(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038065
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】イメージング方法
(51)【国際特許分類】
A61B 10/00 20060101AFI20240312BHJP
A61N 5/06 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
A61B10/00 E
A61N5/06 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023217442
(22)【出願日】2023-12-22
(62)【分割の表示】P 2021541853の分割
【原出願日】2019-08-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【弁理士】
【氏名又は名称】駒井 慎二
(72)【発明者】
【氏名】妻鳥 紘之
(57)【要約】 (修正有)
【課題】治療薬の反応を進めることなく、治療位置、治療効果を正確に把握することが可能なイメージング装置、治療装置およびイメージング方法を提供する。
【解決手段】イメージング装置1が、蛍光色素を含む治療薬が投与された被検者STの治療部位に向けて、蛍光色素を励起させる励起光を照射する励起用光源242と、治療部位を撮像し、可視動画像を取得する第1の撮像部28と、励起光が照射されているときに、治療部位の蛍光色素から発生した蛍光を撮像することにより、蛍光画像を取得する第2の撮像部29と、可視動画像に蛍光画像を重畳して、合成画像を生成する合成画像生成部19と、合成画像を表示する画像表示部15と、を備え、励起用光源は、所定のパルス幅の励起光を照射する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光試薬(IR700)と上皮成長因子受容体の抗体を結合した治療薬が投与された被検者の治療部位において前記蛍光試薬を励起させる励起光を照射するイメージング装置の励起用光源の点灯方法において、
前記イメージング装置は、前記励起用光源に治療を進行させない所定のパルス幅の前記励起光を点灯させることを特徴とする励起用光源の点灯方法。
【請求項2】
前記励起光の照射は、前記所定のパルス幅の前記励起光を1回だけ、もしくはユーザの
照射トリガーにより照射する請求項1に記載の励起用光源の点灯方法。
【請求項3】
前記所定のパルス幅が、略16msである請求項1又は2に記載の励起用光源の点灯方法。
【請求項4】
前記所定のパルス幅が、略33msである請求項1又は2に記載の励起用光源の点灯方法。
【請求項5】
前記励起光が、600~700nmの波長の光である請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の励起用光源の点灯方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イメージング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、がん治療の方法の1つとして、光免疫療法が注目されている。この光免疫療法においては、蛍光試薬(IR700)と上皮成長因子受容体(EGFR)の抗体を結合した、治療薬(RM-1929)を被検体に注入する。
治療薬を被検体に注入すると、抗体はがん細胞の表面に結合する。そして、この状態で600~700nm程度の近赤外光を被検体に所定時間照射すると、治療薬(RM-1929)に熱が発生し、がん細胞が破壊され、IR700の親水基であるリガンド部分が外れることで、凝集体を形成し、消光するといわれている(非特許文献1、2)。
【0003】
このような光免疫療法においては、使用する蛍光試薬(IR700)由来の蛍光を検出することにより、治療位置、治療効果(つまり、治療の進捗)を確認することができるため、治療中の蛍光画像を取得することが重要となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】J K. Sato et al., 「Photo-induced ligand release from a silicon phthalocyanine dye conjugated with monoclonal antibodies; A mechanism of cancer cell cytotoxicity after near infrared photoimmunotherapy」、ACS Central Science、2018年11月7日
【非特許文献2】株式会社島津製作所、「狙った細胞のみを殺す光リモコンスイッチの開発にはじめて成功~副作用の少ないがん治療への貢献に期待~」、[online]、[平成31年3月10日検索]、インターネット<URL: https://WWW.SHIMADZU.CO.JP/ニュース/press/9qbnqud1mddlrfby.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような光免疫療法において、治療位置、治療効果を確認するために近赤外光を照射すると、照射位置において治療薬の反応が進行してしまい、意図せずに治療を進めてしまうといった問題がある。そして、意図せずに治療が進められてしまうと、充分な治療効果が得られないといった問題も発生する。
【0006】
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、治療薬の反応を進めることなく(つまり、治療を進めることなく)、治療位置、治療効果を正確に把握することが可能なイメージング装置、治療装置およびイメージング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、蛍光試薬(IR700)と上皮成長因子受容体の抗体を結合した治療薬が投与された被検者の治療部位において前記蛍光試薬を励起させる励起光を照射するイメージング装置の励起用光源の点灯方法において、
前記イメージング装置は、前記励起用光源に治療を進行させない所定のパルス幅の前記励起光を点灯させることを特徴とする励起用光源の点灯方法に関する。
【0008】
本発明の第2の態様は、前記励起光の照射は、前記所定のパルス幅の前記励起光を1回だけ、もしくはユーザの照射トリガーにより照射する請求項1に記載の励起用光源の点灯方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、治療薬の反応を進めることなく(つまり、治療を進めることなく)、治療位置、治療効果を正確に把握することが可能なイメージング装置の励起用光源の点灯方法が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明のイメージング装置の実施形態を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すイメージング装置の側面図である。
【
図3】
図1に示すイメージング装置の平面図である。
【
図4】
図1に示すイメージング装置の主要な制御系を示すブロック図である。
【
図5】
図1に示すイメージング装置で実行されるイメージングプログラムのフローチャートである。
【
図6】
図1に示すイメージング装置が備える画像表示部に表示される画像の一例である。
【
図7】
図1に示すイメージング装置の第2の光源と、励起光スイッチ(操作部)の操作と、励起光センサのフレームレートの関係を示すタイミングチャートである。
【
図8】本発明の変形例1のイメージング装置の、第2の光源と、励起光スイッチ(操作部)の操作と、励起光センサのフレームレートの関係を示すタイミングチャートである。
【
図9】本発明の変形例2のイメージング装置の、主要な制御系を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のイメージング装置およびイメージング方法を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0012】
<実施形態>
図1は、本発明のイメージング装置の実施形態を示す斜視図である。
図2は、
図1に示すイメージング装置の側面図である。
図3は、
図1に示すイメージング装置の平面図である。
図4は、
図1に示すイメージング装置の主要な制御系を示すブロック図である。
図5は、
図1に示すイメージング装置で実行されるイメージングプログラムのフローチャートである。
図6は、
図1に示すイメージング装置が備える画像表示部に表示される画像の一例である。
なお、以下では、説明の都合上、
図1、
図2および
図6中の上側を「上(上方)」、下側を「下(下方)」と言う。
【0013】
図1に示すイメージング装置1は、被検者STの体内に注入された蛍光試薬(IR700)と上皮成長因子受容体(EGFR)の抗体を結合した治療薬(RM-1929)に対し励起光を照射し、この蛍光試薬(IR700)から放射される蛍光を撮影するための装置である。イメージング装置1を用いることにより、後述するように、被検者STに対して光免疫療法を行う際に、例えば被検者STの治療位置、治療効果(つまり、治療の進捗)を確認することができる。
【0014】
イメージング装置1は、4個の車輪13を備えた台車11と、この台車11の上面における台車11の進行方向の前方(
図2および
図3における左方向)付近に配設されたアーム機構30と、このアーム機構30にサブアーム41を介して配設された照明・撮影部12と、モニタである画像表示部15とを備える。台車11の進行方向の後方には、台車11を移動するときに使用されるハンドル14が付設されている。また、台車11の上面には、このイメージング装置1を遠隔操作するためのリモコンを装着するための凹部16が形成されている。
【0015】
また、詳細は後述するが、イメージング装置1に電源が入力されると、イメージングプログラムが実行され(つまり、
図5に示す各ステップが実行され)、画像表示部15に可視画像IM1、蛍光画像IM2、合成画像IM3が表示される(
図6)。
【0016】
上述したアーム機構30は、台車11の進行方向の前方側に配設されている。このアーム機構30は、台車11の進行方向の前方側に立設された支柱36上に配設された支持部37に対して、ヒンジ部33により連結された第1アーム部材31を備える。この第1アーム部材31は、ヒンジ部33の作用により、支柱36および支持部37を介して、台車11に対して揺動可能となっている。なお、上述した画像表示部15は、支柱36に付設されている。
【0017】
この第1アーム部材31の上端には、第2アーム部材32がヒンジ部34により連結されている。この第2アーム部材32は、ヒンジ部34の作用により、第1アーム部材31に対して揺動可能となっている。
このため、第1アーム部材31と第2アーム部材32とは、
図2において符合Cを付した仮想線で示すように、第1アーム部材31と第2アーム部材32とが第1アーム部材31と第2アーム部材32との連結部であるヒンジ部34を中心として所定の角度開いた撮影姿勢と、
図1から
図3において符合Aを付した実線で示すように、第1アーム部材31と第2アーム部材32とが近接する待機姿勢とをとることが可能となっている。
【0018】
第2アーム部材32の下端には、支持部43がヒンジ部35により連結されている。この支持部43は、ヒンジ部35の作用により、第2アーム部材32に対して揺動可能となっている。この支持部43には、回転軸42が支持されている。そして、照明・撮影部12を支持したサブアーム41は、第2アーム部材32の先端に配設された回転軸42を中心に回動する。
このため、照明・撮影部12は、このサブアーム41の回動により、
図1から
図3において符合Aを付した実線で、あるいは、
図2において符合Cを付した仮想線で示すように、撮影姿勢または待機姿勢をとるためのアーム機構30に対して台車11の進行方向の前方側の位置と、
図2および
図3において符合Bを付した仮想線で示すように、台車11を移動させる時の姿勢であるアーム機構30に対して台車11の進行方向の後方側の位置との間を移動する。
【0019】
図4に示すように、照明・撮影部12は、光源部24と、光源制御部25と、ズームレンズ26と、プリズム27と、白色光センサ28と、励起光センサ29とを備えている。イメージング装置1を用いる際には、照明・撮影部12を被検者STの患部から数十cm程度離間させた状態とするのが好ましい。
【0020】
光源部24は、白色光源である第1の光源241と、励起用光源である第2の光源242とを備えている。第1の光源241が点灯すると、被検者STに向けて白色光が照射され、白色光の反射光が被検者STによって反射され白色光センサ28によって検出される。
【0021】
第2の光源242は、蛍光試薬(IR700)を励起させるための励起光を照射する。第2の光源242が点灯すると、被検者STに向けて波長600~700nmの近赤外光(励起光)が照射され、被検者STに投与された治療薬(RM-1929)の蛍光試薬(IR700)が励起される。
そして、蛍光試薬(IR700)が励起されると、ピークが700又は770nm程度の近赤外光が蛍光として放射され、励起光センサ29によって検出される。なお、長時間にわたって励起光が照射されると、蛍光試薬(IR700)の反応が進んでしまい、意図せずに治療が進んでしまうこととなるため、本実施形態においては、励起光センサ29の1フィールド分の撮像時間(例えば、16msec)に対応した時間だけパルス点灯するようになっている(詳細は後述)。
【0022】
光源制御部25は、第1の光源241の点灯を制御する機能を有している。この機能により、第1の光源241に白色光の照射およびその停止をさせることができる。
また、光源制御部25は、第2の光源242の点灯を制御する機能を有している。この機能により、この機能により、第2の光源242に励起光の照射およびその停止をさせることができる。
なお、光源制御部25は、イメージング装置1を全体的に制御する制御部17に接続されており、制御部17からの指示に従って第1の光源241及び第2の光源242の点灯を制御する。
【0023】
ズームレンズ26には、被検者STで反射した反射光(白色光)と、被検者ST内の蛍光試薬(IR700)で発生した蛍光とが入射する。そして、このズームレンズ26により、反射光(白色光)は白色光センサ28に結像し、蛍光は励起光センサ29に結像するようになっている。
プリズム27には、ズームレンズ26からの光、すなわち、白色光および蛍光が入射するが、プリズム27に入射した白色光および蛍光は、プリズム27によって分離され、白色光は白色光センサ28に向かい、蛍光は励起光センサ29に向かうように構成されている。
【0024】
白色光センサ28は、プリズム27により分離された反射光(白色光)の一部を検出する撮像素子であり、例えば、NTSC(National Television System Committee)のフレームレート(30フレーム/秒(60フィールド/秒))で被検者STの可視画像を撮像する。
また、励起光センサ29は、プリズム27により分離された近赤外光(蛍光)の一部を検出する撮像素子であり、NTSCのフレームレート(例えば、30フレーム/秒(60フィールド/秒))で被検者STの蛍光画像を撮像する。
【0025】
また、
図4に示すように、イメージング装置1は、制御部17と、画像形成部18と、画像合成部19と、記憶部20と、操作部10とを備えている。これら各部は、台車11に配置されている。
【0026】
制御部17は、論理演算を実行するCPU、装置の制御に必要な動作プログラムが格納されたROM、制御時にデータ等が一時的にストアされるRAM等から構成され、装置全体を制御する機能を備えている。
制御部17は、光源制御部25、画像形成部18、画像合成部19、画像表示部15、記憶部20、操作部10と電気的に接続されており、イメージング装置1に電源が入力されると、記憶部20に記憶されたイメージングプログラムを読み出し、これら各部を制御する。
【0027】
画像形成部18には、白色光センサ28によって検出された反射光(白色光)と、励起光センサ29によって検出された近赤外光(蛍光)とが入力される。そして、画像形成部18は、白色光センサ28によって検出された反射光(白色光)を、RGB(赤、緑、青)の3色により構成される24ビット(=3×8)の可視画像IM1として形成する。
また、画像形成部18は、励起光センサ29によって検出された近赤外光(蛍光)を、8ビットの蛍光画像IM2として形成する。
本実施形態においては、画像形成部18は、白色光が照射された被検者STをNTSCのフレームレートで撮影することにより、可視画像IM1を取得する第1の撮影部181と、蛍光試薬(IR700)で発生した蛍光をNTSCのフレームレートで撮影することにより、蛍光画像IM2を取得する第2の撮影部182として機能する。
【0028】
画像合成部19は、画像形成部18により形成された可視画像IM1と、蛍光画像IM2とを合成して、合成画像IM3を形成する(生成する)。
図6に示すように、本実施形態においては、可視画像IM1、蛍光画像IM2、合成画像IM3は、画像表示部15に一括して表示されるようになっている。
そして、合成画像IM3を観察することにより、医師は、被検者STの治療位置、治療効果(つまり、治療の進捗)を正確に把握することができるようになっている。
【0029】
記憶部20は、制御部17で実行されるイメージングプログラム、画像形成部18により形成された蛍光画像IM2等を保存するように構成されている。
【0030】
操作部10は、イメージング装置1の操作を行うユーザインターフェースである。例えば、操作部10は、光源部24からの光の照射、照射の停止、明るさおよび感度の調整、画像表示部15に表示される画像の表示方法などを操作するように構成されている。
【0031】
次に、
図5を参照し、制御部17で実行されるイメージングプログラムについて説明する。イメージングプログラムは、イメージング装置1に電源が入力されたときに、記憶部20から読み出され、制御部17で実行される処理である。
【0032】
図5に示すように、イメージングプログラムが実行されると、制御部17は、光源制御部25を制御し、第1の光源241を点灯させる。第1の光源241が点灯すると、被検者STに向けて白色光が照射される。ステップS101の処理が終了すると、処理はステップS103に進む。
【0033】
ステップS103では、制御部17は、画像形成部18の第1の撮影部181を制御し、画像形成部18にNTSCのフレームレートで入力される白色光センサ28のデータから可視画像IM1を取得する。ステップS103の処理が終了すると、処理はステップS105に進む。
【0034】
ステップS105では、制御部17は、画像合成部19、画像表示部15を制御し、ステップS103で取得した可視画像IM1を画像合成部19に送ると共に、画像表示部15に可視画像IM1を表示する。ステップS105の処理が終了すると、処理はステップS107に進む。
【0035】
ステップS107では、制御部17は、操作部10の励起光スイッチ(励起光を照射するためのスイッチ)がオンされたか否かを判断する。そして、励起光スイッチがオンされた場合には、処理はステップS109に進み、励起光スイッチがオフされている場合には、処理はステップS115に進む。
【0036】
ステップS109では、制御部17は、光源制御部25を制御し、第2の光源242をパルス点灯させる。
図7は、本実施形態の第2の光源242のパルス点灯のタイミングと、励起光スイッチの操作(操作部10)のタイミングと、励起光センサ29のフレームレートの関係を示すタイミングチャートである。
なお、
図7においては、操作部10において励起光スイッチがオンされたときのタイミングを負論理のパルス信号で示し、励起光センサ29の各フィールドの区切りを負論理のパルス信号で示し、第2の光源242の点灯のタイミングを正論理のパルス信号で示している。
図7に示すように、励起光センサ29は、60Hz(16msec周期)で各フィールドの画像信号を出力している。
そして、ステップS107で励起光スイッチがオンされたと判断されると、制御部17は、励起光センサ29の次のフィールド(又はフレーム)と同期させて、第2の光源242を16msec(つまり、1フィールドの期間)点灯させる。
このように第2の光源242がパルス点灯すると、被検者STに向けて励起光が照射される。ステップS109の処理が終了すると、処理はステップS111に進む。
【0037】
ステップS111では、制御部17は、画像形成部18の第2の撮影部182を制御し、画像形成部18にNTSCのフレームレートで入力される励起光センサ29のデータから蛍光画像IM2を取得する。
より具体的には、本実施形態においては、ステップS109において1フィールドの期間だけ第2の光源242がパルス点灯するため、この期間の蛍光画像IM2を取得して記憶部20に保存する。ステップS111の処理が終了すると、処理はステップS113に進む。
【0038】
ステップS113では、制御部17は、画像合成部19、画像表示部15を制御し、ステップS111で取得し、保存した蛍光画像IM2を画像合成部19に送ると共に、画像表示部15に蛍光画像IM2を表示する。
このように、本実施形態においては、ステップS109~S113によって、励起光センサ29の1フレーム分の撮像時間(例えば、16msec)に対応した時間だけ励起光をパルス点灯させて、蛍光画像IM2を取得するように構成し、励起光が長時間にわたって照射されないようになっている。ステップS113の処理が終了すると、処理はステップS115に進む。
【0039】
ステップS115では、制御部17は、画像合成部19を制御し、ステップS103で取得した可視画像IM1とステップS111で取得した蛍光画像IM2を重畳して合成し、合成画像IM3を生成する。
ステップS115の処理が終了すると、処理はステップS117に進む。
【0040】
ステップS117では、制御部17は、画像表示部15を制御し、ステップS115で生成した合成画像IM3を画像表示部15に表示する。ステップS117の処理が終了すると、処理はステップS119に進む。
【0041】
ステップS119では、制御部17は、操作部10の停止スイッチ(イメージングプログラムを終了するためのスイッチ)がオンされたか否かを判断する。
そして、停止スイッチがオンされた場合には、制御部17はイメージングプログラムを終了し、停止スイッチがオフである場合には、処理はステップS103に戻る。
【0042】
このように、本実施形態のイメージング装置1によって合成画像IM3が得られると(つまり、イメージングプログラムが実行されると)、医師は、合成画像IM3を観察することにより、被検者STの治療位置、治療効果(つまり、治療の進捗)を正確に把握することができる。
また、本実施形態においては、ステップS109~S113によって、励起光センサ29の1フレーム分の撮像時間(例えば、16msec)に対応した時間だけ励起光をパルス点灯させて、蛍光画像IM2を取得するため、励起光が長時間にわたって照射されることはなく、意図せずに治療が進んでしまうこともない。
なお、仮に1回の光免疫療によって照射される励起光の総照射時間を333秒とすると、本実施形態のステップS109~S113によって照射される励起光は、全照射エネルギーの2万分の1であるため、治療が進んでしまうことはないと考えられるが、治療を進行させないという観点からは、第2の光源242のパルス点灯は1回であることが好ましい。
しかし、治療を進行させない範囲において、複数回の照射(つまり、複数回の蛍光画像IM2の取得)を行ってもよい。
【0043】
以上が本発明の実施形態の説明であるが、本発明は、上記の実施形態の構成に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で様々な変形が可能である。
【0044】
例えば、本実施形態においては、S109~S113によって、励起光センサ29の1フレーム分の撮像時間(例えば、16msec)に対応した時間だけ励起光をパルス点灯させて、蛍光画像IM2を取得するように構成したが、このような構成に限定されるものではない。
【0045】
<変形例1>
図8は、本実施形態の変形例1として示す、第2の光源242のパルス点灯のタイミングと、励起光スイッチの操作(操作部10)のタイミングと、励起光センサ29のフレームレートの関係を示すタイミングチャートである。
なお、
図8においては、
図7と同様、操作部10において励起光スイッチがオンされたときのタイミングを負論理のパルス信号で示し、励起光センサ29の各フィールドの区切りを負論理のパルス信号で示し、第2の光源242の点灯のタイミングを正論理のパルス信号で示している。
図8に示すように、本変形例においては、ステップS107で励起光スイッチがオンされたと判断されると、制御部17は、励起光センサ29のフィールドに同期させることなく(つまり、非同期で)、第2の光源242を33msec(つまり、2フィールド(1フレーム)の期間)点灯させる点で、本実施形態の構成と異なる。このように第2の光源242が33msec(つまり、2フィールド(1フレーム)の期間)パルス点灯しても、意図せずに治療が進んでしまうことはなく、医師は、合成画像IM3を観察することにより、被検者STの治療位置、治療効果(つまり、治療の進捗)を正確に把握することができる。
【0046】
また、本実施形態においては、光源部24が、白色光源である第1の光源241と、励起用光源である第2の光源242とを備えているものとして説明したが、このような構成に限定されるものではない。
【0047】
<変形例2>
図9は、本実施形態の変形例2として示す、イメージング装置2の主要な制御系を示すブロック図である。
本変形例のイメージング装置2においては、光源部24が第2の光源242を含まず、第2の光源242に代わる励起光光源70が、照明・撮影部12とは別体で設けられている点で、本実施形態の構成と異なる。
本変形例の励起光光源70も、第2の光源242と同様、光源制御部25によって制御される。このように励起光光源70を光源部24と別体とした場合でも、医師は、合成画像IM3を観察することにより、被検者STの治療位置、治療効果(つまり、治療の進捗)を正確に把握することができる。
なお、励起光光源70からの励起光を治療位置や治療効果を把握するためのモニタ光と用いるだけではなく、治療光として用いること(つまり、励起光光源70を治療用光源として用いる)ことも可能である。
なお、その場合イメージング装置2は、治療装置として用いられることとなる。
また、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。
本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0048】
(第1項)
一態様に係るイメージング装置は、
蛍光色素を含む治療薬が投与された被検者の治療部位に向けて、前記蛍光色素を励起させる励起光を照射する励起用光源と、前記治療部位を撮像し、可視動画像を取得する第1の撮像部と、前記励起光が照射されているときに、前記治療部位の前記蛍光色素から発生した蛍光を撮像することにより、蛍光画像を取得する第2の撮像部と、
前記可視動画像に前記蛍光画像を重畳して、合成画像を生成する合成画像生成部と、
前記合成画像を表示する画像表示部と、
を備え、前記励起用光源は、所定のパルス幅の前記励起光を照射する。
【0049】
第1項に記載のイメージング装置によれば、医師は、合成画像を観察することにより、被検者の治療位置、治療効果(つまり、治療の進捗)を正確に把握することができる。また、励起光はパルス点灯されるため、意図せずに治療が進むことはない。
【0050】
(第2項)
第1項に記載のイメージング装置において、前記所定のパルス幅が、前記第2の撮像部の撮像タイミングと同期した、1フィールド分の時間である。
【0051】
第2項に記載のイメージング装置によれば、第2の撮像部の撮像タイミングと同期した、最低限の励起光によって蛍光画像を得ることができる。
【0052】
(第3項)
第2項に記載のイメージング装置において、前記所定のパルス幅が、略16msである。
【0053】
第3項に記載のイメージング装置によれば、NTSCの1フィールド分の時間で蛍光画像を得ることができる。
【0054】
(第4項)
第1項に記載のイメージング装置において、
前記所定のパルス幅が、前記第2の撮像部の撮像タイミングと非同期の、2フィールド分の時間である。
【0055】
第4項に記載のイメージング装置によれば、第2の撮像部の撮像タイミングと非同期の、最低限の励起光によって蛍光画像を得ることができる。
【0056】
(第5項)
第4項に記載のイメージング装置において、前記所定のパルス幅が、略33msである。
【0057】
第5項に記載のイメージング装置によれば、NTSCの2フィールド分の時間で蛍光画像を得ることができる。
【0058】
(第6項)
第1項から第5項のいずれか一項に記載のイメージング装置において、前記励起光が、600~700nmの波長の光である。
【0059】
第6項に記載のイメージング装置によれば、蛍光色素を確実に励起させることができる。
【0060】
(第7項)
一態様に係る治療装置は、第1項から第5項のいずれか一項に記載のイメージング装置と、前記治療部位に向けて、前記蛍光色素を励起させる治療光を照射する治療用光源と、を備える。
【0061】
第7項に記載の治療装置によれば、第1項から第5項のいずれか一項に記載のイメージング装置によって被検者を治療することができる。
【0062】
(第8項)
一態様に係るイメージング方法は、蛍光色素を含む治療薬が投与された被検者の治療部位に向けて、前記蛍光色素を励起させる励起光を照射する工程と、
前記治療部位を撮像し、可視動画像を取得する工程と、
前記励起光が照射されているときに、前記治療部位の前記蛍光色素から発生した蛍光を撮像することにより、蛍光画像を取得する工程と、
前記可視動画像に前記蛍光画像を重畳して、合成画像を生成する工程と、
前記合成画像を表示する工程と、
を含み、
前記励起光を照射する工程は、所定のパルス幅の前記励起光を照射する。
【0063】
第8項に記載のイメージング方法によれば、医師は、合成画像を観察することにより、被検者の治療位置、治療効果(つまり、治療の進捗)を正確に把握することができる。また、励起光はパルス点灯されるため、意図せずに治療が進むことはない。
【0064】
(第9項)
第8項に記載のイメージング方法において、前記励起光を照射する工程は、前記所定のパルス幅の前記励起光を1回だけ、もしくはユーザの照射トリガーにより照射する。
【0065】
第9項に記載のイメージング方法によれば、最低限の励起光しか照射されず意図せずに治療が進むことはない。
【0066】
(第10項)
第8項又は第9項に記載のイメージング方法において、前記合成画像を生成する工程は、前記蛍光画像から蛍光を検出し、その静止画を前記可視動画像と重畳する。
【0067】
第10項に記載のイメージング方法によれば、医師は、合成画像を観察することにより、被検者の治療位置、治療効果(つまり、治療の進捗)を正確に把握することができる。
【0068】
(第11項)
第8項から第10項のいずれか一項に記載のイメージング方法において、前記所定のパルス幅が、前記蛍光画像の撮像タイミングと同期した、1フィールド分の時間である。
【0069】
第11項に記載のイメージング方法によれば、蛍光画像の撮像タイミングと同期した、最低限の励起光によって蛍光画像を得ることができる。
【0070】
(第12項)
第11項に記載のイメージング方法において、前記所定のパルス幅が、略16msである。
【0071】
第12項に記載のイメージング方法によれば、NTSCの1フィールド分の時間で蛍光画像を得ることができる。
【0072】
(第13項)
第8項から第10項のいずれか一項に記載のイメージング方法において、前記所定のパルス幅が、前記蛍光画像の撮像タイミングと非同期の、2フィールド分の時間である。
【0073】
第13項に記載のイメージング方法によれば、蛍光画像の撮像タイミングと非同期の、最低限の励起光によって蛍光画像を得ることができる。
【0074】
(第14項)
第13項に記載のイメージング方法において、前記所定のパルス幅が、略33msである。
【0075】
第14項に記載のイメージング方法によれば、NTSCの2フィールド分の時間で蛍光画像を得ることができる。
【0076】
(第15項)
第8項から第14項のいずれか一項に記載のイメージング方法において、前記励起光が、600~700nmの波長の光である。
【0077】
第15項に記載のイメージング方法によれば、蛍光色素を確実に励起させることができる。
【符号の説明】
【0078】
1 :イメージング装置
2 :イメージング装置
10 :操作部
11 :台車
12 :撮影部
13 :車輪
14 :ハンドル
15 :画像表示部
16 :凹部
17 :制御部
18 :画像形成部
19 :画像合成部
20 :記憶部
24 :光源部
25 :光源制御部
26 :ズームレンズ
27 :プリズム
28 :白色光センサ
29 :励起光センサ
30 :アーム機構
31 :第1アーム部材
32 :第2アーム部材
33 :ヒンジ部
34 :ヒンジ部
35 :ヒンジ部
36 :支柱
37 :支持部
41 :サブアーム
42 :回転軸
43 :支持部
70 :励起光光源
181 :第1の撮影部
182 :第2の撮影部
241 :第1の光源
242 :第2の光源
A :符合
B :符合
C :符合
IM1 :可視画像
IM2 :蛍光画像
IM3 :合成画像
ST :被検者