのカルボン酸官能基を含む、方法に関する。
【0119】
方法は、有利には、少なくとも1種のラジカル開始剤を添加する工程をさらに含む。ラジカル開始剤は、好ましくは、50℃未満の、より好ましくは40℃未満の、有利には30℃未満の、より有利には25℃未満の温度Taddで添加される。
【0120】
方法は、3時間以下の、好ましくは2時間以下の、より好ましくは60分以下の時間にわたって、10~50℃の混合温度で混合する工程をさらに含み得る。
【0121】
液体組成物を調製するか、またはペーストを含浸させるためのこの種の方法は、
図1に示すミキサー10のようなミキサーで実施され得る。このミキサーは、SMC法で、熟成剤をペーストで均一化するために使用されるミキサー(「SMCミキサー」と呼ぶ)と区別するために、「主要なミキサー」と呼ぶ。したがって、液体組成物を調製するための方法はまた、液体生成物を吐出する工程と、撹拌する工程と、充填剤および離型剤(粉末)を吐出し、続いて撹拌する工程と、SMCミキサー20にペーストを吐出する工程とを含み得る。
【0122】
ペーストの配合は、液体添加剤(例えば、(メタ)アクリル系ポリマー、(メタ)アクリル系モノマー、湿潤剤および分散剤)を混合することから始まる。粉末(例えば、離型剤および充填剤)は、その後、得られる均一な混合物に分散させる。充填剤(例えば炭酸カルシウム)は、ペーストの体積の40%超を表し得るが、複数の段階で混和することができる。次いで、生成されたペーストは、SMC法で、繊維強化材を含浸させる前に、別の容器、SMCミキサー20に移される。
【0123】
熟成剤は、その後、例えば、コンテナ31からSMCミキサー20内のペーストに添加することができる。熟成剤を導入するとペーストの粘度が即時的に穏やかな増加をするので、SMC化合物を使用する直前に導入することが適切である。SMCミキサー20は、主要なミキサー10からペーストを、および熟成剤を継続的に供給される。ラジカル開始剤もまた、コンテナ32を介してこの時点で添加することができる。染料も、適宜、混和することができる。
【0124】
有利には、液体組成物は、25℃で少なくとも30分間、好ましくは少なくとも1時間、10mPa*s~100000mPa*sの動粘度を保持する。本発明による液体組成物は、上の段落で詳述しているが、繊維もしくは繊維強化材に含浸させるために、または熱可塑性成形品を製造するもしくは複合材成形品を製造するために使用することができる。
【0125】
したがって、本液体組成物は、繊維もしくは繊維強化材に含浸させるために使用することができる。したがって、別の態様によると、本発明は、予備含浸繊維材料を製造するための方法であって、予備含浸繊維材料が、好ましくはシートの形態での予備含浸繊維材料である、方法に関する。本方法は、特に、本発明による液体組成物を繊維強化材に含浸させる工程を含む。この含浸工程は、ベルトの上で、金型もしくは閉じた金型の中で、または浴の中で行うことができる。
【0126】
【0127】
図1に示す方法は、より具体的には、SMC調製方法である。一般的にBMC法におけるよりも繊維強化材が豊富な複合材を実現することを可能にし、長繊維を使用することも可能にする。さらに、BMC化合物の使用と対照的に、SMC化合物の使用には、成形(切断、剥離、金型内の物質のスタックされたブランクの配置)する場合に変化することなく、SMCプリプレグシートの取扱いが容易になるために、熟成剤の混和を必要とする。
【0128】
図1に示す通り、含浸ペーストがSMCミキサー20で均一化される場合、ドクターブレード51、52の溜め部に注がれる。好ましくは金属のベルト53により、SMC化合物は、2つのドクターブレード51、52の各々の下で、ペーストの層を取り込むプラスチックフィルム45を取るカレンダリングシステム60を通過することが可能になる。プラスチックフィルム45は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、テレフタレートポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリオレフィンおよびポリアミド、またはポリオレフィン/ポリアミド/ポリオレフィンのフィルムであり得る。プラスチックフィルム45は、含浸ペーストのキャリヤー機能および(メタ)アクリル系モノマーの蒸発を防止するためのバリア機能を有し、単層から、または好ましくは多層からなることができる。好ましくは、Orgalloy(登録商標)(ポリプロピレン-ポリアミドグラフトコポリマー、登録商標)から構成される。
【0129】
繊維強化材は、散布装置80を介して含浸ペーストに接して配置する。例えば、繊維強化材は、第1のペーストフィルムを被覆するために切断され得る。次いで、第2のペーストフィルムは、(例えば、以下の種類:プラスチックフィルム/ペースト/ガラス繊維/ペースト/プラスチックフィルムのサンドイッチ構造を形成するために)繊維強化材の層に適用される。そのように形成された化合物は、次いで、ベルト53の上を通過し、カレンダリングシステム60により圧縮される。この圧縮により、特に化合物から空気を取り除くことにより、ペーストは効果的に繊維強化材に含浸させることができる。この種の含浸と、続くカレンダリングは、SMC化合物にある特定の機械的強度を与え、その後、その強度は、熟成反応により著しく高くなる。ペーストおよび繊維強化材の流速は、強化の所望のレベルを得るためにコントロールされる。これらの流速は、ベルトの速度およびドクターブレードの高さによる単位表面当たりの生産速度に関連するが、SMC化合物の最終的な厚さも決定する。カレンダリング後の本発明によるSMC化合物の最終的な厚さは、一般的に、0.5~10mm、好ましくは1~5mm、より好ましくは1~4mm、さらにより好ましくは1~3mmと変化する。
【0130】
したがって、
図1に示す通り、本発明による複合材料を製造するための方法の文脈での含浸は、継続的に行うことができる。さらに、本発明による複合材料を製造するための方法は、カレンダリング工程を含み得る。
【0131】
熟成反応は、熟成剤がSMCミキサー20内のペーストに混和されるとすぐに開始する。特定の一実施形態では、ペーストを熟成剤と混合し、それをドクターブレード51、52に搬送するのにおよそ2分、ペーストフィルムおよび繊維強化材をカレンダーに搬送するのに1分、SMC化合物のカレンダリングに1分かかる。さらに、ベルト53の速度は、およそ4m/分である。BMC法と対照的に、粘度の点で重要であるのは、ペーストの搬送ではなく、繊維強化材の含浸である。均一性の高いペーストフィルムを形成し、効果的に繊維強化材に含浸させるために、ドクターブレード51、52の溜め部内のペーストの粘度は、好ましくは、25℃で200Pa.s未満である。より好ましくは、ドクターブレード51、52の溜め部内のペーストの粘度は、25℃で150Pa.s未満、さらにより好ましくは25℃で100Pa.s未満である。
【0132】
これらが得られると、次いで、SMCロール70は、熟成工程のために保管されるが、これにより取扱いが容易な材料を得ることが可能になる。この工程の間、本発明による液体組成物は、粘度が増加して、本液体組成物を予備含浸させた繊維材料の取扱いが容易になる粘度に達する。
【0133】
熟成工程は、10℃~40℃、好ましくは20℃~30℃の温度で実行することができる。これは、熟成動態を促進することができる。成形する日での化合物の粘度における実質的な変動が、プレスのパラメータの一定の修正を必要とするので、予備含浸繊維強化材を使用する前に疑似プラトーに達することは適切である。その理由は、粘度の偏差が、重合される成形品の品質問題(多かれ少なかれ、金型内の化合物の流れなど)において顕著になり得るからである。したがって、粘度の急激で迅速な増加によって、SMC化合物を、実現した後に迅速に取り扱い、成形することができるので、本発明による熟成工程は有利である。さらに、実施例に示す通り、熟成した化合物は、高い安定性の粘度を有し、例えば成形することにより使用前に化合物を搬送することができる。
【0134】
本発明による複合材料を製造するための方法はまた、10℃~100℃、好ましくは15℃~80℃、より好ましくは20℃~50℃の温度で熟成する工程を含み得る。
【0135】
実施例に詳述する通り、本発明による方法で使用される液体組成物は、熱硬化性ポリマーで実行される類似の方法に対して熟成時間を短縮することが可能になる。ゆえに、本発明の文脈では、短時間で熟成を達成することができ、それでもなお、その取扱いを可能にするのに十分粘着性である強化材に含浸させる組成物を得ることが可能である。熟成工程は、好ましくは、120時間以下、好ましくは48時間以下の時間にわたって行う。本発明による液体組成物は、熟成工程の期間を短縮することができるが、この工程は、一般的に、2時間超の時間にわたって行う。例えば、熟成工程は、24時間~48時間の時間にわたって行うことができる。
【0136】
ゆえに、一実施形態では、カレンダリングの最後にカレンダーに巻き付けたシートの形態での予備含浸させた繊維強化材は、25~30℃で30時間、熟成のために放置する。熟成の目的は、常温で取り扱うことができるのに十分な増加を化合物の粘度に生じさせることである。その理由は、物質の損失を伴わずに、化合物を(操作または機械により)切断、剥離し、金型に導入することが可能である必要があるからである。
【0137】
熟成工程に続くペーストの粘度は、例えば、25℃で500Pa.s超である。熟成工程に続くペーストの粘度は、好ましくは25℃で1000Pa.s超、より好ましくは25℃で10000Pa.s超、さらにより好ましくは25℃で100000Pa.s超である。
【0138】
熟成工程の後、および疑似プラトーに達する場合、予備含浸繊維強化材またはSMC化合物は、25℃未満の温度で保管され得る。熟成工程に続いて、および疑似プラトーに達する場合、予備含浸繊維強化材は、繊維強化材に含浸させる液体組成物の重合を受け得る。
【0139】
疑似プラトーまたはプラトーとは、粘度がさらに著しく増加しないことを意味し、粘度の相対的増加が、この時点または時間間隔におけるPa*sでの粘度に対して+0.5%/分未満であることを意味する。粘度の相対的増加は、好ましくは+0.4%/分未満、より好ましくは+0.3%/分未満、より好ましくは+0.2%/分未満、有利には+0.1%/分未満、より有利には+0.1%/分未満である。
【0140】
繊維強化材
繊維強化材とは、一般的に、ストリップ、織布、組紐、撚糸、または成形品の形態であり得る複数の繊維、一方向粗糸、または連続フィラメントのマット、織物、フェルト、または不織布を指す。
【0141】
繊維強化材は、1つまたは複数の繊維、一般的には複数の繊維の集合体を含み、前記集合体は、異なる形態および寸法:一次元、二次元または三次元を有することができる。一次元の形態は、糸状の長繊維に対応する。繊維は、不連続的または連続的であり得る。繊維は、連続フィラメントの形態で、互いにランダムにまたは並行して配置され得る。二次元の形態は、不織布強化材もしくは繊維マット、または織った粗糸もしくは繊維の束に対応するが、これらは編むこともできる。二次元の形態が、ある特定の厚さを有し、その後、原理的には三次元を有するとしても、本発明にしたがって二次元であると考えられる。三次元の形態は、例えば、不織繊維強化材もしくはマット、または繊維のスタックされたもしくは折り畳んだ束、またはこれらの混合物、三次元への二次元の形態の集合体に対応する。
【0142】
繊維は、不連続的または連続的であり得る。不連続繊維またはチョップトファイバーは、特に、SMC複合材での使用によく適している一方、連続繊維または長繊維は、向上した機械的性質を有する成形品を得ることを可能にする。
【0143】
繊維が不連続的である場合、繊維強化材は、例えば、3mm~100mmの長さを有するチョップトファイバーから構成される。チョップトファイバーの長さは、好ましくは10mm~75mm、より好ましくは12mm~50mm、さらにより好ましくは25mm~50mmである。
【0144】
繊維が連続的である場合、これらを組み合わせて織物を形成することができる。繊維は、繊維の長さおよび直径の比であるアスペクト比により定義され得る。連続繊維または長繊維のアスペクト比は、少なくとも1000、好ましくは少なくとも1500、より好ましくは少なくとも2000、有利には少なくとも3000、より有利には少なくとも5000、さらに有利には少なくとも6000、さらに有利には少なくとも7500、最も有利には少なくとも10000である。繊維の寸法は、当業者に周知の方法により測定することができる。好ましくは、これらの寸法は、標準ISO137にしたがって顕微鏡により測定する。この種のアスペクト比により、より良好な機械的性質を有する複合材成形品を得ることが可能になる。
【0145】
特に、本発明による製造する方法の文脈では、繊維強化材は、短繊維および長繊維の混合物から構成され得る。短繊維および長繊維は、好ましくは、上述した通り定義される。
【0146】
繊維強化材を構成する繊維の源は、天然または合成であり得る。挙げることができる天然材料には、植物繊維、木質繊維、動物繊維、または鉱物繊維が含まれる。植物繊維は、例えば、サイザル、ジュート、麻、リネン、ワタ、ヤシ、およびバナナの繊維である。動物繊維は、例えば、羊毛または毛皮である。鉱物繊維はまた、ガラス繊維、特にE型、R型もしくはS2型、玄武岩繊維、炭素繊維、ホウ素繊維、またはシリカ繊維から選ぶことができる。
【0147】
挙げることができる合成材料には、熱硬化性ポリマー繊維、熱可塑性ポリマー、またはこれらの混合物から選択されるポリマー繊維が含まれる。ポリマー繊維は、ポリアミド(脂肪族または芳香族)、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、およびビニルエステルからなることができる。
【0148】
好ましくは、本発明の繊維強化材は、植物繊維、木質繊維、動物繊維、鉱物繊維、合成ポリマー繊維、ガラス繊維、玄武岩繊維、および炭素繊維を、単独でまたは組み合わせて含む。より好ましくは、繊維強化材は、炭素繊維、またはガラス繊維、または玄武岩繊維、またはポリマー系繊維、または植物繊維から選択される繊維を、単独でまたは組み合わせて含む。さらにより好ましくは、本発明の繊維強化材は、炭素繊維またはガラス繊維を含む。
【0149】
繊維強化材の繊維の直径は、例えば、0.005μm~100μm、好ましくは1μm~50μm、より好ましくは5μm~30μm、有利には10μm~25μmである。
【0150】
好ましくは、本発明の繊維強化材の繊維は、一次元の形態の連続繊維から、または繊維強化材の二次元もしくは三次元の形態の長繊維もしくは連続繊維から選択される。
【0151】
別の態様によると、本発明は、複合材成形品を製造するための方法に関する。複合材成形品を製造するための本方法は、特に、本発明による予備含浸繊維材料を付形する工程を含む。例えば、予備含浸繊維材料は、シートの形態でのプリプレグ物質の形態を取る。
【0152】
付形する工程は、好ましくは、成形する工程である。予備含浸繊維材料は、例えば、化合物の自動取扱い後、圧縮により成形され得る。したがって、本発明による製造する方法は、成形する工程を含むことができる。この成形する工程は、有利には、加圧下で50℃~200℃の温度で実行される、成形する温度は、好ましくは60℃~180℃、より好ましくは80℃~140℃、より好ましくは80℃~125℃である。例えば、成形する工程は、圧縮成形する工程である。適用される圧力は、例えば、25~150bar、好ましくは50~120barである。
【0153】
一実施形態では、予備含浸繊維材料は、110℃の領域の温度で2~3分間、50~120barで圧縮することにより成形される。従来の複合材成形品を製造するために、各々1~2mmの厚さの予備含浸繊維材料の4つのブランクを、切断、剥離し、プレスのパンチにスタックする。被覆のレベルは、ブランクの表面積と金型の総表面積との間の比に対応する。金型が、ダイ(中空部分)を下降することにより閉じられる場合、予備含浸物質は、金型全体に行きわたるまで流れる。流れて重合した後の成形品の最終の厚さは、およそ3mmである。
【0154】
これらの複合材の成形する速度は、好ましくは2~3分間のサイクル時間と、かなり速い。これらが成形される場合、複合材成形品は、バリ取りし、任意で互いに接着し(例えば車体およびライニング部品)、塗装する。したがって、成形工程の期間は、好ましくは10分以下、より好ましくは5分以下であり、例えば1分~5分である。
【0155】
すでに述べた通り、液体組成物は、有利には、相当量の熱可塑性ポリマーを含む。したがって、本発明による複合材は、より容易に形質転換することができる。例えば、SMC法で得られるこの種の複合材成形品は、その後、曲がった形状に、または捻った形態に、曲げたり、折り畳んだりすることによる製造後の熱工程により遡及的に付形することができる。これらはまた、溶接工程の実施に不可欠な熱可塑性特徴を保持するので、溶接により組み立てることができる(熱硬化性複合材は、接着により組み立てることができるだけである)。より具体的には、交通および自動車の用途のためのSMCによる熱可塑性複合材成形品、とりわけ、構造的または半構造的部品(テールゲート、スポイラ、ウイングサポート、応急用タイヤトレイ、電気車両用のバッテリトレイ、床、トラック前端部など)の製造を挙げることができる。
【0156】
したがって、複合材成形品の製造するための方法は、二次成形する追加の工程を含み得る。二次成形は、屈曲することを含み、複合材料部品の形状を修正することも含む。複合材成形品を製造するための方法は、溶接する工程または接着する工程または積層する工程をさらに含み得る。本発明による製造する方法は、PMMAの皮または熱可塑性複合材成形品の組合せで、使用する、例えば減圧下で圧縮する複雑な複合材成形品の製造を可能にしている。
【0157】
本発明による方法により得られる熱可塑性複合材成形品は、本発明の液体組成物の重合の後、二次成形、溶接、または接着、または積層することができる。
【0158】
別の態様によると、本発明は、熱可塑性(メタ)アクリル系マトリックスおよび繊維強化材を含む、ポリマー複合材料に関する。この複合材料では、熱可塑性(メタ)アクリル系マトリックスは、繊維強化材に含浸させる本発明による液体組成物の重合の後に得られる。
【0159】
この種の複合材料は、その後、多くの用途に使用するために加工することができる。別の態様によると、本発明は、本発明による複合材料部品、または本発明による製造する方法により得られる複合材料部品に関する。
【0160】
本発明による複合材料部品は、例えば、自動車の部品、ボートの部品、列車の部品、スポーツ用品、飛行機もしくはヘリコプターの部品、宇宙船もしくはロケットの部品、光発電モジュール部品、例えば複合電機子、土木工学および高架構築物用のダボおよびノギスのような構築物もしくは建築物の材料、例えば風力タービンブレードの桁材のスパーキャップのような風力タービン部品、家具の部品、構築物もしくは建築物の部品、電話もしくは携帯電話の部品、コンピュータもしくはテレビの部品、またはプリンターまたはコピー機の部品であり得る。
【0161】
本発明による複合材料部品は、好ましくは、車両の構造的または半構造的部品である。その理由は、この種の成形品が、特に本発明による液体組成物から生じる機械的性質により、車両のデザインの使用に特に有利であり、10~125GPa、好ましくは8~60GPaのヤング率を有するからである。
【0162】
複合材料部品は、有利には、三次元成形品である。
【実施例0163】
実施例1
液体組成物を、80重量%のメチルメタクリレート中のMMA/EA/MAA 88.5/10/1.5の組成物(88.5重量%のMMA、ならびにコモノマーとしての10重量%のエチルアクリレート(EA)および1.5重量%のメタクリル酸(MAA)を含む、MMAのコポリマー)で、20重量%のPMMAを溶解することにより調製する。
【0164】
PMMAの重量平均分子量は、120000g/molであり、液体組成物の粘度は、100mPa.sである。
【0165】
本液体組成物を、異なる濃度:1phr、3phrおよび5phrで、MgOである熟成剤と混合する。
【0166】
次いで、常温(25℃)での周波数動粘度を、1週間後、アントンパールのシステム(Carreauモデルによる複素粘度η*)で測定する。
【0167】
この動粘度測定の結果は、
図2Aに示す。これらは、熟成の1週間後、液体組成物が、添加する熟成剤の量に関わらず、熟成剤を添加する前の液体組成物の粘度より少なくとも1000倍高い粘度を有することを示す。測定が1rad.s-1の速度または角周波数ωで達成される場合、測定される粘度は、1000Pa.s~10000Pa.sである。
【0168】
実施例2
液体組成物を、80重量%のメチルメタクリレート中のMMA/MAA 95.5/4.5の組成物(95.5重量%のMMA、およびコモノマーとしての4.5重量%のメタクリル酸を含む、MMAのコポリマー)で、20重量%のPMMAを溶解することにより調製する。
【0169】
PMMAの重量平均分子量は、100000g/molであり、液体組成物の粘度は、100mPa.sである。
【0170】
本液体組成物を、異なる濃度:1phr、3phrおよび5phrで、MgOである熟成剤と混合する。
【0171】
次いで、常温での周波数動粘度を、1週間後、アントンパールのシステム(Carreauモデルによる複素粘度η*)で測定する。
【0172】
この動粘度測定の結果は、
図2Bに示す。これらは、熟成の1週間後、液体組成物が、添加する熟成剤の量に関わらず、熟成剤を添加する前の液体組成物の粘度より少なくとも10000倍高い粘度を有することを示す。測定が1rad.s-1の速度または角周波数ωで達成される場合、測定される粘度は、およそ10000mPa.sである。
【0173】
実施例3
第1の液体組成物を、80重量%のメチルメタクリレート中のMMA/EA/MAA 88.5/10/1.5の組成物(88.5重量%のMMA、ならびにコモノマーとしての10重量%のエチルアクリレートおよび1.5重量%のメタクリル酸を含む、MMAのコポリマー)で、20重量%のPMMAを溶解することにより調製する。PMMAの重量平均分子量は、120000g/molであり、液体組成物の粘度は、100mPa.sである。本液体組成物を、3phrの濃度で、MgOである熟成剤と混合する。
【0174】
第2の液体組成物を、80重量%のメチルメタクリレート中のMMA/MAA 95.5/4.5の組成物(95.5重量%のMMA、およびコモノマーとしての4.5重量%のメタクリル酸を含む、MMAのコポリマー)で、20重量%のPMMAを溶解することにより調製する。PMMAの重量平均分子量は、100000g/molであり、液体組成物の粘度は、100mPa.sである。本液体組成物を、3phrの濃度で、MgOである熟成剤と混合する。
【0175】
第3の液体組成物は、80重量%のメチルメタクリレート中の、1:1の質量比での第1および第2の組成物において上で使用した20重量%の2種のPMMAの混合物を溶解することにより調製する。本液体組成物を、3phrの濃度で、MgOである熟成剤と混合する。
【0176】
ニュートン粘度(Carreauモデルによるゼロの剪断速度での複素粘度η
*)における変化を、これらの3種の組成物に対して経時的にモニタリングし、
図3に示す。
【0177】
ニュートン粘度における変化のこれらの測定の結果は、粘度が非常に迅速に増加して、1900分後、または48時間未満に、プラトーに達することを示す。
【0178】
したがって、本発明による液体組成物は、必要とされる熟成時間を大幅に短縮することができる。
【0179】
実施例4
いくつかの液体組成物は、本発明にしたがって調製することができる。これらは、(メタ)アクリル系モノマー中の20重量%~25重量%の(メタ)アクリル系ポリマーを溶解することにより調製する。本液体組成物を、3phrの濃度で、MgOである熟成剤と混合する。
【0180】
本発明による液体組成物は、62000~130000g/molの重量平均分子量を有するポリマーを呈し、液体組成物の粘度は、100mPa.sである。
【0181】
ポリマーの重量平均分子量Mwは、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により測定する。
【0182】
62000g/molの重量平均分子量を有するポリマーを含む液体組成物(実施例4)で形成される成形品は、少なくとも80000g/molの重量平均分子量を有するポリマーを含む液体組成物(実施例3)で形成される成形品と同じ機械的性質を呈さない。
【0183】
実施例5
本発明による液体組成物は、当業者の知識にしたがって配合され得る。
【0184】
以下の表は、繊維強化材に含浸させるために使用することができる典型的な配合物を示す。
【0185】
均一化の後、5質量%~60質量%または20質量%~40質量%の繊維強化材を、本液体組成物に添加することができる。
【0186】
いくつかのSMC複合材のプラークを、実施例6~9において予備含浸繊維材料から調製する。ガラス繊維での組成物に対しては400~600kNの力で、炭素繊維での組成物に対しては1200kNの力で、110℃~120℃で加熱した金型で6分間、重合を実行する。残留モノマーの含有量を、ガスクロマトグラフィーにより測定する。曲げ特性は、標準ISO14125:1998(繊維強化プラスチック複合材-曲げ特性の決定)にしたがって決定し、湾曲部の破断応力、湾曲部のヤング率、および伸びを測定する。
【0187】
実施例6
残留モノマー(MMA): 0.23±0.1%
応力=207±16MPa、率E=9.56±0.44GPa、伸びe=3.14±0.31%。
【0188】
実施例7
残留モノマー(MMA):プレート上で0.275±0.05%
応力=110±13MPa、率E=5.23±0.79GPa、伸びe=2.48±0.67%。
【0189】
実施例8
残留モノマー(MMA):プレート上で0.405±0.025%
応力=457±85MPa、率E=41.21±7.52GPa、伸びe=1.82±0.25%。
【0190】
実施例9
残留モノマー(MMA):プレート上で0.39±0.03%
応力=249±67MPa、率E=27.94±4.48GPa、伸びe=1.35±0.15%。