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  • 特開-積層部材及び積層部材の製造方法 図1A
  • 特開-積層部材及び積層部材の製造方法 図1B
  • 特開-積層部材及び積層部材の製造方法 図2A
  • 特開-積層部材及び積層部材の製造方法 図2B
  • 特開-積層部材及び積層部材の製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003809
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】積層部材及び積層部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/18 20060101AFI20240109BHJP
【FI】
B32B5/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103091
(22)【出願日】2022-06-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 販売日 令和4年4月25日 販売した場所 株式会社甲南
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】若松 洋平
(72)【発明者】
【氏名】川西 康之
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AN00A
4F100BA02
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CC00B
4F100DJ01A
4F100EJ17
4F100EJ30
(57)【要約】
【課題】コスト高を招くことなく、滑り止めと色彩の付加とを両立することができる積層部材及び積層部材の製造方法を提供する。
【解決手段】積層部材20,120は、板状のゴム発泡部材21,121と、ゴム発泡部材21,121の表面(上面)を覆うように塗料12aで形成され、かつ表面(上面)側が所定形状に成形された表面部材22,122と、を備えている。
【選択図】 図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状のゴム発泡部材と、
前記ゴム発泡部材の表面を覆うように塗料で形成され、かつ表面側が所定形状に成形された表面部材と、
を備えたことを特徴とする積層部材。
【請求項2】
前記ゴム発泡部材の表面は切断面であることを特徴とする請求項1に記載の積層部材。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の積層部材の製造方法であって、
前記ゴム発泡部材の表面に、塗料で形成された表面部材が積層された積層体を、所定形状に成形する圧縮工程を有することを特徴とする積層部材の製造方法。
【請求項4】
前記ゴム発泡部材を成形する成形工程と、
前記成形工程にて成形された前記ゴム発泡部材を切断する切断工程と、
前記切断工程にて切断された前記ゴム発泡部材の切断面に前記塗料で形成された表面部材を積層して前記積層体を形成する積層工程と、
をさらに有することを特徴とする請求項3に記載の積層部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層部材及び積層部材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積層部材として、特許文献1には、基板1上に前縁滑り止め3およびエンボス突起2を設けたゴム板状から形成された消音マットが開示されている。
また、他の積層部材として、特許文献2には、マット全体又はその裏面層を柔軟性を有する合成樹脂や合成ゴム又は天然ゴムなどの高分子材料で形成すると共に、その下面に吸盤部を成形した吸盤部付きマットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭56-18782号公報
【特許文献2】特開平11-216060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1及び特許文献2に開示されている積層部材においては、エンボス突起2及び吸盤部により滑り止め効果を有するものの、意匠性を向上させるため色彩を付加することが要請されている。この要請に対して、マットの素材そのものに着色することが考えられるが、コスト高となる恐れがあった。
【0005】
本発明は、上述した問題を解消するためになされたもので、コスト高を招くことなく、滑り止めと色彩の付加とを両立することができる積層部材及び積層部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明に係る積層部材は、板状のゴム発泡部材と、前記ゴム発泡部材の表面を覆うように塗料で形成され、かつ表面側が所定形状に成形された表面部材と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この発明に係る積層部材によれば、ゴム発泡部材の表面に、表面側に所定形状を成形できる表面部材を設けるので、積層部材に滑り止め機能を設定することが可能となる。さらに、表面部材は塗料で形成されるので、比較的低コストにて積層部材に色彩を付加することが可能となる。このように、コスト高を招くことなく、滑り止めと色彩の付加とを両立することができる積層部材を提供することが可能となる。
【0008】
また、本発明による積層部材においては、前記ゴム発泡部材の表面は切断面であることが好ましい。これによれば、塗料を切断面に積層するので、ゴム発泡部材の表面に確実に表面部材を形成(積層)することが可能となる。よって、表面部材すなわち積層部材の表面部の摩耗性、撥水性を向上させることが可能となる。
【0009】
また、本発明に係る積層部材の製造方法は、上述した積層部材の製造方法であって、前記ゴム発泡部材の表面に、塗料で形成された表面部材が積層された積層体を、所定形状に成形する圧縮工程を有することを特徴とする。
この発明に係る積層部材の製造方法によれば、圧縮工程において、積層体の表面部材の表面側に所定形状を成形できるので、積層部材に滑り止め機能を設定することが可能となる。さらに、表面部材は塗料で形成されるので、比較的低コストにて積層部材に色彩を付加することが可能となる。このように、コスト高を招くことなく、滑り止めと色彩の付加とを両立することができる積層部材の製造方法を提供することが可能となる。
【0010】
また、本発明による積層部材の製造方法においては、前記ゴム発泡部材を成形する成形工程と、前記成形工程にて成形された前記ゴム発泡部材を切断する切断工程と、前記切断工程にて切断された前記ゴム発泡部材の切断面に前記塗料で形成された表面部材を積層して前記積層体を形成する積層工程と、をさらに有することが好ましい。これによれば、積層工程において、塗料をゴム発泡部材の切断面に積層することにより積層体ひいては積層部材を製造するので、ゴム発泡部材の表面に確実に表面部材を形成(積層)することが可能となる。よって、表面部材すなわち積層部材の表面部の摩耗性、撥水性を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、コスト高を招くことなく、滑り止めと色彩の付加とを両立することができる積層部材及び積層部材の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】本発明による積層部材20の一実施形態の一部分を示す平面図である。
図1B図1の積層部材20を示す1B-1B線に沿った端面図である。
図2A】本発明による積層部材20の製造方法の一実施形態を示す断面図である。
図2B】本発明による積層部材20の製造方法の一実施形態を示す断面図である。
図3】第1変形例による積層部材120を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明による積層部材20及びその製造方法の一実施形態について図面を参照して説明する。ただし、本発明は、この実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
【0014】
(積層部材)
図1A,1Bに示すように、積層部材20は、ゴム発泡部材21及び表面部材22を備えている。ゴム発泡部材21は、発泡ゴムで板状に形成されている。発泡ゴムは、ゴム材を発泡させて形成されている。ゴム材としては、天然ゴム、若しくは、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、ブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム(イソプチレン・イソプレンゴム)(IIR)、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどの合成ゴムが採用されるのが好ましい。尚、ゴム発泡部材21の厚みは、5mm~30mmに設定されるのが好ましい。
【0015】
尚、上述した積層部材20においては、ゴム発泡部材21に代えてゴム発泡部材以外の発泡部材を備えるようにしてもよい。この場合、積層部材は、発泡部材及び表面部材22を備えればよい。発泡部材としては、合成樹脂フォーム(合成樹脂発泡体)が挙げられる。合成樹脂フォームとしては、軟質ポリウレタンフォーム、硬質ポリウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、EVA架橋発泡体、PET樹脂発泡体、フェノールフォーム、シリコーンフォーム、ポリ塩化ビニルフォーム、ユリアフォーム、アクリルフォーム、ポリイミドフォーム、EPDMフォームなどが採用可能である。
【0016】
表面部材22は、ゴム発泡部材21の表面を覆うように塗料で形成されている。表面部材22は、塗料でシート状、薄膜状に形成されている。シート状、薄膜状に形成された表面部材22の表面側は、圧縮工程(後述する)にて所定形状に成形可能である。尚、表面部材22の厚みは、20μm~200μmに設定されるのが好ましい。
【0017】
塗料は、流動体物質を物体(対象物)の表面に塗り広げて層をつくり、のちに固化して物体の表面の保護、着色などのために用いられるものである。換言すると、塗料は、一般に液状で、溶剤の揮発・乾燥によって固化・密着し、表面に塗膜を形成して、対象物の美観を整え、保護するものである。
【0018】
塗料の主成分は、塗膜形成成分、希釈剤(溶剤)、添加剤、及び顔料(染料も含む。)である。塗膜形成成分としては、乾性油、樹脂、セルロースなどが用いられる。樹脂としては、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂・尿素樹脂(アミノ樹脂)、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、フッ素樹脂などが用いられる。
【0019】
添加剤は、レベリング剤(リターダー)、スリップ剤、可塑剤、増粘剤、乳化剤、乾燥剤、消泡剤などが用いられる。希釈剤(溶剤)は、流動性を調整するためのものであり、水、有機溶剤(エタノール、ベンゼン、アセトン、クロロホルムなど)などである。顔料は、着色に用いる粉末で水や油に不溶のものであり、染料は、水などの溶媒に溶解させて着色に用いる有色の物質である。尚、顔料または染料を所望の色に選定することにより、塗料を所望の色彩にて着色することができ、ひいては、表面部材22を所望の色彩にて着色することができる。
【0020】
尚、上述した表面部材22は、塗料で形成したが、これに限定されず、顔料を含んだ溶液を物体(対象物)の表面に塗布し、溶剤の揮発・乾燥によって固化・密着し、表面に被膜を形成して、対象物の表面を保護したり着色したりする、他の液状物質(すなわち被膜形成用溶液)で形成するようにしてもよい。塗料は、被膜形成用溶液と称してもよい。
【0021】
また、塗料は、塗料の塗布対象に応じて選定されるのが好ましい。本実施形態では、塗布対象がゴム発泡部材21であるので、素材のゴムを溶解しない水性塗料が使用されるのが好ましい。
【0022】
さらに、表面部材22の表面側が所定形状に成形されている。所定形状は、滑り止め機能を発揮する凹凸形状であるのが好ましい。所定形状としては、網目(平織金網の網目)状模様、シボ模様、格子状に配置された凸部(または凹部)を有する模様などがある。本実施形態では、網目状模様の凹凸形状が成形されている。
【0023】
表面部材22の所定形状は、所定形状(例えば正方形の板状)のゴム発泡部材11aの表面に塗料を塗布して乾燥した後に、後述する圧縮工程にて熱プレス加工により成形される。このとき、表面側をプレスする型(上型)の内壁面に網目状模様が形成されており、この内壁面の網目状模様によって、表面部材22の表面側に網目状模様の凹凸形状が成形される。
【0024】
本実施形態では、表面部材22には、複数の凹部22aが形成されている。凹部22aは、前後方向(第1方向)に沿って細長い溝22a1、及び、前後方向に直交する左右方向(第2方向)に沿って細長い溝22a2を有している。溝22a1及び溝22a2は、長さ(長手方向)及び幅(短手方向)は同一に設定されている。溝22a1及び溝22a2は、前後方向及び左右方向にて所定距離をおいて配置されている。また、表面部材22の断面は、略波形状に形成されていると称することもできる。断面波形状は、所定の形状が繰り返し形成されたものであり、例えば非正弦波である矩形波状、三角波状、のこぎり波状や、正弦波状などがある。
【0025】
また、ゴム発泡部材21の表面側には、凹部22aにそれぞれ対応した複数の凹部21aが形成されている。凹部21aは、凹部22aと同様に、溝22a1に対応した細長い溝21a1、及び、溝22a2に対応した細長い溝21a2を有している。
【0026】
尚、ゴム発泡部材11の表面は切断面であることが好ましい。成形用金型に直接接触していたゴム発泡部材11の表面(皮面)に塗料を塗布した場合、熱プレス加工すると表面側に反りが発生する不具合が生じる可能性がある。これに対して、ゴム発泡部材11の切断面に塗料を塗布した場合、熱プレス加工しても表面側に発生する反りを抑制することができる。
【0027】
(積層部材の製造方法(製造工程))
次に、上述した積層部材20の製造方法(製造工程)について、図2A,2Bを参照して説明する。積層部材20の製造方法は、成形工程S1、切断工程S3、塗布(積層)工程S5、及び圧縮工程S7を有している。
【0028】
(成形工程・切断工程)
成形工程S1は、ゴム発泡部材原料を成形用金型内に投入して、ゴム発泡部材11を成形する。このとき、ゴム発泡部材11は、例えば、板状、ブロック状に成形される。切断工程S3は、成形工程S1にて成形されたゴム発泡部材11を切断する。切断工程S3においては、ゴム発泡部材11は、切断装置(図示省略)によって所定サイズに切断される。切断後のゴム発泡部材の符号は11aである。
【0029】
(塗布(積層)工程)
塗布(積層)工程S5は、成形工程S1にて成形されたゴム発泡部材11(または切断工程S3にて切断されたゴム発泡部材11a)の表面に表面部材12を積層する。積層工程S5においては、切断工程S3にて切断されたゴム発泡部材11a(または成形工程S1にて成形されたゴム発泡部材11)の表面に塗料で形成された表面部材12を積層して積層体15を形成する。積層工程S5においては、切断工程S3にて切断されたゴム発泡部材11aの切断面に塗料で形成された表面部材を積層して積層体15を形成するのが好ましい。
【0030】
塗布(積層)工程S5においては、塗布対象であるゴム発泡部材11aの表面に塗布装置31によって塗料12a(被膜形成用溶液)が塗布される。塗布装置31は、塗料を噴射(噴出)するタイプ(スプレー塗布)の装置である。尚、塗布装置31としては、ローラーを使用して塗料を塗るロールコーティングタイプの装置を採用してもよい。いずれのタイプの塗布装置においても、塗料の膜厚を制御可能なものが好ましい。塗布工程S5において、塗布量は、200~600g/mであることが好ましく、300~500g/mであることがより好ましい。これにより、乾燥後の表面部材12の膜厚は、30μm~100μmに設定することが可能となる。
【0031】
塗布(積層)工程S5においては、塗料を塗布した後、乾燥させるのが好ましい。乾燥させることにより、塗料12aが硬化し、表面部材12がゴム発泡部材11aの上面(表面)に積層される。すなわち、表面部材12がゴム発泡部材11aの上面に接着される。
【0032】
(圧縮工程)
圧縮工程S7は、積層工程S5にて積層された積層体15を、所定条件にて圧縮することにより表面部材12の表面側を所定形状に成形する。圧縮工程S7においては、ゴム発泡部材11aの表面に、塗料で形成された表面部材12が積層された積層体15を、所定形状に成形する。圧縮工程S7においては、圧縮装置40によって積層体15が圧縮成形される。
【0033】
圧縮装置40は、圧縮対象(積層体15)を上面に載置するテーブル41と、テーブル41の上方にスライド可能に配置されているスライド42と、を備えている。テーブル41の上面には、積層体15の下面側(すなわち表面部材12の表面側)を上述した所定形状に成形するための所定形状成形部41aが形成されている。所定形状成形部41aは、所定形状に対応した凹凸部が形成されており、本実施形態では、所定形状成形部41aは、網目状模様の凹凸形状である。
【0034】
圧縮装置40は、加熱装置を有することが好ましい。加熱装置は、スライド42側またはテーブル41側の少なくとも何れか一方に設けられている。これにより、圧縮装置40は、積層体15を加熱しながら圧縮することができ、すなわち積層体15を熱プレス加工することができる。
【0035】
圧縮工程S7は、積層体15を圧縮装置40に導入する導入工程S7a、積層体15を圧縮する圧縮工程S7b、及び、圧縮成形後の積層部材20を圧縮装置40から取り出す導出工程S7cを有している。
【0036】
導入工程S7aにおいては、スライド42を上方に移動させテーブル41から引き離すことにより、圧縮装置40を開き、積層体15をテーブル41の上面(所定位置)に載置する。このとき、積層体15の表面部材12側を下側にして載置する。
【0037】
圧縮工程S7bにおいては、加熱状態のスライド42を上方位置から下方に移動させ、テーブル41上の積層体15を加熱しながら圧縮する。このとき、表面部材22は、加熱されながら所定形状成形部41aに応じた形状に成形される。すなわち、表面部材22は、複数の凹部22aが下方に向けて開放するように形成される。尚、表面部材22は、熱可塑的に変形されるということもでき、塑性変形されるということもできる。合わせて、ゴム発泡部材21の表面側(図2Aにて下面側)には、下方に開放する凹部22aにそれぞれ対応した複数の凹部21aが形成される。
【0038】
圧縮工程S7bにおいて、圧縮率は10~30%に設定されるのが好ましく、本実施形態では、15%に設定されるのが好適である。また、温度(加熱温度)は150~170℃に設定されるのが好ましく、本実施形態では、160℃に設定されるのが好適である。圧縮時間は、180~600秒に設定されるのが好ましく、本実施形態では、300秒に設定されるのが好適である。尚、本実施形態では、圧縮工程における所定条件は、圧縮率が15%であり、加熱温度が160℃であり、圧縮時間が300秒である。また、これらの圧縮条件は、圧縮対象(表面部材12、ゴム発泡部材11)の材質等に応じて適宜設定される。
【0039】
導出工程S7cにおいては、積層体15の圧縮変形が完了すると、スライド42を上方に移動させて、圧縮装置40を開き、積層体15の成形後である積層部材20をテーブル41の上面から取り出す。このとき、積層部材20は、使用状態とは異なり上下が逆となっており、表面部材22が下に、ゴム発泡部材21が上に位置している。
【0040】
尚、所定形状形成部41aをテーブル41側に設けるようにしたが、スライド42側に設けるようにしてもよい。この場合、スライド42の下面に、積層体15の上面側(すなわち表面部材12の表面側)を上述した所定形状に成形するための所定形状成形部を形成すればよい。
【実施例0041】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は、この実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
【0042】
実施例1の積層部材20は、ゴム発泡部材11a及び塗料12aを用いて上述した製造方法により作成されている。ゴム発泡部材11aは、EPDM系のゴム素材を3倍~10倍に発泡させ所定形状(1100mm×1100mm×15mm)に成形(切断)された発泡体である。ゴム発泡部材11aは、黒色であり、所定の硬さに設定されている。塗料12aは、水溶性ウレタン系であり、所定の色彩(例えば、緑色)を有している。
【0043】
積層部材20は、ゴム発泡部材21及び表面部材22を備えている。表面部材22は、ゴム発泡部材21の上面に密着している。積層部材20のサイズは、1100mm×1100mm×15mmである。表面部材22の厚みは、50μmである。表面部材22の色彩は、塗料の色彩と同じである。積層部材20の表面(上面)には、所望の凹凸形状が形成されており、所定の滑り止め機能を発揮する。このように、積層部材20においては、表面部材22の塗料12aの顔料の色彩を変更することにより、積層部材20を所望の色彩に変更(付加)することが可能となる。
【0044】
一方、ゴム発泡部材11を使用したマットにおいて、色彩を付加する場合には、ゴム発泡部材自体(すなわちゴム材料自体)に着色することが考えられるが、ゴム材料自体を白色化する必要がある。この場合、ホワイトカーボンや酸化チタンなどの高価な充填材を添加するため、所望の色彩が付加されたゴム材料やゴム発泡部材は比較的高価なものとなる。これに対して、本発明に係る積層部材20は、表面部材22は比較的低コストである塗料で形成されるので、比較的低コストにて積層部材20に所望の色彩を付加することが可能となる。
【0045】
(変形例)
尚、上述した実施形態においては、表面部材22に凹部22aを設けるとともにゴム発泡部材21の表面(上面)に凹部21aを設けるようにしたが、図3に示すように、ゴム発泡部材121に凹部を設けないで表面部材122の表面にのみ凹部122aを設けるようにしてもよい。
【0046】
第1変形例による積層部材120は、ゴム発泡部材121及び表面部材122を備えている。表面部材122の表面には凹部122aが形成されるが、表面部材122の裏面(下面)は、上述した凹凸形状を有する表面部材22の裏面と異なり、平坦に形成されている。また、ゴム発泡部材121の上面は、上述した凹凸形状を有するゴム発泡部材21の上面と異なり、平坦に形成されている。
【0047】
積層部材120は、上述した積層部材20と同様の製造工程にて基本的に製造される。異なる点は、積層工程S5にて塗布される塗料12aの膜厚であり、本積層部材120では上述した積層部材20より厚い膜厚に設定されている。その結果、その後の圧縮工程S7bにおいて熱プレス加工されても、表面部材112の表面側のみに凹凸状が形成され、表面部材112全体が凹凸状に形成されない。よって、表面にのみ凹部122aを有する表面部材122が形成される。
【0048】
また、上述した表面部材22(または表面部材122)に複数の凹部22a(または凹部122a)を設けるようにしたが、表面部材22に複数の凸部を設けるようにしてもよい。この場合、圧縮工程S7において、スライド42の下面に、積層体15の上面側(すなわち表面部材12の表面側)に凸部を形成する凸部成形部が形成されるのが好ましい。
【0049】
また、上述した積層部材20において、塗料に、導電性、抗菌性、熱伝導性を有する成分を含ませることにより、導電性、抗菌性、熱伝導性を有する積層部材を提供することが可能となる。
【0050】
(実施形態の作用・効果)
上述した実施形態に係る積層部材20,120は、板状のゴム発泡部材21,121と、ゴム発泡部材21,121の表面(上面)を覆うように塗料12aで形成され、かつ表面(上面)側が所定形状に成形された表面部材22,122と、を備えている。
【0051】
この積層部材20,120によれば、ゴム発泡部材21,121の表面に、表面側に所定形状を成形できる表面部材22,122を設けるので、積層部材20,120に滑り止め機能を設定することが可能となる。さらに、表面部材22,122は塗料12aで形成されるので、比較的低コストにて積層部材20,120に色彩を付加することが可能となる。このように、コスト高を招くことなく、滑り止めと色彩の付加とを両立することができる積層部材20,120を提供することが可能となる。
【0052】
また、積層部材20,120においては、ゴム発泡部材21,121の表面は切断面であることが好ましい。これによれば、塗料12aを切断面に積層するので、ゴム発泡部材21,121の表面に確実に表面部材22,122を形成(積層)することが可能となる。よって、表面部材22,122すなわち積層部材20,120の表面部の摩耗性、撥水性を向上させることが可能となる。
【0053】
また、積層部材20,120の製造方法は、ゴム発泡部材21,121の表面に、塗料12aで形成された表面部材12,112が積層された積層体15を、所定形状に成形する圧縮工程S7を有する。
この積層部材20,120の製造方法によれば、圧縮工程S7において、積層体15の表面部材12,112の表面側に所定形状を成形できるので、積層部材20,120に滑り止め機能を設定することが可能となる。さらに、表面部材22,122は塗料12aで形成されるので、比較的低コストにて積層部材20,120に色彩を付加することが可能となる。このように、コスト高を招くことなく、滑り止めと色彩の付加とを両立することができる積層部材20,120の製造方法を提供することが可能となる。
【0054】
また、積層部材20,120の製造方法においては、ゴム発泡部材21,121を成形する成形工程S1と、成形工程S1にて成形されたゴム発泡部材21,121を切断する切断工程S3と、切断工程S3にて切断されたゴム発泡部材21,121の切断面に塗料12aで形成された表面部材12,112を積層して積層体15を形成する積層工程S5と、をさらに有することが好ましい。これによれば、積層工程S5において、塗料12aをゴム発泡部材21,121の切断面に積層することにより積層体15ひいては積層部材20,120を製造するので、ゴム発泡部材21,121の表面に確実に表面部材22,122を形成(積層)することが可能となる。よって、表面部材22,122すなわち積層部材20,120の表面部の摩耗性、撥水性を向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0055】
11…ゴム発泡部材、12,112…表面部材、12a…塗料、15…積層体、20,120…積層部材、21,121…ゴム発泡部材、22,122…表面部材、S1…成形工程、S3…切断工程、S5…積層工程、S7…圧縮工程。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3