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特開2024-38086農業環境のための光拡散反射性カーテン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038086
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】農業環境のための光拡散反射性カーテン
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20240312BHJP
   A01G 9/14 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
A01G7/00 601B
A01G7/00 601Z
A01G9/14 S
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023217953
(22)【出願日】2023-12-25
(62)【分割の表示】P 2021546370の分割
【原出願日】2020-02-07
(31)【優先権主張番号】62/803,162
(32)【優先日】2019-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】391028362
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【弁理士】
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー ビー.ダンカン
(72)【発明者】
【氏名】エドワード エイチ.カリー
(57)【要約】
【課題】制御された環境の農業システムを提供すること。
【解決手段】制御された環境の農業システムは、少なくとも90%の反射率値を有する多孔質膜を有する反射性カーテン(100,600)を含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも90%の反射率値を有する多孔質膜を含む反射性カーテンを含んでなる、制御された環境での農業システム。
【請求項2】
光源と、前記反射性カーテンによって拡散される該光源からの光を受けるように配置された光合成生物とをさらに含む、請求項1記載の制御された環境での農業システム。
【請求項3】
前記膜は、約980mbar~約1040mbarの大気圧において通気性である、請求項1又は2記載の制御された環境での農業システム。
【請求項4】
400nm~450nmの第一の波長範囲での膜の第一の平均反射率値が、450nm~750nmの第二の波長範囲での第二の平均反射率値よりも低い、請求項1~3のいずれか1項記載の制御された環境での農業システム。
【請求項5】
前記多孔質膜の反射率値が少なくとも95%である、請求項1~4のいずれか1項記載の制御された環境での農業システム。
【請求項6】
前記多孔質膜の反射率値が少なくとも98%である、請求項5記載の制御された環境での農業システム。
【請求項7】
前記膜は延伸フルオロポリマーを含む、請求項1~6のいずれか1項記載の制御された環境での農業システム。
【請求項8】
前記延伸フルオロポリマーは延伸ポリテトラフルオロエチレンである、請求項7記載の制御された環境での農業システム。
【請求項9】
光が前記反射性カーテンによって反射されるように前記反射性カーテンに隣接して操作可能に配置された少なくとも1つの光源をさらに含む、請求項1~8のいずれか1項記載の制御された環境での農業システム。
【請求項10】
前記反射性カーテンは、光合成生物を覆うように構成されたエンクロージャを形成する、請求項1~9のいずれか1項記載の制御された環境での農業システム。
【請求項11】
前記膜はまた、少なくとも1つの他のガスに対しても透過性である、請求項3記載の制御された環境での農業システム。
【請求項12】
前記他のガスは、硫化水素、エチレン及びそれらの組み合わせから選ばれた少なくとも1つを含む、請求項11記載の制御された環境での農業システム。
【請求項13】
前記反射性カーテンが0.100mm~0.400mmの厚さを有する、請求項1~12のいずれか1項記載の制御された環境での農業システム。
【請求項14】
前記反射性カーテンが0.4未満のドレープ係数を有する、請求項1~13のいずれか1項記載の制御された環境での農業システム。
【請求項15】
前記反射性カーテンが0.50g/cc未満の密度を有する、請求項1~14のいずれか1項記載の制御された環境での農業システム。
【請求項16】
前記少なくとも1つの光源が前記反射性カーテン上に配置され、さらに前記反射性カーテンが、その上に配置され、かつ、前記少なくとも1つの光源と操作可能に結合された少なくとも1つの導電性トレースアレイを含む、請求項9又は10記載の制御された環境での農業システム。
【請求項17】
前記反射性カーテンは、少なくとも部分的に互いに結合された2つの反射層を含み、前記少なくとも1つの光源及び前記少なくとも1つの導電性トレースが、前記反射性カーテンの前記2つの反射層の間に配置されている、請求項16記載の制御された環境での農業システム。
【請求項18】
前記反射性カーテン上の少なくとも1つの位置が前記反射性カーテンの残りの部分よりも透明であり、かつ、前記少なくとも1つの光源が前記少なくとも1つの位置に配置されている、請求項16又は17記載の制御された環境での農業システム。
【請求項19】
前記反射性カーテン上の少なくとも1つの位置がレンズを形成し、かつ、前記少なくとも1つの光源が該少なくとも1つの位置に配置されている、請求項16又は17記載の制御された環境での農業システム。
【請求項20】
制御された環境での農業システムを組み立てる方法であって、前記方法は、
植物に隣接して少なくとも90%の反射率値を有する多孔質膜を含む反射性カーテンを配置すること、及び
光源を操作して、前記反射性カーテンから前記植物に向けて反射される光を提供すること、
を含んでなる方法。
【請求項21】
前記光源を操作することは、前記反射性カーテンに含まれる光源に出力供給することを含む、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記反射性カーテンは、前記反射性カーテンの表面上に少なくとも1つの導電性トレースアレイを含み、前記少なくとも1つの導電性トレースアレイは前記光源と操作可能に結合されている、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記反射性カーテンは、前記光源がポリマーフィルム層と反射性カーテンの間に配置されるように、少なくとも部分的に互いに結合された第一の層及び第二の層をさらに含む、請求項21又は22記載の方法。
【請求項24】
前記第一の層及び第二の層の少なくとも1つの表面は、前記光源が配置されている位置で実質的に透明である、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記反射性カーテンを配置することは、周囲の正圧空気流が前記反射性カーテンを変形させ、そして前記植物に対する前記反射性カーテンの表面角度を変化させるように前記反射性カーテンをドレープさせることを含む、請求項20~24のいずれか1項記載の方法
【請求項26】
前記反射性カーテンの表面角度を変化させることは、光が前記反射性カーテンによって反射又は散乱される方向を変化させる、請求項25記載の方法。
【請求項27】
反射性カーテンの製造方法であって、前記方法は、
少なくとも90%の反射率値を有する第一のフィルムの表面上に少なくとも1つの導電性トレースアレイを適用すること、
前記第一のフィルムの表面上に光源を配置すること、ここで、前記少なくとも1つの導電性トレースアレイは前記光源と操作可能に結合されている、
第二のフィルムの表面上に接着剤を適用すること、及び、
前記光源が前記第一のフィルムと前記第二のフィルムとの間に配置されるように、前記第一のフィルムの表面を前記第二のフィルムの表面と少なくとも部分的に結合することによって反射性カーテンを形成すること、
を含む、方法。
【請求項28】
前記ポリマーフィルムの層の表面を溶媒で湿潤化させることをさらに含み、前記ポリマーフィルムの層と前記反射性カーテンが少なくとも部分的に結合されているときに、前記ポリマーフィルムの表面は、前記光源が配置される位置で湿潤化されている、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記反射性カーテンが0.100mm~0.400mmの厚さを有する、請求項27又は28記載の方法。
【請求項30】
前記反射性カーテンが0.4未満のドレープ係数を有する、請求項27~29のいずれか1項記載の方法。
【請求項31】
前記反射性カーテンが0.50g/cc未満の密度を有する、請求項27~30のいずれか1項記載の方法。
【請求項32】
少なくとも80%の反射率値及び0.4未満のドレープ係数を有する多孔質膜を含む反射性カーテンを含む、制御された環境での農業システム。
【請求項33】
前記反射性カーテンが0.100mm~0.400mmの厚さを有する、請求項32記載の制御された環境での農業システム。
【請求項34】
前記反射性カーテンが0.50g/cc未満の密度を有する、請求項32又は33の制御された環境での農業システム。
【請求項35】
光源と、前記反射性カーテンによって拡散される光源からの光を受けるように配置された光合成生物とをさらに含む、請求項32~34のいずれか1項記載の制御された環境での農業システム。
【請求項36】
前記光合成生物は、前記光合成生物が所定の高さ又はサイズを超えて成長するときに前記反射性カーテンの位置を変化させるように構成されている、請求項35記載の制御された環境での農業システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2019年2月8日に出願された米国仮出願第62/803,162号の利益を主張し、その主題を参照により本明細書に明示的に取り込む。
【0002】
本開示は、一般に、光拡散性膜、より具体的には、農業環境のための制御された光拡散反射性膜に関する。
【背景技術】
【0003】
屋内農業は、様々な理由で、近年、より人気が高まっている。屋内農業は、一般に、キャノピーライトなどの成長用照明を使用する。成長している特定の種に応じて、植物の成長は、通常、栄養素、光及び二酸化炭素の組み合わせの利用可能性から生じる。植物はクロロフィル及び他の色素を使用して光からエネルギーを吸収し、それを光合成によって植物が使用できるエネルギーに変換する。例えば、すべての植物に含まれるクロロフィルaは、紫青及びオレンジ赤の光スペクトルの波長からほとんどのエネルギーを吸収する。したがって、農民などの農業従事者は、植物及びその色素に関する知識を使用して、特定の成長用光を調整し、エネルギーを節約し、特定の植物又は生物の味、栄養価及び/又は薬効を変更するために使用することができる。
【0004】
特定の種類の屋内農業は、屋外農業と比較して独特の方法で水を使用することができる。例えば、水耕栽培は通常、植物の成長に土壌を使用せず、代わりに、植物の根がさらされる水溶媒中で植物が成長するために必要な栄養素及びミネラルを含む。土壌の代わりに、植物はパーライト又は砂利などの不活性媒体によって支持される。また、閉ループ灌漑システムは、幾つかの水耕栽培操作に組み込まれることがある。閉ループ灌漑は、地下水及び土壌から来る可能性のある汚染物質がシステムに入るのを防ぎながら、水の使用量の半分以上を節約し、使用する肥料の量を減らす。
【0005】
リスク低減はまた、制御された環境での農業の人気における主要な要因であることができる。例えば、植物が伝統的な屋外農業で栽培されているときに、有害生物、病気、悪天候及びその他の原因による収穫損失のリスクがより高くなる。また、農産物輸送のビジネスにおける現在の慣行は、熟す前に果物などの農産物を収穫し、その結果、農場から農産物のそれぞれの目的地までの長い輸送中に農産物を熟させる。これは、成熟後に農産物を収穫すると、輸送中に農産物が損なわれ、又は、保管寿命が短すぎる可能性があるからである。さらに、成熟前に収穫された農産物は、収穫前に熟成させた新鮮な農産物よりも栄養価が低いことが知られている。さらに、食用植物及び果物を生み出す可能性のある植物を地元で栽培して、食料供給元からレストラン、スーパーマーケット及び地元のファーマーズマーケットなどの流通業者までの距離を縮めることで、輸送コストを削減し、地元調達を通じて鮮度を確保するのを支援することができる。さらに、屋内栽培環境は一般に他の方法よりもクリーンであるため、大腸菌汚染などの人為的ミスの可能性を低減する。
【発明の概要】
【0006】
本明細書に開示されるのは、制御された環境における農業システムである。1つの例(「例1」)によれば、農業システムは、少なくとも90%の反射率値を有する多孔質膜を含む反射性カーテンを含む。
【0007】
例1に加えて別の例(「例2」)によれば、農業システムは、光源と、反射性カーテンによって拡散される光源からの光を受けるように配置された光合成生物とをさらに含む。
【0008】
例1又は2に加えて別の例(「例3」)によれば、前記膜は、約980mbar~約1040mbarの大気圧において通気性である。
【0009】
先行のいずれかの例に加えて別の例(「例4」)によれば、400nm~450nmの第一の波長範囲での膜の第一の平均反射率値は、450nm~750nmの第二の波長範囲での第二の平均反射率値よりも低い。
【0010】
先行のいずれかの例に加えて別の例(「例5」)によれば、前記多孔質膜の反射率値は少なくとも95%である。
【0011】
例5に加えて別の例(「例6」)によれば、前記多孔質膜の反射率値は少なくとも98%である。
【0012】
先行のいずれかの例に加えて別の例(「例7」)によれば、前記膜は、延伸フルオロポリマーを含む。
【0013】
例7に加えて別の例(「例8」)によれば、前記延伸フルオロポリマーは、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)である。
【0014】
先行のいずれかの例に加えて別の例(「例9」)によれば、前記農業システムは、光が前記反射性カーテンによって反射されるように前記反射性カーテンに隣接して操作可能に配置された光源をさらに含む。
【0015】
先行のいずれかの例に加えて別の例(「例10」)によれば、前記反射性カーテンは、光合成生物を覆うように構成されたエンクロージャを形成する。
【0016】
例3に加えて別の例(「例11」)によれば、前記膜はまた、少なくとも1つの他のガスに対して透過性である。
【0017】
例11に加えて別の例(「例12」)によれば、前記他のガスは、硫化水素及びエチレンのうちの少なくとも1つを含む。
【0018】
別の例(「例13」)によれば、温室は少なくとも1つの側壁及び天井を含む。少なくとも1つの側壁及び天井は、少なくとも部分的に、少なくとも90%の反射率値を有する多孔質膜を含む。
【0019】
別の例(「例14」)によれば、光源用のコンプライアントリフレクタは、少なくとも90%の反射率値を有する多孔質膜を含む。
【0020】
別の例(「例15」)によれば、セルフクリーニングリフレクタは、少なくとも90%の反射率値を有する多孔質膜を含む。前記リフレクタは前記多孔質膜を通して空気を吹き込むことでクリーニング可能である。
【0021】
例15に加えて別の例(「例16」)によれば、前記セルフクリーニングリフレクタは、前記多孔質膜をクリーニングするために前記多孔質膜を通して加圧空気をデリバリーするように構成された、前記多孔質膜と操作可能に関連された加圧空気源をさらに含む。
【0022】
別の例(「例17」)によれば、スペクトル特異的温室材料は、少なくとも90%の反射率値を有する多孔質膜を含む。400nm~450nmの第一の波長範囲での膜の第一の平均反射率値は、450nm~750nmの第二の波長範囲での第二の平均反射率値よりも低い。
【0023】
例1~12のいずれか1つに加えて1つの例(「例18」)によれば、前記反射性カーテンは、0.100mm~0.400mmの厚さを有する。
【0024】
例1~12及び18のいずれか1つに加えて1つの例(「例19」)によれば、前記反射性カーテンは、0.4未満のドレープ係数を有する。
【0025】
例1~12、18及び19のいずれか1つに加えて1つの例(「例20」)によれば、前記反射性カーテンは、0.50g/cc未満の密度を有する。
【0026】
例9又は10に加えて1つの例(「例21」)によれば、前記少なくとも1つの光源は前記反射性カーテン上に配置され、前記反射性カーテンは、その上に配置され、前記少なくとも1つの光源と操作可能に結合された少なくとも1つの導電性トレースアレイをさらに含む。
【0027】
例21に加えて1つの例(「例22」)によれば、前記反射性カーテンは、少なくとも部分的に互いに結合された2つの反射層を含み、前記少なくとも1つの光源及び前記少なくとも1つの導電性トレースは、前記反射性カーテンの前記2つの反射層の間に配置されている。
【0028】
例21又は22に加えて1つの例(「例23」)によれば、前記反射性カーテン上の少なくとも1つの位置は、前記反射性カーテンの残りの部分よりも透明であり、前記少なくとも1つの光源は前記少なくとも1つの位置に配置されている。
【0029】
例21又は22に加えて1つの例(「例24」)によれば、前記反射性カーテン上の少なくとも1つの位置はレンズを形成し、前記少なくとも1つの光源は前記少なくとも1つの位置に配置されている。
【0030】
1つの例(「例25」)によれば、制御された環境での農業システムを組み立てる方法が開示される。この方法は、植物に隣接して少なくとも90%の反射率値を有する多孔質膜を含む反射性カーテンを配置すること、及び、光源を操作して、前記反射性カーテンから前記植物に向けて反射される光を提供することを含む。
【0031】
例25に加えて1つの例(「例26」)によれば、前記光源を操作することは、前記反射性カーテンに含まれる光源に出力供給することを含む。
【0032】
例26に加えて1つの例(「例27」)によれば、前記反射性カーテンは、前記反射性カーテンの表面上に少なくとも1つの導電性トレースアレイを含み、前記少なくとも1つの導電性トレースアレイは前記光源と操作可能に結合されている。
【0033】
例26又は27に加えて1つの例(「例28」)によれば、前記反射性カーテンは、前記光源がポリマーフィルムの層と反射性カーテンの間に配置されるように、少なくとも部分的に互いに結合された第一の層及び第二の層をさらに含む。
【0034】
例28に加えて1つの例(「例29」)によれば、前記第一の層及び第二の層の少なくとも1つの表面は、前記光源が配置されている位置で実質的に透明である。
【0035】
例25~29のいずれか1つに加えて1つの例(「例30」)によれば、前記反射性カーテンを配置することは、周囲の正圧空気流が前記反射性カーテンを変形させ、そして前記植物に対する前記反射性カーテンの表面角度を変化させるように前記反射性カーテンをドレープさせることを含む。
【0036】
例25に加えて1つの例(「例31」)によれば、前記反射性カーテンの表面角度を変化させることは、光が前記反射性カーテンによって反射又は散乱される方向を変化させる。
【0037】
1つの例(「例32」)によれば、反射性カーテンの製造方法が開示される。この方法は、少なくとも90%の反射率値を有する第一のフィルムの表面上に少なくとも1つの導電性トレースアレイを適用すること、前記第一のフィルムの表面上に光源を配置すること、ここで、前記少なくとも1つの導電性トレースアレイは前記光源と操作可能に結合されている、第二のフィルムの表面上に接着剤を適用すること、及び、前記光源が前記第一のフィルムと前記第二のフィルムとの間に配置されるように、前記第一のフィルムの表面を前記第二のフィルムの表面と少なくとも部分的に結合することによって反射性カーテンを形成することを含む。
【0038】
例32に加えて1つの例(「例33」)によれば、この方法は、前記ポリマーフィルムの層の表面を溶媒で湿潤化させることをさらに含む。前記ポリマーフィルムの層と前記反射性カーテンが少なくとも部分的に結合されているときに、前記ポリマーフィルムの表面は、前記光源が配置される位置で湿潤化されている。
【0039】
例32又は33に加えて1つの例(「例34」)によれば、前記反射性カーテンは、0.100mm~0.400mmの厚さを有する。
【0040】
例32~34のいずれか1つに加えて1つの例(「例35」)によれば、前記反射性カーテンは、0.4未満のドレープ係数を有する。
【0041】
例32~35のいずれか1つに加えて1つの例(「例36」)によれば、前記反射性カーテンは、0.50g/cc未満の密度を有する。
【0042】
1つの例(「例37」)によれば、制御された環境での農業システムは開示され、前記システムは、少なくとも80%の反射率値及び0.4未満のドレープ係数を有する多孔質膜を含む反射性カーテンを含む。
【0043】
例37に加えて1つの例(「例38」)によれば、前記反射性カーテンは、0.100mm~0.400mmの厚さを有する。
【0044】
例37又は38に加えて1つの例(「例39」)によれば、前記反射性カーテンは、0.50g/cc未満の密度を有する。
【0045】
例37~39の1つに加えて1つの例(「例39」)によれば、前記制御された環境での農業システムは、光源及び前記反射性カーテンによって拡散される光源からの光を受けるように配置された光合成生物を含む。
【0046】
例39に加えて1つの例(「例40」)によれば、前記光合成生物は、前記光合成生物が所定の高さ又はサイズを超えて成長するときに前記反射性カーテンの位置を変化させるように構成されている。
【0047】
上記の例はまさに実施例であり、本開示によって他の方法で提供される本発明の概念のいずれかの範囲を制限又はさもなければ狭めるように読まれるべきではない。複数の例が開示されているが、さらに他の実施形態は、例示的な例を示して説明する以下の詳細な説明から当業者に明らかになるであろう。したがって、図面及び詳細な説明は、本質的に限定的なものではなく、本質的に例示的なものと考えられるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
添付の図面は、本開示のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に取り込まれ、その一部を構成し、実施形態を例示し、記載とともに、本開示の原理を説明するのに役立つ。
【0049】
図1図1は、少なくとも1つの実施形態による、光源と植物との間に位置する材料が光拡散を達成する農業環境を示す。
【0050】
図2図2は、少なくとも1つの実施形態による、光源及び植物のためのエンクロージャを形成する材料が光反射を達成する農業環境を示す。
【0051】
図3A図3Aは、少なくとも1つの実施形態による、拡散反射のために光が表面上を移動する様々な方向を示す。
【0052】
図3B図3Bは、少なくとも1つの実施形態による、拡散反射のために光が散乱されるときの入射光と拡散光との間の関係を示す。
【0053】
図3C図3Cは、少なくとも1つの実施形態による、高い拡散反射性を備えた表面を有する、本明細書に開示されるとおりの表面の拡大図である。
【0054】
図4図4は、少なくとも1つの実施形態による、本明細書に開示されるとおりの様々な材料の波長と反射率との間の関係を示すグラフ表示である。
【0055】
図5図5は、少なくとも1つの実施形態による、反射率と、該反射率によって達成できる反射の数との間の関係、ならびに、各反射後の残りの光エネルギーを示すグラフ表示である。
【0056】
図6図6は、2つの植物のうちの一方がePTFEカーテンによって囲まれ、他方がエンクロージャの外側に配置されている、1つの実施形態による屋内農業環境の図である。
【0057】
図7図7は、少なくとも1つの実施形態による、図6に示した環境で成長させた2つの植物の比較図である。
【0058】
図8図8は、少なくとも1つの実施形態による、植物用の反射性カーテンの設備を示す図解である。
【0059】
図9図9は、少なくとも1つの実施形態による、光源及びそれに取り付けられた金属トレースを備えた反射性カーテンの部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
定義及び用語
本開示は、限定的な方法で読まれることを意図するものではない。例えば、本出願で使用される用語は、その分野の用語がそのような用語に帰する意味の関係で広く読まれるべきである。
【0061】
不正確さの用語に関して、「約」及び「ほぼ」という用語は、交換可能に使用されて、記載された測定値を含み、この記載された測定値に合理的に近い測定値をも含む測定値を指すことができる。記載された測定値に合理的に近い測定値は、関連技術の当業者によって理解され、容易に確認されるように、合理的に少量だけ記載された測定値から逸脱している。このような逸脱は、例えば、測定誤差又は性能を最適化するために行われた小さな調整に起因することができる。当業者がそのような合理的に小さな差異の値を容易に確認できないと判断される場合には、「約」及び「ほぼ」という用語は、記載された値の±10%を意味するものと理解されうる。
【0062】
本明細書で使用される「拡散透過」という用語は、材料を通る光又は電磁波の通過又は移動であって、その後、光が散乱されるか、又は、一方向ビームが多くの方向に偏向されるものを指す。「拡散透過率」という用語は、光からの放射エネルギーを透過する際の材料の効力を記載する。
【0063】
本明細書で使用されるときに、「拡散反射」という用語は、光(例えば、一方向ビームから発生する)の散乱反射を指す。本明細書で使用されるときに、「拡散反射率」という用語は、光からの放射エネルギーを反射する際の材料の効力を記載する。
【0064】
様々な実施形態の説明
当業者は、本開示の様々な態様が、意図された機能を発揮するように構成された任意の数の方法及び装置によって実現できることを容易に理解するであろう。本明細書で参照される添付の図面は、必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではなく、本開示の様々な態様を例示するために誇張されていることがあり、その点で、図面は限定として解釈されるべきではないことにも留意されたい。「光合成生物」及び「植物」という用語は、本明細書では交換可能に使用され得ることも理解されたい。
【0065】
図1図3は、本開示によれば、光カーテンとしても記載される反射性カーテンの光学的特性及び物理的構造に関連する概念の例示である。図1及び図2において、反射性カーテン100は、光源102と、該光源102から可能な限り多くの光を受ける光合成生物(例えば、植物、藻類、細菌及び植物プランクトン)104との間に配置される。図1において、反射性カーテン100は、光が反射性カーテン100を透過し、反射性カーテン100の反対側で分散して、植物104に均一に又は実質的に均一に光を受けさせるように、光源102と植物104との間で直線的に近接して配置される。したがって、この例において、反射性カーテン100は、高い拡散透過率値を有する。図1の反射性カーテン100は、太陽と温室内の植物との間に位置する温室内で使用されるカバー材料に類似しており、植物の成長に有害である可能性がある外部の有害生物及び他の環境要因から植物を保護する。
【0066】
図2は、植物の周囲に形成されたエンクロージャを示しており、該エンクロージャは反射性カーテン100から形成されている。この例において、反射性カーテン100は、光源102からの光が反射性カーテン100の表面で様々な方向から植物104に向かって反射されるように高い反射率を有する。具体的には、図2中の反射性カーテン100は、植物がすべての方向からできるだけ多くの光を取得するために高い拡散反射率値を有する。図1に示される構成と比較して図2に示される構成を有することの利点の1つは、植物104が、より広い範囲の角度(例えば、180度を超える、270度を超える又は最大360度)からの光の反射のために、より多くの光を受けることができるということである。図2の反射性カーテン100は、温室に入った太陽光又は温室環境内で生成された光を封じ込めて分散させるために使用される。このプロセスの例は、図3A~3Cに示されている。
【0067】
図3A~3Cは、反射性カーテン100の拡散反射性に関する概念を示している。光線が表面で反射するときに、光線が反射する表面角度に応じて、光線が進む方向は変化する。そのため、表面がかなり滑らかな場合、光線は一貫して同じ角度で表面にて反射するため、鏡面反射(例えば、表面からの光の鏡のような反射)が作成される。高い鏡面反射率を備えた表面の例はミラーであり、鏡は光のすべての成分をほぼ均等に反射し、反射された鏡面光は、入射光と同様に法線角度から同じ角度で生じる。反対に、反射性カーテン100の微細構造は、光が反射される表面の特定の位置に応じて、入射光を様々な角度に分散させることを可能にする。
【0068】
光分散の1つの例は、図3Aに示されるような粗い表面を使用して達成することができる。粗い表面により、光は様々な角度で反射される。したがって、粗い表面から反射された拡散光は、図3Bに示されるように多くの異なる方向に進む。表面は、ほんの数例を挙げると、レーザ処理、エッチング、機械摩耗、カレンダ加工を含む様々な処理技術によって粗面化することができる。幾つかの例において、材料自体の微細構造は多孔性又はミクロポーラスであり、それによって拡散光反射を示す。そして、様々な例において、所望の光分散特性を達成するために、上記で参照されたような微細構造及び表面改質の組み合わせを実施することができる。
【0069】
例えば、反射性カーテンの材料は、高い拡散反射率を備えたポリマー膜材料であることができる。反射性カーテンは、ミクロポーラスで順応性のある光反射性材料から形成されるか、又はさもなければそれを含むことができる。幾つかの実施形態において、反射性カーテンは、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)などの延伸フルオロポリマー材料から形成されている。反射性カーテンの材料は、一般に、膜、又は、比較的に順応性のある又はドレープ可能な薄膜の形態であることができる。ePTFEは適切な材料の例であるが、反射性カーテンとしては、発泡ポリエチレン(ePE)などの他のタイプの発泡ポリマーを含むことができる。例えば、反射性カーテンは、ゲル処理されたePEなどのePEの1つ以上の層を含むことができ、これは、それぞれ400~700nmで約40~45%の反射率のスコアを有することができる。1つ以上のePE層は、比較的薄く(例えば、0.500mm未満)、強く、順応性があり、絶縁性であることができる。
【0070】
幾つかの実施形態において、反射性カーテンは、異なる特性(例えば、厚さ、透過性、反射性、拡散性、疎水性又は親水性など)を有することができる複数の層を含む。したがって、層は、透過率、反射率、空気及び/又は水又は水蒸気透過性、又は、他の特性などの反射性カーテンの1つ以上の特性を変更するように配置されうる。例えば、幾つかの例としては、ePTFEフィルムの第一の層(例えば、厚さ0.500mm未満)及びePEフィルムの第二の層(例えば、厚さ0.500mm未満)を含む。ePEフィルムの第二の層は、例えば、バッカー層として実装されうる。
【0071】
図3Cは、例として、光を屈折させるフィブリル化微細構造(示されるように複数のノードを相互接続する複数のフィブリルを含む)を含むePTFE膜反射性カーテンを示す。比較的に大きなノード構造が図3Cに示されているが、幾つかの微細構造は、所望に応じて、高度にフィブリル化された又は本質的にノードのない構造を含む。
【0072】
参考として、「屈折」という用語は、光波が表面で跳ね出るときの光波の方向の変化に関係する。本明細書で提供される様々な例において、フィブリル化された微細構造を含むフィブリルは入射光の方向を変え、これは、光を他の近くのフィブリルに向け直すことができ、追加の近くのフィブリルに向け直すことができる等々である。フィブリルはそれらの間で光線を屈折し続けるので、フィブリルは、膜によって形成されたエンクロージャの閉じ込め内で光線を「跳ね回らせる」と言うことができる。
【0073】
上記の参考として、図3Cは、反射性カーテン100に利用することができ、反射性カーテンの拡散反射特性を達成するために実装することができるePTFEから形成された膜材料の表面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。ePTFE又は同様の微細構造を備えた材料が使用される幾つかの例において、光線はフィブリルからフィブリルに屈折し、その結果、微細構造の深さ及び開放性が高いフィブリル密度と相まって、微細構造内で最大量での屈折が可能になる。ePTFE膜の他に、同様の特性を備えた他の適切な発泡ポリマーも使用できる。幾つかの例において、材料の微細構造は、光を集め又は収集するように整列又は他の方法で配向された特徴(例えば、フィブリル)を含み、その結果、生じる反射光線は、反射性カーテンによって形成されたエンクロージャの中心などの所望の位置に集中する。
【0074】
幾つかの例において、ePTFEフィルムは、フィブリルがフィルムの1つの軸に配向された比較的にノードの微細構造である。幾つかの実施形態において、フィルムは以下の特性を有する:質量/面積:329g/m2、厚さ:0.028インチ(0.711mm)、密度:0.46g/cc、多孔度:79%。単位面積あたりの質量は、サンプルの質量(天秤、Mettler E163でサンプルを計量することによって得られる)をその表面積で割ることによって計算できる。報告される値は、5つのサンプルの平均測定値によって取得できる。厚さはスナップゲージ(ミツトヨモデル、547-400、直径0.25インチ、イリノイ州オーロラ製)を使用して測定できる。報告される値は、5つのサンプルの平均測定値から取得できる。密度はサンプルの質量(上記のとおりの天秤でサンプルを計量することによって得られる)をその体積(サンプルの面積にその厚さを掛けることによって得られる)で除算して計算できる。報告される密度値は、5つのサンプルの測定値を平均することによって得ることができる。多孔度は多孔度パーセントで表され、物品の平均密度とPTFEのバルク密度の商を1から差し引き、その値に100%を掛けることによって決定される。この計算の目的で、PTFEのバルク密度は2.2g/ccであるとすることができる。
【0075】
本明細書に記載の実施形態による反射性カーテンとして使用するのに適したePTFEフィルムの追加の例は、1995年1月6日に出願されたHannonらの米国特許第5,596,450号(「450特許」)明細書に見出すことができる。「450特許」の主な例は、0.500mm以上の厚さに関するものであるが、本明細書で取り扱う反射性カーテンによる様々な例において、0.500mm未満の厚さ(例えば、0.100~0.400mmの厚さ)であることができる。そのようなより薄い厚さは、より大きな順応性及びドレープ性を達成することができ、これは、以下に記載されるように望ましいことがある。さらに、0.50g/cc未満(例えば、上記の先行の例によれば、0.46g/cc)などの比較的に低い密度を組み込むことが望ましいことがある。
【0076】
図4は、可視光の異なる波長にわたって反射性カーテン100に使用することができる様々な材料の反射率値(例えば、スペクトル固有の分散)を比較するグラフ400を示す。400nm~750nmの範囲は、可視光の波長範囲を含み、低波長端が紫であり、高波長端が赤であることに留意されたい。グラフ400の線Aは、3mmの厚さを有する延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)から作られた反射膜を含む反射性カーテンを表す。線Bは、厚さ0.5mmのePTFE製の別の反射膜を表す。線Cは、厚さ0.25mmのePTFE製のさらに別の反射膜を表す。線AからCは、反射性カーテン100の可能な実施形態のほんの幾つかを表す。
【0077】
比較のために、他のタイプの材料について追加の反射率パターンが示されている。線Dは、粒状のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の反射面を表す。線Eは、硫酸バリウム製の反射面を表す。線Fは、ミクロポーラスポリエステル製の反射面を表す。そして最後に、線Gは、基材上の粉体塗装から作られた反射面を表す。
【0078】
材料AからG(グラフ400においてそれぞれの線A~Gによって表される)及び様々な波長にわたるそれらの反射率に基づいて、反射性カーテン100の材料として使用されるときのそれらの効率を比較することが可能である。例えば、線Aは、厚さが3mmであるePTFEリフレクタが、残りのすべての線よりも常に上にあり、反射率が99%以上であり、グラフ内の他の材料を上回っていることを示している。線Bは、厚さ0.5mmであるePTFEリフレクタが400nmの波長で材料Aと同じレベルの反射率で始まり、750nmで約97%の反射率まで徐々に減少することを示している。線Cは、0.25mmの厚さであるePTFEリフレクタが、400nmの波長で86%未満の非常に低い反射率で始まり、450nmで98%を超えて増加し、それが450nm~750nmの波長内でとどまっていることを示している。線Dは、粒状PTFEがグラフ全体で96%~98%の反射率を維持していることを示している。線E、F及びGは次第に反射率が低下し、線Gは、粉体塗装が約430nm~540nmまでのみ90%を超える反射率を達成することを示している。
【0079】
図5は、材料の反射率と達成可能な反射数との関係を示すグラフ500である。光線が反射するたびに、光エネルギーの一部が失われる。光学設計によって複数の反射を起こすならば、反射率が低いリフレクタはかなりの量の総エネルギーを吸収することができる。したがって、反射率のわずかな違いが、総光出力に大きな違いをもたらす可能性がある。例えば、線502は、反射率が98%の材料を示している。この材料は、図4によると、約600nmの波長で材料B(厚さ0.5mmのePTFE)又は材料D(粒状PTFE)であることができる。最初に、反射が起こる前に、残っている光エネルギーの量は100%である。光エネルギーの20%が消費されるまでに、この材料は10回の反射を達成する。一方、線504で表されるように、反射率が92%しかない材料では、光エネルギーの20%が消費されるまでに、この第二の材料は2回の反射しか達成しない。したがって、同じ量のエネルギーを使用すると、光エネルギーの20%が消費されるまでに、線502によって表される第一の材料は、線504によって表される第二の材料よりも多くの反射を達成することが分かる。このグラフの重要性は、反射率が高いほど透過率が低いことを意味すること、すなわち、光が表面で反射したときに表面から逃げるエネルギーが少ない。したがって、反射率が高いほど、同じ量の初期エネルギーに基づいて光を生成する収量が多くなる。
【0080】
本開示における幾つかの実施形態は、植物を取り囲んでエンクロージャを形成し、光源からの光がエンクロージャ内で反射されることを可能にする反射性カーテン100の形態の高反射性材料の使用に関する。エンクロージャは、図2に示されるものと同様であることができ、ここで、エンクロージャの形状は矩形であり、植物は反射性カーテン100によって囲まれている。参考として、「反射性カーテン」という用語は単数形で使用されるが、反射性カーテン100は単一の連続した材料片、幾つかの区別される個別の材料セグメント、又は、別個であるが接続された材料のセグメントから形成されうることを理解されたい。別の例において、反射性カーテン100によって形成されるエンクロージャの形状は、植物が配置されうるレイアウトに応じて、限定するわけではないが、円形、楕円形、多角形、三角形、台形、又は六角形などである任意の形状を有することができ、その結果、エンクロージャの形状は、特定の面積内に配置できる植物の総数を最大化する。別の例において、より少ない植物で得られる全体的な収量を最大化するようにレイアウトを決定する。これは、例えば、各植物をその隣りから等距離に配置して、その隣りの葉がその成長を妨げることなく、各植物が成長するための十分なスペースを提供することによって達成されうる。
【0081】
別の実施形態において、反射性カーテン100は、光を受けている植物上をドレープし、植物の周囲を覆って異物粒子がエンクロージャ内に入るのを防ぐ柔らかい材料であることができる。別の例において、反射性カーテン100は、より剛性であることができ(例えば、1つ以上の補強部材を含む)、植物が配置される容器を形成する(例えば、反射性カーテン100は、底面及び/又は側面を画定して、植物を支持することができる)。
【0082】
エンクロージャの内壁の最大反射率は、使用される材料に応じて、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上であることができる。幾つかの実施形態において、内壁の最大反射率は、約90%~約95%、約95%~約97%、約97%~約98%、約98%~99%又は約99%~約99.5%である。幾つかの実施形態において、内壁の平均反射率は、約90%~約95%、約95%~約97%、約97%~約98%、約98%~99%又は約99%~約99.5%である。
【0083】
本明細書で論じられる幾つかの例において、反射性カーテン100に使用される材料はePTFE膜であり、その微細構造は、反射させるだけでなく、拡散させ及び/又は特定の波長を選択的に通過させるように設計されている。グラフ400の材料Aを参照すると、反射率は、可視スペクトル全体にわたって一貫して98%以上である。したがって、上記に説明されるように、グラフ500では、材料Aは、光源からの全光エネルギーの20%を使用しながら、少なくとも10回の反射を達成でき、これにより、どの波長でも98%の反射率を達成しない材料E、F及びGと比較して、総光出力が増加する。反射性カーテン100にePTFE膜などの高反射性材料を使用することの1つの利点は、他の方法で必要とされるよりも低いワット数の電球で同じ発光を達成できることであり、これはまた、より低いエネルギー使用のためにコストを削減しうる。例えば、反射率の高い材料を使用して、エンクロージャ全体でワット数の低い電球からの光を反射することにより、ユーザは、ワット数の高い電球を使用してエンクロージャ内部の領域を直接照らすときに実現されるのと同じ又は同様の発光を実現できる。別の利点は、すべての方向から光を受ける状態が、一般に、植物が自然の屋外環境で通常に光を受ける方法に似ていることである。自然環境と人工栽培環境を使用した環境の違いのただ1つの例として、自然界では風が植物の葉を動かし、植物の様々な部分に太陽光を照射して、下層植生も太陽光を垣間見ることができるようにする。しかしながら、屋内ファンを使用しない典型的な屋内農業環境では風がないので、反射性カーテン100を使用してその動きを作動させることは、植物が受光するために成長環境全体に光を提供するのに役立つ。
【0084】
グラフ400の材料Cを参照すると、400nmでの初期反射率は、86%反射率よりはるかに低く、これは、400nm未満の波長の光が反射されるのを効果的に防ぐことができることを示している。言い換えると、最大400nmの波長範囲を占める紫外線(UV)は、エンクロージャ内の植物によって吸収されない。前述のように、紫外線は植物に有害である可能性があるため、そのような光線への曝露を制限することが有利なことがある。したがって、反射性カーテン100におけるグラフ400の材料Cの使用は、ePTFE膜を使用して、特定の波長が反射性カーテン100を通過してエンクロージャの外側に選択的に通過させ、これらの波長が反射されて植物に戻ってくることのないようにすることができる1つの例である。あるいは、反射性カーテン100は、特定の波長での反射率が他の波長での反射率よりも小さいか、又は大きいことができるように調整することができる。この調整可能な特性の利点には、カビ又は雑草の成長を促進する可能性のある波長がエンクロージャ内で反射されるのを排除できることが挙げられる。ePTFE微細構造は、正しい樹脂の選択、処理パラメータの調整、膨張率及びその厚さの変更など、様々な方法で操作できる。例えば、1973年7月3日に出願されたゴアの米国特許第3,953,566号明細書は、そのようなポリマーを改質して異なる微細構造を達成するための多数の方法を記載している。あるいは、2つ以上のePTFE膜を一緒にラミネート化して、同様に所望の結果を達成することができる。植物が繁栄するためには所与の量の完全な暗闇も必要であることが知られているので、ラミネート化膜は光の抑止力としても使用できる。光源が可燃性であるならば、ePTFE膜の物理的特性を操作して不燃性にすることもできる。ePTFE膜と同様の反射特性を有する他の適切な発泡ポリマー膜も使用できることに留意されたい。
【0085】
選択的に通過することができる(すなわち、透過され、したがって反射されない)波長範囲での内壁の最小反射率は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%又は少なくとも90%、反射される波長範囲での最大反射率より低い。幾つかの実施形態において、選択的に通過することが可能である波長範囲での最小反射率は、効果的に反射される波長範囲での最大反射率よりも約50%~約60%、約60%~約70%、約70%~約80%、約80%~約85%、約85%~約90%又は約90%~約95%低い。実施形態で言及されるように選択的に通過することが可能である(したがって反射されない)波長範囲は、約280nm~約380nm、約380nm~約450nm、約450nm~約495nm、約495nm~約570nm、約570nm~約590nm、約590nm~約620nm、約620nm~約750nm又は約750nm~約1mmであることができる。幾つかの実施形態において、スペクトルの2つ以上の非隣接範囲が選択的に通過できるように、複数の範囲を選択することができる。例えば、約280nm~約380nm、約495nm~約570nm及び約750nm~約1mmの範囲は、反射性カーテン100によって反射されることなく又は低減された率で反射されて通過することができる。というのは、これらの範囲の電磁線は、植物の成長に有害であるか、又は植物がそのような放射線を吸収しないために植物の成長に影響を及ぼさない可能性があるからである。そのような範囲は、成長している植物の種類に応じて調整することができる。
【0086】
上記に加えて、ePTFE膜から形成された反射性カーテンは、調整可能な多孔性などの利点を有する。融通性のある多孔性を有することの利点は、液体及び気体が標準大気圧付近で細孔を透過して、植物の通気性を向上させることができることである。植物は成長するために二酸化炭素を必要とするため、外部からの粒子がエンクロージャの内部を汚染することなく、必要に応じて二酸化炭素が通過できるように細孔を調整することができる。また、反射性カーテンの表面にほこりが付着すると、カーテンの反射率が低下することがあるため、細孔を使用して、カーテンに付着している可能性のある粒子を除去するためにガスを時折通過させることができる。1つの例において、加圧二酸化炭素ガスを使用して、粒子を表面から押し出すことができる。二酸化炭素は空気よりも密度が高いため、二酸化炭素は植物が配置されている底面(例えば、テーブル又はトレイなど)に沈み、粒子が底面に沈降してカーテンから離れさせる。
【0087】
別の例において、反射性カーテンは、カーテン表面上に形成される結露を最小限に抑えるために、水蒸気が通過するのに十分な多孔性を有することができる。さらに、二酸化炭素に加えて、他のガスが植物の成長に有益である可能性がある。例えば、少量の硫化水素は植物の成長を大幅に促進し、エチレンは果実の成熟を刺激することができる。必要に応じて、ePTFE膜の多孔度を調整して、このようなガスがエンクロージャに入ることを可能にする。
【0088】
反射性カーテンの材料としてePTFE膜を使用することの他の利点には、酸化及び分解に対するその耐性が挙げられる。ePTFE膜は、pHレベル0(最大酸性度)から14(最大アルカリ度)までの範囲のほぼすべての媒体に対して化学的に不活性であり、-268℃~+315℃までの幅広い熱抵抗を有し、生理学的に不活性であり、ePTFE反射性カーテンは、分解又は融解することなく、屋内照明システムの熱出力に長期間耐えることができる。
【0089】
グラフ400に示されるように、反射率などの反射性カーテンで使用されるePTFE膜の特性は、内壁に使用されるePTFE膜の厚さに依存しうる。厚さは約0.01mm~約1mmの範囲であることができる。幾つかの実施形態において、厚さは、約0.01mm~約0.05mm、約0.05mm~約0.1mm、約0.1mm~約0.25mm、約0.25mm~約0.5mm、約0.5mm~約0.75mm、約0.75mm~約1mm、又は、1mmを超える。ePTFE膜の厚さは、反射性カーテンの重量及び順応性の量、又は反射性カーテンのドレープ性など、ユーザによって設定された様々な要件を満たすように調整できることに留意されたい。厚さを減らすとカーテンの重量も減るので、ユーザはePTFE膜の最も薄い形態を選ぶことができるが、これは、より軽量でありながら、反射性カーテンの目的に十分な大きな反射率を提供する。幾つかの例において、反射性カーテンは、植物自体が反射性カーテンの位置を調整することができるように、十分な順応性、ドレープ性及び軽さを有することができる。すなわち、植物が特定の高さ又はサイズを超えて成長するときに、植物は反射性カーテンをその初期位置を超えて押すことができ、その結果、反射性カーテンは植物の幾らかの外葉を覆ってドレープする。
【0090】
幾つかの実施形態において、反射性カーテン100は、金属化され及び/又は金属又は導電性金属トレースで印刷されることができる。金属トレースを使用して、LED又はその他の光源を柔軟で順応性のある反射性基材(ePTFE膜など)の上に設置し、これにより、LEDをカーテン上に直接取り付けることができる。例えば、LED照明は、LED照明が植物を直接照らすように、反射性カーテン100の内壁上に設置されうる。そのような実施形態において、カーテンと光源との間の空間は排除され、したがって、より密閉されたエンクロージャを形成する。このような密閉されたエンクロージャの1つの利点は追加の保護を含む。さらに、LED照明が植物を囲むカーテンの開口部の真上に配置される構成から生じる可能性のある空間を排除することによって反射される光の量を最大化することも別の利点である。さらに、他の例において、反射性カーテン100は、順応性があり、可撓性がある。図8は、そのような密閉されたエンクロージャの例を示している。
【0091】
図6及び7は、本明細書に開示されるとおりの反射性カーテンを使用して実施された実験の結果を示し、一方の植物がePTFE反射性カーテンにより包囲され、そして他方の植物が反射性カーテンの外側に残されていることを除いて、同一条件で成長させた同一のタイプの2つの植物(バジル)の差異を例示している。図6はサンプル植物604を取り囲む反射性カーテン600を示し、一方、別のサンプル植物602はカーテン600の他方の側に配置されている。この配置において、同じタイプの種子を、同じ成長培地中で、同じ光源下で、一日の同じ時刻で同じ栄養溶液で満たされたトレイ内で、同時に成長させた。サンプル植物604は、反射性カーテン600の内壁で反射されたより多くの光を受けることができた。図7に示されるように、植物604は、上からの光のみを受け、反射光があったとしてもごくわずかであるサンプル植物602よりもかなり大きく成長した。
【0092】
各植物が経験される成長は、同じ時間のバイオマスの量及び照明エネルギーの使用によって測定されうる。この例において、バイオマスは主に植物の葉の表面領域から構成されている。植物が置かれたトレイ606及び上記の実験で使用された植物のための容器608は両方とも黒色であり、したがって、植物によって利用され得たであろう光の一部を吸収することに留意されたい。これらの実施形態の幾つかの実施において、銀コーティングを施したもの又はアルミニウムのシートで包んだものなどの反射性容器及びトレイを使用して、容器及びトレイは光を植物の葉に反射して戻し、各植物の光合成を支援することができる。さらに、トレイ606及び容器608はまた、反射性カーテンとラミネート化されうる。
【0093】
図8は、光合成生物104(この場合は植物であることができる)を成長させるために反射性カーテン100及び光源102を実装する屋内農業のための設備又はシステムの別の例を示す。示されるように、反射性カーテン100は、2つの対向する側面、第一の側面100A及び第二の側面100Bを有し、ここで、植物104は、表面806上に配置されるか、又は、さもなければ、それらの間の位置に維持される。幾つかの例において、複数の光源が存在し、例えば、第一のセットの光源102Aは、植物104の上に位置する天井804に取り付けられ又は実装され、第二のセットの光源102Bは、反射性カーテン100の第一の側面100Aに結合されるか、又は、さもなければ実装され、そして第三のセットの光源102Cは、反射性カーテン100の第二の側面100Bに結合されるか、又は、さもなければ実装される。
【0094】
幾つかの例において、前述の光源102A、102B、102Cのうちの1つ以上は、植物104の異なる必要性に従って設備から除去されうる(例えば、幾つかの植物は、上方よりも側面からのより多くの光を必要とることがあり、したがって、光源102B及び102Cは、天井の光源102Aよりも好ましいことがある)。本明細書に記載のとおりの光源は、幾つか例を挙げると、蛍光グローライト、HPS又はHIDグローライト及びLEDグローライトなどの任意の適切な人工光源であることができる。さらに、光源は、反射性カーテンが風又は換気の存在下で自由に動き回ることを可能にするために、超軽量かつ超薄型であることができる。
【0095】
幾つかの例において、光源102は、反射性カーテン100に固定され、取り付けられ又は他の方法で結合されることができる。例えば、1つ以上の光源102は、反射性カーテン100の一体部分を形成することができる。幾つかの例において、光源102は、反射性カーテン100に作られた開口部内に取り付けることができる。さらに、1つ以上の光源102は、電源802を使用して制御されうる(例えば、天井804又は所望に応じて他の場所に取り付ける)。幾つかの例において、反射性カーテン100は、一端808で天井804又は他の構造に付着され又は取り付けられ、他方端810上で自由に動くことができるようにする。幾つかの例において、カーテン100の自由端810は表面806と接触して、水蒸気が逃げることはできないが、周囲環境からの空気が依然として入ることができるエンクロージャ812を形成することができる。これは、反射性カーテン100を形成する材料(例えば、上記のePTFEフィルムなどのフルオロポリマー膜)の透過性及び疎水性を制御することによって可能である。
【0096】
幾つかの例において、エンクロージャ812内の水蒸気は、天井804、又は他の構造、及び/又は反射性カーテン100の内面814で凝縮することができる。次に、凝縮した水蒸気は、液滴を形成し、これは、反射性カーテン100の内面814に沿った重力によって下方に移動する。地面806又は他の表面が土壌又は他の成長培地を含むならば、収集された水滴は、植物104の利益のために、外気に逃げるのではなく、地面806によって吸収されうる。参考として、この記載全体で使用されるときに、「地面」という用語は、環境の土壌表面を必要とすることが意図されず、代わりに、下面又は構造を指すために便宜上使用される。同様に、この記載全体で使用されるときに、「天井」という用語は、屋根又は建物の構造を必要とすることが意図されず、上面又は構造を指すために便宜上使用される。
【0097】
上記に示したように、反射性カーテン100は、比較的に薄く、順応性であることができる。反射性カーテン100の厚さは、その内面814と外面814との間の距離として測定される。上述のように、厚さはスナップゲージ(ミツトヨモデル、547-400、直径0.25インチ、イリノイ州オーロラ製)を使用して測定されうる。反射性カーテン100の順応性又は可撓性は、反射性カーテン100のドレープ係数を決定するための当該技術分野で知られているようなドレープ試験などの試験方法を使用して測定されうる。例えば、適切なドレープ試験は、2つのより小さな同心ディスクの間に反射性カーテン100の円形試験片を調製することを含み、反射性カーテン100の外輪を下部支持ディスクの周りでひだにドレープすることができる。ドレープされた反射性カーテン100の影は、反射性カーテン100の非支持部分と同じサイズを有する既知の質量の紙のリングに下からキャストされる。影のアウトラインを紙の輪上でトレースし、影のトレースに沿って紙を切断する。ドレープ係数は、影を表す紙の輪のその部分の質量として特性化されることができ、紙のリング全体の質量の百分率として表される。幾つかの例において、反射性カーテン100は、適切なレベルの順応性及び可撓性を達成するために、約0.4未満、約0.3未満、約0.2未満、約0.1未満又は0.05未満のドレープ係数を有することができる。
【0098】
幾つかの例において、反射性カーテン100の順応性又は可撓性は、反射性カーテン100がエンクロージャ812内の様々なセクション全体により多くの光を散乱させるのを助ける。例えば、反射性カーテン100が剛性であるときに、光源102が他の角度からの直接光に移動又は切り替えられない限り、光は植物104の同じセクションに供給される。
【0099】
本明細書で提供される幾つかの例において、順応性反射性カーテンは、環境条件下で反射性カーテン100の変形を促進することによって、相対的な静的光源角度の使用を容易にしうるか、又は光源角度を変更する効率をさらに高めることができる。反射性カーテン100が十分に順応性又は可撓性があるときに、反射性カーテン100は、自然に又は人工的に(人工換気を介して)発生しうる正の空気圧(例えば、風又は換気)の存在下で移動することができる。反射性カーテン100が動くと、光源、地面806及び植物104に対する反射性カーテン100の表面角度が変化し、これらの角度の変化は、光が反応性カーテン100の内面813により散乱される方向を変化させる。したがって、可撓性反射性カーテン100は、より剛性のある表面よりも植物104のより多くの部分にわたってより効果的な光の分布(例えば、より均一な分布)をもたらすことができる。
【0100】
図9は、1つの実施形態による、光源102(図8に示されるような光源102B又は光源102Cのいずれかであることができる)をどのように反射性カーテン100に取り付けることができるかの例を示す。光源102は、限定するわけではないが、グルー接着、テーピング、接合及び付着を含む任意の適切な手段を使用して、反射性カーテン100の内面814に取り付けられるか又はさもなければ結合されることができる。示されるように、反射性カーテン100は、反射性カーテン100の外面816に配置された導電性トレースアレイ902が反射性カーテン100を通って内面814上の光源102に到達するための経路を提供する開口部900を有する。したがって、導電性トレースアレイ902はエンクロージャ812の外側に留まり、それゆえ、反射性カーテン100の内面814上に形成されうる水蒸気及び結露から離れていることができる。幾つかの例において、導電性トレースアレイ902は、非導電性ポリマー又は他の保護層を使用して覆われることができ、この場合、導電性トレースアレイ902は、内面814上に配置されることができ、したがって、反射性カーテン100における開口部900はもはや必要とされなくてよい。導電性トレースアレイ902は、光源102がアクティブになるのに必要なエネルギーを受け取ることを可能にし、幾つかの例において、光源102が非アクティブ化するか、又はアクティブ化しそこなったときに、コンピュータなどの処理ユニットに接続されうる電源802に信号を送信することもできる。
【0101】
幾つかの例において、反射性カーテン100への導電性回路及びLEDの取り付けは、以下を含むこともできる。一片の反射性カーテン材料(例えば、ePTFE)は、例えば、1995年3月10日に出願されたBacinoの米国特許第5,476,589号明細書に教示されている方法を使用して、上述の例のいずれかに従って製造することができる。材料はフィルムの形態であることができる。デュアル導電性トレースパターンで金属インク(例えば、銅、アルミニウム、青銅、亜鉛又は他の導電性金属合金を含むことができる)を正確に塗布するために、マスクをフィルムに適用することができる。デュアル導電性トレースパターンは、エネルギー源からエネルギーシンクへの導電性経路、ならびに、エネルギーシンクからエネルギー源に戻る別の導電性経路を画定するトレースパターンを有することによって規定することができる。適切なインクは、マサチューセッツ州ウェアハムのErcon Inc.から入手することができ、スクリーン印刷技術などの様々な手段を使用して塗布することができる。フィルム、マスク及びインクは硬化又は乾燥することができる(例えば、65℃に設定された空気対流オーブン内で)。乾燥したら、マスクを取り外し、LEDを導電性トレースに取り付ける(例えば、約50mm刻みで)。トレースに使用したものと同じインクを使用して、LEDを取り付けることができる。適切なLEDは、例えば、部品番号1214-1447-1-NDで販売されているものを含め、カリフォルニア州サニーベールのLuminus Devices Inc.から入手できる。次に、LED及びトレースをフィルムに適用することによって形成された構造物を、上述の方法と同様の方法で乾燥させることができる。
【0102】
幾つかの例において、ポリウレタン接着剤をフィルム層上に適用し、次に、適切な方法(例えば、130℃に設定された、パターン及びデザインをTシャツにプレスするために使用されるなどの標準的な熱プレス機)を使用して、別のフィルム層(例えば、トレースが形成されるものと同じタイプのフィルム)に転写されうる。シリコーン接着剤(例えば、カリフォルニア州カーピンテリアのNu-Sil Corporationから入手可能なP/N MED 1137)を各LEDの位置に適用することができる。シリコーン接着剤は、ヘプタン(又は任意の他の適切な溶媒)を使用して塗布する前に薄くし、注射器又は他の適切なデリバリー機構を使用して塗布することができる。注射器を使用して、ポリウレタン接着剤及びシリコーン接着剤の「ドット」をフィルムの表面上に作成するのに適するように表面上にポリウレタン接着剤及び/又はヘプタンの液滴を塗布することができる。ポリウレタン接着剤ドットを備えたePTFEフィルムを、ポリウレタン接着剤ドットがLEDに対面するように、ePTFEフィルム及び回路構造(トレースを含む)上に配置することができる。次に、構造全体を結合することができる(例えば、再び熱プレス機に配置し、ポリウレタン接着剤を30秒間リフローすることにより両方のシートを融着させる)。
【0103】
様々な例において、シリコーンにおけるヘプタンの使用は、LEDの位置でePTFEフィルムを濡らすのを助けることができ、それにより、材料を透明にし(すなわち、材料をより光透過性にする)、反射性カーテン材料に光を通過させることを可能にする。上述のアセンブリにおいて、導電性トレースに絶縁性を提供しながら、LED回路全体を、柔らかく、薄く、順応性があり、反射性のePTFEフィルムで挟むことができる。各LEDは、ePTFEフィルムがシリコーン及びヘプタンで濡れた場所にあることができ、その結果、ePTFEフィルムの濡れた場所は、シリコーン及びヘプタンで濡れていない残りのePTFEフィルムよりも透明である。幾つかの例において、シリコーンの液滴は、表面張力又はフォーム又はツールの使用によって改質されて、シリコーン層をLEDの場所でレンズに変え、それによって、光子エネルギーがLEDから向けられる角度を変えることができる。
【0104】
LED結合の上述の例は、例示の目的のためにのみ提供され、導電性トレースアレイを反射性カーテン100に提供するための、反射性カーテン100に結合された光源(例えば、LED)を提供するための、そして光源で反射性カーテン100を通る選択的光透過を提供するための様々な機構が考えられる。
【0105】
屋内農業に加えて、反射性カーテン100は、屋外環境でも使用することができる。例えば、温室は、外部の要素から内部の植物を保護するために、外部構造を覆うフィルムを必要とする。外部構造は、幾つかを挙げると、ガンナー接続、自立型クォンセット、単一の切妻構造などの様々な形状にすることができる。異なる数の側壁及び天井部分を使用して、様々な温室構造構成を形成することができる。温室の屋根又は側壁を形成するePTFE建築布帛などの建築布帛として反射性カーテンを使用すると、反射性カーテンを調整して、温室を形成する布帛を通過できるUV波長を操作できるという、温室の構造に利点が追加されうる。また、ePTFE建築布帛の例において、布帛はUV安定性があり、紫外線にさらされても時間の経過とともに分解しない。ePTFE建築布帛は、反射性に加えて高い耐久性と通気性を有し、布帛は防風性、防水性及び難燃性でもあることができる。このような追加又は代替の利点及び利益は、温室でePTFE布帛及び/又は膜を使用することで実現されうる。
【0106】
屋内農業の分野の以外に、反射性カーテンは、クリーンな環境で効率的な照明が必要とされる科学のあらゆる分野で使用することができる。幾つかの例としては、限定するわけではないが、医療機器設備、電子機器製造設備及び製薬設備が挙げられる。これらの設備のいずれにおいても、光を反射するために反射膜を使用すると、特にこれらの設備が大きく、小さな設備よりも多くの光を必要とするならば、かなりの量のエネルギーを節約することができる。したがって、同じワット数でより多くの光を得ることができ、又は、より少ないワット数で同じ量の光を得ることができる。また、これらの設備の多くは、外部の汚染物質の数を最小限に抑えなければならないクリーンルームを利用しているので、反射性カーテンの多孔性、したがって通気性が重要である。これは、クリーンに保つ必要のある製品からほこり又は粒子を吹き飛ばすための一定の換気があるからである。反射性カーテンを通して空気又はその他のガスを吹き込むことで、反射性カーテンを取り外す必要なく、エンクロージャの内部をクリーンに保つのを支援することができる。1つの例において、カーテンは、カーテンが加圧空気源、例えば、所定の間隔でエンクロージャを清掃するために空気源がカーテンを通して加圧空気を送達するようにカーテンに操作可能に連携されたプログラム可能な電気送風機に結合されるという点で、セルフクリーニングリフレクタである。別の例において、空気源は、エンクロージャを常に清潔に保つために、カーテンを通して常に空気を吹き込むことができる。
【0107】
さらに、反射膜から作られた反射性カーテンはまた、宇宙農業の新たな分野で使用されることができ、そこでは、作物が宇宙又は地球外の場所で食物及び他の材料のためにどのように栽培され得るかを理解するために研究が行われる。地球外の場所としては、宇宙ステーション又は宇宙コロニー、又は、地球から離れた惑星(火星など)又は衛星(月など)の表面を挙げることができる。この分野の研究者が直面する課題の1つは、そのような環境で作物に提供される太陽光の量が、地球上で利用できる量よりもかなり少ない可能性があることである。環境に水及び空気を供給するなど、他の生命維持の目的に使用しなければならない限られたエネルギー源を考えると、この環境の農民は、作物の成長に必要なすべての光を提供するために人工照明に頼ることはできない。光の利用性が不十分であることにより、光合成が起こるのが制限され、栽培する作物が少なくなるか、又は、作物のバイオマスが減少する。完全に持続可能な作物源を得るには、反射膜を使用して、自然及び人工の利用可能な光をできるだけ多く集め、作物が受ける光の量を最大化する方法で光を反射することができる。
【0108】
膜の反射性に加えて、その中の細孔のサイズもまた、必要に応じて調整することができる。例えば、農業環境において、膜が空気、水蒸気及び二酸化炭素に対して透過性であることは、膜の多孔性を考慮するときに重要な要素であることができる。幾つかの例において、細孔のサイズを、空気は入れるが、乾燥環境を維持するため水蒸気が膜を通過しないよう十分に小さくすることができる。これは、少量の水による汚染でさえ、マイクロデバイスの短絡などの問題を引き起こすミクロ加工又はナノ加工を専門とする設備にとって特に重要になることがある。膜の細孔は、1013.25mbarの標準大気圧又はその付近で特定の物質に対して選択的に透過性を示すように、調整することができる。これらの膜が透過性を維持する典型的な大気圧の範囲は、約980mbar~約1040mbarであることができる。
【0109】
さらに、光の欠乏は、時間の経過とともに人間の人格に影響を与える可能性があり、多くの建築家は、現在、設計する構造により多くの屋外光を導入することを検討している。歴史的に、自然光は「視線」が許す範囲でしか建物を透過できなかったため、自然光をまったく受けない領域があった。したがって、本明細書に開示した反射性カーテンは、通常は自然光が当たらないような住居の領域に光を透過させて充満させることを助長することで、光の欠乏に関連する悪影響を防ぐことができる。
【0110】
発明の概念は、一般的に及び特定の実施形態に関しての両方で上記に記載されてきた。本開示の範囲から逸脱することなく、実施形態において様々な変更及び変形を行うことができることは当業者には明らかであろう。したがって、実施形態は、それらが添付の特許請求の範囲及びそれらの均等形態の範囲内に入るかぎり、本発明の変更及び変形を網羅することが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2024-01-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも90%の反射率値を有する多孔質膜を含む反射性カーテンを含んでなる、制御された環境での農業システム。
【外国語明細書】